弥生ちゃんとまゆ子は「ゲリラ的美少女野球リーグ」の地区連絡協議会に出席している。
ウエンディズの所属するこの地区にはゲリラ的美少女野球団は現在七つあり、そのうち正規の会員は6チーム、あとの一つは本来ソフトボールのチームで気まぐれで試合を受けるという形で参加している。
門代地区ゲリラ的美少女リーグに所属するのは
「ウェンディズ the BASEBALL BANDITS」 代表 蒲生弥生
「エンジェルス(現 桜川エンジェルス)」 代表 桜川良子
「でんじゃー紫(パープル)」 代表 紅美月
「桂林棒手振社中」 代表 古城さくや
「暗黒どぐめきら」 代表 宮節子
「疾風流星 戦処女(ヴァルキリア)」 代表 山田かづら
および
「門代西高校秘密野球会」 代表 蓑屋生子
今月の幹事は桜川良子率いる「エンジェルス」であるので、いつもとは違ってまともな技術的問題を話合う場となっている。
これは桜川がとりわけマジメという訳ではなく、参加6チームがそれぞれ分担しているテーマに沿って会議を進行するという形を取っているので、桜川の担当する「ゲリラ的美少女野球における野球技術の向上」という燃えるテーマが議題に上ったのだ。ちなみにウェンディズが担当するのは「集団戦闘時に生ずる法的問題の解決と隠蔽」だ。
さて今回の議題はかなり深刻だ。
つまり、「ゲリラ的美少女野球団はソフトボールの正規のルールで試合をすると必ず負けてしまうのは何故か」というものだからだ。
ゲリラ的美少女野球団は本来強い。負けそうになったら乱闘を起して試合をチャラにするから当たり前だが、ソフトボールルールで試合をする時はそうもいかないので自然野球技術の差が出てしまう。彼女たちは本質的に負けず嫌いだから、異なるルール上の当然の帰結として負けてしまう事を是としないのは致し方ない。
致し方ないが、まともにソフトボールのルールで練習をして強くなろうという至極当然の提案が瞬く間に却下されたのは言うまでもない。
議題の本当の意味は、「如何にして練習をせずにソフトボールルールでソフトボールチームを打ち負かすか」なのだ。
会議は当たり前のように紛糾した。はなはだしい意見に至っては、「暗殺部隊を組織して裏から相手チームを戦闘不能に追いやるべきだ」というのまで出て、それがあやうく正式な方針に決まりかけ、法的問題担当のウエンディズ弥生ちゃんが必死で阻止するという場面まで出現した。
弥生ちゃんの懸命の抵抗でこの提案は却下されたが、同時に会議は停滞した。弥生ちゃんは議事を進行させるため後ろに座るまゆ子に顔を向けた。
それぞれのチームは代表一名とその補佐をする者一名で出席している。発言は代表者以外はしてはならない事になっているが、こういう知恵が回らない時は後ろに座る補佐に意見を求める事も許されている。
めんどくさいが、彼女たちはことさらに連絡協議会の権威を高める努力を怠らない。繁雑で厳正な形式をわざわざ採用してまともな議事運営をしないようにし、各自リーダーの権威の維持にあたっている。ゲリラ的、というくらいだからこの会議自体も戦いの場と見なし、そこで対決出来る事に特別の価値を作ろうといろいろと苦労しているのだ。彼女たちはプロレス的発想でリーグを運営していると言える。
まゆ子は、ちろと皆の顔を見た。
彼女はこの協議会においてもただ者ではないと認識されている。曲者、として期待されていると言い換えてもいいだろう。彼女が提案したさまざまな方策は、実にその40パーセントまでが採用されリーグの運営に利用されている。ウエンディズのみならずリーグ全体においての黒幕でもあるのだ。
桜川がじっとまゆ子の顔を見る。まゆ子は軽く目を瞑って小さく息を吐いた。
まゆ子「つまり、勝てばいいわけよ。」
桜川「当たり前だ。勝てないからこうして会議を開いている。」
まゆ子「勝つためには点を取らなくちゃいけないわ。」
弥生「うん。」
まゆ子「負けるのは相手によりたくさん点を取られるから。では私達の投手陣がソフトボールチームの打線を抑えられるかというと、それは無理ね。」
桜川「投球力の貧弱さはどうしようもないな。オフサイドルールもそれを補う為にあるんだから。」
まゆ子「であれば、点を取るしかないわ。相手よりもたくさん。」
桜川「む。」
まゆ子「打線を強化するしかないわね。それも尋常ならざる方法で。」
「メジャーリーガー養成ギプスでも着けろってか。」
まゆ子「発想としては同じだけど、着けるのはバッターじゃないわ。ピッチャーの方。」
「ピッチャー? でもそれは逆だろ、打線強化とは。」
まゆ子「違うわよ。簡単に言うと、ドーピングした投球で通常ではない豪速球を投げ込んですべての打者をそのレベルの投球に適応させるの。それこそプロ野球選手並みの球にね。そしたらそこら辺のソフトボールなんかへでもないわ。」
「無理だ。」
桜川「無理だよ。幾らドーピングしてプロティン飲んだって、結局練習をしなければ筋力は付かないし、第一投球センスまでは向上出来ない。」
まゆ子はははと笑った。
まゆ子「だれが肉体的に強化するって言ったの。投球をドーピングするのよ。だいたいね、あなた達これって卑怯だとは思わない? バッターは道具を使って打つのに、ピッチャーは素手だなんて。」
弥生「おお!」
一同「おおお!」
桜川「なるほど! ピッチャーも道具を使って豪速球を投げて試合をして、そのレベルに適応した我がゲリラ的美少女野球リーグに敵は無いという事だな。」
まゆ子はVサインを出した。
桜川「この方針で我々は打線強化を図るという事で、意義のある者は。」
ひとり、手を挙げた。
「道具を使うって事だが、具体的には何をつかうわけ。」
弥生「それは私達に任せてもらえないだろうか。次の例会までに具体的な方法と運用について完成させて提出します。」
桜川「これはウエンディズだけに任せずに各自でも方法を考えてコンペをしたいと思う。以上でよろしいか。」
今度は全員が賛成し、会議は終了した。
この後皆で親睦を深めるためにカラオケに行く事になっている。が、最後にまゆ子が弥生ちゃんを呼び止めた。
弥生「何。」
まゆ子「あのね、弥生ちゃん。さっき投手力の強化は出来ないと言ったでしょ。」
弥生「うん。」
まゆ子「出来るのよ、実は。」
弥生「え、じゃあなんでさっき言わなかったのよ。」
まゆ子「言うと、私達の戦力強化が出来ない。」
弥生ちゃんはじっとまゆ子を見つめた。そして隅の方に引っ張っていく。
弥生「なになに。ひょっとして秘密兵器があるの。」
まゆ子「・・・・・・・魔球よ。」
弥生「え、」
まゆ子「魔球があるのよ。」
弥生「まさか、そんな漫画みたいな。」
まゆ子「冗談に聞こえるかもしれないけど、魔球はあるのよ。というか、変化球というのは出現した当時は全部魔球だったんだから、今新しい変化球を作ると魔球と呼んでさしつかえないわ。」
弥生「・・・・いままでに無い、変化球、出来た、の。」
まゆ子「うん。」
弥生ちゃんは天を仰いだ。あいにくと天井はあったのだが、ともかく天に感謝した。
弥生「でも本当に今までに無いんでしょうね。」
まゆ子「変化球というのはね、つまりボールの回転から生まれるの。有り体にいえばストレートという球はまっすぐには飛ばないの。そのまままっすぐ投げたら万有引力の法則に従って放物線を描いて落っこちるのだけど、そうはならない。これはね、ボールが回転しているからなのよ。回転によって空気の疎密が発生してボールが上に吸いつけられるから、結果としてまっすぐに飛んでいるように見えるわけ。」
弥生「なるほど。」
まゆ子「逆にフォークボールという球は、ほとんど回転しないように投げるから、ストレートと違って物理の水平投射の問題と同様に落っこちるわけなの。」
弥生「ふむふむ。でも。」
まゆ子「待って。でね、今までの変化球はすべて球を回転させるかさせないかによってボールの軌道の変化をさせてきたわけね。でもその回転軸というのは二つしかなかったのよ。つまり横に回るか縦に回るか。横に回れば左右に振れるカーブとかシュートになる。で、縦に回ればシンカーとかスライダーになるのよ。」
弥生「改良の余地は無いようにおもえるけど。」
まゆ子「でもね、これらはすべてボールの進行方向に対して軸が垂直で回転するわけなの。」
弥生「! ボールの進行方向に対して水平に回転する変化球って無いわけね。」
まゆ子「ドリル魔球よ。」
弥生「どりる・・・・・・・・・・。」
まゆ子「コンピュータでシミュレートしてみたら、バッターには一見ストレートに見えるけど、カルマン流が発生してパームボールと同様な不規則な運動が上下左右に発生し、振ったバットから球が逃げるように曲がるけれど、パームボールと違って最終的にはちゃんとまっすぐな軌道を維持するわ。」
弥生「おお。」
まゆ子「運良くバットに当たったとしても、軸回転によって横にボールは弾けてバッターの顔面に食い込んでいく恐怖の打球となる・・・・。」
「それだ。」
と、弥生ちゃんは机を叩いて立ち上がった。
弥生「それこそ私の求めていたものだ。まゆちゃん、よくやった。」
まゆ子「とは言ってもまだこの魔球の投げ方は完全じゃないのよ。血のにじむような特訓が必要で、しかも多分ソフトボールじゃ使えない。」
弥生「いい、それでもいい。」
まゆ子「で、いま人体の構造を解析して下手投げで回転させる方法を研究中なんだけど、」
弥生「やるやる、協力する。」
まゆ子「当然やりすぎると身体を壊す可能性もあるんだけど。」
弥生「いいいい、壊れて本望だ。」
と弥生ちゃんはあらぬ方向をしっかと見つめた。
「ドリル魔球、善い響きだ。」
と言うとまゆ子を連れて会場から出ていった。
「ところでまゆちゃん、さっきの道具を使って投げるってのだけど。」
「ああ、あれは一応三種類のアプローチを考えているの。筋力を増幅する方法と、力を蓄積して解放する方法と、それと機械力を導入するのと。」
「え、ピッチングマシーンを使う気なの。」
「いえ、空気圧で球を打ち出す大砲をつくろうと思ってるの。動力はポータブル発電機使ってね。」
「・・・・・・・まゆちゃん、あんた、ドリル魔球の方がずっと現実的だよ。」
FIN
2000/11/10
という訳でゲリラ的美少女リーグは 「超級覇道投撃兵装試験選定委員会」を招集した。
参加したのは
ウエンディズ the BASEBALL BANDITS
桜川エンジェルス
でんじゃー紫
桂林棒手振社中
暗黒どぐめきら
疾風流星 戦処女
ようするにこの間のメンバーが集まって色んな方法を実験するというだけだ。しかし各チームの補佐は野球に明るい者に変っている。
ウエンディズのメンバーが今回の実験台を努める事となった。
桜川「あー、月番じゃないのに悪いね。」
弥生「なになに、こっちから言い出した事だからね。で、そっちの方は。」
各チームの隊長は肩をすくめた。
戦処女「どうも従来の野球の型にはまっていて、うまくいかないんだ。」
「同じく。」「うん」
桜川「で、ウエンディズでは出来たの?」
弥生「う、・・・・ん。まゆちゃんは困った子でね。いくらでもこういうの考えつくんだ。」
弥生ちゃんの隣にひかえていたまゆ子がぴょこんと頭を下げた。
弥生「という事であとはまゆちゃんのしきりで進行します。」
まゆ子「あ、ども。お久しぶり。で、他にアイデアが無いのでしたら我々の物をすすめたいと思いますが、異議はごさいませんか。」
戦処女「構わずやっとくれよ。」
まゆ子「では。
エントリーh齡ヤ。おたま。」
「は?」
まゆ子「おたまです。料理に使う。ただし材質は振り回しても変形しない頑丈なもので出来ているのを選び、さらに柄の部分を投げやすいように改造してあります。」
桜川「なるほど。柄が付いてる。」
まゆ子「投げてみてください。使い方は、見たらわかるでしょう。」
桜川「ま、ね。」
と桜川はおたまにボールをのっけてオーバースローで振った。
一同「ほう・・・。」
桜川「悪くない。いや、二割増しってところか。」
戦処女「コレでいいんじゃない?」
紫「オーバーだけか。ソフトボールはアンダーだぞ。」
桜川、アンダースローで試してみる。
桜川「下は、だめだな。コントロールが効かない。」
まゆ子「はい。下はだめです。ただしだめなのは下だけで、他はそのまま手で投げるのと同じモーションで投げられますから実戦とかけ離れたという事にはなりません。」
棒手振社中「これでいいんじゃない。わるくない。」
まゆ子「ただコレには副作用があって、」
桜川「え? なんだそれ。」
まゆ子「これは普通に手で投げるのと同じ形で、普通でないボールを投げる事が出来ますが、という事は普通でない負荷も腕に掛かってます。とくにおたまにいったん力が集中しますから手首、ひじに故障が出る可能性があります。」
桜川「はー、なるほどね。そういわれてみれば確かにちょっと、手で投げるのとは違う感触がある。」
どぐめきら「だがそれでも実用を妨げるものじゃない。」
桜川「一応候補としておこう。次を。」
まゆ子「エントリー2番。」
紫「それ知ってる。ラクロスのだ。」
まゆ子「軟球用にちょっと改造してます。」
桜川「はーん、それはおおげさだな。で、メリットは。」
まゆ子「まず手が痛くないです。次にアンダーが。」
というとまゆ子はアンダー、というにはサイドに近い投げ方でボールを放った。
ふぁがばしっとキャッチする。
まゆ子「アンダーでソフトボール並みのスピードはこれじゃないと出ません。」
桜川「いい感じだ。最初からこれを狙ってたな。」
戦処女「このスピード、いい感じだ。これならいける。ただモーションが手で投げるのとちょっと違うな。そこの所をどう対応するか。」
まゆ子「しかし真の実力は!」
まゆ子、今度はオーバースローで球を放り込んだ。
天井から襲いかかるようなとんでもない角度でもの凄い速球がミットに飛び込んでいく。
まゆ子「プロ野球なみです。」
桜川「凄いな。これなら140キロくらい出る。」
まゆ子「更にもう一つ!」
と今度は左に構えて逆の方から投げ込んだ。
まゆ子「オーバー、アンダー、サイドを左右両方から誰でも投げられます。しかもこのスピード。」
棒手振「わかった。わかりました。これは凄いの。」
桜川「変化球いらんね、これ。わかった、これとさっきのおたまを併用して使用するという事で。」
まゆ子「えんとりーなんばー3番。」
桜川「げ、まだあるの?」
まゆ子「は、飛ばして4番。」
どぐめきら「なんで飛ばすんだよ。」
まゆ子「投石器です。パレスチナ人がエルサレムで使っている。これは携帯に便利で飛距離は出るけどコントロールは難しくて野球には向きません。アンダースローが出来ますが。」
どぐめきら「やってみろよ。」
まゆ子「では。」
というとまゆ子は二本の紐の間にボールをはさんで回し出した。
まゆ子「ちょっと予備動作が必要です。」
というが早いか、紐のかたっぽをぽっと離した。
ボールは下からすっぽ抜けて地面を這うように飛び、ぐんと持ち上がってふぁの頭上を抜けていった。
桜川「・・・ボールだな。扱いがむつかしそうだ。」
まゆ子「エントリー4番、弾弓です。」
戦処女「弓?」
まゆ子「弓です。とはいえ軟球を飛ばすのは現在研究中でして、ゴルフボールくらいがちょうどいいんですけど。ようするにパチンコです。」
桜川「ゴルフボールみたいに小さいのでないと飛ばないってわけか。スピードは?」
弾弓は普通の弓と同じ形をしている。弾をはさむ部分に皮が付いているだけだ。
まゆ子はゴルフボールのかわりにスーパーボールをはさんでぎりと引き絞るとふぁに向けて球を放った。
スーパーボールはビュと低いうなりを上げ黒い塊となって飛んでいく。まゆ子の手から放たれたと同時にふぁは地面にばと伏せる。そのすぐ上、高めのストライクの位置を影は通るとそのまままっすぐ抜け、スピードが落ちることなくふぁの後ろにあったボール避けネットをすり抜け明美の立っている左、校舎の窓ガラスを粉砕した。
まゆ子「狩猟用です。石を使うと小動物なら即死します。」
桜川「・・・・・・・・・・没。」
戦処女「うん・・・。」
だが、暗黒どぐめきら宮節子は選定会の直後にまゆ子に懇願してこの弾弓を手に入れた。暗殺集団として名高い暗黒どぐめきらは、長距離からの狙撃という新たな攻撃手段を手に入れ、他のチームを恐怖に陥れる事となる。
まゆ子「エントリーa@5番。」
桜川「まだあんのか!」
まゆ子「ゴムぱっちんです。」
弥生ちゃんが右手にゴムひもを持ち、後方の鳴海がそれをひっぱりボールをのせた。
まゆ子「弾弓の改良バージョンです。今度は軟球でも飛びます。」
鳴海の手から放たれたボールはそのまま弥生ちゃんの右手をすり抜けていくはずだったが少し角度があったとみえて、まっすぐ弥生ちゃんの後頭部に炸裂した。
地面に突っ伏してぴくりとも動かない弥生ちゃんの元に鳴海聖明美一号二号が駆け寄っていく。
まゆ子「多少の熟練とヘルメットが必要です。」
桜川「二人がかりで投げるというアイデアには感心するが、ラクロスのの方がいいな。」
戦処女「これはもうやきゅうじゃないと思うぞ。」
紫「だめだね。」
棒手振社中「だめ。」
どぐめきら「うーんん、使えるかもしれない・・・・。」
まゆ子「エントリーa@6番」
桜川「もうやめろー。」
まゆ子「じゃ、7番。」
戦処女「それも無し!」
まゆ子「ではではせめて8番だけでも。」
どぐめきら「ちなみに6番は?」
まゆ子「ハンマーです。ヨーロッパの縁日にあるハンマーで錘を柱の上にすっとばす遊びをヒントに、シーソーで打ち出したボールを雨樋を使って正面に発射するってものです。」
桜川「ボツ!」
棒手振社中「7番は?」
まゆ子「機械式投石器。ばねにパワーを貯えて解放する。一番を機械にしたようなもので。」
桜川「はちばんを見せてみろ。はちばんを。」
まゆ子の指示で聖と明美、鳴海が台車を押してきた。
紫「・・・・エンジンが付いている・・・・。」
桜川「ぴっちんぐましーんじゃないか。」
まゆ子「nonnon、これは圧搾空気を使って球を飛ばす
大砲です。」
棒手振「これで、でっどぼーるになったら、どうなるの?」
まゆ子「試してみましょう。」
がららとスタータを引っ張ってエンジンがスタートした。接続されたコンプレッサーがうなりを高めていく。金属の水道管を接続した投射器が体育倉庫のブロックの壁に向けられた。
まゆ子「まだ試作段階でパワーの調節がきかないんだけどね。」
まゆ子が発射スイッチに手を添え、押すというより触った瞬間、
投射器は号音と共に30度ほど跳ね上がった。
だれも発射されたボールは見ていない。
ただ突然体育倉庫の壁にひびが入っただけだった。
ばーんという花火が爆発したような音がグラウンド中にこだまする。
弥生ちゃんが壁に近づいて行って白い何かを拾い上げた。
弥生「あはは、爆発したね。」
弥生ちゃんが持ってきたものは軟球の破片だった。投射器から飛び出したボールは壁に当たった瞬間爆裂したのだ。
桜川「これは、・・・・・国家権力と戦う時に使ってくれ・・・・・。」
戦処女「すごいとはおもうよ。すごいとは。」
棒手振社中「死人は出したくは無いわね・・・・。」
どぐめきら「ちなみにこれは小型化の予定は?」
まゆ子「火薬で発射するようににすればバズーカ砲並みにはなるけど法律に引っ掛かるから。水酸化ナトリウムの反応で無反動砲方式にすればいいんじゃないかと。」
「連射機能がほしいんだけど。」
「それならいっそのこと排気ガスを使って発射するってのにした方が。排気量あげなくちゃいけないけど。」
「できるなら5キログラムくらいにしてくれないか。」
「だったら筒ではなくて皿にするってのはどう?お皿みたいなくぼみにボールを入れて爆圧で発射するの。これだったら火薬をつかっても法律に引っ掛からないし、命中率は全然ないけど50メートルくらいならまっすぐに飛ぶから。工作も簡単で圧力が篭らないから暴発もしないわ。」
「そこんところをもっとくわしく。」
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
2000/12/09