ガリー「前回までのあらすじ。
 なんだか分からない内にゲキパイロットに助けられた私。何故かは誰も教えてくれないから、自分で考える事にした。」

 ジョーダン大尉が地球に侵入した宇宙人全般について基本的なレクチャーを行う。EX-02においても限られた者のみに知らされる情報だ。
 私がその資格を得たのは、恥ずかしながら前回の敗北と個人的なメッセージをもらった為だ。

「基本的に宇宙人が地球人の前に姿を表わす事は無い。必要が無いからだ。
 彼らは複位相間コミュニケーションアクシズに通常棲んでいる。宇宙人専用インターネットと呼ぶべき代物だ。」
「仮想的な空間ですか? セカンドライフみたいな。」
「そういう理解でいいと思う。この空間内では相互衝突で破壊される確率が下がるところも、それに近いかな。
 ともかく彼らは現実の地球人の社会にはほぼ接触しない。仮想空間を出れば能力が限定されるし、第一現実世界の物質をそちらに持ち出せないから利益にならないんだ。」

「しかし、それでも敢えて出て来る宇宙人が有る。」
「ゲキロボットは現実世界に存在するからな。亜空間コンピュータを有するゲキロボットはもちろんアクシズに進入出来る。だがゲキパイロットが生身の人間で有る限り、そこには足を踏み入れないだろう。」

 と言いつつも、ジョーダン大尉は自らの言葉に真剣味を込めない。彼だとてアクシズに接触した事は無い。
 空調の設定温度が多少ずれている為か、二人だけの室内が息苦しく感じられる。完全機密保持の為に、この部屋は建設時から電波遮断等の措置が施されている。長く居ると不快感圧迫感を覚える。

「大尉。それでは先日遭遇したサルボロイドは、現実世界における有効な価値観を持って動いていたのですか。」
「サルボロイドは特別だ。かなり原始的な宇宙人で、未だ現実物理世界に未練を持っているらしい。故に更に原始的な我々に干渉したがる。」
「彼らの目的は明らかになっていますか。」
「ああ。50年に渡る観察結果から、推定できた。これは地球人独自の調査活動の数少ない実りと呼んでいい。
 サルボロイドは、物質を所有する概念を持っている。現実世界における物品に特異的な価値を認める。要するに、現実世界にお宝が有ると認識する旧い思考の持ち主だ。」

「仮想世界においてはそれはあり得ないわけです。なるほど、原始的ですね。」
「彼らは人類の工芸品や機械にかなりの興味を示し、手に入れようとする。或る分析官の意見だが、彼らは博物館を作ろうとしているのではないか、と言っていたな。」
「…戦争博物館ですか。」

 無敵で不可触の装甲を持つ種族では、とっくの昔に戦争など絶滅していよう。
 野蛮な祭に明け暮れる原始人の生態を記録保存し文物を蒐集するのは、なるほど地球の学者でも同じことを試みるに違いない。

「私のロボット兵器は蒐集の対象にならなかった、そういうことですか。」
「試作機であるし、これから何度も改造やアップデートされるだろうし、最後は解体廃棄だからな。プレミアが付かなかったんだ。」
「ちょっと腹が立ちますね。」

 大破を免れたロボット兵器は、修復と武装強化を行う事が既に決定されている。『XRV-1004A』の型番から、試験機を意味する「X」が取れる事は廃棄の時まで無いはずだ。

「で。」
 ここからが本題だ。何故私を助けに、ゲキロボットのパイロットがわざわざ日本から遠征してきたのか。
 私に与えられた情報では、かなり大規模な宇宙人襲撃事件でないとゲキロボットは出動せず、今回はその条件に該当しないはずだ。

 ジョーダン大尉は困った顔をした。直属の上司ではあるが、NWOの組織においては彼も末端の研究員に過ぎない。やはり無理かと諦めたが、

「ああ、ミス・シャクティから直接にメールをもらった。もちろん詳細は不明なのだが、君は知っておいた方がいいだろう。」
「なんです?」

 まじまじと顔を見られると、さすがに嫌な気がする。珍獣を見るかの彼の視線に、ガリーは表情をどれにするか困った。

「君はー、というよりも君の子孫は、いつの時代かにゲキパイロットの家系と接触して関係を持つようだ。誰かのひいおばあちゃんになるはずだから、かな。」
「…、はあ。」

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