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2012/12/29

じゅえる「ところでさ、まゆちゃんや。」
まゆ子「なんだいじゅえるちゃにゃ。」

じゅえる「ゲキロボに出てきたガスコーニュて土管ロボさ。あれは随分と武器いっぱい持ってるね。」
まゆ子「てんこ盛りです。」
釈「えーと、両手に機関砲を1門ずつ、頭に対空レーザー砲1門、ミサイルも積んでますね、たしかこれは水中も進める凄いやつです。」
じゅえる「なんでこんなにてんこ盛り出来るんだ? 21世紀後半てのはそんな凄い技術の進歩があるのか?」

まゆ子「あー簡単に言うと、素材革命と動力革命によるものですが、なんといいますか一番凄いのは装甲材です。なんせ戦車の120ミリ滑空砲の直撃を至近で食らって平気な顔をしてますから。」
じゅえる「それそれ、なんであんなバカみたいな装甲になってるんだ?」
釈「あーそれがですねーそんなに不思議じゃないんですよアレ。」

じゅえる「え? 装甲ってあんな進歩してるの?」
釈「日本の新型10式戦車ってのがあるんですが、これがまた装甲凄いんですよ。軽量小型化してるのに、90式と同等以上の装甲強度を持つと言われてるんですね。」
まゆ子「ほんとかウソか知らないが、90式と同じ強度の正面装甲を半分の重量で実現できるそうだ。」
じゅえる「半分、まさかあ。」
まゆ子「いや、私もにわかには信じられないがしかし90式に比べると20年の差が有るんだ。この間の特にセラミック技術の進歩の具合を考えると、ウソと考える方が非常識なのかもしれん。」

釈「というか、戦車の装甲って他の国進んでないんですよね。増加増加で重量ばっかり増やしていって。」
まゆ子「そこは日本がまったく戦車を戦争で使ってないから、というあんま威張れない現実が有る。他の国は今ある戦車を使いまわす方針で改修改良を積み重ねているが、日本は使わないからそのまんま放置して新戦車開発時にぽんと新技術を投入してる。」
じゅえる「それは別に悪くないぞ、戦争しない方がいいに決まってる。」
まゆ子「うむ。」
釈「まったくです。」

まゆ子「そこでだ、強度そのままで20年で重量が半分になるのなら、40年で4分の1、60年で8分の1、80年で16分の1、100年で32分の1で実現できるだろう。という見込みでガスコーニュの装甲を見積もっている。」
じゅえる「うわ!」
釈「HAHAHA、そいつはすげーや。そりゃ最強ロボが出来ますよね。」
まゆ子「これは大袈裟な話じゃないぞ。装甲が進化するように武器も進化するんだ。今の兵器で撃たれたら、第二次大戦時のドイツ軍戦車だってさくっと貫通だ。」
じゅえる「そりゃそうだろ。」
まゆ子「120ミリ砲で使われるAPFSDS弾も25ミリ機関砲で同じような弾が使われるようになった。矢みたいなやつね。25ミリで昔戦車の重装甲をさくさくと貫通ですよ。」
じゅえる「うう、つまり、100年前の装甲兵器なんかまったくの無意味ってことか。」
釈「1945年はまだ70年未満ですけどね。」

まゆ子「というわけさ。ガスコーニュが装甲兵器として22世紀の戦場で生きていけるのならば、100年前の兵器なんかかきんと跳ね返すレベルじゃないといけない。」
釈「ウソ大袈裟紛らわしい、と言われようとも、このくらいは必要ってことなんですね。」

じゅえる「じゃあ超凄い機関砲ってのも実現可能なんだ?」
まゆ子「あれは実に控えめな数字で性能を見積もっています。秒速たったの2500メートルしか出ないしょぼい機関砲です。」
じゅえる「秒速2.5キロって、ダメなの?」
釈「いえ十分強力だとは思いますが、ダメなんですか?」
まゆ子「だから百年後の戦場ではダメだったら。」

じゅえる「つまりガスコーニュは22世紀初頭の兵器としては、ダメなの?」
まゆ子「だから魚潜水艦のおっちゃんアントナン・バルバートルはより進化したロボである「マーズマンST」を盗みに行きました。」
じゅえる「なるほど。」

 

まゆ子「実は機関砲両腕装備、と簡単に描いたがこれは失敗であった。デザイン上ね。なんとなればガスコーニュ小さい。腕も小さい。機関砲装備したら腕が無くなっちゃうのだ。」
じゅえる「うむ、そりゃあそうだな。身長3メートルしかないんだったな。」
釈「腕は2メートルですが、機関砲としてはさすがに短いですね。これはー。」

まゆ子「実はさ、ガスコーニュの3DCGを作ろうと思ったんだよ。でモデリングしている最中にそれ気が付いた。腕短すぎ。機関砲乗らない。
 そこで改めて、機関砲に手が付いているという形にしたんだ。腕が砲になっているという酷い形。」
じゅえる「ああ、デザインするとそりゃばれちゃうな。」
まゆ子「更に考えると弾倉を付ける場所が無い。これは困った。」
釈「小さ過ぎたんですねえ。」

まゆ子「そこでだ、今回はこれは仕方ない。だが次に出てくる機会があるとすれば、ガスコーニュ改というのを出す事としよう。

 変更点は2つ。右手はこれまでどおりの20ミリ先進機関砲ではあるが、装弾数が少ない。ほとんどリボルバーキャノンという。
 これは短砲身のこれ以上性能の向上を見込めない情けない砲ではあるが、21世紀現在の戦車にとっては十分過ぎる貫通力を持つ。つまりコスト削減タイプだ。
 左手は10ミリ機関銃。これは21世紀現在のまったくにまんまの機関銃であるが、弾に細工がしてあって多少は貫通力と破壊力を強化してある。もちろん通常弾も使える。
 というか、弱装弾を使って人間を死なない程度に射撃も出来る。もちろん弾いっぱい。という変更だ。

 更に頭部レーザー砲塔も撤去。レーザー砲は威力の割にコストが高価過ぎて発振媒体の寿命も短く、つまりカネばっかり食う兵器であった。所詮は21世紀初頭技術。
 というわけで対空兵器としてはミサイルに頼る事とする。もちろんこのミサイルは未来技術を使っているからコンパクトで強力。なんたって火薬が違う。」

釈「これまで人間撃てなかったんですか?」
まゆ子「弱い武器を持ってませんでした、てへ。」
じゅえる「そりゃあ、まあ、仕方ないか。スーパーロボに対人兵器なんか積まないしな。

 というかそもそも人型土管ロボってのは作れるのか? 機械的に。」
まゆ子「そこは素材革命だよ。100年で重量が32分の1になる素材を使えば、人型ロボの骨格くらい軽く実現だ。」
釈「あ、そうか。素材ってそこにも生きてくるんでしたね。」

じゅえる「動力は?」
まゆ子「マジックポット。『サルボモーター』で出てくる宇宙ロケット用にも使われる奇跡のエンジンだ。」
釈「言ってはならねえ動力ですね。」
まゆ子「実はこの動力は非常に重要なものでしてね、電力を馬鹿みたいに発生できるんですよ。これのお陰で「プラズマタール」を発生できる。」

釈「ECMまでガスコーニュ発生させていたんですか。とんでもないですね。」
じゅえる「でもECMはパトレイバーでも出来る機械出てたから、そんなに不思議でもないぞ。」
まゆ子「まあ、ロボットアニメでは普通ですかね。ロボにECM能力搭載は。

 で、この能力も排除されてコスト削減です。」
じゅえる「安い機械になったなー。」
釈「なんでですか? ガスコーニュお払い箱ですか?」
まゆ子「つまり廉価版をNWOの他の部隊も使うようになった、って事だよ。もちろんオリジナルに近い今の機体はそのまま国際傭兵団で使って、廉価版を支給。」

じゅえる「ふぅむ、なんか政策の変更があったわけか。」
まゆ子「いや、ほら、ドバイでやられまくりましたから。それに今回の物辺村観測所襲撃事件。」
釈「ああ、酷いやられ方しちゃいましたからねえ。そりゃ物理的戦闘力の強化は緊急の課題です。」
じゅえる「ドバイ編ってけっこう重要なんだな。」

釈「それでー、出番の予定はありますか。」
まゆ子「無い。」
じゅえる「無いの? ほんとに。」

まゆ子「次に出てくる予定のロボットは50メートル100メートルのエヴァクラスだ。宇宙怪獣も出てくる。ガスコーニュ改ではとても太刀打ち出来ないぞ。」
釈「それはー、ヤラレ役として是非とも出番を。」
じゅえる「ああ、それは可哀想。」

まゆ子「ガスコーニュって名前も変えるか。改てのもかっこ悪いし。
  レパードLeopardってのはどうだろ。」
釈「豹ですね。」
じゅえる「レオパルドだよ。かっこいいよ。」
まゆ子「カッコイイ方がいいっしょ。」
じゅえる「うん。」
釈「じゃあガスコーニュ改は『レパード』に決定です。」

 

じゅえる「でさ、22世紀初頭に活躍した機械なんだろ、ガスコーニュは。」
まゆ子「22世紀の10年代にはもうロートルですけどね。まあ使えないでもない二線級兵器です。」
じゅえる「二線級でいいけどさ、でも土管型人型ロボというのがほんとうに戦場に必要とされたのかい?」
釈「ああつまり、人型ロボってほんとに要るの? てお話ですね。」

まゆ子「こう言っちゃなんだけど、人型ロボって本当に要らないの?」
釈「えー、いや欲しいんですけどね。でも現実問題としてそんな複雑怪奇な機械があり得るのかと。」
まゆ子「それを解決するのが100年で32分の1になる装甲だ。つまりこんな脆弱な構造しか取り得ない機械が十分な防御力を持ってしまうんだ。」
じゅえる「そこはいい。モノとして実現可能だという前提の上で話をしよう。

 で、人型ロボに使い道はあるのか?」

まゆ子「というか、いつまで人間に歩兵をさせるんだよ。」
釈「えーそれはー、人間の必要が無くなるまでですかね。」
じゅえる「最終的に人間は人間によって制圧されないと納得しないからさ。だから兵士というのの需要が無くなるとは思えない。」
まゆ子「そりゃそうだ、人間を相手にしてたらね。でも戦場に人間は居るの? 22世紀に。」

釈「ロボット兵器の問題ですか。たしかにこれ以上の進化が続けば、ロボット兵器は生身の人間を脅かす存在となりますが、それはー時間的に何時かと言えば、」
じゅえる「百年ありゃ十分だわな。」
釈「そうですねえ、百年は長いですねえ。対人誘導ミサイルとか持ちだされたら、死ぬしかありませんよ。」
まゆ子「そういうこった。無人兵器ロボット兵器の導入と進化が進めば生身の人間の兵士は戦場から駆逐されてしまう。
 いかにパワードスーツをまとったところで、所詮は人間。たかが知れている。」

じゅえる「分かった。人間の兵隊は用済みだ、それは認めよう。

 だがガスコーニュみたいな人型ロボット兵器が、それも搭乗型ロボットが必要か。これは別の話だ。」

釈「とはいうものの、です。ガスコーニュは別に足じゃなくても車輪で動いてもいいんですよね?」
まゆ子「ロケットも付いてるさ。短距離ジャンプくらいはします。」
じゅえる「ワンマン万能戦車ってことか。というか、手が機関砲だったな。足で歩かなければロボですら無いわけか。」

釈「ガスコーニュに足が採用されている理由はなんなんです?」
まゆ子「歩行での移動が可能だからだ。」
釈「技術的に可能だから、ですね。でも車輪でもキャタピラでも無い理由はなんです?」

まゆ子「湿地泥濘地での移動の困難を考慮する必要が無かった。だからキャタピラは採用されない。」
じゅえる「ロケット付いてるからか。」
釈「泥沼にはまっても、水陸両用ですからね。ロケットでぼんと吹かして跳び上がればいいですか。

 車輪でない理由は?」
まゆ子「車輪では走行不能の領域にも行けるから。」
じゅえる「またロケットか。」
釈「つまりガスコーニュは地上ではロケットを頻繁に使って移動する機械なんですね。足はどうでもいいんだ。」
まゆ子「どうでもはよくないが、戦闘機動をする際にはロケット使って迅速に移動した方がいいでしょ。」
釈「つまり、足は単なる着陸脚に過ぎず、歩行はおまけ機能ですか。」
まゆ子「そう卑下したものでもないが、時速50キロ以上を出すようには作ってない。」

じゅえる「だいたい分かった。つまり低速領域でちょこまか移動する為の装備が足なんだな。」
釈「車輪やキャタピラとは目的がまったく違うんですね。」
まゆ子「そもそも一人用戦車みたいなものだからね。ちょこまかと大きな戦車が動けない場所に行くのが任務ですよ。」

まゆ子「実のところ、ガスコーニュは通常歩行の際も噴射しながら動いてるんだよ。高速で噴射するんじゃなくてゆっくりとだが膨大な量の空気を扱っている。
 なんといいますか、空気のおまんじゅうの上に乗っかって動いてるような感じです。だからふんわり歩ける。」
じゅえる「今の技術じゃないな。つまりヘリコプターの親戚みたいなものなんだな、こいつ。」
釈「というかホバー、いえフライングマシンですよ。二足歩行なんかほんとにどうでもいいんですねえ。」

まゆ子「足が必要なのはむしろ射撃時の安定性を確保するためだ。射撃の反動を抑えるために、接地しなくちゃいけないから足が有る。

 これは随分と進んだ技術で、射撃のタイミングに合わせて巧みに足捌きを換えて、反動が機体の姿勢や運動に影響しないように常に大地に受け流しているのだ。
 だから見る人は、ガスコーニュは反動の無い武器を使ってると誤解してしまう。」
じゅえる「白鳥は水面下では足を云々、だな。」

釈「えーとつまり、ガスコーニュの歩行は言うなれば、キャスター付きの椅子に座って足で漕いでいるようなもの、って事ですか。」
じゅえる「ほお、なるほど。そういう感じで足を使う手もあるわけだ。」

まゆ子「うー、なんかバカにされてるみたいだ。ロケット無しでもちゃんと歩けるんだぞ。」

 

2012/12/16(オーラシフター誕生)

 

2012/10/31

まゆ子「586枚! 『ゲキロボ☆彡』5巻めはこんな枚数になってしまいましたよ。」

じゅえる「あー。」
釈「あーそれはーなんといいますか、さすがにドバイ編長過ぎです。」
まゆ子「まあ冒頭に祝子の祝言がありますからそれを抜いたとしてでもね、

 童みのりがドバイに行って世界一タワーをぶっ壊してきた

という一行を描写する為にこんなんなっちゃいました。HAHAHA」

じゅえる「そんなに書くのならどっか出版社に投稿して本にしろよ。」
まゆ子「それがさ、HP上で横書きで表示されるのに最適化しちゃったから、400字詰め原稿用紙に直すと違和感があるのさ。」
釈「たしかに文章というのは最終的に読者に提示されるメディアの形式に拘束されますよね。」
まゆ子「直すのめんどくさいしねえー。」

じゅえる「まあいいや、ドバイ編やっと終わったぞ。」
まゆ子「おう、さすがに能力バトル8連発は疲れた。二度とやらない。」
釈「JOJOは凄いですねえ。やっぱ才能ですねえ。」

まゆ子「というわけで通常体制に戻ります。8月突入です。次は花憐ちゃんが主人公。」

じゅえる「しかし今回童みのりは割と知性派だったんじゃないかな。というか祝子があんまり知性的でないように感じたけど。」
まゆ子「わざとそうしました。みのりちゃんが頑張って頭を使って、祝子さんはみのりに合わせて理屈っぽくならないように気を使って、でも祝子の方が上。という仕組みです。」
じゅえる「ああ、祝子さんはみのりのレベルに合わせてたんだ。」
まゆ子「大人ですからね。」

釈「花憐ちゃんのキャラを掘り下げますか。」
まゆ子「そうだねー彼女の家族関係は書かにゃいかんだろうね。少なくとも実父と先妻後妻そのまた次の妻については書かにゃ。」

じゅえる「あそこの家はそんなにめんどうなんだ?」
まゆ子「花憐ちゃんのお母さんは二番目だよ、離婚してないが巴里に別居だ。で市議会議員のお父さんには籍には入ってないが三番目が居るという寸法。」
釈「不幸だったんですねえ花憐ちゃんは。」
まゆ子「そこがねー、そうでもないというか、性格的なものというか。

 えーとつまり花憐ちゃんの家族はこうなっています。 父、兄、花憐、妹。」

釈「兄と妹が居たんですか!」
まゆ子「つまり先妻の子である兄、二番目で現在も妻である母の子である花憐、三番目つまり愛人という事になるのだがそれの子である妹、なのだ。」

じゅえる「それで何故揉めないのだ?」
まゆ子「一番揉めたのが先妻だ。或る意味悲劇のヒロインなんだな。
 つまり、物辺村の庄屋で村長でもある城ヶ崎家は割と名家なのだ。だがその権威の根源は物辺神社にある。神社の霊力を背景にその執事としての城ヶ崎家が実務を担当する。そういう形になっている。
 昭和になって新憲法に変わってもその構造は変わらず、物辺神社とその信者を背景として城ヶ崎家は地方政治に進出していたのだ。

 さてであるからして、花憐の父も政略結婚をさせられる。やはり地方の実力者である家の娘を嫁に取った。これが先妻。
 彼女は名家の出身らしくお嬢様お姫様であるから、自分が一番でなければ気が済まない。まあ普通にお嬢様育ちなんだ。が、コレが間違いの元。

 この当時まだ物辺咎津美が生きていました。」
じゅえる「贄子饗子祝子のおかあさん、で先代の物辺神社の巫女だな。とても無茶苦茶な。」
釈「城ヶ崎家よりも物辺家の方が権力が上だから、それはーそのお嬢さんは酷い目に遭わされたわけですか。」

まゆ子「というわけで権力者の嫁になったはずなのに、咎津美にいじめられてしまう。ま、咎津美にしてみれば普通に接していただけなんだけど、普通人が勝てるはずも無し。」
釈「はあ。」
じゅえる「だろうね。」
まゆ子「で、花憐の兄が生まれたからと言って状況が改善するわけも無し。これ以上は耐えられないと赤ん坊を連れて実家に帰ってしまいました。」
じゅえる「定番だね。」

まゆ子「二人を結婚させた仲人他も大いに反省しました。やはり咎津美様と衝突する女では城ヶ崎の嫁は務まらないと、今度は性格の穏やかな娘を選んで正式に結婚させる計画を進めます。
 で、先妻は籍を抜いて縁談も整い、結婚式という当日。咎津美様が亡くなります。22年前ですね。
 あの女さえ居なくなれば、と先妻が殴りこみの形で城ヶ崎家に舞い戻ってきます。ま、花憐の兄というれっきとした嫡男が居ることですから周囲も止めようが無い。」

じゅえる「あーそりゃーなんと言いますか、揉めたんだね。」
釈「その人もいい加減可哀想なひとですね。」
まゆ子「可哀想なのはこれからだ。その先妻は咎津美さえ無くなれば物辺神社は弱体化する、と思っていた。
 でもね、咎津美には贄子饗子祝子という三姉妹が居て、贄子20歳。東京の芸能界で活躍中です。饗子は14歳中学生。祝子は8歳。」

釈「……、先妻は誰に殺られたんですか?」
まゆ子「基本的にその時点での巫女は饗子さんで、彼女は割と人当たりの良い性格をしているんですけどね。

 ただ時々帰ってくる贄子が悪い。
 彼女が帰ってくると島の空気がぴぃーんと変わる。島以外の会合でも贄子が来るとその場の空気を完全に支配してしまう。
 それが贄子の超能力だし。

 それにだいたい贄子は母親咎津美似なんだ。優子も似ていると言われるんだけど、ま死人が生きて帰ってきたわけですね。
 しかも咎津美と違って贄子は政治向きの話が割と好き。政治も演劇性を持っているから、やろうと思えばどうとでも出来る舞台なのだ。」

じゅえる「どーしようもなく勝てねえな。」
釈「それで心労で死んじゃったんですか?」
まゆ子「死んじゃいました。憤死です。それで計画通りに花憐の母親が正式に城ヶ崎家に迎えられます。
 で、花憐誕生。
 この頃は贄子は物辺神社とは音信が疎遠になっていて、11月末には優子を置き去りにして失踪します。
 饗子も大学進学していて、中学生の祝子と衝突するという事はなくごく平穏無事に彼女は嫁をやっていました。」

じゅえる「めでたしめでたし。だがどうして花憐母は別居になるのだ?」
釈「旦那の浮気ですか?」
まゆ子「ありていに言うとそうです。」
釈「はあ。」

まゆ子「まあ実を言いますと、花憐8歳の小学二年生の頃に物辺神社で怪現象が頻発します。おばけ幽霊がどんどん出て天変地異怪異がどっちゃりなのです。
 これにびっくりして家から、物辺島から逃げちゃうんですね。
 ちなみに花憐の誕生日は5月の連休頃だから、クラスメートより早く歳をとります。」

じゅえる「それってもしかすると、ゲキのへのこの御神体を優子が悪戯した事件か。」
まゆ子「なんですね。」
釈「オカルトには勝てない女だったんですね、花憐母は。」
まゆ子「それでもうこの島には戻れない、と思っている内にフランスで宝飾デザインの勉強をしようと思い立ったわけなのです。まあちと遅い自立心の芽生えですね。」
じゅえる「それで花憐は置き去りなのか?」
まゆ子「だって、花憐ちゃんは優子の悪戯と知っているから、あまりびっくりしなくって。」
釈「現場を見ていますからね、悪戯の。」

まゆ子「それで女房がフランスに逃げてしまえば、父は困るわけですよ色々と。それでなんやかやしている内に女が出来まして。」
じゅえる「至極当然だな。」
釈「花憐母はお化けが怖くて帰って来れないわけですよ。」

まゆ子「というわけで、花憐には兄と妹がいるわけです。兄はもう社会人ですから家には居ない。妹は愛人の子だから家には入れない。

 とはいうものの、花憐と妹は仲がいいです。花憐ちゃんは優しいからね。それに妹は5歳だから、意地悪する気にもならない。
 というか、兄と花憐も仲はいいです。
 特に兄は、なんといいますか実母がヒステリーばっかり起こしていたのを間近で見てへきえきしてましたから、むしろ花憐母のおっとりした感じの方がほんとの母親っぽくて良いと思っていましたから。」
釈「そういう母親はやっぱり嫌ですよねー、子供にとっては。」
じゅえる「ヒステリーはねえ。まあ物辺神社の犠牲者なんだけどさ。」

 

まゆ子「とまあそういうわけで、城ヶ崎の家には花憐しか居ない。父もよく外に出て帰って来ないから、お手伝いさんと二人だったりする。
 ま、昔漁師だったおじいさんというのが家の手入れしてくれますから、別に寂しくないですけどね。」
じゅえる「そのお手伝いさんというのは何者?」
まゆ子「あー、村のおばちゃんだよ。ちゃんと旦那と子供も居るぞ。

 でもおばちゃんは夜になると自分家に帰ってしまうから、そういう時は夜用のお手伝いさんというのが何故か来ます。」
釈「なにもの!」
まゆ子「あー花憐はまったく気にしなかったんですけど、その正体は陰ながら物辺神社を守るニンジャです。」
じゅえる「やっぱり!」
釈「やっぱり!」

まゆ子「城ヶ崎家はだいたい物辺島の門番ですからね。戦闘要員は常に配置されているんですよ。花憐はまったく気付かないけれど。
 というか、まあそうなんだよね。家にニンジャクノイチが居る環境に暮らせば、そりゃ先妻も頭おかしくなるわな。」
釈「被害者ですよ。」

まゆ子「それで夜用お手伝いさんを花憐は「トノイさん」と言ってました。でお金持ちの家にはそういう人が居るものだとばっかり思ってました。
 小学校高学年になって、トノイが「宿直」だと気付くまで、ぜんぜん普通に思ってたわけです。」

じゅえる「トノイさんは、昼間は何してるんだ?」
まゆ子「そりゃ寝てますよ。宿直だから。」
釈「そういう事じゃなくて、真の身分のニンジャとしてですね、昼間は何かしてないんですか?」
まゆ子「まあ、だいたい1年くらいで人が代わりますからね。時々夕暮れの勤務前に神社のじいさんと木剣で組太刀の稽古とかしてるから、花憐は剣術のお弟子さんかなと思ってました。」

釈「花憐家で寝てるんですか?」
まゆ子「いや、朝になるとどこかに帰っちゃうよ。島の外に。」
じゅえる「そっちが本拠地か。」
釈「物辺村全体で宿直は一人なんですか?」
まゆ子「あー、夜間警備員として考えれば3人くらいは必要かなあ。特に海側の警備は盲点になり易いし。」

じゅえる「つまり2008年にゲキの発現が有るずっと前から、アンシエントによって物辺島は見張られてきたんだ?」
まゆ子「江戸時代はそこらへんを治める藩によって特別にね。秘密体制になったのは明治以降だ。」
釈「橋が掛かったのが昭和の戦後になってから、ですから宿直さんが島に泊まるようになるのもそれくらいですかね。」
まゆ子「ああ。戦前は気性の荒い漁師が寝ずの番とかをしてたからね。特に必要でもなかったよ。」

じゅえる「今現在2008年夏も、トノイさんは居るのか?」
まゆ子「子供の頃は1人しか居なかったのに、今は3人も居ますよ。しかも男の人まで居る。もちろん花憐のお父さんの許可有りです。
 花憐家は広いから別にそんな人数困らないけれど、男の人が夜も泊まるというのはちょっとどうなんだろとは思ってます。

 ちなみにお父さんは週に2日は帰ってきません。愛人の所に泊まってます。」
釈「妹が寂しがりますからね。」

 

じゅえる「それで、城ヶ崎家の家督は兄が継ぐわけかい。」
まゆ子「あーでもねー、花憐兄は政治向きの性格はしてないんですよ。割と大きな企業に今はちゃんと就職していますけど、それを辞めて市会議員になれと言われましてもはいそうですかとは。」
釈「世襲議員は嫌ですか。」
まゆ子「花憐父の構想では、兄はこのまま普通でいい。花憐にしかるべき婿を迎えて城ヶ崎家を守らせよう。とか思ってました。

 ゲキの力を授かるまでは。」
じゅえる「まあ、NWOとか出てきた日にはそんなゆうちょうな事を言ってられないからな。」
釈「世界のお姫様にされちゃいますからね。」
じゅえる「つまり、城ヶ崎家の当主であっても、NWOのゲキ継承シナリオからはまるっきり外されていたんだ?」
まゆ子「事が世界の千年先の歴史までも確定する重大事だからね。それとなく知っていたのは物辺のじいさんくらいなものだよ。」

釈「そのじいさんです。ホントは何者なんですか。どこかのアンシエントの構成員なのは間違い無いですよね。」
まゆ子「そこも説明が難しいんだ。つまり、ミスシャクティの予言が明らかにされる前のアンシエントの計画に従って咎津美と結婚しているからね。
 一応そのアンシエントは鳶郎のニンジャ組織とは近い関係に有る。という程度だな。
 もちろんじいさんはニンジャではない。が、武術の達人だ。」

 

2012/09/22

まゆ子「ところで私は反省しなければならない。」

じゅえる「藪から棒にどうした。」
まゆ子「これまで『ゲキロボ☆』はいい加減過ぎる展開でした。特にキャラクターは出たとこ勝負でてきとーに投入して、お恥ずかし限りです。」
じゅえる「いや、それを言い出したらなにもかも始まらないから。」

釈「一体どういう心境の変化なんですか?」
まゆ子「ドバイ編を書いていて思ったんだ。まさかメイスン・フォーストがここまで味の有る人物になるなんて、プロット上では想像もしなかった。」

じゅえる「ほー。」
釈「すと。」
まゆ子「ああそりゃ今までてきとーにキャラを放り込んで来ましたさ。設定作るのがめんどくさいし、第一書いてる最中に性格ころころ変わりやがるし、そもそもが書いてるとどんどん血肉が通って行くのが面白うござんした。
 だがそれの限界に突き当たった、というわけさ。特に男子!」

じゅえる「男性キャラはなるほど、なかなか当たりが出ないな。」
釈「女性キャラは出る子全部当たりなんですけどね。」
まゆ子「だが男性キャラ無しに物語は出来ないのさ。男はロジックを司る役割を持つからね。男をしっかりと描写しなければ、ロジカルな物語は描けない。」
じゅえる「だが行き当たりばったりでてきとーに投入してきたツケを思い知ったというわけか。」
釈「偉いですねー進歩しましたね、まゆ子センパイ。」

まゆ子「というわけなのさ。私が今後も小説という名の駄文を書き続けるには、少なくとも男性キャラはしっかりと設定を組んでから投入すべきだと、方針が決したのだ。」
じゅえる「異議は無いよ。」

まゆ子「ところがだ、これまでそれをやって来なかったのも理由有っての話だ。設定をちまちまと組んでいってもどうせハズレるんだ。物語中で動かしていれば設定を逸脱してもっと面白い方向に行ってしまう。無駄。」
釈「わかりますわかります。メイスン・フォースト氏がまさにそれだったわけなんですね。」
まゆ子「そこで対策を考えた。そりゃ考えるさ。で当然の結論に突き当たった。

 あんたら考えろ。」
じゅえる「あー。」
釈「あーそれはまさに王道ですねえ。」
じゅえる「明美呼ぼうか? アイツはまさに男キャラ製造機だから役に立つぞ。」
まゆ子「明美はシードを与えてくれる役だけでいいよ。私達が考えつかない方向から石を投げてくれる。だが必要なのはロジックだ。
 つまりどんなキャラが欲しいかは、明美に聞く。だがそれがどんな性格と背景を持つキャラかは、独断で決めるよりあんたらに頼んだ方が確実だ、て結論だ。」

釈「良い判断です。」
じゅえる「まあ、力を貸すのにやぶさかではないぞ。というか、キャラ作りにはこれまで関与しなかったのが嘘みたいだ。」
釈「そうですね。考えてみればそんな重大事を何故今まで独占してきたのですか、まゆ子先輩。」
まゆ子「だって、基本男は添え物だもの。主役は女の子、それを引き立てる舞台装置が男。そういう感覚でこれまでずっとやって来ましたよエッヘン!」

じゅえる「読者の皆様お聞きになられましたか。」
釈「これが『でぽでぽ』の真実です。」

まゆ子「エッヘン!」

 

まゆ子「さて実務に戻ろう。

 ドバイ編ラスボスの性格はどうしようか。ドバイ編はようやく終わるけど、まだまったく考えてないのさ、これが。エッヘン!」

じゅえる「相変わらずの泥縄だな。」
釈「舞台装置ですからしょうがありませんねえ。」
じゅえる「で、

 どうって、どんなのが欲しいんだよ、それで決まるさ。」
釈「そうですねえ、やはり悪の親玉ですからカリスマが欲しいですね。あと将来のビジョンというのが確として有る方が説得力が出易いですよ。」

まゆ子「ふむ、将来のビジョンはともかくカリスマ性の根源は考慮せねばなるまいね、じゅえる。」
じゅえる「どの系統のカリスマか考えないといかんな。いかにドバイ編がジョジョを下敷きにするとはいえ、悪の救世主ではさすがにパクリが過ぎるだろ。」
まゆ子「ジョジョの悪玉に似ないようにしなくちゃね。」
釈「ではかなりキャラの性質が絞られますね。悪ではなく正義の別の側面、というかたちで行きますか?」
まゆ子「却下。というか、こんなとこですぐ消えるキャラにそんな上等な設定はもったいない。後の話で使うよそういうのは。」

じゅえる「たしかに、このキャラはさくっと殺されるのが決定しているのだから、後に使える設定を振るのは得策でない。」
釈「なるほど、そこまで考えるのであればここは単純な悪の帝王にしておきますか。して、どの程度の悪に?」
まゆ子「マフィアの親分程度?」
じゅえる「なるほど、それは使えないでもない。表の顔、というか裏の仕事の顔役一般人マフィアを率いる犯罪者であるが、真の姿は宇宙人の力を駆使して世界の改変を志す悪党。こんなとこか。」

釈「一般人マフィアの親分、それは許されますかねまゆ子先輩?」
まゆ子「そういうことか、なるほど。

 つまりカリスマは手下のマフィアにだけあって、宇宙人仲間の間には特にそういう序列は無いんだ。同志ではあるが上下は無い。」
じゅえる「そうか、親玉が必ずしも偉いわけではない、という話だな。たとえば宇宙人同好組合の幹事程度の役割で。」
釈「では宇宙人の仲間に対しては指導力を持たない?」
まゆ子「指導力は無くとも、現実的方策は唯一彼のみが持ち合わせる。彼等を鳩合してひとつの勢力にまとめ上げていたのは彼の事務処理能力であった。」

じゅえる「事務処理!」
釈「とんだカリスマも居たもんだ。」

まゆ子「てな設定であれば、つまり親玉は一般人マフィアの間では不死の超人としてカリスマを認められる。その雰囲気はそっくりみのりとの対面にも持ち込もう。」
じゅえる「人間が備える風格というものは、別に他所の分野で築いたものであっても有効ってことだな。」
釈「宇宙人としての行動に由来しなくても偉そうに見える、ってことですか。たしかにそれはそうですね。」
じゅえる「スポーツ選手がテレビに出るようなものだな。」

釈「ではあってもですよ、宇宙人仲間に対してはどのようなスタンスであればいいでしょう。そういう人物であれば特に仲間意識も無さそうですが、それに仲間はもう全滅してますよ。」
まゆ子「ああそうだなあーそりゃ困るな。」
じゅえる「そもそもクリンタ城の悪党は7で、8人目になるわけでしょ。彼はどのチャンネルで宇宙人になったんだ?」

まゆ子「この宇宙人はクリンタ城で感染するのだが、彼に限って言えばクリンタ城は関係無い。
 そうだなー、ザックームと寝たら感染した、というのはどうだろう?」
じゅえる「性交渉による自然感染!」
釈「あー、皮膚常在菌ですからねえ。それはあっても不思議ではないというか、むしろ当然というか。」

じゅえる「ちょっと待て。であれば他の宇宙人同志からは彼は軽く見られるんじゃないか? なにせ、選ばれた存在ではない。」
釈「確かに。」
まゆ子「確かに。しかしだからこそ8番目が可能である、とも言えるか。」
じゅえる「そうだな、一番強い奴が一番下っ端、というのも意表を衝いて面白い。そのラインで行くか。」
まゆ子「採用です。」

 

まゆ子「さて、であれば彼はどんな性格であるか考えるぞ。マフィアの親分が本職であれば怖いだろうな、それは。」

じゅえる「だがちょっと待て。彼が親分になるのは宇宙人に感染した前か後か、どっちだ?」
釈「この線であれば、後でしょうね。」
じゅえる「うむ、無敵を獲得したからこそのし上がったケースだな。心底よりの大物ではない、というわけだ。」
釈「心底で生まれつきの器量でのし上がる、というマフィアより少し貫目が落ちますが、いいんですか?」
まゆ子「むしろそのくらいの軽さと薄さが特異的ではないだろうかね。下っ端ではないが、完全な大物になるにはなにかが足りない。」

じゅえる「そのなにか、を手に入れる為に宇宙人同志を鳩合する。ふむ、論理的だな。」
まゆ子「ドバイの繁栄の裏で彼のマフィア組織は大発展するけれど、さらに上を望む。いや、宇宙人の力を持つからこそ、ここが頂点では有り得ないと知っているわけだ。」
釈「そこで様々にルートを探して、スクナ君との接触に成功する、ってことですね。」

じゅえる「それはあれだ。彼は宇宙人クリンタ城の同志を探して纏めあげて、この力を背景とした新しい王国を築こうとしたんだ。
 その時スクナ君と接触してみのりのお見合いパーティというイベントを知り、これを揺さぶる仕事を引き受けた。
 世界の真の支配者達の会合に干渉して、自らの組織のレベルアップに励む、いや、この仕事を通じてクリンタ城の連中を支配下に置こうと画策した、

 こうか!」
釈「納得です。」
まゆ子「納得だ。」

じゅえる「だがクリンタ城の同志は全滅しているぞ。どうしたものかな。」
まゆ子「ああ、それはいいんだよ。彼にとっては。

 つまり、クリンタ城に行けば宇宙人に感染出来ると知っているから、新しい同志を選んで連れていく。それが出来ると確信している。」
じゅえる「自分では行ったことが無いのに?」
まゆ子「むしろ、彼のその根拠の無い確信こそが、クリンタ城の同志をまとめるのに功を奏した、と考えてはどうだろうか。
 クリンタ城の同志は彼を格下に見るが、クリンタ城に行きたいと願う彼の強い想いは無視できない。というよりは、クリンタ城にもう一度行くのは彼等全ての共通の願いでもある。」
釈「ふむ、つまり能力的には格下であっても、志的には上である。そういう関係ですか。」

まゆ子「さらに彼が唱えるクリンタ城の同志による新しい王国の建設。これがかなり有望な構想であった。こんなところでは。」
じゅえる「ふむ。かなりまともな人物だな、彼は。ビジネスマンぽいんだ。」
釈「そうですね、マフィアではなく表の世界で成功してもいいタイプですよ、それ。」

まゆ子「いやいや。彼は生まれはそんな恵まれたものじゃないんだ。下層の、中東であれば難民出身でもいいさ。まともな成功どころか仕事さえ無い。暗黒街に生きるしか道が無かったんだ。」
じゅえる「ふむ、気の毒だな。才能は有りそうなのに。」
まゆ子「才能は有るが、それまでは気付いてもいなかったんだ。自分は無力な只の人間に過ぎないと諦めきっていた。
 だがザックームと出会い愛されて、能力を得る事で才能が開花した。」

 

釈「なんか、良い感じの人物に仕上がりましたね。さっくり殺すには勿体無い。」
じゅえる「ああ、ちょっと勿体無いな。」
まゆ子「まあ、ここに書いた事がすべて本編で描写はされないだろうからね。ちょっとだけ匂わせればいいよ。

 なんだったら別の話で彼を流用する。」
じゅえる「おう。」
釈「可です。」

 

2012/09/09

まゆ子「ドバイ編はやっと最終章に到達した!」

じゅえる「偉い!」
釈「痛みに耐えてがんばったエライ!」

まゆ子「次はドカンロボの襲撃だが、これはさくっと処理できる。問題はその後の、王子様だ。」
釈「花憐さんの謎迷宮めぐりですね。叙述トリックを使うと、」
まゆ子「あ、叙述トリックは使いますがまあ簡単に。おそらく金返せ的効果を発揮できるでしょう。」
じゅえる「おお、見事な叙述トリック。」

まゆ子「最初の構想ではどんちゃん騒ぎでクイズショー、なんだけどこれは部分破棄します。鏡の国のアリスという感じで行きたいと思います。」
じゅえる「鏡の方か、じゃあチェスだな。」
釈「不思議の国はトランプの女王ですね。」
まゆ子「うん。つまり、王子様の双子の妹を白の女王として、花憐を黒の女王としてチェスをするんだね。」
じゅえる「なるほど。」
釈「なるほど。でもチェスだと物語化は難しいですよ。チェスの定石をたどるのもありふれてますし、知らないけど。」

じゅえる「チェスはー、花憐出来ないだろ。」
まゆ子「できませんね。」
釈「圧倒的に無謀な挑戦です! どうしますか。」

まゆ子「謎解きは有った方が良い。」
じゅえる「チェスだからと言って、甲冑の騎士が斬り合うとかは無し、てことか。」
釈「それやっちゃうとハリーポッターになりますからね。」
まゆ子「いや、斬り合いするけどね、面白いし。」
じゅえる「意味もなく武力で解決では意味が無いわけだ。」

まゆ子「どうしよう?」

釈「……ネタもトリックも無しに、謎を作ってくれというご依頼ですか。」
じゅえる「丸投げにもほどがあるぞ。」
まゆ子「だって、思いついちゃったんだもん。なんとかして。」

 

釈「ここでゲストの登場です。山中明美壱号さんです。」
明美「どもー。」
じゅえる「ちょっと待て、困った時の明美頼りは分かるが、謎とかトリックとかと一番縁が無い女じゃないか。」
明美「えー、今日はひょっとして頭脳労働?」
まゆ子「うん。」
明美「帰るー。」
まゆ子「まあまあ。

 で、まあこういうわけなんだ。なんか無い?」
明美「そんな無茶な。だいたい私推理小説とか読んでもさっぱりわからないよ。」
じゅえる「推理小説は関係無いんだ。トリックだから、パズルだから。」
釈「そうですねー、チェスを応用したというかイメージで使うトリック仕掛けの物語ですよ。HAHAHA、こりゃあ難しいや。」
明美「元ネタとか無いの? それを下敷きにしたらというかパクればOKってネタ。推理小説とかには有るでしょいっぱい。」
まゆ子「あるんだろうねえ。」
じゅえる「そりゃあ日本の小説は別として、英語圏やフランス語圏なんかじゃ腐るほどあるだろうね。」

明美「そもそも何の為に花憐さんは勝負するんです? というか、勝負するの?」
まゆ子「そりゃ勝負だろ。チェスだから。ねえ?」
じゅえる「根本的なところから来たな。確かに何の為に戦うか、いや戦いという形式を取らねばならぬのか、から考えねばならないか。
 敵は王子様なんでしょ? 何の為に?」
釈「そりゃーお嫁さんにする為にです。」

明美「勝負に勝ったらお嫁さん? そりゃあ変でしょ。おかしいよ。ロマンスじゃない。」
釈「確かに。勝負の目的は嫁取りではなく、自らの能力の誇示です。同じゲキの能力を継承する者の先達として、エライ所を見せようというのが目的です。」
まゆ子「どちらが上位に来るべきかの確認、マウンティングだな。」
じゅえる「イヌとかサルのアレか。」
明美「なんちゅー色気の無い話だ。だけど男のレベルが分かりましたよ。

 そいつ顔は良くてもバカだね。」
釈「それで妹も苦労しています。」
じゅえる「対等のゲームじゃないんだよ、これ。王子様がキングだけれど、戦うのはあくまでもクイーンの妹だ。花憐は妹と戦う。」
釈「ますますもって下衆ですね。王子様。」
まゆ子「下衆王子か、これはイケる。うん、もっとやってもっと。」

 

明美「そもそもチェスの駒ってのはなにがあったっけ?」

釈「う、」
じゅえる「うう、そこから説明せねばならんか。まあ、明美だからな。

 チェスの駒は将棋より狭い8×8のマス目内部でゲームを行う。つまり横列8縦列2計16個の駒を一セットとして、白黒2組に分かれて戦います。
 将棋で言う「歩」の駒は「ポーン」、以下「ルーク」「ナイト」「ビショップ」が2個ずつ、中央に「クイーン」と「キング」が1個ずつ。」
明美「キングとクイーンは1個ずつしか無いの?」
釈「キングはともかくクイーンが1個というのは変な気がしますね。将棋の常識からすると。
じゅえる「まあ飛車角は無いし、というか飛車角2個ずつあるし。」
釈「クイーンは飛車と角と合わせた最強の駒です。問答無用に強い駒です。」

明美「質問! クイーン取られたらピンチですね?」
じゅえる「あー、まゆちゃん?」
まゆ子「死にますね、そりゃ。」
明美「でもこの勝負、クイーンが花憐ちゃんと妹でしょ。クイーンがそんな大暴れしたら死ぬんじゃない?」
まゆ子「もっともだ。」
釈「あー、そうすると実質キングとクイーン抜きのチェスをしなければならない、と。確かにそうですね。
 まゆ子先輩、クイーンを超強力な能力にしますか?」
まゆ子「とんでもない。臆病者の花憐ちゃんですよ!」

じゅえる「ああ、なんとなく話が見えてきたぞ。チェスに見せかけようとして既に失敗しているんだな、王子様。」
釈「本来有り得ないはずの配置にしちゃったから、勝負というものが成り立たなくなってるんです。」
明美「つまり、チェスの駒の下っ端しか使えない状況に陥っているんだね。花憐ちゃんにはキングが無いんだから。」
まゆ子「キングに相当するもの、というのを用意するのも億劫だしね。」

明美「謎解きをすればいいんだね。しかも相手より早くに。」
まゆ子「確かにそうとも言える。あーそうだね、じゃあ王子様の仕掛けた罠を妹と花憐がどちらが早く解けるかの競争、なわけか。」
じゅえる「つまらん。」
釈「それは却下です。」

明美「下っ端の駒は美男子とか渋いおっちゃんとかショタの男の子とかにしてはいけないかい?」
まゆ子「却下!」
じゅえる「機械的な甲冑人形と思ってくれ。基本的にこの話、目立つのは王子様だけだ。」
明美「ほおほお。なるほど、つまりただの人形であるから駒にふさわしい特殊能力というのは別に設定しなくてもいいんだ。」
まゆ子「あー、なるほど。名目上その名称が付いているだけで、機能は無しか。まあそういう仕組みであっても良い。」
釈「駒はただの駒ですからね。」

明美「将棋みたいにマス目をちまちまと歩いて行って戦術ゲームをする、というのはつまらない。かと言って双六もありふれてるでしょう。こないだ『スーラ』って映画を見たよ。」
まゆ子「双六、ね。確かに最初はそれを念頭において計画していました。すいません。」
じゅえる「というか、双六計画がドバイのみのり夢攻撃で先に使われちゃったから、困ってるわけですよ。同じネタを使うわけにはいかない。」
明美「それを先に言いなさい。

 あー、つまりゲームは三番勝負! ルーク・ナイト・ビショップ。8個のポーンが持ち金のチップとして、最低1枚ずつを賭けていく。てのでは。」
まゆ子「既にチェスはどうでもよくなってるな。しかしその案を採用しよう。」
じゅえる「チェスまったく関係なしでいいのか?」
まゆ子「ルークは城壁、つまり迷宮勝負。ナイトは騎士、騎馬戦勝負。ビショップは僧侶、なぞなぞ勝負だ。」
釈「おお、尺の問題を考えてもそれくらいでいいんじゃないですか。」

じゅえる「ポーンつまりチップを賭けていく方法が問題だな。参加料は良しとして、ゲームを有利にする手続きをするたびに1枚ずつ使っていくというのはどうだろう。」
まゆ子「助言を得るとか道具を買うとか、あるいは賭け金を増額するとかだね。」

 

明美「あのところで、王子様ってどんな能力が使えるの?」

まゆ子「鳩保と同じ絶対服従命令だよ。だがそれとは別に、古代英雄人種という連中が使っていた「洞窟」という能力が使える。」
明美「なにそれ?」
まゆ子「日本語ならば「仙洞」と呼んだ方が分かり易いか。つまり壺中天のように仮想的な空間を作り出す能力だ。
 もちろんコンピュータの仮想空間とは異なり、その空間内の文物をリアル社会に持ち出したり、またその空間に数十年暮らすなんて芸当も出来る。
 また洞窟の先はいろんな所に繋がっているから、テレポートも可能だ。限定的だがね。」

明美「つまり王子様は、俺はこんな空間を作り出せるんだぞー、というのを花憐ちゃんに自慢したいわけですか。」
釈「うーむ、大人げない子だな。」
まゆ子「よし、じゃあこうしましょう。この「洞窟」には恐ろしいほどの数の人間が住んでいる。だがそれは全て仮想的なキャラクターだ。
 しかし、能力を持った人間であればここで何年でも不老不死で暮らせるのだ。」
じゅえる「なかなか思った以上に凄い能力だな。天国生成能力じゃないか。」
まゆ子「つまりこの世界、夥しい人の中に生身の人間が隠れている。

 ルークのステージは、或る一定の範囲内つまり城内の中から「生身の人間を見つけ出す」というクエストだ。」
釈「見分け方は?」
まゆ子「常人の目で分かるような中途半端な術はこの世界では許されない。またこんな所に来る人間は只者ではない。」
じゅえる「見分けが本質的につかない、というわけだな。うーむ、それは大変な難題だ。」

まゆ子「ついでにポーンも設定しておきましょう。ポーンは歩兵であるから、人間形態になって色んな命令を遂行できる。
 だが通貨、コインとして他者に与えた場合どのような願いでも一つだけは確実に叶えてくれる。これは絶対的な命令であって、人を殺せとか自分が死ねとかも即座に遂行される。
 この二つの能力を駆使して、花憐は謎を解かねばならない。」

じゅえる「制限は無いのか?」
まゆ子「生身の人間は拒否できるぞ。NPCじゃないからね。判別手段でもあるわけだ。」
釈「だが与えてみなければ分からない、て事ですか。」
じゅえる「そこらへんの説明ロボットを花憐に「キング」として与えておこう。「ポーン」は喋れないとして。」

明美「同じクエストを妹もするんだよね、王子様の。妹は特殊能力は無いの?」
まゆ子「あー、どうしよ?」
じゅえる「魔法くらい使わせてやれ。兄と同じ程度に。」
釈「やはり同じ「洞窟」能力者でありますからね。」

 

じゅえる「第二ステージの騎馬戦は、やはりクイーンの花憐が乗って戦うのか?」
釈「競馬の方がおもしろいんじゃないですかね、障害物競走で。」
明美「その仮想空間内全体を飛び回って読者に紹介するシーン、というのは無いと困るんじゃないかな。」
まゆ子「まさに。じゃあ仮想空間内一周競争を羽の生えた木馬で飛んでいく。

 あそういえば、今やってるプリキュアは木馬に乗って体当りするのが必殺技だ。初めて見た時はびっくりしたぞ。」
釈「じゃあ空飛ぶ木馬競争で。当然妨害はありますよね。」
じゅえる「ドラゴンとか出すべきだろう。ワイバーンか。」
まゆ子「ふむふむ、しかしただの怪物というのも興が削がれる。もっと知的怪獣であった方がいい。」
じゅえる「とはいうものの、次の第三ステージがなぞなぞだ。ここで知的にされるのもちと困る。」
明美「ゲームでしょう。」
釈「ゲームですね。」
じゅえる「スーパーマリオみたいな感じで。」
まゆ子「いやここは高速ステージだから、ソニックみたいにだ。」
釈「じゃあ空中にコインを並べておいて、コインが多い方の勝ちということで。」
じゅえる「ほんとにまんまゲームだな。」
まゆ子「いや元々この回はゲーム仕立てなんだよ。」

明美「コンティニュ有り?」
じゅえる「そりゃコイン投入すれば、ってポーン1枚でコンティニュか。」
まゆ子「まんまTVゲームじゃないかい!」
釈「やはりゲーム中コインを百枚集めるとポーンが1個もらえるんですよ。で、ポーン1個で1回コンティニュ。
じゅえる「お得ステージだな。」
明美「でもコンティニュしまくりだと、凄いことなるね。」
まゆ子「そこはゲームの腕ということで。」

釈「そういうのって、ゲームやり込んでいる人が強いんじゃないですか?」
まゆ子「そりゃそうだろう。」
じゅえる「相手の王子様の妹ってのは、どうなんだ?」
まゆ子「まあ、達人ですね。」
明美「不利じゃない。」
じゅえる「でも花憐ちゃんは高速ステージは大得意だぞ。能力が高速移動だし。」
まゆ子「おお! なるほど面白い勝負になりそうだ。」

 

じゅえる「で、第三ステージがなぞなぞです。ビショップが居て、なぞなぞを1個出すからそれを先に答えた方が勝ちです。シンプル。」
釈「ペナルティとかは無いんですか?」
じゅえる「答えを1個間違えたら、ビショップが鉄槌でぶっ殺します。」
明美「いやだよ、そんなの!」
じゅえる「いやいや、いきなりプレイヤーではなく、ポーンを1個ずつぶっ殺していきます。ポーンが有る限りは大丈夫。」

釈「前の第二ステージでコインを集めてポーンを大量獲得してるんじゃないですかね?」
じゅえる「あー、どうしよう?」
まゆ子「前ステージで獲得したポーンは人間形態になりませんよ。というか、前回ステージ突入前に持っていたポーンと同じ分+ゲーム勝利で獲得した賭け金ポーンに調整されます。」
明美「なんだ、くたびれ儲けだよ。」
釈「でもコンティニュで消費した分の本物のポーンも復活するんですから、そこは良し悪しで。」
まゆ子「うん、なんか第二ステージ分の特典を考えておこう。」

明美「それで、なぞなぞはどんなの?」
まゆ子「そりゃー物凄く意地悪なものだろう。答えたら死ぬぞ系の。」
釈「答えることが憚られる、という奴ですか。卑怯ですね。」
まゆ子「だって王子様は花憐を負かして、お嫁さんにしなければならない。絶対勝つ気だぞ。」
じゅえる「ああ、最初から卑怯系なんですね。」

明美「なんてゲスな王子様なんだ。」

まゆ子「まあ、最後は王子様人格崩壊を起こして死ぬけどね。」
明美「そうなんだ?」
じゅえる「そうなんだよ。」
明美「可哀想だね。」

 

****************************

明美「そもそも、その洞窟能力ってどこから発生したの? 宇宙人の仕業?」
じゅえる「まゆちゃん、これは?」

まゆ子「基本的には脳内です。脳内で想像したものが、なぜか物理的に発生しています。ま、宇宙人テクノロジーを使えば容易いことではありますね。」
釈「宇宙人の関与はあるんですか?」
じゅえる「というか、ゲキが関与したと設定があるぞ。もう本編でも使った。」
まゆ子「そうなんだけど、それはあくまでも洞窟能力で構想された世界を三次元空間内に物質的な実体として構築するのを手伝っただけで、洞窟能力を三次元化するのとは違う。」

釈「じゃあ、別の宇宙人?」
まゆ子「それでもいいよ。なんだったらクビ子さん系の地球人大好き宇宙人が居た、とかで。」
じゅえる「まあ、ゲキ以前に人間に接触する宇宙人が居ても問題ないしな。」
明美「ゲキが人間に接触する前の地球に、宇宙人は居たの?」

まゆ子「あー、現在の地球みたいに万を越える種族が殺到する、なんて状況ではない。というか、ゲキロボの因子は宇宙中の人間的生命体が生息できそうな惑星なら必ず居る、て程度のありふれた存在だ。
 ゲキがその惑星の知的生命体に興味を持って力を授けよう、とする特別なイベントが発生したから、その他宇宙人が殺到する。」

じゅえる「つまり、そのイベントが起きたのが、古代英雄人種というのの覚醒だな。」
釈「となれば、洞窟能力の獲得はゲキとの接触の、前?」
まゆ子うん。だから、それ以前の宇宙人は数百程度の、マイナーな惑星でしたよ地球。」

じゅえる「つまり、そのマイナー惑星に来ていた物好き宇宙人が、地球人の中から特別な連中を見つけて手助けしてやったら、ゲキが反応して力をくれた。そういう事か。」
まゆ子「うん。ただし洞窟能力がどのくらいまで宇宙人に依存するか、これは難しい。何故ならば脳内でもだいたい間に合ってしまうからね。」
釈「脳内での仮想空間ですべてがまかなわれている中、そのほんの一部を外界現実世界に取り出すのを宇宙人が手伝った、ということですかね。」

まゆ子「あるいはこう考えたらどうだろう。

 或る日宇宙人さんは人間の中でも特別な連中が頭の中でおもしろい事をやっているのに気が付いた。知りたいとは思うが、脳を覗いただけでは本質的理解が出来ない。やはり自分も参加しないと。
 だから、三次元空間内にそれを実現する機能を彼等に渡してみた。そして出来上がったのが「洞窟」だ。宇宙人さんもその中に入って遊ぶ事が出来る。」

釈「なるほど。人間のためではなく、あくまでも宇宙人の興味からその能力が必要だったわけですね。それなら自然ですね。」
まゆ子「というわけで、宇宙人さんは妄想を実体化する装置というのを作って現実空間内に洞窟という形でアクセスできる環境を作ってやったのです。」

じゅえる「それは高次元空間という奴かい?」
まゆ子「いや、亜空間だよ。三次元空間の拡張というだけで四次元とかではない。四次元的折り畳みはされてるけど。」
釈「つまり、洞窟は通常空間からはアクセスできない?」
まゆ子「ゲートとなる穴が三次元リアル空間にあるから、そこを使えばアクセス出来る。閉じれば中だけで独立して生活できるし、外界の何の影響も受けない。歳も取らない。」

じゅえる「ふむ。つまり桃源郷とか竜宮城なんだよ。」

まゆ子「もちろん完全にアクセスできないわけではなく、三次元空間に標識となる器物や人間が存在する。出口を開く鍵となるアイテムは常に外に有る。」
釈「それは、宇宙人さんのくれた装置ですか。」
まゆ子「装置と連動はしているけれど、リモコンだね。もちろん機械的存在ではなくコンピュータのアイコンみたいなものでしかないけれど、装置と直結しているのは間違いない。」

じゅえる「それ壊されると、洞窟内空間も破壊されるの?」
まゆ子「いや、でもアクセスが出来なくなる。中に入っていたものが外に出られなくなる。回復手段もあるのだが時間が掛かるしそれにふさわしい人物つまり古代英雄人種と同種の能力者の介在が必要となる。」

 

じゅえる「その空間を作っている装置は何処にあるんだ。」
釈「そうですね、現実の空間内にあるそれを破壊されたらダメでしょ。」

まゆ子「ああそれがだね、宇宙人さんは古代英雄人種の前にまず実体として現れたんだ。怪物の姿で現れた、と言った方がいいか。
 それで、こういう空間を作ってみましたから見てください、と案内したんだ。古代英雄人種もびっくりして話を聞く内に、機械によってそれが行われていると理解した。
 いや、その理解が出来るというのが、英雄の英雄たる所以なんだけどね。」

釈「当時の人類社会に機械なんてものは無いでしょうに、よく分かりましたね。」
じゅえる「うん、それは突飛すぎる理解だ。」
まゆ子「まあ石斧やら槍はあるんだから、道具と理解したんだね。あるいは家畜の一種と考えたのかもしれない。ともかく、宇宙人さんとは独立して存在して機能すると理解した。

 そこで彼等は、その機械をどっこいしょと持ち上げてそのまま生成される仮想空間内に持ち込んだ。」

釈「え?」
じゅえる「ループとかジャム起こらないのか、それって掟破りなんじゃないか。」
まゆ子「まあ故障やら不具合も起きまして、宇宙人さんがその空間内から出られなく成りました。仮想空間内に封じ込められてしまったのですね。」

釈「ばかですねー、機械止められないんですか。」
じゅえる「いや、今止めたら死ぬだろ。空間潰れて。」
まゆ子「まあそういうわけで、彼等は仮想空間から機械を持ち出してもらえないと逃げられなくなった。とはいうもののだ、化身は出られるから通常三次元空間とアクセスするのはまったく問題ない。仲間を呼んでくればこの状態も解消できる。」
じゅえる「ふむ。」
まゆ子「別に問題は無いし居心地がいいからそのまま居着いてしまいました。仮想空間内で彼等は幻獣として生きています。」

釈「なんだそれはー。」
まゆ子「これが二万年以上もこの空間が生き続けている理由です。宇宙人さんの寿命スケールから言ってもちょっと長いんですが、なにせ仮想空間内は不老不死ですから困りません。」
釈「ひきこもりになったのか……。」

 

****************************

明美「しつもん! そもそも仮想空間てのは古代英雄人種とやらが頭の中で考えたものでしょ? 彼等はなんでそんな事してたの。」

まゆ子「そこが最も重要な点です。彼等は頭の中にこの世とは別の空間を想像していたのですね。夢のように。」
じゅえる「夢とは違うのか。」
まゆ子「夢は目が覚めたら消えます。消えない夢は妄想です。しかし、極めて理性的論理的な人間が自覚的に想像したものは夢と同程度のリアリティを持ちながらも真昼の正気の状態でも存在し続けます。」
釈「それはー精神病の一種みたいな気がしますけれど、」

まゆ子「空想上のおともだち、というのはみなさん理解できますね。」
明美「ああ、赤毛のアンの鏡に映るお友達みたいな、」

まゆ子「彼等は頭の中に数十人ものお友達を持っています。しかも全員同時並列でお話が出来ます」
明美「すご!」
釈「妄想にしても凄まじい処理能力ですね、それは。」
まゆ子「しかも全員が本人と同レベルの知性の持ち主だ。彼等同士の会話がどれほど高レベルかは想像に難くない。」

じゅえる「何を話しているのだ?」
まゆ子「その質問は当然だが無意味だ。その当時の人間に、そんな高レベルの会話は存在しない。あくまでも具体的現実的、自分達の身の周りの事しか話すべき対象が存在しない。」
釈「でしょうね。」

まゆ子「というわけで、彼等はまず抽象的概念というものを作り上げた。高度な知的レベルの会話を実現する為の道具として抽象語彙を発明したんだ。」
釈「ほお。」
明美「言ってることが分からないよ。抽象語彙って何?」
じゅえる「いや、抽象も語彙も抽象語だろ。」
釈「具体的な事物を表さないものは全部ですよ。今の人間は自然に使って会話して思考しているから、弁別が難しいんですけどね。」

まゆ子「いま釈ちゃんが思考って言ったけど、まさにそれが彼等最大の発明だ。難しい抽象的な思考が可能になったんだ。
 というか高度な思考を可能にする為に作ったわけなんですが。」

じゅえる「そういうのは自然発生しないの?」
まゆ子「道歩いてる人間捕まえて、今から哲学的な話をしましょうって言って、応じてくれる?」
じゅえる「嫌だ。」
まゆ子「彼等の脳内にはそういうのに徹底的に付き合ってくれる仲間が何十人も居ます。
じゅえる「うう、」
まゆ子「脳内仲間の中だけで通じるジャーゴンが大量に発生して何がおかしいだろうか。」
じゅえる「うう、つまり抽象的語彙が自然発生する環境が用意された、って事か。」

釈「しかし、そういう能力を持った人間が複数居たとして、互いの脳内のジャーゴンの共有化は難しいでしょう。それぞれでニュアンスがまるで違うはずです。」
まゆ子「禅問答になるな。」
釈「でしょ。」
まゆ子「やってました。」
じゅえる「やるんかい。」
まゆ子「宇宙人さんも何が何だか分からないから、興味を惹かれました」

じゅえる「そう繋がるのか。」
まゆ子「まあ、分からんものを伝えるのはそれしかないですからね。昔から。」
釈「はあ、そういう悟りに関係するようなものがそんな時代から存在していたわけですか。」
まゆ子「悟りもこの時代の発明です。」

 

明美「整理しますと、つまり古代英雄人種というのが居て、で、なんで彼等は古代英雄なんて呼ばれるの?」

まゆ子「まあ、英雄だし賢いし、人類の歴史というか文明の第一歩を確立した人たちですから。」

じゅえる「具体的に龍と戦ったとかは無いんだ。」
まゆ子「いやそれまでそんな化物の想像物は存在しませんから。デカイ蛇が襲ってくるーというのは皆想像しますが、天を飛ぶ蛇が雷を使って、とかはびっくりです。」
釈「そういうのは自然と属性がくっつくものじゃないんですか?」
まゆ子「無いんだよ。むしろ昔の人間の方が身近な生物に対する関心が深い。蛇は蛇以外の何物でもなく、ありえない蛇は想像の対象外だ。」
釈「意外と論理的なんですね。即物的というか現実的というか。」

じゅえる「あー、その当時の人間は精霊信仰とかは無いの? というか有るでしょ。」
まゆ子「もちろん精霊信仰はありますが、精霊が人間の言葉を喋ったりするなんて考えたりはしないのです。なんか居るのは分かるけど、なんかがなにかは分からない。
 曖昧模糊として捉えどころの無い、だが自然現象を通じて人類に対してなんらかの反応を返してくる何者か。生物であるとは思わない、なにか知らないけれどなにか、なんだ。」

釈「動物を象徴として用いるとかはしないんですか・」
まゆ子「動物は動物で信仰の対象物だ。純粋な動物そのものに対して敬意は払うが、それの拡張概念としての精霊ではない。精霊は自然そのものだと考えるとなにか固定したイメージを用いる方がむしろおかしい。」
じゅえる「かなり屁理屈ぽいぞ。」
まゆ子「だが厳密に世界を捉えるとむしろそれが現代的な解釈でもあるでしょ。まさか巨大トカゲ神が精霊の実体とか考える?」
じゅえる「……、うーん、なんか違う。」
釈「はあ確かに、巨大なトカゲは巨大なトカゲ、ですかね。」

まゆ子「台風がやってくるとする。これは精霊だろうか、なにか巨大なバケモノが襲ってくるのだろうか?」
じゅえる「いや、台風が台風であるのは私達が天気予報で丸い渦だと知ってるからの理解だろう。あんな情報が無いとすれば、台風はただのすごい風、野分としか理解できない。」
釈「そうか、精霊というのは割と高度な抽象化が為された存在なんですね。」
まゆ子「精霊はまじない師が五感で感じるものであり、頭で考えるものではなかったんだ。この頃までは。」

じゅえる「まじない師はこの頃までに既に存在するんだ?」
まゆ子「そりゃもっと昔の人類の遺跡からも呪いぽい痕跡は発掘されるからね。その意味では古代英雄人種はまじない師の正統後継者だ。
 呪いが宗教に進化する手助けを行った人たちなんだ。」
釈「五感を使うまじない師と、考える古代英雄人種とは随分と違うようにも思えますが。」
まゆ子「五感を鋭敏に研ぎ澄ませて精霊の息吹を感じ取ろうとするのがまじない師とすれば、論理的思考という新しい感覚を研ぎ澄ませて究極まで突き詰めたのが古代英雄人種。

 実はやってることは同じなんだ。

 色々考えてもなんか釈然としない、というのは思考ではなく感覚だ。もやもやとした感覚は誰も否定しないよ。」
じゅえる「まあ、思考に行き詰って感じるもやもや感は、考えてみれば思考から発生するのはおかしいな。」
釈「あれはー直感的におかしいと感じるんですよね。そうなんだけど、解消するには思考するしか無い。」

まゆ子「古代英雄人種は、そのもやもや感に突き動かされたまじない師、と考えると分かりやすい。論理的思考、抽象的思考を積み重ねて行った先に何かがある。自分達の知らない精霊が居る、と考えたんだ。」
じゅえる「あくまでも精霊なんだ?」
まゆ子「なんか凄いものは精霊だよ。ソレ以外になんと呼べばいいと? 神か?」
釈「精霊から神に進化する過程、ってのもややこしいですよねえ。」

まゆ子「そこは別に難しくないぞ。モヤモヤとして得体のしれないのが精霊。精霊に人格が有ると仮定したものが神だ。」
じゅえる「人格の有る精霊が神。何故そう考える?」
まゆ子「制御可能性の問題だ。まじない師は精霊の力にすがって自分達共同体の生活が円滑に滞り無く続く事を願っている。祈っている。
 しかし祈りが通じるのは、それが祈りと分かる存在だけだ。つまり人と同じく祈りを理解する精霊でなければ困る。であれば、人格を持つ精霊であるべきだろう。」

釈「そりゃあ、人格無いとお願い聞いてもらえませんし言葉がそもそも分かりませんよね。そりゃ困るな。」
まゆ子「それよりもまず、精霊がどこからどこまでを範疇とするか、それすら分からない。ありとあらゆるものに効果があるのか、なにか一つの特定の事物にのみ存在するのか、分からない。困る。」

じゅえる「人格を与えれば限定される、という事か。」
釈「精霊を絡めとるようなものですね、それは。」
まゆ子「まさに、論理的思考によって得体のしれない精霊を絡めとった姿が、神なのだよ。五感で精霊が感じ取れるなら、思考でも感じ取れる。そして実行した。」

 

じゅえる「ちょっとまて。それ以前には人のイメージを持つ精霊というのは存在しないのか?」
まゆ子「有るよ、そりゃ。」
じゅえる「矛盾するじゃん。」
まゆ子「人の姿をしていながら、得体のしれない存在。それをなんという?」
じゅえる「あ!」
釈「それはー確かに。人間が何考えてるか、そう簡単に分かるもんじゃありませんね。」

まゆ子「人間の姿を持つ精霊とは、人間でありながら漠として掴みどころのない存在だ。人間社会・共同体社会全体を統べる精霊であるが、それが人間的意志を持つか、対話可能であるかは未知数。
 というよりは、対話は不可能であり、人間社会で起こる事象であっても制御不可能だ。特に生と死はどうしようもない。」
じゅえる「どうしようも無い自分達自身の精霊、か。なんか統一する力というかエネルギーは確かに感じ取れるが、制御は無理だな。」
まゆ子「ある意味人間自身も精霊の一部であり、切り離して考えるのは不可能。それが自然な理解でしょう。

 が、切り離した連中が居る。それが古代英雄人種だ。

 人間から精霊を分離したと同時に神と成した。人間を神話的存在から、ただの生きて死ぬ生き物の一つに分類してしまった。なんという蛮行。」
釈「そんなコトしたら、そりゃ当然にこう考えざるを得ませんね。自分達は何の為に生まれてきたのか。」
じゅえる「精霊としての人間であれば、生死であっても現象の、得体の知れない精霊の一部のままであり続けられた。そういう事か。」

まゆ子「まあもっと大胆に言えば、彼等は魂を肉体から分離した張本人でもあるんだ。

 五感は当然の事ながら肉体の感覚器無しには存在し得ない。肉体が滅びれば感覚も滅びる。当然だな。魂の概念が有ったとしても、それが浮遊して存在し続けるとは感覚し続ける事だ。肉体無しでそれは意味を持たない。」
釈「死後の肉体、という概念が基本分からないですね。肉体が無い状態での生存てのは。」
じゅえる「死後の世界、とは死んだらー、ああ確かに魂というものの独立性を何らかで確保しなければ死後の世界は死んでないのと同じく肉体があり続ける、と考えるしか無い。」

まゆ子「ここらへんのジレンマは、普段意識していなくても世界中の宗教で拘っているよ。死後の肉体、という不毛な存在をいかに定義づけるか、大奮闘だ。」

 

釈「感覚する事と、思考との分離。思考の価値の格上げ、抽象化。」
じゅえる「おっそろしく面倒な作業だな。」

まゆ子「もちろんこれだけの事をなんの背景も無しに彼らがやってのけたわけが無い。裏付けとなる社会的状況が有るんだよ。
 つまり、技術の進展。」
釈「技術?」

まゆ子「2万数千年前、というのは文明が発祥するもう至近の時代だ。技術は既に十分に発達して、組織的な製造も行われている。農耕だって萌芽を見せてるよ。」
じゅえる「前文明の時代、か。そりゃあ既に原始時代とは呼べないんだろうな。」
まゆ子「そういう時代だからこそ、思考が注目された。論理的である事に価値を置く風潮がみなぎっていた、とも言える。
 だって彼らが使っている技術の産物は、自然のどこかに有る物ではなく、人間が意志を持って創りだした物だ。明確な目的意識を持って生み出されている。
 偶然とかなんとなく、ではない。考えられている。論理的合理的に能動的にそれは人が作ったからこそ有る。

 だから考えた。考えるという事を考えた。
 それが古代英雄人種だ。」

釈「哲学ですね。」
じゅえる「科学の素は哲学だよ。つまり彼等は哲学の創始者なんだ。」

 

**********************

まゆ子「まあぶっちゃけた話、この設定は元々『統則最前線〜メイドロボ・アニタの彷徨 』で使う予定のものだ。
 ”でぽでぽ”のHP扉に有るのはコーナーこそ存在するけれど現在死亡中。
 で、この物語に出てくる”電哲探偵”「ヘクトール・パスカル」こそが古代英雄人種の末裔である! という事になっている。」

じゅえる「設定の廃物利用?」
まゆ子「使ってない設定を再利用するのは廃物利用じゃないでしょ。」
釈「電哲探偵というのは、つまり哲学者なんですね?」
まゆ子「だから彼の出自は哲学者なのだ。並の探偵が推理をするのに対して、彼の武器はコンピュータ・ネットワーク時代の哲学なのだ。
 しかし、じゃあどうすればそれが実現できるか、描写出来るか、というとこを考えると、わたしの能力では無理じゃん!というのが判明して、現在死亡中なのだHAHAHA」
釈「ま、無理ですよね。」
じゅえる「哲学的シャーロック・ホームズを作ろうとしたって、そりゃ無茶だ。」

 

明美「しつもん! その古代英雄人種は抽象語彙を考えたけれど、同じ人種同士で会話しように伝わらずに禅問答する、て話だけど、
 じゃあその抽象語彙はどうやって現実世界の他の人に広がったの?」

じゅえる「そうだな。これはどうなんだまゆ子。」
まゆ子「極めてぶっちゃけた話、古代英雄人種同士で話が通じないのは、彼等自身の知的能力が極めて高過ぎたからだ。微小な差異を問題にする注意力があるからだ。

 一般人にはそんなものは無い。もっと単純な、簡単な知的能力しか持ち合わせていない。
 第一当時の人間社会においては高度な知的訓練の手法が未だ存在しない。頭良くても学問の訓練無しにはそんなものを理解できない。」
釈「古代英雄人種はその訓練が要らない、あるいは自分で勝手に脳内でやってしまう人種なんですね。」

まゆ子「というわけで、彼等が一般人に抽象語彙いや抽象概念を伝えようと思えば、幼稚園児に言い聞かせるように懇切丁寧飽きないように諦めないように、非常に細やかな神経を使って単純なもののみを教えていったんだ。」

じゅえる「つまり、初歩の初歩しか教えていない?」
まゆ子「初歩の初歩であるから、古代英雄人種同士においても意味の食い違いはほとんど存在しない。共有化出来る。つまり、それを使って話ができる。
 というわけで、非常に迂遠ではあるが彼等は哲学の会話を相互にも始めるのだ。が、禅問答ほど効率的ではない。
 正解で無いものを表面だけなぞるような感じなんだね。」

釈「それが学問なんですね……。」
じゅえる「つまり彼等は極めて頭が良くて良く考えていたから、頭の悪い一般人を教育する手法も考えた、って話なんだ。」
まゆ子「その過程で文字も考えたよ。文字の原型だね。」
釈「ああ、それは学問の必需品ですね。」

 

**********************

明美「でもさ、要するに頭の中でキャラクターを作って相互に会話させて、それで何か実益の有るものを作っていこうというわけでしょお。
 そういうのって本当に可能なの?」

まゆ子「あー、それはだねー。」
じゅえる「まあなんだ、世の中に例が無いわけでもないし、」
釈「ですよねー。」

 

 

2012/07/06

まゆ子「TVアニメ「氷菓」を見ていたら、叙述トリックというのが出てきた。」

釈「はあ。ミステリーの定番ですね。」
じゅえる「特に珍しいものではないわな。」

まゆ子「私もやりたい!」

じゅえる「どう思うよ、釈ちゃん。」
釈「えーまたーまゆ子先輩のミーハー体質が出たという事で、でもミステリーですよ。出来るんでしょうかね?」
じゅえる「おいまゆちゃんよ、あんた推理小説とかミステリーとか読むのか?」
まゆ子「ぜんっぜん!」

釈「大威張りですよ。どうしよーかなー。」
じゅえる「あー推理小説が嫌いな、あるいは体質に合わない人間て多いからなー。というか、大雑把な人間は好きだと言っても信じちゃいかん。さらさらと流して呼んでるだけ、てのも居る。」
釈「この際まゆ子先輩の趣味嗜好は考慮するのは止めましょう。本人はミステリーを読みたいのではなく、書きたいのですから。」

じゅえる「おいまゆちゃんよ。推理小説かい。」
まゆ子「おう。」
じゅえる「書くのか。」
まゆ子「おう。」
じゅえる「だが推理小説だと、どんな話に、というかキャラはどうするんだ。名探偵でっち上げるのか?」
釈「あー、名探偵キャラは一応一人居ますけどね。マキアリイさん。」

まゆ子「あ、それは今回使わない。」
じゅえる「そうか。」
まゆ子「ともかくこういうのは思い立ったが吉日だ。「ゲキロボ☆」に投入する。」

釈「あんな事言ってますぜ、じゅえる先輩。」
じゅえる「つまりキャラを別に用意する手間を省いて、ミステリー仕立ての章をでっちあげようという寸法だ。どう思う?」
釈「悪くはないかもしれません。なにせゲキロボもいい加減長いですからだれます。」

じゅえる「まゆちゃんや、しかしミステリーにはネタが要る。どうするね。」
まゆ子「宇宙人相手の商売に、トリックも密室も有るわけ無いじゃないか。万能なんだから。」
じゅえる「違いない。」
まゆ子「故に、叙述トリックだ。」

じゅえる「なんかまともな答えが返ってきたぞ。」
釈「なるほど、さすがですね。その方針はたぶん、今!でっちあげたものでしょう。」
じゅえる「まゆ子は普通はトロイのに、こういう時だけ反射神経抜群だからな。」
釈「ろくでもない事考えさせたら天下一品です。」

じゅえる「じゃあとりあえず具体案は出してもらおうか。」
まゆ子「いや前々から考えてはいたんだ。今回みのりが主人公、狼男の回では物辺優子が主人公、鳩保ハブにされる回もあったし、次は花憐だな。」
釈「ですね。」
まゆ子「であれば、お話の構造をちと換えてやらないと、いかにネタやイベントを工夫してもマンネリ化が避けられない。」
じゅえる「確かにつらつらと流していいものでもないか。」

 

まゆ子「ちなみにもうすぐ物辺優子は東京に遊びに行きます。お父さんが判明したので娘として会いに行きます。好奇心から。」
釈「ふむふむ。なるほど。」
まゆ子「で、鳩保は狼男部族の関係でちと大混乱します。みのりはドバイ編が終わると特にイベントは用意されていません。」
じゅえる「喜味子は?」
まゆ子「夏祭りというか、西瓜盗りのお祭りでちと出番がありますが、まあ小ネタで。あんま主役を張るような子ではないし、ブスだから受けないしね。」
釈「ちょっと可哀想ですね。」
まゆ子「あと最近ご無沙汰の縁毒戸美々世の回も用意しております。だんだん追い詰められていくね。」

じゅえる「ほあーイベント盛り沢山だな。たしかにここらでちょっと目先の変わる事をしておいた方が、ラスト突っ走るのにちょうどいいかな。」
まゆ子「計画では、ドバイ編と並行して鳩保トチ狂う編が展開され、ドバイと並行して喜味子と花憐は面倒を見させられます。その渦中にまた花憐にもイベント発生。
 魚船長が訪ねてきます。」
釈「ドバイ編と平行ですか。それは大混乱で読者様も頭がおかしくなるんじゃないですかね?」
まゆ子「仕方がない。書く方も大混乱中だ。ともかくここらへんはイベントが立て混んでいて、もうむっちゃくちゃなんだよ。」
釈「見せ方、考えましょう。」
じゅえる「そうだな。」

まゆ子「花憐イベントで言えば、魚船長が来てお話をしている最中に、物辺村近くの観測所が土管ロボに攻撃を受ける、というお話があります。
 さらに、魚船長が伝えた花憐のお婿さんとなるべき王子様降臨です。ここで迷宮的展開が起こるとスケジュールされているのですがー、

 どしよ?」
じゅえる「もともとミステリー仕立てなのか?」
まゆ子「ファンタジー、いやホラーかな? 不思議の国のアリスに不安感を覚えるような感じ、というのは理解できるでしょうか。」
釈「不思議空間に放り込まれるわけですね。なるほどー、つまり異空間に花憐は投げ込まれるんですね。」
じゅえる「ふうむ。つまり元々不安定な話なんだ、これは。そこにさらに叙述トリックまでも突っ込んでしまう。
 ……凝り過ぎ、ではないだろうか?」
まゆ子「そうか?」
釈「そうですねえー、もともとわかりにくい所にさらに誤導や錯誤を突っ込むわけですからねえ。うーん、」

じゅえる「これはまゆちゃんの腹次第だが、わたしはここで叙述トリックはやめるべきだと思う。が、もちろん別のイベントでやれ。」
釈「私もそう思います。むしろ不思議空間であれば花憐一人称小説と視点で突っ走るのが正しいかと。」
まゆ子「うーむ、じゃあ叙述トリックは別の機会に回します。」

じゅえる「他にイベントは?」
まゆ子「狼男部族に関してはゼロ設定ですが、予定のスケジュールだと 」
じゅえる「待て。ドバイ編からスケジュール書いていけ。」
釈「構成を確認しましょう。」

まゆ子「あーでは。

 ・ドバイでみのり、スタンド使いを倒す
 ・花憐、魚船長と会見して嫁入り話。直後物辺村観測所襲撃。花憐がやっつける
 ・物部優子演劇部に行き、20年前の母親の演技のビデオを見せられる。
 ・花憐、不思議の国でワンダランドする。
 ・(鳩保、狼男の件)水着でデート

 ・お盆前に物辺村で西瓜盗りのおまつり
 ・お盆。花火大会が有るから、みんなで門代観光風致地区に遊びに来ると、すごい人で大混雑。物部優子、ビルマうどんに文句を言う。
 ・プレゼント星人襲来。喜味子もてまくり

 ・優子東京に行く。東京でお父さんに会い、母親の消息を聞く。巫女会議に出席。
 ・美々世死す。死んで復活するはずが、学校に来ない。美々世の家に遊びに行くと…。
 ・サルボロイドの襲撃
 ・宇宙怪獣襲撃、だが魚潜水艦を作ったマッドサイエンティストが撃退する。が、こいつがさらにトチ狂い大暴れ
 ・宇宙最強艦隊襲来。最終戦争。(9月)
 ・後始末でやり直し
 ・10月

です。」

 

じゅえる「これ、順番確定?」
まゆ子「ですよ。」
釈「ふーむ、ちょっと問題がありますね。美々世死すに欠陥がありますよ。」
まゆ子「え?」

じゅえる「ほら、美々世が死んで復活というか魚肉人間のボディを再発行してもらうんでしょ。」
まゆ子「うん。」
じゅえる「でも不審を覚えるほどの長期の学校欠席がある。そこで物辺村の連中が家に訪ねていくんでしょ?」
まゆ子「うん。」
釈「このスケジュールだと、8月15日以後に死んで、8月25日くらいになりますかね?」
じゅえる「まだ学校始まってないから、来なくても別に問題じゃないでしょ。」
まゆ子「あー、でもなにか約束をしていてすっぽかされたとかで?」
釈「しかし宇宙怪獣襲撃は夏休み中ですからねー。不審に思っても捜査する暇があるかどうか。」

まゆ子「うーっむ、いわゆるケツカッチンという状態か。」
じゅえる「すけじゅーる苦しいぞ。サルボロイドのエピソードをなんとかしろよ。」
まゆ子「なんとかと言われても、サルボロイドは変身物辺村少女が生身で戦う最後の敵だ。それなりに強い相手でないと困るぞ。」
じゅえる「宇宙艦隊はゲキロボの、宇宙怪獣はー、やっぱりゲキロボの出番か。」

釈「美々世死すをお盆前に持っていけばいいんじゃないですかね? 別にお盆後でなければならない道理は無いでしょ。」
じゅえる「そもそも美々世死すは鳩保担当の話だったな。鳩保が死にかけの美々世をぶっ殺すって予定だったな。」
まゆ子「うん。」
じゅえる「鳩保が錯乱した状態を収める為のなんか契機にすればいいんじゃないかな、サルボロイド。」
釈「というか、そもそもが狼男部族はなにも決まってないんですよね。サルボロイド回と混ぜてしまいましょう。」
まゆ子「ちょっとまて、それはーどうもー。」

釈「ダメですか?」
まゆ子「だめではないが、狼男部族はかなりややこしい手順で最終戦争に関わってくるんだよ、たぶん。」
じゅえる「ならサルボロイドみたいな超強いロボット生命体と関連してもいいじゃないか。」
まゆ子「ちょっと待て、ここは考える。ちょっと待て。

 あーともかくだ、狼男部族がややこしいのは実はアメリカに渡って新興宗教の教祖となった物部優子の母親贄子の手の者であるからなんだ。」
釈「げ!」
じゅえる「そんな事考えていたのか……。」
まゆ子「ということで、狼男部族は日本に来る用が無い。サルボロイドが日本に来ない。」
釈「でも狼男ぶっ殺しましたが、」
まゆ子「それは、いやそれはサルボロイド絡める前の設定だからなんとでもなったんだけど、サルボロイドみたいな切り札的存在を導入すると……。
 いや、やはり駄目だ。そうすると優子が自分の母親がへんなことしてるのを事後に知ってしまう。優子東京行きの前にはサルボロイドも狼男も突っ込めない。」

じゅえる「東京行きを前にしてはいかんのか?」
まゆ子「だって物辺神社お盆頃忙しいもん。」
釈「あーそれはどうしますかね。」
じゅえる「いっそサルボロイドの話を捨ててしまえ。美々世がなんだかよく分からない敵にぶっ殺されてしまうんだ、お盆前。」
釈「そっちの方がいいかもしれませんね。狼男優先で。」
まゆ子「うーん、そうかつまり狼男話をもう少し詰めてからサルボロイドを突っ込むしか無いんだな。じゃあ考えるよ。」

じゅえる「しかし今回の話は叙述トリックをどこに入れるか、なんだ。サルボロイド話に入れるか?」
まゆ子「えー。」
釈「サルボロイドって結局どういうお話ですか? まずそれを詰めないと。」
まゆ子「いや、無いぞ。サルボロイドという宇宙人ですら相手にしづらい強敵を、5人でやっつけようという話だ。生身変身の力と活躍を強調するためのお話だ。
 特筆すべき点があるとすれば、ぴるまるれれことサルボロイドは相容れない存在であり、サルボロイドが破壊される事により最終戦争への道筋が開かれてしまう。」
じゅえる「最終戦争の宇宙艦隊の調査ロボットなのか?」
まゆ子「そういうわけではないが、サルボロイドをやっつける時に無量光爆弾というのを使う。簡単に言うとビッグバン爆弾だ。
 こんなものを観測してしまったら、そりゃ宇宙艦隊くらいやってくるさ。」

じゅえる「ビッグバン爆弾て、何?」
釈「人工的にビッグバンを起こすんですか、それ?」
まゆ子「うん。」
釈「どうやって止めるんですか!」
まゆ子「いや迎え火で止まるぞ。ビッグバンに指向性があって、反対方向からビッグバンを掛けてやれば相殺して終了してしまうんだ。
 ビッグバンとはここでは、宇宙の時空そのものの属性を反転させて別の宇宙に書き換えるというものだから、この世のありとあらゆるものが無化されてしまうんだ。
 いかに強力なサルボロイドであろうとも、どうしようもない。が属性の反転の反転で元通りという寸法。」

じゅえる「そうか、ビッグバンていう狼煙をあげるから、最終戦争の艦隊がやってくるのか。外すわけにはいかんな、それ。」
釈「しかもぴるまるれれこが関与するのですかー。どうしますかね、話自体は平凡であっても、存在自体が重要ですよ。」
まゆ子「そうなんだよ。最終回のオチに持ち込む為の最後の仕掛けなんだ。おろそかには出来ないんだぞ。」

 

じゅえる「そうだ!」
釈「なにか妙案を思いつきましたか。」
じゅえる「サルボロイドは強敵なんだろ、今までには居ない。」
まゆ子「まあ、美々世が一撃でやられるほどだからね。」

じゅえる「それほどの者が一度で死ぬのはもったいない。不自然だ。なんせ強いんだから。」
まゆ子「まあね。」
じゅえる「お盆前に美々世が殺される。これはよい。
 だがサルボロイドをここで取り逃すというのはどうだろう。で、お盆後に改めて退治する。」

釈「ほーなるほど、二回に分けますか。」
まゆ子「なるほど。じゃあこいうのはどうだろう。
 一回目のサルボロイド登場の時、物辺村周辺に救っている宇宙人全員がたこなぐりにして、全敗。物辺村連中はこの時は高見の見物。で、取り逃がす。
 二回目は騒ぎが大きくならないように物辺村が直接対決をして、無量光爆弾で退治。その時の爆発反応により宇宙艦隊がやってくる。」

じゅえる「いいんでないかい。」
釈「宇宙人達も働かせないといけませんからね。」
まゆ子「で、サルボロイドをやっつけたのに美々世が姿を現さない。おかしいなと家を訪ねてみる。」
釈「非常に結構ですね。実に論理的ですよ。」
じゅえる「じゃあ美々世話は、って、美々世ん家行ってなにするの?」
まゆ子「シュギャラヘリドクト星人がまた悪いことをしますが、美々世自身は悪くない。ま、あそこの上司は気の短い奴だから業を煮やして直接介入に出たってとこね。」
釈「叙述トリック、つかいますか?」
まゆ子「いや、もっと前、お盆前に使いたい。というかそんな先まで叙述根性が保たん。」

じゅえる「めんどくさいやつだな。というか、どうせみのりがぶっ殺すスタンド使いが何人も居るんだ。
 その中の一人くらい叙述トリックでやっつけろ。」
まゆ子「うー。」
釈「てきとー過ぎます。」

 

 

 

2012/03/14

まゆ子「さてゲキロボだ。ここに来てちょっとしたピンチに陥っている。わたし、ドバイに行ったことが無い。」

釈「あー、」
じゅえる「そんなもん誰だって無いよ。観光案内書でも読んでこい。」
まゆ子「いや今はインタネットというものがありまして、ドバイに観光旅行に行った人とかテレビ番組とかでドバイの風景やら建物やらの動画が上がっているのです。
 また映画「ミッション・インポッシブル ゴーストプロトコル」にもドバイが出るということで、取材がてらに観て来ました。」
釈「感心ですね、ちゃんと取材をするなんて。」

まゆ子「その結果、嘘ドバイを書こうという気になりました。」
じゅえる「賢明な判断だな。」

まゆ子「そこで嘘ドバイ構築の為にお知恵を貸してください。というか、今回ドバイでのストーリーまだ考えてない!」
じゅえる「威張るな。」
まゆ子「えっへん。」

釈「そうですねえ、基本ラインは決まっているんですよね、そこから開示してください。そもそもゲキロボはストーリー開示しないで書いてるんですけれど、今回は仕方有りません。綿密な計算の上で執筆しましょう。」
まゆ子「祝子夫妻と共にドバイに行ったみのりちゃんが、超高級七ツ星ホテルに泊まって、現地に集合したNWOの非キリスト教・非白人メンバーによる結婚申し込み攻勢を退けながら、スタンド使いのエジプト人を倒して、最後にはドバイタワー崩壊する。」
じゅえる「こんだけです。」

釈「具体的にはどこを詰まっています?」
まゆ子「これだけなんだけど、獏とし過ぎて不安です。」

じゅえる「適当に飛ばしていこう。つまりスタンド使いがどのタイミングで攻撃を仕掛けてくるか、だな。」
まゆ子「うん、パーティの最中にというのは無理だろう。」
じゅえる「いや、それでいい。」
まゆ子「え?」
じゅえる「パーティの最中に見えない攻撃を仕掛けてくる敵が居る。誰も気付かないけれど戦闘が始まる。これが物語的でなくてなんだというのだ。」
釈「おっしゃるとおりです。スタンド使いは見えないからこそ恐怖なのですよ。」

まゆ子「でもみのりちゃんには見える、ということか?」
じゅえる「いや、この段階ではみのりにも見えないのがいいんじゃないか。ただ自動防御機能だけが働いているということで、何かしらないけれど何かが起こっているとみのりは恐怖する。」
釈「ゲキの自動防御機能ですね。してみると、敵はみのりちゃんを殺そうとしているわけですよ。いいんですか?」
まゆ子「あ、そうなるな。」

じゅえる「ちょっと待て、スタンド使いが何のために襲ってくるかも未定だったのか?」
まゆ子「うん。」
釈「あちゃー、そりゃ獏とし過ぎて不安なはずです。スタンド使いどうしますか、みのりちゃん、ゲキロボパイロット暗殺でいいですか?」
まゆ子「ちょっとまて、暗殺したら彼らに何のメリットが有るんだ?」
じゅえる「あー、既に動き出しておりNWOはゲキの力で世界を牛耳ろうというのだから、……反シャクティ派だ!」

釈「え、わたし?」

じゅえる「ミスシャクティはどこからどう見てもインド少女。インド人の血を引くことは明白な事実であり、それはインド人が未来社会においてもかなりの勢力を作っている証拠である。
 これをひっくり返すには、そりゃ今の段階から芽を摘むのが良いだろう、ということで非白人系のNWO王朝の祖となるべく定められたみのりをぶっ殺そうという短絡的勢力が居るんだよ。」
まゆ子「なるほど。だが今回スタンド使いはエジプト人やらアラブ人主体だ。みのりちゃん殺しては困るんじゃないか?」
じゅえる「まず王朝の祖が5人というのは多過ぎると考える向きがある。これは結構な支持を得ている考えで、1系統はさすがに問題があるが、バックアップとして2系統に最終的には収めようという考え方は強い。」
釈「つまり、代を重ねる内にだんだんと家系を絞っていくつもりなんですか。ぶっ殺して。」

まゆ子「ゲキの力の継承ルールを知らないバカな地球人の仕業なんだけど、ともかく継承者の祖をぶっ殺すして後の世界と未来の歴史をコントロールしようという誘惑は極めて強く大きなものだ。」
釈「分かります。」

じゅえる「だがその逆に、みのりをNWOの頂点に置き、ミスシャクティの出現までに完全支配体制を整えようという勢力もある。みのり絶対主義者だな。」
まゆ子「ミスシャクティが20世紀の地球に降臨した歴史を実現させるためにそれが必要だと盲信しているんだよ。つまり欧米白人勢力の支配は未来においては打倒されており、その元がみのり系統の王朝による完全支配だと妄想しているのだ。」
釈「なるほど。むしろそっちの方が正解に近いですね。」
じゅえる「うん、つまりはそっちの方がどうにもホントらしいと考える向きが、これではいかんとリアクションを起こしてみのりをぶっ殺そうと考えてスタンド使いを雇った、という線で行こう。」

 

まゆ子「うん、スタンド使いが襲ってくるのは分かった。だがそんな薄っぺらい理由だけでは物語に厚みが生まれないぞ。もう一枚陰謀を!」

じゅえる「今回、みのりがお祭りであった魔少年魔小学生が出演する予定だよね。」
釈「はい。」
まゆ子「あれをどう扱うかもまるっきり考えてない! あはははは。」

じゅえる「つまり魔少年はスタンド使い達が束になってもみのりには勝てないことを知っているから、高見の見物だ。しかし攻勢は掛ける。
 つまりはー、もっと遠大な計画があるんだな。なに?」
釈「彼は現代の人間よりも超越した感性がありますから、えー、宇宙人では無いですよね?」
まゆ子「未来人にしようかとも考えている。」

釈「未来人をミスシャクティ以外にも出していいんですか?」
まゆ子「ダメなような気がするが、だからこそ出したい。」
じゅえる「似非未来人だ。」
まゆ子「おお。」
じゅえる「現代人の目から見たら超技術に見える近未来の武器兵器の情報を持ち込んだ勢力があるんだよ。ドカンロボや魚潜水艦を作った勢力だ。これはミスシャクティと同じ31世紀人なんだけど、その世界でのNWOの対抗勢力と考えよう。
 ミスシャクティによる20世紀人のNWO体制への移行の指導、これを計画通りに遂行するのみならず、対抗勢力による操作も同時に進行しているんだよ。
 もちろんミスシャクティは知っているのだが、黙認だ。計画外の未来情報提供による20・21世紀社会への工作活動。これを止める権限はミスシャクティには無い。
 というわけで、未来社会の何か、によって与えられた情報と兵器を駆使する独自な勢力が、魔少年の母体だ。

これでどうだ。」
まゆ子「いいんでないかな。」
釈「ちょうどいい感じですね。魚潜水艦のおじさんの話にも繋げやすいですから。」

まゆ子「それは「オールドファッション」という名前にしよう。31世紀のNWO体制は、もちろん今作っているNWOとはまったく違う形態なんだけど、そこに至るまでに存在していたNWOの組織の残滓なんだ。」
じゅえる「31世紀のNWOて、どんな形になってるんだ?」
まゆ子「まず合成人間が居ますからね。不老不死の。もちろん普通の人間だっているけれど、これだって不老長寿だ。人類は太陽系内にコロニーを作って拡散し、近隣の諸恒星系にまで進出している。微々たるものではあるが、恒星間文明の仲間入りだ。」
釈「まざーこんぴゅーたーとかばーちゃる空間で生きていたりしますかね。」
まゆ子「それも有りにしよう。ともかく21世紀人の目からはまるで想像もできないものに成り果てている。

 オールドファッションという組織は、つまり人間がちゃんと死んでいた、生物学的なライフサイクルを前提とする社会を維持していた頃のNWOなんだ。こんなバーチャルぽい人類社会なんかは彼らの欲するものではない。
 だがなってしまったからには仕方がないのだが、最初から文明の行く末をちゃんと設計していればこうはならなかったと考えても当然だ。
 どういうのが理想であるのかはおいといて、ともかくNWOの成立と新文明成立の瞬間である今日からそうならないようにコントロールする勢力だ。」
釈「古き善き時代の人間社会を存続させていこう、とする勢力なんですね。」

じゅえる「31世紀というのはそんなに違うものなのか。」
まゆ子「まあ人は死なないし、死んでも再生できるし、老化しないし、他人と精神融合して新しい個人になるし、そもそも精神をインタネットで融合させて巨大な知性を形作るし、人格をデジタル化しているから電波で転送して恒星間宇宙を旅するし。
 人間の世の中ではないわな。」
釈「そこまで行けば、生身の人間は動物園の生き物ですよ。」

まゆ子「しかしながらね、ゲキの代理人であるゲキロボはそんな人類は要らないのだ。生きて育って死んでいく普通の人間にしか力を許さない。ミスシャクティも不老長寿であり永遠の少女ではあるが、ちゃんと死ぬ。だからゲキロボを使える。
 未来のNWOにおいては、そういう生身の人間の家系である5王朝を、不老不死のバーチャル人間社会が守っていくという体制に成り果てている。
 どちらが正しいというものは無いが、しかし所詮は生身である人間の王朝人が集団でリンクしてコンピュータにも支援される存在に勝てる道理が無い。いかにゲキロボの力があるとしても、使役するのが只の人間であれば致し方ない。」
釈「そりゃー考えちゃいますね。」
まゆ子「そこでオールドファッションは結成された。もう少し生身の人間の能力を素のままで強化する方法は無いものかと。で、このまま行くとバーチャル化してしまう世界を作る現在のNWOに干渉をし続けている。」

 

じゅえる「いいんでないか。で、それがみのりちゃんに何をするんだ?」

まゆ子「そうは言われてもね、遠い未来人の理想の社会を実現するために従えと言われて、魔少年がはいそうですかともしないわけですよ。」
釈「はは、それはそうです。」

まゆ子「魔少年の目はむしろ刹那的で、これから起こる世界の大動乱、大戦争にどう参画するかなのだな。21世紀の未来は否応なしに動乱する予定になっている。
 ここに自分がどう関わって世界をコントロールするか。ゲキの力の継承者をどう織り込むか。
 もちろんオールドファッションの一員としての十分な成果を上げなくてはいけないのだが、それにしても自分自身は不老不死でもなんでも無いんだから何を成し遂げるべきか。
 色々考えているんだよ。」
じゅえる「つまり、みのりがスタンド使いに襲われるのには特に干渉しない?」
まゆ子「スタンド使いは宇宙人との連携で襲ってくるからね。いかに魔少年でも太刀打ち出来ないよ。ただその連携している人間の愚かさをからかう事なら出来るのだ。」

釈「つまりこのお話においては、傍観者?」
まゆ子「それでいいんじゃないかな。」
じゅえる「もっと積極的でないと面白くないぞ。」
まゆ子「たしかに。そうだな、じゃあみのりはスタンド使いと戦うが、周囲の人間特にお金持ちどもを危険から救うのに随分と無理をするのだ。
 自分はどうも無いけれど、他人の為にずぶ濡れになったりするのを助けてくれるのが、今回の魔少年の役どころ。」
釈「そんなもんでしょうか。」
じゅえる「なにを無意味なことをやっているのか、と冷笑しながらもみのりちゃんの必死な姿に目を留める。そういう関係か。」
まゆ子「どうかな?」
じゅえる「いいんでないかい。」

 

釈「じゃあ次にスタンド使いを設定します。スタンド使いって何ですか?」
まゆ子「人間と宇宙人がタッグを組んで超能力を使う存在です。この宇宙人がポイント。
 人間にスタンドというパワー有るビジョンを使わせる宇宙人の実体は、目に見えない。人体内部に潜んでいない。かと言ってUFOから遠隔して支援しているわけでもない。
 高次元空間にも居ないし、未来からエネルギーを送っているのでもない。

 その実体は、皮膚常在菌です。」
釈「え?」
まゆ子「ミクロサイズの宇宙人で、他の生命体に寄生して共存して生きていくタイプの宇宙生命体です。もちろん知性もあるしエネルギー源も別にあるのだが、単独で生きてはいけない。
 というか、一人だと寂しくて死んでしまいます。」
じゅえる「なんだそのうさぎさんは。」

まゆ子「ともかくミクロサイズの細菌宇宙人であり、群体として生命体の皮膚に取り付いてその生物の生存に力を貸す事で高度文明を形成して宇宙に乗り出すというもの。
 もちろん宇宙人だから単独で会話もできるし機械文明を築くことも出来るのだが、やらない。他の生命にくっついているのが楽しくて快適で大好きという宇宙人だ。」
釈「仕方の無い奴ですねえ。」

まゆ子「で、この皮膚常在宇宙人が使う機械が、エネルギーによって形成され空中に投影されるパワー有るビジョン、スタンドなのです。」
じゅえる「それをスタンドと呼んでしまうとなにかと差し障りが有るな。新しい呼び名を考えよう。ゴーストとかスプライトとか?」
釈「スプライトでいいじゃないですか。」
まゆ子「あー、まあ、スプライトだな。スプライトをスプライトと呼んで何が悪いだろう。」
じゅえる「よし決まり。スタンドはスプライトだ。」

まゆ子「でもね、みのりちゃんとか物辺島の連中はそれをはっきりと「スタンド!」と言ってしまうんだ。だってそうだもん。」
釈「あー。」
じゅえる「あー、スタンドだからなあ。」

釈「で、そもそもスプライトと呼ばれるスタンドは何なのです?」
じゅえる「立体映像が力を発生させるのか? いや、そういうのはいっぱい有るけれど、まともな物理設定見たことが無いような気がするぞ。」
釈「ああそういうのはですね、だいたいがなんか力を発生させる不思議機構があって、そのインデックスとして空中に物体像を映し出している、という感じですね。ぶっちゃけ立体像は無くても構いません。」
じゅえる「そうなんだ。スプライトもそう?」
まゆ子「いや、スプライトは立体映像そのものが力を発生させるデバイスだぞ。

 簡単に説明すると、微小な光点がそれだ。光で形成されるマイクロマシンというところで、他の物体にエネルギーを投射するアンテナの役をする。もちろんエネルギーとは言ったが、物体を動かしたり操作したり電撃をぶつけたり熱したり冷やしたりと、まあ色々出来ます。」
釈「じゃあ、一個だけの光点が重要で、立体映像は意味無しですか?」
まゆ子「これが数百万個集まって立体映像を構成する。液晶ディスプレイのドットと同じ理屈だ。それが立体で存在するから立体映像。」
じゅえる「つまり空中立体映像がエネルギー投射装置そのものなんだ。じゃあエネルギーをぶつけたらそれ壊れる?」

まゆ子「まあ壊れるんだけれど、壊れない。即修復するというか、そもそもこれは瞬間的にしか存在しない。
 そうだねえ、一つの光点は百分の1秒ごとに1万分の1秒存在する。それが数百万個有る。」
釈「そんなもの視えるんですか?」
まゆ子「ブラウン管テレビというのはそういう理屈で光っている。微小時間で撮影すれば、テレビの画面は1個だけの光点が瞬間光ってるだけだ。」
じゅえる「つまり点滅しているんだ、それぞれの光点が。」
まゆ子「うん。」

釈「破壊するには光点が出現している瞬間にエネルギーをぶつけないといけないわけですね。」
まゆ子「そうなんだが、1万分の1秒しか存在しないから、破壊するのに必要なだけのエネルギーをぶつけられない。短すぎて。」
じゅえる「タイミングを合わせて瞬間的にぶつければ、」
まゆ子「すべての点が同期して点滅してればそれも効くんだが、ばらばらのタイミングで点滅しているから、それぞれの点を全滅させるまでには至らない。」
釈「エネルギーを一万倍に上げれば?」
まゆ子「物辺優子がそれを考えるが、そんなエネルギーを放出するとそこら中が蒸発して、スタンド使い本人が消滅する。みのりちゃんには出来ない無理。」
釈「あー、そうか。生身の人間であるスタンド使いならぬスプライト使いを殺すわけにはいかないんだ。それは困りますね。」

じゅえる「どうやってやっつけるんだ?」
まゆ子「光点を破壊する方法は色々考えつくのだが、最も簡単なものは皮膚常在宇宙人を直接に退治することだ。だがその為には皮膚常在菌自体が宇宙人であることに気付かねばならない。
 まずここでみのりちゃんは苦心する。」
釈「なるほど、謎があるわけですね。」

じゅえる「で、見つけた後はどうする。」
まゆ子「それは秘密。」
釈「まあ、そうですね。」
じゅえる「そこまでサービス出来ないか。」

 

釈「スタンド使いは何人出ますか今回。」
まゆ子「あー、どうしようか。タロットカードのアルカナくらい出しますか。」
じゅえる「いや、さすがにそれは困る。5、6人かな?」
釈「8人くらいでどうでしょう。」
まゆ子「まあ、あそこらへんの神話伝説から適当な数を見繕いましょう。どうせ十把一絡げでやっつけられますから。」
じゅえる「うん。」

釈「じゃあまずてきとーに能力をでっち上げてみましょう。でもほんとのスタンドはなんか不思議な力を最近使いますねえ。ああいう不思議系はさすがに純エスエフ小説であるゲキロボでは使えませんよ。」
まゆ子「とはいうものの、ありきたりの物理攻撃ではせっかくスタンド出した甲斐が無い。両者のぎりぎりの線を狙って行こう。なんだったら使い回しも効くからね。」
じゅえる「ゲキロボだけでなく、別の作品に流用も可能だからね

 じゃあまず基本中の基本である物理攻撃から考えよう。単純に念動力みたいなパワーを用いる、つまり物体を持ち上げたり砕いたりは有った方がいいよね、やっぱ。」
釈「難しいところですねこれ、基本能力ですよ。」
まゆ子「スプライトはスプライト使いの身を物理的に守る事が出来る。つまり物理攻撃/防御能力は標準装備だ。人体を持ち上げて空を飛ぶというのも、限定的に可能だろう。ジャンプくらいで。」
釈「簡易スーパーマン能力ですね。あとオラオラオラオラオラオラは必要でしょう。」
じゅえる「殴り合いは人型のスタンドであれば必須! スプライトは人型なのか?」
まゆ子「あー、そうだな。そこらへんはスプライトの基本機能ということで、一応はすべて人型に成れる事にしておこう。この時はスプライト使いの身を守る物理モードだ。」

釈「二段変身ということですね、了解しました。じゃあ基本機能はそれとして、情報系の能力も基本で欲しいですね。」
じゅえる「透視とか千里眼、読心術なんかはアリだな。」
釈「人の心が読める、というのはいいですね。基本機能にしますか。」
まゆ子「うーん、簡単な奴ね。YESかNOか。」
釈「ダービー弟ですね。了解しました。」
まゆ子「あと透視千里眼やら盗聴は無し。ただしスプライト使いの肉眼や耳の能力をスプライトが強化するという仕組みにしておこう。」
じゅえる「なる。そりゃ二個は要らないわな。」

まゆ子「で、人型つまりアラビアンナイトで言うところのジン形態が変化して、それぞれ特殊能力を発揮するモードになるわけです。
 あー、そうだな。アラビアンナイト風に、イフリート、ロック鳥、ラクダ、舟、デーツ・ナツメヤシの木、ランプ、魔法のじゅうたん、踊り子くらいかな。」
釈「ちょっと脅しが効きませんね。もっと派手な化物はありませんかね。」
じゅえる「バハムートとか大きな魚だから、舟の代わりでいいんじゃないか。」
釈「器物系ははずしてこけおどしの怪獣にしますか。」

まゆ子「うーん、そうだなー。ここはアラブ風でなくてもいいんじゃないかなあ。むしろアラブ社会においてはまったくそぐわない形態の怪獣で。」
じゅえる「弱気だな。まあ確かに目の肥えた読者様に昔ながらのアラビアンナイトではインパクトに欠けるか。」
釈「しかしなんらかの統一性が無いと、ばらばらで面白くありませんよ。」

じゅえる「じゃあまず機能を考えよう。それにふさわしい形状を作ればいいんだ。」
釈「了解しました。ではまず炎ですね、ものすごい炎を噴き上げるんです。」
まゆ子「却下。当たり前過ぎて面白くない。」

 

(考え中)

釈「じゃあ砂で落とし穴。」
じゅえる「却下。砂というなら砂時計だろう。時間干渉能力だ。」
まゆ子「ふむ。砂時計が落ちる3分で悪夢が繰り返すとかだな。」
釈「そういうのアリですか。なるほど、じゃあ砂時計のスプライトは有りにしましょう。砂時計をモチーフに幻覚攻撃です。」
じゅえる「幻覚で色んなことが何度も繰り返し起こって、なにがなんだか分からなくなるんだな。

 しかし、せっかく宇宙人がエネルギーを投射してるのに、地味かな?」
釈「たしかに迂遠ですねえ。砂時計は特殊攻撃で良いとしても、他は物理攻撃でいいんじゃないでしょうかね。」

じゅえる「やっぱり、水は水だ。溺れ死ぬんだ。ホテルのロビーを一瞬で水が埋め尽くして、しかしそれほどは深く水は張らずに表面だけを覆い、ついには対象となる人間の顔面を覆って窒息死。」
釈「それでいいと思います。やっぱり宇宙人のすることですから、派手に行きましょう。」
まゆ子「この表面だけを水で覆うという特殊能力によってどこででも侵入して人を溺死させられる。しかしみのりちゃんは漁師の娘であり、息を止めてぶん殴りに行ってお終い。」
じゅえる「うん、その程度の敵だ。」

まゆ子「火は単純にファイヤーボールで高級自動車を爆発させまくり、で、爆発ごとに火が大きく強くなっていく。そういう燃料が無いと扱えない火攻撃というのでは。」
じゅえる「単純が一番だよ。強いし。」
まゆ子「ドバイだしねアラブだし、石油攻撃だよ。」

釈「風は突風と砂嵐でいいんじゃないですか。なにせアラブでドバイですから、砂嵐ですよ。」
まゆ子「違いない。砂嵐は無くてはならない攻撃だ。」
じゅえる「いや、それはちょっと違うだろ。風魔法はなるほど砂嵐はやる。が物理攻撃手段はそれだけだ。後はもっと地味で陰険な攻撃を仕掛けてくる。」
まゆ子「ふむ、なら音だな。風つまり空気だから、音のトリックを使おう。」
釈「おお、いかにもスタンドぽい。」

釈「後は、太陽と、月と、闇と、これで7個。」
じゅえる「花だな。ベリーダンスを踊る殺し屋が必要だ。」

まゆ子「太陽は熱で無くて光だよ。眩しくて目が開けられないんだ。」
じゅえる「そんだけ?」
釈「それで、短刀でぐっさり来る卑怯系アサシンなのです。しかも毒を使う。」
まゆ子「ふむ、卑怯系は頭脳戦に特化してよいぞよいぞ。」

じゅえる「じゃあ月はシミターだな。三日月刀が百本くらい出現して斬りまくる。」
まゆ子「シャムシールというのが最近の流行りだよ。ファンタジー系ではお馴染みの武器だな。」
釈「しかしみのりちゃんの鉄球ハンマーにシミターではまるっきり刃が立ちませんね。」
じゅえる「いいんでないかい。銃弾も切り落とす不死身のスタンド使いが、鉄球に一撃で打倒される。これが欲しいんだ。」
まゆ子「じゃあこいつはほんとうにあっさりとやられる事に。何をしに出てきたか分からないくらいに。」
釈「納得です。」

まゆ子「闇だが、これはベリーダンスを踊る踊り子の魔力でゾンビが地獄から蘇るというのはどうだろう。」
釈「どういう宇宙人魔法か知りませんが、ゾンビなんかでみのりちゃんには勝てませんよ。」
じゅえる「まあ兵隊が多数出現して、それが不死となれば近代兵器を用いる軍隊でもやばいんだけど、さすがにね。」
まゆ子「くるくる踊ってゾンビを出現させようとしている時に、みのりちゃんにぽこっと殴られて終了。これでいいじゃないか。」
釈「納得です。」

 

まゆ子「地水火風、日月闇。これで7つ。なんかイスラム神秘学だと7が特別な数字らしいから、スタンド使いは7名でラスボス1名だな。」
じゅえる「ラスボスか、つまりディオだな。」
釈「いかにもディオっぽい奴がラスボスで出るんだけど、これは魔少年にやっつけられる事にしましょう。」
じゅえる「うん、魔少年にも凄い奴だという見せ場を作る演出が無いといけないな。実はラスボスディオは魔少年の依頼で動いていたのだけど、あまりにも使えないから粛清されてしまうんだ。」
まゆ子「ふむふむ。実は最後のボスキャラによって建設途中のドバイビルが倒壊するというイベントを用意しているんだけど、そこで使いましょう。」

釈「ドバイビルを倒すくらいですから、結構強力なバケモノですね。どうしましょう、変身でもしますか。」
まゆ子「ディオだからねえ、近接戦闘と時間停止能力なんだけど、さすがに完璧パクリは無茶だし。」
じゅえる「近接戦闘はいいんだけど、うーん、じゃあここは極めて単純にレーザー光線銃を使うんだ。」
まゆ子「なんだそれは。」
じゅえる「オールドファッションが持ち込んだ未来技術による未来兵器だ。単純にスタンド能力を自己の防御に使い、攻撃能力は未来兵器に頼るという卑怯敵。」
釈「ほおほお、それは卑怯。」
まゆ子「なんというか、あまりにも卑怯にして卑屈な敵だな。」

じゅえる「しかしそうでもしなければみのり鉄球を受け止める事はできないんだ。
 で、ドバイビルを破壊しながら最上階にみのりを追い詰める。……いいんでないかい?」
まゆ子「ふむふむ。それなら魔少年が光線銃になんらかの仕掛けをして止めるなんて簡単だ。うん、それがいい。

 ちなみに今回みのり鉄球鎖ハンマー大活躍します。最後のオチもこれです。」
じゅえる「ならドバイビルでの戦闘は、建物を破壊しかねない鉄球ハンマーを封じる為にあえて狭いところを、という頭脳プレイだな。
 光線銃はもちろんコンクリ壁なんか何枚でも射抜くし、柱をビームサーベルみたいにちょん切ってしまう優れ物だ。」
釈「鉄筋コンクリートなんかすっぱすぱなんですね。それは倒壊しますよドバイビル。」
まゆ子「うん、出来た。」

 

釈「ちなみに闇魔法を使うスタンド使いは美少女で腹出してくるくる踊りますがが、やっつけられた後みのりちゃんがほっぺたをうにゅーと引っ張って見て「37歳」と実年齢を暴き出します。」
じゅえる「うん、オチは楽しくな。」
まゆ子「地獄から亡者ゾンビを呼び出す、というかゾンビロボットを作るんだから、アラビア語で「地獄」を意味する”ジャハンナム”としよう。」
じゅえる「ジャハンナムて地獄って意味だったのか。」
釈「ジン・ジャハナムてのは、”地獄の精霊”て意味だったのか。ふーん。」
じゅえる「じゃあ、それはゾンビを呼び出すんじゃなくて”グール”だな。同じものだけどね。」

まゆ子「ラスボスディオの名前は”マリク”ということにします。イスラムの王様称号の中ではスルタンやカリフの下の、だいたい「殿」クラスの名前ですね。」
じゅえる「ふむふむ。イスラム神秘学的な名前は投入しましょう。

釈「火はイフリート、水はバハムート、風はロック鳥、月はそのものずばりのシャムシール、でいいですかね。」
じゅえる「ロックはルフ鳥とも呼ばれるから、語呂がいいルフにしよう。」
釈「はい。」
まゆ子「でんせつのせいけん、を調べてズルフィカールというイスラム世界の聖剣を見つけたけれど、どうしよう?」
釈「あんまり語呂が良くないですねえ。シャムシールでいいんじゃないですかね。」

まゆ子「ぐるぐると調べて、”ザックーム”というのを発見したぞ。地獄に生えている樹木で、亡者の罪人に果実を食わせてものすごく苦いという代物だ。
 時間停止か幻覚かはしらないけれど、砂時計魔法には適当な名前ではないだろうか。」
釈「何度も何度も幻覚が襲ってくるという能力でしたね、砂時計。」
じゅえる「こちらからは積極的に動かないという特性を考えると、樹木の名前はいいかもね。じゃあ採用。」

まゆ子「太陽はアラビア語で”シャムス”だ。なんか普通だな。」
釈「あー、なんですね。」
じゅえる「モスクの傍に立っている高いとんがった塔は「光塔」”ミナレット”というのだが、こっちの方がよくないか。」
まゆ子「あーそうだなー、色々調べるとやばいものが出てきますからねえ。「太陽」のアラビア語を調べてたら、そのものずばりの『太陽』という聖典まで出てきましたよ。」
釈「そりゃ太陽は偉いですから。」
まゆ子「しかし、太陽そのものよりも、塔というのはいいな。スタンドのビジュアル的に。」
釈「ビジュアルの立体映像的にはバリエーションが大切です。ミナレットで行きましょう。」
まゆ子「まあいいか、元々は灯台がそれだったらしいから。」
じゅえる「まさに光の塔だな。」

 

釈「ところでどうやってやっつけますか、こいつら。」
まゆ子「みのりちゃんの能力は無敵の格闘技能と不思議金属で作られたトゲトゲ鉄球鎖ハンマー、あと動物とお話ができることだ。」
じゅえる「ふむふむ。」
まゆ子「まあ、おおむね殴り倒せば勝てます。」
じゅえる「いや、第一形態のジン・スプライトなら防御力と怪力があるんだろ。」
釈「そうですよ、破壊するだけのエネルギーを伝達できないと聞きました。」
まゆ子「みのりちゃんはそんな悪いことしないよ。だって、スプライト撃破しちゃうとスプライト使い死んじゃうもん。」
釈「あ。」
じゅえる「あー、そりゃ死ぬな。」

まゆ子「というわけでみのりちゃんは全力全開でなく、相当に手加減してぶっ倒します。」
釈「手加減してスプライトは破壊できるのですか?」
まゆ子「無理だね。」
じゅえる「なら、」
まゆ子「無敵の鋼鉄甲冑を着ていても、いや重装甲の戦車であっても、ぶん殴られるとダメージが来る。装甲を貫徹出来ない榴弾で撃たれまくって乗員がパニクって戦車捨てて逃亡、という事例もある。」
釈「はあ。つまりスプライトぶっ叩いていれば自然と敵は、」
まゆ子「KOだよ。」
じゅえる「そんないいかげんなことで大丈夫なのか?」
まゆ子「というか、そんな単純な手法で自分達がやられるとは、スプライト使いは誰も理解していなかった。為す術も無く殴られまくるよ。」
釈「はー。」
じゅえる「しかたのないスタンド使いだなあ。」

まゆ子「問題は、そのぶん殴るところにこぎつけるまでどうするか、だ。相手は攻撃を仕掛けてくるわけで、それもなかなかに卑劣な罠を繰り出してくる。さてどうするか。」
釈「誰から始めますか?」
まゆ子「いや、もう全員分考え終わったから、ここで種明かしする必要は無い。」
釈「あら。じゃあ、この会議はもう終了ですか。」
まゆ子「そういう事になる。」

じゅえる「とっぴんからりとしゃん。」

 

2012/03/05

まゆ子「2011年という年を振り返ってみると、まあ震災は置いといて「でぽ」の話だが、「げばると処女」終了を受けてもうとにかく「ゲキロボ☆彡」を書きまくった、らしい。」

釈「更新履歴を見るとそうとしか言いようがありませんね。ゲキロボコーナーにおいてもほとんど11年です。半分以上書いたわけですよ。」
じゅえる「暇になったから、という理由からか。とにかく凄いな。」

まゆ子「正直に言いましょう。げばおと書くのは結構辛かった。」
釈「分かります。」
まゆ子「というわけで息抜きにゲキロボを書いてました。しかし負担が無くなったから野放し状態になり、カクの如き有様に。他の小説はまったく手が出ません。」
じゅえる「息抜きに軽い気持ちで書いてたものが暴走した状態、ってわけか。まあそれも道だな。」
釈「悪いとは誰も言いません。」

まゆ子「とはいうもののだ、書いてる私本人は忸怩たるものがあるわけさ。なんせ息抜きだからてきとーなんだすべてが。」
じゅえる「いや、そのくらいがいいよ。」
釈「肩に力が入らないというのは美点と呼んで差し支えないと思います。」
まゆ子「それはそれとして置いといて、だからこそ目に付く欠点というものもある。」
じゅえる「拝聴しましょう。」

 

まゆ子「えーと、「げばると処女」が習作である、というのは言ったかな?」
釈「はい。」
じゅえる「長編を書く練習だったんだよね。」
まゆ子「それはエピソード1までで、それ以降は色んなシチュエーションで物語を書けるかがテーマでした。だから色んな事件が起きて主人公が章ごとに変わって、特に男性主人公というのがしばしば投入された。」
じゅえる「ふむ、感心だな。」

まゆ子「で、その結果げばおとの枠組みでは出来ないものがあると気付いた。恋愛ものだ。
 一応は恋愛をする人を何人か投入してみたのだが、そして本編主人公として最初に投入された弓レアルがまさにそれなのだが、結論としては失敗であった。
 げばおとは恋愛物を書くには向いていない。

 だから「ゲキロボ☆彡」を始めたわけだ。」
釈「まあこれもまっとうな恋愛物とはいい難いですが、一応は頑張ってますね。」
じゅえる「なるほど。であれば、ゲキロボも失敗と見做すしか無いわけだ。」
まゆ子「恋愛物としての物語は、どう贔屓目に見ても???だ。頑張っているけどね、そしてこれからも頑張るけどね。」

釈「向いてないわけですよ、そもそもが。」
じゅえる「それを言っても詮ないことだ。だが書きたいんだろ?」
まゆ子「うん。しかし、どういう恋愛物を書くのが私としては正しいのか、それすらも未だ掴めていないし、これは書いている最中にしか得られないだろう。」
釈「なんか武術の奥義みたいですね。」
じゅえる「物語創作の奥義ではあるさ。」

まゆ子「さて、ゲキロボは恋愛物としては失格ではあるものの今更止めるつもりは無いし、そもそもがほのぼの日常宇宙人学園モノとしてはそれなりに成功していると見做してよいだろう。」
じゅえる「これから佳境だしね。」
釈「なるほど、宇宙人抜きで恋愛学園ものを書いてみるべきなんですね。」
まゆ子「そこ焦らない。

 さて方針転換をする前にひとつ考えなければならないものがある。長さだ。」
釈「長編はダメですか?」
まゆ子「私は長編は書けない。げばおともそうだしゲキロボも無論そうだが、短編連作で長編に見えているだけだ。やたらと長い連作と考えてくれ。」
じゅえる「でもそれが悪いとは言わないぞ。」
まゆ子「もちろん自信を持って書いているし、そもそもが長編なんか鬱陶しくて読めるかいてのもある。だいいちそんなながいもん、どうやって推敲すればいいんだ。」
釈「執筆上の都合から、こういう形態になっているわけですね。」
じゅえる「読んで書き直してたら眠くなるからしゃあない。」

まゆ子「そろそろ別のチャレンジに踏み込むべきではないだろうか。つまり『長編』だ。」

釈「なるほど。」
じゅえる「本来長編として書かれる物語、ということか。枚数は?」
まゆ子「300枚以下。」
じゅえる「ふーむ。」
釈「ゲキロボ、あるいはげばおとのエピソード1巻分ですね。考えてみればすごい枚数を短編連作しているわけです。」

まゆ子「飽きたわけではないが、ちと長すぎて困る。他を書くのが滞る。」
じゅえる「そういう話か。ネタと企画だけ出しても実行できないんだな。」
釈「体質改善が必要、ということですね。」

まゆ子「体質改善というのにはもうひとつ意味が有る。
 実はげばおともゲキロボも一本道シナリオだ。冒頭から結末までずらーっと一本道分岐無しで進んでいる物語だ。つらつら読んでいくのにちょうどいいものではあるが、しかし全体を俯瞰した場合芸が足りないと感じられる。」
じゅえる「いや、何年も掛かる物語でそんな入り組んだもの作ったら、途中で挫折してなにがなんだか分からなくなるぞ。」
釈「そうですよ。そもそもが書いていく内に設定が煮詰まってキャラが見えてきて、もっと面白い物語に進化していくんです。
 物語構想当初の他愛もない設定や伏線に縛られるのはむしろ逆行だと思いますよ。」

まゆ子「故に、長編だ。シナリオに技巧を利かせるにふさわしい枚数というのがあって、それはちょうどエピソード1巻分てことだな。」

じゅえる「そもそもなんであんなに長いもの書こうと思ったんだよ。そっちの方が不思議だぞ。」
まゆ子「いや、そんな長いものまったく考えてないんだが。そもそもげばおとはあれだけのお話を1巻分で計画していたし、ゲキロボに至っては100枚くらいで終わるかなーと。」
釈「こないだ数えたら1280枚を超えてました。1章6枚換算ですかね。」
じゅえる「なんだかんだ言って、今度の更新で5巻目に突入だからな。」
まゆ子「てへ。」

じゅえる「なるほど、改善の余地有りか。」
釈「ですね。これでは合理的な創作活動とはとても言えません。せめて300枚で一応の決着をつけないとダメです。」
じゅえる「身がもたんな。」
まゆ子「ということです。」

 

まゆ子「で、どうしようかです。
 今のところ考えているのでは、つまり物語を一本道構造ではなく読者様に頭をひねってもらう仕掛けを様々に散りばめて、てきとーに謎解きなんかでお楽しみいただくという技巧が必要ではないかと。」

じゅえる「正道だな。」
釈「たしかに有って困るものではありません。とはいうものの小ネタはこれまでもずいぶんと突っ込んでいるんですよね。」
まゆ子「天然伏線です。」
釈「説明しましょう。天然伏線とは、書いてる本人ですら特に意識していないけれど伏線ぽいアイテムをそこらに放り投げて、あとでてきとーに組み合わせて決着をつけたり展開をエスカレートさせることです。
 一見すると伏線ぽいですが、実はとくにかんがえてない、てのが正解です。」
じゅえる「器用なもんだな。」

釈「最も最近の天然伏線は、ゲキロボ鳩保の男関係です。今回初めて身分と名前が確定しましたが、彼女に男が居たらしいというのはもう始まる前から設定済みです。」
まゆ子「いや、だってそうでしょ。あいつはなんか処女っぽくないんだもん。だからそれなりに気を使って人間関係描いて来ましたよ。」
じゅえる「ま、はんぶんくらい処女て感じだな。あまり成功してはいないぞ、それ。」
釈「あー、なんと言いますか、処女かどうかは別として男に困ってない状態ではありましたね。」

まゆ子「さて問題は、天然伏線と計画伏線はあんま相性が良くないてとこです。」
じゅえる「そりゃそうだ、天然伏線は何時回収されるか分からないから成り立つもので、比較的近距離で解決する計画的な伏線とはスパンが違う。」
釈「天然伏線を撒こうにも、もう終わっちゃいますからね。つまり短い長編であれば計画伏線ですべてを賄わねばなりません。」
まゆ子「えー、うっとうしいよおー。」
釈「これですね。」
じゅえる「うん。これがずるずると長くなっていく元凶だ。」

釈「ということで、伏線をちゃんと設定します。つまり物語の構造に技巧を投入します。」

じゅえる「つまりどういうことかな? 推理小説みたいなの書くわけ。」
釈「それはものによりますが、この流れで行くと恋愛物では。」
じゅえる「なるほど。」
まゆ子「恋愛物で複雑な技巧を投入、か。なるほどメモメモ。」
じゅえる「まあ、一応どの話も最終回の絵をちゃんと想像してから、書き始めているんだから、形は付くんだよね。」
釈「今回そのオチを読者様に推理していただこう、というものになります。」

まゆ子「ふむふむ。勉強になるなあ。で、」
じゅえる「恋愛物であれば、最終的にはくっつくか分かれるか二つに一つだ。」
釈「そこまでプリミティブなものに還元しますか。」
じゅえる「そもそもが恋愛物なんだから男女ペアでキャラを投入するしかないでしょ。男女が出ればくっつくか離れるか、そもそもくっついてから事件を起こすか、くっつく為に事件を起こすか、どうするね。」
釈「もう恋愛物で決定なわけですか。」

まゆ子「いや恋愛物というのは物語のジャンルとして非常に不適切なものだぞ。第一大抵の物語にその要素は投入されている。」
釈「ですよ。」
じゅえる「しかし今回、それをテーマとした1巻で終わる物語をでっちあげるのが目的だろ。」
まゆ子「まあね。」

 

…。
……。
…………。

(以下あしどりむに移行「メイドぶち殺し事件」2014/03/07)

 

2011/09/12

まゆ子「ゲキロボを書いてるとバカになる!」

じゅえる「ま、バカ話だしね。」
釈「頭使わないように気を使ってますよ、アレ書くのは。」

まゆ子「だから頭を使って賢くなろう。というか、『ゲバルト処女』だってあんま賢いお話ではなかったのだが、『ゲキロボ』よりはマシだ。」
じゅえる「まあ、異世界救世主伝説てのはだいたい女子高生なり男子なりが異世界の誰よりも頭良い、という設定で展開するからね。」
釈「でもそれは往々にしてバカばっかり世界になるのです。」

まゆ子「だが『ゲバルト処女』が始まった時点で弥生ちゃんは既に完成され尽くしたキャラであった。かんぺき優等生であった。
 優等生キャラを崩さないままに救世主様をするには、異世界の人がバカでは困るのだ。バカの中で大将やっても弥生ちゃんがバカに見えるだけ。
 だから、頑張って賢いキャラをどんどん出しましたよ。疲れた。」

じゅえる「そうなんだ。賢い敵キャラとか考えると頭禿げるのだ。」
釈「恐ろしいですねえ。筆者の寿命を奪うのです、やはり異世界の人はバカばっかりに限ります。」
まゆ子「というわけで『ゲキロボ』は馬鹿ばっかりで書いているが、当然の報いとして書いている本人もバカに成る。これは嬉しくない。」
じゅえる「そりゃ嬉しくない。」

まゆ子「そこで今回、ファンタジーもの総合政治講座などやろうと思う。異世界ファンタジーを書くために必要な政治知識とその展開方法、てこった。」

じゅえる「何故?」
まゆ子「いや、バカ防止で。」
じゅえる「いや何故今になって?」
釈「涼しくなったからでしょう。秋になって頭ぼけてたのが治ったんです。」
じゅえる「なるほど、季節の変わり目だからか。」

まゆ子「ぺてんが回るようになりました。御理解いただけたでしょうか。

 

 さてファンタジー政治です。しかしながら、政治は嫌いという人も多いのです。特にファンタジーやらエンターテイメントやらでは。」
じゅえる「うん。」
釈「固いと読むの疲れますからね。」
まゆ子「しかしながら、手を抜いて良いかと問えば、そうもいかない。政治とか大好きな読者様も少なくない。」
じゅえる「あー作風というやつだな。そして『ゲバルト処女』の読者様なら、なるほど政治はお好きでしょう。」
釈「ご期待には沿わねばなりませんか。難儀ですねえ。」

まゆ子「当HP「でぽ」「でぽでぽ」では政治ネタは禁止です。なぜかと言うと、前にやって受けなかったから。
 しかし今回敢えて踏み込みましょう。

 

 さて釈ちゃん。ファンタジー世界で政治をする際に最も重要なものはなんでしょう?」
釈「はあ、内政も外交も戦争も欠かせませんが、やっぱ一番大切なのは主人公である救世主さまが負けないことではないでしょうか。」
じゅえる「あ? 救世主さま限定なの?」
まゆ子「いや、物語の主人公というものはだいたい活躍して世界やら国家やらの危機を救う救世主さまですよ。そうでなければ読む価値が無い。」
じゅえる「あー、ずいぶんとプリミティブなところから開始するのだな。」

釈「ですが、政治を語るには主人公はそれなりの社会的地位を得ていなければなりません。いきなり大臣でもいいくらいですが、……つまり身分制度?」
まゆ子「うん、それは確かに重要だ。主人公が政治的手腕なり軍事的才能なりを見せつけるにはそれなりの地位になくちゃいかん。
 そして地位を確固たるものとするのは社会的同意。たとえ当初は敵対的であるとしても、味方内の勢力分布とそれによって生じる身分の差別は重要なものです。」

じゅえる「ちょっと待て。それは現代社会から降臨した救世主さまの政治信条に真っ向から反するのではないか?」
釈「つまり身分の差を認めない民主的な態度ですね。ですがー、」
まゆ子「いきなり現れた救世主さまに政治的権限を与えるのに最も適していない政治制度が民主主義です。」
じゅえる「あ、うん。そうだね。」

まゆ子「つまりチートで権限を手に入れる為に、主人公は君主制か貴族制、独裁者のとこに降臨しなければなりません。宗教国家でもいいですね。弥生ちゃんは基本的に宗教国家に舞い降りました。」
じゅえる「やっぱり身分制度ですね。」
まゆ子「さて、これまで書いてきた中に、これからのヒントというか解答が既に示唆されています。
 つまり、各種勢力、貴族、有力者です。ファンタジー小説で最も重視すべきなのは彼らとの対話、交渉です。」

 

じゅえる「うん、それは正論だ。ラノベの大半は会話で成立しているのだから、人が相手でないとね。」
釈「各勢力をいかに動かして上手く国力を集中するか、これがファンタジー政治の王道ですね。でも内政というのは、現代リアル社会から持ち込んだ各種チートアイデアでグレードアップも醍醐味ではありませんか?」

まゆ子「そいうのはどーでもいいのです。何故ならば、嘘話だからです。」
じゅえる「うわ、言っちゃったよこの人。」
釈「嘘話ですけどー、でもそれを言っちゃあおしまいですよお。」
まゆ子「でも嘘話だ。だからそんなのはどうでもいい。なんだったら地面を掘ったら無限に芋が生えてくる作物を発見した、でもOK。芋を使って文明を興す、芋で敵をノックアウトする、芋で宇宙に進出する文明だって作れます。
 そんなものはどーでもいいのです。というか、それは筆者がお好みで弄るパラメータに過ぎません。
 その結果生じる軋轢をどのように解決するか、その交渉こそが物語です。」

じゅえる「でもさ、戦争とかあるじゃないか。交渉できないから戦争するんだろ。」
まゆ子「戦争は外交の一手段と俗に言われるように、これもまた交渉の一種です。が、戦争は独自の論理で動くから扱いは別。」
釈「でもファンタジーなら戦争しないといけませんね。内政ばっかりでは読者さま飽きてしまいますよ。」
じゅえる「しかし、戦争の理由がリアルでないとあんま面白くないんだよね。」

まゆ子「うん。戦争というのは合理的な理由によって発生したものでないと、読者さまに足元を見られてしまいます。
 しかしながら、それも結局は交渉なんです。
 何故ならば、戦争は外交の延長線上にありますが、外交は内政の延長線上にあるからです。」
じゅえる「お!」

まゆ子「国内勢力が四分五裂していれば、ろくな外交は出来はしない。国内を治められない者に外交も戦争も出来はしない。
 抽象的な話ではありません。これが正しいことは2011年に生きる日本人なら誰もが知っています。」

じゅえる「あ〜。」
釈「あー、それはー酷いものですねー。特に去年。今は内政でぼろぼろですが。」

まゆ子「たとえば、戦争といえば勝てない戦はしていけないと普通の人は思います。誰が好き好んで負ける戦をするものか。
 だが国内政治的にはそれは正しくありません。自らの勢力が有利を得るために国外の敵と手を結ぶなんて普通ですし、そこまで行かなくても戦争を遂行する勢力をあえて矢面に立たせて、負け戦後に自勢力が主導権を確保するなんて手もあります。
 その際は、戦に負けた責任を取らせるという名目で粛清するのが常道です。たとえ自らが戦を呼び込んだとしても、戦争自体を遂行しなければその任を得られます。」

じゅえる「醜い陰謀だな。」
釈「そんな連中をのさばらせておく事自体が間違いですね。」
まゆ子「というわけでまずは交渉をしなければいけません。場合によっては鉄拳によるショータイムで構いません。」
じゅえる「ネゴシエーターとして実に正しい態度だ。」

 

まゆ子「とはいうものの、ではどういう基準でショータイムすればよいか、という問題にぶち当たります。これが狭義の政治ですね。」
釈「はあ。ですがファンタジー世界というものはそれぞれ事情が異なりますから、単純で一元的な基準は定められないでしょう。」
じゅえる「というか、現実社会においても時々刻々と状況は変わるわけで、なにが正しいかはそれこそパラメータ配分の加減によるんじゃないかい。」
まゆ子「おっしゃることは正論ですが、しかしそもそも救世主さまというのは細かいことにはこだわらないものです。もっとおおらかな、大きな視点から人を救うものです。」
釈「たしかに。」

じゅえる「たしかに嘘話の嘘世界の細々とした利害を懇切丁寧に説かれても、読者さまには何の意味も無いわな。」
まゆ子「そこです。そこがまさにファンタジー政治の醍醐味です。つまりこれはあくまでも嘘話であり、同時に嘘話を借りた現実のお話なのです。
 読者さまの共感というものは、それが現実世界においても成り立つだろうという印象、誤解でもよい、によって初めて得られる。読む価値を認められます、認めない人はそこんとこすっ飛ばしてエロいとこやアクションにベージを進めます。」
釈「ふむ。」
まゆ子「つまりこれは現実でなければならない。政治フィクションはそれが抽象化された、あるいはシミュレーション化された現実であればこそ価値を持つのであり、現実の合せ鏡であって現代性も持ちあわせていなければならないのです。
 もっと簡単に言えば、時事モノのテイストがあれば理解も容易い。嘘話を書く者、絶えず現実世界でネタを収集しなければならないわけです。」

じゅえる「ま、テロリストの出現比率は911以降どんと増えたしね。」
釈「311以降、巨大津波と原子力災害はこれからのフィクションに大いに出現するでしょう。確定です。」

まゆ子「というわけで、ファンタジー世界で政治を書くにしても、現実世界における政治や社会のトピックスを知らなければ書けないて結論になるのですが。
 じゃあ何処ら辺に重点を置けばよいか、という問題が次に立ちふさがります。温故知新というか不易流行というか、時事問題を描くには、人類社会において普遍の課題も踏まえていなければなりません。
 まあそこらへんは、政治をフィクションとはいえ書こうて考える人には特に説明の必要はありません。」

釈「いえいえ、そこが分かりません。」
じゅえる「というかさ、そこを間違えない人は、現実社会でも政治間違えないぞ。」
釈「また読者さまもラノベは10代が多いでしょうから、分からない事を前提として書くべきです。政治フィクションは望まなくても政治の教科書になっちゃうのです。」
じゅえる「いや、出来の悪い政治フィクションは逆に悪影響を与える。なんとかしなさい。」

まゆ子「はあ。でも現実回りのことを書くと押し付けがましくて。」
じゅえる「今日は許す。」
釈「許します。というか、ここまで来て逃げないで下さい。」

 

まゆ子「しかたないですねー。では基本を。

 現代2011年現代の娯楽小説においては、社会的イデオロギーの導入は忌避されます。まあ前の世代が悪行の限りを尽くした結果ですが、現実社会にも主導的なイデオロギーが存在しないからには、無いのを前提として書くべきです。
 これは案外と難しい。何故ならば、政治ファンタジーを書くような馬鹿者は単純な民主主義に毒されている事が多いからです。
 21世紀においてもなお、中学校の社会の教科書に出てくるような民主主義を信じているのだから、お手上げです。」

じゅえる「あー、それはー、あかん。」
釈「でも仕方ないんですよ。学校ではそれを教えているわけですから。ラノベを読むにも書くにも、そこから脱却するのは難しいんです。というか、出来ません。」
じゅえる「いや、出来ないと困るんだけど。でも読む方も書く方も中二病だからなー。」

まゆ子「しかしながらそこに真実があります。つまり、読者さまは政治なんかどうでもいいから、自分の知ってる範囲内の単語が出てくれば良しとする。思考コスト最小の戦略は捨てたものじゃないのです。」
じゅえる「いや、そういう奴は政治モノ読むな。」
釈「あー、それを言っちゃ−おしまいですがー、でも救世主さまのご活躍ですから添え物として無いと困るわけで、」

まゆ子「そんな素人くさい読者さまは置いといて、性根の座った根性のネジ曲がった読者さまを対象に読み応えの有るファンタジー政治を考えます。」
釈「はい。」

まゆ子「『ゲバルト処女』においてはここは、真正面から宗教を取り上げるという蛮行によって解決しました。
 宗教自体が意味を持たない現代日本社会に住む読者さまを相手に、宗教原理の独立性を打ち出し、肯定までもしてしまう。まさに蛮行です。
 もちろんこんな手段は他の人はやっちゃいけません。ドツボに嵌ります。下手をすると命に関わります。」

釈「天河十二神信仰という可愛いアイテムを投入したからこそ成し得た奇跡のようなものです。」
じゅえる「とはいうもののノリノリで書きましたよ。」
まゆ子「HAHAHA!」

 

まゆ子「さて、現代性を確保せんとする場合、2011年という現実は否応なしに政治を焦点とせざるを得ないのです。」
じゅえる「悪政はびこるが故に注目せざるを得ない、仕方ない風潮なのだな。」
釈「ファンタジーを書くのも自由にはいられません。」

まゆ子「ではあるが、じゃあどうすればいいのか。民主党の悪を声高に触れまわればいいのか、フジテレビを叩けば済むのか。
 いやいや、ファンタジー小説は生まれた後何年も生き続けます。ネット小説は掲げている限りは10年でも読まれてしまいます。
 その年べったりのアイテムは使っちゃいけない。いや、使うのならばすぐ古くなって死ぬのを覚悟しなければなりません。」
じゅえる「時事モノの宿命だ。」

まゆ子「私自身は一シリーズを書くのに何年も費やしますから、そういう時事べったりはしません。少なくともここ10年は死なないように普遍的に書く配慮をします。
 その上で、時事ネタを突っ込みます。」
釈「謙虚な態度がいちばんです。読者さまの印象もいい。」
まゆ子「そして説得力がなければいけない。

 ファンタジー政治は先に述べた通りに交渉です。交渉は、相手方を説得しなければ始まりません。読者さまが「ソレはないだろ」と思ってしまえばおしまいです。」
じゅえる「うん。」
まゆ子「これは無理です。」
じゅえる「ちょっと待て。」
まゆ子「無理です。」

釈「えー、それはー困る。」
まゆ子「ツールを使いましょう。時事モノ時事ネタを考える際に、何を優先するべきかの目安となるものが必要です。
 自分で出来ないものはツールに頼る。他人に任せる。謙虚な態度がひつようです。」

じゅえる「してそのツールとは。」

 

まゆ子「士農工商、です。」

 

釈「ほお。」
まゆ子「国内政治においては、このキーワードをツールとして読み解けばファンタジー政治にも役立ちます。つまり、何を以て優先すべきかがこの言葉そのものなのです。」
じゅえる「課題の優先順位か。つまり士、戦争が最優先?」

まゆ子「士は武士の士とは限りません。国士なり士太夫なり弁護士なり、色々ありますよ。代議士だったりする。
 士とは、国家です。国家の枠組みを作るもの、枠組みを守るもの、枠組みを成り立たせる仕組み自体についての課題こそが最優先です。
 そういう風に考えると、すっきりと分かります。」

じゅえる「国家とは、王様だったり貴族の身分制度だったりも入れるわけだな?」
まゆ子「はい。それは国体とか国風とかです。その国がなにを以て成り立つのか、国家のアイデンティティも最優先課題です。
 ファンタジー政治ではここが最も重要になります。おのおのの勢力のメンツの問題でもあるからです。彼らが彼ら自身の勢力を成り立たせる為に、まず優先して守らねばならないのがアイデンティティ。
 この大原則を無視しては、いかに利を説いても金銭的に懐柔しようとも、交渉が成り立つことは決して無いとお考え下さい。

 先程も述べた単純な民主主義に毒された作者は、ここが理解できない。だから失敗します。」

釈「宗教も、ここに入れていいわけですね?」
まゆ子「宗教の何が大事かと言えば、まさにここです。アイデンティティの成立に深く関わる存在ですから、宗教はファンタジー政治において第一級の課題となるのです。が、それを読者さまに納得させるのは難しい。
 避けるべきです。」
じゅえる「現実的な実装では、そうするべきだね。」

まゆ子「そして領域です。法です。言葉です。
 国家というものは基本的に領域と領民によって成り立ちます。領民とは、その政治体制に服属する者を意味します。服属するとは、法に従うということ。法とは言葉です。獣に法律を読み聞かせても仕方ない。
 つまり、国家とは話が通じる人間の間において成り立つもの。たとえ同じ言葉を話していても、宗教の違いで意味が異なっては同族とは言えない。同じ論理が通用する者が、仲間です。
 そして、話の分かる人間の住む領域が国家の境界となるわけです。」

じゅえる「自然発生的な国境のことだな。でも現実には国境は戦争の結果として定まっていることも多い。」
釈「しかし、本来自分たちの領域だ、てのは民族それぞれに思うものがあるわけです。いつの日かそれを回復しようと目論んでもおかしくない。」

まゆ子「さらには意思決定機関。国会だったり長老会議だったり王様の宮廷だったりでも構いませんが、どうやって国家の方針を決めるかも重要なものです。
 それは言葉を用いる場であるから。これが不安定だと、国家はゆらぎ破綻します。

 この中には刑罰も含めていいでしょう。犯罪と刑罰はそれぞれの人の共通認識、規範として共有されるものです。正しい刑罰は共同体を強く結びつけ、誤った刑罰は逆に離反を招きます。
 共通認識というのなら、貨幣もその一つ。価値のある物質の等価交換ばかりでは経済は発展できない。抽象化された「カネ」が価値の有るものだとの共通認識の上で成り立っている。

 こういうのが「士」の領分のアイテムです。
 まだまだいっぱいあるけれど、優先順位が最高になるのは理解していただけるでしょう。」

釈「これらはどれ一つとしておろそかにしてはいけないものですね。」
まゆ子「だが往々にして損なわれる。優先順位を見る目が曇るんだね。だからこそツールが必要だ。
 ファンタジー政治において交渉とは、つまりここを堅守し、相手のはうまくごまかして打ち破る。利で目を曇らせる手練手管を用いるわけだ。」
じゅえる「あー、そうなんだよね。交渉で勝たないといけないんだから。」
まゆ子「もちろんまともな有力者ならこんなもの間違わない。だから、強引な手を使うとか兵力を差し向けるとか、色々するわけだ。」

 

釈「それを間違わせるのは利なわけですが、「農」が「商」の上に来ていますね?」
まゆ子「そりゃそうだ。農業は食い物だ。飯が食えずに国家が維持できるか。」
釈「ごもっとも。」

じゅえる「でもさ、現代社会において食料供給はさほど綱渡りなもんじゃない。ファンタジー世界てのは案外と食料に余裕があるもんで供給も問題なく流通しているもんだ。」
釈「それはまさしくファンタジーですから。」

まゆ子「人間食わねば死ぬ。これは曲げようも無い事実です。だから最優先にすべき課題ですが、しかし国家の枠組みの維持の方が優先する。
 何故か。せっかく食料を生産しても、ぶんどられたらおしまいだ。武力とは、第一義としては飯を守る為に有る。
 飯を作る領域を守る。飯を作る人間を守る。飯を作る山野田畑猟場を守る。水を守る。労働力としてまた食料そのものとして牛馬を守る。
 軍隊兵隊を組織運営するのは、「士」の領分の話。だから、「士」が優先する。」

じゅえる「当たり前だな。」
釈「当たり前すぎて何も言えませんね。」

まゆ子「現代社会においては、たしかにじゅえるの言うとおりにちょっと違う。
 だから「農」は「生きること」と考えて下さい。人が、民が生きることに関するすべて。がここに入ります。
 もちろん食料供給生産は第一の優先課題。しかし田畑が無いと作れない、また働く人が無いと作れない。働く場所が仕事が無いと、生きていけない。労働問題は「農」そのものです。

 もちろん人は食うために生きるに非ず。衣食住が問題なく供給されねばならないし、その為には生産力そのものを上げねばならない。
 居住環境の整備や災害への備え、病気や怪我などの医療体制、保健衛生を守る体制。傷病や老齢での生活支援も必要でしょう。
 また社会は再生産されねばならない。子供を産み育て新たなる労働者として、また消費者として育てねばならない。教育も大切だ。

 そういうこと全部ひっくるめて人間の生きていく為に必要な領域の問題を、「農」のカテゴリに収めます。
 政治課題を考える場合、これが二番目に来るのを反対する人は居ないでしょ。」

じゅえる「税金はどこに来るのだ?」
釈「「士」ではありますが「農」でもありますね。まあ、重要な問題には違いありまえん。」
まゆ子「カネが無いと兵隊も役人も雇えないからね。だがファンタジー政治の世界ではよくこれが最重要問題になる。カネを最優先にしてむしりとろうとして反発を食い、内乱勃発だ。」
じゅえる「あー、たしかに税金はヤバい。」

 

まゆ子「「工」とは、価値を作ることです。製品ではない。社会をより強く大きく発展させるためには、自ら価値を生み出さねばならない。」
釈「工業に限定してはいけないんですね。」

まゆ子「逆に工業に限定すると実態が見えません。モノが欲しければ買えばいいじゃん、とか、コストが高ければ外国で作ればいいじゃん、とかになる。それは正しくない。
 重要なのは価値です。価値を自ら生み出し、国家社会を潤さねば何の意味も無い。
 また社会に益するものでなければ、作ったってしょうがないのです。」

じゅえる「耳の痛いおはなしだな。」
釈「でもファンタジー救世主さまは現代社会からこの分野の知識を持って来て無双するんですよ。」
じゅえる「ふむ、ここは重要だな。とはいえ、ここだけなんだな。だってさ、政治の分野で異世界に降臨した現代人が役に立つなんてありえないでしょ。また農業だって、農業高校の生徒くらいなもんで、それもトラクターとか農薬とか無しでどうするさ。」
釈「まあ、大したことはできないでしょうね。」

じゅえる「農業といえば、異世界降臨ものではいくつか画期的アイデアの典型というのがあるんだけど、でもそれってだいたい異世界では無理なんだよね。条件が違いすぎる。」
まゆ子「あー、それも考慮して『ゲバルト処女』では牛も馬も居ないことにしたよ。人力耕作オンリーだ。」
じゅえる「うん。そういうものなんだな。現地に合わせてカスタマイズする能力てのは、アフリカに農業指導に行くおっちゃんならいざしらず、中二ラノベ作家には無理無理。」
釈「かたつむりです。」

まゆ子「とは言っても武器の問題もあるし、ここはファンタジー政治では絶対に押さえておかねばならないぞ。」
釈「でも、鉄鋼生産量とかいきなり増えたりしませんよね。燃料も無いし。」
まゆ子「そこも考慮しました。」
じゅえる「ここらへんは正直素人がいいかげんな妄想を垂れ流す為にあるんだけど、政治やら外交にリンクさせるのはよしておいた方がいいね。」
釈「賢明な態度だと思われます。」

まゆ子「だがまあ、シルク伝来とか紙とか、ここらへんを上手く使えば面白いお話が書けるわけさ。」
釈「でも「農」の下。」
じゅえる「まあ、無くても食えるからね。」
まゆ子「だからこそ、価値が無ければ食えない状況を作り出す必要があるわけさ。」
釈「作劇上の基本です。」

 

釈「で「商」ですが、これを最下位に置くことに異議を唱える人は多いと思われますが、いかに。」
まゆ子「まず第一に、商業の力を侮っているわけではない事を強く主張しておきますよ。というか現代社会においては商業や金融は決定的な力を持ちます。現に各国政府だって通貨で大騒ぎしています。
 が! 」

じゅえる「ふむ。」

まゆ子「が!」
釈「つづき続き。」
まゆ子「が!、だからこそ「商」に属するアイテムは制限的な扱いをされねばならない。何故と問うか、それは前記3分野を容易にひっくり返すからだ。」
じゅえる「それは分かる。」

まゆ子「そもそもが商業は「商」の字が示す通りに、亡国の「商」人達が生きるたつきとしたようなもので、国家の枠から外れています。
 生産地では安いものを消費地に持って行って高く売るから、詐欺商売と見なされてきました。」
釈「原価厨ですね。」
じゅえる「うん、それに各地の情勢を見極めて物資の値動きを推測するから間諜と間違われる事も度々だね。胡散臭いことこの上ない。」
釈「NINJAが化ける第一ですよ。」

まゆ子「てなわけで、元々国家や共同体の裏切り者、余所者ポジションこそが商人の出自なのです。
 当然、共同体への帰属意識も薄い。儲かるなら国だって売るてのが正しい商人のあり方です。

 彼らの論理を優先すれば国というものの形が成り立たなくなり、人が暮らせず、社会の再生産が効きません。いずれは衰退し消滅してしまいます。」

じゅえる「現代社会でも、そうなんだ?」
まゆ子「いや、工場の海外進出とか脱出を必死になってしているじゃないですか。」
釈「あれは、国家的な観点からすると、悪ですか?」
まゆ子「悪ですね。というか、他所の国が産業を整備して自分とこに取って替ろうというのを後押しするのは、そりゃ裏切り者でしょう。
 別に時代の流れに逆らうわけじゃありませんが、自分とこが儲からなくなったら相手のとこに逃げ出す、よりは、相手のとこの商売成り立たなくする、という選択肢だって取り得るのです。
 その発想は、今の日本には存在しない。奇異に思います。」

じゅえる「うん、まあそうだね。商売仇は全力で潰すのが、商人の有るべき姿ではある。」
釈「確かに。」
まゆ子「欧米がきちんと潰してきたのを跳ね除けて産業化を推し進めたのが、日本です。で、日本は何故か産業を他所の国にも移植する変な癖があります。

 私はこれを「明治維新の輸出」と呼んでいます。維新後の日本が一貫して行っている国家的なポリシーですね。日本国内に産業を整備するに留まらず朝鮮満州、はては中国から東南アジアまで。
 大東亜共栄圏は植民地の一方的な搾取を目的とせず、現地に「殖産興業」「富国強兵」を旨とする「維新政府」を作るのを目的としていたのです。
 で、戦後円高で国内生産が暗礁に乗り上げると、またぞろ海外に産業ワンセット丸々移植を始めたのです。
 これは欧米工業国はやらない、日本独自のスタイルです。」

じゅえる「でも何故日本はそれをやっちゃうんだ?」
まゆ子「「工」の論理に従うからでしょう。価値を独自に保持しなければ独立した地位は得られない、と骨身に凍みて知っている。カネだけではダメなんです。
 江戸時代から各国各藩はそれぞれ独自商品を生み出し、自分とこで出来るものは自分とこで作れるように頑張ってきました。」

釈「「商」の論理が弱いのですか?」
まゆ子「「工」に「商」のコスモポリタニズムが乗り移ったようなものかな。そして今ではそれは良いも悪いも突破して、世界経済の様相を変えてしまいました。
 結果、日本自身が苦しんでいるのを「なぜだろう?」と首を傾げて悩んでいるわけです。」
じゅえる「間抜けだな。」
釈「間抜けでなければ、他所の商売仇を潰すという作業をちゃんとしています。アメリカとか特に酷いですよ。」
じゅえる「あー石油メジャーの世界支配なんてのもあったね。そうか、欧米白人ではあれがスタンダードなんだ。」
まゆ子「というか、世界的に見てそれはスタンダードです。」

 

まゆ子「さて、ファンタジー政治をする時ここ留意しなければなりません。つまり私たち日本人がファンタジー政治を書く時も、やはりこの明治維新の輸出をやりたがるのです。
 ま、異世界降臨モノ隆盛を見れば一目瞭然ですね。」
釈「はあ。未来技術で殖産興業に努めてますね。」
じゅえる「そんなとこまで民族性が現れるのか。そりゃたまらんな。」

まゆ子「効果も一目瞭然です。成功すれば他所より間違いなく優位に立てます。同じように工業化に成功した国同士で同盟関係を作れば、一大勢力になるわけです。」
釈「それは悪くないでしょう。」

まゆ子「世の中そんなに甘くない。」
じゅえる「そうだな。自分とこで作れるようになれば、他所の生産施設をぶっ壊せばぼろ儲け間違いなしだからな。」
釈「ああ、それはクレバーなアイデアです。」
まゆ子「そういう事です。そこは日本じゃないし日本人じゃないのです。」

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じゅえる「しかしこれは大原則だね。」
釈「確かにこれだけではファンタジー政治は書けませんね。いや、ここまでちゃんと把握していないと、そもそも政治が成り立たないわけですが。」
まゆ子「これから先は作品ごとに状況が違うからね。

 そこで軍師です。」

釈「軍師、ですか。」
まゆ子「最近のマイフェイバリットは、軍師です。NHK大河ドラマ『風林火山』を見直しています。」

じゅえる「軍師の利点は?」
まゆ子「異世界から来た救世主じゃないから、その世界生まれの人間として泥臭く策を巡らせます。魔法のような未来技術も使いません。」
釈「よりプリミティブに政治を楽しめるポジションてことですか。」

まゆ子「軍師はいいぞお。なんたってまず戦争に勝たなければならない。

 内政モノが陥る罠として、平穏無事が一番という安直戦後平和主義があるのです。
 しかし、平和はむしろ毒である。安穏とした生活は向上心を鈍らせ警戒を忘れ、共同体意識の希薄化を招き、公権力の腐敗堕落を引き起こします。
 特に腐敗問題は避けることが出来ません。さらには快刀乱麻を断つが如き解決を必要とするのに、平和主義はことなかれを選び機会を逸してしまいます。
 最終的には外部からの攻勢を受けて、瓦解。これ歴史の常道なり。」

じゅえる「うん。まったくだ。」
釈「まったくもって正論ですね。しかし打ち続く戦乱よりは平和の方が良いと考えるのは、おかしいでしょうか?」
まゆ子「だが世の中に平穏は続かない。カダフィ大佐だってまさかこんな形で国を失うとは思っていなかったでしょう。人の世は、常に滅びを内包しているのです。」
じゅえる「リビアは別に平穏無事じゃなかったけどさ。まあ分からないでもない。大佐の財産の蓄積具合はそりゃー褒められたものでは無いからな。」

まゆ子「実際問題ファンタジー政治をするにあたって、そんな百年の平穏など考える必要は無いんだけど、安直平和主義は褒められたものではない。
 また奇跡的外交手腕によって一滴の血も流さずに平和を獲得したというスーパー政治家の物語だとしても、彼とていずれば死ぬ。死んだ後にはむしろ奇跡はタネがばれた手品のように瓦解して、争いが時を越えて噴出する。
 平和を前提とした政策、政権運営は間違いとみなすべきでしょう。特に物語においては。

 そうですねー、外国勢力がまったく存在しない、完全に孤立した文明圏においてのみ、それは許されるのです。」

釈「あ!」
じゅえる「十二神方台系はまさにそんな大地でありました。が、平穏無事とは程遠い世界なのだな。」

まゆ子「物語の終了状態を考えると、自国領域が全土を完全支配というのは珍しく、国外勢力とは仲良く共存、国内勢力も内紛など起こさずに規則正しく秩序正しく整っている、てのが理想です。」
じゅえる「いかにも嘘っぽい。」
釈「早晩崩れますね。」
まゆ子「ならば、再生と破壊を常に繰り返す均衡状態にあるのが吉。軍師の出番です。いや、敵味方共に有力な軍師がしのぎを削って均衡するのが、理想的な終了状態でしょう。」
じゅえる「そのシナリオならいっそ悲劇的に滅びるべきだよ。」

 

まゆ子「基本政治をもっぱらにするファンタジーキャラは限られる。
 王様でしょ。王子様もしくは王妃様。大臣、僧侶、勅命を受けた官僚か商人、そして軍師だ。」

じゅえる「側用人てのは、勅命を受けた官僚に入るわけか。」
釈「商人が取り立てられて王の相談役に、というのはアラビアンナイトぽいお話ですね。」
まゆ子「大貴族出身者というのは普通無い。大貴族は敵だからね通常。」

じゅえる「この中で軍師が一番使いやすい位置にあるんだ。」
まゆ子「この内王族に当たる王様、王子様、王妃様は不自由です。なにせ王家の血筋という鎖が繋がっています。これはファンタジー政治に一番必要な要件と言った国家のオリジナリティと直結する要素ですから、制限が大きい。」
釈「政略結婚とかの対象になるわけです。」

まゆ子「王様になってやりたい放題出来る、というのは浅はかな話で、だいたい王様というのは各大貴族や王族の頂点に浮いているアヒルさんみたいなもの。彼らがイヤという事はほぼ出来ません。
 というか、ちょっとでも我が意を貫けば暴君と呼ばれて追放されるか、名君と崇め奉られます。」
じゅえる「暴れん坊将軍は無理か。」
まゆ子「天才的政治頭脳を持っていれば可能でしょうが、無双中の無双ですからその物語がおもしろいか、ちょっと分かりかねます。」
釈「王宮が安定した状態から物語をスタートさせれば、ちっとも面白くないお話ですね。大混乱する宮廷に不遇の王子が登場して王様に代わってばったばった、というのがセオリーです。」
じゅえる「王妃様バージョンはそれの女版だな。若くして嫁いだ王様が病弱だったりして、代わりに王妃様大活躍という。」

まゆ子「どちらにしろ宮廷内政治が中心になります。私個人の小説家としての好みで言うと、ちっと面白くない。」
釈「ぐだぐだと鬱陶しいですからね。」
まゆ子「ここは王様耽美を得意とする腐女子の作家にお任せするのがよろしいでしょう。政治よりもキャラクター個人の魅力で見せるタイプの物語を推奨します。」
じゅえる「となれば、敵もお耽美変態ホモ貴族であるのが望ましい。」
釈「どちらにしろまともな政治はやりませんね、こりゃ。」
まゆ子「やってもいいけど、読まないでしょう読者さまが。」
じゅえる「いやー、その分野はまゆちゃんより私向きだな。」

 

釈「そういえば、将軍がありませんね?」
じゅえる「将軍は政治をしちゃいかんからね。」
まゆ子『将軍を政治にまで起用しちゃうと、国を乗っ取られてしまいます。軍事と政治は分離するのが吉。故に将軍は政治パートでは関与しないよう望まれます。」
じゅえる「その則を越えて発言する奴は、政治モノにおいては悪役なのだよ。」

まゆ子「とはいうものの、ファンタジーにおいて戦争は必要不可欠なもの。政治と軍事は密接でありますから、将軍は切っても切れないキャラです。
 いや逆に、主人公が平和を望み無血の内にすべてを解決していくと、無用とされた軍隊が逆に反乱を起こしかねません。平和が一番、だが平和は功名を挙げる機会を軍人から剥奪します。
 これは後世に混乱の火種を播くようなもの。適度に活躍させて、適度に昇進させて不満のガス抜きが必要です。
 さもなくば、軍隊そのものが陰謀を目論む者の狩場にされてしまいます。

 現代日本人はここのところまったく無頓着ですが、軍隊というものはちゃんと餌をあげないと逆襲する猛獣なのです。」
じゅえる「猛獣の牙を抜いて飼い馴らすと、逆に外敵に役立たずになってしまうのだ。」
釈「つまり、戦争は国家統治に必要だから定期的にやるのが正しい、と。」
まゆ子「完全に正しい。」

じゅえる「ここんところ江戸幕府は上手くやったな。参勤交代で戦争をするカネを吐き出させ続けたんだから。」
まゆ子「参勤交代制度をうまく導入できたラノベ作品は無いでしょう。王様主人公の命に従って国中の軍隊が集結する、というかっこいい場面にケチをつけるのはなんですから。」
釈「カネが幾らあっても足りません。苦しいです。」

まゆ子「ま、実際はなんだかんだで戦争できなくなるから弱くなり、外敵がいつの間にか強力になって、ひっくり返されてしまうんだ。
 また戦争はなんだかんだで博打であるから、負ける時は負ける。負けてはいけない時に負けて王朝の命運が衰退する。」
釈「禍福は糾える縄の如しと言いますから。」

じゅえる「なにかいい方法は無いものか。」
まゆ子「そうだねー、遷都なんか戦争の代わりとしていいかも知れない。大貴族の財産を吐き出させ、旧来の首都にはびこる汚職腐敗を一掃する。常に変わり続ける事で宮廷人事にも風通し良くなる。
 また閣僚や貴族と結託する商人との癒着も、この機を境に一掃出来る。何事も固定化したものは腐敗するのだから、水は定期的に流さねばならない。」
じゅえる「軍隊もか。」
まゆ子「都が変われば、戦略的計算も変わる。軍隊上層部の勢力関係も変わる。固定し軍閥化するのを解消する効果も有る。」

釈「問題は費用ですね。」
じゅえる「費用がね。」
まゆ子「戦争を名目とした方が遷都よりカネを出し易い。遷都は平和な時しか出来ないし、混乱した時にやると人心を惑わせ国家の財政を危機に陥らせ、大貴族や軍隊の離反を招く。」
じゅえる「つまりは、定期的に大規模な出費をしなければ王朝は維持できないが、かといって下手にやるとそれこそ王朝の命運を尽きさせるわけだ。」
釈「難しいです。」

 

まゆ子「そこで宗教を利用する。宗教によって人々の尊敬を集め、国家鎮護の為に都を移す必要があるという風に世論を持っていく。
 高僧を政治的ブレーンに使うと、これがやり易いが、当然大貴族の反発は必至。権力のシェアリングは許せない。
 また僧侶であれば流血は好まないでしょ。まあキリスト教会の十字軍とか異端狩りは置いといて、現代的感性をもったラノベ作家であれば流血をしないために高僧を配置すると考えます。」

釈「僧侶は外交にも活躍しますね。」
じゅえる「うん。戦国の和議を結ぶ時なんか、よく僧侶を仲介にする。」

まゆ子「つまり国家同士俗世間の利害関係から自由である、世俗の論理とは別に動くというアドヴァンテージを僧侶は持つのです。
 対立する国家同士の間を、宗教的ネットワークを利用してフリーハンドで移動できる特権も有る。なんだったら神様の超能力もおまけにしましょう。
 しかし、それが故にオブザーバーとしてのみ政治に関わる事を義務付けられます。
 ま、僧衣を着ただけの戦国武将というスタイルもありますが、それは単に王様モデルに過ぎません。」

じゅえる「学者、ってのもここに入るかな。」
まゆ子「そうだね。学問の独立が認められている社会て設定なら、学者はここに入れていいでしょ。ただ、普通学者はなんらかの宗教と関わっているものだよ。」
釈「学問だけを別に独立させるのは、キリスト教社会が紆余曲折を経て獲得した特別なステータス、て感じですかね。」
じゅえる「僧侶ほどにはフリーハンドではないけどね。」

まゆ子「フリーハンドと言えば、王様から勅命を受けた商人とかも入ります。商業ネットワークを利用して各国を自由に移動し情報を伝達し、資金協力や武器供給というアイテムを持っています。
 しかし、弱い。」
じゅえる「強権、特に大貴族の反発で武力で反発されると商人が政治に携わるというのは弱いな。また競争相手の商人が大貴族と結託して反抗する、というシナリオも容易に考えられる。」
釈「王宮に経済的困難があって抜本的な改革が必要、という状況でないと商人主人公は難しいですね。」

 

じゅえる「なるほど、だんだんと軍師のアドヴァンテージが見えてきたな。」
釈「軍師の存在は、戦が前提。軍師を抱えているということは、王様は戦争を望んでいるという表明なんですね。」
まゆ子「積極的にしないとしても、戦争というオプションを手放す気は無い。また各分野の政治課題であっても、戦争を前提として組み立てられているという一貫した信念が見られるんだよ。」

じゅえる「つまり、大貴族にもドスを突きつけてるようなもんだな。」
釈「普代の家臣である若手官僚の抜擢、ではそういう効果は得られないんです。」
まゆ子「軍師は王様個人によって雇われている専門技術者、国家ではなく王個人に対して忠誠を誓う。だから大貴族とかが横車を押しても、子々孫々までの影響を考えて遠慮するなんて小貴族の振る舞いは無い。
 また敵対する国家に派遣して交渉させても、ただの男であるから殺されても国家的損失とはならない。殺しても仕方ないからこそフリーハンドが通用する。」
釈「僧侶や商人と違って、自身の外部に弱点となる係累が無いんです。宗教組織や商業組織は権力によって脅かされることもありますが、軍師にはそれが無い。」
じゅえる「流れ者の軍師にネットワークがあるとすれば、それはアウトローの集団だから権力で抑えつける事もできないか。」

まゆ子「また各国をさすらう過程で人脈を築き、思わぬ経路で交渉相手に辿り着いたりもする。とはいえ、それほどまでに仕官に苦しむと能力も疑われるけどね。」
じゅえる「単なる軍師ではなくて、工作員上がりというのでもいいか。忍者みたいなもので。」

 

釈「では軍師ならではの内政というのはどんなものでしょう。なんと言っても戦争で勝たなければなりませんから、全土を戦争用に転換ですか。」
まゆ子「いや軍師によってそれぞれ流儀があるからね、短期的中期的長期的に軍事目標も異なるし、第一守ってばかりでは結局は守れないから攻めるのを重視するのが正しい。」
じゅえる「やはり攻めるに勝る守りは無しか。」
まゆ子「そりゃ敵をやっつける以上に安心は無いさ。」

釈「つまり軍師の内政は外征を念頭に置いて準備を整えるというものになるわけですか。」
まゆ子「元々の国力と外国との比率に拠りますが、自分の領内での戦闘は必ず被害を伴います。勝つにしろ負けるにしろ国外で戦うのが吉。つまりは外に出るだけの力を備えねばならない。」
じゅえる「国内での防衛戦は止めた方がいいさね。」

まゆ子「とは言うものの、そう簡単に出ていける地形とも限らない。出て行き易い方向は往来も盛んで発展した領域であろうから、敵国も手強い。また逆に攻められ易い地形でもある。」
釈「ふむ。」
まゆ子「交通の確保は領内経済発展の基盤でもあるから、ここは確実に抑える。ということは、ここらへんを根城とする勢力や貴族の扱いに十分注意しなければいけない。こいつらに寝返られると大問題だ。」
じゅえる「たしかに、敵国との通信も彼らに握られるとしたら、いつ寝返るか分かったもんじゃないな。」
まゆ子「理想を言えばそこらへんの貴族を他所にやって王国普代もしくは王族による支配をしたいのだが、土地から切り離されるというのは誰だってどんな領主だってOKしないさ。」
釈「ふむ。」
まゆ子「だがそんな寝返り易い立場に居る連中に、王国内における重要な地位を与えるのも剣呑だ。
 と同時に、だからこそそいつらは他国との交渉におけるチャンネルとなり、粘り強い交渉を進めて王様直接の外交よりも良い結果を導き出せたりする。」

じゅえる「……、交渉、か。」
釈「内政の基本は対話ですねえ。」
まゆ子「でもそいつらに足元を見られてはならんのだ。軍師が笞となり王様が飴を与えて懐柔する事になります。」

じゅえる「つまり外征路の確保を優先して、資源や恩賞の配分はそちらに集中するのか。」
まゆ子「いや、だいたい王国内部の発展を重視して外征路となる方向は慎重なコントロールが必要だよ。なんとなれば、そこからの流通が途絶えたら途端に飢える、なんて羽目に陥らないように迂回路を確保しなければならない。
 軍師の内政とはそういうことだ。一箇所の流通や供給に頼らない。常にバックアップを用意する。出来なきゃ備蓄をする。備蓄が持つ間に打開策を実現する。」

釈「ムダが多くなりますね。」
まゆ子「備蓄は通常時には余分となる。コストが過大となれば削減も必要だが、何の為にそれが必要かを理解すれば負担も受け入れられるでしょう。
 もちろん負担が永続しては困るわけで、マイナスの分は他で埋め合わせなくちゃいけない。
 そこで価値を生み出す産業を国内に育成する事になるわけだ。国内需要を満たすばかりでなく、他国に輸出してカネを稼げる物を用意する。
 この流通によって他国の経済を左右もできるし、流通機構を利用して他国の内情を探る事も可能。単純な間諜を放り込むよりも、向こうの権力者とも密に接触できる商人の方が深い情報を入手できる。また権力者有力者を操作するチャンネルになる。

 そして他国の有力者を抱き込めれば、流通路に居座る勢力の機嫌を無理して取る必要も無い。ひとつの勢力貴族に肩入れしたら、他がやっかむからね。」
じゅえる「つまり産業全体を他国の内情を探り有力者を抱き込むツールに作り変えるのか。」
まゆ子「他には無いものを供給できれば、攻められる可能性も低くなるしね。まあ金とか産出すれば逆に攻められる事にも繋がるけれど。」

釈「しかし逆に他国からそれをやられる事もあるわけですよね。」
まゆ子「当然。産業を振興して他国の経済を牛耳れば、戦わずして勝つ。勝たれてしまう。で、立地条件によってはどうしても勝てない産業分野は発生する。
 これが完全に悪いわけではない。特定産業分野を他に依存すれば、確実な需要を絆としてその国と同盟関係に持っていける。ここを抑えてたら背かないだろう、と思わせる事で油断を引き出せる。」
じゅえる「バランスだね。」
釈「そうですね。物資の慎重なコントロールが必要なわけです。それを国内の諸勢力・貴族に任せてはいけないんです。」

じゅえる「でもそんなに完璧に物資のコントロールとか出来るだろうか?」
まゆ子「無理だね。」
じゅえる「おい!」
まゆ子「国内諸勢力や貴族はそれぞれ別の経済を持っているわけで、王様から一元的な管理をされてしまうと税金を課されたのと同じような窮屈さを覚える。反発される元となる。」
じゅえる「うん…。」

まゆ子「流通をコントロールする為に、独自の勢力独自のネットワークを作りましょう。国内各勢力を繋ぐ流通部分を王国が直接掌握します。
 と言ってもまあだいたい関所とかで管理しているんですが、特定の大商人に一括して任せ関税を免除する等の措置によって、貴族同士の直接的な交流を一度市場を通してとバラバラにしてしまいます。」
釈「腐敗の温床となりませんかね、それは。」
まゆ子「その危険は有る。常に軍師の管理が必要だ。」

 

じゅえる「……、なんか聞いたような話だな?」
まゆ子「そりゃそうさ。」
釈「なんですか?」
まゆ子「褐甲角王国の流通機構だもん。」
じゅえる「あ。」
釈「すでに物語で実装済みでしたか…。」

じゅえる「褐甲角王国は租税は取らずに、市場の使用料を取る、て方法で管理していたんだね、確か。」
まゆ子「褐甲角王国は軍事国家であり、すべての物資は軍事用なんだから、そりゃ統制されるさ。とはいえ民間セクタをすべてコントロールするのは無理だし非合理だから、市場のみを支配し流通経路を護っている。」

 

 

2011/03/03

まゆ子「さあ、まっちろだ。」

じゅえる「『げばると処女』は完全終了、ということでよろしいですかね。」
釈「反省会をする予定はどうなりました?」
まゆ子「いいでしょ、いろいろと言いたい事はあるけれど、まあとりあえず良しとしましょう。」

じゅえる「で、今後の予定は?」
まゆ子「この「くっちゃりぼろけっと」は「抜質!」用に使いたいと思う。折角十二神方台系の設定をでっち上げたのだからなんとかしましょう。」
釈「では正式に「抜質!」実現に向けて出発進行!」

 ワーワーパチパチドンドン

 

まゆ子「突然だが、弥生ちゃんが出てもいいような気がする。」
じゅえる「抜質に? でも、」

まゆ子「うんそうだ。弥生ちゃんが出張って来るような物語ではないよ、抜質は。構造的に救世主なるものの存在を忌避する。探偵小説だから。
 でも実は、    

 あ、そうだ。設定いきなり変更だ。創始暦6666年を念頭に設定を組み立てていたけれど、6200年にしましょう。」

釈「理由は?」
まゆ子「青晶蜥王国体制が終了して民衆王国運動によって方台全土が統一されたのが、だいたい6000年頃。これを、明治維新の頃として、新しい物語を形成したい。」
じゅえる「明治維新から200年、か。1868年だから、2068年か。」
まゆ子「そりゃちょっと跳び過ぎだ。機械文明レベルから言うと昭和30年代くらいなのだ。」

じゅえる「ふむ、つまり社会背景に合わせて、年代を弄ろうという腹積もりだね。」
釈「創始暦6666年だとダメですか。進み過ぎたことになりますか。」
まゆ子「そうだね、進み過ぎだな。科学技術の進歩が温いとしても、6666年頃には原子力飛行機くらいは飛んでいてもらいたい。」
じゅえる「本格的宇宙時代の到来、というところか。なら「抜質」が想定するのは、今よりもちと手前の世界。第二次世界大戦よりは進んでいるが、西暦2000年よりはかなり低い、そんなのが欲しいんだね?」

まゆ子「というわけで、6200年くらいがよろしいのではないかと思うのです。」
釈「了解しました。6209年くらいでどうですかね?」
じゅえる「9年の根拠は?」
釈「6200年きっちりだと嘘臭いです。今が2011年ですから、シンクロさせるのも面白くない。でも6230年だとなにか、読者様の時代感覚と外れてる気がします。」
まゆ子「勘だね。」
釈「はい。」

まゆ子「よし決定。「抜質!」は創始暦6209年、民衆暦は5985年を1年とするから224年か。明治維新からはちょっとずれるが、世界戦争が無かった分ちょいと進歩が鈍い事にしよう。」
じゅえる「世界戦争はまだ無いんだ。」
まゆ子「文明レベルがまだそこまで到達していない。全方台を繋ぐのはもうちょっと先の未来なのだよ。」
釈「石炭蒸気船とプロペラ飛行艇ですか。電波による通信も出来ないんですよね、プラズマ雲の影響で。」

 

まゆ子「さて、で上記の弥生ちゃん登場だ。
 6209年現在、ゼビ期に突入した十二神方台系には蝉蛾神救世主は到来していない!」

じゅえる「ほお。」
釈「そこで弥生ちゃんキャプテンを再度救世主として投入、ですか。」

まゆ子「そういう風に考えてもらうとわかりやすいのだが、作劇上はさすがにそれは面白くない。
 つまりこうだ。蝉蛾神救世主無しでも十二神方台系は普通に平和に進歩し続けている。人々は千年に一度の救世主の事を忘れてしまっている。もはやそんな時代では無いと思い定めている。

 しかし世の中にはあいもかわらず救世主を待望するヒトが居る。彼らをゼビ救世主信者と呼ぼう。新しい救世主がきっとこの世に現われて、世界中の人々を救ってくれると信じている。」

じゅえる「それが弥生ちゃん?」
まゆ子「先走らない。
 ところがだ、方台にはちゃんと暗黒面がありまして、彼らの間には様々に不思議なことが起こっているのです。なにせファンタジーの大地ですから。
 その彼らの間で密かに囁かれているのが、幻の救世主伝説。どこかは定かには分からないが、頭に聖なるチョウチョを宿し黒髪をなびかせる少女が確実に方台に存在するのだ。」

釈「いわゆる都市伝説ですか。」
まゆ子「そう解釈しても問題無い。ゼビ神救世主だと言われるが、もちろん会った者はどこにも居ない。にも関わらず、それが確かに存在する事に、暗黒街に住む者は決して疑わないのだ。」

じゅえる「いいぞ、それだ。それこそが「抜質」に必要なものだ。」
釈「なるほど、物語は幻のヤヨイチャンを巡って、決して接触はしなくても、確実に包囲を縮めていくわけですね。」
まゆ子「この構造はどうだ!」

釈「採用です!」

 

まゆ子「さらにもう一人。絢爛豪華な山蛾の絹の装飾に覆われる巨きなヒト。男か女か顔が見えないから分からないが、方台暗黒面のそのまた中心に座す生ける神あるいは死者。」
じゅえる「例のヒトですな。」
釈「あのヒトですね。」

まゆ子「このヒトをかなり早い段階で出そうと思う。ただし悪の首領ではなく、正義のヒーローマッキーさんを導く運命の紬手としてね。」
じゅえる「必ずしもこのヒトがなにかをするわけではないんだ?」
まゆ子「う〜ん、なんといいますか、スパイスですね。この物語に厚味を与える。もちろん展開次第では往時のように暴力を振るってもらいましょう。」
釈「つまり、このヒトにそんな真似をさせないのが、物語作者としての腕の見せ所なわけです。」

じゅえる「それはーアレだな。ヒィキタイタンさんだ。彼が政界の闇に斬り込む際に、助言というか警告に現われる。ほんとうに危ない所を、助言で一回だけ救ってくれるんだ。」
まゆ子「ふむ、では政界の奥の院で崇められる存在ということにしておくか。歴代の国家首領でないと会えないという。あるいは、歴史を動かす者の前にのみ現われるという、方台の真の支配者。」
釈「政界のフィクサーがびびりまくっておしっこちびるような恐ろしさを持っているのです。」

 

じゅえる「ここでゲストの登場です。明美一号さん。」
明美「あ、どうもこんにちわ。」

 わーあわーぱちぱち

まゆ子「というわけで、浅見光彦ぱくりサスペンスはだんだんわけの分からないものになってきているのだ。明美、なんか意見無い?」
明美「イケメンさんは出ないの?」
釈「どうなんでしょう?」

まゆ子「あー、考えてない。そもそも浅見光彦サスペンスにはイケメン出て来ないもん。」
じゅえる「考えてみればそうだった。美女は出ても美男子は出て来ないんだアレ。」

明美「改善を要求します!」
まゆ子「ちょっと待て、まだそこんとこは詰めるのが早過ぎる。イケメン、なるほど。イケメン投入しますが、まだもうちょっと後でね。」

明美「背の高い神族のヒトはもう出ないんですよね。」
まゆ子「それはとっくの昔に絶滅しました。」
明美「残念。」

じゅえる「いや、それはどうなんだろう。1000年前に実用化していた霊薬エリクソーはどうなったんだ?」
まゆ子「あれはー聖蟲が無いと作れないというわけではないが、無理ということで。」
釈「ざんねんですねえ。なんとかなりませんか?」

まゆ子「…………、ゥワムの外国人!」
じゅえる「あ、そうか。あそこはまだ神族支配が続いているんだ。」
釈「外国人、いいですねえ。いかにも貴族的な巨人が優雅に物語に登場するのです。それは見物です。」
まゆ子「なるほど。では神族が出て来る話を、最低でも一回は用意しよう。外国絡みの難事件だ。」
じゅえる「…それ、ちょっと待て。

 

 ヒィキタイタンとマキアリィが徴兵時代に遭遇したという敵の襲来。その事件に神族を投入しよう。謎の武装集団に襲われる神族の令嬢をヒィキタイタンが救い出し、マキアリィが野球拳の技でやっつける。」
まゆ子「ほお。」
釈「ほお。それは派手な事件ですね。でもそれは、ゥワム絡みの大袈裟なお話です。」
まゆ子「いやここにその、都市伝説ヤヨイチャンを投入してもいい。もちろん政界の悪の主人公も関連する。」

明美「その派手な事件てなにも決まってないの?」
まゆ子「まだなにも。二人が活躍してヒーローになって、ヒィキタイタンさんが英雄として国会議員になるきっかけではあるが、マキアリィはその後警察官刑事になって逆にその事が元で居辛くなって、探偵になる。というくらいです。中身はありません。」

明美「目的はその女の子なんだ。偉いヒト?」
まゆ子「そりゃなにか凄い秘密の、……? どうしよう?」
じゅえる「そりゃ紅曙蛸女王くらいのボリュームが欲しいな。」
釈「しかし流石にタコ女王はアレでしょう。」

明美「天使とかサイボーグとかの、とびきり不思議な属性が必要だと思うよ。それに、恋愛もしなくちゃいけない。」
釈「それはヒィキタイタンさんの担当です。」
じゅえる「いや、…そうかそれは違う。それは、彼女は恋人と共に追われて、悪の組織に男だけ囚われて、で最終的には悲劇的結末を迎えなくちゃいけない。最大級にドラマチックな展開が必要とされるんだ。」

まゆ子「ふむふむ。ヒィキタイタンがヒーローというのも少し考え直す必要があるな。」
釈「なにか凄い秘密がその女の人には隠されているべきなのです。原子爆弾とか。」
まゆ子「プラズマだ。」
じゅえる「うむ、プラズマ。空中プラズマを利用して敵を一気に殲滅する超兵器が少女の体内に隠されているのだ。バイオニックだ。」

明美「いやサイボーグってのは言葉の綾で、もっとロマンチックでファンタジーな設定でもいいのだよ。天使でもいい。」
じゅえる「悪魔だな。」
まゆ子「プラズマ悪魔か。」
釈「尻尾が生えてますか。」

 

まゆ子「いや待てすこし考えろ。この事件はヒィキタイタンをヒーローにしなくてはならない。ということは、マスコミにて大々的に報道されるのだ。

 逆に考えると、マスコミ報道を盛んに行って事態の真相を隠蔽する必要が有る。ヒィキタイタンはむしろ作られたヒーローなんだ。」
じゅえる「ふむ。だが実際問題としてそこに美少女があり、ヒィキタイタンはロマンスを語り、マキアリィは敵をなぎ倒した。嘘偽りは無い。」
釈「真実を重ねても、真相は見えない。そいう仕掛けですね。」

じゅえる「であれば、だ。表向きに発表される物語ロマンスは、明美が言うようにべったべたのロマンスでなければならないのだ。世の中の女の子がうるうると涙を流してのたうち回るような、そんなベタ。」

まゆ子「……よおーし考えた!!

 美少女が居る。父はゥワム帝国の大使で神族の科学者。方台の女性と恋に落ち、一女をもうける。
 父は現在ゥワムに帰って、5年ぶりに方台に赴任する。美少女は胸をときめかせて父との再会を夢見ている。
 だがそこに悪漢の一味が登場。科学者の父が開発したという空中プラズマ怪力線装置の設計図を奪い取る為に、美少女を人質にしようと企んでいる。

 美少女がまさに誘拐されんとする時、さっそうと現われたのがヒィキタイタンとマキアリィ。
 大学生でありながら一般徴兵制度に応じたヒィキタイタンは辺境海岸防衛団の一員として日夜国土防衛に全力を尽くすが、聡明過ぎる為に部隊の上官に煙たがられるようなナイスガイ。
 二歳年下のマキアリィは野球拳団に所属するエースピッチャーで四番というこれまた逸材であった。
 知勇共に優れた二人は悪漢共を薙ぎ倒し、美少女を救い出す。だが多勢に無勢で山中に逃亡。ヒィキタイタンの作戦で敵を出し抜き、防衛団に連絡して応援を乞う。

 対して悪漢どもは卑劣な手を用い、美少女の病気の母親を人質におびき寄せようとする。それを察知した3人は母親も救い出そうとするが果たせず、遂には美少女が出て行かねばならない状況に追い詰められた。
 母親の命には換えられぬと美少女が出て行くと、母親は足手まといだとバンと拳銃で撃ち殺される。そのままボートで沖合いに逃げ出そうとする悪漢ども。
 そこに現われたのが、防衛団の警備艇。こうして事件は解決したかに思われた。

 が! 突如海中から浮き上がる黒い影。巨大な甲鉄潜水艦の衝角攻撃で、警備艇撃沈。美少女と悪漢一味は潜水艦に乗り込んで消える。
 万事休すと思われたがヒィキタイタンは知恵を働かせ、彼らが美少女の父親の乗った汽船を襲うと察知。水上偵察機を持ち出してただちに追跡を開始する。
 汽船に無線連絡をするも、ゥワム帝国側では信じてはくれない。その内に敵対行為だと水上偵察機に対空攻撃を始める始末。
 案の定、海中からの衝角攻撃で汽船に穴が開けられ、戦闘員が乗り込んで父親を誘拐する。

 しかしその戦闘員に紛れてヒィキタイタンは大胆にも潜水艦に潜入。動力炉を破損させて浮上を余儀なくさせる。
 潜水艦の甲板上に逃れたヒィキタイタンは絶対絶命のピンチ! そこにマキアリィ操縦する水上偵察機が救出に参上。だがたちどころに撃墜されてしまう。
 とはいえ既に位置は海軍司令部に連絡済みで、動けない潜水艦に留まっては死有るのみ。悪漢どもは小型艇で父親と美少女を連れ去ろうとする。 

 ヒィキタイタン、孤軍奮闘して助け出そうとする。その内海中から這い上がって来たマキアリィも加わって逆転優勢に。だが小型艇は発進してしまう。
 だが女ということで警戒が薄かった美少女は、父もろとも海に飛び込む。人質の居なくなった悪漢どもに遠慮は要らない。マキアリィ奇蹟の投球で手榴弾を小型艇に投げ込み、悪漢どもは全滅エンド。
 そして海軍戦艦が到着して、潜水艦に残って居た連中も逮捕される。めでたしめでたし。

 こうしてヒーローが二人誕生した。
 美少女はその後父と共にゥワム帝国へ移住する事になる。ヒィキタイタンへのほのかな想いを残して。

明美「うんいいんじゃないかな。もうちょっとベタな恋愛が欲しいけど。そうねー、殺されるのは母親ではなくて恋人の方がいいかな?」
じゅえる「ヒィキタイタンと恋愛するのだから、それは違うだろ。」
明美「いやー、でも恋人殺した方がより一層悲惨じゃないかな。実は彼は悪漢どものスパイ、彼女を誘拐する為の手先であって偽りの恋人だったのよ。」
まゆ子「それで、用済みになると、バン?」
釈「なんて悲惨な人生なんだ。」

じゅえる「うん分かった。じゃあその恋人はなよっとした優男ということで、最初の誘拐現場にも出演することにしよう。なんだか知らないけれど誘拐現場でも生き残って、人質交換の場に出現する。で、美少女が出ていって正体を明かして「騙したのね」「おまえは用済みだ」バン、だな。」
釈「なんて悲惨な人生なんだ。」

まゆ子「その美少女は、ヒィキタイタン20歳マキアリィ18歳、だから、16歳てところか。」
じゅえる「うん、よいね。」

まゆ子「このお話で映画2時間作れるかな?」
釈「ばっちりだと思います。しかもヒーローは映画俳優張りのイケメンヒィキタイタンさんですよ、これは女の子きゃーきゃーものです。」

明美「マキアリィさんはイケメンじゃないの?」
まゆ子じゅえる釈「…………、あー、「げばると処女」では中々の色男ぶりであったねー。でもヒィキタイタンさんほどではないと思うぞ。」
明美「イケメンにしてください!」
まゆ子「いや、かっこいいんだけどね。かっこいいんだけど、イケメンかと言われればどうだろう?」
じゅえる「野球拳の選手であるから文句なしに力感のあるカッコイイキャラだぞ。イケメンかどうかは別として。」

釈「そこはアレです。ヒィキタイタンさんはイケメンで知性派でゴージャスな上流階級タイプ、マキアリィさんは肉体派で精悍なタイプ。
 女の子は浅墓であるから、ヒィキタイタンさんに人気集中。男性の方玄人筋ではマキアリィさんの野球拳技術が高く評価される、というところに。」
まゆ子「ヒィキタイタンいやみだな。」
明美「まあまあ。」

じゅえる「そういうタイプであれば、警察官になろうというのも極自然な成り行きなのだね。でもヒーローであるが故の苦悩から、刑事探偵に鞍替えと。名前も変えてマッキー探偵社になるわけだ。」

明美「それが10年前の出来事でしょ。」
まゆ子「11年前かな。マッキー18歳の終り頃の事件で今30歳だから。」
明美「美少女も27歳だね。美人になってるんでしょうね。」

じゅえる「! うむ。」
まゆ子「うむ、そいつぁー出さないといかんな。ゥワム帝国から帰って来た妖艶な美女。実はマッキー達と深い繋がりのある、彼らが一躍ヒーローとなった事件の主人公である、とな。」
釈「それはゥワム帝国絡みの事件を描く際に是非とも出さねばならぬキャラクターです。大当たりです。」

まゆ子「空中プラズマ怪力線装置事件だ!」

 

じゅえる「ということであれば、その裏の事情真相という奴はとうぜん、十二神方台系政府の仕業、なんだね?」
釈「プラズマ怪力線装置を奪取しようと試みる秘密工作機関の仕業、と。定番ですね。」

まゆ子「…あたり前過ぎておもしろくない。」
じゅえる「確かに。」

明美「悪漢ども、というのはそもそもどこから来たの、というか、潜水艦なんてこの世界有るの?」
じゅえる「潜水艦、有るの? まゆちゃん。」
まゆ子「まあ潜水艦は有るとしよう。飛行機も有るくらいだから、有るんだよ。」

釈「もしや方台政府の関知しない反政府組織なんてものがこの世界には有るんだ?」
まゆ子「うーむ、考えるな。たとえば多国籍犯罪結社とかでも悪くはない。しかし、もっとデカいものが必要だろうか。」
じゅえる「少なくとも、ゥワム帝国は狙われた方だから、被害者であるわけで関与はしない、かな?」
釈「それも怪しいですねえ。反対勢力による巻き返し策、という手があります。」

明美「こういう時は、いかにも善人面をしている人が悪いのだと、ドラマでは言ってるんだけど。」
まゆ子「違いない。」
じゅえる「世界平和追求連合、とかいう民間組織が平和活動をしている裏面で、実は武力を手に入れようと画策する。それもプラズマ怪力線という最終兵器を。」
釈「何人も抵抗出来ない超兵器を手に入れれば、世界の紛争を解決出来る。平和なんとかならやりそうな話です。」

明美「ならそれは善い人でしょう。」
まゆ子「違いない。」
じゅえる「違いない。いかにも善人の神様みたいな、そうだな女王様みたいな奴が諸悪の根源なのだ。」
釈「しかし、それは方台政府とどのような関連があるのでしょう。政府がそれを知っていれば阻止するでしょ、やっぱ。」
まゆ子「怪力線装置は魅力だな。」
じゅえる「たしかに。ゥワム帝国が先に手に入れるとすれば、なおさらだ。つまり平和なんとかを下請けに使うような形で方台政府が設計図を奪取しようと考える。一方で平和なんとかは自分たちでもそれを使って、世界平和を実現しようと画策する。」

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