蠱螢・抜質 共通設定 from11/01/11

 

前置き

・学園ファンタジー「蠱螢(仮)」と、ハードボイルド推理ファンタジー「抜質!」は時代的にほぼ同じ世界観の上で進展するので、可能な限り設定を共通化した。

・とはいうもの二つはまったく違う物語であり、「蠱螢(仮)」は日本が存在する地球上での話。「抜質!」は事実上「げばると処女」の続編であり、天河十二神により管理される惑星上の話である。

・しかしながらどちらも科学技術文明を有する現代人が主人公であり、現代社会で遭遇しない古代的あるいは神話的現象や存在の出現を現段階では考慮していない。

・結局世界観が相似形であるというだけだ。設定共通化は設定を考える労力を削減するのが主目的であると同時に、「抜質!」から「げばると処女」の要素を隠蔽する効果もある。
 「げばると処女」未読の読者に対しての配慮だ。

 

基本物理設定

・舞台となる惑星はどちらも地球大、1G、海面1気圧。月は1つ、太陽も1つの地球と同等のものである。

・違いは自転・公転周期。「蠱螢」においては1日24時間、1年365日1/4、地球そのものである。
 「抜質」においては地球時間換算で1日27時間を24時間と数える。1年333日である。地球時間換算で374.6日。

・時間の区分は、世紀・年・月・日・時・分・秒、である。十二神信仰において現在は「ゼビ神の統治期」ゼビ期である。

・「蠱螢」の暦は地球のものである。
 「抜質」の暦は28日周期12月の太陰暦と、一年を9月で割った37日周期の季月と呼ばれる太陽暦を併用する。太陽暦1月1日は「抜質」惑星の遠日点に相当する。

・「蠱螢」において惑星名は「地球」である。現代日本が舞台であるから当たり前だ。
 「抜質」において惑星名は、舞台となる十二神方台系においては「天珠」と呼ばれる。意味は「地球」と同じ。また、外国との交流を進める内に共通語で「ピルマリウム」と呼ぶように定める運動が行なわれている。

・月の名前はどちらも「月」である。
 「抜質」世界においては、かって「青の月」と呼ばれる観測されたとの記録があるが、900年ほど前に突如消滅。現在の天体観測技術を以ってしても痕跡を発見出来ない為に、衛星ではなかったと結論されている。

・双方とも、地球滅亡レベルの壊滅的災害は存在しない。小惑星が落ちてきたりもしない。懸念もされていない。

・「蠱螢」において気象は、21世紀初頭とほとんど変わりは無い。異常気象や地球温暖化も懸念されている。

 「抜質」においては異常な気象現象が存在する。高空にプラズマ雲というものが停滞し、磁気コンパスが使えない。電波利用が大きく制限される。

 また航空機の高度が上げられない。
 故に国家間の移動は船が主流であるが、プロペラ水上飛行機、飛行艇が実用化され航路が開かれている。航空機の航続距離は短く中継基地を多数必要とし低空ゆえの燃費の悪さもあって、航空運賃は非常に高い。海外旅行など庶民にとっては夢のまた夢である。
 当然、宇宙ロケットは実用化されていない。また計画も無い。物理的には可能ではあるが、プラズマ雲を突破する手段が現在まだ見つかっていない。 

・「蠱螢」において世界人口は60億人かもっと多いか、21世紀初頭地球と同じである。
 「抜質」においては世界人口は不明である。未だ世界が一つに連絡されておらず未開の土地も少なくない。推計では20億と言われる。

 

地理設定

・十二神方台系と呼ばれる土地は南半球にある。南極大陸に接続する唯一の国家であり、南方大樹林帯から氷河に繋がる。
 国民は現在「ゼビ期方台」と呼ぶ。略して「方台」。外国からは「ゼビ国」と呼ばれる。

・十二神方台系は南アメリカ大陸の西、南太平洋に面している。海流の関係で孤立し、古来より人的交流は無かったとされる。

・十二神方台系の東、インド洋上に巨大な大陸が存在する。かってムー大陸とも呼ばれたゥワム大陸である。大きさはオーストラリアとほぼ同じ。

・十二神方台系とゥワム大陸には「ウェゲ族」いう人種が棲息する。他の人種とはまったく違い、青みがかった黒髪を持つ。瞳は暗い緑色。
 「五色の姓」と呼ばれる分類で赤青黄白黒の人間の内、青人に相当する。

・中央アジア付近に「バシャラタン」と呼ばれる山岳国家が存在する。チベット仏教に基づく統治が行われる。

・「蠱螢」において世界地図の変更は以上である。

 

・「抜質」においては、ユーラシア大陸・アフリカ・アメリカ・オーストラリアは存在しない。というよりは、物語にそれらの土地は登場しない。

・「抜質」においては十二神方台系の東にゥワム大陸、西に十六神星方臺、北にバシャラタン方台が存在する。民間レベルでの渡航が許されるのはこれら3国のみと考えてよい。
 それ以遠の土地とは往来が困難であり、存在の確認はされているが通商はほぼ無い状態。
 「方台」とは神が人間の為に作った土地であるとされる。それぞれ孤立しており、海流や気象によって往来が困難であったが、機械動力船の開発によって交流出来るようになった。

・この4国いずれも、千年前に「星の世界より来た救世主」ピルマルレレコ、の到来を受けて社会が劇的に変化している。多くの恩恵を被り科学技術の進展が見られ、宗教的に大きな足跡を遺している。
 それ以外の方台を調査した結果でも、やはり同時期に同様の救世主伝説が存在し、無い所を探すのが困難なほどである。
 故に国際協議により4ヶ国が属する領域を「ピルマリウム」と呼ぶ事が提唱されている。あるいは惑星全体をそう呼ぶべきとも唱えられる。

・十二神方台系は四辺が1000キロの正方形の土地である。南に巨大な円形の陥没がある。南方は南極大陸に繋がる寒冷な大樹林帯を有し、ここには人は住まないが最近は伐採が進み荒廃している。
 全土はほぼ草原である。とくに中央部は滑平原と呼ばれ、広大な草原が広がっている。南部や北部の山には森林があるが、最近は開発や資源採掘によって伐採が進み深刻な社会問題となっている。
 工業化が進展している為に自然環境破壊は深刻で、ついに政府が環境維持の為の強権を用いるようになった。が、これは1000年以上前の救世主ピルマルレレコの政策の焼き直しである。
 兎竜と呼ばれる耳の長いキリンや荒猪と呼ばれるイノシシが棲息する。牙獣と呼ばれる巨大なイノシシの類いも居たのだが、現在は絶滅。
 トナクと呼ばれるポップコーンのような実を付ける穀物とジョクリと呼ばれる片栗粉みたいな粉の取れる水辺の植物を常食とする。
 毅豆と呼ばれる豆を使った発酵食品が盛んで、醤油を各国に輸出している。発酵食品が極端に発達している。

・ゥワム大陸は北に開いた馬蹄形の土地である。南北2000キロ、東西1500キロ。十二神方台系より大きい。
 沿岸部以外は大体乾燥しているのだが、中央の海のおかげで沿岸部が多く、人の生活には適している環境。4000メートル級の高山もある。カンガルーやダチョウが棲んでいる。
 資源大国であり、工業化に先進する十二神方台系に輸出している。
 トウモロコシに似た作物が主食であるが、内陸部では乾燥に適したサボテンの葉肉を常食する。カカオやコーヒーが取れて輸出でボロ儲けしている。

・十六神星方臺は概ね円形の土地である。正確には16の角を持つ星型であるが、丸い。直径1000キロであるから、十二神方台系よりは狭い。
 インドのような気候であり、全土が密林に覆われている。しかしながら最近は開発によって森林伐採が進み、社会問題となっている。トラやゾウが棲んでいる。
 農耕にも適している。水田での稲の栽培が行われる。香辛料の宝庫であり、また砂糖輸出も盛んである。

・バシャラタン方台は北に頂点を持つ三角形である。1辺1000キロであるからやはり十二神方台系の方が大きい。
 全土が500メートル越えの高地にあり、常に霧に覆われる。特殊な植物が生い茂り、適応した農耕が行われる。猿が棲んでいる。
 茶が取れて、他の方台に輸出している。

・これらピルマリウム4国はすべて南半球にある。故に世界地図は南極大陸を上に置いて描かれる。

・ピルマリウム4国には共通で無尾猫と呼ばれる1メートル長のネコが棲息する。人間に良く懐く。伝説ではかってネコは人語を喋っていたという。
 十二神方台系には白ネコ、ゥワムには腹が白い青ネコ、十六神星方臺ではトラネコ、バシャラタンには山ネコが棲む。

・ピルマリウム4国には馬や牛といった畜力を利用するのに適した生物が存在しない。故に長く人力が主体であった。
 その後十二神方台系においては荒猪に対して去勢を行うことで扱い易くし、利用に成功。この技術はゥワムと十六神星方臺にも伝えられ、それぞれ別の生物の利用に成功する。
 しかしながら、去勢の技術は別の方台からもたらされたとは知るが、ピルマリウム4国のいずれにも存在しなかったものだ。
 どこから伝えられたものか謎である。

・海洋にはゲルタと呼ばれる魚が無数に存在する。アンモニアを多量に含む為に直接の食用は出来ない。開いて干して塩水を多量に掛けて塩干物にして食する。
 十二神方台系では発酵食品が発達している為に、ゲルタをアンモニア発酵させた酷い臭いのする食品もある。
 食べるのは十二神方台系とゥワムのみ。十六神星方臺ではもっと美味しい川魚が主流であり、高地のバシャラタンでは魚を食べない。

・イカ・タコを食べるのは十二神方台系のみである。タコは神の化身であるから、ゥワムでは十二神方台系を憎んでいる。

 

ハードウエア

・科学技術のレベルは、「蠱螢」においては現実の地球21世紀初頭と同じ。原子力も実用化され、原子力発電所から電力供給が行われ、核兵器で世界は脅かされている。

 「抜質」においても相対性理論は存在し原子力も理論的には予言されるが、実用化されていない。経済的に見合う放射性物質の鉱脈が見つかっていない。
 原子力技術がかなり欠落している為に、電子技術も少し劣る。低密度の集積回路が実用化された程度であるが、有線カラーテレビ放送が行われコンピュータも存在する。インターネットに類似した通信ネットワークも存在する。
 プラズマ雲に電波が極めて低い位置で反射もしくは吸収されてしまうので電波通信はあまり有効ではない。放送はほとんど有線である。

・兵器に関しても「蠱螢」は現実と同じである。

 「抜質」においてはプラズマ雲のせいで航空技術が大きく劣りジェットエンジンは実用化されておらず、ロケット兵器も長距離弾は実用化していない。
 国同士が隣接する所は少なく、海で隔てられている為に海軍が隆盛を極めている。
 大規模空爆が無いので未だ大量歩兵の投入が主要な戦術であるが、船に乗って上陸しなければならないので、強力な戦車を持っていれば阻止出来る。故に無茶な戦争はなかなか起きない。

・「抜質」
地球70年代に1ビットシリアルコンピュータでインターネットしているような感じ。このレベルでコンピュータの私有が出来るのは不思議であるが、有るものは仕方ない。コンピュータ技術が暴走的に発達した地球とは異なり、この私有コンピュータは20年まったく進歩していないとする。
 メインメモリは、おおむね80キロバイト。ROM、VRAMは存在しない。というよりはビデオ処理用にもう一個コンピュータを噛ませる。

 性能は結構高く、平面画像処理を1画面1秒程度で行える。シリアルコンピュータであるから性能を向上させる為には数珠繋ぎをするわけで、動画編集ならフレーム数30個繋いで行う。一般人にはとても手が出ない。
 ディスプレイはテレビ画面を使い解像度は500×200程度128色が標準普及帯。1000×1000を越える高解像度ディスプレイは大学や研究機関・軍のみで使われる超高級品。

 テレビ画面の書き換えが遅いから、直接文字入力が困難である。そこで液晶サブディスプレイがキーボードに付いている。1行20字モノクロという貧弱なものだがリアルタイムで表示される。ここで文字入力を行い、入力キーを押すとテレビ画面に文字列が表示される、という仕組み。
 キーボードにモノクロプリンタも付いているのが普通。この入力装置はもともとタイプライターであり、テレビディスプレイが実現する前は紙に活字で表示していた。

 外部記録装置は磁気レコードである。ドーナツ盤大でジャケットは無くレコードみたいにシーケンシャル記録を行う。記憶容量は100キロバイト程度、両面200キロバイト。書き換え不能なROMディスクで市販ソフトが供給されるのだが、これは本当にレコードでありピックアップを換えて針で音を再生してデータを入力する。容量は片面150キロバイト両面300キロ。
 しかしながら貧乏なコンピュータユーザーには高嶺の花である。光で読み取るカード式記録が彼らの主流だ。1枚1キロバイト程度しかないが読み取りはカードが通る5秒程度で終了、キーボードプリンタで印刷可能であり紙も選ばない。

 インターネットに相当するネットワークがある。通称「電燈ネット」、電灯線を通してのネットワークである。電話線を使っての通信は警察当局によって監視されているということで、こちらを使うのがマニアの間で流行っているが、実際は通信料をこちらは取れないからである。現在は文字情報しかやり取り出来ないが、これは個々のコンピュータのメモリが少ないせいである。

 

・「抜質」ではプラズマ雲のせいで航空戦力が貧弱である。高度も3000メートル程度までしか上げられない。
 高度3000メートルを越えると、金属の周囲で放電が起き、可燃物は燃え燃料火薬に引火する。通信も出来ない。そもそも磁気コンパスが有効ではない。ほとんど飛ぶなといわんばかりだ。無理に飛んでも高速が出せない為に、性能限界が低い。
 また電磁波を極めて低い位置で吸収反射してしまうので長距離通信およびレーダーが使えない。

 海面ギリギリの低空を飛ぶと燃費が悪く、搭載燃料を多くしなくてはならない。離陸距離が必然として伸びて水上機および飛行艇が適当とされた。
 艦隊攻撃は10キロ以上離れた位置からの雷撃が有効とされ、大型魚雷を登載し重くなるために離陸距離が長い水上雷撃機が、それを護衛する水上戦闘機が主力となる。

 戦力としては水上機母艦が優先され、航空母艦は高速の偵察機と潜水艦哨戒のオートジャイロ機運用に留まる。
 レーダーも長距離通信も使えないなら、早期警戒は出来ない。迎撃機を緊急に発進させる猶予が得られない。
 高度が取れない航空機相手なら、迎撃機を飛ばすよりも対空火力を増強した中小艦艇の方が良いと結論された。

 潜水艦も大きな力を持つ。航空機による哨戒が弱いので、ほぼ海戦の主力兵器となっている。しかしながらホーミング魚雷が実用化されているので、オートジャイロ哨戒と水上雷撃機が追い回すのを掻い潜る熱い戦いが繰り広げられる。

 戦艦は無くはないが、潜水艦の脅威が大きい為に大型艦の運用は控えられる。高速で移動出来る中型艦艇の艦隊が水上機母艦を護衛する。また対抗する潜水艦運用を補助する潜水艦母艦も随行する。
 戦艦の役目は主に上陸の支援である。この世界ではぞれぞれの方台が海で分かたれ、どうしても上陸戦が必要になる。また航空機の能力が低い為に、事前に空爆という選択肢が弱い。故に激烈な砲戦による上陸支援という状況が発生する。
 砲撃を掻い潜り揚陸艇で大量の歩兵を上陸させるわけだが、陸地には強力な戦車が待っている。故に揚陸艇にもキャタピラと戦車砲が装備されるが、無論それほど強力には作れない。

 

宗教・魔法設定

・「蠱蛍」においては世界各国ありとあらゆる宗教があり、それぞれ魔法を有すると主張する。とはいうもののホントに物理的効果を発生させられるものはほぼ無い。極ごく一部に極めて希な超能力者による効果があって、それを宗派の魔法だと主張する。
 それら伝統的な魔法体系を整理し、科学的にトレーニング法を研究して初級者から研究者まで一貫教育するのが、日本に設置されている「蠱螢魔法学校」である。

 「抜質」において魔法とは、そんなものは無い!

・「蠱螢」。十二神方台系およびゥワムには1000年ほど前に「星の世界から降臨した少女」救世主ピルマルレレコの伝説があり、広く信仰され深く敬愛されている。ピルマルレレコ信仰は「ウェゲ人種」の間に共通される伝説であり、単なる政治宗教的改革のみならず先進的な科学技術をも伝えたとされる。

 それが証拠に、西欧人が大航海時代にゥワム大陸を発見した際でも、既にゥワムには火薬や紙の技術があり、為に征服を免れた。十二神方台系が近代化にいちはやく成功したのも、ピルマルレレコによる技術の伝達が基盤となっているとされる。
 故に西欧人はこれを西欧科学を学習した人物がこれらの地に流れ着いて現地人に教えたと解釈した。場合によっては伝説的な東方のキリスト教王国「プレスター・ジョン」と同一視する。無論、ゥワムや十二神方台系ではそんなことは有り得ないと反発する。

 

・「抜質」。「ウェゲ人種」間に広く伝わるピルマルレレコ伝説は、「星の世界から降臨した少女」ピルマルレレコによる救世の物語である。
 この伝説はしかしながらどの方台にもありながら、すべて違う逸話である。つまり、どこかの方台に起きた出来事が神話や物語として伝達されたのではなく、各方台においてそれぞれ別々に救世が行われたことを意味する。

 時期も同じ1000年前で、どの方台でも等しく黒髪の長い少女だ。
 各方台の説話を統合すると、まず十二神方台系に現れて、西の十六神星方臺に海路で行き、順繰りに回っていると想定される。最後に行着いたと思しき方台で天に帰ったとされるが、十二神方台系に降臨からおよそ30年を要している。
 すべてを総合すると、少女の姿のままで数十年生きたことになる。

 こんなことは有り得ないので、この時期「ピルマルレレコ」を名乗る救世主の一群が居たと解釈するのが普通だ。一説によれば不老不死の神人が居たとされるが、科学的合理的な考察には適さない。

 いずれにせよピルマルレレコの存在無しに現在の「ウェゲ人種」国家の宗教や社会は成り立たない。どこの国でも等しく民衆の尊崇を受けて居る。

 

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