ガリー「前回までのあらすじ。
 地球を襲う宇宙人は、既に世界のあらゆる場所に棲んで居る。だが新たなる来訪者が居ないわけではない。
 今日も地球は、人類は宇宙の征服者に狙われている。」

「土星外縁の索敵衛星に反応。データベース登録外の未確認構造物を確認。秒速3000キロで太陽方向に進行中。」

「遂に来たか。」
「ミス・シャクティの予告通りに、宇宙人の戦闘艦が出現した。数は1隻だが、惑星破壊を容易く行うだけのエネルギー兵器を装備するらしい。」
「迎撃を。ミス・シャクティにプログレブシュ級戦艦の出動要請を。」

 NWO外宇宙警戒管制センターに久々の活気が踊る。
 これまではただ、ミス・シャクティから提供されるデータの解析のみを許されて来た彼らだが、3年前に打ち上げた新開発の索敵衛星により直接宇宙人航宙艦の電波偽装を看破出来るようになったのだ。もちろん必要な電子装置の技術は未来からの贈り物であるが、製造は現代人だ。

 NWOに加盟する各国首脳への情報伝達が討議される中央司令室に、数名の侍女を引き連れてミス・シャクティが入る。
 笑顔だ。彼女にとっては他愛の無い事であるが、現代人にとってこれは快挙であった。素直な祝福を授ける。

「来ましたね。」
「はい。衛星は期待通りの性能を示しております。この調子で全天64基の配備を進めていきたいものです。」
「ヒストリカルデータベースへの接続を許可します。検索してみて下さい。」

 未来人のみに許される、地球の歴史の記録が紐解かれる。この全貌を知れば34世紀までのあらゆる事象の発生と対応、その結果を手にし、全人類に超越する神と成れよう。

「検索結果出ました。リザルトナンバー001! 第1号です。」
「なんと!」

 ゲキロボットによる迎撃が成功した最初の宇宙戦艦。記念すべき初陣の敵の詳細は、だがさほど詳しくは載っていない。

「月面基地より入電。未確認飛行物体が地球を脱出、驚くべき速度で宇宙人戦闘艦に向かっています。」
「ゲキだ。彼女達が初めて、宇宙空間での戦闘を行うのだ。」
「速度は秒速、…もう一度お願いします。えーーーーっ、秒速80万キロ!?」

 光速を3倍近く突破するゲキロボットの非常識さに、中央司令室の誰もが唖然とする。物理法則など進歩した宇宙人科学の前では意味を為さないのか。

「マイクロギャップ航法です。初期のワープ機関で用いられていた航法で、1センチほどの短距離ワープを連続的に行う為に、超光速で航行しているように見えます。」

 ミス・シャクティは事もなく答える。マイクロギャップ航法は亜空間内での座標の特定が技術的に難しかった時代のもので、すぐに長距離ワープに取って替わられる。

「この航法は外の景色が見られるのです。彼女達ゲキパイロットはおそらく有視界による操縦を行っていますね。」

「ゲキロボット、急速に敵宇宙人戦闘艦に接近します。会敵予想時刻は、40分後。」
「いえ、訂正します。30分。あ、また変わった。12分、加速している!」

「ミス・シャクティ、これは。」
「ワープですから、そういうものです。」

 索敵衛星から転送されるデータも超光速通信だ。通常の電波であれば1時間は掛る所を、ほぼタイムラグ無しで接続する。
 宇宙人戦闘艦もゲキロボットに対応せねばならないと、行動を開始する。艦首を地球に向けてエネルギーの蓄積を開始した。

「現在秒速800万キロ、接触まであと、3、2、1。」
「接触!、…爆発しました。」

 宇宙人の戦闘艦がいきなり爆散して高温のプラズマに変わる。ゲキロボットの生死は不明。

「ゲキロボット確認。宇宙人戦闘艦撃沈地点より2600万キロ、静止しています。」

「ミス・シャクティ、輝かしい勝利です!」

 喜ぶ現代人を前にミス・シャクティは複雑な表情を押し隠し、褐色の美貌に微妙な笑みを浮かべる。
 接触時操縦していたのは、5人の内の誰だろう。あれはおそらく、ブレーキの踏み遅れで衝突事故を。

「この事件の記録が極端に少ないのは、そのせいでしたか…。」

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