喜味子「前回までのあらすじ。
 ゲキロボのスーパーパワーを手に入れた仲良し5人組は宇宙人の地球侵攻に対して武力介入を敢行。
 しかしながら、そもそもゲキロボってなんだい?とクビをひねる毎日。得体の知れないモノなんて使っちゃダメだよ。」

 と言いつつも、喜味子がゲキロボのなれの果て「洞窟物置」の隅っこからほじくり出したのは、1センチほどの大きさの洗濯ばさみみたいなものだ。

 ゲキロボは使う度に地中から沸き上がり、使用後はボロボロに朽ち果てて木の洞のようになる。四畳半ほどの広さがあるから秘密基地には最適だ。
 彼女達、および物辺村で生まれた全ての子供たちが神社の裏にぽこんと有ったこの洞窟で遊び育った。まさか古代宇宙人の超科学の遺産であるとは露知らずに。

喜味子「これがゲキロボの正体だよ。」
鳩保「なにこれ?」
優子「妖精さんだ。時々裏の畑で見掛けるよ。子供の頃はよくこれを苛めて踏み潰していた。」
花憐「…ま、ゆうちゃんのすることだから。」

 喜味子の手の中のソレは、ぴくりとも動かない無機物だ。材質は土とも木切れとも思える不思議な暖かみを持っている。
 幸いなことに、21世紀の地球にはこれを正確に表現する言葉がちゃんと用意されていた。

喜味子「これはマイクロマシンよ。超小型ロボットね。これが数百万体集まり合体して、ゲキロボを作ってる。」
鳩保「材質は何?」

 喜味子は自分の首の後ろの常人には不可視な電話を取って、サポートセンターに聞く。彼女が与えられた超能力は、どこの誰とも知らない人がやってるサポートセンターに連絡して、宇宙人の弱点やその持ち物、武器機械の操作法や解体手順を教えてもらう事が出来る。

喜味子「…、鉄と珪素の酸化物、だって。地球上どこに行っても潤沢にある物質で作られている。」
優子「錆と石ころ、だ。」
鳩保「うん。」

 喜味子の手から受け取ったマイクロゲキロボを、鳩保は爪で引っ掻いてみる。結構硬いが削れないでもない。

花憐「これ、脆いよ。ビームとか当たったら壊れちゃう。」
童「うん。」
喜味子「動いてる時はエネルギーバリアを発生しているらしいから、だいじょうぶだよ。」

鳩保「動力源、なに?」

 もう一度喜味子は受話器を取り上げ耳に当てる。だがすぐに止めた。

喜味子「難し過ぎて分からない。ぽぽー(鳩保芳子のあだ名)、あんた次元位相遅延歪みって分かる?」
鳩保「なんじゃそれ。」
喜味子「その歪みが復元する際に物理エネルギーが発生するけれど、それはゲキユニットがアクセスするエネルギーの1%以下の出力でしかない、んだそうだよ。」
優子「つまり、こういうことね。
  なにがなんだか分からない。」

 5人は大きく納得した。どだい宇宙人のメカなんて分かる方がどうかしてる。難しいことは考えないのが吉。

花憐「結論を言えば、ゲキロボは大丈夫なわけね、宇宙人の武器で攻撃されても。」
鳩保「被弾したこと無いから、絶対安心とはいえないけどさ、地球の武器で撃たれたくらいじゃ壊れないんじゃないかな。」

 冗談みたいな話だが、物辺優子はゲキロボのエネルギー兵器担当である。そこらへんは自然と脳味噌にインプットされている。

優子「あ、原爆が当たってもゲキロボ大丈夫だから。ゲキビームのエネルギー密度より3桁くらい低いよ。」
鳩保「そうは言っても安心出来ない。コンバットプルーフをしなくちゃ。」

花憐「何する気?」
鳩保「どっか戦車とか使ってるとこ行って、弾に当たって調べてみよう。ついでに世界平和に貢献だ。」
喜味子「おお、ぶりょくかいにゅうですな。今流行の。」
童「テレビでなんかやってるよ。暴動みたい。」
優子「うん、ゲゲポンス大統領ってのが悪いらしいね。」

 洞窟物置には、古いブラウン管テレビが持ち込まれている。電気のコードを引っ張って来ているから、様々な機器が使用可能だ。
 ゲキロボ稼働時には、内部に100Vコンセントまで発生する。地球人の使う放送や通信にはゲキロボはアクセスしないから、テレビやラジオは案外役に立つ。

 なんの気無しに童 稔が点けた画面上には、アフリカのどこかで暴動と弾圧を指嗾するじゃあくな独裁者の顔が映っていた。
 鳩保の顔がにまっと歪む。物凄く楽しそうだ。

花憐「なんか、すっごくいやな予感がする。」

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