花憐「前回までのあらすじ。
 城ヶ崎花憐特集、にも関わらずまったく活躍しない主役。
 訴えてやる、と言いたいがなんか逆に訴えられそうでつい物陰に隠れてしまうシャイなあたし。」

 「うちにはフェラーリがある!」が自慢の城ヶ崎可憐だが、本人は自転車で全力走行するとコワい、速いの嫌い少女である。
 にも関わらず彼女の特殊能力は、そのものずばり”スピード”だ。

「というわけで、今日は花憐がどれだけ早く飛べるのか実験してみる。」

 言い出しっぺはいつも鳩保芳子だ。昔からそうなのだ。で、その度残り4人は被害者になる。物辺優子ですら例外ではない。

「ぽぽーぉ? 飛ぶのはいいけれど、高いとこ上がると空気無いんじゃない?」
「はい優ちゃん。実のところ早く走っても空気は無い。」
「あー、そりゃそうか。息出来ないもんね。」

 鳩保がスピード測定をしたがるのは互いの能力を見極める為に当然だが、やるのは花憐である。実際飛ぼうと思えばどこまででも飛べると身体が教えるから、なお怖い。

「あ、あのぽぽお? 一人で飛ぶのは嫌よ。」
「心配しなくてもゲキロボで追いかけるから大丈夫。宇宙の果てまで飛んでいこう。」
「いやいくらなんでもそんなに飛べないから。」

 児玉喜味子が首の後ろの受話器を花憐にじーっと向けてみる。喜味子の特殊能力は対象物の性能と扱い方を知る事だから、もちろん花憐のスペックも分かる。

「秒速32キロメートル、だって。最高速度。」
「地球脱出速度越えてるね。つまり、宇宙にだって飛んでけるって事だよ。」
「いや、いやそれはやっぱり困るでしょ。だって宇宙よ空気無いよ。暗くて怖いでしょ。夜道は危ないし。」
「ぶつかるものは無いから安心。」
「人工衛星飛んでるわよ。」

 誰が誰に話をしているのか分からなくなるほどに、花憐は抵抗する。
 鳩保、優子、喜味子はダメだ。最後の希望は童みのりただ一人。だが彼女はこういう場合どんな反応をするか、よく分からない。

「みのりちゃん、助けて。」
「…真上に上がったら、どう?」
「…上か。」

 鳩保は物辺神社の電線一つ無い空を見上げて、呟いた。この上を真っ直ぐに上がるのならば、迷子にもならないな。

「上で行こう。」
「ええええ?」
「というわけで、レディ、GO!」

 仕方なしに花憐は上に飛び上がる。ゲキの力で飛ぶのに意志は要らない。飛んでるかな?と思えばもうトップスピードなのだ。

「ぽぽー、しつもん!」
「はいきみちゃん。」
「まっすぐ飛び立ったロケットって、まっすぐ上から落ちて来るんじゃない?」
「あー、でも脱出速度越えてるから大丈夫だよ。」
「そんなもんかな?」

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