魔法少女まじかるぽたー いい加減設定 その1(07/09/14開始)

 

 

 

 

【蠱蛍 キャラクタ設定】2011/07/05

 

まゆ子「まじぽたはそもそもどんな決着をつけるかを考えていなかったのが問題であるのさ。」

じゅえる「終了条件を作っていなかった、てことか。」
釈「でも物語というものは、過程こそがすべてであって、オチはどうでもいいんじゃなかったですかね? 前に考察したところでは。」

まゆ子「考察ではそうなるけれど、結局のところ客、読者様はオチを期待して読んでいるということも留意しておかなくちゃいかんよやっぱ。」
じゅえる「つまり、オチは必要であるし立派なものでないといけないが、だからと言ってオチだけで見せても仕方ない、てわけだね。」
釈「なんか嫌な話ですねえ。労多くして報いるところ少なして感じで。」
まゆ子「だがそういうものであるんだから、期待に応えるしかないでしょ。

 

 で「まじぽた」だ。オチは無いけど導入部は有る。さあどうしよう、て事で頓挫していたのだ。この物語は何を目的とするべきか、まったく考慮していない。」
じゅえる「面白ければいいんじゃない?」
釈「たしかに。」
まゆ子「面白いとは何か? これがつまり今言ってることでしょ。オチを期待していながら、オチそのものにはさほどの価値は無い。だがオチに繋がっているからこそ、物語は読む価値を見出される。」
じゅえる「単純にキャラのやりとりで面白いだけではダメなのか?」
まゆ子「それでいいとする作者は居る。いややはり物語がすべてに優先するという人もある。オチに向かって怒涛の如くになだれ込んでいくスピード感、これこそが命て人も居る。」
釈「ふむ。それぞれに真実を語っていますか。で、まじぽたはどれになりますか?」

まゆ子「キャラがきゃぴきゃぴするだけで十分と思っていたけれど、どうも構造的に違うみたいだ。「ゲキロボ」はキャラがきゃぴきゃぴするだけで進む物語ですけどね。」
じゅえる「魔法学校で生徒達がわいわいがやがやと楽しく暮らしていきながら、魔法の奥義を身に着ける。それじゃダメ?」
まゆ子「魔法というものはそんな生易しいものではない。というとこを描写しないとダメみたい。」
釈「でもお間抜けな明美さんが主人公ですよ。三号さん。一年生トリオにそんなシリアスドラマは出来ないでしょう。」

まゆ子「やれ、とゴーストが囁いたのさ。」

 

じゅえる「間抜けな明美三号と、もっと大間抜けな美鳥と、苦労人ではあるが要領の悪い南洋子が主役だぞ。シリアスもへったくれも無いだろう。」
まゆ子「うえんでぃずの一年生に新入りが居るぞ。マネージャーの峯芙美子だ。こいつはエロ担当ということで、突っ込む。」
釈「ももぱいさん、ですね。分かりましたスケジューリングします。」

まゆ子「で、基本この四人が主役であり、ライバルにイタリアから来たお嬢が居る。こいつらは生き残る。」

じゅえる「ちょっと待て。じゃあ他は死ぬのか。」

釈「およそ20名の生徒が居ますが、半数以上が死ぬんですか!」
まゆ子「そこがゴーストが囁いた所さ。この物語、基本5年間を予定する。初等課2年、専門2年、最終受験課程1年で5年間の在学期間がある。
 この課程において、魔法訓練生は次から次に脱落する。基本中の基本であり、前に書いた時ももう一人脱落させている。」

じゅえる「リアルと言えばリアルだな。」
釈「でもそれでは面白いお話にならないでしょう。」

まゆ子「いや、それが面白い! と気が付いたのだ。

 つまり、この物語20名以上の登場人物が居る。普通こんだけ居れば、主役以外は埋没背景化する。理の当然。」
じゅえる「だな。」
まゆ子「わたしは仲良しさんが書きたい。クラスメートがいちいち争い合うなどという無粋な物語は御免蒙。百合よ、女の子なんだから。」
じゅえる「言わんとする事は良く分かる。」

まゆ子「であれば、一人ひとりをクローズアップしていく仕掛けが必要だ。」
釈「あ! つまり退場していくキャラを一人ひとり丹念に描写していくんですか。」

まゆ子「それがゴーストの囁きさ。」

 

じゅえる「ふーむ。……、釈ちゃん、どう思う?」
釈「言わんとする所は理解できますが、どんどん寂しくなっていきますねえ。」
じゅえる「これは楽しいお話ではないのか?」
まゆ子「もちろん明るく楽しく痛快な娯楽小説になります。というか、これまでソレになるよう踏み込めなかったのさ。なんといいますかね、甘いお菓子を作ろうとして塩加減が決まらないという。」

じゅえる「ふむ。つまりコントラストの付け方に大きく疑問を感じていたんだ。」
まゆ子「このまま面白おかしいお話を続行させていくと、楽しく楽しくしていこうという苦心が紙面に滲み出る。それでいながら描写は悲惨を極めるという、救い難い物語となっていました。だから頓挫した。」

釈「今度は逆をやろうというわけですね。悲惨を前面に押し出しながら、だからこそ明るく楽しい学園生活が描いていける。」
じゅえる「そこはー、しかし悲惨なんだろ?」
まゆ子「死ぬとは限りません。」
じゅえる「死人も出るのか。」
まゆ子「通例であれば、20人中3、4人は。それにビビッて逃げ出すのが5、6人。」
釈「悲惨ですね。」

まゆ子「だがこのクラス。この年の訓練生は、奇跡の朱美魔法により死者が一人も出ない新記録を作ります。最終的にはハッピーなのです。」
じゅえる「悲惨の中での奇跡のハッピーですかい。」
釈「でも、それは悲劇のコントラストの上に立つ、薄氷の奇跡なのですね。」

まゆ子「主人公 朱美・ルンレンロンさんは朱美魔法の使い手。これは何が起きるか自分では制御できないがともかく凄い画期的な事が起きる魔法です。」
じゅえる「その奇跡こそが、クラスメートが誰も死なない、てのだね。」

釈「でも、どういう物語になるのか分かりかねます。」

まゆ子「つまりヒーローなんだよ。朱美は魔法修行の最中に、クラスメートが不思議の力で次から次に脱落する体験をする。死ぬ、いや行方不明で死んだと思わせるような事も度々起きる。
 だが主人公朱美は、なんとなくのんべんだらりとしたヒロイックな活躍の末に見事クラスメートを死の縁より救い出し、まあそれ以降の魔法修行はさすがに無理なんだが、脱落しても一般人間社会に帰るというだけで生還し、
 最終的には5年生の卒業試験に合格し、立派な魔法使いになる。という物語。」

じゅえる「うーん。」
釈「いい、お話に見えますね。」

まゆ子「というか、最初からそういう構想であったのだ。だが、クラスメートをどうやって脱落させるかに非常に大きな引っ掛かりがあって、進められなかった。
 今回、どうせ脱落するのならどんと派手に行こう! という開き直りにより、これが上手いこと機能すると確信を得た。」

釈「確信、なるほど。」
じゅえる「ゴーストが囁いたのね。」

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まゆ子「であるからして、生徒一人ひとりを厳密に設定しなければならなくなりました。」

じゅえる「めんどい話だが、それが一番の早道というわけだな。」
釈「というか、これまでの書いてる途中に考えるというのは、さすがに無謀が過ぎました。」
まゆ子「まったくだ。ウエンディズのキャラを流用するという策をもっと積極的に使うべきであった。とはいうものの、一年生しか使えないんだけどさ。」

じゅえる「改めて考えるが、主人公朱美るんれん、で固定だな?」
まゆ子「朱美、南洋子、美鳥の3名は確定。桃パイ名の女の子は峯芙美子に確定。ウエンディズから流用するのはこれくらいでいいかな?」
釈「ゲキロボは? 結構いますよ濃いキャラ。」
じゅえる「濃すぎるんじゃないかな。ゲキロボはあれはあれで、結構キャラに突っ込んで考えてるぞ。」
まゆ子「ふむ。あーそうだな。蠱蛍にもキャラで確定したのが居るから、それとマッチングして足りないのを移動させてみよう。」

釈「唄方姉妹は?」
じゅえる「却下。」
まゆ子「主人公キャラは却下だ。」

 

 ”黒こけし” マリア・ジンク・テレヴィアン 15才
 ”こけし2号”マルグリッド・マギリッヂ 15才
 ”三号右はね 改め 右はね狐” テレサ・ゼペェロス 15才
 ”腹乙女” 荒巻圭 14才
 ”ミドリうさぎ” 14才
 ”爺猿” 14才
 ”てんてん目” 14才
 ”ライ麦パン”  13才

 

 ”尻走り”  15才
 ”赤しっぽ” 朱美・ルンレンロン 14才
 ”ちび河童” 南洋子 14才
 ”桃パイ” 浜木綿魔雪 14才
 ”乳かべ” 江良美鳥 13才
 ”蛇でんぱ” 曜・メリョン 13才

 

 ”瓦せんべい” ミトラ・ウェイウェイ 16才
 ”こっくさん” 神羅 槙 15才
 ”おとこ” 15才
 ”ねずみ女” 15才
 ”しょぼどりる” 14才
 ”本屋臭” 14才

 ”金髪妖精子”

上級生
 ”シンデレラさん” 19才

先生
 円城寺 蓮 27才くらい

 

まゆ子「このくらいは決まっている。」
じゅえる「ふむ。」
釈「副主人公に相当するのが、”黒こけし”マリアさんです。この人は徹底的に造形しないといけません。」

じゅえる「シンデレラさん、てなんでこんな名前なんだ?」
まゆ子「頭の中にシンデレラが住んでいるからよ。」
じゅえる「        。マジ?」
まゆ子「物語の核心である。」
釈「簡単にいうと、仙女なのです。仙女シンデレラが取り憑いて夢の中に住んでいるのです。親切な人で、夢路に溺れた学生を救ってくれるのですよ。」
じゅえる「じゃあ、この物語において魔法というものは、」
まゆ子「夢の中でだけ使えます。」
じゅえる「しゃー、それでは現実世界においての魔法の効力というものはー、」
まゆ子「だからこそ『物理魔法』という特別なカテゴリーが存在するのです。バーチャル世界では当たり前ですよ。」
釈「今だからこそ、リアルなんですこの設定は。」

 

じゅえる「ま、いいや。で主人公3名はキャラが確定。副主人公マリアさんは、だいたいお嬢様のツンケンした性格でいいんだね?」
まゆ子「あー、物語5年間在籍しますが、つまり本は5冊出来ますが、マリアさんは最終学年まで残留します。決定です。」
釈「副主人公ですからね。」
まゆ子「あと決まってるのは、主人公3名はもちろん残ります。桃パイはエロ魔法コースに行くので、正課からは外れます。
 この学校は最終学年6年生は、一年間まるまる使って卒業試験をします。これにパスすると正魔法士ですが、試験をパスすると准魔法士として普通に卒業できます。」

じゅえる「何故? 卒業出来るなら試験要らないじゃん。」

まゆ子「正魔法士は三大魔法会に入会する為の条件です。が、これが無くても一般社会で魔法を使うのに制約は無い。むしろ一般社会を活動の場として選ぶ者は、命を惜しんで試験を受けない方がよろしい。」
釈「死ぬんですか、試験通らないと。」
まゆ子「卒業試験の課題は昔から決まってます。三大魔法会より派遣された専門魔法士を、魔法で撃破しろというもの。」
じゅえる「専門家をか。それは過酷だな。」
釈「無理でしょう、それは。」
まゆ子「もちろん試験官である彼らには制限が科せられる。専門魔法以外使ってはならない、というものだ。つまり、専門外の魔法を使って撃破してもよろしい。」
じゅえる「うん、そのくらいのハンデは無いと無理だ。」
まゆ子「だがこれはあくまでも、正魔法士の資格試験であり、三大魔法会への入会資格は専門魔法を用いて専門家をやっつけろ、というものです。もちろんここにもハンデはありますが、」

じゅえる「つまり、クリア出来るぎりぎりのところに設定してあるわけだ。試験官は。」
釈「しかし、死ぬ者も出る。」
まゆ子「試験に一年間を必要とするくらいですから、十分に対策を練ってください。ただし失敗をした場合は、主に精神的疲労でダメージを受けます。肉体的にもあるのですが、魔法使いにとってマジックポイントの喪失がいかに大きいかは語るまでも無いでしょう。」
釈「ポーションひとつで回復、なんてのはあり得ないわけですか。そりゃ無いですよねー。」

まゆ子「今決まっているところでは、朱美るんれんさんは物理魔法である「絢爛たる魔法会」への入会が自動的に許可されます。物理魔法の試験を受けなくても正魔法士にパスします。」
じゅえる「なんで?」
まゆ子「この物語において、いかにるんれんさんが悪行の限りを尽くしたかを描いていくわけですが、それほとんどが物理魔法なのです。
 物理魔法自体実現が困難であるにも関わらず、この有様。はっきり言って試験官よりもはるかに強力で、むしろ試験官の命の方が危ない。だから試験するまでも無いのです。」

釈「なんかすっきりしませんね。」
まゆ子「はいもちろんそうです。朱美るんれんさんは筋のぴっと通ったお方ですから、納得行きません。が、物理魔法のセンセイは試験を受け付けてくれないので、攻撃魔法と神聖魔法の二人の試験官に話を持って行きます。
 で、やります。」
じゅえる「ふむ。」

 

まゆ子「攻撃魔法「勝利の魔法会」の試験とは、受験者が攻撃魔法を発して、試験官が受けるというシンプルなもの。つまり魔法防御を突破すれば勝ちです。
 もちろん他の魔法を用いて突破しても構いません。定石としては物理魔法を用います。石でも降らせてぶつければ、勝てます。」
釈「案外と簡単なんですね。」

じゅえる「ちょっと待て。その試験官が甲冑とか着てたら、ダメなんじゃないか?」
まゆ子「ですよねー。」
釈「あ。物理魔法に対抗するのに、物理的手段を用いるのは可なんですか。」
まゆ子「だって魔法じゃ無いもん。無制限に可です。」

 

じゅえる「神聖魔法の試験は?」
まゆ子「通例では、鍵です。魔法で作られた鍵を開ければクリア。」
釈「それは難しい。」
じゅえる「いちばん難しいんじゃないか?」
まゆ子「まあ、だからこそ一年間が用意されてるわけです。十分研究してね、と。実際この作業を通じて受験者はありとあらゆる魔法の知識を試しますから、これだけで十分な教育効果があります。」
じゅえる「なるほど。課題のクリアがそのまま教育なんだ。」

 

じゅえる「で、物理魔法「絢爛たる魔法会」の試験は?」
まゆ子「謎解きですね。こちらも魔法の知識を総動員して行いますが、物理魔法を使用してでないとクリア出来ないものになってます。
 或る意味、この課題を物理魔法無しで解くのがおすすめなのです。この試験に関しては複数の受験者が協力して行うことも許されます。だって世界中に謎が散らばっていたりするんですから。」

釈「アマゾンの秘境に行って謎を解け、とかもアリですか。」
まゆ子「うん。」
じゅえる「金が掛かるな。」
まゆ子「そりゃ魔法を使って金を稼げばいい。それも物理魔法だ。」
釈「自分のお金、または親の金で解決とかもアリですか?」
まゆ子「どうぞどうぞ。」

じゅえる「それは無理、ということだな。金で解決できるようなシロモノじゃないんだ。」
まゆ子「そりゃー、フェニックスの卵を取ってこい、なんて請け負う人は居ませんからね。」
釈「……、はあ。そりゃ無理だ。」

まゆ子「だが朱美魔法はやってしまう。だから、朱美は禁止です。この課題は複数人が協力していいんだから、朱美は邪魔なのです。」

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釈「で、朱美るんれんさんは物理魔法がダメだから、どうしたのです。」

まゆ子「まず攻撃魔法の試験官の所に行って、試験受けさせてもらいます。物理魔法を使ってクリアすればいいのだけれど、ここは素直に魔法力による攻撃です。」
じゅえる「ふむ。」
まゆ子「全力全開の魔法力のありったけをセンセイにぶつけますが、本来攻撃魔法に向かない朱美の魔力なんか通じるはずがありません。」
釈「ふむふむ。」
まゆ子「だが副作用が酷かった。全力全開の魔力を放出した結果、街全体学校全体が停電やら陥没やらありとあらゆる不具合が起こってしまう。朱美魔法の発動です。
 さすがに試験官のセンセイもこれには叶わぬ。自身に害は及んでいないにしても、被害の責任は彼に有る。降参です。」

じゅえる「はあ。」
釈「普通にクリアしてしまったのですね…。」

 

まゆ子「で、なんか拍子抜けしてしまった朱美は、次に神聖魔法の課題を受けます。これは美鳥が専門にやってるのだけど、なかなか難しい。」
じゅえる「鍵は開かないんだ。」
まゆ子「うん。で、朱美が魔法で開けようとした結果。開かなかった。」
釈「そうですか。」

まゆ子「誰にも開けられなくなってしまう。センセイでもだ。で、これでは試験にならないから「聖なる魔法会」が鍵を排除しようとするが、出来ない。開かないだけでなく動かなくなってしまう。魔法廃棄物になってしまう。」
釈「あらあら。」
まゆ子「高位の神聖魔法士が行っても、これがまたどうにもならない。もうてんやわんやの大騒ぎになってしまい、攻撃魔法士呼んで魔法力で強制的に破壊しようとするも、どうしようもない。」
じゅえる「だめだなそりゃ。」

まゆ子「その内に、美鳥が鍵の開け方を解明する。ちゃんと開けて課題クリア。しかし元の鍵が開いたところで、朱美魔法でむちゃくちゃになった鍵本体はもう手の施しようが無いのです。金も時間も手間も掛かってる大層な魔法鍵なのに。」
釈「ご愁傷さまです。」
まゆ子「ちなみに美鳥が鍵を開ける方法を会得できたのは、高位の神聖魔法士が一生懸命やってるのを見て覚えました。一人ではとても出来ませんでしたとさ。めでたしめでたし。」

 

じゅえる「物理魔法の課題はなんだったんだ?」
まゆ子「これは、この年にだけ課せられた課題で、「朱美魔法の謎を解け」でした。もちろん誰も挑戦しません。だから、後で別の課題に替わります。」
釈「命が惜しいですねえ。」

まゆ子「この年、つまり朱美達が卒業試験を受けた年度の受験生は、朱美達女子が5名、男子4名、前年度留年生男女6名。

 合格者は朱美(攻撃)、美鳥(神聖)、以下略。
 南洋子は(攻撃)を時間切れぎりぎりまでやって試験官の体力切れまでもつれ込みますが、残念。試験は落ちたけれど、みなし判定で正魔法士になれて魔法学校のセンセイになります。
 というか、この年の攻撃魔法の試験官は特別に厳しかったので、通例なら洋子は合格レベルなのです。」

じゅえる「それを、朱美は黙らせちゃったのか。」
釈「ひどい魔法使いだ。」
まゆ子「あと一人、金髪妖精子が、後で替わった物理魔法の課題を一発クリアです。朱美魔法なんかに手を出さなかったのが勝因。他の受験者もこれで半分くらい通った。

 で、マリアさんは辞退です。」

 

じゅえる「つまり考えねばならぬのは、最終試験まで脱落しなかった朱美・美鳥・南洋子・金髪妖精子・マリア・桃パイ、なわけだ。」
まゆ子「脱落一番乗りが、”こけし二号”マルグリットさんです。あと計画では、委員長こと”瓦せんべい” 最年長ミトラ・ウェイウェイ が行方不明になって数ヵ月後朱美に夢の中で助けだされます。」
じゅえる「蠱蛍設定計画は一応進んでいたのか。」

まゆ子「ちなみに金髪妖精子は座敷童です。生徒20人しか居ないのに、マルグリット脱落後も20人居ます。」
釈「人間じゃないんですか?」
まゆ子「というか、だれが人間で無かったのか、もう分かりません。金髪妖精子も、試験時にはすっかり普通の魔法使いです。」

じゅえる「うーむ、謎が残るんだな。」
まゆ子「そうだね。この話ではむしろ、未解決の謎がどんどん積み上がってまったく解決されない、ということにしておこう。」
釈「不親切ですね。」
まゆ子「いや、小説では普通でしょ。」

 

じゅえる「よし考えた。まず朱美以下3名は書く必要は無い。ちゃんと設定が済んでいる。どんな奴か私たちは知っている。」
まゆ子「うん。」
釈「ウエンディズですから。」

じゅえる「一人ひとりをばらばらに設定するのは面倒だ。二三人の組を作ってなんとかしよう。それぞれの物語だ。」
まゆ子「常識的な判断ですね。」

じゅえる「デカイ事件が有ると良い。」
釈「つまりー世界的に大事件が有って、それに関連するエピソードがそれぞれの女の子に有って、彼女たちには物語があって、この学園に集まった。と。」
まゆ子「常道だね。なるほど、最初に大事件を設定しておかないのが間違いであったか。」
釈「なにをしましょう。戦争とかいいかもしれませんが。」

じゅえる「宇宙戦争。」
まゆ子「それならば良いネタが有る。『創始歴1万年』だ。」
釈「あ、ああ。アレですか。」

まゆ子「『創始歴1万年』は十二神方台系1万年のお話。、弥生ちゃん降臨から5000年後だ。

 天空にはゲキと呼ばれる神の種族が戦う姿が映し出され、地上の人は見上げて暮らしている。賭けをしたり、落ちてきた遺物を拾ったり、墜落したUFOを見物に行ったりと忙しい。」
じゅえる「なるほど。常態的に宇宙戦争があって、地上の人は部外者ながら恩恵を受けているんだ。」
まゆ子「世の中になにかある、というのであれば、この位大げさでないとつまらない。」
釈「そうですねえ。でも派手にやり過ぎるとさすがに、嘘っぽいです。」

じゅえる「宇宙、戦争。宇宙での戦争。なるほど、つまりこの時代の人は、天空でなにかすごいことが起きていると知っている。」
まゆ子「そうそう。地上世界には特に影響は出ていないにも関わらず、人心は惑い、常に答えを探している。」
じゅえる「戦争も起きたりするんだ、その影響で。天変地異もそれに関連付けられたりする。だが影響は実際は存在しない。ただ時代は動いており、魔法はその解決の為の一手段と思われる。」

釈「この子達はそれなりに世界をよくしようとする強い意志で魔法学校にやってきた。ということですね。」
じゅえる「うん。」

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まゆ子「よし考えた! 『世界が終わった日の物語』。」

じゅえる「なんだそれは?」
まゆ子「蠱蛍を書く前に書かねばならない小説だ。つまり、朱美達のクラスメートがその世界的災厄をどう感じたかの物語。特別出演として弥生ちゃんとシャクティ・ミスシャクティも出る。」
釈「ほおお。それは特別な物語ですね。」

まゆ子「話は簡単なのだ。今を遡ること数年。というか、これは2008年を起点としての数年前。朱美達が中学生だった頃のお話。もっと具体的には、弥生ちゃん中学三年生で生徒会に恐怖政治を敷いていました。」
じゅえる「…弥生ちゃんはー、高校生になって丸くなったんだったね…。」

まゆ子「弥生ちゃんのお話がいちばん簡単だから、これを例にとって説明しましょう。

 彗星です。地球の近傍をかってない近さで彗星が通り過ぎるというので世界はまったくに終末ムードです。なにせ、3万キロしか離れていないところを通るという。」
釈「そ、それは直撃にほとんど近い話ですよ!」
まゆ子「というわけで、直撃する可能性も捨てきれないとして、世界は終末なのだ。なにせ空を見上げれば彗星がどんと大きくしっぽを引いていて、昼でも見える。」

じゅえる「ふむ。だがそれは結局当たらないんだろ?」
まゆ子「当たりませんよ。当たらなかったのです。が、ただ当たらなかったのではない。当たる瞬間に地球上空に巨大なプラズマが出現して、まるで地球を守るかに腕を広げてかばってくれた。”ファイブリオン”です。」

釈「げばおとで出た、あのオーロラですか。」
じゅえる「あれは人の顔をしたタコみたいな形なんだよね、まっ白のプラズマの。それは、神だ。」
まゆ子「神です。世界中の人が皆理解しました。この星は神様に護られている、と。

 そして生き残った少女達は、魔法学校に集うのです。」

 

じゅえる「構造は分かった。で、弥生ちゃんはどこに出てくる?」

まゆ子「種明かしです。このファイブリオンも彗星も、本来はあり得ない存在であり、しかもこの体験自体が人々の脳裏から急速に忘れ去られてしまいます。まるでいつもの事のように。
 ミスシャクティはこれを弥生ちゃんに教えに来るのです。2008年の未来から。」
じゅえる「なぜそんな必要が有る? 弥生ちゃんがそれをやった訳じゃないんだろ?」

まゆ子「やったのは、ゲキです。ゲキロボです。」

じゅえる「お。」
釈「これはゲキロボに繋がるお話なんですか。」

まゆ子「ゲキロボの最終回てのは、くっちゃりぼろけっとで書いたことあったっけ? あれは、2008年の5月に北海道で始まって、9月の夏休み明けで終わる物語なんだ。
 9月、地球は滅びる。ところであった、が、なんとか助かった。」
じゅえる「ふん。」

まゆ子「宇宙人には低級宇宙人と、高等宇宙人が居ますが、この時来たのは中流宇宙人です。宇宙戦艦15000隻で太陽系を囲み、超光速ビームサーベル戦艦を地球や太陽にぶっ刺して滅ぼそうとします。
 例の如くにその他宇宙人さんは地球防衛を手伝いませんが、ゲキロボで15000隻ことごとくを滅ぼしてしまいます。ミスシャクティの時空戦艦艦隊も防衛に当たりますが、これがしくじった。
 全弾地球への衝突をクリアしたはずなんだけど、ただ一発だけが月に着弾。月質量の38分の1が押し出されて地球に飛び散り、世界中で大変な災害をもたらします。

 これが、破滅です。」
じゅえる「まあ、それは地球絶滅一歩手前という恐ろしい事態だったわけだ。」
釈「月の38分の1てのは、人類が滅びる位のオオゴトでしょうか?」
まゆ子「うーん、知らない。知らないが、この時は多数の犠牲者が出たことになっている。

 で怒ったゲキロボパイロット達は、中流宇宙人の根拠恒星系の超文明都市にぴるまるれれこを投下。恒星間文明は瞬く間に崩壊します。」
じゅえる「……、まー、復讐はセオリーだな。」

まゆ子「もちろん彼女達は災害をそのままに放っては置きません。ゲキロボの因果律修正機能を利用して、多段階で無かったことにします。
 が、ゲキロボの因果律修正機能は、時空改変では無い。過去の事象をまるっきり消去してしまうのではなく、それがあたかもなかったかに偽装してしまう能力なのだ。
 たとえば人死でも、生き返らせるが、死ぬ時期を前後の数年にずらして、でもやっぱり死ぬんだけどそこの時点では死なないことになる。
 その事件は起きなかったのだが、影響に似たような事はこれから、あるいは既に数年前に起きている。
 そういう風に書き換えてしまうんだ。」

釈「時間変更はとてつもなく難しいんでしたね。」
じゅえる「でも、月が崩壊するほどの超巨大な災厄を誤魔化すと、どうなるんだ?」
まゆ子「そこで、彗星ですよ。2008年に起きた宇宙戦争の代わりに、2005年に世界的な規模で彗星衝突騒ぎが起きるのです。そういう風に事象を組み替えました。」
じゅえる「ほお。」
まゆ子「彗星の時点では、なにも起きないし、誰も死なない。だが実際の被害者はさらに何年も遡って、あるいは数年後数十年後に散らして、結局は帳尻を合わせている。」

釈「だいたい理屈は分かりました。が、それで弥生ちゃん先輩はどういう役目を果たすのですか?」
まゆ子「ゲキロボ、の活躍というファクターを抜きにしては、この事象をごまかしきれない。」
じゅえる「だよね。地球の救世主だ。」

まゆ子「そこでゲキロボは自分の代わりに、”ファイブリオン”の象形を天空に描いて、なにかが宇宙で働いていたと人々に認識させます。

 その一方で、ゲキロボ本体が活躍した事実をはるか数千光年にすっ飛ばしてしまいます。弥生ちゃんが関係あるのは、ココ。
 つまり、十二神方台系以下のウェゲ再生計画への参加、をお膳立てしたのは、ゲキロボなのだ。
じゅえる「なんか苦しいぞ。」

まゆ子「なんといいますかね、これは因果律修正のへそなんだよ。事象を置き換えて無かったものに整形し直した結果、どうしてもダメな部分が集中して残ってしまう。無理に無理を重ねているから、これはとんでもない不思議という形でしか処理できない。

 そこで、異星への救世主召喚、というとんでもない事象に組み替えてしまう。もちろんウェゲの再生はまったく関係なく進んでいた話であり、それどころか時代的に合わないのですが、リンクさせる事に成功した。
 まあゲキロボ本体の要望も有った、ということでしょう。ウェゲあるいはゲキ再生は、ゲキロボ本体にとっても悲願であり、それを推し進める無定見生物の運動は常に監視の対象になっており、助力が必要であれば無制限に与えます。
 そこに、まったくにちょうど良い最高の救世主の素材として、蒲生弥生という人が存在する。この人に因果律変更の矛盾エネルギーを吸収処理させるのにも、救世主召喚が最適だった。

 というわけです。」
釈「やっぱり苦しいですよ。」

まゆ子「まあ本編ではそこまで詳しくは書かない。だが、要するにゲキロボのツケを弥生ちゃんが払わされて、それをミスシャクティが時間を越えて伝えに来た。ということです。

 弥生ちゃんのお話はまったくにこのままです。中学校の生徒会室に一人居る弥生ちゃんのところに、女子高生っぽいインド人少女シャクティが訪ねてくる。
 そして二人はおはなしをする。弥生ちゃんは既に、この彗星事件がものすごく怪しい事に気づいていました。だってこんな軌道は計算で出るはずで、天文学者はもっと昔から騒いでいなければならなかったのだ。怪しすぎる。
 で、ミスシャクティは弥生ちゃんに因果律変更のツケを受け持ってもらいたい、と依頼、いやお願いに来る。
 弥生ちゃんは頭の良い子だから、これを受けなければ世界がそのまんまの災害を受けることを理解する。そして快く貧乏くじを引いたのだ。」

じゅえる「なんだ。弥生ちゃんは初めから救世主なんだ。」
釈「そういう事になりますね。」

まゆ子「まあ、何故遠く離れた地球の弥生ちゃんが救世主に選ばれたか、謎でしたから。というか、謎の答えも一応は用意しておいたのです。

 無定見生物が時空を越えて地球で救世主の人材探しを行った痕跡が、実はぴるまるれれこの紋章であり、比留丸神社であって、もう何十年も前の歴史的事象として刻み込まれている、と。
 今回のお話は、以前に考えていたこの設定を流用したものです。」

じゅえる「つまり、廃物利用なわけだな。」
まゆ子「ちょうど良いものがありましたよお。」
釈「そういう事であれば、そういうことで。」

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まゆ子「『世界が終わった日の物語』は、生徒21名+弥生ちゃん+ミスシャクティが出演します。一人一話だと22話になりますが、これはうざい。12話にします。」

じゅえる「何人かは一緒なんだ。」
釈「というか、イタリア組は3人一緒ですよね。」
まゆ子「黒こけし組はイタリア人ということにして考えていたが、謎の国家ロンガリア人、とかでもいいぞ。」
じゅえる「いやそこは素直に、イタリア人にしよう。それにする。決めた。」

まゆ子「じゃあ、黒こけし組は一番手です。彗星騒動の真っ最中に進学の話が決まる、というお話。」
釈「これで、3。」

じゅえる「朱美・美鳥・南洋子は?」
まゆ子「こいつらの内、美鳥は特別です。神社関係の子という設定になっており、幼なじみで美鳥より霊能に溢れた才能の有る子が魔法学校に行かず、美鳥だけが行くというお話があります。」
釈「人数がクリアできませんね。」
まゆ子「あと、朱美ルンレンロン本人は、最終12話です。桃園の誓いをやります。彗星騒ぎは終わり、世界は落ち着きを取り戻し、彼女たちも魔法学校への進学で次のステージに進むという形で、この物語は終わります。」
釈「ふむ。」
まゆ子「南洋子はここでぽんと出してもいいです。というか、ここでこそ出しましょう。朱美本人に突っかかっていくチビです。キャラは立っているのですよ最初から。」
じゅえる「ふむ。つまり、最終話は朱美本人を描く物語、ということだな。」

 

釈「入学する生徒は、日本人は何人?」
まゆ子「朱美達3人に桃パイ。学校が日本に有ることから考えて、6人くらいか。21人中6人、多過ぎはしないだろう。どうせアニメ語で話すんだから、意志の疎通も問題ない。」
じゅえる「あー、この世界はアニメ語が世界共通語として存在するのです。」

釈「人種民族を考えましょう、なんかストライクウィッチーズみたいになって来たけど。
 21人中日本人6人、白人は?」
じゅえる「10人。」

まゆ子「うむ。だがウェゲ系民族というのを投入することが前の設定会で決まっている。十二神方台系とゥワム帝国と、計3名くらいで。」
釈「了解しました。では白人は8名、ウェゲ系3名、ということで、非白人が5名になります。中国人枠が1以上必要でしょうから、」

じゅえる「2。中国人枠は2。ただし、中国人そのものが1で、遊牧民ぽいのが1だ。」
まゆ子「ふむ。満州国から来た人ということにしよう。清朝の末裔です。」
釈「であれば、もうひとりの方は仙人の系統ですね。」
じゅえる「うん。仙人ならば問題ない。」

まゆ子「非白人枠残り3。インドという手は今回むしろ使わない方がよろしいかもしれない。」
じゅえる「じゃあミャンマーだ。ビルマから来た仏教徒だ。」
釈「了解。あとフィリピンから来たシャーマンと、アフリカから来たブードゥー教のシャーマンと。」
まゆ子「どうせ、霊能の才能を持たない連中だからね。」

じゅえる「サイボーグも欲しい。」
まゆ子「いや、それはどうだろう。病人ならば許すがさすがに機械人間は却下だ。」
じゅえる「白人枠から2名出せ。一人は脳改造人間で、もう一人は宇宙人だ。」
釈「では宇宙人にさらわれて生まれた子、ということで。」
まゆ子「あー、あの赤毛の人ね。アレをそのまま年齢落として使うか。」

じゅえる「じゃあ、それアメリカ人ね。脳改造はロシア。脳のほとんどが存在しないにも関わらず、まったく通常の子供と変わらない、いやむしろ頭がよいという不思議な子だ。」
釈「なんか昔そういうの聞いたことがありますよ。脳の中におおきな水が溜まってる部分があり、脳自体は隅っこに追いやられているにも関わらず、何故か知能は高かった。というのですね。」

じゅえる「トランシルバニアから来たシルベスターさん、も欲しいだろう。吸血鬼が。」
釈「吸血鬼はそんなとこに住んでいませんよお。」
まゆ子「定番すぎるぞ、どうする? 吸血鬼は欲しいか?」
じゅえる「期待するんじゃないか、普通の読者様は。」
まゆ子「では、トランシルバニアから来たわけでは無いのに、なぜかトランシルバニアから来たことにされてしまう。見た目吸血鬼っぽい陰気な女の子。」
じゅえる「うん。そんな感じでがちがちのキリスト教徒で。」

釈「残り2名の内、金髪妖精子さんは決定です。北欧、もしくはイギリスもしくはどこでもないけれど白人ぽい。ドルイド使い。」

まゆ子「うーん、そうだなあアメリカ少ないかなあ。

 じゃあこうしよう。アメリカ人増量。日本人枠から一人削って、でも日系人で混血だ。」
じゅえる「ふむ。色っぽい子がいいな。インディアンに関係のある、……インディアンの呪術師で「世界を滅ぼす者」巨魔の封印を、」
まゆ子「あー、そーいうのがーありましたねー。採用です。」

釈「ラストです。オーストラリアか南米ですか。」
まゆ子「ここは意表を衝いて、南極生まれだ。越冬隊員の子だ。」
釈「いや、それはどこの国の子なんですか?」
まゆ子「どこでもいいよ、ノルウェーでもアイスランドでも。生まれは南極で、セカンドインパクトだ。」
じゅえる「あー、それはーどうしよう。でもファイブリオンはオーロラなんだから、オーロラを観測する少女が一人居るのは正しいだろう。」
まゆ子「なるほど一理ある。では南極でオーロラを見る少女だ。」
釈「了解です。」

まゆ子「あと、十二神方台系の黒甲枝の武士の子と、ゥワム帝国の神族の少女。あとウェゲだな。しっぽの有る少女で船の上に住んでいる。」
じゅえる「というか、朱美ルンレンロンは日本人なのか? 混血じゃないのか、赤毛だし。」
まゆ子「あ。赤毛が被る。     ま、いいか。二人くらい。」

まゆ子「ちなみに、南洋子さんとこは武士の家、美鳥の家は神道系、桃パイはお公家です。朱美さんとこは陰陽師でもいいぞ。」
じゅえる「さすがに魔法学校に行こうという連中が、普通の家では困るわな。」

(日本人組)

 ”赤しっぽ” 朱美・ルンレンロン 14才; 本編主人公 赤毛 伝統ある迷惑・朱美魔法の使い手 由緒正しい魔法使い「銀月雫」と呼ばれる 「絢爛たる魔法会」志望→問答無用で加盟
 ”ちび河童” 南洋子 14才; 魔法使いの家系 武家でもあり竹刀を振り回す すぐ突っかかって来るチビ 髪はおかっぱ黒 「勝利の魔法会」志望→卒業後は魔法学校の教師になる
 ”桃パイ” 浜木綿魔雪 14才; 公家の家系 えろい 乳が大きい 温和 →後にエロ魔法専門コースに
 ”乳かべ” 江良美鳥 13才; 神道系の家系の近所で生まれた 背が高い 乳が大きい 飯を食う ぬぼーとしている 「聖なる魔法会」志望→合格・加盟

 ”こっくさん” 神羅エクランド槙 15才; アメリカ人 日系でネイティブアメリカンの呪術師との混血 「世界を滅ぼす者」巨魔の封印の関係者→脱落

(白人組)

 ”黒こけし” マリア・ジンク・テレヴィアン 15才; ラテン系 父は魔法学校の理事 お嬢様 由緒正しい魔法使い「銀月雫」→最終学年まで生き残るも、卒業試験を辞退
 ”こけし2号”マルグリッド・マギリッヂ 15才; ラテン系三人娘の二番 魔法使いの従者の家系→脱落第一番
 ”三号右はね 改め 右はね狐” テレサ・ゼペェロス 14才;ラテン系三人娘 →脱落

 ”金髪妖精子” 14才; 金髪で妖精のような女の子 座敷童 ドルイド使い→合格
 ”ライ麦パン”  13才; ロシア人 脳に巨大な空洞があっても頭賢い へんな電波受信→脱落
 ”ねずみ女” 15才; トランシルバニアから来たと思われるシルバニアさん ほんとはベルギー人 がちがちのキリスト教徒→脱落
 ”しょぼどりる” 14才; アメリカ人 赤毛 宇宙人にさらわれて孕まされて生まれた子と言われている 怯える→脱落
 ”おとこ” 15才; ノルウェー人 南極で生まれた オーロラ観測が趣味 アウトドア最適→脱落

(ウェゲ系)

 ”瓦せんべい” ミトラ・ウェイウェイ 16才; 今期入学最年長 ウェゲ系民族 十二神方台系「ゼビ」出身 黒甲枝の武家出身 委員長格でまとめ役→修行中に行方不明、後に朱美に発見回収されるも、脱落
 ”腹乙女” 14才; ウェゲ系民族「ゥワム帝国」出身 支配階級「神族」のお姫様 偉そう ↑と喧嘩ばかりしている→脱落
 ”ミドリうさぎ” 14才; ウェゲ系民族星方臺「シンドア」出身 しっぽが生えてる→脱落 というか行方不明だが国家上層部の命令で強制退学

(その他組)

 ”蛇でんぱ” 曜・メリョン 13才; 中国人 仙道修行者 →脱落
 ”爺猿” 14才; 満州人 →脱落
 ”てんてん目” 14才; フィリピン出身 シャーマンの家系 →脱落
 ”尻走り”  15才; アフリカ人 ブードゥー教の呪い師の家系 →脱落
 ”本屋臭” 14才; ミャンマー出身 仏教徒 辛気臭い →脱落

※全員死ななかった これが朱美魔法だ。

*******************************

 

・第1話 マリアさんの話。彗星で地球が滅亡するかもしれないという大人の話の中、お父様の勧めで魔法学校に入学するという。お父様の人誑し魔法炸裂。

・第4話? 美鳥が幼なじみの神社の娘と地球滅亡と神様についてお話しする。美鳥のほほんとする。

・第10話? オーロラ娘が天空を観察して、ファイブリオンを記述する。
・第11話 中学生生徒会長弥生ちゃん、ミスシャクティに会う。
・第12話 すべてが終わった次の春。魔法学校を見下ろす丘に、朱美ルンレンロン立つ。南洋子に突っかかられ、美鳥と遭遇して桃園の誓いならぬ桜園の誓いで変な魔法のお茶を飲まされて酔っ払う、
(完)

 

じゅえる「なるほど。終わりは出来てるわけだ。」
釈「まとめ難い人が居ますね。孤立した土地に住む人は、ちょっと大変です。」

まゆ子「しかし、一年は12ヶ月であるから12話にしてみたのだが、循環を考えると13話の方がいいかな?」
釈「12話+エピローグですね。」
じゅえる「尺の問題ではあるが、上の表を見る限りにおいては、第10話はファイブリオンというから、彗星が地球に衝突し損なった話だろ? ならば、説明の為に弥生ちゃん話との間に一話入れるべきではないだろうか。」
釈「はあ。えーとこの場合であれば、10話が衝突当日のお話であり、11話が弥生ちゃん先輩が今回の騒ぎの説明を聞く話ですから、その間に衝突しなかった直後の世界の安堵を描く話が必要な気がしますね。」

じゅえる「まゆこー、衝突は何時? 何月何日?」
まゆ子「ゲキロボで予定してるのが9月の中旬だ。ごまかす為であるし、3年も離れているからぴったんこでなくてもいいよ。」
じゅえる「ぴったんこでもいいわけだ、それならば。うん、9月9日。」
釈「重陽の節句ですね。駄目ですか?」
まゆ子「ゲキロボはもう少し遅いと思う。中秋の名月にビームサーベル戦艦がどんと当たる。」
じゅえる「ほおほお。満月のお月様にどんですね。」

釈「それは目立ちますねえ。了解しました。ではゲキロボは満月十五夜に。彗星は九月九日に。」
まゆ子「了解。」

じゅえる「ということは、弥生ちゃんがミスシャクティの訪問を受けるのは、10月がいい。事件から一ヶ月、大山鳴動して鼠一匹というには派手なファイブリオンだが、人々の関心は徐々に薄らぎ、日常生活に完全に戻っている。」
まゆ子「OK! 弥生ちゃんが十二神方台系に召喚されたのもだいたいそのくらいだ。たぶん10月。帰ってきたのを描いたのが10月だからね。」
釈「最新ウエンディズですから、そこはばっちりです。」
まゆ子「うん、つまりゲキロボで月大破壊が起きるは9月であり、また変更された歴史においてゲキロボ復活が北海道修学旅行で起きるのも9月なわけだ。で、一ヶ月後。うん、いいよお。」

じゅえる「では、その間にもう一話入れなさい。」
まゆ子「了解。……、でもねー、冷静に考えてみると、弥生ちゃんの話は別に書かなくても問題は無いわけだ。」
じゅえる「欲しくなければ外しても問題ないでしょ。そりゃ。」
まゆ子「ぜひとも欲しい。」
釈「ですねえ。」
まゆ子「しかしこのおはなしをどこかに持って行く際には、要らないようにも思う。」
じゅえる「まあ、種明かし編だから欲しくなければ無くてもいいが、単独シリーズにしようと思えばー、無くても大丈夫な構造にしておくか。」

まゆ子「全13話で弥生ちゃん一話。とっぱらったら12話。弥生ちゃん話が11話であり10月だ。とっぱらって収まりが着くようにしておかないといけない。」
じゅえる「それは構造上の問題だ。このお話全てを貫く主人公というか、各話ごとに違うんだけど、共通の存在が必要なんだよ。」

まゆ子「ファイブリオンだ。天空に輝くファイブリオンは元々魔法学校の校章だ。」
釈「そう言われてみればそうでしたね。」
まゆ子「天空にファイブリオンが輝いて、魔法学校の生徒たちは皆入学を改めて決意する。が、それまでは魔法学校? という感じだね。」

じゅえる「つまり12話は11話弥生ちゃんが無くても締めとして機能するものでなければならないんだ。では何を以て当たるかと言えば、もちろんファイブリオンであるところの魔法学校だ。

 まゆ子、ここは一話と同様にマリアさんに活躍してもらうべきではないかい? 魔法学校の理事がパパさんなんだから。」
釈「そうですね、一人のキャラが再登場していけない道理はありません。」

まゆ子「二人がそう言うのなら、そうするか。」

 

・第1話 マリアさんの話。彗星で地球が滅亡するかもしれないという大人の話の中、お父様の勧めで魔法学校に入学するという。お父様の人誑し魔法炸裂。

・第4話? 美鳥が幼なじみの神社の娘と地球滅亡と神様についてお話しする。美鳥のほほんとする。

・第9話? オーロラ娘が天空を観察して、ファイブリオンを記述する。
・第10話 彗星衝突は起きなかった。世界は平静を取り戻す。だが天空に現れた巨大な精霊ファイブリオンは人工衛星によって観測され、全貌が全人類の前に示される。
  人々はアレをこそ神と呼び、それぞれの信仰によって崇めるが、科学者達はがんとして受け入れず、どこの宗教とも関係の無い『ファイブリオン』と命名する。もちろん、魔法学校が掲げる校章が元である。

・第11話 中学生生徒会長弥生ちゃん、ミスシャクティに会う。

・第12話 急速に元に戻る世界。だが魔法学校では今回の事件がなんらかの凄まじい超自然によってもたらされたと理解する。ますます強くなる魔法への期待。
  マリアさんは期待を一心に受けて、魔法学校への入学を決意する。

・第13話 すべてが終わった次の春。魔法学校を見下ろす丘に、朱美ルンレンロン立つ。南洋子に突っかかられ、美鳥と遭遇して桃園の誓いならぬ桜園の誓いで変な魔法のお茶を飲まされて酔っ払う、
(完)

 

まゆ子「あーそれから、一番めんどくさいと思われていたアフリカ娘。これの設定を考えたぞ。難しいのは最初に決めると楽なのだ。」
じゅえる「ふむふむ、ブードゥー教の呪い師であったね。」
まゆ子「アフリカに存在する呪術がブードゥー教を名乗るかはちと疑問であるぞ。アフリカ系呪術をアメリカ大陸で総称して「ブードゥー」と呼んでるんじゃないかな。
 あー、

 少女です。13才です。アフリカの某国の大統領付き呪い師の娘です。大統領と父呪い師は同郷であり、呪いにより大出世して大統領に成れたと理解されています。
 しかしながら、彗星衝突です。世界の終りです。せっかく築いた大統領の権力も利権も、不安に駆られた民衆の暴動により揺さぶられます。
 大統領ゲゲポンスは息子と娘、妻他の身内を一度フランスに逃がしておく事にします。これに少女も同行します。
 少女と大統領の娘は瓜二つ。少なくともフランス外務省では認識出来ないほどに似ています。一種の目眩ましにも使えるかと考えて、この措置になりました。
 もしフランス政府が民衆暴動に際して政府支援を行うとすれば、娘がマスコミ対策などで露出する仕掛けです。一応はゲゲポンスは民主主義の選挙に基づいて選ばれているから、それを暴動で引き下ろすというのは筋違いなのです。民主的ではない。
 まあそんなこんなで、随員として少女はフランスに行きます。

 で、案の定暴動勃発。だがゲゲポンスの家族は莫大な財産と共にフランスに非難しているから、大丈夫。
 しかし反政府側のテロリストによって、ゲゲポンス一家はフランスにおいて爆弾で暗殺されてしまいます。生き残ったのは唯一人、主人公の少女。
 彼女はマスコミに報道され同情を呼び、ゲゲポンス大統領の強い味方となるのです。
 しかし国内情勢はさらに緊迫を増して、ついには武力制圧に乗り出し、国際世論は反転してゲゲポンスを悪魔呼ばわりするようになります。
 少女、どこにも身の置きどころが無い。

 そこに魔法学校からの使者が来て、入学を勧める。呪い師のお父さんの配慮でありました。
 その後ゲゲポンスは…、というところは書きません。ゲキロボで書いてるからね。」

 

じゅえる「ふむ。特に修正をするような箇所が無いな。」
釈「短編としては十分だと思います。ちょっとネタが大きすぎる気もしますが。」
まゆ子「まあ、アフリカ少女というのを魅力的に描くのは、日本ではなかなか難しいのだ。これでかんべんね。」

じゅえる「これはー、5話くらいだな。」
まゆ子「そのくらいになるか。」
じゅえる「欠点が有るとすれば、一人しか出ない。」

じゅえる「このおはなしはだね、地球が舞台だね。」
まゆ子「そりゃそうだ。」
じゅえる「地球には十二神方台系が無い。ゥワム帝国も。」
まゆ子「そりゃそうだ。」
じゅえる「このおはなしにウェゲ系の三人を投入するのは止めよう。」
釈「ほー。」
まゆ子「ほお。一理あるな。本編前に出さなくてもいい人間、というのが居るんだ。
釈「物語としての一貫性を保つ為には、そうです。ただキャラを造形するという点においては不都合ですが、」
まゆ子「そこはなんとでもする。弥生ちゃん話とおんなじ扱いをすればいいんだ。ウェゲ系の三人だけを汽船に乗せて運ぶとかで上等。」
じゅえる「ふむ。では『世界が終わった日の物語』では、ウェゲ系は出ない。OK。」

釈「いっそ朱美さんも出さない方がいいのかもしれません。」
まゆ子「いやそれは、是非とも出したい。」
じゅえる「南洋子をどうするか、の問題とも絡むからな。美鳥は絶対出るんだろ?」
まゆ子「神道系、日本でのおはなしに確実に出ます。というか、その為の企画です。」
じゅえる「南かあ、どうするかなあ。」

 

まゆ子「あとさっき言ってた、共通するキャラとして、金髪妖精子を使いたい。魔法学校の使いとしてどこにでも現れるんだ。」
じゅえる「座敷童だからね。」
釈「それは大丈夫です。ですがー、そうすると案外とその人は造形が薄くなりそうですね。」
じゅえる「謎の女でいいじゃんか。」

まゆ子「あと、桃パイが公家という設定になったから、満州人の女の子を接待するという役になりました。」
 清朝の皇帝の一族に連なる者として、日本に逃げた数名の一家系です。というか、戦争前から日本に居てという感じですね。世が世なら王女様です。」
釈「王女様っぽい人がいっぱいですね。」
じゅえる「ファンタジーにおいてはそれは正義。」

まゆ子「ついでにミャンマーから来た女の子も出迎えに行くということにしよう。二人して空港まで行ってみたら、なんか辛気臭い娘であった。」
じゅえる「うん。」

 

まゆ子「ロシアの脳無し少女とトランシルバニアから来たシルバニアさん。」
じゅえる「ふむ。」
まゆ子「アメリカ人の日系インディアン呪い師と赤毛の宇宙人娘。」

じゅえる「これで何人だ?」
釈「勘定します。

 第一話 マリアさん以下3名。
 第四話 美鳥1名他ゲスト 計1名
 第九話 オーロラ娘1名
 第十三話 朱美美鳥南洋子 初出は2名

 話数不明 アフリカ娘 1名
 話数不明 桃パイ満州皇帝一族ミャンマー娘 計3名
 話数不明 ロシア脳無し少女とトランシルバニアさん 計2名
 話数不明 日系インディアン巨魔と赤毛宇宙人被害者娘 計2名

  話数(追加) フィリピンゴジラ娘 計1名
  話数(追加) 中国仙道娘 バブルの街に暴動が 計1名
  話数(全) 金髪妖精子 魔法学校のお使いをする 計1名

 番外 ウェゲ族豪華汽船に乗る 計3名

18名です。」(21名クリア)

じゅえる「中国人仙道娘と、フィリピンシャーマン娘と、金髪妖精子で、計21名だ。」
まゆ子「金髪妖精子はワイルドカードであるから、話数に制限されない。
 仙道娘が1話、フィリピン娘が1話、か。」

釈「フィリピンシャーマンはどういう話にしましょうか。」
まゆ子「海。」
じゅえる「お!」
釈「いいですねえー。宇宙に皆目が向いている中、海の中になんか居るんですよ。」
じゅえる「クジラか? いや、サメか。それとも未知の、」
まゆ子「ゴジラで行こう。」
じゅえる「よし来たあ!!」
釈「全面的に肯定です。そのくらい不思議でないといけません、この一連のおはなしは。」
まゆ子「よし、ではフィリピンに古くから居る海神様を祀る一族なのだ。ゴジラ様だ。」
じゅえる「OK!」

まゆ子「中国仙道娘は発展著しい中国の都市部。だが発展しすぎて貧富の差が出来て、しかもこの少女は喘息持ちだ。空気悪くて難渋している。そこで、中国を離れて魔法修行ということね。」
釈「特に問題は無いんじゃないでしょうか。」
じゅえる「問題が無さ過ぎて面白くないぞ。」
まゆ子「なんの、バブル崩壊だ。彗星が落ちてくるからとバブルが崩壊するのだ。そこで街が大騒ぎ大混乱で街に火が着く中でのお話。暴動で警察が発砲する騒ぎにもなっている。」

 

釈「あれ、12話ちょうどですよ。」
まゆ子「あれ?」
じゅえる「おや。ちょうどいいじゃないか。」
まゆ子「ちょっとまて、それは案外と困る。まだ調整をしていないのだ。まだ世界が滅亡に向けて突進していく姿というものをだね、考えてないのだ。」
釈「難儀ですね。では調整を始めましょう。」

 

まゆ子「まず物語のへそとなるのが、第9話だ。ここでオーロラを観測していた子が空全体に広がるファイブリオンを見る。ここは動かされない。
 ということは、第8話はもう世界中が彗星パニックに陥っている様を描かねばならない。しかし、ここではもう混乱のピークを過ぎて、人々はただただ息を潜めているという感じが欲しい。
 となると、世界が混乱の坩堝に落ち込んでるのは、第7話までだ。となると、アフリカ娘と仙道娘はここらへんに居なくてはならない。フィリピンゴジラ娘もおそらくはここ。」

じゅえる「美鳥の神道系のおはなしも前だろう。」
釈「1マリア、4美鳥、アフリカ娘、仙道娘、フィリピンゴジラ娘。あと三つです。」
まゆ子「ロシア脳無し少女は、ヨーロッパの街を描写するのに使う。人々がただ神に祈るばかりなのを冷静に見る。反面、トランシルバニアさんは吸血鬼と間違えられて人に追いかけられる。」
じゅえる「ギャグ話か?」

まゆ子「この二人は、…そうねー、魔法学校の入試面接かなにかで呼び集められたということにしよう。で、同室になったのだね。」
釈「ロシア脳無し少女は普通に頭がいいんですよね?」
まゆ子「天才にしてもいいぞ。」
じゅえる「それはどうだろう。理系であるのは良しとしても、天才はちょっとね。魔法学校は才能の有る生徒は要らないんだろ?」
まゆ子「魔法やら超能力の才能だよ。…なるほど、ではこの二人は超能力検査を受けて、まったく反応が出なかったことにしよう。それでパスするんだ。」
釈「病院ですか。」

まゆ子「いや、街だ。病院は次の赤毛宇宙人女でいこう。つまり、謎の研究所に閉じ込められているのだ。で、これまでと違ってなにかスタッフの空気が完全に違うのを察知して、びびっている。
 ところに、インディアン少女がやってくる。これは巨魔の仕業だと。

 ……、うん。これはー、彗星最接近当日の息を潜めているシーンに使おう。うん。」
じゅえる「あらかた決まったかい?」

 

まゆ子「

 ・第1話 マリアさん  ;彗星衝突の噂で混乱する中、魔法が政治の中で活躍する姿を描く。魔法学校入学はちょっとだけ
 ・第2話 桃パイさん  ;魔法学校入学について、かなり詳しい説明
 ・第3話 ロシア脳無し娘 ;魔法学校入学において、魔法的才能が必要ないという事を描写
 ・第4話 アフリカ娘  ;混乱する世相について
 ・第5話 フィリピンゴジラ娘  ;しかしそんなこととは関係なしに自然は動いているのだと
 ・第6話 中国仙道娘  ;もしも世界が滅びなかったら、魔法こそが世界を救う切り札になるのだと期待を繋ぐ
 ・第7話 赤毛宇宙人  ;知恵や科学の力ではなんの役にも立たないという

 ・第8話 美鳥  ;ここは精神力平常心の出番である
 ・第9話 オーロラ娘  ;そして、世界は終わり、また始まる。

 ・第10話 金髪妖精子  ;新しく始まった世界は、元の世界の装いに急速に戻って行くが、しかし決定的な違いがある

 (・第11話 ウェゲの船旅  ;そしてすがるべきは魔法以外に無いと、生徒達は決意する)
 (・番外 弥生ちゃんとミスシャクティ)  ;種明かし

 ・第12話 マリアさん、金髪妖精子と会う。魔法学校入学が滞りなく行われると確認する。  ;全員集合

 ・第13話 翌年春4月 朱美と南洋子と美鳥、桜園の誓い  ;彼女たちが遭遇するのは、こんなバカだ!

釈「第7話入れ替えたんですね。というか4話ですが。」
まゆ子「いや、日本人だからね、ぎゅっと押しつぶされるような感触には一番合うんじゃないかなと。」
じゅえる「ふむ。強いて言えば、南洋子の単独話というのが一個欲しかったな。あいつ普通の日本人娘だから。」

*******************************

 

まゆ子「というわけで各キャラを詰めていきます。

 考えてて思ったのが、桃パイさん回に出る満州族王族の娘。と言っても今はただの金持ちキャラに過ぎませんが、金持ちキャラだ。」
じゅえる「それではわからん。」
まゆ子「おばちゃんぽい13才、というのはどうだろう。なんか知らないけど見切っているような感触があってさばさばしてる。」
釈「うーん、可愛げが無いですね。」

まゆ子「実際可愛くない。あ、顔じゃなくて態度がだ。逆にミャンマーから来た本屋臭い線香臭い娘は可愛い。桃パイはおっぱい。」
じゅえる「取り合わせは問題ないか。」

 

まゆ子「ロシア脳無し娘は、天才少女ではない。が、何故か天才ぽく見える。本人は大迷惑。」
釈「それは面白い設定ですね。困ったときには皆彼女の助言を求めて、でも本人は分からないのですよ。」
じゅえる「なんかキャラが立つな。」

まゆ子「でトランシルバニアさんは、吸血鬼ぽい陰気なベルギー人で、そしてかわいそうな人です。不吉だっていじめられるし。」
釈「うんうん。分かります。」
じゅえる「それでいてクリスチャンなんだろ。吸血鬼が十字架を握りしめてるという絵柄はいいね。」

 

まゆ子「フィリピンゴジラ娘を考えていて思いました。彼女の島に魚潜水艦が浮上するのです。」
釈「でも、時期的にずいぶんと違いますが。…というか、秘密の潜水艦なら何年も前から動いていていいのか。」
じゅえる「まあ、そうだね。なんか変な秘密の勢力が蠢いているというのを描写するのは、悪くないかもしれない。
 で、娘だが特徴は? やっぱシャーマンなの?」
まゆ子「シャーマンの家系に生まれたのに、シャーマンの気がまるっきりありません。物語の最後に金髪妖精子が迎えに来ます。」

じゅえる「ふーむ、何故?」
まゆ子「金髪妖精子の動きはよくわかりませんが、なんらかの秘密のスケジュールが有るみたいです。」
釈「なんか重要な人物なんですよ、皆。」

 

まゆ子「中国仙道娘は、発展する現代中国についていけない喘息娘。若いのになんか古臭い。」
釈「シンプルです。」
まゆ子「ただし、普通の仙術ではなく、神仙術を使います。」
じゅえる「その子は才能が有るんだ?」
まゆ子「何故か有ります。あるのに魔法学校に呼ばれます。不思議ですねえ、というところを秘密に。」

釈「なんか仕掛けが有るわけですね。」
まゆ子「まあぶっちゃけた話、魔法学校で教えてるのは魔法じゃなくて神仙術なわけだよ。最初からやってる人なら、そりゃ出来るんだ。」
じゅえる「ぶっちゃけ過ぎだそれ。」

 

まゆ子「オーロラ娘はぼーっとして天空を眺めている。局地サバイバルの達人。辛抱強いが、強すぎて周囲がついていけない。」
釈「はい。」

 

まゆ子「赤毛アメリカ宇宙人娘は巨乳なのに怯えています。」
じゅえる「例のあの人だな。」

まゆ子「それに対比する日系インディアン呪い師をどうするか、これは考えていません。」
釈「インディアンぽいインディアンはさすがに問題ですね。」
じゅえる「いっそのこと、こちらをメカの天才とかにしておくか。」
まゆ子「いやー、でもメカねえ。メカが出ない物語だからねえ。」
釈「対比する形でキツイ性格にしますか? でもそれだとロシアさんと同じか。」

まゆ子「そうだなー。むしろこのインディアンぽい子は金髪妖精子と同タイプなんじゃないだろうか。」
じゅえる「不思議系?」
まゆ子「いや、何故か色んなことを知っているタイプ。」
釈「仕掛けは?」
まゆ子「だいたい巨魔とかを知っているんだからねえ。うーん…、

 そうだ。一回死にかけて、不思議なものを見た、というのではどうだ。本人自身には霊能力とかは無いけれど、色々知っている。」

じゅえる「その程度で収めておいた方がいいか。じゃあ、彗星の真実も知っている?」
まゆ子「うん。そして、赤毛宇宙人がここから脱出出来ることも知っている。」

釈「結構不思議子ですね。どのくらい先のことまで知っていますか?」
まゆ子「そうだなあ、結構長いぞ。巨魔が出現するまでは知っていることにするか。」
じゅえる「巨魔って何時出るんだ?」
まゆ子「不明。2012年にマヤ暦が終わるということで出現するのだから、2012年までは知っている。2008年にゲキロボ発動でその3年前がこのお話の舞台だから、ずいぶんと知っている事になるな。」

釈「約10年ですかあ。それはすごいアドバンテージですね。でもその人は、魔法使い落第するんでしょ。」
まゆ子「全部の課程を終了しなかっただけ、だよ。使えるものは覚えて、ちゃんと無事に帰りました。というか、そうすると死ぬと知ってるから途中で辞めた。くらいかな。」
じゅえる「ふむ。未来が見通せる少女、というわけだ。一人くらいは必要だろう。」

 

まゆ子「ウェゲ族の娘です。あー一応決まってるところでは、十二神方台系ゼビから来る黒甲枝の娘はお武家様というところで、しかも最年長15才。
 ゥワム帝国からは親族のお姫様でゲジゲジ、もしくはトカゲをペットに飼っている。
 で、十六神_シンドラから来るのは、しっぽの生えた真正ウェゲ。ただしこの物語ではしっぽがあればどうという特典は無い。」

じゅえる「しっぽが有るということは、なにか意味が有るのかな、物語上で。」
まゆ子「無い。だが作ってもいいぞ。」
釈「超能力は誰も持っていないんですね?」
まゆ子「無い。強いていうならば、神族のお姫様はお父様が神族であるから、普通人ではない。すごい洞察力が有るのを見て、こうあるべきだと考えている。」
釈「それは神族の超能力ですか?」
まゆ子「いや、つまりは長年に渡る神族の文化ということだな。長期間熟成された政治スキルだよ。」

じゅえる「ほおほお。ということは、拙くてもそれに倣うお姫様は、やっぱ違うんだね。」
まゆ子「違うね。洞察力が優れたとは言えないものの、先読みをして見せる。普通人ではないのは間違いない。ただそれは超能力でも霊能力でも無い。」
釈「つまり努力人なんですね。」
まゆ子「とんでもない勉強家と思ってください。」

じゅえる「しっぽさんはどんな特性があるのだ。」
まゆ子「あー、ぼーっとするタイプはたくさん居るけれど、この子はその極めつけという感じでいきましょう。しかしながら無能ではない。そうだね、これを理系キャラいや数学キャラにしてもいいか。」
じゅえる「つまり、沈黙の天才ということだね。」
まゆ子「懸念がひとつ。わたしゃ数学があんま特異じゃない。」
釈「書き手の問題、ですね。それはまあなんとかしましょう。なんの為にチートがありますか。」
じゅえる「そこはなんとかしてみせるぞ。任せろ。」

まゆ子「で、黒甲枝のお嬢様は喧嘩ぱやいというかすぐ刃物を抜く。性格は温厚で人付き合いも良く面倒見の良い親切な人ですが、迷いが無く正義を貫きます。」
じゅえる「うん、一番危険なタイプだ。」

 

まゆ子「で、案外と難しいのがラテン系三人娘。マリアさんは名門魔法使いの血統で銀月雫であるからプライドが高い。高いが、自分自身はまったく魔法に向いていないと思っている。というか、不思議なことが全くできない。
 で、それでいながら父親は地味に魔法を使いまくり、政界に確実に効果を及ぼしている。でも彼でさえ真の魔法使いである三大魔法会の会員には成れなかったのだ。
 魔法学校というものの重みを一番知るのが、マリアという子だ。プライドと不安・無力が薄紙で釣り合っているような、まあ思春期の女の子だ。」
じゅえる「背景までもちゃんと有るんだ。さすが朱美のカウンターパートだな。」

釈「お付きの二人は、でもあんまり設定が無いんですよね。」
まゆ子「マルグリットさんとテレサさんだが、まあこの三人はあとでイタリア人名簿を見て名前を変更する予定です。

 でマルグリットさんは脱落第一号です。彼女はマリアさんのお供一号ですが、そして力関係でも知能でも素質でも全てにおいてマリアさんに勝てません。だから嬉々として付き従っていたんだけれど、その鬱憤が魔法修行で噴出して暴走し、脱落します。」
釈「であれば、この段階では普通に良いお友達、子分として描いておきましょう。」

まゆ子「テレサさんは、ひとつ下でありさほどマリアさんの影響力がありません。そうだなー、魔法使い政治家であるマリアさんのお父さんのスタッフの娘、という感じだな。」
じゅえる「親しくはないんだ。」
まゆ子「うーん、そうだな。魔法学校に入学するということで、初めて引き合わされたというくらいか。マリアとマルグリットの関係に入り込めず、メイド的な存在ということにしよう。」
じゅえる「メイドキャラか。」
まゆ子「あくまでもそんな位置づけということで。」
釈「でもメイドキャラにしましょう。」
まゆ子「……、う、うん。」

 

じゅえる「金髪妖精子は、けっきょく何者なのだ?」
まゆ子「考えてない。」
じゅえる「かんがえろよお。」
まゆ子「いやこの人は座敷童なんだよ。だからオールマイティで活躍する。しかし、魔法修行を進めている内に、なんとなく人間になってしまうんだ。いつの間にか聖性が抜け落ちてしまう。普通人になってしまう。
 この時期はまだまだ妖精子だよ。人間ばなれした存在だ。」
釈「難しいですねえ。」

 

 

まゆ子「さて、で肝心の朱美ルンレンロンさんだ。江良美鳥も南洋子も、設定し直さないといけない。

 ここで一番問題なのが、南洋子だ。なんでこいつ魔法学校なんかに行くのだ?」
じゅえる「いや、だってあんた考えたでしょ。」
まゆ子「いや普通に考えて、こいつ魔法関係ないし要らない性格だ。というか、魔法の家にこんな子は生まれない。」
釈「はあ。南さんはさっぱりとしたきっちりした性格ですからねえ。お姉さんもいらっしゃるし。」

まゆ子「だが考えようによってはこいつが一番面白い。なにせこいつ普通人だ。日本の女子中学生の典型のような子だよ。」

じゅえる「ここは私に任せろ。つまり、南洋子のお父さんは魔法会社の社員なのだ。」
まゆ子「まほうかいしゃ〜?」
釈「魔法って、会社組織で運営されているのですか?」
まゆ子「いや、どうなんだろう。魔法学校があるくらいだから、魔法株式会社が有ったって不思議じゃないが、どういう業態なのだ?」

じゅえる「ともかく、普通のサラリーマンの家庭に生まれたのが南洋子なのだ。で、お姉さんが南嶌子だ。弓道をやっている。」
まゆ子「ふむ。魔法株式会社というのは、考えると面白いな。というか、魔法学校というものが存在するからには、それを成り立たせる為の組織が幾重にも必要なんだ。だから魔法会社の100くらいは普通にあり得るのが当然。」
釈「たしかに。世界的秘密組織ですから、ダミー会社くらいなんぼでも必要なのですよ。」

じゅえる「こういうところではどうだ? 本来魔法学校のスカウトは姉の嶌子の方に来た。だが嶌子さんは拒否。代わって興味を示したのは妹の洋子だった。」
まゆ子「ふうむ、面白いな。では洋子は魔法学校について質問するから、お父さんがなんかてきとーなことを言ってどんどん興味を掻き立てるんだ。」
釈「あー、ハハハ。南さんはそういう人ですねえ。」
じゅえる「ともかく、南洋子はそうだが、姉は冷たい目で観ている。いまどき魔法なんてと。この人も変わった人で、世間一般が彗星で大騒ぎしているのにまったく動じない肝の座った人なのだ。」

 

まゆ子「あー、それは面白いから、美鳥の回に続く第8.5話にしよう。いまいち日本の普通の社会における魔法学校の位置づけがあやふやだったから、ここでいいでしょう。
 そうすれば、最終話で朱美さんと洋子さんが遭遇して面白く描けます。」
釈「そうですね。やっぱ主要メンバーには特別にページを割かねばなりません。」

 

まゆ子「で、るんれんさんだ。こいつは確実に最終回にだけしか出してやらない。だが朱美魔法なる単語は至る所でお目にかかれる。だから魔法学校の入学生は皆朱美と聞くとびっくりする。」
じゅえる「朱美るんれんさんは、由緒正しい銀月雫なんだよ。ということは親もばりばりの魔法使いなのだね。」
まゆ子「いやそこはちょっと考えドコロだ。ハリーポッター的に死んでても構わんぞ。」
釈「そういう暗さは朱美さんには似合わないな。どうしましょう、3人の明美シスターズは出ませんか。」

まゆ子「出すかい?」
じゅえる「どうやって出す?」
釈「それこそが朱美魔法ではないですかね。」

じゅえる「なるほど。街を歩いていて、自分にそっくりな人にばったりと出くわす。というのはよくお話であるのだが、三人というのはさすがに無い。」
釈「しかし、朱美魔法というからにはなにか起きないと困ります。なにが起きますか。」
まゆ子「そこは、ほれ、ガソリン満載のトレーラーが突っ込んできて、大爆発して、でもぴんぴんしてる。」
じゅえる「だが、朱美自身はそこでちいさな怪我をしてしまう。自分よりも深刻な被害を受けたはずの明美一号が、不死鳥のごとくになにひとつ問題なく泣きべそをかきながら出てくるのだ。
 それは恐ろしい魔法だよ。」

まゆ子「うむ。それは朱美本人に魔法を自覚させるのに十分な奇跡だな。」

釈「では朱美さんのご両親は、」
じゅえる「お仕事で世界中を飛び回っている、とうことで。職業は「トラブルコンサルタント」「トラブルクリエイター」とかで。」
釈「トラブルクリエイターはさすがに、ちょっと、なんですか、嫌な職業ですねえ。」
まゆ子「まあ、職業「魔法使い」よりはマシだ。空港とかで聞かれた時も「トラブルコンサルタント」で通じるしね。」
釈「で、結局トラブルクリエイターてのは何をするんですか?」
まゆ子「なんかプロジェクトが行き詰ってにっちもさっちも行かなくなった時に現れて、どうしようもなく物事を破壊するのがお仕事。泣きながら処理した後は、なんだかよく分からないけれど、全てが魔法のようにうまくいっているのだ。」
じゅえる「なんだか恐ろしい魔法だなあ。」

まゆ子「で、両親共に居ないから朱美はお祖母ちゃんと一緒に暮らしている。だがばあちゃんが子供の子守もアキター、てので朱美は全寮制の魔法学校に入る事になる。
 朱美本人は魔法? て感じで、ばあちゃんの言う「うちは魔法使いの家系だよ」てのにもまったくぴんと来なかったのだが。」
じゅえる「明美三姉妹に遭遇して、でトレーラー事故に遭うんだ。で、魔法の力を実感する。」
釈「そんなところでしょう。で、4月桜舞い散る丘で南洋子と江良美鳥と出会い、姉妹の契を結ぶのです。」

 

まゆ子「

 ・第1話 マリアさん・テレサさん・マルグリットさん  ;ヨーロッパたぶんイタリア
 ・第2話 桃パイさん・満州国王女・ミャンマー娘  ;東京
 ・第3話 ロシア脳無し娘・トランシルバニアさん ;パリ
 ・第4話 アフリカ娘  ;パリ 後に第3話のメンバーと合流する
 ・第5話 フィリピンゴジラ娘  ;フィリピン離島
 ・第6話 中国仙道娘  ;中国上海かそこらの発展する巨大都市
 ・第7話 赤毛宇宙人・日系インディアン呪い師巨魔  ;アメリカ エリア55にある隔離実験施設
 ・第8話 美鳥  ;日本 どこかの神社とその近辺の田舎
 ・第9話 南洋子 ;日本 東京ではない地方都市
 ・第10話 オーロラ娘  ;北極の近くのオーロラの見える土地(夏だから、南極にした方がいいかも)
 ・第11話 金髪妖精子  ;ニューヨークかロンドンか、ともかく魔法協会の有る都市
 (・第11話 黒甲枝・神族・ウェゲ  ;太平洋上を行く豪華客船
 (・番外 弥生ちゃんとミスシャクティ)  ;日本 門代地区
 ・第12話 全員集合  ;成田空港 金髪妖精子と桃パイさんがお出迎え
 ・第13話 朱美  ;日本 朱美の家 →翌年春4月魔法学校が見える丘 

 

 

【抜質・蠱蛍合同設定その2】2011/02/07

 

まゆ子「抜質・蠱蛍合同設定その2〜。
 まず事件を決めます!」

じゅえる「ちょっとまて、もう事件か。キャラのが先だろう。」
釈「いくらなんでも飛ばし過ぎです。」

まゆ子「いや、実はあれからちとスランプに陥ってなかなか先に進めなくなったので考えた。なにが問題なのか。
 結果驚くべき真実に突き当たる。
 賢明なる読者様ならば御記憶であろう。我々は最終回1日前まで設定を泥縄でこしらえていたのだ!!!」

じゅえる「…………、あー。」
釈「うう、それを言われると一言もありません…。」
まゆ子「つまり厳密なる設定などというものはどーでもいいのだ。いやむしろ、泥縄で設定をどんどんこしらえていく事こそ創作の醍醐味。ならば直撃でいくべきだ。」
じゅえる「なるほど、と同意せねばなるまいな。成功例に倣うのだから。」
釈「そこで事件ですか。なるほど、事件を先にでっち上げれば、どんな設定が必要かいやでも焙り出されますからね。
 で、どっちから行きます? 抜質ですか?」

まゆ子「蠱蛍は基本学園内で終始する物語だ。後になって学校を出て世界を飛び回り実習する予定はあるけれど、すくなくとも4年生になってからだな。遠い未来のお話だ。」
じゅえる「抜質でいこう。
 で、     抜質って浅見光彦パクリなんだから、セコい殺人事件が関の山だな。」
まゆ子「国家的陰謀の国際事件に巻き込まれないといかんだろ、それは。」
釈「のっけから浅見光彦オミットですよ。」

 

じゅえる「まあ、まあいいでしょう。つまりマキアリィさんは国家的大事件に巻き込まれるに相応しい資格を持っているのです。」
まゆ子「ま、最初から予定して居ましたけどね。お友達、というか先輩にヒィキタイタンさんが居て、彼は現在国会議員として若手政治家として核心的な存在になっているのです。
 そのヒィキタイタンさんのお力で、一介の私立探偵マキアリィさんはなにかと無茶を通してもらいます。代償として国家的大事件に巻き込まれる。」
じゅえる「なんだ。最初から決まってたんだ。」
釈「というか、そこが浅見光彦リスペクトなんですね。お兄様が警察庁の偉いさんという代りに、国会議員ヒィキタイタンさんを予定して居た、と。」
じゅえる「しかし警察庁の幹部という割と動かし難いキャラと違って、国会議員であればそれは当然ゴタゴタに巻き込まれる。ふむ、単にパクっただけなのに、当然の論理を経てまったく違うものに変化しちゃうんだ。」
まゆ子「だから言ったでしょ。始めはパクリで上等なのだ。」

まゆ子「さて。でその国家的事件だ。現代日本じゃないんだからもちろんのこと軍部が絡んで来る。」
じゅえる「戦争はしていないのだろ、現在は?」
まゆ子「していない、とい言いたい所だが慢性的に衝突している所は有る。海の上に無人方台というのがありまして、そこは資源確保の為に近隣方台から軍隊やら企業やらが上陸しています。縄張り争いで衝突は日常茶飯事です。
 ただこの世界ピルマリウムの共通する認識として、それら無人方台は自国に併合する事はできないし領土としての宣言を他国が認めたりもしないのです。」
釈「そりゃまたどうして?」
まゆ子「国、というのは一つの方台上に留まるものだ。という共通の概念があるのです。言うなれば、神によって定められ与えられた領土なのです。神聖不可侵かつ変更が許されないものとして領土の境界線は絶対的な信仰の対象ですらあります。」
じゅえる「まあ、故に方台と呼ぶのだよね。その土地の人間専用に作られた土地、ということで。」

釈「では無人方台の領有権はどうなってるんです?」
まゆ子「領有という概念が無いのです。利用権、採掘権、居住権とかですね。或る意味さばさばしていますよ。自分の国ではないのだから、永久所有は許されない。」
じゅえる「しかし結局は軍事力がものを言うんだろ、それは。」
まゆ子「それがねえ、無人方台というものは無人である理由がありまして、なかなか人の住むに値しないものなんですよ。資源確保の為であっても、大量の労働者を大規模なバックアップで投入しなくてはならない。町はあるけれど自給自足は非常に困難。」
じゅえる「気象的なもの?」
まゆ子「もある。風土病であったり怪獣だったり、放射性物質だったりします。」
釈「長居をすると死んじゃうんですね。」

じゅえる「とはいえ、なんとかしなくちゃいけない。」
まゆ子「うん。故に管理委員会というのが作られ、総督というのが居る。無人方台における全権を任される存在だ。そこを利用しようとする国はそれぞれ総督を出して、彼らが協議をするのが委員会だね。」
釈「でも4国しか無いんでしょ? 抜質では。」
まゆ子「十二神方台系=ゼビ方台の近隣の国が4国というだけで、それ以遠にもちゃんと国はあります。が、近隣でないとなかなか投資も開発もできません。なにせこの世界には石油が無い。石炭動力船が未だに主流です。それほど遠くにはいかない。」

じゅえる「じゃあ実質近くの国から占拠されるんだ。というか、それは普通だな。」
釈「現実的に普通ですね。でも、それを領土とは認めない仕組みというのがあるわけですよ。資源は勿論偏在するわけで、近くの無人方台に無い資源を獲得するには遠くまで行かなければならないし、そこが余所の国に占拠されていれば取り返す必要がある。」
じゅえる「なるほど。つまりどちらさまにも都合の良い理屈が、「方台は一国に一個」という原則ですか。」
まゆ子「というわけで、総督と呼ばれるヒトは驚くほど遠くからも来て居たりする。近隣4国だけじゃないのだ。聞いた事も無い国から来て居たりする。」
じゅえる「ふむ、面白いな。」
釈「事件の臭いがしますね。」

まゆ子「ちなみにゼビ方台では石炭取れません。タコ炭は燃やすのに勿体なさ過ぎるから禁止です。近くの無人方台から掘って来ますから、死活問題ですよ。」
じゅえる「そのくらいピンチな方がよろしい。」

まゆ子「ちなみにゼビ方台全土は電化されてます。自動車もバッテリーで動くくらいです。」
釈「石炭火力でですか?! それは凄い煙ですね公害ですよ。」
まゆ子「いや、毒地の真ん中の旧都ギジジットから流れ出る運河が、何故か満ち引きをするのだ。潮力発電で内陸部のかなりの部分で発電が可能だったりする。
 科学者の話だと、ゼビ方台のど真ん中に海に続く深い穴が有り、外海の潮差がそのまま反映されて運河に満ち引きを発生させているのだそうな。」
じゅえる「嘘だな。」
釈「嘘ですね。」

まゆ子「まあそういうわけで、電気は有るのだ。石炭火力発電はあんまり無い。こともないが、沿岸部の工業地帯で主流なのだ。
 物語の中心舞台となるノゲ・ベイスラは潮差発電の恩恵をモロに受けて居ます。
 あと、中心となるギジジットは電力有り余ってますから、アルミ精練をしています。」
釈「他の方台にはそんな便利なエネルギー源は有るのですか?」
まゆ子「色々な形態でエネルギーは供給されています。風力やら地熱やら、山岳国家のバシャラタンでは水力発電ですよ。」
じゅえる「そこは、うまいこと設計されてるわけだな?」
まゆ子「不思議な力が働いているのです!」

 

釈「それで、国家的陰謀はそこらへんから出て来るわけですね?」
まゆ子「最終的にはそこにまで持って行きたいところだが、ちょっと話が大き過ぎるかな?」
じゅえる「1巻で出て来る話ではないな。えーと、若手新進気鋭の国会議員ヒィキタイタン氏が巻き込まれる事件 その1、が欲しいわけだ。」
まゆ子「そうだね。シリーズが続くかどうかは別として、1巻目の区切りとしてちょうどいい規模の事件が欲しい。」
釈「暗殺未遂事件とかでは?」
まゆ子「いや、それは早過ぎる。」
じゅえる「その前にヒィキタイタン氏が不死身であるところを描写して後に、そういう深刻な暗殺未遂事件は持って来るべきだ。」
釈「そうですねえ。ノゲ・ベイスラは暗黒犯罪都市という話ですが、ヤクザの手に余る大事件、という感じでそれを持って来ましょう。必然的に、それよりはかなりレベルの小さな事件となります。」
まゆ子「とはいうものの、ヒーローであるところのマキアリィ探偵のカッコヨサを存分に描写する活劇的な事件がいいのです。」

じゅえる「だいたい見えて来た。でも1巻てどのくらいの規模? 原稿用紙枚数で。」
まゆ子「サルボモーターと同規模で、8回300枚て感じで。」
釈「ふむ。まさに1巻分ですね。しかし、であればさほど大袈裟な事件は仕込めません。なにせ第一巻は登場人物の紹介と配置に枚数を取られます。なにより明るく楽しい、読者様をひき付ける描写が必要です。」
まゆ子「まず客を呼ぶのが先決だ。故に、事件そのものに割く余裕が無い。」

じゅえる「そうだねえ、とりあえず第一巻いうことで、相手にするのはヤクザだな。」
釈「妥当ですね。ですがー、ヤクザをどの程度に敵にするかです。さすがに全面抗争をするほどマキアリィ氏はバカでは無いでしょう。」
まゆ子「うん。というか、割とヤクザと仲はいいのだ。つまりヤクザにもいいヤクザと悪いヤクザがあることにして、極悪さの対比を付ける演出がですね。」
じゅえる「定番だね。」
釈「極道ですね。新興ヤクザと古い昔カタギのヤクザとの抗争ですか。美少女がヤクザの跡目を継ぐ定番過ぎる定番ですか。」
じゅえる「さすがにそれは止めよう。」

まゆ子「8回300枚、どうせ400くらいになるだろうけれど、あまりちょこちょこ外に出るのはまずいかな?」

 

じゅえる「ノゲ・ベイスラで固定する必要はないのだが、国会て何処だっけ? ヒィキタイタン氏の居る。」
まゆ子「あーどうしよー、首都はどこかなあー。」
釈「まったく新しい都市を考えますか? 毒地内部にごっそりと空間がありますよ。」
まゆ子「いや、古都の趣が欲しい。」
じゅえる「浅見光彦サスペンスだから。」

釈「では、カプタニアで、」
まゆ子「カプタニアは方台全土での首都としては狭過ぎる。元が関所で細い街道にあるから。カプタニアの西側にあるルルントカプタニアではどうだろう。あそこはカプタニアの後背の商業都市として昔から栄えている。」
じゅえる「いいでしょう。でもそこは結構山の中だな。行政府としては問題があるんじゃないか?」
釈「立法府があるということで、行政府はまた別のところに置きましょう。」
まゆ子「ふむ。」

 

じゅえる「歴史的には首都の変遷はどうなってるんだ?」
まゆ子「あー、青晶蜥王国時代は一貫してデュータム点付近が首都です。が、この時代は方台が多国主義を取っているから、各地に王都というのがあります。名目上の首都がデュータム点傍のテキュですね。
 で、民衆王国による統一が実現した後に、テキュから遷都されます。方台のど真ん中にあるヌケミンドルに新たに街を作ります。文字どおりのど真ん中。」
釈「ヌケミンドルにはカプタニア街道を守る防衛戦があったんですが、」
まゆ子「それ全部取っ払って都市にしました。南北を貫くスプリタ街道と西を繋ぐカプタニア街道、東に伸びる毒地街道の交点に当たります。場所としてはよい。
 が、割を食ったのがノゲ・ベイスラですね。スプリタ街道の主要地としての繁栄を奪われて、犯罪暗黒都市化です。」
釈「いいじゃないですか、丁度。で、カプタニア街道を通って立法府がルルントカプタニアに有る。何故行政府と離れていますか?」
まゆ子「そりゃ独裁制によって立法府の権限が脅かされた歴史的事実があるから、行政府と離れた所に拠点を構える必要が有るのです。そういう経緯もおいおい考えましょう。」

じゅえる「いいんじゃないかな。主人公の拠点がノゲ・ベイスラ、首都行政府が北のヌケミンドル。立法府で有力な協力者であるヒィキタイタン氏が居るのがルルントカプタニア。」
釈「いい感じですね。近くて。ほとんど首都圏ですよ。」
まゆ子「感覚的には静岡くらいかな?」
じゅえる「ふむ。なるほど。」
釈「してみると、デュータム点は上方ですね。関西っぽい役回りでしょお。」

じゅえる「物語が是非とも抑えて置かねばならない主要都市は?」
まゆ子「首都ヌケミンドル、立法府ルルントカプタニア、旧神都ギジジット、前世紀の首都ヌケミンドル、南軍都イローエント、無法都市タコリティ、西海岸ミアカプテイ。東側のギジシップはさすがに廃れているぞ。廃都ギジシップだな。」

じゅえる「西側がすこし弱いな。げばると処女で練り込みが足りなかった。」
釈「なにか特別な歴史的事実をここのところに用意しておきましょう。戦争とか。」
まゆ子「よし、ではゥワムの艦隊が西側に攻めてきて、十二神方台系唯一の本土侵攻があったことにしよう。」
釈「いいですね、戦場跡。」
じゅえる「浪漫溢れるな。」

 

釈「では具体的に事件を決めます。」
まゆ子「はい! 設定変更です。ネコ喋ることにしました。主人公がクワンパになったからです。女の子とネコ、いいですね。」
じゅえる「まあ、そうだな。」
まゆ子「とはいうものの、カニ巫女なんぞには喋ってくれません。ネコは喋るものと決まっていますが、実際に喋っているところを見たことが無い。というのがこの世界の普通のヒトです。」
釈「そりゃまた、どうして。」
まゆ子「民衆王国運動で統一国家が出来た後に、国民を統制する暗黒時代が一時期ありまして、そこでべらべら喋るネコを全土で抹殺しようとしました。」
釈「うわ。」
じゅえる「それ以来、ネコはめったに喋らなくなったのか。酷い話だな。」

まゆ子「というわけで、ネコの長者ヒッポドス弓レアルが出ます。彼女の登場後にネコはようやっとクワンパにちょっとだけ喋ってくれるようになります。」
釈「つまり、ネコ話が用意されてるんですね。それが1話。」
じゅえる「そうだねえ、それに1話用いるのはやぶさかではないが、第一話ではない。まず第一話はヒーローとしてのマキアリィ氏のカッコ良さをバンと押し出さねば。」
まゆ子「だね。であれば、セコい事件を力づくで解決、が望ましい。知性、使う?」
釈「要りません。」
じゅえる「要らない。」
まゆ子「じゃあバカ探偵ということで。」

釈「第一話をテストから取って来ればいいじゃないですか。ど田舎でオバケ退治ですよ。浅見光彦サスペンスぽいところを出しましょう。」
じゅえる「でも枚数食うぞソレ。」
釈「いいんです。」
まゆ子「いいのか。それじゃあー、8話構成ということで、最初の3話で解決しよう。
 で、ノゲ・ベイスラに帰ってきてネコ話1話やって、後半4話で〆る。」
じゅえる「そんなもんでいいのか。まあ、いいか。」

釈「後半はヤクザ出ますよね?」
まゆ子「出るだろうね。犯罪暗黒都市ノゲ・ベイスラの暗部をどんと描こう。明るく。」
じゅえる「矛盾するが、まあいいか。ここは定番で新聞社の女カメラマンがヤクザが絡む事件を撮影しちゃって、という。」
まゆ子「方向性はいいが、さすがに定番過ぎる。普通の女子高生がカメラでなんか撮っちゃって、それを新聞社に売ろうとしたら、誰かに脅されるという感じで。」

 

釈「根性の悪い女子高生だな。でも、この世界高校ってあるんですか?」
まゆ子「……、どうしよう?」
じゅえる「マテマテ。女子高生は要るだろう。」
まゆ子「でもクワンパ高校出てない設定だ。」
釈「そうなんですか。」

まゆ子「小学校から中学に行って、カニ巫女になる修行を2年ほどして、カニ巫女にも採用の定員というのがあるから待機中で事務員をやっています。」
じゅえる「そうか、カニ巫女専門学校というのがあるんだ。」
まゆ子「いやカニ神殿ですがね。げばると処女の設定流用で、クワンパは元は不良少女であったところ、カニ巫女に棒でぶたれて改心です。」
釈「中学生の時に叩かれたのですね。」
じゅえる「ヤクザに食い物にされそうになったのだね。非処女決定か?」
まゆ子「いや、そこはおいおい考えて行こう。」

じゅえる「小中学校はある。専門学校はある。高等学校と大学は?」
まゆ子「日本とまったくおんなじてのは面白くない。というか、十二神方台系は外国から学制の知識を得ていない影響されていないから、日本と同じ形になるのはおかしい。」
釈「義務教育は?」
まゆ子「小学校までです。6年間だね。」
じゅえる「12歳で働きに出るのも有りか。」
まゆ子「丁稚奉公あります!」
じゅえる「ふむ。ではクワンパ中学というのは、割と恵まれているのか?」

まゆ子「普通、ですね。義務教育という概念すらありませんから、小学校は無いと困るという事になっていて、中学校出ていないとバカという話になります。」
釈「義務教育は法律で制定されてないのですか。」
まゆ子「社会道徳的通念として、子供は読み書きできるものだという風習があり、小学校というのがあります。これは共同体が運営する学校で授業料も共同体が出します。寺小屋デラックスと思って下さい。
 中学校からは国が定めた教育施設になります。
 うーんそうだねー、要するに小学校は幼稚園保育所の延長上の存在だ。託児所で読み書き教えてると考えてくれ。親が働く間、子供を預かるついでに読み書きを教える。」
釈「なるほど。邪魔なんですね早い話が。」
じゅえる「じゃあ、中学校から始めて教育施設になるんだ。」
まゆ子「だから、教育を受けたと呼べるのは中学からです。で、中学にも二種類ありまして、短期3年長期6年。高等学校に分類されるのが、6年制の方です。」

釈「クワンパは3年の方ですね。」
まゆ子「15才で卒業してカニ巫女2年の修行をしました。その後巫女募集定員の問題で浪人中、遊んでるわけにもいかないから事務員をやってます。19才ですね。」
じゅえる「年度初めは何月?」
まゆ子「あー、3月くらいかなあ。」

釈「で、弓レアルは6年制の高等学校の女学生。」
まゆ子「いや、卒業して大学の予備門に通っているということにしよう。」
じゅえる「なんだその予備門てのは。予備校?」
まゆ子「ここは徴兵制の問題なのだ。男子にはもちろん徴兵制というのがあり、2年間の兵役が有る。現在戦争中ではないからそんなに大変ではないが、有る。

 で、通例では6年制の高校を出た18才で入隊が標準だ。で、帰って来ると勉強忘れてるだろう、ということで予備門というのがありそこで大学受験の勉強をするのだ。
 だから大学生は皆20才を間違いなく越えている。逆に言うと、大学入学資格兵役終了だったりする。」
じゅえる「ふーん、大変だねえ。社会のデメリットというのは無いのかい?」
まゆ子「無いぞ。というか、今戦争してないのだ。兵隊の訓練ももちろんするのだが、基本的に暇だよ。だから機械兵器の保守とかの技術訓練をしていたりする。ていの良い専門学校だ。」
釈「タダで技術が学べるわけですか! それは凄い。」

まゆ子「なんといいますか、ゼビ方台国では現在工業力の発展が急務なのです。また軍事力というのも船に乗って海外に出かけて行くというものですから、何よりも機械力が強くないと勝てないと政府も軍も民間も、皆了解している。だから、訓練だ。銃を撃つ訓練よりも、動力機械の整備や運用、自動車や動力船の運転といった事に重点が置かれている。」
じゅえる「でもカネ掛るぞ。」
まゆ子「全員がやらなくてもいいさ、徴兵といっても。」
釈「ああ、完全全員じゃないんですか。」

まゆ子「或る意味、それなりに優秀な者だけが選ばれる。身体強健にして知性に問題の無い優良な男子。これが徴兵の条件だ。バカ禁止。」
じゅえる「な、なるほど。」
まゆ子「というわけで、6年制の男子学生はほぼ間違いなく徴兵される。帰って来たら予備門に入って大学に行って、エリート様だ。
 これは困る。兵隊に行かない一般民衆は、軍隊帰りのエリート様に対して頭が上がらない。文武両道で彼らが文句なく国家の支配者なのだよ。」
じゅえる「れっきとした格差社会が生まれるわけだ。
 ……、ということは、マキアリィ氏とヒィキタイタン氏も。」
まゆ子「そうだなあ。徴兵で同じ部隊の先輩後輩、という所にするか。しかも彼らは戦闘経験が有る。」
釈「おお!」
まゆ子「敵はー、国籍不明の謎の海軍であった。被害も甚大で当時ニュースにも盛んに報道された。
 その時の英雄が、ヒィキタイタン氏だ。その活躍を脇で支えたのが、マキアリィ。こんなとこでどうだ!」
釈「かんぺきです!」
じゅえる「おお、それは国際犯罪のネタに繋ぐのにパーフェクトだね。」

 

釈「でも3年制の中学を出た男子はどうなるのです? 負け組ですか?」
まゆ子「まあ15才で卒業、就職。18才時に徴兵検査で甲種合格となれば、兵役に行きます。ただし技術訓練はなく歩兵ですね。これで2年。」
じゅえる「ふむ。でも兵役が無いと大学受験できないのだろ。彼らには、その資格は。」
まゆ子「発生しますが、もう一つ職業としての軍人になる資格も発生します。軍人になれます。」
釈「ほお。」
まゆ子「兵役に行く以外にも、3年制卒業→軍学校4年という道もあります。軍大学もあります。」

釈「兵役に行かないと大学には行けないんですか?」
まゆ子「大学には行けません。予備門には行けます。予備門で抜群の成績を納めると、推薦入学の道があります。」
じゅえる「なんだ。あるんじゃないか。」
まゆ子「いや、6年制高校出たとしても、徴兵検査で落ちるヒトは居ますからね。でも代償としてそりゃ頭良くないとね。でもそんなに抜群なんて出来ないから、そういうヒト向けの大学みたいなもの、もあります。私立でお金掛ります。」
じゅえる「うう、徴兵逃れだ。」
まゆ子「しかも、男女共学です。兵役条件がある大学は国立で男子のみです。」

釈「それに入るには、カネを積めばいいわけですか。」
まゆ子「はい。」
じゅえる「あっさり言ってのけるのだな。やはり格差社会か。」
まゆ子「逆だ。ダブル格差社会なのだ。つまり、まーなんというか士農工商といった差別があると思って下さい。国立大学によって生じる格差と、財力で生じる格差とはベクトルが別なのです。」
釈「つまり、兵役によって生じる格差は財力によって生じるものをキャンセルする効果がある、わけですね。」
まゆ子「政策的にそうなっています。そしてもう一つ、古い大学はすべて私立であり、国立ではない方に分類されます。」
じゅえる「そうか、国策大学への入学資格が兵役のクリアなんだ。」

釈「どっちがいいんですか? なにか分からなくなりました。」
まゆ子「それは歴史的な経緯がありますからねえ。つまり、ネコが殺された時に大学も殺されそうになったのです。で、必死の抵抗で生き残った結果、政府の側は自らの勢力となる新たなる大学を国策で発足させた。そいうわけだ。」
じゅえる「ふむふむ。つまりゼビ方台では民間の資本による学問の秩序が厳然としてあり、国家政府はそれに対抗する策を必要とした、わけだ。」
まゆ子「ここで理解して頂かねばならないのは、日本という国の学制は余所から移植されたものだ、てことです。大学が自然発生した国とは成り立ちが違う。」
釈「なるほど。」

 

じゅえる「この流れから行くと、マキアリィ氏は後者の大学の出身だな。」
まゆ子「ハハハ、必然的にそうなるのだな。ただし、兵役はちゃんと行ってるぞ。ただ男子ばかりの大学は厭だという軟派な奴だ。」
釈「ヒィキタイタン氏もそうですね。」
まゆ子「そうなるかな。ということは、国策大学から出た国会議員や官僚からは、ヒィキタイタン氏は目の敵にされているのですね。」
釈「敵は幾らでも居る、というわけです。」
じゅえる「ヒィキタイタン氏と旧知の仲であるマキアリィ氏が、しがない探偵業をやってるのも、そこらへんに由来するわけだ。」
まゆ子「なるほど。警察に入っても弾き出されるしかない展開ですね。」

じゅえる「ということは、ヤクザにもそいう別が有るんだ。歴史的に成立した違いから、社会に対する立場も違う。」
釈「そういうことになりますかね。」
まゆ子「ま、古いのと新しいのと、極最近出来たのと、とありますかね。ノゲ・ベイスラに居るのは比較的新しいヤクザです。」
じゅえる「古いヤクザってのは?」
まゆ子「十二神信仰に関係する勢力ですね。げばると処女で明美に殴られた。」
釈「ああ。ヤクザとはいうものの、お祭りに関係したりヒトを集めたりする人達ですね。」
じゅえる「それは自然発生的なヤクザだ。土着ヤクザだな。」
まゆ子「こう言ってはなんですが、カニ神官巫女もこの分類に入れてもまったく問題ありません。」
釈「…ひと、ぶっ叩きますからね。」

まゆ子「新しいヤクザというのは、青晶蜥時代後期の民衆王国運動に付随して生まれた武装勢力です。つまり権力の私兵ですね。もちろん現在はそんなものの存在を政府は認めませんが、成立がそういうのだからマフィア的に存在します。ノゲ・ベイスラは民衆王国運動発祥地の一つですから、それは居ます。」
じゅえる「なんか独立心だけはいやというほど高そうな連中だな。」
釈「誰に縛られるのも嫌なんですね。」

まゆ子「最新ヤクザはもっぱら経済に関係する犯罪組織です。外国との貿易が始って無人方台への進出も盛んになると、山師みたいな連中が多数生まれる。彼らの多くは起業して成功も納めたけれど、もちろん夢破れて零落れた者も多い。主に港湾や海外を根城として、密貿易を取り仕切る。また軍隊の下働きとして酷い真似もする連中です。」
じゅえる「うむ、悪そうな連中だ。」
釈「悪い奴等ですよ。外国人も含みますか?」
まゆ子「含まない。連中にとって外国人は商売仇だ。またゼビ方台には外国人はほとんど居ない。それはマキアリィ氏が海外に行った時のネタにしよう。」

 

じゅえる「つまり、マキアリィ氏が強いのは二番目のヤクザだね。」
まゆ子「というよりは、野球拳団に属するマキアリィ氏は、カニ巫女までもが一番目のヤクザに含めるとしたら、立派な一番目ヤクザです。」
釈「乱暴者は皆ヤクザ、という理屈ですか。」
まゆ子「まあそういうことで、秘密結社的性格の強い二番目ヤクザを、第一巻ではやっつけてカッコイイ所を見せるのです。」
釈「女子高生がカメラで撮影した殺人現場、とかでいいですかね。」

じゅえる「……、いや、そこはアレだ。第一話はシーツをかぶったオバケであれば、それは心霊写真を撮った! と雑誌に売りに行ったら殺人事件だった、という話ね。」
まゆ子「おお!」
釈「おお!」

 

【蠱螢・抜質! 共通設定話 その1】 2011/1/10

 

まゆ子「成功例に倣って次のシリーズを始めるのが適当であろうと考えるよ。」
じゅえる「異議は無いな。で?」
まゆ子「げばると処女はまずいい加減な設定から初めて、ちょいと書いてみてダメだった。設定組み直して「弓レアル」を書いてみて、いけそうだったから本番に入った。」
釈「そうでしたねえ。初期設定は明美一号先輩が大活躍ですよ。」

 

まゆ子「次に手を出すシリーズを考えよう。私は「蠱螢(仮)」が良いと思うが、探偵物「抜質!」もなかなかに魅力的だ。」
じゅえる「その二つはなんとなくカラーが似ているのだな。」
釈「擬似現代物ですからね。」

まゆ子「なんとかしてくれ。」

じゅえる「つまり二つの世界観を一つにまとめろ、ということか。必然的にー、十二神方台系を棄てる事になるぞ。」
まゆ子「構わない。」
釈「なるほど。たしかに「抜質!」は十二神方台系である必然性は薄いといえなくもないです。要するに固有名詞の問題ですから。」
じゅえる「そういう考え方があるか。なるほど、「ガモウヤヨイチャン」を「ぴるまるれれこ」に置き換えてもいいわけだ。というか、本来そうするべきなのだ。」

まゆ子「なるほどなるほど。古代に救世主の女の子が舞い降りた世界、というわけだな。「げばると処女」を知ってる人は、これそうじゃん?と感じるが、知らない人に無理して教える必要も無い。」
釈「極めて当たり前ですが、シリーズは独立した世界観を持つ方がよいのです。親切です。」

じゅえる「ということは、「蠱螢(仮)」と「抜質」が同じ世界である必要も無い、か。似ているけれど違う世界。コンパチの別世界でいいわけだ。」
まゆ子「コスト削減に役立ちます。」
釈「なるほど。要するに固有名詞を取っ替えれば同じじゃん、というわけですね。」

 

まゆ子「まず地形的束縛から解放されよう。天河十二神がゲキ再生の為に作った人工大陸、という設定を放棄します。」

じゅえる「普通の地球型惑星の、普通の大陸のどこか、でいいかな。しかし完全に十二神方台系を棄てるのも面白くない。」
釈「四角い世界、というのはあまりありませんが、無いというわけでも無いですからね。ここらへんから始めましょうか。」
まゆ子「うん。

 だが「蠱螢」は一応日本が舞台になる。」

じゅえる「まあ、名前が江良美鳥、南洋子、に明美三号だからね。」
釈「異世界でありながら日本がある、そういうことですね。ご都合主義ではありますが、希というわけでもないですか。」
まゆ子「普通だね。」
じゅえる「ふつうだね。」

釈「了解しました。「蠱螢」は日本であり、「抜質」は日本が無い。そういう事にしましょう。

 でも、近いですか?」
じゅえる「同じ惑星上のー、どうしようか?」
まゆ子「十二神方台系の東に日本は有る。そういうことで。」
じゅえる「中国なのかい?」
まゆ子「中国に相当する国が別にどっかにー、うーん、南の方にあることにするか。」

釈「不自然ですよ。地形を同じにするのもやめましょう。「蠱螢」では地球の地形、「抜質」ではあの惑星の地形。て、…十二神方台系の有る惑星の名前ってなんでしたっけ?」
まゆ子「決めてない。強いて言うなら「ぴるまりうむ」かな。」
じゅえる「悪くないな。救世主「ぴるまるれれこ」が出現したわけなんだから。」

釈「惑星名「ぴるまりうむ」ですか。ですが、「地球」や「大地」に相当する代名詞が欲しいです。そこに住んでる人にとっては、唯一の母なる大地ですから。」
まゆ子「地球という単語は、地球が丸いということが理解されてからのものだよな。日本語で地球が表れたのは何時だ?」
じゅえる「南蛮人がカステラを持って来た頃だろう。」
釈「そうですね。信長に伴天連が教えたとかいう話もありますから。」
まゆ子「それまで日本人は地球を地球とは呼ばなかった、わけだ。」
釈「そうなりますかね。」

じゅえる「天下、かな。」
まゆ子「なるほど、天地だな。」
釈「ちたま、というのがありましたね。昔。」
まゆ子「悪くない。」

じゅえる「天珠、というのはどうだろう。理屈としては、昔天地と呼んでいたものを、惑星が丸いという理解を得た上で「天珠」と呼ぶようになったと。」

 

釈「グッドです。「天珠」こと「ぴるまりうむ」ですね。でも何故「ぴるまりうむ」なんですか?」
まゆ子「昔、1500年ほど前に「ぴるまるれれこ」と呼ばれる少女が惑星に降り立ち、全世界で歴史を書き換えるほどの大活躍をして回った。世界中を救世して回ったのだ。で、大航海時代の後に世界中の伝説を調べると、どこの世界にも「ぴるまるれれこ」が居る。

 故に、この世界は「ぴるまるれれこ」により救われた聖なる土地「ぴるまりうむ」なのだ。もちろんその呼び方を拒む者も少なくはない。」

釈「意固地な人ですね。」
じゅえる「そこはイデオロギー的対立の、つまり無神論的な立場に立つ人だよ。神の使いなんかが実在したわけがない。というこった。」
まゆ子「現実に物語の舞台となる「十二神方台系」では、「ぴるまりうむ」という呼び名はマイナーということにしよう。「天珠」が主で、世界的にそういう呼び名にしようという運動があるから、「ぴるまりうむ」も日常に使っている。」
じゅえる「英語でいう「ユニバース」に近いものだな。」
釈「了解です。」

じゅえる「方台自体はなんと呼ぼう。「方台」でいいかい?」
まゆ子「うーん、方台で慣れてるけど、「方台国」でいいか?」

釈「ちょっと色気が足りませんねえ。……ゼビ方台では?」
じゅえる「なんだそれ?」
釈「十二神信仰だと今は蝉蛾神ゼビの世になるわけですよ。だからゼビ神の方台でゼビ方台。」

まゆ子「その前はチューラウ方台なわけだ。うん、なるほど呼び易いし分かりやすいか。」
じゅえる「なるほどねえ。十二神信仰をすべて捨てなくてもいいか。」

 

じゅえる「「蠱螢」においてはゼビ方台はどうなんだろう。」

まゆ子「あーここはそうだねえ、うーん、南極にくっついている国、ということにするか。氷の大地に大針葉樹林帯があって、方台がくっついている。オーストラリアに相当する国だ。ゼビ国と呼んでいる。」
釈「そんなものですかね。」
じゅえる「でもゼビ国とオーストラリアは全然イメージが違うだろ。」
まゆ子「感覚としてはだねえ、アトランティス人の国がちゃんとありますよ、という感じだね。古くて科学技術も発達して独自の文明を築いている、どこからも移民されたわけじゃない国。」

じゅえる「そんな国は無いな。」

釈「アトランティスですからね。じゃあムー大陸も考えましょう。」
まゆ子「ふむ。ではゼビ国と民族的には同じ「ウェゲ族」であるが、独自の発達を遂げたムー国があるのだ。」

じゅえる「五色の姓と言ってだね、赤青黄色白黒と五代民族があり、その青に相当するのだ。」
釈「なんてあれでしたっけ、その説。聞いたことありますよ。」

まゆ子「ムーというのはいくらなんでもアレだから、ゥワム帝国ということにしよう。ゼビ国よりも好戦的なのだ。」
じゅえる「「蠱螢」なのだから、魔法大国ということにしよう。」
まゆ子「なるほど、独自の魔法体系を持つのだね。」
釈「となれば、ゼビ国の魔法は頭に虫をのっける聖蟲魔法というものですね。」

まゆ子「なるほど。ではゼビとゥワム国では天河十二神信仰が根付いており、聖蟲魔法を使う。ということにしよう。頭に虫をのっけると超能力が使えるのだ。」

 

じゅえる「了解。学園のメンバーに両方の国からの留学生が居ることにしよう。」

まゆ子「ゼビ国は民主国家ではあるが、ゥワム国は違う。神権国家ということにするかな?」
じゅえる「ギィール神族みたいのが未だに有る、ということではどうだろうか。神族支配が続いているのだ。」

釈「魔法帝国ですか。しかし、さすがに日本が有る世界でそれはなかなか難しいですよ。」
まゆ子「貴族政治が未だに残存する非常に希な国、ということかな。」
じゅえる「ゥワム神族による神族政治というわけだ。ふーむそうだねえ、ではこうしよう。ゥワム国では宗教が禁じられており、神族以外が神様を拝むのは禁止なのだ。民衆は神族を拝み、神族が神を拝む。」
まゆ子「なるほど妥当だ。」

釈「政治もそうなっているわけですね。」
じゅえる「うん。つまり民衆は地元の神族を拝み、彼が地元の代表である議員なのだ。地域神だな。もちろん議会があって神族が対等の権利と立場で討議して国家を運営する。
 神族の代表が神聖王だがー、名前なんにしよう?」
まゆ子「帝国なんだから聖帝でいいだろ。」

じゅえる「うん。では聖帝の下に一般人による内閣があって、神族が決定した法や政策を実行する。いわば宮廷奴隷なのだ。」
釈「なかなか変わった制度ですねえ。」

まゆ子「ゥワム神族にも種類はあって、テューク・ギィール・クワアット・チューラウ・ゼビなのだな。社会の進展によって神族制度にも重層的な積み重ねがあるのだ。5人の救世主による王朝が存在する。」

じゅえる「そんなもんかね。ゼビ国ではもう滅びた神族制度がゥワム国では色濃く残るというわけだ。」
まゆ子「ふむ。こういうのではどうかな。今は十二神信仰ではゼビの世。であるから、ゥワム神族は現在ゼビの使いと呼ばれる新しい神族を民衆の中から見出そうとしているのだ。それが聖なる定めなのだ。」
釈「もう少し煮詰めた方がいいですね。でも神族にこの時代に果たさねばならぬ責務がある、というのは良いと考えます。」

 

じゅえる「蠱螢学園の生徒2名が決定、と。ゥワム国からは神族のお姫様。ゼビ国からはー、」
釈「巫女でしょう。十二神信仰の巫女です。ゥワム国には神官巫女は居ないのですよ。」
まゆ子「ふむ。カニ巫女だ。」
じゅえる「ぶったたく奴か。」

釈「いやそこはもうちょっと考えましょうよ。蝉蛾巫女でもいいですよ、ゼビの世ですから。」

まゆ子「「ぴるまるれれこ」つまり弥生ちゃんによる救世主伝説は、ゼビとゥワム両国に共通で伝わるものとして、他の国には来て居ない。そういうことでいいかな?」
じゅえる「ふむ。日本には弥生ちゃんは来て居ない。ふむ。」
釈「そうですね。ぴるまるれれこは十二神信仰の女神様なのです。」

じゅえる「ゼビとゥワムは仲はいいのかい?」
まゆ子「同種の国は仲悪いものだと相場は決まっている。」
釈「なるほど。戦争をした時もあるわけです。」

まゆ子「ここが地球の歴史に組み入れるのに重要な点でね。ヨーロッパ白人による大航海時代と侵略の歴史において、両国はちゃんと独立を保っているのだ。
 ゼビ国は鎖国で防衛したが、ゥワム国は逆襲に出た。海賊船を神族自らが率いて大海戦だ。南太平洋の覇権は譲らなかったのだ。
 だがその海賊によってゼビ国も随分と迷惑した。白人とゥワムと両方から攻められたのだ。」

じゅえる「そりゃ歪むわな。」
まゆ子「だがまあ、ちゃんと防衛できたからいいとしよう。しかし恨みは骨髄まで残るのだ。ゼビから見たらゥワムは野蛮な海賊であるし、ゥワムから見れば白人の駆逐に協力しなかった裏切り者なのだ。」
じゅえる「なんだかな。」
釈「それはー、…まあ分からないでもないですかね。なるほど歴史の視点とは面白いですね。」

じゅえる「そうだ、この世界、オーストラリアはあるのかい? ゼビ国がその代りをするとさっき言ったけど。」
まゆ子「無しにするか?」
釈「いや、無ければ無いで困るでしょう。」
まゆ子「オーストラリアはムー大陸とちょうど大きさが合うなあ。いい感じだなあ。」

釈「であれば、ゥワム国をオーストラリアとして、ゼビ国は別の所に、そうですねー南アメリカとオーストラリアの間に南極から突き出している国、という事にしますか。」
じゅえる「そんなもんかな。つまり「ウェゲ民族」は文明的なアボリジニなんだ。」
まゆ子「ふむ。なるほど。」
釈「なるほど。」

 

じゅえる「「抜質」に戻るが、こちらでもゥワムを使っていいかな?」
まゆ子「ゥワムは良いが、日本は無しだ。」
釈「地形はあくまで異なるわけですね。」

まゆ子「「抜質」には十六神星方臺も存在するからだ。そうだね、「抜質」世界では外国といえばこの二つしかないと思って下さい。それ以外の国も有るけれど、行き来は難しい。なにせこちらの海にはゴジラが出ますから。」
釈「そうなんですか!」
まゆ子「いや、ちゃんと歴史年表に書いたはずだぞ。方台の海軍がゴジラにやられるって。」

じゅえる「西に十六神星方臺、東にゥワム。ということか。」
まゆ子「そういうことです。あと南の方にももう一個国を作っておこう。「抜質」の世界は狭いのだ、科学技術も原子力は無いし。」
釈「アインシュタインは生れなかったんですか。」
まゆ子「放射性物質が無いのだよ。というかね、こちらにはプラズマによる世界の封鎖が起こっており、飛行機も高度を上げられないのだ。ジェット機ではなくレシプロ水上機しか飛べないのだ。」
釈「天河十二神による往来妨害ですね。」
じゅえる「こちらは「げばおと」の続きなわけだ。」

まゆ子「そんなわけで、海外旅行なんて夢のまた夢だ。外人や留学生なんてめったに遭遇しないぞ。」
釈「あくまでも「抜質」では閉鎖した国家内での出来事なのですね。」

まゆ子「とはいうものの、ゥワムとの間の戦争はちゃんと起こっている。また聖山の洞窟から聖蟲を戴く軍隊が襲って来たことも有る。げばおと年表の通りだ。」
じゅえる「しかしながら、こちらの世界観では魔法は一切存在しない。のだね?」
まゆ子「のだよ。」

 

釈「南の国はなんて名前にしましょう。シャンバラとか?」
じゅえる「フダラクに弥生ちゃんは行くと言ってたな。」
まゆ子「ゥワムがムー大陸、十六神星方臺がインド、と来ればシャンバラみたいな感じのチベット仏教的な感じの国にしますかね。」
釈「シャンバラでいきますか。」
じゅえる「シャンブローでいこう。」

まゆ子「それは宇宙の怪物だ。バシャラタンということで。タン国だよ。」

じゅえる「タジキスタンとかアフガニスタンとかと同じ、タン国だね。」
釈「なるほど。中東っぽくしますか。」
まゆ子「イスラム抜きチベット仏教ぽいタン国だ。」

釈「了解です。でも、深く追求しますか?」
まゆ子「有るということだけ了解しとけばいいさ。そうだね、「蠱蛍」にはそこからの生徒もちゃんと来ることにしておこう。」
じゅえる「チベット仏教的な少女だな。」

まゆ子「うーんそうだねー、まったく縁が無いのもなんだからー、バシャラタンからは緑茶が来るということにしておこう。方台でも輸入品のお茶が飲めるようになっているのだ。」
釈「ヤムナム茶は無しですか。」
まゆ子「いや、ヤムナムにはカフェインが入ってないからね。ついでに十六神星方臺からは香辛料が来る。カレーが食べられる。」
釈「おお!」
じゅえる「ゥワムからは?」
まゆ子「お茶、カレーとくれば、チョコだな。チョコレートとコーヒーが来るのだ。ちなみにコーヒーは飲みません、豆を噛みます。」
釈「おおお!」
じゅえる「なるほど、それはおおおおだ。」

釈「でも方台からは何を輸出するんですか? それらに匹敵するものがありますか?」
まゆ子「醤油だよ。味の素だよ。スルメだよ。弥生ちゃんの置き土産を輸出しますよ。」
じゅえる「おおおおお。」
釈「おおおおお。」

 

釈「ということは、「蠱螢」においてゼビ国からの留学生は、虫の粉をご飯に振りかけて食べたりするわけですか?」
じゅえる「そうなんじゃないかな。虫の粉は調味料なんだから。」
まゆ子「ふむ、そこらへんはエスニックな感触でよろしいな。物凄い臭いのするゲルタの乾物を焼いたり、トカゲの目刺しを食べたり。」
じゅえる「で、ゥワムの奴に馬鹿にされるわけですか。なるほど、そんなもんだなあ。」

釈「しかし、ゥワムの人は何を食べているのでしょうか?」
まゆ子「ふうむ、基本的にはゼビと同じだと思うんだがね。醤油が無いくらいで。」
じゅえる「民族が共通するからには、文化も共通で食文化も一緒だよね?」
まゆ子「基本的にはね。ただゥワムの方が広いからとんでもない化物みたいな家畜が居るとしてもいいかな。」
釈「牛より大きなカエル、というのはどうでしょう。」
じゅえる「いや、それ常食には出来ないでしょ。」

まゆ子「ゲルタに匹敵するような、というかゼビの食文化の特色はゲルタだな。臭い乾物がすべての根幹に有るのだ。一方ゥワムの方にはそれは無い。……なんか無い?出汁の出るような食品?」
じゅえる「タコが陸地を走ってる、とかでいいんじゃないかな。」
釈「いやいくらなんでもそれは変でしょう。ゥワムはゼビよりもさらに広いから、海とは離れているんですよ。兎ですかね、今年はウサギ年だし。」

じゅえる「アロエとかはどうだろう。砂漠にサボテンみたいに生えて居て、トゲの着いた皮を剥ぐと、プルンと出て来る。」
まゆ子「それでいこう。サボテン常食だ。」
釈「テキーラですね。」
まゆ子「まさにサボテン酒だ。」
じゅえる「ぐぐったら、テキーラはサボテンじゃないぞ。竜舌蘭だぞ。ちょっと違うぞ。でもサボテン食ってるな、メキシコあたりだと。」
まゆ子「そこはまたなんか特殊なサボテンが居る事にしよう。足が生えて歩くとか。」
釈「ヒト型サボテンですよ。」

じゅえる「そういえば、モンゴルには魚居ないから、神様の使いということになってたんだっけ。朝昇龍が来日時に魚怖がったとか聞いたぞ。」
釈「海から遠いとそんなものですかねえ。」
まゆ子「ふむ。ではゥワムでは魚は特別な存在ということで、憧れの対象にしよう。神の使いだ。だから毎日ゲルタを食べているゼビは許せないのだ。」
じゅえる「でもゥワムは海賊とも言ったな。どっちなんだ。」
まゆ子「そりゃー、神族は魚を食うのだ。神様の一族だから。広いゥワムには海の民と内陸の民が居て、そりゃ生態が違うんだよ。」
釈「苦しいですが、まあそういうわけです。」

じゅえる「ゲルタは許しても、イカは許せない。ということにしておこう。タコ神テュークの眷属であるイカを食いやがって、と。」
釈「そちらの方がいいですね。」
まゆ子「ゼビの民は救世主ぴるまるれれこにイカのスルメをお供えするのだ。だがゥワムではそれは仰天の風俗ということだな。」

 

釈「「「蠱螢」は学園ものですよね。学生ですよね。」
まゆ子「中高一貫校だよ。」
釈「学園ものには恋愛要素が欠くべからざるものとしてビルトインされますよね。」
じゅえる「やらにゃいかんだろうね。」
釈「とうぜん、国境を越えた愛というのが芽生えるわけですよ。」

まゆ子「なるほど。それは考慮しなくちゃいかんな。国同士で仲が悪いとかはあるだろう。ロミオとジュリエットみたいな感じでね。」
じゅえる「ほほお、なるほど。それは地理的考察に入れとかないと。で、ゼビとゥワムとでは結婚有りかい?」

まゆ子「あーまず魔法学校は恋愛禁止なんだが、そういうのは愛の障害としてはむしろアクセントとして効果的であるわけで、当然民族的宗教的な障壁も愛の前には無力と。」
釈「そうですよね、それは当然そうですよね。」
じゅえる「よし分かった! ゼビとゥワムは恋愛絶対禁止だ。それが正しい在り方だ。」

まゆ子「まあ、神族の結婚はなにかとややこしいしね。ゼビというより平民だから禁止て感じかな。」
釈「へいみん、いいですね平民。」
じゅえる「うむばっちりだ。となれば、神族と平民とが禁断の鯉に落ちた場合、ゥワムを脱出してゼビに逃げる、とかあるわけだよ。ゼビは民衆王国だから。」
まゆ子「うむうむ。それもあって両国は仲が悪いんだ。」

釈「その設定はばっちり使えます。そうですね、ゥワムの留学生はその脱出したカップルの子供ということにしましょう。それがいいです。それが正解です。」
まゆ子「最初から本国に受入れられないボヘミアンなわけだね。なるほど。なるほど。」
じゅえる「そういう生まれではあるものの、だからこそ神族の血を引く自分がこのような扱いをされると怒ってるのだよ。両親に対して。」
釈「いいですね、それは絶対にいいですね。」
まゆ子「わかったわかった。じゃあゥワムの留学生はそういうことにしておこう。」

 

まゆ子「次に考えるのは世界情勢かな。歴史世界史だ。」
釈「「蠱蛍」の場合現実の世界史をなぞるということで良いのですよね。」

じゅえる「ゼビとゥワムが世界史に登場するのは何時頃だ? やっぱ大航海時代か。」

まゆ子「ふむ。原始人が行けたところをその後の人間が行けなかったというのも不自然なのだが、1500年代だろうかねやっぱり。」
釈「オーストラリアに相当するゥワムは人も多くて文明も発達して、独自に海洋に進出するという風になるはずですよね。基本は。」
じゅえる「インドとの交易があってしかるべきだと思うんだが、ダメなのかな。」

まゆ子「基本的な設定。ゥワム大陸はオーストラリアよりもずっと西側にあり、ニューギニアからは離れている。つまり島伝いには行けない。」
釈「海流の関係でそちら側に行くのはなかなか困難ということにしておきましょう。」
じゅえる「自然の結界があるわけだな。」

まゆ子「ヨーロッパ人が訪れたのは1600年代の終り。まずゥワムが発見されるが、南アメリカのように征服はできない。何故ならばここには独自の発明で火薬があるからだ。
 西暦1000年頃に「星の世界から訪れた救世主」ぴるまるれれこにより、様々な科学技術が伝えられて居たのだ。ゼビ・ゥワムどちらも火薬を有しまずまずの金属加工技術を持っている。製紙技術も伝えられた。無いのは外洋航海技術ぐらいなものだ。

 というわけで、ヨーロッパ人はぴるまるれれこは西欧人が海で難破してこちらに流れ着いた、と考える。伝説の王プレスター・ジョンの国とか言ってみたりする。」
じゅえる「ふむふむ。救世主ぴるまるれれことやらは随分な影響力だなあハハハ。」
釈「世界史改編ですねえハハハ。」

まゆ子「ゼビはもっと新しい。というかこの頃はまだチューラウ期方台なんだけど、ゥワムの伝説にある東方の国にヨーロッパ人が行ってみると、たしかに別の国があった。
 色々調べた結果、ここが南極と接触する唯一の国だと判明する。北方大樹林帯ならぬ南方大樹林帯と氷河を経て、南極大陸に接続してるんだ。」

じゅえる「まゆこー、南極って極環流という海流があってそれが寒い原因じゃなかったっけ?」
釈「南アメリカと接続すると海流の関係で南極が暖かくなってパラダイスになる、とかでしたっけ。」
まゆ子「そういう深いことは考えない。十二神方台系は温いのだ。」
釈「了解しました。」

じゅえる「まあいいか。じゃあなんだ、ゼビ国は南極を領有するんだ?」
まゆ子「あーそうだねー、国際連盟が出来た頃はそういう主張をしていたが退けられた。南極は世界どこの国も領有せず、ゼビ国は南方大樹林帯までだ。」
釈「それはゼビ国は納得しているのですか?」
まゆ子「全然!」
じゅえる「だよな。」

まゆ子「これは余談だが、21世紀の今日でも南極大樹林帯と呼ばれる土地はほぼ手つかずだ。恐竜が生き残っているとしたらここだと言われている。ゼビの伝説にも「暴龍チラノン」という巨大なゴジラみたいな話が有るのだ。」

 

じゅえる「ヨーロッパ人はゥワム・ゼビに黄金とか香辛料を求めて来ないのか?」
まゆ子「うん。まず香辛料に関してはゥワム発見の時点で既に需要を満たせるようになっていた。また黄金に関しても撃退されたから仕方ない。ついでゥワム人が海洋交易に乗り出したから、産物は正規に買うしかないのだ。

 本格的な進出は19世紀の動力船開発頃からだな。海流による結界はなかなか貿易を妨げたんだよ。」
じゅえる「主な産物はなんだい?」
まゆ子「知らん。」
釈「まあ、そこはおいおい考えましょう。でもヨーロッパ人が船で来ますから、石炭は出ますね?」

まゆ子「まあね。そうだなタコ石というのは重要な交易品だな。叩くと伸びる不思議な宝石だ。あとゼビ国は発酵技術に優れており、後には食品を売り出すんだが、この段階では未だ。」
じゅえる「タコ石タコ樹脂だね。さすがに現代物でタコはなんだからテューク石、テューク石脂という物質にしよう。」

釈「ゼビからは何か無いですかね。」
まゆ子「発酵技術が進んでいるから、不老長寿の霊薬として名高いエリクソーとか蜥晶とか呼ばれるものが珍重されるのだ。」
じゅえる「ふむふむ。資源ばかりではなく産物でね。鉱物資源は?」
まゆ子「そりゃ土地があればなんらかのものは取れるでしょ。そりゃ20世紀になってからね。」

釈「でも、18、19、20世紀といえば帝国主義ですよ。征服できなかったとしても、19世紀には西欧科学文明に勝てないですよね。」
じゅえる「うーんそうだなあ。ゥワム帝国もどこかで大敗北をしているべきだろう。阿片戦争みたいなかんじでさ。」
まゆ子「そうだなあ。19世紀初頭に大敗北をしていることにするか。そこで近代化でー、てのもなんだな。」

じゅえる「近代化はなかなか難しいな。」
釈「そこは民衆王国のゼビの方が進んで取り入れたことにしましょう。ゥワムはあくまでも帝国を維持する為に近代化は遅れるんですよ。」

じゅえる「それもなかなか面白くないぞ。神族はそんなに甘くない。うむ、全面的な近代化ではなく、武器製造に焦点を搾って国産化を邁進するのだ。」
まゆ子「でも近代工業が無いと近代兵器は作れないぞ。」
じゅえる「うーむ、鉄砲とかは?」
釈「アフガニスタンでは鉄砲作ってるんですよね。」

まゆ子「うーん、ならばー動力船なんかは作らないが、鉄砲をいやというほど手工業で作り始めるのだ。火縄銃に毛が生えたようなものだがとにかく大量にだ。まあ19世紀初頭であれば火縄銃でもなんとかなるか。でその後雷管式からライフル銃へと、ともかく小火器に集中した。」
じゅえる「海では勝てないから本土防衛に集中したわけだね。それも内陸に誘い込んで撃破する。」
まゆ子「で、大量生産される小銃がゼビにも輸出されて民衆王国の成立と近代化の必要性を痛感して行くのだ。」

釈「そうすると、ゥワムの軍隊は極めて特殊な形態を持っていますね。」
まゆ子「そうだな。銃手隊というのが主流で神族によって指揮されるのだ。統一した軍隊ではなく神族それぞれが兵を抱えており、聖帝の呼び掛けで招集される。インドのマハラジャみたいなものと思って欧米は分断工作をしようとしたのだが、十二神信仰はめちゃめちゃ固いのだ。キリスト教で民衆を取り込もうとしたが、平民が直接神を信仰するのは禁じられているから失敗する。」

 

じゅえる「とはいうものの、20世紀まではほぼじり貧だな。」
釈「そうですね。やはり近代化しないとダメですね。」
まゆ子「うん。その点より小さなゼビは見切りを付けて西欧風近代化に乗り出した。こちらも十二神信仰の神殿制度が社会の末端まで支配しているから、キリスト教の浸透を食い止める。なかなか頑張るけれど、さすがに消費地から遠いゼビの近代化はあまり進まないのだ。ただゥワムが近いから、西欧の脅威にさらされるゥワムに対して工業製品を輸出するまでになる。」

釈「やはり転機は第二次世界大戦ですかね。」
じゅえる「日本軍が蹂躙して回ったからな。」
まゆ子「うん、WW2以後になってゥワム、ゼビの両国の近代化も進む。とはいえゥワムはでかいからなかなか進まないのは一緒だ。ただしゥワム大陸から石油が発掘されて鉱業資源も次々に見付かり、それらを武器にようやく世界経済に進出出来た。

 ゼビはゥワムからの資源輸入によって工業化をさらに進め、ゥワムの対ゼビ貿易赤字は嵩む一方だ。」
釈「ゼビは日本みたいな国なんですねえ。」
まゆ子「そりゃ「抜質」では日本みたいな国として描かれるからね。だから「蠱螢」のゼビからの留学生はゥワムの子を田舎者呼ばわりしますよ。」

 

じゅえる「でもさ、神族制度というのはやはり近代国家にはふさわしくないんじゃないかな? 21世紀の今日では民主的でないと叩かれるんじゃないだろうか?」
まゆ子「無論叩く国は多いのだが、しかし民主的な選挙をしてみれば、やはり神族がそれぞれの地域で第一に当選するのは確実なのだ。神族になるのは難しく、神族同士による厳しい審判が行われ、たとえ嫡子であっても相続が叶うとは限らない。知性や能力を七つの試練というので厳密に計られるから、文字どおりのエリートなのだ。」
釈「神族ですからねえ。」

まゆ子「ということは、神族が政治に携るのは至極当然。また彼らの富の源泉は土地ではなく人なのだ。土地の所有権は国が持っており、神族は借りているだけという伝統的な制度がある。人が土地にくっついてるから、神族もそこを利用する、というわけだ。」
じゅえる「奴隷制度ではないのかい? これもまた叩かれるだろ。」
まゆ子「叩かれるが勿論それは欧米的な価値観によるもので、奴隷はそもそもバンドという階層に所属するのだ。神族にはバンドから派遣される形になる。バンドを通して人の移動が有る。」
釈「「げばおと」設定ですね。」
まゆ子「バンドは構成員の福利厚生の為にあり、老齢や傷病で引退した場合でもバンドが面倒をみる。神族は奴隷利用料をバンドに支払い、また奴隷達を食わせる義務が有る。」

じゅえる「なんかややこしくなってきたな。奴隷というか平民の搾取は無いのか?」
まゆ子「搾取するもなにも、神族が指導しないと奴隷は食べられないもの。農業だってそうだ。小作農というのが存在せず、すべて農民は神族に属する農奴であるよ。作物はすべて神族の所有物であり、神族から彼らは給料として作物を分けてもらう。もちろん飢饉の時の備蓄は神族の義務だ。また作物を市場で売って儲けるのは神族に雇われた商業奴隷の仕事だ。」
じゅえる「ううなんかややこしいぞ。まるで社長のようだ。」
釈「そうですね、神族株式会社みたいです。」

まゆ子「実際そうなんだったら。だから奴隷に対して「民主的な選挙をしましょう」というと、彼らは喜んで社長に投票する。当たり前だ、それ以外の人間に権力を与えてどうするね?」
釈「納得です。」

 

じゅえる「信教の自由というのは無いのか?」
まゆ子「神族はそれぞれ信奉する神があり、奴隷達は皆その神の信徒ということになる。「げばおと」とは違って、ゥワムでは神族はギィール神族のみではない。テューク・ギィール・クワアット・チューラウそしてゼビだ。出自がそれぞれの神に由来する神族ではあるが、その他にも十二神のどれを信奉してもよい。もし奴隷が社長の信じる神様は厭だな、と思えばバンドを通じて余所に移ることも可能。人を入れ換えるだけだからね。」

釈「キリスト教やイスラム教、仏教とかはダメなんですか?」
まゆ子「いやそんなことはないよ。でも神族だけだ。神族がキリスト教になれば、そこに居る奴隷もキリスト教になる。とはいえ直接信仰はしない。ゥワムの人は奴隷平民が直接神を信じてはいけないと思って居るから。キリスト教の宣教師が説得しても、耳を貸さない。というか、特別な人が信じるのでなければ神に祈りは通じない、というまこと当たり前の理屈を持っている。」
じゅえる「ううそれは確かに論理的だ。」

まゆ子「というわけで、宣教師は早々に神族の改宗に務めるのだが神族の方が宣教師より頭良かった。また上手いこと騙しても神族は神族同士で常に緊張関係にあり、誰かが邪教に支配されたとか知ると喜んで論破にやってくる。論争大好きなのだ、というか娯楽にすらなっている。」
釈「うう、まさしくギィール神族だ。」

 

まゆ子「その点ゼビの方が布教は簡単だった。キリスト教会を作ると皆普通に遊びに来る。そして幻滅して帰るのだ。ここではなにも役に立つことをやってない。
 ゼビ方台の十二神神殿は民衆への奉仕活動をそれぞれ分担して行っており、そのサービスを受ける為に来るのだから。キリスト教でやってるような満遍なく広く浅い奉仕は、なんじゃこりゃと見られてしまう。
 そこで宣教師は方針を転換して、西欧風の学問を教えることにする。ゼビの教会は西欧学校として知られているのだ。てなわけで近代化もスムースにいきました。」

釈「失望されただけですか? 排斥運動とかは起こらなかったんですか?」
まゆ子「いやそこは1000年前に訪れた救世主ぴるまるれれこ様の教えで、外の世界の侵略に備えねばならぬとあらかじめ。」
じゅえる「うう、弥生ちゃん様の教えだ。」

まゆ子「だからびびらないぞ。たださすがに科学技術の格差はいかんともし難いのだ。鉱業資源もさほど潤沢ではないし。」
じゅえる「まあ世界の市場から離れていれば工業化もうまくいかないな。」
釈「それでも独立を保てるほどにはしっかりしていたわけですね。」

まゆ子「いやなかなかあぶないことがあったぞー、というのがよろしいな。裏切り者が欧米列強に国を売り渡すような。それをトカゲ神星浄王が食い止めて、暗殺されたとか。」
じゅえる「ふむふむ。つまりそれまで星浄王が居たんだ。」
釈「もう少し色をつけましょう。えーと、それは1900年代の話でしょうか?」

まゆ子「ふむ。1950年代に国連でいろんな国が一斉に、という流れを考えると、1920年代にその動乱が起きて40年くらいまで続いた、という感じでいくか。仕込みは1900年頃で、外国人に土地が買われて行き手下になる者がだんだんと勢力を増して行く。それを是正しようとした星浄王が暗殺されて外国人の手先が一時偽王を立てて政権を掌握したけれど、民衆暴動によって遂に倒されて民衆王国が成立する。民主主義国家でないところに注意。」

じゅえる「民主主義と民衆王国は違うのか?」
まゆ子「民衆王国はちゃんと王様が居ます。」
釈「大統領というのは期限付きの王様みたいなものですが、それでもダメなのですか。」

まゆ子「というか、星浄王のシステムをそのまま用いているのだよ。いつか再臨する救世主ぴるまるれれこが真の王様であり、星浄王はその代理というのだ。民衆王国もこの習いのままに、王位は空白で宰相が国家の全権を掌握するという仕組み。」
じゅえる「事実上の独裁者だな。」
まゆ子「そうなのだけれど、民衆の支持が無いと成り立たない仕組みだ。救世主様の顔に泥を塗るような真似は民衆が許さない、という。」

釈「共産党みたいな支持母体は無いんですか?」
まゆ子「ぴるまるれれこ教団というのがありますが、神殿組織もちゃんとある。序列としては十二神神殿の方が教団より上。500年くらい前にぴるまるれれこの化身という人が突如表れて、そこらへんの序列を決めてくれたのだ。」
釈「な、なるほど。まるっきり「げばおと」なのですね。」

 

じゅえる「つまり、ぴるまるれれこ教団というのは信徒の組織であり、神の使いである十二神神殿が直接信徒を組織するわけではない、ということかい。」
まゆ子「ゥワムと同じだよ。神様への祈りは特別な人でないと届かない。ぴるまるれれこ様にお祈りするには、聖山で厳しい修行を積んだ神官様でないとダメなのだ。一方で俗世界にある神殿は民衆に奉仕する為に有る。お客様をお店の人が組織するわけにはいかんだろ。だから信徒組織は別に有る。」

じゅえる「民衆王国の宰相はどうやって決めるのだ?」
まゆ子「選挙だよ。ただし候補者は神殿組織による資格審査を受けなければならない。神衛士と呼ばれる人が居て、国家の為になる人物かを厳しく審査する。この人達は元々は聖戴者と呼ばれたつまりゥワムでいう神族の人だ。十二神神殿の上位存在としてそういう階級が残っている。」
じゅえる「神衛士というのは、特権階級なのかい。」
まゆ子「いや、今ではそんなこともない。というか、星浄王が居た頃にはほとんど聖戴者の勢いは無くなって居たのだ。だから外国人による侵略を許してしまう。」
釈「それで、1920年頃の政権交代が起きた時に彼らは、」

まゆ子「うん。民衆運動による政権奪還に寄与して、だから神衛士と呼ばれる特別な役割を得た。そうだね、20年頃に政権を奪った連中を「民主派」「列強隷属派」とか呼ぼう。国外勢力の力を利用して、方台を支配しようという勢力だ。今も全滅したわけではない。」
じゅえる「なんとなくイランぽいね。」
まゆ子「そのきらいは無いでもないが、十二神信仰はそんなに強圧的ではないよ。」

釈「神衛士の人は、普段はなにをしているのですか?」
まゆ子「なにもしていない、と言った方がいいか。彼らは議会の議員になる資格が無いのだ。また企業経営とか土地所有とかもしてはならないのだ。」
じゅえる「え、じゃあ軍人かい?」
まゆ子「だが第一線に出るわけでもない。ただ弁護士みたいな職業ではある。軍にあってもその行動が規範から逸脱しないように監視もしている。法の番人だな。だから神衛士と呼ばれているのさ。」
じゅえる「神聖秩序の番人か。」
まゆ子「規範意識が強く、信義に篤く、約束を絶対に違えない。社会の不正を見逃さず、強権に屈せず、金銭の誘惑にも負けない。」
釈「そう理想どうりにならないところが、人間世界ですけどね。」

 

釈「そうだ、十二神方台系には無尾猫居ますか?」
まゆ子「そりゃ当然。」
じゅえる「ちょっと待て、人語を喋るのはいかんだろ。」
釈「まあ、そうですねえ。「抜質」の場合は喋ると面白いですが、「蠱螢」では喋るとそりゃ変ですねえ。いや、逆の方がいいのかな、魔法学園ですから、」
まゆ子「ふうむ、それも考えるとこだな。「抜質」はあくまでもハードボイルドであって、「抜質」は日本が舞台ではあっても魔法ファンタジーだからねえ。ネコが喋って許されるのは後者だな。」
じゅえる「そこは賭けの要素が強い。「抜質」はやはりネコが喋るのは止める。「蠱螢」もネコが喋らねばならぬ必然性は無い。」

釈「ネコと話が出来る魔法、というのを身に着けるってシナリオで「蠱螢」は進めるといいでしょう。」
じゅえる「そうだな。普通のネコはもちろん喋りゃあしないし魔法を使ってもそんなに賢くなる道理が無いが、元々ウェゲ族の間では喋るとされる無尾猫は、魔法を使うと喋るような気がするのだよ。」
まゆ子「「蠱螢」はあくまでも夢魔法だからね。ネコが夢の中で出て来ればいいだけの話だ。」
釈「じゃあ「蠱螢」でもネコは通常喋らない。「抜質」でも喋らないが、ネコは居る。そんなものでいきましょう。」

じゅえる「そりゃそうと、ゥワムにもネコは居るのかい?」
まゆ子「白くない。」
釈「そうですね、差別化しましょう。ロシアンブルーの無尾猫ですよ。」
じゅえる「青ネコ、ね。なるほどいいんじゃないかい、魔法っぽくて。」
まゆ子「マジ青ネコにしよう。ほんとうに青いのだ。」
釈「魔法ものですから、そのくらい魔法っぽくていいですよね。」
じゅえる「近くの島に虎猫も居る事にしよう。無尾虎猫だ。」
まゆ子「でもこいつらデカ過ぎるから、初めて見る人はヒョウと言ってびっくりしますよ。」

 

じゅえる「十二神方台系の下にはテュークの巨大化石はあるかい?」
まゆ子「あはは、そりゃあ無い。あれはいくらなんでもちょっと無理。」
釈「じゃあ普通の、…でもタコと関係無いのはちょっと寂しいですね。」
じゅえる「タコの化石が出て来ればいいんだ。」
まゆ子「ー、タコの化石? 軟体動物で骨も無いのに?」
釈「ぐぐりました。有ります! 9500万年前のタコの化石が確かに存在します。」
まゆ子「あるのか…。」
じゅえる「いやびっくりだね。」

まゆ子「よし分かった。十二神方台系の地下からは、タコの化石がごろごろと出て来るのだ。タコが大量に土砂に埋められて、なんか変な鉱物で組織が置き換えられて、世にも珍しいタコ石になっているのです。」
じゅえる「タコ石とはそういうものか。」
釈「でもびっくりです。タコって化石になるんですねえ。まあ恐竜の足跡化石と同じで形が残っているだけなんですがね。」

(2011/1/9)

 

 

07/09/30

まゆ子「あー、今回は魔法の物理的構造についておはなしします。」

釈「すいません、それは相当に無謀な話ではないでしょうか。第一魔法には実体が無い。」
じゅえる「要するに嘘話だ、ってんだね。」

まゆ子「そうは言っても、物理的な実体が無いものを物語世界においても扱う事はできません。物理的になにも無いものは、物語においてもなんの役にも立たないのです。」
じゅえる「そりゃそうだが、なにかアテがあるの?」
まゆ子「なきゃこんな話しない。というわけでしますよ。

 

そもそも魔法というものは、魔法回路と魔力と魔術師と、三者が揃わないと発動しないものです。ではそもそも魔法回路とはなにか、魔力とはなにか、魔術師はいかにして魔法回路を獲得し魔法力にアクセスするか、物理的な裏付けが無いと困るわけです。」

釈「すいません、魔力と魔法力と魔導力と魔法エネルギーの違いはなんなんですか?」

まゆ子「魔力ってのは、まあ言葉のあや。魔法に関連する力の俗称です。使用禁止にすべき言葉ですが、歴史的経緯から使ってる。

魔法力とは、物理現象を引き起こす魔法の力の事です。つまり物理的な実体を持つ魔法の働きです。観測出来る物理現象を引き起こしたソレ、という意味ですね。
魔導力は魔動力ともいい、簡単にいうと魔法回路を駆動する為に使われる魔法エネルギーの事です。魔動力が魔法力に変換されるのが、物理魔法です。
逆に言うと、魔法回路を駆動しなかった魔法エネルギー、つまり貯蔵されるあるいは放出されて終った魔法エネルギーは単に「魔法エネルギー」と呼ぶわけです。」

じゅえる「つまり、ぜんぜん違うわけね。」
まゆ子「厳密な使い分けが必要です。」

 

釈「では物理的ななにかを引き起こす魔法とはなにか、ですね。なんなんです?」
まゆ子「皆さん御存知のように、魔法の力というものは非常に小さい。無いに等しいものです。それを魔術師が無茶をして物理現象を引き起こす為に使っている。
しかし、そもそもどうして魔法で物理現象が起きるのでしょう?」

じゅえる「え? そりゃ物体に働き掛けるから起きるんでしょ?」
釈「あ、いやそれはちょっと違います。炎が点いたり雷が起きるのは、物理現象といえども我々はその原理をちゃんと知っています。やみくもに魔法が動いているわけではなく、合目的に働いているんです。」

じゅえる「あ、そうか。魔法のコントロールがちゃんとされていて、必要とされる物理現象に選択的に働いているんだ。しかし、石が浮いたりするのと、雷が起きるのとではずいぶんと違う…。」

まゆ子「同じです。それらは皆、電磁気力によって成り立っています。つまり魔法は電磁気力に干渉できる力なのです。という事は、魔法は電磁気と明らかに関係するという事です。」

じゅえる「謎力ではなく?」
まゆ子「電磁気力です!」

釈「いや、それはよく分かりますが、電磁気力であるのなら魔法は普通に観測出来ますよね。なんせ電磁気なんですから。」

まゆ子「重力でない、というのは真空中で石を飛ばして見れば分かります。いかなる物理現象によって石を飛ばしますか?」
釈「え? いやーそれは、えーと反重力なんてものは、」
まゆ子「そりゃ魔法以上にありえない力です。」

釈「つまり、魔法は真空中ではものを飛ばせない?」

まゆ子「可能だとすれば、石を削って一定方向に粉かガスを噴出させてその反動で飛ぶ事です。ロケットの原理ですね。でもこれは電磁気力で説明が付きます。空気中の場合は、石の周囲の空気が動いているから、という風に説明できますが、これもまた電磁気力です。空気分子の運動が特定方向に制限されているって事ですから。」

釈「ということは、魔法は電磁気力以外ありえない、ということですか。」
まゆ子「しかし、直接は観測出来ない、しかも非常に弱い力だという事です。

 

だがここで視点を換えて、魔法回路の実体について考えてみましょう。魔法回路って、なに?」
じゅえる「不明。」
釈「謎です。」

まゆ子「分かっているのは、人体に付随し魔法を操るのに不可欠な存在、という事だけです。また意志によって成長させ機能を増大させる事が出来る。そして物理魔法のコントロールが出来る。また魔法エネルギーを呼び出す事が出来る。

で、魔法エネルギーってどこから来るの?」

釈「魔界から、ではないのですか?」
まゆ子「魔界ってどこ?」
じゅえる「黄泉の国じゃないの? 冥界とかあの世とか、地獄かな?」

まゆ子「そいうのって、本当にあると思う?」
じゅえる「いや! それはー無い。」
釈「無いとおもいますねえ。」

まゆ子「何も無いところからは、何も出ない。現代科学じゃ真空といっても電子がぎっしり詰っている、とか見出しちゃった。何も無い所からはなにも来ない。だから黄泉の国も無い。」
釈「魔法エネルギーはどこからも来ない…。」
まゆ子「しかし、それは来るのだ。

 

考え方を換えましょう。魔法エネルギーはいやでも来る。そして人体にはそれにアクセスする為の最低限の魔法回路があらかじめ備わっている。でないと、魔法回路自体を組み上げられない。魔法は人体に不可欠な存在として最初から存在する。」

釈「それは、かなり納得の行く前提ですね。」
じゅえる「人間誰しも魔法への扉を持っている。うん、それはまあ物語の前提として存在すべき設定だね。」

まゆ子「という事は、魔法回路というものは最初から自己の構造を持っている、という事です。最低限てのがどの程度のレベルかはさておき、魔法回路の基本素子よりははるかに大きい複雑なものであるのは間違い無い。或る程度組み上がり意識によって操作されるアクセスパネルのようなものを持っているのは確実です。そしてこれもまた、電磁気力によって制御される。
なにせ、脳の中身は電気信号と化学物質信号によるコンピュータ、ですからね。どちらも電磁気力によって成り立っているものです。つまり、意志によってコントロールされる魔法というものは、電磁気力によってコントロールされている、と言ってまったく問題がありません。」

 

じゅえる「強い力とか弱い力は?四つの力、てのがあるんだよね、物理的には。」
まゆ子「その二つと重力は、考える必要がありません。しかし、魔法と重力には似たところがあります。魔法は非常に弱い力ですが、重力も似たようなもの。電磁気力に比べてはるかに小さな力です。」

釈「小さくとも、巨大な質量によって宇宙全体を支配しているのですよ。」
じゅえる「じゃあ魔法も宇宙全体に広がる力ってこと?」
まゆ子「だが重力と違い、魔法は直接に確実に電磁気力に干渉しますし、またその発現は電磁気力の働きによってのみ観測の目に引っ掛かります。不思議現象というのは、現象の一つに過ぎないのです。」

じゅえる「さっきから電磁気力にこだわるけれど、でもじゃあ何故魔法は電磁気力と同じじゃないの?」
釈「そうですね、何故同じものとして此の世に存在しないんですか?」

まゆ子「あの世の電波、だからだよ。」

じゅえる「あの世なんて無い、ってさっき言ったじゃん。」
まゆ子「最近の仮説では、何故重力がこんなに弱いのか? を平行宇宙によって説明するものがあります。電磁気力・強い力・弱い力はこの宇宙の内部でのみ働くが、重力は無数にある次元を貫いて無数の宇宙で働くから、その分この宇宙においては弱いものとして観測される。本当は強い力が分割されているから、こんなに弱くなってしまう、ってのです。」

じゅえる「あの世がある、んだ。」
釈「うん。」

まゆ子「だが逆に考えると、何故電磁気力他はこの世にのみ限定されるのか? いやそれはむしろ不自然だ。他の次元、平行宇宙にも電磁気力は働き掛けている、ただ恐ろしく弱い力でしか漏れ出していない、という仮説は成り立たないだろうか?」

じゅえる「重力の逆?」
釈「異次元の電磁気力の痕跡、ですか?」

まゆ子「しかし、無数にある平行宇宙のすべてが私達のこの宇宙に満遍なく漏れ出していると、合成してかなりの強さにはなる。ただ、それは普通の電磁気ではないだろう事は間違い無い。」

じゅえる「この世の電磁気になんらかの働き掛けをするのは間違い無いが、通常の電磁気ではない存在、か。」
釈「たしかにそれは、私達が求めるべき魔法に、かなり近いものですね。」

まゆ子「これを大胆に、嘘っぽく設定して『反光』と呼ぼう。電磁気、つまり光、光子の反粒子だ。ま、光の反粒子は光なんだけどね。私達のまだ知らない性質が光にはある、という仮定で行こう。
他の次元から漏れ出てくる光子は、普通のこの世の光となにかが違う。しかし、それが識別出来るほどの強大な力をもっていない、というか数が無い。しかし確実に漏れ出してはいるんだ。」

 

釈「問題がひとつ。そんな稀なものが、なぜに人体によって制御できるほど多量に存在するのです?」
じゅえる「宇宙にまんべんなく漏れ出しているのじゃない?」

まゆ子「まんべんなく漏れ出していない、としたら?むしろ人間の身体を選択的に通路として漏れ出している、と考えよう。何故人間を通してか、ではなく、何故通路が人間でなければならないか、を考える。」

じゅえる「ここらへんからは与太話に突入しているな。」
釈「これからが見せ場ですよ。」

 

まゆ子「何故人間か、ではなく、何故人間に付随する魔法回路から反光は漏れ出すか? という話になりますね、魔法の話なんだから。これはつまり、なぜ人間に魔法回路が付随しなきゃならないか、という問いの答えに当たります。

結論を言うと、魔法回路が人間を作った。」

じゅえる「ちょっとまて。遺伝子と受精卵とかは関係無し?」
まゆ子「いや、それ以前の問題。生命の起源の話だよ。なぜ生命は発生したのか、いかにして発生したのか、生命の発生は宇宙中でまんべんなく起こる普遍的な現象なのか?」
釈「つまり、魔法回路が生命をうみだした、と?」

まゆ子「電磁気力に干渉する力である魔法が、化学反応の連鎖によって成り立つ生命の誕生に寄与しても特に不思議はないでしょ。というか、むしろ魔法が否応なしに生命を生み出す、と考えても良い。
他の平行宇宙から漏れ出す反光は極めて弱いがなにせ無数の平行宇宙全部から漏れて来るから、それなりの強さはある。そして平行宇宙同士は均質なものではない。エネルギーに満ちた世界とそうでない世界、偏りのある世界と均質な世界、まあそれぞれ違いが無数にあるわけですよ。それらの情報を反光は否応なく持って来ている。つまりそれは最初から構造を持っているのです。」

じゅえる「反光というのは、では多数の光子ってこと?」
まゆ子「いやーそれはどうだろう。或る程度まとまった平行宇宙分の情報を持つ一個の光子、って感じかな。反光というくらいだから、偽の光子なのかもしれない。従来の観測方では識別出来ない光子と同じ振る舞いをする粒子、ってのかな。ともかく宇宙全体に均質に溢れ出ているというものではない。
いや、出っぱなしというのもおかしいか。元の次元に行ったり来たりしている。無数の平行宇宙から漏れ出る光子が代りばんこに存在して一個の光子を模倣している、そんな感じ。」

釈「偽光子、ってことですね。」

まゆ子「ともかく、この偽光子は選択的に物理現象を引き起こす悪いくせがある。自らの持つ情報・構造に合わせてこの世界でも特異的な物理現象を引き起こし、引き起こした結果がまた自身を呼び出すゲートとなる。出て来易い所に出て来て、出て来た所を出て来易いものに変換して、また出て来る、という風に解釈して下さい。

中でも、生命というものは特に出て来易いもの、なのかもしれない。平行宇宙全体が重力によって繋がっており、反光によって情報を共有しているとすれば、それは一個の構造体だ。超生命体と呼んでもさして問題はないだろう。それが、自身のミニチュアを作っている。」

 

じゅえる「では人体は、というか魔法回路は、異次元宇宙からの情報ゲート、ってこと?」
まゆ子「うん。それが正しい見方でしょう。情報ソレ自身が情報を汲み出す手段を欲している、そんな比喩も成り立つか。大量の反光を呼び出すゲートを要求する。反光を処理する魔法回路を要求する。魔法回路によって物理世界に干渉する端末を要求する。」

釈「大宇宙の意志、というやつですね。」
まゆ子「うーん、大宇宙の無定見な暴走、と呼ぶべきかもしれないかな。堤防に穴を開けてそれがどんどん大きくなる、大きくなるというのは複雑性を増すという風に捉える事も出来るでしょう。宇宙の穴として複雑な情報を処理出来る存在がどんどん組み上がっていく。穴自身が穴を大きく開けようとしていく。それが生命というものなのだよ。」

釈「つまり、生命とは穴が空きそうな弱い場所に選択的に現われる、偏在する物理現象、ということですか。」
じゅえる「マクロでみれば、平行宇宙全体が自己組織化を強めていく過程にある、ということかな。神経のシナプスが伸びるように、反光が伸びて生命を作っていく。」

まゆ子「これを神の意志、として見る事も不可能ではない。「意図された幸運の上に私達の世界は成り立っている。」 それが魔法という世界に身を置く者の共通した認識なのは間違い無い。なんらかの意図に基づいて、彼らは魔法回路を強化し魔法エネルギーを呼び出し、魔法を用いてなにかを成し遂げているのだ。」

 

じゅえる「つまり、その「意図された幸運」こそが魔法の神髄なわけだ。」

まゆ子「これは「絢爛たる魔法」において顕著に現われる。現在この部所が主に取り組んでいる物理現象は、素粒子レベルの魔法実験だよ。とある科学実験においてほとんど発生しない、でも起ってくれると科学の進歩やら仮説の検証、新素材の開発に役立つような微小領域での反応、を魔法によって観測可能なレベルに引き上げるということをやってる。」

釈「それはいんちきではありませんか?」
まゆ子「いんちきだが、現象自体がちゃんと起ってくれるとその現象についての理解が進み実験手法の改善が行われ、確率の桁がどんどん上がってくれてやがて魔法の助けを必要としなくなる。つまり研究開発の高速化が成るんだ。」
じゅえる「時計を早回しする、って感じだな。今の時代、技術開発はスピードこそ命だもんね。」

釈「ということは、つまりそういうささいな幸運を意図的に引き起こすのが、現在の絢爛たる魔法の仕事、なわけですね。」
まゆ子「魔法物理学、つまり今言ったようなことを考えるのも役目だけどさ。」

釈「そういった起って欲しい時にそれが起こる、ってのはセレンディピティて言うんでしたっけ。」
じゅえる「そういうと、なんとなく魔法っぽくなるな。小人さん降臨魔法なんだ。」

まゆ子「当然のことながら、この微細魔法は生物学やら遺伝子工学やらでも用いられている。生命が魔法から生まれた、という概念は現場レベルではほとんど確定しているようなもんだよ。生命が出来てしまうようななにか、が現に目の前で起っているんだ。」
じゅえる「そうか、裏があったんだ。」
釈「現場の目線からの仮説、なんですね。」

 

まゆ子「だから、朱美魔法というのは、そのセレンディピティが予期しないところでおこってしまう魔法、なんだな。人の想像を越えた所で科学的対処を必要とする大事が起ってしまう、ただしそれをクリアすればそりゃあ魔法学は進展するだろうけど、今起ってくれるなよお〜、という事象を引き起こしてしまうんだ。」

釈「それは迷惑かつ魅力的な魔法ですねえ。」
じゅえる「金、かかりそうだな。」
まゆ子「掛る掛る。予備費がぶっ飛んでいきますよ。」

釈「皆さん戦々恐々としているわけです。」

 

07/09/14

じゅえる「というわけで、ハリーポターを見て来たわけです。しかしなんですな、ハリーが大人になるに従ってどんどん嘘っぽくなるのはなんでだろう。」
まゆ子「そりゃ、嘘を嘘として微笑ましく見るのと、嘘に嘘を重ねていくのを見て窮屈に感じるのとでは、違うだろ。」
釈「可愛い子供が主人公だと、楽しいのは確かです。」
じゅえる「魔法合戦はそりゃドラゴンボールの方が上ってことか。

 そりゃそうと、魔法って何? まゆちゃん、魔法作ってみてよ。」
まゆ子「あー、魔法ね、魔法はいかんよ。いくらでも理屈は考えつく。かんがえつくけど、」
釈「物語ごとに理屈がありますから、定番ってのはありえませんよね。」

じゅえる「なんとかしい。」

 

まゆ子「と言ってもだね、舞乙Himeはどこからどうみても魔法少女だけど、マイクロマシンが元という設定を知っているから、なぜか魔法に見えない。ゲキも亜空間回路と知っていれば、不思議と魔法に見えない。」
じゅえる「亜空間回路ってなに?」
釈「言葉では納得しますが、実際それどういう仕組みです?」
まゆ子「ゲキの物語で使う亜空間回路は至極簡単な仕組みだ。亜空間、を回路にする。」
じゅえる「わからんよ。そもそも亜空間てなに?」

まゆ子「亜空間はサブ空間だよ。この現実世界において認められる4次元の他にある畳み込まれた空間の世界を亜空間と呼ぶ、べきだ。でもほんとは亜空間と呼ばれるものは擬似空間と呼ぶべきだろう。通常空間とは別にありながら通常空間に依存し従属する空間、てイメージ。あるいは、世界は亜空間こそを主体として作られており、通常空間はそのサブセット極一部って感じね。」

釈「ではゲキの亜空間とは、つまりはー、」
まゆ子「どうやって作るかを考えよう。ゲキの亜空間はマイクロブラックホールから作られる。マイクロブラックホールとは極めて小さいものであり、とりあえず電子よりも小さいとする。マイクロブラックホールは出来た瞬間に消滅するという代物だが、これが長時間存在し続ける技術こそが、亜空間生成技術ね。複数のマイクロブラックホールが安定的に存在する為に、或る構造を作る。一番簡単なのが三角錐。四つのマイクロブラックホールを頂点とする三角形の空間、この中が亜空間だ。」

じゅえる「意外とかんたんだな。」
釈「それは通常空間ではないんですか? 一応通常空間内にあるんですよね。」
まゆ子「有るけれど、周りのマイクロブラックホールの影響で通常の物理法則が機能しない。そもそもプランク長さ以下の大きさだから物理法則なんてあったもんじゃない。だから、この中ではいかなる不思議でも起り得るのだ。」

釈「でも小さいんですよね、電子よりも。電子よりも小さなもので作った三角錐です。やはり、」
まゆ子「電子よりはちょっと大きいくらいかな。水素原子核よりも小さいのは請け負う。」

じゅえる「そんなものがなんの役に立つの?」
まゆ子「これ自体がコンピュータだ。ブラックホールをコンピュータの一種と看做す情報物理学からしてみると、ブラックホールで構成される回路はやはりコンピュータの一種だろ。」
釈「つまり、マイクロブラックホールを素子として用いるコンピュータ回路、ですか。」
まゆ子「正確には、マイクロブラックホールで構成される亜空間を素子として用いるコンピュータ、およびエネルギー回路だよ。情報を処理するだけでなく、エネルギーも放出するし、仕事もする。熱は出たり出なかったり、なにせブラックホールだからね。熱が出ないような気がする、というところが大きいのだ。」

じゅえる「よくわからないけれど、ゲキはそれを使っているんだ。」

まゆ子「しかしながら、」
釈「しかしながら、こんな訳の分からない理屈でも用意されると、それは魔法には見えない、ってことですね。」
まゆ子「そうなんだ。理屈のあるものは魔法とは看做されない。魔法の根源は謎で神秘的なものでないと、だめなのだ。」

じゅえる「てえことは、魔法を扱う際に原理を考えると敗北、ってことか。」
釈「逆に、いかにも嘘っぽい、キャラ自体が信じていないような原理、ってのを前面に押し出すと、魔法っぽくなりますね。」
まゆ子「ふうむ。どっちがいい、じゅえる?」
じゅえる「王道。」

 

釈「それはそうと、NHK教育でやってる「電脳コイル」ってアニメ、いかにもサイバーなアイテムを使いまくりですが、妙に魔法っぽいですよ。」
じゅえる「知らん。」
まゆ子「あーあれは、…二倍速で見てる。のったりとした演出が、早送りに最適なんだ。」
釈「あれは、魔法に入れちゃダメですか。」
まゆ子「ふうむ、うまく嘘を吐くと、魔法でないものを魔法に見せ掛ける事も可能、ってことか。演出の力だな。」

 

じゅえる「だが今回それは必要としない。王道的魔法少女学校、がやりたいのだよ。」

まゆ子「あ、はりぽたをパクろうって話ね。あー、やはりこいう時は、地道に魔法原理から入った方が良い。正面突破、こそが最も近道だ。」
釈「しかし、一般的な魔法っぽい魔法は、あれはどこからエネルギー供給がなされているんでしょうね? エントロピーの法則とかを無視してますよね。」
じゅえる「そいうのは考えちゃいけない。」

まゆ子「物理法則は存在しない、と考えて良い。世の中には地味な三流魔法でありながら、マトモに考えると物理法則書き換えなきゃいかん、てのがごろんとしてる。」
じゅえる「やはりバーチャルなスピリチュアルな世界でのみ効果がある、てのが無難なんだろうね。設定としては。」
釈「現実世界においてはまるで無意味、ですか。それは簡単なんですけど、」

まゆ子「今回それは逆で行こう。どんなに苦しくても、現実世界にぎちぎちと物理的影響を与える力としての、魔法だ。」
じゅえる「それこそエネルギーの出所が、分からんよ。」
釈「しかし、ほんとにどこからエネルギー来てるんでしょうね。」

まゆ子「エネルギーを仕事に変換するデバイス、というのも必要なんだけどね。というか、それこそが、魔法と科学の境目だ。デバイスが無くても効果が発生する。」
じゅえる「デバイスが虚空やらアストラル空間にある、という、或いは精霊がやってのける、というのか。」
釈「精霊使いはみごとに魔法使いですが、それでいきますか。」
まゆ子「それは楽だが楽過ぎる。精霊使いでない魔法使いの方が難易度が高い。」

じゅえる「魔法装置、呪文、魔方陣、こういうのが王道には必要だ。しかしこんなもんが役に立つ道理が無い。さて。」

 

まゆ子「デバイスの存在は諦めよう。精霊ではなく神がエネルギーを仕事に変換する、その為の命令コードが呪文と魔方陣だ。」
釈「究極的精霊、というわけですか。それともコモン精霊。」
じゅえる「コモン精霊、と考えるのが正しいと思うよ。魔法の神、というのがあるんだ、やっぱり。」
まゆ子「楽な話だが、デウスエクスマキナだな、それ。マシンの神だよ。」

釈「超巨大なスーパーコンピュータが魔法使いすべてに共有されている、というところですね。」
じゅえる「個人でパソコンを所有する、というのが精霊使いなんだ。」

まゆ子「案外おもしろくない結論だ。魔法実現デバイスにもっと革命を起こそう。デバイスではなく、ゲートあるいは水道口として魔法使いが機能する、というのかな。巨大な魔法エネルギーの奔流が荒れ狂っていて、それを部分的に開放する、というだけの。」
じゅえる「しかし、そのエネルギーを物理的に変換するデバイスは絶対必要でしょう。それとも魔法エネルギーの奔流というのはあらかじめ物理現象を引き起こしていて、魔法使いはどれが起きるかを選択するだけ、にするかな?」

釈「それは王道ではないですねえ。やはり、自力で何かやり遂げる、というの感触は必要ですよ。」
じゅえる「でも人間個人が内包するエネルギーはたかが知れてる。余所からのエネルギーの出口じゃないとね。」

 

まゆ子「デバイスを人間にするか。エネルギーも人間由来で、人間を燃やして動く魔法。」
じゅえる「自分が死んじゃうとダメだろう。」
まゆ子「他人のエネルギーで他人をデバイスに使う。ただし、使えるのは才能が有り高度に訓練を施された魔法使い。魔法使いが他の魔法使いを使って、魔法を起す。」
釈「エゴですね。」

じゅえる「つまり協力しておこなうってことか。」
まゆ子「うにゃ、協力ではなく収奪だ。魔法合戦を行う最中にのみ魔法が発現する。対戦する事で相互のポテンシャルを高めてエネルギーを励起し、物理現象に変換出来る。」
釈「勝てば相手を使って無制限に術を使えるけれど、負ければ燃やし尽くされてしまう、ってことですか。」

じゅえる「それは王道かなあ。」
まゆ子「個人のエネルギーを絞り尽くす、というのは王道だろう。また魔法合戦も王道だ。魔法と科学技術との違いは、不可解非合理的な現象を使うってことで、成し遂げる現象自体の異常性は関係無い。稲妻を落とす魔法よりも稲妻を落とす機械の方がどこからどうみても優れているのだ。」

 

じゅえる「でも負けた方は一方的な損ではないかな。」
まゆ子「体内になにかが残っていき蓄積して、なにかを成し遂げる助けになる、という事にするか。ぎりぎりの決闘でないと、高度ななにかが体内に形成されない。しかしそれを稼動させる為のエネルギーは自身の身体には無い。」

釈「では負けた方が得?」
じゅえる「或る意味では得、ただし死ぬかも知れない。エネルギーを奪い取られて魔法使いで居られないのかもしれない。」

釈「つまり、究極魔法を完成させる為に自身の身体の中に魔法回路を形成する必要があり、その為の手段として魔法合戦を行う。」
まゆ子「エネルギーを奪い取られている状態下では、魔法使いは自身の魔法回路をいじる事が出来るんだ。自分を守るエネルギーが空になっている状態だからこそプロテクトが外れる、ということかな。」
じゅえる「つまり、死ぬギリギリの状態が最も可能性が大きな時間、ってことなんだ。これじゃあ、魔法使いってお友達ができないな。」

 

釈「では、魔法で成し遂げる物理現象自体はなにも生み出さない無駄ですか?」
じゅえる「雷ぴかぴかしても、ねえ。鉄砲で撃った方が早いでしょ。」
まゆ子「魔法はやはり魔法装置の解除くらいしか出番は無いだろうねえ。あるいは、魔法生物を殺すとか。」

 

釈「魔法使いが成し遂げようとする究極魔法とは、なんです?」
じゅえる「神さまになること、じゃないか。」
まゆ子「近いな。神さまとの対話、究極の魔法知識の獲得だ。自身の魔法回路が究極に完成した時、魔法エネルギーの奔流の中でも耐えられて自在に扱う事ができる究極の肉体になっている。既に死も生も超越して永遠を生き、ありとあらゆる物理現象を実現出来る。」

釈「そんなもの、現実で成し遂げられるわけがない、と思うんですが。それでもやりますか。」

じゅえる「しかし、それは結局二人の魔法使いが仲良しでないとダメなんじゃないかな?」
まゆ子「うーん、少なくとも互いのレベルを理解する、くらいの共感は無いとだめだろうねえ。」

釈「では魔法学校というのは、教官によって一方的に魔法エネルギーを吸い出されている状態下で、自身の魔法回路を組み上げる、という所ですか。」
まゆ子「そんなもんかな。」
じゅえる「やはり、下っ端の魔法エネルギーを吸い上げる方法があるんだよ。」
まゆ子「いや、やはりゲートとしてで。あーつまりはー魔法学校というのは巨大な発電機みたいなもので、高級魔法使いが使用するエネルギーを生み出す為の装置であり、副産物として魔法使いの教育を行っている。」

じゅえる「憎しみを生み出す回路に見えちゃうんだけどさあ。」
釈「悪い魔法使いというのは無いと王道になりませんよね。でもこのシステムでは、敵味方はほんとは仲良しでないと困ります。」

まゆ子「うーん、ではこういうのはどうだろう。高級魔法使いとなると、自身の身体の中には高度な魔法回路が組み上がり、魔法学校を利用してのエネルギーを使ってかなりの事が出来る。」
じゅえる「ふむ。」

まゆ子「だがこれだけの高度な魔法回路は非常に敏感であり、他の魔法回路との相性も悪くなる。排他的になる。その中でも特に相性の悪い魔法回路というのがあり、それがあると自身の発動が阻害されるだけでなく、魔法回路自体が破壊されるし本人も死ぬ。だから、先手を打って相手を殺そう壊そうとする。」
釈「つまり、善悪の基準があるのではなく、単に目障りな奴があるからぶっ殺してやろう、という。」
じゅえる「それは辛辣だな。ほんとにありそうな話だ。」

釈「というか、本当に憎しみを生み出すだけの回路なんですね。ということは、相性の良い魔法回路を持つ者同士が組合を作る、ということですか。」
まゆ子「クランってやつだね。それがまた魔法学校も作る。」

 

じゅえる「善悪だけでなく、三すくみ状態になる、というのがいいかも。一方を圧倒的に破滅させることは出来ないんだ。」
釈「魔法学校の生徒も、三つに分かれて行ってしまう。悪は必ず再生産されるんです。」
じゅえる「光と闇と、えーと秩序と混沌、有と無、生成と消滅、支配と協調、善と悪、全体と部分、」
まゆ子「そりゃ二項対立だよ。まあコンビネーションでいけるけどさ。」

釈「三原色とか、えーと三項対立って言葉はありますかね。光と闇と色、ですね。秩序と混沌と循環。生成と消滅と変換、支配と協調と演劇、善と悪と法。有と無と命。全体と部分と相互作用。こんなもんですかね。」
まゆ子「一部納得し得ないものも混じってるけど、そんなもんでいいか。えーとつまり魔法界においては、」

じゅえる「聖なる魔法、勝利の魔法、絢爛たる魔法、だな。つまり聖なる至高の目的に向けて自己を高めていく魔法、魔法使い同士の攻防で勝利を追求する魔法、欲求を叶える為にあらゆる現象を引き起こす魔法。」
釈「どれも矛盾しませんね。」
まゆ子「すべてを欲するところだけれど、それは無理なんだね。」

 

じゅえる「

 聖なる_、というのは身体内の魔法回路の高度化と充実を目的として自己を極限まで追い詰める魔法。ただし高度な魔法で勝利を得るほどでないと高いレベルのエネルギー状態に到達出来ない。負ける為に勝つ、という矛盾した要求を実現しないとならない。
 勝利の_は、ともかく魔法使い同士の戦闘で勝つ。敵のエネルギーを獲得する為、高度で強力な魔法エネルギーの奔流に到達する為に極限まで戦闘力を高めて敵の中に深く没入する為の魔法。
 絢爛たる_は、得られたエネルギーと魔法回路を用いて、それを物理的現象に変換する為の魔法。もちろん高度な術には高度な魔法回路の実装と強力な魔法エネルギーの供給が必要。それらを使う為の高度な制御技術が不可欠だ。」

まゆ子「ますます三者は矛盾しないし、協力協調が必要だ。でも、出来ないんだね。」
じゅえる「無理だから、それぞれで独自の方策を取っているんだ。

 聖なる_では、それこそ協調して互いを死なない程度に殺し合う術を訓練する。何が必要かを見定めて、それに必要な攻撃を与える術を互いに習得して掛け合う。
 勝利の_はそれこそ互いに戦い合い、能力を強化し合う。発生するエネルギーの奔流にも耐える訓練を積み重ねる。
 絢爛たる_は、エネルギーの供給を多数から少量ずつ集めるという策を用い、綿密なる計算と積み重ねた研究により最短距離で魔法が実現出来るようにする。」

釈「つまり、魔法学園は絢爛たる_のサイドがやってるわけです。」

まゆ子「えーと、つまりそれぞれには得意の魔法があり、それに従って攻撃をし、防御をする。ただし初等魔法というのがあり、それぞれの最低限の能力は魔法使いたるもの一応実現可能なんだ。だから魔法攻撃と魔法防御に関しては基礎魔法の応用でなんとかなる点が多いんだな。」
じゅえる「つまり、圧倒的に致命的な攻撃は出来ないってことか。」
釈「それもなんですが、戦闘を繰り返す事で経験値が上がり、そう簡単には倒されないようになる、ってことですかね。」
じゅえる「そうか、戦えば戦うほど強くなるんだ。」

まゆ子「攻撃に関しては、こうだ。

 聖なる_は魔法回路を本人から分離して、魔法生物を作り、これを用いて攻撃を行う。魔法生物は魔法回路を直接に破壊する機能がある。
 勝利の_は魔法攻撃の専門家であるから、魔法エネルギーを直接にぶつけて相手の魔法回路を過負荷にして破損させる、または肉体に負荷を掛けてダウンさせる。
 絢爛たる_は物理攻撃魔法を使って、術者に直接攻撃を掛ける。肉体が傷つけば、あるいは精神的に負荷が掛れば当然魔法は崩壊する。

じゅえる「ということは、それぞれの攻撃には違う防御法を使わねばならないんだ。」
釈「そうですね。特に物理攻撃魔法は特別ですよ。絢爛たる_の攻撃は物理防御魔法でないと、防げませんよ。」

まゆ子「防御に関してはつまり、三者三様でなんとかするんだね。

聖なる_の魔法生物攻撃に対しては
 聖なる_は魔法生物同士の対決という事になる。だが結局はレベルの高い魔法使いの方が勝つ。問題は、なんの為に戦うかというところだね。
 勝利の_は、魔法生物を魔法エネルギーによる過負荷で破壊する。ひたすら力押し。
 絢爛たる_は基本的に防げない。だから防壁を何重にも展開して時間稼ぎをして、物理攻撃魔法で術者を沈黙させる。

勝利の_の魔法エネルギー攻撃に対しては
 聖なる_は魔法生物に魔法防壁を展開させて、直接に防ぐ。膨大なエネルギーの衝突も魔法防壁が効率的に防ぐけれど、用いられるエネルギーは自前だから電池切れがある。
    逆に、勝利の_から魔法エネルギーを収奪するために、攻撃してもらうのを目的ともする。
 勝利の_は簡単。魔法エネルギーによる対抗攻撃で力押しで相殺する。これは彼らの得意中の得意。
 絢爛たる_は膨大な魔法エネルギーの奔流を防ぐ事は出来ない。だから避ける、もしくは多数の術者を介して分散して吸収する。その裏で物理攻撃魔法を用いて沈黙させる。

絢爛たる_の物理攻撃魔法に対しては
 聖なる_は魔法回路を直接に攻撃することで、物理攻撃魔法を沈黙させる事が出来る。術者本体が物理攻撃を受けなければなんとかなる。
 勝利の_も相手の魔法回路を高エネルギーで破壊する。魔法攻撃は物理障壁を突破するので攻撃自体は楽だが、絢爛たる_にも防御手段はある。
 絢爛たる_では物理攻撃魔法には物理防御魔法を展開する。
   石が空を飛ぶとかの攻撃では物理防御魔法しか効果が無い。あくまでも物理攻撃魔法の発動を速やかに阻止する事こそが必要となる。

じゅえる「普通人一般人が相手の場合、

 聖なる_は魔法生物で魂に直接攻撃を掛けて昏倒させたり強制的に精神を支配出来る。
 勝利の_はエネルギー攻撃で一瞬に身体を麻痺させたり石化したり殺したりも出来る。
 絢爛たる_はもちろん物理攻撃魔法でびっくり!」
釈「はあ。勝利の_は嫌われるはずだ。」」

じゅえる「治癒魔法ってのはないのかな?」
釈「それは初等魔法ではないでしょうか? どこの派閥も必要でしょう。」
まゆ子「損傷の分野によって、治癒魔法も特別化が必要なんだよ。

 聖なる_は魔法回路の修復が得意中の得意。
 勝利の_は魔法エネルギーによる打撃に対する回復に長けている。また過剰エネルギーの吸収でダウンした魔法回路を初期化する。
 絢爛たる_は物理治癒魔法は当然だが、破損され易い魔法回路をセーブしておく術を持っている。数で対応だ。

 

じゅえる「しかし、こういうのって、ちゃんと魔法学校で教えられるのかな?」
まゆ子「最初は皆どの方面に向いているか分からないから、全部ひっくるめて習うんじゃないかな。で、徐々に適性が判明して専門教育に分かれて、卒業してそれぞれの派に属する。だから誰もがどれもの基本魔法は習得しているんだよ。或る程度の事は出来るはずだ。得手不得手はあるけれど。」
釈「つまり基本魔法初等魔法てのがあるんですね。やっぱり。」
じゅえる「父子孫々で続く魔法てのもあるんだよ。やっぱり。」

まゆ子「魔法回路ってのは、子孫に継承できるのかな?」
じゅえる「無理だね。魔法回路の継承はそれ自体が超高度魔法だ。そしてほぼ不可能。魔法回路はそれに見合った格を持つ魔法使いが相手である場合のみ継承出来る。だがそれほどのレベルの魔法使いはとっくの昔に自分の魔法回路を形成しているから、それを捨ててまで受けとるというのは余程の理由が無いとできない。
 まあ、それをするだけの価値がある魔法回路というのもあるんだけど、それほどのものは聖なるの極一部の高僧だけだね。

 えーと、
 聖なる_は高度なテクニックを用いて弟子に継承させられるが、渡すと死ぬ。また師匠の魔法回路に触れて構造を知り、自ら魔法回路を組み上げていく。但し魔法回路を受継ぐだけの器と才能を持った弟子が得られない時は、それは失われる。
 勝利の_はそれこそ自ら一代のものとして経験から直感的に獲得する。格闘の技と同じで、習っても本物になるには長い練習が必要で継承なんてのはできるものじゃない。しかし体質と才能を子孫に遺伝で与える事は出来る。才能を持つ子供に高いレベルの魔法を触れさせる事で、継承の確率を高める事ができる。
 絢爛たる_は書物によってのみ継承出来る。ただし真に高度な魔法は言語による伝達が不可能だ。だから少しでもヒントをと工夫に工夫を重ねて、怪しげな書物が出来上がる。長年の研究成果として出来上がったものも、結局は初等魔法に過ぎないのだ。」

まゆ子「…、いいんじゃない?」
じゅえる「いい感じだね。」
釈「とりあえず魔法学校を作るのには十分です。」
じゅえる「魔法学校では初等魔法と、それを十分習得した後での専門分化教育を行い、それぞれの入り口にまで訓練をする事になる。」

 

えーと、それぞれの派閥は統治組織は違う形態と考えた方がいいかな?」
まゆ子「自治組織の形態はそりゃ違うだろう。えーと、

 聖なる_は教皇みたいな高齢の魔法使いが一番高度な魔法回路を有しており、彼を頂点として厳しい戒律の中で運営される宗教団体みたいなもの。年功序列だが、魔法回路の出来を見れば優劣は一目瞭然。劣る者は自ら下がらねばならない。
 勝利の_は、それこそ最強者が頂点として君臨する恐怖の体系になっている。定期的にトーナメントを行い、序列を決定する。負けた者は自分の弟子にすら従わなければならなくなる。
 絢爛たる_は選挙だな。魔法使い同士が会合をもって政治を行い、最終的には投票で頂点となる者を選び出す。もちろん任期があり支持率の上がらない者は途中で首になったりもする。民主的な組織運営だ。だが魔法力の優劣は関係無い。あくまでも実務能力に優れた者が、頂点に立つ。」

釈「絢爛たる_、はそんなもんで魔法組織として機能するんですかね。」
まゆ子「絢爛たる_は、人数で足りないものを補う魔法だ。人間の数を集めて統治する事こそが最大の問題だよ。足りないエネルギーも拙い魔法回路も、集団の力でなんとかしてしまうんだ。そういう設計になっている。高度な魔法を使う優秀者も当然居るけれど、大概の魔法は集団で掛ればなんとかなる。」

 

じゅえる「しかし、その三すくみは本当に連携出来ないのかい?」
釈「そうですよ。仲良くすればどこも得をするでしょう。」
まゆ子「じゃんけんと同じでねえ、そううまくはいかないんだよ。まず一般人民に対しての態度がまず違う。聖なる_は人間のことなんかどうでもいいんだ。」

じゅえる「え?」

まゆ子「つまり人間がいずれ滅びると考えて、より高いレベルに精神を移す為の術を行っている。天国に行くのが目的と考えてもいい。天国に行けるのは神と同等の力を備えるものだけで、それは人類の中から代表者一人が行ければ全ての人間が行くのと同じと考えてよい。つまり全人類を犠牲にしても、たった一人が頂点に立てればよいと考える。魔法を発動した結果が人間社会に多大な影響を与えたとしても、気にしない。」
じゅえる「だめじゃん。」
釈「そんな考えを持っている人とは協調できません。」

まゆ子「一方絢爛たる_はこの地上における幸福をまず追求する。一般民衆の幸福の為に魔法を使うのが使命と考える。人間無しに魔法組織の存在はありえない。」
じゅえる「げんじつてきだな。」
まゆ子「しかし、当然の思考として、下らない人間の支配を排して賢人によるよりよき支配を実現しようとも考える。あるいは現実世界の有力者と結託して、効率的に支配を運用しようとも考える。それは往々にして理想から外れていくものだ。」
じゅえる「げんじつてきだね。」
釈「それは、魔法使いとしてはよくない思考法なんですね。下劣と言ってもいいくらいの。」

まゆ子「勝利の_は更に簡単。勝つ為には全てを捨てなければならない。人間社会のしがらみからも逃れて、唯一人の魔法力を高める道の追求を行う。人間社会とは縁を切るが、魔法使いの後継者を得る為には子供を産まさないといけない。また飯も喰わねばならない。最低限の要求を実現出来れば彼らは文句は言わないが、その最低限がなかなか酷いものなのだ。人間社会を食い物にする、という感じだね。」
釈「女を掠っていきますか。」
じゅえる「この場合、女を生贄にしてなにかを行う、とかもあるとした方が。例えば肉体の強化の為に女の精気を吸い取るとかの。」
まゆ子「うーん、まあそこは考えてみよう。ともかく肉体にこだわる流派だ。強大な魔法エネルギーの奔流に耐える為には、肉体の強化は絶対必要な条件だ。」

 

じゅえる「しかし、方針として互いに相容れないとはいえ、そんな事で殺し合うという訳にはいかないんじゃないかな。」
まゆ子「もっと根源的ななにか、が有った方がいいかな。例えば裏付けとなる神さまとか。」

釈「この魔法世界において、神さまとはいかなる存在なんですかね。そこが鍵ですよ。」

じゅえる「一神教という気もしないが、聖なる_は一神教的だな。一方絢爛たる_はどうみても多神教だ。勝利の_は魔法エネルギー自体を崇拝の対象にしているみたい。」
まゆ子「魔法エネルギーの奔流は混沌に属するべきもの、と考えているんだろう。神により制御出来るものではなく、奔流自体が意志と目的を持って暴れ回る。」
釈「ということは、聖なる_では魔法エネルギーをねじ伏せて高度な目的の為に使役する、という考え方ですか。神が使う為のものにすぎない。」
じゅえる「絢爛たる_は現実世界に棲む生き物としての人間は、現実世界物理世界からは離れられない。物理世界内でのみ役に立てばいい。物質的な多様性と余剰こそが魔法の成果物としてこの世に残るのだから。」

まゆ子「宗教的にはそんなもんだろう。ただどこも独立して組織が存在するから、普段は顔を会わせる事は無い。ただ金はね、絢爛たる_がまとめて稼いで分配する事になっている。三要素がすべて揃わないとこの世が成り立たないと絢爛たる_では考えるし、聖なる_と勝利の_がどちらかが優勢になっても困るのだよ。均衡こそが魔法界の発展に必要なのだ。」

 

釈「ではそれぞれの拠点ですが、絢爛たる_は街場ですね。王国とかの城の傍にアカデミーとかを構えている。」
じゅえる「ふむ。そんなもんだが、或る程度人目を避ける場所にはある。魔法はあくまでも一般社会からは隔絶した存在でないといけない。ま、皆知ってるんだけどね。」
まゆ子「勝利の_は深い暗い森ですね。獣とかも住んでいる。」
釈「野獣は魔法に従うんですか?」
まゆ子「あー、聖なる_は支配出来るし、勝利の_は痛みを与える事で使役出来る。絢爛たる_は狩人に命じた方が早いと知っている。」
じゅえる「そりゃそうか。聖なる_は孤高の存在として、どこかの聖山に塔を建てているてとこか。」

まゆ子「定番定番。」

 

釈「しつもん! 箒で空は飛べますか?」

じゅえる「飛べないと困るだろ。」
まゆ子「飛べる方が非常識なんだけどね、ハリーポターだって箒では長距離を飛ばない。」
じゅえる「絢爛たる_では空は飛べるよね、やっぱ。勝利の_は鳥の脚にでもぶら下がって飛んでいきそうだ。聖なる_は魔法生物に乗って。」
釈「しかしあまり便利過ぎるのもなんですよ。やはり空を飛ぶのは無しということで。」
まゆ子「レビテーション空中浮遊は結構高度な魔法だよ。箒で飛ぶというのは、簡単過ぎる。しかし欲しいとこだな。

 ちなみに使い魔は聖なる_は魔法生物、勝利の_は鳥獣、絢爛たる_は人間の従者だ。」
釈「にんげんですか。」
じゅえる「それはまあ、一番堅実だな。」

まゆ子「えーと基本的に、移動に関しては聖なる_は必要としない。魔法生物は自分の分身だ。分身が行けるのに本体が行く必要はないだろう。また現実世界で用事があるのならば、絢爛たる_の然るべき機関に魔法生物を通して頼めば、使いが行ってくれる。そういう契約になっている。
 勝利の_は移動は己の肉体を用いて行うから、身体機能の強化もあるという事にするか。常人では考えられない速度で森を移動する。飛ぶような早さだ。
 絢爛たる_は確かに空中浮遊は出来る。が高度な魔法でありそう簡単には使えない。石を放り投げるとかは初等魔法だが、人間を動かすのはかなりの能力とエネルギーを必要とする。ま、馬車を使うのが一番だな。」

じゅえる「一々合理的だな。」
釈「ではこうしましょう。箒で飛ぶのは学生の間で流行る悪戯なんです。何人もが魔法を集めて一人を持ち上げるという、遊戯みたいなものです。」
じゅえる「そんなくらいがエクスキューズとしては上等かな。現実問題として、箒で10メートルも上がるのはコワイよ。」

 

釈「石を投げる、とかは初等魔法でいいんですよね。その他に初等魔法はなにがありますか?」

まゆ子「
 基本的な治癒魔法はある。傷や毒、病気からの回復、強度の疲労の回復、精神的混乱からの回復。ま、お医者さんでも間に合いそうだけどね。
 石を放り投げる、モノを手を触れずに持ち上げるのは基本中の基本だ。また風を呼ぶ火を熾す雷を呼ぶのもそうだ。でも水は動かせない。水は重いし形が無い。
 生物を使役する、てのも初等魔法だ。子犬とかネズミとかを相手に一生懸命術を掛ける。
 とうぜん魔法合戦用の攻撃魔法は必修科目だ。さらに魔法生物を作り上げる為の魔法回路の形成は魔術の根幹だから誰でもやる。
 情報系の魔法もそうだね。千里眼や地獄耳、暗号解読やら謎を解いたりするのもそうだ。記憶術なんかは不可欠だね。
 意外な事だがサバイバル術やら体術もやらされる。修行の為には肉体を鍛えねばならないし、森の中に一人で踏み入って薬の材料を探さねばならない事もある。
 ダンスもあるし詩や唄も仕込まれるぞ。社交術はそれ自体魔法にも為り得る。人間を支配する魔法を混ぜて有利な状況を作るのは、人間として当然必要なスキルだ。
 手品もする。手品が見破れないようじゃあ魔法使い失格だ。他にも魔法の為の素材を扱う技能も教えてる。薬草やら鉱物とかの見分け方と使い方もね。」

じゅえる「結構いそがしいな。」
釈「それらを満遍なく修行していく内に、才能がそれぞれ分化していき進路を決定するというわけですね。でも自分に適していない分野でも、強く願って行きたいと思いますよね。」
まゆ子「それは大丈夫。本人の志望よりも受入れる側の試験の方が厳しい。向いてない奴はそもそも仲間になれない。」
じゅえる「落第者、ってのは出るだろうね。」
まゆ子「でますね。魔法回路の形成が出来ない奴、魔法エネルギーに身体が耐えられない奴、不器用な奴、頭の悪い奴、色々ありますよ。特に信頼性の低い魔法の安定性の無い奴は弾かれる。人命に関わるから。」

 

釈「魔法の道具を作るのは、絢爛たる_ですか?」
じゅえる「いやそれは、魔法回路を物品に乗り移らせるってわけだろう。聖なる_じゃないかな。」
まゆ子「そうだね。でも物品自体を作る技能は魔法使いには無いよ。またどんな形状でも、魔法回路がくっつけば皆同じだろう。しかしエネルギー供給は別だ。」

釈「絢爛たる_が用意した物品に、聖なる_が魔法回路を組み込んで、勝利の_がエネルギーを与えて使う。ということもありますね。」
じゅえる「マジックアイテムか。アイテムを使えば物理魔法が誰でも使える、というわけかな。箒で空も飛べる。」
まゆ子「うーん、そういうものかな。じゃあ、絢爛たる_はマジックアイテムを作るのに必要な素材を魔法の力で精錬する事ができる、って感じか。」
釈「或る程度高度な製品でないと、魔法回路が上手く乗らないのです。魔方陣とかがちゃんと描かれていないと、定着しないんです。」
じゅえる「そうだね。絢爛たる_はそういう機能があればいいか。物理魔法アイテムは自分達が一番よく使うだろうし。」

まゆ子「魔法の箒を使うにはべらぼうな魔法エネルギーが必要で、それは勝利の_の素質を持った者でないと使えない。てことでいいか。」
じゅえる「エネルギーの出現の仕方がそこで現われるってことだね。情報系の魔法に得意な者は聖なる_への特性も示すとかか。」
まゆ子「学園には、聖なる_から度々魔法生物がやってくる。それに敏感に反応する者はやはり聖なる_の特性があるんだろう。他の奴にはあまり見えない。」
釈「定番っぽくなってきましたね。」

 

じゅえる「では、魔法の杖は、ハリーポターが使うような小さい棒だね、は必要?」
まゆ子「要らないでしょ。」
釈「定番だから欲しいです。」

まゆ子「うーん、そんなものに頼っていてはダメだよ。ま、せいぜい鍵だな。学園を自由にうろつき回るには鍵が必要で、魔法を行使できる者でないとそれは動かない。それだけの機能だ。」
釈「えーーーー。」
じゅえる「まあ、魔法の教材には鍵が必要だろうし、それ自体はアイデアとして悪くない。呪文と鍵、だな。先生に呪文を教えてもらうと、鍵を使って部屋に入れる。アイテムの使用が許可される。」
釈「戦闘訓練の際にも使いましょうよう。」
まゆ子「あー、じゃあこうしよう。物理魔法を用いる時は杖が有効だが、魔法攻撃と魔法回路形成にはなんの役にも立たない。物理魔法はアイテムで強化できるが、この二つはできないのだ。」
じゅえる「じゃあ、物理魔法の方向制御用の安全装置、という事にするか。どこにでも魔法を掛けられては困るからね。」
釈「はい! そういうのが欲しいんです!」

 

まゆ子「図らずもスペルの話が出てしまった。鍵というのは正しい想定だ。魔法回路を起動させる鍵でもある。しかし、それだけでいいのかな? スペル自体に魔法を乗せるというのは無し?」
じゅえる「ハッキング、という感じかな。他人の魔法回路を無理やりこじ開ける魔法。」
まゆ子「なるほど。それはあり得る。他人に命令するのか。」
釈「暗号解読、てのは魔法回路が勝手に暗号を解読するというのですよね、脳味噌で理解するのではなく。呪文で他人に暗号を解読させる、とかが良いのではありませんか。」
まゆ子「なる。他者への魔法命令か。それ自体が攻撃魔法の一種だが、攻撃魔法として認めた方がいいかな。」
じゅえる「強制的な、という意味ではいいんじゃないかな。初歩の攻撃魔法だよ。」

まゆ子「というか、この魔法体系では他者を開かねば魔法エネルギーは解放できないんだよね。勝利の_は、自分を開けるようになっている、ということかな。」
釈「或る程度開かれると、ぶっ壊れてエネルギーがダダ漏れ状態になる、という感じではどうです。自分では止められないんです。」
じゅえる「ふむ。そうなってしまうと高度な魔法回路の形成はもう出来ない。というか必要も無い。魔法エネルギーの制御に必要なものだけだから。」
まゆ子「そこんところの制限はと閾値は決まってるんだよ。規を越えてしまうと、もう後戻り出来ない。」

じゅえる「では、スペルは魔法生物と魔法アイテム、及び他の魔法使いに対して行使すべきもの。一般人には必要無い。精神を支配して命ずればいいだけだからね。」

まゆ子「スペル自体が空中をさ迷う、というのは有ってもいいかもしれない。自分で自分を保存する最低限の魔法回路を持っている魔法生物の最下級の存在だ。誰かに拾われて解読されるのを待つんだね。」
釈「そうか。そいう所からも聖なる_への道は繋がっているんだ。」
じゅえる「そいう事なら、勝利の_はエネルギー自体に魔法回路を与えて生物にしちゃう、とか、絢爛_なら燃える焔が燃料を求めて歩き回るとかにもできるな。」
まゆ子「そりゃ高等魔法だよ。」
釈「エレメンツの呼び出しですね。精霊ですよ。」

じゅえる「感情を記録した魔法生物が、幽霊ってわけだね。」
釈「死体が生きて動き回る、とかもあるわけです。」
まゆ子「いや死体はーいやだよ。」
じゅえる「考えなさい!」

まゆ子「あい。えーと死体は死んでるから動かない。動くのは死んでない死体だ。だから、死体は常に治癒魔法が掛っている状態にある。治癒魔法が死体内部で永続している、魔法生物化した治癒魔法というわけだ。しかし死体であるから完全な人間にはなりえない。そもそも高度な知性は無い。これはー制御回路が別口で用意されていて、自前の脳は動いてないという事を意味する。脳の最重要部は魔法ではいかんともし難いんだ。だから生命維持の基本機能のみは動くけれど、行動はできない。術者が命じる行動のビジョンを読み取って、反射的に動くだけ。もちろんより高度な魔法生物をくっつけると高等な動死体が出来るわけだけど、それは術者の力量だな。」
釈「つまりこれは、死体をマジックアイテム化した状態にある、ということですか。では絢爛たる_の秘法ですね。」
じゅえる「そういうことかな。物理的身体を有するのだから。」

 

釈「魔法自体の魔法生物化、ができるんですね、結局。」
まゆ子「魔法回路の分離が出来ればね。聖なる_では基礎的な技能だが、他では結構な高等技術になる。聖なる_は物理魔法を使わない魔法だからこそ、簡単だ。基本的に、聖なる_は魔法回路自体への干渉を目的とした魔法生物を作る。絢爛たる_では物理魔法の継続を目的として魔法生物化する。勝利の_ではエネルギーの奔流をその場に留める為に、自身の分身がエネルギーの番をする、ということになる。」

釈「戦闘はできるんですよね。」
まゆ子「聖なる_の魔法生物は魔法回路の破壊が出来る。最初から戦闘用だ。魔法エネルギーの供給は術者から遠隔で行われる。時空も越えて供給される。
 勝利の_は戦闘力はほとんど無いが、なにせ魔法エネルギーをしこたま溜め込んだものだから、魔法回路が破壊されると爆発する。それに巻き込まれては魔法回路を持つ者は無事ではいられない。
 絢爛たる_では物理魔法の継続が目的であるから、攻撃手段も物理的だ。魔法回路を保護する為に逃げ回るようプログラムされている。ちょっと厄介。魔法エネルギーの供給はアイテムを通して遠隔で与えられる。アイテムが破壊されると止まるが、逆にアイテムが術者を離れて現地調達もしてくれる。周辺の地相とかが偶然に良い配置になっていると、永続的に機能する事も可能だ。」
じゅえる「うん、上出来だ。召喚系の魔法が出来る、ってことだね。うんうん。」

 

じゅえる「一つ確認しておきたいんだけど、絢爛たる_の物理魔法ってのは、他のよりも弱いんだよね。魔法としては。でもレベルとしても低いの?」
釈「あーそれは、応用に傾くというのは普通レベルの魔法使いであってもいい、というのではないですか? それは確かに分かりにくいですね。」

まゆ子「あーそれはー、まず物理レベル現実レベルでの問題を片付けよう。
 物理的な問題でいうと、初等魔術や他の_が持っている物理魔法とは隔絶して違うものが、絢爛たる_には存在する。それはー、科学技術だ。
 簡単にいうと、原子レベル素粒子レベルでの物理現象に対する魔法操作、なんてものは、他の_では想像だに出来ない。」

じゅえる「あ。それはー、つまり科学技術の知識の進展に、絢爛たる_では追随してるんだ。」
釈「逆に、他の_では古典的ば地水火風といった素朴なエレメントしか扱ってない…。」
まゆ子「簡単に言うと、雷を落とす魔法を使える奴が、電磁気学を理解しているか、はまた別の話なんだ。そして素粒子レベルでの魔法の応用は、現代では非常に大きな利益を産み出す。」

じゅえる「はー、それは考えなかった。そりゃあ無理だわ。」
釈「そうですねえ。そんなレベルでも魔法が使えるなんてのは、普通考えませんよ。さすが現代魔法だ。」
まゆ子「つまり物理魔法は確実に現実社会に意味を持ち、他には換えられない存在である。だが魔法の観点からして高度なものか、というのは確かに話が別だ。
 こちらもやはり捨てたもんじゃない。

 物理魔法をもっぱらにする絢爛たる_では、確かに聖なる_ほど魔法回路のレベルは高くないし、勝利の_ほどには大きなエネルギーを扱い得ない。
 しかし魔術師は嫌でも進歩する。自らの魔法回路を拡張しエネルギーを扱う手法を進化させると、別の方向に高いレベルを積み重ねる事になる。
 それが、複数化だ。一人に一つしかない魔法回路を、二つ三ついや100個も持てる事になる。」

釈「大丈夫なんですか、そんなに持って。」
まゆ子「正確には、魔法回路の種を持つ。物理魔法ではさほど高度な魔法を使わないから、元の機能を十分に保ったまま、別の回路を組み立てるのが容易いんだ。だから魔法回路にパーティションを作る、つまり独立して動く回路を形成出来る。

 これは聖なる_の魔法回路を分離して、というのとはかなり違う。聖なる_では自分の身体から魔法回路を分離するが、あくまでもそれは一つの魔法回路の延長としてある。要するに高度な魔法回路の部分集合で、時空を越えて繋がっている。独立して行動する魔法生物がダメージを受けると本体にもダメージが及ぶ。

 ところが絢爛たる_ではパーティションを切った結果、一個壊れても全然影響が及ばないんだな。しかも、壊れた所もさほど高いレベルの魔法回路ではないから、修復や再構築が簡単になる。防御魔法を多数展開して破損しても、なんて事ないんだ。
 さらには、全ての魔法回路を同時に起動して、多数の魔法を同時に展開するという事も出来る。まあ制御が難しいから、同じ魔法を多数起動するという形になるが、異なる魔法の同時起動も理論上は可能だ。」

じゅえる「ふうむ。なるほど奥が深い。」

まゆ子「でもね、この複数回路の形成は、高度な魔法への道が閉ざされた初級魔法使いでも必然的に到達する道なんだ。だから絢爛たる_の本義は、最初に言った物理法則や知識との連動こそが重要で、これじゃあない。複数起動の能力は当然でありそれをどう使うかが問題なんだな。」
釈「なるほど、納得しました。つまり絢爛たる_の魔法使いを攻撃すると、複数の別な魔法での連撃を食らうわけですね。」

じゅえる「でも、高度な魔法てのは、自力では到達できないかい? 個人の才能とかで到達は出来ない領域なの?」
まゆ子「そりゃ天才という奴だよ。基本的に高度な魔法、というのは無いんだ。なにが必要かという需要によって確定する。
 魔法回路を進化させる聖なる_では、魔法回路が独自に思考を開始するのを一種の目安としてレベルを決めている。つまり、魔法回路が魔法生物に進化した時点で、その魔法使いは免許皆伝なんだな。
 勝利の_ではもちろん勝てばいい。勝つ為に必要な全てを兼ね揃えている者が、高度な魔法を身に着けたと呼ばれる。」

釈「つまりは、なんの為に、という必然の道を見出さなければ、高度な魔法というのは発展し得ない、という事ですね。初級魔法にはそれが無い。」
じゅえる「というか、初級魔法は目的とする機能が明確でそれ以上を要求されないから、進歩もしないってことか。」

まゆ子「治癒魔法は日々進歩しているんだけどね。最近のトピックスでは遺伝子変換を魔法で行おう、というものだが、それは分子レベルでの魔法の応用だから、単に病人が癒れば良いという伝統的な治癒魔法では、絶対に到達出来ないな。」

 

 

釈「えーと、こんなものですかね、必要な魔法は。時間を遡るとかは無しですかね、やっぱり。」
まゆ子「時間はヤバいだろう。それは聖なる_の究極目標に近いもんだ。また神の力を借りる魔法、ってのはまだ設定されていない。」

じゅえる「神の、ってのは無しにしよう。古代に誰かが作った魔法生物を使役するという魔法だよ。魔術の巨大なる金字塔がうろついているんだ。」
釈「神の僕を使う、ってわけですね。でもこれは、聖なる_の魔法ですかね、使役するのは。」
まゆ子「そんなもんかね。まあ滅多に遭遇するものではないし、空間を飛び越えて召喚するわけにもいかない。生身の術者よりもはるかに高度な魔法回路を持っている存在だ。こちらから出向いていかないとね。強大な力を持っているけれど、今ではその造り方がまったく分からないんだ。物理魔法を使い、超高度な魔法回路を備え、膨大な魔法エネルギーで動く。これはやはり神だな。魔神だ。」

じゅえる「時間はどうしよう。ちょっとくらいいじれると面白いんだけど。」
釈「ちょっとくらい、ですね。」
まゆ子「魔法生物を時間を越えて飛ばす事ができる、くらいにするか。情報を獲得することが出来るくらいで、物理的影響は与えられない。うーん、まあでもそれくらいが出来るのであれば、聖なる_が現実世界の征服支配にこだわらないのも当然ですかね。なにせ未来が見れるんだから。」
釈「そうですね。十分過ぎるくらいのアドバンテージがあるんですよ。だから超然としていられる。」

 

じゅえる「時空を越えて、セイバーちゃんを呼び出す聖杯の魔法、ってのは無い?」
釈「過去の英雄を呼び出して使役する、というのですか。それはー。」
まゆ子「召喚系の魔法の定番だな。欲しいな。しかし時空を飛び越えるのは禁止だ。過去を読み取り情報だけを現代に持ち込んで、魔法生物として再現する。しかもそれに物理魔法を実現させる。無理だ。」
じゅえる「アイテムがあればいい、という事にしよう。英雄の遺物を利用して魔法回路を仕込み、英雄の情報を再現する。で遺物この場合武器宝具を扱う生贄を必要として、人体に英雄の仮想人格を投影する。」
まゆ子「生贄は死にますね。」
釈「そのくらいは許容範囲です。肉体変異も起こしましょう。」

じゅえる「扱いとしては所詮マジックアイテムだ。人体をマジックアイテム化したにすぎない。扱うには別途魔法エネルギーの供給が必要。勝利の_しか使えない。」
まゆ子「いや、アイテムを利用して集団の魔法エネルギーを供給出来るようにもしよう。絢爛たる_にも使えるんだ。」
釈「どちらにしても、聖なる_の力が無いと宝具に魔法回路を仕込めませんよ。」
じゅえる「うん。結構聖なる_の役割は大きいな。さすがに魔法の家元だ。」
まゆ子「宝具をそれように変換するのは、絢爛たる_の仕事なんだけどね。アイテムの追加もしなきゃならない。」

 

釈「そうですねえ。それらは漫然と作られるのではなく、或る不可避な命令によって作られて、敵対する派閥に供給しなければならない事になっているんです。マジックアイテム供給計画というのが、どこかにあるんですよ。」
じゅえる「ふむ。死海文書だね。」
まゆ子「魔法界を統べる計画書、だね。聖なる_を縛るものはやはり神の言葉ってことだ。うんそれ採用。」

釈「やはり、発掘されるんですかね。洞窟とかから。」
じゅえる「古代の文書館が発掘されたというか古代から続いている、という感じではないかな。」
まゆ子「文書館組という魔法使いの一派がある、て事にするか。魔法の文書をひたすら解読し続ける存在。暗号解読専門家だ。」
じゅえる「秘密の中の秘密だね。うん。それはやはりアカデミーつまり絢爛たる_が押さえているんだよ。というか、金掛るし。それに関してはどちらの派も異を唱えない。」
釈「中立ですよね、やっぱり。」
まゆ子「聖なる_も文書館から供給される魔法の書をすべて網羅するわけにはいかないんだ。やはりこれは絢爛たる_の組織力が守るのに必要なんだ。」

釈「予言、てのもここにあるんですかね?」
じゅえる「ハリーポターも予言があったな。今回の映画は。」
まゆ子「字が浮き出ては消える碑というのがやはりあるんだな。予言もそこに浮き出て来る。それに従ってマジックアイテムは作られる。そういう事だよ。ものによっては、アイテムの元を集めるだけでも十数年掛るというのもある。結構大変だ。」

 

釈「しかし、そういうのがあるとすれば、敵も別に用意しないといけませんね。魔法界とは別の勢力が必要です。」
じゅえる「闇の勢力ってことか。まあそれは、別口だなあ。」
まゆ子「それはあれだ。古代に作られたマジックアイテムやら魔法生物を使役するだけの勢力もあるんだ。鬼なんだよ。」
釈「悪魔、ですね。吸血鬼とか狼男とか。生まれながらに魔法を使う能力を身につけた生物。それが居るんです。」

じゅえる「べたな定番だよ、そりゃあ。うん。」
まゆ子「べたでいいじゃないか、はりぽたなんだから。」

 

     ***

南洋子「というわけで、我々は今日から魔法少女になった!」
江良美鳥「わーい。」
明美四号「ちょっとまて、何故に一介の女子高生が魔法処女にならなきゃいかんのだよ。」
洋子「何故もなにも、紋城高校は元から魔法学校なのだ。」
四号「そういうせっていなのか。」
美鳥「講師をご紹介します。京都でも有名な魔法使いの、円条寺蓮さんです。」
蓮「どうもーお。えー今日からびしびし魔法使いになる為の修行をしていきますね。」
洋子「円条寺先生はバストが99糎もあるナイスバディのべっぴんさんなのです。しかも眼鏡っ子だ。」
美鳥「おおー。」
四号「どこに驚いたんだ、いま?」
蓮「えー、この度てきとーにでっち上げられました『針歩太流魔法術』によりますと、新入生には魔法回路が無い。」
洋子「ふむふむ。」
蓮「無いのも当たり前。これから作ります。というわけでテキストの3〜12頁を読んで下さい。読みましたね。」
皆「はーい。」
蓮「というわけで、早速やってもらいます。」
洋子「先生! テキストには魔法力というものが魔法回路の形成には邪魔になる、と書いてます。」
蓮「その通り。人体には元々魔法から人体を護る為の保護機能が付いています。これがある限り魔法回路を身に着ける事はできません。」
四号「それはプロテクトが掛っている、ということですか。じゃあどうすれば、」
蓮「死にます。」
皆「は?」
蓮「死に掛けた状態になると、魔法保護機能が停止します。無防備状態になります。そこで初めて魔法回路の形成が可能になります!」
美鳥「ほー。」
四号「ちょっと待て。死に掛けるってのはなんだ?」
蓮「私が魔法を使って半殺しにいたします。」
美鳥「なるほど。」
四号「ちょっとまって、半殺しというのは、本当にはんごろし?」
洋子「えー、半殺しでは失敗して死んじゃうとかは、無いんですか?」
蓮「大体は大丈夫です。」
美鳥「つまり、大体の子は死なないんですね。」
四号「それは時々死ぬ奴も出る、てことだ。」
洋子「具体的にはどのように半殺しにするんですか?」
蓮「魔法防御機能は人体が元々持つ魔法エネルギーを用いて防御している。魔法エネルギーをさくっと分捕ると、比較的安全に半殺しになります。」
四号「魔法エネルギーというのは、通常の人体においてはなにも益は無いんですか。分捕られても大丈夫なものなんですか。」
蓮「元々ちょっとしか無いものです。だからちょっとしか影響がありません。これが無くなると、おばけに憑かれ易くなり妄想にうなされ、理由も無く衰弱し病気にかかり易くなり、運が悪くなり犬のウンコにつまづいて心臓停止、とかになります。」
四号「…十分やばいじゃないですか。」
洋子「文字どおり命懸けの訓練なんですね。」
美鳥「しつもん! 先生はちょっとしかエネルギーが無くても魔法が使えるのですか?」
洋子「そうだ。魔法エネルギーが人体にちょっとしか無いのに、どうして魔法が使えるのですか。」
蓮「ぶっちゃけた話、他人からエネルギーを奪います。今日はあなた達からです。」
四号「うう、やはり世の中には美味い話ってのは無いんだ。」
洋子「取られた私達は、魔法エネルギーの補給はどうすればいいんですか。」
蓮「決定的な損傷が無い限り、一晩寝て御飯を食べれば勝手に戻ります。人体に普通にあるエネルギーというのは所詮その程度です。」
美鳥「それはよほどお腹の空くはなしですか。」
洋子「でもその程度のエネルギーをかき集めても、大した量にはならないでしょう。それとも百人千人を動員しますか。」
蓮「だからこそ、魔法回路をさっさと身につけてもらいます。まずあなた達が身につける魔法回路は、暗黒世界から流れ込んで来る魔法エネルギーの出口を維持する機能を実現します。蛇口ですね。これを身につける事で、先生達はあなた達からどばどばとエネルギーを引き出す事が出来るようになります。」
美鳥「なるほど。」
洋子「先生。ではその蛇口能力を身につけると、私達もエネルギーをどばどばと使えるという事ですか。」
蓮「だめです。自分の蛇口を自分でひねる事は出来ません。エネルギーを放出するか、魔法を使うかの二択です。だからこそ、お互いが協力しなければなりません。二人組になって、一人が魔法行使者、ひとりが魔法力供給者になります。」
四号「二人一組で魔法を使う、ということですね。」
蓮「ですが、尋常の事をしていては魔法エネルギーは出て来ません。蛇口をひねるのにも力が要ります。そして力が強く必要になるキツい蛇口からの方がより沢山エネルギーが出て来ます。」
洋子「でも、その蛇口をひねる為のエネルギーは、」
蓮「自前の極少ないエネルギーです。しかも相手は抵抗します。無理やり蛇口をこじ開ける事になります。」
四号「抵抗って、協力は出来ないんですか?」
蓮「死ぬか殺されるか、という極限の状態でこそ、蛇口は開きます。またエネルギーを放出する方もその度に瀕死の状態になり、魔法回路の形成の機会を得るのです。」
洋子「つまり、私達は互いに半殺しにし合い、負けた方がエネルギーを取られて死に掛けて、その度に進歩するということですか。」
美鳥「ドラゴンボール形式ですね。」
蓮「どら?」
洋子「しかし、魔法エネルギーを得た勝った方は、何をするのですか、それで。」
四号「そうです。金銀財宝がざっくざく、とかの得はあるんでしょうね。」
蓮「まあ、なんだ。魔法回路の形成が無いと、ダダ漏れして無くなってしまうだけですね。相応の高度な魔法回路でないと、膨大なエネルギーを使役出来ない。そして、魔法回路でなにをすると言っても、あなた達初心者には何も出来はしません。だから、溜めます。」
四号「そうか、エネルギーがどんどん貯まっていくんだ。」
洋子「でも先生、魔法エネルギーを使う魔法回路は、エネルギーを根こそぎ奪い取られた状態でないと形成出来ないんですよね。じゃあエネルギーの溜まる状態は不利なのでは?」
蓮「あなた達個人には不利でも、私達先生には有利です。それだけたくさんのエネルギーを吸い上げる事が出来ます。心配しなくてもエネルギーは定期的に先生達がクリアにしてくれます。要は、エネルギーを扱う量がどんどん増えていく、ポテンシャルが上がるという事です。」
美鳥「なるほど。勉強になるな。」
四号「しかし、魔法回路の形成が上手くいかないと、だめなんだな。」
蓮「そこでエネルギーポテンシャルの量がものを言います。魔法を溜め込むタンクはそれ自体が魔法回路です、当たり前だけど。魔法コンデンサと考えて下さい。電気を溜めるのと同様に魔法エネルギーが溜ります。それは魔法回路が成長しているというのと同義です。ですから、この肥大した魔法回路を一部改変して他の目的に振り換える事が出来るのです。」
四号「つまりは、勝てばいいのですね。」
蓮「簡単に言うと、そういうことです!」
洋子「なるほど、結局はかなり簡単な理屈なんだ。」
美鳥「では魔法回路がどんどん成長していくと、どうなるんですか。凄い魔法が使えるようになりますか。」
蓮「まずは、初期魔法回路の形成に2ヶ月は掛ります。この期間を過ぎると、半数の生徒はかなり魔法を使えるようになります。」
洋子「残りの半数は?」
蓮「負け癖が付きます。」
四号「なるほど、それは大事だ。」
蓮「負け癖が付いた生徒は使えませんから、放校です。」
四号「かなり厳しいな。」
蓮「勝てる生徒同士が今度は勝てる魔法を使って、勝負します。第二段階では形成された魔法回路を利用して攻撃魔法を勉強します。」
四号「お、やった。」
洋子「防御魔法というのは無いのですか?」
蓮「この段階では意味がありません。どちらかが勝たねばならないのです。だから学校はガチンコの勝負を求めます。」
洋子「なるほど。」四号「なるほど。」
蓮「代りに治癒魔法を覚えます。魔法力を使って人体の治癒を出来るようになります。魔法勝負は精神のみならず肉体にも危険が及びます。治癒魔法は非常に大切な技能です。また治癒魔法の現実社会での需要は大きく、これ一本だけでも食べていけます。」
美鳥「なるほど、これは絶対に獲得しなければ。」
洋子「攻撃魔法の訓練はどのくらいの期間続きますか?」
蓮「一生です。魔法使いというものは常に精進し時に応じて他の魔法使いと勝負をし続けなければならないものです。ですが、勝負ばかりに血道を上げても世間様の役には立たない。だからどこかで道を分かれます。ただし、魔法格闘に特化した魔法使いの一団があります。超強力な魔法攻撃を身に着ける事で、魔法エネルギーを自在に扱う事になります。自分の意志で自分の蛇口を開く事が出来るようにもなります。」
四号「それいいな。私それになります。」
蓮「だが儲からない!」
四号「う!」
蓮「もう一つの道があります。魔法回路をどんどん高度なものに組み替えていき、より高度な魔法を使えるようになります。学校で教えるレベルの魔法からでは想像もできないほどの高見に登る道です。」
洋子「それは儲かりますか?」
蓮「ぜんぜん。」
四号「論外だな。」
蓮「しかし他の魔法使いに対して支配的な力を振るう事ができるようになります。儲かっている奴をカツアゲすれば良いのです。」
美鳥「なるほど。勉強になります。」
四号「格闘専用のと、その高度な魔法使いとでは、どっちが強いんですか?」
蓮「ケースバイケースだね。強力な魔法エネルギーをばちばちとぶつけて来るのと、少ない魔法エネルギーを効率的に使って防御を行うのと、どちらが強いかは術者の能力の問題になります。」
洋子「つまり、高度な防御魔法が使えるようになる、ということですね。」
蓮「それだけでなく、高度な攻撃魔法も使えます。また他者の魔法回路自体を破壊する攻撃魔法も存在します。」
四号「つまり質と量の戦いなんですね。で、儲かる魔法は?」
蓮「この二つの魔法は、儲かりません。何故ならば現実社会では意味の無い魔法だからです。雨が降ったり雷が落ちたり、といった物理現象を引き起こす魔法とは異なり、魔法の構造自体に干渉する魔法だからです。儲かるのは、物理魔法を使う連中です。」
美鳥「御飯が天から降って来る、という魔法はありますか?」
蓮「金持ちが弁当持ってやって来る、という魔法はあります。」
四号「おお、それは凄い。」
洋子「物理魔法は特別な訓練を受けないと使えない、んですね。」
蓮「ちょっと違う。一人の魔法使いは分野の違う魔法を自在に使いこなすというわけにはいかないのです。儲ける為には儲かる魔法に特化しないといけない。」
四号「そりゃそうです。ですが、それはデメリットがありますか。」
蓮「魔法勝負で勝てなくなります。またエネルギーの取り扱い量が少ないままです。また魔法的に見てさほど高度な魔法回路ではなく、魔法防御力もありません。」
四号「弱いんですね?」
蓮「そうでもありません。むしろ物凄く強い。魔法勝負でこそ負けますが、現実の戦闘においては物理攻撃魔法は大きな力を持ち、そして魔法使いは通常物理防御力を持たない。」
洋子「つまり、鉄砲で相手を撃ち殺すのと同じわけですね。」
四号「魔法で物理攻撃魔法を防げないんですか?」
蓮「先手必勝。」
四号「かんたんな話だな。」
蓮「しかし魔法エネルギーが少ないのは致し方ありません。そこで数です。魔法使いを多数集めて、エネルギーを分捕ります。」
洋子「つまり、この学校は儲かる魔法の系列、ということですか。」
蓮「そういうことです。みんな頑張ってエネルギー供給源になってくださいね。」
皆「はあ。」
蓮「というわけで半殺しを始めましょう。」

 

   ***

じゅえる「というわけで、魔法学校ができたわけです。どういうの?」

釈「やはりハリーポター風の古城みたいなところで寄宿舎のというのが、良くはないですかね。」
まゆ子「日本だよ日本。そんなもなあ無い。」
じゅえる「そうだよなあ、一応日本の学校だからなあ。がっこうというと限界があるよねえ。」

釈「ではどこかの島をまるまる魔法学園都市、というのでは。「ネギま!」になってしまいますが。」
じゅえる「やはり極めて日本風にアレンジし直しちゃう。えーと、やはり学校なんだから校舎があって、木造ですか。」
まゆ子「もくぞうねえ。うーん、定番ではあるが魔法学校となると、なんだ。」
釈「では擬洋風建築ではどうです。明治みたいな感じで。」
じゅえる「うん、素敵。」
まゆ子「悪くない。だが魔法学園の規模を考えると、全館それだとゴージャス過ぎるよ。」
じゅえる「皇居だってそんなには無いか。」

釈「魔法学園の規模ですよね、問題は。生徒は何人居るんですか。」
じゅえる「魔法使いってのは、そもそも人数が居ないものだから、一学年50人から100ってとこでしょう。6学年あるとしても1000人はいかない。」
まゆ子「門代高校で収まっちゃうな。」
釈「しかし、教員も居るし宿舎もあるし、1000人って事は無いでしょう。」

まゆ子「あー、魔法学校というのがホグワーツをモデルにしてはいかんのだ。あれは元々はただの学校だ。魔法学園には大学から上の研究機関が併設されているもんだ。」
じゅえる「つまり、魔法使いの拠点として考えればいいんだ。というと、要塞都市?」
釈「都市とは言わないまでも、要塞であるのはなかなかに説得力があります。なにせこの設定は魔法合戦を繰り広げるのが宿命ですから。」

 

まゆ子「わかった。第一次世界大戦風の要塞をベースに、擬洋風建築が立ち並ぶ、あやしげな学園都市だ。」
じゅえる「うむ。戦車や大砲も随所に配置しておこう。」
釈「な、なんですかそれ。戦争でもおっぱじめようという気ですか。」
じゅえる「いや、そのまんま。魔法合戦でも武器は使うよってこった。」

まゆ子「具体的に言うと、大砲で弾ぶっぱなして、物理魔法で誘導するということができる。凄い威力だ。」
釈「はあ。それは極めて効果的な魔法の使い方ですねえ。単に弾を飛ばすよりもずっと強力で効果的だ。」
じゅえる「しかも魔力はほとんど使わない。弾丸を横にずらすのは、真っ直ぐぶっとばすよりも遥かに楽な仕事なのだな。」
まゆ子「戦車もそうだ。魔法攻撃を防ぐ魔法装甲というのを開発してるんだ。これに入って大砲撃てば、必勝間違い無し。」

釈「魔法装甲、というのは魔法アイテムですか。」
じゅえる「魔法エネルギー攻撃、魔法生物攻撃を防ぐ為のものだろうから、そうかな?」

まゆ子「いや、貧弱な物理魔法攻撃を防ぐ為のものだ。どの魔法使いだって或る程度の物理魔法は使える。それを防いでなおかつ魔法攻撃を防ぐ為にはどちらかに専念しなければならない。物理防御魔法を展開するよりは装甲内に篭った方が楽だ。攻撃も出来るし。アイテムを通して魔法エネルギーの転送をもらい、魔法防御を展開する。」
じゅえる「物理魔法使いっていちいち合理的だな。」
釈「なんか腹立ってきますね。」

まゆ子「仕方ないじゃん。便利なんだもん。でもおかげで、こちらも魔法攻撃が出来るんだよ。数を集めてぶちかます、ってのが出来るんだ。しかもかなりの高等魔法だ。勝利の_は魔法エネルギーこそ高いが魔法としてのレベルは低い。対して、絢爛たる_の攻撃魔法は或る程度高いレベルにある。術式展開に手間が掛るけれど、戦車の中に居ればなんとかなる。別の魔法使いに防御を肩代わりしてもらう事も出来る。」
じゅえる「ふむ。負ける気は無い、ってことか。」

釈「ということは、正課の授業で戦車の運転、とかもあるわけですね。」
まゆ子「まあ、そうかな。」
じゅえる「大型重機の運転免許付きか。悪くないな。」

 

釈「武装の必要は分かりました。で、肝心の教育施設はどうなっているんです。」

じゅえる「全寮制の魔法学校、6年制男女別、というところは外せない。」
まゆ子「ホグワーツはなぜか男女一緒だが、女子校だ! これは外せない。」
釈「鯉は無くてもいいんですか?」
じゅえる「男女併学なんだよ。学校の中で男女に分かれている。だから、なんか行事があると男女一緒のカリキュラムやらが発生する。学園祭とか体育祭とか。」
まゆ子「うんうん、それだ。」

釈「では可愛い制服を来て、みんなマントとか被って授業に出るんですね。」
じゅえる「あー、どうだろう。西欧魔女スタイルであった方がいいんじゃないかな。魔女だし。」
まゆ子「そうだねえ。でもセーラー服という手も悪くないし。スカートの丈は股間が見えるほどに切れ上がっている必要があるし。」

釈「ではいっそメイド服にでもしますか。」
まゆ子「うーん、定番のスタイルといえばチェックかなあ。魔法使いでないといけないんだよ。魔法スーツというのがあれば、」
じゅえる「ではビキニ鎧なんかも選択肢に入るかな。エロゲっぽくなっていくけど。」

釈「ここは素直に、スカートは尻が見えるミニ、脚は黒のストッキング、チェックのベストに帽子、という真っ当なスタイルでいくべきでしょう。」
まゆ子「現代的なスマートさは欲しいんだ。携帯電話くらいは皆持ってる。しかしー、まあスタイルは後で考えるか。魔法戦闘スーツってのも考えるべきだろうし。」
じゅえる「うーんとそうだねえ、やはりブルマと体操服で。」
釈「いやーここはスク水っぽい恥骨がばっちり見えるようなボディスーツを。」

まゆ子「ま、色々とありますが、そうだねえ。つまり制服を引き抜くと戦闘スーツになれる、という一瞬で変身が出来る格好をしているというのが。」
じゅえる「肯定だ。」
釈「変身はぐっどです。では変身前の制服は割と地味な感じで。やはりハーフのマントも付いている事にしましょう。」
じゅえる「そうだな。エンジの服でシックに、でもスカートは短いストッキングは欠かせない。」

まゆ子「ふむ。じゃあ服はそういうことで。校章が魔法アイテムになっていて、なにか守ってくれるというのがいいかな。」
じゅえる「どうせなら生徒専用ケイタイってのが支給されていて、それが生徒の居場所を教えてくれるGPSみたいになっている。」
釈「完全監視体制ですか。まあ、魔法学校ですからそれでもいいですかねえ。」

まゆ子「そこはかとなく厳重警備がされているんだよ。あーそうだねえ、つまりこのケイタイが許可証でありお財布なんだ。学校の食堂とか売店とかでも、これで決済する。」
じゅえる「いやに近代的だな。」
釈「いや、これでいいんです。これこそが現代魔法少女学校です。処女検査も行います!」
じゅえる「う。股ぐらぱっくりと開いて触診ですか。魔法学校ってそういうものだっけ?」
まゆ子「ともかく、身体検査はばっちりとされてしまうのだ。せくすすると退学、という校則も決まっている。魔法的になにかいかん理由があるんだ。」

釈「制服とケイタイと魔法の杖。ケイタイは情報ツールとして機能するから、学生証にもなりますし、校則も呼び出す事が出来ます。」
じゅえる「そして、魔法の杖を使うと一般人には閉ざされている扉が開くんだ。」

 

釈「えーと、一学年50人ですか。この学校は日本だとして、生徒は日本人オンリーですか。」
じゅえる「えーと立地がどこにあるか、日本であれば島だろ。架空の大陸であれば内陸だろうけれど、やはり大きな湖は欲しいかなあ。」
まゆ子「ホグワーツはどっかの山の中にある。あのくらい辺鄙な土地であってもいいかなと思うけれど、日本の場合はどうかな。いっそ隣が普通の都市、というくらいかなあ。」

釈「いっそのこと、軍事施設の内部に存在する秘密都市、というくらいが。そうですよ、地下の空洞に都市があり、街があるんです。」
じゅえる「べたべただな。だが悪くないアイデアだ。」
まゆ子「なんでこんなとこに、ってくらい普通に穴が開いてるんだな。エレベータを通ると普通の地方都市が上にあるんだ。」
じゅえる「街に湖があり、そこが実は地下都市の明り採りの窓なんだな。」

釈「しかし、何故にそんな凄い所にあるんです。その魔法学校は。」
まゆ子「そりゃやっぱり、使徒が攻めて来るからだろう。」
じゅえる「吸血鬼とか狼男とかが攻めて来るんだよ。」

釈「なんか、定番とちがう…。」
じゅえる「でもそのくらい突拍子も無い方が、むしろ斬新で目立つでしょう。生徒が上の街でバイトとかもするんだよ。」

まゆ子「なにか敵に凄い奴らを考えないといけないね。えーと、やはり他の二つの派閥とは関係無い、別口の敵であるべきかな。」
じゅえる「そうだねえ、魔法生物というのとは異なる、魔界の存在という敵だね。魔神か。」

釈「やはり、地道に悪魔がくるというのが。何故です? なにか恨みを買いましたか。」
じゅえる「買ったんだろうねえ。それも絢爛たる_ではなく、聖なる_の方が。」
まゆ子「勝利の_がだめ押しをしたんだよ。で、とばっちりを受けているのが絢爛_だ。要塞を必要とするほどの攻撃をされるんだよ。」

釈「この穴、なにを隠しているんです? ロボットですか? 古代の発掘戦艦ですか?」
まゆ子「え、いやそんなものは。」
じゅえる「何も無い、ことになっているんだよ。この穴は昔の採石場で地面に穴掘りまくって上の街が崩落しかけたから地下を補強して、ついでに大空間にしたてただけの、ただの穴。」

釈「またまた。ぜったいなにかあるんですよ。あ、そうですね、古代の邪神が眠っているんだ。」
まゆ子「いやそんなの無いから、ぜったい。」
釈「またまた。巨大な怪獣が毎週襲って来るんですよ。彼女達は魔法ロボに乗って戦うんだ。」
じゅえる「いや、それは無いったら。無いよね。」

 

まゆ子「定番じゃない! とはいうものの、おかげで方向性が定まった。

 この世界は魔法と電脳技術との融合が進んでいるんだ。というか、電脳技術は独自に発展しており、従来の魔法教育とは別に存在するんだけど、発展した技術のおかげでなにか効率化が進んでいるんだ。」
じゅえる「交わっている、んじゃなくて、魔法教育の効率化が進んでいるんだね。」

釈「物理魔法と電脳技術と、どの程度の関連性があるんですか?」
まゆ子「いやほとんど関係無いんだよ。ただ、世の中の科学の主要な発見において物理魔法は多大な貢献をしてきた。なんというかね、のるかそるかの大勝負で魔法の加護があると、大抵成功するんだ。世界中で開発競争が進むという中で、魔法の加護があればいちはやく成功して勝ちを得られるんだ。」
じゅえる「つまり、偶然を必然にする魔法、ってわけだ。」
釈「地味に凄いはなしですね、それ。」
まゆ子「だから、別に地底にロボを隠していなくても、十分秘密扱いされるに足る秘密なんだよ。」

じゅえる「やはり魔法と技術の融合は凄い。しかし魔法技能の習得はこれまで通りに泥臭い魔法合戦によるんだね。」
まゆ子「そうだよ。瀕死の状態にならないとダメなのは、昔ながらなんだ。魔法回路、魔法エネルギーを解明するにはまだ人類の技術は全然かすりもしてないんだ。鋭意努力中ではありますが。」
釈「では魔法学校は凄まじく機械化電脳化が進んでいながら、古典的な魔法教育を行う旧態依然たる悪弊が残っているんですね。」

まゆ子「あーちなみにこの魔法学校は、表の街では「紋城学園電奏科」として知られている。電奏って何?と誰からも言われてしまうが、魔法みたいなものと答えるように学校からは言われている。電脳技術を利用して云々ね。」

じゅえる「なにか裏付けとなるものは、あるんだ。」
まゆ子「電気仕掛けを魔法で操る、という事でもある。だから或る意味、ロボットは正しいんだ。魔法を使ってロボットを使役するという研究は今この学園でも随分と力を注いでいる。」
釈「機械とのインターフェイスとして、物理魔法を使おうというのですね?」
じゅえる「それはー、凄いんだけど、いいのかな?」
まゆ子「古代より科学技術の進歩と物理魔法とは密接な関係がある。錬金術はまさにそれだよ。化学の反応を促進する、あり得ないほど稀な現象を引き起こす為に物理魔法は使われて来た。」
じゅえる「そうか、錬金術も物理魔法の範疇なんだ。」

釈「進んでいるのは物理魔法、つまり絢爛たる_だけですか? 他は進んでいない?」
まゆ子「聖なる_はそもそも科学技術を投入するまで人類の知恵は進んでいない。魔法回路の形成にまったく役に立たないから、使わない。勝利の_も同じで、科学技術では彼らを止められない。だから彼らも使わない。ただ彼らの出身はあくまでも絢爛たる_の魔法学校なのだから、科学技術に無知という事はあり得ない。むしろ最先端のものに触れながら学んでいるんだよ。」
じゅえる「要するに時代の子ってことだね。」

 

釈「敵はどうなんです。魔神もロボットで襲って来るんですよね?」
まゆ子「無いったらそんなの。」

じゅえる「しかし、穴掘って学校作ってるんだから、なにか文書館の中に超技術の遺産とかがあるべきでしょう。」
まゆ子「うーん、それはたしかにそうなんだろうけど、あまりここでは戦闘はしないんだよ。それはむしろ、上の街、」
釈「戦闘都市なんですね、武装が街中にいっぱい隠してあり、そこで魔法ロボが戦う。」
じゅえる「そうか、地下には侵入してこないんだ、上の街で惨劇が起こるんだ。」

まゆ子「いや起きないんだけどさあ。あるとしても、学校の先生達が戦うわけで、生徒には関係無いよ。下っ端なんだから。」

 

釈「じゃあこうしましょう。三つの魔法とは別に、やはり暗黒魔法というのがあるんですよ。瀕死の状態で接する魔法エネルギーの世界に身を委ねて、自らを魔神に捧げて人間ではなくなる禁断の魔法があるんです。自らを魔法生物に換える、邪悪な_が。」
じゅえる「うんそれは十分正しい。人間として生きる意志を喪失するんだ。この罠に陥って、同じ魔法学校の友達が暴走して退治されてしまうんだ。」

釈「そうなってしまうと、学校の先生でも対処できない。だから、勝利の_から刺客が来るんです。魔法学校の生徒は、この事件で初めて勝利の_の存在を確認し、その魔法戦闘技術の強烈さを思い知るんです。」
じゅえる「うんうん。それは物語的に正しい。」

まゆ子「じゃあ文書館にある予言が出て来る碑というのは、その暗黒邪悪な_の産物、ってことにするか。」
じゅえる「それを極めると、吸血鬼になったりするんだよ。肉体的な変貌も遂げるんだ。銃で撃たれても死ななくなるとか。」
釈「治癒魔法を体内で使い続ける、とかですねそれ。なるほど、確かにそれだと死にませんか。痛いのは誰だって嫌ですからね。」

まゆ子「それだ、それでいこう。
 魔法戦闘は確かに痛みを伴うんだ。戦闘だから当たり前だが、痛みに耐えていかねばならない。
 しかし、どうしてもそれに耐えられず痛みを抑える、痛みを感じないのを望む生徒も出るんだ。その子達が或る日、まったく痛みを感じないで済む魔法回路の形成に成功してしまう。これは魔法修行で往々に有る陥穽なんだ。

 痛みを忘れた者はアドバンテージを得て、魔法戦闘で次々に勝利する。しかし、魔法戦闘の修行は負けて瀕死の状態に陥って初めて魔法回路の形成に成功する。
 だからその子達も勝ちが或る日ぱたっと止まる。他の子の魔法回路がその段階を上回るんだね。で、負けが込み痛みも復活する。
 それを回避する為に更に痛くない魔法回路を強化して、気がついた時には人外の存在に成り果てているんだ。人の痛みが分からない、命の尊さが分からない怪物になってしまっている。」
じゅえる「それは、魔法防御回路と勘違いしてしまうんだね。防御の魔法を獲得した、と勘違いして痛みを無くす能力をどんどんエスカレートさせていく。」

釈「なんか可哀想ですね。先生はなにも言わないんですか?」
まゆ子「気付いた時は遅いんだ。先生といえども、人の中身は分からない。で、初期の内に気付いたら聖なる_でその子の魔法回路を破壊する。しかし一度痛みから逃げる術を覚えた者は、どうしてもそちらの方に傾いてしまうんだね。だから放校になる。」
じゅえる「つまり、失格してしまうんだ。それはダメなんだねえ。」

釈「それはあれです。順当に進歩していく人も、能力が強化していくと自然に痛みが少なくなるんです。魔法回路がどんどん強化されて、耐性が上がるんですね。それと、痛みを無くす技術との区別が付かない人がどうしても出てしまうんです。だから紛らわしい。」

 

じゅえる「処女検査をするくらいだから、セックスの問題もなにか不都合な事件を引き起こすんだ。」
まゆ子「うん、まあ学校の目的は魔法エネルギーの採集だからそれに不純物が混じるセックスの問題は避けるべきなんだね。だが中には、魔法修行を重ねる内に性的に目覚めてしまう子が出てしまう。性魔法は当然存在するんだが、魔法学校で教えるというわけにはいかない。特別なコースになってしまい、あまり魔法使いの親御さんの望むものではない。だからその危険が進まないように、処女限定という話になっているんだよ。一人非処女が居ると、周りにも伝染する。」

釈「エロエロになってしまうんですね。」
じゅえる「魔法勝負で負けると、快感になるんだ。マゾ属性の解放だ。」

まゆ子「あー現象から言うと、魔法エネルギーの自力での生成能力の開発、だね。暗黒世界からの魔法エネルギーの抽出をしなくても、素で魔法エネルギーを作り出す力が増強される。そのエネルギーを用いて魔法戦闘では勝てるようになるし、自力で瀕死の状態つまりエクスタシーに達して魔法回路の形成も進む。しかし、そうなると魔法戦闘に興味が無くなるんだな。特殊な魔法回路に進化して、三つの_が求めるものとは異なって来る。決して不都合ではないが、違うものだ。」

じゅえる「それはつまり、人間社会において特に機能する魔法であるから、一応は物理魔法。絢爛たる_に属するものだけど、違うんだね。」
釈「でも用途は多そうですよ。」
まゆ子「そうなんだ。錬金術的な魔法の在り方とは違うが、社会を動かすにはかなり効果的な魔法だ。絢爛たる_の本義は、様々な術を用いるということだけど、これもれっきとした一つの道ではある。道徳的に難点があるというだけでね。出来てしまったものはしかたない、隔離してそれ専用の師匠について、エロ魔導師にスキルアップだ。」

じゅえる「まあ、親御さんには言えないな、それ。」
釈「でも、普通人間界において、エロ魔導師はなにか政府高官とかに効果絶大って感じですよね。それは使わないんですか?」
まゆ子「ばりばり使う。この地底学園を作る際にも、随分と活躍しました。」
じゅえる「やっぱり。」釈「やっぱり。」

 

まゆ子「えーつまり、電奏科は普通のコースだけでなく、文章解読科とかエロ魔法科とか錬金科とか、色々と最終的には分かれていくんだよ。で、主人公達は、」
釈「え、もう主人公決まっているんですか?」

まゆ子「ほらもう書いた。南洋子、江良美鳥、仲山朱美、の3名が入学時に桃苑にて姉妹の契りを結んで魔法修行に邁進するんだ。」
じゅえる「あ、あれもう本編なんだ。知らなかった。」

釈「でも名前そのままじゃあダメですよ。一人くらい外人名にしましょう。えーと、朱美・オブライエンとか。」
じゅえる「朱美・ヒェロニムス、とかがいいか。英語名はイヤだ。」
まゆ子「そこはほれ、それぞれの出自に関わる問題だから、魔法の家の伝統に則って付いた名前というのを、後で考えておきましょう。ともかくこの3人はセットです。で、当然親と血筋は魔法使いです。」
じゅえる「うーん、確かに魔法学校に普通人が行くのは変だしなあ。裏付けが無いとだめだよな。」
釈「となると、彼女達も幼い頃からなにか不思議を見ているものなんですよ、やっぱ。」

じゅえる「となるとだね、天才少女、とかいうのもやはり居るべきではないかな。」
まゆ子「ルリルリみたいの?というか、うっちーみたいの、というかテッサみたいの?」
釈「それらは皆、どこか壊れてる人工少女ですね。」
じゅえる「それも文書科には必要だろ。」

まゆ子「ちがいない。一人くらいは確保しておこう。ついでに、いかにもぽよぽよとエロ可愛い女の子が居て、エロ魔法に転落していくんだ。」
釈「おー、それはエロイですよ。」

 

じゅえる「してみると、主人公3人は何になるのかな。落ちこぼれ?」
まゆ子「洋子は違うとしても、美鳥はちょっと。朱美は特殊な能力がある、という事にするか。因縁の能力者。」

釈「先祖代々受継ぐ能力者ですよ。秘められた過去があるんです。」
じゅえる「思いっきり情けない能力がね。もう業界中での有名人有名家系。朱美魔法というのが俗にあるくらい。」
まゆ子「そういうのはー、えーと、魔法失敗因子とかかな。彼女の周りに居ると、魔法が失敗してしまう特殊能力。」
釈「そういうのは現在かなり一般的にラノベに投入されているみたいですから、ちょっと変えましょう。

 魔法革命能力です。なにか予想もしない魔法効果が起ってしまうんです。それは素晴らしい結果だったり、施設の欠陥を暴き出したり、錬金術でもわけのわかんないモノができたり、ともかく予想外の結果が起きるんです。」

まゆ子「そういうことなら、美鳥はそれに対抗する為に雇われた、ってとこだな。魔法的に凄く鈍感なんだ。それでいて無能というわけでもない。大器晩成型なんだな。」

じゅえる「洋子にもなにか特殊能力が欲しいな。優等生っぽくても、穴がある。」
釈「怪我し易いんですよね、彼女は。えーと、治癒魔法ですかね、天然に持っている力が。」
まゆ子「優等生で頭もいいんだけど、よく間違えてずんと落ち込む。早とちりしてしまうんだ。」

じゅえる「魔法使いとして致命的欠陥があるんだよ。いらちだ。」
釈「気が短いんですね。確かに魔法使いってのは気の長い商売っぽいんですが、だめですか。」
じゅえる「だめって事は無いけれど、魔法勝負は我慢くらべのとこがあるから、さっさと勝ちに行く彼女はどうしても不利になる。」
まゆ子「自分から壁に激突するタイプ、ってことか。うん洋子ちゃんっぽくていい。」

釈「彼女達は主人公ですけれど、謎がありません。やはり定番的には、謎キャラがクラスに居るのがただしいと思いますけれど、どうしましょう。」
じゅえる「そこはまあ、今後ストーリーがどう展開するかを考えて、逆説的に考えよう。やはりロボの登場が待たれる所だね。」

 

釈「この学校は6年制ですよね。えーと、12歳から18歳ですか。そうすると、入学は中学生ですね。」
じゅえる「若いな。こんなもんでいいのかな。」
まゆ子「あー、そうね。14歳から20歳、ただし年齢は幅があって、12歳から16歳まで幅がある、て事にしよう。早過ぎても意味はない。」
じゅえる「小さい子が魔法戦闘、というのは痛々しいからね。」

釈「えーと、中等部から高等部へ、という昇格はないんですか。」
じゅえる「どうしよう。舞乙Himeでは二年制で半分は昇格出来ないんだよね。」
まゆ子「あーそうだね。6年として、最後の1年は卒業試験。3年間の分化専門教育と2年間の初期魔法教育、という事にしよう。最初の2年で50人が30人になり、卒業試験には10人しか受けられない。」

じゅえる「ちょっと厳し過ぎないかな。」
釈「しかし、魔法使いですから。というか、なぜ試験が1年間もあるんですか。」
まゆ子「これは三大魔法会への選任試験でもある。つまり聖なる_勝利の_絢爛たる_から一人ずつ試験官がやってきて、こいつと魔法戦闘をして勝てば合格だ。」
じゅえる「プロとの戦闘か。それは無理だな。なにか制限が無いと、というか制限付きなんだな。」

釈「でも魔法戦闘は時間掛らないでしょう。一発勝負で。」
まゆ子「一発でないよ、1年間何度でも挑戦していい。ただし、一発で死ぬかもしれん。」
じゅえる「そんなに真剣な勝負なんだ。」

まゆ子「死なないとしても、ダメージが2、3ヶ月は回復に掛って闘えない、という事になる。一発で死なない為にも相手の特性を良く見極めて弱点を探り策を講じて自身の魔法回路を勝てるように組み上げて、初めて対戦に臨めるってもんだ。1年間はちっとも長くない。」

 

釈「聖なる_の試験官を物理攻撃魔法で倒す、ってのはダメですか?」
まゆ子「ダメじゃないけれど、選任試験だもん。倒した魔法会へ入会する為には、その分野の魔法で勝たなきゃ入れてもらえないよ。卒業の単位が出るだけで、就職出来ない。」
釈「あ、そうか。」
まゆ子「魔法会に入れないということは、それぞれの魔法会が持つ高度な魔法へのアクセスができないという事で、当然レベルの高い魔法使いにはなれないってことだ。意味の無い戦いをしても仕方ないでしょう。」

じゅえる「試験官が3人居るとして、こっちがダメだったからあっちの魔法に専門を鞍替えして倒す、ってのは無理だよね、やっぱ。」
まゆ子「まあ、3年間の分化教育で得意魔法は大体決まってるからね、コンバートは普通無理だよ。」

釈「では、今回は諦めて次の年に、ていうのは。」
じゅえる「1年間も余裕があってダメならば、何度やってもそりゃダメだろう。普通に失格だ。」

まゆ子「まあ、どうしてもダメだと思えば、他の試験官を別の魔法で倒して卒業だけする、という選択肢が禁じられているわけじゃない。
 魔法使いは魔法だけをやってるわけじゃなく、現実回りの仕事をやる人も居る。そもそも魔法学校の教員てのは、その典型だ。また魔法学校の運営と一般人社会との折衝役とか理事とかは、そいう魔法使いがやればいいな。」

じゅえる「ふむ。卒業さえすればなんとかなるか。」
まゆ子「というか、分化教育を終えた者は准魔法使いとしての資格が認められるから、治癒師とか呪い師、占い師として稼いでいく事が出来る。落ちても食いっぱぐれる事は無い。というか、街場に住んでる魔法使いの大半は、この試験をパスしていない。」

釈「という事は、卒業試験をパスすれば高度な魔法使いになれるし、それがダメでも魔法学校運営とかで重きを置かれる、ってことですか。」
じゅえる「それだけの価値のある試験ってことだな。」

まゆ子「とりあえず卒業試験をクリアして見事「正魔法使い」になった者は、三大_に採用されなくても、魔法教会からマジックアイテムを貸与される事が多い。魔法を扱うのを簡便化するマジックアイテムの行使者として、彼らは実にふさわしいのだよ。」

じゅえる「そりゃあそうだ。つまりは魔法教会の兵隊として働く、ってことだね。」
釈「やはり、魔法使いも組織の為に働くってことですね。」

 

釈「して、3人は入学して、どうなります。」
まゆ子「あー、まあー一応目安として考えておこう。3人は首になってもらっては困る。だから、最難関の卒業試験まで一応生き残る事になる。」
釈「一人くらい脱落しても構わないと思いますけどね、やはり生き残りますか。」

じゅえる「脱落する奴は他に何人でも居るんだよ。で、卒業試験を受けると。」
まゆ子「一人くらいは受けない方がいいか。ちなみに、専門分化教育では留年があります。初期訓練期間は2年で打ち切りですが、こっちでは最長5年が認められる。早く出来上がっても卒業試験をクリア出来なきゃ意味が無いから、万全を尽すってことだね。」
じゅえる「美鳥はまず落ちるね、留年する。」
釈「そうですね。えーと、南洋子だけがストレートで卒業試験に挑戦して、玉砕するって事にしますか。」

じゅえる「3人の適性は、どの魔法なの?」
まゆ子「あー、どうしよう。美鳥は聖なる_か治癒魔法師か、で悩む事にしよう。治癒魔法の専門科があってそこに移ろうかとか考える。朱美は物理魔法であやしげな結果を叩き出すのを教員の人達からも求められ否応なしに絢爛たる_に挑戦する。洋子はー高度な魔法は諦めて魔法学校の運営とか教師とかになる、と考えるか。」

釈「諦めるほどの出来の悪さなんですか?」
まゆ子「初等魔法だけ、と言っても結構出来る事は多いんだよ。というか、南洋子はどの魔法もまんべんなくそつなくこなしてしまい、どれが向いているとかが無かったんだ。分化教育で訓練する内に初等魔法を極めるという選択肢もある、と示唆される。」

じゅえる「本人の志望は?」
釈「えーと、性格から魔法戦闘でがしがし行こうと、勝利の_をやってみる。という感じですかね。」
じゅえる「性格から言うと、そんなものかな。でもダメだった、ってとこか。」

まゆ子「じゃあ、こうだ。この年の卒業試験で、勝利の_の試験官に挑んだのは彼女一人で、限界とも言える5回もの戦闘に及び、試験日の最後の日まで食い込む程の長時間戦闘を繰り広げ、遂には打倒し得なかった。」
じゅえる「落ちたのか。」
まゆ子「うにゃ、落ちなかった。試験官の協議の結果、他の試験官を選べば間違いなく受かる実力があると判定されて、というかこの年の勝利の_試験官はべらぼうに強かったんだよ。で、判定で卒業するけれど、勝利の_には採用されなかった。」

じゅえる「年によって、試験官のレベルが違うんだ。」
釈「それは公正な試験とは言えませんね。」
まゆ子「まあ、そういうものだ。勝利の_の試験官をぶちのめすだけの魔法攻撃で他の試験官に挑めば、それは勝てるんだよ。」

 

じゅえる「その試験てのは、秘密の場所でやるの? それとも衆人環視の中で?」
まゆ子「生徒先生皆が見る前でやりますよ。一年間で10人ずつ程度ですから、暇はあります。ただ初級生徒は見学禁止。影響が強過ぎて、魔法回路が損傷を受けます。」

釈「じゃあ、無様な姿を曝け出す人もいるんですね。」
じゅえる「甘く考えてやる奴もいるんだろうね、やっぱ。というか、試験官の強さや特性は魔法戦闘をやってみなければ分からない。誰かが犠牲になって情報収集をしなきゃならない。」
釈「そうか、受験生は皆で戦略を練って誰がまず行くか、とかを考えるんですね。」

まゆ子「というか、受験生は皆相互に助け合って魔法戦闘力の強化、魔法回路の強化を行います。受験生同士の魔法戦闘も常日頃やっていて、互いの強化を図るんだよ。だから1年間はちっとも長くない。
 で、勝利の_試験官に第一番で挑戦する役を南洋子は引き受けて、万全の準備を行って臨んだ初回の挑戦で完膚なきまでに叩きのめされて、その結果他の受験生は勝利の_との勝負を皆諦めたんだ。」

じゅえる「洋子のは分かった。で、彼女は魔法学校の教官になるんだ。ということは、美鳥と朱美を教えるとかもある?」
まゆ子「流石にそれはない。最初は初級訓練の補助から始めるよ。それと分化教育において魔法戦闘の授業の補助だね。」

 

釈「美鳥はどうなりますか、卒業試験では。」
まゆ子「えーと、8ヶ月後に最初の戦闘を聖なる_試験官とやって、一発パスです。その間他の受験生と魔法戦闘をやりまくって強化しまくったお蔭です。分化訓練で目の教育をして、魔法回路を読む力を鍛えていた賜物でもあります。」

じゅえる「一発クリア、ってのは普通無い?」
まゆ子「極めて稀です。天才と呼んでもいいくらい。ま、順番も恵まれたんだけど、他の受験生が挑戦した結果を見て修正していった。それまでに魔法回路を見る力で、他の人に随分と貢献してますけどね。」
釈「魔法生物が見えるんですか、美鳥は。」
まゆ子「見えるようになります。初級の頃は凄く鈍い子だったんだけどね。」

じゅえる「で、朱美は物理魔法を。」
まゆ子「3回やって、やっとクリアです。もうお正月になっています。ただ最終挑戦の時に魔法大爆発で学園の施設を随分と破壊しました。天上の硝子池の底をぶち破って水がダダ漏りです。」

 

釈「試験官、てのはでもほんとうはもっと強いんですよね。制限が掛っているというのは、」

まゆ子「魔法回路による制限が掛っている。
 勝利の_では魔法エネルギー弾のエネルギー量制限とか、防御障壁の禁止とか。
 聖なる_では魔法生物の種類が限定されるとか。絢爛たる_ではエネルギー量と展開する魔法障壁の数だね。
 絢爛たる_の魔法攻撃は、相手の物理魔法を阻害するという攻撃が普通行われる。というか、どの分野の魔法攻撃も受けてみせるのが絢爛たる_の魔法合戦だ。広く浅く極めている。」

 

釈「そろそろ、巻数を決めますか。えーと6年あるわけですが、一年一冊という感じで。」
じゅえる「だな。留年するから7冊だ。その間になにか大きな出来事が二つ三つ混ざっている。」

まゆ子「初等編が2冊で1冊は上の街で事件が起きる中での進行だね。専門分化編が3冊で、鯉話も混ぜて巨大な敵がやってくるという話と、脱落していくクラスメートの話、学校に秘められる謎の話。6冊目が洋子の卒業試験の試練でその裏で起きる事件を美鳥と朱美がなんとかしてる。7冊目が美鳥と朱美の卒業試験、最後の謎が明かされて次のステージに向かう。」

じゅえる「そんなもんだろう。えーと一冊200頁ってくらいにするか。げばおとなら1章分だ。」
釈「あーそうですねえ。それはもんだいですねえ。」

まゆ子「とかなんとか言いつつ、今回この章だけで40頁だ。5分の一だね。」
じゅえる「200は少ないなあ。」

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