機動歩兵の火器銃器 その2

十二神方台系タンガラムの銃砲史において創始歴5500年代は特別な時期である

すでに火縄銃を越えて燐軸式発火法(赤リンマッチ式)で
簡便な運用が可能になっていたが、銃弾は鉛の丸弾で命中率が低かったものが
いきなりライフル銃とミニエー弾が登場して「神銃」と呼ばれる奇跡の命中率を実現
さらに従来型滑腔銃用に木筒を用いて安定翼の付いた鉄矢を放つ
「鉄矢弾」が登場する

いずれも従来の長銃丸弾をはるかに凌駕してたちまち戦場を支配したが
タンガラムでは鉛の産出が少なく、鉄の鋳物で作る鉄矢弾が大流行した
後には安定翼に風を受けて旋転しさらに飛行姿勢を安定させるタイプが登場し
ライフル銃と命中率も伍するようになる
(ヤヤチャ神話参照のこと)


創始歴6000年初頭においては鉄矢弾を使う銃は口径15ミリ以上、
ライフル銃は口径10ミリ程度で規格化された
鉄矢弾は装薬量で威力の加減が可能で、また弾重量も長さで調節可能である
大威力と高い貫通力が魅力で、簡易なバリケードはもちろん
一般家屋や立木、さらには古いタイプの土城壁ですら貫通して
「隠れる事の許されない」神槍、として高く尊ばれた

他方ライフル銃は銃自体の製造にコストが掛かり、また鉛によって銃身内が汚れて
手間が掛かるプロの狙撃銃手用の装備に落ち着いた
どちらも前装式で黒色火薬を用いる分離装填である


転機は「砂糖戦争」、海を越えて攻め入ってきたゥアム軍の銃器はすべてライフル銃
しかも金属薬莢を用いる一体型銃弾で、後装式であった
すでにタンガラムにおいても後装銃と金属薬莢の優位性は理解されていたが
鉄矢弾には不向きである為に、開発に遅れをとった
またゥアム軍ではライフル銃弾に銅メッキを施して銃身内の汚れを少なくして
貫通力を高める事に成功していた
さらには後装式による連発銃化で連射性が高く、兵数以上の戦力となる

タンガラム軍上層部もライフル銃の優位を完全に認め、
以後は金属薬莢後装式連発銃の開発に重点を置く。
後には機関銃も登場して完全にライフル銃の天下となり、
鉄矢弾は過去のものとなった

はずだが、鉄矢弾の高い貫通力は現場が求めるもので
「砂糖戦争」においても装甲化されたゥアム上陸艇をすぱすぱと貫通して
阻止に大きく貢献する
そこで鉄矢弾は専門射手が用いるものとして別に開発を進め
一般歩兵はライフル銃装備で統一する事とした

現在では鉄矢弾は口径20ミリ程度の大型銃で運用されて
主に装甲兵器の駆逐に当たっている
材質も鋳鉄から鋼鉄製、さらには硬度鋼に進化
後装式分離装薬で装填されるが、リボルバーカノン式で機関銃化にも成功

また旧時代に使用された鉄矢弾歩兵銃が未だ民間には残存し
しばしば登場する
タンガラムにおいては擲弾攻撃は歩兵戦闘の中核となるものだ
機関銃が登場する以前より、擲弾や小型迫撃砲が歩兵突撃を粉砕し
塹壕を頭上から揉み潰してきた
馬や水牛などの牽引動物が昔は居なかった為に
大型火砲を戦場に持ち込む事ができなかったが
小型軽量の木砲による落下傘爆弾の投射の発明が戦場の姿を一変させた
木砲は現在では軽量砲へと代わっているが
上から榴弾を叩き込むスタイルは変わらない

歩兵装備においても、個々の兵士が用いる小銃擲弾の多用が特徴である
だが射程距離はせいぜい200メートル以内であるから
200以上1キロ以内をカバーする多用な擲弾筒を運用する擲弾兵が存在する

擲弾は4種類 
一般歩兵用小銃擲弾30ミリくらい、また40ミリ大型
弾頭は同じだが小銃用のアダブタの無い擲弾筒用40ミリ
長距離攻撃用安定翼付き40ミリ擲弾
擲弾筒にはちゃんと照準器が付いていて普通に当たる命中率を持つ
30ミリ擲弾の威力不足は弾数で補うものとする

基本的には対歩兵戦闘を想定する
車両や装甲目標に対する成形炸薬弾も用意されているが
鉄矢弾による攻撃の方が迅速で効果が大きい為に重視はされない

これ以上大きなものは迫撃砲を使用するが砲兵扱いになる
直接照準でも砲撃できる70ミリ機動歩兵砲が主力
人力で運搬できる砲がソレ以下という事情もある
もちろん通常はトラックで搬送するが、さらに言えばトラック荷台上から砲撃もするが
敵の思いもよらぬ位置から攻撃するには、人力運搬が最適である
70ミリの砲口から挿入する外付け砲弾で威力を増大させられる

トラック荷台上からの砲撃は、20ミリの鉄矢弾銃でも行われる
重量が25キロにもなる鉄矢弾銃は人力での運搬が困難
専用トライク(三輪自動車)が開発されるくらいである
鉄矢弾による攻撃は即擲弾による反撃を招くために、射撃後は迅速に移動すべきだ
トラック荷台上からの攻撃が最も適しているとされるが
トラック自体を擬装すべきである


機関銃は前世代の歩兵小銃が使っていた口径7.5ミリ(くらい)弾をそのまま用いる
マキシム機関銃に類似したものからの派生で、原型はゥアム帝国製
さほど大きくはないが運用には複数人を必要とする
射撃点が判明すれば直ちに擲弾攻撃を受ける為に、容易に移動可能となっている
逆に言うと、移動可能でありながらも大威力を追求する
弾薬供給は保弾板式 部品交換でベルト式でも可能だが
移動可能性は保弾板式が便利だった
7.5ミリ軽機関銃は存在するが発射速度が低く機関銃と呼ぶほどの速度で弾が出ない
ほとんど自動小銃だが
3点バーストばかり使うからむしろ弾を浪費しない良い子扱いされる
新採用6.5ミリ弾を使う試作軽機関銃は弾が驚くほどの速度で出て、困る


現在のタンガラムのライフル銃弾は軟鋼を黄銅で被覆したもので
鉛が先端部に少し入っている
貫通力は十分だが少々軽いので威力不足になりかねない
鉛不足は依然として解決していない
機動歩兵団は基本的には400メートル以下の中距離での戦闘を
目的とするが、遠距離で敵を制圧する狙撃隊も含む
毒地平原に配備されている狙撃兵団の一般兵は
前世代の7.5ミリボルトアクションライフルを装備するのだが
機動歩兵団狙撃隊も同じ銃を用いている
20ミリ鉄矢弾銃も基本狙撃銃であるから同じセクションで運用される

光学照準器に加えて近年は夜間暗視照準器も装備される
特殊な火器としては、狙撃砲と呼ばれるものも装備される
これは30ミリ長砲身砲で遠距離に榴弾・徹甲榴弾を正確に当てる為
のもの
榴弾威力は小さいが非装甲車両には十分な撃破能力がある
また近年増大する脅威としての航空機迎撃が可能

彼らの任務は敵機動力の剥奪、つまりは車両等移動手段、
あるいは通信や伝令を破壊し足止めする
また航空機による偵察の阻止も任務に入った
狙撃兵は狙撃砲や鉄矢弾銃を効率的に運用するスポッター的な
役割を果たす
もちろん敵軍にも狙撃兵が居るのだから、互いに牽制し合っている

対空迎撃に関しては、60ミリくらいただの打上花火筒がある
とにかく真上に上がればいいといういい加減な兵器
2メートルほどの鉄管を深い穴を掘って少し斜めに設置する
高度だけは1500メートルくらい上がるので
現在主流の複葉機であればなんとかなるかもしれない
正規の砲弾は高価いので無駄撃ちは出来ないが
歩兵擲弾に発射薬を追加した簡易打上弾で高度300メートルまで
カバーできる
発射筒を横に寝かせて撃てば案外と強力だったりする



拳銃は一般歩兵は持っていない
将校、指揮官、または輜重兵の現場隊長、車両や飛行機パイロットくらい
6連発リボルバーで実用上は十分な信頼性を持つ
口径は7.5ミリ 入れるだけなら7.5ミリ弾頭が入るがもちろん無理
銃床を付けてピストルカービン化されたものも有る 民間警備用

7.5ミリ弾あるいは6.5ミリ弾空砲を使う信号弾拳銃もある
信号弾とは言いながらその実擲弾発射器と同様の構造で
30ミリ小銃擲弾が撃てたりするので便利に使っている

このように擲弾大好きであるが、反面手榴弾はあまり重視しない
手で投げてもあまり遠くまで飛ばないからだ
   直径50ミリで球形、30ミリ擲弾より殺傷力は高くなっている
   投擲距離は30~50メートル
   シュユパンと呼ばれる球技経験者がよく手榴弾投擲手に選ばれる 

ロケット兵器やパンツァーファウストの類は装備されていない
そもそも無反動砲が発明されていないし
また必要ともされていない
動力の未発達で十分に強固な戦車が登場していないから
必要が無いわけだ
装甲列車や河川砲艦の類であれば、70ミリ機動歩兵砲に外付け砲弾
で破壊力を強化したもので攻撃する
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