「前回までのあらすじ。
 絶対の守護者GEKIを得た地球人類は、そのパイロット達を各国で分担して確保し血統を伝える事で地上に留め置こうとする。
 だが彼らの前に立ち塞がるのは、旧来の支配者勢力だった。」

「中国代表は今回出席しないのか?」
「空港が気象の関係で離陸不能となり、専用機が12時間遅れるらしい。もちろん、そうなるように仕向けられている。」
「ミス・シャクティの仕業か。」
「彼女の言によれば、中国はこれから「それどころではない事態」に陥るらしい。GEKIパイロットを預けるには不適だと。」

「歴史ではそういう事になっているのか。」

 ポイントXP-02、硫黄島南200キロの海上に浮かぶ人工島が彼らNWOの拠点である。この島自体がミス・シャクティにより提供されたもので不可視のバリアに覆われ、現在の人類科学では所在を発見する事さえ出来ない。
 NWOのメンバーは世界主要国の最高支配者、国家元首である。しかしGEKIの秘密に与るだけの信頼性を互いに認められなければ、容赦なく会合から外される。弱肉強食こそがNWOの掟だ。

「我らが60年待った機会がようやくに訪れたのだ、一刻の遅滞も許されない。脱落する者は置いていくべきだ。」
「だが救済措置は必要だ。あからさまに外されれば、またARAKANの悲劇を繰り返すだろう。」
「よりにもよって、GEKIプロジェクトで最も貴重な時期を逸するとは。」
「それだけのものという話だ。」

 円卓に並ぶ彼らの中心の空中に、立体映像で5人のGEKIパイロットの姿が浮かぶ。この部屋に用意された情報機器は現在のそれよりも50年は進んでいるが、50年前から提供されており彼らは新しさを感じない。

「5人全てが女性というのは予想外だった。」
「ハーレムを作り子孫繁栄をさせる策は無理だな。」
「卵子だけを抜き出し体外受精、というのは意味が無いらしい。あくまで人間的接触こそが重要で、遺伝子の問題ではないのだ。」

「では計画通りに、彼女達を保護する分担国を定めよう。これは1000年に及ぶ人類の支配者を決定するに等しい選択だ。」

 ミス・シャクティが示唆するところでは、ゲキロボの操縦因子を持つ者が世界の指導者となり、NWOの枠組を通じて人類社会を支配する。いや、人類社会を指導する支配者層が、GEKIパイロットの因子を取り込むのだ。
 彼らは半神として人類に君臨する。その為の道具として、彼女達との婚姻による血統の成立を画策する。

 当然の権利として、まず日本国総理大臣が発言する。GEKIパイロットは全て日本人であるから、彼が特権的に振る舞う事を各国も許さざるを得ない。

「物辺優子、彼女はゲキロボット再生の要であり古くからゲキに関り続けてきた特殊な家系の出身者だ。彼女の子孫が日本に有り続けるのはプロジェクト推進の根幹を為すと考えますが、如何に。」
「承認する。」
「承認する。GEKIロボットが当分の間日本に存在し続けるからには、日本は最も重要な家系を存続させる義務がある。」
「異論は無いが、保証は必要だ。血統の存続に十分な保護措置を講ずるべきだろう。」
「日本は世界で最も旧い王の血統を受継ぐ国だ。問題は無かろう。」

 黒髪が長くゆらめく物辺優子の立体写真が、一枚だけ横にずらされる。残りは4名。
 世界最強国として、アメリカ大統領が発言を求める。ミス・シャクティは現在の国際政治、国際紛争に一切干渉しないので、依然としてアメリカは最強を恣とする。

「我が国がGEKIパイロットを1名保護するのは、国力から言って当然であろう。他国との共有は望まない。」
「…致し方ない。ではどのカードを選択する?」

「YOSHIKO・HATOYASU、彼女は我が国に留学した経験がある。そうなるように定められていたのだろう。」
「承認する。では次にEUとロシアが共同で管理すると定められた…。」

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