結構無敵ガンビットさん、もしくは輪廻転戦ガンビットさん 設定よもやま話

 

【結構無敵ガンビットさん、もしくは輪廻転戦ガンビットさん、最終設定決定】09/04/11

 

まゆ子「『結構無敵ガンビットさん』、企画は色々考えたが難航しておりますなあ。」
じゅえる「いや、あんたがやってるんだから、素直にうまくいかないよ助けてじゅえるちゃん、と言いなさい。」
釈「まあ、そういう風に素直になるか、諦めるかですね。」

まゆ子「それを諦めるなんてとんでもない。というか、ようやっとまっとう、かつ、面白い展開に持っていく筋道を考え出しました。

 

 つまり、脳の軽いファンタジーでいこう!」
じゅえる「いや、ロボットに乗ってチェス、というのは十分過ぎるほど脳が軽いんですけど。」

まゆ子「まずこの話は、当初から主人公を男と考えている。大東桐子さんがヒロインとして予定されて居るから、当然ヒーローが必要ってことだ。」
釈「まっとうな構想ですね。」
じゅえる「男、若い男だろう、が主人公てのは特に反対すべき理由も無いね。うん。」
まゆ子「さて、この男の子、どこから調達しよう。ただの男の子であるというのはなんだ。だがこれまで検討してきたように、ガンビットさんによる戦闘が常識として存在する世界の住人では、どうもうまくいかないらしい。

 そこで、脳の軽いファンタジー設定定番を使用する。これは『げばると処女』が必要以上にシリアスに成り果ててしまった反省も込めて、敢えて読者様の親しみの易い定番を用いるって意味ね。」

じゅえる「もったいつけなくていいよ。」
釈「『げばると処女』の反省、ということでしたら、異世界に降臨、ですか。」
まゆ子「なるほどそれは勘がいいな。だがすこし変えた。桐子さんが現実世界に、主人公をスカウトに行く。」
じゅえる「ふむ。」
釈「『げばると処女』では、どうやって弥生ちゃんきゃぷてんが召喚されたのか、不明ですからね。スカウトなら完璧に理解できます。」

 

まゆ子「となると、その主人公は只の男の子ではない。というか、桐子ちゃんは弱っちい男は相手にしないもんね。
 そこで、開巻冒頭、国体オリンピッククラスの肉体派暴漢複数から因縁つけられ攻撃され、しかしあっけなく快勝する超ヒーロー、にした。」

じゅえる「めちゃくちゃ思い切った設定だな。強いんだね、桁外れに。」
釈「その戦闘力をガンビット戦闘に、…素手の格闘技能はガンビットさんにはあまり関係ないですよ?」
まゆ子「うむ、素手で勝つのは意味が無い。素手で勝てるのはなぜか、が問題なのだ。

 つまり、彼は時間が物凄く遅く感じられる。加速装置を使ったように、相手が停まって見えるのだよ。そういう能力を生まれつき持っている。

 当然、桐子さんも持っている。」
じゅえる「体感時間がゆっくりなんだね。」
釈「ちょうど、『ゲキロボ☆』で、城ヶ崎花憐さんがその能力をつかっていましたよ。そうか、それの流用設定なんですね。」
まゆ子「うむ、そう言われると安直だが、時間がゆっくり感じられるという能力は物語でものすごくありふれた設定であるから、特に反対も無いでしょう。

 で、この能力を生かす為にガンビットさんの機械的性能設定をちと変えた。
 ガンビットさんは、地上数十センチから2メートルの高さを、時速700キロ以上で疾走する!」
じゅえる「それ、激突死するじゃん。」
まゆ子「それをクリアできるのが、この能力の持ち主だ。」

釈「待って下さい。じゃあそれ、現実世界のお話ではないですか。」
じゅえる「あ、そうなるね。これ現実っぽいよ。SFでしょ。」
まゆ子「脳の軽いファンタジーだ、て言ったじゃない。とりあえずぐだぐだと考えた結果、桐子さんはタイムトラベラーだという事に決定した。自分が生まれてから死ぬまで、2032年に31才で死ぬまでの時間を何度でも自由に往復できる。」
釈「? かなり限定的なタイムトラベラーですね。事象の変更はできるんですか?」

まゆ子「さてそれだ。桐子に出来る事象の変更は極めて限られている。そりゃそうだ、人間個人の認識力で、ここをこうすれば歴史はこう変る、ってのは事前には予想出来ない。やってみて間違いだった、とわかってもやり直しは新たなる変更を意味する。変更に継ぐ変更で遂には時空が輻輳して手が付けられなくなる。」
じゅえる「まあ、多重時間旅行者はそうなる宿命だな。どのSFを見ても。」

まゆ子「さらに時間旅行者が複数居る場合は、もう手の付けようが無い。が、まあ桐子はやるし、他の奴も事象の変更を行う。相互に矛盾する事象の変更を調整する、あるいは妨害する行為が、「ガンビット」さんによる決闘だ。」

 

釈「ふむ、戦う理由はわかりましたが、時間旅行者ってのは安直ですねえ。」
じゅえる「いや案外とこのくらいベタな方が面白いよ。読者様の理解が簡単な物語、シナリオ、仕掛けである、てのは極めて重要なポイントだ。」
まゆ子「うむ。だがまあこの設定はかなりの独自性を持つんだけどさ。

 つまり、桐子さん他の時間旅行者はそれほど重大な事象・歴史の変更は出来ない。その代りに人を使う。主人公のように時間が停まって見える人間に、その能力を十分利用できるやり方を教えてなんでも望みのままに欲望を叶えることが可能とさせる。彼らがその先の人生で能力を使って成し遂げる何か、こそが時間旅行者が望む事象の変更だ。代償としてガンビットさんによる戦闘に彼らは徴兵される。そりゃそうだ、彼らの能力の発揮こそが事象変更の実質であれば、妨害者は彼らを殺すのが早道だ。ぶち殺しに来るし、防がにゃならん。」

じゅえる「もっともらしい話だな。」
釈「厨設定ではありますが、新規性は認められますし、面白いかもしれません。」

まゆ子「というわけで考えた。桐子さんには事象の変更は極めて限られた事しかできない。だが出来ないわけじゃない。
 たとえばこの主人公の男の子。小学生の時分に幼い妹を交通事故で失ったとする。桐子さんがこれを防いで妹を助ける事は出来る。だがそうすると、主人公はこの時間を止まったように感じる能力の発現が無い。妹が死ぬ姿を目にする事で目覚めた能力だ。どちらも不即不離の関係にあり、能力の発現が無ければ桐子さんの接触と介入も無く、妹は救われない。」

じゅえる「ループするわけだ。ふむ。」
まゆ子「このループを解消する手段は唯一つ。桐子さんと契約した主人公自身が妹を救うことだ。数年後、能力が発言した本人が時空を飛び越えて過去の事象を変更することで、妹の救出と能力の発現+桐子さんとの接触、を両立させる。」

釈「桐子さんと契約すれば、能力者は誰でも時間を遡ったり出来るんですか?」
まゆ子「ガンビットさんに乗っていれば大丈夫。ガンビットさんは時空のねじれから搭乗者を保護する機能を持つ。これを武装して、時空を飛び越え遡ったり未来に行って妨害者と戦うのだから、過去に飛ぶことも可能となる。」

じゅえる「過去の事象の変更を自ら成し遂げる事も可能、ってことか。」
釈「過去に行って、ガンビットさんから降りるとどうなります?」
まゆ子「時空の連続性保存の法則が適用されて、後から来た者が自動的に消滅する。過去に行けば、旅行者本人が二重存在のパラドックスを解消する為に消滅。未来に行けばやはり後から来た者、つまりその時間に元々居た自分が消滅する。つまり時間旅行者はそこが自分の末路寿命の果てと知る。」

釈「質問! 死後の時間には行けるのですか。」
じゅえる「うん、それと誕生前の世界だな。」
まゆ子「未定。だが単に死体やら受精卵やらの問題ではなく、生命の本質に関係するものだね。要するに生命とはただの化学反応の集積体ではなく、元々時空に干渉する存在であるからこそ時間移動の能力を獲得したりする。

 ちなみに桐子さんは二重存在やら多重存在のパラドックスを回避できる。同じ時間に異なる時間の自分が存在できる。特異的な存在であるけれど、そりゃ当然過去か未来に旅行してみなければそういう体質が有るかどうかは分からない。死を覚悟してガンビットから降りてみる、あるいはガンビット撃破されて外に転がり出るかして、初めて判別できる。

 ということで、桐子さんも元はこのガンビットさん乗りであったのだよ。」

釈「つまり、他の時間旅行者によってガンビットさんに乗りませんか、ってスカウトされたんですね。」
じゅえる「複数の時間旅行者が居るって言ったね。彼らは互いに相克する存在なんじゃないの?」

まゆ子「ガンビットさん乗りの特殊体質者に、時間操作者が含まれることは最初から知っている。知っていながらガンビット乗りをスカウトする。そういうもんだ。

 

 ちなみに桐子さんをスカウトしたのは、しるくだよ。衣川うゐ。ちなみに彼女は正義の時間旅行者ね。」
じゅえる「桐子は悪の時間旅行者なんだ。」
釈「その違いは?」

まゆ子「しるくは、1978年〜2056年までの長い期間生きて自然死する運命に有る。つまり切羽詰まっていないから、歴史が自然と流れることを目的とする。

 桐子は2001年〜2032年の早死にだから、切羽詰まってなんとか運命を変えようと努力する。もちろん運命は変わらないのだけど何も無しに終るのを自分は許せない。自然と歴史に自らの足跡を刻み込もうと、様々な行為を行う。これはしるくにとっては悪と看做して差し支えない。」
じゅえる「明確な区分があるわけだ。」

釈「世界中には何人くらい時間旅行者が居るんですか?」
まゆ子「桐子が生きる時間帯には、7人くらいかなあ。しるくが生きる時間帯なら20人くらいだ。大物はね。」

釈「で、桐子さんと主人公との契約は、どういう形態をとりますか。」
まゆ子「基本的には、ライセンス発行だ。彼らガンビット乗りは任意の間時間を止められる能力を契約によって獲得する。これは数日から数週間までも可能で、凍りついた時間内ではなにをするのも自由。ただし生身の人間をあまり乱暴に扱うと向こうは凍りついているんだから傷付いて死んじゃうぞ。

 で、この能力の担保となるのがガンビットさん。ガンビットさんが彼らに1器貸与されて機能するんだけど、それは自覚できない。彼らは自分達が独自に能力を獲得したと誤解する。
 で、桐子に招集された時にはガンビットさんが目の前にバンと出現する。これに乗って起動すれば、桐子の傍に出現して戦闘に巻き込まれるシステムだ。」

じゅえる「つまりはガンビットさんを取り上げられると、能力を使えないんだね。」
釈「エネルギー源はなんですか。時空エネルギーですか。」
まゆ子「その言い方は意地悪だな。ちゃんと電気だよ。電気で動く。時間を停止させる能力と言っても、実際は能力者の状態を長々とキープしているに過ぎないから、そんなにエネルギーを必要とするわけじゃない。世界が停止して居るんじゃなくて、能力者が物凄く長い時間を生きて居るんだ。」

じゅえる「じゃあ時空エネルギーってのは無いんだ。」
まゆ子「いや有るぞ。ガンビットさんはつまり器体の内と外に違う時間の流れを持つ。能力者固有の時代の時間と、出現した場所の時間の流れ。この差が二重存在のパラドックスとかを解決するんだが、ガンビットさんはその差からエネルギーを生み出していると同時に内部空間を固有時間に留めている。無論無制限で効果があるわけではなく、時間切れタイムオーバーが有る。ま3日〜7日くらいだからほとんど困らないけどね。」
釈「エントロピーの差って奴ですね。」
まゆ子「うん。」

 

じゅえる「とりあえず、設定は分かった。

 キャラ行こう。桐子はそもそも最初から確定だ。主人公が高校生くらいの男の子、これも確定だね。最初の構想と変わらない。」

まゆ子「うん。ガンビットさんは100器の組でチェスのゲームみたいに戦う、てところもそのまま。武器が銃火器で実体弾てのまで同じ。変更点は時速70キロから700キロになっただけ。」
釈「時速700キロで地表付近をぶっ飛んでいく、というのは大事なんですが、ガンビットさんを地面にぶつけても壊れないんですか?」
まゆ子「足にソリが付いてるから、がりがりと削ってちゃんと止まる。うん、壁面にぶつける際でも足からぶつければ大丈夫。ただ真横にぶつけると流石にヤバい。割れる。」
じゅえる「割れると時空エネルギーが流れ込んで、二重存在のパラドックスが発生してどっちかが死ぬわけね。」

まゆ子「ガンビットさん相互は、そういうわけで外にパイロットは出られない。通信手段も信号灯の点滅によるモールス信号だ。直接通話は出来ない。
 が、ガンビットさんの整備工場というかガンビットベースってのがどこかに有ることにする。ガンビットさん製造工場もあるし、製造者も居る。ここはまだ未定ね。
 で、その基地では能力者同士がちゃんと人間として接触できる。それぞれ固有の時間の流れを、桐子時間に強制変調しているから大丈夫。一種の亜空間だ。」

じゅえる「どういう空間なんだ。やっぱ不思議時空に浮いている時空要塞みたいなの?」
まゆ子「いや、今考える。…エリア88の砂漠基地みたいなー、では?」
釈「ひじょーにいやな空間ですねそれ。」
じゅえる「おんなっ気が無いぞそこ。能力者に女は居ないの?」
まゆ子「普通に男女比同じで居るけれど、桐子ちゃんは趣味で男ばっかり集めてる。だからガンビットベース”桐子”は男が群れ集うパラダイス。筋肉ハーレムだ。」

じゅえる「…読者様になんと言ってお詫びしよう…。」

釈「しかし、それは実体としてはどこに有るんですか。地球ですか。」
まゆ子「地球上のどこかでありながらどこにもない、或る時間帯を確保している。もちろん外部からの侵入は不可能だ。桐子の許しが無いと時間の同調が出来ないから。しかし時々紛れ込んで来る奴も居る。不思議とね。で、ガンビットさんの製造者マイスターもここに住んでいる。」

じゅえる「ガンビットさんは誰が発明者なんだ?」
まゆ子「不明。だが設計図やら必要な部品やらはどこからともなく供給される。というかマイスターは何百年も生きているんだよ。時空調整者の空間に間借して、彼らが死ぬとまた別の奴の時間に寄生するように家移りする。無論マイスターを持たない時空調整者も居て、まあそういう奴は嫌われ者だから仕方ないな。社会的協調性が無かったり、アホ過ぎて歴史をアホみたいに変更する奴のところには行きはしないよ。」

釈「そういう人は、ガンビットさんの供給が無いんですよね。どうするんですか。」
まゆ子「まずは、普通時空調整者は他の時空調整者からスカウトされて成るものだ。だから最初の1器は持っている。彼らはまずそれを使って定められた範囲内の時間を自在に行き来できる事を確かめて、何を自分が為すべきかを自覚する。

 次に歴史的事象の変更に乗り出す。まずは各々自分の力でやってみて、その限界と可能性を認識する。その過程で、他の時間能力者の存在を確認し、彼らを覚醒発現させれば効率的に事象変更が可能だと知る。しかしその為にはガンビットさんを獲得しなければならない。

 まそうこうしている内に、他の時空調整者が”寿命”で死ぬ。すると彼が確保していたガンビットベースの時空が空になる。ガンビットベースの責任者は大体がマイスターだ。彼らも時空調整者を必要とする。で双方の合意の上で遺産の継承が成る。で、前のオーナーのガンビットを回収し、加速能力者を解放する。自然解消された加速間能力者はガンビットさん無しでも或る程度の時間時間を凍結して能力を発揮できるが、まあ数分レベルだね。
 ガンビットさんを回収されない場合もある。ほとんど手続き上のミスで見落とされたわけだが。」

じゅえる「つまりはガンビットさんはどうとでもなるんだ。その未回収ガンビットさんを分捕るとか出来ないの?」
まゆ子「まあぶっ殺せば。オリジナルの契約した時空調整者が死んでて護ってくれないから、仕方ないな。」
釈「酷い奴ですね。」

まゆ子「ともかくガンビットさんは手に入る。で、時間能力者を定められた範囲内の時間の中から選び出し、事象の変更に役立つ人物をスカウトしてガンビットを与え契約する。
 契約する前に一度仮にガンビットさんを与えて招集せず、どんな事象の変更をしてくれるか試してみる。で望ましい変更であれば、時間を遡って再度契約する。これがスカウトだ。」

 

釈「質問! 時間旅行というかタイムワープはいかなる手段で行いますか?」
まゆ子「あーそれは、時空調整者がその時間の事を強く思い出せば、自然と飛ぶ。」

じゅえる「早いな。」

まゆ子「こんなとこ精密化しても仕方ない。ともかく想起と時空移動は同じなんだ。
 これは三次元移動も同じだ。世界中行ったこと有る場所ならばどこにでも行ける。逆に行ったこと無い場所にはちゃんと乗り物を使わなければいけない。ガンビットさんはその点時速700キロで海の上も飛べるから、便利だな。
 無論移動中の体感時間はちゃんと流れて腹も減るトイレにも行きたい。周囲の時間が凍結している中、結構孤独な旅だぞ。」

じゅえる「ガンビットさんは、普通空間内で下駄みたいに使ってもいいんだ。」
まゆ子「いいんだけど、加速能力者自身の時間内だと動かんよ原理上。ガンビットさん内外の時間の違いで動くんだから。時空調整者なら無制限に動くけど。」
釈「そこは惜しいですねえ。」

 

まゆ子「あーついでに言っておくと、ガンビットさん時速700キロというのは絶対時間内速度だ。能力者や調整者が時間凍結を掛けた中でもやっぱり絶対時間700キロでしか動かない。つまり時間加速倍率300倍、1秒を5分と感じる時間の中では、ガンビットさんは体感時速2.3キロメートルだ。もの凄く遅い。」
じゅえる「何故?」
まゆ子「空気抵抗ちゃんと掛るもん絶対時速700キロ相当の。」

釈「あー、それは当たり前の話ですね。ということは、そんな速度の中では生身の人間がたとえ居れたとしても、空気が粘着して動けないわけですね。」
まゆ子「300倍の時、体感秒速1センチで物体を動かした時、それは絶対秒速3メートル時速10キロになっている。人間が手足を動かすとして、体感秒速1メートルくらいは普通でしょ。これは絶対換算で時速1000キロ音速だ。」

じゅえる「う、動ける道理が無いな。」
釈「空気抵抗に抗して動く事が可能な速度はおそらく絶対時速80キロくらいでしょう。バイクでもそんなに飛ばせば顔が痛いです。」
じゅえる「だが生身の人間が時速80キロで動ける、てことならば、そりゃあ凄まじい能力だな。」

まゆ子「あー空気抵抗に関しては理解していただけたでしょうか。つまりガンビットさんの出力では大気中時速700キロでしか動けない。推進装置にプロペラを使ってるからだ。ジェット推進にするともっとスピードは出るけれど、ガンビットさんは基本電動だからプロペラはモーターで回ってる。ジェットはちと違うな。」
釈「はあ、そりゃ凄い勢いですね。それだけで空飛べますよ。」
じゅえる「でも飛行機って、何分も加速してその速度になるんじゃないの?」

まゆ子「う! …そこはガンビット超能力ですよ。ガンビットさんは時間加速中だと停まったり動いたりがまるで慣性が無いようにちょこまか動くのです。」
釈「0→時速700キロまで1/100秒、ですか。そりゃあ人知を越えるばかばかしさですねえ。」
まゆ子「いいんだよ! 体感では時速2.3キロなんだから!」
じゅえる「いやそれ1/300の時だから

 

 その300倍ってのは誰が決めるんだ?」

まゆ子「そりゃ時空調節者がガンビットさんを招集して戦闘する時にそう時間を設定する。ちなみに×300なのは、今見た通りに空気抵抗の問題でガンビットさんがまともに動く限界だからだ。時速2.3キロのビークルで戦うのはかなりつらいぞ。」
釈「遊園地のゴーカートでももっと早く動きますねえ。でそれが銃で戦うと。レーザー光線とか無いものですか、未来兵器なんでしょう。」
まゆ子「いや、これ過去兵器だ。過去から延々と生き続けるマイスターがその時間で得られる科学技術を利用して作り上げたもんだ。昔は甲冑武者だったよ。だから彼ら時間能力者は「騎士団」と呼ばれる。」

じゅえる「レーザーは無いんだな。」
まゆ子「いや実はレーザー光線はなかなか難しいとこがある。なんとなれば、光速であれば×300の世界でも十分早いんだな。それでも未だ実用に到ってないのは、ガンビットさんの出力がレーザーを破壊光線として用いるほどに強力では無いからだ。

 さて、ガンビットさんは時速700キロで動くんだが、搭載マニュピレータも武装も機械部品は別に時間加速はされていない。超高速で動くんだけど、ま機械は目まぐるしく動くってのは当たり前だな。で、ガンビットさん搭載火器も、普通に爆発して普通速度で弾丸が飛び出る。弾速も5〜800メートル毎秒くらいの普通弾だ。
 これに問題は無いね?」

釈「初期設定では弾速800メートル毎秒×300倍、でしたけど、止めたんですね。」
まゆ子「やめた! 時間加速された物体が通常時間内で超高速化する、ってのはエネルギー保存則に違反して使い物にならなかった。やめ!」

じゅえる「つまり、ガンビットさん搭載火器が発射した弾丸は、登場する加速能力者にとっては毎秒8メートルのとろい弾丸なんだね?」
まゆ子「それで了承する。やはり火薬の燃焼速度まで加速するってのは、どう考えても駄目だった。

 その代わりと言ってはなんだが、発射される弾丸にはガンビットさん自体の器速が加算される。時速700キロで走行中のガンビットさんが秒速800メートルの弾丸を撃つと、合計1000メートルおーばーの高速弾になる。戦闘機と同じだ。
 ついでに言うと、ガンビットさんは旋回する。こちらはパイロットの能力で高速旋回出来るから、秒速50メートルくらいは加算される。火器を用いずとも手で石ころ放り投げると、器速+旋回速度=秒速300メートルくらいにはなる。空気抵抗掛るけど。」

釈「絶対時間で、ですから、×100だと体感では秒速3メートル、×300だと1メートルのひょろひょろだまです。」

まゆ子「というわけだから、弾丸も体感秒速8メートルのバットで撃ち返したくなるような遅いものになる。が、絶対に当たってはならない。弾丸が持つ運動エネルギーまで1/100になったわけじゃないし、というか速度の二乗がエネルギーであるから秒速800メートルの弾丸は、秒速8メートルの弾丸の10000倍のエネルギーを持つ。見た目に騙されちゃいけない。」
じゅえる「つまり、当たれば加速もへったくれもなく死ぬ、ってことか。」
まゆ子「ガンビットさんの装甲は大した防御力を持っていない。というか、鋼鉄製ですらない。当たるなとしか言いようがない。」
釈「元から8ミリ耐弾でしかない設定ですからね。」

まゆ子「逆にこのトロイのを逆用したのが57ミリ榴弾砲だ。低速で投射される榴弾は、ガンビットさんから見ると、空中に浮遊する機雷みたいなもんだ。接触するとそりゃ爆発で致命的損傷を被るから、動きが取れなくなる。それこそ、チェスみたいな頭脳戦が展開されるんだ。」
釈「おお! なんとなくいい感じです。」

 

じゅえる「でもやっぱ×300の時間加速ってのがダメなんじゃないかなあ。もっと倍率低く出来ないの?」
まゆ子「やっても構わないが、というかガンビットさんは体感時速15キロくらいが一番操縦しやすいのだが、その時の速度は×50くらいだな。敵が×300でこちらが×50だとどういう事が起きるか。もちろん敵も味方もガンビットさんは同じ絶対時間内速度時速700キロで動いている。
 しかしながら同じ時間に発射される弾数が違う。6倍多く相手がばらまく。しかも敵はこちらの6倍の精密度で回避行動をするし、こちらの回避先にばしばし当てて来る。特に57ミリ榴弾砲で機雷みたいのを6倍もばらまかれると絶対勝てない。」

釈「あー、仕方ないですねえ。こちらの射撃もするりと避けられますよねえ。ところで時速700キロと言えば飛行機ですよねふつう。ガンビットさんが空を飛ばないのはどうしてです?」
まゆ子「そりゃ当然。」
じゅえる「しゃくちゃん、あんた時速2.3キロの飛行機で空飛びたいか?」
釈「あ。」

まゆ子「いや飛べるんだけどさ、ジェットかロケットエンジン搭載すれば飛ぶんだけどさ、空気抵抗が無茶苦茶増大するからガンビットさんの形状だと分解粉砕するのさ。空気抵抗を考慮した紡錘形ガンビットさんてのを考えた奴も居るけれど、それで飛行出来る速度は絶対速度時速1500キロ程度、×300だと体感時速5キロだ。時速2.3キロの物体に対してさほど優位にはならない。
 しかも形状的にこいつは小回りが効かないから地上付近を走行出来ない。高くて的になるとこを飛ばざるを得ない。ついでに言うと、そんな高速では鉄砲を振り回して全周狙うなんてのは出来ない。前の的だけだ。」

じゅえる「レーザー砲が搭載出来れば、それでも勝てるんじゃないかな?」
まゆ子「うん。将来的な課題としてマイスターが試作していることにしよう。」

 

じゅえる「しかしそんな倍率で人間が生身で動く、ってのはものすごい無理が有るよね。」
釈「というか、動けませんよ。時速700キロが秒速2.3メートルになるんだから、人間のパワーでは秒速3センチくらいではないですか。」
まゆ子「×300体感秒速3センチだと、絶対時間秒速9メートル、時速32.4キロだ。100メートル11.1秒だな。男子高校生の陸上部くらいだ。」

じゅえる「実のところ、あらゆる状況下でその早さで動けるってのは、バケモノ級の速度なんだな。特に静止状態から次の瞬間トップスピードに入ってるてのは、十分手品いや超人の域だ。」
まゆ子「ああ、正直言って、初っぱなから桐子がやらかした手品は、その速度で十分出来る。」
釈「おお! ではこの速度で、ってかなり妙な絵ですね。」

じゅえる「ちと問題有り。」
まゆ子「うむ、せめて秒速1メートルくらいで動いて貰わないと困る。えーと、人間生身で加速能力使用時は×100が限界として、これで体感秒速1メートルは絶対時間秒速100メートル。時速360キロだ。」
じゅえる「ファンタジーもここに極まってますね。というか、加速×100でも空気抵抗は普通に掛るんですよね、360キロでは手足千切れちゃうよ。」

まゆ子「人間生身だと、時速80キロがせいぜいじゃないかな。」
釈「全身で受けるとすれば、そんなもんでしょう。風防がほしいところです。」
じゅえる「なんとか超能力でここまで出しなさいまゆちゃん。」
まゆ子「へい。
 てことはー、時速80キロ秒速22メートル、×100加速だと体感秒速22センチだ。」
釈「能、ですね。」
じゅえる「だが空気抵抗で自動的に能の動きになる。」

まゆ子「ちなみに加速能力者が自力で発生できる時間加速は精々20倍、この時体感秒速50センチだと、時速では36キロ。人間限界でちょうどいいか。」

じゅえる「ガンビット甲冑での動き、が問題なんだな。無動力ガンビットは要するに人力ガンビットだ。×100体感秒速22センチで動く、ってのはかなり難しいぞ。というか、展開10メートルだけで1分は掛る。」
釈「ガンビットさんも、集団戦であれば展開にかなりの時間を要しますよ。」
まゆ子「つまり、体感でおそろしく時間が間延びした展開、ってわけだ。さあどうしよう。」

じゅえる「ちなみに、時空調整者自身も×100だとそんな速度でしか動けないでしょう。どするの?」
まゆ子「いやあいつら、時間を跳躍する時は想起で行うのと同様に、場所もそこを思い浮かべるとそこに居る、という技が使える。」
じゅえる「それを早く言いなさい。ガンビットさんもガンビット甲冑騎士も、時空調節者によって任意の場所に出現するのだ。」
釈「ガンビットさんも、どん!と出現すると、試作品に書いてますしね。」

まゆ子「じゃあ、…そんないい加減なもんでいいかい?」
じゅえる「秒速22センチで戦闘する不条理さ、に比べればはるかに現実的だ。」
釈「うんうん。」
まゆ子「じゃ、そいうことで。文字どおりチェスみたいに駒を動かす感じで、ガンビットさんが動く。そんなもんか。」
釈「出現位置の設定に、なんらかの制限を加えるべきですね。」
じゅえる「うん。移動にも一定の規則性とか進路制限とかを考えよう。」

 

じゅえる「というわけで、試作してみることにします。」

 

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じゅえる「というわけで、試作してみました。色々出て来ますね設定。」

まゆ子「いきなり桐子は爵位持ちになったよ。」
釈「ロード・アルハンダラ、ってなんですか実際。」
まゆ子「あーつまりだ、私が考えている設定では、時空の狭間に永遠の空間、人が死なずに生きるパラダイスがあるのだ。桐子はその一つを所有する。」
じゅえる「天国?」
まゆ子「ヴァルハラと考えた方が良い。桐子達時空調整者に奉仕する騎士戦士が集っている。彼らは不死ではないが、この空間に生きる限りは老化もせずに時間を越えて存在し続ける。桐子の寿命まで。」

じゅえる「桐子は2001〜2032年だから、すぐタイムリミットでしょう。」
まゆ子「うん。つまり複数の時空調整者の間で相続され続けてきた空間だ。所有者である「ロード」は時空調整能力によって、この空間を安定的に維持し続ける。対価としてこの空間に棲むマイスターからガンビットさんの供給や修理を受け、住人である騎士を率いてガンビット時空戦闘に望む事が出来る。」
釈「つまり、オーナーなんですね。」

まゆ子「うん。但し時空調整者であれば誰でも相続出来るわけじゃない。徳と事象変更の意志が必要。バカと頭おかしい奴に協力するべき道理は無い。また事象変更で過去と未来を変える意志が無いと、そもそもガンビット戦闘が発生せず騎士もガンビットさんも要らない。」
じゅえる「その領地は無くても生きられる、んだ。」

 

まゆ子「そこで爵位が問題になる。ガンビットさん乗りには二種類居る。時空調整者のスカウトを受けガンビットさんを与えられ、現実の自分の時間の中に生きる奴。これ主人公ね。これは爵位を持たない。
 だが彼らの能力は契約する時空調整者の死と共に消失する。ガンビットさんを取り上げられるから当然。これは拒絶する事は不可能だ、自分の能力をはるかに越える時空調整者の思い通りにガンビットさんは取り上げられるからね。

 そこで、この異次元時空に連れて行って貰ってその場にずっと棲み続ける選択をする者が出る。
 彼らは自分の時間を棄てる代りにガンビットさんに乗ってどこの時間へも連れて行ってもらえる。またガンビット戦闘を死ぬまで堪能出来る。というか、彼らの大半は時空調整者の死以前に、自らの死を予告されその運命から逃れる為に逃げ出した者だ。あるいはもうここ死ぬしかないという緊迫した状況からあの世に逃げ出したんだね。」

釈「つまり、死人も同然ですか。」
じゅえる「というか、死後の世界なんだ。」
まゆ子「ガンビットさんに乗って戦う運命にある者のみに許される楽園。文字どおりのヴァルハラだ。で、ここは酒は飲み放題、おねえちゃんも抱き放題なのだ。」

じゅえる「おねえちゃんはどこから来るんだ?」
まゆ子「奴隷。というか、そもそもが時空調整者は自らの欲望のおもむくままにあらゆる暴虐を可能なんだ。で、現実の時間の中から美人のおねえちゃんを拉致誘拐してこの空間に連れ去ることが出来る。というか、そもそもガンビットさんの前身はその為のゲージ鳥篭だったのだよ。」

釈「ま、色々置いといて、ともかく普通の人でもこの場所に連れて来る事ができるんですね。」
まゆ子「出来るんだが、時間加速能力者でないと動けない。永遠に凍結したままになってしまう。致し方ない、永遠の命を受けられるのは選ばれた人間だ。

 

 というわけで、この空間に棲む人間は限られる。故に時空調整者を頂点とする宮廷が生まれた。自らを特別な存在と考え騎士を名乗る。また女の子は戦乙女ワルキューレと呼ばれる。」
じゅえる「奴隷ではなくなったんだ。」
まゆ子「昔は、函に入れて連れて来るしかできなかったけど、ガンビットさんの前身と呼ぶべきガンビット甲冑とかが生まれて、異なる時間流内で自由に活動できるようになったから、時空調整者のお手伝いが出来るようになる。
 そうすると、加速能力者の質が問題となる。有能な加速能力者を高く遇するべきとなる。」

じゅえる「もちろん無能者にもそれなりの仕事は与えられるね。例えばマイスターの手伝いでガンビットさんを作るとかだ。ただしガンビットさん製造は現在では、普通時間の町工場に設計図を持ち込んで部品を作らせて、この空間で組み立てるってことをしている。」

釈「どのくらいの人数がいらっしゃいますか、その王国には。」
まゆ子「桐子ちゃんの王国は、常駐の騎士が50名、客分の騎士が30名くらい。マイスター1名に弟子が10名、その他召し使いやら料理番やらが20名、てな所帯だ。」
じゅえる「ふうむ、まあ騎士団だからそんなもんかねえ。」

まゆ子「全部男。」

釈「ワルキューレは居ないんですか?」
まゆ子「桐子ちゃんのとこには居ない。というか、桐子ちゃん元はワルキューレだ。しかもとびっきり腕の立つ格闘専門者。故に、桐子ちゃんの王国には武闘派の騎士が多数居候している。」

じゅえる「ちょっと待った。居候ということは、他の王国から来たってわけだ。そんなこと出来るんだ。」
まゆ子「まあ、そうなんだけど、詳細は未定。とりあえず騎士は何者にも拘束されない、ってのがこの世界のルール義理と人情だけが鎖になる。
 対して、時空調整者にスカウトされた手下どもは絶対の服従を強いられるべきだね。」

釈「騎士見習い、従者ですかね。」
じゅえる「小姓PAGEだね。ペイジ。」
まゆ子「ふむ、ではそう定めようか。従騎士エスクワイア(esquire)でもいいけれど。」
じゅえる「とりあえず、主人公はペイジだ。これは問題ないでしょう。エスクワイアはまた別のとこで、出世してから考えよう。」

まゆ子「ふうむ、それはーつまりー、うんそうだ。ガンビットさんの装備で”鉛”はペイジ専用として、”亜鉛””鈴”に乗る資格を得たところで与えられる称号ってことにしよう。」
釈「ああ、そうですね。そこんところの設定は生かしていいですね。」

 

まゆ子「えーと、ということで、騎士とそれ以外のガンビットさん乗りの区別は付いた。
 次は男爵BARONだ。」

じゅえる「騎士号以上の爵位を持つのは、つまり時空調整者だね。桐子と同じで、でも領地を持たない。」

まゆ子「というか、自分以外のガンビットさんを持たない時空調整者だ。時空調整能力に目覚めた後、彼らは過去未来に行って自らのやるべき事を模索する。
 その時の呼び名がバロンだ。無論必要無いから領地も騎士も無い。というか、普通騎士に成る前に時空調整能力に目覚めるから、彼らは騎士でもない。
 だがガンビットさん無しでも他の時間流に存在できるから、騎士よりも上位の存在であることは間違い無い。
 そして、自らの領地を作り出す事が出来る。」

釈「あ、誰でもできるんですか、それ。」
まゆ子「誰でも心の中に聖域と呼ぶべき場所の記憶を持っている。それはどの時間に属するというものではなく、永遠に存在するものだ。
 時空調整者は自ら想起することで、そこに到る事が出来る。物理的な確かさを持つ空間が、どこでもない時間の中に見出せる。そこは、その人物にとっては懐かしかったり愛しかったりする、理想郷と呼ぶにふさわしい故地だ。

 むろん、そこには他者は存在しない。極めて個人的な場所だからね。幻想としての人の影が有る場合もあるけど、それは本物の人間ではない。
 故に函を使って人を拉致して来ようとか考えるわけだ。このレベルで満足する時空調整者も少なくないが、この空間は当然彼らの死と共に消滅する。」
じゅえる「とうぜんだな。」

まゆ子「永遠ではないんだ。そして時空調整者はここには一時的にしか滞在できない。現実の自分の時空間に戻らなければならない生理的必然がどうしても発生する。
 彼らは自らが滅びる運命に向けて、刻一刻と進んでいる。いかに加速能力を用いて進行を拒んだとしても、ダメなんだ。というか、寝ると元の時間に戻る。」
釈「寝られないんですか!」
まゆ子「というか、時間調整者は完全に覚醒している状態でしか能力を使用できない。ただ、時間が加速している中では別に眠くもならない。あるいは、時空調整者としての責務から解放されるのは眠りに就いた時だけとも言える。」

じゅえる「限界は何時来る?」
まゆ子「主観時間だと判別は難しい。何ヶ月何年も後、って感じがする。むしろそれは、ガンビットを維持する能力の低下という形で現われる。ガンビットさんは最大100器を動員出来るんだが、これが50を切ると流石に自分の時間に戻って眠らなければならない。また領地を維持する能力も低下して、様々な不具合が起こるから、大抵誰かがそれに気付く。」

釈「気付かずに、そのまま居続けると、どうなります?」
まゆ子「或る日突然、ぶつっと緊張が切れて、領地の空間が消失する。そこに有った全ては永遠に失われ、最早取り戻すことはできない。本人も永劫ともいえる無の空間を彷徨い続け、或る日突然目を覚ますと、そこは元の時間である。ただし、その時彼は時空調整能力も加速能力も既に失われているという。」

じゅえる「別に死なないんだ。ならいいや。」
まゆ子「ただし、その後長生きした者は居ないという。神経がぼろぼろになって、まともな生活は当然送れず、常に焦燥感を覚え、眠ることさえ許されず、大抵が酒に溺れて破滅する。」
釈「仕方ないですねえ。、まあともかく、時空調節者は自らの死の運命を受入れるか、破滅するかの二者択一なんですね。」

じゅえる「つまり、騎士は不老不死になれるけれど、時空調整者はなれない。そいうことか。」
まゆ子「例外があるんだな何事も。つまり、他の時空調整者の領地に移り住めば永遠に生き続ける事が出来る。要するに他人の騎士になるわけだ。ただしこの場合、他の時間に出現する能力は封じられ、宿主に従って飛ぶしかない。ただ騎士とは違い、別の時空内をガンビットさん無しで生きることが出来る。」

釈「つまりは、桐子さんは死なずに済むんですね。」
まゆ子「残念ながら、「ロード」には無理だ。既に他の空間を自らの領地として受入れた者は、その選択肢を取れない。つまり。えーと放浪男爵となるには自らの領地・故地を捨てねばならない。身に着けるもの以外の私物も無い。ガンビットさんは例外だが、まあ放浪男爵専用ガンビットさんてのは有ることにしておくか。」
じゅえる「まあ、でも他人の領地にモノ置いとけばいいだけなら、いいんじゃないかな。」

まゆ子「もう一つ、絶対的に不利な条件が有る。これは騎士も同じだが、当然として領地のオーナーである時空調整者の同意が無ければその空間には居られない。」
釈「当たり前過ぎますね。」

まゆ子「追い出されると、つまりは無の空間に漂い続けるだけだ。別の時空調整者が発見するまではずっとそのまま。もしくは限界に達して、オリジナルの時間に追放されるまで。
 えーとようするにだ、バロンは自分の寿命が無くなる前に他人の時間に棲まなければ自動的に死ぬ。で、他人の時間の中に棲んで居ると客観的寿命を越えて、死を越えて生きる事ができる。しかし自分の寿命後の時代となって他人の時間から追い出されると、自分が居ない現実時間に出現する。そりゃあ死ぬ。」

じゅえる「その無の空間てのはいったいなんなんだよ。時間の無い空間?」
まゆ子「時間倍率1万倍の空間、と考えて下さいな。全てが凍結した空間。空気は硬く石のよう。身動き一つとれないで拘束される。というか、息すらできないようなもの。肉体は外部空間の時空の流れに支配され、意識だけが暴走して加速する。つまりは、加速能力者でない人間が領地に連れて来られた時と同じ状態になる。」

釈「ガンビットさんに乗っていても、そうなんですか。」
まゆ子「ガンビットさんに乗って無の空間に放り出されると、まあガンビット内では普通に生きられる。何時まででもね。腹が減っても水が切れても空気が無くてもだよ。」
釈「それは地獄ですか。意識は有るんですか。」
まゆ子「残念ながら有るんだ。まあ主観時間1万年くらいでオリジナル時間に追放で終了してくれるけどね。」
じゅえる「やめやめ! それは無しだ!」

まゆ子「まあそういうわけで、時空調整者は時々流れ者の放浪男爵を拾う。放浪男爵はそれなりに面白い人物が多いから、色々だよ。」

 

じゅえる「次行こう。男爵以上の爵位を持つ人ね。」

まゆ子「時空調整者はまずバロンとなって過去現在を行ったり来たりして、時空の変更が可能か確かめて見ます。そして、自分が万能の力を持つことに気付き有頂天になります。そしてどんどん歴史を改編して行く内に、多数の歴史改編が時間の輻輳を産んで、どうしようもなくなる事に気付きます。また他の時空調整者の存在に気付き、互いが異なる目的の下に歴史を変更すると、手がつけられなくなると学習します。

釈「そりゃそうでしょう。」
じゅえる「お風呂のお湯に波紋を作って、どれが一番正しいか試してみるようなものだね。」
まゆ子「うん、その比喩は適切だ。どの波紋も自分の思い通りにはならないし、留めようも無い。複数の波紋は互いに干渉し合って意図しない波紋を描き出し、遂には破綻する。しかも別の人間も同じことをやっている。駄目じゃん!と気付くのが、バロンの終わりです。」

じゅえる「時空の変更が駄目と気付いて、諦めるの?」
まゆ子「うん。」
釈「諦めて、いいんですか?」
まゆ子「バロンの段階では自分が不老不死と思ってますから、人類の歴史を達観する神にでもなった気になります。でも何年も加速時間で生きて行く内に、ひょっとして寿命があるんじゃないか?と気付きます。そうすると、ではなんの為に自分は生きているのかを自問し、こうしてはいられないと世界の変更に再度挑戦することになる。
 それが爵位を持つ人間の覚悟ってわけね。」

釈「根性が違うわけですか。でも寿命はいつ気付きます?」
まゆ子「どの時間調整者も取り敢えず寝らにゃいかん。自分本来の時間に戻って、寝る。そして起きて気付くんだ。自分が感じている永遠は、ひょっとしたら胡蝶の夢ではないか、と。」
じゅえる「痛いはなしだな。全てが酔生夢死ではないか、と感じちゃうんだ。」
釈「現実世界、時間の流れの非情さにようやく気付くんですね。」

まゆ子「そこで考える。自分の力では現実の歴史は改編出来ない。ではなにをすれば良いか。
 歴史とは、歴史を作る人間のものだ。つまり歴史改編は生きている人間が行ってこそ、永劫のものとなる。で普通に考えると、歴史の重要人物に未来の情報を教えて目的とする未来を構築させるわけだが、これは無理。時間の輻輳を起こすしかない悪手だ。すぐ限界に気が付く。というか、教えた歴史が嘘八百になってしまい未来情報としての効力を持たなくなるから、いやでも気付いてしまう。

 というわけで、より確実な歴史改編の手法として、目的とする人物の社会的ステータスやらポジションを強化する事でパワーを与えるのだな。自然な振る舞いの中で歴史を変革する能力を獲得させる。
 これも挫折する。歴史的に重要な人物は必ず他の時空調整者のマークを受けていて、絶え間ない修正を繰り返す。時間の輻輳はここでも起きる。
 で最終的に、自分達が手を出しても大丈夫な相手が、時間加速能力者に限られると発見する。」

釈「つまり、加速能力者への干渉は他に妨害されないってことですか。」
まゆ子「加速能力者はいざとなったら自分の空間に引き上げて、保護が出来るからね。他の時空調整者の影響を受けずに済む。」
じゅえる「時間の変更についての詳しい知識を持つ者だけが、歴史の変更に従事できるってわけだ。」

まゆ子「というわけで、時間加速能力者の価値に気付き、その能力を開花させる試みを始めた者が、爵位を持つ連中だ。子爵伯爵侯爵公爵とあるわけだよ。」

 

釈「しかし、加速能力ってのがそもそも良くわかりません。加速した時間内で動くってのは、意識だけじゃないんですか。」
じゅえる「加速装置では、ちゃんと超高速で身体も動くよ。」
まゆ子「うん。意識と同じに身体もその時間倍率で高速で動くのが、加速能力者。そもそも意識だけが高速で動く方が間違っている。とはいえ、体術で動かない身体を無理やり動かす人も居る。加速能力者は覚醒前にそういう能力を獲得している者も少なくない、というか主人公これだ。」

釈「覚醒すると、超高速で動く事が出来る。ただし、1倍の時の体力で、ですね。」
まゆ子「そこんところは仕方ない。超人にはなれない。というか、百倍時間内で普通に動いて居れば、それはウルトラマンだ。」
じゅえる「でも変だよ。」

まゆ子「そこでガンビットさんが登場する。時空調整者は己固有の時間と他の時代の時間流とを同調させる能力を持つ。時間の差からエネルギーを引き出す能力を持つ。そのエネルギーってのが、つまり加速した時間と同じ速度でも肉体が動く能力だ。

 物理の法則を紐解けば分かるんだがさ、速度の二乗にエネルギーは比例する。100倍に加速された時間の中ではどんな物体も1/100の速度にしか見えないが、個々の運動体が持つエネルギーは1/100×100のではなく、ちゃんと元のエネルギーを保存する。逆に、百倍加速された人体が普通通り動いてモノを放り投げたとして、元の客観時間換算だとその速度を出す為には100×100倍のエネルギーを必要とする。」
じゅえる「だめじゃん。」

まゆ子「ということで、時空調整者は加速時間内では絶対時間内速度時速80キロまで、と制限が掛かった。これでも常人の4倍のパワーを必要とするが、ここは超能力で解決する!

 さて、何故時間加速者が加速時間内で自在に動けるか、といえば、正直物理的に有り得ないとしか言いようがない。筋肉やら体内の化学反応に依存していてはそんな早さでは動けない。
 てなわけで、意識と同調して動く”動きの精霊”のようなものが身体と二重存在となり、運動を司っている。これは1倍普通時間でも100倍加速中であっても同じ力を持つ。1/100の時間の中では圧縮されて内圧が高まり、内部での動きの伝わり易さ・音速が早くなっている。これに同調してエネルギーを供給するのがガンビットさんだ。
 ガンビットさんが釣り鐘の形をしているのは伊達じゃない。音・振動の形でエネルギーを加速能力者に供給する機能を持つ。内部と外部の時間流の差を振動という形でエネルギー化する。

 それで、時間能力者はガンビットさんを持つ事で通常時と同じ比率で世界を動く事が出来る。時空調整者はガンビットさん無しでもその機能を持ち、というか彼らの中の”動きの精霊”自体がエネルギー変換能力を持つ。
 で、動けるわけだ。」

じゅえる「”動きの精霊”って、何?」
釈「聞いたこともありませんね?」

まゆ子「わたしもいまかんがえついた。」

じゅえる「ならば仕方なし。」

まゆ子「とりあえず”動きの精霊”は意識と連動し、意識の速度と連動してエネルギーを放出する機能を持つ。想起によって時間を移動する能力を持つ。ここまでは良しとしよう。
 ”動きの精霊”の大きさは、その人が生まれてから死ぬまでの時間の長さ。故に、時間調節者は自分の寿命内しか移動出来ない。加速能力を使い続ければ生身の肉体から剥離するから、定期的に元の時間流に戻して定着をはからねばならない。」

 

じゅえる「話を戻そう。ガンビットさんの意義はよく分かった。で、爵位を持つ連中はなにをする?」
まゆ子「まずガンビットさんを入手しなければならない。加速能力者は以上のわけでガンビットさんが無ければ始まらない。

 とはいうものの、ガンビットさんが大昔から有ったわけじゃなし。今使っているのは動力ガンビットと呼ばれるもので、それ以前は当然無動力ガンビット、ガンビット甲冑というものがあった。
 さらに前は、文字どおり釣り鐘でした。大きさは70センチくらいから1メートル50。人が入る大きさであっても良い。というか、そのまた前が、現在では『ウォード・ボックス』と呼ばれる函だったのね。これに人間を詰めて自分だけの領地に拉致して奴隷にしていたのだよ。」

釈「その函でも加速能力者は能力が使えるんですか?」
じゅえる「それでは面白くない。」
まゆ子「うん、これだけでは駄目なんだ。時空調整者との縁を繋ぐ機構が無いと働かない。拉致箱として使われる時は、時空調整者が手で運ぶから無条件で動くんだけど、異なる時間を越えて縁が繋がる装置ってのを発明して函を機能させる、つまり他の時代に函を起きっぱなしにしても大丈夫にする工夫から、能力増幅器として働くようになった。」

じゅえる「何じゃいそれは。」
釈「ここんとこは思いっきりファンタジーっぽく、水晶ですよ。」
まゆ子「今時、水晶時計を想い浮かべる人も少なくなっただろうなあ。まあいいや、水晶発振子をくっつけて同調するようにしたら、函がガンビットになった。この函を手元に置いておくと、加速能力を無制限に使えるようになる。思い掛けず、時空調節者と同じ能力をオリジナル時間内でのみならば使えるようになった。」

じゅえる「そこで、加速能力者に函を与えて、現実世界で思い通りに活躍する力と為す、そうすると歴史が変る。」
まゆ子「基本的に時空調節者は、歴史とはすなわち人間の歴史であり、変更の余地があるのは人間社会だけだと思い知らされる。そして、それですらままならないと知る。
 ではどうすれば人間社会を効率的に変更出来るか。あからさまな介入では複数の時空調整者の介入で輻輳が起こる。というか、一回の介入では足りずに自分でも何度も手を突っ込むからやっぱ輻輳が起こり、何がなんだか分からない。
 ではどうすればよいか。それは、つまり自然に任せることだ。

 一回の介入で加速能力者に力を与え、放置する。能力者は力を使って欲望を満たし、意図せぬ未来の変更を行う。当然だが、彼がなにをするかは力を与えた者ですら分からない。妨害者にも分からない。
 ここは放っておくのが一番、という結論を得る。思った通りの未来が得られなくとも、修正するのではなく新たなる能力者を開拓して、放置する。
 これが、妨害を受けずに未来を変更する一番の良手と知る。

 では時空調整者はどうやって時間加速者を選ぶかだが、これは勘です。」

釈「そんないいかげんな。」
じゅえる「加速能力者であることは、分かるんだ。で、彼が何をしてどんな未来に到達するか、これは不明。となると、好き嫌いくらいしか選ぶ手段が無いな。」
まゆ子「まさにその好き嫌いだ。時空調整者の個人の嗜好によって選ばれる候補者は、当然選び手と似た嗜好の持ち主。となれば、選び手が満足する未来に選ばれた者も向かうだろう、という安直かつ鉄板な選択。外れでも腹は立たない、というかこれで駄目なら手は無いなという感じ。」

じゅえる「かなり大雑把な方法だね。」
釈「必ずしも成算があるわけじゃない方法です。でも、なんとなく植木が伸びるのを待つみたいな感じですね。」
まゆ子「そうだねえ、そんな感じかなあ。ついでに言うと、他の時空調節者の介入による輻輳も、この選択は勘定に入っている。より妨害が少ないもしくは妨害に耐える流れを生み出す者を選択する。というか、勘で分かるんだそいう人物だと。」

じゅえる「爵位の階級は、この場合どうやって決めるの?」
まゆ子「要するに、目的とする未来への着実な成果を納めている者が一番エライ。狙った手がばしばしと決まる者が上位者だ。ただこの階級であればガンビット戦闘が必要無い者も出る。目的とする未来に妨害が無いような、ささやかな変更を行う奴だ。つまり、エライ奴は歴史に与える影響が大きく、こちら側も対抗措置を加える必要がある大物、って事になる。」
釈「当然と言えば当然です。大状況を作り出す者が偉いのです。」
まゆ子「とはいえ、一人の時空調節者が契約できる人間には上限が有る。特に本当の自分の時間に居て暮らしている者に遠隔で支援するのは難しく、消耗する。

 そこでガンビット戦闘によりなるべく妨害者を排除しよう、効率を上げようと考える。ただ、この階級の連中はまとまった戦力を持たないし、そもそもガンビットさんの供給元を抑えていない。そこで、戦闘のプロに対処を要請する。

 これが次の階級、軍だ。」

 

じゅえる「つまり騎士団を擁し、他の時空調節者の為に戦う時空調節者、ってことだね。でも何の為に? やっぱ利益があるんでしょ。」
釈「でもお金は儲け放題ですよね、時空調節者は過去未来どこにでも行けるんですから。」

まゆ子「そこんところは未定だなあ。桐子ちゃんは別なんだ、あのひとほとんど趣味でやってるから。
 でもー、うーんたしかに利益がある。それは間違い無い。ただ彼らにとって有用な財産と言えば、ガンビットさんと騎士そのものだけだな。」

じゅえる「時空調節者本人にはあまり利益が無い、てのでもいいかもしれないよ。たとえば、彼によって能力を与えられた加速能力者。彼らは自分達が現在において利益を獲得する為に動いて居る。当然他からの妨害を受けるが、それを互助会的に防衛する。それが騎士団の始まりと考えればいい。」
釈「そうか、加速能力者の方が利にはうるさいんですね。」

まゆ子「ふうむ、なるほどなるほど、そいう考え方も有りか。しかしそれではあまり大きなまとまりにはならないな。やはり時空通貨みたいなものを考えよう。」
釈「でもやはり、時間の流れ歴史の改編に関係する機能の方がいいでしょう。そうですねえ、やはり大きな歴史のうねりというのが有り、その大枠を維持する為の戦いをしなければならないのですよ。で、時空調節者同士が談合して大きなまとまりを為すのです。」
じゅえる「それは確かに理解し易い。でも時空調節者は利他的には振る舞わないだろう。一匹狼的な存在だと思うぞ。」

まゆ子「…山火事、ってことではどうだろう。事象変更の輻輳が込み入って来ると、歴史自体が崩壊を初めて山火事状態になる。それを放置すると巨大なギャップが歴史に生まれる。無意味な大虐殺だとか、何百万人も殺す革命とかだ。ちなみに世界大戦はちと違うぞ。これは輻輳しないように丁寧懇切に時空調節者達がありとあらゆる干渉をして、ガンビット戦闘で折り合いを付けつつ進行した、芸術品みたいなものだ。」

釈「いやなげいじゅつですねえ。」
じゅえる「だが、山火事なら自警団互助会的な騎士団の存在もよく分かるか。つまり爵位を持ってる程度の連中であればどうしようもなくなる歴史の輻輳をどうにかしようと泣きついて来る、それが騎士団であり、その隊長となる時空調節者が居るんだ。」

まゆ子「軍人であるから、将軍とかの称号を名乗るべきだろうねえ。」
釈「カーネルさんだーすですよ。」
じゅえる「ジェネラルとか、カーネル、キャプテン、サージェント、とかだね。」
まゆ子「悪くないな。じゃあ一番下っ端の騎士団、5人程度しか抱えていないのがサージェントね。最大数は100器のガンビットさんを擁する機甲部隊だが、これがジェネラル。」
じゅえる「サージェントはガンビットさん持ってない、ってのでもいいかもしれないな。幽霊騎士みたいな歩行戦闘をする。」
釈「ガンビット甲冑ですね。まだ現役なんですよ、それ。」

まゆ子「なるほど。ガンビットさんを持つのはその上、ロードくらすでいいかもしれない。ふうむ、なるほど。ガンビットさんをもうちょっと貴重品にするか。」
じゅえる「なにせマイスターが付いてるんだから、そのくらいの価値はあるでしょう。」

釈「ここはあれですね、ガンビットさん(動力ガンビット)、ガンビット甲冑、個人用ベル、拉致函、に加えてもっと動き易いなにか、が必要です。」
じゅえる「馬車とかの乗り物だね。」
まゆ子「馬車、船、家でもいい。時空超越を行う時に加速能力者を保護する函に成り得るものであればなんでも。」
釈「戦車、ではどうですか。動力と言ってもガソリンエンジン積んでるんです。」
じゅえる「そこはあれだ、蒸気エンジンだろ。」
まゆ子「スチームカーか。うむ、車輪がバカでっかい奴だね。大砲も積んでいる。」
じゅえる「逆に、中で人間が漕いでいる自転車ガンビット、も面白いか。木馬の形をしてるんだ。武装はマスケット銃とか。」

釈「動力ガンビットにも色々ある、ってことですよ。ガソリンエンジンで動く自動車でもいいじゃないですか。」
じゅえる「機械文明の進展に従って、様々なガンビットさんが考案されて、それらがすべて用いられている。そんなところか。」
まゆ子「その中でも最新最強なのが、ロボット型ガンビットさんってことだ。」

 

じゅえる「で、桐子ちゃんの階級、ロードです。王ですね。」

まゆ子「ふむ。しかし桐子ちゃんはLORDだ。”王”だよ。というか、”卿”なんだけどさ、この”卿”=LORDっての訳語ちとおかしいよ。TheLORDは天の神様GODのことだし”LORDof theRING”は指輪の王だ。それを”卿”に落すのは、変でしょ。」
じゅえる「色々辞書とか調べてみたけれど、LORDは明らかに君主の意味合い強いもんね。「○×侯」でちょうどいいはずだ。それこそSir.が”卿”であるべきだよ。」
釈「というか、そこらへんは日本やら中国やらと、欧州の慣習の差が出てますから、正解は無いです。」
まゆ子「うん。
 まあつまり、ウチでは”LORD”を君主の意で使う。桐子ちゃんはロード・アルハンダラという君主だ。アルハンダラ侯だ。めちゃくちゃ偉いんだ。」

釈「じゃあ、爵位を持つ連中も偉そうなカッコつけな、ハッタリの利いた名前にしましょう。」
まゆ子「えーと、王ではなく、軍の隊長ではなく、貴族の爵位を象徴する名前、か。PRINCEとか?」

じゅえる「DUKE、ってのはよくヤクザ者が使っていそうじゃないか。」
釈「いかにも、ホストっぽいですね。」
まゆ子「よしきた! では爵位を持つ、男爵より上の連中は総称『DUKE』で決まり!」

釈「で、ロードはなにをしますか。」
まゆ子「そりゃまず、騎士団を抱えている。領土を持っている。ガンビットさんを多数所有する。と同時に、ガンビットマイスターと呼ばれる技術者学者を抱えている。
 このマイスターが曲者で、もう何百年も無在空間に住んで研究と思索を続けて居る。」

じゅえる「マイスターって何時の生まれなんだ?」
まゆ子「一番旧い奴は、キリストを見たって奴も居る。」
釈「それは絶対詐欺です。」

まゆ子「まあ基本的にルネッサンスとか産業革命付近の人間が多い。世界が知的に沸騰した頃の人間ね。但し20世紀人はまだマイスターとは呼ばれない。生きてる期間が短過ぎる。」
じゅえる「こいつらはガンビットさんの発明改良が主な仕事なのかい。」
まゆ子「いや、もちろん彼らの最大の注目は歴史の改編だよ。で、無在空間の主となって時空調整者からもたらされる情報を分析して、なんとかして時間歴史の有効な改編法を編み出そうと研究し続ける。」
釈「ガンビット開発は余技ですか。」
まゆ子「彼らの研究に絶対的に必要なのが、他の時空調整者の干渉を排して自らのみの意志を歴史改編に施す技術。ガンビットさん開発は避けては通れない道なのだ。」

じゅえる「彼らが住んでいる無在空間ってのが、領土なんだ。これは時空調整者が個々に有する故地とは違うものなの?」
まゆ子「同じものだよ、本来は。但しマイスターは時空調整者であるとは限らない。騎士と同じ加速能力者に過ぎない事もある。彼らマイスターは研究の為に誰かの故地に居候してそのままずっと居座り、故地を譲り受け他の時空調整者に相続させて空間を存続させて、代りに宿主にガンビットさんの力を与える。これを繰り返して来た。」

じゅえる「彼らがロードを選ぶ基準は?」
まゆ子「そりゃどう考えても、人格だな。もちろん善悪の別は関係無い。マイスターの指向するところに則する時空調整者と交渉して相続してもらう。」
釈「桐子さんはどこらへんが良かったんですか。」
まゆ子「桐子はあんまり歴史変革事象の変更に関心が無い。彼女は元々がワルキューレで、騎士に近い時空調整者だ。そういう性格なんだ。
 これに惚れ込んだのがアルハンダラのマイスターであり騎士達だ。戦う王として桐子ちゃんを推戴した。」

じゅえる「ちなみに桐子ちゃんは何の為にロードをするんだよ。」
まゆ子「桐子ちゃんの時空変更の方針は、『頼まれたら拒まない』。義に感じるところがあれば、不利もへったくれも無く戦闘に望む。そこんとこが騎士達の圧倒的な支持を受けて、本来のアルハンダラ騎士団のみならず、居候騎士団まで抱える大所帯になった。

 この管理維持は大変だよ。なにせ連中1ヶ月に1億円分は酒を飲む。無在空間内での1ヶ月となれば、まあ現実空間での時間てのは意味が無いんだけど、主観時間で1ヶ月ごとに桐子が管轄する時間のどこかから酒を調達して来る。
 この酒の調達は結構大事だ。なぜいきなり手下になったばかりの主人公がガンビットさんを任されたかというと、酒の配達に使う為でもあるのだ。」

釈「配達のバイトを雇ったような感覚ですか。そりゃあ、凄い。」

まゆ子「ロードに属する時空調節者は桐子ちゃんの時間の中では7人ばかりが関係する。その一人が、しるくだ。「白の女王」だ。」
じゅえる「しるくは正義の為に動くんだよねえ、やっぱ。」
まゆ子「しるくだから。」
釈「しるく先輩ですから。」

まゆ子「というわけで、しるくはクィーンと呼ばれている。桐子はロードだが、他にもキングとかマハラジャとかも居る。」
じゅえる「そこら当たりの階級称号ってわけだ。」

 

釈「皇帝やらエンペラーやらは無いんですか?」
まゆ子「ある。」
じゅえる「LORDの上があるんだ。何をする?」

まゆ子「彼らは特殊なロード、オーバーロードで、世界の歴史を指し示す『黙示書』を持ち、それに描かれた歴史的事実に従って世界を改編する。善悪の区別はない、ただただこれに従い、これをこそ摂理と呼ぶ。」
釈「でもそれぞれの時空調整者が独自に歴史的事象の変革を試みていて、輻輳するんですよね。無茶苦茶ですよ。」
じゅえる「そりゃそうだ。つかみようが無いはず。それなのに、定められた歴史でいいの?」
まゆ子「むしろ、それでヨシとする思い切りのいい奴が、帝です。歴史年表に従って、事象の発生を整えて行く。こりゃまたエライ迷惑な御仁ですよ。」

釈「つまりは個人の欲ではなく、与えられた年表を天命と考え、それに従って行動するわけですね。でもその年表はどこから手に入れたんですか。」
まゆ子「基本的には、時空調節者は寿命の幅があるから、未来で受け取った情報を過去の一番始めに遭遇するより旧い時空調節者に渡す。こうして未来の事物が過去に転送出来る。」
じゅえる「そんなことして大丈夫なんだ。では騎士も受け渡しができる?」
まゆ子「不可能ではないしガンビットさんも過去に持って行ける。ただし動力ガンビットさんが過去で動いたって話はあまり聞かない。やはり時空調節者の間を受け渡しされる時に、なんらかの不具合が生じる事が多い。これは騎士も同じで過去に戻ると死ぬ可能性が高い。よっぽどの理由が無いとやらないし、やる奴はほとんど殉教者と呼ばれる。聖杯の探索にも似た苦行難行だ。」

じゅえる「なんか神懸ってきたな。」
まゆ子「なにしろ裏付けとなるモノが有るから、これらオーバーロードの信念は強い。この黙示書年表もやはり相続で手に入れるんだけれど、神の存在を信じる奴にのみ受け渡される仕来りになっている。キリストさん関係者は、この手のものに引っ掛かり易いんだな。
 もちろん、そういう具体的なモノがあれば、騎士達を説得もし易い。」
じゅえる「たしかに、賛同者を集めるのにもやり易いかな。」

 

釈「まとめます。

 ・騎士→男爵→貴族→将軍→王侯→皇帝、の序列がある。Knight→Baron→Duke→General→Lord→Emperor
 ・騎士間にはほぼ序列は無く、代表者が騎士団長を名乗る程度。
 ・騎士に成る前の時間加速能力者は、ペイジ(従者)やエスクワイア(准騎士)と呼ばれることもある。
 ・自らを見出した時空調整者の支配から離脱した加速能力者で、他の時空調整者に加勢する者を騎士と呼ぶ。通常は時空の狭間にある不老不死の楽園ヴァルハラに住んでいる。

 ・男爵は時空調整者に与えられる基本的な称号。騎士との区別を表わすのみと考えてよい。最初期段階では他者の運命までも操作しないので、責任も軽い。拠点は必要としないが、持つ者も居る。
 ・男爵は、他の時空調整者の有する無在空間と呼ばれる拠点に居候する事ができる。もしも寿命を越えて他者の無在空間に居続けようと思えば、自らの拠点を放棄し私有財産をほぼすべて放棄する必要がある。またその空間を保有する時空調整者からの退去命令に逆らう事が出来ない。居候男爵は、騎士とは異なり他の時空間内を生身で自由に行動することが出来る。

 ・卿は、時空調整者が自らの力のみならず、加速能力者を使役して歴史的事象の改編に乗り出した際に名乗る称号。天命卿とも、貴族とも言う。ガンビット戦闘を仕掛けるほどの戦力を有さず、器体もごく少数のみしか保有しない。歴史的事象の改編結果を分析する為の人員を抱えている事が多く、小規模な拠点を持つ。
 ・将軍は、歴史的事象の改編を護る為にガンビット戦闘を仕掛けるだけの騎士団を所有する時空調整者のこと。最低10器のガンビットを所有する。通常、時空の狭間に無在空間と呼ばれる拠点を保有する。

 ・ガンビット戦闘は双方同数の器体を持ち寄っての対等な戦闘行為であり、通常1体程度の損傷で撤退する。数でごり押しする事は可能だが、時空調整者は複数居る事を考えると、ルールに準拠した方が得策と思われる。変えた傍から変えられるのはたまらない。
・ガンビット戦闘には長い歴史があり、その時代ごとに考案されたガンビットが各種有る。無動力ガンビット、ガンビット甲冑による白兵戦もまま行われる。

 ・王侯は、ガンビット騎士団を有し、その拠点となる無在空間を領有し、ガンビットマイスターを確保している者を言う。これらは通常前の所有者から相続するものであり、固有の名称を持ち領主としての就任を各時空調整者に明確に公開するものである。
 ・王侯は通常、司書を雇用する。事象の改編による歴史の変更を各分岐点で新聞雑誌等から拾い上げ、誰がどのように何の目的で改編したか、を分析する。とてつもない膨大な資料を扱うので、専門職が必要である。彼らもまたマイスターである。
 ・皇帝は、司書による連携で遥か未来の歴史的事実を入手した「黙示書」を所有する。もちろんこの歴史がほんとうに起きたものであるか、は輻輳する事象の波紋の重なりの中からでは弁別が不可能である。が、「黙示書」に従って事象の改編を進めて行き、他者の改編を妨害し訂正する意志を持つ王侯が、皇帝を称する。

 ・彼らすべて、経済的な消費支出は、通常空間内での搾取で賄う。騎士団は大酒飲みであるから、ガンビットで毎回買い出しにいかねばならない。
 ・女性の騎士・戦闘員は戦乙女ワルキューレと呼ばれる。加速能力の存在確率もガンビットでの戦闘力も、男性とほぼ変わらない。無在空間内では子供を産むことはありえない。これは時空を調整改編する能力が何故人間に備わるか、の問いに近い現象である。

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じゅえる「では、キャラクター配置を考えます。もうあらかた決まってるんだよね。」
まゆ子「そりゃ試作までしてるから。
 えー、まず主人公 

 

 関ヶ原光也くん。みつなり、ね。高校生17才男子、ちょっとかっこいいけれどどことなく孤独な影と凄味を持つ、あんまり居ないタイプ。美形と呼んでも差し支えない。

 彼は5年前小学6年生の春4月に妹を自動車事故で亡くしている。その時に、妹がトレーラーの車輪に巻き込まれる姿を凍結した時間の中つぶさに見詰め続けたことで、時間加速能力が発現した。事故や格闘・戦闘といった極限状態でよく起こる、能力者の典型的なケースだ。

 よって彼は不幸である。妹が事故にあったのは、彼が信号無視をして道路を渡ってしまったのを追いかけて、小学1年生上がり立ての妹が飛び出してしまった為。彼は能力発現前からスピードの感性が高くおまけに器用で、自動車の波をすり抜けて通るくらい朝飯前だった。これがこれが悲劇の原因で、彼は物凄く悔やんでいる。
 事件後性格は急速に暗くなり、中学に上がる頃には自暴自棄になり捨てゴロ繰り返す一匹狼になる。だが加速能力に目覚めた彼に勝てる相手は居ない。鬱憤晴らしに手当たり次第喧嘩を売り捲って半ば伝説ともなるが、やがて自分が勝てるのは能力のせいで自分が強いわけじゃない、と理解し喧嘩は止める。

 頭は良く器用であるので、高校はそれなりの進学校へ進む。喧嘩も止めて大人しくなったので、両親は一応安心しているが、彼自身はと言えば抱え込んだ罪悪感をどうしても払拭できないで、桐子さんの出現を迎える。」

じゅえる「しゅじんこうだねえ。」
釈「かっこいい男子ですか。いいですねえ、これですようん。」
まゆ子「まだ続きはある。

 彼はそいう事情から、女に手を出す事は無かった。強ければ寄って来る女も居るんだろうが、頑に拒絶する。一匹狼だし。高校になっても孤影を引きずっている。
 さて桐子さんと遭遇して、加速能力の持続を可能となり、ガンビットさんに乗って過去に戻り妹夕奈を救い出す。すると、
 彼の世界は一変する。

 まず妹が生きているから、性格明るくなる。ただし、妹が事故に遭い掛けたのは目撃して、加速能力は身につけた。だから妹を極端に大事にし、ほとんどべったりの状態。妹の方もお兄ちゃん大好き娘となって、べたべた。
 雰囲気なごやかになってるから、女の子にもてまくり。中学生活はHAPPYに終了して、高校生活では可愛い恋人も居る。それだけに留まらず、彼が大好きって女子は引きも切らない。」

じゅえる「嫌味な奴だな。」
釈「ヲタが聞けばぶち殺したくなりますね。」
まゆ子「そういう奴と、上に書いた孤独で危険な奴が時間を飛び越えてすり替わるんだ。本編主人公は暗い関ヶ原クンだから、このハーレム状況に放り込まれて唖然呆然。柔らかくてふにゃふにゃした女子に囲まれて、どうにも適応出来ない。」

じゅえる「うん、それでいい。それがラノベ永遠の原則だ。うん。」
釈「大変よろしい展開です。」

 

まゆ子「次、

 大東桐子・ロード=アルハンダラ。桐子ちゃん。本編ヒロインでガンビットを操り歴史を変革しようとする時空調整者。2001年11月18日生〜2032年10月29日没。享年31才。
 身長163センチ、バレリーナみたいな細くて引き締まった身体、髪は亜麻色で細かいウェーブが掛かって肩までの長さ、これはイラスト描いてるから参照してね。で、フランス人形みたいに綺麗なんだけど、目付きが悪い。冬の牝狼とたとえられるほど危険な印象を与える。
 もちろん武闘派。加速能力を身につける前から乱暴者で通っていて、特にフェンシングに似た片手で相手を突く技が得意、手裏剣大好き。
 だもんで性格悪い。大雑把、細かいことは気にしないし他人の空気読まない。ただ結構人情には厚い、お節介ではないが姉御肌である。頭あんまり良くは無いが、勘はいい。
 両親は居るのだけれど、金持ちの二号さんで水商売だった人が母である。だからあまり幸福とも言い難い。

 加速能力者、格闘者としては最強レベルの実力を持ち、自身が保有するアルハンダラ騎士団においても、不老不死の騎士達に一歩も退かぬ強さを見せる。彼女自身他の時空調節者「白の女王」にスカウトされガンビット戦闘に従軍したワルキューレ戦乙女である。
 ロードとしての彼女はかなり特異な存在で、文字どおりの武闘派で通っている。故に騎士達の評判はとても良い。余所から居候の騎士がやってくる程。
 2032年10月29日の死亡は戦闘の結果による、と彼女自身知っている。」

じゅえる「桐子ちゃんはまあいいや。私達よく知ってるから、書いてる内にぼろぼろ出るでしょう。設定。」
釈「色気無し、ってところも書かないと。」
まゆ子「あー。筋肉ムキムキの男とか喧嘩ばかりしてる奴大好きだけど、恋愛の対象ではない。恋に堕ちるのはインテリの優男で弱っちいのばかり、ってとこもね。」
じゅえる「案外と惚れっぽいんだよ。」

 

まゆ子「
 「白の女王」 衣川うゐ。しるくだよ。
 時空調節者でロード。「白の女王」と呼ばれるだけあって、非常にきっちりとした折り目正しい騎士団を保有する。1978年1月16日生〜2056年12月29日没という長大な寿命を持ち、その間の時空を管轄する。彼女の時空干渉の方針は、正義と秩序。人が無闇と不幸になる事象変更を許さない。
 とても長い時間を掌握するので、彼女はこの時代におけるリーダーと目される。桐子ちゃんは短く全期間をこの範囲で終るから、彼女には勝てない。というか、そもそも桐子をスカウトしたのはこの人だ。
 髪の毛フランス人形みたいなふわふわのプラチナブロンド。でも和装がとても良く似合うお姫様。いつも柔らかく人に対して親切で、でも毅然としてらっしゃる。元々がお姫様育ちであるから、ロードとなってもまったく問題ない。衣川家伝一刀流の使い手。剣をとっては誰にも負けない。」

じゅえる「しるくもパスだ。書く必要も無い。」
釈「というか、げばると処女にも絶賛出演中でございますからね。」

 

まゆ子「
 関ヶ原夕奈ちゃん、小学5年生。美少女お兄ちゃん大好きっ娘。
 2003年4月28日、通学途中にトレーラーに轢かれて死亡。享年6才。だがガンビットさんによる事象操作で完全復活。以後お兄ちゃん大好きっ子。これは、その後光也クンが事故の恐怖から彼女を手放さなかった為に、自然そうなった。
 お兄ちゃんのお嫁さんには自分がなるんだというわけだ。お風呂も一緒に入って来る。危ない奴の光也クンは、いきなりお風呂に裸の妹が飛び込んで来て超びっくり。叩き出すとお母さんに泣きつかれ、怒られてしまう。

 ただし、彼女は事象変更の結果であるから、他の時空調節者に狙われる。死んだ人を蘇らせるのは時空調節者最大の禁忌でもあり、また修正が簡単であるから非常に狙われ易い。悪党に掠われるとかのイベントも当然存在する。」
じゅえる「ま、この子が物語のキーとなるわけだ。」
釈「いかにもラノベ丸出しです。」

 

まゆ子「
 光也クンの彼女A。隣のクラスの女の子、可愛いし大人しいタイプ。
 妹が死ななかった世界の光也の彼女だけあって、非常に平和的な優しい女の子。ただ光也をゲットしてしまったばかりに敵は多い。
 まだ寝てないよ。処女だ。」

じゅえる「処女か。そりゃそうだ、そうでないとラノベ描きづらい。」
釈「そこんとこは、山場ですから丁寧にエロく描写しないといけません。」

 

まゆ子「
 光也クンの彼女B。同級生。美人で一途なタイプ。かなり思い詰める。
 妹が死んだ世界でも光也に熱い視線を送っていた娘。だから光也も覚えている、というか割と話しもした女子。
 妹が生きている世界にすり替わっても、彼女はやっぱりそこに居た。彼女Aは前の世界では面識が無いから、自然とBの方に惹かれて行く。当然こちらも同じように吸いつけられるように寄って来る。彼女は危険な方の光也がタイプであるから、相性はこちらの方が良い。

 というわけで、AとBはいずれ修羅場を迎える。光也は自分では暴力の修羅場は慣れているけれど、こういう状況は未体験でどきどきする。まあ第一回戦は桐子さんのにわかの出現で救われるが、どんどん泥沼化する。」
じゅえる「あはは。そうか、不幸になるか光也くん。」
釈「ざまあみろですよ、あははは。」

 

まゆ子「
 光也クンの彼女C。3年生。眼鏡っ子委員長タイプ。
 彼女は「白の女王」の手の者で、事象変更の結果としての光也を知っている。彼女自身、加速能力者。ただしガンビットさんは与えられておらず長時間の能力の使用は出来ないし、戦闘にも参加しない。こういう人物も結構居て、時空調整者は彼彼女が使えるか色々と調べて回る。「白の女王」しるくは、彼女が時空に関わるのは得策ではないと判断して接触に留めており、連絡員協力者としている。

 彼女の使命は、まさに光也の監視である。その為、「妹が死んだ世界」の情報も多数与えられており、光也が自分を曝け出せる唯一の相手となる。
 「白の女王」と桐子ちゃんは仲悪くない、というかワルキューレでありしるく自身のスカウトによるものだから、かなり仲はいいのだが、事象変更の方針が違う為に対立する。当然、立場の違いを反映して、彼女は光也にも反発する。が、深く関わって行く内に段々と惹かれて行く。

 しるくは彼女に、時間加速能力の制御法を教えており、ガンビットさん無しでも体感20秒ほどは加速時間を動く事が出来る。だがより役に立つのは、加速能力の停止。この能力が暴走すると世界から自分が隔離されて孤独になるてわけで、彼女は深く悩んでいたのを、しるくに救われている。」

じゅえる「ふむ。定番だ。」
釈「定番です。」

 

まゆ子「
 埴生クン。同級生で光也の親友、爽やか柔道少年。ただしあんまり強くない。素質はあるが、真剣さに欠けるお調子者。
 これが「妹が死んだ世界」では一変し、彼は光也に何度も叩きのめされて奮起し、高校2年生の現在では将来オリンピックにもと期待されるほどの猛者となり、特待生で別の学校に通っている。
 「妹が生きている世界」では、別に光也に殴られないから、お調子者でへらへらと過ごしている。もちろんオリンピックなんか夢のまた夢だ。
 小中学と光也と同じで、ずっと友達。だから、妹がトレーラーに轢かれそうになったときの光也の取り乱しようを覚えている。」

まゆ子「
 井原、櫓畠。噛ませ犬。井原は空手、櫓畠はボクシングで全国的に名が知られるほどの猛者。「妹が死んだ世界」開巻冒頭で埴生と共に光也に挑戦し、もろくも破れ去っている。
 「妹が生きている世界」においては、井原はそこそこ空手で活躍しているものの、櫓畠はただのちんぴらDQNに過ぎない。
 時空の変更を示すパラメーターとして、有効な存在。」

釈「それだけ、ですか。それだけの人生。」
じゅえる「まあ、全てのキャラに見せ場を作らなくてもいいじゃん。」

 

まゆ子「騎士たくさん。特に騎士団長。

 桐子が領有する無在空間「アルハンダラ」に棲む騎士たち。一応騎士団長が居るが皆のびのびと暮らしている。
 無在空間に居る限り不老不死であるが、桐子の招集に応じて別の時代に下りガンビットさん、もしくはガンビット甲冑で戦闘を行えば死ぬことも有る。が、彼らは戦闘の中で死ぬ事にはまったく異議を唱えない。無在空間は戦士の集う楽園「ヴァルハラ」と理解する。
 光也はスカウトされ妹救出後、無在空間に連れて来られ、彼ら騎士団により新兵訓練を行われた。無在空間では時間加速能力が発動しないので、素の肉体の能力が試される。3週間ほどぶっ続けで鍛えられた光也は、ようやくまともな格闘能力を身につけて、ガンビット戦闘に投入される。」

じゅえる「ふむ。」
釈「ここらへんはまだ未定ですか。」
まゆ子「とりあえず騎士団が居る、ってことだけだよ。ちなみに全員男でむさくるしい。が、彼らは女がひとりしか居ないアルハンダラを天国のように感じている。ラクチン楽狆。」
じゅえる「女のワルキューレを連れ込んじゃだめなんだ?」
まゆ子「いやそんな事は無いけれど、桐子は男ばっかりの領地が不自然であると思わない。女が抱きたければ居候の騎士達はどっか別の無在空間に遊びに行くだろうから、どうでもいい。」

釈「そんなものですかねえ。女の召し使い侍女は要らないんですか?」
まゆ子「いや桐子ちゃん、自分でなんでもやっちゃうから。ロードとはいえ現代日本人だ、自分のことは自分でするよ。」
じゅえる「そりゃそうだ。」

 

まゆ子「
 マイスター・アルハンダラ。ガンビットさんの開発製造者。爺ぃ。無在空間「アルハンダラ」の真の領主。叡智の人ではあるが、いけすかない爺いには違いない。
 無在空間は時空調整者なら誰でも作る事ができるが、過去作られた空間をそのまま保存存続させる事は、複数の時空調整者の協力が無いと成り立たない。為に、ガンビット製造と騎士団の供給という餌で釣る。まあ時空変更の影響調査をする為には膨大な歴史記録をチェックする必要があり、専門の調査員司書が必要となる。

 「領地」はそれらを一手に供給するが、対価として継承した時空調整者から放浪の自由を奪う。放浪、つまり他の時空調整者の維持する無在空間を渡り歩き、永遠に生きることを禁ずる。ロードは確実にその最期を迎える覚悟の有る者にしか許されない力。」

 

まゆ子「
 放浪男爵。未定。フェンシングの達人。おもろい人、でツェペリみたいな感じかな。
 桐子ちゃんとこの居候にして、騎士団の顧問、相談役。未経験の光也の相談役でもある。暇人。
 彼には別に桐子ちゃんなにも期待しないのだが、時々ガンビット戦闘の交渉役や見届け人をしてくれる。居ても困らないから、居る。」

 

まゆ子「とまあ、こんなところさ。」
じゅえる「その女Cは、儲け役だな。」
釈「そうですね、事実上のヒロインですよ。ガンビットさんに主人公と一緒に乗ったりするんでしょ。」
まゆ子「あー、基本的にはそれは有り得ない話なんだが、というか契約上やっちゃあいけないんだが、やる。」
じゅえる「男と女だもん、そりゃあやるさ。」
釈「意味不明ですが、ガンビットさんに限りYESですね。」
まゆ子「あと、敵も考えた。ウロボロスとかディアボロとかのべたな名前が使える点が、このシリーズの良いとこだな。バロンやらデュークやらはほとんど怪人怪人物として、主人公の前に現われる。主人公と女Cは何故か共同戦線を張らざるを得ない。絶体絶命のピンチ! だがガンビットさんに乗って間一髪脱出、と来たもんだ。」
釈「定番もいいとこです。」

じゅえる「宇宙の破滅とか人類の断絶とかも考えるのだよ、定番だ。」
まゆ子「あー、それは〜、考えなきゃダメ?」
釈「ダメ。」
じゅえる「駄目。」

まゆ子「ちなみに女Cをアルハンダラ領内に連れ込むと、うまく動かない。身体がひくひくして人間っぽくなくなる。これは桐子の調整した時間を受入れていないからで、まあ当然の報いだ。彼女はしるくの調整時間に合せてるからね。こういう人物は、通常「捕虜」と呼ばれる。余所の契約者だから、そういうもんだ。」

じゅえる「ところで、バロンはバロンでいいけれど、デュークは色々の称号があるでしょう、あれ適当に使っていいかい?伯爵とか子爵とかプリンスとか。」
まゆ子「あーそうだねえー、バロンは別として複数の称号があると良いかもしれないなあ。例えばロードはロード/キング/クイーン、てな感じに分けてもいい。」
釈「じゃあジェネラルは、ジェネラル/カーネル/サージェントとかですかあ。」
じゅえる「カーネル大佐はいいなあ。実に悪党っぽい。」

 

まゆ子「もちっと考えた。

 女D。やくざ、ではないがその業界の大物の一人娘、凄い金持ちリムジンで御登校。当然高飛車威圧的。
 光也クンは時間加速能力を使って、刺客に襲われる彼女を助ける。うっかりと。自然、見込まれて好きになられてしまう。
 ちなみに彼女の親の妾が、すなわち桐子ちゃんのおとうさん。光也クンは、御歳7才のみぎりの桐子ちゃんと遭遇する。」

じゅえる「ふーむ、そんな下手な展開でいいのかね。」
釈「駄目とは言いませんが、どうしましょう。そのハイレベルな御仁がいきなり高校に転校というのは、さすがに問題多過ぎますよ。」
まゆ子「ふーん、そういう考え方もあるなあ。ではこうしよう。だが光也クンの奮闘により救われた彼女だが、大物の父ちゃんは度重なる襲撃で遂に倒れ、彼女は危険を避ける為に市中に逃走する。」
じゅえる「それだと桐子ちゃん搦めたのがむしろ仇になるな。やくざの娘はいいが、桐子ちゃんの親族という設定は抜きにしよう。えーと、だけどー、そうだね。つまり市中に転がり出て、縁の水商売の店で働いている女性が桐子の母親だ。」
釈「しかしお妾さんが水商売、ってのはいいんですかね。」
まゆ子「それは少しいい加減過ぎるな。店のママなら大丈夫かもしれないけれど。」
じゅえる「桐子ママはそういう性格の人ではない、はずだよ。もっと大人しい静かなタイプ。娘の真逆。」

釈「ここで絡ませるのはやめましょう。とりあえず、ヤクザの娘はとある時空調節者の工作により現実時間内で襲撃され没落し、街をさまよう羽目になる。行き掛かり上助けてしまい、さらに放浪後も回収してしまった光也は、やりようがなくて途方にくれる。」
じゅえる「ここで桐子ちゃんに相談して、敵の襲撃自体を無かったことにする事象変更をする。すると、ガンビット戦闘だ。」
まゆ子「ふむ、こちらから仕掛けるんだね。

 ちなみに桐子ちゃんの時空干渉方針は”頼まれたらイヤとは言えない”だ。」
釈「誰の頼みでも聞くんですか?」
じゅえる「いや、筋が通った申し込みならば、損得考えずに飛び込んでしまう。そいうタイプだね。」

まゆ子「ちょうどいいい。光也が自分から歴史の変更に手を染める最初の一歩にしよう。」
じゅえる「となれば、そのヤクザの娘死ぬ事にしよう。そのまま放置すればどうなるか、未来新聞を桐子に示される。ヤクザに陵辱された挙げ句にばらばらで海に浮かんでる。」
釈「うーむ、なるほど。それはどうも、ガンビットさんにお願いするしか無いようですね。」
じゅえる「ということは、ガンビット戦闘で桐子は確実に勝利するから、光也が女Dと遭遇するイベントも無くなるわけだ。無関係、だね。」
釈「それでいいじゃないですか。で、その後別ルートで二人は遭遇する。」
まゆ子「途中イベントとしてはちょうどいい大きさのエピソードだ。うん、採用。」

 

まゆ子「
 溯行技術者。敵。バロン。
 事象を逆転して変更する時空調整者。観測者の目の前で今起った事象が逆転して再生され、変更される。」

じゅえる「そんなこと出来るんだ。」
まゆ子「あまり意味の有る技能ではないけど、ね。つまり歌を逆さに唄う事が出来る人、と同程度の珍しさだ。過去に戻って事象の変更をするってのは、時空調整者として普通。
 こいつらは、加速能力者が普通に見ている前で事象を変更するところが違う。つまり観測する加速能力者の時間と、事象の逆転と別の時間軸で行うんだ。
 彼らの技能は、直近で起きた事象の変更を細かく出来る、ってところ。逆に大きな変更はよく出来ない。」
釈「なんか、使いどころの無さそうな技術ですねえ。」

まゆ子「虚仮威しには違いない。が、彼の能力の凄まじい点は、歴史にちゃんとその痕跡を残す所だ。現実として、事象変更が意識され記憶記録される。」
じゅえる「どういう理屈?」
まゆ子「まあ、時間旅行の変さファンタジーさに比べればこの程度どうという事はないんだが、結論から言うと起きる事象の幻影を先に見せるんだな。というか、結果的にそういう理屈で理解される能力だ。本当は実現したのかもしれないが、客観的に観測すればそうとしか言いようがない。」

まゆ子「あ、こんなエピソード思いついた。
 夕奈ちゃんが、或る日光也が戻ってみると、自動車事故の日から意識不明の昏睡状態で寝たきりになっている、という歴史の中に居る。
 これは別の時空調整者がそういう措置をしたんだね。で、光也を元の時間流に近い状態にキープする。
 当然桐子ちゃんに修正を依頼するが、これはガンビット戦闘ではケリがつかないタイプの極めてデリケートな事象改編でありました。

 で、通常の手段ではこれを覆せない。というわけで、桐子が死ぬ直前2030年の医者に夕奈のデータを見せて、2003年に回復手術をする術式を伝えるという離れ技でやってのける。大盤ぶるまいだ。
 で、桐子ちゃんはその改編の主から恨まれて、攻撃されることになる。」

 

まゆ子「とまあこんなわけで、『結構無敵ガンビットさん』もしくは『輪廻転戦ガンビットさん』、でいきますよお。」

 

【清子さまSHOWー、『チェス・ゲーム』を考える】09/02/08

まゆ子「というわけで、清子さまにおいで願いました。どうぞよろしく。」
清子「はい。よろしくお願いします。」

じゅえる「さっそくですが、『チェス・ゲーム』もしくは『結構無敵ガンビット』がうまくいきません。キャラが定まらないのです。」
清子「具体的にどのような障害が生じたのですか。」
釈「人がぼろぼろ死ぬという設定上、どう転んでも話が暗くなるのです。」
まゆ子「そうなのです。なるべく明るく殺そうと考えましたが、どうもこの設定ではダメなようです。」

清子「ざっと設定を読ませていただきましたが、これは『大東桐子』さんシリーズなのですか?」

まゆ子「その可能性の一つとして、考えてはあります。桐子さんがお姫様となって、ガンビットに乗り下層階級を率いていくという設定です。」
じゅえる「というわけで、ゲームの勝者が生存に必要な物資を獲得する事になっています。」

清子「大東さんのところでは、それは相場の操作であり、戦闘の直接の結果ではないのですね。」
まゆ子「まあ請負で戦闘の代金はもらいますが、大枠では相場から戦闘市場を形成する資金が発生するわけですね。」

清子「このガンビットさんでは、どこから出るのです?」

まゆ子「う!」
釈「それは謎の宇宙人が、ただ彼らを生かす為に、…はは、これダメですよ、まゆ子先輩。」
じゅえる「うーむー、言われてみると、かなりファンタジーが入っている。」
清子「ここが頓挫の原因ですね。何故戦うのか、説得力のある設定ではないのです。だから、上手に人が死んでくれない。」

まゆ子「反省しました。安直過ぎましたね。」
じゅえる「経済的基盤が無ければ、人は満足に生きられない。確かにそうか。」
釈「しかし、集団戦闘となるとかなり難しいですよ。」

清子「集団戦闘が今回のモチーフですか。」
まゆ子「はい、チェス・ゲームですから。」
清子「ガンビットさんは個人の所有物ではないのですね。」
じゅえる「一応、都市の正式軍隊ですから、ねえ。」

清子「食糧を得る為に戦う、これが基本的にこの物語にはそぐわないのだと思います。」
じゅえる「しかし、それこそゲームの為に戦うのは本末転倒ではないかなあ。」
釈「利益を得る為に戦うというのが、普通に正しいと思いますが、傭兵団かなにかでしょうかね。」

まゆ子「なにか強力な規制が無いと、装備や数の制限を受入れないと思うんだ。だから食糧で縛ろうと考えたんだけど。」
じゅえる「それにマジな戦闘にはこの装備合わないんだよね。」
釈「背が高くてよく見付かりますからね。標識灯も明々と点いていますし。」

清子「これまでの設定を受入れるとしても、暗くなるのはやはり先に希望が無いからでしょう。ただ生きる為に戦うのでは、人は未来に期待しません。」

まゆ子「そうですねえ。食糧やら物資を得る為の手段が戦うのだけってのは、やっぱダメですよね。」
じゅえる「没かなあ。」
釈「集団戦闘の意義が見出せないのですから。」

清子「ところで、このガンビットさんのチームを抱える都市というのは、幾つ有るのですか?」
まゆ子「はあ。ざっと100ほどは。」
じゅえる「そうなんだ。野球みたいに6個くらいかと思った。」

清子「ペナントレースとか、トーナメントではないのですか? 優勝したら豪華商品がいただけるとか、名誉であるとか。」

まゆ子「! あ。」
じゅえる「優勝か、考えたことなかった。」
釈「そうですねえ。優勝チームはなにか貰えることにしますか。」

清子「さらに言えば、毎年戦うというのが良くないのかもしれません。4年に一回とかで稀な機会であると考えた方が戦闘意欲が高まるのではないでしょうか。」
じゅえる「4年に1回は多過ぎるな。12年に一度。命を賭けるのに値する戦闘の祭なのだ。」
釈「12年に一度ですか。では年に30回も戦う必要無いというわけです。」

まゆ子「うーむ、それではこうだ。12年に一度、各都市に100機ずつのガンビットさんが配備される。これでトーナメントを戦う100名の勇者を募り、参戦する。」
じゅえる「ふむ。つまりこの戦に参加する奴はエリートであるか、少なくとも勇気には不自由しない奴なんだ。死ぬよね?」
釈「死ななければ、面白くもなんともありません。」

清子「100名の勇者が、戦闘を繰り返す度にどんどん減っていくのです。『投了』するか、全滅するまで何回でも参加できます。」
まゆ子「トーナメントか、リーグ戦か、どっちがいい?」
じゅえる「リーグ戦勝ち残りがトーナメント参加。地区8組程度で総当たり戦を一度やって、同率首位の場合は決戦をして、それでトーナメントに参加できる。」
釈「トーナメント参加時には、よそのチームから助っ人を雇う、ってのもいいですね。各都市代表を1名ずつということで。」
まゆ子「ふむ。物語り後半で人間関係の軋轢が発生する要因になる。物語性が増大するわけだ。」

釈「でも『投了』ってどうしましょう。『キング』機がやられたら負けでしょう。」
まゆ子「今回機体の補充は無いから、『キング』がやられたら、ゲームオーバー。もう参加できない。」
じゅえる「ではフラッグだ。キングが持つフラッグが破壊されたら、負け。ただし自ら破壊して降参する事は出来る。『キング』がやられてもやはり負けだが、その時はもうゲームオーバー。」
釈「なるほど。深刻さがより増しますね。」

清子「そこで賞品です。えーとですね、トーナメント出場だけでも価値があるとかんがえるべきでしょうね。」

じゅえる「リーグ戦優勝で物資倍増!」
まゆ子「うむ。そのくらいの餌でも十分戦う価値は有る。」
釈「12年間もずっと物資倍ですか。それはすばらしい。命を賭けるに値する戦闘です。これだけでも上等だ。」
じゅえる「ついでに同率首位でも倍になることにしておこう。」

清子「それほどに素晴らしい商品がいただけるのでしたら、敵の『キング』を抹殺して戦闘の数を減らそうと考えるところもあるでしょうね。」
まゆ子「うむ。互いがそれを行えば、効率的に駒を残してトーナメントに参加できる。」
じゅえる「トーナメントへ参加する兵力が十分確保できたまま、勝ち抜けるのか。」
釈「効果的ですね。効率いいですよ。」

まゆ子「えー、1地区8組として、順当に総当たり戦だと7回やらなきゃいけないが、『キング』ぶち殺し作戦を用いると、最小3回で勝ち抜ける。」
じゅえる「素晴らしい!」
清子「逆の作戦も使えますね。自らは兵力を温存しておきながら敵の数を磨り減らし、自分でフラッグを破壊してゲームを抜けて、次の戦闘では最大数で襲いかかる。」
まゆ子「それも悪くない。」
じゅえる「最終的に勝ち残ればいいのか。うむ、勝率にこだわるだけでなく敵殲滅にこだわるのも悪くない。」
釈「各都市どうしの恨みってのもあるわけです。特に前回殲滅された相手とかだと。」

じゅえる「なんか、やる気になってきた。となると、トーナメント出場でこれだけ盛り上がるのなら、トーナメント優勝には素晴らしい商品が待っているんだろうね。」
まゆ子「えーと、全100都市の盟主となるのはもちろん、物資配給の元締めとなり利益上げ放題。都市の再開発もやり放題。」
釈「つまり、各都市間の外交政治機構があるのですよ。産業基盤は別に管理されているとしても、流通とかは任されているのですね。」

まゆ子「なんだかGガンダムに似て来たぞ。」
じゅえる「あれはよくできた設定だ。だがこれでいいんじゃないか。こっちは集団戦闘だし。」

清子「しかし、それ以上に個人的なトーナメント勝ち抜きの動機が必要でしょう。」

じゅえる「どうするかな。宇宙人に会えるとかでいいかな?」
釈「それでもいいと思います。上部管理機構の謎に食い込むのです。最終決戦が待っている。」
まゆ子「うん。トーナメント勝者には宇宙空間に浮かぶ城の内部でのスペシャル戦闘が待っている。誰も帰って来ないから分からないけれど、都市としては別に困らない。ただ勇者は戻らない。」
じゅえる「それは謎ね。城の中にはハーレムが有る、とかのいいかげんな情報が飛び交っている。」
まゆ子「となると、主人公のお姫様は、それがなにか、少しだけ情報を持っていて、確かめに行くんだ。」
じゅえる「お兄様だよ。」
釈「そうすると、必然的に前回優勝チームの都市が舞台になります。それはダメでしょうやっぱり。」

清子「そういう世界観であれば、各都市間での移動は普通に可能と考えるべきでしょう。余所から流れて来たお姫様という設定も使えますよ。」
じゅえる「うむ。それほど殺伐とした世界じゃないんだ。」
まゆ子「とはいうものの、戦闘期間中は移動できない閉鎖状態になって、否が応にも気分を高めるってことにしよう。」

釈「このパイロットは志願制ですか?」
じゅえる「まあ、そうだろうね。」
まゆ子「リーグ戦優勝でもヒーローだ。トーナメントでも全滅するとは限らないから、一勝でもして帰ればヒーローだ。」
じゅえる「志願者は多いな。」

清子「女の子が志望する動機が別に欲しいですね。」

じゅえる「うむ。ではやはり、支配者階層が有るんだ。キング機とその周辺を固める直衛は彼らから出る。下層階級からはガンビットパイロット募集だ。」

まゆ子「では総数100に戻していいかな。キング(青銅)1、クイーン(鐡)1、ビショップ(銅)2、ナイト(錫)6、ルーク(亜鉛)40、ポーン(鉛)50。」
釈「今回の設定であれば、問題ないと思います。ですがビショップは最終的な壁ですから、3でしょう。損失がありますよ必ず。」
まゆ子「OK。でビショップ(銅)3だ、錫5だ。」
じゅえる「で、女の子はこれに参加すると、上流支配者階級に昇格できる。勝とうが負けようが、生きて帰ればそうなるのだ。」
まゆ子「単純だなあ。だがそれもいいか。」

釈「上流階級に行くと、どのような利点が有りますか。」
じゅえる「そりゃあ、金だろう。資格制限とかはあまり無いのかなあ。やはり社会的な経済構造から差別される、当たり前の支配体制か。」
まゆ子「ここはそのまま、有性生殖でいいじゃないか。繁殖能力を回復して、自分で子どもが産めるようになる。」
じゅえる「今回の設定では、あまり魅力的な条件ではないねえ。人間がぼろぼろ死ぬわけじゃないから。」
釈「普通に、綺麗になる。でいいんじゃないですか。歳取らなくなるとか。」

じゅえる「うーんそうだねえ。男女同じ条件である方がいいから、下層階級民は都市間の移動が出来ない。引っ越しは出来ない。だが上流階級になると、移動できる。余所で結婚も出来る。」
まゆ子「ふむ。そんなところでいいかな。短期の旅行は下層階級でも可能だが、移住とかは上流階級でないとダメなんだ。」
釈「では、手荷物扱いで高級品の輸入とかも出来る特権もある。とかでいいですか。」
まゆ子「うん、上等過ぎるな。」

じゅえる「では上流階級は物資の制限を受けたりしないわけだ。ビンボーがイヤなら、別の都市に行けばいいんだから。」
まゆ子「まあ、そんなとこだね。だからリーグ戦の動機は下層階級民の為に、トーナメント戦は上流階級民の為にある。」
釈「それはアレでしょう。各都市にも議会ってものがあって、そこの議員になる為とか、トーナメント戦に参加した人は特別枠で議員になれるとか。」
じゅえる「ベタだが、そんなもんでいいか。優勝すれば当然議長、いや100個の全都市を統べる世界大統領だ。」
まゆ子「おもいっきりベタだな。そこんとこの権力基盤については詰める必要がある。」

清子「天空の城というのは、どのように機能するんでしょう。もちろん世界支配の根幹であるわけですが、彼らへのアクセス権を確保する事で、優勝都市は指導力を獲得するのですよね。」

じゅえる「さあて、どうしようか。各都市は結構大きいような気がしてきた。産業基盤もちゃんとあるんじゃないかな。」
まゆ子「まあ、そうだね。農業プラントくらいはあって喰うには困らないんじゃないかな。なにかもっと重要な物資を掌握しているとか。あるいは情報?」

清子「あの、フロギストン大気の設定は未だ生きてますか? あれに出て来るオークとかいうのは、天空の城の管轄ではないでしょうか。」

釈「そうですねえ。つまりフロギストン大気中の空間は、天空の城の管轄なんですよ。で、各都市は特別なルートで連絡されている。」
じゅえる「フロギストン大気中で活動できる機械は、天空の城のみが供給する。ガンビットも含めて。」
まゆ子「世界支配権というのは、その通路の管制権限で、トーナメント勝者の都市に附与される。当然通行税やら閉鎖やらも自由自在。基本最低限物資の供給すら支配して、都市を干し上げる事すら出来る。」
釈「無制限の暴君ですね。でも12年後には報復されますか。」
まゆ子「前回優勝チームは物質的に優遇されているから、選手の育成とかもカネ掛かってる。当然強いが、他の都市は捨て身で討ち滅ぼしに来るから、キングを取られる可能性がめちゃくちゃ高い。
じゅえる「地区リーグではなく、無作為でリーグの所属を決定されることにするか。いや、そうだね、前回リーグ戦優勝チームはまとめて1リーグにするとか。」
まゆ子「それは著しく戦闘意欲を削ぐ。ダメ。普通のと混ぜる。」
釈「まあ、キング取られたら無制限に負けですから無理やり平準化しなくてもいいですよ。そうですねえー、つまり自分でフラッグを破壊して兵力を温存しようとするのは前回勝者で、敗者は勝者をぶち殺すのに手段を選ばない。」

じゅえる「まあ、横暴が行きすぎると天空の城が懲罰を行って、緊急ガンビット戦争の開始だよ。つまりはチェス・ゲームは選挙の代わりだね。」

まゆ子「基本物資として、水と酸素はフロギストンモーターから各都市に普通に供給される。食糧も配給ではあるが、各都市で自作農を一応はやっている。…そうだね。都市には農地は無い。無いが、農業はやっている。下層階級の市街はれっきとした都市なんだけど、いろんなところが農地になっていて野菜とかの栽培をしている。ただし、これでは足りない。」
じゅえる「絵的にはおもしろいね。水を桶に入れて上の階まで持っていくとか。」
釈「やはり、水が足りないんですよ。都市で人間が配給で生きていく程度ならば十分ですが、農耕を行うにはまったく足りない量の水しか供給されない。」
まゆ子「うん、そんな制限がいい。しかし農業を怠ると、通路を閉鎖された際にいきなり餓死してしまうから、やらざるを得ない。備蓄で食い繋ぐにも限度がある」

清子「ずいぶんと良くなったと思います。これならば暗い話でなく物語を進められるでしょう。」

まゆ子「しかし12年は長いな。」
じゅえる「うーん、6年に一度にしますか。」
釈「12年はさすがに問題有り過ぎますよねえ。いかに緊急ガンビットがあるとしても。」
まゆ子「備蓄の限界は普通のリーグ戦で勝たなかった都市で、せいぜい2年てとこだろう。これでもものすごーくケチってだよ。食糧は腐るしさ。」
じゅえる「では6年で。えーと、その他のクエストとかは無いかな?」
釈「この状況であれば、別にいいでしょう無くても。あと衣料とかは原材料は供給ですが、縫製とかは各都市がやる。その他軽工業はあるとしますか。」
まゆ子「重工業をする資源もエネルギーも無い。そんなに潤沢には物資が無い。というか、そもそも水がそれように無い。」
じゅえる「水を抑えられると、キツいなあ。」

まゆ子「じゃあこうしよう。リーグ戦を優勝した都市には重工業をするだけの物資が供給される。これを使うと付加価値の高い商品が作れて、大儲け間違い無し。
 それが出来ない時は、余所の都市から回される資源を用いて生産するだけ。手間賃のみで商品は発注元に吸い上げられる。これを自分で売りさばこうとかしたら、ルート閉鎖。」
じゅえる「ふむ。つまりは重工業を行う機能はどこの都市にもあるんだ。」
釈「というか、都市ごとに産業が散らばっていて、得意とする分野がそれぞれ違うということにしましょう。産業機械と労働者はあっても、資源が無い。」
まゆ子「ふむ。熟練労働者はどこにでも置くわけにはいかないしね。都市ごとに特化産業が違うわけね。」

 

清子「ということであれば、ふつうですね。」

じゅえる「フロギストン大気が無ければ、普通の地球だな。」
釈「それがいけない、とする何者も無いですから。」

 

【チェス・ゲーム】09/01/12

まゆ子「しばらく目がしぱたしぱたしたから、コンピュータ切って眼精疲労の回復してたら、妙な企画を思いついた。」
じゅえる「またかい。」
釈「懲りませんねえ、で今回はどんなのです。」

まゆ子「こんなの。未完成非武装状態だけどね。」
じゅえる「ロボット?」
まゆ子「ポーンだ。チェスのね。」

釈「チェスをロボットでやるわけですか。なんというか、テレビゲームでよく有る設定のお話ですね。」
まゆ子「まあそういうこった。ちなみにこれ、歩かない。半浮遊状態で走行します。飛行原理はフロギストン。」

じゅえる「燃素ですかい。」
まゆ子「此奴が活躍するステージにはフロギストンが充満していて生身の歩兵が使えない。この大気を圧縮して火を点けると爆燃して推進するのだね。」
釈「大気そのまま燃えないんですか?」
まゆ子「酸素分圧少な過ぎる。2%くらい。だからこの大気中で火花散らすと、周辺がばくっと燃えて酸素使い果たして鎮火する。
 これを圧縮するとーまあ酸素の絶対量が増えるからちゃんと燃えるんだな。(圧縮するとフロギストンが液化して気体中の比率が下がる、ことにする。)」

じゅえる「具体的には、どのようにチェスを行うのだい。」
釈「これがポーンという事は、他にもルークナイトビショップクイーンキングがあるわけですよ。」

まゆ子「あー、これは高速型だからナイトに相当する機体だな。”スタンナム”て名前だ。”錫”だよ。
 他にも”鉛””亜鉛””銅””鉄””銀””金”がある。」

じゅえる「ナイトということは、これ主人公機だ。」
まゆ子「うーむ、そういうことなんだが、語り手を主人公とする考えだから、ヒロイン機だな。」
釈「おお、女の子乗りますか。」

じゅえる「リアル戦争なんだよね?」
まゆ子「うーん、リアルではあるが、戦争ではない。擬闘と呼んだ方がいいのかも。
 つまりこの戦闘は、とある支配者民族”神族”から与えられる戦闘機械によって厳密に管制される集団戦なのだ。」
じゅえる「文字どおりのチェスなんだ。」

まゆ子「住民は”士族”と”戦民”に分けられる。士族が戦闘の指揮をして、戦民がロボットで戦うのだな。」
釈「酷い話ですね。」
まゆ子「そうでもない。士族もちゃんと戦闘に出て来る。つまりチェスだから、キング取られたら負けなのだ。キングおよびその直衛機は士族が乗る。
 要するに、キング機に乗る士族が死ねば、その戦闘は敗北が決定する。他にどれだけ駒が残っていても負けが確定。ただし死ななかった駒ロボットはそのまま温存されて生きたまま帰還出来る。」

じゅえる「味方に殺されるとかもアリ?」
まゆ子「機体性能がめちゃ違うから、ほぼ無理だけどね。

 えーと、一番下っ端機が”鉛”なんだ。57ミリ榴弾砲を搭載してうじゃうじゃ居る。火力は最強でどの機体をも直撃なら一撃で破壊破損出来るのだが、搭載する弾薬が被弾すると大爆発誘爆だ。致死率めちゃ高い。」
釈「御免こうむります。そんなの。」

まゆ子「次の下っ端が”亜鉛”だ。8ミリ機銃と楯を持っている。8ミリ防弾だよ。」
じゅえる「8ミリとはまた非力な銃を持って来たね。」
まゆ子「いや、8ミリというか7,8とか7.65ミリとかは、十分強力なんだよ。強壮弾使えば車両なんかすぱっと貫通だし。」
釈「このロボットには有効なんですか?」
まゆ子「あ、”鉛””亜鉛””錫”には十分過ぎる威力です。一撃では壊れないけれど、5発も食らえばさすがに停まる。”鉛”なら当たり所で大爆発だ。」
じゅえる「ふむ。つまりは相互に確実に破壊出来るだけの火力なんだな。」

まゆ子「えーと”亜鉛”は楯を持っています。基本装備だとね。これもうじゃうじゃ居て、歩兵の役だ。これは火器は8ミリ機銃に過ぎないが、装弾数1000発も有る。手数と員数で圧倒する。」
じゅえる「圧倒できるわけね、はい。」
まゆ子「楯は8ミリ防弾だが、所詮は楯だから当たり所てものもある。基本的には、被弾に弱い”鉛”を護ることとなる。」
釈「文字どおり楯になるわけです。」

まゆ子「”鉛”と”亜鉛”は鈍重だ。装備の重量が重過ぎて、出力も低い。これに対して高速なのが”錫”だ。しかも37ミリ速射砲を持っている。一撃必殺最強装備。ただし装弾数7発のみ。」
じゅえる「ちょっとまて、7発でなにをするんだ?」
まゆ子「”錫”は最強の火器を持つ。士族が用いるより上位の機種”銅””鉄”は13ミリ防弾なのだが、もちろん37ミリで上等一撃殺だよ。」
釈「使いどころの難しい機体なのですね。」

まゆ子「副武装は、つまり左手ね、は8ミリ機銃弾数制限アリ。ま、200発てとこ。これは下位3機の標準装備だよ。”鉛”も持ってるし、”亜鉛”も左手に付けてたりする。
 特筆すべきは、これ銃剣が付いている。」
釈「このロボット金属製でしょ、そんなもの効くんですかあ?」
まゆ子「材料はセラミックとガラス繊維だよ。フロギストンは金属腐食するからね。というか、そんなもので出来ていても8ミリ強壮弾を防げるってとこは、称讃に価する。
 で、銃剣はまあセラミック刀なんだけどフロギストンバーナーでもある。酸素吹き出してフロギストンを高温で燃焼させる。それなりに効果はある。」
じゅえる「つまり格闘戦もアリ、ってわけだ。”錫”は高速機体で最強火器装備、格闘も出来る。”錫”だけで部隊を構成すればいいんじゃないの?」

まゆ子「そうはいくか。ロボット買うのにもカネが要る。戦争に勝たなきゃ神族様から物資や食糧もらえない。負けが込んで来ると敵にロボット売って食糧買わなきゃいかん。」
釈「お。やはり食糧を巡って戦いますか。」
まゆ子「この企画、「大東桐子」シリーズに欠陥があるんではなかろうか、ってことで検討した成果だ。つまり食が戦争の根幹に君臨する。」

じゅえる「つまり、チェス戦闘は絶対不可避なんだ。そして、チームは複数有る。」
釈「じゃあレギュレーションとかロボットの数なんか決まってるんですか。」

まゆ子「あー大体100機のロボットを動員しますね。神族から定数要求されるし。100機中”鉛”50機、”亜鉛”40機、”錫”5機、上位の士族が使う”銅”3機、”鐡”1機、それに大将機である”青銅”1機、で構成される。ってとこかな。もちろん全部出す必要は無いが、まあ出し惜しみすりゃ負けるし。」

じゅえる「勝てばロボット買えるのなら、いずれどこかのチームが強大化して勝ちっぱなしになるんじゃないの?」
まゆ子「そうならないように、神族は調整をしますよ。あー、神族専用審判機”銀”、問答無用お仕置き機”金”があります。」

釈「”錫”機は少ないですねえ。そんなに貴重品なのですか?」
じゅえる「だって最強火器付いてるもん。そこは調整済みでしょう。」
まゆ子「そういうことです。というか、37ミリ砲自体が高い。”銅”と同じ値段がする。虎の子だから、”錫”はやられてはならないんだ。
 ちなみに大将機”青銅”は機体特性としては”銅”と同じです。武装は無いが、指揮管制能力がある。”鉛”全機を遠隔でコントロールして一斉射撃とか出来る。

 あ、基本的な設定を言うの忘れてた。このロボット無線機付いてない。」
じゅえる「ふむ。手信号とかで連絡するんだ。」
まゆ子「あー、方向指示器とか各機体に付いている。左右の肩に電灯がついてるでしょ、3DCGにも。」
釈「ありますねえ。なるほど、これを見て各自周辺の味方がどう動くか判断するんですね。
まゆ子「フロギストンの大気中であれば、人間が顔出して声で会話するとか出来ない。ロボットの手は完全に武装で塞がっている。方向指示器と敵味方識別灯のみが頼りだよ。」

じゅえる「この世界は、遅れているのか進んでいるのか、どっち?」
まゆ子「非常に高度な科学技術文明を持つ。というか、宇宙人だ。宇宙人が地球人を飼っている。で、食糧を与える代りに、武器を使って戦争をしてもらう。これがこの惑星の原則だ。」
釈「じゃあ、物語はその悪い神族をやっつければ、終り?」

まゆ子「そうはいくか。」
じゅえる「そんな頭の軽い中学生みたいな物語り書けるわけないでしょ。」
まゆ子「主人公は納得しますよ。このチェスみたいな戦闘は決して無駄ではない。というか、戦争でもしなければ、ただ食糧等を無償で供給されるのであれば、人間社会として無為無価値でしょ。神族は、人間の世を人間が正しく治められるように、戦闘というお仕事を作ってくれているのだよ。有り難いこった。」

釈「ではこの物語、どのような結末に向かって進んでいくんですか? 悪党ぶっ殺さなきゃだめでしょ、やっぱ。」
まゆ子「そかな?」
じゅえる「悪党が完全勝利でもいいじゃないか。」

まゆ子「というのは置いといて、えーとこれ”戦民”てのはクローン人間です。同じ人間が多数住んでいます」
 といっても、特別に戦争人間を調合して供給しているわけじゃない。神族がこの地を発見した時、既に人間はとっくの昔に絶滅しており、発掘したのはこの地にかって存在した兇悪犯罪囚人のDNAサンプルデータベースでしかない。
 神族は優生生殖によらずクローニングで兵士を供給する。理由は分からない。が、人間同士が闘い合う場面ではどうしても人が死ぬ。死んでも辛く感じないように、クローンで同じ顔が基地中にずっと生きているという状況を作ってくれたのだ、と皆理解する。」
じゅえる「殺人犯やら強盗強姦やらの、そんな連中か。」
釈「しかし遺伝子で犯罪傾向が決定されるわけでは無いでしょう。環境やら情報やらで形成される人格は時代によって適不適があり、善いことは必ずしも全世代で共通とは限りません。」

じゅえる「クローン元は何人分?」
まゆ子「6400人。ただし舞台となる基地では500人くらいしか使わない。全世界に基地は幾つもあり、同じくらいの人数分の遺伝子から閉鎖社会を作っている。」
釈「6400人も居れば遺伝子プールとしては十分だと思いますけどねえ。」
じゅえる「いや、やはり同じ顔がいつも居るという点が重要なんだよ。でも基地って何人くらい住んでるんだ。」
まゆ子「1万5千くらいかなあ。同じ顔は300人居る勘定だ。」

釈「はあ。それじゃあ個性もへったくれもありませんね。でもほんとに適性ってものは無いのですか。特に元が兇悪犯罪者であれば、英雄的とも言える肉体的特徴があっても不思議ではありません。」
まゆ子「そんなもんあろうが無かろうが、”鉛”の爆装ロボットが生き残るのはほとんど運だ。敵味方ぼこぼこと撃ち合って、運が良い者のみが帰って来る。鈍重で自らの判断で独自行動をしてはならない兵種だ。これを5年も続けてようやく”亜鉛”に昇格する。」
じゅえる「5年生きれば無差別で昇格? 手柄とかは無いの?」
まゆ子「まあ、直接”銅”やら”青銅”やらを討ち取れば特別昇格は有るんだけど、まそういう奴は普通すぐ死ぬね。
 えーと戦場スケジュールだとこうだ。

 

 クローンとして誕生した戦民は開始年齢10歳。最初から10才児として工場出荷される。で基礎訓練が終了するのが12歳。”鉛”に乗せられる。最初は自分での判断で発射は出来ない。遠隔操作での集中攻撃を”青銅”からの司令で黙々とこなすだけ。当然良く死ぬ。
 14才くらいから、砲の発射に独自判断を許される。少数の分隊に所属しての攻撃任務にも配置される。能力云々はこれ以降ね。57ミリ榴弾砲搭載の”鉛”は背中に砲弾100発を背負っている。これに一発でも弾を食らうと、大爆発誘爆してしまう。まあふつうに即死だ。

 16才から17才で”亜鉛”に乗る。それまで生きて来た者はまあ運も能力も有るのだろう。上の人数の多少で、昇格は大体早めに決まる。”亜鉛”も最初は集団戦闘を行う装備しか持っていない。群れで戦う時はやっぱり運こそがすべてだよ。
 18才くらいで選抜されて、分隊に配属されて少数での作戦行動に参加する。ここまで生きればもう歴戦の勇士だ。これから指揮官になるか、”錫”の砲手になるかの選別がされる。
 ”錫”の候補になると、13ミリ狙撃銃の付いた”亜鉛”で戦う事となる。弾数16発の狙撃銃は37ミリ速射砲での攻撃と同じく一撃必中を要求される。下位機は8ミリ耐弾であるから、大体撃破可能。特に敵”錫”の破壊は勝利に直接貢献する。

 20才で上に空きがあれば”錫”に昇格だ。”錫”は戦場での勝利を決定する最強のカードであるから、成果が要求される。また37ミリ速射砲は価格が非常に高く、喪失する事は許されない。士族の用いる”銅”や、決定的勝利条件である”青銅”指揮官機の撃破はこれでしか成し得ない。”銅”シリーズは装甲が13ミリ防弾だから、8ミリ機銃では撃破出来ないんだな。
 ”錫”はその性格上、敵士族の撃破の機会がとても高くなる。手柄を上げるわけだよ。だから”錫”パイロットは花形だ。基地全員の食糧を確保するのが彼らの任務であり、故に高く遇される。逆に決定打を得られないパイロットは降格する事だってある。

 25才くらいで”錫”で手柄を十分立てた者は士族に昇格する。特別区画に住む事が許されて、結婚が出来る。というか、彼らは皆クローンでそのままでは子供が持てない。士族に昇格すると、一人パートナーを選んで同時に士族に成れる。遺伝子操作を行って生殖機能を回復させると妊娠可能になる。つまり”錫”パイロットと恋人になると、そいつが昇格すると自分も士族になれるんだな。
 士族はそういう経緯を経て昇格した人間と、彼らから生まれた有性生殖人間のみで構成される。基地の特別区はパラダイスと言われているが、まあそこまで上等でも無い。ともかく、士族の子は士族なのだ。で、有性生殖人には苛酷な運命が課せられる。指揮官機”青銅”に乗る事だ。これはチェスでいうキングに相当するから、敵の”青銅”か自分がやられるまで、戦闘が決着しない。”青銅”のみは神族による貸与でタダでもらえるから機体購入を心配しなくてもよいが、その他の機体はこれまでの戦闘の成果として獲得したものだ。失われると今後の戦闘に支障が出る。パイロットも熟練者を失うと今後の戦闘で勝利が望めない。故に、負けが決定的となった場合には”青銅”は自殺するという選択肢すら使わねばならない。

 戦民出身の士族はそれは無い。だが戦場には出て来る。”銅”だ。この機体は下位の機体とは明らかに異なる性能を持っている。まず装甲が厚い。8ミリ防弾13ミリ耐弾で下位機の標準装備8ミリ機銃では撃破出来ない。また運動性能も良く、57ミリ榴弾はもちろん37ミリ速射砲弾でも当てるのは非常に困難。しかも両手に13ミリ機銃を持っている。下位機は8ミリ耐弾で数発くらうと撃破されてしまうから、13ミリ装備の”銅”は無双状態。欠点はといえば両手に機銃付いてるから弾薬消費量が多くすぐ弾切れする。また武器自体は8ミリ弾でも破壊可能だから、ともかく弾を浴びせればどっかぶっ壊れる。さらには白兵戦闘装備を持っていないから、足を留めて銃剣で攻撃すれば”亜鉛”でもなんとか攻略は可能。また機体価格が高くて補充が容易ではないから、これが破壊されると戦力復元に非常に手間が掛る。まあ乗っている奴は只者ではないから、そうそう上手くは殺れないけどね。

 で、戦民出身者が最終的に辿りつくのが、最強機体”鐡”だ。”銅”をベースに全周13ミリ防弾、正面装甲37ミリ防弾となっている不死身機体。動きも早い。ただ火器の搭載が許されておらず白兵戦闘のみを行う。基本的にこれは破壊不能だが、57ミリ榴弾を集中で浴びせればさすがにどっか壊れて足が停まり、死角から”錫”の37ミリ砲弾で一応殺れる。この機体は基本的に”青銅”直援機で戦闘には参加しない。”鐡”と”銅”とで守られる”青銅”指揮官機は、まあ通常偶発的には破壊されない。”鐡”の出番はむしろ互いに膠着状態、消耗戦になった時だ。このまま双方戦力の磨り潰しをせねば勝利が望めないと決まれば、互いのキング”青銅”を賭けて”鐡”同士の一騎討ちが行われる。戦力維持の為の最終手段てことだ。故に、”鐡”の搭乗者は”青銅”の搭乗者の「親」である事が多い。どうしてもダメだと決まり自殺しなければならなくなると、”鐡”によって破壊されるってことがよく起る。

 ”錫”に昇格出来なかった者は、つまり士族には普通なれない。だが20年従軍すると退役して基地の管理スタッフになれる。有力者としてまあ色々と役得が有る。
 それに辿りつく前に彼らは分隊・小隊指揮を行う事になる。下位機体には後方に指揮官灯が付いていて、通信手段が無いから他の機体は自分が属する分隊指揮機に追従して行動する。つまりは、指揮する彼らの判断次第で戦況が大きく変わって来る。また分隊指揮機には”青銅”から直接戦闘指揮命令が転送されて来る。通信ではなく指示パネルにぴこっとランプが点燈するだけだけれど、ともかく直接命令を受領する特権を持つわけだ。分隊指揮機がやられるとその次の階級の持ち主が自らの判断で指揮灯を点燈させて他を誘導指揮する。これを勝手に点けたら銃殺ものだ。

 分隊指揮官として十分な能力を認められたら、小隊指揮官に抜擢される。つまり”鉛”小隊と”亜鉛”小隊と”錫”小隊が有るわけだ。”錫”小隊は別として、どちらも連動して行動しなければならない。また機体の混成分隊も組織される事がある。”錫”小隊長ってのはつまりは”錫”機体を含む混成分隊の指揮官てことになる。分隊長全員が小隊長になれるとは限らないが、ま普通は順繰りに死んでいく。13ミリ狙撃銃装備の”亜鉛”はこれを討つ為に居るのだから。指揮灯が点いている機体を狙えばいいだけの話。ま、そんなに簡単には殺れないが。
 分隊長は長生きすればまあ大体成れる。というか、他が居ないのだから勝手になる。つまりはヒラの兵隊で戦場を卒業する奴は居ないてことだ。分隊長経験者は上級スタッフに、小隊長経験者はやはり退役後も優遇されて最上級スタッフになる。彼らが事実上の基地の責任者となる。また士族の教師となり戦場での指揮を教えることともなる。

 しかしながら、大体の人間は順繰りに戦場で死んでいく。12才の初陣は全員強制だが、どうしても戦闘拒否をすると下層階級に落とされる。フロギストン大気中でのゴミ拾い。戦場で破損した機体装備の回収をしなければならない。これは戦闘よりもよほど大変で危険な任務だから、戦闘拒否はちっとも良い事はない。3回の猶予はあるが、それを使い果たしたら永久追放で、フロギストン大気中生存可能な肉体改造までされてしまう。
 戦場で負傷して再起困難となればさすがに出撃しなくても良い。が、この世界は再生医療が十分発達しているし、元がクローン人間で臓器の再生はお手の物で、死ななければ数ヶ月後にはちゃんと復帰する。というよりも、フロギストン大気中で機体損傷で負傷するとほぼ確実に死ぬ。よほど条件が良くないと負傷して生き残るなどは無い。ただやはり完全に癒るとは限らず特に精神にダメージを受けて使えない者も出る。さすがに諦めて除籍、スタッフに回される。”鉛”時期にこうなると、低層スタッフになってしまう。戦闘拒否者よりちょっと上、改造はされないってレベル。

 ”鉛”は直撃即死だが、”亜鉛”はそうでもない。被弾しても生きてる事が多い。故に”鉛”の機体価格は安く、”亜鉛”は高い。”亜鉛”パイロットが余る事も多い。17才まで生き残れば、”亜鉛”待機スタッフになれる。”亜鉛”パイロットは志願制であるから、今後一切戦場に出なくても良くなる。下級スタッフだ。”亜鉛”パイロットは連続して出撃しなくてもよく、合計5年間務めれば晴れて中級スタッフ資格を得る。これ以降が分隊指揮資格であるのだが、ここで辞める者は多い。食糧・物資配給資格はパイロットと同等になるから損はしない。ただし指名投入制度というのが有り、その時々の”青銅”の命令で戦場に投入される事がある。特殊な技能の持ち主がこれに該当する。全従軍期間20年までその可能性は有る。わざわざ指名されるくらいだから、戦果を挙げられる人間だ。彼らはポイント制で加算されていって何時の間にか士族になっている事もある。

じゅえる「ふうむ。やっぱり軍隊だから差別的だね。」
釈「戦民、ってのは響きがよくありません。音で聞くと「賎民」に聞こえます。」
まゆ子「ふうむ、そういう観点からケチが付くか。なるほど。では士族改め士民として、兵民にするか。」
じゅえる「まあ、そっちの方がいいか。」

じゅえる「”鉛”ってのは、どのくらい死ぬんだ? あんまり沢山死ぬと人口構成が壊れるでしょう。」
まゆ子「あー、そうね。一つの基地「ファンネム」って呼ぶんだけど、に1万5千人住むとして、必要な物資を得る為には年間15回の勝利が必要とされる。もちろん勝率10割は望めないから、5割で計算すると30回戦わないといけない。損耗率2割で潰滅ってのが常識かな、だとすると総数100機出撃で20機破壊で敗北ってことだ。”鉛”15、”亜鉛”4、”錫”1くらいは破壊される。これだけ負けると”青銅”自殺だな。
 30回戦闘して平均すると年間500機撃破されるくらいだ。”鉛”375、”亜鉛”100、”錫”25ってとこか。」

釈「年間500人は戦死するわけですね。負傷とかも入れると、750人くらいかな。」
じゅえる「そんなもんでしょう。じゃあクローン製造数もそんなもんだ。士民も15人は死ぬか。」
まゆ子「”亜鉛”の損耗率が結構高いな。えーと全戦死数は、20年従軍するとして15000人、あ全滅だ。」
じゅえる「収支とんとん、ってとこですかね。その分クローン生産数を調整すればいいけどさ。」

釈「上のスケジュールに、漏れはありませんか?」
まゆ子「えーと、特殊装備やら特殊技能者が抜けてるか。」
じゅえる「戦術予報士だそうよ。」
まゆ子「うーむ、ちと考えちゃうな。

 えーとまず特殊装備。

 ”鉛”の標準装備は、右手57ミリ短砲身榴弾砲+自動装填装置100発。一発の威力は高いけれど、まず直撃は無理だから集団で同じところに撃ち込むのが基本戦術。結構効くから戦場を実際に支配しているのは”鉛”と言える。また指揮官機”青銅”からの直接コントロールで、同じ標的に全機同時発射が可能。これは照準方向と距離がインジケーターで知らされるから、乗員はそっちを向いて発射ランプ点燈と同時にトリガーを引くだけ。基本的に下位機の視界は最悪だから、独自の判断で行動ってのはほとんど無理。
 左手は8ミリ機銃100発。銃剣は普通付いていない。これは護身用で軽く作られている銃だから命中精度は望めない。近距離に敵を発見したら弾をバラ撒くだけ。基本は”鉛”では対応出来ない。”亜鉛”に護ってもらう。
 これら装備は左右取っ替える事も出来る。出撃前に調整するのだが、普通は小隊全部が向きを統一する。混成独立分隊に配属された時のみ可能。

 打撃”鉛”機ってのがある。”鉛”は背中に大量の砲弾を背負っているから誘爆する。積んでなければ動きも軽快だし爆発しない。だから単発の砲を装備して、敵と刺し違える覚悟で近距離で戦うという戦法が考えられる。57ミリ榴弾砲から自動装填装置を外したものだね。一発ではさすがになんだから、左右同じものを付けている。
 逆に楯”鉛”ってのもある。被弾すると即爆発する”鉛”の欠点を補う為に、左手に楯を装備する。普通の”鉛”は8ミリ機銃装弾数100発ってのを持っているけれど、これを外して楯にする。ただ重量増加でさらに動きが鈍重になるね。
 狙撃”鉛”ってのがある。命中精度の高い長砲身57ミリ砲を装備する、大物狙いの機体だ。砲弾が直撃すれば”銅”でも””青銅でも、”鐡”ですら無事では済まないから、これも有り。ただ特殊で高価な砲であるから、弾倉にも特別に装甲を施してあり装弾数が少ない。12発ってとこ。通常の”鉛”が100発抱えているのに比べると、火力では落ちるね。少し重いから動きが鈍くなる。
 あと、格闘”鉛”ってのがある。両腕に8ミリ機銃100発と銃剣を装備して、格闘戦を行う。速度は”鉛と”亜鉛”は同じだけれど、”運動性では”亜鉛”の方が遥かに小回りが効くから、無謀な試みだね。ただし砲弾積まないから誘爆の危険は無いし、動きは軽快だ。クエスト任務ってのを後述するけれど、この時にスカウトとして活動することもある。使い捨ての駒みたいなもんだ。
 で、指揮官”鉛”がある。分隊長、小隊長が搭乗する機体。”亜鉛”の機体に”鉛”の頭を載っけている。”鉛”は間接攻撃を主目的とするから、頭部に測距器を持っている。これが無いと”鉛”部隊の指揮は出来ないから、運動性が良い”亜鉛”の機体にくっつけている。下位機体には通信装備が無いので、部下に同じ目標を指向させる為に護身用8ミリ機銃に曳光弾を装填している。また右手に砲ではなく”錫”が使う8ミリ長機銃+200発を装備している場合もある。”亜鉛”ベースであるから銃剣装備で格闘戦も可能。指揮官機”青銅”からインジケーターにより直接勝利条件を指示される簡易通信機能を持つが、他の”鉛”よりも詳しい情報を与えられる。

 

 次は”亜鉛”。これの標準装備は、右手8ミリ長機銃+自動装填装置弾数1000発。ほんとはもっと持てるけれど、1000発あれば上等ってことになっている。”亜鉛”用の機銃は砲身が長く連射性能が高い。命中精度が高く弾をどんどんバラ撒く事が出来る。使用弾薬は変らないから威力は同じだが、”鉛”が装備している8ミリとはものが違う。またこれに銃剣を装備して格闘戦にも対応が可能。
 銃剣による格闘は”亜鉛”の第二任務と言える。動きは遅いが小回りが効くので、銃剣で敵に留めを刺すのはよく行われる。銃剣はただの刃物ではなくフロギストンバーナーであり、純粋酸素を供給することでフロギストンを3000度の高温で燃焼させ、敵の装甲を貫く。装甲に優れた”銅”に対してもこれで対応が可能。格闘戦の化物”鐡”には通用しないけれど、足を留めている間に”錫”に狙わせる手がある。
左手は楯で8ミリ防弾。機体は8ミリ耐弾で弾が当たっても内部コンポーネントおよび乗員に到達しないように作られているけれど、損傷には変わりない。損傷を防げる防弾楯は結構効くが、面積がちと狭い為に完全防御とはいかない。主に”鉛”を護る為に楯となる事を望まれるので、そのように使う。だが部隊には左右があるから、楯も左右に無ければいけない。”亜鉛”の装備は半数で左右が別ってことになる。

 狙撃”亜鉛”は13ミリ狙撃銃を使用する。13ミリ弾を使うのは”銅”の両手機銃だが、これと同じ弾を使う。ただし”銅””青銅”は機体全周13ミリ防御だから、この狙撃銃では殺れない。故に標的は下位機、特に”錫”と分隊長・小隊長機だ。また”銅”の両手にある13ミリ機銃を破壊して戦闘力をもぐ事も可能。装弾数が16発と少ない為に打ちどころは十分考えねばならない。この機体の左手は”鉛”の左手と同じ精度の低い8ミリ機銃+100発で護身用。機体特性が”錫”と似ている為に、”錫”候補生の登竜門となる。
 打撃”亜鉛”。右手は通常の8ミリ機銃1000発+銃剣だが、左手に57ミリ単装砲を装備する。近距離で左手の砲を使い、”銅”を破壊する事ができるが、まあ無理。分隊単独運動で爆破が必要な場合には、一発だけでも有効な場合がある。 
 射撃戦”亜鉛”。”錫”の左手に用いられる8ミリ長機銃+200発てのを左右に装備する。背中に大弾倉を背負わないので装弾数は落ちるし発射速度はかなり低いのだが、2丁同時あるいは左右両方で射撃することで便利な場合もある。銃剣装備もあるので格闘も出来る。長機銃は少し重いので、左手には”鉛”用護身8ミリ機銃+100発にして振り回し易くする者も居る。大弾倉を背負わないので少し軽量化で動き易い。
 格闘”亜鉛”。護身用8ミリ機銃100発+銃剣左右装備、背中大弾倉排除でともかく軽くして格闘に特化した機体。あるいは左手に57ミリ単装砲で打撃力を増す場合もある。ただ”亜鉛”の装甲は薄いので、あまり効果的には使えない。あくまでも楯で間合いを詰めて格闘というところが王道。クエスト任務で有効な場合もある。
 砲撃”亜鉛”。57ミリ長砲身榴弾砲を装備した機体。携行弾数12発。すべての”亜鉛”パイロットは”鉛”機体を熟知する。中には”鉛”に特化したパイロットも居て、機銃よりも57ミリ砲を愛用し有効に使う。彼らの為に用意されたのがこの機体で、運動性の良い”亜鉛”に直進性命中精度の高い長砲身砲で直撃を狙う。”鉛”頭部の測距器は無いのが普通であるが、直接照準に向いた”亜鉛”頭部でほとんど問題は無い。左手には楯、もしくは護身用8ミリ機銃+銃剣装備だが、中には57ミリ単装砲を装備してあくまでも榴弾砲にこだわる猛者も居る。ただ幾ら防弾していても榴弾が誘爆する可能性は有る。
 増倉”亜鉛”。標準装備だと背中弾倉は1000発内蔵だが、これに更に500発銃弾を積んだバラ撒き型。さすがに重いので動きが鈍くなるが、”鉛”の護衛と考えれば悪い選択ではない。楯も装備するから重い。
 指揮官”亜鉛”。普通の”亜鉛”と装備は同じだが、部下に同じ目標を指向させる為に、左手に護身用8ミリ機銃+100発を装備しこれに曳光弾を装填して標的を明示する。この機体は左手の方が大事だから、右手はそれぞれ得意の武器を使用する。8ミリ長機銃+1000発大弾倉+銃剣、8ミリ長機銃+200発+銃剣、57ミリ長砲身砲+左手銃剣、が選択肢として有効。指揮官機”青銅”からインジケーターにより直接勝利条件を指示される簡易通信機能を持つ。

 

 ”錫”。これの装備は一種類しかない。右手37ミリ速射砲。この世界で最強の貫通力を持ち全ての機体に有効であるので、エースストライカーとしての役割を期待される。ただし装弾数7発と少なく無駄撃ちは出来ない。ともかく敵将”青銅”を37ミリで捉えなければ、戦争は何時までも終らない。ただこの砲は高価で破損が許されない。砲のみで”銅”と同じ価格がある。だから”錫”パイロットは37ミリ砲をどうしても持ち帰らねばならない。故に格闘戦は禁止である。
 左手は8ミリ長機銃+200発。精度の高い銃であるので、護身のみならず駆逐も可能。高速性能の高い”錫”機体は戦場を駆け巡るが、護身用に高性能機銃は不可欠。装弾数は少ないが十分である。また3発に1発曳光弾が混ざっており、これを利用して味方に支援攻撃を促す事が出来る。
 一応銃剣は装備されており機体の小回りも効くので強いのだが、格闘戦は機体性能よりもパイロットの技量がものを言う世界であるから、わざわざ自分から格闘戦を挑んでくる相手と勝負するべきではない。あくまでも緊急避難用の装備である。
 ”錫”は戦場において決定的な役割を演じる為に、指揮官機”青銅”から直接命令を受ける簡易通信機能を持つ。つまり分隊指揮機と同等である。

 劣化”錫”。37ミリ速射砲が破損して代替が間に合わない場合、13ミリ狙撃銃を装備する事がある。使い方は一緒だが、これでは勝利条件である”青銅”の破壊が出来ない。面白くない。他にも”錫”がある場合はこれで我慢する。
 大劣化”錫”。37ミリ速射砲が破損して代替が間に合わない場合、高速を利して勝利条件である”青銅”に肉薄して直接撃破する為に、57ミリ単装砲を装備する場合がある。まさに捨て身の作戦だが、左手の銃剣で格闘が出来るので得意な者はやってのける。だが”銅”に阻まれるであろう弱い。57ミリ長砲身砲は”錫”には搭載出来ない。
 超劣化”錫”。37ミリ速射砲が破損して代替が間に合わない場合13ミリ狙撃銃を装備するが、これでは勝利条件である”青銅”が破壊出来ない。故に左手の8ミリ長機銃を排して、直接破壊が可能な57ミリ単装砲を装備する場合もある。高速を利して肉薄すれば可能ではあるが、護身が出来ないのでそもそも肉薄は無理だろう。57ミリ砲・13ミリ狙撃銃ともに銃剣は装備出来ないので格闘は不可能。
 激劣化”錫”。あくまでも”錫”の目的は、勝利条件である”青銅”の破壊である。37ミリ速射砲が使えないのであれば、肉薄して57ミリ単装砲を用いて直接破壊するしかないが、途中で”銅”に阻まれるとセカンドチャンスが無い。故に、両手とも57ミリ単装砲にして自殺的に攻撃する手法もあり得る。理論上有るだけで、やってのけるバカは居ないとされるが、バカは何時の世にも存在する。

 

 ”銅”は士族(士民)専用機体。機体全周13ミリ耐弾8ミリ防弾という無敵装甲を誇る。運動性も軽快で出力が高く、最高速度こそ軽い”錫”に譲るが戦場で問題無いレベルである。
 武装は13ミリ機銃+400発を両手に装備。13ミリ弾は下位機体にとっては即死間違い無しの威力であり、”銅”が戦場に躍り込むと、無双状態になる。一応は”亜鉛”の8ミリ防弾楯を貫くと威力が落ちて即死しないこともあるが、まあ逃げるしかない。ただ両手に装備する為に弾薬消費量が多く、弾切れし易い。また13ミリ機銃自体は装甲されておらず8ミリ弾13ミリ狙撃銃弾57ミリ榴弾至近の爆発で破壊され、戦闘力を失う事がある。
 ただし白兵戦闘の機能を持たない。銃剣装備は禁止されており、下位機体の武器も搭載出来ない。つまり13ミリ機銃両手ONLYだ。ちなみに13ミリ狙撃銃と使用弾薬は同じ。”銅”の機銃で単射での狙撃は可能。精度も高い。
 要するに、これが数有れば戦場で圧倒的優位を得られる。それだけに価格も高くてなかなか補充が効かない。戦場で”銅”の数が相手に劣ると、敵”銅”が直接突入してくる場合もある。たいへんだ。
 ”錫”の37ミリ速射砲と57ミリ榴弾砲で確実に屠る事は可能だが、運動性が良い為にそう滅多には当たらない。また乗っている人間が、”錫”パイロットからの持ち上がりだから狙撃に対して十分過ぎる理解が有り、とてもじゃないが裏を欠く事は無理。逆に13ミリ機銃で狙撃されてしまう。
 一番良い対処法は、57ミリ榴弾砲での集中攻撃。これにはさすがに対抗出来ない。
 指揮官機キング”青銅”と直接会話出来る通信機を装備している。士族同士でしか話が出来ないが直接総指揮官に意見を言えるのも士族の特権であり、意思疎通が可能であれば作戦変更に関与して勝利に繋げる事も出来る。

 ”青銅”は唯一購入せずとも神族から支給される機体。これを戦場に持っていかないと戦争ができないのだから当たり前。これを破壊する/破壊されることで戦闘に決着が着く。故にすべての敵の攻撃を誘発してしまう。だがクエスト任務にはこれを必要としない場合もある。
 機体性能は”銅”と同じ。機体全周13ミリ耐弾8ミリ防弾。防御力は十分。運動機能も同等で、格闘戦を挑まれても速やかに退避出来る。
 しかしながら、武器が無い。レーダーを唯一装備しているのだが、代りに腕が無い。逃げるか守られるかしか身を護る方法が無い。だが通信機能と指揮命令機能、レーダー索敵機能を持ち、全”鉛”機体の砲を集中して砲撃させる事が可能。この威力は凄まじく、やはり”青銅”こそが最強ユニットであるのは間違い無い。
 戦力温存の為に、敗色濃厚全滅必至と相成った場合、自爆して戦闘を終らせる事が出来る。支給機体だからコストは総指揮官本人の命だけだ。だがさすがに自爆は難しいので、僚機である”鐡”による破壊を介錯する慣習がある。
 総指揮官=搭乗者は、有性生殖で生まれた士族しか有り得ない。搭乗時にDNAチェックをされるほど、このルールは厳格だ。故に、士族の間で順繰りに籤引きで役を代わっていく。年長者が乗れば戦闘指揮は十分なのだが、敵味方どちらかが必ず死ぬのだから、絶対は有り得ない。戦闘指揮の得意な年長者に頼り過ぎると、後にはひよっこしか残されておらず敗北を積み重ねて滅亡する、というシナリオも在る。

 

 ”鐡”は戦民(兵民)出身者が最後に辿りつく機体。士族に昇格した者で”銅”の操縦に十分習熟した者が使用する。神族の与えたルールでは、”青銅”必ず1機、”鐡”は1機のみ、と決まっている。”青銅”の直援機として機能することを期待される。
 それだけに機体性能も群を抜いて高い。ベースは”銅”なのだが、正面装甲37ミリ防弾、全周13ミリ防弾と装甲は無敵。37ミリ速射砲による攻撃でも後背からでないと貫けない。そして運動性能も非常に高く、他の追随を許さない。これを許す制限として、機体に火器の搭載を禁じられている。白兵戦闘装備のみだが、無敵装甲と運動性能で圧倒的な破壊力を持つ。
 とはいえ1機しかなく、相手も同じモノを持っている。こちらが出せば向こうも”鐡”を出す。使いどころが難しい。しかも場合によっては”青銅”の楯とならざるを得ない。よほど好条件が揃わないと”鐡”の投入は許されないのが戦場の決まり。むしろ下手に投入して双方雑魚下位機の消耗戦に陥ったら、死活問題となってしまう。通常局面での投入は紳士協定で厳重に禁止されている。
 この機体の最終的な目的は勝利ではなく潰滅の予防である。総指揮官の判断ミスで部隊が壊滅状態に陥る前に、勝利条件である”青銅”を破壊することでゲームを終らせる事が出来る。故に”鐡”は本陣に常に居なければならない。また躊躇無く破壊出来るように私情を排して処分できる者でなければならないが、歴史的慣習からこれは総指揮官の身内、戦民出身の士族であることが非常に多い。いや、”鐡”搭乗者が先走った判断で総指揮官を殺してしまわないように、子を親が殺すように仕向けられている。この慣習を知っているから、あえて士族になろうとしない戦民も居る。
 だが、双方同程度の損耗で勝負が着かない時もある。これ以上は消耗戦に突入するが、ゲームは終らせねばならないという時には、”鐡”による一騎討ちで勝負を定める事もある。だから”鐡”パイロットはその基地の最強者でなければならない。

じゅえる「で特殊技能者ってのは、これら各種装備の熟練者ってことだね。」
まゆ子「基本的には、士族に昇格した者が自分の好みや経験から作戦計画に発言して、これこれこういう人間がこの作戦には必要です、と参加する者を定めるのだね。」
釈「ふむふむ。チェスとして考えれば各ユニットの特性がよく設定されていると思います。
 しかし、暗いですね。」

じゅえる「ふむ。暗いかな、設定上は。」
まゆ子「私もそう思ったが、暗いものを明るく描くのが嘘話のプロというものだ。具体的に言うと、人が死なない。」
釈「お?!」
じゅえる「いや、今死ぬ言うたじゃん。」

まゆ子「ちちち! この人たちはみんなクローン人間なんだよ。今日死んだ人間が次の日やあと現れて何の不思議があろうや。」
釈「再生するんですか?」
まゆ子「いや、同じ顔をしている奴は皆同じ性格をしている。死んだ人の代りにそいつを据えると、なんかしら死んだ奴が帰って来たような気がする。」

じゅえる「それは至極いやーなおもしろさだな。」
釈「どう見ても友達なんだけど、喋る言葉は違うんですね。で、ずるずると友達になっていく。」
まゆ子「どうだ! それと、戦傷を負っても再生医療でさくっと修復される。だが彼が居た場所に代わりの奴が入っていて、本人が帰って来ると居場所が無かったりする。」
釈「うむー。」

まゆ子「あと、男女混合ね。ロボットの操縦に男女差は無い。で、男と女がなかよくしてる。セックスもするが別に妊娠しないから意味も無い。で、もちろん美人ばかりだ。」
じゅえる「それは当然だな。」
まゆ子「だが全員兇悪犯罪者遺伝子だ。」
釈「うう。それはやだ。」

まゆ子「あと、支給される物資には女物衣料とか化粧品とか玩具なんかも有る。酒も有る。それらは直接に配給だけでなく、クエストによって支給されたりする。勝敗関係無く定員何名様まで、とか。」
じゅえる「お。それは配給所にまで辿りつけなければ得られないんだね。」
釈「おお、それはなかなか面白く書けます。」
まゆ子「ドラゴンとかも出る。ドラゴン退治は現金支給。直接神族から装備を買える。」
じゅえる「なるほど、暗くても明るく描くことは可能ってこったな。」

 

まゆ子「まとめます。

・神族・士族・戦民、という呼称は没。”遊戯者”・”士族”・”兵民”とします。

・おんなのこはエロくて病んでます。肉食系。

・食糧はまずい。チョコ最強で通貨の代わりにもなっている。

・緑が生えてないわけでもない。野菜は菜園で作っているけど、へんな草。

・ドームの外はフロギストン大気が充満していて生命は生きられない。でもピクニックに行く。敢行する。

・ドームの外はフロギストン大気が充満していて生命は生きられない。でも変な生物が居る。タコですか火星人ですか?

・どーむの外はフロギストン大気が充満していて生命は生きられない。でもドームは目張りしてなくてすかすかです。有色のガスだから団扇で掃き出します。

・どーむの外にはフロギストン大気が充満していて生命は生きられない。オーガと呼ばれるロボットで装備回収作業を行っているが、どう見ても戦闘ロボットより出来がいい。

・ドームの外にはフロギストン大気が充満していて生命は生きられない。でもロボットから飛び出した負傷者は案外と生還する。

・他のドームにも人が住んでいる。仲が悪いということもないが、カネにはうるさい。

 

*************

まゆ子「あ、設定増補分。

 フロギストン・モーターです。これらチェスの駒、ポーンはフロギストン・モーターというもので動いています。フロギストンとは、この惑星の大気中に含まれる可燃腐食性気体。ただし燃えない。地上には既に燃えるモノが無く、燃やす為の酸素も無いし低温で発火しない。つまり、気候は安定しています。
 人間がこの中に入ると、酸欠で死にます。死ねば腐食されて分解されますが、まあ適切な防護服を着て居れば大丈夫。問題は空気、酸素の供給です。これを行うのが、フロギストン・モーター。

 フロギストン大気はフロギストン(燃素)が70%くらい、ついでフロギストンの燃えかすの二酸化炭素、で窒素と酸素、水蒸気とかです。酸素の比率は2%ほど、燃えないし呼吸出来ません。
 しかしながら、フロギストン大気をコンプレッサーで圧縮し冷却すると、フロギストンが液化し二酸化炭素がドライアイスになります。で最終的には、窒素7割酸素2割くらいの呼吸可能な空気になります。まだ酸素量が少ないからコンプレッサーを回して気圧を高めて酸素分圧を増加させます。
 ではコンプレッサーをなにで動かすか、動力源がフロギストン・モーターです。呼吸可能な酸素分圧の空気であれば、フロギストンは当然良く燃えます。空気とフロギストン大気を混合すると爆発的に燃えて動力となります。これでモーターを動かして発電しコンプレッサーを動かす。呼吸可能な空気がどんどん半永久的に供給されるわけです。一人がただ呼吸する分ならばカセットレコーダーくらいのちいさな機械で十分賄えます。だから、防護服にはちゃんと装備されている。酸素と電気と熱を供給してくれる魔法の箱です。冷却器が対応していれば、水も出て来る。

 さて、燃えると排気ガスが出る。酸素はすでに燃焼し尽くしてもう燃えないけれど非常な高温で、排気ガス中に先ほど得た液体フロギストンを噴霧すると再度気化して膨脹し強力な推進力を生み出します。高温排気ガスの方が噴射速度は早いんだけど、フロギストン蒸気にすると推力がぐぐっと上がります。あまり早く飛ばない物体であれば、これで上等過ぎる推力です。
 これが、機体が半浮上走行する原理。つまり燃料も酸化剤も持たなくてもいつまででも飛んで居られる魔法の機械の出来上がりです。

じゅえる「おもしろいな。」
釈「物理的にそんな気体有るんでしょうか?」
まゆ子「知らん。メタン大気ならそんな感じかもしれん。」

じゅえる「高速で空を飛ぶのは無理なの?」
まゆ子「出来るけど、ジェットエンジンになるから高温に耐える素材が必要で、神族は供給してくれない。作れるけれど、彼ら人間は作り方を知らない。」
釈「ふむ、自分達の科学力ではないんですね。」

まゆ子「だが重たいものを運ぶ事は出来る。フロギストン・モーターは燃料もなんも供給しなくてもいいから、モーターを一杯くっつければどんどん推力は上がる。飛行可能重量の限度は無い。」
じゅえる「つまりは分担して推力分までは受け持つから、合計質量はどんどん追加できるわけね。トラックに最適だね。」
釈「フロギストントラックがあるわけです。というか、巨大な貨物船みたいなものですかね。」

まゆ子「街だって空を飛ぶ。飛びたくないけど、まあそんなとこだ。」

************

まゆ子「さて、いよいよ負けが込んで破産に追い込まれると、基地は廃棄されます。つまり住んでいた人間を追い払って、一からやり直し。特に経営と戦闘指揮に不足が有った士族は追放されて、別の基地から士族を呼んで来て新しくやり直しさせます。その際、戦闘員である”亜鉛””錫”乗員は人ごとに判断して採用されたりします。
 それ以外の基地の本来の住民は改造されてオーガになり、フロギストン大気中での破損装備回収用途に各基地に配属されます。こうなるともう人間じゃない。話しも出来ないし意志も無い。ただ命じられるままに動くロボットと変らない。
 ちなみにオーガの食糧は別口で神族から供与されるけれど、なんかプラスチックみたいな膠みたいなもので人間には食べられない。栄養値も低いらしく、のろのろと動く。」

じゅえる「それはやだ。」
釈「いやですね。でも追放された士族ってのは、どうなるのです?」

まゆ子「フロギストン大気中を極地装備でうろつくだけですよ。食糧はどうにかするらしいけれど。」
じゅえる「謎食糧てのの供給先が有るんだ。やっぱ。」
まゆ子「まあ、ある。」
釈「それが物語に隠された謎ですよ。主人公が追求すべきクエストです。」

じゅえる「しかし破産か。そいう事もあるんだね。」
釈「じゃあ結構余所の街から来た人も居るってことですか。」
まゆ子「あー、そこんとこは少し設定を考えよう。外部人の扱いは別格で、金髪碧眼の人が来て吃驚する、とかでもいいな。」

釈「商人ですよ。機体の相互購入の為に交渉に来るんです。」
じゅえる「このポーンの値段ってどんなもん? この世界は貨幣や通貨ってあるの?」
まゆ子「食糧です。さらには、食糧供給クーポンの融通が効きます。世界共通通貨になりますが、基地内部では配給制だから使ってない。」
じゅえる「ふむ。」

釈「食糧だけでなく、衣料やら家具やらも必要ですから。勉強とかもしますか。」
まゆ子「するよ。戦闘員は皆学校に行ってるよ。バカは役に立たないのだ。」
じゅえる「結構虚しい勉強だな。」

釈「でも、バカには高価な機体の貴重さが分からないでしょう。というか、高価なんですよね?」
まゆ子「高価だよお。人の命と引き換えにするほどの戦力だ。カネに糸目は付けられない。」

じゅえる「日本円にして幾ら?」

まゆ子「ちょっとまて、えーとただ生きる分ならば年間1人200万円もあれば上等かな?」
釈「家賃とか掛からないのであれば、100万円くらいでしょうかね。」
じゅえる「思いっきり貧乏でよければね。」

まゆ子「この人達が住んでるのは、フロギストン大気中に存在しクローン人間も製造する閉鎖都市です。運営費は当然獲得分から支払わないと。」
じゅえる「そっか、じゃあ食費自体は少なくて家賃も只だとしても、実はごっそり生存費用が掛かってるな。食費なら50万円あれば上等だけど、その3倍は普通に掛るでしょ。」
釈「機体のメンテナンス費用ってのも掛りますよ。」

まゆ子「では200万円として、”鉛”は食糧100人1ヶ月分です。」
釈「1月16万円として、1600万円。ふーむ、装甲機動車くらいですか。結構まともな値段ですね。」

じゅえる「なるほど、兵器であれば致し方ないな。あだやおろそかには使えない値段だ。」
まゆ子「ほんと、結構な値段だな。であればそれなりにハイテク兵器と考えるべきだろうかね。」
じゅえる「空を飛ぶんだから、まあそうかな。ドラム缶に花火括りつけたてわけじゃないんだ。うん。」
釈「一応は装甲を持ち半浮上飛行するロボットですから。」

じゅえる「半浮上飛行ってのは、高さ何メートルくらい飛べるの? 崖越えとかするでしょ。」
まゆ子「いや、上がるだけなら結構上がるよ。200メートルくらいでも。ただ全力運転だと流石にモーターが保たん。通常巡行運転ならば地面効果を利用して浮上するだけだ。」
じゅえる「地面効果ってのは、そんなに効くんだ。」
まゆ子「まあ、吹き返しと考えて下さいな。噴射したガスが機体に戻って来るのを受け止めて、浮く。だからそんなには上がらない。30センチくらいだ。」
釈「そのくらい浮けば上等です。」

じゅえる「で、他の機体はこの換算だと、どうなる。」
まゆ子「”亜鉛”は100人1年分=”鉛”12機だな。”金額に直すと、2億か。戦車並だな。錫”は1000人1年分=”亜鉛”10機=”鉛”120機=20億円か。」

釈「ちょっとした戦闘機ですね。」
じゅえる「わかった。じゃあ戦闘機並の貴重さと考えよう。ふーむ、エリア88だな。気分は。」

まゆ子「うーむ、20億円の機体に37ミリ砲とは、ちと貧弱すぎるな。分かった。では武器の威力は地球の実弾兵器よりも隔絶して高いことにする。当然装甲もそれなりに凄い。」

じゅえる「8ミリ弾って、貧弱でしょうやっぱ。」
まゆ子「まあ、さすがに20億円のジェット戦闘機には通じないわな。よし分かった。口径は8ミリだが、砲初速がむやみと早く、当たったら弾丸のエネルギーを効率良く伝える特殊な構造になっている事にしよう。8ミリ銃でも地球20世紀レベルだと、20ミリ相当の威力があることにする。」

釈「しゃあ、2倍以上の威力ですか。」
まゆ子「ちょっと待て釈ちゃん。銃弾直径が倍になれば、断面積4倍、体積8倍だぞ。威力は8倍になる。」
じゅえる「銃弾鉛製じゃないでしょ。重量は同じなの。」
まゆ子「あー、ここも倍にしておこう。鉛弾の倍の重量があるセラミック製だ。つまり口径2倍なのに威力は16倍になる。」
じゅえる「いや20ミリは2.5倍だし。えーと2.5の3乗=15.6倍か。砲弾重量2倍なら、31.2倍になる。」
まゆ子「エネルギーは速度の2乗に比例するから、面倒くさいから16倍として砲初速4倍もある高速弾ってことだ。今の車載銃は秒速1キロ程度として、秒速4キロの銃弾という超兵器を登載しているわけだ。」

じゅえる「戦車、貫通する?」
まゆ子「90式戦車の装甲でもダメだろう。エネルギー的には防げるはずなんだが、装甲貫徹原理が違うからすぽっと抜けてしまうのだ。」
釈「まさしく超兵器です。」

 

じゅえる「えーと、30回戦闘して平均すると年間500機撃破される。”鉛”375、”亜鉛”100、”錫”25ってとこが損失であり、当然補充される。じゃあ一回あたりの勝利の報酬はどんなもんだ?」
釈「そうですね。戦闘の勝利の結果として、機体購入代金も供与されるわけでしょう。どうなんです?」

まゆ子「あー、概算で考えるとだね。”鉛”1機=100人1ヶ月分の食糧、”亜鉛”1機=100人1年分の食糧、”錫”1機=1000人1年分の食糧だからあ。ちなみに”銅”1機=1000人2年分ってとこかな。”錫”機は本体より搭載火器の方が値段が高いんだ。”鐡”は10000人1年分ってか。」
釈「”鉛”がいかに安物か、よーく理解しました。」

じゅえる「となると、年間で必要な食糧は、”鉛”3100人分+”亜鉛”10000人分+”錫”25000人分+ほんとに食べる量15000人分=53100人分、か。」
まゆ子「年に3機くらいは”銅”もやられるぞ。10回に1回くらいだな。だから6万人分だな。年間予算1200億円だ。」
じゅえる「年間30回勝率5割でー15回。一回あたりに得られるのが80億円。4000人一年分だ。
釈「”鉛”だけだと480機、買えますね。」

じゅえる「これだけ価格差があれば、”鉛”だけで済まそうとか考えるところも出て来るでしょ。」
まゆ子「まあ、そうだね。しかし機体ごとの価格差は必要によって決められているのだから、配備数に偏りがあればやっぱ勝率下がるぞ。」
釈「”錫”がいかに高価かは、よく理解しました。つまりは主人公機であるところの”錫”を買う為に戦っているようなものです。」

まゆ子「高い割には脆弱なんだ。耐弾性能は下位機はどんぐりの背競べだから。つまりだね、37ミリ砲さいきょーってことで”錫”機を揃えても、13ミリ搭載”銅”に狙われてはいたずらに損失を増やすだけなんだ。そのくらいなら”鉛”で牽制しておいた方が得。要は用兵の妙によるのだ。」
じゅえる「チェスだからねえ。」

釈「あ、逆に高価な機体を護る為に”鉛”を捨て石にするという作戦はどうです? これならコストパフォーマンス的に十分ではないでしょうか。」
じゅえる「兵員の補充はどうなってるの? 減った分は確実に補充される?」
まゆ子「春年度始めに500名、半期で減員分を最大250半数までを補充されるけれど、戦死と再起不能分合せるとトントンだね。しかも10歳児で供給されるから、すぐ使えるわけじゃない。兵士だって貴重な資源だよ。」

じゅえる「機体が安いからと”鉛”を捨て石に使っていたら、乗る人間が居なくなるわけか。」
釈「破壊力的には”鉛”は十分な火力を持っていますから、撃ち負けないように温存しなくちゃいけないんですね。」
まゆ子「ダメージは少なく、成果は多く。鉄則です。」

 

まゆ子「さて、ポーン(仮称)は超兵器を積んでいる事となった。砲初速が現在の4倍も早い超高速弾だ。それに対抗できる装甲を持つのだから、57ミリ榴弾砲もそれなりの威力を持つ超兵器となる。」
じゅえる「論理的だね。」
まゆ子「とはいえ、秒速4キロの銃砲弾となると、平射で真っ直ぐ撃つとして、物凄い会敵距離になってしまう。4キロ5キロは当たり前だな。」
釈「今の戦車は1キロ程度ですかね、戦車砲で。」
まゆ子「戦車砲は初速早いから、曲射弾道でぶっぱなすと4〜10キロ届くよ。まあ徹甲弾は1キロ半くらいの使用を想定していて、それ以上だと効果が無くなるんだ。」

じゅえる「榴弾砲の射程は?」
まゆ子「57ミリ短砲身榴弾砲でも、4〜6キロは普通に届くよ。」
釈「それ以上離れると、相手が見えないでしょう。」
まゆ子「違いない。索敵機で上空から監視しとかないと、見えないし当たらないな。」
じゅえる「”青銅”の砲撃管制能力ってのが、やっと分かった。そりゃ凄い能力だ。」

釈「57ミリ砲は超兵器では無いんですか? これも超初速にすれば、凄いものになると思いますが。」
まゆ子「100キロ飛んでも仕方ない。」
じゅえる「榴弾砲は飛んでく砲弾が超兵器であって、飛ばす方はどうでもいいんだよ。」

まゆ子「しかし困ったな。それほど強力な装甲を持つのであれば、至近弾なんかじゃ効かないぞ。原爆でもないと。」
じゅえる「それは困ったな。」
まゆ子「一応弾殻はセラミックで、爆圧で砲弾の欠け片をバラ撒くわけだが、バラ撒くものがちゃんとしている榴散弾にするか。」
釈「なんか違いますか。」

まゆ子「あーつまり、榴散弾は弾殻が粉みじんに割れるのではなく、小っちゃい鉄球とかごっそり入ってる。よござんす。では57ミリ榴弾砲の砲弾は、8ミリ銃弾と同等のセラミック弾が沢山入っていて、目標上空で超炸薬で高速でバラ撒かれることにする。高度200メートルくらいから前方直径10数メートルの範囲にどかんと発射する。」
じゅえる「そりゃ超兵器なのかい?」
まゆ子「あー秒速4キロの銃弾を浴びても大丈夫な装甲を貫くのであれば、超兵器と呼んでも差支えないが、それだと”銅””鐡”の装甲に対応できないか。直撃すれば効果有りって風にもし難いな。」

釈「超高温の弾丸が飛び出すことにしてはどうでしょうか。装甲板をバターみたいに貫くという。」
じゅえる「超兵器だな。」
まゆ子「たしかに超兵器だ。よし、爆圧で超高速ではなく、超高温セラミック弾子が飛び出すてことにする。ただし、前方ではなく全周にね。」
じゅえる「やはり普通の榴弾みたいな感じの方が使い易いかな。」
まゆ子「普通の人は榴散弾知らないもん。まあ、最近の対戦車兵器には、そんな感じで空中で爆発するの有るらしいけどね。」

じゅえる「ちょっと待った。そうね、金属が腐食されるってのはまだ有効に活用されてない設定だね。」
まゆ子「金属製品は戦場では使えないもん。もし鉄釘でも放り込めば、フロギストンに瞬時に酸化されて、」
釈「燃えますか?」
まゆ子「爆発的に。」

じゅえる「よし分かった。流体金属爆弾だ。液体金属が飛び散って爆発的にフロギストンと反応するのだ。」
釈「おお、なんだか良くわからないけれど、超兵器らしい設定です。」
まゆ子「そんな派手に爆発はしないと思うけど、その設定乗った。液体金属が酸化して超高温蒸気となって機体に強烈な衝撃を与えるんだ。」
じゅえる「これなら”鉛”が登載する砲弾も爆発しやすいでしょ。」
まゆ子「なるほど。たしかに通常の炸薬なら、一発くらったくらいじゃ爆発しないもんね。よし決まり。」
釈「流体金属爆弾です。」

まゆ子「爆薬によって四散する液体金属が球状で膨脹するその表面においてフロギストンと反応して、爆発中心部と同じ高温を均等に保ちながら膨脹し、あたかも高温高圧のシャボン玉みたいになって対象物に衝突して、衝撃波で粉砕するという素敵爆弾だ。膨脹半径10メートル、反応終了後はただの爆発となって50メートル半径を焼き尽くす。」
じゅえる「これで直撃でも近接でも効果抜群の素敵爆弾の出来上がり!」

釈「しかし、50メートル半径ってちと派手過ぎやしませんかね。」
まゆ子「200キロ爆弾と同じくらいの威力かな。ちなみに57ミリ榴弾の炸薬量は2キロ半ってとこだ。」
じゅえる「でも相対距離4キロとかだと、このくらいないとキツいよ。」

まゆ子「そうなんだ。超高速弾を用いるとなると、戦闘時の彼我の距離は4キロくらいになってしまう。参加機数100ずつだと、戦場すっかすかだよ。」
釈「密集隊形とか取りたいですよね。」
じゅえる「密集でないと楯の意味無いじゃん。」
まゆ子「いや狙撃銃とかあるから、密集はちゃんと意味があるんだけど、どうしようか距離が大き過ぎる。」
じゅえる「そうは言っても、機械化後の戦闘で密集隊形なんて意味無いじゃん。」
釈「固まってると、それこそ爆弾でやられてしまいますからねえ。」

まゆ子「うー、しゃあない。ではこういうことで。フロギストン大気中では視界が至極悪い。」
釈「お。」
じゅえる「めちゃくちゃべたな設定で来たね。ミノフスキ粒子説だ。」
まゆ子「そもそも使ってる機体が視界悪い上に通信機無いんだ。密集しとかないと僚機の動きやら隊長の指示が見えん。だから、見える範囲内で固まっている。」
釈「まあ、無難ですかねえ。」

じゅえる「そもそも、超高初速の弾丸なんて言い出した奴は誰だ。そんなもん使わんでも銃弾の威力を増せるでしょうに。」
まゆ子「うう、自分だって乗り気だったくせに。じゃあ、超高速弾無しでいくかい。」
釈「待って下さい、私にいい考えがあります。最初の比較の対象が間違いなのです。そもそもライフル銃だって秒速1キロ出すのは最近の銃です。旧いのはもっと遅いのです。」
まゆ子「まあね。」

釈「ということで、比較対象となるべき現代の銃弾を、ただの拳銃弾にすれば全て解決!」

じゅえる「…、いいのまゆちゃん?」
まゆ子「秒速500メートルとかの銃弾で4倍とするわけですかい。そりゃ秒速2キロでも十分な威力ではありますがね。」
釈「決定です!」

まゆ子「とほほ、20億円の”錫”機はどうなるのだよ。」
釈「それも解決済みです。先進国日本を引き合いに出すからおかしいのです。これを発展途上国レベルにして食料品は安いというシステムを導入します。1人年間20万円でOK!」
じゅえる「”錫”機1機2億円、運営年間予算120億円だ。…、ずいぶんとせこくなるぞ。」
釈「あーそうですね、つまりこれは、日本人の読者様に価値基準を理解していただく為の方便であり、この物語の登場人物の視点では、”錫”機は20億円の戦闘機並の高級ロボットだとご理解ください。戦前の戦車戦艦戦闘機の値段を今聞いてもぴんとこないのとおなじです。」

じゅえる「でも今の戦闘機って100億オーバーでしょう、普通。」
まゆ子「電子装備が高いんだよ。あとミサイルもぶっ放す前にレーダーと連動しているから、データ入力するのにちゃんとしたコンピュータ積んでないとダメだし。それらを外してレーダーも外して、ドンガラだけの飛ぶしか脳の無い戦闘機であれば、20億円ってとこだね。でもステルス機になると機体そのものもかなりの値段になるはず。」
釈「超音速で飛べて、機関砲が付いてるだけですか。」
じゅえる「ゴミみたいな戦闘機だな」
まゆ子「そんなものでも欲しがる国は多いぞ。爆弾落としたり、旧式のサイドワインダー使えるくらいで上等ってとこがある。というか、フィリピンではそんなものでも高くて買えないのだ。」

じゅえる「つまり、”錫”機は発展途上国の戦闘機並の貴重な兵器であるわけだ。」
まゆ子「あーまあ、そんなとこでいいか。戦争で決定的な役割を演じるんだから、そんな感触で上等。パイロットはエースとして住民皆から崇められるってとこでも、そうかな。

 でもやっぱり8ミリ長機銃は現代20ミリ弾と同じ威力、って比較は捨てがたい。」
釈「分かりました。ではセラミック重量弾は鉛弾の3倍の重さがあるのに倍の速度で飛ぶのです。しかも衝突の際に装甲内で粉砕してエネルギーを内部にぶちまける特殊弾。威力はあるけど貫通力はそれほど強くない、ってとこで。」
じゅえる「そんなもんか。じゃあ57ミリ榴弾も超兵器でなくていいか。」
釈「流体金属爆弾は捨てがたい設定です。直撃効果は流体金属で、周辺への被害はセラミック弾をバラ撒くってことにしましょう。」

 

まゆ子「うう、まとめです。

・戦場では両軍共に最大100機のロボットを投入。神族(遊戯者)審判により厳密に規定されます。勝ち過ぎるとバランス調整の為に機数制限を受けたりもあります。

・8ミリ長機銃弾の威力は現代20ミリ機関砲弾と同じくらい。セラミック重量弾で威力倍増ですが、打撃力重視で貫通力はさほどでもありません。抉り取る威力です。

・8ミリ普通機銃の威力は長機銃よりちと落ちます。初速が低い。現代12.7ミリ銃弾くらいです。また命中精度落ちます。

・57ミリ榴弾砲の射程距離は4キロ程度、それ以上は見えません。効果範囲は半径15メートル、破片威力は現代12.7ミリ弾くらいはあり装甲をごっそり抉り取ります。効きます。

・37ミリ速射砲弾の威力は現代105ミリ戦車砲に相当します。13ミリ機銃・狙撃銃弾は現代30ミリ相当。貫通力重視です。

・戦場の視界は最悪。僚機の見える範囲で密集しています。敵味方識別は標識灯による。これは審判が設定して両軍に割り振るので偽装できません。

・機体の装甲はセラミックとガラス繊維。被弾するとごそっと削り取られます。ただし13ミリ、37ミリ砲は貫通重視でパイロットを直撃します。

・筒型の胴体内部には、やはり筒型ガラス瓶状のコクピットが入ってます。機体外装がぎゅっと上に持ち上がり、ガラス瓶が露出して搭乗します。

 

***********************

じゅえる「そりゃそうと、年間500人+αのクローン人間が供給されて、で最終的には何人生き残るの?」
釈「そうですねえ、人口構成が気になります。」

まゆ子「あー、そこはシミュレーションしないといけないんだけど、適当でいいかな?」
じゅえる「まあ、突き詰めれば適当なところで頓挫するでしょう。さっきみたいに。」
釈「あの現象は、『20ミリの呪い』と名付けましょう。」

まゆ子「あー、4月年度始めに500人配属されます。何故4月かといえば、日本人の遺伝子主体でこの基地は作られているから。で、9月に計画外損失を最大半数250名まで補充されます。全員10才児で、12才に初陣です。つまり同期はだいたい500〜600人。

1年め(12才)500人→10年め(22才)50人、てことにしましょう。22才で中級スタッフ資格獲得で、戦場に出る必要は必ずしも無くなります。」
じゅえる「つまり引退していいわけだ。」
まゆ子「基本的にはそう。ただし、人数が足りないと無理やり動員される可能性が20年め(32才)まで有る。ここでほんとうにおしまい。」

釈「10年めで50人1/10が生き残るわけです。で、”錫”機やら分隊長小隊長になる為に戦場に残留するのは、」
まゆ子「50人中10人、てとこにするか。ただしその内に気が変わって出入りするとして、50人中20人が戦場で最後まで戦う。
 最終的には、その20人中で2、3人が完走して引退する。士族になる。」

じゅえる「ほとんど鮭の子供みたくなってきたな。」
釈「500人中で上級スタッフやら士族になるのが、2、3人。なるほど。」
まゆ子「つまり20人中17人は死ぬ。」
釈「つまり、50人中32、3人が生き残るわけです。」

じゅえる「問題は”鉛”から”亜鉛”に乗り換える、下級スタッフ資格取得時だ。何人生きて、何人脱落するかだね。」
まゆ子「500人中200生き残る、ってので、どうだ。これには脱落、負傷再起不能も含めて200人が生き残る。」
釈「では”亜鉛”パイロットとしては、150くらい?」
まゆ子「そんなとこで手を打とう。つまり300人戦死、50人脱落だ。」

じゅえる「”亜鉛”機パイロットが22才時にまで生き残るのが、50人。1/3だから、100人死ぬ?」
まゆ子「うーんそうだねえ、じゃあ22才時生存50人は、脱落も入れてそうするか。」
釈「そうですねえ。戦場を忌避する事が不可能なシステムを設定しておきましょう。ペナルティがあってどうしても戦場に出なくてはならないのです。」

まゆ子「じゃ、100人死ぬ。”鉛”300、”亜鉛”100戦死。脱落70人てとこね。」
じゅえる「下級スタッフ生存が20名ってとこね。」
釈「中級スタッフ資格獲得30名。中級スタッフで留まるのが10名。最終解脱者は2、3名。」
じゅえる「最終生存者は、82、3名だ。負傷等でリタイアがこの50とするね。」
まゆ子「精神的な障害ってのもあるから、50でいいよ。」

じぇえる「全死亡者数は420名くらい。500にちと足りない。」
釈「そこんところが増員ですよ。年により波があり、大体平均500名死ぬ。増員は80名ですか。」
じゅえる「つまり補充100人配属、生存16%であるから死亡84人、脱落14、中級スタッフ到達2名、ってとこね。」

まゆ子「要するに、年間600人配属、最終生存者100名。中級スタッフ12、最終解脱2、3人、てとこね。」

*******

釈「せんぱい! わたくしとんでもないミスに気がつきました。年間600人供給だと、20年で12000人にしかなりません。」
じゅえる「あ。」
まゆ子「わ。」
釈「これは変ですよね。」
じゅえる「とんでもないミスだと思うぞ、それ。」

釈「まだあります。年間戦闘回数30回だとします。一回の戦闘に動員される機数は100機。この内”鉛”が最大で半数50機です。」
まゆ子「うんそういう設定。」
釈「戦闘員は12才初陣5年間”鉛”機搭乗後、”亜鉛”に昇格です。つまり5年制です。」
じゅえる「そうだね。」
釈「ということは、50機の”鉛”に1〜5年生がほぼ均等に乗っているのです。素人ばかりじゃ勝てないし、年長者ばかりだと経験が積めません。均等に分割して1学年10人が出撃と考えます。」
じゅえる「ふーむ、問題ないと思うけど、まゆちゃん?」
まゆ子「まあ、問題ないね。」

釈「てことは、1戦闘に出撃する人数は10人。1年間に出撃するのは、30回で300人。500人の内200人が未経験で終ります。」
まゆ子「あ。」
じゅえる「あ。」
釈「修羅のごとき犠牲の嵐、と呼ぶにはあまりにも貧弱かつ穏便。だがまだあります。
 1戦闘で”鉛”15機が撃破されると惨敗、って設定です。全体の2割が撃破されると、後は蹂躙されるまま、総指揮官ハラキリものです。」
じゅえる「うん、そう書いた。」

釈「勝ち戦もあるから、平均10機が1戦闘で撃破されると考えます。これを5学年で割りますと、1戦闘で2機、2名戦死です。」
まゆ子「うん。なるほどそうなるか。」
釈「30回戦闘で、年間1学年で60名が戦死します。”鉛”機の撃破率は学年ごとにさほど変らない、運によるものと仮定します。どの学年でも年間60名死にます。」
じゅえる「ふむふむ。」
釈「1年500→440名、2年→380名、3年→320名、4年→260名、5年→200名残留します。」
まゆ子「なるほど、500→200ってのは、計画どおりだね。」
じゅえる「問題ないね。」

釈「しかしながら、これ100名の増補分は含みません。そして、増補分が出撃する機会が100機の枠からひねり出せません。」
じゅえる「え、そうなるの?」
まゆ子「いや、えーと、出撃は順番としてちゃんと回って来るけれど、」
釈「はい、ちゃんと出撃回数は平等に与えられるとします。が、戦死数はこれ以上は上がらないのです。つまり5年間で600→200+100生き残ります。」
じゅえる「いやちょっと待て、なんかおかしい。」
まゆ子「つまり、最終学年に到っても300名が残留するんだな?」

釈「ということは、最終学年のベテラン5年目であっても、年間出撃回数は1回が精々、ひょっとするとあぶれる人も発生します。」
じゅえる「がーん。」
まゆ子「がーん、ちっとも修羅じゃない。するってえとなにかい、600人配属であるから、初年度2年度でやっと全員出撃が終了するわけだ。」
釈「おそらくは、5年間で出撃は4回が精々、多い人が5回ってことになるのでは。」

じゅえる「だがそれでも半数は死ぬ。修羅には違いないがー、どうなんだろまゆちゃん。」
まゆ子「それはひょっとすると、かなり間の抜けた地獄ではないだろうか。ぜんぜん緊張感が無い。いや、出撃拒否1回すると、生き残る確率が劇的に高まるなそれ。」
釈「これでよいでしょうか、出撃回数は?」

じゅえる「どうするまゆちゃん?」
まゆ子「いや、それはかなり面白い。いや物凄く面白い。この勘定で20年間に基地全体に滞留する人員数を割り出して、なんとかして15,000人に仕立てるぞ。」
釈「ちなみに1〜5年生までで総生存数は、年頭で1900+500=2400名、年末で1600+500=2100名です。」

じゅえる「こりゃあ、ひょっとすると、一つの基地内に5つほどチーム作らないとダメかもしれない。」
まゆ子「うーん、だがそれは、機体配備数も5倍に増加する事を意味するのではないだろうか。同一機体を順繰りに使うとしたら、おそらくは5年に1回戦闘の機会が巡ってくる、とかになっちゃうぞ。」

じゅえる「年間30回の戦闘で事足りる、ってのがおかしいのかもしれない。100回は必要だろうか。」
まゆ子「しかし、そうなると機体撃破数は年間1500機くらいになるぞ。平均15機くらい撃破されると計算して。」
じゅえる「100機出撃の内15機が撃破されて決着がつく、というのは出血量としては十分だ。しかし戦闘回数を3倍に増やして撃破数は変らないと考えると、100中5機撃破で撤退しなくちゃいけなくなる。かなりアホだよ。」
まゆ子「100中15〜20機の撃破を被ったくらいで、勝ち負けを検討するべきだろう。常識的に考えて。」

釈「これはやはり、機体が撃破されても再利用可能である、とした方がいいかもしれません。撃破は乗員の死を以って勘定し、後で機体を回収すればちゃと修理可能で使えるということで。」
じゅえる「よしわかった。じゃあこういう設定だ。機体は装甲ぺらぺらで、特に乗員が乗る部分はすっからかん。だが機構部はがっちり作ってあり数度の被弾にも耐えられる。戦場での撃破は乗員の死を以って判定され、完全撃破でスクラップになるまで平均5回以上のリストアが可能な頑強性を誇る、ってことにする。」

まゆ子「うーむ、必然的にそうなるか。だがそうなると、年間クローン配属数は3000人にもなるぞ。ちと多過ぎるだろう。」
釈「たしかに、500名くらいがちょうどよいのかもしれません。ドラマ的に。」

まゆ子「となると、死なない、戦闘任務外のクローンも存在しなければならんのだが、それを入れると平等に戦死の運命を持つことで醸し出される緊張感が発生しません。」
じゅえる「となればだ、基地の定員を減らすしかない。」

まゆ子「”鉛”が5学年で2400→2100名であれば、”亜鉛”は5学年で総数1000名ってとこだろう。」
釈「えーと、”亜鉛”機は1回の出撃に40機が動員されます。戦死数は1戦闘当たり3機撃破ですかね。」
じゅえる「”亜鉛”搭乗者は初年度300名が生き残って昇格している。これまた5学年で平等に戦死が振り分けられると仮定する。運と技量、それに基づく任務の困難度から、ほぼ均等に危険が振り分けられるとするよ。いいね。」
まゆ子「”錫”機は20才くらいで選別されるんだけど、この際無視する。数が少ないから調整が効くだろう」

釈「では5学年で割って、1回の出撃に1学年で8名が出撃、3を5で割るのはちと問題がありますので、3回の出撃で9名くらい死亡、下級生に死亡が多いということにして、5で割って2人死ぬって事にします。」
じゅえる「めんどくさいから、3回で10名死ぬでいいよ。」
釈「年間戦闘回数30回、1学年で20名死にます。この比率で5年間推移するとして、
 1年め300→280、2年め→260、3年め→240、4年め→220、5年め→200で終了です。”亜鉛”乗り総数は1300→1200です。」

まゆ子「死なねえ。」
じゅえる「死なないねえ。」
釈「200→50の計算だったのに、残念ですねえ。」
まゆ子「だが分かった。”亜鉛”乗りは死なないんだ。それに、8×30=240名出撃で、1年ごとにあぶれる奴がやはり出る。死なない奴は死なないんだ。やはり。」
じゅえる「しかし、この比率じゃあ10年生きて10回しか出撃しない事になりますか。さあどうしよう。」

釈「人道的です!」
じゅえる「まったくそのとおり!」
まゆ子「とほほ。そうだなあ。」

釈「その上も勘定してみましょうか。初年度200名、引退まで10年あります。全員が戦闘に参加するとして、死亡数は?」
じゅえる「分隊長、小隊長、”錫”機パイロットは計何名出撃する? というか、”亜鉛”の人数に含まれてるわけだが。」
まゆ子「”亜鉛”はますます死なないな。”錫”が5機出撃するから、指揮官も5名ということで、”亜鉛”2、”鉛”2、総合1の隊長が居ることにする。ええいこの際だから、士族の機体は100の数の外にしよう。5機プラスで、総数105機出撃だ。」
じゅえる「泥縄だなあ。」

釈「隊長達の戦死数はどうします。1戦闘あたり?」
まゆ子「”錫”+”隊長”機で、1だ。年間30名戦死。つまり10年制だから、1学年あたりの1回の出撃数は1。年間3名戦死。」
じゅえる「ぜんぜん戦争しやがらねえな。のほほんとしてても上等ってことになる。
釈「200→【10年】→170です。総数は1865→1835です。」

じゅえる「つまり”鉛”+”亜鉛”+”錫”で、5565→5135ですか。全人口は。」
まゆ子「まだあるぞ。最終的に生き残った170名の平均寿命は50才。さらに20年生きる。死亡率は平均寿命には含まれているから、単純に3400名がそんざい・・・。」

釈「計8500名。半数ですね。」
じゅえる「増補分100名を抜いて、2組にするか。」
まゆ子「あー、単純に100ずつ抜いても良さそうだな。40年分4000名を引いて、4500名。2組で、9000名。アレ?」

釈「2組で17000ですが、士族に昇進する人が居ますから、これでよいのではないでしょうか。」
まゆ子「1学年で170名も生き残るのならば、10名が士族になるとしてもいいでしょう。20年余生があるとして200名×2が引かれて、平民は16600名。うーん、こんなもんか。」
じゅえる「増補分が75ではどうだ。2000減員で14600名。士族を含めて丁度15000名だ。」
まゆ子「では、増補分の上限値を100として、実際は75名程度が供給されることにするか。2組だから、200配備されるはずってことで。」
釈「そうですね。元から最大250名上限でしたから、それは適当です。」

まゆ子「だが、30×2回の戦闘で士族が命を賭けるのは多過ぎる。昇進分よりも多く死ぬぞ。」
じゅえる「あー、それはどうするかなあー。これまでの経緯を考えると、死亡率2倍しても大丈夫そうだなあ。」
釈「あ、なるほど。そういう手も使えますか。機体が修復出来るようになりましたからねえ。」

まゆ子「ふうむ、なるほど。2割損害で敗北必至、ってのは変らないと思うけれど、1000名配属で死亡率倍が許されるならば、部隊の4割までもが損害を受けるまで耐えられるという風にもできるか。」
じゅえる「人死には多いほど読者様に喜ばれます。」

釈「です。えーと、致死率2倍で”鉛”は年間120名戦死です。一方人数は1000+150です。年間出撃回数は変らず300名、三年時最終生存数が790名、一巡するのに3年掛る計算です。」
じゅえる「また戦闘数減ったよ。結局”鉛”乗りは5年間に2回しか戦わない。1150→550で、死亡数は十分ではあるけどさ。」
釈「当然”亜鉛”乗りの戦闘回数も減ります。人死には同じですが、人道的です!」

まゆ子「相分かった。じゃあ倍率ドン! うーん、それにそうだなあ。クエストの回数を増やして、正規の戦闘以外で無闇と死ぬ場面を作るか。」
釈「合計死亡率ですね。」

 

じゅえる「まとめます。

・これまでの計算は損害率死亡率の表記の2倍に設定します。

・基地はクローンを年間1000名供給される。さらに、特定の遺伝子継承者が減少した場合にそれを補う形で、最大200名が増員される。

・士族への昇進は、1年ごとに換算すると5名が成し遂げ、それぞれ伴侶を娶り10名×2が昇格する。有性生殖自然出産で2以上の子を持つ義務が課せられる。

・戦闘員は年間1回程度の戦闘しか経験しない。暇です。だから機体整備とかやってます。おそらくは農耕にも。

・結構年寄が多い。全人口の半分がそう。

・出撃回数が極端に減ったので、戦闘嗜好を持つ者が他の出撃を肩代わりする事も許されるようになった。

***********

まゆ子「名前を決めます。”錫”は「スタンナムSTANNUM」てのはもう言いました。かっちょいい名前です」

じゅえる「なんとなくセーラームーンの敵役の名前と同じネーミング手法だけど、まあかっちょいいね。」
釈「独自性も大丈夫です、問題ありません。」

まゆ子「で、チェスの駒であるわけです。これら機体の一般名称を考えよう。CHESS PIECEなんてのは味もそっけもないですがな。」
じゅえる「TROOPER、TROOPs、SOLDIER、この手のはダメだね。ファンタジーもので定番の用語は全て没だろう。チェスであればポーンを””INFANTRY(歩兵)”と呼ぶらしいけど。」
釈「機能や形状から付けるのが一番良いと思いますよ。えーと3DCGの外観からして、…”缶”?」

まゆ子「”戦缶”、”戦闘函”とかも考えてみた。缶は英語でも”CAN”だ。」
釈「今辞書引いてみました。オールドイングリッシュで”CANNE”です。これならばいいかも。」
じゅえる「だが所詮は「カン」だ。使えない。」

釈「では釣り鐘とか瓶とか分銅とかはどうでしょう。”BELL”、”BOTTLE”、”VIAL(薬瓶)”、”WEIGHT”、”BULLET(弾丸)”でもいいですよ。」
じゅえる「”VIAL”もしくは”PHIAL”だね、ギリシャ語の””HIALE”から来てるそうだ。英語版うぃきってみた。」
まゆ子「ラテン語で”PHIALA”だ。ちなみに各機体の名前は元素記号の元となるラテン語から取っている。」

釈「では”PHIALA”でいいですか?」
じゅえる「響きが綺麗過ぎるな。がぎぐげごが無いと強く聞こえない。」
まゆ子「チェス用語辞典を引いて来た。”GAMBIT”でいこう。がぎぐげごが有るから強そうに聞こえる。意味は「捨て駒(序盤に捨て駒を用いて展開を早める定石)」だ。これでどうだ!」
じゅえる「OK。」
釈「パーフェクトですね。「ガンビット」です。」

まゆ子「以降、随所でチェス用語を用いることとしよう。」
釈「ちなみにまゆちゃん先輩は、チェスの心得は、」
まゆ子「知らん。」
じゅえる「まゆ子はこの手のボードゲームには弱いんだよ。」
まゆ子「ウオーシミュレーションゲームもさっぱりだ。」
釈「はあ。」

じゅえる「「ガンビット」は日本語ではなんて名前にする? 戦闘ロボではいけないぞさすがに。」
まゆ子「戦闘駒、かなあ。安易過ぎるかな。」

釈「ふと思ったんですけど、「ガンビット」はガンダム系の巨大ロボットに置き換えちゃダメですか? 今の設定の状況だと、大型ロボットであっても支障は無いと思われますが。」
じゅえる「あー、このロボットは単に戦場に人間が居る事を保障するだけの存在だからね。形状や大きさはどうでもいいかな。」

まゆ子「ガンダム系のロボットでいけない条件はほぼ無い。ただ、1)センサー系が極端に貧弱であり視界が不自由であることを、デザイン的に明示すべきである。2)無線を登載しておらず、標識灯の点滅信号による困難な意思疎通を行う。 この二点は外すと物語が機能しないと思う。ビーム兵装を採用しても構わないが、密集隊形でくっついて歩く絵柄が欲しいのだよ。それを阻害する超兵器だと、面白くない。」

じゅえる「ATであれば上等だね。」
まゆ子「まあね。」

釈「それで、戦闘駒ですが、」
まゆ子「装甲浮遊駒、かなあ。戦場に人間が居る、って事を明示する名称が欲しい。」
じゅえる「では、そうねー、示在顕現装甲戦闘浮遊駒、というのは?」
釈「長いですよ。」
まゆ子「装甲というほど装甲厚くないから、示在戦闘浮遊駒、でいい。略称は示在駒ね。」

釈「では、基地はどうしましょう。「ファンネム」ってのは、『げばると処女』の戦場市のことですよね。」
じゅえる「チェスから用語を取るのであれば、素直に「ルーク」でいいじゃないか。」
まゆ子「あ。」
釈「あー、そりゃそうです。じゃあルーク”ファンネム”、日本語では城塞ということでどうです。」
まゆ子「もうちょっとサイバーな響きが欲しい。”ガオルークGAOL=ROOK”というのにしよう。英語”GAOL(牢獄)”+ROOKだよ。」
じゅえる「兇悪犯罪者の遺伝子バンクからクローン人間が再生された、ってとこを明示するわけだね。であれば、日本語だと「牢塞」か。」
釈「見た事も無い造語のオンパレードです。」

じゅえる「じゃあ、示在駒の種類を書いていこう。

・”鉛”;”PLUMBUMプランバム” ・”亜鉛”;”ZINCUMズィンカム” ・錫”;”STANNUMスタンナム” ・”銅”;”CUPRUMカプラム”  ・”鐡”;”FERRUMフェラーム”
・”青銅”;”CHALKOSカルコス”ギリシャ語”銅・青銅”

まゆ子「先ほどまでの設定会議で、”錫”機の他に隊長機ってのが存在する事になった。ベースは”錫”機で、37ミリ速射砲を登載していない高性能機。

 ”亜鉛”分隊指揮時には8ミリ長機銃+1000発、左手は8ミリ短機銃+曳光弾100発。
 ”鉛”分隊指揮時には、8ミリ長機銃+1000発、左手8ミリ短機銃+曳光弾100発、砲撃用両眼測距規頭部装備。
 総指揮機は”亜鉛”指揮機に総指揮標識灯装備。」
じゅえる「それは”錫”機ベースだから、”錫”でいいじゃないか。」
まゆ子「まあ、そうか。」

釈「次は、”遊戯者”、”士族”、”兵民”、”オーガ”です。これもラテン語辞書で引きますか。」
まゆ子「うん。ローマ軍団から取ろう。

・ハスタティ(hastati) 第一戦列兵のことで、若年者・新兵が主。
・プリンキペス(principes)第二列で、戦闘に熟練した20代後半から30代前半の者。
・トリアリイ(triarii) 最後列で、古参の兵士。彼らはよほどのことがない限り戦闘に投入されることはなかった。

とある。これはそのまま”鉛”、”亜鉛”、”錫”に相当するのだが。」

じゅえる「めんどくさい。それはそのままの方がいい。」
釈「それらの総称が欲しいのです。」

まゆ子「
・重装騎兵(エクイテス、equites) ローマ騎士、騎士階級。
 これは?」
じゅえる「ベタだから禁止。」
釈「それが節度品格というものです。」
まゆ子「とほほ。

・ケントゥリア(centuria、百人隊)
 ”オーガ”;”DIABOLUSディアボロス ”悪魔
は?」
じゅえる「ありふれてるから禁止。」
釈「もちろん!」

まゆ子「ち! よしじゃあ、めちゃくちゃ簡単なとこでいく。

・クローン人間(兵民);”METALLUMメタラム”金属。」

じゅえる「そうそう、そんなのがいい。」
釈「そうですよお。これです。じゃあ士族は、”樹”ですね。」

まゆ子「・士族;”RADIX”根、だ。」

じゅえる「実に人間らしい。これだよ読者様が要求するのは。」
釈「実に自然です。有性生殖で生まれる人間の為に有る、まさにこれこそが人類の夜明です。」

まゆ子「・オーガ;”SOLUMソラム”土。」

まゆ子「というわけで、”遊戯者”は神にする。これは物語の定石を踏みますよ。
・遊戯者;”COGITコギト”考える」

じゅえる「まとめます。

・宇宙人:「遊戯者」;”COGITコギト”
・士族        ;”RADIXラディクス”
・兵民        ;”METALLUMメタラム”
・オーガ「回収者」 ;”SOLUMソラム”

 

 

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