喜味子「前回までのあらすじ。
 古代宇宙人の遺産ゲキロボを手に入れた仲良し5人組は、全地球規模で宇宙人の侵略が行われている事実を知り、ゲキロボを用いての防衛行動を開始する。
 しかしながら宇宙人の侵略は彼女達の手に余る恐るべき頻度で繰り返されているのだ。さあどうしよう?」

優子「いつから喜味子がナレーションするようになったのだ?」
鳩保「というか、あたしたち仲良し5人組だっけ?」
喜味子「幼小中高と16年も一緒に居て喧嘩分かれしないんだから、いいんじゃない?」
童「うん。」
鳩保「そういうもんか。」
優子「門代高校って結構難しいのに、よく5人全員合格できたもんだ。感心するよ。」
喜味子「ぶっちぎり最下位のあんたが言うと、重みがあるね。」

「ちょっとまちなさいよ!」と、青筋立てて城ヶ崎花憐は叫んだ。おまえら現実逃避してるだろう。

花憐「だから侵略よ、攻撃よ。宇宙人がいまこの瞬間でも、世界中のどこかで人間を襲ってるんだったら。」
 花憐がゲキロボから与えられた能力は、宇宙人襲撃に関する予報を因果律無関係で知る超予知だ。地球を襲う企てが進められていれば、はるか何十光年先であっても否応無しに知ってしまう。
 四六時中襲来警報に悩まされる花憐は、仲間と協議して速やかに効率的に宇宙人を撃退しようと焦っている。

鳩保「だから決めたじゃん。ゲキロボ使うのは毎週土曜日午後1時から4時間。5時までに日本に帰ってきてあんたはピアノのお稽古に行く。って。」
優子「学業に支障が出ないように、ヒーローごっこは慎もうって言い出したのはあんただよ。」
花憐「! そんなことは分かってるのよ! ただこの後ろ頭でじりじりなる電話はどうにか出来ないのってはなしよ!」

 彼女達の後頭部には、常人には見えないし触れもしないが、確かに電話の受話器がくっついて居る。それぞれに機能が違い、花憐の場合は宇宙人予報が絶え間なく漏れ出て来る。

鳩保「うん、まあ、あんたは貧乏くじ引いたね。」
優子「着信拒否ってできないの?」
花憐「できるわけないじゃない!」

喜味子「出来るよ。」
 ぽつりという児玉喜味子の言葉に、全員一斉に振り向く。なんでそんなこと知ってるんだ。説明書も無いのに。
喜味子「いや、あたしの電話はサポートセンターに繋がってるから。」

 児玉喜味子の超能力は、電話を通じて宇宙人に関する諸データや宇宙人製の機械の扱い方を知る事だ。ゲキロボの使い方も彼女を通じて理解した。受話器を対象に向けてしばらくかざすと、じりりんとサポートセンターから掛って来る。

花憐「出来るの?」
喜味子「うん。正確に言うと、フィルタリング設定だね。或る程度の大きさの被害以下ならば連絡して来ないように設定出来る。」
鳩保「それを早く言いなさい。」

 とは言うものの、どの程度の大きさの事件ならば無視して良いのか、これは大問題だ。
優子「一日最低100件、犠牲者1万人も出ているんだよ。」
喜味子「年間365万人も宇宙人に殺されてるんだ。」
鳩保「しかしながら、地球人類60億中の365万人だ。0.06%だよ。」
優子「人類の存続にはまるっきり影響が無い数字だね。」

花憐「じゃあ、無視していいの?!」

 花憐の言い分も尤もである。一応リーダーの鳩保は天を眺めてくるくると右手の人差し指を回した。
鳩保「1000人以上の事件、は出向かにゃなるまい。」
優子「うん。」
鳩保「歴史的重要人物に被害が出る、てのは防ぐ事を望まれている。」

 花憐の宇宙人被害予測には、犠牲者の歴史における重要性を示す情報も付随している。ゲキロボは歴史の改変を防いでくれ、と彼女達に要請しているらしい。

鳩保「あとあたしたちの家族関係者とか知り合い、やられちゃいかんと考える人は護らないとね。」
喜味子「個人的な価値観でいいわけ?」
鳩保「別に国連の命令で動いてるわけじゃないし。あと、この条件が揃った際には土曜日限定というのは無しでスクランブル発進。土曜日は定例出動を行い、とりあえず宇宙人を無差別にボコる。」

優子「さんせー。」
童「うん。」
花憐「いいのかな、それで…。」
優子「いいんだよ、それで。」

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