「ナレソメ〜天狗噺〜」

 

美矩「今日の会議は私の司会で始めるよ。えーとウエンディズ2年1年生会議、やります。」
「ぱちぱちぱち」

 2年1組の教室に集まったウエンディズ草壁美矩、シャクティ、山中明美二号、一年生は南洋子、江良美鳥、仲山朱美三号は教室の前の方に固まって会議を始めた。

美矩「今日のテーマは自主練です。二年生の指導の下で一年生が練習すると今月から決まってるわけですけど、」
釈「一年生と私達二人は、やってる期間は一緒ですから、実質は二号明美ちゃんが指揮を執るわけですが、一人じゃ疲れるのをどうしよう、って話です。」
明美二号「いやー、そういう事なんだ。誰か意見ある?」

 新明美こと三号明美、とされるのはなんか納得行かない仲山朱美が手を上げた。一号二号と違って、三号は割と性格が強い。

三号「私は初心者ですけど、聞いた話だとオリジナルの三年生は誰にもゲリラ的美少女野球を習っていない、という話じゃないですか。どうやって覚えたんですか?」
洋子「うんうん。もしイイ手があるのでしたら、私達もそれを使いたいです。」

 これは明美二号にしか答えられない問題だ。彼女はオリジナルメンバーに最も近い人間ではあるが、彼女が入った時には既にウエンディズは存在していた。そもそもの始めがどうなっていたのかは、伝聞に頼るしかない。

二号「えーとね。最初の頃はウエンディズは、ゲリラ的美少女野球じゃなかったんだよ。」
「えーーーーーーーーー!!」
二号「いやほんとの話。なんでも、キャプテンが中学生だか小学生だかの野球少年にバカにされて野球でケリを着ける事になり、急遽結成したチームがウエンディズなんだ。」

洋子「じゃあ、一回試合をすればそれで終り、って事も考えられたわけですか。」
二号「じゅえる先輩が、そう熱心に野球を続けるとでも思って?」
美鳥「じゅえる先輩は逃げますねえ。やっぱり。」

二号「そのとおり。一回義理立てすれば済むと思って嫌々ながらも引き受けた。一号先輩も聖ちゃん先輩もおなじだよ。」
釈「人数合せに足りない分を志穂美先輩の妹で補った、てわけですよ。中学生の鳴海ちゃん先輩が居るのは。」
美矩「ほえー、謎が解けた。」

二号「というわけで、弥生ちゃんキャプテンは新しく作ったチームに野球を教えねばならなかった。そこで野球に詳しい人を探したんだ。そりゃ野球部に頼めば早いけど、そこはやめたのね。男子だから、かも知れないがさだかではない。肝心なのは、女で、ソフトボールではなく野球に詳しい人を探しに行ったてとこね。」

釈「それは滅多にいませんね。選手として使える人は。」
洋子「でも見付けちゃったんだ、運悪く。」
美矩「ゲリラ的美少女野球を。」

二号「どういう偶然だか、「疾風流星 戦処女(ヴァルキリア)」の幹部と知り合いだったらしい。顔の広い人だから他校にツテがあっても不思議はない。でその日はちょうどフォクシーズのメンバーがヴァルキリアを指導していたんだよ。」

三号「フォクシーズってなんです?」
洋子「ばか! ゲリラ的美少女野球最初のチームじゃない。」

釈「橘家弓さんが歴史上一番最初に作ったチームだね。厭兵術の練習をカモフラージュする為に。そこのメンバーがゲリラ的美少女野球を作り上げ、普及に励んだ。そして月日は流れ、ヴァルキリアの顧問?になって?」
二号「学校の先生になった人が居て、女子生徒の中からこれはと思うのを選んで、ヴァルキリアを作ったと聞いてる。門代地区で最初のチームだよ。」

美矩「つまりその人がここらへんの元締めだ。」
二号「今は余所の地域に転任になっていて、弥生ちゃんキャプテンが訪ねた時にたまたま居たてのが真相ね。そこできゃぷてんは見たことも無い激しい野球に遭遇し、いきなり厭兵術に目覚めたわけ。」

三号「うわー。きゃぷてんも巻き込まれちゃったんだー。」
美矩「わたしたちと一緒だ。」
釈「でも世の中の運命てそういうものだと思いますよ。最初はちいさなマッチの炎でも、後にはぼうぼうと。」
二号「燃え広がっちゃったわけだ。」

 三号朱美が右手を挙げて質問と言うか、意見を具申する。

三号「うちもそういうエライ人を捕まえたらどうですか?」
二号「ナイスアイディア。」
美矩「でもどこに?」

三号「そりゃ、そのヴァルキリアってとこの人のツテから。」
洋子「私もそれがいいと思います。三年生の人達はなんだかんだ言って皆スゴイ人達です。才能もあるし背も高いしキャラ立ってるし、得体の知れない底力と、えーと一種の狂気?がありますが、そんなもの私達には無いです。」
美鳥「スゴイヒトがそろっているよねー。」

二号「キャプテンのお眼鏡に適った人達だから、スゴイのが当たり前。でもあなた達も棄てたものでは無いんだよ。同じように選ばれたんだから。」
美矩「…えらいめいわくだよね…。」

釈「しかし、そのヴァルキリアの人って誰だろう。今の幹部かな?」
二号「う〜ん、前の幹部、あるいはその前かも知れない。このツテは使えないかも。」
美矩「いいじゃん。私達ももう橘家弓さんに会ってるんだから。遠くから見ただけだけど。」

二号「そういう渉外担当はじゅえる先輩だから、先輩に相談してみよう。まゆちゃん先輩もおまけで付いて来るから、大丈夫。」

 

 というわけで次の日のお昼休み、二年生3人が揃ってじゅえる先輩の教室に相談に行く。やっぱりまゆちゃん先輩も居た。

まゆ子「偉いヒトか。」
じゅえる「心当たりが無いでもない。でもちと遠いよ。電車賃で言うと片道520円くらい。」
二号「毎日というわけじゃあないんです。月に一度でもお招きして、指導してもらえる方がいらっしゃれば。どんな人です?」

 じゅえるとまゆ子は二人して顔を見合わせ、にやーと笑う。美矩は、やっぱり変人なんだと背筋がぞくぞくっとした。今はもうこれが快感になってしまった。マゾ気質が身内に芽生えている、と我ながら恐ろしくなる。

じゅえる「ゲリラ的美少女野球の人じゃない。厭兵術の正規の修行者だ。」
釈「おお! 願ったり叶ったりです。」
じゅえる「そお〜お? 本物の厭兵術とゲリラ的美少女野球はかなり違うんだよ。」
まゆ子「ついでに言うと、その人は厭兵術だけをやっているんじゃない。厭兵術は余技で、本職は天狗術だ。」

美矩「天狗さんですかあ。」

 天狗、天狗術というものは古来より日本に存在するが、二人の上級生が言うのはその中でも新興の『蝉山天狗道』の修行者だった。

美矩「女の人ですか?」
じゅえる「そだよ。綺麗な人。」
釈「聞いた話だと、天狗ってのは女人禁制だとか。」
まゆ子「そだよ。蝉山天狗道も女の天狗は居ない。」
美矩「おんなのひと、なんですよね。」
じゅえる「正真正銘DNA鑑定しても間違い無しの、女だよ。」
釈「女人禁制じゃないんですか?」
じゅえる「そだよ。」

美矩「あーーーーー、わかんない!?」
まゆ子「そういう世界なんだ。」

二号「で、会えますか?」

 じゅえるはまゆ子に目くばせして、携帯電話を取り出してピコピコとメールを打つ。しばらく立つと返信があり、じゅえるは3人に言った。

じゅえる「明後日日曜日!午前11時、指定の場所行って下さい。地図描くから。」
美矩「いきなりですかあ?」
まゆ子「いつもいきなりでしょ。」

釈「日曜日ですから問題はありませんが、なにか注意しておかねばならない事とか、あそういえば弥生ちゃんキャプテンの了解を取らねばならないと。」
じゅえる「もう取った。」
二号「え、何時の間に。」
まゆ子「ほら。」

 と指差す窓の外を眺めれば、こちらの方に体操服姿の弥生ちゃんが手を振っている。次は体育の時間のようだ。

じゅえる「たまには弥生ちゃんの目の届かないとこで暴れて見るのも一興でしょ。」
まゆ子「その代わり、失望させないようにしなくっちゃね。迷惑ならいくら掛けてもだいじょうぶ。弥生ちゃんは迷惑大好きっ子だ。」

二号「なんとか御奇態に添えるように頑張ります。」
  釈「(ちなみに期待と奇態を賭けています。)」
美矩「しゃくちゃん、だれに説明してるの?」

 

 

 日曜日、朝8時半に二年生3人は門代駅前に集合した。電車に乗って30分程度で着くのだが、死合場周辺は事前に隠密で調査しておくのがゲリラ的美少女リーグの鉄則。相手が天狗ならなお更必要があるだろう。

 駅は観光風致地区にあるので、朝も早くから観光客がやってくる。鉄道のみならず観光バスもどんどん来て、日曜日のこの時間には縁の無い彼女らは少しびっくりする。
 駅前の噴水前は今日はフリーマーケットの会場となっており準備の人も次々に集まり、どんどん混んでいきそうだ。
 三人して並んで切符を買い、電車に乗り込む。三つほど行った先で別の電車に乗り換える必要もある。

釈「わくわく、わくわく。」
美矩「そういや、3人だけで遠出というのはなかったね。」
明美「そうだっけ? これからそういう場面が増えると思うよ。」

三号「ちわーす。」

 うわっと、二年生は後ろを振り返る。そこには仲山朱美三号と南洋子が居た。

美矩「なに、あんたたち。」
洋子「あどうも、おはようございます。」
三号「いえ、天狗ってのを見物に行こうかなあと。ダメですか?」
明美「ダメって事は無いけど、むこうのひとが。・・・、ダメかな、しゃくちゃん。」
釈「ダメなら追い出せばいいだけです。」
洋子「まあー、それはそうなんですが、そういう風にならないようにお願いします。」

三号「いや、わたしは夏にあったという講習会も見ていないですから、橘家弓さんて人も知らないし、当然そこでやったスゴイ演武てのも見てないですから、天狗というのが本当に居るのなら勉強の為に見といた方がいいかな、て。」

明美「美鳥ちゃんは来ないの?」
洋子「弥生ちゃんきゃぷてんのお手伝いで、今日は農業をしています。キャプテンは受験生なのにご迷惑掛けて大丈夫ですかねえ。」
釈「でも農業って身体を使うから、勉強で疲れた頭にはリフレッシュ効果があっていいですよ。」
美矩「毎日ウエンディズの練習してるったら。」

 そうこう言っている内に電車は出発の時刻を迎える。二年生3人が4人掛けのボックスに、その隣に一年生が座り通路越しに話を続ける。

三号「そうですか、二年生の人は皆中学違うんですね。」
釈「わたし、大阪。」
明美「私はふぁ先輩志穂美先輩と同じ。美矩は、」
美矩「じゅえる先輩とまゆ子先輩。」
洋子「わたしはウエンディズに先輩居ませんねえ。ちなみに美鳥と朱美は聖先輩とおなじです。」
三号「です。」
明美「聖先輩と同じなら、一号先輩ともおなじだね。そうすると、意外とみんなばらけて居るんだね。」

洋子「しるく先輩は私立の学校で、なぜか高校から県立に行った事になるんですよね。なんでです?」
明美「それはー、男が居なかったから、と聞いたよ。」

「えーーーーーー!!」
と、他の4人はびっくりして声を上げ、周囲の乗客に睨まれる。慌てて全員顔を突き合わせるようにこっそりと話を続けた。

明美「いや、マジほんとのはなし。と言ってもだね、剣道の稽古の相手に女子では足りなくて男子の部員をぼこぼこにしようという腹で、わざわざ入試を受けたって事ね。」
洋子「自前の道場に男に人は来なかったんですか?」
明美「いやしるく先輩て流派が独特でしょう、だから道場にはおなじ師範に習う門弟ばっかりで、対等な相手ってのが居ないのね。女子校に行ってもちょうどいい実験材料が無いもんで、ならばと門代高校を受けたんだ。うちが受験校だというのも幸いしたてとこね。」
美矩「マジびっくり。」
釈「うーむ、軟派なのか硬派なのかわかりづらい話だ。」

洋子「ということは、弥生ちゃんきゃぷてんはウエンディズに中学の友達を入れていないってことになりますね。」

美矩「そういう風に考えると、そうだね。ウエンディズのメンバーは他校の出身者をかき集めたわけだ。」
洋子「まあ、きゃぷてんの大活躍の話は余所の中学校まで鳴り響いていましたから、同じ学校の人は敬遠したんじゃないですか?」
釈「同レベルの変人が居なかった、というのでは。」
明美「志穂美先輩と同格、というのもかなりむずかしいと思うよ。」

釈「でも、物部村の人達はたしか、」
美矩「ああ。花憐が言ってた。よくもまあ蒲生先輩と同じ所に居て無事で済むねえ、て感心して居たよ。きゃぷてん中学校の時も凄かったらしいね。」
洋子「おねえちゃんがよくその話をしていました。隣の学校に救世主が降り立った、とか。」
三号「いくらなんでもそれは大袈裟だ。」
釈「ぽぽー(鳩保)が世の中に三つ怖いものがある、と言っていた三番目です、たしか。」

美矩「そうしてみると、あの人も高校に入って落ち着いたって事なのかなあ。」
三号「落ち着いた?! あれで!」
洋子「うわー、中学の時のキャプテン見てみたいなあー。」

 

 わいわいと喋っている内に列車は乗り継ぎ駅に着き、いそいでプラットホームの階段を駆け登って目的地へ向かう列車に飛び込んだ。これを逃すと30分は次が来ない。門代地区に住んでいる人間はこの路線は縁遠いので、ちょっともたついてしまった。

明美「ここで乗り過ごす可能性があったから、早く来たんだけど。ま、よかった。」
釈「何を隠そう、私はこちら方面にはまだ行った事がありません。」
美矩「こっちは観光スポットとか買い物とかまるで無いからね。」

 いよいよ目的地に近付くので、意を決して南洋子が口を開く。一年生皆が疑問に思っている事だ。

洋子「それで、肝心の天狗のひとです。なにか事前に心得ておくべき情報はありませんか?」
三号「そうです。一応はうかがって居た方がなにかと便利だと思います。どういう人なんです?」

 4人は明美二号に振り向くが、彼女も首を横に振る。

明美「会った事は無いけど、話は聞いてる。優しいひとだって言うけど、そこはほら天狗だから。」
洋子「何をしてるんです、職業は?」
明美「じゅえる先輩の話だと、ディトレードとネットオークション。でも本当は旅館の女将だって。」
美矩「物凄くうさんくさいね。」
三号「その旅館は閑古鳥が鳴いていますよ、きっと。」
明美「う〜ん。」

 明美が考えるのでシャクティが助け船を出す。この旅館経営というのは、これから会う人のパーソナリティを結構規定する。彼の人に何を期待し出来るのかを考える際に、ホームポジションを外しては何も組み立てられない。

釈「・・・前にまゆ子先輩から聞きました。たしかな根拠があるわけじゃ無いんですが、聖先輩も肯定してます。」
美矩「なに?」
釈「天狗と言うのは古来から日本に存在した、山岳修験道の行者の事です。その中でも特に先鋭的な人達ですね。」
洋子「てんぐって山奥に住むものですから。」
釈「それはつまり、山の民やら河原者と同様に、独自のネットワーク独自の社会を作って生きて来たのです。」
明美「十分有り得る話だね。」

釈「という事は、ネットワークの拠点が必要なのです。彼等の仲間が日本国中を旅して回り何らかの意図に基づいて行動する時、現地で支援する拠点やら隠れ家となるものが絶対必要になる。」
美矩「そっか。表向きは旅館ではあっても、他の客は入れない。仲間内だけで使える宿屋があるといいんだ。なるほど、理に適ってる。」
釈「まゆ子先輩は盗人宿という、鬼平犯科帳に出て来るので説明していましたけど。」

 にゅ、と皆いやな顔をした。ま、天狗の仕業を余人が窺い知る事は出来ない、との線で思考を停止する。
 天狗繋がりで、美矩は重大な問題提起をした。彼女達は今からその人に師匠になってくれと頼みに行くのだが、

美矩「…そうすると現在やっているゲリラ的美少女野球の技術との整合性はどうなるんだろ。今やってるのとは変質するんじゃないかな。」
釈「はあ。そういうことはありますねえ。」
洋子「今更別の武術を習う、ってのは嫌ですよ。」
三号「?」

明美「あ、その点は大丈夫。今のゲリラ的美少女野球にはとっくの昔に天狗術が入っている。」
美矩「そうなの?」
明美「天狗術、というのをあなたたちがどう捉えているのか知らないけれど、見た目ほど突拍子もないものじゃないんだ。まあ、見た目は突拍子ないんだけど。」
三号「具体的に言って下さい。なにがどうマトモなんですか。」

明美「天狗術というのは、弥生ちゃんきゃぷてんとしるく先輩が十分に検討していました。で、結果ちょっとやそっとの事では真似出来ない、と判明しました。」
美矩「役立たないじゃない。」
明美「有用なのは、その考え方です。天狗術は飛んだり跳ねたりするのが表芸ですが、それは表面的なものです。その真の実態は、モノです。人体をモノのように扱うのが、天狗術の基本にして奥義です。」
美矩「分かんないよ。」

明美「いや、みんないつもやってるじゃない。手で突き飛ばす時には力を入れて突くのではなく、身体の重心をぶつける覚悟で腹から突っ込む。手はただの棒であるべきで、力を途中で妨げないように突き出しているだけだ。」
洋子「アレはー、天狗術だったんですか?!」
明美「いや厭兵術だけど、それと同じ理屈で全身を動かす技法なんだよ。つまりは、身体を道具としてモノとして見て、その自由な可能性を最大限に発揮する。誰だってただの木剣に力を出せとかもっと真っ直ぐなれ、とか言わないでしょ。扱う人間の技術があって初めて道具として役に立つ。人体も同じで、扱う人間の技術があってこそ、人体という道具は最も優れたパフォーマンスを発揮するのだよ。」

三号「でもその道具を扱うのが、自分の身体でしょ。なんか矛盾していませんか?」
明美「そこんところは天狗道では徹底していてね。人体を用いるのは魂なんだよ、ってところで突き詰めて考えているらしいんだ。つまりね、天狗だから山で飛び跳ねているでしょう。でも滑って転んで、足を挫いたとします。どうする?」
釈「助けを呼びますね。」
明美「山だからそう簡単に助けは来ない。」
美矩「じっとしているのが一番だ、って聞いているけど。」
明美「それは通常の登山だよ。天狗の登山は誰も助けに来ない。自力でなんとかするべきだ。損なわれた自分の身体でどうやって脱出するか? という問題に直面するわけだ。」

三号「負傷した部分は固定するなりして使わないようにして、歩くしかありませんね。」
明美「これが杖が折れた、と解釈しよう。すると、折れた杖は使えないが、残った部分はまた使い方を変えれば役立つかもしれない。というか、積極的に用いていくべきです、助かる為に。」
洋子「大分話が呑み込めました。つまりは、時と場合に応じて身体の使い方を変える事が出来る、それが天狗術なんですね。」

明美「だから、隠伏の時と戦闘の時、野球の時に平素日常の時、と私達はその都度動き方を変えているのは、天狗術の考え方に基づいているんだ。TPOに合わせて行動の原理を変える。技法も変える。スムースにシームレスに移り変わっていく。それが天狗術。
 ついでに言うと、これまで経験したことの無い状況に放り込まれた場合、うまくやっている人の姿を見てその状況における行動原理を一瞬で見抜く、てのも技法に入っているらしいよ。きゃぷてん達はこれが真似出来ない、て悩んでた。」

釈「瞬時にその状況での最適解を見出す術、ですか。それは応用範囲が広いですねえ。」
洋子「習うとすれば、それですね。」
三号「でもそれには天狗術の修行というのをしなければならないと思う。そうじゃないですか?」

明美「必ずしもそうとは言い切れない。ゲリラ的美少女野球の神髄は『適応』だ。最適解が見出せなくても、天狗という存在に遭遇する事で、私達は適応を覚える事ができる、と思う、というかそうでないといけない、というかそうしたい。」

釈「つまりは出たとこ勝負なのです!」

 

 駅に着いた。
 ご多分に漏れずこの辺りも長年続いたリセッションの影響で駅前周辺であっても潰滅シャッターだらけである。が、少し離れるとちゃんとした住宅街が緑を湛えている。彼女達の目的地はその中心付近だ。

釈「てなわけで、どうしますか?」
明美「まあ、通常ならば直接探査するんだけど。」
美矩「相手が天狗なら逆効果かもしれないね。」
明美「美矩、あんたの携帯は地図出るよね。」
美矩「いや、普通に出ると思うけど。」
明美「釈ちゃん、美矩、朱美ちゃんは通常探査をしてその旅館てのの周りをとりあえず当たって見て。南さん、あなたは私と一緒に隠伏して強行探査する。」

釈「おお。やりますか。」
明美「なめられちゃ、負けだかんね。」

 荷物の大半を美矩に渡し南洋子を連れて、明美はふらーりと歩き出す。ふい、と目を離すと、二人の姿はもう無かった。
 あんまりあっさりと消えたので、隠伏術にまったく知識の無い朱美は手品でも見たように目をぱちくりさせている。度の入っていないダテ眼鏡を外して拭いてみるが、そんな漫画っぽいことしても無駄だ。

三号「え?」
美矩「私達はこっちでまともな探査をするよ。罠を探すんだ。」
三号「罠?」
釈「うん、そう。いい機会だから、三号さんの教育をいたしましょう。」
美矩「そういう意図もあるんだね、やっぱあけみちゃんだ。」

 ウエンディズの隠伏術は、天狗術ベースの技術も入ってない事も無いが、基本は忍術だ。泥臭い。しかし服を汚すというのは嫌い、地を這うがべったりと落ちないように裾に紐を捲いたりして周到に準備をしている。服を汚さないのは、隠伏が隅っこに隠れるだけでなく、人込みに紛れるという手も使うからだ。泥埃がついていれば当然人の目を惹く。これは避けねばならない。
 だいたいスレンダーな少女がやっているのだからかなり狭い隙間も通り抜けられる。薮や植え込み、金網やブロック塀。猫が通れるところならどこでも行くてのを理想として、訓練を積み重ねて来た。

 明美がするすると抜けていくのを洋子は必死で追っかける。美鳥に比べると隠伏術は格段に上手いのだが、オリジナルメンバーに準ずる明美二号の早さに見失わないのが精一杯だ。

明美「ほら。」
洋子「あ。・・・センサーですかね。」
明美「電気は入っていなさそうだけど。いや、ダミーっぽいね。これを確かめてみたりすると、後に誰かが居た事がバレてしまうんだな。」
洋子「でもそれじゃあ即応性は無いですね。」
明美「こんなとこ入って来る奴は二三日前から下調べに来るよ。」

 他にも、指紋を取れそうなつるつるのプラスチック製品がいかにも無造作に、しかし異常な位置に置いてある。子供が隠したかのような忘れられた存在に見せてはいるが、雨水なんかは入っていない。

明美「ここから中に入っちゃあいけないよ。」
洋子「分かっています。アクセス可能な通路に見せ掛けて、どんづまりの袋小路に誘導するんですね。」
明美「まゆ子先輩じゃないけれど、遁甲八陣だ。」

 洋子にも明美が調べているものが段々分かって来た。別に襲撃する訳じゃないのだから必要無いのだが、相手の力量を確かめる為に周辺に張り巡らせた罠をチェックする。確かに、仕掛けた人間の跡が如実に現われて来て、洋子にも相手の姿がおぼろげながら想像出来た。

洋子「天狗術といいますが、この分野でのとおり一辺倒の仕掛けしかしていませんね。」
明美「あるいは、これ自体が罠なのかもね。」
洋子「考え過ぎでは。」
明美「いやあ、・・ほらここ、靴跡がある。誰か滑っている。」
洋子「ほんとだ。なんでこんなところで滑るんだろ。」
明美「仕掛け罠があったんじゃないかな。こんなところに入って来る人間が、そんなものに引っ掛かるはずが無い。にも関らず、だよ。」
洋子「わざと掛って見た?」
明美「挨拶、て感じかな。掛ってはいけないものに掛る、てのはなんとなくボケと突っ込みを連想させるね。」

 

 一方、釈美矩三号も奇妙な物体を発見した。

釈「厭魅えんみ、ですね。」
美矩「紙人形だね。古いお雛さまみたいな。」
三号「なんですかこの汚いのは。」
釈「呪術に使う人形です。これに呪いとかを乗せて樹に五寸釘で打ち込んだり、柱の根っこに埋めたり、川に流したりします。逆に呪いを払う身代わりともなって、それが美矩さんの言う流し雛の風習になるわけです。」

三号「呪術、って、でも21世紀ですよお。今頃そんなもので騙されるのは子供でも居ないんじゃないかな。」
美矩「それはそうなんだけど。」
釈「呪術は、呪術を知る者には有効です。共通言語として機能して、互いの行動のフォーマットを定め動きの予測が出来、また異物部外者を排除出来ます。」
美矩「ではこれは、交通標識みたいなもの?」
釈「普通に考えれば。ただの領域を記すマーキングの可能性もありますが、それにしてはちょっと豪華過ぎですね。」
三号「いや、ぼろぼろの紙なんですけど。」

釈「その名を聞いた時から覚悟はしていましたが、相手はなにしろ天狗です。宗教的ボキャブラリで武装しておかねばならない、ってことですね。お二人とも、難しい話に騙されちゃダメですよ。」
三号「その、天狗ってのがどうも私にはよく分からないんですが、シャクティ先輩は詳しそうだからちょっと教えて下さいよ。」

釈「天狗ってのは、あの天狗です。鼻の長い顔の赤い、烏天狗てのも居ますけど、本質的には同じです。」
美矩「異形の化け物、人間でありながら、という感じ?」
釈「天狗というのはつまりは人間な訳です。人間が、化け物になった。それも自らの意志でそうなった。それが天狗です。」
三号「危ない人? ってことですか。」
釈「もちろん危ない。でもそういう危なさとは違います。違わないですけどね。

 天狗ってのはつまりは天狗道を歩む人の事です。天狗道とは天狗の道、天狗の生き方そのものを指します。つまりは人は天狗であろうと思えば天狗なのです。サムライが武士道を歩むが故に武士であるのと同じですね。生まれは大して問題ではない。剣で生きると心に誓い、武士の道を真っ直ぐに進んでいけば、新撰組の近藤勇や土方歳三のように立派なサムライになれるのです。」

美矩「立派な天狗、ってのがあるんだ。」
釈「鼻の長いのが立派な天狗、その下のマイナー天狗が烏天狗です。烏天狗と天狗の違いは神通力の大きさですかね、武術に関しては烏天狗も一流です。だから私達が今回会おうとする『蝉山天狗道』の人は修行時代はカラスの面を被っているという話です。」

三号「釈せんぱいは、それをまゆ子先輩とかから聞いたんですか。」
釈「聞きましたし、調べもしました。面白いじゃないですか。」
美矩「そりゃあ面白いけどね。」

釈「えーと、どこまで話しましたか? 烏天狗ですね。
 烏天狗は武術に関しては一流ですが、ということは武術に関して一流となる前は烏天狗は名乗れない、という話になるわけですよ。」
三号「まあ、そういうシステムですか。」
釈「つまりはこの段階では、人です。修行を重ねて技術を身に着けようやく仲間と認められると儀式を行い天狗になる。人から天狗になるイニシエーションがあるのです。それが宗教の形態をとっており、当然山岳仏教や神道の理屈で動いているわけです。」
美矩「ああ。そういうことなら呪術も当然基礎的な教養として必要になるわけだ。」
三号「そうか、天狗であれば分かる事、というのがあるんだ。」
釈「だからこの人形はこのままにしておいて、同じようなのが無いかを探すべきなのです。」

三号「でもですよ。武術武道というのは極めるのに一生掛るっていうじゃありませんか。それじゃあ天狗の人は年寄になるまで一流になれないんじゃないですかね。
釈「あ、それ。明治以降です。」
美矩「そなの?」
釈「明治以降はサムライと言う身分が無くなりますから、武道の稽古をする人も減ります。だから稽古する人を繋ぎ止めておく為に、そういう形になりました。実用としてならば4年、せめて10年以内に使い物にならないと意味がありません。」
三号「そりゃそうだ。」

釈「えーと、しるく先輩に聞いた話ですと、衣川家伝一刀流は5年でなんかの資格を取れない人は破門だそうです。先輩はもう取りましたけどね。5年3年3年でキリを付けて、12年で出来上がり、だそうです。後はもう趣味の話で20年30年やりますが、そもそも斬り合い自体が無いわけですから。」
美矩「それを言ってしまうと、身も蓋も無い。」
三号「奥義ってのは、20年掛らないんですかあ、なんか常識と違うなあ。」
釈「まあ、オリンピックに出る人は2030代だ、ってところから類推していただくと、そんなに掛っちゃ仕方ないんですね。だが、そこで天狗道ですよ。」

美矩「そうか。烏天狗レベルというのが、その切り上げた状態で、奥義レベルになると天狗になるんだ。」
三号「そういう考え方だと、分かりいいですね。そうか、使えるレベルと奥義レベルとでは世界が違うんだ。」
釈「奥義となると色々とややこしい話が有って、研究するにも難しい言葉難解な概念とかが必要になるんですよ。個人の才能と努力だけでは出来ない。仏教のお坊さんがなぜ一生懸命勉強していたか、というのもそこです。頭良くないと出来ないレベルの修行があるんです。人に伝えるにもそれが重要です。強いだけならば土佐の”人斬り以蔵”こと岡田以蔵て人はものすごく強かったわけですが、だからどうしたという。後世にはスコアしか残らないんですね。」

美矩「てことは、烏天狗レベルならまだ話になんとかついていけるとしても、立派な天狗さまとなると私達にはちんぷんかんぷんて事になるかな?」
釈「それは出たとこ勝負です。」
三号「ちなみに今日会う人はどのレベルです?」
釈「『蝉山天狗道』には"女"は居ません。」
美矩「そうとういっちゃってる人か・・・。」

 

 二三同じような人形を見付けて更に探していると、いつのまにか彼女達の後ろに明美と洋子が戻って来ていた。どこから出て来たのかまったく気付かなかったが、さすがに二人は息を切らせている。

美矩「どうだった?」
明美「私達の手が届かない場所にあるトラップを確認したよ。ハイレベルの身体能力を持った人間を対象にしているから、私達にはあんまり関係無い。」
三号「いや、元から関係無いと思うんですが。」
明美「レベルとしては、あんまり高くないんだけど、位置が変だね。身体能力が尋常じゃない人間が不用意に近付くのを牽制する、というコンセプトで仕掛けられている。」
釈「実用じゃない?」
明美「そうかも。腕試しって感じかな。ひょっとすると、わざと罠に掛ってみるのが良かったのかも知れない。」
三号「どういう理屈ですか。」
釈「だから、コミュニケーションの手段として、ですよ。」

 という会話を繰り広げながら、5人は件の天狗の館の前に立った。通常の住宅とは異なりこんもり高い所に建物があり、なかなかに趣深い石段と、柱だけが残った門構えの遺構が目を引いた。周囲には行き届いた手入れが為された松の木が幾本も植えて森のようになっている。

釈「旅館ではなく、料亭か遊郭の跡ですね。」
明美「予想よりもちょっと立派。」
美矩「盗人宿として使うには、オーバーな感じだね。」

 明美が左手首の腕時計を見る。10時半、約束よりは少し早い。

美矩「30分は、ちょっと失礼かな。」
釈「微妙な所ですね。」

「門代高校ウエンディズの方ですね。お待ちして居ました。」

 と天から声が降って来る。驚いて振り向くが、人の姿は無い。明美は石段の上の先に向かって呼び掛けた。

明美「はい。お邪魔してよろしいでしょうか。」
「そのままおあがり下さい。あ、トラップの心配は無用です。」

三号「バレてるよ。」
洋子「うん・・・。」

 

 ここで基本的な説明をしておこう。天狗とは何者か?
 世間一般の常識に従えば、山岳修験道の行者が崇める神仙にも似た通力を用いる霊格の高い妖怪で人間とは一線を画す高慢無礼な存在、と答える。あるいは修験者そのものが天狗である、と見る人も居る。

 だが蝉山天狗道では少し状況が異なる。彼らは自ら天狗と成る事を志す。だが天狗は心霊であり、此の世のものではない。故に生きたまま天狗には成れない。
 成れない?

 いや、天狗とはモノでもヒトでもない。概念だ。天狗と呼ばれるモノは、その実体がなんであれ認識されればやはり天狗なのだ。ではどのような存在が天狗なのか。
 彼らはこう考える。天狗はあまりにも巨大な魂魄だ。人間一人の器には収まりきれない。だから人間が修行して天狗になるなどはあり得ない。
 しかし天狗の魂魄を自らの肉の器に盛る事は出来る。盛っても溢れ出るに違いないが、つまり溢れ出たモノが他者が見る天狗なのだ。
 自らの器量の大小高下を考えずひたすらに天狗を盛る事を求める。各々の器には雑多な変位があるが、そんなものは無視して構わない。盛って溢れ出て来るモノが重要であり、しかもおのおのの器の違いから勝手に異なる発現の仕方を見せるだろう。

 故に彼らは我を棄て画一的とも言える単調な山での修行に没頭する。最初から個性が有るのは当たり前、敢えて特異である事を求めずとも天狗を極めれば自ずと人の瞠目するところとなる。
 武芸もまた然り。絶対的な勝利の条件などは無い、おのおのの個人が必要とする強さがあり勝利が有る。それぞれの器から漏れ出る流れを技と為し、流れに突き動かされる身体を戦とする。正義も善も自ずと溢れ出て均しく世界を包み濡らす。しち面倒臭い理屈を越えて、天狗の魂が聳え立つ所に光が有る。

 宗教に似た、だが宗教と明らかに隔絶するこの在り方を天狗道と呼ぶ。思考ではなく鍛え抜かれ研ぎ澄まされた感性が読み解く、自然の教え。それが法である。

 だから、一般人にはなにがなんだか分からないものとして、天狗はある。分かるわけもなく分かる必要も無い。
 ただ驚嘆すべきが、天狗である。

 

 そのあたりの理屈を、ウエンディズ準発起メンバーである明美二号は知っている。

 だから石段の上から雨も降らないのに傘を差した少女が飛び降りて来ても、ひょいと避けるだけで済ます。
 美矩シャクティ一年生は当然不案内だ。目の前の明美に避けられ、いきなりご対面した美矩に為す術は無い。

 ぶわとと飛び降りた少女の瞳は黒々と強い敵意と戦闘意欲に彩られ、思わずずるりと階段を3段ほど落ちる。落ちるのはこれも芸の内で、階段の縁を一直線に結ぶ坂と考え、効率的迅速に落ちるように降りる技がある。後ろ向きにやるのはさすがにヤバかったが。

 続く一年生は美矩に押される形で左右に散る。なにが起きたのか分からないが、ともかく退く。つられてシャクティも退く。飛んで来たのが人であろうとは覚えたが、どんな人どんな意図敵性の存在であるかは分からない。

 少女が振り回す黒いコウモリ傘は球形の防御壁を構築する。
 しかし明美は動じない。すなおに脇を抜けてそのまま昇る。ふっと傘を肩に担いで、少女は階段を滑らかに迅速に戻る。駆け登るのではなく、上から引き上げられると感じられるスムーズさで昇る。

明美「あ、どうもお出迎えごくろうさまです。」

「びっくりしないひとは嫌いだ。」
明美「いや、あのすいません。天狗の家に行くのならもっと酷い扱いを受けるかと思ってましたから、ただの脅しってのは。」

 少女はふんとそっぽを向き、傘の陰に自らの姿を隠す。傘が振られて視界が戻ると、誰も居ない。いや、傘は何処に行った?

三号「…手品、ですか?」
洋子「手品を効率的に使うのは、私達もよくやるんだけど。せんぱい、あれはー。」
明美「手品でもないよ。あれが天狗さんの普通の仕草だ。人の眼を逸らして神出鬼没を演出してるんだね、日頃から。」

 思い返してみると、今の人はへんな格好をしていた。ちゃんと服は着ているが、ビクトリア朝の婦人の外出服か旅装のかなり厚い生地のものだ。御丁寧にフェルトの帽子も被っており、黒々とした髪の重さも相まって、非常に暑苦しい。十月半ばの天気は快晴で、異常気象地球温暖化の影響もあるのか、夏と言っても騙されてしまう。

 三号明美も気が付いた。

三号「暑い、すよね。」
明美「ちょっとね。」

 石段の上は少し広い石畳が続いている。元が遊郭というはなしだから建物自体が大きいのだが、思いの外庭は貧相だ。
 少女達が立つ正面、玄関前に竹ぼうきを抱えたエプロン姿の女性が居る。からからと黒い傘が転がって来て、先程の少女も隣に姿を見せる。

 明美はその場でちゃんと腰を曲げて挨拶する。残りのメンバーもそれに倣う。
 すこし距離があるのでゆっくりと近付く。もしやというかたぶんというか、仕掛け武器、矢が飛んで来るかと警戒するが、やはり何も無い。
 拍子抜けしながらもまだ警戒心を解かずに、その人の前に勢揃いする。改めて顔を見上げた。

 美人である。だがなにかが違う。かなり上等な顔形で万人が見て美人だと評するのは間違い無い。しかし、単に美人とするには決定的ななにかが欠けている。
 明美二号はうまく言語化できなかったが、三号が思わず口に出した言葉で得心した。なるほどそれだ。

三号「…似顔絵に描きにくいひとだな。」

 特徴が無い。婉然と微笑むその表情に不自然さもとってつけた仮面の冷たさも無い。普通の人の普通の顔だ。言うなれば、知り合いの笑顔だった。
 自分達を知って馴染んで居ればこそ、初めて見せる笑顔。だがそれゆえに特に注目しない。他人ではないがその他大勢に紛れてしまう、奇妙な雰囲気を発する女だった。

 シャクティが恐れ気も無く話し始める。明美二号に任せるべきだが、目の前の人の放つ奇妙さに囚われていると察し、代りに先制攻撃に出たのだ。

釈「あの、初めまして。門代高校ウエンディズ the Baseball Bannditsのメンバーです、どうぞよろしく。」

 す、とシャクティは右手を取られた。竹ほうきを右手に抱えたまま左手を伸ばし、肌の黒い右手を下からすくい上げる。

「こんにちは、シャクティ・ラジャーニさん。そして山中明美二号さん。あなたが今回の責任者ね。」
明美「はい。あの、事前の調査済みですか。」
「へきりんがやってくれました。」

 先程の怖い眼の少女を首を回して示した。”へきりん”という妙な名前は天狗の一員である証しだろう。まゆ子先輩は天狗には醜名があると教えてくれている。
 へきりんは真っ黒な瞳をやはり熱い敵意と共に向けて来る。

「やはり、問答無用で殴りかかって行った方がよかったのか。」
「たぶんそうでしょう。この山中明美二号さんは、自制心の強い御方だそうですから、遠慮なさったんです。」
「くそしまった、しくじった。かくなる上は。」

 ふいと後ろを向いて勝手に玄関の中に消えて行った。歩方が妙だ。早いし後を残さない。余韻が無い。消えると言ったら本当に消える神出鬼没さがある。
 ウエンディズの皆は、最初から竹ぼうきの人だけがその場に居たと感じる、奇妙な既視感を覚えた。初対面を二度やった感じだ。

明美「あの、…よろしければ中の方でお話できないでしょうか。どうもオープンエアだと警戒心を抜けなくて。」
「そうですね。ではまずは御上がり下さい。」

 広い土間だが下足箱は無い。別に脇に置いてあるらしく、めんどくさいからそのまま並べておいてくれ、と言われるままに少女達は靴を脱ぎ上がって行く。
 完全木造住宅であるが、ところどころに現代を垣間見えるのは安全設備だ。ちゃんと火災検知器やら消火器が準備されており、特に火には気を使って居ると思われる。
 板の廊下をどんどん行くと、急に暗い並びに出る。建物の作りの関係で陽が差さない場所だろう。こここそが闇討ちに最適か、と身構えるもなにも無い。

 ふと気付くと、竹ぼうきの女のひと、もちろんもう箒は持っていない、が前に居る。行き先を示して後からついて最後尾の美鳥にあれこれ教えて居たはずだが、何故か前に居る。追い抜かれた記憶が無い。
 「どうぞ」と開いた襖の部屋に入ると、かなり大きめの凝った明治時代くらいの作と思われる座卓がある。楕円形で縁にぐねぐねと彫刻が施されかなり高級そうだ。黒檀かと思うが、生憎その周辺の知識は薄いので良くわからない。部屋にはマッチして居るから、おそらくはこの館を買った時に調度として残されて居たものだろう。

 座布団が人数分並んで居るので、大人しく順番に座って行く。最後に中央に明美二号が座り、その正面にその人が正坐する。
 一応座布団を外して明美は座り直し、畳に手を付いて頭を下げ、おみやげに門代駅で買って来たお菓子の包みを差し出した。普通に受け取り、その人は立つ。

「お茶を持って参りますので、しばらく御寛ぎください。」
 まったく異常も奇妙なところも無いので、却って気が抜けない。主人不在の部屋に6人はじーっと固まって正坐して居る。

 緊張に耐え切れず、美矩が口を開く。

美矩「あっ。息が詰る。」
明美「そうね、なんか攻撃してくれないと、ちょっとね。」
美矩「こちらから仕掛けた方がいいんじゃない?」
釈「あ、わたしもそう思います。というか、もう一人の方を突いてみると。」

 間の悪い奴は大体決まっている。二年生の言葉を聞いているのかいないのか、真っ直ぐ横に並んだ座布団の上で許しを乞う。

美鳥「あのすいません、おトイレを。」
三号「あ、それはわたしもちょっと。」

 シャクティ美矩二号、それに南洋子が顔を見合わせた。こちらから仕掛ける? いいだろう。

明美「許可します。どこか分からないけれど、場所を聞いて迷惑掛けないように。」
美鳥「はい。」

 念の為、二人が出て行った後で洋子は尋ねた。あの二人でいいんですか、と。

美矩「美鳥ならうまいこと引っ掻き回してくれるんじゃないかな。」
釈「耐久力高いですし。」
明美「三号さんはあれでも明美一族の者です。なかなか死なないでしょう。」

「あら、ふたり居ませんね。」
と、お盆に急須と湯飲みとお菓子を乗せて来たこの家の主人が現われる。4人は再び座布団の上に正坐して居住まいと整える。

 その女は実に優雅に礼儀正しく、おそらくは茶道の作法にも適うのだろう、美しく茶をそれぞれの湯飲みに注いでいった。天狗という先入観が無ければ皆即ファンになってしまっただろう。
 すべて用意が終り、ウエンディズの正面に座卓を挟んで座ったところで、明美二号が尋ねた。

二号「あの、お名前をまだ伺っておりませんが、やはり仮名?」
「天狗ですから。」
美矩「それではお呼びしにくいのです。こちらの調査の結果では架丹瑠璃子となっているのですが。」
「ここの名義ですね。この旅館の責任者は皆その名を名乗ります。」
美矩「やっぱり。」

釈「では便宜上、”ルリコさん”で良いのでしょうか。」
「そうですね。ルビ子が正しいのですが、そちらの方がまともそうに聞こえますね。」
二号「ルビ子、ですかあ…。」

 天狗というのは人では無いから、世間一般常識に基づく呼び名はもちろん無視して適当な名前を用いる。考えてみれば、一生に何度も名前を変える昔の習慣の方が、日本の歴史上長いのだから、誰が非常識なのかは考えると頭が痛くなる。

 勇気を振り絞って、南洋子が尋ねる。

洋子「あの、さきほどの”へきりん”と呼ばれた方もやはり天狗ですね。」
「まだまだ未熟でお恥ずかしい。へきりんは烏天狗になったばかりの子で、未だちゃんと名前が付いているのですよ。」
二号「では武術の腕は優れている、と解釈してよいのですね。」

「あなたがたの目的は、武術の師を求めるというのですね。それも尋常ならざる実力の持ち主を。」
釈「私達はゲリラ的美少女野球という独自の武術を習って居るわけです。ですが独善に陥らないように、外部から見て辛辣に指摘してくれる方が必要なのです。」

 通称”ルリコさん”は少し困ったように首を傾げる。願いの筋は既にこちらに訪問する約束を取りつけた際に、じゅえる先輩が話しているだろう。断るならその段階でやっている。だから、なんらかの脈はあると、明美二号は踏んで居る。だから畳み掛ける。

明美「自分たちで言うのもなんですが、ウエンディズの特に三年生の先輩方はかなり優れた技術を持ち実戦においても経験を豊富に積み重ねて居ます。ですが、その功績は才能溢れた方が揃った今のメンバー構成に依存していて、続く私達がそのまま真似出来るものではないのです。」

「蒲生弥生という人は、極めて優れた将来に期待出来る人物だそうですね。私は直接には存じあげませんが。」
美矩「あ、こちらにはまだ尋ねていませんでしたか。」
「いえ、巡り合わせが悪くて私じゃない”ルリコ”がお相手したようなので、一度見てみたいと思っていました。」

 言外に、今回の訪問に弥生ちゃんが付いて来るのではないか、という期待が見えたようで、少女達は非常に焦った。ひょっとして至極失望させてしまったのではないか。
 そんな感情の揺れは気にせずに、”ルリコさん”は本題に入る。

「基本的な条件を申しましょう。我が蝉山天狗道では入門者以外にはごく初歩的な技術しか教えられません。」
明美「それはもちろん存じています。無理は申しません。」
美矩「むしろ、技術は教えていただかずに、死角や穴を指摘していただく事を望むのですが、それは禁則に入りますか?」
「いえ。しかし別の問題があります。」

釈「それは、私達の能力でクリア不能なものでしょうか。」

 ”ルリコさん”は眼をぱちぱちとしばたかせる。睫毛長いなあ、と南洋子は思わず見入ってしまう。化粧は当然しているのだが、かなり独自の技法で年齢を読めなくしている。ひょっとすると0歳近いのではないかとも思われるが、その逆に20歳そこそこである可能性も否定出来ない。

「我が蝉山天狗道が貴女がたの指導者である橘家弓さんと約束した事で、厭兵術と天狗術との間のスタンスを厳として取決めて居るのですよ。」
明美「あ、家弓さんがダメだと言っているのですか。」

 それは初耳だ。

 橘家弓というひとは常に貧乏くじを引かされて来た、むしろ明美に近い性格の人物だ。色々経験し、色々な事を知っており、色々な技能を持っている。生き残る為に必要な業を、必要に迫られて習得した。天狗術も軽身功のひとつとして習い覚え、また関連する蝉山天狗道に物質的金銭的支援を雇い主から命じられ世話した為に、便宜上本人も天狗にされてしまった経緯もある。ゲリラ的美少女野球に天狗術が入るのは必然である。

 とはいえ、ゲリラ的美少女野球の基本はあくまでも厭兵術である。あくまで厭兵術の稽古の為に作られた場であるから、他流が混ざるのは極力避けるべきだ。
 にも関らず混ざってしまったのは他でもない、橘家弓自身が厭兵術以上の技を使って見せ、その根源を少女達が独自に解明し求めたからだ。自業自得である。

 

「つまり、他流との技術的混同をあの方は気に病んでおり歓迎しないのです。我々も橘さんには相当お世話になっており、それと知っていてはそのお願いを冒すわけにはいきません。」
明美「あ、…そうだったんですか。」

 明美二号は少し失望した。厭兵術をこのまま積み重ねても三年生の先輩を越える事は難しい。邪道に走って別口の技術で凌駕するという方法も考えていなかったわけではない。
 続く言葉に更に自分の思慮の浅さを突き付けられ、恥ずかしさに頬も赤くした。

「実は、天狗術の技術をそちらに流したのは、こちらには誰も居ないのです。すべて目で盗まれたもの、武術を視る眼の力によります。そして現在その最大の敵と呼べるのが、蒲生弥生さんその人なんです。」
釈美矩「え?」

明美「では、やはりそちらでも、弥生ちゃんキャプテンは要注意人物?」
「信じられますか? 貴女がたが今習っている厭兵術の技術は、彼女がたった二日で覚えてしまったものだということを。」
洋子「ふつか…。」
美矩「二日というのは土日に習った、というだけですか。」
「眼です。だから正直に言って蒲生弥生という人の前で、天狗術を披露したくはありません。貴女がたが習い覚えた不十分な拙いものでも、既に禁止領域を越えています。ウエンディズが出来る前には未だ漏れていなかったものです。」

美矩「そんなものがどうして、どこから。」
「各チームの個々人が部分的に見覚えていた動きを、天狗術のものだと見破って再構成したものでしょう。八段まゆ子という人も関与してますね。」

 ヤバい人達だとは知っていたが、外部の人間から直接指摘されると、さすがに堪える。ひょっとして弥生ちゃんは危ないヒトではないかといううっすらとした勘が、金箔張りでお墨付きをもらってしまったわけだ。

釈「それでは私達の指導をしていただけないのですね。」
「ざんねんながら。ですが選択肢も用意してあります。別の人を推薦いたしましょう。武術の達人ですが天狗術、蝉山天狗道とは全く縁の無い人です。」

明美「その方は、ゲリラ的美少女野球に関しては、理解をしていらっしゃいますか。」
「いやーあのひとはまったく知りませんね。ただ頼まれると嫌とは言えない意志の弱いひとですから、大丈夫でしょう。」
美矩「意志が弱い武術家、ですか?」
「ずるずるです。自制心がありません、ですが悪い人ではないし、いい加減でもありません。枠が無い、と言った方がよいでしょうか。」

明美「枠が無いとは、それは世間一般の常識を越えている、と理解してよいですか?」
「むずかしいところですねえ。常識人でもあるんですよ。ずれているだけで。」
釈「変人、ということですか。」
「とらえ所が無い、というのを変人の枠に入れて良いものか、かなり悩みます。変というのが常識を覆す、予想を越えるというのであれば、その人は違うと思います。その人は自分のことを普通人だと思っていますが、関わった人は天地が歪みものさしが曲がっていると解釈するでしょう。」

明美「天狗ですらそう感じますか。」
「天狗にとってはむしろ敵に近いものです。天狗は山のものですが、その人は海のものですから。」

 よく分からないがにっこりと微笑むので、悪い話を突き付けているのではない、とは理解する。ただやはり天狗のやる事だ。ウエンディズがその人を師範として招いた場合、かなり厄介な問題が起きるのだろう。
 試されている、と明美二号は感じた。生憎と彼女も弥生ちゃんの影響力にずぶと浸かっている女だ。すでに常人とは呼べない偏屈に成り果てていた。

明美「おもしろそうですね、」
美矩「おい!?」
「おもしろいひとですよ、間違いなく。」
釈「ちなみにその方とはどのようなお知り合いで?」
「別の日の私の飲み友達、と言っておきましょう。そもそもその人は、わたしが天狗であることも知りません。」

洋子「しつれいですが、その人は強いですか?」
 あまりにぶしつけな質問だが、”ルリコさん”は真正面から答えてくれた。

「ゲリラ的美少女野球には天敵とも言える技術の持ち主です。」

 

 ”ルリコさん”と入れ代わりに、美鳥と三号が戻ってきた。髪はぐちゃぐちゃ、汗びっしょり。失禁していないのはもっけの幸いだ。

洋子「おしっこ出来た?」
美鳥「はい。それはちゃんと教えてもらいました。ですがその後。」

釈「”へきりん”て人と会ったわけですね。」
三号「あの人は天狗ではなく奇術師です。この屋敷もトラップハウスです。」

明美「具体的に言うと、何されたの?」
美鳥「わかりません。いえ、こちらからも攻めてみましたが、かすりもせず。」
三号「ですが御安心下さい。あいつにも手痛い損害を与えてやりました。襖を三枚ほどぶち破りました!」
美鳥「おそらくは2万円以上の損害です。」

 明美二号は、彼女達の育成を間違えたと直感する。ゲリラ的美少女流コストダメージ法はじゅえる先輩の発明だが、まさかお願いに行った先でやっちまうとは。
 会計美矩は怒る。怒るというよりも、絶望のどん底に突き落とされる。こんな古い屋敷の襖ってのは、どれだけの値段がするものか、見当も付かない。

美矩「み、み、や、えと、どどどどどどうしよう。」
明美「仕方がない、きちんとお話ししてお詫びして、…弁償代は三年生の先輩方からも徴収いたします。」
釈「ひい、鬼だ。」

「あらあら、へきりんにはいい薬ですね。」

 再び部屋に入って来た”ルリコさん”に、ウエンディズメンバーは平身低頭土下座する。だが笑って許してくれた。

「コストでダメージを与えるという策は、人を誑かして追い詰めるへきりんには良い経験となります。兎角勝ち負けにこだわりがちな烏天狗には思いもつかない奇襲です。」

 

 

 翌日登校した二年生達は、朝講習の合間を縫って三年生まゆ子じゅえるの教室に報告に行く。
 最初はふむふむと素直に聞いて居たふたりだが、”ルリコさん”に紹介された人の職業を聞いて仰天する。主にまゆ子先輩が。

まゆ子「と、とうそく?!」
美矩「はあ。等速ロボットとかいうのを実験する研究者とかオペレーターというはなしです。」
明美「先輩御存知ですか?」

まゆ子「統則ロボットというのは早い話が人工筋肉を使う新型の作業用ロボットのことだ。まだ限られたとこでしか応用実験していないと聞いてたのに、まさかこんな身近に。」
釈「それってそんなに凄いモノですか?」
まゆ子「いや、現時点においてはそんな強力なものじゃない。人工筋肉の技術がまだ固まっていないから、作る度に設計ががらりと変わる過渡期の段階なんだけど、それにしても凄い。」

明美「私達、今度の日曜日その人に会いに行ってみるつもりですけど、」
まゆ子「あたしも行く!」
じゅえる「おいおい。」
まゆ子「いやぜったい行く!」

 なんだか良くわからないけれどまゆ子先輩が血相変えて主張するので、二年生達も引き下がらざるを得なかった。
 そして日曜日、あいにくと用事が出来た美矩シャクティ南洋子を置いて、明美二号と美鳥がまゆ子の御供で面会に行く。良く知らない人だけど、まゆ子先輩の友達の男の三年生も何故か一緒についてくる。

月曜日、二年生一年生は緊急ミーティングを自主的に開き、明美二号の報告を受けた。

明美「タコです。」
「はあ。」
美鳥「蛸でした。」

美矩「どういう事?」
美鳥「タコ型のロボットを研究する、タコみたいな拳法を使う、タコ八郎みたいな髪型の女の人でした。」

釈「明美さん、どういうことです?」
明美「タコだ、タコなんだ。その人はタコが人間に生まれ変わったような人で、手足がねっとりと粘り着く軟体動物の、なんというかともかくタコなんだよ。」
洋子「わかんないなあ。」

三号「で、強いんですか? その人。」

 明美二号と美鳥は顔を見合わせて言った。

明美「白い腕がタコの触手のように絡んで来て身動き一つ取れなくなる。関節技を使わないにも関らず手足の動きが封じられ、妙な形で立ったまま抑え込まれてしまう。」
美鳥「巨乳で口を塞がれて窒息しました。」

美矩「………、蛸なのね。?」

美鳥「でもまゆ子先輩と男の先輩は大興奮でしたよ。」
明美「まゆちゃん先輩があれ程食いついたからには、どうやらウエンディズ師範て話もすんなりまとまるんじゃないかな?」

 その人の名は土器能登子、30歳の子持ちの女性である。流派は紅曙蛸八仙という聞いた事のない捕手術だそうだ。

(連載第一回終り 08/01/11 何故かもうちょいと続く。)

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