ゲヴァルト処女、設定辞書&年表

2004/05/08-2007/10/11

辞書 

年表人名地名宗教歴史軍事社会制度文化その他弥生ちゃん関係

モノ長文設定歴史概要

基礎データ

十二神方台系のある惑星は直径1万キロ、重力は0.92Gで、地球よりちょっと小さい。故に弥生ちゃんはこの世界ではもともと怪力で快速だ。普通に恒星が一つある星系なのだが、太陽に核融合を起していない伴星があって、少し変な軌道を描いている。人が居るのは第二惑星だが、太陽の回りに微小惑星がごろごろしているので、本当は何番目か分からない。巨大伴星が1個、岩質の地球型惑星が2個、ガス状惑星が4個のこじんまりとした世帯。

十二神方台系は一日27時間で自転、333日間で公転する。つまり、地球時間だと、一年は374日間になる。一月28日で「白の月」の公転周期と同じ。一年に3日足りないが、構わず28日で補正しない。33日周期で公転する極周回衛星「青の月」があり、33ヶ月に一度二つの月が満月で同時に南中する日があり、これを劫と呼ぶ。劫は33ヶ月つまり12+12+9ヶ月ごとに起こるから、1・4・7・10月に限定されそれぞれの1日とされる。11年周期で「青の月」は同じ日に南中する事になるから、この劫を正しい1月1日として「劫年」と呼ぶ。
年の1月1日と、陰月劫月の1日が一致する大劫年は308年に一度。
      注;適当にこさえた設定だから、まちがってるかもしれない。

一年333日。9×37日でもあり、9日を「週」と呼ぶ。また一年を三つに分けて「季」と呼ぶ。春・夏・秋で、春初月→春中月→春旬月→夏初月→と呼ぶ。春旬月は別名「雨月」、夏旬月は「暑月」、秋旬月は「冷月」と呼ぶ。冷月の前に「チューラウの訪い」という現象が起こり、一気に寒冷化するのを冬と呼ぶ。
一見すると、37日を一月とする方が便利なようにも思えるが、「白の月」は時間の守り神とされるので、通常12月でいくのがこの世界の決まり。四月が一季だから、換算は別に難しくない。十二神一星に対して一月が当てられる。雨月はミミズ神、暑月はゲジゲジ神、冷月はトカゲ神、と決まっており、他の月は神様の担当が換わるのを蜘蛛神殿で暦として売っている。

時間も同じで、一日を12に分割する。「朝」「昼」「晩」と簡単に三つに分けるが、「朝」は日の出から南中まで、「昼」は南中から日の入りまで、「晩」は日の入りから日の出まで、と不均衡になる。日の出はタコ神、南中はカタツムリ神、日の入りはカニ神、午前0時はコウモリ神、となる。
曙光時(払暁午前6時)、初一刻(午前8時)、早次刻(午前10時)、昼天時(正午)、睡五刻(午後2時)、残六刻(午後4時)、呑天時(日没午後6時)、宵一刻(午後8時)、夜次刻(午後10時)、暗中時(午前0時)、闇五刻(午前2時)、待六刻(午前4時) と呼称。
更に一刻を分割すると、二分(1時間)、三分(40分)、五分(24分)、二五分(12分)、三五分(8分)、五五分(5分弱)、五三分(1分)となるが、分単位で約束をするのは非常識。
「東西南北」は地球と同じで、太陽が出て来る方が東、沈むのが西、太陽が通るのが南、となる。

数の数え方は二三五記法というものを使う。これは、数字の1、2、3、5を用いて全ての数字を表すもので、かけ算と足し算を組み合わせた非常に合理的なもの。ただし計算はめんどくさい。10、60、100、600、1000、6000、と十進法と六十進法とがごっちゃになった位取りをする。これでは計算が困難なので、弥生ちゃんは強制的にアラビア数字十進法を導入した。

世界を構成するエレメントは、天地、火水、金成である。金は金属、成は生き物を表す。つまり、生きているという命自体を特別なものとして認めている、他のエレメントで構成されているわけではない、という事だ。故に、無生物から命を生み出そうなんて事を考える人はいない。成の究極の姿が神である。金は不変を、成は転変も意味するから、十二神方台系の人は神様もいずれ死ぬと理解している。

十二神方台系は東西南北1000里1000キロの正方形に近い領域。人口は約250万人と面積に比して少ない。褐甲角王国120万人、東金雷蜒王国70万人、西金雷蜒王国25万人、その他浮遊民や神官巫女等宗教関係、難民が居る。最盛期は神聖金雷蜒王国末期で350万人を越えていたという。惑星全体では、このような閉鎖領域が40有り、人間は30程に居るらしい。1億人に満たない。

年表

(基礎年表)
12000年前:天地創造が始まったとされる。最初に巨大なタコが何万匹も海に投げ込まれたという。多分時代は嘘。
6000年前:天地創造が終わったとされる。1000年間休んで、その後人間が地上に連れられて来たと伝えられる。
5000年前:コウモリ神の護りと導きにより、北の山の更に奥から最初の人間が連れて来られたとされる。時代は正確にはわからないが期間は1000年も無かったと思われる。
4000年前:ネズミ神旧石器文明開幕。正確な時代は分からない。残されたネズミ文字洞窟壁画により、暦を推察して1000年間存続したと推定。
3000年前:タコ神聖女王国建国初年。十二神創始暦2000年、十二神創始暦はタコ王国時代に作られたため、建国初年が2000年ちょうどとなる。
2500年前 交易警備隊長によるクーデター。タコ巫女王5代テュラクラフ・ッタ・アクシ失踪。十二神創始暦2561年
2000年前:金雷蜒王国建国初年。十二神創始暦3054年。
1000年前:褐甲角王国建国初年。十二神創始暦3998年。ただしこれは初代武徳王カンヴィタル・イムレイルが救世に乗り出した年で、4052年に正式に建国された際に遡って計算した。カンヴィタル・イムレイルは生前に王国の成立を見てはいない。
800年前 神聖金雷蜒王国が二つに分裂、十二神創始暦4179年
750年前 ギジジット封鎖を以って毒地の完成とする。十二神創始暦4242年、以後着実に拡大される。
400年前 重甲冑の最初のものが実戦投入。以後獣人の使用は停止される。
200年前 赤甲梢実験部隊の前身、有翼飛翔実験団設立
100年前 「チューラウの先触れ」と呼ばれる非常に寒冷な気候が3年続き、各地で不作が続き餓死者が大量に発生、難民もこの時を境に急増。十二神創始暦4900年
70年前 「真実の救世主の書」完成。
50年前 イローエント沖の海戦において褐甲角軍が歴史的大勝利。
40年前 褐甲角王国空前の好景気。赤甲梢にて兎竜運用実験始まる。
30年前 うすのろ兵の導入始まり、寇掠軍が弩車の使用を開始。
25年前 イローエント沖海戦の再現を目論むも、褐甲角軍大敗北。
20年前 武徳王の代替わりに伴い、寇掠軍の大挙襲来。
10年前 人頭率事件
6年前 ヘビ出現!
5年前 神聖王の代替わりでガトファンバル王の時代になるも、大して変りはない。
4年前 ヒィキタイタン事件。
現在:蒲生弥生ちゃんが降臨した時点。トカゲ神聖国建国初年。十二神創始暦では5006年。
100年後:蒲生弥生ちゃんが降臨して100年後。トカゲ神聖国は繁栄中。
未来;十二神創始暦6500年。蝉蛾神の時代。18代目ガモウヤヨイチャンが北の山中にひっそりと暮らしている。

 

【弥生ちゃんの行程】

【一年333日、陰月12月・28日刻み。劫月9月・37日刻み】
劫月の日付は、朔日(1日)、十日(10日)、廿日(20日)、丗日(30日)、晦日(37日)と呼ぶ。

0日(秋旬月26日、創始暦5006年1月13日 地球時間5月20日)
      弥生ちゃん降臨。23時間後無尾猫が発見。5時間後青晶蜥(チューラウ)神と遭遇。ハリセンをもらう。
+2日(1月15日) ネコの案内で滑平原を脱出、街道でティンブットに遭遇。
+4日(1月19日) タコリティ到着。カタナを買い、ヒィキタイタンと遭遇。

(春初月1日 1月24日)
+7日(1月26日) タコリティ脱出。円湾へ遊びに行く。
+1日(1月27日) 円湾。テュラクラフの神像を発掘。
+2日(2月1日) テュラクラフの神像をタコリティに運搬。大センセーションを巻き起こす。
+15日(2月16日) タコリティ出発。東金雷蜒王国に密輸船で向かう。
+4日(2月20日) ガムリ点の先のガムリハンに到着。サガジ伯メドルイ邸に滞在。
+12日(3月4日) 毒地に向けて出発。 +2日で毒地に進入。アィイーガを捕獲。

(春中月1日 3月5日)
+25日(4月1日・劫月)
      ギジジット到着。巨大金雷蜒神と戦闘、勝利。その晩0時、毒地を浄化。大地震を引き起こす。

(春旬月1日 4月14日)
+30日(5月3日) ギジジット出発。
+15日(5月18日) ギジェカプタギ点の近傍に到着。

(夏初月1日 5月23日)
+5日(5月23日) 草原中に滞在。ゲルワンクラッタ村でバッタを叩き落とす。
+4日(5月27日) 赤甲梢と遭遇。
+3日(6月2日) 「女達の密議」を終えてゲルワンクラッタ村を出発。
+5日(6月7日) 草原中を鈍行中にティンブット率いる「プレビュー版救世主隊」と合流。+2日ミィガン離脱。
+5日(6月12日) デュータム点の郊外に到着。
+10日(6月22日) デュータム点に入城。大歓迎を受ける。+1日ッイルベス刺客に遭い死亡+5日神官メウマサク刑死

(夏中月1日 7月4日)
+12日(7月6日) ヌケミンドル防衛線にて褐甲角金雷蜒両軍、全面的な戦争に突入。+1日デュータム点にて弥生ちゃんその報を聞く
+16日(7月22日) 弥生ちゃん、デュータム点を出立。ウラタンギジトに向かう。

(夏旬月1日 8月13日)円湾にて新生紅曙蛸巫女王国樹立宣言。第6代テュクラッポ・ッタ・コアキ即位。

(夏旬月17日 9月1日) 赤甲梢、東金雷蜒王国領突入、電撃戦開始。
+1日 (9月2日) ウラタンギジトにて弥生ちゃん、聖蟲を持った大狗の刺客を退ける。
+2日 (夏旬月21日 9月4日) 電撃戦開始+3日。赤甲梢、東金雷蜒王国首都ギジシップ島へ侵入開始。
+1日 (夏旬月22日 9月5日) 赤甲梢、ギジシップ島の神聖宮にて神聖王と会談する。

(秋初月1日 9月17日) 東金雷蜒王国神聖王ゲバチューラウ、首都島ギジシップを出立し史上初めての他国領訪問を行う。

(秋初月22日 10月10日) 東金雷蜒王国神聖王ゲバチューラウ、ゲルワンクラッタ村に到着。褐甲角王国入国。
+5日 ゲバチューラウ、ゲルワンクラッタ村出発
+7日 ゲバチューラウ、アルグリト点到着。タコ巫女ティンブットより『双月叢雲に覗く』の舞を奉納される。
(秋初月33日 10月21日) 三神救世主会合。コウモリ神人(志穂美)との決闘。弥生ちゃん北方台樹林帯に飛ばされる。

 

宗教事典

十二神方台系: この方形の世界を表す言葉。十二神が作ったとされる。俗には単に「四角」と呼ばれるが宗教的公的にはこの言葉が使われる。トリバル峠を境に東西に線を引いて南側の一辺1000キロメートルの大地である。東西南北一辺陸行1ヶ月、広いようで狭い世界。

聖蟲: 聖なる救世主が十二神の加護を受ける時に額に授かる神の似姿とされる小動物。タコ女王、ギィール神族、神兵、トカゲ神救世主弥生ちゃんの頭に付いている。ネズミ神時代も頭にネズミの付いた神官が居たとされるが、コウモリ神時代はコウモリ人という特別な人間が居たとされ、額にコウモリが付いていたりはしなかったと伝わる。聖蟲は取り付いている人間の頭にテレパシーの一種で言語によらない情報の提示を行い、また超能力を発現させる。またテレパシーで聖蟲同士が空間を越えて会話するとされる。聖蟲自体は不死であり、滅多なことでは老化も負傷もしないが、取り付いている人間は長命頑強な肉体を得るが不老不死にはならないため、聖蟲の移譲という儀式で継承される。聖蟲は人為的に繁殖できることがあるが、取り付く人間を選ぶ為、誰でもが宿主になれる訳ではない。

天河の神座:宗教 「てんがのかみくら」。天の川にあるという十二神の住む世界の事。十二神はここで相談をして大地を作り、救世主を派遣して人間を導く計画を遂行している。また、死後の世界では人は霊となって西の海に赴き、日の沈む場所から天に上がり、冥府の審判であるカニ神に生前の善悪を測られ、悪の多いものは首を刎ねられ永遠にさらしものになり、善の多いものは神々に仕えて幸せに暮らすという。

神座の星: 十二神は天空にある星とされ、星座を神座として天の川の左右に侍り、地上世界の全てを導いている、とされる。97個あるが、タコ女王時代には88個で、のちにギィール神族が聖蟲の力で目に見えない天体までも数えあげた為に数が増えた。

大の月、青の月: この惑星を巡る二つの衛星。どちらも地球の月ほどには大きくない。大の月は丸く白く輝き常に一定の方向を見せるが、青の月は歪んだ形をしており、時折青く光るという。大の月は善い人の魂が遊ぶ庭として、青の月は罪人の身体をすり潰す夕呑螯(カニ神)の石臼と考えられている。

秘蹟: 方台上に残された神の創造の痕跡、もしくは実在を証明するなんらかの遺跡群。その最大のものは聖山にある大洞窟だが、その他にも多数存在している。人食い教とがこれについては最も詳しく、彼らは秘蹟の秘密の管理を存在理由とする。またそれらに付随する儀式と知識も秘蹟と呼ばれる。通常二つはセットであり、どちらかが欠けても機能しない。

聖遺物: 主に聖蟲の屍骸の事を差す。聖蟲は成長後はほぼ死ぬ事が無く、宿主の死亡後は自力でそれぞれの地上の化身の元に戻ってきて融合する為に屍骸は発生しないが、幼生やサナギの状態で死亡する事がある。これには神の力が宿るとされ様々な応用が考えられるが、金雷蜒褐甲角の両神が並立している状態では互いの神の力を奪われかねないので厳重に保管され門外不出となっている。褐甲角王国の歴史上では3度盗難にあったとされる。
それ以外に、孵化しなかった卵、神聖首都ギジジットにおいては巨大金雷蜒神の体節の残骸、聖蟲が脱皮した抜け殻、青晶蜥神の聖蟲の切り離した尻尾などがある。

冥秤庭: 死者が生前の罪を裁かれるとされる広場。天の川のことでもある。無数の星はすべて死者の魂であり、左右に並ぶ神座の十二神の裁きを受ける。コウモリ神の導きで冥秤庭にたどり着き、蜘蛛神の記録に基づき罪を審議され、罪有る者はカニ神に首を刎ねられ永遠にさらし者になり、功有る者は天の川を解き放たれて天界で遊び、やがてネズミ神の導きで再びこの世に戻ってくるという。

”穴”: 秘蹟の一つ。ベイスラ県ヨガアネ村の東にある旧い古いミミズ神殿の跡にある隧道を通って出入り出来る。毒地中に打ち捨てられた街の地下にある人喰い教団の祭祀場の中心にあり、かってはここで殺戮の儀式が密かに大々的に行われて居たが、700年前に毒を撒いて街を封鎖した際に地下までは考慮が及ばずに、人食い教徒達と一緒に封じられてしまう。毒地が浄化された後に街の跡が陥没して一時露出した為に寇掠軍『ウェク・ウルーピン・バンバレバ』に発見探索された後に、再度の崩落で埋まってしまう。
穴は差し渡しが20メートル程度、深さはギィール神族の超感覚でも探知不能で、特定の周波数の音に反応して祭祀場に居た者を穴の奥底に引き込んでしまう。穴の底は天地が逆転しており、天井がドームのようになっており穴の上に美しい青色に輝く女人がテュークと格闘する姿が空中立体映像として映し出される。『ウェク・ウルーピン・バンバレバ』が探索した際には、蝉蛾巫女エローアが意志を乗っ取られて口頭で応答し、自らを”ぴるまるれれこ”と名乗った。この名は方台に無い言葉なので様々に聞き取られて、ピュグマリオ、プレマリオン、プルマレア、ピレマリオ・レコンとして記録されている。
現在でも人喰い教団にあってはこの穴は最高レベルでの機密であり、高位の司祭である切配主にしか伝えられていない。また遺跡が毒に包まれて居た為に長らく人の出入りが無かった。

ゲキ: 聖山神聖神殿都市がある大洞窟の深部に巣食うと怖れられる怪物。闇の中をさ迷って天河の計画を囁くという。その意志を知る為には神聴伎と呼ばれる特殊感覚者が必要だが、近年までその言葉の真の意味を読み解く事は出来なかった。不世出の神聴伎であるアルカンカラの出現により、研究は一気に進展し、今ではゲキの言葉が一種のゲーム盤での駒の移動を示しており、それがそのまま方台での政治状況の変化を示すものだと解釈されている。ただし、ゲキの本当の姿は静電気の塊のようなもので実態が無く、人が居ても関知することは無い。
ゲキの真の姿は、十二神が方台に人間を再生しようとした計画の最初期の育成施設の自動管理装置の名残である。コウモリ人の導きで人が外界に連れ出された後は、施設の管理を行って居るに過ぎない。ただ人間社会の動向をチェックする能力はもっており、それに基づいて施設の管理と維持を行うので、ゲキの漏らす情報が予言に使えるという分析はは正しい。
ゲキは実は十二神の人間再生計画における最終目的物でもある。十二神こと無定見生物は、かって我が身に吸収したゲキと呼ばれる超科学文明を持つヒューマノイドを、この地に再現する事を目論んでいる。天河の計画とは、つまり「ゲキ再現計画」だ。ただし、ゲキの種族自体は一部が無定見生物に呑み込まれたのみで多くの部分が生き続け、4億年ほど前に自滅している。

ウェゲ: 人間。十二神方台系に住む人間を、十二神側が呼ぶ時の呼称。天河の計画たる「ゲキ再生計画」においての操作対象物。ゲキとウェゲの関係は、地球で言うと人間と北京原人くらいの関係になる。ゲキは超絶した科学技術の上に成り立つ存在であり、科学技術抜きには生存が叶わない。だが、再生計画において最初から科学技術を与えた状態であれば生物として自ら生きていく意志を獲得出来ずに、自律した生態系を作れなかった。その為十二神は生命体としての安定した社会を形成する為に、ゲキが科学技術を獲得する以前の存在であるウェゲを育成し、安定した存在になった後にゲキへの変革を促そうと考えた。しかし、十二神はゲキの文明と行動は知って居てもウェゲは知らない。だから、近隣種にあたると思われる地球人類の歴史と技術、社会制度を援用して再生計画を行っている。
 
(追記6-5)ウェゲが何故上手く再生出来なかったか。それは、ウェゲもゲキも生存本能を持たない種族であったためだ。つまり、生物として本来備えてあるはずの最初期の行動を取るプログラムが備わっておらず、自発的な生存が不可能である。ではどうして生き残ったかと言えば、彼らは生存本能すら学習する。親の行動を見て覚えていく。だが最初の親を十二神は用意出来ず、親として学習するモデルの提供が出来なかった。ただ世話を焼けば自然と生きる努力を始めるだろうと考えていた為で、ウェゲの失敗作を量産する羽目に陥る。最終的な解決は、地球人から生存本能を司る神経回路をコピーしてウェゲの遺伝子を改造して移植した。だから、十二神方台系は地球人社会に酷似する。
正解は弥生ちゃんが初期型ウェゲを捕獲し、おんぶしたまま北方をさ迷った際に発見された。ウェゲの親として弥生ちゃんは実にふさわしい存在であり、その生存様式を学習したウェゲは自発的な生存努力を開始して、天河十二神にあらたなる再生計画を立ち上げさせる。

無定見生物: 天河の十二神の実態。宇宙的規模の大きさを誇る無定型生物であり、時空を越えて生き続け接触する生命体の”形状”を蒐集する知的生命体である。億年規模のあまりにも長い年月を生きる。蒐集した種族の科学技術を利用して星を越えての通信や移動が可能であるが、長時間生きる生命体には時間的コストという概念が無く、タイムラグによる統一していない意志を持つ総体的にひとつの生き物として自覚存在する。あまりに遠隔で身体の各所でバラバラに動く為に、無定見に見えるのでそう呼ばれる。
この生物は発生から成長拡大期には盛んに他の種族を吸収するが、成体として完成した後には安定期を経て収縮期に入り、これまで吸収したものを再現しようという行為を見せる。つまりはスターシードとしての役割を担う、まさに神のような役割を持つ。ただし、再生すべき種族との間にあまりにも大きな在り方の隔たりが有る為に、なかなか再生はうまくいかない。さらには、より進歩した技術を持つ種族には宇宙生命のデータベースとして認められ利用する事も多いので、改変を受ける事もある。あるいは無定見生物と共棲する種族もあり、彼等は無定見生物の超長寿命を自らの種族の再生の保険として用いている。

”十二神管制委員会”: 十二神方台系において行われている「ゲキ復活計画」を管制する組織。天河十二神と呼ばれる存在は実在せず無定見生物自身がそれなのだが、細かい計画の細部を実現するのは自律行動出来る12の人工生物に任せられる。これもまた無定見生物の一部ではあるが独立性は高く互いの相互関係を社会的に築いていく事も出来る。
つまりは委員会組織として今回計画を推進しているのであり、互いの行動は「法」により制限されまた罰則も存在する。さらに12の人工生物は自分の手足となる人工生命体を使役するので、官僚組織すら発生する。

空中の幻影:ギジシップ島神聖宮の内宮上の空中に撤回される映像。円筒形の神聖宮は遠くギジジットの巨大ゲジゲジ神よりエネルギーを転送されて聖蟲の繁殖を行って居る。そのエネルギーを受信する施設である円筒コイルの中央部には、天河十二神より降される予言が映像として浮かび上がる。最近(5006年)であれば、まずなんと言っても弥生ちゃん降臨。テュラクラフ女王の発掘、ギジジットにて弥生ちゃんの巨大ゲジゲジ神の撃破、赤甲梢の神聖宮突入、弥生ちゃんとコウモリ神人との戦い。特に弥生ちゃんの巨大ゲジゲジ神撃破の映像は神聖宮に務める人間の精神を蝕み、赤甲梢の持ちかける和平を結ぶ原動力となったが、幼い神聖王ガトファンバルはその為に命を落とす事ともなった。

創世十二神

 

神聖神殿都市: 聖山トリバル峠の手前にある、十二神信仰の総本山、「地上の神座」とも言われる。ただし、十二神信仰の発祥の地はこの大地全体であるから、タコ王国時代に聖なる場所として定められたもの。その実態は巨大な断崖に穿たれた幅2キロ奥行き5キロの大洞窟であり、鞍型ドームである。とても自然の洞窟とは思えないので、かって人間はこの中に住んでいて大地の創造が終わるのを待ち、コウモリ神によって一組ずつ世界に送り出された、と推定されている。中は迷路では無いが十二の部屋に別れており、その一房ごとが一つの神の神殿とされるのだが、なにしろ奥行きが深過ぎて日の光が届かない為、一番出口に近い房二つを神殿としている。トリバル峠を聖山側から眺めると、大洞窟の裏側が見え、なにやら得体のしれない構造物の集合体が確認できるのだが絶壁の真ん中に突き出している為に、誰も訪れた事が無い。

 神聖神殿都市には神官巫女が3000人ほど常時生活修行しているが、他に従者や奴隷が大洞窟の外に街を作り、巡礼者の世話をしている。十二神の間に上下の差は無いとされるが地上の権力の都合によりゲジゲジ神、カブトムシ神の勢力が強く、独自の塔を立てて覇を競っている。一応は自治都市なので、警備は神官戦士団が行うが、実戦経験を買われ交易警備団出身者も多い。神秘教スガッタの僧院はここから少し離れたひなびた所にあり、修行の為に俗世を離れたことになっているが、生産活動は教義で禁止されているので神聖神殿都市からの食糧の供給が無いと生きて行けず、完全な自主性は持っていない。

 神聖神殿都市の最高権力者は、十二神最高神官が互選で神通翁(嫗)という神官の長を選ぶのだが、通常メンバーの中での最高齢者なので、だいたい5年は保たない。よって実務を取り仕切り祭祀を企画運営する神祭官という役職が事実上の最高権力者。

神祭王:聖職 ゲジゲジ神カブトムシ神の最高神官の代理。神官巫女の最高位は十二神最高神官であるのだが金雷蜒王国と褐甲角王国は神がそのまま地上に在るということで、ゲジゲジ神聖王と褐甲角王が最高位神官と看做される。神聖神殿都市には最高神官が常駐する必要があるのだが、この二神は代りとして祭王と呼ばれる神聖王武徳王の代理人が最高神官を務める。また二大神を他の神と同格にするのは不適当で政治問題化しやすい、ということでそれぞれの神殿としての街を築き住まわせた。神聖金雷蜒王国時代にはこの制度は無く、褐甲角王国時代になって宗教権威上の対立が発生した為に妥協案として成立する。

神宰官:聖職 神聖神殿都市の自治管理、経理を司る実務上の最高責任者。位としては、法神官権神官の下と看做される。要するに、各地方神殿を預かる神官長の長であるわけで、結局は大神官でしかない。ただしその裁量権は絶大で、財務から建築・警備まで任されるが、神官巫女の懲罰権はカニ神殿に属するのでその権限は無い。一国の宰相と同等の権力を持つので、聖蟲を持たない者が出世を考える際に到達する最高位として見られている。腐敗も多いので常にカニ大巫女が付き従う。どの神殿から選ばれるというのは決まっていないが、慣習上金雷蜒・褐甲角・夕呑螯の神殿は辞退する。

王神女: 褐甲角王国において神聖王宮の上の褐甲角神殿に仕えるカンヴィタル家の王女。役目は金雷蜒王国の王姉妹と同じで、聖蟲の繁殖と巨大褐甲角神との交流。生涯独身という点も同じ。

託宣: 地上における十二神の化身である巨大ゲジゲジ、カブトムシと聖蟲を通じて接触しその意志を聞く行為。金雷蜒王国神聖首都ギジジットでは王姉妹が「金雷蜒の雷」を用いて、褐甲角王国カプタニア神聖宮殿上神殿では王神女が聖蟲の翅の羽ばたきの振動音を用いてそれぞれ交流する。が、あまり明瞭な意志は得られないもので、ほとんど政治的には機能しない。

十二神神官巫女:神職 神座の十二神に使える神官と巫女。タコ女王時代に整備された民衆に奉仕すべき存在として位置づけられた。為に現在までは特殊な階級として身分制度に組み入れられた事が無い。むしろ、奉仕をしない僧侶の方が特権を得ている。その身分的自由さによって金雷蜒王国褐甲角王国双方を無制限に行き来する特権を得ている。それぞれに仕える神によって職務が決まっていて、他の人間はこれに携わる事を許されない。基本的には巫女はその生地の地元の教育機関で巫女としての技術と教養を身に付けるが、神官は聖山の神殿都市で長年月の修行をしたのちに俗世に降りてくる。よって神官が巫女を指導し教化するのが常だが、巫女には生来の超能力者という者が居り、この場合は修行に関係なく超能力者の方が立場は上になる。神官と巫女の結婚は普通に行われるが、その他の身分の者との婚姻も特に制限は無い。但し金雷蜒王国においては神官及び巫女の産んだ子は配偶者の身分に関係なく特定の神職バンドに編入され独自の教育をされ次代の神官巫女となる。

 

【神官位の説明】

 十二神方台系の総人口は現在250万人程度と推測される。神官巫女はその1%2万人程度しかいない。その他、神殿の警備にあたる神官戦士と神聖神殿都市で十二神の教えを学ぶ学生を合せても4万人程度である。かなり少ない。なぜならば、十二神信仰は信者というものを必要としないからだ。現に地上に神があり、神族や神兵が世界を統治するこのシステムにおいて、神の実在を疑う者は居らず、信者管理の為に必要な役職も存在しない。また財務に関しても民間の篤志家が管理そのものにまで奉仕する、浄財の寄付を地域ごとにとりまとめて神殿に献上するので、十二神それぞれの本務から逸脱する必要が無い。神聖金雷蜒王国時代に十二神神殿が徹底管理され独自の行動を取れないようにされた名残で、ぎりぎりまで人数を削ってもやっていけるように組織が作られている。

 神官の位は、十二神神官の統一した長である神通翁(嫗)、それぞれの最高神官である法神官法神女が一位、神聖神殿都市にあってそれぞれ神官巫女を束ねる権神官権巫女が三位、地方にあって聖務神殿を取り仕切る大神官巫女が三位、下っ端の神官巫女、学生の神官と見習い巫女となる。

 神官の長であり王である神通翁(嫗)は男女を問わずに十二神信仰を守るにふさわしい霊格と威厳を備えた者が法神官神女から選ばれる。男女どちらでもよいが一人のみである。

 法神官神女は聖蟲を持つギィール神族や黒甲枝と同格であると看做されて、両王国からも篤く遇される。が、逆にそれ以下の神官巫女は聖蟲を持たないただの人として扱われる事になる。 法神官は基本的に最高の学者であり高齢者が多いが、法神女は霊能の最高者であり若くして選ばれる事も多く当然任期も長いので、法神女の方が民間の信仰は篤い。

 権神官は上中下の三位あるが、これは昇進年次による区分で基本的に責任の違いは無い。また常に三人のみとなり、大神官三位のように多くは居ない。権神官は神聖神殿都市において十二神信仰の教伝の維持と研究に携わる責任者であり神官教育の長である。故に彼等の意志は絶対であり、また権神官の長である法神官を選ぶ権利も彼等にしかない。権巫女も三位三人居るが、教伝の解釈研究には携わらず聖務を束ね霊能を育て見守る役を受け持ち、通常は権神官の意志に従う。が、法神官の選出には権神官と同じ権利を持ち、彼彼女等の全員一致を以って法神官を定める。しかし法神女は権巫女のみの合議で選出され、その時代で最高の霊能を持つ者が修行の年限を問わず選ばれる事が多い。

 大神官は地方にある聖務神殿の責任者であり、当然神殿の数だけ存在する。大都市にある神殿には三位あるが、小都市には一人だけという神殿も少なくない。大神官は神殿責任者、財務責任者、聖務責任者兼神官巫女取締まり、の三位であり、神殿責任者が長を務める。大巫女は彼等に従うものだが、実質聖務を取り仕切るのは彼女達であり、神官は教義に基づいた祭礼を主に受け持っている。

 大神官巫女に率いられるのが最下層の神官巫女、見習い巫女であり、毎日を聖務で忙しく送っている。基本的には、神官は一度神聖神殿都市で神官教育を受けねばならず、皆一応の学識を備えてからでないと神官として働く事はできない。が、宮殿でカタツムリ巫女によって養われる孤児が、その就職先として実務系の神官へと斡旋される例も多い。特に芸事を聖務とするタコ・蝉蛾・カタツムリ、杜氏であるカエル神官はその出身者が多い。巫女は希望者がそのまま見習いとなり、聖務の手伝いを通じて素質を見極めて採用されるが、特殊技能や才能または霊能を有する者はそれぞれの巫女がスカウトしてくる事が多い。ただしカニ巫女は別で、不良少女を拾い集めて徹底的に根性を叩き直す、という任務の中から適任者を選んでいる。

 地方の聖務神殿に仕える者はそのままでは大神官以上には成れず、権神官になる為には神聖神殿都市で教伝を研究する事が必要である。彼等は天究神官と呼ばれ身分的にはヒラの神官である。その研究は自費で行わねばならないので、事実上権神官に成れる者は実家が裕福な者、出身身分の高い者となる。巫女は霊能と知識技術によって抜擢されるので、その限りではない。

 神官戦士は実質はただの警備員である。無論神殿に仕える者であるからには、それなりの教養と教義に対する尊敬が無ければならず教育も為されているが、その本義は神殿と神官巫女の警護である。ただし、両王国の秩序にとって独立した武装集団が存在するのは許されないので、神官戦士はあくまでも信徒がボランティアで単独で集った者達という位置付けになっている。その為に集団戦闘の訓練を行う事は出来ず、兵としては使いづらい。ただ、個人の武術を極めた者も中には居り、彼等に教えを乞いに行く武人も少なくない。どの神殿で警護に付こうがボランティアであるから縛りは無いのだが、それぞれの神殿が相互に連絡を取ってその配置を定めている。給与は無い事になっているが、ちゃんとある。

 権神官は教義の研究と神官の教育に専念する為に、十二神神殿を運営する事には関らない。神聖神殿都市にも、ここの施設を維持管理する為に大神官が存在しており、それらが一つとなった組織を作っている。この組織の長が神宰官であり、神聖神殿都市における市長のような役割を持つ。当然都市内部の警備についても責任を持ち、神官戦士隊の指揮権の最上位にある。神通翁(嫗)が王とすれば、神宰官は宰相と看做す事も出来る。その権限は大きいが、反面その人物は教義研究から外れた事にもなり、権神官となる事は無く当然法神官にも成れない。
 なお、この役職は腐敗する事が多く、その監視の為にカニ大巫女が傍に付き従い助言を与える事が定められている。

 神聖神殿都市における神官戦士の長は、守護監軍と呼ばれる。この任は外の世界で実際に兵を率いて居たものが引退して神聖神殿都市に身を寄せるという例が多く、驚くような人物が務めている事もある。

神官戦士:職業 十二神の各神殿に所属する戦士。その職務は基本的には警備員であり、表立っての戦闘行為というのはほとんど無い。金雷蜒王国時代には、神族以外の者が戦闘員を独自に抱えることが禁止された為に、神官が各個独自に武装してボランティア的に警備にあたる、という歴史的経緯がある。個人個人の武術的な技能が高い者も存在はするが、集団として戦闘する訓練をほとんど受けておらず、兵士としてはあまり有効ではない。それゆえに戦闘集団として警戒されることも免れて、金雷蜒褐甲角両王国が対立する中立地帯に武装して移動する事も許されている。現在では彼らのほとんどは、カタツムリ巫女が運営する孤児院の出身者である。

神秘教スガッタ:宗教 十二神信仰とは別の宗教。と言っても元は聖山の十二神神官修行者の間で生まれた密教系の技術で、聖蟲無しでも超能力を得る方法として根強い人気がある。非常に過酷な苦行と修行を要する「破法」と、瞑想と踊りと気を錬ることで体質を換えて行く「纏法」とがあり、「纏法」の方が民間に流布している。効果の程は確かに怪しいのだが、妙な気迫を持った人物が多い。「悟り」の概念は無く、自らの身体から霊体が抜け出して天空に舞上がり、十二神に直接対面して、地上に黄金の精霊と化して戻ってくるというのが奥義。頭に何の飾りも付けずつるつるに剃り上げて、聖蟲が居ないことを視覚的に強調する。低位の世俗に近い僧侶は超能力よりむしろ体制批判をして、世人の注目を集める。

 スガッタ教宗殿は神聖神殿都市の20キロ東にあり、凄まじい山奥で一本の道以外に行き来が叶わない。スガッタ教の僧侶は十二神の教伝を研究した結果、独自の境地を見出して分派を図ったものであり、その教義は十二神からの独立にある。つまりなぜ十二神が人間を導くかといえば、人間が弱く未熟で無分別であるからに他ならない。十二神の計画の最終目的は、人類の完成であり、神の援助が無くとも生きていける世界を作り上げる事に有る、と見做し、その完成された人間の魁となる為に厳しい修行を重ねて、聖蟲も天与の霊能も無しに、超能力を身につける事が教義となる。その修行は過酷を究め毎年死者も出るという。当然彼等には生活を支える基盤が無いので、神官戦士達が毎月食糧他を山道を通って運んでいく。スガッタ教の宗殿は十二神方台系では珍しい女人禁制となっている。
 スガッタ教の僧侶は深山での修行を終えると山を下りて、方台の随所で辻説法の旅をする。この説法はだいたい社会批判となり体制の矛盾の告発となるので、どこでも迫害される。だがそれ故に人の注目を浴びて、修行を志す者も現われる。また十二神神殿の聖務に対しても批判する事も多く、神官巫女の統率と守護を任務とするカニ神官巫女と衝突する事も多い。

ガモウヤヨイチャン:称号 トカゲ神救世主の称号。もちろん蒲生弥生ちゃんのことである。弥生ちゃんに、地球の日本ではエライ人は初代の名を代々引き継いでいくものだ、と知らされてそのとおりに弥生ちゃんの名を継いだ。ちなみにこの世界の人間は「チャン」までも含めて弥生ちゃんの名前だと理解していた。

隠者:宗教 世の中を離れ、一人で十二神の作った大地に自然の声を聞いて生きる人。神秘教スガッタの僧侶とは異なり、瞑想はするが修行はしない。頭にガラスで作った聖蟲の飾りを付けていることが多い。ネコと共に暮らすことが多く、世界のあらゆる事を知る。あるいは、ネコと仲良くなり過ぎて人界を放り出されてしまったともいう。ギィール神族、あるいは神官上がりの人も多く、様々な技を知っていたりする。女性も居るのだが、タコ巫女や蝉蛾巫女だったりしてまぎらわしい。

ウオールストーカー:神 トカゲ神の化身。初代蒲生弥生ちゃんをこの世界に招き入れ、その額に取り憑き、救世主としての役目を果たさせた。以後第三代の禾コミンテイタムの額に乗って教皇に聖なる力を与える。それまでの聖蟲と違い、器物に霊力魔法を与えるエンチャントの能力を持つ。正式名は”北方の大氷壁を巡回して護る冷風の源にして招き手であるトカゲ神”であり、これを弥生ちゃんが適当に訳した為に、ウオールストーカーと呼ぶ。最初出現時は全長30メートルの直立する大トカゲとして荒野で弥生ちゃんと会った。

スペキュラーペイン:神 トカゲ神の化身。二代メグリアル劫アランサが弥生ちゃんから頂いたトカゲ神の聖蟲。青緑色の金属光沢が神々しい。劫アランサが王庭で処刑されそうなところを天空から飛来した弥生ちゃんに救われ、二代トカゲ神救世主として認めさせる為に、ウオールストーカーが召喚した。実体は全長10メートルの巨大トカゲで青い炎で燃えている。ウオールストーカーとの能力の差はほとんど無いとされるが、エンチャントの能力は使わず、手元の道具をその都度神器としてさまざまな能力を発現させる。そのため劫アランサが使った御物はソレ自体には能力は残されていなくても宝物とされた。ときどき頭から離れて花(に止まる羽虫)を食べる。その癖で後に劫アランサは命を落とすこととなる。

ムーヴィンテイル:神 トカゲ神の化身。来ハヤハヤ・禾コミンテイタムが弥生ちゃんから頂いたトカゲ神の聖蟲。尻尾がウオールストーカーの倍も長い。背が茶色に輝き、十二神方台系には居ない種類のトカゲを模している。自力で攻撃する能力を持ち、口からなにか尖ったものを吐き出すのだが、着弾と同時に消滅するので不明。音楽が好きで良く踊る。長い尻尾は通常半分ほど巻いている。一度尻尾が切れて再生しており、その尻尾が大切にトカゲ神殿に保存されている。禾コミンテイタムから四代春ミスカモゥネに譲られて、以降皇主の額に住まうことを慣例をする。

プレビュー版青晶蜥神救世主: 蒲生弥生ちゃんが毒地に潜入する際に目くらましの為に作った自らの贋物。しかし神威を帯びた剣を用いて人を癒し、青晶蜥神救世主の降臨が確かにあった事を東金雷蜒王国に宣伝して回った為に、独自の崇拝を受けるようになった。偽弥生ちゃんを務めたトカゲ巫女見習いッイルベスはデュータム点において難に遭い、命を落とす。その墓には彼女が用いた神剣が添えられて長く人々の信仰を集めたという。この試みの成功が、後に青晶蜥神皇主の全国巡回という制度を産んだ。

救世主神殿: デュータム点のトカゲ神殿は弥生ちゃん降臨後「救世主神殿」と名を換え、弥生ちゃんの為だけに用いられる事となる。その後トカゲ王国樹立まで、弥生ちゃんは拠点をデュータム点近郊、もしくは近隣の古都テュクルタンバに置いたが、一貫して事務処理機能はここ救世主神殿に置かれた。
トカゲ王国樹立後はトカゲ神殿本来の業務である病院機能をもっぱらとする姿に戻ったが、宮殿の造営はなかなか進まず、二代メグリアル劫アランサは救世主神殿をそのまま執務の場にも用いた。完全に神殿としての機能のみに戻ったのは劫アランサ退陣後。
ここの中央祭壇には、弥生ちゃん設計の「青晶蜥神救世主の玉座」の試作品がある。正式にトカゲ王国宮殿が建設された際に作られるはずの、「巨大な岩盤を抉って作られた椅子」の試作モデル兼当座の間に合わせ、で煉瓦の壁を漆喰で埋めて作られた。ここに弥生ちゃんが悪ふざけでぽんと座った際に弥生ちゃんに憑依している巨大トカゲ神の鱗痕が壁面に穿たれ、この場所自体が聖地になる。後世ではこの玉座を中心とした弥生ちゃん記念博物館としての機能が重視された。
関連施設として、「プレビュー版トカゲ神救世主ッイルベスの霊廟」があり、長く神剣による治癒が行われた。

人喰い教:宗教 旧ネズミ神信仰に基づく古い世代の宗教で、主にアウトローの間で信仰されている。現在は正式名を『貪婪』と自称する。
十二神信仰とは違い、オーラや魂というものが物理的存在として肉体に宿り、それを直接摂取することで強力な霊力を身につける事が出来る、というのが教義の根幹。つまり、神が神である由縁を説明した最初の宗教であり、その実践が人喰いで、またより強力な霊力を得る為に特別な人間、神兵やギィール神族をも食べようとするので、両国から見つけ次第に抹殺せよという法律や命令が出来ている。トカゲ神救世主蒲生弥生ちゃんは現在最も食べたい人物。 紅曙蛸王国末期には「火焔教」と称す一派もあり、大いに隆盛を極めた。
人喰い教団に関しての詳しい説明はEP4 第二章冒頭を参照のこと。

 人喰い教団の役職は、天寵司祭を頂点として執行部である切配主が複数居る。生贄の首を切る斧頭手。人肉を煮る湯釜司、血を受ける赤杯子、髪の毛を剃る刃禿子、等々人を食べるのに必要な作業の手順が与えられている。
人喰い教団の経典は秘蹟について書き記された暗号でもあり、真っ赤な大山羊の革に装飾過剰の特殊な文様と文字で表面一杯を埋め尽くすように大きく書かれており、非常に禍々しい。

聖蟲との交信 聖蟲を額に戴く人は、聖蟲となんらかの意思疎通を行うが、言語によってではない。ゲジゲジの聖蟲は知識を直接脳に送り込むが、聖蟲自身の希望や意見などを伝えたりはしない。そういう時は手で額をぽこぽこ叩いたり姿勢を換えたりと、非言語コミュニケーションを用いる。ただし、それぞれの初代救世主のみは別で、直接会話をすると伝えられるし、現に弥生ちゃんはお話ししている。

方位測定 聖蟲は自分がどちらの方位を向いているかを自動的に知る。これは天空北極に存在する人工衛星からの電波によってなされるが、これが妨害されると方位を見失う。秘蹟と呼ばれる人工物の遺跡や天原などではこれにより方位が分からない。人工衛星から出る電波は後に弥生ちゃんが鉱石ラジオを作って確認したが、内容はデジタルだったので意味不明に終った。

ギジシップ神聖宮の壁 神聖宮に聳える直径300メートル高さ70メートルの円筒形の壁。鏡面仕立てになっており、昼間は青を夜は闇を映して天に溶け存在が無いように見える。その実態は神聖首都ギジジットに在る巨大金雷蜒神から放出されるエネルギーを遠隔の地で受信し、内部の空間を聖蟲野繁殖に適したものにする効果がある。レクテナ。構造は円形に並んだ木製の塔の間を、銀タコ石を薬品で溶かした透明の糸を育成中の聖蟲が遊び半分で絡げていくことで出来る。パワーを受信するだけならばこれほどの大きさは要らない。ものすごく固い。

『文字の間』 カプタニア神聖神殿に有り、聖戴者の死亡により解放された聖蟲が戻ってきた時にこの部屋に入り、テュクラ符が記された箱に入って誰が死んだかを特定出来る仕組みになっている。聖蟲は文字をちゃんと読めるので、このシステムを用いれば交信すら出来るのだが、人間にとって分かりやすい言葉を発するとは限らない。

 

軍事事典

凌士:軍事 一般兵士のこと。広義では凌士を指揮する剣令をも指す。この世界では「兵士」という語は装甲兵を意味し、自前で甲冑を用意する職業軍人を指すが、あまり使わない。凌士、凌士夫、凌士率、凌士長の四階級がある。

凌士監、大監、統監:軍事 凌士を取り締まり監督する役職。戦闘指揮は剣令の役目であるから、主に凌士の徴兵、指導、教練、福利厚生、あるいは憲兵として軍隊生活全般を管理する職業軍人を言う。一番上の凌士統監の階級は大剣令に匹敵するが、あくまで戦争指揮は剣令が優先する。

剣令:軍事 一般兵士を指揮する小隊長。広義には小隊・中隊・連隊の指揮官も意味し、それぞれ小剣令・中剣令・大剣令と呼ばれる。一般兵士から大剣令までを「凌士」と呼ぶ。

剣匠令:軍事 剣匠の小隊を指揮する隊長。剣匠はプロフェッショナルの戦闘技術者のことで、剣匠令はいわば特殊部隊指揮官と看做すことが出来る。黒甲枝の剣匠令は通常小剣令以上の位を持っているので、100人は指揮出来るが、平民出身の剣匠令は部隊のみの指揮官。

兵師監:軍事 一軍を指揮する将軍のこと。兵師監はその中でも最少の3000人以上、歩兵弓兵工兵輜重兵の完備した軍勢を指揮し、独自に陣を敷き開戦することを許される。大剣令四名以上を指揮下に置く。占領行政を行う権限も持つ。

兵師大監:軍事 将軍のこと。兵師監の上で1万人以下の軍勢を指揮する。通常兵師監二名以上を指揮下に置く。この世界は軍勢そのものがさほど多くなく、最大動員時でも30万人以下だったので、1万人を指揮する兵師大監といえば、ほとんど一軍の総指揮官と思っても間違いではない。通常は貴族や神族、聖蟲を有する者で無ければなることが出来ない。
大審判戦争時、褐甲角王国においては中級指揮官の不足が重大な障害となり、兵師監が実質中級指揮官の上位へと格が下がり実動部隊を直接預かる事となった為に、兵師大監は前列と後列の二階級へ分けられた。また特に重要な部署には主席大監と呼ばれる兵師統監に継ぐ特別な位階が出来た。

兵師統監:軍事 最高指揮官のこと。兵師大監の上。軍事を統括し、作戦を最終決定する権限を持つ。この世界では軍事力はたいてい王宮や神殿、元老の下に置かれ、兵師統監に命令を出して直接は王族や大神官は関与しない。ゆえに最高指揮官ではあるが、最高権力者では無い。

鐡甲兵:兵種 いわゆる黒神兵。聖蟲を額に頂く者が専用の無敵の甲冑ヴェイラームを纏った姿。ほぼ完璧に無敵であり、怪力を以って巨大な破壊力を有す。しかし重量が重過ぎる為に徒歩での移動手段しかない。走行速度自体は時速30キロにもなるが、一度勢いが付くと止まれないので、長距離走での移動以外は走らずにひたひたと接近する白兵戦闘を得意とする。故に鐡甲兵が集団で隊列を組むと、いかなる軍勢もこれを阻めないという。

三兵: 軍事における三つの権限。軍兵(作戦行動・計画立案)・工兵(陣地構築・施設管理・放棄)・糧兵(物資供給・購入備蓄・輜重)を指す。またそれぞれにおいての人事権も含まれ、軍資金の使途決定も含まれる。これを総て持つには兵師監以上の位が必要である。

甲騎兵:兵種 赤甲梢の兎竜を駆る騎兵。専用甲冑ソルヴァームを装備する。赤甲梢は黒カブトムシ兵のエリートコースから外れ、ひたすら戦闘集団としての実力に特化した最強の精鋭であり、品種改良を施された赤い羽根の聖蟲を額に持つ。兎竜に騎乗しての高速戦闘を得意とし、ギィール神族が駆る巨大ゲジゲジ”ゲイル”のヒットアンドアウェイ戦法に唯一対抗出来る戦力。

甲凌士:兵種 クワアット兵。褐甲角王国正規兵。エリート兵であり、一般兵としては最高レベルの武装をしている。各地からの選抜制で入隊し、組織的近代的な調練によって集団戦に完全に対応したプロフェッショナルな戦闘が可能になる。五年程度で一応退役し、各自の出身地に戻り、邑兵の指揮指導を行うのが慣例。一部は能力を見込まれて上級指揮官となる教育を受け、一般人出身からでも大剣令にまで出世出来る。更には武術で傑出した才能があれば赤甲梢になる例もある。

邑兵・邑衛士:兵種 褐甲角王国の地方を守護する地元の警備隊。地元で選抜された男子を組織してクワアット兵の指揮下、防衛に当たる。弱兵ではあるが、全土が金雷蜒王国と直面しているわけではないので盗賊退治や防災に役に立っている。この中から特に優秀なものを首都カプトニアに送ってクワアット兵に入隊させ、数年後帰って来た者が邑兵を指揮する、というサイクルを持つ。武装は貧弱だが、主兵器である槍と弓をクワアット兵出身者が使う為に侮れない。
邑兵は邑兵見習い、邑兵、年長邑兵、邑兵頭、邑兵団長に分けられるが、これはほとんど年功序列で決まり、邑兵団長以外はただの邑兵として、黒甲枝クワアット正規兵は扱っている。

上将・列侯:呼称 ギィール神族の軍隊は合議制で運営される。大規模遠征の場合は別に将軍職があてがわれるが、ギィール神族が20人以下の場合は、年長で経験の深い者が自動的に最高指揮官に決まる。ただし最高指揮官といえども他のギィール神族を処罰する権限は無い。故に合議制で最も蓋然性の高い判断が採用され、それに従ってマニュアル通りに作戦が決定される。これはそれぞれのギィール神族が優秀な能力と聖蟲の力で十分な情報を得ているという暗黙の了解の上にのみ成り立つ制度である。この時の最高指揮官を上将と呼ぶが、公式にはたんなる責任者として記録される。列侯はそれ以外で従うギィール神族。

兵学校: 黒甲枝の子弟のみを対象に教育する幼年軍事学校。8歳から16歳までをスパルタ教育で軍人として鍛え上げる。ただの軍人ではなく、黒甲枝は庶人の手本となり国を治める事にもなるので、倫理道徳や文学等の教養も、また軍事に活用する為の科学技術も教わる。入学資格は黒甲枝の直接の子弟で養子は不可。ここの卒業生の半分は後に聖蟲を戴いて世襲の黒甲枝の神兵となるので、異分子をまぎれ込まないようにしている。ただ長子とそれ以外の子の区別はしないので、兄弟のどれが聖蟲を戴くかはその時ちゃんと生きており軍務を十分に果たせるもの、となっている。この世界では歳は数えで勘定するので、卒業時に全員が揃って16歳になる。その後、卒業生はほぼ全てが近衛兵に入営して小隊指揮官としての訓練を受け、一年半後に前線に赴任する。  

旗団長: 褐甲角軍の聖蟲戦闘部隊の小隊長。赤甲梢兎竜部隊、海軍強襲部隊、毒地突撃隊で主に使われた区分で、色の違う旗を目印に黒甲枝赤甲梢のみで構成される非常に強力な小戦隊が独自に活動する事を許している。

神裔戦士: ギィール神族は霊薬エリクソーの服用によって常人を越える能力を持つ肉体を手に入れているが、聖戴の試練をクリア出来ずに神族になれなかった神族出身者が居る。彼らの戦闘力は聖蟲によって補正されるものを除き、ほとんど神族と同等である。その能力は獣身兵に匹敵するが、集団戦闘には適さない。気位は高く他人に指揮されるのを拒む傾向があるので、あまり有効な戦力とは看做されないが、個人個人ではかなり強い。

傭兵市: 毒地内にありギィール神族に兵と武器と物資を供給する拠点。常設のもので5箇所、すべてが毒地の東側ッツトーイ山脈の麓の毒を浴びない位置にある。神族であれば、ここに新兵器を持ち込んで売る事も出来、アイデアを実利に転換する場所でもある。寇掠軍の資金も貸してくれる。

合言葉 褐甲角軍の合言葉は「問」「応」「返」の三つで成り立つ。通常「返」は使わないが、前二つがバレていると思われる時にこれで問い返す。「返」は質問である事が多く、ジャンルをあらかじめ決めており、妙な質問が出た場合はすぐにバレるように出来ている。

海賊 海賊は方台において三種有り、「武装商船」「私掠船」「軍船」と分けられる。
 「武装商船」は通常の商船が武装したもので或る程度の財貨を運ぶ船はすべて兵員が乗っており、機があれば襲撃も行う。
 「私掠船」は本来の意味の海賊で、商船を掠奪して財貨と人員を捕獲し、またそれを防ぐ事を生業とする。
 「軍船」は国家によって設立された海軍によって運用されるもので、最初から戦闘艦として設計製造された船を用いて法に基づいて襲撃を行う。
 すべて海賊のくくりで構わないが、東金雷蜒王国のギィール神族が組織した海軍は王国の統制から離れて独自に活動する為、法の縛りが効かない。事実上海の独立国となっている。

 

社会制度事典

外交使/外交司: 外交官。外交司は大使や外務大臣にあたる役職で、王の使者の頭である。金雷蜒王国東西神聖王・神祭王、褐甲角王国武徳王と三王の下にひとりずつ居り、神聖神殿都市と新生紅曙蛸王国では聖蟲を持たない人物が務めるので外交頭と称するが、必ずしも聖蟲は必要無い。ギジジットの王姉妹は伝統的にゲジゲジ神官を用いる。十二神方台系の慣習では使者はしばしば斬られるので、なかなかに曲者が揃っている。青晶蜥王国では弥生ちゃんが居た時期には弥生ちゃん本人が交渉を司ったので、外交司は定められなかった。

戸籍: 戸籍制度は金雷蜒褐甲角両王国とも完備しているとは言い難い。また王国自体がこれを行った事も無い。金雷蜒王国においてはバンドの自己申告が、褐甲角王国では蜘蛛神殿に登録された記録と各町村の自治会議の人別帳を元にしているが、難民や漂泊民、タコリティ等の無法都市、神官巫女等神職および神族や王族に仕える特殊階層民は考慮されていない。弥生ちゃんは戸籍制度と国勢調査の重要性は詳しく説明して実施するように促したが、完全に満足できる形でのものはトカゲ王国成立後400年にようやく出来上がった。

食糧備蓄制度: 弥生ちゃん降臨に先立つ事100年前、十二神方台系は未曽有の寒冷気象に見舞われた。「チューラウの予言」と呼ばれ青晶蜥神救世主の到来を予告したものと理解されたが、5年にも及んだ不作によって大規模な飢餓が発生し、方台の人口は1割近くも落ち込んだ。この時の記憶から、金雷蜒褐甲角両王国は食糧の備蓄を積極的に働き掛けるようになり、法令を定めて各地の軍事拠点に大規模な食糧倉庫を設けるようになった。だが近年はその教えも薄らぎ、備蓄倉庫を舞台とした不正もしばしば見られている。

交易警備隊:武装集団 各地を巡る交易行列の道中を警備する私設軍隊。その起源はタコ女王時代にまで遡り、本来はタコ女王直属の組織だった。その後紆余曲折を経て形態を様々に変え、現在は褐甲角王国体制の下で民間の武装警備隊として活躍する。これは商人の資本・支配力が増強されたために公的サービスによらず運送の警備にプロフェッショナルの武装集団を雇うことができるようになったからだ。私設軍隊とはいえ、中にはプライドを持って規律の正しいれっきとした軍隊もあるが、ほとんど盗賊というものまでさまざまなグレードがある。タコシティの警備はすべて交易警備隊によって行われ、また武器を調達したり要員を募集したりする基地ともなっている。
交易警備隊の隊長と言えば、女たらしの伊達男、奇妙で派手な服装をしていると相場は決まっている。ただし彼らは下っ端まで含めて、長期間徒歩で旅を続け歩き続けるので、最も歩きやすい姿勢を取り、あまりかっこよくはない。

昇殿席次: 宮中において、神族や黒甲枝が並ぶ順序。ギィール神族も黒甲枝も、互いは同格で上下の別は無いと考える。故に彼らは平等なのだが、王国に対する貢献度は流石に認め、席次において表現するのを許容する。元々神聖宮殿に寄りつかないギィール神族には大して意味のあるものではないが、カプタニアにおいてよく集まる黒甲枝には宮中に上がり武徳王の前に並ぶ順序は家の格を示す唯一の目安であり、非常に重視されている。軍や政府の役職には左右されないが、高位を得ればそれだけ重たい役目を負い王国への貢献を為すのは間違いなく、自然と順位も上がっていく。赤甲梢は最下位。

褐甲角王国: 聖なるカブトムシを額に戴く軍人階級を主体とする軍事国家。正式名称は「褐甲角の神軍により導かれる正義と公正の王国」で、「クワアット・カブトゥース(樹)」とも言う。神聖金雷蜒王国時代末期に現われた褐甲角神の救世主を祖とし、ギィール神族から奴隷とされる民衆を解放し、金雷蜒王国を打倒する事を目的として戦っている。聖蟲を戴くという特別な徴があるのだから神族と呼んでも差支えないのだが、自らの使命を忘れないようにその名は避け、通常「黒甲枝」と呼んでいる。カブトムシの聖蟲を戴いた人間は非常に頑健な肉体と100人力の筋力・持久力、五感の向上を得る。更に、聖蟲から発せられるオーラを封じ込める特別な鎧や衣服を身に着けることで、いかなる攻撃も受けつけない無敵の戦士「神兵」となる。ただし、軍人として幼少より厳しく育てられる為に思考が固く保守的で融通に欠けるところがある。信義に厚く法を固く護り約束を破ることが無く決して退かず悪を許さない、とされる。金雷蜒の聖蟲を持つギィール神族とは異なり、知的能力の向上や未知の知識の提供は受けないので、頭を使う分野においては常人。故に知的に優越する金雷蜒王国と対抗する為に、人文分野に多大な労力と資金を注ぎ込み、十二神方台系における文系分野に長足の進歩をもたらした。

金翅央人: 褐甲角王国における最上層の階級。王族も含む。武徳王と呼ばれる世襲の絶対的支配者の下に、親族である世俗の王家と、それを支える元老院を構成する少数の家系からなる。現在では品種改良により金色の甲羽を持つ聖蟲を額に戴き、甲虫の翅翼を模した服装をして超然たる立場から王国の最上層の政治を司り、法を定めている。王族は赤金色の聖蟲を戴き、白金色の聖蟲を戴く元老は「金翅幹」家と呼び56家で成る。法制度上、軍部は武徳王のみに従い、金翅幹の元老や王にはその権限が無い。代りに官僚群を従える。また、王家の者は配偶者を金翅幹家から選ばねばならないと定められている。黒甲枝の中で目覚ましい功績を何代にも渡り示して来た家は、推薦されて元老院に迎え入れられるが、軍務からは隔離されるのでその栄を断る家も多い。

黒甲枝: 黒茶色のカブトムシの聖蟲を額に戴く神兵とその家系に連なる者。代々褐甲角軍の中核を務め最前線に立ち、また民政をも支えて来た。無双の怪力と不死身の肉体を備え、更に極めて厚い装甲を持った専用甲冑を使用して、金雷蜒軍に対して圧倒的な戦績を誇る。武勇のみならず政務においても訓練されており、法律を執行し治安を維持する衛視としても活躍する。黒甲枝は基本的に、民衆の解放者庇護者としてあり、直接に民衆を指導して生業を経営したりは無い。約1200家1500名が登録される。基本的には、いかに功のあった者であっても、聖戴の継承権を与えられる事は無い為に、黒甲枝の家に養子に入るか分家となるか以外には家が増えたりはしない。

赤甲梢: 赤い甲羽のカブトムシの聖蟲を額に戴く神兵およびその経験者。狭義には、ボウダン街道に在る赤甲梢錬兵団を意味する。赤い甲羽のカブトムシは通常聖戴資格の無い黒甲枝の次男三男に特別にその武勇知性と忠誠を認めて授けるものであり、特に武勇において尋常ならざる者であれば黒甲枝出身者以外のクワアット兵からも抜擢される事がある。また近衛兵団に属する紋章旗神兵団の赤甲梢は、親の代に事情があって親類や伯父等に聖蟲を譲り、継承に適した年齢になったにも関らず正常な継承が行われずに待機している継嗣が集められている。赤甲梢は一般的に武術を表看板としており、特に赤甲梢錬兵団では激しい演習が繰り広げられ、更には兎竜を用いて金雷蜒寇掠軍をすら追跡し撃退する。また装備や戦術の実験も行って褐甲角軍の最前衛にあたる存在だ。紋章旗兵団以外の赤甲梢は隊を引退すると同時に聖蟲を返還して、通常一般人の軍人か官僚となる。身分制度的には赤甲梢経験者は単に年金が与えられる程度で特権も無く兵師にもなれないが、その武勇を見込まれて後継ぎの無い黒甲枝に養子に迎えられたり、また民間の富豪が特にと望んで姻戚関係を結んだりとステータスはかなり高い。現在300名が居る。

赤翅葉冠紋:赤甲梢の旗印。赤い地の旗に緑の若葉の梢を冠の様に編み、その上に金糸でカブトムシの透ける翅があしらっている。

巡視:行政 警察のこと。おもに一般人・民間人を取り締まる。褐甲角王国で初めて作られた組織で、それ以前は私設あるいは神殿に雇われる警備員が務めており、裁判と刑の執行も同じ組織が行っていた。これを分離し刑事事件を独立した組織が取り締まるようにしたのは、カブトムシ救世主の発明。巡視は下位はもちろん中位の階級までも聖蟲を持たない普通人が採用されているのが特徴。故に軍や衛視から一等低く見られることが多い。集団での野盗は軍が討伐する。階級は巡司(司、夫、率、長)、巡視(小中大)(監、大監、統監、長)

衛視:司法 司法組織。裁判と刑罰の執行、政府施設の管理を行う。現実的な法制度は褐甲角王国時代に確立し、それ以前は法は条文も少なく形式的儀式的に運用されていたに過ぎなかった。これが実行力の有るものに変化したのは、金雷蜒王国末期にそれぞれのギィール神族が独自の方針で勝手に公を自称して大混乱を引き起こした為、全国的に統一して通用するルールの成立を社会全体が要求したからである。下級官吏である刑司は単なる刑務官や施設管理人に過ぎない。また衛視は公安機関として秘密警察としても機能する。階級は刑司(司、夫、率、長)、衛視(補、正)(監、大監、統監、長)

宰吏:宮廷 宮廷官僚。武装せず強制執行や戦闘を行わない普通の官僚。通常は聖蟲を持たない人間がなり、また聖蟲を持たない人間が立身出世する最高の方法でもある。それゆえ採用の方法は多岐に渡り、試験やコネや抜擢等々あらゆる道筋で就職する。年棒制で春秋に半年ずつ給与が支払われるのだが、金銭関係を扱う部署も多い為に腐敗も伝統的に多く、私服を肥やす者も少なくない。とはいえ聖蟲により社会が規定される枠組みの中では彼らが特権階級になることはあり得ず、汚職が問題になったことはさほど無い。階級は吏官(官、次、召、召長)、宰官、宰監補、宰監、宰大監、宰相補、宰相、となる。

叡書:学問 科学技術を専門にする官職、学究員。褐甲角王国時代に金雷蜒王国から脱出してきた技術者を遇する為に作られた官職で、科学技術を移転するために大いに働いた。科学関係を叡書、技術関係を叡匠、最下級の役職は学匠と呼ぶ。現在は大学も設立されているが、当然科学技術の拡散は不利益になるために重い守秘義務を課せられる。また金雷蜒王国からの脱出者はそれぞれの家で持ち出した知識や技術を独占していることも多く、知識体系が完全に統合されているというわけではない。その最高位は学識統領と呼び大臣待遇。

税吏:行政 褐甲角王国における徴税官。金雷蜒王国には税は無いので褐甲角王国のみの役人。各地の農村や町で黒神兵の指示の下、地方行政単位から徴税する。税査察官も兼ねており、かっての番頭階級の再来として嫌われている。下級役人であるため一般人からの募集がされているが受験の為の教育には資金が必要な為、特定の家系に出身者が偏る身分の固定化も起きている。

先政主義/先戦主義:政治 褐甲角王国元老院を二分する政治上の二つの立場。先戦主義は、聖蟲を額に戴く戦士として金雷蜒王国を抹殺する事に重点を置き、王国のすべてを軍事優先で運営しようとする立場。先政主義は、それと反対に国内政治を充実させ民政を優遇し経済を発展させて国力を増強した後に、軍事を行おうという立場。前者は黒カブトムシ兵ほぼ全ての支援を受け主導者はソグヴィタル家、後者は官僚および聖蟲を頂かない上流階層の支援を受け主導者はハジパイ家。弥生ちゃん降臨の数年前に、両者の対立からソグヴィタル家の当主ソグヴィタル範ヒィキタイタンが宮廷クーデターを試み失敗する「ヒィキタイタン事件」が起きる。 

「白寧根の会」: 元老院若手議員の内、ハジパイ王の唱える先政主義派に従い超法規的に工作活動をする秘密結社。3、4人の小集団が何個もあり、互いの連携は無く、ハジパイ王とのみ繋がる。

不敬罪: 王族に対して著しく敬意を欠くと思われる行為に対してそれを取締まり罰するための法律。不敬罪が適用されるのは、褐甲角王国においては、武徳王以外の王、王族、王族出身の聖職者、ギィール神族の使者、亡命神族、高位神官巫女、およびそれらの紋章や旗印に対してである。武徳王、金雷蜒神聖王、青晶蜥神救世主に対しては神穢罪という更に上位の法律が適用されるが、暗殺等の大逆罪相当の罪に関してはガモウヤヨイチャンに対しては適用されない。黒甲枝、一般ギィール神族に対しては、神使侮辱罪というものがある。金雷蜒王国においてはそれぞれの神族とその狗番が適当に成敗するので、法としては定められていない。

宮法監:司法 褐甲角王国元老院にあって法案が有効に機能するか、既存の法案と衝突しないかを判定する役目。内閣法制局みたいなもので、武徳王に直属する。また、元老法監による上級審において審議を進行する役目を担う。褐甲角王国は二審制ではあるが、元老院にて行われるのは高度に政治的判断を必要とする事例のみで、裁判とはいえ最早政治問題に成らざるを得ず、元老院全体で審議する。

衛視監:司法 褐甲角王国において裁判官となる役職。主に民事と刑事を扱う。軍法と税財法には関与しない。衛視監は裁判官と検事を兼ねたような役職で、被告は個々の事件の関係者ではなく、それを調査した衛視の報告の信憑性と妥当性を審判する。つまり、判決はすでに衛視が作っているのだが、それが正しいかを判断するということ。

衛視統監: 衛視統監は現在3人居り、それぞれが別の分野の法組織を管轄している。一人は戦争を含む外交問題・方台全土に及ぶ規制罰則・神殿関係の神聖法と呼ばれる法律の運用を司る。二人目は国内経営・行政・治安維持警察活動・刑事事件について取り仕切る。三人目は民事および経済関係の法的問題を取り扱う。彼等の内の一人が衛視長を兼ねるが、宮法監の指導を受ける。

輔衛視:司法 赤甲梢総裁に従って法的な助言をする役目。通常赤甲梢総裁は名誉職で実務には関与しないので、輔衛視が部隊の作戦の法的正当性を担保する。軍法で民政を指導する黒甲枝と異なり、純粋な戦闘集団である赤甲梢には、軍法監が無い。また迅速さが命である高速戦隊であるので作戦の独断の可能性も高く、輔衛視が監視をしている形になる。焔アウンサの時代には有名無実となって、後期の二年には空席になっていた。他に、水軍と輜重総隊、伝令隊、造兵廠、各要塞守備軍といった独立性の高い部署に輔衛視はある。

博士寮: 褐甲角王国王宮付属の科学研究教育機関。大学とみなしても良い。褐甲角王国では金雷蜒王国の科学技術を移転する為に、科学者技術者の育成に大金を投じているが、博士寮はその中でも学究的な意味付けが強い。最大のものはルルントカプタニアにあるが、王都カプタニアには軍関係の博士寮がある。

衛視局街道保安室: 衛視局に属する、主要街道の運輸と保全を司る役所。街道を通る不審者へも対応する。現在、大審判戦争による兵員と物資の輸送量の増大に加えて、デュータム点のガモウヤヨイチャンを目指して様々な階級の人が押し寄せているので、この部所も大忙し。

衛視局南辺海事室: 衛視局で、無法都市タコリティを拠点としての東西金雷蜒王国への密貿易を監視取締まりをする部所。特にヒィキタイタンの所在が明らかになり、新生紅曙蛸王国が出来て後はこの部所も大忙し。

税務局蔵庫課: 財務と徴税を司る税務局の中で、国庫の管理をする役所。特に蔵庫課は長期保存物資を管理する。大審判戦争ではここの倉庫までもが空になっている。飢饉に対応するための備蓄穀物は手を付ける事をハジパイ王は許さなかった。

近衛兵団: 王都カプタニアに常駐する武徳王と王都を護る最精鋭部隊。だが最近は出兵も無く、もっぱら黒甲枝の教育軍として機能する。近衛兵団は黒甲枝が兵学校を出て小剣令の教育の為に小部隊を率いて訓練し、聖蟲を戴いては再訓練を行う最初の任地となる。その後引き続いて武術の稽古を続けて剣匠令の位を受ける事も出来る。近衛兵団長は兵師監スタマカッ兆ガエンド。

紋章旗神兵団: 赤甲梢に属する装甲神兵団。他の二つの神兵団と異なり、この部隊の構成員は正規の黒甲枝聖戴資格者である。つまり、黒甲枝の家系に生まれ当然その位を相続する筈の子弟が、その親の代にトラブルが有って代替者が聖戴をして軍務を続けている場合、彼らは順当な聖戴を受けられない。そこで当然の聖蟲の継承が行われるまでを赤甲梢において聖戴して軍務に就く特殊な位置付けの隊。無論実力が選抜の基準となるが、ここを経て王都の近衛兵団に移籍する事が多い。「イムレイル章」と呼ばれる初代救世主武徳王に由来する紋章を旗印とする。

穿攻隊: 正式名称は「褐甲角王国毒地攻略軍○○(地方名)兵団穿攻隊」、毒地攻略軍はベイスラ、ミンドレア、ガンガランガ(穿攻隊および兎竜掃討隊)、および赤甲梢(錬兵団→迎撃兵団へ一時的に改称)を擁する。大審判戦争に際して、新たに設けられた神兵のみで構成し毒地内深くに攻め入る特殊戦隊。神兵100名からなり、赤甲梢装甲神兵団出身者を教導隊とする。ヌケミンドル方面に集中したギィール神族寇掠軍をここから逃さぬ為に、他へ移動する隊を毒地中に攻め入って撃破する事を目的としたが、それゆえ極めて過酷な戦闘を繰り広げる事となる。

スプリタ街道難民移送司令部: 大審判戦争時に褐甲角王国東部の難民をすべて前線から外れたイローエントに隔離収容する為の移動を行う為の部署で、初代司令官はカロアル羅ウシィ兵師監。移送後はイローエント難民保護局の管轄になる。

イローエント衛視局難民治安保持室: イローエントにおいて難民の処遇と治安を担当して居た部署。後に難民保護局に改称する。

青晶蜥神衛士:褐甲角王国において新たに設けられた神兵のみで構成される部隊。赤甲梢の改変に伴い設立された。勿論直接の原因は弥生ちゃんの降臨であり、褐甲角王国内にあっては青晶蜥神救世主の身を保護し、同時に監視する役目を負う。
部隊の成立の経緯から、この士団の初期隊員は平民から上がった赤甲梢神兵が多数を占めた。またメグリアル劫アランサが二代救世主に指名された為に、自動的に彼らはアランサの指揮下に入る。
後に青晶蜥神衛士となる神兵の聖戴は特別な権利として認められ、青晶蜥神救世主の指名により褐甲角武徳王が授ける、という慣習になる。つまり褐甲角王国が四つに分裂した状態にあって、各国に中立な立場の神兵として青晶蜥神衛士がある。彼らは青晶蜥神聖傭兵団の中核となり方台中の平和を護る為に活躍した。

主計官: 軍、役所において経理を担当する部署の役人。税吏の資格が必要。

「黒甲枝の出世」: 黒甲枝と生まれた男子は、まず10歳になるまでに軍学校の予備校である幼年学校に入る。そこで初歩の教育を行い、適正を検査して軍幹部となる訓練を開始する。13歳で軍学校に入り軍人となるが16歳までは最下級の凌士の位となり学校内学年の順に階位がある。16歳で卒業時には凌士率として王都防衛隊でクワアット兵を直に指揮する訓練を受ける。そこで一年ほどの研修の後に凌士長として地方防衛の任に当たる。だが、黒甲枝として聖蟲を受ける準備に入ると仮に小剣令を拝命して黒甲枝の補佐に付く。平均的には20歳から22歳までに聖戴を受けるのだが、それには試験を受ける必要があるので軍務よりもその訓練に明け暮れる事になる。つまり前線配備は免除されて地方中核都市の本営に配属されて民政の実務を勉強すると同時に聖戴の試験勉強をする。
 同じ軍学校を卒業した身でも、聖戴の順が回って来ない次男三男は、通常養子として空きのある黒甲枝の家に配されるが、それも無いものはそのまま凌士長として軍務を続け、同時に剣匠位の取得を勉強する。ここで成績優秀者は王都に戻って親衛隊に入り剣匠令の位を得て、更には赤甲梢へ推薦されて聖戴を受ける者もある。そのまま聖蟲が得られない場合は大剣令までは昇進が可能であるが、将軍にはなれない。ただ、軍自体の事務を司る官僚として凌士監・大監・統監になる道もある。

 聖蟲を聖戴すると、正式に小剣令位を拝命し、次には武術専門の剣匠の位を得る試験の準備を開始する。これは聖蟲を持つ者と持たない者では武術のレベルが隔絶して違って来る為の習熟訓練で、これを終えてやっと一人前の黒甲枝となる。その後、剣匠令という特殊部隊長位を得る者と、民政の専門家としての衛視位を得る者とに分かれるが、軍指揮官としての実務も積み重ねる。30歳で中剣令を拝命するのが普通で、地方区の町村の守護官となる。40歳で大剣令となるがその際には軍中央で昇進するか地方の守護で終るかの選別がされる。通常の黒甲枝は45歳から50歳で息子に聖蟲を移譲するので、これが終ると軍務も終り民政に専念する事になる。軍中央に進んだものは将軍として兵師監、大監、統監となる。

衛視の試験: 黒甲枝は聖戴した後、軍で一生を送るか、高級官僚になるかの選択を迫られる。後者の常道は衛視の資格を取る事で、大抵の者は一度は受験する。ただし受験資格者の選別はその者が属する部署の近くの衛視が行い、合格の見込みが無い場合は推薦されないので、ほぼ間違いなく受かる。衛視の試験は定期的に行われるものではなく、衛視の席が空いた時に適宜行われるので、3〜5年待つのが普通。あまり長くなると、他の県にまで出向いて試験を受ける事もある。衛視の資格を受けたからといって、衛視の職を務めねばならぬというわけではなく、資格を保持する為に5年に一度一年間務めれば良い。逆に、衛視は30代では3年に一度、40代では5年に一度聖蟲を持つ限りは軍務を一年務めねばならない。この異動で席が空く時に試験が行われるのが普通であり、一年経つと戻って来るので、20代では衛視の資格はあれども席は無い、という事がよくある。

剣匠令の資格: 特殊部隊長の資格である剣匠令は黒甲枝の神兵にとって一種のステータスである。なぜならば、これを持つ者は神兵の小部隊の隊長となる、つまり他の神兵を指揮する事が出来るからだ。神兵はその戦闘力の高さで自動的に剣匠の位を得るが、基本的には一人がクワアット兵の小隊を率いて部隊単位で戦う。この時は剣令の位に基づいて指揮命令系統が成り立つ。これに対して、神兵を集めて作る小隊、分隊の場合、指揮権は剣令ではなく剣匠令にある。ゲイルを狩る場合は神兵のみで構成される戦闘小隊が普通なので、最前線の個別戦闘指揮権は剣匠令にあると言って良い。
剣匠令の資格の取得は、王都カプタニアの近衛兵団と、ボウダン街道赤甲梢練兵団で行っている。どちらで取っても違いは無いが、ゲイル騎兵との実戦を繰り返している赤甲梢で資格を取る方が価値がある、と囁かれている。実際近衛兵団では剣匠令の訓練は王族の護衛任務を主体に行われており、戦闘訓練は神兵戦技研究団で行う。これに対して赤甲梢では、もっぱら実技実践、実際にゲイル騎兵を擁する寇掠軍を追い回して訓練しており、極めて実戦的である。訓練課程は双方とも2年間。小資格を取っていくシステムなので、訓練期間を途中で中断する事も出来る。
これとは別に、海軍においても海戦舟戦を主体とする剣匠令の資格を取得する事が出来る。
なおクワアット兵の剣匠令の取得は、まず剣匠の位を各部隊で取り、後に赤甲梢において剣匠令の資格を取得する事になる。故に赤甲梢に所属するクワアット兵の大半が剣匠の位を持つ。

倫理規定: 人間社会は必ず腐敗堕落して汚職や横領、便宜供与等々様々な公権力の悪が発生する。褐甲角王国の黒甲枝、聖蟲を持つ者とて例外ではなく、ちゃんと倫理規定と罰則が定められている。最大の罰則は死ではなく、聖蟲剥奪。

百島湾海軍 褐甲角王国西のミアカプティ港を拠点とする海軍。深い群青をトレードマークとする。ここ20年は褐甲角王国は大した戦闘を行わなかったが、ここだけは別で年中西金雷蜒王国と小競り合いを繰り広げ、多数の勇者を出しており、赤甲梢にて聖蟲を授かった者も多数居る。赤甲梢の電撃戦においては渡し船を確保する為に、百島湾海軍出身者が多用された。

農民議会・自治会議: 褐甲角王国は基本理念として人民は自らを治め統治すると掲げている。実質は黒甲枝による支配に他ならないのだが、形式上各自治体に自治組織が存在し、黒甲枝はそれを手助けする事になっている。農村においては農民議会、都市にあっては自治会議と呼ぶが、どちらも機能としては同じ。ただ農民議会は基本的に長年月村長や役職が変らず世襲もされる為に、一般農民が執行部に対して質問するという形式を取る事が多く、こう呼ぶのが適切と思われる。対して都市は大商人の寄り合いという形で運営がなされ、議長も代るし議員も時に応じて入れ代わる。また議員になる為には献金をせねばならない慣習の土地も多く、公正を期す為にあまり強権を持たないと市民に見せる必要がある。よって自治会議と呼ばれる。
なお農民議会においては議長はクワアット兵出身者である邑兵隊長が歳を経て引退した後に就く事が多く、彼が実質は褐甲角王国の代理人となる。

「ガーハル流軍学」 ゲジゲジの聖蟲を戴くギィール神族は7里(キロ)の範囲を超感覚で知るので、奇計奇略が通じない。為に正攻法で相手が逃げられない形で軍を進める必要がある。そこで褐甲角王国では軍学が発達した。
 「ガーハル流」はその一派で、主に城砦や防塁を用いた守禦の法、またその攻略を取り扱う。非常に重要な学問であるが、カブトムシの聖蟲を戴く神兵の神髄は野戦、それも森林内での戦闘であり、この軍学はあまり人気が無い。とはいえ一般兵を護る為に必要不可欠であるから、クワアット兵剣令を主体に専門職育成の形で教えられている。
 元老員ガーハル家がその総本家であるが、現在最高の教授はヌケミンドル防衛線最高司令官クルワンパル主席大監である。

ギィール神族:階層 ギィール神族と呼ばれる額に聖蟲ゲジゲジを戴く金雷蜒王国の支配者層。一般的に高慢で人の情に冷淡で冷酷、合理的で論理的、享楽的で刹那的で派手好みとされる。感情を持たないとされまた自称するが、相互に読まれて隙を衝かれるのを防ぐ為に隠しているだけで実はちゃんとある。ただし、年齢を経て経験を積み重ねる内に演技力を身につけ、あらゆる感情を自在に表現する事ができるようになる。
外見的には平均身長2メートルの優美な体躯の持ち主で動作も円滑で器用。一見して一般人、奴隷とは隔絶して違うが、これは幼少の時分よりエリクソーと呼ばれる各種の薬液を摂取してきた事により最高レベルの人体として完成したということであり、人種的に異なるというものではない。
額のゲジゲジの聖蟲が与える天空の知識で特に科学技術分野に優れるが、反面人文科学の分野には疎い。また、この知識を利用する為の高度な知性を身に着けた者のみが選ばれて聖蟲を獲得するので、誰一人として平凡な者が居ない。聖蟲の超能力で自らの全周を目で見ずとも知り、霧や暗闇でも自由に動き回ることが出来る。半径7里(キロ)円内を探査出来るとされるが、水中や土中にはあまり効果が無い。巨大ゲジゲジ「ゲイル」をテレパシーによって自在にコントロールして乗用生物として利用する。更には毒地でも影響を受けずに過ごすことが可能。

彼らは聖蟲を持つ者はすべて同格と看做す為、社会制度上の彼ら以上の権力者の存在を認めない。よって政治は合議制・民主制をとっているが、中央の神聖王が戴く聖蟲は唯一の雄であり、繁殖に直接関るので一段高い存在として敬意を払っており、その座を奪おうとは思わない。というよりも、神聖王の責務は非常に繁雑かつ忍耐を要し誰もが忌避するもので、これ幸いと王国の創業者一族に任せている。
中心となる原理原則が存在しないので法制度はあるがあまり発達しておらず、神族相互の弁論によりおおむね紛争を解決する。故に裁判なるものも存在せず、弁論もしくは武力による決闘がその代用となる。また彼らの支配下にある奴隷達は、彼らの恣意のままに処断されるが、おおむね公正かつ合理的な判断に基づいて裁きが行われる。
経済的な紛争に関しては、厳密な契約制度が存在し強制力を用いての執行が許されている。このため破産する神族というのもまま発生する。神聖王と神聖宮殿は中央銀行としての役目を持ち、金属資源の一元的供給によりその任を果たす。

ギィール神族は酷薄な支配者ではあるが、その一方で誰もが科学技術を駆使して高度な製品を産み出す技術者でもある。故に一般の支配者とは異なり労働者としての側面を持ち、また製品を売る商人としても活躍する。彼らの生み出す産物は常人にはとても真似出来ないものであり、輸出もされ褐甲角王国から莫大な利潤を得て居る。
その利益によって神族に仕える奴隷達は生活出来ているという具合で、農業力に劣る東金雷蜒王国の一般奴隷が農業国の褐甲角王国の自由な民衆よりも物質的に恵まれる良い生活をしている。つまり、現在のギィール神族は民衆の圧政者とはかけ離れた、民衆生活を支える柱であり、支配される当の奴隷達はこの支配体制を打倒しようなどとはまったく考えない。

(ギィール神族の身分制度): ギィール神族は本来すべて平等であるが、やはり家格というものがある。中でも三柱家と十二氏家は、金雷蜒神救世主の息子と最初の神族達であるから別格で、すべてのギィール神族はこれらの血筋を引くが正統の家系も二千年の時を越えてちゃんと維持されている。三柱家は神聖王とその妃を出す家で、複雑に絡み合ってほとんど一体化している。神聖王族と呼ばれる者で、特別な権利は無くとも上席を占める事が礼儀上定められる。
十二氏家は神聖王に従った最初期の神族であるが、彼らは互いに姻戚関係を繰り返し現在のギィール神族を作り上げた。故に、十二氏家以外の出身者は存在しない事になる。中でも直系男子により維持されて来たのが正統な十二氏家でこれは三柱家に継ぐ身分として、側室を輩出して神聖王家の維持に協力する。
しかしながらギィール神族の世界では実力がすべてで、有力な神族はまた別にある。三荊閣と呼ばれる城を持つ神族で広い土地と多数の奴隷を有する大豪族で、彼らが「ワクル」を主催する。それ以外の神族は五十歩百歩だが、神聖王になる前に子を生してそのまま続いている家系が王流と呼ばれるもので、一応は格式が高い事になっている。

神聖金雷蜒王国末期の内乱は、これらの身分制度はまったく関係無い。それは思想的潮流によるもので、聖蟲を改変する事が許されるか否かで真っ二つに割れて、最終的にはマッド・サイエンティスト系列である改変派が敗北するのだがその傷は深く、再び改変派が現われないように神聖首都ギジジットを封鎖しようという案が持ち上がる事になる。王姉妹は天意に任せる自然派の中核を為したのだが、その時のやり方が相当にえげつなかった為に後々までも怨まれ現在までもその評価は続いている。西金雷蜒王国はその際に不干渉を貫いた派閥であり、為に後に仲間はずれにされたのだが、丁度その頃双子の王聖蟲というのが生まれて、二つに王国を分断する案が合議により可決され今日に至っている。

聖戴に到る七つの試練: ギィール神族としてゲジゲジの聖蟲を得るには、幼少期より七つの試練を潜らねばならぬと定められている。年齢は実は条件の内に入らないが、第七の試練は王都ギジシップでの聖戴式そのものであり、神聖王に捧げる貢ぎ物の価格が非常に高額になる為に何度もの挑戦は事実上無理である。

(第一の試練)ゲイルの股潜り: 文字どおりゲイルの股の間を通り抜ける事。全長15メートルになり人を食らうゲイルは一般人にとって非常に恐ろしい存在であり、これの股を潜り抜けるのは誰にとっても難しい。故にこの試練は怖れを知らぬ幼児期に行うのが正しいとされる。5歳から7歳が適齢期。神族の親は通りやすいように年老いた巨大なゲイルを用いるが、反面それでは通過距離が長くなり過ぎる事もある。

(第二の試練)ギィ聖符の読み書き発音: ギィ聖符が読み書き出来ない者は神族になる資格は無い。この文字は科学技術を正確に記す為に発明されたものであるから、これが分からないと文書が読めず技術を習得する事が出来ない。故に幼少より徹底的に勉学を叩き込まれる。この試練で脱落する者は多いが、逆に聖蟲を最終的に得られなかった者でもこれにより身を立て救われる。

(第三の試練)殺人: ギィール神族は支配者として奴隷の生殺与奪を恣にする。もっとも無益な殺生は道徳的に許されないが、必要と有れば躊躇無く殺せねばならない。日頃からゲイルが人を食べる姿を見せられている彼らには殺人は禁忌としてはあまり感じられないので、これはむしろ簡単な試練である。通常10歳の時に罪人を買って来て剣で殺すのだが、円形の闘技場で一人で殺さねばならない。罪人は反撃もするので失敗し逆に殺される事もある。故にこの時までに或る程度の武術の習得とエリクソーの服用による体格の向上を図らねばならない。

(第四の試練)扇笑会: ギィール神族の成人式であり14歳になる直前に行う。百人の少年/少女の居る建物に閉じ込められ、三七21日間彼らと性交を繰り返す。感情を殺す事を目的とした試練であり非常に過酷で、毎年これで何人も自殺者が出る。ただ費用が相当に嵩む為に、何人もの神族がまとめて行うのが通例。これを経ると、ギィール神族らしい振る舞いを身につけると言われている。これに用いられる少年少女は神官巫女の卵で、妊娠しないように細心の注意で行われる。

(第五の試練)生還: 山奥に連れて行かれ丸裸に剥かれ、そのまま放置される。与えられた課題をこなしてゴール地点まで戻ってくれば合格。ただし、この際絶対に”道具”を使ってはならない、と言い渡される。この試練の前に道具作りのテストも行われ、子供たちは皆その為の試練かと誤解しているものだが、実際は逆で、これは道具を作ろうという誘惑を掻き立てるものだ。自制心を試す為の試練で、7里の範囲を聖蟲で知る神族が厳格に見張りをし、小石や木の枝で果実を叩き落とすのさえ禁じられる。この試練で死んだ者は居ないとされるが、逆にあっという間に不正が見つかって排除される為でもある。

(第六の試練)口頭試問: 近隣のギィール神族が見守る中、一般人の賢者数名によって口頭で矢継ぎ早に放たれる質問に淀みなく迅速に正解を答えて行く。日の出に始まり日の入りに終る。当然質問のレベルは高く、十分な学習と知性が無ければクリア出来ない。また下手な解答をすると、階上のテラスから見物する神族に罵声を浴びる事にもなる。神族としてのお披露目という意味もあるから、ここで失敗するのは大変に不名誉な事だ。これを見事クリアすると、夜は宴会となる。第七の試練は本人ではどうしようもない為に、ここまでやり通せれば既に神族と同等と看做され、祝福を受ける。

(第七の試練)聖戴式: 文字どおりにゲジゲジの聖蟲を頂き、額に戴く。王都ギジシップ島に年に一度の聖戴の儀に出向き、大変な貢ぎ物を捧げた後に神聖王陛下と対面。王姉妹の案内でその年に生まれたゲジゲジの聖蟲の前に通される。つまり、ゲジゲジの数だけしか神族は生まれないという事だ。通常数は足りるのだが、聖蟲と宿主の間には当然相性があり選択権はゲジゲジにあるから、選ばれない者も出る。この場合気の毒だからそれまでに誰も選ばなかった前年までの聖蟲とも対面させるが、ここでもダメな場合もある。貢ぎ物を更に重ねて来年の招待を受ける事になるが、次の年にもダメな場合は通常の者なら財が続かずに諦める。本人に選択権が無いのだからこれは運であり、ここでダメだったからと蔑まれる事はないのだがやはり落ち込むのは仕方ない。

(第八の試練)寇掠軍出征: 聖蟲を得た神族は金雷蜒王国の為に献身する事が要求されるが、その最たるものが寇掠軍である。一生に一度は必ずやるべきとされ。聖蟲を授かって初めて可能になるゲイルの操縦に完熟し自在に働かせる格好の練習場ともなる。寇掠軍は基本的に奴隷達への福祉として行われる為に、何度も出征する神族は徳が高いと崇められる。ただ、寇掠軍での神族の死亡原因のトップは「暗殺」、他の神族との暗闘によって起きておりなかなかにスリリングな体験だ。

 さらに、子供を産み育て神族にする、という試練も数えられるが当然の話。

東金雷蜒王国:国家 神聖金雷蜒王国が二つに分かれた際に毒地の東側に位置した王国。古代の遺風をそのままに伝えるギィール神族の王国。神聖首都ギジジットに近い為に、自らも金雷蜒王国の正統を主張する。

西金雷蜒王国:国家 神聖金雷蜒王国が二つに分かれた際西側の島嶼部に基盤を置いた王国。海洋性民族を支配下に置いた為に相当に変質しており、褐甲角王国とは密貿易で表面上はともかく、決して疎遠ではない。島嶼部で有る為に巨大ゲジゲジが使えない為に、ほとんど人間のみの支配が確立している。また経済基盤を船舶による輸送と加工貿易で成り立たせているために、戦争は本意ではない。

王姉妹:社会 東金雷蜒王国神聖王の姉妹や叔母達で、金雷蜒神の巫女。神聖王の助けをして聖蟲の繁殖を行っている。が、その中でも二代前の神聖王の姉妹が特にギジジットに篭って巨大金雷蜒神を直接世話をしている。彼女達は平均年齢70歳なのだがぴんぴんしており、日夜陰謀に明け暮れている。神聖王以外の成人男子は王宮には居られず追放というか脱出してしまう。彼女達が他の金雷蜒神族と明確に違うところは、通常聖蟲を聖戴する為にその資格を問う7つの過酷な試練を受けるのに対して、彼女たちは幼少時に聖蟲を憑けられてそのまま成長する為に、非常に高慢になり、まるで自分が本物の神であるかのように振る舞う。

帯(バンド):社会 金雷蜒王国におけるカースト制度。といっても共同組合の意味合いが強く、余所者の参入を防ぎ構成員の互助機関として機能する。基本的に金雷蜒王国はすべての人間がギィール神族の所有物なのだが、すべての職業の人間をそれぞれの神族が抱えているわけではなく、経営する事業ごとに抱える人材が違い、また人材を自ら教育しているわけでもない。必要に応じて人間を買うのだが、その斡旋仲介業者として帯(バンド)があり、余剰人員を吸収し教育するという役目も持っている。カースト制度とはいえ別に排他的で職業選択の自由が全くないわけではなく、その職業に適した才能の持ち主が居れば他のバンドから購入してメンバーにする、あるいは余剰人員を売ったりして労働力の再配分を効率的に行っている。人間の売り買いの機能はギィール神族以外にはバンドの長老会以外は持っておらず、長老会の人間は形式的にはゲジゲジ神聖王の奴隷として身分を固定され安定した特別にニュートラルな存在となっている。また長老会はそれぞれの奴隷を単に売り買いするだけではなく、売った人間の業績の再配分も受け、それにより教育機能、相互扶助機能を実現している。現在50幾つかのバンドが存在し、その所属を表す帯をそれぞれの構成員が締めている為に、バンドと呼ばれる。

狗番:社会 金雷蜒王国においてギィール神族に使える召し使い。召し使いには二種類あって、使宰と呼ばれる執事の下に使える奴婢とギィール神族に直接命令を受ける狗番とがある。狗番は戦場においてはギィール神族それぞれの近衛として、全体の命令とは独立して己の主を護る。故にそれだけ信頼の篤い者が選ばれるので、通常の奴僕よりも上級の扱いを受ける。また他との違いを強調する為に狗の面を被っていたりする。

喙番:社会 「かくばん」、女の狗番のこと。主に女性のギィール神族に仕える。武術を習い覚えているがやはり体格が小さい為に護衛としての役には不足する。使い番をする事が多い。大きなくちばしの鳥の面を被っている。

使宰:社会 ギィール神族の家の執事で奴婢の監督。基本的には代々同じギィール神族に仕えるが、奴婢から抜擢されることもある。その場合は大使宰という上役に代々の使宰が就く事で軋轢を無くすのが慣例。使宰の権限はギィール神族の家の中に留まるのが通常で、それを越える実務にまで権限が及ぶ場合は、権宰と呼ぶ。

牧隷:社会 ギィール神族の家で、主に農作業や土木工事といった人手を要する業務で奴婢を監督する役目。100人以上の奴婢を監督する者は大牧隷と呼ばれる。また、業務別に仕事が分かれている時は所牧隷といい、その上に大牧隷が居て指導することになる。基本的には能力によって選ばれるが、バンドによって牧隷の訓練を施されるのは特定の家系と決まっている事が多い為に、ほとんど世襲となっている。

画匠:社会 ギィール神族の家で、主に技術職を指導監督する役目の者。それぞれの事業で計画立案するために、「画」と呼ばれる。当然技術畑のバンドの出身者のみが就くことを許され、経験を考慮してほとんど年功序列になっている。

算書:社会 ギィール神族の家で、記録と計算と金銭管理に携わる役目の者。元はタコ王国時代の番頭階級だったとされる。その責任者は算書頭と呼ばれ、大概は使宰を兼ねる。また倉を管理する倉算書、輸送を管理する駒算書、奴隷の仕事の記録を管理する役算書というのが大きな家には居る。

(側室): 神聖王の妻室には三種類ある。神聖王の正室である王后、寵愛を受け子を出産した嘉妃、未だ子は為さない瑞媛。さらに、神聖王即位前から連れ添っている女性は、榮栴と呼ばれる。

(ワクル): 神聖王の王宮・官僚に対抗する為に作られた有力ギィール神族の連合体。意味は「同心円」で、首領は無く有力神族の合議で方針が決定される。神聖王は聖蟲の繁殖を司るので特別な存在ではあるが、能力的に優れているとは誰も考えておらず、その宮廷の官僚や廷臣はしばしばギィール神族の権益を損なって彼らは腹に据え兼ねている。「ワクル」には加盟を強制する力はなく、また構成員にも強制力は働かない。それはただの互助会であり、共同で寇掠軍を支援する組織や諜報機関、金融機関などを運営する。「ワクル」に加盟しなくてもそれらの利用は可能だが、会員の方が優先されるのは言うまでもない。「ゥイ・ゴーマン・ゲイル」がその最大のもの。

(神族廷臣): 神聖王の宮殿に神族でありながら属する者。独立独歩のギィール神族としては例外的な存在ではあるが、十二神信仰に重きを置く者だとこの傾向が強い。特にウラタンギジトとギジシップ島は彼らの根拠地となっている。表立って廷臣の身分を与えられる訳ではなく、王宮に依頼された嘱託として働く事が多い。純粋な学者や武人もこの制度で事業の経営に煩わされない生活を好む。

三荊閣: 現在、東金雷蜒王国におけるギィール神族の有力な血族。軍事拠点としての大型の城を保有するのでこの名がある。ミルト、ラタランダル、ガルポゥエンの三つの派閥を為し、それぞれ百以上の家を有し相互に姻戚関係を持って結束する。宗家というものがありほとんど王なのだが、神族は序列の優位を神聖王以外に認めないので、まあ頭を下げる程度。他に、神聖王の血筋を引く「王統派」ゲェと、どれにも属さない諸派もある。

「ジー・ッカ」:暗殺集団 東金雷蜒王国の神聖王族に直属の暗殺組織で主に王姉妹が神聖首都ギジジットで召し使う。十二神方台系においては最高レベルの実力を誇る暗殺集団で、過去二千年に渡って技術を磨き上げてきた。「ジー・ッカ」の構成員は、聖山の東、金雷蜒王国に属する、通称「白穰鼡(ピクリン)の巣宿」と呼ばれる原生林に、紅曙蛸巫女王国時代以前の原始生活を頑に守り抜く「ネズミ族」が務めており、平原の住民よりも観察力と運動能力が優れているという。「ジー・ッカ」の首領は、ネズミ族の族長の家系の者が代々務める事が定められ、家系血筋にこだわる事の少ない十二神方台系においては珍しい集団と言える。
 ギジジット滞在中の弥生ちゃんの前で暗殺技術の披露をした際の記録が、後に出版された「ジー・ッカ暗殺教本」で世界初の武術書として知られるが、応用編にあたる技術は弥生ちゃんが鑑賞しなかった為に存在せず、歴史家に惜しまれている。

「スルグリ」: 西金雷蜒王国の特殊部隊で本土に諜報機関として潜入している。潜水技術に特に優れる。

「アンクロ・パシャ」: 東金雷蜒王国神聖王直属の秘密部隊。主にギィール神族の動向を監視している。構成員の身分が高い。

「ゥイ・ゴーマン・ゲイル」: 東金雷蜒王国のギィール神族の連合体が使用する諜報機関で、神聖王や王姉妹とは対立する関係にある。破壊工作は行わず、情報のみを扱う。

ギジジット護衛兵:兵種 神聖首都ギジジットを防衛する兵士。ギジジットは特別な都である為にその防衛は基本的に金雷蜒神官戦士により行われるが、専門の軍事教練を受けた兵士も駐屯している。これは、軍事バンドに所属する専門技術者として見ることができ、特に聖地であるギジジット防衛という栄えある任務であるから、ギジジット護衛バンド、という特殊カーストが形成されている。その為に装備と訓練は行き届いているが、実戦の経験を毒地の遠征軍として務める事が無く、神官戦士とどの程度違うのかは未知数。忠誠心の高さが取り柄、というところ。

王師海軍 東金雷蜒王国神聖王に直属のギジシップ島警護の海軍。神聖王によって直接に雇われている為に近海防御の能力しか持たないが、大型船10隻に小型船100艘とそれなりの規模はある。

東金雷蜒海軍 三荊閣家ガルボゥエン家を中軸とするギィール神族合同で作る海軍、海運組織。ガムリ点を拠点としてタコリティ、イローエント、ミアカプティ港から西金雷蜒王国にまで跨がる広域を守備範囲とする。大変に儲かっているのでギジシップ神聖王の王師海軍よりも格段に装備が良く兵員も多い。

「天原」 東金雷蜒王国首都ギジシップ島の陸地は特別に「天原」と呼ぶ。ギジシップ島は高さ50メートルの切り立った白い崖の上に平坦な台地がある、という特異な構造である為に、古来より特別な動植物が棲むとされ長く禁域とされてきた。出入りするには通常数ヶ所だけ設けられた港から上陸し、断崖に掘られた石の階段を上って入る。ここの動植物には特異な効能を持つものが多く、薬効成分を抽出して様々に利用され、神聖王の宮廷費を賄っている。また特産の薬品を用いて獣人や獣身兵、怪蟲などの育成も行い、寇掠軍に提供されている。ギィール神族が2メートルの長身を得る為に幼少より服用する霊薬「エリクソー」はほぼ全ての成分がここの産。

”なりそこない”: ギィール神族はゲジゲジの聖蟲を額に戴くのに七つの試練を受ける必要があり、その資格と素質を問われるのだが、エリクソーを服用して奇跡の肉体を手に入れるのはそれとは別の話で、ギィール神族の子弟で身体だけは神族と同様に成長したものの聖蟲を戴く事ができなかったものが時々出る。彼らは神族になれなかったから奴隷にならねばならないのだが、それも不憫な話だからどこか実家の近辺でひっそりと暮す事になる。あるいは勉学に励んで宰相や官僚、将軍といった王宮直属の奴隷になる道もあるが、聖蟲を得られずプライドをずたずたにされたがために悪の道に走る者も多い。中でも人を喰いその霊力を奪い取って聖蟲も無しに超人となるという人喰い教に傾倒して、世に迷惑となることもある。

神裔:神族の家に生まれ、神族になるべく霊薬エリクソーを服用して神族と同等の巨大優美な肉体を手に入れながらも、聖蟲を得る為の試練をこなせずに終った者のこと。俗には「なりそこない」と呼ぶが、正式には「神裔」と呼ぶ。聖蟲が与える科学技術知識や超感覚、射撃管制機能を持たないが、知能は優れギィ聖符を自在に読みこなし、格闘戦の武術の腕は神族とほとんど変らぬ者も多い。ギジシップ神聖宮や神聖首都ギジジットにて廷臣として仕える事が多いが、放蕩して方台をさすらい交易警備隊に入ったり、無法都市タコリティを拠点とする者もある。また聖山に入って学問を続け高位神官に昇る道もある。
弥生ちゃん降臨後に詰め掛けた廷臣採用希望者にも彼らは多数存在する。

神裔戦士 ギィール神族出身者でありながら聖蟲をもらえなかった、いわゆる「なりそこない」は、通常は神聖王の廷臣となる。彼らはその恵まれた体格と育まれた知性をもって王国に仕えるのだが、一応は格の高い奴隷となる。ただそれでは見分けがつかないので、彼らは白銀の武装や装飾を許され、神族に準じる者として「神裔」の名を与えられる。
基本的には神族出身者は誰でも神聖宮は受入れるのだが、能力に問題がある者は家の恥となる為に避ける事もある。こういう場合、ウラタンギジトの神祭王の元に身を寄せ、ゆくゆくは褐甲角王国に亡命したりもするが、無法都市タコリティで海賊になる者も少なくない。東金雷蜒海軍の軍船船長はたいてい神裔戦士で、ワクルが職場を供給しているという意味もある。

『妃縁』:金雷蜒王国神聖王の妃に相当する位。王姉妹と同格。女性が神聖王になる事は無いから、女性の位としては最高となる。ちなみに神聖王が男に限られるのは、王の聖蟲自体が雄であるからで、他の神族のゲジゲジの聖蟲は皆雌である。ちなみに褐甲角王国の聖蟲は、額にあるのはすべて雄。
5006年神聖首都ギジジットで巨大ゲジゲジ神との交感を行ったキルストル姫アィイーガがこの位を受けた。が彼女はその後神聖王の代替わりに遭遇し、そのままゲバチューラウ王のほんものの妃になってしまう。

聖上:神聖王の尊称。通常は神聖宮の住人しか使わない。普通の人は陛下と呼べばよい。武徳王の尊称は「頭目」だが、これは初代カンヴィタル・イムレイルが夜盗同然の小勢力時代だった名残であり、今は古文書にしか出て来ない。

門監将軍:東金雷蜒王国王都ギジシップ島の正門たる鉄城門を守る3人の武将。聖蟲を持たない人間で、位で言うと兵師大監にあたる。その中の一人は弥生ちゃんに強く惹かれて、ギジシップ関連の情報をひそかに伝えて居た。

青晶蜥神救世主神殿: デュータム点においてようやく正式な根拠地を得た青晶蜥神救世主蒲生弥生ちゃんは、現地のトカゲ神殿を接収して「救世主神殿」と名を改めた。その後、紆余曲折あって、青晶蜥王国が出来た後も救世主神殿は王国と併存する形で有り続けた。褐甲角、金雷蜒の王族神族に対しても神威を授ける為に敢えて中立な立場である神殿として制度に残したわけだ。中心施設はガモウヤヨイチャン在世から建設が開始された「ルルントピルマニウム」と呼ばれる丸いドームを持った宮殿で、外は青いタイルが、中は星空の星座を表す図像が描かれている。またこれとは別に「ぴるまる神社」というものもあり、これは地球にある「比留丸神社」の再現である。

青晶蜥王国建軍準備委員会 青晶蜥王国を立ち上げる際に、独自の軍を立ち上げる為に集まった軍人・武人をまとめる組織。諜報機関は弥生ちゃんは別に持っていた為に、当初は警備の役くらいにしか立たなかったが、後に使者として多用されるようになる。

神撰組 方台において王・救世主の身辺警護をする者を禁衛隊と呼ぶが、「神撰組」は弥生ちゃんが作った青晶蜥神救世主の為の禁衛隊。後に「嵐の四日間」と呼ばれる大演習の結果選りすぐられた8名の戦士がそれである。彼らは青晶蜥神の神威の宿る短剣を与えられ成立間もない王国を支えたのだが、紆余曲折と内部抗争、粛正とおなじみの手順を辿り、安定したのは二代メグリアル劫アランサの御代となってから。伝統的に8名を定数とする。

野球拳団 弥生ちゃんが「ゲリラ的美少女ルール」に基づく野球を教えた結果、方台に厭兵術が広まる。この力を方台平和の為に役立てようと考え結成された一種の宗教結社。弥生ちゃんの教えに基づき「不殺」を旨として、弱者を保護し悪と不正を懲らしめるのを目的とする。後には興行としての野球も開催して資金集めを行い、全国的に大人気となる。

禁衛隊: タコリティが新生タコ王国を唱えて独立した際に結成された、褐甲角王国出身の軍隊経験者を構成員とする傭兵隊。独立運動の首班である”ミストレックス”ことソグヴィタル範ヒィキタイタンを慕って集まったもので、タコリティ最強の部隊として活躍した。人数は150名だが、後に倍増する。

 

文化事典

タコファベット(テュクラ符):文字 タコ女王時代に作られた表音文字。単純で速記のし易い平易な文字で話し言葉をそのまま表記する事が出来る。主に商取引や契約文書を記述する目的で生まれた文字であるので明快を旨とするが、反面複雑な思索や科学技術の表記には不向きである。文学も発達せず戯曲のみが残った。タコファベットが難解な内容を記述できるようになるのは、金雷蜒王国時代にギィール神族がタコファベットとはまったく異なる文字として開発したゲジジ聖符と聖文・聖音を経て、その難解な語彙を褐甲角王国時代に翻訳しようとしてタコファベットを改良した後である。

ゲジ(ギイ)聖符:文字 ギィール神族がタコファベットの代わりに全く独立して作った文字。表意文字であり、科学技術を間違いなく記述する為に作られており文章構造を記述する符号も完備されている。元はタコ王国時代の番頭階級が解さない文字として作られたため、金雷蜒王国時代はゲジゲジ神族と限られた書記カーストのみが使うことを許されていて、一般庶民には無縁の存在だった。しかし後に魔法文字として崇められ、子供の名前に嘉字を一文字与えるという風習を生み出し、現在まで伝わっている。ゲジ聖符には一文字ごとに普通に使われる言葉とは別の発音があり、これを直接喋れば額の聖なるゲジゲジ、及びカブトムシに直接話掛けることが出来るという。これが聖音であり聖音の発音をタコファベットで記述したのが聖文である。ゲジ聖符により書かれた文書は内容が科学技術に偏るという面もあり非常に難解で、現在もギィール神族以外の者は解読に困難を極めている。

ゲジゲジ文学:学問 ゲジ聖符で書かれた文書を内容を変更せずにタコファベットで書き直した文書を解読する学問。非常に難解かつ繁雑で、これを解するには大変な勉強が必要である。ゲジ聖符自体の解読も難しいが訳文であるゲジゲジ文もまた難解で、これを理解する努力をすることで褐甲角王国は科学技術の情報のみならず、人文科学の大いなる発展を遂げた。金雷蜒王国からの高級亡命者がそのまま褐甲角王国でも高位の官職に横滑りすることが多かった為、上流階級では必須の学問となり、これを解さない者はたとえ聖なるカブトムシを戴いていたとしても低く見られる傾向がある。

:単位 長さの単位。約140cm。この10分の一が「渡」で14cm、親指と人差し指を直角に開いた長さ。そのまた10分の一が「指」で1.4cm。古えの初代タコ女王の身体を基準としていると伝えられるが、男には不便なので男の指4本が半渡とされる。1尋の半分が「歩」、10歩=5尋で「囲」で部屋の長さの基準となる。1囲四方の面積も「囲」、2×4囲が「畑」で畑の広さの単位。1000歩で「径」で700メートル。700径約50キロメートルで「宿」となり一日で人間が歩ける長さとなる。十二神方台系は一辺1000キロ=20宿となるのだが、なんやかやで29日=1月は掛かるとされる。
「里」は町村の長さを測る単位で、1里の正方形の対角線が2径とされる。つまり√2だ。1里は1キロメートルくらい。

:単位 長さの単位。約75cm。建築物によく用いられる単位で、転じて普通に使われる。この長さは武器の杖と同じ長さで、直剣もこれに準ずる時がある。2杖が150センチで1尋より10センチ長いというめんどくさい体系になっているから、5渡半が1杖という簡易換算法を使う。

名前:文化 この世界の名前の付け方は、姓=(嘉字)=名、である。嘉字はギィール神族のみ、褐甲角王国においてはある一定以上の身分の出身者のみに許されてゲジ聖符で一文字付けられる。ゲジゲジ神聖王族のみ二文字になる。結婚すると、女は名の後ろに夫の姓を付けるが子供は夫の姓のみを名乗る。また養子縁組をすると、姓の前にもう一つ、養子先の姓が付く。金雷蜒王国の奴隷は姓が無く、名=(役職)=出身カースト名=主人の姓名、となる。

扇笑会:文化 ギィール神族の成人式。13歳の時に男女共に行われれ、3・7=21日間或る建物に篭って儀式を行う。やり方は簡単で、男子の場合男根の根元に特殊なリングを装着し決して精を漏らさないようにした状態で、100人の少女とひたすら媾合を繰り返す。女子の場合は逆に男根の根元にリングを装着して決して精を漏らさないようにされた若者100人とひたすらに媾合を繰り返す。非常に過酷な儀式で、毎年何人も自殺する者も出るが、この儀式を終えた者は以前とまったく違う性格になりまさしく神の一族にふさわしい振る舞いを覚えるという。この儀式を越えたギィール神族には色仕掛けや恋愛による篭絡はまったく効果が無い。この儀式で使われる少年少女は特別なカーストの出身者であり、後には大体神官や巫女になる。

蟲餌人: 巨大ゲジゲジ”ゲイル”の餌となる人間。軍と一般社会とはすこし形態が異なるが、基本的に罪ある人間がゲイルの餌になる。軍においては軍法に背いた者が餌となり、その死は戦死と同等に名誉あるものして罪は記録されない。また遺族は戦死の場合と同様に補償される。
一般社会においては、牢内にある罪人から地元のギィール神族が選ぶが、その選択は希望者のみで行われる。ゲイルによる死は全ての罪状を洗い流し、天河の冥秤庭の裁きの場でも、居並ぶ神々に対してなんら恥じる所の無い魂になり、天河の傍で遊ぶ事を許されると信じられている。また、ギィール神族は牢から罪人を大金で購うが、その代金は犯罪被害者遺族にそっくり手渡される補償制度にもなっている。
神聖王宮、神聖首都ギジジット、神殿都市ウラタンギジトに納められる蟲餌人は特別に「神餌人」と呼ばれ、道中地元の人がお祝いをして送る風習がある。

小説: 小説の形態で物語が提供されるようになったのは褐甲角王国が始まりで、まだ300年程度の歴史しかない。元は古代からの歴史を研究して一般読書人に知識として提供する為の、簡易表現形態であったが、その内に架空の人物を用いての物語となった。現在では歴史小説、あるいは恋愛もの、サスペンスが主流となっているが、印刷手段が存在せず写本として流通しているのだからまだ商業ベースには乗っていない。

禁色: 一般人が用いる事を許されない色。十二神方台系は色の禁令は緩い方だが、やはり存在する。
金銀:金雷蜒神聖王、王族、ギィール神族および神族家族(銀のみ)、褐甲角王族、元老員、黒甲枝(銀のみ)。
宝石全般およびガラスを除く透明色:聖戴者および高位神官、王宮の美姫のみ。
曙色(タコ石):紅曙蛸神殿関係者。
青色:青晶蜥神殿関係者および褐甲角王国王族、染料が特別で入手困難。
山吹色:金雷蜒神殿関係者、ギィール神族およびその家族。褐甲角王国においては忌避色。
紫:王宮関係者、官職を持つ王族、高級官僚、大臣。
緑(翡翠)色:緑隆蝸(カタツムリ)神殿関係者、カタツムリ巫女侍女。
銀黒(毛皮の光沢を持つ黒):黒冥蝠(コウモリ)神殿関係者、葬祭時の高級喪服で上流階層のみ使用可能。
毒々しい色:風紀のびん乱を引き起こすとして取締まり対象。主にタコ樹脂による染料で河川の汚染を引き起こす為。神族神兵の甲冑等に用いられる。

秤量通貨: 十二神方台系における通貨の基本。金属のインゴットの重さで取り引きをする。通貨という概念はタコ女王の時代に始まったが、当初は物々交換、後にタコ石が用いられ、最後には手形で取り引きがされるようになるが、王国崩壊後はまた物々交換に戻る。金雷蜒王国は金属の利用を始めた国だが、どれほど巧妙に作っても他のギィール神族が貨幣を偽造するので、やはり物々交換が主流であり、のちには金属を用いる秤量通貨へと進化した。これは現代までも用いられ、褐甲角王国との商取引でも基本となっている。
褐甲角王国は外貨を対外取り引きで使用する為に、国内では青銅製の貨幣を用いるが、大中小の三貨幣はいずれも品質が劣悪、他の者が偽造しようにもこれ以上品質を悪くすれば崩壊するというギリギリの組成にまで最適化されているので、贋金は作れないようになっている。ちなみに大銅貨1枚は1金として流通し、金雷蜒王国の銀小粒一個と同じ、という事になっているが、対外取り引きでは絶対に銀しか通用しない。褐甲角王国の通貨は、実質紙幣と同様の信用に基づくものである。
物々交換における基準はゲルタ。ゲルタ貨幣という考え方が用いられ、ゲルタを束ねたモノが方台全土どこに行っても同じ程度の価値を持つので、標準的に使われている。1金が荷車一台分に相当する。褐甲角王国貨幣であれば、大銅貨がゲルタ1荷車(60包)、中銅貨がゲルタ1担ぎ(人間が背負う分量、12包)、小銅貨がゲルタ1包み(25枚)となるが、さらに細かい貨幣はないので、そのままゲルタ一枚が貨幣としても通用する。都市であれば大商人がゲルタ符というゲルタ換算の私的通貨を用意して、民間の便宜を図っている。

複利計算: トカゲ神救世主降臨当時に活躍した貸し金業者ジューエイム・ユゲムが考案した貸し金の計算方法。十二神方台系では金銭貸借はあらかじめ返済日と利息が決まっているものであったが、彼は借りた日数に応じて利子を計算し、またその利子に対しても利率が適用されるという計算方法で巨大な富を築いた。当時この計算方法は悪魔の所業とされ忌み嫌われた。

ギィール神族の装飾 ギィール神族は自ら拵えた機械や道具に対してしばしば華麗な装飾を施す。これはその作品が満足すべき出来である事を証すものであり、逸品の印である。装飾の結果本来の性能が失われるという事は無い。

方台における美の概念:地球はかなり違う。カエルは美しいものとして捉えられ、人間の美の理想の一つとして挙げられる。

童子の奉仕 方台においては、王侯貴族・聖戴者を地方の村や町がもてなす際には、儀礼的に地元有力者の児童を給仕に当てる慣習がある。通常は微笑ましい礼法に過ぎないのだが、時と場合によっては子供たちは人質としても用いられる。また気まぐれで有名なギィール神族の場合、ひょっとしたらゲイルの口に放り込まれるかも、といった懸念もある。実際その例も有った。

その他事典

裸足 海戦においては敵の船に乗り移る海賊戦法がよく用いられるが、この時は甲冑を着用していても裸足であるのがセオリー。甲板で滑って不覚を取る事は非常に多いために、神兵であってもそうするように定められている。

 

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