弥生ちゃんの部屋  

 本日の弥生ちゃんは座敷牢にご出勤です。

  

 

弥生「春弥生、私の生まれた月です。こんばんは蒲生弥生です。」

まゆ子「こんばんは、八段まゆ子です。

  そういえば弥生さんのお誕生日は3月の21日ですね。」

弥生「ええ。ですから私、幼稚園の頃からいつもクラスで一番遅くに誕生日を迎えてきたんです。」

まゆ子「それはちょっとお気の毒。まして小さい頃は早生まれの子と4月に生まれた子とでは体格に随分の違いがありますからね。」

弥生「そうなんです。私、クラスで一番小さい子をもう10年もやってきました。

 でも今は聖さんが居るから私その座から解放されましたわ。」

まゆ子「それはそれは。」

弥生「ところでまゆ子さん、何故に私は今回座敷牢の中に居るのでございましょうや。」

まゆ子「おほほほ、お気に召しませんか。」

弥生「ええ、とっても。」

まゆ子「それは前回私が世にも恐ろしい猛獣に襲われたからですわ。おかげで私の躰には一生消えない傷痕が残ってしまいました。」

弥生「それはまた恐ろしい。一体いかなる獣に襲われたのですか。私は前回もまゆ子さんとご一緒させて頂きましたが、そのような猛獣には気づきませんでした、」

まゆ子「・・・・ああ、口に出すのも恐ろしい。でもそれは実在するのです。私の躰にはその証拠がはっきりと刻まれておりますもの。」

弥生「もしよろしければその傷痕を拝見させて頂くわけには参りませんか。」

まゆ子「まあ。

 しかしそれは少し恥ずかしゅうございます。なぜならば噛まれた場所が場所だけにこのような公共の場ではお見せする訳には参りません。」

弥生「まあ、これは失礼な事を申しました。そうでしたか、そのような場所を。」

まゆ子「と申しましてもこの傷痕を隠し通したところで問題の解決にもなりはしません。

 私、恥を忍んでお見せいたしましょう。」

弥生「ありがとう御座います。貴方の勇気には私ほとほと感じ入りました。

 ではご無礼を仕ります。

 ははあ、なるほどこれは酷い。あれからもう二週間も経つというのにまだこのようにはっきりと残るとは、よほどの力で噛まれたのですね。」

まゆ子「はい。私このまま肉まで噛み千切られるかと思いましたわ。」

弥生「それにしてもこの場所はよくありませんね。」

まゆ子「ええ。他人に見られたら私、ふしだらな女と思われてしまいますわ。」

弥生「一体どのような獣がこのような噛み傷を残すのでしょう。」

まゆ子「私恐ろしくて恐ろしくてとても見る事が出来ませんでしたので詳しい事は判りかねますが、どうも犬ネコのたぐいではなかったように思います。」

弥生「ならば狼という訳でも無いのですね。」

まゆ子「勿論牛馬ではありえません。あれはまさしく猛獣でした。それにその吠える声。最初はライオンかと思いましたわ。でもそんなには大きくは無いようでした。」

弥生「日本に自生する動物といえば猿猪キツネタヌキくらいしか他にはおりませんが。」

まゆ子「さあ。案外と身近な生き物のようにも感じられました。」

弥生「なるほど。謎ですね。

 ところでまゆ子さん。何故に私はこのような牢屋に閉じ込められているのでしょう。」

まゆ子「・・・・・・はあ。」

 

 

おしまい

 

 

 

 

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