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「信長の鉄甲船なるもの」2015/04/30

まゆ子「ちょっと思いついたから書いてみる。題して『信長の鉄甲船とはなにか』」

釈「大きく出ましたね。」
じゅえる「信長は三段撃ちとかの伝説もあるけれど、鉄甲船てのは実在したってことでいいのかな?」
釈「どのようなものかはよく分からないけれど、鉄を張ったのは確かだという所はたぶん否定できる歴史家は居ないと思います。でも、」
まゆ子「そうなんだ。鉄張りの船と言っても当時の造船技術だと装甲と呼べるほどの厚さを実現できない。装甲でないのに鉄張りとはなんぞや? という謎なんだ。」

じゅえる「鉄を張っても装甲防御力が無いのか?」
釈「まあ、弓矢なら完全防御は間違いありません。」
じゅえる「鉄だからな。でもあーたしか信長の鉄甲船は石山本願寺攻めで海上から補給物資を運び込む毛利水軍松山水軍を撃破したってものだよね。」
釈「一度海戦で大敗した後に、信長の命令で巨大な鉄甲船を建造したって話ですね。九鬼嘉隆でしたか。」

じゅえる「あー当然毛利水軍松山水軍共に鉄砲使うよね? 火縄銃。」
まゆ子「まあ、弓矢を使わなかったとは言わないが、鉄砲だよね。」
釈「それと焙烙玉です。まるっこい爆弾を敵船に放り込んで爆破します。」
まゆ子「船は当然木造だから火矢という選択肢もあるぞ。まあそんな簡単に自分の船を燃やされる間抜けな船大将も無いだろうが。」

じゅえる「水軍と言えば海賊だ。敵船に乗り込んで白兵戦は、」
まゆ子「そりゃ当然。」
釈「信長側とすれば、海戦の猛者である敵を如何に船に乗り込ませないかが重要なのです。その為にはやはり鉄砲を多数使用して敵が近づけないようにするのが一番ですね。」

じゅえる「鉄砲の数はどちらが多かったんだろう。」
まゆ子「そりゃ動員される兵隊の数、つまりは投入される船の積載能力と隻数の問題ですね。」
じゅえる「信長軍と毛利松山水軍はどちらが多かったんだ。」
まゆ子「第一次木津川口の戦いでボロ負けするんだが、この時は信長軍300隻 VS 700隻、織田水軍は大型船が多かったみたいだけどね。鉄甲船デビューの第二次は鉄甲船6隻 VS 600隻、て書いてるなWIKIには。」
じゅえる「数的には毛利松山はまったく負けてない、ってことか。」

まゆ子「ついでに書いてる文を参照にすれば、焙烙玉と焙烙火矢によって第一次はボロ勝ちしたらしい。焙烙火矢ってのは火薬筒を括りつけた矢もしくは火薬でロケット推進する火矢だ。」
じゅえる「どっちなんだよ。」
まゆ子「いや単純なはなし、ロケット矢ってのは何処飛んでくか分からんから海の上で使っても当たらないと思うんだ。」
釈「今でもロケット推進するRPGは当たらないと言われますからね。風に吹かれて流されて。」

まゆ子「ついでに言えば、ロケット推進で火薬を使っちまえば当たっても爆発しないじゃんて思うんだ。炸薬量が相当少ない。」
釈「しょせんはロケット花火ですからね。船に効果が有る程の破壊力を出そうと思えば、そりゃあどでかいロケット花火が必要でしょう。」
まゆ子「火薬高いんだよ。硝石当時は輸入品だし。それをただ飛ぶだけで馬鹿みたいに浪費する武器なんて、勘定が合わない。」

じゅえる「なるほど。つまり火薬筒を括りつけた矢の方が破壊力があって確実で低コストなわけだ。」
まゆ子「いやーそもそもね、大砲だって鉄砲だって、揺れる船の上で撃っても当たらないのさ。だからおもいっきり近くまで船を寄せて発砲する。
 ロケット火矢の出番は無いと思うぞ。」

 

釈「毛利松山水軍は大砲使わないんですか。」

まゆ子「あー基本的にだ、日本の水軍海賊が使う船は小さい。小早と呼ばれる高速艇か関船と呼ばれる中型船でせいぜいだな。巨大な安宅船はそれこそ大大名くらいなもんだ。
 で、小型の小早はもちろん、関船だって大砲装備を考えて建造されていない。舷側に大砲を何十門も配置するポルトガルイスパニアの船とは違うのだ。
 安宅船でようやく大砲積載が可能なほどのレベルになるが、それこそ信長の鉄甲船が大砲積載設計をされた初めての日本船だってなもんで、他所の水軍が大砲を前提とする船を装備していたとは考えない。
 とはいえだ、大砲ではなく大口径火縄銃を大砲の代わりに積むのは可能だし、小口径火縄銃だって火薬増量すれば結構な威力となる。」

釈「その信長の鉄甲船だって、大砲を百門積んだわけじゃないんですよね。大きいのを2、3門、大鉄砲を何十丁か。」
まゆ子「大鉄砲も運用可能な数しか積んでないと思うぞ。片舷20門も有れば十分だと思う。というか、そもそも大鉄砲が当たるかどうかが問題だ。」
じゅえる「命中率悪いのか?」
まゆ子「大口径短砲身砲だからな。火縄銃と同じくらいであれば凄い命中率と称えるべきだろう。」

じゅえる「あーそもそもが丸い弾丸を用いる鉄砲は当たらないんだったな。」
釈「マスケットで確実に当てるには50メートル、戦列歩兵では敵の白目が見えるくらいの距離に近付いて撃てとさえ言われますね。」

まゆ子「まあ大砲みたいに大鉄砲も舷側固定して照準すれば、手持ちで撃つよりは当たるだろう。とはいえ、船だしな。」
釈「揺れますからね。しかも敵は動きます。小型の移動目標です。」
じゅえる「あー、そりゃなあ。」
まゆ子「ヨーロッパの海戦みたいに大型艦同士が舷側の何十門の砲で撃ち合うのと違って、快速の小型船を駆逐するのが鉄甲船の役割です。そもそも大砲ではダメなんだな。」

じゅえる「ああ、だいたい鉄甲船の運用方法が分かってきた。つまりは小型の銃砲で小型船を片っ端から撃ちまくるのが目的なわけだな。」
まゆ子「当然のことながら、鉄砲の射程距離にまで近付かねばなりません。が、それは毛利松山水軍も同じ。いやむしろ彼らの方から近付かねば攻撃すら出来ません。

 大型の鉄甲船から雨あられと鉛玉を撃ち込まれるのをかいくぐり、船の死角に滑りこむ。ま、彼らの得意技ですけどね。」

 

じゅえる「つまり水軍てのは、それこそ敵船に乗り移れるくらいの至近距離にまで接近するのが攻撃の常法なわけだ。そこで焙烙玉を投げ込むんだな。」
釈「だから、爆弾ですよ。爆弾であれば大型船でも効果的に破壊できます。」
じゅえる「うんなるほど。」

まゆ子「と思うだろ。だがそれは無理なんだ。」
じゅえる「何故?」
まゆ子「焙烙玉ってのは、つまりは爆弾なわけだが瞬発信管ではない。導火線を使った時限信管だ。」

じゅえる「あ。」

釈「つまり、敵船に接近するのはいいが、甲板上に確実に放り込まねばダメなわけですよ。遠距離から放り込む方法は?」
まゆ子「投石機、は日本の水軍が装備していたとは聞いたことが無い。焙烙玉を紐でくくってぐるぐるとハンマー投げするのが一番確実で遠くまで飛ぶ方法だと思う。
 だが高さを稼ぐのは難しい。大型船の高い甲板に放り込むのは、角度的にも難しい。」

じゅえる「なるほど。焙烙玉を使うにも知恵を使わねばならないわけだ。」
釈「でも当時の船は全部木製です。火薬筒の付いた矢を打ち込めば導火線式の爆弾でも効果有るんじゃないですか。」
まゆ子「うん。それでも遠くから射て当たるとは思わない。なにせ火薬筒なんてオモリをぶら下げてるからな。射程距離はせいぜい10数メートル、せめて20メートルくらいは欲しいのだが。」

じゅえる「20メートルといえば、弓道部が射ている距離よりちょっと短いくらいか。遠的は無理なのか?」
まゆ子「不可能とは言わないが、敵船からも射撃するからね。遠くから射るってのはつまりは敵船の死角から出ているってことだから、逆に殺られる。」
じゅえる「そうか、とにかく懐に入り込むのが先決で、射程距離は問題じゃないんだ。」

釈「焙烙玉を投げ込むのはさらに距離は短くなりますね。投げ上げるにしても、5メートルくらいですか。」
まゆ子「そうだなあ。関船であれば甲板に届くだろうが、安宅船では高過ぎて無理だろう。」
じゅえる「焙烙玉、効かないじゃないか。」
まゆ子「そういう事になる。普通に考えればね。知恵を使わなくちゃ。」
じゅえる「なにか手が有るのか。」

まゆ子「とにかく射程距離は諦めよう。いろいろ工夫をするにしても、資金力の大きな信長軍の方がハードウエア的に優れている。遠距離で撃ち合っても勝てない。」
釈「そもそもが遠距離戦はやる気が無いわけですよ。」

じゅえる「だが源平の壇ノ浦の合戦では漕手を射て義経大勝利だな。矢戦さが弱いわけではないだろ。」
まゆ子「そりゃそうだ。可能であれば遠距離から勝負を掛けたい。だが大型船相手だとそんなやり方だと片っ端から撃ち殺されるだけなんだな。

 

 やはり至近距離接近戦有るのみ。」
釈「うん。」
じゅえる「つまり、至近距離に近付いて確実に大被害を与える方法が必要、てことか。それが焙烙火矢。」

まゆ子「でも私、焙烙玉も効果は有った、と思うんだ。」

釈「でも甲板は高いですよ。」
まゆ子「そうなんだけど、実は甲板で爆発しても大した被害にはならない。いや、人的被害は甚大なんだけど、船の航行能力を損なうほどの大爆発はさすがに無理。
 帆柱を折る事が出来るかすら定かではない。なにせ投擲重量が限られるからね。それに戦闘中は帆ではなく艪櫂での人力航行をしている。」

じゅえる「舷側にその為の穴が有るだろ。そこに放り込めば。」
まゆ子「そりゃ当然するだろうが、敵船だって無防備じゃない。鉄砲で待ち構えているよ。成功率は2割以下だろうが、やる価値は有るな。」
釈「どう転んでも命を盾に突っ込むしか方法は無いんですよ。それを勇敢にやってのけるから水軍の名が高まるわけです。」
じゅえる「海賊だからな。それで、」

まゆ子「うん、焙烙玉を効果的に使う方法だ。普通にやっても甲板上に放り込めない。舷側に投げても跳ね返って海に沈む。ちょうどいい爆発時間で放り投げるってのは、自滅の可能性の方が高い。
 ある程度長い導火線は絶対に必要なんだ。」
釈「投げるタイミングってものがありますからね。特に小舟で急速接近するなんて高機動してたら、舟も安定しません。」

まゆ子「というかさ、さっきも言ったように船の舷側は板なんだよ、木なんだ。弓矢は刺さるさ。」
じゅえる「うん。   あ、そうか、弓矢を打ち込んで焙烙玉を引っ掛ける足場みたいなものを作ればいいんだ。」

まゆ子「その方法も有る。ガイドとして紐付きの矢を打ち込んでもいい。でももっと単純には、鈎の付いた焙烙玉を投げて木の板に食い込ませて引っ掛けるて方法が有るな。」
じゅえる「なるほど、とにかく舷側に焙烙玉をぶら下げればいいんだ。鈎でなくても、そうだな斧とかツルハシとかそんなものをぶっ込めば。」
釈「まあさすがにそこまで近付いたら船がぶつかって小さい方がひっくり返りますが、鈎で引っ掛けるのが一番いいですかね。」
まゆ子「確実を期すならば矢を打ち込んだ方がいいと思うが、そこまでの時間的余裕は無いだろう。鈎だろうな。」

釈「そして、信長水軍は大敗北を喫した。」

 

じゅえる「つまり信長の鉄甲船は鈎付きの焙烙玉と焙烙火矢を防げばいいわけだ。
 その対策が鉄板張りってわけだ。」
まゆ子「硬くてつるつるしてれば、鈎は引っかからないし、火矢も跳ね返しますからね。」

 

じゅえる「しかし、鉄砲大砲への防御力ってのは本当に要らないのか?」
まゆ子「要らないというよりもさ、重くて船がひっくり返りますよ。」
じゅえる「いやそうだけどさ、弾は貫通しないのか。」
まゆ子「鉄甲船は、つまりは装甲板として考えれば軟鉄でなく鋼鉄板でなければならない。しかも鉄砲玉を跳ね返す厚みが必要。
 大口径の大砲を防ぐにはやっぱ10センチくらいの厚さは必要だろ。木造船にそんな装甲は論外だ。」

釈「いやそもそも10センチ厚の鋼鉄板なんて作れませんよ。1センチくらいでなんとかなりませんか。」
まゆ子「いくら昔の大砲が威力ないと言っても、1センチ厚では完全防御可能かわからないな、というよりもそんな重たい板をどうやって船に装着するのだ。」
釈「うう、海に浮かべる前に建造すら無理ですか。無理ですよね、木の柱が持ちません。」
じゅえる「ああそうだった、当時は全部人力で作ってるんだったな。1センチ厚でも1メートル大の板なんて扱えないな。」

まゆ子「だいたいその鉄板自体が機械力でなく人力で作ってるんだ。金槌でトンカンと鍛造する。でかい板なんて論外だ。」
釈「つまりは、鋼鉄の薄い端切れを鋲で打って貼り付ける的な、表面にちょろっと鉄がくっついてるものなわけですよ。」

じゅえる「使えねえな、手工業時代。」
まゆ子「いやー完全装甲軍艦なんて、19世紀にならないと本当に使えるようにはならないよ。しかも外洋戦艦なんて、よっぽど後にならないと出てこない。」
じゅえる「ペリーの黒船は?」
釈「あれ木造蒸気船です、黒く塗ってるだけで。鋼鉄装甲を持った戦艦となると、日本では「甲鉄」ですね。1864年就役1358d装甲は錬鉄製最薄部32_ですよ。」
じゅえる「あはは、信長装甲むりだな。」

 

釈「とまあそういうわけで、装甲板は無理なのです。」
じゅえる「でも火縄銃くらいならどうだろう?」

まゆ子「あー世間一般の研究だと、信長の鉄甲船は鉄板3_くらいだろう、ってはなしだ。でもこれでも船全周に張るには重すぎる。なにせ表面積めちゃくちゃ大きいからね。
 重要部3_、舷側1_程度の厚さではないだろうかな。」
釈「重要部ってのは、」
まゆ子「そりゃ甲板上の防盾さ。鉄砲撃つ人間を防ぐのがまずは肝心だろ。」
釈「そうですね、敵も火縄銃に大鉄砲を使うと考えれば、何より射手の保護が肝心ですね。」

まゆ子「もともと船は木の厚板や角材で出来ている。それなりに防御力は高い。薄い鉄板張りで弾を防げないにしても、変形で弾丸のエネルギーを消費してしまえば木材装甲がちゃんと止めてくれる。
 鉄板1_厚でも無力だったとは思わないな。普通の火縄銃相手なら。」
釈「ましてや主に考える効果が焙烙玉を引っ掛けるのを防ぐのであれば、ですね。」

じゅえる「大口径の大鉄砲は、でも防げないだろ。」
まゆ子「まあ、敵に撃たれる前にこちらから撃つのが一番上等な防御策だろうね。

 その点に関しては鉄甲船の装備もちょいと変えた方がいいと思う。大砲数門に大鉄砲多数、という風に考えられているが、たぶん狭間筒多数の方が適していると思う。」
釈「狭間筒とは、長距離狙撃用の大型火縄銃ですね。一般火縄銃よりも口径が大きく銃身が長く、重量も10キログラム以上あってとても一人では扱えない。
 これを大鉄砲と呼んでも特に問題はありませんね。」
まゆ子「普通は大口径の大砲もどきを指すのだが、単純に大きな鉄砲と思えば定義的に問題ないな。

 で、一般の火縄銃が命中率悪いって思い込みに反して、これは狙撃用だ。なにせ銃身が2メートル近くある。当たらない銃にこんなものは要らないさ。これは当たる。」
釈「遠距離から接近する小舟を狙撃していれば、敵に大鉄砲を使わせずに済む。
 死角を突いて懐に飛び込んだとしても、鉄板張りで焙烙玉が引っかからない。

 なるほど、これなら無敵ですね。」

 

じゅえる「特攻、ってのは海賊はしないのか?」
釈「ボートに爆弾を積んでぶつけますか。たしかに不可能な戦術ではないと思いますが、どうでしょう。」

まゆ子「その為には乗員を犠牲にしなければならない。確実に攻撃する舟の乗員は死ぬ。
 現場で味方の舟に乗り移るなんて器用な真似は鉛玉の嵐の下で出来るはずが無い。
 ま、この時はそこまでは考えなかったってことだろうね。大安宅船がどんどん使われる海戦が多発すれば、そういう戦法は当然に辿り着いただろうが。」

釈「だいいち戦闘中の大型船の銃弾をかいくぐって接近するには舟足が早くないといけないですからね。強力な漕手が何人も必要です。これが全部死ぬとなれば、」
じゅえる「海賊衆としては間尺が合わないわけだ。」

まゆ子「たぶんね、これはいわゆる李舜臣の「亀船」がその戦法を取ったんじゃないかと思うんだ。

 亀船ってのも実体がよく分からない存在なんだけど、人力でオールで漕ぐ船で、天井装甲があり、船首に大砲が1門付いている、これは正しいらしい。
 なぜ天井装甲が必要なのかといえば、日本兵が上から船に乗り移ってくるのを防ぐため。その為ご丁寧にも亀の甲羅にトゲまで生やしている。

 てことは、これはかなり小さな船だ。関船よりも小さい小早程度だろう。間違っても安宅船みたいな大戦艦ではない。」
じゅえる「上から日本兵が降ってくるんだからな。そりゃあ背の低い船だろう。」

釈「甲羅で上が塞がれてますから、前を見るのも難しい。操船も困難だったはずです。それに大砲を1門搭載するのもやっとだったはずです。自由に照準を定めるなんてできない。」
じゅえる「まあ当時の大砲を搭載した船は、おおむね照準には苦労するんだが。露天甲板に据え付けてでもないと。」

まゆ子「亀船は舳先に1門を据え付けて、とにかく至近距離で舷側の喫水線あたりをぶちぬくのに特化した船、と考えると照準はどうでもいい。いや、砲弾の再装填すら必要ない。
 日本船に体当たりして1発ぶっ放してそのまま逃げる。それだけだと考えると、それなりに狙い所はいい。

 ただそんな近距離にまで近づけば、所詮は木製の亀の甲羅は火縄銃で軽く打ち抜かれるし、大鉄砲なんかだと確実に沈められる。焙烙玉を上から投げつけられもする。
 自殺攻撃やら特攻にほとんど等しいと考えていいな。まあ当時の水軍の戦法はそんなのばっかりだけどさ。」

 

 

 

【戦列歩兵少女地味子】12/11/10

釈「というわけで、くっちゃりぼろけっとあしどりむの「スーパー地味子大戦」から移動です。

 テーマは、「戦列歩兵少女地味子」!」

 

まゆ子「あー、というわけで高校で女子マネが衰退した男子戦列歩兵部を存続させる為に女子チームを作ることになります。

 主将は行きがかり上女子マネ、ま本人は痛いの嫌なんだけど、それから金髪外人子は戦列歩兵の本場だからという訳の分からない理由で入れられます。
 病気子はさすがに無理だから衛生兵になります。衛生兵の役は非常に大事です、戦列歩兵ゲームでは。」

じゅえる「そもそもそんな痛いプレイに人が集まるわけ無いだろ。どうするんだ。」
まゆ子「そこは考えている。

 まず男子戦列歩兵部は部員不足で壊滅寸前だ。部員がぼろぼろ脱落して、三年生部長は廃兵となり、二年生次期部長も廃人と化している。
 コレは皆、女子マネ子が悪い。戦列歩兵の甲子園「関が原」に皆で行こうー!、とかぶちあげて無理な試合を毎週のように行った結果、
 年間100回くらい戦死しているのだ。それは廃兵になる。」

釈「廃兵ってなんですかそもそも。」
じゅえる「まあ、戦争に行って身体障害者や精神がおかしくなった人、少なくとも生産活動には従事できないくらいのダメージを生涯負う事になった人ですかね。」
まゆ子「戦列歩兵ゲーム界では、バーチャルで身体的ダメージを喰らい続けてPTSDを負ってゲームが出来なくなった人の事を言います。
 そしてこれは戦列歩兵ゲーム界共通の悩みです。
 なんとなれば、本当の戦争であれば一回死ねば終了ですが、バーチャル戦争の場合何十回も死にまくるからです。」

じゅえる「そもそもなんでそんなバーチャルで痛い事するんだ。」
まゆ子「これは高度に進化した軍事技術の副産物です。

 時は21世紀、高度に進化したロボット技術とC4Iによる戦争の情報化により、ついに歩兵のロボット化に成功します。マジでFPSをプレイする感覚で戦闘が出来るようになりました。
 歩兵ロボットの普及や高度な防御力を持つボディアーマーの普及で、米軍では一般兵士に緊張感というものが無くなりました。TVゲームみたいなのが戦争、と思う馬鹿ばっかり状態です。

 とはいうものの、生身の兵士の需要が無くなるわけがなく、やっぱりちゃんと要るのです。が、戦闘任務を主とする事は無くなります。
 無くなるという事は経験も積めないというわけで、戦場に在りながらも未熟な兵士が常態化するわけですね。
 しかも敵はこれまでどおり、非対称戦争ですから発展途上国のゲリラ的戦争をいちばん弱い歩兵に向けてきます。」

釈「やばい話になりますね。それは。」
まゆ子「当然の事ながらそんな危険な任務をやりたがる兵士は居ません。当たり前です。
 そこで兵士にリアルな戦闘経験を積ませて突発的なゲリラ的戦闘に巻き込まれても対応出来るように訓練する必要が生まれます。

 兵士に緊張感を与える為にバーチャルな空間での戦闘訓練と、戦闘結果に連動して身体に強烈な痛みを与えるバーチャルパニッシャーと呼ばれる技術が発達しました。
 敵弾を受けると、マジで死にそうに痛い技術です。
 もちろん身体的な後遺症は残らないし、そもそも何度も死んでもらっては困るので徹底的に鍛え直しますから被弾確率も減って当たらなくなるから精神的ダメージもそれほどはありません。
 ま、つまり軍ではバーチャルパニッシャーのお世話にならないような訓練と教育をするのです。

 しかし、これを民間で応用した戦列歩兵ゲームは違います。

 なにせ好きでやってるのだから、年間百回戦死とか普通にあります。こんなこと繰り返してたらPTSDを起こして廃人になります当然に。
 またそれを緩和するためにバーチャルモルヒネというのもあって、戦死状態の強烈な痛みのダメージを散らす為に電子麻薬を用います。」
 これ自体には身体依存性常習性はありませんが、バーチャルパニッシャーとバーチャルモルヒネの複合効果を何十回も繰り返すとおかしくなる事が報告されています。

 とても危険なゲームなのです。」
釈「あははは、あっははははは。」
じゅえる「やめろお。」

まゆ子「というわけで、戦列歩兵ゲームの準備として身体にぺたっとバーチャルパニッシャーの電極を貼り付け、おむつを履きます。」
釈「おむつ、漏らしますか。」
まゆ子「ええ! そりゃ、特に気絶級のダメージを食らうとてきめんに。」

じゅえる「気絶するまでやるのか!?」
まゆ子「うにゃ、民間ではそこまでの強さのバーチャルパニッシャーは認可されていない。強・中・弱・お試しの4段階だ。」
釈「強、というのはどのくらいですか。」
まゆ子「金玉を軽く蹴られたくらい。」
釈「うはー。」
じゅえる「うはー、それって洒落にならないね……。よくわからんけど。」
まゆ子「およそ10分は身動きが取れなくなります。そこでバーチャルモルヒネです。

 ちなみに気絶レベルの場合はダメージよりはむしろ気絶で身体のバランスが取れなくなって地面にぶつかって事故ったり、吐瀉物で窒息したりの方が心配です。
 むしろ気絶しちゃった方が精神的ダメージは少ない。」

釈「あー、少なくともとんでもなく酷い事を考えているわけです。」
まゆ子「さらに言うと、強レベルでも何回か繰り返し受けると身体が気絶を学習してしまう事があります。びっくりして意識がトンじゃうんですね。
 だから、おむつは必須なのです。」
じゅえる「それが廃兵という奴か。」
まゆ子「男子二年生部員というのは、すでに弱レベルでも気絶して失禁するほどに症状が進んで戦闘どころではありません。
 下手すると授業中に思い出して失禁するくらいです。

 また現三年生部長もわざと片足引きずって日常も歩いています。
 これは戦列歩兵ゲーム界に広く見られる傷痍軍人モデル、という擬態であって、これをするようになった人間は心が折れてしまっています。」

じゅえる「心を折るまでやるなよ、ただの部活を。」
まゆ子「いや、女子マネはただちょっと甲子園に行ってみたかっただけなんだ。」
釈「あはははは……。」

じゅえる「ちなみにお試しレベルってのはどのくらい?」
まゆ子「弱と同じです。ただバーチャルパニッシャーはビデオゲーム機やコンピュータと連動するのに対して、お試し機能は銃みたいに押し付ければ威力を発揮します。」
 このくらいですよー、という見本ですね。」

釈「痛いんですか?」
まゆ子「冬場金属触ったらぱちっと電気が飛ぶくらい。」
釈「痛い!」
じゅえる「それ無茶痛いじゃないか。」
まゆ子「だから痛いんだよ。」

釈「ちなみに中は?」
まゆ子「タンスの角に小指をぶつけたくらい。」
釈「痛い!」
じゅえる「そりゃー2分くらい動けないぞ。たまったもんじゃないな。」
まゆ子「人によっては弁慶の泣き所ぶつけたくらい、とも表現します。骨身にぎしっとダメージ来ますよ。」
釈「うはー。」

まゆ子「まあバーチャルパニッシャーにはただのショックというのもありますから、それほど痛覚に頼るわけじゃないんだよ。
 ショックってのはそれを痛みと感知出来ないほど瞬間の打撃力を与えて、混乱に陥れる程度のダメージを与える。
 何が起きたか分からない、ここはどこだ状態になります。」
じゅえる「そっちの方がやばいだろ。精神的ショックはそこから来るぞ。」
釈「ほんとにバーチャルパニッシャーて上手く出来てる機械なんですねえ。」

まゆ子「他にも内蔵がじくじく痛むとか、顔面がひりひりするとか、涙ぼろぼろ出るとか焼けるように熱いとか、まあ様々です。」
じゅえる「生理痛も再現できるのか?」
まゆ子「ああ、それは男性に生理痛の感覚を与える教育とかで使います。高校の保健体育の授業でやったりしますよ。」
じゅえる「嫌ながっこうだなあ。」

 

じゅえる「つまりこのゲームは本来バーチャルリアリティの設備が無いと出来ないわけだ。設備に依存する。」
釈「女子高生が学校で出来るくらいに設備は普及しているわけですね。」
まゆ子「21世紀ですから。」

じゅえる「他のチームも高校生?」
まゆ子「成人、実業団、大学、高校。中学生以下のチームはありません、痛いから。」
釈「まあ廃人になるようなゲームをお子様にさせるわけにはいきませんね。」

まゆ子「もちろん国外にもチームはいっぱいあります。というか、ヨーロッパ・アメリカの方が本場です。」
じゅえる「当然だな。」
まゆ子「日本はだいたい100チームくらいあって、インタネットで接続して対戦しています。
 メンバーが百人越えるチームもありますが、機材の関係でだいたい10人前後がバーチャルするのが最大ですね。」

じゅえる「ちょっとまて、10人じゃ戦列歩兵は組めないだろせめて100、いや1000人は無いと。」
釈「そうですね。NPC使うんですか。」
まゆ子「あーNPCなんだけど、痛覚はログインしてるメンバーに直結してるんだな。NPCに当たると皮膚がつんつんします。」
じゅえる「隊列の維持ってのは、それでなんとかなるのか?」
まゆ子「うーん、

   そこはまだかんがえてない。」
釈「じゃあ、そこは未定ですね。でも隊列の維持と崩壊こそが戦列歩兵戦術のキモですから、いいかげんな設定はダメですよ。」
まゆ子「うんわかってる。」

 

まゆ子「というわけで、女子のチームは非常に少ない。日本で100チーム有る内の5個くらいだ。

 えーとまず有名ドコロで『チーム マリカルマスケッター』、『PSI GIRLs』

 『マリカルマスケッター』はマジカルとリリカルを掛けていて、魔法少女戦列歩兵です。白いマスケットを使います。
 ここの特徴は背嚢を背負わない。つまり身軽に運動できます。

 『PSI GIRLs』は超能力者ではなく、雑賀衆コスプレ隊です。火縄銃です。

 あともう一個くらい特徴有るチームを作っとくかな。よし、『ワイルドびっちーず』だ。」

じゅえる「『マリカルマスケッター』、ってまみさんか?」
釈「まみられます?」
まゆ子「あー、基本アレでいいかなと思ってる。黄色いミニスカートに帽子被って、白塗りのマスケット使って。」
じゅえる「史実で存在しない部隊でもいいのか。」
まゆ子「あー別に構わないんだけどね。というか、この戦列歩兵ゲームは短時間で終わるのが特徴なのだ。
 他のバーチャル戦闘ゲームが数時間、あるいは数日間連続でやるのに対して、戦列歩兵ゲームは最初から敵味方対峙の号令一下戦闘開始というあっさりとした試合です。」

じゅえる「で『マリカル』はどう違うんだ。」
まゆ子「まず背嚢が無い。重くてかさばる背嚢は戦列歩兵には不可欠の装備です。だがこれが無い。」
釈「戦闘には必要ないように思えますが。」
まゆ子「この戦列歩兵ゲームは基本的には史実に則って行われます。歩兵個人装備を携帯しての長期間長距離行軍の末に戦闘が行われる。そう想定しています。」
じゅえる「ああ、つまり本当の戦争をなぞってるんだ。」
釈「そりゃ普通の兵隊さんは個人装備が無いと死んじゃいますからね。大事なものを人任せには出来ません。」

まゆ子「そういう事なんだ。背嚢の個人装備は兵隊の命綱だから無いのは不自然。まあバックアップがちゃんとしてれば無くてもいいかもしれないけど、何時間も待機したり不意に移動して陣形の再編とかも行われるからやっぱ置いてけない。」
じゅえる「だが『マリカル』はそれが無いんだな。」
まゆ子「故に魔法少女と呼ばれています。」
釈「なるほど。」

まゆ子「ただしここのマスケットも普通に前装銃で普通に手間が掛かります。あと特殊な設定としてここの銃には銃剣が装備できません。」
釈「何故?」
まゆ子「格闘で勝てっこ無いからです。しょせんは女の子だからね。」
じゅえる「そりゃ銃剣装備の男の兵隊がチャージしてくれば、瞬間で粉砕だろうね。」

釈「ちょっと待ってください! ということは、我々が今作ろうとしている戦列歩兵チームもやはり、」
まゆ子「銃剣格闘?、無理!」
じゅえる「だな。」

まゆ子「そこで考えました。死のうと。」
じゅえる「なんだそれは。」
まゆ子「どうせ勝てないものならば擲弾を使って自爆して、敵諸共に死のうと。」
釈「また変な設定を。」
じゅえる「擲弾てのは有りなのか?」
まゆ子「ありですよ。ま、戦列歩兵相手に擲弾抱えて突入は無茶ですが。」

まゆ子「あと『マリカルマスケッター』が有名なのは、映画に出たからです。その名も「マジカルマスケッター」という青春映画で、ずぶの素人の女の子が戦列歩兵チームを作って大勝利する、というのが数年前人気になりました。」
じゅえる「ああ、『スゥイングガールズ』みたいなものだな。」
釈「それで少女戦列歩兵がブームに、……ならなかったわけですね?」
まゆ子「痛いもん。」
じゅえる「もっともだ。」

 

まゆ子「『PSI GIRLs』は雑賀衆の格好をして火縄銃で戦うチームです。普通の戦列歩兵と違って胴丸に陣笠の甲冑装備です。背中に旗指物も挿してます。
 ここも火縄銃装備だから銃剣格闘は出来ません。代わりに日本刀を用いて格闘戦をします。」

じゅえる「銃剣と日本刀だと、どっちが強いんだ?」
まゆ子「ま、普通に考えると長い方ですね。」
釈「銃剣の方が長いでしょう。ですが、日本刀装備のチームって他には無いんですか?」
まゆ子「有る。戦国武将チームは多いし、幕末奇兵隊チームてのもある。幕軍チーム白虎隊彰義隊新選組もある。
 ちなみに奇兵隊チームもちゃんと前装銃ですミニエー弾は禁止。」

じゅえる「日本刀装備の利点は?」
まゆ子「単純に格闘に強い。」
釈「銃剣の方が長いのに、ですか?」
まゆ子「日本刀装備の、いわゆるサムライスタイル戦列歩兵は文字通りに日本の侍の姿をしている。だが彼等が強いのは設定の補正ではなくて剣術の技術をマジで持っているからだ。
 つまり剣術技能を別に取得している。」
じゅえる「ああ、銃兵としての訓練とは別に、白兵格闘もみっちり鍛え込んでいるのか。」
釈「はー、それは大変です。」
まゆ子「たいへんだよ。だから『PSI GIRLs』も練習は大変なのだ。」

釈「火縄銃というのはどうなんです? やはりフリントロックやパーカッションよりはめんどうでしょう。」
まゆ子「まね。」
じゅえる「奇兵隊であればパーカッションでしょ、後装式禁止なら。雑賀衆コスプレだからだめなのか?」
まゆ子「ゲーベル銃とエンフィールド銃だと全然別なんだが、ま戦列歩兵ゲームに奇兵隊姿で出る時は当たらないゲーベル銃にされちゃうな。」
釈「史実とはちがうんですね。」

まゆ子「いや史実に則ると、日本式火縄銃だと命中率が妙に高いという特典が有るのだ。その分手間が掛かって発射速度が低いというデメリットもあるが、ともかく当たる。」
釈「そうなんですか。火縄銃も50メートルくらいだと思ってましたが、」
まゆ子「フリントロックはバネが強烈だから、撃つ時ブレるんだよ。火縄銃はそれがない。瞬発式と呼ばれるタイプだからね。
 ちなみに火縄銃にはもうひとつ形式があって、火縄をバネで火皿に叩きつけるのが瞬発式。逆に引き金を引くと火縄を火皿にじわっと押し付けて火を点ける緩発式がある。シアロックてやつだね。」
じゅえる「じわっと点けるのはダメなんじゃないかい?」
まゆ子「いや、日本のやつは引き金に触れると即ばんと撃っちゃうけど、緩発式は引き金をぐいっと長時間引かないといけないから暴発が無いんだ。集団戦闘ではむしろ向いている。

 が、瞬間的に発射する機構であれば銃をちゃんと保持できるから命中率が高いけれど、じわっと引くと長時間重い銃を照準し続けなければいけないから当たらないのだ。」
じゅえる「手がぷるぷるしちゃうんだな。」
釈「やっぱりダメですよ。なんで西欧はそんなの欲しがったんです。」
じゅえる「文化的なものと考えるしかないな。」

まゆ子「日本では弓でも狙撃するのが普通、まあ狩猟時には世界中どこでも狙撃なんだが、種子島と呼ばれる形態の火縄銃が日本人気質に合ったからこれほどの急速な普及を促したとも言えるのだ。

 というわけで雑賀衆をコスプレする『PSI GIRLs』も狙撃を得意とする。戦場の地形によっては散兵戦術を使うほどだ。」
釈「戦列歩兵ゲームなのに、それはいいんですか?」
まゆ子「いやゲームはたいてい、両軍が弾の届かない距離に一列に整列した状態で開始される。そこから散兵戦術を取るにはまず移動をしなくちゃいけないから、相当難しいぞ。
 でも狙撃で相手を削がないと勝てない、という不利がやはり女子にはあるのだ。」

じゅえる「男女別のレギュレーションで戦闘しないのか?」
まゆ子「ああ、基本戦列歩兵ゲームは男女区別しない。銃弾の前に男女の別は無いからな。むしろ痛みに強い女子の方がプレイ的には向いているとされる。
 それにどこのチームもメンバー集めには苦労するから、男女混合である事が多い。」
釈「女子だけのチームは非常識なんですね。」
まゆ子「前述の「マジカルマスケッター」という映画ではメンバー集めに苦労して、結局女子だけになってしまった、というのがユーモラスに描かれるわけだ。」

 

釈「『ワイルドびっちーず』てのは酷い名前ですねえ。なんですかここは。」
じゅえる「まあ女子チームだというのはよく分かる名前だが。それに、ミリタリー物だと俗語卑語を使いたがるという病気も有るしね。」

まゆ子「『ワイルドびっちーず』はその名のとおりに犬のコスプレをする戦列歩兵チームです。
 簡単に言うと、のらくろ猛犬連隊です。ちなみに男子チームもありまして、こっちはまんま『猛犬連隊』です。」
じゅえる「なんだ。ほんとに犬なんだ。」
釈「犬コスプレって、どんなのですか。というか猛犬連隊は38式歩兵銃でしょ。」

まゆ子「ま、装備なんてどうでもいいんだよ。
 ともかく軍服は白。首の所に大きな階級章をぶら下げてる。で、犬耳帽子を被ってる。
 隊長はのらくろ。黒い軍服黒い帽子です。背嚢は背負ったり腰のベルトにぶら下げてたり。」
じゅえる「そういうのも有りか。」
釈「といいますか、『マリカル』よりはよほどまっとうな部隊ですか。」
まゆ子「戦術的にはごく普通の戦列歩兵チーム。軍服も白でそれほど不利ということはない。」

じゅえる「強い?」
まゆ子「ぜんぜん。」
釈「そこは噛ませ犬にちょうどいいですね。」
じゅえる「だな。新生チームが初勝利を上げるにはちょうどいい。」

 

じゅえる「それで、主人公達のチームはどういう形態の戦列歩兵なんだ。」
まゆ子「元の男子歩兵チームがナポレオン戦争の頃の装備を使うから、それに準じる。ま、後で軍服エディットとかしますけどね。」
釈「エディットできるんだ。TVゲームみたいに。」
まゆ子「ま、そこはバーチャルですから。例えばイギリスの女王の近衛兵みたい格好のチームも居ます。」
じゅえる「なるほど、それは楽しい。」
釈「女の子はそこのところを頑張らねばなりませんよ。」
まゆ子「だから派手な軍服が使用可能というところで、戦列歩兵ゲームは世界的に人気があるんだな。」

じゅえる「でもさ、防具とか楯は無いのか?」
釈「塹壕とか掘れません?」
まゆ子「だから戦列歩兵ゲームは30分で終了するほどの短期決戦なんだよ、陣地構築はできませんしありません。」
釈「ちぇ。」
じゅえる「鋼鉄の楯は?」
まゆ子「だから背嚢を背負うんだよ重たいの。だいたい鋼鉄の楯と言っても、火縄銃の銃弾を防ぐだけの装甲厚なら20キロくらいにはなりますよ。」
釈「背嚢無しならなんとかなるんじゃ?」
まゆ子「+鉄砲も持っていきます。」
じゅえる「う、それはちょっと重いな。マスケットってどのくらいの重さ有るんだ?」
釈「4、5キロくらいじゃないですかね、でもマスケット銃は長いから大変です。

 あ、まゆ子先輩。戦列歩兵の図を探したら、背嚢背負ってる兵隊と背負ってない兵隊とが居るんですが、どっちがほんとでしょうね?」

まゆ子「それ外征軍と防衛軍の違いじゃないか? 補給をあてに出来る本国防衛軍はそれほどの装備は要らない。腰にでもぶら下げとく程度で。
 逆に外征軍そこ敵地だし、補給が十全に可能とは限らない。」
じゅえる「ま、重くない方が動くには都合がいいのは確かだ。とはいえ戦列歩兵の時代はともかく歩くからな。」
釈「そうですねえ、別に戦闘目的でない長距離遠足だって、随分と色んなものが必要ですからね。」

まゆ子「今から戦闘ですよ、重い物捨てて戦いましょう! と言われて捨てられるか、だ。」
じゅえる「うーむ、負けても確実に死ぬとは限らないしな。」
釈「というか、負傷したら薬や包帯、水が絶対に必要なんですよ。そんな物資を隊自体が十分に持っているか。」

まゆ子「というわけで、戦列歩兵ゲームにおいては背嚢は極めて重要なアイテムだ。

 だいたいね、戦列歩兵ゲームはゲームとはいえシミュレーションだ。理屈には合わないルールは許容しない。
 有り体に言うと、バーチャルだからほんとに死ぬわけじゃないという現実を利用してのチートがありうるのだ。
 長距離疾走射撃とかね。」

釈「なんですか、それ。」
まゆ子「戦列歩兵は隊列を乱さずに横一列で進軍して、マスケットの有効射程100メートルからさらに進出して50メートルという必殺距離に侵入してからが本番だ。
 だが命がいくつあっても足りないから、その距離に大人しく入っていく兵隊は居ない。隊列を乱さないよう叱咤して羊飼いみたいに追い込んでいく。これが指揮の技術。士官の役割よ。」

じゅえる「だが死んでも命が有るという現実を認めてしまえば、いきなり乱戦が可能ってことか。」
まゆ子「マスケット銃でも狙撃はできる。落ち着いてじっくり狙って、弾丸も特別な処理で装填して、さらに銃身がぶれないように固定すれば相当いける。
 だがそんなことをしている暇が無いから戦列歩兵という戦術が成り立つんだ。」

釈「なるほど、史実に則ったゲームでないと面白くもなんともないわけですね。」

じゅえる「そこで背嚢か。自分が何の為に戦争やってるかを強く認識させる必要があるわけだ。」
まゆ子「バーチャルバニッシャーはもちろんバーチャルリアリティ技術と連動して成り立っているわけで、身体機能に負荷を与える事で運動している感覚を再現する。
 しかし理屈に合わない負荷を身体に掛けると、精神がギャップについて行けない。
 「背嚢を背負っているから身体が重いんだ」と脳を騙さないと、頭変になっちゃうんだね。」

 

じゅえる「でもバーチャルで行軍て、身体はどうなってるんだ? トレッドミルの上で歩いてるのか?」
釈「ああ、物理的に身体はどうなってます?」
まゆ子「全身にバーチャルパニッシャーの電極貼って、バーチャルリアリティ用のスーツを着ます。これもパニッシャーと同じで筋肉に電流を与えて外部から運動させる機能を持ってます。
 で、顔にはヘルメットとゴーグル。これだけです。
 たださすがにバーチャルマスケット銃を仮想的に実現するのは、技術的に荷が重い。そこで木銃を用います。」

じゅえる「木銃とは、銃剣道のあの木銃か。」
まゆ子「ほぼアレと同じものと考えてください。あれは銃剣格闘の練習にも使えるよく出来たものです。」
釈「しかし、それでいいんですか?」
まゆ子「いいんです。だいたい米軍の教育シミュレーターでも弾抜き実銃を使うくらいで、この時代のバーチャル技術でもそこまで完璧な物体の感覚を再現するには至ってません。
 というか、バーチャルじゃダメなんだ。実銃でないと。」
じゅえる「慣れか。実銃に慣れてないといざという時に感覚の違いで上手く操作できない、て事が起きるんだ。」

まゆ子「そこで木銃です。マスケットの操作を行うにもやはり手に馴染んだ感覚が無いと、嘘くさい。脳がイカサマを見破ってしまう。」
釈「難しいもんですねバーチャルも。」
まゆ子「たいへんだよ。だいいち、試合で被弾したとしてもプレイヤーを外から見たら、びくっと引きつったままそこに立ち尽くす。という状態になります。
 派手に転げまわったりはしない。スーツがそれをさせてくれないんだ。事故防止の為に。
 だが体感では弾が当たった瞬間自分はぶっ飛んでいる。」

じゅえる「随分と高度な技術なんだな。」
釈「それは大変なハイテクですよ。」

まゆ子「あと、さすがに安全の為に防護ジャケットを着ています。ヘルメットはこれと接続して首筋を守ります。
 ジャケットは上からワイヤーで吊っていて、転ばないようにします。」
釈「安全策は十分なわけです。で、トレッドミルは?」
まゆ子「無い。本格的な訓練施設ではもっと凄いのを使っているけど、戦列歩兵は10名以上を同時にエントリーするからそんな設備は高校には導入出来ない。」

じゅえる「じゃあどうなるんだ?」
まゆ子「脳が騙されて、その場で一生懸命足踏みして行軍します。ちょっとおもしろい。」
釈「身体や頭が騙されてるんですね。」

じゅえる「つまりスーツとジャケット、天井からのワイヤが物理的な機材なんだ。」
まゆ子「10人分ありますが、高校レベルでこれ以上を望むのはバチが当たりますよ。だいたいワイヤと言っても実質ロボットアームだし。」
釈「ああ、テンションをリアルタイムで操作しなくちゃいけませんよね。コンピュータ制御で。」
じゅえる「金掛かってるんだ、見た目以上に。」

まゆ子「戦列歩兵ゲームにだけ使うわけじゃありませんから。インタネットでテニスとかも出来ちゃったりするんですよ。」
釈「おおー。」
まゆ子「あとバーチャルでエベレスト登ったり。色々便利です。でもバーチャルパニッシャーまで使うのは戦列歩兵部だけ。」

釈「しつもん! 学校備品を自由に使えるんですか?」
まゆ子「部であるから。同好会愛好会落ちするとちょっと苦しい。ましてや休部になっちゃうと、」
じゅえる「女子マネが焦るわけなんだな。」

まゆ子「ちなみに女子マネは戦列歩兵しませんよ。」
じゅえる「え?」
釈「なんで?」
まゆ子「だって、外部でコンピュータをコントロールする人必要だし、それも熟練者でないと駄目だし。女子マネの仕事だし。」
じゅえる「うあひどい。」
釈「卑劣な奴め。」

 

釈「ところで『マリカルマスケッター』は背嚢無しが許されるんですけど、これはいいんですか?」
じゅえる「そうだ、それはイカサマだろ。」

まゆ子「あー、まあイカサマだね。でも伝統的に許可されてるんだ。だいたい弱っちいしね。」
じゅえる「なんでそんなのが許されるんだよ。」
まゆ子「あー、綺麗な魔法少女が無残にも撃ち殺されるという美的感覚から。」
釈「イカサマだあ。」
じゅえる「ちっ! 男の考えそうなことだな。でもリアル死体は見たくないぞ。」
まゆ子「まあ、そうなんだけどさ。そこはR-18 という事で高校生参加のインタネットではそれほど酷い映像は生成しません。
 というか、普通グロ映像は生成しません。海外のアホなサークルくらいですそんなのは。」

釈「ただでさえ痛みで廃人化するのに、さらにグロ画像だとほんと自殺しろと言わんばかりですからね。」
まゆ子「そこを逆手に取って美少女戦死に特化したのが『マリカル』だ。映画になったのもそこに理由がある。」

じゅえる「スケベな男たちが美少女戦死を見る為に接続するわけだな。なんてこったい。」
釈「まあその為に、金玉蹴られるような痛みに耐えてるわけですから。」

まゆ子「まあ背嚢無しは主人公チームでも採用しよう。なにせ女子高生のド素人だからな。木銃持って行軍演習するだけでへばってしまう。」

釈「木銃持って行軍てのは、バーチャルの中では筋力要らないんですか?」
まゆ子「がっちり必要です。だから戦列歩兵部の練習の大半はリアルで木銃持って背嚢背負っての行軍演習です。」

じゅえる「PTAとか日教組とかはだいじょうぶなのか?」
まゆ子「そこはテーマに関わりますが、この世界では概ね好意的です。というか、民主国家の国民はお国の為に命を捨てる覚悟が必要だ、と愛国心教育をされているのです。」
釈「はあ。」
じゅえる「戦列歩兵と愛国心は、それこそ切っても切れない間柄だからな。」
釈「愛国心が無ければ、そりゃ逃げますからね。戦列歩兵。」

まゆ子「あ、それから戦列歩兵ゲームでは敵前逃亡は認められています。ペナルティ無し。もちろんチーム内での私刑も禁止です法律で私刑は禁止だし。」
じゅえる「それじゃあ戦列成り立たないんじゃないかい?」
まゆ子「戦列歩兵ゲームは、敵の戦列歩兵の陣形を崩すのが目的です。逃げて崩れるのは当たり前なのです。」

釈「そりゃあ、でも逃げるとどうなります?」
まゆ子「逃げた人はバーチャルパニッシャーの効果から排除されます。つまり痛くない。」
じゅえる「ふむ。」
まゆ子「その分、残ったメンバーの被弾率が上がってしまいます。これは痛い。」
釈「うわー、つまり、リアルで顔向け出来ないのですね。」
じゅえる「村八分にされてしまうな。」

まゆ子「というわけで、私刑の必要なんか無いのです。チームがただ単に崩壊するだけなのです。」

 

***********************

釈「しかし、主人公ちーむは、って主人公って誰なんですか?」
まゆ子「男だよ。」
じゅえる「そうなんだ。」
まゆ子「ま、今考えている構想だと、幼馴染の幼馴染。まあ幼馴染というのは誰の幼馴染かという問題が常に付きまとうわけで、ならば男を出さねばなるまいなと。」

じゅえる「論理的にはそうだが、それで許されるのか?」
まゆ子「女子マネは無能です。特にメンバー集めに関しては。」
釈「痛い戦列歩兵ゲームですからね。」

まゆ子「そこで主人公が校内の地味子に狙いをつけて勧誘していく。これは男であるべきだろう。」
じゅえる「構造的にはね。」
釈「でもそれでだいじょうぶかなあ。」

じゅえる「で?」
釈「ああ、はい。『マリカル』や『雑賀衆』には萌ポイントというのがあるわけですが、主人公チームはどうしましょう。」
まゆ子「あー、かんがえてない。」

じゅえる「考えろよ。」
まゆ子「考えた。このチームは本来男子戦列歩兵部の代理である。から装備も男子のをそのまま使っている。
 もちろんバーチャルだから体型に合わせて軍服のサイズを調整できるのだが、しない。ぶかぶかの軍服で戦います。」

釈「ああ、それは可愛い。」

 

***********************11/25

まゆ子「というわけで「あしどりむ」の方で「戦列歩兵ゲーム」のルールを開発したわけです。」

釈「よく出来ました。」
じゅえる「「スーパー地味子大戦」よりはよほどよく出来ていると褒めてあげよう。」
釈「わーぱちぱち。」

まゆ子「というわけで「戦列歩兵少女地味子」も新たなる展開を迎えたわけです。」
じゅえる「ええ、商品展開ができますね。」
まゆ子「ちがーう! 根本的質的転換が起きたのだ。何故気付かない。」
じゅえる「いや、ゲームがほんとにゲームになったわけだろ。うん、それは認めるよ。」
釈「はい。割とよく出来ていると思います。」

まゆ子「あー何故分かってくれないのだ君達は。カードゲームだよ、「戦列歩兵ゲーム」は。」
釈「はい、それも極ありふれたトランプで可能なルールです。」
じゅえる「良く出来てると言ってるじゃないか。」
まゆ子「だからさ、これはトランプを使ってやるゲームなんだよ。」
じゅえる「うん。」
まゆ子「でもトランプでなくても出来るんだよ。地味子はただの札だから。」

釈「あーそうですねえ。このルールであれば並べて死ぬ地味子の札は、実は地味子カードでなくても番号の付いた札であれば出来ますね。」
じゅえる「おお、そういう事か。つまりチェスの駒だ。カードでなくても人形でも出来るんだこのゲーム。」
釈「あ! そうか、それは商品展開として極めて大きな質的転換です。なるほど、素晴らしい!」

まゆ子「ああ、そこは考えなかった。でもフィギュアはいいな。なにせフィギュアだからね。」
釈「地味子フィギュア、これは売れますよ。」
じゅえる「まゆ子、わたしが悪かった。たしかにこれは巨大な進歩だ。」
まゆ子「あー、まあ。そうなんだけど、それとはちょっと違う方向を私は考えてるんだけど、」
釈「もっと儲かる手ですか?」

まゆ子「いや、そういう方向ではなくてだね。だがそれはいい線を行ってるんだけど、別にフィギュアでなくてもこのゲーム人間でも出来る。」
じゅえる「あ。」
釈「あ! そう言われてみれば、人間にゼッケン付ければ出来ますね。」
まゆ子「将棋でもチェスでも、昔から世界中で人間が実際に駒になる人間将棋は行われてきたのだ。」
釈「お祭りとかでやる奴ですね。」

まゆ子「地味子カードの代わりに地味子少女を戦列歩兵として並べる「戦列歩兵ゲーム」が実際に可能となった。SFガジェットを使わずに、だ。」

じゅえる「おー、なるほど。」
釈「じゃあつまり、この「戦列歩兵少女地味子」自体をSFから普通の女子高生モノに引き戻す事が出来る、ということですか。」
まゆ子「ゲームの展開はトランプと同じ、まったく変更の必要が無い。ルールも変える必要が無い。」
じゅえる「明るく朗らかな青春小説としての「戦列歩兵少女地味子」が出来るわけか。なんてこったい。」

釈「しかし一つ問題が有ります。ダメージです。バーチャルパニッシャーを用いずにダメージを演出する方法がありません。」
まゆ子「有る。弾着を使おう。」
釈「”弾着”、ですか。アノ?」
じゅえる「弾着ってなんだ?」

釈「映画とかドラマで使う、銃弾が当たった時にパーンと弾けて血糊が飛び散る、アレです。」
じゅえる「おお。アレは派手だな。でもアレって痛いのか?」
まゆ子「痛いと役者はやってくれない。」
じゅえる「だろ。」
釈「たしかに痛くないように出来ています。普通アレは火薬の下に金属板を敷いて服の下に隠すんです。

 でもですよ。普通の爆竹は手の中で弾けても特に怪我もしませんが、弾着は服が破けて飛び散るという大威力です。」
じゅえる「そうか、あれはそんな物騒な代物だったのか。」
まゆ子「確かに弾着は怪我をしない、ダメージを受けない安全なものだ。が、大型の爆竹が身体の上で爆発するんだよ。」
釈「私だったら、それは嫌です。怖いじゃないですか。」
じゅえる「もっともだ。地味子達怯えまくるな。」
まゆ子「ダメージ、足りない?」
じゅえる「いや。納得した。」

まゆ子「というわけでだ。「戦列歩兵ゲーム」をする事になった地味子達は、軍服に弾着を仕込み、ほんとに爆発する模造マスケットを担いで、ぼんぼん撃ち合う事になるわけだ。」
釈「絵的にはバーチャルゲームよりも遥かに、いやまったくもってリアルになりましたよ。これはいけます。」
じゅえる「ちょっとまて、マスケットも爆発するのか? 火薬詰めて。」
釈「いけませんか?」
まゆ子「そりゃマスケット発射するべきだろう。」
じゅえる「ほんとに火薬を装填するマスケット、なんてものを高校生が気軽に校庭でばんばんして良いのか?」

まゆ子「そりゃ金属製の筒を使った実際に発射可能のマスケットは使えないし、そもそもそんなもの買えない。
 だが塩ビ管とはいわないが、もっと火に強い素材で出来た、しかし弾体を発射するほどの圧力には耐えられない素材で作られた模造マスケットであれば問題は無いだろ。」
じゅえる「いや。まて、だが火薬だぞ。ばんばん撃ちまくって、」
釈「ほんとの戦列歩兵みたいに煙もうもうに出るようなシロモノです。」
じゅえる「いいのか、それ?」
まゆ子「お話だから。でも、そういう商品が出たら嬉しいなあ。」
釈「欲しいですねえー。買っちゃいましょうよ。」
まゆ子「マスケット、火縄でもフリントロックでもパーカッションでも、なんでも実現可能だよ。」
釈「いいですねえー、そういう世界になったら、どれだけ面白いでしょう。」

じゅえる「わかった。つまり資本主義の犬なわけだ。
まゆ子「アマゾンで「戦列歩兵少女地味子」仕様の模造マスケットが売られる日を目指そう!」
釈「おー!」

 

じゅえる「うんなるほど、だいたい分かった。しかし弾着はアレって爆発物取り扱い免許とか必要なんじゃないか?」
まゆ子「取ればいい。」
釈「ですね。この間危険物取り扱い免許を取った小学生、ってのがニュースになってましたよ。高校生なら爆発物だって取れるんじゃないですか?」
じゅえる「ううむ、なんというか、取る必要が無いから取らないわけだ。」
まゆ子「うむ、であれば女子マネ地味子は既に「戦列歩兵ゲーム」に必要な免許を持っている、という事にしよう。」
釈「なるほど、それはリアルな設定です。」

じゅえる「いや、だがね。普通に考えたら火薬使わないで音だけ出るマスケットでもいいんじゃないか? 免許要らないし。」
まゆ子「えーつまらないー。」
釈「いやですよー。」
じゅえる「いや、そこはほら、なんとかさ。」

まゆ子「ああ、まあそこはほら、火薬使うとカネ掛かるから通常の練習の時はぱちんとなるだけの音だけ弾着で。」
釈「しかたないですねえ。じゃあ練習中は口でばーんて言うんです。」
じゅえる「自衛隊みたいだな。」

まゆ子「ただ確かに弾着を簡単にやる方法とかは考えないといけないな。というか、せっかくの軍服が破裂しては困るのだ。」
釈「そうですね、本気でやるとすれば軍装にはカネかけますから、弾着は困ります。」
まゆ子「服の外にくっつけて服自体が破損しないようにしないとだめだね。」
釈「人間がほんとに戦列歩兵のコスプレをするんですよ。そりゃあ、お衣装にカネを掛けないと。」
じゅえる「そうだな。只のゲームやスポーツとは違う。格好がすべてだ。」
まゆ子「そうそう。だいたい勝つだけだったら人間も人形も要らん。トランプだけで幾らでも練習出来る。」

釈「つまり、戦列歩兵部では日常の練習だと弾着しないわけですよ。」
じゅえる「そりゃそうだ。正装で行進とかお祭りみたいなもんだし。」
まゆ子「お祭りはいいな。戦列歩兵部は地域のお祭には是非とも参加してバンバンマスケット撃つよ。」
釈「おおー。それは景気いいですね。お祭りの花ですよ。」
まゆ子「マスケットを使ったドリルとかもすると、楽しいぞ。」
じゅえる「イギリスの女王様の近衛兵とかがくるくる回すやつか。なるほど、それはかっこいい。」
釈「「マリカルマスケッター」とかは映えますね。マスケットドリル。」

まゆ子「その設定もらった! 「マリカルマスケッター」はドリルで大人気なのです。」

じゅえる「で、模造マスケットだが、」
まゆ子「ああ、もうめんどくさくなった。じゃあこうしよう。
 銃身は塩ビ製。まあなんでもいいが筒じゃない。というか、火薬は銃口の浅い所に入れる。
 というか、専用クラッカーを突っ込んで終了。撃鉄起こして引き金引けば、クラッカーがぽんと鳴る。」

釈「はあ。おもちゃですね。」
まゆ子「おもちゃだが、さすがに戦列歩兵専用クラッカーだ。火花煙がぼんと出るぞ。」
じゅえる「つまり、模造マスケットにクラッカーを銃口から押し込んでぱんとやる。それだけか。」
まゆ子「どうだ。これなら法的規制を食らう可能性も無いだろ。」

じゅえる「釈ちゃん、どうだろうね。一人が鉄砲型クラッカーを鳴らしても問題は無いだろうが、十人並んで発砲だ。」
釈「あー、たしかに問題ありますね。ではこうしてはいかがですか。
 つまり爆発物取り扱い免許が改正されて、遊戯用爆発物取り扱い免許というのが出来たんです。
 花火なんかは遊ぶのに免許入りませんが、集中的に使用する、また大量に備蓄する事が常態の戦列歩兵ゲームとかでは免許取得者が必要なんです。」

まゆ子「ふむふむ。妥当なところか。」
じゅえる「まあいいでしょ。でも一発ずつクラッカーを押し込むのは面倒だな。」
まゆ子「そこがいいんじゃないか、前装式の銃器は。」

釈「で点火方式ですが、要するにクラッカーですから紐を引っ張る機構が銃身内部に収まっているのです。
 で、引き金を引いたらきゅっと引いてパン。点火する必要はありません。」
まゆ子「うむ。だがパーカッション式なら、金キャップというのを撃鉄の所に嵌めれば、普通にパンと鳴るぞ。」
じゅえる「やはり、手元でも火花が散った方がおもしろいか?」
釈「それはそうでしょう。火縄銃であれば爆竹突っ込んでいて、火縄が叩けばいいだけですからね。」
まゆ子「先端のクラッカーと直結している必要が無いわけだ。」
じゅえる「つまりかっこつけだな。」

まゆ子「とはいえ、じゃあ手元でパンと鳴らない方がいい、というわけではない。いや扱いやすいのはいいんだが、つまらない。」
釈「でも火薬はお金掛かりますからね。」
まゆ子「まあそこは、爆発を使わなくても派手な音が出る機構くらいなんとでもなるでしょ。機械的にパンと鳴る機構装備です。」
じゅえる「ああ、おもちゃでなんか派手な音する奴あるから、アレだね。」
釈「練習中だとそれで十分ですよ。」
まゆ子「というか、それすら無い場合は口でパンと、」
釈「うう泣ける。」

じゅえる「それで、マスケットの発砲と弾着は関係ないんだよな、これは。」
釈「弾着は審判がトランプの判定を行なって、兵隊のナンバーを叫べば自分で発火、でいいんじゃないですか。」
まゆ子「うん。実はだ、そこを機械化しようと思うとちょっとやばい話になる。遠隔操作で爆発物に点火する技術、なわけだ。」
じゅえる「テロ専用。」
まゆ子「そうなんだ。」
釈「健全なスポーツであるところの戦列歩兵部にはふさわしくありませんね。」

まゆ子「そこで、歩兵は自分がやられたら自分で弾着のスイッチを押さなければならない。
 ま、遠隔発火だって簡単なんだけどね。無線じゃなくて赤外線のリモコン使えば、10人くらい軽く捌けるから。」
じゅえる「リモコンのスイッチを入れたら、任意の地味子兵の弾着が爆発。うん、それは最も望ましい方法だが、」
釈「でもテロ防止の為にちょっと使えないわけです。」

まゆ子「そこで、地味子兵が自分がやられたと知る方法だ。まリモコンでブルブル震える奴があればいいだろ。」
釈「ああ、大きなカフェテリアとかで使ってるビービー鳴いて震える機械ですね。アレって幾らくらいのものでしょうか。」
じゅえる「あれはー同時にいくつもの機械が散らばってても、ちゃんと識別出来るんだから、アレをポケットに入れてたら弾着のタイミングはすぐ分かるな。」
まゆ子「そこで自分でスイッチオンです。」

じゅえる「ところで弾着の爆破スイッチってのはどんな仕組みになってるんだ。ハイテクなのか?」
釈「インタネットで弾着の作り方を調べてみましたが、あれは単純にムギ球のフィラメントです。」
じゅえる「ムギ球ってのは、えーとクリスマスツリーに付いているちっちゃな電球か。今じゃあLEDに取って代わられてるな。」

まゆ子「あれのガラスの殻を割って中身だけ取り出し、爆竹をほぐしたものに突っ込んで電流を流す。
 通常1.5ボルトで光るんだが、でも殻を割られて真空状態でないから発火するわけで、瞬時に爆発するように9ボルト電源で一気に破裂させる。らしい。
 弾着作る人によって違うんじゃないかな細部は。」
じゅえる「9ボルト電源てのは?」
まゆ子「角型電池。1.5ボルトの小さな電池が6個入って9ボルト。最近は使う機会が無いかなあ。」
釈「ラジコンカーとかはどうでしょね?」
まゆ子「角型電池って高い割にすぐ切れるからキライなんだよ。でも充電池だったら、便利いいのかなあ。」

じゅえる「ま、とにかく角型電池を直結すれば爆発するわけだ。」
釈「単純に、電線つなぐだけでOKです。小学生でも点火できます。」
じゅえる「弾着の作り方というのは、どうなんだ。爆竹ほぐしてとかをラノベなんかで書いちゃうとやばいだろ。」
まゆ子「あー、そこはさすがにちまちまと作るのがめんどくさいから売っているということで。
 なにせ戦列歩兵ゲームはばりばり撃ちまくってじゃんじゃん死にますから。自作で爆竹使って、てのは割が合わない。」
釈「映画の撮影用に売ってるんじゃないですか? でもまあ、この物語世界では戦列歩兵ゲーム用ということで、ちゃんと弾着用火薬が売ってるんですよ。」

じゅえる「で、血糊は?」
まゆ子「調べたところでは、あれは食紅とか専用絵の具とかをコンドームの中に入れて発破するらしい。」
じゅえる「コンドームか。」
まゆ子「薄さ、弾力、丈夫さ、破裂しやすさ。どれをとっても他に代わる物が無いらしい。」
釈「いいですね。コンドームを一生懸命引っ張って血糊を詰める地味子の姿は。」
まゆ子「自分でコンドームを買いに行かされるのです。」
じゅえる「うむふむ。

 ということは、つまり現実的にはまったく問題なく戦列歩兵は現実に出来る、ってことか。」
まゆ子「まあファンタジーということで、戦列歩兵ゲーム用の模造マスケット、専用クラッカー、専用爆発指示器、専用弾着火薬、が売ってるんだよ。」
じゅえる「その爆発指示器は弾着スイッチと一体化しちゃえ。
 スイッチを押さないと何時まで経っても震え続けるんだ。」
釈「いいですね。いつまで経っても押さない地味子が居て、左右の子に無理やり押させられるんですよ。」

じゅえる「やっぱ、チョンボはペナルティだから、死人はちゃんと死んでくれないとね。」

 

釈「でもですよ、バーチャルでなくなったという事は軍装はほんとのコスプレになる、て事ですよ。
 いいんですか?」
まゆ子「あー、ダメかな?」
じゅえる「ダメってことはないが、ぶかぶかの軍服ってのがリアルになると、歩きづらいし行軍できないし、ドリルなんて論外だぞ。」
まゆ子「ふーむ、ちょっと考える余地ありか。」
釈「切り貼りしてサイズを合わせるのはどうでしょう。お針子地味子を用意して。」
まゆ子「いや。あくまでも地味子連隊は男子部員不足を補うピンチヒッター的存在だ。男子部員こそが正規のメンバー。
 もし男子部員がちゃんと戦列組めるほどに揃った時、軍装が女子サイズだと困るだろ。」
じゅえる「そうか、金掛かるんだったな。リアルは。」

釈「でもー、それじゃあどうしましょうか。学校の制服でやるわけにもいかないし。」
まゆ子「そこで考えた。この学校の戦列歩兵部は伝統的にナポレオンスタイルなのだ。かっこいい。
 だから上着はそのまま着る。袖はまくって安全ピンだとか部分的に織り込んで縫い止めてサイズを合わせて。
 だがズボンはそういうわけにはいかない。さすがに大き過ぎてかっこうがつかん。」

じゅえる「ずぼんはね。」
釈「丈の長いのをむりやり折って、年上の兄弟のを着せられるような姿になってしまいますねえ。それは。」
まゆ子「というわけで、ズボンは履かない! 生足ブルマでブーツだ。」
じゅえる釈「おおおおー!」

釈「ちなみにブーツも合わないと思いますが。」
まゆ子「女の子だから皆ブーツくらい持ってる。無ければ普通のスニーカーだ。」
釈「とほほ。」
じゅえる「せめて靴くらいはなんとかして揃えるように考えようさ。」

 

 

 

 

 

 

【ゾックさんはハイパーチートメカなのです】12/06/11

まゆ子「聞き捨てならん話がある。ゾックさんが不当に貶められている。」

釈「ゾックさんと言えば、水中用モビルスーツのゾックさんですか、あのモビルアーマーとモビルスーツの過渡期の存在と言われる。」
じゅえる「ガンダムにさくっとやられるメカなんだから、今更不当もなにも」
まゆ子「不当なのです。第一ゾックさんは超強力ハイパーチートメカなのです。」
釈「はいはい。じゃあ増補版「ゾックさんはハイパーチートメカなのです」を始めましょう。

 で、何があったのです?」
まゆ子「いつの間にかフォノンメーザー砲が無くなってメガ粒子砲にすり替えられていた。」
じゅえる「はあ。」
釈「はあ。」
まゆ子「なんだ、その気の抜けたヤル気の無い声は。」

釈「その設定はもう何年も前にそうなっていたと思いますよ。少なくとも10年は前の」
じゅえる「うーん。でもさ、ゾックさんは最初のガンダムにしか出ないんだから、設定が変わろうがどうしようが意味無いんじゃないかい?」
まゆ子「許さん。」
釈「いや、それは許せないでしょうけどね。」

まゆ子「だいたいゾックさんは水中MSなのだから、フォノンメーザー砲は至極当たり前の兵装です。なんせ水中用なんですから。」
じゅえる「そもそもフォノンメーザーというのは、超音波砲でしょ。」
釈「はい。」
じゅえる「フォノンてメーザーになるの? というか、メーザーはマイクロウェーブでしょ。」
まゆ子「フォノンが、つまり音がメーザーのようにまっすぐ強力に飛んでいく、という意味だよ。ま、超音波砲という理解でまったく問題ありません。」

釈「水中ロボに超音波砲って、至極まっとうな兵装ですね。なんせ水中ではビームは使えませんから」
まゆ子「そうなんだ。ま、ビーム砲とはなんぞやという設定のアヤがあるのだが、ガンダム世界においてはおおむね水中ではビームは短距離にしか届かない事になっている。」
じゅえる「それは問題無い設定なんだ?」
まゆ子「今のところはね。でも放っておくと、水中でも大丈夫にならないとも限らないんだけどね。」
釈「ガンダム世界は公式設定くらい変わりやすいものはありませんからね。」

まゆ子「ともかくだ、これまで30年水中でビーム砲はほぼ使えないという設定は鉄板と思われている。だからゾックさんのビーム砲も水中では使えない。
 で、ゾックさんの武装はと言えば、頭部のフォノンメーザー砲1門、前後左右メガ粒子ビーム砲が8門、両手の爪、である。」

じゅえる「爪はいいのか?」
まゆ子「よくします。」

釈「はあ、そうすると頭部のフォノンメーザーをビーム砲に換えちゃうと、水中で使える武器が無いんですね。そりゃ大変だ。」
まゆ子「そうでしょ。水中用MSが水中で役立たずになってしまうのです。これを貶めていると言わないでなんと言いますか。」
じゅえる「ああ、そういう風に繋がるわけね。」

まゆ子「というわけで、最初のシリーズではちゃんと水中用として立派に設定されていたものが、ゾックさんが陸上で無様にやられたからこれは駄目メカ扱いにされます。
 で、頭のとんがりのフォノンメーザーの意味が理解出来ないから、これは対空砲だと解釈され、対空砲ならビーム砲だろうという設定の改変がされたわけです。」
釈「はあ、悲劇ですね。」
じゅえる「ちょっとまった。フォノンメーザー砲というのはそもそも実現可能なのか?」
まゆ子「は?」

釈「あーそれはー、人型巨大ロボが戦ってる時に無粋なしつもんですねー。」

じゅえる「でも音だぞ。音で相手の潜水艦やら戦艦やらを破壊できるものだろうか?」
まゆ子「知らん。」
釈「まあ、わかりませんねえ。」
じゅえる「音をぶつけてものを壊すというのは、でも不思議ではないよな。」
まゆ子「超音波で汚れを落としたりしますからね。しかしどの程度の威力を発生させられるかに関しては確かに考えるべきところはあります。
 そもそも、あまり極小の領域にエネルギーを集中すればプラズマ化しちゃいますからね、水が。気泡になってエネルギーが浪費されてしまいます。そうならない為には或程度以下のエネルギーの集中に抑える必要があります。」

じゅえる「じゃあ、そのちょっと抑えた領域で超音波を当てると、潜水艦撃沈とか出来るんだ。」
まゆ子「やってみなくちゃ分からないが、単純な破壊の場合はもっと効率的に標的と共振するとか気泡の爆圧でぶっ叩くとか、まあ色々考えようもあるでしょう。」
釈「水中超音波はもちろん実在するのですから、まあ普通ですね。クジラなんかは超音波でお魚捕りますから。」
じゅえる「まあ、普通にぶっ叩かれて五月蝿ければ、中の人目を回すからね。」
まゆ子「搭載機器や兵器にも深刻なダメージが発生しますね。そんなバカ音聞かされたら。」
釈「騒音は立派な公害です。」

じゅえる「しかし、うるさいだろ。」
まゆ子「音兵器ですから。」
じゅえる「そんな音使ったら、居場所バレバレではないだろうか? 水中兵器としてそれはいかんのではないかい。」
まゆ子「まあ、バレバレだろうね。」
釈「そこのところはどうなんでしょう。確かに音でバレるようでは困ります。」

まゆ子「まあ、フォノンメーザーはたぶん困らないと思うけどね。まずそんなものぶつけられたらソナーは死ぬ。」
じゅえる「うるさいからね。」
まゆ子「しかも早い。水中の音波は空気中と違って秒速1500メートルにもなる。射程距離も百キロくらいは軽く出るだろう。遠くまで届きすぎて困るくらいだ。」
釈「ちょっと危ない兵器ですね。流れ弾の心配をしなくちゃいけないてのは。」
じゅえる「クジラとか魚死んじゃうんじゃないか?」
まゆ子「うーむ、その可能性は極めて高い。現在だってソナーの音が大きすぎてクジラに影響が出ているのではないかと言われてるくらいだからね。」
釈「そこのところはどうなってるのでしょう? 対策はありませんか。」

まゆ子「まあ水中で核爆弾が爆発したって魚絶滅はしないから、上手くエネルギーを処理すれば大丈夫なのだろう。
 そうだな。むしろエネルギーがプラズマ化して気泡になるのを逆手に取って、標的の位置あたりでエネルギーを一度に発散するような、焦点とも言える距離があるとすればどうだろう。
 標的の位置で音波を気泡の爆発に変化させて、最大限の衝撃波を生み出して破壊する。
 これならどこまでも超音波が飛んでいくというのは防げるでしょ。」

じゅえる「超音波が直接戦艦の装甲板を抉り取る、てのよりは合理的かな。」
釈「そうですね。破壊力をちゃんとコントロールできるてのは、兵器として必要な条件ですよ。」
まゆ子「まあそもそもフォノンメーザーをちゃんと使ってるようにも思えないし、アニメ的観点からすれば水中ビームと水中超音波砲と描写が違う必然性も無いから、そこは謎ということで。」
じゅえる「ゾックさんの頭からなんかビームがぴーっと出る、でいいんだよ。」
釈「ただ水中であればメガ粒子ビーム砲であるのはよろしくない、てことですね。」

 

まゆ子「さて、そこで音が問題だ。実の所ゾックさんには潜水艦としてちとまずいところが有る。」
釈「ふむ。」
まゆ子「ゾックさんにはスクリューが付いていない。推進は足の裏についているなにか、を使うのだが、」
じゅえる「確かゾックさんは、歩くことができないんだったな。」
釈「ホバーが付いてますよ。陸上を浮上して移動します。歩行は考慮されていません。足がありますが。」

まゆ子「足の裏にはホバーとロケットが付いている。このロケットは凄いぞ。ザクの数倍のジャンプ力を持つというのが昔からの公式設定だ。」
じゅえる「それって、どのくらいのジャンプ力?」
釈「えーと、MSのジャンプ力と言えば。」
まゆ子「ガンダムが背中のロケットでジャンプして、ガルマのドップ戦隊を叩き落としていました。マッハ5で飛ぶ未来的超音速戦闘機をです。
 ゾックさんのジャンプ力が有れば、そのくらい出来ると思われます。」
釈「しかも、両肩前後左右に計8門のビーム砲。戦闘機なぎ払いますよ。」
じゅえる「こえ〜。それって、チート兵器じゃん。」
まゆ子「だから今回の題は「ゾックさんはハイパーチートメカ」なんですよ。」

じゅえる「あー、そうだなーそれはチートだなー。しかし、陸上は駄目なんだろ、アレ。」
釈「さっくりやられていますからね。アニメで。」
まゆ子「だからゾックさんは駄目メカだと言われている。好意的な人であっても、ゾックさんは陸上に上げて用いるのは運用の間違いだと指摘する。私もそう思う。

 だが、ゾックさんはそれでも陸上を移動できる能力を持つし、陸上で使うようにメガ粒子ビーム砲がこれみよがしに付いている。」
釈「変、ですね。」
じゅえる「失敗作なの?」
まゆ子「でも空飛べばハイパーチートメカだよ。出力と火力に関しては後のガンダムシリーズでも屈指の強力さだ。スペック的にはね。」

じゅえる「結局どうなんだよ。これは水中で使うメカじゃないのか。」
まゆ子「そこ焦らない。

 つまりだね、ゾックさんは足の裏にホバーとロケットを装備しており、水中も陸上もこれで移動する。
 ホバーの有用性はドムを見れば一目瞭然ですね、ちゃんと高速で陸上を移動できます。ただドムのホバーは空気を吸い込んで加熱して噴射するものです。
 ゾックさんのホバーも空気を吸い込んで噴射する。が、」
釈「が?」
まゆ子「水中には空気はない。」
じゅえる「当たり前だ。水を吸い込んで噴射……、出来るの?」
釈「えー、それはージオン脅威の科学力があればなんとかなると思いますがー、かなり難しいというか手品的な機構になるのでは。」

まゆ子「まあ、空気中と水中を同じ機構で移動するのはさすがに無理があるさ。だがロケットであれば、そんな条件の違いは無視できて推進します。
 ゾックさんは水中でもロケット推進ですね。」
釈「水中ロケットですかあー。」
じゅえる「あー、昔であればバカにされる設定だろうねー、それ。」
まゆ子「現代科学技術って素晴らしい!」

釈「ともかくです、水中でもロケットで推進できるのはこれはもはや常識! 旧ソ連開発で今はイランも使ってるシュクヴァルとかの水中ミサイルは、水中を時速350キロで”飛翔”いたします。凄い世の中ですねえ。」

じゅえる「ゾックさんもそんなに高速なの?」
まゆ子「いやーそこまで早くはないだろう。ゴッグさんはスクリューで時速80キロくらいだったかな? そのくらいじゃないかい。
 ロケットで水中を飛ぶんじゃなくて、あくまでも推進して泳いでる。」
釈「時速80キロというのは、かなり早くありませんか。」
まゆ子「早いけど、ガンダム世界の水中兵器としては並でしょ。」
じゅえる「あの世界では航空機はなんでも垂直離着陸が出来て、プロペラ機でも音速を突破するからな。水中でも無茶をするよ。」

まゆ子「ここでゴッグさんを引き合いに出したのは訳がある。ゴッグさんはスクリューであるのに対し、ゾックさんはロケット推進だ。
 速度的にはどっちが優れているという事は無いだろう。また核融合エンジンが生み出す巨大なパワーがあれば、ちょっとくらいの効率の低さを十分にカバーしてしまう。」
じゅえる「ふむふむ。」
まゆ子「だが厳然とした違いがあると思うのだよ。それは静粛性だ。」

釈「はー、なるほど。音ですね。」
じゅえる「そうか、ゴッグさんは静粛性を追求したスクリューで移動するのに対し、ゾックさんは派手な音を出して移動するんだ。」
釈「ゾックさん、危ないですよ。さすがに居所バレますよ。」
まゆ子「構わない。そこは運用だ。

 そもそもね、ゾックさんは水中工作用には出来てないんだ。なんせあのお手々でしょう。作業が出来るようには思えない。」
釈「ですね。」
まゆ子「純粋に戦闘用だ。しかし静粛性は期待されていない。つまりガンガン派手に撃ち合って敵を撃滅するのを期待される兵器だ。
 だから運用方法としては、現場までは大型潜水艦等に搭載して運ばれていき、戦闘時に発進。という形で使われる。」
じゅえる「しかし、それでも静粛性は欲しいだろう。」
まゆ子「低速移動時には或程度の静粛性はあるでしょ。高速時にはガンガン音を出すということで。」

釈「いやーしかし、さすがに潜水艦がそれは駄目ですよ。」
まゆ子「まあね。そこでもう一つの移動手段を使おう。ホバーだ。」
じゅえる「陸上を?」
まゆ子「いや海上を。もちろん言うまでもなく、ホバーというのは元々はホバークラフトをイメージした機械であり、これは海上から陸上にスムーズに上陸する為の移動装置だ。

 ホバー装備のゾックさんが海上を浮上して移動できるのは、当たり前過ぎる機能ではないだろうかね。」
釈「海上ですかー。はー、海上をホバーで走行。どのくらいの速度が出るでしょうか。」
じゅえる「ドムと同じくらいは出るんじゃないだろうかね?」
まゆ子「いやーさすがにそんなに早くは無いだろう。そうだねえ、水上艦艇それも高速艇と同じくらい出れば運用上OKなんじゃないかな。」
釈「時速100キロくらいですかね。それ以上出すと空飛んじゃいますからね。」
じゅえる「というか、飛んだ方が早いからね。」
まゆ子「ゾックさんは飛べるんだよ、ロケット装備だから。」
釈「そうでした。」

 

まゆ子「つまりゾックさんの移動はこんな感じになる。

 まず水中。潜水母艦から発進した際は静粛性を重視して浅くロケットを噴射させる。水を押しのける程度の推力でゆっくりと静粛に進んでいく。
 ゾックさんは純戦闘用機械だから、発進したら速やかに戦場に移動する。高速巡航が必要であるが静粛性は確保できない。また必要でもない。ロケットを噴射して水中を時速80キロ以上で高速移動する。
 もちろん随伴するゴッグさんと速度は同程度でないと、編隊が組めない。ゾックさんは水中で十分な速度で移動できるものと考えるべきである。
 しかしながら、ゴッグさんがあくまでも水中での戦闘を重視した兵器であるのに対して、ゾックさんは海上での戦闘も範疇に入っている。
 そこでジャンプ!」

釈「ジャンプ!?」
まゆ子「時速80キロも出てれば、トビウオみたいに海上を跳ねますよ。羽根が有れば飛びますよ。」
じゅえる「たしかに、ゴッグさんが跳ぶのはあまり考えたくないけど、ゾックさんはペンギンぽいからな。」
釈「ペンギンさんは海から陸に上がる時は高速で海面ジャンプをして陸に直接飛び乗りますよね。あれか。」

まゆ子「
 海面にジャンプして浮上したゾックさんは、空気を吸入してホバーを起動。海面を浮上走行する。
 この時、ジャンプした時のままの速度を維持しているから、直接時速80キロ以上で走行出来る。ホバー自体は浮上にのみ推力を用いるとして高速移動は無理かもしれないが、ロケットはもちろん海面上でも使用可能。
 適宜ロケットも併用してさらなる高速移動を行う。この際、もちろん水中での静粛性なんか考慮する必要は無い。」

じゅえる「そりゃそうだ。水中に居ないからな。なるほど、ゾックさんは水上戦闘艇だったんだ。」
釈「時速100キロ以上で海面を滑るように移動して、8門のビーム砲を乱射する。それはチート兵器です。」

まゆ子「もちろんこのホバーにも弱点はあって、止まれない。また機敏な動きをする事が出来ない。そんな器用な浮上装置ではないと思う。
 が、そんなのはどうでもよいのだ。なんせ海の上だから。」
釈「元々船ってのはそんなに小回り掛けませんからね。惰性が強く働きます。」
じゅえる「そもそもがロケットも付いてるんだ。いざという時は噴射して方向を変えればいいよ。」
まゆ子「いやいや、そんなことしなくてもホバーの推力をちと緩めて、足を水中に突っ込んでやれば即ブレーキが効きますよ。左右方向転換も思いのまま。
 いざとなったらまた海中に潜水してもいい。」

釈「べんりなきかいだ!」

まゆ子「さらに言えば、ロケット噴射で空中にジャンプして、対空迎撃も可能というハイパーチート。ま、普通は海面からビーム砲で迎撃出来ると思うけどね。」

じゅえる「なんかコレ、凄い兵器だぞ。」
まゆ子「まあ、凄いですね。とはいうもののだ、じゃあ連邦軍の兵器と比べてどうかというと、水上艦艇にビーム砲を搭載していれば互角、程度だろうね。」
釈「あ。そうか、船くらいの大きさがあれば、核融合炉積んでビーム砲搭載しても普通ですか。はーそりゃーそうだ。」

まゆ子「というかさ、ゾックさんはMSとしては馬鹿でっかい方だけどさ、船としてみればそんなに大きくはないんだよ。
 大きさや重量が戦闘力を決めるとすれば、普通の戦闘艇だ。ビームを使ってロケットで跳び跳ねるが、まあ常識的な存在だね。」
釈「戦争ってのは、相手があることですからねえ。

 しかしよくよく考えてみれば、ジオンの水上艦艇てのはほとんど知られてないですね。ビーム搭載の戦闘艇くらいあっても普通ですが、無い。」
まゆ子「ゾックさんがソレなんだよ。」
釈「はあ。」
じゅえる「極めて常識的な存在なんだな。」
まゆ子「陸上を二足歩行で戦うロボットよりは遙かに常識的だぞ。」

じゅえる「なぜ地上に上げた!」
釈「なんで、ジャブローなんかに上がったんだ!」
まゆ子「あー、それはー。」

 

まゆ子「というわけで、ゾックさん最後の謎。爪だ。」

釈「まあ、格闘戦はしませんよね。」
じゅえる「そこまで器用に動けない。第一陸上に上がったらのろのろしてるから、格闘どころではないぞ。」
まゆ子「いや、爪も海上で使おうよ。浮上中にホバーで高速移動している時に敵艦の脇をすり抜けて、船腹を爪でガリガリと。」
釈「あー、それは痛い。」
じゅえる「対艦用の兵器だったのか。でもビーム砲でぶち抜けばいいんじゃないかい。」
まゆ子「そんな乱暴な。どんな船でも沈めりゃいいというものではありませんよ。
 沈めるより拿捕した方が良い場合、また火器の使用を忌避すべき場合。もっと単純には脅して従わせる場合。
 こう、爪でガリガリとですね。」
釈「いたい、痛い。」

 

釈「ところで先輩。WIKIを見てみるとゾックさんには熱核水流ジェットとやらが付いていて、これで推進するとか書いてますが。」
まゆ子「どこに?」
釈「えー、足の裏ではないですよねえー。どこだろう?」
じゅえる「モビルスーツってのは、なんか訳の分からないところに不思議装備が付いているもんだよ。」
まゆ子「うん、まあ、どっか外からは見えない所に付いてるんだろう。水取り入れ口も見えないけど。」
釈「そうですねー、どっかになんかうまい具合についてるんですね。」

じゅえる「めでたしめでたしだ。」

 

 

【スペオペ宇宙海賊!】12/03/19

まゆ子「今テレビでは「モーレツ宇宙海賊」というアニメをやっている。」

釈「はあ、スペースオペラですよね。今時珍しい。」
じゅえる「女子高生がいきなり海賊になるんだね。まあスペオペだよね。」

まゆ子「春には宇宙戦艦ヤマトが新しく映画になって、来年にはテレビ放送もするそうです。新しいヤマトには女の子の乗員が増量です。」

釈「まあ女の子増量は正しい判断ですね。」
じゅえる「なんか、キャラがずいぶんと変わっているぞ。南部さんはキムタクの元祖みたいなキャラなのに、髪をばっさり切られてしまった。」

まゆ子「というわけで、スペオペを考えてみよう。」
釈「さすがにミーハーですね、まゆちゃん先輩は。」
じゅえる「ここがまゆ子のいいところなんだ。」

 

まゆ子「さてスペースオペラというからには、宇宙船でビュンビュン飛び回ってどんぱち砲撃戦をしなくてはならない。

 が! ゲキロボで書いちゃったように光線砲やらミサイルやらがまるで意味を持たない速度での戦闘というのが考えられるわけですよ。」
釈「ワープがジャンプ型なら通常空間での戦闘でいいんですけど、超光速航法が出現すると困りますよね。」
じゅえる「超空間通信とかの超光速通信法が実現するのなら、超空間電波砲とかがあってもいいんじゃないかな? 無制限に防御不能で超光速で直撃する光線砲。」

まゆ子「とまあそういうわけで、宇宙戦艦での戦闘というものは物理設定でどーとでもなるわけです。
 さて今回考証するのは、誰も見たことの無いスペースオペラを作っちゃおう、というのです。」

じゅえる「あー、なにかネタが有るのかな。」

まゆ子「そもそも宇宙船というのがダメダ、というのが私の結論だ。」
釈「まあ、宇宙船、超光速宇宙船というのが既に大時代的に間違っているだろう、とは思いますね。やはり転送ですよ。電波人間が正しいと思いますよ。」
まゆ子「つまり人格のデジタル化、人間存在の諸要素のデジタル化によって信号伝送が可能となる形になり、電波なり光なり超空間通信なりで伝送する方がよほど現実的と言えるのです。」
じゅえる「まあね。」
釈「有人宇宙船が太陽系を脱出するのと、脳機能の電子化置換えと、どっちが先か賭けの対象にだってなりますよね。」

まゆ子「しかしそれではスペオペが成り立たない。やはり生身の人間が宇宙を旅するからこそロマンが生まれるというものだ。」
じゅえる「ミックスしたらいいんじゃないかな。スター・トレックだって近距離転送はするんだから。」
まゆ子「でもスター・トレックの転送てのは、元データ破棄されるからねえ。」
釈「はあ、確かにあれは不条理な設定です。どんな仕組みかよく分かりませんね。」
じゅえる「ホロデッキから出られると、人間を何人も増やせる。というのは、至極便利な話なんだよね。禁じ手にするのは当然だ。」

まゆ子「どうしよう。20世紀的な生身の人間の冒険物で我慢しようか。」
じゅえる「あー、そうだなー、それはー面白くないなー。」
釈「確かに。21世紀の現代で考えると、それはまたいかにもウソっぽいですか。」
じゅえる「しかし死なない人間を描いても仕方ないというところは有る。だがその技術ギャップは埋めがたいなあ。」
釈「どう考えても人間の電子化の方が早そうですからねえ。」

まゆ子「宇宙でどんぱちが至極ウソっぽい、というのは今やもうSFをちょいと齧った者なら理解する、共有する常識なのだな。」
釈「うーむ、どうしたものでしょうかねえ。」

じゅえる「そもそもがだ、宇宙船がそんな簡単に民間人の所有になっていいものだろうかというのも有る。」
まゆ子「うーむ、惑星間宇宙船ならともかく恒星間宇宙船がねえ、たしかにとんでもないパワーを持ってるだろうから、地球の一個くらい普通に破壊できるだろうねえ。」
釈「そもそもワープってものは失敗すると宇宙が崩壊するくらいの危険行為ですよ。色んな作品においては。」

まゆ子「いやそもそも宇宙に地球人が拡散して植民すると考えていいものだろうか? そんな阿呆なことをしてしまうのだろうか?」
釈「うーむ、それは確かに。」
じゅえる「生物としての人間の能力であれば、行けさえすれば拡散するだろうが、それが経済的にペイするかと言われると困るな。」

釈「かと言って人間以外の宇宙人を出すと、それもまたスペオペとしてどうかと思いますねえ。」
まゆ子「宇宙人はねえ、ゲキロボで描いているとおりにあいつら訳分かんねえからなあ。」
釈「あ、そもそもからしてゲキロボはスペオペでもあるんですよね。」
じゅえる「歴然としたスペオペなんだが、宇宙船はゲキロボだからな。三畳一間に乗ってるんだから。」

まゆ子「つまりゲキロボがそのままでは全然スペオペではないから、今考えているのですね。」

 

***********************

釈「やはり船でなくてはならないでしょう。」
じゅえる「うーむ。宇宙戦艦だろうかねえ。主人公は女子高生?」
まゆ子「男ではないな。なら女子、大生?」
じゅえる「珍しいな。」
釈「はあ。女子大生宇宙戦艦艦長、てのは聞いたことも無い話ですねえ。それで行きますか。」

まゆ子「しかし、女子大生がなんで宇宙戦艦なんか持ってるんだ? というか、それ誰の物?」
釈「それはー、……宇宙戦艦ていくら位するものでしょうか。日本円で。」
じゅえる「いや、買えないから。」

まゆ子「一般民間人女子大生が操る宇宙戦艦であれば、敵は軍隊ということは無いわな。宇宙海賊か。」
じゅえる「いやちょっと待て、なんでどうして、どこに住んでるんだそのネーちゃんは。」
釈「宇宙で宅急便でもやってるんですか、そのネーちゃんは。」
まゆ子「いやー、貨物でもタクシーでも無いだろう。無意味だな。」
釈「さすがにそれは困りますよお。」

まゆ子「中古の宇宙船を買ったことにしても、それでは宇宙軍というのが存在する事になる。それは宇宙には複数の国家が有って戦争もしているし、宇宙戦艦が中古で出まわるほどにドンパチで使ってる。」
じゅえる「どういう宇宙なんだよそれは。」

 

釈「つまりは宇宙戦国時代。血で血を洗う激戦の渦中にあって、人は明日をも知れぬ命なのです。」
じゅえる「いや、それは無茶だろ。」
まゆ子「地球は悪の宇宙人によって侵略され、地球を放逐されて宇宙を放浪していく内に、宇宙をすみかとするようになり、宇宙海賊になりましたとさ。」
じゅえる「悪の宇宙人というのはなんだ。」
釈「それはかって宇宙に追放された地球人の一団が大宇宙の不思議パワーによって変化した異形の姿なのです。」
まゆ子「ふむ。それがいい。地球人は母なる地球から強制的に退去させられた種族なのだ。で、太陽系内にばらばらに住んでいる。」

じゅえる「恒星間宇宙は?」
まゆ子「それも有りにしよう。地球人は悪の宇宙人によって様々な恒星系に住む種々の宇宙人に売り飛ばされて銀河中にばらばらに住むはめになってしまったのだ。」
じゅえる「なんの為に? 食べるのか?」
まゆ子「あー、……どうしよう?」
釈「ペットとか?」
まゆ子「あー、いやそんな上等なものではない。言うなれば、ガーデニングの植物の一種だな。珍しい宇宙人を自分とこの庭に植えておこうという程度の。」
じゅえる「人間は植物か!」
まゆ子「とはいえ、ペットよりはマシではないかな。言うなれば地球人文明というのをガーデニングに移植したわけだよ。」
釈「宇宙人は気宇壮大ですねえ。」

まゆ子「というわけで、悪の宇宙人によって太陽エネルギー装置を与えられて自活していくようにされる。売り飛ばされそれぞれの宇宙に放された地球人は頑張って現地で地球文明を作りました。
 が、所詮は地球人の浅知恵で恒星間航行機能も超空間通信もできないのです。そんな技術は誰も教えてくれないし、地球人の能力では解明出来ません。
 そもそも気宇壮大な宇宙人の文明があまりにも進み過ぎていて、地球人のコンピュータ技術では解析できないのです。

 また宇宙人の方でもあまり巨大過ぎるエネルギー源を与えてはこいつら何するか分からない、というので太陽エネルギー装置しかくれないのだ。」

 

じゅえる「太陽電池なのか、それは。」
まゆ子「あー、そうだね。太陽電池だね。あと太陽電池を利用した食料合成装置だね。」
釈「宇宙に放り出す、というのはどういうことをされたんですか。宇宙コロニーでも作ったんですか。」
まゆ子「そんな優しい宇宙人が居るか。嘘みたいに簡単な宇宙船に何万人かずつ詰め込んで、太陽エネルギー装置でほそぼそと生きていくようにされたんだ。」

じゅえる「食料はいいとして、水や空気もエネルギーでなんとかなるとして、せめて衣類や薬品が無いと駄目だろう。」
まゆ子「悪の宇宙人のせいで、地球人は死なないようにされてしまったのだ。つまり一人一個ずつ体調管理ロボットを植えつけられて管理され、病気になったらドクターロボが勝手に治していくのだ。
 衣類はさらに単純。裸にスプレーを吹きかけると銀色の全身タイツが出来上がるのだ。」
釈「無茶な宇宙人ですねえ。」
まゆ子「まあ、買い手が付くまでのしばらくの辛抱なのだ。首尾よく売れればその宇宙船ごと売り飛ばされて、その恒星系の適当な無人の小惑星やらに連れていかれて、自らの手で開拓しなければならない。
 でも宇宙船に閉じ込められているよりは遙かにマシで広い。という塩梅。」

釈「しかし、道具や機械が無ければ開拓もなにも無いでしょう。」
まゆ子「だから太陽エネルギー装置だよ。太陽エネルギーで電気を作るのだが、これでレーザー光線を出して石や金属を切り出せる。精錬も出来る。
 ただの石ころ惑星にも都市が作れるのだ。太陽エネルギー装置さえあればね。」

釈「その太陽エネルギー装置ってのは、一人一個もらえるんですか?」
まゆ子「そりゃ簡易宇宙船に1個しか付いていないのだが、増える。」
釈「え」
まゆ子「植物と一緒で、エネルギー使わないで放っておくと自己増殖して増える。苔みたいなキノコみたいなものだ。太陽エネルギーを浴びて二酸化炭素を分解して酸素と有機物を合成する。食べられるのだな。」
じゅえる「美味いのか?」
まゆ子「それなりに。味も様々。」
釈「妙な機械ですね。というか、それはまさにキノコみたいな物なんですね。」

 

じゅえる「そもそもその太陽エネルギー装置というのはなんなんだ? えらく人間に優しいようだが。」
まゆ子「悪の宇宙人が地球人を飼う為に開発した、これさえあれば地球人は死なないだろうという最低限を保証する生命維持システムなのだ。

 そうだね、意志もあって運動もして病気や怪我を直す。衣服をスプレーする機能ってのもなんとかするか。キノコではあるがホヤみたいでぽろっと外れて動きまわるドクターロボになるのだ。」
釈「待ってください。それはつまり、有機物の循環を行うものなのですね? 排泄物や死体なんかも、」
まゆ子「うん、分解して食べちゃってまた合成する。とはいえ、完全閉鎖空間では無理があるから、宇宙船自体にも不足する物質を採集する機能が有ることにしておこう。彗星を齧るのだ。」

じゅえる「太陽光を浴びないとその機械は動かないんだろ。」
まゆ子「うん。だが簡易宇宙船自体の外装がその受光部になっているから、別に困らないぞ。光ファイバーで太陽光を引いてくるから。」
釈「レーザー光線もファイバーで導光ですか。」
まゆ子「うん。そうだな、ドクターロボから伸びている光ファイバーで、これで患者の肉体をぶった斬って開腹手術をするのだ。」
釈「レーザーメスか。」
じゅえる「そのレーザーメスを別の用途に利用できるわけだ。」
まゆ子「出力が高ければ石も切り出せるのだよ。砂を溶かしてガラスみたいにして道具も作れる。」

釈「衣類のスプレーというのは?」
まゆ子「あー、なんか粘液が出てくるところが有って、それを人体に塗りたくれば乾燥して布状の膜になって、それで衣服として使えるということに。
 これを平たく濡れば、紙や布の代わりとするものが作れて、テントや壁替わりにして家も作れるわけだ。

 乾いたら耐水性があるが、燃える。燃料にもなるのだが、宇宙船の中で燃やすと危ない。」
釈「まあ、とりあえず紙みたいなものは確保されているわけです。耐水性があるのなら、食器とかにも使えますね。」
まゆ子「ふむ。中に水を入れたら紙製容器でも燃えないから、鍋の代わりにもなるかな。」

じゅえる「それは長く引き伸ばして塗ると、紙みたいにべろっと剥げるのか。」
まゆ子「まあ、粘液同士であればくっつくけど、それ以外だとたいていはべろっと剥げるから、衣服としても使える。」
じゅえる「紙を作って、丸く巻いて糊でくっつければ棒になる?」
まゆ子「至極簡単に。」
釈「おお、それならば使い道がいくらでもあります。それは素晴らしい素材です。事実上木材は有るわけですよ。」
じゅえる「道具を作ることさえ可能なんだ。よし、だんだん見えてきた。」

釈「紙があるのなら、字を書く方法も考えて記録ができます。なにかインクとなるようなものは、:¥」
じゅえる「火が起こせるんだから、消し炭の木炭で書けるんじゃないか。」
釈「なるほど、水に溶いてインク作ってもいいですね。粘液をちょいちょいと混ぜてやれば、ちゃんと固化して紙に定着しますよ。」
まゆ子「便利な粘液だな。だが硬くはない。ナイフは作れないぞその粘液は。また紙くらいの強度しかない。まあ厚塗りをすれば、また紙同士を接着すれば板にもなりますが。」
じゅえる「ナイフは石でなんとかしたい。が、宇宙船内には無いな。」
まゆ子「残念ながら。人の骨はあるけどね。」

釈「それはやはりやめましょう。硬いものをどっかから調達しますよ。というか、光ファイバー! あれって硬くありません?」
まゆ子「あー導光用のね、そりゃファイバーは硬いが、折れていいのか?」
じゅえる「ドクターロボは光ファイバーを形成する透明粘液というのを持ってるんだよ。これで蜘蛛の糸みたいに透明のファイバーを随時形成してレーザー光線なり人体開腹なりをする道具になる。マジックハンドみたいなものだ。
 この粘液を取ってきて紙に塗れば、りっぱなガラス質の硬い道具の出来上がり、と。」
まゆ子「そんなところだろうかね。柔らかい紙を塗り重ねて木材みたいなものが出来て、さらにファイバー粘液を塗り重ねて様々な工具が作れる。刃物にだって成る。
 そりゃあ便利すぎるなあ。」

 

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じゅえる「で、そのキノコをお供に、地球人は宇宙のあちらこちらで人間文明を創り上げたわけだ。
 でもこのキノコが有れば、別に人類文明なんか作らなくてもいいんじゃない?」

まゆ子「いやそれは許されないよ。それに別の恒星系に連れていかれた人類には地球の植物の種やら動物やらが提供されて、いかにも地球ぽい環境を作ることを飼い主宇宙人から期待されています。」
釈「お仕事として地球再生をしなければいけないのですね。」
じゅえる「妙な宇宙人だなあ。というかガーデニングに一文明を用いるくらいだからな、変なんだな。」

まゆ子「というわけで、何百年もする内に人間は文明社会を作り出し、ドクターロボも数が増えて一人1台にも行き渡り、人間それをお供にするのが普通になります。
 キノコというか、キノコみたいのがちゃんと動いて人間の言葉を聞き分けて色々と便利に使えます。医者要らずでもあります。」

釈「ドクターロボキノコはどのくらいの大きさですか。」
まゆ子「太陽エネルギーを蓄えているから、かなり大きいぞ、直径1メートル高さ1メートル20センチくらいは有る。足の下にローラーがあって滑って動きます。手のようなものも有り、光ファイバーでレーザーを出してぶった斬ります。
 エネルギーはマザーキノコから有線で補給を受けますが、丸い頭を太陽に当てていれば1日もすればエネルギー満タンになります。
 食料生成や二酸化炭素分解などはマザーキノコがやりますが、もし壊れたらドクターロボが接地してその機能を果たす存在になり、また新しいドクターロボを生成します。」
じゅえる「任意の数作れるんだ。」
まゆ子「まあ、1ヶ月もすれば新しいのが生まれます。」
釈「便利ですねえ。」
まゆ子「まあ、レーザー使えないと色々と困るしね。」

じゅえる「で、主人公となる女子大生も持っている。」
まゆ子「一家に一台有ればいいけれど、女子大生は一人暮らしで宇宙戦艦を所有する事になるからね。」

じゅえる「その宇宙戦艦は、まあ地球人が頑張って創り上げたものだろうけれど、動力は何だ?」
まゆ子「あー、なんにしよう。この段階の地球人は自力でコンピュータまで創り上げる程に科学技術も進んでるしね。核でもいいぞ。」
釈「さすがに核分裂はかんべんです。なにか宇宙人が提示した素敵エンジンなんですよ。」

まゆ子「じゃあ、キノコ動力によるイオンロケット、いやプラズマロケットなのだ。もちろん恒星間どころか惑星間航行すら危うっかしい推力。さすがに元々無重力空間内にあれば、発進はちゃんと出来ます。」
釈「ですが、太陽エネルギーでは所詮、」
じゅえる「太陽帆船もおまけに付けよう。」
まゆ子「ふーむ、じゃあキノコの太陽エネルギー回路を人類科学が解析した結果、より大電力を発生させる事に成功したプラズマ機関なのです。」
じゅえる「出力はどのくらい?」
まゆ子「あー、推力50キログラムくらいかなあ。」

釈じゅえる「        。」

まゆ子「あ、動くよ50キロでも。イオンロケットの推力というのは小さくても長く加速出来るんだから。」
釈「宇宙戦艦の重量ってどのくらいです?」
まゆ子「あー、おおきいぞ。100トンくらいはあるんじゃないか。最大積載量で。」
じゅえる「百トンの宇宙船を50キログラムのエンジンで飛ばすのか。それが宇宙戦艦とな?」
まゆ子「駄目かな?」
釈「いくらなんでも駄目でしょう。非力過ぎますよお。」
まゆ子「ちぇー。まあ2000秒で1メートル加速するからねえ。23日間で秒速1キロに到達だ。すばらしいエンジンじゃないか。」
釈「そりゃはやぶさに使うなら凄いエンジンなんでしょうけどね、宇宙戦艦ですよ。いくらなんでもこれは無茶すぎるでしょう。」

じゅえる「キノコ動力禁止!」
まゆ子「ちぇええ。」
釈「せめてジェット機並の5トンくらいは推力出してくださいよお。」
まゆ子「そんな100倍も強力なエンジン使えないよお。」
じゅえる「使え!」
まゆ子「ええええ!」

まゆ子「あ、推進剤というのがありまして、それ抜きにエンジンなんか考えられないんですけどー。」
釈「すぺおぺの為です。そんなもの要らないエンジンです!」
まゆ子「やだーあ。」
釈「でもこれでも秒速1キロに到達するの5時間も掛かりますよ。無理ですね宇宙戦艦。」
じゅえる「なにか超凄いエンジンを考えろ。宇宙戦艦にならないじゃないか。」
まゆ子「しかしだね、これ以上凄いエンジンを載せると、エンジン噴射自体が犯罪的破壊力を持つ兵器になってしまうのだよ。ロケットエンジンが兵器だよ、そりゃ無いよね。」
釈「はあ。まあ、そうですね、このエンジンは大推力のまま何百時間も噴射し続ける奇跡のエンジンですからね。5トンとか無茶なんですよね。」
じゅえる「あ、釈ちゃん説得されるな!」

まゆ子「じゃあこうしよう。推力5トンの推進剤消費ほぼ無しの奇跡のエンジンだこれは。機体重量100トンを5時間半で秒速1キロにまで持っていく。」
じゅえる「だからそれじゃ駄目なんだったら。」
まゆ子「55時間で10キロだ。555時間で100キロだ。23日間の加速で秒速100キロに到達する超ロケットなのだ。」
じゅえる「それって、凄いの?」
釈「現在の地球製ロケットにはとても無理ですから。それ核融合ロケットですよ。」
まゆ子「しかも女子大生でも直せる!」
じゅえる「そりゃあ凄いエンジンだ。」
まゆ子「親切などこぞの宇宙人がプレゼントしてくれたのを、地球人がコピーして使っているんだ。宇宙人的にはロウソクで走るポンポン船並の低レベル技術だが、地球人にはなにがなんだか分からない超技術なのだ。」

じゅえる「しかし、大推力でどーんと超加速ってできないの?」
まゆ子「出来るよ。ペットボトルロケットだ。」
じゅえる「え?」
釈「推進剤を無駄遣いすれば、初期加速をどーんと大きく出来るのです。所詮は圧縮空気しか入ってないペットボトルロケットが、水という推進剤をぶちまけることで100メートルも飛んで行く大推力を発生させる原理ですよ。」
まゆ子「超ロケットの排気に推進剤の水かなんかをちょろちょろと流してやれば冗談みたいな推力が出るのだが、もちろん積荷は大半が水という有様になってしまう。」
釈「しかも水が切れれば加速も終わります。ペットボトルロケットみたいに短時間しか続きません。また加速終了時の最終速度自体は大して大きくもなりません。」
じゅえる「どういうこと?」
まゆ子「最初の5時間で出る1キロを稼ぐ為に推進剤全部数秒で無駄遣いするようなもんだ。まったく割に合わない。」
じゅえる「なんか、それメリット有るの?」
釈「地球の大気圏を突破する時にはとても必要な技術なんです。大重力の惑星から離脱するにはなんたって推力がべらぼうに必要ですから。」

じゅえる「なんとかしろ。」
まゆ子「へい。じゃあ、最初の加速はサービスということで、発進基地空港からビームを当ててサポートしてくれるということで。秒速10キロまで10分で推進ビームが押してくれます。」
釈「凄い便利サービスです。23日が21日に短縮されました。」

じゅえる「でも、宇宙戦艦が海賊なり敵艦なりと戦うのに、こんなエンジンでいいのか?」
まゆ子「無理!」
じゅえる「だろうな。」
まゆ子「だいたい、止まれと言われても止まるまで23日も掛かってしまう。」
釈「ですよねえ。停まりませんねえ。」

 

じゅえる「止まらない宇宙戦艦でどうやって戦争すればいいんだ。」
まゆ子「さすがに光よりはずっと遅いから、レーザー光線砲で。といっても射程距離に近づくまでが大変なんだけどね。」
釈「どうしますか、光線砲積みますか?」
まゆ子「そりゃ1基くらいは積んどかないと格好がつかないだろう。」

じゅえる「まて、宇宙戦艦100トンと言ったが、どんな大きさなんだこれ。」
釈「まあ、小さいですよね。」
まゆ子「20メートル級かなあ。」
じゅえる「ちいさ!」
まゆ子「なんせ100トンしか無いからな。えーとで船体重量13トン、キノコセット他生命維持関連および食料他人間用物資で7トン、推進剤および呼吸用酸素の元として水20トン。計40トンは無いと動かないとして。
 積荷は60トンという事になりますね。補修用の部品のストックも必要だし、乗員乗客が増えれば生命維持に必要物資も倍になりますが。」
釈「なにせ長期間飛びますからね。半年くらいは潰れますね。」
まゆ子「1航海にね。」

じゅえる「じゃあ、武装なんて積むスペース無いな。」
まゆ子「ミサイルトーピードなんか積んだ日には、1基5トンほどもありますか。長魚雷なら10トンですか。」
釈「この船は元は魚雷艇ということにしておけば、長魚雷5発搭載可能という事に。」
じゅえる「しかし、広い宇宙で5発の魚雷になんの価値があるというんだ。」
まゆ子「仕方ないじゃないか、宇宙戦艦なんだから。」

釈「簡易型レーザー光線砲を1門積んでおきましょう。取り外して野戦にも使えるような本来艦載用ではない小口径砲です。500キログラムくらいですか。」
まゆ子「あと榴弾を発射する迫撃砲みたいなのも1門積んでおこう。砲100キログラム弾薬1トンとささやかに。
 あと宇宙スクーターは必要だろう。小型ロケットで船体修理とかにも使えるマジックハンド付き。これが3トンくらいで。そして宇宙アンカーとワイヤーで、小惑星係留用に。」
じゅえる「それで宇宙戦艦を名乗るのはおこがましいぞ。」
まゆ子「いや、主砲は付いているんだよ。さっき言っただろ、これ以上凄いロケットにしたら破壊的威力があるって。
 これを主砲とします。」

釈「メインエンジンを主砲に転換出来るんですか。」
まゆ子「推進剤の水を投入して、噴射を徹底的に収束させ絞り込むと、戦艦の装甲も穿つビーム兵器になるのだ。この機能がある船はすべて宇宙戦艦扱いされるんだよ。」
釈「なるほど、一度目的とする速度に達してしまうと、エンジン暇ですからね。敵に向けてもいいわけですよ。」
じゅえる「いや待て、エンジンを砲に使えば、エンジン壊されるまで攻撃されるんじゃないか。」
まゆ子「そりゃそうだよ。宇宙戦艦なんだから。」
じゅえる「なんか思ったより遙かにやばい宇宙戦艦だな。」
まゆ子「まあまともな宇宙戦艦ならエンジン2基付けて、1個は前向いてたりするんだけどね。」
じゅえる「ビーム専用エンジンね、それが普通の設計だろ。」
まゆ子「だって貧乏な宇宙戦艦ですから。」

 

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じゅえる「そもそもだ、それは宇宙戦艦ではなく宇宙魚雷艇だろ。」
まゆ子「戦闘艦艇は全部戦艦なんだよ。」
釈「そうなんですよ。」

じゅえる「それは詐欺だ。まあともかく元は軍用の船だったものが、何故か女子大生の手に入ったんだな?」
まゆ子「そこになんか不思議を織り込んでおくと面白いな。」
釈「宇宙海賊のおじいさんが行き倒れていたのを介抱してやったら、御礼にくれたとかでは?」
まゆ子「それ採用ー。」
じゅえる「いや、それも無茶もいいとこだ。いかにおんぼろ宇宙魚雷艇と言っても、女子大生が買えるような金額ではないだろ。」
釈「そうですねえ、家が立派なのが建ちますかね。」
まゆ子「億だよな、日本円なら。」

じゅえる「なんでそんなもんくれるんだ。」
まゆ子「それは女子大生の人品骨柄が只者では無かったから。」
釈「運命のいたずら、いや天命なのです。」
じゅえる「まあ、そこは物語だしね。必然で、それ無しには話進まないんだからね。

 とりあえず海賊の爺いから譲られた、というのは良しとしよう。で、宇宙戦艦で彼女は何をしているのだ。」
まゆ子「まあなんと言いますか、とりあえず大学生と言ってもそりゃ未来の大学生ですからいつもいつもキャンパスに居るというものでもない。
 それにこの宇宙戦艦の性能はエンジンは普通にいいから、近くの地球人居留地まで数日で往復出来るのです。」
釈「まあ、2日で地球脱出速度にちゃんと到達しますからね。元から宇宙空間に居れば、便利に使えるでしょう。」

まゆ子「とはいえ旅客免許とかは持ってないから、営業として客を乗せるわけにもいかない。というか、貨物免許も無い単なる個人宇宙船操縦免許だ。」
じゅえる「まあ、営業許可が出そうにも無いな、宇宙戦艦だし。」
釈「そこは海賊御免状という手で。」
まゆ子「そこまでぱくりは出来ん。個人宇宙船免許と対艦兵器運用免許をもらってしまった。」
じゅえる「なんでそんなもんが女子大生に出るんだ。」
釈「そこは海賊がいっぱい出るんですよ。」
まゆ子「まあ、出るんだけどね。一般民間船護衛用武装船というのは結構多くて資格を取れば発行されるのだ。この宇宙戦艦もそんな感じで使用されてきたと思われる。」

釈「普通に戦闘をしてもスペオペになりませんよ。女子大生ならではのキュートなお仕事を開発します。」

じゅえる「ちょっと待て、核兵器というのはこの世界無いのか?」
まゆ子「無いよ。というか、地球人が必死で科学技術文明を復元して原子力を取り戻し始めた頃に、親切な宇宙人さんがやってきて「おまえたちそれはヤバいからコレを使いなさい」とエンジンもらったんだ。」
釈「なるほど。原子炉なんかで遊んでたらせっかくいい感じで育っている地球人が死んでしまいますからね。」
まゆ子「まあ、エンジン砲は核兵器並に強力ですから別に困ってません。推進剤の水が有る限りは連続発射も可能です。大型船舶ならエンジンも3つ4つ積んでるから、すごいよ。」
釈「大型船なら護衛要らないんじゃないですか、それ。」
まゆ子「そういうわけにもいかんよ。気軽に船体振り回せないし。エンジン砲を自由に使えるのは、エンジンを砲座に載せて自由に照準できる軍艦か、船体が軽くて自由に手軽に姿勢制御出来る小型戦闘艇だよ。」

じゅえる「大型船には大型エンジンじゃないのか?」
まゆ子「いや、全部同じエンジンだ。推力の不足は数で補う。巨大旅客船ともなれば8基もエンジン付いてる。」
釈「でもそれじゃ800トンのあんまり大きくない船ですよ。」
まゆ子「そうだなあ、じゃあエンジンのグレードがちょいと違うことにするか。ともかく地球人科学ではこのエンジンの改良とか大型化は困難なのだ。デッドコピーしか出来ない。」
じゅえる「なんで親切な宇宙人さんはこのエンジンくれたんだ? 無くてもいいんじゃないか、原子炉取り上げて。」
まゆ子「そりゃ、地球人がばらばらの居留地で暮らしているのを交通出来るようにしたら、文明もっと発達して面白いじゃないか。」
釈「おもしろいから、ですか。」
まゆ子「うん。」

じゅえる「そうだなあ、じゃあこうしよう。女子大生がもらった宇宙戦艦はちゃんとしたエンジンが付いてるけど古いタイプで推力低いんだよ。最新型なら4倍も強力だったりする。
 しかし旧式だとはいえエンジン砲の性能としてみれば今でも現役バリバリの出力を叩き出すのだ。まあエンジン取り外して砲として売った方が儲かるんだけどね。」
釈「そんな弱っちい戦闘艇なら、海賊に負けちゃうじゃないですか。」
まゆ子「そこらへんが女子大生が持ってる船というかんじでいいじゃないか。」

じゅえる「そうだな、じゃあ大学の授業というのも通信教育的な感じで、教室にテレビ画面を置いて女子大生は顔だけで出席しているという事で。」
まゆ子「うん可愛い。」
釈「そういう感じの学生は多い、ってことなんですね。」

まゆ子「つまり女子大生は大学のキャンパスの仲間関連の輸送を個人的にやってるのだ。」
釈「どんぱちはどうしましょう。そんな平和的な宇宙船を何者が襲いますか?」
じゅえる「そりゃ船くれた爺いが謎の財宝を、」
釈「死に損ないの爺いがそんなお宝をですか?」
じゅえる「うん、なんか変だが海賊ものはたいていそんな感じだ。ワンピースだって。」

まゆ子「いや、爺ちゃんのお宝はこの船だ。」
釈「はあ。」
じゅえる「船はお宝だけどね。」
まゆ子「どうしよう、宇宙エイハブにでもするか。」
じゅえる「あーそれもマンネリだなあ。巨大宇宙生物は無しねなし。」
釈「では地球人だけの世界で、あーあまり大げさなお宝は無いですかねえ。」
まゆ子「やはりここは、幻の人類の聖地地球への海図がお宝ということで、」
じゅえる「却下。こんな船で恒星間航行は無理だろ。」
釈「そこはどうなんですか? 地球には帰れないんですか?」

まゆ子「いや、実は地球には帰れないが、地球から出荷されてくる人は結構居るんだ。
 地球は悪の宇宙人によって完全制圧されており、地球人はひとりとして降りる事が許されないのだが、月は地球人繁殖牧場として使われており人間が今も増えている。が、環境は劣悪でこういうガーデニングで文明を築くことを許されてもいない。」
じゅえる「悲惨だな。でも地球上は人間が住めなくなってるのか?」
まゆ子「いや地球人以外の動植物は元気に反映しているぞ。で、ここから動植物を取り出してガーデニングセットに売っているのだ。」

釈「お宝は決まりですね。地球のオリジナル動植物ですよ。ガーデニング文明圏において何より貴重なのが動植物なんです。その為に地球人は飼われているとさえ言えるのです。」
まゆ子「うむ、やはりガーデニングは美しいものでなければならない。機械文明だけでは味気ないからな。」
じゅえる「特定動植物ばかりを飼っている居留地とかもあるんだよ。で、そこは機械文明はほとんど置けない設定になっているから、船で必要な物資を届けたり廃棄物を引き取ったりして回収してる。」

釈「カレーですね……。」
まゆ子「うむ、特定香辛料なんかはまさにお宝だ。」
じゅえる「胡椒やコーヒーなんかは、宇宙ではほとんど取れないのだ。まさにお宝なのだ。」

釈「ならば女子大生は料理学校の生徒とか?」
じゅえる「いや、生活なんとか科の生徒なのだ女子大によくあるじゃないか。」
まゆ子「ふむふむ、実に女子大生らしい設定だな。そういう学科はこれまでエンターティメント作品で見ないからね。」
釈「で、ごく普通の女子大の生活なんとか科で普通に勉強してたら、生徒の一人が何故か宇宙戦艦を持っていて実習とか研究に活用出来るようになってしまったのです。」
じゅえる「まあ、宇宙戦艦持ってる大学というのもなんだしね。」

釈「でも地球にはいかないといけませんよ、やっぱり。」
まゆ子「しかし恒星間航行技術は無いぞ。地球人の手に負える技術ではないのだ。さっぱり見当もつかないと地球人の科学者でさえ匙を投げている。」
じゅえる「いいじゃないか、宇宙人の宇宙船に便乗密航して地球に行ってみるというので。」
釈「いいかげんですねえ。」
まゆ子「まあ、そんな感じだな。でも地球圏に行くと今も悪い宇宙人が強圧的に人類を脅かしているのですよ。」

じゅえる「そこはあれだ。宇宙人に媚びへつらうことで地球に住むのを許された裏切り者人類というのが居るんだよ。」
釈「実にすぺおぺらしい設定です。そうですね、地球人を脅かすために月の横にデススターくらい浮かべておきましょう。」
まゆ子「うん、それは実に悪役らしい。」

 

********************************

まゆ子「さて、このお話は至極可愛らしくのほほんとした女子大生ライフを描くものとなります。」

釈「まあ、宇宙海賊なんかしなくてもいいですけどね。」
じゅえる「でもやっちゃう。」
まゆ子「うん。だがどの程度の悪を想定しようか。普通にリアル悪だと、女子大生やられちゃうぞ。」
じゅえる「強姦されちゃうな。」
釈「さすがにそれは美しくありません。しかし、妙に強い女子大生というのもリアルからかけ離れてどうにもつまらないですよ。」

じゅえる「宇宙には悪いやつばっかりだ。地球人類も悪ばかりだ。」
まゆ子「いやそれはリアルなんだけどさ、」
釈「ちょっとメルヘンを入れてみるしかないですかね。宇宙ヒャッハーなんか見たくないですし。」

じゅえる「宇宙ヒャッハーか……。」
釈「あ、ドツボ踏んだ。」

まゆ子「宇宙山賊が襲ってくるというのはどうだろうか。」
じゅえる「うむまさに女子大生宇宙戦艦にふさわしい敵だ。」
釈「なんですかその宇宙山賊というのは。」
じゅえる「そりゃあれだ、人型ロボットに乗って斧を振り上げて襲ってくるんだよ。」
まゆ子「人型ロボだねえ。やはり宇宙山賊は。」

釈「ザクですか?」
まゆ子「そこまで大きくない。不思議エンジンも付いてない。地球人の科学技術で作られているのだ。」
じゅえる「電池だね、太陽電池と蓄電池で動くロボットだよ。おおきさはー、8メートルくらい?」
まゆ子「もう少し小さくてもいいか。5メートルくらいのATサイズというのはどうだ。」
釈「宇宙作業員ですか。」
まゆ子「小惑星で鉱物資源採掘に使うロボットだよ、本来は。女子大生宇宙戦艦についているマイナー火器はこいつら対策なのだ。」
じゅえる「レーザー銃やグレネードランチャーでなんとかなる程度の敵なわけだね。」

釈「しかしこいつらは何を目的に悪事を働いているのですか。」
じゅえる「肉。」
まゆ子「うむ。」
釈「肉ですか。」
じゅえる「地球産の貴重な動植物を勝手に盗んで食べる凶悪な連中だ。肉の魔力に取り憑かれた悪しき地球人なのだ。」

釈「じゃあ普通の地球人はなにを食べているんですか。」
まゆ子「そりゃあキノコシステムが出力する食物はデフォルトとして、地球産の植物から作った食品と、ミドリムシ。」
じゅえる「ミドリムシ一択だな。」
釈「えー、お魚なんか食べたいですよお。」
まゆ子「その願い、叶えましょう。タコです。」
釈「いえ、タコは魚じゃないですから。」
まゆ子「宇宙の無重力空間に適応し遺伝子改造を施された宇宙タコというのが居て、これを食べます。人間も襲ってくる凶悪でかつ知的な生命体です。餌は人間。」
釈「おお!」
じゅえる「宇宙山賊はこいつらと戦っている内に肉食の味を覚えて、他の動物も食べようと襲ってくるようになったのだ。」
まゆ子「うむうむ。宇宙は恐ろしい世界だ。リアルなんだよ。」
釈「もともとはタコを食べようと工夫した人類の知恵だったのに、恐ろしい逆襲を食らっているのです。リアルですねえ。」

 

じゅえる「大学が有るということは、そして宇宙戦艦の譲渡が平和裏に解決して免許も認められるという事は、政府というのがあるんだな?」
まゆ子「ありますね。」
釈「国があるんですか。」
まゆ子「まあ無いわけではないけれど、ガーデニングをやってる宇宙人の超意志こそが世界を決めているわけで、各恒星系ごとに管理する宇宙人も違います。
 だから国というのは恒星系内部に限られ、どこの恒星系地球人自治組織も対等に扱われます。」
釈「集権構造の組織とか社会は存在しないのですか?」
まゆ子「有る所には有る。しかし、構造上恒星系を出て領域を広げるとかはできないから侵略的になるわけにもいかない。
 まあ色々酷い国家はあるんだけど、また酷い企業や雇い主というのも有るんだけど、そこは宇宙山賊の出番なのだ。」

じゅえる「反政府活動を宇宙山賊がやっているということか。」
まゆ子「つまり、国家側・権力側はかっての地球の文化文明を復元して保存していこうという意志によって形作られている。
 対して宇宙山賊側は、現状与えられた状況の内部で自由に暮らして現在の文化文明を作っていこう、という態度。
 どちらも否定されるべきものではないとはどちらも理解するが、しかし気に食わんもんは気に食わん。」

じゅえる「共産主義社会主義的なゲリラじゃないんだ?」
まゆ子「社会主義的といえば、国家権力側はまさにそうです。宇宙ではそちらの方が効率的である事が多いのです。
 対して、リスクを負って鉱山開発なんかやる人間は自分達にこそ実権を欲しがり、自主性を尊重する、リスクも個人で負うような文化があります。」
釈「自由主義者なんですね。」

まゆ子「女子大生はどちらにも与しないノンポリなんですが、まともに就職しようと思えば国家側に、儲けようと思えば山賊側に視点が移ります。ましてや宇宙戦艦なんか手に入れた日には。」
じゅえる「国家にぶん取られてしまう可能性もあるんだね。」
釈「宇宙山賊はいいやつなんです。」
まゆ子「いや、こっちはこっちで武器で脅してくるけどさ。」

じゅえる「そこはいろいろな集団や組織が複雑怪奇に絡み合っているという事にしよう。人種や民族や宗教やらもしっかり生き残っているんだよ。」
釈「特に宗教は根深く生き残ってるでしょうね、それ。」
まゆ子「というか、大学だってそういう自主運営組織だよ。」
じゅえる「まあ、地球文化を保存するためにありとあらゆる勢力が必死になっているわけなんだな。」

釈「じゃあ女子大生自身もなんかの組織に最初から属しているというか、そもそも家系がそうなっているとかのバックグラウンドがあるという事にしますか。」

じゅえる「それより宇宙戦艦だ。なんか曰く因縁の有る船なんだよ。そうでないと、女子大生に船くれないんだ。」
まゆ子「幽霊船とか?」
釈「乗っている人間がついには消えてしまうとかの、不思議シップです。」
まゆ子「ゆうれいせんか、ふむ。」
じゅえる「なに?」
まゆ子「いやさ、宇宙人の恒星間移動に便乗して地球に行くというのは、この船に備わっている属性のおかげで可能になる、とかではどうだろう。」
釈「おお、神の船なんですね。」
じゅえる「なるほど、船自体が特殊な価値を持つのだな。それは良い。」

釈「じゃあ、地球に行ってみたら女子大生が実は王女様だったことが判明する、とかで。」
まゆ子「ああ、そのくらい派手な秘密が有ってもいいかもしれないな。宇宙戦艦の持ち主なら。」
じゅえる「さすがに王女様はなんだけど、なんか考えよう。」

 

じゅえる「だが地球はどうなってるんだ。というか、地球圏に残された人間はどうなってるんだ。」
まゆ子「スペースコロニーがあるんですよ。数万人乗りの出荷待ち宇宙船自体がコロニーです。これが何万本も浮いてます。」
じゅえる「地球を追い出されてもう何年も経ってるんだろ。近代科学技術文明を作りなおすまでには。」
まゆ子「ざっと二千年は掛かってますね。なにせそれぞれの居留地はさほど大きくなく、鉱山というものも無い。むしろ耕地や森林を作ってのどかに暮らしていくのに適した場所ばっかりを提供されているから。」
釈「鉱山無しで文明ですか、そりゃきついですね。」
まゆ子「まあ、でもキノコが有るからそれなりに文化的な生活をすると共に、科学技術知識をを温存してようやくだよ。基本太陽エネルギー装置を使った機械だね。」

じゅえる「で、宇宙を飛んでいこうと思ったら、親切な宇宙人さんがエンジンをくれたんだ。」
釈「やっぱり大航海時代は面白いですからね。」
まゆ子「というわけで、近傍のまあ月から火星くらいまでの距離は普通に行き来できるのです。だいたい地球人居留地というのは惑星上とは限らずに、小惑星や人工天体なんかもガーデニングの対象になっているのだ。
 無重力低重力天体の居留地には、宇宙戦艦は直で入港できるのです。が、まあ重力圏には降りれないのは仕方ないな。」

じゅえる「地球クラスの惑星から大気圏出入りするほどの能力は無いわけか。」
釈「まあ、それはいろいろと策を練って。」
まゆ子「そうだなー、じゃあ搭載する水を20トンしか積まないのを60トンまで増量してエンジンからペットボトルロケット並噴射を使って離脱だよ。まあ内蔵はペイロード下がるから、外部タンク有りで。」
釈「大気圏突入は大丈夫ですか?」
まゆ子「まあ、なにか空気抵抗避けを。というか、さすがにそれも水積んで最終減速着地の噴射しないと激突だ。」
釈「ああ。やっぱり水ですよ。」

じゅえる「この宇宙戦艦は着陸脚というのはあるのか? それとも海に降りる?」
まゆ子「海にも降りられるし、飛行場でもいいぞ。しかし海に降りたらエンジン整備しないと、塩水かぶるから即再スタートというわけにはね。」
釈「ヤマト以来の伝統ですからね、海に降りるのは。」
じゅえる「濃硫酸の海でもいいぞ。」

まゆ子「ということは、あんた達は地球に強行着陸とかも考えているんだ?」
じゅえる「そりゃ当然。」
釈「地球に似た惑星でもいいですが、有人惑星に降りないと駄目でしょうやっぱスペオペは。」
じゅえる「大気中の飛行能力は?」
まゆ子「いや、弾道飛行するだけだから、飛行て能力は無い。もちろん空中戦なんか出来っこない。」
釈「そういう機械ですからね。」
じゅえる「水さえあれば飛べるというのなら、文句は無いでしょう。」
まゆ子「腐っても宇宙戦艦だから、他の民間用輸送船なんかとは出来が違うのさ。」

 

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じゅえる「ふむふむ、結局これは海賊船ではなく「さまよえるオランダ船」話だな。」
釈「幽霊船ですか。」
じゅえる「なんらかの目的を果たすまでは決して旅を止めることを許されない船なんだ。その代わり、他の船では行けない未知の領域に連れてってもらえる。」
まゆ子「なるほど。それはいかにも冒険スペオペ。」
釈「いいですね、船自体に幸運が取り憑いているんですよ。で、その幸運を維持する為に次の船長に選ばれたのが、主人公女子大生。」
まゆ子「ふむふむ、実にいい加減でお伽話チックでよろしいぞ。その線でいこう。」

じゅえる「というわけで、よその恒星系に何度も行っており、船にはその記憶が刻まれているんだよ。」
釈「船自体が海図なわけですね。」
まゆ子「船長日誌とかお宝の山なんだ。」

じゅえる「もちろん、ほんとのお宝も宇宙には山のように隠れているぞ。」
釈「いいですね、冒険ファンタジーですよ。」

じゅえる「まあこんなものでしょう。こんだけあればそこそこに小説書けるかな。」
釈「そうですね、コレ以上はキャラ考えないと展開難しいですね。」
まゆ子「どうするかなあ、むしろここからてきとーに書いてみた方が早いかな。」
釈「じゃあてきとーに。」

 

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実験スペオペ小説

【彷徨える百合SEAーず】    (没)

 

(ましなりい)

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