シャクティ「前回までのあらすじ。 NWOは全人類を支配する超大国と、それに追随する政治的に安定した諸国の秘密連合である。 彼らを指導するのが34世紀からやって来た麗しのインド人少女、ミス・シャクティなのだ。」 びびびびび。 いきなりの平手打ちに、その政務官はたまらず床に倒れる。 「ミス・シャクティ。あの、御機嫌を損ねたのは分かりますが、あまりにもこのやり方は。」 え、と驚き周囲の者が床に倒れたアメリカの政務官を抱き起こそうとして、絶句する。彼は既に絶命していたのだが、口元から漏れる血の色が、白い。 「か、彼は、宇宙人ですか?!」 呼び出しを受けて警備兵と宇宙人死体処理特別班員、それに彼の所属するアメリカの特務大使がおっとり刀で駆けつけた。 「ノーマン、おおなんという事だ。」 だがミス・シャクティは冷たい視線を向ける。彼女は歴史上の先人たる現代人に好意的であるが、今日はさすがに慈悲を望めない。 「少しむかっ腹が疼きました。このソーセージ野郎は自分が何者かも心得ずに人類を冒涜し、誤った判断を押し付けるので、NWOには要らない物体と判断します。」 「基本的には、この種のアンドロイドは無害なものです。事務処理能力は高いものの人間ほどの独創性は無く、定められたシナリオに沿って動くだけです。」 憎々しげに見詰め今にも唾でも吐きかけそうなので、恐れ入った死体処理班が早々に黒い回収袋に収めて持ち去った。清掃班が薬液を用いモップで床を消毒する。 或る程度落ち着いたミス・シャクティは「殺人現場」を離れ、自らの椅子に座る。側近の女性がチャイを給仕した。 「あのソーセージ野郎は、アメリカの政治を陰で操る白人至上主義者が宇宙人から購入したものです。彼らの主張どおりのメンタリティをインストールされていますから。」 「あの、」 「ああ。あのアンドロイドは成分的には、というよりも材料は市場で買って来たソーセージそのものなんです。適当なたんぱく質を人型に成型して、動力と知性を与えたものです。」 |