統則最前線、サルボモーター、(蠱螢(仮)、) 便宜的共通設定&年表 設定辞書&年表

 

 

年表 人物 地名 兵器&装備 組織機構 世界情勢 その他 補足

 

年表

この物語は三つの異なる時間軸を持つ為に、サルボモーター編と土器能登子編の二つが設定上も入り交じることになる。両者の事物歴史は基本的に同じではあるが、その限りを逸脱するもの、あるいは無かった事になるものも多数存在すると見込まれるが、気にしない気にしない。

1744年 延享2年。鶴仁波○○堂、京都を追放される。以後街道で辻強盗的に饅頭を売り捲る。

1895年 鶴仁波○○堂の分家「鶴仁波転輪堂」、自転車生産開始。人力車製造も手がけるものの、最終的には農業用荷馬車の製造に落ちつく。後には、とち狂って飛行機も作ってみた。

1947年 鶴仁波転輪堂、「ツルニハ」に改名。自動車生産に乗り出すものの、やはり失敗。後に、原動機付リヤカー三輪車という際物で小ヒット。地道に農業用荷車として地味に売れる。
1970年 ツルニハ、満を持して軽自動車「サルボ」投入。もちろん売れない。が、コスト削減の極みで天井取っ払って擬似コンバーチブルにすると、そこそこ売れる。
1993年 ツルニハ、満を持して「サルボ」後継の新車種「サルボU」投入。バブル崩壊後の不況で、そりゃ売れない。とち狂って素晴らしく無意味なロボット的ギミックを投入して、マニアには評価される。
1997年 ツルニハ、とち狂って搭乗型二足歩行ロボット開発に着手。「サルボU」の開発陣をそのまま移動させたのが運の尽きだった。

2001年 21世紀の始まり
2008年 世界金融恐慌の始まり。

2011年 日本の弱小自動車製造業「ツルニハ」が、世界初の搭乗型二足歩行人型ロボット「サルボモーター」原型機発表。
  1月28日 鶴仁波綾子誕生。
2013年 サルボモーター発売開始。初年度売り上げ数13機。

2016年 それまで懸念されていた地球温暖化による気象変動が、誰の目にもはっきりと分かるほどに顕著になり、極地の氷が溶けることで海水面の上昇が始まる。
  同年、中国経済バブルがはじけて大不況に突入するも、世界経済はその対策をすでに終えており中国国内でのみの混乱となる。
  むしろ、海水面上昇により、中国国内の混乱に対する国際的な監視の目が外れたことが、後の地域紛争症候群の引き金となる。
2018年 統則理論に基づく人口筋肉腕「統則腕」の実用化に成功。

2020年 鶴仁波綾子がサルボモーター試験機でサルボ格闘術の試験披露。同年サルボモーター大ブーム、年間生産数を上回る200機出荷。

2026年 ツルニハ、サルボモーター運動制御ソフト”AY2.00”発表。画期的な制御ソフトで、かなり簡単にサルボモーター操縦が可能となる。
  この年サルボモーター出荷1000台突破。ツルニハは農業機械部門を売り払いサルボモーター専業メーカーに転身。

  11月11日 土器能登子、誕生。

2028年 某国にて火山大噴火。火山灰が成層圏まで達し世界中で気候の寒冷化が観測され、食糧生産に大打撃。飢餓発生。
2030年 自然災害、国際犯罪組織に対応する為に、国連に大規模常設特殊部隊「国際治安警備機構」発足。同時に、常設「国連軍」発足するも、実体無し。
      サルボモーターのオプションパーツ「もふもふ手」(対野生動物接触用ハンドシューズ)発明。

  2030年2月14日 円条寺蓮、誕生。

2035年 「国際治安警備機構」が組織改編、「国連合同治安警備機構」に昇格。国連安全保障理事会の決議から解放される。
  また、「国際連合」に替わる「国家連合体」構想が初めて公になる。
  「国連合同治安警備機構」に常設「国連軍」司令部は吸収され、事実上これが「国連軍」となる。

2037年 地域紛争症候群と呼ばれる最初の紛争がアフリカ、東南アジアで発生、以降留め様がなく続発する。国連打つ手なし。
2039年 世界各国に対する中国の兵器輸出を禁止する国連決議を中国(北京政府)が敢然と無視。国連を脱退状態となる。
      同年、遂に中華人民共和国が事実上分裂、核ミサイルの凍結を条件にアメリカは中国国内での紛争に不介入の協定を結ぶ。
      中国江南省を中心に武装難民船団が次々に出港。東南アジアを中心に遠征開始。台湾政府、領海内所属不明船無条件撃滅宣言。

      ローリング・キング、サルボモーター中東1000キロレース2連覇、アメリカオーバルコース3連覇、小豆島(最終回)トライアスロン制覇。「受身王」として世界的有名人になる。ツルニハオフィシャル「シームツルニハ」に加入。

2040年 国連の事実上の機能停止を受けて、新たに国家連合体構想が浮上。急速に法整備が進む。
  それに対抗するように、アメリカの提唱で常設国連軍が正式に発足するも、アメリカ軍参加無し。
  正規軍同士による大規模な戦争はそもそも考慮されておらず、小規模武装勢力による同時多発テロや掠奪占領に対処する、新たな枠組みが模索される。

      ベンジャミン・ミン・ジャン、サルボモーター格闘大会(スイス)優勝。「チームツルニハ」加入。

2041年 サルボモーター 現在
      最初の統則戦闘ロボットTACO-6「統則戦車」、完成。投入。

2042年 太平洋諸島戦争(第二次太平洋戦争)と俗に称される、日本国軍の南北太平洋平和維持活動が開始される。
2043年 統則戦闘ロボットTAKO-8、完成。実戦投入。
      サルボモーター、アメリカ合衆国のロケットで月に行く。

  2043年 円条寺蓮、大病を患い、生来持っていた霊的能力の全てを失う。子供が産めないと宣告されるも、この時代の医療水準では体外で受精卵を育成出産することが可能。
  2044年 土器能登子、高校卒業と同時に日本国軍海上戦力部隊に入隊。特殊戦闘ロボット部隊に配属。

2047年 「国家連合体」正式発足。大規模な国家間紛争の調停と核戦力・宇宙戦力の均衡を目的とする「国際連合」と、国際組織犯罪や武装勢力の根絶を目的とし統一された経済・通貨機構を主体とする「国家連合体」に役割分担されることとなる。ただし、アメリカ、ロシア、中国(紛争中)は批准せず。

  6月27日 土器能登子、ラバウル島にてリモコン毒矢にて負傷。意識不明の重体。開発初期の統則マイクロマシン療法による毒素除去でかろうじて一命を取り留める。治療中、妊娠初期である事が判明、受精卵を子宮より摘出して人工子宮に移される。
  8月15日 太平洋諸島戦争、ほぼ鎮圧。日本国軍派遣終了。

2048年 「常設国連軍」解消、「国家連合体治安警備軍」に一本化。国際組織犯罪撃滅を目的とする大規模常設特殊部隊で、国家間戦争の局面には投入しない合意が成り立つ。

  7月1日 土器能登子、出産。但し、本人は関与無し。土器るぴかと名づけられる。7月31日母子共に退院する。8月1日をもって日本国軍除隊。ロボット技術系短期大学に入学。
  9月30日 ヘクトールパスカル誕生。(仏蘭西、EU籍)
  10月 中国内戦ほぼ安定状態に。5個の国に事実上分裂。

2050年
  3月1日 土器能登子、スカウトにより中四国広域警察警備部統則ロボット隊に入隊。4ヶ月の研修の後に廣嶋中核首都警察統則ロボット隊市内高速展開小隊隊長に就任。
  3月 円条寺蓮、大学卒業。
  9月1日 廣嶋中核首都警察統則ロボット隊実動開始。

2056年 現在!(T) 土器能登子29歳、円条寺蓮26歳
  4月1日 円条寺蓮、廣嶋中核首都警察に出向。[物語の始まり

 

  2069年 ヘクトールパスカル、物理数学工学哲学博士号取得。史上初の電哲探偵と呼ばれる。
2098年 現在!(M) ヘクトールパスカル50歳。

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【蠱螢(仮)】

2007年 三馬鹿入学。 

 

人物

「キング」; サルボモーター本編主人公にして語り部。世界的なサルボ乗りで、「受身王」の名を恣にする。鶴仁波綾子の恋人で、世界中を飛び回りサルボモーター普及に務める。

鶴仁波綾子; 女性2011年1月28日生まれ。サルボモーターを世界で唯一社製造する「ツルニハ」の令嬢。30歳、吹石一恵似の美人。2032年度ミスディープオーシャンの準ミス。
  メーカーオフィシャル「チームツルニハ」のリーダーとして世界中でサルボモーターの運用と宣伝に務める。
  「ツルニハ」内部でもろくに動かせなかったサルボモーターを子供特有の柔軟性で克服し、実用的な運動制御ソフトの構築に導いた。サルボモーターを実用可能なものとした偉大なる先駆者として世界中で大いに尊ばれる。また実験の過程でサルボモーターによる格闘を始め、始祖としての伝説も帯びる。サルボモーターによる富士登山300回はギネスブックに載る。
  現在は競技者としての活動はせず、もっぱらツルニハの広告塔として世界中を飛び回る。高額商品であるサルボモーターの顧客は各国VIPが多く、彼女の美貌はセールスに大きく役立っている。映画テレビ等の出演歴多数。
  地球環境保護の為にサルボモーターを役立てよう、という名目で世界中の環境保護団体から寄付を募り、「チームツルニハ」の財政を賄っている。  

ベンジャミン・ミン・ジャン; 元アメリカ海兵隊軍人のサルボ乗り。サルボモーターでの格闘を得意とする。黒人、190センチ以上の巨体で特製コクピットが必要。2040年サルボ格闘チャンピオン。「チームツルニハ」所属。

鶴仁波芽衣子; 綾子の姪。18歳女子高生。サルボモーターの製造を増強して、世界中に大量に普及させようとする半分狂信的な女の子。後に「ツルニハ」の社長に成る。

鶴仁波清子; さやこ。綾子の祖母。文学的な人で物静か。京都在住。

スキップ銀二; キングのライバルでサルボモーターでは不可能と思われるスキップを実現する高度な技術を持つ。更なる高みを目指して「パ・パ・ドゥ」の習得の為に、達人が鍛えた脚用専用板バネを求める。

 

土器能登子; かわらけ のとこ。本編主人公A。29歳女性独身一女あり、170cmで巨乳、髪はショートだが一見して、60年以上前の大阪府知事横山ノックの髪型に似ている。名前に”能登”と付くがこれは母親の生地で有る為で本人は関係ない。
  廣嶋中核首都警察統則ロボット隊市内高速展開部隊小隊長。太平洋諸島戦争時には特殊戦闘ロボットのオペレータとして活躍し、導入されたばかりの統則戦闘ロボットタコハチを駆使ボットオペレータとして知られる。終戦間際ラバウル島にて誘導毒矢を受けて瀕死の重傷を負い、当時実証研究中だったして数々の作戦を成功に導き、海上戦力部隊中でも屈指のロ統の後除隊して工業系短期大学に進学、在学中に廣嶋中核首都警察が新設する統則ロボット隊の広域オペレータとしてスカ則制御マイクロマシン療法でかろうじて一命を取り止める。そウ場よりも遥かに複雑怪奇な状況下でのミッションを遂行せねばならない警察任務においては、教官と言えども研究と運用トされ、更に統則ロボットオペレータ養成の教官となる。しかし戦の要と判明したために、市内高速展開部隊小隊長を兼任する。現在母子で警察官舎に居住する。特定の男性関係は無い試行錯誤を積み重ね技量の練度を不断に上げて行くことが必ものの、意外と惚れっぽい。
  体内の免疫系神経系の相当部分が治療に使った初期型統則マイクロマシンと融合しており分離不能、要監視状態にある。身体のバランスが時折破壊的に悪化し何度か死に掛けるも、その度新製品のマイクロマシン投与で不死鳥のように蘇る。はっきり言って統則型マイクロマシン療法のモルモットで、その為奇っ怪な特異体質を身に付けている。 

(備考): 「統則最前線」設定は現在二転三転しており、彼女の設定が一番変更が多い。現在も定まっていない為に、これもまたフェイクに近い。

土器るぴか; かわらけ るぴか。土器能登子の娘。9才。謎の小学生。髪の毛ふわふわの、不思議な印象を他に与える女の子。どちらかというと、母親よりもよその小母さんである円条寺蓮に要望が似ている。
  実はるぴかの父親は、古代英雄人種と呼ばれる古の血脈を受継ぐ人物。当然、るぴかもその血を引く。超常の力が使えるはずではあるが、未だ発現していない。

円条寺蓮: えんじょうじ れん。本編主人公B。26歳女性独身?183cmで長身巨乳ふわふわとした髪質の茶髪、眼鏡を掛けている。旧華族(公家)の一人娘であり、古来より陰陽寮に属する妖怪退治の記録係を務めて来た家系。しかし超能力は無い。廣嶋中核首都警察には皇宮警察隊からの出向という形をとっており、名目上は”皇居周辺警備に統則ロボットを導入する研究”であるのだが、そんなことは警視庁がやれば良いことで、あからさまに不審。廣嶋市内各所に電気まねき猫やその類似品を多数設置する作業を行っており、その真意は誰にも分からない。昴賢同盟にも関与しているらしい(未定)関東地方にある有限会社「蓮クリーン」の設立発起人で実質オーナー。現住所はそこになる。社員3でおまけ1の女性だけの会社であり、おまけ1は蓮の愛人。京都に実家があり母親が一人で守っている。 

ヘクトール・パスカル: 本編Mの主人公。本編Tにおいては土器るぴかと同年齢で、T編は彼の親の世代の物語になる。身長180cmでがっしりした体つき。頭部は半ば禿ているがそこがまたセクシー。かっこいいエルキュール・ポアロという外観、仏蘭西籍。
 極めて優秀な頭脳と博識、一発で物事の本質を見極める洞察力と、綿密に事象の構造を立体的に把握する想像力の持ち主で、世界初の電哲探偵として知られているが、同時にスポーツマンでもあり馬術剣術格闘技にも精通し、軍隊で特殊部隊員として活躍したこともある(EU軍仏蘭西ユニット、大尉)。独身ではあるが世界中に恋人が多数存在する。隠し子もまた多数。男から見ても女から見ても非常に魅力的でセクシーな得意なキャラクターで、メディアにも度々登場する。彼の働きは単なる犯罪に留まらず、国家レベルでの謀略やそれ以上のものにまでも関与するので、年中暗殺の危険に晒されている。
 2098年現在、暗殺の魔手がとうとう成功を納めて彼は致命傷を負うものの、彼を陰ながらバックアップしてきたピルマル理科工業が派遣した米軍介錯人SUOUなる者の手でサイボーグ緊急処置手術を施され、頭部のみの保存に成功。クローニングによるボディが出来上がるまでの期間(2年間)を首だけの状態で特殊なカプセルの中で過ごす。しかしその状態でもなお世界への献身を怠らなかった。カプセル中の彼は専用メイドロボットANITAにより運搬される。常に暗殺の危険に晒された為に生涯結婚はせず、彼の身の回りの世話はメイドロボットHELMINEが行ってきた。
 古代英雄人種の遺伝子の発現率が最も高い世界38人の中でも特に著しいと、昴賢同盟は認定している。 

相原志穂美: 27歳女性。小学校の先生。土器能登子の娘るぴかの担任。とても怖いけれど、格闘技に優れていて安全面ではとても頼りになり父兄からの信頼が厚い。結婚はまだだけれど、この世界ではかなりもてているらしい。妹は鳴海で24歳OL。 

東雲綾子: 61歳女性長身で190cm以上もある。横浜近辺あるらしい**大学教授で文化人類学で「比較外法論」を講ずる。要するに円条寺蓮と同類であり、廣嶋電猫曼荼羅を考案した中心人物。円条寺蓮はしばしばこの人の元に相談に上がるが、別に卒業生というわけではないらしい。格闘と武術に極めて明るく、はっきり言って化け物クラスで戦争時には中国大陸でスパイらしきことをやっていたとされる。ちなみに高齢ではあるものの、2050年時点での美容整形技術からしても驚くような若さと美貌の持ち主。彼女を”仙女”と呼ぶ人も居る。 

橘家弓: 31歳女性。東雲綾子の個人秘書。学部秘書とかは付いてないので、彼女がひとりで東雲綾子のアシスタントをしている。師が師だけに彼女も武術を相当なレベルで身につけている。研究者ではないので大学から給料をもらっておらず、けちんぼの東雲綾子の薄給で我慢している。東雲綾子はどこからともしれない大金を手にすることも多いが、金づかいが荒くほとんど個人資産と呼べるモノは無い。発掘品や禁制品である魔術の道具やらを納めた倉があるだけだが、そこの管理人でもある。 

嵐山どろっぷ: 警官。21歳女性、身長155センチで採用基準ぎりぎり。廣嶋中核首都警察統則ロボット隊市内高速展開小隊隊員。変な名前だが、この世界では気にしない。廣嶋中核首都警察では統則ロボット隊への志願者はなぜか背の低い婦警ばっかりで男子警官は応募しない。というよりも、人手不足で外勤警官はどこの部署も確保に大変で、男子警官に対しては統則ロボットなんて言う身体的能力が関係ない部署への配属願いを握り潰しているらしい。 

蔡典子: 警官。22歳女性、身長157cm。廣嶋中核首都警察統則ロボット隊市内高速展開小隊隊員。戦争前から日本に住んでいる華僑の娘であるが日本国籍である。実家はかなりの金持ちで山の手の家がある。本人は割とのんびりした性格で、コンピュータに明るい。嵐山どろっぷと共に土器能登子の下で働くが、嵐山ドロップがフロントで蔡典子がバックアップ担当であることが多い。統則ロボットオペレータはどこでも喉から手が出るほど欲しい人材であり、彼女も近々外部に転出すると見込まれている。でこ。 

謎の復讐者: 円条寺連が廣嶋電猫曼荼羅で捕獲する最終目標としている人物。戦争前に某所に監禁されたものの数年前に脱走、以降消息不明。昴賢同盟の構成員だったと思われる。円条寺連には知らされていないが、ピルマル細胞を一部盗み出しており、その事実からも相当深いレベルで機密に関与出来る最高級のメンバーだったと思われる。資料からは2056年当時50歳と思われるが、そもそもの経歴が欺瞞に満ちており実際は不祥。 

地名

・廣嶋中核首都: 中四国州の首都で広島市の東、呉とを結ぶ位置にある海面に新しく建設された。既存の平地はむしろ農業に使うべきだということで重点的に手当てされ、逆に水没しても構わない場所はほとんど手が入れられず沈むままに任せたが、それゆえに特定地区では地価が極度に下がり、こういう芸当も可能になった。

 

兵器&装備

サルボモーター; 2011年に発明された搭乗型二足歩行ロボット。全高6メートル、全備重量2〜3t弱。歩く事しか能が無い、万無能機械。でも面白い。
   手足が炭素繊維製の長大な板バネとそれを曲げる為の空気圧チューブアクチュエーターで構成され、極めて衝撃に強い構造となっている。原理的には、機械化竹馬。

「8メートル型」; サルボモーターに作業用マニュピレータと尻尾型支持脚を付けて作業が出来るようにしたもの。通常の6メートル型では出力不足の為に8メートルを必要とする。机上のプランに過ぎず、ツルニハの資金力では開発できなかった。

サルボロイド; エア駆動で動くサルボモーターを改良して、人工筋肉を採用した新型ロボット。静的な直立すら出来ないサルボモーターの欠点をほぼ覆い隠し、繊細な作業に使える。
  ピルマル理科工業はこれを軍事用に改造して前線に投入しようとする。無人兵器ロボット兵器の導入が一回りした結果、それらをケアする汎用性の高い作業用ロボットが必要となり、従来型作業機が擱座する場所にでも入っていけるサルボモーターの万能性が注目されたわけだ。
  このような経緯から、ピルマル理科工業ではサルボロイドを無人機に仕立て上げるだろう事を鶴仁波芽衣子は看破し、ホビーロボット市場にピルマルが参入しないと見極めた。

サルボフロッグ; 欧州のとある金髪美女社長の以来で開発された特殊サルボモーター。最初から湾曲した脚部を持ち、ガニ股である。主に水中で平泳ぎをする為に用いられるが、セッティングを替えて湾曲部を後方に向ければ、陸上でもちゃんと普通に使用可能。依頼者がカエルマニアであり、長年カエルみたいなサルボモーターを夢見て来たので、「サルボフロッグ」の名を持つ。

「かっこいいロボット」; 古典的とも言えるガンダム系の正統派搭乗型二足歩行ロボット。サルボモーターの成功を見て開発された。
  繊細な構造で正確に機能し作業に用いる事が可能。役に立つロボットであるのだが、サルボモーターのように転倒する事を前提に設計されていない為に、転けると壊れる。どつかれると壊れる。
  2042年頃に相次いで開発されたが、この時期は兵器の無人化が一通り進展し、メンテナンスの為の装備も無人化しようと各国試みた為。この時までに唯一存在した大型人型ロボット「サルボモーター」が注目されるは無理もない。

「ヴァン・ダム」; 「かっこいいロボット」1号。ヨーロッパの兵器メーカー「IRSP」の試作機で、ちゃんと肘膝関節を持ち、立派な頭が有る。またサルボモーターが柔軟な材質の手足を利用して活動域を拡げているのを参考に、機体各部にクッションを装備してあらゆる体勢を可能とする。主任設計者は外部から招聘したアル博士。
  娘のアル・エルシイが操縦してアフリカで行われたサルボ格闘大会に出場するも、ロボットのコンセプトの違いからサルボモーターの運動にまったく追随出来ず敗北する。

サルボモーター・フライトユニット; サルボモーターが空を飛ぶ為の装備。実体はパラグライダー。時速100キロ程度で飛行可能。また、単純に空中投下されてパラシュートで地面に下りる事も出来る。

タモ; サルボモーターの右手に装着してゴミを拾う為の網。結構便利。

赤外線レーダー; サルボモーター標準装備のセンサー。ミリ波レーダーも搭載する。赤外線は主に人間の存在を感知して安全を確認する為、ミリ波は地面の凸凹を測定する為に使われる。赤外線で空中を数十キロ先を飛ぶ物体を感知出来る。この時代、至極有り触れたセンサーである。

太陽光レーザー発電衛星; 宇宙空間に配置された人工衛星で太陽光を集め直接レーザー光線を作り、地上基地局に照射して水素を作り出す施設のこと。地球温暖化対策のエネルギー供給源として最も期待されている。2025年から本格建設が始まり2042年現在は実用レベルにまで出力が増大して全世界に水素を供給し始めた。

人工筋肉; 電流もしくは化学物質をエネルギー源に動く筋肉状のアクチュエーター。サルボモーター開発時にはあまり出力の大きいものが供給されていなかった為に用いられなかったが、2042年に月面へサルボモーターを投入しようという計画に際して本格的に搭載研究がなされる。これによりサルボモーターは極めて微細な運動が可能になり、作業機械としての能力を獲得して、サルボロイドへと進化する。

歩行姿勢制御システム; サルボモーターの特異的な歩行機構を制御する為のソフトウエア。「ツルニハ」は元が自動車メーカーでありソフトウエア開発能力は低く、サルボモーターの制御でも、悪路面での高速走行を重点としたシステムしか構築し得なかった。その為世界中のサルボ乗りやコンピュータ技術者が無償で制御システムを作り上げ、様々な運動やメーカー想定外の作業が出来るようになった。

「AY2.00」; 歩行制御システムバージョン2.00。ツルニハが提供した最初の実用歩行制御システム。それ以前のバージョンはとてもではないが自由な運動など出来なかった。「バージョン2.00」の投入により、初めて大衆向けのビークルに成り得たといえ、ツルニハ社史にも大きく取り上げられる記念碑的存在。
  これの開発を語るにはテストパイロットである鶴仁波綾子の協力を特筆せねばならない。生まれた時からサルボモーターに接している綾子は、ツルニハ正規のテストパイロットをはるかに越える適正と技量を示し、本来不可能であるはずの運動さえも実現し、歩行制御システムの構築に大きく貢献した。型番の「AY」自体、”綾子”の略である。
  「AY1.00」は綾子9才時のバージョンで、このシステムを使って史上初のサルボ格闘を実現し、世界中にサルボモーターブームを引き起こす。しかし、やはり常人には扱いかねる難物で幾度もバージョンアップを繰り返し、ようやく万人に利用可能としたのが、綾子15才時のデータを元にする「AY2.00」だ。
 その後、制御システムは順調にバージョンアップを繰り返すものの、綾子のみのデータではなくなっている。長年の研究の末に様々な事が可能になったが、今でも未体験の運動をする際には熟練パイロットは「バージョン2.00〜2.35」を使う。ちなみに綾子本人は自らのみのデータ更新を続け、「バージョン2.8-Y40」となる。

潜水艦発射偵察衛星; 旧ソ連が開発した潜水艦からSLBMを使って打ち上げる短期間用偵察人工衛星。米「スターウォーズ計画」によって軌道上の軍事衛星が一方的に撃破されるのに対抗して、数で補おうと開発された。開発自体は成功したものの、北極海からの打ち上げ実験には失敗。残骸が氷の中に隠れており、2042年に発見される。
  もう60年も前の機械であり既に技術的に見るべきものも無いが、なぜか争奪戦となり北極の氷原で銃撃戦まで展開される。この衛星に使われている通信暗号システムは極めて旧いものの、CPU供給を西側に依存せざるを得なかったロシアは最終的な安全牌として全てを自国で掌握出来る原始的なコンピュータを用いており、ごく最近まで類似のものが使われていた。現在では完全に光コンピュータに移行しているものの、未だにプロセッサ供給を外国に頼らざるを得ず、安全保証システムの基本的な設計はこの時代から変わっていない為に、参考資料と成り得る潜水艦発射偵察衛星の残骸は絶対に回収しなければならなかった。

ロボットアーマー; 軍用のパワードスーツ。全高2メートル程度でチタン装甲を持ち、搭載のみならず手持ち武器の使用も可能な完全な戦闘兵器。一応手足はあるものの、人型とはとうてい認められない形状をしている。世界中の軍隊で使われているが、過渡期の存在として未だ有用性が完全には証明されていない。北極海で主人公らはロシア軍が保有するものと遭遇したが、落水して復帰不能となりサルボモーターで助けることとなる。

カーゴジャイロ; オートジャイロの原理を利用した電動無人輸送機。5〜10トン程度の貨物を時速120キロという低速で運ぶ。燃料電池を用いた電動ヘリコプターの開発からの派生品で、燃費が抜群に良く構造が単純な為機体価格が低いのが最大の利点。またオートジャイロ特有の失速事故が起きにくい構造も運用を簡単にしている。垂直離着陸も限定的に可能。通常有人機による先導で10機以上の無人機が列を作って編隊飛行する。故に「空中列車」とも呼ばれる。飛行物体としては極めて低速だが貨物輸送量の大きさととコストの低さから難民への物資輸送に大きく役立っている。サルボモータは軽量の為、これで空中輸送出来る。

「SARVO」;「ツルニハ」が70年初頭に販売した軽自動車。農業機械を作っていた「ツルニハ」が自動車事業に参入した際の第一号モデル。思いっきり安物に作られており、若者を対象として売り出されたが、当然ぜんぜん売れなかった。しかし更なるコストダウンを敢行し屋根までちょん切ったところ、安物コンバーチブルとしてそこそこヒットして命脈を繋ぐ。

「SARVOU」;「ツルニハ」が90年代に売り出した軽自動車。「SARVO」のモデルチェンジでようやく他のメーカーと同じ土俵で戦えたが、生憎のバブル崩壊で販売数は芳しくなく、場当たり的なマイナーチェンジを繰り返してロボット技術を応用した珍妙なギミックが投入された。この時の主任設計者が、サルボモーターの開発責任者であるから、珍妙な機械になったのは当たり前。

「もふもふ手」; サルボモーターのオプションパーツで手の設置部分に装着する。シューズの一種である。基本的な機能は地面に接地する時の衝撃緩和であるが、特殊なスポンジでできておりもふもふと柔らかい。主に象とかサイ、熊といった大型獣とふれあう為に用いられる。肉球有り。

マジックポット; 2040年頃に登場したエネルギー発生装置。核分裂/核融合ハイブリット型発電機で基本使い捨て。戦闘機や戦車に搭載できるほど小さい。
  中性子ミラーで構成された反応室に極微量の核分裂燃料を挿入し、重水素-三重水素を燃料とする核融合による中性子で起動する。連鎖反応を利用しない為に暴走があり得ず、制御が簡単。発生するエネルギーは極めて大きくしかも長時間反応が続くが、一度反応させると停止が出来ず、修理や再利用は出来ない。戦闘機に用いると超音速巡行(M2以上)で10万キロ連続飛行が可能となる。またレーザー砲、ビーム兵器のエネルギー源としても用いられる。
  主要部品である中性子ミラーは極めて強固であり、砲弾やミサイルの直撃でも容易には破壊出来ない。故に移動する兵器に搭載する事も許可される。しかしながら1基20億円以上で使い捨てである為に、使用する国は限られる。また製造元であるピルマル理科工業は軍事機密としてその構造・製法をまったく開示しておらず、同盟国以外は使用が不可能である。なお反応停止後は内部構造が融解している為に調査しても構造を推察する事ができない。特に発電機能の構造がほとんど謎である。

サルボエンジェル; ツルニハ次代の経営者と目される鶴仁波芽衣子(18才)が目論む、未来の主力商品。早い話が、サルボモーター構造の人間大メイドロボ。当然なんの役にも立たない。しかしながら、大型サルボモーターと同じく野外での運動特性に優れ、凄まじい速度での走行が可能となり、ホビー用途としては十分に訴求力を見込まれる。
  また芽衣子これを警備用途に用いる事も画策する。警備には人間の姿がその場に存在することが重要な場面があり、しかも狙撃や自爆テロ等の危険にさらされる。人型ロボットによる警備任務は世界中で実験されているが、いずれも人型ロボットのコストの高さが障害となり頓挫した。そこに、非常に安価な構造を持つ、立って歩く以外の機能を持たないサルボモーター形式のロボットを投入しようというわけだ。
  試作機はすでに完成しており、鶴仁波○○堂の庭で飼っている。芽衣子の手に仕込まれた触覚感応マウスにより、かなり器用な動きをする。通常のメイドロボがほぼ自動でAIによる家事労働を行うのに対し、サルボエンジェルでは遠隔操縦によるユーザーの手仕事となるらしい。

触覚感応マウス; 手足に挿入したマイクロチップが触覚神経に情報を伝達しモノの形状を伝え機器を操作する、ポインタ技術。概念的には前世紀から考えられており、サイボーグ技術の進展により普通に完成した。基本的には義手義足等の制御に用いられる為のものである。しかしながら、サイボーグ技術がどんどんと進化した上での結論は、機械義手義足はほんものの手足の代わりにはならず、あくまでも道具でありまた道具に徹するべきである、となった。故に、触覚感応マウスは機器操作の利便性を向上させる進化を遂げ、手足とは独立した操作感を得ることとなる。
  触覚感応マウスは2040年代には非常に精度の高いものに完成し、提示される触覚情報で文字や図形が読み取れるようになる。シーケンシャルな情報ではあるが文章を読む事も可能である。さらには色や感触、粘度といった形状に付随する属性も瞬時に判断する事が可能となる為に、多彩な情報を瞬時に認識出来る。加えて、両手両足に埋めこまれた触覚感応マウスを独立して操作する事が可能で、人類史上初めて、人間にマルチタスク環境を導入することが叶った。
  微細なアナログ感覚を識別フィードバック出来る為に、乗り物の操縦、特に難しいサルボモーターの制御にも十分役立つ。2041年前後のツルニハの課題は、この触覚感応マウスによる操縦をどの程度サポートするか、であった。従来の手足の感覚による操縦は芸術の域に達するが、これの導入により初心者でも容易にその域に到達する可能性が示唆される。これがマーケット戦略上でどの程度の影響をもたらすか、ツルニハ開発陣の誰も読み切れずに躊躇していたわけだ。しかし、オフィシャル「チームツルニハ」のエースパイロットにして操縦技術顧問のローリング・キングの言によれば、「音は出ても人を感動させる演奏が出来るとは限らんだろう」ということになる。

 この技術と対比されるのが、いわゆる「電脳技術」だ。脳内にマイクロチップを埋めこみ、脳が直接デジタル情報を取り込み操作する電脳技術は21世紀が始まるとともに急速な進歩を遂げて、2040年代にはかなりの自由度を得た。だがその限界もはっきりと認識され、弊害も問題となる。そもそもが脳を直接電子機器に接続する事は生体に負担が大きく、また意識を電脳に集中させることで身体本体の制御がおろそかになり、身体的危険が増す。また脳内のマイクロチップは毎年進む技術革新で急速に陳腐化し、早くやった者が馬鹿を見る状況に陥った。さらには個人情報の漏洩や犯罪利用、とくに電脳処理をした者を拉致しての情報略取や生体認証資格の盗用。拷問の手段としての電脳ハッキングが世界的な問題になる。加えて、電脳を利用したプライバシーの侵害、いわゆる「電脳ピーピング」が大問題になる。これは、情報機器を持っていない生身の人間であればこそ許される日常の場面を、電脳処理者が記録してインターネット上にアップロードする事で起こる、個人情報の漏洩である。また企業や政府機関の機密情報も電脳処理者が盗み出す危険は当初から指摘の通りに頻発し、ついには企業機関の機密エリアには電脳処理者の侵入が許されない、というよりもそもそも起用雇用されない事態にもなり、本来電脳により個人能力が増大し社会生活において他者に優越し利益を得るはずの構造が逆転する。劇場や映画館、コンサートにも入場を断られ、足が付き易くなるとヤミの犯罪者にも相手にされない。ここまでの不自由を甘受すべき理由は誰にも無いわけで、ほどなく世界的に電脳処理手術は身体的欠陥の補正に絶対必要な者以外は許可されなくなった。そもそもが、頭の中でWindowsが動いている間抜けなインターフェイスではどうしようもない、脳機能の本質的向上ではなくほんの少し手間が省けるに過ぎない、他の操作技術も向上して電脳化のメリットが少なくなった、等の理由で急速に廃れてしまう。

 

 

統則兵装、統則ロボット、統則戦闘ロボット: (別紙参照) 

 

再帰性装甲: 対HEAT用の装甲板。入射したエネルギーを入射した方向にそのまま返す性格を持つ材料で、HEATが集中するメタルジェットで装甲を貫通するのに対して、更に集中した反射エネルギーでメタルジェットを拡散してしまう。電磁装甲が装備の追加が必要なのに対してこれは普通の装甲板としてそのまま使えるので多用されるようになった。主に軽装甲車両やアーマースーツに用いられる。
  マジックポットで使われる中性子ミラー技術は、この再帰性装甲の親戚にあたる。

CNTラバー: CNTをらせん状に形成しコイルにすることで、この集合体に弾力を与えることができる。まるでゴムのような特性を示す為にCNTラバーと呼ばれる。統則ロボットの統則腕やキャタピラ、クローラ、通常の車両のタイヤにも使われる。極めて高い抗弾性を持ちほとんど摩耗しない。歩兵用のアーマーにも多用される。

防爆シールド: 爆発物の爆風を防ぐシールド。CNTの枠に張られた目の細かいCNTラバーの網、通常はただの黒い板に見える。主に破片をキャッチして逃さないようにする事で爆発による破壊をガスの勢いだけにして最小限の被害で食い止める。軍、警察、主要官庁や企業、スタジアム等の爆発物によるテロの危険がある場所には大抵設置されている。もちろんこれだけでは不足するので、最近の建築物には爆圧を巧みに逃す設計の工夫がされている。「防爆スプレー」という簡易型のシールドもあり、スプレー缶に入ったCNTラバーの泡で爆発物をくるむことで、ガスは抜けても破片は飛び散らないようにする。但しこれは、破片の保存で証拠を保全する程度の効果しかない。

 

レーザーアブレーションロケット(LAR): 外部よりのレーザー光線により推進剤を加熱して飛ぶ方式のロケット。比推力が相当に大きい為に推進剤搭載量が少なくて済み、また化学反応を使わず推進剤にタダの水を使ってもロケットが飛ぶために、飛翔体が非常に安価になる。有人ロケットには使用されていないが、小型衛星を打ち上げる時はほとんどこの方式で単段式になっている。また、この特性を利用して迎撃ミサイルを大量に空中に打ち上げるという使い方もなされている。2040年代に原子力艦船に搭載可能になった。
  太陽光レーザー発電衛星の建設は、当初軌道上から供給されるレーザー光を用いてこのLARを打ち上げ建設資材を宇宙に送り、展開した太陽光レーザー衛星の照射するレーザーでまたLARを打ち上げる、という形で効率的に進められた。故にロケット建造以外の打ち上げコストは名目上存在しない。またこの軌道投入システムはその後も存続し、安価に大量に宇宙空間を利用する技術として現在の宇宙開発をリードする。また複数のレーザー光線を照射して大型の機体をそのまま宇宙に持ち上げる事も可能となった。
  いまやこれを「光エレベーター」と呼び、軌道エレベーター建設を唱える者は居ない。 

レーザー光線砲: 対ミサイル迎撃に20世紀から開発が進められてきたレーザー光線砲は、この時代ほぼ実用が完成している。ただし出力はそれほど大きくはなく、十分な防御手段を講じた飛翔体には長時間照射をしなければ効果が乏しい。地上および艦船に搭載された原子炉をエネルギー源として使用するので機動力に乏しく防御的な兵装として考えられており、未だミサイルが戦場の主役である。航空機搭載型は対レーザー防御が発展した現在では出力不足でほぼ使用されていない。
  ただし、このレーザーを利用してLARを飛翔させる事は可能で、単純安価な弾体をM15以上の超高速ミサイルとして用いている。 

連装弾砲; 一本の砲身に複数の弾体を詰めて順次連続して発射する砲。すべての砲弾が砲身内に有るタイミングで連続発射を行うと、列車のように連なって超高速で飛んでいく。先頭の弾頭が空気抵抗を排除する機構を持っている場合、40ミリ砲であっても高度1万メートル以上にまで軽く到達する。また第3世代型MBTのセラミック正面装甲を簡単に貫く事が出来る。2040年頃の戦車はほぼすべてこれを搭載し対空迎撃機能を有するが、戦車自体の有用性はこの時代ほぼ消滅しており単なる装甲車扱いである。

37mm対犯罪者砲: 警察が使用する自走砲。現在では使われていないような小口径の大砲を専用のトラクターに搭載した奇妙な兵器で、ボックスで給弾することで6連射可能。円条寺蓮が廣嶋首都警察に持ち込んだ。砲弾はコンクリート弾つまり石であり、乗用車・通常防弾車程度には十分な貫通力があり一撃で行動不能にするが、爆発を伴わないために殺傷力が低い。また着弾時に破壊した石粉が飛び散る威力の弱いHE弾としても使え、立てこもり犯に対して建物をがりがりと破砕しながらも人命には影響が少ない、という風に使える。ロボットにも効果的で、それが円条寺蓮の主目的であろうと思われている。

AK-47: 軍用ライフル銃。非常にタフである為に世界各地で使われて来たが、さすがに設計の老朽化が目立ち効力がなくなってきた。しかしそれでも武装難民の主力兵器には違いなく、一般警察や軽装備の軍隊相手には十分な威力を持つ。ただし、精度が低い為に、自動照準装置が普通に使われるようになった現在の戦争ではアウトレンジ攻撃に対抗できない。生産もほぼ終了しており在庫のみとなっているが未だ膨大な数があると言われている。武装難民の使い捨てロボットに搭載されることも多い。

AK-147: 中国で密造されたという12.7mm仕様の重機関銃。兵器専門メーカーの製品ではなく、中国経済バブル崩壊で困窮にあえぐ機械工場がAK-47をスケールアップして適当にでっちあげたと言われている粗悪品で命中精度は劣悪。しかしちゃんと発射可能で重機関銃としては発射速度が低い分扱いやすく壊れにくい。大量に製造されて世界中で密売された武装難民の定番装備。20ミリを発射可能なAK-247というものもある。

外壁透過ライフル: 狙撃銃。監視カメラ等が多用されるこの時代の立て篭り犯は決して姿を見せる事はなく、コンクリートの壁に守られて狙撃する隙がなくなった。その為に建築物の構造を解析して抜き易い壁を貫通して標的を制圧する専用のライフル銃が作られた。12.7・15・20ミリと種類があるが、弾体はダーツのような形状をしているのが特徴。貫通するだけではなく、標的内部で爆発する事を考慮した貫通榴弾も用意され、爆発物が点火される前に運動エネルギーで粉々に粉砕して機能させないといった使い方もある。

歩兵用CIWS: 対艦ミサイルを最終的に防御する近接迎撃システムを対歩兵ミサイル用に超小型化したもの。射程100m以下で使われる。使用される火器は5.56ミリ弾弾頭を液体炸薬で発射、もしくは9ミリ拳銃弾で技術の進歩の結果一回の迎撃に10数発程度で足りるのだが、やはり数百発は携行する必要があり重量の関係上車両やロボットに搭載する。必要に応じて無警告で自動発砲されるために、これを使用中の行軍は厳重な注意が必要である。実は個人装備として弾倉10数発分しか可動しない拳銃型も開発されているが、パワードスーツでもない限りはやはり運用不可だった。

29式歩兵ライフル: 日本国軍装備の正式ライフル。5.56ミリ弾20発装填。人間がそのまま使う分には普通のライフル銃であるが、コンピュータ制御をする事を前提に設計されており、照準カメラマウントが三ヶ所にある。ストック部に電池が入っていて、銃に内蔵されているすべてのコンピュータの電源をまかなっている。ビデオ撮影機能もあり、ガンカメラとして発砲時1秒前に遡って記録する。これは国際条約で規定されたもので発砲の正当性を立証する為の必須の装備であり、これが無い銃をビデオ撮影ナシでは使えない。射撃精度は極めて良好で、コンピュータアシストの照準スコープ使用で、600メートルでも直径5センチの的に確実に当てて来る。高い命中精度はコンピュータ・ロボットが使用する事も考慮されている近代のライフル銃に必須の条件だ。本銃は29式とは言うものの、その後何回もの改修が行われている。

自律照準銃・拳銃: 自動で標的を発見して射撃するシステムを搭載した銃。銃本体をモーター付きの銃架で回転させるタイプは「ロボット銃」と呼び、これには含まれない。本体は固定されていてその正面2〜3°に対して銃身を振り、銃内部で照準する機構を持った銃の事。普通は銃身が上下左右で振動しており射線上に標的が存在すればタイミングを合わせて発射する。素人がほとんど標的を定めずに発砲しても当たってしまうという器用な銃で、警備用にかなり広範に使われている。拳銃タイプもあるが重量が2キロくらいになり、人間が使うには取り回しに困難があるが、歩兵用CIWSとリンクして据え付けで使うと便利。 

「火燕」: 対人誘導ミサイル。有翼、最も単純な誘導機構を装備した廉価ミサイルで、銃口の発射焔に対して飛んで行く。高度な判断AIを搭載していない為に手榴弾程度の値段に留まり、未熟でAKを連射する海賊に特に有効な為に大量に使われている。火口を認識すると、その位置を記録して以降火を出さなくてもその場所に飛んで行き、視差で障害物を確認して掩体を回りこんで爆発する。また火線をまっすぐ追跡するのではなく少し上を飛ぶように出来ているので、初弾命中でないとなかなか迎撃出来ない。少し上を飛ぶ特性を活かす為に上下で色が違いその為「ツバメ」と呼ばれている。昼は下が白い方を夜は下が黒い方を向けて飛ばすと見つかりにくい。射程距離は400mで少し短い。プログラム飛行も可能。
類似品にグレネードランチャーで撃ち出し後尾のプロペラで飛行する長距離無赤外線タイプもあり、無線でリンクして簡易探査カメラとして使われる。時速120キロで飛行し15分飛行可能。

「ドラゴンファング」: 二段式携帯対空ミサイル。主に武装難民が使う。二段式なのは、2段目に普通の携帯対空ミサイルをそのまま流用し、別の人間が担いできた1段目と組み合わせて使うというアイデアによる。通常の携帯対空ミサイルが高度3000メートルがせいぜいなのに対してこれは1万メートルまで到達する、航空機にとっては鬼門と言える兵器。1段目、2段目弾頭、発射器の三個の部品に分解し歩兵が担いで運搬出来る。

誘導弓矢: 誘導装置の付いた矢。極めて小型のカメラと携帯電話を搭載して矢羽を動かして目標への誘導が可能になった矢。普通よりも重い材料で作られているが、レーダーを避ける為に金属はほとんど使われていない。発射にも火薬は使わず赤外線の発生が無いエンジン/モーターカタパルトか金属製の弩が使われる。飛距離は1kmを越えるが弾頭重量が制限されるために爆弾を搭載することはほとんどなく、毒矢か徹甲弾になっている。もちろん対人兵器。

パイパーグレネード: 2050年開発の手榴弾。ただし、特殊な紐がついており、これを使って目標の元に這って行く一種のロボット爆弾。赤外線で人体を感知して移動する、蛇のようにイヤらしいのでこの名がある。破壊力は通常手榴弾と同程度。というよりも、手榴弾に装着するオプションパーツの一つ。グレネーダで投射されることもあり、その場合、歩兵は非常に深刻な脅威に襲われる。人工筋肉腕ではあるが、統則腕ではない。 

 

「雨合羽」: 対BC兵器用の防護服。パワーアシスト機能と空調機能を搭載しており長時間の作業が可能。放射線環境下でも作業可能とされる。一種のパワードスーツであり防弾機能までも備えているが、運動性が高いとは言えず戦闘に使うのは適していない。 

「隠れ蓑」: 「雨合羽」の類似品で、表面に動的迷彩機構を備えた戦闘用防護服。運動性も向上されているが、透明になれるわけでもなく被弾率は普通の兵士と同程度とされる。この世界ではパワードスーツの存在意義は装甲力ではなく、兵士が重量物を担ぐ負担を減らす事と装備用電源の確保、戦闘時負傷した際にスーツが勝手に応急措置をして生存率を高める点にある。ただし、米軍では大火力の搭載を指向していて、他国のそれとはすこし形状が異なる。「隠れ蓑」の動的迷彩機構は肉眼での監視に対しては或る程度効果があるもののセンサーを通してみると丸分かりなのだが、対歩兵ミサイルでこれを撃った場合、赤外線と発光でフラッシュして待避パターンが表面上で動き回り、センサーの認知率が著しく下がり目標を定める事が困難になる。 

「河童合羽」: 潜水作業も可能なBC作業用防護服。「雨合羽」とは根本の設計から異なり、プラスチックの甲冑みたいな形状。水中では統則腕とひれで移動する。パワーアシスト機能も付いており、水中戦闘も可能だが高速水中戦には対応していない。深度100mまでも潜水可能。地球温暖化で海水面が上昇して戦場が海浜部に偏る現在の状況では非常に重要な装備である。単なる潜水服でなくBC防御になっているのは、世界中で陸地が水没することで汚染物質が海中に拡散してかなり危険な場所もあるため。 

「オッドィー」: アメリカ軍が装備するパワードスーツ。陸上戦闘に特化しているタイプ。他国のパワードスーツアーマースーツとは設計思想が異なり、重火器を歩兵が運用するために強力なマニュピレータを装備している。というよりも、火器と人体が融合した形状をしており、戦場で装備を持ち換えるという事を考慮していない。その為に、「潮招き」とも呼ばれる。連続運用時間は5時間・外部発電機接続で20時間。走行速度は歩行時時速20キロ、アスファルト路面車輪走行時60キロ。装甲は全周で5.56ミリ、正面シールドで12.7ミリに耐える。現在地上最強のパワードスーツではあるが、統則ロボットと競合する装備であり、他国は導入を検討していない。

アシストスーツ、アーマースーツ、パワードスーツ: モーターあるいは人工筋肉によって人体の筋力を支援する機能が付いた着用型のロボット。
  アシストスーツは民生用としてかなり普及しており、人工筋肉タイプが人気。CNTによるソフトシェル装甲スーツと一体化したものを俗に「ポリススーツ」と呼び外勤警官はすべて着用している。動力はメタノール使用の燃料電池かキャパシタ。稼働時間は8時間程度。
  アーマースーツは一般歩兵用防弾スーツにアシスト機能を付加したもので、装甲と火器・装備の重量から歩兵の負担を取り除く為の性能しか無く、運動能力の拡大は行われない。外装に動的迷彩機構を装備したタイプもある。稼働時間は通常10時間以上、燃料電池で駆動する。発電機構と動力機構の一部が脱落することで重量を軽減して、非常時には人力のみでの活動も可能になる。
  パワードスーツは運動能力の拡大と重火器使用を可能にした、短時間戦闘用の装備。ほぼモーター動力。重量がかさむ為に飛んだり跳ねたり出来ないので、結局車両と比べてのパフォーマンスがあまり良くないので、統則ロボットの導入で代替する国が多い。 

 

 

目つぶしレーザー: 条約で禁止されている非殺傷兵器で、レーザーで目を焼いて相手を無力化する。正規軍は使わないし防護バイザーを装備していて効かないが、海賊やゲリラは普通に使って一般警備員を効率的に無力化している。出力が相当高いものもあり、1分程度の照射で木製品に点火する事も可能だが、対人誘導ミサイルはこの程度のレーザーでは破壊出来ないし無力化も出来ない。 

偏光補正透過イメージトモグラファー: 泥水中も水面上より透過して視認出来る、コンピュータ補正機能の付いた監視装置。南方戦線や中国江岸戦で大活躍した装備。40年代はヘルメット全体にマウントする大きなボリュームがあったが、55年時には普通の眼鏡と同程度の大きさにコンパクト化されている。濃霧や砂嵐、薄手のカーテンも透過出来る為にコンピュータセンサカメラを搭載している車両やロボットにはほぼ必ず付いている。夏物衣料も透けて中が見えるが、手指や顔の肌、髪も透過するのでお勧め出来ない。 

量子ファイバー通信: コンピュータ等に使われる通信用のケーブル。原理的に盗聴が不可能とされ広く使われている。転送速度は高速であり、コンピュータ内部の配線にも使用されており、筐体内部での盗聴ハッキング等も不可能になっている。はずだったのだが、何故か読み取る手段が存在する。どうも実装上の理由で完璧では無かったらしく、新型の量子配線の規格も提案されている。これで製作された時限爆弾はほんの最近まで解体不能だった。

 

水上偵察攻撃機PA-2「みさご」: 国産超音速水上ジェット機、2038年採用。3メートルの荒れた海面からも離発着可能な高性能水上機。複座で双発、最大M1.1で飛行する。フロートは引き込んで空気抵抗が少ない状態での飛行が可能で、またミサイル等をフロート内に格納する為にさほど邪魔にはならない。車輪も有るので陸上の飛行場での離発着も可能。
 武装難民が高性能な小型誘導ミサイルを常用するようになった為に、亜音速機やヘリコプターの使用が危険になり、超音速機が洋上監視任務にも必要になったが、日本国軍は空母をほとんど装備しておらず、また遠く離れた陸上基地から発進するのでは間に合わない事例が多発した為に、作戦区域に常駐する航空戦力としてこれが活用された。低速の為に空中戦は不可能に近いが、敵が航空戦力を持っている状況がほとんど無かった為に十分活躍できた。この種の軍用機は他国では作っておらず、日本から多数輸出された。

 

 

 

組織機構

ツルニハ; 元自動車製造で現在はサルボモーター専業となったメーカー。現社長は何故にこんなものを作ってしまったのか、と後悔に苛まれる毎日。
   月産80台、年間1000台を製造する。単価が2000〜3000万円な為に年商200億円と、知る人ぞ知る優良企業。
   30年製造しており、世界中に20000体弱のサルボモーターが有る事になるが、破損率が大きくまた趣味の機械である為にメンテナンスの手間とカネも掛り、メーカーでありサポート体制を持つツルニハは結構な儲けを出している。
  大正時代には人力車・馬車を作っており軍用に馬車を納入してそこそこ儲けていたが、当然モータリゼーションの進展に置いてけぼりを喰う事になり、戦後はエンジンの開発を進めて原動機付き三輪自転車というニッチな商品でそこそこ成功。次に農業用トラクター等で馬車屋としては堅実な転身を遂げ、70年万博に合わせて軽自動車「SARVO」を発売、苦肉の策で屋根をちょん切った似非コンバーチブルがそこそこヒット。90年代に後継「SARVOU」を発売するもこれは成功とは言い難く、21世紀に入って後はハイブリット技術の導入も遅れた為に自動車産業から撤退。農業機械部門を売り払ってサルボモーター専業へと業種を替える。

チームツルニハ; サルボモーター専業メーカー「ツルニハ」が有する唯一のオフィシャルチーム。同業他社が存在しない為に、チームツルニハがサルボモーター競技の最高権威となる。
  「サルボクィーン」として著名な鶴仁波綾子がリーダーを務め、各国のサルボモーター組織に認定を与える。同時に、オフィシャルチームとしてサルボモーターの健全な使用と競技の開催を促進する。開発陣に属する作業員・研究者も擁しており、サルボモーター事故が起きた際には彼らが派遣され、原因究明と再発防止策、さらには機体のアフターサービスも行う。

ツルニハサルボメンテナンス; サルボモーターの整備と補修部品納入を主要業務とするツルニハ子会社。サルボモーターは特殊な機械である為に、ユーザーの近辺に修理工場などは見付からない。その為に、世界中にメンテナンスの拠点を作り運営する。他者がサルボモータービジネスに参入しないのも、これと同じ組織を作らねばユーザーのアフターサービスが出来ない為。
  サルボモーターは本格的に運用を開始すると、機体費用に倍するとんでもない経費く費用が掛りメンテナンスが必要となる。

鶴仁波○○堂; 「ツルニハ」の母体となった老舗の饅頭屋。ミカンの皮を用いた一種のジャムを乗っけた銘菓「鶴仁波」により、全国的に知られる。16世紀創業。
  京都に一族の本拠地があるも、18世紀になんらかの失態をしでかして洛中から追放の憂き目に遇う。以後活路を街道のお土産売りに見出し、辻強盗紛いの商法で売りつけていく。この頃から移動手段に関して特別な興味があったらしい。
  鶴仁波の一族には2種類の人間が生まれるとされ、片方は老舗を護る堅実な商人、もう片方はとち狂って変な機械を作ってしまう。もちろんサルボモーターは変な方の産物。

国家連合体; 2047年に正式に発足した「国際連合」に替わる国家間協調組織。バーチャル金本位制という強力な統合通貨によって縛られる為に、各国が一丸となって旧経済秩序と対処できる。また強力かつ大規模な特殊部隊である「国家連合体治安警備軍」を持ち、国家間に跨がる組織犯罪を効果的に撃滅出来る。
  反面、正規の国家間の紛争・戦争には「国際連合」安全保障理事会による仲裁と調停を必要とする形に、二つで役割を分担しており両者の共存を図るものの、今後どうなるかは良くわからない。

MIT; 米マサチューセッツ工科大学。サルボモーターを格闘させる為の制御ソフトを大学生が開発し、無償で公開している。

ピルマル理科工業: 軍事用コンピュータシステムから民生用コンピュータチップまで幅広く扱っている電子関係の一民間企業。世界で最初に統則制御理論の実用化に成功した。現在は統則腕に使われる人工筋肉のCPUセルを中心にロボット兵器にも深く関与する。また医療用統則マイクロマシンの開発元で、その試験者の一人が土器能登子である。 
  ツルニハとは、アメリカが月面にサルボモーターを持ち込んで運用する際に、人工筋肉技術の提供という形で関わる事となる。後にサルボモーターの駆動系を再設計して細かい作業が可能になった「サルボロイド」の共同開発を行うが、ピルマル理科工業ではこれを軍事用に使用する事を目論んで居た為に、ツルニハから販売権を奪取する。
 ただし、サルボロイドはスポーツ用のコンセプトをまったく備えていない為に、サルボモータービジネスに影響は無かった。

治安警備軍; 最終的には国家連合体の所属となった、大規模広域特殊部隊。国家の枠を越えて拡がる組織犯罪を根絶する事を目的とする。手法としては、悪人皆殺し。何ヶ月もの内偵により、犯罪組織の末端構成員をすべて把握し、一気に殲滅する。如何に強力な犯罪組織であろうとも、手足をもがれては活動出来ない。麻痺状態に陥っている間に、他の組織犯罪にテリトリーを奪われて枯死する寸法。組織復元をしようと試みても、厳重な監視下にある為にそれに従事する者はすべて射殺されてしまう。
 基本的には時間稼ぎでしかない手法ではあるが、この時代においては実に適宜な方法である。
 当然のことながら、国家間戦争レベルの紛争には対応出来ない。また対応出来ない能力しか持たない事で、国際連合と良好な関係を保っている。

 

皇宮警察隊: 皇族と皇居を守る警察。円条寺蓮が所属すると自称するが、確かに照会すれば在籍が確認されるものの、彼女がそこに拘束されておらず独自に動いていることは明白である。

日本国軍: 自衛隊から改称された日本国の軍隊。ただし、いまだ自衛隊の時の名残を引きずっていて、陸軍海軍空軍とは呼ばず、”GROUND FORCE”、”SEA FORCE”、”AIR FORCE”の直訳である陸上戦力、海上戦力、航空戦力部隊と呼ぶが、運用は統合されていて統合司令部が指揮を執る。加えて”INTELLIGENCE FORCE”情報戦力部隊というのがあり、現状では最重要と考えられており特に強化されている。 

核タスクフォース: 情報戦力部隊中に設置されている、核兵器の流出と移動に関する特別調査チーム。独自の特殊部隊も持つ。現状では最高の優先度を持つ任務として全軍が協力をするが、秘密主義で作戦行動の意図を明確にしない為にあまり歓迎はされていない。 

ZEMIPON co. スウェーデンにある兵器メーカー。ロボット搭載兵器を主に製造開発している。統則ロボットタコハチにもここの製品をライセンス生産したものが搭載されている。ゼミポンの製品は破壊力よりも制圧、迅速かつ最小限の殺傷と破壊でミッションを遂行する事を目的に開発されている為に、デリケートな作戦が多い特殊部隊配備の戦闘ロボットにはよく使われる。もちろん正規軍のみに供給される。 

 

(以下没)

・昴賢同盟Pleides: 紀元前より存在したといわれるピルマル理科工業の母体となる秘密結社。最高会は7人の賢人よりなる。その目的は人類文明の監視であり覇権ではない。ピルマルレレコを崇めるものの宗教とは無縁で、理性のみに立脚する。超科学文明の遺産を持つとされるが、それによって文明がいくつも滅びるところを目撃して来たので現在までそれを利用しようとはせず、逆にそれに頼らないがために科学技術の叡智を結集してアクセス手段の確立を急いでいる。このまま行くと地球文明が絶滅的破滅に到達すると結論し、それを避ける為にピルマルセルの利用による制御された滅びへと人類を向かわせる決定をした。

・ピルマル理科工業(M): 世界に冠たる超科学企業。特にメイドロボットの開発元として名高い。だが特許対策で公開していない技術を多数抱えるために、各国政府からアンフェアだとも言われている。ここの製品の幾つかがなければ世界の科学工業が立ち行かない、ということで中くらいの国家の経済規模に等しい売上高を誇るが、その資金の流れにかなり不透明な部分も大きい。実は世界中に無数の中小企業として「ピルマル理科工業」は存在していたのだが、2087年に一斉に統合して超大企業となった。資本関係が謎に満ちており、それを探った者は生きて帰れないという。 

・統則ロボット広域遠隔操作センター: 統則ロボットはロボットであり遠隔操縦で動くものであるから、操縦者が必ずしも現場に居なくても数百キロ離れている所からでも操作に問題ない。が、どういうわけだか現場にオペレータが居ないとミッションに失敗する確率が高い。これは現場の空気を読み違えるという事が原因らしく、戦争時から度々問題になっていた点であるが、人手が足りない警察では高度な能力を持ったオペレータを現場で確保するのは極めて困難である為に、やむなく広域遠隔操作体系を構築している。土器能登子がスカウトされたのもこれの為であるが、現場に出て行かないと勘が鈍る、という事で市内展開部隊に配置替えを申請して受理されて小隊長となった。しかし、もちろんこの業務にもしばしば携わっている。特に警察の狙撃任務は難度が高い為に犯人の射殺を必要とする緊迫した任務では彼女が処理することが多い。もちろん、腕がいいから可能であれば生きたまま捕らえるように努力している。 

・統則ロボット警備隊: 警備任務を専らとする統則ロボット隊。統則ロボットの真価は特殊部隊の代替物としてよりも、むしろ警備任務の高度化効率化という面からまず警察に注目された。高度なセンサーを搭載しあらゆる環境に進出出来る統則ロボットタコハチは、テロリストによる要人暗殺や爆破といった攻撃に対抗するのに非常に大きな効果がある。その為に警備部では統則ロボット隊を独自に新設しようとしたが、やはり実際に出動して困難な任務をこなさないとオペレータの技能が向上しないということで、車両部ロボット課統則ロボット隊という形で各地の地方中核警察に設置された。つまり、市内配備部隊と警備部隊で人員を適宜コンバートすることで実践を積み重ねて練度を確保するということになる。このとばっちりを食ったのが人間のSWAT部隊で今では解散すら論議されるまでになっており、統則ロボット隊と仲が悪い。なお統則ロボット警備隊はしばしば鑑識業務にも引っ張り出され、困難な状況での鑑識作業でも使われて重宝がられている。 

・海上警備ロボット隊: 統則ロボットを使って海上で不審船を臨検する部隊。廣嶋中核首都では海上警備隊・市中展開部隊・警備隊の三本で人員をやりとりしている。統則ロボットは元々タコを模しているわけで、水中で船底を調べたり、中で待ち伏せているかもしれない船内への臨検とかはお手の物だが、中にはテロリストや海賊が強力な武装を携帯している可能性も高い為にとても危険な任務。海水面が上昇して海岸線が複雑怪奇になった現状では非常に重要な役目を負う。体力も必要であるから統則ロボット隊に応募して来た奇特な男子警官はほぼここに取られてしまう。タコハチだけでなく、タコ5水中高速戦闘艇IKAも装備する。 

・統則ロボット市内高速展開部隊: 統則ロボットの輸送は通常、指揮運搬車で行う。統則ロボット自体には高速走行能力が無く舗装面で時速45キロメートル程度でしかない。屋内でもそれだけ出るから都市犯罪に対抗するのに十分な走行性能なのだが、車両を追跡するには遅過ぎるので、パトカーの上部にタコハチを取りつかせて高速で出動展開するという方法を使う。故にパトカーとセットで高速展開部隊と呼ぶ。主に市内における重武装犯罪や立て篭り事件、車両で逃走中の犯罪者に対応する。パトカーで出動する際は、オペレータは同乗しない事が普通で、パトカーが破壊されたり事故で走行不能になった際には次のパトカー、もしくは無人操縦のタクシーを徴用して追跡続行する。 

 

 

世界情勢

・アメリカ合衆国: アメリカは現在もなお世界最大の経済力軍事力を有する大国である。しかし、戦争中はありとあらゆる方面から押し寄せる難民と海賊への対処に極めて厳しい状況に陥った。中・南アメリカはもちろん、太平洋からの中国・東南アジア海賊、アフリカからの海賊、と敵は数知れず、派遣する領域も東太平洋、大西洋、のみならずインド洋のアフリカ東岸にまで及んだ。現在でも世界中に軍隊は駐留しつづけており、国家予算を圧迫し続けている。既に人口の三分の一にまで白人人口は下がっていて、アメリカに対する世界中の見る目はかなり現在とは異なっている。メキシコは住民投票の結果北部がアメリカに吸収された形になっているが、人口構成を考えるとアメリカがメキシコに統合されたとまで言われる。 

・EU: ヨーロッパも海水面上昇でかなりの打撃を受けたが、むしろそれによって混乱したアフリカアジア諸国から流入する難民が非常に多く、これが海水面上昇よりも大きなダメージになっている。EUが完全に統合したのは2030年であり、戦争の間際でEUが全精力を挙げて対処する事にしたのだったが、北海大西洋地中海を固めるのが精一杯だった。とはいえ内陸部はダメージが少なく世界経済が落ち込んだ分をここが取り戻したという事で、景気はかなり良かったのだが、戦争終結により反動が来て不景気の真っ只中に有る。 

・ロシア共和国: 海水面上昇にほとんど影響を受けなかったロシアはむしろ気候変動による永久凍土の溶解が問題になったものの、難民の影響も少なく生産力の低下もなく、停滞した世界経済を肩代わりする事で大層な繁栄をした。が、それはヨーロッパ側のロシアであり、シベリアの方は崩壊した中国から流入する難民にかなり苦しめられた。日本の協力によりウラジオストックを中心に工業化が進み、サハリン近辺での資源開発も進んだが、ほとんど日本との間の貿易で潤い、戦争中は石油や天然ガスを優先的に日本に供給した為に日本が後顧の憂い無く太平洋全域に派兵出来たのだが、その分ロシアは軍事的貢献をしなかったとも言える。戦争後がEU内陸部と同様に反動による不景気に陥っている。 

・分裂した中国: 中国は内戦の結果、2048年にほぼ5個の地域に分裂することとなった。
中華人民共和国(北京政府、東北部)、中華共和国(上海・香港政府)、中華民主共和国(広州政府)、中華人民民主社会共和国(四川政府)、正統中華民主政体(亡命政府、各国難民主体。)。その他、中国の枠外で独立した国多数。
核ミサイルの管理は中華人民共和国のほぼ生き残りである北京政府が管理する。管理が行き届かず年代物で大半が使用不能だが、1割でも世界を破滅に導くだけの威力はある。そのため管理費用というものをアメリカ日本等から供与されている。
正統中華民主政体は、難民受け入れをした各国と国連が共同で中国系難民を統括して扱う為に作った受入れ機関。ほとんど軍事力を持たない。

・韓国: ひどい状況。北朝鮮はとっくの昔に崩壊して、中国経済バブルの崩壊にもろに巻き込まれて韓国も大ダメージを受けた。 

・水没領土に関する特別協定 海面上昇で領土が水没し領土領海の区分が変動して紛争の元になることを防止するために、2010年時の海面を基準に領土領海を固定する協定。2016年成立。

 

その他

銘菓「鶴仁波」; 鶴仁波○○堂で作っているお菓子。日本国中で有名、というほどではないが結構知られている。「ツルニハ」ではサルボモーターを納入する時、かならずこれをお祝いに持っていくので、サルボ乗りの間では知らぬ者が無いというか知らない奴はモグリ。

「パイロット重心での回転」; サルボモーターは本来転倒時にはスムースに回転して機体に損傷を与えないように作られている。その為、設計時から機体転倒の重心が設定されており、普通に転けた場合はこれを中心として回転する。しかしながら「受身王」ローリング・キングは『パイロット重心での回転』を行い、独自の機動でレースの頂点を極めた。
 つまり、機体転倒時上部に位置するパイロットを中心に機体を回転させる。これにより頭から突っ込む鋭いスピードの有る回転、空中でコクピットが回転して地面に触れない、通常の機体重心の回転よりも速やかで制御可能性の高い復帰動作が可能となる。それ以上に、見る人に強烈な印象を与えサルボモーターの令名を高めた。だが勿論キング以外の者には真似ができない高等テクニックだ。

 

 

・統則制御: ロボット制御理論の一つ。制御のセンターとなるCPUが特定されておらず、等質の性能を持つユニットがその物理的配置によって各個にその役割を自分で決定し分業して、統合した全体が合目的に機能する制御方法。人間の集団に例えられる。

・水堰工法: 海面上昇から都市を守る為に堤防を急造する工法。杭を打ってつないだ水を通さないCNT製の布袋に水を入れて一気に堰き止めてしまう。

・界面都市: 水没した都市を利用して、水面に突出しているビルの周辺に浮き桟橋をつないで地面の代わりとして都市機能をの回復を図ったもの。海面上昇を堤防で食い止めたとしても下水道周りの機能は回復せず作り直しになる所も多いので、放置して沈めてしまいその上を板でふさいで元のように使おうという発想。実際、農地の保存の方が都市よりも優先された所も多い。

・農業: 地球温暖化と極地の氷の溶解、それによる海水面上昇と海水温度の低下は農業に深刻な打撃を与えずにはおれなかった。また海面上昇で水没する農地も多く、各国共に農業の保全と生産量の拡大が急務となる。水堰工法による海面の保全と遺伝子改良による収量増加、マイクロマシンの土壌への投与による理想的環境の保持が主に使われたが、石油天然ガス等により温度を上げるという方法はCO2排出の増大を招く為に当然禁止された。

・人工子宮: 体外にあって受精卵を育成して出産させるための装置。その実体は人間の遺伝子を導入されたメスの豚である。つまり豚の子宮で人間の子供を育てるわけだが、元が人間によく似ていると言われる豚である為に、ほとんど免疫の問題も無く実用化に成功した。現在先進国では1パーセントの新生児がこれによって産まれるという。欠点としては、或る程度生育した胎児を育成する事が出来ず、受精卵の始めから使わなければならない。完全人工物による人工子宮も存在するが、胎児の育成中の精神的影響を考えると望ましくないとされ研究は退潮気味。最初の実用は2011年。 

・電哲探偵: ヘクトール・パスカルを祖とする特殊な能力を持った職業。電脳探偵とはまるで異なる。電脳探偵はコンピュータを使って事件を解決、あるいはコンピュータ犯罪を担当するが、電哲探偵は刑事事件には案外携わらない。それは事件ですらない。この複雑に入り組んで世界全体とネットワークで繋がる現代社会では、個々のユニットである個人が全体を理解しないままに、総体としてなにか大きな事業を行っているということがままある。あるいは、個々のユニットは、何かをしているという自覚すら無いこともある。日常一般でありうる当然の選択を、ちょっと修正することで全体としては大きな影響を与えているのかもしれない。ほとんど”北京で蝶が羽ばたくと、紐育で雨が降る”に近い感触ではあるが、この時代はそれが可能になっている。ドラコンコンピュータという人々の意志をねじ曲げるシステムも完備しており、誰かが何かを企んでいたとしても、それを政府や関係当局が知ることは出来ない。にも関らずそれを見抜くのが電哲探偵である。ネットワークの裏で実際はなにが起こっているのか、またそれを食い止め影響を修正して本来あるべき姿に世界を戻す者、それが電哲探偵だ。

・電気まねき猫シリーズ: 内部にバイオチップが有りそこから発生するシグナルを、指向性低周波で人体に投影することで人間の行動を制御する特殊な一群の機械。ほとんどが縁起物の形をしていて、見ても楽しいのだが、効果はあまり芳しくないと思われる。だが全体として見ると、たしかに何かを行っており、街中の人間の流れを効率的に制御しているらしい。円条寺蓮が廣嶋中核首都に持ち込まれたが、後に土器能登子が東京に行ってみると、民衆は気付いていないものの、そこかしこにこれがある。 

・電気まねき猫: 正体不明の原理で動く電池式のまねき猫。大型で燃料電池で動くものもある。原理もそうだが効果もはっきりとはわからない。が、それを設置する以前に比べてなぜか忙しくなる。円条寺蓮が関係者に配り回っている。小型のものは自動で位置を測定して適正位置に移動する能力が有る。 

・電気鍾馗様: 電気まねき猫と同じ原理で動く別の製品。正体不明の原理でなんらかの攻撃的影響を与える。特に悪心を抱く者の行動を抑制する効果があると説明されるが、効果のほどはよくわからない。行動を変更されている事が分からないところが良いらしい。 

・電気信楽焼たぬき: 電気まねき猫の類似商品。ほぼ同じ機能を持つが、女性になんらかの特殊な作用を与えるらしく、これの近所に居るとドキドキする。 

・電気びりけん: 電気まねき猫と同じ原理で動く別種の製品で、主に賭け事の成功確率を上げるらしい。もちろん事象の成否ではなくその予想の的中率を上げるのだが、特に希な事象への反応率が高くなる。期待し過ぎると効果が落ちる。 

・電気きゅーぴー: 電気まねき猫と同じ原理で動く、恋愛に特化された製品。これを稼働させると意中の異性の関心を惹くことができるという。常時持ち歩く必要は鳴く、自宅に置いておくだけでよい。また黒いきゅーぴーは嫌な異性の関心を自分から遠ざける効果を持つ。 

・電気えびす様: 電気まねき猫と同じ原理で動く、釣りに良く効く製品。大漁間違い無し。 

・電気鮭熊: 電気まねき猫と同じ原理で動く、北海道名産の熊の置物。なぜか北海道に行ってみたくなる。類似品に「電気しーさー」とか「電気善光寺の丑」がある。 

・電気道真公: 電気まねき猫と同じ原理で動く、頭が良くなる製品。特に受験勉強に効くという。 

・電気だり: 電気まねき猫と同じ原理で動く、画家のダリの姿をした人形。これが稼働する空間に居ると、いつのまにか平衡感覚を失い時間の感覚も定かではなくなり、行動不能に陥る。警察関係者にはかなり使い勝手の良い製品。 

・電気三猿: 電気まねき猫と同じ原理で動くと思われる特殊な装備。猿の形をしている。これを装備すると、周囲の人間の目に自分の姿が入らなくなり、物音を立てても気付かれず、気付いても特別に警戒体勢を取ったり他に連絡しなくなる、侵入にもってこいの効果を発揮する。コンピュータ監視装置には効果が無い。 

・電気地蔵: 廣嶋電猫曼荼羅中には、一般市民が迷いこまないように犯罪者が集中する危険なエリアがどうしても発生する。そこには通常コンピュータによる監視体勢が有るのだが完全とは言い切れず、入り込んで来る一般人も居る。その時、迷いこんだ人を救う為に設置されているシェルターとして機能するのがこれで、地蔵様の姿をしている。電話が付いていて警察に連絡がとれる。 

・身代わりバッファ: 電気まねき猫等の正体不明の干渉力を無効にする装置。目の付いた巻き物の形状をしている。これを装備していると初めて、他の者がこれら製品に強く影響されているのだと気がつく。強力な影響を受けると破損する為に、二本セットで使う方が良い。当然のことながら、これを装備することで自身が装備したものの影響もキャンセルされ、良い効果を得る事ができなくなる。 

・廣嶋電猫曼荼羅: 円条寺蓮が廣嶋中核首都に敷いた電気まねき猫シリーズによる集合システム。人間の行動を制御することで、全体として廣嶋市自体を犯罪者テロリストに対するトラップに仕立て上げた。このシステムの悪辣な点は、一般市民の行動を矯正することで、市民はあくまで安全に、それでいて犯罪者は他愛もない犯罪に執着し市民とは別のエリアに逃げこむように、テロリストは一見重要でありながら実体はどうでもよい捕まえるのに非常に便利な施設に、ハーメルンの笛吹き男に吸いつけられるように殺到する。廣嶋市は本州の西端にあり、大阪、名古屋、東京を防御するのに適当であると、どこか秘密の組織が円条寺蓮のこの計画を許可したものと推定されるが、蓮の目的はそれだけではない。 

・無感応者: 特殊な体質を持つ人間。電気まねき猫等の影響をまったく受けない。人間社会において大体0.2パーセントの確率で存在するが、本当にまったく感応しない者はさらに少ない。円条寺蓮もその一人だが、それ以上に感応率の低い人間が「蓮クリーン」に「鐡函」搭乗者要員として集められている。 

・米軍介錯人: ”介錯人”というのは「緊急サイボーグ手術前処理担当医師」の事。戦場において医療施設への搬送が間に合わない重傷者を、全身サイボーグ手術を前提に戦場で直接、最も重要な脳と頭部のみを人体から切り離して緊急保存処理して、頭部のみをサイボーグ手術センターに送るという救命処置が2070年代から行われている。首を切り離す事から、日本でサムライが切腹時に首を斬る役目の”介錯人”という用語がそのまま世界中で使われている。米軍介錯人SUOUは日系人で、特製抗菌日本刀により極めて鮮やかに首を切断する当代最高の介錯人だが、米軍は現在も頻繁に対外戦争を繰り広げており、頭部のみのサイボーグを大量生産すると批難を浴びている。 

・首だけサイボーグ: 頭部のみを切り離されたサイボーグ手術患者は、通常クローニングで作られた人体に接続する事で、元の肉体を取り戻す。しかし移植用人体が成人サイズにまで成長するのには約2年が掛かり、その間首だけで居るのは精神衛生上非常によくないので、機械体に接続して日常生活を送る事が勧められる。首に固定用のジグを接続せず浮いた状態で機械体に搭載するわけで、肩から上に大がかりなカプセルが乗った形状になる。機械体は所詮は短期の代替品であり何人もに利用されるものであるから、無個性で不細工であるが、日常生活では不自由が無く、ほとんどの生活行為が可能。皮膚感覚もあまり鮮明ではないがフィードバックされる。カプセルといっても中に液体が入っているタイプは感染症予防の為で、顔面が露出したタイプもあり、これは頭蓋骨にボルトを何本も打ち込んでがっちり固定する事で固定具をスリム化出来て結構違和感の無い外観に仕上がる。 

・古代英雄人種: 紀元前3万年頃に地球を支配していた人類。ホモサピエンスと身体的特徴は変わりないが脳の機能に相当の違いが有り、極めて優秀で凡人を無制限に従わせるカリスマ性を持っている。超能力は無いがそれに相当するほどの洞察力や予見能力を持っており、また手品のようなトリックも普通に駆使する為に魔法を使うとも思われていた。彼らは実は文明は作らなかった。むしろ、物質的な制限から解き放たれていたと思われ、優れたコミュニケーションによって高度な知識と論理哲学の大系を共有して不可視の王国と呼ばれるものを作っており、これが後の時代の神話宗教の元となる。紀元前2万1000年頃に降臨したピルマルレレコが大気圏中に撒き散らしたε放射線源によって多大なダメージを負い、歴史の表舞台からは消滅した。おそらくは、知性を構築する脳神経の回路が若干普通人と異なりそれがカリスマ的影響力を発生させていたものの、ε放射線に強く影響される弱点を持っていたということらしい。
現在は大気圏中のε放射線源はすでに地上に落下し終えていて、古代英雄人種が存在しても支障が無い。彼らの要素は普通人類との混血によってDNAの中に刻みこまれており、時折奇跡的にほぼ完全体としての個体が発生して、歴史上の偉人となり人類社会に多大な貢献を為して来た。秘密結社プレアデスが認定する所では現在完全体として存在する英雄人種は38人、その中で資質が完全に覚醒している者はヘクトール・パスカル唯一人である。 

・広島ヤクザ: 広島のヤクザ。暴力団。21世紀はヤクザにとって良い時代ではなく、流入する外国人犯罪者に対抗して政府が徹底的な犯罪撲滅政策をとった為に暴力団のシノギがことごとく潰され資金的に行き詰まった。それに加えて、世論が外国人組織犯罪に対して怒りを爆発させ、それに連動する国内暴力団に対しても断固撲滅すべきとの風潮となり、政府警察もこれに呼応、全国で集中的な壊滅作戦が繰り広げられた。これに対抗するには、原点回帰、極道任侠道の原理主義的復興と組員の国粋主義的教育、および社会貢献以外に生き残る道が無かった。ある時期、環境保護運動、人権運動の30%にヤクザがボランティアで参加したり、裁判所の傍聴人がすべてヤクザで勉強会を開いていたりした。こうして弱きを助け強気を挫くという、あまりにも荒唐無稽な行動原理を押し進め、それに反する者には徹底的な制裁が科され、まるで幕末の新撰組のような、抗争で死ぬ人間よりも粛正で死ぬ人間の方が多くなる、という事態になる。状況が好転したのは2028年、ハリウッド映画「The NINKYO YAKUZA」の公開で世界中に極道任侠道がブームとなった事で国内においても世論の見る目が変化した。その後「The REVENGE of YAKUZA」「The YAKUZA、a CUP of BROTHERS」と立て続けにヒット、本物の組員が出演する事で迫真の演技を見せ、ヤクザヒーローとも呼ぶべきカリスマ的人気を博し、世界中からヤクザになりたいという若者が殺到するという事態になる。これには国粋主義教育の一環として日本武道の習得が組員に強制的に義務づけられ、20年に渡って研鑽した結果、達人と呼べる者が多数輩出された事にも起因する。世界は、第二の武士道、サムライを発見した、ということだ。広島は「The NINKYO YAKUZA」の舞台となったことで、一躍ヤクザの本場として知られる事となる。 

 

補足

・円条寺蓮の背景: 円条寺蓮は本来明治時代の人間と設定されていたから、その名残を引きずっていて、なぜか古い和風の文物が身辺近くに多い。また彼女は幼少時きわめて強力な霊能力を持っていたものの、11歳の時に大病をしてその全てをそっくり失い、同時に子供が産めない身体になった。故に半分レズである、という設定もあったのだが、2050年の技術では、直るし子供も産めるし人工子宮まであるので、個人的な興味として人工子宮で子供を産んだ土器能登子に参考としての意見を聞きたいと思っている。また、円条寺蓮の恋人となる男、というのが用意されているが、これは”岩窟王”をモデルとした復讐者ですごいエネルギーの持ち主である。たぶん敵になる予定。 

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