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07/12/29

 EP6
1、東神聖王、ギジェカプタギ点へ行幸。両軍再緊張状態。
2、武徳王、ハジパイ王、弥生ちゃんの指示で神聖王が走った事を知る。
3、三神救世主邂逅。即神人の到来、弥生ちゃん行方不明。
4、弥生ちゃん、いきなり北へ。森林地帯をさ迷う。
5、デュータム点で大混乱。両軍凍結状態に。褐甲角王国大動乱。
6、弓レアル、茫然自失。カプタニアでお葬式。
7、ハジパイ王、粛正起動。標的はヒィキタイタン
8、イローエントの騒乱。紅曙蛸王国攻撃計画。
9、赤甲梢成功後のヒィキタイタン。再度のマキアリィとの対決(対面)。
10、焔アウンサ暗殺事件。
11、いきなり中央政界に巻き込まれる劫アランサ。武徳王襲撃事件、犯人は人喰い教団?!
12、イローエントに軍勢結集。臨戦態勢。
13、呑気なもんだよ弥生ちゃん。EPLG

 EP7
1、神聖神殿都市の謀略。
2、弥生ちゃん、遂に十二神の中枢に到達。
3、弥生ちゃん、神との対話
4、神聖王襲撃計画発覚。赤甲梢軍令に反して神聖王警護。罠に落ちる。
5、ハジパイ王と、勝ち組派との対話。敗北するハジパイ王。
6、タコリティ陥落。ヒィキタイタン、カプタニアに連行。
7、赤甲梢凍結命令。神聖王の所に勝ち組が交渉に来る。熾烈な外交戦。
8、弥生ちゃん、遂に十二神方台系に帰還、ネズミ族の村。巨大カブトムシ神のお迎え。
9、デュータム点、カプタニア、他民衆の不安が広がり、弥生ちゃんを求める声が高まる。
10、ヒィキタイタンの帰還。
11、ヒィキタイタンの断罪。劫アランサの断罪。赤甲梢解散。ジョグジョ薔薇の大演説。
12、白の母。ネコとの対話。弥生ちゃんの帰還!
13、弥生ちゃんの大審判。トカゲ王国樹立。

まゆ子「というのが、EP6のスケジュール。ちなみに第一章は順調に進んで居るにはいるのだが、恒例の年末スケジュールによって絶賛炎上中であります。」

じゅえる「出来はいいと思う。うん。」
釈「前回の打ち合わせの成果を受けてぐっと引き締まりました。」

まゆ子「もうちょっとで出来るんだけど、ざんねんながら年越しです。というわけじゃないけれど、オマケが三本付いて来るのを暫定的に掲載しておこう。まだブラッシュアップしてないバージョンだけど、無いよりはマシだ。」

じゅえる「ま、年末最後の更新を出来る内にしておこうってわけだよ。」
釈「てなもんです。」

 

07/12/17

まゆ子「というわけで、既にげばおとEP6「第一章 そして新章」が始まっている。相談無しで書こうとしたが、案の定失敗した。」

じゅえる「具体的にはどういう失敗?」
まゆ子「おもしろくない。」
釈「ちめいてきです。」

じゅえる「この章の目的は?」
まゆ子「一章二章は双方の王国の準備だ。とくに一章は赤甲梢のその後の動向を描かねばならない。そして描いていましたが、あきません。ぐだぐだとした台詞ばかりが続きます。」
じゅえる「準備が面白いわけないじゃない。」
釈「ですねえ。」

まゆ子「ついでに言うと、人が足りない。これからの外交戦に備えて東金雷蜒王国側に有力なキャラを配置しなければならない。地味だけど重要な章だ。」

じゅえる「ラブを出せ。」
釈「戦闘シーンが無いのであれば、ラブでしょう。」
まゆ子「そうかなあ、とも考えて女を一人出した。
 いまのところ考えている新キャラは、東金雷蜒王国宰相、禁衛将軍この二人は聖蟲は持たない一般人ね。で、ギィール神族の近衛隊長で神剣匠の位を持つ武術の究極の達人、そしてトカゲ神救世主。」

じゅえる「なんだそのトカゲ神救世主ってのは。」
まゆ子「金雷蜒王国が確保して居たトカゲ神救世主候補だよ。全身に鱗を持つ奇形の少女だ。もちろん素肌を披露する。」
釈「これがラブの対象ですか。」
まゆ子「それもありかな。」

じゅえる「まずそれは禁止。」
まゆ子「どうして?」
じゅえる「当たり前過ぎるから。ラブはもっと凄い事にする。百合だ。」

釈「ホモは!」
まゆ子「いやホモは嫌。」

じゅえる「百合で行こう。アウンサ王女が、もしくは彩ルダムが。」
釈「いきなり彩ルダムが神聖王に見初められる、というのは。」
まゆ子「むう。それは凄い。」

じゅえる「これを中心に、準備の様子を配置していくというのが良い。」
まゆ子「むう。そんなのは夢にも思わなかった。彩ルダムが、って神聖王はそんなに女に餓えてるのか?」

釈「聖蟲を持つ女というのは、特別な魅力があるのです。」
じゅえる「なるほど。たしかにとくべつなオーラがあると考えてもよいな。ゲジゲジの聖蟲を持つ女には慣れていても、カブトムシの聖蟲を持つ女にはなにか惹き付けられるものがある。」
まゆ子「フェロモンか。」
じゅえる「フェロモン、なるほど。では神聖王のみならず他の神族も引っ掛かる。」
釈「百合ということで、王姉妹とギィール神族が彩ルダムを巡って争うとか。」

まゆ子「信じがたいはなしだが、どうやってまとめよう。」
じゅえる「あくまでもこれはサブエピソードなのだ。本筋はいかにして神聖王出立の準備を調えるか。しかしながら随所で彩ルダムが報告して来る、あるいは話が伝わって来る。そこで赤甲梢のメンバー達は彩ルダムに関する状況の深化に驚くのだよ。」

釈「まずは神聖王からプロポーズされた、次はギィール神族が集団でやってきて贈り物の山、さらには王姉妹からこのまま神聖宮に留まらないかと誘われて、彩ルダムを巡って神族と王姉妹が剣を振るっての争いを、しまいには事態の収拾の為に神聖王自らアウンサに申し込みが。」
じゅえる「凄まじい話だ、それ。」
まゆ子「なにがなんだか分からんぞ、それ。」

じゅえる「その神剣匠の位を持つ素晴らしい神族の剣士が神聖王に彩ルダムをねだる、とかもありだな。で、赤甲梢頭領のシガハン・ルペと決闘も辞さないとか。」
釈「むちゃくちゃでござりまするな。」

まゆ子「しかし何故にアウンサでなく彩ルダムなんだ? やはり未婚の処女だからか?」
じゅえる「そうなんだろう。十二神方台系においてもこんなのは聞いた事が無いんだが、女性で聖蟲を持っていて処女で歳がかなりいってると、凄まじいフェロモンが発せられるらしい。」
釈「なんなんでしょうそれ。」
まゆ子「腐れ処女の香り、てわけなのか。うーむえろいはなしだ。」

じゅえる「最後には、彩ルダムはトカゲ女をおみやげにもらってしまうのだよ。なんだか分からないけど。」
まゆ子「ほんとにわからないよ。」

 

07/12/09

まゆ子「というわけでモモ展がんばって出品しました。とは言うものの、モデリングしかできなかったので有りモノを並べてシーンを構築しましたよ。まあ、どれも皆モモ展に出すのを目的でこしらえたものだからいんだけんどね。」

じゅえる「はいごくろうさんでした。どう?」
まゆ子「ま、ひさびさに死に掛けたって感じ。さすがに一年ぶりくらいのだから、いい感じに全力放出ですよ。」
釈「これで「げばおと」も進行促進できますかね?そううまくはいきませんか。」
じゅえる「12月はなにかといそがしいしねえ。」

まゆ子「というわけで、「打通山ちは」が出来たのです。」
じゅえる「打通山ちは、というキャラは前から居たの?」
まゆ子「くららが強襲される敵、という設定で考えていたのの一人です。旧日本軍の中戦車チハに乗ってやってくるという。」
釈「やばいキャラですね。」
じゅえる「旧軍だからね。」
まゆ子「打通さんだし。」

釈「このキャラは今後活躍しますか?」
まゆ子「うーん、実はこのキャラは今回初めてビジュアルが出来たんだ。出来たのを見てみると、動かし易いな。竹刀が特にいい。あと右肩にバルカン砲ももってるし。」
釈「なんか普通の拳銃みたいにみえますが?」
まゆ子「”ばーるかん”と叫ぶと発射するんだよ。しかも強力な6.5_弾を使用する。」
じゅえる「旧軍だからね。」

釈「では竹刀と銃を装備する。腹の上のはなんですか? 目玉の付いた筒みたいなのです。」
まゆ子「これは”身代わり器”と呼ばれるもので、幽霊とか精霊に襲われた時に身代わりになってくれる機械だ。「攻殻機動隊」の防壁みたいなものだね。実はこれはとんでもなく古いアイデアで、なんと弥生ちゃんよりも大東桐子よりも古い時代に描いていた漫画のガジェットだ。」
じゅえる「当然私達よりも古い。」
釈「ふええー、発掘品ですかあ。ということは、打通山ちはは幽霊と戦う?」

まゆ子「てきとーにビジュアルをでっち上げていく過程で「身代わり器」をくっつけてみたところ、当然そういう選択肢が出て来た。というわけで、後ろの”狐女”をつくったわけです。装備品が少ないからこれはさくっと出来た。」
じゅえる「いい出来だね。」
まゆ子「実際気に入ってます。シリーズ化も検討中。ちなみに下腹の紋章は「蠱螢(仮)」から借りました。」

釈「キツネは使いやすいキャラですねえ。これはなにかバックボーンはありますか? たとえば他の作品に登場するとか。」
まゆ子「無い。が、それも悪くないなあと思ってる。」
じゅえる「むしろこれを中心に据えたいところだ。必ずしも打通山ちははこれと格闘する必要は無い。」

釈「なるほど。3DCGを弄り回すと、色々頭の回転も早くなるんだ。」
まゆ子「実際そういう機能があります。今回モモ展は大成功と看做すべきでしょう。」

じゅえる「苦労に見合ったリターンがあった、てわけね。で、次の四月のモモ展はどうする?」
まゆ子「キツネのキャラは悪くない。これは動かしてますます魅力の出るキャラだ。これを中心に打通山ちはを動かしてみようと思う。次は情景に挑戦ね。」
釈「新機軸ですね。」

 

07/11/29

まゆ子「げばると処女EP5「最終章 喪服の女達」完成です。53枚。本編29枚エピローグ24枚という極めて常識的な枚数。」

じゅえる「ふふ、なんだかね。着手日07/12/20、完成日は07/11/28だからまる11ヶ月掛ったよ。」
釈「前篇371枚、後篇512枚、EP5は計883枚となりました。ちなみにEP4は543枚。06/07/12に第一章着手、06/12/02に最終章完成。所用日数は4ヶ月です。」

じゅえる「まゆちゃん。いくらなんでもEP5は時間掛け過ぎだ。今年は全部これで潰れた計算になる。」
まゆ子「締切日は四月末日、だったんだよ。」
釈「実際最初の4章くらいは快調に飛ばしています。なにがあったのでしょう?」
まゆ子「なにって、…なに?」
じゅえる「EP4も十分でかいんだから、枚数で考えても7ヶ月で完成していておかしくない。8月からは新章突入、というのが、」
まゆ子「あー、6月末日に締め切り延ばしたねえ。」

釈「結局やる気のもんだいですかね。」
まゆ子「そうなんだろうねえ。というか集中力だね。あんまり長いとやる気なくなっちゃうんだ。」
じゅえる「読み返すのが大変なんだよねえ。ちなみに最終章も4回きっちり書き直しました。集中力要ります。」
釈「集中力を高めてさあやるぞ、って原稿に向かうまでがたいへんだ、というお話ですねえ。」

まゆ子「やはり、ダメなのかもしれない。3DCGから撤退したというのが、文章書きにとって悪影響を及ぼすのかも。」
じゅえる「そうかもしれないなあ。モモ展はなんだかんだ言って締め切りを画定する丁度良いイベントなんだろう。」
まゆ子「物理的な形を弄り回すというのは、ひょっとすると精神的にじゅうぶんな栄養を与えて居るのかも知れない。イラスト描きではそれを補給できないのかも。」

釈「4月7月のはパスしましたから、12月のです。モモ展自体が死に掛けていますけどそんなのかんけいねえ、ということでやりますか。」
じゅえる「去年は折角つくったものも出さなかったからねえ。今回は目先を変えて新章突入の為に、やりますか。」

まゆ子「う、と思ったが締切日は12/07日までだ。もう一週間しかない。」
じゅえる「あーそれ思ったんだけどさあ、モモ展本体はすぐ消えちゃってつまんないよ。いつまでもだらだらやってるギャラリーの方が絶対いい。」
釈「モモ展自体がもう死んでますからねえ。むしろCARRARAのフォーラムに出した方がいいくらいですよ。」

まゆ子「まあ、そういうことにしておくか。なにを作るか決めよう。」
釈「やはりにんげんですか?それともいっそ翼甲冑でも作りますか。」
じゅえる「そうだね、でぽでも役に立つものを作ると良い。重甲冑翼甲冑ゲイル騎兵、こんなとこがよくないかな。」

まゆ子「いいんだけど、そういうのってなまじ完成されたビジュアルがあると、想像力働かせにくいでしょ。あえて描かない事にしてるんだ。」
じゅえる「そうか。じゃあげばおとはダメだな。蠱螢(仮)は?せっかく表紙絵にもなったんだし。」
釈「いや、ビジュアルでいくのならやっぱ物辺村少女自警団でしょう。あれの水中用モビルアバターを作りましょう。」
まゆ子「ふむ、アレか。」
じゅえる「簡単そうでいいじゃない。」
まゆ子「だが一般受けするかな、アレ。一応人に見せるのをきちっと基本に抑えてないといけないぞ。あれは単なるロボットとしか思ってもらえない。」
釈「しかし、生半可なロボットではまったく受けませんよ。ガンダム系を越えなければ不出来とすら思われます。」

じゅえる「めんどくさいものはもういいよ。もっと簡単なプリミティブマンみたいなのがいい。」
まゆ子「あれはあれでめんどくさいんだよ。うーんそうだねえ。いっそ女神でも作るか。」
じゅえる「べるだんでぃとか?まあそれも悪くはないか。版権モノに引っ掛からないように美少女路線で。」

まゆ子「いや、おもいっきりめんどくさがりでやってみようかと思う。」

 

07/11/13

まゆ子「このところ、くっちゃりぼろけっとの更新が無かったのには訳がある。体調が悪くて駄文が書けなかったのだ。」
釈「まともな文章は書けたのですか?」
まゆ子「不思議なことに、そっちに問題はまったくない。げばおとEP5「最終章 喪服の女達」は半分は書き上がった。」

じゅえる「やはり体調はそんなに悪かったんだ。」
まゆ子「うーん、得体の知れない悪さ、というべきかな。どうも感染症であったらしいんだが、症状の発現が緩くて慢性病かと間違ってしまったんだよ。」
釈「いまは癒ったんですか?」
まゆ子「癒ったような気がするが、同じ症状をおとうさんが出している。だから、感染症だと気がついたんだ。」

じゅえる「具体的な症状はどんなの?」
まゆ子「まず風邪だ。そしていつまで経っても寒いんだ。風邪は癒ったはずなのに寒気がするのが何日も続く。で、下痢になる。腹痛は余り無いが下痢が止らない。そんなにひどい下痢ではないけれど、やはりこれが何日も続く。そして御飯が食べられない。胃が半分になった気がする。胃の上部になんかできたような重いものがあるような気がする。で御飯が通常の半分なわけで、これはもうだめか、と思っちゃうんだな。」
じゅえる「やばそうな病気だな。」
まゆ子「ひょっとすると肩こりも症状に入るのかもしれない。あと、腹筋が異常痙攣するんだけど、これは別口のような気がする。これは今も止らない。」

釈「腹筋の痙攣というのは、ひょっとして死に至る病では。」
まゆ子「いや、どうもなにか分からないけれど、精神的なチック症の一種ではないかとか思うんだけど原因不明。しゃっくりほどではないけれど、腹筋が強く収縮して、でも意志で止められないというほどではない。これがまあ3週間ほど続いている。これのせいで集中力ががた落ちなんだ。」

じゅえる「あーそれで駄文が書けない。」
まゆ子「駄文は精神の解放であるから、精神を解放出来ない緊張状態が続くとダメなんだ。逆に集中力と気合いが使えれば、まともな文章は書ける。この場合わたしよりも弥生ちゃんの方が仕切りに向いてるね。」

釈「でも駄文を書けるまで復活したんですよね。」
まゆ子「これを精神的なものと仮定して、であるならば肉体的に症状が出ていると認識する。精神的な問題でも、精神的に発現する、肉体的に発現する、行動的に発現する、とさまざまな出現の仕方があるわけさ。で、それぞれに対処法は違う。肉体的に出る時はいたしかたない、肉体的に解決するしかない。」

じゅえる「あー、そりゃ弥生ちゃん式にやるしかないさ。」

まゆ子「というわけで、弥生ちゃん式にやる。

 で今回最終章はわたしたちの事前の打ち合わせが無いんだが、無くてもさっくり書けて居る。まあエピローグのジンハ守キンガイアさんの話はとっくの昔にやったから、できるのが当たり前だ。で、最近の私はもうEP6を書きたくてしょうがない。」
釈「やる気満々、なんですね。」
まゆ子「弥生ちゃんが本格的に動くってんだから、話がおもしろくなるのが当たり前だ。更に言うと、EP6の主役は男だ、男キャラだ。弥生ちゃんの不在は男達に自ら動く事を強制する。どんどん動くよ。」
じゅえる「つまりはダイナミックなエピソードがてんこ盛りなんだ。うーむ、そりゃおもしろそうだ。」

まゆ子「てなわけで、設定を作ろうというわけさ。基本的に必要なものは既に揃えてある。無いのはもはや、金翅幹元老院だな。」
釈「そうですね。見返して見るとEP1ではまっさきに出て来たはずの元老院は、これまで実体が語られていませんね。」
まゆ子「そうなんだ。元老員は何人か出た。しかし、元老院がいかなる原理に支配されているか、これは無い。そしてこれからはそれこそが主役なんだな。だから考えます。」

じゅえる「具体的には、なにが欲しい?」

まゆ子「元老院を考える、というよりも、これから元老院はどのように解体していくか、これが欲しい。弥生ちゃんは褐甲角王国を三つの王国に分割する心づもりだ。だがこれはもちろん褐甲角王国にとってマイナスだ。マイナスには違いないが、元老院も王族も黒甲枝も、これしか王国を救う手段は他に無い、と思い定めるその道筋がここで用意されねばならない。」
釈「大事ですね。」
じゅえる「ちょっとおおごとだな。

 彼らは現時点においてはまったく分裂を企図していないにも関わらず、分裂以外の選択肢があり得ない状態に陥ってしまうんだ。弥生ちゃんの示唆は最後の決壊を促すに過ぎず、彼らは既に内部で分裂して居た事を自ら発見する、てことね?」
まゆ子「そうなると理想的。」

釈「てえことはですよ、すでに内部では三つ以上に分かれているべきですね。」
じゅえる「そいうことだが、露骨に亀裂があると考えるのはどうかな。これまでは問題なかったものが、弥生ちゃんの出現と和平という概念の導入で一気に破断した、と考えるよ。」

まゆ子「まず元老院とは何者か、を考えましょう。金翅幹元老員は黒甲枝の中でも特に王国への貢献著しいと認められる家で、最初期の神兵の家系はほぼすべて昇格しています。未だに残っているのはチュダルム家とレメコフ家だけですね。この二家は金翅幹家でさえ貢献度において劣るほどの王国の屋台骨です。」

じゅえる「最初期の神兵と、それ以外の神兵の違いは?」

まゆ子「700年くらい前に王国が膨脹したんだよ。ギジジットが閉鎖されて毒地が完成した頃で金雷蜒王国からの攻撃が難しくなり防衛に余裕が生まれ、王国は防戦一方から攻勢に出る気運が高まった。
 この頃登場したのが重甲冑だ。無敵の神兵が重装甲をまとう、という軍事的な新コンセプトの登場だね。これ以前は只の甲冑の装甲が厚いものに過ぎなかった。甲冑に機構を挿入して神兵の能力を最大限に絞り出そうと考えて登場した新兵器、なんだね。

 攻撃軍を形成するには神兵の数が足りない。ということで300家ほどあった黒甲枝がこの頃から拡大を初めて最終的に1000家になった。もちろん領土と領民の拡大に伴って無理なく増えたんだけどね。」

釈「つまり、軍事力の大幅な強化が行われたんですね。」
じゅえる「軍事力だけ? 行政とかは。」
まゆ子「うん、役人としての黒甲枝もこの頃からクローズアップされた。300の黒甲枝が等分して軍務と政務と行政とを司っていたんだけど、手が足りなくなったんだな。そこで軍事専門に働く黒甲枝という案が承認されて、新参の黒甲枝がそれまでの家に仕える信頼に値する者達から選ばれて大量に聖蟲を授かった。と言っても聖蟲の供給量には限りがあるから、200年掛かりで1000家にまで到達したんだな。」

じゅえる「3倍増か。じゃあ当初は重甲冑の導入は極少数だったんだ。」
まゆ子「重甲冑の製作はギィール神族の手を借りないと無理だもん。年に1体ずつ配備、ってとこだ。」
釈「これも300年掛かりですか。」

まゆ子「後には生産性を向上させる為に工人工匠の育成も始めたから、300年で500体ってとこだ。現在は重甲冑1000体に翼甲冑400丸甲冑400ってとこなんだけど、古甲冑と呼ぶべき最初期の重甲冑がまだ生き残っている。グテ地警備とかの僻地の神兵が使ってる。」

じゅえる「つまり最前線に出るのは最新型の重甲冑のみ、てわけだ。しかし、神兵の数は今2000弱でしょ。翼甲冑は最近出来たものだから、えーと神兵の数に甲冑が足りない?」
まゆ子「赤甲梢がこれほど増えたのはここ50年だから。それ以前100年前は神兵の数は1500に重甲冑1000丸甲冑500だ。甲冑が足りないという事は無い。」

じゅえる「話を戻すと、つまり500年前までに黒甲枝は1000家になったんだね。で、今は1500家に赤甲梢が300も居る。500家増えたのは?」
まゆ子「自然増加、だね。黒甲枝の家は不変ではなく婚姻や子孫の途絶で増えたり減ったりする。戦力の安定を考え定数1000を維持するには1500が必要と考えられて計画的に増やされた。つまり、毒地の警備と海軍とで常時1000名の神兵を必要とし、それ以外の者を行政官や司法官として必要としたんだな。だから黒甲枝の家族から随時増減させていたのが、固定化したのが最近増えた家。」

釈「神兵と官僚とを同じ家から同時に調達する、という考え方はなかったんですか?神兵はあくまで軍事を司り、その兄弟が行政官になるて考え方は。」
じゅえる「いや、それはやっぱり聖蟲を持ってる方が上だろ、権威的には。軍が官僚に優先する構造が固定化してしまう。やっぱり神兵も官僚になる、という道筋が必要なんだ。」

まゆ子「まあ聖蟲の供給量が順調に増えて居たのが主因なんだけどさあ、軍事に触れない特権階級というのが出来るのを嫌ったんだな。官僚を出す家は必ず兵士も出す。聖蟲を増やしたからと言ってコストが膨大に増える、ってことも無い。赤甲梢がそうであるように、不要とあれば聖蟲の供給量を減らせばいいんだから。」

釈「しかし1500家は多過ぎますよね、やっぱ。」
じゅえる「兵数としてはそうでもないと思うけど。」
まゆ子「特権階級としては多いのは確かだ。多過ぎるのが、今後のというか分裂の原因に為り得るかな。」

じゅえる「家の数を絞ろうという試みは無かったの?リストラは。」
まゆ子「うーん、無いなあ。というか、後期になると海軍の拡大を開始したから、丸甲冑を使う神兵が必要とされた。だから新参の黒甲枝はなんらかの形で海軍に関わっているのが多い。」

釈「多過ぎるとは思うんですが、少ないとバランスが取れないんですよね。もっと赤甲梢みたいな形で家の無い神兵を作るシステムを用意するべきでしたね。」
じゅえる「うん、海軍とかそいうシステムにしておくべきだった。もう遅いけど。」
まゆ子「いや遅くはない。俸給システムになにか仕掛けをしよう。黒甲枝1500家の内内庭に住んでいるのが200家。こういう集合住宅は他にもあるんだよ。」

じゅえる「ちょっとまて、身分だけあっても何も持っていない黒甲枝が居るんだな、それは。」
釈「貧乏なのは知って居ますが、それだと一般庶民以下になりますよ。」
まゆ子「いや、まあ年収30金くらいは普通だから、えーと、はは、びんぼうだな。」
釈「一般庶民はといえば、大工が月1イヌコマのゲルタ、半金で生活出来るから、年6金だ。この5倍で家来も抱えてというのは、ははびんぼうですね。」

じゅえる「つまり心配する必要無いってことだね。というか、この貧乏暮らしが分裂の原因にもなる。」
まゆ子「そっちの方が切実だな。」

釈「つまり元老院の勘定では、和平が成り軍備縮小が余儀なくされると、神兵の数の過剰が一気にクローズアップされるんです。」
じゅえる「うむ。それが真の分裂の原因だな。軍事的な均衡を保って居たのは、ひとえに褐甲角王国が金雷蜒王国を打倒するという大義があったればこそ。和平共存となると、最小レベルの軍備しか必要無くなる。おそらくは1000家にまで落ちる。金翅幹家も過剰になる。」

まゆ子「膨らんだ風船が萎むわけだ。ギィール神族は3000人居るとはいえ、一家に2、3人だしモノを作り高付加価値を生み出す人だからね。居てもまったく邪魔にはならない。一方神兵は、居るだけではなんの役にも立たない。そこで、弥生ちゃんが神聖傭兵団というのを作って回収するんだ。」

釈「基本を考えましょう。褐甲角王国分裂後、神兵はどういう配分になりますか。」
じゅえる「総数は1500家のまま。最大はカンヴィタル武徳王国、次がソグヴィタル王国、メグリアル王国、黒甲枝諸侯国、神聖傭兵団。5:3:2:2:1てとこかな。」

まゆ子「金翅幹家130家含めて、1500家ね。赤甲梢は一代限りだから良しとしても、ちょいと多いか。」
釈「リストラに応じる者は居ないでしょう。」
じゅえる「百年単位でものを考えないといかんね。ともかく、弥生ちゃんが居る時期にリストラは無い。2000人の褐甲角の聖蟲を戴く者が居るわけだ。これを三分割のち四分割するわけだ。」

まゆ子「とりあえず、弥生ちゃんの意見では褐甲角王国を分割するのは中央軍権集中体制と呼ぶべき現状が現実に即さない。もっとバリエーションのある政治体制を模索するべきであり、その為には行政区を大きく分割するべきで、それを三人の王に任せようてもんだ。褐甲角王国を最初から王国で切り離すとは言ってない。言ってないけど言外には言う。」

釈「先回りして考える人がいる、ってことですか、たとえばジョグジョ薔薇とか。」
じゅえる「いや、彼は逆に徹底抗戦派だろう。あくまでも金雷蜒王国を討ち滅ぼせ、とか言って後に黒甲枝諸侯国につながる動きをする。そうだよね。」
まゆ子「動きと考えが同じ、とは限らない。彼はもっと賢い人間だが、力を手にする為に自分では信じてもいない道を行く、そういうタイプ。」
釈「ふむ、策士策に溺れるタイプですか。」

じゅえる「となると、分裂派というのは?」
まゆ子「つまりは経済的な問題だ。つまり、金の掛る部分を外部に放り出してしまおう、と考える奴が居る。」
釈「なるほど、どこか不経済な部所を外部化独立採算にしてしまおうという、典型的なアレですね。」

じゅえる「となると、分裂するのではなく放棄されちゃうのだな。」

まゆ子「逆に考えてみよう。褐甲角王国のすべての人間は武徳王の存在を絶対と考える。聖蟲を与える権限を持つのだから当然だ。だから、新褐甲角王国も武徳王の近辺が確実に安定する方法を取る。」
じゅえる「当然だね。」

釈「しかし、過大な軍備をどうするかという問題は避けて通れないわけです。特に神兵の数の多さは維持出来ない。」
まゆ子「生産の上限を突破しているわけだよ。そこで南海軍のリストラに着手する。これを任されるのが要するにジョグジョ薔薇だ。

 で、王国を分割すると考えるとどうしても第一に目が行くのが、お荷物のグテ地だ。ここは生産力が低くて人口も少なく、警備するには金ばかり掛る。だからここを切り離そうと考えるが、だからと言って棄てるわけにはいかない。だから独立採算性を考えた。」
じゅえる「ていのいい姥捨て山だな。しかし産業が無いとそれもうまくいかないだろ。」

まゆ子「もちろん。グテ地とイロ・エイベントは不毛の土地だ。だがイローエントは随分と儲かる。儲かるイローエント港だけは確保して、グテ地は外してしまおうというのが賢いやり方だな。」
釈「ほんとうになにも無いんですか?」
まゆ子「弥生ちゃんは後に油ゲルタから魚油を搾る産業を立ち上げるけど、この時点ではまだ無い。まあ、船員としてイローエントに出稼ぎに行くというのがのちのちまでの産業になるんだけどね。あと傭兵だ。神聖傭兵団の傭兵もここから来てたりするようになる。ま、のちの話。」

じゅえる「つまり分割構想の段階では、グテ地は完全なお荷物なんだ。でもこれはソグヴィタル王国になってしまう。」
まゆ子「スプリタ街道東側の穀倉地帯を与えられる見返りとして、グテ地も付けられた、という感じ。もちろん広大なグテ地がお荷物になるのは最初から分かってる。暫定的な措置としてソグヴィタル領に組み入れるというわけ。

まあ褐甲角王国においても、領土三分割構想を考えるとどうしても四つに分けねばならない、と認識するんだな。だからグテ地を含む南西部をすべて武徳王領にしてしまうか、ソグヴィタル王領にしてしまうかで論争が起きる。」

釈「最終的な処分は、黒甲枝諸侯国になってしまうんですけど、これは最初からは無いわけですね。」
まゆこ「共有地にしてしまおう、という考え方はある。代官だけを置いて、名目上は武徳王の管轄で維持費は三王家共同という仕組み。ただこれだと隣接するソグヴィタル王領の影響力が強過ぎるにも関わらず、他は金だけは取られてしまうという不公平なものがある。」

じゅえる「ちょいと待った。グテ地とトロシャンテ以外は領土問題は無いのかい?」
まゆ子「まあ、カプタニア山脈の西側は武徳王が取るのは当然と誰もが思う。メグリアル王家はボウダン街道の守護者であり聖山に影響力が強いから、北方がメグリアル領になるのを誰も疑わない。王国南部はカプタニアを境に東西分けるのが当たり前だから、ミンドレア・ヌケミンドル・ベイスラという穀倉地帯を手中にする者が強い力を得るのは当然で、政治力の強いソグヴィタル王領として問題は無い。

問題が出るのはガンガランガから毒地の平原の部分だ。ベイスラ・エイベントの隣の毒地は青晶蜥王領となる事が大体了解されている。元々弥生ちゃんはここから出て来たし、ここが青晶蜥神のホームグラウンドらしいというのは、昔から知られている。」

釈「毒地の開発と、グテ地トロシャンテの管理、が問題なんですね。特に毒地はギジジットとも境を接するわけですから。」
まゆ子「最終的には、ガンガランガはソグヴィタル王領となり、開発の必要がある毒地はメグリアル王領となる。不公正なようだが、その分東金雷蜒王国との交易を独占するメグリアル領は金銭的には儲かる算段だ。またメグリアル王家は他よりも勢力が小さい劣位のもの、という合意が最初からある。」

じゅえる「そこんところをなんとかしよう、という元老員が居てもおかしくないな。」
釈「なにしろメグリアルの姫が次の青晶蜥神救世主ですから、それ相当の権力も手にしなければならないと考えるでしょう。」

まゆ子「うん。つまりは、まず元老員の分裂はメグリアル王家の勢力拡大と三王家の勢力均衡という課題で始まる。最小の面積となるメグリアル王領はしかし金銭的には恵まれるし、青晶蜥神救世主の威光を借りて今後強い指導力が期待される。

そこで神聖傭兵団だ。メグリアル王国軍と加えて神聖傭兵団で、他国に伍す戦力を有する事になる。神聖傭兵団の軍事費は方台全土から調達するので、メグリアル王家の負担は小さい。また交易の公正を保つ為にも武力は絶対的に必要なのだ。」

釈「しかし、ソグヴィタル王領は縦に長い国ですねえ。この中心はヌケミンドルの街ですよね。」
じゅえる「一番発展しているからね。」

まゆ子「あ、いや、ヌケミンドルは街としては発展しているけれど軍事的に弱い所があるんだ。もちろん東側には鉄壁だが、西側はまったくの無防備。王国を三分割すると考えるとこれはマズイと考える。無論カンヴィタル武徳王国が攻めて来るとは考えないし、東金雷蜒王国が侵攻して来た場合は共同で防御するからヌケミンドルの西側を防備する訳にはいかない。
そこでソグヴィタル王家はベイスラを王都にして、ヌケミンドルを商都と考える。イローエント港を東西金雷蜒王国との交易に用いようと考えると、二つの都市との中間は便利だし、防御の観点からもベイスラは問題が無い。だから城を作ります。」

釈「ということは、これからベイスラは大発展をするということですか。ふうむ、良く出来てるな。」
じゅえる「つまりは、ソグヴィタル王家が城を築く事で、物語も色々と展開を進めるわけだ。ふむ。」

まゆ子「要するにカンヴィタル武徳王国は産業によって成り立ち、ソグヴィタル王国は農業によって成り立ち、メグリアル王国は交易によって成り立つわけだね。」

釈「軍事力の必要からいうと、武徳王国はあまり要りませんよね。隔離されて居ますから。」
じゅえる「メグリアル王家は金でなんとかするわけだろうけど、じゃあ神兵の数の比率はあまり当てにならないな。」
まゆ子「ふうむ、メグリアル王国は神聖傭兵団と合わせて、ソグヴィタル王国と同数にはなるよ。つまりは、武徳王国の神兵が不要にも関わらず多過ぎるんだ。」

釈「具体的な数を言えば、700ってとこですかね。」
じゅえる「人口150万を三分割、ちょっと多めで70万としても、千人に一人ってのはやっぱきついな。」

まゆ子「今も千人に一人の割り合いなんだけどね。実は弥生ちゃんが去った後の方台は人口がぐっと増えるんだよ。いま250万のとこが200年で400万になる。200年後で考えると多過ぎはしない。ただ短期的にはね。」

釈「しかし重甲冑とかは既存のものがあるし、兵器の更新とかを控えればなんとかなるんではないですかね。」
じゅえる「そりゃ甘い。弥生ちゃんが持ち込んだネジは金属製品に飛躍的な進歩を与える。兵器の更新はサボれない。」

まゆ子「その点、褐甲角王国の西側は工業がちゃんとあるから、大丈夫なんだよ。
 だから軍の構成を変更しなきゃいけないけれど、ともかく抵抗する神兵がね。」

釈「抵抗と言いましても、どの程度の抵抗ですか。武力ではないですよね。」
じゅえる「うーんと、どうなんだろ。やっぱ政治的に抵抗するとなると、議会?」

まゆ子「黒甲枝には元老院での発言権は無い。縁の金翅幹家に行って愚痴をこぼすんだ。で、それを元老員が議会で演説とかに使う。普段は黒甲枝はそんなに政治向きの発言はしないし、元老員に対しても批判めいた事は言わないよ。が、ここで雲霞のようにやってきて愚痴を言うんだ。」
じゅえる「なかなか鬱陶しい政治運動だな。」

釈「彼らは結局どうすればよいと考えるんです?」

まゆ子「理想を言えば、王国は一つのままでこれまでどおりが望ましい。しかし和平がなった後ではそれが難しい事は良く理解する。敵が居なくなった黒甲枝ほど脆いものは無い。だから敵を求める者と、素直に分割に従おうとする者とに分かれる。従う者はいかにすれば自分がちゃんとした待遇で扱われるか、これを気にかける。」
じゅえる「猟官運動みたいなものか。そうねー、現実的に考えると失業問題の方が怖いもんね。」

釈「黒甲枝の家を取り潰すなんてのは方針に無いんですよね。」
まゆ子「有る。これは武徳王のサイドから提案されるんだが、これまで養子縁組で存続して来た黒甲枝家を直系に限る、というアイデアが出る。元老院において基本的に了承されるのだが、具体的に死人が出ている現状ではそれは凍結される。」
釈「現状それは忠誠心を損なうだけの悪法、ってことですね。王国の為の戦い死んだ神兵への冒涜だと。」

まゆ子「リストラ策は自然減、というのは誰もが了承する。戦争をしないのを前提とした国家においては、多額の装備費を要する神兵は明らかにコストに合わない。翼甲冑に機種変更がされるに従って、もっと機動的かつ運用に金の掛らない神兵の在り方が模索される。ま、これは後の話だから考慮しなくていいけどね。弥生ちゃんが影響を及ぼすせいぜい数十年においては、神兵の在り方武装について変更は無い。」
じゅえる「いずれ破綻する事は分かっているけれど、暫定的に持ち堪えられる状況、というわけだ。ふーむ。

で元老院の対立軸は?」

まゆ子「つまり、誰がどこの王家に属するか、これだね。王国を分裂させるかどうかは未だ不明であるも、まとまった大きさの行政区に分けてそれぞれを三王家が支配する、というコンセプトに反対は無い。統一した状態が維持出来ない以上、仕方ない。」

釈「出来ないんですか?」
まゆ子「黒甲枝の考え方が明らかに独立志向になっちゃったんだ。中央集権に異を唱え出した。と言ってばらばらでは仕方ない、或る程度の塊で動き上に王家を頂く、この形式は外さない。」

じゅえる「つまり、誰を敵として認めるか、で路線が割れちゃったんだ。えーと、一番簡単なのが武徳王の、」
まゆ子「いや違う。メグリアル王家だ。ここが、どう見ても次代の青晶蜥神救世主である劫アランサ王女を抱えているわけだ。当然実家の王家のバックアップも有る。そして方台全土の平和と安定と公正さを担保する、という弥生ちゃんの方針に表立って異を唱えられる者はどこにも居ない。であれば、メグリアル王家の下で青晶蜥神救世主の救世の聖業を助けよう、と考える敬虔な黒甲枝は少なくない数で出て来るのさ。」

釈「なるほど。神兵本来の有様として、民衆の為に尽くそうと考えると、当然のごとくに新救世主の下に集うわけです。それは決して褐甲角王国の国是には反しない。」
じゅえる「つまり、神様派なんだ。これに対立する軸が、武徳王派だ。」

まゆ子「うん。あくまでも神兵は武徳王を頂点として民衆を保護し正義の為に戦うぞ、というこれまた一点非の打ちようの無い名目があるわけで、たいていの黒甲枝はこの立場をまず第一に考える。神様派でさえそうだ。しかしながら、この路線には決定的な欠陥が有る。」
じゅえる「単独の判断ではそう簡単に戦争を起こせなくなる。特に方台の西側に閉じ込められちゃうとそうだ。」

釈「口で言うことと、行いとが容易に合致出来なくなるんですね。ただ、政治的にはそれでも。」
まゆ子「まとまる為の大義名分としては、問題なく機能する。戦争の自主性に関しても、弥生ちゃんが画定する新時代もこれからどういう風に流れていくか分かったもんじゃない。いずれ動乱の時代が訪れるだろう、と考えるとここは一時退いた方が良いという判断になる。新救世主のお手並み拝見、てもんだ。」

釈「神様派と武徳王派では、どちらが優勢か、というのが無いんですね。どちらも正しい。」
じゅえる「正しいからこそ対立するんだ。どちらも現時点においての破綻は考えない。これから弥生ちゃんの影響で方台がどういう風に変わって行くか、これに備えている。

一方ソグヴィタル王家の派閥は現実派だ。こちらはもっと広い視野で方台全土の政治情勢を考える。つまり金雷蜒王国の方がどう動くか、これをだね。そして戦争をする為には民衆の支持が必要、という極当たり前の結論に到達する。メグリアル王家が青晶蜥神救世主の方針に従って民衆救済を行うのに対して、ソグヴィタル王家では現実の民衆の暮らしを着実に改善していく事で国力を増強し軍備拡張の余力を引き出そうとする。」

じゅえる「つまり、ここも戦争を諦めてはいないんだ。」
まゆ子「そうなんだ。三者共に新しい戦争とはなにか、を考えている。そしてどれもそれぞれ当然の手法に回帰する。気付いた時には、彼らはいつの間にか同じ籠の中では暮らせないほどに乖離していると、そういう事態になってるんだ。」

釈「武徳王原則派、ソグヴィタル現実派、メグリアル救済派。でここに黒甲枝諸侯国派が出来るんですね。」

まゆ子「元老院の思惑から外れて、黒甲枝達も独自の道を模索する、というわけだ。彼らの意見は元老院では取り上げられる事が無く、三王家による王国分裂の際にも考慮されなかった。それがジョグジョ薔薇の乱で一気に噴出し、最終的にはグテ地に立て篭る事になる。」
釈「原理主義派ですね。」
じゅえる「黒甲枝、神兵としてあくまでも金雷蜒王国と相容れない、て奴だ。」

まゆ子「まあそうなんだけどー、それじゃあちょっと面白みに欠けるかなあ。あーともかく、後に出来る黒甲枝諸侯国はギィール神族立ち入り禁止ね。」
じゅえる「そいうとこもあって面白いかな。」

釈「逆に言うと、メグリアル王国は弥生ちゃん先輩の影響で、神族と黒甲枝がごっちゃに居るんですよね。」
じゅえる「国際都市、ということか。ふむふむ。してみるとだね、ソグヴィタル王国は穀倉地帯を領土にしているから、農民の権利が高いってことだな。」
まゆ子「うん産業別に勢力が違うってのはあるべきだろうね。それがまた政治体制の形態を規定する。」

釈「で、当面考えるべき元老院金翅幹家の対立に戻りましょう。下ごしらえはこのくらいでいいんじゃないですかね。」
じゅえる「カブトゥース戦争まで考えたいところではあるが、まあいいか。」

まゆ子「かなり意外だろうけれど一番勢力が大きいのはメグリアル派だ。
 これはむしろ当然で、新しく降って来た救世主を褐甲角王国に取り込んでその影響力を利用して褐甲角王国の利益としよう、という考え方は非常に現実的かつ堅実なものだ。これに表立って反対出来る者は居ない。

 居ないが、あまりにも救世主の力にのめり込み過ぎるのはいかん、てのが武徳王派だ。故に武徳王の権威をことさらに高めようと考える。
 ソグヴィタル派はそれも過ぎてはいかんと考える。つまり神の力に頼り過ぎて人間本来の成長力を軽んじてはならないとね。

 で、この議論から弾かれたのが黒甲枝の一派が唱える徹底抗戦だよ。金雷蜒王国との共存はあり得ないという原理主義だが、これにも欠点はある。
 この原理を推し進めると当然、青晶蜥神救世主をも否定しなければならない。青晶蜥神救世主は金雷蜒褐甲角両王国の和平が望みであるから、金雷蜒王国殲滅を唱えればとうぜん衝突する。これは民衆が許さない。」

釈「徹底抗戦派は最初から無理ですね。ジョグジョ薔薇はそこの矛盾を解決する策を黒甲枝に与えたんですね。」
じゅえる「なるほど。」

まゆ子「で、メグリアル派は多いけれど王国分割までも唱える者は少ない。ただ彼らもカブトムシの聖蟲を戴く者であるからには武徳王派を立てる必要がある。メグリアル派は同時に武徳王派でもあり、両方が高く並び立つのを理想として考える。」
じゅえる「穏当な考え方だね。」

釈「問題ないと思いますが、それが分裂に至るのはやはりギィール神族ですか。」
まゆ子「そうだね。メグリアル派の思考ではどうしてもギィール神族との共存は避けられない。和平は結べてもギィール神族を受入れてまでの共存は、さすがに賛同者は少ない。
 だから、分裂というよりもメグリアル王領を特別区として考える発想で、分裂が考えられる。当然特別区はボウダン街道から聖山街道までの本来でもギィール神族の往来がある地域だ。」

じゅえる「穏当かつまっとうで衝突も少ない考え方だね。これが問題になるとは思わないけれど。」
まゆ子「メグリアル王の裁量権をどの程度任せるか、で問題になる。聖戴権は元より無いが統治の三権、法務と行政・徴税権・軍権をどの程度認めるかで揉めにもめる。」

釈「解決策は?」
じゅえる「ソグヴィタル王国は同様の問題が絡まないのかな?」

まゆ子「ソグヴィタル王国は当初グテ地を含む不毛の領域を抱えて居たから、徴税権に関しては最初から認められて居たんだ。軍権も最前線のスプリタ街道を含むから最大限の権利を認めるべきと考える。これに元老院では異論が無い。問題は、ソグヴィタル王国と同様の権利をメグリアル王国に認めるか、だ。」

釈「ギィール神族が往来し、青晶蜥神救世主が本拠を構える地域ですからねえ。メグリアル王の考えにも影響は大きいでしょう。それは難しい判断ですよ。」
まゆ子「その一方で、メグリアル王には神聖秩序に関しての取決めは元から最大限に認められている。その為の王家だから、この権を活かすには当然その他の権利も付随させねばならない。交渉担当者として十分な権利を持たねば意味がない。」

じゅえる「弥生ちゃんはノータッチ?」
まゆ子「基本的には。弥生ちゃんの示唆では、武徳王を更に棚上げして武徳王国を元老院自体が内閣を作って統治し、三王国の頂点に武徳王が居る、てのも考えてみた。金翅幹家の使者に話してみて元老院で検討された結果、これは排される。武徳王が軍権を失う事になるかも、という危惧が拭えなかったんだ。」

じゅえる「そりゃまたどうして。」
まゆ子「現在の褐甲角王国では黒甲枝が軍務を司り、武徳王のみならず三王も軍を直接には指揮しない。だが三つに分かれるとメグリアル・ソグヴィタル王は直接軍を指揮する、せざるを得ないと考える。その上にまた武徳王が居る、という体制はさすがに無理が有るのさ。」

釈「つまり武徳王派は軍権に強くこだわり、武徳王が軍を直接に指揮する事を求めた、ということですか。」
じゅえる「他の二王の領域においても、武徳王に直接繋がる黒甲枝が軍を指揮する、という形態は無理なんだな。そのくらいならそれぞれの王に軍権を委ねるべきだ、と。」

釈「現在のシステムが使えないわけですか。いっそ分割をやめてしまうという選択肢はありませんか?」
まゆ子「それは最初からどんと聳え立つ山だ。だが弥生ちゃんが帰還後、王国の矛盾がぼろぼろと出て来るんだよ。抜本的改革が必要だと誰の目にも明らかだ。弥生ちゃんが分割を勧めたのも、大きな領域での改革は難しく、間違いを正せないからだよ。小分けにして改革の競争を行い、よく出来たものを他でも用いれば良いだろうという。」

じゅえる「王国が大きなままであれば落ち着くまでに物凄く長い時間が掛る、と見切ったんだね。」
釈「元老院もそれを認識して、ばらしてみようと考えた。分割がダメならば、更に困難な課題をクリアしないといけなくなる。」
じゅえる「ただその為には軍もバラす必要がある、か。ふうむ。もう少し小さく多く分ける、という手は?」

まゆ子「考えなかったわけじゃない。ガンガランガおよび毒地平原、カプタンギジェ関、グテ地を更に誰かに任せよう、という計画も出た。

 ガンガランガはちょいと特殊な地で、農耕はあまりやらない牧畜の地で、しかもスプリタ街道の起点だ。ソグヴィタル王国は当然に欲しがるが歴史的にミンドレアとは違うものだ、と認識されていたんだ。」
釈「風土ががらっと変わる土地なんですね。ここは。」
まゆ子「ガンガランガを武徳王国の飛び地として兎竜を養う、という考え方もあった。敵に武徳王が面しないというのはかっこがつかない、という考え方だ。これは結構深刻な問題だよ。」

じゅえる「頓挫したのは何故?」
まゆ子「王の下に小王を作る、という発想であるから、ちょっと褐甲角王国の気風に合わなかった。三王家は一応血縁であるからね。それ以外の者に任せるというのは、難しい。」

釈「結果、三王国に分かれるんですが、決定した要因は?」

まゆ子「弥生ちゃんの西金雷蜒王国征服だ。絶対無理と思われていたこれを人工動力船でさくっと成し遂げてしまった結果、救世主の言うとおりにするのは天河の計画で、より発展する契機となるのではないか、と考える者が増えた。もちろんこの判断は当りなんだ。武徳王がメグリアル王とソグヴィタル王と会談して、さっくり分ける事になる。聖断が下ったということで、褐甲角王国は神妙に分割していくんだが、その過程で徹底抗戦派は脱落していくんだ。」

じゅえる「黒甲枝徹底抗戦派の問題は、また別口で考えましょう。というか、考えなければ話が組み立てられない。」
釈「ジョグジョ薔薇の乱に繋げなきゃいけませんからね。」

まゆ子「まあ、徹底抗戦派は実はそれまでの間に随分と大手柄を立てたんだ。西金雷蜒王国戦があるからさ。で、勝ったはずの戦争で、結果は西金雷蜒王国は普通に体制に組み入れられて以前よりも繁栄する、逆に勝ったはずの褐甲角王国が三分裂してしまうという有り様。こりゃどうしたことか、とびっくりするのは当たり前だ。」
じゅえる「うむ。期待と真逆の結果を得てしまったんだね。」

釈「元老院はこれまで先政主義派と先戦主義派とに分かれて居たんですが、三分割論争の頃にはどういう分け方をしますか。やはり王家の名を取って?」
じゅえる「それはさすがに障りがあるだろう。メグリアル派は、えーと救世派か。武徳王派は、…障りがある、な。」

まゆ子「素直に北派西派南派、としよう。メグリアル派は北派、武徳王派は西派、ソグヴィタル派は南派、徹底抗戦は東派だ。」

釈「それは簡単かつ分かりやすいですね。どこに重点を置いているかが丸分かりです。」
じゅえる「よしそれでいこう。」

***   ***

まゆ子「で、元老員だ。えーと今までに10家くらいは出演したかな。」
釈「リストアップだけでも大事ですねえ。元老院内での闘争を描くには、固有名詞は必要ですよね。」
じゅえる「わたし、ガーハルさんだけ覚えてる。」

まゆ子「まあなんだ。色々と考えていこう。えーと、前回の考証で東西南北と四つに派閥が分かれている事が判明した。ただし東派は元老院には居ない。」
じゅえる「唯ひとり、ジョグジョ薔薇だけだ。」
釈「そうですね、ジョグジョ薔薇は完全ではありえないけれど東派に理解を示し議会でもそれに沿った発言をする。

 って、元老院での議論は公開されるの?」
まゆ子「元老院というシステムは、本会場はただの議決しかしないもんだ。討議はそれぞれの家で宴会を行い、私的に決着をつけて元老院で発表し、武徳王の裁可を受けるというシステム。だが演説はある。つまり本会場のでの演説だけは、すべての黒甲枝および官僚に対して公開される。んでもって、ジョグジョ薔薇はこれの達人だ。」
じゅえる「ふむ。つまりジョグジョ薔薇は弱小勢力には違いないが、透明性の観点からいうと現代離れした近代性を備えているんだ。」

釈「弱いが故に大向こうを狙った言動を繰り返すんですね。でもジョグジョ薔薇が孤立するのは、東派に同調するからですか?他に東派の後見をする者は居ない?」

まゆ子「居るはずだが、どうしようというのが今回のお題。ちなみにガーハルさんは戦争が長期化すると見込んで居た派閥であり、なんとなく東派には近い。元の先戦主義派には東派は多いはずだが、どうしよう。」
じゅえる「これはあれだね、王国が和平を結ぶという武徳王の聖断に対して正面から非を唱えるのは、難しいんだ。やってのけるのはジョグジョ薔薇だけで、故に彼に他の元老員も陰ながら応援する、という形で密かに乗っている。」

釈「せこいですね、いやらしい大人の世界の話ですね。そういうのですよ、今回必要なのは。」
まゆ子「うむまったくその通り。ジョグジョ薔薇は自らがどのように他から見られているか熟知しており、傍観者達が彼を躍らせ易いように都合のよいように騒ぎを引き起こす。」

じゅえる「となると、武徳王派である西派が、それに乗ってるというところかな。」
まゆ子「そうねえ、北派はさすがに居ないけど、南派には若干あるか。今は国力を貯えて事態の急変に備えるべき、という現実的な対応にはもちろんいきなり戦争に突入というシナリオが含まれている。青晶蜥王国体制の崩壊、という可能性は誰にも否定出来ない。」

じゅえる「その青晶蜥王国体制というのがよくわからない。弥生ちゃんが居る時には機能する、これはわかる。しかしその後担保するものはないでしょ。」
釈「しかしそんな基本的なものを弥生ちゃんキャプテンが見逃す道理はありません。なにか手を打っているはずです。」

まゆ子「いや、もうやっちゃってるんだけどね。黒甲枝、神兵の独立性が高まるというこれからの思想的風潮はもう用意されている。神兵は一人ひとり独立して正義を模索するべきだ、という問い掛けは至るところでやっている。」
じゅえる「あー、そうか。東派はそれ自体が武徳王の聖断に対する反逆なんだった。そうか、そりゃ盲点だな。」
釈「つまりこれからは黒甲枝は笛を吹いても動かない、王国運営にとっての邪魔者になるんですか。」

まゆ子「これはまだ誰も気付いていない。ジョグジョ薔薇の乱で初めて認識され、またその為に弥生ちゃんは乱を必要として開戦を画策する。」
じゅえる「またマッチポンプか!」
釈「全くひでぇ救世主様ですたい!」

まゆ子「というわけで、実は青晶蜥王国体制は見た目よりはるかに安泰なんだ。だがその事に気付く人はジョグジョ薔薇の乱の後でも少ない。いや、聖蟲を戴く者が少なくなってただの人が支配権を持つまで、半分の聖戴者は気付かなかったと言える。それほど決定的に騙されてるんだ。」

じゅえる「つまり、黒甲枝のみならずギィール神族も勝手な判断で動き回り、各王国の思惑を嘲笑うかに随所でそれぞれの正義を振り回すんだ。」
釈「うーむ、誰が敵やら味方やら分からない。」

まゆ子「そういうことだ。各王国はこれまでどおりに王が支配する聖戴者の国を作っていこうとする。それに対し、個々の聖戴者は方台全土の守護者として動くから、個々の王国の都合は考えない。いや、個々の王国の偽善欺瞞を暴き出し正義の鉄槌を加えて民衆を救う事こそ、聖戴者の使命だと心得ている。すべての法に優先して弥生ちゃんの正義の法が支配するのだ。」
釈「にも関わらず、個々の王国は聖戴者でもって構成される。矛盾と言うよりも自己否定のような、倒錯したシステムですねえ。」

じゅえる「というかさ、王国の上位指導者達と下位の聖戴者との間の齟齬は、どのように調整されるのだよ。どこかで割り切らなければならないでしょ。でも王国全体を考える者と目先の正義を考える者とでは絶対に食い違う。」
まゆ子「そこを各自でなんとかせい、というのが弥生ちゃんが与える課題、褐甲角王国を分割する目的なのだよ。

 ちなみに神兵は社会正義の為に方台全土をうろつき回るが、ギィール神族は方台民衆の生活基盤を安定させる為に漫遊し知恵を与えてその土地土地に適した策を授けてくれるのだ。水利土木工事も請け負うぞ。」
釈「それはー、為政者としてはなかなかにキツい話ですねえ。自らの無能も暴露されてしまう。」
じゅえる「それが、各々の個人的な正義に基づいて動いてるのか。王国を運営していくのも大変だ。」

まゆ子「というわけで、褐甲角王国分割の論議が進む最中ではまったく予想もしない事態が、弥生ちゃんの画策で進行中なのです。それに気付いていない金翅幹元老員達は、後から見るとかなーりとんちんかんな事をやってるわけです。」

じゅえる「つまり、元老員達は黒甲枝が従来通りに命令に絶対服従するものとして、王国分割を計画する。しかし、それに同意しない東派というのが発生して対応に苦慮し、切り捨てという最悪に近い選択をしてしまう。これを見て取ったジョグジョ薔薇が自らの権力を強化する為に東派の囲い込みに走り、遂には挙兵という暴挙に出る。敵対する相手は誰?」

まゆ子「基本的には弥生ちゃんです。ジョグジョ薔薇の乱は弥生ちゃんに対する唯一の、そして正式な宣戦布告をしての戦争となります。
 また弥生ちゃんが唯一王として軍を指揮した戦争です。

 それの前の西金雷蜒王国攻略戦は、前半が黒甲枝の百島湾海軍、後半がギィール神族も交えた混成軍に委託しての戦争となり、弥生ちゃんが直接指揮はしません。」

釈「なのに、なぜジョグジョ薔薇の乱では出るのですか?間尺に合わないでしょう。」
まゆ子「ジョグジョ薔薇が正面切って挑戦したからだよ。誰もがまさかと思う、青晶蜥神救世主への反抗だ。人皆驚き、いかにして対処すべきか忘れる。

 その時弥生ちゃん自ら親征を宣言する。それもシュシュバランタの掲げるピルマルレレコ旗だけを御供にだ。デュータム点からベイスラ近辺の毒地内決戦場に至るまでに義勇兵が、ただの民間人の百姓とか女とかもが次々に集まって来るという事態になる。

 対するにジョグジョ薔薇の軍は、百戦錬磨の黒甲枝の神兵に率いられるクワアット兵邑兵その数1万てとこ。神兵の数は100有余。まともに戦えばジョグジョ薔薇の方が勝つ。」

釈「負けちゃうんですか?!」
じゅえる「負けない。負ける道理が無い。黒甲枝は自らに対して民衆が大挙して向かって来るという初めての事態に戸惑い、自らの正義を確信出来なくなる。で、そこに出て来るのが、」

まゆ子「ナルミン姫の額の聖蟲により制御される、ジョグジョ薔薇の親衛謎の重甲冑兵だ。彼らと謎の薬とかなんかで判断力を麻痺させられた兵士が民衆の兵に対して襲いかかる。この事態に陥って、それまで様子見状態にあった両軍どちらにも居る神兵が参戦して激闘を交わす事になる。」

じゅえる「なるほど。ようやくジョグジョ薔薇の乱の風景が目に浮かぶようになったよ。」
釈「具体的に語られるのはこれが初めてですね。ジョグジョ薔薇の乱。」
まゆ子「そういうこった。つまりこの戦、民衆と神兵の戦いなのだ。だから画期的なんだ。」

じゅえる「当然、この戦の仕掛け人は「白の母」なのだね。」
釈「そういう事になりますねえ。なるほど、仕掛けのし甲斐がありますよ。とうぜん人喰い教団も参戦しましょうね。」
まゆ子「うむ、なんか考えておこう。ガニメランバンを華々しく散らさなきゃ面白くない。」
じゅえる「あの首から髑髏下げてる禿頭か。なるほど、それは。」

釈「その後の仕置きはどうなります。ジョグジョ薔薇は討たれるとしても、東派の黒甲枝は。」
まゆ子「ジョグジョ薔薇が討たれた後、彼らはイロ・エイベント県に敗走する。

 ここで弥生ちゃんは彼らの代表と和平交渉を持ち、グテ地を治める彼らだけの共和国、という概念を提唱する。共和国の最初だね。しかし勿論彼らはそんな話には乗らない。なにかまだ策略があるものと警戒をしている。そこで弥生ちゃんは自らの分身とも言える「カタナ」を置いて用事に出かけるんだ。で、このすぐ後にコウモリ神人との最後の決戦に挑む事となる。」

じゅえる「で、108本の剣を以ってコウモリ神人を封禁し天河に帰し、だがハリセンは破壊され弥生ちゃんの身体にも重大な損傷を受けて西の海に去る事が決定的になる。
 カタナはコウモリ神人を倒す最後の一本として劫アランサが乱の首謀者達から回収し、戦場の弥生ちゃんに届ける。ここにおいて、弥生ちゃん伝説は完結するわけだ。」

釈「あ、108本の剣について読者様は知りませんよ。」
まゆ子「そうだったっけ。

えーと、弥生ちゃん最後のバトルはコウモリ神人が真の姿、真っ黒で巨大な獣と化して弥生ちゃんと一騎討ちをします。だがこの獣は弥生ちゃんの青い光を帯びた剣ですら徹らない毛皮を纏っている。

 で、序盤戦で獣の攻撃を防ぎ続けた弥生ちゃんだがとうとう魔法のハリセンが破損してしまい、周りの人間を守れなくなる。そこで一時タイムを取って周囲に控える褐甲角神兵やギィール神族、その他兵に対し1里の距離をとって批難しろと命ずる。加勢は要らない、というか役に立たない。獣はあまりにも早く白い牙はあまりにも鋭い、神兵ですらまったく歯が立たない。

 で、旗持ちのシュシュバランタのみを置いて皆は退避するが、弥生ちゃんの命で皆刀や剣を抜いて地面に突き刺しておく。なにしろ弥生ちゃんが帯びて居た新しい刀ですら二三合打ち合っただけで折れてしまう牙だ。刀が何本有っても足りない。すぐ使えるように抜き身で地面に林のように刺している。

 で、弥生ちゃんはこれを一本ずつ抜いてコウモリ神人と戦うが、獣の毛皮は凄まじい装甲でまったく刃が徹らない。しかしそれでもツボに相当する部分にはようやく刺さるので、弥生ちゃんは極めて的確に正確に執念深く丁寧に、一本ずつ刀を差し込んでいき、獣の魔法的防御能力を無効化する。

 この戦いは十数時間にも及び、108本の刀をぶっ刺してようやくガードが解除されてコウモリ神人の真の姿が顕れる。そこにジョグジョ薔薇反乱勢力から「カタナ」を受け取った劫アランサ王女が駆けつけて弥生ちゃんに渡し、遂には留めを刺す事に成功する。
 二人の戦いを見守った神兵や神族、兵達は天河に帰るコウモリ神人を最敬礼で見送るのでした。

 だが弥生ちゃんはこの戦いで身体が透けて見えるほどの強力な光線を浴びており、またハリセンも破損して修理の為に西の海の果てに行かねばならないと言い出す。で、弥生ちゃんが方台を去る日が着々と近付くのでありました。」

じゅえる「これが最終回直前のお話。つまり、ジョグジョ薔薇の乱はどうしてもクリアしなければならないのだ。」

釈「てえことは、ここで軌バイジャンさんが出て来て弓レアルと遭遇、という劇的なシーンですね。」
じゅえる「戦場でばったり、か。うむ、弓レアルも弥生ちゃん軍に何故か参戦するのだな。というか、何万というごっちゃの混成部隊の中に居るかも知れない、という勘は悪くない。で、敵方に記憶喪失で人喰い教団部隊の中に居るバイジャンさんを発見するんだ。」

まゆ子「ふむふむ。それは定番中の定番だな。ちなみに記憶喪失の軌バイジャンさんは人喰い教団関連の若い女に拾われて、記憶は無いものの武術の腕はピカイチでそのまま兵士にされている、という塩梅だね。」

釈「定番中の定番ですね。その人喰い教団の女はぶち殺しましょう。」
じゅえる「うむ。こいつは戦場で弓レアルに男を手渡しして絶命、だ。うむ。」
まゆ子「あんちょくだなあ。」

釈「しかし、…なんというか、いつまでたっても元老院の内部構造についての話が進みませんねえ。」
じゅえる「手掛かり無さすぎ。」

まゆ子「うむ、なんとかする。あー、つまり元老院がなんともならないのは補助線が無いからだ。そして補助線と言えばハジパイ王以外ありえない。だからハジパイ王の視点で考える。」
じゅえる「ふむ、あれは欠かせない人物なんだな。」
釈「でも近々引退予定です。」

まゆ子「そのとおり、引退させられちゃうから、銀椿つまりジョグジョ薔薇のライバルね、をメグリアル王家に放り込みます。今後事態はメグリアル王家の処遇こそが重点となる、と見切って腹心とも言える銀椿を投入するのです。」

じゅえる「つまり、これからどうなるかはハジパイ王には読めているんだ。」

釈「銀椿という人は随分な切れ者なんですねえ、そうすると。」

まゆ子「切れ者、というよりもメグリアル王家は伝統的に政治向きには弱い家系だ。だから有能な政治家としての黒甲枝の家臣宰相は是非とも欲しい。特にこれから三分割するとなると、それに誰を当てるかが大問題になる。

 ハジパイ王はそれを見切って、自らの次の右腕になるべく育て上げた、まあこれはつまり息子のハジパイ王太子のちのソグヴィタル=ハジパイ王の右腕となるべく育てた虎の子の人材なんだ、をメグリアル王家に潜入させた。つまりメグリアル王家が今後青晶蜥神救世主と連携して方台に新たなる秩序を作り上げるのに、褐甲角王国つまりは旧来の褐甲角王国の理念を維持し導入させる為に、彼を送り込んだのだな。

 この時点ではそこに、新武徳王国の潜入スパイという意味合いも新ソグヴィタル王国の手先という側面も無い。変わって行く王国の方針ではなく、これまで築いて来た王国の在り方を正当に評価させる為に、腹心を送り込んだと言える。」

じゅえる「新王国と旧褐甲角王国は違うもの?」
まゆ子「完全に違う、とハジパイ王は解釈する。

 まあ、金雷蜒王国を潰滅させるという中心的課題が消失してしまってはまったく同じではあり得ないし、後の人間が再評価するにしてもそこを外しては本来の意図が伝わらない。褐甲角王国がまさに天河十二神の民衆救済の中心にして頂点であった時の有り様は、後の者には決して分からないんだ。
 ハジパイ王はそれを理解する。これは彼が歴史に強い興味を持ち、かっての小王達の生き様を発掘させて来た賜物でもある。一度亡びてしまった理想は、後世の者には決して理解出来ない。」

釈「つまりハジパイ王は、褐甲角王国が亡びた先の未来を、すでに予想して居たわけですか。まあ、新しい救世主が来ると既存の王国は亡びるに似た変革をせざるを得ないのは道理ですが、完全に亡びるほどのダメージを受けると理解して居たとは、」

まゆ子「ハジパイ王は予想していた。というよりも、知って居た。

 金雷蜒神救世主が突如として歴史に浮かび上がって来た時に、それまであった小王達の世界が一気に古びた時代遅れのものになり瞬く内に消滅したのだけれど、でもそこには様々な次元の正義が渦巻き悪と戦い、高度な政治的駆け引きがあった、と読みとれるんだよ。それらの意見対立は今やまったく些細な問題として誰の目にも留まらない。だが当時の人にとってすれば、天地を揺るがす重大事に他ならない。

 これは褐甲角神救世主初代武徳王が現われた時も同じだ。そんなに簡単に褐甲角王国は立ち上がったわけじゃなく、正直にいうと50年以上も掛っているのだが、それでも出現前の神聖金雷蜒王国の動乱を引き起こした問題とか対立点とかは、今は誰も覚えていない。
 残ったのはその結果民衆が非常に大きな苦難に見舞われ、相次ぐ戦争により国土の荒廃が進んだ事、これだけだ。ほんとうはその政治的対立を引き起こす価値観の違いとかの方がよほど大事だったはずなのに、今ではそれがなんだったのかさえはっきりとは分からない。

 ハジパイ王は褐甲角王国がそのように歴史の闇に埋もれていくのを怖れたんだ。」
じゅえる「ふうむ、深いね。」

釈「そんな事を考えて居たんですか、あの人は。まあ、賢い人とは思いますが、それくらいなら救世主を排除しちゃう方法とか考えた方が良かったんじゃないですかねえ。」

まゆ子「いや、排除してたんだよ。偽救世主が何人も現われては火焙りにされている。弥生ちゃん登場以降はそんな事があったことさえ忘れちゃったけれど、救世主を名乗る者はたちどころに捕まって衛視局の厳しい詮議を受け、贋者つまりはただの政治運動家だと判明すると躊躇無く火焙りだ。まあ言うなれば言論統制を行って居たわけだ。」

じゅえる「おお、恐怖政治だったんだ。」
まゆ子「もちろん、私は救世主だ!などと名乗らなければ、百叩きで放免てのの方が多かったんだけどね。また詮議の途中であまりにも厳しくてたちまち転ぶ者も出る。こういう奴は火焙りは免れて、救世主を騙った者として生きたまま晒し者にされている。」

釈「つまりは救世主を名乗らなければ、或る程度の王国批判も許されて居たんですね。」
まゆ子「或る程度、ではあるけれどね。それも為政者の度量だと認めている。煽動とかは許さないけれどさ。」

釈「ではハジパイ王は、王国がこのままでは亡びる、と思って居たわけですよ。かといって現状を変えるべき方法も見出せない。見出せない、でいいんですね?」
じゅえる「弥生ちゃんが来る前にこの状況を予測して居たのなら、それは狂人だ。」
釈「ごもっともです。」

まゆ子「ハジパイ王は現状維持以上の策を持たなかった。また必要もしなかった。ただこのままのんべんだらりとした方台の状況が続けば、いずれ黒甲枝のモラルが揺らぎ王国に致命的な欠陥が生じるとは理解して居た。ただそれがどのような形で現われるかは推定不能だし、あらかじめ手当てする必要も認められない。

 長く平穏が続けばその先には動乱が必ず訪れる。それを防ぐ為には、或る程度の規模で自ら動乱をコントロール可能な形で起こすべきだ、と考えて居た。ガス抜き、だね。

 だからヒィキタイタンの攻撃計画はそのまま維持し続けたし、自分の後ヒィキタイタンがそれを進めて本当に戦争を引き起こすのも容認するつもりであった。所詮褐甲角王国は戦争抜きでは成り立たない、と知っているからね。」

じゅえる「ふうむ、それじゃあこれまでとまったく同じなんだ。というか、それ以外に褐甲角王国が依って立つ方策が無いんだね。」
釈「なんだかんだ言っても、一度出来上がってしまったものはどんどん転がっていくものですか。しかし、」

まゆ子「弥生ちゃんは決定的に彼の予想を裏切り王国を壊滅的な不安に落とし込み、時代の闇に溶けていく危機を生み出してしまう。それに抗するには、青晶蜥神救世主の懐に飛び込み自ら状況をコントロールするしかない。ただ彼の年齢からは直接的には不可能だ。だから銀椿を送り込む。」

じゅえる「銀椿の下りは理解した。でも元老院金翅幹家には、手を打って無いの?」
まゆ子「”白根っこの会”がそれなんだけどね、これは今から赤甲梢・ヒィキタイタン裁判で暴走して潰滅する予定です。…そうか、潰滅した後の白根っこの会をまず考えるべきなんだ。」

じゅえる「白根っこの会、は弥生ちゃん劇的登場!の後どうなるの? やっぱ処罰される?」

まゆ子「えーと、それには白根っこの会がどのように働いたかを考えなきゃいかんのだが、それは次の機会に置いといて。
 えー、武徳王から謹慎処分を受けて居ます。会議はおろか私的な会合への参加、書簡のやりとりも人をやっての密議もすべて禁止です。これは無期限ではありますが、期間はそう長くないと考えられている。1、2年くらいを見込んでます。」
釈「この激変期の1、2年は命取りですねえ。」

じゅえる「ほんとうに謹慎してたの?」
まゆ子「まあほんとうにしてましたよ、褐甲角神の聖蟲を戴く者は律義なんだから。ただその間皆さん御勉強をなさっております。本を読むのは自由ですからね。で、矢継ぎ早に執筆される昨今の情勢を伝える書物にて、一応時代の波から取り残されないようにはしています。また彼らのためにも、他の元老員は書簡ではなく本を書きますね。」
じゅえる「つまり、パブリックにされた意見にアクセスすること自体は禁じられていない、ってことか。」
釈「謹慎処分としては、ちと緩いですか。」

まゆ子「そんなわけで、白根っこの会が出て来るのはまさにジョグジョ薔薇の乱からだ。彼らは謹慎処分が溶けると同時に行動を始め、なんだかんだと画策して黒甲枝の東派を焚き付け、ついには対弥生ちゃん抵抗運動の実力行使をさせるのに成功する。」

釈「ふむ。実に正当な道筋ですね。でも黒甲枝諸侯国に参加するのですか?」
まゆ子「どうしよう。一応参加することにするか。で、敗北後弥生ちゃんとの交渉において、黒甲枝と彼ら白根っことの間の確執が明らかになり、ついには黒甲枝諸侯国となる段階で追放されて、弥生ちゃんとの協定が結ばれる。こういう仕掛けにしておこう。」

じゅえる「ではマジで武装して参加する、ということにするか。」
釈「そのくらい単純な方が見栄えがしますね。でも裏でこそこそしているのも似合いますが。」

まゆ子「そこは銀椿に任せよう。彼は白根っこの会を密かに焚き付けるなにか、をするわけです。逆に言うと、ジョグジョ薔薇を潰す為に白根っこの会を暴走させてひっくるめて潰した、これだね。」
じゅえる「ふむふむ。つまりはジョグジョ薔薇は彼なりに未来に通用するなにかを立ち上げる直前であったものを、銀椿により潰されたと。それは何?」

まゆ子「弥生ちゃんに公然と叛旗を翻すくらいだ。たぶん、…そうね、次の青晶蜥神救世主の選定方法とか即位の条件とかを突き付けるつもりだったんだ。

 これはメグリアル劫アランサが次になるのを画策する銀椿にもかなり不利な話。確かに既存の王国が弥生ちゃん以外の人間を救世主と看做す時には、なにかの条件や資格が必要なのもまた正しい。」

釈「これは、きゃぷてんなにか対策を?」

まゆ子「まあ、現救世主が自ら見付けて来る、というシステムなんだけどね。これは三代シャクティがやってくることで確固たるものとなる。青晶蜥神救世主には次の救世主が誰か見抜く力が有る、と判明するんだ。」
じゅえる「しかし、ジョグジョ薔薇の乱の前にはそれは分かってない、ということだね。何故そのひとが救世主にならねばならないのか、それはどのような条件を兼ね備えた人なのか、ジョグジョ薔薇はこれを明らかにしようとする。これに対して弥生ちゃんの答えは?」

まゆ子「つまりがそれが、弥生ちゃんが旗持ちのみを連れて単身敵地に乗り込む、というのだ。民衆により支持される者こそが次の救世主にふさわしい、という事を言語に依らず示したのだね。」

釈「それでは、劫アランサ王女もその時の戦になにか貢献したのですね。」
まゆ子「あ、うーん、ここは出ない方がいいような気がしますねー。」
じゅえる「ここではアランサはなにか、彼女にしか出来ない事をするべきですね。それこそ白根っこの会を直接説得する、とか。」

まゆ子「ふむ、そうだね。この段階ではまだ王女の頭の上はカブトムシの聖蟲が載っている。同じカブトムシ神の使徒として、白根っこの会と黒甲枝東派を説得する特使として弥生ちゃんに先行してるんだ。もちろん、弥生ちゃんの決意は変らないから、アランサ単独独断で戦地に先乗りして単身で交渉している。」
じゅえる「ふむ、そんなとこだね。」

釈「きゃぷてんが救いに来るまで、アランサは敢えて虜の身となり到着を待っているんです。戦場でどのような結末を迎えるか、目では見ずとも耳で聞いている。」
まゆ子「それでやきもきしてるんだね。相変わらず。」

じゅえる「で、逃げ出した白根っこの会はカプタニアに戻るわけにもいかず、無法都市タコリティのヒィキタイタンさんの所へ駆け込むのでした。」

釈「かって刑死させようとした人のところにですか。」
まゆ子「うーむ、なる。それはうん、いいよ。」

***   ***

まゆ子「基本的な凄くまぬけな話をしよう。このくっちゃり、いまんとこ二回分書いたけど、ここまでで400字詰め原稿用紙85枚だ。」
釈「…いま初稿ができたばかりのげばおとEP5「最終章 喪服の女達」はだいたい55枚ってとこですよ。」
じゅえる「うーむ、なにも考えずに書くと、かくのごとくべらべらと書けるもんなのだね。」

まゆ子「というわけで、行くか。えー、で未だ出て来ない元老院です。ガーハルさんはやはり外すわけにはいかない。」
じゅえる「当然というよりも、読者様が感情移入出来る唯一の元老員だ。外すと意味が無い。」

釈「そういう意味では、これまで元老員にキャラを作らなかったのは失敗ですね。」
じゅえる「まあそれも善し悪しだ。要するにガーハルさんだけには焦点が行っている。ガーハルさんを中心とすれば、すんなりと読者様の視点が誘導出来るんだ。」
まゆ子「うん、そこんとこの構造を外してはならないね。

 えーと、だが彼は基本的にこれから起こる赤甲梢・ヒィキタイタン裁判では無力なその他大勢に過ぎない。白根っこの会とジョグジョ薔薇だけがクローズアップされます。というか、ジョグジョ薔薇は暴走する元老院白根っこに唯一対抗する孤高のヒーローとして登場する。」
じゅえる「最初からその構図だね。だがなにか裏で活躍するキャラとエピソードを用意しなければならないのも確かだ。」

釈「とはいえ、その為のツールはとっくの昔に用意されているわけで、偽女神族のなりそこないの弦レッツオさんは未だ弥生ちゃんキャプテンの廻し者として働いているわけです。」
まゆ子「だな。つまりガーハルさんは彼女の手引きにより、えーと、」

じゅえる「劫アランサ王女。彼女は当然赤甲梢裁判では被告の側にある。彼女に対してガーハルさんは弦レッツオさん経由で知らされる弥生ちゃん情報を逐次伝える役をする。」
まゆ子「うん。だがそれ以上は無理だし、色々と試してみても無理だった、という描写を作ろう。」

釈「してみると、ガーハルさんは北派ですか。」
まゆ子「どうだろう。彼の基本はむしろ南派と東派なんだけどさあ。」
じゅえる「一度弥生ちゃんに会わせてみるのはどうかな。帰ってきて再び救世の聖業に邁進する弥生ちゃんの元に御機嫌伺いというかで出かけて、北派になる。」

まゆ子「悪くないアイデアだ。しかしー、やはりここは劫アランサ王女を立てるべきではないかな。救済された赤甲梢の処分を巡って、再度褐甲角王国は処遇を考え直さなければならなくなった。赤甲梢解体のアイデアは未だ有効で、多少の手直しが必要になる。また劫アランサが、誰がどう見ても弥生ちゃんの後継者っぽいわけで、彼女の周りにも武力を配置せねばならない。そこで褐甲角王国中央と交渉する窓口、いや劫アランサ王女の代理人としてガーハルさんが指名される。」

じゅえる「問題は無いとおもいますねえ、先の赤甲梢裁判で便宜を図った仲ですから。ただ彼はやはり、自身の考える在るべき王国の姿、というのを持っていて、劫アランサ王女に対してそれに沿った方台秩序の在り方を弥生ちゃんに働き掛けるように説くという場面もあるわけだ。」

釈「ふーむ、どっちつかずですねえ。すぱっと割り切った人物が必要ですよ、やっぱり。」
まゆ子「そうだなあ。ガーハルさんは割り切れない人物ではある。しかしながら、彼はやはり劫アランサ王女を通じての窓口としての役割を持つ。すぱっと割り切った性格の元老員キャラがガーハルさんのラインを利用して弥生ちゃんに働き掛ける、これでいくか。」

じゅえる「ジョグジョ薔薇もガーハルさんに積極的に働き掛ける、という場面もあっていいかもしれない。ジョグジョ薔薇は弥生ちゃんから、南海軍の処分を任される事になるわけだから、弥生ちゃんに接近遭遇するチャンネルが必要だ。」
釈「そうですね、ジョグジョ薔薇ときゃぷてんがどのように対面するかは、じっくりと考えねばなりません。」

じゅえる「となると、ジョグジョ薔薇は目立つ奴ではあるが、彼の周りにはやはり何人か若い衆が群れているべきだろうか。」
まゆ子「元老員金翅幹家は、大体一家に最大3匹の聖蟲が与えられる。まあ、全部使うってわけでもないが、つまり親子孫の三代が生きていれば3匹、というわけね。

 だからその孫クラスの元老員が目立つ彼の言動に引きずられ、えーと、白根っこの会とバッティングするかな。」
じゅえる「それでもいいと思う。白根っこの会のメンバーとジョグジョ薔薇の取り巻きと重なって居ても良い。ただ目的はかなり違うし、彼らは誰もジョグジョ薔薇の攻撃的な先進性についていけない。」

まゆ子「いっそ、ガーハルさんに対するきっぱりとした性格のキャラってのを女性にしてみるか。元老員に女性が居る事は望ましくはないが、居る。黒甲枝にも例外的に4人居る。ルダムちゃんがその筆頭だが、他にもちゃんと居るんだよ。」

釈「絵的には面白いと思いますが、焔アウンサさんが亡くなった直後に似たようなキャラを投入するのは得策とは思えません。」
まゆ子「あ! そうかしまった、アウンサとキャラが被るか。」

釈「そのカブトムシの聖蟲を持つ女性達は、赤甲梢裁判が終った後に、劫アランサ王女の周囲を固めるということで派遣されて来るとしましょう。」
じゅえる「そうだな。女傑とかいう人がアウンサと被るとうっとうしくて良くない。ストーリー展開上もまずいっしょ。ガーハルさんの傍には変な女も居る事だし。」

まゆ子「あー、ではどうするかな。きっぱりした性格の人というのは、裁判の過程では出さないかな。」
じゅえる「別の役所で出せばいいんだよ。つまり、裁判の過程で彼は一種の挫折を味わい、その反動から一気に青晶蜥王国に踏み込もうと決意する。

 そうだね、赤甲梢裁判においてはむしろ彼はハジパイ王サイドだ。ハジパイ王に直接働き掛けてなんとかしようとしたが、生憎と白根っこが暴走しているものだからハジパイ王でも抑えきれない。そこで彼は時代がすでに変わってしまった事を理解して、新世紀に足を踏み出すわけだ。」
まゆ子「なるほど。物語の根幹に足を踏み入れる者には、バックボーンが必要か。」

釈「それでしたら、赤甲梢いやヒィキタイタンさんに関して因縁の有る人を更に投入しましょう。レメコフさんはもちろん裁判の過程において重要な役所を果たすわけですが、彼のサポートをする元老員というのは必要でしょう。」
まゆ子「確かにそうだ。つまり、ヒィキタイタン事件において彼はなにかミスったわけで、それをまだ引きずっている。多分ヒィキタイタンの助命運動とかをしていた人物だ。この人も裁判に直接関与する。」

じゅえる「ガーハルさんをその人と対立させるか。いや、ガーハルさんのバックが弱いな。」
まゆ子「うーむ、有力な前線指揮官を擁しているとはいえ、独自の派閥を作るほどではないしねえ。穏健派と呼べるハジパイ王太子のグループに混ぜておこうか。」
釈「先戦主義の仲間はあてになりませんねえ。なにか誰か居ないんですか。」

まゆ子「官僚関係あるいは宰相の部下とか外交畑、あるいは直接武徳王の意志を受けて動いている人とか。神秘的な思考の人でも良いぞ。」
じゅえる「うーん、派閥だから閨閥で固めるとかも有りなんだが、それもちょっと違うなあ。弱い。」

釈「ではいっそ、弱い系元老員というのはどうでしょう。非主流派が固まって。」
まゆ子「それは有り。」

じゅえる「無力系派閥、か。うーむそれは役立たんとこがいいぞ。役に立たないからこそ自由に動けるし、主導権奪取の為に積極的に動く。」
まゆ子「ヒィキタイタン事件で弱体化した派閥、いや元々弱かったけどそれゆえに主流派ハジパイ王への対立軸としてヒィキタイタンさんを擁立して、挫折ってとこだ。うむ弱くていいぞ。」

じゅえる「必然的に主流派というのがあるわけさ。主流派とその中でも突出した白根っこの会、無力系派閥、あと武徳王系かな。」

まゆ子「基本三種でよろしい。現実的な政策を打ち出すハジパイ王を中心とした主流派、対するに積極的な攻勢を主張するヒィキタイタンに乗る非主流派、慎重に抑えに回る武徳王派、というところだ。武徳王派は保守というわけではなく官僚系というかんじかな。ハジパイ王は経費削減にも努めておりそちらにも恨みを買っている。

 さらに極少数派閥として神秘派、ついでに新救世主派が居る。新救世主派というのはつまりは青晶蜥神救世主の降臨を待ち望み停滞した方台の状況を一気に変革せんと唱える人のことだ。褐甲角の元老院においては異端中の異端だが、論に不思議はない。」

じゅえる「では先政主義派が主流派で、先戦主義派が非主流派?」
まゆ子「先政主義派は主流派+武徳王派、ただし戦争をしない方が良いという一点で繋がっており予算縮小を考える主流派とは一線を画す。逆に言うと、非主流派の先戦主義は軍事行動の結果引き起こされる景気の促進も考えている。」
釈「はあやはり経済の問題からもそうなりますか。というか、そうですよね。」

まゆ子「この時期、弥生ちゃん降臨直前の景気は悪くはないが良くもない。穀物収穫量自体はまったく問題ないが、それ以外の商品とくに大型の建設工事とか造船、軍備とかは不況なのだ。」
じゅえる「つまりは軍事活動が当分無かったのでぱーっと景気良く使う機会が無く、景気拡大の効果を求めている経済界の主張とかもあったわけだ。」

まゆ子「だね。非主流派は経済界の要望に従ったと言った方が良い。対するに主流派は主要産業である農村をバックに人手が拡散するのを嫌ったわけだ。実際このところの平和のおかげで穀物収量は上がっている。だが豊作が続いたことによる穀物価格の下落で、その他産業も不景気状態にある。グテ地は穀物が高くて買えなかったのではく、金が無いから買えなかったんだ。」

じゅえる「そのカラクリよくわからんよ。」

まゆ子「穀物が豊作になると、輸出も伸びる。輸出代金として東西金雷蜒王国からの高度な産品が入って来る。これが入って来ると国内産の質が一等落ちる製品は売れ行きが伸びない。伸びないから産業自体が縮小してますます外国産を必要とする。そういう仕組み。」

釈「では穀物が取れない方が良い?」
まゆ子「外国産品を輸入制限すりゃいいんだけど、それをしないのが主流派なんだ。農村に基盤を置くからね、穀物は売れた方が良い。ちなみに農村に基盤を置くという事はとりもなおさず主流派は黒甲枝に基盤を置くということだ。大抵の黒甲枝は農村部に派遣されてるからね。都会は非主流派。近代以前の産業構造を考えると当たり前だ。

 ゆえに非主流派は黒甲枝の関心を惹く為に先戦主義を持ち上げる。神兵としての本来の責務を呼び起こし、非主流派の意見に耳を傾けるようにするんだ。」
じゅえる「なるほど、深い。」

釈「武徳王派は経済に対して何も関与しないんですか?」

まゆ子「つまりは武徳王派は官業、高級官僚が自ら産業を指導して王国の為に安定的に必需品を供給するというシステムに乗っている。ま官僚のする事だ、安定が一番で波乱を呼ぶ戦争の計画はどうしても忌避するな。
 実際彼らは安定状況で儲かっているんだが、これはハジパイ王から見ると国家予算がそういう官業に対して不当な値段で流出している事を意味する。もう少し国家管理する産業を減らして自由な民間に解放し価格を下げるべきだと。それが民衆の為にもなるのだとね。故に輸入品の制限を敢えて行わない。」

じゅえる「つまり、官業で抱え込んでる産業の製品は高い?」
まゆ子「高い。消費税掛ってるのと同じくらい高い。」
釈「うーむ、なるほど。つまり褐甲角王国は見えない税金でがんじがらめにされているのと同じなんですね。」

まゆ子「その反面、実質の税金は無いも同然だ。個々の百姓には掛らないで村を治める自治会議に借地料を払わせているだけだ。都市部では関税とか市場税とかが掛るけどさ。」
じゅえる「つまりこの税金システムはすでに老朽化してる?」

まゆ子「これからそれが判明する。つまり弥生ちゃんの登場後世界は急速に貨幣経済が強くなる。すると、銭を持たない農村部が痛めつけられる事になる。穀物供給量はぐんぐん伸びるのに、金は入って来ないという状況が発生する。」
釈「貨幣を中心とした近代的な経済に生まれ変わるんですね。なるほど、その直前の姿なんですか。」

まゆ子「だから、弥生ちゃんが去った後の方台は、なにか凄く変わるんだよ。誰も思わなかった方向に進んでいき、既存の王国は変革で大混乱、褐甲角王国四分割が当たり前に思えてしまう。その中できらっと光り輝くのが青晶蜥神救世主劫アランサ、というわけだね。」

じゅえる「銭銭銭の世の中だ、というわけで悪徳銀行家がボロ儲けするという寸法ですね。うーん、となるとだ、その悪徳銀行家ってのは巨大な勢力になるねえ。」

まゆ子「それは考えて居たんだよ最初から。ただ切り出し方が難しかった。えーと、人喰い教団が悪徳銀行家に絡む、暗黒ユダヤ資本みたいになる、という形にするか。」
釈「そうですね、紅御女もお金持ちですからそういうのの方が良いと思います。」

まゆ子「よし決まった。人喰い教団がこれまで貯えて来た財宝がすべて「白の母」の手に落ち、その暗黒資本を元手に方台の裏経済を牛耳る存在となるのだ。」
じゅえる「うむうむ、これで500年千年後の悪事もばっちりだ。このマネーこそが後に聖戴者の支配から脱する民衆王国の母体となるのだよ。」
まゆ子「うむうむ。それこそまさに歴史の王道。督促派行徒が何故歴史上高く持ち上げられたかの理由にもなる。恨みによる聖戴者の否定だ。」

釈「するていと、元老院神秘派というのは神殿秩序から資金を得ている団体の代弁者ってことですか。」
じゅえる「そりゃ、十二神神殿はそれぞれにサービス業を営んでいるからねえ。金も入って来るよ。」
まゆ子「それはおおっぴらには武徳王が直接管理するという立前になっている。神秘派ってのはその立前を本音に変える存在だ。新救世主派も分派と呼ぶべきである。

 ちなみに弥生ちゃんは今後経済政策に関して、重大な示唆を行います。簡単に言うと、詐欺商法やら投資の悪癖について地球の知恵を法務関係者に伝えて方台初の『商法』を作ります。」
じゅえる「いかにも弥生ちゃんのやりそうな話だ。」
釈「近代的な救世主さまですからね。」

***   ***

じゅえる「さて、大体こんな感じで元老院も固まって来ましたが、なにか注意点は?」

まゆ子「元老院と神聖宮は切っても切れない関係です。基本、カンヴィタル・ソグヴィタル・ハジパイ・メグリアルの四王家は元老院から配偶者を得ます。逆に言うと、王家の配偶者となれば金翅幹家です。」
釈「という事は、結婚出来る相手はあらかじめ枠内に決まっているという事ですね。」

まゆ子「ま、百個もあれば上等でしょう。ちなみにカンヴィタル武徳王の王子はつまりカプタニア神衛士を務めるわけですが、それに飽きたらというか政治向きの事をしたいとか思ったら、金翅幹家に婿養子で降りて来ます。だから金翅幹家の半分くらいはカンヴィタル王家の血筋です。」
じゅえる「娘は?」
まゆ子「まあ王神女となって一生を終える人も多いけれど、やっぱり金翅幹家に降嫁します。」

釈「つまり上と出たり入ったりを繰り返すんですね。じゃあその他王家もやはり、」
まゆ子「ま、そういうこった。金翅幹家は王家と血縁閨閥で密接に繋がり、金翅幹家は黒甲枝から基本嫁を取る。」

じゅえる「しかし、ではカンヴィタル王家ってのはずいぶんと人が多いんじゃないかな。」
まゆ子「人には知られてないんだけど、そうなんだ。カンヴィタル王家内にもやはり三王家がある、と考えるのが正しい。大体嫡流の武徳王家があり、スペアが四つほどある。」
釈「ではその人達は下に降りてこずにそのまま一生をカプタニア山で終るんですか。」
まゆ子「そうだよ。」

じゅえる「イヤだとかは思わないの? 下に降りて戦いたいとか政治をやりたいとか民間人になりたいとか、そういう希望は無いの?」
まゆ子「そりゃああるけどさ、カプタニア山内に過ごすとそういうのを圧する程に強力な巨大カブトムシ神のオーラを感じるんだ。これ抜きに人生を考えるのは不可能なほどに強い。さらに言うと、彼らの額の聖蟲は金翅幹家や王家の戴く金色の聖蟲ではなく、緑金の翅を持つ聖蟲なんだ。」

じゅえる「犬の頭に乗ってるのとおなじ?」
まゆ子「あれ。」
釈「あれは特別な聖蟲なんですね。」

まゆ子「王家の金色の聖蟲の絶対支配を受ける、と書いているけれど、神衛士の額のは巨大カブトムシ神に直接支配を受ける。また武徳王に直結するね。神衛士の見たものは武徳王も見る事が出来る。そういう仕組みになっている。」
じゅえる「じゃあ、凄く精神に影響を受けて常人ではあり得ないんだ。」

まゆ子「ただカブトムシ神は人間の言葉喋らないからねえ。思想的になんか影響を受けるって事はない。ともかく巨大過ぎる存在感だ、これがたいへん。」

釈「で、今回それが居なくなったんですけど、これは赤甲梢裁判に影響があるんですか?」
まゆ子「直接には無いはずだが、どうしよう。あってもいいよ。」

じゅえる「そりゃ難しいな。巨大カブトムシ神が居ないという状況から、神聖宮からは事態の収拾を急ぐように指示されて、歯止めが掛らないってかんじでいいかな。」
まゆ子「うん、あまりややこしい要素が絡むと大変だ。だが紅御女の関係から、まったく無関係というわけにはいかない。特に武徳王が失明の危機というわけだから。」
釈「しかし直接的に裁判の行方に影響を与えるというのではない、ということですか。では逆に、神聖宮の意向を慮って元老員が動く、というかんじですか。」

じゅえる「してみると、白根っこの会とは別に武徳王派からも裁判に介入する派閥がある、ってのかな。」

まゆ子「また難しいことを言い出したな。たしかにそれはあるのだが、白根っこの会は黒甲枝に基盤を置く主流派で、武徳王派は官僚に基盤を置くのだけれど、そのまた分派となるとー武徳王親政を中心とすべしという直接統治派ってのか?」
釈「武徳王に政治権限を復活させようという派閥はあって不思議はないと思いますがね。ハジパイ王ソグヴィタル王の並立によって元老院の秩序は保たれてきたのですが、片方が居なくなるとこのように歯止めが効かなくなる、と武徳王による直接介入を訴える。」
じゅえる「それは有り。」

まゆ子「なるほど、それは有る。だが具体的にどうするかと言えば、やはりこれも黒甲枝を味方に付けねばならないわけで、赤甲梢・ヒィキタイタン裁判は逆に機能する。黒甲枝の大半はヒィキタイタンと焔アウンサの味方だよ。」

釈「では白根っこの会の暴走がよく分からない…。」
じゅえる「逆だ。白根っこの会はこれまでどおりの安定した国際関係を維持しようというものだ。黒甲枝にこれまでどおりの暮らしと仕事を保証しようというもので、それに対して表立っての反論は難しい。その秩序を乱し王国の軍制を揺るがしたヒィキタイタンと赤甲梢を処分せねばならない、というのはその線では当然の主張だ。黒甲枝は心情的には同情しても、法を重んじればいかんともし難い。」

釈「逆に、武徳王親政派はヒィキタイタン・赤甲梢の弁護を、というか武徳王による超法規的な温情措置を画策する。」
まゆ子「そういう可能性は否定しない。ただ武徳王は今重傷だし、法の秩序は維持せねばならない。赤甲梢はともかく、敵対国家を作り上げたヒィキタイタンにはそれでは通らない。」

じゅえる「それでいいじゃないか。武徳王親政派の介入によりヒィキタイタンの裁判は中止され、追捕師レメコフ誉マキアリィとの決闘による審判が行われる。それでいい。」
まゆ子「ふむ。なるほど。」
釈「なるほど、そういうラインもありか。」

じゅえる「つまり、両者の無罪を主張するのはジョグジョ薔薇のみで、白根っこは有罪、親政派は神前裁判による決着を主張する。赤甲梢は?」
まゆ子「親政派は国際情勢を元に戻そうとは考えないが、現状維持は必要とする。ただし、赤甲梢の成果で金雷蜒神聖王が今や褐甲角王国領内に居るのだ。まるっきり無駄にするという手も無い。
 青晶蜥神救世主抜きの和平交渉を考えており寇掠軍の中止と金雷蜒神聖王直接指揮の軍勢のみによる戦争に限定する、と取決めたい。寇掠軍のでたらめな出撃には閉口してるんだ。王師同士の正規戦こそが親政派の要求で、神聖王にギィール神族の取締まりと管理の徹底を呼び掛ける。つまりは、金雷蜒王国の内部の統制を求めるんだな。」

じゅえる「大きく出たな。」
釈「それはー金雷蜒王国に褐甲角王国と同じ制度を採用しろ、という意味ですね。でもそんな条件つけても無駄ではありませんか。」
まゆ子「いや、ほら、三荊閣の頭ごしに和平交渉をする、というのはそういう意味でもあるんだ。神聖王と直接に和平条約を結ぶというのは、ギィール神族をそれに従わせるという意味に他ならない。この点はハジパイ王の主流派の弱い点で、彼らが現状維持を求めるのは神聖王に統制力が無いからなんだよ。」

じゅえる「となると、親政派は赤甲梢を高く評価してるってわけだ。裁判で有罪にするなんてもってのほか、勝利を直接に味わおうというのか。」

釈「いえ、もっと野心的なことを考えているとかはどうでしょう。金雷蜒神聖王に赤甲梢部隊を供与して、神聖王の統制力を高めよう、というのでは。」
まゆ子「いやそれは、ちょっと。」
じゅえる「いくらなんでもそれはー、どうだろう。ちょっと面白い手だぞ。」

まゆ子「うーむ、それは確かに悪くない。悪くはないが神聖王とギィール神族に無用の争いを引き起こすタネでもあるだろう。あり得ない、んだが、論としてはあり得る。」
じゅえる「論としてはね。交渉の端に、わずかでも言及すると凄味が出る。」

まゆ子「うむ、ちょっと考えておこう。」

釈「となると、ゲルワンクラッタ村に滞在する神聖王の下には、褐甲角王国から二組の使者が来るんですね。で、どちらも秘密裏に交渉する。」

じゅえる「非主流派も当然働き掛けるべきだろう。が、どうするかな?こちらは和平についてどういうスタンスを取るべきか。もちろん弥生ちゃん派ではありえない。」
まゆ子「そうだねえ、やはり神聖王がこちらに居る間になにかしておくべきだと考えるだろう。しかし非主流派も利害関係からいうとーハジパイ王主流派と同じなんだよなあ。」
じゅえる「差別化ができないのか。」
釈「武徳王を立てるというからには、そうなりますねえ。ただこちらは弥生ちゃんきゃぷてんの存在を無視しない、というのでは? 劫アランサ王女という切り札もありますし。」

じゅえる「和平を結ぶにしても、弥生ちゃん抜きではあり得ないという事を主張するのか。そうだね、弥生ちゃん有りの和平の枠組みというのを考えて持って来る、とするか。」
まゆ子「してみると、弥生ちゃん有りの和平で褐甲角王国が有利になる策を持ちかける。だけど、神聖王にこてんぱんにしてやられるというのがいいな。そして神聖王は前の二つとのみ交渉する。しかし本当の腹は非主流派の意見にかなり近い。」

じゅえる「ふうむ、そうすると重厚さが増すねえ。ただ弥生ちゃん込みの和平となると、どういう形態になるのかな。」
まゆ子「そりゃ簡単だ。神聖王は青晶蜥王国、領土領民付きのを弥生ちゃんに用意しようと考える。もちろんその領土は褐甲角王国の内部のどこか、になるな。毒地も足すとしても東金雷蜒王国には掛らない。」
釈「せこ!」

じゅえる「必然的に、非主流派は青晶蜥王国抜きの救世主組織を褐甲角王国が抱えようと考えるわけだ。つまり褐甲角王国が青晶蜥神救世主を庇護しよう、その威光を方台全土の支配に利用しようというまことに虫のイイお話だ。」
まゆ子「はは、そりゃあ門前払い掛けられるわ。」

釈「してみると、きゃぷてんの構想は実際は非主流派の考え方に近いんですね。」
まゆ子「近いけどさ、代償として王国三分割を伴うなかなかシビアなものなのさ。」

じゅえる「良しこれで万事OKと見た!

 金翅幹元老院は農村主体の主流派、商業流通に基盤を持つ都会の財界に支援される非主流派、官業に支えられる武徳王派の三派があり、神殿組織と繋がる神殿派という小派閥そのまた中に新救世主派、というのがある。

 先戦主義は非主流派が黒甲枝の支持を取りつける為と景気浮揚策としてヒィキタイタンの論に乗り、先政主義は主流派と武徳王派が現状維持での発展を模索してこれと対立する。
 しかしながらヒィキタイタンが追放の憂き目に遭い、ソグヴィタル王=ハジパイ王の均衡が破れ、ハジパイ王の主流派が主に実権を握ることとなる。

 そして大審判戦争で両派は前提が崩壊し、赤甲梢の突入により神聖王が訪問するという一大事となり、対応にどの派も苦慮する。

 ハジパイ王の主流派は現状復帰を模索するが、ハジパイ王自身の制御を離れて白根っこの会が暴走、赤甲梢と紅曙蛸王国を立ち上げたヒィキタイタンに極刑を処そうとする。

 対して武徳王派はこの際親政を模索し実権を武徳王に取り戻そうと、神聖王との交渉において主導権を取ろうと試みる。赤甲梢を神聖王に供与して金雷蜒王国内における統制力を強化し、和平条約のギィール神族への強制を要求する。また神聖秩序を維持する観点から、法の裁きではなく神前決闘という形でヒィキタイタンを追捕師レメコフと対決させる。

 一方非主流派は青晶蜥神救世主の降臨により時代が不可逆的に変わった事を率直に認め、救世主込の方台新秩序を模索する。が、褐甲角王国に都合の良い形での新秩序を提唱した為に神聖王に門前払いを喰い、和平交渉の場から弾き出される。しかし非主流派の一部はその後も劫アランサ王女への支援を行い、青晶蜥神救世主との繋がりを深くする。

 赤甲梢とヒィキタイタンの両者を無罪と主張する者はジョグジョ薔薇しか存在しない。

 裁判は結局、赤甲梢は解体、神兵は聖蟲剥奪、ヒィキタイタンは追捕師との決闘という事に決まるが、天から弥生ちゃんが巨大カブトムシで降って来てすべてを掌握してしまう。

 弥生ちゃんの裁きでは、ヒィキタイタンは聖蟲剥奪で紅曙蛸王国に送還。ソグヴィタル王位はハジパイ王太子が継ぎソグヴィタル=ハジパイ家となりハジパイ王家は事実上解消される。赤甲梢は処分自体を取り消して、劫アランサ王女直属となして青晶蜥神救世主の直衛とする。弥生ちゃんはカブトムシ神の上に乗るほどの存在であるから、武徳王の命令よりも優先する。ただし赤甲梢のこれ以上の増加および赤甲梢神兵の聖蟲の子孫への継承権は無いままとする。

 弥生ちゃん帰還後、武徳王の目も癒り、三者での和平交渉および方台新秩序が成立し、新生紅曙蛸王国宰相ヒィキタイタンもこれに賛同する。

 そして弥生ちゃんの提言により、褐甲角王国の統治権分割が議論されるようになり、黒甲枝の混乱を収拾する為にも三王家による分割が議論として進行する。結果、東西南北の四派に元老院と黒甲枝は分裂し、いよいよ王国自体を分割する他手が無くなる。

 その裏では一つ新体制に加わらない西金雷蜒王国を従える戦争が準備され、緒戦は褐甲角王国百島湾海軍が攻めるも敗退、弥生ちゃんはジョグジョ薔薇に命じてイローエント南海軍を西に回して応援させ、さらに人工動力船を開発して完全勝利を収める。西金雷蜒王国は弥生ちゃんに服従するも、領地領民は現状維持を許され、どちらかというと領土が確定して得をしてしまう。ここに方台新秩序は完成を見る。

 が、実際血を流して戦った黒甲枝神兵、特に海軍は勝利を実感出来ずに不満が募る。またイローエント南海軍は行き掛かり上リストラされてしまい、三分の一になってしまう。これは紅曙蛸王国の南海域支配権を強化する為の弥生ちゃんの政策でもあるのだが、黒甲枝の不満は高まる一方でジョグジョ薔薇を中心にその勢力は東派として結集される。謹慎中の白根っこの会元老員もひそかにこれに呼応する。

 褐甲角王国は遂に三分割され、新体制による方台の運営が始まるが、これに意を唱えるジョグジョ薔薇は次代の青晶蜥神救世主の任命に関して、既存の王国の認証権と救世主資格の認定という極めて重大な提唱をする。これを新時代の運営に不都合と見たハジパイ王門下の銀椿はメグリアル王国からひそかに手を回し、東派の黒甲枝を焚き付けて武力反抗へとエスカレートさせる。

 人喰い教団「白の母」の支援と資金協力もあって、イロ・エイベントを拠点とした黒甲枝東派は遂に武力を貯えて武徳王の命令にさえ不服従を貫き、独自の支配権を主張するようになる。だが弥生ちゃんの挑発もあって、ジョグジョ薔薇は遂に弥生ちゃん本人に対する宣戦布告を行い、誰も為し得なかった青晶蜥神救世主への公然の叛旗を振りかざす。これに対するに弥生ちゃんは本人のみの親征を行い、デュータム点を旗持ちだけ連れて出発。その後道中の民衆やら黒甲枝、ギィール神族やらが続々と結集して混成大部隊を形成。劫アランサは単身東派の本拠に飛び説得を試みるもそのまま拘留され、ついに両軍が正面衝突する。しかし黒甲枝主体の東派は民衆の集う弥生ちゃん軍と対する大義名分が見出せず、またジョグジョ薔薇に属する一部部隊の民衆兵への残虐な攻撃に戦意を喪失して後退。ジョグジョ薔薇は一人戦場に取り残される形となり、討ち死にする。

 弥生ちゃんはイロ・エイベントに撤退した東派と交渉するが、その過程で東派と合流して居た白根っこの会は意見対立から弾かれてタコリティに逃亡。黒甲枝のみとなった東派に対し弥生ちゃんは黒甲枝のみの共和国を提唱する。しかし領土確定の根拠となるものを要求されたので、とりあえず和平を続行する意味合いから分身とも言える「カタナ」を質に弥生ちゃんは一時退去。イローエント近辺の荒地において発見された異常事態の解決に向かう。

 コウモリ神人は先の戦いにおいて、弥生ちゃんが故意に民衆を戦におびき出したと見做し、というかそれで正しいのだが、弥生ちゃんを明確に悪と規定して殲滅の為の闘争を一方的に宣言する。これに弥生ちゃんは正面から応じて、最終怪獣大決戦となる。108剣を以ってようやくに撃破するものの、ハリセンは大破、弥生ちゃんの身体も常人でも分かるほどのダメージを受け、方台から退去して十二神による治癒が必要とされる。これほどまでの神威を示した結果、イロ・エイベントの東派も和平に同意して黒甲枝諸侯国を名乗り、弥生ちゃんからグテ地とトロシャンテの死守を請け負い契約の剣を授かる。

 こうして弥生ちゃん伝説は完結し、それから1年後弥生ちゃんは小舟に乗って夕陽の海に去っていくのでした。」

まゆ子「というわけさ。」

 

07/10/29

まゆ子「あー久しぶりの更新ですか。げばおとEP5「第十一章 毒殺鬼アルエルシィ」は42枚ですね。順当順当。」

じゅえる「ひさしぶりはいいんだけど、さあ。ちいと間が空き過ぎじゃないかい。」
釈「ですねえ。ほぼ1ヶ月じゃないですか?」
まゆ子「別にさぼっていたわけではないぞ。さぼりも入れて随分と忙しかった。」
じゅえる「そりゃー認めるけどさあ。」
釈「怒濤の大更新大会ですから、さぼっていたとは言いませんが、それにしても。」
まゆ子「ついでに風邪までひいてたのさ。いやー「毒殺鬼アルエルシィ」が遅れたのは、大体風邪が原因だよ。ほんとはこれはもう1週間も前に出来ているはずだった。ところが風邪ひいて確信が持てなくなった。」
釈「??」
まゆ子「体調が悪いと、書いてる文章に確信が持てなくなる。絶対の自信を込めてリリースできないんだ。げばおとは特に戦闘シーンが多いから、気合いの入らない時には〆を入れる事ができない。」
じゅえる「つまりは、でぽは体力勝負ってことだ。まあ扉絵まで変わったのは凄いと褒めちゃうけどね。」

釈「新シリーズスタートですね。えーと、”現代マジカル美少女学園小川浪漫小説”?」
じゅえる「小川小説ってなんだ?」
まゆ子「げばおとがファンタジー大河浪漫小説、だからそれほどではない小品ということで、小川。」
釈「はあ。」

じゅえる「で、朱美ってのは髪が赤いんだ。これ正式な設定?」
まゆ子「『蠱螢(仮)』では、そう。うえんでぃずではちゃんと黒いよ。」
釈「同じキャラでも違う設定、なんですね。じゃあ南さんと美鳥もなにか違っているところがあるんですか。」
まゆ子「考えてない。」
じゅえる「考えときなよ、そのくらい。新シリーズなんだから。」
まゆ子「まあ、そうだね。でも南洋子はあれでいいだろ。美鳥は相変わらずだし。」
釈「出来上がっているキャラ、ということですか。確かに三号明美さんは出たばっかりでキャラがまだ固まっていませんでした。」
じゅえる「そうか、鉄は熱い内に打てか。と言ってももうすぐ1年になるけどさ、初登場から。」

まゆ子「てなわけで、この蠱螢(仮)には魔導ロボが出ます。」
じゅえる「現代物だろ?」
釈「ガンダムですか?」
まゆ子「ロボではあるが、ろぼとしては使えない。なにせ現代技術で作られているから、そんなにしゃきしゃきと動けない。」
じゅえる「具体的に言うと、どの程度の能力があるんだ?」
まゆ子「ワンポーズ取るのに5分てとこ。」
釈「…、あるけない。」
じゅえる「つまり、ろぼじゃないんだ。」
まゆ子「現代日本の最高のロボ技術が投入されているけれど、こんなのが精一杯だ。ただこれは、アンテナとして機能するから、これでいいんだよ。」
じゅえる「魔法を使う際に、魔法のアンテナとして大きな人型が必要だ、ってのだね。そういうものか。」

釈「でもそんな大物を使うのですから、敵は強力で大物ですね。」
まゆ子「ま、その内に考えようそこらへんは。」

 

***   ***

まゆ子「体調があまり良くない。運動不足が堪えたようだ。」
じゅえる「あーまゆちゃん風邪ひいて最近引っ込んでたからね。」
釈「季節の変わり目は注意しないと。」

まゆ子「というわけで、文章書く気は無いのだが、にも関わらず「げばおとEP5 最終章 喪服の女達」は着々とできつつある。」
じゅえる「今回はダブルヘッダーで、エピローグの方が長いんだよね。」
まゆ子「それの冒頭、弥生ちゃんのお手紙が出て来る。これは根性入ってる手紙だから、体調が万全で無いと書けない。説得力が出ない。」
釈「げばおとは根性で書いております。」
じゅえる「そうなんだ。体調が直接出来につながる、体力系の執筆を行ってるのです。」
まゆ子「てなわけで、最近余りよろしくない。どうしよう、というのはもういいんだ。一生懸命頑張って、なんとかなるように持って来た。問題は、どこから手を付けるか」

じゅえる「なんかパーッと面白いことやりたいな。」
釈「とはいえ、新シリーズはもうけっこうです。「蠱螢(仮)」も動き出しましたが、その反面「物辺村」は割喰って止りました。」
まゆ子「と思ったから、必死になって描きました。」
じゅえる「まゆちゃんは勤勉で偉いひとなんだよ。」
釈「まあ、トーン貼ってないですけどね。」
まゆ子「トーンは場合によりけりだ。今回止めた方が目立つ構図だったんだよ。」

じゅえる「実際よく見えます。にしても、あんた男描く気まるっきりないね。」
まゆ子「男書いても喜ぶ人いないから。」
釈「そうですねえ。しかし強いて言うならば、今回もう少しエロがあってもよかったと。」
じゅえる「エロイじゃん。」
釈「エロいのはわかりますが、もっと露骨な性描写というのが必要です。」
まゆ子「ふむ。今回制限ぎりぎりでエロくはしてみたんだけどね。」
釈「やはり直接攻撃が最も効果的であると、小生考えます。」
じゅえる「なるほど、確かに物辺村本来の役割を考えると、直接エロがそろそろ出るべきか。」

 

まゆ子「そりゃそうと、物辺村の5人ね、蠱螢(仮)に出る事になったから。」
じゅえる「ほう。」
釈「レギュラーですか?」
まゆ子「いや、上級生が必要になった。9月に学校祭と体育祭がある。上級生がちゃんと居る事を示すべきだろうと思えば、あくの強いキャラが必要になった。」
じゅえる「鳩保と優子だな。」
釈「やはり魔法使いですね。」

まゆ子「悪くはないでしょ、5人ともまるっきり魔法使いなんだからさ。えーと鳩保はー。」
じゅえる「あれは魔法使いと言っても、人を従わせる魔法だから三大魔法会には入れない。」

釈「物辺優子は神社の娘で、AWOの所属です.AWOつまり伝統的魔法使いがこの学校で学んで居ても、別にいいんですよね?」
じゅえる「それはどういう組織構造になってるかだね。三大魔法会とくに「絢爛たる_」が運営する魔法学校てのは、伝統的な魔法組織とどうなんだろ?」

まゆ子「あー基本的には、魔法会には宗教的な側面を欠かす事は出来ず、各国権力機構に対しては宗教的側面から食い込んでおり、これは伝統的魔法会の牙城と呼んで差支えない。問題は、三大魔法会の成り立ちでね、「聖なる_」は魔法を究極で突き詰めて純化したものだからどこの宗教勢力よりも上位に来るんだ。」
釈「宗教的裏付けが無いのに、ですか?」
まゆ子「というか、「聖なる_」は直接神の領域に到達する道を行っている、と思われている。信仰を要しない宗教、なのだね。信者の支えが無くともここは自力で神の領域に到達する。故に、各宗教勢力からは畏れられる存在だ。」
じゅえる「つまり奥義の塊みたいなものだから、他のところは手が出せないんだね。」

まゆ子「逆に手を出そうとしても、「勝利の_」の攻撃力の凄まじさにはまるで敵わない。呪詛とかの技法は「勝利の_」は使わないが、各魔法会の呪詛を簡単にぶち破り、術者を魔力で焼き殺すくらいは朝飯前ってなもんだ。だから、各宗教勢力間で争う時には、「勝利の_」の協力を取りつけた方の勝ちだ。」
釈「「勝利の_」は中立的な立場にあるんですか?」
まゆ子「中立です。三大魔法会は中立という立場をあえて作り出しています。ほんとうはそういうわけはないんだけど、力づくでね。」

じゅえる「で、「絢爛たる_」の魔法学校だけど、ここには各宗教勢力に属する魔法会からは人が?」
まゆ子「ふつう入りません。ここの卒業生は神様なんか信じませんから。むしろ伝統的な宗教知識に基づく魔法理解をばかにします。ひじょーにやりにくいこと夥しい。」
釈「邪魔者なんですね。」
まゆ子「力が有るのは認める。だがここの卒業生は宗教勢力は従わせられない。なんせ、一番偉い坊さんとかの知識よりもずっと上に居るもんで、宗教の秩序がひっくり返ってしまうんだよ。これはあかん。だから、三大魔法会が彼らを引き取ってくれるのが一番ありがたい。

 

 また三大魔法会はまぎれもなく実績を上げるわけで、世間一般の権力者が魔法にアクセスしようと思えば伝統的宗教勢力を通してでないと無理だから、見せ金という感じで実績を上げてくれるのはむしろ有り難い。」

じゅえる「つまりは自分達には力が無いにも関わらず、三大魔法会の力を自らのものと誇示して、権力機構を支配しようとするわけだね。」
釈「せこいですね。」
まゆ子「伝統的宗教組織はほとんどが魔法に関しては無能だ。にも関わらず三大魔法会を見せびらかす事で自分達もその力を自在に操ると誤解させるのだね。」
じゅえる「うーむ、なかなかに怪しくていいぞ。」

まゆ子「そういうのをちゃんと理解しているから、「絢爛たる_」は各伝統的魔法会に対して一歩退いた立場で接している。彼ら全体の奉仕者という形で存在するが、各宗教勢力は互いに対立する立場にあるから、実質三大魔法会に対する支配権は最初から保持し得ない。「絢爛たる_」は文字どおり宙に浮いた共通秩序の上に存在する。」
釈「詐欺ですね。」

まゆ子「宗教自体、魔法自体が詐欺同然だからそういう在り方に対して文句も言えない。また「絢爛たる_」は自力で運営資金を稼ぎ出すから運営面でも口出し無用だ。しかし信者とかは存在しないで、純粋に魔法を用いて金を稼ぎ出している。何を言われる筋合いは無いな。」

釈「そういう在り方をよしとせず、配下に収めようとする宗教勢力は無いんですか?」
じゅえる「いやー、歴史的経緯からするとそういうコトするのは共産主義とかナチスとかだな。」
まゆ子「うん。世俗の権力権威の方が魔法を手中に収めようと考える。また伝統的宗教組織はそういう時は邪険にされているもので、三大魔法会があくまでも中立であり続ける事で逆に彼らは生き延びて来たとも言えるんだな。本当に価値あるモノが手に入らないからフェイクで満足するってこった。」

じゅえる「でもアメリカの手からは逃れられないでしょ。」
釈「唯一となった超大国ですからねえ。」

まゆ子「実は、アメリカの権力者達は三大魔法会すべてを手中に収めている、と誤解している。自分達の意のままになると完全にだまくらかされている。魔法学校の卒業生で三大_に属していない者の主な仕事は、その誤解を永続させる事にある。これは、各宗教勢力の合意の下で行われて居る詐欺だ。
 つまり各宗教の魔法儀式のすべてが三大魔法会により収集されており、すべての魔法はアメリカの権力者達の意のままに操る事が出来る。と彼らは誤解する。
 しかし実際は、伝統的宗教組織は三大魔法会とは直接は関わっておらずすべての奥義を盗まれたわけでもない。また「聖なる_」は神のなんたるかを実際に扱っているわけで、それの機嫌を損ねたらどうなるか、俗人には計り知れないものがある。ともかく世俗権力は魔法により毒されないという保証があればそれで良いというもので、直接影響力行使は世界全体がどうなってしまうか分からないので、使うのは止めています。」

じゅえる「つまりは敵でなければそれでいい、ってことか。」
釈「魔法は魔法だけで単独であれば良い。これが世間一般の為政者の総意であり、三大魔法会はそのとおりの存在なんですね。」
じゅえる「無論、馬鹿はどこにでも居る。今度は宙に浮いた魔法会を前提に世界の秩序を再編しようとかいう奴も出て来ている。こいつらをうまい具合にあやすのが、学園の理事のお役目なんだね。」

釈「魔法会は世界を支配しようとかは考えないんですね。」
まゆ子「意味無いからねえ。」

 

じゅえる「で、物辺優子だ。こいつは神社の娘ではあるけれど、」
まゆ子「無能ではないのだが、検査にまったく引っ掛からなかった。他の5人も一緒だ。魔法使いとしての資質を図る入学前検査のどれにも引っ掛からない凡人と判定される。しかし、物辺優子はやっぱりああいう性格で力もちゃんとある。ちゃんと初期魔法訓練もパスしたし、ちゃんとその後の訓練も積んでいる。」

釈「では生まれながらの素質ってのは、無い?」
まゆ子「ゲキは魔法じゃないからね。」
じゅえる「他の4人もやはりそういう感じでパスしたのか。で?」

まゆ子「鳩保はもちろん優等生だが、反面教官達の間ではこれはダメだと思われている。三大魔法会の採用するべき人材じゃないんだ。むしろ理事会に入って政治向きに働くべきだと思われている。

 城ヶ崎花憐は予言ができるけど、ゲキ関連の予言はあまり役に立たないから特殊だね。使えない魔法使いってのは一定の割合で生まれるもんだ。こういうのは書籍部とか観測部に回される事になる。

 物辺優子は「聖なる_」の管轄に入る魔法の発現をしているんだけど、あまり理性的でない。まあ彼女は卒業したら実家に戻ればいいだけだ。こういう奴は伝統的な組織の方が扱いには慣れている。

 童 稔はパワー系の発現をしているんだけど、まあ普通に「勝利の_」だね。

 児玉喜味子はもちろん手先関連に魔法の発現が集中している。彼女は卒業試験を受けるまでもなく「絢爛たる_」が採用内定だ。まあ本人は知らないけれどそうなっている。」

 

釈「意外とものにならないものですねえ。」
じゅえる「ほんとに。というか、普通の魔法使いが何をしているのか知らないからねえ。」
まゆ子「ヒーラーはまあ良い。予言者や霊媒師もやってる。風水師みたいなのや魔法相談、企業の経営相談や相場の予測とか、あるいは開発の現地の調査とかだね。魔法的な障害というのは一定の割合で発生する。」
釈「地味なもんですねえ。」

じゅえる「派手な奴も居るだろ。政治家とかスターとか。」
まゆ子「居る。鳩保みたいな奴は政治家になりたがる。有力政治家の中には政敵を退けるとか支配力を確保するとかでスタッフに魔法使いを取り込んでいる者も居る。ま、魔法使いは絶対数が少ないから、いいんだよそれでも。」

釈「その地味な魔法使いってのは、物語を作れますね。」
まゆ子「うん。逆にここら辺を使って3年目以降の物語を組み立てよう。」

 

07/09/29

まゆ子「あー、色々前後を見直すと修正しなきゃいかんもんだな。
というわけで、げばおとEP5「第十章 なんでもつくるよ弥生ちゃん」ができたわけですね、55枚です。」

じゅえる「このくらいならすっきり行くんだ。」
釈「やはり、50枚程度でなんとしてでも収める強い決意が必要ですよ。」

まゆ子「でこのままさくっと次の章に行く前に、ちょいと寄り道「電撃戦幻想」というおまけを書きます。この戦争の後、歴史上において赤甲梢の電撃戦成功はいかなる意味を持ったか、ですね。」

じゅえる「それも紀元6666年?」
まゆ子「そのくらいかな。6666年は20世紀文明と同程度だからね。ただ宇宙技術と核技術は無い。飛行機も発達していない。」
釈「飛行機は何故です?」
まゆ子「単純に、石油が無いからだよ。石炭か、植物性アルコールもしくはメタンガスを燃料として使う。石炭は重いから飛べないし、アルコールじゃあパワー不足で簡単な複葉機しか飛ばない。」

じゅえる「じゃあオイルは結局、どんぐり油?」
釈「油ゲルタを絞って石鹸を作る計画では?」
まゆ子「ふむ、油ゲルタでは飛ばないと思うけどね。」

じゅえる「そんじゃあ、つまり石炭とアルコール以外は燃料としてほぼ使えないから、武器のレベルもその程度なのか。」
まゆ子「戦艦と戦車、気球だね。ロケットはあるけれど、あまり高度を必要としないし、十二神による高空バリアが存在する。大体高度5000メートル程度までしか上がれない。」

釈「この時期世界は自由に行き来出来たんですかね。」
まゆ子「海に限定的な航路が存在する。36個ほどの方台の存在が知られているが、十二神方台系の人間が直接に接触するのは10個程度。後は伝聞情報だけど、23の方台に弥生ちゃん伝説があると知っている。」

じゅえる「で、電撃戦幻想というのは?」
まゆ子「赤甲梢の電撃戦は非常に特異な軍事作戦であり、歴史的偉業であるから、当然人の注目するところとなる。物語にも唄にもさまざまに表現されるが、軍事的にも範となるのは必然だね。だが、」

釈「真似た人間はことごとく失敗した、んですね。」
じゅえる「あー、電撃戦は弥生ちゃんが居ないと話にならないからね。」
まゆ子「実質大審判戦争という大規模な陽動があればこそ、こういう奇術的作戦が成功したんだけど、そうは考えない馬鹿ばっかりなんだな。」

じゅえる「つまり、馬鹿列伝ですか。」
釈「それは面白いですね。」
まゆ子「おもしろいが、うむ、なんか考えてみよう。書く予定の無い未来の歴史、だからこりゃ大事だな。」

じゅえる「うーんと、青晶蜥神救世主時代にも戦争はあるんだろ?」
まゆ子「そりゃあそうだ。えーと、この千年紀は大体3期に分けられる。

弥生ちゃんが作ったままの枠組みが残っている前期。これは当初のごたごたが二代劫アランサの時代に起りまして、その死と前後して収まり、高度成長に入ります。

この高度成長が一段落して閉塞状態に陥った状態が、中期。中期は弥生ちゃん再臨前と後とでがらっと変わる。だから4期と区別する歴史家も多いけれど、弥生ちゃんは1年も居なかったから実質何も変わって居ない。
大洞窟を通して余所の方台に繋がる可能性がある、というのが明らかになっただけで、民衆全ての心がすっかり落ち着いたんだよ。
で、熱狂的な外国ブームになる。しかし年間数人しか行けないから、100年くらいでそれも収まります。で、この頃から聖蟲が目に見えて減って来ます。

で、神の力抜きで人間だけの方台を築いていこうという風潮が主体的になるのが、後期から晩期だよ。」

じゅえる「基本を考えると、その境目にはどれも戦争が起きるべきだね。前期初頭、中期再臨前、後期初頭、晩期終盤次の千年紀。」
釈「では例として都合4回を考えましょう。どのくらいの大失敗にしますか。」

まゆ子「えーと、大中小取りそろえて、海戦も入れて、特に戦車というかエンジンが開発された晩期の汽動戦というのを出すかな。」
じゅえる「高速で移動出来るデバイスを手に入れた奴は、皆それをやってしまうんだな。」
釈「では前期初頭のは神兵翼甲冑による再現。中期再臨前は船で、後期初頭は鉄砲で、晩期最期はエンジン車で、というかんじですね。」

じゅえる「銃火器は後期初頭でいいんだね?」
まゆ子「うん。では後期初頭のは馬車にするか。イヌコマを使う馬車が発明されるとして、…だめか。」

じゅえる「なにか凄く怪しげなものを作ろう。荒猪車とか。」
釈「そうですね。去勢した荒猪が家畜として使える、という風にしますか。それまで去勢という技術が無かったのが、やっと開発されたとして。」
まゆ子「大洞窟を通して外国の文化が伝わり、去勢の概念も持ち込まれたとしよう。」

じゅえる「荒猪というのは、馬車を引っ張るのに十分な力あるの?」
まゆ子「騎乗は流石に無理だろうけれど、拘束具の発展で車を牽けるようになった事にしよう。エンジン車の発明の前まで、荒猪車が大活躍するような時代になるんだ。」
釈「荒猪車と鉄砲、となると極めて強力ですね。電撃戦が本当に可能と思わせる力がありますよ。」

まゆ子「晩期のエンジン車は、最初あんまり馬力が無くて動けない事にするか。荒猪車最大の弱点、動力である荒猪自体が攻撃を受けてしまう、というところをクリア出来ただけで、それほど強力ではない。ま、大砲積んでるんだけど。」
じゅえる「この時期の銃火器はすでに近代兵器になってるの?」
まゆ子「いや、この世界エンジンの開発の方が銃火器よりも早い。大砲はいまだ滑腔砲で丸砲弾を使う。榴弾だけど。」

釈「えーと、どうしましょう。どこで戦いますか? 前期は翼甲冑ですから、敵は。」
じゅえる「同じ神兵同士にしよう。少数の神兵で急所を直撃して、瞬時に掌握しようという目論見がもろくも崩れ去る。同じ神兵だから急所を抑えると考えを変える、と思ってたんだね。」
まゆ子「電撃戦の正しい使い方と失敗例だな。」

釈「では海戦は、いっそ西海岸からぐるっとグテ地を回って東海岸を襲うという、野心的かつ赤甲梢の電撃戦の再来を。」
じゅえる「南海岸の燈台を利用して、沖をぐるっと回る作戦で、東海岸に入る直前の岬で撃沈、だな。」
釈「東金雷蜒王国の継承権争いを、西海岸からぐるっと回って奪取しようとしたんです。」

まゆ子「で、荒猪車と鉄砲による強引なギジジット央国攻略。」
釈「これはなんだか成功しそうですね。武装が強力ですよ。」

じゅえる「ギジジットの防壁はゲジゲジ神の身体だからそう簡単には崩せない。足が止まったところで、背後から崩される。」
まゆ子「その時間差を読み間違えたんだ。これもまた電撃戦の典型的失敗例だ。背後からの援軍というのは、テュクルタンバの青晶蜥傭兵団にしよう。」
じゅえる「歴史上最期の聖蟲による戦闘だね。」

釈「エンジン車はー、」
まゆ子「この時はもう、人間を中心とした体制というのが出来上がっていて、そこの軍隊が旧来の国家を併合する過程の戦闘だ。エンジン車によるカプタニア攻略は失敗したものの、地道に兵力を集中して大砲でカプタニア城を攻撃して勝利している。電撃戦が大失敗しただけだ。アユ・サユル湖に叩き落とされてる。」
じゅえる「カプタニア街道の掌握戦だね。」

釈「それはあれですよ。荒猪車に付き物の、生き物としての扱い難さから来る動員の手間を省ける機械、なんです。電撃戦というか、瞬発戦という感じでやります。相手の準備が整う前に、こちらは大部隊を出動できて叩くんです。」
まゆ子「荒猪車は、そもそも荒猪自体を集めて来る事自体が困難ってことかな。強力だけどおいそれとは使えないし数も揃わないんだな。」

じゅえる「これだけあれば、ばっちりだ。」

釈「ところで一つ気になったんですが、弥生ちゃんキャプテンが画策する「神聖王をすぐに出発させる」策、ってなんですか?」
じゅえる「それはー、デマかな? やっぱ「何月何日までに来ないと悪い事が起きる」、とか。」

まゆ子「うんそれに近い。「秋初月に神聖王が来ると、世界が終る」ってデマを流した。」
じゅえる「???」
釈「???、そんなもので神聖王が来るんですか?」

まゆ子「まず「世界が終る」ってのに一般庶民が引っ掛かった。なにせ弥生ちゃんはいきなり大審判戦争を起こしてしまう張本人だ。世界を破滅させるのも簡単だろう、と思われている。実際不可能でもない。マップ兵器も持ってるし。」
じゅえる「それは民衆ならば面白いかもしれないけどさ、神聖王とかギィール神族は引っ掛からないでしょ、それ。」

まゆ子「ちょっと頭のいい人は、「終る世界」というのが褐甲角王国の世だと考える。千年紀が終れば、当然褐甲角神救世主の世界は終る。ただ、それがどういう意味を持つのかは分からない。」
釈「たしかにそれは妥当ではありますが、神聖王が来たくらいで終るほどヤワではないでしょう?」

まゆ子「ギィール神族はこう考える。「そりゃ当たり前だ」。

神聖王が国境を越えて褐甲角王国に入り、和平を結ぶ。これは初代褐甲角神救世主カンヴィタル・イムレイルの誓いから離れて、金雷蜒王国との協調を図る、という事を意味する。つまり褐甲角王国と黒甲枝は、何の為に戦うのか目的を見失ってしまう。」

じゅえる「お!、そりゃあ大事だ。」
釈「それは大変ですね。黒甲枝が心の支えを失うんですね。そりゃあ、世が終ったのと同じ話になりますね。」
まゆ子「弥生ちゃんが褐甲角王国を分割しようというのも、そういう事だからだよ。そして、ギィール神族と神聖王はまったくにこれを理解する。すると、神族はヘソ曲りだから、心の支えを失った黒甲枝がどのようなあがきを見せるか、是非とも見てみたい、と思うわけだね。」

じゅえる「しかし、秋初月でないといけないのは、何故?」

まゆ子「一つには、時間を与えると先政主義派が息を吹き返し、暫定的にも和平派として機能する可能性があるから。いまだハジパイ王にはそのくらいの力は有る。ただし、この場合褐甲角王国はさらさらと砂が流れ出すように崩れていく、と思われる。
二つ目は、毒地に進出しているギィール神族が本国に戻る可能性が大きくなる。両軍が矛を納めた状態では、和平の意味が薄れる。
三つ目は弥生ちゃんだ。その頃に弥生ちゃんがなにか凄い事をやってのける、という根も葉も無い噂が流れている。詳細は分からないけれど、弥生ちゃんに大きな危機が迫っているというのがボウダン街道沿いの人々の口に膾炙するようになる。弥生ちゃんが抜けての和平交渉には意味がない。」

釈「えーと志穂美先輩が降臨する、というのがバレてるんですかね?」
じゅえる「いやそれは、別口でなにかある、と考えると。不思議事件ですね。」
まゆ子「まあ、コウモリ神人なわけだから、戦場で髑髏がしゃべるくらいは可能ですけどさ。」

釈「やはりコウモリ神人は無理がありますね。えーと、武徳王は。」
まゆ子「あ、それもある。四つ目は、弥生ちゃんと金雷蜒神聖王が武徳王抜きで直接会う、という事態は避けねばならない、と武徳王の進行が急がれる。誰がどう考えても、二人だけで会った方が、金雷蜒王国には得策だ。急ぐべきであろう。」
じゅえる「そりゃそうだな。ましてカプタニアの巨大カブトムシ神が行方不明なんだから、武徳王は急ぐでしょう。弥生ちゃんを確保しようと思うかも知れない。それを防ぐ為にも急ぐ必要はある。」

釈「急ぐべき理由は幾らでも考えつくんですよね。でもゆっくり行くと、どうなります?」

まゆ子「なにも起きない、ね。その場合弥生ちゃんと褐甲角王国との間の協定だけで方台の未来が決定する。弥生ちゃんの科学技術知識が恐ろしい力を持つ事は、金雷蜒王国側も十分に理解している。だから刺客がどんどん来る。」

じゅえる「そりゃそうか。つまり、ギィール神族の技術的アドバンテージが失われる事を意味して、…金雷蜒王国負けるじゃん。」
まゆ子「まあ、そうだね。」
釈「そういう選択肢もある、ということですね。」

07/09/23

まゆ子「179枚ときたもんだ。あーしんど。」
じゅえる「結局3ヶ月も掛ったぞ。第九章「ここが峠。」なにかやりようがあったんじゃない?」
まゆ子「いったん集中力が切れると回復に時間が掛るもんだよ。しかしまあ、第十章も出来てるし、オマケも書いたし、挙げ句は新シリーズまで始めましたよ。」

釈「魔法少女学園まじかるぽたーですね。あれは正式なシリーズになるんですか?」
まゆ子「なるというより、もうなった。正編書き始めて、もう4、50枚分は手付けを打った。」
じゅえる「つまり寄り道が多かったってことだな。」

まゆ子「いやーもう、なんというか、「ここが峠。」はいつまで経っても終らない物の怪に取憑かれたようなもんで、もううんざりしてしまったよ。」
釈「でもやってることは大した話ではないんですよね。」
じゅえる「そうなんだ。ファンタジーものだと一大戦争を描くところを、きわめて小さな領域の、たった半日の小競り合いを描いただけ、なんだ。死者だって神兵3名、神族2名に過ぎない。」

釈「丸甲冑の若い人しんじゃったんですね。」
まゆ子「何故か死んでしまいました。その話は後に弓レアルがベイスラにバイジャンさんを探しに来た時に、サトさんが話してくれます。」
じゅえる「この戦争がいかに激烈なものだったかを話してくれるわけだ。」

釈「でも、もうちょっと大きな戦を峠に持って来るのが筋ではないですか? これは少しせこいって感じがしますよ。」
まゆ子「戦争というものはせこいもんだよ、通常。」
じゅえる「大戦争ばっかりを欲するのは感覚がインフレを起こしてるんだよ。少数の戦闘が一番激しく残酷なもんだ。」
まゆ子「それに、この時代の戦争は基本的に自分の目の届く範囲しか分からないもんだよ。何万人も動員される戦争ってのは、大会戦ってわけではなく、要所をちゃんと押さえていくとそういう人数が必要だったってのだ。」

釈「でも1000人以下ってのは、なんですねえ。」
じゅえる「神兵は一人で100人相当ゲイルも100人相当だよ。この戦闘に動員された人数は地球で換算すると、2200対1300+1000だ。」
まゆ子「正直大兵力が極めて小さな領域で激突しました。密度は濃いのです。」

釈「にしても、179枚は。」
まゆ子「言わないで! 素直に前中後篇に分けるべきだったと思います反省します。」

じゅえる「して今後です。えーと、素直に第十二章を書きましょう。」
まゆ子「あー、アルエルシィさんです。「真実の救世主の書」を手に入れた彼女は、世界の半分が分かる気になって居ます。

 それは置いといて、トゥマル商会は大繁盛です。高級出汁ゲルタが飛ぶように売れています。」
釈「そりゃまたどうして。ぜいたく品ですよね、それ。」
じゅえる「いや、戦争が起きればぜいたく品も売れるよ、そりゃ。なにせ出征の時とかお祭り騒ぎなんだもん。」
釈「あそうか。」

まゆ子「そうなんだ。今回の大審判戦争はかってない規模の戦争であるから、貴人やら将軍やらの偉いさんが東西南北動き回ってる。彼らを歓待するのに塩ゲルタのお粥というわけにはいかない。だからぜいたく品は通常の三倍売れてるんだ。」
釈「なるほど、意外なところで儲かるものですね。」

まゆ子「それだけじゃない。トゥマル商会はこの度「のしいか」の独占販売権を手に入れた。元から海産物の干物の高級品を扱っているから、ごく自然な形で販売網を手に入れましたよ。」
じゅえる「のしいか、って高級品で売れてるの?」
まゆ子「高級品には違いないが、方台内陸部の人間に食べる習慣が無かったんだ。それが突然売れ出した。デュータム点において、弥生ちゃんが頬すりすりするほど喜んだから、爆発的人気になってる。」

釈「おお、あれは伏線だったんですか。」
まゆ子「第10章にも伏線を書いたぞ。イカと七輪は今後方台を大きく動かしていくのだ。具体的に言うとだね、イカが取れるのは西海岸。だから弥生ちゃんは西に向かい、必然的に西金雷蜒王国と対決する。」

じゅえる「イカが大人気ってのは、お供え物として? それとも食べる?」
まゆ子「両方! お供え物としてトカゲ神殿に捧げられるが、放っておくのもなんだからイカを焼いてみたら大ヒット! またイカを戻して煮てみても大好評。そもそもが方台の人はあんまり食べない食材だから、穴だったんだね。」

釈「つまり、イカブームが起きているんですね。これが後になにか禍を?」
まゆ子「考えよう。イカの独占販売権を巡って殺し合いくらい起きてもおかしくない。トゥマル商会がピンチになる、という伏線も。」
じゅえる「それはあれだ。イカがあんまり人気になったから、どこか宗教勢力が独占しようと、…違うな、西金雷蜒王国の息の掛った商人がイカの販売権を奪取しようとして、なにかやらかすんだ。」

まゆ子「うむ、西だ。これからの事件は西で起きるんだ。」

釈「してアルエルシイさんです。えーと、どうしましょう。」
まゆ子「謎解きを予定している。これから督促派行徒がなにをするか、かなりの確率で予想出来たんだ。というか、督促派の現在の状況を書きたいわけだね。」

じゅえる「連中、今なにをしてるの?」
まゆ子「彼らも実は大分頑張っているんだよ。しかし目立たない。まあ、ここで一般社会における大審判戦争の影響、というのをばっちり書きます。」

釈「督促派はあいもかわらずテロ行為をやりまくってるんですね。」
まゆ子「だが分裂している。ターゲットを誰にするかでかなり路線対立が起きていて、ばらばらに動いてるような感じ。まあ彼らも、色々と振り回されてますよ。まずは弥生ちゃん関係でしょ、軍関係でしょ、神殿秩序でしょ、難民暴動でしょ、タコリティでしょ、弥生ちゃん金貨問題もあるし、スパイ狩りも起きている。赤甲梢の秘密工作もそろそろバレます。」

じゅえる「うーむ、ちょっと大変だな。集中しないとまた枚数が暴発するよ。」

釈「最終章はどうなりますか。そこから逆算するという手がありますね。」
まゆ子「エピローグは既に決まっている。ジンハさんの所にお手紙が来ます。

 で、最終章は褐甲角神聖神殿です。カプタニアの屋上の神殿が舞台となり、ハジパイ王が娘のカブトムシ巫女に泣きつかれます。戦争を止めて下さい、と。」
じゅえる「まあ、戦死者続出だからね。」
まゆ子「で、そこで前半。後半は、カロアルさんの奥さまです。彼女は夫が兵師監という地位になりましたから、ベイスラ関係の黒甲枝の家族のまとめ役をする事になっています。
 だがここでも戦死者とか負傷者の報がどんどんやって来て、大忙しです。黒甲枝は神兵よりもクワアット兵として出征している人が多いから、これは大事だと口には出さなくても薄々と分かります。

 しかし、彼女が忙しく動き回って家に帰って来たところで、訃報が届けられる。ここで終り。副題は「黒服の女達」」

釈「ふむ。終りの章として、実に納得の行く筋書きですね。」
じゅえる「最終章として、それは完璧だ。となると、息抜きにアルエルシィは機能せにゃいかん。」

釈「しかし、本人がなにもしない、というのでは話になりませんね。いっそ主役を換えますか。」
じゅえる「それは簡単だが、いまさらという気がするし。それにここでのイベントはカプタニア山の山火事だ。詳細を描くのはまた枚数がかさむ。」
まゆ子「描くのであれば、武徳王サイドというのもある。紅御女のとこで出た皇子様を用いる、というイメージも当初はありました。」

釈「うーん、困りましたね。結局、象徴としてのカブトムシ神の大きいのが、督促派行徒によって放火されて北に飛んでいく、というのがイベントなわけです。これを書く為には切り口をどうするか、ですよね。」

じゅえる「とりあえず、覚悟を決めよう。60枚だ。」
まゆ子「致し方ない。60絶対。」
釈「イベントが4つあれば書ける、んですよね60。3つなら30+。」

じゅえる「アルエルシィが一つ。でも彼女を中心に置くべきだろう。武徳王と、カプタニア神衛士の皇子と、督促派。だめじゃん。」
まゆ子「山に火が点く、てとこを考えてみよう。何故はまあいいとして、どこ?だな。どこに点ければ最も効果的か。」

じゅえる「カプタニアじゃないの?」

まゆ子「カプタニアが最適には違いない。これまでは。しかし、今武徳王はヌケミンドルに居る。そしてヌケミンドルの山は無防備に近い。」
じゅえる「そこは神衛士は居ないの?」
まゆ子「いや、普通は神聖神殿の周りしか守ってないよ。そんな人数居ないし。もちろん地元の邑兵隊とかはちゃんと山火事防止の任務を負っているけれど、今はそれも手薄だ。」

釈「武徳王に対するアピールとして、カプタニア山放火は極めて効果的、ということですか。」
じゅえる「でもそこでは神さまに火は回らないだろう。」

まゆ子「更に、カプタニアの東街は難民がごっそり居なくなったので閑散としている。難民街は人がおらず火の気も無い。」
じゅえる「放火にぴったし、だね。」
釈「しかし離れ過ぎてますよ、両方の現場が。もっと連携したというのが明確でないと。」
まゆ子「ふうむ。督促派の仕業だというのが明確である必要もあるかなあ。

 ではこうしよう、現場はカプタニア東街。難民街が火元。だがそれと連動して、神聖神殿付近にも火が放たれる。」
じゅえる「それは分かりやすい。でも可能かな?」
まゆ子「ここら辺は神衛士の管轄だ。かなり難しい。飛噴槍を使おう。」
釈「それはギィール神族の製品ですか。」
まゆ子「いや、督促派の工人が作りました。出来るんです。で、放火に成功する。」

じゅえる「それは大胆な犯行だとは理解するけれど、もう一つ面白みに欠ける。」
釈「いや、連中の仕事は面白みに欠けるのが手口ですけど。」

まゆ子「巨大カブトムシ神が飛び出す動機としては、浅いか。いや、火の中からテュークが出て来て、テュラクラフ様が山に上がっていくんですけど。」
じゅえる「それが原因で巨大カブトムシ神が飛び立つのは、良い。しかし初めから督促派がそれを狙って居た、と取られるのはやだな。」

釈「もっと決定的な陰謀があり、それがテュラクラフ様により阻止された、というのが良いのです。」
まゆ子「とすれば、東街全体に火を掛ける、というのがアレかな。」

じゅえる「ふうむ。しかし武徳王に対する攻撃としては、意味が薄い。むしろ弥生ちゃんかな。」
まゆ子「トカゲ神殿も東街にあります。これを一気に燃やしてやろう、というのは有りだね。」
釈「まだ弱いです。ここでは青晶蜥神救世主にアピール出来ません。武徳王も留守というのでは、アピールも半分です。」
じゅえる「やはり武徳王の眼前で、というのが必要かな。でも出征しているから、それは無理。」

まゆ子「武徳王のサイドの現況、というのは書きたいところなんだ。まあ、後でデュータム点の双子の片割れの攻撃が予定されているわけですが。」
釈「では武徳王に対する攻撃、というかアピールも同時に起こるべき、ですかね。」
じゅえる「そこは遠くからの風聞という形で描いてもいいんじゃないかな。督促派がこれまで何をしてきたか、は書かれていない。」

まゆ子「整理しよう。今回アルエルシィが目撃するべき事件は、カプタニア東街の放火事件と、それを陽動とする神聖神殿のある聖山への飛噴槍による放火、だ。そこで貧困層の民衆が右往左往する中、アユ・サユル湖からテュークに乗ったテュラクラフ女王が上陸して、炎を従えてカプタニア山脈に登っていく。」

じゅえる「そんだけ異常であれば、十分じゃないか。」
釈「ただ、督促派の意図と違う、ってところが問題なんですね。督促派は武徳王と弥生ちゃんキャプテンの両方の権威を貶めようとします。しかし、…この放火事件では不足ですか?」
まゆ子「城に武徳王が居ないから、問題だ。」
じゅえる「そうだね。本来このテロは武徳王がカプタニア城に居る事を前提に計画されたんだよ。だから親征に行ってるというのは予定外の状態だ。」

まゆ子「考えた。或る意味これで正しいんだ。つまり陽動だね。武徳王のところに突っ込みを掛けて、こちらが本命と見せ掛けて、」
釈「おお、それはまさに納得です。つまりはミンドレア側のカプタニア山脈に放火しようとして、実はカプタニア総本山焼き討ちです。」

じゅえる「なるほど。それはいい。でも放火という手段は伏せて居た方がいいよ。そうだね、督促派は頭がいいという事になっているから、施設破壊か。」
まゆ子「じゃあ、橋を落とそう。兵隊が渡っている最中の橋を落とそうとして失敗、とかで十分警戒されていたんだ。」
釈「つまり、褐甲角軍を対象のテロを多数行って居た。しかし本命はカプタニア放火、ということですね。」

じゅえる「行けて来た。つまりアルエルシイはこれが陽動である事を見抜くんだ。しかし彼女の所には情報の集中は、」
まゆ子「弓レアルのところでネコに聞く、でいいじゃないか。色々とツテはあるけれど、報道管制をくぐってくるのはやはりネコなんだ。」
釈「そろそろネコの大活躍も見せねばならない所ですからね。」

じゅえる「うん。で、東街が燃える中、人々が逃げ惑う地獄のような有り様の中、湖の中からテュークが炎と共に現われて、火事を消すというか炎を奪い取ってカプタニア山に入っていくんだよ。で、その空では金色の光がぴゅーっと北方に飛んでいくのが目撃される。」

釈「一つ問題があります。アルエルシイの家は西街で、東街は城に遮られて見えません。弓レアルの家のある外陣も、カロアル家のある内陣からも見えません。」
まゆ子「なにかイベントがあり、アルエルシイが東街に居る理由がなければならない、ってことか。」
じゅえる「なんとしてもテューク上陸は目撃しなければならないっしょ。しかし状況が戦時であるからには、祭とかじゃない。」

釈「ここはやっぱり、ごく普通に家の商売の手伝いをしていた。という事にしましょう。セールスをやってたんです。」

まゆ子「うん、現在東街は閑散とするのと同時に、軍事物資の移送がどんどこ行われて居る。その責任者とか物資の調達係の役人とかに接待をしなきゃいかん時もあるだろう。特にアルエルシイは黒甲枝の家に嫁に行こう、というのだから、なんか顔を売っていて不思議はない。」
釈「では、イカ関係にしますか。武徳王とかにイカの納入を行う為に、ノシイカを戻して作ったイカ料理というのを味見してもらっていたんです。そこに華を添える為に、娘も担ぎ出して来た。」
じゅえる「東街に倉庫と家を調達している事にするか。というか、安っぽい遊郭みたいなものは前から有るしね、東街は。」

まゆ子「トゥマル商会は、イカという新製品を売り出す為にアルエルシイを積極的に使っている、という事にするか。いきなり青晶蜥神の信者に改宗させられちゃった。」

じゅえる「十二神信仰の改宗、ってのはどういうのだ? 普通に神殿に遊びに行くんじゃないの?」
釈「なにか特別な会員みたいなものですかね。巫女になるわけでもなく、戒律も無いんですよね。」
まゆ子「うーん、では救世主教にするか。弥生ちゃんを直接に信仰する教団というのがにわかに立ち上がり、そこの広告塔として。」
じゅえる「あからさまに怪しいぞ、その宗教。母体はどこだ、トカゲ神殿じゃ無いな。」

釈「それはともかく、救世主教とピルマルレレコ教については言及せねばならないでしょう。なんだか分からないけれど救世主教に改宗させられそうになるんです。抵抗しますが。」

まゆ子「しかし、アルエルシイが自らノシイカを焼いて、試食を求めるというのは面白い絵だ。ただ、なにかのパーティ会場での話だな、それ。」
釈「それこそ、トゥマル商会主宰のイカ販促パーティでいいじゃないですか。今はガモウヤヨイチャンと名が付けばなんでも売れるご時世なんですよ。」

まゆ子「イカを取り扱う事にしたのは、アルエルシイがネコの噂から考えた。って事にしておこう。デュータム点で弥生ちゃんがすりすりした、ってのを聞いて、これは売れる!って。」
じゅえる「つまり自分が始めた商売、てことか。それならキャンペーンガールを逃げられないな。うん、採用。」
釈「ついでにこうしときましょう。イカはそもそも西金雷蜒王国においては宮廷料理にも多用される美味なのは間違い無い。トゥマル商会のお父様もかねがねこれが売れたらなあ、とは思って居たところに、この弥生ちゃん騒ぎです。渡りに舟で、娘の進言に飛びついた。」
じゅえる「うん。最初から下地はあったってことだね。」

まゆ子「ニーズとシードが合致して、情報戦を制したってわけだ。金ががっぽがっぽと入って来る。」

じゅえる「あ、ここで弥生ちゃん金貨の実物を投入しよう。なぜかイカやゲルタの代金としてこれがごっそり持ち込まれるんだ。王国が規制しようにも、これは通貨ではなくて商品に過ぎない。極めて兌換性の高い商品として、規制の対象外なんだ。というか、通貨として認めていないものであり、しかも既存の通貨と似ても似つかぬものだからね。」
まゆ子「ふむ。じゃあ督促派もこれにはなにか絡んでいることに、…そこまで頭良くないか。」
釈「経済運営は専門外ではないでしょうかね。」

まゆ子「ともかく、アルエルシイの大審判戦争はイカ!なんだ。では弓レアルは?」
じゅえる「そりゃバイジャン様だろう。頭にお花畑が咲いてるよ。でもどうしよう、イカパーティに出席する?」
釈「居てもいいように感じますが、いいとこのお嬢様がそうめったに東街を出歩くというのもなんですね。危ないんでしょ?」
まゆ子「危ないというよりも殺気立ってる。戦時だから当たり前だ。東街のトカゲ神殿に行きたい所だが断念してるくらいだしね。」

じゅえる「では、アルエルシイはノシイカのキャンペーンガールで大忙し。その合間を縫って色々と督促派の策略に思案を伸ばす。そして街が放火されカプタニア山に飛噴槍が飛び、テュークが湖から上がって来る。」

釈「60枚のエピソードとして上等ではないでしょうか。」
まゆ子「過不足無し、て感じだね。」

 

07/09/08

まゆ子「げばると処女 EP5 「第十章 なんでもつくるよ弥生ちゃん」 できた。」

じゅえる「やっぱこっちの方が早かったか。」
釈「どうしましょう。9章はまだ修正中ですよ。」

まゆ子「できたものは仕方がない。さっさと載せるよ。なあに、告知しなきゃいいさ。」
じゅえる「そんなもんかねえ。」
釈「まあ、読みたい人は探してでも読むでしょうから、致し方ありません。」

まゆ子「ところでだ、この章の前には一つおまけが付く事になっていた。創始暦7000年とかいうやつだ。」
じゅえる「ああ、13代目青晶蜥神救世主ってやつかな。」

まゆ子「でこれを書いた方がいいと思うんだ。後世の視点から考えれば、いま弥生ちゃんが何をやっているかがよく分かる。」

釈「具体的に言うと、どういう風に分かるんです?」
じゅえる「弥生ちゃんの歴史的意義、というやつかな。」
まゆ子「いや、ちょっと違う。実は弥生ちゃんが歴史には何一つ介入していない事だ。」

じゅえる「?」
釈「? でも色んなことやっていますよ。」

まゆ子「やっているように見えて、やっていない。作ってるんだ。」
じゅえる「作るのとやるのとは、違うの?」

釈「いえ、それはー、歴史というものはあくまでもその世界に住む人達が作るもので、部外者たるきゃぷてんはなにをするべきでもない、ということですか。」
まゆ子「そういう事だな。だがお節介な弥生ちゃんは世界がよりよく進むように道案内をする。未来を示唆して見せる。だから色んなものを作るけれど、それを残す事にはこだわらない。むしろさっさと滅びてしまえと思っている。
歴史上伝説上に、不思議エピソードだけを残して、実物はなにひとつ証拠を残さず消えてしまう方が、より人を惹き付けると知ってるんだ。」

じゅえる「ふーむ、損な役回りだねえ。となると、弥生ちゃんは自ら伝説になろうとしているわけか。」
釈「すでに伝説の人物ですが、よりバーチャルな存在に自らを移し変えている最中、というわけですよ。」

まゆ子「てなわけで、後の世界から振り返ると、弥生ちゃん黄金伝説というのが幾つも残る事になる。大量の財宝や不思議アイテム、神秘の剣、死人をも蘇らせる奇蹟のハリセン、星の世界の文献やら音楽、不可能を可能にするカラクリアイテム、などなど。」
じゅえる「ファンタジー世界を一人で組み上げているのかー。それは楽しいな。」

まゆ子「だが、だからこそ、後の世界の人は弥生ちゃんを否定する。合理的に考えて、そんな人が居る道理が無い、とね。」

釈「…、そりゃ、そうです。」
じゅえる「どう考えてもラノベの登場人物だしねえ。まともな人間なら否定しない方がおかしい、か。」

まゆ子「それが創始暦7000年、です。正確にはーえーと蝉蛾神600年くらいか、6600ねん?」
釈「創始暦6666年、でいきましょう。」
じゅえる「うむ、いい年だ。」

まゆ子「というわけで、この世界の常識ではガモウヤヨイチャンなる救世主は実在しない事になっている。弥生ちゃんのみならずゲジゲジカブトムシタコの救世主も存在しない。十二神も架空の存在だし、聖蟲なんてものが居る道理が無い、という事になる。」

釈「6666年には聖蟲は無いんですか。」
まゆ子「300年ほど前に最後のカブトムシ神の聖蟲が消滅している。それからわずか300年。人はここまで思い上がっているんだ。」

じゅえる「じゃあ、聖蟲は歴史上居ない事になり、…でもそんなんじゃあ歴史がでたらめになるでしょ。」
まゆ子「当然。だから方台人類の科学技術は、長年の叡智の積み重ねにより人類自らが作り出したもの、として考えられている。
 ゲジゲジ神による科学技術の導入は、ゲジゲジを信奉する王朝による金属文明の成立として、3000年前に始る訳だね。
 その更に1000年前に農耕が始り文明というものが形成された。だが実はそれは歪曲されており真に方台に文明が開花したのは今から6666年前。タコ巫女王ッタ・コップの出現が紀元0年にあたる、とこの時代の人は考える。」

釈「紀元0年は、架空の設定ですよね。ッタ・コップが王国を作った時を3番めの救世主の時代の幕開けとして、紀元2000年に設定した。」
まゆ子「だから、テュラクラフ女王が失踪した後の時代、小王の時代で文明は停滞し怪しげな宗教により世界は混乱して、3000年前にゲジゲジ神王朝により統一された、ということになる。」

じゅえる「じゃあカブトムシ神王朝ってのは?」
まゆ子「貴族支配に基づく王朝が不敗堕落した結果、奴隷階級にあったカンヴィタル・イムレイルが蜂起して作り上げた軍国主義の王朝。という事になる。しかしそれ以前のゲジゲジ神文明から脱却していない、従属的な文明として考えられている。」

じゅえる「ま、まちがっちゃない。」

釈「で、1666年前にガモウヤヨイチャンという文化英雄神が現われた、しかしてその実体は。」
まゆ子「この時代、つまり紀元6666年は科学技術文明社会だ。
 弥生ちゃんの時期に科学技術の教科書がぽんと現われた。弥生ちゃんが書いたからね。これを、秘密教団による科学技術原理の暴露、が行われたと解釈する。仮想的執筆者ガモウヤヨイチャンが星の世界からもたらした、という形で世に出されたものと考える。」

じゅえる「誰によって?」
まゆ子「督促派行徒。」
釈「全然関係ないじゃないですか。」

まゆ子「いつの間にかそういう事になったんだ。というかしたんだな。ギィール神族が独占していた科学の秘術を暴露した英雄的行為、って事になる。」
じゅえる「やはり、裏事情があるってことか。」
まゆ子「というか、青晶蜥神時代の後期は聖蟲の数が減っていって、神聖秩序というのがどんどん薄らいでいくんだ。で、人間を中心とした理性的な社会運営を謳う結社がどんどん出来上がる。
 彼らが自らの祖として選んだのが督促派行徒なんだ。だから、彼らの地位を引き上げる工作を行い、十二神に対抗するものとしてピルマルレレコ神を選択した。」

じゅえる「しかし弥生ちゃんは確かに居ただろ。それを否定するのかい?」
まゆ子「弥生ちゃんは十二神方台系に二度現われる。5006年と5555年だ。13代目青晶蜥神救世主カマランティ・清ドーシャが捨身祈祷を行って無理やり弥生ちゃんを呼び出します。」
釈「あ、それで。5555年の次のぞろ目の年に、弥生ちゃん祭りをするんですね。」

まゆ子「それはいい考えだな。じゃあそういう事にしよう。天下の奇祭として、弥生ちゃん祭りが行われるんだ。古代様式の武闘会が行われるんだ。」
じゅえる「野球だな。」
釈「ゲリラ的美少女野球、ですね。あまりにも乱暴で人が死ぬというお祭りです。」

じゅえる「だが弥生ちゃんが居ないと考える人達は、どうしてそんなことを。」
まゆ子「ま、500年も飛んで同じ人物が現われるはずはないさね。」
釈「はあ。不思議が災いしたんですか。」

まゆ子「それに、この時代は外の世界とも通じるようになっている。十二神方台系のみならず、別の世界にもちゃんと弥生ちゃんの足跡が残されており、そんな事は人間には不可能だということになっている。都合23箇所で救世主やってるから。」
じゅえる「そりゃーたしかにでたらめなはなしだなあ。」

釈「しかし、痕跡は残っているでしょう。なにか遺物とかが残って居て。」
まゆ子「弥生ちゃん等身大像とか玉座の跡は残っている。ピルマルレレコ旗も残っている。」
じゅえる「それらじゃあ、ダメなんだ。」

まゆ子「弥生ちゃん信仰は激動の時代を乗り越えて来たからねえ。うーん、そうだねえ。
 まず弥生ちゃんが来てすぐのオリジナルブーム。弥生ちゃんが去った後の動乱の時代の規範プリンシプルとしての弥生ちゃん信仰。発展期の象徴としての弥生ちゃんブーム。それが去った後の混乱期の弥生ちゃん待望信仰→これが5555年の捨身祈祷に繋がるのだね。

 で、その後外界に繋がる事が弥生ちゃんにより実証されて、大外界ブームとその案内人としての弥生ちゃん信仰。外界への脱出が容易には叶わない事を知った後の破壊神弥生ちゃん信仰。で、世紀末弥生ちゃん待望論と弥生ちゃんから脱却すべきだという打倒弥生ちゃん論。旧世代の遺物だとして弥生ちゃんを否定しようとする合理的弥生ちゃん批判論。に繋がっていく。」

じゅえる「つまりは千年間ずっと弥生ちゃんの幻影が支配したんだ。そりゃあ無かった事にもしてみたいかな。」
釈「6666年ではどうなんです? 既に滅びてしまった英雄伝説なんですか。」

まゆ子「いやー、実はこの時期弥生ちゃん復興論が盛んになっているんだ。環境問題の先駆者としての弥生ちゃんの言説がクローズアップされてる。
 弥生ちゃんは森林保護に強く指導力を発揮したし、炭団も作って燃料としての森林伐採を咎めたし、トロシャンテを初めとする原生林の利用を王権をもって厳に戒めたし、ともかく6666年の方台の自然が保たれているのは弥生ちゃんのおかげだ、という事になっている。
 6000年新時代の幕開けの頃も製鉄と蒸気機関の燃料として木材を利用しようとしてトロシャンテに手を出して、弥生ちゃんの旗を掲げる森林保護派との大紛争も起こっている。特に グテ地にある黒甲枝諸侯連合国は弥生ちゃんにトロシャンテ保護の約束をして国を与えられている。」

じゅえる「そうか。まだ弥生ちゃんの幻影は生きているんだ。」

 

07/08/20

まゆ子「あづい。」
じゅえる「なんでまあ、こんなに暑いかね。どうせなら7月中に熱けりゃスイカもおいしくなるのに。」

釈「そいう文句のつけかたをしますか。えー、というわけで頓挫しております。」

まゆ子「してないよ。9章は進んでないけどね。」
じゅえる「10章もう半分書いちゃった。さすが弥生ちゃんだ。」

釈「それでは、9章よりも先に10章が完成すると?」
じゅえる「そいう可能性は否定しない、というか選択のもんだいだ。どちらが夏のボケた脳味噌でかんたんに書けるか。」

まゆ子「例年なら夏はコンピュータがぶっ壊れて、修理の関係でバカンスになるんだけどね。というか、動いてても負荷掛けられるような熱さじゃない。CGも3Dもおしまいだ。」
じゅえる「夏の3DCGノルマを果たしてないからね、今年は。」
釈「そうか、やる事は山と積んでるんですね。」

まゆ子「あづい。」
じゅえる「まゆちゃんは髪の毛が長くて太くて真っ黒で、めちゃ暑苦しいんだよ。切れ!」
まゆ子「うう、その誘惑に何度心をうごかしたことか。」

釈「わたしも髪は長くて黒くて太いですよ。」
じゅえる「あんたのはぱさぱさしてすずしそうじゃん。まゆ子の見てよ、このびっちりと詰った髪を。」
まゆ子「夏場はしぬります。」

釈「でもなんだかんだ言ってお盆も終りましたから、もうすぐ涼しくなりますよ。明日になれば、」

じゅえる「明日? 昨日と違う今日も来ないのに、今日と違う明日が?」

まゆ子「押井特集はなかなかへびーでござんした。あれを真夏のクソ暑い夜中に延々と見続けるのは拷問でありんすね。」
じゅえる「ダロスっての初めて見ちゃったよ。」

釈「そう言えば今年はお盆に映画を見に行くというのは、しませんでしたね。見る気ありませんか。」
まゆ子「行くまでに死ぬ。」

じゅえる「えーと、トランスフォーマーは見なくちゃいかん。はりぽたーは、まあ見なくても死にはしないが、見て損も無いか。」

まゆ子「じゃ、とランす・ふぉーまに。」
じゅえる「とランす・ふぉーま。」

 

07/08/13

まゆ子「あー、地獄のような有り様です。」

じゅえる「あー、なんだ、調子良く書いてるじゃないか。」
釈「ですねえ。第九章がどんどん掲載されてますよ。」

まゆ子「あんまり長いから、一編20数枚くらいのボリュームで完全に仕上げて逐次掲載という形態を取った。どれも一本丸々書き直すくらいの手間が掛ってる。というか、組み直してる。」

じゅえる「最初から完璧、というわけにはいかないんだ。」
まゆ子「そんな事が出来る奴は、超人か、書いたものの品質を考えない恥知らずな奴だけだ。

物語というのは書いているとフィードバック現象を起す。つまり先に書いたものよりも後に書いたものの方が良く、設定もどんどん進化していく。
で、これに応じて前の方を書き直すと、当然後ろも書き直さざるを得ない。書き直しが必要無い、というのはつまりこのフィードバックが無い、ということだ。」

釈「あー、長期連載ものって、それでどんどん破綻していきますよね。」

じゅえる「じゃあさ、最初の第一稿を簡単にして軽く流して、後からちゃんと手直ししていけばいいんじゃない?」
まゆ子「それは私も考えたけど、どうもダメなんだ。」
じゅえる「そりゃまたどうして?」

まゆ子「ダメなんだ、想像力がそれを許さない。原稿執筆に到る前には、当然どうやって描こうかとかのイメージがあるわけだよ。で、それに従って書いている。でも、最初のイメージはやはり弱いんだ、細部のディテールに欠ける。で、そのディテールを獲得するのが第一稿を書いている最中なんだな。」

釈「それでは、省力化するわけにはいきませんね。」
じゅえる「うーむ、だが高速化はしてもらいたいもんだ。なにが問題?」

まゆ子「強いて言うのならば、分量制限の失敗だな。このEP5はつじつまを合せる為に、本来倍三倍の量を必要とする話を詰め込んでいる。容量が30数枚で納まる話ならば、ちっとも時間は掛らない。というか、現在書きまくってるのは20数枚だからさくさく行く。」

釈「この計算の間違いというのは、結局、」
じゅえる「うん。ディテールだよ。折角投入したキャラクターに血を通わせる為に必要な分量が、これだ。キャラを削ればよかった、あるいは使い捨てで良かった、というのならば、これでまったく問題ない。」
まゆ子「そうなんだ。マネキンならばまったく計算通りに問題無い。」

釈「では今後、EP6・7も拡大する?」
まゆ子「しない。謀略だから。」
じゅえる「謀略はスピード感こそが命、戦闘シーンとは異なるのだよ。矛盾を感じさせてはダメなんだ。」

まゆ子「ついでに言うと、登場人物達が処理出来ない速度で歴史が流れていく、という感触を必要とする、というか考えている。この2巻に要求されるのはスピードだ。」

釈「ではEP5に要求されて居たのは、」
まゆ子「鉄の軋みと血の熱さ、流れる汗に浪漫だよ。」
じゅえる「そりゃ枚数喰うわさ。」

まゆ子「まあ、この第九章はそれこそ「ここが峠。」だからさ、これさえ済めば次のフェイズに移れる。弥生ちゃんが主人公の物語が流れ始める。」
じゅえる「弥生ちゃんは早いからねえ。あの子が出るとなんでも早くなる。」
まゆ子「あれは才能というか天性だね。」

釈「そいうキャラは計算で得られるものではありませんからねえ。」

まゆ子「ちょっと弥生ちゃんの話をしておこう。

えーと、劫アランサは弥生ちゃんの指示で神聖王をギジェカプタギ点から走らせます。どこまで? という事で、途中にお迎えの準備をしておきます。神聖王にふさわしいレベルのゴージャスなお出迎えです。」
じゅえる「ふむ、納得だね。」
釈「安っぽくしては、褐甲角王国が軽く見られますから、それは大問題です。」

まゆ子「そうなんだけど、未だ受入れるか否かも決まってない状態でそういう準備はできない。また金の出元も無い。そりゃそうだな、どちらかと言うと招かれざる客だ。だから弥生ちゃんが金を出す。」

じゅえる「それはどうだろう。弥生ちゃんが今出したら、すかんぴんになっちゃうだろ?」
まゆ子「敢えて出す! この事で一般庶民の心も鷲掴みだ。」

釈「しかし、それはキャプテン自らが準備するのですか?」
じゅえる「そりゃ無理だろ。トカゲ王国の宰相だか建軍準備委員会だとか、そいうのが、」

まゆ子「そいうのがやったら角が立つ。なにせ褐甲角王国が初めて迎える賓客だ。金は出しても、あくまでもホストは褐甲角王国の人間でないといけない。そして、その役は脱走前には決して決まっていない。」
じゅえる「王族とかではない、ということか。というか、それを受けた人間は後々政治的に酷い目に遭うね。」
釈「よほどの人物でないとこれは受けられませんよ。」

まゆ子「受ける人物が一人居る。ゲルワンクラッタ村、元のベギィルゲイル村を守護する神兵ジンハ守キンガイアだ。」

じゅえる「だって、アノ人負けちゃったでしょ。」
釈「いえ、負けたからこそ、天河十二神のお導きとして、…受ける、でしょうか?」

まゆ子「お手紙を書きます。誠実に。あまりにも誠実なお手紙だった為にジンハさんは感激して、弥生ちゃんのいうことを聞きます。というか、ここに神聖王が来るのは天の計画だ、ということを教えてくれますから、彼も頼まれてはいやとは言えない黒甲枝なんだよ。

それに、弥生ちゃんは手紙の中で近々自分も非常に危険な戦いをする予定になっていて、死ぬか生きるか分からない。てのまで書いている。弥生ちゃんがタイトロープを渡って方台の為に一生懸命働いているという事を、彼とその仲間は知る事になり、これは黒甲枝として応えねば死んでも神さまの前に顔向けができない、と思ってしまいます。」

じゅえる「つまり説得の決め手は、誠意ってことか。」
釈「それが使える救世主、ってなかなかお目にかかれませんよねえ。」
まゆ子「書くの難しいし、不思議が無いからねえ。」

じゅえる「まあ分かった。しかしそうなると、むしろその人はお金を受け取らないんじゃないかな?」
釈「うーんどうでしょう、いかに自前でやりたいと思っても、彼にはそういうお金や物は無いでしょう。それで神聖王を迎えるというのは、礼に欠けますか。」

まゆ子「そこんところも手紙に書いておくか。このお金は金雷蜒王国褐甲角王国の民衆が天河十二神の計画を遂行する為に寄進したお金であり、これで神聖王を粗略なく迎えるのは、褐甲角王国の民衆の誇りであり誉れである、と。」

じゅえる「ふむ、それならば受入れるか。でもそれは生半可な者に託すわけにはいかない宝物だらけ、ってことだよね。」
釈「うーんと、やはり建軍準備委員会の連中ですか。」

まゆ子「運搬はね。お使者としてはまた別に選ぶとして、ゲジゲジ神官の代表として神聖王を迎えるのは、例のギジジットから付いて来た人ね。」
釈「アィイーガさんのお付きになったひとですね。」

じゅえる「あの人ならば礼儀とか儀典に関してはまったく問題無いけれど、お使者の選び方は考えるべきだな。誠実を絵に描いたような人、で男、だね。」
まゆ子「男だね。褐甲角王国のひとがいい。商人や神官よりは、軍人っぽい感じか。」
釈「黒甲枝の相手ですからね。でも、居ないでしょう。」
まゆ子「脚の怪我を直した人が使えれば良かったんだけれど、まあなんとかしますよ。新キャラでっち上げだ。

(考え中)
でっちあげた! この使者は黒甲枝の家の従僕をやっていた、いかにも誠実頑固一徹という人物。年齢もかなり行っている。これでいこう。」
釈「何故そんな人がお使者を務めるのです? ご主人様は。」

まゆ子「死んだ。この度の大戦においてめでたく御討ち死になさった神兵だ。」
じゅえる「うわ。またたいそうな人を持ち出したな。」

まゆ子「で、その人が主人を失った喪失感を癒す為に弥生ちゃんの元に訪れて、この役目をもらったんだよ。しかも会ったその日に、ろくに人物も知らない内に決めた。一目でその任に耐える、って見抜いたんだね。」

じゅえる「ご主人様が無くなったのも、天の定めるところであれば、救世主の使いとなって方台に平和をもたらすのも天の計画に従う所、ってわけか。」
釈「それは無碍には断れませんね。」

まゆ子「特に、黒甲枝は相身互い。黒甲枝に仕える従僕となれば、その雰囲気から人物まるわかりだから、神兵やクワアット兵は彼を無視出来ないんだ。

ちなみに裏設定では、金翅幹家の元老員が黒甲枝だった際に用いていた従僕の家系が、そのまま王国に仕えて神兵になった、という例が少なくない。カロアルさんとこもそんな由来だ。」
釈「律義は折り紙つき、ってわけです。」

じゅえる「ちょっと待った。ジンハさんの所に行くのは、もうちょっと後だね。そのエピソード。」

まゆ子「第10章ではないね。おそらくは、13章エピローグだ。」
釈「つまり、次は神聖王ですよ、という事を印象づける為に、ジンハさんを持って来るんですね。」

じゅえる「おおごとだな。」
まゆ子「誠実なる手紙、ってのがちょっとね。書いたこと無いもん。」
釈「また修羅場になりそうですよ。」

じゅえる「うーんと、そうだ。アレだ、もう一つ感動のネタを用意しよう!」
まゆ子「具体的には?」

じゅえる「盗賊が出る。弥生ちゃんが送った財宝を途中で奪おうとした奴だ。これが行列に付いて来て、ジンハさんの前に跪いて「お縄を頂戴いたします」って。」

釈「それは、プロフェッショナル泥棒ですか?」
じゅえる「強盗追いはぎの類いで、街道筋の神兵が長年追って来た札つきの悪だ。これが財宝の行列に襲いかかる。しかし、」
まゆ子「弥生ちゃんがなんの為にこれを送るかの口上を聞かされて、感動して荷物運びに付いて来た、ってのだな。」

じゅえる「しかし、彼は自分がどうしようもない悪であることを知っている。このような薄汚れた自分が弥生ちゃんの御為に荷物を運ぶわけにはいかない。ではどうすればよいか、と考えて、長年彼を追っているジンハさんの元に出頭し、正義を行って下さいと訴え出るんだ。」

まゆ子「それは、つまり、手紙が届いた後で荷物が届くようになってから、だね。」
釈「つまりジンハさんの説得とはまったく関係無い事件です。ですが、」

じゅえる「感動の嵐だよ。

ちなみに弥生ちゃんは、神聖王をお迎えする為の財宝は、途中いくらか盗まれたとしても、決して血で穢すなと命令している。ケチのついたモノで神聖王はお迎え出来ないってことだね。だから、運んで居た建軍準備委員会の連中も戦わない。斬られても手を出すな、という仲間内の誓いになっている。これを守れない奴には、トカゲ王国に仕える資格が無い、とね。」

まゆ子「つまり、あくまでも感動の嵐が目的なわけだ。あざといな。」
釈「あざといんですけれど、…描きようですね?」
まゆ子「描ける!」

じゅえる「がんばれ。」

07/08/04

まゆ子「げばると処女EP5 「第9章 ここが峠」、でけた。177枚! あたしってバカだと思う。」

じゅえる「バカ。」
釈「1章は30枚以上、ですよ。大バカです。」
まゆ子「ははは、バカだ、バカの顔だ。」
じゅえる「阿呆。」

まゆ子「えーと、これから手直しするんだけど、とりあえず

カロアル軌バイジャン死亡確認! カロアル羅ウシィ死亡確認! カエルみたいな人死亡確認! コウモリ神人確認! 蝉蛾巫女エローア死なない! ジムシ死なない!」

じゅえる「ふむ。エローアは生き残ったか。」
釈「一番絵になる死に方でしたけどねえ、生きたまま歌いながら食べられちゃう、てのは。」
まゆ子「カエルみたいな人に感謝するべきだな。この人がクローズアップされた関係上、エローア無しでも緊張感を持続出来た。
後、赤甲梢の人も大活躍、サト英ジョンレさんもなかなか活躍してみせた。書き足りないのは難民の兵だが、まあ雑魚だからいいか。」

じゅえる「しかし、まあ一章30枚で月4回、という計算なんだけどさあ。確かに177枚はそれよりも多い、多いのは分かるけど、せめて7月中に上げるべきでしょ。」
まゆ子「戦闘シーンてのは体調が悪いと書けないものだよ。というか、運動不足でも書けないんだけどさあ。気合いというのは気持ちじゃない、身体と気持ちが合体したもんだ。」

釈「では戦闘シーンでない時は、さくっと書けるということですか?」
まゆ子「弥生ちゃんなら今からでも書く!」

じゅえる「うーん、書きたいものと書くべきものが同じとは限らないからね。でもまあ、ともかくこれで当分は戦闘シーンは無いか。」
まゆ子「次は弥生ちゃんのお話戦闘シーン無し。11章はとっくの昔に書いた。12章は山火事だ。13章は大審判戦争のエピローグ、カプタニアに訃報が続々到着だ。
EP6は、第1章がえーと?」

釈「EP6第1章は神聖王走る、第2章は武徳王走る、第3章が弥生キャプテンコウモリ神人と対決戦闘シーンです。」

じゅえる「山火事がどういうものになるかよくわからないけれど、取り敢えず弥生ちゃんまでは無いか。ちっとはゆっくり出来るね。」
まゆ子「戦闘シーンは疲れるからねえ、可愛いの出せないし。」

釈「では次のきゃぷてんの章では可愛いのが出ますか。」
じゅえる「ネコは出るだろ。このところご無沙汰だ。」
まゆ子「あーネコね。ネコは至って平和な生き物だから、戦闘シーンが続く中では出られないな。

 えーと、次の第10章は弥生ちゃんが劫アランサに神聖王行幸の指示を出す、というお話ね。なにせ敵の親玉が飛び込んで来るんだから、さあたいへん。
 あと色んなものを作ります。炭団とか七輪とか、日本刀も。それにお医者さんもします。今回は整形外科です。十二神方台系においては、整形外科なんて考えた人はひとりも居ない。整形というか形成外科なんだけど、顔がさまざまな理由で二目と見られない人を救います。人の顔面をこねこねして粘土細工みたいにね。でも弥生ちゃんは芸術家ではないし、方台の人の美意識がどうなのか、がよく分からないから念入りに準備しギィール神族に助言を仰ぎ、人形職人に弟子入りして顔を作る練習を積み重ねて、ようやくチャンレンジです。手術を受ける人も念入りに調査して家族の顔とか自分のイメージとかを画家にスケッチさせて納得のいく、もっともそれらしい顔を描いて、慎重に行います。」

じゅえる「その慎重さと丁寧さが弥生ちゃんだね。」
釈「まさにきゃぷてんはそういう神経の細かい所まで十分に考えて行動するんですよね。」
まゆ子「そうなんだ。あまりにも真剣に丁寧に細かく検討するので、かえって周りの人が恐れ入ってしまった。まあ、普通に病気をなおす時はばっさばっさと斬り倒していくんだけどね。」

じゅえる「炭団て何?」
まゆ子「炭団は、エネルギー資源問題解決の切り札だよ。デュータム点とかの大都市は、周辺の木を切っちゃって周囲に薪が無いんだよ。だから遠くの森から運んで来る。」
釈「環境保護の問題ですか?」

まゆ子「そうなんだ。炭団を作って薪よりも簡単で軽い、持って来やすい燃料を作り、熱効率を上げて燃料消費量そのものも少なくしようと考える。だから炭団と七輪だ。他にトカゲ風竃も作るよ。方台の解放型の竃ではなく、密閉煙突付の熱効率の高い奴でお湯もついでに沸いてしまう。」
釈「それは、どっかのNPOが推進していた奴ですね。」
まゆ子「まんまね。で、これで燃料使用量を下げて森林保護を推し進めるのだ。」

じゅえる「弥生ちゃんて、ごくろうさんだねえ。」

まゆ子「ま、七輪はスルメを焼く為のものだけどね。」

 

07/06/29

まゆ子「というわけで9章だ。今回私はなにもしない。ここで決めた通りに書く。」
じゅえる「ま、戦闘シーンだからね。まずは軌バイジャンさんの戦闘と。」

釈「スケジュール的には、軌バイジャンさんの戦闘→イルドラ隊の陣容→羅ウシィ隊の到着戦闘→穿攻隊の到着→イルドラ兄負傷→撤退戦闘→神人の出現→撤退。ですか。」

じゅえる「羅ウシィさんも大活躍しなけりゃということで、難民武装団800を急遽投入しました。この人やられちゃうのは、穿攻隊到着前?」
まゆ子「どうしよう。イルドラ隊の剛兵にやられるんだけど、本隊の兵士だから穿攻隊到着と同時くらいかな。」
釈「というよりも、穿攻隊が負傷の穴をカバーするんですから、穿攻隊の戦闘もかなり枚数を裂かねばなりませんね。イルドラ兄の負傷はそのせいです。」

じゅえる「はなしがデカ過ぎるな。もうちょっとこんぱくとにまとめないと。」
まゆ子「褐甲角軍だけで抑えれば楽ちんなんだが。じゃあこうしよう。

 軌バイジャンさんの戦闘→羅ウシィ隊の到着戦闘→イルドラ隊が羅ウシィを狙う→穿攻隊到着→狙撃命中羅ウシィ負傷→イルドラ兄との戦闘・兄負傷→羅ウシィ戦死の報告→イルドラ隊撤退準備・エイムール生贄→撤退戦闘→神人出現→撤退」

じゅえる「ふむ、構造としては良くなった。で、イルドラ隊のカエルみたいな神族がやられるんだね。」
まゆ子「それはやられるところは描かない方がいいと思うんだ。イルドラ姫が神人の出現を目撃して、で、既に撤退中で毒地の中を引き上げるシーンに移る。この時会話だけでカエルみたいな神族が死んだ事を告げて、彼の姿はここにはない。つまり直前の大戦闘シーンでの活躍ばかりが読者様の印象に残る、という形にしたい。」
釈「つまり、永遠に戦い続けている、という事ですね。」

じゅえる「えーと、軌バイジャンさんですが、20人全部で行くわけ?」
まゆ子「うにゅ、10人とイヌコマ5頭で行く。つまりクワアット兵2邑兵8イヌコマ5、で残りはヌポルノ原で待機している。

イヌコマは元々森林地帯にも住む動物で、林の中でも道を間違えないんだ。撤退時のコンパス代わりに連れている。それと、イヌコマは賢い生き物で、危険な目に遭ったら最寄りに宿場とか駅、駐屯地にすっ飛んで行って群れの中に保護してもらう習性があるんだ。だから緊急時にこれを放すと、すっとんで帰って緊急の警告を伝える事が出来る。これは林の中でも同じ。
だから追跡の10人が敵を発見してイヌコマを放すと、待機しているところに飛んで帰って、そこから残りのイヌコマを地域全体に放って警戒警報を発する、というわけだ。
これが一番確実で早い。」

釈「便利な良い子ですねえ。で、戦闘はしないんですよね。」
まゆ子「敵の本部隊を発見するとひたすら撤退する。カロアル小隊のこの10人は最初から撤退戦闘の練習を積み重ねており、逃げるのに関してはじゅうぶんな備えがある。第一、こういう状況でばらばらに逃げると道を間違えて立ち止まり攻撃されてしまうからね、ちゃんと規律正しくひとかたまりになって逃げるのが正解。」

じゅえる「発見からどのくらいの時間戦ってるの?」
まゆ子「2時間ほど逃げるかな。林と畑の段々になっている端村というところを逃げるから、距離は10キロも無い。7キロってところか。」
じゅえる「5キロくらいにしよう。既にかなりの深さに入り込まれて居たということで。」

釈「そうですね。それよりヌポルノ原はどのくらいの距離にあるんです。」
まゆ子「街道から2キロってところかなあ。林がね、層状な感じで連なってる居るんだよ。その境目にあたる場所で結構遠い。」

じゅえる「そもそもベイスラ県の横幅ってどのくらいだっけ。長さは40キロくらいだったかな。」
まゆ子「定規で測ってみると南北100キロ東西75キロってくらいだ。スプリタ街道が東寄りにあるとして、30キロの深さはあるかな。」
じゅえる「国境線が80キロある、と聞いた事があるんだけど、それで5000人?」
まゆ子「うん。」
釈「すごくすかすかですよお。」
まゆ子「そういう世界なんだから仕方ない。もちろん道というのがあって、ゲイルは道を通るしかないから、そんなに自由には行かれないんだけどさ。」
じゅえる「よっぽど食糧の生産技術が低いんだね。うーむ。」

まゆ子「だからさ、ゲイルは早いけれど、兵が伴わなきゃ意味が無いんだよ、普通は財物をかっさらって行くから。だからゲイル単体での侵入はまず無い。だが今回、ゲイル騎兵だけの侵入は少なくなかったから、防衛線はぴりぴりしてる。2キロおきに神兵を配置している場所もあるてなくらいだ。神兵は普通の兵と違って走るのも早い。重甲冑装備で時速15キロは出る。2キロでも8分で到着だ。それにイヌコマの警戒網もある烽火台もある。林はゲイルの足も遅くする。実際はそんなにうまくはいかないよ。」

じゅえる「でも今回、人を殺すのだけが目的でしょお。ゲイル単体でというのはダメなの?」
まゆ子「ダメじゃないが、ゲイル単体で確認されると神兵も単体で追って来る。ゲイルと神兵は、鉄弓装備だと神兵1で1寇掠軍6体と戦えるくらいに戦力比は分が悪い。指揮する歩兵の部隊抜きで複数の神兵に囲まれた場合、ちょっと死ぬね。」

釈「射程距離からして違いますからね。」
まゆ子「実際どちらも堅実な方法を取らざるを得ないんだ。ゲイルは無敵でも上の神族はそうじゃない。単騎で乗り込んで罠にでも掛ったらどうしようもない。単純な罠ほど掛り易いものだからね。」
じゅえる「やはり、兵は数か。」
まゆ子「そういう事です。」

釈「で、ゲイル15兵100盗賊800という大部隊ですけれど、これは数的には十分なものですか。」
まゆ子「800は大したもんだ。でも集団で攻撃する分だと、クワアット兵の敵じゃないな。あくまでこそこそと出て来る分にはそれなりに強いが、総攻撃に参加した連中は軒並み戦死だ。捨て駒にされます。」

じゅえる「そこらへんをもっと詳しく描かなきゃいかん。」

釈「具体的にどういう戦術を用いて侵攻したんですか。その武装団はどういう風に使役されるんです。」

まゆ子「基本的に今回の浸透作戦の目的は一つ、兵師監カロアルの首だ。だからゲイル騎兵は後ろに控えて出番を待っている。
実は彼らは嘘吐いて今回作戦を組み立てており、他の隊の神族は内部から南北どちらかの砦の後背を衝くと思っている。要するに応援を分断して砦を孤立させるというのだね。
まあこれはその通りに動きもするんだが、イルドラ隊はクワアット兵を出来るだけ釘づけにし殺す事でこの地でその役割を果しつつも、兵師監カロアルを狙う、という作戦だ。

難民をぶち殺そうとは考えていないが、彼らが使役する難民武装集団がどう動くかまでは考慮していない。さんざん暴れて正規部隊の楯になってくれというもんだ。その過程で難民に被害が及んでも仕方ないてのだね。」

じゅえる「それではちょっと書けないな。もっと難民武装団の運用をちゃんと考えてくれ。」
釈「そうですよ、もっと考えないと。」
まゆ子「あーしかしあんまり考え過ぎると戦場を離脱してしまうおそれが、あくまでヌポルノ村を襲撃する事を考えないと。」

釈「ではこういうのではいかがです。難民武装団には、ヌポルノ村住民を皆殺しにして、現在滞在中の難民に占拠させて一定期間村を分捕ろうという作戦です。彼らはこの一大攻勢で寇掠軍が国に帰るなんてまったく知らない。長期戦のつもりで今回参加して居ます。」
じゅえる「そっちの方がありそうだ。ではその策を強化する為に、その一定期間村を守り抜く策、というのも考えておこう。それがあれば後々なんか役に立つよ、話を膨らませるのに。」

まゆ子「なるほど、戦後の話にリンクして来るわけだ。

だがそれは実は単純な話で、村人が皆殺しに遭えば村は空っぽ。襲撃に荷担しなかった「善意の」難民が住み着くのになんの不思議も違和感も無い。褐甲角王国としても住民が居ないままに村を放置するわけにもいかない。だから、そっくり村を手に入れても大丈夫なんだ。そのアリバイ作りとして、難民達にも相当数の被害を与える事が予定されている。同じ犠牲者として村を譲り受けるんだな。」

じゅえる「グッドグッド。でもそれじゃあ戦後に結びつかない。既に難民の間に協力者が居るということではどうだろう。これが呼応して内部からも攻撃する予定になっている。」
釈「でも武器が無いでしょう。それに難民の間に手引きする者が居ると知られたら問題ですよね、やっぱ。」
まゆ子「まあ、そうだねえ。現地に突入するまではスリーパーだったのかな。」

じゅえる「そんなに金雷蜒軍は拙劣じゃないよ。要するに暴動でなく、混乱した逃亡をを演出するはずだったんだ。褐甲角軍の統一された軍事活動防御行動を、パニックに陥った難民で妨害する。これならば誰からも非難されずに、効果的に目標を達成出来る。難民の被害者が多数出ても、どこにも尻の持って行きようが無い。」
まゆ子「おおー。」
釈「なるほど。それは考えましたね。」

まゆ子「ではヌポルノ村の内部工作はそのくらいで。で、武装団の運用だけど、単純に突撃させるというのはやはり無い?」
釈「どうでしょう。実際は金雷蜒軍の指揮には付いて来れないんじゃないでしょうかね。いかに指揮官を送り込んでも。」
じゅえる「練度の不足からね。」

まゆ子「後ろから督戦隊として追い立てる、というのも効果は無い。となると、無秩序に動く事を企図している、と考えた方がいいか。正規軍本隊の進路を開削する為に、武装団は適当に走り回らせて褐甲角軍の兵力分散を図る。このくらいしか使えないかな。」

じゅえる「それではダメなの?」
まゆ子「いやいいんだけど、それでは神兵を留められない。クワアット兵というものはそういう事態に対処する為にあるんだから。」

釈「林に火を掛けるとか。」
まゆ子「却下。自分達が林の中に居る。」

じゅえる「ではなにか新兵器を持たせているとかでは。」
まゆ子「却下。正規軍の剛兵に持たせるほどしか無い。それに、奴隷兵以下の難民武装団にそんなもの渡しても使えない。」
釈「毒煙毒ガスの類いもダメですしねえ。陽動といえば鳴り物とかもダメですか。」
じゅえる「意味無いだろ、この状況では。」

まゆ子「難民武装団は一つが10から30ほどの小集団だ。武装も短い剣と手製の槍、丸木の弓に投石くらいしか無い。鎧も無い。クワアット兵と正面からぶつかったら玉砕必至だ。となると、楯くらいは持たせるかな。矢を消費させる為に竹束とかを持たせるとか。」

じゅえる「あ、旗指物には矢を止める効果があると聞いた事がある。」
釈「母衣衆のほろは、あれは矢を止めるという話も。」
まゆ子「それでいこう。旗指物を何本も掲げて矢を止める策に出たんだ。本隊とゲイル騎兵に矢が届かないように布旗をたなびかせて突撃するんだ。ちなみに布は矢を防げないけれど、矢が当たると向きが変わってまともに飛べなくなるから正面から当たらず、貫通しないのだね。」

じゅえる「ビジュアル的にはそれでOKです。旗指物を何本も掲げて突撃する盗賊団。その背後から新兵器を携えた寇掠軍本隊正規兵、そしてゲイル騎兵と来たもんだ。」

釈「ついでだから、武装団は楯の代りに籐笠を携えている事にしましょう。これでも或る程度は矢を防げます。」
まゆ子「まあ、二枚重ねで中に獣の革でも挟んでたらね。無いよりはマシというものか。蕃兵の話に繋げられるからいいかな。」

じゅえる「じゃあ難民武装団の話はこんなもんでいいか。次は金雷蜒軍本隊の構成です。」

まゆ子「金雷蜒軍寇掠軍は通常、狗番、剣匠、剣令、剛兵、傭兵、奴隷兵、という階級になってます。

奴隷兵は一般公募でやってきたずぶの素人。
傭兵は傭兵バンドに属する兵だけれど中には籍だけおいて各地を転戦して来ただけという素性の悪いのも混じっている。
剛兵はギィール神族に対して特別の恩がある一族が神族の求めに応じて参戦するもので練度は中くらいながらも忠誠心は厚い。
剣匠は早い話が上級傭兵で下級の傭兵を指揮し先陣を切って戦う戦闘技術者。剣匠令はまあ普通寇掠軍には居ない。剣匠自体が少ないからね。
剣令は彼らを統率する者で兵の運用の技術者だ。戦闘力に関してはあまり期待しない。彼らは戦うのが仕事ではなく、戦わせるのが仕事だから。
狗番は神族の執事であるから常に主人の傍におり、戦況のいかんに関わらず前線には主人と共にしか出て行かない。また神族の他の下人を指揮する。」

じゅえる「つまり、兵のレベルでは通常剣令が指揮を執っているわけだ。」
まゆ子「まね。神族の指示に基づいて兵を動かすのは剣令の役目だ。数は結構居る。100人兵が居れば、6人くらいは剣令だ。4人が下級の剣令で20にんずつくらいの小隊を指揮し、1人が補給関係を取り仕切り、1人が神族の命令を直接受ける高級指揮官だ。
ただし寇掠軍の中では剣令に軍人の階級を与えるというのは出来ず、バンドがその任を持つ。つまり大中小の階級はそのまま保証書みたいなものだね。一般的な6人神族の寇掠軍においては、高級士官と思われるのが大体小剣令だ。」

釈「あれ、そんなものですか。軌バイジャンさんは20人率いているだけですが、おなじですか。」
じゅえる「軌バイジャンは特別だろう。つまりこれはクワアット兵に換算すると、小剣令の下に凌士長が居て、という話だ。」
釈「あ、そういう話ですね。」

まゆ子「そうなんだ。中剣令はほとんど寇掠軍には出て来ない。というか、寇掠軍を支援する後方補給所とか、寇掠軍連合体とかで初めて中剣令は出て来る。大剣令は更に毒地全体の兵力の調整とかに当たっている。もちろん個々の寇掠軍には属さない、もっと大きな三荊閣とかに属する。」

釈「じゃあ、褐甲角軍とはかなり重みが違うんですね。」
まゆ子「そうでもないよ。毒地に展開する兵数が全然違う。今次大戦で褐甲角軍はボウダン・スプリタ両街道にのべ16万人ほどを動員したけれど、金雷蜒軍は4万人ほどで大半は後方補給任務だ。正面兵数は15,000くらい。一寇掠軍は100名として、150隊神族900人、ま取っ替えひっかえで神族は1300人くらいは出たけれど兵自体は留まって戦い続けたから、こんなもんだ。」
じゅえる「数で考えてみると同程度の重みってことか。ふむ。」

まゆ子「ただし今回奴隷兵は補給にしか用いていない。財物の掠奪が目的では無かったから、奴隷兵は用いずに剛兵を用いている。その分剣令のレベルも高い者を要求されている。ちなみに小剣令の下につくのは「剣令下」と呼ばれることにしよう。ベタな名前がいっそ潔い。」
釈「それだけ位に重みがある、ということですよ。」

じゅえる「それじゃあさ、傭兵にも「凌士」という言葉を当てていいんじゃないかな。」
まゆ子「いやそれは、金雷蜒軍では「凌士」は雅語だから、使ってない。使っていいのは金雷蜒王国軍に属する重装歩兵隊だけだ。」
釈「すなおに闘奴と呼べばいいのではありませんか。」
じゅえる「いや、それは面白みに欠ける。彼らには特徴的な装備があってその名で呼ばれるとかがいい。」

まゆ子「冠とかかな。あ、いやそうだ、彼らには鉄の武器が支給される事として「鉄人」とかは。」
釈「鐡兵、ですね。」
じゅえる「鐡兵、良い良い。」

まゆ子「よし決まりだ。戦闘バンドに属するのは「鐡兵」。うん。」

釈「では剣令が指揮する剛兵隊と、剣匠が指揮する鐡兵隊とは役割が全然違うんですね。」
まゆ子「剣匠が指揮する隊はまるっきり斬り込み隊だ。剛兵の方は弓と槍を持っている。新兵器を持たされているのもこっちの方で、鐡兵は自前の武器を持っててこれに慣れているから手放さない。ま、弩は専門兵として鐡兵なんだけどさ。」

じゅえる「それでカロアルさんをやっつけるのが剛兵なんだ。」
まゆ子「うん。薬液瓶を放り投げる投射弓を持っている。これは500ミリ入りの強酸を封入した硝子瓶で、保護の為に筒の中に収められていてそのまま撃てる。距離は50メートルも届かないが至近距離で撃つから大丈夫。」

釈「その他の秘密兵器は。」
まゆ子「徹甲矢でしょ、火矢は今回使わないとして、対クワアット兵用として狙撃弓を持って来ている。極めて小さな重い矢を射る事で風に流されず真っ直ぐに飛ぶ。距離も200は軽くクリアする。構造はボウガンなんだけどさ、弓が普通の長弓並に大きいんだよ。それと弾弓だな。剛兵の標準装備として石を投げる弓がある。これに鉄塊を用いたりする。パチンコ玉だ。」

釈「鎧に効きますか。」
まゆ子「当たれば打撃力は石の比じゃない。重いから。鎧の上からでも浸透して堪えるよ。」
じゅえる「そりゃ高価な武器だなあ。」
まゆ子「高価だけどけっこうな数を持ってる。だからバカに出来ない。あと神兵用には目つぶしの毒液入りカプセルを投げるな。」

じゅえる「ま、こんなもんでしょう。で編成は。」
釈「剛兵はどこから連れて来たんです。」

まゆ子「基本的に兵は傭兵市で買うものなんだけどさ、イルドラ隊の兵員は、剛兵40傭兵20奴隷兵30、剣匠3剣令7、狗番15他10て感じかな。総勢125と大勢だ。通常ならば傭兵20奴隷兵60剛兵10てとこ。カプタン雁ジジが傭兵マニアなのは配下に剛兵を抱えて居て、彼らに定期的に実戦経験させる為でもある。今回雁ジジが剛兵25を連れて来ている。あとカエルみたいな人の片っぽが5人ほど。イルドラ家は諸派だから居ない。諸派は普通剛兵は抱えていない。」

釈「剛兵の余りは借りたんですか。」
まゆ子「うん。寇掠軍の神族が遠征に出る時、近所の神族にも呼び掛けるものだけど、その時自分は出ないけど剛兵を貸してくれることがある。というか、要するに剛兵に実戦経験を積ませる必要があるからさ、少数ずつを集めてというわけさ。」
じゅえる「なるほど、持ちつ持たれつなんだ。」

まゆ子「で、当日の攻撃隊はその内で使えるものだけを選って、更に別の隊からも兵を借りて、剛兵70傭兵40奴隷兵20、剣匠5人剣令10人という大人数だ。さらに退路を確保する為に剛兵30傭兵10の部隊もある。総数200ってとこだな。ちょいと膨れた。」

釈「15隊の内から兵員を出したのですから、200は普通ではないですかね。軌バイジャンさんが確認するのは前の方で、兵100ってとこですか。」
まゆ子「そうなるか。まあ正確な人数でなくてもいいかな。加えて難民武装団が3倍以上。それ以上はわからんさ。ただ、軌バイジャンさんは兵数を数える訓練も受けているから、そう外れはないと信じられている。」

じゅえる「で、こいつらの運用は。」
まゆ子「神兵を中心にクワアット兵を牽制してゲイルが接近する隙を作る事だね。ゲイルが突撃するにふさわしい距離と場所に入ってしまったら、いかにクワアット兵が強くても蹂躙されるから。ただ神兵の方が射程距離が長いのが問題だ。剛兵よりクワアット兵の方が練度が上だから、やはり難しいところだよ。だから、剛兵で注目を惹いて剣匠率いる斬り込み隊が飛び込む、というのがセオリーだ。、ただし400とかの集団に対してはそれはヤバい。だから、難民武装団の楯を用いるわけだ。」

釈「しかしあまり対策になっていないようにも感じられますが、」
まゆ子「そこはもうゲイルの背の大弓に頼るしかないか。射程距離が鉄弓に相当するのは狗番が全身の力で引く大弓だけだな。だから随時ゲイルが前に出て牽制の攻撃を行いながら、軍を前進させる、という形になる。後方でふんぞり返ってるわけにはいかない。むろん神兵の攻撃を或る程度受けるのを覚悟の上だ。正直言ってギィール神族の方が晒される危険が高い。」

じゅえる「ふむ。ではいきなり軌バイジャンさんがゲイルに巻き込まれるというのは、十分ありえる事態なんだ。」
まゆ子「自分で書いててびっくりだな。あり得るんだ。」

釈「では次に褐甲角軍のクワアット兵、カロアル隊についてです。えーと250で100が重装歩兵装備なんですね。」

まゆ子「重装歩兵とか装甲歩兵装備というのは早い話が長槍隊だ。ゲイルに接敵しても負けないだけの攻撃力を持つのが長槍隊。5メートルほどになる長大な槍でゲイルを突き立てる。これが100。
残り150は全て長弓装備と近接は刀での戦闘だね。クワアット兵はこの切り替えが早いから、どちらにも対応出来る。ここが強い。50ずつの3隊に分けて、25人ずつの分隊で運用する。1隊はカロアルさん本人が指揮する。つまり4人の神兵がそれぞれ隊を率いている事になる。
彼ら神兵の使命は簡単で、クワアット兵がゲイルに襲われないように鉄弓で牽制する事だ。正面切っての格闘戦ではない。また一人ではゲイルを倒すのは至難の業で、最低で3人の神兵が必要とされる。そんな人数は穿攻隊でしか得られない。」

釈「長槍隊の運用が難しそうですね。」
まゆ子「地形効果を狙って、だな。弓兵が牽制と防御を引き受けている間に、長槍隊は進撃して敵の中枢を叩く。この場合中枢とはゲイルではなく剛兵だ。ゲイルは神兵にしか倒せないが、上の神族は剛兵や狗番が傷付くのをいやがるからね。あと、長槍隊は難民武装団を弓兵隊のキルゾーンに追い詰める役割もある。」

じゅえる「しかし250では足りませんね。」
まゆ子「うん。でもエイベントからの応援100で林を抜けようとする難民隊を駆逐する事が出来たし、南側から穿攻隊の10人50が突っ込んで来て戦局は一転する。穿攻隊が直接ゲイルを襲うようになって、撤退を余儀なくされたんだ。やはりなにより大切なのはゲイル騎兵だからね。」

じゅえる「その穿攻隊が来るまでの間の戦いが問題なわけだ。どのくらいの時間戦うことにしよう。」
まゆ子「1時間ってとこかなあ。実際詳細に書くと難しい。またここは別口で考えよう。」

釈「しかし、ゲイル撤退に到るまでの戦闘は考えておかないといけません。穿攻隊が来て、どうするんです?」

まゆ子「ゲイルは10体ある。穿攻隊に対するのに5体でやった。残りは他の兵を援護するのを続け、どうしてもダメだと見極めてから撤退の合図を出す。この後10体総掛かりで穿攻隊に対処するが、最初に対応していた5体がかなり傷付いて先に後退し、完全撤退の状況に入ったところで殿軍に3体のゲイルが再突入して後続を追い払う。ここでイルドラ姫がコウモリ神人と出会うのだね。で、最終的に寇掠軍の兵が引き上げたのを確認して撤収。追撃した穿攻隊は後方に残って退路を確保しながら戦い続けていた5体のゲイルに逆撃を喰い、追撃を断念。これでこの日の戦闘は終り。」

釈「では次回は、その穿攻隊の戦いについての詳細設定ですね。」

***

まゆ子「というわけで穿攻隊です。よく考えると穿攻隊の中には赤甲梢から何人も来ているんですね。彼らが電撃戦についてなにも語らないというのは不自然。」

釈「あ、ベイスラには10人も来ているんでしたか。」
じゅえる「サトさんの先生だった人だ。この人を出さないのは惜しいな、確かに。」
まゆ子「というわけで、彼には何やらを語ってもらう。焔アウンサさんについてとか、自分も電撃戦に参加したかったとか。」

じゅえる「そこはまあそれとして、穿攻隊はベイスラ南部には10人しか居ないわけだ。」
まゆ子「穿攻隊は100名の神兵。これを10人一組の隊に分けてそれぞれ配置している。ベイスラの総攻撃は三つに分れて行われるから2組ずつ計6組が、更に士団長自らが率いる1組が最激戦を見込まれるヌケミンドル県境付近に配置されています。残った4組は国境を突破して来る浸透攻撃に備えてボウダン街道上に配置されており、機動的な運用をされます。」

釈「ではヌポルノ村には最初から配置される予定だったわけですか。」
まゆ子「ちょっと違って、ヌポルノ村近辺にクワアット兵50を配置したのは特別だ。ヌポルノ村への浸透攻撃は極めて確度が高いものと推測されていたからね。またエイベントの方に攻撃の重点が高くなる可能性も考えられたから、その際にはエイベントからの応援が望めないと考えられ、ここに50を追加配置するのは必然と認められたんだ。」

じゅえる「なかなか難しいね。」
まゆ子「実際浸透攻撃はそれぞれ目的が違って対処に苦しんでいる。ボウダン街道までゲイルの侵入を許した箇所もある。なかなかに苦戦したよ。」

釈「クワアット兵の予備兵力は他には。」
まゆ子「無い! あとは練度の高い邑兵を用いるしかないところまで追い込まれた。ベイスラ以外の穿攻隊ボウダン街道守備隊は支援部隊は全部邑兵だ。ま、他は防御拠点がかなり整備されていたしね。」

釈「で、ベイスラ南部の穿攻隊の到着は、カロアルさんが致命傷を受けたと同時頃、なんですね。」
じゅえる「というよりも、穿攻隊が来たからこそカロアル隊も前進を図り、剛兵の攻撃を受けた、ってところかな。」

釈「そこのバランスはどうしますか。イルドラ隊の様子も書きますか、それとも後に書きますか。」
まゆ子「うーん、軌バイジャンの撤退戦、カロアル隊の到着と戦闘、穿攻隊事前の会話等、の合間に少しずつ混ぜ込んで行くかな。カロアルさんへの攻撃は特に作戦的に難しいものは無い。絶妙な指揮とかを見せるものでもないでしょう。むしろ、イルドラ兄が負傷した後からがイルドラ隊の見せ場だ。そこから撤退への反撃、神人出現に到るまでは褐甲角軍の出番は無い。」

じゅえる「では前半と後半はすっぱりと視点を切り分けますか。」
釈「そうですね。えーとカロアルさんは即死、というわけではなくて或る程度時間が掛り、死亡確認がちょうどイルドラ兄が負傷して後方に撤退する時になる。ここで場面転換、という事ではどうでしょう。」
まゆ子「そんなもんかな。兵師監も倒したしここで撤退するか、という感じに自然となるか。」

じゅえる「難民武装団はほったらかしかい。」
まゆ子「穿攻隊が到着するまでに或る程度片がついているという事にしよう。エイベントからの部隊が掃討に掛っているとして、どうにもヌポルノ村攻撃は失敗だなと。」
釈「事前予告が無ければここまでの兵力の集中がないでしょうから、そもそも本気でやる気がなかったわけですよ。」

じゅえる「あくまで目的はカロアル兵師監だ、というわけだ。」
まゆ子「すでに撤退は決まってるしね。それに、それなりに多数の損傷を敵に与えている。まるっきりの損でもないさ。基本的な戦略目標は毒地の確保であり、褐甲角軍の毒地内奥への侵入を防ぐというのは達成出来た。」

釈「そうでした。本来の目的はそれだったんですよ。」
じゅえる「褐甲角軍にはもうそれだけの余力が無い。となると、成功と言ってよいのかな。」

まゆ子「神族の被害が思ったより多かった事を除けは、そうだね。それに連中はこれを第1回戦と考えている。一度後退して金雷蜒王国全体で体制を組み直した方がよいと、つまり各神族の自由意志による寇掠軍ではなく、神聖王自らが組織する毒地制圧軍であるべきだ、と方針転換をした。この転換にはもちろん赤甲梢の神聖宮突入というファクターが絡むわけで、神聖王を除外したままの無秩序な状態では弥生ちゃんのトカゲ王国に対処出来ないと考えたんだな。」

じゅえる「フェイズが違って来た、という事だ。弥生ちゃんの思惑通りってね。」
釈「最初からそういう計画で、赤甲梢に電撃戦を示唆したわけですからね。完勝てことですよ。」

まゆ子「つまりはめでたしめでたし。

 というわけで、すでに執筆に取り掛かっているのだ。今現在、軌バイジャンさん戦死!まで書いた。」
じゅえる「今回思いっきり設定の方に力入れたからね、迷いが無いわけだ。」
釈「めでたしめでたし。」

 

07/06/23

まゆ子「てなわけで、げばおとEP5「第八章 回る舞台は鬼ばかり」ができましたとさ。オマケ付きで63枚、62枚ちょっとと言った方がいいか。」

じゅえる「おまけのタコ女王が6枚だから、実質56枚か。こんなもんかね。」
釈「戦闘シーンが軽く終りましたから、こんなものでしょう。」

まゆ子「その戦闘シーンだ。次の第九章は戦闘シーンてんこ盛り、というよりもトリプルヘッダーだ。」
じゅえる「軌バイジャンが撤退行をして、羅ウシィ兵師監が戦死して、穿攻隊サトさんが突入してイルドラ兄ちゃんが負傷してエイムールが生贄になり、イルドラ妹が部隊の撤退を支援して殿りに残り大乱闘で神人に遭遇、と来たもんだ。」

釈「これを一人の主人公に絞って書くのは不可能です。どうしますか、バラバラでいいでしょうかね。」
まゆ子「というか、無理だよね。やはりシーンごとに視点を区切ってたんたんと書いて行くしかない。とはいえ、全シーンに登場するキャラが居ないわけでもない。」

じゅえる「ジムシだ。」
釈「でも彼は、戦闘において主体的な活躍はしないはずではなかったですか。視点としてもよろしくないキャラです。」
まゆ子「視点でなくてもいいだろ。」
じゅえる「ともかくジムシは出っぱなしなんだから、これにクローズアップするのは当然だ。しかし、それで面白くなるだろうか、というのは別のはなし。」

まゆ子「書きますよ。でもなにかネタが欲しいな。彼が執着するのがコウモリ神人。コウモリ神人のネタを投入しますかね。」
釈「枚数が膨らみますよ。ちなみにこの章の予定枚数は?」
まゆ子「100。」
じゅえる「100にはならないように気をつけよう。80で納まるように。」

釈「コウモリ神人は禁止ですね。では、やはり戦場の風景として彼を書きますか。」
じゅえる「ちょーっとなにか欲しいな。むしろジムシは無視するか。徹底的に奴を無視しても、どうしても顔を出すという感じで。嫌悪感、かな。」

まゆ子「アイテムが欲しい、切実に。」
釈「武器ですかマジックアイテムですか、それとも恋人とかの思い出の品とか。」

じゅえる「切り口としてね、しかしこの場合コウモリ神人をクローズアップする方が絶対イイよ。」
まゆ子「コウモリ神人のお札とかかなあ。でも、戦場ってまじないあるかな、この段階で。」
釈「そりゃあるでしょうが、だとするとこれまで書いて来た戦闘シーンに無いのは困りますよ。書き直ししなければならないかも。」
じゅえる「或る程度は挿入してもいいのかもしれない。だが合理的な戦闘であるべきではないかなあ。いや、呪いは無いってことはないんだろうけど。」
まゆ子「呪いだらけって気もするけどねえ。ま、軌バイジャンさんはそういうのにこだわるキャラではないから、無しにするか。」

釈「むしろ、神兵が出て来た際にそういう話が。呪いというよりも超常現象の発現でしょうね。」
じゅえる「聖蟲は色々とあるからね。でもコウモリ神人が出るという確信を段々にジムシが深めて行く、という描写はあるべき。ただ、コウモリ神人てのは不意に現われるものでしょ。」
まゆ子「うん。」

釈「俯瞰で描写しますかねえ。主役を絞り込めないのが困ります。」
まゆ子「今回戦闘自体が主役だから。…戦闘自体、ね。」
じゅえる「戦闘自体か、悪くないアイデアだ。ちょっと試してみる価値はある。」
釈「戦闘描写に力を入れて、キャラの心の動きとかにはこだわらない、てことですか。」

まゆ子「映画とかでは、台詞で発言されない心の動きってのは、まあ描写されてないのと同じだ。そういう感じでさ。」
じゅえる「台詞の重要度を上げる、ってことでもあるか。うん、つまりモノ感覚が上昇するんだ。この章ではそれは悪くない。」
まゆ子「いっそト書きにしたいところだね、こんな感じで。」
じゅえる「うん。」

釈「誰が喋っているかわからないように書くという手もあります。博打ですが。」
じゅえる「いいんじゃない? 後で書き直しも簡単だ、それ。」
まゆ子「誰それがしゃべった、と一々書いてもいないしね、これまで。極力そういうのは排除している。だから、出来なくはない。」

 

じゅえる「まあそれは置いといて。今回の襲撃はどの程度の規模なの?」

まゆ子「かなりデカい。つまりベイスラ方面の寇掠軍はこの日複数の集団が同時多発的に襲撃を行ったんだ。だからどこもかしこも蜂の巣を突いた状態。ベイスラ南部県境付近の現場では10箇隊60騎のゲイルと1000人の兵が投入された。ま、前線に出たのは陸舟の数から言って500程度だけどね。突入したのはイルドラ隊ともう一つ、計15騎、この内5騎は後方退路を確保する為に林に留まったから、実際に戦闘に及んだのは10騎。後方確保に配置していて大正解で、穿攻隊の神兵10が横腹から突入して来る。」

じゅえる「じゃあ、その他の寇掠軍は国境線付近の防衛陣に攻撃を仕掛けたんだ。」
まゆ子「突入組を援護する為でもあるし、内部に入り込んだ連中に気を取られている防衛陣に効果的にダメージを与える事を考える。かなりイケたよ。」

釈「被害は?」
まゆ子「突入組は神族2が戦死、5が重軽傷。ただし兵師監カロアルを討ち取るという大殊勲を上げた。その他の戦場においても神族と神兵を一対一くらいの割合で殺してる。60人神族がいるとして、死者5負傷者20てとこか。かなりやられているけれど、やりもした。」

じゅえる「損害かなり大きいね。」
釈「それは失敗に近いのではありませんかね。神族の被害がかなり大きい。」
まゆ子「代りに兵の犠牲は金雷蜒軍は少ない。逆に褐甲角軍は神兵よりも兵の被害が大きい。金雷蜒側30に対し褐甲角側120負傷多数、てとこやられた。ま、国境内に潜んで居た難民の武装集団とか盗賊団も800くらい参戦して500も討ち取られてるけど、これは金雷蜒軍の損失には入らない。」

じゅえる「1000人と60騎ゲイルを投入して、そんなもんか。」
まゆ子「戦場の密度がそんなに高くないんだ。金雷蜒軍の兵士はゲリラ戦みたいな感じで戦うから、今回損害が少なかった。というか、30戦死は多いくらいだ。神族の被害が大きいのは、防衛拠点に乗り上げて内部から殲滅しようとしたからで、これは戦術の失敗だな。急造の砦とかでもゲイル対策をちゃんとしていたんだ。」

釈「で、イルドラ隊の被害は。」
まゆ子「カエルみたいな神族が戦死。この人ともう一人がイルドラ妹と殿を務めて、この人だけ戦死。頑張り過ぎちゃって穿攻隊の集中攻撃を浴びたんだ。他にお手伝いに来てたのが一人鉄弓でやられた。負傷者はイルドラ兄がかなりの重傷で後にギジジットで弥生ちゃんの神剣の治療とかなんとかでもめます。イルドラ姫は無事ですが、ゲイルが凄く疲れちゃった。もう一人の人も腕に傷を受けています。15騎の内10騎がすくなくともゲイルには手酷いダメージを受けて居る。ゲイルがダメだから撤退した、と言った方がいいくらい。舟で兵員を運ぶのはいいけれど、帰りも舟を曳かねばならないから無茶ができないんだ。」

じゅえる「激戦にはちがいない、てことか。数はあまり出なかったけど。」
釈「そんな感じですね。」

じゅえる「日付は?」
まゆ子「18日にノゲ・ベイスラを出発してヌポルノ村に入ってるから、25日てとこか。ヌケミンドル大攻勢が19日夕刻から開始だから、まそんなもの。ヌケミンドルの大勢が決した後で攻撃した、という感じだな。」

釈「時間帯は。」
まゆ子「早朝に突入隊は侵入している。本格攻勢に出るのは昼頃。軌バイジャン隊が遭遇したのも午前11時頃。」
じゅえる「真っ昼間で見付からないの?」
釈「いやその場合、他の隊が陽動で動いて居る、と考えるべきでしょう。」

まゆ子「そのとおりで、23日くらいから国境沿い防衛陣の前方には大部隊が展開してるんだ。当然兵力は国境線に集中され、内部は手薄になっている。ここに侵入する。」

じゅえる「そんな状態でよく穿攻隊を割けたね。10名とはいえ。」
まゆ子「サトさんが居るからさ、カロアルさんのお手紙をもらって難民への攻撃がいかに重大な事態を引き起こすか理解してたんだ。それに防衛陣首脳部もそれは理解するから、敢えて後方で待機しようという穿攻隊には構わなかった。内部で撹乱されるのは確かに恐ろしい話だからね。」

じゅえる「でも監視体制はちゃんとあったのを、剣匠が沈黙させて侵入した、ということか。」
まゆ子「県境にはエイベントの砦があり、ここにかなりの寇掠軍が集中する。ベイスラ南部を護る防塁はそれからかなり離れているので、ヌポルノ村の前には防衛施設が無いんだ。その代りに林がある。ここに兵を伏せれば通過は容易ではない、はずだったけど舟で兵員を多数送り込んで来たからね。」

じゅえる「地形を逆手に取られたんだ。でも取られても大丈夫?なはずだよね。」

まゆ子「だって畑しかないんだもん。そこから進むとスプリタ街道まで畑と林が段々にある。畑に入れば侵入はモロバレだから、街道を通って防衛隊が飛んで来る。ヌポルノ村自体も或る程度の防御施設を持っているから、ここに拠って戦っても良い。まあ軍事的にはさほどの脅威には成り得ない。実際ゲイルは10騎しか入れなかったし、兵員も100てとこだ。通常の潜入破壊攻撃の倍でしかない。前線の攻撃に呼応する撹乱が主な役目だね。」

じゅえる「カロアルさんの兵力は?」
まゆ子「カロアルさんは神兵4クワアット兵250てとこ。その内クワアット兵100は完全重歩兵装備の戦闘部隊だ。穿攻隊は神兵10でこれもクワアット兵50を連れている。このクワアット兵はこちらに配備される時に付けられたものだね。他にエイベント側からも神兵3兵100の部隊が待機して居た。都合400に邑兵が300が補給とかでついてくる。決して無防備というわけじゃあない。」

釈「じゃあ使える兵は総動員ですか。難民支援には邑兵だけで。」
まゆ子「極めて確度の高い襲撃の情報が来たからね。でもエイベント側の応援は危ないところだった。もう少しで砦の応援に行く所をかろうじて間に合ったのは、早期発見をした軌バイジャンさんのおかげだ。」
釈「そうか、なるほどちゃんと役に立ったんですね。」

釈「えーと、で金雷蜒軍全軍撤退と赤甲梢ギジシップ島上陸戦成功の報が伝わる、何日ですか。」

まゆ子「実は25日にはもう金雷蜒軍には伝わっている。というよりも、伝わったから最後の攻撃をしたんだ。だから全軍出撃となる。本当は初期に出征した者はもう帰るつもりだったし、損害を受けて撤退せざるを得ない隊までも投入されて居たんだ、この時。でもここで思いっきり攻撃したから、心残り無く帰る事が出来るんだね。」

じゅえる「そうか、この後褐甲角軍にはその報が伝わるんだ。というか、神聖宮に入ってしまった後は政治的な決着で、情報伝達ルートは金雷蜒軍正式なものに限られるだろうからね。」
まゆ子「うん。褐甲角軍には正式なコミットメントとして伝わるから遅かった。停戦と和平会談の呼び掛けと共に外交使が正式にギジェカプタギ点に到る後だ。これが27日。カプタニアに報せが届くのが29日。弥生ちゃんとこに届くのが24日。」

じゅえる「弥生ちゃんとこは早いのはいいけれど、神聖宮内部の情報がそんなに簡単に漏れるのかな。」
まゆ子「神聖宮にも王姉妹は居るから、ジー・ッカは居るんだよ。」
じゅえる「神聖宮のジー・ッカも弥生ちゃんに従うの?」
まゆ子「そういう事になっている。というよりも、神聖宮の王姉妹によって積極的に報せられる。なにせ赤甲梢侵攻の詳報を全部神聖宮に伝えていたのもジー・ッカだから。」

釈「そうなんですか。じゃあほんとに奇襲ではないんですね。」
まゆ子「神聖宮中枢にとってはね。予定の、そして天上の計画だ。」

 

じゅえる「話を戻そう。つまり戦争を主体として描くとすれば、かなり大がかりなものになる?」
まゆ子「実際かなり大がかりな作戦だ。」
釈「突入隊がさほどでもない、というだけで全体としては大きいのですね。」

まゆ子「というか、この日少なくともこの規模で3組が同時攻撃をする。北部中部南部だ。ボラ砦奪還して北部ヌケミンドル近辺、ノゲ・ベイスラに到る脇街道に沿って、でエイベント県境だ。総数で2500くらいの兵員は動員される。寇掠軍30箇だ。」
じゅえる「そりゃでたらめな数だな。ゲイル騎兵が200くらい?」

まゆ子「まあ南部に出向いた神族全部だから、そのくらいかな。ただし攻撃に本当に加わったのは100くらい。撤退時の為に舟を曳く係が結構居たし、砦や防塁への攻撃はなかなかゲイルを乗り込ませられないから。浸透作戦を取った隊のみで10箇くらいか、4ヶ所同時浸透で60騎くらいが突っ込んで来て、ま大部分が跳ね返された。」

釈「3組全部が同程度の損害を被ったとして、神族被害は死者15負傷60、参加した40パーセントが被害を受けた事になります。大損害ですね。」
まゆ子「まあ、結局攻撃は失敗と言えるのかな。」

じゅえる「大審判戦争全体での神族被害はどうだっけ?」
まゆ子「1200出て500くらい死亡、というのが当初の設定。ちょっと多過ぎるか。」
釈「2ヶ月の戦死者として、多過ぎるとも思いませんが、地域別内訳は?」

まゆ子「実は、東金雷蜒領内で赤甲梢にやられた神族が50ばかりも居る。あとボウダン街道沿いで兎竜にやられたのが30ほど、ガンガランガで兎竜掃討隊にやられたのが40ほど、ミンドレアで30、ヌケミンドルで100、ベイスラで30、エイベントで5くらいだ。」
じゅえる「280、300てとこか。思ったよりも沢山いるな。」

釈「これ即死者ですよね。重傷者が後に死んだと言うのが足されますね。」
まゆ子「いいとこに気付いたね。そうなんだ、重傷者が100以上死にます。イルドラ兄も死に掛けた。なんせ医療が発達してないから、神族といえどもそこらへんは一般人と同じ。だから、400人以上は確実に死んでる。対して神兵は元々傷付きにくい上に自然治癒力が高いから、重傷者はほとんど復帰した。この差が大きい。」

じゅえる「ギィール神族は誇りの問題で弥生ちゃんの治療を受けられないからね。ギジジットでやっぱ一悶着有るのを描くのかな。」
釈「スケジュールではありませんが、やはりそうなりますか。」

まゆ子「イルドラ兄妹を書くにはそれしかあるまいね。ともかく3000人の内の500だ、これは大問題になる。褐甲角軍は2000の所135て感じか、まあ比率的には軽いんだが、逆にクワアット兵邑兵が大損害を受けた。1万人以上死んだからね。予後というのならここでも更に倍死ぬところを、弥生ちゃんの送り出したトカゲ巫女により相当数救われて、ますます弥生ちゃん人気は高まる。」

釈「なんか詐欺みたいな話ですよ。」
じゅえる「実際自作自演には違いないが、踊った方の負けだな。」

******

釈「あの話は代りますが、イルドラ兄妹ですが、今後の出演予定はどうなのです?」
じゅえる「あ、それは私も気になって居た。この二人、今後も出て来るべきキャラでしょ、なんとか予定を立てておかないかな。」

まゆ子「あー、それよりも前にキルストル姫アィイーガの方が問題。彼女はこのまま、新しい神聖王ゲバチューラウのお妃様になります。神聖王に外から人が就く場合、一つ前の王と同じ世代の王姉妹をすべて嫁にする慣習ですが、現在居るのは30代の適齢期外れのが一人、11歳の双子の少女、それとアィイーガが王姉妹と同格という事で自動的にそうなってしまいます。」

釈「おお!玉の輿ですか。」
まゆ子「まあそういうことなんだけど、子供を産むのにちょうどいい適齢期は彼女しか当分居ないから、このままだと次の神聖王の王母になってしまう算段だ。」
じゅえる「それも、弥生ちゃんの神算鬼謀か。」
まゆ子「計算した訳じゃないけどさ。」

釈「イルドラ姫にもなにか凄いものをください。」

じゅえる「なにか良さそうなものあるかな? たとえば、ギジジット央国というのは家臣の構造はどうなるんだろう。」
まゆ子「新しく出来るのは、ギジジット央国と新生タコ王国、それに弥生ちゃんのトカゲ王領だな。この内トカゲ王領は毒地の南に作る開拓地で指導者はまあトカゲ神救世主だが総督というのがあって、これの初代にヒィキタイタンの御子様がなる予定です。現在9歳。」
じゅえる「そういうのが決まってるんだ。」

釈「イルドラ姫にはダイナミックなお働きをお願いしたいですね。」

まゆ子「となると、弥生ちゃんが作る傭兵部隊ということもある。赤甲梢をそっくり手に入れた後に組織するんだが、ここにゲイル騎兵も参加する。これで行こうか。」

じゅえる「う〜ん、もう少しなんか。えーとイルドラ兄をギジジットに連れて行って、ゲジゲジ巫女に治癒を拒否される。しかし地面に突き刺したままの神銅剣の光によって或る程度の癒しを得てチゲル温泉に行き養生する。その後故郷に帰ってイルドラ姫は、えーと、」

釈「あれですよ。弥生キャプテンにぶん投げられたヌトヴィア王ハルマイの「シンクリュアラ・ディジマンディ」に誘われるんです。えーと、これが何をするかと言えば。」
じゅえる「新体制下での金雷蜒王国の構造変革かな。より神聖王の力を強化して、三荊閣に立ち向かおうというゲエ派の策動。イルドラ家は諸派だけど、彼らに近い。」

まゆ子「ギジジット神央国の支配体制をどうするか、も重大事だからね。確かに神族間の攻防はある。うーんと、そうだ。ギジジットにはまだ巨大金雷蜒神は居るんだから、宗教的な聖性を高める運動を彼らは行うんだな。トカゲ神救世主に対するにはそれが最大の武器だとして。たしかにそれはそうで、これまでの世俗化した東金雷蜒王国の有様を変えるチャンスでもある。」
じゅえる「イルドラ姫っぽく無いなあ。もうちょっとはっちゃけた活躍が望まれる。とはいえいきなり傭兵団というのはないだろうし。」

釈「新キャラ新集団登場ですね。こういう場合は。あのカエル大好き少女が、「金雷蜒乙女団」というのを作るんです。」

まゆ子「………はあ。」
じゅえる「なにをするんだ、それ。」
釈「それは王姉妹に対抗してギジジットを乗っ取るのが目的。乙女の園にするのです。」

まゆ子「うーん、なんとなく分からないでもないが、それはまた大仰な話だな。ただ三荊閣がギジジットを乗っ取る為の工作を展開しない、とは考え難い。その方便として娘を使うというのはあり得る話だ。ただ乙女団というのはー。」
釈「いえこの乙女団は単に神族間の利害を分捕り合うような俗なものではなく、もっと高尚な目的に基づいて結成されるのです。乙女宮殿というのを作るのが目的で、トカゲ神救世主に張り合うのです。」
じゅえる「つまり外交団として働くというわけ?」
釈「それもあります。というよりも、トカゲ王宮を乗っ取ろうというかんじですか。」
まゆ子「あーそれなら分かる。新しく出来るトカゲ王宮の脆弱さを見破って、ギィール神族で牛耳ってやろうってわけだ。たしかに、神族が廷臣に入って悪いという話はない。」
釈「ゆくゆくはギジジットにトカゲ神救世主を遷座させて、ギジジット神央国を方台の中心都市とする遠大な計画です。これを乙女の力でやってしまおうというの野心的な。」

まゆ子「考えておこう。」

釈「ついでに、褐甲角王国にも働き掛けて、女子の聖戴を恒常化させるように働き掛けます。婦人聖戴権運動です。これもまた乙女団に組み込んでやろうという野心。」
じゅえる「野心的すぎるわ。」

まゆ子「でもそれ、イルドラ姫は参加しないよ。いくらなんでも。」
釈「残念。」

まゆ子「イルドラ姫はチゲル温泉に滞在中に絵を書いて戦場絵物語集を完成させて、製造する。これの資金捻出の為に三荊閣に金を借りに行き、ミルト家の末の姫から金を貸す代りに乙女団に入れと言われてしまう。泣く泣く妙な集団に入らされてしまったイルドラ姫は、その後数奇な運命を辿り真実の愛に辿りつくのであった。」

じゅえる「誰?」
まゆ子「という話であれば、なんか収まりがいいかな。」
釈「そこはその、なにか禁断の愛がよろしいかと。」

じゅえる「女同士の? うーん、もっとなにかいけないのが。ホモものが受ける!と発見してしまうとか。」
まゆ子「却下。そいうのはダメです。」

釈「なにかいい男を考えねばなりませんね。頭に虫の憑いて居る。」
じゅえる「あれでいいじゃない。ガルボウエン本家の家令の男で。最終的には堅い所に落ち着くのが、実は一番正しいんだよ。」

まゆ子「納得、ではそいう事でイルドラ姫の話を組み立てよう。彼は出征自体はしていないんだね。」
じゅえる「そうじゃないかな、補給にばかり関わって。なるほど、そこんとこの食い違いが二人の衝突の原因となり、やがて互いを意識してしまうという事で。」

釈「納得です。」

 

07/06/13

まゆ子「書いたぞげばおと第八章。原案書いてから約一週間で書けた。」

じゅえる「枚数は?」
まゆ子「68て数字が出たけど、これは空白分も勘定しているから、ま60無いて感じかな。」

釈「縮めますか?」
まゆ子「いやー、まあこんなもんだろ。最終的には55くらいで済むと思うけど、当初の計画よりはでかいさね。なんせ軌バイジャンさんは対決三連戦だ。」

じゅえる「うーん、大体イベントが二個あれば30行くんだよね。3個で50。」
釈「3個で40くらいに縮小出来るでしょう。」
まゆ子「できるけどさ、繋ぎが膨らむんだな。無意味にイベント起こしている訳じゃないんだから。今回も元々が青服の男との対決で相当枚数を見込んでいた。55で収まれば順当だね。」

じゅえる「で、これからブラッシュアップに掛るんだけど、問題は無い?」
まゆ子「くっちゃりで書いたとおりの展開だから、ディテールアップと圧縮だけだ。根幹に関わる変更は無いはずだけど、…思い出しちゃった。」

釈「なんです?」

まゆ子「テュラクラフ女王の経過報告。ここに入る予定だった。」
じゅえる「タコの女王か! あれは今どうなってるの?」
まゆ子「それがおまけとしてこの前に入る予定でした。」

釈「それはーちょっと考えましょう。今どの辺りに居るんです?」
まゆ子「テュラクラフ女王はテュークに乗ってまずグテ地からトロシャンテの森に入り、サユールを経てアユ・サユル湖だ。カプタニア大放火の際に森から姿を現す事になっている。だから今はアユ・サユル湖だ。」

じゅえる「イベントが無いと面白くない。」
まゆ子「だ。であるから、なにをしよう。」
釈「UMAですね。ネッシーみたいなものです。藤岡弘、探検隊です。」

じゅえる「だがー、どうするかね。地元の人に恩恵を施した方がよくはないかい?」

まゆ子「金でもばらまくかね。いや、そう恩恵を被るのはいいんだが、タコの女王だから蕃兵がお供についてくる。そいつらが金をばらまくとか?」
釈「金ですか、宝石ですか、食べ物ですか?」
じゅえる「金はちょっとねえ。珊瑚とか真珠だな、海の産物。」

まゆ子「あーそれはだ、つまりネズミ王国時代からの言い伝えがあるんだよ。森の中を巨大なキノコみたいなものが進んで行くのに出くわすと、一生食いっぱぐれが無い、という。それが実現するんだね。」
じゅえる「となれば、これを見て住人が古い言い伝えに基づいてお祭りをする、というのが良い。古い時代のお祭りで一番貴重なものといえば、」

まゆ子「火、だ。当時は火はネズミ神官だけにしか熾せなかった。山火事みたいに進んで行く紅いテュークは、やはり火の女神としての姿を示すべきだろう。」
釈「山に住む獣が丸焼きになって美味しそうに転がっている、というのはどうでしょう。皆が齧り付くということで。」

じゅえる「火の祭、か。なるほど、古代的で理に適う。」

まゆ子「ではもっと派手に、そうだ、地震を起すのは元からテュークの属性としてあるんだ。火山の噴火、溶岩の噴出、蒸気が噴き出してもうもうと煙を上げる、てのがいいだろう。」
釈「はあ、それは派手です。でもテュークが進んだ跡は焼け野原ですか?」

じゅえる「焼け野原でいいじゃないか。後でそこに新しい芽が生えて来る。驚くほどの短時日で草木が生い茂るんだ。」
まゆ子「破壊と再生か、うん。では死体が生き返るくらいはあってもいいかな。」
釈「蕃兵の姿がうっすらと見えて、まるで死者の国から帰って来たよう、というのはどうでしょう。その中に死んだじいちゃんの姿とかをおぼろげに発見する。もちろん気のせいですが。」

じゅえる「コウモリ神官とかネズミ神官とかが大騒ぎしてお祭りをして、お供え物の山となる。て感じかな。地中の宝、金銀も噴出して大儲け。」
まゆ子「派手過ぎないかい?」

じゅえる「黒甲枝の神兵も到着するけれど、どうしようもない。古代めいた雰囲気に人が支配される、ってのでいいんじゃない? 翌日は皆疲れ果てて寝転けて、まるで夢を見たような。」
釈「タイトルは『真夏の夜の夢』ですね。」

 

07/06/06

まゆ子「無理だとは思っていたけどさあ、やっぱ書けないよ第八章。」

じゅえる「書けたらびっくりだ。」
釈「ネタがありませんからねえ。で、カモゾーさんが出て青服の男と対面対決するわけですよ。そこまでの話はどのくらいの複雑さを要求されますか?」

まゆ子「30分テレビアニメ1話分。」
じゅえる「はーするてーと、AパートBパートで分けて考えればいい。」
釈「Aパート15枚、Bパート20枚ってところですか。でアバンタイトルで5枚ほど。」
じゅえる「エンディングの後もちょこっと要るだろ。計45枚ってところだ。」

まゆ子「う、なんかリアル。」

釈「今回山場は青服の男との対決、口で論争するわけですから、そこにまで持って行く筋道が面白くないといけません。どうしますか、事件を起こしますか。」
じゅえる「というか、この章は難民で混乱する現場の状況を確実に描写しないといけない。本当の主役は背景描写だ。難民がいかに困窮し混乱しているか、これを書くのにふさわしい舞台設定でないとならない。」

まゆ子「一応はカモゾーさん登場まではこぎつけた。これからヌポルノ原まで調査に行く。でも村長の娘というのが出て来ない。来れない。」

釈「設定変更! ヌポルノ原もとっくの昔に難民が入り込んじゃってキャンプしていて、そこに目の覚めるような美少女が居るわけです。」
じゅえる「うむ。なるほど、それは後に弓レアルが遭遇する人物としては非常に良いキャラだ。その娘、掠われかけたのを軌バイジャンさんが助けてくれるという事にしよう。」
まゆ子「ほお、なるほど。してみると、うーんそうだね。ヌポルノ原に行く事になるから、そこに滞在している難民と邑兵とに物資を届ける任務を授かったという事で。」

釈「でもカモゾーさんはどうして白状する気になったんです? 言えば殺すって言われたんですよね。」

じゅえる「そーうだねえ、実はカモゾーさんはいいように杣女に脅されているとか。で、誰か、いやまったくに軌バイジャンさんを人気の無い場所に連れ出す為の罠として、手先に使われている。」
まゆ子「あ、そうか。なるほど、軌バイジャンさんを釣りの餌に使う為に、頭に聖蟲の憑いて居るひとになら告白します、って事で、それに準ずる形で軌バイジャンが調査に当たったと。なるほど、それはいい。いやそこまで考えつかなかった。」

じゅえる「では娘もそうだ。」

釈「カモゾーさんといい娘といい、どちらもは自分達が何をやらされているか分からない、というのがいいですね。彼らにはまったく悪意が無いんです。でもずるずると罠に嵌められて行く。」
じゅえる「でも軌バイジャンを罠にはめてもさ、カロアル父が出て来るとは限らないでしょ。」
釈「ですねえ。」

まゆ子「そこはそれ、軌バイジャンが入手した情報。いや極めて具体的な寇掠軍の攻撃計画によって、カロアル父が自ら出陣しなければならなくなる状況に追い込まれるんだよ。つまりは同時攻撃計画で別の部隊はそちらに襲いかかるが、イルドラ隊がこちらから来ると。カロアル父の所にしか出動可能な兵が無く、神兵が無ければダメだということから、兵師監自ら戦闘に参加する。」

釈「では極めて確度の高い情報として、軌バイジャンの信頼度を利用したという話ですね。青服の男との対面もそれなりの罠と。」
じゅえる「罠には違いないが、軌バイジャンを狩るわけではないから。…そうだね、ここに謎のスガッタ僧の痕跡を挿入しよう。青服の男は素直に、寇掠軍の手引きをしているのはここではスガッタ僧だ、と白状しちゃう。」

まゆ子「ふーむ、しかしジムシはー、てどんな工作活動しているんだ?」
釈「それはやっぱり、…そうですね、そもそもこのヌポルノ原に人を呼び込んだのが彼です。」
じゅえる「だね。非常に無理があるが、娘を掠うのも彼にするか、ゲイルの餌にするとかの名目で掠って行くところを、軌バイジャンに助けさせる。」
まゆ子「無理がありすぎるが、一考する興味は沸くね。そもそもこの回は軌バイジャンが活躍しなければならないのだから。」

釈「娘が実は杣女だった、というのはどうでしょう。若作りで化けているのです。」

まゆ子「悪くないが、そうすると後に弓レアルがやって来た時にややこしい話になるな。」
じゅえる「冷静に考えてみると、この枚数でうぶな素人娘とロマンスを仕込むのは不可能だ。杣女でいこう。」
釈「弓レアルさんが来た時には、なにかイベントを大きくでっち上げましょう。素人娘では不可能な。
 というか、軌バイジャンさんはこれから記憶喪失になるんですよね、で、うぶな素人娘に助けられる。」
まゆ子「その予定だね。」

じゅえる「だったら、ここで素人娘出すのはだめでしょ。キャラが被るよ。」
まゆ子「そういうものかー。じゃあ杣女が化けた若いとびきりの美少女ね。見たこともないくらい綺麗な。」
じゅえる「こんな美人は、王都で見合いの時に見た弓レアルくらいなもんだ。」
釈「それはいいですね、弓レアルさん喜びます。」

まゆ子「で、杣女が掠われてジムシと遭遇格闘戦になる。青服は?」
じゅえる「こういうのはけれん味たっぷり芝居気たっぷり、がいい。ヌポルノ原は劇場だ。だから青服の男は紅い夕闇迫る中に難民達に囲まれたまるで世紀末救世主のような登場の仕方をするべきだよ。」

釈「ジムシは更に卑屈に獣っぽく、これまた芝居気たっぷりで。」
じゅえる「ではこうします。杣女扮する美少女は、この難民キャンプの責任者です。最初ヌポルノ原にやって来た軌バイジャンさんは彼女の応対を受けて、青服の男についてさまざまな話を聞く。そこでマイナーな騒動が一件起きて、それに気を取られている隙に杣女の美少女が掠われる。
 で、軌バイジャンさんともう一人のクワアット兵、いや気の効いた邑兵の方がいいな、で追いかけて行って、ジムシが猿みたいに美少女を掠って行くところを発見する。総攻撃前の生贄として美少女をゲイルに食べさせる、ってね。」

釈「しかしそのシナリオでは、難民の武装集団の話には繋がりませんね。」
まゆ子「そうだ、難民の盗賊団はどうなるんだ?」

じゅえる「いやーそれはだね、つまりは、うーん、ここで軌バイジャンさんに弓で4、5人射殺させるか。」
まゆ子「やっぱり連れて行くのはクワアット兵でないとダメだよ。ヌポルノ原に邑兵は置いといて、二人が大活躍、盗賊団を射すくめて謎の怪僧から美少女を奪還。帰って来ると、原に青服の男が立っている。」
じゅえる「うん。」

釈「では最初の騒ぎは、盗賊団が起したということで。何にしましょう。」
じゅえる「難民がじゅうぶんに騒ぐ事件がいい。そうだね、カロアル小隊の邑兵で鎮圧出来る程度、軌バイジャンのみを誘い出すのに十分に小さいが、兵を必要とする事件。」

まゆ子「別グループからやって来た、食糧を分けてくれっていう半ば強請みたいな強引な奴がいいかな。悪意があるわけではないが割り当て分の食糧では足りないからと、美少女が責任者を務める弱小グループに強引に談判に来た。」

釈「十分ですね。では美少女というのは或る程度身分がある人、という設定がよいと思いますよ。」
じゅえる「さーて、どうするか、難民だからね。お姫様っぽいのがいいんだろうけどさあ。」
まゆ子「ここで紅御女の設定の流用だ。元は小王の血筋で金雷蜒王国にあっては神聖王の宮廷廷臣の一族であったが、政変によって国を追われ已む無く難民の中に身を置くはめになった。
 なんとなく弓レアルの設定に近いな。」
じゅえる「近い方がいいな。何故武徳王に庇護を求めないのか、と尋ねると、難民達が苦しんでいるのを見て放っておけない。と、いかにも若者の心をくすぐるような話をするわけだ。」

釈「だがカモゾーさんの目は誤魔化せなかった。あの尻はどこかで見たことのある? と。」
じゅえる「まさにカモゾーさんは慧眼だな。」

まゆ子「ジムシはどうしよう? 追われて、戦って、で?」

じゅえる「いかにも悪者っぽく、カロアル軌バイジャンめ、お前とお前の父をゲイルの顎で噛み砕いてやる、とかの悪態を吐くのです。これは引っ掛けでして、軌バイジャンの名を知りカロアル兵師監を名指しする事で、逆にカロアル父に自分が標的にされていると認識させ、戦場に出て来るように仕向けるのだね。」

釈「つまり予告する事で逆に自分が出て行かねば他の人に迷惑が掛るという風に理解させるんです。」

まゆ子「じゃあジムシはそれこそ極悪非道の邪悪な生臭坊主という、頭から血でもかぶりますか。」
じゅえる「そうだね。軌バイジャンに射殺された難民盗賊の腹でも割いて心臓を取り出し、頭から血を被るくらいはするか。」

釈「実にうそっぽいはなしですねえ。演技過剰ですよ。」
まゆ子「まあ、このくらいは普通にまんがっぽく。」

じゅえる「では、ステイチューンの第九章に入るには、軌バイジャンの前に先日の坊主が現われて誘われるままに追いかけると! て感じで。」

まゆ子「うむ。」
釈「良い感じです。」

 

07/05/30

まゆ子「54枚! ま、こんなもんでしょう。」

じゅえる「わたし思うんだけどさあ、30枚を予定した話を用意して、ボリュームが増えて40枚てのなら許せるんだけど、60枚を予定して50枚に切る、というのは不健全ではないかな。」
釈「実際増やそうと思えばまだどんどん増やせるんですよね、これ。」
まゆ子「バレたか。実は30枚という縛りが今は効いてないんだ。理由は簡単、他が多いからだ。バランスを考えると一章だけ少ないてのは許されない。」

じゅえる「あー第六巻からは元に戻そう。」
まゆ子「というわけで、第五巻も半分を越えたからには、次の巻の構成を考えるべきなのです。」

釈「ずいぶんと長く掛ってますねえ、第五巻は。スローペース過ぎませんか?」
じゅえる「モチベーションが下がってる?」
まゆ子「そりゃああんた、第五巻は山場であるから苦手な戦闘シーンがてんこ盛り、弥生ちゃんも出て来ないし話の筋は進展しない、となれば手が止まっても仕方ないじゃない。しかもボリュームがどんどん増えている。」

じゅえる「現実的に第六巻を考え直そう。一章30枚をやめて40枚見当でいく。現状の50オーバーよりはよほど楽になるでしょ。」
釈「そうですね、40に2、3枚というくらいならいいですかね。」
まゆ子「うーん、戦闘シーンが減るからそれでもなんとかなるか。」

じゅえる「で、第六巻はこれまでなにか決まっていたかな?」
釈「今検索します。ありました、06/10/29バージョンです。

  EP6
1、東神聖王、ギジェカプタギ点へ行幸。両軍再緊張状態。
2、武徳王、ハジパイ王、弥生ちゃんの指示で神聖王が走った事を知る。
3、三神救世主邂逅。即神人の到来、弥生ちゃん行方不明。
4、弥生ちゃん、いきなり北へ。森林地帯をさ迷う。
5、デュータム点で大混乱。両軍凍結状態に。褐甲角王国大動乱。
6、弓レアル、茫然自失。
7、ハジパイ王、粛正起動。標的はヒィキタイタン
8、イローエントとタコリティの話。
9、人喰い教団壊滅。
10、赤甲梢成功後のヒィキタイタン。再度のマキアリィとの対決。
11、いきなり中央政界に巻き込まれる劫アランサ。
12、焔アウンサの弾劾。
13、イローエントに軍勢結集。臨戦態勢。

  EP7
1、神聖神殿都市の謀略。
2、弥生ちゃん、遂に十二神の中枢に到達。
3、弥生ちゃん、神との対話
4、ハジパイ王の粛正。焔アウンサ殺人事件。
5、赤甲梢凍結命令。斧ロアラン走る。
6、劫アランサの弾劾。トカゲ神救世主の断罪。
7、タコリティ陥落。ヒィキタイタン、カプタニアに。
8、神聖王、事態の推移を見守る。弥生ちゃん帰還の予兆。
9、弥生ちゃん、遂に十二神方台系に帰還、ネズミ族の村。巨大カブトムシ神のお迎え。
10、大裁判。武徳王暗殺未遂・重体。ヒィキタイタンの帰還。
11、ヒィキタイタンの断罪。劫アランサの断罪。赤甲梢解散。
12、白の母。ネコとの対話。弥生ちゃんの帰還!
13、弥生ちゃんの大審判。トカゲ王国樹立。

まゆ子「6−6になるけど、カロアル家の聖蟲が宙に浮くから元老員の人が来てどうするか相談します。親戚にふさわしい軍人が居てその人に譲るか、養子この場合斧ロアランの婿になるけどに家督を継がせるか、このまま放棄するか。カロアル家には現在軍人の親戚というのが居ないので、それもあり得ます。神兵になれるのはあくまでも軍人ですから。

 でも斧ロアランは第四の道を選択します。女ながら自分で聖蟲を戴きます。理由は簡単、ミグリアル劫アランサ王女の手助けをしたいと思うから。弥生ちゃんが帰って来るとこの段階ではまだ分かりませんから、非常に大きな賭けです。元老員の人もこれは手に余る大事なので相談に行きます。ちなみにこの時点で黒甲枝の女性で聖蟲を持つのはわずかに5人。」

じゅえる「ふむ、でも斧ロアランが聖蟲を、てのはちょっとアレな感じがするね。」
釈「なんとなく違うような気がします。」
まゆ子「ちがってもいいんだよ。その騒動も描けばいいんだから。」
じゅえる「そういう話か、それならば異存は無いね。では6章はカプタニアでお葬式の話と。」

釈「アルエルシィはどうしましょう、ここに出しますか?」
まゆ子「7章がハジパイ王でカプタニア山大火事の後始末です。アルエルシィはここで。」

じゅえる「あれ、焔アウンサの暗殺はここ?」
まゆ子「あれ? ちょっと違うね。

  EP6
1、東神聖王、ギジェカプタギ点へ行幸。両軍再緊張状態。
2、武徳王、ハジパイ王、弥生ちゃんの指示で神聖王が走った事を知る。
3、三神救世主邂逅。即神人の到来、弥生ちゃん行方不明。
4、弥生ちゃん、いきなり北へ。森林地帯をさ迷う。
5、デュータム点で大混乱。両軍凍結状態に。褐甲角王国大動乱。
6、弓レアル、茫然自失。カプタニアでお葬式。
7、ハジパイ王、粛正起動。標的はヒィキタイタン
8、イローエントの騒乱。紅曙蛸王国攻撃計画。
9、赤甲梢成功後のヒィキタイタン。再度のマキアリィとの対決(対面)。
10、焔アウンサ暗殺事件。
11、いきなり中央政界に巻き込まれる劫アランサ。神聖王襲撃事件、犯人は人喰い教団?!
12、イローエントに軍勢結集。臨戦態勢。
13、呑気なもんだよ弥生ちゃん。EPLG

こんな感じか。」

釈「弾劾裁判の過程がよく判りませんね、それから赤甲梢を救出する為の方策も、キャプテン一人に頼るというのは問題です。」
じゅえる「赤甲梢を助け出そうとするのは、どうなんだろうね。この裁判の主体は誰?ハジパイ王は事実上実権を失った状況にあるんだよね、元老員の暴走で。」

まゆ子「えーとこの裁判はまだ初期の段階の設定を引きずってのことだから、現在は話がひっくり返っていると思うんだ。つまり、この裁判は勝ち組の元老員が褐甲角王国が東金雷蜒王国および新生紅曙蛸王国に勝った!というのを証す為にある。だから赤甲梢は弾劾されるはずが無い。」

じゅえる「ダメじゃん。」

まゆ子「しかしながら、焔アウンサはあくまでも神聖王を和平の使節として褐甲角王国領に迎えているわけだから、と決して危害を加えるような話は許さないし、それは武徳王も同じ。ただその肝心の武徳王が重傷で失明の危機にある、という事で話が暴走している。」
釈「つまり赤甲梢は死んだ司令官焔アウンサの命に従って、神聖王を守ろうとしているんですね。でもそこから弾劾となると、」

じゅえる「裏返して考えてみよう。どうすれば、神聖王を逮捕処刑出来るか? これを元老員勝ち組派の考えでやってみる。」
まゆ子「まず神聖王の身柄を押さえないとダメだろう。」
釈「軍の実権を握らないといけません。黒甲枝全軍を掌握しないことには、再度の戦争はできません。」
じゅえる「戦争ではなく、捕虜にする、という事を考えているとしたらいいんだよ。アユ・サユル湖のマナカシップ島へ監禁しようという。でもゲイル100騎は問題だな。」

まゆ子「…いや、そうじゃない。この勝ち組は元は先政主義派なんだから、彼らの真の狙いは神聖王の退去なんだ。和平を結ぶ事なく真っ直ぐ戻って、何事も無かったように振る舞って欲しいというものだ。一見するとまるで無意味なようだがそうじゃない。

これは弥生ちゃんが起こそうとする青晶蜥新王国と救世主の秩序を未然に排し、新生紅曙蛸王国も潰してこれまでどおりにしようというわけだ。だから、赤甲梢は犯罪者でなければならない。」

じゅえる「ううーむ、今時それで成り立つのか?」
まゆ子「無論ただで帰そうてわけじゃない。毒地の西半分の領有権を褐甲角王国に譲渡して、神聖首都ギジジットを中心とした新たな国境線を確定しようとも考えている。」
釈「なるほど、悪い話ではありませんね。互いに損しないようにしようという話なんですね。」
まゆ子「ついでに言うと、接収したタコリティと円湾を東金雷蜒王国に正式に組み入れる事も提案する。つまり、間に中間点というものを挟まないようにしようというわけだね。」

釈「良くなりました。つまり、この弾劾裁判の真の目的は弥生ちゃんきゃぷてんなわけです。青晶蜥神救世主が方台になんの意味も無いものだ、というのを宣言する為の裁判なんですね。」
じゅえる「うん、それならよく分かる。この裁判に欠けていたものはやっぱり弥生ちゃんなんだ。これでやっと納得がいった。」

まゆ子「では彼らは、むしろ神聖王に対して融和的であるわけだ。では、…衝突しないね。」
じゅえる「いや逆に、先戦主義派勝ち組がある、というでっちあげで、神聖王が襲われるという話が広まって、赤甲梢は軍令に反して神聖王を守る羽目に陥り、というかこれが罠なんだけど、で度重なる軍令違反として凍結されるんだ。この命令は焔アウンサ亡き後の劫アランサが出したから、彼女もとっ捕まる。」

まゆ子「では

 EP7
1、神聖神殿都市の謀略。
2、弥生ちゃん、遂に十二神の中枢に到達。
3、弥生ちゃん、神との対話
4、神聖王襲撃計画発覚。赤甲梢軍令に反して神聖王警護。罠に落ちる。
5、ハジパイ王と、勝ち組派との対話。敗北するハジパイ王。
6、タコリティ陥落。ヒィキタイタン、カプタニアに連行。
7、赤甲梢凍結命令。神聖王の所に勝ち組が交渉に来る。熾烈な外交戦。
8、弥生ちゃん、遂に十二神方台系に帰還、ネズミ族の村。巨大カブトムシ神のお迎え。
9、デュータム点、カプタニア、他民衆の不安が広がり、弥生ちゃんを求める声が高まる。
10、ヒィキタイタンの帰還。
11、ヒィキタイタンの断罪。劫アランサの断罪。赤甲梢解散。ジョグジョ薔薇の大演説。
12、白の母。ネコとの対話。弥生ちゃんの帰還!
13、弥生ちゃんの大審判。トカゲ王国樹立。

釈「しかし、この筋書きではタコ女王テュラクラフが出て来ませんね。あの人は本筋には関係無い?」
じゅえる「どうするね、どこかに入れようか?というか、あの人役に立つの?」
まゆ子「立たせましょ。

 あー、テュラクラフさんは現在アユ・サユル湖に居ます。弥生ちゃんの消失と共に出現する予定ですが、基本的に政治状況には関係無い。そういう人だ。だが、」
じゅえる「出てしまえばいやでも政治的影響力を持つでしょ。何をするのだよ。」

まゆ子「テュラクラフは何もしない。ほんとうに何もしない。寝ているだけだ。ただその席は弥生ちゃんのものなんだ。彼女がそこに在るという事で、全ての人が弥生ちゃんは居なくなったのではなく、ただ不在なだけと知るんだな。テュラクラフ女王に対して、弥生ちゃんを返して下さいとお願いする人が多数巡礼にやってくる。」

釈「何もしなくて、で最後にはどうなります?」
まゆ子「紅曙蛸巫女王国時代の首都テュクルタンパの遺跡に2500年ぶりに戻り、乗っていたテュークは石化し、テュラクラフの姿もその中に消える。テュークはそのまま神殿となる。」

じゅえる「じゃあ、彼女は寝るだけ?」
まゆ子「他に何をしろと?」
釈「そんなファンタジーがあっていいんですか?」

まゆ子「悪いという話もきかんな。何をしなくても影響力のある人というのはあるんだよ。そうだね、7-9の最後にぱちっと目を覚まして、『主の帰還を迎える準備をしなさい』と言うだけだな。」

じゅえる「それはわかった。しかし督促派はいいのかい? これには余り出て来ないけれど、カプタニアに火を点けたのも、武徳王を襲うのもそうでしょ。」

まゆ子「あぶり出しみたいにぞろぞろと出て来るようにしようかね、人食い教徒ではなく督促派だったと。」
釈「まあなんですか、救世主の不在は彼らの活動に燃え上がらせる好機でしょうから、いろんな所から出て来るでしょうね。」

じゅえる「督促派の実相を後で集中的に設定だね。」
まゆ子「だな。」

 

07/05/25

まゆ子「あっという間に7章書いた。」
じゅえる「これまでさんざん焦らしておいて、ネタが出来た途端にあっさりと解決か。げんきんなもんだねえ。」

まゆ子「案の定60枚突破した。これから細部描写をディテールアップして、50枚に削る。」
釈「矛盾してますよ、それ。」
まゆ子「でもやる。」
じゅえる「まあ、いつもの事だしね。第一稿は原料に過ぎない。他人様の目に触れさせる前には色々と小細工が要るんだよ。」

釈「で、一応は出来た事ですから、次に参りますか。」
まゆ子「どうしよう? 修正始めた方がいいんだけど。」
じゅえる「ものはついでだから、やっておこう。えーと第8章は難民暴動の現場に到着です。軌バイジャンさんが大活躍の予定。て、カロアル父の方は活躍しないの?」
まゆ子「軌バイジャンが活躍でいいんじゃないかな?」

釈「しかし、釣りの仕掛けは書いておくべきではないかと。」
まゆ子「違いない。だが、司令官が何をする、というのは無いぞ?」
じゅえる「そりゃまあそうなんだけどさあ、そうだね、難民暴動を俯瞰して見る、という事で、現場の状況を軌バイジャンさんが説明する。こんな感じではどうかな?」

釈「まあそれも手ではあります。ただちょっとしたロマンスなんかも盛り込むと、悪くはないかと。」

じゅえる「来たな。」
まゆ子「あーそういう設定もあったな。うーん、カモゾーさんか。」
じゅえる「青服の男とか杣女とかもあったなあ。」

釈「いかがしますか? そのままじゃあ形にならないと思います。いっその事9章を先に考えますか。」
まゆ子「逆説でいくか。9章は寇掠軍突入→バイジャンさんジムシと決闘→イルドラ姫突入→カロアル父と戦闘→カロアル父戦死→穿攻隊英ジョンレさん到着→イルドラ兄重傷→蝉蛾巫女エローア死亡→脱出→コウモリ神人出現!→〆だ。」
じゅえる「ステイチューンだな。」
釈「ですね。8章の終わりで不審な物音がするのに、バイジャンさんが気付いて確認に行くと、寇掠軍の姿が! というのです。」

まゆ子「となると、8章は地道な作業で煮詰めて行く、という感じが良い。となると、主役はむしろ地元住民だ。軌バイジャンさんが遭遇する普通のお百姓さん達がぴりぴりしている状況の中を行く。この中に、ロマンスの種なんかもあると良いわけだよ。地元の村長さんの娘とか。」

じゅえる「では、難民や金雷蜒軍は姿をまるで見せない方がむしろいいな。」
まゆ子「だと思う。ま、イルドラ姫の状況を書きたい所だけど、それは後で種明かしをして、という感じでやるか。」

釈「つまりは、なにも起きていないと思っている状況でありながら、実は罠に嵌められて居た、というのですね。」
じゅえる「必然的に、その罠を考えねばならない。」

まゆ子「で、ネタだ。第八章は神族も難民も出て来ないという事が決まった。おそらくはカロアルさんも出ない。出るのは軌バイジャンさんの小隊だけだ。」
じゅえる「或る意味それは至極やり易い。」
釈「そうですね、出るよりは出ない方が話を絞り易くていいです。えーと、村長の娘というのが出て来るわけですが、これは或る種のピンチに陥った状態で遭遇するわけですか?」

まゆ子「そうだねえ、でもカモゾーさんを出したい。となると、青服の男が出るべきではないかと思う。こいつらが弥生ちゃんの廻し者である事をちゃんと明示して、軌バイジャンさんが青服の男と遭遇し、緊迫感のある対話を行うという場面がクライマックスに来るというのはどうかな。」
じゅえる「そうだね、青服の男は社会秩序を乱す奴、として取り締まるんだけれど、村娘から、この人はガモウヤヨイチャンさまのお使いだから捕まえないでください、と懇願されたりするんだな。」
釈「武力行使は無くとも、なかなか息詰まるシーンが描けますね。」

まゆ子「さらに言うと、この章で描かれた事を、後に弓レアルが捜索し追体験する事になる。だからよく考えておかないといけない。」

じゅえる「村娘はやはりセックスしちゃうとよろしいのだが、それは無理だな。」
まゆ子「そのくらいは欲しい所だが、ちょっと枚数が足りない。2、3章は要るよそれ。」
釈「では清い関係ということで、でもちょっとつまらないですね。」

じゅえる「なにか、…エロはだめかな。」
まゆ子「なんだよ、うーんそうだねえ、裸で水浴びしていたとかで出くわすの? でもこんなヤバい状況で森の湖でそんなことはしないよ。」
釈「河に落ちるとか?」
じゅえる「むしろ泥沼で助けられるとか?」
まゆ子「いかにもベタベタな出会いは悪くない。だが理に適わないのは許さないよ。なんか出して。」

釈「安全の為に男の格好をしていて、むしろ不審人物として摘発されるとかで。」
じゅえる「村長の娘というからには、割と金持ちの美人であるだろうから、むしろ積極的に誘惑して来るとかの方が良いかも知れない。兵師監の息子で神兵になるとなれば、玉の輿であるでしょうからね。」
まゆ子「誘惑の最中にほんとの不審人物が出て来て、取っ捕まえて見ると出歯亀のカモゾーさんだったりして。」

じゅえる「ふむ、それは悪くないが。」

釈「でもカモゾーさんはそんなに悪い人ではないですよ。えーと、出歯亀はしていたけれど、杣女だと思ってましたとか?」
まゆ子「村長の娘の衣服が一着盗まれて、ひらひらのふわふわという今の状況であり得ない派手な服装の女が森を歩いて居た、とかで追っかけていて、とか?」
じゅえる「盗難事件でいいじゃないか。村娘とも自然に出くわす事が出来る。」

まゆ子「ふむ。で、難民の盗賊団の仕業じゃないかてんだけど、一着だけということでそれは違う。調べていると、カモゾーさんの目撃情報で、村娘ではない尻の感触だったと。」
じゅえる「で、カモゾーさんの証言から青服の男と杣女を追うわけだ。」

釈「そこで村娘が積極的にアタックして来るということで.」

釈「それはともかく、なぜか『物部村少女自警団』その二が出来てますよ。」

じゅえる「…私達はなぜマンガにならないのだ?」
まゆ子「話せば長い事になるが、簡単に言ってしまうと、あいつらは元がマンガだ。」

釈「ではウエンディズは元が小説なんですか。」
まゆ子「RPGのプレイヤーキャラが元だから、小説と似たようなものだな。聖ちゃんは違うけど。」
じゅえる「聖と志穂美鳴海姉妹はれっきとしたマンガキャラなんだ。だからあいつらマンガになり得るんだ。」

釈「わたくしは?」
まゆ子「純然たる小説用キャラだね。まともかく、物部村の連中は元がエロマンガキャラだから自由度が我々と段違いに大きいと理解してくれ。」
じゅえる「つまり、脱いで裸見せるだけの度胸が座ったキャラなんだな。」
釈「はーそれはわたしたちはちょっと、ですねえ。」

まゆ子「そこんとこは無理があるなあ、たしかに。でも桐子なんか裸になってもおもしろくもなんともない身体なんだが、ばばっと脱ぐ。脱ぐけど、マンガより小説の方がおもしろいからこっち専門にされてしまったんだな。」
じゅえる「やはり元がエロというのは強いよ。」

釈「ではこのままあの人達はずっとマンガが続く?」
まゆ子「弥生ちゃんがげばおとでまるっきり主人公張ってびくともしないのと同様に、連中は飽きもせずマンガになる。ネタに困る可能性がまず無いって奴らだ。」

じゅえる「うーん、私達もちゃんとウエンディズを書くべきだねえ。なんか仕掛け無いの?」
まゆ子「これ。」
釈「それでは困ります。」
じゅえる「まーそうなんだけどさー、ちゃんとした小説の方がいいよねえ、やっぱ。」
まゆ子「うーん確かにこれでは私達しか出て来れないからなあ、なんか考えるか。」

釈「しかし物部村少女自警団は、これ正式タイトルですか? もうちょっとひねった方がいいと思いますけどねえ。例えば、GEKIプロブレムとか、の横文字で誤魔化すとか。」

まゆ子「どーでもいい話。そうだ、今度こいつらの話にミスシャクティ出してやるよ。」
釈「え、でもミスシャクティてのは結局年齢は何歳くらいなものでしょう。随分歳にも見えるし、女子高生にも見えるし。結局どういうビジュアルになるんですか。」
じゅえる「この場合、ミスシャクティは各国首脳と会ってる時はメーテルとかと同じような存在と考えるべきではないかな。永遠の命がある、てな。」
まゆ子「うんそういう捉え方が正しい。女子高生バージョンは弥生ちゃんとウエンディズしている時だけね。」

釈「で、私はどういう話で出て来ます?」
じゅえる「ずばりエロ。カーマスートラで。」
釈「それは短絡的過ぎます。」
じゅえる「だがエロでなきゃ許してもらえないだろ。あのページはエロ専門だよ。」

まゆ子「あー、変身とかした方がいいのかもしれないなあ。門代高校の制服から未来的な胸元がばっちり開いた松本零士的キャラに。」
じゅえる「松本キャラか、そりゃ新機軸だな。ミスシャクティにはいいのかもしれない。」

釈「で、連中は今後どうなりますか?」
まゆ子「一応は、GEKI遭遇編小学校時代をちょこっとやる予定だ。あと、魔法少女児玉喜味子というのもやるかな。」
釈「児玉さんはなぜか贔屓されているような気がするんですが、理由は。」

まゆ子「珍しい。」
釈「へ?」
じゅえる「ブスは珍しいんだよ、でぽでは。」
釈「いや、そんなにはぶすっぽくないと思いますけど、ぶすなんですか?」

まゆ子「ブスを魅力的に見せるのは、創造者としては非常に興味のある話なんだ。第一インパクトが大きい。児玉喜味子はブスというにはちと弱いけど、地味目の女はなんだかね、いたぶり甲斐があるというものさ。」

釈「うううむう、それはなんだかわからないでも無いですが、ウエンディズでは誰がそのぽじしょんになります?」
じゅえる「明美ちゃんだな、性的に、ではないが。」
まゆ子「ウエンディズにブスは居ない。ま、ウエンディズ以外のチームには居るけど、それはまたべつの話。結局他に例が無いから注目されるのはあんたと一緒ってわけだ。」

釈「ではインド人の私と、ブスの喜味子さんと、乱暴者の桐子さんと、主人公バリバリの弥生ちゃん先輩とが順当にクローズアップされてるってわけですね。」
まゆ子「そだね。あとタコの女王土器能登子さん、お姫様しるく、だ。」

じゅえる「使い勝手がいいキャラはいいんだよ。でも能登子さんは書きたいけれど難渋してるな。」
まゆ子「マンガでも小説でもないキャラなのかも知れない。元が3DCGだもんね。マンガの方が先行したとはいえ。」

釈「3DCGもあるんですか。というかくららちゃんというのがありますね。」
じゅえる「あれも凄いブスだ。背が高く体格骨格が良く割と巨乳で動きはいいが、ブスという不思議極まりないキャラ。体育会系だね。」
まゆ子「旅行部なんだけどね。」

釈「ではこの人達は後にひとかたまりになって新しいお話を作るとか、ありますか。」
じゅえる「そうなんじゃない? 能登子さんもくららちゃんも主人公キャラなんだから、聖志穂美鳴海と同じだよ。」
まゆ子「統則最前線にすでに物部村の連中は突っ込まれているけれど、また構成いじるかな。げばるとしるく・明美帝国の話もあるし。」

釈「今度は宇宙ですか。」
じゅえる「ガンダムが欲しいんだよ。」
まゆ子「うん。」
釈「はあ。」

まゆ子「これまででぽの他の話では無い、もしくは薄かった恋愛モノに挑戦するキャラを募集中なんだ。釈ちゃんもあんた寅さん話で恋をする事になってるでしょ。」
釈「あ! そうか恋愛モノのベースを用意しているんですね、そうか。なるほど、ただ単に可愛いとか普通とかでは書きづらいから、変な女を見繕ってるんだ。」

じゅえる「でもなんか足りない。」
まゆ子「そりゃそうだろ、あんたが足りないんだよ。」

じゅえる「え?」

まゆ子「恋愛モノに美人がおらんでどうするね。酸いも甘いも噛み分けた、というキャラが欲しい所だ。となると、エントリー出来るのは限られて来る。」

釈「次回のくっちゃりぼろけっとましなりいは、『じゅえる先輩改造計画』です!」
まゆ子「乞う御期待!」

じゅえる「いやちょっと待て!?」

 

07/05/23

まゆ子「とりあえず第七章のAパートは書いた。遅いのは物理的障害があった為とキーボード取っ替えた為と、桐子のを書いてる反動だと思ってくれ愚痴は聞かない。次が書けない!」

じゅえる「なになに、というか、カロアルさんでしょ。」
釈「カロアル兵師監が出撃するというお話ですね、Bパートは。」

まゆ子「そう! Aパートでイルドラ兄を書いた。イルドラ兄が色んな人を尋ねて意見を聴いて行くという趣向だ。であれば、Bパートもおなじ構造であるべきだと思う。ただし今度は、カロアルさんの所に色んな人が押し掛けて来る、というのがよいと思う。」

じゅえる「ふむ、逆の構図ね。で、足りないのは?」
まゆ子「ぜんぶというか、難民移送に関する状況の設定がまるでない。でっちあげねばならないのだが、どのレベルまででっち上げるかで出来が決まる。」
じゅえる「そりゃそうだ。そんなめんどくさいものを事前に考えてる道理が無い。」
釈「まあ実際、なにもないところになにかをするようにでっちあげるんですからねえ、頓挫するのも当然です。しかし、」

まゆ子「考える! ただ、考えると言ってもだ、カロアルさんがかっこいいところを見せねばならないでしょ。彼の有能さを際立たせる。となれば、あらゆる策を巡らせている所をばっちり描写するべきだ。それを考えて欲しい。」

じゅえる「言いたいことはよく分かる。でもね、あの人は軍師タイプじゃないでしょ、なにか策をばんと打ち出して仰天するような状況を作らない。」
釈「治安や警察関係の人なんですよね、であれば策も固いものでないといけないんじゃないでしょうかね。といっても、そりゃあ難しいでしょう。」
まゆ子「警察の策、なんてもの考えたことない。」
じゅえる「うん。」
釈「というか、聞いた事もありません。おとり捜査とかならありふれているでしょうが、そういうのしますか?」

まゆ子「囮捜査か、なるほど、考慮しよう。」

じゅえる「警察であればなにより情報収集が一番じゃないかな。ぴっちりと調べ上げてぎりぎりと締め上げて行くような感じで取り締まる。」
釈「しかし脹れ上がる一方の難民にそこまできめ細かい調査は無理でしょう。」
まゆ子「なる、無理と承知で調査ね。でもすると、武装集団や盗賊のリーダーとかは判明しているのかな?」
じゅえる「そういう奴は居るだろうけど、そうね判ってる奴はいるけれど、大多数は不明て感じかな。」

まゆ子「分類くらいは出来ていることにするか、出身別に手口が違うとか。」
釈「出身バンドとかですか?」
まゆ子「いやそれはどうだろう、特定バンド以外の人物が武器を取って泥棒やら強盗やらをする、というのは有り得るのかな?」
じゅえる「それは、特定の武装戦闘バンドやら盗賊バンドの出身者と、単に食い詰め難民のバンドと、」

釈「戦略的に命令を受けて行動する集団と、三つのグループがある事にしましょう。武装バンドは自らの使命のままに難民を保護し権益を確保する為に動く、盗賊バンドはまさに商売だから動く、ギィール神族の命を受けて活動する集団は戦争遂行を目的とし、食詰者集団はただ単に目先のものを取って行く。」

じゅえる「コーディネーター的な人物がいるんだ。」
まゆ子「それが、謎のスガッタ僧だな。ジムシの面が割れている事にしよう。」
釈「しかし、違法でない、難民の自警団的な者もあることにしませんか。盗賊に対抗して難民達も自力で警備して、却って地元住民との軋轢が生まれる。」
まゆ子「それもらい!」

じゅえる「難民達はどうやって食べているのだろうね。王国からの食糧供給は万全なのかな?」
まゆ子「盗賊から買っているとこもある。そうだな、盗賊にしても義賊的な奴がいる事にもするか。」
釈「それは地元のあこぎな商人とかから分捕っていることに。」

じゅえる「不正もあるべきだ。王国の命令に反して、売ってはいけない者も当然居る。そういう混乱も描くべきだよね。」
釈「であれば、難民ばかりではなく、地元住民の盗賊団というのがあっておかしくはないでしょう。難民に取られたものを取り返す集団。」

じゅえる「女が掠われた、とかは頻発している事にしますかい? あるいは子供を難民が売っているとか。」
まゆ子「うーん、今回短期的な移動だから、まだそこまでの自体の進展は無い。」

じゅえる「それはそうと、難民移送事業って、カネは足りてるの?」
まゆ子「う、ぜんぜん。予定外の出費というか、予定外の困難が次から次に発生しているから、当初予算はまるっきり意味を為していない。これはカロアルさんのせいではなくて最初に予算を組んだカプタニアの中央軍制局と中央衛視局が予測を大外れさせてしまったのが原因です。その事についても追加予算の折衝を後に託すということにしておきましょう。」

釈「難民移送事業の経済活動への影響も当然ありますよね。」
まゆ子「これまた麻痺状態。弥生ちゃん金貨のせいで食料品を含む軍需物資が毒地に流れ出している。そこんところをカロアルさんは重視して、直接に叩くつもりだ。物資の流出が止まれば、難民に回す分も手に入り、混乱に歯止めをかけられるからね。逆に金雷蜒軍はこの物資の流れを利用して、カロアルさんを釣り出そうとする。」

じゅえる「今回一番の焦点はそこだね。そこはちゃんと読者様の印象に残るように描くべきだ。」

まゆ子「うん。で、この件に関連して物資輸送隊を連れて行くんだが、そこにカロアル息子の隊も入って来るという寸法ね。」

釈「でイローエントですが、大混乱ですね。軍内部に裏切り者がいたという事で。どうしますかこのまま突っ込みますか?」

まゆ子「ふううむ、なんというか、いまやイロ・エイベント県は混乱のるつぼ、武装集団のメッカという感じになっていまして、ここに難民を突っ込むのは無謀を通り越して狂気の沙汰です。だからカロアルさんは敵の来襲必至のベイスラ南部から、一刻も早くエイベントに移すつもりです。ベイスラ北部にはすでに難民は残って居ません、というか中央の命令で強制的に動かしました。だから、南部が大混乱です。ま、命令に従う人達は或る程度は大人しくやってますけどね。」

じゅえる「武装集団はベイスラでは問題になってないの?」
まゆ子「毒地に脱出しちゃったから、ベイスラ本体ではなんとかなっている。ただ出た連中が戻って来るのは必至だから、今のうちに迎撃体制というか内応することの無いように難民をさっさと動かしたい、というわけさ。」

釈「イローエントにはもう収容できないんですね?」
まゆ子「いや、一生懸命収容所を作ってる。イローエントの軍制局衛視局が大混乱を極めている中で、鎮圧に誰かが投入される事が決まっている事にしよう。ただ現在は大審判戦争まっただなかの大激戦の最中だから、動かせないんだ。」

じゅえる「ジョグジョ薔薇?」
まゆ子「いやここは、だれか王族の、…どうしよう?」
じゅえる「タコリティの新王国に対応する為でもあるから、これは焔アウンサクラスの人間でないとダメなんじゃないかな?」

釈「メグリアル第三の人物ですか。劫アランサ王女のお兄さんというのではいかがです。」

まゆ子「それでいこう。メグリアル王家は十二神信仰の擁護者でもあるから、精神的にも混濁した今のイローエントに最も必要とされる人物だ。ジョグジョ薔薇もその幕僚として入る事にする。これが後に、ヒィキタイタンの弁護という話に繋がる。」
じゅえる「でもジョグジョ薔薇は今は大本営近辺に居るんじゃないかな? 忙しそうにして。

では、カロアルさんはそれを前提として動くということで。でもまとまった兵力は投入出来ないね。」
まゆ子「いや、元々イローエントには十分な兵力はあるんだよ、混乱しているだけで。イローエント南海軍は今も健在で、イロ・エイベントの荒地に陸戦隊を出して盗賊共を追っかけてる。陸の軍制局がダメダメ状態だから、そっちまで請け負ってるんだ。これを中核として部隊の再編をする、という感じね。」

釈「でもマキアリィさんも触れねばなりませんね。今どうなっています?」
まゆ子「マキアリィの行為は、というか彼は別になんかやったという訳でもない。イローエントにおける西金雷蜒王国の工作員のギィール神族を追う、という極めて当たり前の行動の結果、こうなったわけだから誰も責めはしない。ただ、とんでもない大穴を開けやがった、と頭を抱える人が居るだけでね。」

じゅえる「人喰い教団の潰滅運動をしているわけ?」
まゆ子「いや、難民街の周辺で対タコリティの工作活動を指揮している。これはもちろん彼がヒィキタイタンの追捕師であることに根拠があるんだが、タコリティ内部に内応者が居るからには、出るは出るはで大騒ぎになってしまうんだな。彼自身ここまで事態が拡大するとは想像だにしなかった。パンドラの箱を開けたようなもので、こんな申し入れには裏があるに違いないと思って居たけれど、まさかイローエントが麻痺するほどの事態になるなんて、とほぞを噛んでいるんですよ。」

釈「すっかり嵌められてしまったんですねえ。」
じゅえる「白の母のやることだから当然とは言えるんだけど、そういうものかあ。して、カロアルさんは関係して来るかな。」
まゆ子「先乗りした人から当地の報告は上がって来る。マキアリィの話もそこに投入しよう。ついでにイローエント南海軍の構成も、タコリティ討伐の動きも匂わせておく。」

釈「金雷蜒軍がカロアルさんを狙っているというのは、こちらでは動きを掴んでいないんですか?」
まゆ子「どうしよう。掴んでいればなにか警告くらいはあるだろうけれど。」
じゅえる「警告は次の回にしよう。今回は金雷蜒軍の情報をちゃんと把握しているよ、というくらいの。ああそうだ、青服の男達の動きに関連して寇掠軍の突出がある、という分析結果を出しておこう。」

釈「ではやはり、自分が狙われているとは考えないで出て行くんですね。」

まゆ子「うーん、カロアルさんとしては、難民移送事業自体の失敗を企図していると考えており、責任者である自分を直接攻撃しても意味は無いと思っている。というか、優先的に攻撃すべき目標がクワアット兵にあるというのは既に誰もが知っているから、指揮下の一般人剣令達の方が危ないと思っていて自分が盾にもならねばなるまいと出馬するんだな。」
じゅえる「うう、合理的判断で実に正しい。むしろイルドラ隊の方が不謹慎なんだ。」

釈「では自身についてはなにも防備無しということで。」
まゆ子「いや、南部の方に穿攻隊の一部を回してもらう事に依頼している事にしよう。ちょうど彼の部下だったサト英ジョンレさんも居る事だし、難民が膨れ上がっている所の防備は当然に要求する。」

じゅえる「ふむ、一応やるべき事はやっているんだ。でも迎撃は、ってそれは任務じゃないか。」
まゆ子「そう、彼の任務じゃないんだ。あ一応それについても言及しておこう。我々の任務は難民の無事な移送であり、迎撃ではない、と若い神兵をたしなめる、と。」

釈「こんなものですかね。」

じゅえる「30枚ならこんなものだろう。」
まゆ子「いや、Bパートだから15枚なんだけどさあ。やっぱ60枚書かせるつもりかい。」
じゅえる「とうぜん!」

 

07/05/10

まゆ子「またぞれ例によって、”でぽ”のサーバー領域が満杯になりましたので、掲載絵をごっそり削除しました。」

じゅえる「100メガHPを作る、というのはどうなったんだ?」
まゆ子「いっそのこと自分とこに繋いで、というのはまあおいといて、フリーのHPで大きい所もある。でもエロ絵を置くところが欲しいんだから。」
釈「スペースがあれば、マンガを載せたいんですけどねえ。」
まゆ子「順調に絵が増えて行くからには、古い絵は順調に消えて行く。なんとかしよう。」

じゅえる「で、新しいキーボードの調子はどうかな?」

まゆ子「サイズ的スペース的にはまったく問題はない。でも文章入力に関しては、うーん、慣れがね。」
釈「慣れを言ったら、何年も使っているキーボードに勝てる道理がありませんよ。そういうのではなく本質的なところではどうなんです?」
まゆ子「ぺこぺこキーボードは実は前のコンピュータで慣れているんだ。あれは最初からコンパクトタイプだからね。だから、これがダメと言うことは全くないんだよ。キーを打つ指には優しいと思うし。というか、明らかに指への負担は小さい。これは平面ぺこぺこキーボードではだめなんだよ。カマボコ状であるからこそ、低負担なんだ。とはいえキー配置が多少違うのが鬱陶しくてねえ、特にDELキーとCTLキー、”ー”の位置が問題だ。まさしく慣れだね。」

じゅえる「じゃあこのまま続けて行けるのかな。生産性が悪いのならば戻した方がいいよ。」
まゆ子「キーの打ち間違いが多いけれど、問題は無いと思う。むしろ、変換間違いの方が鬱陶しくてね。もっと知的なフロントエンドを買った方がいいのかなあ、とか思ってしまうよ、どうも最適化が失敗している感じ、ちょっと前はもっとうまく動いていたような気がする。」

釈「問題が無ければ、仕事に戻りましょう。て、どっちします?」
じゅえる「桐子のとげばおとEP5第七章だ。どっちが本命?」

まゆ子「桐子のは急いだ方がいい代物、げばおとはやらねばならない代物。どちらも等価だな、気が向いた方を突っ込んでやる方がいいだろう。というよりも、げばおと7章、ようやく構想がまとまりつつある。でもやっぱ、あんたたちの力が必要だ。」

じゅえる「桐子の方は?」
まゆ子「暖簾に腕押し糠に釘、するすると書けていくけれど、固い地盤に突き当たらない。」
釈「地盤と言うのは、手応えですか。」

まゆ子「そうかもしれないが、げばおとでは毎回突き当たっている困難さと呼べるものだ。さすがに桐子のは歴史が古いから、イメージの方が描写より強い。だから発掘するまでもなく描けてしまう。げばおとは逆で、イメージを書きながら掻き立てて行く作業が必要で薄いんだよ。ま、桐子のは元がマンガだから、イメージが豊富なのは当たり前なんだけど。」

釈「で、私達がお手伝い出来るのはどちらですか?」
まゆ子「げばおとの方だな、やっぱ。書き進めるのにもネタが無い。」
じゅえる「ネタ打ち合わせ前回にやったのは骨子でとても書けそうに無かったからね。いっちょやるか。」

釈「まず、イルドラ姫隊は今なにをやっているか、です。総攻撃の準備ですよね。」
まゆ子「うん。いま、潜入工作隊を送り込んで下準備アンド小規模戦闘を行って居る。問題は、他の隊も同じことをやってるから競合関係にあるてこった。そこでイルドラ隊は大物狙いに行く。難民移送司令官に狙いを定めているんだ。」

じゅえる「カロアルさんだね。焦点を考えると、7章はイルドラ姫にするか、カロアルさんにするか、どちらがいい? 二者択一、中途半端は無し。」
まゆ子「無しか! うーん、二つ描くといいんだがな。」
釈「二つ描けばいいじゃないですか。」
じゅえる「統一性が無いでしょう。」
釈「おなじものを両面から見ることで、統一性は自然と生まれます。」

まゆ子「まて、同じものを両面から、と言ったね。なるほどそれは考えつかなかった。カロアルさん側からも、毒地に潜む寇掠軍を見ているんだよ。難民を操作している寇掠軍をどうにかしないと、難民移送任務が成立しない、と。では両面から書くとすればどうするか。それを考えよう。まるっきり二分してしまう、というのも芸が無い。」

じゅえる「三分割すればいいじゃないか。もう一個、視点をもっといでよ。」
釈「しかしそれはあまりにも。スガッタ僧ジムシを視点にしますか?」
まゆ子「あれは得体の知れない人物だ、というのを描写したい。視点には成り得ないよ。」
じゅえる「では第三者視点でいくかな。でもそれだと、他の章と釣り合いが悪いだろう。」

まゆ子「二分割として、いや、多分割してみるか。次から次に視点が入れ換っていく。」
じゅえる「それは賭けの要素が大きいぞ。失敗してどうしようもなくなる可能性が高い。」
釈「しかしこの章に限って言えば、それは手です。多岐にわたる人物描写が必要とされているのですから。」

まゆ子「細切れ、か。手ではある。だが、いやしかし、…この回は出て来る人間が多過ぎるんだよ。イルドラ姫の隊の人物紹介をまとめてしなきゃいけないんだから。」
じゅえる「いやそれでいこう。二部構成で、一部はイルドラ隊をばらばらの視点で見る。二分はカロアルさんとこの内情を集中的に書く。」
釈「また、60枚です。」
まゆ子「覚悟。」
じゅえる「まね、30ちょいで納まるとは最初から思ってない。」

まゆ子「しかし、多分割しなきゃならない理由もあるんだ。イルドラ姫でしょ、イルドラ兄でしょ、ジムシ、蝉蛾巫女エローア、上将ガブダン雁ジジ、キシャチャベラ、その他二人神族、これを全部一度描いて見せねばならないんだ。統一するのはむりだ。」
じゅえる「しかし、バラで書いてみて統一感は出るのかな。」

釈「モチーフを決めればいいでしょう。と言っても総攻撃前であるからには、話題も一定の枠に定まるとは思いますけど。」

まゆ子「そうだ、台詞だ。ひとりひとりがインタビューを受けたように、この戦争について語って行くんだ。」
じゅえる「なるほど、それは或る意味新企画。しかし、誰がそれをやる? ネコか?」
釈「ネコではないでしょう。人が人に話を聞くべきです。」
まゆ子「しかし、蜘蛛巫女はマスコミではないから、そんな事に一々注意する人間はいないぞ。イルドラ姫はもちろんやらない。」

じゅえる「むしろ、イルドラ兄だな。彼はあんまり目立たない性格だが、歴史に興味があり、歴史の節目として後々まで語り継がれるであろうこの大戦争を一冊の書物としてまとめる気であるとか。」
釈「ギィール神族がそんな事をしますかねえ。むしろ金儲けのネタを思いついたとかで、そんな話を聞く、…そうだ、出征前にイルドラ姫さまが描いていた絵本の印刷をまた戦後にやってみようとか。」
じゅえる「そうか! 大審判戦争従軍記念アルバムとかを売り出そうとか考えるわけだ。」
まゆ子「ううううむ、恐ろしい兄貴だな。」

じゅえる「どう、これならインタビューをする動機になるんじゃないかな。どんな場面が一番欲しがるものか、聞いてみるとか。」
釈「逆に、これからの戦いにおいて、どんな場面を演出したら売れる絵になるか、とかを聞いてみるのがいいかもしれません。一番目立つような美々しいような感じで戦おうとか、考えるわけですよ。」

まゆ子「その中で、やはりやるのならば大物を狙うべきだという話になり、カロアルさんをやっつけよう、という事になるんだな。難民を苦しめている張本人だ、てことで。」
釈「素直な解釈ですね。」

じゅえる「よしそれで行こう。神族が突拍子もない事を思いつくのはいつもの事だから、誰も不審には思わない。むしろあれやこれや注文を付けて行く、と。」
釈「蝉蛾巫女も、こういうシーンならば唄にしやすいとかを助言するわけですね。」

 

07/04/30

まゆ子「ざっくり削りましたよ、55枚! でもオマケが付いて13枚。都合68枚と来たもんだこんちくしょう。」

じゅえる「なんで、おまけなんか・・・。」
まゆ子「こないだ話してた紅さんだよ。獣人でアウンサを襲う。」
釈「ああ、出来たんですね、あの人のが。」

まゆ子「これまた何も起こらない、部屋から一歩も出ないて類いの話だよん。というか、びた1センチ動かない話は大得意だ。」
じゅえる「まあ分かるけどさあ、動き回ればいいというものでもないから。」
釈「赤甲梢は動きっぱなしでしたから、いいんじゃないですか。」

まゆ子「実際ね、動いている話というのは実は動かないもんなんだ。なにせ、視点と人物は固定されてるでしょう、情景が動くのであってキャラは動かないんだよね。構造的にそうなるんだ。逆に一歩も動かない話というのは、話題があちこちに飛ぶからほんとうは広大な領域を巡っているんだよ。と言っても分からないか。」

じゅえる「いや、まあ一歩も部屋を出ないで1センチも飛躍しない話という分野もあるけどさ。」
釈「私小説ってのはそんな感じでしょう。あれは頭の中だけで終りますよ。」

まゆ子「ふむ、私小説か。そういうのを挿入してみても面白いかもしれない。ある黒甲枝の内省とかいってさ、手記を。」

じゅえる「使いどころが難しいな。裁判の最中にそういうのが入ってもいいかもしれないけれど、今回呪ユーリエさんのモノローグの予定だったのが、まるっきり無視されたもんね。」
まゆ子「あーそれはー、やっぱ前後と釣り合いが悪かった。でも呪ユーリエさん視点でちゃんと行ったから許してよ。」
釈「まあ、次に出番がありますから、今回その下ごしらえと考えればこの方が良かったでしょうね。」

じゅえる「さてゴールデンウィークだ。四月中にようやく間に合ったけれど、今後の予定は?」
まゆ子「素直に第7章書く。ついでに桐子のもだ。桐子のはでぽには掲載しないからなんなんだけど、随時くっちゃりましなりいで打ち合わせ会議をするから、まあそんなとこで。」

釈「それはちょっと寂しいですかねえ。折角頑張っているのに、見せられないてのは。」
まゆ子「仕方ない。そういう性格のものだ。」

じゅえる「設定打ち合わせ会議をやるのはいいけれど、そうするとオマケが欲しいじゃないか。」
釈「そうです。せめて設定画などは描くべきです。」
まゆ子「あー、設定画ねえ。うーん、でも今回、あまりマンガっぽいのは描きたくないなあというかんじ。もっと真面目な。」

じゅえる「桐子で?」
まゆ子「桐子だからこそ。」
釈「酷い言われようだな。」

じゅえる「てなわけで、話はましなりいの方で続けます→ましなりい

 

2007/04/24

まゆ子「てなわけで書けました。まだ第一稿だから分量は分からないけれど、おそらく・・・60枚以上。」

釈「・・・戦闘シーン、無いんですよね。」
じゅえる「なにも起こらない回だったんだよね、のんびりのほほんとした。」
まゆ子「じっさいなにもおきていません。誰も死なないし、斬り合いも無いし、何故?」
じゅえる「何故って、書いてる本人が分からないのに、わたしたち分かるわけないじゃん。」

釈「一体何が原因ですか、なにが枚数食ったんです?」
まゆ子「全部。」
じゅえる「全部って、ぜんぶ?」

まゆ子「つまりディテールが、というかそれほど頑張ってディテールを詳細に描いたとも思わないけれど、最小限のディテールがそれだけ食った。」

釈「改善の余地はないんですか。」
まゆ子「つまらなくなる。いや、削ってかまわないところもあるけれど、せっかくクワアット兵の実態を暴き出す為に苦心惨憺して書いた所を削る必然性が認められない。」
じゅえる「つまり、ディテールだ。」

まゆ子「そうなんだ。必要最小限にしか書いてないし、全然足りないくらいなんだよ、少なくともアニメなりに換算して映像化した場合で考えると25分ものにするには全然ディテールが足りない。にも関らず、」
釈「60枚、ですか。」

じゅえる「小説って、そんなにディテールの表現力が少ないんだ。」
まゆ子「これはほとんどの人が誤解していると思うんだけど、そもそもが小説ってのは情報量が少ない表現形態なんだ。色も絵も無い動きもしない、外部リンクにも飛ばないインタラクティブでもない、とくれば情報量極小なのは当たり前。文字でしか表現出来ない事もあるけれど、ディテールを描くには貧弱過ぎるんだよ。その貧弱具合が読者様に想像力を働かせるわけなんだけど、で働かせるのに必要な最小限度の情景描写というのがあるわけなんですが、それがこの有り様。」

じゅえる「うーむ、昔の紀行文じゃないんだから、微細な表現は必要無いし、げばおとは現代の小説のメーカーなりブランド名なりが氾濫するてのとは縁が無いにも関らず、そうか。」

釈「むしろ、なにかあった方が短くなったんじゃないですか?」
まゆ子「あー、それは言える。のんべんだらりとした空気を書こうと思ったのが、そもそもの間違いかも。」
じゅえる「でも、この章はそれが必要なんでしょ。」
まゆ子「なきゃないでいいのかも知れないけれど、あった方がいいには決まっている回だ。毒地戦闘の全てがガチでは無い、という世間一般の戦記物の常識を覆すという効果はあるね。」

釈「次の回は何ですか? それでこの回の評価が決まりますよね。」

まゆ子「そこはねえ、7章と8章は混濁してよく定まってないんだけど、イルドラ姫様とカロアル父子だよ。特に8章はイローエント反乱が待っている。」
じゅえる「789は続き物、という事だね。7章で準備段階、8章で難民暴動の有り様、9章で激突と悲劇、という。」
釈「つまりのんべんだらりとした回は、ここにしか入れられないわけです。10章は?」

まゆ子「10章はえーと、弥生ちゃんだ。弥生ちゃんとこに赤甲梢目標達成という詳報が入って来る。11章は既に書いているから、そう。12章がカプタニア大火事とイルドラ姫撤退。13章が大審判戦争結果発表、ですね。」
じゅえる「たぶんそこは、13章がイルドラ姫撤退だ。で、エピローグで弓レアルに凶報が届くという算段だね。」

釈「分量的にそうなりますかね、カプタニア大火事はまた分量食いますよね。」
じゅえる「そりゃあ、これまで書いていない全てがここに集中する。ハジパイ王も出て来るわ、アルエルシイも出て来るわ、督促派もテロるはで、そりゃもう大騒ぎさ。」
まゆ子「やはり、ここも60枚は見ておくべきなのかな。」
釈「諦めましょうよ。30枚は。」

じゅえる「30はいい縛りなんだけどね。じゃ、次行こう。第7章だ、えーと準備段階?」
まゆ子「準備段階という事で、イルドラ姫とカロアル父子の動向を描くのだが、つまり今決まったところでは8章で難民暴動の有り様を描くからには、イルドラ姫サイドではその仕込みを、カロアルサイドでは対策を、それぞれ描く事になるわけだ。」
じゅえる「ふーむ、参ったねこりゃ。厄介そうだ。」

釈「こういう時は逆に遡及して考えると良いのです。8章9章から考えましょう。」

まゆ子「違いない。ではつまり9章から、カロアル父子はいかにして落命するかです。やはりイルドラ姫さまの一行に襲われるのかな?」
じゅえる「だが6章で出て来た英ジョンレの出番をむげに潰すのは、拙いだろ。ここに出る。」
釈「当然出るべきです。やはり絵描きの人と一緒に。」

まゆ子「なる。では、二人が急行した時にはすでにカロアル父子の命運は尽きていて、その直後に穿攻隊の救援部隊が突入し、大混乱乱戦に突入。その最中に、イルドラ姫はコウモリ神人の姿を見るのです。」

じゅえる「コウモリ神人てのは、凄い激戦の渦中にのみ現われるんだよね。ヌケミンドルの時には出なかったけど。」
まゆ子「ありゃ激戦過ぎる。誰も覚えていないんだ。今回は違う。最初から予感がある。というか、カロアル父の方はマジで見る。」
釈「死の予告、てわけですね。なるほど、いかにもファンタジーです。」

まゆ子「で、スガッタ僧のジムシが死ぬ事になってます。ちと活躍が足りないかな。」
じゅえる「さあて、それは78章でどの程度動くかで運命を決めよう。イルドラ姫さま達の戦後の運命にも関るでしょ。」
まゆ子「あ、イルドラ兄はここで重傷を負い、ギジジットで弥生ちゃんが派遣したゲジゲジ巫女のトカゲ神の治療を受ける事になります。この傷を与えたのが、つまりは、」
釈「英ジョンレさん。」
じゅえる「だな。」

釈「書くべき事が盛り沢山過ぎますね。カロアル息子の方は、神族との戦闘ですか。」

まゆ子「どうしよう、難民暴動の渦中にでもよいが、ともかく彼の輸送小隊が潰走した時に、邑兵を逃がす為に彼が殿軍をつとめたんだよ。で、もろに敵に鉢合わせする。」
じゅえる「やはりゲイルだね。生死不明になるからには、派手な方がいい。」
釈「難民暴動の鎮圧を行っている最中に、敵襲を受けたというのが妥当です。」

まゆ子「ふむ。ではそういうことで。となると、8章での難民暴動において、彼の小隊は一応は活躍をしておかねばならないな。」
釈「そうですね、輸送小隊ですけれど、なにか手柄を上げるとか、フラグを一個立てておくべきでしょう。後に弓レアルさんが探しに来た時の手掛かりを。」

じゅえる「フラグか。この場合、彼はあくまで正義であらんとして滅びる、という形になるからには、そのフラグはまさにクワアット兵として鑑となるほどの、立派なものであるべきだ。」
まゆ子「違いない。う〜ん、じゃあアレだ、難民暴動を指嗾する者を退治して、難民達を混乱から救うのだね。」

釈「弥生ちゃんキャプテンが派遣した青服の男は、関与しませんか?」
じゅえる「させる。」
まゆ子「させる。そうだね、青服の男達は敵か味方か分からないんだ。で、カロアル軌バイジャンは混乱の中で、彼らの助力を得て難民暴動を指嗾する者を引っ捕らえる。デマを流すという手法の奴で、督促派てのがいいか。難民の盗賊であればまだしも、督促派が絡んでいるとなれば許しがたい。」
釈「いたずらに人死にを出そうとする奴ですね。それは成敗ですよ。」

じゅえる「となると、必然的にイルドラ姫サイドの仕込みはここでは描けない。7章に集中すべきとなる。8章はカロアルサイドだ。」
まゆ子「やっぱそうか。だがカロアルサイドをまるっきり書かないのは、不都合なんだよ。」
釈「いいじゃありませんか。イルドラ姫サイドから覗いたカロアル司令という形で、こちらが注目するというので。」
じゅえる「そう、敵の内情を知るという事で、カロアル父は当然注目の対象となってるのが普通だろ。ノゲ・ベイスラの防御指揮官だし。」

まゆ子「じゃあ、しかしあまりイルドラ姫さまの活躍を描けないな、それ。9章で集中的に行うからいいのかな。」
じゅえる「そこはテクニック。」
釈「です。具体的には、イルドラ姫さまはシミュレーションを何度も行うのです。で、神族の他の人と討議する。会話劇という形ですね。」

じゅえる「つまりは、ここもまた一歩も動かないような話なんだ。」
まゆ子「うーん、それじゃあむしろ、ジムシは活躍しない方が正しいな。しかし、となるとジムシは9章で死ねない。」
じゅえる「そうか、あれは死なないのか。」

釈「という事は、13章で撤退の時に、ジムシはイルドラ姫さま一行から離れて、また闘争の中に入る、となりますね。えーと、次はタコリティですか、大規模戦闘は。」
まゆ子「まだイローエントの騒動は収まっていないはずだから、そっちかな。人喰い教団の暗躍に一枚噛む事にするか。」
じゅえる「いっそのこと、ジョグジョ薔薇の乱やら弓レアルの探索にも絡めてしまえ。」
釈「いやー、弓レアルさんのは無理があるでしょう。しかしジョグジョ薔薇の方には、なるほどありそうです。」

まゆ子「ジムシが死なないとなると、自動的に蝉蛾巫女のエローアが死にます。イルドラ兄のゲイルが重傷を負って動けなくなった時に、餌食として自ら命を投げ出すのです。そういう事にきまっていますが、やはり出しますか。」
じゅえる「ジムシが死なないのならば、致し方ない。そうだね、ジムシはコウモリ神人を見損なうんだよ、イルドラ兄が討たれた際に、コウモリ神人は現われる。多分、別の神族もここでやられるんだ、その最中に現われる。でもジムシはその時、別の場所に居て見られないんだ。」
釈「もう一人の神族をやつけるのが、呪ユーリエさんです。」
じゅえる「うむ。」

まゆ子「ふむ。なるほど、ではジムシは死なないけれど、怪我でもさせるか。」
じゅえる「軌バイジャンだ。」

釈「そうです。ここで、軌バイジャンさんは恐ろしく腕の立つ恐ろしい怪僧に出くわして戦闘状態に陥り、逃げ損なうのです。岩をも砕く超人ですよ。」
じゅえる「だが軌バイジャンは一歩も退かずやられもせず、しかしゲイルの突進に巻き込まれてしまうんだ。ジムシは彼に浅手を負わされて撤退を余儀なくされ、コウモリ神人を見損なう。」
まゆ子「OK、それはまるでOkだ。ちなみにカロアル父の方は、特殊な火炎瓶によってやられてしまいます。雑兵ですから、無念の最期です。」

じゅえる「OK。だがそうすると、7章はかなりの難物だな。或る程度戦闘が進展している気配を見せなきゃいけないけれど、戦闘を描いてはいけない。」
釈「既に突入した他の寇掠軍がことごとく跳ね返されている、という事で、難民暴動のオペレーションを進めているということでは。」

まゆ子「でもイルドラ姫隊はそんなややこしい事をする性格ではないのだが。」
じゅえる「いや、イルドラ姫はノゲ・ベイスラに直撃したキルストル姫アィイーガの居た寇掠軍に話を聞いているのだから、カロアル父への直接攻撃を狙っている、という事ではどうかな。敵の大将首のひとつだよ。」
釈「あーそうすると、収まりはいいですね。他の寇掠軍と同じことをするのはイヤだ、てわけです。」
まゆ子「なるほど、そうするとカロアルサイドも無理なく描けるか。OK。」

じゅえる「でもそれでいいとして、もう一ひねりしておくべきだろうかね。難民暴動に対するオペレーションをしておくべきだ。」
釈「しかし難民暴動のタネというのが、今ひとつピンと来ません。ギィール神族ならばもっとややこしい、厭らしい手を使うべきではありませんかね。」
じゅえる「そこんとこは、手下に任せるてのでいいんじゃないかなあ。下劣な手段も下賎の者には当然だと。」
まゆ子「さあて、今回神族は黒甲枝ではなくクワアット兵をターゲットにしているんだけど、その所の議論も描いておくとするか。たしかに獲物はデカい方がいいんだけどさあ、実効力てのも無視はできないさ。」
じゅえる「だから、そこんところでカロアル父を狙おうという話になるわけだ。ついでに、難民暴動を引き起こして統一的な戦争が出来なくするというのもちゃんと考えている。」

釈「うーんと、もっと大きな話になるとよいのかもしれませんね。タコリティが独立したのですから、難民達にも自分の国をつくらせるとかで、遠大の計画で褐甲角王国の国力を削ぐとか。」
じゅえる「逆に小さくてもいいのかもしれない。難民の村をつくらせようと。難民が困窮しているのは彼らに農地が与えられず農民議会とかにこき使われるからだ、とちゃんと神族は知っているんだ。だから、適当な場所に難民だけが住む村を作ってやれば、彼らの生活が楽になると解決策を持ち合わせている。」

まゆ子「う、それは黒甲枝には出来ない策だ。人の農地を取り上げて与える、つまり農地改革だな。」

釈「あー、それはーすごい。」
まゆ子「なるほど、ギィール神族の作戦はまずは彼らなりの善意に基づいているというのは、確かに正しい。分かった、そういう具合に賢い所も描いておこう。そうすると話につじつまが合う。」

じゅえる「じゃそういうことで。」

 

2007/04/18

まゆ子「あー、現在げばおとEP5「第六章 穿攻隊の戦い」は執筆突入中でありますよ。
しかしながらー、「大東桐子の、」の小説も同時に着手しましたし、四月恒例の3DCG作成もやってますから、順調に遅れて居ます。」

じゅえる「あー、桐子ね。あれはさっさとやらなきゃいかんのだよね。」
釈「MOMO展、事実上つぶれてしまいましたね。」
まゆ子「新型ネコムスメ作ってみました。かなりいい感じです。この程度のものならば普通に作れるようになったな。」

じゅえる「猫娘かあ、鬼太郎の何度目のリメイクかな。」
まゆ子「5回目かな、今回は猫娘が現代流に萌え娘化していると、ネットで評判です。今年最大の萌えキャラだね。わたしは、前回のも結構可愛いと思ったんだけど。」
釈「私はネズミ男なんかも好きです。」
じゅえる「ネズミ男にデスノート持たせると面白いんだけどね。」

まゆ子「で、まあスケジュール遅れは予定通りなんだけど、でもほんとに進まないのはなんでかなー、と考えたら、絵を描いてなかった。」
じゅえる「え? あ、エヴァちゃん3/9日だ。」
釈「一ヶ月以上もなにも描いてなかったんですね、そりゃローブローみたいにダメージ溜って作業が進みませんよ。」

まゆ子「そうなんだ、うっかりしていた。最低でも月2枚、3枚は描かなきゃダメだと思うんだけど、どうも億劫でね。」
じゅえる「で慌ててプリキュアを描いてみたってわけだ。なにか締め切りか課題を設定すべきなのかもね。」

釈「しかしなにか餌が無いと、ダメですよね。」
まゆ子「うーん、そうだねえ。絵を描いてもその先の展開が無いからね。」

じゅえる「唯のキャラ絵というのがそもそも間違っているのかもしれない。もっとドラマ的にみるべきものを用意するべきかと、でもー、ねえ。」
まゆ子「エロくないといけないんです。」
釈「あまりエロイのもよくないんです。」

じゅえる「展開、かあ。エロ絵で展開ねえ。芸風を考えると、やはり文字をもっと前面に押し出すべきかもしれないね。喋りだよ。」
まゆ子「台詞かあ。そうだね、キャラを喋らせるといいのかもしれない。しかし、単なる漫画的に台詞を付けるのは感心しない。」
釈「ありふれて居ますからね。」

じゅえる「見る人に、なにこれ? と思わせるなにか、が必要なんだよ。ただエロいとか綺麗ではいけない。趣味、だね。」
まゆ子「熟女とか年齢層の高いキャラを選択してるんだけどー、てこともないか、最近は。プリキュアは中学生だし。」

じゅえる「しかし、ウチの絵はなんか他の人のと線が違うんだよね、アニメでもまんがでもなくて、なんか変。」
釈「今回のプリキュアは、またえらく変ですね。」
まゆ子「元絵が筆ペンだからね。」

じゅえる「不思議なことに、3DCGで作っても、やっぱりなにか同じように変なんだ。」
釈「それはあれでしょう、肉体線というものが同じという。」

まゆ子「肉体線てのは、個人個人の脳内にある人間のボディに対するイメージの表現であって、つまりは同じ人が描く絵、彫刻、3DCG、人形、その他写真に到るまでも、やっぱりそうなってしまうというのだね。それが正しいと思うからこそそういう形にしてしまうが、客観的に見てみると、なんか変な個性がある。」
じゅえる「西欧が3DCGにこだわるのは、それから脱却したいという精神風土なんだろうね。ほんとうに目で見たまんまにしなければいけないという強迫観念になっている。でもハリウッド映画なんてのは、まさに定型化された肉体がごろごろしてるんだ。」

釈「要するに、でぽもこのままじゃダメ、ってことですか?」
まゆ子「うーーーーん、肉体線についてもう少し考えてみるか。とりあえず非常な困難を要せずに絵は描けるようになった。今度は大向こうに受ける絵を描かなきゃいけないってわけだから、売れ線てのをさ。」

じゅえる「或る一線てのを突き抜けると、どんなものでも売れるんだけどね。」
釈「それが分かれば苦労はありませんよ。」

まゆ子「そりゃそうと、テレビでニュースやってたんだよ。イランから来てずっと日本で暮らして居た家族が、とうとう不法滞在が見つかって国外退去になって、大学生になった長女だけが日本に居る事を許されたっての。」

釈「あー、あれは身につまされる話です。」
じゅえる「釈は他人事じゃないもんね。」

まゆ子「というわけで、他人事じゃなくします。釈は日本退去です!」
釈「え?」
じゅえる「そりゃまたどうして? お父さんが不法滞在ですか?」
まゆ子「そういうことです。」
釈「えーーーーー!」

じゅえる「何故?」

まゆ子「ま、事実をフィクションに持って来るのは私の作風に合わないのだが、面白いものは面白いし、便利に使えるからには使わない理由は無い。つまりはこうです。
釈ちゃん一家は日本を点々としながらも、割と幸せに暮らして居ました。しかしながら、とうとう不法滞在が見つかって国外退去を言い渡されます。

ここで立ち上がったのが! 東大生になったばっかの弥生ちゃんです。
弥生ちゃんの獅子奮迅八面六臂の活躍により、みごと釈ちゃん一家はそのまま日本に住み続ける事が出来るようになるのです。」

釈「おお!」
まゆ子「その過程で、弥生ちゃんの爆走する原子炉みたいな活躍が世間の注目を浴びて一目置かれるようになり、その後25歳で衆議院議員となる布石になります。
ついでに、釈ちゃんもテレビに何度も出て、その人懐っこい笑顔とくればーな頭脳、当意即妙な受け答えで人気になり、そのまま芸能界デビューという運びになります。」

釈「おお!」
じゅえる「なるほど。弥生ちゃんが政界デビューするための道筋を考えたんだ。極普通に自然な道筋だね。なにか一つは大活躍をみせないといけないんだから。」
まゆ子「うえんでぃずは全然すすんでいないんだけど、まあそういうのを前提として考えておいてね。」

じゅえる「で、穿攻隊の設定要る?」

まゆ子「今回普通に書き始めましたけれど、やっぱこないだ言っていた通りにモノローグでやるべきだと判明した。絵描きの神兵の視点でね。だからむしろ大量過ぎる設定が必要になる。これまで描かれなかったクワアット兵の生態がリアルに描かれる事になる。」

釈「そういえば、クワアット兵ってあまり書いた事ありませんね。軌バイジャンさんはクワアット兵だけど、扱っているのは主に邑兵ですし。」
じゅえる「うーん、まともに描いたのって言えば、第一章でノゲ・ベイスラが寇掠軍に襲われた時くらいなものか。あれも軌バイジャンさんだな。」
まゆ子「そうなんだ。ほんとうのクワアット兵の姿を書くのは今回初めてになる。むしろこれは新しい挑戦だね。時期的にも今後の展開上からでも、これは必要だ。」

じゅえる「めんどくさいはなしになりそうだな。」

**********

まゆ子「あー、たすけてー。書けないよおー。」
じゅえる「やぶから棒になんだよ。」
釈「スランプですか?」

まゆ子「EP5第6章、途中で引っ掛かっちゃった。クワアット兵を書く為のイベントが見付からない。」
じゅえる「どういうイベントが欲しいんだよ。」
まゆ子「クワアット兵がただの人間であり、生きた普通の人である日常を端的に表現する単純かつ玄妙な、いかにもこの時代のこの場所この戦場でのみ起こるイベントが、」

釈「ケンカでいいんじゃないですか?」
じゅえる「そりゃケンカだろう。」
まゆ子「喧嘩するほど状況は逼迫してないのです。むしろやる事が無くてだらけている。夏の暑さにやられています。」

じゅえる「博打とか?」
釈「ホモ騒ぎとかではいかがです?」
まゆ子「そいうのはイヤ! もっとまじめな人達なんです。でも孤立した状況にあってイベントが組めないの!」

じゅえる「ちょっと困った状況だな。事故はダメ?」
まゆ子「事故も要らないの。もっと普通の日常的な、おまぬけなものが欲しいのです。」
釈「敵襲はありませんか?」
まゆ子「敵もあんまり来なくて、来ても神兵が居ればそれほど大事にならないの。もう一ヶ月も誰も死んでないし殺してないの。」

じゅえる「ふざけた戦場だな。プレイメイトが慰問に来るとか?」
釈「ああ、カエル巫女とかがやってくるのがいいんじゃありませんか。」
まゆ子「それは後半で使うの。砂漠のど真ん中で女に遭うの。だから前半には要らないの。」

じゅえる「家族からの手紙とか、」
釈「いえ、・・・砦の下から怪獣が出没するとかでは?」

まゆ子「なんだそれ、ボラ砦の下になんか居るの?」
じゅえる「地下水道てのが繋がっているんじゃないの? ボラ砦にも。」
まゆ子「あ、・・・。枯れ井戸になってるから気にも止めなかったけど、井戸の実体は地下水道の地下貯水池です。使ってないけど。」
じゅえる「穴掘っていて、地下水道を見付けてしまう、というのがいいんじゃないかな。」

釈「怪獣です。」
じゅえる「というか、先月の戦闘の際に逃げ損ねた奴が居た、とか。」

まゆ子「あ、・・・それ使える。」

じゅえる「普通の人間では面白みに欠ける。なにか特別な、そうねうすのろ兵とかでもいいかな?」
釈「むしろスガッタ僧とかの方が、」
まゆ子「いやここは一つ、とんでもない人間が。人食い教徒とかかな?」

じゅえる「いややはり怪獣だ。巨大山椒魚だよ。」
釈「十二神方台系には爬虫類ではなくて両生類の方が多いんですよね。たしか人間そっくりの山椒魚が居るとか。」
まゆ子「歐媽の事? あれは山椒魚だけど姿形は女に似て、でもピザデブのぶくぶく肥った世界不思議なんとかに出る300キロ以上の人に似ているんだよ。」
じゅえる「いやな人間に似ているな。」

まゆ子「いや、それでいいや。泥のまゆの中から四つ足の地面を這う人間みたいなのが沸いて出たんだよ、水をぶっかけると動き出した。で、クワアット兵が大騒ぎする。しかも砦内をうろちょろと動き回る。」

じゅえる「それ知的生命体?」
まゆ子「どうしよう? 人間のような目をしていることにするか。何も喋らないけれど、これはヤバい、と感じるくらいには人間的な。」

釈「ぶち殺しますか?」
じゅえる「殺すにはもったいないな、捕まえよう。」
まゆ子「じゃあ、折角持って来た水桶の中に飛び込んでしまい、水が汚れちゃう事にしよう。で、正体がまるで人間にそっくりなでも人間じゃない生き物だ、と分かる。」

釈「歐媽の親戚ですね。泥媽とでも言いますか。」
まゆ子「わかった、その線で行こう。」

 

2007/04/07

まゆ子「げばおとEP5第五章を4度目の見直ししなきゃいかんのだけど、まあそういうめんどくさい事はほっといて、むだばなしをします。

 甲冑です。」
じゅえる「こう言っちゃあなんだけどさあ、凄い甲冑、ていうだけでいいんじゃないかな、物語的には。」
釈「自作するわけではありませんし、アニメみたいに設定画が絶対必要というわけでもありませんから、そうですねえ。」
まゆ子「いやまあ、書きたいから書く。

 甲冑て物が十二神方台系に登場したのは、当然のことながら紅曙蛸女王の時代。それ以前のネズミ神官時代は防具といえば皮衣を頭から被っている、て程度でした。それと笠ね。盾じゃなくて笠。」
釈「板切れの盾の方が強いんじゃないんですか? 作るのも便利だし。」

まゆ子「いや実は、ネズミ神官時代は木の板というのはけっこうな宝物だったんだ。なにしろ石斧で木を切って綺麗に割って表面を滑らかにしなきゃいけない。加工賃がけっこう掛るから、あんまり使いたくない材料だったんだな。それに比べて笠は籐のツルを編めばどんどん大きくなる。何枚も重ねれば矢だって受け止める。しかも軽いときたもんだ。板盾より籐笠の方がポピュラーな防具になるのは必然だったんだよ。」

じゅえる「タコ女王時代は板切れ生産技術は向上したんだ?」
まゆ子「ネズミ神官時代は旧石器時代、タコ女王時代は新石器時代。石器の技術レベルが格段に違うから、板切れは普通に生産出来るようになりました。木造建築技術が花開いたのもこの時代。大きな楼閣が建てられるようになりました。」
釈「かなり意外な話ですね。そうか、原始時代にも技術格差ってのがあるんだ。」

じゅえる「ということは、タコ女王時代になると、甲冑の需要が高まったってわけだ。」
まゆ子「まず、弓矢という道具が出たのが、ネズミ神官時代の後期から晩期です。タコ女王時代に完全に武器として用いられるようになりました。丸木の弓だと射程距離もそんなに伸びないけど、だから至近距離から射るので当たるんだよね。で甲冑が必要になる。ネズミ神官時代の主武器は投石と投槍、それに弓が加わったのね。」

釈「投石は籐笠で十分防げるとして、投槍は無理でしょう。」
じゅえる「いや、鉄の穂先が付いてる訳じゃなし、貫くのは難しいだろ。」
まゆ子「ハイ正解。刺さりません。もう根性入れて至近からぶっさすしかありません。だからそう簡単には死なない戦争でした。

 が、弓が出来ると一変。50から70メートルの距離からでも当たれば死にます。皮衣をぐさっと貫いて死にます。籐笠も貫通されてしまうのでもうびっくり。」
釈「それでもっと固い板盾と甲冑ができたわけですね。」

まゆ子「板盾と籐笠はその後もずいぶんと併用されるんですが、最終的に板盾に籐甲という姿がスタンダードです。籐甲というのは便利な防具で、これをフレームとして更に板を貼ったり皮を貼ったりと、防御力を向上させる試みが随分と行われ、また成功もしたんです。十二神方台系は夏はかなり蒸すから、着用しても風通し抜群で暑苦しくないのは良い特徴だったのね。

 で、籐甲はタコ女王時代には主兵装として大流行します。だが同時に皮衣の防御力を向上させる形で、革鎧も生まれます。レザーアーマーだね。籐甲よりもコンパクトに納まるので、格闘戦を行うプロの兵士、交易警備隊で利用されました。値段がかなり高いので隊長やら将軍やら、あるいは小王達が用いたわけですが、これが甲冑に進化します。」

じゅえる「革鎧と籐甲とでは、優劣は無いの?」
まゆ子「見た目以外、ほんとは無いんだけどね。しょせん金属器の無い時代の戦争だ、籐甲をぶった切るほどの武器が無い。むしろ当時の白兵戦標準武器である長棍棒には籐甲の方がずっと防御力が高い。ま、かっこつけのステータスシンボルだね。革鎧の方が装飾に適して居たし、工芸の技術が高度なものが必要だった。値段もずっと高いんだ。」

釈「今の革鎧とくらべて強度はどうなんですか?」
まゆ子「弥生ちゃん降臨の時期の革鎧は、全身に鉄の鋲が打ってるから強度は格段に進歩しているけど、まあ鉄の鏃を防げないて点ではあんま変わりないな。
 ともかくタコ女王時代は弓矢も石鏃だし板盾で十分防げたから、じゅうぶんな防御力があったんだ。」

じゅえる「で、ゲジゲジ王国時代だ。金属器の登場だね。」

まゆ子「まあ当時の人が驚いたのなんの、完全な防御力を持っているはずの甲冑も板盾も、鉄の剣でばさあーっとやられるんだもん。これは神罰だあーってすっとんで逃げました。矢を射掛けても鉄の鎧がかきんかきん弾くんだから、不死身に見えました。
 んでもって、弓も複合材料の弾力を強化した合成弓だし、最初期の弩も同時に出て来たから板盾をずばっと貫かれる、100メートル越えでずばっと革鎧に突き刺さる、ってんで雪崩れを打ったように方台は征服されていきました。一人で100人を射殺して3000の兵を撃退した神族も居ます。」

釈「あはは、そりゃー宇宙人に遭遇したようなものですね。」

じゅえる「初代ゲジゲジ神救世主は鍛冶屋だったっけ?」
まゆ子「ガラス職人です。火を使うのには慣れていたから、金属の扱いもすぐ覚えました。で、自分の身内の男達を鋼鉄で武装させて或る程度の人数と装備が揃ったところで、一気です。」

じゅえる「で、他は金属の使用は全然出来なかった?」
まゆ子「その暇はありません。というか、鉄を鋼にするのはかなり難しい技術がありまして、一朝一夕でできるもんじゃない。真似をしようと手を出しても、どだい無理です。」
釈「鉄ですよね、青銅器時代はすっとばして。」
まゆ子「だから、他はとても追随出来ずに、金属の使用はギィール神族に独占されたのです。で、一般庶民は金属に触る事すら許されない。金属の道具、それも武器を使用可能なのは特別に神族に許された高位の人間だけで、ステータスシンボルだから、金属器の普及なんて誰も考えない。

 この枠組みが崩れたのは神聖金雷蜒王国末期の大動乱で、兵数を増やす為に一般兵用の金属の武器が供給されて以降ですね。この時期には金属精錬や鍛造鋳造の技術で単純な作業を奴隷に任せるようになっていたから、量産が可能になりました。つまりこの時期に金属器の生産が一般人にも可能になったからこそ、褐甲角王国がその後存立する基盤が出来たてワケだよ。」

じゅえる「甲冑に戻ろう。で、ギィール神族の甲冑は最初は鉄、後にタコ樹脂?」
まゆ子「鉄は重いからね。軽量化の工夫が随分と考えられたし、身体を大きくして武装が重くても大丈夫なようにした。身体を大きくする試みがエリクソーで2メートルの巨人になる、というのにつながるし、エリクソー無しでも栄養状態によってかなり神族の背丈は大きくなりましたよ。だがそれでも重いのはイヤだてので、タコ樹脂の利用が始まり、鋼鉄の板とタコ樹脂との複合装甲へと進化します。また全身をくまなく覆うネヴュラという鎧が完成します。

 この時期の鎧の特徴としては、主要部だけを覆えば良い、という設計思想をどうやって追放するか、です。タコ女王時代の甲冑は、今もクワアット兵が使う鎧のように、首から盾をぶら下げて主要部だけを重点的に守る、という発想で作られて居ました。が神族の場合、鉄の鎧は固いから急所を狙おうという攻撃法に変り、死角を無くそうと全身くまなく覆う事が考えられるようになったのね。で、全身を覆うと重いから、軽量化を考える。」

釈「一般人の兵用の鎧に進展は無かったんですか? 末期以前は。」
まゆ子「強度の進展はほとんど無かったんだけど、製造法が格段の進歩を遂げてコストダウンに成功します。籐甲はほぼ姿を消して、革鎧が普及します。金属の穂先を持った槍に対処するには運動性を上げなきゃいけないから、籐甲は廃れます。また特別に許された鉄鏃を使う部隊も現われたので、盾も進化して表面に鉄を貼るようにもなります。

 だが鉄の利用は装備の重量の増加を必然的に招く。その解消にさまざまな工夫、荷車の発明とかがなされますが、最終的に残ったのがゲイルの使用です。」
釈「重たい鎧でもゲイルに乗っていれば大丈夫、てことです。でもゲイル以前には騎乗生物は居なかったんですか?」
まゆ子「獣人の輿というのがあった。つまりうすのろ兵の元祖だね。また人間が曳く戦車もあったけど、これを使うには平坦な路面でないといけないから、毒地つまり青晶蜥神の滑平原が度々戦場に選ばれた。でも自分の足で走る方が早かったりしたんだけどね。」

じゅえる「で、褐甲角神救世主が現われた。」
まゆ子「彼は、元々は一般兵士の一人です。というか、戦闘バンドの出身ですね。で金属の武器の使用も許されていたんだけれど神族に比べて著しく劣る装備から出発した。だから褐甲角王国の歴史はいかにして鉄の生産能力を確保するか、でもある。新時代になって、神聖金雷蜒王国時代と比べて鉄鋼生産量は3倍にもなりました。

 幸いにして彼には物好きなギィール神族の友人とかも出来て、鉄の鎧を装備するようになるんだけど、ここで重甲冑は最初から登場したんだね。なにしろカブトムシの聖蟲をのっけてる人間は怪力を持っている。常人ではありえない重量の鎧を普通に着こなせた。しかも速度が落ちない。よって、神兵の甲冑は最初から常人の倍の厚さを持っています。ま、50キログラムから70キロだね。これで十分な防御力がある。逆に、ほとんど無防備で剣一本を引っさげて運動量で圧倒するというのもよくあった。」

じゅえる「軽量化の必要が無かったわけで、これで400年ほどはまっすぐ行ったんだ。」
まゆ子「色々考えてみたけどね、神兵は普通に装甲した方が強かったんだよ。で神兵の数がどんどん増えて強力になり、金雷蜒王国が分裂し、ギジジットも危ないと感じられて毒地が形成されるようになった頃、画期的な甲冑が開発された。それが、重甲冑ヴェイラームね。ゲイルに撥ね飛ばされても大丈夫な全身バネ構造の鎧が完成した。

 しかしバネを単に人体の保護に使うのは神族の矜持が許さずに、すぐに運動機能の補助にまで発展する。で、「着る自転車」みたいな構造になるんだが、この時部分的に鋼の強度では足りない所にタコ樹脂製の部品を用いるようになり、更には軽量化というよりも鉄量の節約という意味合いからタコ樹脂による強化が行われ、乾漆による自由な成形が行われて現在に続くのです。」

釈「じゃあ、重甲冑は今よりも重かった時代があるんですか。」
まゆ子「いや、300キロよりも随分軽かったんだけど、徐々に強度を増して行くに従って結局は重くなったね。翅も付いたし火中での活動も出来るようになった。軽量化は機能の増加の為に使われた、ってわけだ。」

釈「で、今回出て来た武徳王の鎧のはなしです。」
じゅえる「でも300年前となると、400年からずいぶんと遠いね。」
まゆ子「あー、その前にも何体か武徳王の鎧はあるんだけどね、全数ちゃんとカンヴィタル王宮に残っている。現在の武徳王の甲冑は、脹れ上がる一方の重甲冑をなんとかしなければならない、という危機意識からは出発している。資源量の節約という観点からも財政的にも、軽い鎧は必要とされ、標準理想としてこの甲冑は作られた。

 まあ、話は簡単なんだよ。重甲冑には三種類の装備がある。タコ樹脂を利用した複合装甲、ゲイルにはね飛ばされても大丈夫なバネ構造、運動を補助する自立運動機構。この三つをそれぞれに発展させようという話に普通なる。で、武徳王の鎧は軽量化によって三番目の自立運動機構の必要を無くした。

 一方、海戦用の丸甲冑は複合装甲だけで普通の甲冑を作ってみた。海の上ではゲイルの心配は無いからね。
 現代の重甲冑は三番目の機構が強化されたものになっている。

 で、翼甲冑だ。武徳王の甲冑の直接の後継はこれなんだけど、運動補助にタコ樹脂の翅を用いるという新企画によって、これまでより格段に高い運動能力を獲得した。この機能は後には重甲冑丸甲冑にも部分的に採用された。で運動補助機構は省いた、軽くて小さな重甲冑として翼甲冑は作られたんだな。ゲイルにはね飛ばされても大丈夫なバネ構造も持っている。」

じゅえる「つまり、武徳王の甲冑には翅が無いんだ。」
まゆ子「無い。」

釈「製造に関してはどうなんです?」
まゆ子「タコ樹脂の翅の製造は、重甲冑製造よりもはるかに技術的には楽なんだ。というか、人力パワードスーツとなれば、そりゃあ製造は大変だ。褐甲角王国は技術的に遅れていてどうしても追いつけないから、簡単な方に進んでいく事を考えたんだね。また戦場にうすのろ兵と弩車が出現して、重甲冑の効力が疑問視されるようになり、さらに大審判戦争ではタコ樹脂装甲が燃えるという予想外の現象が出現した為に、火矢が当たらない運動能力の高い翼甲冑が主役の座を獲得しました。」

じゅえる「別の系統の神兵用甲冑てのは、無いの?」
まゆ子「カプタニア神衛士が使っている鎧は特別な革鎧、つまりは革とタコ樹脂製のかちゃかちゃ言わない奴だ。防御力は普通の甲冑以上だけど、強弩は防げないしゲイルにはね飛ばされると死んじゃう。これに翅を着けたものも考えられているけれど、そりゃ今後出そう。劫アランサ専用甲冑だ。」

釈「ギィール神族の甲冑には変化は?」
まゆ子「あれは一人一人違うからねえ。流行もあるし、新企画は随時勝手に導入されてるし、隠し武器はいっぱい付いてるし。まあ、人間が着ている限りは所詮知れてるてとこもあり、仕方ないところもある。

 それよりも、実は神祭王から贈られた「弥生ちゃん甲冑」はかなり新機軸が投入されているんだよね。あれはタコ樹脂製のチェーンメイルなんだ。目が非常に細かい鎖を銀タコ石の糸で繋いでいる。軽くて頑強な素晴らしい甲冑だよ。」

じゅえる「ギジシップ島で遭遇した重甲冑は、黒甲枝が作るのと一緒?」
まゆ子「ほぼ同じ。装甲材が新型になってるけど、耐火で表面層が鉄張りになってるてだけだね。これは冷却には不利なんだが、内部に排熱機構を独立して設けている。ま、重甲冑を神兵用以外で作るのは初めてだから、あまり冒険はしていない。」

釈「これから新型甲冑は出ますか?」
まゆ子「西金雷蜒王国の海戦用甲冑が出て来るし、翼甲冑の廉価バージョンである草甲冑も出て来る。だが要望があれば受け付けるよ。」

じゅえる「そうだねえ、神人が着る甲冑とか、人食い教徒が着る甲冑とかはどうかな。」
釈「それは随時なんとかなりますから、ここはもっと厄介なものを。たとえば生体甲冑とか。」
まゆ子「残念ながら、弥生ちゃんが北に飛ばされた時に最初に遭遇するのがそれだ。聖蟲の試作バージョンとして、人体をそっくり覆う甲冑というかパワードスーツがある。」
じゅえる「その程度じゃあダメなんだよ、甘いなあしゃくちゃんも。」
釈「しょぼおん。」

じゅえる「十二神方台系には魔法は無いんだよねえ。てことは、むしろ魔法の甲冑てのを出してみろ、と挑戦的に言うのが正しい。」

釈「焔アウンサさんとか彩ルダムさんとかは礼装甲冑てのを着てますよね。あれはどの程度の装備なんです?」

まゆ子「あれは常人が着る事を前提として作られた甲冑で、グレードが色々有る。

 一番高いのが元老員金翅幹家の人間が使うもので、鋼とタコ樹脂の複合材料が用いられているギィール神族のネヴュラと同等の品で、黄金や銀の飾りが施されている。これは高い。
防御能力的には丸甲冑に継ぐ強度を持っているね。丸甲冑は神兵が用いる事を前提としての重装甲があるから、かなり重い。ネヴュラとの違いは隠し武器が無いってとこだ。褐甲角王国では卑怯だと嫌われる。
ただ元老員には聖蟲を持たない人間というのも居て、その人達はギィール神族みたいに体格が大きくもないから、後で言う常人用礼装甲冑を用いている。

 2番めに高いのが黒甲枝が用いるもので、聖蟲を返上した者、あるいは軍務にあっても正面での戦闘を行わない者が用いる事を前提に作られている。
黒甲枝の家の出身者で聖蟲をもらわない者もこれを用いる事がある。ま、そういう人は普通クワアット兵になってるけどね。
色は特に定められていないけれど普通錆防止に塗料を塗っていて、銀の装飾が施されている。黒甲枝は黄金を使うことは普通許されていない。黒甲枝主要家のチュダルムやらレメコフ家くらいだね。
強度の点では常人用普通甲冑の最高レベルの防御力を持つけれど、やはり重い。だから聖蟲を譲ったという人はもうちょっと簡易な軽い甲冑を使っている事が多い。これは実戦用では無く、クワアット兵の甲冑に防御力では劣る。逆に、聖蟲がある者は増加装甲を付けて防御力を強化しているのが普通だ。

 3番めはクワアット兵の上位の者、大剣令クラスが用いるのだ。まあこれは王宮に上がる為に用いるものだから実用性は必要無い。上で言った聖蟲を譲った人が使う実用性の薄いものである事が多い。というのも、クワアット兵は大剣令クラスでも裕福とは言い難く、金が無い。クワアット兵は基本が一代限りだから、個人で甲冑を買えない。そういうレベルの人は黒甲枝との繋がりが深く、礼装甲冑を借りているのだよ。

 で、クワアット兵の鎧だ。一応これも礼装甲冑に分類される。というのも、クワアット兵はこれを着て武徳王の前に出る事が許されるから、便宜上そうなっている。
実用本意ではあるが、クワアット兵は王国の華であるから、見栄えがいいようにデザインもされている。
特に目立つのが胸盾で、首からぶら下げた盾というタコ王国時代からの甲冑の様式を模した姿になっている。これは実際外す事も出来て、盾として用いるのも可能。完全プレートメールではなく、レザーアーマーの上に装甲をぶら下げているという形だね。手足は金属製だけど。
 実用品としてのクワアット兵の鎧は、常人が用いる甲冑としては最も完成度の高い、防御力も文句が無い非常にレベルの高いものだ。ただコストの問題があるから、金雷蜒王国の狗番の鎧ほどには硬くない。けど、狗番でも徒歩の場合は例の蛤様の甲冑はあんまり用いないからね、やっぱ重過ぎる。

 ついでに言うと、狗番の蛤様の鎧も礼装甲冑と看做される。ステータスの高い鎧ってわけだ。
ギィール神族の盾として矢を防ぐ為に用いられるから、費用はそれぞれの主人持ち。鋼鉄板を叩いて成形したもので、肩に蝶番があり上から被る。肩の部分が拡がっているのは、主人がゲイルの背に登る際に踏み台として使う為ね。
まあ重いから、ゲイルの背に無い時はこれは着用しないで半分裸同然の姿で戦場でも従うよ。
実は同じ形状でタコ樹脂の複合装甲を用いた、軽い鎧も存在する。これは軽い。もちろん費用が随分掛るんだが、金持ちの神族は今次大戦においては狗番にこれを着用させている。

ちなみに、キルストル姫アィイーガの狗番ファイガルとガシュムは甲冑の前板だけこれになっている。イルドラ家の狗番は全鉄製の旧いのを持って来ている。だからイルドラ家の狗番は通常は軽装で動いているよ。緊急時は首から盾を掛けて甲冑に換える。便利なもんだ。
弥生ちゃんについてきたサガジ伯メドルイの狗番ミィガンはこれを用いていない。

***** *******

まゆ子「ものはついで。235記法についての説明をしておこう。十二神方台系においては、数を表記するのに1・2・3・5の数字しか用いない。これを235記法という。」

じゅえる「不便じゃないの?」
まゆ子「とんでもない! これは物凄く合理的な表記法です。

 ま、話はかんたん。これは十二神方台系の算盤に表される数字と同じものなんです。方台の算盤は石盤、もしくは木の板に溝が彫っているだけなんですが、10〜15本直列に溝があるのね。で、この列が上下二列ある。上が答えの列で下が仮の数字の列。下の列をいじって上の列に答えを置く、という形で使う。
 で、この列に置く石が、1・2・3・5の4種類しか無いんだ。」

釈「つまり、4種類の石を列の数だけ揃えればいいんですね。で、メリットは?」
まゆ子「実際にやってみるといいんだけど、1から11までの数が、この4個の石で完全に表現出来る。つまり足し算だ。

  1-1,2-2,3-3,4-13,5-5,6-15,7-25,8-35,9-135,10-235,11-1235

ね。12で繰り上がるから、この4つの石で上等。」
じゅえる「…ほんとだ、嘘みたい。」
釈「書けるもんなのですねえ。」
まゆ子「で、これを南アメリカ文明みたいにキープで表現すると、かなり便利だね。12進法が綺麗に表現出来る。列に数字が無い、0の場合は紐をまるく結わえておく。
(注;省略記法として9-51,10-52,11-53 として二文字で表す事もある。)」

じゅえる「なかなかべんりなもんだねえ。でもこれで近代的な計算は難しいでしょ。」
まゆ子「むずかしい。だから弥生ちゃんは10進法を導入して、5つ珠の算盤をつくらせた。これで猛烈な勢いで救世主神殿の経理をばちばちとやっちゃうんだ。弥生ちゃんは小学5年生で段取ったから、すごいよ。」
釈「では方台の職人に算盤を発注していたんですね。ふーむ、ではこれを使えばものすごい勢いで計算力が高まるという話ですよ。」

まゆ子「でもね、235記法はそれなりに合理的なんだけど、実は完全な12進法を使って居たわけじゃない。10進法も併用していた。11の記法を見て分かる通りに、1と235なんだね。これを1余りの法と呼び、10人の隊に隊長が一人、という風に数えている。だから10人隊は11人居るし、20人隊も21人居る。税金とか手数料もそうで、10余り1の1を納めるようになっている。」

じゅえる「いやな慣習だね。」
釈「でも9パーセントてことでしょ、税率。・・・あ、これを関税と考えると、関所を通る度に9パーセント抜かれていく・・・。」

まゆ子「そうなんだ。タコ王国時代末期はこれで凄い事になった。借金の利率も9パーセントだ。貸した金の9パーセントを最初に天引きして、期日までに全額返す、という形になっている。複利計算は無い。ま、複利計算を発明したバカが居ますけどね。」
じゅえる「まさかトイチじゃないよね。」
まゆ子「借金の最低期限は一ヶ月28日だ。普通は3ヶ月で借りるけど、年率36パーセントだな、まあ酷いといえばそうなんだけど、複利じゃないから許されているよ。」

じゅえる「しかし10進法に換えるには数字を新しく作るしかないね。」
まゆ子「そのとおり。弥生ちゃんは幾何の本を書いたけど、これの説明にはどうしてもアラビア数字が必要だった。つまり、自分の都合で強引に押し付けるのだが、まあいいじゃあないですか。」
釈「きゃぷてんのする事ですからね。」

 

2007/4/4

まゆ子「げばおとEP5 「第五章 武徳王の戦い」、でけたー、69枚!」

釈「2週間掛っちゃいましたよ。」
じゅえる「4月になる前に上げるつもりだったのに。」

まゆ子「すまん。でも69枚だ、二章分の分量なんだからかんべんして。」
じゅえる「長けりゃいいというものでもないよ。」
釈「そうですねえ、スケジュールは章の数で進んでいるのであり、テキストの量ではありませんから。」

まゆ子「でもでも、この章はこの分量が確実に必要だったんだから、」

じゅえる「否定はしてない。もっと別のやり方が無いか、と考えて居たんだ。」
釈「長けりゃ読まない人も出ますしね。そもそもが、書いてる最中で困るでしょう。」
まゆ子「添削の途中で寝た。」
釈「ほら。」

まゆ子「まああ、長けりゃいいってもんでもないんだ、たしかに。だが、すっ飛ばして描いた第一巻は悔いも多々あるんだよ。もうちょっと丁寧に描いてりゃよかった、てね。」
じゅえる「どうするね、対策は考えた?」

まゆ子「文体だ。」
じぇえる「またか。」
まゆ子「だが核心だ。

 小説において文体は命というよりも、実体そのものだ。なにが書いているか、よりも、どう書いているかの方が重要なんだよ。しかも、作品全体の構成やらよりも、最小単位である文章、これこそがあらゆる点において絶対的な価値を持つ、全てだ。」

釈「えらくまた極端ですね。」
まゆ子「なにしろ私は、手に取った小説の文体が気に食わないと、読まない。その判断は10秒以下で決まる。」
じゅえる「つまりは個人の嗜好に基づいて、そう考えるわけだ。しかし、或る意味それは正しい。」

釈「そうでしょうか? やはり或る程度読んでみなければ善し悪しは分からないものだと思いますよ。」
まゆ子「内容はね。ただ、わたしくらいになると、文体で作家の力量を瞬時に判断する。内容ではなく小説家本人を知る、という意味においては、文体はまさしくその人そのものなんだ。」
じゅえる「気にくわねえ奴の本は読まない、てわけね。うんうん。」

釈「小説は読まなきゃ死ぬというものではありませんから、そういう考え方の人が居るのはしかたがないですが、・・・そうかなあ。」
まゆ子「書いてる本人がそういうのだから、そうなんだ。」

じゅえる「で、自分が書いた文章を添削している最中で寝てしまう人が、どういう文体を作り上げるつもりだい?」

まゆ子「対策はすでにあるからこそ、こういう話をしているんだよ。
 つまりは、書く時によく考える。」

釈「???」
じゅえる「・・・・、あたりまえじゃん。」

まゆ子「あたりまえじゃないよ。げばおとは書く前にはなにも考えてない。」
じゅえる「嘘! じゃあ、あの大量の文章はいつ考えてるのさ。」
まゆ子「キーボードの上、書いてる最中に勝手に沸いて出ている。」

釈「・・・・設定は私達が作るとしても、描写のこまかいところは出たとこ勝負、なんですか? うわー。」

まゆ子「これは別に不思議でもなんでもないが、分量が増える一因であろうとは考える。鉛筆で書いていた当時はそんな事は無いからね。まず書くべきものを考えてから、書く。字を書く手間を惜しめば、そうなるのは当然だ。」
じゅえる「なるほど、宙で考えてから書いていた昔に戻ろうというのだね。しかし、客観的に見て、昔の文章はそれほどー。」

釈「いえ、そうでもありませんよ。たしかに昔の方が拙いのですが、締まっているといえば、確かにそうです。」
まゆ子「つまりは、宙で空で考えるという工程を適切に挿入すれば、おのずと締まった文体に戻り、テキストの分量も削減される、と見込まれるてわけだ。どう?」

じゅえる「いや、・・・よくこれまで書けたもんだと驚くばかりだよ。」
釈「ワープロとかコンピュータてのは恐ろしいものですねえ。」

まゆ子「ま、そんなわけで、次は「第六章 穿攻隊」だ。かなーり間抜けな話になります。かんべんしてね。」
じゅえる「まあ、わたしが筋書き考えたからねえ。」

 

2007/03/29

まゆ子「というわけで、げばおとEP5 「第5章 武徳王の戦い」が一応出来ました。なんかべらぼうに長い。」

じゅえる「60枚くらい?}
まゆ子「たぶん。長くなるかなとは思っていたけれど、ホントに長くなるとは考えてなかった。」
釈「しかし、いきなり場面転換ですから、長くなるのが当然と思います。」

まゆ子「そうなんだ。必然ではある。だけどなんだな。」
じゅえる「深いことは考えない! で、出来はどうなのさ。」

まゆ子「悪くないと思うよ。わるくはない。でもねーこう思うのさ。戦闘シーンに私はほとんど台詞は入れない。多少入るがほぼ最小だ。対して地の話の時には意図的に会話を多量に投入する。会話はやっぱり読みやすいし、私の書く会話はちっとも長くないから、地の文の長さを和らげる効果がある。」
釈「戦闘シーンは地の分が長いのが連なる、というわけですね。で読みにくいと。」

じゅえる「それほど読みにくくもないけどね。要するに、新型の戦闘シーンの描写法が欲しいんだ。」
釈「そりゃあ、この巻になってからは戦闘シーンを書き捲くっていますからねえ、目先の変わった事もやりたいですか。」
まゆ子「あーそーかも。実際戦闘シーンが続くと飽きる読者様も出るだろう。」

じゅえる「次はなんだ? 次の戦闘シーン。」
釈「ベイスラの穿攻隊です。」
じゅえる「モノローグの嵐ね。」
釈「ですね。」

まゆ子「うわああ、そりゃ困るな。」

じゅえる「なにか、他の趣向ある?」
まゆ子「無い。」
釈「決定です。」

まゆ子「しかしモノローグかあ、こりゃ困ったな。えーとだねー、主役を一人に集中するべきだろうか?」
じゅえる「絵かきの人を主人公にしなさいよ。軌バイジャンの兄貴分の、なんだっけ?」
釈「サト英ジョンレ 24歳です。」
じゅえる「絵描きの人の目でその英ジョンレを見て、おもろい感じでやろう。コミカルに。」

まゆ子「え?」

釈「悲惨な戦場ですよ?」
じゅえる「悲惨なものをひさんに書いてどうするね。」
釈「ごもっとも。」

まゆ子「え? ちょとまって、じゃあ、モノローグだけでなく、コミカルに楽しく、悲惨な状況を書け、と仰しゃるわけですか、あんさんは。」
じゅえる「新機軸!」
釈「新機軸ならしかたありませんねえー。なにせ新機軸ですから。」

まゆ子「ちょっとまて、・・・・・・うーーーーん、なるほど、新機軸か。確かにここらあたりに新機軸を投入するのは構成上望ましい。明るい軽い感じのが欲しいとは思って居た。」
じゅえる「必然なんだよ。構成上の。」

まゆ子「しかしーそれでは、英ジョンレさんがかなりまぬけな感じで描かれる事になると、・・・いいか、軌バイジャンとカロアル父の章がめちゃくちゃ重たくなるんだから、その前はかるーい方が。」
釈「必然です!」

まゆ子「了解した! ところで、げばおと事典はかなり増補したぞ、主にEP5。大苦労しました。」
じゅえる「そんなことするから進まないんだよ。」
まゆ子「そりゃそうなんだけどさあ、まあね。」

釈「でも、そういえば第5章の前になにか別件で書くんじゃありませんでしたか?」

まゆ子「あー、そうね。ころっと忘れてましたわ。で、次の第6章の前に「紅御女」を書く。短いの。こいつは督促派のスポンサーみたいなものだから、ここで顔を出しておく価値がある。というよりも、第6章はカロアル親子の御話だけど、督促派も当然難民暴動に関与しているし、していなければおかしい。だから彼女は顔見せをする。」

じゅえる「伏線というか、前振りね。」
まゆ子「そ。髪が真っ赤な火のような女。」

***

まゆ子「そりゃそうと、ブックオフに行って色々な作家の人の本を確かめてみたんだけど、どうもウチの文体は陳瞬臣さんに似ているらしい。」

じゅえる「また大きく出たな。」
釈「しかし、それはまた実に正統的ですねえ。」

まゆ子「昔、この人の本はいっぱい読んだからねえ。いや、誰かの本に似ているとは思っていたんだよ。人間ってなかなかオリジナルというものは打ち出せない。それまでの人生で接触した色んな人の色んな活動のコピーを無意識にやってるもんだ。だから、私が好ましいと思って書いている文体は、これまで読んだ中で一番分かりやすく親しみやすかったもの、であるのは間違いがなかったんだ。」

じゅえる「ふーむ、でもライトノベルで陳瞬臣はないでしょ。」
まゆ子「うん、そうなんだ。でも「げばおと」は時代劇のつもりで書いてるからねえ。「ウエンディズ」がアレなワケだから、対比する形で真剣な文体を追求すると、」
釈「先祖返り、ってわけですよ。」

まゆ子「ま、だからげばおとがイイ、って人は、居るのかどうか分からないけど、多分陳瞬臣をよく読んだ人、もしくはこれから読むべき人ですよ。」

 

2007/03/21

まゆ子「第5章書こうと思ったら書けなかった。カンヴィタル王宮の構成がまるっきり分からない!」

じゅえる「またどろなわかー!」
釈「ほんとに、どうしてこう設定が次から次に必要になりますかねえ。キリがありませんよ。」

まゆ子「実は調子よく5章は書いていたんだよ。ヌケミンドル防衛線の3人は説明する為に作っているから使いやすい。だが、それじゃあ目先が変らないから構成を考え直して、カンヴィタル王宮がそのまま移って来た大本営にガーハル元老員が出かけて小言を言われる、て話に変更するように換えたら、途端に頓挫だ。」
じゅえる「目先が変らなきゃあ、書く意味無いしねえ。」
釈「諦めて設定始めましょう。

 えー、カンヴィタル王宮というのはもちろん武徳王陛下がいらっしゃるわけですが、その他には?」

まゆ子「まず、カンヴィタル王宮の性格を考えよう。褐甲角王国は基本的に聖蟲を頭にのっけた人間が支配する、これはまあ大前提だ。だが王国のそもそもの目的は、奴隷とされて居た民衆の解放と彼らの自治だ。」
じゅえる「その自治、てのが曲者なんだよね。民度が低過ぎて弊害だらけなんだ。」
釈「つまりは社会がまだその段階にまで進んでいないんですよ。」

まゆ子「てなわけで、カンヴィタル王宮はその目的の為に特徴的な構成をとっている。つまり、宮廷では聖蟲を持つ人間は武徳王しか居ない。群臣は皆一般人だ。」

じゅえる「マジ?」
まゆ子「警備は別だが、聖蟲をかって戴いていた人間、てのは有りだよ。」
釈「それは、現実問題として指導力を発揮出来るのでしょうか? 立法と行政、軍事は聖蟲を持つ人間が指導しているんですよね。」

まゆ子「行政の内、税務と呼ばれる金勘定はすべて一般人官吏によって為されている。あと産業育成とか学問研究とかだね。ただしその人員は黒甲枝の家に生まれたけれど軍には進まなかったという人間がほとんどだ。後は官僚を代々やってる一族の出身とか、民間の財界人が能力を買われてとか。ヒッポドス商会はそれだね。」
じゅえる「なるほど、一般人の政界官界への関与についてはほとんど穴だったな。なるほど、でカンヴィタル王宮はその構図を意図的に作り出しているんだ。」

まゆ子「これは、初代武徳王カンヴィタル・イムレイルの指導部の構図をそのままに再現している、とも言えます。昔はカブトムシの聖蟲を持つ人間は救世主唯一人、今の弥生ちゃんと同じ状態だったんだよ。」
釈「原点をここに保存する、というわけですね。なるほど、元老院とか黒甲枝の世界とは隔絶して違うはずです。」

まゆ子「えーとだね、カンヴィタル王の職責としては、聖蟲の繁殖と聖戴、十二神信仰の擁護はまあ当然として、現実の仕事として元老院で可決された法案の承認、これがまず一番大事。で、監査だ。」
じゅえる「監査?」
釈「では、王国の全ての軍と官僚と法曹を監査するわけですね。」
じゅえる「えらくまた現実的だね。」

まゆ子「だがそこがいい。褐甲角王国は神聖金雷蜒王国を否定する立場として成立したんだけれど、当然のように金雷蜒王国が否定した紅曙蛸王国時代末期の有様にも否定的だ。カブトムシの聖蟲は別に知的な優越を聖戴者に与えないから、そこのところは非常に気にしている。腐敗堕落をしないように最大限の努力を払っているんだ。」
じゅえる「それでカンヴィタル王宮に監査の機能があるんだ。」

まゆ子「で、監査局、通り名は「極北」が武徳王直属の機関としてある。逆に言うとこれしかない。
 で、武徳王の傍にはそれを助ける為の大臣が6人居ます。臣人(おみと)と呼ばれます。軍、行政、民間、神殿、学識、法の6人ね。

軍を監査する為のアドバイザーが「将軍」です。これは凌士統監から選ばれたクワアット兵の位階を最高位まで極めた人物から選ばれます。作戦指揮には文句は付けませんが、軍事費の使い方に関しては、この人プロです。だからなによりも厳しい。中央軍制局が最も怖れるのがこの人です。

行政・官界の最高位にあるのが「宰相」です。この人は元老院の下にある税務局の最高位を務めた人が普通なります。なにより金の流れをチェックしておけば、王国で今なにが起こっているかはつぶさに分かるわけですから、当然です。

民間からは「太夫」です。この人は民生の状況を武徳王に直接知らせるのが役職で、王国の行政や司法がちゃんと民間人を助け潤しているか、を判定する役になります。この人は全国の都市自治会議や農民議会の長達の中から互選で選ばれます。だいたいルルントカプタニアかヌケミンドル、ミアカプティ、デュータム点の自治会議議長が多いです。つまりは富豪富商なわけですから、王国の経済についても詳しく、民間経済の状況をアドバイスしてくれます。

学識経験者から「叡書」。叡書の語は学問全般に渡る研究者の総称で役所名でもありますが、この際気にしない。科学技術庁長官ともいうべき「学識統領」が引退した後にこれになる。褐甲角王国では学問といえば即物的に役に立つものが重視されるのだけれど、それを越えて知識全般に渡って諮問に答えます。軍事でも政治でも経済でもから捉えられない現象についての知恵を与えるわけで、この世界ではほとんど常識の外にある自然秩序についての深い叡智を持ち合わせています。エコとかね。

神殿関係は「聖笞」といい、身分はカニ神官で法神官に継ぐ高位神官が神聖神殿都市から派遣されます。武徳王は褐甲角神の最高神官でもありますが、だからこそ自分の姿が見えなくなる事もあり、特にカニ神官を召し出して鑑とします。神官巫女は民間人の生活を裏から支えているから、見えないところ、また見たくないところまでしっかり見ています。それを武徳王に直言出来るのもカニ神官の強味です。

で、最後に司法の長として「宮法監」が元老院からやってきます。この人はもう一つの役目である、元老院で可決された新法案の承認を助ける役目も負っています。この人は例外的に聖蟲を持っていてもかまわない事になってますが、年齢的なものを考えると大抵はとっくの昔に聖蟲は息子に譲っている黒甲枝ですね。

 で、それぞれスタッフを5人ほど持っています。ほんとうはもっと居るんだけれど、カンヴィタル神聖宮に上がれるのは5人まで。人事はそれぞれに任されていますが、他の臣人から異が唱えられると素直に換える慣習があります。」

じゅえる「じじいばっかりだね?」
まゆ子「じじいばっかりです!」
釈「それは素晴らしい。でも女性はいないんですか?」
まゆ子「無いねえ。カンヴィタル宮のそのまた上にある神聖神殿は女だらけなんだけど。」

じゅえる「大本営にはこれら全員が来ているの?」
まゆ子「居るんだよ、律義に。まあ、そのスタッフというのは少ないけれど、大臣さん達は皆来ている。大変だ。」

釈「軍事的にはまったくの無能力なんですか、カンヴィタル宮は。」
まゆ子「そこだね。

 カンヴィタル神聖宮は基本的に近衛兵に守られているんだが、宮廷内部はまた別の護衛が居る。禁衛隊と言ってカプタニア神衛士団の一部隊だ。この隊員は黒甲枝の家に生まれた者から特に志操堅固な者をピックアップして選び、特別な聖蟲つまりは緑金の聖蟲を与えて護らせている。武徳王の命令に絶対服従する、というわけなんだけれど何もしないのが褐甲角王族の慣習だから、基本はそれぞれの判断でちゃんと動いている。こいつらの特徴は甲冑を用いない、てとこね。重甲冑翼甲冑はもとより、礼装甲冑すら使わない。革の衣を着けているだけで、剣も大剣みたいな大物ではなく一般用の小さいものしか下げてない。」

じゅえる「弱い?」
まゆ子「いや、神衛士独自の武術てのが伝わっていて、近衛とも赤甲梢ともまったく系統の違う独自の強さを見せる。ま、宮廷内での独自進化を遂げた武術てわけだ。緑金のカブトムシの聖蟲は王族に対し、というかこの場合は武徳王オンリー、絶対服従をするとなっているんだけどもうひとつ超能力があって、彼らの見るモノはすべて武徳王にも感じ取れるようになっている。だから武徳王は普通出張ってはいかないんだ。」

釈「その緑金のカブトムシの主ってのは、決まっているんですか?」
まゆ子「あー、なにか儀式か操作かで決まる事にしよう。ともかく、彼らは絶対服従というのが無い代りに戦闘時は武徳王の管制を受ける事になる。相互に連絡しないでもその管制に従っていれば最適の戦闘が出来るわけだから、かなり強いよ。」
じゅえる「ちょっと反則っぽいけどね。」

釈「でも現在は戦争の真っ最中にあるわけですよ。戦場の指揮権は委譲しているとして、状況や作戦の説明を受けたりはしないんですか?」
まゆ子「そりゃ居る。中央軍制局から主席大監がちゃんと説明の為に常時詰めている。彼はカプタニア中央軍制局司令部と密接な連絡を取っていると同時に、近衛兵団の指揮もしている。まあ、近衛兵団長に任せておればいいんだけどね。前にハジパイ王の所に来た、スタマカッ兆ガエンドて人だ。」

じゅえる「大体構成は分かった。で、人間関係、て事になるわけだ。」

釈「そうですねえ、宮廷内部の話を書く訳ですけれど、ガーハルさんは宮廷内においてどの程度の地位になるんですか?」
まゆ子「武徳王のお使いですから、武徳王にのみ従います。でも武徳王の代理として臣人達は質問するわけだから、かなりキツいよ。督戦使は臨時の役職であり、指揮する部下てのも居ない。全部ガーハル家がスタッフも資金も自分で調達する。ま、後で必要経費は下りるけれどね。大本営の周りには元老員も数名従っているから、ガーハルは彼らと主に連絡を取っているんだよ。」

釈「お友達設定しなければいけませんね。」
じゅえる「白根っこの会の登場だ。」
釈「おお、忘れて居ました。」
まゆ子「あ〜、それは当然出るな、忘れてた。」
じゅえる「俄然おもしろくなってきました。」

まゆ子「すっかり忘れてたよ、そりゃあそうか、そりゃあ出るな。てことは何? 元老院における勢力争いとかも当然のように戦場に持ち出されているんだ。」

釈「特に不自然なはなしだとは思いませんね。でも、どうなんでしょうか、元老員の人は幕舎に入れるんでしょうかね。」
じゅえる「入れない、て方が面白いな。外に立って雨の中とかでも元老員は野外で命令を聞く、ての。」
釈「そこまで徹底するのですね、態度を示さなければいけないんですよ。けじめです。」

まゆ子「絵面としては面白いし、象徴的な意味も打ち出せる。悪くないアイデアだが、使いどころが難しいな。ガーハルさんの報告がスムーズにいかない。」
じゅえる「そこは技巧を凝らして、いかにうまいこと報告するかて元老員同士での暗闘があったりする描写をするんだよ。白根っこに妨害されるてのがあるべきだ。」
釈「ですね。」
まゆ子「またむずかしいことを。」

じゅえる「でもそうでなければ、元老員を正面に押し出して描写できないでしょ。」
まゆ子「いや、今回ゲイルの突進を書かねばならないんだが、そんなのは必要無いよ。」
釈「そう言う時は、たぶん、戦場を書かないのがいいんですよ。勘に従えばたぶんそうです。」

まゆ子「でも武徳王にも勇ましいところを見せるべきだと。」
じゅえる「そんなもんは近衛兵団に任せておけばいいんだ。武徳王の周辺は最後の最後までなにも無い。」
まゆ子「いいのかな、それで」
じゅえる「読者様の期待を裏切るのが正解。」
釈「です。」
まゆ子「うーん。」

じゅえる「具体的に行こう。誰が出る? 大臣さん6名は必須でしょ。」
まゆ子「あー、カニ神官は今回要らない。宮法監も居なくていい。宰相と将軍と太夫、こんだけでいいよ。」
釈「でも他の人がどこに居るか、は明らかにしておきましょう。では大臣は3人、その外に元老員が10数名、近衛兵団長スタマカッさんと禁衛隊長、こんな感じかな。」

じゅえる「おんなが居ない!」
まゆ子「戦場に女は要らんでしょう。」
釈「侍女は無しで侍従だけ、ですね。でもなぜか、地元の農家の人とかが居るんですよ。」
じゅえる「地元民ね。なるほど、それは問題ないそれで行こう。」

まゆ子「スパイ!」

じゅえる「よござんす。まったくもって田舎の農婦然とした、おばちゃんスパイね。」
釈「絵的に美しくは。」
まゆ子「しかし論理的だ。」

じゅえる「では弦レッツオさんを連れて行こう。で、この美しい女男さんに、おばちゃんスパイがざくっと斬られちゃうんです。スパイだと見破られて。」
釈「コワイこわい。」
まゆ子「まあ、それもいいか。どうやって見破る事にしようか。奴隷と褐甲角王国の農民とは、ひと目で違うものがある、てことにするかな。」

じゅえる「聖蟲を持つ者に対する態度が違うのに、褐甲角王国に来てから気付いたんだよ。金雷蜒王国の者は聖蟲をなるべく見ないようにするのに対し、褐甲角王国の者は物珍しく見るんだよ。」
釈「もう少しいじって、褐甲角王国の者は神兵の顔に対して顔を背けるのに対し、金雷蜒王国の者は聖蟲の顔に対して顔を背ける、というのでは。」

じゅえる「びみょーだな。」
まゆ子「それはやばい違いだな。間違えたら大事だ。」

       *

じゅえる「そもそも、ガーハルさんってどういう人? いや性格ではなくて身分的にというか元老院の立ち位置というか政治的スタンスというか。」
釈「そうですねえ、それが分からないとお友達設定が出来ませんよ。」
まゆ子「そりゃもっともだ。ふむ。

ガーハル敏ガリファスハルさんは38歳。元老院においてはまあ中くらいの格の家柄で、派閥としてはかっての先戦主義に近い立場ではあったが、積極的に推進するという風ではなかった。
彼の先祖は武勇というよりもむしろクルワンパルのような参謀タイプであり、黒甲枝にあって軍の中枢近い部分で作戦立案に携わって来た家系であり、金翅幹家になった後でもその気風は受継がれており、武徳王が作戦の軍事的妥当性を知りたいとか思った際には呼び出される立場にある。督戦使に選ばれたのはそういう人だからね。」

じゅえる「当然といえば当然過ぎる設定だな。戦争解説員てかんじだ。」
釈「しかし実際に軍を指揮しているわけではありませんよね、それでいいんですか?」

まゆ子「学者さんでもある。軍学のね。黒甲枝と金翅幹家とは隔絶しているわけではなく閨閥で密接に繋がっており、出世とか昇進とかにも影響力がある。黒甲枝はともかく勉強するものだが、その頂点には金翅幹家のどれかを頂く学問の派閥というのがあり、ガーハル家は軍学においてその一つとなる。」

釈「ではクルワンパルさんも、その派閥の。」
まゆ子「エースです。」
じゅえる「そりゃそうか。」
まゆ子「まあもっとも、実践の現場と学問の現場とは違うものだけれど、クルワンパルはガーハルに対しても講義する程の英才なのさ。」

釈「しかし、ガーハルさんはそういう風には見えない人ですよね。」
じゅえる「あえて、現場の指揮官に対してはそういう風に装っている、というのではないかい。」
まゆ子「ガーハルさんは学問もするけれど、でもどっちかというと政治的な方が得意だよ。学者さんにだって、理論にしか眼がいかない人と応用に傾く人、政治向きに眼が行く人と、金儲けに行く人と、それぞれ分れているもんだ。」

釈「あー、わたしはそういうのは良く知らないんですが、そういうものですか?」
じゅえる「ま、学問だって金が無ければ出来ないし、政治力が無ければ実を結ぶ策が取れないからね。」

まゆ子「彼の立場に立って考えれば一目瞭然。現在ガーハル派の軍学はクルワンパルというエースを擁し理論的深化も進んでいる。学問を推し進める方向においてはまったく心配は要らない。であれば、クルワンパルの仕事がうまくいくように政治的に便宜を図るのが最適、ということになる。ガーハルさんはクルワンパルさんよりも年下なんだよ、3つばっか。」
じゅえる「実にまっとーな話だね。」
釈「おもしろくないほどです。」

まゆ子「とはいうものの、クルワンパル家は黒甲枝においては主流になったことの無い端っこの家だ。誘惑もなかなかに多いのさ。ガーハル派ではあるけれど、その枠組みから逸脱したってまったく不思議ではない。他の金翅幹家の派閥も取り込もうと画策する。あるいは潰そうともする。なかなかね。」
釈「そうか、だから元老院では暗闘があり、クルワンパルさんを巡っても揺れているという所を描写するんですね。」

じゅえる「立場は分かった。では対抗する勢力を、白根っこの会は?」
まゆ子「白根っこの会は、ハジパイ王を頂点とする秘密の会合であり先政主義派である。軍事的には軍備縮小とか軍事費削減、最低限の軍備で最高の成果を挙げよう、なるべく外交交渉を優先して戦わずして勝つべし、というのだよ。白根っこの会は、先政主義を有利に推し進める為には非常の手段、裏工作も必要だ、という考え方を元に、最小限の犠牲でそれを成し遂げようて派閥だね。ハジパイ王はむしろ彼らを抑えている、と言った方が良い。むやみやたらと影の力を使用すると、政治的混乱に陥るからね。

対して、先戦主義強硬派はこの際金雷蜒軍に完膚なきまでのダメージを与えて再起不能にする、あるいは国境を越えて攻め入ろう、とか考える。赤甲梢は彼らの後押しで出来たわけだが、もちろん電撃戦の構想を彼らは知らないし、更には弥生ちゃんの勧めで神聖王と和議を結ぶ、てのは彼らにはとても受入れられない話だ。」

釈「かなり、やっかいですね。ハジパイ王は、悪ではないんです。」
じゅえる「悪とは程遠い正義なんだが、時流に見放されましたねー。」

まゆ子「もっとも、白根っこの会は先政主義の主流ではない。
現在の先政主義の主流派はハジパイ王の王太子ハジパイ照ルドマイマンを中心とする穏健派だ。この場合穏健とは、軍事力による解決に対しても真剣に向き合うという考え方ね。特に弥生ちゃんの出現後はこの派閥は先戦主義の穏健派との区別が付かなくなっている。そうだね、この派閥を仮にいうと、対救世主派だ。青晶蜥神救世主の出現に対して、褐甲角王国はいかにして応対するかを第一に考えて次の時代においても王国の変わりない存続を模索する立場ね。」

釈「極めてまっとうですね。」
まゆ子「あー、つまりは既に先戦主義先政主義という枠組みは無効化しているんだ。なにしろ戦は起ってしまった、それも未曽有の大戦だ。先戦主義派の頭目であったヒィキタイタンさんの構想は、膠着した状況を打破する為に敵に先んじて能動的に攻撃しよう、という考え方。両軍最大兵力での激突なんてのは想定していない。故に先戦主義派の構想はとっくの昔にぶっ壊れている。

他方先政主義派の、これまでの王国秩序を堅持しようという考え方は、大審判戦争でお話にならなくなっているし、弥生ちゃんという人物が極めて政治的に強い力を持ち、瞬く間に新王国建国の気運を高めて行くのに対処できていない。

よって、現在では褐甲角王国の政治情勢は四分五裂しているのだ。あー、
旧先政主義体制墨守派・新先政主義新時代派・青晶蜥王国参画派・方台統一派・戦時優先戦争遂行体制派・金雷蜒王国絶対打倒派・褐甲角王国原理主義派
こんなとこだ。」

じゅえる「だめじゃん。」
釈「だめですよお、そんなのじゃあ。」
まゆ子「ま、こういう風に分れているのは元老院内部だけであって、黒甲枝の全ては戦争遂行で手一杯頭も一杯だ。元老院では戦後を考えるしそれを期待される部所だから、勝敗に先んじてそういう事が考えられるわけだ。」

釈「ガーハルさんとこはどこです?」

まゆ子「戦時体制派だね。この場合、弥生ちゃんには中立を意味する。勝った後で考えようというのだが、まあ戦争の帰趨が読めない状況では致し方ない。無論この立場は判断の保留に近いから、彼らを取り込もうと様々な工作が行われるのだね。ちなみに、戦時体制派はこの状況が10年続く事も視野に入れている。無能故に判断しないというのとはまるで縁の無い決然とした立場だよ。」
じゅえる「戦争が10年続くというのは、そりゃあなるほど大変だ。そういう立場もありか。」
釈「政治ってのは難しいですねえ。」

じゅえる「青晶蜥王国参画派てのは裏切りじゃないの?」
まゆ子「その派閥は早い話が、褐甲角王国に青晶蜥王国を取り込もうというのだよ。裏切りとは逆に、弥生ちゃんを取り込んでその勢いをこちらのものにし、金雷蜒王国に対して有利になろうてのだ。劫アランサが戦ってるのは主にこの派閥ね。

逆に、方台統一派が弥生ちゃんに協力的で青晶蜥王国樹立に積極的に関与しよう、というのだよ。非軍事的な影響力で金雷蜒王国を屈伏させよう、て感じかな。奴隷全体の解放を考えて弥生ちゃんを利用しようという立場だ。裏切り者てのは居ないよ。

むしろ新時代派というのが、弥生ちゃんの扱いに困って判断保留をしているね。なにしろ弥生ちゃんの動きは読めない。敵か味方かの判断もつかないし、そもそも神の計画がどういうものかを知らねばどうしようもない。なるべく弥生ちゃんを敵にしないようにしよう、てのだ。」

釈「では墨守派は明確にきゃぷてんを敵にするんですね。というか、狗をけしかけましたか。」
まゆ子「戦時体制派は弥生ちゃんに対して中立というよりも触らぬ神に祟り無し、戦争に関与してくれるなよ、て立場だ。

金雷蜒王国絶対打倒派は弥生ちゃんの力をも利用して戦争に勝とうというのだね。弥生ちゃんと手を結ぶのもやむなし、と考える。

逆に褐甲角王国原理主義派は、弥生ちゃんとは絶縁して褐甲角神の力だけで勝利、王国を存立させて行こうという立場。この派閥は現在の褐甲角王国の在り方にも不満を持っていて、もっと褐甲角神を中心とした神権国家にしたいと願っている。後の黒甲枝諸侯国の母体となる。」

じゅえる「ほんとうに、理屈ってものは考え出すときりがなく分化するもんだねえ。」
釈「呆れてしまいますよ。」

まゆ子「ちなみに、大本営にはハジパイ照ルドマイマン王太子が来ています。元老院の代表としてね。」
釈「では、この派閥がそれぞれに代表を送っている、と考えた方がいいですかね。」
まゆ子「ま、そいう配慮をして連れて来たわけではないが、それぞれの派閥から人を押し付けて、大本営の外に元老院の天幕で暗闘が繰り返される。」

 

2007/03/18

まゆ子「ひー、やーっと終った。げばおとEP5「第11章 神聖宮にて」がやあーっと終ってくれましたよ。44枚。」

じゅえる「遅いよ。」
まゆ子「アクシデントとかあると弱いんだよ。集中力の維持が出来なくてね。ついでに言うと、花粉症の季節に効率を期待してはいかんよ。」
釈「にしても、遅いです。これじゃあ今月中に完成なんてのはありえませんね。」
まゆ子「四月末日だな。ま、12月中はほぼやってない、1月中は半分休み、二月三月は花粉症とくればね。合間に色んなものを残しているから勘弁して。」

釈「にしても、戦闘シーンばっかりで、たまにはのほほんとしたお話も書きたいですねえ。」

まゆ子「そうなんだ。寅さん見て泣いちゃったよ。寅さん最後はよかったね、て。」
じゅえる「そうだ、寅さんシリーズの最終回ってどうなるんだ?」
釈「『男はつらいよ』シリーズは48作「寅次郎ハイビスカスの花」で最終回です。何度も出ているマドンナのリリーさん(浅丘ルリ子)と最終的には石垣島で一緒に暮らす事になるだろう、というところでおしまいです。」
じゅえる「幸せになるんだ?」
釈「たぶん。」
まゆ子「たぶんね。」

じゅえる「しかし、寅さんみたいのは書けないなあ。なにか、ネタが必要かな?」
まゆ子「それこそミスシャクティでも使わなければ、そうだねえ。たとえば、創作インド料理店の看板娘シャクティが日本全国津々浦々に流れ流れてお店を出しては畳んで行く、というストーリーかな。」
釈「あまり、嬉しくないシリーズですね。」

じゅえる「この場合、お父さんが寅さんだ。日本全国津々浦々の名物を食べて大袈裟に感動して、創作インド料理に取り込んで見事失敗する。」
まゆ子「べたべたの展開だな。」
釈「では料理対決も当然ありますね。」

じゅえる「それどころか、行く所いくところで釈は鯉に落ちるんだよ。」
釈「え、えへえへ?」
まゆ子「そりゃ当然だな。釈が惚れるんじゃなくて、釈が惚れられちゃう。しかもすごくかっこいい男の子に。」
釈「え、えへえへへへ。」

じゅえる「でも最後にはなんかトラブルがあって、一家揃って町を出て行くんだよ。ちっちゃなバンにお店の道具を突っ込んで、家族皆がぎゅうぎゅう詰めになって。」
釈「でもおとうさん、免許もってませんよ。」
まゆ子「おかあさんにしなさい。」
じゅえる「えーと弟二人に妹ひとり、ね。弟3人だったような気がするけど、妹にしなさい。」

釈「しかし、寅さんだとすると御前様というのが必要ではないですかね。おじいさんのエライ人が。」
まゆ子「それは、料理界のエライ人でいいじゃないか。いや、それはちとおもしろくないか。」
じゅえる「釈なんだから、いくところで年寄をなぜか拾ってしまう事にしよう。それもめんどくさいのばっかり。」
釈「あーそれ、実話です。」

まゆ子「ま、そんな感じ。ほんとにできたらおもしろいなあと思うけど、さすがにそりゃ無理だな。」

じゅえる「で。次は?」
まゆ子「えーと、第5章、武徳王の戦いだね。ヌケミンドル防衛戦だ。」

釈「武徳王自ら戦うんですか?」
まゆ子「いや、この世界王族は戦わない慣習になっている。むしろ、いつまで戦わずにおれるかという根性比べだね。

 で、主席大監クルワンパルさんが、ヌケミンドル防衛線に大穴をあけてゲジゲジ軍を挑発しているんだよ。武徳王の本陣に向けてぽっこり大穴の進撃路を開けて誘い、ゲジゲジ軍が余所に行かないようにしている。そこに、赤甲梢の電撃戦の噂が入って来て、ゲジゲジ軍は120騎のゲイル騎兵での大突撃を敢行する! てはなし。」

じゅえる「クルワンパル、クビだろ。」
釈「それは大ミスではありませんか?」
まゆ子「いや、想定内の事態の内でも最大級の攻撃だよ。最初から対処の方法は考えている。ただ、それを理解してくれるか、が問題でね。結論から言うと、武徳王本陣にまで敵襲があり、近衛兵団が多大な犠牲を払ってかろうじて撃退する。おわびに行ったクルワンパルさんは近衛兵団団長スタマカッ兆ガエンドさんにがしっと抱きしめられちゃう。近衛兵団も暇で退屈していたから、大活躍の舞台を作ってくれて大感謝ってとこだ。」

じゅえる「・・・・なんだかな。」
釈「ほんとうに、戦うのが好きなんですねえ。」
まゆ子「そりゃそうだよ。ただでさえ近衛兵団は戦わないんだから。」

じゅえる「その話は、今後に繋がるところが大きいね。」
まゆ子「武徳王の姿が直接に描かれる最初の話だから、そうだね。」

釈「そもそも武徳王というのはどういう人なんですか、いい人ですか?」
まゆ子「いいひと、と言われると困るな。歴代武徳王としては普通なんだけどね、ま、彼の治世において大規模な進攻はまだ無い、という点においては乱よりは治の人ではある。ただし、その間にヒィキタイタンの同時侵攻計画は進むし、赤甲梢は兎竜によるゲイル撃退策の確立に成功して、変化は目の前に迫っていたという感触は誰の目にも鮮やかではあった。千年紀の変わり目だと自覚もあるし、まあ変化に備えて覚悟は決めていた、という感じかな。」

じゅえる「つまり今回のはなしは、いかに動かないように我慢するか、てところに焦点が置かれるんだ。それによって武徳王の器量を表現する。」
まゆ子「そ。」

釈「では、かなりの激戦が描かれますね。」

まゆ子「えーと、予定では120のゲイル騎兵が突入して、神族の死者58名重軽傷者28名内捕虜17名、対して褐甲角軍神兵28名が戦死、クワアット兵800名が死傷という大惨事になります。」
じゅえる「大審判戦争における最大の激戦か。」
釈「でもクワアット兵の死傷者が多いですねえ。」
まゆ子「ゲイル騎兵は基本的に歩兵を伴わないからねえ、遠慮無しに歩兵隊の真ん中に突っ込んで行くよ。こんな感じにどうしてもなってしまう。」

じゅえる「で、クルワンパルさんはどういう策を施していたのだよ。」

まゆ子「簡単に言うと、最前線の防備を開けてギィール神族を引き付ける。もし万が一大規模なゲイル騎兵隊の突入が有った場合、でも近衛兵団を突破出来ないと想定して、ゲイルの脱出路をあらかじめ設定しておいたんだ。近衛兵団に跳ね返されたゲイル騎兵隊は北東に抜けてミンドレア穿攻隊の前に出る。ここでも立ち塞がるのをやめて側面攻撃に徹する。で、東への脱出路を開けておいて死に物狂いの自爆的攻撃をさせないんだ。」
釈「では、うまく逃げさせるわけですね。」
まゆ子「ついでに、第一波が突入した後には開けた大穴を塞いで第二波の突入を全力で阻止する。実際、第二波も100騎を用意していたけれど、これが突入できれば武徳王はほんとうにヤバかった。」

じゅえる「近衛兵団てのは、戦力はどのくらい?」
まゆ子「近衛兵団は兵数1500、神兵は100(神兵戦技研究団20)、神衛士禁衛隊15、に加えてヌケミンドル内国兵団 兵数1000 第一挺身団30、てとこだ。」
釈「ちょっと、少ないですかね、120のゲイルには。」

まゆ子「ゲイルが真横に並んで戦う、てのは無いからね。壁を作られたら突破出来ないよ。ミンドレア穿攻隊の後ろにはガンガランガ兎竜掃討隊もある。ついでに、クルワンパルは電撃戦がバレた際にこのレベルの一大攻勢があると予期して、経路上に神兵の大弓狙撃隊を配置して居た。これにざくざくやられて進路を近衛兵団に向けるようになっている。ちょっと突破は無理だね。」

じゅえる「こう、近衛の絶対防衛線てのがあって、武徳王がじりじりと待っていると、ぐばあっと討たれたゲイルが一体飛び込んで目の前で倒れる、とかね。」
釈「で、眉ひとつ動かさないんです。」
まゆ子「ふむ。」

 

2007/03/06

まゆ子「というわけで、どんどんいくぞー。

で、前回まったく大したあてもなしに、大頭戦士の陰に陰謀があると決定したわけです。」
じゅえる「なにも考えてなかった?」
まゆ子「まあ、大頭戦士つまりは白銀の重甲冑戦士の頭の聖蟲が偽カブトムシのゲジゲジだ、というのは決まって居た。その元はカブトムシの聖蟲の死骸だ、というのもなんとなく決まって居た。だがその犯人をハジパイ王にするつもりだったんだ。」

釈「それはダメでしょう。」
じゅえる「それはキャラに合わない。それ没ね。」
まゆ子「と私も思う。となると、ハジパイ王より上の身分の大物が悪、という事になる。」

じゅえる「カンヴィタル王家だね。・・・・で、誰が居るの?」
釈「そうです。そもそもカンヴィタル王家には誰が居るんですか?」

まゆ子「まず武徳王でしょ、褐甲角神聖神殿で聖蟲を育てている王神女ですね、複数人居ます。で、ナルミン王女は武徳王の娘です。ちゃんとお兄さんも居ますがいずれも20前です。で、その他のカンヴィタル家出身者も皆神聖宮殿に暮しており、外には出ません。男はカプタニア神衛士となり、女は結婚すれば王宮から出ます。」

じゅえる「悪はナルミンの叔父さんだ。」
釈「ですね。」
まゆ子「そんな簡単な結論でいいのかいな。」

(以下中略

  じゅえる「ふーむ、かんたんだな。もう一ひねりするとして、どういう切り口がある?」
  釈「身分としてはこれ以外ありえません。あとは動機ですね。」
  まゆ子「カンヴィタル王家の王子、というのは確かにそこにしか行き当たらない。そこでケリをつければ動機は幾らでも考え尽くし、説得力もある。いや、いくらでも屈折した設定を考えつくしドラマ的に盛り上げる事も可能だ。だが、」
  じゅえる「謎が無いんだ。誰にでも考えつくはんにんだから。」
  釈「スクリーンにしましょう。いかにも臭いキャラが出て、それが犯人だとばかり皆考えるが、実はまったく意外な人物がそれなんだ、という推理小説の定番です。」
  まゆ子「しかしそれにしても、・・意外な人物だって言われてもねえ、書いてる本人に意外な人物てのは。」
  釈「カモゾーさんとか。」
  じゅえる「カモゾーさんだ。」
  まゆ子「そりゃまた意外過ぎて無茶だ。そもそもからして、カプタニア山脈の王都近くは禁域になっていて普通の人は入山出来ない。無理やり入ると神衛士に殺されちゃう。」
  じゅえる「獣だな。」
  釈「獣に化けて、カモゾーさんが盗み出したのです。」
  まゆ子「そんなこどもだましが、・・・トロシャンテの蕃兵か・・。」
  じゅえる「月並み過ぎるな。」
  釈「こどもだましもいいとこです。ここはすぱっとトリックで解決です。つまりは、カプタニアのカンヴィタル王宮に務める者が取っちゃったんです。」
  まゆ子「つまりは、王奴とか奴婢とか言われる下働きのにんげんかい? いやこの人達はそんな所にまでは入れないんだけど。」
  釈「無理やり入る、というのはどうでしょう。たとえばですよ、カンヴィタル王族のひとりが、法度を破って聖なる山に人を度々呼んで居たのです。彼自身は悪意は無く、またその呼ばれた人物も悪ではない。しかしながら、」
  じゅえる「その手引きの役をしていた人間が、金に転んで裏切って、聖蟲の遺骸を持ち出すルートまで開けてしまった。というのか。ふーむ。」
  釈「誰か心当たりはありませんか? そんな工作が出来る人を。」
  まゆ子「白の母か、人喰い教団、それに秘密工作員でしょ、それに督促派、スガッタ教の僧侶に蕃兵。あとはー、番頭階級の生き残りに交易警備隊、神官巫女。」
  じゅえる「白の母は除外しよう。ただ、アウンサを殺す為にはここにツテが無いといけない。ではスガッタ教の僧侶が良いか。」
  まゆ子「ハジパイ王の設定で、スガッタ教の僧侶をよく使い話も聞いた、というのがある。この設定を援用してだね、カンヴィタル王家の人間がスガッタ教の僧侶をカプタニア山脈にたびたび招いていたその隙を衝かれて、という感じかな。」
  じゅえる「白の母がまるっきり関係無い、というのもアレだな。」
  まゆ子「後始末に使った、というのはどうだろう。スガッタ教の僧侶は白の母にはツテがある。彼の立場としても、自分のせいでこのような重大な危機を招いてしまったのに責任を感じている。だから、闇の話は闇に、と彼女に処理を任せたが結局ダメで方台のどこかに消えてしまった。」
  釈「それではもう少し捻りが足りません。白の母はその任務成功したのです。ですが、その遺骸を納めた舎利容器を持っていくと、そのカンヴィタル王家の人はにわかにこの品の利用法を考えてしまう。」
  じゅえる「ふむ! それは思いがけない誘惑なんだな。人はその類いの偶然に弱い。」
  まゆ子「聖蟲とはなにか、を知るのにはやはりゲジゲジの聖蟲が与える知恵が必要なのだよ。つまりギィール神族に褐甲角の聖蟲を調べさせる以外に手は無い。だが彼は、迫り来るトカゲ神の新世界に対して聖蟲のより詳しい知識を欲して、禁忌に踏み出してしまうんだ。」
  釈「でも、白の母は、これに対して何の興味も抱かなかったのですかね。彼女の性格ならば与えられたチャンスはわらしべ一本でも掴み取ってしまうでしょう。」
  じゅえる「時期をいつにするか、それが問題だ。10年、てとこか。」
  まゆ子「重甲冑の戦士の育成を考えると、10年は必要だ。」
  じゅえる「では10年。白の母はとっくの昔に神人に成っているとして、聖蟲の遺骸は要らない?」
  まゆ子「・・・いや、彼女では分からない、という事が分かるんだ。やはりゲジゲジの聖蟲が無ければ分からない。しかもギジシップでないと研究も出来ないと知っているからには、欲しても仕方ない。」
  釈「たしかにそうですねえ、これを煎じて飲んでも不老不死にはならないでしょうから。」
  まゆ子「だが白の母はやはり、ここで出すのはアレだ。出したい所だけど、赤の巫女とかいうのを別にでっち上げよう。」
  釈「白の母は便利過ぎますからねえ。」
  まゆ子「やはり、スガッタ僧であればスガッタ僧を手下として用いるべきだ。では、その探索の任務にはスガッタ僧を用いるとして、」
  じゅえる「しかしそれも面白くない。もっと別の、博徒かなんかの親分を用いるべきではないかな。」
  まゆ子「博徒かあ。」
  じゅえる「奴隷の中の一バンド、というのでもいいよ。ともかく別のチャンネルが欲しい。」
  まゆ子「アウンサの暗殺が人喰い教団の手によって行われるとしたら、やはり人喰い教団であるべきではないかな。白の母とは別系統の主流派の方が。」
  じゅえる「そうだ・・・、ほんとうに喰う目的で聖蟲の遺骸を手に入れた人喰い教団が、白の母によって鎮圧された、というのはどうだろう。赤の巫女なり御女なりが居て、それの一派が喰う為に手を回して、それをスガッタ僧を師と仰ぐ白の母がさくっと首を刎ねて解決する。それも、そのカンヴィタル王族の目の前であっさりと。で、舎利容器を手渡す時に囁くのだよ。」
  まゆ子「ふうむ、ならばガニメランバンの兵達も再登場出来るというものかな。白の母がアウンサを殺す以上、なんらかの繋がりが無ければ話が通じない。であれば、ここらへんが妥協点かな。」
  釈「そうですねえ、悪魔的な誘惑、というのは只者には出来ませんからねえ。やはり白の母には出てもらうべきでしょう。」
  じゅえる「ついでに言うと、白の母は、こういう事件は闇に葬られているけれど、実は歴史上何回もあってその度に聖蟲の遺骸は持ち出されている、と教えるのだよ。で、王族の心を揺さぶるのだ。」
  釈「しかし、白の母ってひとは、恩師の頼みをちゃんと聞く義理堅い人ですねえ。」
  まゆ子「あ、彼女は実際義理堅いんだ。自分からは決して裏切らない。彼女に従う者が彼女についていけなくなって脱落する、のを成敗するという形でものごとが成り立っていく。そういう人なんだ。」
  じゅえる「じゃあ、今回の暗殺事件も依頼で動いている、てわけだ。」
  まゆ子「うーん、そうねえ。依頼というよりも、彼女の独断だな。むしろ彼女は、ハジパイ王を表に引っ張り出すのを目的とする。彼の独断を既定路線に乗せる為に後戻りできないようにしてしまう、て感じ。」
  釈「しかし、督促派はこの回には関係無いというの勿体ないはなしですねえ。」
  じゅえる「武徳王襲撃事件もあるし、このどれにも白の母を関与させるのは得策ではないよ。もっと別の路線が必要だ。」
  まゆ子「悪党てんこ盛りで困ってしまうな。アウンサ襲撃事件の黒幕は白の母ではなく、彼女はあくまでも裏から利用した、というだけにしたいんだがね。というか、彼女の指図にしては襲撃事件が安直過ぎるんだ。また武徳王襲撃もそうだよ、彼女の仕業ではない。」
  じゅえる「やはり督促派だよ。ここが薄過ぎるんだ。もうちょっと大きな組織である必要があってね、そこからの指示によって襲撃事件とかが起きるんだ。」
  釈「しかし、督促派には中核組織が必ずしも必要だとは思いませんけど。聖典があればいい人達ですから。」
  まゆ子「そのカンヴィタル王族は督促派に立脚点が近い人だ。だが褐甲角王国の裏切り者ではないよ。だから、督促派のボスには成り得ない。もちろん人喰い教団に入信したりはしない。あくまでもカンヴィタル王族だ。」
  じゅえる「うーーーーん、大頭戦士を抜いて、アウンサの殺害動機を探った方がいいかなあ。白の母の目的はそれにして、でもそれは便乗しただけという形で。」

まゆ子「てなわけで色々考えたのだが、こいう話にする事とした。」
じゅえる「どした?」

まゆ子「
計画通りに、カンヴィタル王族の一人がスガッタ僧をたびたび招いてその講話を聞いて居た。彼は王族でありながらも督促派行徒に近い思想の持ち主だ。

だが、彼の下に仕えていた奴隷の一人が金に目が眩み、あろうことか彼の秘密の招待の合間を利用して、聖蟲の遺骸の入った容器を持ち出す事に成功する。
当然すぐバレるが、闇の世界に一度流れたモノは回収できない。そこでスガッタ僧が、かって自分の元で修行して居たという、白の母に依頼する。
義理堅い白の母は瞬く内に犯人を突き止めて、カンヴィタル王族をそのアジトに案内する。そこは、人喰い教団の一派の秘密神殿であった。

ところが、そこの主は人喰い教団でも除け者扱いされている、タコ女王国時代には小王と呼ばれた古い権力者の末裔なのだ。番頭階級よりも偉く、人喰い教団の前身である火焔教の司祭たちを思うがままに操っていた記憶がこの者の一族には伝わっているのだね。で、それが紅御女だ。

アジトを急襲したカンヴィタル王族は、白の母の手引きで聖蟲の遺骸の回収に成功する。だが、白の母はこの紅御女をうまく手駒にしてやろうと思っていた。彼女がほんとうは不老不死なんかどうでもよく、ただ単に大昔の栄華を取り戻そうとあがいているのみ、と知っていたからね。

さて、聖蟲の遺骸を回収したのはいいけれど、白の母の誘惑でカンヴィタル王族の心は揺れ動く。さらに追い打ちを掛けるように、この紅御女の一派を彼の手足として俗世で動くように取計らってくれたのだ。これは紅御女にとっても願ってもない話で、カンヴィタル王族なんていう天上の位の人に使われるというか後援を受ける、となればまったく異存は無いのだね。
で、白の母は聖蟲を金雷蜒王国に渡すという成果と、カンヴィタル王宮に紐を着ける事に成功する。

その後、カンヴィタル王族がお忍びで外に出て来る際には、彼女の一派が手引きをして便宜を取計らうようになり、その内に彼女は彼の愛人になり子供までもうけることとなる。」

じゅえる「こども、かあ。なるほど。」
釈「愛の鎖を掛けてしまったわけですか。なるほど、それは良い献身の動機となりますね。」

まゆ子「そうなんだ。焔アウンサ王女がギジシップで見た大頭戦士の話が漏れ伝わるにつれて、盗まれた聖蟲の遺骸に話が及ぶのはカクジツだ。そこで、彼女の一派はアウンサの殺害を計画する。白の母は彼女にそれを示唆するも協力はせず、彼女らの襲撃の陰で必殺の機会をうかがっていたというわけさ。」

じゅえる「実に、まっとうな動機になったね。息子の父を守る為に、献身的に尽すんだ。それは不器用ながらも得心行った。」
釈「まったく異論がありません。白の母の位置付けもちょうど良いですし。で、彼女の一派はデュータム点でメウマサクから獣人の処方の薬品を手に入れて居たわけですか。」
まゆ子「そいうことになるね。彼女の一派には特技があって、人を腐らせるんだ。金の力を実にたくみに使う。督促派に対してもひそかに資金援助を行っている。」

じゅえる「ふむ。悪くない。でも人喰い教団からはチェックが掛らないのかい?」
まゆ子「あー、そこは白の母がなんとかするとして、番頭階級とか小王の歴史についても少々でっちあげねばなるまいね。」

じゅえる「しかし、そいうバックグラウンドを襲撃事件の章に持ち込むのはなんだな。書かなくても襲撃の様相は書けるでしょ。」
釈「そこんところは、伏せて居て後で明らかにしてもいいと思いますよ。後から種証しすれば。」
まゆ子「というよりも、赤甲梢はその後もアウンサの暗殺の真相を探り続けるんだよ。で、EP6からの裏のストーリーの底流となるんだ。

ついでに言うとだね、紅御女の大事な息子さんは、後に大病を患って弥生ちゃんの元に救いを求めにやってくる。」
じゅえる「うーん、なるほど定番だ。」
釈「まるっきりの定番ですね。」

 

2007/03/02

まゆ子「というわけで、げばると処女エピソード5「第四章 天原の迷宮〜赤甲梢征東記その3〜」の第三部が完成したわけです。延々110枚、ここまでで236枚です。あー疲れた。」

釈「ごくろうさまです。しかしまあ、よくもこれだけ戦闘シーンを書きましたねえ。」
まゆ子「書いた書いた、もう戦闘シーンなんて見たくもない。」

じゅえる「そりゃ困るんだよ。567章全部戦闘シーンだ。」
まゆ子「うはー。」

じゅえる「えーと、次はベイスラ地方に戻るのかな? 穿攻隊の苦戦だったっけ?」

まゆ子「あ、いや、それだけどちょっとスケジュールをいじって、第8章を書く。第8章はつまり、神聖王との対面だ。第4章を延々と描いて来て、神聖宮内部での戦闘についてもじくじくと煮詰めていったから、今なら書ける。」
釈「それは確かに、勢いを殺さないように今書くべきでしょう。でも、章立ての順番を変更するのですか?」
まゆ子「それは無い。つまり、でぽ上では四章の次に八章が来て、その後567章と増えていく、という経緯を辿るよ。」

じゅえる「まー、それでもいいか。後で読む人は正しい順番を知る、ってだけの話で。しかしなんだ、こう集中して書くと、他の場所に居る人の事忘れちゃうね。」

まゆ子「あー、それは言わないで、いまちょっと落ち込んでいる。前の方の話読み返してみたんだけど、EP2で間違いを二つも見付けちゃった。一つは極めて重大なミスだ。あーどーして、こんなミスが残ってるかなあ、何度読み返したと思ってるんだ。」
釈「なんですか?」

まゆ子「アウンサとアランサの名前を間違えた。ここ間違えると全然意味がわかんなくなる。」
釈「二人の名前はいまでもよく間違えますよね・・・。」

まゆ子「初稿書いて、大体4回は書き直しているというのに、その後でも掲載中でも読み返してなんどでも修正掛けているというのに、こいうの見付けると落ち込むだろ。」
じゅえる「プロなら一回でなんとかなるのかねえ? 今テレビでは芋蛸南京てやってるでしょう、田辺聖子さんの。あの人はまあよく原稿書いてるけど、修正する暇ってあるのかね。いや、一発で決まるから要らないのかな?」

まゆ子「あたしにゃーわからない。まあね、初稿ってのはひどいもんなのさ。なにせ、組み上がるのを最重点でやっている。形が出来るまではもうなんも考えずに突っ走るんだよ、だから矛盾点やら自分勝手に分かって居て説明がまるで無いてのが多過ぎる。その原点ともいう姿が、「統則最前線」の原稿だね。あれはめんどくさいから書き直ししていない。どうせその内全部組み直さにゃいかんと思えば、修正する気力もなかったわけだ。あ、うえんでぃずは結構見直して書き直してますよ。ただあれは、論理矛盾やら錯誤を敢えて導入しているし、会話文が自然になるように畳語をわざと多用するから、修正自体がまぬけなんだけどね。」

じゅえる「「統則最前線」は書き直ししなくてよかったねえー、今度全面総取っかえだよ。いやー無駄が省けてよかったよかった。」

釈「だいたい、30枚を大きく過ぎると、修正なんてとても出来はしませんもんねえ。」

まゆ子「そうなんだ。今回100枚の内三分の一をきれいに修正するのにどれだけの手間が掛ったか。気力が無いと出来ないから、あえてぼーっとする暇を二日ばかり導入しなきゃならないんだよ。初稿を書く時は、これも集中力が大事なんだけど、想像力というものは一気呵成に書き上がるには危険過ぎるからね。自分がなにやってるかわかんなくなって怖くなり、逃げ出してはまた書き進む、てのを延々と繰り返す。ここで全部仕上がってりゃあ苦労はないんだけどさあ、」

じゅえる「修正する時は、読者様の視点でやるからね。読者さまが読んで分からないという所を見付けて書き直すには、別の精神状態が必要だ、ってわけだ。」
釈「同じ人間が二つの役をするのってたいへんですよねえ。そういやあしもだかげきさんは口述筆記するらしいですけど、どうですか?」
まゆ子「固有名詞を忘れてしまう私には、意味のない話だ。コンピュータの情報処理能力が無いととても書けやしない。」
じゅえる「げばおと辞書ねえ。今回もまた新しい人が出たわけですよ。死んじゃったけど。

 あ、そうそう。で、結局大頭戦士改め、白銀の重甲冑戦士の頭に憑いて居た聖蟲ってのは、どういう設定になったんだい。」
まゆ子「あー、前に書いた通りだと思うよ。というか、書いたよねえ。」

釈「ちょっとお待ち下さい。あ、

 1、弥生ちゃん、ウラタンギジトでおもろいはなし、狗の刺客
 2、赤甲梢の電撃戦、敵地侵入撃破
 3、赤甲梢の電撃戦、港に到着。舟を奪取、ギジシップ島へ。
 4、赤甲梢、王都ギジシップ島に突入。激戦の末に遂に神聖王宮に突入
 5、ヌケミンドル死守戦。武徳王の闘い
 6、ハジパイ王の工作、ジョグジョ薔薇デビュー、ヒィキタイタンの状況、赤甲梢電撃戦第一報
 7、ベイスラの激闘。そして悲劇への序章
 8、カロアル羅ウシィ、難民と金雷蜒軍とのゲリラ戦の渦中で戦死。軌バイジャン行方不明
 9、イルドラ姫、ベイスラ穿攻隊との激戦。神人に遭遇。
 10、弥生ちゃんの所に赤甲梢成功の報せが届く。ダゲレオたいぷ
 11、赤甲梢、神聖王宮での和平の情景。
 12、イルドラ姫撤退。神聖王の褐甲角王国入り
 13、カプタニア山中で謎の大火災。記憶喪失の軌バイジャン。弓レアル訃報を聞く。弥生ちゃん消滅!

こういう計画になってますよ?」

じゅえる「あ、8章じゃない、11章だ。」
まゆ子「あーそりゃ遠いな。061029か、4ヶ月前の計画だな、どうしよう。」
じゅえる「どうしようと言われても、・・・この計画表は悪くない。だから、11章が和平の章だ。でも書くのなら、今しかないね。」
まゆ子「そうするかあ。」

釈「ざっと06年分を確かめてみましたが、大頭戦士の聖蟲についてはなにも書いていませんね。それ以前の設定はもう使わないでしょうから、実質フリーハンドということで。」

じゅえる「じゃあ改めて聞くぞ。あの聖蟲はなにものだ?」
まゆ子「じつは、カプタニア神聖神殿において育成されている途中あえなく死んだ聖蟲の幼虫や蛹の遺骸を密かに盗み出して、ギジシップにて研究していたもの。ゲジゲジの聖蟲にそれを食べさせるとあの変な聖蟲が出来た。」

じゅえる「盗んだのは誰?」
まゆ子「未定。ただ、これから起きるカプタニア山脈山火事は、これを隠蔽するためでもある。まあ、アウンサさんはそういう噂がある事を知って居たんだよ、元老院金翅幹家の人間なら一度はその噂を聞いた事がある。」

釈「一大大スキャンダルですね。その謎解きはどうなります?」
まゆ子「あー、どうしよう?」
じゅえる「弥生ちゃんがトカゲ王国を立ち上げた後のお話でいいでしょう。ハジパイ王の弾劾には関与は無いということで。ただ、アウンサさんが殺されるのはこのネタに突っ込まれたくない人間の仕業、ということにしますか。」

まゆ子「ふむ、殺されるのに十分な動機だ。ただ、その人物は白の母に命じるだけのステイタスを持った人物になる。カプタニアの上層階のにんげんだな。」
釈「関係性をいうと、あの学匠のなんでしたっけさん、が山火事に絡んでいるわけですから、督促派行徒ですね。」
じゅえる「カプタニア上層部の聖蟲繁殖にタッチ出来る人間に、督促派が居る、ってことか。おおごとだな。」

まゆ子「てことは、その人物は自らトカゲ神救世主に成ろうと考えていた、という事になる。」
じゅえる「ありそうなはなし。」
釈「です。」

まゆ子「じゃあ、この疑惑は今後縦糸の一本として追求していくとして。

 次は行きがかり上「第11章、和平怪談」です。」
じゅえる「どんなかんじ? ちょっとは考えたんでしょう?」

まゆ子「あー、内部でまだ戦闘があります。「饗宴の間」というのがありまして、神族廷臣となりそこないsが闘います。こいつらは大金持ちの道楽息子みたいな感じのヤクザ者、ハスラーてな感じで少し頽廃の気味がありますが、武術の腕は大したものです。へらへら笑いながら、神兵と闘います。」
釈「うん、それはかっこいいです!」

まゆ子「加えて、この「饗宴の間」というのそれ自体が一つの傑出した美術品です。ギィール神族芸術の最高峰で、これの完成後ギィール神族は絵画に写実性を求める事を止めて、褐甲角神兵黒甲枝の武人画の精神性に傾倒していきます。それだけハイパーリアルです。」

じゅえる「よくわからんよ。」

まゆ子「早い話が、その名の通りに「饗宴」を描いた絵なんです。前後左右上下にまでびっしり、数千人のギィール神族が集まって饗宴を繰り広げる姿が驚くほどの写実性で描かれている。しかも絵だけではなく、浮き彫りや彫刻塑像を配して、騙し絵や錯覚錯誤を引き起こす凄まじい空間です。大広間全体が絵にになっているから、この絵の題は「饗宴の間」なんです。」
釈「それはー、すごいですね。」
じゅえる「すごいというか、呆れるね。」

まゆ子「で、そのヤクザ者達は、その絵の中の人物が生きて動いているようなキラビヤカな、でもちょっとはすっぱな、どう見ても戦闘には適していない衣装で闘います。「饗宴の間」の絵の人物達と溶け合って、なにがなんだかわかりません。しかも、その絵の中にはさまざまな仕掛けが施され、兵が隠れ秘密兵器が作動します。」
じゅえる「トラップ地獄なんだ。そりゃたいへんだ。」

まゆ子「で、そこを抜けるとうって変わって、非常に静寂な空間、円筒の中心部に出ます。ここにはカタツムリ巫女の頭侍女が待って居ます。で、シガハン・ルペと基エトスのみを案内して神聖王の居る内宮に連れていくんだけど、そこでこの円筒の説明がされます。」

じゅえる「ふむ。」
釈「円筒には意味があるんですね。」

まゆ子「これは全体がアンテナになっています。レクテナと言った方がよい、電波を使って電力の供給を受けるアンテナのことだよ。ギジジットにある巨大ゲジゲジ神の体がぐるりとギジジットの街を取り囲んでいるでしょう、あれから放出されるエネルギーをこれで受信して、内部に聖蟲が繁殖生育する環境を整えているんだ。だから、この周辺ではゲジゲジの聖蟲の超感覚がうまく機能しない。方位も見失う。」

じゅえる「なるほど、巨大ゲジゲジ神が居なくても王都として成り立つ為の仕掛けなんだ。」

釈「しかしそんなものをどうやって作ったんですか? そもそも材料は何です?」
まゆ子「材料は、タコ樹脂なんだけど、赤いタコ石を取る時にその周りに詰まっている銀色の柔らかい珠みたいなのを溶かして糸にしている。聖蟲を育てるミルクにもなります。」
じゅえる「ほお。ではかなり高価なものだな。」
まゆ子「まあ、でも他に使い道が無いから神聖王が独占しても誰も文句は言わないよ。カプタニアでは使ってないし。」

釈「じゃあ、アンテナで電力供給を受けるから、ギジシップでも巨大な機械が使えるんですね。」

まゆ子「あー、実はこのアンテナの内部はギジジットの神聖宮と同じにアリーナ状になっている。つまりここはゲジゲジ神の神殿なんだ。で、ギジジットで空中に志穂美を呼び出したように、ここでも空中に立体映像が浮き上がるんだ。カタツムリ巫女が語るには、これは天河の十二神がお示しになる未来の予想図。これからなにが起きるかのプレビュー版が映るんだよ。で、これから起きる弥生ちゃん失踪事件の映像が今は映っている。」

じゅえる「ほおほお。それはすごいね。じゃあここの人達は未来になにが起きるか知ってるんだ。」

まゆ子「詳しくは分からないけどね。でもだから赤甲梢の侵入にも驚かないし、準備もできている。で、赤甲梢突入の前に映っていたのが、弥生ちゃんのギジジットでの巨大ゲジゲジ神退治の映像だ。これを何週間にも渡って見せられて、ゲジゲジ巫女が何人も発狂したといういわくつきの映像だ。まあ神さまが弥生ちゃんに殺されるわけだから、気くらい狂うよ。」

釈「じゃあ、ギジシップの人は、ギジジットでなにが起ったかをちゃんと知っているんですね。」
まゆ子「そんなに親切には映像は教えてくれないんだけど、ともかく巨大ゲジゲジ神が破れた事は知っている。だから赤甲梢が神聖王の弥生ちゃんとの会談という話をもってきたとしても、驚かない。むしろ易々と請け合ってくれる。」

じゅえる「で、その後が内宮で神聖王5歳がお亡くなりになって、新しい神聖王が誕生するという運びになるわけですか。」
釈「そこまで書きますか。」
まゆ子「ここじゃあ、もう引き伸ばしは要らない。ちゃんとした交渉を行って、和平が成立しますよ。ゲバチューラウ神聖王の誕生だ。で終り。」

じゅえる「うむ。」
釈「そこまで決まっているのでしたら、そりゃあ今すぐにでも書くべきですね。11章の順番まで待つのはバカです。」
まゆ子「んだ。」

じゅえる「しかしなんだね。とっこーさいはは出放題なんだけど、あれの原理ってイマイチよく分かんないんだよね。」
釈「単なる体当たり、では困りますよねえ。詳しく説明してもらえますか。」

まゆ子「あー、まいいでしょう。まず基本的な事を押えていてもらいたいんですが、重量130キロとか300キロとかの黒甲枝が最高速度30キロでぶつかるというのは、こりゃおおごとだ、って事です。」
釈「鋼鉄のお相撲さんのぶちかましですね。」
じゅえる「死ぬ死ぬ。」
まゆ子「実際それだけで人が死にます。重装歩兵でさえ死にます。で、その勢いで剣で突っ込むのだから、威力は凄まじいものがあります。」

釈「それはわかります。」
まゆ子「とっこーさいはも、基本的にはおんなじです。ただその推進方法が特殊だというだけです。」

じゅえる「聖蟲の翅の羽ばたきと、翼甲冑の翅とが連動するんでしょ、それは聞いた。」
まゆ子「実はそれ嘘です。」
釈「あー。」

まゆ子「実は、空間に足場を作って、不可視不干渉の力場で聖蟲を持つ者を直接推進しています。だから、とっこーさいはを使っている真後ろに居ても、大した風はうけません。」
じゅえる「風は無いのか。そりゃ意外だな。」
釈「では、重力波とか亜空間とかが出て来るわけですね。」
まゆ子「ま、そんな感じ。でもやる事は一緒です。凄い力で聖蟲を持つ者を推します。」

じゅえる「どのくらいの力?」
まゆ子「1万G。」
釈「あー。」
じゅえる「あー。」

まゆ子「この推力で5センチ進みます。」

じゅえる「ちょっと待て、5センチってなんだ?」
釈「5センチを1万Gで加速したら、どうなります?」
まゆ子「まあかんたんなはなし、どんな固いもんでも切れますな。大剣だってぶちっと切れますが、まあそこはふぁんたじーとして。」

じゅえる「5センチってのは、つまり加速中の移動距離でしょう、えーとつまり何秒かな。」
釈「L=1/2・at^2ですから、L=5センチ、a=10000Gだと、・・1/1000秒です。」
じゅえる「なるほど、瞬間的というよりも爆発に近いんだ。」
釈「ちこっと当たって切れる、てだけですね。」

まゆ子「そこで止まればね。その千分の1秒の加速で、神兵は100m/sの速度になっている。時速360キロで新幹線のトップスピードだね。」
じゅえる「ちょっとまって。えー、よく分からないんだけど、5センチしか動いていないんだよね。でも時速360キロ?」
釈「・・・・すっとんでいきますね・・・・。」

まゆ子「当然ブレーキも掛るが、その時は100Gで止める。100m/sの速度を100Gで止めるのに掛る時間は、0.1秒ね。この時の移動距離は5メートルになる。」
釈「つまり、0.101秒の過程でとっこーさいはは終了し、神兵は5メートル5センチ動いている、ということですか。」
まゆ子「正確には5メートルしか動いていない。なぜならば、5センチという距離は人体各部の移動で吸収出来る距離、膝をちょっと曲げたくらいでしかないからね。カウントに入らない。」

じゅえる「つまり結論からいうと、とっこーさいはを使った神兵は、瞬間的に5メートル移動している、ということか。」
まゆ子「なにも当たらなければね。とっこーさいはの威力は大体この後期過程に発生しますが、上手い人は前期過程の加速で敵を撃滅します。なんでも砕きますよ。」
釈「1万Gですからね。」

まゆ子「だいたい後期過程のブレーキングは、止まる為の不足する推力を補うものであり、なんかに接触してエネルギーをそちらが吸収するのであれば、敢えて減速を行いません。まあ、接触面の損傷とか圧潰とかが起きないように適度なブレーキになりますが、普通接触物をぶち壊さなければ止りませんね。」

じゅえる「なんか5メートルしか動いていない、てのは地味っぽい気がするんだけど、いいのかな?」
釈「具体的には、どのくらいの威力になっているんでしょう?」
まゆ子「ま、1トンもある車が次の瞬間吹っ飛んでいる、くらいは。」
じゅえる「城門くらいは簡単に破れる、という威力、ね。想定通り、てとこか。」

釈「とっこーさいははわかりました。で、返し技のれんねんが、の方はどういう理屈です?」

まゆ子「れんねんが、はつまりは後期過程の減速シーケンスを妨害して相手の持つ運動エネルギーを回転方向に変換する、という技です。これのコツは、敵の加速過程には接触せず必ず遅れて発動し、敵の減速推進の方向をずらして回転運動に換えて破壊力として解放させないんだね。相手の減速推進の方向を歪める技だ。この時、相手を留めるのは自分のとっこーさいはなのだよ、支えるんだね。」

釈「衝突して双方とも位置が動かなかった場合、減速過程はどうなるんですか。」
まゆ子「速度に対して反応するから、働かない。減速過程はおまけというか、人体の保護の為にあると考えて下さい。あくまで威力は最初の加速過程のものです。」

じゅえる「減速をしなければ、凄い速度で進み続ける事ができるんだ。」
まゆ子「それは地上では無理ですが、空を飛ぶ時にはそうです。とっこーさいはで上に向かって打ち上げて、後は適当に羽ばたいて飛んで行くてのが、カブトムシ神の聖蟲を持つ者の飛行です。」
釈「時速360キロですからね。」

まゆ子「えーと、だいたい初代武徳王はたかさ500メートルくらいを上限として空を飛んでいます。ま、速度で言えば160キロくらいだね。劫アランサ王女もこのくらい。」
じゅえる「飛行物体としてはかなり遅いかな。」
まゆ子「早い鳥ならこのくらい出るよ。」

釈「弥生ちゃんきゃぷてんはどのくらいになりますか?」
まゆ子「80キロから100キロかなあ、突風に煽られて飛んでいくだけだから、そんなには早くない。早いんだけどね。」

 

2007/02/25

まゆ子「花粉症でえらいことになっております・・・。」

じゅえる「ま、それは最初から計算の内だもんね。この時期と夏のどまんなかは何にも出来ないと相場が決まっている。」
釈「夏は頭がぼーっとするんですね。」

まゆ子「てなわけで、まっとうな事をする気にはならん。ちなみにげばおとは第四章でついに神聖宮まで到達いたしました。」
じゅえる「あらかた書けたのです。ほめてほめて。」

まゆ子「よく考えたら、第四章は三回に分けて書いてるから、つまり本当ならもう6章まで行ってるはずなんだよね、なんか損したような気分。」
釈「きぶんもなにも、損してますよ。まちがいなく。」
まゆ子「てへ。」

じゅえる「で、どうするね。いつものようにまた設定をしますか?」

まゆ子「息ができないのに、そんな真似ができるもんか。迷走します。えーウエンディズが出来る時に弥生ちゃんという主人公キャラを零から作り上げた、というのは皆知ってるね。」
じゅえる「知ってるよ。だから弥生ちゃんは完璧な主人公キャラなんだ。」
釈「典型的な人物設計ですね。」

まゆ子「とは言っても、弥生ちゃんも本当に先行するものがなかったわけじゃない。ミレニアム・カプリコーナスというキャラが弥生ちゃんに先行して居たんだよ。弥生ちゃんはそのキャラの性格描写のかなりの部分をもらって出来上がっている。」

じゅえる「ふむ。そりゃいったい何者だ。」
まゆ子「救世主。」
釈「おお。」

じゅえる「そうーなんだ。じゃあ弥生ちゃんが救世主やってるのは、先祖返りなんだ。」
まゆ子「全然そういう風には考えてげばおと始めたわけじゃないけどね。(ここんとこにミレニアの絵が入る予定)で、これが彼女です。」

釈「似てますね。」
じゅえる「ちょっと大人っぽいかな?」
まゆ子「ミレニアは顔が男顔なんだよ。父親似でちょっと四角い顎をしている。髪型も特徴的で弥生ちゃんのトカゲの尻尾ヘアとはちょっと違うが黒髪で、まあ先行バージョンと言うのは納得していただけるものと思います。」

じゅえる「して、これが出て来るというのは、何故?」

まゆ子「この人、今度31代目トカゲ神救世主になります。」
釈「31代、って、何年後の話ですか!」
まゆ子「1700年くらいかなあ。つまりは蝉蛾神救世主時代のおはなしだ。」
じゅえる「後日談かあ。」

まゆ子「この時期、とっくの昔に十二神信仰が廃れ、ミレニアはトリバル峠の近くにタコ女王と共にひっそりと住んでいます。相変わらず正義の味方をしている予定ですが、北の大樹林からやってくる一つ目人喰い巨人をやっつけています。」
じゅえる「今度弥生ちゃんが遭遇する奴ね。その巨人のアイデアは、この人のところがオリジナル?」
まゆ子「ちょっとややこしくなるけれど、そんな感じ。」

釈「1700年後の方台は、どうなっているんですか?」
まゆ子「かなり寂れちゃった。500年くらい前が絶頂期で、以後資源の不足と環境の悪化で文明が衰退しちゃったんだね。聖蟲を持つ人も居なくなり、寂しい限りです。」

釈「わかりました! その世界をなんとかする、ってわけですよ。」
まゆ子「まあ、そういう事。巨大ろぼっとを出すかどうか、迷ってる。」
じゅえる「出すな! そんなもん。」

釈「また外伝として書くんですか。」
まゆ子「箸休め的に書いてみようかなあ、とか考えてるんだ。ちなみにこの人、元々の設定は仙女です。仙術を習い覚えた女の子が故郷の村に帰ってきて、荒くれ男共を率いて戦う救世主になる、というお話なんですよ。だから、巨大ロボットは必需品。」
じゅえる「いや、全然関係無いじゃん。」

釈「早い話が、巨大ろぼっとを出したいんですね。」
まゆ子「うん。」
じゅえる「花粉症のせいだな。」

まゆ子「このロボット、仙術がある世界の産物だから、それなりにファンタジックな機構で動いている。なにせコンピュータの代りに小人が入っている。」
じゅえる「まて、話が読めない。」

まゆ子「つまりはオートマトンだ。魔界の工場で半端者の魂を集めて人形に封じ込めて、小人型ロボットを作って現世で売ってるんだよ。」
釈「あー、すごいふぁんたじーだ。」

まゆ子「この小人、まあ絵に書いているとおもうんだが、めちゃくちゃ可愛い。しかも計算が早い、ろぼっとだからね。で、巨大ロボットの演算装置として鉄箱に閉じ込められて、24時間働きっぱなしなんだ、酷使されているんだ。」
じゅえる「はなしが見えて来た。奴隷労働をさせられるロボットなんだ、その小人は。」
釈「え、しかしそれってロボットですよね、電気製品の。酷使して悪いという道理はちょっと変です。」

まゆ子「女の子の論理に変は無い!」

じゅえる「わかった。どこらへんが救世主なのか。で、小人を解放したミレニアは、なにをするんだ?」
まゆ子「小人は電池駆動だ。寝てようが働いていようが、2、3年で電池切れで止まってしまう。充電は効かない。角の部分に半端者の魂が電源として入っていて、ボディはゴム風船みたいなもの。ボディの強度も数年しか保たない。」
じゅえる「まて、それじゃあちっとも解放してないじゃないか。」
まゆ子「そうなんだ、どうしよう。」
釈「なんなんですか、それ。」

まゆ子「放っておいてもやがて止まる可哀想な小人の運命を客観視しながらも、人死にの絶えない過酷な環境で虐げられる人々の運命を仙女が実力で救済する、というお話なんだ。」

じゅえる「結構寂しいお話なんだ。」
釈「じゃあ、31代目トカゲ神救世主てのも、寂しいお話なんですねえ。」
まゆ子「で、とりあえずそういうことで、どうしよう?」
じゅえる「こら!言い出しっぺがなんとかしなさい。」
まゆ子「花粉症なんだよ。」

釈「そりゃああれですよ。箸休め的なお話なんですから余計な事は考えずに、世界歴史紀行的ななんでもない日常を覗く、て感じにさりげなく描いておけばいいんじゃないでしょうか。チベットの山奥に住む人々の日常風景、とかの感じで。」

まゆ子「それ採用ー。」
じゅえる「さいようするんか。」

 

2007/02/19

まゆ子「さて、ついでだから戦後の話。赤甲梢とアウンサの処分についてを考えよう。大審判戦争は、東金雷蜒王国神聖王がデュータム点近郊で褐甲角王国武徳王と会い、弥生ちゃんが失踪する事で終結する。赤甲梢の処分はそこから始まる。」

じゅえる「ま、そういうはなしが予定されてるんだけど、正直言って殊勲賞である赤甲梢をそう簡単に解体して弾劾に掛けられるのかい。」
釈「罪に問うのはかなり難しいものがあると思います。黒甲枝は心情的に皆支持者なんでしょ。」

まゆ子「それをこれから議論するんだよ。えー、ともかくアウンサは王国の軍の命令系統をまるっきり無視してやっちゃった。これは間違いなく軍法会議ものだ。これはいいね。」
じゅえる「アウンサは間違い無い。でも、」
釈「成功が罪を帳消しにしないんですか?」

まゆ子「した。が、落とし前は着けねばならない。そこで赤甲梢の解体を中央軍政局が考える、。ま、なんだかんだ言っても赤甲梢は成功したわけだ。しかしながら、成功したという事は存在意義がそこで終わった、という事でもある。用が無くなったからには潰そうと言うのはこれはまともな考え方だ。」

じゅえる「赤甲梢は実験訓練部隊でしょ。殴り込み部隊としての役割は消えたとしても、それらの機能は?」

まゆ子「まず兎竜部隊と穿攻隊の貢献は高く評価されました。兎竜部隊は正式に褐甲角王国の一部隊として正式に発足する事になります。と同時に赤甲梢から兎竜隊の教育機関としての能力が分離されます。当然だね。」
釈「それは、表立って反対出来ない措置ですね。」
まゆ子「実際兎竜隊は活躍し過ぎた。だから、さっくり持って行かれます。紋章旗団が一度解体されて、兎竜部隊となります。紋章旗団兎竜隊です。」

じゅえる「・・・・なるほど、悪意を感じるね。」

まゆ子「その前に、現在の紋章旗団のメンバーはすべて退団です。元々が黒甲枝の家を継ぐべき人間に当座の居場所を作るのが目的ですから、黒甲枝の大量死で家が開いている今日、彼等には本来の位置に戻るよう命じられます。赤甲梢も同じです。次男三男で継ぐべき家が無い彼等に、今回当主が死んだ家に養子になるように命令が下ります。つまり赤甲梢からもはずれるんだね。」
釈「それはー、かなりな人数が取られますね。150名でしたか、大審判戦争で死んだ黒甲枝は。」

じゅえる「紋章旗団が解体されて兎竜隊になる、これは了解した。で、赤甲梢は?」

まゆ子「教育団としての赤甲梢の価値は軍政局もしっかりと把握しています。そこでクワアット兵に対して剣匠剣匠令を与える機能は温存されました。つまり、赤甲梢はクワアット兵だけの集団になります。劫アランサはここの総裁になる予定です。」
じゅえる「赤甲梢の神兵から切り離されちゃうんだ。」

釈「一般平民が聖蟲をもらう、てのは無くなっちゃうんですか?」
まゆ子「そういう話もあったが、それはまずいだろうという事で、別の手を考えた。赤甲梢と赤い神兵は分離するというわけですね。しかも実戦部隊から離れて名誉職にしようという事になる。新部隊の創設だ。青晶蜥神衛士だよ。」
釈「トカゲ神ですかー。つまり弥生ちゃんキャプテンに仕える、・・・いえ、監視するお役目。」
まゆ子「いかにも閑職でしょう。」

じゅえる「構想は分かった。つまりは実戦部隊から平民神兵をどけるんだ。で、赤甲梢からも分離する。シガハン・ルペらの現在の平民出身の神兵はどうなるの?」

まゆ子「さてそこが問題だ。とりあえず、アウンサ王女は襲撃されて非業の死を遂げる。この犯人の捜索を彼等は始めてしまうんだ。」

釈「犯人は白の母なんですよね。井戸の中から髪の毛で搦め取って殺す、と。」
まゆ子「だがそうは思わなかった。

 ・・・と、ここから空白ぅー。」

じゅえる「ふむ。弾劾に持って行く手順が欠けているのか。ちなみに予定ではその弾劾裁判で、タコリティのヒィキタイタンがとっ捕まって死刑にされるわけです。そこに彼等も混ぜるのですね。」
釈「タコリティと連動して謀叛を起した、とかになるわけですか。ちょっと飛躍し過ぎていますね。」

じゅえる「そもそも、この時点での政治状況はどうなっているんだよ。神聖王が、えーと滞在中?」
まゆ子「ガンガランガ付近に100体のゲイル騎兵と共に滞在中です。」
釈「暴れられたらおおごとじゃないですか。そんな弾劾とかやっている暇は無いでしょう。」

まゆ子「えーと、そうだね。ただ黒甲枝が主体となってこの一団のゲイルを囲んで居て、出征しなかった兎竜掃討隊20騎の赤甲梢のみが警備についています。電撃戦に出征した兎竜は最終的に40騎残って居ますが、これはギジェ点において凍結、隙を見て襲って来ようという金雷蜒軍に対抗する形で、ちょうどゲルワンクラッタ村あたりに赤甲梢本隊としてあります。で、これを預かるのは副官だったカンカラ縁クシアフォンで、シガハン・ルペと基エトスは責任者としてカプタニアにアウンサのお供で出向いて居ます。紋章旗団も一緒ね。」

じゅえる「劫アランサは?」
まゆ子「一応はまだ赤甲梢総裁ですが、これも凍結でデュータム点にあります。弥生ちゃんも消滅して居ますから、やることがない。」

じゅえる「スケジュール的には、弥生ちゃんの不在の最中にハジパイ王が交渉の有利を得ようとして画策する、という事になっているんだけど、ま、そのラインでタコリティ攻略はいいのかな?」
まゆ子「タコリティ攻略はその直前の難民大暴動と人喰い教団潰滅事件の余波と考え下さい。にっちもさっちも行かなくなったのを強制的に解決です。無論これは交渉で有利に働きますし、神聖王も口を出しません。」

釈「で、アウンサ王女が暗殺されてしまうんですが、えーとそれじゃあ凍結されている赤甲梢が勝手に動くわけですか?」
まゆ子「あー、どうだろ。犯人が分からないから、動きようがない。というわけで、赤甲梢の幹部5名のみが代表としてシガハン・ルペらと合流しようとするのだね。事件の捜査の為に。」
じゅえる「ここでなにかある。」
まゆ子「命令違反で逮捕されちゃう。まあそれは筋なんだけど、当然提出していた移動願いが握り潰されちゃったんだな。で驚いて劫アランサが出向いた隙に、デュータム点でなんか起きる。」

釈「弥生ちゃんきゃぷてん関係ですね。」
まゆ子「あー、そんなところかな。巡礼とか建国準備委員会とかが暴れるんだ。宗教関係での権益を冒されたとかだな。・・・無理があるな。」
じゅえる「赤甲梢弾劾には程遠いね。」

釈「ちと考え直しましょう。ハジパイ王は何をしたいんですか、王国に元の秩序に取り戻したいんですよね。という事はですよ、金雷蜒褐甲角両国のバランスが元に復するのを考えるべきではないでしょうか。」

じゅえる「賠償問題だ。」
まゆ子「そりゃねじくれまくっているけど、そんなもんかな。」
じゅえる「どちらが勝ってどちらが賠償するか、で揉めてるんだ。もちろん下の方で。で、それに対しても一応の回答を与えなければならない。ついでに毒地の帰属の確認問題だね、これももめる。」

釈「とてもじゃありませんが、元には戻れませんよ。」
まゆ子「もうひとつ、神聖王に従って来た神族の法的な根拠とか行動の制限とかだ。これを保障するものがなにもなく、調停がおおごとになっている。」

じゅえる「・・・ハジパイ王の立場なら、交渉の決裂の方が分がいいんだ。神聖王がこのまま何事も為すことなく引き下がってくれると、旧来の体制とか枠組みの維持ができる、と考えた。」
まゆ子「ふむ。」
釈「ああ、なるほど、それはありえます。そのダシに赤甲梢を使おうというわけです。」

まゆ子「偽情報だな。つまり、幹部が逮捕されちゃって指揮系統が手薄な時に、毒地から一団の軍勢が移動中という報せが入り、赤甲梢が出動。これを撃破するも、実は単なる神聖王への補給応援の軽武装の軍勢だった。もちろんこの情報をもみ消した人間が居る。」
じゅえる「お! それらしくなってきた。」

釈「この時点でアウンサ王女はすでに死んでいる、というのは痛いですね。劫アランサ王女の直接指揮下でそれが起きた、という事にしますか。」
まゆ子「そうだね。幹部が逮捕されちゃった状態で激発しそうになっている赤甲梢を鎮める為に、劫アランサは本隊に出向き、そこでこの事件が勃発する。当然責任はすべてアランサにある。」
じゅえる「伏線として、その時点ではそういった金雷蜒軍による小攻撃が頻発していた、という事にしておいた方がいい。また、和平交渉を破壊しようという勢力は金雷蜒側にもある、て。」

まゆ子「では、ハジパイ王から内密に、赤甲梢断罪で事を済ませる、という裏協定を持ちかけるという事になったとかかな。で、表向き神聖王側から強く言われて、褐甲角側も譲歩せざるを得ない態度を見せる。まだ弱いか。」

じゅえる「スキャンダルが無いからねえ。なにか無いかな。」

釈「あります。牙獣による戦車計画の捏造がばれました。」
じゅえる「ああ、そういうのがあったな。」
釈「ついでに、毒地に潜入しての秘密工作で、勝手にヌケミンドルに寇掠軍が集まる偽情報を流したというのが問題視されます。」
まゆ子「スプリタ街道防衛線では人が多く死んだからねえ。」
じゅえる「もう一個、タコリティのソグヴィタル王との間に連絡を取って、連動して動いたというのも罪に問われるね。なんせ相手は謀反人だ、反逆罪だ。」

まゆ子「うー、そこまで来ると、なにか捏造を加えたくなるか。アウンサが不正を働いていたという真っ赤な嘘による死後の訴追、てので赤甲梢が激発するてことに。」
じゅえる「致命的だね。」
釈「殊勲賞の赤甲梢がそんな汚名を着せられたら、和平交渉どころではありません。決裂必至ですよ。」

まゆ子「ハジパイ王の目論見もそこにある。この訴追とか裁判とかは、途中で雲散霧消してもいいんだ。神聖王が和平交渉から去ってくれればそれで事足りる。神聖王が居なくなった後で、特例で赤甲梢を放免してもまったく問題無い。」

じゅえる「・・・ハジパイ王の目論見が外れて暴走する、のだね。」
まゆ子「法システムの暴走、か。なるほど、有りそうな話。白根っこの会に頑張ってもらおう。そうだね、ハジパイ王の目論見とは逆に、神聖王に対して屈辱的な和平を結ばせようという勢力がある。つまり勝ち組だ。この勝ち組がなんとかして和平交渉を成立させる為に、障害となる要因をさっくり始末してしまおうと考えた。それが赤甲梢断罪だ。」

釈「じゃあ、アウンサの不正てのは、この白根っこの会が捏造して、ハジパイ王は無関係ということにしますか。」
まゆ子「うん、それがいい。あくまでハジパイ王は真っ正直な人だ。」

じゅえる「で、武徳王襲撃事件はどうしよう?」
まゆ子「なんらかの仕組みでとりあえず沈黙していてもらわないと、この一連の弾劾が成立しない。やはり白の母に頑張ってもらおうか。」

じゅえる「いや、・・・ほらアレ! 弥生ちゃんを襲った双子の毒少女。もう一人が居たでしょう。あれを使おう。カニ神殿の地下牢で保護されていたのが、白の母とは別の人喰い教団の残党によって、当然目的はタコリティの潰滅作戦の報復だ、で武徳王に対して直接攻撃に出る。」
まゆ子「・・・・わるくない。」

釈「それは、タコリティ制圧の前に起るべき代物ですね。これで武徳王が毒を被り重傷になって、えー目でも見えなくしますか、でハジパイ王もなんとかしなければならなくなり、タコリティ制圧を命じるしかなくなった。」
じゅえる「タコリティ制圧はすでに準備が出来ていたけれど、タイミング的に赤甲梢問題が膨れ上がっていて延期だったのが、このテロ事件で加速した、てことにしよう。このタイミングでやりたくはなかったけれど、てね。」

まゆ子「・・・わるくないが、そこまでやるのなら、この際褐甲角王国が分裂に向かう重大な局面がここに集中する、という風にしておくべきだ。これまで一枚岩だった褐甲角王国に亀裂が入るんだ。」
じゅえる「その裁判ていうのは、褐甲角王国が今後どちらの方向に向かうのかを占う極めて重大な決定の場なんだ。」

釈「つまりは、褐甲角王国による方台全土の制圧、てのをぶちあげる勝ち組というのが現われるわけですよ。これに対して、表立って反論出来ないハジパイ王の陣営。ここに敢然と立ち上がり、赤甲梢とヒィキタイタンさんを弁護するのが、」

まゆ子「誰?」
じゅえる「そりゃあ、・・ジョグジョ薔薇?」
釈「ではいかがでしょう。」

まゆ子「そりゃかっこいいけどさあ。彼って勝ち組じゃあないのかな?」
じゅえる「勝ち組、ではないだろう。事実上勝ってはない、少なくとも彼の考える勝ちではない。て、彼はどういう風に勝ちたいのかな。」
まゆ子「完全勝利。つまりはまったくに軍事的に敵勢力を潰滅させるのが、彼の考える勝利で、このような謀略で勝つのは歴史的に、また神の計画から見てもあって良い道理が無い、と考える。まったくに正論だ。」

釈「伏線を引いて置かねばなりませんね。ところで、伏線は敷くものですか引くものですか?」
じゅえる「待ちな。・・・辞書によると『敷く、もしくは張る』だ。」

まゆ子「『引く』はダメなんだ。そうだったのかあ。」

2007/02/16

まゆ子「げばると処女EP5「第4章 天原の迷宮、第二話」が出来とります。」

じゅえる「はいごくろうさん。今回は、ちょっと事前の打ち合わせと違うね。」
釈「基エトスが主人公だったはずですが、それほど活躍もしませんね。」

まゆ子「あー、これでも頑張ってクローズアップしてみたんだけど、戦闘が主体になるからにはこんなものだよ。たしかにもっと基エトスの心中を掘り下げてみたいところだけれど、なにせ前に進まにゃあいけない。両立は無理だ。」

じゅえる「ふうむ、ま、仕方ないかな、もっと基エトスをとんでもない変態さんに仕立て上げるネタを用意するべきだったな。」
釈「そうですねえ、なにかトラウマとか恋人とかの伏線を敷いておくべきでした。今からでも投入しますか。」

まゆ子「もう投入したけど、伏線と言うのは敷いたその回には効果が無いもんだ。」
じゅえる「そうなんだよね、ちょっとね。」

まゆ子「逆に、飛ぶという伏線を敷いたから、シガハン・ルペはその路線で動かせたんだけど、次の回が彼が主人公となる話だから、今回は見合わせました、というか、途中まで書いちゃったんだよ、それ。でもそうすると構成上問題があるから、基エトス中心の話に戻して修正した。かなり厄介でした。」
じゅえる「そうかあ、頑張ったんだね。」

釈「しかし、基エトスは今後もまだ出ますよね。伏線の投入準備を更に致すべきでしょう。」
じゅえる「違いない。ハジパイ王の弾劾てとこで、彼は活躍せねばならない立場にある。もう少しエピソードを足すか?」
まゆ子「あー、そうだねえ。うーん、元老院でのエピソードを投入する予定だったんだけど、流れに乗って省いちゃったな。無理やり投入するかな。でも何を?」

じゅえる「元老院での人間関係。彼が元老院を見限って飛び出す理由は、何?」
釈「そうです。それがあればいいんですよ。」

まゆ子「でも彼が飛び出したのは少年の時、そうだね、14才くらいだよ。聖蟲を与える儀式に臨む前に、クワアット兵にいきなり飛び込んじゃったんだ。」

釈「そんなに簡単にクワアット兵ってなれるんですか?」
まゆ子「武術の腕があればね。あと教養だな。まず算盤が出来て字が書ければ、確実に軍は取る。しかも武術の腕前もあるとなれば、いきなり剣令候補だ。凌士夫にされちゃった。」

じゅえる「もちろん身分は隠してだね。」
まゆ子「そうなんだけど、入隊してすぐにバレた。というか、剣令候補は当然のように身元確認をされて、金雷蜒王国のスパイじゃないかと調べられる。まあバレルのは当然だがその後が問題だ。元老院金翅幹家の出身とはいえ、本人の希望は軍だからね。部隊の司令官の前で、実家から来た叔父さんとかと口論を繰り広げる事になる。で、司令官が間に立って、とりあえず軍で鍛えてものになるかどうか、本人の納得行くまで試してみようて事になった。金翅幹家の人間が、自分よりはるかに身分の低い一般クワアット兵に命じられて泥に塗れる事に耐えられるか、そこからして問題だもんね。」

釈「で、見事にやってのけたわけですか。」

まゆ子「やってのけた、というよりも、剣令候補から一度外して一兵卒として鍛えてみたら、本人が馴染んじゃった。で、そのまま戦闘にも参加していきなり手柄も立ててしまう。で、再び剣令候補として訓練してみれば主席になっちまうという有り様。そこで、実家と司令官が協議して、こいつは赤甲梢に叩っ込んでしまおうて話になった。
赤甲梢は剣匠令を取る為の実験教育部隊で独立性が高く、黒甲枝も訓練にやってくるちょっと格の高い部隊だ。王族のアランサ様の色が濃くて、かなり目立つ存在でもある。金翅幹家の出身てのがここでは意味を為さないから、それがいいってね。勿論、元居た部隊で持て余したということもある。褐甲角軍は聖蟲を持つ人間の指揮が優先するのだが、黒甲枝が金翅幹家出身の剣令に命令するというのは、いささか鬱陶しいものがある。で、赤甲梢に厄介払いされた。」

じゅえる「なるほど、普通に赤甲梢に行くわけだ。で、そこでシガハン・ルペに会うわけだね。」
まゆ子「いや、彼がルペに会うのは、聖蟲をもらって神兵になってからだよ。ともかく彼は一生懸命頑張って剣匠剣匠令と資格を取り、兎竜隊に従って寇掠軍退治にも参加した。で、当然のように注目を浴びるのだね。というか、剣匠令と剣令の位を同時に持つ者はそうは居ない。クワアット兵百人隊長になってしまう。赤甲梢の百人隊だからもう最精鋭だ。で、これでボウダン街道の警備に就いていた時に、なんか手柄を上げるわけだ。」

じゅえる「その手柄というのを、今回伏線に導入するかな。」
釈「そうですね。いわくの有るものでないと、保ちませんから。」

まゆ子「それはそうだ。あー、続けると、クワアット兵として可能な限りの出世をしてしまうんだね。中剣令になったが、この時わずかに21才。黒甲枝が軍学校を出て、というのでなければ最速だ。こうなると、もう軍が手放さない。カプタニアの中央軍政局から兵師監になる為の勉強をしろ、と言って来る。あるいは百島湾海軍から戦艦の指揮官にとかのオファーも来る。だが、彼はそういう人の上に立つ事のわずらわしさを良く知っているから、困ってしまうんだ。千人万人の将となるてのは、政治の話から逃げるわけにはいかないからね。」

じゅえる「逃げた?」
まゆ子「逃げた。彼の最後の選択肢が、赤い聖蟲をもらって赤甲梢の神兵になる、てのだ。赤甲梢に居る限りは出世からは逃げられる。だから一度は拒んだ聖蟲を受けたんだ。」

釈「なんというか、ずいぶんと大回りですねえ。」
まゆ子「彼の特徴というか性格がまさにそれだよ。本来あるべき場所に大回りして行く。だから、聖蟲をもらって、やっぱり逃げられなかったかあ、と観念したよ。」

じゅえる「で、赤甲梢神兵としても地道に堅実に出世して、大剣令となり装甲神兵団を率いる事になり、アウンサさんから妙な仕事ばかり押し付けられるようになる、と。」
まゆ子「アウンサの考えでは、彼女が引退した後に赤甲梢の実務を托すべき人間として彼を育てて居た、てのがある。劫アランサの副官として使おうとね。」
釈「かなり素敵なお話ですね。」

まゆ子「しかしながら、今回の電撃戦で赤甲梢は解体の憂き目に遭う。当然彼は野放しになるわけで、引き手数多というわけだが、さてね。」
じゅえる「それはその、ハジパイ王の弾劾において彼の処分はまた特別なものになるというわけだ。電撃戦においても中心的な役割を担った一人だからね。」
釈「その前の下準備でももうやる事やってますから。」

まゆ子「つまりは、もう伏線は十分に敷かれているんだ。だから特別なものは要らないな。」
じゅえる「要らないなると、突っ込みたくなる。」
釈「です。」

じゅえる「女は?、結婚はしているのかい。」

まゆ子「実はしているんだ。といってもなかなか会えるものじゃないけど。ちなみにシガハン・ルペもしているよ。彼等の妻子はだいたいデュータム点に居る。休暇の時には近い方がいいからね。」
釈「どんなひとですか。やっぱり身分の高い人ですか、それとも一般庶民を見初めて、それとも大富豪のお嬢様、はたまたカタツムリ巫女とか。」

まゆ子「普通の女なら嫁に取らん、と実家の方が判断して嫁を送って来た。黒甲枝のお嬢さんだよ。金翅幹家ではだいたい黒甲枝から嫁を取る習慣がある。王族は金翅幹家の人間と結婚し、金翅幹家は黒甲枝から、黒甲枝には民間の富豪とか豪農とかから、という風に決まってる。」

じゅえる「あっさりと承諾したんだ。」
まゆ子「あっさりとしました。というよりも、なにせ来たのが黒甲枝の家に生まれた者だからね。引き下がらないからには追い出せない。」
釈「押しかけ女房ですか、なるほど。それはなるほどです。」

まゆ子「ちなみに、シガハン・ルペの妻は民間の割とお金持ちの家から来てます。なんといいますか、固い商売というか軍に関係するような家柄で信用が第一ての。ヒッポドス商会も似たようなものだけど、素封家て感じかな。で、聖蟲を持った婿ができたと大喜びです。」

じゅえる「ふーむ、それなりに幸せなんだ。ちょっと意外だな。」
釈「いや、でもそれが当たり前の人間の生涯と思いますよ。まあ、大波乱に突入したわけなんですが。」

まゆ子「掛け値なしの大波乱だな。ま、そういうことで。」

 

07/02/08

まゆ子「ま、とりあえず「げばおと 第4章 天原の迷宮 前編」が書き上がってますよ。」

じゅえる「尺は?」
まゆ子「結構行った。40枚くらい。今回ちょっと特別だ。」

釈「どこらへんが変ったんですか。」
まゆ子「これは昔から気付いていた事なんだけど、女の子が主人公の章は生き生きとしているのに対して、男が主人公の回は精彩を欠く。」
じゅえる「まあね、下手だね。」

釈「それもあって、男性を主人公とする回をあえてたくさん設けて場数を踏み克服する、というのが「げばおと」の真の目的です。」
じゅえる「ウエンディズはほんとうに男が出て来ないからね。」

まゆ子「ま、そういうこった。そしてこれまではそういう観点から、男は出てりゃ勝ちだったわけだ。」
じゅえる「なるほど。男を出すだけ、という段階は既に卒業したというわけだね。で?」

まゆ子「女の子が主人公の回と、どこが違うかを考えてみた。」

釈「しかし、男性が出ていてもキレのいい回も無いわけじゃありませんよ。」
まゆ子「情けない奴が出ていると、書けるんだ。」
じゅえる「ふーむ、そういうものかなあ。しかしそれじゃあ、戦闘シーンじゃ困るね。」

まゆ子「で、だ。こないだ考察した通りに、げばおとはちと頭の線が一本切れてる、という感覚に乏しいんだね。弥生ちゃんが出ている回はまあ十分なんだけど、他の回は少し落ちる。弥生ちゃんと白の母、それにぴるまるれれこの回くらいだな。」

じゅえる「そうか、一本切れてる感触を出す為にはどうすればよいか、という話になるんだな。で、情けない男が出れば、それはなんとかなる?」
まゆ子「情けない男はそうそう出すわけにはいきません。」
釈「もっともです。黒甲枝も赤甲梢もかっこいい男達ですから。」

まゆ子「そこで、今回、暴走させてみました。」

じゅえる「誰?」
まゆ子「槙キドマタ、紋章旗団の団長ね。この人が熱に浮かされたように感情的に戦闘にのめり込んでいく、というラインでやってみました。結果は悪くない。」
釈「切れますか。」
まゆ子「切れる直前までは行った。ま、彼のキャラならその程度が関の山なんだけどね。で、調子にのって次も暴走させてみます。」

じゅえる「ふむ。次はどうなる?」
まゆ子「計画では城の中に入るはずでしたが、暴走させた代償として、まだ10キロも進んでません。大体80キロほど進みますから、ちょっとね。夜の戦闘となりまして、城のすぐそばに到着する、というのが次の回となります。」
釈「つまりはー、第4章が3本になる、ってことですか。不経済ですねえ。」
じゅえる「こうなりゃヤケだ。いきつくところまでいっちゃれ。で、夜の内に到着するってこと?」

まゆ子「夜の戦闘を潜り抜けて、明け方城のすぐ傍の凄い壁に圧倒されます。そこで彼等は、白銀に輝く黒甲枝の重甲冑と遭遇します。」

じゅえる「黒甲枝と同じ甲冑を敵が使っている、てことだね。それは要するに、大頭戦士か。」
釈「設定変更ですか、さりげなく。」
まゆ子「まあ、そのくらいは臨機応変。でも割と絵的にはいいでしょ。」

じゅえる「黒甲枝、ねえ。なるほどそりゃ悪くはない。で、これと決闘をして?」
釈「城の中に突入、ですか。」
まゆ子「城の中では戦闘が無い、ということにするか、それとも書くか? 迷ってますが三本も書けば上等ということで、いきなり神聖王との対面になる、というのでいいかな。」
じゅえる「そこんとこは計画通りだ。つまりは、第4章は3部に分れて、えー。」
釈「100枚、ですね。見込み。」
まゆ子「そうなんだ。どうしよう。」

じゅえる「迷わず進め、進めば道が拓ける。てとこで行くしかないでしょ。でも、ちゃんと構想できてるんでしょうね。」
まゆ子「暴走には道筋は無い。」
釈「そりゃ暴走ですから。」

じゅえる「いきあたりばったりか。しかし、夜の戦闘と、暁の決闘?」
まゆ子「ギラギラと輝く旭日の中で、黒甲枝と決闘というのは、かっこいいでしょ。」

釈「しかし黒甲枝同士の戦闘となると、おおごとですね。書けるんですか? というか、これも暴走させるトリガーのようなものが無いといけないんじゃありませんか。」
まゆ子「槙キドマタは熱に浮かされたように、感情的に書いた。次の夜の戦闘は厳しく冷徹に行くつもり。暁の決闘は荘厳にいくよ。できるかどうかは別として。」

じゅえる「冷徹に暴走は難しいな。」
まゆ子「そうなんだ。しかし次はギィール神族に指揮される獣身兵のとの攻防だ。冷徹で無いとリアリティが無い。」
釈「くどい?」
まゆ子「くどくならないようにする、なにかが無いとね。」

じゅえる「そりゃ、想い出だろう。カプタニアの想い出とか、恋の話、故郷で待つ恋人とかが思い浮かんで来るのさ。」
まゆ子「ふうむ。なるほど、一理ある。深夜息を潜め物音を立てないように戦う内に、心はカプタニアに飛ぶのだね。なるほど、それも面白い。暴走もしやすい。」

釈「では決闘はどうします? 荘厳と言っても、具体的な戦闘の手順を描写するというのもなんですね。」
まゆ子「鋼の触れ合う音が聞こえる、というくらいに具体的に描写したいのだが、技術論的になるかなあ。」
じゅえる「黒甲枝の剣術を記述できるのかい。」
まゆ子「或る程度は。でも無理が多いな。」

釈「無理ですか。」
じゅえる「無理なら、やる価値がある。」

まゆ子「そーおなんだけどねえ、でも読んで面白くなければ意味がない。しかも、大剣のみでの戦闘となれば、なおさら難しいな。」
釈「決闘ですから、普通に書けばかっこいいんじゃないですかね。必殺技とかバリバリ出して。」

じゅえる「とっこーさいは、以外の必殺技って無いの?」
まゆ子「考えたこともない。」
じゅえる「考えなさい。」

まゆ子「ちょっとまて、とっこーさいはの剣はありゃ体当たりなんだ。翅の力で突っ込んでいくんだけど、瞬間的な推力がバカみたいに大きいから爆発的な威力を発揮するんだね。」
釈「体当たり、ってことは自動車が衝突するようなものですか。よく大剣が保ちますね。」

じゅえる「じゃあ、今度はとっこーさいは同士がぶつかるような状況下での必殺技を開発するんだ。」
まゆ子「考え方としては、第三部はシガハン・ルペを主人公にしようと思うんだが、ひっさつわざねえ。

 えーと、早い話が、体当たりするか、上から叩き斬るか、振り回して蹴散らすか、この三種以外の技を必要としない。」

じゅえる「突きは?」
まゆ子「大剣は比較的短いからね。柄まで入れて1,5メートルも無い。だから体当たりするんだけど。」

釈「黒甲枝と戦うわけなんですから、黒甲枝の重甲冑に効く技でないといけないわけですよ。その偽黒甲枝もとっこーさいはを使うんですよね。」
じゅえる「赤甲梢の翼甲冑だけが使える技、ってのは無いのかな。」
まゆ子「一応はやいのは疾いんだけど、重甲冑だって手足はそれほど重くないんだから、振り回す速度はおんなじだ。むしろ、・・・全身のバネを使って振り回す、ってのかなあ。」

じゅえる「それで行こう。えーと、二人兄弟の神兵が居て、こいつらが予定されているんだけど、負けるようにするか。」
釈「ふたりが斬り殺されて、シガハン・ルペが前に出る、という形で行きましょう。」
まゆ子「ふむ、セオリーだ。必殺技を投入するのに説得力があるね。」

じゅえる「全身のバネねえ、大剣がねじ曲がるほどの強烈な必殺技にするかな。」
釈「吹き飛ばすとか切り倒すとかでなく、手足がねじ切れるくらいの、凄い回転にしますか。」
まゆ子「いやそれはさすがに、・・・・必殺技なんだけど必殺じゃない、という技にしますか。」

じゅえる「なんだそれ。」
まゆ子「どうやっても倒れない黒甲枝の重甲冑を、地面に投げ飛ばすだけの技。大剣がねじ曲がるほどの回転力を以ってしても、ただこけるだけ。」
釈「こけた後で留めを刺す、というわけですか。」

じゅえる「鉄拳だ!」

まゆ子「うむ。最後は鉄拳で兜を叩き割ると、頭から偽褐甲角の聖蟲が出て来るというあんばいだ。だが、その偽神兵、10人も出て来るよ。」
じゅえる「10人居るとしても、最初は一人が前に進み出て、決闘という形を取るというのはどうかな。旭日の中タイマンの決闘で双子の神兵の一人が進み出て、これが全然叶わなくて見かねてもう一人が飛び出すが、ついには二人ともやられてしまう。そこでシガハン・ルペが進み出て。」

釈「かっこうはいいですね。合理的ではないかもしれませんが。」

まゆ子「かっこ優先!」
じゅえる「うむ。」
釈「きまりです。」

 

07/01/31

まゆ子「げばおと「第三章、波濤の攻防」ができたわけなのさ。ちょっと短め36枚。」

じゅえる「戦闘シーンてのは意外とページ喰わないね。」
まゆ子「うん、必殺技とか出さないからかなあ。双方共に必殺技を出して、それを撃破する為に死力を尽し策を練る、てのが無いからね。」
釈「少年漫画みたいにですね。実際問題としては、必殺技が出るところはさっくり決まる所ですからね、死にますよ。死んでステージアウトです。」
まゆ子「そうなんだ。でもって、今回出て来た赤甲梢はさくっとステージアウトです。」

じゅえる「酷いね。」
釈「ひどいですよ。」
まゆ子「戦争なんだから仕方がない。」

じゅえる「でも余韻とか敵に対する敬意とかはあるもんでしょ、普通ファンタジーだと。」
まゆ子「こいつらは誰一人として自分達をファンタジー世界の住人だとは思ってないぞ。時代劇の登場人物だ、とは思ってるかもしれないけど。」

釈「あれが正しい、というのは分かりますが。地味にひどいというのはどうなんでしょ。」
じゅえる「派手にまぬけで、死人が生き返るてのよりは、よほどイイとは思うけどさあ。」
まゆ子「死人が生き返る方が受けはいいよ。受けはね。」

釈「気を取り直して第4章に行きましょう。ギジシップ上陸です。」
じゅえる「スケジュールとしては、第4章はギジシップでの攻防で、神聖王との対面はまた別の章だね。」
まゆ子「そうです。ここも戦闘シーンしかありません。」
釈「なにか、神聖王についての伏線を張っておきますか。」
まゆ子「いえ、もうざっくりとEP2に張ってますから、ここはただただ戦闘シーンです。今回オカルト仕立てね。」

じゅえる「ギジシップってどんなところ?」
まゆ子「えー、簡単に言うと、ロストワールドです。」

じゅえる「皆まで言うな。だいたい分かった。」
釈「恐竜が出て来るんですねえ。」
まゆ子「恐竜は出て来ないけれど、一面のお花畑の中から次から次へと異形の怪物が現われるという、凄まじい戦闘ね。赤甲梢もびっくりだ。」

じゅえる「具体的に言うと、何が出て来るの?」

まゆ子「小さなゲイルだ。5メートルくらいのがいっぱい。色もちょっとピンク。」
釈「強いんですか?」
まゆ子「まず、人が乗ってない。」
じゅえる「そりゃやばいな。」
まゆ子「動きがとても早い、敏捷だ。しかもゲイルを喰うほど獰猛と来たもんだ。応援に駆けつけた神族のゲイルを喰ってしまう。」
釈「う〜それはぶるぶるです。」
じゅえる「人が操作しなくても、・・・いや、神族って遠隔でもゲイルの操作出来るんだよね。」
まゆ子「そうなんだ。家の中に居ながらでも、ゲイル小屋のゲイルをなんとでも出来る。だから不思議ではないが、知らない者はびっくりだ。」

釈「ほかには。」
まゆ子「ここは薬草園だから、一面に花が咲いていて、迷宮になっている。凶悪な両生類が徘徊して噛みついて来るし。」
じゅえる「カエル?」
まゆ子「うん、強いて言うならばエリマキトカゲのカエルバージョン。歯が生えていて、毒を吹く。」
釈「爬虫類ではだめなんですか?」
まゆ子「両生類の方が十二神方台系では怖いんだよ。で、獣人、獣身兵が襲い来る。女の獣身兵も居る。うすのろ兵がハンマーで襲い来るし。だが一番の問題は、城が無い!」

じゅえる「神聖王が居る王宮が、無い?」

まゆ子「ぶっちゃけ言っちゃえば、、鏡で空の色に隠れている。巨大な鏡で城の外壁を隠していて、見えないんだ。」
釈「ガラス製の鏡では無いですよね。」
まゆ子「石に錫を張って、上に水を流している。平滑面だからまったく鏡になっている。三角形のピラミッド状であるから、空の上の色を映して、横からみると見えないんだ。」

釈「どうやって見付けるんですか?」
まゆ子「まず、これは非常に巨大な建築物であるってことね。そして島の「天原」と呼ばれる平原にある。赤甲梢は数キロ先までもちゃんと見えるから、城を探すのだが、無い。目標が無いから皆驚き焦り、獣人と遭遇していくのだね。でも最後にはそれを見付ける。」

じゅえる「なにか、劇的にね。」
まゆ子「うん。月が地面にあるんだ。月の光が上と下の二つに在る。だから見付かる。」
釈「いい感じですね、ファンタジーっぽくて。」

まゆ子「だがこれで終り。第4章はここでエンド。続きは第4章の2、となり、神聖王宮を突破する戦いを描く。」
じゅえる「二部構成なの?」
まゆ子「二つ合わせて50枚、ってところ。ただキリがいい終り方をさせる為にはそうした方が良いと判断します。」
釈「そうですねえ。そういう構成ならば過不足無いってところですか。2部はどのように。」

まゆ子「大頭戦士が出ます。兜の中にニセカブトムシの聖蟲が入っている戦士。あと、神聖宮殿の内部の描写をみっちりとやりますよ。これまでまったく書いてないから、描きたい。」
じゅえる「そうだねえ、神聖王の姿はまったくないんだから、親切に描いておく方がいいな。」
釈「了承しました。」

まゆ子「あ〜、ただねえ〜。」

じゅえる「なに?」
まゆ子「ウエンディズの次の話を書き始めちゃったんだ。ちょっと時間掛る。」
釈「このタイミングでですかあ〜?」
まゆ子「いや、シャクティもちゃんと出ているから。二年生が天狗の人に会いに行く、て話をベースに弥生ちゃん達の過去を暴く、て話になる。」

じゅえる「面白い?」
まゆ子「予想がつかない。天狗の人ってのは、書いてる私にも想像出来ないほどの化け物になる可能性が大きい。」

じゅえる「やばいな。」
釈「やばいですよ。」
まゆ子「やばいんだよ。」

 

07/01/19

まゆ子「EP5第2章、あらかた書けたよー。44枚。」

じゅえる「はいごくろうさん。」
釈「どうですか、面倒でしたか?」
まゆ子「うにゃ。まっすぐ書けと言われたから、まっすぐ赤甲梢だけを描いた。ほんとうに戦ってばかりだね。」

じゅえる「・・・こりゃあー、」
釈「戦う以外に選択肢は無い、てばかりの突っ込みようですね。これ。」
まゆ子「電撃戦てのはそういうもんだ。駆け引きとか軍略とか関係無しに、ともかく突っ込めるだけ突っ込むのが本分。まあ、突っ込む前に考えているわけだけどさあ。」

じゅえる「しかし酷い有り様だね。ゲジゲジ軍てのはそんなに弱いのか。」
まゆ子「弱いんじゃなくて、旧いんだ。毒地で遮断されて防衛に労力を必要としなかった為に、軍制とか防御拠点とかがまるっきり時代遅れになっていたんだよ。第一、ゲジゲジ軍では歩兵とゲイル騎兵との連携は存在しない。」

釈「連携しない、ってそれじゃあ、・・・・まあゲイルの足元でうろちょろされても困りますが。」
まゆ子「まさにそこなんだ。ゲイルの足元でうろちょろするな、遅くてついてこれないんだからついてくるな、勝手にやるから後始末をしろ、というのがゲジゲジ軍の通常の軍隊なんだ。兵というのはゲイル騎兵を活かす為にあり、補助の兵科に過ぎないんだよ。

 対して、カブトムシ軍では歩兵の統率が取れて集団戦闘をシステマティックに行うし、神兵の集団と連携を取り効率的に戦いを進める研究が随分進んでいる。というか、軍事学というのは褐甲角王国の発明だ。ギィール神族は聖蟲によって見えないものまで見てしまうから、奇計奇略の使いようがないんだな。不意討ちとか待ち伏せとか効かないんだから、正攻法しか使えない。だから正攻法だけを真っ正直に考える。いやでも進歩しちゃうな。」

じゅえる「つまりは、ずっとゲジゲジ軍が攻めていた反動で、護りに回ったら弱いんだ。」
まゆ子「そういう事だね。だが、攻め続けるというのも結構な労力が要るわけで、これを産業化したというのは大したもんなのだよ。」
釈「そちらの方は進んでいるんですね。」
まゆ子「とっても。」

じゅえる「そりゃそうと、第一章ね。弥生ちゃんが強いのは分かるけど、男の人相手に技術的にそんなに違う、てのは有り得るの?」
釈「ああ、そう思いました。いかに技術が進歩しているとはいえ、天然自然の能力というものがあると思います。野生のカンと言いますか、野蛮人故の身体能力の高さとかは無いんですか?」

まゆ子「まず技術的な問題だが、十二神方台系の格闘技術は、地球と比べると1万年遅れている。」

じゅえる「げ?!」
釈「1まんねん、ですか。」

まゆ子「もっとかけ離れている、と言ってもよいぞ。なにせここの人達は狩りの技術でさえ、5000年前にコウモリ人に教えられたくらいだからね。肉体を使う文化文明に関しても欠落していると言っても過言ではない。」
じゅえる「そうかー、無定見生物はそういうところになんの考慮もしてなかったんだ・・・。」
釈「そりゃ地球を見習わなければ何もできないはずですよ。なるほど、分かりました。技術的な事は隔絶して優越するわけです。して身体能力は。」

まゆ子「まず弥生ちゃんのすばしっこさは地球においてさえ人よりも格段に高い。また運動神経反射神経抜群のスポーツ万能少女でもある。かんぺきゆうとうせいを舐めちゃあいかん。弥生ちゃんがスポーツの道を行ってないのは、背が低いから、以外の理由は無い。」

じゅえる「筋力は?」
まゆ子「筋力は、って十二神方台系の有る惑星は地球より重力が低いんだもん。1G環境で過ごした弥生ちゃんにはどうってことない。また、神さまのお蔭を持ちまして、弥生ちゃんはこの世界に居る間に環境に適応して筋力が低下したりはしないようになっている。素早さ反射神経筋力、と並みの男よりも優れている人間が隔絶して進歩した技術を完璧に使いこなすんだ。」

じゅえる「負ける道理が無い、ってわけか。」

釈「でも、でも世の中には天才とかも居るわけではないですか。そういうのは十二神方台系には出て来ないんですか?」
まゆ子「厭兵術が実戦経験足りない、と?」
釈「あ・・・。」
じゅえる「実戦しかしない武術だもんね。そうか、技術的に優れているだけでなく経験値も十分に高いんだ。」

まゆ子「更に加えて、弥生ちゃんが十二神方台系に降臨して以降、厭と言うほど刺客が来て戦闘を繰り返した。全部真剣勝負だから一戦ごとに敵は秘術を尽して来る。それをすべて受け止めて来た弥生ちゃんは、十二神方台系における武術のオーソリティになっちまったんだよ。しかも、ギジジットにては暗殺組織「ジー・ッカ」に命じて戦闘技術暗殺技術の開陳もさせている。研究熱心さにおいても当代一だ。

 誰が誰に負けるんだって?」

じゅえる「弥生ちゃんのモットーは、勝つべくして勝つ、だもんね。」
釈「救世主でなくても、覇王として十分やっていけるんですね。納得。」

まゆ子「てなわけでえ、第三章です。海戦ですね。」

じゅえる「なにか、ネタがあるの?」
まゆ子「あります。海戦、舟戦とくれば火です! 当然のように火攻めで来ます。」

釈「対応策は?」
まゆ子「弥生ちゃんです!

 弥生ちゃんはデュータム点に逗留中に、市内に火を放たれるのを怖れて無尾猫にパトロールをさせて居ました。また神官戦士達に秘密兵器を持たせていました。それが消火弾です! これを使えばぼやくらいだとあっと言う間に消えてしまいます。これを見た赤甲梢のウェダ・オダがアウンサの元に現物と製作法を送って、赤甲梢でも実験してその有効性を確かめて居ます。電撃戦でも持って来ていますよ。」

じゅえる「消火弾って?」
釈「それって、戦時中に空襲で落ちて来た焼夷弾を消す為に使っていたのですよね。」
まゆ子「妙な事を知ってるな。はいそうです。ガラスの球の中に消火剤を詰めていて、これをばちんとぶつけると中身が飛び散って火を消します。」

じゅえる「でもさあ、それって化学薬品でしょう。そんなもの十二神方台系にあるの」
まゆ子「ぬかりなし! インターネットで成分を調べて来ました。弥生ちゃんが作ったのは、中身は重曹です!」
じゅえる「じゅーそー??」

釈「あんなもので火が消えるんですか。というか、重曹は重炭酸ソーダのことですよね、化学薬品では、・・・て、アレ? 重曹の利用って随分古いような。」
まゆ子「重曹は鉱石があるんだよ。トロナ鉱石というまっしろな石として掘り出される。だから古代社会に有ってなんの不思議も無い。」

じゅえる「どのくらいよく消えるの?」
まゆ子「戦時中に使ってたのは、バケツの水一杯がソフトボール大の球2個分、て話。だけど水バケツを携帯するのは無理だからね。即応性の点でぼやの段階だと抜群に利くのさ。」

釈「ふむふむ。で、舟戦にも良く効くと。」
まゆ子「それだけでなく、これはタコ樹脂に燃え広がる特殊火焔瓶の火をも消す事が出来るんだ。化学消火剤としてちゃんと効く。」
じゅえる「そりゃ凄いな。」

まゆ子「さらに加えて、実は消火剤はもう一種類ある。水に界面活性剤と塩類を混ぜたもので、ただの水の8分の一で火を消す事が出来る。中性強化液消火剤てやつだ。
(ちょと修正:シャボン玉せっけんが作った新型消火剤は17分の一だ。ついでに言うと、戦時中の消火弾の中身は塩化アンモニウムとかの水溶液。木材火災用だから、こちらの仲間になる。)」

釈「ちょっとまってください。界面活性剤てのは、・・石けんですね。」
まゆ子「最近は自然環境で容易に分解するように、石けんを使った消化液を盛んに開発してるね。木材の火災とかにはこれが抜群に効く。粉末消火剤は火は消すけど冷却はしないから、火種が残ってるとまたすぐ燃え上がるのに対して、こちらは消した後で再着火を防ぐ機能もある。だから、最初は粉末消火器を使い、あとでこいつを使って留めを刺す事が推奨されているね。ま、船の上で使ったらちょっと滑るんじゃないかと思うけど。」

じゅえる「うーむ、なるほど弥生ちゃん様様だ。」
釈「十分SFなんですね。」

まゆ子「てなわけで、舟戦の準備も万端整っているわけなんだけど、ま都合としてカンベさんが死にます。」
釈「ケルベルト咆カンベさんですね。舟を奪取しにいった。」
まゆ子「舟を分捕ってきたのはいいが、彼は一艘だけ小さな軍船を手に入れて、本隊の護衛任務についていたんだよ。護衛だから、いたしかたなく。」

じゅえる「うむ。そのくらいは普通にある。」
釈「南無〜。」

 

07/01/15

まゆ子「さてげばおとだ。

 EP5第2章は、赤甲梢が毒地中の関所を破って東金雷蜒王国領に侵入、街道を伝って王都ギジシップ島へ渡る最短距離を突き進む、てものだ。ゥエーゲル間道というところを全軍全力で突破して、シンデロゲン港に入る直前までの激闘を書く。」

じゅえる「全速力でばーっと突っ切るわけ?」
まゆ子「その逆だ。焔アウンサは非常に慎重に行っている。なにせ兎竜もイヌコマも生身の生き物だからね。こいつらが行けるような行程でないとダメなんだ。」

釈「でも人間よりよほど疾いんですよね、赤甲梢でさえ追いつけないくらいに。」
まゆ子「兎竜は時速60キロ、イヌコマ40キロ、対して赤甲梢は巡航速度15キロ、最高20キロ、突撃時25キロってくらいで、話にならないくらいに遅い。」
じゅえる「まっしぐらに行けばいいじゃん。」

まゆ子「アホですか。生き物なんだから兎竜もイヌコマも寝るし休むし飯を喰うんだよ。飯を喰ったら食休みで2時間は普通に動けない。無理して動かすと胃腸障害を起して死んでしまう。第一兎竜70イヌコマ400という大部隊をどうやって食わしていく。エサはどうするね、水は? て事になる。」
じゅえる「う。」
釈「それはー、どうなんです? やはり休まなければいけないんですよね。」
まゆ子「当然。つまりは、イヌコマが行けるスケジュールでないと、電撃戦は成り立たないのだ。」

じゅえる「どうするのさ、それ。スピード稼げないじゃん。」

まゆ子「だからアウンサは慎重に行くんだよ。つまりは、如何にして兎竜とイヌコマを休ませながら全速力で進軍するか、という非常に困難な課題に取り組んでいる。

 ま、種明かしをすると、兎竜で距離を稼いで、イヌコマが最後に制圧された領域をがーっと行く、という形になる。つまりはね、
 本隊イヌコマ隊にアウンサが居る。で、陣を構える。当然ここは制圧された土地であり一応は安全だ。ここで、イヌコマと兎竜の飼い葉を調達する。」
じゅえる「ふむ。」

まゆ子「その一方、兎竜隊は6隊の内3隊36騎が適当な距離まで進出して、当地の守備隊と交戦する。」
釈「ふむ。」

まゆ子「で、3隊の内2隊+1の25騎の神兵が兎竜の背から飛び降りて、装甲歩兵として戦闘を開始する。兎竜隊はゲイルを撃退しながら本陣に帰る。帰ると、控えて居た第二陣の兎竜3隊が発進して、その間出動した兎竜は休む。第二陣の兎竜隊も神兵25騎つまりは装甲神兵隊1幟隊を投下すると、そのまま帰って来る。要するに、前線では神兵が50に増えたんだな。」

釈「わかりました。第三陣も有るんですね。第三陣も25人を下ろして幟隊3隊75人に。」
まゆ子「第四陣もある。第四陣は幟隊ではなく兎竜騎兵が飛び降りて戦闘に加わり、空になった兎竜を後ろに下げる。すると、第五陣としてアウンサを含めた全軍が兎竜に乗りイヌコマを連れて制圧済みの前線に大挙して乗り込むわけだ。」

じゅえる「なるほど、人間は走らないんだ。」
釈「兎竜もイヌコマも、人間も十分に休めるわけです。それに本陣が手薄になるという事も無いんですね。」

まゆ子「まあ、移動の途中の兎竜が空になってるから危ないと言えばあぶないんだが、ゲイルよりも空の兎竜はよほど速いからね。まあ追いつかれる事はないさ。大体2、30キロの距離でこれをやるから、片道30分。中間地点で迎撃されるとしても、すぐに応援は来ます。」

じゅえる「尺取虫みたいなもんなんだね。」
まゆ子「で、前線部隊は段々兵数が増えていくから負ける道理も無いんだが、問題は本隊だ。最初は人数が過剰に居る。これを使って周辺地域を掠奪する。」
釈「掠奪!? いいんですか?」

まゆ子「と言ってもだ、別に可哀想な奴隷の家を襲ったりはしない。またギィール神族の家も襲わない。神族の家は金雷蜒王国の人にとっては神殿にも等しい聖域だからね。
 襲うのはむしろ、バンドの重役が居る邸とか一般人の豪商、役所や役人の家だ。ギィール神族が神として尊ばれているのと対比する形で、こいつら一般人の有力者は一般庶民から恨まれている。同じ奴隷のくせに、何故こいつらばっかりが得をするのだ、と積年の恨みが積み重なっている。こいつらを襲ってその財貨を周辺住民にばら撒けばだね、」

じゅえる「人気取りかあー、アウンサも苦労するねえ。」
まゆ子「人気取りに加えて、流言蜚語とプロパガンダの流布だね。赤甲梢は神聖王をぶち殺しに行くんじゃなくて、青晶蜥神救世主のお使いとして和平交渉に行くのだ。長年方台に蓄積された諸悪を洗い清める為に、ガモウヤヨイチャンの先払いとして恨み連なる連中を懲らしめているのだ、とね。」

釈「うーむ、つまりは一般民衆の抵抗する意欲を減少させる為ですか。なるほど、その噂が広まると、民衆の支持は防衛軍には行きませんね。」
まゆ子「だがやはり、神族の防衛隊はあるんだ。だから激戦はある。

 で、80キロくらい東に突き進んだ所で、装甲神兵隊の1隊が離脱して更に東に向かう。本隊はそこから南に下りシンデロゲン港に行くんだけど、この1隊は東の果ての小さな港町に行く。ここで船を調達する。」
じゅえる「シンデロゲン港では船が手に入らない、と読んでいるんだ。」

まゆ子「幸いな事に、東金雷蜒王国に入ると同時に、艦隊がそっくり南の方、タコリティ支援に出向いているという報告が密偵からもたらされる。ギジシップ島を護る為の軍船の数が足りないと知った時、港の指揮官は船を沖に逃がす、あるいは焼く。」

釈「焼く? そうか、漁船でも商船でも海は渡れるんだ。えーとギジシップ島への航路はどのくらいの距離になりますか。」
まゆ子「10キロてとこだね。さすがに泳ぐのは潮の関係で無理だ。だが何の妨害も無いのであれば、どんなボロ船でも簡単に渡れる。」

じゅえる「周辺の港の全部の船を焼くのが最善てわけだ。そこで別口で船を用意するんだ。」

まゆ子「というわけで、この別働隊の神兵は、大体が百島湾海軍の出身者で固められている。百島湾海軍は最近10年の間では一番多く実戦を繰り広げた部隊で、戦闘経験の数が多いから英雄も多数生まれて、それらが赤甲梢に配置されて神兵にも昇格している。そういう一般人出身者の神兵に電撃戦の要を任せたわけだ。船に慣れているし操船の技術も持っている。適任なわけだね。」
釈「しかし、25名では船は1艘しか操作できないと思います。なんせ昔の船ですから。」
まゆ子「そこはそれ、密偵というのがあって、電撃戦に合わせてその港に結集しているんだよ。約100人。こいつらが船の調達を密かに謀っていて、神兵の到着と同時に奪取するんだ。」

じゅえる「それは、情報漏洩があるとダメだね。」
まゆ子「まあそこんとこは技術的な問題としてクリアする。ともかく、ここで10艘を手に入れて海路南下する。船が手に入っているからには、アウンサの本隊はむしろ敵に港の船を焼かせようとする。つまりは迎撃が出来ないようにするんだね。」
じゅえる「ふーむ、芸が細かい。」

まゆ子「さて、ここからが本番だ。大まかな計画はこのとおり。で、敵の迎撃陣をどういう風に配置して、どうやって描写するか、という話になる。」
釈「それはむしろ、淡々と描いた方が。」
まゆ子「そうか? それだと普通にあっけなくなるんだが、敵にヒーローが居ないとダメだろう。」

じゅえる「いや、・・・えーと第3章は船に乗ってギジシップ上陸までだね?」
まゆ子「シンデロゲン港到着、紋章旗団到着、北から船が到着、海上での戦闘、上陸。という流れになっている。」

じゅえる「そこまではほぼ一方的にやられているわけだから、海上で敵の英雄を作るべきだろう。」

釈「そうですね。船を焼く事で防備を甘くさせる、煙で目つぶしをしている、と見抜いた人が居るんですよ。」
じゅえる「戦艦単艦での突入だ。船長が一人気がついて転進して来るんだ。」

まゆ子「うーむ、なるほど。そういう手か。あまり大部隊だとわずか10キロの海上では描写できないからね。一隻か、うん。それでいこう。」
じゅえる「主に密偵達が操作する船が、本船を護る為に楯となり、その戦艦に何隻もやられてしまうんだよ。」
釈「悲壮ですね。」

まゆ子「うむうむ、それは非常に良い絵となる。だがそうすると、第一話である方には英雄が居ないな。」
じゅえる「そこはむしろ、奴隷達の側から見たというのを描くべきでしょ。この突入電撃戦が方台の歴史にとっていかなる意義を持つのか、というのを思う存分に描写しなさい。まゆちゃんそういうのがやりたいでしょ。」
まゆ子「まあね。だが、ギィール神族を何人も殺すとするか。その方が一般奴隷民衆にとっても、これが神同士の戦であり人間の手出しをしてよいものではない、という感じが伝わる。」

釈「まってください! 兎竜とイヌコマは船に乗った後はどうなるんですか? 置き去りですか?」
まゆ子「基本的には、アウンサの計画ではイヌコマを喰ってしまう。」
じゅえる釈「えーーーーーーー!!!」

まゆ子「いや、場合によってはシンデロゲン港の食糧に毒を撒かれる事も考えられるから、いざという時はイヌコマを斬り殺して食べるてのも、計算に入って居たんだよ。」
じゅえる「ひでー。」

まゆ子「幸か不幸か、その心配は無くなった。船が燃える煙でそういう悪さも出来なくなったんだよ。で、地元の人間にイヌコマを譲り渡して、代りに食糧とか武器を得る。良心的だなあ。」

釈「兎竜はそうはいきませんね。」
まゆ子「兎竜70騎、これは棄てるには惜しい。だから、神兵12名、一番若い青旗団メル・レト・ゾゥオム中剣令に任せて、東金雷蜒領内を逃げ回れ、という事になっている。首尾よく和平がなった後は戻って来て迎えろ、という話だが、ギジシップ島で戦っている間にゲイルに追い回されて、討たれたり逃げたりして、結局30騎にまで減ってしまうんだな。」

じゅえる「兎竜騎兵が兎竜を棄てるわけにもいかないからねえ。びんぼうくじだよ。」
釈「でも、それはそれで浪漫がありますよ。」

まゆ子「しかし、まあ第一話だよ。そうすると一般人庶民奴隷だね、を書くのはいいんだが、視点が定まらないな。」
じゅえる「すなおに赤甲梢を書いてればいいでしょ。庶民は三人称でいいじゃないか。」
釈「あまり凝り過ぎるのは却って不自然ですよ。」

まゆ子「あー、そうするとー、ネタが無いな。」
じゅえる「こういうのはネタは関係無いよ。迷わず逝けよ。」
釈「いえ、そうですね。時間的というか背景というか自然というか、つまり大状況に絡む状況の変化くらいは挿入してもよいのでは。たとえばタコリティの話とか、あるいは過去話とかを。」
まゆ子「そうねー、東金雷蜒王国の地理とか歴史とか、街道の説明とかそもそもギジシップ島の由来とかは、全く無いもんね。」
じゅえる「三荊閣も出て来るでしょ、そりゃ。」

まゆ子「うーん、では赤甲梢の個々人、説明、庶民、と三段階のレベルで話は進むと。30ーいややっぱ50枚以下というボリュームならば、こんなものかな。」
じゅえる「ともかく書いてから考える!」
まゆ子「わかった。」

釈「して、第三話のネタはどうなんです?」

まゆ子「あー、ギジシップ島は恐ろしい所だ。神聖首都ギジジットがゲイルの飼育場でもあるのと同様に、ここはうすのろ兵の飼育場がある。」
じゅえる「マジ?」

まゆ子「当然獣人も飼っているし、獣身兵と呼ばれるもっとましな獣人も居る。早い話がギジシップ島は全体が薬草園なんだ。ギィール神族が成長する為に必要なエリクソーの材料はここで一手に栽培して暴利を貪っている。」
釈「おお! それは儲かりますね。」

まゆ子「うすのろ兵も同様に、販売用に育成している。獣身兵というのは獣人の技術を少し用いて、普通の人間をちょっと強力かつ耐久性を飛躍的に高くした、利用価値の非常に高い兵なんだ。これも販売用。ただ育成コストが掛るから1000人くらいしか養っていない。大審判戦争で出荷してしまったから、今居るのは在庫が100人くらいだな。」

じゅえる「普通の奴隷兵は居ないの?」
まゆ子「居るには居るが、首都が攻撃されるなんて思ってもいないから、近衛兵はほとんど居ない。」
じゅえる「まあ、普通考えないよな。」

釈「ギィール神族は護りに出ないんですか。」
まゆ子「神族廷臣と呼ばれる人が100人くらい居るんだが、島全体で人口は1万人くらいだな。面積に比べると非常に少ない。それだけ特殊な島なんだよ、地形も険しい。険しい地形と吹きつける海風にさらされて薬草の薬効成分が高まるんだよ。だから人が住める箇所はあまりない。」

釈「いいところなんですか。」
まゆ子「いいところだよ。王様が住むくらいだから。」

じゅえる「ふむ。まあ、かなりの激戦が予想されるね。」

 

07/01/06

まゆ子「ヘルメットが無ければ即死だった、てなくらいに忙しい年末年始でした。やっと通常の体勢に復帰出来ます。

 ま、なんたってね、HDDがぶっ壊れてADSLのモデムがぶっ壊れてとかまあ色々あったわけですよ。もう、たーいへんたいへん。」

じゅえる「ま、それもいいさ。たまにはそれも勉強だ。新しい発想の元にもなるでしょ。」
釈「でも年末年始はそもそもコンピュータに触れないほど忙しかったんですから、いいんですけどね。」

まゆ子「さて、げばると処女だ。現在エピソード5第一章が書き上がって校正中てところ。まともに執筆体勢が復活したからにはどんどんいきますよ、3月末日締め切りだ。」

じゅえる「まだげばると辞書の補筆が出来てないけどね。そういやあ、最近鳩保達物部村の連中がでぽでは良く出るのだが、げばおとにも出るのかな?」
釈「正直に言って、女のキャラはもう要らないってかんじですけどね。」
まゆ子「そうだな。主要女キャラはあと一人、ジョグジョ薔薇と結婚する事になっているカンヴィタル王家の王女様だ。これはー、まだ全然考えてないというよりも、そもそもジョグジョ薔薇ってどんな人? ってとこだしね。」

じゅえる「男なんだからー、物部村には男のキャラはいないのかね。」
まゆ子「実は物部村には居ないけど、大東桐子のところの話には男キャラが山ほど居る。あいつは、むさくるしい男のサムライの中の一匹雌狼って役所だから。」
じゅえる「うらやましい。」
釈「でぽには、大東さんの話って出ないんですねえ。」
まゆ子「そうだな、何故だろう。今度載っけてみるか。で、キャラなんだけど。」

じゅえる「うえんでぃずのメンバーはもう大体出たのかな?」
釈「オリジナルメンバーと、二年生、一年生、ピンクペリカンズ、ですか。」
じゅえる「オリジナルメンバーはもう大体出ていたっけ?」

まゆ子「えー、どうだっけ。誰か漏れてない?」
釈「どうだっけ、と言われましても、まゆ子先輩が書いているんじゃないですか。」
まゆ子「てへ。」

じゅえる「おりじなるめんばーは、弥生・まゆ子・じゅえる・しるく・聖・志穂美・明美・ふぁ・鳴海、だよ。この内出ていないのは、まゆ子・明美・ふぁ・鳴海、だね。」

釈「北方大樹林「樹獄」でキャプテンが遭遇する「神さま」無定見生物は、明美先輩の姿で現われるんですよね。他の人はどうですか。」
まゆ子「まず、もうすぐ志穂美が出ます。コウモリ神人が志穂美の姿で弥生ちゃんと対決して、弥生ちゃんは北に飛ばされます。明美はその後だね。」

じゅえる「私はーファンファメラだっけ。どうも影が薄いけど。」
釈「わたしはもう出て居ます。本編には絡んで来ませんけど。まゆ子先輩は出ていませんが、名前はあちこちでいっぱい出ていますね。」
じゅえる「まゆ子ー、あんたはやっぱ出るのはやめときなよ。今後もあちこち名前だけ出るでしょ。」
まゆ子「その予定だ。弥生ちゃんがなにか発明をするたびに、私の名前が出て来ます。」

じゅえる「鳴海ちゃんはまあ置いといても、ふぁ、だね。ふぁだけは割を喰ってるね。」
まゆ子「実際目の前にすれば、厭でも目立つんだけどね、176センチもある。」
じゅえる「でかいんだよ、アレ。乳もでかいし。」
釈「男装の麗人、いやそのものずばりで男性として出るのはいかがでしょう。ふぁ先輩は。」
まゆ子「ふむ。元々その役割を持っているんだが、ふぁは。しかしその設定が役立った例は無いな、うえんでぃずで。」
じゅえる「いいでしょう。女装の男は出ているから、見た目はまるっきり女のように肌の綺麗な男性として、弥生ちゃんを誘惑しよう。」
まゆ子「何者だよそれ。」

釈「あとは美矩さんと、一年生ですね。明美二号三号さんはー、」
まゆ子「神さまとして出ますから。」
釈「いっそのこと、3人いっぺんに出るというのはどうですか。三位一体攻撃です。」
じゅえる「攻撃はしないしない。」
まゆ子「3人で、ぼんと出る、か。いかにも不思議っぽくていいか。よしそれ採用。」

じゅえる「じゃあふぁを出して〆にしよう。それで男をだね、むしろ男をうえんでぃずに逆輸入するという手を考えるべきだとわたしは思うんだよ。」

まゆ子「いまさらうえんでぃずにおとこかよー。というか、そういえば小柳原くんをげばおとに出してもいいかな。気の弱い神官として。」
釈「それはいい考えです。ひたすらいたぶられる神官というのは、新機軸です。」
じゅえる「新機軸というよりは新喜劇だがね。」

まゆ子「そだ。とりあえずふぁだがーあ、これをちこっと変えてジョグジョ薔薇にしてみようか。」

じゅえる「ちょっとまて。するってーとなんですか、ふぁが男になってお肌つるつる脚びろーんと伸びる、派手目でプライド高い、奸計を巡らせる男になるってこと?」
釈「それはー、無謀としか。」

まゆ子「宝塚です!」

じゅえる「うわあー。」
釈「うわあー、あのなんだか分からない宝塚定番男役キャラですかー。それはージョグジョ薔薇っぽいですけどおー、ふぁ先輩でいいんですかねえ。」

まゆ子「ジョグジョ薔薇は複雑怪奇な人物だ。表ではそういういかにも野心的な人間だが、裏では最愛の姉を失った痛手からまだ回復していない弱い弟でもある。それが嵩じて、姉の姿を真似するようにもなっているのだよ。」
じゅえる「なるほど、それじゃあふぁ自身はすでに死んでいる姉で、その似姿としてのジョグジョ薔薇か。その姿で男に身を任せる、とかもありかな。」

釈「うわ、なにかだんだん面白いキャラになってきました。」
まゆ子「これまでの野心家としてのジョグジョ薔薇のキャラは良いとして、その肉体の描写に関してはいまだ設定がほとんどない。女のような肌を持ち、それでいて長身手足も長く、さらには魅惑の脚を誇るように露出する、というのはどうだろう。」
じゅえる「男のくせにミニスカートをはくんだ、こいつ。いや、片足だけ露出するとかにしますか。ちんちん見えそうなほどに切れ上がったスカートで。」

釈「十二神方台系では、男がスカートをはくんですか?」
まゆ子「あー、神官服の中にはそういうのもある。というか、高位神官はだいたい裾の長いのを着ているから、その下にはズボンははかないよ。無駄だから。」
じゅえる「むだか。なるほど。」

まゆ子「がぜん、ジョグジョ薔薇の姿が見えて来ました。それでいきましょう。てことで、ふぁ自身はジョグジョ薔薇の姉で、想い出の中ではかなーり美化されている事にしよう。」
じゅえる「その正体を知る女、というもまた別に出すか。元老院金翅幹家の姫だとか。」
まゆ子「ジョグジョ薔薇と結婚するはずのカンヴィタル王家の王女様がそれになるか。一時王宮に姉は上がって居て、王様のお手付きになるところだったりして、でも神聖王の血筋だからと陰謀によって殺されてしまう。」

釈「ジョグジョ薔薇本人はそう理解しているけれど、実際は違うという事にしておきましょう。」
じゅえる「元がふぁだから、かなりのんびりしたにんげんだよ。えーと、王宮で最初にヘビに噛まれた人間なんだよね、たしか。」

まゆ子「だからジョグジョ薔薇は暗殺だと考えている。・・・一章分ふぁで書いてみるか。ジョグジョ薔薇が何者かを読者さまに印象づける為には、そのくらいの手間を惜しんではならない。」
じゅえる「そうだね。じゃあ、トカゲ王国成立後を描くその第一章に、ジョグジョ薔薇の姉の昔話を書こう。そうでないと、お姫様が描けない。」
釈「決まりですね。」

じゅえる「となると、結論として鳴海ちゃんが入り込む余地は、カンヴィタル王家の王女様、ということになる。」
まゆ子「はあ。なるほど。」
釈「なるほど。」

まゆ子「しるくである所の劫アランサ王女より歳下で妹のように慕っている、という基礎設定があるんだが、なるほどそれは鳴海ちゃんで上等だ。」
じゅえる「それでいこう。」

まゆ子「ついでに、美矩も出しておこうか。弥生ちゃんを暗殺する為に送り込まれた電気人間だ。」
釈「身体から電気を放出するんですか。それはー、なんとも。」
じゅえる「身体に静電気を貯えて、敵に心臓麻痺を起させる。電気がたまると髪が逆立つんだよ。」

釈「弥生きゃぷてんの敵ではありませんね。」

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