優子「前回までのあらすじ。 物辺優子は超絶美少女である。その家系は旧くから神社を守っており、優子本人も今や人気絶頂の商売であるところの『巫女』である。 だが何故か男が寄りつかない。今回はその辺りの事情をさぐってみよう。」 喜味子「色物には誰も手を出さない、ってだけじゃん。」 ま、だいたいこの通りである。物辺優子が超絶美少女である事に異論を挟む者はほぼ居ない。が、美と捉える者もそうは居ない。 優子「いや、先輩はちゃんと私を見るぞ。」 香村先輩は三年生男子で、物辺優子が一応所属する演劇部の前部長だ。暗黒舞踏に走った優子の唯一と言って良い理解者であり、心ときめく異性でもある。 喜味子「相原せんぱいは、ゆうちゃんと同じ人種だと思うよ。私。」 鳩保「たとえて言うならば、ゆうちゃんは巫女だけれど、相原せんぱいは祭られてる方の神様だよ。あっちの方が格上だね。」 相原志穂美せんぱいは、書道部である。字は、はっきり言うと物凄く下手なのだが、そこに込められる怨念とも呼べる気魄が凄まじく見る者を圧倒してやまない。魔除けの効果があるとか病魔を打ち破る、呪いを掛けた相手に百倍返しにするとかの噂も高い。 花憐「ひょっとして、相原せんぱいをゲキロボに乗せたら、凄いんじゃないかしら。」 物辺神社の縁起が物語るところでは、京の都からゲキと呼ばれる鬼の頭が飛んできたのが千年前。秀吉が全国制覇した頃になんやかやで復活したゲキの鬼に物辺神社の巫女が犯されて孕んだ子が、そのまま神社を継いで居る女系家族である。 優子「というわけで、うちは家系的に超美人なのだ。」 城ヶ崎花憐は物辺村村長の娘、代々の庄屋であり網元だ。物辺家ほどではないが古くからこの地に住み続けて居る。だから、物辺家にまつわる様々な悪評もよーく心得て居る。 村の男達は決して物辺神社の娘とまぐわってはならない、というのが固い掟だ。喰い殺されるぞとか、精を吸い尽くされ抜け殻になる、沖に出たら海の神様に取り殺される等々に脅かされる。 優子「酷い言われようだな。わたししょじょなのに。」 |