まゆ子のましなりい その7

05/08/22

 

「兵隊ヤクザロボDICS」
「三十七粍機動歩兵砲の話」

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兵隊ヤクザロボDICS

シャクティ「というわけで、「統則最前線」では広島ヤクザが出るわけです。今日はそこんとこをちょこっと考察してみましょう。お相手は、今や全日本在住インド少女の星、私シャクティと、この度悪徳金融業者としてゲバルト処女に出演がお決まりなったまゆ子女史です。どうもようこそ。」

まゆ子「突然ではあるけれど、なんだか等身大1/1スコープドッグブルーティッシュカスタムが大人気です。本物の鉄板溶接で作り上げた4メートルの鉄の固まりてものの迫力は、プラパンや発泡スチロールで作ったのとはまったく違って、禍々しさや神々しさすら発しているのだよね。これ凄いよ。」

釈「ほお、で、愛地球博には出品されてますか?」
まゆ子「もうちょっと早く出来てたら、それもあったかもしれない。しかし、やっぱごついのはイイよウン。」

釈「で、ヒロシマヤクザなんですが。」

まゆ子「で、その鉄板ATは塗装しないのよね。錆が、でも赤錆じゃないよ、が浮いて来るとまたなんとも言えず地球の重みといいますか、質感がずんと腹にこたえるというか、頭で想像するだけでは到底実現し得ない、確かな感触があるわけなのよ。」

釈「だから、ヤクザを、」
まゆ子「これはやっぱかっこいい! ということで、あたしも4メートル大乗り込み型ロボットをこさえてみることにした。」

釈「つまり、ヤクザがそれに乗るわけですね?」
まゆ子「いや。単に趣味で。

 で話変えよう。ATは通称ボトムズと言われている。地べたの底辺を這いずる者、という意味合いで付いてる名前で、装甲も最小限でやられたら戦死必至というあやうっかしさを表現してるのだよね。で、私もまず名前から入ろうと思う。DICSてのはどうでしょう。」

釈「嫌でもヤクザやらない気だな。えー、そのDICSてのはどういう意味合いの名前でしょうか。」
まゆ子「DICKと書くとペニスという意味になる。その名のとおりに、おちんちんの位置に大砲が付いているロボットなのだ。」
釈「それまた下品な。」

まゆ子「しかしものは考えようで、これによりロボットの性格が間違いなく男性っぽく設定されるわけね。女無用の世界になる。男くさい、荒々しい、禍々しい、息苦しさというのが、名前だけで表現出来るのだよ。」
釈「お、・・兵隊ヤクザの世界ですか。なるほど、そう来るか。」

まゆ子「さて、人型ロボットだが、まあ普通に考えると車両の方がずっといいに違いない。早いし低いし安定してる。どこでも行けるしね。だが今回、そいうとこは完全に無視して、がちゃがちゃ歩いていくロボットを戦場で運用する事にする。」
釈「無理やりですか? 合理性を無視するのですか?」

まゆ子「命知らずの男たちが何の因果かおもちゃのようなロボットに押し込められて、地獄の最前線に叩き込まれるのだ。だから今回、このロボット「DICS」はややこしいことは考えない!」
釈「せんぱーい、それはヤクザでさえ涙を流すような非情さですよお。」

まゆ子「さて、とりあえずロボだ。このロボットは、ATよりはちと小さい。どのくらい小さいかというと、2.3メートルくらいと思ってくれ。コクピットはロボットの背中におんぶしてもらう形になる。正面には装甲板と機械があって、人間は守られている人道的だなあ。操縦は簡単。左右の足がロボットの太股あたりに入っていて、歩く感覚で微妙なコントロールが可能。高速走行は車輪などという上等なものは無く、オートマ走行ですっ飛んでいく。跳ねて走るから、障害物もちゃんと乗り越えてくれる。だから、パワードスーツとロボットの中間みたいな感じだな」

釈「装甲は厚いんですか。」
まゆ子「それがなかなかゴツイのだ。つまり、全周装甲ではなくて、胸板だけが強化されている。正面から受ける分には普通のライフル程度はかきんと跳ね返す。

武装は、股間の大砲がロングバレルグレネーダー40ミリだ。貫通力はまるっきり無いが、爆発してくれるから威力はなかなか。射程距離も1キロは確保している。ただし反動が少し大きいので、連射はすべきではない。あとは両手にでっかいライフル銃を持つのだな。7.62ミリの強壮弾、つまりロボットにしか撃てないような強力な弾薬を使用する。煙幕なんぞは無い。オプションで専用ショットガン(対人)やらRPGとか、まあ色々好きなモノを持ってくれ。弾薬携行量は意外と少ない。ライフル弾が1丁200、グレネーダーが20程度。」

釈「2.3メートルの小柄なロボットの割りにはかなりの戦力ではないですか、それ。運動性はどうです?」

まゆ子「重量は1t!と超軽量、アルミとかチタンを随分と使っている。最高走行速度40キロだが二足歩行で40といえば相当早い。燃料はメタノール燃料電池、稼働時間は8時間、走行しまくりだと2時間てとこだね。運動性は人間が乗っていると思えば良好。ヘリコプターや輸送機から投下出来る空挺ロボット兵だ。」

釈「値段は1000万円くらいですか。」
まゆ子「うーん、もちっと高い。装甲ハンビー程度の値段で買えると思ってくれ。とまあ、こんなとこでスペックはいいだろう。つまり、バカにされるほど弱くはないロボなのだ。」

釈「で、コレを使ってどういう戦闘をするか、という話です。」


まゆ子「DICSには、ただのロボットではない特技がある。自動車が運転出来る。専用トランスポーターだよ。」
釈「ロボットに乗ったままで、車両の操縦が出来る、という意味ですか? 無線とか有線で。」

まゆ子「簡単に言うと、ヤクザの殴り込み十八番、軽トラに乗っての特攻が出来る。」
釈「おお! 実に明快にイメージが浮かびました。なるほど、それは便利だ。」

まゆ子「これにより、ロボットの機動性に対しては、完璧な解答を得る。最初から装甲車に乗っとけばいいじゃん、というのは却下。それで済むなら随伴歩兵などというものは必要無い。随伴歩兵と装甲車との間の能力の格差サイズの違いが両者の連動を不可能にする。ロボットとトランスポーター(白トラ)という、絶妙なサイズこそが連携を完璧なものとするのだ。」

釈「実に安っぽくし上がりますね。」
まゆ子「実際人間が乗らない車というのは安く出来るし、装甲も工夫次第で厚くできる。邪魔なのはにんげんであって、それが外にロボットという形であるんだから、設計は極めて大胆になる。つまり、タダのトレーに盾と機関銃が付いてるだけ、というのでも良いのだよ。」

釈「地雷とかには大丈夫なんですか。」
まゆ子「大きな戦車とか兵員輸送車とかが爆発したら、これはそっくりダメだけれど、トランスポーターの上のロボは意外と保つでしょ。トランスポーター自体が盾となるし、ロボの装甲もあるし、生存性はむしろ高い。」

 

釈「でもヤクザ的な殴り込みをする状況というのは、現在ほとんど存在しないと思いますけどね。」

まゆ子「米軍の戦略ドクトリンが変わったのだよ。これまでの外科手術的な兵力集中で対象を排除する、というのはやっぱ無理だとようやくにして気付いた。」
釈「ふむ。」

まゆ子「敵が居なきゃ叩けない。敵を引っ張り出すには、自分達もかなり弱くなければならない。もちろんホントに弱いと負けちゃうから、極めて短時間で兵力を投入出来る体制特に無人兵器の導入を柱とした大量展開体制を維持しつつも、現場には貧弱な戦力しか常駐させない。つまり囮部隊の常態化を考えたのだね。囮だから弱くなければならないが、そう簡単に餌を取られても困る。そこで、餌自体を強化したロボットヤクザ兵が導入されたのだ。」

釈「それをアメリカ国民に納得させたのですか!」
まゆ子「いや、これをするのは民間軍事請負会社のフリーの戦闘員。つまり兵隊ヤクザだね。一山なんぼの命てわけだ。これで敵を釣る。」
釈「・・・・・米軍自体は無傷で無敵、そういうことですか。」

まゆ子「そういうことです。

 さて、そういうことで、ロボットヤクザ兵DICSは、常に敵中にある。しかし、迎撃側はこれをまとまった兵力で攻撃しようと思ってはいけない。これは囮なのだから、自分達が姿を見せるとすぐに天からミサイルが降って来ることになる。そこで、こちらも隠密で攻撃するのだが、そもそも目標の数が少ないから隠密とはいえ敵は兵力の集中が起ってしまう。しかも、囮のDICS部隊はかなり手ごわい相手だ。或る程度の兵力を投入しなければ勝てない。指揮官の判断のギリギリのラインを衝いてくるのだよ。ここんとこ重要。つまり戦争というのはインテリジェンスの闘いであり、正面兵力での戦いは結果に過ぎない。DICSを使う戦闘は、リスクも大きいが敵もよく釣れてしまう。しかも放置すればやりたい放題にやられてしまい、支持勢力の関心を失ってしまうからには、迎撃側はいやでも叩かねばならない。相手を攻めの状態に持っていかせるのが、この戦争ドクトリンの神髄だよ。」

釈「つまり、ヤクザの縄張り争いのような状況を演出するのですね。コワイとこ強いとこ見せとかないと、舐められるという。」

まゆ子「DICSの運用は非常に現在の軍隊の活動とは異なっている。たとえば、現在ではアフリカとかで見られるような、或る勢力が或る集団に対して一方的な攻撃や掠奪暴行を加える、というのがあるわけだ。これを止めさせるには大量の兵力を投入して身動きとれなくする以外方法が無い。」
釈「そうなんですよ。まったく自国と関係ない国で、兵隊さんが命の危険に曝されるという理不尽な軍事行動を取らなくてはいけなくて、兵力を確保できないんです。」

まゆ子「DICSは違う。まず、無人の偵察ロボを紛争の現場に多数潜伏させていて、誰が何をしたかを十分情報収集しているのだね。ここで、一番目立ってる奴をピックアップする。そして、こいつの行動を監視してどこに居てどういう作戦行動を取っているかを確認して、DICSを空挺で投入。ぼこぼこにするが暗殺ではないので無理して殺す必要も無い。要はぼこぼこにすることで、相手が報復せねば兵士や住民からなめられるという状況下に陥れるのが肝要なのだ。」

釈「指揮系統の権威を失墜させる、そういう事ですね。アフリカじゃあよく効きそうだ。暗殺じゃあダメなんですよね。」
まゆ子「悪の代わりはいくらでも居る。必要なのは、その旗印においての作戦行動をさせるモチベーションを完膚なきまでに破壊する、そういう事ね。」
釈「対症療法ではなく、予防的ミッションなわけです。」

まゆ子「あるいは、悪党どもの家族やら親類やらを取っ捕まえて刑務所送りにするとか。ともかくヤクザ的な方法を駆使してひたすら侮辱するのだよ。」

釈「実にえげつない作戦です。でも、そうすると、DICSの搭乗員やらは捕まったら生きては戻れませんね。」
まゆ子「鉄砲玉だから仕方ない。無人兵器にはこのような外道な作戦は無理だから、人間がやらざるを得ない。兵隊ヤクザが必要なのだよ。」

釈「その為には自由度の高いロボット兵器が必要、ですか。攻められた場合はどうなんですか。防御にはDICSは効果あるんですか。」
まゆ子「まあ、そういうのはどうでもいいんだよ。米軍の大量動員システムがすぐ救援に来るんだから。兵力が集中するのならば、いくらでもハイテク兵器を使えばいい。それこそが作戦の目的であり成功の瞬間なのだな。」

釈「いまイラクでやってるような場合はどうでしょう。なかなか敵が出て来ないんですが。」

まゆ子「ま、基本的に最初からやり直しというとこになるんだが、こうなってしまっては仕方がない。イラクにおいては、DICSで道路修理とか学校建設とかの良いことをする。目立つからいやでもやってくるな。そこを監視ロボで見ていて居所や連絡方法を解析する。」
釈「結局監視ロボが無いといけないのですね。まあ、搭乗型人型ロボよりは簡単だから現実的といえばそうかな。」

まゆ子「より効果を完璧にするためには、DICSの部隊は一つではなく、二三の複数の系列の会社により運営されている方がよい。現場でかち合ってなんだかわかんない抗争が起ったりすると、隙が出来てより突っ込み易くなる。相手に隙を見せるというのがこの方法の神髄だから、組織的な欠陥を曝け出すというのが実によく効くのだな。それに、民間戦闘会社で命令系統がクローズドになっていれば、米軍がかってな作戦行動で敵を出し抜く、もちろんDICS隊の生死は考慮しない、も可能なのだ。」

釈「なんとか一家とか同士を入札する、そういうことですか。そんなのに国の中に入られたら大変ですよ。相手国の国民感情は考慮しないのですか。」
まゆ子「カタがついた後に、正規の米軍米兵を投入する。と、米軍は正義の味方として住民感情も良好に。」

釈「きたねえ、あめりかきたねえすねえ。」

 

まゆ子「とまあこんなところで、なんとか人型ロボットの存在意義を確保しつつ、まぬけなDICSを使ったおもしろマンガを描いてみようというのが今回のお話。」

釈「ヤクザロボの一席でした〜。べんべん。」

05/06/09

 

まゆ子「さてDICSだが。」

釈「あれ、まだやるんですか?」
まゆ子「最近ゲバルト処女でファンタジーばっかやってるから、こういうメカメカしいのにご無沙汰して居て、ちょっとフラストレーションが溜まっている。ちょこっとやりますよ。

 さて、この兵隊ヤクザロボですが、見てのとおりに、て絵まで描いちゃってるよ、で貧弱な坊やなわけです。」
釈「それがなにかのパロディというのは、現代のぼいざんだがーるには通じませんよ。」

まゆ子「正面装甲だけは確保したけれど、全周もやっぱり防御したいものだ。そこで使い捨て装甲というのを使っている。耐弾性はあっても弾を止めるだけで材質自体は使い捨て、という装甲だ。防弾ベストみたいなものだね。一応これでコクピットまわりは防御している。なにせ中身はやっぱり人間だから、一応の安全を確保しなきゃあ乗る奴をリクルートできない。」
釈「そりゃそうです。ヤクザだって死にたくはないんです。」

まゆ子「しかし万が一の場合、人間だけをピックアップして、ロボット本体は放棄するという事態も考えられる。その時普通の兵器ならば爆破しておくところだが、DICSは未来兵器だから自力で帰って来る。燃料がある限りは無線操縦も可能なんだ。ただし、燃料搭載量と携行弾薬量を考えると長時間の行動というのは不可能としか見えない。」

釈「8時間しか動かないんでしたね。でもそれじゃあ普通のミッションだって危ういんじゃないですか。てそういう時は専用トランスポーターですよ。」
まゆ子「それそれ。DICSはそれなりに高価な機体であるから、そう簡単には放棄できない。だから安っぽいトランスポーターを無人で投入して無人で回収する、あるいは補給物資を投下して歩いて来させる、とかもあるのだ。」

釈「つまり、人間はさくっと戦うと、迎えのヘリでさっさと帰って、ロボ自体は後で回収、というのが普通のやり方なんですか。」
まゆ子「状況によるけれど、1tのロボを回収するのは意外と難しい。かなり大型の輸送ヘリが必要だし、普通のトラックに搭載も可能だがトラック自体が攻撃されては元も子も無いのだね。だから安全な状況になるまでは自力で帰ってきてくれる機能がどうしても必要。で、それが実現するからこそDICSは実用化に成功したのだ。ちなみに、最初のDICSはもちろん日本製だよ。アメリカと日本の共同技術研究の結果完成した二足歩行ロボ、十分に戦闘行動に耐えうるものの使い道が無い、でも使えるし歩兵の削減には有効そうだ、というところからこの戦争ドクトリンは出発している。」

釈「DICSで待ち伏せ、とかいうのもあるんですよね。」
まゆ子「いや、待ち伏せには普通の無人兵器の方が適しているから、意外と使わない。つまり殴り込みにしか使わないんだよ。それも相手の戦闘行動を阻止するようには使わない。妨害はしても阻止はしない。」
釈「?」

まゆ子「つまり、阻止だと相手の正面に立ち塞がって膠着状態になるし、相当量の火力兵力の投入が必要なんだけど、妨害だと相手の作戦目標自体の遂行は許すのだよ。ただ、そのリスクとコストが高くなり、敵は気軽に行動出来なくなる。しかも投入兵力は最低限、ロボット数体で上等なのだ。それに、DICSは付帯被害、巻き添え喰って一般住民が死傷するというのも考慮はしない。ただひたすらに敵の兵士や指揮系統、輸送手段を攻撃する。つまり末端の兵士を孤立させる攻撃をする。DICSが投入されるような戦闘は、敵は一般住民の殺害を企図している事が多いから、実は付帯被害は問題じゃないんだ。それにDICSは捕虜も取らないし負傷者の救助もしない。敵兵が負傷した状態で、襲撃して虐殺していた一般民の中に取り残されると思うと、どうかな?
 要するに、相手の戦意を低下させるのに無辜の民衆をどの程度犠牲にすれば間に合うか、という極めてシビアな計算の上に成り立っている。どうせ止められないのなら、最初から人命もコストに含んでおこうという考え方ね。」

釈「じゃあ、一般民衆は敵とDICSとの両方から攻撃される、という事ですか。」

まゆ子「そう、まさにそう。でも現場に居る一般民衆の考え方はすこし違うものになる。たしかに人は死ぬ、しかし敵もやはり死んでいる。放置されれば無抵抗に殺されるだけなのだが、わずかなりとも反撃出来ている、というのはかなり溜飲の下がるとこだね。必要悪としてDICSを捉えるわけだ。もちろん大量の兵力を投入して敵をやっつけてくれるのが一番いいのだが、自分達にその価値が無いことは、自分達自身が一番よく知っている。であれば、敵をひたすらに殺すだけの存在DICSは許容すべきものなのだ。それに、たとえば相手がまったくの生身の兵隊だけの貧乏軍隊であれば、民衆も巻き添えにして催涙弾をばら撒いて敵味方ともに無力化して、民衆にも被害は出るけれど効率良く敵兵をぶち殺す、という作戦も取得る。これは非人道的だけど、殺される方の民衆としては許容せざるを得ないなあ。死ぬよりはマシだもん。」

釈「う〜〜む、つまりDICSは必ずしも嫌われ者というわけでは無いんだ。しかしまあ、イヤな戦場ですねえ、それ。」

まゆ子「もちろん非常にイヤな戦場だけれど、しかし現在の非対称的に大規模な戦力を投入して完全勝利を求める戦争ドクトリンが好ましいものかと問えば、そうもいかない。むしろ人間同士が感情の赴くままに殺し合うことを指向するこちらの方が、より人間的ではないかな。それに、一般民衆の死ぬ量はけっきょくどっちも変わらないんだ。」
釈「つまり、一般民衆は必ず何人か死ぬ、その死に見合うだけの成果を得られるか、というところに成り立っているんですけれど、・・・並の人間には耐えられない話ですね、それ。普通の兵隊さんには酷な話だ。兵隊ヤクザでなきゃ成り立たない。」

まゆ子「そこだ。この戦争ドクトリン「YAKUZA DUEL」に基づくDICSの闘いは、非常に人間的なんだ。ゆえにかなーり堪えるのだよ。普通の兵士、ましてや徴兵された兵隊にはとても不可能。戦争のプロと言える元特殊部隊員とかで構成される民間軍事会社を使わざるを得ない。しかしよくしたもので、それに応募する奴もやはり不自由はしないのだな。兵隊ヤクザに成りたがる奴は募集所に行列して並んでいる。」

釈「でも、これじゃあロボット同士、DICS同士の戦闘というのは成り立ちませんね。ロボットって高いんですから、そういう米軍に眼を付けられるような貧弱な坊やみたいな国やら組織には、導入できないでしょ。」
まゆ子「というか、やる必要も無いんだが、そこはそれ蛇の道はヘビといいますか、傭兵というのがあってDICS避けの為に働く会社もヤミであるんだ。そいうのはロシア製とか中国製のDICSに乗っている。元々が性能をギリギリまで引き下げたあまり強くないロボットであるから、ロボット技術の劣勢を武装とか装甲とかでカバーするてのも不可能とは言えない。十分ペイするのだ。ということにしておこう。実際は米軍に楯突いたら目茶潰されるんだけど。」

釈「どっちかというと、DICSの会社同士の縄張り争いみたいなとこで、無益な衝突をする方が多そうですけどね。」
まゆ子「違いない。

 で、DICS乗りは、極めて専門性の高いパイロットというわけではなく、歩兵戦闘の熟練者という位置づけなんだね。生身でも強い連中だ。」
釈「まごうことなく兵隊ヤクザなんです。」

まゆ子「そういう物騒な連中が、しかもこんなイヤな戦争をやっている。しかも頭上からいつ米軍のミサイルが降って来るかも知れない。死んだって保険も遺族年金も下りやしない、となるとこれは荒れるさね。」
釈「うーむー、理想的な環境ですね。」
まゆ子「中にはぶち殺した敵の人数をペイントしてて、100越えたとかで威張ってる奴もいるわけなんですよ。まあ、米軍のミサイルは一発で100人くらい普通に死にますけど。」

釈「なにが本当に非人道的なのか、分かりませんね。」
まゆ子「わかんないねえ。」

05/06/11

 

まゆ子「さてDICSなのよさ。」

釈「まだやりますか!?」

まゆ子「今日はDICSのロボットとしての機能について話してみよう。

 DICSは搭乗型人型二足歩行ロボで、開発は日本、運用実験と戦闘マニュアルの製作はアメリカ、と両者の共同研究によって作られた世界初の有人戦闘ロボットなのだな。だから、ロボットとしての性能は段違いに他より優れている。ぶっちぎりに優秀だと言ってよい。他の国が作ったDICSは単に歩くだけ、と言っても過言ではない。」

釈「やはり、ロボットとして優れている方が、兵器としてはいいのですか? 車輪が付いてる方が便利という話ですが、歩くロボットは速度が問題なのではありませんか。」

まゆ子「弾よりも早く走れる陸戦兵器は居ないよ。つまりね、DICSは弾丸を避ける為に走る、という事は無いんだ。そんなものは、機関銃がAK-47が発展途上国にも行き渡るようになった後には意味が無い。DICSが生身の歩兵よりも有利なのは、その射程距離と射撃精度なのだよ。人間には当てられない距離からばんばん当てて来る。それも日本製の精度の高いマニュピレータのおかげで、不規則な二足歩行の運動の最中でも、ばんばん当たるのね。」

釈「ああ、そうか。歩くロボットは揺れるんでした。」
まゆ子「日本製DICSは単に揺れを制動するのではなくて、揺れ方を予測して補正する機能が付いているから、据え置きの狙撃銃と同程度の命中率を誇るのだな。距離は7,800メートルだけど。それだけではなくて、対人、つまり歩兵に対して複数の目標とその脅威の大きさを瞬時に測定して左右同時に射撃して、さらに制圧の優先順位に従ってオートで照準を換えていく機能があるのだな。敵兵が5人ならんで一人人質が居るとして、ばばっと一連射したら、人質だけが無事だった、という使い方も不可能ではない。」

釈「うわあ、それはスゴイ能力ですね。確かにそんな優秀なロボットは、日本製以外ありえない。」
まゆ子「オーバースペックとも言えるほどの精密度だね。しかも、機械としての頑強さと故障のしにくさ、被弾時の機能のバックアップ冗長度の確保、と矛盾する条件をことごとくクリアしている。なにせ日本人は人型ロボットといえばスーパーロボとしか見えないからね。徹底的、ひたすら徹底的に性能を追求してしまうのさ。それでいてコストもしっかりと削減して来る。まあ、この精密なマニュピレータは民生用の技術も相当導入されてるからね。」

釈「はあ、それじゃあアメリカも自分でロボット作ってみようとか思わないはずだ。でもやっぱり、コスト削減で簡単にしたところもありますよね。」

まゆ子「うん、胴体はただの筒だ。本当ならば胴体部分も柔構造のアクティブフレームにしたいところだけど、装甲と防弾力を確保しなければならなかったのでここはタダの筒にした。ここらへんのサバイバビリティの要求に関してはアメリカ軍のノウハウが役に立つわけだね。また頑丈な胴体てのは砲を据えつけるのには適している。」

釈「ふむふむ。つまり茶筒に手足がくっついているようなものですか。で、脚です。」
まゆ子「二足歩行ロボットが取る避弾の方法は、速度ではなくて運動性だ。つまり、物陰に隠れながら高速ダッシュを繰り返して相手に照準を絞らせないのが一番よいのだね。当たらないのが最高なんだ。だから高速性ではなくて、運動の自由度とダッシュ力切り返し力が優れているのが正しい。それには脚のパワーもさることながら、器用さ精緻さも重要だ。」

釈「つまり、ささっと動いてぱぱっと隠れるのですね。」
まゆ子「それだけでなく、単に歩いているように見えて、じつはふらふらと予測を外すような不安定な歩きをわざとやっている。これは搭乗者に任せてもいいんだが、オートマでも出来るようになっている。人が手持ちで撃つ誘導機能の無いRPGミサイルとかには、この変な動きは有効なのだね。」
釈「酔拳ですか。」
まゆ子「まね。だから、これをやるから自動照準装置は要る。両手に銃を持っていても、普通の人間には同時目標の撃破なんて出来ないしね。」

釈「その変な動きは、平坦な地面で無いと出来ないんですか。斜面とかガレ地とかでもやりますか。」
まゆ子「やりますよ。むしろそういう所の方がやりやすい。要するに酔拳だから不安定な動きをするのよ、常時不安定な運動をし続けている。だから、多少地面が歪んでいても十分吸収が可能で、場面によっては車輪で走るよりも岩の端をとんとんと歩いていく方が早かったりもする。」

釈「凄い能力ですね。これもオーバースペックですか。」
まゆ子「オーバースペックです。しかもあまり活用の機会は無い。山岳ゲリラやジャングル戦で有効な気がするのだが、そいうのには使わない方が賢明だろう、ということになっている。むしろ活用するのならば、都市内での銃撃戦ですね。DICSの元々の計画こそが都市内部での歩兵戦闘の効率化と装甲附加だから、それは十分に考慮されている。DICSは2.3メートルだけれど、1.7メートルくらいのコンクリやブロックの壁ならば、手を使わずに脚だけで乗り越えるとかの芸当も可能なのだ。」

釈「手をつかわないというのは、どうやるんです。」
まゆ子「こういうの。(と、まゆ子は教室の机の上に手を使わずによじ登る。制服のスカートの内部までも見えてしまう熱演ぶり)」
釈「・・・分かりました。かなりセクシーな感じになるわけです。」

まゆ子「はあはあ。とまあそんな感じ。非常に微妙な重心の移動と、自分の重量で足場を壊さないデリケートな接触面の維持、更に上体の武装を敵に指向したままでこれを行わねばならない。なんていうのですか、後ろを向いて壁を脚だけで登る、というかなり変態的な運動も可能なのだな。」

釈「それはほとんど趣味の世界の話ですね。そこまで出来なければ軍用には使えないものですか。というか、それが出来ないようならば、装甲車でも使っておけ、という話になるんですかね。」
まゆ子「小型装甲車というのは、まあそんな感じかなあ。つまりDICSは普通に歩いている分には小型装甲車には勝てない程度の存在なのだ。変態的に歩くからこそ、脅威になる。」

釈「じゃあ、脚を故障したら、凄く大変ですね。」
まゆ子「大変だねえ。しかし、壊れたのが一本ならば、そちらの脚を固定してただのつっかえ棒にして、歩いていける。機械だから固定するのは大得意なんだよ。エイハブ船長みたいに片足義足て感じにして、これまた器用に歩いて行く。速度もほとんど両足無事の場合と変わらないくらいだ。ま、変態歩きは出来なくなるんだけどね。」

釈「でも、脚を狙うのはセオリーなんでしょ。」
まゆ子「いやあ、そうじゃないな。むしろ脚なんかよりも上体のコクピットを狙った方がいいよ。脚はやっぱり狙いにくい。ちなみに地雷とかワイヤーとかはほとんど問題じゃないことになっている。何故ならば、敵が攻撃を仕掛けている戦場に投入されるのだ、地雷とかトラップとかの防御的な対応を敵が取っていると考えるのは不自然。敵が仕掛けられる方なのだな。ま、対人地雷くらいは屁でも無いし、対戦車地雷で壊れるにしてもDICS一体乗員一名のみの命となると、さほど惜しくも無い。DICSで済むところに、数名必要な装甲車や10人も乗ってる兵員輸送車を送って地雷にやられると思えば、経済的だ。」

釈「でもやっぱり地雷には弱いわけですね。最近はリモコン爆弾とかもあるし。」
まゆ子「うん。そこで日本側は光学迷彩の搭載を提案したのだが、コスト上昇するからとアメリカ側に拒否された。光学迷彩といっても透明になるわけじゃあなくて単に普通の迷彩機能が動的に絵柄を変更するという程度のものに過ぎなかったしね。結局ペイント迷彩しか使わない。けれど、赤外線迷彩にもなっていて、赤外線誘導ミサイルのセンサーから見ると、へんな形の熱源分布に見えてしまうから、或る程度は避弾に有効なのだよ。」

釈「あ、誘導ミサイルというのが当然あるんですよね。単なる撃ちっぱなしRPGじゃなくて。」

まゆ子「そういうのは、イメージング機能も進化してるから迷彩もやっぱり効かない。迎撃機能で応戦するしかない。左右の両方の銃7.62mmロボットライフルで撃ち落とす事も物理的には可能ではあるのだが、近接防御用にショットガンパレットが付いている。指向性爆弾の更に指向性の高いものが、二三本銃にくくりつけているのね。一本ずつだから動作は確実。ショットガンだから、並のミサイルならば10数メートル付近でずたずたにしてしまい、自分は安全。」

釈「近所に人が居た場合、それは使えないでしょ。」
まゆ子「兵隊ヤクザが使うんだもん。てのは別として、随伴歩兵を排するためにDICSを作ったてのは、そこにあるんだね。車両を小型ミサイルの脅威から守る為には、随伴歩兵はむしろ邪魔になってきた。そこで、装甲ロボットタコロクやら、このDICSやらで、近接防御システムの作動に巻き込まれても壊れない死なない兵隊が必要なのだよ。」

釈「つまり、「YAKUZA DUEL」てのはあくまで別口の考え方で、ロボットの開発には関係なかったのですね。戦闘ロボットは出来た。でもあんまり役に立たないような気がする。でもなにか便利、どう使おうか、と。」

まゆ子「或る程度は、従来の作戦にも使うことも考慮されてはいたのだよ。特殊部隊に配置した場合、どういう活用方法があるか、特にこの照準システムの巧緻さは特筆に値するものがあり、一機で一個小隊をさっくり片付けてしまう戦闘力は、役に立たないと切り捨てるには惜しい、というかそんな結論シカ出せないのは無能てわけで、一生懸命考えた。」

釈「そもそも、どこらへんが使えない、と考えたのですかね。」
まゆ子「戦闘力については、まったく問題は無かったのだよ。敵が居る、かなり複雑な地形の場所に、空挺でロボットを投入する。敵がゲリラ兵であったとしても運動性に優れたDICSはものともせずに殲滅を完了する。だが、その後どうやって回収するべきか、これが問題になのよね。自力で歩いて帰って来るしか、無い。小型のロボットだから携行弾数も燃料搭載量も最少で、一戦闘を行えばもう御仕舞いだ。それから補給物資を投入してヘリで回収出来る安全な場所にまで回送する、てのが馬鹿にならない負担となる。小さいロボットが大き過ぎ重過ぎて、ピックアップ出来ないのだよ。」

釈「それは、追撃とかを受けた場合、相当やばい話ですね。」
まゆ子「そうなんだ。まともな軍隊ならば追撃してくる。追撃してこないようなまぬけな軍隊だけを相手にしているわけにもいかない。

 そこで発想の転換、相手も自分と同様に逃げる状態で撤退すればいい。敵との間に勝ち負けの結果を出さずに、ポイントを上げられるだけ上げるのが良い、という、ヤクザデュエルの基本を考えついたのだね。そもそも正面兵力との全面対決という場面にはDICSの出番は無いし、歩兵の大量投入が必要な非常に困難かつ無益な民族紛争等に投入する際の兵員保護と省力化の手段としてのDICS開発だったから、これでいい、と見極めたのだね。」

釈「ふむー。でも従来からの特殊部隊の作戦に、DICSの投入という場面は、完全に無くなったんですか。」

まゆ子「こちらは、パワードスーツ、つまりゴツイ防弾服の採用、という形でカバーする事になった。戦闘力の向上はほとんど無い。装甲もほとんど無いに等しい。ただ、情報機器の搭載量の増大と電源の確保、負荷重量の軽減の為の倍力機構の導入、と人間の能力ベースで相変わらずの方針を貫いている。ま、無人戦闘ロボやらタコロクやらの導入が進んでいるから、それでいいのだよ。」

釈「じゃあ、DICSはこれでおしまい。強化や進化はしないんですかね。ま、ヤクザデュエルの戦術が機能する限りはDICSはこのままでイイのかもしれませんが。」

まゆ子「そうだね。この任務で使う限りは、これで上等なのだ。しかし強化計画はもちろん続行されている。

 なによりも稼働時間が短過ぎるのは問題。増加燃料タンクを搭載すれば別だけど、8時間しか動かない、全力で動くと2時間で止まる、てのはさすがに問題だ。更に装甲の強化だね。正面装甲と同程度の防御力を全周に施したいし、使い捨て防弾てのをもっと保つものにしたい。走行速度をもっと上げたいしそれは弾薬搭載量の増加にも繋がる。乗員の環境も相当劣悪で長時間の戦闘は特別な訓練を積んだ者でなければ十分に使えないという点も改善したいし乗り心地を良くして負担を下げたい、情報機能をもっと充実させたいし新しいコントロールシステムを導入してまるで自分の体を拡張するように便利にも使いたい。遠隔操縦の精度も向上させたい。値段ももっと下げたい。要求はいろいろあるわけよ。」

釈「それをどんどん進化させていくと、スーパーロボットになるわけですか。」

まゆ子「それをそう呼びたいのならね。でも現状でDICSはタダの兵隊ヤクザロボ。」

05/06/13

 

まゆ子「てなわけでDICSだっちゃ。」
釈「いいかげんしつこいな。」

まゆ子「DICSの運用の周辺、特に民間警備会社と米軍の関係について、ね。サポートの話。

 人型ロボットを空挺で運用するとなると、相当のバックアップが必要で、メンテナンスも専門の技術者を大量に必要とする。それは分かるね?」

釈「それはもう。いくら兵隊さんをたくさん投入しない作戦だといっても、それでも相当の人数を投入しなきゃいけないはずですよ。」

まゆ子「それを解決する手段は、やはり大量の兵力の動員以外ありえない。では何が民間警備会社の担当になるか、そういうことです。

 ぶっちゃけ種明かしをすると、実はちゃんと米軍の兵隊なのだよ。つまり、民間警備会社をそっくり入隊させる、そういう形態になっている。」

釈「下請けではなくて、傭兵ですか。」

まゆ子「それそれ。つまり、昔ながらの傭兵団のシステムだ。まとまった兵力をそっくり都市国家とかが契約して、軍隊とする。これを復活させたものと考えよう。ロボットの運用と守秘義務とかを守らせるには、かなり信頼のおける人物でなければならないからね。それに、やはり民間の企業が組織的に人殺しするというのは許されない。かっては監視の目が行き届かなかったからそういう真似も出来たけど、戦場にまでインターネットが伝わってリアルタイムで放送される現実を前に、それはまったく許されなくなった、しかし、国軍をいう形で兵力を海外に大量に動員するのもなかなか困難になるのだな。そこで傭兵団形式が採用された。」

釈「では、米軍なんとか師団というのは、ふたを開けて見ると全員傭兵でアメリカの市民権を持っていない、そういう事があるわけですね。」

まゆ子「考えようによっちゃあ、これは至極マトモな軍隊だ。一般市民を徴兵したり志願兵でも短期間数年しか兵役に就けないというのは、相当に変なのだよ。職業としてプロフェッショナルの軍人を目指した者が、需要のある所で活躍する、これは当たり前過ぎるお話で、それが外人部隊とかの形式でしか今まで存在出来なかったのは、イデオロギー的な問題だ、と言えるでしょう。」

釈「つまり、この形式の傭兵団は、当時の時代状況から見て妥当だとされているわけです。」

まゆ子「供給地はどこにでも世界中からでも人材は得られるのね。しかし民間軍事会社とかの形態で国家の拘束を受けない集団を戦場に投入する事を、世界の世論が許さなくなって来た。じゃあ、丸抱えしてしまおうというのは、発想に矛盾は無いわね。それに、アメリカなんかは入隊希望者を募る為に相当のプレミアを用意しているのだけれど、これも必要無い。」

釈「反乱の可能性とかは無いわけですか? 装備の持ち逃げとか途中で寝返りとかは当然あるでしょう。」

まゆ子「保険が利くようになった! 叛逆保険てのがあって、それに加入していると、傭兵団の裏切りとはいかないまでも不手際で被ったありえない損失に関して保険金が下りるのだよ。しかも、装備をレンタルする会社というのまで存在する。投資によって兵器やら装備やらを用意して現地に配置してくれる。そこに自国の軍隊であったり傭兵団だったりを派遣して、必要とされるミッションを実行する。ま、最新装備はありえないけれどね。また、練度の低い自国軍隊の兵隊を動員して、傭兵団から士官だけをレンタルしてくるという方法もある。」

釈「なんか、いままでそれが無いのは不思議な気がしますけど、なんででしょうね。」

まゆ子「そりゃあ今まではアメリカなりソビエトなりが、その役を担って来たからでしょ。軍事顧問とかバーターで兵器取り引きとか、色々と方法はあるものの、本来ならば自力で調達するはずの兵器装備と熟練した指揮官とかを支援されていた、ってことだね。でも今はもうそれは無くなったから、民間でそういうのが用意されるようになる。兵器レンタルの会社は、今までならば戦場が自国内や近所だったから買い取りの方が良かったけれど、国連PKOPKFとかで弱小国でも地域紛争の前線に連れてかれる事になったから、わざわざ運ぶよりも現地調達したいという欲求が産まれ、そのニーズに合わせて発生したのだね。

 ただし、DICSは、それも米軍が使ってる日本製最新ロボットは、これは外部には出せない。ちゃんとした正規の部隊になっている。」

釈「しかし、大丈夫なのかなあ。それで勝てるんですか。」

まゆ子「勝つだけならば、米軍は無人兵器を主体とした大量動員体制を使ってどかどかと空爆するよ。つまり、反乱で傭兵団が勝つなんてロマンチックな状況は、よほどの小国でも無ければありえない。また、装備レンタルの場合、補給もレンタルだ。反乱を起しても補給のあてが無ければ飢え死にしちゃう。国内で戦争をする時は慎重であるべきだけど、普通は反乱は考える必要はないのだよ。」

釈「でも国内で戦争やることもあるんですよね。当然。」
まゆ子「通常それは、まともな筋目の通った傭兵団は手を出さない。でも相当低劣でいかがわしい傭兵団同士が国内で戦い合うという状況もありえなくはない。」
釈「ですよね。」

まゆ子「それは、そんなもの雇ったその国の指導者の責任ではあるけれど、ま国内で収拾がつかなくなれば国連が介入を決めて、PKFやらが起きる。傭兵団の投入という気楽なものがあるから、かなり大胆な戦力投入も有り得るのだが、その国自体に国益の無い誰も見向きもしないような時には、」

釈「YAKUZA DUELだ。」

まゆ子「ヤクザデュエルは、その低劣な傭兵団にとっては非常にイヤな存在なわけね。前に立ち塞がらないで自分達を直接襲って来る、オブザーバーだ。まともに相手すると上からミサイルが落ちて来る。最も良い方法はさっさと逃げちゃう事だね。潮時を見極めて適当なところで国外脱出。これだ。」

釈「ふーむ、なるほど、それはヤクザというよりも愚連隊だ。」
まゆ子「逆に、謀略として傭兵団を送り込み、国内の安定を崩して好都合の勢力に実権を渡して、崩壊させる、という謀略会社も存在するのだな。米軍御用達だ。」

釈「いいですよお。それは中々にいいですよお。ロボット同士の戦闘にちくちくと接近していきます。」

まゆ子「さて、DICSはそれらの傭兵団に任す事が困難なハイテク兵器だ。訓練もよそではやっていない。なにより防秘の観点から他人任せには出来ない。そこでヤクザデュエルをやる専属の傭兵団というのが組織される。長期契約の傭兵なのだね。最低でも10年在籍を義務づける、移籍の自由度が低い安定した職場だ。故に、特別な待遇も存在する。訓練と資格取得で昇進するのだよ。通常の傭兵団は昇進は無い。どこかの軍隊を出たらそのままの階級で横滑りする、つまり各国国軍からドロップアウトする受け皿という位置づけだ。

しかし、米軍ヤクザデュエル部隊は昇進するし、場合によっては正社員待遇つまりアメリカの市民権と合衆国の正規の軍人としての所属を、希望により取得できるのだな。この時代はアメリカの市民権が二つに分かれてしまったのだよ。不法滞在者や移民に与えられる選挙権被選挙権の無い二級市民権と、完全な公民権があり大統領にもなれる一級市民権と。二級市民権には徴兵もあるし健康保険も無い。一級市民権を得るのはなかなかに難しいけれど、これは一つの手段ね。」

釈「ではかなりのエリートと考えた方がよろしいでしょうか。て、元々特殊部隊員とかなんですよね、DICSのパイロットは。」

まゆ子「多分、ヘッドハンティングで隊員を集めているでしょう。人材の質を要求するんだ。」

釈「しかし、そういう事ならば、メンテナンスやら空挺やら支援攻撃やらは、それは楽ですね。まったく問題はない。」

まゆ子「そりゃあ問題があっちゃあいけないよ。ということで、時々日本のメンテナンス部隊とかが派遣されてたりする。」
釈「ですよね。当然。」

まゆ子「さらに時々、新兵器というか新装備とかを持って来て実験台にされたりもする。」

釈「それが曲者なんです。」

05/06/15

 

三十七粍機動歩兵砲の話

まゆ子「あー、なんだか知らないけれど、モモ展に新作3DCGを出展しましたー。」

 

じゅえる「なぜ? 折角作った弥生ちゃんじゃないのはなぜ?」
まゆ子「さあ。」

弥生「いや、でも折角作ったんだから、私出してよ。」

まゆ子「あー、なぜだろうね。実は今回、・・・・何故出したのか分からない。」
弥生「そんな無責任な。」

まゆ子「そもそもね、弥生ちゃんを出すオプションと、統則ロボットタコロクを出すのと、二つの選択肢があったわけなんだ。で、弥生ちゃんを出すのも悪くはないのだけれど、冬に出しそびれたタコロクを出すべきだろうということで、その背景を作ろうと思い立ったわけだ。」

じゅえる「ちょっと待て。ベイベータコロクの方が背景になってるぞ。」
まゆ子「本来は話が逆だったんだよ。ほら、AAであるでしょ。HAHAHAと笑って地獄だぜという米兵の。あれを作るつもりだったんだよね。」
じゅえる「ああ、あれ。でもじゃあ、あのパワードスーツは、それだったんだ。」
弥生「そんな一発芸用のいい加減なものには見えなかったよ。」

まゆ子「うん、結構いい出来になった。でもスカートの下はいい加減な関節構造になってるんだよ、修正したけれど。てことで、これは本来米兵なわけで、しかもタコロクがあることからも分かるように、未来米兵なのわけだ。当然使うべき銃器も未来鉄砲なのだが、見てのとおりにパワードスーツに見える高度なアーマーを装着しているしぃ、ロボットを相手にするのだから相当の強力な火器が必要とされるのね。」

じゅえる「で、37粍砲なわけだ。」

まゆ子「なにしろ装甲ロボットてえものはアサルトライフルで撃ったくらいじゃ効かないからね。それどころか、最近は人間だって手足がなくなったくらいでは引退しないでまた戦場に出て来たりしようとかいう。大口径のもはや砲が必要なのだ。しかし、重い。パワードスーツがいくら力持ちだといっても自分の重量よりも重い砲は持ち上げられないのよ。」

弥生「なるほど、さすがに論理的だけど、でも耕運機になぜしかも37mmなんて非力な砲が載るわけなの。」
まゆ子「耕運機ではなく、砲、37o速射砲にエンジンが付いただけなんだな。37o速射砲は太平洋戦争前のノモンハン事件においてさえ、すでに非力で対戦車任務には不適とされた砲なんだけど、それは戦車に対してであり、現在の装甲トラックやら高機動装甲車、それになんといっても装甲ロボットに対しては上等過ぎるほどの貫通力破壊力を持っている。重量の問題もあるし、なにより個人ワンマンで運用される砲だということで、ワンマンが対峙するべき敵を考えるとこれ以上の口径の砲の必要を感じない、て見切ったのだ。仰角大きくとって対空にも使えるし。」
じゅえる「え、飛行機撃てるの?」
まゆ子「一応はこれは機関砲なのだ。連続発射が可能だよ。でも装弾数は10数発しかないから、あっという間に弾薬無くなっちゃうけど。」

弥生「思ったよりもずっと考えてたんだ・・・。」

まゆ子「えっへん。ただし、それはこれを静的に運用する場合の話。37mm砲は基本的には待ち伏せにしか使えないてのは、まあこの口径だしだいたいがして砲であるのだから、動く必要もないんだけれど、これは動ける。」
じゅえる「うん? 無駄に動ける?」
まゆ子「まともに考えると無駄な動き。しかし、軽戦車並の火力ではある。戦車みたいに使ってみたくもなるでしょ。だいいちこれを押すのは人間とは限らない。ロボットやら無人車両やらに牽引させてもいいのだよ。」

弥生「あ、これもロボット兵器なの?」
まゆ子「人間が手押しで動く、のではないのだよ。手押しで操作するだけで、勝手に二輪でバランスを取るし動けるし発射も可能。ウインチを持ったタコロクが随伴すればちゃんと不整地も自由に移動可能なのだな。絵にはならないけれどね。」
じゅえる「だまされた。これ、人間要らないんだ。」
まゆ子「世の中そんなに甘くない。というわけで、剥き出しの砲が無人でうろついているという、かなりヤバい状況が現出するわけなのだよ。」
弥生「これも、ほとんど使い捨て兵器なんだ。」
まゆ子「弾薬搭載量はたかが知れてるから。20撃てれば上等、当たれば装甲車だって沈むしロボットだって。それにライフルに比べると射程がずば抜けて長いから、小型のタコロクがうろちょろする状況下ではモンスターとも呼べる傍若無人の無敵さを発揮する。」

じゅえる「じゃあ人間は。」
まゆ子「要らない。しかし、人間がこれを振り回すとなると、これがまたおもしろいんだな。絵的に抜群に面白い。」
弥生「うーーーーむーーーーー。」

まゆ子「こないだね、テレビでXゲームって番組の中でスノーモビルのレースやってたんだけど、これがめちゃおもしろいんだ。バイクがぽんぽん飛び跳ねるのはよくあるけれど、キャタピラ付いたスノーモビルもぽんぽん飛ぶんだな。まあゴムキャタピラだろうけれど、でこれはおもしろいやってみたいと思うんだけど、でもさ、この三十七粍砲がぽんぽんと飛び跳ねると、これまた面白いんじゃないかなとか。」
じゅえる「おもしろすぎるわ。で、飛び跳ねるように作ったわけなんだ。」
まゆ子「でもさ、でもさ、後ろに取りついた人間が砲がでこぼこで跳ねる度に空中でポーズを決めるとしたら、これはすごく絵的に面白いでしょ。」

弥生「・・・大体なにを考えてるのかわかった。つまりこれは真面目な機械ではないんだね。」
まゆ子「そうは言っても、やっぱり砲が自力で動くのは面白いよ。」

 

じゅえる「次行きましょう。パワードスーツです。」

弥生「これは至極マシだね。」
まゆ子「正直言って、こんなにマシなものが出来るとは作り出す当初からはまったく考えられない事でした。

 これの元は弥生ちゃんの素になった人形で、これを改修して身長2メートル、つまりギィール神族の女性を作る積もりだったものを流用して、彼女の身体がこのパワードスーツに入るように考えました。これまで作ったのは、素体となる人体を変形してスーツの形状を取るようにしてたのですが、今回は素体がスーツの中にちゃんと入る、というのを前提として作ってみました。結果としてデザイン重視の手法よりもずっとマシなものになりましたが、これも身長2メートルという最初の設定が良かったですね。身長170程度あるいは弥生ちゃんが入る150なんてのだったら達磨さんになってました。HAHAHAの米兵を作ろうと思ったのが吉でしたよ。」

弥生「これ、手足動くんでしょ。」
まゆ子「ほぼ完全に動きますよ。カラーラのリンクの設定がいい加減でへんな動きにはなりますが完全可動です。腰も回せます。ボーンを入れればもっと柔軟になりますけど。」
じゅえる「それは凄いんじゃないの?」
まゆ子「ここまで完全可動なのは、私史上初めてですね。自信を持って他に持って行けますよん。」

弥生「で、この中身はCGでは私が入ってるんだ。」
まゆ子「顔だけね。さすがに人体そっくり入れたら動かすのが大事になってしまうから首から上だけが入ってます。もっとも素体となった2メートル女の頭のサイズは弥生ちゃんと同じだから、弥生ちゃんの顔が中に入るのはしごく当たり前です。で、2メートル米兵バージョンに弥生ちゃんの頭を入れてディテールアップをした上で、首から下の甲冑部分を150cmサイズに縮小しました。だから、首とバックパック・装備品のサイズは2メートルバージョンと同じですね。」

じゅえる「いや、2メートルのはでぽには載ってないんだけど。で、このパワードスーツはどの程度の性能なの。」

まゆ子「単なる防弾スーツですよ。普通の生身の人間よりはマシという程度。別に超筋力があるというわけではないけれど、全備重量300kg(中身の人間入り)が軽快に動く為に十分な倍力機構が入っているという設定です。だから筋力は生身のにんげんの3倍くらいかな。チンパンジーの腕力がそのくらいというから、大したものではないね。」

弥生「でも猿ってそんな強力なのに、なんで人間だけこんなに弱っちいのだろう。」
まゆ子「ネアンデルタール人はそれほど非力ではなかったということだから、これはホモサピエンスの特徴なんじゃないかな。進化の当然の帰結ではなくて、非力ゆえの知恵の発達という側面があるのかもしれない。未開の土地に住む文明から隔絶した現地人といってもそんなに強力じゃないじゃない。要不要の問題じゃないんだよきっと。」
じゅえる「そうねー、肉体労働してれば強くなる、というのは一面の真理なんだけど、だからといって肉体労働をしていればオリンピックに行けるというものじゃないものね。」
弥生「ふむ。力が強ければそれに応じた文明を築くというだけだしね。どうでもいいことの一つなんだろうね、きっと。」
まゆ子「むしろ足が遅いことの方が大問題だよ。逃げられないもん。」
じゅえる「にんげんは遅いね。べらぼうに遅い。人間より遅い生き物って亀くらいなものじゃないの。」
まゆ子「あ、うん。そうなんだ。ただ一日の移動距離はそれなりに長い。こんなに遅いのにこんなに歩くなんて、という不思議な生き物だよ人間は。」

弥生「で、このパワードスーツが筋力3倍とはいうものの、装備重量がかさむのだからそれほど意味のある怪力ではないんだ。」
まゆ子「白兵戦するわけじゃないからね。やっても勝てるけれど、槍とか弓矢は使わないから怪力を利しての戦闘は無い。怪力よりはむしろこの大重量が大口径火力を扱うのに有利になり、つまり発射の圧力に負けないで反動を制御できて銃を持ってかれないのね。固定武装にしちゃえばもっと大きい銃も使えるけれど、一応は手持ち火器を必要最低限の筋力で保持してる。」

じゅえる「スピードはどうなの。装甲はしていても弾が当たるのはお勧めできないんでしょ。」
まゆ子「もちろん。弾は拳銃弾だって当たりたくない。いや拳銃弾ならなんてことないんだけど傷くらいは付くからね。5.56oのアサルトライフル、7.62oの古いタイプの弾丸まではなんとか防御出来るということにしよう。でもやっぱり障害物の後ろに隠れるべきだし、移動時は装甲車両に乗るべきなのだ。だから運動機能はそれなりに早い。生身の人間が装備重量を考慮せずに運動できる程度の速度は持っている。その分装甲厚は下がるけれど当たらない方がいいに決まってるから、バーターで運動能力の方に性能を合わせている。」

弥生「スーパーマンとは程遠い、というレベルなのね。」
まゆ子「現実的なパワードスーツというのはそんなものだよ。生身の人間が12.7oのM2機関銃を撃ちまくるなんてバカな話は未来永劫無いのだな。」

じゅえる「動力は何?この後ろの背負ってるのがそうでしょ。」
まゆ子「うん。これは燃料電池で電気で動く。2メートルバージョンと150cmバージョンとは同じバックパックを背負ってるから、150cmバージョンでは背中一杯になるけれど、2メートルバージョンではさらに装備が加算出来るようになっている。大体弥生ちゃんが小さ過ぎるんだよね。」
弥生「わるかったね。で、この後ろの扇風機は冷却器ね。」
まゆ子「それはたしかに冷却器なんだけど、プロペラでもある。」
じゅえる「プロペラ?」

まゆ子「強力な筋力で高速で移動する、これは理想であるけれど実装は非常に難しい。人間がベースなんだから人間の能力を大きく越えるパワードスーツを作るのは困難の極みで特に速度面でその限界は顕著に顕れる。筋力で重いものを持ち上げる、なんてのは機械にはいとも容易いのだよ、ジャッキを使えばよい。時間を掛ければ重たい装甲車だってひっくり返せる。でもスピードはそうはいかない。リーチ決まっているから、中に人間が入って着用という形でコントロールする前提では、運動能力の倍力比は1:1が妥当なんだ。

 だけど、それをアシストするのは可能。つまり外から誰かに押してもらえれば、普通に走るよりも早く走れるのね。そこでプロペラでプッシュして。」
じゅえる「はいはい。なるほどね、短時間瞬発的に動く為にこんなもの付いてるんだ。」
まゆ子「最高速は要らない、加速力がね。障害物乗り越えの際にもプッシュは効くでしょ。」

弥生「おしりが丸見えなんだ。」
まゆ子「最初はスカートつけてました。そして付けるべきです。十分な強度をもったスカートは股関節部位を保護します。ただ、動かすのにはちとめんどうだったので、150cmバージョンでは取っ払ってみました。背が低いから丸っこくなっちゃうのを避けたという面もあります。スカートと腰の装甲は2メートルサイズのと同じものだからバランスが悪くなります。ここはスタイル重視でお尻出してみました。」
弥生「はあ。なんだかかっこいいお尻だね。ここまでお尻である必要は無いんでしょ。」
まゆ子「というよりも、ここまでお尻の形で残るとは思いませんでした。普通はもっと変形してしまいます。生身の人間が入るという設定で球体関節を多用したことでこんなにお尻になってくれました。」

じゅえる「拳銃持ってるね。弥生ちゃんには大きいんじゃない。」
まゆ子「人間には大き過ぎる拳銃ですそれ。なにしろパワードスーツが使う銃です。自分も壊せないような貧弱な威力ではなんの意味もないから、弾薬に通常の5.56oライフル弾を流用出来るというスーパー拳銃です。パワードスーツを来ているからこそ撃てる銃ですね。大きいように見えるけれど、でも拳銃。銃身長はライフルよりも短いけれど、並の拳銃よりは随分と長い。短いから十分に威力が弾丸に乗らないけれど拳銃の比ではない。なかなかおもしろい鉄砲です。」

弥生「腰にぶら下げるのがその弾だね。」
まゆ子「うーん、弥生ちゃんの場合はそうなんだけど、2メートルバージョンでは12.7o弾を持ってるんだよね。狙撃銃を手持ちで撃つ、という感じで装備が違う。弥生ちゃんチビだからそんな長モノは使えないから、拳銃の弾をぶら下げることになりました。といっても弾倉の形状は同じでサイズが違うだけなんだけどね。」
じゅえる「でも拳銃ってほんとの戦争ではあんまり使わないんでしょ。」
まゆ子「そだよ。拳銃は離れた位置の相手に当たらないもん。でもこれはコンピュータ補正するから当たる。銃身も並より長いから当たる。サブマシンガンよりはよほど当たる。大体デカい機動歩兵砲を操作しているんだから、他の武器は要らないもの。おまけよ。」

弥生「で、顔にマスクが付いてるわけなんだけど、なんだこりゃ。」
じゅえる「なにこれ。」
まゆ子「なにってマスクよ、顔面装甲よ。透明素材で作ってるからこんな感じ。その他の呼吸補助装置やらは透明素材じゃないからよく見える。」
じゅえる「そんなもん見せる必要ないんじゃないの。」
まゆ子「逆に、見せて何が悪い、というとこがある。ただでさえ装甲服で人間離れしているというのに、これで顔面まで見えなくしてしまったら、それこそ非人間的でしょう。それは着ている兵士にとってもよくないわけよ。仮面の裏に顔を隠して非人道的な行為を簡単にやってしまうとかもある。そこで、だれがやったのかが相互に分かるように、透明マスクを使ってる。液晶シャッターで見えないようにする事は出来るけど。」

弥生「まゆちゃんの言う事は一々なんらかの理由があるのよね。でもほんとうは。」
まゆ子「はい。面白いからです。」

じゅえる「ちょっとー、これ透明のところに色を塗ってみると、犬か猫の顔になるんじゃないの。」
まゆ子「呼吸器が付いているところが出っ張っているから、そういう感じかな。特に異常とは思わないけれど。」
弥生「なんかドクロみたいでこわいよ。目も付いてるし。」
じゅえる「この金色の目はなんなの。」
まゆ子「目ですよ。つまりディスプレイだ。普通に前を向いて見る時は、透明のマスクを通して前が見えるんだけど、目を下に伏せてこの丸を見ると、網膜投影でコンピュータの画像が見れるのだよ。網膜投影だからこんなに小さくていいんだよ。で、これはコンピュータが補正した周辺の状況やらが360度丸分かりで、肉眼で見るよりも詳しく状況を把握出来るんだな。」

じゅえる「耳はなに、耳は。」
まゆ子「立体音場測定装置、つまり聴覚を利用して敵を発見する装置です。人間の耳では追っつかないのでコンピュータが勝手に測定して、視覚情報で提示します。どこから撃って来たかが音で分かるのね。」

 

じゅえる「なんだか、ほんとうにまゆちゃんは一々ごうりてきだねえ。それで、これはお話に使うの?」

まゆ子「へ?」

じゅえる「いや、これ、タコロクと一緒に映ってるのをモモ展に出したんでしょ。お話に出るんじゃないの。」
まゆ子「どうしよう。別にパワードスーツなんて必要ないんだけど、どうしよう弥生ちゃん。」
弥生「私に振られても。ダメなの?」
まゆ子「あまりにも普通過ぎてかえって使い勝手が悪い。」
じゅえる「どういう理屈なんだ。」

まゆ子「米軍というものは、もうちょっと頭の線が一本切れたような派手派手さが必要なんじゃないかな。これは常識的過ぎて堅実で、ちと困る。」
弥生「それは困るところじゃないでしょ。よしわかった。これを使いなさい。」
まゆ子「や、でも砲はダメだよ。あれはさすがに間抜け過ぎて。」
じゅえる「パワードスーツは採用だ。いやならもっと凄いものを持って来なさい。」
まゆ子「いやでもあれってただの防護服みたいなものだし・・・・。もっと凄いものかー。」
弥生「パワードスーツって、ご主人様と私に出ても大丈夫なんでしょ。」
まゆ子「出ない方がおかしい、てくらいだね。今の状況だと。故に、躊躇する。」

じゅえる「あ、わかった。これ、蛸足が付いてないからだ。」
弥生「あー、ああそうだ。これ統則構造じゃないんだ。」

まゆ子「え。・・・ああそうか。それで躊躇するんだ。そうか。どうしよう。」
弥生「つまりこれは旧式に当たるんだよ。最近のはもっとぬめぬめしてるべきなんだ。タコロボットがある世の中に合致していない、時代遅れのスタイルなんだな。」
まゆ子「そこまで言わなくても。」

 

じゅえる「でもいいじゃない、悪役っぽくてさあ。やられキャラっぽくていいよ。」
弥生「うん。」

 

05/04/15

 

 

 

 

 

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