ゲバルト乙女 第六夜

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まゆ子「突然ではあるが、地図を描いた。」

じゅえる「ああ、ファンタジー世界を作るのには地図というのは強力無比なアイテムだからね。で、・・・」

明美二号「ややこし過ぎます! なんですか、これは。どうして十二国記みたいに簡単な地図にしないんです。」
じゅえる「あ、まあ、そうね。一筆書きみたいな地図がやっぱりいいよ。分かりやすくて。でもこれはあ。」

まゆ子「だってだって、地図の魅力ってものは、このごちゃごちゃしてわかりづらいところに無限の情報が格納されてるってとこなんだけどね。」
じゅえる「そんなのは男の子にまかせておきなさい! 女の子は方向オンチくらいがかわいいのだ。」

明美「でもなんとなく、近所の地図に見えるのは何故でしょう。これは一辺1000kmの地図じゃなかったんですか?」

まゆ子「その理由は、川幅がデフォルメされて極端に大きくなってるところにある。この地図の通りとすれば、この世界は幅が2、3キロもある巨大河が縦横に走るアマゾンですらびっくりするような凄まじい熱帯雨林ということになるんだが、実体はそんなバカでっかい河はこの世界にはほとんどない。
 じゃあ何故か、といえばそりゃあ分かりやすいから。一辺1000キロの地図上では、河なんてのは一本の線よ、ナイル河クラスでも。それじゃあ道と区別がつかないから、水辺としての地形的特徴を強調して描いたところ、こんな太さの河だらけになってしまったというわけなのさ。」

明美「ということは、この世界は本当はもっと乾いている、と」
まゆ子「そこが難しいところなんだが、まともな地図上では河が無いようなところでも、乾いているかといえばそうでもない。河が描いてなくても、砂漠ではなくちゃんと木も草も生えていて農業をしてるのさ。つまり、この絵をぱっと見て、ああ、ちゃんと水が流れていて農業もし易そうだな、と感じる事が出来ると、この地図は成功なのだ。」

じゅえる「まあ、地図ってのは正確でなきゃいけないってわけでもないしね。どこに何が有ってどういう意味があるか、それがちゃんと表現できていれば、行基図みたいなおまんじゅうがつながってるようなのでも十分役に立つんだから。

 でもなんでなんでもっと簡単な、読者の人が見て一発で構造が分かるようなものを作らなかったの。」
まゆ子「だってー、つまり、ゲジゲジ神が居て、ゲジゲジ王国があって、それを駆逐する形でカブトムシ王国が、って話なんだから、つまりゲジゲジ王国が辺境にあるという設定が優先したのだよ。そこで、大地の中心にカブトムシ王国が、その端っこにゲジゲジ王国があり、その境界線は毒の廃地が広がっている、という風にしたら、こうなっちゃったんだよ。」

 

明美「毒の廃地てのは、この赤い斜線の部分ですか。めちゃ広いじゃないですか。って、そのどまんなかにある街みたいのはなんですか?」
まゆ子「ゲジゲジ王国の真の首都で、巨大ゲジゲジ神が眠る神秘の大都市なんだよ。道路が環状線で二本もあるし、四方八方に通じる道路がまさにすべての道はローマに通ずという有り様で、しかもその周辺は潅漑施設が整っている。」
じゅえる「ほんとだ。これ、人工物だ。」
明美「これはこの中央の湖から水を引いてくるんですよね。大工事ですね。」

まゆ子「往時のゲジゲジ王国はそれは素晴らしい奇跡の技術大国だったんだよ。 潅漑施設があるってわけだから、ここは本来不毛の土地なんだ。それが南の海にまで達している。そこに水を引いて巨大な農地にしてしまったんだよ。」

じゅえる「でも、その周辺が毒の廃地ってのは、何故?」

まゆ子「実は塩害。荒地に水を引いて農業やってたら、塩が吹いて出たんだ。でもゲジゲジ王国最盛期にはそれは取るに足らない事だったんだよ。カブトムシ王国が出来て戦争に明け暮れる内に、次第にそういう地道な努力を怠って、塩害を引き起こしてしまい、また元の荒地に戻り、その上にゲジゲジ神族は毒を撒いたんだよ。つまり神聖なるゲジゲジ首都が征服されないように周囲を毒でバリアしてしまったんだ。おかげでここは砂嵐と毒の風が吹き渡る、人間には用の無い土地になってしまった。」

 

明美「毒でない領域が南の方に続いてますね。この丸いクレーターみたいな湾はなんですか。」

まゆ子「文字どおりのクレーターだよ。ここは本来荒地で、ぺんぺん草も生えない土地で、潅漑をしなかった土地は昔のままに荒地なわけで、ここら辺はゲジゲジ神族も毒を撒く必要を認めなかったから、とりあえずは人は通れるけれど、でも水も無い土地だからね。
 で、南のクレーターは本当に宇宙から隕石が落ちて来て穴が開いたんだ。何も無い大地にぽっかりと穿たれた巨大クレーター、その縁の大絶壁の壁面は、地層に混じって巨大タコの化石がごろごろしてるのが見える、という寸法だ。故にこの近辺にある唯一の街が”TACO CITY”になっている。」

明美「あ、ほんとだ。でも、そうすると、タコシティってわけですから、ここはタコ神さまのお膝元なんですか。」
まゆ子「うん。タコ神さまというのは、ゲジゲジ神の1000年前つまり今から3000年前に、人間に農業を教えてくれた神様なんだ。だから、どこの村に行ってもタコ神様の石像を飾っているけど、すでにタコが頭に取りついた人は居ないから、宗教としてはさびれてしまってるわけで、ここタコシティがその最後の聖地なんだよ。
 で、ここはカブトムシにもゲジゲジにも従わない自由都市なんだ。と言っても、何も無い土地なんだけどね。ここには昔から追放された人やら犯罪者やら盗賊やらが逃げてきていて、その人達の子孫が作ったのがこの街なんだ。で、タコ神さまが居た当時はタコは神聖な生物だったから、地底のタコ化石を利用するってことはなかったんだけど、ゲジゲジ神が降臨して工業利用を始める。つまりタブーを破ってしまったわけね。その時最初に採掘されたのが、ここタコシティ。つまり罰当たりの人間を使ってそれまでのタブーを打ち破ったんだ。だけど、2000年も立つ内に、この都市はタコ化石だけで生きているということで、逆にタコ神さまの信仰の聖地に変化したんだよ。だから、ここは荒くれと聖者とが混沌としている刺激的な街なんだ。」

じゅえる「ふん。いいね。弥生ちゃんはまずここに来る事にしよう。荒くれものどもを叩き伏せるんだ。」
まゆ子「そう言うと思った。でも、ここは本当に何もないわけで、ここに来ちゃったらカブトムシ王国に行くのにずいぶんと難儀するよ。」
じゅえる「いいっていいって。

 

で、カブトムシ王国の首都は。」
まゆ子「ここの、この世界最大の湖のほとりにあるこれが首都。水というよりも、そこから南西の方向にある山が重要で、ここは水源の山なんだけど、カブトムシ神が降臨したのもこの山なんだ。」
明美「へー、結構いいところにあるんですね。まるで世界の中心だ。」
まゆ子「実際王国の中心だね。
 で、見ても分かるけれど、周囲が山に囲まれてなかなかの要害。ここを抑えちゃったらそう簡単には制圧できないわけで、結局ここを本拠としてカブトムシ王国は発展していったんだよ。

ちなみに湖の真ん中に島があるけれど、そこにも城がある。カブトムシ王国最後の砦、だったんだけど、現在では勝っちゃっているから、役に立たないのだ。」

じゅえる「ここには伝説的な人物が牢屋に収容されている、という事にしよう。」
明美「そうですね。ここはそういう裏暗い暗黒の島にしましょう。」
まゆ子「え、でも、なんも考えてない・・・。」
じゅえる「ここには昔反乱を企てた大物の貴族が鉄仮面を付けられて誰にも知られる事なく住んでいるのだ。で、これが表沙汰になると一大スキャンダルになる。」
まゆ子「はあ。まあ、そういうのもありかな。なんも考えてないけど。」

 

明美「この湖から東に水路が延びてるんですね。潅漑用水ってやつですか。」
まゆ子「そうだよ。といっても、そんなに太い用水は作れない。せいぜい幅200メートル程度だから地図に映る訳がないんだけど、でも描いてないとここがどういう土地かわからないでしょ。」
明美「なるほど。これが地図に描いてあると無いとでは大違いですね。でも、こんなにゲジゲジ王国の首都と近いんですね。」
まゆ子「いや、ゲジゲジ王国の本当の首都はここじゃなくて、東の果ての島にある。これだよ。この中央のは神聖ゲジゲジ首都といって、巨大ゲジゲジ神が眠っている。でも、かなり早い時期にカブトムシ王国の脅威に曝されて、というか、ローマと同じで道路がすべてこの首都につながるという設計になってるから、防衛という観点ではゼロに近いんだな。で、ここの防衛は諦めて、毒地で封印してしまったんだよ。で、毒の土地ではゲジゲジ王族、神族ならまだしも普通の人間では生きられないから、この東の方に首都を移したんだ。」

じゅえる「随分隅っこにあるんだね。

 

 西の島もゲジゲジと書いてるこれは?」

まゆ子「分断しちゃったんだね、カブトムシ王国の軍事力で。で、西の島嶼部にあるゲジゲジ王国は現在滅亡しようとしている。見てもわかるけど、ここら辺の島は毒でほとんどダメになっている。防衛を諦めた土地を毒で固定してカブトムシ兵が入れないようにしているんだ。だから、今問題の難民はほとんどがここの出身者なわけだね。で、防衛の為に固定すると、同時に耕地も失っていくわけだから、もうここはどんづまりで、民衆がひんぱんに反乱を起こしているんだけど、それでもなおゲジゲジ神の力で押え込まれているんだよ。」
じゅえる「なるほど。こんなになるまでになっていても、でも自力では民衆は脱出できないんだ。」
明美「さすがにしぶといですね。でも、こういう勢力分布であれば、ここは西の島は攻めるべきなんじゃないですか。純軍事的には。」
まゆ子「こうもなってしまったらね。でも島嶼部だから平原を行くのと違って船が必要なんだ。技術力に優れるゲジゲジ王国側は、現在でもまだ海戦には一定の兵力を残していて、そう簡単には大部隊の上陸ができないんだ。毒を撒かれた土地は、赤黒カブトムシ兵ならともかく一般兵にはかなり厳しいのだよ。」

明美「船ですか。そうですねー。なるほど。バイキングって設定はここらへんで効いてくるんですね。」
じゅえる「あ、でも、カブトムシ兵の方がバイキングじゃ無かったっけ?」
まゆ子「まあね。でも、単身で敵の船に飛び込んでいく赤カブトムシ兵は十分にバイキング的であるとおもうんだけど。」
じゅえる「義経の八艘飛びとかするんだ。そうか、それは絵になるな。」

 

明美「でもこんなに領土を汚染して、よく食糧が持ちますね。」
じゅえる「ほんとだ。東の方とは連絡も無いだろうに、どうして成り立ってるんだ?」
まゆ子「それがあー、実はー、西側沿岸に航路が書いてるでしょ。密貿易なんだよ。食糧とかを輸入して工業製品を輸出してるんだ。ここらへんは見ても分かるけど陸地が分断されてるわけで、つまり南のクレーターと同じで巨大タコ化石が露出する地層なんだ。」
じゅえる「なるほど。タコ化石はどこにでもあるわけじゃあないんだ。」
まゆ子「地割れで相当深い所が露出してないと、見つからないんだよ。この世界にはまだ深い鉱脈を掘る技術が無い。というか、露天掘りでタコ化石が取れるから、鉱業技術は発展する必要が無かった。」


明美「はあ、で、その工業製品ってのはどういうものなんでしょう。」
まゆ子「早い話が、タコ化石から取れる、染料や塗料、成形素材。カブトムシ兵の甲冑の素も、ここからの輸入品だ。そして金属器。タコ化石を利用しての大規模な精練技術が存在していて、村の鍛冶屋レベルでは作れない巨大な金属材も作れるんだ。錆びない鉄製の梁とかも。ここらへんはカブトムシ王国ではとうてい手に負えない。つまり、この西のゲジゲジ王国はいがみ合いながらもカブトムシ王国の発展に寄与してきたんだな。だから、東の方とは疎遠になった。敵に協力するとは何事か、ってね。

 で、その危ういバランスが崩れたのが、赤カブトムシ兵の創設から。事実上停戦状態にあった西ゲジゲジ王国を、イデオロギー的正当性に則って電撃的に攻略し、それに対抗して領土を毒で汚染して難民を送り出すという作戦をゲジゲジ側はとったんだ。」
明美「なかなか、複雑な事情があるんですね。それじゃあ千年掛かっても滅ぼせないはずだ。」

 

じゅえる「ということは、東のゲジゲジ王国は、この中央の毒で固定された土地を除いて東側全部で、ここは農業も工業も発達している?」
まゆ子「ここはタコ化石の供給を南側からの輸入に頼っている。でも工業製品の輸出を行っていないから、あまりさかんとは言えない。むしろ農業が主になっている。その意味ではカブトムシ王国と双子みたいな関係にある。」
明美「東側にはカブトムシ軍は遠征しないんですか?」
まゆ子「するよ。でも毒地を横切ることはしないから、極めて細い回廊が北の山側に一本あるだけだもん、大部隊の運用は出来ない。タコシティからの航路は、そんなにたくさんの船は無いから、ダメなんだよ。

 ちなみに船は、カブトムシ王国の方が優れている。南北の山脈を抑えて木材の供給を独占してるからね。だから、西ゲジゲジ王国はカブトムシ王国で作った船に自分とこの優れた技術で作った艤装を施して高機能船として再輸出もしていたりする。」
明美「はあ。なんだか意外と仲がいいような。」
まゆ子「実は西ゲジゲジ王国は、長年カブトムシ王国と付き合って来て、ずいぶんと軟化してるんだよ。巨大ゲジゲジに人間を食べさせたりはしていない。だから、あとはもう、何時併呑されるか、ってだけなんだが、赤カブトムシ兵の侵攻で態度が硬化してしまってる。とはいえ、このままではじり貧だという事も分かってるわけで、まあ、どうしようと悩んでるんだな。」

じゅえる「東ゲジゲジ王国はまだ人間を餌にしてるわけね。」
まゆ子「毒地の中央にある神聖ゲジゲジ首都は、巨大ゲジゲジ神が今も生きている土地で、巨大ゲジゲジの産地でもあるからね。戦力を維持するために乗用の巨大ゲジゲジを捕獲する餌として人間を使うのだよ。だから、ゲジゲジ王国は今は東にだけ存在する、といっても過言ではない。西ゲジゲジ王国の巨大ゲジゲジは東からの密輸品だし、それに大体、海ではゲジゲジは使えないよ。」

じゅえる「じゃあ、つまり、ここは弥生ちゃんの戦場にはならないってこと?」
明美「そうですねえ。そんな弱っちいところに救世主さまは必要ないですよね。」
まゆ子「うー、・・・・・ん。そう。弥生ちゃんは初め荒野に出現する予定なんだ。

 

 

 この地図を見ると、荒野と呼べるのは毒地を除けば、タコシティの近くに限定されるでしょ。あとは北の山くらいだけど、最初から中立の立場でこの世界に現われる弥生ちゃんは、たぶんタコシティの方がふさわしいと思う。山の方は聖地だけど、坊主がたくさん住んでいて妙なちょっかいを掛けて来るからね。」

じゅえる「ほー。じゃあ、弥生ちゃんの、つまり壁チョロ神の僧侶とかいうのが居て、弥生ちゃんを、・・そうだね、制御とか支配しようとか思ってたりするわけだ。」
まゆ子「ゲジゲジ、カブトムシ神の例を見ても分かるとおりに、頭に神様の付いた一族は大変な繁栄を遂げるわけだからね。壁チョロ神の僧侶や巫女はこの千年紀に合わせて一大キャンペーンを張っている。ついに新しい神様の時代が来る、とね。
 で、やり過ぎて弾圧されて北の山に引っ込まされている。だから現在、カブトムシ王国にもゲジゲジ王国にも壁チョロ神の巫女や僧侶は居ない。というか、隠れている。なにしろもう100年ほどキャンペーンをやり続けていてね、でも実際どういう未来になるかと言えば、これはもう誰にも分からない。どんな御利益があるかも分からないんだけれど、ともかく次は壁チョロさまだ、というのでいいかげん皆慣れっこになってるんだね。
 どこから見ても、カブトムシ王国が滅びる兆候は無い、ゲジゲジ王国と違って強いて倒される理由も無いように見える。だからちょっとうんざり気味。そこに、弥生ちゃんがやってくるんだから、北の山に出現すると大騒ぎで、下手すると討伐すらされてしまいかねない。なんの注目も浴びないためには、タコシティの荒野が最適な出現位置だ。」

 

明美「具体的には、壁チョロ神の僧侶とかいうのは、なんの御利益があるって言ってるんですか?」
まゆ子「壁チョロ神は十二支でいうところでは癒しの神とされる。戦乱に苦しむこの世界と民衆を癒してくれるわけね、慈悲と慈愛の優しい神様なんだ。それが現世に現われて世界を救済するという事は、ようするにカブトムシ王国は民衆を苦しめ傷つける悪い王国だ、と言ってるのと同じだから、」
じゅえる「体制批判かあー。そりゃあ山に追放されるさ。」
明美「阿呆ですね。」

 

まゆ子「というわけで、北の山には壁チョロ神に仕える者がたくさん居るけど、特に御利益は無い。頭にへんなものが付いて無い普通の人間は超能力なんか無いからね。
 で、弥生ちゃんの癒しの超能力というのは、だ。大体ね、医学薬学と言っても学業優秀な弥生ちゃんは素でも相当なことを、現代人として知ってるのよ。弥生ちゃんの手持ちの知識だけでも、この世界では非常識なほど高い医療技術を提供できるんだ。なにしろ、手術も無ければケガを糸で縫うことすら知らないし、黴菌とかの衛生知識も無いからお湯で消毒するだけでもすごく効くんだよ。ハリセンでどつくと麻酔にもなるしね。」
明美「あはは、ハリセン万歳です。」
じゅえる「弥生ちゃんはウエンディズで応急処置とかもよく勉強してるしね。」
まゆ子「で、本来の医学薬学の知識は、ゲジゲジ神がもたらしゲジゲジ神族が独占していて、一般民衆には触らせないんだな。極秘扱いだ。カブトムシ王国ですらほとんどその知識を持たない。それを弥生ちゃんは開放することになる。」
明美「まさにキリスト様のような救世主ですね、弥生キャプテンは。」

 

じゅえる「ついでに荒野の毒地をハリセンの風でさーーーーーーっと浄化しちゃえばいいんだよ。」
まゆ子「あー、それはダメなんだ。その毒は巨大ゲジゲジ神によってもたらされたもので、荒野に眠る巨大ゲジゲジ神が居るかぎり浄化出来ない。で、それが居るのがこの封印都市なわけね。」
じゅえる「じゃあ、ここに行かなければ毒地の浄化出来ないんだ。」
まゆ子「弥生ちゃんはまずこれをやっちゃう。タコシティに現われてこの世界の仕組みを知った弥生ちゃんは、ゲジゲジ王国を開放しようとするカブトムシ王国を知るわけで、でもそれじゃあ何千年経ってもこのままだという事を悟り、いきなり核心を衝く巨大ゲジゲジ神の退治に向かうのだよ。ほら、この左回り航路で船に乗って東ゲジゲジ王国に侵入して西に遡り、毒地に埋もれた街道を通って神聖ゲジゲジ首都を直撃する。それも誰にも知られないように、こっそりと、だ。

 で、壁チョロ神の加護のある弥生ちゃんは毒地でも平気なわけで、首尾よく巨大ゲジゲジ神をやっつける。

 ということは、この世界の人にとっては、いきなり広大な毒地が消滅する、という大異変にさらされるわけなんだね。カブトムシ王国と東ゲジゲジ王国がいきなり対面してしまうという。で、神聖ゲジゲジ首都は、巨大ゲジゲジ神が居ないとしても、ここを落とされてるとカブトムシ王国の強力な前進基地になるわけで、絶対死守しなきゃいけないんだな。」
明美「全面戦争になるわけですね、にわかに。」
じゅえる「大戦争じゃない、それ。」
まゆ子「ということだ。

 

ちなみに救世主弥生さまは、この神聖ゲジゲジ首都で巨大ゲジゲジ神をやっつけるまでは、ほとんど何もしない。ただ、世界中に壁チョロ神の救世主が居る、というネコネットワークによる噂話だけなんだな。つまり、世界中の色んな階層の人間が救世主弥生ちゃんの噂話に翻弄されるというのがこのお話しの骨格なのだ。毒地消滅の真相は、ネコネットワークですら知らないほどの急展開で、ネコもびっくりでうろたえるほどだ。」

じゅえる「いきなりハイブローな展開だね。

 じゃあなに、つまり、世界は一応は平和なんだ、均衡状態にあり、誰も大変化が起きるとは思っていない。カブトムシ王国は着々とゲジゲジ王国を駆逐しているけれど、でもまだ何百年も掛かりそうで、人々はその戦争の圧力に苦しめられながらも普段と変わりない日常を送っている。と、ゲジゲジ王国は知らないけれど。」
まゆ子「うん、ゲジゲジ王国の視点というのも作ってみよう。そうだね、壁チョロ神の巫女で、東ゲジゲジ王国で人々を救済しようという人を出しますか。」

 

明美「じゃあ救世主弥生さまというのは、要するに、・・・・・・・・働くといきなり大戦争を引き起こした!! という人なんですか!」

じゅえる「いいね、さすが弥生ちゃんだ。」
まゆ子「GOOD!」

 

2003/08/30

 

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