童「前回までのあらすじ。
 鳩保芳子特集。」

 物辺神社の裏にあるゲキロボ秘密基地に集合して定例会議を行う5人。意外と5人全員が土曜日に揃うのは難しい。

鳩保「というわけで、我々は選ばれた者としてゲキに超能力を授けられた。これを人類の恒久平和の為に使おうなどという殊勝な気持ちは微塵も無いが、もちっと有益に使う道はあるでしょ。」

 リーダーの鳩保が黒板をばんばん叩くのは癖みたいなものだ。さりとてゲキの超能力はそれほど便利な、あるいは現実的なものではない。

優子「ぽぽー、あんたの超能力はそりゃ役に立つかもしれないけど、あたしのはダメだあー。」
 物辺優子の超能力は、電話を使って得体の知れないどこの誰だか分からないそもそも人間かどうかも分からない相手と通話する、それだけだ。なにやら凄まじい智慧を備えているらしいのだが、宝くじの当選番号を事前に教えてくれるとかは無いので、得にはならない。

童「うん。」
 童みのりは怪力超人的運動能力。正義の味方としてまことにふさわしいが、しょせんはゲキロボ通常業務用だ。それ以外ではむしろ目立たないよう注意しなければいけない。

鳩保「ちなみにあたしの能力は絶対順守の力! 世界中の権力者支配者に直接通話して、意のままに従わせる事が出来る。
 名付けて”ヘブンリー・ボイス”!」
花憐「使って見せてよ。」
鳩保「そね。」

 威張って見せたものの、鳩保はこの機能を使った事が無い。一介の高校生が世界の権力者に用事など無いからだ。

鳩保「では、とりあえずアメリカ合衆国ブッシュ大統領などを。」
「おー、ぱちぱち。」

 首の後ろにある、一般人には決して見えない受話器を取って、鳩保は会話する。

鳩保「HELLO! もしもしホワイトハウス? 大統領出して、なに会議中?いいから出しなさい。それと、料金はコレクトコールね、そっちが払うの、いい?!」
「ひでえ。」
「なんという暴虐。」
「国際電話なのに。」

 来週のサミットでブッシュ大統領に裸踊りを厳命して通話を切る。振り返ると、4人の目が至極冷たいものになっている。

鳩保「てなわけで、万能の力を我々は有している。さてどうしよう。」
花憐「そんな力があるなら、おばさんを世界一の病院にでも入れればいいのに。」

 いきなり想定外のツッコミを受けて、鳩保は一瞬止まった。そうか、そういう考え方もあるか。
 だが、更に想定外のツッコミを受ける。

喜味子「いっそのことさ、おばさんの病気をゲキの力で癒せばいいじゃん。」
鳩保「そんなこと出来るの?」
優子「あたしは無理だ。」
花憐「あたしも。」
童「うん。」
喜味子「できるわよ。」

鳩保「出来るの、喜味子?」
喜味子「簡単よ。あたしの電話はそういう能力だ。」

 鳩保は少し考える。宇宙人の複雑怪奇な機械や武器、あるいは生体をぐにゃぐにゃと自在にいじくる児玉喜味子なら、確かにそれは可能かもしれない。

鳩保「あんたがやるんだよね?」
喜味子「そりゃそうだ。」
鳩保「あんた、こないだの模試の生物、何点だった?」

喜味子「うっ!」

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