喜味子「前回までのあらすじ。
 ゲキロボの力で世界に解放の光を与える仲良し5人組。しかしひとりだけあんまり目立たない子が居る。
 童 稔。彼女はそもなにものや。」

花憐「つまり、ひとりずつの紹介をしていこうというわけね。」
優子「まあ、ひとりずつね、色々とややこしい背景は皆持ってるんだよ。ちなみに私は、というか私の実家物辺家、物辺神社の神主の家系は代々女の子しか生まれない。」
鳩保「そうなんだ。女ばっかりの所帯だと思ったけどさ。」
喜味子「よくよく考えると、今男はおじさん唯一人だよね。」
優子「私にとってはおじいさん、なんだが最近の50代ってのはあんま老けてないてだけの話。そもそもおじいさんには娘が三人居て、長女が私のおかあさん。現在行方不明。」

 自分の紹介の回なのにどんどん話が逸れていく。それでも抗議しないのが、童 稔だ。
 無口というわけではないが、女の子相手にはあまり喋らない。いや、他の子が口達者過ぎて付いていけないのだ。だから港で漁師のおっさん相手なら、普通に喋れる。

花憐「話をもどすわよ。えーと、みのりちゃんです。5人の中で一番ちっこいけれど、一番力持ち。」
鳩保「中学時代はハンマー投げ砲丸投げで県大会出場だからね。」
優子「門代高校でも陸上部、だけど成績はぱっとしないのは何故?」

童「…世界記録越えちゃった。」

 ひくっと、4人の姿勢が固まる。あたかもジョジョ立ちと呼ばれる怪しげなポーズを作るかのよう。

喜味子「ゲキロボの影響?」
童「かもしれない。でもゲキロボと接触するちょっと前から変だった。」
優子「あー、それは私もそうだ。修学旅行に行く3月も前から変な夢ばっかり見てた。」
鳩保「そう? あたしはなにも無かったよ。」

 ゲキロボを起動させるには5人の因子が必要だが、精神や肉体に及ぼす影響は個々人で違う。
 電波系能力を授かった城ヶ崎花憐は、日常生活では不思議のまるでない勘の鈍い娘だ。鳩保に至っては、ゲキロボ超能力を獲得した後もまったく何も変らない。

花憐「要するにみのりちゃんは競技で超人的身体能力がバレないように、普段は抑制してるんだ。」
優子「そりゃ可哀想。」

鳩保「任せろ。あたしが思う存分筋力を振り回せる場所を作ってやる。」
童「ハンマーを投げたいの。」
鳩保「ハンマーね、うんうん。室伏なんか目じゃないほどにぶんぶん回させてやる。宇宙人相手に。」

優子「陸上のハンマー投げって、アレは元は武器?」
喜味子「ガンダムのハンマーとかと同じで武器なんじゃない?」
花憐「陸上のはトゲトゲ付いてないわよ。」
優子「武器なんだったらさあ、的が無いとだめでしょ。移動目標に対してぶん投げて当てる。そこで初めて破壊力になるんだから。」

 皆それぞれ、なにかが違うとは分かっている。分かってはいるが、さりとてその齟齬を修正するに足る知識が欠けていた。
 彼女らが無知で悪い、と断じるのは浅墓だ。かって円盤投げのアメリカ選手は競技で使う円盤がどんなものか知らず、ギリシャ彫刻の競技者が持っているのと同じような青銅製円盤を投げて、本物の木の円盤しか投げて来なかったまともな競技者を総なめしたという逸話もある。

 鳩保芳子は頭のいい、理数系コースでも成績上位者であるが、バカである。バカだからこそ乗り越えられる常識の壁が有る。

鳩保「ゲキロボにハンマー兵器って付いてないじゃん。なんとかならない?」
喜味子「作ればいいんだよ。サポートセンターに注文出せば、みのりちゃん専用ゲキロボハンマーってのを作ってくれる。」
童「あう。」
花憐「えーすごいー、良かったねみのりちゃん。」
優子「なるほど、パイロットごとに専用武器が作れるんだ。それは知らなかった。」

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