大東桐子の『…。』 設定 第1夜

 

【桐子のおサムライの話 その3】07/05/17

まゆ子「どうも、桐子のお話はうまく転がり出したみたいだ。してみると、次を考えざるを得ない。次の展開をね。」

じゅえる「シリーズ化するってことかい。」
釈「桐子さんは色々とお話があるんですよね。」
まゆ子「あるけど短編なんだ。しかもマンガを前提として話が組んである。このまま小説にすると、短編がごろごろというあまり有り難くないことになるんだよね。」

じゅえる「つまり、げばおとみたいな長編的展開がほしい、てこと?」
まゆ子「いや、一話完結で一巻というくらいのボリュームが、ちょうど穴になる。50枚くらいの話はある、100にふくらます事はできる。だが250枚一冊分くらいのストーリーは用意が無いんだ。」

釈「ちょっとむずかしい話ですね。なにか手掛かりがないと、膨らますのが難しい訳ですよ。」

じゅえる「つまり、骨格となる時代的背景が無いと、難しいというわけですよ。あるいは大状況の動き、いや桐子の身の振りようの動きでもいい。ともかくシリーズ全体を通しての動きが無ければ、そういうのは無理だ。」
釈「完全な単発モノではダメということですね。」
まゆ子「てなわけで、どうしよう。」

じゅえる「それ以上の長編ストーリーはあるの?」
まゆ子「一応『信長ごろし』というお話を用意している。一一という名前の半サムライの御館さまが侍界を統一しようという動きを阻止するのだが、ウエンディズ総出演のおはなしね。
あと、桐子の出生の秘密について迫って行く、というちょっと長めの話もある。桐子の父親は侍だということは分かっているけど、正体不明消息不明なのだ。」

じゅえる「うーん、それはあれだ。ストーリー冒頭から顔を覗かせる大々的な秘密、この世の偽善の本体みたいなものがなければいけない。」

まゆ子「あ、それはー無いことになっていたな。どうしよう、統合管制局と永久評議員は悪ではないんだよ。悪は宇宙人だ。」
釈「私がこっそり読ませていただいたマンガですと、宇宙人は人間ではありませんね。」

まゆ子「うん。桐子のに出て来る宇宙人は人間性がかけらも無いんだ。あるわけがない、一つのボディに100もの人格が詰め込んである。しかも思考速度を加速されている。今から1000年先の未来で地球全取っ替えをやった後、更に5000年からは時代が進んだ、コンピュータ上に住む地球人、だからね。」
じゅえる「悪もへったくれも無いね、それ。陰謀なんか使う必要が無いんだ。」

まゆ子「だからこの世界、大きな悪は無い。無いんだけど、それじゃあ困るよね。」
釈「困ると言うよりも、でっちあげるしか無いんじゃないですかね。俗悪というのはどうでしょう。コガネモチどもが結託して悪を為す。」
じゅえる「しゃくちゃんよお、この場合桐子はその手先になっちゃうんだ。」
まゆ子「経済活動として侍やってるもんね。」

 

釈「では、でもお金持ちという人が多数有り経済界というか上流階級を作っているんでしょ。」
まゆ子「というか、下層階級というものが無く無産階級があると考えて下さい。或る程度カネが有る人は、それなりの暮らしが出来る世の中です。ギャップがあります。そのギャップを埋める戦いをしている、という風に持って行ければいいのかもしれないが、やっぱ無理でしょ。」

じゅえる「その比率は?」
まゆ子「人口1000万人、内500万が無産階級で300万が有職階級として、200万が一応は資産階級となりますね。上流階級と呼べるのは10万てとこ。
つまりは失業率50パーセントである。
でも有職300万の内250万は農村で農業プラントにぶら下がって暮らしている。そんなに人数要らないけれどキャパシティがあるからここで暮らし、それなりの職業がある。つまり無駄が多いけどそれがどうしたて感じね。
逆に都市に住む資産階級200万は家族というものもあるわけだから、本当に仕事がある人は50万くらい。
要するに、日本中の都市には100万人分の雇用しか無い。」

釈「そりゃあ、絶望的なはなしですねえ。でも死にはしないんですから、困った。」
じゅえる「ロボットが力仕事するんだから、当たり前の話だよ。」

まゆ子「で、上流階級の内、5万は統合管制局の職員と家族。
2万は永久評議員に仕える人達とその家族。執事とかメイドとかなわけなんだけど給料は高く、故に教養とかに回すカネも多く、上流階級と呼ばれるのにちゃんとふさわしい人になってるわけだ。つまりは、昔の公家に仕えていた人はやっぱり一段上に見られたてのと同じだね。
で、3万が本来の意味での富裕層とその家族。1000家くらいはあり、まー要するに家族親類縁者を養って居て3万人。彼らの使用人として10万人くらいが暮らして居ます。」

釈「桐子さんたち侍は、要するにローマの剣闘士みたいな見世物なんですか?」
まゆ子「その要素は多分にある。」
じゅえる「それが悪いなんて誰も言わないよ。或る意味侍ビジネスの周辺で働く人が結構居るわけで、儲けている。桐子が気ままに戦っている事で儲かる人が居るんだよ。」

釈「しかし500万の失業者というのはいくらなんでも多過ぎるのではないですか。社会が構成できないでしょう。」
まゆ子「実際無理がありますね、死なないだけで。でも都市に住む事に価値を見出すのが現代人であるから、田舎にわざわざ住もうというのは居ないもんなんだよ。」

じゅえる「そんなに何も無いものなの?」
まゆ子「現在は歴史始まってから500年くらい経っているんだけど、その間自然保護というか育成の為に人間の立ち入りを禁止していたんだね。現に桐子達は「隠し田」と呼ばれる違法な私有農地を発見して焼き払うのも業務に入っている。
この措置は原生林が十分な密度で確保されるまで続く、つまり1000年くらいは優に掛る。まだ早過ぎるんだね。」

釈「過渡的な状況ですか。では人は都市に暮らすか、農業プラントの傍に暮らすかしか方法が無い?」

じゅえる「いやまて、牧畜とか漁業とかは無いの?」
まゆ子「漁業はねえ、早い話が手こぎボートで魚群探知機無しでやっている。投網か釣りか海女かだよ。だから産業規模としては非常に小さい。当然支持出来る人口も少ない。だが海産物は高値で売れるから、割とお金持ちですよ。
牧畜は牛豚馬山羊羊鶏兎くらいはある。でも飼料に穀物を与えるわけではなく草で飼ってるから、やはりそれほど多くはない。また頭数制限もしている。ま、肉を喰える奴は金持ちだ、って世界だ。」

じゅえる「貧乏人は逆立ちしたって肉魚は食えないんだ。」
まゆ子「いや、桐子は鰺の開きに釣られて仕事するくらいだから。コンビーフの缶なら人でも殺すぞ。」

釈「ああ、それはヤバい。でもなにかあるでしょう、貧乏人が食べられるお肉みたいなものが。」
まゆ子「魚肉ソーセージがある。」
じゅえる「おお。」
まゆ子「中に何が入ってるかは、ヒミツ。」

釈「ヤバいな。で、なにが入ってるんですか、蟲ですか。」
まゆ子「いやキノコと言うか麹というか、そういうのですね。食感は魚肉ソーセージみたいなものですが、味が無い。でもこれは貧乏人にとってはかなりの御馳走になります。素材は1種類しか無いわりに、製品の数は多く形状も色も沢山有ります。あと、ささ身みたいな繊維状のプレートがあります。もちろん肉は100パーセント入ってないけれど、歯応えがかなり肉っぽい感じの食い物です。」

じゅえる「代用食品ビジネスというのは、結構流行っているんだ。」
まゆ子「こう言っちゃあなんだけど、無産階級の食事に関しては統合管制局が何もしていないというのとはほど遠く、バラエティに富んだものがあります。代用食品だけでコンビニ一杯にできます。ただ、」

じゅえる「まずい。」
釈「しょせんは代用品、てことですか。」

まゆ子「なんたって、キャベツレタスの代りに紙を食うんだからね。プリンタで栄養分のジュースを含んだ微小カプセルを印刷して緑にしている。いつでもみずみずしい野菜が食べられるって寸法だ。」

釈「ううううううむうううう。」

 

じゅえる「でも、それじゃあなにか無いのかい、仕事は。何か無ければ浮かび上がれないでしょう。」
まゆ子「前にも言った食品相場への投資、これは宝くじレベルの簡易なシステムになっていますけど、普通これですね。
あとはやはり、人間を対象にしたビジネスは勝手に初めても大丈夫だから、なんでも相談屋とか便利屋、芸能、教育、医療はそうですね。」

 

釈「医療は公的サービスではないのですか?」
まゆ子「公的サービスだよ。ただ、健康体操というか気功みたいなものの御師匠さんというのが居て、病気にならない方法というのを教えてくれるんだ。感染症とかは薬一発で癒るけど、癌も一発で癒るけど、臓器移植とかは無い。人工臓器は自費で負担、という事になっている。安いけどね。」

じゅえる「この世界の寿命は?」
まゆ子「上流階級で平均80年ほど。無意味と長生きはしない、というかさせてもらえない。下層階級で60年ほど。無論、長い人は長いし、夭折する人はやはり居る。本来ならば死ぬ人をゼロに出来るんだけど、あえてそうなっている。」

釈「お金持ちが全身を人工臓器に置き換えて生きる、てのは禁止ですか。」
まゆ子「これはかなり難しい問題なんだが、人工臓器にも寿命がある。標準型のは15年を目処に取り替える事を前提に製品が設計されている。下層階級民にはこれを一回だけ無料で供与される。お金持ちは長寿命品というのが申請して代金を払えば特別にもらえるが、これは30年を寿命として設定されている。人工臓器の交換は高齢化に従って危険になるから、長寿命品は是非とも欲しいんだが、これを付けてしまうと壊れた時には既に交換が不能なほどに高齢化が進展している。クローニングで全身細胞を若返りてのは禁止されているから、ダメだね。」

じゅえる「クローン禁止なんだ。」
まゆ子「いや、手足はほぼ無制限にクローニング手足を取っ替えてくれるんだよ。ただこれ、元の手足と同等の性能を発揮するには1年くらい治療期間が掛る。内臓の場合は完全クローンというのは無く、ある程度規格化されたコンピュータ制御装置とかも付いている人工臓器であるからクローニング臓器てのは普通使わない。ま、肺と心臓をそっくり取り替えられるというんだから、満足すべきでしょ。」

じゅえる「つまり、フレーム交換には応じてくれないんだ。」
釈「脳が付いている部品はだめなんですね。」
まゆ子「うん、脳はね。骨の交換はダメだし、血管神経のセットを入れ変えるとかもダメだ。出来るんだけどね。」

じゅえる「てことは、医療では或る程度までしか生きられないから、神秘的な力を使って生きようとかもあるんだ。」
まゆ子「ありますね。特に、動きに関しては医療はなんにもしてくれないから、若い頃から訓練しようという風潮にはなってます。それが御師匠さんです。」
じゅえる「でもびんぼうなまま長生きするというのも、なんだな。」

まゆ子「あと鉢植えとか盆栽、ペットとか、イヌは面倒だからネズミや小鳥、蟲だね、の商売は盛んだ。」

釈「小説やマンガの類いは無いんですよね。」
まゆ子「うん、暇つぶしは無い。でも数学パズルや言葉遊びは流行ってる。更には賭けだね。これはおもに侍で賭けてる。街は決闘屋てのが居るし仇討ちもたまに起こるからね。偶発的に起こるこれらに一早く賭場を開く連中があるんだ。しかし普通のサイコロやら歌留多やらの賭博は禁止だ。取締まりがちゃんとある。」

 

じゅえる「その原資となるお金は、どうなってるさ。たしか支給されるってはなしだけど。」
まゆ子「統合管制局から活動費、てのが一日一人1円支給されます。といってもそれぞれの口座に1円て話だから、手続きをした時点でそれまでの不払い日数分がもらえるんだけどね。1円は1000円相当なんだけど、まともな食品を買おうと考えるとこれが100円分くらいの価値しか持たない。」
じゅえる「月30円、年365円、36万5千円相当か。うーん。」

釈「かなりの金額になりますが、これとは別に食事医療住居サービスがあるんですね。」
まゆ子「うん。カード決済だから誰も気にも留めないけど、おカネとは別口の会計がある。」

じゅえる「要するにこのカネは、社会全体を動かす為の動力として、採算度外視して供給されているんだ。」
まゆ子「うん。実は、この上に更に別のおカネがある。統合管制局決済資金てので、富裕層てのは普通これで決済している。」
釈「じゃあ、お金は三種類あるわけですね。」

まゆ子「早い話が、活動費として支給されるお金が特別なんだ。仮想貨幣みたいなもので、これで実体経済は動いていない。統合管制局決済資金がそのまま都市インフラから市民生活までも支えていて、それとはまったくかけ離れたところで「お金」が動いている。
 富裕層はなんだかんだで庶民からお金を吸い上げるんだけど、それは統合管制局銀行局で決済資金に両替して実体経済での運用を行っている。のと同時に、市中に溢れる「お金」を回収しているんだね。」
じゅえる「でも金持ちかそうでないかは、そのお金で決まるんだろ。複雑な話だな。」

釈「つまり、どうやって統合管制局の運営に食い込むか、で上流階級かそうでないかが決まるんですね。」
まゆ子「それは半分だ。むしろ上流階級、たとえば鶴仁波○○堂なんかは永久評議員お出入りになっているから、今の地位がある。統合管制局の社会運営はロボットとほぼ同じで変動がほとんどない。動きがあるのは永久評議員の方なんだ。」

釈「永久評議員てのは、それほどまでに力があるんですか。」

まゆ子「考え方は簡単。統合管制局は人間の力で動くロボットと思えばいい。日本国というものを運営している実態は永久評議員であり、彼らの意図を実現する為に統合管制局がある。ところが永久評議員は日本国を庭園のように考えており、そこにある自然や動植物、人間はおろか町や農村までが、すべて移動可能なディスプレイなんだ。

彼らの見方では日本国というものはどのようにでも姿を変えられる。より美しいように、より自然なように、より日本的な風にすべてが変えられている。だいたい一つの町が存在する期間は50年くらいと思って下さい。町はじわじわと建物を建てては取り壊して、粘菌のように動いている。動けなくなった所で終焉を迎えて新しい場所に町が出来る。

一見非合理的なように思えるけれど、これが雇用を作り出しており上流階級を維持していると思えば、応分の負担だと言える。」

じゅえる「都市自体がストックではなくフローなんだ。では工業施設もそうなんだ。」
釈「あ、工業とか工場とかは何処に存在するんですか。」

まゆ子「工業の中でも金属加工業や機械工業は基本的に海の上のプラントとして存在する。核融合炉を動力として排熱の為に海水を必要とするし、資源運搬に海を用いているからね。工業資源は(海外)からやってくるんだけど、そんな話は誰も知らない。ただ、基本的にはリサイクルで世の中が回っているからそれほど輸入には頼らない。

建築関係、つまりはコンクリは実は水中で作られる。コンクリプレートやらプラスチックプレートを組み合わせて建物を作るから、セメントミキサー車てのは普通使わない。石材というのも無い。これは石材の形をした空洞の箱を作って運んで来て、中に水と硬化剤を入れると固まってしまう。セメントを使わないから山を崩す必要も無い。自然環境には優しいというわけだ。

木材工業はこれは農業プラントの一つとして考えられており、畑である森の近くに有る。木材輸入はまったく無いから、山を育てて切って利用してまた植えてを繰り返すんだけど、山が一個無くなれば工場も移る。再生可能資源として木材とその副産物はかなり用いられているので、この世界の建築物はかなりふんわかした柔らかい質感を持つ。

衣料や繊維産業はすでに農業プラントから糸になって供給されるから、機織り機に任せてあとは縫製だね。これもロボットがやります。

食品加工業は大体が産地の側にありこれまたロボットが全工程を管理する。出荷までほぼ人間を必要としない。」

じゅえる「つまり、人間はいらない。」
まゆ子「普通のものはね。

ところがだ、普通でないものは人間が作るんだよ。鶴仁波○○堂は人間が御菓子を作っているんだけど、とうぜんこの職人さんを教育するのがお店の役目だ。手業でやるべき代物をいちはやくゲットして産業化した人が、お金持ちになり上流階級となる、と考えて下さい。永久評議員の家はそんなもので一杯です。家も大工さんが製材からやって作ります。木造建築というのはそれだけでステータスです。」

釈「手仕事職人を抱えているところが、上流階級になるんですか。ふうむ、不思議なはなしですねえ。」

まゆ子「また、無産階級の殺風景な暮らしの中には、そういう生成の暮らしに憧れを掻き立てる様々な罠が一杯仕掛けてあるんだ。というか、一日1円支給される活動費、これで飯を食ったらもう大事なんだ。今まで食べて居たものがなんだったんだ、と愕然としてしまうほどものが違う。一度食べたらもう後戻りが出来なくなってしまう。」

じゅえる「或る意味、そりゃあ残酷な話だな。」
まゆ子「残酷ですよ。だから、飯が重要なんだ。」

 

釈「あのすいません。何の話をしているかわからなくなりました。」
まゆ子「なんだっけ?」
じゅえる「えーと、悪だ邪悪が必要なんだ。でもこの世界、邪悪は存在しない、って話になって、では構造的に社会がどう動いているか、で。」

釈「そういう動いている世の中において、邪悪とはなんでしょう。」
まゆ子「固定と独占、だな。実はそれは以前にも例があるんだ。今を遡ること300年ほど前、甲丙の戦乱というのがあった。侍が二派に分れて甲家と丙家とで戦争したんだ。これは当時の侍勢力の独占化が問題で、統合管制局の制御を離れて暴走して、永久評議員によって解決されている。」

じゅえる「どくせんか。では今回も侍勢力の独占が原因でなにか起きる、と。」
まゆ子「それが「信長殺し」のストーリーだ。日本統一とか言い出したお殿様のおはなし。で、しるくがこの人の首をずばっと斬って衆人環視の下コロコロと階段を転げ落ちる、ところまでは決まっている。」
釈「うう、ホラーなんですね。」

 

じゅえる「では、もう一つの悪とは、資本の独占だ。と言っても、」
まゆ子「そうなんだ。経済的には統合管制局が全てを掌握している。経済的独占はあり得ない。というか、だからこそ武力の統一という事が起った。」

釈「えーつまり信長殺しの話では、武力の独占がまたぞろ起きてしまうわけですが、その経済的裏付けというものが無ければなりません。となると、信長という人は経済的独占に対して協調的共犯的な立場であったか、あるいはそれに対抗すべきそんざいであったか。」

じゅえる「対抗者であるべきだ。えーと、よし。信長が居るのならば秀吉があるべきだろう。「太閤」という奴が居て、経済的独占を果たしてしまうんだ。」
まゆ子「なにを以って?」
じゅえる「うーん、都市計画、かな。」

釈「それならばいっそのこと、都市を動かないものにする事を考えた最初の人、という事にしましょう。都市、つまり「大阪」ですね、に動く代わりに際限無く拡張して行く街という概念を導入するんです。カタツムリの殻みたいにぐるぐると回って行く街、とした方がいいかな。で、どんどん大きくなるからどんどん儲かる。どんどん彼の下にカネが貯まっていく。」

じゅえる「どう、まゆちゃん。」
まゆ子「黒幕としては悪くない。統合管制局の支配を外れて、第二の政府を作ってしまおう、とかも考えている。紙幣なんかも発行してしまうんだ。」
じゅえる「太閤印のお札か。それは絵になるな。」

まゆ子「しかし、そんな事をしたら永久評議員が止めるぞ、普通。」
釈「こういうのはどうでしょう。「信長」はその為の手の一つだったけれど、それが暴走して頓挫したからには、むしろ一度やらせてみて大失敗させてみようと考えている。どの程度出来るものかを計ってみる、という感じで。」

まゆ子「…桐子の手には負えない。」

じゅえる「とうぜんだな。「利休」というのを出してみよう。「太閤」に対抗するには、それしかあるまいね。」
まゆ子「うーんと、ではそれはやはり文化人ということでいいのかな?」

釈「それでは面白くありません。うーん、つまり利休という人は太閤の知恵袋なんですよ。太閤印の紙幣もこの人が考えた。でも、武力の統一、いやこの場合、相場を支配してしまう出来レースとしての侍の戦闘というのにまで手を出してしまうわけですね。太閤が一方的に儲かるような仕組みに侍の集団を繋ぎ止め、逆に太閤紙幣をばら撒いて無産階級層を自分に繋ぎ止めようとする。」
じゅえる「出来レースか、それはやばいな。」
まゆ子「社会秩序が根底から覆される。或る日突然、すべてが膠着状態に陥って頓挫してしまう。」

釈「ですから、利休という人がですね、…いや、利休はむしろそれを推進する方がいいと。しかしどんでん返しで一気に太閤の資産をまるまる自分のものにしてしまうとか考えている。」
じゅえる「家康というのも欲しいな。関東において太閤と同じ事をしている奴が居て、それと利休は繋がっている。ただこっちは統合管制局の構造をそのままに残して、自分の資産だけを増やそうと考えている。」

まゆ子「ふうむなるほど。筋はまあ後で練り直すとして、そういう大状況があると考えれば、桐子の話にも背骨が出来るか。ただ最終的に桐子は大状況のカギを握る最後の一石でなければ物語として許されないでしょ。なんだか、な。」

じゅえる「太閤という人物の描写をなにか、裏があるようには。あるいは家康が実は昔々の甲丙の時代からの名門であるとか。」
釈「経済、武力、権力、あと独占の対象となるものはありませんかね。」
じゅえる「文化学問や趣味、あるいは女という線もあるけど。」
まゆ子「芸術というか、物語の独占、てのはあるさ。今回そういうはなしなんだからさ。」

 

じゅえる「利休てのがめちゃくちゃ悪い奴で、桐子が騙されている、てのが面白いよね。」
まゆ子「そうだねえ、利休は太閤と家康を使って、なにかとんでもない事を目論んでいる、というのがよろしいな。」

釈「ほとんどあり得ないような欲望がいいですね。そんなことの為に、人を殺すのか、ってくらいの。」

じゅえる「イチゴのショートケーキが食べたい、とかで?」
まゆ子「イチゴのショートケーキは日本には無いよ。作れるけど」
釈「なにか伝説的な食べ物、というのはどうですかねえ。利休がかって本で読んだソレをなんとかして手に入れる為に、統合管制局も永久評議員も出し抜く必要があった、とか。」
まゆ子「うーーーーーーんん、それはあああーーーーー。」

じゅえる「チョコ。」

釈「チョコレート、ですか?」
まゆ子「…ちょこれーとはにほんではとれない…。」

じゅえる「決まりだね。何千万円をもの太閤の財産を一手に握り、永久評議員に働き掛けて、御禁制の外国産物資の内でも特に禁じられている、チョコレートを食べるのだ。」
釈「…わたし、そのひと支持します。」
まゆ子「ううむ、なるほど、それは凄い。」
じゅえる「ぜったいあり得ないはなしだからなあ。それで行こう。」

 

まゆ子「ではそのストーリーは『利休鼠』というコードネームで。」
じゅえる「『信長殺し』、『利休鼠』ね。」
釈「よろしいのではありませんか。」

 

【桐子のおサムライの話 その2】07/04/30

 

まゆ子「というわけで、『桐子の、』が始まりました。」

釈「正式なタイトル名はなんなんですか?」
まゆ子「『桐子の、”○×”です。まるばつのところにサブタイトルが入るのね、血槍富士とか血笑旅とかの時代劇っぽいのが。』
じゅえる「で、今回のは?」
まゆ子「未定ですが、書物をモチーフとした作品ですから、徒然記とか紙魚枕とかそんなかんじになる。」

 

釈「まずは話の粗筋から伺いましょう。どんなお話です?」

まゆ子「早い話が、乱暴者の桐子がマリ見てをする、というお話。とある女子大学で生徒の間に勢力争いが発生して、用心棒として桐子が鶴仁波○○堂のお嬢さんに雇われる。」
釈「そのつるにはまるまる堂というのは、なんのお店ですか?」
まゆ子「和菓子屋さんです、老舗の。まこの際稼業はあまり関係無い。お金持ちの旧家というだけの属性で結構です。」

じゅえる「しかし、女子大ということならば、サムライが刀振り回す必要は無いんじゃないの。」
まゆ子「まね。一応は非武装が本来の筋です。桐子もメタルの短刀一本しか持ち込んで居ません。」

釈「メタルとは鉄という意味でいいですか。」
まゆ子「まあ鉄です。超合金だけどね。この世界にはエネルギー兵器としての普通のカタナと、メタルの刀の二種類の刃があります。カタナの方は特殊なガラスで出来ていてエッジの部分にのみエネルギーが供給されて切断します。なんせガラスだから振り回すと見えません。で、このカタナは大抵のものはぶった切ります。メタルの刀もすぱんと。珍しいものではなく、サムライならば誰でも標準装備でカタナを通常使わない桐子も短刀として持っています。」

じゅえる「つまり、メタルを持ってる奴は変り者てこった。」
まゆ子「いや、戦闘のカテゴリーが違うんだよ。サムライにも色んな奴があって、中には決闘を商売とする奴も居る。こいつらが主にメタルを使う。甲冑も用いずに普通の服で、メタルの刀で切り合うんだ。サムライ体質の人間にとってもかなりヤバい話だ。」
釈「要するに、今回桐子さんは決闘をする為に呼ばれた、という事ですね。」

まゆ子「うん。サムライ同士を使って代理戦争をするわけだが、それに到るまでの手続きが結構ややこしい。

 女子大の内部にはまあ4、5人の有力者が居るわけで、そいつらがそれぞれ手駒としてサムライやら忍者やらを飼っている。無論、戦闘だけで勝負が決まるわけではなくて実力者本人がそれぞれの力でもクリアするわけだ。戦闘はそのお膳立てというわけで、あくまでも陰働きだね。」

 

じゅえる「つまり、そいつらは何を目的として何で勝負するか、てことだね。何?」
まゆ子「卒業文集です。」
じゅえる「へ?」
釈「あの、卒業文集ですか?」
まゆ子「つまりこの人達は、卒業文集の主幹を誰が務めるかで戦っているのです。」

じゅえる「何故? それがそんなに儲かるのか?」
まゆ子「いえ全然。生徒の人数分と、三学年クラス分のわずかな発行部数しかありません。値段も生徒が授業料の一部として払うものですから、特に儲ける枠組みはありませんし、金銭の授受はあらかじめ拒否します。お嬢様学校ですから金銭でなびいたりしないんだよ。」

じゅえる「そこんとこが、この話のミソだな。金では換えられないものがあるんだ。」
釈「内容ですね、なにか自分の主義主張を表現する為に争うんです。」
まゆ子「そうでもない。あくまでも卒業文集だから、主役は卒業生、あここは3年で卒業ですが4年生がつまり実力者となります、卒業生がそれぞれ書いたものが普通に載ります。」

じゅえる「じゃあなんで?」
まゆ子「この人達は、小説を書くんですよ。彼女達の小説を手本に、卒業生は卒業製作として一文を載せる。そのお手本として年に三回文集が発行され、四番目が卒業文集です。」
釈「編集方針ですかあ。なるほど、それは難しい。」

まゆ子「ぷりんしぱるです!」

じゅえる「ふうむ、難しいはなしだな。つまり主幹になると誰を載せるとかこれは載せないとかが自由になるんだ。」
まゆ子「まあそうですけど、四年生はほんとに少ないから、実質誰が主幹になっても変らないね。」

釈「う〜む、結局はなにを争うんですか、その人達。」
まゆ子「そこを突き詰めていくのがこの小説の醍醐味なんだけど、」
じゅえる「おまえさんも知らないんだ。」
まゆ子「てへ。」

釈「つまりは禅問答みたいなものが、ここで行われるわけですか。白刃の下で胆力を競うとかの。」
まゆ子「まさにそういう感じ。だからサムライはひつようなんだ。」

じゅえる「名誉なんだね?」
まゆ子「それはもう、ばっちり。ただし、なにが凄いかというのは、その文集を読んだ人しか分からない。で、その文集は基本的にその女子大の生徒しか読めないんだ。」

 

釈「小説家になる、というのは無いんですか?」
まゆ子「この世界、小説家という職業は無い、漫画家も、映画テレビドラマも無い。」

じゅえる「コンピュータはあるんでしょ?」
まゆ子「タダで貸与されます、ノートパソコンというよりもパッドみたいなので、「電卓」と呼ばれます。電子式卓上情報端末です。もちろん図書館機能があるし、映像ソフトの再生も3DCGも出来ますよ。」

釈「政府が禁止しているんですか?」
まゆ子「禁止です。しかし禁止すべき理由があります。「飽きたから」ですね。」
じゅえる「なんじゃそりゃ。」

まゆ子「この世界は、一度世界が滅びた後に再生された世界なんだよ。つまりそれまでの世界の歴史で、ありとあらゆる娯楽ソフトが提供され、滅び去ったんだ。この世界に住んでる人はそのごくごく一部しか開示されていないにも関らず、こういうものは沢山有っちゃダメだ、という事を知っているんだ。だから禁止以前に要求しない。故に、観賞する為に特別な教育が必要となる。それがこの大学だ。」

釈「なにか、物凄くめんどくさいです。」
じゅえる「つまりはこの四年生というのは、誰も必要としないものを書いているということか。酔狂だな。」
まゆ子「酔狂に命を賭けています。」

じゅえる「うむ、なんとなく分かって来た。しかし、彼女らが書いたものは世間一般に流布されないの?」
まゆ子「それは禁止です。というか、彼女らの文学は紙の上、それも藁半紙に謄写版印刷をされたごく粗末な存在としてある事を前提に作られて居ます。電子情報となる事は想定されていないし、拒否します。」

じゅえる「それはポリシーなんですね。」

まゆ子「前の世界はこれらの娯楽ソフトが完全保存され誰でもタダで利用可能になった時から滅びの道を進んでいった、と理解してますからね。芸術は滅びる事を前提としなければ、生命を得る事ができないという考え方です。桐子には最初よく分からないけどね。」

じゅえる「つまり、彼女らの作品は読み終わると処分されるんだ。」
まゆ子「そうでもない。まあ、クラスに配布したものは皆が読むと崩壊してしまう消耗品だけど、彼女らのクラブハウスである「曾呂利亭」にはちゃんと歴代バックナンバーが揃ってますよ。また卒業生も大事に取って居る。現につるには○○堂のお嬢さんの御婆様はここの卒業生で、何年分か持っている。桐子はすべてが終った後に、この御婆様の所に招かれて古い文集を読み、滅びる作品というものの真の価値を知る事になります。それがエピローグね。」

釈「滅びる事により永遠に生きる芸術、というわけですね。なんか今の世の中の真逆をいくはなしですね。」
まゆ子「わたしもまたへそまがりなにんげんだもの。」
じゅえる「そりゃ私の友達だもん。」
釈「なるほど。」

 

まゆ子「というわけで、四年生というのが学園を支配するのだが、この人達は卒業しない! もう何十年も在学していたりする。つるには○○堂のお嬢さんは最年少だけど、それでも5年通ってる。留年したわけじゃないよ、書く側に回ったからここに居るんだ。で、これまで学園を牛耳って居た『ダリウス大帝』という人が寄る年波で引退したから、今回の主幹争いが勃発したのだ。」

じゅえる「ちょっと待て、ではこいつらは互いに殺し合ったりするんだ?」
まゆ子「そんなばかな事はいたしません。鉛筆握る指を折るくらいです。」
釈「うう、地味だ。」

 

まゆ子「で、この人達とは別に、印刷屋も居るんです。これは入学から卒業までの3年間のみの任期だけど、自力人力で謄写版に鉄筆でがりがりと線を引いて版を作ります。これは誰にも中立的な立場を取ります。この人達もまた芸術家です。期限付きのね。」

じゅえる「ふうむ、しかし謄写版印刷ってそんなに綺麗にできないよね。インクがべたべたするし。」
釈「輪転機というのが要るんじゃないですか、というか手刷りですか。」
まゆ子「いやあさすがに輪転機はあると思うけど、ともかくプリンタじゃない。プリンタというものはちゃんと世の中に存在するにも関らず、ここでは謄写版印刷で藁半紙でやる。綺麗に写らない字が読めない、てとこも勘定に入ってるのさ。だからこの人達も命懸けだ。なにせ卒業生の一生に一度の作品集を印刷するんだからね。だから選ばれた生徒が3年間みっちりと修行をして、精神の集中を高めて書きます。」

じゅえる「質はどうなんだ? 作品の質は、それだけの態度にふさわしいものなの?」
まゆ子「さすがに四年生の作品は見るべき所は多々有りますよ。だけど卒業生のはねえ、やっぱ素人じゃあこんなものかてくらいにしかなりえません。というか、ほとんど全ての生徒が初めて書いた小説です。上手い道理がありませんわさね。」

釈「ではやはり四年生というのは優れた人達なんですね。威張るだけのことはある。」
まゆ子「まあ、筆力よりは胆力気力の面で優れていると思うんだ。やはり存在感そのものが勝負の要だよ。で、サムライを前にしてもたじろがない程度には肝は据わっているてのが、桐子にはかなり新鮮な驚きだね。」

 

釈「だいたいわかりました。えーとではキャストの方を。
 まずは主人公大東桐子さん。つるには○○堂のお嬢さん、印刷の人。他には?」
まゆ子「

大東桐子
つるには○○堂のお嬢さん
そのお付きの女生徒A・B・C
ライバルが4人とお付きの生徒、用心棒
印刷の人
教師
つるには○○堂のおばあさん
ダリウス大帝

  こんなもんです。いまのところ。教師も何人か居て、インテリの優男に弱い桐子がひっかかる若い男の教師も居ます。」

じゅえる「つるには○○堂のお嬢さんというのは、どんな性格?」
まゆ子「この人は、基本的にぼーっとしています。夢見がちというよりも、ぼーっとです。作風は特異で、絵本です。」
釈「絵本作家かあ、なるほど、それはそれです。」
じゅえる「挿し絵とかもやはりあるんだ。いや、それほど入れ込んでるんならばたしかにあるか。」

まゆ子「他の人も自分の作品にワンポイントでイラストを入れたりもします。つるにはのお嬢さんは絵を中心とする特別な、というよりも謄写版印刷という極めて不利な状況で、絵で勝負です。」
じゅえる「謄写版じゃあ写らないからね。」
釈「刷ってる内ににじみますよ。」

じゅえる「他は小説とかエッセイとか。」
まゆ子「まあ未定だけど、基本的に空想的な小説とエッセイと二本立てですね。分量はかなり少ないよ。なにせ謄写版印刷の冊子だから50ページ、5人なら一人あたり5枚が限度てかんじかな。B4用紙の表のみを印刷で二つ折り製本だよ。表紙も入って50ページは結構かさばる。」
じゅえる「そうか、制限はさらにキツいな。枚数制限で争っているようなものか。」

まゆ子「故に、彼女達の作品はぎりぎりの線まで突き詰められて書かれている。カミソリみたいなもんだ。ついでに言うと、あまり黒いページを作ると輪転機がインクでべとべとしちゃうから、絵はベタ禁止。すべて線で表現する。写真を使う事もできないから、なかなかめんどうで凄いよ。印刷する方も命懸けだ。」

釈「あ、なんかそういうのって、結構憧れますね。」
まゆ子「だろ。」

 

じゅえる「えーとキャストは分かったけど、つまりはまだ物語の骨組みは出来てないな。どういう構成になるんだ。」
まゆ子「今回、厳正に1章30枚をキープしようと思う。げばおとの倣いからすると30ではろくなディテールが書けないだろうが、しかし今回生産性を重視した。もちろん表現はぎりぎりに突き詰めるけどね。」

じゅえる「ま、統則能登子さんはそこでしっぱいしたからね。」
釈「能登子さんはどうしますか?」
まゆ子「どうしようかねえ。うえんでぃずも半分は書けてるんだし。20枚から30枚は確実に書けている。今すぐ出してもいいくらいだが、後半の目処が立たない状態でちと迷ってる。」
じゅえる「ま、善きにはからえよ。」

釈「えーと、250でしたか、予定は。8章分ですね。」
まゆ子「そう。この内1章は桐子の紹介、8章はエピローグに使うとして、残りは6章。180、いや200枚で勝負しなきゃいかん。」

じゅえる「何日間の話?」
まゆ子「だいたい一ヶ月無い、3週間くらいだな。桐子がやっと大学の学生に馴染んで来るくらいの時間は必要だ。この時間経過の描写もすこし考えるよ。」

じゅえる「となると、外出日というか御休みの日もあるわけだね。ちょうど中日に挿入する。学園の外の情景を描く必要があるでしょ。外でも状況が動いているというのを描写する。」
まゆ子「5章、だな。678で怒濤の一気に行くからには、5章がそれだ。デートをしよう。」

釈「自動的に234は学園のお話ですが、二度ほどは戦わねばならないでしょうね。一度はサムライと、二度は一般女生徒と。」
まゆ子「あーそうだね。桐子が馴染まないという感触を出さなきゃいけない。一度衝突して、頬の一つもぶっ叩いて、お姉様になってしまうくらいがちょうどいい。」
じゅえる「おねえさまかあ、それが目的なんだよね、この話。」
まゆ子「うん。」

じゅえる「デートの時も、たかびーのお嬢様と遭遇するくらいのイベントが必要ってことか。でお付きのサムライと決闘する。」
釈「しかしそれは、街中での決闘になりますよ、デートの最中だから。それでいいんですか?」
まゆ子「サムライも、街中でのエネルギー兵器、爆発物等の使用は禁止、乱闘も禁止だ。しかし桐子はなにかうまい手でやる事にするか。」
じゅえる「賭け事とか。」

まゆ子「ふうむ、やはり血みどろのはなしが面白いな。」
じゅえる「こういう場合だね、どちらが早いかとかの一発勝負がいいんだよ。要するに、それをやればどちらに力量が上か一発で分かるという手段ね。」

 

*****

釈「それはさておき、その四年生の実力者というのを定義しておくべきではありませんかね、やっぱ。」

まゆ子「この四年生達はそれぞれい世界史の偉人英雄の名を自ら称している。世界史というくらいだから、鎖国中のニッポンであってもそれくらいは教えているという事だね。で、20世紀より後の話は私が分からないから、とうぜんにそれ以前の歴史上の人物の名だ。」
じゅえる「架空のこれからの偉人は無しか。」
釈「ちょっと残念ですね。」

まゆ子「えーとね、まず鶴には○○堂のお嬢様はまだその名前を名乗ってはいないんだ。これは最後に主幹の座をみごと獲得した時に、名乗る。

 で、えーと。」
じゅえる「皆まで言うな。つまりはそのキャラクター配列こそがストーリーの根幹だ。遭遇する順番で、話が進んでいくんだ。」
釈「そういうのはマンガの王道ですね。というよりも、この間テレビでやっていた『馬の骨』という時代劇がちょうどそんな話でした。」

まゆ子「そういうわけだ。でも全部がぜんぶ戦う必要もないと思うんだ。鶴にはのお嬢様の力量を認めてやりたいのであればやらせよう、という人も居ていいよ。」
じゅえる「その人は夫持ちにしよう。その桐子が恋に落ちるとかいうかっこいいのと結婚しちゃってるんだ。女子大だけど、結婚しちゃいかんという法は無いでしょ。」

まゆ子「いきなり構造の一角が決まったな。なるほど、ではその人は既婚者で優しい感じ。もうひとりは、百合ですな。」
釈「レズですか。では或る有力者との間でそういう関係にあり、鶴にはさんをその人の為にやっつけてやろう、というのですね。」

まゆ子「つまりは、3人決まったわけだ。ではその百合の人が前半で桐子と戦い、その相手は後半として。えーと、大ボスの前の中ボスという感じか、策士タイプで百合の人をいいように使っている。」
じゅえる「ああ、悪の大幹部っぽいひとね。」
釈「めちゃ分かりやすいキャラですね。」

まゆ子「大ボス、中ボス、となると小ボスもあるべきかな。鶴にはさんが別に悪いとは言わんが、成りたければ自分を倒していけ、とかいう。」

じゅえる「でも戦うのは桐子でしょう。」
釈「いつもいつも、桐子さんが戦わねばなりませんか? どうもそれでは鶴にはさんがなにもしないように感じますが、それでいいんですかね。」
じゅえる「よくはないな。鶴にはさんがそれにふさわしい人だというのを表現する回が必要だろう。桐子はその場合、暗闘するべきだ。」
釈「なるほど。その人は悪い事をしないけれど、陰で攻めて来る奴が居るんですね。その策士タイプの人ですよ。」
まゆ子「なる。そういうのは簡単でいいな。」

じゅえる「大ボスとの戦いはー、えーとなにかアイデアはあるの?」
まゆ子「まあね。この人が一応は新主幹の最有力候補で、力量から言うとほぼ間違い無い。それに敢然と立ち向かう鶴にはさんが不思議と学内の目には映るんだ。」
じゅえる「或る意味、中ボスの策略があってそれに担ぎ出されたのが鶴にはさんで、すっかりやる気にになってしまったとかかな。」
まゆ子「それでもいい。ともかく鶴には○○堂のお嬢様はそれなりに大した変人だからね。」

 

釈「小ボスとの戦闘で中ボスの仕掛けが読めて、・・・あれですね、競争から下りたはずの優しげな人が最後に牙を剥くんです。」
じゅえる「中ボスが裏切られるのだね、うんそれは世の中の人が皆要求するようなはなしだ。」

まゆ子「そういう話であれば、それはやめた方がいいな。」
じゅえる「とするとだ、彼女には別の目的があるとした方がいいか。小説家の話であるから、学園の騒動そのものをお話に書いてしまう。自らは傍観者として。」
釈「なるほど、そういう体質の人であれば責任が伴わないポジションを維持したまま、面白くなる仕掛けを施すでしょう。」

じゅえる「だが当然、それは。」
まゆ子「桐子が読んで、ケラケラ笑って原稿破ったりするな。」
釈「ちょっといい落ちです。」
じゅえる「自分で参加しろよ、てこったね。だがもう一つ足りないな。書いたものを外部に公開しようとするとかかな、曾呂利亭の掟に反して。」
釈「桐子さんには理解出来た事を、この人は理解出来なかったんだ。まあ、そういう人も居ますよね。」
じゅえる「桐子に、悪いこと言わないから、あんたさっさと卒業しな、と言われちゃうかんじね。」

まゆ子「うんうん。それで行く。落ちが綺麗に決まるよ有難う。これで、鶴には○○堂のお嬢様のお婆様に会いに行く時の十分な動機づけができる。」

 

釈「えーつまり、四年生は6人居るわけです。鶴仁波○○堂のお嬢さん、百合の人、旦那持ち、職人肌、策士、ラスボス。」

じゅえる「であれば、彼女らの用いるペンネームとなる偉人の名は、それに則したものであるべきですね。策士であれば孔明とか。」
まゆ子「こうめいかあ、もっと西洋っぽいのが欲しいなあ。」
釈「ナポレオンでいいんじゃないですか。ラスボスの性格が読めませんね。なにか属性がありませんかね。」
じゅえる「思いっきり縁起の悪いのでいいのかもね、その人は。旦那持ちはあえて実在の人物じゃない名前の方がいいかも。後で本当の名が明かされるという感じで。」

釈「策士の人はつまり可哀想になるわけですよ、敗北して。それに対して百合の人がノーリアクションというのは不自然ですよね。」
まゆ子「ふむ。策士の人は自分の力でも勝つべきだとちゃんと理解はしていると考えるべきだよ。であれば、芸術で負けたとするか。」
じゅえる「芸術を続ける気力を失うほどの衝撃を受ける、という事ですかね。そうするとだねえ、百合の人の攻撃手段はむしろ、口だな。口で批難するてことだ。さぞかしいい気分でしょうね、とかの憎まれ口を叩くのだよ。」

釈「それに対しては、お嬢さんは?」
まゆ子「・・・早口でよくわからなかった。」
じゅえる「・・・。」
釈「そういうひとですかあ。」

 

じゅえる「まあそれはそれとして、桐子が直接に遭遇するサムライはどうなんだよ。これもまた全部女だろ。」
まゆ子「・・え、えへ?」
釈「あ、」

じゅえる「まじかい。まあそれはラスボスの所だとして。その前4人のボディーガードは女のサムライだな。」
まゆ子「えーと、全部が全部サムライである必要もなくて、ニンジャという選択肢もある。サムライにしても武術競技専門てのも居る。更に言うと、四年生にはお付きの人がだいたい居て、この人たちも四年生だ、やはり。ただこれは正式な生徒ではなくて聴講生とかなんかの特別な身分だったりするとして、桐子もやはりその区分で学園に入るわけだね。」

釈「ではサムライの人は桐子さんと後二三人ですか。」
じゅえる「百合女のボディガードは、サムライにしろ。第1回目の戦闘だから真正面から行く。」

釈「でもサムライ同士が戦うだけじゃあ意味がないんですよね。そもそもがどういう勝敗がつけばいいのか、やっぱり分からないんです。」
じゅえる「百合女の場合、やはり百合サムライが付いているべきだろ。ネギまのせっちゃんみたいな感じで幼なじみというくらいの、個人的な関係がある人が良いよ。」

まゆ子「なるほど、ではそうしよう。百合女に関してはべたべたの人間関係を誇る者にしよう。」
釈「わっかり易い人ですね、また。」
じゅえる「だが典型的な人物というのは正しいだろ。典型的なモデルを非典型で扱うのがベストだよ。」
まゆ子「せっちゃんならば、策士が負けて百合女がそっちにかまうのに、彼女は複雑な思いで見送るという感じだな。」

じゅえる「待てよ。鶴仁波○○堂のお嬢さんは桐子が来る前は、護衛が居なかったのか?」
まゆ子「さてそれは、お嬢さんには普通人のお付きのひとが3人ほど居ますけどね。一人くらいはニンジャにしますか。」

じゅえる「サムライとニンジャと、でだけだと面子が足りないな。サムライ体質が半分だけという奴が居ただろう。あれを投入するかね。」
まゆ子「ふうむ、純然たるサムライには彼らは勝てないんだけどさあ。マシンを装着して戦うということにするか。どういう感じで戦闘員が現われて来るか、というのも描写の注目点ではある。百合女の護衛は真っ正面から現われる。となると、策士のはまさに騎士という感じで立ち塞がるべきか。職人は友人がその半端者であるとして、となると策士はー。」

じゅえる「本人がサムライだ。弱いし訓練もしてないけれど、そうなんだ。サムライの家系の生まれという事で。」
釈「ニンジャはむしろ、旦那持ちの手の者ということで、職人の時には彼女の護衛が一枚噛んでいる事にしましょう。」

 

じゅえる「しかし今以ってよくはわからないけれど、ともかくバトルで決着が着く、というのを無理やり納得させよう。不思議な感じだけど。」
まゆ子「そりゃああれだ、書いて行きながら考えるとする。」

釈「サイボーグというのもあっていいんですよね。」
まゆ子「この世界はサイボーグ弱いよ。」
じゅえる「それは職人の護衛にしよう。生まれつき病弱で機械の身体に置き換えているというの。」
まゆ子「あ、そーいうのはちょっと。そういう高度機械化医療は無い事になっている。サムライなら別だがそれでも手足のみだよ。」
釈「片手だけでいいじゃないですか。中に銃とかレーザーとか入っているてので。」

 

じゅえる「つまり

鶴仁波○○堂のお嬢さん/桐子
百合女/幼なじみのサムライ
職人/改造人間
策士・(本人)
ラスボス/(得体の知れないサムライ)
旦那持ち/ニンジャ
なんだ。」

 

釈「サムライというのは、存在比率がたしか1000分の一くらいでしたか?」
まゆ子「200分の一で発現するけれど、使い物になるのが500分の一、現役が1000分の一で1万人てとこ。
 ちなみにサムライランキング比率は、B(ノービス)1000人位 BB5000人 BBB2000人 A1000人 AA300人 AAA100人 S10数人 てとこ。」

釈「ノービスというのは新人ですね。これって頑張ると強くなってランク上がるんですか。」

まゆ子「BBBまではね。A(シングル)とBBB(トリプル)の違いは強さじゃあない。集中力だ。実際この二つのクラスの強さや技量はほとんど変らない。ただAは努力しなくとも常に最高の戦闘力を維持出来るのに対して、BBBは気合いを入れて時間を区切ってでないとAには立ち向かえない、て感じ。」
じゅえる「かなりの開きがあるんだ。じゃあBBBとAとの間に行き来は無い?」
まゆ子「元々Aの人間が、自分のランクをよく理解してない状態で、つまり開花してない状態でBBBに留まるというのは良くある。」

釈「つまりは才能がすべてという事ですか。」
まゆ子「うにゃ、それではAAには成れない。AA(エース)は気付きと呼ばれている。或る種の悟り的な感覚で敵の動きが読めるんだな。だからAがどんなに頑張っても手も足も出ない。これは才能ではないとされている。」

じゅえる「じゃあAAAは?」
まゆ子「AAA(マスター)はAAの上にある概念で、AAが相手の動きが読めるわけだけど、その読み切った動きで考えてもどうしても自分が勝てないと悟るのが、AAAの戦いなんだ。これはAAの悟りの上に更に奥義を重ねたものとして考えられる。つまりは、習得するのに気付きが必要な技術という事だね。だから、AAAになるのはAAAの師匠を持った者だけだ。しるくがまさにそうなのだよ。」
釈「桐子さんがAAAの師匠についたら、なれますか。」
まゆ子「まずAAの気付きを得ないとね。これに導く方法を持っているのもAAAだが、ま本人の格の問題もあるか。」

じゅえる「Aが読もうと思っても、読めないんだ。」
まゆ子「誰だって自分の動きを読まれないようには心掛けているもん。そう簡単には読めないし、読む前にぶっ潰した方が早い。だから普通は気付きなんてものは必要無い。だから、或る日ふと気付いてしまうんだよ。AAAならばその機微が分かり文献に書かれている事の実態を知る事が出来るから、適切に導く事が出来る。ただし、気付いた後でそれが役に立たないという事を知るというのは、なかなかにツライ修行だよ。」

釈「Sというのはどういう強さです。」
まゆ子「そりゃレジェンドだ、伝説的な強さというわけだが、まあこれは実績がそれほどまでに画期的だった人だな。強さのレベルじゃない。偉人だ。」

じゅえる「逆に、B以下のサムライというのは居ないんだ。」
まゆ子「Cというクラスもあるが、このクラスのサムライは一般人が鍛錬して支援装備を使うとクリアできちゃうから、サムライの内には入らない。パワードスーツにもグレードがあって、最高のスーツは半自律のロボットスーツになっていて、BBを越えるくらいの戦闘力にはなる。
 ただし、統合管制局が保有する戦闘用ロボットはAの桐子ですら完全装備でないとクリア出来ないほどの戦闘力だけどね。複数体ならばお手上げだ。」

釈「Cだった人はどうするんです? サムライの商売は出来ないんでしょう。」
まゆ子「ま、やらないね。ところがだ、世の中にはサムライ体質が半分だけ発現して、やたら戦闘力だけは高い人、身体的能力は高い人、というのが居るんだ。またいてい肉体のゴキブリ的不死身性は無いんだけどさ。こういう人は、BBくらいには為り得る。ただやられると再起不能になっちまうから、たいへんだな。」
じゅえる「なるほど。職人の護衛はそういう人なんだ。ニンジャってのもそういう人だな。」
釈「機械の腕を装備してまでも戦うというのは、そういう背景があるんですね。」

まゆ子「さらに言うと、サムライの中にも桐子みたいに野武士みたいな放浪の人生はまっぴらだ、てので都市に留まる人も居る。あんまり戦闘もしないから、競技会というのを開いているんだけど、そこにそういう人はよく来るんだ。」

じゅえる「桐子は競技会には出ないの?」
まゆ子「実戦に比べると馬鹿馬鹿しくて。ただ、競技会の方が条件を限定している分、AAの気付きが出易いという話は知ってるよ。性分で行かないだけだな。」
釈「そういうのはサムライとしては普通なんですか?」
まゆ子「野伏りとしては普通。基本的に普通のビジネスとしてのサムライの戦いにはAA以上は出て来ないもんだ。

 そうね、AAはヤクザとかでいうところの「センセイ」と思って下さい。サムライ一家が店を構えているところに厄介になっていて、出入りがある時は恩義に報いる為に出向いていって、ちょこっと戦う。そういうものだ。だから通常業務の時にはA以上のサムライは居ない。
 対して桐子は結構まめに働くよ。女のサムライというのは細かい仕事をちょこちょこ地味にこなすもんだけど、まさにそういう固い商売をしている。貧乏暇ナシで競技会なんかに行ってる暇は無い。」

釈「ニンジャの人は競技会に出るんですか。」
まゆ子「出る人も居る。ニンジャ専門の競技会もある。というかニンジャは普通専門学校卒だ、卒業検定でそういうのをやる。」

釈「ナルトみたいなものですか。」
まゆ子「ナルトってのはほとんど知らないけど、かなり違うと思うよ。なにせサムライの方が絶対的に強いんだもん、死なないようにするだけで精一杯だ。そうね、ナルトというのがヒーロー的なものを出すとすれば、まったく反対の存在だね。必殺技なんかも持ってないし、というかそんなもの桐子だって持ってないし、AAには得意技なんか全然効かない。というかニンジャというのならば桐子はまさに忍者的に戦うよ。姿を消して単身で低空を魚みたいに飛び回るのが、スタイルだ。」

釈「じゃあ、ニンジャってほんとうに補助的な任務しかできないんですね。」
じゅえる「嫌がらせ専門だな。」
まゆ子「うん、そういう仕事やらせたら、そりゃあ手に負えない連中だ。」

 

じゅえる「話を戻そう。

 で、その学園というのは、どういう学校? 国立私立? 女子だけということは男子だけ大学もあり? マリアさまは居る? スールは?」
まゆ子「スール制度はありません! マリアさまもありません。それはナガサキの出島にだけ居ます。マリアさまロボというのがあるらしい。」
釈「ナガサキはあるんですね。」

まゆ子「大学は女子校は有っても男子校はありません。というか、大学は国に数ヶ所しかありません。超エリート校で、統合管制局の官僚を育成する為のものです。もちろん共学ね。

 この女子校はそういう枠組みから外れたもので、私学校のお嬢様大学、花嫁修業センターみたいなものです。文学部と礼法学部、史学部だけです。

 男子校といえば理学校という理系の大学レベルの学校がほぼ男子ばっかりだけど、この世界はすでに究極まで技術の進んだ社会の中からカスみたいなレベルの技術のみを用いているわけで、あまり面白くはありませんね。ロボットがロボットを直しますから、必要性も薄い。ただ、そういう性向の人は必ず居るんだからあります。
 それと食糧生産に直結する農学校は人気がありますが、これも就職口は国立農業工場だから公務員だな。
 軍学校もあります。兵士になるわけじゃなくて、戦闘ロボットのオペレーターとか軍組織の官僚としての訓練をしていますが、あまり必要もない。全国の治安はサムライが独自の道徳に基づいててきとーに維持して居ます。サムライの手に負えないレベルの敵性物体が時折宇宙からやってきますが、これは統合管制局が、さらには永久評議員が直接対処します。その時の要員ですね。

じゅえる「教養学部か。じゃあ教師を育成する学校は無いんだ。」
まゆ子「あ、それはーこの女子大学の生徒は免状もらいますよ。そういう機能はどの大学にもあります。あと芸術学校もありますね、美術と音楽やら舞踏演劇映画の類い。あまり需要は無いけど。」
釈「鎖国しているから単純化しているわけですね。むしろ道徳教育の方に視点が向くんじゃありませんかね、そういう社会だと。しかし、宗教大学はないんですか。」
まゆ子「宗教自体が無いからね。いや神社はあるんだけど。そういうのは学校ではない、個人が師匠とマンツーマンでやる。

 あ、そうそう。サムライ専門学校というのもある。サムライ体質の人間に色々と教える学校だ。ふぁがここの出身だけど、桐子は行ってない。行ってなくてもなんとかなるし、行けばそれで無用の苦労はしないというレベルだけど、サムライになると周囲で喜ぶ人が多いからそれなりにステータスはあります。

 そうね、策士のひとはこの出身だけど、周りのレベルの高さにサムライの道をあきらめちゃった事にするか。」
じゅえる「弱っちいサムライなんだ。」
釈「それはちょっと可哀想なかんじもしますか。」

 

じゅえる「必然的に、その人はサムライものというか時代劇やら戦闘ものを主に書くんだ。自分にはできなかったことをね。」
まゆ子「なるほど。そうか、人によって書くものの分野とその存在が密接にリンクしている必要があるか。典型的なキャラ設定として。」

釈「そうですねえ、鶴仁波○○堂のお嬢さんは絵本ファンタジーでぼーっとした性格。
 百合女はまんま恋愛モノ。策士は時代劇と武将もの。職人は娯楽小説。旦那持ちはノンフィクション。ラスボスはー。」

じゅえる「純文学だ。」
まゆ子「うむ。重厚な文学で深刻なテーマ。人間の実存とかに深く斬り込む、超重量級の作品を発表する。」
釈「でもあの、ページ数が足りないとおもいますが、」
まゆ子「やる。」

じゅえる「でも、じゃあ主幹はラスボスがやるべきじゃないのか?」
まゆ子「でも純文学だよ、重いよ。卒業文集なんだよ。」

じゅえる「死んだダリウス大帝は何だったんだ?」
まゆ子「死んでない死んでない。あのひとはーマンガだな。」
釈「まんが! マンガも描いていいんですか。」
まゆ子「四コママンガだ。時事ネタや風刺もやっていた。かなりの人気を博し、卒業文集の性格も明るくなっていたんだよ。」

 

じゅえる「そうか。鶴仁波○○堂のお嬢さんは、ラスボスの作風だと文集が暗くなると思って、自分が立候補したんだ。」
釈「なるほど。それは理解が可能です。空気のもんだいなんですね。」

(つづく)

 

 

【桐子のおサムライの話】07/01/25

まゆ子「てなわけで、げばおと第三章頑張っているわけですが。そりゃそれとして別口の作品のおはなし。」

じゅえる「統則最前線?」
まゆ子「いや、ひょっとしたらと、桐子の話を書いてみてもいいかなあ。」
釈「新企画ですか。」

まゆ子「そういう話になるか。統則最前線がどうにもうまく動かない、いや動いているんだけど完成の目処が立たない。ちょっとね。」

じゅえる「うまくいってるのいってないの、どっち?」
まゆ子「あくしょんしーん。」
釈「あー。」
じゅえる「あー。そりゃたいへんだ。」

まゆ子「ようやく能登子さんがちゃんと動くようになったんだけど、というかやっと能登子さんの本領発揮になるところなんだけど、タコハチの運動をマジで書くのはつらいぜ。」
釈「他に類がありませんからね、統則ロボットは。」

じゅえる「企画のしっぱいかい?」

まゆ子「産みの苦しみ、という感じではある。なにせ、下水もビル外壁も街も海中も、立て篭り現場やらテロ現場、災害支援に密輸船臨検、とタコハチの出番はいやというほどある。それらすべてで納得出来る描写とくれば、ハハハ、どうしよう。」

じゅえる「やる気ではあるけれど、完成の目処が立たないってわけだ。じゃあ桐子は立つってこと?」
まゆ子「ありゃ元から漫画短編のシリーズとして設定されているから、短編の集合体としては容易になりたつ。全篇200枚と仮定して、50枚4篇で済ます、いや40枚5篇でとくれば。」
釈「げばおと一ヶ月半の仕事ですか、そりゃ考えてしまいますね。」

じゅえる「統則最前線はそれが効かないんだ。うーん、なるほど。」
まゆ子「統則最前線は長編、あるいは中編の小説を書くという課題を課せられているからね。」

 

釈「それはそうと、桐子さんの物語、というのはどういう設定と構造なんですか? 私それ詳しくなくて。」
じゅえる「あんたが生まれる前の話だからね。

 そもそも桐子のお話は漫画を書く為に作られて、プロットは20程有る。単発で32枚の漫画原稿、いや前後篇で2回分てのもあるから、まあ結構なストックがある。ただし、第一話が完成したくらいのところで挫折して、小説へとコンバートされている。その時に中編戦隊ものの企画も立ち上げて、ここにはウエンディズの他のメンバーも登場する事になっている。」

まゆ子「早い話が、SFウエンディズだ。」
釈「SF、じゃあ未来がお話の舞台なんですね。」

まゆ子「実は桐子の話の舞台設定は、げばおとと似ているんだ。というよりも、換骨奪胎してげばおとで採用されている。

 あー時は、今から1000年ほど未来ということになっている地球。その頃の地球は一度壊滅的なダメージを受けており、人類は一度滅びたのだ。で、宇宙に移民して居た人類は地球環境が落ち着いた頃を見はからって、人類再生計画を実行する。それが今から500年程前。故に、再生暦紀元500年頃のお話なのだ。」

釈「はあ。それは十二神方台系ですね。そうか、いままで桐子さんのお話が出ない理由はそこなんだ。」
じゅえる「だもんで、桐子は割を喰っている。なにせこのシリーズ、桐子が主人公であるけれど、桐子だけが主人公なんだ。ウエンディズとは違って人間関係で見せる話ではない。桐子がばちばちと戦闘を繰り広げるという話でね。」

釈「桐子さんは兵士なんですか?」
じゅえる「ちょっと違う。おサムライだ。」
釈「??」

まゆ子「つまり、この世界はかって失われた人間世界を取り戻すのが目的だ。地球がダメになったのは、実は世界が一つになってしまい文化的弁別が出来なくなった、という所も大きい。つまりは自然災害ではなくて人間の手によって地球環境は失われてしまったんだね。だから、再生する時に、日本列島ではかって日本にあった文化文明を再現する事になっている。だから、鎖国の真っ最中だ。これは世界中どこでも一緒で、互いに鎖国して文化文明圏が十分な安定性を取り戻す為に没交渉に敢えてしているのね。」

釈「つまり、日本文化の再生の一環として、この社会にはおサムライが居て、桐子さんもその一人と。でもおサムライとなるとやはり人を従えて御役人として居るのですか。」

じゅえる「いやいや。そういうのは居ないでもないが、桐子は野伏りを商売にしている。野武士だ。」
まゆ子「戦国期の武者の姿を模した存在だね。だから武士道とはかけ離れた倫理基準を持っている。それがこの世界のサムライだ。役人は別に居るんだよ。日本再生を司る役所として統合管制局てのがね。

 うーん、つまりはこう考えてくれ。まず宇宙に地球全体を再生する為の組織がある。その現地事務所が地球にある。日本にも分室がある。その指示に従って実際に働くのが統合管制局だ。そして分室のお偉いさんが、貴族だ。」
釈「貴族?」
じゅえる「お公家さんだよ。」

釈「ああー! なるほど。そんなところまで再生したんだ。では京都に住んでいるのでは。」
まゆ子「当たり。都というところに集中して住んでいる。殿上人だね。これを永久評議員という。で、彼等は事実上不死身の存在だ、なにせ未来人だからね。

 この世界はかって地球を滅ぼした驚くべき科学技術を基盤として成り立っている。ま、地球再生なんて事をするんだから、そりゃ当然。その科学技術文明によって彼等は生きている。が、この科学技術文明は再生されるべき地球人・日本人にはこれはほとんど開示されていない。」

釈「では、江戸時代程度の自給自足体制ですか。ふむ。」
まゆ子「いや、そこまで薄情じゃないんだが、ともかく最低限の文明生活はさせなければならないということで、20世紀程度の物質文明は保障されている。ま、20世紀というのも旧い話と成り果てた未来の話だからね。」
じゅえる「逆に言うと、殿上人永久評議員の目からして20世紀という社会は、そうね、大化の改新以後の日本、程度と思って下さい。なにかしらの文明はある。その程度の認識。」

釈「ほお。ではその永久評議員てのは神さまですか。」
まゆ子「そこんとこはおいておこう。実はそこの設定は既にげばおとに取り込まれているんだ。うーん、そうだね。十二神方台系の三個先の救世主の世界、てくらいの感覚ね。」
じゅえる「無定見生物に相当するのが、宇宙空間に存在する超科学文明を有する人類、その一部が十二神となったのが、永久評議員。神族神兵に相当するのが統合管制局の人間。彼等に支配監督される平のにんげんが、桐子達だ。」

釈「はあー、なるほどなるほど。げばおとなんだ。換骨奪胎されちゃったんですねえ。」
まゆ子「まあ、そこんところはこれからちょっと修正する。世界観が同じってシリーズがあってもいいじゃないか、という感じだね。ま、コンセプトもおんなじなんだけど。」

 

じゅえる「げばおとは、ファンタジーでもSFでもなく、空想時代劇、という感覚で製作されている。桐子の話も未来時代劇という風に考えられている。時代劇、てのがキーワードね。」
釈「・・・・あの、ひょっとすると統則最前線も、時代劇テイストを導入すればなんとかなるんではないでしょうか?」
じゅえる「なんだって?!」
まゆ子「・・・・・。どうやって?」
釈「あ、すいません。しかし、時代劇テイストというのは悪くないかなあ、と。」
じゅえる「現代劇に近いものに、時代劇テイストかあ。うーん、ちょっとわからないなあ。」

 

まゆ子「ま、それはおいといて。

 つまり、桐子はおサムライであり野武士なんだ。だから毎日戦闘をしている。ただし用いている武器は20世紀どころではない、27世紀相当の科学技術を利用した高度な武器だ。」
じゅえる「ついでに言うと、桐子達サムライは遺伝子改造の結果、ぽこっと一般人の中から現われる特異体質人なのね。こいつらは戦闘をする為にだけ生み出された人間で、大体500人に一人生まれるが、使い物になるのはその半分てとこ。選ばれたにんげんなのだよ。」

釈「じゃあ、最初からサムライになるのは運命として決まっているんですね。」
まゆ子「ところがだ、サムライの世界にも厳しい能力によるヒエラルキーがある。雑魚戦闘員に近いものから剣聖まで存在する。そして、ここが一番大切なのだが、雑魚戦闘員といえども、一般人が武装した兵士よりも隔絶して強力な能力を持っている、のだね。」
じゅえる「つまりは、一般人がどんなに頑張ってもサムライにはなれない。だから、一般人は彼等に憧れる。そういうシステムになっているんだ。」

まゆ子「ついでに、この世界の生産設備施設はすべて統合管制局の所有だ。かって極端に発達した科学技術文明のごく一部であるから、新製品というのは無く研究開発も行われていない。必要なものを必要なだけ、無人化されたロボット工場が生産している。農業においても同じで、農業プラントがかってに作物を作ってくれる、人は皆失業者なのだよ。そういう中で、おサムライだけはちゃんと仕事があるのだ。」

釈「しかし、失業者と言うか、それでは生きている甲斐が無いのではありませんか? 文明を維持するのにそれじゃあ、モチベーションがありません。」

じゅえる「ある。」
まゆ子「ある。そういう風に作ってある。」
釈「具体的には。」
じゅえる「飯がマズイ。」

釈「へ?」

まゆ子「配給される食事が、やたらとまずいんだ。灰を喰ってるようなもので、栄養的には理想の食品なのだが、これがまた味もそっけもない。だから、美味いものを食べたければ稼がねばならない。」
釈「サムライになれば、おいしい御飯が食べられる、てわけですか。・・・?、アレ、誰でもがサムライになれるわけでは無いんですよね?」

じゅえる「まず基本を覚えよう。この世界を支配する原理は、飯だ。不味いものから脱出する為に、人は活動している。」
釈「ふむ。」

まゆ子「しかし産業は無い。無いが、農業プラントの製品である食品は、ただで配分されるわけではない。ちゃんと市場があって売っている。金が無い奴は買えない。」
釈「ふむ。しかし職業が無いと、お金もなくて、買えない。」
じゅえる「だから、職業はバーチャルなものにならざるを得ない。というわけで、相場に手を出した。」

釈「何相場です、なにか動きの激しい商品とか株式とかあるんですか?」

まゆ子「食品流通の相場だよ。統合管制局から支給されるわずかな資金を元手に、誰もが相場を張っている。これで儲けた人間は市場で美味しい食品を買い、生活を豊かにする。一方負けた人間は、味も素っ気もないカスみたいな完全栄養食品を食べなきゃならない。」
じゅえる「食を得る為に、食品流通の相場に熱中する。これがこの世界の主要産業だ。だが、食品流通はそんなに不安定にはならない。」
釈「ええ。そんなにぐらぐら揺れたら、市場が成り立ちませんよ。」

まゆ子「だから、無理やり不安定化させている。それがサムライの仕事だ。」
釈「???」

じゅえる「早い話が、相場の値を吊上げる為に、サムライ達が商品の流通を戦闘によってコントロールしているんだ。相場を張っている人間の依頼で、供給量を絞ったり、別の市場から分捕って来る。生産施設への攻撃は禁止されているものの、一歩生産プラントの外に出れば、そこは地獄。市場に運ぶまでの道のりは血に塗れている。」

釈「なんじゃあーそれは!」

まゆテ子「というわけで、一般市民のおサムライに対する関心は非常に高い。なにせ彼等の生活が掛っているからね。というか、おサムライの戦いこそがすべて、と言っても過言ではない。テレビや雑誌なんかもサムライがスターのように扱われている。女子中高生がきゃあきゃあ言ってる。」

釈「・・・・なんというか、凄まじい世界ですねそれ。そこの頭の線の切れ方が、げばおとの比じゃないんですよ。」
じゅえる「ウエンディズと同程度だけどね。」
まゆ子「統則最前線にもこのくらいのぶち切れ方がひつようなんだねえ・・・。」

釈「わかりました。つまりは、桐子さんもそのスターのおひとりなんですね。」
じゅえる「ま、注目株だな。女のサムライはやはり少ない。その中でも桐子はかなりの実力者で並みの男のサムライではとても勝てないてくらい強い。」
まゆ子「強いが故に巻き込まれる事件も多いってわけだ。」

釈「しかし、そんなに強い人が戦ったら、すぐにサムライの数が減ってしまいませんか。人は死ぬんでしょ。」
じゅえる「死なない。」

釈「不死ですか? まあスゴイ未来技術があるのだから、サイボーグ人間とかもあるでしょうが。」

まゆ子「もちろんサイボーグ技術もあるし、そもそも遺伝子改造で生まれたサムライ人間は少々の傷では痛みも感じない。ここは重要。サムライ体質の人間はやたらと丈夫で、どてっぱらに大穴が開いていても平気で飯を喰う、てくらいに頑丈だ。桐子なんか、レーザーガンで肺に穴を開けられてもぴんぴんして動き続け、三日後になんか身体の具合が悪いよ、てことで病院に行って初めて貫通銃創の肺気胸になっていた事に気がついた、てくらいだ。」

じゅえる「バカです。」
釈「ばかなんですか。それは困ったな。」

まゆ子「ま、そんなわけで常人はとてもサムライの世界には足を踏み入れられないんだが、サムライ達もそう簡単には人を殺せない。殺してはいけないし、ちゃんと殺人罪というのも適用される。技術的にも卓越しているから、もうぎりぎりのところで斬り合って死ぬ直前まで入れ込むが、死ねないんだな。」

じゅえる「しかし、それでもやはり死人は出る。出るとなると大騒ぎだ。敵討ちという名目で、合法的に人が斬れると大喜びで戦いに行く。近隣の友人も加勢に来たと大喜びで参加するし、討たれる側にも助っ人が続々と詰め掛ける。皆人殺しをしたくてたまらないのだ。が、死なないんだなー。」

釈「・・・・・・、ばか?」

まゆ子「そして、その中でも時折現われるのが、悪人だ。悪人というのは、つまりは悪い奴だからぶち殺しても構わない。ってんで、皆大喜びでぶち殺しに行くんです。が、悪人も悪と呼ばれるほどの存在だ、なかなかに強いし技術も持っていてそう簡単には捕まらない。統合管制局も自前で取り締まるのは面倒くさいから懸賞金を掛けるので、悪人狩りは実に面白い仕事となる。もう、サムライが行列して順番待ちで悪人狩りをするは、集まったサムライを目当てにサムライがタコ焼きを売ったり商売をする奴も出るわ、でおおさわぎさ。」

釈「・・・・ばかだ、こいつらばかだ。」

じゅえる「とまあ、こいう感じね。飯と人殺し、という二つの軸で桐子の話は進んでいく。」

まゆ子「ちなみに、ウエンディズではしるくが当然のようにエントリーしています。ふぁもサムライ専門学校出たて新米のおサムライとして絡んで来ます。ウエンディズ北海道修学旅行篇で出た、「根矢ミチル」はこの話に出演するキャラです。」
じゅえる「”リボンの武士”てはなし。」
釈「あ、・・・あいつはそういうキャラだったのかあ。」

まゆ子「まあ、それだけではなく、上の方ではえらい悪党も蠢いているし、宇宙人もやってくるし、まあ忙しくやってるわけさ。」

 

釈「それ、いいです。それやりましょう。というか、私も出して下さい。ミスシャクティでいいですから。」

じゅえる「わるい。日本の話だから、印度人の出番は無いんだ。」
釈「そんなああ。」
まゆ子「贋印度人なら、有り。」
釈「ニセ!イイです! 私ニセになります。靴墨を塗って色が黒くなった事にします!!」

まゆ子「ちなみに、この世界では、”ハワイ布哇”は常夏の桃源郷として知られます。幻の果物バナナが一年中生い茂り、可愛いワニさんが戯れる、天国みたいなところだと、皆理解しております。熱海には”バナナワニ園”というこれまた素晴らしい保養施設がありまして、セレブ達が押し寄せます。ここには御禁制幻のワニさんが飼われていて、悪の女サムライがワニさんの皮を剥いでハンドバックを作ろうとします。」

釈「ああ〜、そんな素晴らしい世界が埋もれていたなんて。ああ〜、ああ〜ん。」

inserted by FC2 system