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19/10/09

まゆ子「基本的にね、『げばると処女 蛇足外伝』はこれまでに書いた本編を補足する為の存在だ。
 書こうと思うけれど、流れ的にうまくないから外しておこうってものを、改めて蛇足的に書いている。」

釈「ですよね。」
じゅえる「本編の本筋にはまったく変更なしだ。当然だが。」

まゆ子「ではあるんだが、 一つ、コレは無かったなてのを思いついた。
 ギジジットのその後だ。」

釈「その後というのは、どの時点をもってですか?」
じゅえる「物語中において、弥生ちゃんが出発した後にギジジットはどうなったか。
 どうなった?」
まゆ子「考えてない。」
釈「ですよねー。

 基本的には、王姉妹が柔らかく協力的になって、ギィール神族の寇掠軍の基地になったと聞いてます。」
まゆ子「そもそもがギジジットは巨大なゲイルの繁殖地であって市場も有ったからね。
 毒地が浄化解放されて往来が元に戻れば、人も戻ってまた都市としての機能が回復しますよ。」

じゅえる「運河の水を満ち引きさせるのも、あそこが中心の原動力なんだな。」
まゆ子「はい。毒地閉鎖中に黙々と運河の拡張工事が行われ、地下水道網が整備されています。
 これによって、大審判戦争中の寇掠軍は運輸においてたいそうな便宜を受けて、有利に戦いました。」

じゅえる「今後も、その機能は失われない?」
まゆ子「ギジジット全体を取り囲む金雷蜒神のしっぽが有る限り。
 そして創始歴6200年のマキアリイさんの時代でも、どういう理屈だかは分からないけれど、その現象は起こり続けています。」

釈「ギジジットは繁栄しないわけにはいかない。ということですね。
 でもたしか、キルストル姫アィイーガさんが国王的なものになって、「ギジジット央国」が生まれたはずですよ。」
まゆ子「そこさ! 王姉妹は金雷蜒神のお世話に専念して、行政権はアィイーガに渡してしまったんだ。
 その方が面倒くさくなくて良いという判断。
 で、その他大勢のギィール神族も神官巫女やら軍隊やら一般人もそれでよい事になった。
 東金雷蜒王国の神聖王のお墨付きを得て、正式にアィイーガの領地になります。というか、ゲバチューラウの嫁だからね。」

じゅえる「そこに至る前、のギジジットの体制か。」
まゆ子「えーと、つまりは新しい神聖王となったゲバチューラウがゲルワンクラッタ村に滞在中で、弥生ちゃん失踪中の期間のギジジットです。
 アィイーガはデュータム点近辺に留まり弥生ちゃん代行をやってました。」

 

じゅえる「誰が主人公?」
釈「ですね。誰がその回の主役であり視点であるかを定めないと、物語は書けません。」
まゆ子「だが王姉妹を主役にするのは避けた方がいいと思うぞ。」

じゅえる「うーん、じゃあ誰がどんな立場で、となるさ。
 ギィール神族大量出演だろ?」
まゆ子「物語的に考えると、ここは本編中で一度も描かれなかった題材。「ギィール神族同士の政治劇」というものになる。」
釈「だああああ、だいもんだいじゃないですかああ。」
じゅえる「無理!」
まゆ子「ああ。うん、まあ、うん。」

釈「ゲジゲジ乙女団的なものは無いんですよね。」
まゆ子「ゲジゲジ乙女団は特別だ。あれは他にはあり得ない。
 でもあれに匹敵するインパクトのあるギィール神族の集団が欲しい。」

じゅえる「ギジジットに前から住んでいたギィール神族の一団はどうだ?」
まゆ子「それはむしろ主人公側のカウンターパートとして機能するだろう。
 えーと、基本的にギジジットのギィール神族は、
 ・前からギジジットに住む神族の一団であまり数は居ない。王姉妹に対して敵対的で、未だ和解はならず。
 ・毒地閉鎖中でもしばしばギジジットに参っていた、割と信仰的な連中。王姉妹には敵対的だが、ゲジゲジ神さまと対面してどうでもよくなった。
 ・大審判戦争の補給拠点としてギジジットを用いようとする、ごく一般的なギィール神族。あまり宗教的ではなく、ギジジットを実用の為に作り変えようとする。多数派。
 ・首都島「ギジシップ」の王姉妹と連携して、ギジジットの王姉妹に干渉しようとする神族。ゲェ派の王族血筋が多い。

 こんなもんだ。」
じゅえる「立場上、アィイーガと同じゲェ派の姫あたりが主人公にしやすいかな。」
まゆ子「とはいえ、アィイーガと同じものを今更投入するのはどうかと。」

釈「ふむ。明美センセイをお呼びしましょう。」

 

     *****

明美「じゃーん、来ました。面白くないですね!」

じゅえる「まず基本的に、どこが面白くない?」
明美「ラブです! 愛がありません。」
じゅえる「なるほど。そこは大失点だな。」
まゆ子「なーーーーーん、まあ、だねえ。」
釈「でも、誰が誰と恋愛しますか。ぜんぜん見当たりませんよ。」

明美「トカゲ神救世主の名代を置きましょう。青く光る神剣を許されるトカゲ巫女です!」

じゅえる「まゆ子、アリかこれは?」
まゆ子「そりゃー、ギジジットに1本くらいは治療用の神剣を置いていかないわけがないな。
 それは当然にトカゲ神官巫女の扱いとなり、たぶん巫女が弥生ちゃん名代になる。」
釈「であれば、そのトカゲ巫女と若きギィール神族の恋を描くべきではないでしょうか。」

明美「安直だね。」
釈「はあ、そうかもしれませんが。」
じゅえる「だが明美、これは神族同士の政治劇を主眼に置くんだ。神族の若様との絡みは普通に必要だろ。」
明美「しかたないですねえ。
 じゃあその若様、神族同士の暗闘で重傷を負い、トカゲ巫女に徹夜で治癒を受けて命を取り留める事とします。」
まゆ子「そうそう。そういうのが必要なんだよ。」

明美「あ! そうですよ。
 暗闘で重傷を負うのは一人じゃない。まずはその若様が担ぎ込まれてトカゲ巫女が必死に治療して仲良くなった、と思ったら、
 次の日にまたこれまたイケメンの神族が傷を負って担ぎ込まれる。
 そのまた次の日に、今度は女人の百合神族が! とどんどんトカゲ巫女にフラグが溜まっていく。」

じゅえる「      はあ。」
釈「それはなんとも、はあ。」
まゆ子「どういう結末になるんだ?」
明美「わかりませんか?」
まゆ子「うん。」
明美「読者に、これどうなるんだろう?と思わせたら、勝ちです!」
釈「たしかに。」

じゅえる「で、結末は?」
明美「どうします?」
じゅえる「まゆ子!」

まゆ子「あー、とにかくこの展開で物語の中盤くらいまではがっちり固められますか。
 ではオチというか結末に至る展開を。」
釈「ゲジゲジの神様も絡んでくるべきではないですかね。」
明美「それオチでいいじゃん。
 トカゲの神剣を抱えた巫女と、ゲジゲジの神様が二人並んで、はあとため息をつく。」

釈「ゲジゲジの神様も疲れるんですか?」
まゆ子「まあ、ギィール神族がひっきり無しにお参りに来るからね。」
じゅえる「そこの所は、別に表現しよう。王姉妹がここでも神族と軋轢を生み出すんだよ。
 で、なぜか神様がフォローに回らなければいけないという本末転倒な結果に。」

釈「そこがオチとなると、その一枚前にトカゲ巫女がとんでもない事になっている必要がありますね。」
じゅえる「トカゲ巫女モテ期到来、そこになにか決定的ななにかが。何?」
明美「そこは弥生ちゃんが何かを寄越したとかじゃないかな?」
まゆ子「ふむ、困った時はこれを開けろ的にびっくり箱を残してあって、それをトカゲ神官が開くと、か。」
じゅえる「でもそれは、トカゲ巫女のトラブルじゃないよな。
 神剣についてのトラブルか、ギジジット全体のトラブルか、あるいはゲジゲジ神様がどうにかなると予想していたか。」

まゆ子「なにか怪獣でも出すか。」
釈「なるほど。怪獣は有りです「げばると処女」は。でもどうしましょう。」
じゅえる「ああ、凄い化け物が居たぞ。
 ゲジゲジ神の巨大な体節が滅びた残骸の欠片を、食ったバカが居るんだ。」

まゆ子「え?……。」
明美「どうなるんです?」
釈「たしかそれって、ゲイルを大きくする為の餌じゃないんですか?」
まゆ子「獣人もデカイのだが、人間がそんなものを食ってしまったら、なんか凄い変態をするぞ。」
じゅえる「ダメか?」
まゆ子「いや、どうなるか面白い。でも、ギィール神族にとっても面白いから、ちょっと経過観察をしてみようと放置して、とんでもないことに。」
釈「ですね。そこで弥生ちゃんキャプテンが残した「突発事態に対処するマニュアル」参照です。」

じゅえる「でも、どんな突発事態にするか。でかくなるのは普通なんだろ。」
まゆ子「最初の患者がでかくなるのは、神族的にアリとしよう。
 だが研究していたバカな神族が、その化け物と融合してしまうんだ。食べられるんじゃなくて取り込まれるんだな。
 まあ考えてみれば、巨大ゲジゲジ神てのは無数のゲジゲジ神の身体が融合したものだから、普通にそういう作用があるんだな。」
じゅえる「ついでに、化け物と化した最初の患者も不死になってどうやっても死ななくなる。てので。」
釈「うんなる。」

明美「で、トカゲ巫女が神剣の力でその患者をぶっ殺し、融合された神族を救い出すと。
 これを、最初の若様神族にしましょう。」
釈「ですね。」

じゅえる「だがこれで終わるのは面白くない。
 さらに、弥生ちゃんが毒地の毒を浄化した際に用いた祭壇に、トカゲ神の霊力で水晶化した器物があるんだよ。
 これを盗み出して実験してみた神族が、またバカな事故を引き起こし。弥生ちゃんの「突発マニュアル」で。」

まゆ子「ああ、ギジジット大迷惑だな。」
明美「この回はのタイトルは、「ギジジット大迷惑」にしましょう。」

 

     *****

まゆ子「それにしても、蛇足外伝てヒーラー弥生ちゃんの話ばっかりになるな。」
じゅえる「これまですっかり楽していた、てことだろ。」
釈「物語的には戦う弥生ちゃんきゃぷてんの方が面白い、てことですよ。」

まゆ子「あ、色々資料漁りして、古いの発見。「姫一刀奥義斬」だ。」
釈「ああ! あのボツになった回ですね。「新・姫一刀奥義斬」になった。」
じゅえる「そういや、あれは書くだけ書いて、ボツったんだ。ならば、」
まゆ子「蛇足外伝、まさにふさわしい場所ですね。

 ちなみに「姫一刀奥義斬」は、アランサ王女がペギィルゲイル村を出発して、アウンサ前総裁が殺られた場所に行くまでの道中記。
 本編中では抜け落ちていた赤甲梢の皆様の本国帰還後の動向やら、毒地中で再攻撃を考えるギィール神族の集まりとかを描いてます。」
釈「重要な回だったんですね。」
じゅえる「でもさくっと切った。なんで。」
まゆ子「そりゃもう、流れですよ。これ描いたら流れ悪いなと思って、せっかく描いたのに外してしまったんです。
 実際、流れはいいですよ。」

 

まゆ子「というわけで、書きました。(10/9初稿、ちなみに「赤甲梢」ももう書いた)
 こうしてみると、本編と違って蛇足外伝はファンタジー成分マシマシですね。」

じゅえる「そもそも「げばると処女」本編はファンタジーではなく時代物として書いてるからね。」
釈「大河浪漫小説ですよ。」

 

 

19/09/07

まゆ子「というわけで、「げばると処女」蛇足外伝「EP2第3点5章 殉ずる者の一人も居ないのは」 書きましたー。
 12章だから、60枚ね。」
じゅえる「だからー、遊んで頭早くリセットしろよお。」
釈「遊ぶって言っても、関連イラスト描いたり、3DCGでアイテム作ったりなんですけどね。」
まゆ子「機械モノやら建物やら描くの苦手だから、CGで設計してるんですけどね、
 最近はさすがにあまりの非効率にどしよかなーと思ってます。」

まゆ子「今回は、ボツ企画「刺客大全」から持ってきたものですから、「刺客大全」3本目だな。」
釈「「賤の醜男」の骨鎧の戦士、人食い教団の神刀強奪、で。」
まゆ子「ギジジットのゲジゲジ巫女が弥生ちゃんに復讐の刃を振るう、というものです。
 まあギジジットがあまりにもチョロく弥生ちゃんの支配下に落ちたのを、さすがに簡単すぎるなと企画しておいたものです。」

じゅえる「でも、無理だろ? 弥生ちゃん暗殺。」
釈「無理ですよねー。」
まゆ子「無理を無理だと書いたお話です。
 ちなみに、『刺客大全』とはどんなものか。企画表を発掘してきました。」

(「げばると処女 刺客大全〜死屍累々〜)

 げばると処女は基本的に弥生ちゃんを中心として描かれる物語であり、
その他の視点となる人物が各王国に配置されて居て立体的に描かれている。
 だが、それでもなお十二神方台系のディテールが十分に描かれているとは言えない。
 補う為の物語が必要になる。

「げばると処女 刺客大全〜死屍累々〜」の仮題の通りに、この一連の物語は刺客が主人公だ。
 弥生ちゃんおよび物語に登場する主要人物を狙って送り込まれる、あるいは自発的にやって来た刺客達の末路を描いている。
 十二神方台系の暗黒面と下層階級の生態を描く事を主要な目的とする。
  であるから、彼等刺客は基本的にすべて死ぬ。

 例外的に生き残る者もあるが、それはメインのげばると処女において重要な役だから生き残り特筆されるのだ。
 「刺客大全」に出る者は基本的に死ぬ。
 しかしながら、成功例というものもわずかに存在する。
 たとえば、弥生ちゃんの狗番を務めたミィガンは、弥生ちゃん一行から離脱の帰路刺客に遭い、神剣を奪われゴバラバウト頭数姉に渡される。
 成功例のひとつである。

予定:
    1)蜻蛉の隠者をつけ狙う宗教関係者→無尾猫達のコンビネーションで死ぬ。

    2)タコリティにおいて、弥生ちゃんを毒殺しようとする。→青晶蜥神救世主に毒を盛るとはいい度胸だ。
    3)タコリティ周辺。人喰い信者が人数を集めて弥生ちゃんを襲おうと画策する。
      →ひそかに動いていたヒィキタイタンとドワアッダの傭兵に殺される。
    4)タコリティにて。テュラクラフの神像を奪おうとする神官。タコ神の熱烈な信者。
      →タコリティの実力者達の暗闘に巻き込まれて死亡。

    5)毒地中にて。弥生ちゃんを追跡する刺客の一団。「ジー・ッカ」
      →自ら瀕死の重傷を負い弥生ちゃんを騙すが、非情なアィイーガに突き殺される。
    6)ギジジットにて。ビッグバトルの後。ゲジゲジ巫女がいきなり弥生ちゃんに支配された王宮でただ一人反乱を起こす。王姉妹に決起を促す
      →王宮吹き抜け内に転がる無残な巨大ゲジゲジ神の屍骸を目の前にして、城の壁から投身自殺。
    7)ゲジゲジ王国にて。ッイルベスが狙われる。「なりそこない」が神剣を奪おうとする。
      →ティンブット大活躍。犯人は民衆に石を投げられほうほうのていで逃げる。が、そこには地元の神族が居て、彼の狗番に見苦しいものとして処分される。
    8)ミィガン暗殺。ゴバラバウト頭数姉の手先の人喰い教徒による。
      →成功。「狗番の剣」が奪われる。

    9)カプタニア王宮元老院での出来事。元老院の一人が病死する。だがそれは本当に謀殺ではないのか?
      →疑心暗鬼の中、犯人とおぼしき者の死体が見つかる。真相は?
    10)戦の最中で、黒甲枝の誰かが狙われる。恨みによる犯行。
      →だが犯行に及ぶ前にゲジゲジ軍と遭遇。暗殺者は行きがかり上楯となって死に、名誉の戦死と称えられる。

    11)チュバクのキリメの仕事の一つ。
      →普通に成功する。これは彼がまだ弥生ちゃんの家来になる前の話。
    12)農民。弥生ちゃんの一行が通り掛かると聞く。その陰で人喰い教徒が蠢いているのを知ってしまう。
      →農民は頑張って、人喰い教徒は全滅する。弥生ちゃんは知らない。

    13)督促派行徒。褐甲角王国にて大規模テロを画策。幸運に恵まれ、それは誰に知られる事もなく進み、まったくのノーマークで成功の一歩手前まで行く。
      →勝利の瞬間。そこに弥生ちゃんが居た。陰謀は未然に潰され、彼は弥生ちゃんに斬られて死ぬ。
       弥生ちゃんが直接斬った人間は数少ない。彼はまったくラッキーだ。

 

まゆ子「今回書いたのは、6)ですね。前回8)も書きました。
 2)3)の代わりに、別の外伝として考えていた「賤の醜男」との遭遇話を書きました。これも刺客が大事な役目を持ってますね。」
じゅえる「刺客大全ばっかりなんですか?」
まゆ子「いやー、次に書く予定のは「赤甲梢」なんだけど、これは人は死なない平和なお話。」

じゅえる「蛇足外伝何本書くつもりだ?」
まゆ子「いやーそれがね、近代化改修をしている最中に、「あ、これやっとかな」と思って書くからね。
 まだ作業に取り掛かっていないとこは、まだ分からないな。」
釈「今後の展開に期待、ですね。」

 

 

19/09/04

まゆ子「くっちゃりぼろけっとー。
 8月かけて『罰市偵』第5巻「危うしニセ病院1」外伝「少年よ、海外に雄飛しろよ」「不確定性の猫」初稿書いたー。」

釈「ご苦労さまでございます。」
まゆ子「12+8+13 +3書いたから、都合36章。
 シュリンクして最終的には一章平均400字5枚に落ち着くとして、180枚……。」
じゅえる「ちょっと書き過ぎだな。」
まゆ子「ああ、うん。そうだね……。」

釈「+3 て何ですか。」
まゆ子「「その女、ヒロイン」その2である「不確定性の猫」の続き、その3「怪光線交響曲」の冒頭部分がちょうど流れで続きだから、ついでに……。」
じゅえる「うん、まあ。流れでね。
 で、次は。」

まゆ子「遊ぶフェイズになる。とりあえず脳を小説書きモードから落として、すっからかんにして、
 その後「げばおと」で書いてる分の直しをやって近代化改修やって、「罰市偵」の改修もやりたいし。
 今回書いた分を仕上げるのはその後だな。」
釈「9月中には、「危うしニセ病院1」を上げましょうよ。」
まゆ子「そーだなー。」

釈「前回掲載分が8/10日ですから、20日で書いたことになりますね。」
まゆ子「そうだよ。初稿書くのは早いよ私。
 というか、小説書きに入る前に「シンドラ連合王国の政治構造」とか「タンガラムの銃砲弾」の再構築やったから、実質は2週間だね。」
じゅえる「なんで完成まで時間掛かるんだよ。」
まゆ子「いやー、何も無いところからでっち上げるのは得意だが、推敲添削は苦手なんだよ。つらし。」

 

     *****

まゆ子「というわけで、第5巻はなんとか形になってきたから第6巻「ポリティカル・サスペンス」をやろうと思います。」
じゅえる「そろそろか。」
釈「いい頃合いですかね。」
まゆ子「その前に、今回第5巻の流れから言って、計画に無かった展開が入ります。
 「ソグヴィタル・ヒィキタイタンとユミネイトの交際発覚 →結婚か!」疑惑です。」
じゅえる「最初から計算に入れておくべき展開だな。」
釈「うかつです。」
まゆ子「いやいやいや、本来であれば第7巻にそこらへん突っ込もうと思ってたんだけど。
 そりゃ、いきなり選挙戦の最中で恋愛スキャンダルはやばいだろ、と見てたんだが。

 入れないと、ダメかな?」
じゅえる「ダメだな。」
釈「絶対必要です。」
まゆ子「だよなー。で、

 ・ヒィキタイタン、ノゲ・ベイスラ市に来てマキアリイに土下座して選挙応援を頼む
 ・ヒィキタイタンとユミネイト、交際疑惑結婚疑惑でタンガラム中の女性阿鼻叫喚の地獄絵図
 ・ヴィヴァ=ワン総統、ヒィキタイタンに結婚の際にはぜひとも媒酌人に、と申し込む
 ・与党「ウェゲ会」での勢力地図。特に正月に死んだ有力議員の未亡人議員がヴィヴァ=ワンに敵対的
 ・議会解散。いよいよ選挙戦開幕、ヒィキタイタンとマキアリイ街頭にての出馬演説。マキアリイ、マスコミにインタビューされる
 ・一方、首都に付いていったクワンパは別行動で、ユミネイト関連でとんでもない目に
 ・野党陣営もヴィヴァ=ワン叩きで一進一退
 ・繁華街のど真ん中での遊説。ヒィキタイタンとマキアリイ目当てでとんでもない大群衆。
 ・そしてヴィヴァ=ワン総統、急病にて壇上で昏倒。意識不明の重体。再起不能か?
 ・そして炸裂する「ミラーゲン」の爆弾テロ

 序盤はこんなものかな。」

じゅえる「ヴィヴァ=ワン総統は毒によって瀕死の重態なんだな。これはマスコミ発表」
釈「されないでしょ。あくまでも急病によって入院中で、ちゃんと意識があって元気だと。」
まゆ子「政治的にはそうだな。でもすっぱ抜かれて病院での姿の写真が新聞紙上に。」
釈「なるほど。それは大スクープです。」
じゅえる「野党も勢いづいて、そりゃ大騒ぎさ。
 総統代行って誰がやってるんだ?」
まゆ子「総理大臣にあたる「大臣領」だよ。このヒトは改選しないし実務能力には問題ないから、その点の心配は無い。
 とは言うものの、ミラーゲンの爆弾テロで大わらわ。他の事はできないと思ってください。」

 

じゅえる「ちょっと待て。まあそこまでは分かる。
 だがミラーゲンの爆弾テロの捜査は巡邏軍と警察局だろ。マキアリイは活躍しない。」
釈「そこで、予告状ですよ!
 マキアリイの下に謎の予告状とタロットカードが届けられて、この寓意を手がかりに事件現場を推理して、未然に爆発事件を防ぐのです。」
まゆ子「うむ、呪先生大活躍の巻だ。クワンパさんも大活躍だ。」

じゅえる「だが、予告状は巡邏軍に届けて対処を任せるべきではないのか?」
釈「そうですねえ、それはそうです。」
まゆ子「うーん、では予告状第一回は、そうだねこういうのはどうだ?
 まず、ヴィヴァ=ワン総統昏倒の日、マキアリイの所に予告状とタロットが送られてくるが、意味が分からない。
 しかし、爆弾テロが遂行され、ここでようやくタロットの意味が分かる。クワンパさんが後知恵で気付いたことにしよう。

 そして第2の予告状。
 マキアリイは巡邏軍に、いやここは政府調査員でも警察局の女捜査官でもいい、とにかく関係筋に話を通すが無視されて、独自調査に乗り出す。
 で、大活躍の末に爆弾テロを未然に防ぐ事に成功。クワンパさんも爆弾の恐怖に直面するというシーンで。」

じゅえる「ふむ、悪くない。
 だがそうやって事件性を証明された後は、警察局が第3の予告状を持っていって独自捜査するんじゃないか?」
釈「いいじゃないですか。で、警察局の要員が爆弾を解除しようとして大失敗爆発!
 マキアリイはほぞを噛む事になる。」
まゆ子「うんうん。それラジオ実況放送にしよう。」
釈「そこで、3枚の予告状とタロットカードに明確な法則性が発見されて、実行犯を逮捕。マキアリイの評判はまたしても高く世間に報道される。
 これでどうです。」
まゆ子「うん。マキアリイはこの巻で何回も勝利しながら、何回も敗北する。そして最後に最終勝利で決め。だな。」

じゅえる「そうか、マキアリイは勝利をしなければいけないんだな?」
まゆ子「うん。マキアリイの勝利は国家権力の敗北であり、強権的な対応を必要と思う人を呼び起こすわけですよ。」
じゅえる「でもさ、そのタロットカードの謎って具体的には?」
まゆ子「いまどう使うか考えたものを、どうやって謎しろというのだ。」
釈「あははははあ、ぜつぼうてきですねー。」
じゅえる「いやお前も無責任にでっち上げたじゃないか。」

 

     *****

まゆ子「というわけで、ヴィヴァ=ワン総統が倒れ、ミラーゲンの爆弾テロが炸裂し、英雄マキアリイが大活躍して、
 世論は事態の収拾を求めて緊急措置的な政界の安定化を求めるわけです。

 ここで浮上するのが、「潜水艦事件」の際に政権与党からいち早く離れて責任逃れを図った前総統「アテルゲ・エンドラゴ」の一党。
 アテルゲ自身は政界を引退しているが、その勢力は野党としてウェゲ会と付かず離れずの状態。
 しかし「闇御前事件」でダメージを負った現政権が、今回のヴィヴァ=ワン意識不明でさらに支持率失墜で野党転落の危機の中、
 この一党が返り咲きを果たそうとするわけです。
 しかもアテルゲ一党は、「闇御前」とつるんで「潜水艦事件」を引き起こした連中。
 それが「潜水艦事件」後の立て直しをした現政権の、その足を引っ張る「闇御前事件」のマイナスを利用して返り咲こうとする。
 当然にこいつらは、収監されている「闇御前」復権に働くわけですよ。」

じゅえる「そりゃー、クーデターくらい起こしたくなる状況だな。」
釈「信条的には分かります。そこで、「皇帝」出馬というわけですよ。」
まゆ子「その前にも、「皇帝」の元陸軍の統監にも出てもらわないといけないな。
 そうだなー、彼は「議長」候補でもあるから、出陣式にてマキアリイが挨拶をするという事で、
 さらに爆弾テロを未然に防いだ功績を讃える記者会見の現場にも居る。という事にするか。
 彼のマキアリイに対する評価は高く、温かいものだ。マキアリイも嫌な感じは持たない。」

釈「善人が悪役になるわけですよ。このお話!」
じゅえる「ふむ。だが「皇帝」が軍を率いてクーデターするには、まだカードが足りないな。」
釈「決定的な動機が、ですね。」
まゆ子「そこはさあ、ヴィヴァ=ワン総統意識不明重態が、実は暗殺事件であったという真相暴露。
 アテルゲ一党の仕業、として報道され、選挙大混乱! で。」
釈「話としてはいいのですが、まだ軍を出動させるには足りない。」
じゅえる「足りないな。ミラーゲンの大規模攻撃が予告されるとかだな。」
まゆ子「なるほど。マキアリイによって逮捕されたテロ犯人が、大規模テロを自供して、首都大混乱!」
じゅえる「いいね。」
釈「意義はありません。」

 

まゆ子「だが、陸軍の出動を頑なに拒む大臣領が、巡邏軍でなんとかしようとする。
 マキアリイとヒィキタイタンも乗り出して、ーーーーーー、ダメか?」

釈「ちょっと、無理がありますね。」
じゅえる「そこで、巡邏軍に重大疑惑発生。なんと巡邏兵の一隊が実はミラーゲンの偽装小隊であった!」
釈「巡邏軍同士の銃撃戦が発生するとか。」
じゅえる「それは大混乱必至。もうどうしようもない対テロどころの騒ぎじゃない。」

まゆ子「ここにおいて、陸軍出動の命が下る。うん、自然だな。
 一時的に巡邏軍の活動が凍結されて、陸軍が首都を制圧している事にしよう。」

釈「で、大規模テロはどうなりました?」
じゅえる「大規模テロは嘘でよくないか? マキアリイの所に送られてくるタロットで、実は「嘘」だと分かっていた。
 巡邏軍同士の演出された抗争劇こそが、真の狙い。これ以上の衝撃は無い。」
まゆ子「ふむふむ。爆発するだけが能じゃないてわけだ。」

釈「そして誰も信じられなくなった状況で選挙は一時中断して、陸軍の元英雄である「皇帝」が一時的に全権を掌握して救国内閣を作るという話になる。
 コレ自体はまっとうな手続き上の問題であるが、しかしそういう事態となった後には、
 旧政権の「闇御前機関」とつるんでいた連中を摘発して政界浄化をしよう。という正義派将校達が居るわけです。」

 

     *****

まゆ子「で、こういう状況になってしまったからには、ヒィキタイタンとマキアリイに手の打ちようが無い。
 というか、もうどうなってるのかさっぱりだ。
 二人して滞在するホテルのロビーなんかでぼーっとしていると、立派な老紳士が現れて新たなる陰謀の形を解き明かしてくれるのです。

 「醜い蛇」と呼ばれる謀略で、誰からも忌み嫌われる蛇を退治する者は英雄となる。
 たとえ常日頃は疎まれている横暴な存在であっても、だからこそその力を認めて、仲間として扱う事となる。

 この際、蛇は陸軍。蛇を退治する英雄は「闇御前機関」であり、民衆協和制度を守って世間の認知を得る事となる。
 表の国家機関として正式に認められるものになるのだ。」

じゅえる「それからそれから?」

 

まゆ子「「闇御前機関」が表の組織となるのに邪魔になるものが一つある。
 それこそ「闇御前」そのものが悪の権化であり、この混乱に乗じて彼を抹殺する事で「機関」の主導権は新体制に移り、晴れて国家機関として認められるのだ。
 というわけで、「闇御前」暗殺計画が発生する。
 これを防がんとするのが、ヒィキタイタンとマキアリイだ。」

釈「今は「闇御前」バハンモン・ジゥタロウは特別の拘置所に居るんでしたね。」
まゆ子「ここから陸軍によって別の所に移送されるのを、マキアリイ達が奪還する。そしてオートジャイロに乗って安全な場所に逃げ延びるのだよ。」
じゅえる「しかし、それは陸軍が正式な書類と手続きで動いているのじゃないのか?」
釈「ではなかった。独断専行のニセ命令であったと暴露するんですよ。クーデター派の将校の仕業ですね。

 そうですね、司法当局の彩ルダムの姐さんが登場です! 
 最高裁判所判事のお父様の発行した令状で、国事犯「バハンモン・ジゥタロウ」の身柄を抑えるんです。
 これによって、ヒィキタイタンとマキアリイの救出行動は合法的なものとなる。」

じゅえる「いやちょっと待て。クーデター派の将校は「闇御前機関」の排除が目的だろ。
 なんで「闇御前」本人を殺害しようとするんだ?」
まゆ子「いや、そこは不思議じゃないだろ。
 「闇御前」こそが国家を蝕む元凶として、正義派将校が殺害しようとする。しかしそれは仕組まれた正義であった。
 結局はその事により、陸軍クーデターは独断と法の秩序を破るものとなり、征伐される対象と看做されるんです。
 すべて、シナリオ通りに運んでいる。」

 

釈「でも、救出した「闇御前」はどこに匿います? 政府機関はどこもダメでしょう。」
まゆ子「ダメだね。巡邏軍警察局は元より、陸軍だろうが裁判所だろうが、総統府の政治工作員だろうが、誰一人として信用できない。
 しかしながら、或る程度の武力を持っていて「闇御前」を保護してくれる。そんな存在でないとね。」

じゅえる「「闇御前機関」の守旧派は?」
まゆ子「考えたけど、まあ難しいね。守旧派を名乗っていても今はどう考えが変わっているか、信用ならない。
 そもそもバハンモン・ジゥタロウ自身が信用しない。」
じゅえる「まあ、信用できないね。」
釈「謀略に携わってきた連中です。こういう時こそ裏切り放題ですからね。」

まゆ子「というわけで、絶対信用できる連中に預ける。
 一度ベイスラに飛んで、ヤクザの「マギヴァグ會」の若衆別頭グラガダルさんを呼びつけるのだ。

 「マギヴァグ會」の親父こと総長は、「闇御前」に個人的な恩義を受けていて、裁判でもマキアリイを抱き込もうとした。
 この大親分なら任せられるだろう、と。
 むろんグラガダルさんは「闇御前」を見た途端に口をあんぐり、咥えていた昆布タバコを取り落し、手下諸共土下座崇拝だよ。
 後は丁重にお迎えする。」

釈「でもヤクザに任せて、後は裁判どうするんですか。逃げちゃわないんですか。」
まゆ子「逃げてくれれば、実は国家としては実に有り難い。もう公的な存在としてはありえない事を自ら選択してくれるんだからね。
 めんどくさい「国家叛逆罪」の特別法廷もやらなくて済む。
 当然に「闇御前」は以前のような支配力を取り戻す事は無く、そのまま爺としておっ死ぬだけだよ。」

じゅえる「ふむ。なにせ歳だからね。死ぬのを待つという選択肢もアリか。」
釈「じゃあ、事件が収まった後には、自ら出頭するんですか?」
まゆ子「そうした方が、これからも影響力を各界に行使できる。
 というかさ、今だって特別拘置所に閉じ込められていながらも、依然として影響力を行使しまくってるんだ。」
じゅえる「ああ、それは、逃げると損だな。」

釈「じゃあ、ヤクザの大親分が盛大にお見送りして、牢屋に逆戻りするわけですか。いい絵ですねえ。」
まゆ子「大親分、マキアリイに「終生返せぬ恩を受けた」と、手下に命じるわけですよ。マキアリイには念入りにお礼参りをしてやりなと。」

 

     *****

釈「そして、「闇御前」から「闇御前機関」について詳しく教えられて、敵の根拠地を強襲。悪を断つ。」
まゆ子「特別拘置所に閉じ込められていながら、「機関」のどこがどう動いているか、確実に把握しているからね。」
じゅえる「そいつらが、つまり「機関」の守旧派が奪還に動こうというのは無かったのか。」
釈「でも、誰がどう寝返っているかまるで分からない状況だから、逆に動けないでしょう。」

まゆ子「そして、「機関」の暗躍を制圧している最中に、「皇帝」に翻意を促して、そこでヴィヴァ=ワン総統復活!
 投票日を迎えて、ヒィキタイタンとマキアリイの活躍の結果が報道されているわけで、「ウェゲ会」大勝利。政権維持に成功って話さ。」

釈「そして、すべてをコントロールしていたはずの「ミラーゲン」の中枢が、実は「闇御殿」にあると教えられたヒィキタイタンとマキアリイが殴り込み。
 ミラーゲン壊滅となるわけです。」
じゅえる「めでたしめでたしだ。」

 

まゆ子「うん。まあ、でもまだ重要人物とその勢力を織り込んでない。」
じゅえる「「げばおと」で出てきた、白の母だな。でかい女の不死の神人。」
釈「随所にその人の勢力の干渉を描写しておかないと、ラストが決まらないですからね。」

まゆ子「それと、首都からベイスラに戻るマキアリイとクワンパを、空中で迎え撃つ刺客が居るわけさ。
 義眼大尉が迎撃する。これもどこらへんで織り込むか。
 「闇御前」よりは前だよね。」
じゅえる「そうだなー、マキアリイが連続テロ犯を捕まえた直後、くらいじゃないかな。」
釈「報復としてですね。それが分かりやすくていいと思います。」
まゆ子「うん、なら結構早く出番があるな。」

 

まゆ子「ああ、そうだ。
 これはずっと後の話だが、「白の母」現在の名前を付けないといけないな、の画廊があるわけだよ。歴史的重要人物の肖像画が飾られる。」
釈「そうでしたね。この巻の最終シーンは、画廊にマキアリイの小さな手紙大の肖像画が掲げられるんでした。」
まゆ子「この物語がすべて終わった後のシーンだ。
 マキアリイは既に海洋に没し、国家元首として数々の業績を成し遂げたヒィキタイタンの肖像画も掲げられている。
 しかしヒィキタイタンの逝去に際して、彼女は二人の肖像画を取り外させ、若き日の「潜水艦事件」の頃に撮られた二人がはつらつとした姿の絵に掛け換えさせる。」

じゅえる「ふむ。」
釈「分かってるんですね。二人の英雄は永遠に若く滅びないと。」

 

     *****

まゆ子「とまあそういうわけで、第6巻は終わるわけだが、
 第7巻になってにわかに始まるマキアリイバッシング。
 今回のヤクザの「マギヴァグ會」との癒着疑惑なんかも取り沙汰されるわけだ。」

じゅえる「もうちょっと面白い話も入れておこう。
 実はマキアリイは、「闇御前」の息子だった! とか。」
釈「はーーーーーーー、すごい大ホラですねええ。」

まゆ子「えーとだいたい、第6巻の必要経費をクワンパが請求に行くと。
 「ウェゲ会」からもらったら特定政党に肩入れしたことになるから、政府の治安維持費から出してもらうように、地元選出議員に頼むと「喜んで!」OKです。」
釈「その地元選出議員て、ヒィキタイタン様と一緒にマキアリイに土下座する人なんですよね。
 で、地元選挙運動の最中でも、首都で大活躍するマキアリイを喉が枯れるほどに連呼して、今回当選を果たしますのです。」
じゅえる「ああ。そりゃ「喜んで!」だな。」

まゆ子「あとはー、第6巻で敵の飛行機4機と空中戦で、義眼大尉に助けてもらうから、その御礼に遊びに行きます。
 そこで、タンガラムが「陸上機を海の上で使えるようにする飛行場母艦」というまったく新しい計画が立ち上がっている事を教えてもらいます。」
釈「空母ですか。」
まゆ子「空母です。まあ水上戦闘機はどうしても収容の時に手間取るからね。数を運用できないんだ。」
じゅえる「どのくらいの数の飛行機を、現在は運用してるんだ?」
まゆ子「発進はカタパルトがあるからなんとかなるとしても、飛行機の収容は母艦が止まっていなくちゃならない上に、海が荒れていないのが前提だからね。
 敵も機動的に攻撃してくると考えると、3〜5機が限界だな。
 で、母艦を4,5隻用意するとして20機だな。偵察や艦隊直掩の護衛機も要るだろうから、攻撃任務に使えるのは1ダースくらいだ。」

じゅえる「空母に比べると少ないですね。」
まゆ子「というわけで、ゥアム帝国が空母作ってるという噂を聞いて、こりゃあかんと思ってるわけなんですよ。
 でも空母って、めちゃくちゃでかい上に早くないと飛行機が発着できない。艦の移動する速度も重要だからね。」
じゅえる「それって、無理難題?」
まゆ子「かなりねー。」
釈「200メートルより大きくないと困りますからねえ。」
まゆ子「複葉機なら条件はちょこっと楽なんだけど、これからの時代はちょっと時代遅れかな−と。」

じゅえる「水上戦闘機って、波が荒くて帰還できない時はどうするの?」
まゆこ「天気のいい海上に行って着水します。友軍が居るといいですね。」
じゅえる「居ない時はどうするんだよ?」
まゆ子「太平洋ひとりぼっち。」
釈「えー。」

まゆ子「まあ、天気が良くても艦隊がのっぴきならない理由で止まれない時なんかは、収容する任務を受けた艦が離脱して迎えに行く事になりますね。
 最後の手段としてはパイロットだけでも回収すれば良いと、小型艇で迎えに行くのもアリか。」
じゅえる「無線が無いと死ぬな。」
釈「死にますね。」
まゆ子「水上機って簡単ではあるが船だから、そう簡単には沈まない。
 味方の水上機に見つけてもらえばいいし。」
じゅえる「ああ、味方に発見してもらえれば迎えは来るか。」
まゆ子「大型飛行艇というのもありますから。」

 

まゆ子「ところでね、この世界は地球じゃないんだから重力とか大気とか地磁気とか電離層とか色々違うんだな。
 飛行機の進歩もまた違う。というか、飛行機が十分発達する前に飛行船時代が結構長くあったんだ。」
釈「地球の場合は飛行船と飛行機はだいたい同じ速度で進化した、くらいですかね。」
まゆ子「この世界は空気薄いから内燃機関に過給器が要るんだよ。というか蒸気機関にも付いてる。
 そういう地味な違いで、飛行機はなかなか上手く行かなくて飛行船の方が早かった。」

じゅえる「空気薄いと飛行船もやばくないか?」
まゆ子「そこは水素だからなんとかなることにします。ヘリウムなんて使わないよ。」
釈「爆発上等ですか。」
まゆ子「いやツェッペリン飛行船も、船体にアルミ使ってなければ大丈夫だったんじゃないかとか色々説があるし。」
じゅえる「水素って軽いからさっと逃げるんだっけ?」
まゆ子「どっかに貯まって空気中の酸素と混ざるとヤバいんだよ。
 水素自動車だって、タンクから水素漏れてもさっと逃げるから大丈夫だろう、ということになってる。」
釈「ガソリンの方が怖いですよね。」

じゅえる「というか、普通の焚き火とかカマドとかもダメなんじゃないか。」
まゆ子「ああ! 実はこんなこともあろうかと火吹き竹を用意しておいた。」
釈「うう。竹あるんですか?」
まゆ子「いや、似たような筒が。」
じゅえる「フイゴとかも火起こしで使うらしいね。欧米では。」
釈「地球だって高山で煮炊きする民族ありますし、どこの世界もあまり変わらないてことですか。」

まゆ子「そもそもねー、人間自体が地球人と違う構造になってるからねー。鳥類と同じ気嚢システム持ってるからね。」

 

     *****

まゆ子「というわけでガンガン書いているわけですが、第5巻「その女、ヒロイン」その3「怪力線交響曲」。
 「幻人」に取り憑かれた人間は、物語とかおとぎ話とかを元ネタとした「見立て」に従って人を、というか自分を殺すわけです。」
釈「ですね。そういう話になってしまいました。」

まゆ子「最初の事件が「ハンプティ・ダンプティ」、二番目が「シュレディンガーの猫」。では三番目は何?」
じゅえる「交響曲じゃないのか?」
まゆ子「最初はそのつもりでした。「交響曲は9曲作曲したら死ぬ」という伝説に基づいて。
 でも「怪力線交響曲」です。マッドサイエンティストが電波発射装置でマキアリイ達をびりばりとぶっ殺そうとする回。」
釈「また思いっきり、ベタなマッドサイエンティストですねー。」
じゅえる「なんでそうなる。」

まゆ子「うん、なんでだろう。とこれまでイメージが上手く噛み合わなかった。
 風呂入って考えて、決めた。
 これもまた「見立て」なんだよ。そして、誰もなんの見立てか分からなかったけれど、ユミネイトが遂に見抜く。

 これは「映画」だ。映画の見立てなんだって。」

釈「ほおほお、ゥアム帝国の映画ですかね。」
まゆ子「つまり「怪力線」だよ。
 ゥアム帝国の天才科学者「トゥガ=レイ=セト」が開発した「怪力線発生装置」の設計図を奪取した悪の組織が実物を製作して、
 発明者の実の娘である「ユミネイト」と彼女を助けに来た2人のナイト「ヒィキタイタンとマキアリイ」にデンパびりびりと発射するんだよ。」
じゅえる「「潜水艦事件」映画か!?」
釈「うわああああ、タンガラム映画ですね!」

まゆ子「「潜水艦事件」映画第一作、 エンゲイラ社「南海の英雄若人、潜水艦大謀略を断つ」だよ。
 で、巨大潜水艦が出てくる前、洞窟の中の秘密アジトでヒィキタイタンとマキアリイに助けられたユミネイトに、
 邪悪なマッドサイエンティスト博士がビリバリとちゃちい手書きの特殊効果の怪光線デンパを照射してぶっ殺そうとする、
 そのシーンの再現なのです。」

釈「子供だまし!」
まゆ子「実際子供にはこのシーンは受けました。正義のヒーローマキアリイの空中二段キックによって博士死亡です。大爆発」
じゅえる「リアルマキアリイもやれよ。」
釈「そうですね、見立てなんですから、そこはマキアリイが二段キックしないと収まりが付きませんね。」
まゆ子「やっぱり、そうかなー。じゃあ二段キックするってことで。」

 

     *****

まゆ子「てなわけで、最後のオチとして用意されている「電子の要塞」です。
 ラスボスは電子頭脳によって守られる巨大要塞に籠もっていて、これをマキアリイとヒィキタイタン、ユミネイトが退治しに行くのです。」
釈「決まりましたか。」
まゆ子「で、ゥアムから来た狩人の男は、ここで死ぬことになります。まあ噛ませですね。」

じゅえる「これも見立てなのか。」
まゆ子「見立てを何にしようかと思いましたが、映画を引き合いに出したからには、これも有名なものにしなければならなくなった。」
釈「今度はゥアム帝国の映画にしますか?」

まゆ子「SF小説にしようと思う。ゥアム帝国にはジュール・ベルヌみたいな作家が居るんだよ。
 で、まあベルヌの作品には無いのだが、「電子頭脳によって支配される管理社会」を描いた「残されたひとびと」みたいなのが有るのですよ。」
釈「インダストリアですね!」
じゅえる「「未来少年コナン」か。いやでも、電子頭脳で支配されるってのはちょっと違うか。」

釈「完全オリジナルのSF小説ですか。元ネタ無しで。」
まゆ子「うーんん、どうしよう。SF古典でいいのがあればと思うけど、まったく同じものは使えないしね。

 「メトロポリス」! はどうだろう。」
釈「あの、手塚治虫のアニメの?」
じゅえる「元は漫画だが、その大元のSF映画じゃないのか。世界初のSF映画だっけ?」
まゆ子「世界初は「月世界旅行」だろ。」
釈「「月世界」が1902年で、「メトロ」が1927年でしたね。
 でも、電子頭脳によってすべてが支配されている社会、じゃあないですよ。むしろ逆で階級闘争のお話です。」
じゅえる「「メトロポリス」は女性型ロボットが出てくるだろ。これ使えるんじゃないか?」
釈「まあ、絵的には素晴らしいものがありますね。」

まゆ子「あーうーん、アンドロイド、いやガイノイドの「マリア」ですかーうーん。ほしいね−、でも無理だからね−この世界の科学力では。」
釈「それはいいんですよ。元ネタの小説にアンドロイドが出て来ることにしておけば。」
じゅえる「「メトロポリス」自体は名作映画だが、原作ってのが無いんだねこれは。」

 

まゆ子「とはいえ、物語で使う分には、これは理想社会の理想未来を描いたものでなければならないのだよ。
 まあ物語的には最後破局するのが正しいだろうけど、
 そうだねー、つまり理想社会の到来に適応できなかった人々が、理想郷を破壊してしまう。という皮肉な小説にするか。」

釈「えーと、つまりは電子頭脳は人間の行動をすべて予想できなかった、ということですか。」
まゆ子「うーん、ざっとこんな話だと考えてください。

 とある未来都市で、街中に自動機械が活躍して、人々を様々に助けるすばらしい科学の世紀が実現していた。
 その中枢が「マリア(仮」と呼ばれる電子頭脳と、その端末であるアンドロイドの女性。
 彼女の言葉は電子頭脳の導き出した深淵なる託宣でであり、そのとおりに従えば人類社会は平和で幸福な繁栄へと帰結する。

 だが、人類の自由意志を崇拝する勢力がこの「メトロポリス」を覆して人間の支配を取り戻そうと、テロ活動を繰り広げる。
 「マリア(仮」の適切な指導によって未然に防がれるテロ行為。
 しかし、「電子庁」の技師がとんでもないスキャンダルを暴露してしまうのだ。

 メトロポリスを支配する電子頭脳の計算容量は、実は人間一人分でしかない。つまりは「マリア(仮」以外の人工人格は存在しないのだ。
 では何故都市の機能は保たれる?
 なんの事はない、人間の官僚がこれまでどおりに仕事して計画を立て遂行しているだけなのだ。
 ただそれを「マリア(仮」の計算結果と偽り、人々に強制してきた。官僚の独裁こそがメトロポリスの実態だったのだ。

 というわけで、民衆は真実を知り欺瞞の皮を剥ぎ取ろうと、暴徒となって「マリア(仮」を破壊する。
 次々と現れるスペアボディの「マリア(仮」の言葉に従わず、ついに「電子庁」の庁舎、電子頭脳の納められる塔を焼き尽くしてしまうのだ。

 こうして都市は人間の手による支配が取り戻され、人間崇拝論者の指導者が大統領に就任する。
 が、メトロポリスはもはやメトロポリスたり得ず、様々な人間的ファクターにより行政は頓挫し、もちろん都市議会は非効率で何も決定できず、市民の欲求が実現される事無く
 遂には内戦状態となって滅びてしまう。

 かっての栄華を懐かしく思い起こす人々は、「マリア(仮」の何が優れていたのかを振り返る。
 思い出せば出すほど、彼女が人間として正しく、慈愛に満ちて、市民を思いやりまた信じ、未来への希望を示し続けていた。と気付くのだ。
 電子頭脳はただ単に、理想とされる人間像を演じていたに過ぎない。ただそれだけだったのだ。


釈「いいですね。」
じゅえる「うん、皮肉も利いていて、いかにも古い時代のSFぽいぞ。」

まゆ子「題名は−、さすがに「メトロポリス」はいかんだろ。えーと」
釈「「メタトロン・ポリス」ではどうでしょう。天使の名前を持つ都市です。」
じゅえる「ロサンジェルスみたいなもんさ。」
まゆ子「なるほど、都市の名前が「メタトロン」、電子頭脳も「メタトロン」、でその代弁者としての「マリア(仮」が居るわけだね。」

釈「「マリア(仮」という名前は、むしろ人工物ぽくていいですね。このままでいきましょうか。」
まゆ子「ふーむ、タンガラム翻訳版としてヒロイン「マリア(仮」はいいと思う。
 英語訳だと、というか原語だと何になるかな。」
じゅえる「今の言葉なら、バーチャルだよ。バーチャル・マリア。」
釈「ですよねー。
 virtual:事実上の、実質上の、実際(上)の /虚像の、 という意味です。
 fictitious:架空の、想像上の、創作的な、小説的な/うその、虚構の、虚偽の 
 これも悪くない。」
じゅえる「コンテンポラリー・マリア でも悪くない。科学技術社会の最先端の産物なわけだし。」
まゆ子「その時代に最適化された、という意味に取ることも出来るね。」

 

釈「でもちょっとまってください。
 この小説は、ゥアム帝国で書かれたものですよね。でも、帝国はゥアム神族によってそれこそ神のような統治を受けているわけですよ。
 こんな、それこそ共和主義みたいなお話が出て来るんですか?」

まゆ子「はあ。そこんとこ気にするんだ。」
じゅえる「元々の「メトロポリス」が社会主義っぽい作品だからな。これ左翼的傾向の強い作品だろ。
 いわば反帝国主義と呼ばんばかりの。」
まゆ子「うーん、そこはこういう説明でいいんじゃないかな。

 この物語が書かれるちょっと前に、タンガラム方台が発見されて、ゥアム帝国との交流が始まった。
 この時「民衆共和主義」というイデオロギーも同時に流入して、ゥアム帝国を少なからず揺さぶったんだよ。それこそ革命的にね。
 で、その思想的流行を受けて、でも否定的に描かれたのがこの「メタトロン・ポリス」だ。

 しかし、逆にこれが発禁処分を受けたりする。」
釈「何故です。それっぽい話を書くだけでもダメですか。」
まゆ子「いや逆にね、ゥアム神族という絶対の指導者層が、まるで何もしなくてもよい。実は何もしていない、と言わんばかりと」
じゅえる「そうか、そういう風にも見えるんだ。」

まゆ子「で、発禁されたがなにせゥアム帝国は14も州国があるバラバラの社会だ。
 ある所では厳しく弾圧されても、他の所ではゆるゆるだったりする。で、この小説も普通に広まっていったわけさ。」

釈「いろいろ楽しいですね、そこんとこ考えていくと。」

 

じゅえる「ところでさ、”コンテンポラリー・マリア”(現代のマリア)で思い出したけど、「未来のイヴ」て本もあるだろ。」
釈「攻殻機動隊「イノセンス」の元ネタになるやつですね。ハダリですよ。」
まゆ子「うん。人造人間モノの嚆矢だね。それが何?」
じゅえる「いや、「メトロポリス」もそうだけどさ、女性型アンドロイドって性愛の対象だろ?
 この「マリア(仮」はちっともエロくないぞ。」
釈「あ、」

まゆ子「そこに気付いてしまったかー。いやーでもね、「罰市偵」自体エロさが無いからねー。」
じゅえる「気付いたからにはなんとかしろ。」
まゆ子「へい。では、「電子の要塞」メタトロン・タワーにも、エロいロボ女が居る事にします。」

釈「でもそれは、「電子の要塞」でのアクションシーンで出すギミックに使えますね。
 ロボットアームとかは有りでしょう。」

じゅえる「どうするかな、「マリア(仮」に歌でも歌わせるか。」
まゆ子「こういうのはどうだろう!

 「マリア(仮」の造形は、その昔に流行ったアイドルの若い頃そのものなんだよ。
 そのアイドル自身は早逝しているが、かっての恋人が今は人間崇拝論者の指導者だったりする。」
じゅえる「おお、なるほど。かっての恋人によってアイドルの幻影が打ち砕かれるんだ。」
釈「たしかにそこはエロい絵です。」

じゅえる「なぜアイドルが造形に使われたのかは、そこにも因縁を入れとこう。
 アイドルの兄が電子頭脳の開発者博士だったり。」
まゆ子「兄かよ。むしろ弟だろ。」
釈「父親でもいいんですが、あるいはまったくに無関係のファンでも。」

じゅえる「アイドルが早逝するその原因の事故を起こした関係者、というのはどうだろう。
 その後電子頭脳の研究者となり、自分が殺した(と思う)アイドルを蘇らせる。」
まゆ子「なるほど。」
釈「ふむふむ、もちろんそいつはアイドルのファンだったんです。
 いやむしろ、アイドルが死んだ事故自体が、実は仕組まれた殺人であったとか?」
じゅえる「物語展開的にはじゅうぶんストーリーを構築するに値する設定だな。それは。」

まゆ子「あ、いやそうだ!
 その事故自体は研究者によって引き起こされたものだけど、その現場にアイドルが居合わせたのは恋人の差し金で、
 急に売れて世間の人気者になった彼女を誰にも取られないように、恋人こそが彼女を殺していた。
 というのではどうだ。」
じゅえる「推理モノになってきたな。」
釈「犯人A および真犯人B という構造ですね。」

まゆ子「とすれば、その研究者は自動機械のテストをその頃行っていて、自動操縦電車とかの実験をしていた事にしよう。」

釈「主人公はどうします? 誰の視点でこの物語は進行します?」
まゆ子「うーん、外部からの視点、都市「メタトロン」には本来居住しない旅人とか? がベルヌぽいかな。」
じゅえる「電子頭脳の研究者が、世界一進んだ「メタトロン」を見学に来た。的な。」
まゆ子「ん〜、ならば「ロボット三原則」的な要素も組み込めるかもしれないな。」
釈「アシモフですねー。」

 

まゆ子「ちなみに、「ジュール・ベルヌ」は→「ジゥヌ・ベルル」と名前換えます。
 あと、ゥアム帝国で名高い「戯曲の王」シェ=ェクス・ピア の作品もタンガラムで翻訳されて人気ですが、
 不思議な造語で訳されています。
 例えば「ロミオとジュリエット」。
 ゥアム帝国においては別のタイトルですが、タンガラムでは「ロミ雄とジュリエツ嬢」です。」

 

 

19/06/04

まゆ子「突然ではありますが、また入院しましたよ1ヶ月!」

釈「今度はどんな重病ですか。前は心不全でしたよね。」
まゆ子「あ、深刻ではあるが死なない病だな。
 とにかく、1ヶ月入院の内、3週間はただひたすらに「待機」! それのみでした。これはつらい。」
じゅえる「なんでそうなった。」

まゆ子「いやー、そもそもがGWの真っ只中、というのが段取り最低でしてね。まあ突発的な病気にスケジュールなんか関係ないんですが。
 でもね、せっかくカウントダウンしてた「令和」のお祭りの直前で、以後5月まるごと監禁ですよ。コレはつらすぎる。
 物書きとして、新時代に沸く街の様子を、お祭りを見損ねたというのは、これは痛恨!」

釈「いやまあ、それはおつらいでしょう。」
じゅえる「待機って、なんでそうなるんだよ。」
まゆ子「いや、入院して1週間は薬を呑んで効くかな?と待機。
 薬は効いたけどはかばかしく無かったから、手術しましょうとなって順番待ち1週間。
 手術したら、途中で電気メスが作動不良で大事をとって中断。再手術で1週間待ち。
 再手術でちゃんと治って退院するまで1週間。こういうスケジュールでしたのさ。」

じゅえる「あ〜。」
釈「基本運が悪いですよねー、まゆちゃん先輩。」
まゆ子「とまあそういうわけさ。で、その待機の間何事も無かったかというと、まあ最初の1週間はいいんだけど、
 2週目以後はしぬような痛みが常に付きまとうという。」
釈「じごく。」
じゅえる「じごく。」
まゆ子「自分で言うのものなんだが、じごく。」

 

じゅえる「それだけ暇が有ったのなら、小説描きになんか活かせよ。」
釈「そうですねえ、暇なんですから。」

まゆ子「いや、活かしましたよ。これから『罰市偵』でニセ病院を描くわけですが、その実地体験ですよ。」
釈「ああ。それは。」
まゆ子「非常に貴重な体験を得ましたよ。病院てトイレ糞尿の始末が極めて核心的な存在であると心底実感しました。」

じゅえる「そうか、ニセ病院には何十人も病人が居るから、トイレ満杯になってしまうんだ。」
釈「設定上はあの世界水洗は少なくて汲み取り式ですから、それは超大事だ。」
まゆ子「そういうことさ。汲み取り料金だけで毎日カネが吹っ飛んで行く事に気づいたさ。」
じゅえる「そうか、体験してみなければ分からないというのはあるな。」

まゆ子「ついでに言うとだな、入院患者の中に狐憑きみたいな爺さんが居て、夜の病棟を徘徊して各病室にまじないというか呪いというか、掛けて回っていたりもしたのだ。」
釈「な? マジですか。」
まゆ子「まじだからなー、気持ち悪いから呪い切りをしましたよ私。その日とうとうどこそへドナドナされてしまったぞ。
 なんか長年ヤクザ坊主をやってきて、人を騙しまくってました的な奴だったな。」
じゅえる「うーむ事実は小説よりも奇だな。」

まゆ子「というか、その時使った呪い切りは『孔雀王』に出てきたやつだが、作者の荻野 真先生お亡くなりになってしまわれましたね、入院中にスポーツ新聞見てびっくりだ。」
釈「ああ! あの方の作品はこの業界に大きな足跡を残しましたね。」
じゅえる「なんだっけ、オンバザラダトバンだっけ? 色々あるんだな。」
まゆ子「とにかくご冥福です。たぶん、インタネット各所で祭りになったのでしょうが、乗り損ねた! 痛恨」

 

まゆ子「ついでに、『げばると処女』外伝「赤甲梢」考えたぞ。今から執筆に取りかかる。」
釈「おお! やはり時間を無駄にはしなかったのですね。」

まゆ子「『ゲキロボ☆彡』の新章が出来た! 鳩保たちで近未来スマホ小説を描くことになった。おそらくは2025年くらいの風俗で。」
釈「未来ですか。」
まゆ子「あいつらは高校卒業後で20歳くらい。でも時代は2025年、こういうことね。」
じゅえる「なんとかなるのか?」
まゆ子「なんとかなったんだよ、それが。」
釈「時間をまったく無駄にはしていないんですねえ。」

まゆ子「オーラシフターも出来た。あいつら漫画になることになった。
 なぜかフカ子さんが主役で、ラーメンの話をする。」
じゅえる「ラーメン?」
まゆ子「蕎麦も出るし、チャーハンも餃子もやるつもりだ。なぜか。」
じゅえる「そうか。」

 

まゆ子「とにかく、くっちゃり再出発だああ。」

 

19/03/28

まゆ子「くっちゃりぼろけっと緊急ー! 「ミィガンて何者?」」

釈「はあ。「げばると処女」で弥生ちゃんの狗番であったミィガンさんですよね。」
じゅえる「こないだ書いたんじゃなかったけ。」

まゆ子「書きました。というか、こないだの予告どおりに「ミィガンの最期」を書きました。」
釈「ゴバラバウトさんに神刀を盗まれちゃう話ですよね。」
じゅえる「書いたのは偉いが、なにが問題なのだ。」

まゆ子「実はさ、「ミィガンの最期」はとても上手く書けたのだ。これ以上無いくらいに上手くね。
 まあ本来発生する尺を半分くらいに削りまくった結果なんですが、とにかくよく出来ました。」
じゅえる「いいじゃん。」
釈「それが問題なんですか。」
まゆ子「でさ、この「蛇足外伝」シリーズはあくまでも「げばると処女」の補足であり蛇足なのだが、という事は当然にこれまで書いた「げばると処女」と同レベルである事を要求されるのだな。」
釈「当たり前ですね。」

まゆ子「「ミィガンの最期」は、「げばると処女」レベルでは上手く書けたと言える。
 でも「ゲキロボ☆彡」「罰市偵」レベルで考えると、ダメなんだ。
 ミィガンのキャラ・人物設定がすっからかんだとバレてしまった。」

釈「すっからかん……。」
まゆ子「「げばると処女」においては、エピソードがんがんすっ飛ばしてとにかく前に進め進めやってますから、人間描写というのが薄くてもまったく問題ないんですね。
 むしろ余計な色が無い方がよい。そもそもこれは「時代劇・歴史劇」として描かれている。
 大量の人物が登場する物語において、個々の人間に一々構うわけにはいかない。というか邪魔。」

じゅえる「分かった。物語構造が違う路線に慣れた今の眼で見て、「ミィガンすっからかん」なのだな。」
まゆ子「どうしよう。せっかく書いた「ミィガンの最期」やり直したく無いよ。」
釈「そりゃそうです。」

まゆ子「というわけで緊急。なんとかして!」
釈「明美せんせー。」

 

明美「はいはい来ましたですよ。「げばると処女」と言えばわたしも出演してますね。」
じゅえる「というわけだ。なんとかして。」
明美「うーん、まあとりあえず書いたのを読みます。(「ミィガンの最期」読んでる)

 読みました。なんですかこの人。自分の意思ってものがまったく無いじゃないですか。」
まゆ子「そうなんだ。ミィガンは狗番、つまり絶対にギィール神族に従う従者だから、無個性なのは当たり前で必要条件なのだが、
 今回のお話は彼が自らの思うところに従って自らの意思で決定する、というお話なんだ。」

明美「困りましたねー、色っぽい話のひとつふたつ位用意してくださいよ。」
まゆ子「というわけで新キャラ投入、嘴番の「ハトゥパシェト」さん出してみたんですけどね、おっぱい。」
釈「ぜんぜん絡みが無いじゃないですかあ!」

じゅえる「明美、すまん。まゆ子はダメな奴だった。
 というか、今回の外伝書くのに「くっちゃり」使ってないから、事前に審査出来んかった。」
まゆ子「もう思いつくままに一本道でざーっと書きました。「げばると処女」当時と同じ手法です。」
明美「これはー、出来上がっていると言えば出来てるんです。というか、修正の必要は無いですね流れ的に。
 問題はフレーバーですよ。ミィガンさんという人物の個性を際立たせる香料を、後付で添加しましょう。」

釈「しかし、なんとかなりますかね。」
明美「このお話、ほとんど男の人しか出ませんから、ホモっぽいテイストなら簡単です。」
まゆ子「そこは勘弁して。」
じゅえる「弥生ちゃんがちょっと好きになるようなキャラだから、ホモはさすがにダメだぞ。」

明美「だとは思いますが、20才でしたか?」
まゆ子「20才だね。でもこの世界、というか中世レベルの社会では20才は十分に大人過ぎる。普通子供居る。」
釈「子供ですか。狗番て結婚するんですよね?」
まゆ子「しますが、まあ色々ですね。」

明美「苦悩が無いんですよね。いや、分不相応な身分にさせられちゃっているという苦悩はありますが、弥生ちゃんへの忠誠心のみが原動力で、」
じゅえる「もっと内的に人々を救おうとする意思やら動機やらが必要かな。」
明美「それはー、今更ですかあ。」
まゆ子「今更ねえー。」

明美「旧主への思慕、望郷の念、自身の本分への回帰。そいうのが弥生ちゃんの元を去る理由なんですよね。」
まゆ子「うん。まあ本編では、居てもやること無くなったから、というのも有る。」
釈「神官巫女やら色んな人がうわっと寄って来て、弥生ちゃんは大きな集団組織の頂点になってしまいましたから。」

明美「であれば、1章ください!」
まゆ子「1章でいいのか。もっと全面的に改稿するのも覚悟してるけれど。」
明美「そのミィガンの気持ちをひっくり返すイベントを突っ込みましょう。」
じゅえる「具体的には。」
明美「そうですねえ、どこかの町で歓待を受けるミィガンが、綺麗な巫女に尋ねられるんですよ。
 「主人のサガジ様は、弥生ちゃん様の家来になるのですか?」とか。
 ミィガンは、もはや元の狗番に身分には戻れない。ということを改めて思い知らされるわけですね。」

釈「ふむ。自らが何者であるかを別の側面から問い直されるんですね。」
じゅえる「それはいい。ミィガン本人の自主的な意思が見れるだろう。
 でも落とし所どうするね?」
まゆ子「それは旅の中でおいおいに発見していくということで。でも、殺されちゃうんですけどね。」

明美「そうだなー、「故郷に戻ったら結婚なされるのですか?」とか尋ねられるのがいいなあ。」
釈「なるほど。」
じゅえる「この世界は、結婚といえども様々に政治的意図が絡んでくるからな。
 トカゲ神の使いであるミィガンは、もはや政治の世界に足を踏み込んでしまっている。」

 

まゆ子「わかる! 分かるが、そこまで固くなってもらうのは困る。もうちょっと柔らかく、個人の心情がぼろっと出て来るような。」
明美「お嫁さんの話は、足りない?」
まゆ子「いや、それは大いに結構なのだが、さらにもう一枚!」
じゅえる「て、なんだよ。」

まゆ子「あ〜、なんというか、もっと個人的なというか、自らの将来についての不安というか、乱れるというか、でも最後には弥生ちゃんが絡んでくるような。」

明美「ああー!!」
じゅえる「どうした。」
明美「弥生ちゃんのお婿さんだ!」
釈「え?」

明美「女の救世主であれば、お婿さんが要るでしょお。
 ミィガンのお嫁さんの話をしている最中に、突然話が大きくなって「弥生ちゃんのお婿さん」というのに飛び火するんだ。」

まゆ子「うわ〜、なんじゃあそれは。」
じゅえる「面白い。おもしろいが、それはミィガンにどう絡むのか。」
明美「ミィガンから見て、「弥生ちゃんという女の子」がどんなヒトだったかを語らされる、てのは、どうですかね?」

まゆ子「うーむ。」
釈「うーーーむ。なるほど。なるほど。」
じゅえる「ミィガン本人がどういう人間であったか、を描くよりもよほど印象的な描写になるか。うん。」
釈「ミィガンがどのような気持ちで弥生ちゃんを見ていたか、が浮き彫りになる仕掛けですね。」

まゆ子「よし分かった! 任せろ!」

 

釈「ところで、『蛇足外伝』は以後どうなります?」
まゆ子「えーと、次は、EP2の時点で設定まったくのすっからかんで誰が何やらまったく決まっていなかった赤甲梢の面々のプロフィールを、弥生ちゃん滞在中の時期を舞台に描いてみましょうか。」

     *****

まゆ子「OK! 書いたぜ。ぐっと締まった!」

釈「ところで、この嘴番の「ハトゥパシェト」さんて、どういう人ですか。」
まゆ子「ビジュアルイメージ的には、鳩保だ。おっぱいだし。」
釈「おっぱいですか。」
まゆ子「おっぱい以外のビジュアルを考えていないぞ。
 というか、彼女はロケットおっぱいではない。ゴムまり系おっぱいだ。」
釈「なるほど。攻撃的で無いんですね。」

 

19/03/18

まゆ子「くっちゃりぼろけっとー。
えー、現在「罰市偵」更新が滞っていますが、もうちょっとお待ち下さい。もうすぐできます。」

釈「遅延の原因はなんですか。」
まゆ子「やりすぎました。」
じゅえる「バカですよこいつ。「げばると処女」の近代化改修をやったついでに、外伝書き始めたんだから。」
釈「それも2本です。というか、もう書けてます。」

まゆ子「いやー、こう言っちゃなんですけどね、「げばると処女」書いてた時は流れがザクザク進むように、本来説明しなくちゃいけない所をざっくり切ってるんですよね。
 無くたって理解には困らないんですけど、ぽんぽんぽーんと跳んでいくから、まあ分からないという人も居ますよねそりゃ。
 で、今回近代化改修していたらそういうところがムラムラと沸き起こってきて、
 でも別に既存の章立てを変える必要も無い蛇足ばっかりなんですが、蛇足は蛇足で価値はあるだろうと。」

釈「ちなみに、何のお話ですか。」
まゆ子「EP1で弥生ちゃんがタコリティの街に行った時のお話。
 たぶん「くっちゃり」には書いてるんだけど、弥生ちゃんここでほんのちょっとだけ行方不明になったんですね。
 で、後に出て来る「青服の男」達と遭遇する。これ書きました。」

じゅえる「もう一本は。」
まゆ子「ほんとに蛇足といえば蛇足なのだが、弥生ちゃんが毒地を制覇する際に同行した狗番のミィガン。
 彼の描写が薄すぎるのは、当時から気になっていたのです。
 せっかくだから補強しようかと。」
じゅえる「ふむ。理由あってのことか。」

釈「そういえば、狗番のミィガンが弥生ちゃんからもらったというか、トカゲ神の神威をもらった神刀を、ゴバラバウトさんが盗んでしまうんですよね。その時の話も無いですね。」
まゆ子「それは、後で外伝として「刺客大全」に入るはずでした。でも外伝集自体が頓挫しましたからね。
 というか、せっかく完成したものを、これ以上もう続けたくないよ!と。
 ミィガンが襲われて刀を盗まれる話はやはりなんとかしないといけないな。」

釈「で、「罰市偵」の方はどうなのですか。」
まゆ子「推敲もあらかた終わって、あとはもう最終的なチェックして出すだけですから、22章分。」

じゅえる「でかくないけどでかいんだなこれが。」
釈「第五巻導入と、外伝「ユミネイト」ですからね。」
まゆ子「手は抜いてないぞ。というか、これまで第五巻構想手を抜いていたのを今回詰めてますから、当然に手間かかります。」
じゅえる「まだ後半がすっからかんだけどね。」
釈「まーすっからかんなんですよ。」

 

まゆ子「というわけで、第五巻詰めていきます。
 本日は、「古屋敷乗っ取り事件」及び「ニセ病院誕生!」について話をしてみたいと思います。」

釈「なんか、地味な話題ですね。」
じゅえる「そんなもん必要か?」
まゆ子「特に必要とはしませんが、ニセ病院乗っ取りが今回発生しますから、その準備段階としてそもそも何故ニセ病院かをちゃんと設定しておきましょう。」
釈「はあ。堅実ですね。」

まゆ子「というわけで、ゥゴータ・ガロータ先生だ。
 国立ソグヴィタル大学医学部副教授で野戦病院やら僻地医療の専門家。
 大学病院内の権力闘争に嫌気が差して酒場で飲んだくれて、ついでにそこらへんの病人の手当をしていたら
 マキアリイにスカウトされて、古屋敷に連れて来られて病院の真似事を始めたら、
 めざとく嗅ぎつけたトカゲ巫女が乗り込んできて、古屋敷をニセ病院に仕立ててしまいましたとさ。」

釈「はい! メマ・テラミさんはこのニセ病院発足の前か後か、どっちです。」
まゆ子「うーーーーーん、彼女の事件も設定しないといけないなあ。」
じゅえる「これザイリナの時か、ケバルナヤの時か、どっちだ。」
釈「ちょっと待ってください。えーと、

 最初のカニ巫女ケバルナヤ在籍時に「古屋敷乗っ取り事件」
 二代目ザイリナに代わった直後に、ニセ病院設立。たぶん、「ソル火屋」の下宿から追い出されたんですね、新事務所が出来たから。
   それで下の網焼き屋で飲んでたら、ゥゴータ先生と出くわした。
 そして、ザイリナがほどほどの活躍をしていた頃に、メマ・テラミさんの犯罪組織壊滅事件。
 その後に三件連続公権力不正事件を暴いて、首都ルルント・タンガラムで大々的に二人は表彰。そして「闇御前」事件
 というスケジュールです。」

じゅえる「つまり行き場の無くなったメマさんを、直接にマキアリイが手元に引き取った事になる。
 これはー、」
釈「あー、これはー惚れるなという方が難しい展開ですねえ。」
まゆ子「そうなるなあ。うーん、まあ、そういうのもアリかな。色っぽくていい展開ではあるのだ。」
じゅえる「普通に恋愛描写を入れるなら、そうだなあ。」

 

釈「ゥゴータ先生はやさぐれて網焼き屋で飲んでいたわけですが、何があったんですかね大学で。」

まゆ子「あー、これはまあ今までどうでもいい設定だと思って別に表にも出してないと思うんだが、
 ソグヴィタル大学は名門大学ではあるが、文化系とくに社会学系で強い大学だ。
 というか、首都の官僚養成大学で法学部とかやってるし、金持ち大学で経済学部やってるわけだが、
 そこから外れる社会学の分野をソグヴィタル大学が一手に引き受けている。
 直接に官界財界と関わらないから政治的に有力な大学ではない。しかし大学の先生教授それも教育に携わる者はここの出身が多い。」

じゅえる「高等教育の牙城なんだ。」
まゆ子「直接には権力には繋がらないが、影響力は非常に強い。
 そもそもが政治学も社会学の範疇であり、民衆協和制の概念が生まれたのも此処だ。」
釈「名門ですねえ。」
まゆ子「理科学分野はギジジット中央大学、芸術・語学の分野ではシンデロゲン大学、とだいたい得意が分かれているんだな。
 これは国策的なものでそう特色付けている。
 もちろん他の大学にそれが無いわけではないが、資金配分はそうだ。

 で、医学部の最高峰はデュータム大学なんだな。
 ここは隣に青晶蜥王国の王都「テキュ」が有り、トカゲ神救世主「ヤヤチャ」と縁の深い市だ。
 トカゲの神様は医療の神であるから、当然に医療はここが中心地となる。」

じゅえる「ふむ、矛盾は無い。」
釈「ではソグヴィタル大学は医学はどうなのですか。」

まゆ子「実は、かなり先進的な医療体制が整っており、設備も充実する。
 なにせ方台中央南部全域の高度医療の中核ですから、十分な投資も為されている。
 問題は、ソグヴィタル大学医学部の役割が、一般民衆への高度医療の普及であって、研究ではない。というところだ。」

釈「はあ。研究者としてはこちらに来てはダメなんですね。」
まゆ子「生物学としては、百島湾大学でも盛んだから、デュータム大学か百島湾大学、もちろんギジジット中央大学なんかが研究者としての医学者の砦だ。
 首都の大学は、まあ高度医療の中でも特に先進的な医療が実用されるという点においては、研究は盛んだね。
 なにせ患者にカネが有る。立派な病院が立ち並んでいますよ。」

じゅえる「ソグヴィタル大学はそれに比べると落ちる、ってことか。」
まゆ子「安価で経済的でありながらも一般庶民の健康を守ろう、という医学の仁術たる部分を担う大学です。
それはいい。
 しかし、それに甘んじる教授ばかりではない、という事だね。」
釈「研究がしたい、てことですか。」

 

まゆ子「実はだ、ソグヴィタル大学医学部にはもう一つの役目がある。
 それがゥゴータ先生の、軍医や僻地医療従事者の育成というものだね。
 そして医学部の学生でもカネの無い者は、学費を免除される代わりにこの分野に進むのを余儀なくされるのだな。」

じゅえる「重要性は非常によく分かるよ、それは間違いなく必要な教育機関だ。
 だが、なんだろう、ちょっと格差社会という感じか。」
まゆ子「そこなんだよ、ゥゴータ先生が腐るのは。

 それに、先生は海外派遣軍にも従軍したことが有るからね。教え子達も何人も送り出している。
 カネが無いから軍医にならざるを得なかった。いや、それはまだいいとしよう。
 しかし隠された戦争である海外派遣軍において、多数発生する傷病者の待遇。またそれを治療してきた軍医達。
 彼らは一般社会において口をつぐむ事を定められているんだな。
 だから、改善の余地というものがどうしても世間や政界で認められない。」

じゅえる「なるほど。」
釈「なるほど、酒でも飲まねばやってられませんや。」

まゆ子「この眼の前にある厳然たる事実をよそに、大学内部では研究費を巡って熾烈な人事闘争が行われているのだ。
 それどころではないだろう、と言いたくなるのは分かるが、しかしゥゴータ先生もまた組織内部の人間なのだ。
 彼が頑張らなければ、カネの無い学生達の将来はますます暗いものとなってしまう。
 そして改善の光はまったくに見えない。政治力は無い人なんだな、このヒト。」

じゅえる「わかるなー。」
釈「なんとかなりませんかね。」
まゆ子「なった。」
じゅえる「なんでだ。」

まゆ子「いやだって、ヱメコフ・マキアリイだよ。国家英雄だよ。総統閣下にもしばしば会いに行く超有名人だ。
 彼と知り合ってニセ病院を手伝うようになったのは、まったくに偶然の気まぐれさ。
 そしてニセ病院はまったくに奉仕の為だけにあるから、儲かりようも無い。」

釈「ええ。トカゲ巫女が資金調達に汲々としてますからね。」

まゆ子「だがマキアリイだ。常に中央からも総統府からも監視される彼だ。
 その余波で、ゥゴータ先生の存在感が妙に際立ってしまったんだな。
 なんというかな、ヴィヴァ=ワン総統に媚を売ろうと思えば、なぜかマキアリイ経路が早道と思われるようになって、
 マキアリイと親しいゥゴータ先生も、大学内での立場が知らない間に上がってしまっているのだ。
 まあ普通に考えても、マキアリイと友達ってだけで大人気ですからね。」

釈「なんだかめんどくさい話になってますねえ。」
じゅえる「そうか、それをゥゴータ先生は快くは思わないんだ。」
まゆ子「それもあるが、せっかく影響力を行使できるようになったのだから、貧乏な学費免除学生達この人達は免除してもらうくらいに優秀です。
 この学生や若い医師達を、どうにかして陽の目の当たる場所に押し上げてやろう、と考えるようになったわけです。
 また海外派遣軍の軍医についても、もっとなにか出来ないかと。」

 

じゅえる「軍医養成は他の大学ではやらないのか。」
まゆ子「イローエントの軍大学は当然にありますねえ。しかしこちらは元々が軍人から医者になる、という経路ですから、ちょっと違う。」
じゅえる「ふむ、そういうのが有りか。」
まゆ子「イローエント軍大学医学部、海軍大学だな、は外国から入ってくる伝染病防疫研究の最前線だ。
 研究というならば、ここにも重点は置かれているけれど、まあ実用重視だな。」

釈「海軍大学はよそには無いんですか。」
まゆ子「百島湾のミアカプティ市とトロントロントはどちらも軍港であるんだな。
 ミアカプティ港の方は国際交流都市であり、シンドラ連合王国との正式な玄関口だ。
 だから、トロントロント港の方に造船の、海軍艦艇を建造する工業地帯がある。
 だからここに造兵大学があるな。」

じゅえる「兵士というか士官将校だな、が海軍で学ぶ大学、というのは、」
まゆ子「まあ、色々なところにあるんですけどね。ただイローエント港は外国人も多くて教材的な状況に事欠かないんですよ。
 イローエントで学べば、よその港の海軍でも十分通用するから、イローエントで。」
釈「外国人がとにかく居るんですよね、イローエントは。

 海軍の軍艦はトロントロントでだけ作っているんですかね?」
まゆ子「東岸のシンデロゲン港にもその機能は有るけれど、ここは基本艦艇の修理とか改造とかが主になる。
 トロントロントだけ、てのはさすがになんかあったら困るから、シンデロゲン港にも仕事を割り振っているというところだね。

 あと内陸のヌケミンドル市では、湖上水軍の艦艇を建造する機能がある。アユ・サユル湖で使う為だから。
 ちなみにヌケミンドルでは飛行機も作ってるから、艦載機研究開発もやってるぞ。
 で、初期の飛行機は木製部品が多かったから、そこはベイスラでやってたのだ。」

じゅえる「木製飛行機なのか。」
まゆ子「ベニヤで飛行機作るのは地球では第二次大戦までやってるぞ。」
釈「はあ。」

 

まゆ子「まあそういうわけで、ゥゴータ先生はそもそもが大学内の人事競争には縁が無くやりたくもないが、やれるようになってしまった。
 という悲劇なのだ。」
釈「そういう背景もちょこっと物語に織り込むと、いいですねえ。厚みが出ますよ。」
まゆ子「うむ、そうだなあ。」
じゅえる「だが直接的に物語にはそれ絡まないよな。」
まゆ子「なんとかして。」
じゅえる「なんとかと言われてもなあ。」

釈「つまり、ニセ病院解体の話が出て、それを契機に大学の派閥の一派から「キミもそろそろ出世を考え給えよ」とか言われちゃって、
 ニセ病院を辞める潮時かとか考え出すんですね。」
まゆ子「大学関係者からしてみれば、ニセ病院は遊びのように見えるわけだな。まあそうと言っても問題ないくらいのいい加減な所だしな。」
釈「なるほど、医学関係者によるニセ病院の評価、というものもそれは確かに出す必要がありますか。」
じゅえる「そうだなあ、そもそも貧民街が無くなるというのだからな。」
釈「ああ、それも有りました。そうですよ、病人が居なければ病院も無しです。」
まゆ子「あー、考えてみれば当たり前過ぎて、それが関係者に与える精神的影響をあまり考慮していなかったな。そうか、そうだな。」

じゅえる「ついでに、ゥゴータ先生昇進して教授になっちまえ。」
釈「そうですね、そのくらいは動きが有った方が書き易いですね。」
まゆ子「ああ、なるほど。そこらへんも織り込んでいこう。

 かってはそういうどろどろした駆け引きが嫌で逃避したニセ病院なのに、そのニセ病院のおかげで正教授になってしまった、とな。」
じゅえる「いいんじゃないかい。」

 

まゆ子「明美ならさあ、ここで「どんでん返しだあ」と叫ぶところだな。」

釈「はあ。順調すぎるのもいやですかね。それも定石です。」
じゅえる「ドンデンは欲しいよな。でも教授になるのは嫌ではないんだろ、先生。」
まゆ子「なるのだったら成りますね。なろうとして成る為の努力をするのが嫌なわけで。」
釈「どうします。教授の昇進は無しにしますか?」
まゆ子「アリで。どんでんは別の方向からでお願い。」

じゅえる「そうは言ってもなあ。いや、そうだな、教授になると同時に栄転の話も出るというのは?」
釈「栄転、ですか。」
まゆ子「どこかの大学に移るってことか。」
じゅえる「それでもいいが、ソグヴィタル大学の傘下にある総合病院の院長になるとかの。田舎だけどさ。」
まゆ子「あー、ニセ病院がおもちゃに見えるようなところ、て意味では面白いな。」

釈「どうしましょう、ちょっと田舎がいいですね。」
まゆ子「なら格好のど田舎がある。毒地開拓領だ。毅豆食って髪が黄色くなるところだ。
 ノゲ・ベイスラ市からそこまで遠くない、でも遠い田舎だね。」
釈「でもそれだと、中央政界にコネとして有効、というのとは外れますね。」

じゅえる「そうだ。それは、二派が争ってゥゴータ先生をいいように処分しようという策なんだよ。

 軍医・僻地医療の国策派の教授らは、正教授に昇進させて立場を強化しようとする。
 一方研究派は、邪魔なゥゴータ先生を僻地に追いやって栄転させて影響力を排除しようとする。
 逆でもいいんだが、どちらのエサが甘いかな、と。」

釈「あー、どちらかというと国策派の方が病院長の座は約束し易そうですね。」
まゆ子「研究派はむしろゥゴータ先生の学費無料学生医師を引き立ててやろう的な主張に賛同するんじゃないかな。
 中央政界への働き掛けを必要とするのはこちらの派閥だろうし。」
じゅえる「そうか、逆か。」

まゆ子「でも、考え方はいい。

 本当に病人を救うなら、本物の病院でないとな。それは理屈だ。」
釈「自分の思い通りになる本物の病院を一個くれよう、という太っ腹ですね。
 それはー、儲かりますねえ。」
まゆ子「儲かるんだろうねえ。地域の尊敬も集める偉い大先生ですよ。」
じゅえる「一個人の幸福として、それにそもそもが大学で昇進なんかしようとも思わなかった先生だ。
 これなら釣れると考えてもおかしくはないか。」
まゆ子「一国一城の主だからね、或る意味。」

 

     *****

まゆ子「さて。では、「古屋敷乗っ取り事件」です。
 まずヤクザを決めましょう。どこにしますか。」

釈「えーと、「緑苔漠風会」「マギヴァグ會」が直接に出てきていますが、他に用意しますか。」
じゅえる「巫女寮の時に出てきたヤクザはどこのもんだ。」
まゆ子「あー、そーだなー。緑苔にしておくか。侠百人殴りでおなじみだし。」

明美「こんにちわ。」

じゅえる「なんだ、呼んでもないのに来ちゃったぞこいつ。」
明美「わたしにいい考えがあります。ヤクザBL!」
じゅえる「あーーーーーーーーーーーーあーーーーーーーーーー。」
まゆ子「却下!!」
釈「いえいえ、ヤクザという敵役を魅力的に描くのは、十分に必要な作業ですよ。」

明美「だってさ、今回のヒロインてお婆さんでしょ。で、それにくっついてるお爺さんがヒーロー役なんでしょ。」
まゆ子「う!」
明美「地味じゃん、地味すぎるよ。」
じゅえる「まったくもってその通りだ!」
釈「ぐうの音も出ませんね。まさしく改善の余地ありです。」

じゅえる「マキアリイが出てきてさくっと解決するのは決定だ。ひょっとして、若い女出す予定有る?」
明美「出すんだったら、女ヤクザだね。」
釈「いーですねー女ヤクザ。ど定番ですよ。」

まゆ子「かんがえたこともなかった……、でも今回、女ヤクザは無し。」
明美「であれば、ヤクザBLをしない理由がありませんね!」
まゆ子「う、     うん。」
じゅえる「決定だな。」
釈「また一歩人類は前進しました。大きな飛躍です。」

 

明美「ここでまたわたしに提案があります。ヤクザBL無し!」
じゅえる「おいおい、今言ったのが台無しだ。」
明美「ヤクザBLではありません、ホモです。」
釈「それは言葉の言い換えに過ぎないと思いますが、」
明美「耽美無しのガチホモ。」
じゅえる「それ、ぐっとくるが、一般的ではないぞ。」

釈「注;設定上はじゅえる先輩は、BLではなくガチホモ系腐れ女子です。あまりくっちゃりではその要素出しませんが、そうなのです。」

明美「いや、だってさ、ヤクザで兄貴と弟分と、普通に熱い絆で結びついていれば、外野の読者様が勝手にホモ化BL化してくれるでしょ。
 それは自由の翼です。わずかの兆候から臭いを嗅ぎ分け、カップリングに結びつける。
 そのお邪魔を作者の側がしてはならないのです。」

まゆ子「えーつまりー、どういうことだ。ホモっぽく書いてはいけないってことか。」
明美「まさにそのとおり。ホモではない連中をホモっぽく見せる表現が必要とされているのです。」
じゅえる「うんうん、分かる分かる。分かるが、具体的にはどうすればいいんだ。」

明美「テクニカルの問題ですよ、執筆上の。
 彼等をホモとして、また恋愛関係やら依存関係やら、そいうべたべたした関係には描かない。
 にも関わらず、肉体的接触がたっぷりと描写される。
 それは別に性的な接触を意味しない。むしろ即物的物理的接触と表現してもいい。
 でも濃厚に接触する。」

釈「おーーーーー、つまりはこう、皮膚感覚的に暗喩とするわけですね。」
明美「いやあのさ、これまで『罰市偵』書いてきたの読んだけどさ、肉体的接触はほとんど無いよね。」
じゅえる「そうだっけ?」
まゆ子「無いか?」
釈「えーーーーとおーーーーー、読み返してみましたが、かなり少ないという印象ですね。」
まゆ子「そうなのか。」
明美「改善の余地があります。べたべた触りまくってください。」
まゆ子「う、うん。以後気をつけます。」

 

じゅえる「そういうことを考えるとだな、その接触というのはモチーフとして使い甲斐があるな。」
釈「どういうことですか。」
じゅえる「つまり今回の事件、元富豪の老婦人とその従僕の爺さんとのお話なのさ。」
まゆ子「うん。そういうとこにヤクザが押しかけてくるんだな。」

じゅえる「そこでさ、この二人も接触の無い関係なのだよ。長年二人きりで過ごしていながら、主人と従僕という関係で。」
釈「ほおほお、なるほど。つまりそこには深い精神のつながりが有りながらも一線を画して、恋愛関係には陥らないようにどちらも自ら自制していた。そいう関係ですね。」

明美「なるほどなるほど。そこで従僕のお爺さんが死んだ時にようやく触れたと老主人が涙を流して死に顔を触ったりするんだね。」
まゆ子「泣ける! それ採用!」
じゅえる「というわけで、このお話は肉体的接触というのをモチーフといたしましょう。」

釈「ですが、他の本編ではどうしましょうか。すでにマキアリイという人は接触しないキャラとして通っていますよ。」
まゆ子「というわけでだ、サユールの怪物退治でクワンパが襲われた時にマキアリイに投げ飛ばされるという行為が衝撃的ですらあったんだね。」
明美「ここはですね、接触という行為は戦略的に使いましょう。いつもいつも使ってはダメです、」
じゅえる「なるほど、ここぞという時を見計らって、効果的に接触を織り込むわけだな。」
釈「感情を直接表現するというのも「罰市偵」には無いのですが、それでも強烈な感情を表現する手法として肉体的接触を位置づけましょう。」
まゆ子「うん……、まだまだ勉強が足りないなあ。」

 

明美「バイジャンくんの出るところでも、ワム・レフちゃんにべたべた接触させましょう。」
釈「おーーーーー。」
じゅえる「大サービスラッキースケベだな。」

 

 

19/03/10

   (くっちゃりあしどりむ「バイジャンくん強化計画その3」より出張)

 

釈「さて、ここまで固まった上での、バイジャンくんです。」

じゅえる「ここまで企画が固まった段階での情報を元に、バイジャンくんのキャラを再構築する、という作業だな。」
釈「既に、ヱメコフ・マキアリイの薫陶を受けた、という設定から逆算して、『罰市偵』においてはバイジャンくんは「ヤキュ」の練習試合に引っ張り出されている事になりました。
 おおいなる進歩です。」

まゆ子「男を磨いたなあ!」
釈「さらに、鬼と婪婆とくっちゃり教で、パワーアップです。たぶん『罰市偵』内でのキャラとしては、それで十分立つと思われます。」

まゆ子「次の章つまり「危うしニセ病院1」において、巫女寮に魚油発動機の修理に行きます。
 ノゲ・ベイスラ市は停電が少ない恵まれた土地柄ですが、冷蔵庫用の発電機は不可欠の装備です。
 でも何ヶ月も使わないと、燃料の魚油が酸化して固まってしまいます。
 固まらないようにするのがエンジン使う作法なのですが、巫女寮のど素人ばかりでは致し方ない。
 そこで、バイジャンくんの出番です。」

釈「バイジャンくんはヤキュの練習をするのですか?」
まゆ子「無理。なにせ超人野球ですから、素人どころかプロの野球選手が入っても使えない。
 まあ見学だけですが、それだけでバイジャンくん目の玉が飛び出る状態です。」
じゅえる「超人野球って、どの程度の。」
まゆ子「あー、ニンジャが電柱登って電線の上を走りながら球を投げるとか、そもそもボールが見えない時刻に真っ黒のボール投げてますから。それも鉛入りの。」
じゅえる「超人野球だ。」

まゆ子「バイジャンくんの言によると、「ヱメコフ・マキアリイが普通に見える」ほどの連中です。」
釈「しゃあああああ。」

じゅえる「ではつまり、そのような状況を目撃するバイジャンくんに次はどんな属性を盛り込むかだな。」
釈「鬼達との交流からなにか、ですね。」
じゅえる「ヤクザにも会わせてみるか。」
まゆ子「いやさすがにそれは、巡邏軍監のお父様の手前無理です。
  でも、まあ一流の企業経営者とか青年実業家くらいには会ってみますか。」

釈「そうですね、でもマキアリイさんはそういう人達とお付き合いあるんですか?」
まゆ子「答えは○です。そうだなー、誰か一人そういうクセモノの青年実業家くらい用意しておくか。」
釈「バイジャンくんを会わせる為だけに?」
じゅえる「ふむ。マキアリイ事務所とまったく関係ない筋から、マキアリイに関しての評を聞く。そういうのもアリかもね。」
釈「その人が実は、ヤキュのメンバーのひとりだったとか。」
まゆ子「あーーーーー、その手はあるが、保留。」

 

じゅえる「でも、結局は弓レアルに会わないとバイジャンくんのシーンは収まりを見せないぞ。」
釈「そうですよ、黒ぴったんが寂しがります。」
まゆ子「ふーむ、そこはニセ病院に怪しい奴が現れての話に取っておいたのだが、」

明美「そこでさ、黒ぴったんを抱えたまま、その青年実業家の家とかオフィスにご案内されてしまうとかではどうかな。」
じゅえる「ふむ、だがどうやって接触を持つ?」
明美「バイジャンくんが鞄に黒ぴったん入れて歩いてたら、すーっと高級乗用車が近づいてきて、青年実業家が話しかけてくる。
 誰だこいつ、と思っていたら、彼が真っ黒の野球のボールを見せて、あっ!と驚くわけさ。」
釈「ケレン味たっぷりですね。」
じゅえる「いいぞ、そういうレベルだ。」
まゆ子「よっしゃ採用だ! だが何の話をさせよう。」

明美「なにか陰謀でっち上げてよ。」
じゅえる「そうだ、今回つまり第五巻内で決着しなくていい。もう一枚陰謀を噛ませろ。」
まゆ子「なるほど。伏線張りですか。それは考えるな。」

釈「しかし、今からですか。今から何をどこにどう入れますか。」
じゅえる「釈ちゃんよお、明日を超えて明後日に向かうのさ。」
まゆ子「そうそう。」

明美「大陰謀であるのですから、そうですねー「ワムちゃん」でマキアリイが遭遇する鬼との戦いのイントロですよ。」
じゅえる「違いない。この謎は、『罰市偵』では姿を見せる事は無いが、関与はする。そういう仕組みだな。」
まゆ子「やり過ぎるとやばいやつだぞそれ。」
明美「でもヤキュについての説明はありますよね、そりゃ当然に。闇の世界のお話ですよね。」
まゆ子「うむ……。」

釈「テイストとしては、「マキアリイ故郷に帰る」に近いものですね。」
まゆ子「うむ、ファンタジーとしての側面を強化するわけだな。ふむ……。」

じゅえる「どう手を回すかな。そうか、マキアリイがバイジャンくんをヤキュの練習に連れ出したのには、間違いなく目的が有るんだ。
 それは闇の世界のお話であり、巡邏軍監カロアルも関与している謎なんだ。」
まゆ子「ゲルタか。」
じゅえる「それも入れよう。」
まゆ子「入れるのか!」
明美「いいですねえ、ゲルタが繋ぐ男達の世界。いいですねー。」
釈「いいですけどね。でも、うーん、どうやって?」

明美「バイジャンくんはゲルタが苦手だということで、ではとマキアリイが連れて行く。」

まゆ子「意味がわからない!」
明美「そのくらい自分で考えなよ。」
じゅえる「そうだまゆ子、楽をするな。」

 

釈「ああそうだ! その青年実業家の所でワムちゃん出しましょう。ほとんど関連なしでいいけれど、凄い美少女がどんと出てびっくり。」
まゆ子「さいよー。そこでドギマギした経験を下敷きとして、弓レアルに再会して「あーほっとするやっぱりこの人だ」という。」
じゅえる「そうだな、ドギマギはしてもらう。」

明美「ワムちゃんどうする? 妹、使用人メイド、それとも友達というか愛人?」
じゅえる「そこは、バイジャンくんをその家に連れて行く目的と同じ。てのでどうだ。」
釈「なるほど、候補者の顔合わせ的なものでいきますか。」
まゆ子「どうしよう、鬼の話を出すわけにはいかないが、お祭りの手伝いとかの名目かな。」
じゅえる「お祭り、ねえ。ふむふむ、そこで救世主関連のイベントを繰り込むか。」
釈「救世主ですか、「ヤヤチャ」関連ですね。それは当然に有ってもいいのですが、
 いっそのこと、次の蝉蛾神救世主を呼ぶイベントとかにしますかね。」

まゆ子「ふーむ。あーいやどちらかというと人食い教的な?」
じゅえる「人身御供みたいな感触は欲しいかなあ。」
明美「でもポップな感じも欲しい。」
釈「また無茶を。」

明美「そうですねー、イベント屋的な商売として、万博的なものをその青年実業家が考えているとして、」
釈「いやそれは全然方向性が違うと」
まゆ子「いや。むしろ古代の秘術的なものよりもアリだ。新しさが欲しいのは確かだし。」

じゅえる「そうだ。バシャラタンにおいて、タンガラムゥアムシンドラの文物を集めた博覧会的なものを行って、バシャラタン人を一気に文明の意識に導こう、的な」
釈「ああ。先進文明博覧会ですね。それは凄いイベントです。」
じゅえる「これにワムちゃんとバイジャンくんが出演するという線で、どうだ!」

まゆ子「うーむ、うーむ考えたな。うーむ。」
明美「その青年実業家って、いいヤツ?」
じゅえる「どうかな、悪くてもいいが。」
釈「ヤキュの選手なんだから、マキアリイさんと同様の熱い正義漢なんじゃないですかね。」

まゆ子「任せろ。つまりだね、

 バシャラタン法国においては、交通通信の技術、出版や報道業が発達していない為に、全国民が同時に情報を知るという事が出来ないんだ。
 だからバシャラタン発見50年が経った今でも、一般民衆の間では外国というのは遠い存在でほとんど意味を持たない。
 もちろん貴族階級は目ざとく情報を得ているし、交易の恩恵に与かっているのだが、彼等にしても外国を包括的に理解しているとは言い難い。
 バシャラタンの政治は僧侶が取り仕切っているのだが、彼等も旧態依然とした宗教国家として変革を厭う風潮が有る。
  つまりは、遅れた野蛮国という誹りを甘んじて受ける状態と言っていい。

 でも実は、これは諸外国にとっては極めて都合の良い状況だと言える。搾取するにはね。
 目ざといバシャラタン商人というのは居るが、彼らは自身の富と欲望を充足させるだけで満足して、国全体の発展やら権益の保護やらにはまったく思い至ってない。
 憂慮する賢者は少なからず居るのだが、しかし一般民衆がその脅威を全くに理解しないから政治僧が動く事は無く、彼ら賢者の言葉は虚しく宙に消えていく。

 要するに、バシャラタン国民が全員!目を覚まさない事には、どうしようもない状況なのだ。

 ここに、その青年実業家が出現する。
 まあおせっかいにというべきだろうが、義侠心からバシャラタン国民の目を強制的に開かせてやろうと、先進文明博覧会を開催しようと思いつく。
 統合的包括的な近代文明の在り方というものを、それも三カ国それぞれの異なる有り様をばーんとぶつけてやる事で、強制的に自らが劣った存在であることを自覚させるという。まあおせっかいですね。」

じゅえる「非常におせっかいではあるが、必要なことなんだな。」
釈「でも、彼一人ではダメなんじゃないですかね。三カ国どころかタンガラム一国でもうまく行きそうに無い。」
明美「味方が多数必要だよね。」
まゆ子「それが出来る男なんだよ。そして、ゥアムにもシンドラにも賛同してくれる人が居る。

 いや実は、「闇御前」だって協賛者だ。闇御前機関による強力なバックアップも有る。」
じゅえる「いいのか、それ?」
まゆ子「アリにしましょう。

 で、バイジャンくんだ。

 この先進文明博覧会は、要するにバシャラタン国民に強烈な劣等感を抱かせるものなわけだ。
 だがそこで留まっていてはネガティブな感情にとらわれるばかりだ。だから、バイジャンくんのような青少年が必要となる。

 バシャラタンは近代文明機械文明においては大きく劣るかもしれない
 だが精神文明としてはまた伝統文化としては優れた点も少なからず持つという事を、外国の青少年が自ら体験し興味を持つ姿を露わにして、自国の誇りをしっかりと持ってもらおうという話だ。

 というか、バシャラタン法国は孤立していた方台であるから、一つの国家という枠組みの自覚も薄いんだな。
 それを今回強烈に植え付ける必要がある。外国と対比する形で自国をも認識する。
 その助けとなるのが、バイジャンくんやワムちゃんら青少年の体験使節なのだな。」

釈「ふむ、重要ですね。でも一人二人ではダメでしょう。」
まゆ子「ゥアムシンドラからも、そうだなー一カ国10人として三カ国30人くらいの青少年が必要だな。」
じゅえる「大事だな、それは。」
まゆ子「それはも何も、博覧会会場には線路敷いて機関車走らせるし、電気でそこら中ぴかぴか光るし冷蔵庫でアイスクリーム作るし、飛行船やら飛行機は飛びまくるし、当然に兵器類も展示されてデモンストレーションもするさ。とんでもなく大掛かりさ。」

釈「兵器もですか。」
まゆ子「当然に。近代文明の最高の産物だからね。バシャラタンにも軍人や武人階級はあるさ。彼らの興味はまさにここに有る。」

明美「つまりは、兵器の売り込みの為でもあるんだ?」
まゆ子「その側面は否定しない。というか、それでカネを釣って、博覧会を成り立たせるという寸法だ。
 単なる平和的イベントではないが、裏には確固とした平和の意思が有る。
 だからこそ、ヱメコフ・マキアリイも協力して、バイジャンくんを推薦してくれた。」

 

釈「バイジャンくんはなにか特別な役割とか才能が有るんですかね? 普通ぽい役立たずに見えますが。」
まゆ子「バイジャンくんは大事だよ。他に適任者が居ないというくらいに大事だよ。
 何故ならば、前述したとおりにバシャラタン法国には武人階級やら貴族が居るんだな。
 彼らは血縁を元に結びつく氏族だったり部族だったりだ。つまりは血統がものを言う。

 ここに、タンガラムにおいて巡邏軍監という武力で治安を維持する集団の司令官職の息子、という存在が来るわけだ。
 信用度は極めて高く、インパクトは非常に大きい。

 また当然に近代文明の産物として娯楽コンテンツ、映画だねも上演されるのだ。
 バシャラタンにおいては未だ常設の映画館も無いくらいだからね、大人気になるだろう。
 当然に上映されるのは『英雄探偵マキアリイ』映画だ。大人気間違いなしコンテンツ。

 その実際に生存する英雄に直接接触して教えを乞うた、という少年が現れるのだ。しかも巡邏軍監という高位の軍人の子息である。
 どうだこの説得力!」

釈「な、なるほど。」
明美「納得だ。」
じゅえる「たしかにバイジャンくん、重要だな。でもワムちゃんは?」
まゆ子「ワムちゃんに関しては、まあ霊能に詳しいということで、そこにはまた別の思惑が有ることにしよう。」

 

じゅえる「でもさ、そんな大掛かりな仕掛けを、その青年実業家がただ一人で考えつく、というのは異常だな。」
釈「誰か仕掛け人が他に居る。それも超大物、ですかね?」
明美「闇御前はあくまでも協賛者の一人、てことでいいんだね?」

まゆ子「そうだなー、このレベルの仕掛けを考えつく奴となるとー、
 第六巻で出て来る「白の母」、くらいですかねえ。」

じゅえる「おお、本命が出た。」
釈「ああ。ゴバラバウトさんですね。あのヒトであれば、このくらいはやってのけますね。納得。」

 

 

19/02/06

まゆ子「えーと、これまでクワンパが事務員として文字を書いているシーン、書いたかな?」
釈「えー、記憶にありませんねえ。」
じゅえる「帳簿を読んでるシーンはあるが、書いてるのは無いかな?」

まゆ子「えー、じゃあタンガラムの筆記具について語っているところは無かったか。」
釈「いえ、巡邏軍ベイスラ駐屯軍のカロアル軍監の万年筆破壊しました。あれはロットリング式の管状万年筆ですよね。」
まゆ子「あれだけかね? 筆があって鉛筆がある、てのは言ったかな?」
じゅえる「うーん、よく分からない。」
釈「そこらへんはあまりこだわって書いてませんねえ。」

まゆ子「ということは、クワンパが事務で使うのがガラスペンだ、てのも言ってなかったか。」
釈「ガラスペンですかあ。あれって割れやすそうですよね。」
じゅえる「というか、ガラスペンてちゃんと書けるのか? 今では鉄のつけペンはまだ存在しても、ガラスペンは無いだろ。」
釈「おおむね美術品的扱いですよね。ガラス細工ですから作りようによってはとても綺麗なものが出来ますから。」

まゆ子「ガラスペンは、発明は日本らしい。」
釈「へー。」
じゅえる「外国では、というか欧米では無かったのか。」
まゆ子「というか、欧米ではつけペン以前はガチョウの羽ペンだろ。アシをペンにするというのもあるらしいが、羽根の軸削ってペンにするだろ。」
釈「あー、つまりガラスペンが出て来る路線が無いわけですか。」

じゅえる「いやだって、棒に絵の具付けて引っ張れば線が引けるだろ。」
釈「なんでもいいような気がしますが、」
まゆ子「そんなもんでは引けないのだ。なんとなれば、ただの棒にはインクを適宜供給する仕組みが無いからだ。」

釈「羽ペン、鉄ペンは先が二つに割れてインクが毛細管現象で吸い上げられて書字する時に適切な量が供給されるんですね。」
じゅえる「筆もたくさんの毛の間のインクが毛細管現象で供給されるんだ。
 ガラスペンはどうなってるのだ?」

まゆ子「ガラスペンは8本ぐらいの溝の集合体のような形状をしている。この凸と凹の凹のところにインクが溜まって、適切に供給されるのだ。
 しかも上手く出来てるのは、この凹が8本あるわけだから、インクが8箇所に蓄えられる。
 書いてる時にインクが切れたなと思ったら、ペンの向きを回して次の溝のインクを使えばいい。
 付けペンよりも長い線が引けるのだ。」

釈「へー、よく出来てますねえ。」

 

じゅえる「だが結局は書き味だろ。線を書くのがやりにくければ廃れるってもんだ。」

まゆ子「それがさ、しごくまっとうに引けるんだ。細くて綺麗な線が一定の幅でなめらかに。
 そもそもガラスペンの先はただの丸棒だから、鉄の付けペンと違って向きが無い。だから書いている内に一定方向に偏って磨り減るてことが無いんだな。
 安定した線が延々と引き続けられる。

 問題はただ材質強度だ。」
釈「ガラスですからねえ。ぶつけたら割れますよ。」
まゆ子「というか、ちょっと強く当てただけで欠ける。というか、使ったら欠けた。」
釈「ああ。実際に今使ってるんですか。」
まゆ子「マンガ描き用に最近ちょっと試している。一定の細さの線がなめらかに繊細に描けるというのは、至極便利。
 ただマンガって線の強弱が大事だから、まあ向かないね。絵は綺麗だけど、強調とか出来ないな。」

じゅえる「つまり脆いんだな。」
まゆ子「というか、一定の太さの線が安定して引けるというのは、ボールペンが出現して用済みだわな。」
釈「あー、競合するもっと良いモノが出ちゃった、て事ですね。
 付けペンも最近は使いませんからねえ。」
じゅえる「鉄の付けペンは、マンガ以外にはなんだ、レタリングか?くらいかな。先が二つに割れたペンといえば万年筆が根強く人気だが、あれも趣味だしな。」
まゆ子「というかまあ、インク壺にペンを入れて字を書くというのは、もうどこにも実用性を見出だせないわけですよ。特に事務の現場では。」

釈「つまりタンガラムには、ボールペンが無い?」
まゆ子「ゥアムにもシンドラにも無い。ゥアムには先割れ式の付けペンみたいなものは有る。高度な万年筆は有るが、廉価な用途だと羽ペンまだ使ってるな。」
じゅえる「それは、進歩していないということか。」
まゆ子「いや、字を書くくらいの用途に鉄なんか使わなくていいだろ、という発想だ。鉛筆も有るし。」

釈「鉛筆はあるんですね。」
まゆ子「救世主弥生ちゃんがいろんな世界で作ったからね。鉛筆黒板チョークは使いまくったよ。」
じゅえる「啓蒙洗脳の道具だな。」

 

まゆ子「で、タンガラムの書字は、葉片という葉っぱの表面を棒でひっかいて黒い下地を出して文字を書く。というのが伝統的な方法だ。
 それ以外だと、木の板や布や革に筆で文字を書いていた。これはまあ普遍的な方法だな。」

じゅえる「シンドラは?」
まゆ子「あそこは、バナナの広い葉っぱを紙代わりに使ってたから、筆が王道だよ。インクの成分が独特で、撥水性のある材質にもへばりつく。」

釈「ゥアムは紙の代わりはどうしたんですか。」
まゆ子「ああ、あそこは弥生ちゃんが行く前から紙はあった。パピルスみたいなものだな。
 だからたぶん、葦ペンからの発展だな。」

釈「そこで、タンガラムでは棒で引っ掻くの延長上として、ガラスペンが発生したということですね。」
まゆ子「そいうこと。ガラス細工はタンガラムでも大昔紅曙蛸女王国時代から有る。紙が発明されたら普通に実用化だよ。」
じゅえる「そういうものなんだ。」
まゆ子「というか、字を書く道具は弥生ちゃんが居た時に頑張って考えて普及させた。鉛筆チョークに加えて筆ペンも作ってる。」
釈「ああ、軸にインクを入れた万年筆なんですね。」
まゆ子「サインペンまで考えているが、まあこれはすぐに失われた技術となり、近年になって再発明されている。

 

 で、ガラスペンだ。弥生ちゃんは、ガラスペンみたいなものも開発している。」
じゅえる「ほお、そうなんだ。」
まゆ子「というかね、弥生ちゃんは鉄を斬る能力を持つから、鉄ペンを切り込み入れて作ろうと考えたんだ。
 しかし失敗する。そんな薄い鉄を高品質に幾つも作ろう、というのがまず間違いだった。」
釈「鉄自体の利用がまだ不十分だったんですよね。」

まゆ子「で、そもそも紙が無い。発明しようとしたけど忙しいから学匠に任せて、弥生ちゃん方台退去後に完成した。
 つまり、鉄ペン作っても使いみちが無い。
 というか、使うのは葉片か革の羊皮紙みたいなもの、あるいは板を使っていたから、繊細な鉄ペンなんか引っかかって無理だったんだ。」
じゅえる「あらかじめ失敗することが予定されていたんだな。」

まゆ子「そこで弥生ちゃんは、単純に棒にインクを付けて書く、というのをやっていた。凹が一筋だけのガラスペンもどきを木の棒で作って使ってた。
 まあ木の板に字を書くのなら、筆を使った方が早いけどね。弥生ちゃん書道も凄い段持ってるし。
 ただ、あんまり細い筆が無かったんだ。小さな字を書くのに筆では無理だから、棒にインク付けて葉片に補足として書いていた。
 そんな程度だ。」

釈「その後、紙が発明されてタンガラムでも利用が進んでいき、書字を行うようになった。」

まゆ子「なったんだけどさ、あんまり早い普及はしていない。最初期の紙は高級品だったからね。
 で、公式文書を制定する際には羊皮紙か高級紙を使ったんだけど、紙の最初の使い道は、これまた弥生ちゃんが残していった活版印刷の本作りなんだ。
 木版および金属活字、どちらも使われて、本を効率的に出版する。
 これによってタンガラムに科学技術を普及させようって寸法さ。科学技術書も置き土産していったから。」

じゅえる「最初の本は模写じゃないのか?」
まゆ子「そりゃとっくに葉片でやってます。蜘蛛神殿はその為の専用施設です。
 ただ物語中で、ギィール神族イルドラ兄妹が印刷やってますけどね。」

 

釈「つまり、ガラスペンはもっとずっと後の時代に開発されたって話ですね。」
まゆ子「まあね。黒板とチョークを使っての学校教育が行われ、地面に字を書いて憶えますよ。
 葉片だって、ちゃんとした品質の高いものはそれなりのお値段しますからね。」

じゅえる「そこらへんに生えている木の葉じゃないのか?」
まゆ子「いや、必要だから植えていますが、さすがに食用にはならないからそこまで多いものでもないのさ。」
釈「はあ、葉片の木は実がならないのですね。それは嬉しくないな。」

まゆ子「そもそも葉片に字を書く棒は、木の棒か骨の棒だったんだ。
 ガラスペンは骨の棒から進化した。
 葉片を引っ掻いて字を書くのと同じものでインクを使って字を書ける。そういう具合にね。」

じゅえる「なるほど、葉片の習慣は結構長生きしたんだ。」
まゆ子「6215年現在においても、実は葉片の使用は続いています。神文誓紙ですね。」
釈「宗教的なものですか。」
じゅえる「伝統として残ってるんだな。」

まゆ子「そもそも葉片の文書は結構長持ちしますが、50年くらい経つと別の葉片に書き直して保存し直すのが通例です。
 書いて10年くらいで葉片は真っ黒になりますが、表面が傷付いているから、ちゃんと読める。
 ただ50年も経つと虫食いとか乾燥で破損とかあるから、コピーするという習慣です。

 このコピーが重要なんだな。神様の教えを間違いなく正しく伝承する為には。」

釈「不変で残る文書じゃあないのですね。」
まゆ子「そういうのが欲しければ、絹布とか羊皮紙に書く。ただこれは材料自体がめちゃ高価い。
 葉片は安いからこそ大量に使われているわけで、まあ経文の類も安価で普及に使う分には安い材料を使いますよと。」
じゅえる「50年は保つんだろ。個人的な用途では十分以上の保存性じゃないか。」

釈「しかし、50年ではさすがに歴史的文書の発掘とかは無しですねえ。」
まゆ子「そういうのは葉片の保存技術の問題で、油漬けにするとか蝋を塗るとかで表面の劣化乾燥を抑える手段を使うと、そうとう保ちますよ。
 ただめんどくさく、費用もそれなりに掛かるからやらないけれど。」
釈「そういう時は絹布とか使え、てもんですね。」

 

じゅえる「それで、現代でもボールペンは発明されていないから、ガラスペンを使ってるということだ。」

まゆ子「いやそれがさ、
 自分でもガラスペン使っていて、考えたさ。

 これ、ガラスじゃなくてもよかね? て」

釈「はあ。形状が同じなら、ガラスでなくても同じ機能になりますか。」
じゅえる「鉄や銅でもできるかな。なんだったら陶器でも」
まゆ子「ガラス細工は簡便で熟練職人も居るから、ガラスが一番楽チンなんだけどね。大量生産の世の中だし。

 でもさ、ガラスでなくてもいいや、と思うと自分でも作ろうとか考えるじゃん。
 竹削って作ってみた。」
釈「自作ペンですか。」
まゆ子「むかしにね、竹ペンてのが流行ったことがあるのさ。まあ葦ペンのたぐいなんだけどさ。
 で、自分でも竹削ってみて使ったけれど、まあ、感心しないものだな。」
じゅえる「ダメだったか。」
まゆ子「マンガ描くのには使えないな。で、でも出来はよかったから捨てずに放置していました。
 で、ガラスペンのインク溜めの凹を見て、似たような構造にすればいいんじゃないか、と試しに削り直して使ってみたら、

      普通に描けた。」
釈「普通ですか。」
まゆ子「ほんとうに普通にね。つまり、なんだっていいんだよ、材質は。」
じゅえる「なんだってその形ならいいわけなんだ。」

まゆ子「さすがに、線はガラスよりは太いんだけど、マンガ描くのに線が細すぎたのが問題だったからね。
 それに筆圧入れて押し付けても壊れる心配は無い。竹だからそうとう乱暴に扱ってもだいじょうぶ。
 ちびて来たら削り直せば何度でも同じものが使い回せる。竹だからガラスほど摩耗には強くないけれど、問題ない無い。

じゅえる「いいじゃん。」
釈「結局は、ガラスペンのインク溜めの溝が大発明だった、てことですね。」

まゆ子「というわけで私のオススメ。「異世界に来たらガラスペンをつくろう!」」

 

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