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18/12/07

まゆ子「くっちゃりぼろけっと緊急ー!
 外伝「ユミネイト船上の旅」、構成つくってえー。」

じゅえる「こないだのでは無理か。」
まゆ子「いや、アレはアレでいいけれど、小説を描くシノプシスにはなってない。」
釈「そりゃそうです。骨格決めただけですからね。」

じゅえる「あー、何がどう起こるのかのスケジュール立ててないか。それや書けないな。」
まゆ子「第五巻はとにかくまずは「ユミネイト船上の旅」を正式に突っ込む事に決めた。
 だから、これ大事。」
釈「そうですか、そういう構成になりますか。」

 

まゆ子「というわけで考えてるが、ここで一つ要素が増えた。

 ユミネイト、あいつ魔法を使う。」
じゅえる「何故?」
釈「ゥアム神族って魔法使いですか?」
まゆ子「いや、でもゥアム帝国ってさ、アステカ系近代科学文明国家でしょお、血なまぐさいネーミングがばんばん出て来る。
 そういう国のお姫さんが、ただの賢いお利口さんなお嬢さんだとキャラが立たないじゃん。」

じゅえる「そこで魔法か。たしかにキャラ立てするのに不足するな。」
釈「しかし超能力は違うでしょう。無いですよね。」
まゆ子「罰市偵はファンタジーだから超能力アリ。すでに「他人の死が見える」義眼大尉が出てる。」
じゅえる「ゥアム帝国ならではの超能力か。」
釈「そこですよね、ゥアムでないといけないんです。特色を表現するのです。」

まゆ子「で、いろいろ考えた結果、とりあえず「幻人」が脳内に侵入してくるのを防ぐくらいの魔法はアリと考えた。」
釈「基本的な教養として、「幻人」対策が有るてわけですね。」

じゅえる「でもそれは外部から見て特徴的なのか?」
まゆ子「とにかく、お祓い的なおまじないを素振りでやるのは決定している。ただこれは、今回の話に決定的に意味が有るが、その他ではまるで無力。」
釈「ですねえ。」
まゆ子「もっとビジュアルに、説得力のある、華のある魔法が欲しい。」
じゅえる「でも物理的超能力ではない? 戦闘力を高くするというのではないな?」

釈「いきなり武術が強くなるおまじない、というのは。」
じゅえる「というか、ユミネイトってめちゃ頭いいんだろ。頭が良くなる魔法とか。」
まゆ子「脳の機能を高める魔法か。うーんそれもアリではあるのだが、しかし近代合理主義というゥアムの先進性も盛り込んでもらいたい。」

じゅえる「超能力だろ?」
まゆ子「魔法です。」
釈「えーーーー、ですかあ。火が出たり雷が落ちたり、そういう物理魔法無しですよねえ。」
じゅえる「ネコと話ができる、のはゥアムネコには制限無いんだっけ。」
まゆ子「ゥアムネコは、神族とは普通に話をしますが庶民とはしません。迫害されるから。
 ただそこは、弓レアルとバッティングするから無しで。」

じゅえる「情報能力では。」
釈「すごい記憶術とか、知らない建物でも迷わず行ける能力とか、そういう知的な見せ場を作れる能力ではどうでしょう。」
まゆ子「見せ場、ねえ。」

じゅえる「ユミネイトがめちゃ頭いい、という設定は動かせないのだな?」
まゆ子「大学で超競争社会でそれなりに中くらいの成績を修めていますよ。平民上がりの天才学生達を相手にして。」
じゅえる「天才の中で中くらいか、すごいな。」
まゆ子「頑張りました。」

釈「あー、あーーー、それ。不自然ですね!」
まゆ子「ダメなの?」
釈「父親の神族からおまじないを習って、その結果大学でも引けを取らなかった。そういう魔法でどうでしょう。

 そうすればユミネイト本人はそんなにエリート風を吹かすことなく、マキアリイと同等の庶民ぽさを維持していながら、頭いいという描写が出来ます。」

 

じゅえる「そんな魔法、アリ?」

釈「たとえばですね、つまり「幻人」を防ぐ魔法はアリなんでしょ。
 だったら逆に「自分の父親のイメージを頭の中にアリアリと描き出す」魔法、とかアリじゃないですかね。」

まゆ子「ふーん、つまり知識を持つ賢明な人物の人格を脳内に生み出す技術、か。」
釈「そうすれば、父親の知識を活かして事件の解決に当たるという描写が可能です。」

じゅえる「つまり、ユミネイトは父親とテレパシーで通信しているようなものなのか。」
釈「ビジュアル的にもいいでしょ。」
まゆ子「絵的にはアリだし、便利もよさそう。」

じゅえる「だが待てよ、その脳内父親が持つ知識をユミネイトがそっくり持ち合わせているわけが無いだろ。」
釈「無いですねえ。」
じゅえる「なんとかしろ。」

まゆ子「知識の量と理解、か。人格はトレースできるにしても知識と判断力をコピーするのはなあ。」
釈「ダメですかね。」
まゆ子「いや、いいんじゃないか。

 つまりユミネイトは魔法を習って、脳内に父親をトレースする能力を獲得したんだ。
 で、その父親のおかげで難しい学問を理解する能力が異様に早くなって、勉強すればするほど染み込んでいく。
 自分の人格とは別に、父親という知識の宝庫を自分の中に組み立て上げるのに成功したんだ。

 これがゥアム神族の家族である「銀骨のカバネ」がゥアム社会を牛耳る秘訣なんだ。」
じゅえる「つまり、神族の家族であればこれは皆使える技術なんだ。」
まゆ子「いや、それでも10人に1人くらいしか成功しないと考えればいいんじゃないかな。
 この能力の獲得に成功した者のみが、神族としての試練を受ける資格を持つ。という。」

釈「そんなところでしょお。そうでなければユミネイトが最初から天才児になってしまいますよ。
 それは嫌味ですよ。」
じゅえる「だなあ。」

まゆ子「つまり、ユミネイトは時々ひとりでお父さんとお話ししているのだな。」

釈「変な絵ですねえ。」
じゅえる「ま、そのくらい変なのは許してやろう。」
まゆ子「だったらさ、突然ユミネイトが父親のように喋りだして、マキアリイに「娘をよろしく」とか言い出すんだ。」
じゅえる「ああ!」
釈「ああ、アリですね。」

まゆ子「じゃあ、その術は「顕臨の魂術」とかいう名前にしておこう。」

 

       *** 

まゆ子「というわけで、ユミネイトにはそいう一種のファザコンの属性が発生した。
 これを踏まえた上で、外伝「船上の旅」を考えてもらいたい。」

釈「結構この属性でイメージ変わりますね。」
じゅえる「描写もかなり決定的に変わるか。なるほど重要なもんだ。」

釈「一応予定としては、

 ・ユミネイト、客船一等ラウンジで、同じ神族家族の「銀骨のカバネ」の男性と談話する。
  彼は「自由の国」タンガラムにおいて、身分の低い女性と結婚するつもり。だが実家の神族家系が彼を連れ戻そうと企んでいる。という話。
  タンガラム出身のユミネイトは、彼を応援してくれる。というより、ユミネイト以外の客船乗員乗客は皆身分秩序の破壊者であるこの男女を許そうとはしない。
  ユミネイト、連れてきたというか勝手に付いてきたゥアムネコに頼んで、三等船室に身をひそめる彼女の動向を探ってもらう。

・ユミネイト、一等二等乗客が利用可能なデッキにて、怪しいタンガラムの工作員らしき男と話をする。
 彼がなにかを企んでいるのは分かるが、敵か味方か分からない。
 彼はユミネイトが、今まさに大人気絶頂の英雄探偵ヱメコフ・マキアリイの関係者だと知っている。

・ゥアムからタンガラムに向かう男女二人の刺客らしき人物を、ゥアムネコ発見してユミネイトに伝える。
 ユミネイト、タンガラム人の工作員が何者かの命を狙うのかと推察する。
 後に彼を追求している内に、真実に辿り着く。彼はとある重要人物の護衛としてこの船に乗っており、それは誰あろうユミネイト本人であった。
 ユミネイトは自分でも知らない内に、タンガラム国内政治大きな影響を与える立場になってしまっていたのだ。

・(ここでユミネイト、刺客らしき人物と、タンガラム工作員の関係を推理する)→船内で陰謀が進行中?

・恋人たちの女の方。トラブルに巻き込まれる。だが刺客らしき二人に助けてもらう。
 ネコの連絡で、ユミネイト二人を密かに会わせる段取りを整える。
 タンガラム工作員、なぜか現場に居合わせて、怪しさ抜群。

・豪華客船、ついにタンガラムとの直接無線通信海域に突入する。
 ユミネイト、恋人たちにタンガラムに連絡して、資産を実家に封印されないように移転させることを勧める。株券としてカドゥボクス社がオススメ。
 なおタンガラムからの郵便船が到着して、雑誌新聞等が読めるようになる。
 で、「潜水艦事件」10週年記念式典の記事なんかもばっちり。

・三等乗客の為に、客船では定期的に映画を上映する。
 今回は、もうすぐタンガラムに到着するということで、人気絶頂「英雄探偵マキアリイ」を上映する。
 ユミネイト、低俗の平民騙しと映画をあげつらう船長と共にこの映画を視察に来る。そして自分が映画のゥアム語翻訳に関与したと告白して、悪口を黙らせる。
 ついで、その低俗の「英雄探偵マキアリイ」映画を、ゥアム帝国でも極めて評価の高い芸術監督ボンガヌ・キレアルスが撮るとの最新情報を教えてやる。

・最新情報に基づき、ユミネイト状況分析。
 恋人たちの男に指摘され、自らが実は重要人物になってしまっている事を察知する。
 タンガラム工作員の目的を看破。暴露。彼はユミネイトにくれぐれもタンガラム政界を揺さぶらないように警告する。

・ユミネイト、タンガラムに到着。岸壁に降りる。
 その少し前に恋人たちの男の神族家族の方が上陸して、タンガラムで雇われた男たちに詰め寄られる。ゥアムの実家からの差金。
 だがタラップを降りるユミネイト、高いところから彼に、「タンガラムにおいては実家の意向や権力など個人の自由を縛るものではない。遠慮なく巡邏軍に訴えればよい」と大きな声で助言する。
 ユミネイトの傍らには、メイド姿の恋人たちの女の方が侍女として付き従う。
 男たちはあまりに貴婦人然としたユミネイトに恐れをなして退散する。

  (ここでEND)

・さてユミネイトは、タンガラムに到着して迎えを待つが、なかなか来ない。
 マキアリイ30分遅れて到着するも、ユミネイトは怒ってないという。「銀骨のカバネ」である自分が待たされるなど、ゥアムでは無いコトだ。まさにタンガラムは自由の国だなあ、と。
 怒ってる怒ってる。
  (ここから本編に突入する。)

じゅえる「尺は?」
まゆ子「15章以下10章以上。」
じゅえる「割と小さめか。」
まゆ子「外伝だから。それに、船上では実は何も起こらない。」
じゅえる「ふむ。人物紹介だけだな。」
まゆ子「今回の目的は、ゥアム帝国とはどのような国であるか、を予備知識として読者様に伝える事にあります。」

釈「これ、10章に足りませんかね? 十分いけそうな気がしますが。」
まゆ子「これバラバラのエピソード並べただけだから、その中軸を貫く視点というかラインというか、そいうのが無いんだよ。」
じゅえる「「マキアリイ故郷に帰る」での、政府工作員みたいな別の視点からすべて眺める的な、ね。」
釈「ユミネイトを三人称で描くなら、視点はネコですかね。」
まゆ子「今回はユミネイト主役だからそういう手は使わない。しかし何らかのラインがねー。」

じゅえる「映画の話、無理して出さなくてもいいんじゃないか?」
まゆ子「それはそうかもしれないけど、ユミネイトがマキアリイと関連することを強調する意味合いから、そしてゥアムに居た時でもタンガラムとの結びつきがあったと示すためにも、必須だと思うけどね。」

釈「あー!」
じゅえる「なんだい。」
釈「ユミネイトってこの後、ヒィキタイタンと結婚するんですよね。ソグヴィタル夫人になるんですよ。」
まゆ子「1年位あとだね。」
釈「であれば、ひ」
じゅえる「みなまで言うな。中軸にヒィキタイタン、つまり「潜水艦事件」の英雄というのを繋ぐか。」
まゆ子「ああ、マキアリイの名が出るのは確定しているのだから、ヒィキタイタンも出さないとね。そりゃそうだ。」

釈「この段階から、ゥアムに居た時からヒィキタイタンとは文通して二人ともに心通い合っている。そうなんですよね?」
まゆ子「恋愛関係かは別として、彼女がタンガラムとの結びつきと呼べるもので最も強いのが、ヒィキタイタンとの文通だね。
 そうか、恋人未満の関係ではあっても、ユミネイトは心躍る旅でもあるんだ。」
じゅえる「そうか、そういう心情を縦糸に、エピソードを絡ませていくとちゃんと繋がるわけだ。」

まゆ子「わかった、理解した!」

釈「ちなみに、マキアリイとの文通は?」
まゆ子「マキアリイ、首都警察局に就職後配置される先がコロコロ変わって、ついには警察局クビになってヌケミンドルでヤクザの親分に娘と結婚させられそうになり、ノゲ・ベイスラ市に逃げてきて刑事探偵やってケバルナヤに正義の道を示されるまで
 とにかく住所不定だから。」
じゅえる「手紙届かなかったのか。」
まゆ子「ヒィキタイタンとは連絡を密に取ってるから、別に心配も無かったんだけど、文通は無しね。」
釈「そういうとこですよ。マッキーさんの悪いとこは。」

 

まゆ子「ちなみにこの豪華客船、船室は
 特等室(神族専用)で今回乗船なし 一等室(神族の家族、大臣級の政府関係者) 二等室(一般および外国の富裕層、政府関係者)
 三等室(一般乗客)、四等室(低料金乗客) と明確に区分されているのだが、
 今回の船旅では四等船客は居ない。というか最低チケット料金が高価くてそういう人は乗れないのだ。
 なんとなれば、ゥアムからタンガラムまでの航海での食費他生活費を別途入金しないと乗せてくれない。食料持ち込み自炊禁止」
釈「そりゃそうでしょう。火事とか危ない。」

じゅえる「一ヶ月だっけ、船旅。」
まゆ子「ゥアムータンガラム間は1ヶ月ちょい掛かります。タンガラムーシンドラなら20日くらい。
 ゥアムーシンドラはタンガラムを経由しますから、一度タンガラムに上陸して休みますね普通。
 ゥアム帝国の船は基本東岸シンデロゲン港にしか入れないから、まず東岸で休む。
 シンドラ連合王国の船は逆に西岸ミアカプティ港にしか入れず、西岸で休む。
 でも双方に行くには反対岸のそちら行きの船に乗り換える必要があるから、南岸を船で回ってその途中イローエント港に立ち寄る許可が出る。
 でもね、一番早いのは陸地を幹線鉄道で突っ走って反対岸に行くルートで、これは外国使節とかでないと使えないな。普通一般の外国人はタンガラム内陸進入許可が出ないから。」

釈「バシャラタン法国はどう行くんです。」
まゆ子「バシャラタン方台はタンガラム方台の真南にある。距離は20日掛からない。
 でも季節によって航路が不通になるので、行ける時期が決まっているのだ。
 ゥアムシンドラから行こうと思ったら、軍艦巡洋艦は別として、まずタンガラムに来てイローエント港から出発する航路を用いる。
 一般人やバシャラタンとの交易も、イローエント港が中継基地になっていて、まあ繁盛しているわけさ。」
釈「なるほど。」
じゅえる「イローエントがいろいろ厄介な問題を抱えるわけだな。」

まゆ子「で、四等船室をどうしているかと言えば、まあ倉庫なんだけど、三等船客の中でも迷惑を掛ける者を隔離する牢屋みたいな感じで使われている。
 恋人たちの女の方は三等船客。カネを積んでも身分の差は覆らず一等にも二等にも乗れないのだ。
 しかし、三等船客の間で彼女がタンガラムに倫ならぬ結婚の為に行こうとしているとバレてしまって、船客管理者は彼女を四等船室に隔離しようとする。
 そこでユミネイト、ネコの助けも借りて活躍ですよ。」

じゅえる「そうだな。倉庫というからにはがら空きなんだろ、その四等船室。」
まゆ子「というか、そもそも部屋ごとに区分されていません。雑魚寝の平たい床面です。」
釈「ただ乗るだけですか。まあ最低料金ですからねえ。」
まゆ子「というか、この豪華客船はそもそもが四等船客を受け入れる運行がされていません。
 あくまでも緊急避難用に、避難民や漂流者を乗せたりする場合に用いられます。
 また軍用として徴発された際には兵員輸送も考慮した設計ね。」 

じゅえる「その四等にさ、居るのは刺客みたいな男女二人組のみって事にしておこうさ。
 客船側としては乗せたくはない怪しい連中だが、政府の命令書を持っているから仕方なしに一般乗客から隔離して収容している。」
まゆ子「ふむ。それは目立つな。ネコが発見するはずだ。」
釈「自然と、恋人の女とも接触する機会が発生する。それはいいですね。」

じゅえる「でも、ユミネイトは彼女をどうやって救うのだ。」
まゆ子「そりゃあ、オチを見れば分かるよ。」
じゅえる「あ、メイド扱いにするんだな。なるほど」 

 

 

2018/10/16

まゆ子「というわけで「シャヤユート最後の事件」を書いた。
 この事件の犯人ゾバーハヌは、ディオ・ブランドーをモデルとしているわけだが、本人よりよほど犯罪者としては上出来だ。」

じゅえる「というか、ディオって犯罪者としてはド素人もいいとこだろ。」
釈「ですよねー。自分の親父を毒殺しただけで、ジョースター卿の毒殺には失敗して、ジョナサンを刺殺しようとして失敗。
 あとは石仮面のチカラに頼りきりで、しかもさくっと敗北ですよ。」
まゆ子「ま、少年マンガの悪役だからね。」

 

まゆ子「で! だ。
 ディオは書いた。であれば、次は吉良吉影だろう。」

釈「事件をもう一つでっち上げるんですか?」
じゅえる「事件、足りない?」

まゆ子「いや、スケジュールを眺めている内に気が付いたんだ。
 マキアリイが「八閃鬼の追撃」を斥けて勝利し、最後「決闘罪」で投獄されて無罪放免されるまでは、彼の活躍は無いとしよう。
 それから「クワンパ最後の事件」に至るまで、若干の余裕が有り、その期間に何の事件も解決しないはずがないだろう。少なくとも3件くらいは新聞を驚かせるネタが必要だ、と。」

じゅえる「3件か。」
まゆ子「しかし、「ユミネイト事件」「英雄と皇帝事件」「八閃鬼の追撃事件」、に匹敵するような大物ではなく、もうちょっと地味な奴をね。」
釈「なるほど。で、その事件は物語として描くのですか。」
まゆ子「たぶん、小説にはならない。でも話の中で、こんな活躍をしていましたよ的には語られるべき、それなりにセンセーショナルな事件ではないだろうかね。」

じゅえる「というわけで、吉良吉影か。
 なるほど、街に長年潜みひそかに連続殺人を行い誰にも気付かれない。このくらいの悪が欲しいわけだな。」
釈「たしかに。ちょこっと出すには適当なキャラですね事件ですね。でも、どうしますか。」
じゅえる「スタンドを出すわけにはいかんし、そもそも連続殺人くらいに超越パワーは必要ないからな。常識的犯罪者でもそのくらいは出来る。」

まゆ子「ふぅむ、だがそれではさすがに面白くない。武術の達人としてのマキアリイの能力を試すような、それなりの強敵でないと困る。」
釈「分かります。「またしてもマキアリイさんがやってくれた!」的なものが必要なんですよね。」
じゅえる「しかし、スタンドは使えないぞ。魔法使いにでもするか。」
まゆ子「死体を隠すのに鍋で溶かした、くらいの魔法なら許すが、さーてどうしたものか。

 そもそも連続k殺人鬼というところを模倣するのはナシじゃないかな。」

釈「えーまあ、そこまで一緒にするとイヤですかねえ。」
じゅえる「殺人ナシか。いや、「ポアロ」さんの最後の事件「カーテン」みたいに、人をそそのかせて殺す事に悦を得るようなそういう殺人鬼でもよくないか。」
まゆ子「そういう言われ方をすると、やりたくないなあ。」
釈「あからさま過ぎますねえ。さすがにそれはいやですねえ。」

 

まゆ子「うーん、わからん。明美さんを呼びますか。」
釈「呼びますか。」

明美「またまた登場です。吉良吉影でないとダメなの? カーズとかはダメ。」
まゆ子「いや、さすがにカーズとか究極生物とかは無理だろ。」
じゅえる「いや第六期でもその後でも、なんでもいいんだけどさ、「黄金の風」から後はほとんど読んでないんだな、長すぎて。」

明美「むしろ、岸辺露伴の方が犯罪者としてよくない?」
まゆ子「ううううむうううう。」
じゅえる「あ、そっちの方が楽だな。犯罪の動機としても、展開の広さとしても上だな。」
釈「そういう考え方がありましたか。なるほど。」

 

まゆ子「明美くん、きわめて重大な枠組みを与えておこう。
 今回のこれは思考実験だ。お題は「吉良吉影をマキアリイの物語に登場させるには、どのような事件がよいか」、これを考えてもらいたい。」

明美「あ、なるほど。小説には描かないけれど、作っておこう。という話なんですね最初から。」
釈「しかし、相変わらずやばいくらい丸投げだな。」

明美「まあ普通に考えると、単なる快楽殺人だね女性を対象とした。コレクターでもある。
 でもスタンドで死体を消去する要素を排除すると、世間一般推理小説ミステリーにゴロゴロと出て来る単なる変態性欲者だよ。
 それはイヤでしょ。」
じゅえる「そりゃーインパクトだよね、吉良吉影の魅力は。」

釈「というか、吉良は少年マンガには出てこないタイプの悪役だからインパクトが有ったんですよ。
 一般推理小説としては、『羊たちの沈黙』を例にとっても、よくあるタイプですよね。」
まゆ子「まあ、そもそも犯罪者って世間に目立たないようにするものだからねえ。」

明美「と言いますかね、ディオと同じで犯罪者としてはまったくなってないんですよ、スタンド能力頼りで何も工夫が無い。
 むしろ、ドジを踏みまくるからじたばたとあがいてとんでもない事をやらかしてしまう、というのが荒木センセイの物語展開手法じゃないかな。」
まゆ子「それは認めよう。あーうん、たしかに一般推理小説のキャラとしては逆にありふれていて目立たないタイプなのかなあ。」

明美「まずはインパクトだ。インパクトが無い悪役は許せない。
 マキアリイの敵として世間で認識されるくらいにはインパクトの有る犯罪者である。これを大前提としての条件としましょう。」
じゅえる「だが、それ吉良吉影なのか?」
まゆ子「とりあえず、明美。その線で展開してみてください。」

 

明美「まず、犯罪者であるのは確かだ。むしろ有名な犯罪者である方がいいでしょう。
 さらに言うと、現在の今、マキアリイと同時代の人間であり、犯罪界のアイドル的な存在として世間に認知されている。」
釈「アイドルですか、なるほど。」
じゅえる「犯罪アイドルか。なるほど、アリだな。」
釈「投獄されている刑務所にも、世間のファンから花束が贈ってくるくらいがいいですかね。」

じゅえる「吉良と大きくかけ離れているが、まあ楽しいからアリにしよう。」

まゆ子「やはり捕まっていない方がいいな。世間を騒がせるアイドル犯罪者であるが、マキアリイが刑事探偵として活動を始める前に最後の犯罪を起こして、それ以来音沙汰無し。
 それがいきなり、世間でクローズアップされて、それらしき犯罪がまるでマキアリイを挑発するかのように発生する。」

じゅえる「悪くはない。で、捕らえてみればきわめて普通の会社員だった。とかだな。」
釈「マキアリイが逮捕して、世間の注目を浴びるというやつですね。」

明美「でもその為には、事件自体が派手にセンセーショナルでないとダメだね。
 どうする、やっぱり女性を連続殺人にした方がいい? 
 たとえばひじょうに美麗に着飾った人形のような美女の死体が、腹の中に仕込まれていた時限爆弾で発破されるとか。
 そのくらいは必要じゃないかな。」

釈「まあ、衆人環視の中で、解体不能の時限爆弾で美しく装われた美女の死体がこっぱみじん。
 これはアリかもしれませんね。アイドル化しても不思議はないと思います。」
じゅえる「インパクト的には悪くない。まあどうやって死体を運んでいくのかが問題だけど、劇場型犯罪としてはじゅうぶんじゃないかな。」
まゆ子「うーん、アイドル犯罪者としてはアリだろう。だが、どうも吉良吉影的ではないかなあ。」

明美「不可能犯罪にしたらどうかな。
 どうしてこんなところに死体が置けるのか分からない。そういう所に美女死体が忽然と出現する。」
釈「まるでスタンド能力を使ったような、ですね。」
じゅえる「バイツァダスト要素は突っ込んでいるしな。」

まゆ子「美女の死体の腹の中に時限爆弾、か。犯人は時計職人だな。」
釈「悪くない職業だと思いますよ。吉良的犯罪者としては。」

 

明美「まあ、でもさ。この程度でも小説は書けるが、この程度ではマキアリイ映画にはならないね。」
まゆ子「もう一歩の飛躍が欲しいね。」
じゅえる「うーむ、たしかにこのくらいであれば誰でも考えつく異常犯罪者か。」
釈「欲張りですねえ。」

明美「クワンパさんがその標的として狙われる、とか?」
じゅえる「それはーあまりにも王道過ぎて、却下。」
釈「アリすぎですね。」
まゆ子「マキアリイ映画としては、狙われた美女を間一髪で助けなければいけない。この事件はすでに女性が死んだ状態で見つかるから、ナシだな。

 むしろこの展開は、美少女探偵セラファン・マァムとトマトくんの担当だ。」
じゅえる「しにがみいちねんせい、の出番か」
釈「あー、マキアリイ映画は人が助からないといけませんねえ。」

明美「トマトくん再登場! ではダメ?」
まゆ子「うーーーーーん、楽しいとは思いますがね。マキアリイ映画とするなら、そこはセラファン・マァムが爆殺されかかるくらいでないと。」
じゅえる「それはダメか?」
釈「映画会社的にはアリアリですが、ダメですかねえ。」
じゅえる「トマトくんが事件の担当となって、犯人を探っていく内に姉マァムが拐われて、ヱメコフ・マキアリイが颯爽登場!
 たしかに映画としてはじゅうぶんにアリだけど、逆にナシだな。」

 

明美「じゃあいっそ、美人死体はやめにしましょう。
 冴えないおっさんが美麗な衣裳に包まれて、腹の爆弾で発破!」

まゆ子「それ、死者の人選になにか秘密有る? 裏で犯罪に手を染めていたヒトが狙われるとか。」
じゅえる「いや、そこはそれこそごくごく普通のおっさんで。」
釈「あまりアイドルっぽくなりませんね。」
明美「いや逆に、それこそがタンガラムで大受けして少女達が大注目のアイドル的犯罪ということで。」
釈「歪んでるなあ。」

まゆ子「逆にめちゃ面白くなってきたぞ。じゃあ逆に、犯人の吉良はけっこうな美男子にしよう。」
じゅえる「マキアリイが活躍前からの犯行とすれば、結構な歳じゃないかな。」
釈「30代後半ではどうでしょう。独身貴族として、結婚相手にも困らないのにひとりを貫いているダンディズム。」

明美「うん、見えた。

 吉良吉影が不可能犯罪の手口を使って、冴えないおっさん死体を美麗に飾り付けている現場を目撃したおっさんが居るのだ。
 しかしそのおっさん、不遇な人生に嫌気が差して、自分もまた一瞬の脚光を浴びる犯罪被害者になりたいとか夢想するのだ。
 で、行動がおかしくなった彼を心配して家族が、刑事探偵のマキアリイに相談して、彼が事件の唯一の目撃者と判明する。
 そこで、マキアリイとクワンパは、吉良吉影討伐に乗り出すのだ。」

じゅえる「一種の自殺願望だな。」
釈「マキアリイものぽくなってきましたが、犯人がどう絡むか。そこは難しいですね。
 犯人が顔を見られた、というのは、吉良吉影的展開でアクションを引き出す要因になります。アリですね。」

明美「そこに、おっさん爆発魔ファンの謎の腐女子が出現ですよ。」
釈「また変なものを。」
じゅえる「そいつを助けるのがマキアリイの役目だよ。」
明美「いや、そいつはクワンパの役目で、おっさんとマキアリイとのツーショットに熱く興奮するバカをぶん殴るのです。」

釈「で、逮捕された吉良吉影が、その美貌によってたちまちアイドル犯罪者の頂点を極めるのですよ。」
じゅえる「ニヒルで美貌の静かな時計職人38才。犯行の動機は、市井に埋もれる冴えない男性に一瞬の美を与えるという美学に基づく犯罪。」
釈「そりゃーアイドル的大人気爆発ですね。」
明美「マキアリイ映画の悪役として、実にふさわしい映画映えするキャラですよ。映画化けってい!」

まゆ子「あー、まあ15章くらいで納まってくれそうな事件でいいかな。」

明美「この事件のタイトルは『”綺羅星おじさん”連続殺人爆破事件』!」

 (この「吉良吉影」の超能力は闇夜の視力。まったく灯りの無い所でも光に過敏過ぎる網膜の力で自由に作業出来る。
  ただ逆に、昼間は太陽光線が眩しくて、視力を弱める目薬を使い、外出時にはサングラスを必要とする。瞳は銀色!
  成人男性を運ぶ怪力は、実はひそかに鍛え上げた鋼のボディの筋力による。
  美中年でダンディ、しかも隠れマッチョという、まさに少女たちの憧れのアイドル犯罪者)

 (なぜ今回、暗闇で作業する彼がただのおっさんに目撃されてしまったか?
   装飾に新基軸として、電飾を取り入れて通電試験をしてみたところを見られてしまったのだ。痛恨)

 (ちなみにタンガラムにおいては、鳩時計ならぬ腹時計というのが商品化されて普及している。
   つまりは、動物の腹のところに文字盤がある置き時計・柱時計で、口の部分から声が出て時刻を知らせる。) 

 

     *****

釈「で、あと2件ですか。
 1件は東岸にしましょう。まだ行ってないですからね、小説中では。」
まゆ子「なるほど、それは行かないとダメだな。トマトくんはこの事件にしよう。」
じゅえる「なんかネタ有る?」
まゆ子「時期的には、ヒィキタイタンとユミネイトが結婚する直前かなあ。

 ゥアム帝国の大使館は東岸にあるから、こちらでユミネイトが何かをするのにマキアリイが付き合わされた。そういう展開ではどうだろう。」
釈「セラファン・マァムが武術大会に出るのを観に行ってもいいですよ。
 なにせマキアリイさんは天下無双の武術の達人ですから。」

 

じゅえる「3件目は、西岸も行ってないぞ。」
まゆ子「西岸は、シャヤユートが絡む国際交流都市大爆発の舞台だよ。それ関連で行きますかね。」
明美「百島湾て海域があるんだよね。島に閉じ込められるクローズドサークルでは。」
釈「悪くないですねえ。いかにも推理小説ですよ。」

まゆ子「だがそんな孤島に、マキアリイ達は何故行く?」
釈「それこそ普段のお仕事で、裁判の証拠固めの為に関係者を訪ねていったら、とんでもない島だった。でいいんじゃないですか。」
じゅえる「おう! その孤島の事件を解決したら、裁判を有利にする重大な証拠が発見。あるいは犯人はその事件の犯人だった。でいいんじゃね。」
まゆ子「やりようはなんぼでも有るか。」

明美「水も食べ物も無い島に一週間置き去り、はどうですか。クワンパさんと親密になるいいチャンスですよ。」
じゅえる「ふむ。」
釈「ふむ。クワンパさんに恋心を抱かせる絶好の環境というわけですね。アリですねアリアリ。」

 

 まゆ子風呂場で考えた。

(この事件、孤島におびき出されたマキアリイとクワンパが灯台から狙撃を受ける。
 だがマキアリイの反射神経であれば、或る程度の距離からの狙撃でも反応して避ける事が出来る。
 それを見越した狙撃者は、じっと身を潜め数日を島が無人だと思わせた後に、マキアリイとクワンパを同時に一撃で倒すという「二股王手(王手飛車取り)」を掛けてきた。

 マキアリイが避けるとクワンパに当たる。どちらかが必ず銃弾に当たってしまうタイミング。
 マキアリイ瞬時に判断した結果、自分は避けてクワンパを銃弾に晒してしまう。そうでなければ、もし銃弾が貫通した場合クワンパも傷付くし、自分が殺られたらクワンパは為す術も無く殺られるのが決まっている。
 選択肢は他に無いのだが、映画の「マキアリイ」なら絶対にやらない行為だ。

 クワンパの肩に銃弾は当たり、貫通銃創。もちろんマキアリイは応急措置の心得が有る。
 手早く処置をするが、感染症を防ぐ抗生薬剤は灯台の基部「灯台守の家」に有る。法律で決まっているから有る。
 で、狙撃兵が待ち構える中をマキアリイ敢然と挑戦して、犯人逮捕と薬剤入手を行うわけだ。だがその間クワンパは一人置き去りに。

 しかしマキアリイ、約束どおりに半刻で犯人逮捕。帰ってきた直後にクワンパの銃創を縫合する簡易手術を行う。
 ウゴータ・ガロータ医学部副教授直伝の野戦病院療法で、マキアリイ手術に成功。だがクワンパ、手術中よりもその後の麻酔が切れた後の方が痛い。
 しかし海は荒れ、数日を島に閉じこもって過ごさねばならない。もちろん犯人は地下室に放り込んでいる。
 さて二人の運命やいかに。)

(つまり孤島に行く時はふつうに船を借りて行くのだが、二人を置いて去っていく。
 その後電話も無線通信機も壊れている事に気付き、連絡の手段としては灯台の灯りを使った合図しか無いと理解する。
 だが天気予報のとおりに天候が崩れて船の行き来が出来なくなり、島に留まるのを余儀なくされる。

 島にある建物は灯台と、船着場近くの小屋が1軒有るのみ。マキアリイ達は船着場の方に宿泊する。というか灯台の基部にある灯台守の家は固く鍵が掛かっていて入れない。
 いや入るのは出来るが無理をして壊さなくても小屋で間に合うからやめておく。
 ちなみに灯台守は居ない。と思う。

 おそらくはマキアリイ達が来た船に乗って本土に帰ってしまったと推察する。
 船主はいいひとそうだったから、灯台守に脅されて無理やり発進したのだろう。あらかじめマキアリイ達をおびき寄せ隔離する算段だと理解する。
 つまりこの島にはマキアリイとクワンパのみ。

 と思われたのであるが、不用意に小屋の外で薪割りなどをしているところを灯台の上から狙撃される。

 ちなみにマキアリイはどうやって狙撃兵の目をかいくぐって灯台に接近したかというと、そもそもが「ヤキュ」においては盗塁の技術は必須。
 真っ昼間衆人環視の中、人の目を欺いて塁を盗むなど朝飯前なのだ。タンガラムにおけるNinjaの源流ですらある。) 

(犯人の狙撃犯自体は簡単に掴まえたのだが、小屋の地下室に縛って放り込んでおいたところ、なんか天候不良で凄まじい暴風が吹いて爆弾低気圧ということで、小屋がふっ飛ばされそうになるのだ。
 マキアリイはクワンパを灯台守の頑丈な小屋に嵐の中写すが、犯人は食料してゲルタと水だけを与えて放って置く。というか、地下室なら安心だろうという目論見。
 だが、上に人が居なくなって逃げない犯罪者なんか居るわけが無く、ゲルタの角で縄を切って嵐の中脱出するが、その後行方不明。
 どうやらふっ飛ばされて終了したようだ。)

(孤島から救出後、クワンパは西岸のミアカプティ市の病院に1週間入院。その後ノゲ・ベイスラ市に戻って自宅療養2週間計1ヶ月お休みとなる。
 なおしばらくの間肩から腕を吊っていた。(肩を撃たれたから、別の方の肩で腕の重みを肩代わり)
 その為、ヒィキタイタンとユミネイトの結婚式に参列した時でも痛々しい姿となる。
 逆に参列者、テレビを見ていた人やら新聞報道で知った人は、「クワンパさん偉い」という感想になる。)

 

 

(「美少女探偵セラファン・マァム事件」考えた。

 東岸にユミネイトのお供をさせられたマキアリイとクワンパ。たまたま東岸で無制限格闘競技大会があり、セラファン・マァムが出場しているのを知り、応援に行く。
 当然に、武術の達人マキアリイさんが来た!と会場は騒然。マスコミの取材も殺到する。
 そんな中セラファン・マァムと弟のトマトくんは、マキアリイ達と一緒にお昼ご飯を食べる。彼女は午前中に行われた女子年少の部であっさりと優勝を果たしていた。

 特に成人男性の出場者達、それも相当腕に覚えのある猛者達は、マキアリイと手合わせしたくてしょうがないが、しかしマキアリイ別に試合に出場したわけではない。
 せっかくなのに残念だなあ、と思っていたら、何処かのバカがいきなりマキアリイの所に押し掛けて手合わせを強硬に申し入れる。
 会場取材のマスコミも、観衆もやたらと煽って、乗せられやすい愚かな所長はついに試合会場の真ん中に引っ張り出されてエキシビジョン的に戦わせられてしまう。

 ところがその不躾な奴、試合で見せるよりも遥かに強力な攻撃を繰り出して、しかもクリティカルでマキアリイを本気で殺しに来る。
 やむなくのしてやったが、そしてそれ自体は簡単であったが、彼は失神間違いなしのダメージでもゾンビのように起き上がり何度でも挑戦する。
 これはちょっと変だと思ったマキアリイ。絞め落としてさすがにおしまいにする。

 だが、やはり目の色が変わった選手たちが次から次に、まあ口から身も蓋もない個人の欲求をわめきたてながら、マキアリイに順番に挑戦する。
 しかも最初の男と同様にゾンビ的不死身。やむなくマキアリイは胸の点穴を突いて、めちゃくちゃ痛くしてやった。さすがにこれは効いて、選手七転八倒に苦しんで、それでも死にはしないがリタイアだ。
 次から次に遅い来る選手たち。これはどう見ても異常事態。

 名探偵トマトくんが立ち上がり、選手たちに何が起きたのかを調べ始め、選手の一部それも優勝候補達にのみ配られた仕出し弁当に注目する。
 これはマキアリイのところにも特別に届けられたのだが、優勝のご褒美にセラファン・マァムが食べてしまった……。
 ゆらりと立ち上がるマァム。彼女が戦おうとする相手は、クワンパだ。
 「わたしが勝ったら、マキアリイ事務所の事務員の座はもらった!」などと間抜けな欲望を叫びながら殴り掛かる。クワンパ、カニ巫女棒で応戦。

 マキアリイ、ようやくこの異常事態がミンドレア県ユージェン村で起きた怪事件の際に登場した「人体強化薬」の仕業だと気がつく。
 ほんの微量の薬液の蒸気を嗅ぐだけで、筋肉が膨れ上がり怪力を発するのであるが、さらにまずいことに「倫理観による欲望の抑制が外れる」効果を持っていた。
 つまり彼等は、心の奥底に秘める欲求に突き動かされて、マキアリイを襲い来るのだ。
 中には「マキアリイ好きじゃああ」などと叫ぶむさ苦しい大男まで居る。
 というかむくつけき女子選手も「結婚してくれええ」などと叫びながら襲い来る。

 一方トマトくんとユミネイト、弁当に薬液を仕込んだ黒幕を追求して、追い詰める。しかし、解毒剤は無しと聞く。
 ちなみにこの薬剤、鼻で蒸気を吸い込むことで効くのだが、弁当のフタに臭いを仕込んでありさすがに極めて微量しか用いていないので、驚くほどの怪力にはならなかった。
 おおむね興奮剤と精神を鈍化させる程度の機能である。
 マキアリイ、数時間を戦い続けてついに完全勝利。まあ半分くらいは、選手同士がそれぞれの遺恨で潰し合ってくれたのだが。
 そしてようやく薬液の効果が消え、事件は終息する。
 犯人は、さすがに小学一年生には逮捕できずに取り逃がしてしまった。

 この事件は後に「マキアリイ大暴闘事件」として世に知られることとなる。
 なお小説化する際にはこの話、実況中継のアナウンサーと解説者コテツさんとの掛け合いが中心となる)

 

 

2018/10/08 

まゆ子「「シャヤユート最後の事件」できたー前半。」

じゅえる「遅い!」
釈「月刊ならまだいいですけど、1ヶ月半はさすがに許せませんよ。」
まゆ子「だってー、お絵かきと小説書きは時間を排他的に使用するからさあ。どっちかをやるとどっちかがおやすみなんだよ。
 正直に言うと、ここんところずっとお絵かきおやすみだったからその帳尻合わせさ。
 というか、「でぽでぽ」の扉絵描いてるんだよ。」

釈「次は早くしてください。」
まゆ子「へい。でもさあ、「まきありいの歌」も一生懸命考えたんだよ……」
釈「しゃあああああああ」

 

まゆ子「さて。
 私は考えた。「ユミネイトの外伝は押さえた。では次は、シャヤユートだろう」」 

釈「シャヤユート外伝ですか!」
じゅえる「ほお。だが「シャヤユート最後の事件」自体が外伝だ。どう違うものを書くのだ。」
まゆ子「そこさ。まるっきり違うものを書かねばならない。
 となれば、最も巨大な要素である「ヱメコフ・マキアリイ」を排除せねばならないだろう。」

釈「たしかに今現在はカニ巫女事務員を離れていますから、単独での活躍になるのは必然ですが、」
まゆ子「そうじゃない。シャヤユートがカニ巫女になる前の話、カニ巫女になろうとする話だ。」
じゅえる「前日談か。」
釈「なるほど、そこはまるっきり違う、素のシャヤユートですね。というか、名前からして違う。」

 

じゅえる「あいつ、本名は何て言うんだ。というか、どういう奴だ。」
まゆ子「カニ巫女「シャヤユート」本名は、      まだ決めてない。」
釈「……ですよねー。」

まゆ子「だから今決める。「ツァィパラ・クリロャウ」てはどうだ。」
じゅえる「相変わらずのわけわからない命名規則だな。」
釈「呼びにくくありませんか、「クリロャウ」は。愛称はなんてなります。」
まゆ子「クロリンだな。」
じゅえる「ひっくり返るのか?」
まゆ子「だめ?」
じゅえる「いやまて、それなら、「クロリャウ」にしろ。」
釈「そっちの方が自然ですからね。」

まゆ子「というわけで、カニ巫女「シャヤユート」は本名「ツァィパラ・クロリャウ」となりました。」

 

釈「で、どういう話になりますか。」
まゆ子「これまでシャヤユートについて何も語っていなかったかな?

 あいつ、とんでもない優等生だったんだよ。」
じゅえる「そりゃ只者ではないことは知ってたけど、学校の成績も優秀だったんだ。」
まゆ子「女子学校、つまり女子高校の出身である。というか、中退だ。
 で、一年生で入学した途端に校内で大人気となり、二年生飛び越して秋には生徒会長になる。
 二年生になったら学校やめて、カニ神殿入りしてしまうわけだ。」

釈「ここになにかの物語があった。そういう外伝ですね?」
まゆ子「考えてくれ。」
釈「相変わらずの丸投げですか。」

まゆ子「でもない。結末は考えてある。

 つまりだね、シャヤユートは生徒会長としてなにか重大な事件を解決するのだよ。
 しかし、その代償として彼女本人が退学する事となる。もちろん彼女には何の責任も無いのだが、人を裁くにはそれ相応の等価なものが必要だと考える。
 つまりは、彼女が解決した事件というのはそれだけ重大なものだということだね。」

じゅえる「学校としては、彼女に責任を負わせる必要があったわけだ?」
まゆ子「うーん、どちらかと言うとシャヤユート本人がそれを良しとせず、ヒトを切るには自分も切られるべきだと。そう堅い信念をもっていた。
 そんな感じだな。」
釈「極めて強い倫理観があった、ということですね。」
まゆ子「生まれながらにカニ巫女になるしか道が無い、と言われた女です。」

じゅえる「それで、学校をやめる所がオチだな。」
まゆ子「もうちょっと先。ケバルナヤが丁度マキアリイから離れて、カニ神殿に戻ってきたところで、
 カニ巫女見習いのシャヤユート達に、今話題のカニ巫女が質問に答える的な場面があったと思いなせえ。
 で、シャヤユートがケバルナヤに「慈悲」とは、「正義」とは、と尋ねる。ケバルナヤ答えて、シャヤユート深く考える。
 で終わり。」

じゅえる「ふむ、今後に繋がる展開に、というやつだな。」
釈「ケバルナヤはなんて答えるんです。」
まゆ子「そこも考えた。
 シャヤユートが尋ねるに、「慈悲とは?」「躊躇わない事です」、「正義とは?」「自然(じねん)の理です」。
 これだけだな。二人の会話は。」
釈「まためんどくさい禅問答を。」

 

まゆ子「というわけさ。
 美少女達にモテモテの生徒会長さまが解決すべき事件を考えておくれ!」

釈「こういう時は素直に明美先生をお呼びしましょう。」
明美「来た。妊娠していい?」
まゆ子「ダメっ! 絶対!」

じゅえる「女子校で妊娠騒動とか、誰でも考えつく事件だからな。陳腐だわな。」
釈「じゃあ、恋愛関係もダメですか?」
まゆ子「うーん、そこは校則的にはダメなんだけどね。」

明美「じゃあさ、いじめで自殺とか、もっと単純に犯罪に巻き込まれて犠牲者が、てのもダメかい。」
まゆ子「ダメだね。」
じゅえる「そもそも犯罪を出す気有るのか?」
まゆ子「うううーん、無いかなー。」
じゅえる「だそうだよ、明美さんや。」

明美「なるほどね、それじゃあほとんど問題ではない行為だね。」
まゆ子「いや、ヒト一人が学校を辞めるに値する大げさな問題であって欲しい。」
釈「むちゃを言うなあ。」

明美「教師を悪にしていい?」
まゆ子「あまりうれしくない。出来れば避けて。」
明美「教師の隠された過去や秘密が暴露されて、学校を追放される。これも無し?」
まゆ子「うーん、差別的なところが絡んでくるのは無しで。」

じゅえる「なんだよ、ほとんど全身縛られて戦え的なもんじゃないか。」
釈「どうすればいいって話ですか。」
明美「生徒の両親とか家族の秘密や素行なんかも無し?」
まゆ子「無し。」
じゅえる「こいつ、ぶっ叩いた方がよくないか。」

 

明美「だいたい分かった。裏切りだね。」
まゆ子「うーーーーーん、具体的には?」
明美「生徒は誰ひとりとして気付いていない。にも関わらず、長年に渡って不正な行為が行われてきたものを、或る一人の生徒が違和感を覚えて、生徒会長シャヤユートに相談する。
 調べてみたところ、実は。」

まゆ子「よく分からないけれど、そういう展開!」
じゅえる「いや、それ何が何だかわからないぞ。」
釈「やっぱり教師が悪じゃないんですか、その展開?」

明美「ぶち殺そう!」
じゅえる「いやだから、それ禁止だってば。」

明美「かってこの学校で死んだ、生徒でも教師でも父兄でもいい、とにかく何年何十年も昔にそいう話が有ったのです。
 その真相を、現在になって掘り起こしてしまったのがシャヤユート。
 その事によって、誰かがなにかとんでもない迷惑を被る。しかし、それは正当な裁き。

 どだ!」

まゆ子「死体を発掘、とかは無しだよ!」
明美「分かってるわかってる。死体は出ない、もしくはとっくの昔に埋葬済み。いや、ここで死んだのですら無い、て感じで。」
じゅえる「え、それってどういう状況だ。」
釈「ここじゃないって、どこで死ぬんですか。そもそも誰が。」

明美「そうだなー、学校を訪ねてきた有名人が、ここで死ぬ原因をもらって、どこか他所で死ぬ。」
じゅえる「毒か!」
まゆ子「うーん、悪くない。悪くないぞ、誰も気付かずに素敵なものとして贈ったものが、実は科学的には解析されない毒の効果を持っていた。
 そんな感じか。」

明美「まあ、女子校が舞台であれば、それもアリかな。わたしとしてはもうちょっとスペクタクルな方がいいんだけど。」
釈「めまいがして運転を誤って事故死、とか?」
明美「列車から落ちて死んだ、とかでもいい。でも、もうちょっと芸術的な死に方をしてくれた方がいいかなあ。」

 

釈「しかし、それをどこで裏切りに絡めるか。」
じゅえる「いや、その毒を教えた人物がちゃんと効能を知っていて、生徒を利用した殺人を行った。」
まゆ子「悪くない、極めて悪くないが、殺人はどうだろう…? いや悪くないんだけどね。」

明美「死なない方がいいのか。うーん、
 流産はどう?」

まゆ子「流産……、生徒にもらった何かで、妊婦が流産というシナリオか。」
じゅえる「そいつはやばい罠だな。」

 

まゆ子「見えた!

 つまり、かってこの学校を訪れた有名人の女性が妊娠中であったのだが、その時生徒からもらったなにかによって流産を余儀なくされてしまうが、それは誰にも理由が分からない。
 しかし、この学校の教師とか校長とかは、当時なにかでその真実に突き当り、以後本校の生徒はその事をするのが禁止されてしまう。
 なぜ他の学校では、あるいは一般社会においては普通に出来ることが校則で禁止されているのか、不審に思った生徒の一人が生徒会長シャヤユートに質問。
 校則の根拠を求めて活動を始めたシャヤユートは、やがて隠された陰謀、生徒を欺いた許しがたい背信を暴き出す。

 これでどうだ!」
じゅえる「悪くはない。だが具体的にはなんだ?」
釈「花や植物にしますか、お菓子とかにしますか。それとももっと別の行為?」

明美「或る特定のお菓子を食べてはいけない。という理不尽な校則では?」
まゆ子「ううううううううんんんんん、採用。するか、な。」

釈「チョコ食べてはいけないというのではどうでしょう。」
じゅえる「なぜチョコ。というか、チョコ有るのこの世界。」
まゆ子「有る。というか、ゥアム帝国でしか取れない。」

釈「チョコ、というかカカオがですね、この時期タンガラムに輸入され始めてお菓子として珍重されていたんですよ。
 まあゥアムには砂糖が無いから、タンガラムの砂糖と合体して完成した素敵お菓子ですね。

 だが、このチョコには色々な薬効が有って、その一つに特定の花のエキスと結合して妊婦の毒となる、というのが有ったわけですよ。
 しかしそんな話はゥアムでもほとんど知られておらず、ましてやタンガラムにおいては誰も知らない。当時はですね。

 で、ゥアム文学に通じた教師、か誰か、が小説や詩の一文にそういう下りがあるのを読んで、生徒にそっと囁くわけですよ。
 チョコのお菓子のフレーバーに、なんとかの花を使いましょう、て。」

じゅえる「     悪だな。」
まゆ子「まさに背信だな。」
明美「でも、そいつまだ生きてるの? というか、何年前の話?」
まゆ子「ざっと50年だな。」

釈「ふむふむ、
 そうだ、蜂蜜にしましょう。特定の花から取った蜂蜜をチョコと合わせると、流産の効果が有る。」
じゅえる「いかにもな、ファンタジーだな。」
まゆ子「ファンタジーだからな、そのくらいふわふわとしたメルヘンチックな陰謀は要求される。」
明美「その花はゥアムでは珍しくないが、タンガラムには当時ほとんど無かった事にしよう。」
じゅえる「蜂蜜、はさすがにめんどくさい。花の蜜を直接絞り出して使うというのでは。」
釈「そちらの方が絵的には綺麗ですね。」

まゆ子「つまりアレだよ。ゥアムにはタンガラムとの国交が成立するまで砂糖が無かったんだ。
 だから甘い物といえば蜂蜜で、チョコ菓子にも蜂蜜を入れていたけれど、特定の蜂蜜は毒になると知られていたんだな。」

明美「でも、ゥアム帝国の小説にその記述が有るとして、その教師はよく分かったね?」
まゆ子「そこはさ、シェークスピアの戯曲に書かれているということで、ゥアム文学研究者なら確実に分かるという。

 だから、その教師が学校を離れた後でも、別の教師がチョコの危険性に気が付いた。
 そして、有名人流産事件の真相がその時に発覚して、校長は驚いて校則に「花の香りのするチョコ禁止」条項を追加した、と。」
釈「生徒の間に、「花の蜜を使ったチョコ菓子」のレシピが伝わっていたわけですね。
 だから校則を作ってまで禁止する必要があった。」

じゅえる「ゥアム帝国にシェークスピアが居るんだ。」
釈「そこは、シェ=クス=ピアというお名前です。」
明美「うんうん。」

じゅえる「つまりその犯人の教師は、ゥアム文学シェークスピア研究でタンガラムの大学教授にまでなった女性なのだな。すごく名誉有る尊敬される人物なんだ。

 でも、なんでそんな毒殺まがいの事をやらかしたんだ? 無知ゆえか。」
釈「流産させられた人物というのは有名人ですよね。その当時からその教師と知り合いだったのですか?」
まゆ子「えーと、明美?」

明美「男性つまり夫の方が有名人、ヒィキタイタンさまのような色男で、その妻もまた大人気。という線では。」
釈「ああ、ヒィキタイタンさまの妻ですか。それならば、面識が無くてもぶっ殺したくもなりますねえ。」
じゅえる「熱狂的信者だった、ということか。それは問答無用の動機になるな。」
明美「学校を訪問するのは、千載一遇の好機だったわけですよ。」

 

まゆ子「で、オチだ。
 シャヤユートが校長と一緒にその犯人のすでに老人となった名誉教授みたいな人の所に行って追求する。
 で?」

釈「すでに老人ですからねえ、裁きというわけにも。」
じゅえる「もちろん警察沙汰にするには遠すぎて時効だな。でもマスコミに真相発表というわけにもいかない。」
まゆ子「それはシャヤユートの気質では無いな。」

明美「その犯人の名誉教授、犯行を認めるのかな。」
まゆ子「どうだろう。いいようにはぐらかすだけ、て感じじゃないかな。
 それとも、シャヤユートは追い込みを掛けますか。」
釈「カニ巫女になった後であればそれもアリですが、生徒会長さまだとどうですかねえ。未熟な女子高生であればアリとしますかねえ。」

じゅえる「校長てのは何歳くらいだ。」
まゆ子「タンガラム社会において、定年退職は55才。校長はもうちょっと長くて60才まで、かな。
 この女子校だと、校長50才くらいでいいでしょう。

 対して、犯人の名誉教授は、なにせ50年前に教職に就いていたのだから、新任教師としても20才よりも上、22才くらいかな。
 だとすれば、72才だ。」
釈「老け込むにはちょっと若い?」
まゆ子「老けてても構わないが、その場合は病気で、よほど慎重な対応が必要じゃないかな。」

明美「そのひと、結婚してる? 家族は。」
まゆ子「未婚でもいいぞ。家族あり孫も居る、という事にしてもよい。」
じゅえる「孫にしよう。それも、シャヤユートと幾つも違わない学齢期の少女だ。その女子校に入学するような。」
釈「ああ。来年度その女子校にもう入学が決まっている、とかだと良いですね。
 それで校長と生徒会長の訪問を快く受け入れた。」

明美「つまり、シャヤユートは表立っては何の糾弾もしなかった。ただ、静かに旧悪を暴いた。それだけの展開だね。」
じゅえる「その少女とも訪問で会って、たちまちシャヤユートの魅力にめろめろになる。くらいでいいぞ。
 その彼女を傷つける事は、シャヤユートには出来ない。」

釈「このような結末ではどうでしょう。

 シャヤユートと校長が訪問したその日。
 自宅の庭に植えられた「シェークスピア」関連のゥアム植物を、にわかに見たくなったって孫の少女と共に巡り、色々と教えていく。
 その中には最も有名な毒としてジギタリスがあって、心臓が止まるとも。
 その夜、名誉教授は、元々弱かった心臓が麻痺して亡くなってしまう。

 自殺なのか病死なのか、誰にもわからない。」
じゅえる「で、生徒会長シャヤユートと校長は再びその家を、今度はお葬式に訪れる事となる。
 で、」

まゆ子「で。シャヤユートは人を裁く事の難しさを知り、自らの責任として学校を辞めるのを決意する。」

明美「出来ましたね!」

 

 

18/09/14

まゆ子「やたー、やっと『南海の英雄ヒィキタイタンとマキアリイ 潜水艦事件完全録』第一稿できたー。」

釈「おめでとうございまーす」
まゆ子「やたー、これでようやく「シャヤユート最後の事件」仕上げ出来るう。」

じゅえる「で、出来はどうなんだ。」
まゆ子「35章全編これアクション、とにかくアクションです。きつかった!」
釈「本編マキアリイさんて動かないですからねえ。」
じゅえる「怠惰が売り物の国家英雄さんだ。」

まゆ子「とにかく、出来たからできた。後はみかん男爵の講釈だけだ。めっちゃ書くぞ」
じゅえる「なんだそれ。」
釈「この『南海の英雄』はみかん男爵が映画館に見に行く事になっていて、彼女の視点から描かれるのです。
 当然彼女はマキアリイ映画に対して一家言が山のようにある。」
じゅえる「ああ、   うんご苦労さん。」

まゆ子「よーしやたー。これで「ユミネイト、船上の旅」が書けるう。」

釈「ちょっとまて。」
じゅえる「そこは前のやつ上げてからだ。」

 

18/08/29

まゆ子「くっちゃりぼろけっとー。さて私現在ひじょうにおおきなピンチに陥っているのです。」

釈「ほおほお。」
じゅえる「なんだ、なにか問題か。」

まゆ子「文章がうまくなった。」
釈「おめでとうございます。」
じゅえる「いんでないかい。」
まゆ子「文章がうまくなって、短く簡潔になって、分かり易く読み易くなった。文章の意味がすぱっと心に入ってくるようになった。」
釈「それはまた素晴らしい進歩ですね。」
まゆ子「ついでに、センテンスが短くなったから書く方も早くなるし、読みやすいから推敲もし易くなって、高速化が可能となった。」
じゅえる「おお、道理でなんかさくさくと出来てるなというわけか。」

 

まゆ子「であるからして、これまでに書いた文章をこの新文体に合わせて改稿しなくてはならなくなったさ……。」

釈「あーーーーーー、それはダメだ。」
じゅえる「どこ、どこをどうやって。」

まゆ子「まず分析するに「罰市偵」では、第二巻の「或る閑日」からは新文体に近い形で書いていることが判明した。
 つまりそれ以前「南海豪華特急替え玉殺人紀行犯人は義兄」まではやり直すべきである。というか、「闇御前裁判」その3はやった。」

釈「それ以後は大丈夫なのですか?」
まゆ子「第四巻は最初からこの新文体対応だ。
 第三巻は、分析してみるに、だいたいそのラインで簡潔に書かれている。ちょこちょこと直せばそのままイケると判断した。」
じゅえる「不幸中の幸い、てとこか。」

まゆ子「でもね、せっかく書き直した「げばると処女」EP1だよ、あれ第六話くらいまで対応してないんだな。インターバル長いから」
釈「頭痛いですねえ。」

 

じゅえる「「ゲキロボ☆彡」は?」
まゆ子「読み返すと、こいつは意外といけてる。というか、そもそもがバカな話を書いていたから複雑な文体を使用していないんだ。
 無理があるのは「オーラシフターVS狼男」のとこだな、あそこは無理して尺を詰めて突っ込んだから、改稿対象だ。

 でもね、読み返してみた結果だね、まあ全編大体いいんだよ。
 ただ問題が、確実に修正しなければならない箇所が判明した。」
釈「それは、」
まゆ子「優ちゃんだ。第一巻の物辺優子はキャラづくり失敗してる。というか失敗するように書いている。
 当たり前だ、私アレ書くまで痴女なんて書いたこと無い。」

じゅえる「あー、だねー。」
釈「痴女なんて文章で表現するものではありませんからねえ。」

まゆ子「というわけさ。無理して痴女にしているから、ほとんどマンガ的なバカ女になってるんだ。戯画化されたステロタイプ痴女でしかない。
 その後キャラの性格を掴んで、しっかりとキャラ作りに励んだ結果、優ちゃんは痴女を通り越して素敵なお父さん恋しい女子高生痴女になったわけだが、」
じゅえる「ものは言いよう。」
釈「優ちゃんは素敵になりましたが、今ならばそれを第一巻冒頭に反映できるわけですね。」
まゆ子「やる、やらねばなるまい。というか、やろう。」

 

           *** 

まゆ子「ところでさ、「罰市偵」は外来語禁止で書いてるんだけど、どうしても置き換えが出来ない単語があって、
 「ガス」なんか無理だったんだよね。」

釈「ガスは、気体と言ってしまうとなんか違いますからね。」
じゅえる「英語で気体はガスだからね、日本語で気体と書いてなにもおかしくはないんだけど、なんか違うんだよね。」
まゆ子「瓦斯、と昔の偉い人も諦めるくらいに難物です。
 では、なんでこれダメなんだろう? というところから考え直してみました。」
釈「ふむ。」
まゆ子「日本語でガスという単語をどのように使っているかを分析した結果、どうも
 「人間が操作を行う特定の気体、また別して識別しなければならないと認識した特定の気体のことをガスと呼ぶ」らしいです。」

じゅえる「……人間原理?」
釈「いやそれちょっと違う使い方ですが、ガスってそういう単語ですか。」
まゆ子「興味の対象となった気体、の事をガスと呼ぶ。それでいいと思うぞ。少なくとも日本語内では破綻しないと思う。」

じゅえる「う、む。なんだろうこの物理学的にはえらく扱い難い概念は。」
釈「まさに概念なんですねえ。」

まゆ子「で、これにふさわしい漢字を探すと、どうも「息」ではないだろうかね。」

じゅえる「いやまて、そこはちょっと賛同しかねる。」
釈「さすがに「息」は生物の呼吸に関連するものと限定すべきではないですか。」
まゆ子「でもさ、呼吸の吐息ってさ、空気とどこらへんで弁別すべきだと思う?」
釈「え?」

じゅえる「吐息はさすがに酸素が減って二酸化炭素が増えてるという特徴があるけど、生体から外に出た途端に外気と混ざって識別不能になる。」
釈「吸気に関しては、生体内に取り込まれただけの空気ですからね。」

まゆ子「そもそもね、人間普通に生きて体調に問題なければ呼吸にだって気が付かないものさ。
 ましてや出入りする息なんて気にも止めない。でも一度気になればそれは「息」と呼ばれる存在になる。」

じゅえる「うーん、そこがガスと似た概念というのだな。」
まゆ子「なにせ「自」分の「心」と書いて「息」なのです。意識しなければ存在しない。」
釈「理屈は分かりました、論理の正当性も分かります。でもーさすがに「ガス」の置き換えに「息」は無理でしょう。」
まゆ子「うーん、まあ「息気」とかにしてしまうしかないかねえ。」
釈「ですねえ。」
じゅえる「さすがにぴっと来ないな。」

まゆ子「しかし「毒ガス」は「毒息」で置き換えても大丈夫なような気もする。」
釈「排気ガス、も排気息、で分かる気がします。」
まゆ子「排気はそのままで排気ガスの意味にもなるけれど、排気という行為を示すし、環境の空気中に混ざった有害な気体としての排気ガスという意味では使いにくいからねえ。」
釈「空気中に混入して分離できない排気ガスを単体で認識しようと思うと、ガスと呼ぶしか無いわけです。
 「息」は限定的に使用は可能ですかね。」
じゅえる「エンジンという機械が呼吸すると考えると、まあアリと言えなくもないな。漢字がじゃっかん弱いけど。
 廃気息、とすればなんか悪そうな感触があっていいぞ。

 天然ガスは?」
まゆ子「そもそも天然ガスてなんだよ。空気中に有るのは全部天然ガスだろ。」
釈「そりゃあ燃料として燃やすのに適当なガスが自然界中に都合よく噴出してくるから天然ガスですよ。すなおにメタンでいいと思いますけどね。」
まゆ子「さすがにもうちょっといろんなものが混入してるけどね。」
じゅえる「天然息、これはなんか変だろ。」
まゆ子「ふーむ、燃料としての利用を考慮して識別するならば、天燃ガス・天燃息と書くべきかな。」
釈「惜しいですねえ、「罰市偵」で採用するにはあと一歩、てな漢字です。」

 

           *** 

まゆ子「さて。というわけで、ユミネイトさんの外伝物語を作ってもらおう。
 というか、手始めに書いたら愚痴ばかりになった。これはあかん。
 もっと面白い、ストーリー性のある、読んで意味の有る外伝にしてもらいたい。」

じゅえる「舞台はゥアム帝国か?」
まゆ子「いや、もうすぐタンガラムが見えるという所まで帰ってきた豪華旅客船の中、という設定ではどうだろう。」
釈「いいですねえ。ゥアム在住の出来事は回想として描けばいいんですから。」
じゅえる「なるほど、船の中の物語か。アリだな。」

まゆ子「それで、重要なキャラを一つ追加した。ゥアムヒョウ柄ネコだ。こいつはユミネイトとちゃんと喋る。」
釈「ネコですか。」
じゅえる「ふうむ、上手く使えそうだな。で、事件を起こせばいいわけだな、船内で。」

まゆ子「そこさ。これから大惨事に遭遇するユミネイトさんではあるが、船内で大げさな犯罪に出食わしてもらっては困る。
 そうだなー、彼女は一応は特権階級に属するわけで、彼女の権限で処理出来る程度の微細な犯罪やらトラブルを作ってもらいたい。」

釈「下層階級の四等船客の少年が、船内で食料を盗んだ、程度ですか。」
じゅえる「定番だなあ。」
まゆ子「あ〜、できれはそれは避けてもらいたい。なるべく階級差別やら闘争やらはこの物語、「罰市偵」本編にも概念的なレベルで控えてもらいたい。」
じゅえる「了解した。」

 

釈「明美せんぱいをお呼びしますか。」
まゆ子「あー、でも彼女はタンガラムに帰ったらマキアリイに会ってヒィキタイタンに会って、改めて恋をしてヒィキタイタンの妻になるわけだから、ロマンスは無しだ。」
釈「明美せんぱいは、そこらへんは上手く処理できますよ。呼びましょう。」

 

明美「じゃんと出ましたロマンス抜きですね! 了解しました、他人のロマンスを手伝いましょう。」
じゅえる「おっと、いきなりだ。」
まゆ子「他人のロマンス?」
明美「身分制度の厳しいゥアムから抜け出して、自由で階級の無いタンガラムで結婚しようという恋人達です。
 船の中には厳然とした差別があってろくに顔も会わせられませんが、それでも必死に連絡を取ろうとして船内警備に見つかってしまうのです。」

釈「ほぉー、いきなりいいところを突いて来ましたね。どうです?」
まゆ子「悪くない。いや悪くない、だがユミネイトはどう関係する。」

明美「ネコが居るんでしょ。そのネコに恋人達の手助けをさせて船内を自由に動き回って、そこでなにか怪しげな謀略を発見。とかではいかがでしょう。」
釈「ミステリー仕立ては望まれるものです!」
じゅえる「軽い謀略を阻止するくらいの活躍は必要だぞ、ヒロインとして。ついでに恋人達も愛を成就させる。」

明美「次回「この女、ヒロイン」においては、ゥアム帝国から派遣される殺し屋も居るんでしょ。
 彼等を紹介しておく為にも、何らかの形で出しておくべきではないですかね。」
まゆ子「その為に軽く謀略か。うーむー、つまり、闇御前組織の諜報員くらいは出てきてもアリか。」
釈「アリですね。」
じゅえる「タンガラム行きだ、そのくらいは出るだろう。」

明美「というか、これまで「闇御前組織」の人間は出てきていません。彼等がどのような存在か、外国においてどう行動しているか、描いておくべきではないですかね。」
まゆ子「ううむ、闇御前諜報員か。うーむそれは単独で描いておくべきだよなああ。」

 

じゅえる「15章!それ以下限定!」
釈「尺を定めるのはいいことです。物語としての規模が決定しますから、エピソードのツッコミ具合も決まります。」
まゆ子「15章か、5章くらいで良かったんだがな。」
明美「ロマンス成分を入れるだけで10章は確定です。」
まゆ子「うん、だよね。」

 

釈「敵はほしいですよね。どうしましょう、犯罪者にしますか。」
じゅえる「いや、この関係だと神族家族と一般庶民との恋愛を否定する道徳家、運動者ってところではないか。」
明美「この豪華客船てさあ、そういう差別は厳しんだよね?」
まゆ子「たしかに船長権限でそこのところの秩序は厳密に定められています。ただ船長自らがそこを管理するわけではないから、厳しい寮監みたいな人が居ると考えて下さい。」

じゅえる「一般庶民乗客は、その身分違いの恋愛についてどう考えるだろう。やはり自分もそうなりたいと思うのか。」
まゆ子「逆ですねえ、抜け駆けするような奴は許せない、神族家族を利用して自分ひとりだけ得する奴は許せない、てな考え方ですね。」
じゅえる「そういう社会なのかゥアムは。」

明美「なんか宣教師みたいな人を設定しますか、乗客の中に居る。それとも船の係の人で止めときますか。」

釈「しかし、どう闇御前組織の諜報員を絡ませるか。」
明美「そこは大王道で行けばいいんじゃないかな。タンガラムが誇りとする「民衆協和制」に基づく身分制度の撤廃をひそかに画策しているとか。」
じゅえる「それ、明美おまえの口から出てくるような話じゃないぞ。革命じゃないか。」
明美「いや、なんかベルばらぽいじゃないですかい。」

まゆ子「あーーーー、そうかその手が有ったか。安っぽい革命ドラマは「罰市偵」内においては新鮮に効果を見せるのか。」
明美「安っぽいはひどいなあ。」

(ここから「革命」に関して脱線しました。 別頁参照)

 

           *** 

釈「まとめます。

 舞台は豪華客船の中、主人公はユミネイト ネコが出ます。
 身分違いの恋人達が居て、自由の天地タンガラムにおいて結婚しようと乗り込んでいます。
 闇御前組織のスパイが居て、タンガラム発祥の市民革命をゥアム帝国において実現しようと画策します。というか帰ってきた。
 幻人ハンターの男女二人が乗っています。」

 

明美「ふーむ、まあ船の中は平穏無事でいいでしょう。
 でも恋人達を引き裂く特権階級の家の者が、タンガラムで人を雇って引き離そうと電報で連絡しているとかは、アリじゃないかな。」

釈「ゥアムからの電報ですか。飛行船中継基地ネットワークはもう出来ているんですか?」
まゆ子「いや、今現在でも定期航路の飛行艇を中継する電報サービスはあります。100文字1万円くらいのばか高価い電報ですが。」
じゅえる「そりゃー、特権階級だからそのくらいは出すさ。」

まゆ子「それはさ、えーと男の方を特権階級、女を一般民衆と今私は仮定しているんだけど、
 タンガラムに上陸した男の方は連絡を受けた連中がふつうに抑える事は出来る。だが、女の方が確保できなかった。

 何故ならば、ユミネイトのメイドとして上陸したから。という線でどうだ。」
明美「メイドですか定番でいいですねー。」
釈「いいですねー。」

まゆ子「男の方が特権階級だから、特権階級フロアでユミネイトと親しく話が出来る。
 ましてやユミネイトはタンガラムの出身で混血、身分違いの恋についても理解がある。というか自由の国タンガラムの人として、そこは問題視しない。
 だから協力もしてくれる、と彼が頼んでくるわけさ。」

 

じゅえる「まったく問題なくアリだな。ただ、それだと船内でのトラブルが無いな。」
まゆ子「そうだなー、なにか考えなくちゃな。」
釈「ロマンスがそこに有るわけですから、トラブル自体は恋愛とも身分差別とも関係ないもの。それこそ闇御前組織のスパイの話になりますねえ。」
まゆ子「うん、あまり複雑な構造にしてしまうと尺に収まらないな。」

明美「スパイって、タンガラムに帰って来ているところなんですよね。つまりゥアムには別の人が工作活動を行っている。」
じゅえる「うーん、誰がそれであるか、名前を吐かせるとかもアリなのかなあ。だがそれでは拷問とかになってしまう。」
まゆ子「あまりありがたくない。もっと穏便に、穏やかに盛り上がらないやつで。」

じゅえる「ゥアムから誰か亡命者を連れて帰っている途中とかではどうだ。なにか重要な機密を握っている人物を護送するという。」
まゆ子「それはアリだが、実はもっと護衛されなければならない人間というのが居るんだ。
 ユミネイト本人だ。」

釈「あ。」
明美「そうなの?」
じゅえる「確かにマキアリイ映画大人気で、闇御前との対決にも影響しようというこの時期この状況、しかも総選挙直前のヒロインの帰国。
 これはとんでもない重要人物だな。」
まゆ子「今自分で考えてびっくりしてる。言われてみればそうだった。ユミネイト第一級VIPじゃねえか。」

明美「でも本人はそういう風には自分の事考えてないんだよね。」
じゅえる「そういうことだな。となると、闇御前組織のスパイがユミネイトを護衛するってのは、あまり良くない構図か。」
明美「無理して闇御前組織にしなくても、タンガラム政府から派遣されているエージェントでもいいんだよ。」

まゆ子「ちょっと待て、そこはちょっと待て! なにか、引っかかって、
 まずとにかくは、ゥアム帝国で革命騒ぎを起こさせようという仕業は闇御前組織のものだ。
 そして「マキアリイ映画」の為にヒロインユミネイトの帰国を護衛しようとするのは、政府工作員だ。
 だがそこになにか、第三極のようななにかが、」

釈「いっそ二重スパイというのはどうでしょう。長年ゥアム帝国で工作活動を行ってきたスパイが、調略されてゥアム側に寝返ったとか。」
まゆ子「それじゃない! そうじゃない、つまり、これだ。

 闇御前組織の内部においても一枚岩ではない。闇御前をどうするかで方針の違う勢力がせめぎ合っている。
 あくまでも闇御前を法廷から救出して組織を盤石に固めようとする守旧派と、
 今度「英雄と皇帝」事件で出て来る、闇御前を過去のものとして葬り去り組織自体を表舞台日の当たる場所に出して公的機関に成り上がりたい勢力と、
 その二つが異なった思惑で動いてるんだ。

 ユミネイトの帰国は後者の勢力にとっては好都合。「マキアリイ映画」の人気に乗じて大どんでん返しを成功させる為のコマの一つとして使うつもりだ。
 だから彼女を守らなければならない。
 ただそのスパイの男は、彼女を自分が守っているなどとは決して口にはしない。ユミネイト自身に自分の政治的利用価値が有るなどと悟らせないようにしている。

 これでどうだ!」

じゅえる「なる、ほど、ね。」
明美「あくまでもユミネイトに彼女の役割を悟らせないようにしてきたけれど、タンガラムに近づくにつれて、自覚してしまって。
 「やれやれおじょうさん、お気をつけなさいよ」とクールに去っていく。こんな感じですか。」
まゆ子「そんな感じだ!」

釈「しかし、タンガラムに徐々に接近してくに従って現地の状況が分かっていく、てのはどうやって実現しましょう。
 ラジオ放送もテレビも無いんですよ。もちろん新聞なんか届かない。」
まゆ子「届くさ、水上飛行機がタンガラムから新聞や手紙を届けてくれる。そういう距離にまで接近してる。
 ラジオ放送だって、軍用通信を傍受出来るほどの高度な通信機器が装備されていて、タンガラム軍の非暗号通信は完全に聞こえてくる距離になったんだ。」

じゅえる「つまりは、タンガラムに近づいている事が刻一刻と分かっていく状態なんだな。」
釈「船の上でも分かるんですよ。」

 

           *** 

まゆ子「よし分かった。この外伝ユミネイト、だいたい出来た。
 でもあと一つ、もう一つなにか欲しい。揉め事とは言わないが、なにか。」

じゅえる「なにかと言われてもなあ。」
釈「もっとゆるいやつですか。さーて、船内で犯罪はダメなんですよねえ。」
明美「ユミネイトがいきなり求婚されるとか?」
まゆ子「それは今回無しで! ロマンスは恋人でクローズして。」

じゅえる「じゃあ、船内で、しかも3等乗客の為に、映画を上映するとか。「マキアリイ映画」を。」
釈「おー、3等乗客だって気晴らしは必要ですからね。1等乗客のフロアではそんな下品なものは上映しないのですよ。」
まゆ子「それはアリだが、事件じゃないしな。」
釈「でもユミネイトさんは、「マキアリイ映画」の翻訳監修を行ったんですよね。その作品が上映ってのはどうです?」
まゆ子「うーん、責任者として立ち会ってみる。そいうのはアリなのかな?」

じゅえる「船長に、「こんな下品な映画」とか言われてユミネイトが反論する、とかのシーンが出来るぞ。」
釈「悪くはないと思いますよ。ゥアム民衆に対するタンガラム文化の浸透率を表現するというのも。」
まゆ子「うーん。」

釈「ゥアム社会でも著名な巨匠ボンガヌ・キレアルスがマキアリイ映画を撮っている、とかで凹ませましょう。」
じゅえる「キレアルスそこで出てくるか。」

 

 

2018/07/03

まゆ子「『罰市偵 英雄とカニ巫女』第四巻第二話「名探偵総登場!」初稿あがりました〜。」

釈「ごくろうさまでございます。」
じゅえる「これで、「総天然色二本立て」の前3話はできたか。」
まゆ子「はい。第三巻は完了する事となります。」

釈「今回は、コナンくん出てきますねえ。」
じゅえる「あれいいのか? さすがにパクリ呼ばわりされるんじゃないか。」
まゆ子「ぱくりもなにも、そもそもがこのお話このタイトル「名探偵総登場!」からして往年の推理小説パロディ映画『名探偵登場!』の堂々としたパクリでございますよ。」
釈「あー、ですよねー。」
じゅえる「あれ大好き。」

まゆ子「であるからして、今回登場「エルキュール・ポアロ」みたいなインド人「ポラポワ・エクターパッカル」は、実は『名探偵登場!』に出てきたポワロのパクリキャラ「ミロ・ペリエ」と、
 ピーター・セラーズ扮する中国人探偵「シドニー・ワン」が合体したキャラなのです。」
じゅえる「芸が細かいな。」
まゆ子「なお、「エクターパッカル」は「ヘクトール・パスカル」の訛りであり、頓挫した企画『統則最前線』に出て来る電哲探偵なのです。今回復活です。」
釈「あの、メイドロボ「アニタ」のご主人様として3DCGコーナーに有るやつですね。」

まゆ子「このポラポワさんは、最初の構想では第五巻にマキアリイが遭遇する「幻人」についての情報を教えてくれるはずでしたが、さくっと割愛。
 今回の物語においてまったく意味がありません。美味しいご飯を作っただけです。」

じゅえる「他にパクリキャラは居ないか。」
まゆ子「そもそもからして、第三巻に登場した「オォォフ・ウロフ」さんは、『名探偵登場!』でサム・スペードのパクリキャラであるところのピーター・フォーク演ずる「サム・ダイヤモンド」を参考に作られております。」
釈「まあ逆算で名探偵こしらえましたからね。今回の『名探偵総登場!』は実は重要な回なのです。今後出演する名探偵さんが総登場ですから。」
まゆ子「そうなんだよ。第五巻でタンガラム中を飛び回るし、第六巻では首都での大事件だから首都の刑事は出て来る必然性があるのさ。
 マキアリイの同期の女刑事はここで出ている必要があるのさ。」

釈「そういえば、この回の設定で出現した北部の老刑事が、5人目のカニ巫女「ポラヴァーラ」の時期に、とある怪盗とマキアリイが「兄弟」であるとか「股旅帝国」であるとかに発展するんでしたね。」
まゆ子「無駄な設定はつくらないよお。」

 

じゅえる「というわけで、コナンくんだ。
 美少女探偵セラファン・マアムと弟のトマトくん。これ実の弟?」
まゆ子「色々ドラマチックな設定を考えたけど、実の弟、両方共実の子、というラインに落ち着かせました。面倒だし。」
釈「父親は元刑事だし、娘は格闘技少女チャンピオンだし、トマトくん小学一年生だし。これはもうコナンですね!」

まゆ子「弁解のしようもなくコナンです。ですが、だがしかし、「高校生探偵が薬で小学生になった」という設定抜きでコナンは成り立つだろうか?」

じゅえる「それはただの子供探偵だ。」
まゆ子「そうなんだ。ただの子供探偵の物語ならいくらでも有る。児童小説の方でなんぼでも書かれているだろう。
 姉がワトソン役という作品もたぶん有るに違いない。というか、手塚神の『3つ目が通る』の「和登さん」は、まんまその役だ。」
釈「和登さんはまさしくワトソンから名前取ってますからねえ。」

まゆ子「ちなみにトマトくんは小学1年生ですが7才です。タンガラムの小学校は7才で入学ですから。
 また謎の博士の新兵器とか持ってませんから、大人を麻酔銃で撃ったり、エンジン付きスケボーに乗ったりしません。
 というか、運動神経鈍くてぽてぽて走ります。」

じゅえる「どこらへんをもってオリジナルと見做すか。こりゃあ難しいなあ。」
まゆ子「とまあ、そういうわけですよ。

 第一ですね、『名探偵登場!』をこの21世紀の日本でやろうと思えば、コナン類似キャラの登場は不可欠と呼べるのではないでしょうか。」
釈「というか、現代推理小説界において、代表的な名探偵って誰です? 6人集められますか?」

じゅえる「うーーーん、金田一も古いし十津川警部も渡瀬恒彦さん死んだし、浅見光彦は何人目だ。まさか明智小五郎を今頃出しはしないだろ。」
釈「古畑任三郎も遠い過去になりましたねえ。
 今現役のテレビドラマ名探偵は杉下右京さんですかねえ。」
まゆ子「あー、沢口靖子さんは出なくちゃね。科捜研の女ですね。」

釈「科捜研! そうだ現在の推理ドラマの主役は科学捜査なんですよCSIだ!」
じゅえる「そうか、名探偵が登場するまでもないんだな。現在推理ドラマは。」

 

**************

まゆ子「さて、『罰市偵』第六巻「英雄と皇帝」 そろそろ始めますか。」

釈「第五巻「その女、ヒロイン」の方が先ではありませんか?」
じゅえる「というか、第四巻「総天然色二本立て」二本目「潜水艦事件映画4本目」を作ってないぞ。これが最優先だろ。」

まゆ子「あー、「潜水艦事件」やらないとダメですかねー?」
釈「やる気、抜けた?」
まゆ子「うん、まあ、なんというかさっぱり思いつきませんわハハハッハ。」
じゅえる「そりゃあそうだよな。これだけさんざん持ち上げてきた世紀の大事件「潜水艦事件」、これが出来れば苦労はしないさ。」

まゆ子「というわけさ。実はこの「皇帝」と呼ばれる人は、「潜水艦事件」の後処理で大活躍した人なんだ。
 「潜水艦事件」の後に政府総統府は、責任を全部イローエント海軍に押し付けようとして、統監辞任。で三海軍一斉抗議運動勃発で、政府瓦解。
 これを鎮める為に活躍した陸軍首都部隊の統監が、「皇帝」さ。」

釈「であれば、やはり「潜水艦事件」が先ですよ。」
じゅえる「だなあ。」
まゆ子「えーとですね、まずは「英雄と皇帝」、これの説明をしておきましょう。

 

 8月総選挙選挙戦開始。
 ヒィキタイタンがマキアリイ事務所を訪れて、マキアリイに選挙応援に来てくれ、と土下座で頼む。
 マキアリイとクワンパ、さすがにヒィキタイタンにそんな真似はさせられないので、やむなく首都ルルント・タンガラムに行き、政権与党「ウェゲ会」の応援をさせられてしまう。

 ところが国家総統ヴィヴァ=ワン・ラムダ 毒殺未遂で意識不明の重体。
 肝心要の総統を欠いたままでの「ウェゲ会」大ピンチ状況の中、非常にも選挙戦は進行していく。
 当然に野党有利。当然に、野党に肩入れする「闇御前組織」の暗躍。彼らの思惑は計画通りに進んでいく。

 しかし、そこに現れたのが破壊組織「ミラーゲン」。選挙をあざ笑うかに首都で爆発騒動を頻発させ、マキアリイも警戒に走り回る。
 だが彼らの目的が分からない。

 この状況の正常化を図るために、国会議長と総理大臣は話し合い、次の議長による暫定非常事態体制を取るべきではないかと、「頂上法廷」に進言する。
 その次期議長というのが、実は今回また選挙中であって、未だ決定していない。
 ただ国家総統が国会議員による間接選挙であるのに対して、国会議長は有権者による直接投票で選ばれる。
 国民の信を集めるのに、むしろ総統よりも上であろう。
 というわけで、タンガラム民衆協和国初の国家元首直接投票、という事態が発生してしまう。

 だがヒィキタイタンとマキアリイは、この状況事態が「ミラーゲン」ひいてはその黒幕の思惑に乗ったものではないかと感づいた。
 そして、彼らの思惑が、超越的権威による国会内勢力の抜本組み換え。有権者の意思によらず、超党派談合によって新たなる挙国一致体制を形成する事だと見抜く。
 それは、与党「ウェゲ会」においても「闇御前事件」で失脚し党外逃亡した主流派の復権でもあり、「闇御前組織」に支援される旧来体制の復活であるわけだ。
 完全に出来レースである。有権者の選択など関係なく、政治家またその背後の勢力の計画に従って政治の枠組みが決定される。

 ということをまた見抜いているのが、「皇帝」である。
 国家が真に窮地に陥っていると判断し、信望厚い陸軍を動員して軍事クーデターを起こし、旧来体制の復活を阻止しようとする。
 また「闇御前組織」の解体には超法規的権力が有効であると判断し、併せて強引に実行しようと目論んでいる。

 ヒィキタイタンとマキアリイは、何をもって正義と呼ぶべきか、非常に迷う。落とし所が分からない。
 そこに、さらに謎の組織が現れて、二人に或る真実を明かす。
 「偽りの蛇」と呼ばれる戦術で、叩くべき存在をあらかじめ用意して、本命の権威付けを行う策である。
 この場合、軍事クーデター勢力がタンガラム民衆協和制を破壊する邪悪となって、これを倒した者こそが真の「正義」と呼ばれる事となる。
 「闇御前組織」が自ら表に出て、公的な存在として君臨する為の策謀である。

 ただしこの企てには「闇御前」バハンモン・ジゥタロウは関与しない。
 というよりも、彼をも旧弊の象徴として抹殺し、まったく新しい新体制としての「闇御前組織」のタンガラム支配が始まるわけだ。
 つまりは新旧交代劇でもある。

 「闇御前」バハンモン・ジゥタロウ、特別監獄から移送される事が決まり、外界に出た所を武装勢力に襲撃される。
 これを助けるマキアリイ。
 老人の知恵によって、今回の策謀の全容を理解する英雄二人。

 そして事態を阻止する肝心のカギが、「皇帝」の良心であると理解する。彼が「国会議長」候補から降りるという選択肢。
 「ヴィヴァ=ワン・ラムダ暗殺未遂事件」、未だ昏睡状態にある国家総統を襲った真犯人が、彼を担ぎ上げてクーデターを行おうと画策するメンバーの一人だったと、彼自身に訴えるのだ。
 果たして彼は、動き続ける状況の中で何を選択するか?

釈「全部、できてるんじゃないんですかそれ?」
まゆ子「あー、うん。まあこれだけ有れば書けるかな?」
じゅえる「二転三転して、しかも悪の権化たる「闇御前」をマキアリイが助けるという意外性も有る。
 ふむ、できてるね。」

まゆ子「えーとそうだねえ。「偽りの蛇」を教えてくれるのは、親切な老紳士にしよう。
 それも明るいホテルの喫茶室で、偶然に英雄二人を見つけて無駄話に興じていた。という体で、どんどんと深みに沈んでいくように真実を伝えていく。
 真昼に冷や汗が流れるような、静かでありながらも緊迫した、異次元の恐怖に遭遇する。そんな体験。」

釈「そんなかっこいい情景、できますかまゆちゃん先輩の筆力で?」
まゆ子「無理かな?」
じゅえる「挑戦はしろよ。やりたいと思うのであれば、やるさあ。」

まゆ子「そうだな。であればこの老紳士、最後の締めくくりで出現する不死人「白の母」の執事の役として、偉人の殿堂を管理する事にするか。」
釈「ああ、肖像画を飾っているあそこですね。なるほど、そこの管理者もタダモノでは困りますからね。」
じゅえる「ヴィヴァ=ワン総統でもびっくりするような超大物なんだな。」

 

釈「しかし、一つ抜け落ちている点があります。「英雄」です。」
まゆ子「うん? 大活躍するよ?」
釈「ではありますが、この陰謀の枠組みに予め最初から「英雄探偵マキアリイ」という駒が仕組まれており、その活躍までもが利用される。
 そういう仕掛けであるべきではないでしょうか。」

じゅえる「つまり、「ミラーゲン」の爆発騒ぎを未然に防ぎ、人死が出ないように最初から「英雄探偵」が配置してあり、否応なしに緊迫感と世間の注目を集める役を振っている。
 そんなかんじか。」

まゆ子「なるほど。駒に使われていたマキアリイが、最後にそのゲームのプレイヤー達の元に推参してチェックメイトしてしまう。て図式だね。」
釈「そうですそうです。そういうのが欲しいです。」
まゆ子「よし分かった。予告状を出そう。マスコミに挑戦するかに、「ミラーゲン」の謎の予告状が届いて報道されるのだ。」

じゅえる「その予告状の裏で、実はバハンモン・ジゥタロウの暗殺計画が進行しているのを、ついにマキアリイ達は見破ってこれを阻止。
 これまで相手に先手先手を打たれていた所についに逆転の一撃を加える事となるわけだ。」

 

 

2018/06/17

まゆ子「というわけで! 「英雄探偵マキアリイ シャヤユート最後の事件」シナリオ出来た!」
釈「おめでとうございます〜!」

じゅえる「ちょっとまて、シナリオってなんだ。」
釈「それはもちろん映画の脚本、あ、小説ではないのですか?」
まゆ子「だって、映画だもん。」
釈「ですよねー、どうしましょうじゅえる先輩、何が起きたのです。」

じゅえる「シナリオって、台詞だけ書いたってことか。」
まゆ子「いや、映画だからどんなシーンを映像として描いたか、またどのような演出がなされたか、カメラワークとかもちょこちょこと入れて書いてる。」

釈「こないだマンガで考えた、字に書く絵コンテってやつですか。」
まゆ子「そうそう。で、シナリオだから台詞もちゃんと入れてる。」
じゅえる「ああ、映画を書いたわけだ。どんな映画になるか設計図を。」

釈「必要ですかね、そういうの?」
まゆ子「無論いきなり事件を、「ユージェン村連続殺人事件」てのが正式名称だけど、小説としてそれを書くという選択肢はあった。
 しかし今回、クワンパとカニ巫女見習い友達が一緒に映画を見るその内容、というスタイルであるから、描写されるものも映画でなければ困る。
 映画のノベライズというのは世間にあるが、今回は映画自体の小説化が要求されるのだな。」

じゅえる「めんどうなことを。」
まゆ子「だって、虚構の上に虚構を重ねるんだから、そりゃ凝りますよ。誰に責任を求めるかと言えば、こんなバカな展開を考えた張本人です。」
じゅえる「くっちゃりとかやってるバカだな。」
釈「バカ死すべし。」

 

じゅえる「で、出来はどうなんだ。」
まゆ子「泣けます。子供可愛くて可哀想です。というか計算外の要素が噴出しました。
 この物語、母親の愛情というものが一大テーマです。」

釈「そんなこと一言も考えてないですよね、私達。」
まゆ子「書いてびっくりだ。というかさ、あいつが悪いんだよ、「ハリウッド殺人事件」で出て来るヒロイン役さ。
 先にハリウッド書いたから、そのヒロインをちゃんと映画内でも立つようにヒロイン化してやらなくちゃいけないんだ。
 しかし、こいつ結局は犠牲者ではないのだ。犠牲者はその姉で子供の母なんだ。
 であれば、母親にクローズアップせざるを得ない。」

じゅえる「まあね。」
釈「論理的にはわかりますが、それで上手くいきましたか?」
まゆ子「そもそもがこの映画の真のヒロインは「シャヤユート」だ。シャヤユートが活躍しなければ意味がない。
 というわけで彼女が戦う相手というのを用意しなければならなくなった。で、人間をやめた母親というのを敵にせざるを得ないのだ。
 当然母親がクローズアップされる。」

じゅえる「最初からそう計算できていれば、「ハリウッド」にもその母親役を十分フィーチャー出来たんだがな。」
まゆ子「惜しい事をしたね。でも7才の子の母親だから結構歳で、20代前半である「ハリウッド」のヒロインを中心に持っていくのは必然だからね。」
釈「難しいとこですねえ。」

じゅえる「それで、シャヤユートが大活躍はちゃんと出来たのか。」
まゆ子「泣けます。そりゃ彼女はヒロインです。読んだ人は皆納得してくれます。」
じゅえる「そうか。上出来ならばもんだいない。」

まゆ子「あと、金田一探偵が設定どおりに八つ墓村的に見事に死にました。ため池で逆さになってます。」
釈「それはいいんですか? パクリ扱いされるのでは」
まゆ子「オマージュというよりはパロディですね。まあ面白く死んでます。
  ただこいつも結構惜しいキャラでね、マキアリイがユージェン村に来るまでの前半部分を担ってくれたから、それなりに力の有るキャラでしたよ。」
釈「ま、使い捨てキャラですからね。」

じゅえる「ヌケミンドルでの前半の事件はボツになったんだ。」
まゆ子「いや、さすがにユージェン村にマキアリイ達が行く都合というものが描写できないと困るもので、それなりにサクサクと描いています。当初の計画通りにですね。」
釈「出来ましたか?」
まゆ子「ダイジェスト版。あと、「ハリウッド」で出てきたマキアリイの嫁初登場です!」
じゅえる「おう、痛いな。」
釈「えへへ、あれはちょっと痛いですよね。」

 

じゅえる「で、これからどうするんだ。そのシナリオを充実させて本編に載せるのか?」
まゆ子「最終的にはそうなるんでしょうが、なにせシナリオですからね。これじゃあ困るんですよ、情景描写をすっからかんにしてますから。
 さすがに映画として上映される時は、絵としての描写をそれなりに追加しないといけない。
 だが分量的には結構なものになっていますから、今の段階でも。」

じゅえる「また、膨らむ?」
釈「まずいですね、それ何章分くらいになりましたか。」
まゆ子「がっちり21章。計画では小説としても20章見当だから、大当たりなんだが、そこに情景描写を突っ込むとなると。」
釈「絶望的ですね。」

まゆ子「おまけに、これはシナリオであるから、俳優の演技というものをまったく考えてない。
 演じる俳優のキャラについて、つまりは配役とキャラと二重の設定が必要なわけですが、演技をする俳優という存在が発する言葉としての「台詞」をこれから構築します。」

じゅえる「おう……、シナリオは必要なんだな。」
釈「なんというか、同情します。」

まゆ子「で、次は「潜水艦事件」映画のシナリオづくりですよ。ははは、もう笑っちゃうね!」

 

 

2018/06/05

 まゆ子「というわけで新企画けってーい!」

釈「決定、ですか。」
じゅえる「検討も無しで?」
まゆ子「決まる時ってのはそういうものです。

 えータイトルは『咽ぶ赤方台』」
釈「あれ、それって。」
じゅえる「人形劇だろ。「罰市偵」に出てくるテレビ番組の。」
まゆ子「そうです。みかん男爵の父親の会社がスポンサードしているSFロボットバトル人形アニメです。」

釈「で、SFロボットバトル人形アニメ、を小説化するわけですか。」
まゆ子「はいそうです。」
釈「うーーーーーーーーーーーーーん。どうですか?」
じゅえる「なんか重大な情報が欠落している気がする。まゆ子、なんか落とし所があるんだろ、ロボットバトルではなくて。」
まゆ子「いえぜんぜんまったく、まじでロボットバトルです。」

釈「でも、今なぜそれをしなければならないか。その根拠というか、ばっちり決まるツボというか、そういうものが有るんですよね。」
じゅえる「ロボットバトルが今来ているのか?」
まゆ子「いえ全然。」
釈「じゃあいったい何故。」

 

まゆ子「じゃーん、この企画のミソは、「みかん男爵が出て来る!」です。」
釈「え?」
じゅえる「みかん男爵って中学生だよな。あれがヒロインか?」
まゆ子「みかん男爵はスポンサー令嬢として登場します。つまり、この番組「咽ぶ赤方台」の企画を立案した中心人物で張本人です。」
釈「はあ。えーと、どう展開するんだ、これ?」

まゆ子「そして、このSFロボットバトル人形劇を実際に演じるのが、劇団『彷徨えるプロキオン人』です。」

じゅえる「あっ! 唐子ミレイか!」
釈「頓挫したはずの『彷徨える百合シーズ』ですか!」
まゆ子「正解でーす。つまりはこの物語、みかん男爵が劇団「プロキオン人」に持ち込んで、唐子ミレイとお友達が実際に物語を構築して演じる。という形になります。」

じゅえる「いやちょっと待て、その形態はどっかで見たこと有るぞ。」
釈「有るぞも何も、それってまるっきり「くっちゃりぼろけっと」、これじゃないですかあ。」

まゆ子「そういう事だ。「くっちゃりぼろけっと」自体を小説化する。ついでにロボットバトルも書いちゃおう、という異色作。」
じゅえる「そりゃ異色だな。」
釈「企画の趣旨は理解しました。ですが、そもそも「咽ぶ赤方台」は「装甲騎兵ボトムズ」のパクリですよね? 危ないですよね。」

まゆ子「危ないとは言ってもだ、「ボトムズ」自体企画がもう死んでるしな。伝説は今も健在だが、作品としては行き詰まり打開のしようが無い。
 キリコ・キュービイという主人公に頼り過ぎてにっちもさっちも行かなくなっている。
 だからパクっても、キリコという存在を回避すれば自ずとまったく違う企画が完成する。」

じゅえる「うん、まあそうなんだが。それでもテイストというものがだ。」
まゆ子「そもそもですよ、「赤方台」の舞台は文字通りの赤い方台、陸地の上です。そして宇宙ロケットなんか金輪際出て来やしません。
 宇宙関係ないロボットものが、どうして「ボトムズ」のパクリになりますか?」
釈「まあ、全然ですね。」
まゆ子「ついでに言えば、「赤方台」は海の上を行く船で来て、船で帰る物語です。海戦もありますが、ボトムズは?」
じゅえる「海は無かったか?」
釈「OVAで上陸戦してましたか。本編は思いつきませんが、なるほどまったく舞台が違うところでボトムズをする。そういう考えですか。」

まゆ子「ついでに言うと、スポンサー令嬢「みかん男爵」様のご意向により、ヒロインなるモノが出現しません。
 男ばっかりでむせます。」

じゅえる「いや、確かにボトムズはキリコとフィアナという黄金カップルが完成しすぎて発展性を失ったようなものだけど、出ないってのは。」
釈「恋愛モノの展開は完全無視ですか。」
まゆ子「ダメか?」
釈「ダメというよりもー、なんとかして恋人作ってやってくださいな。」
まゆ子「まーそうだな。売店のおばちゃんとかで、」

じゅえる「ちょっと待て、主人公何歳なんだこれ。」
釈「えーと、「咽ぶ赤方台」の主人公チャムケ・マカリは若いです。19才、にしますか。」
じゅえる「売店のおばちゃん、て?」
まゆ子「まあ30才は越えてるかな。」

じゅえる「どうしよう。なんだかゾクッとした。これはイケる。」
釈「30才売店のおばちゃん、てもうちょっとビジネスウーマン的なものには出来ないんですか。」
まゆ子「だってさ、武器商人というのなら「ボトムズ」だとゴートでしょ。「エリア88」ならマッコイじいさんでしょ。
 これと被ってもらっては困るんだ。」

じゅえる「本当にただの売店のおばちゃん、なのか。」
釈「30才でおばちゃん呼ばわりも酷いが、まあそういう。
 そうだ! 秘密諜報員のスパイにしましょう、おばちゃんは!」
じゅえる「ロッチナか?」
釈「ロッチナを出して、その手先としてのおばちゃんです。」

まゆ子「ロッチナ出ないよ。というか、出たら困る。でも諜報員は出ることがもう決まっているから、どうやってロッチナにしないか検討中。」
じゅえる「おばちゃんにしなさい。」
釈「しなさい。」
まゆ子「とほほ。では売店のおばちゃん30才は秘密諜報員です。どのレベルの?」
じゅえる「諜報員としてどのレベルの権限を持つか、という話か?」
釈「最高レベルです。黒幕です。ロッチナです。」
まゆ子「でも売店のおばちゃんがそんな高レベルなミッションをやる暇は無いぞ。」

釈「複数種類の諜報組織が存在して、それぞれが暗闘していることにしましょう。
 おばちゃんはその内でも正義側の諜報員。麻薬取締官の潜入工作員的な?」
じゅえる「そうだな。人知れずチャムケの動向を監視して、密かに生命の保護も行っている。そういう出来る役所だ。」

まゆ子「わかりました。じゃあロッチナは別に設定すると。」
じゅえる「そうそう。諜報員を一人確保したから、他のシリアス系諜報員を何種類も出して良くなったのだ。既にボトムズの枠は越えている。」
釈「まったくパクリでは無いのですよ。」

 

まゆ子「というわけさ。
 唐子ミレイ達劇団「プロキオン人」は、このような会議を繰り返して「咽ぶ赤方台」の舞台を作っていく。
 今の、「ヒロイン=売店のおばちゃん=正義の諜報員」決定プロセスなんかも、そのまま彼女達の合議の結果成立していく事にするよ!」

じゅえる「おう。なんかいい感じがしてきた。」
釈「これはイケますね。」

 

じゅえる「ところでこのおばちゃん、どの程度のヒロインなのだ?」
まゆ子「いや、途中で死んでもいいよ。というかみかん男爵なら「ぶっ殺せ!」と要求するよね。
 なにせ主人公チャムケは、モデルが往年の英雄ヱメコフ・マキアリイなんだから。」

釈「この物語は「罰市偵」と同時代じゃないんですか?」
まゆ子「えーと、そもそもタンガラムですら無いんだ。もっと別の国。ゥアムシンドラバシャラタンでもない、さらに別の国。
 時代もマキアリイ死亡認定後80年、てところかな。
 英雄として国際的に有名であるが、映画としてその名が広まっており、みかん男爵はマキアリイ映画の熱狂的ファン、という感じになる。」

じゅえる「なるほど、つまりは伝説的英雄をモデルとした人形劇主人公なのだな。」
釈「理解しました。つまりは「罰市偵」の設定はほとんど影響しないわけですね。」

じゅえる「それで、ヒロインレベルは?」
まゆ子「うーん、そりゃ30女と19才パイロットが恋愛関係となると、けっこうわくわくしますけどね。
 これテレビ用子供向け人形劇ですから。自然と恋愛レベルにも枠というものがあります。」
釈「濃厚なセックスとかは、」
まゆ子「期待しないで下さい。あと、そもそもチャムケだって最終回まで生きているか不明です。リアリズムに則れば死んでも仕方ない。」

じゅえる「そこはアレだ。この赤方台には船で来るんだろ?

 マキアリイの最期は、外国航路の客船上から失踪するというものだ。
 チャムケもまた、すべてが終わって赤方台を船で離れた後に、悲劇的結末が待っている。そいうのでは。」
まゆ子「ふむ。一考の価値があるな。」

釈「全体的に長さはどうなりますか。長編?」
まゆ子「うーん、一巻に収まる程度でとりあえずは放送最終回まで生きたい。
 1話7章くらいで、1章を「くっちゃり」パートで設定を整えるとして、最小で7話構成。最大で12話構成、これは一年間放送が続いたという設定で。」
じゅえる「ああ、途中で打ち切りの危機とか発生するんだ。」
釈「そのくらいのピンチは必要ですね。ならば、7話目に最初のオチとなる物語の山を用意しましょう。」

まゆ子「最大構成で7×12=84章に、プロローグエピローグで86章。まあ余分を考えて100章以下と。標準的な一巻の長さでお願いします。」

 

釈「ところで、出演するキャラは決定しているのですか?」
まゆ子「えーとロボットバトル『咽ぶ赤方台』パートは現在。

 主人公:チャムケ・マカリ 19才 ロボット操縦士
 ヒロイン:売店のおばちゃん 30才 秘密諜報員(正義)
 ロボット兵器部隊の中隊長 ユッコ大尉 33才くらい ワル

 このくらいです。」
じゅえる「ユッコ大尉ってなんだ?」
まゆ子「主人公チャムケの上官ですが、陰謀に基づいてチャムケをぶっ殺そうとする。
 「ボトムズ」のカン・ユー大尉にインスパイアされたキャラです。」
釈「いやそこは、なんか上手くパクリがばれないように処理しましょう。」

じゅえる「売店のおばちゃんはよしとして、武器関連の調達や機体の整備の人間は考えておくべきだな。」
釈「でもこれ、傭兵部隊ではないんですよね?」
まゆ子「あ、一応正規軍だな。えーと今考えている設定によると、

 チャムケ・マカリは「タンバラム国民共和国」という架空の国家に属する正規兵。
 モデルのマキアリイと同じように、「潜水艦事件」に相当する事件を解決した国家的英雄として大人気なのです。
 えーと、「なんとか全滅事件」ですね。敵の秘密基地に乗り込んだロボット小隊が全滅したが、一人だけチャムケが任務を完全遂行して生還した。という英雄的事件です。
 ただし、この事件は裏がややこしくて、陰謀に満ち満ちています。

 それで、「タンバラム」本国に凱旋帰国したチャムケは国家的英雄としてマスコミの寵児となるわけですが、実はこれは偽物の役者!
 本物チャムケは負傷療養の後に諜報部の過酷な取り調べを受け、本国に戻る事無く、「地獄」と噂される「赤方台」の最前線に配属されるのです。
 しかも、部隊長ユッコ大尉には諜報部から、「合法的にチャムケを抹殺せよ」との密命が下っている。」

じゅえる「なるほど!」
釈「実に英雄的ですね。でもこの展開だと、ヒロイン「フィアナ」が必然的に登場するのでは?」
まゆ子「そこは「ネガラニカ」が闇の勢力として出てくるとして、その「全滅事件」はネガラニカ関連の秘密組織とたまたま不幸にも遭遇して奇襲攻撃を受けてしまった。という展開です。」
じゅえる「「フィアナ」は無し?」
まゆ子「無しです! ええもう、女なんか絶対出しませんよ。みかん男爵が許しません。」

釈「でもなんらかの謎を目撃してしまい、それで狙われるという王道展開では?」
まゆ子「うん。そうなっては困る。」
じゅえる「パクリがばれるからな。」

まゆ子「というわけで、チャムケは現場では何も見ていないのです。
 しかしながら、各勢力はそれでは許してくれない。「あいつはきっと、アレを見ただろう!?」という疑心暗鬼で、とにかくぶっ殺そうとする。」

釈「ほんとうに見ていないんですか?」
まゆ子「ほんとか嘘かは、物語最大の謎として最期まで引っ張るよ。とにかく、チャムケという主人公が悪という悪に狙われまくるという構造を作ります。」
じゅえる「ふむ。では外国勢力の陰謀もアリか。」
まゆ子「そもそもが、赤方台においては、ゥアム=ルバム シンドラ=インダラヤ 現地人=ババロハ人 に加えて、タンガラム=タンバラム という4勢力が入り乱れての戦闘争奪戦が行われているのです。
 そりゃあもう、各国入り乱れての陰謀の渦ですよ。
 その意味では、チャムケの遭遇したネガラニカの謎だけでなく、赤方台利権獲得陰謀の方がよほど大きな流れとして主人公に襲いかかってくるのです。」

釈「ネガラニカはどう絡んでくるんです?」
まゆ子「考えてない。まだ。」
じゅえる「まあね。」

じゅえる「つまりは、チャムケは何がなんだかよくわからないままに、陰謀に殺されかけまくる、という筋書きだな?」
まゆ子「ですね。」
釈「であれば、そりゃあ安易なヒロインは出せませんね。殺し屋ですよ。」
まゆ子「そして、チャムケ唯一の心の安らぎが、売店のおばちゃんの所で買う干しゲルタを食うことなのです。みかん男爵が要求します。」
釈「ふむふむ。あくまでもゲルタは出るのですね。」
まゆ子「ちなみにみかん男爵は、ゲルタがどんなものであるかはマキアリイ映画でしか知りません。食ったこと無いから凄く美味しいもの、少なくとも味わい深いモノとしか知りません。」
釈「知らぬが仏ですね。」

まゆ子「そして、これは駄菓子販促の子供向け番組ですから、ロボットだけでなくお菓子も売ります。「ゲルタせんべい」というのも発売されるのです。
 だからチャムケは、劇中ゲルタをかっこよく食いちぎります。
 それが番組終了の合図的なものです。で、これが流行るといいなと、スポンサー令嬢は考えているのです。」

じゅえる「よし分かった! 二期からはチャムケ・カレーも発売だ。レトルトパックで戦場で茹でて食べるんだ。
 チャムケ・カレーはどう作っても美味いのだ。」
釈「手塚神ですね。」

 

釈「それで、「くっちゃり」パートの登場人物は、」
まゆ子「正確には「プロキオン人」パートです。
 えーと、

 みかん男爵:中学生 14才くらい 謎の仮面 怪しい扮装 スポンサー令嬢にして番組企画発案者 往年の英雄探偵マキアリイの熱狂的ファン
 みかん男爵の執事:老人 送迎車を運転する みかん男爵の横暴を優しい目で見つめて決して止めようとはしない
 部長:「プロキオン女子学院大学」の人形劇団「彷徨えるプロキオン人」部長 3年生
 前部長:卒業生 金持ち 人形劇に情熱を燃やす 
 唐子ミレイ:20才 学生 劇団のエース その斬新な演技により数々の社会不安騒動を引き起こした伝説的操者 「プロキオン人」を有名にした

 このくらいです。」
じゅえる「ま、くっちゃりぱーとは4人も居れば多すぎるくらいだ。」
釈「ですね。メンバーはこれで固定しましょう。でも劇団ですから、他にも有力な役者操者は居るとします。」

 

2018/05/26

まゆ子「「罰市偵」第四巻17話「マキアリイ故郷に帰る」、初稿あがりましたー。」

釈「おめでとうございます。」
まゆ子「今回尺の制限があったので、一回書いた文をちょいと圧縮して短くしてみました。結果いい感じ。」
じゅえる「端折ったんじゃないのか?」
まゆ子「端折ったんだけどね。でも第四巻に突入して、これから本格的に飛ばしていこうとする時だ。
 これまでは世界観を表現するために、わざと移動に時間が掛かるとか、近代化してなくて不自由だとかの描写を突っ込んできたんだけど、もういいかなと。」

じゅえる「そうだなあ、世界観の描写はこの程度で切り上げてもいいか。」
釈「物語の内容が薄くなるわけではないんですよね?」
まゆ子「むしろ、これからざくざく話が展開していく中で、尺がどうしても伸びてしまうのを無理やり押し込まなくちゃいかん。必然だと考えるさ。」
釈「であれば、さくさくいきますかあ。」
まゆ子「いや、書く分にはさくさくじゃあないよ。一度書いた文章を半分に削るんだよ。無駄だよ。
 無駄の中には、いかにも異世界っぽい、またはマキアリイさんの人間性を描写するとかクワンパさん可愛いとかの描写をさくっとだよ。」

じゅえる「まあ、いいんじゃないか。作者の苦労なんか読者様は知る必要無いんだから。」
まゆ子「でもね、ネット小説業界ってなんかどれだけ沢山文字を書けるかで競ってるみたいな所あるから。」
釈「そこは付き合わなくていいです。短くても、というかウチはちっとも短くない!」

 

まゆ子「というわけで、「罰市偵」第四巻19話「ハリウッド殺人事件」、初稿上がりました〜。」
釈「はやっ!」
じゅえる「なんで?」

まゆ子「何でも何も、「マキアリイ故郷に帰る」よりも先に書き始めたんだ。前半だけ書いて先に掲載しようかと。
 でもその内に興が乗って、「故郷に帰る」を先に書いたら書けちゃって、で続きに戻ったら「ハリウッド」も書けちゃった。」

釈「なにがあったんです、その生産力の高さ。」
まゆ子「う〜ん、無いかな。特には。」
じゅえる「でも、何枚だよ。」
まゆ子「えーと、「ハリウッド」が20章、「帰る」が12章。計32章だから、1章6枚換算で原稿用紙192枚……か。」
釈「げえええええ。」

まゆ子「さて問題です。マキアリイさんは、つまりは古いタイプのキャラクターであり、そのビジュアルイメージも古いのですが、
 「ヒィキタイタンとマキアリイ」というペアを考えた際に、当初からアラン・ドロンとベルモンドという往年の人気者を想定していました。」

じゅえる「ジャン=ポール・ベルモンドは、「コブラ」とか「ルパン三世」とか「犬神明」の元ネタになっている、まあかっての大人気漢モデルなんだな。」
釈「ちょっと崩れたヤクザものだけどかっこいい、というイケメンではないですが当時は受けたんですね。」
まゆ子「ではあるのだが、これは映画の中の話であって、映画の「ヒィキタイタンとマキアリイ」ではそのペアでいいのですが、
 実物マキアリイはさらに崩れて、「アラン・ドロンと田中邦衛」くらいになるのだ。」

じゅえる「う、うーん。」
釈「青大将ですかあー、うーんそれはー。いやいい役者さんですけどねえ。」

まゆ子「これでは腐のお姉さま方にはちょっと、やっぱ、問題ではないかと。」
釈「ですねー、まあ「でぽでぽ」で描かないのであればいいんですけどねー。」

 

2018/03/26

まゆ子「というわけで、第十六話「おみやげクワンパ」初稿出来ましたー。つまり第三巻終了ー。」

釈「まあ、分量的には三巻終了ですか。」
じゅえる「エピソードは3本も次巻に先送りだからな。なんか終わった気がしない。」

 

まゆ子「ところで、妙なバグを発見した。
 第一巻冒頭で「ソグヴィタル・ヒィキタイタンは52代国家総統」という事になっている。
 だが第三巻において「ヴィヴァ=ワン・ラムダは第19・20代国家総統」という事になっている。
 まあ第八政体において20番目の総統という意味であるのだが、してみると前の第七政体までは30人ほどの国家総統が居る事になる。
 任期5年として150年だ。短命内閣もあるから、おそらくは100年くらいであろう。

釈「えーと、第五政体で「砂糖戦争」が有ったのが6072年。
 第七政体が崩壊して第八政体になったのが、今が6215年でその60年くらい前、なんですね。」

じゅえる「そりゃあアレだ。第五政体が終わった時に「国家総統」という制度が生まれて、そこか数えて52番めということにしよう。」
まゆ子「では、それまで第五政体までは「国民王」とかにしておくかな。「民衆王国」なんだから。」
釈「あー、それが「民衆王国」から「民衆協和国」になってから、民衆政体として数え始めたという事ですから、「王」は使えません。」

じゅえる「大統領というのがそれまであった事にするか。」
まゆ子「ふむ。あ、いやそうだ、それまでは総理大臣が一番偉かった事にしよう。議会で第一党の党首が国家元首として。」
じゅえる「今と違うの?」
まゆ子「今は議会で第一党の勢力が「国家総統」となり、国家総統が総理大臣こと「内閣大臣領」を決めますよ。」
じゅえる「行政権を一応は分けているのですね。」

まゆ子「うむ、つまりは戦争状態となった際に、国家元首が戦争遂行に集中出来るように行政権を総理大臣に任せる事となったんだよ。
 同時に、予算編成権を国家元首が直接に手掛けるものではなくなった。戦争も予算もどちらも最高責任者が国家元首の指導に従うという形になる。」
じゅえる「それ効果あるの?」
まゆ子「まあ、無かったから第七政体崩壊したんですけどね。
 だが第五政体の時は戦争遂行体制がぐちゃぐちゃになった反省から、「国家総統」という制度が生まれた。そういう事にします。」

じゅえる「ヒィキタイタンが後で成る「総統臣領」というのは何だ?」
まゆ子「だから、予算も軍事も一手に指導する最高責任者が「総統臣領」だ。一種の先祖還りだね。
 むろんこれがかなりやばい制度であると、タンガラムの政界人は理解する。やはり国家の大権を一人が独占するのはまずい。それが「砂糖戦争」の反省だ。
 でも「砂糖戦争」の頃に当時の最高責任者が暴虐を奮ったわけではないぞ。むしろ逆で、やるべき事が多すぎて権限が最高責任者に集中しすぎて完全に無能に陥ったのだ。
 だから国家元首というものは、実際に政務を行なう際にワンクッション置くべきだと理解して制度を作り直した。
 それが「国家総統」だ。

釈「無能ですか。」
まゆ子「そうだよ。国家が国民が恐れるべきなのは独裁ではない。真の恐怖は無能なんだ。」
じゅえる「確かに有能な独裁者は実際に存在するし、いかに暴虐を振るう者であっても、国内の秩序維持という最低限の仕事が果たせていればなんとかなるからな。」
釈「無能で暴虐の独裁者、これが最悪なのですね。」
まゆ子「独裁でなくても、いや議会制度がちゃんと整備されていても無能が議員となった日には、話にならない状態だからね。」

じゅえる「人類が真に恐るべきなのは、バカなのだ。」

まゆ子「と言いますか、第五政体で「砂糖戦争」が始まる前までは、議会で政治家達が外国の侵略などまったく考慮せずに、馬鹿騒ぎばっかり繰り返していたのです。
 総理大臣が最高責任者なのも、政争で政権を分捕った政党がやりたい放題する為に権限の集中を良しとしていた。そういう経緯があります。」
釈「ひでえ。」
じゅえる「民主主義の弊害だな。愚民政治だ。」
まゆ子「ゥアム帝国がはるばる海を渡って攻めてきたのも、その状況を見ての事です。足元を見られたわけですよ。
 まあ、それは反省しますわな。第五政体の議員全員に戦争責任を取らせて、新体制第六政体発足となりました。」

 

まゆ子「ここで白状しなければならない。
 「シャヤユート最後の事件」前に決めた前日談があるでしょ。あれボツになった。」
釈「なんでです?」
まゆ子「いや、だってさ、「潜水艦事件」十周年記念殺人事件、こんなばかでっかくなるなんて思わなかったよ。だいたい25章くらい見当で書いてたんだ。」
じゅえる「何章になったんだっけ。」
釈「46+外伝16です。外伝ヒィキタイタンは、まあ書かなくちゃいけないものでしたが。」
じゅえる「うん、バカだね。」

まゆ子「というわけさ。前日談なんか入れてしまった日には、このくらい大きくなるのは必至。」
釈「たしかに20章くらいで片付けたいですね。」

まゆ子「そこで考えた。この「最後の事件」の悪役ってのがまだぜんぜん決まってないんだ。
 こいつを上手く極悪人に仕立ててやれば、短くても印象的で強い物語が書けるだろう。」
じゅえる「物理的に長いのではなく、印象に強く残る物語というラインか。それはアリだな。」
釈「で、具体的にはどうします。」

まゆ子「ディオにしよう。」
釈「え?」
まゆ子「ディオ・ブランドー並の極悪人にしよう。」
釈「まてまてまてまって。それは無茶です。」
じゅえる「石仮面でも出すか。」
まゆ子「それだ! そもそもからしてこの話は遺跡盗掘が裏の遠因となる連続殺人事件だ。石仮面くらい出すよ!」
釈「駄目ですだめです。それは禁止です。」

じゅえる「石仮面は無理だとしても、なんか怪しいアイテムは欲しい。人間をやめるぞクラスの。」
まゆ子「うん、それでこそ無敵英雄マキアリイの活躍が引き立つ。ヒーロー大活躍だ。」
釈「ああ、うん、それは王道ですが。不思議アイテムで魔法パワー、アリですか?」
じゅえる「これ、ファンタジーだよ。「罰市偵」は。」
釈「そうなんですけどね、そうですけど。」
まゆ子「ファンタジーでいこう。釈ちゃん考えろ、ファンタジーでありながら科学的な裏技を使った超人極悪人を発生させる方法を。」
釈「えーーーーー。」

じゅえる「蟲を使うか。ある特殊な寄生蜂が耳の穴から脳に入り込んで、超人パワーを発揮させるという。」
まゆ子「いいねそれ!」
釈「死にます、それ死にます。」
まゆ子「いや実験台として使う分には死んでも構わんのだが、金田一ぽくないか。」
釈「そうですそうです。これは元が金田一なんです。金田一キャラが出るくらいですから。」

じゅえる「ハチは絵になるが、ダニでもいいぞ。ヒルでも。」
まゆ子「やっぱりハチがいいなあ。」
釈「だめですったら。こわい。」
じゅえる「でもね、耳から入り込んだ寄生蜂を、鼻から燻して外に出して退治するとかの対策法を今考えた。」
まゆ子「おー、それでふつうに人間に戻れるのか。よしそれ採用。」
釈「うわあああ。」

じゅえる「ところでどんな超人パワーを発揮させようか。ただ怪力になるだけではつまらないぞ、マキアリイが確実に勝つ。」
まゆ子「そうだなあ、やはり超人であり超能力者でないとな。怪力は当然としてももっとすごく忌まわしい能力を。
 ではこうしよう、古代の超兵器が使えるようになるのだ。紅いコンドルみたいな。」
釈「3つ目が通るですか。」
じゅえる「古代武器はいいが、でもあまり突拍子も無いものだと読者が引くぞ。」
まゆ子「うん。銃弾を受けても死なないとかは、普通か。」
釈「不死身性はさすがに陳腐すぎますからね。」

釈「口から毒を吐くとか?」
まゆ子「当たり前過ぎて困る。」
じゅえる「不老不死の研究とかで、死人を生き返らせる毒が出るとか。」
まゆ子「それはアリなんだが、この犯人は実の子どもを邪魔者扱いして殺すくらいの極悪人だ。
 是非とも生き返らせたいヒトは居ないんじゃないかな。」
じゅえる「そうか。」

まゆ子「あ、そうだ。それでいい。古代の死んだ人間の人格を現代に蘇らせる研究というのはどうだろう。
 遺跡が過去の偉人の墓であり、そこに描かれている秘法を使うと、現代人の身体に古代の偉人の精神が蘇る、というのがあるんだよ。」
釈「ほおほお。」
まゆ子「そこでまず第一段階として、寄生蜂を被検体の耳から脳に入れて、出て来る毒を使って対象をゾンビ的無能力人間にして、精神の転写を行なう。
 これでどうだ!」

じゅえる「ふむ。つまり、寄生蜂を耳に入れるのはまずは犯人じゃないんだ?」
まゆ子「そうだな、被検体が脱走して殺人を繰り返していた事にするか。森をさまよって人を殺す。凄まじい力で。」
釈「ですが、そこには金田一要素が欲しいです。」

まゆ子「うーん、つまり被験者は犯人の嫁なんだ。そして愛人と子どもがまた別に居て、この嫁を始末しないと相続権がどうのこうので。
 だからこれを操る為に寄生蜂を使って脳を冒してみたら、超現象が起こって怪人化するわけだ。
 この結果、これまでまったく謎だった古代の復活の秘法の原理が解明されて、犯人は古代の英雄の精神を自分に移し替える方法を模索し始める。
 そして屋敷の使用人も次々に実験台として餌食になり、相続の邪魔となる自分の子どもすらぶち殺そうとする。」

釈「そこちょっと飛躍がありますね。でもまあ、これまでよりはマシになりました。」
まゆ子「うむ、であれば、その最初の犠牲者で実験台である嫁に、古代の遺跡に描かれていた偉人の妻の霊が降りるんだ。
というか、自分がその妻であると自称し始めて、またそうでなければ知らないような話もし始める。ほんとうに転生が可能なのだと犯人に納得させるに十分な現象が起きるんだ。」

じゅえる「その嫁は邪悪なのか。」
まゆ子「どうしよう。邪悪でもいい、逆に高潔に最期は自ら命を断ってもいい。
 いや少なくとも、古代の偉人である夫の復活を成し遂げる為に、犯人を操るくらいの手腕は欲しい。精神の高さは欲しい。」

釈「ふむふむ。古代の人の意識を持ちながらも、常人を超える怪力の怪人なのですね。」
じゅえる「それなら古代武器を使いこなしても不自然さが無いな。」
まゆ子「おお、そうだ! これ女じゃん。女であれば、シャヤユートが直接対決をしてもいい。

 夫の犯人が古代偉人の精神で超強力に変身してマキアリイと戦う中、シャヤユートは奥方と戦おう。」
釈「ですね!」

じゅえる「金田一キャラというのは、この嫁に殺されるといいんじゃないか。」
まゆ子「そうだね。下手に真相に近付き過ぎて、昼間は普通にその家の嫁に化けている奥方が本性をむき出しにして、金田一を八つ裂きですよ。股から半分に裂けるんです。」
釈「うわああああ。」
じゅえる「いいね!」

まゆ子「うむうむ、つまり嫁に寄生蜂を耳から入れて生き残ったのは、かなり偶然なんだ。
 その後偉人を蘇らせようと使用人を使って実験した場合、大失敗して死んでしまうんだ。そこで犯人は慎重になって実験を繰り返している。
 完全に手法を解明できたら、自分がその蜂を入れて自ら偉人に成り代わろうという計画だ。」
釈「でもそれでは、毒を使ってゾンビ化させるというのがよく分かりません。」
じゅえる「そうだな。やめるかその設定。」
まゆ子「うーんそうだねー。こういうのではどうだ。

 寄生蜂を耳に入れて怪人化したのはいいけれど、あまりにも強烈なパワーを発揮する事で肉体に多大なダメージが有るんだよ。
 もちろん再生力も凄まじいのだが、寿命を先食いしているようなもので、いづれは滅びる事が分かっている。
 これを回避するには怪人化しないで人格の再現を行なう必要が有り、その為の技術が毒なのだ。」

釈「悪くは無いと思います。ですが、毒というのがあまり見栄えの良くないアイテムではないですか。」
じゅえる「骨針並のインパクトのある絵的に映える手段がほしいな。」
まゆ子「ビジュアルか。確かにそうだな。」
じゅえる「すなおに噛み付くか。」
釈「それはまあそうなんですが、もうちょっとインパクトの有る、」

じゅえる「奥歯を自分で引き抜いて、対象の眉間にぐさっと刺すというのはどうだろうか。歯はまた瞬間的に生えてくるということで。」
まゆ子「めちゃ歯が長いんだろう。歯の根が。」
釈「口の中から剣が出てくるようなものですね。」

じゅえる「うんつまり、こうだ。

 犯人は妻と男の子、そして愛人とその子と二つの家族を同時に持っているのだ。
 そして妻をぶち殺そうと思って寄生蜂を耳に入れるが、死なずに怪人として再生し古代の奥方の人格を転写する。
 犯人は、この肉体が凄まじい能力を持ちながら長持ちしないのを知って、計画通りに妻はぶち殺す事とする。
 代わりに愛人の方に古代の奥方の人格を移して、自分も古代の偉人の精神を受け継ごうと考える。
 そして愛人の方の子に財産を継がせる為に、妻との子はぶち殺す事とする。」

まゆ子「うーむ悪だな。」
釈「悪ですねえ。ところで、そんな古代遺跡の秘法を良く解読出来ましたね。」
まゆ子「そりゃね、百年くらいは解読に時間を掛けた事にしよう。」
じゅえる「その煙で蜂が逃げる方法ってのは、解読で判明したのか。」
まゆ子「そりゃそうさ。」

じゅえる「呪先生とか使えないか? 解読のスペシャリストじゃないか。」
釈「呪先生ですか、あの屋根裏の。」
まゆ子「あの人は呪術の専門家ではあるが、暗殺を恐れて出てこないぞ。」
じゅえる「出せよ。」
まゆ子「ふむ、ミンドレアまで呼び出すか。呪術だしな。」
釈「それはいいですねえ。呪先生の解読により弱点が判明する。」

まゆ子「ふむ、ふむふむふむ。なるほど。
 こういうのはどうだ! 遺跡の謎を解かねば怪人の正体が分からないという事で呪先生を呼び出す。
 呪先生は見事解読して、怪人の弱点を暴き出す。
 だがそれを聞いた金田一は手柄欲しさに自ら奥方を追求して、弱点を使った攻撃で正体を暴こうとするが、逆襲を食って股裂きの刑。」
釈「いいですね。そのくらいの安直さ大好きです。」

じゅえる「いやまて、マキアリイが呼び出したら2日以上は来るのに掛かるだろう。
 遺跡が荒らされて内部調査の為に、呪術の専門家として地元警察が呪先生を呼んだ、そういう感じにするか。」
まゆ子「ふむふむ、その筋では有名な先生という事にしても悪くはないな。」
釈「呪術といえばミミズ巫女。現地地元ミミズ神殿の筋で呪先生が呼ばれたというのでは。」

まゆ子「ふむ、とにかくタイムラグが発生するのは避けよう。」

 

まゆ子「というわけでさ。今回この物語、というか「映画!」だ。
 通常の話とは異なり、今回がーっと進展して計画の尺の内部で終了したい。ディテールを描けばキリが無いが、すっ飛ばす。
 で。20章で納めたい。1章6枚(400字)として120枚、多くても150以下で。」

じゅえる「「潜水艦事件」映画も直後に来るからな。」
まゆ子「そっちは30章で納めたい。200枚以下。」
釈「でもですよお、20+30で300枚換算ですよ。これで十分長編です。」
まゆ子「そうなんだよねー。その前に3話有るんだな。
 「マキアリイ故郷に帰る」「名探偵総登場!」「ハリウッド殺人事件」、この内前二つはさくっと15章以下で納めたい。
 でも「ハリウッド」は20章行くよ確実に。」

釈「15+15+20 +20+30=100ですか。600枚!」
じゅえる「ま、しゃあない。1巻2巻3巻と、そのくらい書いてる。」
釈「そう言われると、まあそうですが。しかし。」
まゆ子「今回第四巻は100章で! これは絶対要求です。」

釈「あい。
じゅえる「仕方ないなあ。」

 

まゆ子「さて、それで「最後の事件」だ。20章で〆るからには、その構成もきっちりと定めておらねばならぬ。
 10章+10章で、後半にのみマキアリイとシャヤユートが出現する。最終1章はまとめで、シャヤユートが巡邏軍に逮捕される。ここは確定だ。」

釈「ということは、「滝壺に落ちる」が11章目ですね。」
じゅえる「実質8章で物語の解決か。無茶だな。」
まゆ子「正直に言おう。途方にくれている。」
釈「ええ……。」

じゅえる「とにかく、悪は前半10章で正体までもばらしておこう。読者は悪が何者かを承知した状態で、マキアリイの登場を待つ。」
釈「ですね。マキアリイがどんどん罠に嵌っていくのをハラハラしながら見ている。そういう形です。」
まゆ子「それはいいのだが、となると金田一キャラはほとんど意味も無く死ぬ。」
釈「死にますね。」
じゅえる「殺そう。股裂きだ。」
まゆ子「つまりは奥方が格闘するシーンはほとんど出て来ない。
 つまりはこのスケジュールでぽんぽんと片付けていくとなれば、マキアリイは超名探偵化する以外無いのだ。」

釈「そこは痛いですねえ。マキアリイさんは怠惰な探偵として売ってるのに、困りますねえ。」
じゅえる「やむをえん。ディテールは豚にでもくれてやれ。」
まゆ子「仕方がないなあ。」

 

まゆ子「さて、「潜水艦事件」だ。30章を予定する。となれば、10章3つで行くしかない。」
釈「こいつも、まったく話が決まってないんですよね。」
じゅえる「前半中半後半。これでいくと、
 前半、マキアリイとヒィキタイタン登場。さっそく悪党発見。令嬢ユミネイト奪還。
 中半、ユミネイトを無事確保。国家権力の保護に任せたはずが、巧みな陰謀により令嬢拉致。ヒィキタイタンとマキアリイ、展開を察知して命令違反でありながらも救出に向かう。
 後半、ユミネイト奪還。巨悪出現、三度ユミネイト拐われるのは阿呆な婚約者のせい。巨大潜水艦出現、ヒィキタイタン潜水艦内潜入、マキアリイ救出。悪党撃破。大団円で大勝利パレード

 と来たもんだ。っと。」

まゆ子「中半をもうちょっと狭めても良くないか。後半詰まりすぎだ。」
釈「では、ユミネイトが三度拐われるを後半との接続部に使うとして、残りはすべてアクションでいきます。」
まゆ子「そういくしか無いか。」

 

18/03/09

まゆ子「さて問題です。

 第5の巫女ポラパァーラはどんな巫女?」
釈「キンキラのお嬢様ですよね。昔はギィール神族に仕えていた軍事技術者の家系の。」
じゅえる「マキアリイの嫁になる為に事務員になったんだな。で、」

まゆ子「ポラパァーラはカニ巫女である。しかもカニ巫女にあるまじきキンキラお金持ちで、裕福なのを隠そうともしない。
 これって嫌な女だろ。」
じゅえる「まあね。」
釈「確かに反感を買いますね。そこで、なにか策を思いついたわけですね。」
まゆ子「うん、モデルだ。いかにも金持ちそうでありながら好感度の高い、しかも旧い家系を思わせる美女。
 となれば、

 四条貴音さんみたいな素敵なお姫様ではないだろうか。」……

以下別紙

 

まゆ子「というわけでさ、ポラパァーラは本を書くことになったさ。
 マキアリイと分かれた後に、カニ巫女として暮らしている中でその思い出話を。たぶんマキアリイ死亡認定後の出版だな。
 本の題名は『英雄探奇夜話』、オカルトものとして扱われる。実際彼女が遭遇した事件はオカルトものが多かった。」

じゅえる「それは確定?」
まゆ子「確定、というか第十七話はこの本を元にした怪奇浪漫です。」
釈「そりゃあ優子さんとか喜味子さんが出ますから。」

まゆ子「あー、経緯としてはつまりはマキアリイの思い出を綴ったというよりも、自分の子にマキアリイの逸話を教えた的な存在です。」
じゅえる「やはり隠し子か。」
釈「それはいい感じですが、結局マキアリイには実子は居ない、という結論でいいんですね?」
まゆ子「世間ではマキアリイの子であろう、とされるが、実際は分からない。

 そうだなー、ポラパァーラには形式上の夫は居たが、夫婦生活は無かったような感じがする、そういう風に世間は理解するという感じで。」
じゅえる「うんうんなるほど。英雄の子孫というものはそういう風にして広まっていくのが正しい。」
釈「アリですねえ。事実はどうでもいいんです。その子が、また孫がいきなり「おれは婆様からマキアリイの血を受け継ぐと聞いた!」と宣言してもいいんです。」

 

まゆ子「あともう一つ決まった。

 第五巻に出て来る「闇御前」バハンモン・ジゥタロウの息子の道楽者教授の著書です。
 『ネガラニカ古文明の精華』 バシャラタン法国に残る古代聖蟲文明の遺跡を解説する、タンガラムで唯一の書籍です。というかバシャラタン本国にすらそれは無いくらいのレア物。」
釈「バハンモン教授、ですよね。はバシャラタンに行ったこと有るんですか。」
まゆ子「この教授はとにかく「闇御前」の権力を利用してシンドラ・ゥアム・バシャラタンその他新発見島にまで人間の居た形跡の有るところはほとんど行ったという、或る意味化物なヒトだ。
 バシャラタンの古代聖蟲遺跡は今はもう密林の奥に誰にも顧みられる事無く眠っているのだが、わざわざ行って発掘した。」

じゅえる「大した研究者じゃないか。」
まゆ子「まあね。自分では大した才能は無いとは言うし、学会の泰斗というものでもない。
 しかしながら実際に世界の遺物古美術を見て回ったという経験においては、世界有数の人間でそれだけで教授の名を冠するのに十分なのだな。」
釈「どこの大学に所属するんです?」
まゆ子「通常はミアカプティ市百島湾大学だ。「闇御前」はこの辺りの出身だからね。そしてシンドラ文化や政治経済に強い大学だ。
 バハンモン教授も専門はシンドラ古美術だ。ただし、バシャラタン芸術の講座を持っている。」

じゅえる「誰も手を出さない、ってことか。バシャラタン芸術には。」
まゆ子「そもそも外国文明は行き来に数ヶ月掛かる上に、バシャラタンは郵便制度すら完備していない。航路も一年の内半分くらいは交通不能になるという。
 とてもではないが裏に支援する組織が無いとアクセスすら難しいさ。」
釈「バシャラタン芸術ってどんなものですか。」
まゆ子「あそこは割と陶芸が盛んなんだ。金属を使って何かを作るというのが少なく、木工か陶芸、彫塑なんだな。
 陶器で作った仏像みたいなものが有名だ。身の丈2メートルもある陶器像ってかなりの技術力だよ。」
じゅえる「色絵で?」
まゆ子「そうなんだよ、ちゃんと彩色するよ。だから結構な芸術品なんだ。

 ただ問題は、宗教国家であるからその芸術を鑑賞するにも宗教知識が不可欠で、これがまためんどくさい。
 バハンモン教授がユニークなのは、そこらへんをさくっと無視して純粋に芸術的観点から論じるところだ。彼は比較芸術学の立場だからね。
 そして、バシャラタンとシンドラに共通する或る文化的要素を発見して「ネガラニカ古文明」と名付けた。」

釈「つまり、第五巻でまたしても「ネガラニカ」が出現するわけですね?」
まゆ子「いや第六巻に出すつもりであるが、その下地として第五巻で言及するってところだな。
 ついでに言うと、「運命の子」ヤャラァタの存在についても、ここでちょっとだけ言及してもいい。
 「死んだ兄貴の息子が実はネガラニカと関係があるらしいよ」的な風にさらっと流しておく感じで。」

じゅえる「ふむ。さらっとね。」

 

 

2018/01/25

まゆ子「というわけさ。外伝「ヒィキタイタンのお正月」を載せた上に、ファイアフォックス対応にでぽでぽ全体をリニューアルしたぞ。」
釈「めんどくさい話でしたねえ。FFだけが反応しないんだから。」
じゅえる「いいかげんブラウザの統一とかやってくれないかね。ブラウザ上でややこしい事するのはやめようさ。アプリでいいだろ。」
まゆ子「まあ、もう10年もすれば「昔はいいかげんだったなあ」とか言ってると思うよ。」

 

まゆ子「で! まだ「「潜水艦事件」十周年記念殺人事件」は終わりません。というか、まだ殺人起きてない。」
釈「起きませんねえ、なんとかなりませんか。」
じゅえる「計画通りであれば、死体は1それも死因不明で病死の可能性大、というものなんだね。」
まゆ子「殺人事件かどうかすら分かりません。すごい詐欺です。
 で、次に参りましょう。

 第三巻最終回「ハリウッド殺人事件」です。これも死なない予定です。」
じゅえる「死ねよ。」
釈「まあまあ、この回はマッキーさんとクワンパさんがハリウッドに行って映画界を見学するというだけのお話です。楽しいんです。」
まゆ子「そうなんだけどさ、事件てまだ一個しか決めてないんだよね。マキアリイ爆殺未遂。」
釈「爆殺ですか。」

まゆ子「とりあえずこれまでに決定している分まで。

 マキアリイとクワンパは映画「英雄探偵マキアリイ シャヤユート最後の事件」の完成試写会に招待されます。
 で撮影所の有るヌケミンドル市に行きます。ここは結構な大都会で、大きな映画撮影所が有ります。「聖柊林」という所です。
 そこで主演である”マキアリイ”・グェンヌや、その他キャストの方々。映画監督およびスタッフさん一同、映画会社の重役やらプロデューサーやらと対面します。
 新しく決まった「クワンパ」役の女優さんとも会います。この「シャヤユート」でも最後の一コマに出ます。
 というか、シャヤユートがクビになって、次のカニ巫女事務員として予告的にクワンパ役がちらっと映ります。
 さらに言えば、この時期既に「サユールの怪物事件」での報道映画で、クワンパ本人が銀幕デビューしてますが、再現パートに彼女も出演しています。

 なお、現在既に別会社によるシャヤユート「古都甲冑乱殺事件」映画が9月公開で最後の仕上げ。
 加えて、今まさに起こったばかりである「「潜水艦事件」10周年記念殺人事件」の映画化が決定!
 また別に、総統府からの解禁を受けて、いよいよお待ちかねの「闇御前事件」クランクイン!
 さらに、20年前に流行ったドラマ「細腕頑固立志伝」の主人公が関係する「サマアカちゃん誘拐事件」の映画化が決定。「_立志伝」の俳優さん達が同窓会的に出演という、大当たり間違い無し企画です。
 とにかく目白押し。

 ”マキアリイ”・グェンヌは、さらに今度食品会社のCM出演する事が決まり、今まさに撮影しようというところで、マキアリイとクワンパも見学に行く。
 で、かっこよくどかーんと花火が爆発して登場!というシーンを撮影する話を聞いて、ノリのいいマキアリイがそのどかーんをやってみる事になる。

 で、マキアリイ登場! どかーん、と想定しない大爆発を起こしてマキアリイ爆死!!! 
 無傷なんですけどね。」

釈「死なないんですか、この爆発で。」
まゆ子「死なない程度の大爆発、というところで実際はマキアリイを狙ったのではなくグェンヌが標的であっただろう、という話になる。
 さて、真相は?」

じゅえる「真相は? 決まってないのか。」
まゆ子「あー、私としてはその食品会社の新製品、まあ四カ国味巡りセットという香辛料なんですが、を潰そうとするライバル会社のしわざではないかと。
 まあ、あんまりにも単純過ぎて、このラインは没だろうとは考えてます。」

じゅえる「ああ、これは安直過ぎてダメだね。」
釈「ダメですね、そんなのロマンもへったくれもありません。」
まゆ子「やっぱりダメか、だろうなーとは思ってました。

 やっぱり、殺人事件として美女くらい死なないと困るかな?」
じゅえる「ここは当然に、明美先生をお呼びしよう。」

 

明美「どもー。犯罪ですか、ハリウッドですか、芸能界の闇ですか!」

まゆ子「うん、まあそういうお話。」
明美「当然のことながら、芸能関係の利権とかキャストの不満とか足の引っ張り合いとか、そういうお話ですね!」
まゆ子「まあね。」
釈「定番ですねえ。」

明美「やめよう!」
じゅえる「ちょっと待て、やめたら困るじゃねえか。」
明美「いや芸能界ならそういう展開って、陳腐じゃん。」
まゆ子「そりゃそうなんだが、陳腐な展開を期待する向きも有るだろ。陳腐自体が悪とは、必ずしも言い切れないぞ。」

明美「もっとヤバイ犯罪を想定すべきではないでしょうか。英雄探偵様のご活躍としては。」

まゆ子「あ〜、そういう観点から言えば、確かに。」
釈「いやでも華やかな芸能界を舞台に、華麗なる殺人事件とか欲しいですよね。」
明美「そこはいいんだよ。被害者が芸能人であるのは。
 でも大元の犯罪の源が、芸能界よりもさらに大きな枠組みで深刻な事態であった、というのが欲しいよね。」

じゅえる「うん、なるほど。芸能界を食い物にするヤクザ組織とか業界の闇とかだな。今流行の「ハリウッドセクハラ騒動」とか。」
まゆ子「あー、時勢に乗って事件をでっちあげるのは王道か。そうだな、セクハラ、でもセクハラ? もうちょっと何か。」
釈「ちょっと嬉しくありません。この「罰市偵」シリーズはカニ巫女クワンパさんの夢小説的なものでもあり、少女小説やら乙女ゲームやらの枠組み内に納まってくれないと困るんです。」
明美「レイプだめですかい。」
まゆ子「だめです。」釈「だめです。」

じゅえる「ああレイプはダメだが、ホモは有りだぞ。」
明美「そうなの?」
まゆ子「ホモは有りだ。完全にOK!」
明美「そうか、ではホモ同士が恋人の奪い合いとかで刃傷沙汰というのは。」
釈「うーーーーーん、ちょっと難しいですね展開的に。マキアリイさんホモじゃないですから。」
じゅえる「ホモは真正面から押し出すのはやめよう。あくまでもテイスト的に、薄くさらっと。」
明美「理解しましたよ。

 じゃあ金だね。」
まゆ子「金、ビジネス絡みでの殺人事件、て殺人確定?」
釈「誰殺しますか。まだ何も決まっていませんよ。」
まゆ子「基本的にはだ、マキアリイ爆殺事件の真相というのが第一の犯罪。これだけではちと寂しいなというので、美女の死体が絡んでもらいたい。」
じゅえる「女性アイドルの一人や二人くらい死ぬか。」

 

明美「ホモはやめよう。バイにしよう。
 つまりバイセクシャルのモテ男が居て、男の恋人と女のアイドルと両天秤に掛けていたのだ。
 そして女のアイドルが恋人をホモから奪い取ろうと、恐るべき罠を仕掛けるのだな。
 その罠に特に意味もなく引っかかってしまったのが、ヱメコフ・マキアリイだ。
 当然に計画はおじゃんになる。」

まゆ子「ふむ。なるほど、展開が大きく開けた。」
釈「それはまた、ビジネスでの争いなんかにも絡めやすそうですね。」
まゆ子「えーと今決まっているところで言えば、

 本来はマキアリイ役の俳優がCMでかっこよく発破で登場!てシーンをマキアリイさんが調子に乗ってやったら大爆発した、という事件だ。
 マキアリイは当然に無事なのだが、本来のターゲットである俳優であれば危なかったかもしれない。
 つまりはマキアリイ役俳優の退場を目的とした犯罪であるのだ。
 その動機はと言えば当然に、「映画でのマキアリイ役の配役をめぐる争い」と普通に考えられる。

 だが実は! ホモとバイの争いであった。というのではどうだろう。」
釈「マキアリイ役の俳優さんはホモなんですか?」
じゅえる「いやそこは困るぞ。マキアリイ役がホモなんて。」
明美「そこは、ホモの横恋慕でいいんじゃないかな。ノンケの俳優さんをホモが狙っている。」
まゆ子「実におそろしいじけんだ。」

じゅえる「つまり、なにか。ホモがマキアリイ役に横恋慕して、それを阻止しようと女のアイドルがマキアリイ役を殺してやろうと爆弾を仕掛けた、と。そいう話か。」
釈「女アイドルがホモを好き、というのはアリな設定なんでしょうかね?」
まゆ子「えーと、どういう構図何だコレ?」

明美「まず抑えておかねばならないのは、マキアリイ役の俳優さんはホモとはまったくに縁が無いヒトだ、ということ。
 ホモは業界関係で知り合いかもしれないが、私的には何も無い友達ですら無い。
 これはいいね?」
まゆ子「うん。」釈「はい。」

明美「女アイドルは、ホモが好き。これはアリなのかな?」
じゅえる「どうしよう、ホモとアイドルが付き合っていた事にすれば、バイになるわけだが。」
明美「でも女アイドルが爆弾を仕掛けるというのは難しくないかな。」
まゆ子「もともとはCMでどかーんと爆発するだけの発破なのですが、それを多少増強したという。
 確かに素人では無理な仕掛けだ。女アイドルの手助けをしたやつが居るな。」

明美「要するに、この女アイドルはほんとうの仕掛け人じゃないんだ。
 ただ爆薬を設置するのになんらかの手助けを、それも騙された形で行っており、「こんなはずじゃなかった…」て呆然自失する役だ。」
まゆ子「真の黒幕が隠れているわけだな。

 

 あ、まてよ。そういえば前に考えてた事があるんだけど、マキアリイ役の俳優さんは最初の「潜水艦事件」での「マキアリイ」役を務めたアイドル上がりなんだけど、この時「ヒィキタイタン」役を務めた顔のいいアイドルはどうなったか?
 というラインを考えた事がある。」
釈「マキアリイ役の人は大人気絶好調ですが、ヒィキタイタン役はその後どうなったんですか。」
まゆ子「そこだ。一案としては、映画で大人気になったのはいいが、売れた芸能人の常としてスキャンダルで零落して、それでも芸能界にしがみついている。そんな感じではどうかな、とか考えてた。」

じゅえる「ふーむ、使えそうだな。ただそこはホモではなく、売れっ子になったかっての相棒に邪な執着心を持っているというところで、女アイドルはその零落した男をもう一度檜舞台に、という展開か。」
明美「いえそこはホモバイ展開で確定です。」
じゅえる「確定かよ!」

まゆ子「えーと、つまりですね、マキアリイ役の俳優は本物マキアリイを演じる為に非常によく研究しているわけですよ。それはもう愛と呼ぶに値するほどに熱心にです。
 その姿を、かっての相棒である男アイドルが邪推して嫉妬して、これはマキアリイ役がマキアリイに対してホモ愛を抱いていると、めらめらと対抗心を燃やすのです。
 女アイドルは男アイドルがマキアリイ役に取られると思って、恋敵であるマキアリイ役をぶっ殺す、ほどではないが当分芸能活動が出来ない程度に傷つけてやろうと爆薬を増量するわけです。
 しかし、その現場で実際に立ったのは本物マキアリイで大爆発であったのだ。」

釈「その男アイドルはバイというよりは自己愛人格というやつではないでしょうかね。マキアリイ役と一緒であれば自分も芸能界で大活躍できるはずと、マキアリイ役に執着する。」
明美「うーん、もう一声だね。」
じゅえる「確かにこれだけではビジネス的な陰謀とは直接に結びつかないな。金儲け的な要素をもう少し突っ込んで、」
明美「いえ、もうちょっとドロドロの愛憎劇が欲しいです。」
釈「まだですか。女アイドルが子供でも孕んでおきますか。」

 

じゅえる「あー、そうだ、その女アイドルって何者だ? マキアリイ映画の出演者じゃないのか?」

まゆ子「お。あー、いや私何も考えてないし、というかいきなり今話に出てきた奴だし。」
釈「映画の出演者、今回の映画はヒロインシャヤユートですから、シャヤユート役ですかね。」
まゆ子「ふーむ、それはヒロインだなあ。いやヒロインでいいのか。」
明美「シャヤユート役なら今大忙しで、映画の完成には自分の利益も大きく関わっているのだから、そんなバカな真似はしないんじゃないかな?」
じゅえる「しないね。」
釈「しませんね。そこはCM撮影の時に出演する女性アイドルということで。」

まゆ子「ちょっとおもしろくないな。やはりヒロインという事にするか。
 今回の「シャヤユート最後の事件」のヒロインは間違いなくシャヤユートなんだけど、事件そのものの関係者被害者としてのヒロインというのも存在しなくっちゃ困るんですよ。
 物語中のゲストヒロインですね。劇中で死ぬ。」
じゅえる「そうか、物語で語られる事件についてまったく詳細が決まってないから、そんなとこまで分からねえや。」

まゆ子「じゃあつまり、今回「シャヤユート最後の事件」のゲストヒロインとして、人気アイドルの女性がキャスティングされていた。
そしてマキアリイ映画に出演ということで脚光を浴びるところ、かって振られた色男の男アイドルがヨリを戻すかに擦り寄ってきて、女アイドルもほだされて彼の為の出番を作ろうと、このような愚行をしでかした。」
じゅえる「ふむ、情けない男だな。」
明美「それだよ、その情けなさがグッドです。」
釈「まあ、ダメ男にほだされてしまうというのは、アリですね。その女アイドルは、まだ駆け出しの頃に人気絶好調の男アイドルの取り巻きの一人として弄ばれて捨てられて、それでもまだ好きだった。
 そんな話ですか。」
じゅえる「いいんだけど、何か違うな。」
明美「その違いというのは、ドロドロさが足りないってところね。」

まゆ子「まだダメなの?」
明美「というかさ、その男アイドルが絶好調の大人気状態の時に恋愛の本命としてちょっかいを出していたのが、今や大人気女優となってマキアリイ映画に出ているわけさ。
 つまり、男アイドルがスキャンダルで身を持ち崩す切っ掛けとなったのが、その女優に手ひどく振られて、という話だね。
 振られた直後荒れていた男アイドルが何人もの少女を毒牙に掛けた中の一人が、その女アイドルだ。元々愛情も執着も男アイドルの方には無いんだよ。
 でも、女アイドルの方は初めての男ということで、その後自分も人気が出てマキアリイ映画に出演が叶ったというわけで、憎い仇の女優との共演が実現するわけだ。」

じゅえる「であれば、その女優。今度映画を封切りした後に結婚する予定、とかいいかもな。」
釈「マキアリイ役の俳優さんと、ですか。」
じゅえる「さすがにそこまでは。若手実業家くらいにしておこう。とにかく公私共に幸せの絶頂に居るんだな。」

 

まゆ子「うーむ、そいうのを突っ込まれるとすれば、私もなにか突っ込みたい。その女優のライバル的な何かを、」

明美「いやまてよ。シャヤユートって若いよね?」
釈「はあ。18才でカニ巫女事務員になって、1年も保たずにクビになりますから。」
明美「ということは、シャヤユート役の女優ってのはやはり若いね。」
まゆ子「ああ。となると、むしろ女アイドルこそがシャヤユート役をやった方がいいのか。
 ゲストヒロインの方にこそ、その大人気女優を当てるべきだね。」
じゅえる「ちょっと待て。となると、そのシャヤユート役アイドルは15、6才の頃に手篭めにされた計算になるぞ。」
釈「うあー、それはー、キますね。」

じゅえる「それは秘密だな。彼女が絶対に隠すべき秘密だな。」
まゆ子「バレたらまずいよね、そりゃ。今売れ始めたばっかりのアイドルにそれは。」
釈「その秘密を知る芸能関係者が居るんですよ! そいつが今回爆殺未遂事件の黒幕!!」
まゆ子「おう。つまり秘密を知る黒幕の指示に従って、女アイドルは現場のADを抱き込んで爆発の仕掛けをさせたら、マキアリイがのこのこと爆発のど真ん中に。」

明美「こういうのはどうでしょうか。

 「「潜水艦事件」10周年記念殺人事件」の全貌がマスコミ解禁されて、当然に事件が映画化されるのです。という前提があるわけでしょ。」
まゆ子「うん。そこらへんも上手いこと織り込んでいきますよ。」

明美「この映画には当然に「ヒィキタイタン」が出演するのです。そして「潜水艦事件」最初の映画の「ヒィキタイタン」役は、その男アイドルなんですね。
 最初の映画の「マキアリイ」と「ヒィキタイタン」が、10周年で英雄コンビ復活再結成! とくれば、そりゃあ嬉しい人も多いんです。
 であれば、今度の映画の「ヒィキタイタン」役としてその男アイドルを起用してやろう、という甘言に女アイドルは騙されてしまうんです。

 でも、「マキアリイ」役は今まで頑張ってきたマキアリイ役俳優で、既にシリーズ実績が有る。
 彼が居る限りはこれまでのシリーズの展開に従ってこれまでに登場した「ヒィキタイタン」役俳優が起用されるのは間違いない。シリーズだから。」
まゆ子「当然だね。」
明美「つまり、男アイドルを「ヒィキタイタン」役に起用するには、「マキアリイ」役も替えなくちゃいけない。
 そして大当たり「マキアリイ」役をやりたがる俳優はいくらでも居て、各芸能事務所も手ぐすねを引いて足を引っ張りあい、スキあらばと狙っている。
 というか、「潜水艦事件」の映画は4本も作られて、それぞれに「マキアリイ」「ヒィキタイタン」役は居るんですよ。代役は幾らでも居る。
 そこで、とある芸能事務所の筋からの依頼、という事で現「マキアリイ」役俳優をちょこっとだけ怪我させて今度の映画は降板させよう、という陰謀を女アイドルに吹き込むのね。

 しかし、その陰謀は実はもっと根が深い。てなかんじ。」

 

じゅえる「ちょっとまて。その筋書きは悪くない。悪くないが、マッキーさんご本人はどう活躍して解決するのだ?」
釈「はあ。そういえばマッキーさんが活躍しなくちゃいけないのでした。どうしましょう。」
明美「というか、自分で言っててなんだけど、このシナリオだと情けない男アイドルは実際には出てこなくても済んでしまうよ。それはまずくない?」
まゆ子「ちょっとまて、ちょっとまて、今考える。

 えーとつまり、男アイドルは情けないのだが、それは秘密を知る黒幕からの指示でもあり、女アイドルに情けなくすがるのも実際は演技だったりする。
 もちろん芸能界復帰をしたいと願う気持ちは有るのだが、マキアリイ役に嫉妬とかは実は無かったりする。そういう風に見せかけ女アイドルを意のままに動かす為に。」
釈「じゃあもっと別の価値観から陰謀しているってことですか。なんです、カネですか。」
じゅえる「ああー、そうだな。麻薬の代金を得る為に陰謀に乗っている、というのでもいいな。」

まゆ子「いやそうなるとだね、こうではないか。
 つまりはこの男アイドル、今現在のマキアリイ大ブームが腹が立つのですよ。悪意と憎悪を覚えるのです。
 そして隙あらばこのマキアリイの名声ごとマキアリイ映画の大ブームまるごとにひっくり返して泥に落としてやりたい、と強い悪意の裏付けが有るんですよ。
 そして今回の人気女優の出演だ。そりゃあもう、腹が立ちまくりだ。

 そこで、自分でひっくり返してやろうと、「マキアリイ」役の俳優を別の芸能事務所で入れ替えたいとする勢力に近付いて、「シャヤユート」役女アイドルの秘密を自らぶちまけるのだ。
 そして今回の爆発事件。でも別の芸能事務所はマキアリイブームをぶち壊そうとまでは考えていない。それでは元も子もない。

 正義の味方であるマキアリイのイメージを泥沼に突き落として、社会の混乱を招こうとする悪の犯罪勢力がそこには絡んでいるのです。」

 

明美「すいません、ホモ設定が消えました。」
じゅえる「そうだな、このラインではホモが意味を持たない。なんとかしろ。」
まゆ子「えーーーー、別にホモでなくてもいいじゃんーーーー。」
釈「よくよく考えると、このラインは最初に明美先輩が否定した「芸能界のごちゃごちゃ」ですねえ。もっとプリミティブな男女の愛憎のもつれでもいいんじゃないですかねえ。」

明美「こういった明確な悪意は、男アイドルの情けなさを否定します。よくない。
 彼はほんとうに情けないキャラであるべきです。もうどうしようもないクズですね。」
じゅえる「おう、異議なし。」

明美「であれば、マキアリイブームをぶっ壊してやるのではなく、本当に自分が「ヒィキタイタン」役になりたい、という堅実な妄想によって行動すべきです。
 黒幕はやっぱり黒幕としてちゃんとした圧力と指導力を持つべきです。」
じゅえる「うむうむ。」
釈「そうですね、芸能人としては彼はやっぱりこの大盛り上がりを見せる「英雄探偵マキアリイ」ブームに自分も乗っかりたい、そういう情けない気持ちが一番強いんですよ。
 悪党の黒幕はマキアリイブームをぶっ壊して世間を暗黒に陥れてやるのが目的です。

 マキアリイさんは真の悪役をこそぶっ飛ばしましょう。この情けない男アイドルはクワンパさんがカニ巫女棒でお仕置きです。」
じゅえる「どうだ!」
まゆ子「うーん、じゃあ男アイドルは情けないつまらない、意志薄弱なやつで。」

じゅえる「ところで、マキアリイブームをぶっ壊そうとするのは、どこの反社会勢力だ?」
釈「爆弾破壊組織「ミラーゲン」のしわざですか?」
まゆ子「ミラーゲンでいいんだけど、何か問題有る?」
明美「ミラーゲンに頼り過ぎじゃない?」
じゅえる「となると、ネガラニカ系? ヤクザか別の犯罪組織か。」
釈「「闇御前」一派、という手も。」

まゆ子「闇御前系でいこう。そうだな、今度「潜水艦事件」10周年事件といっしょに、「闇御前」事件も映画化が決定しているんだよ。というか総統府が解禁した。
 そこで闇御前一派がマキアリイ映画自体の流行を覆して、映画制作を潰そうとする。
 どうだ!」

明美「いんでないかい。」
じゅえる「そこは、短絡的で現実的で、アリだな。」
釈「アリですね。」
まゆ子「よし決まり!」

 

明美「ところで、ホモが消えたままなんですが。」
釈「いえもっと重大な問題が残っていました。この事件、殺人事件じゃない!」

まゆ子「あっ、しまったー、殺人が入ってないと「ハリウッド殺人事件」にならない……。」

じゅえる「いや、それ別にいいんじゃないか殺人事件が無くても。」
まゆ子「なんでだよ。」
じゅえる「マキアリイさんと映画関係者の間での事件は、マッキーさんのご人徳によって円満解決で幕を閉じるのですよ。ごくごく平和裏に。
 だが、マキアリイ映画ブームをぶち壊そうとする「闇御前」系の陰謀を、マキアリイを密かに監視している政府系諜報機関が事件を通じて関知してしまった。
 そして情けない男アイドルはまだ、「シャヤユート」役女アイドルの秘密を暴露してダメージを与える事が出来るのだ。

 そこで政府諜報機関はこの男アイドルの排除を決定。
 どこかのドブ川にぷかぷかと浮かぶ事になるのだ。」

釈「ひどい……。」
まゆ子「うう、酷い事件だ。まさに陰謀だな。」
明美「かなり可哀想だけど、一人くらい死なないとケリがつかないしね。南無阿弥陀仏。」

じゅえる「そうだな、そこでこの死体発見後に用意された事件のシナリオというのが、
 「男アイドルが麻薬に手を出して依存症患者になっており、麻薬代をホモの恋人から巻き上げていたのを拒絶され、力づくで奪おうとして逆襲され死んでしまった」というものに。
 どうだ、ホモ設定もちゃんと導入したぞ。」

明美「うう、そんなん違う、許されないよお。」

 

 

2018/01/17

まゆ子「というわけで、新年明けましておめでとうございます。」
じゅえる「もう、1月も半分終わったぞ。」
釈「月日の流れるのは早いですねえ。」

まゆ子「というわけで、今年の目標。とりあえず「なろう」に掲載してみる。」
釈「『罰市偵』ですか。それもいいですねえ。」
まゆ子「いやそれはそうなんだが、この分だと近代化改修を行った『げばると処女』EP1の方が出来てしまうな。これでとりあえず実験的に突っ込んでみようと考える。」
じゅえる「近代化改修ね、アレって結構面白いんだな。」

まゆ子「なんというかねー、昔のあたしってのは一生懸命書いてたんだなあ、というところがよく分かって、なんだか応援したくなるね。
 なにせあの頃は、とにかく文章量文字の量を増やそうとやっきになって考えたから、とにかく分量が多いんだ。」
釈「ですよねー。今にして思えば、1ページ小説の体をしていないから読み直し書き直しがとても難しいんですね。やたらと長くて。」
まゆ子「そうなんだよねー、今だと1ページ内に必ずオチ的なもの入れるし、引きも考えてどんどん先に進めるようにしてるけれど、この時は1回ごとにかっちり〆るからね。」
じゅえる「だからめちゃ苦しかったさ。」

まゆ子「今の眼で見ると、テンポ悪いからかなりの部分を切ろうと思います。でも書いた当時のままの勢いとか流れも極力保存したい。」
釈「わかります分かります。」
まゆ子「その一方でこんなことも考えている。「これ長すぎてめんどいから、1ページ小説にダイジェストしちゃおうぜ」なんてね。」
じゅえる「1章まるごとをシュリンクしちゃうのか。」
まゆ子「出来ます。」
釈「まあ、前に「彷徨える百合SEA−ず」で1ページ小説やってますからね、出来ますね。」

じゅえる「しかし、7巻13章ずつあるぞ。91ページにもなってしまう。」
まゆ子「おそらくは前後編になっている巻は1章が複数ページに分割すべき膨大な内容になってるから、100を軽く突破しますね。解説文もあるし。」
釈「1ページ原稿用紙6枚換算として、600枚。ま、概ねこういうのは増大しますから1千枚の一大長編が完成しますよ。」
じゅえる「おわー、大仕事だなそれだけで。」
まゆ子「ではあるんだがね、所詮は1ページ小説であってしかも内容は既に完成しているのだから、簡単ではあるのだ。」
釈「ちょっとした労力ですが、必要なものは時間だけです。それも「罰市偵」を書く余興として。」
じゅえる「いやそこはだ、「罰市偵」を書く時間と手間を削ってそっちに持っていく、という話だろ。死ぬぞ。」
まゆ子「あ〜、そ〜だね〜死ぬねえ。」

まゆ子「またね、もう一つ「げばると処女」ではちょいと看過しにくい問題も有るんだ。
 各巻各章ごとのタイトルだ。これがよくない。」
釈「昔から分かっていました。」
じゅえる「センスが無いのは重々承知の上で、あえてだっさださにしてたんだなアレは。凝りすぎると逆に痛いから。」
まゆ子「です。しかしそれで良しとしたわけではなく後期には改善しましたし、なにより「ゲキロボ☆彡」で各章ごとにタイトルを付けるという暴挙で徹底的に鍛え上げました。
 既にそれはもう弱点ではない。」

釈「というわけで、タイトルを付け直すつもりですか。」
まゆ子「うん。ま、ださださのタイトルが実は結構良いものも有ったりして、そこは適宜対応します。」
じゅえる「ださださでもよく考えたしな。」

 

         *** 

典型的女子高生巻き込まれ型救世主異世界ファンタジー大河浪漫小説
   『げばると処女』 ダイジェスト版

Episode 1「トカゲ神救世主蒲生弥生ちゃん、異世界に降臨する」

 【プロローグ】

 王都カプタニアの大商人ヒッポドス家の令嬢 ヒッポドス弓レアルは花咲き乱れる中庭の丸机に頭を横にして眠っていた。
 家庭教師のハギット女史がそっと近づいて、頭の上から囁く。声に反応して桜色の長い髪が揺らめいた。

「お嬢様、おじょうさま。ネコが参っておりますよ」
「……ここに呼んで」

 呼ぶも何も、ネコ達はヒッポドスの庭に我が物顔に入り込む。
 普通の屋敷では不吉な客として下男が追っ払うが、ヒッポドス家は、弓レアルは例外的にネコに厚遇する。
 体長1メートル、全身真っ白で尻尾の無い無尾猫は、もちろん功利的に彼女に接近する。

「ヒッポドス弓レアル、起きろー」
「いいはなし持ってきた」

 ネコは人語を喋る。人界をくまなく探索しヒトの間の出来事噂話を収集して、人間に売って回るのが彼らの生業。
 弓レアルが支払うのはネコ専用ビスケット。これを大ネズミの血に浸して食べると得も言われぬ美味なのだ、そうだ。

 ふわり、と桜色の髪が起き上がる。結ってもいない髪は早春の風に吹かれて無秩序にはためく。
 ネコを見て、真白い顔をほころばせる。

「今日は楽しいお話?」
「そうとは言い難い」
「でも面白い」
「みんな待ってた話だ」
「なにかしら?」

「始まる」
「はじまるぞ、弓レアル」
「なにかしら。どこのお話?」

「始まるぞ弓レアル。トカゲの神様だ」

 驚いて弓レアルは立ち上がった。ハギット女史も息を呑む。
 千年に一度、星の天河に住まう神の御使いがこの世界、十二神方台系に舞い降りて人々を苦しみから救う。

 その四番目の救世主が降臨されたのだ。 

 

 ヒッポドス弓レアル17歳。これから始まる激動の運命に翻弄される、本編主人公だ。

 

EP1第一章「救世主弥生ちゃん降臨す」

 此の世は方千里、正方形に似た世界「方台」が人間が生きるべき土地として天河の神より与えられた。
 人は離合集散互いに相睦み合いまた争い殺し合い、それぞれの思惑と感情に基づき歴史を紡いでゆく。
 だが天河の神は人をなすがままに放置したのではない。
 産み捨てたのでない証しに、千年に一度導き手を遣わす。
 これまでに3人の王、三神の救世主が立ち、それぞれの王国を築き上げ人類を繁栄へと導いた。

 そして今。
 約束の時を迎え、新たなる導き手を方台に住む人は期待する。希求する。
 第四の神、トカゲの神青晶蜥「テューク」の御使い、救世主、新しい王国の主を。
 また戦慄する。
 その人が地上に降り立つ時、千年の歴史が裁きに掛けられる。
 先の救世主が興した神の王国が、自らの民を真に救い得たか。神の手で審判が下されるのだ。

 

 新たなる救世主の名は蒲生弥生。
 名門受験校である県立門代高校三年生で成績はもちろんトップ。生徒会副会長をこの春まで務めていたかんぺき優等生美少女である。

 しかし門代高校の生徒はそんな肩書すっかり忘れている。
 本人の印象が強烈過ぎて、その他のレッテルはたとえ総理大臣の表彰でもプロフィールの一隅を汚しているだけに思えてしまう。

 身長は公称150cm。小柄ではあるが容姿は端麗でスポーツ万能。動きの鮮やかさ切れの良さは一流の武道家を思わせ、平時から人目を惹いて放さない。
 弁舌も爽やか論理も明解にして的確、聞く人を自ずから従わせる迫力は、しばしば学校の教職員すら屈伏させる。
 青味を感じさせるほどに透明なつやのある黒髪は先細りして腰まで伸びて、彼女のトレードマークとなっていた。

 だが霊感や超能力のたぐいは持ち合わせていない。夢の中で不思議な異世界を見ることもなく、日常で幻獣と出くわすこともない。
 天変地異で空中に持ち上げられたのでもなければ、UFOがスカウトに来たのでもない。トラックにだって撥ねられていない。
 事前になんの予告も無しに、いきなり、

「ここどこ?」

 気が付くと、ミルクのように濃い霧に閉じ込められていたわけだ。

 濃霧の中ひたすらに西を目指してまっすぐに歩き続けていたところ、折よく真っ白なヒョウが通りかかってこれを捕獲。
 ヒョウは若干小さめで尻尾が無い。
 にゃおにゃおまるで喋るかに声を出すが、そしてなんだか意味が有る言葉に聞こえるが、まったく分からない。

 道案内をさせると、数十匹の白ヒョウと共に西欧中世時代劇の修道士みたいな簡素な服を来た中年男性に出くわした。
 男の言葉もヒョウと同系列で、日本語どころか自分が以前に耳にした地球上のどの言語とも違うように感じる。

 彼は、しかしただ一つ、自分の名前だけは覚えてくれた。

「ワ、ゥワモオィヤヒョィチャァン?」
「そうそう。それが私の名前」

 言葉は通じずとも案内は出来る。彼に付いて行くと、地面に大きく裂け目が走り谷となる。ここに入れと促した。
 危害を加える気は無さそうだから、とりあえず彼の示す通りに従ってみる。
 男は谷底にまでは来なかった。ネコ、たぶんヒョウではなくネコの種であろう、が数匹慎重に足元を確かめ付き従う。

 そして彼女は、それを見た!

 

 谷底から戻ってきた弥生ちゃんは、手を挙げて男を呼ぶ。

「私の言葉、分かる?」
「はい。声は先程と変わりませぬが、意味が頭に染み通り理解できます」
「貴方の言葉も分かる。こいつの超能力ってことか」

 と、艶のある長い髪の上、額と呼ぶよりは頭頂部辺りに鎮座する1匹の小さなトカゲを小突いた。
 青光りして鱗がテラテラと、まったくもってただのトカゲであるが、意思を持つかに決して頭から離れない。

 男はトカゲの姿を確かめようとはするが、真正面から見ようとはしない。巧みに目を逸し視界の端にかろうじて映るように避けている。
 これは「聖蟲」と呼ばれる救世主の証。神の力を人に授ける為に地上に賜われた化現である。

「まことにもって有難く目出度い事でございます。貴女様はこの『十二神方台系』の人間社会を善き秩序に導く救世主に選ばれました。
  天河の星々が指し示す大いなる計画に基づき、世の淀みを吹き払い庶人を蝕む悪を斥け、速やかに新王国を立てられます事を御願い奉ります」
「神様、って、さっきのでっかいトカゲ?」
「ははっ。下賤の身である我にては立ち会う事叶わず、ネコのみが見届けました。まさに青晶蜥神「チューラウ」が地上の化身にあらせられます」
「おう」

 まあ家よりも大きな二本足で立ち上がるトカゲが普通の生物とは思わないし、それが頭の中にテレパシーで話し掛けてくるのだ。
 神でなければ悪魔とかであろうと認識せざるを得ない。つまりはこの世界、ファンタジーワールドである。
 そして大トカゲからその使い魔として、頭に乗って超能力を発揮するカベチョロをもらったわけだ。

 弥生ちゃんに付き添った白い大きなネコ、「無尾猫」というらしい、は目撃談をネコ語で直ちに共有する。
 数十匹のネコがそろって顔色を変えるのを見た。
 毛だらけの顔で顔色もおかしいが、とにかく青ざめるという表情になる。

 それはまあ、神様トカゲをびっくりさせてよろめかせたから、仕方がないか。
 魔法のハリセンなんかを要求すれば、吃驚するわな。
 目の前の男、頭にガラスで作ったトンボの飾りを載せる隠者がネコの話で次第を聞けば、やはり青ざめショックを受けるだろう。

 しかし、であればこそ彼の任務を果たさせてやるべきだ。最初の案内人として神様に選ばれた男の。

 

「で、私は一体なにをするべきなのかな?」

 

         *** 

まゆ子「うん、まあ、もうちょっと短く出来るかな。」
釈「第一話で基本的な設定を提示しなければ困りますからね。欲張りはやめときましょう。」
じゅえる「単純にあらすじを書くのであれば事象をつらつらと並べるだけでいいんだけど、雰囲気を出さないといけないからな。」
まゆ子「極力会話文を残して、人間味というのを演出しないといけないからね。あらすじ書きとしてはちょっとつらい。」
釈「あくまでもダイジェスト版であり、小説としての雰囲気を損なうわけにはいきませんからね。」

釈「ところで、【プロローグ】、要りますか?」
まゆ子「せっかく新しく書いたから。要る。あれが無いと弓レアルが主人公に見えん。」
釈「そうですか。であれば、しかしダイジェスト版ですけどね。」
まゆ子「ちょこちょこと話の番外として設定やら細かい状況設定やらあるけれど、これも極力ダイジェストしてでも載せる。そういう覚悟。」

じゅえる「ま、どこまで削るかはこちらの胸先三寸だからね。いいんでないかい。」

 

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