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2017/12/18 

まゆ子「現在、『げばると処女』EP1を近代化改修作業中です。ずいぶんと読みやすくなりますので、お楽しみください。」

釈「そもそもEP1は「試作品」でしたからねえ。」
まゆ子「まあ、そもそもが「自分に長編小説書けるかどうか、やってみよう!」て企画だったからね。
 本格的に「長編小説書いてみよう」と思ったのが、EP1終了後のEP2からで、焔アウンサという傑物キャラを突っ込んだわけだ。あと「黒の女」」

じゅえる「その「黒の女」とかいうの、いいかげん名前付けてやれよ。呼びにくいったらありゃしない。」
釈「ゴヴァラバウト頭数姉、じゃあ駄目なんですか。」
まゆ子「あのキャラは再利用するつもりだから、大元の出処のキャラ名は「東雲透梨」というのだが、「トウリ」さんと呼んでおこう。」

釈「「罰市偵」、出ますか。」
まゆ子「出るんだが、そうだな主要キャラとしては出ないな。出すか。」
じゅえる「タンガラムの歴史を陰で操ってきた歴史のプロデューサー、としては出るんだね。でもこれは活躍しない。
 似たイメージで、若い頃のキャラと同等の人物を投入するか。」

 

******

まゆ子「というわけで、新しい話を考えます。」

釈「「罰市偵」ですか?」
じゅえる「まあ、次の話を考えるべき時期かね。第三巻最終話の「ハリウッド殺人事件」」
まゆ子「ハリウッドはホーリーウッドではなく、ヒイラギの林って意味です。そこを踏まえて『聖柊林』殺人事件とします。

 じゃない、そうじゃないんだ。実は第五巻のお話だ。
 このお話のヒロインは「潜水艦事件」のヒロインで、父親がゥアム神族の外交官にして物理学博士のタンガラムとのハーフの少女です。
 当時16才だから、26才になりますね。」
じゅえる「行き遅れ、だな。」
まゆ子「それを言うな。」

釈「タンガラムにおいて結婚適齢期って何歳くらいでしょう?」
まゆ子「22才。」
じゅえる「早いな。」
釈「早すぎはしませんから、よしとしましょう。」
まゆ子「ちなみにヒィキタイタンの妹は24才で、まあやっぱりヤバイ年齢だ。」

釈「それで、そのヒロインがどうしました。」
まゆ子「名前が決まった。ユミネイト・トゥガ=レイ=セト というめんどくさい名前だ。
 ちなみにユミネイトが名前で、後はゥアム名での姓となる。母親の姓はゥアムでは引き継がない風習。というか、後ろのはギィ聖符で3文字だ。」
じゅえる「ふむ、漢字3文字名ということか。」

釈「名前が決まるのはいいですね、話がやりやすくなります。」
じゅえる「で、問題が有るわけだ。」
まゆ子「だってさー、ただのポッと出のキャラじゃないんだから、過去の事件のヒロインだし、ゥアムに行ってる間でも色々有ったんだし。」
じゅえる「皆まで言うな。設定が足りない、まるで無いんだな。」
釈「あー、ヒィキタイタンと一緒ですかー、そりゃーまた外伝書かないと駄目ですねえ。」
まゆ子「というわけさ。しかも今度はゥアムでの彼女の生活という話になる。

 で、ゥアムってどんなとこ?」

釈「     ですよねー、   hahaha、どうしましょ。」
じゅえる「そりゃあ、うんまあ、その、なんだ。イメージ的にはアメリカなんだ? アレ。」
まゆ子「インディアンが作った現代アメリカ、的なものです。外国からの侵略を受けた事無いですから。」
釈「まためんどうなものを。」
まゆ子「ちなみにこの間考えた「ネガラニカ」の件において、ゥアムに弥生ちゃんが上陸した時の状況を考証しました。
 聖蟲を乗っけたゥアム神族を相手に、恐竜に乗った弥生ちゃんが槍で戦って何人もから聖蟲を強奪するという荒業で、世界を変革しました。」

釈「恐竜って、デカいティラノとかですか。」
まゆ子「小さなイグアノドンくらいだなあ。ベロキラプトルくらいの大きさで。もちろん草食獣。」
じゅえる「恐竜騎兵か。」
まゆ子「ゥアム帝国の特色としては、二足歩行獣に乗る騎兵が居るってとこですね。ダチョウに乗ったりカンガルーに乗ったり、いろいろです。」
釈「それは良いことなんですか?」
まゆ子「少なくとも、古来より騎獣を利用する技術を持っていたから、他の方台よりも技術が早く進歩したってところは有る。やはり速度は大切だな。
 うん、恐竜というのではなく、二足歩行するカモノハシという手もアリか。」

じゅえる「頭いたくなってきた。でも現代アメリカなんだろ、摩天楼が立ち並ぶ。」
まゆ子「あー。そこまで高層ビルが要るかなあ。」
釈「なにか工夫をしましょう。摩天楼を建てる理由付けが必要です。たとえば、商業ビルでなくて教会ということでもいいんですよ。」
じゅえる「そうだなー、ニューヨークが例外であって、ヨーロッパの第一次大戦くらいの街はあそこまで林立しないしな。」
まゆ子「ほどほどだよ。でも高いビルは建てよう。電波塔として。」

 

じゅえる「でも実際、そりゃあオオゴトだよな。そもそもそのねえちゃんがどうしてタンガラムに戻ってきたのかの理由を考えるだけで、これ設定が膨大に発生するんだな。」
釈「ええ、もちろん面白いお話になる理由でないと困るわけですよ。理由から考えて設定を膨らませましょう。」

まゆ子「基本設定においては、第五巻で原子力開発が題材ですから、ねえちゃんも原子力関連技術に関係する部署に携わっていたと考えるべきで、父親が物理学者であるからそこは普通に納得していただきましょう。」
じゅえる「そうかなあ。ゥアム神族が博士としたら、普通の人間に過ぎない彼女がその域まで到達は出来ないだろうやっぱ。」
まゆ子「そうなんだよねえ、神族と一般人の差は聖蟲が無くてもとんでもなく隔絶してるんだよねえ。」

じゅえる「すくなくとも、ゥアムの公的機関の所属ではない?」
まゆ子「うん。個人的理由でタンガラムに戻っていると考えるべきで、父親の意向を汲んで来たとしても役人ではない。」
釈「それまでにも公的機関に所属した経験は無い?」
まゆ子「大学は行ったと思うんだが、大学職員くらいは有ったのかもしれない。司書くらいは可能なレベルの知的能力は有ると考える。
 とはいえ、ゥアムは超競争社会だからね、少なくとも知的な分野においては。」
じゅえる「頭は悪くないが、トップレベルとは程遠い、そんなもんか。」
釈「そんなもんですね。」
まゆ子「ゥアム神族としての英才教育を受けていない、タンガラム育ちであるからのびのびと育っており、そんな競争社会にいきなり放り込まれて随分な苦労と努力をしたわけです。」
釈「うん、頑張ったんですね。」

じゅえる「じゃあ、父親の神族博士の研究室の司書だった、というくらいにしておくか。」
釈「そうですね。コネで就職するくらいが適当ですね。」
まゆ子「むしろ、タンガラム関係の国際友好団体に加入してボランティア的に働いていた。そういう線で行くべきではないだろうか。」
じゅえる「なるほど。」
釈「タンガラムは母の国ですから、それはアリですね。ましてやマキアリイ映画も輸入されて自分もその上映の仕事に関与していたとか。」
まゆ子「うん。だがゥアム帝国におけるエンタメ業界がどんな形態をとっているか、まったく知らないんだよねー。」
釈「だよねー。」

 

まゆ子「うんなるほど。だいたいわかった。
 つまり彼女はタンガラム生まれという特性を十分に活かす職業をしているんだ。単に通訳というものではなく、タンガラムの風習文化についてもネイティブで知っているというアドバンテージがある。
 そこで、タンガラム文化紹介ということで、マキアリイ映画の字幕作成やら吹き替えやらに立ち会ったり、タンガラム社会のニュースの分析なんかを行う仕事をやっている。

 それと同時に、父親の研究室の司書として、タンガラムの新進気鋭の原子力物理学者との交流の窓口役を務めている。
 まあつまり、この父親は神族外交官であると同時に原子力物理学者であり、タンガラム物理学者にゥアム学会の最新研究を教える師匠であるわけだ。
 ただし、「闇御前」が進めているタンガラムに発電用原子炉を作ろう的な秘密計画に関しては、自分はタッチしない。事情は分かっているが何を言う立場でもない。
 ただ、タンガラム原子力物理学者の動きから、タンガラムでそういう事業が行われているとは察知する。

 ところが、「闇御前」が逮捕された後に彼らの動きに変動が見られ、どうもゥアム政府の側が工作活動を行いタンガラムの原子力発電計画を阻止しようとしているのではと読み解く。
 そして、旧知のタンガラムの学者が危機的状況にあると見抜いて、娘ユミネイトを母国に送って救ってやろうと考えたわけだ。」

釈「なるほど。」
じゅえる「父親の神族が陰謀を見抜いた、ってことだね。なるほど、それは娘自身が察知するよりもはるかに納得し易い。」
まゆ子「この流れを固定でいいかな。」
釈「はい。」
じゅえる「うん、許可する。」

釈「つまり、娘ユミネイトは父親の研究室に手紙を送って交流していた原子力物理学者を訪ねて回るわけですね。リストに従って。」
じゅえる「うん、なんか黒革の手帳的な展開だ。」
まゆ子「なるほど。つまりリストを辿っていく内に、どんどんと事件がエスカレートしていく、という展開にするか。」
じゅえる「だな。最終的には一番重要な学者に辿り着き、決着に至るわけだ。うんうん。」

 

まゆ子「……トウリさんを出すか。

 ヒロインはユミネイトなんだけど、もう一人ヤバイ感じのゥアム美女を。」
釈「ああ。そういうことであれば、ゥアム帝国から来た刺客、って感じではどうでしょう。」

じゅえる「刺客と言っても、アレの犯人は「幻人」と決まってるからな。脳内怪人だ。」
まゆ子「脳内怪人専門ハンター、というのでは?」
釈「アリです。」
じゅえる「うむ、第三者的な立場はいいね。」

まゆ子「つまり、この事件においてはゥアム帝国は3方面からの介入を行うわけだ。

 一つは、「闇御前」バハンモン・ジゥタロウと結託して国際陰謀を行い、タンガラムに原子力技術を移転させる計画を行ってきたが、「闇御前」逮捕を契機として計画の破壊を目論み、刺客として「幻人」を放った勢力
 二つ目が、その陰謀から前途有為の若手物理学者を守ろうとする「潜水艦事件」のヒロイン勢力。
 三つ目が、ゥアム皇帝政府によって派遣された「幻人」ハンター。放置すると「幻人」の被害が大拡大パンデミックしちゃうのを阻止する

じゅえる「幻人、てのは、どうやって滅ぼすんだ。脳内に住んでいるんだから、憑いてる人間を殺すのか。」
まゆ子「殺します。」
釈「殺しましょう。」
まゆ子「殺すと言っても、幻人自身は知的能力も高く行動に世間の法の枷も無く、どのような非道な振る舞いも出来るから、かなりのオオゴトになるわけですよ。」
じゅえる「そこで専門ハンターが必要ってことか。なるほど、ではハンターも強キャラでないといかんね。」

釈「そうですね、「幻人」が取り憑いたマキアリイを、そのままに放置しておくという選択肢は、物語の展開上ダメですからね。スリリングでないと。
 「幻人」が取り憑いたことでマキアリイが破滅すると、明確に表現しなくちゃいけません。早急な治療が必要だと。
 具体的な刺客の存在は良い展開です。」

じゅえる「殺そう! その女、トウリさんは後の回でも使うとして、男の脳内怪人ハンターがこれまた凄腕なんだけど、幻人の悪辣な罠に嵌って惨殺されるという猟奇事件!」
釈「おう! エクセレント・かませ!!」
まゆ子「うむうむ、そのくらいは必要だね猟奇事件。」

じゅえる「で、トウリさんは2メートルなんだ。身長。」
釈「さすがにそれは、185くらいにしましょう。マキアリイが183センチですよ十分デカ女です。」
まゆ子「そうだな、ヒール履いたらマキアリイよりもデカイ、というのが良い感じで。」
じゅえる「エロいのか?」
まゆ子「そりゃあ、」
釈「おっぱいぼいんぼいんでしょう。さすがはゥアム人てくらいに。」
じゅえる「アメリカンなわけだな。

 ユミネイトのおっぱいは?」
釈「そりゃータンガラム的にささやかな。」
まゆ子「貧乳とそしられない程度には有りますよ、さすがに。全体的にスリムな知的キャラですが、後にヒィキタイタンの嫁になるのですから、それなりに良い身体です。」
じゅえる「まあ、世間一般のヒィキタイタン信者が嫉妬する程度にはモデル体型の美人だな。うん。」

 

まゆ子「まあそれはそれとして、ユミネイトのキャラに厚みを出すために、やっぱりまた外伝書かないといけないのさ。」
釈「いけませんねえ。仕事ばっかり増えますよ。」

じゅえる「ところでさ、彼女はゥアム帝国から来るんだから東岸部の都市に汽船で来るんだよね?」
まゆ子「そりゃ当然に。」
じゅえる「東岸部には原子力物理学者、居ないわけ? 居るならまずそちらに挨拶に行くだろ、この流れなら。」
釈「当然ですねえ。」
じゅえる「マキアリイもヒィキタイタンも東岸には居ないぞ。」
まゆ子「あ。」
釈「行きがかり上そうなりますか、そりゃまずい。彼女が一人で猟奇事件に遭遇する。」

まゆ子「マキアリイを出迎えに出すか。しかし東岸部は遠いからなあ。幹線鉄道を乗り継いでも1日はかかる。」
じゅえる「飛行機で行けばいいじゃん。」
釈「おう、そうでした。マキアリイは飛行機操縦出来るんです。おんぼろ水上機の後席に乗せてヒィキタイタンの居る首都ルルント・タンガラムまで飛びましょう。」
まゆ子「分かった。そこは手配する。というか、いい具合にその展開だとクワンパがノゲ・ベイスラに置き去りになるな。うん予定通り。

 そうか、東岸部の途中には先進科学都市であるギジジットがあって、そこには当然に最新科学としての原子力発電所建設プロジェクトも有るんだ。
 ユミネイトはそこには必ず行く。であれば、足が必要。
 マキアリイの水上機で飛んでいくさ。」
釈「機体のレンタル代がとんでもない事になりますね。」
まゆ子「うん。首都に行ってヒィキタイタンに言われちゃうのさ、「自分の飛行機貸してやったのに」って。」
じゅえる「ああ。そりゃーまずかったね。クワンパに殴られる。」

 

******

まゆ子「さてそれではユミネイトのキャラについて考えよう。

 現在26才タンガラムの母とゥアム神族の外交官にして物理学者である父との間に生まれたハーフで、
 母親はどうなった?」
釈「潜水艦事件の時は母親はどうだったんですか。」
じゅえる「というか、彼女16才の時にはもう許嫁が居ただろ。たしか、アホな事をやって殺されてしまう。」

まゆ子「あー、そういえばそうでした。でも許嫁かあ、もちろん神族の父親が居るわけだから上流階級出身なわけだが、タンガラムにおいてもそうなのか。」
釈「そうですね。神族ですからタンガラム側でも上流階級が接遇している内に、名家の娘が恋仲に落ちて、というシナリオですね。
 許嫁はその名家の線で。」
じゅえる「そこに問題は無い。しかし16才からもう結婚となると、どうなんだろう。政治的か家系的な都合というか背景というか、複雑な事情が有るはずだな。」

まゆ子「となるね。母親の事情がよほど変なのか、それとも神族の嫁になってしまったのがダメなのか。」
釈「経済的な事情からかな。」
じゅえる「どっちがいいか。なにか家系的な問題か、経済的な問題か。」
まゆ子「うーん、どっちが面白いかなあ。」
釈「つまりネタが有るか無いかですね。このゥアム神族がタンガラムにおいてどの程度の影響力を持つ人物であるか、……原子核物理学者だから学問関係か。」

じゅえる「うーん、それは無しで。母親は生きていた、少なくとも潜水艦事件直前までは生きていた。ああ、こういうのはどうだろう。
 タンガラムの名家の娘がゥアム神族と恋に落ちて、結婚というのではなく愛人となってユミネイトを産んだ。
 しかしながら、彼女はゥアムに行くことは拒絶してタンガラムに住み続ける。神族の彼は行ったり来たり。
 母親はユミネイトを養育するに当って特に経済的な困難など無く裕福ではある。しかし、彼女の懸念はユミネイトがゥアム帝国に連れて行かれる事だ。」

まゆ子「わかった。ユミネイトがゥアム帝国に連れて行かれない為に実家に頼んで鎖を付けておこうという話になって、許嫁という方法を用いていたんだな。」
釈「それでは、許嫁とは名ばかりで本人には何も思うところは無いのですか。」
まゆ子「そうかもしれない。少なくとも母親が生きていた時分においてはそれでよく、成人した後に本当に結婚するかどうかは自分でなんとかするつもりであった。
 しかし潜水艦事件の1年くらい前に母親が病死して、ゥアムに帰っていた父親がタンガラムを訪れ、ユミネイトを連れて行こうと考える。」

じゅえる「うん。母親が死んでいるという不幸は、ヒロインとして適当な属性だな。」
釈「もう少し属性が欲しいところです。父親が長く不在が多かったことが何か彼女のパーソナリティに影響を与えるとか。」
まゆ子「まあそれはともかく、許嫁の男の方は十分に彼女に対して惹かれており、さらに神族の親戚となることで権益的利益が発生することを十分に認識している、と。」
じゅえる「やっぱりゥアム帝国と結びつきが有ると有利な点が発生するのか。」
釈「これは潜水艦事件の陰謀とはまったくに関係の無い、実業的な利益ですかね。官界で公務員として、外交官になるとかではなく。」
まゆ子「ふむ。やはり実業だな。金儲けだよ。」

釈「この許嫁の家系の設定をまず考えないといけませんね。」
まゆ子「つまりは、母親の家系の設定だな。その許嫁は多分親戚筋だから。」
じゅえる「またぞろ黒甲枝家にするか?」
まゆ子「いやいや、南海岸のイローエントかタコリティの名家で、……網元か。」
じゅえる「そうだな、許嫁の家系の方は網元くらいがいいな。地元の実力者だ。それで母親の方の家系は親族ではあるがもうちょっと公的に身分の高い、伝統のある。神族?」
釈「ギィール神族ですか。元々は海賊の家系であったとかでもいいんですよ。」
じゅえる「海賊王かー。逆につまらないな。銀行系にでもしておくか。」
釈「銀行金融系だと、あまりにも無難すぎますが、どうです?」

まゆ子「金融系でいこう。地元商工会の主催するパーティで神族外交官と遭遇してフォーリンラブなんてのは、堅い家であればこそ引き立つ。」
釈「そういう観点もアリですか。では銀行系の家系で。」
まゆ子「跡取り娘、というのではないな。他に兄妹が居てそちらの方が家業を継ぐ事になっていて、彼女は元から外に嫁に行く要員だ。で、神族と結びついて父母も諦め顔。」
釈「金持ちの家ならばその程度のイレギュラーはむしろ普通ですか。」

じゅえる「であれば、母と娘が二人で住んでいる小奇麗なお屋敷とかを普通に用意できるだろうな。誘拐事件の舞台設定としては十分だ。」
釈「その家は、神族の父親がタンガラムに帰ってきた時は家になるわけですよ。
 そして母が亡くなったという報せを受けて、父親はゥアムより戻ってきて、ユミネイトを本国に連れ帰ろうという相談を実家の筋と行っている最中、と。」

じゅえる「はは〜ん、なる。それはつまりだ、許嫁は網元の家の方では銀行家と繋がる為の重要なリンクであって、ゥアムに連れて行かれては困るという理屈なんだな。」
まゆ子「十分実利的合理的な判断として理解できるね。執着するはずだ。ゥアム神族の方は特に関係ないと。」

 

 

17/10/13

まゆ子「というわけで、「マキアリイの歌」は出来た。となれば当然「クワンパの歌」も作らねばなるまいさ。」

釈「エンディングの方ですね。しっとりとしたバラードとか、本編の大活劇を見た後での鎮静化というか、落ち着いたやつです。」
じゅえる「マキアリイの歌の方が漢語ばっかりだから、こっちはひらがなカタカナで柔らかく行こう。」

まゆ子「うんうん、セオリー通りだ。

 でさ、「ヤャラアタ」って誰?」

釈「誰もなにも、6番目のカニ巫女でしょ。クワンパさんの2つ後です。」
じゅえる「本編には出てこないよね。なにせ5番目だって出て来ないんだから。」
釈「5番目「ポラパァーラ」はクワンパ編最終回にちょこっと出てきます。カニ巫女にも関わらずキンキラキンのお姫様です。」
まゆ子「いやそこは分かってるんだ。でもさ、年表見たら「ヤャラアタ」の事を「運命の子」と表記しているんだ。

 「運命の子」って、何?」

(以下、別頁にて)
  内容は悪の黒幕「ネガラニカ」について 「名探偵総登場!」 ゥアムシンドラバシャラタンの歴史

 

*** 

まゆ子「……というわけでさ、「ネガラニカ」というのを軸に色々考えたわけさ。」

釈「ですねえ。」
じゅえる「補足設定でも作るのか?」
まゆ子「いや、テレビのニュース見てて考えたんだ。「トランプ大統領が日本に来る」ね。」
釈「そうですねえ。11月4日でしたか5日でしたか。」

まゆ子「私は今「「潜水艦事件」10周年記念殺人事件」を書いていて、ついでに正月に起きたヒィキタイタンの事件を書いてるわけさ。
 これ両方にタンガラム民衆協和国総統ヴィヴァ=ワン・ラムダ氏というのが出るんだな。」
釈「出るんですねえ。」
まゆ子「で、考えた。「ヴィヴァ=ワン総統も外遊しよう」

 いや実はね、タンガラムゥアムシンドラバシャラタンは、この四カ国今に至るまで他国に国家元首が訪問するって事が未だ無いんだよ。互いに遠すぎるから。
 国内政治を考えると何ヶ月も空白にするわけにはいかない。
 そこでヴィヴァ=ワン総裁は考えた。今外国への親善訪問を行えば歴史に名が残る!」

じゅえる「クワンパの話に新しく突っ込むのか、それ。」
まゆ子「いやいや、さすがにそれは無理。クワンパの次のカニ巫女「ポラパァーラ」の時の事件として、マキアリイも総統にくっついて外国に行ってみようかなと。」
釈「何処にです?」
まゆ子「一番重要なゥアム帝国との間で親善訪問をしてみようかと。」

じゅえる「ふーむ、でも遠いんだろ。」
まゆ子「汽船で行くと1ヶ月は掛かりますね。行きに1ヶ月、向こうで1ヶ月、帰りに1ヶ月。」
釈「うわー。」
じゅえる「でも日本も明治維新後に政府要人が揃って欧米視察に行ったんだろ。3ヶ月は長いが、無いとは言わないな。」
まゆ子「いやいや、この時代汽船でなくても、飛行船も飛行艇も有ります。飛行艇は一足飛びには行けなくて途中で海の上で給油しなくちゃいけませんが、3日で飛べます。」

釈「おお! それでいいじゃないですか。」
まゆ子「なんだけどさ、定員が少ないから総統閣下本人とスタッフと護衛 計10人くらいになってしまうんだな。」
じゅえる「う。ちょっとまずいなそれ。」
釈「歴史的意義を考えると、随員百人は欲しいところですね。」
まゆ子「だろ。このやり方だとマキアリイが付いていく事も出来ないのさ。
 そこで考えた。

 海外派遣軍をゥアム近海に集結させて基地として、そこまで飛行艇で飛んでいく。飛行艇はピストン輸送して随員を現地に多数用意する。
 最後にヴィヴァ=ワン総統が飛んできて、一番立派な軍艦で堂々と乗り込んでいくのだ。」

じゅえる「おーなるほど。最初の訪問が無力な印象を与えると困るからな。」
釈「威風堂々最新戦艦で登場ですか。なるほど、それは立派な計画です。」
まゆ子「このやり方だと、マキアリイとお供のカニ巫女が無理なく行ける。ヒィキタイタンも付いていける。
 ヒィキタイタンの嫁はさ、ゥアム神族の外交大使の娘じゃないですか。クワンパの頃に結婚している。
 だったら当然に総統に付いて行くよね。」

じゅえる「うんうん。なるほど。でもマキアリイって要るの?」
釈「そうですねえ。マキアリイさんは政府要人でも官僚でもない、名ばかり名誉軍人です。護衛役も多数居るでしょうから、」
まゆ子「そりゃ軍艦に陸戦隊くらい乗せて行くさ。」
釈「ですよね。何の為に連れて行くんです?」

まゆ子「実はさ、マキアリイ映画はゥアム・シンドラ・バシャラタンに輸出されて、各国で大人気なんですよ。
 なにせ本物のヒーローの本物の事件を扱っているから、迫力が違う。作りものとは格が違うのだ。
 で、ゥアム大衆にも英雄探偵マキアリイは大人気。であれば人気取りの為に連れて行こうという話になる。」
じゅえる「うーむ、それも政治か。」
釈「なるほど。本物のヒーローが本国からやって来たとなると、それは大したイベントですね。」

まゆ子「でもさ、ヴィヴァ=ワン総統の思惑は別のところにもあるのさ。
 マキアリイって、常にトラブルに見舞われて謀略に巻き込まれるでしょ。
 ヴィヴァ=ワン総統も、この時期にはちゃんと国際謀略組織「ネガラニカ」の存在を知っているのさ。だがまるで正体不明。
 そこで、マキアリイを餌に炙り出そうという危険な思惑もあるのさ。」

釈「あざとく、危ない遊びですよそれ。」
じゅえる「でも面白い。よし、それでいこう。」

まゆ子「と言っても書かないんですけどね。ポラパァーラの頃の話だから。」
じゅえる「いいんだよ、色んなところで色んな形で引用される事になるんだから、作っていても。」
釈「そうですね。それに巫女ポラパァーラには派手な事件が必要です。これまでまったく何も決まっていませんから、そのくらいどんと打ち上げましょう。」

まゆ子「うん、バランスというものがあるからね。  「恋する巫女」クワンパ、「運命の子」ヤャラアタ に比べて遜色の無いウェイトがポラパァーラにも欲しいからさ。
 ちなみに彼女に二つ名をつけるとすれば「絢爛豪華」ポラパァーラ なんだが、さすがにちょっと個性が薄いと考えていた。」
釈「「洋行帰り」のポラパァーラ でいいです。」
じゅえる「十分だ。」

まゆ子「それまでの巫女の二つ名は、「聖女」ケバルナヤ 「爆弾小娘」ザイリナ 「麗しき狂犬」シャヤユート となります。」
じゅえる「相変わらずシャヤユートはひどいな。」

釈「最後の第八巫女は「拳銃巫女」シクゥヴァル。第七の双子「シスメィ&カトラマヤ」はどうしましょう。」
じゅえる「双子、だけじゃ寂しいか。どうする。」
まゆ子「あ〜、そうだねー。普通に考えると「英雄社長」シスメィ&カトラマヤ でいいんじゃないか。
 双子という特性よりも、マキアリイが当時どうであったかの方が重要じゃね? 巫女との関係性の意味合いからも。」

釈「ちなみに、シスメィはカニ巫女で、カトラマヤはトカゲ巫女見習いです。」

まゆ子「ポラパァーラ時代の物語の軸は、この「マキアリイ、洋行する」を中心として、ポラパァーラの故郷である東岸部を舞台としてギィール神族またゥアム神族絡みの不思議事件。
 さらには、北方ボウダン街道を拠点とする犯罪帝国「追剥挺国」の若きプリンスが、マキアリイの事を「兄さん」とか呼んでくる問題。
 老名刑事を交えて、マキアリイの両親と出生の秘密について探る。ということにします。」

 

 

17/10/11 

まゆ子「ヒィキタイタンの話、初稿書けた〜! ついでに三巻第二話「「潜水艦事件」10周年記念殺人事件」は第一話10章分ヒィキタイタン颯爽登場まで書けた〜。
 というか、第一話だからどこで切ろうかという問題で、ヒィキタイタン登場で切るか、その先の国家総統登場で切るか。そういう塩梅。」

釈「その2つは同時に掲載しないといけないものですか。」
まゆ子「いや、同日の話であるから一緒に載せたらまとまりがいいかなと。ちなみにそこに至るまでにマキアリイとクワンパはとっくに一騒動起こしております。」
じゅえる「順調、てことか。」

まゆ子「ぜんぜんです! 「ヒィキタイタンの日常」行きがかり上目一杯設定を考えて書いてますが、これ掲載時には全部捨てます。補足ページを後で追加しとくことになります。」
釈「そうでしたね。今回設定てんこ盛りなんです。」
じゅえる「政界の人間を或る程度揃えないといけないからな。」
まゆ子「与党主要人物の一部のみです。おそらく、これでは第六巻では全然足りない。しかも野党ゼロです。」
釈「政治なんか書くものじゃありませんねまったく。」

まゆ子「その分タコ巫女タルちゃんを随分とキャラが立つようにしたぞ。これは使える。」
じゅえる「はいご苦労さん。巫女寮についてもそろそろちゃんと描かないとダメだからな。」
まゆ子「というわけで、第三巻第三話「おみやげクワンパ」においては、巫女寮にページを割いております。タルちゃんも大活躍です。」
じゅえる「ふむ。」
釈「楽しみです。」

 

まゆ子「というわけだ。ここでそろそろ例の計画を実行すべきではないだろうか!」

釈「「例の計画というと、あの、」
じゅえる「誰も何も分かってないという、例のあれか。」
釈「というか、聞いたことも無いです。」
まゆ子「まだ言ってなかったっけ? つまりヱメコフ・マキアリイという男はえらく大人気で映画でもテレビドラマでも作品いっぱいのスターなのだ。」
釈「はい。」
まゆ子「映画が有るなら当然にテーマ音楽が有る。歌が有る。「マキアリイの歌」をそろそろ考えるべきではないだろうか!」

じゅえる「すまん、作詞ってやったことない。」
釈「同じく。」
まゆ子「おなじく。」

釈「明美さまー、あけみさまーたすけてー。」

 

明美「はいどうも。わたしもやったこと無いです。というか、曲が無ければ詞も書けないでしょ。」
まゆ子「そこは秘策がある。ものの本によれば、作詞をする時は自分が好きな歌・曲に合わせて替え歌を作ればいい、とのことだ。」
じゅえる「なんだったかなーそれ言った人。」
明美「まあ。そういう手で行くのであれば、やってみましょう。で、どんな曲?」

まゆ子「うん、つらつら考えた結果、タンガラム音楽というのは、この時代の映画のテーマ局や主題歌はどうも「河内音頭」に似ているのではないかと。」
じゅえる「かわちおんどだああ。」
釈「知りませんよそんなの。なんでそうなるんですか。」
まゆ子「いや、伝統的な音楽に乗せて物語性の高い詞を歌手がソロで歌い上げる、というのがタンガラム音楽だ。演歌じゃないよ、もっとプリミティブだよ。」
じゅえる「うーん、まあ、分かるけどね理論的にそう導き出すというのは。」
釈「しかし河内音頭ですかあ。どれがスタンダードであるのかさえ分かりませんよそんなの。」

明美「あほだら経でいいのかな、つまり。」
まゆ子「いや、まあ、たしかにその流れではあるのだが、時事性の高い歌詞であるのは確かであるし批評や風刺が利いているのは確かだろう。
 そうなんだけど、もうちょっと大衆が熱狂するかっこいい、誰もが口ずさむ、歌っていると元気が出る。マキアリイというキャラクターを自らに宿す力を持つ。
 そういう歌になってもらいたい。」

じゅえる「むずかしい事を言いやがるぜ。」
釈「つまりはロボット物とか冒険活劇アニメの主題歌みたいのを、河内音頭で歌えばいいわけですね。」
まゆ子「そうかな。そうかもね。」

明美「河内音頭であれば関西だね大阪だ。大阪で有名な歌手といえば。」
釈「河内音頭であれば、河内屋菊水丸ですかね、今は。」
じゅえる「すまん、名前は知ってるけど聞いたこと有るか無いかすら分からん。」
釈「考えるよりもここは聞くべきです。」

 

(聞いてる)

 

じゅえる「つまりこの「河内十人斬り」みたいなのを書けばいいわけだ。」
釈「セリフが入りますね。これでいいんですか。」
まゆ子「かなり平易な文章で、感情を表すセリフが入るわけだね。これをマキアリイの解決した事件に当てはめていけばいいわけだ。」
明美「……、長い。」

釈「確かに。」
じゅえる「そりゃ十数分とか30分とかになるだろう全編歌ったら。」
明美「アニメのオープニングみたいに1分半で収めてもらいたい。」
まゆ子「ああ、映画のオープニング主題歌だからねえ。そりゃあ絶対条件だ。」
釈「じゃあこのまま喋るのは得策ではありませんね。」
じゅえる「この歌詞は、当時の無学文盲の人に時事を解説するための新聞読みというやつだから、オープニングにするにはそこまでくどく書く必要はないぞ。」

明美「小学生でも頭のいい子程度なら理解できる、そのくらいがいいと思う。」
釈「割と抽象的な表現でも許されるという事ですか。」

明美「ついでに言うと、一本の映画のテーマ曲でなくてシリーズ映画「英雄探偵マキアリイ」を通して使われるものだから、マキアリイ自身のカッコイイところを描くべきだと思うよ。
 個別の事件の詳細でなく。」
まゆ子「うん。個別事件物は「潜水艦事件」のみでいい。後はこれから活躍するマキアリイに乞うご期待!という感じでおねがい。」

じゅえる「承りましたがね。どのラインで行くかね、やはり武勇を真正面から押し出していくか。それとも神の如き推理力を、」
まゆ子「そんなものはない。」
釈「静と動ですよ。マキアリイという人はいつもいつも荒ぶっているわけではなく、平素の時は穏やかな人に好かれる街の人気者なんです。
 だが一旦悪を見つければ鬼神ごとき強さを発揮して、ただの巡邏軍や警察局では追い切れない根深い悪を、権力を嵩に着て人を苦しめる悪党どもを根こそぎ退治する。
 更に国家からも高く評価される国民的英雄であり孤高のヒーローである。
 この三極を歌詞の中で描かないといけないのです。」

明美「長すぎる。」
まゆ子「一番二番三番の歌詞ということで、映画で歌う時は一番だけを歌うってことで。」
明美「じゃあ最初から勇壮でいきますか。」
釈「そうですね。イケイケマキアリイ、という感じで。」

 

明美「ヒィキタイタンは出すべきかな?、歌詞の中に。」
まゆ子「う〜〜〜〜〜ん、迷うう。」
釈「いや時代考証的に考えると、この映画音楽はマキアリイが刑事探偵となって間もない頃に書かれたものです。
 世間一般で「英雄探偵マキアリイ」の名が定着したのは、2本目の映画『英雄探偵マキアリイ 実話:唸る鉄拳 侠(おとこ)百人殴り』からです。
 この時の主題歌が世間の人の耳にこびりついて、以後親しまれていく。と解釈するのが良いでしょう。」
じゅえる「この時期はまだヒィキタイタンを事件に引っ張り込むまではしていない。つまりヒィキタイタン出て来ないって事だ。」

まゆ子「ふむふむ。侠百人殴りは入れていいかな。」
明美「うん。ぐっどだぜ。」
釈「許可します。殴って殴って殴りまくる。そういう歌詞にしましょう。」

じゅえる「だがちらっと「潜水艦事件」の英雄が今の世に刑事探偵として復活だ、という感じでヒィキタイタンもちょこっと出してやる方が通りはいいんじゃないかい。」
まゆ子「そこは表現上の問題だな。」
釈「ゲルタは欠かせないでしょう。マキアリイのトレードマークとして。」
まゆ子「ソル火屋の屋根裏部屋で寝るというイメージを固定させなくちゃいかんしなあ。」
明美「この事件の頃は、カニ巫女はケバルナヤなんだね。最初の聖女っぽいよく出来た巫女。」
じゅえる「その内助の功的なものを描かねばならないだろうね。」

まゆ子「あー分かった。つまりはだ、カタカナをいっぱい出すべきか、そういう問題になるんだ。」
釈「固有名詞はだいたいカタカナですからね、この物語。」
明美「でも聞くのは日本人だ。」
じゅえる「うん、日本人が歌うんだよ。」
まゆ子「……えーとつまりー、本文中みたいに極力外来語を減らせということか。」
釈「固有名詞すら削るべきですよ。「ヱメコフ・マキアリイ」だけ1回出てくればいい。」

明美「お囃子は?」
まゆ子「タンガラムの歌謡に、無意味な囃子言葉は出てきません。有るのは神様への祈祷の文言です。」
じゅえる「じゃあそれ入れて。」
まゆ子「日本人が聞くと無意味だぞ。」
釈「いいんですよ、河内音頭なんですから。」
明美「カタカナ語は全部そこに押し込んじゃえ。」

まゆ子「わかりましたー。考えます。」

 

”ヱメコフ・マキアリイを讃える歌”

「昔、おとこありけり」(セリフ)

 幾百万の人ぞ棲む、この方台は文明の 電気伝視の世の中で

 上辺は黄金(こがね)の輝きの 闇より悪の忍び寄る 銭と権とで罷り出る

 泣くは巷の者ばかり

(テケテン ペンペン)

 抗う術の無きものか ここに一人の男あり

 鹹魚(かんぎょ)の煙(けむ)に燻されて、まどろむ屋根裏階段(きざはし)の

 呼び来る声に目を覚まし 正義の朝日今ぞ差す 

(ぺぺんペンポン)

 立つは黒鉄(くろがね)南洋の 怪鯨戦(いくさ)の船なれば

 兵(つわもの)二人若人の 国を思えて奮迅の

 力を示す殊勲の星ぞ 悪党どもをなぎ倒す

 数えてそれより五・六年

 並の者なら世に倦(う)みて、栄華に溺(おぼ)る毎日が 

 我が身を捨てて今奮う

 これぞ怒りの鉄拳だ

 殴れよ殴れ打ち倒せ 剣(つるぎ)鉄砲なにするものぞ

 カニ巫女棒ほど怖くはないさ

 俺の名前を覚えておけよ 英雄探偵ヱメコフ・マキアリイ

(ヤサエンヤラドッコイショ)

 

まゆ子「出来た。」
明美「うん。」
釈「いいんじゃないですか。」
じゅえる「上出来だな。最初の映画、2番目か、のものとしてはこれで十分だな。」

まゆ子「じゃ、採用します。第四巻「シャヤユート最後の事件」の冒頭に載ります。」

じゅえる「でも最初のセリフ「昔おとこありけり」は、2番目の映画の主題歌としてはおかしいんじゃないか。」
まゆ子「ああこれは、50年後に作られたテレビドラマ『罰市偵 〜英雄探偵とカニ巫女』で使われるバージョンです。
 50年前ですからねえ、そりゃあ「昔おとこありけり」ですよ。」

 

”ヱメコフ・マキアリイを讃える歌”

「昔、おとこありけり」(セリフ)

 幾百万の人ぞ棲む、この方台は文明の 電気伝視の世の中で

 上辺は黄金(こがね)の輝きの 闇より悪の忍び寄る

 銭と権とで罷り出て 泣くは巷の者ばかり

(テケテン ペンペン)

 抗う術の無きものか ここに一人の男あり

 鹹魚(かんぎょ)の煙(けむ)に燻されて、まどろむ屋根裏階段(きざはし)の

 呼び来る声に目を覚まし 正義の朝日今ぞ差す 

(ぺぺんペンポン)

 流す涙を捨ててはおかぬ 奮え鉄拳我らの怒り

 殴れよ殴れ打ち倒せ 剣(つるぎ)鉄砲なにするものぞ

 カニ巫女棒ほど怖くはないさ

 俺の名前を覚えておけよ 英雄探偵ヱメコフ・マキアリイ

(ヤサエンヤラドッコイショ)

 

まゆ子「短縮バージョンです。子どもが歌うならこっちの方がいいかな。
 真ん中はソル火屋網焼き店の屋根裏で下宿していたことを書いてるから、ソル火屋バージョンと呼ぶべきか。ケバルナヤ編です。」

釈「「潜水艦事件」の下りを抜いたんですね。」
明美「ふーむ、マキアリイさんの熱狂的ファンなら、「潜水艦事件」をちゃんと歌えよと怒るかもね。」
じゅえる「だいたい三番まで長さを合わせたわけか。元は四番まであった、ということだね。」

まゆ子「あとでお囃子の部分をカタカナでこしらえて、それで異国の歌っぽくしますよ。
 歌詞ってものは基本的になんか少ないなあ文字足りないなあ、てもんだからね。小説書く身としては物足りないんだ。」
釈「だからこその特殊技量ですよ。」

 

 中都湖南の市(いち)に住む 鉄車轟く橋の下

 構えし正義の砦にて 電話番する艶姿

 赤き花とて近づくな やがて手が出る棒が飛ぶ

(テケテン ペンペン)

 ここに一人の男あり

 憂いの人も科人(とがびと)も 縋るを袖には出来ぬ質(たち)

 証を求め東西へ 旅の道連れ人殺し 

 爆弾毒殺なんでもござれ

(ぺぺんペンポン)

 今ぞ皆んなの待てる時 疾(はし)る白球弱きを救え

 殴れよ殴れ打ち砕け 値千金誉れの拳(こぶし)

 苦き盃(さかずき)奢るぜ今日は

 俺の名前を忘るるな 英雄探偵ヱメコフ・マキアリイ

(ヤサエンヤラドッコイショ)

 

まゆ子「これがザイリナバージョンです。鉄道橋のマキアリイ事務所を描いたものですね。「中都湖南」はノゲ・ベイスラ市を意味します。
 シャヤユート、クワンパ、ポラパァーラ、ヤャラアタまでのカニ巫女はこれになります。
 ちょっとお酒好きというのを入れてみました。
 が、ソル火屋バージョンの方がかっこいいか。」
釈「もうちょっとですねー。」

まゆ子「ちなみに、中都とは方台中央部に位置するアユ・サユル湖周辺の大都市を意味します。ルルント・タンガラム、カプタニア、ヌケミンドル、ノゲ・ベイスラの4都でおまけにサユール入り口が加わります。
 カプタニアは「中都神樹の関」(元々が関所である)、ヌケミンドルは「中都拱橋の大市」(ヌケミンドル市は古代金雷蜒王国が築いたアーチ橋が名物)、ルルントタンガラムは「中都渡岸の華」と呼ぶ
 サユールの入り口エィクトゥラタ・サユル港は「中湖絶壁 鄙の戸」と古来より称される。

 

 眺(なが)む黒鉄(くろがね)南海の 怪鯨戦(いくさ)の船なれば

 兵(つわもの)二人若人の 国を思えて奮迅の

 力を示す殊勲の星ぞ 奸賊どもをなぎ倒す

(テケテン ペンペン)

 数えてそれより五・六年

 並の者なら図に乗りて 栄華に溺(おぼ)る毎日が

 何を思うか泥の海 庶人(ひと)の中にて輝ける

 立身出世は

「ヒィキタイタン、任せたぜ」

(ぺぺんペンポン)

 これぞ我らが心映(こころばえ) 腹を括って胸を張れ

 悪に限りは無いものぞ 明日晴れてもまた曇る 

 あんただけには任せちゃおかぬ

 俺も男にしてくれよ 英雄探偵ヱメコフ・マキアリイ

(ヤサエンヤラドッコイショ)

 

まゆ子「で、これが「潜水艦事件」バージョン。庶民のヒーロー「マキアリイ」を強調してみました。
 一般市民も悪を許さず犯罪と戦うぞテイストのやつ。
 まあ、英雄待望論だけでは情けないと、この世界の人も分かってます。民衆主義は個々人が社会を築くものだと。」

明美「セリフがここに入ったね。」
まゆ子「どうかな?」
じゅえる「いいんでないかい。三番なんだから変則的でも。」
釈「そうですね、ヒィキタイタンの名前がポンと出てくるところが、いかにも人気者ぽくていいですね。」

明美「この最後の下り、歌い手が自分もマキアリイになりたいよ、という感じだね。人称が変わるというか。」
まゆ子「うん、大衆参加型というか、自分も頑張るぞって気になるように考えてみました。」
じゅえる「いいんだがね、でも「殴れよ殴れ」に比べるとちょっと弱いかな。」
まゆ子「いや三番まで同じフレーズを繰り返す方が歌として正当だとは思うけどさ、うまくここには繋げられなかったよ。」

 

釈「すいません。ソル火屋一番を見直していたら、1節多いです。」
まゆ子「うん?」
じゅえる「あ、ほんとだ。」
まゆ子「削れってか。」
釈「明美先輩、どうしましょう。」
明美「いいんじゃないの。そのくらい歌い方でなんとかしなさいよ。」
まゆ子「あー、うん、まあ。なんとかなるっしょ!

 

 熟慮の末、「この方台は文明の」 これを切ります。

 ”幾百万の人ぞ棲む 電気伝視の世の中で”   になりました。

 それにしても、昔は頑張ったはずなんだが文法すっかり怪しくなってしまったなあ。」

 

 

 

2017/09/13

まゆ子「銀河英雄伝説の「アムリッツア星域会戦」見てて気がついた。

 大局観だ。」

じゅえる「大局観、か。」
釈「「罰市偵」の事ですか?」

まゆ子「いや、銀河英雄伝説は実は「げばると処女」書く時にちょこっとお手本にしているのだ。
 複数の異なる勢力のそれぞれの局面を描写することで、立体的に大河ドラマを構成するって手法をね。
 そこを考えてみると、「罰市偵」は足りないかなと。」

じゅえる「でも市井の一民間刑事探偵が遭遇する事件で、そんな大局観が必要なものって無いぞ。」
まゆ子「無いんだよ。だから描かないのが正しいんだが、それではちと寂しいという。」
釈「確かに国家的英雄であれば、単なる大事件を機械的に解決していくのではなく、大局観に立った遠大な計画とか、そういう悪をぶちのめすとか、欲しいですね。」

じゅえる「うーん、言わんとするところは分かるのだが、所詮は「異世界浅見光彦」だからなあ。あいつそういうのやらないぞ。」
釈「はあ、「相棒」ではそれらしい事やってますが、あまり成功しているとは思えませんね。推理・刑事モノでは難しいかな。」
まゆ子「ポリティカル小説になっちまうかな、そういうのは。」

 

じゅえる「で、どう織り込むよ。」
まゆ子「いや実はちと困っていたことは有るんだ。
 10年前にヒィキタイタンとマキアリイが一躍英雄になった「潜水艦事件」。これは国際謀略と呼ばれているのだが、どう国際かは考えてない。」

釈「無いんですか。」
まゆ子「いや普通に考えればだよ、超大型巡洋潜水艦なんて化物を作れるのはゥアム帝国しか無いんだから、ゥアム帝国の仕業だろう。とうすうすは考えていた。
 しかし、れっきとした国家が裏で仕組んでいる作戦であれば、国際謀略とはちょっと違うかなー。と考えてしまう。」
じゅえる「ゥアム帝国には謀略を行う人物は居ない?」
まゆ子「いやいや、ゥアム神族と呼ばれるめちゃ頭賢い社会階級が支配している国家だ。謀略ぐらいは普通に行うよ。

 ただー、ゥアム帝国くらいの実力があれば、謀略を用いるまでもなく真正面からの外交と軍事力でなんとでもなるんじゃないかなと。」

じゅえる「釈ちゃん、この分析はどうなんだ?」
釈「あー、いやまあ確かに国際謀略と呼ぶからには、一国家が主体的に行う秘密作戦とは一線を画するものであるべきですかねえ。
 ゥアム人が関与していないとは思いませんが、ゥアム帝国政府が関与あるいは全部支配しているようでは、何か辻褄が合わない気もします。」
じゅえる「じゃあ、死の商人ブラックゴーストとか?」
釈「うーん。」
まゆ子「死の商人なんてけちくさい連中の出番は無いぞ。この時代この世界においては国家自体が兵器を売ってる。」
じゅえる「それは、困るな。国家が謀略を行って「潜水艦事件」を引き起こした、というのはダメな設定なわけだ。」

まゆ子「タンガラム・ゥアム・シンドラ、実力不足であるがバシャラタン、これらどの政府も関知しない未知の謀略組織が「潜水艦事件」を契機としてその姿を現した。
 こういう感じで、「潜水艦事件」のケリをつけたい。」
釈「ふむ。」
じゅえる「考えろ、てことか。

 明美呼ぶか?」
まゆ子「要らない要らない。この手の設定考えるのに明美は要らない。」

 

釈「「潜水艦事件」なわけですから、やはり海の上、海上での戦争に関与している組織ってことですよね。
 そして海の上での戦争と言えば、海外派遣軍。海島権益争奪戦を繰り広げているわけです。各国共に。」
じゅえる「無関係と考えるのには無理がある、わけだ。
 しかし、国際謀略組織が戦争そのものを引き起こしたわけでも無い、んだな?」

まゆ子「あーそこもどうだろう。いや海島権益争奪戦を考えていて不思議に思うこともあるんだ。

 ゥアム帝国はタンガラム民衆協和国よりも科学技術に優れ兵力も多くて強い。タンガラムは頑張っている。
 だがシンドラ連合王国はタンガラムよりも科学技術は劣り旧式兵器が多くて弱い。
 にも関わらず、3国ははっきりとした優劣が発生せずに隠された戦争を飽きずに繰り広げている。

 何らかの補正が行われているんじゃないだろうか? と思うほどにね。」

じゅえる「あ〜なる。なるほど、バランサーとして、そうだな戦争が長続きするように謀略を行っている存在が有る。そういう事か。」
釈「戦争を起こした元かどうかは分からないけれど、戦争が長続きする方が彼等の利益となるわけですね。」
まゆ子「たしかに死の商人としての顔も有るのだろう。だが、戦争を継続する事自体に価値を見出しているのではないだろうか、とね。
 そうして考えた。

 世の中の進歩は戦争によって推し進められてきたという側面がある。
 この国際謀略組織も、人間世界の進歩を促す為に敢えて戦争という手段を用いているのではないだろうか。と。
 実際兵器技術の進歩はこの数十年で大幅に進捗した。既に電波兵器や誘導兵器すら登場しているくらいだ。」

釈「超国家的な人類進歩管理機構、ですか。NEW WORLD ORDERですね。「ゲキロボ☆彡」に出てくる。」
じゅえる「はー、なるほど。ここでミスシャクティの登場だ。」
まゆ子「ミスシャクティ! そうか、この作品にも出てきていいんだ!」
釈「えー、そーですかー。」

じゅえる「まあそれはやめとくとして、そういう組織があると仮定してもよい。だが、安直じゃね?」
まゆ子「確かに安直だ。NWOの投入は保留して別の可能性を考えよう。」

 

釈「とはいえですよ、ネモ船長みたいなどこの国にも属さない事を公言する強烈な指導者の存在は、アリですね。」
じゅえる「NWOでなくても、国際謀略組織は存在するわけだからな。それか、17人委員会とかの集団指導体制でもいいぞ。」
まゆ子「うーむ。そもそも確とした謀略組織が存在するか、それとも単にネットワーク的な存在であって実体や首謀者は存在しないか。
 どっちにしよう?」

釈「予言で動く宗教組織、というのでもアリですかね。」
じゅえる「海底王国とか。ポセイドンだな。」
まゆ子「あまり突拍子もないものを出されても困るのだが、”ゲート”はアリかも。」
釈「”ゲート”?」
まゆ子「今度、マキアリイの里帰り回で出てくるんだよ。

 ガンガランガの山奥の中に「聖域」と呼ばれる所があり、そこには”ゲート”を守る種族が居る。そのお姫様にマキアリイは可愛がられて成長した。というお話だ。
 ちなみにそのお姫様は「ヒュゥコ」様と呼ばれ、まるで物辺優子のような美女だ。その対となるとんでもなく醜い容貌のお姫様が「フィミィカ」様と呼ばれる児玉喜味子きみちゃんみたいな女なのだ。
 とはいうものの、このお話は全編ファンタジーであり、最後には「それ、夢だったんじゃね?」で終わる不思議回だ。」

じゅえる「優子と喜味子かい。あー。」
釈「まだミスシャクティの方が可愛げがありますよ。それ。」

まゆ子「ゲート自体は「げばると処女」でも出てきた正統なる設定だよ。これを抜けると別の方台世界に通じて、よその文明と接触する事が出来る。
 創始歴5555年に弥生ちゃん再臨の際に、タンガラムの民衆が方台から出られない閉塞状況で息が詰まりそうだと判断して、天河十二神と交渉をして別の方台に行く”ゲート”を開設した。
 これを通じて、和猪の去勢技術がもたらされてタンガラムは一層の発展を遂げるのだが。」

釈「はいはい。たしか聖山神聖神殿都市の背後にある巨大な洞窟の内部にそれは設置されたのですね。」
まゆ子「聖戴者がこの世から居なくなる「王漿堯座」の奇跡でトンネルを使った後にゲートは封鎖された事になっているのだが、実はゲート自体はガンガランガの聖域に移設されていた。という話だ。
 木製の鳥居であるのさ。」

じゅえる「NWOを作った人間も、ゲートを利用してこの世界にやって来た別の方台の人間、ということか。」
まゆ子「ダメかな?」
じゅえる「いやつまり異世界人だな。流れ者の外国人に実はどこから来たか分からない人間が少なからず居る設定だから、それはアリだ。」
釈「アリですね。並の人物ではないという設定で良いですよ。ネモ船長です。」
まゆ子「あーうん。「罰市偵」本文にはそのNWOは噂だけでまったく姿を見せないから、ネモ船長だろうがデスラー総統だろうが構わないんですがね。」

じゅえる「デスラーの方がいいな。」
釈「えー。あ、でも肌の色の青い人間はアリですね。」
まゆ子「ほお。肌が青い人間、か。それはアリだな。いや本当に青いのではなく、「潜水艦事件」で遭遇した敵戦闘員の肌が真っ青でびっくり。という手が使える。
 実際は色を肌に塗っていたということで。でも本当に青い人間が居て、それの真似をしているという。」
じゅえる「悪党はそのくらいのケレン味が必要だな。」

釈「青肌採用です!」

 

まゆ子「それでだね、本文中にこの大局観をどう盛り込むかで考えたのだ。

 マキアリイは「潜水艦事件十周年記念殺人事件」において、海軍陸戦隊の猛者と酒飲み比べ腕相撲大会をやらされるのだ。
 そこで、陸戦隊のヌシみたいな大物と手加減アリの引き分けに持ち込むのだ。何故引き分けたかというと、マキアリイがゲルタ食ってなかったからだな。頭がまだイカれてなかったのだ。

 で、ヌシが引き分けにしてくれた礼というか呪いというか、これを知ったら後戻り出来ないぞ的な情報として「国際謀略」を教えてくれるのだ。
 これは海外派遣軍に20年も出征して現場で肌で確かめてきた実感というやつで、この戦争の裏で糸を引いているのは得体のしれない連中だ。って。
 そこにも青い肌の人間が出現する。」

じゅえる「ふむ。いいんでないかい。」
釈「さらっと流すのがいい感じです。」

 

じゅえる「しかしだよ、そのNWOでも青肌人の闇組織でもいいが、どういう組織構造になってるのか設定しておかないとさすがに後で困るんじゃないか。」
釈「やっぱり必要ですかねえ。」
まゆ子「あれば設定の幅が広がってお話のスケールも大きくなるのは確かだなあ。だがどういう組織形態であればいいと思う?

 巨大巡洋潜水艦を作ってのけたんだからゥアム帝国内においてもかなり強力な支配力を持っているに違いない。少なくとも国家予算を流用するほどの大金を左右出来る組織だろうさ。」

釈「闇御前組織みたいなものですかね。」
じゅえる「それはこの国際謀略組織と比べたらメダカみたいなものだろうさ。」

釈「海洋方台、というのはどうですかね。大きな陸地の本拠地を持たないけれど船の上に住む人間が国家を作っており、特殊なネットワークで繋がっている。
 NWO組織はその特殊ネットワークを流用して海島権益争奪戦をコントロールしている、とか。」
じゅえる「海洋民族な。それはアリだと思うが、どうだ。」
まゆ子「まだ弱いなあ。」
じゅえる「海賊王とか、海の神様の信仰組織とか、貿易組合とか。」
まゆ子「違うなあ。こうもっと、禍々しい絶対的な支配力を有する闇の掟的な、」

釈「では、海で死んだ人間が亡者として蘇って、それで青い肌色になる。というのでは。」
じゅえる「いやさっき異世界方台と決めたじゃないかい。だがまあ、海で死んだ人間はゲートを潜って異世界方台に行き、そこで何かを見てこの世界に戻って来た。てのは。」
まゆ子「それだ。いわば臨死体験者によるネットワークだ。死を通じてネットワーク会員と意思疎通が出来て、死後の世界で見た計画のままに彼等は動いている。

 闇と冥府の支配者が海の底に居て、それの下僕として青肌の人間が居る。そういう世界だ。」

じゅえる「ふむ。」
釈「ファンタジーぽくて良いですが、ネットワークに超能力を使うのはアリですかね?」
まゆ子「電信電話無線が発達してきた今の世界情勢で、あまり嬉しくない設定だな。」
じゅえる「とはいえ、青塗りの会員と、地肌からして青い特別な人間とで能力が違うのはアリだろう。
 超能力通信というのがうまくないのは分かるが、ネットワーク的なものだとすれば許容せねばならないのかな。」

釈「超音波通信でいいじゃないですか。クジラが使うやつですよ。あれ、場合によっては数千キロも通じるらしいですよ。」
まゆ子「うーん、クジラの通信は500キロメートル以上は確定的らしいな。それならば、中継機能を用いるとすれば数千キロもアリか。」
じゅえる「なにか受信アイテム、たとえば青い真珠とかを使えばそれが可能。なんてのもアリだな。」

まゆ子「というか、そもそもネコのやつが超音波通信使ってやがった。超音波はアリなんだこの世界元々。」
釈「ネコの場合は圧縮通信ですけどね。」

 

まゆ子「よしわかった。国際情勢を裏で動かす謎の謀略組織は、海で死んだ、少なくとも臨死体験をする事により青色の肌になった人間によって支配される怪しいネットワーク集団。
 超音波通信を用いて密接に連携を取り、既存4カ国を海の上で戦争させ継続させるのが目的である。」

じゅえる「海で戦えば、水死する人間も増えて彼等の仲間が増えるという寸法か。」
まゆ子「ああ。そういう考え方も有る。自らの組織を維持するためのメンバー集めに戦争を繰り返させる。
 それならばマキアリイが遭遇した海軍陸戦隊の猛者が死線を超える現場で彼等を見た、というのがぐっと信憑性を増すな。」
釈「良い設定ですそれは。」

じゅえる「例えばこんなのはどうだろう。

 マキアリイが話を聞いた猛者は、或る時敵に部隊が殺られて海の上を彷徨っていた。周囲は霧で閉ざされ、救援は望めない。
 そこに所属不明の船が1艘現れて、助けてくれるかなと期待したがやっぱりダメ。
 彼等は海の中に網を入れて、何を捕るのかと思えば、先程の戦闘で死んだ死体だ。
 そして死人を確かめて、ダメならまた海に放り捨てる。中に肌が真っ青な者が居れば、また息が有って助かりそうな者は引き揚げる。
 よく見るとその漁をしている連中は、全員が亡霊のような真っ青な肌であった……。」

釈「こわいですねー、船幽霊ですねー。死線を幾度も潜り抜けてきた海軍陸戦隊の猛者のみが知る体験談ですね。」
まゆ子「いいね。それだけで1本話が作れそうだ。」
じゅえる「後に非戦闘地帯で他所の国の船員に聞いたところでは、船員の中にもそういう話をする者が居る。
 てな感じで、これが彼独りの単独の目撃談ではないと証明するんだ。」

まゆ子「それは採用だー。
 マキアリイが遭遇した「潜水艦事件」の時にも、巨大潜水艦の乗員が青肌であるのを目撃した、という描写が映画にもあって、猛者はそれがずっと気になってマキアリイに語った。て事にもしておこう。

 でも、あくまでもこの組織は合理的な存在であって、真の目的は4ヶ国を戦争状態において技術を発展させ進歩に導き、
 またその技術を収集して別のゲートの向こうの方台に送る事とする。
 これでいいかな?」
じゅえる「若干の修正が欲しいが、技術の移転は意図せずともゲートをくぐってしまう人間によって為される。という事でよくないか。」
釈「あまり確定的な目的の為に動いているというのは。もうちょっとファンタジー色が強くても良くないですかね。」
まゆ子「ふむう。

 じゃあ、とにかく海の底の怪しく冥い支配者の命じるままに国際謀略を行っており、目的自体は彼等にはあまり理解できていない。ということにします。
 また「くっちゃりぼろけっと」において、他の深い目的を考えつくかもしれないからねえ。」

釈「ビッグファイヤーの為に」

 

まゆ子「あ、そうだ。

 今回「潜水艦事件十周年記念殺人事件」において、第一の襲撃を企んだとされる元イローエント海軍司令官は引退している自宅において、捜索に突入した強行制圧隊に風呂桶の中で自然死しているのを発見されるのだが、
 この死体が異常なほどに真っ青であった。

 ということにしよう。青肌の勢力は方台陸地の奥にまで、実は浸透しているのだよ。」

じゅえる「そこまで深入りするならば、その勢力の名前も付けておこう。NWOでは流石にダメだ。」
釈「海冥計画会、とかですかね。」
まゆ子「もっと素直に、青魚会でいいんじゃないか。」
じゅえる「それなら銀背会でもいいだろ。」
釈「アトランティスでいいんじゃないですかね。もうこうなったら。」
じゅえる「ガトランティス、はヤマト2202だな。銀英伝ならヴァルハラだな。」
まゆ子「アトランティスかー、悪くないが、ニライカナイ的ななんか無いかな。深海に眠る冥界の王が出てきそうな。」

釈「ぐぐりました。「メガラニカ」なんてどうですか。」
じゅえる「えーと、意味は、「かって地球儀上において南方にあると仮想された大陸」ね。極めて大きく、南半球世界の半分を占めるような。」
まゆ子「えーと、「テラ・アウストラリス・インコグニタ」とも言う、か。

 よしでっち上げるぞ。語感を活かして「ネガラニカ」でどうだ。この場合短い語の方が作劇上使いやすいと思う。」
釈「ネガ、ですか。反転の意味の。」
じゅえる「メガは、でかいって意味だしな。冥界のようでもあり海の底でもあるような、そういう現世の反対側にあるような国であれば、それでいいかな。」

まゆ子「じゃあ、国際謀略組織の名は「ネガラニカ」に決定ー!」

 

追記; 国際謀略組織「ネガラニカ」のシンボルは海底深くに棲む前世紀の支配者、巨大な「ダイオウグソクムシ」とします。シンボルマークもソレ。

 一方、「げばると処女」においては深海の支配者としては巨大なタコ「紅曙蛸神テューク」が設定されています。
 つまりは前世紀の支配者が「ダイオウグソクムシ」、現世紀の支配者が「タコ」なのです。
 真っ赤な光に輝く正義の巨大タコが、邪悪で冥界を支配するダイオウグソクムシと戦うのです。

 

*** 

まゆ子「ついでに。
 クワンパが事務員を卒業する直前に起きる「最後の事件」を考えついた。」

釈「ほお。」
じゅえる「どんなもんだ。血腥い大活躍か。」
まゆ子「ではないんだ。むしろ地味な事件だ。
 というかさ、これまでマキアリイは国家的大謀略によって幾度も命を落としかける。権力というよりも、それを遥かに超える犯罪組織テロ組織の圧倒的な暴力と戦い、勝利した。

 今回の事件はそれとはまったくに性質を異にする。
 つまり、権力を私して悪を闇でもみ消そうという特権階級の悪事で、合法的社会的な存在である民間刑事探偵であるマキアリイは、結局はいやでも敗北するシナリオだ。」

釈「世間の荒波にマキアリイさんが敗北する、という話ですか。」
じゅえる「いやあいつ、そういうのは絶対効かないだろ。カニ巫女だって叩きのめす。」
まゆ子「そこは、法の力で制裁出来ないように圧力を掛けるんだ。
 もちろん彼等は刑事訴追されるが、裁判に持ち込まれれば社会的権力財力を行使して安々と逃げ延びるような、そいう敵だ。」

じゅえる「今更になって出てくるものが出た、という感じか。」
釈「なるほど。最後の事件としては逆の意味で意義深いものなんですね。

 で、結局それはどうなるのですか?」
まゆ子「まあつまりはだ、今考えているところでは、

 貧民街の女子ども老人という弱者が、いきなり発砲されて負傷さらには殺害に至る事件が頻発する。もちろんまったく手がかり無しの捜査お手上げ状態。

 その地域で、ヤクザが一人殺される。
 警察局巡邏軍も、これは手口がまったく違うから、まったくに別の犯罪として扱うわけだ。が、しかし警察局の法衛視は念のためとして、弱者襲撃事件との関連性を洗ってみようと考える。
 が、ヤクザを相手にするとこれはまためんどくさい。捜査員を派遣するのも億劫だから民間刑事探偵を使ってみた。
 その仕事を請け負ったのが、ヱメコフ・マキアリイだ。

 で、そのヤクザの所属する「ヴァグマグ会」だったかな? の事務所に乗り込んで、「闇御前事件」の時に顔を合わせている若衆頭の凄みの有る幹部に面会する。
 で、殺されたヤクザがその時何をしていたかを尋ねて、ヤクザの子分たちの中の一人が聞いた、「そいつがいいユスリのネタを仕入れた」事が判明する。

 マキアリイはつまり、このヤクザが弱者襲撃事件の犯人を見つけ出して金銭を強請ろうとして、逆に殺し屋に消されたのではないか、と考える。」

じゅえる「だいたい分かった。」
釈「なるほどなるほど。正義の力では成し遂げられない正義もある。というお話ですね。」

 

 

2017/08/30

まゆ子「へへへー、『罰市偵』第三巻第一話「ど田舎サユール怪奇譚」中編を読み直し推敲してたら、
  本編よりも遥かに長い解説文を書いてしまったぜい! ほめてほめて。」
釈「ばかやろお」
まゆ子「てへ。」

じゅえる「あーこれじゃあ後編夏休みに終わらないじゃないかあばかあ。」
まゆ子「てへ。」

 

まゆ子「というわけで、実は中編推敲中にも関わらず、第二話「「潜水艦事件」十周年記念殺人事件」をかなりの部分まで書き進めていた、てのもあるのです。
 で、ここからが本題。タンガラム中央政界の設定まるで無しだから、書けないよコレ。」
釈「まあ、当然ですね。」
じゅえる「だからさっさと設定作れよ。て、作ってたのかい!」
まゆ子「いえ、それとはまったくに別口です。中編で『げばると処女』関連わーど「カプトゥース戦争」が出てきましたから解説文を。
 いわばダイジェスト版『げばると処女』、力作です。」
じゅえる「意味ないじゃん物語進行の。」

     *****

 

まゆ子「あー、とりあえず現代までの政治史を語らねば現在の政治状況を説明できません。」
釈「もっともな話です。」
じゅえる「どこまで遡る?]
まゆ子「「砂糖戦争」まで。

 えー創始歴6072年に突如勃発した『砂糖戦争』当時の政権は「タンガラム民衆協和国 第五政体」でした。
 それまでの政治状況は、割とのほほんとしたもので景気も良く、一般社会にも怠惰というかぼんやりというか、薔薇色の未来が開けてる的な弛緩した風潮でした。
 この当時の特徴としては、ゥアム帝国シンドラ連合王国との国交が開けて三国の文物の交換が始まり、見たことの無い品や文化を体験してこれからどう世の中が開けていくのか、皆わくわくしていたのです。
 そして、いきなりの戦争。それも歴史上発の方台間戦争という初体験で、びっくりです。」

じゅえる「ああ。異国との交流が必ずしも平和的なばかりではないとその身に染みて知ったわけだ。」
まゆ子「そして第五政体は、与野党入り乱れて平和に政争などを行っていたのを、古今未曾有の戦争に挙国一致体制となり戦時動員体制を発動して、政府に全権委任が満場一致で賛成されて戦争に突入したのです。
 タンガラム全土からも義勇兵が続々と名乗りを上げて、一時は東海岸に敵軍の上陸を許したものの撃退に成功。
 ゥアム艦隊を撤退に追い込み、翌年再度の襲撃も撃退して「砂糖戦争」は終結した。

 ちなみにこの時代はまだ鉄道は無くトロッコは有る、蒸気船は有り。電信はあるが電話は無い。電気照明はあるが都市部のみ。和猪車全盛期。鉄矢銃最強時代。

 戦争終了が確認された後、政府への全権委任が解除されて素の議会制度に戻りますが、どの政党もこれまでどおりではやっていけない事が分かっている。
 そこで合従連衡、政党の組み換えが起きて、国際戦争に対応できる国家体制を構築する為の新しい政治体制「第六政体」が発足する。
 ここまでは平和的なプロセスでなんとかなった。
 創始歴6075年の事です。

 しかし、組み換えが終わった後の議会は紛糾を繰り返し、結局は武力を用いての粛清なども起きて、与党と穏健派野党による平穏な議会が成立する。
 「第六政体」の目的は一つ。
 タンガラムを国際戦争に対応できる軍事強国とする事。その為に絶対に必要なのが、先進国ゥアムに負けないだけの産業基盤の育成、特に機械工業の進化だ。
 その為に不可欠なのが鉄道網の構築。政府は遮二無二鉄道線路の敷設を急ぎます。国防上の養成からも最優先課題であった。
 だが鉄道インフラの構築にはかなりの工業力が必要で、これまでのタンガラム社会には手に余る事業だった。

 その為にはまず資本をかき集めねばならず、鉄鋼業建設業機械工業といったこれまでに手薄だった産業分野に集中しなければならない。
 人材も不足するし、エネルギー供給もまったくに不足。原料調達も労働力も、とにかく全てを動員して急がねばならない。
 「第六政体」はほとんど戦時体制と呼べるほどの強引さで産業育成に励み、逆に育成に役立たないと思われる分野からは容赦なく人材や資金を引き上げます。
 国民の福祉も少なからず犠牲となる。そして当然とも言えるインフレの進行。
 農業部門の生産性の飛躍的向上の為に都市部から「余剰人員」送り込み労働力とするも、それは急激過ぎる体制に反発する知識人などの追放でもある。
 また産業育成だけでなく、新兵器を多数揃えた近代軍の構築を急がねばならない。
 となれば資金不足に陥るわけで、当然に増税が何度も繰り返された。

 これだけ直接的に産業界と政治が結びついていれば、汚職腐敗が起きない方がおかしい。
 というわけで、政府の腐敗体制が覆い隠せぬほどに露骨に暴露されて、国民の支持率は激減。
 さらに産業を育成するのは良いが、政府軍隊以外に消費しないという有様であるから、消費市場が拡大しない。
 腐敗による開発効率の低下により供給のだぶつきが起こり、深刻な不景気に突入する。が、これに拡大一辺倒であった政府与党は為す術を持たない。

 「第六政体」はもはや手の打ちようが無く、すべてを一度リセットせねばならなくなり、総統以下政府関係者総辞職となり、暫定政権により新しい政治が模索されました。
 ここで主導権を握ろうとする数多の勢力により武力をも交えた抗争が行われ、無政府状態の内戦に突入する寸前の状況に。
 軍部がこれを阻止するために独自の行動を開始して、全土を掌握。一時的に軍政が施行される。
 軍部は、司法の中枢である頂上法廷と、地方自治体の長によって構成される大審会の承認を得て、国民総選挙を実施。
 この時強権により既存の政治家で武装闘争を主導した者の参政権を剥奪しており、批判を覚悟の上での新議会の出発。新政権の発足となる。
 新政権と軍部が連携して事態の正常化を果たし、腐敗体制を一掃して新しい官僚制度の構築を果たす。

 3年後、参政権を剥奪された政治家も資格を回復したものの、国民民衆の支持はもはや無く、回復後最初の総選挙で彼等は惨敗を喫して政治から永久に排除されました。

 

 この選挙によって発足した議会と政府が、「第七政体」です。
 軍部は非常事態宣言を解除し、元の政治とは関係の無い立場に復帰した。
 創始歴6102年の事になります。

 とは言うもののそんなに簡単に正常化が出来るはずも無く、10年に渡って国家機関の抜本的改革が行われます。
 また開発計画の必要性は今もまったく衰えていないものの、これまで行われた開発は拙速に過ぎ、整理統合して効率化を図るべき段階にあります。
 加えて一般市民の購買力を高めて消費力を向上させて、健全な産業育成に務めなければならない。これまでなおざりにされてきた国民福祉にも尽力せねばならない。
 第六政体の時期には停止されていた国交も回復して、再び国際交流を行うものの、文化レベルの嵩上げをしなければうまくいかない。
 全面的な社会の見直しが必要となり、「砂糖戦争」以前の自然で大らかなタンガラム社会が再評価される事となります。

 こうして脅迫的な産業育成富国強兵に突き進んだ「第六政体」から、自然で持続的な発展と国民の生活向上に力を入れる「第七政体」へと時代が移り変わる事となる。
 まことに結構な話であるが、口で言うほど簡単ではない。むしろしゃかりきに突っ走った「第六政体」の方が目標が見えていた分楽だった。
 政府主導の開発独裁では限度が有るのを思い知り、民間活力導入と市場原理による産業の適正化を期待する、「民間経済の時代」になる。
 政府が相変わらず公共事業による開発を進めるけれど、そこには需要者としての産業人、財閥の存在がクローズアップされる。
 また国民、一般労働者の福祉と健康にも留意して、労働条件の改善も財閥に受け入れさせて、それが功を奏し消費市場が拡大する。

 のですが、やはり財閥・富裕層の支配力が強化され特権階級化していく。
 これは一般労働者にとっても自らの理想とする生活モデルを提示するものともなって、向上心を引き立てる元ともなったのですが、やはり天井というものがある。
 財閥富裕層は資金協力により政治家・政党への発言力を高め、産業育成・開発事業が彼等の草刈り場のような有様になる。
 またぞろ腐敗堕落が発生して「第七政体」は徐々に当初の反省と理想を失い、階級社会の形成に突き進む事となる。
 もっとも「砂糖戦争」前の社会に戻ろうとしていたような話である。

 さすがに未だ「第六政体」崩壊の記憶が薄らいでおらず、社会各層から批判と改革の声が湧き上がる。
 だが財閥富裕層はこれを資本の力で弾圧。政府も順調な景気を支える為に彼等の行動を追認していく事となります。
 当初は民間の力関係による言論封殺であったものの、社会全体に不公平感が募っていった為に遂には国家権力による言論統制に突入。
 今回「第六政体」の轍を踏まぬように、あらかじめ軍部の上層部を権益構造に抱き込む工作が続いており、改革勢力としての軍部は期待できない状態。
 というよりも、民間主導の気運は政府批判する側にとっても重要で、あえて自らそれを否定する軍部の介入は望まなかったわけです。

 が、軍人も末端の兵士は一般民衆であり、それも貧困層を主体とする構成でした。
 彼等兵士の実家の困窮を見かねた若手将校達による反乱事件が全国で多発。強制的な摘発と軍内部の綱紀粛正が行われ、ますます無力化が浸透する。
 軍事力によらず警察力で混乱する秩序を維持するのに、巡邏軍と警察局では力不足と感じて、政府は「国家治安維持警察隊」を改めて創設。
 秘密警察による批判者改革者言論人の取締りが効率的に行われる事態へと進展する。

 しかしながら、このような状態で好景気を維持できるはずもなく、全国的に大不況に突入。
 財閥富裕層にも被害甚大で倒産や破産する者まで続出し、特権階級側の人間であっても国家の方向性を間違えていると自覚し始めた。
 改革勢力が各地で旗揚げし、「国家治安維持警察隊」との衝突が続く。
 これでは政府への支持率など無いも同然で、総選挙を行えば政権崩壊間違い無しと選挙の無期限停止を宣言。
 頂上法廷はこれを違憲と判断して、政府機能の無効を宣言。政府は逆に司法権の一時代行を唱えて独裁体制に突入するも、賛同者はさすがに少ない。
 遂には巡邏軍までもが政府の命令に従わずに群衆の反対運動を野放しとして、鎮圧に出向いた「国家治安維持警察隊」との衝突までも引き起こす。

 事ここに至っては万策尽き果て、政権中枢部はタンガラム方台を脱出してシンドラ連合王国へと亡命。
 「第七政体」の崩壊が確認される。
 頂上法廷は暫定政権の成立を急がず、大審会の地方自治による全土の治安確保を優先。「国家治安維持警察隊」を解体する。
 早期の総選挙を求めて数多の政治勢力が活動を盛んに行うが、強圧的な政権への反動の解放的過ぎる理想主義の暴走が懸念されて、また民衆の支持も得られなかった。
 弾圧の報復を求める声も強かったが、これは押さえ込み、実効的な政権をまず立ち上げて総選挙への道筋を整えるべきとの総意で動き始める。
 既存政党政権与党の残存政治家を中心として実務的な内閣を組織して、総統職は空位のままで政権が動き始める。
 2年を過ぎてようやく総選挙の気運が高まり、実施。新議会を立ち上げ総統を選出して、憲法通りの政権が発足する。

 これを以て「第八政体」の誕生と見做す。
 創始歴6154年の事なのです。

じゅえる「長かった。」
釈「まあ必要なんですから仕方ないですが、長いです。」

まゆ子「ここで留意すべきは、「第七政体崩壊」時に実は粛清が行われなかったのです。平和的な政権交代とはいいにくいものの、流血の惨事とはなっていない。
 そりゃまあ恨みを買った「国家治安維持警察隊」の隊員は後に報復された者も少なくないのですが、組織的制裁は行われていない。
 政治家政権与党も脱出亡命しなかった者は当分干されていましたが、別に殺されてはいない。
 亡命組もほとんどが15年後くらいに帰国を許されています。

 財閥や富裕層もまた同様に、汚職腐敗に連座して逮捕された者は少なくないのですが、資本系列としての財閥そのものを没収して取り潰した例はほとんど無い。
 おおむね財閥総裁の個人的刑事罰で、禁錮数年あるいは在宅謹慎のままで刑が終了した者まで居ます。
 とにかく「第八政体」が重視したのが早急な景気回復で、これには民間資本とくに財閥系の会社の業績を回復させなくてはならなかったわけです。
 一部には過激な無産主義的報復没収を呼びかける政党も居ましたが、これは全くに支持を得られない。
 とにかく景気をなんとかしてもらいたい。てのが国民全体が求める最優先課題だったわけです。」

釈「背に腹は代えられないて事ですね。」
じゅえる「政治家も公務員もそのまま居着いたわけか。」
まゆ子「まあ、汚職で私腹を肥やした者は容赦なく逮捕しましたが、不当資産没収と公職追放のみで、刑務所に入れたりは無かったのですね。
 でもブラックリストが作られて、それなりに社会的制裁は受けています。一種の晒し者です。
 「第八政体」においては、汚職や背任はだいたいこの晒し者刑にされてしまうのが慣習になってます。メディアで吊るし上げるのです。

 まあこれが後に、マキアリイさんに牙を剥く事ともなるわけですが。」
釈「財閥にはお咎め無しですか。責任者逮捕くらいで。」
まゆ子「ま、現実を取ったってわけです。公共事業指名停止とかも無い。これは後の時代には復活しますが、この時期どこもかしこもやってたから公共事業に支障が出るのです。」
じゅえる「「国家治安維持警察隊」も、たしか解体されて別の組織に編入されちゃったんだね。」
まゆ子「30年くらいはそこの人脈が結構な権力を握っていました。

 

 この時期「第八政体」が何をやっていたかというと、税制改革です。

 前の時代に「消費者」の概念が発見されたのはいいのですが、結局は階層分化になってしまった。
 これを是正する為には富裕層への課税強化、累進課税が必要となったわけですが、これがあまり常識的な考え方ではなかった。
 富裕層というのはこれまでの時代、広大な地主やら工場経営者やらの産業を担う主体であり、それぞれが多くの労働者を抱えているのが普通である。
 彼等に対する重税は、彼等が抱える労働者に対する課税でもあり、労働環境の悪化に誘導するような話であるわけだ。
 相続税に関しても、これらの産業は相続によって受け継ぐ事が多く、高額の相続税は事業自体を破綻させる可能性が高く、あまり産業振興的に得策ではない。
 また累進課税は無いといえども、なんやかんやで富裕層には「特別拠出金」と言われる税ではない税金が課される事が多かった。
 これも農場やら工場などを経営する者には重くのしかかるが、貿易商や銀行家は免れ易いという悪平等を産んでいた。
 そして、カネだけを動かす資本家の登場。

 まあ、近代資本主義社会にふさわしい衣替えが税制にも必要であったわけです。
 「特別供出金」を全廃する代わりに「累進課税制度」を導入して、新しい経済状況を作り出していた。
 反対も多かったけれどこれは結構上手くいく。経済の発展も促される。

 しかしここで「第八政体」に重くのしかかるのが、「見えない戦争」「海島権益争奪戦」です。海外派遣軍ですね。
 これ以上の国力増加を図るには国内だけの資源、特にエネルギー資源が再生可能なものに頼っていては不可能。
 なんとかして新しい資源、さらには新しい有人方台を発見して特別な権益を他国に先駆けて獲得しよう。という現実的な闘争が始まっている。
 そして海の上で実際の戦闘行動まで起こっていた。
 ここでクローズアップされるのが「高度兵器」です。
 潜水艦、飛行機飛行船、無線通信、巡航装甲艦、高速長射程砲、機関砲、レーダー観測、誘導装置。
 とにかくこれまでの兵器体系を覆す技術の産物が続々と戦場に投入され、対応するのに苦労させられる。
 もちろんタンガラム国内でそれらの製造を行う為の技術革新が必要で、産業の高度化が民生の必要以上に発生した。
 防衛体制を整えるのにも四苦八苦するが、軍隊を整備する資金の出処が無い。

 そこで産業界に特別なルートを構築して、特殊技術の開発実用化を目指すと同時に、資金を捻出する秘密の共同体を作り上げる。
 これを担当したのが後に「闇御前」と呼ばれるバハンモン・ジゥタロウだ。
 ただこれは最初の内はあまり上手くいかなかった。やはり国民に内緒での戦争は無理がある。
 隠された利権は当然に腐敗を産み、政権与党を侵食し、崩壊に至る。
 「第七政体」の反省から、政治家による監査はずっと効率的に公明正大に行われていたので、道半ばにして政権交代へと至る。

 

 で、政権交代して新進気鋭の与党が誕生するのだが、そして旧来の権力構造の打破に成功するのだが、
「海島権益争奪戦」の実情を突きつけられては、これまでの路線を踏襲するしかない。

 タンガラムの未来の為に、より強力な軍隊を派遣せねばならないと、「海外派遣軍」を正式化して国民にも徐々に開示していく方針を採用する。
 こうして政治的なお墨付きを頂いた産業界裏のルートでは、闇税金と呼ばれるような資金供出が続き、「見えない戦争」が拡大していく。
 これは経済が好調であったタンガラムを裏から拘束するようなもので、徐々に景気が悪くなる。
 民衆の生活の向上も止まり、長期化し、こんなものが世間だと皆が思うようになっていく。

 閉塞状態で社会が息苦しくなり、そのウサを晴らすかにエンタメ業界が大発展する。映画も天然色のトーキーになり、伝視館放送でテレビ生放送が開始される。
 新聞雑誌は芸能界のゴシップネタで花盛りとなり、或る意味では一般消費社会を刺激し続ける。
 「息苦しいのに躁状態」と評論家が言うような、徒花的社会が広がった。
 中間所得層のとりたてて生活が苦しくない、むしろ恵まれた家庭の子どもたちが不良化する「持てる者の反乱」などが叫ばれる。

 この状況で颯爽登場したのが、「潜水艦事件」の若き二人の英雄だ。
 エンタメ業界は熱狂的に彼等を賛美し、また政府軍隊も持て囃した。
 「潜水艦事件」によってタンガラム国防体制に欠陥が有るのが暴露され、おおっぴらに軍備増強が国民にも理解される。
 投資が拡大して一瞬ではあるが景気が良くなり、なんとなしに明るい兆しが見えてくる。

 しかしながら、なにか不健全なものを抱えているのは明白で、外国からの悪影響もあり治安の悪化が懸念される事となる。
 このような状況で再び登場したのが、「英雄探偵ヱメコフ・マキアリイ」だ。
 彼の活躍はめざましく、そして裏の世界を牛耳ってタンガラム社会を拘束し続けてきた張本人「闇御前」までもを炙り出す。

 与党政権基盤は大きく揺らぐ事となったが、逆にこれはチャンスで有る。
 古い「闇御前」体制を打破してまったく新しい世紀を築くための産みの苦しみと言えよう。

 そして創始歴6215年夏の「国民総議会選挙」が開かれるわけだ。

じゅえる「はいごくろうさん。」
釈「ごくろうさまでした。」
まゆ子「ははは、疲れるぜい。

 でここからが本題。「政党の名前、何にしようかね?」」

釈「それって、こんな前置きを必要とする問題ですかね?]
まゆ子「名前を決めるだけなら問題ない。
 その政党がいかなるバックボーンを持って現在活動しているか、それを体現するのが政党名であるから、これだけ要る。」
じゅえる「なんだよね。めんどくさいんだよ。」

まゆ子「

 で、30年くらいで「第八政体」において大規模な政権交代が起きて、それまでの与党勢力が崩壊します。
 この崩壊でおおむね「第七」から継承した古い権力構造は駆逐されます。
 そして新政権となって、ここで登場するのが『ウェゲ(真人)議政同志會』です。ヒィキタイタンも所属する党ですね。
 正確にはその前身となる政党です。合従連衡して当時の多数派を握った保守政党です。『ウェゲ保守会』とでも言っておきますか。
 この政党は20年ほど政権を独占します。が、10年前に起きた「潜水艦事件」の責任問題で政党が分裂。
 中核である主流派が政権に残存して『ウェゲ(真人)議政同志會』を名乗り、足りない議席分を『自由タンガラム党』他との連立でなんとか乗り切った。

 しかしながら2年前の「闇御前事件」で「自由タンガラム党」は政権から離脱。少数与党としてふらふらと迷走状態にあるのです。」

釈「つまりは、「第八政体」発足時の与党名と、政権交代後の与党名を決めますか。」
じゅえる「最初のやつは、えーと『大同団結国民タンガラム発展党』とでもしておきますか。」
まゆ子「大同、はいいな。『大同正方台発展党』とでもするか。タンガラムは「正方形」て意味だし。」
釈「もうちょっとひねって『大同正方台発信党』としましょう。信無くば立たずですよ。」
じゅえる「う〜ん、『大同正方台発心党』、やはり初心に帰るべきさ。」

まゆ子「じゃあ第八発足時は、『大同正方台発心党』で、崩壊時は『正方台発心民誠党』に改名されていることに。
 分裂して、『ウェゲ(真人)議政同志會』+『正方台発心党』+『タンガラム民誠党』に。
 その後野党『国民草莽社』が『ウェゲ會』と合同して、『ウェゲ信民党』に改名。政権与党に。
 『タンガラム民誠党』は『自由タンガラム党』と『民誠党』に分裂。『民誠党』は『ウェゲ信民党』に再吸収、
 『正方台発心党』は『正方台改新党』に改名後、没落泡沫政党に。」

釈「はあ。」
じゅえる「めんどくさいな、政党って。」
まゆ子「でもこれ、野党系政党はほとんど書いてないから。

 ちなみに『国民草莽社』は宗教系の支援を受ける政党で、主に低所得者層の民生改善を主要な政策課題とする政党。
 財閥や富裕層を重視していない事を示す為に、『ウェゲ會』の方から取り込んだ。
 その後「新ぴるまるれれこ教団」系の政党『青天光日博尽会』との連携をして政権基盤を強化していたが政策が折り合いが悪く連携解消。
 その後釜として『自由タンガラム党』との連携をしてきたが、「闇御前事件」によってこれまた解消。
 『国民草莽社』系議員までもが逃げ出し、『ウェゲ(真人)議政同志會』単体となっている。ちなみに『民誠党』系議員は既にフェードアウトした。」

じゅえる「なんだか腹が立ってきた。」
釈「政党の合従連衡って腹立ますよね実際。」

まゆ子「ちなみに、まったく関係ない独立系議員が立ち上げたのが、『タンガラム信民党』。紛らわしい泡沫政党だ。
 他にも『無産市民者之会』という強硬左派がある。
 『国家忠永団』という軍人系政党もある。これは特に右派ではなく、軍人の政治的地位を高めようという勢力。むしろ内向的だ。」

釈「ちょっとまとめますよ。6215年夏現在ですね。

 政権与党:『ウェゲ(真人)議政同志會』大
 元与党:『国民草莽社』小

 野党:『自由タンガラム党』大 『青天光日博尽会』中
     『国家忠永団』小 『無産市民者之会』小
    泡沫:『正方台改新党』 『タンガラム信民党』   『他』


じゅえる「なんか『ウェゲ會』選挙に勝てそうだぞ。」
まゆ子「あー、そうだな。もうちょっと、……いや、むしろ『ウェゲ會』もまた分裂気味ということで、その片方の有力者が餅を喉に詰めて死ぬのだよ。」
釈「なるほど。得票数によっては『ウェゲ會』自体の分解があるわけですね。」

     *****

 

 

 

2017/08/08

まゆ子「脳が熱くて文章とかかかれん〜」

釈「あー、いつものことでございます。夏場は小説は書かないと決めているのですが、実際クーラーの無い部屋で頭脳労働出来るわきゃあ無い。
 というわけでお絵かきに時間配分を回しているのが例年であります。

 だがご安心ください。
 『罰市偵 〜英雄探偵とカニ巫女』第三巻第十四話「ど田舎サユール怪奇譚」は全部出来てますから、8月中に推敲も終わって掲載されるのはだいじょうぶです。」

まゆ子「だめだーしっぱいだー。」
釈「いやまあ、スケジュール的に遅れてるのはいつものことですから。」
じゅえる「次か? 第十五話の話か?」
まゆ子「第十五話、構造的に書けないとはんめいしたのだー。しぬー。」

釈「そりゃ大問題です。どこをミスったのですか。」
まゆ子「ヒィキタイタンが出る〜。」
じゅえる「ああ、大物新キャラ登場はたいへんだな。そりゃ計画として大仕事になるのは間違いない。」
まゆ子「ヒィキタイタンの家族とか友人仕事関係とかを構築しようとすると、どうしてもタンガラム中央政界の構造と政界要人と当面の政策課題と政党間の抗争とか、その他もろもろ用意しなくちゃいけない〜。」
釈「あちゃー、そりゃダメだ。」
じゅえる「小説一本分の設定資料が必要だ、それ。参ったな。」

まゆ子「というわけで、第十五話を書く前に外伝「ソグヴィタル・ヒィキタイタンの日常」を描くことにした〜。所要枚数50枚てとこで。」
釈「ああ、まあ、8章分くらいの小編を描く事でなんとか収めようって腹ですか。それにしても、人間がですねえ。」
じゅえる「政治は人脈だからなー、ちょっとリアルっぽく書くにしても、相当数を設定しなくちゃいかん。それもおっさんばかり。」
まゆ子「おっさんばかりなんだー。」
釈「嬉しくない作業です。うん。」

まゆ子「というわけで、たすけて明美えもん!」

 

明美「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃん。でもどうするの。」
まゆ子「まずこれまでに設定したキャラだけ並べるぞ。

 ソグヴィタル・ヒィキタイタン;王子様 政治家一年生議員 今年総選挙で改選予定
 ヒィキタイタンのお父さん;財閥総帥 かっこいいミドル
 ヒィキタイタンのお母さん;お姫様 ぽやっとしてる お父さんにベタ惚れ
 ヒィキタイタンの姉;結婚している 夫はヒィキタイタンに代わって次の財閥後継者と見込まれている それだけの有能さを持つ
 ヒィキタイタンの妹;未婚 ヒィキタイタンの容姿を持ちマキアリイの強さを兼ね備える人物を夫としたい

おわり」

釈「だめだこれ。」
じゅえる「他に何か無いのか他に。」

まゆ子「
 チュダルム彩ルダム;ヒィキタイタンの従姉 ベイスラでの闇御前裁判を5月に控えて隠し玉を準備する(あ、この物語の時期はクワンパが着任する前の1月お正月です) ヒィキタイタンも絡んでる
 タルちゃん;タコ巫女 ゥアム帝国製の楽器が弾ける ゥアム帝国での音楽留学から戻りヒィキタイタン家を拠点として活動を行っているが、ちょっと窮屈

 このタルちゃんの音楽活動の便宜を図るという個人的な活動を織り交ぜて、マキアリイとの友情も絡めながら、総選挙が行われる大事な年のお正月風景の中、政治情勢を描きたいと思います。」

明美「ふむ。タルちゃんてヒィキタイタンの恋人?」
まゆ子「ちがいます。どちらかというとマキアリイの方が好きな子です。でも音楽の方がずっと好き。」
釈「タルちゃんは天才肌ですから、天然ですね。」
明美「では色恋沙汰は無し?」

まゆ子「そこが重要であります。ヒィキタイタンもそろそろいい加減に結婚してくれないと困る年齢です。なんせもう30です。
 あと、嫁になるはずだった財閥令嬢がびびって逃げ出したわけで、だいたい「闇御前」事件の頃の政界のごたごたでヒィキタイタンも命を狙われかけるという現場に彼女も居合わせたという不運。
 マキアリイの被害者です。」

じゅえる「今年の総選挙で当選した暁には、有力な政治家か新たな財閥令嬢との間に結婚を、と考えるわけだ。当然に政治的に。」
釈「書くこと自体はいっぱいあるんですね。問題はキャラと政治背景か。」
まゆ子「ちなみにヒィキタイタンの嫁はもう決まってます。

 第五巻で登場予定の、10年前の「潜水艦事件」のヒロインがこの事件で巫女寮に住み着いて、やがてヒィキタイタンとくっつくのです。
 ゥアム帝国の神族外交官の令嬢でタンガラムとのハーフ、というとんでもない属性です。政治的にも強い影響力を持ちます。」
じゅえる「外国人が嫁でもかまわないのか、タンガラム政界は。」
まゆ子「今回に限って言えば、タンガラム中央政界にとっても有益です。ゥアム政界に極めて太いパイプを通す事になります。だから大歓迎ムードです。

 もちろん一般ヒィキタイタンファンにとっては、誰が嫁でも許せないのですが、「潜水艦事件」のヒロインとなると反対のしようが無く、泣く泣く万歳するしかない相手。」
釈「それは、第五巻に登場ですから、今回の外伝には姿を見せないという事ですか。」
まゆ子「ちらと話に出してもいいが、第五巻ではいきなり登場! を書きたいから、なしというところで。」

 

明美「つまり、色恋沙汰は無しがデフォだね?」
まゆ子「ホモも無し!」
明美「ち」

明美「やっぱり、その場限りでいいから、悪を用意しなくちゃ。」
じゅえる「賛成だが、政治的な悪であれば、ごたごたぐちゃぐちゃと鬱陶しいぞ。」
釈「政治家であるヒィキタイタンが自らの職権において正当な活動を行って、悪を打ち負かす。こういうシナリオがよろしいです。」

じゅえる「マキアリイ登場も無し?」
まゆ子「無しで。」

明美「手が無いね。それでまゆちゃんはどういうお話を思い浮かべているんだよ。」
まゆ子「無い、というか新年会で政治家同士が悪の密談を交わして、ぐへへ。で終了なの。」
じゅえる「だめだなこれ。」
釈「まったく役に立たないじゃないですか。明美先輩、なんとか言ってやってください。」

明美「えーとー。つまりは会話劇がいいのかな?」
まゆ子「無理。キャラの立ってない新規登場キャラでそんなの無理。」
釈「誰が誰やら分からないですからね。」

じゅえる「参列客の宝石が盗まれるとか、爆弾犯とかは出したらダメか。」
まゆ子「嬉しくないが条件付きでアリ。」
釈「犯罪絡みにすると、マキアリイさんを出してしまいたくなりますからね。」

 

明美「よしわかった! ぶっ殺そう。

 どこかの政党党首か、有力派閥の領袖が、新年会で餅を喉に詰めて憤死だ!
 純然たる事故だけど、政界では暗殺の噂でマスコミとかも大騒ぎになる。」

じゅえる「確かにそのくらいの大げさな事件は必要だが、まゆ子、これは?」
まゆ子「餅で死ぬとか、ほんとに世間様で事故が起こってる遺族の方々のお心を傷つけるのではなかろうか…。」
釈「えい、そんなのはこんにゃくでも入れ歯でも死ぬんです。喉詰めて。だいじょうぶです!」
明美「なんだったら、ゲルタでもいいよ。」
じゅえる「いや、なんか聞いたこともない至極上等なぷるんぷるんした食い物でタンガラムにしかない高級品を喉に詰めた、ということで。中央政界政権与党の新年会だし。」
釈「世知辛い世の中ですねえ。お餅で死ぬのをギャグにも使えないなんて。」

まゆ子「ではクジラの脂の煮凝り料理ということで、普通しぬような食い物ではないにも関わらず、それは死んだ。」
じゅえる「ちょっと怪しい、暗殺の気配がする、というのは悪くない。」
釈「マスコミが騒ぎ出すわけですよ。」

まゆ子「これは純然たる事故であるにも関わらず、政敵を排除する為に仕組まれた暗殺劇だ。と世間で大事になり、
 マキアリイが電話で、喉にモノを詰めて人を殺すツボ、というのがあると教えてくれて、また話が厄介になるわけだ。」
じゅえる「政界の裏の汚い部分を描くのに、人の死くらい好都合なものはあり得ないからな。」
釈「その死んだ人物が、次の総統候補だったりしたら、十分に謀略謀殺を疑われますね。イイです!」

明美「オチは?」

釈「これはオチませんね。というか、このネタは選挙の時まで延々と引っ張り続けるべきネタです。マスコミも野党も。」
じゅえる「むしろ、選挙でピンチなこの状況を打開する妙案として、選挙運動にマキアリイを引っ張ってくるという手を用いるべきだ。」
釈「それですね。ヒィキタイタンに我が党のピンチを救うにはそれしかないと、無理強いするのですよ。」

まゆ子「ではそのクジラを喉に詰めて死ぬのは、実はアレルギー反応で喉が収縮して窒息した、という医者の見解が出るけれど、そんなの誰も信じない。
 ということにします。」

 

明美「ヒロイン出さないの?」
釈「この話限定のヒロインは欲しいですね。」
じゅえる「誰か行きずりのヒロインは必要だろう。とはいうものの、これはタルちゃんで間に合うか。」
釈「謀殺事件には関係ないヒロイン、ですか。そうですねー、新年会に演奏する目的でタルちゃんも出席している事にしますか。」
明美「タルちゃんて、美人?」
まゆ子「それなりに。だが天然系無邪気キャラであるから、異常に男性との距離が近い。」

釈「あと出演しなければならないのは、ゲスマスコミ!」
明美「おお!」
じゅえる「今や必須アイテムだな、ゲスマスコミは。」
まゆ子「ふむふむ。ゲスマスコミえんとり。あと、マキアリイ事務所のスタッフとか、学生時代に結成した政治運動の仲間とかも出ていいぞ。」

じゅえる「ちょっと危ない目に遭うといい。ヒィキタイタンがかっこいい所を出さなくちゃ。」
まゆ子「ふむ。反対派の暴徒とか? でもヒィキタイタンを闇討ちにしようとする奴はほとんど居ないぞ。」
じゅえる「目立つ広告塔であるから、あえて。というのでは?」
まゆ子「う〜ん、」

明美「タルちゃん暗殺事件! ヒィキタイタン様にべっとりくっついている悪の女をぶち殺す為に、ヒィキタイタン信者の女性がナイフでぶっ刺しに来る。」
釈「あー、まあー、普通にアリですね。」
じゅえる「ヒィキタイタンも大変だなあ。」
まゆ子「ああそれで、ヒィキタイタン家にずっと居るのは良くないと、ノゲ・ベイスラ市にお引っ越しになるんだ。」

 

     **********

 

 

2017/07/05

まゆ子「そろそろ不二子ちゃんが欲しい!」

釈「はあ、そうですねそろそろいい頃合いですね。」
じゅえる「まあ主人公がクワンパであるのだから、あまりヒロインぽいのが出てきてくれても困るのだが、悪女キャラは必須だね。」
まゆ子「そもそもがマキアリイさんはジャン・ポール・ベルモンド似の、ルパン三世やらコブラやら「狼男だよ」の犬神明と同系のキャラなのだ。
 悪女キャラに振り回されるのはもう生まれた時から決まっている運命なのだな。」

釈「でも毎回クワンパさんに殴られてるんでしょ。」
まゆ子「そうじゃない。欲望の対象として、ぶっちゃけるとセックスの対象としての悪女にいいように翻弄されてしまうのだ。そういうものなのだ。」
じゅえる「わかるわかる。マキアリイさんて性欲無いのかよと思っちゃうよね。」
まゆ子「というわけでスケジュールを確認してみると、3巻4話「マキアリイ、里帰りをする」、3巻6話「ハリウッド殺人事件」がその対象と成り得る。」

釈「そりゃハリウッドでしょ。美人美女てんこもりです。」
じゅえる「だよな。」
まゆ子「ところがだ、この回はどちらかというと映画版マキアリイである”マキアリイ”グェンヌさんとの男の友情話が中心展開になりそうなのだ。」
じゅえる「う〜〜〜〜〜ん、そりゃ〜〜〜〜〜〜あ、うんそっちがいい。」
釈「クワンパさんを絡めるにはそっちの方が展開いいですねえ、確かに。」

まゆ子「無論、芸能界でのし上がる為に本物英雄マキアリイに取り入ろうとする若手女優とかが出てきてもまったく問題ないのだが。さて。」
じゅえる「「マキアリイ、故郷に帰る」はロマンシング・ストーンだっけ。」
釈「冒険モノの予定です。政府秘密調査員がマキアリイの故郷に潜入して驚くべき秘境に侵入するのです。」
まゆ子「ちなみにこの回のヒロインは、マキアリイを養育してくれたほとんど王族のような褐色のお姫様です。若い頃からお姫様で、歳をまったく取らずにお姫様です。」
じゅえる「怪人だな。」
釈「不老不死は「げばると処女」では定番ですよ。」

じゅえる「まいったね。ちなみに第7巻「絶体絶命隔絶途絶」は、変身キャラ007による女装ヒロインが出演して悪女を演じますが、これはちょっと違う。」
まゆ子「不二子ちゃんではないな。」
釈「意外と出しにくいものですね、不二子ちゃん。」
じゅえる「そもそもが毎回ゲストキャラで印象的な女性は出ているぞ。悪女は出ているが、マキアリイと直接絡まないな。」
まゆ子「いっそのこと、悪女を出すために一個事件をでっちあげるか。」
釈「お話増量ですか。それも手ですかね。」

 

まゆ子「ゲストをお呼びしました。明美様です。」
明美「どもー。不二子ちゃんかあ。」
じゅえる「どうだ、色々と考えつくものがあるだろう。」
明美「いやあるけどさ、どうせやるなら男不二子ちゃんという線でいくのはどう?」

まゆ子「えええええ。」
釈「男不二子、ですか。男なのに悪女キャラ……。」
じゅえる「いや、そんな、気色の悪い。」
明美「そうかなあ。少女漫画とかそんなのばっかりじゃないかな。」
まゆ子「あーいやまーそーなんだけどね。クワンパさんに絡めるのなら男でそいうキャラ有ってもいいけどね。」
明美「いえ、絡むのはマキアリイさんにですよ。」
じゅえる「ホモかー。まーそれはありだよねー。」
釈「いやまあそれはそうなんですけどね。それでいいんかな。」

まゆ子「嬉しくない!」
明美「だめか、てへ。」
まゆ子「いや方向性としては理解するのだが、それはこの段階で投入してもらっては困る。キャラが歪む。」
釈「序盤ですからねあくまでもまだ。それ出しちゃうと、全体的にそれに沿って物語のラインを組み立てていく羽目になりますよ。」
じゅえる「だが捨てがたいものがある。」
明美「うんうん。」
じゅえる「ここは間を取って女装キャラというのではどうだろうか。本当に小悪魔系悪女なホモキャラ。」
まゆ子「ホモはやめろ。」

明美「ぶち殺そう!」
釈「え、」
明美「コブラのゲスト悪女キャラはだいたいぶち殺される。それならば後腐れなくホモを投入出来るのではないでしょうか。」
じゅえる「穏当かつ王道の展開だな。ストーリーラインにも絡まない。」

まゆ子「あー、いや、そうだ、それだ。うん。
 そもそもだ、ロマンシング・ストーンだ。第4話は。これは冒険するキャラはマキアリイじゃないんだ、政府諜報員の方なんだ。」
釈「なるほど。この回はマキアリイさん視点ではなく、あくまでも政府諜報員視点で描いていくという仕掛けですね。」
まゆ子「これを男とする。まだ若く経験も少ない駆け出し諜報員だ。
 こいつに絡む小悪魔キャラということでホモを出す分にはまったくに困らない!」

明美「いいんじゃない。」
じゅえる「マキアリイには関係ないぞ。」
まゆ子「いやいや、後に諜報員はさっくりとマキアリイに見つかって行動を共にする事となる。悪女キャラなんだから、どちらにもちょっかい出せばいい。」
釈「おお、それならば自然にキャラを投入できます。でもこれ、死にませんね。」
明美「殺そう。」
まゆ子「ほんとに死ななくても嘘死にでもいい。とにかく死んだことにしてオチに繋げるというのはどうだ。」
じゅえる「悪女なんだから死にマネも上手ってことか。」

明美「ロマンシング・ストーンであれば、敵の悪い勢力というのが居てもおかしくない。そいつらに殺されるというのがお勧めです。」
まゆ子「謎の秘宝を求める暗黒魔術集団とかだな。悪女生贄にされてしまう。」
じゅえる「生贄はいいなあ。心臓とかえぐり出すともっといい。」
釈「いいでしょ。」

明美「政府諜報員と悪女捕まって、美しい悪女は生贄にされてしまう。その過程で男の子であることがバレるのだが、暗黒魔術師はむしろ大喜びで心臓を抉り出し悪魔に捧げるのだね。」
まゆ子「あー、ロマンシング・ストーンというよりインディ・ジョーンズだな。」
釈「そして政府諜報員が次の生贄、というピンチにマキアリイさんが救出に突入。悪魔集団との格闘戦におよびもちろん大勝利。
 しかし、政府諜報員は自分のせいで悪女死んじゃったと後悔することしきり。という仕組みです。」

まゆ子「その後、政府諜報員は王女様によって秘孔を突かれてここ数日の短期記憶を消失する。
 秘境を離れて文明社会に戻る車中にて目を覚まし、この数日がおぼろげな夢のようにはっきりとしないのであった。
 そして駅に到着して分かれて、ふらふらしてると客引きの少年が、まるでその悪女と生き写しという……。」

明美「完璧ですね。」
釈「ストーリーラインに抵触もしないし、いいんでないですかそれ。」
じゅえる「マキアリイとの関与が薄いけれど、まいいか。」

 

 

2017/04/19

釈「くっちゃりぼろけっと緊急ー。」
まゆ子「今日の議題は、第三巻「世界が彼を待っている」第一話第二話です。
 ぶっちゃけ、事件が思いつかない!」

釈「一話はナマケモノで決着がついたはずですが。」
まゆ子「このお話は、山奥の電源開発事業を巡って反対派による暴力的反発により推進派が次々に虐殺されていく、と思っていたらナマケモノの仕業だった! というものです。
 この間違った推理の部分はれっきとしたミステリーであり、しかも八つ墓村クラスのおどろおどろしい因習が絡む猟奇犯罪なのです。という風に思わせる状況なのです。」
じゅえる「そりゃ最初から組み直さないとダメだわな。」

まゆ子「第二話に至っては、犯罪そのものが存在しない。どうしたものか。
 ちなみにこの物語は、ヱメコフ・マキアリイとソグヴィタル・ヒィキタイタンが何年ぶりかに共同して大活劇を繰り広げるという豪華スペクタクルなのです。
 後には必ず映画化されること間違い無しという大活劇が欲しい、とは思うのですが、それは第五巻「その女、ヒロイン」第六巻「英雄と皇帝」でも描かれますから、割とさりげなくかっこいい活躍をするという程度で。」

じゅえる「ムシが良すぎる注文だな。」
釈「さあー困りましたね。とりあえず喫緊の課題である一話から始めますか。

 

 まず事件の背景からお願いします。」
まゆ子「はいはい。舞台はベイスラの裏にあたるサユール県というど田舎のそのまた森の中の村で起きます。
 ここは産業は林業くらいで何も無い貧しい土地ですが、それゆえに誇り高い人々が住んでいます。元黒甲枝の一族がこの地を統べる領主的な存在として今も活躍します。この家系のお姫様が今回の依頼人。

 さて、ここは森林部であり水源には不自由しません。開墾は無理ですが、豊富な水量を利用して発電を行い、首都の電源事情を改善しようと考えられています。とんでもない高地に鉄塔を並べて直接送電します。
 これ自体は悪い話ではないのですが、作業員を別の地域から連れてくるという話になっており、地元民を雇用して地域を潤すべきという勢力との間で話が若干こじれています。
 さて、我らが英雄探偵ヱメコフ・マキアリイはかってベイスラの南のエイベント県での電源開発事業にまつわる汚職事件を見事解決した経験があります。ザイリナの頃です。
 そこで、首都の大学で勉学をしていたお姫様が地元の事件を知ってマキアリイに依頼する、というお話です。」

じゅえる「導入部だな、それ。」
釈「そして、結末が決まっているのです。
 お姫様には兄が居て、彼は少年の頃はとんでもない神童でありました。その頭脳を用いてサユールの地を豊かにしようと様々な試みを行い、異国の作物なども植えて実験をしていました。
 その頃に持ち込まれたバシャラタン産のナマケモノが、今回の真犯人です。」
じゅえる「その中間、ね。なるほど、それはまったく何も無いんだね?」
まゆ子「まったくに。」

じゅえる「とにかくまずは殺される被害者を設定しよう。えーと、」
まゆ子「電源開発事業を行う官僚公務員、建設会社の社員、地元政治家などなど。3人も死ねばいいでしょう。」
釈「負傷者はもう少し出てもいいですかね。殺人事件はマキアリイさんが到着後に起きるという感じで。」

じゅえる「ふーむ、それはアレだな。電源開発事業の妨害と普通は考える。地元警察は考えるが、実は更に根の深い怨念がどうのこうの。」
まゆ子「ああそうか。電源開発事業そのものへの反発、と考えるから難しいんだ。それは導入でありミスリード要因と考えればいいんだな。

 つまり歴史的に不入の地があり、電源開発事業の調査員なんかが地元の掟を破って足を踏み入れたから祟りが起きた。」
釈「なるほど、分かり易い。」
じゅえる「いや、それもミスリードとして考えよう。マキアリイさんが調査していくに連れて、どうもこの掟と祟りを悪用した妨害活動ではないかと見るわけだ。」
まゆ子「ふむふむ。」
じゅえる「となるとだ、悪人が欲しいな。あからさまに犯人ぽい奴が居て、そいつが私利私欲で電源開発事業に絡んで保証金とか立ち退き料とかを値上げさせる算段をしている、とか。」
釈「なるほど。で、そいつも死ぬ。」
じゅえる「死ぬ。」
まゆ子「死ぬよね。そこで、その悪巧み論も潰えるわけだ。」

じゅえる「祟りを実際に行うのは、超自然的な力? それとも別部族?」
まゆ子「あー、疑われるのはサユールに古くから住む森林民という事にするかな。お姫様達の村とは隔絶した。」
釈「どうですかね、あまりヨロシクない設定ではないかと、それは。」
まゆ子「差別的がどうのこうのか。あーじゃあ、落人?」
じゅえる「あるのか、そんなものが。」
釈「落人伝説があってもいいですよね。かってこの地には戦で敗れた勢力が逃げ込んで、他の民が近づくだけで殺していたという不入の地伝説が。」
まゆ子「それで行くか。でも実際に調査するとそんな落人は居なかったんですよ、というのが地元民の常識だ。
 そうだな、サユールの外の世界では割と有名な伝説だが、地元ではそれは無いと完全否定されるような話だ。そこまで田舎じゃないよ、という。」
釈「その伝説の落人が使ったという武器と、被害者に残された傷跡が一致する、とかいうやつですね。」

じゅえる「急に怯える実力者、とかいいよね。村長がいきなり30いや40年前に起きた忌まわしい事件を思い出す、とか。」
釈「いいですねえ。その落人伝説が殺人事件と結びつくのは、これが二度目なんですよ。40年前に凶悪殺人犯がこの辺りに逃れてきて、村人全員でぶち殺したとか。」
まゆ子「うんうん、村人でぶち殺したのではなく、死体が木の上に吊るされてそのような傷跡で死んでいて、祟りじゃということで結末が降りた話ですな。」
釈「実際は村人の仕業だった。」

 

じゅえる「そうだなー、その事件についてはマキアリイさんが推理で解き明かしてもいいな。真相はこうだったと。」
まゆ子「ふむふむ。その時の凶悪犯の一味が隠した黄金、なんかを発見しちゃう。」
釈「いいですね。ではこういうので。

 凶悪犯一味が隠した黄金は遂に発見されなかった。しかし、不入の地と呼ばれる地域に測量に訪れた調査員が偶然に発見、私物化しようとする。
 ひそかに持ち出した黄金を巡って発見者の間で私闘の騒ぎとなり、原因を公表できないから謎の傷害事件としてマキアリイさんを呼ぶまでの拡大をしてしまう。」

まゆ子「ふむふむ。最初の発端と、連続猟奇殺人とは実はまったくに縁が無かった、という話だな。それで行こう。」

じゅえる「最初の連続傷害事件が忌まわしい伝説と結びついておどろおどろしく語られるのを懸念したお姫様が、マキアリイ探偵に依頼。
 調査に出向いたら、その怪事件の続きと思しき連続殺人事件が急に発生し始める。というシナリオだな。」
まゆ子「そういう流れであれば、まったく事件と関係の無い官僚や地元政治家、工事会社の社員とかが不用意に危険な場所に踏み込んで殺されても不自然ではない。
 よしわかった!」

 

じゅえる「では落人伝説だが、どうするかね。やはり戦に敗れた8人の武者が、とかにする?」
釈「あーそうですねー、どの時期の話にしましょうか。落人というからにはやはり鉄砲普及前ですかね。」
まゆ子「弥生ちゃんがピルマルレレコ教を滅ぼした時期、でもいいぞ。ど田舎の山中に逃れたピルマルレレコ教団の幹部が密かに黄金を、というのはあり得る話だ。」
じゅえる「600、700年前の話か。ちと近いか?」
釈「そうですねー、日本の歴史なら十分古いんですがタンガラムはゆっくりと歴史が流れてますからねえ。」
じゅえる「じゃあ「ジョグジョ薔薇の乱」か。弥生ちゃんが滅ぼした。」
まゆ子「悪くない。わるくないんだが、そこはほんとうに歴史から神話の境目だなあ。どうするか。」
釈「その後も戦争はありますからねえ。えーと、『げばると処女』を参照して……。

 5042年『カブトゥース(褐甲角神聖戴権)』戦争はどうでしょう。褐甲角王国内部での内戦ですこれ。
 ソグヴィタル王 範ヒィキタイタンの孫が首謀者であり、第二次ジョグジョ薔薇戦争とも呼ばれます。
 この時の遠征軍は人目を忍んでサユールの渓谷を抜けて進軍してるんですね。当然敗走する時も同ルートを通ったと思われます。

 サユールの黒甲枝家が治める地において伝わる伝説として、その落ち武者の処断をお姫さまの先祖が行ったとすれば。」
まゆ子「悪くない。いや、むしろそれだ。お姫さまの一族にとってそれは名誉に関わる重大問題であり、不入の地の禁忌を守るに十分な理由がある。」
じゅえる「では落ち武者が来て、この地で腹を斬ったという。何人くらい?」
まゆ子「全員が死ぬことも無いだろう。何名かは首都カプタニアに護送されたという事で。そうだな7人の黒甲枝と金翅幹家が2名。黒甲枝は全員腹を斬った、としよう。」
じゅえる「金翅幹家はいいのか?」
まゆ子「弁舌でもって法廷においてさらに戦おうとした、という態度であった。てな感じで。」
釈「なるほど。それは軍資金くらい持ってきても不思議ではありませんね。というか、甲冑自体金色ですよね。」
まゆ子「そうだな、黄金の甲冑をこの地に封じて再起の際に用いようとした。そういう伝説だ。」
釈「で、黒甲枝の神兵は自害するのですね。」
まゆ子「うん、自ら腹を斬った上に大剣で自分の首を刎ねて死んだ、という壮絶な最期を遂げるのだ。哀れに思ったお姫さまのご先祖が手厚くこの地に葬っている。」

 

まゆ子「いいでしょう! 第一話はこれで行きます!」
釈「ヤッター。」
じゅえる「めでたしめでたし。」
まゆ子「じゃあ次第二話お願いねー。」
じゅえる「ぎゃあああ。」
釈「ぎゃふん。」

 

まゆ子「第二話は、「「潜水艦事件」10週年記念殺人事件」です。
 この物語はヒィキタイタンとマキアリイという国民的英雄が再びペアを組んで大活躍するという、ファン大歓喜シナリオである必要があります。」

じゅえる「そもそもが「潜水艦事件」の動機というか犯人側の事情というか、そういう所を明らかにしないとダメなんじゃないか。」
まゆ子「ところが今回の犯人は、「潜水艦事件」の責任を取らされて失脚したイローエント海軍の失意の司令官、です。「潜水艦事件」犯人とは一面識も無い。」
釈「ふむふむ。とばっちりでクビになっちゃったんですね。かわいそうに。」
じゅえる「ではまったく責任が無いかと言えば、国防上の重大な欠陥が暴露されてしまったわけで近海防御という規定路線が破綻を遂げるという、本当に軍人軍司令官にとっては悪夢であったわけだよ。」

まゆ子「可哀想だが、もちろん重大責任アリ、というわけさ。恨みに思うのは国家英雄の二人にではなく、御自分にだ。」
じゅえる「まあ職責上はそうなんだろうな。」
まゆ子「問題はこの人が或る種の拡大論者だった事にある。というか、海軍の将たる者は皆考えるわけですよ、「海外派遣軍は本来海軍の管轄であるべきだ」と。」

釈「そりゃそうですよね。なにせ海の上で船に乗って戦争しているわけですから。」
まゆ子「人員もそうなのだ。海軍で養成した人材が多数海外派遣軍に取られている。
 まあいずれ帰ってきて実戦経験を積んで海軍上層部も彼らが占める事になるわけだが、その時は海外派遣組による派閥が海軍を支配する事となる。」

じゅえる「なるほど、かなりやばい状況と言えるな。それも海外派遣軍が「闇将軍」の影響下にあるとしたらな。」
まゆ子「まあそういうわけです。政府と結託した「闇将軍」組織が海外派遣軍という形で軍部を掌握しようとしている。
 タンがラムにおいて軍隊は国家の三権とも数えられる重要な存在であり、それが犯罪組織まがいの勢力の支配下に陥る事態は避けねばならない。
 であれば、海外派遣軍の機能を海軍に取り戻すべきであり、海軍自身が海外派遣能力を獲得すべきである。」

釈「実に理に適った判断です。それは孤立した意見だったのですか?」
まゆ子「いや、海軍関係者においては結構根強い意見だ。それに海軍士官の多くは既に海外派遣を経験しており、その弊害と損失についても理解する。実態が建前とは乖離する現状もだ。
 何らかの形で修正せねばならないのは間違いなく、様々な方策が各方面において議論されている。もちろん陸軍有志とも協議の上だ。」

じゅえる「つまりは主流派であったわけだ、その司令官は。
 それが「潜水艦事件」で引責辞任させられて、後任は「海外派遣軍派」にすげ替えられた?」
まゆ子「ですね。」
じゅえる「なるほど、クーデターくらい起しかねない人物というわけだ。」
まゆ子「その海外派遣能力を海軍に与えよう、という勢力を俗に「大戦艦隊主義」と呼びます。
単純に巡航能力を持った艦艇を海軍に増やそうというのではなく、より強力な重装甲巨砲戦艦に巡洋能力を与えて投入しようと提案もしている為に、こう呼ばれます。

 対して、あくまでも海軍は本国侵攻に備えて近海沿岸での撃退能力を強化すべきだとするのが、「航空制圧主義」です。
 これからの時代は航空機によって海上覇権が維持されるという考えで、「潜水艦事件」の後に近海防御に穴が有ったことが暴露されてしまい、水上飛行機による哨戒活動を密に行うように体制を改めました。」

釈「どちらがよい、というのは、まあ現実的に切羽詰まった国防体制の強化と考えれば、後者しか無かったわけですね。」
じゅえる「そりゃね、大艦隊をさくっと増やすわけにはいかないからな。」
まゆ子「大戦艦建造なんて夢のまた夢です。工業力的に。」

 

釈「つまり、「「潜水艦事件」10週年記念殺人事件」は海外派遣軍の在り方に対する抗議、の意味合いから起きるものなのですね。」
まゆ子「と、私は考えている。問題はありますか?」

じゅえる「ふーむ、背景は分かったが、ではどうすれば要求を実現できるかだな。
 ちなみに、その司令官は犯人なのか?」
まゆ子「この人が殺人の被害者です。」
釈「あー。うーむ、そりゃ困りましたね。どういう経緯で死んでるのか、謎すぎますね。」
まゆ子「ちなみに、この事件の序盤で国家総統閣下と共にバルコニーで手を振る事を強制されるヒィキタイタンとマキアリイは、とうぜんに総統暗殺未遂事件を未然に防ぎます。
 主にマキアリイさんの御力で。」
じゅえる「ヒィキタイタンは現在国会議員だったな。それでは戦闘力は期待することはできないか。」
釈「そうですねえ、なにかかっこいい見せ場を作らないといけないんですが。」
まゆ子「国家権力が絡んだ事件であれば国会議員としてサポート出来るんだが、いきなりの襲撃では、それに周囲に護衛も居るからね。」

じゅえる「それで、その死んだ司令官というのはどういう要求をするはずだったんだ。」
まゆ子「まあ現実的に考えれば、海外派遣軍の権限の一部を海軍に引き渡せ、というものだが、それは当然に派遣軍の運営費予算を海軍に引き渡せという事にもなる。当然の話だが。」
釈「でもそれは正式な国家予算ではなく、「闇御前」組織によって運営される利権構造からひねり出している不正規な資金なわけです。」
じゅえる「ふーむ、そりゃ困るね。」

まゆ子「ついでに言うならば、海外派遣軍に出向している海軍兵士、もちろん陸軍兵士もだが、死亡傷病に陥っても戦闘の結果ということにはならないわけで、補償が著しく低い。
 これを改善しようとするのが主たる動機なわけだが、その為には国会に海外派遣軍が戦争状態にある事を認めさせ、補償の予算を獲得しなければならない。」
釈「それは重大かつ大問題ですね。」
じゅえる「それは、どうしたらいいのか見当もつかないな。」
釈「政治的アピールを行うしかないわけです。ということで、総統襲撃という事件を起こす事になる……。うん、そこから殺人に繋がらないな、困りました。」

じゅえる「つまり、総統襲撃事件発生→事件捜査→黒幕は前司令官と判明→逮捕に行く→死んでた という話だな。」
まゆ子「まあ、そうだね。それも事件が起きる数日、いや数週間前に孤独死していた、てな話だ。」
じゅえる「孤独死、……それは、困る。」
釈「ええまあ、犯人じゃないですねそれ。どうしましょう。」
まゆ子「どうしたらいいと思う?」

 

じゅえる「相変わらずとんでもない所で投げ出してくれる。えーと、それで結局犯人は誰なんだ? もう決まってるんだろ。」

まゆ子「いえ、今回決まっているのはヒィキタイタンとマキアリイが大活躍して映画化できちゃう、というだけです。」
じゅえる「まったく無しか!」
釈「ですよねー、大活躍が一番重要ですよねー、犯人とかトリックとかよりもはるかに重要な。」
まゆ子「ちなみにクワンパさんもそれなりに活躍して、映画化された際にも十分クローズアップされる出番があります。」
じゅえる「必要条件が多いな、おい。」

まゆ子「ちなみに尺は25章を予定。150枚くらいです。」
釈「尺まで決まってますか、大物ですね。中編くらいの長さはありますよ。」
じゅえる「おそらくそれ、200枚コースだ。ちなみに第一話は?」
まゆ子「15章を予定。20章以下です。100枚前後ですね。」
釈「ナマケモノが犯人ですからね。」

じゅえる「犯人を考えよう。謎の秘密機関にするか?」
釈「クーデター紛いを起こすほどの組織力が有るのであれば、そのくらいの規模は必要ですかね。」
まゆ子「たしかに。軍の諜報機関工作部隊くらいは必要かもしれない。

 あー、そうだな。マキアリイさんは負けてもいいのかもしれないな、この話。」
釈「なんですか、それ。」
まゆ子「つまりこの事件の目的は、世間と政府に対して派遣軍戦死傷病兵に対する補償の拡充がそうなんだ。
 そして、それを起こして世間の注目を喚起させようとしたのが、負け組とも目される元海軍司令官である。一種の義人として彼は賞賛されるはずであった。」
じゅえる「なるほど。宣伝活動と考えればいいわけか。」
釈「手段はともかく目的は善とされるわけだから、犯人が分からなくてもいいわけですね。」
まゆ子「まあ、探偵ものであるからには、それで終わらせては困るんだけどさ。」

じゅえる「で、どんな犯人の候補があるのさ。」
まゆ子「まあなんですね、海外派遣軍の帰還者が多数噛んでいるのは間違いない。ただそれらを結束させ行動させるだけの中心となる人物なり組織なりは、」
じゅえる「悪の組織が絡んでもいいんじゃないか。」
まゆ子「うーん、そうなんだけど、テロ組織ではないわな。『ミラーゲン』なんかの。」
釈「ヤクザ組織ですかね。それも違うかな。」
まゆ子「ヤクザも絡んでもいいかもしれない。でも今考えたんだけど、「闇御前」組織が絡むのがやはり筋なのかな。」
じゅえる「まあ海外派遣軍だからな。でも「闇御前」は海軍への派遣軍機能の移転は承知しないんじゃないか?」
まゆ子「そうでもない。どちらかというとそれは政府の意思であって、闇御前は利権構造の維持の方が重要だからね。」
釈「じゃあ、篤志団体、てことですか? いや違うでしょ。」

まゆ子「あー、うーん。「闇御前」組織が一部関与してもいいんだが、こうなってくると、意識高い系の軍人の理想主義的な行動、と考えるべきだろうかね?」
じゅえる「そのくらいでないと、派手な活躍は出来ないんじゃないか?」
釈「ああ、であれば、それは最初のスクリーンに使いましょう。意識高い系軍人のグループの活動がまず第一の容疑者として挙げられ、その中核となる指導者が罷免された元司令官だ、という事で特殊部隊が逮捕に向かうと、既に死んでいた。」
まゆ子「なるほど。それで、そのグループに属すると思われる士官が何人も取り調べを受けるが、さっぱり分からない。

 その内に第二の襲撃が起きるわけだ。今度はマキアリイ、いやヒィキタイタンに襲い来る。
 そうだな、ここはマキアリイ不在で、ヒィキタイタンとクワンパが二人きりだったところを襲われて、英雄大活躍クワンパさんヒロインという素晴らしい画が発生する。」
釈「グッドです!」
じゅえる「それはいいな。」
まゆ子「それで、何故総統ではなくヒィキタイタンまでが襲われたのか、を探っていく内に、これが「潜水艦事件」10週年記念殺人であった、と判明する。次の標的は当然にマキアリイ!」
釈「そこです、それです。」

 

じゅえる「ちょっと待て、その場合の犯行目的はなんだ。そんなの憎悪を駆り立てるだけなんじゃないか、タンガラム国民の。」
まゆ子「うむ、そういうことになるのであれば、そうなんだろう。」

釈「そうですね。いや、それでいいんじゃないですか? 
 つまりはタンガラム国民の眼が外部に向いて、直接に武力で安全を確保すべきだという意見が高くなれば、海軍の増強を当然に唱える勢力の支持が高くなり、海外派遣軍の機能が海軍に移譲される事にもなる。」
まゆ子「ふむ、一理有る。」

じゅえる「それで、犯人は結局誰?」

まゆ子「このシナリオを採用するとすれば、犯人は非常に高度な政治的判断力を有する者だと考えるしかない。それも闇に隠れた存在ではなく、実際に実務に当たっている政治家、閣僚であってもよい。
 真の目的は海外派遣軍の段階的縮小と、国民への海外派遣軍の実際の状況の認知、国会での公式な戦争状態の認識、を目的とする。」
釈「それって、ほとんど政府のしごとじゃないですか。」

まゆ子「むしろ総統府の、総統閣下本人の指示によるもの、と考えていいんじゃないかな。
 むしろ今は好機でもあるんだ。闇御前は牢屋の中に居て、これまでの闇御前機関の活動は低下しているのは間違いない。
 海外派遣軍の在り方を修正しようと政治的行動を起こすのに、今ほど恵まれた時期はこれまで無かった。

 でも闇御前勢力は未だ健在であるから大っぴらに組織改編するわけにはいかず、徐々に段階的に進めていく雰囲気作りを行うってところだな。
 「潜水艦事件」の引責辞任をさせられた元司令官を有効活用し最後に国家にご奉仕させる的な考え方もアリだろう。」

じゅえる「つまりは、総統閣下自身が自分を的に狙わせた、という話か。ヒィキタイタンとマキアリイはそのダシに使われた。」
釈「なるほど、それはマキアリイさん負けておいた方がいい話ですよ。」
まゆ子「逆に、その処理は政治家であるヒィキタイタンに任せた方がよい、という棚上げの仕方が出来るしね。」

じゅえる「であれば、やはり総統閣下とその周辺は燃やされる囮のカカシくらいは用意しているんだろうな。」
まゆ子「そうだね、結局犯人は「潜水艦事件」で恨みを覚えた外国秘密諜報機関の仕業、という事にされるんだ。
 それで、口車に乗せられた元司令官が海外派遣軍での戦死傷病兵の待遇改善の為に決起する、という風に仕組まれた。というシナリオなんだ。」

釈「もう一捻り欲しいですね。」
まゆ子「そうだな。では、実は偽装総統閣下襲撃事件において、本来は爆発力の低い爆弾を使うところ、本物の兵器が使われており偽装襲撃が本当に総統爆殺が可能だった、と判明するというのはどうだろう。
 陰謀の裏にそれを利用した真の陰謀が隠れていて、陰謀を画策した総統ですら欺かれていた。」

釈「ほー。」
じゅえる「いいでないか。そこは解明されない謎ということで。」

まゆ子「さらに言えば、総統閣下はこの事件をただの事件として終わらせるつもりはサラサラ無く、いつものマキアリイの活躍が映画にされるのを見越して、タンガラム国民の意識操作の道具として用いる事を画策する。
 というわけで、今回のイローエントでの一連の事件においては、すべての現場に撮影用映画カメラが存在する。」

釈「うーむあざとい。」 

 

 

2017/02/26

まゆ子「くっちゃりぼろけっとー、今日は明日を越えて行きたいと思います。」

じゅえる「なんじゃそれは。」
まゆ子「私は前々からそうしているのですが、このくっちゃりぼろけっとで生成する物語設定ですね、これのお陰様を持ちまして小説は着々と完成していくのであります。」
釈「はい。」
まゆ子「だがそれは、ともすれば決まった路線の上をお行儀よく進んでいくだけできっちりしたものが完成する、お手軽マニュアル路線でもあります。
 マニュアルを自分で作って自分で実行する分には誰に遠慮も要らないのですが、さりとてそれが創作の喜びをもたらすかと言われると肯けない。」
釈「なるほど。」
じゅえる「定められた明日を越えてもっと高く進みたい、そういう志の話か。感心感心。」

まゆ子「というわけで、ではどうすればいいかと言いますと、手段は無いわけで、結局はまたここに戻ってくるわけです。」
じゅえる「あー、そうだな。くっちゃりで作ったものを超えるには、くっちゃりでやるしか無いか。」
釈「他で出来ればとっくにやってますからね。
 で、どこを変更しましょう。というか、『罰市偵』ですよね。」

まゆ子「この物語、マキアリイさんは現在に至るまであんまり働かない怠惰な主人公です。計画ではここからどんどんとエスカレートして、最終的にはクワンパさんが付いていくのを諦めるほどに凄まじい英雄力を発揮する事になります。」
じゅえる「英雄力てなんだ、と言いたいこところだが、まあ分からないではない。」
釈「誰にも真似出来ない、その人だからこそ主人公にふさわしいと思わせる活躍でありキャラクターですね。」
まゆ子「まあやるつもりです。マキアリイさんは正真正銘に掛け値なしの英雄探偵である、ということを描写出来ないと、この物語全巻無駄になってしまいますからね。」
じゅえる「うん。」

まゆ子「しかし、こう、なんですか? 英雄になる以外に超人になる方法って、なんか無い?」
釈「超人、ですか。既に超人な人をさらに常識を超えてウルトラマンにしちゃいますか。」
じゅえる「それこそウルトラマンみたいな宇宙人だった、的なSF要素を突っ込まない限りは無理だよ。」
まゆ子「神様に会うとか?」
じゅえる「うん、だがこの世界弥生ちゃんは会ってるから不可能ではないのか。」
釈「さすがにこの設定において、超越創造神を直接登場させるのはまずいでしょう。」
まゆ子「愚かな展開だね。」
釈「ですよね。でもまあ、怪獣くらいは登場してもいいかな。」

まゆ子「怪獣今度出まーす。第三巻第一話「ど田舎サユール事件」は巨大ナマケモノがマキアリイを襲います。連続殺人魔です。」
じゅえる「なんだそれ。」
まゆ子「ど田舎サユールで電源開発に携わっている政府役人や地元業者などが次々に惨殺されていくのです。犯人は誰か陰謀を持った人間であるという前提での捜査を行っていった結果、
 実は、山中深くに住んでいるバシャラタン固有の猛獣人食いナマケモノがその犯人だった! という奇想天外なミステリー。」
釈「それ、ミステリーじゃないです。絶対許せません。」
じゅえる「いやまて、それをどうやってミステリーに見せかけるか。その仕掛けの方がむしろおもしろいぞソレ。」
まゆ子「うんうん。あくまでも人間による犯罪という風に完全に錯覚するほどの緻密な仕掛けというのが要求されるのだ。むしろ逆に難しくてファイトが出る。」
釈「ううそうでした、まゆちゃん先輩はへそ曲がりの変人だったのでした……。」

まゆ子「あー、つまりこの回のコンセプトは「岩見重太郎のヒヒ退治」です。」
じゅえる「うんうん、マキアリイさんほどの豪傑であれば、人外の化物を退治して民衆に平和を取り戻すくらい普通にやってのけねばならないな。」
釈「いやでも、今の読者の人って岩見重太郎なんか知ってますかね?」
まゆ子「知ってなければ教えればいい。物語定番の一形態だからね、怪獣退治は。」
じゅえる「課金ゲームでモンスターをばりばりと狩りまくっている現代人には分からない話だが、モンスターってふつう居ないから。」
釈「当たり前です。居ないからこそモンスターです。」
じゅえる「羆嵐。」
釈「うう、そいつはまごうことなきモンスターです。」
まゆ子「そそるでしょ、英雄の活躍としては。」
釈「うう、言わんとする事は理解します。」

 

まゆ子「とまあここまで考えて思ったわけだ。「マキアリイさんは吸血鬼と対決しなくて許されるだろうか?」と。」
釈「な、なるほど。たしかに超越者と対決する必要が、いや、でも。」
じゅえる「吸血鬼とは言わないまでも、人界に密かに根を張った冥界の住人というのが居てもまったく問題ないわけだ。」
まゆ子「『罰市偵』はファンタジーですから。」

釈「たしかに、異世界ファンタジーなんですからモンスターや怪人が出てくるのはまったくに結構なことでありますが、しかし今更?」
まゆ子「明日を超えるよ。」
じゅえる「うーむ、冒険だなあ。」

まゆ子「ちなみに十二神方台系にはかって「人食い教団」てのがあったわけですから、グールはちゃんと居るのですリアルな存在として。」
釈「あー、人食鬼、吸血鬼というだけではインパクトが無いわけですね。空くらい飛ばないと。」
じゅえる「そういえば、『ゲバルト処女』には、カブトムシの聖蟲の死骸を食べて育ったゲジゲジの聖蟲、という化物が出ていたなあ。
 あれを流用して、脳を蟲に食い荒らされて超能力が使えるようになった人間、てのくらい出してもいいんじゃないかな。」
まゆ子「それは候補として採用しましょう。ただー、そういうリアルなのではないです今回必要なのは。」
釈「荒唐無稽で言語道断にハイパーな超越的モンスター、ですね。はあ、スタンド使いくらいのヤツですよやっぱ。」
じゅえる「スタンド使いは『ゲキロボ☆彡』で出した。また出すか?」
まゆ子「能力バトルはもうかんべん。」
釈「まあ、物語と食い違いますよね。却下です。」
じゅえる「超能力者か。サイキックは有りだろ。」
釈「念動力か、予知能力、透視能力者、さらには絶対遵守のギアス能力者が居ても有りですね。」
まゆ子「物理的エネルギー保存則を違反しないものであれば、超能力は有りなんだがな。そうかー、この世界まだ超能力者は出てないか。」
じゅえる「伸び縮みさんくらいだな。」
釈「洗脳は、あえて超能力を使わなくても、もうクワンパさん赤茶の回で出ているくらいですから、困らないんですけどね。」
じゅえる「魔法使いだな。化学的薬物を使っての魔法なら、いくら出しても有りだ。」

まゆ子「いや超能力者は有りなんだけどさ、というか今度出る義眼大尉も超能力者なんだけどさ。」
じゅえる「こう、あからさまでないリアルで普通にも居るような気がしないでも無いけれど、冷静に考えたら嘘みたいだよって能力者かなあ。必要とされるのは。」
釈「どんなものですかね、たとえば絶対に負けないギャンブラーとかですか。」
まゆ子「つきまくって幸運で都合の良いことしかその身に起こらない人間、とかだな。」
じゅえる「霊媒は有りか?」
まゆ子「幽霊存在に関しては、タンガラムは条件付きで有りです。電波ですけど。」

釈「……、ドッペルゲンガー、では?」
じゅえる「そっくりさんか。」
釈「マキアリイさんのそっくりさんが敵になり、マキアリイと対決する。というのも定番ですね。」
まゆ子「ヒーロー物では必ずある定番だな。一捻り足りない。」
じゅえる「ダメか。」

 

釈「ゲストをお呼びしました。明美様です。」
明美「どもー。で、その怪人どこに出るの?」
まゆ子「決まってない。考えてない。」
じゅえる「そうだな、どの話に出て来るかで要求される怪人の性格も決まるか。」
明美「これまで『罰市偵』のスケジュールは完成しているわけですから、この先どこに怪人を突っ込むか。それが重要ですよ。」
まゆ子「もっともなご意見。ではそこから考えるか。」
釈「えーと、まず第三巻第一話「サユール事件」は怪獣ナマケモノ登場です。」
じゅえる「第六巻「皇帝と英雄」はむしろ普通人だけが出て来る事でこそ際立つポリティカルミステリーだな。」
まゆ子「第七巻「絶体絶命隔絶途絶」は9人の戦鬼が出てきますが、超能力者というよりも超手品師暗殺者が出てきます。」
じゅえる「第四巻は怪人を出してはいけない。というか出るとすれば前半シャヤユート話だから、スケキヨだな。」

 

釈「第五巻「その女、ヒロイン」ですね。怪人を突っ込めるのは。ただ、あまり得策ではないとも思います。これ本格ミステリーでありたい題材ですから。」
まゆ子「うん、そうだな。だが描写が怪人であってもタネ明かしすれば立派にリアルだった、というミステリーは有りなのだ。もともと怪奇事件だからなこの回。」
釈「では、この回に怪人を突っ込みましょう。とはいえ、偽怪人ですねこれ。」
じゅえる「ではこの回の犯人はそれなりの怪人ということで。サイコパスの暗殺者くらいは出しても許されるか。」
まゆ子「サイコパスねえ、あんまり好きじゃないんだよね。」

明美「サイコパスが怪人じゃなくてもいいじゃないですか。サイコパスだから接触できる特殊な領域でのみ存在する怪人、とか。」
じゅえる「おお、脳内怪人か。」
まゆ子「ふむ、物理的存在でない怪人。幻人と呼ぶべきか、は有りだな。」
明美「サイコパスが死んでしまうと、今度はマキアリイさんにそいつが見える、とかで十分怪奇ですよ。」
釈「異次元空間とかはダメですかね。」
じゅえる「せいぜい鏡の中の世界に住んでいる、とかだな。」
まゆ子「現実的に分析すれば狂人の妄想に過ぎないものだが、しかしサイコパスが死んだ後にマキアリイの脳内に引っ越している。こういうのであれば十分に怪人だな。」

明美「問題はどうやって勝つか、だよ。さすがのマキアリイさんも脳内怪人とは戦えない。」
釈「あー、それは困る。」
じゅえる「まゆ子、なんか手が有るか?」
まゆ子「極めて伝統的な手法を使うとするか。狐憑きを払うにはやっぱり、」
釈「悪魔祓いですかあ!」
じゅえる「ああ、カニ巫女棒で叩けばいいんだ。」
まゆ子「基本十二神信仰においては、憑き物払いはゲジゲジ神殿の、妖怪退治はコウモリ神殿、悪行奇癖はカニ神殿の管轄と決まっています。ぶちのめすよお。」
明美「いやいや、そんな単純な方法で退治できると困ります。」
じゅえる「まーねー。覚せい剤とか使うかね。」
まゆ子「おもしろいから悪魔祓いは採用だ。だがマキアリイ叩かれ損ということで。」

じゅえる「この物語は基本的にゥアム帝国が関係しているのだ。その脳内怪人もゥアムから来たということでなんとかならないか。」
釈「ゥアム帝国にはこれを殺す手段が有る。ということですか。」
まゆ子「呪文とか音楽とか、そういう脳に作用する手段をね。」

明美「ゲルタだ!」
まゆ子「え?」
明美「苦いのは脳に効く。」
釈「おう!」
じゅえる「ふむふむ、マキアリイが正気に戻るには最適な手段だな。ゥアムから伝えられた悪魔祓いの音楽の中、ゲルタの力で英雄が蘇る。」
明美「かっこいい」
釈「うーむ、やはり自力でマキアリイさんが勝利するのが最もふさわしい展開ですね。」
じゅえる「となれば、幻人に取り憑かれている間、マキアリイはゲルタを食べようとしなかった。酒しか飲まないという事にしよう。」
まゆ子「明らかに正気を失っていると描写できるからね。」

まゆ子「つまり、幻人という怪人は、知能にのみ価値を認めるゥアム神族の間に発生した集合妄想イメージみたいなもので、実体が無いからゥアム神族ある限り何時迄も生き続ける、というものにするか。」
じゅえる「この回はゥアム帝国と文物が至る所で出現するからな。そういうところで落ち着かせよう。」
まゆ子「つまり幻人が滅びるのは、マキアリイの頭がゥアム神族ほどには複雑でなかったから生息できなかった。そいう話でオチるぞ。」
釈「ということは、サイコパスの脳はそれなりに複雑だったから、幻人は生きられた。ということですか。」
じゅえる「サイコパスはそれなりに頭込み入っているからな。」

 

まゆ子「ところでここに一つ新設定があります。

 クワンパさんが住んでいる巫女寮の同居人、ゥアム帝国の鍵盤楽器をがんがんと演奏するタコ巫女タルちゃんについてです。
 彼女は昔、高額な楽器の名器をめぐる犯罪に巻き込まれた被害者であり、「潜水艦事件」で英雄となったヒィキタイタンとマキアリイが軍のアピールに方台中を引き回しの刑に遭っている時、解決して救い出されております。
 音楽の才能に優れた彼女はその後認められ、ゥアム帝国の音楽学校で留学する事になります。
 帰国した彼女は一時首都のヒィキタイタンのところに居て演奏活動をしていましたが、彼女独自の融合音楽を完成させる為に作曲活動に専念したいとマキアリイの居るノゲ・ベイスラ市に引っ越してきたのです。
 ちなみにタコ巫女なのは、いかがわしい芸能界に所属しないままに音楽活動を行うための方便としてで、珍しいものではありません。」

じゅえる「なるほど、この設定が出来たから、ゥアム音楽でマキアリイを救おうとかになるわけだ。」
まゆ子「ゥアム帝国に棲む幻人についての逸話を大学で調べて、悪魔祓い音楽の楽譜を見つけ出してきたとしても、それが弾ける人間はタンガラムには居ない……、居たよ! というお話です。」

釈「私考えました。この悪魔祓い音楽を探すのはノゲ・ベイスラ市のソグヴィタル大学では無理で、ゥアム帝国を研究している東海岸の大学の文献の蔵書を当たるしかない。
 だが頼んだからと言ってそう簡単ではないのを、先日話を聞きに行った闇御前の息子の遊び人教授を通じて迅速な検索が出来て、大学ではなく金雷蜒神聖宮にあった、というのでは。」
まゆ子「ほお。」
じゅえる「使い方としては悪くないね。」

まゆ子「あ、注:です。最新の第五巻シナリオ構築作業において、この事件の背後には闇御前が存在しており、というよりは闇御前が計画遂行していた闇計画を、責任者不在の隙を突いてゥアム帝国が潰しにきた。
 という構造になっています。闇計画の実態を知るために、遊び人教授に事情聴取に行きます。
 ちなみに遊び人教授の専門はシンドラ古美術です。ただし「ヤヤチャ漂流文明圏」の比較研究でゥアム芸術にも手を出しています。」

 

明美「ところで、サイコパス1人でいいかい? このシステムだと、幻人は何人でも増やせそうな気がするよ。」
じゅえる「そうだな、実体が無いからには無限増殖も可能だな。ただしサイコパス級に頭がおかしいやつでないといけない。」
釈「ではこの事件、犯人が何人も居て何人も死んでいる、という事にしますか。普通の奴は犯行後気が狂って自殺するという形で。」
まゆ子「猟奇事件だからな、そのくらいは必要だな。」

 

 

2017/01/09

まゆ子「というわけで、新年あけましておめでとうございます。
 さて『罰市偵』の設定話ですが、まあ第二巻最終話にちょこっと不安がありますが、第三巻に突入したいと思います。」

じゅえる「いいのか? 第二巻最終話はなにも決まってないぞ。」
釈「事件は幼稚園児が誘拐されて、というだけですよね決まってるのは。」
まゆ子「基本的にこの回はマキアリイさんは活躍しません。ですから、事件以外の部分で充実していればよいのです。そこは出来た。」
じゅえる「いやいや、事件を作れよ。直接活躍しろよ。」

まゆ子「あー、基本的にこの回のお話はこうです。
 とあるお金持ちの坊っちゃんの幼稚園児が何者かに誘拐され、その犯人は一緒に消えた送り迎えの運転手だ、と思われています。
 現在巡邏軍警察局共に全力を挙げて捜査中であり、ベイスラの人は皆固唾を呑んでその成り行きを見守っているわけです。

 ここで我らが英雄マキアリイさんは何をしているかと言えば、関係ないのです。現在進行中捜査中の事件に民間人の刑事探偵が介入する事は法律上も許されていないわけです。依頼も受けていないし。
 というわけで、忙しい巡邏軍の皆さんに代わって、どうでもいい些事のような事件調査を行っています。どうでもいい事を民間人探偵に任すのはよく有る話です。
 今回マキアリイ事務所が請け負ったのは、鉄道轢死体の身元確認調査です。遺留品何も無し、服すら着ていなかった被害者は他殺か自殺かすらはっきりしていません。まあプロの手口であろうと思われますが。
 で、誘拐事件で人手を割けない巡邏軍が民間刑事探偵に依頼して肩代わりをしてもらっているのです。

 で、轢死体の写真をつぶさに観察していたのを後ろから覗き込んだクワンパさんはあまりの惨状に事務所の床にゲロを吐いてしまうという惨状を演じてしまうのです。
 さてマキアリイさんは死体写真から、指の1本が鉄道列車の車輪でなくナイフで切断されている事を発見します。他の指も千切れてはいますが、こうではない。
 殺害者が意図的に指を切り取ったものと理解します。では何故か。
 これは、指輪が抜けなくて指自体を切ったものではないか。と推測します。身元を証すものを何一つ残さないという意図が感じられます。
 となれば、身元を調べる証拠を指輪として持っている者である、との結論を得るわけです。そこで気がついた。

 現在行方不明の誘拐実行犯とされる運転手の宗教では、信者の証として特定の指に指輪を嵌める風習が有ったことを。
 そこで改めて死体を繋ぎ合わせて身長やら体格やらを測ってみるわけですが、もちろん既に死体そのものは処分されています。火葬で骨にしてます。
 偽病院院長のウゴータ・ガロータ副教授と共に、死体写真と骨を使って、死体の正確な身体的特徴を復元してみたところ、どんぴしゃり。
 ただちに誘拐事件捜査本部に連絡して、所見を伝えました。

 もしも容疑者が数日前既に死んでいたとすれば、捜査方針は大きく変更を余儀なくされます。
 さて。」

釈「ここまでですよね。」
じゅえる「こっから先が重要なんじゃないか。で、結局事件の骨格はどうなんだよ。」
まゆ子「いや、ただ単に金持ちの坊っちゃんが誘拐されて、お守役の運転手はとっくに殺されていましたよ、と。」
じゅえる「だめじゃん!」
釈「ダメですよそれダメ。」

まゆ子「じゃあどうしろと言うんだよ。なんにも考えてないんだよ、どうせ最後は犯人捕まえるだけなんだから過程なんか要らねえちゃねえか。」
釈「開き直りました。」
じゅえる「いや、そりゃ真実なんだが、それでは無責任すぎるだろうというわけだ。どうするか、釈ちゃん。」
釈「基本的にですね、このお話はマキアリイさんは活躍しなかったのに、最終的な総評をするとマキアリイさん大勝利というお話なんですよ。
 最後の真犯人逮捕はもちろん偶然的にマキアリイさんが、というかクワンパさんがカニ巫女棒で決着つけるとしてですね、最初と最後を締めくくるだけでは活躍と呼ぶには弱いんですね。」
じゅえる「犯人たちの隠れ家や人質の幼児が居る場所を見つけるくらいは英雄探偵やるべきかな。」
釈「ですね。」

釈「そうですね、ちょっと考えましたが、今回偽病院回であり、クワンパさんはみかん男爵との壮絶な死闘を繰り広げるわけです。
 その間所長のマキアリイさんは何をしているか。これが問題です。」
じゅえる「呑みに行ってるんじゃない?」
釈「まさに。呑みに行って、そこで聴き込んだ噂話から誘拐犯に偶然辿り着くというシナリオが要求されるわけです。」
じゅえる「いやそんな安直な見つかり方ででいいのか。」
釈「ダメです。ここに一大飛躍を投入する事で、この物語は初めて成り立つ事となります。
 後の犯人逮捕シーンは、それこそおまけです。犯人が刑事に追われて逃げてきたところを、マキアリイさんに見つかりクワンパさんに殴られる。これだけですから。」

じゅえる「呑みに行って、誘拐犯の隠れ家を発見する。もちろん犯人の正体を看破るわけだ。
 誘拐されたのが幼児であるからには、自発的に脱出を試みて外部に連絡する手段を用いた、というシナリオは却下だな。」
釈「ムリですね。でも運転手が犯人ではないとしても、乳母が実は、というシナリオでどうでしょう。」
じゅえる「ふーむ、アリだが甘い。もっと突拍子も無いシナリオが欲しいぞ。」

釈「親族の一人が実はそうだった。というのでは。」
じゅえる「親族と言ってもどの程度か、本当に家族内の話なのかちょっと遠縁なのか、それとも姻戚関係で血縁ではないのか。」
釈「はあ、お金持ちの家というのは複雑な家系になっていますからねえ。しかし、事件の凶悪性残虐性を強調するためであれば、本当に血縁のある人間がいいと思います。」
じゅえる「従兄弟くらいだろうか。」
釈「そうですねー、まずそのお金持ちがどこらへんからお金持ちかを考えますか。先祖代々金持ちですか?」
じゅえる「爺さんの代には既に十分な金持ちであった。これはよしとしよう。あまり成金だとまた話がめんどくさくなる。代々の資産家で屋敷も豪勢。」
釈「当然に誘拐された幼稚園児の両親というのが居るわけで、しかもかなり若い事になります。」
じゅえる「父親が結構な中年、というのは?」
釈「美しくありません。両親は若い。」
じゅえる「有無を言わさずだな。では両親は若く、当然その父親世代も50代というくらいになる。お爺さんは50代とくれば、そのまた一つ前から金持ちというわけだな。」
釈「はあ、50代ではお爺さん呼ばわりも難しいですからね。それこそ成金になってしまいます。」
じゅえる「成金でもいいのだが、どうする? 元々からお金持ちだったのが今50代の代で大きく飛躍したとかでもいいぞ。やり手社長だな。」
釈「やり手社長はいいですね。うーん、そうだなー、そうですねー、今50代の祖父母ですが、その親が、しかも母親の方が伝説的な起業家で一躍富を築いたということにして。」

じゅえる「曾祖母が傑物であった、というわけだな。なるほど、タンガラムでも有名な女社長であり、それを継いだ息子も社長としてまず間違いなく堅実に経営を続けていた。」
釈「どうです? 幼稚園児が誘拐とかなると、曾祖母はそれこそ嘆き悲しみ万金を払ってでも取り戻そうとするでしょう。」
じゅえる「いいね。で、曽祖父は?」
釈「とっくに死んだということで。」

じゅえる「では犯人は曽祖父の兄弟の子どもの内から、という事にするか。
 そうだな、こういう女傑出世モノの定番としては、結婚して子どもが生まれたすぐに夫が急に亡くなり、途方に暮れる彼女を親族が冷たく当たり、独立して頑張るしかなかった。というシナリオが主流だな。」
釈「なるほど。死んだ旦那の親族は皆冷たく、子どもを抱えて生きねばならなかった彼女が一躍奮起して事業を起こして大成功。」
じゅえる「旦那の親族はそれなりに裕福な家系であった。しかしその後彼女が大成功していく裏で事業に失敗して財産を失い没落していく。」
釈「それですよ、それが幼児誘拐の直接の原因ですよ。
 没落した我が家に比べて、爪弾きにした彼女の家は大成功大繁盛で幸せの絶頂に居るように見えて、これは復讐してやるぞと。」

じゅえる「だがその没落も昨日今日起こったものじゃない。
 夫が死んで彼女が事業を起こして20年の内に、だな。生まれた子ども、つまり幼児の祖父が成人する頃には見る陰も無くなって方台のどこへやらに消えていった。
 それから十数年後、もはや浮浪者同然の姿でその家の家族がまるごと助けを求めて転げ込んでくる。
 曾祖母は、助ける義理も無いのだが、なにがしかのカネで一家が暮らせるだけの事はしてやった。仕事の世話もしてやった。それで一家は生き延びることが出来た。
 しかし、その家の息子、いや娘でもいい。はそうは考えない。
 自分とはさして年齢も変わらない子が、つまり幼児の親になるわけだが、が裕福に幸せに暮らしているのに、何故自分は貧乏なのか。
 彼彼女はこれまでに、さんざんに曾祖母の家が落ちぶれて貧しかった等々を親から聞かされており、元は貧乏だったのにこちらは裕福だったのに、何故逆転したのか。きっとイカサマを使ったに違いない。と思い込んでしまうのだ。」

釈「おお、逆恨み全開です。」

じゅえる「ということで、犯行の動機はいいんじゃないかな。」
釈「その犯人は男女二人居るのですか?」
じゅえる「あー、二人居ていいんじゃないか。女の方が残酷で恐ろしいぞ。」
釈「であれば、マキアリイさんが酒場で手がかりを見つけるというのは、その男の方がもうカネが入った気になってべらべらと飲み屋の女に喋っているのを聞き込んで、」
じゅえる「いや、それは安直過ぎる。第一この時点では既に運転手が死体となって発見されているのがバレているから、犯人の候補者として親族までもが警察局に疑われている。」
釈「ああ、では喋りませんね、さすがに。」

じゅえる「だがそのシナリオも悪くはない。マキアリイが飲み屋で、その男がへらへらとカネをばら撒いているのを目撃し、男を陰で監視する人物をも看破する。
 で、監視者の方を捕まえてみたら、警察局の刑事であって、素行不良の男を内偵していたわけだ。それで男の身元をマキアリイは知る。」
釈「ふむふむ、で、決定的な事実を知るのは、」
じゅえる「そうだな、男がその後殺されそうになるのを、マキアリイがたまたま通り掛かって助けるわけだ。
 で、男には自分を殺すのが姉、か妹か、まあどちらでもいいや、が身代金を独り占めするつもりだと思わず暴露してしまうんだな。」

釈「ちょうど折よく助けられますかね。」
じゅえる「それだと面白くないな。そうだな、男は殺されかけて自力で助かったんだ。たとえば、ビルの谷間の人が通れないような所に落っこちて、暗殺者から上手く逃げられたが自分も出られない。
 マキアリイは、無尾猫の知らせで男が身動きできないのを発見して、救出する。そしたらこの間の男であって誘拐事件の関係者だった。」
釈「なるほど、偶然に、ですね。ネコも出てくるしよろしいでしょう。」

 

じゅえる「というわけだ。出来たぞ!」
釈「どうですかまゆちゃん先輩。これならすんなりとうまくいくでしょう。」

まゆ子「耽美が足りない。」
じゅえる「ヴぇ?」
釈「明美先輩の真似をしてー。」

まゆ子「いやいいんだがさ、やっぱり耽美が欲しいだろ。もっとドロドロとした、」
じゅえる「これ以上かよ。」
まゆ子「いやドロドロってこんなもんじゃないんじゃないか。そもそも今誘拐を実行するタイミングと何故判断したか。なにか特別な事件が起きたからじゃないのか。」

釈「タイミング、ですか。確かに誘拐事件を決行するだけのなにかが欲しいですね。」
じゅえる「だが、でもこれプロの手並みなんだよな。こいつらはプロではない。」
まゆ子「だね。プロの誘拐組織がこいつらに話を持ち込んだ、そういうところかな。」
釈「そうですか、運転手が殺された時の死体の処理なども、そういう風に処理しますか。」

まゆ子「そしてマキアリイが捕まえるのは誘拐のプロの方でなければならない。親族の男女の方はタネがバレたら即逮捕だよ。」
釈「はあ。」
じゅえる「ああ、なるほどね。つまり男を殺し損ねて女も捕まる頃には、誘拐組織は幼児を別の隠れ家に移して身代金奪取を続行しているんだ。」
釈「使い捨ての部品だったわけですね、親族の方は。」

まゆ子「女殺すか。誘拐組織が自分たちに繋がる手がかりを消す為に。ちなみに男の方はさほど知らないということで。」
じゅえる「殺すかね。」
釈「殺しますか。」
まゆ子「では、幼児監禁場所に警察が踏み込んだ時には、現場は蛻の殻で、女の死体が転がっているだけだった。
 そうだね、ここで誘拐組織の引き込み役のメイド、ってのが登場だ。」
釈「ここで?」

まゆ子「屋敷に入り込み事情を調査して誘拐の段取りを付ける役だが、今回親族の男女を仲間に引き込んだ勧誘役でもある。
 こいつが、さすがにやばいと脱出する。
 だが警察局もバカではないから、すぐにもう一人の内通者の存在に気付き、というか男が生きているのだから話の中でこのメイド怪しいと思って訊問しようとした直前に、逃走。」
釈「ははあ、ここでクワンパさんですね。」
じゅえる「そうか、追い詰められたメイドが、クワンパのカニ巫女棒で殴られ取り押さえられるんだ。そして組織の全貌が解明され、幼児の誘拐場所も判明して御用だ。」

まゆ子「最後の救出劇は、警察局の特殊部隊が踏み込んで無事確保。誘拐された幼児はマスコミの取材に囲まれた中で両親と涙の再会となる。めでたしめでたし。」
じゅえる「おう、できた。」

まゆ子「そうだねー、えーと最後にそのメイドは追い詰められた末にマキアリイの懐に飛び込んで「変な男達に追われているんです、助けてください」と涙ながらに訴える。
 だが男達の中に、この間酒場でとっ捕まえた刑事が居て、このメイドが悪人だとバレてしまうんだな。
 さすがにマキアリイが騙されなかったと悟ったメイドは、ばっと離れて逃げようとするところを、カニ巫女棒の餌食に。」

釈「できました!」
まゆ子「まだだ。耽美が足りないと言っただろ。」
じゅえる「メイド投入ではまだダメなのか。」

まゆ子「もう少し、その犯人兄妹、姉弟かもしれないが、の不幸不遇を浮き立たせるなにかをだね。」
釈「あー、親の介護問題でも放り込みますか。」
じゅえる「親殺すか。」
まゆ子「あーそうだねー、曾祖母に助けてもらった一家は貧乏ながらも普通に生き、子どもたちも立派とは言えないまでも成長し、親は貧乏の内に死んでいく。
 で、その墓をどうするかという問題。元の富裕な家系としては立派な墓に葬らねばならないのだが、貧乏になった時に立派な先祖代々の墓を手放してしまっており、入れることが出来ない。
 そこで墓を建てるのに資金援助してくれと頼むのだが、それはさすがにお門違いで。」
じゅえる「あんまり耽美じゃないな。」

まゆ子「では、曾祖母が人手に渡った累代の立派なお墓を買い戻している。かって旦那が死んだ時には勘当同然で墓に入れてもらえなかったのを、後年に実現したわけだ。
 そこに、没落した元本家の連中が入れてくれというのは、さすがにね。で拒絶したのを逆恨みに思って、こうなったと。」

釈「理に適ってはいます。理が勝ちすぎですかね。」
じゅえる「それも動機のひとつとしてはアリにしよう。
 あと、その男の方は、曾祖母の会社に入社させてくれと頼んだのだが、採用試験をまっとうに受けなさいと言われて当然のように落っこちて入社できなかったとか。」
釈「コネ入社出来なかったわけですね。」
まゆ子「女の方も、そうだな、十代の頃にもう誰ともしらない男の子を産んでしまうとかで。」
釈「口利きで、良縁を世話してもらうって事もできなくなったわけですね。」

じゅえる「うん、どうしようもないなそりゃ。しかし自業自得なのはいいが、もっとなにか決定的な何かが欲しいな。」
釈「カネが欲しいという切実な動機が無いと、犯罪にまで踏み込む勇気がありませんか。」
まゆ子「ガチャでもするか。」
釈「賭博ですか。」
じゅえる「タンガラムには賭博ってあまり無いんだよね。」
まゆ子「まあ悪党は悪いことするから。賭博で借金作ってしまい、「金持ちの親戚になんとかしてもらえよお」とか脅されていたんだな。」

釈「マキアリイさんは、ヤクザが来て男に催促しているのを「アテがあるんだ」とか上機嫌でいなしてたのを見たわけですよ。」
じゅえる「ところで、その女が産んだ子というのは、母親が事件で死んでしまった後はどうなるんだ?」
まゆ子「どうしよう。そんなとこまで考える必要は無いぞ。」
釈「そりゃそうなんですが、気になるじゃないですか。」
じゅえる「行きがかりを考えると、曾祖母の方で引き取るのが筋なんだろうが、情けを下手に掛けた末のこの犯罪だから正しい選択とは言えないな。養子にでも出した方がいいのかもな。」
まゆ子「そういうお仕事はネズミ神官巫女の領分ですから、なんとかなるのですよ。」

 

釈「メイド、はどうしましょう。男を色仕掛けでたぶらかして仲間に引き込んだ。とかにしますか。」
まゆ子「そこまでバカではない、という感じかな。あくまでも清楚で、セックスなんか何度誘われても絶対なびかない。それでいて馴れ馴れしく近付いてきてどう考えても気があるだろう的に勘違いしてしまう。」
釈「うーむ、性悪ですね。」
まゆ子「屋敷内でも彼女の評判は非常に良いのです。だから犯罪組織と絡んでいるなんて誰も思わない。警察も気付かなかった。」

じゅえる「メイドでもう少し耽美したい。」
まゆ子「うーむ。では、いや、うーん世間の焦点は拐われた幼児の安否でありその両親だからねー、このお母さんだって若くて綺麗なんですよ。」
じゅえる「メイドではなく母親の方がヒロインになってしまうわけか。うーん、つまりメイドが活躍するとしても、小説で描く範囲内では出てこない、ってことか。」
釈「そりゃまさしく、無駄ですね考えるだけ。」

まゆ子「わかったよ、じゃあこうしよう。そのメイドは私がなんとかする。小説中の描写によって随分な美少女ぶりを表現するよ。」
じゅえる「つまり筋書きとは別の次元で処理するってことか。でもそんなの突っ込んで大丈夫なのか、マキアリイが惚れてしまうとかには。」
まゆ子「いや今回偽病院回だから、マキアリイの傍仕えをしている妖精子ちゃんがクワンパさんに絡むのです。そこでも随分な美少女ぶりを描く事になってるから、バランスが取れてOK。」

釈「ではそういうことで。今回はお開きにしましょう。」

 追記)曾祖母の女社長(既に引退はして息子に全てを委ねてはいる)が、当然のようにマキアリイ事務所に訪れてお礼をする。
   マキアリイは正規の契約を結んでいない事件であるから、謝礼は受け取れないと固辞し、それでも食い下がる老婦人をクワンパに任せてお引き取り願う。
   しかしその姿を陰で監視している者が居た。トカゲ巫女である。後に彼女達は寄付を募りに押しかけに行くのだ。

   だがこの老婦人、これで退場ではなくもう一度出て来る。第五巻で偽病院が存立の危機を迎えた後に奇跡の復活を遂げるのだが、トカゲ巫女もう一度寄付を募りに行く。
   偽病院事件のスキャンダルは結構ひどい悪宣伝の嵐であり、彼女も心を痛めていた。
   だがトカゲ巫女から、マキアリイの意志は固く不退転の決意で貧しい人の為の病院を続行すると聞いて、彼女は涙を流して喜び寄付をするのであった。

 

 

 

 

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