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2011/07/21まで

【魔法甲冑リリカルポエマー 設定第四回】11/07/21

【魔法甲冑リリカルポエマー 設定第三回】11/07/19

【魔法甲冑リリカルポエマー 設定第二回】11/07/10

【魔法甲冑リリカルポエマー 設定第一回】11/06/28

【リリカルポエマー 設定第0回】11/06/27

 

 

 

魔法甲冑リリカルポエマー 設定第四回】11/07/21

 

まゆ子「てなわけで、魔法ギルド自体の組織を考えよう。旦那騎士はどこらへんに関与しているか、とか色々とね。」

じゅえる「ふむ。魔法ギルド外の人間なんだよね、旦那は。にも関わらず魔法の最深部に足を踏み込んでしまう。この手順をしっかり作らないとあかんよ。」
釈「それは面倒なお話です。」

まゆ子「まずリリカルポエマーのお話から。
 リリカルポエマーは念話や探査、通信を司る電波魔法です。何故か女性ばかりが携わります。」
じゅえる「ほお。」
釈「女性が向いているのですか?」
まゆ子「逆だ。他の魔法は女性禁止なのだ。特に四大精霊魔法は。」
釈「それはー、物理魔法の強力な奴で戦争にも使われますからねー。女性禁止は普通ですか。」

まゆ子「というわけで、リリカルポエマーのみならず、リリカルダンサーとリリカルアクターが存在します。男性です。」
じゅえる「ポエマーは聖歌隊なんだけど、ダンサーは踊り、アクターは演劇なんだね。」

まゆ子「リリカルダンサーはつまり四大精霊魔法です。これは特別な才能の持ち主でなければそもそも入門も許されません。
 リリカルアクターは基本的には肉体の強化や治癒に関係する魔法です。彼らは剣術や武術の稽古、医療の勉強もします。人体について深く知る必要があります。」

釈「錬金術師は?」
まゆ子「別です。」
じゅえる「錬金術師は魔法使いじゃないんだよね。この世界では。」
まゆ子「この世界の魔法体系では、錬金術師は魔法使いではなく、魔法使いが使う道具を作ります。魔法の発動を助ける為の様々なアイテムを作るのは彼らであり、深い魔法の知識が必要です。もちろん物理学化学の知識理解も。」
釈「つまり普通に工房を営むだけの技術が必要なんです。」

まゆ子「しかし、錬金術師の力だけでは不可能な技術もあります。精霊魔法を必要とするもので、主に土魔法の魔法使いが協力します。」
じゅえる「うん。土魔法はそう使うべきだな。」

 

まゆ子「さて、リリカルポエマー、ダンサー、アクターは魔法使いの修行者でありますが、彼らを導くリリカルマスターと、彼らをサポートするリリカルヘルパーが居ます。リリカルヘルパーは魔法使いではありません。普通の人です。」

じゅえる「リリカルマスターは導師のことだな。魔法教師だ。」
釈「ヘルパーも分かりますが、魔法使いでなくても務まる仕事なんですか?」
まゆ子「さてこのヘルパーは随分と重要な役だ。つまり、旦那と女房を結婚させる役を務めたのが、ヘルパーのおばちゃんだ。尼さんみたいな格好をしています。」
じゅえる「魔法使いというのは、修行者全部が成れるわけではないんだろ? 脱落した者がヘルパーに成るんじゃないかい?」
まゆ子「そういう人も居ます。こう言っちゃなんですが、魔法修行者なんて潰しが効きませんからね。魔法ギルドを追放されたいい加減な魔法使いは最終的には野垂れ死にです。」
釈「なかなか、過酷ですね。」

まゆ子「それにこの間考えた設定で、魔法使いを外国に売り飛ばすという手段が出来た。魔法使い単独で行っても十分な働きが出来ませんから、ヘルパーも付属品で付いていきます。

 魔法使いが錬金術師の技で作られた魔法の道具無しでは働けないように、魔法の品は魔法の知識無しの者には管理出来ません。
 また魔法使いの体調維持の為にも、特別な知識と技能が必要です。もちろん一流の魔法使いは自分でできますが、結構めんどくさい。やってくれる人が欲しいのです。
 というわけで、ヘルパーは専門技術者としての価値を認められています。」
じゅえる「そうか、学芸員兼マネージャーなんだ。」

まゆ子「魔法修行者を数年鍛えてみればだいたい才能は分かります。実用レベルにまで達しないと見定めればヘルパーの道を示されます。
 実はこれは悪い話ではない。魔法使いは寿命はあんま長くない。強力な魔法は肉体への負担も大きく精神も酷使して、寿命を自らすり減らしてしまいます。
 ヘルパーであればその心配は無い。魔法使いは要するに命を惜しんじゃ出来ない商売であるから、それだけの覚悟を認められない者はヘルパーに転身すべきなのです。」
じゅえる「なるほど。」

まゆ子「リリカルマスターも実はヘルパーの一種です。確かに一定のレベルの魔法を使えるし才能もあるのですが、安定した生活と研究を求めてギルドに留まる事を選択する者が居ます。
 なにせ実用魔法使いは命懸けですからね。遠い外国に行ってそのまま死んじゃうてのも、珍しくはない。」
釈「なんか魔法使いってあんまり得なような気がしませんねえ。」
じゅえる「いや。現代だって金銭換算であればちっともお得じゃない職業をわざわざ選ぶ人は少なくないぞ。」
釈「やっぱ、魔法というのはそれだけ人を惹きつけるなにかがあるんですねえ。」

まゆ子「まあ、リリカルマスターはギルド付きの魔法使いとして、なんか事件が起きれば出張して魔法を使います。戦ったりもします。」
じゅえる「ふむ当然。」
まゆ子「また、リリカルアクターは武術や医術、または演劇の授業もあります。これを教える人は一般人ですが、マスターです。」
釈「先生ですからね。」

まゆ子「さて、で女房のお姫様ですが、リリカルポエマーの修行者の最上位に当たる、リリカルポエムリーダーです。実力的には既にマスターレベルです。」
釈「ほおほお。才能有るんですね。」
まゆ子「ま、真剣味が違います。」
じゅえる「修行者卒業は何時なんだい?」
まゆ子「年限は決まってません。才能と技術と覚悟を認められ、身体的精神的故障が無ければ、リリカルマスターの認定で推薦状が上に送られて、認可されれば晴れてリリカルヰッチです。」
じゅえる「平均修行年数は?」
まゆ子「10年あればまともな魔法使いになります。というか、実用レベルに達しない場合はノロマ呼ばわりです。」
釈「まあ、人により上達曲線は違いますから。」

まゆ子「ところがだ、リリカルポエマーだけは違って、魔法の発現が早く、能力が早く失われます。」
釈「失われる、ですか。」
まゆ子「精神的な問題と考えられています。特に念話を使うと精神機能に負担が大きく、ぶちっと切れたりします。」
じゅえる「ふむふむ。」
まゆ子「というわけで、若い女の子がきゃぴきゃぴして出入りが多いのがリリカルポエマー。もちろん能力が失われたらヘルパーになるという道がありますが、もう一つ魔法使いのお嫁さんになるという選択肢もあります。」
じゅえる「あ〜。」
釈「あー、嫁量産なんですねー。」

まゆ子「なぜ念話の能力が早く開眼するのか? なんのことは無い、通話者が魔法使いだからです。魔法使い同士の会話を中継するだけならば、そんなに熟練は要らない。実用レベルが低いわけですね。
 対して探索の魔法は普通に念入りな修行が必要です。

 女房お姫様は10年選手ですから、リリカルヰッチレベルまで到達しているわけです。」

じゅえる「リリカルマスターの上は?」
まゆ子「その前に、錬金術師の方を説明しておきましょう。つまり工房です。錬金術師は魔法関係の品を作っているのですが、作業は完全に普通の技術者です。不思議なところはまったく有りません。
 故に、錬金術師育成は完全に工房の徒弟制です。しかし魔法の知識無しには、魔法使いが必要とするモノが分かりませんから、勉強です。また作った品を魔法使いに確かめてもらわないといけませから、魔法に慣れる必要もあります。
 つまり、錬金術師と呼べるのは魔法使いと親交の有る者だけです。錬金術師が単独で研究してなにかを作れる、発明できるということはありません。
 というわけで魔法使いと親交を結ぶ場が用意されますが、彼らに接触するのはリリカルヰッチかマスターレベルです。修行者は会えません。未熟者同士が会っても良いことはありませんから。」

釈「当然といえば当然ですが、つまり錬金術師は一人前にならなければ魔法使いと会えないし、練習できないわけですね。」
まゆ子「はい。だから徒弟制です。魔法使いと交流して理解の深い親方の言う事を聞いていれば絶対です。」
じゅえる「なるほど。納得だ。でも、やんちゃをする奴は居るんだろ?」
まゆ子「まあ、それは居ますが、実のところ徒弟はギルドには住んでません。工房は材料や燃料の供給の楽な場所に作られてますから、皆そこに住んでます。つまりそこには魔法使いが居ない。」
釈「居なければ、魔法の品は使えないから作れない、のですね。」

 

まゆ子「さて、リリカル組と錬金術師組はまったく違うカリキュラムで育成されると分かりました。
 ここにもうひとつ、ギルドの管理部が存在します。ここの長がギルドの最高責任者であり、教団から派遣された高位の聖職者です。」
釈「なるほど。つまり魔法ギルドは、リリカル魔法使い組と、錬金術師と、管理する聖職者との三本柱で出来てるのですね。」
まゆ子「一番偉いのは聖職者という事になっていますが、もちろん魔法使いが居なければ意味が無い。
 ここは建前ですね。」

じゅえる「その聖職者というのは何人くらい居るのだ? というか、魔法ギルドというのは人数的には?」
まゆ子「焦らない。

 えー、つまり三本の柱でありますが、管理運営経理交渉などの組織運営スタッフがすべて聖職者の手で握られています。
 ただし食を含めた生活面は、それぞれ独立して成り立っています。リリカルならヘルパーが、錬金術師なら弟子が食事を作り洗濯をし、掃除をしています。食料の買出しも別々です。
 これはー、早い話が聖職者連中を信用していないのですが、逆に聖職者の連中も魔法使いを信用していない。魔法の薬を食事に盛られていいように操られると恐れています。」
じゅえる「うん、いいぞ。」

まゆ子「ただしカネに関しては、聖職者いやその下の経理担当者がやっています。各国の援助を受けて魔法使いを派遣したり、外国に魔法使いを売り飛ばしたりの交渉もここがやります。
 魔法使いを売り飛ばすとは言いましたが、契約条件を満たさなければ魔法使いを引き上げるとかも出来ます。もちろん向こうは承知しないでしょうから、独自の特殊部隊が派遣されて奪還します。

 本編主人公である女房お姫様が所属する部隊も、これの一つに該当します。が、目的は違う。魔法の悪用を取り締まるセクションですが、権限はもちろんギルド内に限られる。
 ギルドの外の存在であれば、たとえ一民間人であったとしても取り調べの権限も逮捕も出来ません。
 だから、提携する王国から派遣された旦那騎士が権限と共に同行しているわけです。」

 その聖職者、いや管理部門とよびましょう。管理部門はいくつかに分かれています。
 主要中枢部、魔法管理部、財務部、貿易部、施設資材管理部・警備部・人事部・総務部・通信部。通信部というのは、つまり魔法ギルド独自の飛脚便です。
 各王国との交渉は、もちろん主要中枢部が司ります。」

釈「普通に会社組織なんですねえ。」
まゆ子「そして図書部。魔法関係の図書館も、こちらでやっています。」
じゅえる「書物は魔法使いの命なんじゃないのかい? それ握られると命取りでしょう。」
まゆ子「そうなんだけどね、そうなんだけど、彼らに任せた方が良いと判断されている。
 何故ならば、魔法関係の書物は、魔法使い以外には読めない。暗号で描かれているのではなく、魔法無しには読めない形態の書物であるから、いいんだよ。
 逆に、読める魔法使いに書物の管理を任せたら、なんか凄いことになってしまう。もちろん他国に売り飛ばされては困るというのも有る。
 であるから、魔法書を読む能力の無い者に管理を任せている。」

釈「具体的にはどんな形態で書物は描かれているのですか。」
まゆ子「剣。」
釈「え?」
まゆ子「文字通り鉄の剣の地肌に紋様が描かれている。もちろん墨じゃないぞ、電気で掘り上げられているのだ。一種の電気回路になっている。
 だから、電気魔法の使えない者には決して読むことは出来ないし、読めても意味が無い。
 だいたい剣1本に魔法が1個書いてある。もちろん複製は魔法使いであれば可能だ。他国に売り飛ばすのも可。
 と言っても、この剣が無ければ魔法が使えないということは無い。あくまでも只の記録媒体だ。」

じゅえる「なんでそんな形態で記録しているんだ? 紙ではダメなのか?」
まゆ子「まあ魔法使いにとっては読みやすいというのも有る。魔法の手順を記す為の微妙な表現法が可能であり、読むと同時にマスターしてしまう事になる。
 とはいえ、一番の理由はかっこいいから、だな。魔法の権威付けに剣という形式を使っているんだ。
 剣自体は只の鉄、鋼なんだけど、ただの剣ではなく錆びない魔法の鉄だ。電気魔法で錆びない処理がしている。
 で、柄の部分におもいっきり装飾がしている。この剣が何の魔法であるかを示す為に、フィギュアになっていて黄金や宝石も使って麗々しく飾り立てている。
 何故か、というとこれがお宝であるからだ。ものの分からん蛮族であっても、この柄飾りを見れば一目瞭然にこれがお宝であると理解する。大事に扱うから紛失したとしても回収が容易い。
 そして鞘だ。これは普通に黒かったり緑だったりするんだけど、管理用の情報がココに記されている、著者や作成年月日、所有者、その他注意事項ETC。普通鞘と柄飾りは鎖で繋がれておりバラバラに売り飛ばされないようになっている。
 また鞘には王国の紋章も記される。王国の品だと知れば、素人だってこれが重要なものであると理解して、届けて来るからだよ。」

じゅえる「便利なもんだね。」
釈「つまり、剣が一番扱いやすい形であったんですね。でも書物という形式ではダメなのですか?」
まゆ子「いや、錬金術師の記録はすべて書物形式だ。もちろんこれも図書部が管理する。あと資料もそうだな。魔法関係資料はちゃんと厳重に保管されている。」
じゅえる「私が考えるに、錬金術師の記録が一番やばくないかい? なにせ普通の人間でも実行出来る技術なんだろ?」
まゆ子「まあ、そうだね。一番カネにもなるね。」
釈「それは困るでしょう。」
まゆ子「困りますよお。」

じゅえる「ん? なんか変だな?」
釈「なんか余裕がありますね。ひょっとしたら、この書物ってのはフェイクなんでしょうか。」
まゆ子「御名答。本当に大事なものは、魔法使いが鉄剣に書いてます。ニセの本を混ぜて、泥棒つまり魔法密造者をペテンに掛ける算段です。」
釈「おおやっぱり。そうですよね、やっぱり紙の本は危ないですよね。」

じゅえる「しかし、鉄剣文書だって知ってる人には読めちゃうじゃないか。いいのかそれ?」
まゆ子「錬金魔法暗号というのが有るのだ。錬金術師でなければ理解出来ない判じ物を、魔法使いが自分でも意味が分からないままに描いている。」
じゅえる「やっぱり暗号か。」
釈「当然の対応ですね。」

まゆ子「とはいうものの、実はそれだけでも理解は無理だよ。やはり製品の現物が無いと分かりづらいね。」
じゅえる「念が入ってるね。慎重だね。」
釈「魔法よりも厳重なんですね、秘密の保持は。」
まゆ子「そりゃそうだよ。カネを生み出す素は、徹底的に管理しますよー。」

 

まゆ子「さて、で魔法公である高位聖職者が管理部門の頂点に在ると同時に、提携する各国王との交渉を行なっている。目的はもちろん、同盟国間での魔法の有効活用と独占だ。
 魔法によって得られる利益を、同盟国と教会で独占して外国に流出するのを防ぐ。とはいえ、出さねば儲からないから仕方なく出すが、中枢である魔法教育は外部で出来ないようにする。」

じゅえる「ま、商売ですから当たり前ですね。」
釈「今更言うほどのことでもありません。」

まゆ子「これまでは魔法ギルドが一括して同盟国と交渉を行い売買契約を交わして、魔法使い本人は魔法ギルドの命令で派遣されるという形を取っていました。これが破綻して魔法使い本人をスカウトすると、戦争になるわけだね。
 で、魔法ギルドはそういう形式であるから、魔法公を一応は頂点と定めているけれど、管理部門と魔法使い教育機関と錬金術師との三位一体で成り立っている。」

釈「案外と管理部門は重要でして、こういう組織の場合管理部門が抜けると途端に組織としての態を成さなくなり、分解しちゃうものです。」
じゅえる「もちろん魔法使い無しにすべてが始まらないんだけど、偉いのは管理部門が独占したりするもんだ。こういう組織は。」
まゆ子「もちろんそれは魔法使いにとっては面白くはない。面白くはないが、世界平和の為にはこれがいちばんまともであろうと考える。なにせこの地域でないと魔法は有効に発動しない。何故か、無骸が埋まっているからだ。
 魔法の源泉が何であるか、案外と魔法使いの高位であっても知らなかったりするのだが、無骸の周辺何キロて近くが一番強力に発動する。
 で、その地域を魔法ギルドが抑えているものだから、否応なしにギルドへの参加をせねばならない。野良魔法使いは居ないのだ。」

釈「フリーの魔法使いは居ないんですか、許されないんですか。どちらですか。」
まゆ子「野良は禁止です。とっ捕まります。」
じゅえる「理由は?」
まゆ子「魔法管理の徹底です。同盟国内の魔法使いは全て魔法ギルドに所属し、その所在を明らかにせねばならないと条約で決まっています。」
じゅえる「でも魔法甲冑を作っているのは、野良魔法使いだろ?」
まゆ子「違います。れっきとしたギルド登録魔法使いです。」
じゅえる「おい、……。」

まゆ子「たがが緩んでいる、のではないぞ。無骸の大量発掘によるバランスの崩壊だ。条約自体の有効性が大きく揺らいでいるのだ。」
釈「でも魔法使いはギルドの言う事を聞かなければならないんじゃないですか?」
まゆ子「もちろんそうですし、またそうしています。しかしながら魔法甲冑の密造もまたやっているのです。」

じゅえる「う〜ん、ちょっと理解に苦しむ。」
釈「ちょっとおかしいですねえ。」
まゆ子「いや全然。それだけ魔法甲冑というものが社会的ステータスが強く、魔法使いとしても一生の内にやってみたい、歴史に残る業績となるんです。
 なにせ同盟国はこれ一個で国をぶっ立てた。初代建国王が使った魔法甲冑が王国の最重要の宝物として大切い扱われている。
 魔法使いというものは、ともかく魔法甲冑をこそ魔法の究極頂点と見定める。それに近づく機会があれば、たとえ悪魔の誘惑だろうが乗ってしまう、てのが習性なのだ。」

じゅえる「管理出来ないじゃん。それ。」
まゆ子「だからこそ、無骸に恨みのある女房お姫様が取締チームで重要な役を果たしているぞ。というか、このチームには彼女以外に有力な魔法使いは存在しない。また錬金術師も若くない。
 この人選であれば間違いを起こさないと確実な人物のみをピックアップしている。当然旦那騎士もそこを見込まれて任務を割り振られているのだ。」

 

釈「えー、でリリカルマスターになった上はどうなりますか。」
まゆ子「リリカルヰッチ、リリカルマスターはまあ同格なんですが、外に出て働いているとそりゃ当然実績というのがありまして、顕著な功績を上げると魔法ギルド内でも位が上がっていきます。
 マスターはそこらへんは難しいし、外に出なければ金儲けも出来ない。ちょっと苦しいですが、そこは個人の選択です。」

じゅえる「つまり、マスターで留まっていればバカにされちゃったりするんだ。」
まゆ子「まあ理想的には、外で何年か働いて年経ってから戻ってくるのがいいんですが、魔法の先生というのは結構体力使いますから若くないと苦しいぞ。」
釈「しかし、否応なしに年は経りますよ。年配の魔法使いはどうなるんですか?」
まゆ子「まあ年になれば相応に落ち着いて、魔法の研究をして過ごしたいところですがー、先立つモノが無いとね。若い時にしっかり稼いでゆうゆう自適が理想。」
じゅえる「そりゃどこの世界も一緒だ。」

まゆ子「年寄りは普通に弱魔法仕事をやりますよ。強烈な奴は身体や精神に負担が大きいから、あまりキツクない魔法でちまちまと稼ぎます。
 もっと賢い人であれば、魔法使いを何人も動員しての大規模プロジェクトを運営します。自分で魔法使うより、他人に使ってもらおうというわけですね。やっぱ知識です。」
じゅえる「まあ、魔法使いは年経って知識を蓄えるのが普通かね。」

まゆ子「ここらへんの人はさすがにギルド内爵位を持っているのです。外で働いている人は魔法爵を、マスターとして内部で働いている人は魔法卿を、戦士の人は魔法騎士という。」
釈「爵位と役職は違う、というわけですね。」
まゆ子「つまり、ギルド内権力構造であれば、魔法卿に関係する。
 あ、ちなみに魔法騎士の人は強いですよ。なにせ魔法で肉体を強化して戦いますから。とはいえ、銃火器の発達してきた現代ではあんまり要らないかなという気に、各国も思い始めています。が、困るときは困るからやはり重宝します。」

じゅえる「魔法騎士こそが肉体的衰退が命取りなんじゃないかい?」
まゆ子「案外とそれが違うんだ。というか、魔法騎士てのは基本的に相手が魔法を使わない武力、兵士であるからそこそこの魔力で間に合うのだ。あとは武術の腕と長年の戦場の経験ですね。」
釈「ベテランが強い、てことですか。」
まゆ子「うん。というか、長年やってると魔法無しでも武術の腕が上がったりする。」
じゅえる「素で強いの?」
まゆ子「修羅場を潜って来た者のみが持つ、真実の強さという奴かな。魔法騎士が投入されるような現場、つまりが普通の武者では手に負えないところだからね。経験値上がりまくり。」
じゅえる「なるほど。」
釈「それは素晴らしい設定です。」

まゆ子「というわけで、魔法ギルドはかなり強い騎士団を持つ。これは管理部門の魔法取締部局とは関係なく、リリカル部門及び錬金術師部門の守護者だ。
 で、魔法使いが拐われたとか、魔法の品が奪われたとか、外国が魔法関係の契約を破って悪用してる、とか事件が起こったら解決に乗り出します。

 しかしながら、故に彼らは一歩退きます。魔法侯に魔法騎士は居ない。魔法使いという存在は武力を前提としないから、立場上それを明らかにするのですね。」
じゅえる「魔法騎士団か。数は?」
まゆ子「いや、数はまだ考えてない。だがあんまり多くも無い。ギルド内に留まる人は少ないし、ギルド内の人でも外国出張や各国派遣が多いからね。」
釈「つまり、魔法世界の秩序を保全する使命があるんですね。」
まゆ子「うん。特に同盟国の外に契約で派遣されている魔法使いの立場を守るために、彼らは常に戦っていると言っても良い。
 また、魔法騎士は特に支援機材が無くても発動できる弱魔法であるから、どこでも発動可能。各国君主の傍で護衛を務めることも多い。魔法医術も使えるし。」

じゅえる「そうか。別にギルド内に留まらなくても、身分は高くちゃんと遇してくれるんだ。なるほど、お得だね。」
まゆ子「ま、使い物になる騎士を育てるのは大変なんだけどね。」

 

釈「魔法侯は5名。四大精霊魔法侯が居て、中枢魔法侯があります。魔法騎士はこれには入らないんですね。」
まゆ子「中枢魔法の一部門になるから。そして四大精霊魔法は実用の、中枢魔法は魔法教育に関しての権限を持ちます。つまり魔法ギルド内にあって重要なのは中枢魔法の方です。」
じゅえる「魔法使いの再生産がギルドの使命であるから、当たり前なんだね。」

まゆ子「この内土魔法は錬金術師と関連して、魔法の品を作ります。錬金術師の長も居ますが、魔法侯より一つランクが下がる。土魔法侯が代弁者です。」
釈「納得します。」

まゆ子「で、残りの風火水は外で働く魔法使いの代弁者なのですが、それぞれ分野が分かれています。

 水魔法は、地脈を流れる神劫電流の管理者として、地中深くに埋めた無骸の管理をしています。地脈とは言うけれどこの世界においてそれは地下水脈です。無骸は深く掘られた井戸に封じられています。
 つまり、旦那騎士達が押収した密造魔法甲冑は、水魔法侯の扱いになります。」
じゅえる「ふむふむ。」

まゆ子「火の魔法は文字通りに火の威力を最大に用いる戦争に主に関与します。城攻めとかに重宝なのが火炎魔法ですから。
 各国が武力として魔法使いを必要とする時に、その斡旋とかしているのが火の魔法侯になります。まあ、管理部門を通してですが。
 こう言ってもいいでしょう。魔法ギルドにおける将は火の魔法使いだと。」
釈「魔法騎士も彼に従うのですか?」
まゆ子「魔法攻撃の指揮を火の魔法侯が行うので調整はしますが、さすがに騎士団は別。同じ場所では案外と戦わないものです。
 あ、ついでに魔法騎士には魔法の品をお届けする際の護衛という役があります。どれも大変に高価な品で他に奪われて悪用されると困りますから、騎士が付いていきます。」

まゆ子「で、通常普通の魔法の使用を司っているのが、風の魔法侯です。プラズマの振動を利用する彼は、長距離通信が可能となります。
 通信は念話というのがありますが、これは長距離通信は不可能。大出力の強烈な電波を利用するには、四大精霊魔法が必要です。
 で、各国さらに全世界に広がる魔法ネットワークと通じているわけです。この力により魔法ギルドはどこよりも早く情報を手に入れます。」

じゅえる「しかし、外国に居る魔法使いが常に風魔法使いではないでしょう。長距離通信はこちらから送信だけじゃないのかい?」
まゆ子「いや、魔法のアセチレンランプというのを考えましたから、ここで発生する球電とやらに話しかけると、ギルドの風魔法使いが勝手に読み取ってくれるんだ。定時連絡が決まってるんだよ。週に1度くらいの。」
釈「便利なもんですねえ。念話なんか要らないような気がします。」
まゆ子「念話の便利さに比べると、さすがに落ちるよ。
 あとランプを使った通信の利点としては、魔法使いでなくても通話出来るというのが有る。ランプに火を点ければ、声の音声で球電が震えるから読み取れる。また球電はばりばりと振動して音が聞こえる。」

 

まゆ子「で、魔法侯の下に3人ずつくらいの責任者が居ます。それぞれの部門の責任者。中枢魔法侯の下は4人で、その一人が魔法騎士団長。錬金術師の長はこれよりも一つ上の格を認められます。
 3人の内一人は必ず、魔法技術研究家が居ます。なにより魔法のレベルの維持と発展が最優先ですから。」
じゅえる「つまり、魔法侯の下に居るのは、

 中枢魔法に、魔法教育管理者、魔法技術研究者、魔法騎士団。
 土魔法に錬金術師、魔法技術研究者。
 水魔法に無骸管理者、魔法技術研究者。
 火魔法に魔法軍事専門家、魔法技術研究者。
 風魔法に魔法通信者、魔法技術研修者。が居るんだ、」

釈「もう一人はなんでしょう?」

まゆ子「土魔法には、錬金術師と協力して魔法の品を実験評価する専門部署が居るぞ。というか、魔法力無しには魔法の品が作れないんだから、生産部隊がある。
 水魔法は無骸だけでなく、魔法墨も管理している。土から掘り出されたものを処理して聖水中に保存するから。つまり魔力の源を管理しているんだな、水魔法は。」
釈「でもー、水魔法侯が裏切るんでしたねえ。たしか。」

まゆ子「火魔法には各国に派遣されている魔法使いの能力を評価する部署がある。それで戦力分析を行うのだが、ついでに魔法使いとしてのランク付けやら賞罰も評価してる。魔法使い評価員だな。」
じゅえる「軍事がやっぱり中心なんだ?」
まゆ子「魔法は色々役に立ちますが、一般民衆への恩恵というのはあんまり無いのだ。やっぱ各王国の王家が切り札として抱えるようなもの。力として第一位に期待されますから。」

まゆ子「で、風魔法には一般の軍事とは関係無い魔法使いから寄せられるサポート取り扱いの部署がある。通信のみならず便宜も図ってくれる。魔法サービスセンターですね。」
釈「まとめましょう。

 中枢魔法; (魔法騎士団)、魔法教育管理者、【魔法使い福利厚生員】 、魔法技術研究者
 土魔法;  (錬金術師)、錬金生産部責任者、魔法産品評価員、魔法技術研究者
 水魔法; 無骸管理責任者、魔力源管理供給責任者、魔法技術研究者
 火魔法; 魔法軍事専門家、魔法使い評価員、魔法技術研究者
 風魔法; 魔法通信者、魔法使いサービスセンター員、魔法技術研究者

中枢魔法がちょっと足りません。」

じゅえる「魔法使い福利厚生員だ。魔法使いの年金機構が有るべき。」
まゆ子「うむ。」
釈「納得しました。追加です。」 

まゆ子「しかし、なにをするんだそいつは?」
釈「困ったお年寄りの魔法使いにヘルパーを派遣するのです。」
まゆ子「なるほど。それは重要なサービスだ。」
じゅえる「なるほど、ヘルパー無しには魔法使いてあんまり働けないんだったな。そうか、そういう部署も無いと駄目なんだ。」
釈「というか、ヘルパー部門の責任者ですね。」
まゆ子「そりゃ大切だな。」

 

 

【魔法甲冑リリカルポエマー 設定第三回】11/07/19

 

まゆ子「てなわけで、伸ばし伸ばしにしていた国際情勢について考える。
 ここで重要視しなければならないのが銃、火縄銃の存在だ。攻殻機動隊のぱくりであるからには、銃を外してはこの作品成り立たない。だが銃と甲冑はなかなか共存しない代物なのだ。」

じゅえる「あからさまにぱくりと言うなよ。インスパイアだ。」
釈「と言いますか、すでに攻殻機動隊どこ行った状態であります。タチコマはどこに行きました?」
まゆ子「ああ、タチコマの代わりに導入したチョロケンね。あれは猫のおもちゃになった。山猫女がことのほか籠が気に入って、ぐるんぐるん遊ぶことになる。これは可愛い!」
じゅえる「うー、まあ、可愛いのならいいか。」

釈「まあ、どこらへんに攻殻機動隊の残滓が発見できるか、というマニアックな遊びになっちゃいますねえ。」
まゆ子「分かるように分からなくする、のが正しいパクリ方なのだ。これはアレから持って来ただろう、というのは気づいたとしても、だからどうしたとなってしまう。」
じゅえる「それはいつもの手口だよ。」

 

釈「さて鉄砲です。鉄砲が有るということなら、大砲も火薬もありますね。」
じゅえる「いや、そいつらの方が先に存在しないと、小口径銃というのは案外とハイテクな代物だ。」
まゆ子「まあね。小口径銃には命中精度というのが要求されるから、大砲よりは精密に作らないといけないぞ。」

釈「でもヨーロッパで使われていたマスケットは命中精度がほとんど無かったとか聞いてますが、」
まゆ子「いや、命中精度が必要な職業の人はちゃんとした銃を使ってたぞ。マスケットが当たらなくて許されたのは、ヨーロッパの軍隊の伝統によるのだ。ずらっと一列横に並んでぞろぞろと歩いて行く。」
じゅえる「やりたいことは分かるけど、あんま頭良くないなアレ。」
まゆ子「仕方ないんだよ、あいつら逃げるんだよ。敵前逃亡しないように、みんなでぞろぞろ行くしかないんだ。軍隊じゃなくて羊飼いなんだよ、アレは。」

釈「というわけで命中精度の無い歯輪式やいまいち信頼できない燧石式でなく、火縄銃なわけですが、これに到るまでの技術開発史はどうなっているんでしょうこの世界。」

まゆ子「それも特に命中精度の良い瞬発式の火縄銃だ。ちなみに「げばると処女」で出てきた燐軸式てのは、要するにマッチを擦って火を着けるから、瞬間的に発射とはいかない。」
じゅえる「あれ、命中精度低いんだ?」
まゆ子「いや、そうでもないんだが。マッチが確実に火を着けるというのは案外と難しい。外れがある。ただ簡単にマッチ棒入れ替えられるから外れマッチでもわずか数秒で再点火可能となる。」

釈「なんかすごい魔法の銃ですね。」
まゆ子「あとちゃんと火が着いたとしても、火薬を巻き込んだ軸の中を火が走ってくれないといかん。また火薬を巻いている紙がちゃんと燃えるまでは内部に火が入らない。
 つまり、引き金を引いて3秒以上の待ち時間がある。これはちと苦しい。」

じゅえる「ほお。そこは弥生ちゃん修正を掛けなかったんだ。」
まゆ子「いや、弥生ちゃんはここまでくればもうほとんどパーカッション(雷管)式にあと一歩だから、放っておいたんだ。燐ではなく雷汞使えばいいんだけど、現在でも銃は密造で自作しても雷管にだけは手を出すなってくらいにヤバいから、ヤメタ。」
釈「安全重視策ですか。」
まゆ子「弥生ちゃんは偉いんだよ。まあ、燐軸式に使ってるのは危険な黄燐なんだけどさ。」

 

じゅえる「話を戻そう。つまりこの時代の銃は火縄銃の瞬発式なのだな。それが主流で他は無い?」
まゆ子「基本的な問題として、銃の普及率がある。狙撃にも使用可能な長銃身火縄銃はかなり珍しい代物だ。特別な訓練を受けた兵士に任せられている。」

釈「他の一般兵は弓ですか。」
まゆ子「クロスボウを使う者もまだ結構居る。短弓もだ。しかし既に時代遅れなのは否めない。

 現在主流の兵器は、単砲と呼ばれる短銃身大口径銃である。日本では石火矢と呼ばれる、つまり「もののけ姫」で出てきた奴だな。」

じゅえる「あれは性能はどうなんだ? 当たらないような気がするんだけど。」
まゆ子「当たらないぞあんなもん。」
じゅえる「だろ。」

まゆ子「この世界の銃器は地球のヨーロッパ銃火器の発達とちょっと異なる進化を遂げたんだ。つまり大砲、これが無い。」
釈「大砲が無い?」
まゆ子「正確に言うと、大砲で城壁を破壊しようと考えるのを途中で止めた。というか、城壁の下に穴掘って爆弾埋めたほうがてっとり早いと考えた。」

じゅえる「あーそれは私も考えた。大砲作るより爆弾使った方が石の城壁を破壊するの便利でしょう。」
釈「まあ、石積みの城壁はそれがいいですよね。何故大砲にこだわったのでしょう。」

まゆ子「ヨーロッパとか中国とかのあっちの方じゃ城攻めが進んでいて、ともかく敵兵を城壁に近づけない事に留意していたんだろう。とはいうものの、やっぱ近づけるわけだよどうやっても。」
じゅえる「堀とか垣根もあるからねえ、難しいのかな接近は。」
釈「日本の城でも堀で近づけませんよ。ですがー、日本の城は平城でも石垣の下は土ですからねえ。爆弾でどうこうは難しい。」

まゆ子「もう一つの要素としては、魔法の存在だ。この世界は歴史上、戦争の度に魔法が活用されてきた。で、問題なく城塞の攻略は進行する。」
じゅえる「ここで魔法使いか。」
釈「まあ、四大精霊魔法なんか使われたら、そりゃ城くらい落ちますからね。」

まゆ子「そこでこの世界の王様や将軍は考えた。都市全体を囲むのはさすがに無茶だ。王家や重要な組織の中枢部だけを堅固な要塞に隠して、それ以外のところはほぼ無防備でいいじゃないか、と。」
釈「日本式ですね。」

じゅえる「まてまて、それだと中国やヨーロッパみたいに野盗が街を襲うんじゃないか?」
まゆ子「そこで軍隊を機動的に運用します。つまり、街を守るのに塀を以てせず、傭兵なんか雇わずにまっとうな軍隊を育成して取り締まろうという、非常に合理的かつ健全な判断です。

 だから、爵位制度が発達しました。この世界は兵と領地の管理が完全には一体化せず、軍隊が早い時期から独立して王国軍として成り立っています。
 つまり制度上進歩した軍隊が居たのです。」

じゅえる「なるほど。」
釈「なるほど。」

 

まゆ子「つまり機動戦で敵をやっつけようというのだから、銃火器もそれにシフトしています。
 最初は爆弾ですね。火の点いた火薬の樽を投げて、蛮族をフッ飛ばします。装甲擲弾兵が大活躍しました。装甲騎乗擲弾兵です。」
じゅえる「うん、納得だ。」

まゆ子「そして、指向性爆弾に進化します。早い話が散弾銃の銃身の短いのを敵に向けて爆発させるという代物。これがどんどん進化して、銃器になります。
 最新モデルがつまりは単砲だ。」

釈「はあ、つまり散弾銃で戦ってるんだ。」
じゅえる「射程距離は短いんじゃないかい?」
まゆ子「火薬増量です。」
じゅえる「うう、なんとなく分かってきた…。伊達に「単砲」は名乗らないんだ。」

まゆ子「そして、単砲の砲身を長くして命中精度を上げたものが、「銃」です。これは大きい。」
釈「具体的には?」
まゆ子「口径30_、銃身長2メートル。」
じゅえる「大鉄砲だ! それもう火砲じゃないか。」

まゆ子「そうなんだ。今各国では一生懸命このタイプの火砲を研究してる。とはいえ、野戦に持ち出して機動戦闘をする為の装備だからこれでもかなり大きすぎるんだ。100キログラムも有るし。」
釈「そりゃあ重たいでしょ。大砲ほどではないにしても。」

まゆ子「だから小型の小銃が開発された。物語に出てくる火縄銃とはこれのことだ。元々命中精度重視で開発されたものの小型版であるから、使う人間も狙撃をするのが正しいと思っている。
 しかし、このタイプの口径を大きくしよう、とは考えない。そもそも爆裂弾は実用化されてないし、只の丸弾を当てるのに適当な目標物も戦場には無いからね。

 というわけで、魔法甲冑が戦場に登場すると、口径30_クラスの砲撃を受けるのだ。」

じゅえる「ちょっと待て、それは現代装甲車両でもやばいではないか。」
まゆ子「黒色火薬だから威力少ないから、現代兵器は大丈夫だよ。」
釈「でも当時の装甲兵器で考えると、とてもじゃないが直撃は耐えられないですよね。」

 

まゆ子「あ、ちなみに単砲も口径30_だ。砲身長200_程度。これに散弾ではなく丸弾を入れると、200メートルくらい飛んでいく。殺傷力に申し分はないが、さすがに装甲兵器には効果は薄い。
 形状は、石火矢ですが、鉄で出来た砲身に短い柄が着いていて、発射時は地面に突き刺して斜め構えて発射します。当然、精密照準なんてあり得ない。」
釈「日本軍の擲弾筒みたいなものですね。」
まゆ子「うん。爆裂弾が発明されたら、それも撃つ。」

じゅえる「装填に時間が掛かるんじゃないかい?」
まゆ子「いえ、単砲はさくさく撃てます。というか、運用術が進歩していて早合よりもさらに進歩した「前から全部入れ」をします。」
釈「なんですか、それ。」
まゆ子「つまり紙筒に火薬と信管と導火線と弾やら散弾やらが詰まった1セットをそのまま突っ込んで、導火線に火縄で点火します。それだけでOK!」
じゅえる「いいかげんな火砲だな。」
まゆ子「要するにただの鉄筒なんだよ。花火と思ってください。

 もちろん狙撃銃はこれに比べると非常に繊細かつ精密に出来ています。照準器だって付いてくるくらいだ。ただの長い筒だけどね。」

 

釈「しかし、そんな武器が普通に存在するとすれば、部隊の運用法はずいぶんと変わりますね。単砲の装備比率は? 普及してますか。」

まゆ子「あー、そうだな。小隊50人居るとすれば、狙撃銃手×1、単砲手×10、短弓手×3、鐘太鼓×2、旗×3、弾薬×5、残り槍。というくらいかな。」
じゅえる「弓手の意味が良く分からんな。要らないんじゃないかい。」
まゆ子「いや、狙撃銃も単砲も即応性には欠けるから、弓は必要なんだよ。あと連絡用に矢文を射ったりするし、鏑矢で通信もする。通信士の役割が大きいかな。」
釈「楯は?」
まゆ子「単砲には効かん。特に丸弾をぶつけられたらばっきりだ。接近戦時にはもちろん邪魔で、単砲からの散弾に対応して甲冑を着ています。」

じゅえる「鉄砲に甲冑は効かないんじゃないかい?」
まゆ子「散弾銃は別だよ。」
じゅえる「つまり、散弾には効くが通常弾には効かない甲冑を着ているんだ。」

まゆ子「30_の散弾でなく小口径の銃が大量に導入できればいいんだけど、実際にやってみたら負けた。」
釈「負けた?」

まゆ子「うん。狙撃銃部隊とも言える直接照準の銃を装備した部隊と、単砲の部隊がぶつかった事例が有るんだよ。もちろん狙撃銃部隊は最新鋭の高価な銃を装備して訓練も十分に積み重ねた精鋭。
 対して単砲部隊は数は3倍なのだが、普通弾使用のまったく命中率なんか考慮しない部隊だ。」

じゅえる「狙撃銃部隊が負けたのか。」
まゆ子「狙撃銃と言っても丸弾であって、50メートルを超えると途端に命中率が下がるのです。口径も14_程度で弾が軽い。
 対して単砲の丸弾は30_とデカくて重い分まっすぐ飛んで、最大有効射程の200メートル付近で狙撃銃隊を壊滅してしまったのだ。やはり戦争は数だよ。」

釈「つまり、大口径の勝利! なんですね。」
まゆ子「だから、現在各国は単砲と同じ30_口径の狙撃銃の開発と運用に躍起になっている。
 命中率と打撃力と運用性、戦場における射撃目標、を考えると、このサイズの砲に無限の可能性が見えてるのだよ。

 あと、思ったより単砲の命中率がいい、と見直されている。つまり迫撃砲と同じで地面に接地して発射するから、手で持って撃つよりも衝撃反動に強いんだ。土台が安定しているから、素直に飛んでいく。」
じゅえる「丸弾であっても、か。」
まゆ子「逆に、これだけ命中率がいいのに、散弾を使わねばならないのが不満に思っている。命中率を活かして大型弾を打ち込み、破裂して殺傷すればいいのになあ、と模索が続いている。」
じゅえる「ふむ。」

まゆ子「ちなみに、城塞攻略においても単砲は便利が良い。上に向けて撃つ砲だからね。」
じゅえる「便利な武器だな。」
まゆ子「火薬、銃砲の歴史が必ず同じ道を通るわけじゃない、てこった。地球で言えば、ラッパ銃が進化したようなもんだよ。」

釈「でも、やっぱり真正面からの対決なら、命中率を重視すべきではないですか? 狙撃銃を歩兵に一般化する方向には行かないんですか。」
まゆ子「だからヨーロッパじゃないんだよ。ずらずら並んでまっすぐ行進なんてしない。10数名ずつの組でこそこそと突っ込んでくるのが通常の戦法だ。大挙して接近すると、散弾にやられるからね。」
じゅえる「ふむ。散弾は卑怯な武器だな。」

 

まゆ子「まあ戦場のシーケンスはこんな感じ。

・まず両軍接近する。単砲有効射程の200メートルまで接近したら丸弾で攻撃する。これは命中率関係なしの制圧射撃であるから、数の勝負。
・両軍盛大に単砲を撃ちまくると戦場に黒煙が立ち込めて視界が非常に悪くなる。これを利用して斬り込み隊接近。
・敵の先頭の単砲をは散弾装填に替わっているから、狙撃銃で射殺。射手が死ぬと、自軍の隊列の中で散弾が爆裂して大混乱。
・こちらも散弾攻撃で、向こうに発射の機会を与えない。
・斬り込み。」

釈「弓なんて出番有りませんね。」
まゆ子「うん。だから鏑矢とか火矢を用いて通信だな。」

 

じゅえる「でも単砲の弾って鉛だろ、高いんじゃないかい。」
釈「「げばると処女」では鉛が高くて、銃弾への使用が制限されてしまいました。」
まゆ子「ふむ。じゃあ鉄丸で。」
じゅえる「丸い鉄の弾って、作るの簡単なの?」
まゆ子「鋳鉄であれば。しかしー、鋼の鋳造技術はあんまり進歩していないことにするかなあ。」

釈「鍛造では丸弾は作れませんか?」
まゆ子「型に嵌めてガンガン叩けばいい。完全な球体でなくてもいいんだから。」
釈「うう乱暴な。」

じゅえる「しかし、鉄の弾てのはけっこうな値段になるんじゃないかい。なにせ鉄だよ。」
まゆ子「たしかに30_径の丸弾はもったいないな。」
釈「鉄は貴重品ですからね。石弾でも使いますか。」
まゆ子「ふーむ。当たって砕ける石弾は、破壊力こそ低いが、殺傷力は有るのかなあ。」
じゅえる「そりゃー、混合だな。鉄と石の弾を状況に応じて撃つ。」

まゆ子「そんなもんかな。うん、そうだな。あんまり進歩的な武器を使うというのも、逆に嘘っぽい。単砲で使う単一丸弾は石。これで決定!」

じゅえる「とはいうものの、石弾を作るのも問題だ。固い石を丸くするのは結構な骨だぞ。」
釈「逆に手間賃で鉄弾より高くなるかもしれません。」
まゆ子「うう。じゃあ、焼物で。」
釈「陶器!」
じゅえる「うう、そんなもん当たると割れるじゃないか。」
まゆ子「うーむ。ではコンクリート弾だ。石灰と小石を混ぜて丸く固めたものを使うのだ。」
釈「うう、へんな武器になっちゃった。」
じゅえる「そこは陶器にしてくれ。さすがに30_コンクリ弾てのは実現可能か不安になる。なんか強固になる特殊な陶器の製造法があるんだよ。」

まゆ子「ふむ。砂鉄でも混ぜ込んどくか。」
釈「あ。それいいですね。鉄の焼物ですよ。重たいし。」
まゆ子「そんなもん実際に使ったらどうなるか、見当もつかん。しかし、まあ不思議材料ということで納得してもらおう。」
じゅえる「コンクリ弾よりははるかにマシだと思うぞ。」

 

釈「しかし単砲は導火線が有るということですが、これはー火を着けるのは何を使いますか。」
まゆ子「火縄。」
じゅえる「点火機構は無いんだろ?」

まゆ子「跪いて地面に柄を設置させ左手で単砲を支えて、右手の火縄で砲口から出てる導火線に火を着けて、火縄を口で咥えて、左右両方の手で単砲の柄をしっかり握り固定します。導火線式であるから出来る安全発射法ね。」
じゅえる「なんかずいぶんと原始的なもんだな。」
まゆ子「まあ威力が現実的だから、機構は原始的という風に許してくれ。
 それに、散弾火薬の詰まった筒はそのまま手榴弾にもなるのだよ。威力は低いけど。丸弾を撃つ時は火薬だけが詰まった爆弾を入れて丸弾を乗せる。」

じゅえる「当たり前と言えば当たり前だが、なんという原始的な火器だ。」
釈「まあ、……そうですねえ。これで本当に弓矢クロスボウを駆逐できるのか、心配になってきました。」
まゆ子「いや、でも200メートルも石弾が飛んでいけば弓矢よりも強力だぞ。破壊力あるぞ。」
じゅえる「投石はたしかに強力だし、200メートルも飛ぶなら運動エネルギー半端じゃないのは分かるけどさあ。」
まゆ子「装填方法も簡易にして、連射速度も上げたというのに、何が不満だ。」

釈「強いて言うなれば、メカらしさが乏しいところですか。」
まゆ子「メカじゃないもん。単砲に可動部品付いてないもん。」
釈「ですよねー。」
じゅえる「なんか気に食わん。せめて引き金くらい付けてくれ。」
まゆ子「まあ火縄式点火法はさすがに考えものだが、逆に非常に信頼性の高い方法だぞ。そうだ、導火線を漆塗って防水にして、雨中でも発射出来るようにしよう。」
釈「いや、そういうところに改良しないでですね、」

 

まゆ子「というわけで、単砲の威力を考えてみた。30ミリという大口径は威力十分である。」
釈「はい。30ミリですから凄いです。」
じゅえる「まてまて。これは単なる花火筒なんだから、火薬の量で威力は変わるだろう。」
まゆ子「まあね。」
じゅえる「つまり、こう言っちゃなんだが、筒が爆発するくらい火薬入れて自爆とかも考えられる。」

まゆ子「まあそこは、投射物の威力というところで測定しましょう。
 で、単砲の第一使用目的は散弾による敵歩兵の突入防止です。50メートルの近距離で殺傷能力があります。」

じゅえる「金属甲冑着用で?」
まゆ子「はい、と言いたいところだが、この散弾はかなり小さいから威力もそれなり。」
釈「弾に乗せられるエネルギーに限界がある、というわけですね。でも騎士の金属鎧はともかく、一般兵が着用する防具くらいは貫通してくれないと困ります。」
じゅえる「でも楯という防御手段もあるわけだ。どうするね。」

まゆ子「うん、散弾は楯が有れば防げる。が、かなりの厚板楯ね。矢を防ぐだけなら牛革を1枚張っただけでもけっこういけるんだが、鉄や鉛の小粒であるから、それなりの厚さの板楯が必要。で、そんなもの抱えては突入できない。」
釈「運用上無理がある厚さの楯が必要なわけですね。」
まゆ子「それに散弾が前から来るとは限らない。上から降り注ぐこともある。というか、楯なんか構えてたら当然上を狙う。」
じゅえる「そういう運用の自由は、単砲装備兵の技術の問題か?」
まゆ子「うん技術的な自由度がかなり高い兵器だ。」

釈「それでも楯を持って来たらどうします?」
まゆ子「素直に丸弾の単一弾を使おう。200メートルで当たらないと言っても、50メートル以下ならいやでも当たるぞ。」
釈「あー、そうですねえ。あたりますよねえ、当然に。
 ちなみに当たらないというのは、どのくらいのレベルで当たらないんですか。数値でお願いします。」

まゆ子「単一丸弾の最大有効射程である200メートル付近に着弾させようとすると、直径15メートル円内に落ちる。くらい。」
じゅえる「かなり酷いな。」
まゆ子「そうかな? 10発同時に撃てば、15メートル円内で確実に誰か当たるような命中率だぞ。」
釈「大量同時使用を前提とした武器としては、満足すべきなんですかねえ?」
まゆ子「ちなみにこの距離での威力というのが、「完全装甲の騎兵を打倒出来ること」、と決まっている。砂鉄陶器弾であれば200メートルだが、より重たい鉄丸であればもうちっと距離は伸びる。ただし、伸びた分だけ命中率はさらに悪い。」

じゅえる「しかし、砂鉄入りとはいえ陶器の弾だ。騎士が食らって効くものだろうか。」
まゆ子「あーなんといいますか、実は騎兵の甲冑は簡素化が進んでおり、同時に単砲への対応もされています。つまり装甲強固なのはヘルメットと胸甲だけで、ここで受ければ陶器弾なら死なずに済みます。200メートルなら。」

釈「ということは、100メートルなら死ぬ?」
まゆ子「装甲自体を貫通出来ないとしても、30ミリ弾の威力は絶大です。ぶっ倒れて頭蓋骨胸骨骨折くらい普通です。死ななくても戦闘不能確実です。」
じゅえる「うん、威力的には十分なんだ。」

まゆ子「この100メートル付近で単砲単一弾の威力は定められています。つまり、「一般民家の木製扉を一撃で貫通できること」。この威力が確実に出るように、火薬量は加減されます。」
じゅえる「家の扉、か。」
釈「中世ヨーロッパの家屋の扉、ですか。ファンタジー的な知識だと、材木の結構太いのを使った頑丈なものですが。」
まゆ子「防犯能力的には、斧や槌で殴られても数分は持つ程度の強度、は有りますね。破るのに苦労する。」
じゅえる「それを、貫通か。かなりの威力だな。」
釈「ええ、たぶんこれは甲冑着てても死にますよ。なにせ、ハンマーでぶん殴られても大丈夫な扉を貫通するんですから。」
じゅえる「事実上、これはハンマーを打ち出すようなものだね。」
まゆ子「鉛弾鉄弾だとするっと貫通するんだが、陶器弾だとぶっ壊れて木製扉に大穴が開く。そんな感じ。破壊にはむしろこっちの方が効く。」

じゅえる「ふむ。この時の命中率は?」
まゆ子「やっぱり直径15メートル以上だな。ただしこれは仰角60度くらいでの発射で、天井から弾が落ちてくる。この距離ならむしろ直射に近い軌道をとってもいい。これだとかなり命中率が高く3メートル円で当たる。」
釈「いわゆる天井サーブですが、意味があるんですか単砲の運用上。」
まゆ子「物陰に隠れている敵を直接攻撃出来る魔法の射撃だ。城塞攻略とかでも多用するぞ。とはいうものの、この時の威力は200メートル時の騎士打倒と同じだ。人間なら死ぬレベル。
 木製扉破壊は直射の時ね。」

釈「つまり、直射は出来るんですね。でも照準が出来ない。」
まゆ子「照準を付けてみましたが、一人で点火する場合は無意味。誰かに火を点けてもらいましょう。」
じゅえる「射撃姿勢が問題なんだな。とはいうものの、だからこそ歩兵がこんな大口径砲を使える。」

まゆ子「というわけでですね、単砲の弾を確実に当てる為には50メートル以下、いや20メートル以下にまで接近して撃ちます。」
釈「げ!」
じゅえる「人間に当てるのか、それ。」
まゆ子「いかに金属甲冑装備の騎士でも、これは確実に死にます。というか、人間用甲冑なら貫通します。ただしよく出来た優れた鋼の胸甲であれば陶器弾に耐えます。耐えるだけで死にます。」
じゅえる「まあ、そりゃ死にますか。」

まゆ子「魔法甲冑との戦闘の時に、鉄丸使用でこれやります。決死隊です。」
じゅえる「うん。」
釈「死人続出ですね。」

 

まゆ子「だいたいね、あんまり強い火器だと、魔法甲冑が危ないんだよ。ただでさえ防御力は弱いんだから。只の鉄板が貼ってあるんだぞ。」

じゅえる「その鉄板だが、どのくらいの強度が有るんだ? おおまかでいいんだけど。」
まゆ子「あー、なんといいますか、搭乗者を守るだけの防御力があればいいんだから、大した重量にはならん。えーと、100キログラムくらいかな。しかしこれだと狙撃銃はまだしも、30_狙撃砲は防げないな。」

釈「100キログラムといえば先程の狙撃砲、でいいのかな、と同じ重量です。ちと装甲薄すぎませんか?」
まゆ子「とは言うものの、人間が着る甲冑の倍以上の重量だ。しかも全鋼製品。」
じゅえる「無骸を操るんだから、自由度が低いとダメでしょう。搭乗者の可動範囲を全部覆うとすれば、その倍は鉄が欲しいぞ。」
釈「そうですね。こう言ってはなんですが、人間の甲冑の2倍の厚さではぜんぜん足りません。100キログラムは却下です。」

まゆ子「うう。だが30_砲弾を防ぐには、正直トンカチで出来る鉄では駄目だぞ。表面硬化装甲でないと。」
じゅえる「錬金術師が居るんだから、やれ。」
まゆ子「うう、では魔法の力で表面硬化鋼板が製造できるということで。」
釈「軽くなりますか?」
まゆ子「ならない。でも200キログラムくらいで、たぶん黒色火薬砲30_丸鉄弾くらいならなんとかなると思う。」

じゅえる「いいじゃないか。」
まゆ子「問題は、人力でそんなゴツイ鋼板を鍛えるのは無理てとこだ。」
釈「魔法では?」
まゆ子「そういう魔法は無いのだよ。おそらくは1センチ鋼板くらいであろうと考える。_じゃなくてaだ。厚さ1センチの鉄を人力でどうやって鍛えますか。」
じゅえる「魔法の力でオークを使おう。魔法で筋力強化は出来るんだろ。」
まゆ子「そんな無茶な。というか、一人二人に魔法を掛けて怪力にしたくらいで、そんな大物作れない。」

じゅえる「ふむ、まずいな。」
釈「物語の根幹が危ないですね。」
じゅえる「水力で何とかできないか?水車でトンカチして。」
まゆ子「そんな大げさなことは、国家の正式な工廠でないと無理だ。というか、そんなものを使う用途が魔法甲冑以外に見当たらない。」
じゅえる「まずいぞ釈ちゃん。」

釈「鋳鉄を使いましょう。昔は戦車も鋳造で作っていたから大丈夫です。」
まゆ子「いや、鉄鋳造技術は無しにしたんでしょうに。とはいうものの、鋳造で作るにしても大物過ぎる。」
じゅえる「釈ちゃん考えろ、どうすれば鉄の大物部品を鍛え上げられるか。やはり魔法か。」
釈「土魔法は鉄金属を溶解出来るんですよねえ。うう、使いたい使いたい。」

まゆ子「仕方が無いなあ。じゃあこういうことで。大砲は鍛造で作るのだ。」
じゅえる「え?」
まゆ子「日本で鉄砲作った時みたいに、鋼の鍛造で長尺の部品を作るのだ。薄板を巻いていくわけだね。これでフレームを作る。」
釈「なるほど。しかし装甲板はその手法では作れませんよ。」
まゆ子「長尺の輪っかを繋ぎあわせていく。板ではなく、棒を組み合わせて面を作る。簾、いや鎧戸かな。細いのが段々になってるのだ。」
じゅえる「おー、で、強度は?」
まゆ子「1本ずつの鋼鉄棒の強度は十分だ。それを隙間が無いように組み合わせていくのだが、もちろん欠陥も出来るだろう。完全密封は無理。でも他に方法が無い。
 無いというか、この方法でないとそもそも部品が作れない。多くの工廠で鋼鉄棒を寸法どおりに作らせて、無骸最終組み立て現場に部材を送って、甲冑に構築する。部品を作った工廠は、自分が何を作ったのか理解していない。しかし、魔法甲冑は組み上がる。」

じゅえる「うーむ。釈ちゃん、これでいいのか?」
釈「少なくとも、私たちの頭では、部材を他所で作ってこっそり組み立てる、なんてのは考えつきません。物語、とくに攻殻機動隊をネタにするのであれば、この方法が正解なのでしょう。」
じゅえる「つまり魔法甲冑は鎧戸みたいに段々の有る装甲を持つ。うむ、西欧甲冑とはかなり外見が違うな。」
釈「そうですね。しかし許容すべきでしょう。」

まゆ子「いや組み立てるだけでなく、修理もその方法でないと出来ないぞ。工廠内だけでなく、戦場でも補修するつもりだから。」
じゅえる「うーむ。なるほど。鉄製の部材は人力でハンドリング出来る軽さでないといけない、のか。」
釈「ウインチがあるわけでも無いですからね。なるほど、野外で修理ですか。」

まゆ子「しかし、これであっても中世工房では荷が重い。近世の入り口くらいの発展度工業力必要だよ。」
じゅえる「大砲作ってるんだから、それは十分な工業力、鉄生産力が有るんだよ。そいう風に決めた。」

 

釈「ではこういうことにしましょう。最初に見つけた出来そこないの魔法甲冑は、人間に着せるような形の薄い鋼板で鎧っていたんです。もちろんこんな厚さの装甲では意味が無い。」

まゆ子「なるほど。密造の犯人によって技術レベルが違うんだ。完全実用に値する完成度になるまでにも、色々なタイプの魔法甲冑が存在する。そうだな、フレームは木で作って鉄板を鋲で打っていくとか、針金の籠をフレームとして薄い鉄板を貼っていくとか。」
じゅえる「なるほど。どうやって実装するかに、様々な創意工夫が有ると。」

まゆ子「この時代の工業技術の粋を集めて作られているんだ。魔法甲冑は。」

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釈「えーとー、国際情勢は?」

まゆ子「今やってたじゃないか。つまり、この工業力をベースとして、各国は闘争を繰り広げているんだよ。」
じゅえる「ちょっとまて、これは結構な技術レベルではないか。武器レベルも結構な破壊力を持つのだが、鉄製造技術いや産業がずいぶんと発達してないと出来ないぞ。鉄はどこからやってくるんだ?」
釈「おお! そう言えば、鉄を溶かす燃料が必要でした。石炭の実用化が無いと、これは無理でしょう。」
まゆ子「木材燃やしてでは、無理だな。たぶん見渡すかぎり木の一本も無い不毛の大地が舞台になってしまう。」

じゅえる「石炭は有る!」
釈「決まり!」
まゆ子「うむ、たしかにここまで進歩しているからには、石炭の利用がある事にしよう。」

じゅえる「というか、鉄はどこから来たのだ? 鉄鉱石か、砂鉄か、それとも輸入鉄か?」
釈「製鉄技術はどうなってるんですか、各国共に技術共有してるんですか?」

まゆ子「……、かんがえてない!」
釈「素晴らしい泥沼です!」

 

まゆ子「いやちょっとまて、それは重大な問題だ。この世界の経済規模はどうなってるんだ? そもそもあんまりたくさんの国家を出すわけにもいかないし、動員すれば一ヶ月くらで全国全軍招集出来るようなせせこましさを想定する。」
じゅえる「ヨーロッパくらいの広さ、というのも、なんだな。世界大戦争というくらいだから、アウステルリッツ三帝会戦くらいの規模は欲しい。」
釈「いやーそれはさすがにー、ちと大げさすぎるような気が、」
まゆ子「とは言うものの、魔法甲冑が勢揃いしてるんだから、世界の終りのハルマゲドン級の大戦争には違いない。

 まずここから考えよう。最終戦争に動員出来る兵力は何人? 敵味方全部でだ。」
じゅえる「アウステルリッツで、仏軍73000 VS 87000だ。日本史上最大の関ヶ原で165000くらい。」

まゆ子「10万は、多いか? 多いな。火器主体の戦争に10万は多すぎる。第一火砲の数がそんなに無いはずだ。それに魔法甲冑が有り魔法使いが物理魔法をじゃんじゃん使うんだから、一般兵士は精鋭のみを戦場に投入していると考える。
 よくは分からんが3勢力に分かれてると仮定して、総数3万くらいで、魔法甲冑と魔法使いが主力、と考えよう。」

釈「各勢力1万ですか。しかし精鋭のみ投入となれば、少し考えますね。」
まゆ子「この戦争はエリートのみの戦いなのだよ。魔法が炸裂し魔法甲冑が大暴れする中に、一般雑兵の立ち入る隙が有るものか。しかも兵であっても大口径銃砲を装備する。全員だ。」
じゅえる「なるほど。補助兵科無しでひたすら火砲を投入するという、およそ中近世にあり得ない戦闘なんだな。それは、3万でも多いくらいだ。」

まゆ子「銃砲3万を用意できる兵力とすれば、およそ10万いや15万は動員出来るはず。それも決戦であるから精鋭のみを率いており、領国安保目的の部隊は温存している。
 決戦場に3万、その外に救援5万、さらに後詰に5万は用意しているだろう。」
釈「つまり全部隊の火砲をかき集めて精鋭に渡して、その他は外に控えている状態ですね。」

まゆ子「つまり13万人は兵隊として普通に動員できる。この戦、魔法が焦点であるから総力戦ではない。総人口に対する動員比率は3パーセントくらいだろう。総人口400万?」
じゅえる「近世の工業力を支える農業生産力を考えると、1000万弱ではないかい?」
釈「そうですねえ。この13万人は一般民衆から徴兵したものではなく、職業軍人少なくとも戦争を生業とする人たちです。1000万人ですねえ。」

 

まゆ子「戦場3万銃兵、というのが過大か?」

釈「そう思いますね。銃兵1万。これに抑えましょう。」
じゅえる「3分の1、300万人。十分の1が工業人口として30万人。」
まゆ子「多い。工業10分の1なら、とんでもないエネルギー資源が有ってじゃんじゃか製造してる、と思うぞ。この時代的には。」
釈「やはり石炭は有るのです。燃やして鉄をじゃんじゃか作ります。」

まゆ子「だがそれでは国内消費量を遙かに上回る。とっくの昔に産業革命してないといかん。」
じゅえる「だが銃砲をこれだけ動員できるからには、そのくらい無いと無理だ。」
まゆ子「分かってる。どこかに歪みがあるんだ。なんだろう。」

釈「おそらくは、海外植民地です。外からいっぱい物資を流入させているのでしょう。」
じゅえる「ふむ、1500年代的にそんな感じだな。」
まゆ子「やはり大航海時代無しに火砲の大量導入は無理か。」
じゅえる「カネの問題も有ると思うぞ。」

まゆ子「この世界大原則。アメリカ大陸のような都合の良い植民地は無い。アフリカも無い。アジアも無い。大航海時代は到来していない。」

釈「自前の生産力だけで近世に突入した、世にも稀な社会なのです。」
じゅえる「外界との交易無しでそれだけの武装をやり遂げる財力は、無いぞ。」
まゆ子「うむ。完全クローズドならたしかにとっくの昔に平衡状態に陥っているはずだ。どこかに抜け穴がある。外から来てる。」

 

釈「やはり交易を行っているのですよ。鉄生産も自力でやっていると考えるのは間違いです。銃砲の製造はやっても、鉄そのものは輸入品ではないでしょうか。」
じゅえる「だがそんな気前よく鉄をくれる他国が有るのか? 鉄と何を交換するのだ。」
まゆ子「穀物や木材では駄目だ。なにかすごく儲かるものを、」

じゅえる「…………、魔法使い。」

まゆ子「む!」
釈「む! それは儲かります!」

じゅえる「だが鉄と交換するにはまだ弱い。もう一声。」
まゆ子「じゃあ石炭でいいや。」
釈「なるほど。火砲の製造に困らないほどエネルギーが有るのなら、売り飛ばしてもいいですかね。」
まゆ子「工業人口1割ということであれば、エネルギー資源はじゃんじゃか採掘中だ。売り飛ばしてもいいんじゃないか。」
じゅえる「しかし、石炭を遠くの国に売りに行くというのは、儲かるのか? この時代。近所で木を切った方が。」
まゆ子「硫黄分の少ない、鉄生産に非常に都合の良い石炭という事にしておこう。ここらへん産の石炭でないと、品質の良い鉄は大量に作れないんだ。」

釈「魔法使いと石炭、いい感じですがもう一つくらいアイテムが欲しいですね。」
まゆ子「そりゃ鉄砲でいいじゃんか。」
釈「ああ。なるほど。鉄砲を売ればそりゃ儲かりますね。」
まゆ子「特に単砲を使った戦術ごと売っているんだよ。その意味では、魔法甲冑を作るくらいの工業力は十分に進化したと言っていいのかな。」

じゅえる「つまり、石炭を売って鉄を買い、銃砲にして売り飛ばす。ふむ。儲かるな。」
釈「その商売であれば、ここらへんはずいぶんと裕福な感じでしょう。魔法も有るし、いいかもしれません。」

 

まゆ子「しかし、石炭売るのはさすがに弱いかな。もう少しスペシャルな感じが欲しい。」
じゅえる「地面の下から掘るものでなく、地上で生産出来る増えるものを売るべきだろう。」
釈「毛糸とか木綿とかですかねえ。」

まゆ子「これはやはりアレだ。石炭のエネルギーによって生産できる産物だ。他では手に入らない。」
じゅえる「石炭から誘導した合成樹脂とかはどうだろう? プラスチックというかカーバイトというか。」
まゆ子「そりゃベークライトだろ。しかし、あんま面白くないぞ。やっぱ畑で取れるものにしよう。」

釈「チョコが取れます。」
じゅえる「むう。」
釈「畑にチョコの豆が生えていて、これをすり潰すとチョコになります。」
まゆ子「うむ、チョコか。たしかに南米でのカカオは通貨として用いられるほどに貴重な品だ。チョコが成るのは悪くないが、さすがにチョコとは言えぬ、」
じゅえる「ここは魔法らしく、万病を癒す薬が生えてくる方が良くないか?」
釈「チョコです。」
まゆ子「チョコも万病の薬だったなあ、たしかに。よし電気豆というのが生えてきて、これをすり潰してウイロウみたいなものにすれば、万病の妙薬ということで。」
じゅえる「うむ、いかにも魔法らしい。」

まゆ子「さらにもう一個、売れるものが欲しい。」
じゅえる「ゲルタ。」
釈「ゲルタですかねえ。」
まゆ子「ゲルタなのかい? まあ、アレは中毒性が有る食品だからねえ。」
じゅえる「さすがにゲルタはあれだから、陸生かたつむりの干物か塩漬けを珍味として売ることにしよう。エスカルゴだよ。」
まゆ子「もう一声!」
じゅえる「じゃあ、これは媚薬なのだ。女の子がめろめろになってやりたい放題に出来る。」
まゆ子「よし買った!」
釈「それは売れますよ。バカ売れです。」

釈「もっと普通の、でもハイテクぽい産物は無いでしょうか。いかにもここは進んでる工業国だぞお、という。」
じゅえる「例えば?」
釈「製品です。本とかですかね、ともかく不思議な、いかにも魔法的な本だとか情報関係のなにかですよ。しかも売れる。」
まゆ子「注文がうるさいなあ。じゃあハイテク製品でいいかい?」
釈「ファンタジー世界でもありそうなものにしてくださいよ。」

まゆ子「仕方ないなあ、ではー、セロファン紙だ。」
釈「え?」
じゅえる「セロファンて、あれは近代化学の製品ではないのかい?」
まゆ子「材料は只の木だよ。セルロースだ。まあ化学的な、近代にしか作れなかったものだけどさ。」
釈「透明な紙、それは欲しい。」
じゅえる「たしかに、魔法ぽい代物だ。それはすごく売れる。」
まゆ子「じゃあ、セロファン紙に色付けて大々的に売り飛ばすということで。」

 

釈「しかし、魔法の品を作って売るという商売は諦めきれませんね。なにかソレらしいものはありませんかね。」
じゅえる「というか、電気魔法なんだ。なんかすごいものを作れよおまゆちゃん。」
まゆ子「ふむたしかに。たしかに電気魔法の産物は売れるだろう。…アルミとか、かねえ。」
釈「しかしアルミの加工は出来るんですか?」
まゆ子「いやーやはり無理だろうし、そもそもあんま嬉しくもない。」
じゅえる「電気で出来るもっと魔法っぽい品物を高値で売るから儲かるのだ、ということにしておこう。」

まゆ子「いや待て。そうだな、魔法使いが商品であるのだから、魔法使いをサポートするなにか、を売るというところではどうだろう。」
じゅえる「無骸、ではないのかい?」
まゆ子「無骸であることは知っているが、無骸の無い地域でも魔法を発動させるアイテムというのはどうだろう。」

釈「できますか、そんなものが。」
まゆ子「プラズマ!」
じゅえる「まあ、プラズマだろうねえ。」
まゆ子「だがここはもっと原義に戻って、エクトプラズム。」
じゅえる「あの、アレ?」
釈「口から出るずるずるした奴ですか。」

まゆ子「それだ。後に旦那騎士が無骸の頭を断ち割った際にどろりんと出る骨髄の、おもいっきり薄いのが魔法の力で精製出来る、というのはどうだろう。」

じゅえる「ふむ。しかしそんなものが量産出来る設定で、いいのか?」
まゆ子「いややはり、魔法にもパラメータを振っておかないと、政治外交経済上の立つ瀬が無い。」
じゅえる「ふむ。魔法が確かに国際政治上で重要なファクターである、と印象づけねばならないだろうね、やはり。」

 

**************************

まゆ子「というわけで考えた。アセチレンガスが出てくるランプを使うと、地中を流れる神劫電流を捉えて魔法が使えるようになります。地脈ですね。
 ここで重要なのは、アセチレンランプ自体は魔力を発生するものではないということ。えーと、つまりエクトプラズマが気化して炎となると、神劫電流を地上に導いて魔法になります。」

釈「アセチレンガスというのは、石炭から作ったカーバイトから出てくるガスです。炭化カルシウムですね。石灰とコークスを2000℃の電気炉で熱するとできちゃいます。電気魔法です。」
じゅえる「ふむ。石炭は有るのだからよいのだ。でもアセチレンなどというあからさまにまともな物質を使っては困るぞ。」
まゆ子「なーに、そこは魔法物質でいいんだよ。エクトプラズムの入ってるランプに聖水を注ぐと、ガスが出て炎が燃えて、電気魔法が使えるようになる。ただの炎はつまらんな、球電にしよう。」
釈「いいですね。プラズムがプラズマになるのです。」

じゅえる「原料は石灰ではなく、魔法物質と石炭の反応ということにしよう。えーと石灰だからー、」
まゆ子「カルシウムが必要なわけだから、骨だな。なんかしらんけど出土する骨と石炭で作るのだ。」
じゅえる「なんの骨?」
まゆ子「恐竜。」
釈「いや、それはー、もっとおだやかなもので。」

まゆ子「おお! ならばマンモスの牙だ。」
じゅえる「うう、はじめ人間設定だね。」
まゆ子「土の下から掘り出したマンモスの牙と、この地で取れる特殊な石炭を合わせて、電気魔法つまり土魔法を掛けると魔法物質エクトプラズムが出来るのだ。て、エクトプラズムという名はさすがにいかんな。」
釈「まあそこはてきとーにでっち上げます。」

じゅえる「でもなんでここにだけそんな魔法物質が転がっているんだ?」
まゆ子「そりゃー、神代の時代、はじめ人間の頃にこの地で魔法大戦争が起きたからだよ。その残骸というか、森林一個まるごと炭化させてしまったのだ。」
じゅえる「ふむ。その時に作られた木炭なんだ。実際は。」

釈「しかしさすがに木炭だと、恐ろしく深い森まるごと一個燃やしても、さほどの量にはならないのではないですか?」
まゆ子「そうだな。この地では何百万年にも渡っていつもいつも魔法大戦が起きていた、てのでは?」
じゅえる「さすがにそれは大げさすぎる。とはいうものの、さすがにそろそろ神!を考えねばならんね。」

 

まゆ子「ともかく、ここらへんでは特殊な墨が出土するのです。……変換間違えた炭だ。

 ……墨か。」
釈「書道の墨ですか?」
まゆ子「アレは松の木とか燃やして出来た煤を膠で固めて作るのだ。魔法大戦によって燃やされた森林の煤が膠状物体に取り込まれて出来た固体、というのは。」
釈「おお!」
じゅえる「つまりその膠状物体が、エクトプラズムだな? なんかべとべとした。」
まゆ子「そういう事になる。つまり、エクトプラズムの化石からエクトプラズムを抽出する作業を行なっているわけだ。」
釈「なるほど。石炭のようで石炭でない、なんか魔法の黒色物質なんですね。」

じゅえる「そりゃー、鉄精錬に使うのは勿体無いぞ。」
まゆ子「違いない。石炭輸出という設定は捨てて、魔法墨輸出で魔法使いをサポートする。
 ただ、そうだな。魔法墨を採掘しようと地面を掘り返している内に、石炭もついでに掘ってしまったことにしよう。

 別に欲しくなかったけど、魔法墨探索の過程で鉱脈を発見して、いつしかこれも専門で掘る業者が出現して、ここらへん一体地域の熱エネルギー源として定着したのだ。」

じゅえる「ケガの功名か。でもそれなら石炭で鉄工業が盛ん、というのも納得しやすい。」
釈「鉄自体の精錬はしないけれど、鉄工技術は盛んなのです。鉄砲輸出をするくらいに。」
まゆ子「うん。なっとく。」

 

************************

 

まゆ子「さて、ちょいと手直しするぞ。

 人口は300万で工業人口30万、というのを修正して、人口300万工業人口30万+工業力を持たない国200万+その他50万、てことにする。
 つまり魔法工業力を有する有力国家と、それ以外の農業国の連合体なのだ。ここらへんは。」

じゅえる「550万か。西欧中世的に鑑みるとそんなもんかなあ。」
釈「えーと、このレベルの人口で開発できる領域となれば、フランスくらいの大きさですかねえ。」
まゆ子「もちろんお米のような生産性の高い、人口を支える能力の高い主食は存在しないという前提があります。ジャガイモもありませんね、アメリカ無いんだから。」

じゅえる「実際、そんなもん食っていて発展できるのかかなり疑問だ。やはり飯が無ければ工業的にも発展できないものではないだろうか?」
まゆ子「うーん、、つまり、500万人で留まるような文明に、魔法甲冑は作れないということですか。」
釈「魔法甲冑はともかく、火砲は無理かもしれません。やはり周辺領域にかなりの人間、かなり大きな国家群があるのです。」
じゅえる「魔法同盟国の外に、それと同規模かそれ以上の生産力と人口を持つ文明圏が、2個以上だな。」
釈「そうですね。それら外の文明圏同士が戦っているところに、戦力を決定付ける火砲と魔法使いを供給することで、魔法同盟国は成り立っているのです。」

まゆ子「うーむ、いちいち正しくて頭に来るな。
 なるほど。つまりアジアとアフリカは有り、てことだな?」
じゅえる「ロシアもだ。」
釈「北東南、ですね。西はやはり海ですか。大西洋ですね。」
まゆ子「西は海だ。たぶん、西は海であって、女房お姫様の元の故郷はそこらへんにある。さびしいとこだ。」

じゅえる「アジア、か。どうするかな、モンゴルは要るか?」
釈「いや遊牧民族による脅威には晒されていないことにしませんか? 魔法同盟国自体が脅威に脅かされていると、すなおに権力闘争出来ませんよ。」
まゆ子「まあ、漁夫の利を得る死の商人であるからね。」

釈「ロシアが蛮族、というのはこの際無しにしましょう。何故ならば、現実と同じで逆に嘘っぽいからです。」
じゅえる「ふーむ、しかし寒いと生産力も低いだろ。魔法同盟国だって昔から弱くないぞ。切り取れる領土なら切り取るし、豊かな土地ならもちろんこっちから戦争を仕掛けるさ。」
まゆ子「いやーどうかなー。読者様としてはロシア近辺はモスクワ大公国っぽいのがお望みではないだろうかね?」

じゅえる「よし分かったではこうしよう。ロシアに当たる位置に、小さな国がたくさん有るのだ。ドイツっぽいのだ。」
釈「群雄割拠ですか。」
じゅえる「確かに麦の生産で豊かな土地があるのだが、国同士が奪い合っているので大国に成長できない。だが剽悍で強い軍勢なのだ。馬でなくてロバに乗って戦うのだ。」
まゆ子「そりゃスウェーデンだよ。」
釈「ロバじゃなくて小さなポニー騎兵ですね。しかしロバというのは戦闘に使えるもんでしょうか? 馬が居ればロバで戦うことは無いはずですが。」

じゅえる「ロバってどんな動物?」
まゆ子「ロバはロバだよ。頑固で言うこと聞かない、頑丈な奴。」
釈「まあ荷役には重宝しますから戦争でも大活躍のはずですが、兵器ではないですからね。」
じゅえる「あーめんどくさい。つまり、北の方にはなぜかロバで戦う民族が居るのだ。馬は飼ってない。というか、馬を飼えるほどの金が無い。」
まゆ子「まあ、寒くて食料が無いというのなら仕方ない。牧草だけでは馬もおなかが空くからね、やっぱ穀物も欲しいよ。」
釈「戦闘用の馬というのは、美味しいご飯で太らせないと馬力が出ないのです。」

じゅえる「ロバは不味い飯でも動くのか?」
まゆ子「ぐぐってみるとそうみたいだねえ。」
じゅえる「ふむ。では間を取って、ヤギに乗って戦う戦士が居る、ということでは?」
まゆ子「北の寒い所ならトナカイだろー、それは。」
じゅえる「トナカイで戦争できるの?」
まゆ子「ヤギでだって出来ないぞ。」
釈「やはりそこはロバで戦うことにしましょう。素直に。」

じゅえる「そうだ、牛に乗って戦争は!」
まゆ子「変なスイッチ入れちゃったな…。」
釈「じゅえる先輩は動物好きなんですねえ、意外ですが。」

まゆ子「しかし牛か。牛はパワーが有るから、ちゃんと走ってくれれば戦争に使えなくも無い。」
釈「え?」
まゆ子「品種改良だ。バッファローみたいなのが、いやヌーみたいな牛が居るんだよ。」
釈「どこにです? それに、角が生えていれば乗るのは危険でしょう。」
じゅえる「角は切ればよい。ヤギさんもだ。」
まゆ子「ふむ。牛か。考えてみれば、馬が戦争に使われるのは従順で早いからだ。その性質を持つ動物であればなんでもいいわけだ。」
釈「はあ。ラクダとか象とかでもいいんですよね、騎兵は。」

まゆ子「まあ珍奇な動物を不用意に投入してしまうと、西欧中世っぽい雰囲気が消えちゃいますから、さすがにそこらへんは抑えましょう。
 しかし牛か。よくよく考えてみれば、魔法同盟国に牛は居るのか?」
じゅえる「牛乳無しで西欧文明作れというのは、酷な話ではないかい?」
まゆ子「違いない。カバ乳で代用もできないし、」
じゅえる「おお!」

 

まゆ子「まあ冗談はさておき、馬が主力兵器であるのは間違いない。大砲銃器も投入されて世界的に戦争の形態がシフトしつつある。

 その中で、魔法同盟国は魔法の力を強化してこれまで以上に有利に立とうとする。というか、火力に負けない魔法の活用が急務である。
 そんなところに、女房お姫様の国から大量の無骸が発掘された。それはまさに天の思し召し。」

じゅえる「ああ、歴史的必然の真っ只中に、あるべきモノが飛び出したんだ。そりゃ大動乱が起こるさ。」
釈「つまり、大動乱の真っ最中を描こうというわけです。」

まゆ子「だがそれは、魔法同盟国内部でのみ盛り上がり、収束する。他者外部の干渉を退けたのは外交努力、つまり魔法お后様のお力だ。」
じゅえる「ふむ。偉い人だな。」
釈「偉いお后様なんですよ。だからとっ捕まってもすぐに立場を回復するのです。」

まゆ子「というわけで、周辺の文明では馬を使った戦術が普通。というのを前提条件として。」
釈「はいはい。ですがー、遊牧民族は無しなんですね?」
まゆ子「うん。」

じゅえる「つまりはタルタル抜きで、ヨーロッパを考えるという感じ。アジアアフリカは無し?」
まゆ子「どうしよう。完全に無しというのも困るか?」
釈「そうですね、アジア、いえ中国にいたる半分をさっくり消去しましょう。西アジアまでです。」
じゅえる「ほお。ペルシャは有りか?」
まゆ子「インドは無しか?」
釈「そうですね、イスラムは有りでインドは無しです。」

まゆ子「なるほど、いい感じだ。つまりユーラシア大陸ではなく、ヨーロッパ大陸なんだな。」
じゅえる「陸地規模から言うと、物語に要らない部分をさっくり消去か。うんOK。」
釈「中国インドをさっくり消去というのもなんですから、遠く東の海の向こうにそれらの大陸があるのです。で、そこと交易して儲けているのが東海岸を占めるペルシャです。」
じゅえる「うむ、納得のいく設定だ。」

まゆ子「アフリカは?」
釈「めんどくさいから、エジプトと地中海だけは有ることにしましょう。かって魔法で栄えた国エジプトですよ。」
じゅえる「地中海があるのなら、イタリアもあって交易で潤っているのだな?」
まゆ子「いや違う! アフリカが無く、アジアが無い地中海に、そんな上等な繁栄は無い。貧乏な海辺の国なのだ。」
釈「それこそゲルタを食べて生きているのです。」
じゅえる「さすがにゲルタはやめよう。地中海の人間はタコ食って生きてるのだ。」
まゆ子「おお! イカタコ食いとして、他の文明国の人から蔑まれているとしよう。」
釈「悪魔崇拝者です!」
まゆ子「うむ!」
じゅえる「正当な神様を拝む文明人からは恐れられているのだよ。」
まゆ子「悪魔の海、頭足海があるのです!」

じゅえる「エジプトはー、エジプト文明でピラミッドでいいのか?」
まゆ子「はあ、特に問題はないと思うけれど、現在の状況の方が。中世から近世あたりのエジプトで考えるべきだろうか?」
釈「いやー、それはちょっと無いでしょう。むしろローマ帝国ですね。神聖ローマ帝国がエジプトにあるのです。」
じゅえる「ふうむ。つまりなんだ。かってエジプトにあった文明が一度崩壊して、その後継帝国が出来たけど、さほどぱっとしないわけだな?」
釈「そんなもんです。」
まゆ子「つまり、地中海のイタリア近辺の繁栄が、エジプトに渡っちゃった。そんな感じでいいのか?」
釈「しかし悪魔の海ですから、それほど儲かるというのもなんですねえ。」
じゅえる「貧乏帝国でいいじゃないか。戦争ばっかりやってるから貧しいんだ。」
まゆ子「いや、戦争は金が無いとできないぞ。」
じゅえる「うんじゃあ、蛮族が襲撃してきて瀕死の状態というのは。」

まゆ子「うーん。イスラムとの宗教戦争というのはあんまり持ち出したくは無い。そうだな、逆だな。魔法同盟国の間にあるピルマルレレコ教を信奉する者が、神聖エジプト帝国で反乱を起こしているのだ。」
じゅえる「ほお。」
釈「逆張りですか。」
まゆ子「ペルシャの方のイスラムぽい宗教で成り立つ神聖エジプト帝国が、ピルマルレレコ教に侵略されている真っ最中、て感じだな。」
釈「ふむふむ。」

じゅえる「ピルマルレレコ教は強いな。」
まゆ子「500年くらい前に現れた大賢者ヤヤチャ様のおかげなのだ。魔法同盟国もヤヤチャ様が無骸を用いた魔法甲冑を製作して、初めて統一王国を打ち立てたのだ。その後分裂して同盟国となるも、領域は健在なのだ。」

じゅえる「近東はどうなのだ? ペルシャは中東だから、それこそトルコあたりだな。」
まゆ子「そこ別文明でいいよ。」
釈「わかりました。では中間貿易で潤うトルコ人文明が居るのです。ここもイスラムっぽい?」
まゆ子「いや、そこは新興宗教で盛り上がっているのだ。仏様を拝むのだ。」
釈「おお!」
じゅえる「何故にそこで仏教が出る?」
まゆ子「いいじゃないか。僧侶が王様で固い団結を誇るのだ。だから中間地点に有りながらも侵略されずに貿易の利益を独占状態。」
釈「まさに仏様のおかげでございます。」

まゆ子「そうだな。頭足海にはやっぱ海賊王が居るのだ。」
じゅえる「貧しい海の民は海賊になる。きわめて合理的な話だが、それなら陸地貿易が盛んになるだけだろう。」
まゆ子「いいじゃないか。海の民には海の神様が居て、海の王国があるのだ。貧しくても独立しているのだ。」
じゅえる「それはアレだ。神聖エジプト帝国にピルマルレレコ教徒を運んでくるのは、海賊なのだ。ピルマルレレコ教徒は、神聖エジプト帝国の地にかって栄えた旧エジプト帝国時代の神様を起源とするから、聖地奪還を目論むのだよ。」
釈「十字軍ですか。」
まゆ子「むしろレコンキスタだな。その旧宗教の一角に頭足類タコ神様が居るのだよ。つまりピルマルレレコ教とタコ悪魔教は親戚みたいなもんだ。」
じゅえる「なら、海賊がカネをもらって密航させてもなんの不思議も無いわけだよ。」

釈「しかし、そのピルマルレレコ教は、魔法同盟国とイコールではないんですよね?」
まゆ子「ふーむ。」
じゅえる「どうだろう? かなり強い影響力は有ると思うぞ。」
まゆ子「そうだなあー、つまりは、新旧ピルマルレレコ教があって、聖地回復をしているのが新ピルマル教であり、魔法同盟国にあるのは旧派なんだよ。」
釈「カトリックとプロテスタントですか。」
まゆ子「それほども違わないけれど、そうだな、トルコあたりの仏教新宗教の影響を受けて変質したのが新ピルマル教。督促派と呼ばれ、世界の週末と新たなる救世主の到来を促進しようとする急進的な宗派なのだ。
 一方魔法同盟国にあるのは、大賢者ヤヤチャ様によって勢力を保たれた旧派である。まあ、魔法甲冑大量増産によって勢力強化、ってのは新派らしいんだけど。」
じゅえる「それは新派に影響された、というところだな。」

釈「まとめまーす。

・魔法同盟国;ヨーロッパ中央辺りに存在。魔法によって栄える。ピルマルレレコ教旧派
・悪魔海北岸諸国;地中海北岸。貧乏な海賊王国。タコ悪魔教を崇拝
・神聖エジプト王国;エジプト辺りにある。結構裕福だが、ピルマル新派教徒の流入を受ける。イスラムぽい宗教
・トルコ仏教国;トルコ辺りにある。東西南北貿易の中継地として大いに栄える、新興仏教国
・ペルシャ:東海岸にある。海の向こうの東洋国との交易で栄える。イスラムぽい宗教
・ロシアドイツ;ロシアよりは南にあるのだが中欧。寒くてあまり発展していない。ロバに乗った戦士が群雄割拠状態。現地宗教


じゅえる「ペルシャと魔法同盟国の間には、トルコがあるのか?」
まゆ子「うーん、そこはー、山にしましょう。山岳地帯であって直接の交流は無いのです。」
釈「そうですね。ペルシャと直結していると、トルコが儲かりません。」
まゆ子「山猫娘はそこの出身ということで。」

じゅえる「イギリスは?」
まゆ子「そんなものは無い。」
釈「スカンジナビア半島は?」
まゆ子「無いもんは無い。」

釈「ちょっと面白くないですねえ。」
まゆ子「そうか? ならば、小さな島が西の海にかなり多く有ることにしよう。タコ海賊はここらへんまで出張っているのだ。」
じゅえる「バイキングなのか?」
まゆ子「いや、タコ海賊であってバイキングではない。ただバイキングっぽく襲撃はしてくる。」
じゅえる「バイキングでいいじゃないか。」
釈「まあまあ。そこは単に海の民に領域は無いということで。」

 

まゆ子「しかしいい加減に考えたが、なぜ仏教国が有るのだ?」

じゅえる「おまえじゃねえか!」
釈「あー、それはー、仏様が居るのです。」

まゆ子「うむ活仏だな。」
じゅえる「つまり、生き仏さまが現れて教を説いたのか。」
釈「そうですね、ここで初めて輪廻転生を説いたのですよ。万物生き物は死んでも現世に生まれ変わると。」
じゅえる「いや、それは新興宗教としてはどうだろう? ちと古くないか?」

まゆ子「そこはアレだ。すなおに輪廻転生から逃れるために修行をするのだよ。万物人間の不幸の元をは因果であり過去世の悪行の報いと説いたのだ。」
釈「そういうことですかね。」
まゆ子「つまりピルマルレレコ教ともイスラムぽい教とも違う第三の道を示して、熱狂的支持を受けた。」

じゅえる「ピルマルレレコ教とはなんだよそもそも。」
まゆ子「そりゃー12の神様が居て、その頂点に立つピルマルレレコ様を信奉すれば、星の世界から救世主様を遣わせてもらえるというありがたい教えだ。」
釈「納得です。」
まゆ子「タコ悪魔教はその12の神様になり損ねたタコの神様を信じるのだ。」
じゅえる「第一のタコの代わりに何が来たんだ?」
まゆ子「イソギンチャクで。」
釈「三悪人ですね。」

じゅえる「イスラムぽいという宗教はなんだ?」
まゆ子「うん。そこは東洋と関係付けて、東洋からもたらされた聖なる書物預言書に従って世界の運命は変わっていくというもの。神様は居らずに運命が居る。」
釈「唯一神ではないんですか?」
まゆ子「運命は人ではないし人格を持たない、というところが新しい。一種の運命機械というどうしようもない人間の力では如何ともし難い存在なのだ。
 だがその機械の機能を理解し、行き着く先を読み取る解釈者というのが居るのだ。これが信仰の対象となる。
 そして経典は「マニュアル」と呼ばれる。」
じゅえる「うう。」
釈「マニュアル真理教なんですか…。マニュアルを読みなさい、てお説教されるんだ。」

じゅえる「してみると、新興仏教というのはマニュアル真理教から強くインスパイアされているのだな。」
まゆ子「そういうことだな。人間死んだらどうなるか、というのは運命機械によって自動的に処理され、その計画は生きていた時分の行いに由来する、という考え方だ。
 ちなみにマニュアル真理教では、人間死んだらおしまい。転生はしない。いい人は運命機械に取り上げられて永遠の管理者に迎えられるが、悪人は機械油を絞られて消滅するのだ。」
釈「恐ろしい。それは恐ろしい世界観です。」
まゆ子「一方ピルマルレレコ教であれば、人間死んだら魂が天上の川原に呼び集められ、カニ神の審判を受けて、いい人は神様と一緒に遊び時期が来たら総ての記憶を綺麗に洗われて人間世界に生まれ変わりる。
 悪人は首だけちょん切られて永遠に川原に晒される、というものです。長机の上に意識はあるけど干からびた首だけが延々と並び続けるのです。」

釈「なるほど。その二つをミックスしたのが、新興仏教なんですね。」
まゆ子「つまり、運命機械の永遠の管理者になる為にはただ善行を積めばよいというものではなく、その為の資格試験を受けねばならない。その修行をやりましょう、という教えだ。」
じゅえる「なるほど。その資格試験のところに、新ピルマルレレコ教徒は引っかかったんだ。神様のところに行くためには、資格審査を満たす功績を得なければならない、て。」
釈「ほーなるほど。なっとくいきますね。そういう考え方だと。」

じゅえる「タコ悪魔教は?」
まゆ子「ああ、それは。十二神から漏れたタコ神様は怒って、人間に罰を与えて骨を突っ込んだ。良い行いをしてタコ神様を崇める者は骨を抜いてもらって、美しい軟体の姿に戻してもらえる。軟体人間は善悪の別も無く融通無碍の無限の自由が得られるのだ。」
じゅえる「なかなか凄い宗教だな。」

じゅえる「ロシアドイツのところは現地宗教と書いているぞ。これはなんだ?」
まゆ子「ああ、そこは他愛の無い御伽噺が信じられているんだよ。

 かって人間という生き物は存在せず、すべてがトカゲであった。トカゲが大きくなり二本足で立ち上がり繁栄を遂げたが、天から星が降ってきて絶滅。
 生き残った数少ないトカゲが身体に毛を生やして寒さに耐え、長い年月を経て暖かくなったところで再び二本足で立ち上がり、文明をこしらえた。
 だが大津波で総てを流されて、箱舟に乗って生き残った者が尻尾を代償に再び地上に降り立って、世界を再建する。
 尻尾も鱗も無くしたトカゲはその後も数々の苦難に遭遇したがその度に姿を変え、全世界に広がり様々な動物になった。が、現在二本足で立つのは「人間」と呼ばれる種族だけ。
 それが我々なのだ。」

釈「トカゲ進化教ですね。」
じゅえる「神様は居ないんだ?」
まゆ子「ここは先祖崇拝ですよ。神様なんか居なくて、世の中には災害がいつもいつも付きまとい、何の救いも無い。しかしご先祖様は生き延びて、現在まで生かしてくれた。有り難や。」
じゅえる「ふむ。なんと申しますか、御伽噺みたいな他愛も無いお話ですねえ。」
釈「そんないい加減な神話が有るはずが無いじゃないですか、ハハハ。」
 ハハハ。

 

 

 

【魔法甲冑リリカルポエマー 設定第二回】11/07/10

 

まゆ子「というわけで、物語の骨格がだいたい固まった。タイトルもちょっと変える。

  『魔法女房リリカルポエマー』、だ。」

じゅえる「     。まあ、女房だし。」
釈「魔法の奥様、でもいいような気がしますが、まあ、とりあえず。」

まゆ子「というわけで、こういう物語になります。

1; 魔法ギルドが裏社会でこっそりと作られる魔法甲冑を摘発する為の特殊部隊を運用している。
   魔法甲冑とは、地面の下から掘り出される古代の魔法戦士の遺骨と思われる『無骸』と呼ばれる人型に、鋼鉄の鎧を着せた物。人間が着用すると凄まじい戦闘力を発揮する。
   この無骸によって故国を滅ぼされたお姫様が魔法ギルドで魔法を覚えて、撲滅に執念を燃やしている。

   そこに赴任してきた騎士が兵士を率いて特殊部隊をサポートし、摘発する。
   が、魔法使いが製作途中の魔法甲冑を着用して大暴れ。命がけの戦闘によってようやく停止させる事に成功。押収する。

2; (未定) 同じように魔法甲冑を摘発押収しようとして大バトル。今度は魔法攻撃もアリで、主人公のお姫様は死にそうな目に遭い騎士に命を救われる。
   二人の間になにやらよい雰囲気が生まれる。

3; 魔法ギルドで傷ついたお姫様は休養中。騎士はギルドの協会で彼女の生い立ちや身の上を聞かされる。
   彼女は10年前に滅びたとある小国領主のお姫様であったが、周辺の国が揃って押し寄せて戦闘を繰り広げ、彼女を残してすべてを滅ぼしてしまった。
   リリカルポエマーの所以である、聖歌隊の描写。

4; 三度出動。手際よく片付ける。しかし今回押収した魔法甲冑の素体は、1話で押収したはずの無骸であった。
   魔法甲冑の密造に魔法ギルドが関与している可能性が高まる。

5; 魔法ギルド。しかし組織の壁は厚く、騎士の問い合わせにもなしのつぶて。全ての黒幕は誰か、疑心暗鬼を募らせる中、とんでもない事態が発生する。
   なんと、お姫様と騎士の結婚だ。彼女は然るべき身分の高い者でなければ釣り合わぬ位を持っているが、騎士である彼と仲が良さそうだからここは娶せてしまおうという話。
   そして、彼女の故国が滅ぼされた真相。無骸がなんと3千体も遺跡の地下から出土したのであった。
   これを野放しにするわけにはいかず、周辺各国が合同で管理調査をしていたが盗掘が相次ぎ、それならばと各国競って確保に乗り出し戦闘が勃発し、結局すべてを灰にしてしまった。
   魔法ギルドもその共犯者であり、被害者である彼女を引きとって面倒を見てきたが、これ以上任務に付けるのは危険である。
   そこで、騎士と結婚させて引退するというシナリオに出た。

   彼女に騎士はプロポーズ。受諾される。

6; 結婚式は賑々しく、リリカルポエマーの女の子達も大喜びである。
   ハネムーン、というわけではないが結婚した二人は今は亡き彼女の国に行く。そこは今も魔法ギルドの兵により警備される場所であった。
   彼女と結婚したことで、騎士はこの地の領主の権利と爵位を手に入れる。だから、警備の兵にも秘密の開示を要求出来る立場である。
   兵の案内で地下遺跡に潜る。そこには恐ろしい数の無骸が今も横たわる。

   そして全てを解決するはずの伝説の大魔道士ヤヤチャ様が残したという巨岩を見る。これには「石を以て石を割れ」と書いてある。
   当地の責任者である高位の錬金術師から、無骸の起動と停止の方法を教わる。石斧で後頭部をぶっ叩くのだ。以後騎士は標準装備に石斧を持っていく。

7; 帰ってきた夫婦は四大魔法侯と会う。魔法ギルドの中でも最高位の魔法使い。これまで活躍した夫婦をねぎらう。
   が、本題は盗まれて再度使われた無骸の話。魔法ギルドが関与しているのではないかとの疑念を晴らす。もちろんこれは、夫婦が高い身分を持ちなおかつ妻がこの件の最大の被害者でもあるからだ。
   実は押収された無骸は地中深くに埋められる。古井戸を利用して30メートル以上の奥深くであるから、通常であれば掘り起こすことは出来ない。
   ただ埋めているのではなく、無骸を使って魔法を使っている。神劫電流は地中の磁脈を通っており、無骸を埋めたポイントはその合流点に当たる。
   無骸を埋めることで膨大な大地の神劫電流を利用できるから、地上における魔法も機能する。

   四大精霊魔法もそれが原動力。魔法は無骸を埋めた場所の周辺数十キロでしか使えないのだ。

8; 夫婦はまた内定の任務に戻る。妻は反対されながらも、やっぱりやってしまうのだ。
   そこで、これまでに例の無いほど完成された魔法甲冑を発見する。だがその製作者は大国の息が掛かった魔法使いであった。
   さすがに手に負えず、魔法ギルドから四大魔法侯も出動。しかし、魔法甲冑を着装した者もただの騎士ではない。たちまち大魔法戦争が始まる。

   だがそれでもなお止めきらず、周辺から大軍が出動して魔法甲冑1体と軍勢の戦争となる。
   ついに魔法ギルドが取っておきの秘策、魔法甲冑を出動させる。しかし乗る者が違った。敵は強力な攻撃魔法を使うので、白兵戦闘しか出来ないこちらは苦戦する。が遂に縺れ合って動きを止め、騎士が後頭部を叩いて停止にこぎつける。
   逮捕した着装者は、すべての者が驚くほどの高位の人であった。

   残念ながら魔法ギルドの魔法甲冑を操る魔法騎士は戦死する。そこで騎士がこれを受領する。

9; この一人の戦争は魔法ギルドに強い衝撃を与えた。特に、魔法甲冑の着装者には四大魔法侯ですら歯が立たない。
   周辺国もいよいよ魔法甲冑の威力に自信を示し、公然と遺跡に眠る無骸の分配を要求する。

   政治向きで世情が混乱する中、妻は夫の実家である小荘園に初めて訪れる。義父や義母から暖かく迎え入れられた。

10; ついに四大魔法侯すら分裂する。とある国で魔法甲冑と宰相級の地位を約束されて、一人が離反。覇権を目指すその国と、他の国との戦争が始まった。
    これは史上初の魔法甲冑同士の大規模戦闘となる。魔法と火砲が激突する最悪の戦争である。
    戦火の中で、最も高潔で騎士とも縁が深かった魔法侯が戦死。魔法ギルドでも強力な魔法使いを手持ちの魔法甲冑に乗せて戦場に投入する。

   攻撃魔法を使う3体の魔法甲冑の衝突は凄まじく、被害が戦場から一般の都市農村にまで及ぶ拡大を見せる。
   魔法ギルド、もはや諦め天に祈るばかり。だが夫婦は、夫の魔法甲冑に隠伏の魔法を掛けて、敵の首魁であり主力である魔法侯の甲冑に肉薄し、絡みついて動きを止める。
   騎士、魔法甲冑を捨てて生身で石斧を振るい、停止と同時にかち割ってしまう。着装していた魔法侯も撲殺!
   そして救世主となる。

11; 戦争は終わった。だが、火種は残る。いやますます大きくなった。
    騎士が無骸の脳をかち割って中の骨髄を取り出してしまった。魔法ギルドが調査した結果、これこそが魔法の根源であると認識する。そして、これを服用すれば四大魔法侯並の超強力な魔法使いが量産出来るのだ。
    一方、魔法甲冑の量産も進む。すでに各国10体以上を保有し、先ほどの戦争が可愛らしく思えるほどの戦力の集中が起こると思われる。

   戦争を回避する為と称して、8;で逮捕された高位の人物が釈放される。彼は魔法ギルドの役目が既に終わり、各国がそれぞれ魔法使いを直接に管理すべきだと主張する。その裏にはキリスト教会の暗躍があった。
   残る2人の魔法侯も別々の国に趣き、魔法ギルドは有名無実となってしまう。リリカルポエマー達も行く場所を失う。
   特殊部隊も当然に解散で、騎士に任されていた魔法甲冑も取り上げられ、夫婦は身一つで追われることとなる。

   だが、彼らを慕う兵士達が付いてくる。これまで事態の最終的な解決を成し遂げた騎士への信頼は厚く、魔法甲冑を手に入れられない中小の領主達の連合に迎え入れられた。

12; 魔法ギルドに代わって教会が急速に勢力を拡大する。神の御名において全ての魔法と魔法甲冑を支配する、とか言い始める。まるで教会が勝者の王国に地上の支配権を認めるかの言い分。
    もちろん別の宗教勢力が絡んで、外交の様相は大きく歪む。民族差別や過去の因縁も噴出して、もはや誰にも止められない。

    そんな中、再び夫婦は妻の故国に戻ってくる。もちろん既に掘れるだけの無骸は持ち去られ、人力ではどうしようもないモノは頭部を断ち割られ骨髄を奪い取られていた。
    魔法ギルドの警備隊は未だに駐屯するが、既に活動を停止。ここはもう抜け殻で、誰の管理も要らないのだ。
    だから夫婦が再び家を興すのを咎める者も居ない。ここに兵士達も連れてきて、住み始める。

    ここは平和であった。落ち着いた静かな日々が続く。だが飛び込んでくる戦争の噂はますます深刻の度合いを高め、世界最終戦争を待つばかりとなる。
    平和を求める者達が英雄である騎士の元に幾人も訪れるが、もはや為す術が無い。むなしく帰るのみである。

    そんな折、騎士と妻は遺跡の中心にある巨大な岩、大魔道師ヤヤチャ様の呪文を刻まれた岩の前に立つ。「石を以て石を割れ」、この文句に従って石斧を振り上げ、巨岩を割る。
    煙と共に現れたのは大魔道師ヤヤチャ様である。頭に青いトカゲを載せる小さな人であるが、全身から気合がほとばしる熱血の魔法使いである。
    彼の人は魔法に打ち勝つ最強の魔法「絶縁魔法」を教授する。裸体にこの呪紋を施せばどのような魔法も効果が無く無事になる。
    そして魔法を断ち割る石斧を振るう強靭な肉体を得る為に、アブトロニック魔法を授ける。魔法の電流で筋肉を活発に刺激して、オークのような肉体を手に入れるのだ。

    ヤヤチャ様は熱血の人である。騎士達に休む暇を与えず、徹底的に肉体を鍛え抜かせる。妻・女房は肉体を作る為の食事の用意で寝る暇も無い。

13; そして決戦の日。

    見事に鍛え抜かれた裸体に絶縁魔法を施した石斧の戦士が、魔法甲冑魔法使いが並ぶ究極の戦場を望む丘にある。
    魔法の発動は、大地から流れ出る神劫電流を無骸が吸い上げて魔法使いに供給することにより起こる。通常は地中に埋めたもののみが供給するが、今は戦場に並ぶ無数の魔法甲冑が行っている。
    魔法を止めようと思えば、すべての無骸を破壊するしか無い。それも、脳天を断ち割って骨髄をぶちまける。

    両軍が衝突する鬨の声を聞き、騎士は裸体の戦士達に命令する。突撃と。

エピローグ; 
   1987年。未来である。
   夫婦の領国、遺跡のあったその場所は、いまやすっかり様変わりして鉄道の駅があり石造りの街が築かれ、繁栄する。
   駅前広場の中心に、百人の裸体の戦士を刻んだ大理石の像がある。魔法使いと悪魔から世界を救った騎士とその軍勢を現したものだ。

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まゆ子「どや!」

じゅえる「旦那を誘惑する悪の女は?」
釈「そうですねえ。夫婦生活が安定しすぎて、面白みが欠けるのではないでしょうか。一本道シナリオですし。」
まゆ子「えー、幸せになりたいよ。」
じゅえる「いや、夫婦モノは波乱万丈であるべきでしょう。」

釈「あー、ここは考えどころですね。正直魔法甲冑による世界戦争、という巨大過ぎるシナリオを考えると、そういう夫婦シナリオは薄い方がむしろ好印象かもしれません。」
じゅえる「たしかにここに描かれている通りであれば、旦那はさほど偉い人ではなく、大状況を左右もしないな。」
まゆ子「そうでしょうそうでしょう。この物語は夫婦円満を描いて皆がほんわかとした幸せな気分になるのが目的です。浮気はしないのですよ。」

じゅえる「シャクちゃん、なんか考えて。」
釈「そーですねー、でも新婚生活でどきどきわくわくするお嫁さん、というのも捨てがたいファンタジーですよ。」
じゅえる「くそ、旦那はそんな謹厳実直な奴なのか!」
まゆ子「そりゃあ、国が滅びて可哀想なお姫様を託されるくらいに信頼される人物でありますし、高い爵位を任せられる信頼できる人物ですよ。教会も太鼓判です。」

じゅえる「なんか欠点は無いか、欠点は。」
まゆ子「強いて言うなれば、真面目過ぎて誰もが逃げる超戦場に一人で突っ込んでいく勇者様、というところですかね。」
釈「それはいけません。お嫁さん心配でどきどきですよ。」

じゅえる「だが元が攻殻機動隊であるから、女は素子だけなのだ。これは困った。なんか凄いオンナキャラを必要とする。」
まゆ子「ふーむ、でも仕事仲間の内には居ないし、敵と恋愛ごっこするほどガキではないし、…困ったな。」
釈「身近に居ないのであれば、身近ではない女ではどうでしょう。」

まゆ子「どういうこと?」
釈「つまり、偉い人です。国王とか領主とかの女公爵。王女様はちょっと向きませんね、むしろ女王もしくはお后さま。」
じゅえる「大きく出たな。どうだまゆちゃん、これで浮気を作れるか?」

まゆ子「うーむ、今ちょっと考えてる。

 あーそうだねー、8;をちょいと見てくれ。ここで魔法甲冑を着装して大暴れした皆が驚くほどの高位の人。これ、使えないか?」

じゅえる「なるほど。お后様であれば、そりゃあ皆びっくりする。」
釈「魔法も使いますね。ということは、魔法ギルドとも関連が有り、旦那騎士とも面識が有る、としてもいいかもしれません。」
まゆ子「なるほど。旦那は高い爵位も継承するから、お后様と対面しても問題ない身分なのだな。なるほど、ではこれを使おう。」

 

釈「主要キャラ一人追加。  エロくて魔法を使うお后様です。」

 

じゅえる「まゆ子ー、ここまで色々考えてきたけど、そもそも旦那はどこの王国に属するんだ? というか、王国とかの地政学的な関係とかはどうなっているのだ?」
まゆ子「まっっったく、考えてない!」
釈「素晴らしい泥縄です!」

じゅえる「じゃあこのお后様はどこの王国かも分からないじゃないか。というか、旦那は王様だろう。王様は何をしているのだ。」
まゆ子「そうだねー、お后様は後に釈放されて政治権力を復活どころか、一方の勢力の旗頭となるほどの大物です。旦那の王様は、それこそ腑抜けであるべきではないですかね。」
釈「この王国は、お后様でもっているのです。凄い政治家なのですよ。」

じゅえる「そんな人がなんで魔法甲冑なんかに乗るのだ?」
まゆ子「いや、自分で作ったから、自分で試してみるよ。」
じゅえる「魔法甲冑作れるほどの魔法使いなのか?」
まゆ子「いやいや、そこは錬金術師の出番だ。鉄をトンカチするよ。スポンサーがお后様であり、国際世論を考えて秘密の工房で作っていたのだ。明確に条約違反だからね。

 だがそれを、攻殻機動隊に発見されて摘発を受ける。身分を明かせば逮捕されないし、もちろん魔法甲冑を押収もされないのだが、国際問題になるのは必至。
 そこでお后様は考えた。甲冑を着て逃げられるなら良し。逃げられないにしても、魔法甲冑の密造は既に各国も取り組んでいて、最早条約は意味を持たない。
 であれば、ばーんとぶち壊してやろう、と。」

じゅえる「肝の座ったねえちゃんだなあ。」
釈「しかし、そんなに凄い魔法使いなんですか、そのお后様は。」
まゆ子「あー、たぶんこういう事だと思う。

 魔法甲冑は基本的に騎士が操るものだ。肉体的強者であり、運動センスの良い人が操るのが一番強い。
 もちろん魔法使いの能力があれば、攻撃魔法を使える。だが基本的には魔法使いは着装が向かない。これは甲冑だからだ。第一、動きながら魔法を掛けるなんて芸当は普通の魔法使いでは出来ないよ。
 そこでお后様だ。
 彼女は魔法使いではあるが、普通の魔法は使わない。主人公であるところの素子/モルガーナが探査の魔法という地味なものを使うように、お后様も四大精霊魔法は使えない。
 でー、おそらく肉体強化魔法を使ったのだろう。騎士としての能力を持つ彼女が、男性に対する肉体的不利を補う為に身に付けた格闘魔法だ。」

じゅえる「そりゃー、手に負えないわ。」
釈「普通の騎士では勝てない道理です。」

まゆ子「というわけだ。ちなみに四大魔法侯が出動しても勝てないから近隣の王国の軍隊も出動するのですが、もちろんこの王国というのはお后様の国でした。」
じゅえる「ハハ、皮肉なもんだねえ。」
釈「王様目が点ですよ。」

じゅえる「ではこうしよう。この8;の回の魔法甲冑は、これまでと異なり、初めて専用武器、巨大剣を使う。で、ばっさばっさと斬りまくる。」
まゆ子「自分とこの兵をかい?」
じゅえる「それは魔法ギルドが派遣した傭兵をだよ。王国軍は後から来て、さすがに自分とこの兵隊は殺せないから半ば諦めて魔法甲冑同士の一騎打ちに持ち込むんだ。」

 

まゆ子「うむ。では旦那の女関係はここらへんで〆ていいかな。」
釈「お后様に関しては完璧です。」
じゅえる「文句無い。だが上が決まると下も欲しくなるな。」
釈「身分の低い女、ですか。下女ですか。でも昔は下女なんかそう簡単には騎士様に話も出来ませんよ。」

まゆ子「どうしよう。チョロケンの中に異国の女が隠れている設定、使うかい?」
じゅえる「要らんような気がする。」
釈「でも魔法甲冑がこれほど大げさになってくると、騎士の武力だけでは留められないでしょう。」
まゆ子「いわゆる山猫女なんだよね。飛びついてくる。」

じゅえる「ふうむ。それは考え方を間違っているぞ。それは女ではなくて、山猫女なんだ。人外の化け物なんだ。
 だから、旦那と恋愛なんかしない。その代わりに嫁の方に懐くんだ。」
釈「ほお。魔法で結ばれた仲なんですね。」

まゆ子「却下。モルガーナは物語最初では荒んでいます。孤独です。可哀想な人です。そこに救いを与えてはいけない。」
釈「それは非常に重大なファクターですね。旦那と結ばれる為の。」

じゅえる「そういうことであれば、山猫女は只の兵器として用いよう。
 逆に、結婚して気持ちが落ち着いた嫁になって初めて仲良くなれるんだ。」
まゆ子「うん。そんなとこだな。」

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じゅえる「まゆちゃんや、この世界の爵位はどういう風になっているのだ?」
釈「そうですねえ。現実の中世ヨーロッパとは違いますよね。というかアレも国によってえらくまちまちですが。」

まゆ子「あー、考えてない。」
釈「また。」
まゆ子「今考える!

 王・后 公 侯 卿 爵 士 というのではどうだ。」

爵「公爵ではないんですか。」
じゅえる「というか、爵という名の爵位があるぞ。」
まゆ子「いいじゃないか。

 爵は、地方爵だよ。土地の名前が着くんだ。小さな荘園を持つ、というかこの世界においては土地所有は庶民には出来んのだ。爵以上の爵位を持たないと駄目だ。

 卿は役職名が着く。王宮廷臣に与えられる爵位だな。魔法ギルドにおいても使われている。

 士は軍人に与えられる爵位だ。騎士というわけだよ。将軍になればまた違ってくるけど、まあそういう。」

じゅえる「案外と整った爵位だな。」
釈「そうですねえ。むしろ何故こうでない、というくらいのものですが。まあ昔は領地をもらってこそ貴族ですから、仕方ないですか。」
まゆ子「この世界は案外と貨幣経済が発達してるんだよ。王宮に詰めていてもちゃんと財産は増えるんだ。」
じゅえる「つまり、地方荘園主には、軍役の義務は無い?」
まゆ子「無い、という事にするか、それともやはり自分で戦うか。どっちがいい?」

釈「これはアレですよ。爵位の二重取りOKです。」
じゅえる「そいうのは許されるのか?」
まゆ子「まあ、構わないかな。そういう構造であれば、むしろ旦那が登場しやすい。つまり地方荘園の次男坊かに生まれた旦那は、爵位の内軍人の「士」を戴いて王国に仕えているのだ。」
釈「つまり、家に伝わる爵位を分け与えられているのですね。」
じゅえる「なるほど、家単位ね。」

まゆ子「それから、身分は分かっても偉さが分からないから、大中小の区別を付けましょう。
 「大卿」とかすると、とても偉く感じられる。」

釈「逆に、「小士」とか言うと、なんか可哀想です。」
まゆ子「あーそうだな。では「大」「次」「正」「 」、ということで。大卿・次卿・正卿・卿、と。」
じゅえる「軍人である「士」もかい?」
まゆ子「軍人はやっぱ「将」「大」「正」「」、ということで。」
釈「でも領地の場合は大中小でいいんじゃないですか。」
まゆ子「ふむ。「大爵」「中爵」「広爵」「爵」、て感じでね。」

 

まゆ子「で、王・公・侯ですよ。大中小と考えてもいい。

 この内「王」は特別だ。爵位を授けることが出来るのは、彼だけだ。」
じゅえる「うむ。」
釈「なるほど。身分制度の根幹を司るわけですね。」
まゆ子「貨幣鋳造権も「王」が持つ。紆余曲折の結果、そういう風にしておけば貨幣経済はうまく回ると学習したのだ。」
じゅえる「だから貨幣経済が成り立って、軍人と領地を分離できたわけだよ。」

まゆ子「「公」も特別な位にしよう。教会関係で、聖職者に布教や活動の許可を与えられるのは、これ以上の身分でないといけない。」
じゅえる「この世界では、世俗の権威の方が宗教的なのよりも上に有るんだ。」
まゆ子「まあ、魔法ギルドもありますから、宗教と魔法が分離している世界です。これは世俗の権力にとっては都合がいい。」
釈「なるほど。そこで教会側は魔法甲冑を管理しようと乗り出すわけですよ。」

まゆ子「というわけで、「侯」も特別な権力を持つ。法律の執行だ。裁判所というか裁判権はこれ以上の爵位が無いと出来ない。つまり、自分勝手に人を裁けるということだ。
 もちろん王国の法という縛りがあるが、そうだねー、つまり爵以下の地方を預かる権力者は、上から裁判権を預かっているんだ。一般平民はこれで仕置する。
 で、裁判の判決に不服があると、貴族同士であればそりゃもめるんだが、上級の「侯」に申し立てる。そこで結審。まあだいたいが地方領主同士のもめごとを法で解決しようという話だよ。」

じゅえる「軍役は?」
まゆ子「「侯」からは独自の軍隊を持っており、「王」の命令で馳せ参じる。まあ侯と名が付けば1000人は出さないとね。騎士10人に従者100人、兵1000人、てとこか。」
じゅえる「つまり、「侯」クラスの領地であれば、「爵」の荘園は10個以上あり、「士」が10人居る、ということだな。」
まゆ子「まあ、簡単に考えるとそんなもんだ。「侯」本家に5人くらいの親戚の「士」が居て、その他に陪臣となる「爵」の荘園が10個くらい有る、て感じか。武力全部を出して領地を守れないと意味が無いしね。」
釈「つまり、領地の半分くらいを「侯」自らが持ち、残りを10家くらいの「爵」が保有する。そんな感じですか。」

まゆ子「ついでに言うと、「公」「侯」家においても家臣というのがあり、「卿」位を持つ者も務めている。まあ家老クラスだね。
 家臣の身分を表すローカル爵位である「地卿」「地士」「地爵」てのもあるけれど、まあ領地外では軽く見られるな。」

 

釈「しかし、そのシステムだと貴族の家に生まれたのに、次男三男であれば爵位がもらえない者が出る、という事になりませんか?」
じゅえる「そうみたいだね。爵位数の制限があるんだ。どうしよう。」
まゆ子「あーまあ、それでいいような気がするが、それでは収まらない者も居るんだろう。というか、日本ではそんなもんじゃないか、家単位だし。」
釈「なるほど。それは確かにそんな気もします。」

まゆ子「簡単にあげられるのは「卿」と「士」だ。「爵」はさすがに荘園が無いとあげられない。だから、「王」に付け届けをして、子供に爵位を授けてもらうわけだね。もちろん「侯」家以上の場合。」
じゅえる「それはつまり王国軍であり王宮において通用する爵位、ということだね。もちろん資格審査はあるんだろ。」
まゆ子「あー、まあ。金の問題ではあるのだが、さすがに「士」は実力が問題になるからね。」

まゆ子「そうだ、ついでに「紳」という位も作ろう。つまり、そういう奴にくれてやる用にこしらえられた、教会に属する身分という意味の爵位だ。」
じゅえる「あんま嬉しくないな。」
まゆ子「まあ、教会に入るのも身分が必要てことさ。それこそこれは、金で買える。」
釈「ううむ、なるほど。で、特典は?」

まゆ子「あー、もちろん宗教関係の特別なミサに出席できる。王家の結婚式葬式なんかもだ。」
じゅえる「嬉しくない。」
まゆ子「特別な契約書の証人にもなれる。結婚誓約書なんかも「紳」の上書きが必要だ。」
釈「あんま嬉しくないですね。」
まゆ子「仕方ないでしょ、この世界はそういう箔付けが必要なんだから。あと説教が出来るぞ。」
じゅえる「欲しくねー。」

まゆ子「ついでに言うと、教会の僧侶にもちゃんと爵位が認められる。「教」だ。
 で、教会内爵位として「信卿」「信士」「信笏」となります。「爵」でなく「笏」だよ。教会は土地を所有しない建前になってるからね。」

 

まゆ子「そして一般には決して知られることの無い爵位「師」だ。魔法関係者にのみ与えられる。」
釈「おお。でも魔法侯というのがありましたが、」
まゆ子「連中は特別だ。「侯」並の権威を認められる超高位魔法使いだ。外交的にもそう扱われる。

 ちなみに魔法ギルドは「公」クラスの独立性を認められています。また「師」爵位を独自に授ける特権も持っています。
 というわけで、魔法ギルド内には「法卿」「法士」「法匠」という爵位がある。魔法ギルド内の役職を示し、魔法ギルド特別軍の資格を示し、魔法ギルドにおける練達度を示す。最後のは錬金術師専用だな。

 さらに「法紳」というのがあって、魔法教授の許可証となっています。もちろん高度な四大精霊魔法は「導師」と呼ばれる特別な魔法使いに習いますが、念話や探査の魔法なんかはこのクラスです。」

じゅえる「で、旦那騎士は爵位はどうなるのだ?」
釈「魔法ギルド預かりですよね。」

まゆ子「まずは王国にちゃんと属しているから、「士」を持っているぞ。
 その上で、結婚して爵位の継承を受けたから、「侯」になってしまった。
 さらに魔法甲冑を操作する資格として「師」も手に入れた。甲冑を任される時に自動的に。」

じゅえる「おお、爵位持ちだな。」
釈「景気いいです。」

 

まゆ子「それから、これは使うかどうか分からない設定だが、遺爵というものがある。つまり今は滅びた国の爵位で「泊」とよばれる。自由貴族という感じで、王国や公・侯領に行けばちゃんとそれなりに遇してくれる。」

じゅえる「それが意味を持つのはどんな時だろう。」
釈「それはー、やっぱ漂泊の騎士とかかっこいいじゃないですか。」
まゆ子「そうだな。たとえば、四大魔法侯の一人は、それにしておこう。かって魔法によって滅びた国の貴族なんだ。」
じゅえる「おお、なるほど。」

 

**************************

まゆ子「四大魔法侯について考えよう。男だ。」

じゅえる「そいうのはだいたい一人くらいは女が混ざってるものじゃないだろうか。」
釈「定番だとそうなりますねえ。」

まゆ子「無用。何故ならば今回、魔法のお后様を考えたからだ。つまり彼女は、魔法侯についても魔法ギルドに対しても強い影響力を持つ。自身も肉体強化魔法によって戦うくらいの達者である。
 これが居るのに、下っ端に女将軍は要らないな。」
じゅえる「なる。」
釈「なるほど。」

まゆ子「さて、裏切り者を考えよう。最初に魔法甲冑に乗って反旗を翻す者だが、ここで一人除外したい。
 火の魔法使いだ。つまり、魔法甲冑と戦う際に、炎の魔神を呼び出して戦わせる怪獣大決戦が行われる。火の魔法使いはこの時点では味方、という枠組みにある。」

じゅえる「火の魔神てのは、呼び出せるものなのか?」
まゆ子「いやいや。街に火を着けて燃え上がった炎を操るのが、そのまま炎の魔神だ。召喚するのではなく、自分で作るんだよ。でも素人目からすれば、それは魔神を呼び出したようにしか見えない。」
釈「はあ、そんな大魔法を使えば、魔神呼ばわりされますねえ。」

じゅえる「よし分かった。では火の魔法使いは裏切らない。で?」

まゆ子「もう一人、戦死する魔法侯が居る。謹厳実直な旦那騎士と気が合うタイプであるから、重厚な信頼できる性質を持つ立派な人物であろう。」
釈「それは土でしょう。」
じゅえる「イメージ的には土だな。」
まゆ子「じゃあ、土魔法侯はそういう重厚なタイプでよいかい。」
釈「おっさん、いや中年を越えて初老くらいでいいですよ。四大魔法侯の中でもリーダー格の、魔法ギルドにあっても高く尊敬されている人です。」

まゆ子「おお。」
じゅえる「そいう人こそ、戦死させねばならない。だからこそ、魔法ギルドも弱体化して分裂しちゃうんだ。」

 

釈「風の魔法使いは空気の振動で家を押しつぶす。水の魔法使いは電子レンジで水を沸騰させる。どっちが悪そうでしょう?」

まゆ子「ちなみに、水の魔法使いはデンパを使って人体をそのまま沸騰させることもできます。甲冑装備の兵士なんか、雷放電しながら目玉が沸騰しますよ。」
じゅえる「なんという悪。それは裏切れ。」
まゆ子「でもこんな奴が敵になったら、それこそ勝てないぞ。」
釈「そこは、敵は強ければ強いほどイイ! という定番のシナリオがあるわけですよ。」

まゆ子「ちなみに水の魔法使いは水の上を素足で歩けます。魔法甲冑装備でも水面を歩けます。足の裏で水を沸騰させて湧き上がる圧力の上を歩くのです。」
じゅえる「見ろ、それはまさしく悪魔の仕業だ。」
釈「川を渡られると、炎の魔神も攻撃出来ませんねえ。そりゃあ強い。」

じゅえる「こういう奴を、旦那騎士はやっつけるんだろ。」
まゆ子「そういうシナリオになってます。」
釈「敵として申し分無いですね。」

じゅえる「ではこうしよう。水の魔法侯は、さっき言った遺爵なんだよ。かって魔法で滅びた国で高い地位を持っていた。その世俗の地位を回復させてやろう。「公」レベルの領地もやろう、という誘いに乗るんだな。」
釈「裏切るのに十分な理由ですね。」

まゆ子「じゃあナットク。となれば、風の魔法使いはーどうしよう。これこそ女でもいいような気がしてきたぞ。」
じゅえる「女はやめると言ったんだから、方針は貫かねば。そうだなー、つまりここに異質な分子が欲しいんだろう。」
まゆ子「たしかにアクセントは欲しい。」
じゅえる「であれば、この世界では差別されているような人物、たとえば黒人とかが魔法使いであれば、目立つでしょう。」
釈「ほお。」
まゆ子「あんま差別するのを直接描くのは中世モノでも許される世の中ではないんだが、異邦人ね。うん、黒人で忌み嫌われる、というのはいいかもしれない。魔法ギルドだし。」

じゅえる「OK!」

 

まゆ子「あーついでに説明をしておくと、つまり魔法ギルドは「公」扱いなのだ。高い独立性を各国に認められる専門知識を扱う魔法の殿堂だ。
 だから一番偉い人が居る。魔法公だ。ただしこの人は魔法使いではない。

 というか、魔法使いの最高峰は四大精霊魔法侯と、中枢魔法、錬金術師の6つ有る。
 この内錬金術師は魔法は使わない。魔法で動く機械や道具、魔法材料を作るのが仕事。
 中枢魔法とは仮の名であるが、つまり四大精霊魔法以外の魔法だ。人体に影響したり、念話や探索に使ったり、そういうのが四大精霊以外に有る。ただしこれは攻撃魔法とは呼べない。
 直接に物理的な現象を引き起こして巨大な力を発揮する四大精霊魔法は、やはり特別なものだ。特別であるが故に魔法ギルド内で指導力を持つことは許されない。

 そこで、中枢魔法の最高峰が魔法侯のとりまとめをする。これも魔法侯だ。

じゅえる「つまり魔法侯は5名居り、さらにその上に魔法公が居る。ただし魔法公自身は魔法使いではない。何故?」
まゆ子「そりゃ簡単。教会の手先だからだ。」

釈「お! でも魔法と宗教はこの世界分離しているんじゃないんですか?」
まゆ子「そうだよ。智慧と力は分離するのが正しいとされ、さらには力は智慧によって制御されねばならぬと考えられている。だから魔法公は教会から来ている。
 でも残念ながら、魔法の知識は彼には無い。また魔法の力を欲する周辺各国は直接に魔法ギルドと交渉し協力しようとする。当然資金も各国から流れている。」

じゅえる「微妙だな。」
釈「難しいですね。教会から来た人は、何を以て魔法ギルドを支配するのでしょう。」
まゆ子「そこで僧侶だ。教会専用魔法というのがあり、それを習得した僧侶が魔法ギルド内にあって管理を行う。「折伏魔法」と呼ばれるものだ。
 まあ実体は、魔除けというやつだな。呪文を唱えると悪しき魔法を打ち破る。ただし、僧侶自身には魔法を感知する能力は無い。」
じゅえる「だめじゃん。効かないじゃん。」
まゆ子「いやそれが効くんだよ。伊達や酔狂じゃないんだ。連中も独自の修行によって神劫電流の操作法を身に付けて発動させる。ただし魔法使いと違ってそれが本当に発動しているか、本人には分からない。
 分からないが、ともかく効く。」

釈「どういう具合に効くんですか?」
まゆ子「魔法ギルド内で行っている魔法の数々は神劫電流によって機能する。大きい魔法も小さい魔法も人体に影響する魔法もすべてだ。そこには一種の回路が形成される。電気が回路を流れているんだね。
 折伏魔法はこの回路を一時的に破壊する効果が有る。

 そうだねー、物理的にどういう現象かと言えば、「ノイズ」だね。強力なノイズを発生させて一時的に回路を遮断する。当然魔法の発動は阻害される。」
釈「はあ。思ったより強力ですね。」
まゆ子「そりゃそうだ。この魔法一筋で宗教会は魔法ギルドに対しての優越性を認めさせているのだから。

 というわけで素子/モルガーナの居る魔法攻殻機動隊には僧侶が居ます。悪しき魔法を打ち破る為です。」
じゅえる「なるほど。ナットク。」

 

 

【蠱蛍(仮)・抜質 共通設定話は専門コーナーに移動しました】2011/07/05

 

【魔法甲冑リリカルポエマー 設定第一回】2011/06/28

 

まゆ子「というわけで前回のおさらい。」

釈「というか、書いてる本人が訳分かんなくなります。」
じゅえる「どうでもいいが、MICROSOFT IMEはなしてこうも酷いかな。グーグル使うしかないじゃないか。」
釈「64ビットWIN7ではWXGは使えないのですよ残念。」

まゆ子「新企画『リリカルポエマー』は剣と魔法モノファンタジーです。

 中世ではなく近世、火縄銃や大砲が当たり前のように出ます。でも甲冑や剣槍が主武器です。
 この企画の根本は、魔法の世界で攻殻機動隊が活躍するぞ! というものです。が、すでに設定として崩壊しているから出発点の目安として記述。

 主人公;草薙素子っぽい女。24才くらい。くらいと言うのは、修道院育ちであってちょっと世間からずれてるのです。24才はこの時代行き遅れのおばさんですが、そんな感じはない。むしろ若い。
 主人公補;騎士。トグサっぽいのを考えてたけど、普通に騎士で兵士の一隊を率いて悪党を逮捕します。28才。妻と娘が居ましたが一昨年流行病で二人とも亡くしています。
 で、任務に従って二人が共に悪と戦っている内に、結婚します。かなり早い時期に。」

じゅえる「ちょっとまて、聞いてないぞ。」
まゆ子「前回書いたのが全てじゃないぞ。頭の中で考えて決まってることも多いんだ。」
釈「まあまあ、ここはまとめですから。最後まで聞きましょう。」

 

まゆ子「この物語の基本は、地面の下から発掘された神代の魔法兵器、人型魔法生物『無骸』の不法な軍事利用を防ぐために、主人公達が隠密裡に処理していく、というものです。

 無骸とはなにか。不明です。が、魔法がまったく効かない無限の力を備えた魔法戦士人形である、と考えられています。
 この世界には王国が幾つもありますが、王国成立の立役者として常に無骸を利用した魔法甲冑の活躍がありました。それだけの能力を持っているのです。

 こんなものが大量に出まわっては大迷惑。軍事的バランスが崩壊するどころではなく、人類社会そのものが戦禍に沈み滅びてしまいます。だから、魔法ギルドが各国政府と協力して、無骸狩りをやっています。

 で、何故そんなものが裏社会に出回っているかと言えば10年前。主人公草薙素子はお姫様でした。
 地方領主である彼女の家は古くから有る名門です。領地内には古代遺跡もありました。その下から、或る日大量の無骸が発掘されます。およそ3千体分です。
 こんなもの野放しにしていいはずが無く、周辺各国と魔法ギルドが合同で調査管理していましたが、何者かの手により無骸が盗まれる事件が頻発。で、堰を切ったように分捕り合戦が始まり、本来の領主である家は滅亡。

 ただひとり生き残った後継者である彼女は魔法ギルドに引き取られ、魔法を覚えて犯人退治の為に無骸回収の過酷な任務に携わっている。
 が、それはさすがに迷惑な話で、各国も心ならずもぶっ潰してしまった名家を再興させようとするのだが、彼女が頑として聞かないので困っていた。

 ところに主人公補の騎士が現れて任務の最中になんとなく彼女といい感じになってきたので、これ幸いと結婚させてしまう、というお話。
 妻が身分の有る者であったので、騎士はいきなり〇〇侯と呼ばれてしまいます。爵位を継承して領主になります。領地は無いけどね。

 以後夫婦で無骸回収の任務を行うのです。」

じゅえる「そういう話だったのか。」
釈「処女厨死亡ですね。」

 

まゆ子「無骸とは何か? 詳しくは分かっていません。が、制御方法は分かっている。

 頭蓋骨部分を後方斜め45度で石斧でぶっ叩くと起動し、後方水平打ちおろし30度で叩くと停止します。古代の偉大なる魔導師ヤヤチャ様が発見されました。
 石斧でなくてはいけません。ちょうどいい硬さなのです。

 主な機能は、人型のまま動く。人間が乗れるように甲冑型に装甲を増加して着用しますと、搭乗者の意のままに歩き走り殴ります。力は人間の比ではなく、雄牛10頭以上のパワーで馬よりも早く走ります。

 ただ人間が乗るようには本来出来ていないから、乗っている人間そのものが酔ったりくたびれたりして、長時間戦闘は出来ません。また乗れる人間の身分も限られており、聖騎士の称号を持つ者だけです。
 しかしこれに魔法使いが乗ると、乗った人間のスキルに応じて様々な魔法をブーストすることが出来ます。

 ただし、無骸自体は魔法で損ねることは出来ません。魔法に対してはまったくに絶縁仕様になっているみたいなのです。
 もちろん物理攻撃でも破壊出来ません。人間が増設した装甲部が壊れるだけで、本体は無傷です。が、人間が乗らないと動かないのでそこが壊れるとやっぱり無力化出来ます。」

じゅえる「無骸を作ったのは神様であり、それは神戦闘の為の戦闘服的なものだった。てのは隠し設定です。」
釈「無骸を核とした魔法甲冑を止めるために、主人公補の騎士は後に聖騎士となり専用魔法甲冑を用いて後ろ頭を石斧でぶっ叩くという戦闘を繰り広げることとなるわけです。」

 

まゆ子「魔法使いです。この世界には厳然として魔法があります。物理的な効力を持つ破壊的なものです。
 原理は簡単。世界中に満ち溢れている神劫電流というものを自在に操り、ありとあらゆる事が出来るのです。

 まずは基本の四大精霊魔法「地水火風」、念話、探査、治癒、予言。なんでもありです。肉体や精神を強化する魔法もあります。
 ざっとこんな感じ。

・電流を直接使う系
・電流による発熱を使い発火させる系
・電流による発熱を使い金属を溶解する系

・静電気を使って物質を引き寄せ跳ね飛ばす系
・静電気による爆発系
・静電気から雷を発生させる系

・磁力による拘束系
・磁力を用いた物質投射系
・プラズマ(炎)を電磁気で誘導する系
・プラズマ(球電・火の玉)を直接に操作する系
・低温プラズマ(不可視)を屋内等に忍び込ませ探査する系
・電圧の変化によって振動を引き起こす系

・電波放射による水分子振動発熱系
・電磁波放射、特に可視光線による直接発熱系
・電磁波による通信・索敵系
・電波による誘導電流で遠隔作用系
・発光系 および宝玉を利用したコヒーレント光条の発生

・強力なノイズを発して魔法回路と呼ぶべきものをショートさせ魔法の発動を阻害する系

・電解作用による化学変化系 オゾン等を生成出来る
・体内電流を利用して生理機能を活性化させ治癒を行う系
・特に筋電流を操作して怪力を発生させる系
・神経電流に作用して精神機能を強化もしくは操作する系
・神経電流を利用して反応速度を加速する系
・体内に流れる神劫電流を吸収して蓄電池に蓄える系

・イオン推進による飛行系
・パルス放電によるジェット推進系
・錬金術師が作ったモーターを動かす動力系
・プラズマ生物「精霊」の思考を電波で受信出来る系

・電気魔法全般を絶縁する系

 

【リリカルポエマー 設定第0回】2011/06/27

まゆ子「私にいい考えがある!」

 

じゅえる「おー、やっとやる気になったか。」
釈「震災からこっち、新しいお話のネタを作っていませんでしたからね。じゃあここはひさしぶりにばーんとぶちあげますか!」
じゅえる「おー。」
まゆ子「よく分からないがありがとう、ありがとう。

 

 さて世の情勢をつらつらと見るに、人々は中世・戦国ファンタジーが大好きだということに気が付いた。西欧中世騎士物語&魔法使いなんかそりゃもう人気があせる事は無い。」
じゅえる「まあ、楽しいからね。」
釈「人に望まれてこそのエンターティメントですよ。じゃあ『げばると処女』の次のファンタジーものをやってみる気になりましたか。」

まゆ子「うむ。そして魔法を今度はばんばん打ち出すぞ。げばおとでは魔法は事実上禁止だったからな。今度は魔法使いというクラスがあり、ばんばん大活躍だ。」
じゅえる「べただが、まあやる気になったのならいいんじゃないかな。」

まゆ子「というわけで甲冑を作る。」
釈「はあ。」
じゅえる「そこはげばおとと一緒なんだ。」

まゆ子「やはり魔法で動く甲冑は中二心をくすぐるものでしょう。今回の構想では不思議甲冑を媒体として戦場で派手に攻撃魔法をばらまこうというハラなのだ。」
釈「つまり魔法の動力源であり効果を発生する媒体そのものなんですね。」
じゅえる「魔法プラットフォームか。まあ呪文詠唱で発動するよりはよほど現実的であるかな。」

まゆ子「まあ、呪文はさすがにアレだしね。

 で、この世界には昔から魔法甲冑というのがあり、時代の変革を促してきたのだ。英雄達が魔法甲冑を身に纏い、攻撃魔法の火花をバチバチ散らして雌雄を決してきた。」

じゅえる「そこまでべただと却って心配だな。」
釈「もうちょっと聞いてみましょう。」

まゆ子「そこで現在、というかいつものとおりにてきとーに発達した中世風ファンタジー社会です。魔法甲冑というものの効力は未だ健在ではありますが、その原理が結構解明されている。」
釈「ふむ。」
まゆ子「魔法甲冑なるものは元々存在せず、骨組みだけがあったのだ。古来より受け継がれて来た『無骸』なる骨、こそが魔法甲冑の心臓部であり動力なのだ。」

じゅえる「骨、ですかい?」
まゆ子「まあ簡単に言ってしまうと、肋骨の無い骸骨だ。背骨が有って手足があって、頭部はほとんど残ってない。脊柱が重要であり、そこから魔法力が出てくるのだな。」
釈「つまり古代文明の遺産を流用しているわけですね。」
まゆ子「そこだ。今回のお話の核心はそこに有る。

 この『無骸』、実際は機械やら道具ではなく魔法生物であることが確認されている。つまり骨だけで動くゴーレムみたいなものね。」

じゅえる「なるほど、ゴーレムか。たしかに古代文明の遺産だな。でもちょっと陳腐な設定ではないかい。」
まゆ子「当然のことながら、こんなもの人間の手では作れない。誰か別の存在が、魔法を操る存在が作ったのだ。」
釈「良くある設定ですね。人類を滅ぼすために闇の魔王が作った魔法の戦士、とかですね。」

まゆ子「うん。それそれ。『無骸』はその魔王が作った不死の戦士の残骸なのだ。人間に敗れ去り野に朽ちたものを魔法使いが発掘して流用している。骨に鉄の装甲を付けて、人間が着用出来る様にしているのだ。」
じゅえる「あんまり新味の無い設定だな。まゆちゃんには珍しく。」
釈「はあ、ちょっと失望ですね。」

まゆ子「いいじゃん、ファンタジーなんだから。
 で、その魔王が軍団を派遣したのは今から3000年前。」
じゅえる「ふむ。」

まゆ子「その頃の人類は、石斧担いで腰蓑一つでマンモスを狩って生きていたのだ。」

 

じゅえる「ちょっと待てぃ!」
釈「ちょっと待ってください。……それは、原始人ではないですか?」
まゆ子「はじめ人間だよ。」

じゅえる「つまりなんだ。ゴンのとーちゃん達が、魔王が遣わした不死の軍勢を打ち破ったわけか。その残骸は3000年後に今日に至るまで戦場で大活躍しているというのに。」
まゆ子「というか、作った当時の性能に比べれば、魔法使いが再利用した現在のものよりもはるかに強く早く賢くどばどばと攻撃魔法が使えますよ。今有るのは超劣化版です。」

釈「……、どーやって撃退したんだ…。」
まゆ子「それはもう、戦って戦って戦い抜いて、で結局闇の魔王まで葬り去って奈落の底に封印だ。」

釈「武器は? 魔法は? なんか凄い味方のドラゴンとかは?」
まゆ子「そんなもんあるかい。石斧と石槍、棍棒くらいだよ。防具は頭に獣の骨を乗っけたくらいだ。ちなみにこの世界にはドテチンは居ません。」

釈「…あー、そのー、魔法使いつまり現代人は、そのことを知っているんですか?」
まゆ子「この度遺跡が発掘されて『無骸』が大量に採集されました。原始人達が勝利した後に穴掘って埋めたものです。およそ3千体分。その詳しい解析の結果、どうやら石斧にやられたとの結論が。」
じゅえる「頭痛くなってきた。その『無骸』を使った魔法甲冑て凄い力があるんだろ?」
まゆ子「発掘された中には、身の丈10メートルを超える『無骸』もありました。」

釈「     。じゅえる先輩、これはどうしましょう?」
じゅえる「どうするもこうするも、原始人さいきょーだろ。

 あ、そうか。つまり『無骸』を利用した魔法甲冑が世間一般に広まり世界が地獄に変わったのを、原始人の末裔が退治して回るというヒーロー物だな!」
まゆ子「そんな人居るわけないじゃないですか。現代人はひよわなままです。」

 

釈「オチは! オチはどうなるんです!」

じゅえる「いやちょっと待て釈ちゃん。まだ何も決まっていない内にオチを求める奴が居るかい。」
釈「でもこの物語、どういう展開を遂げるのかまったく見えません。オチを聞かせてください。」

まゆ子「あーそうだねえ。つまりこの物語の展開としては、オーラバトラーと一緒だなあ。
 ダンバインでそうだったように、魔法甲冑の威力に目を奪われた各国領主達が互いに魔法甲冑を続々と戦場に送り出し、人間を無視した修羅場を演出する。
 で人も獣も生き延びられないような荒野になり、最後は人類は絶滅するのだ。」

じゅえる「     。救いも何も無しか!」

まゆ子「それから千年。地上を破壊しつくした魔法甲冑達は操る人も居ないまま荒野を徘徊する。
 そこに、生き延びた人類たちが石斧で戦いを挑み、今度は勝利して穴掘って埋めます。

 それから3000年。」

じゅえる「分かった。構造は分かった。」
釈「あくまでも原始人最強がやりたいんですね。分かりました。」

 

 

まゆ子「で、これは魔法中世ファンタジー世界に、攻殻機動隊が居るというお話なのだ。」
じゅえる「また妙な設定を。」
釈「それは結局、なんなんですか。」

まゆ子「いや単純に『無骸』が危ないから管理しようという魔法ギルドの特殊部隊員て感じかな。無骸を使う魔法甲冑は魔法ギルドの専売特許みたいなものであり、無骸そのものの数が少なかったからこれまでは問題無かったわけだ。
 だがその数少ない魔法甲冑でさえ、国を一つぶっ立て新しい時代を築くほどの威力を見せている。
 それがいきなり3千体も発掘されたらどうしますか。」

じゅえる「この世の、終わり、だな。」
釈「つまり攻殻機動隊は無骸を破壊もしくは奪取隠匿しようとするわけですね。」

まゆ子「無骸て壊れないんだよ。どんな手段を用いても。まあ手足の指とか顎の骨とかは歴史的に脱落していってるんだけど、中枢部は無傷のままだ。そうだなー、ファンタジー的な類似物といえば骸骨戦士だな。ドラゴンの牙から生える。」
じゅえる「あー懐かしい。」
釈「ローマを作ったアレですね。アレは頑丈だ。強いし。」
まゆ子「つまりイメージ的にはアレに鋼鉄の鎧を着せて、中に人間が乗るというのを想像してください。でオプションにより火を噴いたり電撃を発したり、もちろん怪力と快速は標準装備で付いてきます。

 で、攻殻機動隊はひそかに持ち去られた無骸を探し出し一体ずつを処理しようとする。が持ち去った方も素人じゃない。各国の王とか領主とかがそれぞれに精鋭を選んで奪取して腕扱きの魔法使いに甲冑化させてるんだ。警備も厳重。
 そういうところに乗り込んでいくのだな。」

 

じゅえる「だいたい分かった。甲冑自体が物語の中心じゃないんだな。その両者の暗闘が物語なんだ。」
釈「なるほど。それはなるほど、納得です。」

まゆ子「常に攻殻機動隊の方が失敗する。」
じゅえる「ちょっと待て。」
まゆ子「しっぱいする。」

釈「それはー、どういう物語でしょうか? ちょっと分からないんですが。」
じゅえる「失敗したら無能だろう。」
まゆ子「有能な人材を惜しみなく投入しても、人の営みは止められない。歴史の流れには逆らえない。そいう物語です。」

 

釈「失敗したらどうなります? 動き出した魔法甲冑は止められないんでしょ?」
まゆ子「だいじょうぶですよ。着ている人間を殺せば勝手に止まります。この時代の技術力では気密には出来ないから、毒で殺せます。」
じゅえる「ふむ。」

まゆ子「だがその情報が漏れると、後の甲冑は対策されてしまう。どんどん難しくなります。」
釈「泥沼化。」
じゅえる「魔法甲冑は、魔法甲冑では止められないのか?」
まゆ子「勝てば止まります。」
じゅえる「だよね。」

まゆ子「攻殻機動隊には魔法甲冑の使用は許されません。」
じゅえる「う〜。」

釈「魔法甲冑を持っている領主か王様に依頼して、てーそういう人が一番あぶないのかあ!」
まゆ子「まあそうです。持ってる王様はもう一体欲しくなる。持ってない人はそれが無ければ勝てない事を知り、ますます欲しくなる。そういう代物です。」

じゅえる「だんだんと話が見えてきた。つまりこれは、ファンタジー世界を滅ぼす気満々なんだな?」
まゆ子「まあ、十二神方台系ではありませんから思い入れも無いし、生き残らなくても構いませんよ。」
釈「愛は無い、と。」

まゆ子「この物語に関しては、そうです。そうですねえ、かわいらしい幼女やらお姫様やらいい人をいっぱい出しましょう。滅びる世界は美しいのです。」
じゅえる「鬼じゃー。」
釈「鬼じゃー。」

 

釈「しかし、石斧でどうやれば壊せるんですか? 弱点とか有るんですか。」
まゆ子「無いとは言わない。つまり無骸はあくまでも骸骨だ。骨だ。肉は現在失われている。」

じゅえる「あ、そうか。制御装置である肉の部分あるいは脳髄は生モノであって、石斧で破壊可能なんだ。」
まゆ子「そういうことです。しかしながら当時つまり原始時代にあっても現代と同じように固い殻を纏っていましたよ。柔らかい所を防御する為に。」

じゅえる「しかし、石斧で破壊が可能なんだ。」
まゆ子「鋼鉄の鎧だって、石斧でがんがんやれば中身壊れますから。」
釈「そういう理屈ですか。でもそれは、凄い人死にますね。」
まゆ子「まあ、原始人だし。」

 

釈「はい! 火薬は出ますか?」

じゅえる「中世だから、銃器爆弾は無しか?」
まゆ子「ありで行きましょう。その方が魔法甲冑の威力を証明できます。」

じゅえる「でも、銃弾をかきんかきん跳ね返すってのは無いだろ。さすがにそれは中世技術では無理だよ。」
釈「というか、銃器が無力だとファンタジーにしても面白くないんですよ。最新兵器はちゃんと効果が必要です。」
まゆ子「まあ、鋼鉄の甲冑部に当たれば簡単に貫通するという事にしておきますか。無骸の部分でなく。」
じゅえる「そうだな。節度は必要だ。」

まゆ子「じゃあ、攻殻機動隊は鉄砲で魔法甲冑を破壊しようとする。実際スペック上は出来る。出来るのだが、出来ない。」
じゅえる「何故?」
まゆ子「作る魔法使いもバカじゃないからだ。いかに鋼鉄で覆っても鉄砲の弾丸を止められないとちゃんと理解する。だから数々の防御策を講じているのだ。」
釈「具体的には?」
まゆ子「増加装甲とか、鉄棒で受けるとか、中に乗る人間を子供にして当たり難くするとか。まあ色々だ。どれだけ凝った細工にするかも見所だね。」

釈「魔法甲冑の性能というのは、どんなもんでしょうか?」

まゆ子「まず弓矢はまったく受け付けない。鋼鉄甲冑の厚さが違う。
 人力で持ち運べる重量をはるかに越えているから、鉄板も厚い。だから生半可な鉄砲も貫通しない。
 しかもその重量装甲でありながら、走れば馬よりも早い。それも長距離を駆け抜ける。時速40キロで100キロくらいは普通。それ以上は操縦する奴が保たないけど。
 もちろん怪力だ。そんな重量で動くんだから、凄い力に決まってる。戦車並みとさえ言える。
 そうだな、戦車くらい出すか。中に牛が入った装甲車。これを蹴飛ばして破壊する。」

じゅえる「無敵だな。攻撃魔法必要ないぞ。」
まゆ子「まあ、これくらいの能力がデフォだ。特殊能力の付加は作った魔法使いの能力に依存するが、ここまではまともな奴ならちゃんと出来る。そういうものだ。」

じゅえる「火薬で吹き飛ばす、てのはダメ?」
まゆ子「ぜんぜん効かない。てのがよろしいな。でも大丈夫。吹っ飛ばされて甲冑自体は無傷でも、中の人間がぐっちゃぐちゃという事にしておこう。」
釈「そこは運用次第ですね。」

じゅえる「ふむ。治癒魔法とかが存在すれば、大丈夫ということにしておくか。あるいは肉体強化魔法で。」
釈「地味に意味が無い魔法なんですよね肉体強化ってのは。怪力とかならまだしも、殴られて痛くないという強化は。」
じゅえる「ちょうど良い魔法だなそれ。」

 

まゆ子「さて! 攻殻機動隊ということで考えると、タチコマとオペ子の存在が絶対に必要だろ。」

釈「しかし今回の構造上魔法甲冑が敵となるわけですから、さすがにタチコマはどうでしょう?」
じゅえる「まちなさい、私によい考えがある。今現在某所で流行っている中世武具があるのだ。通称「ちょろけん」「ちょろけん兵」だ。」
まゆ子「ほお。」

じゅえる「ちょろけん兵はもちろん本来の名はそんなんじゃない。というか、西欧に実在したのかも怪しい装備であるが、見た目インパクト最強。誰もが一目で理解する。」
釈「ちょろけん、て可愛い名前ですね。タチコマと比肩するんじゃないですか。」
まゆ子「よし分かった! では攻殻機動隊はちょろけん兵を用いることにけってーい。で、それ何?」

じゅえる「こういうものだ。」

釈「!」
まゆ子「! GOOOOOOD!」
釈「なるほど、これはまたタチコマっぽいナイスな外観です。これは逝けます!」
じゅえる「えへえへ。楽しー。」

まゆ子「ちょろけん兵はつまり装甲機動兵であるのだから、ファンタジー世界においては実に実に素晴らしく効果的なのだ。これでいこうこれしかない。おそらくはその後のファンタジー業界を席巻することとなろう。」
釈「歴史が作られるのですね。」

 

じゅえる「オペ子は?」
まゆ子「ファンタジー世界においては案外と皆念話を用いる。特に魔法を使わなくても、遠隔地とおはなしが出来る。これは不合理。」
釈「ふむ。」

まゆ子「通信専用の魔法使いというのが居ることにしよう。部隊にこれを伴えば、術者同士が自在に会話出来る。しかし、敵に付けこまれて逆撃を食らうことも有るのだ。魔法だから、魔法使いにやられる。」
じゅえる「ふむ。」
まゆ子「つまり、脳を焼かれるのね。魔法通信を逆用されて。」
釈「対処法は無いのですか?」
まゆ子「身代わりのお札とかを用いてもよいが、素直に焼き殺されるのがかっこいい。それも女の子。」
じゅえる「ヒドイ話だな。」
釈「ハードボイルドですよ。」

まゆ子「こう考えよう。攻殻機動隊は魔法ギルドに属する秘密捜査隊。しかし通常はまったく別の名称の穏当な部署を名乗っている。そこは聖歌隊であり、魔法歌を修行する少女達が何十人も居るわけだ。
 少女達は念話の修行をさせられており、事件が起きれば駆り出されて攻殻機動隊員の通信を司る。
 しかし敵も魔法使いであるから通信の自由を許しては我が身が危ないと心得ており、念話の術を逆用して攻撃に出る。一番単純な攻撃法が「脳を焼く」。他にも乗っ取りとか憑依とか色んな術があるんだけど、まあ最後にはたいてい焼かれちゃうのだ。」

じゅえる「論理的合理的だが、酷いはなしだな。」
まゆ子「主人公草薙素子は、つまりこの念話の達人なわけだ。敵の術者の攻撃を逆用して精神を乗っ取ったり憑依したりとかのサイバーっぽい魔法が使えるのだ。」
釈「あくまでもサイバーファンタジーなのですね。」

まゆ子「というわけでこのお話のタイトルが決まった。『リリカルポエマー』。」
じゅえる「なんでやねん!」
まゆ子「彼女たち念話要員は本来リリカルポエムを詠唱するという名目で集められている。だから「リリカルポエマー」だ。」
釈「なんという羊頭狗肉。いえ羊頭狼肉。」

 

まゆ子「ちょろけん兵を調べたぞ。これは大きな籠の中に隠れて城壁に接近してクロスボウを撃つ兵種らしい。

 クロスボウというところがミソ。皆も知ってるとおりにクロスボウは再装填に時間が掛かる。その際を狙われたらまったくの無力棒立ち。だが残念ながら当時のクロスボウは立ったままでないと弦を引けないのだ。
 そこで登場したのがちょろけんだ。弓矢を防げる程度には防御力の有る籠の中で再装填をする。撃つとまた隠れて再装填。」

じゅえる「賢い。」
釈「でも有効じゃないんでしょうねえ。上から火矢を射られたり。」
まゆ子「まあ、何十本も食らうとさすがにダメなんじゃないかな? もちろん『リリカルポエマー』のちょろけんは防御力が尋常ではないことにする。クロスボウを食らっても貫通しないし、魔法甲冑に殴られてもぶっとんでいくだけで中身は無事。」

釈「でもそんなことあり得るでしょうか?」
じゅえる「なんの為の魔法か。ちょろけんの中に入れば安全という防御魔法が掛かってることにすれば良いのだ。」
まゆ子「うむ。」
釈「でも火縄銃には勝てない。」
じゅえる「節度だな。」

まゆ子「単発のクロスボウだけでは面白くない。中国から渡ってきた連弩を装備してもよいぞ。マシンガンだ。」

じゅえる「サイトーは? スナイパーの。」
まゆ子「そりゃ火縄銃だろう。」
釈「火器解禁ですから、そりゃ出ますよ。爆弾のボーマも出ますね。」

じゅえる「じゃあトグサはどうなるのだ。元刑事という。」
まゆ子「刑事は下っ端過ぎるから、騎士にしましょう。魔法使いの中にひとりだけ騎士が混じってるのさ。もちろん攻殻機動隊は出動時には一般兵や警察も動員しますから、彼はそれらを総括する責任者ということで。」
じゅえる「なる。騎士は必要なんだ。」

釈「バトーは? イシカワは、パズは?」
まゆ子「いや、全部が全部揃えなくちゃいけないわけじゃないから。」
じゅえる「だが最初にある程度メンバーを考えておく方が良いぞ。まったく同じにする訳にはいかないんだから、どこを変えるかちゃんと設定しておこう。誰が欲しいか優先して。」

まゆ子「うむ正論だな。しかし私としてはー、草薙素子を主人公になぞ絶対にしたくない。」
釈「そりゃー丸パクリですからね。」
まゆ子「むしろ4話くらいで殉職させてもいいくらいだ。読者の期待は常に裏切らねばならぬ。」
じゅえる「物語パクリの定石だな。皆が暗黙裡にそうなるだろうと考えているのを裏切ってこそ、パクリが輝く。」

 

まゆ子「まず一人決まった。騎士だ。それも魔法ギルドの外部から来たまっとうな経歴の騎士であり、今回の『無骸』状況にどんどん深く足を踏み込んでいく。」

じゅえる「トグサ役だな。」
釈「妻帯者ですか?」
まゆ子「そこは敢えて外す。だがいい年をした騎士が独り身というのも不自然だ。伝染病によって愛妻愛児を失った孤独な騎士、という感じで。」
じゅえる「うむ、そのくらいは外さねばならんね。」

まゆ子「事実上彼が主役になった方が良いと考えるけれど、今後の展開を待とう。」

 

まゆ子「草薙素子。念話の達人で敵の精神を乗っ取ったり出来る。通常はヒラの念話修行者の少女達の指導を行うシスターだ。」
釈「この世界、教会はありますか?」
まゆ子「どうしよう?」
じゅえる「ぴるまるれれこ教でいいんじゃないか?」
まゆ子「そうだな。一神教ぴるまるれれこは万能だし。」

釈「身分はどうしましょう。王女様とかでもいいような気がしますが。」
じゅえる「それは駄目だ。むしろ素子が死んだ後に代わりの要員として送り込まれてくるのが王女であった。くらいが良い。」
まゆ子「では戦争によって両親も身分も失った貴族の娘で、みなしごになり下層民に落ちぶれたところを魔法ギルドによって拾い出された。そんなところで。」

じゅえる「うーむ、もうちょっと色が欲しい。そうだねー、その戦争というのがそもそも『無骸』が発掘された話で、大量の無骸を各国が奪いあって彼女の領地に大挙して攻め入った。」
釈「なるほど。」
まゆ子「なるほど。」

 

まゆ子「サイトー。火縄銃の達人。火器全般に通じている。これ以上なんか設定要る?」
釈「要らない。」
じゅえる「要らないが、ファンタジー世界でそれはなんかもの足りないな。なんかなんか。」

まゆ子「ふーむ。しかしあんまり沢山アイテムを与えちゃうと、スナイパーとして働けないぞ。」
釈「ここは思案のしどころですね。スナイパーにするか、魔法使いにするか。」
じゅえる「ここでまともにスナイパーにしちゃうと、パクリがばれてしまう。」
まゆ子「うむ。」

じゅえる「スナイパー役はそれぞれの話で連れて行く兵隊の中から出そう。この世界では火縄銃は或程度普及しており、歩兵部隊にはスナイパーが必ず一人は居ると。」

まゆ子「西欧の銃器は当たらないのが前提で発達してきたんだけどね、どうする?」
釈「当たる方が物語の展開上面白いです。」
じゅえる「だな。スナイパーが必殺必中の射撃を行う瞬間に、念話で妨害するとかの展開が使えるぞ。」

まゆ子「じゃあ、サイトーはナシで。」

 

釈「ボーマは女の子です。」

じゅえる「なんでやねん。」
釈「義体であるから、別に男性形態でなくてもいいんです。脳核を詰め替えて美少女ボディでもOK。それがボマーです。」
まゆ子「それは使える。つまり変装の達人だ。でも男にするぞ。つまり敵を内定する為の要員だ。魔法は使わずに捜査を進める。」

じゅえる「それはバトーでいいんじゃないか。」
まゆ子「バトー、かな?」
釈「ですね。」

まゆ子「でも捜査員は多い方がいいぞ。」
じゅえる「どうしよう。大男って要るかな?」
釈「要らないですね。捜査するのなら。魔法使いであった場合はさらに要らない。」

まゆ子「要らないと聞くと、欲しくなる。巨漢肉体派魔法使い、いや坊主だ。魔法ギルドには坊主が居るんだ。」
じゅえる「なんでやねん。」

まゆ子「つまりだね、『無骸』を使った魔法甲冑はこの世界では建国神話とかでポピュラーな存在なのだ。王家には必ず1両は有る。
 で、そんなものが巷にごろごろしていたら困るから、僧侶が諸国を回って監視していたのだ。それが攻殻機動隊の前身。

 というかだね、魔法ギルドは信用されていないのだ。魔法甲冑の製造は魔法使いの仕業だからね。そこで僧侶が中心となって攻殻機動隊を組織する。」

じゅえる「つまり僧侶がリーダーなんだ。」
釈「そういうことになりますね。」
まゆ子「であるから、僧侶Aがリーダーでありバトーだな。僧侶Bがサブリーダーでボーマなのだ。」

 

じゅえる「なんかずいぶんと変わってきたな。」
釈「これまでの経験から言うと、一回全部変えてみたところで、さらにひねるのがまゆちゃん先輩の手口です。パクリ隠蔽術ですね。」

 

まゆ子「であるからして、攻殻機動隊は僧侶が中心となり密偵を何名か使い、そこに魔法使いと騎士と念話使いが居る構成です。」
じゅえる「攻殻機動隊と考えるとへんな感じだが、秘密捜査官と考えるとまっとう過ぎる構成だな。」

釈「しかし、魔法使いは素子さんでしょ。念話使いの人が魔法甲冑に対抗出来ますか?」
まゆ子「無理。魔法甲冑の専門家、錬金術師を必要とするな。」
じゅえる「錬金術、うん。なるほど、金属を使うしね。でも攻撃魔法とかもやっちゃうのその人?」

まゆ子「まさかあ。錬金術師が魔法で火炎を吹いたり電撃とか、どこのアニメですか馬鹿馬鹿しい。」
じゅえる「だよねー。」

まゆ子「錬金術師はあくまでも魔法甲冑の鑑定の為に同行する。技術的な側面から分析するのが仕事であり、危険度評価を行う。もちろん攻撃には参加しない。」
釈「まったく戦闘力が無いのも困りますが、」
まゆ子「無いものは無い。」
釈「了解しました。」

 

じゅえる「でも攻撃魔法がまったく使えないのはつまらないぞ。ファンタジーなんだし、魔法甲冑の威力を引き立たせる為にも。」
まゆ子「マジックアイテムの登場です!」
じゅえる「術者は誰でもいいのか?」
まゆ子「アイテムなら。でも僧侶が攻撃魔法というのも美しくないな。」
釈「そうですよ。イケメンのお兄さんが華麗に攻撃しなくちゃ。」

まゆ子「あーそうだなあー、それはアレだよ。攻殻機動隊には無いんだよ。もっと上級の攻撃魔法部隊が居るんだ。で、どうしようも無くなった時にそいつらが出張ってくる。」
釈「まあ、探索任務は下っ端なんですかねえ、やっぱり。」
じゅえる「それがいいか。じゃあこのレベルでは攻撃魔法は出てこない。そういうことで。」

まゆ子「いずれ魔法甲冑が暴走した時に、派手に出現して派手にやられる事にします。」
じゅえる「うむ。」
釈「定石ですね。」

 

まゆ子「まとめるぞー。

(王国側)
 騎士;男性 実行戦闘部隊を指揮する
 兵士;1個小隊30名。手練であるが、損耗は激しい
 ちょろけん兵;2基装備 時々中になんか恐ろしいモノが入っている

(魔法ギルド)
 魔法使い;女性、念話の達人で敵の精神に介入支配する。
 錬金術師;男性、魔法甲冑についての専門技術者、脅威の判定を行う。また現地で魔法解除を行う。
 念話士;女性若い、修行中。ほぼ毎回殉職する。

(ぴるまるれれこ教)
 僧侶A;捜索部隊の指揮官、探索の総責任者
 僧侶B;捜索部隊の副リーダー
 密偵1〜4;男性4名、密偵

じゅえる「人的には十分と言えるかな。」
釈「そうですねえー、脅威が現実に確認されたのならともかく、捜査中であればこんなものですかね。」
まゆ子「ちょっと多いかもしれないが、しかしフルメンバー使わなくてもいいんだ。お話の展開によって人数は加減出来る。」

じゅえる「だね。尋常の体制での出動はほとんど無いと考えた方がいいか。」
釈「その為に騎士が居て兵士を率いているんですから。」

じゅえる「密偵を全部忍者にしてもいいかもしれない。」
まゆ子「ふむ。でもそうすると僧侶も忍者でないと駄目だろう。」
釈「忍者ではだめですか?」
まゆ子「魔法甲冑の意義について十分理解するのは、十分な教育を受けた者でないと駄目だろう。」

じゅえる「とはいえだ、魔法使いとかが出張るのはそれこそ討ち入りの時だけだろうから、忍者でもいいんじゃないかい?」
まゆ子「ふむ。でも忍者は強すぎるから魔法勝負が出来ないぞ。敵があっという間に壊滅してしまう。」
釈「それは困りましたねえ。敵と味方の均衡が取れてるから、攻殻機動隊は成り立つんですよ。忍者を使うなら、敵はもっとすごい忍者ですよ。」

じゅえる「ファンタジー世界で忍者は反則、ってことか。」

 

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『リリカルポエマー』

 女は辻に立つ。
 目を開いた。午後の陽は土埃の立つ道を東西どこまでも照らし、荷車馬車の轍をくっきりと浮かび上がらせる。
 左右に立つ家の積み石が一つひとつ顔に似た影を作り、赤茶色の瓦屋根に陽炎の息吹が宿る。
 人影は、無い。
 銀の鎖を帯び黒衣を纏う女が指差す先には、生きて動く姿は見当たらぬ。人も、馬も、犬も、鳥も虫も。
 ただ樹の葉のみがざわめき騒ぐ。時の流れが確かに有ると、全身の緑を震わせて主張する。

 商家の営み、木箱が積み重なり巻いた布地が並べられ、店の奥に仕舞われようとする。石板には白墨の文字が数を記し、銭箱に王の横顔を記した円貨が満ちる。
 振り返れば青物屋の店先には野菜が並び、屋台で芋を焼く匂いが食欲を誘う。荷運びの人足達が休む木の長椅子が、骰子賭博の掛札が役人に見られぬよう水碗の後ろにこっそりと示される。
 見上げる窓の木枠には、風に誘われる帳のはためき。土器の鉢に丹精を込めた花が咲き誇る。

 つい今しがたまで人が居た情景。いやこの瞬間にも溌として息づく市井の暮らしが、俳優を除いて演じられる。
 声がする。遠く、地平の彼方遙かの空より、微かに低く、寂しく響く。
 耳元で囁いた。男の声。

『首尾は、』
「探査の魔法に妨害はありません。行けます」

 銀鋼の鎧を纏う騎士が、女の身を案じて声を掛けた。魔法は発動する初めが最も危ない。張り巡らせた罠に自ら飛び込む覚悟が要る。
 特に敵の眼前で探査を行う時は細心の注意が必要だ。
 目的の建物から二つ通りを外して高壁の陰に隠れる。一団の兵士の先頭に女は立ち、軽く目を閉じたまま道の真ん中を指す。
 そこに、彼女の精神が在る。肉体を離れて幻が佇んでいる。
 もちろん騎士にも兵士達にも見えない。道に溢れる無数の民の目にも触れない。
 幻となって進む彼女の前に立ち塞がる者があれば、それは紛れもなく超常の存在。魔法によるか神精霊によるか、はたまた幽鬼妖怪であるか。
 いずれにしろ、防御を放棄しすべてを環境に委ねる彼女は一瞬にして葬り去られる。我が身を危険に晒す事こそ、探査の魔法の代償だ。

 

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まゆ子「というわけで書いてみたが、あんま面白くない。シリアスファンタジーはつまらない。」
釈「はあ。それは構造的な問題ですね。」
じゅえる「うーん、たしかにいまどきファンタジーというか剣と魔法モノはうざい暗いのは受けないか。」

 

まゆ子「なんかヒネってくれ。」

釈「ファンタジーで剣と魔法で火薬と銃も出る。世界史で言えば16世紀くらいの世界観ですね。」
じゅえる「中世ではない、もう近世だ。実は剣と魔法の世紀ではないぞ。これは放置してよいのか?」
まゆ子「他の作品はそれでやってるんじゃないかな。」

釈「確かに。じゃあ時代設定はそんな感じで、   ここでヒネりますか。どうしよう。」
じゅえる「ひねると言うが、つまり面白くするという事だ。キャラをひねるか、世界をひねるか、コメディ系にするか。どれで行こう。」

まゆ子「でぽでぽの身上は「真顔の冗談」だ。」
じゅえる「うむ。」
釈「真正面から剣と魔法を行きますか。では思い切った手を。」

じゅえる「というか前半の設定で考えた、「はじめ人間」がまるで効力を見せてないぞ。なんか使おう。」
まゆ子「しかし、はじめ人間が直接に戦うのはどうかと思います。」
釈「そうですねえー、これは使いにくいアイテムですねえ。」

じゅえる「面白くなるのは、ここだ。」
まゆ子「うむ。」
釈「直接戦いますかねえ。」

じゅえる「でも攻殻機動隊だからね。はじめ人間の素子がヒョウの毛皮で背中に赤ちゃん背負って戦闘、てわけには。」
まゆ子「面白いぞ、それ。」
釈「おもしろすぎてつかえません、それ。」

 

じゅえる「というか『無骸』てそもそもなんなのだというところから戻らないとダメなんじゃないか?」

まゆ子「闇の帝王が作った、てのがそもそもダメか。てきとーに考えただけだからな。」
釈「すべての元凶はそれでしょう。闇の帝王は今どうなってるのですか、死んじゃ居ないでしょ?」
まゆ子「考えてない。」
じゅえる「うむ。書いていないし。」

釈「おそらく、そこを詰めないと面白くないんでしょう。闇の帝王を考えて下さい。」
じゅえる「それは知性があって目的が有って、人間はじめ人間たちを支配しようとしたのかい? 」
まゆ子「いや、どうしよう。別に人間なんか殺しても仕方ないんだが。食べるわけでもないし。

 よしじゃあこれでどうだ。

 かって大地には神が居て、神の使いが地上を恐怖で支配していた。
 それに対して敢然と立ち向かったのが、無骸の軍勢。彼らは神が使う魔法を一切受け付けない特殊な存在であり、不滅の戦士であった。
 神と無該は何千年にも及ぶ戦いを繰り広げ、ついには無骸が勝利を収め、神は天界に追放された。その神の遺産こそが魔法である。
 勝利を収めた無骸だが、しかし彼らには戦闘以外の生きる目的が無かった。敵を失い滅びる術も無くひたすらに大地をさまよう無骸。
 しかしそこに救世主が現れた。はじめ人間だ。彼らは石斧でぶっ叩くと無骸が停止するスイッチらしきものを見つけて、かたっぱしから停止させていった。
 そしてすべての無骸が眠りに就き、数千年。」

 

じゅえる「じゃあ「無骸」てどこから生まれたんだよ。」
まゆ子「あーそうだな。魔法を一切受け付けないアンチ魔法生物であるわけだから、神の錬金術というところかなハハハ。」
釈「神自身の武器というところでしょうか。神は神同士で戦っていて、敵に対して有効な戦力として無骸を作った。」
じゅえる「安直だ、それは却下する。」
釈「とほほ。」

まゆ子「もう一捻り欲しいな。うん、死んだ神自身の身体なんだ。神そのものは死なないけれど、肉体は滅びる。魔法勝負で負けて地面に落ちた肉体はそのまま朽ちることも無く留まり続ける。だが精神は分離してまた再生を繰り返す。」
じゅえる「死体であれば動かないぞ。」
まゆ子「そこにはじめ人間が。石斧でぶっ叩いてみると動き出した、と。」

釈「そういえばギャートルズには骨だけの死神さんというのが居ましたね。」
じゅえる「あーでもあれは一応神だからね。うーん、なるほど、神が戦闘を行うために必要な物理的な肉体。神自身は精霊のような炎のようなあやふやな実体である、と。」

釈「ではこういうことで。現代魔法の時代に発掘された「無骸」も、斜め45度で叩けば動き出すのです。」

じゅえる「実に科学的な結論だ。」
まゆ子「素晴らしい。」

 

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まゆ子「一応のまとめ。『無骸』は斜め45度で叩くと動き、水平30度で叩くと止まる。古の大魔導師ヤヤチャ様が発見した聖なる打擲により、命を吹き込まれまた眠るのだ。」
じゅえる「ヤヤチャ様って誰だ?」
まゆ子「ゲバルト処女世界においてかって世界を救った幻の救世主の名前だよ。今回出張しております。」
釈「……、弥生ちゃん様、ですね。」

じゅえる「う。まあ、いいや。とりあえず叩けば動くんだね?」

まゆ子「でもなかなか難しい。まず叩く道具は石斧もしくは石の角。木では弱いし鉄では強い。良い加減で無いと効果は無いのだ。」
じゅえる「その設定の利点は?」
まゆ子「誰でも叩き方をマスターすれば動かせる。」
じゅえる「ふむ。」

釈「諸刃の剣ですね。敵も味方も使えるんですか。」
まゆ子「でも難しい。どこを斜め45度か分からない。というか、叩くべき場所はだいたい装甲の鉄板で覆ってるのだ。叩きようが無い。」
釈「知ってるものにしか使えないわけですね。ですがー、」
じゅえる「知ってる奴は知ってるのだな。不思議が無いし魔法じゃないんじゃ。叩き方教えたら整備員でも戦闘員でもいいんだろ?」
まゆ子「まあね。」

釈「暴走しますか?」
まゆ子「しない方がむしろ面白いと思う。また魔法能力を拡張強化するのだから、治癒魔法や浄化魔法も大規模広域発動出来る。主人公である素子が使う探査魔法も超精密に使えるぞ。」

 

じゅえる「素子は探査魔法しか使えないんだ。」
まゆ子「元は念話士だから、念話と探査が使える。調子がいいと心の奥までも覗くことが出来るぞ。でもサイコメトラーではない。モノの過去とかは分からない。あくまでも物理的に存在するモノを探査したり、心を覗いたりだ。」

釈「その他に魔法は?」
まゆ子「通常ファンタジー剣と魔法モノに出てくる魔法はあらかた網羅している。地水火風の四大精霊魔法に神聖魔法、治癒魔法、探査念話といった情報魔法。魔法生物を構成する魔法やら時間をいじるモノまで。」

 

じゅえる「理屈は? 魔法が存在する物理的基盤があるんでしょ、やっぱ。」
まゆ子「考えてない。」
釈「はあ、イメージ先行ですか。」

じゅえる「たまにはいいか。世間様も別に変には思わんだろう。」
まゆ子「それはいやだな。へそ曲がりがつむじを曲げるぞ。しかし鉄砲爆弾もあるからな、そのくらい強力な魔法が無いとバランスが悪い。」
じゅえる「ふむ。鉄砲の前にはどのような不思議も通じないからな。」
釈「鉄砲は考えれば考えるほど卑怯アイテムですねえ。」

まゆ子「ふーむ、しかし鉄砲の威力をばんと正面から大きく打ち出すのは、ファンタジーを重厚化するのに最適なのだ。リアルっぽい。」
じゅえる「むしろ魔法の方がうそっぽいわけだ。さてどうするかな?」

まゆ子「探査と念話は捨てられない。攻殻機動隊するんだから。」
釈「それだけあれば攻殻は成り立ちますからね。あとは憑依ですか。」

じゅえる「ゴーストでもひっぱり出すかい?」
まゆ子「ダーカーザンブラックになるからイヤ。」
じゅえる「ふむ。媒体は霊的なものではダメか。」

釈「プラズマでは?」
まゆ子「却下。いくらなんでも安直過ぎる使い過ぎた。」
じゅえる「ふむ、しかしエクトプラズマでもいいような気がする。そうだな、精神電波とか。」
釈「情報系であれば、むしろ信号電流でしょう。」

 

まゆ子「ふむ、信号か。    神劫電流というのは?」

じゅえる「なんじゃそれは。」
まゆ子「目には見えないけれど世界中を流れている電流。地脈とか言ってるとこもある。」
釈「風水、道教ですか。」
じゅえる「気の流れではだめなのか、と言いたい所だが、西欧風ファンタジーであったから、電流がよいのか。」

まゆ子「そうだな。ヴィジュアル的には人の身体を雷が走ることにしよう。……、ふーむ。普通に一般人の目にも見える電流ということにするか。静電気のぱちっとくらいには見える。」
釈「けっこうな見え方ですねえ。」

まゆ子「いや、電気電流であればそのまま炎にも直結する。電流で薪やら家やらを燃やせばいいんだ。鋼の剣にも効果が有るし、空中を走って矢尻を焼いてしまうとかも出来る。」
じゅえる「つまり魔法ではなく電流使いなんだ。」
まゆ子「すべての魔法使いが電流使いね。」

 

釈「火はいいですが、地水風はどうしますか?」
まゆ子「ただの地面はーどうしよう、じゅえる。」
じゅえる「そうだなあ、ここは普通に爆発でいいんじゃないかい。静電気がめちゃ溜まってだいばくはつ。」
まゆ子「ほお。」
釈「爆発ですか、地面大爆発ですか。」
じゅえる「土っぽいでしょ。」

まゆ子「たしかに。そもそも金属を流れるんだから、びりびりするのも地系の魔法ということでいいんじゃないかい?」
釈「まあ、金属は元々地系ですから、ふつうですね。爆発が普通でないだけで。」

じゅえる「じゃあ決まり。「火」と「地」は出来た。て、火は遠隔操作できるのか?」
まゆ子「離れたところに火を投げる、というありきたりの魔法はやめよう。燃えるものに術者が直接接触すると燃える。その燃える炎を電流で支配して、炎自体が歩いて行く。とかではどうだ?」
釈「大魔法ですね。」

 

じゅえる「問題は無い。 じゃ次。風魔法。」
釈「さすがに空気は動かせませんよ、電気じゃ。」

まゆ子「だが音は鳴る。電流の振動で音が震える。空気が動く。重低音で空気を重く大きく振動させて家を破壊、相手を押し潰すとかはどうだい。」
じゅえる「それはひとつの術としては問題なくOKだが、風が吹く魔法というのも欲しい。」
釈「ですねえ。もっとエレガントな奴が必要です。」

まゆ子「じゃあもっと直接的に、静電気でそこら中の小石やら砂やらをひっつけて動かす。。」
じゅえる「ちょっとまて、それは土魔法じゃないかい?」
まゆ子「いや、風魔法だ。そうに決めた。周囲のものが静電気で震えて、ひとつところにすっ飛んで行くのだ。」
じゅえる「なんか、普通に考えるよりも派手な魔法になってきたぞ。」

 

釈「でもさすがに水は無理でしょう。」
まゆ子「なんの。水に接触している者は全部感電だ。」
じゅえる「ちょっとまて、それは水魔法じゃない!」
まゆ子「なんでやねん。水に接触している者に超強力に機能する完璧な水魔法じゃないか!」
釈「わかりました、わかりましたから、それはひとつの技にしてください。他に?」

まゆ子「電子レンジの術。水を熱湯に変えて蒸気を噴出させる。また熱湯そのもの噴き上がって攻撃力だ。」
じゅえる「うう、それは水魔法に違いない。」
釈「うう、地味に科学的で困りますね。」

まゆ子「PHを操作して、水を酸に変えることも出来る。」
釈「うう、電気魔法嫌だ。」

 

まゆ子「今考えた。金属を手に持って溶解し、その溶けた金属を電磁的に発射する土魔法。戦車も貫通だ。」
釈「うう、やめてえ。」
じゅえる「くそ、だからまゆ子に考えさせるのは嫌だったんだ。マジになりやがる。」

 

まゆ子「まとめます。四大精霊魔法です。
・火 炎のプラズマを電流で直接制御します。雷で可燃物を燃やします。その炎を操って思い通りに動かします。炎の魔神みたいなのがうろつきます。
・地、静電気魔法です。爆発します。また金属に電流を流して敵を感電させ、焼きます。稲妻が宙を飛び矢も焼きます。金属を溶解して電磁的に投射して敵を撃ちます。静電気で小物が飛んで行きます。
・風 電流により発する音を用います。強力な振動で家屋を破壊し石を砕きます。小石やら砂やらを舞い上がらせて、1ヘルツ以下の低周波で押し出すことも出来ます。
・水 水中を流れる電流および電子レンジの原理を使います。水に触れるものを際限なく感電死させ、また水を熱湯に変え蒸気を噴き上がらせます。水を電解して酸に変えることも可能です。

じゅえる「風で言ってた静電気で小石を吹っ飛ばすてのは、土魔法にしたんだ?」
まゆ子「静電気でまとめた方がいいでしょ。どうせ音波振動で同じこと出来るんだし。」
釈「そうですね。電荷による物質の制御は土にまとめた方が座りがいいですかね。」

じゅえる「そういう事なら、磁力で鉄の武器がくっつく、というのは実に地魔法的ではないかい。」
釈「おお、なるほど。」

まゆ子「あと、生物の体内の水を電波で熱して殺す魔法も水かな。電流を流すことが出来れば別に必要な技ではないけど。」
釈「うう、精霊基礎魔法というのを考えておきましょう。雷を発生させるとか磁力を発生させるとか直接電流とか。」
まゆ子「だな。」

 

じゅえる「となると、探査の魔法も念話も簡単に説明が付くな。念話は電波だ。」
釈「そうですね、それ以外考え付きません。」

まゆ子「まあ、ね。探査の魔法も脳内電流を直接読み取るとか、……離れた場所にあるものを知るには?」
じゅえる「それこそプラズマを使えばいいだろう。火の玉が飛んで行って探索だ。」
釈「プラズマは目に見えるものばかりとは限らないんでしょ。見えない冷温プラズマでいいんです。」
まゆ子「そうか。火の玉を電波で操ることにするか。」
釈「きわめて穏当な説明です。」

釈「治癒魔法は?」
じゅえる「電流で細菌が死ぬとか、免疫力やら細胞再生力やらが活性化する、でいいじゃないか。」
まゆ子「神経に流れて元気になります。」
釈「おお!」
じゅえる「電気バンザイ!」

 

まゆ子「だが、磁気利用が弱いな。モーターとか有ってもいいぞ、ここまで来ると。」

じゅえる「モーターはめんどくさい機械を必要とするから、それは錬金術師の仕事だな。」
釈「そうですね。磁石と銅線を用いたカラクリが、魔法使いの手で動き出すんですよ。」
まゆ子「ふむ、では魔法で動く馬車、とかも出来るわけだ。」
釈「魔法で弾丸を発射する大砲、なんかもアリなわけです。電磁砲ですよ。」

じゅえる「なんかすごいことになったぞ。甲冑なんか意味が無いんじゃ?」
まゆ子「そこはそれ、電波を直接浴びないようにする護法効果が有るわけですよ。電波から人体を守ってくれるのです。」
釈「自動車のボンネットの上を雷の電流が流れて、中の人が大丈夫なように、電撃にも耐えるんです。」

じゅえる「おお! 甲冑大活躍だな。」

 

まゆ子「えーとなにか他に電気でできそうな魔法は無いだろうか?」
釈「巫女とか神様召喚系の魔法はさすがに無理でしょう。というか、神様居るんですか?」
じゅえる「無骸作ったヒトが居るでしょ。」

まゆ子「うーん龍とか巨人、オークやゴブリンエルフといった魔法生物は出すべきか?」
じゅえる「この話ではやめた方がいいな。」
釈「電気でなんとかなるのなら、いいですけどね。」
まゆ子「龍は簡単なんだ。雷そのものだから。」
じゅえる「まあね。」

まゆ子「エルフを出すのは、さすがにー止めるべきだろうね。吸血鬼は?」
釈「やめたほうがいいと思いますよお。第一血を吸っただけで無敵になるなんて馬鹿みたいじゃないですか。」
じゅえる「よし! 生命力として宿る神劫電流を吸って自らの体内にある蓄電池に充電する吸電鬼だ。」

まゆ子「うう、そんなものを出さねばならぬのか…。」

釈「そういうことでしたら、エルフも電気関係で。」
じゅえる「そうだな。大きな耳で電波をいつも捉えている種族ということで。」

まゆ子「うう、そんなのありですか…。」

釈「オークは身体が大きくて、電流が常に筋肉に流れているのです。筋力増強アブトレクス状態なのです。」
じゅえる「納得だ! なるほど、それならば常人を超える筋力でぶいぶい言わせてもOKだ。えらいぞ釈ちゃん。」
釈「でへへ。」
まゆ子「うう、じゃあ巨人は、」

釈「巨人の前にゴブリンを思いつきました。夜中になると目がぺかっと光るのです電気で。」
じゅえる「電灯か。なるほど、これまで光はあんまり使っていなかったな。光の魔法だな。」
釈「神聖魔法です。」

まゆ子「うう、ゴブリンが神聖魔法を使うのか。」

釈「いいじゃないですか。夜中に目をぴかっと光らせて、飛んでくる虫を食べるのです。」
じゅえる「エコだな。」
釈「エコクリーチャーですよ。人間の手先となって、夜間戦闘に従軍です。」
じゅえる「おー。」
まゆ子「じゃあ間をとって、目から赤外線が。」
じゅえる「でもゴブリンは光ったほうが面白いぞ。」

釈「巨人はさすがに無理ですね。さすがに電気では。オークが居るから諦めましょう。」
まゆ子「巨人かあ。うーん、さすがにねえ。ちょっと馬鹿っぽいしね。」
釈「というよりか、あまり派手なものを出すと、魔法甲冑の効果が薄いのですよ。オークは十分デカイ動物ですから、これを巨人と呼ぶことになんの問題も無いのです。」

じゅえる「ドラゴン級の化物はやっぱリアルじゃないか。」
まゆ子「うん、じゃあせめてワイバーンくらいで。羽がイオンで浮いてるのですよ。」
釈「イオノクラフトですか。うーん、必要ですかねえ?」
じゅえる「アブトロニクス系巨獣、とは違うね。やはり普通に飛べばいいんじゃないかな、アブトロニクスで。」
まゆ子「そうか、筋肉電流強化型生物というのが居ることにするのか。なら普通に筋力で空を飛べばいいかな。」

釈「ぴかちゅうは?」
じゅえる「うう、居るだろうなこの世界には。」
まゆ子「まあ、でも魔法生物でなければ使えないことにしておこうよ。雷獣は別に特許があるわけじゃないから、誰でも使えるのだ。」

 

釈「まとめると、電気魔法というのは多岐に渡って効力が有る。で、魔法はその特性に応じて分化している。
・電流を直接使う系
・電流による発熱を使い発火させる系
・電流による発熱を使い金属を溶解する系

・静電気を使って物質を引き寄せ跳ね飛ばす系
・静電気による爆発系
・静電気から雷を発生させる系

・磁力による拘束系
・磁力を用いた物質投射系
・プラズマ(炎)を電磁気で誘導する系
・プラズマ(球電・火の玉)を直接に操作する系
・低温プラズマ(不可視)を屋内等に忍び込ませ探査する系
・電圧の変化によって振動を引き起こす系

・電波放射による水分子振動発熱系
・電磁波放射、特に可視光線による直接発熱系
・電磁波による通信・索敵系
・電波による誘導電流で遠隔作用系
・発光系 および宝玉を利用したコヒーレント光条の発生

・電解作用による化学変化系 オゾン等を生成出来る
・体内電流を利用して生理機能を活性化させ治癒を行う系
・特に筋電流を操作して怪力を発生させる系
・神経電流に作用して精神機能を強化もしくは操作する系
・神経電流を利用して反応速度を加速する系

・イオン推進による飛行系(追加)
・パルス放電によるジェット推進系(追加)
・錬金術師が作ったモーターを動かす動力系(追加)
・プラズマ生物「精霊」の思考を電波で受信出来る系(追加)

 

まゆ子「こんなもんかな?」
釈「イオン推進による飛行、はどうしましょう?」
まゆ子「レヴィテーション、要る?」
じゅえる「要る。」
まゆ子「じゃあ追加ね。」

じゅえる「コンピュータやらテレビ系は無いんだね。」
まゆ子「さすがに電子回路を組立てられるほどこの世界は進んでいない。また知性を発揮するほど高度な回路はさすがに魔法で作るというのは、なんだ。」
じゅえる「単純なもんでもいいんだぞ。」
まゆ子「そうは言ってもねえ。」

釈「神様の声が電波で聞こえる、というのは有りでしょう。」
じゅえる「そうだよ。精霊の声が聞こえるんだ。」
まゆ子「うーん、じゃあ入れとくか。」

釈「雷を使って、モノを象って見せる、てのは?」
まゆ子「ばかばかしい。」
じゅえる「さすがにファンタジー過ぎてダメ。」
釈「へい。」

じゅえる「リニアモーターカーみたいに高速移動は?」
まゆ子「レールが無いもん。」
釈「さすがにそれはちょっとダメです。」

じゅえる「磁力はあんま使えないかな?」
まゆ子「甲冑や武器は鉄製なんだから、ひっつければいいよ。動けなくなる。」

じゅえる「ふむ。だがそれではインパクトに欠ける。」
釈「磁力で破壊は出来ませんかね?」
まゆ子「ふーむ、そうだね。強力な磁力で金属が圧縮されて、甲冑を着けている人がめりめりと折り畳まれていく、というのは。」
釈「ひぃー。」
じゅえる「うん。そりゃあ派手だ。」

 

釈「土魔法が強烈に強力になりました。風魔法は便利がいいですね、インスタントで。水魔法は水が無いと使えませんが、人体を直接熱湯化出来ますから恐ろしいです。
 でも火系魔法はただ大きな火を自在に操る、てだけであまり面白みもインパクトも無いですね。」
じゅえる「まあ、即効性は無いのかな?」
まゆ子「まあ、土系魔法で飛んでくる矢を雷で焼く、てのがあったけど、火系にも入れるかい?」
釈「無理は駄目ですよ。原理的に違うものはダメなのです。」

まゆ子「でも火系の魔法はプラズマの操作であって、プラズマが無いと使えないぞ。空中にいきなりプラズマが発生する方法は?」
じゅえる「火の玉はダメなのか?」
まゆ子「ふーむ。…いや、駄目だ。手の中にいきなり火球が発生するなんてベタなヴィジュアルは私が許さない。」
釈「では火系魔法は、火そのものは燃料が要る事にしましょう。」
じゅえる「まあ火を操れるというのは便利なんだけどね。山火事やら街に火を掛けるとか、巨大な被害が発生する。その他魔法ではそんな大規模破壊は不可能だ。」
釈「被害規模で考えるべきですかねえ。」

まゆ子「こんな感じだ。家に火を掛けて炎の魔人を作り出す。魔人は歩き出し、燃える物をどんどん燃やして大きくなる。彼の移動経路は燃える物の有る場所のみ。風上にでも自在に進むことが出来る。
 ただし、燃える物が無くなると消える。川等で遮られると、魔人の手が対岸に届けば渡れるが、橋等が無いと動けない。ただし船を使っての移動は可能。炎自体を小さくして船が燃え尽きなければいいのだ。
 術者は近くに居なければならないが、大きな魔人はそれ相応に距離が取れる。だいたい10〜100メートルくらい。」

じゅえる「近くに居ないと使えないんだな。遠隔は禁止で。」
まゆ子「遠隔で使えると、さすがに強力になりすぎるからね。

 ん。あ、そうだ。燃える物が有ればいいわけだよ。」
じゅえる「そうだね。」
まゆ子「鉄だって燃える。」
じゅえる「酸素があればね。……あ、そうか。純粋酸素中ならば燃えるようなものなら、燃やしても構わんか。」
釈「おお。なるほど、電解とかも出来るんでしたね。空中で酸素だけを集めるとかも可能ですか。」
まゆ子「イオン、オゾンを集中して燃やすというのはどうだ。」
釈「オゾンは毒ガスですよ。」
じゅえる「つまり、火の魔法使いは毒ガスを使えるわけだ。」
まゆ子「おお!」

 

釈「良い加減に派手になって来ました。オゾンで集めた酸素によって、鉄でも銅でも燃えるんです。」
じゅえる「剣や鎧がいきなり燃える、のは面白いよ。だがそんな芸当が出来るなら、部屋中ぼんと燃え上がるフラッシュオーバーとかも出来るんじゃないかい?」
釈「証拠隠滅というか、火の気の無い部屋が爆発的に炎に包まれるのですか。うん、それなら満足です十分派手です。」
まゆ子「弱点としては開放空間ではできない事にしておこう。」

まゆ子「オゾンをちょいと調べたぞ。燃えるには燃えるが、爆発的というのは案外と難しいらしい。だが熱を与えてやればさくっと分解してO2になるから、大丈夫爆発的に燃えますよ。」
じゅえる「オゾンて確か臭いよね。」
釈「生臭いんですよ。なんだかね。」
まゆ子「使える、それは使える。あと、オゾンの生成は高電圧の低温放電によって生成されるというけれど、まあそこは電気の力で簡単に発生するのだ。」

じゅえる「素子はプラズマを操って探査をする魔法を使うんだったね。ならば、オゾンプラズマだ。オゾンの塊が空気中をお散歩するのだ。」
釈「近くを通ると、人は生臭い臭いを感じるのですね。」

 

*********************************

 

まゆ子「やはりはじめ人間の設定を使わないのは面白くない。というわけで、こういう展開を考えてみた。

 主人公補の騎士は素子と結婚して〇〇侯の爵位を得て、身分が高くなったから魔法甲冑の使用資格である「聖騎士」の位を手に入れた。
 そして専用甲冑を用いて敵の魔法甲冑と戦うのだが、彼の場合他と違って、敵無骸の後ろ頭をぶっ叩いて停止させ回収するのが目的となります。」
じゅえる「ふむふむ。」
釈「他のところは、自分とこの勢力拡大が目的であるわけですよ。」

まゆ子「物語のスケジュール的には、

1;無骸を不法に魔法甲冑化する魔法使い達を強襲して、無骸を回収するステージ
2;魔法甲冑が或程度完成して、素子達の手に負えなくなるステージ
3;新戦力四大精霊魔法使いの投入で、魔法甲冑一応の制圧を見せるステージ
4;だが陰謀により、四大精霊魔法使いが反逆を起こし、魔法甲冑を着装して修羅の道を歩き始めるステージ
5;聖騎士となった主人公補、魔法甲冑を使って四大精霊騎士に挑むステージ

となっています。」
釈「四大精霊騎士とやらが出現するまでは、魔法甲冑の使用は許されないんですね?」
じゅえる「もうちょっと早めに投入したいところだが、」
まゆ子「うーん、そうだなあ。それまでにも押収した魔法甲冑を使って戦闘をしていたりするけれど、本格的に自分のものになるのは第5ステージあたりだな。」
釈「正式供与ですね。」
まゆ子「うん。」

じゅえる「しかし、もうその段階にまで行くと魔法甲冑が氾濫して、手の付けられない状態ではないだろうかね?」
まゆ子「うん。で、各国で戦争が起き始めます。
 しかし、ここで第6ステージ突入だ。」
釈「ほおほお。」

まゆ子「
6;戦争の最中、独自の立場魔法ギルド寄りのスタンスで魔法甲冑回収を進めていた騎士。強力な魔法騎士と遭遇して死闘を演じる。
  相討ち覚悟の決戦でついには自分の魔法甲冑が動きを封じ込められて、甲冑を捨てて生身で石斧担いで敵甲冑の後頭部を殴る。必死で殴る。
  すると、物理的攻撃に対してまったくに無敵であったはずの無骸の頭蓋骨が、ぱっくりと割れて中の骨髄がどろりんと垂れてくる。もちろん敵甲冑停止。魔法使いも石斧で撲殺だ。

 ここにおいて、新しい知見が得られる。はじめ人間がどうやって無骸を葬り去ったか。
 やはり角度だ。或る特別な角度で石斧でぶっ叩くと、無骸は割れて中身がでろりんと出てしまうのだ。言うなれば、メンテナンス用の開放スイッチを押した状態。」
じゅえる「おお!」
釈「やった!」

まゆ子「
7;魔法ギルドの錬金術師が調査した結果、でろりんと流れ出た骨髄こそが神劫電流を操作する為のデバイスであると確認される。
  そして、この骨髄を利用すれば魔法使いの能力が甲冑無しでも大幅に強化されると判明する。極めて稀な能力者である四大精霊魔法使いを、量産する事が可能となった。」

釈「……こりゃあ、ことですね。」
じゅえる「これはいよいよ人類滅亡フラグだよ。」
まゆ子「まあ、滅亡だな。」

まゆ子「
8;量産された精霊魔法使いを揃えた魔術ギルドの軍勢が、魔法甲冑を擁する各国王国軍を次々に撃破。ただし魔法甲冑と魔法使いの捕獲はなかなかうまくいかない。
  やがて魔法ギルドとその他王国連合軍が魔法甲冑と魔法使いの大軍を用いての大決戦へと収斂する。
  騎士と素子、すべての始まりである素子故郷の遺跡に戻り、戦争を止めるアイテムをゲット。」

じゅえる「なんだそれは。」
釈「なんですか、まだそんなもの出てきていませんけれど。」
まゆ子「考えてないもの。うん、そうだな、神劫電流の影響を受けない絶縁魔法とかいうのではどうだ。たとえば裸体に紋様を描くと魔法の力を受け付けない。」
釈「でも、物理攻撃には弱いでしょお。」
まゆ子「そうだなあ。」

じゅえる「そこはアレだ。オークを見習ってアブトロニクス魔法を使って全員ムキムキの兵隊になるのだ。」
釈「アレは魔法が切れても効果は有るんですか?」
まゆ子「発達した筋肉はそりゃそのままだよ。」
じゅえる「じゃあ、素子の故郷の遺跡で魔法を使って、裸で筋肉ムキムキで紋様を描き魔法から絶縁した兵士が石斧担いで戦う部隊を結成だ。」
釈「素子さんは、そんなムキムキはちょっとやだなーとか思うわけですよ。」

じゅえる「よし分かった! ここはアレだ、魔法の助っ人が出現だ。
 伝説の魔道士ヤヤチャ様が降臨なされて、二人に絶縁魔法紋様とアブトロニクス魔法による筋力強化を授けてくれるのだ。」
まゆ子「うーむ。」
釈「うーむ、いきなり降臨ですか。」
じゅえる「救いの主というのは、いつでもいきなりですよ。」
まゆ子「そこは、物語の端々になんか伏線を噛ませておこう。」

まゆ子「
9;騎士率いるはだかの戦士達が石斧担いで決戦の野に突入だ。」

じゅえる「結末は?」
釈「この物語、ここでおしまいですよね?」
まゆ子「まあ、終わるだろうね。」

釈「
10;それから数百年後。現代。
  魔法に、魔法甲冑に打ち勝った裸の戦士達の像が広場に並ぶ。END」

まゆ子「まあ最終回はどーとでもなるさ。」
じゅえる「最終回くらい簡単なもんは無いと言っても過言ではない。」

 

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まゆ子「いつまでも素子と騎士、という仮名では書きにくい。名前を付けよう。」
じゅえる「ふむ。いい感じのがあるかい?」

まゆ子「ここは剣と魔法モノの定石を利用して、ベタでいこう。

 素子; モルガーナ
 騎士; モルドレッド

釈「悪役ですね。」
じゅえる「円卓の騎士だな。」
まゆ子「でも悪役名の方が、読者様はややこしい方に妄想を働かせていくんじゃないだろうか。

 たとえば、魔法ギルドも「アヴァローン」とか。」

じゅえる「なるほど。」
釈「魔法モノ的にベタですね。」
まゆ子「人がよく知り、それでいて違う。というのがよろしいのさ、一番。

 

 

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