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10/12/26

まゆ子「あえてここは陳腐な表現を使おう。Orz、イヌコマが可愛く描けない…。」

じゅえる「三回目だよ書き直し。どうするんだ。」
まゆ子「やるしかない。可愛くなるまでひたすら修正だ。それが終らないと、げばおとが終れない。」
釈「まあ、因果なものですねえ。」

 

10/12/24

まゆ子「没原でーす。」

『…………。
 この(トカゲ)巫女も、半ば泣き出しそうだ。弥生ちゃんが方台を去るのに悲しまない者など居ない。

「それと、ティンブットは大丈夫?」
「はい。3人付き添って居ますから、今のところは。」

「二人目ですからね。今度も安産でしょう。」

 いい加減なタコ巫女として世に名を轟かせる「聖神女」ティンブットは、産み月だというのに弥生ちゃんに付いて百島湾まで見送りに来た。
 大きなお腹のままでもクルクル踊るから大丈夫なのかな、と思っていたら、いきなり陣痛だ。上手く行けば、弥生ちゃんも赤子の顔を見られるだろう。

 ファンファメラは尋ねる。出産のお祝いをすると言っていたのは決まりましたか?

「うん。よくよく考えてみると、私これまで人に嘉字を与えた事が無かった。」
「なるほど! ヤヨイチャンさまより頂いた嘉字であれば、何よりの祝福となりましょう。何と?」

 新しい葉片を用意して、書き留めようと骨筆を構える。
 弥生ちゃん、びしっと人差し指を突き出した。

「”生”。」
「おお。」

 ファンファメラもその他側近も知っている。「蒲生弥生」をギィ聖符で記すと、”生”の字が姓名どちらにも入ることを。

「ですが、上の子に無いのは可哀想ですね。」
「なんの。”生”の字は二つあるからどちらにも付けちゃおう。」
「有難うございます。」

 ファンファメラはタコ巫女に代って立ち上がり、御礼を言う。トカゲ巫女も頭を垂れた。
 彼女は早速ティンブットがうんうん唸る産室に報告に行く。

 なんだかいい気分になって、弥生ちゃんはイカクンを口に運ぶ。
 トゥマル商会とィルアンダァ供物問屋とが繰り広げた「青イカ戦争」は、弥生ちゃんがイカの燻製を所望したことで一応の決着を見る。

 デュータム点で弥生ちゃんにイカを捧げたィルアンダァ供物問屋は、長年聖山やウラタンギジト・エイタンカプトに海産物の乾物を納めて来た。
 イカに関してはほぼ独占状態だったのだが、カプタニアで王室に納入するのに成功したトゥマル商会が急速に勢力を伸ばす。

 両者はイカの販路に関して異なる戦略を取る。
 ィルアンダァ供物問屋はこれまでどおりの供物として、さらには弥生ちゃん信者の間に販売して料理にはあまり工夫をしなかった。
 対してトゥマル商会は高級食材として調理法から献立までも完備して商戦に望んでいる。美食で有名な金翅幹元老員まで巻き込んでの万全な態勢だ。
 当然トゥマル商会が強い。しかし長年の実績からィルアンダァ供物問屋はイカ漁師・加工業者に繋がりが深い。

 イカが儲かると知って他の商人も銭箱を抱えて漁師村に押し寄せる。高値で生イカを買い占めた。
 トゥマル商会は王室御用達という絶対的な強味を持つが、賢明なことにイカ価格を元の通りに据え置いた。損は覚悟で比較的安価なまま直接顧客に届ける。
 果たして価格の高騰する他社のイカは、質素倹約を旨とする褐甲角王国の調達部所が忌避し始める。品質にも疑問が生じる。
 信頼出来るのはトゥマル商会のみ。

 一方資力の乏しい弥生ちゃん信者を相手にしたィルアンダァ供物問屋は、元々値段を高く吊上げられない。
 こちらも漁師への長年の信用を頼りに安価に抑えて信頼を勝ち取る。信者はィルアンダァのみを選んで購入する。
 嵐のような商戦で生き残ったのは、結局二社のみであった。

 どちらも10代の少女をイカ販売の責任者に押し立てて、火花を散らす。
 トゥマル商会が金翅幹元老員に頼れば、ィルアンダァ供物問屋はウラタンギジトの神祭王に泣きついた。
 ギィール神族は自身でも料理をするから、美食の分野でも芸術的な才を持つ。
 
 弥生ちゃんがデュータム点に落ち着いた後は、ィルアンダァ供物問屋が若干の優位で勝負を進める。
 ここに、「イカの燻製」のリクエストだ。

 トゥマル商会の会長は自ら漁船に乗り込み、弥生ちゃんの御為に最高のイカを求めて戦乱の気配漂う百島湾に漕ぎ出した。
 元々が大ゲルタの燻製で財を成したトゥマルだ。商品開発力の重要性はよく心得る。
 しかも得意の燻製と来ては勝ったも同然。

 こうして第一次青イカ戦争は終る。だがィルアンダァ供物問屋は死んではいなかった。
 トゥマル商会はあくまでも高級志向。王室御用達の金看板を押し立てて商売を進める。
 対して、これまで加工に適さなかった小さなイカ、子イカの姿干しを商品化して、低価格戦略で逆襲に転じる。

 第二次青イカ戦争勃発は、弥生ちゃん方台退去から4年。来ハヤハヤ・禾コミンテイタムの来航後だ。

 

10/12/22

まゆ子「さあてお立ち会い。最後のお仕事です。」

じゅえる「なんだよ。」
まゆ子「「げばげばぎっちょん」「本編主人公」「さようならトカゲ神救世主弥生ちゃん」まで完成しました。」
釈「はい。」

まゆ子「ところがここで一つ、良くわからない設定が出て来た。」
じゅえる「……今更…?」

まゆ子「弥生ちゃんは創始暦5006年1月13日に出現した。5010年の秋初月1日つまり9月5日に方台を去った。と設定した。」
じゅえる「ふむ。」
まゆ子「5007年3月6日にカプタニアに降臨する。「げばおと」で書いたのはこの期間。1年とちょいだね。」
釈「はい。問題があるとは思えませんが。」

まゆ子「4年半も居る。」
じゅえる「そうだね。」
まゆ子「ちと長いのではないだろうか。4年ぎりぎりというところではダメかな?」

釈「長いとダメですか?」
まゆ子「イベントの数が合わない。」
じゅえる「うん? 3年半ではトカゲ王国は作れないのかい?」
まゆ子「長ければ磐石だが、長過ぎると面白くない。弥生ちゃんはぎりぎりの期間だけ居るべきだよ。」

釈「整理しましょう。まず方台に来て1年2ヶ月でトカゲ王国建国です。「神刃一〇八振」から7ヶ月で方台離脱です。ここまではちゃんと設定されてます。秋初月は九月半ばですから、「神刃」は10年2月の出来事です。」
じゅえる「つまり建国から3年間有るわけだ。これで突っ込むべきイベントは?」

まゆ子「方台新秩序結成、西金雷蜒王国参加交渉、決裂、第一次百島湾戦争勃発敗退、スガッタ僧によるぴるまるれれこ教団の弾圧、第二次百島湾戦争、戦争の後始末、褐甲角南海軍リストラ、ナルミンによる弥生ちゃん暗殺未遂事件、黒甲枝諸侯連盟結成、弥生ちゃん大行進、妖幼女ゲキとの戦闘、ジョグジョ薔薇の乱、油ゲルタ視察、神刃一〇八振。」

釈「3年で短いですか、ソレ全部?」
じゅえる「裏で同時進行しているものもあるからね。ふーむ、西金雷蜒王国やギジジットでのイベントが欠けてるかな?」
まゆ子「そうだな。第一次百島湾戦争の裏で弥生ちゃんは毒地開拓の下準備で再び毒地内に進入していることにするか。なにせ弥生ちゃんの出番がこの辺り無いんだよ。」
釈「戦争はやはり何ヶ月も掛りますからね。」
まゆ子「第一次の時は褐甲角王国に全部お任せしているから、弥生ちゃんやる事が無いのだ。」

 

じゅえる「確かに毒地辺りで化物と戦わないと間が保たないてのは有るかな?」
まゆ子「うーん、なにかいい化物は無いかい?」
釈「ゾンビはどうでしょう。まだ出て来て居ません。」
まゆ子「なるほど。」
じゅえる「まったく異質なものがいいな。虫関係および動物関係から離れた化物。」
釈「十六神星方臺で魔法博士が作ったという泥の巨人がここにも出現する、というのはどうでしょう? 泥巨人は目新しいと思われます。」
まゆ子「うーん、もう一声。」

釈「古代遺跡から出現するミイラ男ではいかかでしょう。カビ臭いのです。」
じゅえる「カビ男か。なるほど、死体から生えて来るのだね。」
まゆ子「やはりゾンビか。なるほど、…するてーと、そこはミミズ神官が良い所を見せるべき番なのだな。」
じゅえる「ふむ。昔カビ男が大量発生した際に、毒地管理官のミミズ神官達が必死で食い止めたという歴史があるのだ。」
まゆ子「弥生ちゃんはカビ男を生み出す元凶である古代遺跡に乗り込み、塩素消毒だ!」
釈「塩素ですかー。」

じゅえる「単にカビ男イベントを発生させるだけでは面白くないぞ。督促派行徒が毒地からカビを人界に持ち出してテロに使おう、というのではどうだ。」
まゆ子「うん。督促派にももうちょいと働いてもらわないといかんからね。」
釈「その督促派のテロリストが自らカビに感染してしまい、カビ人間になって町を恐怖に陥れるのです。」

じゅえる「督促派はそれでいい。だがそうすると人喰いさん達のイベントをもうちょっと増やしてやるべきだなあ。」
まゆ子「それはいいんだよ。シュメ・サンパクレ・アのところで仕込んである。人喰いに本来属する賢人達が表で大学とかを作り、学問の宗教からの分離を図るのだ。ここで教団幹部との衝突が起こる。」
釈「それは完全に裏で同時進行するイベントですね。弥生ちゃんキャプテンとは関係無い。」
まゆ子「というわけにもいかんのだ。トカゲ王国の大臣とか官僚になろうと、人喰い教団に関係の有る賢人とか番頭階級とかやって来てるのだ。」

じゅえる「そいつらは学問だけで独立しようとはこれまで思わなかったのかい?」
まゆ子「いや、火焔教つまり人喰い教はギィール神族に弾圧されてたから、その時期は賢人こそが教団の表の顔だったのだよ。宗教的側面は地下に追いやられて居た。
 しかし褐甲角王国が出来て、ギィール神族ほどは賢くないから裏をかくのも簡単で、人喰い教も宗教的な復活を遂げて居たのがこの千年だ。
 賢人は宗教的な先鋭化についていけないとは思いつつも、彼らの持つ知識の宝庫からは逃げられない有り様。」
釈「困りますねえ。」

まゆ子「そこで弥生ちゃんの示唆で学問の殿堂を作ろうという。人喰い教団の書庫を強襲して蔵書を押収するのだ。」
釈「でもそれは反発を招きませんかね?というか、招くでしょう。」
まゆ子「心配無用だ、それこそが人喰い教団の望みに叶う事なのだ。弥生ちゃんがより強大な敵になればなるほど、彼らの食欲も増すのだよ。」
じゅえる「うういやなチキンレースだな。」

 

まゆ子「さらには、神聖首都ギジジットにて「人喰わない教団」というのが発覚する。火焔教の分派ではあるが金雷蜒王姉妹に従う内に変質していった特殊な、ギジジットだけの宗教だ。これの処分にアィイーガが手を焼く。」
じゅえる「なんじゃそれは。」
釈「人を食べないのなら困らないんじゃないですかね。」
まゆ子「いやこいつら、ゲイルを育てる為に使う巨大ゲジゲジ神の脱皮のカラを食べるんだ。ゲイルはこれを食べると大きくなるのだが、人が食べるとどうなるか。」
じゅえる「大きくなるの?」
まゆ子「ならないぞ。気が大きくはなるけどね。誇大妄想を抱くようになるのだ、地獄を見たとか言い出すぞ。」
釈「そりゃー厄介な人達ですね。」

じゅえる「その誇大妄想狂がどのような迷惑を引き起こすんだ?」
まゆ子「新しく央国を名乗るギジジットには多数のギィール神族が奴隷を連れて移り住むようになる。ところが現在ここに住んでるのが彼ら誇大妄想の人喰わない教信者なのだ。
 近所めいわくだからぶっ殺してみると、ギジジットでストライキが起きて大迷惑。」
じゅえる「そりゃアィイーガ困るな。」

 

まゆ子「このくらい悪党を用意しておけば、「げばおと2」くらい書けるか。」
釈「そうですねえー、まあ大体、ですか。」
まゆ子「げばおとは書かなくても、「抜質!」では引用する可能性があるからね。こんなもんでしょう。」

じゅえる「結論として、弥生ちゃんは10年秋初月に方台離脱、でOK。」

 

10/12/17

まゆ子「げばると処女APPENDIX「げばげばぎっちょん」「本編主人公」「さようならトカゲ神救世主弥生ちゃん」の初稿が出来ました。」

じゅえる「「げばげばぎっちょん」てなんだ?」
まゆ子「トカゲ巫女チュルライナのお話だよ。あの娘、弥生ちゃんにウロコ取ってもらったんだ。」
釈「ああ、そう言えばぐるぐる回る儀式以来出て来て居ませんでしたね。」

まゆ子「色々と後始末を着けなきゃいけない人が居るわけさ。で、ウロコ取ってもらったのはテュラクラフ女王がお姉ちゃんに岩の洞窟に連れてかれた直後のお話。本来ならば「タコ女王顛末」で描くべきであった。」
じゅえる「そうだね。何故?」
まゆ子「構成上の問題。時系列に沿って描いて行くと、タコ女王テュクラッポのその後を描くのが困難になる。邪魔だったのさ。」
釈「なるほど。でもそれならば章を改めて後ろに付ければよかったのではありませんか?」
まゆ子「そこまで頭が回らなかった!」
じゅえる「致し方なし!」

 

10/12/12

まゆ子「没原で〜す。油話その4補足ですね。」

『(蟲醤油の話の続き)

 

 弥生ちゃんが方台の醸造業に関係したのはその程度である。虫醤油だとて実質は村のカエル神官に任せて放りっぱなしだ。
 しかし、彼らは醸造の神とも仰ぐ。弥生ちゃん以後業界が劇的に変化したからだ。

 寄与したのは他ならぬ、微生物の概念だ。
 感染症予防の為に微生物の概念を伝え除菌の方法を教えた弥生ちゃんだが、醸造業においてももちろん重大な示唆となる。
 そもそもが彼らは、自分達が何をしているかはっきりと理解していなかった。微生物が穀物や肉を分解している、と知って初めて己の仕事の意味を知る。
 有用な微生物を積極的に育て、腐敗菌を退ける対策を行えば、発酵醸造の成功率が劇的に向上する。
 当たり前過ぎて困るくらいに、重大な恩恵を与えられたわけだ。

 さらに、弥生ちゃんはレンズを方台に持ち込んだ。近視の補正が主目的だが、後には望遠鏡・顕微鏡の発明に繋がる。
 顕微鏡が出来れば直接に微生物をその目で見れた。発酵の現場を直に確かめる。

 もっと重要なものが、温度計の発明だ。無論この時代まで存在しない。
 作るのは簡単なのだ。レンズも温度計もガラス製品。トカゲ神はガラスの神。
 弥生ちゃんが命じれば、指示通り設計図どおり早速に持って来る。弥生ちゃん自らがガラスを引き伸ばしたりもした。
 目的はやはり医療用。しかしこんな便利なものを他に使わない道理が無い。

 温度計の普及によって蒸溜が簡単に出来るようになった。
 十二神方台系は気圧が低い為にアルコールがすぐ蒸発する。蒸溜酒は厳密に温度管理の出来るギィール神族の専有物であった。
 温度計を用いれば、火加減をどこに保てばよいか一目瞭然。効率的にアルコールを分離出来る。
 これもまた医療用に指示して行わせた。が、飲まない道理が無い。
 折角作った消毒薬が盗まれないように神経を使ったものだ。

 寒天培地も弥生ちゃんの発明だ。
 己の欲求に従って海に遊び海苔や昆布を採集した際に、当然のごとくに天草も採ってきた。方台の西北、百島湾に面するグテ地は冬場寒気が激しい所。ところてんも乾く乾く。
 たちまちお菓子の材料として普及した。透明でぷるるんとした寒天は、まさに氷とガラスを司るトカゲ神の賜物。
 微生物培養に使うシャーレも、これまたガラス製。

 缶詰ビン詰めも弥生ちゃんはこしらえた。毒地制覇の取材に同行する無尾猫のごはんを納める為に、わざわざ錫貼りの鉄缶も作る。
 鉄を使うからさすがに缶詰は一般庶民に普及しなかったが、ビン詰めは積極的に利用される。
 やはりガラスだ。

 ガラスの神、トカゲ神救世主弥生ちゃん様を崇めるのに、何の論を待つだろう。

 

 方台退去後しばらくして、醸造業界は空前の活況を呈する。
 弥生ちゃんの指示で毒地の開発も進み、基礎的な食糧として毅豆が栽培され、味噌や醤油が次々に作られ始めた。
 カエル神官は大忙し。
 に留まらず、この分野に素晴らしい可能性が有ると見て、学匠やギィール神族までもが大挙して研究に乗り出した。
 青晶蜥神救世主時代は発酵の時代、と呼ばれるほどに学問が進む。

 のだが、どういうわけか抗生物質は発明されなかった。

 微生物を使って不老不死の薬を作ろうとの試みは幾度もなされ、製品化もされる。病に利く薬も多種多様に作られる。
 にも関わらず抗菌作用には注目が行かない。
 いや微生物培養に熟達し人為的な手段での除菌に絶対の自信があったから、発見に繋がらなかったのだ。
 抗生物質の発見は青晶蜥神救世主の退去後、創始暦六〇〇〇年代になってからだ。

 もはや神の力での癒しは無い、と焦る人間が代るものとして編み出した。方台科学精華の頂点である。

 

じゅえる「没になったのは何故?」
まゆ子「くどい。」
釈「たしかに。」

まゆ子「ほんとは、その2の最後に付いてる銃器火器の発展についてを消そうかと思ったんだけど、まあ皆さんはてっぽうがお好きでしょうから。」
じゅえる「こっちの方が有力だったのか。」
まゆ子「まあ、こっちの方が世の為人の為になる話ですから。」
釈「そういう観点もありますねえ。そうか。武器なんか進歩しなくてもいいってわけですよ。」
じゅえる「そうして見れば、5555年のやり過ぎは致命的なミスなんだな。」
まゆ子「弥生ちゃんの失敗は今に始ったことじゃないけどね。なにせ油ゲルタの利用自体がしっぱいだー、というお話ですからさ。」
じゅえる「そうか、そりゃそうか。」

釈「それにしても、外伝といいますかおまけで戦闘指揮というのも、なんか勿体ないですねえ。異世界降臨救世主モノでは花の場面でしょう大活躍ですよ、近代兵器を使って群がる敵をばったばったと薙ぎ倒すのは。あるいは天才的な指揮能力を発揮して諸葛孔明も真っ青て。」

まゆ子「いや今更に気が付いたんだが、本編で弥生ちゃんは兵隊の指揮をやってないんだねえ。」
じゅえる「そうなのか? というか、そもそも弥生ちゃんは敵軍なるものと遭遇したことが無いな。」
釈「そうなんですよ。実は巧みに交渉でお友達になっているのです。表立っての戦闘というのは、ギジジットに向かう毒地道中くらいなものです。」
まゆ子「アレは、弥生ちゃんとアィイーガと狗番3名のみが戦力だぞ。戦闘指揮なんて上等なものじゃない。」

釈「……、何故です!」
じゅえる「いや大声張り上げなくても、弥生ちゃんは戦争を嫌う平和的な性格だった、というわけでしょう。」
まゆ子「救世主さまというのはそういうものなのです。」

 

釈「それで申し訳程度に今回戦闘指揮をしてみせた、わけですか。」
まゆ子「いや今回も弥生ちゃんやってない。」
釈「え。」
じゅえる「そうなの?」

まゆ子「弥生ちゃんが今回やったのは、まず大義正義をぶち上げる。ぴるまるれれこ教団を公敵と認定して世間様に周知徹底させる。教団を挑発してまっこうからの反乱を起させる。」

じゅえる「あ、そこちょっと疑問があるぞ。弥生ちゃんがどうせ数年で居なくなるのなら、死んだフリしとけば良かったんじゃないかな? 無理に反乱しなくても。」
釈「確かにその方が賢いですね。」
まゆ子「いや、それは弥生ちゃんを甘く見過ぎだ。4年も5年も弥生ちゃんにいいようにされたら、方台根こそぎ耕されちゃうぞ。

 それに弥生ちゃんはそうさせない手もちゃんと打ったのだ。「真ぴるまるれれこ教」というのをでっち上げて、信者の受け皿を作っている。おまけに自分が天河十二神と遭遇した際の問答集を本にして出版しているのだ。「ぱられる十二神がいどぶっく」てのをね。
 なにせ方台退去後もおよそ30年、主観時間でそんな長い時間色んな所で救世主やら魔王やらをやったんだ。神様に出くわしたの2度や3度じゃない。
 で、その問答集を方台の人間が読めば、神学上の秘密がごっちゃり詰った有り難くも勿体ないお言葉の山。聖書バイブル新刊デター、てものですよ。」

釈「そんな事やってたんですか。」
じゅえる「書きなさいよ、それ本文中に。」
まゆ子「書いたらくどくなったので止めた。

 とまあそういうわけで、ぴるまるれれこ教団では弥生ちゃんを放置しておくと間違いなく自分達は死ぬ、と思ったわけなのさ。だからマジで殺しに来た。」
じゅえる「そうか。まあ弥生ちゃんだしね。」

 

まゆ子「それで戦争の準備だが、テュクルタンバに自分の兵隊を集め、新兵器を開発し実験し量産し使い方を教え、作戦を立て偵察やら事前準備やらを計画し、敵軍の情報を入手して撹乱なり誘導なりの工作員を派遣して、

地理を調べて決戦場を選定し、陣地構築の設計図を描き、部隊配置計画も立てて事前演習も行い、シミュレーションでやる事を徹底的に兵達に叩き込み、

その間テュクルタンバの神族神兵と相談して方台の改革を練り、神聖傭兵団の連中と戦後の改革の進め方を詰め、
もちろん金策も行い、
さらにはもし負けた場合にはどういう展開で次の策を行うかの下準備をこしらえて、まあこれは無駄に終ったわけだけど、

その他諸々のめんどくさいことを一手に引き受けてやっちまいましたが、
しかし、実際の戦闘指揮は下っ端に任せたのだ。」

じゅえる「最後まで自分でやれよ! そこまでやったのなら。」
まゆ子「いやこれが方台の流儀なのだよ。というか褐甲角王国風だな。」

釈「王族は兵の指揮を黒甲枝に任せて自分は一切なにもしない、て奴ですね。」
じゅえる「逃げることすら手下に任せるんだったな。そうか、そうした方が兵の士気は高まるという計算か。」
まゆ子「そういうこった。なにせ他の方台では戦争なんてうんざりするほどやって来た弥生ちゃんには、こんなの朝飯前なのだ。まあ、それでも負ける時は負けるし、負けた後でも取り返す算段をみっちりしていたわけなのですがね。」

じゅえる「しかし、救世主さまも大変だな。そんなとこまで気を回さないといけないなんて。」
まゆ子「おー、肝心なことを言い忘れていた。

 弥生ちゃんは、そういう瑣末な事の実行を下っ端に任せて、自分はテュクルタンバの街で遊んで居ました。ちなみにこの時代のテュクルタンバは立派な街が出来ていて人もいっぱい住んでます。」
じゅえる「遊ぶ?」

まゆ子「さいです。市民の人と触れ合って状況の激変に揺れる民心をなだめ、必勝の予感を振り撒いて人々を安心させるという大変なお役目があったのです。」

じゅえる「ひー、弥生ちゃんむしろ可哀想だぞそれは。」
釈「トカゲ神救世主とは、そこまで難儀なものですか!」
まゆ子「どうだ、他の救世主とは一味も二味も違うだろ。」
じゅえる「降参。」
釈「降参です。」

 

じゅえる「そういやまだ疑問が有るぞ。
 鉄砲の弾、火縄銃の鉛の丸弾は人体に当るとべちゃっと潰れてダムダム弾みたいになって、酷いダメージを与えるという話を聞いたんだけど、
 鉄矢の徹甲弾って、すんなり貫通銃創になっちゃってダメージ少ないんじゃないかな?」

まゆ子「ああそれはー、弥生ちゃんが悪い。」
釈「やっぱダメージは少ないんですか。」

まゆ子「弥生ちゃんはねーそれ鋳鉄で作っちゃったんだよ。硬いけど脆くて割れる奴ね。
 でこの弾、鉄矢は装甲なり甲冑は簡単に貫通しちゃうんだけど、弾も割れちゃうんだ。バラバラになった鉄の塊が人体内部で暴れ回り、ダムダム弾どころではないめちゃくちゃな破壊を引き起こすのだ。」
じゅえる「……。貫通、しないの?」
まゆ子「貫通するはずだったのよ、弥生ちゃんの計算だと。別に死ななくても怪我をしたら戦闘力が消失するという人道的配慮。しかし弥生ちゃんもこんな弾丸使ったこと無いから、ハハハ計算違いもいいとこだよ。」
釈「…その弾考えたの、まゆちゃん先輩ですよね…。」

まゆ子「実は甲冑など着ていない一般兵はもっと酷かった。この弾、羽が生えてるんだ。」
釈「安定翼ですね。」
まゆ子「空気抵抗を受けて弾の姿勢を一定に留める効果が有る。そんな大きな羽じゃないから、切断とかの能力は考えていない。」
じゅえる「まあ、火縄銃の口径12、3ミリだからね。小さな羽だろうさ。」

まゆ子「だが人体に突入すると、この羽のせいでまともに進まないのだ。
 というか、人体内に突入した弾丸はまっすぐ抜けたりしないのだ。よほど重くて硬いものでないと、人体内部組織やら骨やらのせいでぐにゃぐにゃとねじ曲がった軌道を通り、人体内部を破壊して抜ける。貫通銃創なら大丈夫だ、というような生易しいものじゃないぞ。」

じゅえる「でも刑事ドラマとかだと大丈夫的なことを言ってるんだが、」
釈「警察が使うホローポイント弾というのは、それこそダムダム弾みたいに人体内で開いてマッシュルーム状になり、人体に深いダメージを与えますよ。」
じゅえる「貫通銃創は、ダメなの?」
まゆ子「まあ、人体内に留まって鉛中毒にならないかなあ、というくらいなもんだ。日本の警察はホローポイント弾使ったかな?」
釈「ぐぐったら、完全被甲弾と書いてありました。」
まゆ子「ああ、やっぱ日本の警察はそうなんだ。」

まゆ子「でね、弥生ちゃんが作った鉄矢は人体内に突入すると羽が肉に引っ掛かって、人体内部で縦回転するのだ。」
釈「げ?」
じゅえる「どういうこと?」

まゆ子「つまり或る程度の長さの有る鋳鉄の弾がぐるっと回って、切断してしまうのだ。
 これをくらった教団兵は、肩とか腹とかずっぱり斬れてぼとっと落ちる。首が刎ね飛ばされるという悲惨な有り様。こう言っては何ですが、鉄矢が当った者で負傷者は居ない。皆綺麗にお亡くなりになりました。」

じゅえる「げえ。」
釈「そいつぁー酷いものを持ち込んじゃいましたね。魔王と言われるのも当然です。」
まゆ子「教団兵はこれを見て、銃で撃たれたんじゃなくて、見えない刀で斬られたかと思いましたよ。なにせ弥生ちゃんは切断の神でもありますからね。」

(この形式の弾丸はフレシェット弾と言いますが、この名前使うのはやめました。flechetteはフランス語で「投げ矢」、異世界語に翻訳すると「矢弾」になっちゃうし、そもそもフレシェット弾は前装銃用じゃないし、というか小銃弾用としては失敗して実用化されてないからです。ま、5.56ミリ口径にそんな細いもの使おうという方がおかしいぞ。
 ちなみに弥生ちゃんは12〜14ミリの大口径銃で使いましたから、軽過ぎて弾道が狂うという欠点はカバー出来ました。丸弾より命中率高ければいいだけだし。鉄矢というよりも、弥生ちゃんの感覚では「+ドライバーが飛んで行く」的な太いものです。) 

 

**********

まゆ子「それにしても、つらい。」

釈「もうお終いですから、そうですね。」
まゆ子「他の小説に手が出ないぞ、こちらを片付けないと。」
じゅえる「まあ最後まで頑張るさ。「ゲキロボ」には迷惑だけどさ。」

釈「「げばると処女」が終ったらどうしますか。続編書きますか。」
まゆ子「書かない。というか、書くネタ全部突っ込んだ。」
じゅえる「おまけで「げばおと2」の分まで書いちゃったからね。外伝とかは?」
まゆ子「「げばると処女刺客大全 死屍累々」というのを書く予定だったんだけど、多分書かない。これは弥生ちゃん出て来ないし。まあー、そうだなあ狗番のミィガンが殺される話がこれには含まれるんだけど、仕方ないか。」

釈「そうですか。外伝もスピンオフも無しですか。」
じゅえる「「抜質!」は?」

まゆ子「う〜ん、アレは書いた方がいいだろうか? アレは書くべきだと思うんだがネー。」
釈「読者の皆様にご説明です。「抜質!」は、怪奇推理サスペンス物、探偵が出て来て謎事件を解決して行く物語。2時間ドラマでよくやってるタイプのです。”でぽ”にはまだそのタイプはありませんね。」
まゆ子「「抜質!」の意味は「BAD CITY」です。」
じゅえる「まんま、探偵推理ものだな。」

まゆ子「抜質!の主役は、マキアリイ&クワンパ。私立探偵とその助手、いや事務所の女事務員ですね。
 舞台は創始暦6666年、場所は近代国家となった十二神方台系。大都市ノゲ・ベイスラです。鉄道高架橋の下に「レメコフ探偵事務所」があります。」

じゅえる「うん。クワンパは相変わらず酷い性格なんだな。」
まゆ子「うん。マキアリイを棒でぶっ叩くまるっきり可愛げの無い女事務員です。」
釈「近代国家というのはどのくらい近代なのですか? テレビとかあります?」
まゆ子「いや、インターネットもパソコンもありますよ。基本的に日本の1990年代くらいの文化レベルだ。」
じゅえる「ほお、そりゃ進んでるな。というか、弥生ちゃんが来てから1600年なら、それくらいは進んで貰わないといけないか。」

まゆ子「登場人物はー主人公レメコフ・マキアリイ。私立探偵でかっては警察にも関係していた。刑事だな、定石どおりに。
 彼は本来なら私立探偵なんかする立場の人間では無いのだが、市井に紛れて安っぽい生活を送っている。
 武器は野球拳。弥生ちゃんが伝えた「ゲリラ的美少女野球」を今に伝える野球拳団に属し、その奥義で悪党共を薙ぎ倒すのだ。」

釈「はあ、まんま主人公ですね。性格はあいかわらずちょっとへたれでいい加減、ですか。」
じゅえる「でもちょっとかっこいい兄さんだな。」

まゆ子「女事務員クワンパ。さほど美人じゃなく面の皮が薄く化粧っけが無い、容赦の無い性格の女。これまでどおり。マキアリイの薄給にも負けないのだ。
 カニ神信仰に基づきカニ巫女の棒を奮って、マキアリイをぶん殴る。強いぞ。」

じゅえる「要するに、マキアリイとクワンパで探偵物やりたかっただけだな。」
まゆ子「悪い?」
釈「いえ、ぜんぜんOKです。」

まゆ子「謎の女アクノメナ。悪い女以外はまだ考えてない。」
じゅえる「考えてから言いなさい。」
釈「悪の女ヒロインは定番だから、考えるまでも無く出るのです。」

まゆ子「令嬢ヒッポドス弓レアル。令嬢です。ネコも出ます。無尾猫ネットワークは依然として健在です。」
釈「ああ、つまり探偵マキアリイはうまく調査が進まないと、弓レアルの所に来てヒントを貰う、という間柄ですか。」
じゅえる「そこは第一話くらいで知り合うエピソードが必要だな。」

まゆ子「ちんぴら若造カロアル・バイジャン。ガキです18歳くらいの。探偵にはそれを信奉する若い衆が付き纏うのが定石。」
じゅえる「定石すぎるぞ。」
まゆ子「令嬢弓レアルにひとめぼれします。が身分の違いでそう上手くはいかないな。」
釈「この時代にも身分制度はありますか?」
まゆ子「いや弓レアル普通にお嬢様だし貧富の差はそりゃありますよ。ちなみに嘉字はよほどの旧家でないと残っていない旧い風習になっています。」

まゆ子「警察署長カロアル・ウシィ。地元警察の署長です。バイジャンは実はその息子でした。」
じゅえる「ほお。つまりマキアリイの元上司なんだ?」
釈「それは違いますね。マキアリイは言うなれば、警視庁特捜部の刑事だったんです。地元警察よりも偉いのです。」
じゅえる「ノゲ・ベイスラって大都市じゃないの?」
まゆ子「大都市ですが、方台の首都ではありませんぞ。戦争とか色々あった結果、現在の方台の首都はルルントカプタニアです。」
釈「つまり、ノゲ・ベイスラという首都からちょっと離れたところで、お気楽に私立探偵をやってるわけですね。」
まゆ子「ついでに、バイジャンの妹ロァランも出ます。こちらは警察署長の娘という役回りをきっちりこなす律義な女子高生です。」

まゆ子「政治家ソグヴィタル・ヒィキタイタン。嘉字は有るけど政治的な問題で使わない。新進気鋭の若手政治家で国会議員です。マキアリイの友達。」
釈「やっぱり出るんですね。でも国会議員ですか。事件とは関係しませんね。」
じゅえる「いやそこは、巨大な悪の陰謀が明らかになる時に関係するのだ。」
釈「ということは、政界の大物議員で悪の爺いが居るわけですか。」
まゆ子「となりますなあ。ハジパイ嘉イョバイアンが悪の爺いです。」

まゆ子「検察官チュダルム・ルダム。名門サンパクレ女子大学堂主席卒業の女エリート官僚です。高級スポーツカー「チラノン666」を乗りこなして颯爽と登場です。」
じゅえる「定番だ。」
釈「定番過ぎます。」
まゆ子「定番なんだからしかたないだろ。マキアリイとは腐れ縁なのですよ。」

まゆ子「そして、聖山に住む三十三代目青晶蜥神救世主ガモウヤヨイチャン。」
釈「「紀元6666年」ですからね。」
じゅえる「野球拳団は、そういえばこの人の所に12年に一回集まってペナントレースをするんだ。」
まゆ子「というわけで、結構な重要人物ですよ。それだけでお話が書ける。」

 

じゅえる「しかしなんだな。いきなり探偵モノてのはいいかげんも過ぎるだろ。」
釈「まあ、こいうのはノリですから。」

まゆ子「人をバカにするな。実はこの構想は随分と古くから持っているのだ。もっとも探偵モノとは限らなかったんだけどね。RPGみたいな感じでもよかったぞ。」
じゅえる「ふむ。」
まゆ子「君達は不思議に思ったことは無いかい? 弥生ちゃんは何故古代の魔法が掛かった不思議な聖剣を使わないのか?」
釈「それはー自分で作れるから、……いや、それはかなーりおかしな話ですねえ。」
じゅえる「魔法の剣を自前で作れます、てのはそりゃ変過ぎるな。」

まゆ子「それどころじゃないぞ。物語に必須な謎が、それを手にすればすべてが上手くいくようなお宝が、莫大な財宝が、どこにも無い。」
じゅえる「定石をことごとく外してるな。気にも止めなかったが。」
釈「というか、弥生ちゃんキャプテンが自前で全部作りましたよ。……、…あ!」

まゆ子「そういうことだ。弥生ちゃんは後で伝説となるようなエピソードやらお宝やら謎やらを、自前で方台中に用意しまくっているのだ。」
釈「…あとで、冒険する人の為に、ですか。」
じゅえる「え! てことは、スピンオフを最初から考えてたの?」
まゆ子「いや自分でやる気は無かったんだけど、まあ弥生ちゃんロールプレイングゲームくらいは考えていたのだ。」
じゅえる「他人にやらす気だったのか、それ。」
まゆ子「いや、オープン設定というかシェアワールドとかいうのが流行っているようだったから、そんなものかなあと。」
釈「他人にやらす気満々ですね。」

まゆ子「つまりだね、この「抜質!」は言うなれば「浅見光彦サスペンス」の方台版だ。故事やら伝説・古典芸能を題材に、マキアリイが方台各地で美女を助けて回るというお話ね。」
じゅえる「弥生ちゃんの冒険は、その為の壮大なネタ振りだったのか…。」

釈「まゆちゃん先輩周到ナリ。」

 

10/10/14

まゆ子「ミスった。設定事典にカタツムリ巫女ファンファネラ享年40歳と書いてるけど、これは間違いだ。」
釈「いまさらですか。」
じゅえる「というか、ヒィキタイタン事件となれば最初期の設定じゃないか、そんなとこにそんな間違いが。」

まゆ子「うん。つまりこういうことだ。

 カタツムリ巫女ファンファネラはヒィキタイタンとマキアリイのお姉さん的人物だ。マキアリイと10歳歳が離れている。
 弥生ちゃん降臨時マキアリイは30歳。つまり今年ファンファネラは40歳。だが彼女は4年前に死んでいる。」

釈「あ!」
じゅえる「超基本的な間違いだな。36歳で死んで以後歳をとってないんだ。」
まゆ子「どうしよう…。」

釈「こういう時は深く考えずに設定資料を書き換えます!」
じゅえる「うん、それが最も正しい。」
まゆ子「へ〜い。」

 

10/10/01

まゆ子「「げばると処女」EP7 最終巻12章・最終章の初稿かんせいでーす。」

釈「ばんざーい」
じゅえる「万歳ー!」

まゆ子「長かった、良くわからないが長かった。予定を3年もオーバーだ。」
釈「ご利用は計画的に、ですね。」
まゆ子「うん。反省した。」

じゅえる「物語はこれでおしまい。残りは後始末ですかね。」
まゆ子「弥生ちゃんがどうなったかをほったらかしにすると、気持ちの悪い人が沢山出るでしょう。弥生ちゃんの物語はもう少し続ける必要がある。とはいえ、ほんとうに後始末だけですよ。これより先はキャラクタ描写は無い。」
釈「げばると処女は一章ごとに主人公が代るのが特徴でしたからね。これからは三人称で語られるのです。」

じゅえる「しかしこれだけ長い物語なのに、男女関係はほとんど無しに等しいですねえ。ここらへんが限界か。」
釈「恋人は幾人も出て来ましたが、本当にいいかなと思うのはー、クワンパとマキアリイくらいですかね?」
まゆ子「あの二人、恋人じゃないよ。」
じゅえる「だが恋愛関係に見えてしまうくらいしっくり行ってるのは確かだ。この物語で一番得をしたキャラがクワンパだな。」
まゆ子「ノーマークでした。」

釈「なんといいますかね、妻帯者が多い物語でしたね。」
まゆ子「というよりは、もっと若いキャラを活躍させるべきであったと、普通の人は思うでしょうね。でもこれでいいんだよ。」
じゅえる「すべての元凶はヒィキタイタン事件なのさね。」

まゆ子「うん。ヒィキタイタン事件は4年前に起こった。弥生ちゃん帰還時には5年めだな。この事件が起こった当時、赤甲梢のキャラは十分に若くて一般の物語的によろしいような感じだったのよ。」
釈「30歳のキャラが、26歳に。責任を持つ軍人としては、若いですね。」
じゅえる「つまり4年前に戦争は起きるべきだったのが、頓挫した。それから鬱屈した時を重ねて弥生ちゃんの降臨が有る。そういう時間軸だ。」
まゆ子「だから主要キャラは年長で、妻帯者ばっかりになる。
 不思議に思う人も居るだろうが、でも中世あたりだと20歳には普通に結婚してるよ。これでも遅いくらいだ。」
釈「ですよねー。」

まゆ子「しかし、だからこそこの物語は成り立ったと言えるのさ。若いヒーロー然としたキャラばかりだと、面白くない構造だ。なにせ神族神兵は素で特撮ヒーローレベルの能力を持つからね。」
釈「それもまた変な構造ですねえ。雑魚キャラがこんなに強いお話は無いですよ。」
じゅえる「雑魚、って。まあ雑魚なんだけどな。」
まゆ子「魔法を構造的に排除しながら魔法を導入する。現代世界からやってきた弥生ちゃんがタイムトリップ物特有の魔法的圧倒的パワーで無双する、という展開は断固阻止する。
 という方針の為さ。」
釈「こう言っちゃなんですが、現代の人間が過去で賢く見えるのは、個人の力量が備わっているからではないですからね。人間としてのレベルは昔の人の方が高かったりしますよ。」
まゆ子「うん。そこを表現するのがこの物語の焦点でした。」

じゅえる「無茶だな。」
まゆ子「十分知的冒険と呼べるほどの設定です。弥生ちゃんという超強力キャラが無ければ手を出さなかったね。」
釈「超主人公様ですよ。奇蹟みたいな人ですねえ。」
じゅえる「なんでかな。弥生ちゃんはなんでこんなになっちゃったかな?」
まゆ子「こればっかりは見当もつかん。出来ちゃったものは出来たんだ。その意味では我々の方がよっぽど不思議。」

じゅえる「自分で自分の物語を作るキャラだからね。」

 

*****

じゅえる「そりゃそうと、ひとつ疑問が。弓レアルって黒甲枝じゃないでしょ? なんで嘉字持ってるの?」

釈「あ。」
まゆ子「そこに気付いてしまったか。」

じゅえる「じゃあこれってミス?」
まゆ子「まず基本的なルールから。嘉字は聖戴者のみが付けることを許される。」
釈「ふむ。」
まゆ子「基本的に嘉字は濫用しない。身分を表わすものだからね。」
じゅえる「だから親が聖戴者でないとダメなんだよね。」
まゆ子「聖戴者が名付け親になれば、嘉字は付けられる。」

じゅえる「誰にでも付けていいってこと?」
まゆ子「基本的にはそうだ。しかし濫用すると社会的混乱を引き起こすから規則は護られている。
 自分の子供以外に嘉字を付けるのは、こんな時だ。えーとまず、黒甲枝神兵がまだ自分で聖戴しており、息子はただの人だけど家督相続が予定される。孫が生まれた時にはそりゃ付けます。」
釈「なるほど、それは付けますね。」

まゆ子「親が聖戴者であったとしても、子供が生まれた時には不在ということもある。長期に渡って名前が無いと困るから、知り合いの聖戴者に付けてもらう。黒甲枝なら縁の金翅幹元老員にお願いする。」
じゅえる「至極当たり前だな。」

まゆ子「一般人の恩人の子供に、御礼として付けることもある。この場合聖戴者はその子を生涯バックアップすることになる。これはギィール神族の習慣だ。狗番は案外と嘉字を持っていたりする。というか、狗番は姓が無い事が多く、嘉字を姓にしたりするね。」
じゅえる「特殊事例だな。」

まゆ子「そんなのは抜きにして誰にでも嘉字を与えて良い人物が、方台には3人居る。今は6人。」
釈「武徳王、東西神聖王、弥生ちゃん先輩とタコ女王ですか。」
まゆ子「そもそもが嘉字ってのは、金雷蜒神聖王が自分の臣下にギィ聖符であだ名を付けたことに始まる。十二神の救世主はフリーハンドで付けて良い。

 弓レアルの場合、これに相当する。」
じゅえる「おお!」
釈「そんじょそこらのお嬢様とは違うんですね!」

まゆ子「これは外庭に住む高級官僚の家に許される特権でね、子供が生まれたら申請して武徳王からお祝いに一字賜るのよ。だから弓レアルの本名はヒッポドス・レアル、で”弓”を加えている。
 何故というのは至極簡単。褐甲角王国には黒甲枝が居るからだ。軍人家系である黒甲枝のみが幅を利かせると、国家の行政がないがしろにされてしまう。官僚達の権威も認めないとうまく成り立たない。
 そこで、一見して違いが分からないように高級官僚の嫡流の子供には嘉字が与えられるのよ。まあ申請した人のみにね。
 黒甲枝は1500家もあるけど、そういう権利を持った高級官僚は100家くらいしかない。レアケースですよ。」

じゅえる「官僚本人が一代で出世した場合は、嘉字もらえないの?」
まゆ子「その場合は嘉字ではなく賜字と呼ぶけれど、姓の前に付けるのが通例。弓=ヒッポドス・レアルという感じになる。生まれた時に名付けられるのが一番よろしいのさ。」
釈「”サー”の称号みたいなものですね。」

まゆ子「まあなんだ。弓レアル本人に限ってみると、お婆様は金翅幹元老員のお姫様だし、お母様は黒甲枝のお嬢様だ。嘉字も普通にもらったぞ。」
釈「そんじょそこらのお嬢様とは訳が違うわけですね。」

 

10/09/17

まゆ子「あ〜夏はいかん、今年のあつはなつかった。」
釈「毎年暑いとは思いますが、今年は半端じゃなかったですね。でも9月になると案外と楽です。」
じゅえる「東京の方じゃそうでもなかったらしいね。」

まゆ子「というわけでゲバルト処女EP7第十/十一章同時公開です。」
じゅえる「これ、8月中には公開出来てたのよね。」
釈「さぼりですか?」
まゆ子「いや、どういうわけだか知らないが、推敲を6度も7度もさせられた。」
じゅえる「通常は4度だよね。なんで?」
まゆ子「短いから、かな。短いと手を入れたくなるのよ。長いとそれどころじゃない。」
釈「ふーむ、よしあしですねえ。いつもは必死に4度まで辿りつきますから、今回楽でしたか。」
まゆ子「とんでもない。短過ぎてなんか穴が開いてやしないかと必死になってつつき回したよ。或る種これまでに遭遇していなかった地獄です。」
じゅえる「まあ夏の暑い最中に書けば、自信も持てないってとこかな。」

 

じゅえる「そりゃそうと一つ疑問。泥でお城は作れるの?」
釈「ああ、カプタニア城の土城壁のことですか。あれはどうなんですかね、アフリカの辺りでは泥で町を作って居ますが。」
まゆ子「ちょっと待てなんか勘違いしてるぞ。日本の建物も木と泥で出来ている。」
じゅえる「え? …、そうだっけ釈ちゃん。」
釈「はあ。構造体としては使いませんが、木の柱に竹かなんかで壁を張って、泥を塗って行きますね。漆喰ではなく泥ですね。あと土塀なんかまるっきり土です。」
じゅえる「ううそうだった。じゃあカプタニアはあれでいいわけなのか。」

まゆ子「つまりその構造体として泥が使えるか、が心配なんだ。結論から言うと使えるのだが、中国の版築と呼ばれる建築法が一番強固かな。あれは泥と土と石灰と、草とか穀物の糊とかまで使って何層にも渡って突き固めて行く根気強いものだ。万里の長城が有名だな。」
じゅえる「カプタニアもそうなんだ。」
まゆ子「いやそれは違う。版築は土の質にも左右されるのだが、十二神方台系において特徴的なのは火山灰を使うってのだね。地面を掘って行くと火山灰のようなさらさらした黒っぽい灰みたいなものにぶち当たる。これを粘土とまぜまぜして日干し煉瓦を作るのが通常。」
釈「土を固めるんじゃないんですか。」
まゆ子「順番があるんだよ。カプタニアに限らず方台においては、やっぱり木を柱にする。で、柱の枠に沿ってその煉瓦を並べて行く。だがこの煉瓦、湿気てるのだ。」
じゅえる「乾かないの?」
まゆ子「めんどくさいから乾く前に使う。灰を混ぜると乾かなくても形が崩れないのだ。だから煉瓦を積むと、その内くっついて土を盛ったようになる。」
釈「はあ、簡易版築みたいなものですか。」
まゆ子「その場で叩いて固めてないだけで、やることは同じなのだ。何故現地でやらないか? 灰は地面のかなり下を掘るから手間が掛る。商業的に大規模な産業として灰煉瓦を作ってるのだね。」
じゅえる「でも建築現場まで持って来るの重いでしょう。」
まゆ子「重いぞ。だがこれを使わないと高層建築物は作れないのだ。3階建くらいの大きな建物はこの手法だぞ。
 それにそこらへんの泥を使って固める、というわけにもいかないのだ。良い土良い粘土はやっぱり運んで来るに限る。」
釈「つまり粘土を運ぶ輸送法として、灰煉瓦を作っているてことですか。」
まゆ子「土盛りだから現地そこらへんの土でいいじゃないか、てのは素人の考えなのだ。」

釈「灰煉瓦使わない方法は無いんですか?」
まゆ子「いや、木で組めばいいじゃん。だがもちろん木造建築は火に弱い。王都であり要塞であるカプタニアでは推奨されていない。」
じゅえる「もっともだ。」
まゆ子「木造建築であっても、泥をしっかり塗っていると或る程度の防火能力は有る。屋根が柴だったり藁だったりするからあんま意味無いけどね。
 カプタニア東街の低所得者層は木造だ。だから焼き討ちで燃えちゃった。」
釈「なるほど。木はふんだんに手に入るわけですか。」
まゆ子「カプタニアの周辺は山ばかりであるし、アユ・サユル湖を使ってベイスラとかからも運べるからね。材木では苦労しない。ただそんなもの城砦には使えないな。」

じゅえる「石造建築は無いんだよね。」
釈「というか、石が無くなって作れないんですよ。」
まゆ子「神聖金雷蜒王国時代にめぼしい石を全部使っちゃったのだ。今では地下2、300メートルから掘り出している。とても大変。」
じゅえる「カプタニア城は旧カプタニア城が完全な石造りで、他は違う。」
まゆ子「既存の石造建築物を取り壊して、元老院やらその上の神聖宮殿やらは作ってます。やっぱ石で造るとハイソな気分になりますよ。」
釈「コンクリは無いんですか?」
まゆ子「有る。」
じゅえる「おお。」
まゆ子「でも生コンとかは無いわけだ。漆喰はある。あんまり多用はしないが、表面を綺麗にする為に塗ったりはしますね。普通は泥だけど。
 で、コンクリだが実は非常に重要な建築材料なのだ。」
釈「おお。」
まゆ子「ローマ人が使っていたような手法でコンクリは作れる。至極固い石が出来るが、これは固まるのに数ヶ月も掛る代物だ。建築現場では使えない。」
釈「コンクリ固まるまでそんなに待って居たら次の仕事が出来ないですね。」
じゅえる「やめた方がいいな。」
まゆ子「だが固まってちゃんと石が出来るのだ。強度も十分。だから、石の大量生産をやっている。」
釈「お?」
まゆ子「現地で固めるからいかんのだよ。工場で連続的にコンクリブロックを作れば、どんどん出荷出来る。煉瓦と同じだ。」
釈「おお! そんな手がありますか。」
まゆ子「とはいえやはり手間が掛かって費用も嵩む。だが大きな石が自在に作れる貴重な手法であるから、礎石として利用する。」
釈「柱の下に敷く石ですね。なるほど、柱の数しか要らないわけですよ。」
まゆ子「カプタニアにおいては、水上交通で出来た石を運べるのだ。大中小とコンクリブロックは製造していて、木造建築であっても床下にはこれが埋まってる。」

じゅえる「つまりカプタニアは結構先進的な建築環境にあるんだ。でも田舎の村は?」
まゆ子「まあ、灰煉瓦を自分達で作って重ねてますね。礎石はさすがに田舎には石は有る。大きくはないけど。
 貧乏人なら木の柱に泥を塗った壁で済ませます。これだってピンきりで上等な家も建つんだ。」
釈「要するに、どうとでもなるわけです。」

 

じゅえる「次の疑問。聖戴者は賜軍衣てのを着ますが、それ以外の軍衣ってどんなの?」
まゆ子「あー褐甲角王国においては軍衣は4つありますね。まず聖戴者および経験者のみが許される賜軍衣、これが最高の価値を持ちます。
 次は剣令軍衣です。剣令以上の者が着る服で、賜軍衣ほどではないですが権威があります。
 そしてクワアット兵の軍衣。凌士長以下が着ます。かっこいい。
 で、邑兵の軍衣。これは製造元が決まっておらず、色形材質とかの定め書に従ってそれぞれの村で作ります。」
釈「つまり賜軍衣を着ていない神兵は、だいたい剣令軍衣を着ているわけですか。」
まゆ子「賜軍衣は裏に絹を張っているくらいですから、高価です。聖戴者を一目で分かるようにするものですから、まあなかなかですよ。」
じゅえる「その他に礼装の軍衣てのは無いの?」
まゆ子「無いですよ。どの軍衣も礼装扱いされます。あと夏服と冬の外套があるかな。
 礼装と言えば、一般剣令は軍官僚としての資格を取って凌士監・大監・統監と位を得る事も出来るんだけど、それらの人が引退した時に王宮に上がる特別な礼装があります。」
じゅえる「「将軍」てじいさまが居るけど、あの人?」
まゆ子「うん。彼らは序列的には兵師監・大監・統監に継ぐとされていて、一般剣令と区別する為の服を用います。でも軍衣ではないから、昇殿衣とでも呼ぶべきかな。」
じゅえる「なるほど。」
まゆ子「あと巡邏の服とか官僚の服とかもあるけど、まあそれは別。」

釈「部隊章とかは無いんですか?」
まゆ子「所属を示す記章はあるけど、基本的には無いな。地方ごとに兵隊はあんま動かないのだ。徒歩めんどうだし。」
じゅえる「他の部隊と混じり合わないから、区別する必要無いんだね。」
まゆ子「でも赤甲梢は特別だ。剣匠の位を取る者が多いから、一般クワアット兵でもその資格章が付いていて目立つ。剣匠の資格章はどこで取ったかの印が付くから、大威張りできるぞ。」
釈「資格章にはどんなのがありますか?」
まゆ子「剣匠でしょ、剣匠令でしょ、凌士長も特別な資格章を持つし、凌士監・大監・統監もそれぞれ有るぞ。あと海軍もまた色々有る。海軍の兵士は海に落ちても目立つような色を着てますね。」

 

じゅえる「しかし褐甲角王国は神兵と一般剣令とが同じ階級を持っていながら、神兵のが指揮権が上という構造になっていてヘンだねえ。神兵のが上、てするわけにはいかないの?」
まゆ子「頭までは賢くならないからね。」
じゅえる「ま、あ、ね。」
釈「部隊運営とか軍略とかはそれは頭の出来で向き不向きがありますよねえ。神兵は正面で戦うのが本義で、聖蟲の力を必要としない分野には一般人でも良いわけですよ。」
まゆ子「言うなれば、神兵は戦車だ。戦車と歩兵を同列に扱うわけにはいかんだろ。」
じゅえる「まあ、それはちがうわな。」
まゆ子「しかしながら宗教的に聖戴者の方が上という方台の秩序が有る。只の人に聖戴者がこき使われるのは、民衆が許さないのだ。故に神兵のが上と決まっている。
 兵師監以上の軍の階級が聖戴者および経験者なのもその理屈。神兵に命令を与えるのは神兵でなければならない。」
釈「理屈ですねえ。」
じゅえる「一般人で頭のいい人は、なんとも思わないのかな? 出世の道は無いでしょ。」
釈「それはどこの世界でも同じじゃないんですかね。出身身分の違いで出世の道が決まってるのは。」
じゅえる「いやそうなんだけどさあ。」
まゆ子「そういう人は官僚を目指せばいいのだ。軍にわざわざ来る必要は無い。官僚には神兵はならないのだ。」
じゅえる「どうして?」
まゆ子「額に軍神カブトムシを載せていながら、後方でのほほんとしているのは許されない。最前線に出て救世の大義を果たすのだよ。」
釈「神兵は戦うのがお仕事なのです。」
じゅえる「つまり、軍で一般人が出世を望むのはバカ、てことか。」
まゆ子「だからこそ黒甲枝という身分制度が有る。彼らはたとえ聖蟲をもらえない立場であっても、救世の大義に従って戦おうとするヒトだ。出世して権力を得る為に軍に入る、なんてのは無いのだよ。」
じゅえる「要するに、地球とは違うんだ。」

釈「でも衛視も神兵ですよね。」
まゆ子「これには理屈がある。そもそも褐甲角王国は行政をしないのだ。一般民衆が自らで社会を運営して行くのを立前とする。」
じゅえる「そんなことできるわけないじゃん。」
まゆ子「無いんだよ。だが立前上はそうなっている。褐甲角神の救世主は、自立した民衆の保護者に過ぎないのだ。
 というわけで各町村の行政はそれぞれの人の会議で運営される。王国は、その町村を繋ぐ道路街道を保全し交易の安全と市場の公正を保つことで成り立っている。」
釈「それって、もしかして。」
まゆ子「そうなんだ。タコ女王時代の交易警備隊を主体とする通商保全と同じ仕組みだ。金雷蜒王国時代から先祖返りしている。
 とはいえ戦争はしなければならないから重大な負担が生じるわけで、商業のみならず工業においても王国の指導がなされている。まあ一次産業のみだな、一般民衆に完全に任されているのは。」
じゅえる「要するに立前上は行政権は民衆の会議にある。だがそんなのは腐るに決まってるわけだ、民衆だもん。」
釈「そうですねえ。土地の親分みたいなものですからねえ、村長ってのは。」
まゆ子「つまり公正を確保する為には外部の視点が必要であり、それは村内の勢力よりも明らかに強大であり、格式の上でも隔絶して高くないといかんのだ。
 そこで神兵あるいは黒甲枝の出番となる。黒甲枝は親が神兵であるから、偉いのだ。」
釈「偉い人だからこそ、法を司る役を求められるのですね。」

 

じゅえる「ちょっとまて、黒甲枝ってのは親が神兵でないとダメなのか?」
まゆ子「そうだよ。というか、親が神兵であり聖戴者だからこそ嘉字を持っている。嘉字を与えられるのは神兵かギィール神族のみ、今はタコ女王と弥生ちゃんでもいいけどね。その資格はおおむね聖戴者を親として持つ者、だ。そうでなければむしろいじめられちゃうのだな、この偽物めと」
じゅえる「まあ後ろ楯が無いと生きるのに辛いだけかな、それはやはり。」
釈「つまり日本の武家とはやっぱ違うのですね。神兵の子孫は代々黒甲枝、というわけじゃないんですよ。」
まゆ子「この世界はあんまり血統を重視しないからね。なにせ頭に聖蟲を乗っけるのはあくまでも個人の資質なのだ。聖蟲に嫌われるとたとえ王族であっても聖戴は叶わない。」
じゅえる「ダメな王族も居るんだ?」
まゆ子「不名誉ですから話には出ませんが、王族も金翅幹元老員でもそういう人は居ます。黒甲枝家でそうなった場合は、他の黒甲枝家から養子を取って聖戴させます。あるいは既に聖蟲を授かっている赤甲梢や紋章旗団を迎え入れます。」
じゅえる「養子がまた聖蟲獲得に失敗すれば、そりゃことだしね。」

釈「具体的にはどんな人が聖蟲に嫌われるんですか?」
まゆ子「邪悪な人よこしまな人根性のねじ曲がった人、犯罪常習者、薬物/酒中毒患者。上流階級にはこういう人がけっこう居るからね。
 意志薄弱な人、自らの姿勢の正しく無い人、救世の大義に自信を持てない人、極端に功利的な人、聖蟲の力を妙なふうに使おうとする人、人に思いやりの心の無い人。」
釈「まあ、そりゃイヤですね。」
まゆ子「短命な人も嫌われる。身体に異常が無くても運が悪くて寿命が短い人とか、いかにも危なっかしい人は避けられる。
 また逆に、まったくもってどこから見ても立派な人であっても聖蟲に嫌われると、後に考えると運勢が悪いのを聖蟲に見抜かれていたんだと分かったりする。」
じゅえる「そういう人は落込むだろう。聖蟲もらえないと。」
まゆ子「世を儚んで聖山に上り神官になったりしますね。軍人であればそのまま軍務を続けたりもしますが、死にそうであぶない。」
釈「気の毒ですが、仕方ないですね。」
じゅえる「その場合は軍務から離れて命を惜しむのが正しいね。」
まゆ子「しかしながら、身体の弱い人は別に条件から外れたりはしないのだ。特にギィール神族にあっては身体障害者であっても聖蟲を持ってる人は結構居る。
 褐甲角の神兵の場合はともかく戦わねばならない宿命にあるから、そういう人は辞退するけどね。王族や金翅幹元老員であっても。」

じゅえる「女人はどうなのだ? 彩ルダムは特別なんでしょ。」
まゆ子「王族女子は普通に聖戴します、男子と一緒です。金翅幹元老員の場合は男子に条件に叶う者が居ない場合、女子が受けても良い事になってます。この場合元老員としての資質が試されますが、金翅幹家の姫はおっとろしく弁が立ちますから大丈夫ですよ。」
釈「黒甲枝家ですが、彩ルダムの場合は「破軍の卒」ですからね。金翅幹元老員と同格ですよ。」
まゆ子「まあ、「破軍の卒」であるというのが一番大きな要因ですね。黒甲枝家では戦士となる男子のみが聖戴するのが普通です。しかし例外は有る。」
じゅえる「ふむふむ。めちゃくちゃ強いとかだ。」
まゆ子「彩ルダムは槍を取っては男子も敵わないほどの達人だからね。だが黒甲枝家ではよく有る話なのだよ。
 家を継ぐ男子が居ないから養子を取って継がせようとする。娘に婿を取るわけだが、娘がよわっちい殿方は嫌いと言い、じゃあ娘と戦わせてみようという話になって、」
釈「勝っちゃうわけですか。」
じゅえる「連戦連勝ですか。」
まゆ子「時々そういう娘が居るのだよ。で、それぞれの黒甲枝家には金翅幹元老員が上に居るから、面白がって武徳王に申請して聖戴出来たりする。家督も継ぎますが、残念ながら軍には入れない。」
じゅえる「そりゃ無理もない。」
まゆ子「こういう人はだいたい王宮の女官もしくは神聖宮殿の巫女になります。褐甲角神の巫女として地上で奉仕活動をしたり、聖山に行ってメグリアル王家で働いたりしますね。」
じゅえる「だから、弥生ちゃんの傍に聖戴した女性を付けようという話が出るわけだ。」

【ついでに】

じゅえる「ひとつ分からない事があるんだけど、弓レアルの実家のヒッポドス家は財務大臣まで出した偉いおうちだよね。」
まゆ子「うん。」
じゅえる「なのに、何故布地屋なのだ? というか、外国からやって来た宮廷廷臣がいきなり布地なんて基本的なマテリアルを独占出来るのは、何故?」
釈「ああ、それは私も不思議に思っていました。どうしてです?」

まゆ子「ヒッポドスの、4代前かの人が東金雷蜒王国から亡命して褐甲角王国に迎え入れられる。財務に詳しくて大臣となり、国家に多大な功績を上げて外庭への居住も認められる。
 ここまでは特に不審は無いね?」
じゅえる「まあ、なんとか。」
まゆ子「では彼が何をしたか。税制改革なのだ。
 皆知ってる通りに、税金てのはカネで納めるばかりでなく、穀物・生産物・労役でも払えるのだよ。」
釈「租庸調ですね。」
まゆ子「この内、穀物と労役はまあいいんだ。ヒッポドスが手を着けたのは、生産物の納税だ。
 知ってのとおりに近代国家では生産物の物納よりは銭納が好まれる。取り扱いに楽だしね。ところがだ、褐甲角王国では通貨制度がはっきりしない。」
じゅえる「ふむ。大銅貨っての1金の価値を持つわけだったね。」
釈「物凄く劣悪な鋳造貨幣で、落すとくぐもった変な音がして、あまりに品質が悪いからギィール神族でさえも偽造出来ないんでしたね。」

まゆ子「その大銅貨だ。大中小と銅貨はあるが、いずれもそんなもの。希少価値は無い。紙幣が紙でありながらも通貨として流通するのは、発行者に信用が有るからだ。
 つまり褐甲角王国の通貨は、なんの価値も無いが王国の信用のおかげで成り立っている。
 ということは、発行者である王国が銅貨での納税を受けても、なんの得もしないのだ。」
じゅえる「う、まあ、そうだな。」
釈「通貨の流通量の制御という観点がありますが、まあ邪魔ですね。」
まゆ子「そこで納税は生産物によって行われる。というよりも、褐甲角王国においては穀物の納税は無い。」
じゅえる「ほお。」
まゆ子「各村での穀物や農産物の生産は、村の会議が全責任を負う。利用や売却も同じ。ただし農地は国家から借りていることになるので使用料を払わないといけない。
 だがこれも、各村の備蓄という形で実質は納税しない。褐甲角軍が作戦行動を行う際に使用の優先権があるだけで、平穏無事であれば村で食べてしまっても構わない。」
釈「つまり使用料という名目の飢餓対策ですね。」
まゆ子「うん。税金が掛るのはこれからだ。村で作った穀物・生産物は市場で売らなきゃカネにならない。物々交換も村に留まって居ては難しいから、定期的に近くの市に行って売却や交換をする。
 この市場の使用税が掛るのだ。」
じゅえる「なるほど。二重課税はしないんだ。」

まゆ子「さて生産物の納入だ。布地を例に上げるのが一番簡単だが、油とか石とか木材とか色々と有る。」
釈「色々と役に立つ品物ですね。」
まゆ子「ではこれの納入はどうするべきか? 持って来る?」
じゅえる「いや、それは重い。」
釈「それは難しいです。なるほど、これが原始的なままで残されていたわけですね。」
まゆ子「うん。ほんとに持って来ると困るから、代りの品で納入する。で、大銅貨だ。」
じゅえる「欲しくないものが納められてしまうんだな。」
まゆ子「王国は大銅貨は欲しくないから、より有用なものとして布地特に山蛾の絹を通貨代りとして納入を義務付けた。しかしこれも大変だ。」
釈「つまり油やら木材やらの代りに、布がどんどん送られてくるわけですか。そりゃ大変だ。」
まゆ子「もちろんカプタニアでそんな大量の布は必要無い。近くの市場で売り払って別の物資に取り替える。無駄な労力を費やして居たのだね。」

じゅえる「ヒッポドスはそこをどうしたのだ?」
まゆ子「手形だ。布地を専門に扱う業者を選定して、税がちゃんと納められた証明書を税務当局に送って終了だ。」
じゅえる「大丈夫なのか、そんなので?」
釈「実質王国には何も入っていませんよ?」
まゆ子「だが国家というものはだいたいそんな形で運用されているのだよ。そうね、こう考えると良い。王国は民間から借金をして運営されている。借金のカタが、税だ。税が直接貸し元に行けば、それで返済終了。」
釈「はあ、まあそうですが。」
じゅえる「それが適正に行われる保証が無い…から、ヒッポドス商会になるわけか。王国が自ら作った布地専門の商会で、王国の命令で商売する。」

まゆ子「ヒッポドスはその手形システムを褐甲角王国に構築したのだ。金雷蜒王国ではもう長いこと似たようなシステムが使われているからね。こちらでは商会の代りに神族が対象となる。神族同士の決済機構だ。」
釈「でも具体的にはどうやって。大量の文書処理が必要となるでしょうそれは。繁雑で、混乱して不正や誤魔化しが起きますよ。」
まゆ子「うん、だから1万金銅貨やら10万金銅貨が作られている。」
じゅえる「え?」
まゆ子「文字どおりの銅板に「1万金」と打ち出していて、現在の所有者と登録番号と割り符が付いている。王国の役所でひとつひとつを登録していて、授受の際には役所で所有を登記する。もちろん割り符の合わない登録もされていない者には行使は出来ない。」
釈「物理的に存在するんですね、書類上の数字ではなく。」
まゆ子「もちろんこれの授受が出来る商会・業者は王国で資格が厳しく定められており、定期的に監査も入る。下っ端には無理よ。
 正直言って、大ゲルタの燻製やイカを王宮に納入するトゥマル商会でも、認められない。」
じゅえる「なるほど、そこんとこにれっきとした区別が有るんだ。」
釈「伊達に外庭に住んではいないんですね。」

じゅえる「でもよまゆちゃん。商人というのは商品を転がして初めて儲けが出るものだ。この決済システムだと、納入された生産物に一定の固定した金額を認めないとダメなんじゃないかな?」
まゆ子「そこがまたこのシステムの特徴であって、そもそも方台には一物一価の大原則があるのよ。方台どこに行っても、どこで買ってもモノの値段は同じ。理想的ではあるが、そうであるのが望ましい。」
釈「無理でしょ?」
まゆ子「無理だね。しかし極端な値動きがしないように、枠を決めることは出来る。」
じゅえる「カルテルか。」
まゆ子「国家的カルテルだね。だから褐甲角王国の住民は割高な商品を使うのを余儀なくされるが、品質は保証されているし供給が滞る事も無い。生産者は極端な値動きでダメージを受けないし、計画的な生産を効率的に行える。」

釈「なんだかいい話みたいですねえ。」
まゆ子「全面的に否定されるものでもないさ。褐甲角王国だってカルテルの弊害は承知していて、業界団体を3、40年に一回解体して別の枠組みに組み直す。その為の大義名分はだいたいが戦争の動員なんだけど、ヒッポドスの時は税制改革だったて話さ。」
じゅえる「でもさ、既存のカルテルからの反発は強いでしょ。」
まゆ子「税制改革の必然性はこの時期とみに高まっていたし、絹布に極端な価値を認めるのも危ういと分かっていたんだよ。
 絹布が高値で取り引きされるのも、これが輸出商品だからであり、金雷蜒王国の需要で価値ががくんと変わるのさ。弩車や神兵用甲冑さえ輸入に頼る褐甲角王国は、他に輸出商品を生み出さないといけなかった。
 そこで商品の品質管理と保証も合わせて、税制改革で産業構造を組み替える。既存の業界団体を解体して、新しいカルテルを組織する。
 ヒッポドスはこの仕組みを成り立たせる為に、敢えて絹布ではなく一般の布地・麻みたいなのを専門に扱うこととなった。既存の利権構造が死守したから、絹布には手を出せなかったのね。」

じゅえる「しかし、そんながんじがらめの経済で反発する人は出ないのかい?」
まゆ子「それが、先政主義派だよ。主に金雷蜒王国からの輸入品を扱う都市商業者を支持母体として、より自由な経済活動を志向する。
 なんたってこのがんじがらめの制度はまず戦争の遂行を目的として物資食糧の安定供給を保証するものだ。多少のコスト高は許容せざるを得ない。
 このコストを最低限にして、民間に富を蓄積させて経済を飛躍させ国力を増進して、戦争においても勝とうというのが先政主義派だ。」
じゅえる「う〜ん。」
釈「やはり戦争の元は経済、ですか。」

まゆ子「というわけで、先政主義派の天下であったここ15年はヒッポドスも大臣になったりはしなかった。
 しかし大審判戦争で風向きが変わり、有能な人材を必要として弓レアルのお父さんとか伯父さんとかが高級官僚に任命されて税務を担当した。」
じゅえる「なるほど。経済と政治も密接するわけだ。」

 

********************

まゆ子「うーんとこんなものかな、げばると処女も設定を書くのはこれで最後になりましょう。」
釈「長かったですねえ。」
じゅえる「次の第十二章と十三最終章は事実上一つであり、おしまいだよ。」

まゆ子「長かったすなあ。計画ではこの「弥生ちゃんの大審判」までで、約250枚の計画でした。」
じゅえる「ちょっとまて。」
釈「それは3章分の長さでしかないじゃないですか。」
まゆ子「いやそういう計画だったから。だってさ、単に喧嘩両成敗するだけだもん。まあそうだね1章30枚換算だと8章分、ちと短いか10章くらいかなあ。」
じゅえる「……なんでこーなった?」
まゆ子「さあ?」

釈「まあその後、そうは簡単にはいかないなと思い直して「弥生ちゃん降臨」→「ゲジゲジ神撃破」→「大審判戦争」→「弥生ちゃん失踪」→「弥生ちゃんの大審判」、てことになりましたよ。これで大体1巻ずつとして、5巻分だな。現在7巻だからまあまあでしょう。」
じゅえる「いや、分量から言うと今は10巻分だ。倍に増えてるじゃないか。」
まゆ子「ありぃ〜」
釈「『げばると処女2』も合わせて10巻予定ですよ。すっかりやっちゃいましたよ。」
まゆ子「ありぃ〜」

釈「これからの計画は?」
まゆ子「EP7最終章が終ったら、APPENDIXが最後に付いて完成です。要するに最後の落とし前だ。
 現在の予定では

・「一方その頃弥生ちゃんは、無茶をやっておりました」; 弥生ちゃんはカプタニアに来る前に、武徳王本陣に殴り込みを掛けております
・「タコ女王顛末」; テュラクラフ女王の最期を描きます。あと弥生ちゃんは帰還早々フィミルティにぶん殴られます
・「油話」; 油ゲルタから魚油製造を始めたら、硝石が沢山採れて鉄砲が発明されます。5555年に再臨した弥生ちゃんは「釣り野伏」をします。/お醤油のおはなし
・「本編主人公」; 弓レアルのその後です。軌バイジャンさんを探して方台を彷徨い歩き、タコ女王(若)が願いの珠をくれるというのを断り、「ジョグジョ薔薇の乱」の渦中に巡り合います。方台を去ろうとする弥生ちゃんにバイジャンさんの記憶を取り戻してもらい、ENDです
・「さようなら、トカゲ神救世主弥生ちゃん」; 「本編主人公」の続き。弥生ちゃんの方台退去後3年、小舟に乗って釈ちゃんが3代目としてやってきます
・「げばると処女」; 方台退去の前夜、ファンファメラと弥生ちゃんの伝記の題名について議論します

おしまい。」
じゅえる「結構有るなあ。」
釈「今年中に終るでしょうか。」
まゆ子「終らせたいな。」

 

2010/08/30

釈「おたよりを頂きました。「刀話」で弥生ちゃんがスハイツの最後の刀を受け取ったくだりをお気に召してくださったそうです。」

まゆ子「ふむふむ。やはり「油話」も書かねばならんようだな。」

じゅえる「再度降臨した弥生ちゃんが島津家得意の「釣り野伏」をするわけですよ。」
釈「あれは物凄い結束力が無いととても出来ない荒技なんですよね。」
まゆ子「銀河英雄伝説でヤンウェンリーがよくやってるけどね、でも実際やるとなれば、ふつう死にます。」
じゅえる「そりゃ少数の兵力で大軍を釣るわけだし。」

まゆ子「ちょっと違うぞ。少数の兵力をさらに割いて、待ち伏せとおとりとに分ける、なんというか死にます戦法だ。」
釈「朝鮮征伐の際には7千で明・朝鮮軍20万がとこをやっつけちゃいますからね。」

じゅえる「でもなんで「油話」なの?」
まゆ子「いや、おもに油製造の話だから。ついでに醤油だな。油を作っていたら、なぜか鉄砲ができちゃう話だ。」
じゅえる「なんでやねん。」

釈「戦争は?」
まゆ子「おまけ。いや実際「刀話」も刀製造が主で、戦闘はおまけだし。」
じゅえる「う、んん。」

 

じゅえる「げばると処女EP7「第十章・第十一章」は同時公開となる予定です。」
まゆ子「乞御期待!」

 

10/07/20

まゆ子「あっしは時々、自分が馬鹿ではないだろうか、と思うことがある。」

じゅえる「バカは今に始ったことじゃない。」
釈「あ〜その〜なんですか。ハハハ、それはですねえ、」

まゆ子「げばると処女の次のお話は、実はもうとっくの昔に出来ている。その前に、ひとつおまけを書かなくちゃいけない。紋章旗団を陰謀に嵌めるのだ。」
釈「スケジュール通りですね。」

まゆ子「げばると処女が至る所に演劇が盛り込んでいるのは、特に指摘しなくても皆知っている。今回もまたそうなる。」
じゅえる「今更、マンネリではあるね。」
まゆ子「マンネリだよ。だから目先の変わった事をする。というわけで考えついたのが、

 朗読だ。」
じゅえる「ちょっと待て。」
釈「朗読ですか、あの本を読む。」
まゆ子「そのまんま朗読だ。」

じゅえる「いやそれは、小説で朗読を出すのはいかんだろ。なにせ小説を読むのが朗読だ。」
釈「えーとそれはまた、どういう経緯でそうなりますか。」
まゆ子「いや、でも自然とそうなった。朗読が出るのは劇中では実に自然。自然でないのが、」
じゅえる「そんなもの普通の小説には出て来ない、という常識だな。」

釈「しかし、それにしても朗読とはまたマニアックですね。」
まゆ子「だが私は朗読得意中の得意なのだ。」
じゅえる「あーそれはつとに有名で、学校で皆にリクエストされるくらいだし。」
まゆ子「とは言うものの、では朗読を小説に描いた事があるか、といえばそんなわけない。」
釈「不自然の極みですからね。普通はそこんところはモノローグとして処理しますよ。」

まゆ子「今回朗読は朗読でなければならない。しかも力強く人を動かす、魂を揺さぶる朗読だ。」
じゅえる「それは無理だ。朗読は書いてる文章変えちゃいけないぞ。
釈「あー、どうしましょー。」

じゅえる「とはいうものの、これはバカだからやるに決まってる。」
釈「あー、……頑張って下さい。」

まゆ子「うんがんばる。」

**********

 

釈「…………、まがあきました。」
じゅえる「なんか面白いことを言いなさい。」
釈「なんかとは、なんですか?」
じゅえる「それはー、あー昨今の政治状況、とかは要らないぞ。ネタを振りなさい。」
釈「それはやはり、創作活動に寄与する雑談をしろ、というのですね。」

まゆ子「今はなにが流行ってるだろうか?」
釈「色々有りますけど、パンツではないでしょうか。」
じゅえる「アニメね。それはまあ置いといて。映画はこの夏はけっこうあるらしい。シャマラン監督が雇われ監督をしたアメリカのCGアニメもありますよ。」
まゆ子「ジブリの「借り暮らしのアリエッティ」とか。小人か。」

釈「小人は書いたことありませんね。」
じゅえる「でも小人はあんまり発展性の無い題材だぞ。どうせ人間の大きいのとハートウオーみんぐななんとかで。」
まゆ子「へんなとこで切るな。でも小人は美味しくはないな。」

釈「まゆちゃん先輩なら、小人はどう料理します?」
まゆ子「塩で炒める。」
じゅえる「そういうボケはいいから。」

まゆ子「あー、小人か。しかしグロは嫌いだよ。小人ってすぐグロるもん。」
じゅえる「ああ、そういう展開はウチではやってませんから。」
釈「そういえば、小人グロはまあなんですか、頭のおかしい人をどんどん惹き付けますよね。注意しなくちゃ。」

まゆ子「だいたいね、小人は人間よりしごく弱いのがデフォルトになってるのが気に食わない。弱くてちっさい生殺与奪をほしいままに出来る蟻んこみたいな存在であるから、物語を読む人に無用の万能感を与えるのだ。これはよくない。」
釈「どうしても自分が保護者、あるいは圧政者虐殺者になりますね。」
じゅえる「そういうのが小人モノ特有のロジックだよ。それは読者様も期待する。」

まゆ子「うむ、不健全だ。」
じゅえる「まあね。」

まゆ子「小人と人間は対等でなければならない。どちらが優れているとかをあからさまにしてしまうと、自然に既存の物語に堕してしまう。」
釈「道理です。」
まゆ子「小人に銃を与えよう。一撃で人間を抹殺出来る。」
じゅえる「うわーそれは困る。」
釈「でもそれだと、敵対しますね。抹殺するでしょう、人間は。」

まゆ子「バルサンを炊くな。それにも大丈夫なように、どこでもドアをくれてやろう。一瞬で人間の攻撃から逃れる能力を持つのだ。」
じゅえる「それは人間よりも賢いのか?」
まゆ子「それでもいいぞ。うん、そうだな。人間を奴隷にして働かせるくらいは普通にやる。」
釈「デストピアですね。つまり小人に征服された世界ですか。」
まゆ子「うん、人間はどう足掻いても小人の脅威と支配から逃れられないのだ。」

じゅえる「それは確かに面白いが、グロ展開は避けられない。止めよう。」
まゆ子「ああ、そうだね。反逆した人間の頭部脳内に小人が侵入するとかも考えられる。」
釈「グロはやめましょう。」

 

釈「小人が強いというのなら、神様でスクナ彦とかいうのが居ましたね。」
じゅえる「小さい神様は結構人気のあるモチーフだ。可愛いし邪魔にならないし、それでいて相当な霊力有るし。」
まゆ子「でもそれはまた小人とは違うジャンルではないかと思うのさ。」

釈「やはり目的です。小人ものに何を期待するか、それによって小人自体の性質も変わって来ると思うんですよね。キャラとしての要求も変わる。」
まゆ子「まあ、キャラ作りてのはそういうもんだ。まず物語ありき、いや物語にて表現したいものありき。それに必要なキャラを造型する。まず小人ありきで作るとろくな目に遭わない。」

じゅえる「エコかい?」
まゆ子「いや、「アリエッティ」は貧乏らしいけどさ現代的に。」
釈「それは着眼点は悪くはないとは思いますが、唐突ですね。いや宮崎監督の頭の中では常にそれを忘れてはいけないことになってるんですかね。」
じゅえる「どっちにしろ説教くさいのは性に合わない。小人は無理か。」

まゆ子「小人が生物である必要も無いか。使い魔やら分身の術やらで小人化する魔法使い、という手がある。仙術の類いか。」
釈「そっちの方が使いやすいですかね。」
まゆ子「気を集めて小人化すると、小人にだけ入れる世界が開けて見えるんだ。ふむ、いくらでも使い道有るな。」

じゅえる「その間、生身の本体はどうなるんだ?」
まゆ子「寝てる。」
釈「まあ普通ですが、起きててもいいような仕掛けが欲しいですね。精神が分裂するような感じで。」

 

じゅえる「まあいいや。で、その小人の身体でなにをするのだ? 世界でも救うのか。」
まゆ子「はあ。どうしよう。」
釈「そうですねえー、限られた術者でなくてもケイタイを使って誰でもが小人に成れる。くらいの方が発展性有りますかね。」
まゆ子「そうだねえ。不思議能力というのもなんだしねえ。要するにアバターだよね、でもアバターよりも強い何かだ。」

じゅえる「そういえばこの間、そんなアイデアを弄くったような気がするな。」

まゆ子「ああ、アレは、「ケイタイを使って自我の一部を外部化すると、残された本体は雑念を覚えずに極めて効率的に機械的に作業が出来る」て奴だな。勉強がよく出来るようになるとか、仕事を勝手にしてくれるとか。で、排出した自我の一部が戻らなくてどうこう、というアイデアを考えたね。」
釈「おお、それこそ小人に相応しい状況。」
じゅえる「アバターであれば、その分身が経験したことを本体がすべて心得るんだが、そのシステムであればむしろアバターは誰も知らないところに行って何らかの経験をして、でも帰って来ると全部忘れてしまう。てとこだね。」
まゆ子「いや、完全に忘れてしまうのではなく、記憶の断片とそこで得た感情の一部、およびなんらかの手掛かりを獲得する。てのがよい。
 で、合体すると本来の人格に戻る訳で、そうすると勉強もはかどらない仕事もなんか嫌気が差す。で、また分離してアバターをどっかにやる。その内に返って来るのを拒絶するようになる。本体の人格は有能ではあるものの、なんだか魂の抜けたようなものになる。」

じゅえる「で、抜けたアバターはどこに行ったのか? が物語になるわけだ。」

 

釈「そのアバターはもっと有益に使えるんだけど、自我を込めて飛ばすとそうなる、てことにしましょう。有益だから皆使い方を知って居て、その裏技として勉強が良くできるおまじないが有る。という感じですね。」
じゅえる「いや、それはつまりアレだ。眠くなると小人さんが出て来る現象のように、なんだか実感の無いままに作業や勉強がはかどっている。という代物だ。だからおまじないの名前も「こびとさん召喚術」。ただし現象としては、小人さんが自分から出て行くことになる。」

まゆ子「そのシステムであれば、タイムリミットが有るな。ふと気がついたら、という時間が有るんだ。えーと、12時間くらい?」
釈「人に依りますね。8〜14時間くらいではどうでしょう。朝掛けると夕方気が付く、くらいです。」
じゅえる「強い光の刺激で元に戻る、とかでもいいか。後、自分の身に危険が迫ると自動的に解除になる。」
まゆ子「それは逆がいいな。自分では覚えていないのだけど、他人の目からは物凄い危険な状況を、驚くような自然さでするっとすり抜けて無事だった。正気ならとても出来ない真似をしてしまう。で、一段落付くと、正気づくんだよ。」
釈「おお、それは便利過ぎです。」

じゅえる「でも勉強とか仕事の結果は、正気の時はどうなるんだ?」
まゆ子「自分では覚えていない。ただ正気のままで勉強なり仕事なりを始めると、なぜかやったことを思い出し、ちゃんと効果が有ると理解する。ただやって居た時間帯の記憶が無いだけだ。記憶は無いけれど、友達とかと会話した内容は覚えて居る。いや、自分が覚えて居ることに驚く、くらいだな。デジャブのような感じで思い出すんだ。」

釈「かんぺきですね。余りにも完璧過ぎてちょっと御都合主義的です。」
まゆ子「いや、読者様がそれ欲しいと思うくらいの機能でないと、この場合困るのだ。人には夢が必要だよ。」

じゅえる「でも、抜け出たアバターはどうなっているんだ? なにか体験してるんだろ?」
まゆ子「ここで注意しなくてはならないのは、ふと気が付いた時には別にアバターは戻っていない。そこでケイタイを使ってアバターを引き戻して初めてアバターと合体する。また合体しなければ再び有能状態にはなれない。つまり、気が付く度にアバターは呼び出されており、その度合一のショックを受ける事になる。」

釈「ふむ。離れているのが常態化しないような仕組みになってるんですね。」
まゆ子「ただ、人は自らが無能であることに耐え切れず、アバターを常時すっ飛ばす行動を取ってしまう。そこがミソね。」
じゅえる「アバター戻さないと、有能にはなれないの?」
まゆ子「一度醒めてしまうと普通だよ。そして自我を持ったままだとどうしてもなにか思う通りに動かない。当たり前だけどね。そういう葛藤が無い状態を作り出すのが、この魔法の神髄であって、別に頭が三倍偉くなるわけではない。」
じゅえる「ふむふむ。有能になるのではなく、無能を感じなくなる魔法なのか。」

釈「独創性を必要とする仕事やら、社交的な能力はどうなるんですか?」
まゆ子「それが、ちゃんと機能するんだ。つまりテレとか迷いが無くなるわけであって、それらは能力の発動の阻害要因だ。だから芸術家でも機能するし交渉事でも機能する。結果は満足出来るものだ。ただし、その過程を覚えて居ない。いや、知っているけど自分のものとしては認識出来ない。まるで、ふと目を覚ますとすべてが上手く行っていた的な疎外感が有る。
 ただし、それに満足出来ずに自力で自覚しながらやろうとして、で失敗するから人は魔法に頼るのだ。」
釈「そうなんですよねえ。出来ると思うことが出来ないのが、現実社会ですからねえ。」

 

じゅえる「でも、アバターどこに行ってるの?」

釈「ふむ。それが物語の核心です。探索の必要が有るのです。」
まゆ子「いや、これは「詮索するな」が魔法の極意、注意書である方が面白い。アバター合体の時皆感じるショック、様々なビジョンが一瞬の内に流れ込んで来る。この元は何か? これを詮索してはならないのだ。それが有能の小人さん魔法の唯一の条件。」
じゅえる「うむいいぞ。それだ、そういうのが必要なんだ。」

まゆ子「これは、物語中の偉い人の解説で出て来るべき言葉だが、有能状態の人間からは新しいものは何も出て来ない。そういう仕組みなのだよ。そりゃ当然だ、新しい概念新しい発明新しい仕事は、現在やっている事に不満を感じることで発生する。その葛藤が無い所に進歩とか成長は無いのだが、それを有能状態は放棄する。表面上は何事もすべて順調に上手く行っているように見えて、実は危ない状況が積み重なっている。」

釈「しかし、人はもはや小人さん魔法を手放せないんですね。」

 

まゆこ「今名前考えた。”コビトアバター”というケイタイサービスだ。新開発携帯電話についている精神感応入力装置によって、と言ってもラブセンサーみたいな人体電気抵抗測定器と画面のどこ見てるかの視線解析を併用した入力装置であって不思議な存在ではない、を前提としたサービス。

 この入力装置は別名”コックリさんキーボード”と呼ばれるくらいで、自分が考えるより早く文章を入力出来る。たまにはあらぬ文章を作ったりもしてしまう危険なものだ。
 これを使って100の質問をクリアすると、ユーザーの深い部分までの指向を精緻に把握出来るのだよ。それに基づいてサーバー側のAIがユーザーが望むものを勝手に集めたりこなしたりしてくれる。」

釈「便利なものですねえ。つまり小人さんは別に魔法を使わなくても便利なものなんですね。」
まゆ子「とはいうもの、新型ケイタイにのみ付いてる入力装置だからそんなに普及はしていない。物語中で爆発的に増えるけどね。小人魔法のおかげで。」

じゅえる「その魔法って、どうするんだ?」
まゆ子「新型ケイタイで特定のHPを呼び出して、入力装置をぎゅっと握って一心不乱に念を入れながら「少名彦之命さま、どうか勉強を手伝ってください」と3回唱えると、ぴゅーっと”なにか”が向うの世界に行ってしまう。

 で、ふと気がつくと、宿題が全て完了しているという塩梅だ。」
じゅえる「便利イイー。」
釈「それ欲しいですねえ。でも宿題だけでなくてもいいんですね。」

まゆ子「最初はいやな宿題をいつの間にか片付けてくれる魔法だったんだ。その内に、いやなテストをいつの間にか片付けてくれる応用法を誰ともなく考案して、それからいやな授業中をすっとばす方法、めんどくさいバイトの時間をすっ飛ばす方法、と進化して行く。」
じゅえる「で、一般社会人が業務の最中に使ったりするようになるんだ。」
まゆ子「うん。人間関係とかめんどくさいものを、いつの間にか上手いことこなしてくれてるんだ。魂が無いんだから実は無敵なんだよ。DQNのクレーマーにもまったく飽きずに長時間付き合って理路整然と反論する、なんて離れ技も成し遂げる。」

釈「最終的にはどこまで拡散しますか。」
まゆ子「その当時の、どうしようもなく使い物にならないと大評判の総理大臣 仮に「鷺山首相」としよう、が或る日突然有能になる。くらい。」
じゅえる「おお、それはなんとかしてもらいたい。」
釈「そんなことして大丈夫なんですか?」
まゆ子「大丈夫じゃなかった。魂が抜けたような目のうつろな顔になるから、こいつ使ってるなと一目で分かる。で、国会において与野党議員からさんざん批難されるのだが、なにせ有能でありまた使用前があまりにも無能であったが為に、支持率回復の為に与党側がこれで行こうと覚悟を決めてしまったんだな。」
釈「なかなか辛辣ですね。」

 

じゅえる「で、そこでではケイタイの向うに行ってしまった”小人さん”だ。一体何をしているのだ?」
まゆ子「この魔法、全ての人が出来るわけではない。というか、ごく少数の人はどうしても掛からない。で、主人公はその人になる。どうしても魔法が掛からなくて成績が上がらなくて困りまくって、もう一心不乱に少名彦之命にお願いすると、全存在、全意識が小人世界に飛び込んでしまう。というお話だな。」

釈「サイバー空間ですか?」
まゆ子「未定。」
じゅえる「それは面白くない。なにかネタは無いか?」
まゆ子「バンブーパンクというのを前に考えたことが有る。サイバーパンクを受けて考え出された概念にスチームパンクてのが有る。蒸気機関が異様に発展した世界だな。
 バンブーパンクはそれの応用で、中華世界が極端に発展したもの。つまり竹を中心とした文明世界だ。」
釈「具体的には、」
まゆ子「コンピュータの代りに筮竹を使う。麻雀牌で演算する。」
じゅえる「あ〜、そういうのか。あーなるほど、そういうのはアリだ。」
釈「仙人とか出て来るわけですね。小人の神様が行く世界としては、なるほど納得いきますか。」

まゆ子「とはいうものの、日本の神様だから完全にバンブーパンクにするわけにもいかない。日本昔話の世界かなあ。」
じゅえる「でも、…いや完全に日本昔話というのも斬新で悪くないかもしれない。ただ、」
釈「そいうのはココ最近結構アニメとかで出てますね。ちょっと考える余地があります。」
まゆ子「水木茂調の不思議世界、という手もある。」
じゅえる「うむ、ちょっと怖いくらいが良い。」
釈「そうですねえ。やっちゃいけない制約を破るんですから、怖いくらいがちょうどいいです。その主人公はそもそも魔法が掛からないのだから、制約破りの恐ろしさを理解しない。」
じゅえる「そうだな。アバターと合体する時に覚えるショックが、詮索するなという制約を守らせる強制力となるんだ。」

釈「どうしますか、メルヘン調でも面白いですよ。」
じゅえる「ただし、元の世界が割とシリアスであれば、こちらもちょいとぎすぎすしていてもイイのかもしれない。読者様はどちらを好むかだな。」

まゆ子「その一部だけを投射する、というのが鍵だ。人格の何をこちらの世界に持って来ているのだろう。普通の人は実はお面だけの存在、というのでも悪くない。」
じゅえる「うーむ「千と千尋の神隠し」の顔無しの逆バージョンだな。顔のみ、だ。」
釈「ふむ。この世界に飛ばされるのは個人にとってどの程度の価値が有るものなのでしょう。人格のどの部分を切り離しているのかで形状も変ります。シンボル的に。」

じゅえる「悪意とか邪念、妄想やら欲望が来てるんじゃないの?」
まゆ子「そういうのは神様の世界には来れないのだよ。」

 

釈「逆はどうでしょう。向うに行っていると思わせて、実は向こうから現実社会に来て居る。個人に取り憑いている。」
まゆ子「いやそんな非現実的なのは良くない。あくまでも実現可能かも? と思わせるさり気なさが大切だよ。」
じゅえる「でもなんらかの作用がユーザーに働いてるのは確かだ。一種の催眠術かな。」
まゆ子「催眠術てのはあまり好きじゃないなあ。だがまあそういうものだ。「なにかが向うの世界に行ってしまう」という感覚が、一種の自我の麻痺を生んで効率的機械的に動くことを身体に許すんだ。」

釈「つまり、本当に行ってしまうわけではない?」
まゆ子「ケイタイはケイタイだ。そんな不思議ゲートじゃない。ただ精神感応入力装置によって極めて精緻なレベルでユーザーの嗜好が暴露されてしまうだけだ。」
じゅえる「つまり、向うの世界は無い?」
まゆ子「無い。」

釈「ではバンブーパンクもヴァーチャル世界も無い?」
まゆ子「そいうことになるが、それでは面白くない。主人公は常時接続状態となって不思議世界を彷徨い、最後には少名彦之命と会わねばならぬ。」
じゅえる「ゲームの世界だな。」
まゆ子「まあ、そうだな。そういう事にしておこう。精神感応機能付き端末専用オンラインゲームのテスト用ページなんだ。そこにアクセスしてお願いすると、そういう状態に成る。」
釈「つまり主人公は、そのゲームを極めて真っ当にプレイしているわけですか。」
まゆ子「ふむ。βテスターだな。」

じゅえる「つまりこれまでよりも遥かに現実的リアルなバーチャルワールドが出現する?」
まゆ子「という安直なネタは避けよう。」
じゅえる「うむ。」
釈「まあモノは考えようです。読者様はまちがいなくその展開を想像しますから、そういう展開をさらりと見せてあげてまたとんでもないとこに連れて行く、というシナリオがよろしいですよ。」
まゆ子「ふむ。仕掛けね。」
じゅえる「人が欲するものを与えよ。人の想像を常に裏切れ。エンターテイメントの鉄則だな。」

まゆ子「つまり主人公はこのゲームをやってみて、これが魔法に関係無い事を知る。だが皆魔法はこのサイトでやっているのは間違い無い。
 途方に暮れてゲームのロビーでたむろしていると、誰も居ない。魔法を掛けに来るけれど、誰もゲームをしようとは思わないんだ。
 でAIの”スクナ彦”が話し掛けて来る。」

釈「でもそれは求めるべき少名彦之命ではない。」
まゆ子「同じものだけど違う、という変な話。そして話している内に気が付くんだ。ここに魔法を掛けにやって来る人は、この物語世界で自分のアバター達が楽しく愉快に過ごしていると思い込んでいる。ここで幸せに暮らしていると誤解している。
 そりゃそうだ。ここはゲームだから、ユーザーが直接にプレイしないと意味が無い。AIに任せて勝手に動き回らせてなんかのポイントを獲得しても、だからどうしたという話なのだ。」
じゅえる「そりゃそうだ。」

まゆ子「だが、だからこそそれが魔法なんだ。ここに何か有るという錯覚。幸せな世界がバーチャルで実現するという誤解。これが魔法の核心。

 ”空ろ舟”なんだよ。」
じゅえる「それは少名彦之命が乗って海に行ったお舟の名前だっけ。」
釈「なんとなくフダラク渡海を思わせますね。」
まゆ子「うん、その要素も有る。つまり、海の彼方に理想の世界が有ると思うように、バーチャルの世界にも理想世界が有ると想いたい人間の業なんだ。
 で、その理想世界にアバターとなった自分を置き去りにしていくと、今の抜け殻になったリアル自分が機械的合理的に自動で振る舞う言訳になる。自分が抜け殻になったと思い込んでしまう、と言った方がいいかな。だからリアル社会でちゃんと物事が成り立つ。」

じゅえる「理屈は分かった。だがまだ弱い。政府とか国家の陰謀を絡めるのだ。」
釈「いえ、総理大臣がやるくらいですから、政府によってこのゲームサイト潰されるくらいでいいんじゃないですかね。」
まゆ子「そうだね。物語の最後にはこのサイトが潰されて魔法が消える。リアル社会もまた元のぎすぎすしたぎこちない世界に戻る。というシナリオがよろしいんではないかい。」
じゅえる「だが、後の救いを残しておかないと後味悪いぞ。」

まゆ子「だね。主人公が最後にそこで一働きする、というところで終るのが綺麗でしょう。」

じゅえる「そうだな。自分で「小人ワールド」とか作り上げて、でも今度は有料課金で魔法サイトにするんだ。
 でも、なにか更に仕掛けが欲しいところだな。魔法が実現する為のキーとなる技術が。」
釈「そうですねえ。洗脳プログラムとかですかねえ。」

まゆ子「ああ、それはだ、アバターと合体する時に瞬間的に覚えるイメージというのが有る。これに秘密がある事にしよう。」
じゅえる「楽園のイメージが雪崩れ込んで来るわけだ。」
釈「そうですね。アバターが小人の世界で楽しくやってるに違いない、という思い込みを発生させる機構なんです。」
まゆ子「それも個人個人が望む通りの素敵な世界だ。より精緻に嗜好の傾向を抽出したからこそできるイメージだな。その意味ではこのゲーム世界は良く出来ているんだ。」

 

10/06/28

まゆ子「近況報告ー! 現在ゲバルト処女EP7「第九章 (未定)」をさぼって、ガンダム話を書いております!」

釈「はあ。」
じゅえる「まあいつものことだ。で?」

まゆ子「題して「公式設定完全無視俺が考えた最強ボール大活躍活劇「星空のスノーホワイト」」。枚数にして200枚!」

じゅえる「200だああ?」
釈「そりゃーげばおと書けないですねえそりゃ書けないや。」
まゆ子「アハハハハ」

じゅえる「じゃない! どうやらここはお仕置きが必要だな。」
釈「しかしまたそれは、どんな大長編物語ですか。」
まゆ子「いや、ボールが出て来てザクが出て来て、どーんとやってびゆーんとやってリックドムがずがががと撃ってGMがばびゅーんとして、お終い。」
釈「それだけで、200枚。」
まゆ子「これだけが200枚だ。」

じゅえる「人間ドラマとかニュータイプとか人類の革新とかは、」
まゆ子「そういう人間的な要素まるっきり無し。ばびゅーんだけだ。」
釈「ちょっと試作を見てみましょう。」
じゅえる「そうだな。えーと、

…………なんじゃこれは。設定だ。」
釈「設定文の山、だ。」
まゆ子「そういうことだ。ましなりいだもん、設定がどんどん来ますよ。」
じゅえる「しかしこれはまた、設定だ。」
釈「設定ですねえ。」

まゆ子「近日後悔!」

          ********** 

まゆ子「そうこうする内に、第九章もできましたー。というか、9章がどうにも面白くならなかったから、ちと迷って居たのだ。200枚寄り道したらなんとかなった。」 

じゅえる「なんだ、そういうことだったのか。」
釈「行き詰まっていたんですねえ。でもどの辺りですか。」
まゆ子「つまりこの回はタコヤキ王女が主人公。しかしながら会う相手はハジパイ王とかの年寄だ。この組み合わせで面白いとか楽しい話にするのは、なかなかね。」
釈「そりゃ難しいですね。」 

じゅえる「して、解決策は?」
まゆ子「「第九章 還って来た酔っぱらい」!」
じゅえる「酔っぱらい? 酒か。」
釈「困った時は酒を飲んでなにもかも忘れるてのは、まあ普通ですが、酔っぱらいですか。」
まゆ子「まあなんだ。この話酔っぱらいを出す前から、仮タイトルが「帰って来た酔っぱらい」でした。当初の構想には無かったけど、なんとなくこのタイトルが頭に引っ掛かって。結局この通りになりました。
 とはいうもののだ。実はそれだけが問題じゃなかったのね。どうにもタコヤキ王女の性格が扱いかねて、あの娘ジャジャ馬だもん。」 

じゅえる「タコの女王は皆一筋縄ではいかないからね。」
まゆ子「それなんだ。タコ女王は誰も皆ただのヒトとして描くわけにはいかないのだよ。破天荒でヒトを驚かし、同時に魅力的でないといけない。これは難しいぞ。」
釈「しかもロリですからね。」
じゅえる「そりゃ考えるな。考えざるを得ないな。」
まゆ子「どっちかというと、弥生ちゃんよりも異星人なのだよ。苦労した。でも宇宙を200枚描いたら、なんとかね。」 

釈「こちらもまた近日公開乞御期待です。」 

 

10/06/04

まゆ子「134枚! 五月は頑張った! というかこれだけじゃない、ゲキロボもまだクリンナップしてないだけでたっぷり書いた!」

釈「ご苦労様でございます。」
じゅえる「しかし、まあなんだ。第八章とおまけだけでそれだと、ちょっと長過ぎはしないかい?」
まゆ子「だが第七・八章自体は短いのだ、50枚くらい。おまけがどっさりだよ。」
釈「つまりは、出し惜しみ無しなのです。」

 

じゅえる「で?」
まゆ子「次は第九章、ここから十三章まで全部カプタニアだ。最終章だ。」
じゅえる「ふむ。問題は出てないのかな。」
まゆ子「おまけもこれから先は書く必要が無くなってきた。おまけでエントリーしているのは、「刀話」「醤油話」「釈ちゃん物語」「本編主人公弓レアル」「ゲバルト処女奮戦記」だな。」
釈「出し惜しみ無しで書いちゃいましたね。」

じゅえる「では素直に第九章だよ。どうしますかい。」
まゆ子「ここは少し悩んでいる。「ヒィキタイタンの帰還」だけれど、パレード描いても仕方ないところが有るのさ。というわけで、ハジパイ王の部屋で悪巧みが行われる。のは良いのだが、地味だ。」
釈「はあ。」
まゆ子「ちなみに一章を必要としないが、物語に完全に必要なものとして、悪の華アクノメナによる紋章旗団のそそのかし、が用意される。これはおそらく30枚近くを必要とする。」
じゅえる「十章はなんだっけ?」
釈「弓レアルのお屋敷に赤甲梢のウェダ・オダさんが訪ねて来ます。そこで弓レアルのところに入り浸りになっているゲワォさんと語り、ハジパイ王が必ずしも敵では無いと知ります。」
まゆ子「十一章は紋章旗団の暴走で、斧ロアランが大冒険をして劫アランサ王女が閉じ込められている塔に上りハジパイ王の真意を伝えて軽挙を戒めます。」
じゅえる「で、十二章は万策尽きてレメコフさんの提案でヒィキタイタンさんと再度の決闘をやりまして、」
釈「十三最終章で弥生ちゃんキャプテンがカブトムシ神に乗って降臨です。」

じゅえる「かんぺきだね。」
まゆ子「かんぺきです。ちなみに十二章の見物に繰り出すところで、弓レアルは婚約者カロアル軌バイジャンさんの所在の手掛かりを遂にゲットします!」
釈「めでたしめでたしです。」
まゆ子「問題は九章の構成なのだわさ。」

 

じゅえる「もちろんこういう時は、書きたいものを書くのがセオリー。」
まゆ子「だが書きたいのは爺なのだ。」
釈「読む人はあまり歓迎しないでしょう、それは。」
まゆ子「どうしようかねー、もちろんヒィキタイタンさんの行列を描いてもよろしいのだ。ただー、後の章を考えると、ここで陰謀がめぐらせてある事を明示しなければならないのだよ。」
釈「女の子では?」
まゆ子「今更新キャラ出すわけにもいかないし、弓レアル関連のキャラは次の回に勢揃いだ。」

じゅえる「タコヤキ王女は?」

まゆ子「…………、でもあの娘はヒィキタイタンと一緒に護送されてる最中だし、」
じゅえる「逃げればいい。どうせ透明になれるんだ。」
釈「そうでした、透明魔法の使い手ですよ。」
まゆ子「うーむしかしね、私が今回書きたいのは、爺の陰謀だよ。ヒィキタイタンを罠に落すその悪事の相談に主眼を置いてだね、」
じゅえる「覗きに行けばいい。カプタニアの王宮中まで侵入だ。出来ない?」
まゆ子「出来る。出来るが、さすがにヤバい。」

釈「タコの女王ですから、タコに乗って行けば安全ですよ。」
まゆ子「いやそれは、さすがにカプタニアにテュークで乗り込めば、バレるよ。」
じゅえる「バレちゃダメかい?」
まゆ子「だめだね。それにヒィキタイタン裁判に少なからず影響を、それも悪影響を与えるのは必至。さすがにタコヤキ王女はそこまで愚かではない。」
釈「ダメですかあ。」

 

じゅえる「しかし、タコヤキ王女視線は悪くないぞ。」
まゆ子「うう、確かにカプタニアを裏表ひっくり返したり俯瞰したり隅っこ突っつくのに、タコヤキ王女は便利かも。」
釈「とはいえ、この章は陰謀を巡らすわけですから、VIPとタコヤキ王女が遭遇しないと話がバラバラになりますよ。カプタニア王宮で会えないなら、ダメですねえ。」
じゅえる「料亭とか?」
まゆ子「それは烏賊パーティでやったけど、うーん王宮の外か。」

釈「タコヤキ王女がどこまで出歩くか、ですねえ。アユ・サユル湖の湖畔を回って、王都の傍までは来るのでしょ。」
じゅえる「というか、王都に入れないのだ諸事情で。アユ・サユル湖って大きいでしょ。ベイスラ県から続くのだから、何日くらい歩くのかな?」
まゆ子「5日。急げば4日だな。」
釈「大きいですねえ。」
まゆ子「とはいえ、急ぐのであれば湖を船に乗ればラクチンなのだ。」
じゅえる「タコヤキ王女は船を使えるの?」
まゆ子「まさか。ヒィキタイタンは地面を歩かされるのだから、王女が船乗ってどうしますか。おしのびでタコの背中に乗って行きますよ。」

じゅえる「湖だ。」
釈「そうですね。湖の上で褐甲角王国のVIPと遭遇ですよ。」
まゆ子「うーん、つまりタコヤキ王女はタコに乗って湖を渡りふらふらとカプタニア見物をしていると、VIPここではハジパイ王とその一党と出くわす、のか。

 ならいい場所が有る。」
じゅえる「ふむ。」
まゆ子「マナカシップ島、アユ・サユル湖の中央にある秘密の島で、ここには亡命神族の隠れ里が有る。」
じゅえる「決まりだね。」
釈「そこ以外にタコヤキ王女がVIPと遭遇会談する場所はありません。というか、その島はたしか、」
まゆ子「そうなんだ。この島はタコ女王にくれてやるつもりなんだ。ギィール神族の隠れ里ではあったが、世界状況が変わってもう隠れる必要が無い。一方テュークを乗り回すタコ女王に街道を歩かれては迷惑。そこで、この島をタコ女王の行宮に定めてなるべくテュークの姿を人に見せないようにする、つもりでした。」
じゅえる「つまり、その相談をする場に、タコヤキ王女が勝手に飛び込んで来たんだ。
 ふむふむ、それならその島にVIPが居るのは不思議じゃない……、よね? ハジパイ王居てもいいよね?」
まゆ子「亡命神族は褐甲角王国の協力者であり、ハジパイ王は神族の姫と密かに結ばれて子供も出来ているくらいだ。」
釈「わりとしばしば訪れている、という設定でも問題ないですかね。」

まゆ子「なるほどなるほど。タコヤキ王女はギィール神族しか使わないギィ聖音で喋るし、その場所に神族が居るのはきわめて好都合だな。
 ついでに言うと、「ゲジゲジ乙女団」はヒィキタイタンの護送に付き添ってカプタニアに移動中だ。彼女達と、アユ・サユル湖の神族とが合流する布石にもなる。」

じゅえる「いいじゃないか、タコヤキ王女大活躍だ。」
まゆ子「考えてみれば、それ以外にタコヤキ王女活躍の場所は用意出来ないぞ。10、11、12章は弓レアルサイド大活躍だから。」
釈「なるほど。12章は実質ヒィキタイタンさんとレメコフさんの決闘メインですから、ますます出番ありませんね。タコヤキ王女危うく埋もれるところでしたよ。」

じゅえる「9章はタコヤキ王女大活躍! これで決定だ。」
まゆ子「なるほど。たしかに、妥当にして適当だね。物語を華やかにする最後のトリックだ。」

 

まゆ子「ちなみに12章で弓レアルはネコ達に誘われて、弥生ちゃん再臨にお祭り騒ぎのカプタニアの街に繰り出します。アルエルシイも付いて行きますが、鉄仮面を取っても大丈夫な秘策を発見しました。」
釈「ネコが鼻を引っ掻こうとするんでしたね。」
まゆ子「うん。だが用心棒を導入する。食用タヌキであるところの「イノコ」を4匹も連れて歩くと、ネコが怖がって寄りつかないのだ。一応はイヌ科の生き物であるから、ネコには強いのだ。」
じゅえる「イノコは尻尾除いた長さが30センチほどの小さな愛玩動物なんだけどね。1メートルの無尾猫よりも強いのだ。」

 

10/04/23

明美「こんにちわー、ひさしぶりー。」

まゆ子「お、明美ちゃんだ。」
じゅえる「ひさしー。というか、あんた今から出番だよ。」
明美「え?」
釈「明美先輩はこれから御出番がありますよ。弥生ちゃん先輩が帰還する話の前座です。」

明美「聞いてないんだけど、まじ?」
まゆ子「良くは分からないが、そういうことらしい。
 えーと計画としては、褐甲角王国西側を公演中の聖神女ティンブットの劇団に、明美ちゃんがやってきて「もうすぐ弥生ちゃんが帰還します」と伝えて、劇団はカプタニアに行く。」
明美「あ、メッセンジャーね。なるほど簡単な役だ。」

釈「戦闘シーンがあります。」
明美「なして!?」
じゅえる「いや、まあなんだ、色くらい付けなくちゃ面白くないだろ。」
明美「でも戦闘シーンて、なにをすればいいのか分からないよ。」
まゆ子「そこだ。」
じゅえる「どこだ?」
まゆ子「行き掛かり上今、戦闘シーンが有ると考えた。」
明美「いまあ?」
まゆ子「考えた。でも敵は誰にしよう。」
明美「そんなことも決まってないのかー。」

釈「人食い教団では? あるいは督促派行徒、交易警備隊やら巡邏やら兵隊も各種取り揃えております。」
じゅえる「ありきたりだな。これまでにない勢力がいい。」
まゆ子「これまで出て来ないのか、そんなの今から組み立てても困るな。」
明美「そうそう。いまさら新勢力を作っても、もうすぐ終りますよ。」
釈「あ、新開発ぴるまるれれこ教徒では?」
まゆ子「あの教団はこの時期は極めて大人しい苛められっ子だから、それは無い。」
じゅえる「はいはい、ヤクザなんてどうでしょう。」
明美「やくざあー?」
まゆ子「お。」
釈「おお!」

まゆ子「なるほど。ではつまりこういうことだ。
 ティンブットの一行は西側を公演して回り大人気。当然動く金も半端じゃない。地元地回りのヤクザも、この公演で大儲けしている。
 で、次に一座がどこに行くかは既にヤクザ同士で話し合いが付いていて、スケジュールがびっちり詰っている。
 にも関わらず、明美ちゃんがやって来て、「カプタニアに行け」と言う。

 ゆるしてはおけないな。」
明美「ちょっと待って。」
じゅえる「実に正当な怒りですな。明美死すべし。」
釈「なるほど、これはこれまでで最も論理的な襲撃の理由ですよ。」

まゆ子「てなわけで、じゃあ明美ちゃんよろしく。」
明美「よろしくったって、わたしヤクザとなんか闘えないよ。どうやればいいってのよ。」
じゅえる「何を言うかおまえさんは。ここで使わずにどこで使う。」
明美「使うって、なにを?」

まゆ子じゅえる釈「厭兵術撥法。」

明美「あ、…………ゲリラ的美少女野球?」
じゅえる「我々は本道に帰るのさ。」
釈「その最も大事な御役目を、明美さんに果たしていただきたいのです。」
まゆ子「責任は重大だ。頼まれてくれるかな。」

明美「え? えへへ? いい、のかな? わたしで。」
まゆ子「任せた!」

 

10/04/17

まゆ子「つまり世の中には小説が二種類あるわけだ。」
じゅえる「ふむ。」
まゆ子「作家が書くべき小説と、読者が読むべき小説だ。この二つは明確に違う。」

じゅえる「具体的にはどう違うんだ。というか、読者は提示されたものをひたすらに読むしかないでしょ。」
まゆ子「だから、それがワンパッケージとして読者に提示される前に決着がついてなければならない。のだが、そうなっていない作品も山と有る。」
じゅえる「つまり、観賞に適さない小説を作家は書く、ということだな。それをなんとかするのは、編集の役割だね。
 でも何故作家は観賞できない物語を書くのだ? というか、なぜ観賞される事を目的に書かないのだ。」

まゆ子「話は簡単、作家は読者より物語世界について多くを知っているからだよ。

 たとえば今回「第七章 姫一刀奥義斬」、私が書かねばならないのは、「劫アランサ王女が神兵をぶった切った」これだけだ。原稿用紙1枚有れば足りる。
 ところが、そこに持って行くまでに、アランサがそんな真似をする必然性を納得するまでに整えるのに、とんでもない枚数が必要なんだ。」

じゅえる「なるほど。しかしながらその必然性、論理的整合性を整える為の文章は、読者の観賞に適さないわけだ。」
まゆ子「では作家はそんなものを書かなきゃいい、と普通に考える。が、無理なのだ。どんなに精密な設定を作っていても、骨組みをしっかり作っていても、文章に起こしてみると必ず穴が見付かる。キャラが勝手に主張し出す。
 そして、キャラの主張する所は必ず正しい。要するに作家の脳内で再度シミュレートされたわけだから、ストーリー展開上のご都合主義で作られたシナリオを凌駕するのが当然だ。」

じゅえる「つまり、書いてみなくちゃ分からないわけだ。」

まゆ子「この手間をソラで埋めてしまう人は居る。才能が有る作家てのはそうなのだろう。しかしながら、才能の有る作家の作品が全て傑作とは限らない。やっぱ手間を惜しんじゃいけないな。」
じゅえる「ま、ネット小説レベルでは参考にならない高みなわけだよ。」

まゆ子「というわけで手間を惜しまなかった今回、4回もの試行をした結果、必要とする枚数の半分以上が観賞に適さないと判明した。故に切る。」
じゅえる「おお潔い。」
まゆ子「とはいうものの、観賞できない訳じゃないし他人が読むことを意図しなかったわけでもない。つまり、読めるものは読めるのだ、棄てるには惜しい。」
じゅえる「まあね。」

まゆ子「そこで"春新年度新学期期間限定掲載"という手段を考えた。出血大サービスだ。」
じゅえる「だがそれだけじゃないな。」
まゆ子「分かる?」

じゅえる「作家が書くべき無駄な枚数の中には、後の物語進行に必要な描写も含まれている。伏線もだ。それをさっくり捨ててしまうと、読者はなにがなんだか分からない。」
まゆ子「もちろん。」
じゅえる「つまり切る、という行為が示されるのも、作家が読者に対して行うコミュニケートの一つなのだ。これもまた伏線だな。」
まゆ子「てへへ。」

     ********** EP7第七章姫一刀奥義斬

 

10/03/04

まゆ子「緊急招集! EP7「第七章 姫一刀奥義斬」が面白くならない〜!!!」

じゅえる「そりゃ大問題だな。なにが問題?」
釈「エピソードが足りないのですか?」

まゆ子「冷静かつ客観的に見ると、シーケンシャルで進んで行く手法がこの章では良くないみたい。ネタは有るんだ。
 まず、赤甲梢にアランサに代わる指揮官が赴任→ゲバチューラウに別れの挨拶→毒地行き→金雷蜒軍の傭兵市に立ち寄る→ヌケミンドル暗殺現場に到着→墓参り→アランサ拘束
 とネタは盛り沢山。

 ただ、これをそのまま時系列に沿って並べると、どうしようもなく退屈になる。」
じゅえる「焦点が定まってない、て奴だな。前にもそんな章があったぞ。」
釈「えーと今回描写すべきは、サブタイトルの奥義を披露するところですね。そこに向かって話が収斂して行く。」

じゅえる「こういう場合はものは極めて単純だ。その奥義披露は尻の締めくくりにちょこっと出るだけで上等。」
まゆ子「いや、それじゃ困るんだ。」
じゅえる「困る所がガンなのだ、こういう場合。だから、話がどんどんややこしくなってきたところで、アランサが「チェリオ!」と黒甲枝をぶん殴って、終了。これでよし。」
釈「それは一つの見識ではあります。こういうケリを付ける物語として、どうですかダメですか。」

まゆ子「ちょっとまて、尻から逆算するわけだな。いま計算し直す。
 しかしその場合、アランサがどのような人物として描写されねばならないか、これが問われる。最終的に堪忍袋の緒を切らしてぶん殴るのであれば、ここまでは理不尽な命令とかでストレスが溜っていると看做すべきだろう。

じゅえる「それはもうやった。アランサに関してはそれはやり過ぎと言って良いほどに、やった。」
釈「そうですねえ。でも余裕綽々というのも、キャラが違いますか。かと言って、有能でてきぱきとこなして行く、てのも違いますね。」
じゅえる「困った仁だな。この章の主人公を別の奴に取っ替えるってのは、無理?」
まゆ子「そりゃ流石に、なにせもうすぐ塔の上に閉じ込められるんだから、アランサのキャラをここで立てておかないと、なにがなんだかになってしまう。」

釈「一人称主観だ。」
じゅえる「なるほど。」
まゆ子「え、つまりアランサの視線にべったり貼り付くってことか。まあ全巻を通してのバランスがあるから文体を変えるわけにはいかないけれど、アランサ主観に。ふむ。」
じゅえる「それで行こう。いや、それでいいんだ。周囲がアランサを見る眼と、アランサが見る眼とが食い違うってとこが、今回は面白いんじゃないかい。」

まゆ子「ふむ。試してみる価値はある。」
釈「ではそういうことで。」

 

2010/02/24

まゆ子「歯医者いたい〜。」
じゅえる「まあ歯医者は痛いのが身上だからしゃあない。」
釈「そうは言っても最近の歯医者さんはあんまり痛くないですよ。特に注射は。」
じゅえる「注射針がすごく良いものに代わってるんだよ、2段式に細くなる。」
まゆ子「でもいたい〜。」

じゅえる「ま、そんな個人的なとこは置いといて。で、どうしたの?」
まゆ子「親知らず抜いたら隣の奥歯も酷いむしばだった〜。神経抜いた〜。」
釈「それは自業自得ですよお。」
まゆ子「というわけでえ、十二神方台系の連中にも歯医者の地獄をおもいしらせてやる〜。」
じゅえる「ああ、だからああいう麻酔の話が書いてるんだ。ひどいはなしだな。」

釈「えー、ということで今回はおまけだけなのですが、次を考えますか?」
まゆ子「7章アランサはあらかた考えてるからよろし。8章弥生ちゃん帰還はあらかた考えたからどうでもいい。
 9章ヒィキタイタンの帰還、考えてない。10章陰謀編なにも考えてない。11章斧ロアラン大活躍、かなり考えている。12章ヒィキタイタンとマキアリイの決闘、戦闘シーンは考えてもしょうがないノリだ。
 13最終章、弥生ちゃん降臨は考えてる。後始末の描写はどうするかな。」

じゅえる「こうしてみると、案外と穴だらけだな。そもそも陰謀編てのは私聞いてないような気がする。」
釈「金翅幹元老員がハジパイ王の言うことを聞かずにヒィキタイタンさんを処刑しちゃおう、というお話なのですがー、それをさせない手をもう打ってますねハジパイ王。」
まゆ子「とりあえずー紋章旗団を引き出す話はここだ。でも金翅幹元老員の方の陰謀を考えないと。」

じゅえる「ヒィキタイタンがダメならば、紅曙蛸女王タコヤキ王女をなんとかしようとするんじゃないかな? 付いて来てるんでしょ。」
釈「野放しにするはずはありませんね。どうしますか。」
まゆ子「どうしよう。というか、実はカプタニアには元からギィール神族が住んでいるんだ。アユ・サユル湖のど真ん中にあるマナカシップ島に亡命神族の隔離地が有る。ハジパイ王はここで神族の御姫様と結ばれて、いま聖山神聖神殿都市に居る息子を授かってる。
 状況の大変化と方台新秩序の構築の結果、彼等がここに閉じ込められている必然も無くなった。出て来るぞ。」

じゅえる「ふむ。というか、ヒィキタイタンに付き添ってゲジゲジ乙女団が来るんだから、もう神族が褐甲角王国をうろついてもいいんだ。」
釈「というわけで、亡命神族が出て来るわけですね。
 じゃあ、タコヤキ王女はー。」
まゆ子「神族を追い出して、代りにタコヤキ王女をマナカシップ島に閉じ込めようというのが陰謀だな。ただしテュークの脅威が有るから、表向きは紅曙蛸女王にマナカシップ島を寄贈しここを王宮として、しかし新生紅曙蛸王国には帰らないようにする。
 遠く南海に居ては方台新秩序構想の会議にも不都合でしょう、という理屈で、この地に留まるように勧めるわけだな。」

じゅえる「姑息だな。」
釈「政治家は皆姑息ですよ。そうですねえ、でもマナカシップ島は湖の中ですから、テュークが人目に触れないようにするには最適ですね。」
まゆ子「そうなんだ。街道をバカでっかいテュークがうろついたら、それはさすがに民心を動揺させる。褐甲角王国の威信が地に落ちる。ならば、湖の中に隠れて貰う為に島一個くれてやる、というのは悪いアイデアではない。」

じゅえる「それ、ハジパイ王の考えじゃないのかな? 話の筋的に。」
まゆ子「いや。ありそうなもんだが、それを金翅幹元老員から勧められて、ハジパイ王も納得する。てのにしよう。マナカシップ島はハジパイ王にとっても懐かしい場所なのだ。」
釈「思い出が籠る地なのですね。」

じゅえる「もちろん裏陰謀は有る!」
まゆ子「いやまあ、ヒィキタイタンとタコヤキ王女が常にべったりくっついてたら、流石に色々困るだろ。ヒィキタイタンは街道沿いの街に軟禁して、タコヤキ王女は湖の中。そういう策だ。」
じゅえる「当たり前だな。」
釈「その当たり前が、難しいんですよ。」
まゆ子「ついでに近場に劫アランサ王女も取っ捕まえている。ま、10キロくらいは離れてるけど。塔の上だ。これはハジパイ王には内緒だが、もちろん密偵から知らされている。ハジパイ王は知らんふりをしてるけどね。」

じゅえる「なんか穏健な陰謀だな。もうちょっと力の有る奴を考えようよ。暗殺とか。」
釈「そうですねえー、確かにあまり面白みが無いですか。緊迫感を高める為に超凄い暗殺計画とかが必要です。たしかに。」
まゆ子「そうは言っても、黒甲枝がびっちりと警備しているヒィキタイタンをどうこうは、金翅幹元老員でも無理だよ。紅曙蛸女王は透明の護衛が付いてるし。」

釈「正面からヒィキタイタンさんを排除するのは、無理ですね。」
じゅえる「では側面だ。裏から攻める良い手は無いかい、まゆちゃん。」
まゆ子「側面と言っても、ヒィキタイタンさんは裏も表も無くヒーローだしねえ。大人気だよ。スキャンダルで引っ張り下ろす手も使えない。」
釈「だめか。」

まゆ子「だが、裏も表もダメならば、暴走という手がある。」
じゅえる「ほう。そんな陰謀の手段は聞いたこと無いぞ?」
まゆ子「つまり、或る一定方向に世論が流れている時は、その方向に向かって過剰に物事を進めてやれば、保守的な人達は「これはやり過ぎだ」と感じて、退く。印象だけでもそう見せれば、民衆の支持は退いて、これまで通りには行かなくなる。」
釈「なるほど、高等テクニックですね。」
じゅえる「民衆の自己保存本能を過剰に引き出す策か。この場合においては?」

まゆ子「民衆の支持というよりも黒甲枝の支持だ。黒甲枝は本来保守的なものだ。彼等のヒィキタイタンへの支持も、ヒィキタイタンこそが王国建国の理念カンヴィタル・イムレイルの誓願の成就を目指すもの、と知っているから支持する。」

じゅえる「なるほど。一見急進に見えるけど、逆なんだ。」
釈「古い価値観を守っているからこそ、ヒィキタイタンさんは新しいんですね。」

まゆ子「だがそれも行き過ぎれば黒甲枝は去る。ヒィキタイタンへの過度の期待が昂じて武徳王の頭越しに方台新秩序の構築が始まれば、さすがに常識的な黒甲枝は本来の姿に戻る。
 今回の陰謀はそれを狙う。」

じゅえる「具体策は?」
まゆ子「それが、アクノメナの罠。紋章旗団を暴走させて劫アランサ王女を救い出させ、ヒィキタイタンと合流させ、あたかもヒィキタイタンが新しい武徳王となったかに見せる。」

釈「なるほど。それはキツイ策です。」
じゅえる「そうか。これが暴走か。なるほど、そんなことになれば常識的な人はさすがに退くな。」
まゆ子「ついでと言ってはなんだけど、高い塔の上にアランサ監禁て言ったけどさ、そんな理由無いんだよ。王女をそんな目立つとこに監禁して得する理由は無い。
 あるとすれば、」
釈「象徴的な囮、ですね。」
じゅえる「賢い。それはほんとに金翅幹元老員の策なのかい。まるで「白の母」カラミチュさんの策に思えるけど。」

まゆ子「もちろん噛んでいるが、すべての陰謀が彼女の発案というわけではない。そうだね、そこんとこを少し説明しておくか。
 もちろんだが、金翅幹元老員にもカラミチュさんは関係を持っている。直截的に接触することも有る。だが本当に怖いのは、彼女は人食い教団の偉いヒトで、方台の賢者と呼ばれる各国政治ブレーンはほぼ教団が網羅しているんだな。」
釈「金翅幹元老員が相談する賢者が、カラミチュさんと繋がっている、てことですか。」

まゆ子「ここでさらに恐ろしいのは、カラミチュさんは方台滅亡や褐甲角王国崩壊などを意図しない、正しい事の為にも脳味噌を使うってとこだ。賢人達は正しい方向を示されるが故に、正しい策を導き出す。あらかじめ正しい方向を示しておけば、別に特別な指示を与えずとも、カラミチュさんの意図どおりに賢人達は動くんだ。」

じゅえる「つまり、この暴走によるヒィキタイタン支持の喪失は、正しい策なんだ?」
まゆ子「うん。」
釈「そうですね。やはり元老院の策定する政策に基づいて王国が活動するのが、正しい姿でしょう。その邪魔となるヒィキタイタンさん勢力の排除は、逆さに眺めても正しいと認めざるを得ません。」

まゆ子「金翅幹元老員達の思惑はこうだ。

 私的ブレインの賢人達と相談して、ヒィキタイタンへの黒甲枝支持を逆転させない事にはどうやっても政治的に勝つ事は出来ないと知る。
 その為には、支持の動きを暴走させて黒甲枝の離反を招くべきだ。
 尋常の策では果たせない。またヒィキタイタンさんは慎重であるし、カプタニアでの裁判で論戦に臨む気満々だから、挑発には乗らない。
 乗るのは若い頭に血が登った奴だ。軽挙妄動する黒甲枝の勢力があれば申し分無い。
 とはいえ、赤甲梢は遠く国境線。近衛兵団はガンガランガの武徳王の下。カプタニアを護る留守居部隊は盛り上がる状況に対して慎重に輪を掛けて自制してる。
 そこで紋章旗団を起用すべきだが、彼等はヒィキタイタンとは縁が薄い。王の為に立ち上がるてのは、話が繋がらない。
 彼等が動くとすれば、焔アウンサ王女絡みの因縁だ。王女暗殺事件の真相がカプタニア元老院によって隠蔽されているとすれば、かならず動く。
 さらに、王女の跡継赤甲梢現総裁 劫アランサ王女がとっ捕まって塔の上に幽閉されてる、とか知った日には、救出せねば神兵としての誇りが許さない。
 ダメ押しとして、アクノメナの忠臣蔵を引き合いに出した挑発だ。

 という極めて深い智慧が働いて、この陰謀は成り立っているのだね。
 金翅幹元老員の視点からすれば、このアクノメナの挑発にだけカラミチュさんの手を借りている。元老員自ら煽るわけにはいかないし、只のヒトでは効かないからね。」

釈「これに対して、ハジパイ王の指示はどうなんです?」
まゆ子「反対する理由が無い。」
じゅえる「うん。」

まゆ子「とはいえ、ハジパイ王はこの暴走の頂点で、黒甲枝が退く直前で、ヒィキタイタンの暗殺が行われるとどうなるか、を案ずるのだ。暴走の、さらに暴走が起きると歴史に決定的な一撃を与えるに違いない。
 この動きは止めねばならない。」
じゅえる「その頂点での暗殺こそが、カラミチュさんの目的だね。」
釈「ですね。」

まゆ子「そこで、……あー、どうしよう?」
じゅえる「ゲワォに命じて止めさせる、てのは流石に筋違いか。」
釈「あり得ませんね。」
まゆ子「うーん、つまりー、紋章旗団の決起を止めるのは、劫アランサ王女しかない。王女にこちらの内意を伝えて軽挙を慎ませるには、それにふさわしい人物でないといけない。
 王女が言うことを聞く人間と言えば、ー神聖神殿の筋も有るにはある。が、やはり身内の赤甲梢ウェダ・オダさんからだね。」
じゅえる「それしか無いな。」

まゆ子「で、ウェダ・オダの行方を調べさせようとすると、ゲワォが言うのだ。「弓レアルのとこに居ます」て。」
釈「又従兄ですからね。」
まゆ子「これ幸い、とゲワォを通じてウェダ・オダにハジパイ王の内意を伝えて王女に忠言してもらう。だが塔の上だ、もちろん赤甲梢が行って会える道理も無い。」

じゅえる「そこで、斧ロアランの冒険ですかい。」
釈「うんうん、ラノベ的展開に雪崩れ込みです。」

まゆ子「とまあ、こんなわけだ。9章10章11章、できあがりい。」

 

2010/02/01

まゆ子「てなわけで、「げばると処女」EP7「第七章 ヒロインの証明」書き上がりました。今回短い!」

じゅえる「短いとは、どのくらいで。」
まゆ子「37枚、おそらくは30枚そこそこだね。オマケも無いし。」
釈「はあ。それはげばおと仮想標準に準拠しておりますね。何故に。」
まゆ子「いや、今回これ以上を書く気が無いし、これ以上書く必要が無い。」
じゅえる「ふむ。展開が薄いんだ。」
まゆ子「いや展開がものごっつ厚いぞ。」

釈「弓レアル主人公ですよね、この章は。あの人でそんなにごつく描写をできますか。」
まゆ子「君達は何も知らないのだね。弓レアルこそがこの「げばると処女」の主人公だよ。」
じゅえる「いやそれは聞いたから。」
釈「弥生ちゃん先輩はあくまでも狂言廻しであって、真の主人公は現地十二神方台系の住民でなければならない。それがポリシーでしたね。」

まゆ子「弥生ちゃんはそこんとこを十分良く理解しているキャラなのだ。で、そもそもが弓レアルこそが方台住民第一号として造形された真に主人公たる主人公。」

じゅえる「わかったわかった。で、今回の話は短い。次は?」
まゆ子「ここから怒濤の快進撃、弓レアル大活躍だ。」
釈「活躍しそうには思えませんが、」

まゆ子「彼女のお庭に人がどんどんやって来る。で、ここを作戦基地として劫アランサ救出計画が発動するのだ。ウェダ・オダさんもやって来る。」
まゆ子「というわけで救出作戦が開始されるわけだが、いきなり頓挫する。何故ならば、ハジパイ王は必ずしも敵ではないからだ。」

釈「そういうところを今回書いているわけです。」
まゆ子「というわけで、新しく敵を設定した! 悪女アクノメナだ。」
じゅえる「ほお、あの武徳王暗殺未遂事件に関与した、あの女だね。」

まゆ子「だが今回、黒髪のウィッグ着けてSM風ファッションで登場。…なんだが、実のところを言うと、これは彼女本人であるとは限らない!」
釈「???」
まゆ子「自称アクノメナ、なのだ。というか今後アクノメナと呼ばれる女が何人も出て来る。」
じゅえる「…なんじゃそれは。コードネームなの?」
まゆ子「そういう事になってしまうのかな。ちなみに本人さんは聖山神聖神殿都市に潜り込んで、ハジパイ王の息子さんの手先になります。」

釈「これは、カラミチュさんの手配ですか。」
まゆ子「そう考えた方がいいかな。ちなみにこの最後の裁判においては、アルエルシイさんを取って食おうとした刺青の人食い教徒と共に現れます。おそらくはその筋の廻し者。」

じゅえる「どういう風に絡んで来るんだ。敵なんでしょ。」
まゆ子「つまり状況はかなり錯綜している。

 まずはヒィキタイタンさんが護送されてきてカプタニアで裁判が行われる。はずなのだが、この裁判は紛糾すること必至。答えがそもそも存在しない。
 無論法に基づいて処分すればかんたんに死刑の結論を得られるのだが、そもそもの「ヒィキタイタン事件」の顛末が政治的な紛争であり現在の状況に照らしてみればヒィキタイタンさんの方が正しかったと誰もが認識する。処罰自体が無意味化している。

 ただし、召喚に応じずカタツムリ巫女ファンファネラを人質にカプタニアを脱出した件は、話的には別物で、武徳王の命令に背いたこととなりこれだけで死罪は免れぬ。

 とはいえ、杓子定規に適用してしまえば現在の状況では議会元老院が軍にも民衆にも反発されるのは目に見えている。弥生ちゃんが方台新秩序を作っている真っ最中にあって、救世主の友人にして新生紅曙蛸王国の宰相でもある彼は、特別に扱うのが正しいと誰もが思うところ。
 それでは法が成り立たず国が成り立たず、元老院の黒甲枝・褐甲角軍に対する統制が効かない。旧先政主義派は元老院の優越を主張してヒィキタイタンさん処分を強行すべきと宣言。対して旧先戦主義派は現実的な対応として彼を救い出そうとする。

 ここで注目すべきは先政主義派の頭目であるハジパイ王の動向。彼は実際の元老院の支配者として、ヒィキタイタン裁判においては中心的な役割を果す。武徳王が居ない王都の現状では誰も彼を留められない。
 しかしながら、黒の女カラミチュの秘めたる陰謀に気がついたハジパイ王は、ヒィキタイタンを処刑してしまうのが王国の為にはならないと理解する。ではあるが、旧先政主義派の急進派を留めることは出来ない。王の威信や政治力の低下もあるが、正当性はこちらにあるのだから曲げるのは緊急避難的超法規措置となる。これは避けるべきだし、またハジパイ王の立場からすれば留めるべき公表できる理由が無い。

 つまりハジパイ王は王としては、ヒィキタイタンを処分死刑にする以外の選択肢を持たない。元老院の反対勢力が政治闘争によってハジパイ王に打ち勝つ以外に、ヒィキタイタンを救う手立ては無い。

 最終解決の手段となれば、武徳王直々の判断が要求されるのだが、これまた間の悪いことに負傷して失明状態にあり、しかもそれは極秘だからヒィキタイタンの事案に関与が出来ないのだ。
 また弥生ちゃんが現在失踪中だが、誰もが間も無く帰って来ると思っている。弥生ちゃんが帰る前にこの処分を決しなければ、褐甲角王国が根幹から揺さぶられることとなる。法に基づく処分よりも弥生ちゃんの要請の方が優越することにでもなれば、褐甲角王国の権威は地に堕ちる。だから救う方も殺す方も解決を急ぐ。

 いや、そもそもヒィキタイタンが生きているのがいけないのだ。彼を除いて改めて仕切り直しをするべきだ、という考え方が有る。これが結構強い。元老院の悪い癖だが、波風立てないように裏で処分してしまった方が政治的には好都合というわけだ。そして、確かに今ヒィキタイタンさんに消えてもらうのはマコトに都合がいい。

 ハジパイ王の立場からすると、これが最悪の結末だ。ヒィキタイタンさんが暗殺で横死ともなれば、彼の幻影は独り歩きし後継者がそれを担ぎ、褐甲角王国に新たな火種が生まれてしまう。黒の女カラミチュの目的がコレ。ただし、これが王国にとって最悪かと言えば、そうでもない。言うなれば初代救世主カンヴィタル・イムレイルの聖なる誓いの実現の新たなる誓約をやろうという。弥生ちゃん主導の方台新秩序構築に対する敢然たる反抗となる。方台人民の誇りからすればまことに正しい道である。無論、これは大いなる流血の始まりだ。

 黒の女の思い通りにさせない為に、ヒィキタイタン暗殺を阻止せねばならない。であるから、ハジパイ王は裁判無しで王都に着き次第ヒィキタイタン問答無用で処刑する、とか言い出す。
 これは殺す救う両派にとって非常に迷惑な宣言であり、しかも暗殺すら出来なくなってしまう。暗殺すれば即ハジパイ王の差し金と見られてしまうから、暗殺の意味が無い。

 ハジパイ王の目論見では、これは単なる時間稼ぎであり、弥生ちゃん帰還を待って状況がさらなる転変をした状況で改めて武徳王の判断を仰ぐつもりだ。
 当然、こんなことは黒の女の一目で看破するものであるから
   悪女アクノメナの出番となる。」

釈「なるほど。」
じゅえる「たいへんだな、説明だけでも。」

釈「具体的にアクノメナは何をするのですか。」
まゆ子「あーこのアクノメナなる悪い女は、名前自体が『悪の花』をもじって作られてるくらいだから、めちゃ悪い奴だ。だがほんとに悪いことをするんじゃあない。正論を用いて人を誑かす悪い女ね。」

じゅえる「えーとヒィキタイタン裁判は、えーとこの状況では出来ない?」
まゆ子「できません。ハジパイ王は時間稼ぎ戦術に出ており、守旧派改革派どちらにも都合が悪く、また都合がいいようになっています。

 こう言ってはなんですが、ハジパイ王が最強硬右翼を務めてくれるおかげで、他の守旧派は現実的な対応が出来ます。譲歩の余地が生まれます。
 またそれでも強硬の手段を貫こうとする勢力ももちろん有るんだけど、彼等にとってはハジパイ王こそが主張を100%受入れてくれる最後の拠り所であり、ということは王の意志に背いての裏工作や暗殺は出来ない。
 というよりも、ハジパイ王はヒィキタイタンを衆目の前で処刑することを以って褐甲角王国の大義を示しこれからの方針を天下に示そうとする(という風に誤解させている)のだから、暗殺は王の意志にまったく反するものとなり、不許可なのです。」

釈「最強硬派にとっては、いいのか悪いのか分かりませんね。」
じゅえる「いや、ハジパイ王の姿勢は有り難いものだけど、これでは動きの取りようが無い。若い者の働き場所を奪ってしまったわけだよ。老獪だな。」

まゆ子「つまり、状況が動かない。デッドロックに引っ掛かった状態にある。これは黒の女白の母ことカラミチュには一番困る。だから、状況を動かす為にアクノメナを使う。

 でアクノメナが眼を着けたのが、王都では今英雄の名を恣にする「紋章旗団」。彼等は現在王都で待機中であり、手持ち無沙汰なのだ。
 同じ赤甲梢が国境付近で神聖王ゲバチューラウを護って活躍しているのに対し、彼等は王都で英雄と持ち上げられて祝勝の宴ばっかりに連れ出される。褐甲角王国がたしかに大審判戦争で勝ったと主張する為にも彼等英雄が必要となり、つまり政治的に利用されているわけだね。

 むろん彼等はこの状況は面白くない。というよりも焦っている。たしかにギジシップ島への強行軍で一番犠牲負傷者が多かった部隊ではあるんだけど、それにしてももう十分休んで働き場所を求めている。が、得られない。赤甲梢の活躍を聞くにどうにも身体が動いてたまらない。
 加えて、彼等の尊敬し慕う焔アウンサ赤甲梢前総裁の暗殺事件だ。真相解明に乗り出そうと有志が集ったのだが、これは中央衛視局に潰される。当然ね。政治的に大事にならない為に、また続いて起きた武徳王暗殺未遂事件も合わさって軽挙妄動は許されない。で、彼等は待機を厳命され、宴席にばかり駆り出される。

 いい加減鬱屈して来たところに、「メグリアル劫アランサ王女の謀叛」のお芝居を見せられるんだな。前総裁に続いて現総裁までもが、赤甲梢は歴史の真っ只中で格闘し続けている。それに比べて自分たちは、とぎりぎりと焦るところにアクノメナの甘言が投入されるんだよ。」

じゅえる「おお。」
釈「いやらしいですね、実に厭らしいタイミングで来ますね此奴。」

まゆ子「「劫アランサ王女の謀叛」の上演はカプタニアでは禁止されていて、ほとんどの人が見ていない。いや、王都西街の人間は見ていない。東町の庶民貧民街ではゲリラ的に上演されている。もちろんやってるのはアクノメナの仲間たちつまりは黒の女の手の者だ。

 で、高名な勇者達であるところの紋章旗団団員を集めての秘密観劇会です。秘密会ですが、来た団員はもちろんそんなことは知らない。いつもの通りの戦勝祝賀会かと思ってやって来た。騙されたんだね。
 で、劇が終ったところで、舞台の上から大きな人食い教徒の勇者の肩に乗って、ボンデコスのアクノメナがいかにも悪女とし現れる。」
釈「OKです。はったり効きまくりです。」
じゅえる「その人食い教徒の勇者ってのは、誰? アルエルシイが取って食われそうになった時の、」
まゆ子「アレでいいと思うんだ。アレも再登場しないとね。

 で見るからに人食い教徒として現れるアクノメナを、もちろん団員斬ろうとする。が、挑発するんだな。
 極秘情報によれば、カプタニアからさほど離れて居ない高塔の上に、劫アランサ王女が囚われている、とね。」

じゅえる「ううーむ。」
釈「こんなもの見せられた上で、その情報を与えられると、そりゃ暴走必至ですか。」
まゆ子「これだけには留まらない。アクノメナは、ここで弥生ちゃんの本を引用する。切腹の回に出て来た例のサムライ小冊子だ。
 この中で或る章にアクノメナは注目して、紋章旗団を煽り立てる。それは、弥生ちゃんがサムライの手本として挙げた幾つかの物語の中でも最も日本人に愛されたお話『忠臣蔵』だ。」

じゅえる「うううむう、そう来るか。」
釈「忠臣蔵とは、これはキツイですね。」
じゅえる「しかも劫アランサ王女とっ捕まってるんだよね。焔アウンサ王女暗殺されてるし。」
釈「その暗殺の犯人が、もし王国元老院あたりやらハジパイ王やらと勘違いすると、忠臣蔵はやばいです。」

まゆ子「アクノメナの挑発がまさにそうだった。特に彼女が強調したのは、というか弥生ちゃんが強調したのは、このお話はただの復讐劇ではなく、公の政府の裁きに誤りが有り喧嘩両成敗の原則を破っての恣意的な判決であったのを、命を捨てて赤穂浪士が正し公然と御上に抗議した、という点だ。
 謂れ無き冤罪を被る、いや王国の名誉の為にあえて叛逆の汚名すら着ようとする劫アランサ王女を助けずに、なにが電撃戦の英雄だ紋章旗団だ。

 しかも、カプタニアに入ろうにも入れないヒィキタイタンを護送する一行がまさに劫アランサが幽閉される塔の近くに滞在する。彼等の正義の叛乱はヒィキタイタンによって正当化され、膠着した状況も一挙に解決に向かうだろう。」

釈「止めようがありませんね。」
じゅえる「そこまでお膳立てが調っていては、どんな理性の持ち主でも、臆病者でさえも立たざるを得ないな。」
まゆ子「というわけさ。アクノメナの挑発はまさに乱を招くものであり、正常の頭脳を持っていれば誰にでもこれが内戦にすら発展しかねない暴挙だと分かる。

 ついでに言うと、忠臣蔵の悪の親玉は吉良上野介だ、くそ爺いだ。ハジパイ王はまさにくそ爺いであろうさ。」
釈「かんぺきです!」
じゅえる「ハハハ、そりゃああかんな。ハジパイ王、それはだめだ。どーしよーもない。」

まゆ子「とまあそういうわけで、紋章旗団は軽挙妄動する。しかしながらネコの働きによりいち早く察知した弓レアルにより、叛乱はハジパイ王に筒抜けとなる。ゲワォはあれ以来ヒッポドス家に出たり入ったりしてるからね。
 もちろん王としては、この挑発の主の意図がよおく分かっているから、さてどうしようという所。紋章旗団を未然に抑えるのも楽な話だが、そうすれば劫アランサ王女が幽閉されている事も天下に暴露されるだろうし、大審判戦争の英雄「紋章旗団」が公然と反旗を翻してヒィキタイタン陣営に味方した、とかなるとこれはもうどうしようもない。」
じゅえる「どうしようもないな。」

まゆ子「そこで、劫アランサに外の状況とハジパイ王の内意を伝えて、紋章旗団の誘いに乗らないことを密かに伝達するべきとなる。しかしながら、劫アランサ王女を捕らえているのは守旧派の最強硬派であり、ハジパイ王としては手が出せない。というわけで、ゲワォに密書を届けさせるのだがハジパイ王の密偵が持って来る手紙くらいアテにならないものも無い。
 そこで! 密書の使者を申し出るのがカロアル斧ロアランだ。」

釈「しかし、斧ロアランが密使でも信じますかね?」
まゆ子「心配御無用。ここで赤甲梢ウェダ・オダさんの出番だ。ロアランとウェダ・オダとが揃えば、さすがに劫アランサも納得する。
 そもそもがウェダ・オダさんは弓レアルの又従兄であるから、この企てに参加しておかしいところは微塵も無いわけさ。」
釈「にくいですねえ、いかにもライトノベル的王道展開ですよお。」
じゅえる「うむ。全くもって問題ないな。頑張って書いてくれ。」
まゆ子「うん。まあ、それが一番の難題でね。
 ちなみに、紋章旗団の救出にも劫アランサは動かず幽閉の塔から出なくて、彼等の叛乱は一応は終結する。
 だが一度動いてしまったからにはもう止められない。これ以上の混乱に陥らない為にも、ヒィキタイタン事件の決着を急がなければならない。
 そこで!」

釈「ふむ。」
じゅえる「そこで決闘だな。レメコフ誉マキアリイとの。」
まゆ子「む、分かるかい?」
じゅえる「そりゃあーまあ、ヒーローが最期には出て来ないと締まりが無いでしょ。」
釈「でもレメコフさんは一度負けてますよ。いいんですか?」
まゆ子「マキアリイには必勝とは言わないが、勝てるかもしれない策がある。無論、円湾の戦いで傍若無人の強さを見せたヒィキタイタンに対しての、策だ。

 つまり円湾での戦いでは、ヒィキタイタンは全力を使っていないんだよ。彼が弥生ちゃんから神威をもらった「王者の剣」を戦闘に使ってないからね。だから決闘では彼にこれを使わせる。」
じゅえる「ちょっと待て、何でも斬れる奇蹟の剣を相手に、何を使うんだ?」
まゆ子「弥生ちゃんの神剣は3本有るんだ。「王者の剣」と「女王の剣」と、「紅曙蛸女王従者の刀」。これを使えば互角、ではない。これを使わないのが互角の秘密なんだ。
 まずレメコフはゲジゲジ乙女団の神族によって、「神剣の力を自前の剣に移せば、一戦闘の時間くらいは神威が乗り神剣に斬り飛ばされない」と知る。つまり普通の剣でも戦える。
 そして、「王者の剣」は確かに素晴らしい能力を持っているが、褐甲角神兵の剛力を使うようには出来ていない。つまり、普通の人間として神剣を振るうことになる。
 対してマキアリイは重甲冑着装で大剣で戦う。神兵の能力を十二分に発揮する大剣に神威を乗り移らせて斬り飛ばされないようにして、ヒィキタイタンは聖蟲の力を十分に活用出来ない状態で、サシで勝負する。」

釈「うーむ。でもやはり、条件はイーブンになりませんね。」
じゅえる「ヒィキタイタンは弥生ちゃんから教えてもらった日本の剣術を使うからね。しかし、」
まゆ子「そうなんだ。これだけの条件が揃った状態で、褐甲角の神兵が負けるのであればどうしようもない。褐甲角(クワアット)神の時代は終り、青晶蜥(チューラウ)神の時代が来たと誰もが納得せねばならないでしょう。」
じゅえる「覚悟、が要るか。戦う者にも、戦わない者にも。」

まゆ子「しかしまあ、ヒィキタイタンさんも変なおひとだよ。カブトムシの聖蟲を乗っけた王様でありながら、タコの国の宰相で、トカゲ神の神威が宿ったゲジゲジ神族が作った剣を用い、星の世界の剣術で戦うんだ。」
釈「げばると処女の世界を一身に背負っていますね。これが勝っちゃうと、なんですか、世界が変わるわけですよね。」
じゅえる「でも勝たないし負けないな。」
まゆ子「勝負が着いてしまうと、弥生ちゃんの出番無いもん。」
釈「そういうことですね。でもなんらかの激突をしないと面白くないですよ。」
まゆ子「ふーむ、弥生ちゃんが出て来るタイミングか。どうしよう。」

じゅえる「二人の勝負は一度やって決着が着かず、延長戦に入るってのはどうだろう。試合の状況の裏でその他のキャラが動き回るてことで。」

まゆ子「神兵最強の姿をここで改めて描写するのは、まったくもって正しいと思うな。重甲冑を着装した状態でこそ最強の力で大剣が振るえることを、最後に描いておくべきでしょう。重甲冑を着けてないヒィキタイタンは、マキアリイの大剣を受けると、如何にカブトムシ憑いていようとふっ飛ばされてしまうほどだよ。」
じゅえる「そうか。そりゃ凄いな。」
釈「そうですね。それがいいかもしれませんね。勝負に水を注すのは面白くはありません。」
じゅえる「どうせやるなら、甲冑が千切れ飛び兜が割れ、重甲冑ですら抉り取られるくらいの激闘に描写すべきだ。」
釈「そこまでやれば、弥生ちゃんキャプテンが天空から下りてきても、納得してもらえますか。」

まゆ子「ふーむ、更にもう一発なんか決定的なアクシデントが欲しい。絶体絶命のピンチが。」
じゅえる「ヒィキタイタンか、レメコフか、どっちか死に掛けますかね。」
釈「いや、しかし、それは、どうでしょう。謀略で殺すというのもこれほどの決闘にはそぐわないですし。」
じゅえる「アクシデントというのは良くないな。ぎりぎりとした絶対不可避の運命であるべきだ。しかし、ーここまで来ては。」

釈「時限爆弾、とかですかねえ。爆弾無いですけど。」
まゆ子「時間、か。」
じゅえる「そういえば、時間がどうこう人食い教団が言ってたな。なんか出来る?」
まゆ子「ヒィキタイタンがカプタニアに居られる猶予時間を正午まで、ということで決闘するとか? いや、それもおかしいか。」
釈「時限爆弾を仕掛けておきますか。不可能では無いでしょう。」
まゆ子「ギィール神族、あるいは督促派行徒であれば、不可能ではない。いや、ここは督促派が出て来るべきだ。」
じゅえる「たしかに神競べの場こそが督促派が邪魔に入る絶好の機会ではある。」

まゆ子「そのアイデアもらった。だがここでは使わない。決闘の前に一騒動起こそう。劫アランサとかにも活躍の場所を用意してやらないといけない。」
じゅえる「そうだね。大混乱の最中に決闘が行われるんだ。ハジパイ王暗殺計画の三つや四つくらい、当然に有るべきだな。」

まゆ子「そうだ、この決闘というが裁きの場に観覧席が用意されVIPがやってくるんだけど、その中にガンガランガからやって来た”御女”の称号を持つシュメ・サンパクレ・アが居る。御簾で覆われて顔が見えないんだけど、夫であるカンヴィタル鮮パァヴァトンが入ってみると、そこには黒髪の背の高い女が居る。ということにしよう。」
釈「堂々と、ですか。」
じゅえる「堂々と、だね。」
まゆ子「実はシュメ本人は来て居ない。あくまでサンパクレ家の行列だけが来て居るのさ。」

じゅえる「これまでの登場人物総登場ですかい。じゃあその席にもうひとり付けてもらいたいな。」
釈「誰です?」
じゅえる「ジムシ。」
まゆ子「ああ! スガッタ僧のジムシかい。なるほど、確かにアレも行方不明だ。なるほど、じゃあここでパァヴァトンさんに引き合わせて手駒に使ってもらうことにしよう。」
釈「ゲワォさんと同じ、ですか。」
まゆ子「まあ、そんなものかな。まあ色々手蔓は考えるけどさ。」

釈「ついでに督促派のえーとなんだっけ、シバ・ネベだ、あの人も復活です。」

じゅえる「まあ総出演でいいんだけど、督促派行徒出るならなんか凄い仕掛けを出さないと面白くないぞ。火薬くらい出しちゃダメなのかい。」
まゆ子「…出すか。弥生ちゃんが方台退去後2百年くらいで火薬は出現することになっている。この時代だと、硝石を用いた発火装置くらいは出ても問題ないかも。」
じゅえる「よし決まり。督促派行徒のテロ計画は新開発発火装置を使ったカプタニア焼き討ちだ。」
釈「まあそこはいい感じで、解決させてもらいましょう。」

じゅえる「コウモリ神人は、」
まゆ子「ここでは絶対出ない。」

釈「弓レアルさんにはもう出番無しですか。」
まゆ子「いや、これは極めて重大な出番がある。ネコが弥生ちゃんが帰って来ると言い出して、弓レアルも市中に引っ張り出されてしまう。
 で、ヒィキタイタンの護送に伴ってやって来た南方のネコとも会うのだな。で、この中に眉間に赤い三日月傷を持つネコが居る。弥生ちゃんなら間違いなく「早乙女主水之介」と名付ける奴だ。で、こいつは今時珍しい古代の風習を残す人間の一団によって狩って食べられそうになった経験が有るんだ。傷はその時のものね。
 で、ここで弓レアルは、ネコが入り込めない集団が有るということを知る。ということは、その集団の中の出来事はネコは知らない。弓レアルも聞いたことが無いというわけだ。
 で、ネコがダメなら人だ、ってことでネコネットワークを通じて近くのヒッポドス商会に縁の有る人に言付けを頼んで、その集団の、つまりは難民の一団なのだが、の内部を調べてもらう。」
じゅえる「なるほど!」
釈「無理無くいけますね。」

じゅえる「ふむ。で、弥生ちゃん降臨の切っ掛けはー。」
釈「あー、こまりましたねー。」
まゆ子「タコヤキ王女は居るんだから、地震くらいは起こしてもいいんだが、あまり関係無いような気がする。」
じゅえる「とはいうものの、弥生ちゃん降臨の切っ掛けとはならない話だ、それ。」

まゆ子「うーん、なんか天変地異かヒィキタイタン絶体絶命以外の切っ掛けは無いものだろうかね。」
釈「絶体絶命でなくてもいいんじゃないですかね?」
じゅえる「例えば?」

釈「決闘が進行していく中、あらゆる事が起きるんですよ。色んな事が、色んな人が、色んなまとめが裏でどんどん進行して、一応の解決を見て行く。なにもかもが終幕に向けて突っ走り、これまでの登場人物が顔を揃える。
 そして決闘は最終局面に到達し、なんと!」
まゆ子「ふむ。」
釈「なんと?」
じゅえる「なんだよ。」

釈「決着がつかない事がけっちゃくした。」

まゆ子「なんなんだよそれは、引き分けかい。」
じゅえる「でも決闘はやめられないぞ。」
釈「ええ。ですからふたりともめんどくさくなって、剣を捨てて殴り合いをする運びになるんです。もう道具を使うのはまだるっこしいと。」
まゆ子「まあ、そういう展開にもなるかな。」

釈「でもふたりは気付いていなかったんです。まだるっこしく感じるのは、二人の動きがどんどん早くなっているからで、カブトムシの聖蟲が羽ばたいて高速で動いてるんです。これは異常な動作です。」
じゅえる「決闘だから、じゃないんだ。」

釈「予感です。何かがやってくる予感で、聖蟲が活発に動いて居るんです。で、試合場を見る全領域において、聖蟲達が騒ぎ始める。うわんうわんと唸りを上げて、やがて大きく羽ばたき始める。」
じゅえる「そりゃあ、なるほど。」
まゆ子「それは並の天変地異よりも目立つ事件だな。で、」

釈「とうぜんのことながら、カブトムシの聖蟲が騒ぐのは、天空から巨大カブトムシ神が下りて来るからです。キャプテンの降臨です!」
じゅえる「おお。」
まゆ子「ほお。別に破滅を回避させなくても、降臨は成るのか。なるほど、それは予想外の展開だ。平和的じゃないか。」
じゅえる「定石ではないが、しかし定石でないことのデメリットを感じずにクライマックスに入れるな、ソレ。」

まゆ子「うん。それで行こう。天変地異やら絶体絶命でなく、満場の喝采の中弥生ちゃんが舞い降りるんだ。或る意味これは新しい。」

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