花憐「前回までのあらすじ。 無論のこと、日本政府は門代高校に万全の警備を行っている。とはいえ、 それがゲキパイロットにバレて自由な行動を妨げるのは逆効果となるわけです。」 ミスシャクティの助言により日本国政府はゲキの覚醒を2年前から知っており、ゲキロボットのパイロットの身辺警備を密かに行っていた。 門代高校の教職員さらには生徒の中にも警備は紛れ込んでいる。 2年1組、水泳部に所属するナイスバディでショートカットの美少女は、しばしば選択科目の授業を脱出する。 「定時報告、対象者Cの状況に変化無し。脅威を認められず。」 5人のパイロットに5人の専属警護員が居り、支援が更に2人ずつある。如月怜は城ヶ崎花憐の専属だ。 今、如月怜が連絡に使った携帯電話も特別製だ。白いネコのイラストが描いてある可愛らしく丸っこいデザインだが、実は銃器・スタンガンと一体化している。 高校敷地内の警備員数は最小限に留めている代わりに、周辺の一般住宅を接収して100を越える特殊武装警察官を配置する。
「それだけするのが馬鹿馬鹿しくなるほど、彼女達はのんびりやってるんだ。」 如月、本名は犬塚怜は最近自分がゆっくりと麻痺していくのを感じる。ここ門代高校は田舎とはいえ進学校でそれなりにぴりぴりしているはずなのに、どうにも神経が弛緩する。 昼休みの時間となり、生徒達がそれぞれの教室から戻って来るのを如月怜は迎える。 門代高校のこの場所こそ、世界中から狙われる陰謀の渦中にあり、宇宙人の襲撃を受けるであろうホットスポットだと、どうして彼らは気が付かない。 「そういえば、」 「物辺村には十数年に一度、武術の達人が遊びに来るのよ。もう何百年もそうで、道場や宿舎までウチに有るの。」 物辺神社は古くから軍神を祭る宮として信仰を集めていた。「物辺」=「ぶつへん」=「武辺」、ということだ。 尊敬と信仰の対象ともなる伝説的な武芸者の訪れを、村人が平和の裡に歓迎したのは当たり前だが、それは間違い。 おそらくは彼女と同じように陰からゲキを守る集団があり、今も活動を続けているのだろう。政府が全力を挙げて警備する中でも、やはり。
「隙アリ!」 如月怜は額を空手チョップされて、びっくりというより呆れてしまう。何故こんな間抜けな攻撃を自分は防げなかった? 「あ…。」 にこにこして去る美矩は、門代高校影の総番と噂される3年生蒲生弥生率いる私兵集団『ウエンディズ』の隊員だ。彼女達も独自の判断で校内の治安維持に奔走する。 「あれが、…その筋なのか…。」 |