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 2015/12/22

まゆ子「最近のお気に入りはセガサターン!」

釈「ゲーム機捨てちゃったんじゃないですか? 引っ越しの時。」
まゆ子「ゲーム機本体は無いけれど、ソフトの方はちゃんと全部残しています。プラスチックケースは捨てちゃいましたがディスクは有る。」
じゅえる「なんで。」
まゆ子「いやいつか、セガがサターンもドリームキャストも動く夢のゲーム機を作ってくれるんじゃないかと淡い期待をしてまして、」
じゅえる「あるかそんなもん!」
釈「セガゲーム機本体作るの止めちゃいましたからねー。というかゲーセンすらろくなテレビゲームが無い。」

まゆ子「というわけで、ドリームキャストももう崩壊寸前でありまして温存の為にほとんど遊んでないんですよねもう何年も。
 ところがだ、こないだからコンピウタが実に快調でありまして、というかマイクロソフトのアップデートパッチを全部拒否っているのですが、これがまた快調この上なくてですね。」

釈「いや、それは、分かりますけどさ。」

まゆ子「それでコンピウタがコンピウタとしてまっとうに機能するのであれば、計算力を要求するプログラムでも走らせてみるかあ、てサターンのエミュレーターを動かしてみたのです。
 まあ、これまでが酷すぎたわけですが。」
じゅえる「なんだかんだでちょこちょこフリーズしてたからな。そりゃあ重いソフト使いたくないさ。」

まゆ子「そしたらちゃんと動くじゃないですか。もう感激ですよ。バーチャファイター2もバーチャロンもセガラリーも。」
釈「アーケードものですね。一世を風靡しましたよそれらのゲームは。」
まゆ子「というか、私はゲームは1回5分しかしない!」
釈「アーケードのゲームでワンコインで死ぬまでですね。」
じゅえる「めちゃくちゃ弱いな。」

まゆ子「で調べたら世の中にはいろいろエミュが出てて、ドリームキャストもプレステ2もおおむね動くんですね。」
じゅえる「PS2でさえもう15年前のゲーム機だからね。」
釈「機械の進歩は早いですよ。というか、今ではUSBメモリサイズのコンピューターがそれこそPS2よりもずっと高性能なゲーム機になりますからね。」
まゆ子「アンドロイド携帯端末でも動くドリームキャストエミュレーターだってあるんですよ。
 だったらだよ、メガドラもサターンもドリームキャストも動くセガ製コンピュータとか簡単じゃないだろうか!」

じゅえる「いやゼッタイ出ないから。」

釈「あ、アメリカの方でドリームキャスト復活運動嘆願書てのやってますよ。HDMIで1080P出力でGDROMとHDD搭載したのを出してくれえ、という。」
まゆ子「ハードウエア的には1万ちょいでできちゃうような構成だからな。そういう時代なのだ。」
じゅえる「いやいや、いやいや。」

 

まゆ子「というわけで『罰市偵』、のろのろと転がり始めたわけです。

 で、そろそろテーマなんか考えてみてもいいかなーと思うわけです。」

釈「テーマ、物語全体全シリーズを通して貫かれる大テーマ、ですね。
 ちなみに1巻「英雄探偵登場!」のテーマはぶっちゃけた話「異世界で探偵物語するのを読者様に理解していただこう」ですからね。」
じゅえる「まずはフォーマットに馴染んでいただかないと困るからな。」

まゆ子「そもそもがこれは推理小説でなく探偵物語であるのだが、探偵物語であっても推理小説要素を除外するわけにはいかない。
 前にも考えたとおりに、推理小説を描く為に必要なものが「世間様に対していちゃもんをつける」事にある。」
じゅえる「というわけで、世間様の何にどういちゃもんつけるわけだ。」
釈「改めて言われると困りますよね。そんな世の中に恨みを抱いて生きているわけでもないですから。」

まゆ子「いや私にはあるぞ。というか推理小説やら刑事事件を扱う小説にだが、サイコパスだ。」
釈「精神異常者の犯罪常習者ですか。」
じゅえる「あー流行ったねえ。」
釈「言われてみればネコも杓子もサイコパスって時代がありましたねえ。今でもそんなに珍しくはありません。」

まゆ子「いやじゃん、そういうの。だってさ、異常者が異常なコトするのって普通じゃん。」
じゅえる「ま、ね。」
釈「そりゃ異常者ですからねえ。」

まゆ子「つまり異常者が異常な犯罪を行う小説は、野生動物を観察しているように極めてふつうのお話なのだ。それをセンセーショナルにいかにも重要であるかに描くのはやだな。と」
釈「分かりますわかります。」
じゅえる「それは確かにいちゃもんつけるべきであるな。」

まゆ子「そこで私は『罰市偵』においてサイコパスは扱わない。扱わないだけでなく、そういう機序に基づいて発生する犯罪がこの異世界においては普通である、という風に描くつもりだ。
 つまりファンタジー的というよりSF的な観点からだが、「精神構造メンタリティが違う人種存在における犯罪学」というのを構築しよう。」
釈「大きく出ましたね。」
じゅえる「まあ、実際のところ国が変われば人の心も感情も常識も変わるわけで、メンタリティも違えば発現型としての犯罪行為も様相を違えるんだけどね。」
まゆ子「ほんとなら異世界に行くまでもなく外国を舞台にすればいいだけなんだが、それはなかなかカドが立つわけで、じゃあ異世界でやってやろうってお話だ。」

 

釈「大テーマはそれでいいと思いますが、でもそれじゃあ具体的にどうするかというのに繋がりません。」
じゅえる「そうだなもっと具体的な犯罪事案に直結するキーワードとかが欲しいぞ。」

まゆ子「あー全く関係の無い話だが、タンガラムの政界は乱れに乱れている。
 つまり直接的な外界からの侵略の危険はほとんど無いから、主に内政で政権を掌握する為に議会内で醜い勢力争いを繰り広げている。
 その為に与党も野党も議席を持たない勢力も犯罪まがいの政治活動、いやもう明確に犯罪と呼んでよい活動を行い、それに対抗するために犯罪行為まがいを行っているという塩梅だ。
 混乱するというならばもうどうしようもなく混乱していて、犯罪の直接的な原因が政界の乱れと呼んでもまったく差し支えない状況で、
 そんな中で異常犯罪者が生き残るのも結構難しいのです。というか少々の変態行為なんかすんなりと見逃されてしまうほどに乱れております。」

釈「なにせ「罰市偵」ですから、市が罰を受けるほどにひどい状況なのです。」

じゅえる「そうか、戦時中やら治安が極度に悪い状況だと、別に異常犯罪者なんか注目するまでも無いからな。理性を持った連中がもっと大規模に酷い犯罪やらかしている。」
まゆ子「まあそうなるとさすがに大テーマを表現するのに不都合があるわけですから、同じ程度に正義が行われている。英雄探偵がまさに活躍している状況なのです。
 異常犯罪者は、あーそーだなー、どうやって出そうかなー?」

釈「つまりはそこがこの物語を語る上でのキーワードなのですね。異常犯罪者が異常でない状況をどう表現するか。」
まゆ子「いやいや、そうじゃない、そうなってしまうと困るんだ。現実の21世紀日本における社会状況に食い込んでくるようなテーマの表現という、そいうのが欲しいんだ。」
じゅえる「安直なサイコパス信仰を打ち砕く鉄槌となるべく、『罰市偵』を構築しなくちゃいかんのだよ。」

まゆ子「とはいえだ、世間的に大規模な影響を及ぼす重大犯罪で英雄探偵の栄光に花を添えるような事件は、もっぱらそういう政治的犯罪の方なんだな。
 個人的なケチな猟奇殺人なんかどーでもいいんだ。というか世間的にもどーでもいいんだな。」
じゅえる「じゃあ猟奇犯罪は報道でも小さい扱いなのか。」
まゆ子「うーん、その時節時節の話題性に従うんだが、変質者の犯罪というのはなかなか難しいなあ。」

釈「今調べたら、『罰市偵』にエントリーしている犯罪にはサイコパスによるものがありませんね。」
まゆ子「そうだっけ。」
釈「無いですね。」
じゅえる「無い方がいいんだよ。だいたいサイコパスの犯罪なんか推理するような代物じゃない。」
釈「いやまあサイコパス推理モノってのはだいたいうんちく話になるんですよね、なんか蒐集癖の。」
じゅえる「うざい。」
釈「ごもっとも。」
まゆ子「それが好きな人も居るんだよ。」

釈「1個くらいは必要ですかねサイコパス。」
まゆ子「1個くらいはね。」
じゅえる「理由の無い殺人てのは嫌だなあ。どうせ世間的に広がりも無い話だよそいうのは。」
まゆ子「あー、たしかに。世界中に犯罪の影響が広がっていく的なサイコパス犯罪であればまた違うんだが。」

じゅえる「作れ。」
まゆ子「お。」
釈「そうですね、作りなさい。」
まゆ子「いやいやいや、そんなもんが出来るくらいなら私推理作家になってますよ。」
じゅえる「やれ。」
まゆ子「えーーーーーーーー。まあ考えるけどね。

 サイコパスというか、つまり世間様に犯罪の影響が波のようにドミノ倒しのように広がっていく犯罪、だな?」
釈「拭いがたい影響を与え、社会に見えない怪物が居座るような奴です。テロでも構いません。」
じゅえる「連続猟奇爆弾魔でもいいぞ。」
まゆ子「ふむ。いかにも変態的に爆弾を仕掛けていく犯罪、というのはなかなか無いかな。」
釈「そうですね、死体でも生きてる人でもいいですが、爆弾による殺人に意味を別に与える的なのはあんまり聞きませんね。」
じゅえる「サイコパスってのは自分の犯罪が長続きするように地味に殺っていくからね。そんな大注目の的になるような手口は無しだな。」

まゆ子「よし分かった。連続猟奇爆弾殺人魔サイコパスだ。」
釈「とほほ、オーダーしたこっちがバカみたいですよ。」
じゅえる「テロとしてのサイコパス的な犯罪はよく推理小説犯罪ドラマでは出るんだが、うむまあ英雄探偵の敵としてはそのくらいはアリだろうかな。」

釈「対象はどうしましょう。美女美少女、あるいは世間で注目の人物とか、悪の犯罪者に正義の鉄槌をとか?」
まゆ子「最後の奴はいかにもありそうな話だからボツ。」
じゅえる「没。」
釈「では、美少女ですかね、性的興奮を爆発に求める的な。」
まゆ子「それもやだな。ありきたり過ぎる。」
じゅえる「いっそのこと宗教絡みにするか。」
まゆ子「それもー、あーでもこの物語は浅見光彦だからなー、宗教絡みはアリだなー。」
釈「では単純に宗教がらみのサイコパスです。決めました。」

じゅえる「十二神信仰ではない方がいいな。歴史の陰に埋もれてきた邪教の信者が爆発で殺されていく。それも思わぬ社会的有名人で。」
釈「それら有名人が実は邪教の信者だった、てのは悪くないですね。」
まゆ子「ふむ、火焔教とかだな。それはアリです。だが安直過ぎる。」
じゅえる「いやいや、今回『罰市偵』の読者様は火焔教についてはあまりご存知ではない。火焔教の血塗られた歴史をばーんとどろどろと説明してあげるのも、サイコパスのお仕事です。」
釈「サイコパスドラマのお仕事です。」

まゆ子「わかったよ。じゃあ火焔教についてのお勉強会です。この事件は。」
釈「それで、この事件を通じて火焔教が現代社会に亡霊のように復活する。てのはどうですかね?」
じゅえる「悪くはないが、もう一捻りだな。何故現代社会に火焔教が必要とされるのか。社会の病根とかをでっち上げないといかん。」

 

まゆ子「あーそーだーねー、まだまったく骨格が定まっていないお話があるんだけど、第五巻潜水艦事件のヒロインが帰ってくる事件。
 あれにオカルト物をぶち込もうかね。」

釈「潜水艦事件の可憐なヒロインが父親に従ってゥアム帝国に渡り、大層な美人になってマキアリイの前に現れる。というお話ですね。」
じゅえる「決まってるのはそこだけだな。」
まゆ子「そこだけ。」
じゅえる「よし、オカルトぶち込もう。」

まゆ子「あーこの事件はですね、当然のことながら10年前の「潜水艦事件」を引きずっておりまして、その時に超兵器として殺人光線とかなんとかが出る予定なのです。」
釈「殺人光線とはまたアンティークな代物ですね。」
じゅえる「レーザー光線かそれともマイクロ波電子レンジか。」
まゆ子「いや、粒子加速器なんだ。というかそういうことにしようと思う。」
釈「粒子加速器で死にますか?」
まゆ子「うん、そこを考えるとだね、粒子加速器を使って核融合反応を起こして、中性子をガビガビと発生させる兵器、という。」
じゅえる「核融合って粒子加速器で起きるのか?」
まゆ子「うん。」
釈「至極単純な話、重水素と三重水素トリチウムがばちこんと衝突すれば勝手に核融合は起きるのです。
 なんだったら水素吸蔵合金の中にその二つを閉じ込めて、外から拳銃でドンと撃って圧縮すると起きます。」
じゅえる「そうなんだ、割と簡単なもんだな。」
まゆ子「難しいのは発電、エネルギー生成の為に大量に連続的に反応を起こす技術であって、ただ実験的に起こすのは至極簡単なのだ。
 加速器による核融合も単純に重水素イオンをちょこっと電圧掛けてぶつけるだけで完了。加速器どころか高電圧金網で出来ます。」
じゅえる「それで中性子が出るわけだ。うーん、でそれが殺人光線になる?」
まゆ子「まあ、そんな機械の傍に生身で居れば普通に死にます。」
釈「ばかですね。自分が何をやってるか理解していないわけですよ。そういうのは。」

まゆ子「とまあそういうわけで、「潜水艦事件」はもともと原子力技術をベースとした物語なのだ。まあ潜水艦自体は原子力で動いてるわけじゃないけどね。
 そこで「帰ってきたヒロイン事件」でも、原子力をベースにした物語にしようかと。」
じゅえる「火焔教関係ないじゃん。」
まゆ子「原子力は「第三の火」とか言われますから。化学燃焼によるのが第一の火、電気で輝くのが第二の火、原子力が第三の火。」
釈「なるほど、知識をベースに覇権を握ってきた火焔教とその分派にとって、それは魅力的なアイテムですね。」
まゆ子「更に言うと、タンガラムのみならずこの世界には石炭も石油も見つかっていないから、エネルギー問題は焦眉の急なのだ。
 どうにかして次のエネルギー資源を見つけなければ現代文明を維持できないところまで来てしまっている。」

釈「そこで原子力利用ですか。で、ウランとかプルトニウムはあるんですか?」
まゆ子「ラジウムはあるぞ。ラジウムがあればウラン鉱石もあるってことだな。」
じゅえる「ラジウムってキュリー夫人だな。ラジウムで原子炉は作れるのか?」
まゆ子「あー、作った人はいないと思うな。ウランがあればそっちを使う。でも他にトリウム原子炉というのがあるのだ。

 将来的にはこの世界ではトリウム原子炉によるエネルギー供給体制が確立している、という予定。この物語が書かれるマキアリイが死んで40年後の世界ではね。」
釈「ちょこっとトリウム原子炉のWIKI読んでみましたが、トリウムって割と資源量が多いんですね。それにそのまま集積しても核反応を起こさない。
 なんか別の方法で中性子をぶつけてやらないと始まらないらしいです。」
じゅえる「そうか、そこで殺人光線か。」
まゆ子「いわゆる加速器駆動未臨界炉ってやつです。」

じゅえる「しかしウランがあると核兵器開発に繋がるんじゃないか。」

釈「トリウム原子炉の利点はそのままでは核兵器製造ができないとこにあります。この利点を使わないのですか.]
まゆ子「あー、うーん、実はウラン鉱石は無いようにしようかなーと思ってはいたんだが、ラジウムは放射性物質研究の為に無いと困るしなあ。」
釈「初期の放射能研究はウラン鉱石の中に微量に含有されるラジウムを一生懸命抽出して行われていたんです。つまりラジウム有る所にウラン有りです。」
じゅえる「そいつは困ったな。」
まゆ子「というわけで、実は十二神方台系の土壌には極めて微量のプルトニウムが存在する。ということにしようと思う。」
釈「でも天然には無い人工元素ですよ。有っていいんですか?」
まゆ子「そもそも方台は宇宙人が造成した地面だし。」
じゅえる「ああ。まあ、いっか。」
釈「そういう理屈であれば致し方ありません。」

まゆ子「ふむふむ。ぐぐってみたら、どうやら温泉熱水に溶け込む形でラジウムを取り込んだ石があるわけだ。俗にラジウム鉱石と呼ばれて売られてるやつだ。」
じゅえる「ラジウムを主成分とするとか結晶とかじゃないのだな。」
まゆ子「単純に泥が固まったものらしい。つまりはラジウム温泉の湯の花だな。」
釈「十二神方台系には温泉は、」
まゆ子「方台最大の湖アユ・サユル湖は巨大な火山湖です。『げばると処女』中でも温泉出てきました。」
釈「だいじょうぶですね。」
じゅえる「ウラン鉱石は無いということで。」
釈「ラジウム鉱石はがんに効くとかで根強い需要があるわけですが、お話で使いますか?」
まゆ子「考えてみよう。せっかく放射能を扱うんだからな。
 ついでにぐぐったら、どうも黒水晶は放射能と関係有るらしい。まあ基本的にオカルトアイテムであるから、これも投入しよう。」

 

じゅえる「つまり、原子力関連の科学者が公の場で爆殺処刑されるという怪事件が頻発するわけだ。」
釈「なかなかですね。」
まゆ子「実はこの際、ちょっと大問題が存在する。

 ウランとかプルトニウムとかラジウムとか、こういった元素名は漢字にならない。」
じゅえる「中国では律儀に全元素に一文字漢字を作ってるぞ。それ使えばいいのでは。」
まゆ子「いやそれ使うとHP上で表示するのがめんどくさいし、第一読者様が読めない。」
釈「読めませんよね、そりゃ。20世紀になってから作った漢字ですから。」

まゆ子「まあめんどくさいから「(プルトニウム)」ってやろうと思う。わざわざ妙な名前考えるよりよほどましだ。」

じゅえる「分かり易さ優先か。」
まゆ子「実のところ「ガス」も置き換え不能だった。なにせ「瓦斯」だからねえ。」
釈「そりゃー逆にファンタジー性を損ないますねえ。」
じゅえる「明治の頃の訳語を大量に製造していた時期でも、ガスは置き換え不能だったわけだ。まあ仕方ない、分かり易さ優先だ。」

 

 

2015/10/14

まゆ子「というわけでお仕事だ、じゅえる釈ちゃん。」

釈「うぇ〜い。」
じゅえる「へーい。で、今日は何の議題だ。」

まゆ子「お仕事だよ。『罰市偵』第四話になる予定のお話、題は『最初の事件』」
じゅえる「ほおー。」
釈「それは特別な事件ですね。」
まゆ子「無論のこと、ここに至る前にクワンパとマキアリイ紹介の為の事件が幾つか展開されている。しかし人も死なないゆるい事件だ。
 だが『最初の事件』となると話は別。」

じゅえる「それは重要だな。」
釈「このシリーズの方向性を決定づける極めて重要な事件ですね。」
まゆ子「というわけで、要求水準が高いシナリオとなる。何よりもまず、この事件は探偵もの推理小説としての典型を取っている必要がある。」
じゅえる「推理小説の典型となると、やはりシャーロック・ホームズの如くに探偵事務所に依頼人が訪れる?」
釈「それは外すわけには行きませんね。依頼人が犯罪事件刑事事件の解決を依頼しに、自発的にマキアリイ探偵を選んで訪れる。そういう事ですね。」

まゆ子「そして最期はちゃんと明快に犯人が判明し事件は全貌が明らかとなり、完全解決がなされて正義が執行される。こうでなければならない。
 変化球はこの事件では許されない。」
じゅえる「ふむ。ストレートだな。」
釈「この物語シリーズはほぼ全編変化球ですから、なにせ異世界ファンタジー浅見光彦ですから、中心まっしぐらな事件はこの回しか存在しないてほどの稀なものとなりますね。」

まゆ子「というわけで、極めてオーソドックスでありながら、マキアリイクワンパの二人のキャラを存分に表現してもらわねばならない。なにせ『最初の事件』だ。」

 

じゅえる「殺人事件であるか否か。ここから始めよう。」

釈「そうですね。血みどろな事件であるか、クレバーな職業犯罪者の仕業であるか。あるいは偶然な事故であるか。」
まゆ子「今回明確な犯人を必要とする。逮捕する生きたまま。」
じゅえる「であれば、素人の犯罪者。深刻な事情を持ち、ソレ以外の選択肢を持たずに犯罪を行った。そして道徳的にも倫理的にも罪を理解できる常識的な一般人、が望ましいな。」
釈「オーソドックスですね。犯人像はそれでいいと思いますが、事件の規模です。」
じゅえる「死体が1つでは足りないか?」
釈「英雄探偵が解決する事件としては。でないですか、まゆちゃん先輩。」

まゆ子「あー、殺人事件であるとすれば、たしかに。」
じゅえる「殺人、やめる?」
まゆ子「いや、一人くらいは死んでおこう。しかし続く犠牲者は英雄探偵としては阻止してもらいたい。彼は普通の名探偵のように事件が起きるまで手をこまねいてるというキャラではないのだ。」
じゅえる「いきなりハードルが高いな。」
釈「つまり、依頼人です。この依頼人は犯人側か被害者側かという問題が生まれます。」
じゅえる「犯人が探偵に解決を依頼する?」
まゆ子「ああそれは、英雄探偵マキアリイさんのネームバリューがあれば十分にあり得る話だ。つまり自らの腕試し的な、あるいは自らでは自らを裁けないから探偵に頼む。」
釈「自責の念に駆られながらも自らを裁く事ができない臆病な犯人が、内心での期待を込めて名探偵にすがる、というタイプのシナリオですね。」

じゅえる「ふむ。最初の事件としては悪くないが、」
まゆ子「あー、うん。やはり悪は悪として明確に裁ける者の方が望ましいな。」
釈「ではこれは無しで。依頼人は被害者の側です。」

じゅえる「つまり事件は既に行われており被害は既に存在して、警察力での解明がならないから、被害者あるいはその関係者が解決を依頼しにマッキー探偵事務所にやって来る。」

まゆ子「あ、それもダメだ。マッキーさんはそれは引き受けない。警察や巡羅軍が捜査中の事件には彼は首を突っ込まない。というか越権行為として彼が逮捕される可能性すら有る。というか、ショバ荒らしだ。」
釈「あくまでも刑事探偵は巡羅軍警察が捜査を終了して処分を仮決定した段階で、初めて捜査を開始するのが正規のお仕事なんですよね。仮処分に対する異議申し立てと再審理の実現の為に調査を行う。」
まゆ子「というわけで、現在捜査中の犯罪であれば刑事探偵は調査できない。
 あるいは既に容疑者が拘束されている段階であれば、無罪を立証する証拠を集める為に依頼を受ける事があるが、それは弁護士である法論士の指示による。刑事探偵に直接依頼するものではない。」

じゅえる「つまり、刑事探偵マッキーさんが事件に関与できるのは、その事件の調査が終了した後、か。」
まゆ子「迷宮入り、あるいは手詰まり状態でもいいぞ。捜査の進展が見られなくなった状況で、業を煮やした被害者が刑事探偵に独自の捜査を依頼する事はままある事だ。」
じゅえる「そうか、とにかく警察とバッティングしてはいけないんだ。」
釈「どうしましょうか。迷宮入り事件を解決、というのは名探偵としては実にふさわしいものですが、」
まゆ子「釈ちゃん、英雄探偵は名探偵ではない。頭脳ではなく筋肉で解決するのだ。」
じゅえる「嫌な推理小説だな。」

まゆ子「さらに言えば、英雄探偵マッキーさんは一般庶民が感情に任せて思わず人を殺してしまった、とかケチな遺産相続で親族ぶっ殺した、なんて卑近な事件は望ましくない。
 もっと大きな社会やら世間やら政治やらと関係するような大げさな事件でないと面白くない。
 そうでなければマッキーさんの事件を映画化できない。」

釈「つまり絵になる事件でないとよろしくないのですね。方台のファンが待ち望むレベルの事件でないとダメなのです。」
まゆ子「さらに言えば、探偵ド素人のクワンパを伴っての事件の解決だ。彼女は役に立たないが、それでもある程度の見せ場を必要とする。」
じゅえる「なんか推理小説の事件を考えるんじゃなくなってきたぞ。」
まゆ子「しかしながら、場末の刑事探偵事務所に持ち込むくらいだから、依頼人レベルで言えばこれは些細な事件である。深刻ではあっても依頼人はそこまで大きな事件になるとは思っていない。」
釈「つまり事件の展開はマッキーさんに依頼された時点では小さく、その後大きく広がりを見せるってことですね。」

じゅえる「クワンパに見せ場を作るとすれば、殺人。死体と遭遇しないわけにはいかないな。」
釈「ですね。リアルな犯罪現場殺人現場に足を踏み入れる最初の機会ですから、これは描かなければ許されません。」
まゆ子「では殺人は最低でも1件起きる、と。惨殺?」
じゅえる「ふーむ、謀殺かなあ。」
釈「謀殺にしても、ならず者を雇って集団でリンチ、というタイプの殺人ではないでしょう。最初の事件としてはもっと静かな。」

じゅえる「ならば定番の後頭部を殴られて死亡、だ。」
まゆ子「それはつまり、殺人者は被害者の顔見知り知人で、殺されるなどとは思わずに隙を見せたところでガツン、てタイプだな。」
釈「いいですね、まさにそのタイプの殺人事件を要求します。」

 

まゆ子「じゃあ決定。まず被害者は1名後頭部を知人に殴られて死亡。」
釈「異議なし。」
じゅえる「犯人はそうすると、殺人の常習者ではなく犯罪組織の人間でもなく、一般人というシナリオだな。で愛憎のもつれではない。」
まゆ子「愛憎は今回大きな要素であってはならない、が入れないわけにもいかんだろう。」
釈「なんらかの形で犯人にも人間的な感情が有る事を示しておかないと、推理小説としては三流ですよねー。」
じゅえる「まあ世の中の推理小説はだいたいそれだけで殺人してるしな。」

釈「となれば、秘密を知ってしまった、あるいは秘密を公に暴露しようとして殺された。というタイプですね。」
じゅえる「その秘密が、つまりマッキーさんへの依頼に繋がるのだな。」
釈「殺人をするほどの秘密を、つまりは依頼人はその存在を知っている/いない?」
まゆ子「その場合は真相を調べてもらいたい、という依頼だな。とある事件が起きて、真相は藪の中。依頼人は困り果てて刑事探偵事務所に駆け込む。」
じゅえる「ですね。」

釈「ではそのシナリオだと、殺人は1件のみで終了という事になりませんかね。」
まゆ子「あー、つまり真相を闇に封じ込めるために次から次へと殺人を重ねねばならない。というシナリオを想定したいね。」
じゅえる「どうする? 連続殺人をある/無し? これは結構大きな選択だな。」
まゆ子「死体は1個で十分だが、マッキーさんとクワンパは続く連続殺人を止めねばならない。それも推理力を行使して事件を予測した、てのではなくほぼ偶然に。」
釈「いやそこは、推理しましょうよ。」

まゆ子「マッキーさんは推理しなくていいんだよ。推理は別の偉い人がやってくれる。それが英雄探偵。
 ただ残念ながらそれら賢い人推理力のある人は事件の現場には居合わせない。名探偵は事件終了後に現れる。」
じゅえる「考え無しでも現場に居る、居てしまうのが英雄探偵てことだな。」

釈「話を戻しまして、とにかく一人は死ぬ。それもマッキーさんの調査が原因で、という事になりますね。この流れだと。」
まゆ子「一度事情聴取に行った人が、話さなかったのだけど、後で電話してきてマッキーさんに「打ち明けたいことがある」てので行ってみたら死んでた。
  この流れだな。」
じゅえる「ただたんに事情聴取に行っただけだと面白くない。その人間の弱みをマッキーさんはとりあえず入手しており、それをちらつかせて彼もしくは彼女に決断を迫る、的な仕掛けが欲しい。」
釈「そうですね。筋肉で解決するにしても筋肉を使わないところでは頭を使ってもらわないと困ります。」
まゆ子「マッキーさんも素人探偵ではないからね。」

じゅえる「そこで遺留品から秘密の一端が分かる?」
まゆ子「ここは謎の殺人事件でいいと思うな。いや遺留品はあるが意味が分からない警察が鑑識してもわからない。
ただ事件を追っかけて行くと、次第に何が証拠で重要だったのかが見えてくる。そんな感じだな。」
釈「推理でなく地道な捜査の結果判明する事実、てやつですね。正統派です。」

まゆ子「実はマッキーさんは警察で捜査官をやっていた年数が短く経験は浅いのだ。だから正攻法真正面からの捜査しか出来ない。これは欠点ではあるが英雄探偵の捜査法としては王道なのだ。」

釈「むしろそういう怪しい推理はクワンパが大好きなんですよ。だから間違った推理を延々と垂れ流して怒られる。」
じゅえる「そういうキャラなのか?」
まゆ子「第二話を書いてたら、どうもそういうキャラらしいよ。クワンパはかなりミーハーな推理ファンだ。」
じゅえる「そうか。じゃあ見せ場はいくらでも作れるな。」

釈「というわけで、クワンパさんは推理しまくりで外しまくりです。時々当たる事もあるけれどほとんど無意味。
 マッキーさんはいつもどおりの手法で探索を続けて、奇縁に導かれて次から次へと手がかりにぶち当たります。」
まゆ子「いやさすがに、そんな奇跡的な話は無しだ。人が死ぬような危ない場面に遭遇するけれど、手がかりはそんなに都合よくは転がってない。」
釈「魔法的な偶然で事件を解決、てタイプじゃないんですか?」
まゆ子「筋肉を使わずに解決できる事件は無い!」
釈「了解しました。」

じゅえる「しかし、それは口封じに殺していくのか? 一人助けたらもう犯人バレるだろ。」
まゆ子「あー、そうだなあー。じゃあこうしよう、第一の本当に死ぬ人を殺したのは犯人だ。
 だが犯人の犯行を知った人物が事件の真相が犯人に知られてしまったと理解して、口封じを実行し始めた。」
じゅえる「ふむ。」
釈「なるほど!」

まゆ子「これであれば、そうだな最終的にマッキーさんの活躍で本当に悪い奴は人殺しをせずに捕まるのだが、殺してしまった真犯人はむしろ自ら名乗り出るくらいのどんでんが。」
釈「なるほど! それです。マッキー探偵の人情味あふれる説得に応じて彼/彼女は自ら死ぬことを諦めて警察にお縄になるのです。」
じゅえる「ふむ、断崖絶壁を用意しないといけないな。」

まゆ子「あーうーん。そうだな、それでもいいんだけどクワンパが最終的に活躍した方がいいんじゃないだろうかな。
 真犯人は自責の念にかられて自ら死を選ぶ。それが犯人個人にとってはけじめの付け方である意味では美しい生き方ではあるのだろう。
 だがカニ巫女は、カニ神殿の教えはそうではない。罪を裁かれるのを恐れて死に逃げ込むなどは許さない。たとえ死刑が待っていようとも、家族が世間から爪弾きにされようとも、カニ巫女の棒に慈悲は無い。」
じゅえる「世間的には消えてしまった方が後々良いような状況でも、理非曲直をはっきりと正すのがカニ神殿、てことか。」
釈「そうですね。この事件において最終的な活躍はクワンパさんに無いといけませんからね。」
じゅえる「そこでカニ巫女棒の嵐、ってわけだな。」

 

じゅえる「そして、実際はどうするんだ?」
まゆ子「腹案はあったんだ。冒頭というかつかみというかね。

 ノゲ・ベイスラは地方都市ではあるのだが中央政界がある首都ルルント・タンガラム(旧ルルント・カプタニア)にかなり近い場所にある。
 というか方台中央区と呼ばれる選挙区に入ってるくらいだ。首都の衛星都市、とは違うのだがそうだなー東京に対する静岡くらいには近いとこだ。
 もっと近いのはヌケミンドルだが、ここは横浜くらいの存在。
 で、割と発展しているけれど中央政界や官界からすれば島流し的な位置にある。逆にいうと、一度都落ちをした者でもノゲ・ベイスラで再起を図るために画策する場所でもあるのだ。
 だから中央での動きがベイスラにも影響することがある。中央で政変が起こった場合、ベイスラでもなにかしらの動きがある。

 そんな位置関係で、国会議員秘書とかがベイスラで死ぬ事件が起きる。めちゃくちゃ怪しいにも関わらず、転落死とか事故で警察巡羅軍は立件しなかった。
 だが遺族は納得せず、なんとか警察に再捜査を願うが聞き入れられない。そこで!」

じゅえる「ふむ。なるほどそういう展開であれば刑事探偵はすなおに出動できるわけだ。」
釈「その遺族依頼人は美女ですね美少女ですね。」
じゅえる「ここはやはり普通に未亡人のおばちゃんくらいでいいんじゃないか。クワンパも快く仕事が出来るぞ。」
まゆ子「うん、まあそうだな。未亡人一人が来るというのもなんだから、家族で息子娘と来るというのでもよいかな。」
釈「あ、そうですね。そういう家族的な愛を描くのも悪くないですね。」

じゅえる「それで、マッキーさんは彼が事故死した現場とかを検証して回るんだ。そして目撃者とか第一発見者とかを探して事情を聞きに行って、」
釈「ちょっと弱いですかね。発見者に聞きに行くにしても、その程度では死にませんよね。」
まゆ子「ふむ、そこはよくよく考えて。あ。うーんそうだな、未亡人と共にやって来た息子が犯人だとか?」
じゅえる「少しヒネり過ぎではないか?」
まゆ子「ダメか。」
釈「悪くはありませんがまだ唐突過ぎます。なんらかの補強が必要ではないかと。そうですねどうしてそのお父さんは死んだのですか、というところからですね。」

じゅえる「それ、中央政界が絡まないとダメか?」
まゆ子「別になんでもいいんだけど、マッキーさんが中央政界に居るヒィキタイタンと密接な関係が有る、てところを表現する為にはこのくらいは必要だろ。
 なんだったら製薬会社の新薬開発を巡るなんとか、にしてもいいぞ。あるいは自動車会社が軍に納入した車両の性能が実は定格に達していなかった偽装問題とか。」
釈「とにかく大げさにする必要があるわけです。また連続殺人が起きるほどには大きな問題でないと困ります。」

じゅえる「ふーむ。代議士秘書がセンセイの汚点を被って自殺、とかに持っていくわけね。まあ分かりやすい悪だわな。」
釈「政界絡みであれば警察巡羅軍が及び腰で再捜査に応じてくれない、てのもすんなりと説明できると思いますよ。」
じゅえる「そうか、警察が熱心に捜査しないという前フリがあるんだったな。」

釈「政界で秘書が死ぬ、ということでいいんですかね。ならばやはり違法献金問題とかですかね。」
まゆ子「あーそうだなー、いやー違うなータンガラムの政治政界はもうちょっとダイナミックで汚職といってもその程度では人は死なないな。もうちょっとワイルドなやつだ。」
じゅえる「この世界、政治は腐敗してるのか?」
まゆ子「逆だ。煮えたぎるシチューのような有様で、誰が正義で悪かは一夜にしてひっくり返るような有様だ。だいたいカニ巫女が人をぶん殴っても道徳的だと考える社会だよ。
 それぞれの政治団体が己の正義を実現しようと実力で覇を唱えるのがまっとうな民主主義と思われてるような世界なんだ。
 カネくらいでは死ねないな議員秘書も。せめて強姦やら殺人くらいをセンセイがやってくれないとダメだな。」
釈「『罰市偵』ですからねえ。バッドシティですよ。」

じゅえる「逆にだ、実はもっとせこい事件だった、というのはどうだろう。
 議員秘書が実は議員が受け取った闇献金を横領着服して逃亡。それをベイスラで捕らえられ制裁として事故死に見せかけて殺されたとか。」
まゆ子「悪だな。」
釈「じゅうぶんな悪です。それならば殺した連中の口封じくらいは普通にアリですね。」
まゆ子「それならば、そうだな。議員秘書の妻未亡人は夫がそんな悪事を働いたとは知らないのだ。至極まっとうで正しいことをやっている人だと思っていた。
 だから夫が死んだのは議員自身が悪を働いたその身代わりに殺されたのだ、と思い込んでいる。」
釈「悲劇ですね。そして息子の方は実は真相を知っていてお父さんが悪いというのを母には伝えていないのです。」

じゅえる「うんうん、だいぶいい感じに煮詰まってきた。」

釈「じゃあ、マッキーさんが訪ねて殺される人は、秘書の人と顔なじみというか親友というかそれで息子には恩人にあたる人だったりして、
 父親はその人を頼って逃げてきたのを密告されて殺される。ということで息子が殺してしまう。」
じゅえる「ん。いいんでないかい。」

まゆ子「そうだな。このくらい有ればシナリオ書ける! じゃあ今日はこれで終了。」
釈「おつかれさまでした。」

 

 

2015/09/22

まゆ子「というわけで、3人めのカニ巫女見習いシャヤユートは悪人に思いっきりカニ巫女棒を振り回して大怪我をさせて
 刑事訴追はされなかったもののカニ神殿にて懲罰房に閉じ込められて写経させられている。
 という設定が新たに生まれたわけです。」

釈「なにやらかしたんでしょうね、こいつは。」
じゅえる「どういう事件なんだろうな。というか、カニ巫女って悪党なら誰でもぶん殴るんじゃないのか?」
まゆ子「そうなんですけどね、でもこの時彼女はもう動けなくなった犯人を執拗にぶん殴り続けて、どう考えてもこれは傷害事件だろうて事になりました。」
じゅえる「ふむ、よほどの」
釈「とんでもなく鬼畜な犯人であった、ということですね。」

まゆ子「だから事件を考えてください。とんでもなく鬼畜な犯人を。

 ちなみにこの事件、数カ月後に警察の法衛視の簡易処分の末の裁判一審が終了した時点で、テレビ局がマキアリイの所にやって来てドラマ化を打診します。
 マッキーさんは快く許諾して、ドラマの監修料という名目でお金をもらうこととなります。」
釈「あ、マッキーさんはそういうところで活動費をひねり出していたんですね。」
じゅえる「そうか、タダ働きをしても良い経済的構造が出来上がってたんだ。」

まゆ子「いやーでもね、その監修料ってそれほど高いわけではないんだ。だいたい5金くらい。
 クワンパの安月給が週4ティカ=2万円くらい。1金=20ティカだから、50万円くらいだ。」
じゅえる「安くはないが、しかしそれで暮らしていくには少ないな。」
釈「そうですね、コンスタントに年間10件くらいないと困りますね。」
まゆ子「うんまあ、ドラマ監修と協力はタダ働きではないという事を覚えていてください。
 だがもちろん前提条件としては、「刑事事件のドラマ化で原作料なんか入ってこない!」」

じゅえる「マッキーさんが解決した事件は、マッキーさんの創作物ではない。そういう事か。」
釈「はあ。言われてみればワトソンがホームズの事件を小説化してカネをもらうのは、なんか変ですね。」
まゆ子「変だろ。報道として考えてみれば原稿料はともかく著作権が発生するのは変なのだ。」
釈「ですねえ。」

 

まゆ子「というわけで、マッキーさんは事件のドラマ化映画化で金儲けはしていない。していないけれど無関係ではないから監修料という名目でカネをもらっている。」
じゅえる「つまり再現ドラマというわけだな。でもマッキーさんの所に取材に来なくても、警察報道を元に事件をドラマ化出来るだろ。」
釈「いやでも、それが単なる連続殺人事件ならそれなりに客は呼べると思いますが、英雄探偵マッキーさんが鮮やかに解決した本当の事件、てのなら客がどばどばと呼べますよ。」

まゆ子「あーそこなんだけどね、マッキーさんが監修するというのも、これは現実に起きた実在の人間が絡む刑事事件であるから、
 事件被害者、加害者家族関係者も含めてプライバシーという問題が生じるし、公表されては多大な損害となる事実もあるわけだよ。
 マッキーさんは自らドラマのシナリオをコントロールする事でそれらの害が発生するのを未然に防いでいる。
 テレビ映画制作側も不必要な世間への波紋を起こさないようにマッキーさんの監修を必要とするし、英雄探偵の名前で客が呼べるというわけさ。」

じゅえる「なんだ、けっこう考えてるんだ。」
まゆ子「だからドラマや映画の始めには、『この物語は事実に基づいているけれど諸事情により改変されています』と断り書きがついてきます。」

 

じゅえる「でもさ、それならマッキーさんの活躍をおもしろおかしくでっち上げて英雄探偵の虚名を増幅する、てのも簡単だね。」
釈「ああ、それは当然に簡単ですね。安易な英雄化はマスコミの大得意ですよ。」
じゅえる「そこらへんは自覚的にやってるのか、マッキーさんは。」

まゆ子「まず抑えておかねばならないのは、マッキーさんが遭遇する事件はかなりハードです。人も死にます。」
じゅえる「うん。」
まゆ子「それも凶悪犯です。でなければ英雄探偵なんか必要ない。」
釈「はあ。殺人の素人なんかはそこらへんの警察に任せておけばいいですね。」

まゆ子「自然とマッキーさんが遭遇するのは放送禁止レベルの酷い事件、てことになります。
 外道を懲らしめるのに安易安全な方法など使っていられない。
 マッキーさんは人命尊重を貫く正統派ヒーローですが、悪党がかってに滅びるのを助けてやるほどお人好しでもありません。」
釈「きわめて当然のお話ですね。」
まゆ子「そこら辺をドラマ化すると、かなりエグい物語になります。当然ここらへんはテレビ局映画会社が改変します。
 結果、マッキーさんのスクリーン上での活躍は紋切型のステレオタイプ活劇になってしまいます。」

じゅえる「つまり、現実の方がよほど活躍してるのか。」
まゆ子「ダイナマイト大爆発の中を平気で歩いてきたりするようなヒーローがほんとに居たらびっくりするでしょ。そのくらいのレベルです。」
釈「うわー。」
まゆ子「だいいち、マッキーさんは子供たちにとってもヒーローですよ。模範となる正義の使者です。
 子供が真似して怪我するようなアクションを、ドラマ映画でやるわけにはいかないじゃないですか。」
釈「そうですねえ。ライダーキックは改造人間だから出来るんだよ良い子のちびっ子は真似しないでね、ですね。」

まゆ子「実はそこらへんでマッキーさんはちょこっとPTAから問題視されている。シュユパンの球を投げて悪党をやっつけるという定番アクションを真似する子供が多いのだ。」
じゅえる「野球のボールを悪党にぶつけるのか。そりゃダメだな。」
釈「教育上よくありませんね。」
まゆ子「だからこその監修さ。実際はこうだったけど、世間の影響を考えてこんな感じのアクションにしましょう。とかを相談して作り上げてるんだ。

 もちろんちびっ子は「英雄探偵マッキーさん」シリーズの重要なファン層です。
 実際の事件に子供が絡まなくても、シナリオの都合上わざと出演させる場合もあります。」
釈「少年探偵団ですか。」
まゆ子「それもありです!」
じゅえる「うーむ、定石は抑えているわけだな。

 

じゅえる「そこで、巫女見習いシャヤユートがブチ切れた事件をドラマ化する、て話だな。
 どんな事件なんだ?」

まゆ子「あー連続殺人事件てのは決定です。資産家一族の相続権問題で、どっか僻地の山村なんかで起こります。」
釈「金田一耕助ですね。」
じゅえる「でもマッキーさんは殺人を防ぐことが出来る英雄探偵なんだろ。死人が出た後でしか活躍しない名探偵と違って。」

まゆ子「そこです。だがその前に、シャヤユートがぶち切れるような悪事を」
じゅえる「子供を殺す。」
釈「そうですね、10人大人が死ぬよりも、子供が1人死ぬ方がカニ巫女ブチ切れますね。」

まゆ子「それはそうなのだが、ただ子供が死ぬてだけで、そこまでシャヤユートが切れるほど殺人事件に疎いわけではない。
 逆に、マッキーさんの所に居る間に障害強盗窃盗詐欺殺人誘拐その他もう犯罪オンパレードな毎日です。
 子供が死んだくらいではそこまで心を動かしません。」

じゅえる「そうか、経験値MAX状態か。」
釈「ではよほどの事でなければ法を破るほどに心を動かさないわけですね。」

まゆ子「子供が殺される、てのはいいかもしれない。でも、
 そうだな。こういうのはどうだろう。子供が悪党に川に落とされてしまうんだ。先には断崖絶壁の大瀑布。」
釈「滝ですね。」
じゅえる「落ちれば死ぬこと間違いなしのデカイ滝の有る川に落とされる、てわけか。
 でもその程度ならマッキーさんは救出できるだろ。」
まゆ子「能力的に考えると、そうだな。」
釈「子供を2人にしましょう。悪党によって幼い子が2名川に落とされる。英雄探偵マッキーさんとカニ巫女シャヤユートはすかさず飛び込み救出する。
 しかし、マッキーさんは難無く救い出したものの、シャヤユートは女であるから救いきれずに子供は滝壺に真っ逆さまに!」

じゅえる「ほお。それはシャヤユート悔いが残るな。」
まゆ子「そこで子供が死んだら、怒るより先に自分に絶望するんじゃないか。」
じゅえる「じゃあ、マッキーさんは溺れる子供を救う為に自らも滝壺にダイブ! だな。
 そして二人共死んだと思われた時に水の中から子供を抱いたマッキーさんが!」

まゆ子「なるほど、だが冷たい水の中に落ちた子供は心肺停止状態で、シャヤユートが必死になって蘇生を試みるが息を吹き返さず、」
釈「死ぬんですか?」
まゆ子「そこでマッキーさん、は関係ない。太陽が差し込んで暖かい光に包まれて幼子は蘇る。まさに神の恩寵であろうさ。」
じゅえる「そこはいいな。カニ巫女だから、神様の助けがあると信仰心をくすぐって好感度だ。」

釈「それは実に映画的にいいシーンです。
 となれば、最後に悪党を捕まえた時にシャヤユートが暴走しても何の疑問もありませんね。」
じゅえる「まあ、これだけあれば普通の人間でも怒り狂うのに十分だ。

 でも、さらに、子供が。
 うーん、子供の実の親が犯人そのものであり、自らの子をすら亡き者にしようと突き落とした。
 これならどうだ!」
まゆ子「どういう理屈でそうなるんだ?」
じゅえる「だから、相続権の問題で正妻との間の実子が死ねば、妾の間に出来た子供に相続権が発生するとか、」
釈「うわー。」
まゆ子「そこはちょっと家族関係を整理してみなければ分からないが、いいねソレ。」
じゅえる「いいだろ。」
まゆ子「あくまでも事故に見せかける為に、近所の関係ない子とまとめて川に突き落とす、とか。」
釈「悪いですね、極悪非道ですねー。
 じゃあこんなのもどうですか。

 事件が解決し、悪党が捕まった。だが被害者の無念を思えばシャヤユートは怒りを留められない。
 感情の赴くままに犯人を棒で打ち据えるのだが、
 しかし殺されそうになった犯人の子供にとって、それは悪人ではあってもお父ちゃんなのです。
 だから怒り狂うシャヤユートにすがって、「おとうさんをいじめないで」と泣きながら哀願する。
 シャヤユートも小さい子を振り払うことが出来ずに、打ち据える手を止める。
 で、一部始終は警察も居る中での出来事であったから、シャヤユートは一時的に警察に逮捕されてしまう。
 手錠を嵌められたカニ巫女に、マッキーさんがなにかカッコイイ台詞を吐いて
 ドラマはお終い。」

じゅえる「なんというお涙頂戴。」
まゆ子「そりゃドラマ的には映えるだろうけどさ、臭いよ芝居が。」
釈「いいんですよ、タンガラムのドラマ映画界はそういうすれてない観客を相手に商売してるんです。
 ひねくれていれば上等、なんて世界じゃ無いんです。」

 

じゅえる「それで、この話は劇中に出てくるのかい。」
まゆ子「基本的には無いんだけど、シャヤユートが出演しないわけにはいかないだろうから、下敷きとなる基礎知識を作っているわけです。
 でも出してもいいよ。この話をドラマ化しようとしてテレビ局の人が来るんだから、出来たドラマを見るとか映画館に行くとか。
 あー4話目にクワンパが「潜水艦事件」の映画を観に行く、という回があるわけですが、この新作ドラマが併映になってるて事にしようか。」

釈「「潜水艦事件」の映画はいくつも有るんですよね?」
まゆ子「あー、そうだねフィルム上映する映画は4本も有る。10年前の事件で4本だからどれだけ人気だったか分かるってものだ。
 最近は、刑事探偵になったマッキーさんが次から次に事件を解決するのをドラマ化するのが大流行だから「潜水艦事件」映画は作ってない。
 最新映画は4年前、てことにしよう。当時売り出しの若手アイドル俳優が主役の超カッコイイ映画。」
じゅえる「マッキーさんはかっこよくはないんだよね?」
まゆ子「マッキーさん役の俳優は美男子ではないのが定番です。でも味があって人情味があって男に好かれるタイプが選ばれます。
 そうだなー昔何故か大流行したジャン=ポール・ベルモンドみたいな。」
釈「ベルモンドはルパン三世のモデルだし、コブラの整形顔モデルだし、ウルフガイ犬神明のモデルなんですよね。」
じゅえる「すげえ大人気だ。」

まゆ子「ちなみにマッキー役の俳優さんはどの人もその後大出世しています。まあ元々が演技力が必要な役であるから実力者が選ばれているんだけどね。
 そして実録ドラマ「英雄探偵マキアリイ」シリーズの俳優さんは、一番最初にマッキーさんを演じた人です。
 実際にあった事件をドラマ化するこのシリーズは、基本的にテレビの生放送演劇として上演され、評判の良かったものはフィルム映画化されます。
 でも今回の事件は最後にカニ巫女シャヤユートが逮捕されて退場する、という劇的展開を迎えますから、最初から映画化前提の企画です。
 ちなみにシャヤユート役の女優さんはちょっときつ目の感じのする美人です。もちろん20歳と若い。」

釈「つまりカニ巫女見習いのこれまでの3人はドラマ映画化の際にちゃんと配役があるわけですね。」
まゆ子「そりゃ当然。」
じゅえる「ボンドガールみたいなもんだな。3人の美女てわけだ。」
まゆ子「あ、いや。ドラマは基本が生放送演劇だから、映画化の際は映画女優に代わります。やっぱ生放送に向いてるのは経験を積んだ手練でないとね。
 逆に映画は見栄えのする美人でしかもカニ巫女見習いは基本10代後半ですから、これがスクリーンデビュー作て人も居ます。」
じゅえる「アイドル登竜門てわけだ。」

釈「実録マッキーさんシリーズはこれまで何本作られているんですか。」
まゆ子「あー最初の巫女ケバルナヤはまだ実録ドラマ物のフォーマットが確立していなかったから1本だけ。
 本格的にドラマ化が始まったのが二番目のザィリナからで、5本ドラマ化されて2本が映画化されている。
 その後ケバルナヤの事件が映画化されて、彼女の時代の事件が立て続けに3本ドラマ化された。

 3番めシャヤユートは目の覚めるような美人であったから、最初からテレビ映画に注目されて「カニ巫女見習いの日常」なんて単発映画が作られた。
 つまりこれは新ヒロインお披露目的な映画で、ザィリナの新しい映画封切りの宣伝みたいなものだった。
 でその直後になんか大事件が起きてシャヤユートヒロインのドラマと映画がほぼ同時に制作スタート。
 シャヤユート役の女優さんの人気も爆発で、次のドラマのネタが無いかなと待ち受けていたら、立て続けに3本大きな事件を解決。
 映画化間に合わないからドラマでしかも複数の会社が同時制作になってマッキーさん事件の奪い合いのような有様に。

 そこに、シャヤユート最後の事件が勃発するわけです。なにせ彼女は9ヶ月しか居なかったから忙しい。
 ちなみにテレビで放送されたドラマの脚本はそのまま舞台化して、今も方台各地で演じられています。
 放送上映されなかった事件も、ラジオドラマ化されて、これもまた舞台化されています。」

じゅえる「なんだこの流行作家ぶりは。」
釈「それほんとうにちゃんと解決した事件なんですか。」
まゆ子「マッキーさんのいいところは、一つの事件の解決に時間を掛けないことだよ。もう次から次に大事件難事件が押し寄せて大活躍だ。」
じゅえる「さすがと言うべきだな。」

釈「じゃあクワンパさんも実はテレビ局から注目されている?」
まゆ子「もちろん! ただあまり美人ではないからどういうキャラで売っていこうかと思案中。
 最終的には、これまでに無かった「マキアリイに恋する巫女」的なキャラが作られていきます。
 だから最後にクワンパが失踪するはめになって、妄想が炸裂するわけです。
 実はクワンパはマッキーさんの子を孕んだのではないか!?とか。」
じゅえる「テレビ局は悪いやつだな。」

まゆ子「あ、それから基本的にこの世界のテレビ放送は生放送でドラマも一回きり。
 磁気テープによる記録で再放送が行われますが、テープが高価いから数回放送したら潰して使い回します。
 しかし「実録マッキーさんシリーズ」は非常に人気の高い番組であるから、放送画面をフィルム撮影したコピーが特別に作られています。
 だからマッキーさんシリーズは何度もテレビ放送されており、シャヤユートとか大人気なわけです。」

釈「ちなみにこの時代のテレビは個人の家庭にはまだ導入されておらず、小劇場映画館みたいな「伝視館」てとこで上映されてます。
 カネを取る街頭テレビみたいなものです。」
まゆ子「そもそも放送が有線で配信されているから、テレビだけ買っても仕方ないんだな。ケーブル引かないといけない。」
じゅえる「そういうのって不自由じゃない?」
まゆ子「でも方台全土で映像をリアルタイムで共有できる、という他には代えがたい特性を持っている。もちろん有線で。
 だからマッキーさんは全国区の大人気ヒーローですよ。
 でも画質が悪いからね。ブラウン管テレビだし。」

釈「カラーテレビですか?」
まゆ子「そこは大手テレビ配給会社がカラー放送やってる系列局であれば、カラー放送だ。カラーテレビは白黒テレビの3倍の値段がするから、資本力のある伝視館でないと導入できない。」
じゅえる「マッキーさんの実録物を作るのは大手だろ?」
まゆ子「まあね。しかもフィルム映画をテレビでカラー放送したりもする最大手だよ。でもマッキーさんシリーズはドル箱コンテンツなのです。」

じゅえる「じゃあ小資本の白黒テレビ局は指をくわえて見ているだけなのか。」
まゆ子「いやいや。そもそもがドラマ化する前に放送しちゃえばいいのだ。
 そこでバラエティ枠で刑事事件報道を取り上げて、英雄探偵マッキーさんはこんな感じで悪を懲らしめた、てのを面白おかしく芸人さんが説明してくれるのだ。
 大手ドラマが登場するのは最低でも数ヶ月後だから、早くに儲けちゃうんだな。」

釈「ラジオは各家庭にあるんですよね。」
まゆ子「うん。でも短波放送だからね。十二神方台系は電離層がおかしいから中波放送がうまく機能しない。基本近距離局だ。」
釈「ラジオドラマは人気無いんですか。」
まゆ子「いやいや大人気だよ。マッキーさんシリーズも大人気ですよ。マッキーさんシリーズの映画主題歌だってがんがん流れてます。」
じゅえる「他にヒーローは居ないのかよ。」

 

まゆ子「他のヒーロー?」
釈「いや、マッキーさんが二人居たら世の中犯罪界は大騒ぎですよ。」
まゆ子「他のヒーローか……。
 各界の名士というか、経済界でも学会でもスポーツ界でもなんでもいいが、ヒーローと呼ばれ世間で持て囃される人物が犯罪に巻き込まれ、犯罪捜査界のヒーローマッキーさんに依頼する。
 これは使える。」
釈「なるほど。それは凄くいいです。たとえばリンドバーグが子供を誘拐されてホームズに頼むようなものですよ。」
じゅえる「そりゃ時代が違いすぎる。ポワロさんだろそこは。」
まゆ子「ホームズよりはポワロさんはネームが下だからね。でも、そうだなとりあえず政界の若きヒーローはソグヴィタル・ヒィキタイタンなわけだ。
 ヒィキタイタンはほんとうに大活躍しており、政治記事なんかが世間の一般人が注目するなんて珍しいのに、彼に関してはほんとにアイドルみたいに目を向けている。」
釈「ヒィキタイタンさんが事件に巻き込まれるのは、第6話に予定されているんですね。」

じゅえる「政治と刑事事件てくると、経済界の寵児ってのが居るべきだな。スポーツ界の英雄でもいいけど。」
まゆ子「経済界の寵児、って金持ちだよね。マッキーさんとこは貧乏人相手の商売だし。」
釈「貧乏人相手の商売からいきなり抜擢、となると何か仕掛けが要りますね。誰かの紹介とか?」
まゆ子「でも刑事探偵てのは本来裁判で働く者だから、大手事務所だってちゃんと有るんだな。」

じゅえる「依頼人ではなく、犯人。ヒーロー同士の対決でいいんじゃないか。」
釈「おお!」
まゆ子「そいつは大事件だな。ほんとに映画級の。」
釈「それはもちろん映画化決定ですよ。そのくらいに大げさな仕組みの事件を構想しないといけませんね。」
じゅえる「やはり経済的な動きで庶民に大きな負担が回ってくるような話をそいつが密かに行っていて、庶民の味方マッキーさんが打ち破る。これが欲しい。」
釈「欲しい。」
まゆ子「ふむぅ。めちゃくちゃ難しいぞ。」

 

まゆ子「とまあそういうわけで。ちなみに映画ヒロインの話をちょっと続けると、

 実は今のところマッキーさんシリーズには4人のヒロインが居るわけです。
 まずは最初の「潜水艦事件」のヒロインである、ゥアム帝国の外交官とタンガラムの女性との間に生まれた少女。
 最初の映画であり最大の事件の、まさに二人が英雄になった事件のヒロインであるから大人気です。女の子なら自分が成りたいと思う美少女ぶり。」
釈「その人は第5話でゥアム帝国からタンガラムに帰国して、マッキーさんに会いに来ると同時に事件に巻き込むわけですね。」
じゅえる「成長したヒロインはとんでもない美女になって帰ってきた、そういう仕組だな。」

まゆ子「で、ケバルナヤ、ザイリナ・シャヤユートの3名のカニ巫女見習いです。TVドラマと映画とそれぞれに女優さんが違う。
 というか、「潜水艦事件」のヒロインは映画自体が4本も有るから4人の女優さんがやってるわけです。

 第一の最初の映画が大ヒットします。この女優さんが一番有名で人気なのだけど、ちょっと大根です。新人女優で事件の事実通りの15歳の少女ですから。
 第二の映画は第一の映画が大ヒットしたのを見て、別の映画会社が二匹目のドジョウを狙って豪華版を作りました。この女優さんは人気実力共に有る当時17歳。
   この映画の特徴は、第一では軽視された悪役に大物俳優を使って敵側の動向にも力を入れた点です。より事件の背景がわかり易くなりました。
 第三の映画は、前者2つの映画を見て3匹目のドジョウを狙った3番目の映画会社で、女性の人気が高い事をマーケットリサーチしてヒロイン主役にシナリオ改変しました。
   この映画は15歳の美少女で新人だけど演技力抜群の女優を使いまして、これまた大ヒット。ちなみにこの映画ではマッキーさんもちょっとイケメンになってます。
 で第四の映画は第一の映画を作った会社が、決定版を作ろうと軍隊の協力も仰いで本物の兵器を登場させた本格冒険活劇です。潜水艦も本物です。」
釈「兵器が本物なのはいいですね。」
じゅえる「ミリオタ大興奮なわけだ。」

まゆ子「で三人の巫女だが、ケバルナヤの時代はまだドラマ化フォーマットが定まっていなかったから1作のみ。
 ザイリナが先に有名になった形だから、ザイリナが一番目の巫女と誤解している人も多い。
 でザイリナシリーズが大人気になったから、ケバルナヤシリーズが遅ればせながら始まるわけだが、1作めのヒロインとは違う女優さん。
 というか、ケバルナヤシリーズはザイリナシリーズとは違うテレビ局の制作で、伝視館系列同士の戦いなりました。

 キャラクターとしては、ケバルナヤはマッキーさんが初めて預かった巫女見習いだからどちらもぎくしゃくとして上手くいかない。
 そもそもマッキーさんが新米私立探偵だから、まだ事業が軌道に乗ってないから失敗も多い。彼女とも正義の在り方で衝突してしまう。
 でも事件解決の為ならば抜群に息の合ったコンビになる、信仰心の篤い巫女。
 ザイリナは武闘派でいかにも頑固そうな太眉の、でも幼いところがまだ残る未熟な巫女見習い。髪が黒いのが特徴で、運動能力は抜群です。
 三番目のシャヤユートは非常に美しい人目を惹く美少女。でも手が早く悪を許せない、カニ巫女として典型的なキャラです。
 とはいえ前二人もそれなりの美人です。映画テレビのキャラとしては十分に美少女として描かれます。

 ちなみにシャヤユートシリーズはテレビ映画制作会社がタッグを組んで独占して他のテレビ局は使えません。
 そこでケバルナヤにイメージの似たキャラが活躍する架空の探偵シリーズを毎週放送してます。結構人気。」

じゅえる「クワンパは?」

まゆ子「それはこれから。クワンパは前三人と較べてかなり大人しい巫女見習いと言えます。事務員としての能力も上です。
 ただその分奇矯な振る舞いが少なく、マキアリイの補助に務める極めて当たり前のキャラなのです。
 しかしマッキーさんの事件の現場にはちゃんと付き合って巻き込まれている。その結果、ヒロイン的に助けられる場面が多かった。
 実はこれが受けるのです。テレビ映画を見ている少女たちが感情移入するのに。
 で、ファンの人気を逆に反映させる形でクワンパはマキアリイに恋する少女のキャラにされてしまいます。」
じゅえる「そして失踪を経て、伝説の巫女になっちゃうのだな。」

釈「ちなみにクワンパは元ヤンです。」
じゅえる「そこのところは、テレビ的人気に影響しない?」
まゆ子「ぜんぜん。というか、カニ巫女にぶん殴られて矯正する、てのは一種の社会的パターンですからすんなり受け入れられます。」
じゅえる「そういうもんか。」

まゆ子「5人目の巫女はお嬢様です。東海岸からわざわざマッキーさんの事務員になるためにやって来た、ゴージャス系無知お嬢様キャラ。
 まあクワンパがカニ巫女になるのを辞めちゃったから、実質は4人めです。」
釈「ほんとにボンドガール的ですね。」
じゅえる「「相棒」の相棒みたいなもんだな。」

まゆ子「6人目はちょっと違って、マッキー探偵事務所に男の見習い探偵が居ます。これは史実。
 でカニ巫女見習いは主にこの男と絡み合って事件を解決する事になります。マッキーさんは懐の深い大人の男性的キャラとなります。」
釈「活躍しないんですか? 英雄探偵なのに。」
まゆ子「この時期、実はマッキーさんは私的な用事でしばしば行方不明になります。」
じゅえる「何か裏があるのか。」
まゆ子「しっかり裏はあります。謎です。だから事務所は留守がちになるのですが、だからと言って怪事件を解決しないわけではない。
 世間一般の考えでは、失踪したクワンパが何かあったのではないか??? という感じで固唾を呑んで見守ってます。」

まゆ子「7人目はなんと双子。カニ巫女見習いとトカゲ巫女見習いの双子が何故かマッキー事務所に。しかも事務所が移転してちょこっと大きくなります。
 見習い探偵もそのまま在籍し続けて活躍します。」
じゅえる「なんかラノベシリーズ的になってきたな。」

まゆ子「8人目は最後の巫女です。しかも舞台がベイスラではなくイローエントになっている。
 敵はイローエントを蝕む仁義など知ったことの無い組織犯罪者で、これまでマッキーさんが戦っていた相手とは全く違う。
 事件もハードで陰惨なものが多く、警察巡羅軍も及び腰。マッキーさんは孤軍奮闘という有様です。
 この時期に居たのは見習いではない、イローエントの正規のカニ巫女。正義を行うにも危険すぎて街で活躍できない。
 彼女が危なかったところにさっそうと現れたのが、伝説の英雄探偵マッキーさん。以後彼女が相棒となります。
 事務所も小さな、というか船小屋みたいな仮住まい。なんか怪しい汚い男がマッキーさんの手下になります。」

じゅえる「そのカニ巫女は美女か。」
釈「美女ですよね。」
まゆ子「映画的には美女なんだが、25歳くらいのこれまでの見習いとはまるで違う「女!」て感じです。
 だからマッキーさんの嫁扱いされてしまう。」
じゅえる「いいんじゃないですか。」
釈「それまでずっと独身ですよね。そろそろ年貢の納め時ですよ。いいんです。」

まゆ子「うんまあ、でもこの直後に40歳マッキーさんはゥアム帝国行きの客船上から失踪して、死亡扱いになるのです。」

 

 

2015/09/15

まゆ子「うん、まあこれだ。」
釈「やっぱり、HTMLのエディターで書くのは性に合いませんね。」
じゅえる「慣れたのでで書くのが一番さやっぱり。」

 

まゆ子「というわけで、くっちゃりぼろけっと今日の議題。
 あー、やっぱくっちゃり書かないと小説書き進まないやー、を始めます。」

釈「せっかく『罰市偵』を正式に始めたのに、全然進まないんですよねこれがまた。」
まゆ子「うん、というか暫定第一話もう出来てるのに、最終確認しようとしやがらねえよ私。」
じゅえる「モチベーションを高める為には火を以って火を制す、文章書きには文章で、だな。」

まゆ子「ちなみに罰市偵主人公マキアリイさんは苗字がレメコフからヱメコフに変わりました、どうでもいいですけどね。」
釈「質問があります! ヱメコフ・マキアリイさんは略してマキアリイ氏になってますが、正式にはヱメコフ氏ではないでしょうか。」
じゅえる「どっちがファミリーネームだ? 十二神方台系では。」
まゆ子「前が姓で後ろが名、これはいいんですよ。だからマキアリイ氏は実は正しくない。のだが、これにもからくりがありまして、
 三番目の名前ってのが実は存在する。幼名です。」

釈「勝 麟太郎 安芳 みたいなものですか。」
まゆ子「ま、最近では形骸化した風習と考えてもいいんですが、なにせ小学校を出たくらいから普通にヱメコフ・マキアリイなんて幼名抜きで名乗りますから。
 これは家の中で子供を呼ぶ時の名前です。十二神信仰の名残でもあるんですね。ネズミ神殿で出産のお祝いにもらう名前です。」
じゅえる「じゃあ名付け親は普通ネズミ神殿なのか?」
まゆ子「お金を積むといい名前をもらえるのですが、まあ無事赤ちゃんが成長しますようにとお祈りをする時の神様にお願いをする名札みたいなものです。」
釈「なるほど、誰が誰か名札なしじゃ神様も分かりませんからね。」

まゆ子「つまりは姓も名もどちらも改まった公式な呼び方であるから、氏を付けるのはどっちでもいいんですよ。
 それに、あの世界ではヱメコフという姓は、ありふれてはいないがぱっとしない地味な名前です。語感から武人ぽい感じもしません。
 その点マキアリイてのは、古の救世主ヤヤチャ様伝説に登場する英雄の一人の名前ですから、これは通りが良い。
 ソグヴィタル・ヒィキタイタンてのは、そもそも姓が王族で、名も同じヤヤチャ伝説の英雄王ですから、それと対を為す英雄マキアリイと組み合わせて非常に評判となったのです。

 だからマキアリイは、マキアリイと名乗る方が世間においてよほど通りが良い。ほとんど商標的なものになってます。
 そこで彼は虚名を利用して商売をするにあたって、「マキアリイ」を全面に押し出してます。屋号「マキアリイ屋」てなかんじで。」

じゅえる「やはりソグヴィタルは王族名でいいのか。」
釈「ノゲ・ベイスラ自体がソグヴィタル王国の旧領地ですよね。名族ですね。」
まゆ子「名族には違いないし、ヒィキタイタン自身もベイスラに縁が無いわけではない。
だが名族ってのは親類縁者が多くて、同じ姓を名乗っても色々なわけですよ。こちらもからくりが有って、ソグヴィタル・なんとか って血統を表す語が幾つか付きます。」
釈「ほおほお。つまり何代前の先祖から枝分かれしたって情報を苗字に付加してるわけですね。」
まゆ子「そこを分析すると、ソグヴィタル王家の血筋には違いないが随分と血縁的には離れているのだ。

 しかし、彼の実家はそれなりに裕福である。血統故の特権によるものではなく、先祖の資質と才能と事業の成功によるものです。
 そもそもがソグヴィタル王国は最も先に民衆王国の民主主義国家になったところで、特権的地位なんて600年も昔に失っているのです。」

釈「つまり、普通の人の家系?」
まゆ子「家名が事業に利益を与えなかったわけではないが、だからと言って破滅破産を免れさせる義務なんてものはどこにも無い。
 要するに普通に勝ち組なんです。
 というか、この600年世情は乱れ、幾つもの社会的混乱が起こり、特権階級富裕階級を引きずり降ろそうと社会運動が起きて、法律にも特権階級が不利になる条項が何回も書き込まれ施行されました。
 没落した特権階級は数知れず。ということで、没落した特権階級の老人、てのが物語にも出てきます。」

じゅえる「その歴史の荒波を華麗に生き延びてきたのが、このヒィキタイタンの一族ってことか。これは他のソグヴィタル分家の中では普通なのか?」
まゆ子「どうだろうね。概ねはその時々の特権階級間の交流で姻戚関係になって、自然と吸収合併されていったんだけどね。

 もちろん正統ソグヴィタル王家は今も存続しています。それなりの大富豪です。
 ヒィキタイタンは潜水艦事件で英雄となって世間の寵児とされた後に、ようやく王家本家から対面を許されている。そのくらい格式に差があります。」
釈「上流階級もなかなか難しいもんだ。」
まゆ子「ま、それだけ血の繋がりが薄いってことだよ。」

 

じゅえる「そういえば、今のタンガラム民衆協和国には爵位ってものはあるのか?」
釈「おう、それはファンタジーには欠かせない要素です。どうなんです?」
まゆ子「無い。だがそれは社会制度的には無いだけで、これまでの歴史上の特権階級を表す呼び名の使用までもを禁じたわけではない。
 だから嘉字の風習もまだ生き残っている。
 嘉字は神族神兵のみに許されてきた特権であるが、聖蟲の聖戴が終了した時点でその区別は無意味になっている。
 後は家系的な区分に過ぎないわけで、金雷蜒王国領の神族出身有力者は今も自らの子供に新たな嘉字を与えている。
 一方褐甲角王国の黒甲枝神兵は武人の家系であり、聖蟲の代わりに当主に決まった嘉字を引き継ぐことで家名を継承している。」

釈「嘉字があるのが旧特権階級貴族、て目安ですね。」

じゅえる「伯爵とか男爵とか爵位は決まってないのか。」
まゆ子「十二神方台系では階級制爵位は無いな。聖蟲が有るか無いかの区別が決定的に大きかったから。
 あと青晶蜥トカゲ王国の神剣を授かった者を特別視する風習があるから、それが近いかな。」
釈「騎士階級とかは、……て、馬がいませんね。すいません。」
じゅえる「そうなんだな。騎兵が無いから騎士も無い。」

まゆ子「ちなみに王族にはランクが有って、カンヴィタル武徳王家を特別に「神王家」と呼び、ソグヴィタル・メグリアル王家よりも高い位を認められている。
 またギィール神族はそのまま「神族」と呼ばれ、神王家・王家に次ぐ格式を認められる。
 黒甲枝はその下の「兵家」と呼ばれる。金翅幹家も同じ。
 これはギィール神族が地方領主の役をしていたのに対して、神兵はあくまでも褐甲角王国の官僚であった為に、一歩低い格式になったと思われる。
 そして、青晶蜥王国で神剣をもらった特別な人物の家系。「剣家」と呼ぼう。
 神剣と呼ばれる聖遺物が方台各地には未だに残るし、不思議な光を発し続けている。万病を治癒するとして今も信仰の対象だ。
 さらに別の「名家」と呼ばれるものがある。なんらかの理由で格式を認められていた家系だな。タコ女王国時代後期の小王を名乗る者も居る。

 爵位に相当するものと言えば、こんなくらいだな。」

釈「金雷蜒神聖王の一族は滅びたのですか? あと、紅曙蛸王国の女王は。」
まゆ子「金雷蜒王国神聖王は、創始歴6000年になる直前に不思議な洞窟から方台を自主的に退去しています。これ以後はゲジゲジの聖蟲は方台には居ません。」
じゅえる「王漿尭坐と呼ばれる十二神信仰最後の奇跡、てやつだな。」

まゆ子「つまり、神聖王の血筋なんてものは無い。というかそもそも神聖王は神族の中から選ばれるからね。
 タコ女王はもっと簡単。ある日気がついたら玉座に座っている少女がタコ女王だ。血統で選ばれるものではない。
 それは青晶蜥王国星浄王も同じ。血統まるで関係なし。
 だからカンヴィタル武徳王のみが神聖な王家として残ってる。」

釈「政治的には意味があるんですか、その爵位は。」
まゆ子「カンヴィタル武徳王家は非常に大きな力を持つ。なにせ褐甲角神の化身とすら呼ばれているから、宗教的な影響力は大したものだ。
 また最後まで聖蟲が残っていたのがカブトムシであるから、民衆主義国家といえども疎かには出来ない存在だ。
 また徳が高く正義の担い手として深く信奉されている。実際法律家として働く「兵家」出身者も多い。

 というわけで、法律によってカンヴィタル武徳王家およびメグリアル・ソグヴィタル王家直系親族は国家公務員にはなれない、と決まっている。
 当然国会議員には成れないし、国家元首になるなんてあり得ない。」

じゅえる「姑息だな。」
まゆ子「影響力は随分と劣るが、ギィール神族にも神聖王を出した家というのがあって、これの直系子孫も国家公務員にはなれない。
 というかギィール神族が国会議員にはなれないと法律で決めている。理由は「五月蝿いから」
 元々知力によってゲジゲジの聖蟲を得てきた神族は後になっても教育と奇矯な言動に磨きが掛かっている。議論になったら誰にも負けない。
 これは民衆の中から選ばれる民選議員としては非常に困る存在だ。だから法律で禁止してしまった。
 ほんとうの神族が居た時分からは随分と時が経っているのだが、この条項は今も生き続けている。」

釈「黒甲枝はどうですか。」
まゆ子「うん、これとは逆に黒甲枝出身の「兵家」には軍隊に所属してはならない、という法律が有る。
 なにしろ民衆主義国家というのは軍隊の忠誠心を疑う、疑いまくる。何度もクーデターが起きて政権をひっくり返されているからトラウマだ。
 そこに、兵士に絶大な人気と信頼を持つカンヴィタル武徳王の忠実な配下と呼べる元黒甲枝神兵の子孫が軍の重職を務めていたら、と考えると。」
じゅえる「そりゃだめだな。」
釈「ダメですね。」

まゆ子「同様に、「剣家」出身者は医療行為をしてはならないと決まっている。不思議な治癒力を持つ神剣の力で民衆を惑わすと考えられているからだな。」

釈「神剣の青い光はまだ使えるんですか。」
まゆ子「ほとんど力は無いが、発光し続ける剣が何本か残っている。効く効かないは問題じゃない溺れる者はわらでも掴むて信仰心だよ。
 光る神剣のほぼすべてが国家所有となって博物館入りだ。例外は救世主神殿「青晶蜥救世主の大剣」と星浄王二代の遺品である「易鮮」だけだ。
 この2本は救世主信仰、とくにヤヤチャ様を慕う民衆によって強く守られているから、国家としても手が出せない。」

 

じゅえる「ということは、ソグヴィタル・ヒィキタイタンは選抜徴兵で軍隊に居たから、「兵家」ではないんだ。」
釈「嘉字も無いし、神兵の家系ではなかった、てことですか。」
まゆ子「そういうことになるね。昔は聖蟲を持つか否かが最重要であったから、家系的には王族の血を引いても大したことではない、と思われていたわけだ。」
じゅえる「なるほど、大分ヒィキタイタンの出自の弱さが見えてきたな。」
釈「プリンスでもなんでも無いわけですね。」
まゆ子「彼の貴公子然とした風情は、何の事はない金持ち故の教養と本人の余裕の有る性格に由来するわけだ。」

 

じゅえる「しかしまあ、探偵物刑事物で貴族階級が出てこないというのもつまらないし、爵号を振り回す権力者とか居ると面白いのだな。」
釈「そうですねえ、伝統的な爵号は無いとしても、近代国家が国民に与える勲章とかは有ってもおかしくないですね。」
まゆ子「ふむ。そうは言っても町中を歩いてる人がそんなのに出くわす事も無いからねえ。」
じゅえる「いやいや、ミステリーでも文化功労者とか人間国宝とかが絡んでくる事件は面白いから。」
まゆ子「なるほど、そういう使い方も有るか。

 じゃあ考えた。国家勲爵号として一等から七等まで「勲子」という称号を与えるとしよう。
 一等はもちろん国家元首にのみ与えられる。選挙で政権を取って国家元首になってー、あーでも任期途中で降板、とかではあげられないかな。」
釈「そうですね。国家元首と言ってもタンガラム民衆協和国では国会代表と総理大臣が別ですから、その両方を兼ねてしかも任期を全うした人物を、第一級国家功労者として元老扱いしましょう。」
じゅえる「元勲の方がいいな。」
まゆ子「ふむ。じゃあ

 国家元首である国会総統と、総理大臣である大臣領を兼任した総統臣領で任期を全うして国家に貢献したと認められる人を、国会が議決して『元勲』という一等勲子に定める。
 二等勲子は国会総統、および大臣領として任期を全うして国家に貢献したと認められる人物。国会で議決して「国家元老」という称号が与えられる。

 三等勲子は大臣経験者および国会総統経験者、国会議長経験者、さらには最高裁判長経験者、軍隊最高指揮官の大将経験者、で刑事事件等で有罪判決を受けていない者。「臣梁」という称号で。
 四等勲子は国会議員歴30年、官公庁長官経験者、高等裁判官勤続何年等、軍隊将軍位経験者などなどの公務員最高の勲位。地方6区「大審会」議員などなど。「邦僕」という称号で。
 五等勲子は国会議員2期経験者。官公庁局長級経験者、裁判官勤続、軍隊大佐級、地方県長経験者、地方議会議長クラス、国立大学学長などなど
        さらには一般国民であっても長年国家に貢献してきた人物、タンガラムの国家の名誉を高める働きをした人物
        特別な技芸や学問で顕著な功績を示した人物等。       「人宝」という称号で。

 六等勲子は地方市長経験者、地方議会重鎮レベル、上級公務員退職者、軍隊士官レベルの退職者
        国家的企業経営者または学校経営等国家に益する活動を行う者、外貨獲得・資源探査・画期的発明等国家利益をもたらした者
        戦死者等国家公務に殉じた人間、また一般国民であっても顕著な功績を認められる人物、大学教授
        また十二神信仰の最高神官等宗教関係最高位到達者など  「範鑑」という称号で
 七等勲子は公務員満期定年者、高額納税者、その他表彰を受けるに値する功績を認められた者、長寿(80歳以上)で刑事罰等を受けていない人、地方議員経験者
        戦傷者等公務で重大な損失を得た者、一般大衆に広く功績を認められる者、また国民としての模範となる人物 「善士」という称号で

 こんなもんでどうだい。」

じゅえる「ヒィキタイタンとマキアリイは国家的英雄になったわけだが、どこらへん?」
まゆ子「あ、いや二人はそういう表彰は受けていない。何故ならば、一応は選抜徴兵で軍隊に所属していたわけで、本来の任務として軍人が行うべき事を行っただけ、という扱いになる。
 それでも国家的に表彰するべきだとは認められたから、勲子の称号は貰わなかったけど表彰状は頂いた。ホントは六等くらいもらってもいいんだけどね。
 ヒィキタイタンはその後国会議員として、もう2期務めているから五等はもらえる予定。」

釈「一等二等は、国家元首専用の勲爵ですよね。ちょっとやり過ぎではないですか?」
まゆ子「ま、権力者てのは自分を飾りたくなるものだからね。というか、この2つは国会での議決が必要だ。それも満場一致が望ましい。
 それなりに厳しい資格だし、そもそも在職中にはもらえない。」
じゅえる「そうなんだ。難しいもんだな。」
まゆ子「退職金代わりと思ってくださいな。」

釈「国家元首で行政の長でもある「総統臣領」は1期のみで続投が認められていないんですよね。(ここらへんの設定は「落書き」にあります)」
まゆ子「ま、最高権力者ですから独裁を防ぐために任期が厳格に定められています。
 総理大臣を別に定めれば、失政の責任を総理大臣に押し付けてすげ替える事が可能ですから、総統臣領はリスクが大きく普通はやらない選択です。」
じゅえる「つまりは戦争などの国家の非常時とか、どうしてもやらなければならない改革を断行する時にしか発生しないわけだな。」
釈「勲爵一等も当然てことですね。」

じゅえる「しかし三等勲子で大臣てのがちょっと納得いかないぞ。バカ大臣てのは確実に居るからな。」
釈「ちょこっと腰掛け的に大臣やった人、てのももらえるんですか三等?」
まゆ子「ああこれは、基本的に一等二等をもらえなかった総統と大臣領が自動的にもらえるものだ。バカでも成ればもらえる、これは国家の枠組みとして了承してください。

 その下の大臣ですが、勲四等に相当する国会議員長期経験者であれば、ふつうに大臣くらい務めているだろうから一等繰り上がりで三等もらえます。バカでもね。
 四等の資格の無い政治家が大臣を経験した場合、その親分である大臣領が勲二等をもらえるかが重要になります。
 つまり優秀な内閣の閣僚であれば当然に働きが認められ、勲三等も適当と考えられてもらえます。しかし在職期間が短い場合は辞退する事は可能で、その場合は特別に四等が与えられます。
 しかし親分が二等をもらえていない場合、また民間から人材活用という形で抜擢されたような大臣は国会での議決が必要です。ま、普通に辞退すれば自動的に四等がもらえますけどね。」

釈「なるほど、とりあえず大臣になれば勲四等は確実なんですね。」

じゅえる「六等七等は公務員に有利なような気がするが、」
まゆ子「そこは安月給で働いているご褒美的なかんじでね。

 今の日本では公務員が鉄板に有利な待遇としか思えないわけだけど、普通の国ではそんなことないんだよ。
 そもそもボーナスだって私企業なら時流に乗って大儲けが社員に還元される、てのがあるけれど、公務員には構造的にそれは無い。」
釈「そりゃー営利事業じゃないですからね。」
じゅえる「今の日本を基準にして考えたら変なわけだ。」
まゆ子「バブル時代は公務員は儲からない商売て敬遠されてたんだよ。時代はぐるぐる変わるのさ。」

じゅえる「勲子になったら何か特権的な待遇を受けるのか。税制上の優遇とか。」
まゆ子「あー、公務員年金制度で多少の優遇はあるけれど。国家保有の保養施設で優先権が有るくらいかな。
 あとは情報アクセス権が多少高いレベルのが使えるようになる。国家の為に個人で働こうと考えた場合の優遇措置、て感じかな。」

釈「あんまりうれしくないですね。」
じゅえる「こういう勲章とか爵位なんてのは、他人に威張るためのものだからな。プライスレスってわけさ。」

まゆ子「ちなみに公務員の定年は55歳です。タンガラムの平均寿命は男性60歳だから、ま普通ですね。
 満期定年者は30年勤続。25歳までに公務員にならなければ普通無いですね。上級でなければ勲子になれない。」
釈「まさに昭和の時代のお話ですよそれ。」

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まゆ子「さて、英雄探偵マキアリイさんの英雄化の問題です。人間どうやれば英雄になれるかというおはなし。」

じゅえる「今は英雄じゃないのか?」
まゆ子「過去の事例だけで英雄の虚名を保つのは極めて容易いが、今この瞬間をどのように生きれば皆から英雄と讃えられるか、という問題だよ。」

釈「どのような生き方をする人間を英雄と呼ぶか、ですね。」
じゅえる「ふーむ、実際に毎日のように犯罪事件を解決していれば英雄探偵じゃないのか?」
釈「それは名探偵コナンでしょう。」
まゆ子「あの子は1日に何十件も殺人事件を解決しているらしいね。計算上は」
釈「蘭ちゃんなんか死人の山を見たトラウマで発狂してもおかしくないです。」

じゅえる「つまり、刑事事件を解決するだけでは英雄になれない、てことか。」
まゆ子「実のところ、マキアリイさんはそれだけでも十分に英雄と呼ばれるに足りるのですが、彼は英雄探偵ではあっても名探偵ではない。」
じゅえる「どういうことだ。」
まゆ子「彼は事件を解決はするが、謎を解決するわけではない。
 推理ではなく冒険で事件を解決するタイプだ。謎なんか解かない。」
釈「ああ、そういうタイプですね。」

じゅえる「名探偵は頭脳明晰で推理力によって謎を解くのがお仕事。英雄探偵は?」
まゆ子「英雄探偵と名探偵とどちらが優れているかを比較すれば、圧倒的に英雄探偵の勝ちだ。
 なぜならば、名探偵は事件が起きてから解決するが、英雄探偵は事件が起きる前から解決してる。死人も極力出さない。」
釈「おお!」
じゅえる「そいつはまさに英雄だな。というか、そんなこと可能なのか。」

まゆ子「普通の人間や探偵では無理です。しかし名探偵たるもの彼が動く所赴く所で殺人事件がごろごろと起こるものです。
 英雄探偵は彼が動く所赴く所殺人事件が起きようとする真っ最中に飛び込んでしまいます。
 特に、違いがあるわけではない。」
じゅえる「そいつは辛辣だな。」

 

まゆ子「そこでだね、英雄の家というのを考えたのさ。」
じゅえる「それはなかなか難しいものだな。」
釈「思い切ってゴージャスなセレブマンション、てのはマキアリイさんは無理なんですね……金欠で。」
まゆ子「英雄にふさわしい貧乏な住処というのを考えてもらいたい、というか考えた。」

じゅえる「ふむ、それは後に置いて私らが考えてみよう。釈ちゃん、どんな家をイメージする?」
釈「家に女が居る!」
じゅえる「ふむ基本だな。英雄色を好むというから定番だな。ところでマッキーさんはご結婚は。」
まゆ子「まだですよ。その予定もありません。女運は事務所のカニ巫女に吸い取られています。」

釈「そもそもご両親はご家族は。」
まゆ子「考えてない。だがノゲ・ベイスラの今の職場では一人で暮らしている。」

じゅえる「少なくとも自分では炊事洗濯掃除はしないだろ。男だし。」
釈「してもいいですよ。でも英雄ぽくはありませんね。やはり女です。」
じゅえる「そうだよなあ、身の回りの世話をする女が一人くらい居ないとな。男でもいいが。」
釈「執事とか居ないですよね?」
まゆ子「居ないいない、そんなカネ無い。」
釈「であれば、一軒家という線も無いですか。」

じゅえる「いやしかし、英雄探偵という職業柄集合住宅では他の住人に迷惑が掛かりまくりではないだろうか。」
まゆ子「そりゃ当然掛かりますねえ。ヤクザとか攻めてきますねえ。」
じゅえる「だよねえ。」

釈「では一軒家ということで。新築ではないですよね当然、古屋を借りているとか?」
まゆ子「新築に住んでいるとしたら何か特別な理由が必要だ。」
じゅえる「女だな。」
釈「女ですね。」
まゆ子「女は無しだったら。第一そもそもがそんな恵まれた環境に住んでいながら下町のヒーローとか嫌じゃないですか。」

釈「つまりまゆちゃん先輩には明確なビジョンがあるわけですよ。下町で庶民のヒーローであるマキアリイさんが何処に住むか。」
じゅえる「そういうことであれば、長屋かボロマンションということになるが、しかし集合住宅では迷惑が掛かるんだよな。」
まゆ子「迷惑が掛からない集合住宅といえば、そりゃあ住んでる人間も札付きのワルということになってしまうな。」
釈「それは許されるんですか?」
まゆ子「イメージ的にはよろしくない。英雄としては貧乏であっても悪と慣れ合ってはいかん。英雄なんだから。」

じゅえる「正義の味方だからな。24時間戦い続けなければならない。それが英雄。」
釈「となれば、孤児院で匿名のヒーローなど、」
まゆ子「タイガーマスクだな。」
じゅえる「悪くはないが、子供か。迷惑が掛かるとさらに困るぞ。」
まゆ子「却下だな。」
釈「しかしラインとしてはいいと思います。24時間社会奉仕しているような環境に住んでいる。これが英雄マキアリイです。」

じゅえる「酒場に住むというのは無しか。」
まゆ子「酒場、うんいかにもらしいが、マキアリイさんはアル中ではない。ゲルタ中毒患者だ。」
釈「一種の変態趣味ですよね。趣味人です。そういう人間がそういうスポットにどっぷり浸かって暮らすというのも、作劇上あまり得策ではありません。」
じゅえる「うーん、実は隠れた料理人、というシナリオは無しか。」
まゆ子「それはいいな。少し採用。」

じゅえる「野中の一軒家、あるいは山中に、あるいは断崖絶壁の家、なんてのは無しか。」
釈「探偵事務所自体がそうであればよかったんですが、町中に普通に事務所有りますからね。」

 

まゆ子「これ以上無いのであれば、私が考えたやつを発表するよ。」

釈「待ってください! えーとつまりマキアリイさんがどういうヒーローであるか、それを考えたら自然と出てくるわけですよ。
 彼は公明正大誰の目にもヒーローそのものであって、世に隠れも無いわけですよ。
 そこであえて隠れるからには、プライバシーを尊重して誰にも見咎められないという秘密保持が最重要になるわけです。」
じゅえる「バットマンスタイルか。」
まゆ子「なるほど、それは考えてなかった。」

釈「では古い下水道なんかで。ノゲ・ベイスラは古い町ですから、そういうものも有るでしょう。」
じゅえる「古城の地下室、あるいは廃棄された神殿という手もある。神秘性を求めるならね。」
釈「マキアリイさんにはなにか人に知られてはならない秘密というのは無いのですか?
 より深い、ダークヒーロー的ななにかです。」

まゆ子「あー、かんがえてない。」
じゅえる「おまえはそういう奴だ!」

まゆ子「マキアリイさんには秘密は無い。何故ならば、彼には最期の失踪と今回クワンパの失踪という謎が最初から用意されているからだ。
 その上にさらに謎を重ねるとすれば、シナリオを大幅に変更せねばならない。どうする?」
釈「なるほど、やり直しですか。それは困るな。」

じゅえる「いやそもそもだ、奴は野球拳をどこで習ったのかという謎、そして何故野球拳なのかという出自の謎があるわけさ。
 わざわざ再設定しなくても、謎はほんとうに有る。」
まゆ子「そうそう。ある意味では、彼は本当に世間のど真ん中に居て自らを隠そうともしない、逆の不思議さが有るんだ。
 誰でもがこう思う。この男の裏には何が有って、どうしてそこまで強くあれるのか。」

じゅえる「英雄である、それ自体が謎か。」
釈「そりゃー謎ですね。謎すぎますよ。」
まゆ子「であれば、彼の住処は謎でも隠れ家でもない。普通だ。」
じゅえる「白昼どまんなか路上で寝ているような、そんな大ぴらな住処が必要になるな。」
釈「であれば、やはり低所得層の集合住宅が一番ふさわしくなります。ただー、」
まゆ子「うん、普通すぎてダメなんだな。もっと特別な場所、人が住むには適していない公の空間に住んでいる。そんな感じだ。」

 

じゅえる「降参だ。まゆ子、あんたは何を考えた。」

まゆ子「私が考えたマキアリイさんのお家はこんな感じ。

 数年前彼は或る事件を解決した。
 元は上流階級の老婦人が老僕と共に住んでいる幽霊屋敷がヤクザに掠め取られそうになる。マキアリイさんが見事解決はするが、老婦人は病でまもなく亡くなる。
 本来であれば屋敷は縁者が相続すべきであるが、今は行き方知れず。そこで管財人としてマキアリイさんが任命された。
 とはいえだだっ広い幽霊屋敷だ。マキアリイは管理人として一室に住むことになったが、そのまま放置するとそこらへんの貧乏人が潜り込んで勝手に住んでしまう。

 そこで彼は、酒場で偶然に出くわした無頼派の医者と仲良くなり、貧乏人相手の病院として屋敷を開放しようと考える。
 その医者は実は大学病院の偉い教授なのだが、院内の権力争いとかに嫌気が差して酒場なんかに入り浸り、貧乏人相手にやぶ医者をやっていたのだ。
 マキアリイさんは、そんな町中で適当に医療行為をするならば屋敷でやればいいと彼をスカウトして来るのだな。
 そこでほとんど無料の医療行為を行うニセ病院が出来上がる。
 マキアリイさんはカニ神殿に出入りするように十二神殿には強い。元々医療奉仕を行うトカゲ神殿から巫女を連れて来て看護婦にもしてしまった。

 で、屋敷自体の管理も他人にお任せ出来る事となり、マキアリイさんは管理人として一室に自分の部屋を設けているだけで楽々お住まいしているという塩梅。
 ちなみに飯を作るおさんどんの役は、ニセ病院の入院患者用の厨房があって近所のおばさんが半ばボランティア的に務めているから、マキアリイさんのご飯もなんとでもなるのだ。」

釈「ううっ、これはタイガーマスク路線の変形だ。」
じゅえる「なるほど、これはまさに公の道路の真ん中で寝っ転がる的なプライバシーも何も無い公明正大な英雄の住処だな。」
釈「しかし、ちょっと偽善が過ぎませんか? いくらなんでもそんな英雄的な。」
まゆ子「英雄的なのはそれだけじゃないぞ。

 このニセ病院、元が幽霊屋敷だけあって訪れる患者も貧乏人ばかり、医療費を払うのも無理なのに入院費なんか出るはずも無い。
 だが基本ここはタダなのだ。治療費はツケであっていずれは払わなければならないが入院費ベッド代はタダ。
 まあ食費は出すことになっているが、それではとても足りない分を病院側が補ってくれる。」
釈「うう、すごい偽善的な施設だ! そんなカネどこから出てくるのです!」

まゆ子「うん実はだ、トカゲ巫女が篤志家から寄付を集めてきて、そのカネで運用しているのだ。
 これはトカゲ神殿発足以来何千年の昔からの任務であり、どうやって医療弱者を経済的に救うかはまさに神の与え給うた試練、てものだったのだな。
 だがもちろん普通の寄付で賄う慈善病院てのが存在するし国家補助なんてものもある。それでも救えない人達を救うのが、このマキアリイニセ病院だ。」
じゅえる「どういうからくりで運営されているのだ?」

まゆ子「至極簡単。トカゲ巫女が金持ちの篤志家の所に訪ねて行って、
 「あの英雄として名高いマキアリイ氏が密かに病院を作って貧しい人を助けているのです」と吹き込めば良いのだ。
 篤志家はマキアリイの英雄の虚名を聞くと、もうそれだけで脳内アドレナリンがどばどばと分泌されて寄付したくなってしまう。
 しかも、病院自体を預かる医者がベイスラの大学病院の教授であって、医療施設としても盤石の体制を持つとなればためらう何物も無い。
 さらには、マキアリイ氏は売名とそしられないように匿名で運営しているのです、となれば金持ち達はここは自分の出番だと張り切ってしまうのだ。

 トカゲ巫女というのはこういう口説には長けている。人を騙して寄付をぶんどってくる達人なのだな。
 というわけで、マキアリイは自分では何一つやらない内に、ますます英雄となっているのだ。」
釈「すげー偽善の塊だ。」

じゅえる「トカゲ巫女すごいな。マキアリイはそれでいいのか、というか医者の教授は一人で大丈夫なのか?」
まゆ子「医者の手は慢性的に足りないのだが、なにせ大学教授であるから、まあ准教授くらいにしておこう、彼は学生に遠隔地や僻地医療について教えている。
 そのフィールドワークとして医者の卵たちをこのニセ病院に連れて来てタダで働かせるのだな。
 学生も、学生の内は希望と理想に燃えているから、こういう修羅場を見ると血が騒ぐ。
 なにより、彼らが子供の頃に聞いた英雄マキアリイが絡んでいると聞けば、それはもう!」
釈「何から何まで、虚名におぶさっているのですね。」

まゆ子「というのを私は考えた。どうだ。」
じゅえる「いやちょっとまて、そもそもが幽霊屋敷の財産権は死んだ婆さんの子孫の誰かのものなんだろ?
 じゃあいずれこのニセ病院は解散の憂き目に遭うのではないか。」
まゆ子「そういうエピソードがあってもOKですね!」
釈「なるほど、トラブルを予め用意しておけばネタが困ることもない、というペテンですね。」

じゅえる「しかし、マキアリイが何一つ病院運営に関わらないってのはなんだな。」
まゆ子「そうでもないんだよ。病院法上ではこのニセ病院は非合法なわけで、当然患者の質もよろしくない。
 中にはヤクザの抗争なんかで土手っ腹に風穴の空いた奴が担ぎ込まれて来たりするのだ。」

釈「そういう荒事になったらマキアリイさんの出番てわけですね。」
じゅえる「そしてまた英雄的な事件に飛び込んでいくわけだ。」

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まゆ子「というわけで出演キャラクターが増えた。

 マキアリイニセ病院院長こと大学准教授45歳くらい。無頼派酒飲み。
 彼の教え子の若い医者・医学生若干名。特に決まったキャラは居ないが、今後出るかもしれない。
 トカゲ巫女2名 年嵩のと若いの。および見習いが常時数名勤務。
 病院で働く近所のおばちゃん数名、1名は厨房勤務でマキアリイの飯も作る関係上出番が多い。
 女1名。厨房のおばちゃんを手伝うのだがマキアリイにぞっこん惚れている。
 墓掘り人1名。貧乏人が手遅れになって担ぎ込まれている病院だから毎日のように死人が出るから、葬式を取り仕切るコウモリ神殿の回し者が常時待機している。
   彼はマキアリイが不在の間の用心棒役でもある。」

釈「女1名、というのはなんですか。マキアリイにぞっこんとか穏やかでないですね。」
じゅえる「わけありか?」
まゆ子「つまり、マキアリイさんが事件で解決した関係者、ということになる。
 至極単純に説明すると、不運な境遇で身体を売るまでに身を落としていた美人が、マキアリイさんの事件に巻き込まれ因縁の鎖から解放されて自由になった。
 しかし自分が行くべき場所が無い。有るとすれば、マキアリイさんの所しかない。」

じゅえる「なるほど、いかにも有る話だ。」
釈「それじゃあかなりの美人ということですね。」
まゆ子「まあ暗い影のある美人だな。24歳くらいにしておくか。今はおさんどんを手伝っているから地味な、だがそれ故に目立つ容貌。」
釈「こんな所に居るはずの無い美人、てわけですね。それはクワンパさんが角を出しますね。」

 

じゅえる「墓掘り人てのはコウモリ神殿の神官じゃないのか。」
まゆ子「神殿の下働きをする者、一種の固定身分となっていて代々コウモリ神殿に仕えている。
 まあ伝統ヤクザというのは神殿の下働きをしていた者であるから、これもヤクザの一種に数えても特に問題はない。実際墓堀人組合てのは結構な力を持ってるからね。」

釈「カニ神殿にはそういう下働きの外部勢力は無いんですか。」
まゆ子「例外的にカニ神殿には無いんだよ。というかカニ巫女の棒を振り回して悪を叩きのめすのは、まんまヤクザまがいな存在だし。」
釈「そりゃそうだ。」
まゆ子「しいて言うならば、警察関係に協力する民間業者ってのはカニ神殿の下請け勢力の成れの果て、と言えなくもない。
 実際現代になっても、それら民間業者はカニ神殿を敬っているからね。」

じゅえる「踊りや祭礼を司るタコ神殿には興行師香具師の一派がつきまとうんだったな。
 トカゲ神殿は?」
まゆ子「薬草取りと呼ばれる集団がそれに相当する。山野に分け入って何日もさまよって高価な薬草を取ってくるのだ。薬草の相場を組合で支配しているとも言える。
 今は普通に薬局で薬売ってるから相当力を失っているけれど、まだ有るんだな。」
釈「なるほど、いろんなところで因縁が絡んでるんですねえ。」

 

じゅえる「ところで十二神方台系は土葬?」
まゆ子「あー、はい。火葬も無いではないですが、それは火焔教由来ですから宗派が違います。」
釈「鳥葬とかは、」
まゆ子「無いです。獣が人の肉を食べたら危ないと考えてます。」
じゅえる「ふむ、そこら辺は鳥葬やら野ざらしの風習のところはどう考えてるんだろうね。」

釈「火焔教の宗派というのは、創始歴6000年代ではどういう宗教ですか。」
まゆ子「宗教じゃなくて、土葬だとやたらと地面が必要になって土地が無くなって不経済だから、焼いて骨にして省スペースに埋葬しようという合理主義です。

 実を言いますと、弥生ちゃんの宿命のライバルであったあの黒の大女は5555年に弥生ちゃんに神剣を胸に押し込まれた後に健康になってまた悪事を働きます。
 で、彼女はピルマルレレコ教壊滅の後に方針転換をしまして、十二神信仰から脱却した新しい理性に基づく国家作りの理想を唱え、民衆主義国家樹立運動を立ち上げるのです。
 まず最初に成功したのが、ベイスラの有るソグヴィタル王国。「ソグヴィタル民衆独立自治国」を足がかりに方台全土を最終的に統一します。
 火葬が広まるのもその頃です。合理的な埋葬法として国家が推奨するものとなりました。」

釈「ふむふむ。あの人はまだ生きてるんですか。」
まゆ子「まだ生きているのです。マキアリイさんも国会周辺の大陰謀を暴いた暁には、彼女に会う予定ですよ。」
釈「千歳超えてますよね。」
じゅえる「まあ、1300歳だね。」
釈「いいんですか、そんなもの出して。一応「罰市偵」はリアル探偵物語ですよね。」
まゆ子「うーん、まあ、そこは謎の媼ということで。別に1300歳て出さなけりゃいいんじゃね。」

 

 

2015/08/08

まゆ子「それはそれとしてだ。「罰市偵」はこのようにしっかりと様々に構築して正しく書いていくとして、
 行き当たりばったりでデタラメに書くのも楽しいよね。」

釈「はあ。」
じゅえる「まあね。でもそれが出来れば苦労はしないってなもんだ。」
釈「しかしまあ、短編中編くらいであればまゆちゃん先輩にも出来るかもしれませんね。」
じゅえる「そうだな。実質「ゲキロボ☆彡」の1巻の中の1エピソードくらいであれば、100枚くらいなら大丈夫かもね。」

まゆ子「あまり深く考えないのも悪くないのかもしれない。とりあえず「彷徨える百合SEAーず」はそんな感じでこれからは触っていこうと思う。」

釈「設定の放棄ですか。」
まゆ子「うむ。いや、むしろ書いた後で設定をつくろうとか。」
じゅえる「超泥縄だな。」

釈「しかしそうは言ってもですよ、「百合SEAーず」はこれからどうするんですかね。」
まゆ子「まあ色んな惑星を巡って最終的には地球に行って、地球人を解放しておしまい! というかんじ。」
じゅえる「どうせ描くならめちゃくちゃ面白いお話にしたい。」
まゆ子「うん、まあ、そりゃね。」
釈「めちゃ面白い、ってのは具体的にはどのような条件を満たせばOKなんでしょうね。」

じゅえる「面白さってのは定量的に計ることの出来るものじゃないし、定番ネタをタイミング良く提供できればそうとは言えるけれど、それは望んではいないだろ。」
まゆ子「出来るならオリジナルネタで、それもオリジナル展開で、オリジナルというよりはオンリーワン的なものが欲しい。」
釈「要するに他の、これまでの作品群とは独立した地位を獲得できる要素を備えていながらなおかつ面白い。」
まゆ子「いや、面白いからそれをオンリーワンとして認め、他者も追随する的な先駆者的な役割を持ちながらも最初から完成されていつまででも面白い、てのが、」
じゅえる「そりゃホームズやらウェルズあたりなら許されるけれど、今の世の中さすがにねえ。」
まゆ子「そこまで大げさには言わないよ。近年のラノベでも一時代を画したてのは有る。そのくらい程度はオリジナリティが欲しいてだけさ。」

釈「ま、言って出来るくらいなら誰も苦労したりはしないんです。
 で、どこらへんをいじれば「百合SEAーず」がそうなりますかね。」

まゆ子「うーん。基本的にこの物語は女子大生が宇宙戦艦の艦長になって大宇宙を放浪して回り小活躍する、てなもんだ。この骨格自体がそれほど面白くはないのな。」
じゅえる「宇宙を放浪して回り、てとこがポイントだな。女子大生はキャラ回り、宇宙戦艦てのは舞台回り、小活躍てのは物語の規模を表しているに過ぎない。
 宇宙を放浪して回る。オリジナリティが欠片も無いここが、変更ポイントだ。」
釈「とはいえですよ、ロードムービー的に考えるとそこには「銀河鉄道999」なんてそれこそオンリーワンがそびえ立っていますからね。」
まゆ子「いわゆるスペース・オペラ的な色んな惑星に行って活躍する、てのは幾つでも例を挙げられる。
 だがどこに行っても変わった不思議が転がっている、てとこで既に破綻しているのではないだろうかね。」

じゅえる「宇宙の果てまで行っても地元と変わらない、それはーさすがにダメだろ面白くないなんて程度のレベルじゃない。」
釈「つまり他所の宇宙に行った所で何も起きたりしないのを、無理やりトラブルにするのが「百合SEAーず」に求められているものだと思いますよ。」
まゆ子「何処に行っても人間が居て、想像から一歩も踏み出していない程度の変さしかない。そんな宇宙てのが、楽しいか?」
じゅえる「無理だな。」
釈「だが逆に凄く変わった想像を絶して理解に苦しむ変化を見せる宇宙、てのは逆に白けるんじゃないですかね今時。」
じゅえる「うーん、今時かあ。」

まゆ子「変な世界のバリエーションを考えるのはやぶさかではない。出来る。だがそれが面白いかと言われると困る。
 変でない、どこに行っても同じような社会組織体制になっていて、僅かな変化で味付けして見せる。これも出来る。
 だがそのどちらでもないと言われると、途方に暮れてしまうぞ。」

明美「こんちわ。」
まゆ子「というわけだ。なんか無いか。」
釈「ここは明美先輩のごく平凡な頭脳で救いの道をお示しください。」

明美「……むちゃを言わないで。そんなばかみたいなこと考えつくわけないじゃない。
 せいぜいキャラの違いくらいよ、わたしにできるのは。」
じゅえる「行った先に変なキャラが居る、これもありきたりだよねえ。」

明美「めちゃくちゃ面白いってのは展開が読めないって要素は有ると思うのよ。そもそもロードムービーはだいたいずるずると進んでいって最後ぱたんと終わるだけでしょ。
 展開が読めないってのとは真逆じゃないかしら。」
じゅえる「謎解きの要素とかで進展していくのが正しいな。オリジナリティは欠片も無いが。」
まゆ子「1エピソードごとに展開が予想できないとてつもないどんでんを見せる物語、てのは面白いだろうか。」
釈「何度も続くと飽きられるパターンですねそれは。雑誌連載でずるずると長く続くのとは違って、完全フリーのオリジナルですから短く区切って見せないと。」

明美「主人公であるカラコ・ミレイさんが望まないのに、周囲がノリに乗りまくってとんでもない騒動に仕立て上げていく。そういうお話はダメなの?」
まゆ子「うん、それはー。」
じゅえる「一種のシチュエーション・コメディだな。舞台は宇宙戦艦内部に限られて、どんどん色んなエピソードが突っ込まれていくやつだ。」
釈「ああ、スタートレックとかその要素もありますかね。」

明美「カラコ・ミレイさんて人はどういう性格なの。主人公として何かを為すヒーロータイプなの? それとも巻き込まれタイプ?」
まゆ子「どちらでもない。」
明美「そうなんだ。」
じゅえる「いや、そうなのか? 何をするんだ。」

まゆ子「あいつは、宇宙戦艦を託されたからには責任を持ってこれを維持し望ましい姿で活用し次の後継者に完全稼動状態で渡そうと考えている。」
釈「典型的な非冒険者ですね。管理人ですよ。」
明美「管理人さんか。つまり女の子なわけだね。」
まゆ子「ある意味徹底的に女の子です。自分の管理下にある宇宙戦艦を綺麗にお掃除したり飾り付けたりしちゃうタイプです。」

釈「つまり少女漫画的な感じでは「店」系の物語ですね。」
じゅえる「訪れる客によってほのぼのだったりびっくりだったりの出来事が毎回起きるタイプの物語か。なるほど、そんな感じかな。」
まゆ子「もともと宇宙海賊ではなく交易商人の物語だからな。戦艦が店になるのは当然なんだ。」

じゅえる「しかし店系でおどろくようなオリジナリティは出せないぞ。所詮は店系だ。」
明美「訪れるお客さんが勝手に物語を作ってくれるタイプでしょ、そのお話は。」
釈「店の主人が活躍してもいいんですが、いや宇宙戦艦が店なんですから強行突入してもいいんですよね。」
まゆ子「店の主人が超人的な活躍をしてお客が持ち込んだトラブルを鮮やかに解決してみせる。それもあり。

 だが、もう一歩!」

 

釈「そこで、店の主人には心に秘めた大きな目的が有り、それを実現していく為の着実な一歩を積み重ねていく。そういう物語ですよ。」
じゅえる「復讐劇とかを織り込んだら、それはいいな。「岩窟王」とかみたいに。」
まゆ子「この場合、宇宙に地球人を追いやった悪の宇宙人に対する復讐、という形かな。」

明美「いえ、キャラ的にそれは違うと思うな。」
じゅえる「そこまでの大志は持たないか。女だからな。」
釈「超人にしてはいけませんか? ミレイさんは超絶賢いヒロインにはなれませんか。」
まゆ子「いきなり目覚めてもいいが、それは悟りを開く的な展開になってしまうぞ。

 うーんそうだな。ミレイ本人じゃなくていいんだ。
 宇宙戦艦には船霊とか船幽霊とかが憑いていたり、コンピューターの中に仮想人格が隠れていたりして、それが超絶能力を持っている。
 そもそもが船がどうやって別の恒星系に行くのかは、全部そいつの仕業であって、そいつの意志や情報網を掌握すれば船の全機能が自由に使える。
 それどころか宇宙のすべての領域で何が今起きて、何が求められているかがインタネットで見るように分かって、その通りにすれば巨万の富も強大な権力も握る事が可能。」

じゅえる「超絶的だな。」
釈「まさに超人です。ミレイさんは女の子らしさの発露として船幽霊と仲良くなって全機能を、」

 

明美「えー、それは違うよ。ミレイさんはそうじゃないさ。」
まゆ子「うん、私もそう思う。ミレイは宇宙の覇者なんかには成る気は無いタイプだろ。」
じゅえる「つまり、船の精神とも言える存在と喧嘩する。意志に逆らうのか。」
明美「いいんでない。」
まゆ子「そんなものからも独立しているべきですね、彼女は。」

釈「逆の意味で超人ですね、それは。」
じゅえる「ふむ。ミレイはたしかに特別な存在ではあるし得難いキャラクターではあるのだが、船が求めるものは受け入れない、徹底的に女の子なキャラなのだな。」
釈「うーん。だが船の意思と戦うってのはちょっとオリジナリティが低いです。」
まゆ子「「2001年宇宙の旅」かねえ。」
じゅえる「インターネット的宇宙の意思でいいんじゃないかな。2001年と差別化するには。
 とにかく世界中のニュースとか意見の書き込みとかくだらない妄想とかまでがどんと検索可能で飛び込んできてさ。現代的でしょ」

まゆ子「うーん、そうだな。船の意思が出現するのは船の航行コンピューターで、1行文字列でのみ交信する。てところか。」
 少なくとも3D立体映像で船の魂のイメージ図とか出てくるのはおかしいよな。」

明美「船幽霊は、店としてはやはりお客さんなんだよ。店の主人としてのミレイさんは、やはり店の本分を守る為に、店の意思にも逆らうんだ。
 あくまでも徹底的に女の子であり続ける。それがカラコ・ミレイさんだと思うよ。」

 

まゆ子「そうだな。船の意思に逆らって、さすがにこれは手に負えないと気付いた船幽霊が、じゃあとミレイの望みを叶えてくれるということで地球にワープしてくるんだ。」
釈「そして最終回に突入、ですね。なるほど。」
じゅえる「自然に最終目的地太陽系に到達できるわけだ。」
まゆ子「そして、ガーデンマスターの製品だと思っていた宇宙戦艦が実は太陽系のそれも月に残っていた地球人の産物だと知る。
 ガーデンマスターによって地球から追い出された人類ではあるが、一部が月面に残るのを許されて宇宙文明を築き、他の恒星系に高度な工業製品を供給する製造基地とされていたわけだ。」
釈「いいですね。」

明美「でもなんで船幽霊はミレイさんにそんなことさせたの?」
まゆ子「そりゃー。船幽霊が自分の意思に逆らうのであれば、ミレイの意思を実現させてやるから船に従うか船を降りるか決めろ、って選択を突きつけるんだ。
 そしてミレイは望み通りに地球に来て、そこでミレイのキャラクターどおりに行動して地球人類を救い、そして船幽霊も脱帽する。
 そういうお話だな。」

じゅえる「ふむふむ。そして船幽霊は再び航行コンピューターのデータの背後に隠れて、ただの宇宙戦艦に戻る。
 ミレイは宇宙戦艦艦長を続ける。ってオシマイだな。」
釈「きれいですね。」

まゆ子「うん。だいたい見えた。だがもう一声!」

じゅえる「宇宙人、異星人でも出すか。」
釈「ガーデンマスターは謎のままですからね。宇宙人が出るのが正しいでしょう。」
じゅえる「ミレイが月を救う際にガーデンマスターのしっぽを見つけてしまって、それを追求されると困るから船幽霊はデーターに戻るとかは?」
まゆ子「いや、まあそれはいただくとしましても、ちょっと違うな。なにかもっと、なにか。」

明美「宇宙恋愛とか?」
まゆ子「うむ、それはありなんだが、めんどくさい。」
明美「恋に落ちる相手が用意されていないから、そうか。」

じゅえる「それは作れ。」
釈「そうです。ミレイさんが惚れる相手を作りなさい。キャプテンハーロックみたいなのです。」
まゆ子「いやいやいやいや、それはいや。もっと普通の固い職業の人ですよミレイさんが惚れるのは。」

じゅえる「じゃあ、ミレイの前に宇宙戦艦別の船でもいい、船幽霊の存在に気付いて、宇宙を引っ掻き回した英雄の痕跡をたどるとか。」
釈「そうですね、地球人の前にガーデンマスターに飼育されていた異星人の痕跡というのはどうですか。
 これをたどればいずれ地球人がどういう末路をたどるのかも判明します。」
まゆ子「ふむ。それはミレイの性格からしてこだわってしかるべきマターだ。採用。」
釈「ガーデンマスターの正体に迫る活動を始めたからこそ、船幽霊は覚醒した。いいんじゃないですかね。」
じゅえる「ふむふむ。重層的になってきた。」

明美「トレジャーハンター的な?」
まゆ子「おう! だが犯罪的なものも欲しい。
 なんといいますか、世界中の秩序をひっくり返して、民衆の目を新たな視点にレベルアップさせるような、体制や権力者には都合の悪い展開の」

明美「人形劇だね。過激な人形劇がミレイさんの唯一の必殺技だから。」
じゅえる「ふむ。そこの設定をちゃんと生かさないとダメだな。」
釈「なんの為に女子大生キャラにしたか、てなとこですからね。」

まゆ子「ふーーーーーーーむーーーーーー、まあどう繋がるかは分からないが、地球人の前の異星人の物語とかを人形劇化してもいいかな。」
じゅえる「それがガーデンマスターには至極都合が悪いんだよ。」

明美「でも人形劇はやっぱり恋愛物でないとかっこうがつかないでしょ。」
まゆ子「そうかな?」
じゅえる「まあ、怪奇物やらお化け物でも恋愛ネタを絡めると感情移入が進んでより怖いというのはあるな。」
釈「男女の愛憎のもつれほど恐ろしいものは無いのです。」

明美「そこで、ミレイさんは知らずに男性を追いかけるというか、まだ見たことの無い人に恋してる、とかの要素を突っ込むべきだと思うんですよね。
 この人はふつうには、普通の恋愛はしないタイプでしょ。」
まゆ子「ほんとの男性に恋をしない?」
明美「そうだよ。あくまでもロマンを追いかけるのだよ。」
まゆ子「じゅえる、これってアリ?」
じゅえる「珍しいタイプではあるが、ミレイくらい変な女ならむしろいけるかもしれん。」
釈「普通男性がその役をしますよね。見果てぬ夢のようなヒロインを追いかけるってのは。でも、」

明美「いや、ほんとに付き合うとたぶんこの人は破綻する。船と恋人どっちを取るかと言われると、恋人を取って船を捨てる。
 やはり船が恋人くらいのスタンスでないとダメだよゼッタイ。」

まゆ子「ふーむ。でも具体的には誰なんだ?」
じゅえる「そりゃー、前の船長とか?」
まゆ子「いや、おじいさんだよ。」
じゅえる「若い時はあったろうさ。宇宙戦艦を駆って宇宙をだいぼうけんだよ。」
釈「なるほど。ミレイさんは前の船長さんのことをあまり知らないんですよね、すぐ死んじゃうから。だから知ろうとして記録を調べてのめり込んでしまうんです。」
まゆ子「なるほど。それは恋とは呼べないかもしれないけれど、傍から見るとそのくらいの真剣さなんだな。なるほど。」

じゅえる「そこんとこは律儀に全部抑えなくてもいいさ。
 人形劇の新しいお話をつくろうということで、宇宙戦艦を駆るヒーローにしようということで盛り上がって、なんとなく前の船長さんがクローズアップされるという形で。」
釈「軽い感じで、ですね。」

 

釈「それじゃあだいたいのスケジュールを決めますか。何回くらいで終了します?」
まゆ子「8回で。」
釈「
 1)カラコ・ミレイ、宇宙戦艦を行き倒れのおじいさんからもらう

 8)ミレイ地球に行って人類を救う。でも帰ってきて普通に宇宙戦艦の艦長を務める。終了。」

じゅえる「今は2)ってところかな。起承転結で言えば、起が終わったところか。」
まゆ子「ふむふむ、起承転結ね。なるほど、8回を4つに分けて、起2承2転2結2 で終わりにしよう。」
釈「いいですね。それで起の部分は、とりあえず宇宙戦艦を動かせるようになり、他所の宇宙に行くのにも慣れるってかんじですね。」
じゅえる「そうだな。能動的で意思を持ってビジネスとして本腰を入れて、宇宙戦艦で恒星間交易を始めた、てとこだな。」

まゆ子「承2回は、恒星間交易をとんとん拍子に成功させていき、カラコ・ミレイここに有りと大宇宙に宣言する、超のし上がり伝説で。」
じゅえる「いいね、やっぱり成功譚はみんなが望むものだよ。」
釈「大会社がどんと出来て、大出世大金持ち。これですね。」

まゆ子「転2回は大出世の当然の帰結として、ガーデンマスター自体に挑戦する事となる。
 それは地球人類が何故に地球から太陽系から追い立てを食らったかの謎に迫るわけだ。
 そしてミレイは、前任者であるおじいさん船長がその生涯を掛けてガーデンマスターの謎を追った事を航海記録から発見するわけだ。
 そして記録に基づいて航路を設定すると、地球人以前にガーデンマスターに弄ばれた異星人種族の痕跡遺跡を発見。
 そして襲い来る謎の敵。ミレイは華麗な操船で危機をいくつもクリアしていく。
 しかしその活躍も、船の航行コンピューターによる謎の出力に支えられるものだった。
 そして、ミレイはコンピューター内に潜む特殊な自我プログラムと対話する。」

じゅえる「OKOK。」
釈「では結2回は前半が自我プログラムとの対話と拒絶、後半が地球圏に到達とお終い、ですね。」
じゅえる「結構長いな。」
まゆ子「短くしますよ。何も考えずに。」
じゅえる「何も考えないと長くなるじゃんあんた。」
釈「ですよ。考えてください。」

まゆ子「しかし、わらしべ長者級のボロ儲けをどのように描くかね。やはりミレイ一人じゃ無理だよ。」
釈「この物語は「百合SEAーず」です。女の子だらけの商会を立ち上げるんです。そのための人材はとっくに用意しています。」
じゅえる「金太郎グループの令嬢とか、どっかの星の大統領令嬢とかだな。」
まゆ子「うん、まあ、そういう感じで、そいつら出したんだけどさ。」
釈「やればいいじゃないですか。」
まゆ子「やるんだけどね。というか、まだキャラ出揃ってないんだけどね。」
釈「 2)ですから、それは。必要なキャラを揃えて、3)で大博打、4)で大成功です。

 1)女子大生カラコ・ミレイ、行き倒れのおじいさんから宇宙戦艦をもらい恒星間交易に乗り出す
 2)さまざまな恒星系にジャンプして、色んな政府と接触。キャラクターがどんどん揃っていく

 3)カラコ・ミレイとその仲間達、恒星間交易ビジネスを専門とする商会を立ち上げる
 4)大博打に大成功して、商会は莫大な富を手に入れる。大成功

 5)カラコ・ミレイ、前船長のおじいさんの航海記録から彼の実像を再現して人形劇にしようと思い立つ
 6)前船長の航海記録から、地球人類の前にガーデンマスターの弄玩物となった異星人種族の遺跡を再発見する
    宇宙戦艦航海コンピューターの内部に自我を持つプログラムを発見

 7)自我プログラム、カラコ・ミレイを籠絡して船の能力を最大限に発揮しようとするが断られる
 8)諦めた自我プログラム、カラコ・ミレイの希望を叶える為に太陽系地球へのジャンプを敢行
     月面に地球人類政府が存在し、全宇宙の地球人類の為の工場になっていた。
     カラコ・ミレイ、月政府がガーデンマスターの監視をされていると思われる巨大な「眼」を宇宙魚雷で破壊する。
     カラコ・ミレイ、航海に復帰してまた元気に恒星間交易を行う(END)

釈「しかし、どんなビジネスで大成功しますかね? 宇宙を股に掛けて交易すると言っても。」
じゅえる「カラコ・ミレイって、大学家政科だろ? お料理とかではどうだ。」
まゆ子「え、宇宙戦艦で食堂をするというのは既に設定済みではあるけれど、ビッグビジネスで大成功は設定してないぞ。」
釈「料理のチェーン店で大成功、てのはアリですが。しかし物流が寸断されている恒星間交易でそれは無理でしょう。」

じゅえる「だからさ、他所の星の連中を美味い料理で中毒にさせて洗脳しちゃうのだ。恒星間交易でのみ入手できる食材を使って、カラコ・ミレイカンパニーのみが提供できる料理をだね。」
まゆ子「高級レストランですねそれは。」
釈「うーむ、なるほどそれぞれの社会の支配階級を虜にするのに、それはアリですね。」
じゅえる「貧乏人を相手にしても儲からないからな。」
まゆ子「家政科だから、服飾とかも得意なんだ。食と衣料とでカラコ・ミレイブランドを立ち上げて、宇宙中の地球人に流行発信する最先端ファッションリーダーとなる。」
じゅえる「いいね。」
釈「いいですね、それ。ファッションはとにかく原価低くても儲かりますよ。」

まゆ子「でも戦争はする。」
じゅえる「どうやって?」
まゆ子「カラコ・ミレイって人は不正を許せない、困った人が居ると助けちゃう性分だ。それに戦闘艇に乗っているのに戦争しないわけにもいかんだろ。」
釈「武器は?」
まゆ子「一応あるんだが、ソレ以上に積み荷がね。代金の代わりに廃棄弾薬とかをごっそりもらっちゃったとかで持っていたりするんだ。」
じゅえる「確かに戦闘しないのは宇宙戦艦としてつまらないからな。そもそも前の宇宙海賊と遭遇した時もキレてるし。」
釈「こいつくそ度胸あるんですよね、元々。そりゃあ戦いますか。」
まゆ子「こないだ載っけた7話の操縦士も、戦闘狂みたいな奴だ。あとで傭兵団も用意しよう、もちろん女の子だらけ。」
釈「ふむふむ。」
じゅえる「なるほど、そう来るわけだ。」

まゆ子「というかさ、既にスケジュールに入ってるんだけど、女の子だけが取り残された小惑星が宇宙海賊だか宇宙軍だかに攻められているいるのをミレイが強行接舷で助けるというお話があるのさ。
 教会みたいな宗教団体が弾圧されて攻め滅ぼされているところを、女の子だけ救出して別の恒星系に避難させる。
 彼女達が後に武装してミレイの為に戦う、てのでもいいぞ。」
釈「ちょっと怪しいですけどね。」
じゅえる「それはアレだ、その恒星系自体が特殊な宗教国家になっていて、ソレ以外の宗教団体を殲滅にかかってるんだ。」
まゆ子「なるほど。」
釈「自然ですね。」

まゆ子「ちなみに、この世界ではそもそも宗教がほとんど意味を持ちません。ガーデンマスターに地球から追い出された際に神様はなにも助けてくれませんでしたから。」
じゅえる「そりゃ無理だけど、そんなもんかな。」
釈「神自体の概念がガーデンマスターとバッティングして、訳分からなくなってるんですよ。」
まゆ子「カラコ・ミレイ達はお稲荷さんを拝んでいますけどね。農耕の神として。」
釈「キツネですか。」
じゅえる「宇宙各地のカラコ・ミレイカンパニーにお稲荷さんを建設するのが目的、ということにしよう。」
まゆ子「うむ。」
釈「お稲荷さんですか。うーん。そうだ! まだ見ぬ生きた本物のキツネを探して宇宙を旅する、というのはどうでしょう。」
まゆ子「ほぉー。」
じゅえる「そうか、プロキオンにキツネを届けるのを最終目的とするわけだな。」
釈「地球の月面人類を助けた御礼にキツネの番いをもらって凱旋ですよ。」

 

じゅえる「うん閃いた。カラコ・ミレイの一党はきつねさんをアイテムとするが、宇宙には狼とかタヌキとかライオンとか色々とシンボルにする集団があるんだよ。
 そういうアニマルトーテムで集団のカラー付をしよう。」
まゆ子「お! それだ。宇宙何処に行っても、いきなりそこの集団とか政府とかの色や性質を表現する手法が無かったんだ。余計な描写が必要となる。
 アニマルトーテムで象徴的にやってくれるのであれば、それは大助かりだ。

 そうだな。上の女の子だけが小惑星で攻められるというのは女の子達が黒ヤギトーテムで、攻める方が羊トーテムでいこう。」
釈「キリスト教ですね。」
まゆ子「うん。そういうこった。ブラックゴート教団をホワイトシープ軍が襲ってるのだ。」

釈「であれば、カラコ・ミレイの一党は名付けるならばカラメル・フォックス・カンパニーですね。」
じゅえる「カラメル? 色?」
釈「きつね色って英語にするとぱっとしませんから、似た感じの色のカラメルで。」
まゆ子「可愛い!」
じゅえる「よし、では金太郎グループ令嬢がカラコ・ミレイを中心に作る商会の名前は「カラメル・フォックス・カンパニー」だ。」

 

 

2015/08/01

まゆ子「とまあそういうわけで、2ヶ月の間小説はお休みして今後の方針を練っていたのですが、」

釈「休んでる間も遊んでるわけじゃありませんよ。「落書き」コーナーで色々と設定をこしらえてます。」
じゅえる「この様子だと、「罰市偵」が次の主力小説に本決まりか。」
まゆ子「とまあそういう風に思うわけですが、さすがにちょっと違います。ました。

 「抜質」こと「罰市偵」は「げばると処女」に出てきたマキアリイと巫女クワンパを主人公として、ほぼ現代社会と同じ発展度を持った十二神方台系を舞台とする探偵物語です。

 ここまではいい。探偵モノだからネタがあってトリックがあって色んなエピソードがあればいくらでもストーリーを続けられる。
 ノンストップでだ。」

じゅえる「ああ、そりゃいかんな。」
釈「終わり方を最初に決めていかないと、だいたい空中分解するんですよね。」
まゆ子「というわけで、この物語の終わりをずっと掴めないでいた。この2ヶ月はあーでもないこーでもないと終わりのシーンを模索していたわけだ。」
じゅえる「死ぬか?」

まゆ子「死なない! 
 マキアリイさんは元々英雄であり、こないだのくっちゃりで「40歳でゥアム帝国行きの客船上から忽然と姿を消して戻らない」という最期が設定された。
 だが「罰市偵」自体は、マキアリイ30歳の頃、カニ巫女見習いとしてクワンパが事務員としてマッキー探偵事務所に厄介になる1年半を描くものだ。
 つまりマキアリイは死なない。」

釈「クワンパさんは結局は巫女として働く事を辞めて、正式なカニ巫女にはならず、社会から消えてしまう。
 これが設定された結末でしたね。」
じゅえる「カニ巫女クワンパは何故巫女になるのをやめたのか、そこに英雄探偵マキアリイはどう関わってくるか?
 これがこの世界に残された謎なんだな。そして妄想を掻き立てる要素が多過ぎて、様々な憶測が為される。
 一説には、クワンパは密かにマキアリイの子を身籠って、英雄の邪魔にならないように身を引いて、密かに次の英雄を産み育てた、とか。」

まゆ子「まあ、お話としてはそれが面白いよね。
 だがさすがにそれは少女趣味が過ぎて使えない、という結論になりました。
 というか、それは架空のエンターテイメントの物語として劇中にて盛んに持ち上げられるお話です。ほんとに使っちゃいけない。」
釈「ですよねー。では何故クワンパさんは、というお話です。」

 

まゆ子「あー、そこで考えた。

 まず大前提として、クワンパは4番目の巫女見習いだ。マキアリイはそれまでに3人の巫女見習いを引き受けている。
 マキアリイが私立の刑事探偵として独立開業したのは、警察を追われた直後25歳くらいの頃。
 その後1年間ほどは普通に営業をしていて、軌道に乗ったと思われた頃にカニ神殿から巫女見習いを事務員として引き受けてほしいと頼まれる。

 年限は1年半。これはカニ巫女見習いが社会で自立して暮らして、要するに世間を知ってそれでもなおカニ巫女として生涯を捧げる覚悟があるかを問う試練だ。
 おおむねこの試練によって7割方の巫女見習いは脱落する。
 そりゃー若い女が社会で1年半も暮らしていれば、だいたいは色恋沙汰が発生して信仰を保ち続けるのが難しくなる。
 ましてやカニ巫女は正義の為巷の悪を叩きのめす激しい職務、それゆえの事故や暴力による死も少なくない。
 一生を決めるのにはまず世間を知って後、という理屈で一般社会のカニ神殿とは縁の無い私企業で働くわけだ。」
釈「それまでの2年間はカニ巫女見習いはちゃんと棒術の訓練などを仕込まれて、意気揚々とこの現実回帰の試練を受けるわけです。」

じゅえる「つまり3人のカニ巫女ということは、4年半マキアリイはカニ巫女見習いを引き受けているわけだ。
 今30歳であるから、26歳から始めたとして、ちょっと余るな?」
まゆ子「余ります。なんとなればその3人の先任者はマキアリイ事務所に1年も居着いていないからです。
 理由は簡単。マキアリイさんは刑事探偵でありながらも10年前に騒がれた英雄であり、今も英雄の名に恥じぬ活躍をなさっているからです。
 カニ巫女見習い共は世間を知るために事務員として働いていながら、マッキーさんに誘われるままに難事件に飛び込み、カニ巫女の杖を奮う大冒険の毎日です。
 そりゃー巫女辞めるわけありませんや!」

釈「つまり、実に美味しいお仕事なんですね? マキアリイ探偵事務所は。」
まゆ子「使命に燃えるカニ巫女見習いにとっては、です。」
じゅえる「ふむ。でも何故1年保たないのだ。」
まゆ子「あまりにも暴れすぎて、カニ神殿の巫女が回収に来るからです。世間を知るのが目的なのにこれじゃやぶへびだ。」
じゅえる「あー、」
釈「ですよねー。」

まゆ子「というわけでマキアリイ探偵事務所は事務員職がカラだったのですが、この春。春にしましょう。
 新人カニ巫女見習い クワンパさんがめでたく就職なさったわけです。」

じゅえる「そして約束の1年半の後にクワンパは事務所を退職して、カニ巫女にならずに失踪した。だね。」
まゆ子「はい。」
釈「何故でしょう。クワンパは望み通りの場所に来れたのでしょ?」
まゆ子「あー、最初の内はそうです。というか前の3人の伝説が光り輝いていて、そりゃあ探偵物語の主人公ヒロイン役ですよ、そりゃあカニ巫女のスターです。」
釈「わかります、クワンパさんは胸躍る思いで事務所の門を叩くのですね。」

じゅえる「だが期待はずれだった?」
まゆ子「ある意味ではそう。マッキーさんはダメ人間です。だが、英雄であり、まさに現実に存在する正義の味方弱者の為に戦う救世主です。」
釈「どっちなんですか。」
まゆ子「だから、ダメ人間だけど巻き込まれ型のキャラであるから、事件は向こうからやって来る。
 勇気も無謀さも無い一般人であれば素通りする事件ばかりですが、マッキーさんは愚直に真正面から受け止めてしまうのです。

 そして勝利する! 鍛え抜かれた野球拳の技を使って、10年前に世間で噂となった英雄の姿のままに。」

じゅえる「どこがいけないんだよ、クワンパは。」
釈「掛け値なしのヒーローのとこに来たんですよ。嫁くらい成りなさい。」

 

まゆ子「あーまー、そうなんだけどさ。
 簡単に言ってしまうと、クワンパは普通の少女であったってことなのさ。未来永劫ヒーローをやっていこうとする特異なキャラクターではない。
 マキアリイの相棒として数々の難事件に巻き込まれ、自らもカニ巫女の杖を振るって解決に当たるうちに
 彼女の中で「もう、コレ以上はいいや」という気分になってしまったのです。」

釈「正義の味方疲れ?」
まゆ子「というか、彼女の中における正義の味方成分をこの短い期間に全部使い果たしてしまった、て感じ。」
じゅえる「ふむ分からないではない。所詮は凡人である我が身が、何の因果か英雄と共に目覚ましい活躍をして、もう満足してしまったんだな。」
釈「あー、つまりカニ巫女を続ける意志がもう昇華してしまったんだ。」

まゆ子「というわけで、彼女はカニ巫女になることを断念します。まあ、子供じゃなくなったから、てのが大きな理由ですね。

 クァンパって娘は13、4歳の頃は不良少女であって、街で悪いことしてたらカニ巫女にぶっ叩かれて信仰に目覚めてしまった、という経緯です。
 そして情熱の赴くままにカニ神殿に飛び込んで巫女見習いに。
 なんと言いますか、それこそ世間の風を知って頭を冷やせ、の措置が一番必要だった娘、と言えます。」

じゅえる「そして思惑通りにちゃんと冷えた。」
釈「それも、英雄の相棒としてやるべき事をやり尽くした上で、満足して熱狂が失せた。そういうことですね。」
じゅえる「ふむ。青春の1ページとして最高の季節を送ったわけだ。幸せな奴だな。」

まゆ子「まあ、そうなんです。

 問題は、その幸せを本人が受け止めきらなかった。
 これ以上カニ巫女として務める気が無い。いや、巫女になったとしてもこれ以上の高揚感充足感を得られるはずも無い。
 本来自分の器量では到底辿り着くことのなかった境地に、僥倖にも巻き込まれてしまったのです。

 そしてマキアリイという男を知った。英雄の運命から逃げられない、また逃げようともしない真の英雄です。ダメ人間だけど。
 これ以上マキアリイと一緒に居る為には、自分も英雄にならねばならない。あるいは英雄の女房にならなければならない。
 無理無茶でしょ?」

釈「無茶ですね。」
じゅえる「そういう発想に行ってしまうところが、まず無理だ。つまりクワンパはマキアリイの事が好きなのか?」
まゆ子「ダメ人間ですから、誰かが彼の面倒をみなければならない、とは思います。女ですから世話は焼きたい。
 だがそういう女は、マッキーさんの傍にはうじゃうじゃ居るんです。」

釈「女たらしなんだ。」
まゆ子「残念ながら。そんな器量は持ってません。巻き込まれキャラですから、事件が起きる度に女が引っ掛かる、入れ食い状態です。」
じゅえる「うーむ、そりゃー、やだな。」

まゆ子「マッキーさんはダメ人間ですが、女性関係は潔癖ですよ。ヒーローですから女性に関しても夢があるのです。」
じゅえる「ヒーローだからね。」
まゆ子「クワンパが彼の傍に居て相棒として認められるのも、ただ単にカニ巫女見習いのカニ神殿の依頼で引き受けさせた事務員、という自分の価値とはまるで関係ない理由からです。」

釈「はあ、つまりはクワンパさんは自分がそこに居ていいものかを自分では納得出来なくなったんだ。」
じゅえる「なるほどね。1年半の年限が迫ることで、さらにその思いは深くなり、」
釈「また自分の中の正義への思いは成就されていた事に気づくわけです。これ以上マキアリイの隣に居る理由が無い。」

まゆ子「これが、クワンパがカニ巫女にならなかった理由です。」
釈「面白い1年半なんでしょうね。」
じゅえる「人の羨むような輝かしい時間を生きていた、そういうわけか。」

 

まゆ子「そして事務所を辞めて正規のカニ巫女にもならなかった。

 ここで問題が起こります。クワンパに戦闘力が無くなった。」
じゅえる「信仰が失われて、精神的に弱くなった?」
釈「カニ巫女を辞めて人をぶん殴る杖を捨ててますからね。そりゃ弱いでしょ。」

まゆ子「いやいやそういうことじゃなくて。
 つまりくワンパは個人が強いわけではないのだ。まあカニ巫女だから強いのだ、というのはあるがじゃあカニ巫女が何故強いかだ。
 宗教の力信仰の力、というのは個人的なものではあるが、実際には神殿組織によって守られているのだ。
 カニ巫女は町のヤクザを遠慮容赦なく叩いているが、それは宗教に基づく道徳観によってヤクザも面と向かっては反抗できない。
 だがソレ以上に、カニ巫女を傷つけたらカニ神殿組織が、それも全方台のカニ神殿が総力を挙げて潰しに来ると分かっているからなのだ。」

じゅえる「要は、数が力だな。」
釈「そうですか、なるほど物理的裏付けのある力なんですね。」
まゆ子「十二神方台系のヤクザはこれでも神殿に仕えるものであった過去のいきさつをちゃんと覚えて倫理として継承している。
 経済的に不合理だなと思っても、それが神の法であると知るからには逆らわない。
 それでもカニ神官巫女の死因の多くはヤクザに刺されたってものだけどね。」

釈「危ないですね。」
まゆ子「ところがだ、最近は宗教と関係の無い外来性の犯罪組織というのも増えていて、これはそういう信仰にはまるで敬意を払わない。
 むろんカニ神殿も断固として戦うのだが、まあ基本的にはこれは国家権力の仕事。当然にね。
 それでもおっつかないから、マキアリイさんという英雄が必要とされるわけだ。カニ神殿も支援を惜しまない。」
じゅえる「ふむ、なるほど。バックアップ組織となり専門家を雇っているわけだ。」

まゆ子「マキアリイさんは通常のヤクザとはあまり戦いません。というか、話せばだいたい分かる相手です。筋を通せば。
 だが犯罪組織には筋なんてありはしない。そして、この物語の多くがソレを相手とします。
 犯罪組織としてもマキアリイは邪魔者ですが、彼を抑えようとして事務員クワンパを捕まえようってのは割が合わない話だったのです。カニ巫女だから。」
じゅえる「なるほど、それがクワンパが弱くなったという理由か。」
釈「人質として狙われてしまうんですね。」

まゆ子「この物語は8つのエピソードを予定している。この人質話は最終回第八回のネタになる。
 事務員を退職してカニ巫女も辞めたクワンパが、警戒はしていたのだが案の定狙われて人質にされてしまう。ひどい目に遭わされるのだ。」

じゅえる「なるほど。終わりが見えたとはそういうわけだな。」
釈「とうぜん、……死なないですよね? クワンパさんは。」
まゆ子「死なないよ、それほど深刻な事態にもならないよ。マッキーさんは掛け値なしの英雄ですから、人質なんかさくっと救出です。
 だが問題はその後だ。クワンパの身を今後も守り続けるにはどうするべきか。
 このような事態は、マキアリイが英雄探偵を続ける以上いつまでもつきまとう。一生クワンパを守り続ける事はできない。」
じゅえる「女房になれよ。」
まゆ子「そういうわけにもね。」

釈「つまり、何の支援組織の後ろ盾も無いクワンパさんをどうやって守るか。が最後の問題になるわけです。
 結論は?」

まゆ子「知り合いに頼んで、つまりは英雄のもう一人の片割れであるヒィキタイタンさんは国会議員になっているわけですが、彼とか彼の仲間の助けを借りていわゆる証人保護プログラムを使うのだ。
 クワンパは名を換え素性を隠して、方台のどこかで別人として暮らす。
 カニ巫女を辞めて新たな人生を切り開く為の再出発のスタートとして、これで万全です。」
じゅえる「ふむ、妥当だ。」
釈「それで謎の巫女になってしまったわけですね。正体を隠しているから、その後が分からない。」

 

まゆ子「その後の続きも考えた。

 クワンパが素性を隠す際に、一人の女性法衛視に力を借りるのだ。マッキーさんも馴染みのあるチュダルム彩ルダムさんだ。「彩」の字が付くかどうかはまだ未定。
 彼女が法的な手続きを行って新しい身分戸籍を発行している。つまりは、クワンパの身元引受人である。
 彼女が、クワンパが別人となって学校で語学の勉強をしているところに仕事を持ってくる。それも犯罪取り締まりに関係する事だ。
 もちろんマキアリイは今回まるで関与しない。これは警察機構の捜査の一環として、正式にクワンパが協力させられたのだ。

 この事件を無事こなしたクワンパに対して、国家諜報部から彼女をスカウトに来る。
 外国、それも今最もホットな外交問題の現場である新方台バシャラタンに「外交官の妻」として赴任してもらいたい、てなもの。
 外交官である「夫」は表の仕事をやるわけだが、既に展開してある密偵からの情報を集積して本国に送り届ける連絡員として、クワンパに目を付けた。
 よくある話で、表向きは外交官の夫の方に監視の目が光らせているが、妻が実質は重要であった。というやつだ。

 外交官の夫の方は今はそれほど高い身分ではないが、15年後くらいにはちゃんと出世して1等書記官くらいにはなる人材。
 ニセの結婚でもいいが、本当に結婚しても損はしない縁談である。」

釈「ふむ。」
じゅえる「ふむふむ。ますます謎の女路線だな。」
釈「説得されたんですか。」
まゆ子「うん、これまではカニ巫女としての信仰という個人的な理由で公に奉仕しようとしていたのだろうが、これからは国家の為に尽くしてみないか、とか言われて。」
じゅえる「受けたんだ。」
まゆ子「色々曲折はあったけれど、まあね。そして彼女はバシャラタンに赴く。」

じゅえる「それが、終わり。」
まゆ子「クワンパの物語はこれで終わり。

 マキアリイさんは空っぽの事務所に次のカニ巫女を受け入れる事になる。
 今度はカニ神殿も反省して、というかクワンパが巫女を辞めるとは考慮していなかったのだ。
 前3人がしっかりと巫女になったし、それと変わらぬ意固地な巫女見習いとしてクワンパを送り込んだのだから。
 そして巫女にならなかった場合にこういう事が起きると理解した。

 そこで今度の巫女見習いはお嬢様だ。東海岸の方の大きな財閥の、それも元はゲジゲジ王国に仕えた武力集団の流れを汲む、まあ一種の伝統ヤクザのお嬢様巫女。」

釈「定番だ!」
じゅえる「定番だな。なるほど5番目はそういう女が配置されるんだ。」
まゆ子「マキアリイさんの物語は、彼女が事務所に来る所で終了。

 しかし、40歳になったマキアリイさんが何故にゥアム行きの客船に乗ることとなったのか。何故失踪したのか、はまるで不明のまま。なのだ。」

じゅえる「ちなみに前3人のキャラは?」
まゆ子「全然決まっていない。しかし決めなくてはいけないな、なにせクワンパはカニ神殿の勧めでマキアリイ事務所に入る前には会っているはずなんだ。」
釈「前任者ですから、それは当然ですね。」
まゆ子「というか、カニ巫女として正規に昇進した彼女達はなった途端に大活躍ですから、有名人です。カニ巫女の間だけでなく一般世間に対してもです。」

じゅえる「どのレベルの有名人にするかだな。その巫女本人が手柄を立てたか、有名な事件の関係者として知られるのか、英雄マキアリイと共にあって有名なのか。」
釈「なるほど、それはバリエーションを付けるべきですが、三番目のはありにしていいものでしょうかね?」
まゆ子「ふーむ、少なくともほとぼりが冷めているべきだな。それは1番目の巫女だ。英雄マキアリイと共に働いて大事件を解決した有名な巫女A。その後もめざましく活躍している。
 巫女Bはカニ神殿内での働きが素晴らしく、表彰された。そうだな、カニのみならず12神殿での行事で大いに面目を施したということで。
 巫女Cはこないだまでマッキーさんのとこに居た者で、カニ巫女としては素晴らしいがとてつもなく世間に大迷惑な行為をしでかして、カニ神殿に捕獲されてしまった札付き。
 ということにしよう。」

 

釈「創始歴6200年代での十二神殿の一般庶民への人気、てのはどのくらいでしょうか。」
じゅえる「宗教の支配力はどのくらい強いか、って問題だな。でも十二神信仰は衰退してるのではないのか?」
まゆ子「あー、難しい問題だな。信仰がどの程度一般庶民の生活を規定するか、か。
 えーとつまり、この時代の宗教がいくつあるかというと、まずは十二神信仰が一番古いもので確かに最も一般庶民への影響が強い、信仰というより生活そのものだ。
 そして十二神信仰の派生である、救世主信仰。これはタコ女王、ゲジゲジ神聖翁、カブトムシ武徳王、そして星からの使者ヤヤチャ様信仰がある。」

釈「十二神信仰と救世主信仰は別なんですか?」
まゆ子「別というよりは、より上位の信仰だな。神よりもなお救世主の方が地上に深く影響する。直接のご利益を考えると救世主信仰は強い。」
じゅえる「つまりは代々の王国を作った者は神聖視されるってことだな。特に5000年代にタコ王国が復活してトカゲ王国も出来たからね。」
まゆ子「というか、救世主信仰は6000年代になって発生した新興宗教と考えた方がいい。それまではどの王国もちゃんと存立していたのだから、普通に権威に服従していたのだ。
 救世主信仰の信者はおおむねそれぞれの土地を治められていた領民に多い。だから他の王国の領民と救世主の名誉を賭けて喧嘩することもある。」
釈「ふむふむ、より強く民衆に結びついた信仰ですね。」

まゆ子「そして救世主ヤヤチャが持ち込んだ「神殺しの神ピルマルレレコ」神を崇める新ピルマルレレコ教。
 旧ピルマルレレコ教団は創始歴5555年に再来したと言われるヤヤチャによって滅ぼされている。それまでにさんざんな悪を働いたのを救世主により直接罰せられて、民衆からも大いに罰せられた。
 しかしその反面、ヤヤチャ本人が再来して悪を成敗した姿はまさに「神殺しの神」 非常に鮮烈に民衆の目に焼き付いている。
 そこでまったく新しいピルマルレレコ信仰として立ち上げられたのが新ピルマルレレコ教。ヤヤチャ信仰の最も強力な一派と考えてもいい。
 ここの教義は星の世界、ヤヤチャが来たという星の世界チキュに死後転生するのを目的とする。」

まゆ子「火焔教または秘密結社「貪婪」、さらにはスガッタ教団は無いことも無いがほとんど影響力を持たない。
 スガッタ教団は医学の進歩に貢献したが、現在ではその秘密のすべてを剥がされて一種の武術教団としてほそぼそと活動をしている。

 火焔教は知識の独占により深く太い命脈を保っていたのだが、ヤヤチャ様が表の世界に知識の殿堂である大学を開設させたことにより、知識集団が自発的に教団から分離独立を果たす。
 火焔教の分派である「貪婪」は不死の指導者の力により方台裏面で暗躍し謀略を司ってきたが、ピルマルレレコ教団の壊滅と同時に崩壊。
 しかし、その百年後から盛んになった「民衆主義」運動に、宗教色を隠して支援また哲学的に啓発してまったく新しい形態の組織である「政治結社」として表に出現する。
 政治結社は与野党各種あり、どれが「貪婪」を祖に持つか今ではまったく判別できないが、深いところでは流れは続いている。」

じゅえる「それだけか。」
釈「もう無かったですかね。」
まゆ子「厳密に言えば、他の方台から来た宗教もあるのだが、一般市民社会とくに十二神殿とは関係ないから省く。外国人が出てきた時に設定しよう。」

 留意すべき点と言えば、火焔教の分派である「貪婪」を率いた不死の指導者、が「罰市偵」に出るということです。」

じゅえる「出して、いいのか?」
釈「それは魔法使いですよ、いいんですか?」
まゆ子「いい。というか出す。無理矢理にでも。」
じゅえる「そうか、そう決まっているのであれば致し方無い。」

 

まゆ子「「罰市偵」は基本8つのエピソードで構成される予定です。

 1) クワンパ、マキアリイ刑事探偵事務所に事務員として就職。英雄マキアリイの真の姿を見て絶望する
 2) 子猫探索を発端として、猫女とパソコン少年を巻き込み、事件は驚くような展開に
 3) 法廷闘争においてマキアリイは刑事探偵としてまともに働く だが隠された真相があまりにも巨大であるが故に、事件はおどろくようなてんかいに

 4) 10年前、マキアリイとヒィキタイタンが英雄として世間で持て囃された「潜水艦事件」の映画を見る。映画という形で紹介
 5) その「潜水艦事件」のヒロインであるゥアム神族外交官の娘がタンガラムに帰還する。当然、事件を携えて

 6) 盟友ヒィキタイタンが国会での騒動に巻き込まれ、親友マキアリイに助けを乞う。政界に潜む陰謀を正義が暴く
 7) 6)の事件の続き あまりにも巨大な悪を白日の下に曝したマキアリイに復讐の刃が迫る 追われる探偵 ついには死の淵に

 8) 最終回。クワンパ、事務所を辞めて犯罪組織の人質になる。その後証人保護プログラムを適用されて別人として生きる、ところを国家機関にスカウトされて国外で諜報員となる
     マキアリイはクワンパが辞めて、人質になった事件を解決した後は関わらない。新しくお嬢様カニ巫女見習いが事務員として就職する

じゅえる「 7)の探偵ついに死の淵に、てのはホームズがライヘンバッハの滝で転落死したて、アレだな?」
まゆ子「はい。」
釈「じゃあ死んだふりですか。」
まゆ子「クワンパなんか絶対死んだと思ったんだが、次の日ひょっこり帰ってくる。というかお葬式の準備の最中にだ。」
釈「死亡確認したんじゃないんですか?」
まゆ子「誰が見ても死んだに違いないというとんでもない状況です。そうだな、爆薬を満載した列車が鉄橋から谷底に転落して大爆発木っ端微塵! てなかんじで。」
じゅえる「どうやって生き延びるんだ?」
まゆ子「そりゃー、爆発転落する前に列車から飛び降りますよ。犯人と一緒に。ソレ以外に方法無いじゃないですか。」
じゅえる「無いわな。」

釈「つまり、ここでマキアリイが死んだと思い込んだクワンパは、正義の心が燃え尽きてしまったんですね。」
まゆ子「そうだな。あまりにも鮮やか過ぎる、英雄探偵として完璧な死であった為に、心がもう昇天してしまったんだな。新聞やらラジオ・テレビでも大報道されるくらいに。」
じゅえる「そこにひょっこり帰ってくる?」
まゆ子「うん。」
釈「めいわくなひとですねえ。」
まゆ子「そうは言ってもだよ。マッキーさんは自分が死んだなんてまるで思わない。だって生きてるもん。帰ってきて葬式でびっくり。」
じゅえる「まあ、葬式でびっくりって、ふつうそういう展開だよね。」
釈「事件の影響力がマキアリイとクワンパでは違う、ってことですね。」

 

釈「でもこの8本のエピソード、少なくありませんか? 基本的に「罰市偵」は”異世界で浅見光彦シリーズをやる”てなものですよね。」
まゆ子「まあ、1本の中に複数の事件が入るものと考えてください。小ネタの番外編んくらいは覚悟して。」
じゅえる「やだなー。」
まゆ子「だいたい、この8本はどれも場所が違うんだよ。タンガラムの様々な土地が舞台となり、それぞれに固有の地域の伝説が絡んでくる。

 えーと、まずは1)がマキアリイの本拠地である「ノゲ・ベイスラ」でしょ。
 2,3)はおいて、4)が南海イローエントだよ。5)もたぶん南海方面もしくはゥアムに近い東海岸
 6)は中央議会の有るルルント・カプタニアを予定している。7)はたぶん、方台中を駆けまわることになる。
 8)は基本ノゲ・ベイスラだが、最終的には外国に飛ぶことになるわけだし。」

じゅえる「まあとにかく方台中を駆けまわるんだな。」
まゆ子「カネさえあればどこにでも出向く気軽さが、マキアリイさんの真骨頂です。」
じゅえる「なんとかして、依頼人が遠隔地に行かせたがる展開にしよう。」
釈「ですね。」

 

じゅえる「そういれば、ライヘンバッハでモリアーティ教授が死んだ後、ホームズは手下に暗殺されようとするんだな。
 マキアリイも、方台随一の暗殺者ってのに狙われることにするか。」
釈「 7)ですね。それも悪くないですね。」
まゆ子「悪くはないが、マキアリイは転んでもただでは起きない男だ。さらに悪を暴いてしまうぞ。」
釈「やぶへびですね。」
じゅえる「うん。どうしても殺さずにはおれないほどの憎しみを集めるのだよ。事実上最後の事件だ。」
まゆ子「わかった。」

釈「でも、最終的にその列車大爆発でほんとうに死んだと思わせなくちゃいけないんですよね。
 どうしましょうか。」
まゆ子「うーん、そうだなあ。方台一の暗殺者との最後の格闘に勝利して脱出しようとするその瞬間、暗殺者が手錠で自分とマキアリイを繋いでしまう。
 爆発転落する列車、鉄橋はもう目の前。さあどうする!
 で大爆発さ。そりゃあしぬ。」
じゅえる「手錠抜けとかマキアリイは出来るんだ?」
まゆ子「出来ないぞ。

 あー、うん、そうだね。こういう感じではどうだろうか。もはや逃げられないと覚悟を決めるマキアリイは、暗殺者をぼこぼこに殴る。
 そいつの手足の骨を砕いて抵抗出来なくして、そのまま担いで逃げ出した。」
じゅえる「       むちゃくちゃだ。」
釈「そんなもんでいいんですか?」
まゆ子「いいんだよ。マッキーさんはそういう御方だ。あーそうだな。暗殺者の手の骨を砕いて手錠抜けさせた、なんかでもいいな。
 まあどっちにしろ、マッキーさんは人殺しをするような御方ではない。暗殺者もちゃんと現行犯逮捕しちゃうのだ。もちろん死なせない。」
じゅえる「うんん、まあ。英雄だしね。」
釈「万歳ですよ。」

まゆ子「そうだな。マッキーさんが死んでないことは爆発翌日には警察は知っているのです。
 だが悪党どもの残党は、マッキーさんと共に悪のアジトやら構成員やらの情報もすべて消し飛んだと思っている。
 一斉検挙の為に、マッキーさんは死んだことにされていたわけだ。
 で、。すべてが終わったのが葬式当日。もちろんクワンパなんかは警察関係者でもなんでもないから、詳しい状況は伝えられていない。
 だからほんとに死んだと思い込んでいる。」

釈「それで、クワンパさんもくじけるわけですよ。」
まゆ子「うーん、そうだな。7)はむしろクワンパは活躍しない、と考えてください。
 マキアリイは他に暗殺の魔の手が伸びないように一人戦い続ける。クワンパはそれを知っていながら手が出せず、事務所で安否を心配し続けている。
 そうだな、事務所でも同時進行で事件が起こっていて、その解決にクワンパは離れられない。くらいでもいい。
 とにかく、マッキーさんは一人でも十分に英雄探偵だ、ということをクワンパが認識してしまうんだ。」

じゅえる「男が一人で戦う場に、女は足を踏み入れられない。そういうことだな。」
釈「それは仕方ないですね。主人公と脇役の違いですよ。」

 

まゆ子「あー、そうだな。2)でマキアリイとクワンパは、無尾猫が人語を喋る事を知る。
 というか、ネコ女であるヒッポドス弓レアルと知り合い、ネコも心を許して言葉を使って挨拶をしてネコだけが知る秘密の情報をくれる。

 7)においても、ネコ情報によってクワンパが独自にマキアリイの為に戦わざるを得なくなる。そうだな、冤罪でもいいな。マキアリイが悪の一味だったなんかの濡れ衣を晴らすために。」

釈「でもそれは6)解決で無理があるんじゃないですかね。」
じゅえる「そうだろ。ヒィキタイタンとマキアリイはこの事件で再びヒーローとして祭り上げられるべきだ。
 カニ巫女クワンパも有名人となる。そんな事件だろ。」
まゆ子「うん、まあね。

 だがクワンパが別のシーンで独立して活躍していなければならない。そこで探偵としては自分は無力だと思い知るのだ。
 ヒーローはマキアリイであって、自分ではないと。」

じゅえる「ネコはいいんだがな。」
釈「そうですね。ではクワンパが八方手が無い最終ギリギリに追い詰められた状態で、ネコがひょっこりやってきて教えてくれる。そんな感じですね。」
じゅえる「だな。ネコはあまり喋っちゃいけない。」

 

まゆ子「 3)に関しては、単純な殺人事件の審理であったが、殺人の被害者が実は生きていることをマキアリイが発見する。じゃあ死んだのは誰だ?という展開で。」
釈「ふむふむ。いいですね。それ女の子です。」
じゅえる「マキアリイは事件が起きる度に女を増やしていく体質だからな。」
まゆ子「ではそういうことで。」

 

2015/06/16

まゆ子「さて。

        どうしよう?」

釈「これが現在の状況です。困りましたねー。」
じゅえる「いや計画は色々と前から考えているのだが、それがそのまま進んでいくてものでもないんだな。やる気の問題だし。」
まゆ子「或る意味忙しいとはありがたい状況であって、深いことを考えずに済むのですね。
 ゲキロボもげばると処女も、やってる最中はお祭りの中に居るみたいで、早く終わらせてしまいたいとは思っても、いざ終わってみると寂しいというよりは途方に暮れるのです。
 何をすべきかの指針を失うから。だからそれまでに考えた次の企画、ってのはまったく意味を為さないんですね。」

釈「やはり本人のやる気の問題ですよ。何がやりたいですか今一番。」
まゆ子「正直言うと、小説書きが一番楽だから一番やっちゃいけないと思う。少なくとも他を立て直した後で。」
じゅえる「楽か?」
まゆ子「楽だね。なにせ字だけで済むから。」
釈「やっぱり3DCGもお絵かきもたいへんですか。」
まゆ子「なんというかねえ、そいつらはキリが無いんだ。どこまでやれば完成かってのに、限度が見つけられないんだ。
 その点小説は終わりは終わり。きちっと終わる。」

じゅえる「ふむ。マンガだったらきちっと終わるんだがな。」
釈「一枚絵とかもう断片ですからね。
 でもなにか、目処ってものが、」

まゆ子「実はさ、1コマラノベ割と面白かった。」
釈「書くのが、ですか。」
まゆ子「うん。そこで考えた。あらすじだ、1コマラノベであらすじを書けばよい。ゲキロボでもげばると処女でもだ。」
じゅえる「まあ長すぎるからね。あらすじを用意しておいてもいいだろう。1コマラノベであればいいんじゃないか。」

まゆ子「ゲキロボはいい。少なくとも12巻は1コマで終われる。だがさすがに11巻は無理だ、エピソード3つも用意してるから3コマ必要だ。」
じゅえる「そりゃあしゃあないな。1コマに3エピソードはさすがに無茶だ。まじ断片になる。」
釈「その点では10巻はいいですね。1コマで収められそうです。」
まゆ子「そこで考えた。エピソードごとに1コマで最大でも1巻4コマまで、であらすじ1コマラノベを書こうではないか。」

じゅえる「いいんでないかい。」
釈「そうですね、新作を始める前にゲキロボを完全に終わらせる必要がありますか。埋葬の儀とでもいいますか。」
まゆ子「言い方は悪いが、そういうこった。心残りを引きずっちゃいけないな。
 しかしながら、12巻であるから最低でも12コマ。1コマ400字詰6枚換算で、72、100枚分くらいは軽く発生するだろう。」
釈「計算上はですね。」

まゆ子「これをげばると処女にまで拡大すると、7巻13章、91コマにもなる。その他を入れたら100コマ600枚のれっきとした大作に。」
じゅえる「長編小説1巻分、か。ずいぶんなボリュームだな。」
釈「しかし、それは本来計画していた通りの分量ですね。げばると処女って1巻で最終巻までのエピソードクリアする予定だったんですよね。」
まゆ子「予定だったんです。」

釈「そりゃー、でも出来るんですか?」
まゆ子「しらん。やってみれば分かる。」
じゅえる「とりあえずゲキロボでやってみればいいさ。」

 

 

まゆ子「というわけで考えた。とりあえず色々やってみよう。長編シリーズものは当分おあずけだ。」
じゅえる「さすがに長編はデメリットも大きいからな。」
釈「というよりも、いつのまにか大長編になっていく自制心の無さが大問題なわけですよ。計画的にはどれも1巻で収まるはずなのに。」
まゆ子「まったくもってそのとおりだ。

 「宇宙人の力をもらった女子高生が忍者とかスパイとかと大暴れして宇宙戦争から人類を救う」
 こんなアホみたいなアイデアが大長編になるはずがないだろ普通。」
じゅえる「ふつう、ね。」

まゆ子「というわけで、一応はゲキロボげばおとの1コマラノベをなんとか進めていくとして、その他シリーズはぼちぼちと進めていく。
 それ以上は今年は無理だ。」
釈「なったって仕込みがありませんからね。設定を膨大な量作らなければなりません。」
じゅえる「ああ、そりゃまたくっちゃりぼろけっと大繁盛だな。」
まゆ子「そういうこった。今年中の主要な生産物はくっちゃりぼろけっと本編のみ、となる。
 後はだいたい落書きコーナーだな。小説の試作品がごろごろ出てくる事になる。」

釈「それで次回作の候補となるのは「彷徨える百合SEAーず」ですか。」
まゆ子「これは今現在実際に有るからな。捨て置くわけにもいかんだろ。7章を載っけたけど、実は8章までは構想が残ってる。これは書くよ。
 それ以外となるとー。」
じゅえる「抜質はどうするさ。」
まゆ子「あーそれも書きたいのさねえ。あれは世界観はいいからねえ。」
釈「げばおと流用ですから世界観はしっかりしてますからね。」

じゅえる「SF枠が「彷徨える百合SEAーず」、ファンタジー枠が「抜質」、」

まゆ子「いや「抜質」は題名変更して「罰市偵」になった。これはファンタジー枠ではなく推理小説枠だ。探偵物だからな。」
釈「推理小説って、探偵物が推理小説になると必ず決まったわけではありませんから。」
まゆ子「あーどちらかというと現代ヒーロー物枠だが、異世界現代ヒーロー物枠ってのはなかなか無いかな。」
釈「ラノベ界では、一見すると中世冒険ファンタジー物なのに、風俗とか習慣、物質的には現代と変わらないというのがありますが、それとはちょっと違いますね。」
まゆ子「違う。異世界の現代だ。おおむね1960年代の風俗になるが、2015年の現在から考えるともう50年前の時代劇だな。」
じゅえる「現代時代劇か。めんどうなカテゴリーだな。」

釈「SF枠が「百合SEAーず」、探偵ヒーロー枠が「罰市偵」、ファンタジー枠が、」
まゆ子「ファンタジー枠は二種類用意してる。19世紀終わりもしくは20世紀初頭程度の科学技術時代における魔法兵士の、アレタイトルなんだっけ? 蟲魔法が出てくるの。」

釈「「メイドぶち殺し事件」です。」

まゆ子「そうだった。「メイドぶち殺し事件」も、……しかしなんというタイトルだよ。タイトルだけで書かねばならんと思ってしまうな。」
じゅえる「いや、これは仮タイトルだから後で変更する予定だろ。」
まゆ子「「メイドぶち殺し事件&メイド蘇り事件」の2巻を考えている。」

釈「ファンタジー枠もうひとつは、「魔法女房リリカルポエマー」ですね。中世攻殻機動隊です。」
じゅえる「ああ、あれか。あれもファンタジー枠なんだ。」
まゆ子「蟲魔法よりもよほど科学的なんだけどな。でもファンタジーだし、最終的に勝つのは石斧だし。」
釈「どちらにします?」
まゆ子「どちらも設定面での在庫がほとんど無い! ここを何とかしないことには始めようがない。」

じゅえる「現代物枠は無いのか。」
まゆ子「ゲキロボ派生で、「厭勝仙士オーラシフター」だな。ただしこれもファンタジー枠と考えたほうがいいかもしれない。」
釈「なにしろ仙人ですからねえ。現代物と言い難いですね。」
まゆ子「不思議が無いという点においては、「罰市偵」の方がよほどシリアスなんだ。」
じゅえる「そうか、今度は宇宙人も神様も忍者も無い、ほんとうに現代的な話を作るつもりなんだな。」
まゆ子「そうだなー、今度はこれをちょっと考えてみたい。次のくっちゃりの議題としよう。」

 

釈「他にはありませんか。時代劇は無いですね。」
じゅえる「いやいや、ファンタジー物はどちらも時代劇だろ。」
釈「あー、異世界の古い時代という考え方だとそうなります。」
まゆ子「日本の時代劇なんてできないよ、……、あ。」
じゅえる「なんだい?」
まゆ子「外記前史があった。物辺神社由来の物語だ。」
釈「ああ、それは前に聞きましたね。書きますか?」

まゆ子「保留だな。そもそもが直にその時代を書いてもおもしろくはならないだろう。現代2008年の連中を動員しないとな。」
じゅえる「現代人から見て、昔の事件を振り返るって構成か。」
まゆ子「これは2つのエピソードが絡み合ってるんだ。西暦1000年頃のゲキロボが物辺島に落っこちた時の話と、1600年頃の碓氷某がゲキの力で反乱を起こした時の顛末と。」
釈「2つの時代を、現代の視点も合せて3つの時代をミックスして語られる物辺神社の真実。て感じですね。」
じゅえる「それはそれで面白いな。それは不思議無しでできないのか?」
まゆ子「だって、ゲキロボだし。」

じゅえる「いや、現代の物辺優子達は不思議を知らないという形で、現代物として語るのもアリだろ。」
まゆ子「ふうーむ。出来ない事は無いだろうが、さすがに平安時代の話はゲキロボに乗って大活躍、だからなあ。」
釈「猟奇時代劇という分野はちゃんとありますよ。」
まゆ子「それも悪くはないけどなあ。」
じゅえる「そもそも平安時代の風俗なんて書けるのか。まゆちゃんよ。」
まゆ子「要らないいらない。そんなの考慮する必要全くない。なにせラノベだから。」
釈「ラノベ界においては、平安時代の風俗なんてまるっきり無視していいことになってるんです。おおむね「ざ・ちぇんじ」の頃からですね。」
まゆ子「あれはラノベでなくてコバルト文庫だけどね。氷室冴子さんだよお亡くなりになられましたよ。」

じゅえる「つまり、平安コスプレで現代人が普通に現代ぽく活動すればいいだけってことか。」
釈「しかり」
まゆ子「しかりしかり。」
じゅえる「なら何の問題も無いな。普通に書けるぞというか、楽すぎて困ってしまうな。」
まゆ子「むしろ、江戸時代初期の碓氷某反乱事件の方が難しいのだ。こちらはまさに武士がそのメンツを掛けて戦うって話だから。」
じゅえる「無理か?」
まゆ子「無理だよ。だから書いてみたい。」
じゅえる「おまえはそういうやつだ。」

釈「でもこれ純粋な現代物じゃないですし、純粋な時代劇でもないですからね。」
じゅえる「純粋な時代劇は放棄してもいいだろう。問題は純粋な現代劇だ。」
まゆ子「どうしたものかな。不思議を突っ込めばいくらでも考えつくが、不思議無しが書きたいのだが考えつかん。」

 

じゅえる「現代劇と言ってもだ、何を主題とするかを決めなければ話にならんぞ進められない。何が書きたい。」
まゆ子「基本的には恋愛。恋愛モノは一度なんとかしなければならんよ。」

釈「ゲキロボをスピンオフさせて、物辺神社に下男になるて話はどうなりましたか。」
まゆ子「あれ、ファンタジー枠じゃね?」
釈「そうですか。不思議抜けませんか。」
まゆ子「だってゲキロボの派生だし、主人公である少年がそもそものファンタジー枠の人間だし。」

じゅえる「抜け。」
まゆ子「ファンタジー不思議設定を全部抜きで? えーそれはーどうだろう。」
釈「それはー、どうなるんですか?」
まゆ子「どちらかというと、ラノベというよりは恋愛小説のなんかわけわからん時空に突入するぞ。」
じゅえる「ホモは許す。」
まゆ子「いやいやいや。」

釈「そこは優子さんがヒロインということで。あーでも、お終いの見えないお話になりますかねえ。キリが無い。」
じゅえる「ゴールが無いのは現代物の特徴ではあるが、困るな。」

まゆ子「最初から終わりを設定しておいて、それに向けて最初から積み上げていくという方法を取ればいいんだけどさ。
 この場合どうするかな。不思議を全部抜くとすれば、人生におけるゴールと言えば、」
じゅえる「死ぬ。」
まゆ子「優子が死ぬ、うんまあ、それでもいい。」

釈「それは困るでしょう。せめて人類が滅びるくらいで。」
じゅえる「物辺神社が借金のかたで潰れるとか?」
まゆ子「それもばかばかしいなあ。もっとさり気ない終わりの形って無いものかな。」
釈「卒業とか結婚とか、おおむねゴールと呼べるものはありますが、優子さんには関係ないでしょう。」

じゅえる「そもそもが優子がヒロインてのが間違いなのだ。」
釈「最低一つは不思議を投入しないことには、この設定ではお話が作れません!」
まゆ子「うーん、ゲキのへのこでは無理か。」
じゅえる「ここんところは伝奇物風のアイテムでなんとかならんだろうか。」
釈「ゲキのへのこは十分に伝奇物アイテムです。」
まゆ子「そうだよなあ、あれ使うと鬼に成れるしな。」

 

釈「ちょっと考えました。けっこんしましょう。」
じゅえる「誰が?」
釈「物辺優子さんです。高校生で17歳、いや11月までは16歳ですけど法的に結婚は可能です。」

まゆ子「で、誰と?」
釈「鳶郎さんです。」
まゆ子「お?」
じゅえる「お?」

釈「つまりですね、その下男になる少年は優子さんが近いうちに結婚すると知っていながら恋に落ちるのです。」
じゅえる「なるほど、タイムリミット制だな。恋のタイムリミットは結婚式までって。」
まゆ子「悪くはないが、さすがに鳶郎はどうかと。」
釈「いいんでないですか。鳶郎さんのご友人ということで山本翻助さんも出演できます。」
まゆ子「ふむ。悪くない。」

釈「でもですね、結婚するのはもちろん祝子さんなのです。どういう理屈かは後で考えますが、少年は誰かに騙されて優子さんが結婚するものとばかり覚えてしまうんです。」
じゅえる「あはは、それがオチなわけだな。」
まゆ子「ふむふむ。もう一捻り欲しいところだが、その線でいけば猟奇アイテムを突っ込んでもあくまでも現代物路線で押し通せる。いけるな。」
じゅえる「それは採用に値する。だがー、誰がだます事にしようか。双子とか?」
釈「そうですねえ。優子さん本人でもいいんですけどね。」

まゆ子「そこはちょっと妙なトリックを使うとして、どうしたものかな。やはり結婚式の最中に少年が飛び込んでくるというベタなオチで、実は花嫁が優子じゃないと知ってびっくり! かな?」
じゅえる「ちょっとおもしろみに欠けるな。そこは猟奇アイテムをめぐる事件の解決と同時に誤解が解けるという算段で。」
釈「順当な展開ですね。それで行きましょう。」
まゆ子「いやいや、むしろ本当に優子が結婚してしまう、でいいんじゃないか?
 でも本当に結婚する人は祝子であるのだが、バカだから結婚式当日にどこか捕まって式そのものに出られなくなって、来賓を帰すわけにもいかないから代理花嫁として優子本人が替え玉でほんとうに。」
じゅえる「ふむふむ。」
釈「なるほど。その方がやっぱり面白いですね。なんでやねん、てのが欲しいですからね。」

まゆ子「だいたいがして、祝子さんは30女のくせしてちょっと見には女子高生に見えるほど若いからな。替え玉として優子が使われてもまるでおかしくないんだな。」
じゅえる「まあ物辺神社的にはどっちでもいいような気もするからな。」

まゆ子「構造的にはそれで了承するとして、敵が欲しい。」
釈「まあ猟奇アイテムを投入するのであれば、通常の手順ですね。」
じゅえる「忍者禁止。」
まゆ子「おう。」
釈「そうですね、鳶郎さんの身分は最後の最後まで明かさない方がいいかんじですね。」
まゆ子「とは言うものの、いざという時は強いところを見せてもらいたい。忍者の棟梁設定は生きてることで。」
じゅえる「そうだな。結婚式後に忍者ってバレるくらいでいいな。」

釈「翻助さんは、」
まゆ子「あれは味方側の曲者という位置づけで。鳶郎さんが実質は動けないから代わりに行動する役だね。」
じゅえる「ふーん。じゃあ警察とか。」
まゆ子「警察、か。そうだな警察が家宅捜索するくらいでもいいかな。銃器を探しに来るとか。」
じゅえる「刀剣類は隠してあったんだな。まあ一応は手入れされるくらいで、権力の横暴という形でね。」

釈「そうですね。今回は敵はでかい方がいいです。国家権力は○です。」
まゆ子「じゃあ警察とその上層部の何者かがゲキのへのこを狙っているということで。」
じゅえる「へのこ奪ってどうするのだ?」
釈「煎じて飲むと不老長寿とかで?」
じゅえる「やはり鬼の力がどうこう、だな。うんそうだな、最終的な決闘の場で少年が鬼化しかけるくらいの緊迫感は欲しい。」
まゆ子「ふむ。」
釈「ふむ。でもなっちゃいけませんよ今回は。」

じゅえる「じゃあ敵の黒幕は「鎌倉の老人」という。」
まゆ子「なんかで聞いたような気がするな。「鎌倉の老翁」てなとこで。」
釈「ということは、最終決戦の相手はオーラシフターですか。まあ、らしいですよね。」
じゅえる「怪しい力を使う少年少女。いいんでないかい恋愛物の敵役では。」

釈「でも、それじゃあ少年はぜったい勝てませんよ。どうやってケリを付けます。」
じゅえる「そこは鳶郎さんが、」
まゆ子「そこは喜味ちゃんが。」

じゅえる「喜味ちゃん、アリ?」
まゆ子「喜味ちゃんは眼鏡掛けてますが、オーラシフターの攻撃を回避する為に少年がゲキのへのこを使い鬼化しようとするのを、眼鏡外した威力で無効化。
 ついでにオーラシフターも崩壊です。」

釈「はあ。それアリですか。」
まゆ子「いや、たまちゃんは最初から居る予定だからな。中学生たまちゃんは最初から児玉家にホームステイだ。ちなみに少年も物辺家にホームステイという名の下働きだよ。」
釈「いいんですかね?」
じゅえる「むしろマジになったらダメだろ。これはあくまでもゲキロボだ。」
釈「ですよねー、最後はぶっちゃけ馬鹿話で終了が正しいですよね−。」

 

 

2015/06/10

まゆ子「というわけで、「彷徨える百合SEAーず」を前回の提案に従って書き直してみた。第一話だけ。」

じゅえる「ふむ。」
釈「ふむ。」
じゅえる「正直に言っていいか? 描写不足だ。」
釈「そうですね、これじゃあミレイさんがどんな人かまるっきり分かりませんよ。」

まゆ子「そりゃそうさ。切って切って切りまくりだ。」
じゅえる「そりゃ分かるんだけどさ、筋だけを追っているだけで肝心のキャラ描写がまるで欠けているからな。」
釈「あー、確かによく切ったとは思いますが。それに、オーダーどおりの形式に出来てますね。」

まゆ子「1ページ小説400字詰6枚程度で、4章で1話+SF設定1章計30枚程度に収める。これでいいんでしょ。」
じゅえる「うん、まったくオーダーどおりだ。」
釈「だからと言って面白いかと言われると、面白さの部分は切り落とされてますからね。」
まゆ子「そりゃそうさ。キャラクターの魅力で見せる物語からキャラクターを切ればこんなもんだ。
 更に言うと、SFは設定の説明こそ命。一般人は読まなくてもSF者は設定を喜んで読むのだ。これを切られたら読む所無い。」
じゅえる「それで、ストーリーラインだけを抜き出して書いてるのが、コレか。」

釈「よく出来てはいるんですけど、まあむしろ第五章のSF設定の方が面白いんですよね。
 なんですかこの、宇宙人にホームセンターで売られるというのは。」

じゅえる「それで、これはこのままこうやって続くのか?」
まゆ子「どうしよう。私もこれがあんまり面白くない事は理解するのだ。これをこのまま続けてもダメだろう。」
じゅえる「ということはだ、以下のエピソードも同様に無理というわけだな。」
釈「そうですね、少なくともキャラの描写を復活しないことにはお客様が読んでも面白くありませんから。」

じゅえる「キャラ描写を中心に4コマでまとめられるか?」
まゆ子「あー、難しいけどやってみますか。次の課題は第一話でキャラ描写中心にする、てことでいいかな?」
釈「そうですね、可能であればの話ですが。」
まゆ子「不可能とは思わないな。私切って切って切りまくるの大得意だし。昔新聞部に居た頃から、切って切って切りまくってますよ。」

じゅえる「そうなんだな。どちらかというと長く書く方が不得意でさ。」
まゆ子「そうなんだよ。『ウエンディズ』の時分は短く簡潔に書くのは出来ても、長く細部を描写するのが苦手で、結果として30枚で収まってたてなものなんだ。
 今は描写力の向上のおかげでなんぼでも長く書けるようになったけど、必然的に長過ぎるようになった。」

じゅえる「キャラクター描写の分量を多くするとして、じゃあストーリーラインの描写が短くなるな、バーターで。」
まゆ子「だろうね。」
じゅえる「どのくらい短く出来る?」
まゆ子「さあ。」

釈「あんまり短くすると、星新一みたいになってしまいますよ。」
まゆ子「あー、昔よく読んだなあ。あれ原稿用紙2、3枚なんだっけ。」
じゅえる「幾らなんでもそりゃ短過ぎるだろ。」
釈「そうでもありませんよ。新聞連載小説はだいたい2枚のはずです。」
まゆ子「13文字20行、だっけ。400字詰1枚も無いぞ。」

じゅえる「1ページ小説よりも短いのか。まあそんな展開も無いからな。」
釈「でぽでぽで書いてる1ページ小説はあれでも一応は起承転結ありますから。」
まゆ子「「ゲキロボ☆彡」は1章だけ読んでも小説的である事を念頭に書いてます。通常は。
 逆に言うと、前後の連携があまり綺麗でないところもある。1章ごとに視点や主人公が代わったり。」
釈「5人の主人公に均等に見せ場を与える為にそういう形態を用いてるんですよ。」

じゅえる「しかし星新一はそれで1話作ってるんだ。まゆ子もやってみろ。」
まゆ子「ああ、うん。でも『百合SEAーず』だよね?」
釈「一話をまとめてみればいいんじゃないですか。ちょうどあらすじみたいな感じで。」

まゆ子「ふむ。やってみる……。

 やってみた。1コマラノベだ。」

じゅえる「ふむふむ?          こっちの方が面白い……。」
釈「S氏万歳だ!」

 

     ***

まゆ子「ちょっと面白かったから、『ゲキロボ☆彡』第十二巻「世界があらかた終わった日」を1コマラノベにしてみたよ。」
じゅえる「いや、あれ、640枚も有るし。」
釈「あらすじ、ってことですか。」
まゆ子「まあ、出来たものを読めば分かる。」

 

【世界があらかた終わった日】

 鳩保芳子の憧れの人、初恋と呼んでも差し支えないあれほど恋い焦がれたのは始めてだ、が物辺島に1年半ぶりに訪ねてきた。

「芳子ちゃん、元気そうだね」
「香背男さん……」

 だが彼はある恐るべき陰謀に加担していた。
 人類は狙われている。
 何故彼がその情報を知り得たのか。実は物辺優子の母親が一枚噛んでいた。
 母物辺贄子はアメリカに密かに秘密結社を作り、人類を破滅から免れさせる「方舟計画」を遂行中であった。

 香背男は彼女の意を受けて、優子や芳子を地下深くに設置されている宇宙人のシェルターに避難させる為に日本に来た。
 しかし彼は、物辺村5人の少女が古代宇宙人ゲキの力を借りて地球を防衛出来るとまでは知らない。

 急遽「スーパーヒロイン会議」を開いた5人はそれぞれに分かれて防衛行動を開始する。
 敵はカニ星人。地球を遥か7000光年、蟹星雲を破壊して資源を搾取する悪の宇宙人。
 今回は太陽系をその標的とする。

 ゲキの技術面を受け継ぐ児玉喜味子は、彼我の戦力差を分析して、

「ダメだねこりゃ。負けちゃうよ」
「なんとかならないの、喜味ちゃん?」
「うーん、とにかく世界中の国家政府機関の協力がないと、宇宙空間で起きる大災害を地上の人が目撃しちゃうよ」

 もしも宇宙戦争の姿を目の当たりにすれば、人は皆宇宙人の存在を察知して大きく動揺する。
 宇宙人の実態を隠蔽する事で権力を得てきた世界のVIP達も、支配の根拠を失ってしまう。
 だが物辺優子は唱える。いざとなったら全部うっちゃってしまえばいいのだ。

「とにかく勝てば官軍。カニ星人をぶち殺さねば明日はない」

 少女達はゲキの力を用いて無人誘導ミサイルを1万基作った。これ以上は自分達には運用できない。
 だがカニ星人の宇宙艦隊は1万5千隻。数ではどうしても敵わない。
 やむなく、全宇宙人が忌避する最終手段を用いる事とする。

 カニ星人の攻撃。光速の百倍を越える巨大ミサイルが多数襲来。
 1万基のミサイルをフル活用しても防ぎきれない。
 だがその時、香背男が連れてきた宇宙人サルボロイドが自らを盾として地球への攻撃を無効化する。

 優子は叫ぶ。

「喜味子!」
「すいっちおん」

 瞬時に静寂を取り戻す太陽系宇宙。
 カニ星人艦隊はすべての艦船ミサイルも一瞬の内に全機能を喪失した。
 鳩保、その恐るべき威力に戦慄する。
 これが、宇宙最強宇宙人ぴるまるれれこの力か。
 すべての宇宙人が身を潜め、見つからないようにするはずだ。

「つまりはハッキングをしたんだ。雉も鳴かずば撃たれまいてやつだね」

 地球は救われた。しかし天空で繰り広げられたハルマゲドンの光景に世界中の人は慄き正気を失い、各地で戦乱が起きる。
 人類の精神ではこの現実に耐えきらなかったのだ。
 かくなる上は、歴史を改変して無かったことにするしかない。
 その代償はあまりにも大きい。物辺村ゲキの少女達5人がこの時空から消滅する。

「でもしかたないね。地球が滅びるよりはマシだし」
「さようなら、みんな」

 全員納得で、ゲキロボットの最終安全スイッチを5人手を合せて押した。

 そして10月。物辺村の少女5人は修学旅行で北海道にやって来た。
 確かに彼女達は消滅した。ゲキの力を授かった少女は、最初から居なかった事になる。
 居ないのだから、消える人間も居ない。単に力を授からなかった5人が普通に生活をしていただけだ。

 それでも彼女達には記憶が有る。これから始まるめくるめく冒険の日の記憶が。(FIN.)

 

釈「あらすじですね。」
じゅえる「しかも所々正確でないところが有る。」
まゆ子「ダメかい?」
釈「ダメと言うよりはー、なんですか。」
じゅえる「なんか凄いペテンな気がする。」

まゆ子「そうか、やはり鳩保芳子はH嬢にしなくちゃいけなかったんだな。」

 

2015/06/03

まゆ子「というわけで『ゲキロボ☆彡』、2015年6月1日で完結です!」

釈「わーわー」
じゅえる「ぱちぱち。長かったなー。」
まゆ子「まあ2007年くらいから活動を始めて、でも2011年「げばると処女」終了後からほぼこれ一本で頑張ってきました。」

釈「しかし、まあ、なんといいますか、第12巻「世界があらかた終わった日」、なんですかこの長さ。」
じゅえる「あー、100章あるからな。」
まゆ子「てへ。」
じゅえる「通常50章を1巻として分割してるのに、100章だからな。2巻分だ。」
まゆ子「てへ。どうりで予定の4ヶ月で終わらないはずだ。」

釈「あー400字詰原稿用紙換算だと640枚、199000字ですからね。この巻だけで立派な長編小説です。」
まゆ子「いや、書いてる分にはエピソード一つしか書いてないから、短編小説なんですけど。」
じゅえる「おまえさんの頭の中では「ゲキロボ☆彡」全体が短編小説だろ。」
まゆ子「うん。」
釈「困った人ですねえ。」

まゆ子「要するに、書いても書いても終わらない不思議な短編小説だったんだな。何故だろう。」
じゅえる「何故もなにも、エピソード切らないからだ。」
まゆ子「切ったら鳩保達をちゃんと描写できないじゃないか。」

釈「ここですね、問題点は。」
じゅえる「うん、短い描写でキャラを立てる。そういう課題が新たに発生したわけだ。」
まゆ子「次やる時は、ちゃんと短編で終わる短編にしよう。」
釈「おー。」

 

じゅえる「ところでさ、少し疑問が有るんだけど。 
 ぴるまるれれこさんがカニ星人文明を侵蝕した時、10万光速以上のとんでもない速度で行ったけど、あれカニ星人文明の通信手段を超えてるよね?
 既存の機器を利用したんじゃないの?」
釈「なるほど、ちょっと変な気がしますね。どうなんですか?」

まゆ子「ま、ぴるまる細胞を形成すればなんでも出来るよ。てのは置いといて。

 あくまでもこれは『ゲキロボ☆彡』ローカル設定ですが、一応超光速通信について説明しておかないといけないかな。

 えーと設定上カニ星人の超光速通信手段は1万Cです。宇宙艦隊よりも遅い。
 しかし他の中流宇宙人と比べた場合、この速度はかなり早い。おおむねその宇宙人の宇宙船移動速度が通信の速度となるのが一般的です。
 なんとなれば、宇宙船そのものが通信伝搬手段でもあるからです。
 郵便とはいいませんが、通信文を最寄りの中継ステーションまで届ける役を宇宙船は果たしています。」

釈「つまり、宇宙には超光速電波みたいなものは無いわけですね?」
まゆ子「有るといえば有るし無いといえば無い。カニ星人で言えば宇宙戦艦が通った超空間の経路を利用して通信波を通してますから、船が行かないところには通じない。」

じゅえる「電線方式か。なるほど、それなら仕方ないな。」
まゆ子「ついでに言えば、電線の中に通信波を通しても、船が行き来してないと凄い速度では動きません。
 超空間利用の通信はだいたいそんなものですが、超超光速を出す手段を用いている存在に巻き込まれる形で移動をしています。」
釈「電波ではなく、海の波みたいなものなんですね。」
じゅえる「船の航跡の波に引っ張られるように進んでいくわけだ。」

まゆ子「ただ、近距離であればもうちょっと早くはなります。超光速ミサイルにワープエネルギーを供給した時みたいに、過去に向けて通信波を送ればいいのです。
 ま、数光年が限度ですが。」
じゅえる「それは船は関係無いのか。」
まゆ子「有るといえば有る無いといえば無い。つまり通信波は船が無い時は届かないわけですが、過去に通った船に巻き込んでもらう事で超々光速で移動できるわけです。
 ま、そうすると過去に未来の情報が届いてしまう矛盾を引き起こすわけですが、そこは暗号化によって無難に処理してます。」
釈「じゃあめちゃくちゃ早く到着する事もある、ってことですか。」
まゆ子「うんまあ、通信発信時よりも前には届かないようにはするけどね。それに過去と言ってもそんなに遠くの過去には届かないから、せいぜい数日程度の話だよ。」
じゅえる「じゃあその方式では10万光速は無理か。」
まゆ子「うん。」

釈「艦隊移動速度1万5千Cよりも、通信波が遅れるのはなんでですか。」
まゆ子「カニ星人の宇宙船の標準移動速度は1万Cです。これは進歩した中流宇宙人の上限値ですから普通です。
 ただ連中は1千隻以上の艦隊で群として移動する時にワープエンジンを同調させて空間になんらかの処理をしています。
 それで標準の1.5倍速を出しており、大威張りです。俺達は中流宇宙人の枠を超えたぞ、と。

 通信波は標準速で移動するのが普通ですから、普通です。」
じゅえる「じゃあ艦隊基準で通信波を送れば、1万5千Cはあり得るんだな?」
まゆ子「ま、軍用通信はね。」

じゅえる「じゃあ侵蝕時の10万光速以上ってのはぴるまるれれこの仕業なんだ。」
まゆ子「ぴるまるれれこが記憶する科学技術の中には、つまりかって同化した高度な宇宙人技術を知ってますから、カニ星人文明を同化した際にそれを適用しています。
 10万光速というのは中流宇宙人ではなく高等宇宙人レベルですから、要するに高等宇宙人でもぴるまるれれこに殺られるというわけですよ。」

じゅえる「美々世達びびるはずだな。」

 

まゆ子「それで前回の話に戻る。『ゲキロボ☆彡』を読者が書きたいSFにするという話だ。
 だがよくよく考えてみると、ゲキロボは萌え4コマ漫画ののたーっとしたサザエさん時空で展開するというものだ。でぽでぽHPトップでも宣言してる。
 であるから、描くべきは読者の書きたい萌え四コマでなければならなかった。」

じゅえる「エピソード多過ぎだ。」
釈「そうですねえ、めくるめくイベントの嵐ってのは萌え四コマの有り様を根本から否定するものですね。」
まゆ子「しっぱいした!」
じゅえる「そうだな。もっと何も無い日常を描くべきなんだ。」

釈「そうですか。つまりは鳩保さん達はのほほんと何事もない日常を送るべきなのを、執筆のまゆちゃん先輩がトチ狂ってSFにしちゃった……。」
まゆ子「てへ。」
じゅえる「なるほど、それはおまえが悪い。しすべし。」
まゆ子「てへ。」

まゆ子「まあ今更『ゲキロボ☆彡』に手を加えるのはばかばかしいから、落書きコーナーで頓挫している『彷徨える百合SEAーず』を萌え四コマ化してみよう。」
釈「あ! よく見るとこいつも半分SF化してやがる。」
じゅえる「全面改稿が必要だな。SF要素を極力排除して萌え四コマ化しなくてはならん。
 というか、どうせめんどくさいSF設定は必要なのだ。思う存分解説コーナーを作ってやれ。本編はのほほんとメルヘンチックなファンタジーで。」
釈「了解しました。なんだかわからない原理で動いてる宇宙船で主人公が宇宙を飛び回る。そういうことにして、「おねえさんの解説コーナー」で徹底的にSF要素を隔離しましょう。」
まゆ子「うう、それはなんというか、物凄く姑息な。」
じゅえる「いいんだよ、楽しければ。」

 

まゆ子「ま、まあそれはいいさ。でも今ちょっと読み直してみたらなんか読み難いぞ。」
釈「慣れですよ。1ページ小説の形態に慣れ過ぎたんですね。」
まゆ子「そうか? ほんとにそれだけか?」

じゅえる「ふーむ、じゃあこうしよう。百合SEAーずは1話4章で。1ページ小説4枚縛りで書いていくという形態にしよう。」
釈「あんまり違いは無いようにも思えますが、」
じゅえる「ゲキロボで慣れ過ぎたんだとは思うが、つらつら書いてると読み難いのも確かだしな。
 間を取ってひとまとまりでこの程度、てのはいいんじゃないかな。」

釈「そうですね、1エピソード4枚、1ページ原稿用紙6,7枚と考えると28枚おおむね30枚程度という最初期の形態に戻れますからね。」
じゅえる「しかも百合SEAーずの当初計画では8回で終了ってことになってる。240枚あれば、」

まゆ子「いや10回は欲しい。40章で300枚程度ってことで。」
釈「そうですねえ、1巻300枚は欲しいとこですからねえ。」
じゅえる「そうか。じゃあ10話50章の区切りで1章つまり1ページ6枚という勘定で。」
まゆ子「6枚か、かなり短いな。」
釈「今回は短くするのが課題ですからね。」

じゅえる「そうだ、物語4章 SF説明1章で構成しよう。それなら文句あるまいさ。」
まゆ子「えー少ないー、せめて2章で。」
釈「却下。」
じゅえる「ということさ。」

 

 

2015/06/01

釈「シリーズ長編小説『ゲキロボ☆彡』第十二巻最終巻「世界があらかた終わった日」最終回最終章、完成です!

 ということで、没原稿が出ています。本来であれば織り込むところを、流れを良くするために泣く泣く切った話ですね。」

 

  ****

(これはPHASE 689最終回最終章最後の一文の次に来るべき文章)

「こんなこともあろうかと!」

 喜味子は門代高校科学部前女子部長 八段まゆ子先輩からエレクトリック・ガンを授かっていた。
 超強力スタンガンで、主に北海道のヒグマに襲われた時を想定する。
 EMP効果で電気部品を灼き切る事も可能。

 

  ****

(前回更新「世界があらかた終わった日編」PHASE 675の次に来るはずだった文章  優子がNINJAカーなんかに乗るから無くなった)

 縁毒戸美々世の呼び出しで指定の会合場所に赴くのに、優子は徒歩を選択した。
 車両を使うのが筋であろうが、物辺村前の道路は現在封鎖中。
 外記の霊力に縋ろう押し寄せた人で通行不能状態である。

 その張本人、物辺の巫女には苦情の一つも言わずばなるまい。

「ちょいとおばちゃん、祝子おばちゃん。」
「おう優子、ごくろうさん今帰ったか。」

 この会話を果たすまでに優に10分が経過する。とにかく近付けないのだ。
 優子も白黒モノトーンのワンピースでなく、緋の袴であるべきだった。神社関係者であればすんなりと神輿への道が開けたはず。
 群がる群衆は見境を無くし、ひたすらに外記の鬼を求めんとする。前後左右に配慮が無い。
 混乱を制するのはただ拳骨のみ。若い衆が物辺の巫女を守る肉の壁となる。

 警備の連中も、さすがに優子の容姿を見れば物辺の関係者だと分かる。
 普段は世間様から爪弾きにされてる連中だろうが、よくもまあ手懐けた。
 鬼の力はダークサイド面を持つ者に特によく効くわけだ。

 しかしながら、と中型トラック上を舞台として群衆に手を振る祝子を見る。
 卑弥呼だの楊貴妃だのと形容してみたが、ひょっとしたらスターウォーズの網棚女王だろうか。
 なんだこの花魁みたいな髪型。

「うん? 変か。」
「いや、もうちょっと古式ゆかしいのをおばちゃん好きかと思ってた。」
「髪を結うのはれっきとした古式だろうさ。別に伝統に反しちゃいない。」

 うんうん、と周囲の女共もうなずく。
 どこのキャバクラから拉致してきたのか、揃いも揃って髪を盛ってやがる。まるでチョコパフェだ。
 綺麗どころと乱暴者と女王様、どう見ても悪の軍団。そりゃ周囲を警官隊も取り囲むさ。
 さらに詰めかける崇拝者の列。人の波。

「おばちゃん、ちょっと煽り過ぎではないか。」
「集団発狂状態と言えなくもないが、秩序が無いでもないからな。昭和以前の祭りはこんなもんだ、古法に倣うまでさ。」
「もう。」

 呆れたものだ。
 まさか知性派を自認する祝子が戦後すぐの鉄火場状態の物辺神社に憧憬を抱いていたとは。
 だが思い当たるフシが無いわけでもない。
 幼い頃に母咎津美を失ったおばちゃんは父親っ子である。高度成長期に婿入りした彼は、当時の賑いを子守唄代わりに教えてくれた。
 祝子が自らの血肉となった昔話に基づき神社復興を志しても突飛とは言えまい。
 いやいやむしろ金の亡者の饗子おばちゃんが、そもそもが長女の贄子がやらねばならない事業ではなかろうか。

「おう師匠おかえりー」「おかえりーごくろうさん」「まずまずでござんすよ」「もうちょっと派手でも良かったね」

 でかい口を叩くのは美彌華&瑠魅花。小学生の分際でありながら兄ちゃん姉ちゃんを侍らせて無礼三昧。
 なぜかケバい姉ちゃん達からも大人気で、菊人形のようにごてごてと飾り付けられて身動きでない。
 アイス持ってこいコーラを持ってこいと、人をアゴでこき使うサマは物辺の女の成れの果てである。

 だが優子になめた台詞吐いたのは運の尽き。

「ぎゃああああああ」「うぎゃあああああししょおごめんなさいい」「あたくしどもが間違っておりましたあああああ」「誰かたすけてえええ」
「おばちゃん、子供の躾は一時でも忘れてはいけないぞ。」
「すまん優子、ちょっと手伝わせて上手くやってたから目を離した。後で念入りに根性を叩き直しておこう。」

 双子とて物辺の血を引く者、人に与える影響力は凄まじい。
 普段は小学生を隠れ蓑に能力を伏せているが、非常の際だ手加減やめたのだろう。
 効率優先でやりたい放題させた祝子も大人げがない。

 それでも、まあ、この惨状。たちまちに秩序と礼節が取り戻された。
 双子にかしずく若い衆も、まだ熱いアスファルトに跪き幼い王女の不始末を詫び命乞いをする。
 優子が神々の御一人だと完全に理解した。

 モーゼが海を割るが如くに、人が分かれて優子の為の道を作る。
 人々は手を差し出して、腕に、翻るスカートに触ろうとする。まるで力士の花道だ。
 地に身を投じ踏んでもらおうとするバカも居た。
 望み通りに踵に力を入れると、「ありがとうございます!」の悲鳴を上げる。

 最終的に、一人の中年男の前に立つ。
 群衆の終端、騒動にならないように整理規制を行う警察官だ。しかし腕章はしているが私服のワイシャツ。
 知ってる刑事だ。

「おひさしぶりです石室さんでしたか。組織犯罪対策課の。」
「物辺優子……さん。この間は、どうも。」

 狼男事件の顛末は、警察官として納得のいかない展開で終わった。
 しかし、その後起こる隣県での狼男出没事件。直接捜査には関与しなかったが情報は漏れ伝わっている。
 何故あの時最後まで詰めなかったのかと、内心臍を噛んでいた。
 それ以上に、この数ヶ月門代地区で起きた怪奇現象の震源を優子に求める彼である。

 のだが……。

 優子は天を指さした。

「石室さん、これあたしの仕業です。」
「バカを言うな。」

 幾らなんでも世界規模の天変地異、最後の審判までもを優子のせいには出来ない。
 だがそうであればどれだけ心が安らぐことか。何か一つでも合理的な理由が欲しい、世界中全ての人間が今求めるモノだ。

「あ、行っていいですか。」
「ああ。」

 

  ****

PHASE 675の続き。優子が物辺村を歩いて外に出るとこうなるはずだった。これは最終回構想のかなり初期段階から組み込まれていたエピソードだけに、残念)

 茜の空に白い筋を引く高速物体があった。速い、戦闘機よりまだなお速い。
 アイアンフィストだ。喜味子が作った秘密兵器が門代の空をすり抜ける。であれば、操縦者はCaptain FISHMEATか。
 天空より落ちてくるカニ星人の異物を排除するのだろう。

 なにしろモノが多過ぎた。
 既に自律的に行動する知能兵器は完全駆逐したが、残骸すべてを蒸発させたわけではない。
 デブリとなり地球重力に引かれて落ちるものも多数。中には高エネルギーを未だ宿すコンデンサーの類や反物質弾頭の欠片も残っている。
 サルボロイドの盾は排除したから、地球人自らの手でゴミ掃除をせねばならない。
 喜味子が全世界に提供した『週間わたしのゲキロボ・ミニ』シリーズが、値段相応の機能を発揮しているのだ。

 

 1個百億円かあ、と呆れて眺めていると知り合いに出会した。
 偶然ではないのだろう。優子を探し、求め、必死に会う機会を作ろうとした。生憎と宇宙の彼方に居たから見つからなかったわけで。

「あ、先輩こんにちわ。」

 夕方だからもうこんばんわと言うべきか。マヌケな事を考えるが、相手は切羽詰まって漫才に付き合ってくれそうに無い。

 九泊加留。
 優子の敬愛してやまない演劇部前部長 馬渕歩の彼女だ。

「物辺さん       。」

 この様子だと、たぶん自分の勘は当たりだ。前々からそうではないかと思っていたが、まあそういう事だろう。

「せんぱい、なんですか。」
「物辺さん、この、今の世界の混乱、」
「はい。」
「貴方ならなんとか出来るわよね。そうよね!」

 ああ。悪い予感というものは外れた例が無い。
 改めて九泊を見る。
 美人であるが押し付ける強引さではない、控えめな、和風の飾り気のない質素な感触。知性を感じるが今はそれがアダとなろう。
 世界の終わりに直面して自らの無力さを知るのは残酷な体験だ。
 もう少しバカならば自分の安全を図るだけで精一杯、反省する暇を作らない。

「あなたでしたか。いえ、たぶんそうではないかと思ってましたけどね。
 九泊せんぱい、あなたがあたしの監視者でしたか。」
「え、」

 門代高校にあらゆる方面からのスパイが入り込んでいるのは周知の事実。敵味方様子見勢力から宇宙人までも。
 美々世は別として、彼彼女達はゲキの少女に正体を隠しておかねばならない。
 それでも有益な情報を収集する為であれば、接触して密接な人間関係を作る必要が。

 優子にはもうひとつ懸念がある。

「馬淵せんぱいも?」
「え、いえ、いえ! 違うわ。彼は関係ない。」
「じゃああなたは、あたしに接近するためにせんぱいに近付いた?」
「それも違う……。」

 ほとんど泣き出しそうな顔で美人が台無しだ。
 加留せんぱいはいつも笑顔を絶やさず、常に第三者的立場にあって余裕を持って優子達に接してきた。
 こんな状況ではあるが、いつもと同じであって欲しかった。
 でも泣かないところが強さだろうか、諜報員としての訓練の成果だろうか。

「優子さん誤解しないで、彼と付き合う事になったのは決して不純な目的があったからじゃないの。そうじゃなくて、」
「では何です。」

「   彼とわたしはいつも、おなじものを見ていたの。ふたり共おなじものに注目していたから、自然と親しくなって、」

 十分だ。鬼の娘にそれ以上の好意は要らない。
 優子は初めて笑った。これまでも顔に笑みを貼り付けていたが、心が読めずにせんぱいを恐怖させていたのだろう。

「せんぱい知ってますか。物辺の巫女は好いた男とは決して添うてはならない掟があるんですよ。」
「   なぜ。」
「食い殺すから。どんなに強い男でも、鬼の性が男の人生を食い散らかして確実に破滅に追い込むから。
 だから歴代の巫女は見も知らぬ男と娶され、好いた惚れたは無しなんです。
 現にあたしの母さんだって、あたしを産んで父さんからすぐ逃げてます。壊してしまうのが怖かったから。」

「祝子さんと鳶郎さんは、」
「あの二人も見合いですよ。今はくっついてますが、NINJAだからいずれ一人で世界中を飛び回るでしょう。」
「…………。」

「だからせんぱいには感謝してるんです。あたしがせんぱいを壊してしまわないように防いでくれて。」
「ごめんなさい!」

 謝られる事ではないのだが、と優子は少し当惑する。
 どうせ上から仕事を押し付けられたんだろうし、任務に忠実なだけだ。恨む筋合いは無いし、だいいち悪い印象も持ってはいない。
 だから、天を指さした。
 もう暮れる紫の空を。

「なんとかしますよ、あたし鬼ですから。」

 

「お迎えにあがりました。」

 黒いジャージを着た二人の男がボックスバンを留めて優子の前に整列した。
 東京に行く時に使ったNINJAカーだ。であれば、

「鳶郎の配下?」
「はい。今は門代地区といえども安全は確保されていません。御用であれば我らがお供いたします。」
「じゃあ頼む。」

 

 

  ****

(PHASE 689内に入るはずだった物辺村の現在の状況の説明。人の営みは絶えず続いていく事を表現したかったのだが、仕方ない)

「それでみのりちゃん、なにか変わったこと無い?」
「うーん、それがねー……。」

 顔を曇らせるみのりに、4人の心臓が少し跳ねた。
 なに、本当に異変が有るの?
 どこだ物辺村か学校か、既にどこぞの諜報員でも暗躍してるのか

「おかあさんがね、」
「うん。」
「うちのおかあさんがね、どうも妊娠したみたいなんだ。」
「え!?」

 童みのりの両親は海の上にたらいで浮いていたみのりを拾い、引き取って育てる為に結婚したようなものだ。
 それから17年。高校二年生になるまで、ついぞ実子は出来なかった。
 とっくの昔に諦めていたのだが。

 優子は容赦なく推論する。

「ドバイ旅行の間だな。」
「あでも、この時間軸だとドバイ行きは無かったんじゃないかな。」
「みのり、おまえゲキの力が無かったら陸上部辞めてないだろ。」
「あ。そうか、そういうことになるよね優ちゃん。」
「夏合宿か大会遠征で村を出ていた期間に、そうなるように改竄されたのさ。」

 おー、と皆名探偵に惜しみない賞賛を送る。なるほど、そういう風に理屈をこねるんだ。
 しかしみのりは、

「でもね、おかあさん逆に心配しちゃってね、」
「そりゃ四十近くの高齢出産になるからね。たいへんだ。」
「そうじゃなくて、……わたしがどこか遠くに行っちゃう予感がするとか、そんなしんぱいを。」

 さすがに母というべきか。これから展開する未来図が直感で分かってしまうのだ。
 一般普通人の勘も決して侮ってはならない。

 でもね、と花憐がなだめる。

「でもみのりちゃん。わたし達来年、いえ再来年の春には卒業よ。物辺村にいつまでも居る方がむしろおかしいわ。」
「そうか、そうだね。大学に行くとか、花憐ちゃんは留学するの?」
「どうかな、ぽぽーの方が先じゃないかしら。」
「その可能性も低くはないな。少なくとも誰かは外国に住む事になるだろう。」

 海外かあ。優子はすこし想像する。
 誰も知らない何も分からない土地で、鬼の力を制限なし手加減無用で揮ってみる。
 悪くはないなあ。

 とはいうものの、祝子おばちゃんが既に正式に物辺神社を継承したが、
 それでも巫女として 島を守る責務は果たすつもりだ。

「みのり、物辺村にまた子供が増えるんだ。いいことじゃないか。」
「うん。」
「祝子おばちゃんだってそろそろ妊娠するはずだ。おまえの母ちゃんもぜんぜん寂しくないぞ。」
「そうだね。きっとそうだね。」

 

 

  ****************************** 

(PHASE 683 ぴるまるれれこによるカニ星人文明侵蝕の際に、喜味子がみのりにカニ星人が高等宇宙人になるために何をしていたかの説明。蛇足)

「つまりね、ゴム風船が亜空間なのさ。風船膨らませて中に模型の家とか作る。」
「ふんふん。」
「でぷーっと大きく膨らませて、風船を裏返して表と裏を入れ替える。
 風船の表は外の世界の宇宙であるから、裏返ったら宇宙は風船の中。
 一方風船の中に有った模型の家が外に出て、宇宙全体になる。」

「いや喜味ちゃんそれ違う。模型の家が外の世界に出ただけでしょ。」
「だから、外の世界全体が風船の中に封じられちゃったんだよ。で、外に出た模型の世界が宇宙全体に入れ替わる。」
「変だよそれ。間違ってるよ。」

「いや私も変だな―とは思うけどさ、カニ星人がもの凄く頭使って何年も掛けて考えた正しい理論がそうなんだからそうなんだ。
 でもみぃちゃんの懸念も分かる。つまりは風船の大きさだ。風船がむちゃくちゃ大きければ、それこそ宇宙全体に置き換わるくらいに大きければ、変さは少なくなる。
 その為の、つまりは風船を作る材料がワープエンジンてことさ。無数のワープエンジンで数万数十万光年をカバーする亜空間を作り、裏返す。」

「宇宙ってもっと広いんじゃないの?」
「広いんだけどね、このくらいの大きさが有ればなんとか誤魔化せるんじゃないかと、」
「やっぱり変だ。」

 

 

2015/04/19

まゆ子「とまあそういうわけで、前回の続き。「」ゲキロボ☆彡」ダイジェスト版の構成は?」

釈「とか言ってますけど、書くかどうかはまだ決まってないのです。」
じゅえる「あくまでもまだ思考実験の段階だ。」
まゆ子「そりゃそうさ。面白いかどうかの見極めがつかない内に書くとか言うもんか。

 そこでさ、有益な教訓を得たもんだ。
 最近は深夜アニメ多いでしょ、多すぎるでしょ。」
じゅえる「まあ、録画すら困るほどやってるね。BS11とか。」
釈「全部見る必要は無いのですよ。面白いのだけ見れば。」
まゆ子「まあそうなんだけど、行きがかり上テレビが点いてる事があるのさ。他の作業をしながら流しているって。
 あ、もちろん「ゲキロボ☆彡」とかの小説書いてる時は邪魔だから点けてないよ。」
じゅえる「集中力の邪魔だからな。」

まゆ子「そこでさ、流してみて面白いのがあれば集中して見るし、流して面白くなければ切るさ。
 で、『冴えない彼女がなんとか』ってのがやってたわけなんだ。これは後者だった。」
じゅえる「なんで見たのさ。」
まゆ子「いやその後で「四月は君の嘘」やってたから、いたしかたなく。」
釈「そっちの方はめちゃ面白かったですね。ヒロイン死んじゃうんですよ。何の奇跡も無く」
じゅえる「そりゃまた定番の悲劇だな。」

まゆ子「それで、行きがかり上いやでも見せられたわけさ。で、悟った。」
じゅえる「どんなの?」
釈「オタクの少年が美少女を集めてエロゲを作ろうって話です。」
じゅえる「美少女がリアルで集まれば、男としてはもう別にいいんじゃないかい?」
釈「それを言われてしまうと、返答に苦しむのですが。」

まゆ子「それでさ、面白い面白くない以前に内容が頭に入ってくるか否か、という評価基準があるんだ。
 つまらなくても内容が分かる、ってアニメも有る。だが用事をしながら流し見していると、いつの間にか番組終わってたよ系のも有るんだ。」
釈「はあ、集中してないからですね。アニメ見るのに集中する必要もありませんが。」
まゆ子「で、「冴えない」はさっぱり分からなかった。あんまりわからないからなんだったのか一応録画で確かめてみるぼどだ。
 その結果、つまり分析してしまったわけなんだが、おかげでラノベの書き方が分かった。」

じゅえる「そのアニメってラノベなんだ。」
釈「ラノベなんですよ。で、ラノベだから固定客が居て、アニメの円盤も結構売れたらしいです。」
じゅえる「面白くないのに?」
釈「ラノベのアニメってだいたいそんなものです。まあ上中下とレベルがありますから一概には言えませんが。」
じゅえる「それで、ラノベの書き方って?」

 

まゆ子「普通小説を書く、マンガを描く人は自分が面白いと思ったものを書きます。当たり前ですそうでなければ書く気が起きない。」
じゅえる「もっともなはなし。」
まゆ子「だが読者を考えれば、読者が読みたい話を書く。これが王道です。普通そういう風にやってます。」
じゅえる「もっともなはなし。」
釈「ラノベとかその典型ですよね。」
まゆ子「いや、それが違う事に気が付いた。もちろん王道は正しい。しかし時代背景というものがある。
 今のラノベは、読者が書きたいものを書く、これが受けるらしい。」

じゅえる「ほお。つまりはラノベ読者は全員ラノベ作家志望者ってことなのか。」
釈「いや、それはちょっと違うのではないですか。」
じゅえる「いやでもラノベって下手な文章でもがんがん売れてるだろ。アレは下手だから真似しやすいってものじゃないのか。」
釈「あー、まあその要素は有ると思いますが、思いっきり有ると思いますが、」
まゆ子「そうなんだ。ラノベは、かってはマンガもそうだったんだけど、素人が自分でも書けると思わせるくらいのクオリティが一番客を呼べるんだ。
 なんというかね、手の届くところの希望って感じかな。」

じゅえる「ふむふむ。だがそれは今更の要素だろ。ラノベが生まれてからもう15、20年経ってるのかな。」
釈「20年位にはなりますかね。」
まゆ子「そこでさ、文章のクオリティ的に低いラノベは既にスタンダードなんだよ。自分でも書き易いものが人気になる。
 それが内容にまで波及して、自分でも書きやすい内容のものが流行る。自分でも書いてみたいものが流行るという世の中なんだ。」

じゅえる「まあ理解できなくはない。」
釈「しかし、それだとかなりレベル低いですよね。」
まゆ子「じっさい、なんじゃこれってレベルのラノベがどんどんアニメになってます。ただシナリオ的に優れた作品もアニメになってます。」
じゅえる「というか、アニメオリジナル原作ってのがシナリオ感心しないのが多すぎるんだよね。」
釈「どちらもクオリティ低いなら、固定客を掴んだラノベを使った方が歩留まりがいいって寸法ですよ。」

まゆ子「そこでだ。これから小説を書くとすれば私も読者が自分で書きたいネタを用いるべきだとの結論を得た。
 そう考えてみれば、よくよく考えればSFとか推理小説とかも同じ構造を持ってるんだよね。
 自分でも書きたいものが受けるって。」

じゅえる「推理小説かー、あれはだいたいラノベと構造的に変わらないからなあ。」
釈「全編会話だらけだったりしますからねえ。」
まゆ子「アレだって、読者が読みたいものを書いているとは一概には言えない。読者は常に推理小説に新しい地平を開いて欲しい、と思ってるわけではない。」
釈「予定調和的に、シナリオが閉じてますよね。」
じゅえる「推理小説フォローワーは自分でも書いてる。それは普通のあり方だね。
 逆に言うと、SFは。」
まゆ子「読者が書きたいSFを提供していない。ラノベが代わりに提供している。衰退するのもむべなるかな。」
じゅえる「ふむ。」
釈「読者が書きたいSF、ですか。そりゃー難しい。」

 

まゆ子「そこで「ゲキロボダイジェスト」だ。普通にダイジェストにしても読者が書きたいものにはならない。SFだから。」
釈「うん。」
まゆ子「だからダイジェスト版を書くにしても、この方向性で構造転換を図らないといけないのだ。
 まあなんですか、「ゲキロボ☆彡」本編は、あれはもう私が書きたいから書いた、ってな典型ですからね。」
じゅえる「読者が着いて来ない典型だな。」
釈「そもそもがSFですからねえ。」
まゆ子「いや、あれでも萌え四コママンガと同じくらいにはバカバカしいんだが、なにせ宇宙人とかNINJAとかまともなアイテム出てこない。」
釈「そりゃそうなんですけどね。というか、冷静に分析すればバカ話まるだしなんですよね。」

じゅえる「バカの方向がずれていたか。難しいものだな。」
まゆ子「まあ「ゲキロボ☆彡」の主要な目的は、「げばおと」では十分に描けなかったキャラクターの感情表現やら空気感、日常性の表現力向上にあるんだから、その面ではちゃんとやったよと主張したい。」
釈「その為だけに、ずいぶんと長く苦労しましたねえ。」
まゆ子「したんだよ。」

じゅえる「しかしだよ。読者が書きたいSFってのはどんなのだろう。」
まゆ子「まあ今のSFはSFじゃないんだよ。SFってのはサイエンスフィクション、だが科学的に正しい知見を盛り込めばいいわけじゃない。
 それは未来なんだ。科学に基づいて思考実験をして来るべき未来を予想する、または未来を設計する。こうあるべきだとする未来を作る。
 まあそりゃ超古典的なSFだけど、その後の60年代くらいのSFだと思考実験によって現実社会のあり方をひねって見せて新しい視点を拓く、的な発展をしてきたわけだ。
 目が覚めるような体験。これがSFだ。」

釈「で、思考実験をやりすぎて、もう何をやっても有り難みも新味も無いようになってSF衰退を遂げてるわけですか。」
じゅえる「自業自得だな。」
まゆ子「新しい視点を開いて現実の新たな切り口を提供する、この路線ではダメだ。てことは理解してもらえると思う。
 もちろんSFガジェットを使って好き勝手に遊びまくる、ってのはもうSFとは呼べない。ラノベで済む話。
 真のSF者はやはり未来を見なくてはならない。」

じゅえる「その未来だって、もうずいぶんと思考実験され尽くして焼け野原だよ。」
まゆ子「だが、現実21世紀から15年経った今がこの状況だ。この未来はほんとうに予言されたものだろうか。特に社会。」
釈「まあ日本単独で語ってみても、東日本大震災とかM9の地震だとか、ちょっとSF的なものを越えてますね。」
じゅえる「「日本沈没」とか「復活の日」とかあるけれど、エボラとかねえ。オウムなんかもう20年経ってしまったのにまだ裁判ぐじゃぐじゃやってる。」
釈「イスラム国とか、ありえないですよね。というか想像でイスラム過激派が国家転覆してなんて言った日には、昔は大笑いされるようなバカ話です。」
まゆ子「しかもその原因が「アラブの春」とか「ジャスミン革命」なんかの民主化運動なんだからな。皮肉というにもよほど痛い話だよ。」

釈「完全に予想した未来とは違いますよ。日常って怖いですね。」

まゆ子「当たらない未来予想ってのは、逆に言うとそこには金の卵が転がってるんだ。
 そもそもがSF的気分てのをいい加減世間一般のヒトも捨ててもらわないと困る。

 ここはSFが描いた未来じゃない。SFで描けなかった未来なんだ。」
じゅえる「うーむ、まさに今21世紀に生きてるわたしらが、なんだか途方に暮れる状態だからな。」
釈「知ったかぶりはするもんじゃない。てのが教訓ですか。」

まゆ子「知ったかぶりをしないSF。うん、それだな。筆者作者が驚きを持って描く未来。これが今あるべきSFだと思う。」
じゅえる「未来ガジェットをさも大仰に描く、ってのとは違うんだ。」
まゆ子「全く違うね。どう書けと言われても今すぐには思いつかないが。」

 

******************

まゆ子「というわけで、だ。主人公の物辺神社下男の少年が最後携帯電話をピルマルレレコに届けて宇宙戦争大勝利シナリオを採用するとなれば、ゲキ自体をピルマルレレコに置き換えてもよろしいな。」

釈「そりゃまた超根本的な変革ですね。」
じゅえる「じゃあゲキロボの超機能の数々は無しってことか。」
まゆ子「ゲキロボを実現する方法を別に考えなくちゃいけないな。超能力だけはアリ、って事にするか。」
釈「ふむふむなるほど、ゲキの力はハードウエア的なものではないって設定ですね。でもそれで宇宙戦争ってのは。」
じゅえる「物辺神社に埋まってる古代宇宙船の残骸がよみがえる、でいいんじゃないか。」
まゆ子「じゃあ、物辺神社の水牢あたりに、ゲキの骸がでーんと横たわっているとかにするか。」
じゅえる「だな。」
釈「少年が優子さんと共にゲキの骸を確認するのですね。」

まゆ子「ふむふむ、なんとなく構造が読めてきた。だいたい「ゲキロボ☆彡」は1999年7の月に鳩保ら5人が御神体ゲキのヘノコに悪戯して発動したのが、2008年5月北海道修学旅行で顕在化して物語が始まるわけだが
 今回は小学生の鳩保らが水牢探検をしてゲキの骸を発動させた、って事にしておこう。」
じゅえる「そうだな、北海道パートはそもそもが要らないからな。」
釈「なんでそうなってるのか、あそこは昔から不思議でした。」
まゆ子「いや、あれは何故なんだろう。私にも分からないぞ。たぶんゲキ前史に関係するのだろうが。」

釈「ゲキ前史ってなんですか。」
まゆ子「何故物辺島にゲキの骸が落っこちたか、という平安時代のお話だ。ピルマルレレコもこれに関連している。

 ちなみにピルマルレレコはちゃんとUFOに乗って地球にやって来た。亜光速UFOでね。」
じゅえる「ちょっとまて、ピルマルレレコは超光速航行出来ないのか?」
まゆ子「ピルマルレレコは1万年よりも長く生きますから。10年くらいで行ける所には急ぎません。」
釈「ああ、宇宙人ですからね。」

まゆ子「ちなみにピルマルレレコのUFOもピルマルレレコです。ヘビ型のピルマルレレコがUFOのエンジンになってエネルギー出力しながら飛んでいきます。」
じゅえる「つまり、ピルマルレレコは自力で宇宙空間を亜光速で移動できる生命体ってことか。」
まゆ子「実は超光速航行もできます。他の宇宙人がワープするのに遭遇すると、お友達になろうとして追っかけてきます。
 というか、宇宙には所々に高速道路みたいな超空間ゲートがありますから、普通そこを通ります。クビ子さんこと「天空の鈴」星人と同じです。」

 

 

2015/04/14

まゆ子「とまあそういうわけで、「ゲキロボ☆彡」最終回第一稿書き上がりました。後はもう真の最終回を書くばかりです。」

釈「また最終回詐欺ですか。」
じゅえる「最終回最終回ってのをもう4ヶ月ほどやってるからな。」
まゆ子「今度こそ本物です。ついに「世界があらかた終わった日」弥生ちゃん登場! まで到達しましたから。」
じゅえる「ふむ。今度こそほんとらしいな。」

釈「弥生ちゃん先輩大活躍ですか。」
まゆ子「いや、一言二言喋るだけだよ。それで上等。」
じゅえる「「ゲキロボ」は弥生ちゃんが出てこない事が前提だからね。」
まゆ子「そうなんだよねー。ほんとなら「ウエンディズ」も極力排除するべきではあったんだろうけど、なにせ釈ちゃんが出るのにそれは不自然だからねえ。」
釈「二年生メンバーはなにかと出すのが得策だったからですねえ。キャラを最初から設定しておけば学校生活も楽に描けます。」

まゆ子「それでも、他で掲載するのならやっぱ外すべきであった。とはいえ志保美センパイは超重要人物だからな。」
じゅえる「なんだか知らないけれど、志保美が凄い活躍だ。というか、まゆちゃん先輩の活躍も超重要じゃないか。」
まゆ子「てへ。」
釈「正直、まゆちゃん先輩と志保美先輩が無かったら「ゲキロボ」成り立ちませんよ。ちょっと構成上の問題ですね。」
まゆ子「うーむ、その二人の役割を釈ちゃん一人にまとめても良かったな。超美少女天才シャクティちゃんに。」
じゅえる「そういう考え方も有るか。そうすると、尺を半分以下に収められただろうな。」

 

まゆ子「ふむ、それは有りだな。なるほど、ダイジェスト版を作る時はそういう風にしてみよう。」
釈「いやでも、それダイジェスト版じゃないでしょ。作り直しですよ。」
まゆ子「いやそれがさ、「なろう」に掲載するのはどうしようかと計画中でさ。「ゲキロボ☆彡」ダイジェスト版てのも候補に上がってるのさ。」

じゅえる「ダイジェスト版か。」
まゆ子「もしくは、ハーレムラブコメ版。」
釈「ハーレム? 誰が主人公ですか、男の子でそんなヒト居ないですよ。」
まゆ子「だからさ、作るのさ。前に鬼首島の鬼姫優子様を考えたでしょ。あの主人公を使って、「ゲキロボハーレム」を考えてるのさ。」
じゅえる「ちょっとまて、優子鳩保花憐喜味子みのり、を面子にして、ハーレムか?」
釈「地獄ハーレムですか。」

まゆ子「そこでだ。喜味子ちゃんはとてもいい人なんだが見た目が怖い。ゲキの力で新開発「真実が見えるメガネ」というのを掛けて、眼鏡っ子にする。」
じゅえる「ゲキの力で美少女に見える、って寸法か。」
まゆ子「ちょっと違う。このメガネは掛けた人の真実を他人に強制的に見せる、ってものだ。だから喜味子についての理解が深い人ほど喜味子の実体が見える。
 もちろん恐ろしい外見だってちゃんと受け入れる度胸の有る人には、そのまんまの喜味子が見える。」
釈「なるほど、通り一辺倒しか知らない人には喜味子さんの心しか見えないわけですね。」
じゅえる「あれはイイ女だからな。外見以外は。」

まゆ子「それ以外にも、物辺優子を典型的巫女キャラでちょっと夢見がちな超能力少女に。
 鳩保芳子をウザさを削減して面倒見の良い巨乳キャラに。花憐ちゃんはむしろ初期キャラの頼りないキャラに。みのりちゃんは可愛らしさ倍増に。
 てとこを計画してる。」
釈「詐欺ですね。」
じゅえる「いや、むしろ詐欺上等だな。」

 

まゆ子「だいたいハーレム物は主人公の男を考えるのが難しいのさ。クズはクズでキャラ立てするのは難しい。」
じゅえる「女は属性を数揃えればいいだけだからな。」
釈「これまでは主人公たるにふさわしい男キャラが居なかったわけですよ。
 それで、鬼首島の男の子は使えるんですか。」

まゆ子「まずファンタジーキャラだ。ただの少年ではない。ただし超能力を持つわけではない。
 理由だ。異常な状況に居る必然性を持っている。これは大きい。
 しかもタイムトラベラーだ。」
じゅえる「現実世界に戻ってきたけれど、時間が違うから肉親の元に帰れない。なかなかの悲劇性だな。」
釈「そうですね、宙ぶらりんの状態がラノベにはちょうどいい。」
まゆ子「さらに、そんな状態だから学校にも行けない。結構コレは大きなメリットだ。」

じゅえる「戸籍偽造とかでなんとかならないか?」
まゆ子「物辺神社ならなんとかできるが、鬼首神社はそこまでの政治力は無い。でもなんとかしてもいい。
 ただ基本としては学校には通ってない、というのが使い勝手がいいだろ。」
じゅえる「まあね。不規則にどこにでも行けるからね。」
まゆ子「そうだな、運転免許偽造取得くらいはあってもいいかな。車の運転が出来なくて物辺村の連中は困ってたから。」
釈「なるほど。使えますね。
 つまりこういう構造です。

 主人公は男性少年17歳くらい高校二年生。物辺村のゲキの少女と同じ歳です。
 彼はなんだか分からないけれど亜空間に囚われて、不思議世界を旅する事を強いられた。目的は元の世界に戻って日常を取り戻す事。
 冒険の旅をある程度クリアした結果、元の現実世界ではあるが時間軸が違う鬼首島に流れ着く。自分が失踪する4年前の世界だ。
 彼の選択肢は2つ。もういちど亜空間不思議時空を旅して時間軸の同じ自分の世界に帰る。
 だが彼は、鬼首島に留まり4年を待って元の時空に戻る事を選択する。ただし両親の元に帰るには、4年の間に成長した姿を見せるのは得策ではない。
 4年+さらに4年くらいの間失踪して、少年の面影が消えた頃に両親の元に戻れば、年齢の違いをある程度ごまかせるだろう。
 というわけで、鬼首神社の下男として10年間ほどここで働いて過ごす事になる。」

じゅえる「舞台は2008年か?」
まゆ子「いや、去年考えたから、2014年で行こうと思う。つまり彼が17歳なのは2018年だ。」
釈「ほんとは、彼は2014年の少年で、6年遡って2008年に来た、という設定なんですよ。こちらの方が便利なんですけどね。」
まゆ子「17歳が6年間遡れば、本人は11歳。これでは両親の元に戻ってもあんた誰と言われてしまう。
 ただこれだと、失踪から4年後、では帰れないだろう。21歳と偽って27歳が帰るんだ。さすがにね、苦労して老けましたじゃあ通らない。」
じゅえる「ふむ、それで4年に変えたのか。21歳と偽って25歳、うーんギリギリだなあ。」
まゆ子「でもこれで8年間居続けだ。かなり長いと思うのだ。10年にすると、23歳と偽って27歳。」
じゅえる「ちょうどいい感じかなあ。でも8年で我慢するか。」

釈「それで、物辺村ハーレム化計画です。鬼首島は物辺村と違うんですよね。」
まゆ子「基本的に物辺島はでか過ぎたという反省が有る。鬼首島には村は無い、神社があるだけだ。つまりその程度の大きさ。
 本土の橋の手前に鬼首村が有る。鳩保達はここに住んでいる。つまりは鬼首島には優子と少年が住むだけだ。鬼首家の家人は居ますけど。」
じゅえる「祝子さんや饗子さんは、」
まゆ子「当然居ます。双子もです。こいつらはほとんど設定変わらない。優子が可愛くなる程度だ。」

釈「物辺家ではなく鬼首家なんですね。」
まゆ子「そうだよ、鬼首と書いてモノベと読む。鬼はモノ、首はコウベで、合わせてモノベ。オニべと呼ぶ人も居るしそっちの方が通りはいい。
 んでもって、ゲキロボは出てこない。ゲキのヘノコは出てくるけどね。「ソトツフミ」でいいや。」

じゅえる「村は鬼首村なのか。」
まゆ子「旧鬼首村だね。今は市町村の名前は変わって、普通に「鬼首」という地名があるだけだ。
 鬼首村は、鬼首島がちょっと離れた海の中に有るけれど、本土側にあるそれなりに広い地域。人もこちら側に住んでいる。
 鬼首神社には宮司の一家が住んでいて、もちろん巫女は代々鬼なのだ。
 村人は巫女を崇めて大切に祭る。毎年お神輿が海を越えて本土に渡ってくるのだ。」

釈「ふむふむ、こちらの方がむしろ神秘性は高いですね。」
まゆ子「もちろん、江戸時代は藩の牢屋が有ったという設定は生きている。門番の城ヶ崎家設定は有りだ。

 でも、明治になって昭和になって、ここら一帯は行政的に一つになったから、鬼首村は消滅。
 花憐ちゃん家も村長ではない。昔は庄屋だったというだけのお金持ちだ。

 実は、村が広くなった関係上児玉家の養鶏業が大きく出来るというメリットがある。喜味子の家は普通の大きさの普通の養鶏農家になる。」
じゅえる「みのりの父親の漁師、鳩保の診療所は一緒か。変更する必要無いしね。」

釈「門代高校はどうしましょう。替えてみますか。」
まゆ子「まあ。文城高校でもいいよ。鬼城でもいい。」
じゅえる「いっそ鬼ヶ関高校とでもしてみるか。」
釈「かっこいいですね。」
まゆ子「あーラノベならいいんだけど、鬼首高校でもいいよ。意味的にシュリンクしよう。」
釈「あーいやそれはー、あんまり嬉しくない。」
じゅえる「替えなくていいか。」

 

まゆ子「というか、書くとは言ってないぞ。」
じゅえる「そうだな、ハーレム化ダイジェスト版でいいじゃないか。」
釈「そうですね。とりあえずダイジェスト版の方向性はハーレム化で男の子を中心としたものにすると。」

じゅえる「それで、本命のヒロインは誰なんだ?」
まゆ子「はあ? ルートってので分かれるんじゃないの。」
釈「それはゲームでしょ。ラノベハーレムはだいたいメインヒロインを軸として、脇ヒロインとイチャイチャしながら進んでいきます。
 メインヒロインの決定は大事です。」

まゆ子「そういう事であれば、やっぱ鬼首神社の下男だから、雇用主の優子がヒロインなのが正統だろ。」
じゅえる「まあね。それをやる気があるのかを聞きたい。」
まゆ子「あー、優子がヒロイン出来るのかって話か。そりゃ難しいな。」
釈「まともにヒロイン出来そうなのは花憐さんくらいなものですからねえ。」

まゆ子「普通に考えると、優子メイン、鳩保サブ、花憐がお嬢様高嶺の花クラスで、喜味子がお姉さん系、みのりが妹的ヒロインだ。」
じゅえる「ど安定で面白くない。幼なじみはどうする。」
まゆ子「いや、それは禁止。主人公は素性がバレてはいけないのだ。」

釈「それで、主人公の素性は他の娘にはバレているのですか?」
まゆ子「うーん、基本的に彼を隠す為に5人の少女が活躍する、というお話だ。」
じゅえる「だが「ゲキロボ☆彡」ダイジェスト版と考えると、その構図は良くないな。」
まゆ子「ふむ。どちらの重心を置くかってことだね。ダイジェスト版だとゲキロボについてに焦点を当てるべきだしね。」

じゅえる「どういう経緯で鬼首神社の下男になったか、なんてイベントを書いたらそれだけで1巻は終わる。たぶん、これまでの経験則から。」
釈「ですね。おもいっきり短くするには、そんなとこ一行で終わらせます。」
まゆ子「となると、まあダイジェストですから1巻で終わるとして、「ゲキロボ☆彡」正史のどこらへんまでを書くかだ。」
じゅえる「そりゃ宇宙艦隊撃破までに決まってるだろ。」
釈「問題はそこじゃないんですね、カニ星人襲来とちくわ宇宙戦艦襲来とをミックスしてしまいます。」
まゆ子「なるほど、とにかく宇宙艦隊戦で終了だ。そこはいい。
 でも主人公ハーレム関係ないだろ。」

じゅえる「主人公の少年の力で宇宙艦隊戦大成功だ!」
釈「ぴるまるれれこに携帯電話を届ける役を彼にしましょう。」
まゆ子「なるほど。」

 

まゆ子「あ、今思いついた。」
じゅえる「なに?」
まゆ子「いや、別に次に書くものの候補は「ゲキロボ」ダイジェストばっかりじゃないんだよ。「げばおと」スピンオフだって考えてる。
 まあ第一の候補は名探偵マキアリイとカニ巫女クワンパの「罰質」なんだが、もうひとつ。
 頭にカブトムシを載せた美少女が悪と戦う物語。その題名。「重魔神少女カブトさん」てのはどうだろうか。」

釈「……、カブトさんは兜甲児さんでしょう。」
じゅえる「重魔神将カブト」くらいでどうだ?」
まゆ子「美少女属性が表現されてないぞ。魔法少女ものなんだからそこはやはり「カブトさん」で。」
釈「あー参考までにお尋ねしますが、それはどういうお話ですか。」

まゆ子「時は現代、所は日本。あるところに女子高生がのほほんと住んでおりました。
 しかし世界は悪に侵略されて為す術がない。まあそんなのは自分には関係ないかな、とのほほんと生きている無気力な現代っ子です。
 だがある日、天から降ってきた一匹のカブトムシが頭の上に住み着いたから、彼女は無敵の重魔神少女になって、悪と格闘戦をしなくてはならなくなりました。
 その為に日本政府が用意したのが重甲冑。これを着たら無敵装甲なのだ。ただし武器は付いてません。
 で、その他にもゲジゲジ少女やらトカゲ少女やらが居て、悪をやっつけて回るのです。」

釈「ああ、そりゃ確かにスピンオフだ。」
じゅえる「まあ、魔法少女ものだな。で、悪って何?」
まゆ子「あーイスラム国とか?」
釈「いかん、それはいけません。」
じゅえる「さすがにほんものの悪はダメだろう。もっと穏便な抽象的な悪にするんだ。」

まゆ子「そうだねえー、じゃあこういうのはどうだろう。課金悪魔という奴が居るんだ。
 で、そいつはもちろん携帯スマホやインターネットで課金アプリをばら撒いていて、それを普通の人が入れてるわけだ。
 で、それを使えば人生の勝者になれるというのだが、つまりは悪を為すのに良心の呵責が一切無くなるのだ。金で。
 まあようするに免罪符みたいなものだな。気分の問題だが、実際に悪を犯罪を犯させてしまうのが困るのだ。
 で、その課金免罪符が中毒になった人間が社会に悪をばらまくのだ。」

じゅえる「警察の仕事じゃね?」
釈「警察ですよね、それ。魔法少女の敵じゃない。」
まゆ子「あー、もちろん魔法少女カブトさんは巷の悪をやっつけます。銀行強盗コンビニ強盗やらテロリストやら。銃火器の使用も容赦なしですから、重甲冑が役立ちます。」

じゅえる「でも、相手は本当に人間なんだろ。」
釈「ですねえ。」
まゆ子「あー、じゃあ、悪のアプリで免罪符を買うだけでなく変身アイテムも売ってるということで。例えば犯罪を犯して警察に捕まりそうになった時これを使えば、ドロン出来るのだ。」
じゅえる「ドロンの方法によるが、つまりは無敵アイテムを買った人間は警察の手には負えない化け物になるってことだな。」
まゆ子「そういう事にしておきましょう。
 もちろん良いアイテムってのも売ってるんですそのアプリ。たとえば「腐りきった現代の資本主義社会を打倒する唯一絶対ぴりっと辛い真実の解決法」とか。」
釈「それがイスラム国じゃないですかあ、だめー。」

じゅえる「まあとにかく強大な悪のバケモノが出現するわけだ。で、魔法少女がやっつける。構図的には特に問題は無いが、最終的にはどういう結末になるのだそのお話。」
まゆ子「悪を滅ぼしたら、実は真の悪が人間社会そのものだということが判明して、これを根こそぎにやっつける。」
釈「人類絶滅じゃないですかあ! 死んじゃう。」
まゆ子「まあそういうことで、シリーズ通して集まった魔法少女軍団と、世界各国の連合軍である「NWO軍」ってのが核兵器をも交えた最終戦争を行うのだ。」

じゅえる「人類絶滅だな。つまりは。」
釈「とにかくその最後は却下です。ダメですぜったい。」
じゅえる「とにかく悪がそれではダメだ。その企画は許可できない。」
まゆ子「うう、じゃあ何と戦えと言うんだよ。魔女か、魔女ならいいのか。」
釈「いや魔法少女というのはそんな怖い敵と戦う必要も無いと思うのですが。」

じゅえる「いやむしろ、めちゃくちゃ怖いものと戦うというのはどうだろう。筆舌に尽くしがたい恐怖の化身と。」
釈「具体的には何です。」
じゅえる「だから「無茶苦茶怖いもの」だよ。見ただけで歴戦の勇者がおしっこちびって泣き出すような、とにかく外見上めちゃくちゃ怖いんだよ。」
釈「そりゃ怖いですが、それは何の為に現れて具体的にどんな悪事を行うのですか。」
じゅえる「ただ単にそんなものが町中に居たら、人間恐怖で何をする事も出来ないだろ。飯を食うどころかトイレにだって行けない。夜寝ることすら不可能だ。」

まゆ子「それは警察ではどうにも出来ないのか?」
じゅえる「まあ人間の警察やら兵隊ではね。肉眼で確認した時点で戦意喪失、戦闘不能だ。」
釈「じゃあロボットとかミサイルで遠距離から攻撃では。」
じゅえる「あーそうだなー、じゃあレーダーに映らない、ビデオカメラでも撮影できない。各種センサーまるで反応なしの幽霊的な。」
まゆ子「でも人間には見えるんだ。」
じゅえる「うん。」

釈「分かりました。それは魔法少女にしか退治できません。でも、近代兵器本当に要らないのですか。」
じゅえる「そうだな。その怖いのが地上の兵器武器を拾って自分で使って撃ってくるというのはどうだろう。何のセンサーにも反応しないはずなのに、念動力で武器や道具が使えるのだよ。もちろんパソコン携帯電話だって使える。」
まゆ子「人間の霊みたいなものだな。悪魔か。」
じゅえる「むしろ天使だな。ケルビムだ。」

釈「その敵は魔法少女の敵として十分によろしいものです。
 でもそれって、人間社会とはあまり上手く繋がりませんね。なにか定番的に、人間の邪悪な想念が凝り固まったもの、的な裏付けが欲しいと思います。」
まゆ子「なるほどなるほど。最後はやっぱり人間が悪い、って事にしたいんだな。定番だからね。
 でもこの場合、人間が悪いってのはやめよう。人間とはまったく関係ない理由で出現しているんだけど、人間には依存する。こんなとこで。」
じゅえる「どういう理屈だよ。」
まゆ子「つまりだね、この化け物は人間には見える。だがその他のセンサー類には一切反応しない。
 念力を使って武器を操るが、人間が使う武器でないと扱えない。つまりはそこら辺の木を引き抜いて棍棒にするとか、石を拾って投げるとかは無いんだ。」
じゅえる「拳銃が落ちていれば射撃し、刀が落ちていれば斬りかかる。そういう現象だな?」
釈「はあ、つまり人間が扱うものしか扱えないってことですか。」

まゆ子「つまりこの化け物ケルビムは、蹴尾夢とかの当て字をしよう、は人間の脳に依存して存在する。念動力も実際は人間を媒介にして使っている事にしよう。
 だから化け物を消すのに一番簡単な方法は、化け物が出た土地に居る人間皆殺し。すべての脳が停止すれば化け物も消える。」
釈「脳に潜む悪魔、ですか。」
じゅえる「犬やらカラスやらの脳は?」
まゆ子「あくまで人間の脳オンリー。だから軍とか政府とかは、それもアホな国やら政府とか独裁者とかは人間皆殺しで化け物を消滅させようとか考えるわけだ。」
じゅえる「悪だな。」
釈「紛れも無い悪です。」

まゆ子「だから、この化け物は無敵ではないんだ。でもその場に居る人間の脳に潜む事が出来れば不死で在り続ける。
 とはいえ、近代兵器や伝統兵器で殺せないわけでもない。鉄砲撃ったらなんだか傷ついたように見えなくもないのだ。
 というか、それを確認できた人間がめちゃくちゃ度胸の据わった人間で、それだけでも特別なのだが、まあ自動機械やらトラップやらが有効に働く事例が無いわけでもないのが混乱に拍車を掛けるのだ。」

じゅえる「うむ、だいたい悪くなってきたぞ。とにかく人間の、それも頭の良くて馬鹿な奴が余計な事をしでかして事態の悪化を招く方法論は確立できた。」
釈「ではその線で検討してみましょう。」
まゆ子「でもね、現代的にイスラム国とかの問題も織り込んでみたいのさ。時代性ってのはやっぱり有ると無いとでは物語の厚みが段違いだよ。」
じゅえる「じゃあどうするんだ。これが最後の審判とか位置づけるか。」
まゆ子「それも悪くない。だが希望という厄介で悪質なものが存在する方がより物語の重層性を高めると思うのだ。」

釈「救世主ですね。天から遣わされた真の救世主によってケルビムは一掃されるはずなのですよ。
 でも主人公達が頭のカブトムシの力で追い払う。これは真の救世主ではない、偽救世主であり悪そのものである。とか考えるんですよ。」
じゅえる「ふむふむ。もうちょっとイスラム国っぽい論理展開を考えてみれば、なんか使えそうだな。」

まゆ子「そこで免罪符アプリを、」
じゅえる「うーん、なんか使えそうだな。」

釈「主人公は聖蟲をもらうわけですが、デメリットは無いのですか。」
じゅえる「カブトムシなら怪力と飛行能力、肉体の驚異的な再生能力と勘の鋭さ、だったっけ。」
まゆ子「飛行能力は専用器具やら甲冑やらが無いとだめですが、だいたいそんなところです。
 デメリットとしては、髪がカブトムシ臭くなるくらいですかね。」
釈「なんかもらい得ですね。」
まゆ子「まあ聖蟲をもらった最初の戦闘で、生身で怪力を使ったから全身99箇所骨折という結果になりますが、三日ほどで治るから問題無い。」
じゅえる「いやそれ問題だろ。」
釈「そりゃたしかに驚異的な再生能力ですけどね。
 で、それをもらえる資格とか血統とかあるんですか。」
まゆ子「あ、今回はあるぞ。主人公は普通の人間ではない、ウェゲと呼ばれる古代の種族の血が流れているのだ。」
じゅえる「ゲキの前身の種族だっけ。」
まゆ子「ネアンデルタール人とかアウストラロピテクス的なものです。」
釈「いやそれ、普通の人でも遺伝子的に繋がりがあるんじゃないですか普通。」
まゆ子「まあそうなんだけどさ、色々と組み合わせというものがあるんだよ。組み合わせが良かった人間が聖蟲を戴く事が出来る。」

じゅえる「カブトムシだけ?」
まゆ子「まずは黄金のゲジゲジを頭にのっけた凄く賢い子が出ます。性別は男女どうしようか?と考えてるところ。」
釈「タコゲジゲジカブトムシトカゲ蝉蛾ミミズカタツムリクモカニカエルコウモリネズミ、でしたっけ。」
じゅえる「全部を出す必要はないさ。」

まゆ子「まあとりあえず黄金のゲジゲジを乗っけてる子はめちゃ頭良くて、ゲジゲジがレーザー光線を出して電撃も出します。
 電撃は敵をやっつけるのにも使えるけれど、ケルビムを見て心停止した人を叩き起こすAED機能になります。
 主人公ののほほんとした友達二人がケルビムを見て死んじゃうのを、助けてくれるのですね。」
じゅえる「そいう展開から始まるわけだな。なるほど。」

釈「でもケルビムは一般人の武装していない人はどうしようも無いのですか。なんか逃げる方法とかあれば、」
まゆ子「あるんだよ。目をつぶれば見えなくなる。」
釈「ほお。」
じゅえる「ほお。」
まゆ子「だがね、それが居る事はその姿を見る前から心は敏感に察知するんだ。予感がするんだな、それが居るって。
 そんなのを感じていながら目をつぶる度胸がほんとうに有るか。」
釈「あーそれはー、ちょっと。」
じゅえる「見えなくなったら逃げる事すら出来ないじゃないか。それは怖い。」
まゆ子「でも見たら心が潰れる。見なければ何されるか分からない。で、普通の人は目を閉じられないんだ。子供とかはまだ影響力が遠い状態で目をつぶっちゃうから大丈夫だけど。」
じゅえる「判断力が無いからこそ出来るってわけだ。」
釈「怖いですねえ。」

 

 

2015/03/17

まゆ子「というわけで、3/14に書き始めた「カニ星人襲来」書けた。」

釈「早!」
じゅえる「くっちゃりぼろけっとの威力は凄まじいな。」
まゆ子「おおむね13章。これは本来3/12に更新するはずだったのの後半ね。2つ合わせりゃ20章超えちゃう。そりゃあかん。」

釈「これで、だいたい終了ですね。」
まゆ子「終了です。もうまとめしか残ってません。
 というか、ここからが本番。ついに「ゲキロボ☆彡」にあの人が出ます。」

じゅえる「弥生ちゃんだね。」
釈「弥生ちゃんキャプテンですね。」
まゆ子「そこネタバラシしない! まあ、実は〆が弥生ちゃんなのはもう連載が始まった最初から決まってたんですけどね。」

じゅえる「カニ星人襲来の宇宙戦艦艦隊戦は、いつ決まったんだ。」
まゆ子「最後は破局的なイベントをクリアして、地球が壊滅するのはセオリーですから。
 そうだなー宇宙艦隊戦てのが決まったのはかなり早いんだが、こちらもある程度戦艦を投入するつもりだったな。
 ただその前に、ミスシャクティの時空戦艦に艦隊戦やらせてみて、安普請戦艦では戦力にならない事が分かっちゃってボツになったけどね。」

釈「ゲキロボが対等の戦闘をする相手は非常に高度な宇宙人文明であるし、そんな高度な宇宙人に地球人が操る戦艦じゃあ手も足も出ないってリアルですね。」
じゅえる「難しいもんだな。」

まゆ子「そこで考えた。超光速戦闘は既存の物理法則がまったく役に立たないから、当然に嘘八百が並んでいる。
 しかしながら基本は普通の相対性理論以前の状況だ。単純にパワーが有れば際限なくスピードが出る世界にした。」

じゅえる「偉い人が見たら怒るだろうね。」
釈「怒ると言うよりは、そもそもがこの物語は設定がめちゃくちゃなんですよ。
 多種多様の宇宙人が居て、それぞれの科学技術のレベルが違い、しかも同じ目的を果たすのに違った方法が許される、ってのですから。
 どれを基準において語れば良いかすら定められない。」
じゅえる「しかし、超光速航行ってSFで色んな方法考えてるよな。」
まゆ子「腐るほど仮想原理が有りますが、ま全部が全部裏付けありません。ワームホール理論はあえて使ってませんが、まあそんなものどうでもいいや。」

釈「ワームホールはあり得ませんか?」
まゆ子「素粒子レベルでトンネルが有るだろう、とは思うよ。」
じゅえる「素粒子じゃ宇宙船は動かせんな。」
釈「なるほど、そんな都合の良い大きさのトンネルが有るわけ無いですか。そりゃそうだ。」
まゆ子「ブラックホールがワームホールになってる、てのはどうも無さそうだ。最近はブラックホールも色々と研究が進んでいるからね。」

じゅえる「じゃあワームホールは使えない、でいいのか。」
まゆ子「そこで考えた。素粒子レベルのワームホールを無理やり大きくこじ開ける理論。」
釈「はあ、そりゃあ凄まじいエネルギーが必要でしょうねえ。」
まゆ子「たぶん。少なくともその穴を通過する物体の全エネルギー、質量をエネルギーに変換した値よりは大きいと思うよ。」
じゅえる「反物質で出てくるようなレベルのエネルギーか。」
まゆ子「そうそう。」

釈「だめですね。」
まゆ子「そうでもないのさ。ワームホールは空間を飛び越えて穴が開いてるだけでなく、時間にも穴が開いてると考えた。
 過去と未来と自由に行き来できる穴だ。」
じゅえる「素粒子レベルで、だろ。」
まゆ子「うん。」
釈「どっちにしろ使えませんね。」
まゆ子「それで未来から過去に続く穴に素粒子を1個放り込む。とうぜんに通過可能だ。」
釈「うん。」
まゆ子「その出口に、過去から未来に続く穴を接続する。接続先は元の過去行きワームホールの入り口だ。」

じゅえる「ちょっとまて、ループだな?」
釈「同じ素粒子が同時に何個もワームホールに飛び込むのですか。いや、どんどんループが進んでとんでもない数に、」
まゆ子「で、穴を大きくこじ開ける。エネルギー消費無しで、だよ。」
じゅえる「それ失敗すると宇宙が滅びる的な、アレだな?」
釈「ですね。」
まゆ子「ワープなんだから失敗したら宇宙くらい滅びていいじゃないですか。セオリー通りですよ。」

 

 

2015/03/06

じゅえる「まあ、ぐだぐだだね。」
釈「「ゲキロボ」の生産性ゲキ墜ちですね。この理由はなんですか。」

まゆ子「ひぃーごめんなさい。理由はどう考えてもこれです。くっちゃりぼろけっとの不在です。」

じゅえる「新設定はもう要らないんだろ。」
まゆ子「要りません既に最終回までしっかり出来上がってます。現にこれまで無しでも書いてきました。」
釈「ですねえ。では何故。」
まゆ子「あーどうも、気分の問題と言いますか、そもそも何故小説を延々と大量に書き続けることが可能なのか、そっちの方が謎と言うべきで。」

じゅえる「そりゃー、あー、小説って普通どういう理由で書いてるの? 釈ちゃん。」
釈「そんな根源的哲学的な質問を振られても、最終的には描きたいから書いてるとしか。」
じゅえる「だよなあ。てことはー、気分の問題でいいわけだ。」
釈「あえて反論すべきものもありませんから、そうなんでしょう。その気分を盛り上げるためにはくっちゃりが必要。そういうことですか。」

まゆ子「あー実はさ、私コレまでというか今の今までころっと忘れてたんだけどさ。」
釈「はい。」
まゆ子「そもそもの認識が間違っていた事に今の今気が付いた。」
釈「はい。」
まゆ子「私は「ゲキロボ」という娯楽小説を書いていたつもりだったんだけど、それは間違いでした。
 ほんとうは、「くっちゃりぼろけっと」という駄文を書いていて、その副産物として「ゲキロボ」書いてたんでした。」

じゅえる「うん。最初から、くっちゃりでなんども何度も言ってる話だ。」
まゆ子「わたくし、ころっと忘れておりましたわホホホ。」
釈「アハハ。死んでしまえ〜」
まゆ子「というわけで帰ってまいりましたくっちゃりぼろけっと。で、

 

 でもですね、よくよく考えてみるとですね。今私、3DCGの方にちょっと注力しているわけですよ。
 ま、これはここ数年ずっとサボりまくった結果、どうやら3DCGに関しては浦島太郎になっているらしい、という事が判明しましてね。アップデートの意味があるわけです。」
じゅえる「それ関係ないから。」

まゆ子「と思うよねふつう。だがよくよく考えてみますとね、私が3DCGをいじるのはだいたい自分家の物語に出てくるものに形を与える為なんです。
 ゲキロボとかガスコーニュとか、あるいはチェスゲームだったり。」
釈「ああそうですね、あんまりアニメ作品のキャラを作ったりしませんね。」
じゅえる「そういうのは”でぽ”のエロ絵の背景になるんだが。ああ、そうだな、言われてみればオリジナルばっかりだな。」

まゆ子「これを翻訳しますと、つまり「くっちゃり」「くっちゃり あしどりむ」「ましなりい」でべらべらと書いた事を3DCGで実体化しているわけなんです。」

じゅえる「お。」
釈「つまり、すべてはくっちゃりから始まっている?」
まゆ子「と見做しても間違いではない、と思います。」
じゅえる「ふむ。てことはー、つまりはくっちゃりをサボっちゃいけないわけだ。」
釈「すべての創作行為の原点であり原動力は、ココですか。はーわたし達凄い偉いヒトですねえハハ。」

まゆ子「だが全てではない。要するにエロ絵はこことは関係ないわけだ。」
じゅえる「テレビでやってるアニメのキャラだからなだいたいが。」
まゆ子「だがやはり、あんまり描かない。最近はかなり頻繁に上げてはいますが、やはり少ない。」
釈「”でぽ”の生産性の低さはやはり考え直さなければいけませんね。」

まゆ子「であれば、つまり、くっちゃりぼろけっとでエロ絵についての考察を進めてやればいいのですよ!」
じゅえる「まあ、そういう結論に到達するわけだ。この流れだと。」
釈「いやしかし、どういう話をすればいいんですかソレ。」
まゆ子「わからん。だが”でぽ”にはちゃんと、「くっっちゃりぼろけっと せくれたり」てのを用意してある。
 これを使えばエロ絵がいやというほど沢山描けるようになるのではないだろうか。」

じゅえる「論としては正しいが、それを実行するとたぶんオリジナルの絵がどんどん増える事になるだけだぞ。」
釈「まあ、ですね。アニメのキャラを二次創作的に操るのにはたぶん向きません。」
まゆ子「ダメかな?」
じゅえる「ダメではないが、敵を作りかねない。二次創作ってもものは勝手に他人のキャラをいじるんだからな。」
まゆ子「やはりオリジナル中心か。しかし。」
釈「そうですね、その展開に問題があるわけではありません。もともとアニメ版権キャラを描いてても人がたくさん訪れているわけではありませんから。」

 

じゅえる「やはり書くんだったらピクシヴとかじゃないと、人は見てくれないぞ。」
まゆ子「他所のとこで見せても人寄せにはならないんだが、まあそれも見る人あってこそか。」
釈「営業努力が必要ってことですよ。」
まゆ子「うん。この春からは「小説家になろう」にも進出しようとか考えてるしな。
 というか、新しくリンク登録したけどぜんぜん集客力は無さそうだ。やはり今現在はネットを飛び回って小説を読んだり絵を見たりする人は居らず、集中して投稿される場所に入り浸っているんだな。」
じゅえる「まあそれは前々から認識はしていたが、億劫だから手を出さなかったわけだし。」

釈「じゃあやっと重い腰を上げますか。」
まゆ子「そうだな。というかだいたいオリジナルものなんて誰が見るんだろうという気がするからねえ。小説もあんなにたくさん有る所にわざわざ出て行っても埋もれるだけだろうと。」
じゅえる「それはそうなのだが、小説登録リンクにも人が寄り付かないとなると、背に腹は替えられん。」
まゆ子「うむ。」
じゅえる「別に他所で書いても自分とこに載せてはいけない法も無いからな。アクセス数稼いでもカネがもらえるわけじゃなし。」
釈「アフィブログとかやってませんから。」

まゆ子「まあ、でもそもそも作風が向いていないというのもあるんだ。
 「ゲキロボ」なんかものすごく頭が悪いお話なんだけど、」
じゅえる「宇宙人とか忍者とかロボとか出まくりだしな。おまけにNWOとか陰謀論の産物だし。」
釈「バカですよねーはっきりと。」
まゆ子「にも関わらずだ。最近前の方読み直してみたらかなり難しいぞ。クドイし。」
じゅえる「ま作風だからな、本人書きたいように書いていて読み難いのは仕方がない。」
釈「そもそもがラノベ読んでるのに飽きた人向けに書いてますから、それはいいんですよ。目的通りです。」

まゆ子「なんだけどさ、それでは困るんだ。でもクドいのをヤメル気はさらさら無い。」
じゅえる「ポリシーというもんだな。」
釈「変えれば書く気も無くなるでしょうしね。」
まゆ子「そこで考えた。次に書く作品は、まあこれまでどおりにクドイのでいいや。がんがん書こう。
 でも「なろう」に投稿するのであれば、それでは困る。ならば簡単化したバージョンに書き直せばいいや。」
じゅえる「ダイジェスト版か?」
まゆ子「いやなによりセンテンスを短くしようと。」
釈「内容ではなく文章を短縮化ですか。」
まゆ子「どうかな?」

じゅえる「いいんでないかい。」
釈「手間ですけどね。描写薄くなりますけどね。」
まゆ子「「ゲキロボ」であれば、1章7枚のところを5枚に削る。特に描写薄くなるとは思わないけどな。」
釈「そのくらいであれば。」
じゅえる「逆にキリッとしまっていいかもしれないな。まあクドいのを大勢の人に見せようというのがそもそも間違いではあるが。でも書きたいんだからしかたない。」
まゆ子「そうなんだよしかたないんだ。なら手を増やすしか無いな。」

 

 

15/01/07

まゆ子「しかし面白いな。
 挿絵ページに有る「物辺村少女自警団」暫定第六回、つまりはEROスーツの絵だよ。」

釈「はあ。これは最近になってようやくエロ修正をする気になって再掲載が叶ったやつですね。」
じゅえる「まあ、ゲキロボ宇宙服はこれまでにも何個も考えたけど、これはーどこがダメだったのか?」
まゆ子「いやいいんだけどね、漫画に描くのがめんどくさいという理由でその後使われていない。第八回では簡易版にされちゃってるな。

 それでだよ。花憐ちゃんが持ってるタブレットコンピューター。ペン式だね。」
釈「はあ、そういえばそうですね。」
じゅえる「今はもうほんとうにタブレットが定着して、しかもペンではなく手指だけで操作するからね。これはもう時代遅れなんだな。」
まゆ子「2007年に描いた時点では別に古くもなければ当たり前のおしゃれコンピュータだったんだが、時代の流れというのは恐ろしいな。」
釈「そうですねえ、この頃はこんなに指だけで操作出来るとは考えなかったんですね。」
じゅえる「まあ今でもペンを使わないではないのだが、そう言われてみるともう時代遅れか。凄いもんだな。」

まゆ子「まあそもそもですね、『ゲキロボ☆彡』てのは携帯電話が一応のモチーフになってるんですよ。なにせ首根っこのうしろに宇宙人電話が付いている。」
釈「ええ既に携帯電話が普通の時代にわざわざ別口で固定電話を付けるというレトロ具合が面白いんです。」
まゆ子「ネット小説界隈でも携帯電話を使って物語を回すのにちょっと困ってる時期だったから、逆を張ってみたのです。」
じゅえる「携帯電話が有ると使えない古典的エピソードが結構あるからね。ソレ全部使えなくなって、スタンダードを模索していたわけだが、今はどうということは無くなったな。」
釈「要するにコミュニケーションの断絶による行き違いを回避しただけなんです。むしろコミュニケーションが常時可能であるのが破壊される事による感情の揺れという風に使われてますね。」
まゆ子「まあ2008年にはもうそこらへんは完成していたと思うんだけどさ。
 だからこそのゲキロボ固定電話だ。携帯電話が有るのにわざわざくっつける、という趣向だ。」

じゅえる「となると、今流行ってるスマホやタブレットももう終わりかな。」
釈「そうですかねえ、なにかこのままスタンダードになりそうな気もしますが。というか、もうガラケーも終了でしょう。」
まゆ子「ガラケーがスマホに対して一定のアドヴァンテージを認められていたのも、そろそろ終わりかな。
 なんかシムフリーとかなって、つまりは電話会社による端末囲い込みが終了したから、変な端末作り放題だしね。
 それに液晶画面も真四角を越えて、どんな形状の平面でもディスプレイになる技術も開発された。◎やら☆やら円筒やらのディスプレイが普通に作れる時代なのさ。」
じゅえる「形状の自由度が復活して、もっと使いやすいスマホが出来るってことか。」
釈「四角い携帯電話は定番ではありますが、決して携帯に便利というものではないですからね。タブレットは本やノートとしては四角がいいに決まってますが。」

じゅえる「そろそろウェアラブルコンピューターが本格的に始動するかな?」
釈「服にコンピューターをくっつけるってやつですね。そうですねえ、USBメモリサイズの普通のコンピューターも普通に安価で売ってる時代ですから、ディスプレイが四角から解放されればアリですね。」
まゆ子「何に使うかは分からないが、今後5年で普通になるんだろうね。スマホは残るとしても。」
じゅえる「街を歩きながら四六時中インターネットやら動画やらを見なくてもいいからね。電話メール機能を主として、必要であれば最低限スマホ機能は有る、てのは欲しい人は居るだろう。」
まゆ子「次は電池がなんとかなれば、だね。」

 

※閑話休題

まゆ子「というわけで、鳩保3DCG化してみたぞ。」
釈「え? いきなりですか。」
まゆ子「こう言っちゃあなんだが、暇だ。「ゲキロボ」終了が見えてくると、つまりは次の展開を考えなくていいから。」
じゅえる「まあねえ、半年一年先まで展開をココでかんがえていたからね。」
釈「その手間が無くなればそりゃ暇でしょうが、それならもっと早く「ゲキロボ」書いた方がいいですよ。」
まゆ子「う。」
じゅえる「それがそうはならないところが面白いな。にんげんだもの。」

まゆ子「こう言っちゃあなんですが、作業スペースというか時間枠は一定なのです。小説を書いてる時間とお絵かき3DCGを作る時間とは排他的なのです。」
じゅえる「そうそう。」
釈「いやでも、暇なんですよね。」
まゆ子「おう。だがだからと言って「ゲキロボ」が早くなるわけではないし、早く書けばいいものでもない。」
釈「でも14年中に完成予定でしたよね。」
まゆ子「う。」
じゅえる「だめなもなあだめなんだよ、釈ちゃん。」
釈「それはもう随分と前から知っています。」

まゆ子「そこで鳩保だ。「落書き」コーナーに仮に置いているが、まだ未完成。というよりは形だけ出来たから見せてみよう。」
じゅえる「そりゃボーンを入れて歌って踊らせてみないとね。」
釈「最近はMMDが大流行してますから、一枚絵のCGでは客も呼べませんよ。」

まゆ子「うう、だが動画となるとそれはそれは手間が掛かってしぬ。」
じゅえる「まね。そもそもがCG動画なんて敷居の高いものが、よくもまああれほど世間一般で広まるものだ。感心というより呆れてしまう。」
釈「それはー、モデルも自分では作りませんし、動きも誰かが作ってくれたのを動かしてみるだけですから。」
まゆ子「いやでも出来る人は自分でやってるからさ。あたしゃやる気は無いけどね。」
じゅえる「そんな暇が有れば小説を書くさ。」

まゆ子「いやーそもそもね、1月更新分を書いてたんだよ「ゲキロボ」。でサクサク書けてこりゃ楽ちんだなと。」
釈「え? でもまだ更新してませんよ。
まゆ子「そこさ。あんまりさくさく過ぎて、規定回数の推敲が終わる前に次の章を書き始めちゃったんだな。それでもサクサク過ぎて正月前に更新可能なはずだったけど、
 あんまり寒すぎて貧血起こして倒れちゃった。」
じゅえる「ばか。」

まゆ子「それでもようやく立ち直って、さあ新年更新するかってところで、不意に思いついてCG鳩保作成開始だ。」
釈「なぜそうなる……。」
まゆ子「さあ。というか、12月中に「ゲキロボ近代化計画」ってのが発動してたのだ。2007年に制作したゲキロボCGモデルを再利用する為にちょこっと手直しする。
 ついでに長年の懸案であった、ゲキロボコクピット内部を作ろうか。これは現在進行中。
 でもコクピットだけ作っても仕方ない。やはり搭乗員、物辺村の彼女達を乗せるべきだろうって。」
じゅえる「理路整然としているのは理解する。でも、」
釈「さっさと小説書いてくださいよお!」
まゆ子「うむ。わしもそうおもう。」

じゅえる「しかし鳩保はもう何回もCG作ってるんじゃないか?」
まゆ子「うん、もう3回は作ってるな。完成には到達していないけど。まあサルボロイド鳩保は完成したけどさ。
 たしか去年の夏にも、水着鳩保を作ったはずだ。ほら、あいつ小説中でもプールに遊びに行っただろ。あの時の仕様でエロ水着。」

じゅえる「なぜでぽでぽに掲載しない?」
まゆ子「いや、完成しないから。というか完成した後でもボーン入れて動かして絵作りするってのはそりゃああ大変な作業なのさ。」
釈「3DCGくらい報われない作業ってありませんよね。それも金ももらわずに。」
まゆ子「そういうわけなのさ。
 ロボはいいんだよ、あれはデザインを確定する作業であって、作ってる最中に色々と発見が有るから。
 でも人間はねえ。」
じゅえる「とにかく水着鳩保は完成させろ。せっかく作ったのにもったいないだろ。」
まゆ子「そうだなあ、水着作るのにものすごく頑張ってなんとかしたからなあ。じゃあヤマトコスが終わったらなんとかしよう。

 

 

 

 

 

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