MACHINERIES
このページは
私がお話しで使おうと計画した
ロボットや機械類のうち、
科学的根拠を持つホントに使えそうなモノ
を選んで展示するものです。

 

ひなこシステム(ホントに使える人型戦闘ロボット)
   
「人型戦闘ロボットとはかくあるべし! シリアスに、あくまでリアルに。」

TWSTranceWeaponSystem)(ホントに使える大型人型戦闘ロボット)
   
「ロボットは戦車には勝てない? あなたの常識が今覆る。」

オービタルダイバー(ホントにつかっても別に問題はない人型宇宙作業ポット)
   
「作業用に手が二本、機体の固定用にも手が二本。おお、こりゃ人型だ!」

サルボモーター(こりゃ絶対使えない人型歩行機械レース専用)
   
「人類の夢、歩くことだけを要求された機械の究極の姿とは。」

オクタコス シリーズ(ホントに使えるタコ型パワードスーツ・ロボットビークル)
  
「あなたがデザインしたパワードスーツはエレベーターに乗れますか?」

μH マイクロヘルパー(ホントに使える日が来るかも知れない家庭用お手伝いペットロボット)
   
「AIBOだったりASHIMOだったり、でももう5年も前に考えてたぞ、コレ。」

箱型スペースコロニー(ホントに使える物理的に不安定で無い立方体型コロニー)
   
「ガンダムのスペースコロニーはいい加減飽きません?」

もびるぺんぎん(ホントに使える全領域人型有人戦闘ロボット)
  「君は戦場に有人ロボットがある事をバカにしているだろう」

 

 

ひなこ システム

 21世紀前期、国連平和維持活動は多大なる兵員の損失によって
事実上任務の遂行が不可能になった。
 これはアメリカロシアEU中国インド等が極めて
安価なロボット兵器
世界中に見境なく販売したためである。
 この事態を打開する為に国連は
兵器輸出に関与しなかった日本に
兵員の代替となる人型戦闘ロボットの開発製造を依頼、
全数を国連管理とし各国が
平和維持活動専用として装備する事を決定した。
 それが「ひなこシステム」である。
 「ひなこシステム」は当時採用されていた人型戦闘ロボットに比べて
極めて小さいという特徴を持つ。
 これは兵器輸出国側が平和維持活動専用に限定するように
強硬にスペックダウンを要請、妥協的措置として規定された。
 だが日本の開発スタッフは要求以上に
小さく軽いロボットの開発に成功、
逆に、純戦闘目的で設計された人型ロボットに対して
運用上の大きなアドバンテージを得る事が出来た。

 ちなみに「ひなこシステム」の名称はその元となった
自衛隊が研究開発を続けていた兵員代替人型戦闘ロボット
KARACO」の縮小版という事で名付けられた。
 世界中どこでも「HINAKO ROBOT」で通用する。

 ひなこシステムの詳細

 「ひなこシステム」は日本が国連の委託により開発と生産を行う、平和維持活動専用の人型戦闘ロボットである。

開発の経緯
 「ひなこシステム」は国連平和維持活動において従来は人間の兵士がやっていた、停戦監視、紛争地帯での治安維持、警察活動、難民支援、選挙監視や医療援助に当たるNGOの護衛等、戦闘を主としない通常任務を人間に代わって行う事を目的として開発された。本来なら戦闘ロボットはこの主の任務には投入されないが、この当時直接戦闘を行う実戦部隊よりもこういった任務の方がはるかに兵員の損失が大きいという異常事態に陥っていたのだ。
 その原因は極めて安価なロボット兵器の普及にある。500円の爆弾にCCDカメラの付いた1000円のコンピュータを接続するだけで、敵味方を自動で識別するロボット爆弾が完成する。進化したコンピュータとソフトウエアは画像から一般人と兵士を識別したり、車両の弱点を解析して直接攻撃を加えるといった、極めて高度な機能をどんないいかげんな兵器にも付加する事となった。ただの自動ライフルにコンピュータを装着した自動照準ライフルは一般歩兵を駆逐して戦場の主役となっていたし、それを搭載した民間用の車両に爆薬と操縦用コンピュータを装備した「自爆トラック」と呼ばれるものは人間をはるかに越える戦闘力を発揮する。装甲に守ら十分な火力支援を行える戦場ではそれらは微弱な威力しか持たないが、戦場を離れ日常の現場に近づいていくほど、これらのロボット兵器はその威力を増していく。言うならば、戦争の形態が変化して主戦場は民間人の側へと移っていたのだ。
 この変化に国連平和維持部隊に参加する各国軍隊はまったく対応できなかった。この形態の戦争では守る側が攻める側に比べて圧倒的に不利な状況に置かれ、兵力の多寡は問題ではない。弱小勢力のテロリストや反政府組織に、各国正規軍である平和維持部隊が次々と敗北していった。

 この状況を産み出した兵器輸出国には当然のように避難が集中した。特にアメリカは自国の軍隊をより大規模な戦争に振り向け、こういった日常業務に近い任務には派遣を渋っていたのでより強い反発を受けた。こうして主要な兵器輸出国であるアメリカロシアEU中国インドは制裁措置を受ける事となり、一定期間の兵器輸出差し止めと兵員の供出義務づけが課せられた。
 こうして「常設国連軍」構想が発足したが、しかし平和維持活動にそれを直接投入する事ははばかられた。なんらかの有効な防御策を講じなければ国連自体の存続すら危ぶまれた。
 そこに、アメリカとEUが「兵員の代替となる人型戦闘ロボットの共同開発と全数国連管理によるロボット国連軍の創設」というアイデアを提供した。が、この案は各国から猛反対を受ける事となる。自分でロボット兵器をばらまいておいてそれに対抗する為のロボットをまた自分ところで作って売ろうというのか、という訳だ。しかしこの提案はそのまま却下するのには惜しいものであり、ロボットに対抗する為にはロボット兵器しかないという事は誰の目にも明らかであった。
 そこで、自力で戦闘ロボットを開発する能力がありながら兵器輸出をしていなかった日本に開発と生産を委託するという案が自然発生的に生まれた。というよりも、兵器輸出国側はすでに兵員代替用戦闘ロボットの生産に着手しており、機能や品質においてそれらに劣る機械を装備するのに各国とも消極的で、それらと交戦しても引けを取らない能力を持った戦闘ロボットが必要となったが、そんなものを開発出来る国というのが、日本以外には無かったのだ。

 日本政府は自衛隊で開発中であった兵員代替戦闘ロボット「KARACO」システムに基づき平和維持活動専用の特別なミッションAIを備えた人型ロボットの設計原案を提出したが、今度は兵器輸出国側で猛反対が起った。つまり、これは事実上日本の兵器ビジネスへの参入だ、というのだ。この意見は結構説得力があり、平和維持活動専用ロボットというコンセプトの意義を確認する専門家によるワークショップが設けられ検討した結果、一般的な人型戦闘ロボットよりもサイズの小さなロボットが望ましいという事になった。

小型化の利点
 ひなこは身長170cm、重量100kg、装備重量130kgという極めて小さなサイズである。人間の兵士よりも小さいくらいだ。当時主流の人型戦闘ロボットが身長2m、重量200ー250kgというのにくらべると半分の大きさしかないと言える
 これは制裁措置として「ひなこシステム」の開発製造から排除された兵器輸出国側の強硬な要請があり、妥協案としてサイズの縮小が決定されたものだ。ひなこの大きさでは、当時の人型戦闘ロボットの主兵装として見られていた20ミリ対装甲ライフルを移動中に発射する事が出来ない。ロボット兵器の普及により人間以外の兵器はほとんどすべて装甲化されるようになっており、兵器輸出国側の開発する人型ロボットは20ミリを使えるのでこの制限はかなり大きな意味を持つ。歩兵代替兵器として「ひなこシステム」が独占状態になる事は絶対に阻止するという、意思の現れなのだ。
 その結果、ひなこは身長185cm以下、重量150kg以下に定められた。自衛隊が開発中の「KARACOシステム」を元に試作されたプロトタイプはこの大きさで作られたが、運用実験の結果ひなこが投入される予定の、難民が周囲に多数居る状況では、非常事態が起った際に人間がロボットの方に近寄ってくる事が判明した。従来の人型戦闘ロボットは周囲に一般人が多数存在する状況での運用を考慮していなかった為に、こういう現象が発生する事が分からなかったのだ。
 この結果を受けて、非常時に人間が近寄ってこない為の「ひなこシステム」の解答が、さらなる小型化である。従来ボディに内蔵されていた燃料電池を外部に露出させ冷却器を排除する事で人間よりも小さな戦闘ロボットが実現した。この変更によりひなこの熱赤外線センサーに対する隠密性は人間並に拡大したが、その十分の一の熱排出量でも探知する技術がすでに普及しており、排熱を少なくするよりもいかに誤魔化すかに焦点が移っていた為に欠点とは看做されなかった。
 小型化の成功は従来の人型戦闘ロボットに無い運用上の利点を数々もたらした。まず軽量化により稼働時間が大幅に延長された。サイズが小さくなった為に狭いスペースへの進入が可能となり、兵員の代替物なのに建築物への突入というもっとも危険な場面に人間を必要とするという矛盾が解消された。重量が軽くなった為に運動性が向上し、木造建造物や屋根、樹上にも登れるようになった。だがなんと言っても大きいのが、一般の民間用の車両で「ひなこシステム」が輸送出来る事である。開発途上国では人型戦闘ロボットの輸送に使う専用車両の用意もままならないが、「ひなこシステム」ではひなこのみを派遣して現地で輸送手段を調達出来るようになる。派遣部隊の規模の縮小が可能になり、その分経費が削減されるのだ。

ひなこの戦闘力
 ひなこシステムは通常6体を1小隊としてグループで運用する。ひなこ1小隊の火力は人間の兵士2個小隊30人と同程度とされるが、実際の運用では歩兵同士の戦闘ではひなこ他のロボット歩兵に人間が敵対する事は不可能だとされている。
 なぜならば、まず火器のレベルが違う。ひなこは背部に旋回するウエポンシステムに12.7ミリ自動照準ライフルと40ミリマルチパーポスランチャーを装備するが、それは常時360度全周を望遠レンズ付きのカメラで監視するコンピュータと連動しているのであり、射撃精度の点のみでも人間とは隔絶した能力をもっている。反応速度の点でも、ひなこは全く予備情報を与えられない状態からわずか0.3秒で状況認識、行動選択、索敵、目標確認、射撃予備動作、照準設定、発射までもこなす事が可能だ。
 さらには熱・赤外線・偏光・磁気電波・音響・化学物質(嗅覚)・レーダー等の各種センサーを全身に無数に装備しデータをリアルタイムで分散処理しており、人間どころか戦車にすら情報処理能力では引けを取らない。状況に存在する複数の人間の行動と意図を同時にシミュレートするソフトウェアすら持っているので、人間相手で負けるという事はほとんど考えられない。
 もっともひなこシステムが相手にするのは同じ戦闘ロボット、対人ミサイルや自動照準ライフル、ロボット式指向性榴弾、最も悪質とされる極めて安価な待ち伏せロボットトラップといった、人間では手も足も出ない存在である。現代の戦争は一人の兵士がこれらのロボット兵器を使う事により中隊規模や機甲部隊にさえ対抗出来るという、テロリストにとっての天国のような状況に陥っているのだ。

ひなこウエポン
 ひなこは背部に「ひなこウエポン」という旋回する武器システムを装備している。よって直立した状態では前方の標的を攻撃出来ない。この形態は一見不利のように思えるが、それまでに使われた戦闘ロボットの運用状況から戦訓として得られたものだ。
 ひなこは戦闘時には人間と同様に上半身を折り曲げて姿勢を低くする。すると背が平面となり、武器システムが正面を向き射撃可能姿勢となる。つまり、回転砲塔として使えるようになる。ひなこは全身にカメラやセンサーを装備し、武器システム自体も独自のセンサー系を持っているので、どのような姿勢になっても索敵能力が低下する事は無い。通常は二足歩行をするひなこだが、両手を地面についてトカゲのように匍匐前進をする事も出来る。二足歩行時にはひなこは時速40キロ程度だが匍匐前進時でもやはり40キロが出る。むしろ戦闘ロボットとしてはこの姿勢の方が常態だといえる程、被弾率を極端に下げた優れた戦闘形態で、ひなこの重量の軽さもあり丈夫な建築物であれば壁面に張りついての移動や攻撃が可能だ。
 また通常の直立姿勢では正面を攻撃出来ないので、平和維持活動で無用の緊張を産み出さないという効用もある。

ひなこの防御力
 小型化の代償としてひなこの装甲はきわめて貧弱である。人間並と言ってもよい。とはいえ人間にボディアーマーを装着するよりはレイアウトが自由なのでより強力な防御手段を施す事が可能で、人間用には使われなかった、高密度ガラスとプラスチックをサンドイッチにした使い捨て複合装甲で7.65ミリ弾を完全にストップする事が出来る。使い捨て装甲が用いられているのはメンテナンスの手間を省くためである。「ひなこシステム」はそれ自体が繊細なマニュピレータを装備しているので、自己あるいはひなこ相互にメンテナンス作業を行い支援整備の省力化も実現している。ひなこを遠隔操縦して日本に居るエンジニアが整備をする、という芸当も可能なのだ。
 手足の装甲は無い。「ひなこシステム」の元となった「KARACO」システムがもともと戦闘任務を野戦だけでなく都市戦闘、特に屋内戦闘を目的としていた為に運動のじゃまになる手足の装甲を装備していなかった。手足も使い捨ての部品と見なし、それ自体にある程度の強度を持たせておくのみとする、という発想で「KARACO」システムは設計されている。この設計思想は海外の支援設備もろくに無い環境で運用される「ひなこシステム」にも有効だとされ、日本に開発が委託されたという経緯がある。
 装甲の無い手足はその分柔軟性と巧緻性を獲得した。特に難民支援で使われる場合、ひなこが人間を押したり制止したりという人体に接触する場面が想定されるが、従来の戦闘用ロボットはそういう任務には向いていない。場合によってはひなこが爆発物処理を行ったり、災害救助や負傷者の応急処置もしなければならないのだが、装甲のある手ではそういう行為は不可能だ。どうしても必要とあれば増加装甲を付加するという事で、手足自体には拳銃弾を防御する程度の強度しか与えられていない。
 だがもともと兵員を代替する戦闘ロボットに重装甲は不要という見方も多い。どれほど重装甲を誇ったとしても、軍用軽車両よりも防弾能力は低いのが当たり前であり、20ミリ対装甲ライフルでなくてもひなこが装備する12.7ミリ対物ライフルで十分な制止力がある、とされている。所詮は人間の代替物であり、人間と同様に弾丸に当たらないような戦闘行動を取らなければならないので、必要最低限の装甲で十分なのだ。むしろサイズの小さいひなこの方が、大型の人型ロボットよりも投影面積が小さくて被弾しにくいと言えるだろう。

 

 

 

TRANCE WEAPON SYSTEM
 どうしても戦争に大型ロボットを使いたいという皆の願いをかなえる
待望の人型ロボット。
 主兵装に
120ミリ迫撃砲を装備
砲弾に自律照準システムを搭載した
対戦車ミサイルを使い
ロボットに不向きな直接照準による戦闘を回避した
アウトレンジ攻撃に徹する事で実用化にこぎつけた。
 実質はホントに歩く自走迫撃砲である。
 航空材料で作られているので他の陸戦兵器よりも軽く
大型輸送車両の後ろに設けた専用ステップに載せて移動する。
 大抵の軍用大型車両に搭載が可能で、
非武装の車両にほとんど無改造で
武装を付加強化する事を可能とする。
 故に「くっついている兵器」、トランスウエポンシステムと呼ぶ。

 

オービタル ダイバー
 宇宙で使える人型ロボット
 ガンダムと同様、
スペースコロニー建設に用いられる
 作業用ロケットをベースに開発されたもので、
深海作業艇にコンセプトを似せ、
機体固定用の大型マニュピレータを追加したもの。
 一対のアーム2セットが上下に配置されるのでなんとなく人間に見える。
 紹介されている機体は主に広報活動、商業宣伝、撮影に使われ
そのため外装をより人間らしい形に改造、
ホログラム投影装置と透過キャノピーを装備、
更に全身数十ヶ所に企業のロゴが張ってある。
 戦闘はまったく出来ない。というか、この手の作業用ロケットは
著しく速度が遅くて戦闘なんてとんでもないのだ。

サルボモーター
 1998年に或る自動車会社が発表した本物と呼べる初めての人型ロボットは世界中に大きな波紋を巻き起し開発に追随するモノが続出した。
 その中にライバル会社に遅れを取るまいとする間抜けな自動車会社があった。その会社は、発表されたロボットが鉄腕アトムを実現させる為のものだというのを聞き、そんならこっちは
ガンダムを本気で作るぞ、と実用の見込みも無いのに勢いだけでプロジェクトを立ち上げた。が、一人の天才エンジニアが参加した為にロボット工学の極北を歩む事となる。
 彼はこう考えたのだ。「このロボットは二足歩行で移動すればいい訳で、効率良くうごくのであれば
人間を模倣する必要は無い。」
 その結論を受けて設計されたモノは、高圧空気で支えられた一本の板
ばねで構成される、まるでダッチワイフのような風船状の脚を持っていたのだ。この脚は股関節のアクチュエータのみで駆動され。膝関節は無く、蹴り足をばねの弾性力で代替するというものになっていた。歩く姿はまさに「競歩」。膝をまっすぐに伸ばして前後する抱腹絶倒の歩き方だった。
 当然他の研究員は反対したが、物理シミュレータ上ではそのロボットはちゃんと歩いていた。しかも関節構造を持った他のタイプよりはるかに早い走行速度を持っていた。ただし、このアーキテクチャでは歩く事しかできない。歩きながら物を運搬したり道具を使ったりは出来ない。だが、単に歩くだけならばこの構造にかなう物は無かった。
 歩く以外何の役にも立たない機械。そのあまりのシンプルさに開発者もそして経営者も魅せられた。この自動車会社はかってレースで名を馳せた事があった。その夢をもう一度、この機械で再現できないか、実機の開発が開始された。
 実機ではより早く歩行させる事に焦点が置かれた。それは
転倒にどう対応するかという問題でもある。開発チームは脚と同じ構造の腕も取りつけて転びそうになったら腕が脚を補う、転けたらそのまま腕のばねが受け身を取って機体を損傷から守ると同時に速度を落とさずに姿勢を復元する、という逆転の発想で乗り切った。この腕では作業は出来ない、実用機としてはまったくの無駄である。しかし、おかげで時速80キロで転倒しても機体乗員ともに傷一つ無いという安全性を確保する事が出来た。
 そうして完成したロボットは、全くの実用性を持たなかったが、それゆえに世界中から大きな支持を集めて瞬く間に1000台の受注に成功、スポーツビークルとして認知される事となり、ロボット走行レースから、更には格闘戦までも行われるようになった。
 ちなみに「
サルボモーター」の名前の由来は「猿ぼぼ」にそっくりだから、である。

オクタコス シリーズ
 21世紀半ばとなっても個人用装甲倍力服・
パワードスーツは実現していなかった。
技術的な問題はすべてクリアされていたが、使う場所がなかったのだ。パワードスーツよりもロボットの成長の方が早く、人間がわざわざ投入されなければならない現場があっという間にロボット、および遠隔操縦される機械によって置き換えられてしまった。パワードスーツが投入されるべき場所などは一番先にロボットが導入されてしまい、
戦場であれ災害現場であれ人間が必要なくなってしまったのだ。
 これは確実に科学の勝利なのだが、同時に人間の無力さを証明する事ともなる。それを覆そうと様々なタイプのパワードスーツが考案されたがいずれも実用には至らなかった。危険な環境においてロボットに匹敵するだけの
安全性を確保しようとするとどうしてもロボットに比して3ー4倍のボリュームが必要になる。人間を危険な場所に送り込む為の機械なのにこれだけのボリュームが災いして却って現場に入れないという事になるのだ。
 だが、オクタコス シリーズはこれまでに無いまったく新しいアクチュエータを採用する事でこの壁を突破した。つまり、これまでは装甲の内側に内蔵されていたアクチュエータを排除して単なる装甲服とし、その外部に人間の構造とは別の配置で移動の為の「腕」を配置したのだ。この「
」は関節構造が無く人工筋肉のみで構成される、まさに「タコの足」だった。
 「タコ足」は同じ体積の機械式マニュピレータと比べて数倍の力を発生させる事が出来る。つまり同じ力を出すのに必要な体積が小さく、しかもその形状を自由に変えて場面に応じてもっとも邪魔にならない場所に格納する事が出来るようになる。これを装備する事で、これまでのパワードスーツでは入る事も出来なかった人間用の狭いエレベータも利用が可能となった。
 また、その先端に
吸盤を装備する事で、ビルの外面を垂直に上昇したり、天井に張りついての移動といったロボットですら不可能な移動も実現した。さらにこれはもともと頭足類を模したものであるから、水中での利用にも抜群の威力を発揮する。まさに全領域型と呼ぶべき万能の移動装置となった。
 この「タコ足」は別にパワードスーツ専用という訳ではないのでこれを装備したロボットも制作された。それが「
マーズマンST」で、通常は本物のタコと同様に地面を這って進むが直立しての歩行も可能。ひなこシリーズに代表される人型戦闘ロボットよりもなお小さなボリュームと隠密性を持ち、都市型犯罪に対抗する最前線で活躍している。また、パワードスーツという形態を取らずに移動機械、乗り物として再設計されたのが「オクトモービル」であり、これは様々な障害物が存在する建築物内部で時速100キロを越える移動を可能とした。これ自体も一個の独立したロボットであり、その操縦はほぼ完全な自動操縦で、搭乗者はただしがみついているに過ぎない。

 

μH マイクロヘルパー
 マイクロヘルパーは家庭内作業用小型人型ロボットの世界共通規格である。
 μHは家庭用ホームマネージメントサーバーに専用電話回線で接続されたセパレート型ロボットで行動の決定は全てサーバー上の人工人格EMが行っている。
 μHは一応「感情」と呼べるものを持っているがこれは本物の感情ではなくて、マスターの感情に対応する為の端末であり、マスターもこれを手がかりにサーバーの状態を知る事が出来る。もしサーバーがウイルス等に冒されたとしてもその詳細を専門知識が無ければ理解出来ないが、μHはサーバーの端末であり、しかもかなり重たい処理である為、これの状態を見ればなんとなく生き物の状態を知るのと同様にサーバーの状態を知る事が出来る。また、感情を理解出来る能力をコンピュータが持つとしても、人間がその感情を集中する対象を持たなければ折角の機能が活用できない。μHはその対象となる一種のインターフェイスとなる。
 μHは、コンピュータがあたかも衣服と同様の、存在の意識をせずとも付き合えるものに進化させるものであり、これから育っていく子供たちにとってはもっとも親しい家族の一員となる。

 だが、実際に人間と生活するロボットは、ロボット三原則のような粗雑な命令による規制ではとても処理出来ない、人間との間の「共依存」ともいえる関係を構築する。通常のμHはこれが害を引き起こすのを防止するフィルタが入っているが、これがあるμHはあまり気が利かないので、マスターとの間により深い依存関係を築ける特別な制御プログラムが、法では規制されているが半ば公然と販売されている。
 この特殊なプログラムで動くμHは、マスターの極めて深いレベルの心理状態を反映して行動する事が出来る。が、法で禁止されている行為までもマスターの命令を聞くので、犯罪にも利用が可能である。それに、このプログラムは、命令をマスターが失われた後にも単独で実現する機能がある。つまり幽霊のようにいつまででも現実世界にマスターが影響力を行使する事が可能となり、これを目的とした、あるいは偶然その状態になってしまったμHが社会の片隅でひっそりと活動するという事態が発生する事となった。

 なおμHは家庭内作業ロボットであるが、工業用小型人型ロボットの共通規格も存在する。「コオニ」規格がそれで、これは一度に数体ー数十体が共同して働く事が出来るが、μHのような複雑な環境では使われないし、人間らしい会話もできない。一体2万円くらいの安いもので、かって中国等に奪われた、人手がかかる手先の細かい作業を必要とする産業を国内に呼び戻すのに役立っている。

 

箱型スペースコロニー
 スペースコロニーは通常ドーナツ型かシリンダー型と呼ばれる二つの種類のものが構想されている。比較的小規模で10万人以下の人口用としてはドーナツ型、それ以上の普及型として巨大な、全長10kmにもなるシリンダー型が考案された。これはガンダムに登場した事で随分と有名な、スペースコロニーの定番として既に定着してしまったが、しかしこの型のコロニーはかなり無駄が多く、また不具合も相当あって実際に建設を試みる場合大変な修正が必要だと見込まれている。
 だが人間が暮らしていくのにはあれ程の巨大な体積は必要では無い、という事実に基づいて再設計されたスペースコロニーは経済性を考慮され徹底的に省資源化されて、ついには箱型にまで変形をしてしまう。これは空中に浮かぶ集合住宅であり、一つの建築物の内部に無数の小家屋が内蔵されたものだ。この構造は宇宙線の影響から人体を守るのにも適している為、安全性が格段に向上しており、実際の建設居住計画として初めて推進された。
 通常宇宙空間では人口重力を発生させる場合、巨大構造物は円形を取る必要がある。そうでないと重力に偏差が発生して構造物が破壊されてしまう。しかし箱型コロニーは本体居住部を2基ワイヤーで結び、シリンダー型の数倍にもなる回転半径で低速で回転させる事により疑似重力を発生させる。この構造をとる事でシリンダー型では避けられないコリオリ力による影響を最小限に留め、居住部の上下で重力の大きさが違うという事も避けられる。また全体として円形を取る必要も無いので無駄な空間を省きコンパクトに納められるので省資源つまり低コストでの建造が可能になった。
 建設にあたっては円形の構造物が回転運動を必要とするのに対し、平行移動だけで済むこの構造は、作業自体が簡単でありロボットによる自動化にも適していて、建設資材機械の移動にかかる推進剤の使用量も少なくて済む。さらに設置後の人口重力の方向と一致して加速が可能なので、工場宙域での建造から実際の設置宙域への移動にも十分耐えられ、生産性の向上、設置宙域での建設作業による交通混雑の防止、建設に付随するスペースデブリの無秩序な飛散の防止、を図る事が出来た。

 このような構造では中の人間が息苦しくなる、と普通考えるが、しかしシリンダー型またはドーナツ型では居住空間の上部に構造物、天井が常時見てとれるのに対し、この閉鎖型のコロニーは天井部分に照明として自発光型ディスプレイを設置していて常時「空」の映像が映し出されているので、人間の心理に与える影響は円形のものよりもむしろ小さい。また内部を小空間に区切るといっても、その一つ一つは巨大な床面積を持っている。全体が1kmの立方体でもその内部を数十、百階層に区切れば数十平方キロの床面積を作り上げる事が出来る。十万人規模の居住者にとっては十分過ぎる広さだろう。コロニー上部にはワイヤー結合部の基礎部に納める形で巨大な植物プラントが空気浄化施設として設置されるので、ここを一般居住者にも解放すれば狭いという印象を持つ事は無いと見込まれている。シリンダー型の中軸部分が希薄な空気のみの無駄な空間に過ぎず鳥も飛べない事を考えると、より人間的なのはどちらであるか、議論の分かれる所だ。

 この型式のスペースコロニーは単に人間を宇宙に住むわせるのみの役割に留まらず、これ自体に推進力を与えて惑星間移民にも利用出来る。地球周辺で作ったコロニーを火星や木星に住民ごと運んでそのまま開発計画に従事させるという事も可能になるだろう。

 

もびるぺんぎん
 戦場に歩兵を装甲して投入するのは古来よりの人類の夢である。その歴史は古く、甲冑の発達史はそれをのみ語る専門家すら養う事ができる程だが、近代、銃砲の発達に伴い、甲冑はまったく廃れてしまう。最近こそ素材の革命的進歩によりボディアーマーが普通に着用されるようになったが、それでも歩兵の脆弱さはすべての軍隊の悩みのタネである。ましてこれからの戦場には生物化学兵器の使用下での軍事行動の為ガスマスク、空気タンク、防護服等々数十キロもの装備を着用せざるを得ず、熱帯や砂漠で十何時間もそれらを着用し続けねばならない状況の現出が予定されている。
 よって兵員の負担を軽くする為にも、搭乗型ロボットの開発は必要とされる。しかしどのような形が最適であるか、現在まで結論は出ていない。その最大の問題点は、歩兵が実に自由度の高い運動能力を持っている、という事である。確かに兵員を保護するだけなら装甲車両で十分だし、一人一人に車両を支給するのも現在の先進国ならばたやすいだろうが、それでも歩兵の代わりをする車両は未だ開発されていない。いかに悪路走破性が向上しようともやはり車両で行けない所はあるし、歩兵が必要とされる地域は、歩兵でこそ進入が可能な隘路に溢れている。まして歩兵ならかがめば弾丸を避けられる状況でも、いかに小型化しようとも人よりは大きい車両であれば、小型化ゆえの軽装甲もあいまって、歩兵と同等の速度域での行動ではいい的にされてしまうのだ。

 それらをすべて勘案した結果、攻撃にさらされた場合、搭乗型ロボットも伏せる、匍匐前進と同様に低姿勢で行動するのが最善との結論を得た。だがそれならば平べったい車両や歩行機械でもいいはずだが、小型車両では歩兵と同等の運動性を持たせるのに困難であるし、歩行機械は機構が脆弱過ぎて戦場に投入できないと目されている。そこで採用されたのが、「ソリ」である。
 つまり、カプセルに兵員と武装を収納して、ワイヤでひっぱればあらゆる状況でも移送が可能なのだ。ジャングルや砂漠、湿地帯、さらには海岸線や絶壁、高層ビルにおいても、この方式で移動できない所は無い。ひっぱる為のワイヤとウインチはカプセルに内蔵可能だし、ワイヤの設置は随伴する歩兵や、専用の投射器を使えば簡単である。舗装路面では車輪を使っての移動は当然として、歩兵として、搭乗員が直立状態で自由に活動し作業を行う為のマニュピレータも装備する事を考えた場合、最適なロボットの形状は、必然として「ペンギン」になる。

 兵員の保護をもさる事ながら、攻撃力の向上もロボットには要求される。もびるぺんぎんはサイズの関係上、火力は生身の歩兵よりも多少上、という程度でしか無い。が、近未来の戦場を考えると火力の向上よりはむしろ情報処理能力、高度なセンサーを駆使した知的索敵能力とそれにスムースに連動する自動火器のコンビネーションが重要になる。極端な話、重火器は後方に待機して先行する歩兵や車両からの標的指示で攻撃する、というだけでも良い。最前線にセンサーと判断力を投入する手段をこそ要求される。生身の歩兵はこの点においての限界は既に見えており、将来の技術革新をもってしても、能力の低さゆえ、早晩戦場に存在する事を許されなくなる可能性が非常に高い。搭乗型ロボットの意義は、この知的索敵・自動攻撃能力を歩兵に付加する事にあり、軽装甲小火器のみの非力なロボットでもこれらの能力を備える事で戦場の覇者となり得るのだ。

 

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