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【ゾックさんはハイパーチートメカなのです】12/06/11

まゆ子「聞き捨てならん話がある。ゾックさんが不当に貶められている。」

釈「ゾックさんと言えば、水中用モビルスーツのゾックさんですか、あのモビルアーマーとモビルスーツの過渡期の存在と言われる。」
じゅえる「ガンダムにさくっとやられるメカなんだから、今更不当もなにも」
まゆ子「不当なのです。第一ゾックさんは超強力ハイパーチートメカなのです。」
釈「はいはい。じゃあ増補版「ゾックさんはハイパーチートメカなのです」を始めましょう。

 で、何があったのです?」
まゆ子「いつの間にかフォノンメーザー砲が無くなってメガ粒子砲にすり替えられていた。」
じゅえる「はあ。」
釈「はあ。」
まゆ子「なんだ、その気の抜けたヤル気の無い声は。」

釈「その設定はもう何年も前にそうなっていたと思いますよ。少なくとも10年は前の」
じゅえる「うーん。でもさ、ゾックさんは最初のガンダムにしか出ないんだから、設定が変わろうがどうしようが意味無いんじゃないかい?」
まゆ子「許さん。」
釈「いや、それは許せないでしょうけどね。」

まゆ子「だいたいゾックさんは水中MSなのだから、フォノンメーザー砲は至極当たり前の兵装です。なんせ水中用なんですから。」
じゅえる「そもそもフォノンメーザーというのは、超音波砲でしょ。」
釈「はい。」
じゅえる「フォノンてメーザーになるの? というか、メーザーはマイクロウェーブでしょ。」
まゆ子「フォノンが、つまり音がメーザーのようにまっすぐ強力に飛んでいく、という意味だよ。ま、超音波砲という理解でまったく問題ありません。」

釈「水中ロボに超音波砲って、至極まっとうな兵装ですね。なんせ水中ではビームは使えませんから」
まゆ子「そうなんだ。ま、ビーム砲とはなんぞやという設定のアヤがあるのだが、ガンダム世界においてはおおむね水中ではビームは短距離にしか届かない事になっている。」
じゅえる「それは問題無い設定なんだ?」
まゆ子「今のところはね。でも放っておくと、水中でも大丈夫にならないとも限らないんだけどね。」
釈「ガンダム世界は公式設定くらい変わりやすいものはありませんからね。」

まゆ子「ともかくだ、これまで30年水中でビーム砲はほぼ使えないという設定は鉄板と思われている。だからゾックさんのビーム砲も水中では使えない。
 で、ゾックさんの武装はと言えば、頭部のフォノンメーザー砲1門、前後左右メガ粒子ビーム砲が8門、両手の爪、である。」

じゅえる「爪はいいのか?」
まゆ子「よくします。」

釈「はあ、そうすると頭部のフォノンメーザーをビーム砲に換えちゃうと、水中で使える武器が無いんですね。そりゃ大変だ。」
まゆ子「そうでしょ。水中用MSが水中で役立たずになってしまうのです。これを貶めていると言わないでなんと言いますか。」
じゅえる「ああ、そういう風に繋がるわけね。」

まゆ子「というわけで、最初のシリーズではちゃんと水中用として立派に設定されていたものが、ゾックさんが陸上で無様にやられたからこれは駄目メカ扱いにされます。
 で、頭のとんがりのフォノンメーザーの意味が理解出来ないから、これは対空砲だと解釈され、対空砲ならビーム砲だろうという設定の改変がされたわけです。」
釈「はあ、悲劇ですね。」
じゅえる「ちょっとまった。フォノンメーザー砲というのはそもそも実現可能なのか?」
まゆ子「は?」

釈「あーそれはー、人型巨大ロボが戦ってる時に無粋なしつもんですねー。」

じゅえる「でも音だぞ。音で相手の潜水艦やら戦艦やらを破壊できるものだろうか?」
まゆ子「知らん。」
釈「まあ、わかりませんねえ。」
じゅえる「音をぶつけてものを壊すというのは、でも不思議ではないよな。」
まゆ子「超音波で汚れを落としたりしますからね。しかしどの程度の威力を発生させられるかに関しては確かに考えるべきところはあります。
 そもそも、あまり極小の領域にエネルギーを集中すればプラズマ化しちゃいますからね、水が。気泡になってエネルギーが浪費されてしまいます。そうならない為には或程度以下のエネルギーの集中に抑える必要があります。」

じゅえる「じゃあ、そのちょっと抑えた領域で超音波を当てると、潜水艦撃沈とか出来るんだ。」
まゆ子「やってみなくちゃ分からないが、単純な破壊の場合はもっと効率的に標的と共振するとか気泡の爆圧でぶっ叩くとか、まあ色々考えようもあるでしょう。」
釈「水中超音波はもちろん実在するのですから、まあ普通ですね。クジラなんかは超音波でお魚捕りますから。」
じゅえる「まあ、普通にぶっ叩かれて五月蝿ければ、中の人目を回すからね。」
まゆ子「搭載機器や兵器にも深刻なダメージが発生しますね。そんなバカ音聞かされたら。」
釈「騒音は立派な公害です。」

じゅえる「しかし、うるさいだろ。」
まゆ子「音兵器ですから。」
じゅえる「そんな音使ったら、居場所バレバレではないだろうか? 水中兵器としてそれはいかんのではないかい。」
まゆ子「まあ、バレバレだろうね。」
釈「そこのところはどうなんでしょう。確かに音でバレるようでは困ります。」

まゆ子「まあ、フォノンメーザーはたぶん困らないと思うけどね。まずそんなものぶつけられたらソナーは死ぬ。」
じゅえる「うるさいからね。」
まゆ子「しかも早い。水中の音波は空気中と違って秒速1500メートルにもなる。射程距離も百キロくらいは軽く出るだろう。遠くまで届きすぎて困るくらいだ。」
釈「ちょっと危ない兵器ですね。流れ弾の心配をしなくちゃいけないてのは。」
じゅえる「クジラとか魚死んじゃうんじゃないか?」
まゆ子「うーむ、その可能性は極めて高い。現在だってソナーの音が大きすぎてクジラに影響が出ているのではないかと言われてるくらいだからね。」
釈「そこのところはどうなってるのでしょう? 対策はありませんか。」

まゆ子「まあ水中で核爆弾が爆発したって魚絶滅はしないから、上手くエネルギーを処理すれば大丈夫なのだろう。
 そうだな。むしろエネルギーがプラズマ化して気泡になるのを逆手に取って、標的の位置あたりでエネルギーを一度に発散するような、焦点とも言える距離があるとすればどうだろう。
 標的の位置で音波を気泡の爆発に変化させて、最大限の衝撃波を生み出して破壊する。
 これならどこまでも超音波が飛んでいくというのは防げるでしょ。」

じゅえる「超音波が直接戦艦の装甲板を抉り取る、てのよりは合理的かな。」
釈「そうですね。破壊力をちゃんとコントロールできるてのは、兵器として必要な条件ですよ。」
まゆ子「まあそもそもフォノンメーザーをちゃんと使ってるようにも思えないし、アニメ的観点からすれば水中ビームと水中超音波砲と描写が違う必然性も無いから、そこは謎ということで。」
じゅえる「ゾックさんの頭からなんかビームがぴーっと出る、でいいんだよ。」
釈「ただ水中であればメガ粒子ビーム砲であるのはよろしくない、てことですね。」

 

まゆ子「さて、そこで音が問題だ。実の所ゾックさんには潜水艦としてちとまずいところが有る。」
釈「ふむ。」
まゆ子「ゾックさんにはスクリューが付いていない。推進は足の裏についているなにか、を使うのだが、」
じゅえる「確かゾックさんは、歩くことができないんだったな。」
釈「ホバーが付いてますよ。陸上を浮上して移動します。歩行は考慮されていません。足がありますが。」

まゆ子「足の裏にはホバーとロケットが付いている。このロケットは凄いぞ。ザクの数倍のジャンプ力を持つというのが昔からの公式設定だ。」
じゅえる「それって、どのくらいのジャンプ力?」
釈「えーと、MSのジャンプ力と言えば。」
まゆ子「ガンダムが背中のロケットでジャンプして、ガルマのドップ戦隊を叩き落としていました。マッハ5で飛ぶ未来的超音速戦闘機をです。
 ゾックさんのジャンプ力が有れば、そのくらい出来ると思われます。」
釈「しかも、両肩前後左右に計8門のビーム砲。戦闘機なぎ払いますよ。」
じゅえる「こえ〜。それって、チート兵器じゃん。」
まゆ子「だから今回の題は「ゾックさんはハイパーチートメカ」なんですよ。」

じゅえる「あー、そうだなーそれはチートだなー。しかし、陸上は駄目なんだろ、アレ。」
釈「さっくりやられていますからね。アニメで。」
まゆ子「だからゾックさんは駄目メカだと言われている。好意的な人であっても、ゾックさんは陸上に上げて用いるのは運用の間違いだと指摘する。私もそう思う。

 だが、ゾックさんはそれでも陸上を移動できる能力を持つし、陸上で使うようにメガ粒子ビーム砲がこれみよがしに付いている。」
釈「変、ですね。」
じゅえる「失敗作なの?」
まゆ子「でも空飛べばハイパーチートメカだよ。出力と火力に関しては後のガンダムシリーズでも屈指の強力さだ。スペック的にはね。」

じゅえる「結局どうなんだよ。これは水中で使うメカじゃないのか。」
まゆ子「そこ焦らない。

 つまりだね、ゾックさんは足の裏にホバーとロケットを装備しており、水中も陸上もこれで移動する。
 ホバーの有用性はドムを見れば一目瞭然ですね、ちゃんと高速で陸上を移動できます。ただドムのホバーは空気を吸い込んで加熱して噴射するものです。
 ゾックさんのホバーも空気を吸い込んで噴射する。が、」
釈「が?」
まゆ子「水中には空気はない。」
じゅえる「当たり前だ。水を吸い込んで噴射……、出来るの?」
釈「えー、それはージオン脅威の科学力があればなんとかなると思いますがー、かなり難しいというか手品的な機構になるのでは。」

まゆ子「まあ、空気中と水中を同じ機構で移動するのはさすがに無理があるさ。だがロケットであれば、そんな条件の違いは無視できて推進します。
 ゾックさんは水中でもロケット推進ですね。」
釈「水中ロケットですかあー。」
じゅえる「あー、昔であればバカにされる設定だろうねー、それ。」
まゆ子「現代科学技術って素晴らしい!」

釈「ともかくです、水中でもロケットで推進できるのはこれはもはや常識! 旧ソ連開発で今はイランも使ってるシュクヴァルとかの水中ミサイルは、水中を時速350キロで”飛翔”いたします。凄い世の中ですねえ。」

じゅえる「ゾックさんもそんなに高速なの?」
まゆ子「いやーそこまで早くはないだろう。ゴッグさんはスクリューで時速80キロくらいだったかな? そのくらいじゃないかい。
 ロケットで水中を飛ぶんじゃなくて、あくまでも推進して泳いでる。」
釈「時速80キロというのは、かなり早くありませんか。」
まゆ子「早いけど、ガンダム世界の水中兵器としては並でしょ。」
じゅえる「あの世界では航空機はなんでも垂直離着陸が出来て、プロペラ機でも音速を突破するからな。水中でも無茶をするよ。」

まゆ子「ここでゴッグさんを引き合いに出したのは訳がある。ゴッグさんはスクリューであるのに対し、ゾックさんはロケット推進だ。
 速度的にはどっちが優れているという事は無いだろう。また核融合エンジンが生み出す巨大なパワーがあれば、ちょっとくらいの効率の低さを十分にカバーしてしまう。」
じゅえる「ふむふむ。」
まゆ子「だが厳然とした違いがあると思うのだよ。それは静粛性だ。」

釈「はー、なるほど。音ですね。」
じゅえる「そうか、ゴッグさんは静粛性を追求したスクリューで移動するのに対し、ゾックさんは派手な音を出して移動するんだ。」
釈「ゾックさん、危ないですよ。さすがに居所バレますよ。」
まゆ子「構わない。そこは運用だ。

 そもそもね、ゾックさんは水中工作用には出来てないんだ。なんせあのお手々でしょう。作業が出来るようには思えない。」
釈「ですね。」
まゆ子「純粋に戦闘用だ。しかし静粛性は期待されていない。つまりガンガン派手に撃ち合って敵を撃滅するのを期待される兵器だ。
 だから運用方法としては、現場までは大型潜水艦等に搭載して運ばれていき、戦闘時に発進。という形で使われる。」
じゅえる「しかし、それでも静粛性は欲しいだろう。」
まゆ子「低速移動時には或程度の静粛性はあるでしょ。高速時にはガンガン音を出すということで。」

釈「いやーしかし、さすがに潜水艦がそれは駄目ですよ。」
まゆ子「まあね。そこでもう一つの移動手段を使おう。ホバーだ。」
じゅえる「陸上を?」
まゆ子「いや海上を。もちろん言うまでもなく、ホバーというのは元々はホバークラフトをイメージした機械であり、これは海上から陸上にスムーズに上陸する為の移動装置だ。

 ホバー装備のゾックさんが海上を浮上して移動できるのは、当たり前過ぎる機能ではないだろうかね。」
釈「海上ですかー。はー、海上をホバーで走行。どのくらいの速度が出るでしょうか。」
じゅえる「ドムと同じくらいは出るんじゃないだろうかね?」
まゆ子「いやーさすがにそんなに早くは無いだろう。そうだねえ、水上艦艇それも高速艇と同じくらい出れば運用上OKなんじゃないかな。」
釈「時速100キロくらいですかね。それ以上出すと空飛んじゃいますからね。」
じゅえる「というか、飛んだ方が早いからね。」
まゆ子「ゾックさんは飛べるんだよ、ロケット装備だから。」
釈「そうでした。」

 

まゆ子「つまりゾックさんの移動はこんな感じになる。

 まず水中。潜水母艦から発進した際は静粛性を重視して浅くロケットを噴射させる。水を押しのける程度の推力でゆっくりと静粛に進んでいく。
 ゾックさんは純戦闘用機械だから、発進したら速やかに戦場に移動する。高速巡航が必要であるが静粛性は確保できない。また必要でもない。ロケットを噴射して水中を時速80キロ以上で高速移動する。
 もちろん随伴するゴッグさんと速度は同程度でないと、編隊が組めない。ゾックさんは水中で十分な速度で移動できるものと考えるべきである。
 しかしながら、ゴッグさんがあくまでも水中での戦闘を重視した兵器であるのに対して、ゾックさんは海上での戦闘も範疇に入っている。
 そこでジャンプ!」

釈「ジャンプ!?」
まゆ子「時速80キロも出てれば、トビウオみたいに海上を跳ねますよ。羽根が有れば飛びますよ。」
じゅえる「たしかに、ゴッグさんが跳ぶのはあまり考えたくないけど、ゾックさんはペンギンぽいからな。」
釈「ペンギンさんは海から陸に上がる時は高速で海面ジャンプをして陸に直接飛び乗りますよね。あれか。」

まゆ子「
 海面にジャンプして浮上したゾックさんは、空気を吸入してホバーを起動。海面を浮上走行する。
 この時、ジャンプした時のままの速度を維持しているから、直接時速80キロ以上で走行出来る。ホバー自体は浮上にのみ推力を用いるとして高速移動は無理かもしれないが、ロケットはもちろん海面上でも使用可能。
 適宜ロケットも併用してさらなる高速移動を行う。この際、もちろん水中での静粛性なんか考慮する必要は無い。」

じゅえる「そりゃそうだ。水中に居ないからな。なるほど、ゾックさんは水上戦闘艇だったんだ。」
釈「時速100キロ以上で海面を滑るように移動して、8門のビーム砲を乱射する。それはチート兵器です。」

まゆ子「もちろんこのホバーにも弱点はあって、止まれない。また機敏な動きをする事が出来ない。そんな器用な浮上装置ではないと思う。
 が、そんなのはどうでもよいのだ。なんせ海の上だから。」
釈「元々船ってのはそんなに小回り掛けませんからね。惰性が強く働きます。」
じゅえる「そもそもがロケットも付いてるんだ。いざという時は噴射して方向を変えればいいよ。」
まゆ子「いやいや、そんなことしなくてもホバーの推力をちと緩めて、足を水中に突っ込んでやれば即ブレーキが効きますよ。左右方向転換も思いのまま。
 いざとなったらまた海中に潜水してもいい。」

釈「べんりなきかいだ!」

まゆ子「さらに言えば、ロケット噴射で空中にジャンプして、対空迎撃も可能というハイパーチート。ま、普通は海面からビーム砲で迎撃出来ると思うけどね。」

じゅえる「なんかコレ、凄い兵器だぞ。」
まゆ子「まあ、凄いですね。とはいうもののだ、じゃあ連邦軍の兵器と比べてどうかというと、水上艦艇にビーム砲を搭載していれば互角、程度だろうね。」
釈「あ。そうか、船くらいの大きさがあれば、核融合炉積んでビーム砲搭載しても普通ですか。はーそりゃーそうだ。」

まゆ子「というかさ、ゾックさんはMSとしては馬鹿でっかい方だけどさ、船としてみればそんなに大きくはないんだよ。
 大きさや重量が戦闘力を決めるとすれば、普通の戦闘艇だ。ビームを使ってロケットで跳び跳ねるが、まあ常識的な存在だね。」
釈「戦争ってのは、相手があることですからねえ。

 しかしよくよく考えてみれば、ジオンの水上艦艇てのはほとんど知られてないですね。ビーム搭載の戦闘艇くらいあっても普通ですが、無い。」
まゆ子「ゾックさんがソレなんだよ。」
釈「はあ。」
じゅえる「極めて常識的な存在なんだな。」
まゆ子「陸上を二足歩行で戦うロボットよりは遙かに常識的だぞ。」

じゅえる「なぜ地上に上げた!」
釈「なんで、ジャブローなんかに上がったんだ!」
まゆ子「あー、それはー。」

 

まゆ子「というわけで、ゾックさん最後の謎。爪だ。」

釈「まあ、格闘戦はしませんよね。」
じゅえる「そこまで器用に動けない。第一陸上に上がったらのろのろしてるから、格闘どころではないぞ。」
まゆ子「いや、爪も海上で使おうよ。浮上中にホバーで高速移動している時に敵艦の脇をすり抜けて、船腹を爪でガリガリと。」
釈「あー、それは痛い。」
じゅえる「対艦用の兵器だったのか。でもビーム砲でぶち抜けばいいんじゃないかい。」
まゆ子「そんな乱暴な。どんな船でも沈めりゃいいというものではありませんよ。
 沈めるより拿捕した方が良い場合、また火器の使用を忌避すべき場合。もっと単純には脅して従わせる場合。
 こう、爪でガリガリとですね。」
釈「いたい、痛い。」

 

釈「ところで先輩。WIKIを見てみるとゾックさんには熱核水流ジェットとやらが付いていて、これで推進するとか書いてますが。」
まゆ子「どこに?」
釈「えー、足の裏ではないですよねえー。どこだろう?」
じゅえる「モビルスーツってのは、なんか訳の分からないところに不思議装備が付いているもんだよ。」
まゆ子「うん、まあ、どっか外からは見えない所に付いてるんだろう。水取り入れ口も見えないけど。」
釈「そうですねー、どっかになんかうまい具合についてるんですね。」

じゅえる「めでたしめでたしだ。」

 

 

【スペオペ宇宙海賊!】12/03/19

まゆ子「今テレビでは「モーレツ宇宙海賊」というアニメをやっている。」

釈「はあ、スペースオペラですよね。今時珍しい。」
じゅえる「女子高生がいきなり海賊になるんだね。まあスペオペだよね。」

まゆ子「春には宇宙戦艦ヤマトが新しく映画になって、来年にはテレビ放送もするそうです。新しいヤマトには女の子の乗員が増量です。」

釈「まあ女の子増量は正しい判断ですね。」
じゅえる「なんか、キャラがずいぶんと変わっているぞ。南部さんはキムタクの元祖みたいなキャラなのに、髪をばっさり切られてしまった。」

まゆ子「というわけで、スペオペを考えてみよう。」
釈「さすがにミーハーですね、まゆちゃん先輩は。」
じゅえる「ここがまゆ子のいいところなんだ。」

 

まゆ子「さてスペースオペラというからには、宇宙船でビュンビュン飛び回ってどんぱち砲撃戦をしなくてはならない。

 が! ゲキロボで書いちゃったように光線砲やらミサイルやらがまるで意味を持たない速度での戦闘というのが考えられるわけですよ。」
釈「ワープがジャンプ型なら通常空間での戦闘でいいんですけど、超光速航法が出現すると困りますよね。」
じゅえる「超空間通信とかの超光速通信法が実現するのなら、超空間電波砲とかがあってもいいんじゃないかな? 無制限に防御不能で超光速で直撃する光線砲。」

まゆ子「とまあそういうわけで、宇宙戦艦での戦闘というものは物理設定でどーとでもなるわけです。
 さて今回考証するのは、誰も見たことの無いスペースオペラを作っちゃおう、というのです。」

じゅえる「あー、なにかネタが有るのかな。」

まゆ子「そもそも宇宙船というのがダメダ、というのが私の結論だ。」
釈「まあ、宇宙船、超光速宇宙船というのが既に大時代的に間違っているだろう、とは思いますね。やはり転送ですよ。電波人間が正しいと思いますよ。」
まゆ子「つまり人格のデジタル化、人間存在の諸要素のデジタル化によって信号伝送が可能となる形になり、電波なり光なり超空間通信なりで伝送する方がよほど現実的と言えるのです。」
じゅえる「まあね。」
釈「有人宇宙船が太陽系を脱出するのと、脳機能の電子化置換えと、どっちが先か賭けの対象にだってなりますよね。」

まゆ子「しかしそれではスペオペが成り立たない。やはり生身の人間が宇宙を旅するからこそロマンが生まれるというものだ。」
じゅえる「ミックスしたらいいんじゃないかな。スター・トレックだって近距離転送はするんだから。」
まゆ子「でもスター・トレックの転送てのは、元データ破棄されるからねえ。」
釈「はあ、確かにあれは不条理な設定です。どんな仕組みかよく分かりませんね。」
じゅえる「ホロデッキから出られると、人間を何人も増やせる。というのは、至極便利な話なんだよね。禁じ手にするのは当然だ。」

まゆ子「どうしよう。20世紀的な生身の人間の冒険物で我慢しようか。」
じゅえる「あー、そうだなー、それはー面白くないなー。」
釈「確かに。21世紀の現代で考えると、それはまたいかにもウソっぽいですか。」
じゅえる「しかし死なない人間を描いても仕方ないというところは有る。だがその技術ギャップは埋めがたいなあ。」
釈「どう考えても人間の電子化の方が早そうですからねえ。」

まゆ子「宇宙でどんぱちが至極ウソっぽい、というのは今やもうSFをちょいと齧った者なら理解する、共有する常識なのだな。」
釈「うーむ、どうしたものでしょうかねえ。」

じゅえる「そもそもがだ、宇宙船がそんな簡単に民間人の所有になっていいものだろうかというのも有る。」
まゆ子「うーむ、惑星間宇宙船ならともかく恒星間宇宙船がねえ、たしかにとんでもないパワーを持ってるだろうから、地球の一個くらい普通に破壊できるだろうねえ。」
釈「そもそもワープってものは失敗すると宇宙が崩壊するくらいの危険行為ですよ。色んな作品においては。」

まゆ子「いやそもそも宇宙に地球人が拡散して植民すると考えていいものだろうか? そんな阿呆なことをしてしまうのだろうか?」
釈「うーむ、それは確かに。」
じゅえる「生物としての人間の能力であれば、行けさえすれば拡散するだろうが、それが経済的にペイするかと言われると困るな。」

釈「かと言って人間以外の宇宙人を出すと、それもまたスペオペとしてどうかと思いますねえ。」
まゆ子「宇宙人はねえ、ゲキロボで描いているとおりにあいつら訳分かんねえからなあ。」
釈「あ、そもそもからしてゲキロボはスペオペでもあるんですよね。」
じゅえる「歴然としたスペオペなんだが、宇宙船はゲキロボだからな。三畳一間に乗ってるんだから。」

まゆ子「つまりゲキロボがそのままでは全然スペオペではないから、今考えているのですね。」

 

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釈「やはり船でなくてはならないでしょう。」
じゅえる「うーむ。宇宙戦艦だろうかねえ。主人公は女子高生?」
まゆ子「男ではないな。なら女子、大生?」
じゅえる「珍しいな。」
釈「はあ。女子大生宇宙戦艦艦長、てのは聞いたことも無い話ですねえ。それで行きますか。」

まゆ子「しかし、女子大生がなんで宇宙戦艦なんか持ってるんだ? というか、それ誰の物?」
釈「それはー、……宇宙戦艦ていくら位するものでしょうか。日本円で。」
じゅえる「いや、買えないから。」

まゆ子「一般民間人女子大生が操る宇宙戦艦であれば、敵は軍隊ということは無いわな。宇宙海賊か。」
じゅえる「いやちょっと待て、なんでどうして、どこに住んでるんだそのネーちゃんは。」
釈「宇宙で宅急便でもやってるんですか、そのネーちゃんは。」
まゆ子「いやー、貨物でもタクシーでも無いだろう。無意味だな。」
釈「さすがにそれは困りますよお。」

まゆ子「中古の宇宙船を買ったことにしても、それでは宇宙軍というのが存在する事になる。それは宇宙には複数の国家が有って戦争もしているし、宇宙戦艦が中古で出まわるほどにドンパチで使ってる。」
じゅえる「どういう宇宙なんだよそれは。」

 

釈「つまりは宇宙戦国時代。血で血を洗う激戦の渦中にあって、人は明日をも知れぬ命なのです。」
じゅえる「いや、それは無茶だろ。」
まゆ子「地球は悪の宇宙人によって侵略され、地球を放逐されて宇宙を放浪していく内に、宇宙をすみかとするようになり、宇宙海賊になりましたとさ。」
じゅえる「悪の宇宙人というのはなんだ。」
釈「それはかって宇宙に追放された地球人の一団が大宇宙の不思議パワーによって変化した異形の姿なのです。」
まゆ子「ふむ。それがいい。地球人は母なる地球から強制的に退去させられた種族なのだ。で、太陽系内にばらばらに住んでいる。」

じゅえる「恒星間宇宙は?」
まゆ子「それも有りにしよう。地球人は悪の宇宙人によって様々な恒星系に住む種々の宇宙人に売り飛ばされて銀河中にばらばらに住むはめになってしまったのだ。」
じゅえる「なんの為に? 食べるのか?」
まゆ子「あー、……どうしよう?」
釈「ペットとか?」
まゆ子「あー、いやそんな上等なものではない。言うなれば、ガーデニングの植物の一種だな。珍しい宇宙人を自分とこの庭に植えておこうという程度の。」
じゅえる「人間は植物か!」
まゆ子「とはいえ、ペットよりはマシではないかな。言うなれば地球人文明というのをガーデニングに移植したわけだよ。」
釈「宇宙人は気宇壮大ですねえ。」

まゆ子「というわけで、悪の宇宙人によって太陽エネルギー装置を与えられて自活していくようにされる。売り飛ばされそれぞれの宇宙に放された地球人は頑張って現地で地球文明を作りました。
 が、所詮は地球人の浅知恵で恒星間航行機能も超空間通信もできないのです。そんな技術は誰も教えてくれないし、地球人の能力では解明出来ません。
 そもそも気宇壮大な宇宙人の文明があまりにも進み過ぎていて、地球人のコンピュータ技術では解析できないのです。

 また宇宙人の方でもあまり巨大過ぎるエネルギー源を与えてはこいつら何するか分からない、というので太陽エネルギー装置しかくれないのだ。」

 

じゅえる「太陽電池なのか、それは。」
まゆ子「あー、そうだね。太陽電池だね。あと太陽電池を利用した食料合成装置だね。」
釈「宇宙に放り出す、というのはどういうことをされたんですか。宇宙コロニーでも作ったんですか。」
まゆ子「そんな優しい宇宙人が居るか。嘘みたいに簡単な宇宙船に何万人かずつ詰め込んで、太陽エネルギー装置でほそぼそと生きていくようにされたんだ。」

じゅえる「食料はいいとして、水や空気もエネルギーでなんとかなるとして、せめて衣類や薬品が無いと駄目だろう。」
まゆ子「悪の宇宙人のせいで、地球人は死なないようにされてしまったのだ。つまり一人一個ずつ体調管理ロボットを植えつけられて管理され、病気になったらドクターロボが勝手に治していくのだ。
 衣類はさらに単純。裸にスプレーを吹きかけると銀色の全身タイツが出来上がるのだ。」
釈「無茶な宇宙人ですねえ。」
まゆ子「まあ、買い手が付くまでのしばらくの辛抱なのだ。首尾よく売れればその宇宙船ごと売り飛ばされて、その恒星系の適当な無人の小惑星やらに連れていかれて、自らの手で開拓しなければならない。
 でも宇宙船に閉じ込められているよりは遙かにマシで広い。という塩梅。」

釈「しかし、道具や機械が無ければ開拓もなにも無いでしょう。」
まゆ子「だから太陽エネルギー装置だよ。太陽エネルギーで電気を作るのだが、これでレーザー光線を出して石や金属を切り出せる。精錬も出来る。
 ただの石ころ惑星にも都市が作れるのだ。太陽エネルギー装置さえあればね。」

釈「その太陽エネルギー装置ってのは、一人一個もらえるんですか?」
まゆ子「そりゃ簡易宇宙船に1個しか付いていないのだが、増える。」
釈「え」
まゆ子「植物と一緒で、エネルギー使わないで放っておくと自己増殖して増える。苔みたいなキノコみたいなものだ。太陽エネルギーを浴びて二酸化炭素を分解して酸素と有機物を合成する。食べられるのだな。」
じゅえる「美味いのか?」
まゆ子「それなりに。味も様々。」
釈「妙な機械ですね。というか、それはまさにキノコみたいな物なんですね。」

 

じゅえる「そもそもその太陽エネルギー装置というのはなんなんだ? えらく人間に優しいようだが。」
まゆ子「悪の宇宙人が地球人を飼う為に開発した、これさえあれば地球人は死なないだろうという最低限を保証する生命維持システムなのだ。

 そうだね、意志もあって運動もして病気や怪我を直す。衣服をスプレーする機能ってのもなんとかするか。キノコではあるがホヤみたいでぽろっと外れて動きまわるドクターロボになるのだ。」
釈「待ってください。それはつまり、有機物の循環を行うものなのですね? 排泄物や死体なんかも、」
まゆ子「うん、分解して食べちゃってまた合成する。とはいえ、完全閉鎖空間では無理があるから、宇宙船自体にも不足する物質を採集する機能が有ることにしておこう。彗星を齧るのだ。」

じゅえる「太陽光を浴びないとその機械は動かないんだろ。」
まゆ子「うん。だが簡易宇宙船自体の外装がその受光部になっているから、別に困らないぞ。光ファイバーで太陽光を引いてくるから。」
釈「レーザー光線もファイバーで導光ですか。」
まゆ子「うん。そうだな、ドクターロボから伸びている光ファイバーで、これで患者の肉体をぶった斬って開腹手術をするのだ。」
釈「レーザーメスか。」
じゅえる「そのレーザーメスを別の用途に利用できるわけだ。」
まゆ子「出力が高ければ石も切り出せるのだよ。砂を溶かしてガラスみたいにして道具も作れる。」

釈「衣類のスプレーというのは?」
まゆ子「あー、なんか粘液が出てくるところが有って、それを人体に塗りたくれば乾燥して布状の膜になって、それで衣服として使えるということに。
 これを平たく濡れば、紙や布の代わりとするものが作れて、テントや壁替わりにして家も作れるわけだ。

 乾いたら耐水性があるが、燃える。燃料にもなるのだが、宇宙船の中で燃やすと危ない。」
釈「まあ、とりあえず紙みたいなものは確保されているわけです。耐水性があるのなら、食器とかにも使えますね。」
まゆ子「ふむ。中に水を入れたら紙製容器でも燃えないから、鍋の代わりにもなるかな。」

じゅえる「それは長く引き伸ばして塗ると、紙みたいにべろっと剥げるのか。」
まゆ子「まあ、粘液同士であればくっつくけど、それ以外だとたいていはべろっと剥げるから、衣服としても使える。」
じゅえる「紙を作って、丸く巻いて糊でくっつければ棒になる?」
まゆ子「至極簡単に。」
釈「おお、それならば使い道がいくらでもあります。それは素晴らしい素材です。事実上木材は有るわけですよ。」
じゅえる「道具を作ることさえ可能なんだ。よし、だんだん見えてきた。」

釈「紙があるのなら、字を書く方法も考えて記録ができます。なにかインクとなるようなものは、:¥」
じゅえる「火が起こせるんだから、消し炭の木炭で書けるんじゃないか。」
釈「なるほど、水に溶いてインク作ってもいいですね。粘液をちょいちょいと混ぜてやれば、ちゃんと固化して紙に定着しますよ。」
まゆ子「便利な粘液だな。だが硬くはない。ナイフは作れないぞその粘液は。また紙くらいの強度しかない。まあ厚塗りをすれば、また紙同士を接着すれば板にもなりますが。」
じゅえる「ナイフは石でなんとかしたい。が、宇宙船内には無いな。」
まゆ子「残念ながら。人の骨はあるけどね。」

釈「それはやはりやめましょう。硬いものをどっかから調達しますよ。というか、光ファイバー! あれって硬くありません?」
まゆ子「あー導光用のね、そりゃファイバーは硬いが、折れていいのか?」
じゅえる「ドクターロボは光ファイバーを形成する透明粘液というのを持ってるんだよ。これで蜘蛛の糸みたいに透明のファイバーを随時形成してレーザー光線なり人体開腹なりをする道具になる。マジックハンドみたいなものだ。
 この粘液を取ってきて紙に塗れば、りっぱなガラス質の硬い道具の出来上がり、と。」
まゆ子「そんなところだろうかね。柔らかい紙を塗り重ねて木材みたいなものが出来て、さらにファイバー粘液を塗り重ねて様々な工具が作れる。刃物にだって成る。
 そりゃあ便利すぎるなあ。」

 

********************************

じゅえる「で、そのキノコをお供に、地球人は宇宙のあちらこちらで人間文明を創り上げたわけだ。
 でもこのキノコが有れば、別に人類文明なんか作らなくてもいいんじゃない?」

まゆ子「いやそれは許されないよ。それに別の恒星系に連れていかれた人類には地球の植物の種やら動物やらが提供されて、いかにも地球ぽい環境を作ることを飼い主宇宙人から期待されています。」
釈「お仕事として地球再生をしなければいけないのですね。」
じゅえる「妙な宇宙人だなあ。というかガーデニングに一文明を用いるくらいだからな、変なんだな。」

まゆ子「というわけで、何百年もする内に人間は文明社会を作り出し、ドクターロボも数が増えて一人1台にも行き渡り、人間それをお供にするのが普通になります。
 キノコというか、キノコみたいのがちゃんと動いて人間の言葉を聞き分けて色々と便利に使えます。医者要らずでもあります。」

釈「ドクターロボキノコはどのくらいの大きさですか。」
まゆ子「太陽エネルギーを蓄えているから、かなり大きいぞ、直径1メートル高さ1メートル20センチくらいは有る。足の下にローラーがあって滑って動きます。手のようなものも有り、光ファイバーでレーザーを出してぶった斬ります。
 エネルギーはマザーキノコから有線で補給を受けますが、丸い頭を太陽に当てていれば1日もすればエネルギー満タンになります。
 食料生成や二酸化炭素分解などはマザーキノコがやりますが、もし壊れたらドクターロボが接地してその機能を果たす存在になり、また新しいドクターロボを生成します。」
じゅえる「任意の数作れるんだ。」
まゆ子「まあ、1ヶ月もすれば新しいのが生まれます。」
釈「便利ですねえ。」
まゆ子「まあ、レーザー使えないと色々と困るしね。」

じゅえる「で、主人公となる女子大生も持っている。」
まゆ子「一家に一台有ればいいけれど、女子大生は一人暮らしで宇宙戦艦を所有する事になるからね。」

じゅえる「その宇宙戦艦は、まあ地球人が頑張って創り上げたものだろうけれど、動力は何だ?」
まゆ子「あー、なんにしよう。この段階の地球人は自力でコンピュータまで創り上げる程に科学技術も進んでるしね。核でもいいぞ。」
釈「さすがに核分裂はかんべんです。なにか宇宙人が提示した素敵エンジンなんですよ。」

まゆ子「じゃあ、キノコ動力によるイオンロケット、いやプラズマロケットなのだ。もちろん恒星間どころか惑星間航行すら危うっかしい推力。さすがに元々無重力空間内にあれば、発進はちゃんと出来ます。」
釈「ですが、太陽エネルギーでは所詮、」
じゅえる「太陽帆船もおまけに付けよう。」
まゆ子「ふーむ、じゃあキノコの太陽エネルギー回路を人類科学が解析した結果、より大電力を発生させる事に成功したプラズマ機関なのです。」
じゅえる「出力はどのくらい?」
まゆ子「あー、推力50キログラムくらいかなあ。」

釈じゅえる「        。」

まゆ子「あ、動くよ50キロでも。イオンロケットの推力というのは小さくても長く加速出来るんだから。」
釈「宇宙戦艦の重量ってどのくらいです?」
まゆ子「あー、おおきいぞ。100トンくらいはあるんじゃないか。最大積載量で。」
じゅえる「百トンの宇宙船を50キログラムのエンジンで飛ばすのか。それが宇宙戦艦とな?」
まゆ子「駄目かな?」
釈「いくらなんでも駄目でしょう。非力過ぎますよお。」
まゆ子「ちぇー。まあ2000秒で1メートル加速するからねえ。23日間で秒速1キロに到達だ。すばらしいエンジンじゃないか。」
釈「そりゃはやぶさに使うなら凄いエンジンなんでしょうけどね、宇宙戦艦ですよ。いくらなんでもこれは無茶すぎるでしょう。」

じゅえる「キノコ動力禁止!」
まゆ子「ちぇええ。」
釈「せめてジェット機並の5トンくらいは推力出してくださいよお。」
まゆ子「そんな100倍も強力なエンジン使えないよお。」
じゅえる「使え!」
まゆ子「ええええ!」

まゆ子「あ、推進剤というのがありまして、それ抜きにエンジンなんか考えられないんですけどー。」
釈「すぺおぺの為です。そんなもの要らないエンジンです!」
まゆ子「やだーあ。」
釈「でもこれでも秒速1キロに到達するの5時間も掛かりますよ。無理ですね宇宙戦艦。」
じゅえる「なにか超凄いエンジンを考えろ。宇宙戦艦にならないじゃないか。」
まゆ子「しかしだね、これ以上凄いエンジンを載せると、エンジン噴射自体が犯罪的破壊力を持つ兵器になってしまうのだよ。ロケットエンジンが兵器だよ、そりゃ無いよね。」
釈「はあ。まあ、そうですね、このエンジンは大推力のまま何百時間も噴射し続ける奇跡のエンジンですからね。5トンとか無茶なんですよね。」
じゅえる「あ、釈ちゃん説得されるな!」

まゆ子「じゃあこうしよう。推力5トンの推進剤消費ほぼ無しの奇跡のエンジンだこれは。機体重量100トンを5時間半で秒速1キロにまで持っていく。」
じゅえる「だからそれじゃ駄目なんだったら。」
まゆ子「55時間で10キロだ。555時間で100キロだ。23日間の加速で秒速100キロに到達する超ロケットなのだ。」
じゅえる「それって、凄いの?」
釈「現在の地球製ロケットにはとても無理ですから。それ核融合ロケットですよ。」
まゆ子「しかも女子大生でも直せる!」
じゅえる「そりゃあ凄いエンジンだ。」
まゆ子「親切などこぞの宇宙人がプレゼントしてくれたのを、地球人がコピーして使っているんだ。宇宙人的にはロウソクで走るポンポン船並の低レベル技術だが、地球人にはなにがなんだか分からない超技術なのだ。」

じゅえる「しかし、大推力でどーんと超加速ってできないの?」
まゆ子「出来るよ。ペットボトルロケットだ。」
じゅえる「え?」
釈「推進剤を無駄遣いすれば、初期加速をどーんと大きく出来るのです。所詮は圧縮空気しか入ってないペットボトルロケットが、水という推進剤をぶちまけることで100メートルも飛んで行く大推力を発生させる原理ですよ。」
まゆ子「超ロケットの排気に推進剤の水かなんかをちょろちょろと流してやれば冗談みたいな推力が出るのだが、もちろん積荷は大半が水という有様になってしまう。」
釈「しかも水が切れれば加速も終わります。ペットボトルロケットみたいに短時間しか続きません。また加速終了時の最終速度自体は大して大きくもなりません。」
じゅえる「どういうこと?」
まゆ子「最初の5時間で出る1キロを稼ぐ為に推進剤全部数秒で無駄遣いするようなもんだ。まったく割に合わない。」
じゅえる「なんか、それメリット有るの?」
釈「地球の大気圏を突破する時にはとても必要な技術なんです。大重力の惑星から離脱するにはなんたって推力がべらぼうに必要ですから。」

じゅえる「なんとかしろ。」
まゆ子「へい。じゃあ、最初の加速はサービスということで、発進基地空港からビームを当ててサポートしてくれるということで。秒速10キロまで10分で推進ビームが押してくれます。」
釈「凄い便利サービスです。23日が21日に短縮されました。」

じゅえる「でも、宇宙戦艦が海賊なり敵艦なりと戦うのに、こんなエンジンでいいのか?」
まゆ子「無理!」
じゅえる「だろうな。」
まゆ子「だいたい、止まれと言われても止まるまで23日も掛かってしまう。」
釈「ですよねえ。停まりませんねえ。」

 

じゅえる「止まらない宇宙戦艦でどうやって戦争すればいいんだ。」
まゆ子「さすがに光よりはずっと遅いから、レーザー光線砲で。といっても射程距離に近づくまでが大変なんだけどね。」
釈「どうしますか、光線砲積みますか?」
まゆ子「そりゃ1基くらいは積んどかないと格好がつかないだろう。」

じゅえる「まて、宇宙戦艦100トンと言ったが、どんな大きさなんだこれ。」
釈「まあ、小さいですよね。」
まゆ子「20メートル級かなあ。」
じゅえる「ちいさ!」
まゆ子「なんせ100トンしか無いからな。えーとで船体重量13トン、キノコセット他生命維持関連および食料他人間用物資で7トン、推進剤および呼吸用酸素の元として水20トン。計40トンは無いと動かないとして。
 積荷は60トンという事になりますね。補修用の部品のストックも必要だし、乗員乗客が増えれば生命維持に必要物資も倍になりますが。」
釈「なにせ長期間飛びますからね。半年くらいは潰れますね。」
まゆ子「1航海にね。」

じゅえる「じゃあ、武装なんて積むスペース無いな。」
まゆ子「ミサイルトーピードなんか積んだ日には、1基5トンほどもありますか。長魚雷なら10トンですか。」
釈「この船は元は魚雷艇ということにしておけば、長魚雷5発搭載可能という事に。」
じゅえる「しかし、広い宇宙で5発の魚雷になんの価値があるというんだ。」
まゆ子「仕方ないじゃないか、宇宙戦艦なんだから。」

釈「簡易型レーザー光線砲を1門積んでおきましょう。取り外して野戦にも使えるような本来艦載用ではない小口径砲です。500キログラムくらいですか。」
まゆ子「あと榴弾を発射する迫撃砲みたいなのも1門積んでおこう。砲100キログラム弾薬1トンとささやかに。
 あと宇宙スクーターは必要だろう。小型ロケットで船体修理とかにも使えるマジックハンド付き。これが3トンくらいで。そして宇宙アンカーとワイヤーで、小惑星係留用に。」
じゅえる「それで宇宙戦艦を名乗るのはおこがましいぞ。」
まゆ子「いや、主砲は付いているんだよ。さっき言っただろ、これ以上凄いロケットにしたら破壊的威力があるって。
 これを主砲とします。」

釈「メインエンジンを主砲に転換出来るんですか。」
まゆ子「推進剤の水を投入して、噴射を徹底的に収束させ絞り込むと、戦艦の装甲も穿つビーム兵器になるのだ。この機能がある船はすべて宇宙戦艦扱いされるんだよ。」
釈「なるほど、一度目的とする速度に達してしまうと、エンジン暇ですからね。敵に向けてもいいわけですよ。」
じゅえる「いや待て、エンジンを砲に使えば、エンジン壊されるまで攻撃されるんじゃないか。」
まゆ子「そりゃそうだよ。宇宙戦艦なんだから。」
じゅえる「なんか思ったより遙かにやばい宇宙戦艦だな。」
まゆ子「まあまともな宇宙戦艦ならエンジン2基付けて、1個は前向いてたりするんだけどね。」
じゅえる「ビーム専用エンジンね、それが普通の設計だろ。」
まゆ子「だって貧乏な宇宙戦艦ですから。」

 

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じゅえる「そもそもだ、それは宇宙戦艦ではなく宇宙魚雷艇だろ。」
まゆ子「戦闘艦艇は全部戦艦なんだよ。」
釈「そうなんですよ。」

じゅえる「それは詐欺だ。まあともかく元は軍用の船だったものが、何故か女子大生の手に入ったんだな?」
まゆ子「そこになんか不思議を織り込んでおくと面白いな。」
釈「宇宙海賊のおじいさんが行き倒れていたのを介抱してやったら、御礼にくれたとかでは?」
まゆ子「それ採用ー。」
じゅえる「いや、それも無茶もいいとこだ。いかにおんぼろ宇宙魚雷艇と言っても、女子大生が買えるような金額ではないだろ。」
釈「そうですねえ、家が立派なのが建ちますかね。」
まゆ子「億だよな、日本円なら。」

じゅえる「なんでそんなもんくれるんだ。」
まゆ子「それは女子大生の人品骨柄が只者では無かったから。」
釈「運命のいたずら、いや天命なのです。」
じゅえる「まあ、そこは物語だしね。必然で、それ無しには話進まないんだからね。

 とりあえず海賊の爺いから譲られた、というのは良しとしよう。で、宇宙戦艦で彼女は何をしているのだ。」
まゆ子「まあなんと言いますか、とりあえず大学生と言ってもそりゃ未来の大学生ですからいつもいつもキャンパスに居るというものでもない。
 それにこの宇宙戦艦の性能はエンジンは普通にいいから、近くの地球人居留地まで数日で往復出来るのです。」
釈「まあ、2日で地球脱出速度にちゃんと到達しますからね。元から宇宙空間に居れば、便利に使えるでしょう。」

まゆ子「とはいえ旅客免許とかは持ってないから、営業として客を乗せるわけにもいかない。というか、貨物免許も無い単なる個人宇宙船操縦免許だ。」
じゅえる「まあ、営業許可が出そうにも無いな、宇宙戦艦だし。」
釈「そこは海賊御免状という手で。」
まゆ子「そこまでぱくりは出来ん。個人宇宙船免許と対艦兵器運用免許をもらってしまった。」
じゅえる「なんでそんなもんが女子大生に出るんだ。」
釈「そこは海賊がいっぱい出るんですよ。」
まゆ子「まあ、出るんだけどね。一般民間船護衛用武装船というのは結構多くて資格を取れば発行されるのだ。この宇宙戦艦もそんな感じで使用されてきたと思われる。」

釈「普通に戦闘をしてもスペオペになりませんよ。女子大生ならではのキュートなお仕事を開発します。」

じゅえる「ちょっと待て、核兵器というのはこの世界無いのか?」
まゆ子「無いよ。というか、地球人が必死で科学技術文明を復元して原子力を取り戻し始めた頃に、親切な宇宙人さんがやってきて「おまえたちそれはヤバいからコレを使いなさい」とエンジンもらったんだ。」
釈「なるほど。原子炉なんかで遊んでたらせっかくいい感じで育っている地球人が死んでしまいますからね。」
まゆ子「まあ、エンジン砲は核兵器並に強力ですから別に困ってません。推進剤の水が有る限りは連続発射も可能です。大型船舶ならエンジンも3つ4つ積んでるから、すごいよ。」
釈「大型船なら護衛要らないんじゃないですか、それ。」
まゆ子「そういうわけにもいかんよ。気軽に船体振り回せないし。エンジン砲を自由に使えるのは、エンジンを砲座に載せて自由に照準できる軍艦か、船体が軽くて自由に手軽に姿勢制御出来る小型戦闘艇だよ。」

じゅえる「大型船には大型エンジンじゃないのか?」
まゆ子「いや、全部同じエンジンだ。推力の不足は数で補う。巨大旅客船ともなれば8基もエンジン付いてる。」
釈「でもそれじゃ800トンのあんまり大きくない船ですよ。」
まゆ子「そうだなあ、じゃあエンジンのグレードがちょいと違うことにするか。ともかく地球人科学ではこのエンジンの改良とか大型化は困難なのだ。デッドコピーしか出来ない。」
じゅえる「なんで親切な宇宙人さんはこのエンジンくれたんだ? 無くてもいいんじゃないか、原子炉取り上げて。」
まゆ子「そりゃ、地球人がばらばらの居留地で暮らしているのを交通出来るようにしたら、文明もっと発達して面白いじゃないか。」
釈「おもしろいから、ですか。」
まゆ子「うん。」

じゅえる「そうだなあ、じゃあこうしよう。女子大生がもらった宇宙戦艦はちゃんとしたエンジンが付いてるけど古いタイプで推力低いんだよ。最新型なら4倍も強力だったりする。
 しかし旧式だとはいえエンジン砲の性能としてみれば今でも現役バリバリの出力を叩き出すのだ。まあエンジン取り外して砲として売った方が儲かるんだけどね。」
釈「そんな弱っちい戦闘艇なら、海賊に負けちゃうじゃないですか。」
まゆ子「そこらへんが女子大生が持ってる船というかんじでいいじゃないか。」

じゅえる「そうだな、じゃあ大学の授業というのも通信教育的な感じで、教室にテレビ画面を置いて女子大生は顔だけで出席しているという事で。」
まゆ子「うん可愛い。」
釈「そういう感じの学生は多い、ってことなんですね。」

まゆ子「つまり女子大生は大学のキャンパスの仲間関連の輸送を個人的にやってるのだ。」
釈「どんぱちはどうしましょう。そんな平和的な宇宙船を何者が襲いますか?」
じゅえる「そりゃ船くれた爺いが謎の財宝を、」
釈「死に損ないの爺いがそんなお宝をですか?」
じゅえる「うん、なんか変だが海賊ものはたいていそんな感じだ。ワンピースだって。」

まゆ子「いや、爺ちゃんのお宝はこの船だ。」
釈「はあ。」
じゅえる「船はお宝だけどね。」
まゆ子「どうしよう、宇宙エイハブにでもするか。」
じゅえる「あーそれもマンネリだなあ。巨大宇宙生物は無しねなし。」
釈「では地球人だけの世界で、あーあまり大げさなお宝は無いですかねえ。」
まゆ子「やはりここは、幻の人類の聖地地球への海図がお宝ということで、」
じゅえる「却下。こんな船で恒星間航行は無理だろ。」
釈「そこはどうなんですか? 地球には帰れないんですか?」

まゆ子「いや、実は地球には帰れないが、地球から出荷されてくる人は結構居るんだ。
 地球は悪の宇宙人によって完全制圧されており、地球人はひとりとして降りる事が許されないのだが、月は地球人繁殖牧場として使われており人間が今も増えている。が、環境は劣悪でこういうガーデニングで文明を築くことを許されてもいない。」
じゅえる「悲惨だな。でも地球上は人間が住めなくなってるのか?」
まゆ子「いや地球人以外の動植物は元気に反映しているぞ。で、ここから動植物を取り出してガーデニングセットに売っているのだ。」

釈「お宝は決まりですね。地球のオリジナル動植物ですよ。ガーデニング文明圏において何より貴重なのが動植物なんです。その為に地球人は飼われているとさえ言えるのです。」
まゆ子「うむ、やはりガーデニングは美しいものでなければならない。機械文明だけでは味気ないからな。」
じゅえる「特定動植物ばかりを飼っている居留地とかもあるんだよ。で、そこは機械文明はほとんど置けない設定になっているから、船で必要な物資を届けたり廃棄物を引き取ったりして回収してる。」

釈「カレーですね……。」
まゆ子「うむ、特定香辛料なんかはまさにお宝だ。」
じゅえる「胡椒やコーヒーなんかは、宇宙ではほとんど取れないのだ。まさにお宝なのだ。」

釈「ならば女子大生は料理学校の生徒とか?」
じゅえる「いや、生活なんとか科の生徒なのだ女子大によくあるじゃないか。」
まゆ子「ふむふむ、実に女子大生らしい設定だな。そういう学科はこれまでエンターティメント作品で見ないからね。」
釈「で、ごく普通の女子大の生活なんとか科で普通に勉強してたら、生徒の一人が何故か宇宙戦艦を持っていて実習とか研究に活用出来るようになってしまったのです。」
じゅえる「まあ、宇宙戦艦持ってる大学というのもなんだしね。」

釈「でも地球にはいかないといけませんよ、やっぱり。」
まゆ子「しかし恒星間航行技術は無いぞ。地球人の手に負える技術ではないのだ。さっぱり見当もつかないと地球人の科学者でさえ匙を投げている。」
じゅえる「いいじゃないか、宇宙人の宇宙船に便乗密航して地球に行ってみるというので。」
釈「いいかげんですねえ。」
まゆ子「まあ、そんな感じだな。でも地球圏に行くと今も悪い宇宙人が強圧的に人類を脅かしているのですよ。」

じゅえる「そこはあれだ。宇宙人に媚びへつらうことで地球に住むのを許された裏切り者人類というのが居るんだよ。」
釈「実にすぺおぺらしい設定です。そうですね、地球人を脅かすために月の横にデススターくらい浮かべておきましょう。」
まゆ子「うん、それは実に悪役らしい。」

 

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まゆ子「さて、このお話は至極可愛らしくのほほんとした女子大生ライフを描くものとなります。」

釈「まあ、宇宙海賊なんかしなくてもいいですけどね。」
じゅえる「でもやっちゃう。」
まゆ子「うん。だがどの程度の悪を想定しようか。普通にリアル悪だと、女子大生やられちゃうぞ。」
じゅえる「強姦されちゃうな。」
釈「さすがにそれは美しくありません。しかし、妙に強い女子大生というのもリアルからかけ離れてどうにもつまらないですよ。」

じゅえる「宇宙には悪いやつばっかりだ。地球人類も悪ばかりだ。」
まゆ子「いやそれはリアルなんだけどさ、」
釈「ちょっとメルヘンを入れてみるしかないですかね。宇宙ヒャッハーなんか見たくないですし。」

じゅえる「宇宙ヒャッハーか……。」
釈「あ、ドツボ踏んだ。」

まゆ子「宇宙山賊が襲ってくるというのはどうだろうか。」
じゅえる「うむまさに女子大生宇宙戦艦にふさわしい敵だ。」
釈「なんですかその宇宙山賊というのは。」
じゅえる「そりゃあれだ、人型ロボットに乗って斧を振り上げて襲ってくるんだよ。」
まゆ子「人型ロボだねえ。やはり宇宙山賊は。」

釈「ザクですか?」
まゆ子「そこまで大きくない。不思議エンジンも付いてない。地球人の科学技術で作られているのだ。」
じゅえる「電池だね、太陽電池と蓄電池で動くロボットだよ。おおきさはー、8メートルくらい?」
まゆ子「もう少し小さくてもいいか。5メートルくらいのATサイズというのはどうだ。」
釈「宇宙作業員ですか。」
まゆ子「小惑星で鉱物資源採掘に使うロボットだよ、本来は。女子大生宇宙戦艦についているマイナー火器はこいつら対策なのだ。」
じゅえる「レーザー銃やグレネードランチャーでなんとかなる程度の敵なわけだね。」

釈「しかしこいつらは何を目的に悪事を働いているのですか。」
じゅえる「肉。」
まゆ子「うむ。」
釈「肉ですか。」
じゅえる「地球産の貴重な動植物を勝手に盗んで食べる凶悪な連中だ。肉の魔力に取り憑かれた悪しき地球人なのだ。」

釈「じゃあ普通の地球人はなにを食べているんですか。」
まゆ子「そりゃあキノコシステムが出力する食物はデフォルトとして、地球産の植物から作った食品と、ミドリムシ。」
じゅえる「ミドリムシ一択だな。」
釈「えー、お魚なんか食べたいですよお。」
まゆ子「その願い、叶えましょう。タコです。」
釈「いえ、タコは魚じゃないですから。」
まゆ子「宇宙の無重力空間に適応し遺伝子改造を施された宇宙タコというのが居て、これを食べます。人間も襲ってくる凶悪でかつ知的な生命体です。餌は人間。」
釈「おお!」
じゅえる「宇宙山賊はこいつらと戦っている内に肉食の味を覚えて、他の動物も食べようと襲ってくるようになったのだ。」
まゆ子「うむうむ。宇宙は恐ろしい世界だ。リアルなんだよ。」
釈「もともとはタコを食べようと工夫した人類の知恵だったのに、恐ろしい逆襲を食らっているのです。リアルですねえ。」

 

じゅえる「大学が有るということは、そして宇宙戦艦の譲渡が平和裏に解決して免許も認められるという事は、政府というのがあるんだな?」
まゆ子「ありますね。」
釈「国があるんですか。」
まゆ子「まあ無いわけではないけれど、ガーデニングをやってる宇宙人の超意志こそが世界を決めているわけで、各恒星系ごとに管理する宇宙人も違います。
 だから国というのは恒星系内部に限られ、どこの恒星系地球人自治組織も対等に扱われます。」
釈「集権構造の組織とか社会は存在しないのですか?」
まゆ子「有る所には有る。しかし、構造上恒星系を出て領域を広げるとかはできないから侵略的になるわけにもいかない。
 まあ色々酷い国家はあるんだけど、また酷い企業や雇い主というのも有るんだけど、そこは宇宙山賊の出番なのだ。」

じゅえる「反政府活動を宇宙山賊がやっているということか。」
まゆ子「つまり、国家側・権力側はかっての地球の文化文明を復元して保存していこうという意志によって形作られている。
 対して宇宙山賊側は、現状与えられた状況の内部で自由に暮らして現在の文化文明を作っていこう、という態度。
 どちらも否定されるべきものではないとはどちらも理解するが、しかし気に食わんもんは気に食わん。」

じゅえる「共産主義社会主義的なゲリラじゃないんだ?」
まゆ子「社会主義的といえば、国家権力側はまさにそうです。宇宙ではそちらの方が効率的である事が多いのです。
 対して、リスクを負って鉱山開発なんかやる人間は自分達にこそ実権を欲しがり、自主性を尊重する、リスクも個人で負うような文化があります。」
釈「自由主義者なんですね。」

まゆ子「女子大生はどちらにも与しないノンポリなんですが、まともに就職しようと思えば国家側に、儲けようと思えば山賊側に視点が移ります。ましてや宇宙戦艦なんか手に入れた日には。」
じゅえる「国家にぶん取られてしまう可能性もあるんだね。」
釈「宇宙山賊はいいやつなんです。」
まゆ子「いや、こっちはこっちで武器で脅してくるけどさ。」

じゅえる「そこはいろいろな集団や組織が複雑怪奇に絡み合っているという事にしよう。人種や民族や宗教やらもしっかり生き残っているんだよ。」
釈「特に宗教は根深く生き残ってるでしょうね、それ。」
まゆ子「というか、大学だってそういう自主運営組織だよ。」
じゅえる「まあ、地球文化を保存するためにありとあらゆる勢力が必死になっているわけなんだな。」

釈「じゃあ女子大生自身もなんかの組織に最初から属しているというか、そもそも家系がそうなっているとかのバックグラウンドがあるという事にしますか。」

じゅえる「それより宇宙戦艦だ。なんか曰く因縁の有る船なんだよ。そうでないと、女子大生に船くれないんだ。」
まゆ子「幽霊船とか?」
釈「乗っている人間がついには消えてしまうとかの、不思議シップです。」
まゆ子「ゆうれいせんか、ふむ。」
じゅえる「なに?」
まゆ子「いやさ、宇宙人の恒星間移動に便乗して地球に行くというのは、この船に備わっている属性のおかげで可能になる、とかではどうだろう。」
釈「おお、神の船なんですね。」
じゅえる「なるほど、船自体が特殊な価値を持つのだな。それは良い。」

釈「じゃあ、地球に行ってみたら女子大生が実は王女様だったことが判明する、とかで。」
まゆ子「ああ、そのくらい派手な秘密が有ってもいいかもしれないな。宇宙戦艦の持ち主なら。」
じゅえる「さすがに王女様はなんだけど、なんか考えよう。」

 

じゅえる「だが地球はどうなってるんだ。というか、地球圏に残された人間はどうなってるんだ。」
まゆ子「スペースコロニーがあるんですよ。数万人乗りの出荷待ち宇宙船自体がコロニーです。これが何万本も浮いてます。」
じゅえる「地球を追い出されてもう何年も経ってるんだろ。近代科学技術文明を作りなおすまでには。」
まゆ子「ざっと二千年は掛かってますね。なにせそれぞれの居留地はさほど大きくなく、鉱山というものも無い。むしろ耕地や森林を作ってのどかに暮らしていくのに適した場所ばっかりを提供されているから。」
釈「鉱山無しで文明ですか、そりゃきついですね。」
まゆ子「まあ、でもキノコが有るからそれなりに文化的な生活をすると共に、科学技術知識をを温存してようやくだよ。基本太陽エネルギー装置を使った機械だね。」

じゅえる「で、宇宙を飛んでいこうと思ったら、親切な宇宙人さんがエンジンをくれたんだ。」
釈「やっぱり大航海時代は面白いですからね。」
まゆ子「というわけで、近傍のまあ月から火星くらいまでの距離は普通に行き来できるのです。だいたい地球人居留地というのは惑星上とは限らずに、小惑星や人工天体なんかもガーデニングの対象になっているのだ。
 無重力低重力天体の居留地には、宇宙戦艦は直で入港できるのです。が、まあ重力圏には降りれないのは仕方ないな。」

じゅえる「地球クラスの惑星から大気圏出入りするほどの能力は無いわけか。」
釈「まあ、それはいろいろと策を練って。」
まゆ子「そうだなー、じゃあ搭載する水を20トンしか積まないのを60トンまで増量してエンジンからペットボトルロケット並噴射を使って離脱だよ。まあ内蔵はペイロード下がるから、外部タンク有りで。」
釈「大気圏突入は大丈夫ですか?」
まゆ子「まあ、なにか空気抵抗避けを。というか、さすがにそれも水積んで最終減速着地の噴射しないと激突だ。」
釈「ああ。やっぱり水ですよ。」

じゅえる「この宇宙戦艦は着陸脚というのはあるのか? それとも海に降りる?」
まゆ子「海にも降りられるし、飛行場でもいいぞ。しかし海に降りたらエンジン整備しないと、塩水かぶるから即再スタートというわけにはね。」
釈「ヤマト以来の伝統ですからね、海に降りるのは。」
じゅえる「濃硫酸の海でもいいぞ。」

まゆ子「ということは、あんた達は地球に強行着陸とかも考えているんだ?」
じゅえる「そりゃ当然。」
釈「地球に似た惑星でもいいですが、有人惑星に降りないと駄目でしょうやっぱスペオペは。」
じゅえる「大気中の飛行能力は?」
まゆ子「いや、弾道飛行するだけだから、飛行て能力は無い。もちろん空中戦なんか出来っこない。」
釈「そういう機械ですからね。」
じゅえる「水さえあれば飛べるというのなら、文句は無いでしょう。」
まゆ子「腐っても宇宙戦艦だから、他の民間用輸送船なんかとは出来が違うのさ。」

 

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じゅえる「ふむふむ、結局これは海賊船ではなく「さまよえるオランダ船」話だな。」
釈「幽霊船ですか。」
じゅえる「なんらかの目的を果たすまでは決して旅を止めることを許されない船なんだ。その代わり、他の船では行けない未知の領域に連れてってもらえる。」
まゆ子「なるほど。それはいかにも冒険スペオペ。」
釈「いいですね、船自体に幸運が取り憑いているんですよ。で、その幸運を維持する為に次の船長に選ばれたのが、主人公女子大生。」
まゆ子「ふむふむ、実にいい加減でお伽話チックでよろしいぞ。その線でいこう。」

じゅえる「というわけで、よその恒星系に何度も行っており、船にはその記憶が刻まれているんだよ。」
釈「船自体が海図なわけですね。」
まゆ子「船長日誌とかお宝の山なんだ。」

じゅえる「もちろん、ほんとのお宝も宇宙には山のように隠れているぞ。」
釈「いいですね、冒険ファンタジーですよ。」

じゅえる「まあこんなものでしょう。こんだけあればそこそこに小説書けるかな。」
釈「そうですね、コレ以上はキャラ考えないと展開難しいですね。」
まゆ子「どうするかなあ、むしろここからてきとーに書いてみた方が早いかな。」
釈「じゃあてきとーに。」

 

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実験スペオペ小説

【彷徨える百合SEAーず】    (没)

 

 

【サイボーグ009 CG化記念】12/02/07

まゆ子「ProductionIGがこんど3DCGでサイボーグ009をやるんだそうな。」

じゅえる「石ノ森センセイの?」
まゆ子「うん。まあ2000年頃に石ノ森絵でのアニメはちゃんと作ってるから、同じものやっても仕方ないしね。」
釈「3DCGであれば、攻殻機動隊みたいなものになるんですかね?」
まゆ子「まんまその通りだ。空中のヘリの上から003フランソワーズが素子ばりに飛び降りてました。」
じゅえる「あちゃー。」

まゆ子「あちゃーなんだけどさ。でもね、その流れで「オー人事オー人事」のCMにフランソワーズご出演のアニメがインタネット公開されてるんだけど、これはいい。おまぬけで可愛い。
 だから、今回のアニメも許そうという気になった。」
釈「やはり可愛げの有るものが愛されますよね。」

 

まゆ子「というわけで今回はサイボーグだ。それも009をベースに考えてみよう。」
釈「サイボーグは以前にも仮面ライダーベースで考えてます。」
じゅえる「ということは、以前とは考えも変わってきたんだ。というか、科学もあれから随分進歩したからね。」

まゆ子「そうなのです。IPS細胞というもので、医療現場が激変する事すでに確定なのです。つまり、機械式サイボーグが出現しない可能性が極めて高い。」
釈「そうなんですよね、自分の遺伝子で作られている代替臓器で破損箇所を埋められるのであれば、これに越したものはありませんよ。」
まゆ子「それでは困る。」
じゅえる「サイボーグだからね。」

まゆ子「だが、まあ、そもそもが極めて困難な話であるわけさ。なんたって機械だよ鉄の塊だよ、そんなものを生体内に突っ込むんですよ。」
釈「痛いとか拒否反応とかの前に、そもそもスペースが取れないんですよね。コンポーネントの。」
まゆ子「つまり、要らない臓器を捨てちゃってコンパクトに纏める必要がある。でもそんな無茶をしなくても外部にオプションとして搭載すればいいじゃないか、というのが前回の考察。
 でも今回は内蔵しちゃう。」
じゅえる「ふむ。」

まゆ子「だがまあ断言しよう。そんな必要は無い。」
釈「ぶっちゃけちゃいましたあ。」
まゆ子「人体にそんなもん突っ込んでも中途半端以下の小さな出力しか発生できない。それでさえ、排熱で人体そのものがこんがりバーベキューに成りかねない。さあ困った。」

じゅえる「熱、出るんだ。」
まゆ子「充電式のバッテリーだって熱を持ちますよ。」
じゅえる「確かに。コンピュータはファンを回すし、ノートパソコンは膝を低温やけどにさせちゃうし、大変だな。」
釈「実際冷却と電力は大問題です。これ一個取り上げただけでも、サイボーグ無理!と結論していいくらいです。」
まゆ子「今日は、そこんところは魔法の技術でなんとかなる事にします。」
釈「いいんですか?」
まゆ子「いいんです。」
じゅえる「せめて、なんか足掛かりでもアイデア投入しとくべきではないかい? バッテリーなんかじゃサイボーグ動きっこないだろ。」

まゆ子「ここはもう思い切って、外部電源の無線電力供給にでもしときましょう。動力はなんとでもなる設計です。」

釈「うーむ、それはさすがに思い切りましたね。近くに電源別で大量に供給する設備が無いと動けない設計ですよ。」
じゅえる「無線電力供給ってマイクロ波使うやつだろ。あれはー距離はどのくらいで効果があるんだろう?」
まゆ子「気にしない気にしない。ともかく人間歩かすだけのエネルギーでもおおごとなんだ。スーパーマン並のパフォーマンスを実現するには、これしか正直手が無い。
 というか、これでも冷却の問題はつきまとうくらいだ。」
釈「外部からエネルギーを得ているんですからね。」
じゅえる「動力別なだけ、まだマシか。」

 

まゆ子「いっそこうしましょう。サイボーグ戦士の中には一人だけ小型原子炉を搭載して電力を供給し、他者に送電する能力を持つ者が居る。」
じゅえる「うーむ。でもそれは人間型でなきゃいかんのか?」
まゆ子「石ノ森センセイは人間型でないサイボーグも考えてます。家型とか。」
釈「なるほど。」
じゅえる「そうか。つまり戦場に投入される際にも随行出来る形態であればいいわけだ。まあ乗り物に乗ってもいいんだが、まあそういう奴が居てもおかしくない。」

まゆ子「00ナンバーサイボーグには居ませんけどね。しかしそのくらいの出力が必要なわけですよ。
 特に002ジェット、006張々湖、009ジョーは。」
じゅえる「空飛ぶもんね。」
釈「口から岩盤をも溶かす高熱を発しますから。それに加速装置ですか。あれは空気抵抗でかいですよねえ。」

まゆ子「実のところ、003も大飯食らいだ。なにせレーダー搭載だから。」
じゅえる「歩く無線基地局だからなあ。」

釈「001イワンはただの超能力赤ちゃんでありサイボーグの必要がほんとに有るのかさえ不明ですから除外して。

 004ハインリッヒは機関銃とミサイル搭載で常識的ですが、弾薬スペースが大きいから、彼はむしろ人体が歩く動くというところに神秘的な技術があるわけです。
 005ジェロニモは怪力で戦車を投げ飛ばしますが、そりゃさすがに無理がある。起重機として人間サイズでどこまで実現できるか。
 007ブリテンは完全に他のサイボーグと別口のアーキテクチャーだから、後で考えるとして。
 008ピュンマは水中用ですから、電波では動けませんね。なんせ水中ですから。」

まゆ子「とりあえず009の加速装置は後で考えよう。単純に機械体のクロックを増幅させてもあんな風には動けない。なんか別の技術があるはずだ。

 

 で、ここで一番注目すべきは004です。彼の身体はすっかすかなのに、動いてる。ギルモア博士の技術力でアクチュエーター付きの骨格のとんでもない省スペース化に成功しているのだ。
 つまり、004のフレームをベースに考えるとよろしい。」

じゅえる「つまりすっかすかのサイボーグ体に、それぞれの機能を果たす為のコンポーネントを搭載しているわけだ。
 でも人体の生体部分を維持させる為の臓器はどうした?」
釈「そうですよ。胃腸や肝臓はどうしたんですか。」
まゆ子「無い。」
釈「うえ。」
まゆ子「そんなもん、付けてたら動けん。サイボーグ成り立たん。だから脳みそだけを活かす事にする。
 つまり輸液を循環させ酸素交換するだけの機能が搭載されており、定期的に必要とする栄養物質の投与と老廃物の排出を行わねばいけないという仕組み。」
じゅえる「小さくなるな。」
まゆ子「理論上は小さいのだが、実装するとさほど小さくもならんと思う。内臓が無いことによる身体情報の欠落を脳がどうやって克服するか分からん。
 擬似信号を投入するにしても、専用コンピュータを載っけなくちゃいかんだろうし、そもそも機械の身体をコントロールする増設がなされているんだ。このインターフェイス部分は相当のスペースを食うはず。
 また戦闘用のサイボーグは長時間の無補給での行動を想定しておかねばならない。まあ、丸2日は補給なしで動いてくれないと作戦行動は非常に困難となる。」

じゅえる「2日か。歩兵運用で考えると、かなり短くてきついな。いかに機械体は物質的支援が不可欠だとしても、人型の利点を殺しちゃ意味無いしな。」
釈「電池切れで戦闘行動はできないにしても、脳が長持ちしてくれないと回収すら不可能になります。2日ではきつい、1週間飲まず食わずでも脳は保存されるくらいは欲しいです。」
まゆ子「それだけの栄養物質と最低限の生命維持機能の継続を考えると、バッテリー駆動としても相当にスペースを必要とする。」

じゅえる「うーん。」
まゆ子「実質は、胴体内部は生命維持機構と受電機構、バッテリーで満杯ではないだろうか。」
釈「うーん、つらいですね。なにか良い解決策は。」
まゆ子「外付け。栄養物質のタンクは外付けにして、老廃物処理もオプション装備でなんとかする。いっそのこと酸素交換器も外付けにしたいところだ。」
釈「生命維持機構すべて外付けですかあ。そりゃー、ちょっとでも壊れたら死にます。」
じゅえる「うう、つまり脳が一番の邪魔なんだな。脳を捨てよう。」
まゆ子「うむ、それも手だ。.しかしさすがのギルモア博士もそこまでの技術力は無い。ヒト脳はそのまま使うしか無いな。」

じゅえる「なにか無いのかなにか。」
まゆ子「いや、身体をでかくすれば容積は増えるぞ。全員ジェロニモ並の巨体にしよう。」
釈「フランソワーズもですか?」
まゆ子「致し方なし。」
じゅえる「……致し方なし。003も巨女だ!」

 

釈「のっけからおおごとになりました。サイボーグ戦士は全員巨人です。そうでないと内部コンポーネントが載りません。」
まゆ子「と言ってても仕方ない。巨人になったのだから、生命維持機構は頭部に集中することにする。首から上だけで生命維持は完結。胴体は全部機械としよう。」
じゅえる「大頭だな……。」

まゆ子「というわけで、首から下はまるっきりのロボットです。フレームはすっかすかですが大きくなった分だけ力も強くなり、戦車は投げないにしてもそうとうな怪力です。」
じゅえる「ロボット歩兵としては十分だな。」
まゆ子「そこで注目すべきは008です。これは水中用戦闘サイボーグですが、もちろん陸上でも戦えます。アンダーウォーターから上陸しての戦闘が真価です。」

じゅえる「特殊部隊で水中を潜って行けるというのは強みだな。」
釈「008は実は身体も頑強な装甲を持つんです。耐圧ですから。」
じゅえる「耐弾防弾の能力はもちろん外部に着るスーツが持つんだけど、素体そのものが強いのはもちろん大きな強みとなる。」

まゆ子「さっきも言ったけど、水中活動中は電波による送電は出来ない。バッテリーで動いてもらいます。巨体のほとんどがバッテリーとなりますが、問題ない。」
じゅえる「うん。大きくなった分力も強くなったから、水中活動も不自由しない。」
釈「まあ巨大になった分消費電力も増えてますが、なんとか賄えることにしましょう。」
じゅえる「全部これでもいいくらいだな。戦闘用サイボーグは。」
まゆ子「雑魚戦闘サイボーグとしては完成していると言ってもいいね。送電設備が随伴してなくてもある程度の長時間戦闘行動可能であるならば、大成功だ。」
釈「ふむ。しかしこれはスタンダードであるが故に、特殊な状況では弱いんですよ。」
じゅえる「加速装置付いてないからな。」

まゆ子「つまり他のサイボーグはそれぞれの特殊機能を動かす為の機構に、バッテリーからの大電力を必要とする。バッテリーでは足りないかもしれない。」
じゅえる「うん。空を飛ぶのはさすがにバッテリーでは無理がある。」
釈「そもそも電気で空を飛べるのですか? せいぜいプロペラを回すことくらいしか。」

まゆ子「プラズマだ。」
「おお!」

まゆ子「地球大気圏内だけで飛ぶと仮定して、電気火花もしくはレーザーで空気を加熱してプラズマ化して噴出。これでジェット噴射はいける。がもちろん大電流を必要とする。」
釈「どのくらいですか? 電力。」
まゆ子「まあサイボーグ1体を飛ばすだけだから、とは言っても空力無しの推力だけで飛ぶんだから、あー、ちょっと大きいかな。」
じゅえる「とてもじゃないが内蔵バッテリーでは話にならん量だ。無線送電をマイクロ波で行うとしても、メーザー光線を直接ぶち当てるくらいでないと賄えないだろ。」
まゆ子「マイクロ波ではとても無理ではないかな。レーザーの、それも破壊力抜群てくらいを直接に002にぶつける。」
釈「うう、その機能だけでも超技術だ。」

まゆ子「しかし外部電源でレーザー照射で飛ぶというのであれば、サイボーグ本体にはほとんど何も要らない。凹面反射鏡、中華鍋みたいなものが付いてればOK。
 まあ、空中を飛ぶのだから、そして空中を飛んでなにかオペレーションを行うのだから色んな装備が要るだろう。だいたい身体の中は満杯になるかな。」

 

じゅえる「超小型の原子炉でもあればなあ。」
釈「さすがにそれは排熱と放射線遮蔽の問題が。」
まゆ子「ドルフィン号に詰めるくらいの大きさで勘弁してくれ。飛行機に原子炉載せるてのも無茶だが、それが実現可能な最低限の大きさだ。」
釈「それでも遮蔽は疑問なくらいですけどねえ。」

まゆ子「サイボーグ自体を動かす動力は、前に考察したとおりに中型バイクくらいの出力があればいいんだ。ガソリンエンジンで十分間に合う。
 しかしそれ以上の大電力を必要とする機能を実現するには、最低でも自動車のエンジン並の出力が。まあ最近は電気自動車も普及してきましたが。」
じゅえる「電気自動車並の電力を蓄えるサイボーグ、か。そりゃバッテリーの化物になるな。」

釈「あの、前々から疑問に思ってましたが、そんな強力なバッテリーって、爆発しません?」
まゆ子「するよ。」
釈「やっぱり。」
まゆ子「内蔵のエネルギーが一気に放出されれば、そりゃ爆発並の破壊を発生させる。だが爆発物を使ってそれだけのエネルギーを発生させるという技術はさすがに無いのだ。」
じゅえる「爆発物を使って発電てできないの?」
まゆ子「爆発物は破壊力は有るけれど、エネルギーが高いというものでもないんだよ。というか、そこらへんの酸素を使って燃焼する普通の燃料の方がエネルギーは大きい。爆発物は自前だからね酸素。」
じゅえる「うまくいかないな。」

まゆ子「だからこその無線伝送だ。と言っても、受電してそのまま直で電気使えるとも思わないけどね。というか、そんな大電力を伝送するとなればそこら一帯電子レンジの中並の環境に。」
じゅえる「うう。」
釈「火花散りまくりです。」

 

じゅえる「有線だ!」
釈「ひいぃ。」
まゆ子「あー、有線の方がげんじつてきですなあ。というか、006張々湖機能を実現するには有線しかありえません。」
釈「高熱を口から吹いて岩盤を溶かして地中を進む、ですね。」
じゅえる「そんな強力なエネルギーを無線伝送すれば、そりゃそこら中燃えまくるな。」
まゆ子「そもそも土の下に潜るんだから、電波届きませんよ。もちろん体内にそんなエネルギーを蓄えることできないから、有線ですね。それ以外に実現する方法は無い。」

釈「そもそもそんな高熱をどうやって放出しますかね。プラズマですか。」
まゆ子「プラズマよりはレーザーで溶かした方が確実で効率的で、エネルギーの節約になると思うな。まあレーザーで無理やり溶かせば、そこら中プラズマが飛びまくるだろうけど。」
じゅえる「つまり張々湖は口からレーザーを放出するサイボーグなのか?」
釈「はあ。そういう事になりますか。」
まゆ子「レーザーであれば長距離狙撃もできるなあ、とか思ってるんだろう。まあできるんだけど、焦点を近距離に合わせて岩盤を溶かすのに特化したサイボーグではないかな。」

釈「有線ならバッテリーは要りませんね。」
まゆ子「運動するための最低限のものでいいだろ。むしろ体内に電線コードリールを内蔵しておいた方が便利。」
釈「その電線、どこから出てくるんでしょう…。」

じゅえる「しかし有線であるならば電線を引き回す管理が必要だ。一人じゃ無理だな。」
まゆ子「そこは普通一般の兵士でいいでしょ。008はだいたい暇そうにして居るよ。」
釈「008ってだいたい暇そうなんですよね。見せ場というのが作ってもらえなくて。」
じゅえる「だって水中用なんだから、他のサイボーグは水中は苦手だし、でも酸素ボンベ使えばちゃんと戦えるし、特異的に描写できないんだもん。」

まゆ子「有線サイボーグであればだいたい2、3人は電線管理人が必要だし、それを守る兵士も必要。でもそれだけの価値があれば実用するにやぶさかではない。
 だがこういう考え方もあっていいだろう。
 母機ドルフィン号の動力から供給される電力を直接に受電して、他のサイボーグに供給する有線配電サイボーグという存在だ。」

釈「ドルフィン号からは無線送電されるんですか。」
まゆ子「母機が現場にそんなに近づけるとも思えないからね。また要塞内部に突入とかだと、無線送電は難しいと考えるべきだ。」
じゅえる「もっともだ。」
まゆ子「であれば、無線送電可能なぎりぎりの位置に留まって母機から受電し、有線で先行するサイボーグに配電するサイボーグ、というのがあっていいじゃないか。」
釈「ふむ。」
じゅえる「ふむ。」

まゆ子「そうであれば、マイクロ波でのぬるい送電なんてやめて、メーザーで強力なエネルギーをばちこんと照射してしまいましょう。レーザーでもいいや。」
じゅえる「そんな受電設備をサイボーグに搭載できるのか?」
まゆ子「002と同じ中華鍋でいいよ。レーザーを中華鍋で受けて空気をプラズマ化して、強力に噴出するプラズマで発電する。サイボーグが空を飛ぶほどのエネルギーであれば、発電もできるでしょ。」
釈「効率は落ちますけどね。まあ普通にメーザー光線でなんとかしてくださいよ。」

じゅえる「というか、それはサイボーグでなくても普通の機械でいいじゃないか。警備を付けておけば。」
釈「暇そうな008をですね。」
まゆ子「有線でなくても長時間動ける008はなんにでも使える便利な奴だぜ。」

 

じゅえる「そもそもだ。有線でエネルギー供給をしなくちゃいかんサイボーグというのを戦闘に投入すべきだろうか?」

釈「無茶は元より覚悟の内ですが、戦闘にのみ目的を絞ってチームを結成するとすれば、008タイプと004タイプがあれば間に合うと思いますよ。」
まゆ子「普通に戦闘するのならばね。しかし彼らには重火器を使えない。さすがに重量物を扱うには標準サイボーグでは無理で、005の投入が必要でしょう。」
じゅえる「ジェロニモの怪力と重装甲だな。しかしそんなもの動かすにはそれこそ大きなエネルギーが必要で、有線で電力供給しなくてはならない。
 が、起重機レベルのエネルギーであれば別に原子炉から供給を受けなくても、ちょっと大きめの発電機でいいじゃないか?」

まゆ子「005が1体であればね。ちょっと大きな電源車を突入させる手法もあり得る。」
じゅえる「通常の任務なら006張々湖機能は要らんだろ。」
釈「でも敵はブラックゴーストですから、爆弾くらいではなんともならない防壁くらいは用意してるんじゃないですかね。」
じゅえる「ふむ。穴掘り専門家は必要なのか。」

釈「逆に言うと、要らないサイボーグが有るんですよ。001は置いといて、002飛行タイプは別に人間でなくてもいいじゃないですか。」
まゆ子「違いない。」
じゅえる「いかにももっともな話だ。レーザーとプラズマで空を飛ぶにしても、人型である必然性が無い。無人飛行機に008をくくりつければOKだろう。」
まゆ子「008は水中用サイボーグだから、高空の大気が薄い低温環境でもちゃんと活動できるのだ。外皮も耐圧で頑丈だから、生身でくくりつけるのが大正解。」
じゅえる「うん。002て空を飛ぶだけで、別に戦闘力が高いわけじゃないからね。というか、ただの無人飛行機であれば無理してレーザーでなくてもジェットエンジンで飛べるだろ。」
釈「飛べますね。」
まゆ子「飛べるんだな。」
じゅえる「リストラだ!」

 

釈「002はリストラ。003はセンサー・レーダー機能です。これはー便利なような気がしますが、戦場で必要ですよね?」
まゆ子「C4I技術というのが最新兵器の流行りですね。複数センサーを連動して知能的な攻撃を行うのです。一般の兵士もノートパソコンやらスマートフォンを携帯するご時世です。」
じゅえる「003要らないかな? ノートパソコンで間に合うのなら。」
釈「そうですねえ。専用の高精度センサーを搭載したいのは山々ですが、008タイプだって通常のセンサーは持ってるでしょう。これを連動すれば、」

まゆ子「いやあ、あんまり複雑なセンサーを搭載したら、008タイプの長所が失われるよ。C4Iの導入は当然としても、分析機能を持つコンピュータまで搭載するのはやめよう。
 ここにこそ003タイプの必然がある。」
じゅえる「分析・指揮官だな。でもサイボーグでなくてもこれは出来るでしょ。後方の、それこそドルフィン号で管制すればいい。」
まゆ子「まーね。」
釈「有線で電源は来ているのですから、008でも005でも使って特殊なセンサーを現場に投入すればいいでしょう。センサーをわざわざ人型にする必要は無い。」

まゆ子「まあそうなんだが逆に考えると、そんな管制を人間がやるよりももっと効率的な方法があるんじゃないだろか。つまり指揮専門サイボーグ。」
じゅえる「知能の拡張か。」
釈「なるほど、人間の知覚能力を超えてC4I技術を駆使した指揮管制に特化した知能サイボーグですか。」
じゅえる「そいつは別に現場に出向く必要も無く、もちろん電力供給は母機から直接もらって、椅子に座って仕事すればいいな。」

まゆ子「というわけで、電脳化されたサイボーグによる戦闘指揮という概念ができあがるのです。
 サイボーグ戦闘部隊の中枢であり、実質の指揮官である生身の人間の命令を聞いて部隊を管制するインターフェイスとして働く。これなら003が女性型であるのも許されるのではないだろうか。」
釈「それなら巨大化しない方がいいですね。本当に生身の人間の脳に電子回路を突っ込んで、ほとんど人間というサイボーグで許されます。」

まゆ子「ProductionIGがアニメ作るわけですよ。」

 

じゅえる「というわけで、指揮管制機能を持つ003タイプの指揮で、現場部隊として008タイプと004タイプが投入され、重火器を運用する為に怪力の005と穴掘りの006が有線電力供給で少数投入される。」
釈「002タイプはリストラ。007と009が残されました。」

 

じゅえる「007は戦闘に是非とも必要というわけじゃないけれど、欲しいよね。」
釈「便利ですよね。そして、現在の科学技術の進展で色々と進んでいますよ。」
まゆ子「メタマテリアルとかを使って透明人間を作ろうとする時代になりましたね。身体を構成する分子を弄って変身するサイボーグだって作ろうと考えて不思議じゃない。

 とはいうものの、これは運用からアーキテクチャーまでまったく別のサイボーグですから、今回は考証しません。また考えたところで、凄いエネルギーを蓄積出来るはずも無いからほとんど人間レベルの出力になります。」
じゅえる「バッテリーの塊を呑み込んで変形は無茶だわな。」
釈「バッテリーで動くよりもバイオ技術で動いた方がいいかもしれませんね、これは。」
まゆ子「機械というよりも、プラスチックで構成された合成人間だね。ケミカルで動くのが筋というものだ。」

じゅえる「でもさ、変形機能って特に必要ではないよね。というか人体のボリュームは隠し様が無いんだから、見つかりにくくなる偽装やステルス、透明化で十分じゃないか。」
まゆ子「赤外線での探知も妨害出来るのであれば、変形は必要無いかもね。
 と言いますか、そもそもサイボーグが人型である必然性というのは、人間に混じっての行動が可能というところで、他者を考えないのであれば小型戦車の方がよっぽど強いのだ。」
釈「サイボーグは人型でなければ生きていく意味を持たない。わけです。」

じゅえる「うん。とするとコンポーネントを搭載するために巨人化するサイボーグはそもそも要らないのだ。」
まゆ子「サイボーグ戦士は特殊部隊員であるのだよ。特殊部隊というのは、人間が居るところに突入する為の部隊だ。人間をなんとかする戦力だ。
 相手をただ単に殲滅したいのであれば、誘導ミサイルをぶち込めばいい。」
釈「なんですよね。やはりサイボーグの本道は007なんです。」

じゅえる「でもさ、プラスチックの合成人間であっても、強力にすることは可能だよね。」
まゆ子「まあ、ケミカルで動くのであれば生身の脳とは独立した循環器系を用いて人工筋肉をオーバードライブすればいいからね。
 もちろん出力としてはせいぜい人間の2,3倍。小型バイクほどの力も無い。が、人間相手であれば十分過ぎる。通常の銃火器を用いる上でも怪力は便利なのだ。」
釈「弾薬の携帯量が上がればそれだけ火力はアップしますからね。」
じゅえる「これでいいじゃん。」
まゆ子「これでいいんだよ。」

釈「でも敵はブラックゴーストですからねえ。並の兵隊より強い程度の戦力じゃ、負けちゃいますよ。」
まゆ子「火力でばかばかぶっ倒しますよ。それしかない。」

 

釈「さて、で009ジョー島村です。ほんとは0010とか0011とかも居るんですけどね。加速装置標準搭載モデルです。」

じゅえる「加速装置って、そもそもなんだ? ただ高速で動くだけではないんだろ?」
まゆ子「まあクロックアップですけどね。身体が高速で動くだけでなく、脳の認識機能も高速化されます。人間はピンチになると走馬灯とか時間がゆっくりに感じられるとかありますから、なんらかの薬物を使用した加速でしょうか。」
釈「人間の脳をまんま用いているとすれば、素子速度を上げるとかは無理ですからね。本来人間に備わっている機能を活用するべきでしょう。」
じゅえる「まあそれは分かるんだ。相手の動きがゆっくりに見えれば対処も容易い。身体がその分高速で動けば、簡単に勝てるはず。
 でも、009に付いてる加速装置はそんなレベルではないでしょ。」

まゆ子「人の目にも止まらぬほどの高速で運動できる、てのはこれはとんでもない能力であって、時速100キロなんてものではない。トリックを使わなければね。」
釈「トリックというと、」
まゆ子「相手の視線を逸らして、その隙に逆に動けば、相手には瞬間移動したように見える。これは武術のテクニックだが、もちろん加速装置はそんなもんじゃない。」
じゅえる「客観的に見ても目にも留まらぬ速度なんだから、そんなもんじゃないな。で、それってどのくらい?」

まゆ子「あー、目の視界の幅を100分の1秒で移動できれば、見えないと思うぞ。」
釈「それは距離が離れれば見えるということですね。」
じゅえる「そりゃそうだ。空を飛んでる飛行機はゆっくりに見えるさ。」

まゆ子「もちろん近距離の、拳銃で撃ち合うくらいの距離であれば、見えない。ライフル銃の距離であれば分からんでもない、という速度だな。」
釈「拳銃は50メートル離れたら当たらないんでしたか。」
まゆ子「シューティングレンジは、つまり射撃場は10から25メートルくらいだから、拳銃の距離はそんなもんだろう。で視野角はまあ120度くらいか、集中すれば90度以下だと思うけど。」
釈「距離25メートルで視角90度、100分の1秒で通過。秒速3.5キロメートルですね。」
じゅえる「戦車砲弾の倍以上てことだ。」
まゆ子「無理。」
釈「ですね。」

まゆ子「100分の1秒は過激すぎた。10分の1秒で通過ということで。これでも常人には見えない。」
じゅえる「日頃テレビゲームとかで鍛えてる猛者ならば、見えるな。」
釈「秒速350メートル。拳銃弾ですね。」
じゅえる「これでも無理だろ。」
まゆ子「超音速だからな。えーと、1秒で通過ということで。」
釈「秒速35メートルは時速126`です。特急電車並の高速ですね。」
まゆ子「どうだ!」
じゅえる「いや、そりゃホームを特急電車が通過する速度なら、見えたかなー?くらいだろうけどさ。」
釈「25メートルも離れていたら見えますよ。世間様は納得してくれません。」

まゆ子「しかしながら、実はもっと問題がある。これはトップスピードの話をしているのだが、009は加速装置。静止状態から瞬時にトップスピードを叩き出すのだ。」
じゅえる「ふむ。瞬間的にね。つまり走り出したらもう見えないんだ。」
釈「絵に描いたとおりに、ですね。」
まゆ子「時速126`の常識的速度であったとしても、それが瞬間的に達するとすれば加速度は無茶苦茶になる。」

釈「ちょいと計算過程を省きますが、推力10d超えでないとダメですね。たとえ時速126`であっても。」
じゅえる「むり。」
まゆ子「うん……。」

釈「なんとかしてください!」
まゆ子「あー、しかしだね、いかに加速したとはいえ生身の脳だ。これが制御出来る速度を超えてしまったら意味が無いんだ。」
じゅえる「そりゃそうだ。」
まゆ子「薬物を使って体感速度を加速しているとはいえ、人体を操作出来るのはせいぜい猿くらいの速度だろう。」
釈「あー、まあ人間よりははるかに早いですかね。」
じゅえる「人間は遅いからねえ。」

まゆ子「人間をベースとして可能な速度というのは、このまゆ子様が見たところでは豹くらいか。しかしパワーは岩をも砕く。」
釈「微妙なジョジョネタは入れないでください。」
まゆ子「豹くらいの速度で勘弁して。」
釈「チーターはですね、最高時速113`に達し、加速過程2秒で72`にまで到達します。」
じゅえる「うーん、2秒で時速72`、うーん了解しなくてはいかん数値だろうな、それ。」
まゆ子「実際の動物が叩き出した数値だ、サイボーグもこのくらいで勘弁して。」
釈「しかし、金属と機械のサイボーグでチーターの走りを実現するのは、ちと困難ではないでしょうか。さすがに重くて危なくて。」

まゆ子「むしろ007みたいなプラスチック合成人間にこそ、それは可能だ。」
じゅえる「滑らかな身体の操作が必要なわけだな。まあ、チーター並に動く人間を照準に捉えるのは無理だろう。」
釈「街に逃げ込んだ猿を捕まえるのでさえ、全力疾走中では無理ですからね。」
まゆ子「うん、サルだ。009は高速で疾走するサルであればいいんだ。」
釈「はあ。」
じゅえる「世間様は納得してくれないだろうな。」

 

まゆ子「というわけで、007と同様に009もプラスチック製合成人間という事にします。007がステルスやら偽装やらの芸達者であるのに比べて、009は単純に早く運動出来る猿並サイボーグです。
 しかし、それがいい。」
釈「実用を考えた場合、それで十分ですよ。」
じゅえる「金属ボディの008やらは、重くて鈍重にしか動けないという事でいいのかな?」
まゆ子「人間並みの速度は達成している、ということにしよう。もちろん009にも弱点はあって、そもそも重いとダメだから防弾は一般兵士以上は無理だし、そんな早く動いたら即ガス欠する。」
釈「チーターだって400メートルしか走れませんからね。」
じゅえる「腹減って動けなくなるわけか、合成人間は。まあ仕方ないな。ケミカルで動いてるんだからな。」

釈「しかしケミカルなエネルギー源でそんなに上手くサイボーグは動きますかね?」
まゆ子「実績が無いからなあ。人工筋肉はまだ実用化の段階とはとても言えない。ましてやケミカルで動く人工筋肉は。」
じゅえる「想像上の産物であるけれど、生体のモデルがあるからには実現が不可能には思えない、というところで〆とくべきだな。」

 

釈「まとめましょう。サイボーグ戦士は大きく分けて3種類になります。

 一つは巨体を持ち金属フレームで構成されるロボット的サイボーグ。004や008を実現するもので充電池で動きますが、継続してパフォーマンスを発揮させるには無線送電の機能があるのが望ましい。
 008は水中行動も可能で長時間の活動が可能な一般兵士タイプ。運動能力は人間並みですが頑丈です。防弾服を着用して装甲もできます。
 004は体内に銃火器を内蔵したタイプ。装甲を最初から有しており戦闘に適しているが、活動時間は長期にはならない。また内蔵銃火器の弾薬補充をする為にも、短いサイクルで補給に回さねばならない。
 主流となるのは008タイプであると思われます。あくまでも004は先行して敵の防備に穴を開ける特攻隊みたいなもの。

 ロボット型のバリエーションとして怪力を発揮する005、口からレーザーを発射して岩盤を繰り抜く006などが考えられますが、彼らは無線送電ではとてもエネルギー供給が追いつきません。有線で電力供給をします。

 これとはまったく別の身体構造を持つ有機化学で合成された人工筋肉により駆動される合成人間的サイボーグ、007と009があります。

 007は運動能力は並の人間と同程度ですが、身体に偽装やステルス、赤外線隠蔽等の機能を有して、敵に察知されず隠密裏に行動できます。
 また柔軟な構造を持つこのタイプは一般社会にも溶けこんで行動が出来て、戦闘任務以外の活動にも従事できます。
 動力はケミカルな栄養物質を用いて人工筋肉が直接に消費すると考えられますが、電力で動いてもかまいません。電力であれば外部より無線伝送も可能です。
 しかし人間社会に潜り込むのであれば、長時間の活動が可能な体内の物質を消費してのいかにも生物的な存在であるべきでしょう。

 009は007の戦闘特化型で、運動能力を向上してあります。ステルスや欺瞞機能は付いていませんが、防御力を素体に与えるには外皮に余分な機能を搭載すべきではないでしょう。
 009はサル並の運動能力を持ちます。が、さすがに長時間の稼働は難しく、エネルギー消費が激しい為に通常の兵士とほぼ同じ運用が求められます。
 あくまでも、ここぞという時にこそ運動能力が発揮されます。

 そしてサイボーグ戦士が搭載するセンサー情報を統合してC4I技術による指揮管制を行う、脳改造サイボーグ003が考えられます。
 これはただ知能の強化がなされているだけなので、人体ベースで構いません。いわゆる電脳化です。

 002は人型である必要がありません。001は超能力を実現する方法が見つかりません。」

 

じゅえる「でもさ、ロボットタイプのサイボーグってほんとは無くてもいいんじゃないかな。それこそロボットを電脳で操ればいいんだし。」
まゆ子「うーん、確かに。ロボットに電脳化処理をした兵士が接続して、遠隔でも現場ででも操作すれば足りるかなあ。」
釈「それの方が正しいですよね普通。第一ロボット人間にされると、人間凹みますよ。」
じゅえる「前回仮面ライダーベースサイボーグの話でもそういう事になりましたね。」

まゆ子「しかし、ケミカルベースの合成人間だとギミックに凄いものを搭載というわけにはいかないぞ。ちょっと凄い人間程度で。009だって内蔵火器やらは無いから戦闘力低いんだもん。」
じゅえる「なんとかガン、レーザーだっけ? あれが有ればいいんじゃないか。」
釈「というか、あれこそエネルギーをバカ食いするんですよ。あれに電力供給する為にバッテリーを背負うとかになってしまいます。」
まゆ子「あー、あれはーパラライザーだったっけ、出力上げれば破壊も出来るけど。あれはたしかにエネルギーをバカ食いする。」
じゅえる「火薬兵器でいいんじゃないか?」
まゆ子「うん。まあ、常識的な範囲内で戦闘をするのであれば、火薬鉄砲爆弾で結構です。サイボーグちゃんと壊れますから。」

釈「そもそもサイボーグに火薬を内蔵するのはやばいですよ。」
じゅえる「被弾すれば爆発だな。」
まゆ子「最近の爆弾はそんなやわではないが、まあ銃弾はヤバイかな。確かに外に持ち歩いた方がマシだ。」
じゅえる「004、008共に要らないんじゃない?」
まゆ子「あー、しかしーそれではせっかく改造されたハインリッヒとピュンマがあまりにも可哀想。」
じゅえる「そんなものは要らないのだ、というのが彼らの平和の意志なのだ。」
まゆ子「とほほ。じゃあケミカルで動くただの合成人間になりますー。」

釈「結局人間でいいんですよね。ただちょっと生身の人間の不都合なところをパッチ当て出来れば。」
じゅえる「人間がひ弱過ぎるのがいかんのだ。だからこんな妄想を繰り広げる。」
まゆ子「しかし、機械のパワーを人体に与えようというのは人間の想像の正しい方向だぞ。無理だけど。」

じゅえる「ともかくだね、サイボーグ戦士はケミカルで動く単なる合成人間なのだ。飯食って働くんだ。」
釈「でも消化器官とかは無いんです。ポリマーリンゲル液が体内を巡ってマッスルシリンダーを駆動して、」
まゆ子「爆発!」
釈「はい。」
じゅえる「割りにあわねー。」

釈「まあ、それでもロボット化されるよりは精神的に楽ですよ。生物としての常識からは出ていませんからね。精神ケアになんぼかマシです。」
まゆ子「だがそんな程度の人体改造では、ブラックゴースト団はボロ儲けできないぞ。もっと商品力のある、訴求力の強い製品でないと。」
じゅえる「結局はカネか。」
釈「死の商人ですからね。でもー、たしかにこの程度のサイボーグを使うよりは、変な宗教に騙されてる死んでも大丈夫な兵士の方が役に立つかもしれません。」

まゆ子「むしろ、そういう兵士に簡単な部品を取り付けてちょこっと死ににくくなった程度の改造人間が便利だろう。」
じゅえる「ちょこっとって、どのくらい?」
釈「鉄砲で撃たれても血が出ないとか。」
まゆ子「うーむ、ケミカルサイボーグでも白い液体が漏れ出るからな。」
釈「ポリマーリンゲル漏出で爆発です。」
まゆ子「うむ。」

じゅえる「やはり007くらいの付加価値は必要なんだな。偽装やらステルスやらでどこにでも潜入出来る特殊な兵士は、世界各国のあらゆる実力機関が必要とする。」
釈「商品力を持つサイボーグは007だけですか。」
まゆ子「正直言って猿並み009はなんとか出来るからね、機械力で。」

じゅえる「でも003の指揮管制能力は別口で必要だろう。」
まゆ子「だがそんなのはむしろブラックゴーストから買うべきではない。国家の機密情報に不正アクセスされちゃうぞ。サイボーグにバックドアを仕掛けられて。」
釈「中国製003ですよ。」
じゅえる「そりゃーやばい。」

 

釈「えー、007だけ?」
まゆ子「うん。」
じゅえる「そういう事になってしまった。」

まゆ子「そういう事であればー、007ベースでサイボーグ部隊を組み直そう。

 でもやぱり002は要らないな。」
じゅえる「007ベースでは008みたいに無人飛行機にくくりつけるのは無理だぞ。」
釈「堅牢性が足りませんね。普通の人間と同程度に環境の変化に弱いですよ。」
まゆ子「ふーむ。防護服が必要になるのか。でもそんなものをつけたら007の長所が殺されるぞ。」
じゅえる「雑魚戦闘員は普通の人間でもいい、という話に戻るんだな。どうしよう?」

釈「007にオプションパーツを付ければ機能拡張が出来るというのでは。」
じゅえる「それでは前回と同じ結論になってしまう。今回は内蔵だ。」
まゆ子「まあ、サブマシンガンくらいならケミカルサイボーグでも内蔵出来るから、004は随分と弱体化はするものの許されるよ。」
釈「堅牢性を考えればやはり内部スペースの問題が発生します。生存性を高める為の装備を内蔵しなければなりません。また高価なサイボーグ戦士を保護するために外皮の防弾も必要です。」
じゅえる「大きくなるな。」
まゆ子「005だ。」

釈「007を潜入工作用とすれば、戦闘用サイボーグとしてケミカルな巨人が必要とされるのです。これは装甲が強化されているから要人の護衛にも使えます。」
じゅえる「ふむ。費用対効果を考えれば通常の戦場に投入するよりも、もっと経済価値の高い現場に投入すべきか。」
まゆ子「商品価値を考えれば、特にカダフィ大佐の最後なんかを省みれば、護衛用サイボーグ需要は高い。
 005は採用だ。」

釈「007と005は有りです。運動性を高めた009は潜入工作用に必要な場面もあるかもしれませんから、商品にラインナップしておきましょう。004はオプション扱いで。」
じゅえる「ふむ。007は所詮人間並みの運動性能しか実現してないんだったな。」
まゆ子「それだけでも十分超技術なんだけどね。」

じゅえる「006は要らない。」
まゆ子「まあ、有線で電力供給される武器は悪くないんだが、サイボーグにしなくていいな。」
釈「しかし穴掘って進むというのも潜入工作ではしばしば有るアイデアです。」
じゅえる「うーん、それはーパワーショベルでも地下に持っていった方がいいんじゃないか。最近は小さいのも普及してるし。」
まゆ子「それは普通の作業員でいいよ。

 

 とはいうもののだ、007はケミカルサイボーグで潜入工作用とはいえ長時間単独で潜行するのに向いているとは思えない。」
じゅえる「そうだな。短時間での任務しかできないだろう。メンテ無しでは機械化部隊は十分な能力を発揮できないのだ。」
まゆ子「ボディーに長時間活動用の装備を内蔵するという選択肢はあっていいと思う。無論外付けオプションでもいいのだが、1〜2週間を単独で活動できるようにするには専用装備を内蔵しないとダメだろう。」
釈「超低燃費サイボーグですね。」

まゆ子「もちろん食料を長期間活動分必要なのだが、腎機能が今度は問題になる。生体部品を維持する為には輸液から老廃物を取り除く機能が不可欠であるから、外付けで賄うようでは長時間活動は難しい。」
じゅえる「人間と同様にスタンドアローンで生存を続けられる仕組みを内蔵だな。随分と生身っぽくなるな。」
まゆ子「もちろん栄養物は必要なのだが、逆にそういう環境で活動を続けるには無線電力供給が効果を発揮する。ケミカルで動く人工筋肉を電力でも動くようにしておくと良いだろう。」
釈「最初から人工筋肉も電気で動くようにしておけばいいんじゃないですか?」
じゅえる「大容量バッテリーを搭載するスペースを嫌ったんだよ、ケミカルサイボーグは。しかし007であってもオプションでバッテリーを背負えば運動能力を高められる、という仕組みも悪くないな。」
まゆ子「ふむ、ケミカルと電力とハイブリットというか、そこらへんを共用出来るように人工筋肉の構造を考えておくべきかもしれない。」

釈「電気で動くとなれば、太陽電池なんかも使って長期間の単独ミッションも可能になります。あるいは家庭用電源から充電してちょこちょこと動きまわるなんかも。」
じゅえる「あまりにも当たり前すぎて、それが戦闘用サイボーグであることすら忘れてしまうな。」
まゆ子「つまり、長期間活動用サイボーグはほとんど人間なんだ。」
じゅえる「しかしだよ、灼熱の砂漠や熱帯雨林、あるいは北極なんかで長期間単独活動出来るというのは、十分価値の有るものではないかな。」
釈「商品価値はありますよ。」

まゆ子「しかしそんな機能を搭載すれば、兵器としての能力は随分と低下するぞ。並の人間以下だ。」
じゅえる「そんな環境に並の人間が行けたらね。」
釈「本来あり得ない場所に戦闘員が居る、というのがいいんですよ。」
まゆ子「ふむ。弱くても許される戦闘サイボーグか。まあサブマシンガンを内蔵した004は別に強くも無いんだよ、てな話だな。」
釈「所詮はサブマシンガンの火力でしかないんです。」
じゅえる「でもそれで間に合う現場に投入されるんだからね。」

まゆ子「しかし、ふーむ弱っちいけど耐環境性に優れて長期間単独でメンテも補給も無しに活動できるサイボーグ、か。」
じゅえる「008だな。」
釈「弱いと言えば、008です。」
まゆ子「決まりだな。」
釈「でも008は水中活動用ですよ。省エネルギーサイボーグにそんな運動をさせていいのでしょうか。」
じゅえる「単独活動サイボーグが水で溺れたら困るだろ。」
釈「確かに。でも深海活動なんかは無理ですよ。」
まゆ子「まあ、身を隠すために1時間くらい潜水出来るくらいの機能は欲しい。また陸上であっても呼吸を潜めて潜伏する為に活動を長時間停止する機能もね。」
釈「ほんとに省エネなんですね。」
じゅえる「体内に酸素ボンベなんかを搭載して、潜りが可能にしておくべきなのか。それも外部オプションでなくて。」
まゆ子「肺が要るな。まあそもそもケミカルで動くというところから空中の大気を呼吸して酸素を利用すると暗黙で設定しているから、007ベースサイボーグには標準搭載だけど。」
釈「自力での酸素ボンベ貯蔵機能を持っている、という特殊なサイボーグなんですね。長時間型は。」

じゅえる「そこまでするのであれば、胃腸肝臓なんかも搭載して自然環境で飯が食えるようにしておけばいいんじゃないか。」
まゆ子「いやーさすがにそれは、その器官を維持するだけで内部スーペースがパンクしちゃう。」
釈「こういうのはどうでしょう。まあ脳細胞を維持する為の栄養物質は外部から補給せざるを得ないとして、人工筋肉を駆動する化学物質は外部電源によって還元されて何度でも再利用が可能で長時間の無補給活動が可能。」
まゆ子「ま、そんなもんだろう。電気供給が途切れてもそれを分解してちまちまと活動をし続ける。電気供給が再開するまでひたすら待つという。」
じゅえる「脳を維持し続ける分の電力を確保しなくちゃいけないからな。でも栄養物質というのはどれほど必要なんだろう。」
まゆ子「まあ人間が極地探検に行くとして、何を食料としてどの程度持っていくか、だな。ただし消化器官無しで直接利用出来るものとなると、ブドウ糖を粉で持っていくとかだろうかね。」
じゅえる「水はどうしよう。水を体内で完全循環させるというのは、あまり得策でもないんじゃないかい。」
まゆ子「基本は循環だが、排泄を必要とすればやはり最小量を飲まねばならないだろう。それも極地であれば清水があるとも思えない。砂漠は別として、水分の濾過装置は不可欠だな。」
釈「そんなものまで内蔵ですか。」

 

じゅえる「サバイバルサイボーグってのは、ずいぶんと難儀なもんだな。」
まゆ子「サイボーグに望まれる機能の一つではあるからね。まあ電気を十分に供給されるのであればもっと簡単に実現できるだろうけど。」
釈「太陽電池レベルの低密度エネルギーしか供給できないとなれば、これほどのややこしさが必要になるんです。」
じゅえる「でもこれは、通常の人間サイズで実現できるだろうか?」
まゆ子「やはりジェロニモサイズは必要ではないだろうかね。まあ手足は細くていいんだけど。」

釈「問題はさらに、値段が嵩むというところですかね。」
まゆ子「必要があるからこういうサイボーグが用意される。値段の問題ではない。」
じゅえる「まあ秘密結社やらの用ではなく、れっきとした国家機関の実力組織に需要があるんじゃないかな。こういうのは。」
まゆ子「うん、これだけのややこしい環境に投入されるんだ。帰還後のサポートが十分に無ければやってられない。やっぱ国家機関だな。」
釈「そうですね、サイボーグ自体は単独で現場に投入されているとはいえ、長時間のサポートが必要でしょうから。やはりそれなりに大規模な組織的バックアップ無しで運用はできないんです。」

じゅえる「そういうのであれば、やっぱアンダーウォーター機能をもうちょっと充実させておくべきではないだろうか。」
まゆ子「水中活動? でも深海は無理だぞ。」
じゅえる「いや、でも手足で泳ぐというのは非効率だし。」
まゆ子「ふむ。スクリューでも着けるかな。」
釈「いやあ、やはり手のひらに水かきくらいしか許されないんですよ。008は。」
まゆ子「むしろ必要なのは浮き袋だな。サイボーグ体はケミカルであってもやはり重いだろうから、浮かない。身体をふくらませて浮力を得る機構は欲しい。」
釈「なるほど。そんなものをオプションで外部に装着するのは邪魔ですね。浮き袋内蔵です。」
じゅえる「肺機能を実現しないといけないのだから、浮き袋兼用だな。」
まゆ子「008ってなかなか大変なサイボーグだなあ。」

 

************************

 

まゆ子「というところで、本題に入ります。

 009シリーズはもう何十年も前の作品ですから、時代遅れの設定になってるものが多い。
 その中でも最悪なのが、女の子が一人しか居ないという事なのです。」

じゅえる「あー。」
釈「最近の戦隊物は5人居れば2人は確実に女の子居ます。確かに紅一点は時代遅れですね。」

まゆ子「003がフランス人でバレリーナで美少女であるのはまあいいとしましょう。ヒロインです。
 しかしながら現代的な観点でドラマ性を検証すると、これは009以外との結びつきが発生しない、発展性がほとんど無い死んだようなもの。使えません。」
じゅえる「ああ、003を巡って男たちが争うという定番の展開が使えないな。で?」

まゆ子「女の子一人増やしましょう。」
釈「当然の改変ですね。で、誰にします。」
まゆ子「誰でもいいんだけどね、しかしファン心理というものが有り、下手にいじるとカミソリの刃を送りつけられてしまうのです。」
じゅえる「そりゃー腐女子の仕業だ。なるほど、人気キャラをいじっちゃあいけないな。」

まゆ子「じゃあ始めるよ。

001イワン・ウイスキー」
じゅえる「ちょっと待て、赤ちゃん女の子にしてどうする気だ。」
釈「おまわりさん、ここに変態女が居ます。逮捕してください。」
まゆ子「ぼ、没ね。

002ジェット・リンク」
じゅえる「マジで殺される。」
釈「うん。」

まゆ子「003フランソワーズ・アルヌール。男の子にしてもいいぞ。この際。」
じゅえる「さすがにそこは変更の必要を認めない。」

まゆ子「004アルベルト・ハインリヒ」
じゅえる「死ぬ気かああ!」
釈「やめてえええ。」

まゆ子「005ジェロニモ・ジュニア」
じゅえる「ふむ。インディアンの、今はネイティブアメリカンと言わないと怒られるんだけど、女の子に。」
釈「しかし巨人設定を捨てるのは惜しいです。巨女にしますか?」
まゆ子「それはーさすがにマニアック過ぎるのではないだろうか。変な性癖の人しか寄り付かないぞ。」
釈「じゃあ保留で。」

まゆ子「006張々湖」
じゅえる「チャイナドレスでおさげの可愛いチャイナ女子。悪くない。」
釈「いいですね、東洋系の女子は何時の時代も人気です。」
まゆ子「儂がゆるさん。」
釈「え?」
まゆ子「張々湖はアレがいいんだ。アレを改変したら私がカミソリ送りつける。」
じゅえる「うう、それはー致し方ないな。」

まゆ子「007グレート・ブリテン。しかしまあ、なんてえ無茶な名前だ。」
じゅえる「でもこの人変身サイボーグだからなあ。金髪美女に変身するぞ。」
釈「それも色っぽいお姉さんに身も心もなってくれますよ。素晴らしい演技力です。」
まゆ子「これは今の設定がベストです。張々湖との絡みも完璧です。ちび子供なんかどこの設定だ黒歴史だ。」
釈「このままが最高ですね。」

まゆ子「008ピュンマ」
じゅえる「いいんでないかい。」
釈「黒人美女で水中用サイボーグです。水着がまぶしいですね。」
まゆ子「これでいこうと思います。」
じゅえる釈「異議なし。」

まゆ子「009島村ジョー」
じゅえる「はっはっは。じょうだん。」
釈「主人公ですからね、こればっかりはさすがに許されませんよ。」

まゆ子「ギルモア博士」
じゅえる「釈ちゃん、どうだろう? これは悪くない話だ。」
釈「ですがー、サイボーグ技術の権威で悪の組織ブラックゴーストでも重要な役目を負っていた上に00ナンバーサイボーグ全員の生みの親です。小娘では無理があるのでは。」
じゅえる「熟女キャラでもいいぞ。」
まゆ子「しかし熟女ではサイボーグ達との恋愛沙汰は難しくなるぞ。エロいだけで。」
釈「断念せざるを得ません。」

 

まゆ子「ということで、005ジェロニモか008ピュンマを女の子化します。」
じゅえる「二人同時に、というのは?」
釈「しかし巨女はさすがに無理が。普通背丈の少女であればOKです。」

まゆ子「褐色インディアン少女 VS 黒人エロ水着女、判定はどっち?」

じゅえる「008」
釈「008」

まゆ子「けっていでーす。」

 

 

【ゲキロボ〜欺縁陥没って何?〜】11/04/28

じゅえる「まゆちゃんよ、欺縁陥没ってのは結局なんだい?」

まゆ子「分からない? 物理的構造を持たない空間の欠損だよ。」
釈「いやーそりゃ判れと言う方がおかしいと思いますよ。だってそれ、宇宙人物理学でしょ。」
まゆ子「てへ。」

じゅえる「改めて聞こう。なんか設定考えてる? それとも口から出まかせかい?」
まゆ子「後者。」
釈「終了ーですー。」

まゆ子「いやまあ、そうなんだけどね。口から出まかせした後でちゃんと考えたさ。」
じゅえる「SFか。」
まゆ子「これ以上無いくらいに立派なSFを考えたぞ。」
釈「ではその宇宙人物理学を講義していただこうじゃありませんか。」

 

まゆ子「あー、宇宙というものが端も無ければ真ん中も無い存在だ、てのは今更説明するまでも無いね?」
じゅえる「いや、よく知らないぞ。」
釈「丁寧に説明してください。」
まゆ子「ちぇー。

 あーつまり、ゴム風船の膨らんだのを宇宙と思って下さい。風船の表面二次元が宇宙です。」
釈「はいはい。」
まゆ子「宇宙に住むヒトは風船の表面にしか棲息出来ませんし、表面以外の場所を見る事も観測も出来ません。
 これが二次元宇宙です。風船には端も無ければ中心もありません。皆等しく宇宙です。」

じゅえる「ふむふむ。なるほどそういうものか。」
まゆ子「だが三次元空間に住む我々は、風船が風船であることを知っているし、風船には大きさ形が有り、厳然として中心が有る事を理解します。
 そして、風船の表面をいくら撫でたところで、風船の中心に行き当たることは無いと判ります。」
釈「これが古典的な宇宙空間の説明なわけです。」

まゆ子「そして二次元人は風船表面しか観測できませんから、風船の外とか内部とかにはまったく気がつかないのです。」
じゅえる「つまり観測手段である光とか波は、風船表面上にしか伝わらないのだね?」
まゆ子「そのとおり。あくまでも丸い風船の薄い二次元のみが世界、宇宙のすべてです。

 さて、で釈ちゃん。風船に穴を開ける方法は知ってるね?」
釈「爆発しないで、ですか? 風船にセロテープを貼ればいいんです。」
まゆ子「はい正解。二次元だからと言って、穴が開かないわけではありません。
 ですが、二次元人にとって、その穴は決して観測する事はできないのです。」
釈「なぜならば、そこには風船のゴムが無いからです。観測手段はその穴に到達することは絶対にありえません。故に観測は不可能です。」

じゅえる「風船上をまっすぐ進んだ光は、穴に当って通れないんじゃないかな?」
釈「それは違うんです。あくまでも風船の皮だけが問題であり、穴が開いた場所を埋めるべきであったゴム皮も風船上には未だ残存するのです。つまり、光はその残存する皮を通って穴を迂回して、向こう側に抜ける。」
まゆ子「つまり、二次元人には穴は観測できないのです。」

じゅえる「なるほど。それが物理的構造を持たない空間の欠損か。」
まゆ子「いえ、これは物理的構造を持つ空間の欠損です。」
じゅえる「え?」

まゆ子「以上の説明で重要なのは、風船のゴム皮が無い部分は観測出来ない。このイメージです。
 このイメージをそのままに、欺縁陥没を説明します。」
釈「はい。」

 

まゆ子「えー、宇宙人物理では、宇宙空間、三次元空間は極めて微小な空間の集まりとして捉えられています。
 物質が素粒子から成るように、空間も素空間から出来ています。」

釈「しごく小さな空間なのですね?」
まゆ子「はい。」
じゅえる「イメージできない。」
まゆ子「積み木と考えて下さい。宇宙は無数の中が空っぽの積み木の集合体として考えます。積み木の内部のみが宇宙空間三次元空間であり、世界の全てです。」
釈「ゴム風船と一緒ですね。」

まゆ子「つまり宇宙は、素空間と素粒子とエネルギーで出来ており、この三者は等価で変換することが出来るのです。」
じゅえる「また分からないことを言い出した。」
まゆ子「いやまあ、そこはどうでもいいんだ。
 問題は、宇宙は微細な積み木で出来ているということであり、宇宙に住む三次元人は、積み木の中だけしか観測出来ないということだ。」
釈「風船宇宙と一緒です。」

まゆ子「しかしながら、積み木というものは結構ばらばらな形をしており、上手く積んだとしてもびっちり隙間無くという風には行かないものだ。どうしても隙間が出来てしまう。
 これが、欺縁陥没だ。」
釈「三次元人には観測できないんですね?」
まゆ子「三次元人にはまったく縁の無い代物だが、高次元空間からの観測が出来るようになった高等宇宙人にとっては、それは『穴』以外の何物でもない。」

 

じゅえる「つまり、三次元的にはまったく問題の無い、物理的欠陥でもなんでもないけれど、確かに穴が存在する……。
 それが、物理的構造を持たない空間の欠損、か。」
釈「口から出まかせとはいえ、うまいこと逃げましたね。」

じゅえる「でも待てよ。それが何故「神様指数と呼ばれるんだ?」
まゆ子「それが「欺縁陥没」のギエンの由来だ。

 この概念は主に時間操作・因果律改変業界から発見された。つまりタイムマシンのことね。」
釈「宇宙人は時間溯行やら未来へやらを簡単にやっちゃうんですよね?」
まゆ子「宇宙人物理ではそうなのだが、しかしより深く研究すると、世の中そんなに甘くないと判って来る。というか、現代地球人のじょうしきではまったく考えつかない現象が起きるのだ。

 まず因果律。これはつまり因があれば果が出来る、原因と結果の一対一対応を前提とする不文律だ。科学の根幹となる原理だよ。
 だがタイムマシンではこれが崩壊する。」
釈「まあ、因果律を変更する為の機械ですから。」

まゆ子「そうじゃない。過去に遡り特定事象を変更したとしても、結果となる未来が思うようには変更できない、いやまったく思ってもいない現象が発生する。そいうのに出くわすのだ。」
じゅえる「何故?」
まゆ子「それが「欺縁関係」だ。
 「縁」とはすなわち因果だよ。原因と結果を繋ぐ縁、因果律の別名でもあるわけさ。
 ところがそれが破綻する。原因を変えても結果がちゃんと変らない。因果律が有ると思ったのに、実は存在しなかった。騙された!」
釈「ああ。だから「欺かれた縁」ギエン、なんですね。」

じゅえる「なんでそんなことが起きるの?」
まゆ子「三次元空間は素空間の積み木とさっき説明した。この積み木は当然過去にも存在する。
 時間をも含めて高次元空間から観測すれば、素空間の積み木が現在だけでなく過去から未来にも繋がっているひとかたまりのモノ、として宇宙は捉えられるのさ。」
釈「つまり、宇宙は時間も含めた積み木の集合体なのですね。」

まゆ子「さて、至極単純に説明すると、過去の積み木は下にあり、未来の積み木は上にある。」
じゅえる「ふむ。」
まゆ子「因果律変更の為に過去の事象を変更する、ということは、びっちり積み上がった積み木の山の、過去に当る部分を、上を崩さないように入れ換える作業に他ならない。」
じゅえる「うわ!」
釈「そりゃー、不可能ですね。」
まゆ子「そうなんだ。出来ないんだ。時間を溯行すること自体は技術的には簡単なのだが、過去の事象を変更するというのはそういう困難さを伴うわけだ。
 が、宇宙人はやってしまうのだな。ニンゲンだから。」
釈「知的生命体の性ですね。」

じゅえる「しかし、そんなことをすれば積み木崩れるだろ?」
まゆ子「当然。見てのとおりに下の積み木を抜き取って、自分達が思うとおりの別の積み木を挿入する。そういう作業なわけですよ。
 そりゃー崩れる。」
釈「ふむ。」
まゆ子「上の積み木は下に出来た穴に落っこちる。どんどん連鎖反応的に落っこちる。その結果予期せぬ未来の事象の変化が発生して因果律が崩壊する。
 因果律というものは、三次元空間を固定されたものと仮定した場合にのみ仮想的に観測出来るだけの、絶対原理でもなんでもない景観であったわけですよ。」

じゅえる「つまり、時間改変は不可能ということか。」
まゆ子「いややっちゃうんですよ、宇宙人は。」
釈「やりますか?」
まゆ子「馬鹿だからやります! でその結果、未来の事象がむちゃくちゃになり、それを修正する為に再度過去の事象を改変し、さらに無茶苦茶になり、再々修正が必要になり、そして手が着けられなくなる。
 これが高等宇宙人がやらかしてしまう原罪なのです。」

じゅえる「他の宇宙人はどうなるんだ、それ?」
まゆ子「積み木がバラバラになったとしても、積み木内しか感知できない三次元人にとって、別に何も起こってはいません。観測できないのです。」
釈「ああ、そんなものですか。」
まゆ子「問題は、そんなアホな操作をやりまくった結果、上の積み木は無茶苦茶になり、うまく結合出来なくて穴だらけになる。欺縁陥没が泡みたいに大量発生するのです。」
じゅえる「おお、ここに繋がるのか。」

 

釈「欺縁陥没が増えると、なにが起きます?」
まゆ子「超光速航行が不能になります。ワープの邪魔です。船ぶっ壊れます。」
じゅえる「つまり光速以下でしか航行できなくなるんだ。そりゃたいへんだ、宇宙文明の根幹が破壊されるわけだ。」
まゆ子「高次元空間からの観測が実現される前は、それは「ワープ抵抗」として観測されます。ワープのし易さです。ワープ抵抗が或る閾値を越えると、宇宙船はばっきり逝ってしまいます。」
釈「なるほど。」

まゆ子「とうぜん、時間溯行も不可能になります。崩れた積み木の中に入って操作するわけだから、そりゃ当然です。」
じゅえる「自業自得だな。」

まゆ子「そして最後に、ピルマルレレコが来ます。欺縁陥没を大量に発生させる高次文明は、ピルマルレレコの大好物です。
 また彼ら彼女らは欺縁陥没を解消し宇宙空間を正常に戻す機能が有る、と考えられています。だから別名を「ガベージコレクター」と呼ばれています。ゴミ回収者ですね。」
じゅえる「つまり、大宇宙の意志として迷惑千万な高次文明を滅ぼす存在、なわけなんだ。」
釈「偉いヒトなんですねえ。」

 

じゅえる「ゲキは?」
まゆ子「そこが問題の核心だ。神様指数となぜ呼ばれるのか。

 つまり宇宙空間の積み木の穴が、欺縁陥没なわけです。そこは本来何も無い。なにも無いはずなのだが、それは穴だから別の宇宙が入り込む事が可能です。」
釈「別の宇宙、というのは、ひとかたまりの宇宙空間積み木とは別の系統の宇宙積み木、ということですか。」
まゆ子「はい。
 ですから、それは我々が棲息する宇宙とは別の法則別の時間が成り立っており、当然のことながら我々の宇宙からは操作できません。」
じゅえる「もっともだ。」
まゆ子「そんなものが入り込んでいれば、因果律操作も時間変更も出来ません。」
釈「ですねえ。」
まゆ子「欺縁陥没が大きくなればなるほど、別宇宙の影響が強くなります。現宇宙が自然な存在として成り立ちません。」

じゅえる「たしかに恐ろしいものだな。」
まゆ子「しかも、意志を持っています。」
釈「意志、ですか。宇宙全体に知性がある…。」
まゆ子「特に驚くべきものではありません。積み木という比喩を用いるのであれば、それはピタゴラスイッチです。積み木機械です。」
じゅえる「つまり、積み木はただ積み上がっているわけではなく、なんらかの意志によって機能的に組み上げられているのか。」
釈「いえ、それはどちらかというと、とある法則に従って組み上がって行った積み木には、なんらかの機能が実現されていた、というものではないかと。」
まゆ子「つまりチンパンジがでたらめにタイプライター打って行ったらシェイクスピアの戯曲が出来ていた、レベルの現象が普通に発生するのです。なんせ極端に小さい素空間の膨大な集まりですから、とうぜんのように自己組織化します。知性くらい普通に持ちます。」

じゅえる「つまり、神?」
まゆ子「神、と安直に呼ぶのはどうかと思うけれど、まあ神の一種には違いない。もっとも自己つまり自分の内部にある三次元空間に対してはなにもしないんだけどね。」
釈「でも自分の外の別の宇宙積み木に対しては、積極的に働き掛ける。欺縁陥没を通して。」
まゆ子「故に神様指数でもあるのです。余所の世界からの意志の代弁者であり力の行使者。高次元空間に住居を移す高等宇宙人といえども、宇宙全体を身体とする超生命体とは格闘できません。」

じゅえる「志穂美が80ナノメートル、てのは凄いの?」
まゆ子「知的生命体と宇宙積み木との関係は、まあよくわからないのです。時々余所の宇宙とシンクロしていたりする個体が存在する。いや生命体だけではなくモノだったり機械だったりするんだけどね。
 或る意味生命の発生は欺縁陥没の仕業だったりもする。

 高度に発達した文明が欺縁陥没を大量に発生させるのだとすれば、それが外部宇宙積み木からの攻撃そのものではないだろうか? 
 そして、それら文明を破壊し欺縁陥没を解消するピルマルレレコは、この宇宙積み木の内部免疫機構として見ることもできるのではないか?」

 

釈「深い。」
じゅえる「なるほど。たしかにこれはSFだ。」

まゆ子「そしてゲキです。ゲキには有効な因果律変更機能が有る。古代宇宙人ゲキはその技術をついに完成させていたのです。欺縁陥没の発生を抑え、積み木の崩壊を最小限に留めながら、ピルマルレレコさえも手懐けて。

 そりゃー高等宇宙人が目の色変えて追っかけるはずですよ。」
釈「なるほど。」
じゅえる「なるほど。」

 

【かくの如くして『ガンビットさん』は蘇った】2010/04/30

まゆ子「というわけで、ガンビットさんは頓挫している!」

釈「はあ。」
じゅえる「まだ諦めて無かったんだね。」
まゆ子「諦めるどころか、タイムトラベルものとして描き始めていたのだが、さすがにどうも、アレでね。」

釈「それはファンタジーであってSFではありませんからね。」
じゅえる「ファンタジーの能力バトルもの、であれば流石にちゅうちょするねえ。」
まゆ子「ホントは書きたかったんだよ。桐子ちゃんが大活躍する話だから。でもねえ、」
釈「まあ、大東桐子さんには御自分のシリーズがありますから、無理をしてやる必要も無いですか。」

まゆ子「もう一つ。実は「三種の神器」の話の方も結構まとまっているのだ。だがこれも能力バトルぽくなったし、平凡な女子高生がいきなり超常の力を得るって構図が『ゲキロボ』と同じでねえ。困ってるんだ。」

じゅえる「あー、仕方ないなあ。」
釈「困りましたねえ。」
まゆ子「ファンタジーをやるのであれば、『蠱螢(仮)』の方が圧倒的にオリジナリティに溢れている。これはめんどくさいからやってないだけであって、別に捨ててはいない。というか、今改めて書き直せばもっともっと良いものに仕上げる自信は有る。ファンタジーを描くなら、これだ!」

じゅえる「整理しよう。現行稼働中なのが、

 ・「げばると処女」;ファンタジー、異世界救世主もの:完結間近
 ・「ゲキロボ☆」;SF、すちゃらか学園宇宙人もの:現在主力的シリーズ
 ・「サルボモーター」;SF、リアルロボットもの:第1巻完結、第2巻スタンバイ状態
 ・「ウェンディズ the BASEBALL BANDITS」;青春、学園スポーツもの:絶賛終了中

だ。」

釈「ここにファンタジーを増やすとすれば
 ・「蠱螢(仮)」
 ・「三種の神器」
 ・「結構無敵ガンビットさん」

と来ます。ただし元々は「ガンビットさん」はSFロボット戦術級戦争もの、です。ファンタジーとなっても戦術級戦争ものであるのは変りません。」
まゆ子「戦術級てのが「ガンビットさん」のキモだからね。」

じゅえる「「蠱螢(仮」)は有望なのかい?」
まゆ子「「ゲキロボ☆」を書いていく内に、魔法ものを一つなんとかしたいと考える気はどんどん上がっていく。描きたいと思う。」
釈「オリジナリティに関して抜群ですから。」

まゆ子「一方「ガンビットさん」はそのガンビットさん自体がそもそもファンタジーぽい機械であるよ。これを使って戦争をするというのが、どうしても上手くいかない。SF色を損なってしまう。」
じゅえる「ま、釣り鐘だし。」
まゆ子「さらに言うと、ロボットに乗って戦術級のバトルをするという構想自体がありふれており、嘘っぽさ炸裂だ。」
釈「はい。」

じゅえる「どうするんだよ。」
まゆ子「というわけで、風呂に入った。考えた。」
釈「ふむ。」

まゆ子「入った結果が、コレだ!」

””

結構無敵ガンビットさん

第一翔 ガンビットさんアラワル

 「空飛ぶ車」のホンモノの実物が現れた時、人々は大きく落胆した。
 全力運転で10メートルほどしか上がれなかったからだ。速度も遅い、最高時速160キロメートルだ。

 これには訳がある。「空飛ぶ車」だからだ。
 「空飛ぶ車」の定義は、翼を持たずに推力だけで浮上する事。リフティングボディは許されるが、大きく張り出した翼があれば定義から外れ「飛行機」に分類される。
 そして翼が無ければ、どうしても非合理にならざるを得ない。

 人々が期待するものを現実の存在として組み上げると、失望を呼ぶ。良く有る話だ。
 だがこれは、まさに待ち望んでいた「空飛ぶ車」である。
 性能の低さは発明されたばかりのモノなら当然。今後の改良を待てばいい。失望するには早過ぎる。

 そうは言っても、ぱっとしないには違いない。
 全力運転で高度10メートルだが、通常巡航速度だとわずか50センチしか浮かない。
 当たり前だ。これは車両である。車両の走行速度は、街中の実用では時速30〜50キロメートル。こんな速度で高く浮くものか。
 「空飛ぶ車」はあくまでも車として作られている。早くするのは簡単だが、敢えて飛行物体としては論外な低速巡航を実現する。

 また法的にもこの高度が望まれた。
 「空飛ぶ車」は、イメージとしては陸上のどんな所でも自在に移動出来る機械だ。道無き道を往き、障害物を鮮やかに飛び越える。
 それでは困る。車両はちゃんと道を走らねば、法規違反だ。
 いやそもそもが道の無い所を走られるのは迷惑。屋根の上を飛んで落下しないと誰が保証できるだろう。公園の芝生を飛べば、小学生を引っ掛けたりもするだろう。
 このような不愉快な事態を引き起こさぬ為に、「空飛ぶ車」はあまり高い所を飛んではならない。そんな能力は付加すべきでない。
 高度50センチ? 上等だ。それならば普通の自動車とまったく区別せずに済む。

 航空法からしても、飛行計画を提出しないで勝手に低空を移動する「車」は迷惑千万。最初から許可を出さない認可しない。
 いたしかたなく、車両として開発を進め、高く飛べない早くもない機械に仕上がった。

 それでも海や泥濘地を行けるのだ。交通や輸送で活用出来るはず。
 意味がなかった。そもそもが、クルマで行けない場所には最近は人が住んでない。
 また「空飛ぶ車」自体、多人数や重量物の運搬ができるほどパワフルではない。
 一応は浮上飛行するのだから、車輪よりもエネルギー消費が激しいのは当然。地上車の4倍もの重量の電池を積んでも、航続距離は50キロメートルがせいぜいだ。
 その上でさらに乗客や貨物を載せれば、浮く事さえできなくなる。人間が2、頑張っても3人乗れば重量オーバー。
 もちろんリフトファンを倍にすれば推力は上がるが、電池もその分倍になる。
 経済的にまったく見合わない。

 間の悪いことに、と言うべきか。その頃丁度、電動ヘリコプターや無人貨物オートジャイロが登場し、本格的に物流に革命を起し始めていた。
 どちらも数百から1000メートルの高度が出るし、遅いとはいえ100キロを優に突破して飛行する。着陸の場所も公園の空き地程度で上等だ。
 「空飛ぶ車」も同系列の技術を使っているのだから、より輸送に主眼を置いた機械に勝てる道理が無い。

 だが夢の機械を諦めるほど、人は素直ではなかった。
 試作同然の「空飛ぶ車」を購入して、何人ものパイオニアが大地を駆抜け、……逮捕された。
 どこでも行ける、ということは来て欲しくない所にも行けるわけで、プライバシーを侵害することはなはだしい。犯罪に使用するバカも居て、たちまち世間の指弾を浴びた。
 また五月蝿い。
 リフトファンが巻き起こす風は、小なりとはいえ飛行機械だ、道端の砂やゴミを巻き上げて周囲を混乱に陥れる。
 どちらかと言うと掃除機として効果があるのでは、とオファーが来るほどだ。

 極地探検に用いたグループも居たが、全滅。航続距離のあまりの短さに実用性皆無との結論を下すしかない。
 あくまでも私有地内で乗り回す高価なおもちゃ、それ以上の評価を誰からも得られない。
 行政も早速に対応して、地上での「空飛ぶ車」の使用を差し止めた。

 だから、海に逃げる。
 海はいい。海ならばどれほど騒音を出しても、どれほど突風を吹き荒らしても人に迷惑が掛からない。
 それはもちろん港湾部の船の出入りの激しい所では使用を控えるべきだが、無人の海原はいくらでも有る。
 ただ問題が一つ。あまり面白くない。
 というよりも、プレジャーボートパワーボートの方がよほどダイナミックで爽快だ。航続距離積載重量乗員数、いずれにおいても敗北する。
 また50センチメートル程度の飛行高度だと波に激突して沈没する。無理して1メートルを出せば、風に煽られ転覆だ。
 波風の荒い日には海に出られない。

 しかしながら他に行く場所も無く、また船は「空飛ぶ車」の運用サポートに便利だ。しばしばの電池充電も支援船が有れば海上で完結する。
 こうして、本来は「車両」として開発されたはずのものが、「船舶」の付属物になってしまった。

 それから50年。
 「空飛ぶ車」は進化して、なぜか腕の付いた釣り鐘になっている。足も有るから、ロボットと呼んでもいい。
 海上での使用を前提に形状を見直した結果、前後左右どちらにでも自然に移動出来る形状が望ましいとされた。「車両」を真似る必要は無い。

 またエネルギー供給に関しても、新たなアプローチが採用された。
 レーザー光線による電力供給だ。元は貨物輸送用無人オートジャイロ”カーゴジャイロ”の為に開発された技術で、空中の機体に直接エネルギーを供給する。
 通常は高々度に浮かぶ専用飛行船でレーザーを反射して対象に照射する。低速で電気のみで動く飛行機械には有り難いシステムだ。

 これは業務用だからそれなりの使用料が必要となるが、私的に設備を保有する事も可能だ。
 船舶上にレーザー発振器を設置し、無人飛行機を中継として、エネルギー供給をする。100キロメートル圏内であればまったく問題なく運用出来る。
 ただ、機体がレーザーを照射されるのだから、搭乗者が生身で乗っているのは不都合。
 もちろん内蔵電池でも飛ぶから肉体を風に曝しても良いのだが、レーザー照射中は閉じこもっているべきだ。

 こうして密閉式釣り鐘型が選択された。伝統的に「空飛ぶ車」はオープントップタイプが好まれたが、却下だ。
 空力的にも邪魔者が消えた結果速度も増し、リフトファンの性能向上とエネルギー消費問題の解決も合わさって、瞬間到達高度100メートルも実現する。

 ただ飛ぶだけでは意味が無い。海上を自在に飛ぶのが可能となったのだから、せめて人命救助くらいには役立って欲しい。
 実のところ下方に突風を吹き荒らすから救助にも向いていないのだが、溺れる人の近くに浮き輪を持って行くくらいは可能には違いない。
 また近所に着水して、水上航行してもよいのだ。
 だからフロート兼スキッドである”足”が付いた。”手”、マニピュレータも付属する。軽量頑丈な素材を用いた簡易な作業用が供給されているから、そのままくっつける。
 立派なロボットだ。

 今では誰も「空飛ぶ車」エア・カーとは呼ばない。
 ”フライング・マシン””フローティング・ベル”。 ”エアマリン・ロボット”という商標名も有る。
 だが実際に用いている者は、平坦な海上を直立して平行に移動する姿から、チェスの駒になぞらえる。

 いつしかそれは、”ガンビット”という名前になった。ロボットの名に”ガン−”の接頭辞を着けるのは、どこの国の風習だろう?


 西暦でいうと2069年。地球は温暖化の影響で、……別に水没なんかしていない。
 ただ海洋に注目が向いていたのは確かだ。

 さすがにいいかげん石油に頼るのはやめて、原子力と太陽エネルギーが半々の比率で用いられる。特に太陽エネルギーは一度化学物質に変換されて貯蔵輸送される為、内燃機関を中心とするインフラをそのままに利用出来た。
 最も有力なのは衛星軌道上に配置された無数の太陽エネルギー衛星だ。レーザー光線で伝送されるエネルギーを洋上に浮かぶ施設で受け取り、海水から得られる物質を精錬・合成して世界中に供給する。
 衛星の資材打ち上げも、レーザーロケットで行われる。初期の衛星からのエネルギーはほぼすべて打ち上げに用いられ、プロジェクトの規模に比して相当安く成し遂げられた。
 21世紀人類が打ち立てた金字塔、と呼んでいい。

 ちなみに核融合発電は、研究者によればさらに50年の研究期間を必要とするらしい。
 実験炉は既に確立しているのだが、燃料となる重水素とリチウムを海水から回収するのに太陽エネルギーを必要とした。
 やはり、宝は海の中に有る。

 かっては石油産出国に集中していた視線が一気に大洋上のエネルギープラントに向かう。
 資金も人材も、海の上に集められる。

「というわけで、ガンビットさんを習いに来ました。」
「うぅむむむ、物好きだねえ。」

 ガンビットは今ではどの作業船でも1機は装備している。沿岸港湾部でも結構便利に使っているから、教習所なるものも有る。
 だから、なにを好んで太平洋のど真ん中まで習いに来るのか、理解出来ない。

 綺麗な、男の子だ。高校生に見える。髪はさらさらと潮風に吹かれ、肌は白く滑らかで、くすっと笑う姿は、

「すまん、ちょっと聞いていいか。お前さんは男なんだよな?」
「正確には、”どっちも付いてます”。」
「やっぱりかー。」

 遺伝子を色々弄くっている内に、妙な人間が増えて来たのは陸に上がる度に気付いていた。そもそも人類は精子の数が年々減少し、いや精子に納められる遺伝子が少なくなり、いずれは必要としなくなるとも聞いている。
 ふたなりが未来人のあるべき姿なのかもしれないが、それにしても。

「変ですか、やっぱり。」
「差別かもしれないが、やっぱり変だ。」
「えー、でも自分で選んだわけじゃないですからねえ。」

””

 

じゅえる「ちょっと待て、このふたなりさんは誰だ?」

まゆ子「いや行き掛かり上てきとうに書いてみた、まったく何も決まっていないキャラです。ちょっと色を付けてみました。」
釈「ということは、コレからはこの人は出ない?」
まゆ子「いや、出してもかまわないよ。SFだし。」

じゅえる「うんそこだ。これ、サルボモーターと同じ世界観だね。」
まゆ子「何故かそうなった。」
釈「サルボモーターと同じということは、”統則最前線”と同じってことですよね。土器能登子さんが出て来る。」

まゆ子「あー。」

じゅえる「あーじゃない。」
まゆ子「言われてみればそうだねえ。」
釈「どうしますか。”統則”と同じであれば、統則ロボット出せますよ。しかも海です。」

まゆ子「あー。」

じゅえる「あーじゃない。」
まゆ子「海を舞台にすれば、戦闘シーンとか出せるよねー。」
釈「そうですよ。ガンビットさんは戦術級バトルものなんでしょ。なら戦闘するの前提で設定組み立てないといけませんよ。」
まゆ子「そうだよねー、戦闘しなきゃガンビットさんじゃないんだよなあ。」

じゅえる「では、これを話に組み立てると、大戦争ものになるのかい?」
まゆ子「何も考えてない。」
釈「大東桐子さんは、出ますか?」
まゆ子「出してもいい。というか、出したいな。」
じゅえる「というか、濃いキャラださないと話はおもしろくならないな。」
釈「桐子さんは出るだけで空気変りますからねえ。」

まゆ子「あー、この線で物語を組み上げるとすれば、えーと冒険アドベンチャーであるべきだろうからー、えーとー。」
じゅえる「大シリーズにする気がなければ、宝探しでよいではないかい?」
まゆ子「宝と言っても、うーむー2060年頃のお宝と言われるとなあ。なんだろうなあ。」
じゅえる「ま、そこはなんでもいいんだよ。金塊に価値があるのはその頃でも一緒だろ。」
まゆ子「いや、海洋金属収集プラントだと金も海水から取り出してるから、どうなんだろう。」

じゅえる「ちょっといいかい。これSFなんだから、ガンビットさんは現実的な技術で作られていることになるんだよね?」
まゆ子「そうだね。海面を浮上飛行するから超軽量素材だね。」
釈「装甲は?」

まゆ子「あー、無いも同然。まあ新素材でなんとかなるとしても、拳銃弾くらいかねえ防げるのは。」
釈「サルボモーターと同程度ですか。」
じゅえる「そんなもんで戦闘するのか、大変だな。」
まゆ子「トヨタのトラックで戦闘するようなもんだな。というか、船ってのは拳銃弾食らったくらいではなんともならんよ。」
じゅえる「そりゃなんでも分厚いから。してみると、海の上では非常識な紙装甲が飛んでるんだ。」

釈「それこそ、宝探しくらいが関の山ですよ。」

          ************

まゆ子「とりあえず「ふたなりさん」確定で話を進めて行く。」
じゅえる「うーむまーインパクトはあるよね。めちゃ可愛い男の子みたいなふたなりさん。」
釈「いかにも苛めてぽいキャラですね。」

まゆ子「こいつ、良くわからない理由で洋上プラントにガンビットさんを習いに来る。ところが、本来有り得ないはずの海賊が何故か襲って来る。」
じゅえる「ふむ。」
まゆ子「ガンビットさんは催涙弾とかの非殺傷兵器で応戦。撃退に成功するが、なぜかふたなりさんが誘拐される。」
釈「おお!」
じゅえる「むくつけき男達に、可憐なふたなりさんが!! それはピンチだ。陵辱の嵐だ!」
まゆ子「あー、実際のところそうなんだ。」
釈「うひゃー、それは凄まじいお話に。」

まゆ子「というわけで、掠われた洋上プラントの人達は皆ずんどこに突き落とされる。
 ところが1週間後海賊から連絡があって、なぜかそこには「お頭」となったふたなりさんが!」
じゅえる「???」
まゆ子「そこに日本から捜査官がやって来て、ふたなりさんは実はバーチャルネット上では札つきの悪、バチャテロリストであったと暴露されるのだ。日本に居たら逮捕されちゃうと、国外脱出を図ったわけだ。」
釈「おお、そういうシナリオですか。」

 

じゅえる「ちょっとまて、バチャテロリストというのは何をするのだ?」

まゆ子「健全で友好的で建設的な議論が成されているインターネット上のコミュニティに現れて、荒しまくる。」
釈「あ〜。」
じゅえる「あ〜、それ未来じゃ犯罪行為なんだ。刑法犯なんだ。」
まゆ子「それどころか、著作権が設定されている映像ファイルを闇に流したり、、発売前のエロプログラムを小学生にバラ撒いたりと、万死に値する行為を何千件も犯している。」
釈「それは極悪人ですね死刑ですよ。」

じゅえる「でもインターネットてのはこの時代どうなってるんだ。やっぱ3DCGで街があったりするんだ?」
まゆ子「あー、それもいいかもねえ。でも一般人は効率を求めてひたすら文字情報を追っかけている。バーチャル空間に壁新聞が何百枚も張り出されているような世界だ。」
じゅえる「お、おもしろくない……。」
釈「しかし言われてみればひたすら効率的ですね。」
まゆ子「しかも人間の代りをする執事さんみたいなプログラムが普通に出回っており、ネット上で生身の人間に遇うのすら難しい状況。」
じゅえる「そりゃあーおもしろくないなあ。そんなので人気有るの?」

まゆ子「有るの無いのの問題ではなく、ソレ無しでは日常生活もビジネスも成り立たない。ただ、嘘がおそろしく巧妙に成ってるから検証するのに執事さんAIを走らせないといけないんだ。言わばバーチャルネット内に築かれた壮大な虚構の塔を探索して真実を見出す騎士だね。」

釈「なんかカッコイイ」
まゆ子「で、騎士は主人のオーダーに従ってネット上の情報の信憑性をチェックして廻り、簡潔にまとめて提示する。人間はソレを読んでようやく判断するという塩梅だ。
 バチャテロリストとは、この騎士を誑かすのが抜群に上手いヒトなのだな。
 というか、このふたなりさんは実在の人間とは思われていなかった。騎士AIの信憑性検査プログラムを欺くのが人力で出来るとは思わず、裏にヒトが居るにしてもAIの複合体であろう、てのが捜査側の感触だった。

 でも今回、実はただのふたなりの男の子が犯人だと判明し、驚いている。」
じゅえる「うーむなんか難しいお話だな。」
釈「しかし、騎士AIは楽しいアイデアですね。なんか想像のつばさが拡がりますよ。」

 

まゆ子「というか、これは未来の話なんだ。今のヒトがPC上の画像ファイルをだらだらと眺めるように、3DCGで記録された立体映像、それも現実社会の光景を映したものから、テレビのニュース、あるいは映画ドラマ、個人がでっち上げたデマ映像などなど、がクリック一つでさくさくと切り替わって行く。時間経過に従う変化も、コマごとに並べるように3DCGを並べてつまみ食い出来る。」
じゅえる「おお、そりゃ凄いな。さすが未来だ。なるほど、そんなに圧倒的に真実っぽい情報が並んでいたら、どれが真実か眼で見ただけでは判別できないんだ。」
釈「そうですね。人間の認識能力を越えてるんですよ。だから、騎士AIが必要になる。マスコミの取材能力を越えて、信憑性判定を行う専用プログラムなんです。」

まゆ子「とまあそういうわけで、まともな人間ならインターネットへの没入は手を引いている。圧倒的過ぎるんだ。だから精々掲示板とかツイッターぽい、極めて原始的な方法に頼っている。」
じゅえる「Eメールではなく、ほんものの手紙とか?」
まゆ子「うむ、それも有りだ。」

釈「でもちょっと待ってください。ではそのバチャテロリストは、どのような手法でヒトを誤魔化すんですか? というか、そんな圧倒的な情報の前に人力なんて太刀打ちできないでしょう?」
まゆ子「うむ、まったくもってそのとおり。だから誰もそれを実在の人間とは思わなかった。

 だがもちろん、ふたなりさんも騎士AIを使う。で、***してヒトをだまくらかす。」
じゅえる「***てなんだ?」
まゆ子「私にも理解出来ない超絶テクニックです。」
釈「すなおに考えてないとおっしゃいなさい。」

まゆ子「まあともかく、ふたなりさんは超絶テクニックで海賊の頭目にのし上った。何が起きたのか我々にはさっぱり見当もつかない。だが、海賊がなんらかの情報操作を組織的に行って居る事が、この事件で判明するわけだ。」

 

じゅえる「そのコアとなるコンピュータが、海の底に眠るお宝だ。」
釈「そうですね。それが一番良いですよ。」
まゆ子「うーむ、だがそこんところになにか素晴らしいトリックを潜めておかないと、SFとして薄くなる。」
じゅえる「薄くていいじゃないか。どうせガンビットさんでどんぱちやりたいだけなんだし。」
まゆ子「あー、まあそうなんだ。そうでなければならない。」

 

じゅえる「うむ。で、桐子ちゃんは出て来るのかい?」
まゆ子「海賊の親分として、というのはどうだろう。海賊というか海賊退治というか、バウンティハンターというか。」
釈「ちょっとありきたりですねえ。」
じゅえる「桐子にしてはありふれた面白みの無い職業だ。ペンギン保護家くらいでいいんじゃないか。」

まゆ子「うーん、それをいうなら”白鯨”を追っかけてる方が彼女らしい。」
じゅえる「それだ!」
まゆ子「いや、白鯨なんて実際には居ないし。」
釈「鯨型潜水艦でいいじゃないですか。戦時中に使っていたのを誰かが横領隠匿して。」
まゆ子「うーんまあ、そのなんだ。ガンビットさんの相手としては強過ぎて困るな、そういうのは。」

じゅえる「ゴーストホェール狩りをしている、てのはどうだろう。戦時中に作られた鯨に擬装したメカ鯨。実態は潜水艦であるが鰭で泳ぐから探知できない。」
釈「はあ、しかしそんなもので誤魔化せるのでしょうかね?」
まゆ子「なんとかしてみよう。実際の鯨の生体部品を使うとかでほんとに紛らわしいとか。」

じゅえる「うーむ、じゃあなんだ。海の中には嘘イルカやクジラが居て、エネルギープラント周辺を獲物を求めて嗅ぎ回っている、とか。」
まゆ子「うむ。」

釈「よろしいです。で、桐子さんがクジラを殺して回るんです。時々ホンモノのクジラをやっちまって、肉を販売に来る。」
じゅえる「それだ!」
まゆ子「その迂闊さが、桐子だな。うん採用だ。」

釈「いえいえそこはですね、海賊共がリアルクジラに電波発振器とか飲ませて、故意に欺瞞しているんですよ。で、クジラ保護世論に訴えかけてバウンティハンターを撲滅しようとしている。」
じゅえる「ふむふむ、そこでインターネット上の欺瞞が効いて来るんだな。」
釈「ついでに言うと、蟹の密漁とかもやっている。」
まゆ子「そいつは許せないな。偽クジラは虐殺だ。」
じゅえる「桐子ちゃんは正義の味方だよ、ほんと。」

まゆ子「というわけで、洋上でクジラを追っかけるのにガンビットさんを使っているわけですよ。桐子さんは。」

 

【アッガイが可愛いのは言うまでもないのですが、ゴッグです】 09/10/18

まゆ子「今日は水中部!」
じゅえる「まだやるかガンダム話。」
釈「懲りませんねえ。」

まゆ子「てなわけで、今日は水中用モビルスーツのお話です。海の中なら18メートル程度のロボットは全然大きくない。」
じゅえる「船は元々大きいからね。」
釈「水の中に居る分には、500d千トン問題なしです。」

まゆ子「だが水中用MSは地面の上に上がって暴れるのがお役目。陸上を歩けないと意味がない。」
じゅえる「意味が無いなら不可能でいいじゃない。」
まゆ子「まあ基本的なことを言えば、あの大きさのロボットが歩いて戦闘するてところから疑問に思わなきゃいけないわけですが、それは置いといて、

 

 水中用MSです。水中用と陸上用とではなにが違うか、ここんとこから見て行きましょう。」

釈「はい! 水の中に潜れます。」
じゅえる「それは正確ではないな。水中に長時間潜って活動出来るMS。ここが違う。ガンダムだってちょっとくらいは潜れるもん。」
釈「そんな宇宙ロボットは変ですよおやっぱり。」
まゆ子「宇宙戦闘ロボットが耐圧水密になってるはずがない。まあ普通に考えるとそうだよ。」

じゅえる「やっぱ、有り得ない?」
まゆ子「現在の宇宙機材は水中に沈めて空気漏れが無いかチェックする。人間が扱う機材は特にそうだ。」
釈「NASAのプールに宇宙服の人が潜ってますよ。周囲に何人もダイバー付けて。MSもあんなテストされてるんですかね。」
じゅえる「ないでしょそれは。」

 

まゆ子「普通の環境では無いが、ことはUC世紀だミノフスキだ。ミノフスキ粒子環境下にて稼動するロボットは、内部に粒子が入り込まないようにする特殊なシーリング処理をされているもんではないだろうか。」
じゅえる「はあ。そういえば、機械の中にミノフスキが入っちゃうと、これは怖いな。」
釈「でもどうなるんでしょう、そいうの。ミノフスキが中に入ってちゃんと動けるものでしょうか。」

まゆ子「分からない。さっぱり分からない。ファーストガンダムの描写だとガンダムってぱかぱかメンテナンスハッチ開けてたような気がする。」
じゅえる「だよねえ。でもシーリングしないのは確かに恐ろしいような気がする。どうしよう。」
釈「えーとこの場合どう考えた方がいいんですかね。機械電子機器はミノフスキ粒子が入っても大丈夫なように作られている。もしくは、内部に入ったミノフスキを中和する機構がある。」

まゆ子「とりあえず、個々の部品をプラッチックの中に埋めこんで直接接触しないようにすることは出来る。今でも樹脂の中入ってるな。接点部分に関してもそういう処理をすれば、敢えて気密にしなくても済む。」
じゅえる「ちょっと作る時面倒くさいかな。」
まゆ子「面倒くさいが仕方ないでしょ。ミノフスキ粒子は空中電線が接触するようなもんだし、電波受けると妙な力を発生するし、全部の電子基板を樹脂で固めちゃうのが一番だ。冷却もひっくるめて、一体化だね。」

釈「しかし特殊で量産されない機材の多い軍用品で、骨が折れますねえ。」
まゆ子「いやコンピュータ設計で製造までロボットがやってくれるのなら、むしろ楽かな。人間は出来上がった基板をえっちらおと嵌め込むだけで完成。」
じゅえる「宇宙空間では空冷なんて出来っこないんだから、基板冷却のヒートポンプをちゃんと最初から配線してる方がいいのかもね。」

釈「つまりミノフスキが入り込んでも大丈夫なほどに気密はしっかりしている。MSはそういう機械だ、ってことですね。」
まゆ子「空気気体を通さねばならないのなら、専用配管組んで閉鎖回路作ってるでしょ。どこからでも空気を取り込める設計にはなっていない。もちろんコロニー空気環境下で使われる民生品ならば、そんな手間掛けなくてもいいかもしれないけどさ。」
じゅえる「空気環境下での使用に限られる機器は民生品をそのまま利用する。うん安上がりだ。」

釈「まあそれは分かりますが、でもだからと言って水が入って大丈夫って事にはなりませんよね。」
まゆ子「塩水だし、水圧掛るし、ねえ。」
じゅえる「だよねえ。」

 

釈「ではガンダムは特殊な水密シールドが有る、という結論になりますよ。」

まゆ子「まあそういう事になるんだけど、ではなぜそんな処理がしてあるか、ってことだよね。ただこれはあんまり不思議ではない。宇宙用だからだ。」
じゅえる「??」
まゆ子「宇宙空間で使われる機体だ。様々な異常な環境で用いられる事が最初から決まっている。その中で特に軍用機が曝される可能性があるのが、密閉空間内で爆発物が使用される環境だ。」

じゅえる「密閉空間というと、コロニーかい?」
釈「いえ、小惑星を掘削した空洞とか、月面基地とか採掘場とか作業用宇宙船エアロックとか、色々と考えられます。そもそもが構造物自体が気密を考えられたものばかりですから、密閉空間内での戦闘とそれに伴う爆発は普通にありえます。」

まゆ子「当然、そんな空間で爆発させれば超高気圧が機体にぎしぎしと押し寄せる。しかも外に燃焼ガスが抜けて行かない。数秒以上高気圧が続く可能性は高い。」
じゅえる「そんな空間で生身の人間が居れば、死ぬね。」
釈「とても酷い死に方をするでしょう。目玉破裂内蔵が口から飛び出したり。」
まゆ子「そんな酷い場所が宇宙にはごろごろしてる。」
じゅえる「うん。」
釈「はい。」

まゆ子「機体主要部の電子機器等にそんな高圧が掛かれば、いくらなんでも破損する。しかも相当の高熱である可能性が高い。」
じゅえる「爆発だしね。」
まゆ子「無論、MSは外部から気体を取り込んで利用する機構が装備されていてもいいのだよ。ただそこから主要部に高温高圧のガスが入り込んでは困るのだ。」

釈「驚きですね。真空状態でだけの戦闘を考えてはいけないんです。」
じゅえる「これは宇宙戦闘機には要求されない性能だな。コロニー内部に侵入工作する前提でこしらえられた機械だからこそ、密閉空間超高気圧なんて考えないといけない。」
まゆ子「数秒耐えればいいんだけど、ただし数百数千気圧が掛る。かなり厳重にシールしなければならないはずだ。

 もちろんその手間を省いてあくまでも真空中開放空間でのみ戦うぞ、という選択肢も取り得る。ただ、ガンダムはそうではないらしいね。」
じゅえる「爆発をいやというほど食らってるしね。」
釈「つまり、ガンダムが水に潜れるのは普通、ってことですか。」
まゆ子「そうは言わないが、水に沈めて気密を調べるテストくらいはクリアしてそうだね。」
じゅえる「うーん、確かに有りそうだ。地球人の設計だし。」

まゆ子「だからと言ってガンダムは水中でも戦闘出来るよとはならないし、その延長線上で水中用MSが出来るともならない。」
釈「とうぜんです。」
まゆ子「だが、気密に関してはジオンの技術者はかなりの自信を持っていたでしょう。元が真空だし、月面での採掘で爆発物使うとして、ばんばん爆発する環境でがりがり動く機械、とかも作ってるはずだよ。」
じゅえる「月面地下鉱山、とかか。そういうところでは爆圧がちゃんと抜けるように配慮されてるんでしょうねえ。」
釈「1/6G環境で爆発ガスが普通に抜けると、凄く怖いですね。なんか色んなものぶっ飛んで行きますよ。発破は慎重に行わないといけません。」

 

まゆ子「そういう苛酷な環境で動く機械を作った経験があるから、地球海洋で用いるMSの製造計画が持ち上がってもびびらなかった。水中では月面と同様に重量が軽減されるしね。」
じゅえる「まあ、動くだけなら陸上機作るより楽か。ぷかぷか浮くし。」
釈「しかし深海の超水圧に耐えるだけの殻が保てますかね。」
まゆ子「いや、そんなびびることない。水圧いくら高くても、中に空気詰ってない物体を押し潰すことはできない。灯油缶の中に石油詰めて深海中に下ろしてもべこっと潰れないのだ。」
じゅえる「中から支えてればね。」

まゆ子「それに、海水中で動く大型ロボットてのは地球でも珍しくないでしょうアノ時代なら。大規模土木工事の時代だし、陸上をバカでっかい車両や戦車が動いてる。水中作業ロボットはむしろ常識的な発想に基づく正当なアプローチだ。」
じゅえる「用途が有れば、だね。」

釈「でも宇宙企業が地球の海洋建築ビジネスに参入、って冗談みたいな話でしょお。無理ですよ。」
まゆ子「逆は可ではあるけどね。つまり海中で使っているロボットの設計図をまっとうな手段で購入して、宇宙で作る。」
釈「それはーまっとう過ぎる手段ですがー、いいんですか?」
じゅえる「幾ら何でもあまりにもまっとう過ぎて法的にも規制出来ないな。それじゃあジオンが海中ロボット技術を手に入れる事に本質的な障害は無い?」
まゆ子「というか、資本主義社会であるし、そもそもが海洋ロボットで侵略なんて出来ないし、軍事的にも脅威となる要素無い。」
じゅえる「実に平和的なお話だ。」

釈「つまりは、ジオンが海中ロボット技術を入手するのは至極ラクチンというわけですよ。まあ、兵器技術を入手するよりはよほど楽ですね。」
まゆ子「海中でMSを運用して軍事行動を起こすというのは、割と簡単な話なんだ。ただし、バレなければ。」
じゅえる「バレるよそりゃ。」
釈「バレますよねえやっぱ。地球政府もバカじゃないんだし。」

 

まゆ子「とはいうものの、陸上で人型ロボットを歩かせるよりはよほどマシな作戦であるのは間違い無い。ではジオン公国が地球の海中に武装ロボット投入して軍事行動を行うことに意義を見出すか、これを考察しよう。」

じゅえる「見付からなければ不可能ではない。というか、見付からない手段があるのであれば、海中でのテロ攻撃は国際経済に多大な損害を与える極めて効果的な手段と成り得る。」
釈「ミノフスキ粒子の投入、ですか。」
まゆ子「そこ焦らない。

 つまり、見付からない手段を講じることが出来れば、海中からの攻撃により地球政府を混乱に陥れ、宇宙における状況を公国有利に持って行くことは可能だし有意義だ。
 であれば、公国独立戦争を企画している段階で、連邦に地味なダメージを与える海中からの攻撃というオプションを採用するにやぶさかではない。」
じゅえる「最初から戦争する気であれば、ね。」

まゆ子「逆に、地球表面への直接攻撃無しで公国独立戦争が有利に運べるか、と考えると、結論はNO!だ。そういう設定になっている。」
釈「地表から宇宙戦艦がどしどし上がって来ますからね。」
じゅえる「それは、それで馬鹿げた設定なのだ。」

 

まゆ子「地球上には極めて膨大な資源があり、宇宙空間での経済に比べてはるかに大きな生産力を持つ。一年戦争時点でもやはりそういう構図になっている。というか、コロニー経済と地球経済の相関関係は、良くわからん。とりあえず地球がコロニー社会を搾取しているのであろう、と描写から推測するに過ぎない。」

じゅえる「でも何を宇宙から供給しているのだろう? 食糧なのかい?」
釈「これはーまったく分かりませんねえ。宇宙にコロニー作るほどの文明であれば、エネルギー問題で困ることは有り得ないし、であれば有り余るエネルギーを用いて幾らでも食糧他を生産できるし、リサイクルで資源回収しても経済的に賄えると思います。」
じゅえる「むしろあの段階であっても、コロニー経済は地球に依存というかおんぶにだっこ状態だと思うぞ。

 …あー、そうか。それがいかんのか。宇宙経済がいつまで経っても地球経済から自立できない状況は、宇宙生まれの人間の独立心を傷つけること著しい。だもんで、強制的に地球経済からコロニー社会を切り離す必要を認めるんだ。」
釈「なんか、子供のダダのように見えますが、そんな理屈でいいんですかね?」

まゆ子「コロニー社会コロニー国家が、コロニー自体の建設費を自らの借金として負っているのは間違い無いな。その借金を地球資本がすべて握っている。
 宇宙資本系の企業やコロニー公社は地球圏資本の言うがまま、人事権からなにから全てを牛耳られている。もちろん利潤が上がったとしても、すべて借金の償還に当てられるのが筋だ。
 とはいうものの、では宇宙は衰退するばかりかと言えば、新しくコロニーを作る、コロニーを作る為の産業開発をする、コロニー建設の為に小惑星引っ張ってきて資源採掘を行う、コロニー開発に関連する建設機械を作ってる売る、コロニー建設に従事する労働者を供給する等々、すべて宇宙経済はコロニー増殖に依存して存在する。
 原動力はまさに増殖に次ぐ増殖。コロニー建設資金償還なんてしている金があれば、コロニー作れ。コロニー建設が滞ったら、たちまち宇宙の住民皆おまんまの食い上げだ、って構図になっている。」

釈「なにもしないのが一番、ですかね。」
じゅえる「そうだね。なにもしなくても、破綻するまではこのまま突っ走るのが一番だね。で、破綻したの?」
まゆ子「いや。ジオン独立はちっともこの路線破綻の結果ではない。というか、結果的に木星圏への人類移住の道を拓き拡大の一途を続けている。バブル崩壊はまだまだ先だよ。」

じゅえる「ジオンの連中って、なにをしたかったんだろう…。」
まゆ子「要するに、これが普通と勘違いした連中が、拡大が永久に続くのであれば主導権を自分達宇宙住民で握ろう、と考えた。そういうことだね。」
釈「バブルの最中では、それがバブルであると同時代の人間には理解できない、という理屈ですね。」

 

 

じゅえる「で、そんな状況で海中にMSを投入して、なにか得が有るのかい?」

まゆ子「まあテロなんだから、経済活動を停滞させようてのは常道といえば常道なんだが、独立戦争と連動させてと考えるともうちっと知恵が要る。
 つまりだ、これはセカンドオプションだよ。宇宙における独立戦争が緒戦大勝利、ってのはあ普通無理だろ。」
釈「はあ。」
じゅえる「ミノフスキ粒子とMSという切り札を持っているとはいえ物量では連邦がよほど強力で、しかも核ミサイル使用無制限だからね。ジオン側快進撃と言っても、非武装の他のコロニー群の無差別殺戮というあんま良くわからん作戦を勘定に入れて良いのかもよく分からん。」

釈「つまり、万全の備えをして乾坤一擲の大勝負に出たのはいいけれど、こてんこてんにやられて持久戦篭城戦に雪崩れ込んでしまう。そういう展開も当然考えられるわけです。一年戦争は。」

まゆ子「というか、それが普通だ。地球にコロニー落すとか他のコロニー皆殺しにするとか、どんな天才が考えた作戦だ。人類丸ごと心中計画と言ってもいい愚行だ。」
じゅえる「まあ、ねえ。」
釈「ジオンですから。」

まゆ子「つまり、テレビでやってる展開はパチンコフィーバー大当たりの緒戦で嘘みたいに勝ってしまって舞上がった結果の、盲目的侵攻なのさ。こんな展開最初から考えてる奴は、脳の真空管切れてるな。」
釈「ギレン総帥ばんじゃーい。」

まゆ子「というわけで、もっと現実的なさくせんとして宇宙で膠着状態に陥った際の打開策として、地球経済と軍事状況を混乱に陥れる作戦が用意されている。というか、こちらの方が主とさえ言える。
 なんとなれば、宇宙空間で戦争やっても地球連邦政府首脳はなーんの痛痒も感じない。どっか余所の銀河の出来事だと考える。」
じゅえる「まあね。足元に火が着かないと真剣に考えないな。」
釈「であれば最初から地球上におけるテロ活動に焦点を絞って攻撃すればよかったのでは、…そういうのは宇宙市民に対して説得力が無いか。」

まゆ子「宇宙空間における堂々たる正面決戦は、宇宙移民の独立を歴史に記す一大イベントだ。これはやらなきゃいけないと考える政治的感性は正しい。
 ただー、勝てると考えるのもおかしな話。善戦して負けないくらいがちょうどいい。外交交渉を進めてコロニー側の権利を徐々に拡大するのが正道王道である。

 が、歴史的社会的気分風潮として、堕落し切った地球連邦政府打倒すべし、て頭に血が上ってる。また戦争やるなら卑劣外道を行ってでも勝たねばならぬ、てのは確かに当たり前の考えだ。」
じゅえる「勝たない戦争に意味はない、と考えるのは普通だが、歴史的にはそうでもない。んだよね。」
釈「落とし所、てのがあるわけです。」

 

まゆ子「では地球海洋でテロ活動を行って成算はあるか、てことになるのだが、これは有る。ミノフスキ粒子のお蔭だ。」

じゅえる「でも軍用の機械にはそもそもがECM関連の装備はちゃんと完備しているだろうから、効くのかね。」
まゆ子「いや地球上であれば、軍用よりも民間用の電波妨害無警戒の分野がなんぼでも有る。軍用の1万倍UCであれば100万倍くらいも有る。」
釈「当初は地球に敵は居ませんからね。」
じゅえる「そうか、そりゃそうか。経済にダメージを与えるには民間セクタに攻撃するのが当然。ミノフスキ対策なんてまったく知らない民間船を沈めるなんて茶の子も茶の子だね。」

まゆ子「目の付け所はいい。また海底ケーブルとかエネルギー線とかも張り巡らせてあるでしょう。宇宙コロニーに目が行ってるけれど、海中にも重要なライフラインが縦横に張り巡らせてある。海の底というアクセスのし難さがテロから守って来たのだけど、卑しくも一国が総力を傾けて破壊を敢行すれば完全無傷とはいかないな。」

じゅえる「つまり泥縄地球侵攻作戦のはるか前、独立戦争のよほど前から地球海洋中でのテロ攻撃作戦は遂行されて居た、わけだ。」

まゆ子「ま、テレビ見たら一目瞭然ではあるんだがね。
 陸上用MSは宇宙からそのまま降ろされたザクと泥縄で改装されたグフ、一応は完全地表陸上対応のドムと、他に無い。
 一方水中用MSはマリンザク、ゴッグ、ズゴック、アッガイ、ゾック。モビルアーマーも有るし、こっちの方が力入ってる。それもザク改造に留まらず完全新規設計だ。どう考えても1年以上開発は掛るに決まってる。
 というか、水中用MSはテストに相当手間掛る筈だよ。開発よりもテストの方が時間を喰う。宇宙コロニーでは深海耐圧実験も出来ない。」

釈「地球侵攻作戦が始った後に泥縄で作れるようなものではない、わけです。」
じゅえる「1週間で新型MSをロールアウトするUC脅威のメカニズムであっても、運用研究は手間を喰う。地球に持って行かなきゃ調整できない水中用MSは、おいそれとは作れないさね。」
まゆ子「つまり、開戦よりもよほど前から、おそらくはザク開発とほぼ同程度の期間を掛けて、水中用MS開発は進められていた、そう考えていいでしょう。」

 

釈「一つ疑問が。テロ目的に水中用MSを作るのは分かりますが、でもさすがにそんな局地運用のみの機械を一作戦の為に開発するのはペイしないのではないでしょうか。」
じゅえる「ふむ、ザクだって民間コロニー建設機械として開発が進められて来たんだもんね。まったくの兵器として開発されたと考えるのはどうだろう。」

まゆ子「だが水中作業ロボットは人型では無いとしても地球には多数有っただろう。宇宙用巨大作業機械メーカーが海洋作業ロボットに参入するのに、特に問題も不審も無いと思うぞ。」
釈「やはり民間用に擬装して開発が進められた、という経緯ですね。」
まゆ子「あるいはこうも考えられる。つまりは民間セクタの海洋インフラを破壊して地球経済に打撃を与える為に、その種の情報を収集する目的でジオン企業の地球海洋作業ロボット市場進出が計画された。」
じゅえる「そっちの方がいいな。周到な準備の下でテロ計画が念入りに進められ、そのカモフラージュとして水中ロボット市場への進出がある。」

釈「陸上でテロ活動、てのは考えなかったんですか?」
じゅえる「月面から石投げれば済む。」
まゆ子「そうだねえ。」
釈「陸上を混乱に陥れるのは、直接攻撃と同じ。なるほどそれはそうですか。」

じゅえる「つまり、地球経済を支えているのは膨大な海洋輸送網と海中インフラだ! と見切った慧眼の士が居るんだよ。いかに超巨大飛行機が飛び船が宇宙に飛び上がる世の中でも、膨脹する需要を賄う輸送能力は海洋に頼るのが最も経済的なのさ。」
釈「巨大構造物が多くなるUCではなおさらに、ですね。」

まゆ子「てなわけで、地球侵攻作戦よりも、水中からのテロ攻撃の方がよほど理に適い成功の可能性の高いものだ。
 後にジャブロー攻略の為に水中用MSは動員されるけれど、そもそもジャブローが地に潜ったのは地上施設が全部破壊されちゃったからだよ。水中用MSがジャブロー攻略の為に開発された、ってのはちょっとねえ。」
じゅえる「宇宙からの攻撃をかなり前から懸念してた臆病者が居たんだろ。敵も居ないのに穴掘って隠れるなんて計画を作っちゃうのは。」
釈「チキンですねえ。」

 

 

じゅえる「以上から、水中用MSの存在意義と価値が確保されたわけです。これ以降水中部のヒトはちゃんと基盤があるものとして、合理的な存在として捉えて議論しますです。」
まゆ子「水中用MSは水中で活動する分にはまったく問題ない。ただし水中部のヒトの真価は陸上に上がっての戦闘力で問われるのです。」
じゅえる「モビルスーツだからねえ。陸上で立って歩いて戦闘するのが当たり前だよ。とはいうものの。」

釈「つまりは、巨大人型機械が陸上で戦闘する合理性、のはなしですねえ。どうします、やりますか?」
まゆ子「やらない。」
じゅえる「やらない。」
釈「やりませんか。じゃあ人型ロボットは陸上戦闘で大活躍をデフォルト、ということで〆ます。」

 

まゆ子「でもね、水中用MSの陸上戦闘における有効性は、なかなか考察せにゃならんことが多々有るな。どこらへんから行こうか。」
じゅえる「そりゃやっぱりジャブロー攻略戦からでしょ。事実上あそこしか出番無いし。」
釈「海の上でも戦ってますけど、どうですかね。水中用MSは水中戦闘は達者な筈ですが、その上で陸上戦闘までもカバーしなくちゃいけないものでしょうか。」

じゅえる「陸上でも使えたらそれはたいそう便利だ。」
まゆ子「つまり陸上で戦闘する為にはいかなる装備が必要で、それを水中に持ち込むにはいかなる措置が必要かってとこを考えるべきなのだな。
 さて、ではとりあえず陸上で何をしよう?」
釈「そりゃ戦闘でしょう。破壊ですよ殺戮です一面火の海です。」

じゅえる「いや、でもそんなものは爆撃でもすりゃいいんじゃないかな。船舶としては水中用MSは小さいし、搭載できる火力弾薬は少ない。船か潜水艦はただの容器だからどんどん積めるが、アクチュエーターとジェネレーターで身体中一杯のMSには、そこまでの破壊力は期待できない。」
釈「あ。それはー、そうですねえ。いいとこ戦闘爆撃機程度の弾薬しか搭載できない。それでは大した戦力にならない。」
まゆ子「MSを100機ほども投入するのであれば話は別だが、あくまでもテロゲリラ的に用いられる水中用MSにはその運用は無い。」

じゅえる「とすれば、陸上においても標的とされるのは小規模かつ戦術的に重要な拠点もしくは兵器、てことになる。」
釈「ピンポンダッシュ戦法ですね、モビルスーツが常用する。」
まゆ子「ピンポンダッシュ作戦はモビルスーツ運用における鉄則だ。敵の居ない所に押し掛けて行って短時間で目的を果し、敵の防衛隊がやって来る前にさっさと逃亡、探知不能領域に隠れてしまう。この場合海に戻るのね。」

じゅえる「そんな都合の良い目標が地球上には無防備で存在するのかな。いくらなんでも大戦も中盤ともなれば、重要拠点は防備が整ってるでしょ。」
まゆ子「だからジャブローを目指すんだけど、ジャブローに関しては有りなんだ。水中輸送によってモビルスーツやら宇宙戦艦やらの建造資材を運び込んで、外部に供給するルートがある。ただし水中用MSの数と能力ではルートを直接破壊するのは不可能だ。」
じゅえる「モビルアーマーやら潜水艦やらがもっと大量に必要だが、さすがにそこまで手は回らない。水中用MSは或る程度の戦果を上げてるはずだけど、それでも全然不足して連邦の継戦能力を削ぐことはできなかった。」

まゆ子「一般民衆にツケを回したからね。」
釈「外道忘八戦術大成功です。」

 

まゆ子「ま、ジャブロー攻略においては或る程度働きは期待できる。ただし陸地に上がっての戦闘が可能か、これはどう理解しよう。モビルスーツの戦闘力火力が何故か既存の陸戦兵器を上回る不思議設定がなして成り立つのか。これを説明出来る人は居ないのだ。」
釈「戦車はともかく、大量に配備されてるだろうミサイル群やら、電源別のビーム砲要塞やらは、そりゃ当然有るでしょうから。」

まゆ子「これは、新兵器を投入するしかないな。地上に配置される戦力を一掃する大規模破壊兵器を水中用MSが敷設稼動出来る、と考えねばなるまい。」
釈「具体的には、どんなものです?」
まゆ子「火器ではないが、大規模なミノフスキ粒子発生装置は戦場の近辺に設置しないといけないな。艦船には積めるがMSには大き過ぎる、大きなエネルギーを消費する機械らしいから、かなりの手間でしょやっぱ。」

じゅえる「陸上のザクでは無理なのかい、それは。」
まゆ子「妨害が無ければ簡単だろうけれど、そんなまぬけな連邦軍はさすがに居ないだろ。」
釈「水中でのみ準備可能な大規模兵器。作業ロボットとしてのMSの真価が発揮されるのですね。」

 

まゆ子「うん。これは陸上でも同じなんだけどさ、兵器といえばミサイルやら火砲のみに目を奪われてはいけないのだ。日本軍とアメリカ軍とでなにが違ったかと言えば、兵器の質や量以上に輸送と土木作業能力。日本軍が持ち込めない重量の戦車を軽く揚陸し、どんな辺鄙な島にもブルドーザーでがあっと均して飛行場を作る。戦争と土木工事は古代から切っても切れない関係にあるんだよ。
 ジオンが地表を攻撃するのなら、爆撃機や衛星軌道上からの攻撃で事足りる。そこを敢えて巨大歩兵とも言えるMSを投入したのは、直接の戦闘ではなく大規模土木工事をするのが目的。プレハブ要塞の建設だな。つまり地表を囲い込む為の作業機械がMSであり、作業のついでに武器持って周辺警備をしているようなものなのさ。」

じゅえる「単純に戦うだけならドップ戦隊ガウ飛行空母モビルアーマーの方がよほど強力で、さらにはドダイなんかの強力な輸送手段も有るからね。MS2機100dを抱えて垂直離着陸できる飛行機を戦闘に用いない道理が無い。」
釈「つまり、火力で勝つつもりはジオンには無い?」
まゆ子「そのつもりなら、上から核爆弾をどかどか落とせば10日で戦争終結。」
釈「ですねえ。」

じゅえる「なるべく地球自体の環境は維持しながらも、人間だけ削ぐ、なかなかえぐい発想だな。ギレン総帥バンザイ。」

釈「しかし、水中でそれほど大規模な土木工事は無理でしょう。水中MSの数から言っても。」
まゆ子「水中用MSのテロ攻撃と、実際に行われた地球侵攻作戦とでは、規模がまるっきり違うね。地球侵攻作戦はどこをどうすれば成功するのかさえ分からない狂気の暴走であるから、常識的な思考で発想された水中テロ計画と齟齬を来すのは当たり前だ。」
じゅえる「というか、水中用MSを用いての作戦はすべてぬるいのだ。海を全部沸騰させるくらいの馬鹿騒ぎをするべきであった。ガンダムでは有り得ないけどさ。」
釈「まあ、地球侵攻作戦は調子にのっていけいけしてしまったまぬけ作戦ですから、比較してはいけません。」

じゅえる「ギレンバカだろう。」
まゆ子「それを言うな。」

 

釈「しかし、そこは考察に値しますね。何故にギレンは本来有り得ない地球侵攻作戦にGOサインを出したのか、何故に地球連邦軍は本土上陸を許してしまったのか。いや、なぜ故意に地球侵攻作戦を誘発するような兵力の転進を行ったのか。」
じゅえる「兵力を立て直してジオン本国を直撃するためじゃないのかい。」
まゆ子「順繰りに宇宙戦力を削いでぎりぎりと追い詰める方針ですよ。その間地球はほったらかし、上陸を防ぐ気はまるっきり無い!」

じゅえる「何故だろう。コロニー落とし作戦を阻止するのに、それほどの兵力を消耗し尽くしたのだろうか。」
釈「逆かもしれません。コロニー落とし作戦を敢行するだけのジオンの兵力の集中を防ぐ為に、広く薄く展開して局地戦でずるずると消耗させていった、とか。」
まゆ子「連邦軍がまっとうな人間の集まりならそんなこと許すはずがないんだがねー。自分家が火事にも関わらず、隣町の小火消しに行くようなもんだし。うーむー。」

じゅえる「どの段階で連邦軍は地球侵攻作戦を許容したのか。とはいえ、ジオンは誰がどう考えて兵力分散と無意味な消耗で負け確定の作戦に踏み切っちゃったんだ。」
釈「こういう場合、敵勢力の本拠地がどんどん奥地に逃げるから追っかけて、というのがセオリーですがー、連邦軍の本拠地はジャブローであって、ジャブローに直接上から攻撃し続ければいいだけの話ですねえ。」

まゆ子「やはり、とてもではないが常識人の発想からは導き出せるものではないのだが、ギレン総帥は全人類の指導者としてジオンのみならず全コロニー、地球人すべてから諸手を上げて推戴されるのを期待していた、と考えるべきではないだろうか…。」

じゅえる「……悪の帝王としては、実に納得できる発想であり究極目標であるな。」
釈「凡人には遠く考え及ばぬ境地であります。」

 

 

まゆ子「ともかくだ、とりあえずジャブロー侵攻時のMS運用を標準として考えよう。考えたくないけど。」
じゅえる「ばっと出てばっと攻撃してずかずかと上がり込んで、どかんとやられる。」
釈「そこはやられないように、なんとかお願いします。」

まゆ子「とりあえず水中用MSは外部に兵器を携帯しないし増設もしない。故に機体内部に搭載する分しか運用できない。ミサイルはもちろん大きいのが威力あるわけだが、自衛隊の護衛艦でさえMSが両手で抱えるようなミサイル積んでいる。MSは船舶に比して大した量の火力を持ち合わせていない。ビーム砲は一応制限ナシに使えるらしいが、直接照準に限られるから敵前に機体を曝さねばならず、奇襲攻撃には向いていない。」

じゅえる「ミサイルを100dほどもぶち込みたいとこだな。」
釈「水中用MSでも重量は80d程度で、その内ミサイルはせいぜい10d程度でしょう。戦闘爆撃機に比すべき量を抱えているわけですが、しかし非力には違いない。」

まゆ子「致し方ない。自力での防衛線殲滅は諦めて、係留中の軍艦やらを爆破誘爆させて混乱の坩堝を演出する。」
じゅえる「ふむ、燃料現地調達か。」
釈「あたまいい。」

まゆ子「そんなに美味い状況がいつもいつも揃っているわけはないが、まず奇襲で敵を混乱に陥れる。船舶やら燃料タンク、発電所弾薬庫等々燃え易い場所を標的にするのはセオリーだな。敵の応援が来る経路を考えて待ち伏せして網を張っておくのも良いぞ。」
釈「しかし、そんな端っこを燃やすのが目的では無いわけです。」

まゆ子「これは陽動であり、別行動する部隊が上陸侵攻するべきだ。一次攻撃隊は暴れるだけ暴れて遁走する。ビームは使えるとしてもさすがに弾薬撃ち尽くしている。彼らはこれ見よがしに海洋に逃げることで敵の注意を陸上から逸らし、別働隊の任務遂行を助ける囮になる。」
じゅえる「ふむセオリーどうりと言えるけど、まあ貧乏な軍隊の作戦だね。ミノフスキ粒子によって視界が狭まってるなら、順当な作戦か。」
釈「ミノフスキー粒子をうまく使いますね。」

 

まゆ子「さて上陸した別働隊だが、これが見付かるのは時間の問題だ。速力こそが命となる。」
じゅえる「でも水中用MSは鈍足でしょ。」
まゆ子「鈍足と思われているが、実はそうではない。出力推力のバランスが取れてれば速度はどうとでもなる。問題は水冷式と言われるジェネレーターだ。核融合発電の冷却に海水を使えるから宇宙用MSに数倍する出力を得る、と設定には書いてあるが、これは嘘。」
釈「嘘?!」

まゆ子「陸上に居る時は海水取り込めないもん。」
じゅえる「そりゃ当然。陸上に居る時はあくまでも陸上用MSなんだね。」
釈「では水中用MSは出力的にアドバンテージを得られない、ってことですか。」

まゆ子「対応策その一、冷却水を機体内に多量に積んでおく。だがこれは却下だ。普通にザクとかもやっている。推進剤という形で冷却剤をちゃんと登載している。もちろん積み過ぎると重くて動けない。水中用MSも機体規模と機動に見合った量の推進冷却剤を登載している。丸っこい機体には多量に積めるではあろうが、その分重量も嵩むしミサイル搭載スペースも必要だ。」
じゅえる「ダメね。」
まゆ子「とはいうものの、ゾックなんかはこのオプションを取っているような気もするな。ビームしか武装無いしエネルギー消費大きいから。」

釈「対策その二は、陸上では不要なパーツは切り離して上陸する。身軽になって陸上戦闘専用の形態にチェンジする。ただし、一年戦争時の水中用MSにそんな構造を持ったものは無い。却下です。」

まゆ子「対策その三。どうせ長時間の陸上運用は叶わないのだから、見切りを付けて一戦闘分だけのエネルギーを事前に貯えて上がって来る。」
じゅえる「つまりは、海中でのメリットで陸上では短時間のブーステッド状態におく、ってことか。それは普通に有りだな。」
釈「つまりは、ビーム砲に使用するエネルギー分を海中に居る時に稼いでおき、バッテリーなりキャパシタなりに貯えて上陸する。機体規模容量が大きな水中用MSならば、ザクには積めない大型キャパシタも大丈夫。」
じゅえる「いいじゃない。」

まゆ子「デメリットは電池切れが有るってことだな。だがその頃にはミサイルも撃ち尽くしているから引き上げ時だ。アッガイのようにビーム兵器を装備していない機体であれば、運動にエネルギーを回して軽快に活動できるのねん。」
じゅえる「ふむ。理に適っている。」
釈「つまりは、海中充電器搭載陸戦用MSなんですね。」

 

まゆ子「水中用MSにはもう一つの利点が有る。戦域からの脱出が容易い。
 陸上用MS、ザクとかだと敵と戦闘して弾切れになった場合でも、歩いて逃げるしかない。ぼんとロケット吹かして戦場を離脱しても、そこはやっぱり陸地。歩いて帰らなきゃいけない。お迎えのドダイが待っているとしても、逃げるのはなかなか骨だ。特に機体に損傷が有る場合や推進剤が切れ掛かっているとどうしようもない。」
釈「ふむ。」

まゆ子「一方水中用MSは、ともかく水の中に飛び込めば勝ち。ぎりぎりまで粘って最後の力で全力噴射して元来た海に飛び込めば、推進剤の補給もエネルギーの最充填も、逃走も思いのまま。特に双方共に基地から離れての戦闘であれば、陸上用MSよりも有利に戦える。」
じゅえる「いいね。」
釈「最後のジャンプが距離10キロくらいを稼げるのであれば、上等です。強いです。」

まゆ子「とはいうものの、流石にミサイル弾薬の補給は出来ないから、やっぱり単発の攻撃しか無理だ。継続的に戦闘を続けるには多数が必要でローテーションを組まねばならない。」

じゅえる「まあ水中用MSは数が無いから元々それは無理だ。囮部隊も合わせて2個小隊6機がせいぜいの動員だね。」
釈「10個小隊も動員出来れば、それは凄い戦果が期待できますが、潜水艦でもありますからコスト高いですよやっぱ。」
まゆ子「まあねえ。ザクを地上に下ろすのは泥縄であって、水中用MSは周到な準備要るから急な増強もできないしねえ。」

じゅえる「でも水中に更に補給隊を用意しておけば、弾薬補充パイロットの交代とかで連続した出撃が可能なんじゃないかな。」
釈「いやそれは、出撃したMSが完全無傷で帰って来るという前提が無いとなかなか難しいですよ。あまり性能の良くないマリンザクとかを予備に回して潜水輸送船で補給とかは可能かもしれませんが。」
まゆ子「いいね、それ。」

じゅえる「なかなかだね。ただ流石に連続出撃は負担が大きい。囮部隊への弾薬補給による三次攻撃がせいぜいかな。」
まゆ子「第二陣の撤退の支援ね。ふむ、悪くはない。そこまでやって初めて軍事的に正当な作戦かなあ。」
釈「その作戦であれば、第一次攻撃には無理して陸に上がらなくてもいいですね。陸戦に向いてない水中用MSを用いると良いですよ。ゴッグとか。」
じゅえる「まあ、その作戦なら普通に潜水艦で攻撃するけどさ。」

 

 

釈「ということで、水中用MSの使い方は分かりましたが、では映像に出て来るMSはそれに合致しているか、これを検証しましょう。」

じゅえる「ゴッグのことだよ。」
まゆ子「ゴッグのことだね。」
釈「ゴッグはいかんでしょう。」

まゆ子「一応はマリンザクに続く、というか水中用に設計された最初のMSとなっているんだ。ごつくて丸いけど、水中に居る限りにおいてデメリットはあんま無い。浅い港湾部では腹がつかえてしまうだろうてのはおいといて。」

じゅえる「腹部にビーム砲搭載ってのは、さすがに使い勝手が悪いな。頭に付けないと。せめて腕にだね。」
釈「ビーム砲のコンポーネントバカでっかいらしいですから、腹部にしか収まらないんですよ。ズゴックではあんなに小さく両腕に装備できるほど進歩してるのに、と哀しくなりますが。」

まゆ子「ビーム撃つ為には上半身を大きく海面から出さなきゃいけないが、そうすると敵に撃たれてしまう情けない設計。明らかなミスなのかも。」
じゅえる「うーんそうだねえ。そもそもビーム砲何の為に使うのか分からないし。」
釈「何故か射程が短く減衰率が大きくてすぐ威力が低下してしまうんですよ。ほとんど火炎放射器です。」
まゆ子「そのまんま火炎放射器だな。」
じゅえる「上陸して港湾設備や基地を焼き払うには便利かもしれないが、ミサイル余分に搭載した方がマシだ。どうしようまゆちゃん。」

まゆ子「うーむ、水中でビーム兵器を用いると水にエネルギー吸い取られて減衰し標的に届かない、てのは常識だしねえ。」
釈「はあ。ですがガンダムビームライフルならなんとかなりますかね、ビームサーベルは水中でも使えますし。」

 

まゆ子「とりあえずビーム砲の有効性はおいといて、ではゴッグは使えるロボットかを考えよう。」
じゅえる「いやビーム砲使えないのなら、ダメでしょう。」
釈「ズゴックの方がいいことになってますよ。あっちはスマートでかっこよく、腕からビームを発射するとてもクレバーな設計です。」
じゅえる「そうそう。ビーム使わないのならアッガイの方が便利イイよ。武装も強力だ。」

まゆ子「酷い言われようだが、逆に考えてみよう。戦闘用には適しているズゴックアッガイ、だがこいつらは水中作業用として使えるか?」
じゅえる「…? あれ?」
釈「作業もへったくれも、あの手ではモノが持てません。」

まゆ子「だがゴッグは持てる。ハンマー受け止めるほど器用だ。パワーも十二分にある。腕の構造もフレキシブルで自由度が大きい。対してその二つは、」
釈「戦闘用に特化した結果、水中作業には向かなくなってますね。」
じゅえる「作業用としてズゴックアッガイは使えない。ゴッグは使える、ということになる。なんか、変。」

まゆ子「運用を考えると、上陸させてなんてバカなことをしなければ、ゴッグは水中でどんどん破壊活動や工作活動、建築といくらでも使い道はある。特にあのパワーは水中作業の効率を飛躍的に向上させる。水中でもやっぱ力がある機械の方が便利だよ。
 ゴッグは水中作業に向いた構造のロボットに無理やりビーム砲を登載した、かなりいい加減な設計になっている。」

釈「つまり、ジオンが平時に考えた水中テロ作戦に対応する機械がゴッグであり、上陸しての破壊戦闘活動は重視されていない。」
じゅえる「ふえ、ゴッグって開発途中の半端なやられメカと思ってたよ。」

まゆ子「よくよく目の玉ひんむいて見れば誰にでも分かるんだけどね。誰だって最初から知っている。ズゴックアッガイに作業は出来ん。」
釈「もっともです、爪ですから。」
まゆ子「アッガイは両手パーツがオプションで取り替え可能で多彩な武器を選択できるようになっているから、多分ザクのマニュピレータを装着したりも可能でしょう。なんせ内部コンポーネントにザクのもの使ってる。でも、戦闘に適したメカをわざわざ作業に使わなくてもいいよね。」

 

じゅえる「ということは、ゴッグは水中作業・テロ工作に適したメカであり、そいう風に使えばどんどん戦果を上げられる。でもそんなもんに何故にビーム砲を、しかも腹に付けたんだろう。」
釈「こういう時は斜め上に飛び上がる勢いで思考を逆転させるとよいのですよ、せんぱい。
 そうですねえー、腹部に装備されるビーム砲は水中では使用不能だし、陸に上がっての使用も難しい。ですがー、」
まゆ子「ふむ。」
釈「背泳ぎすれば上飛んでる飛行機を落すのに至極便利な。」

じゅえる「それだ!」
まゆ子「まさにそれだ!

 対潜哨戒機は基本低く飛ぶ。ミノフスキ粒子なんか散布された日にはそりゃ目視で水中潜航の物体を探さなければならない。もちろん潜水艦水中MSにとって上からの索敵と攻撃は非常に恐ろしい敵だ。しかし、」
じゅえる「ビーム砲でずががっと焼いてしまうんだね。すごい威力だ。」

釈「うーむ、ゴッグ凄い。ジオン脅威のメカニズムここに極まれりです。」

 

【こちらガンキャノン、鷹の目を使う】09/07/19

まゆ子「最近はガンダムが異様に増殖しているようだね。」

じゅえる「Zからこっち増えまくりだよ。」
釈「Gガンダムから先は、出るロボット全部ガンダムですね。」

まゆ子「そういうことじゃなくて、一年戦争の外伝として作られたアニメやらゲームやらで、オリジナルのアムロガンダムとは別にガンダムが同時代にちゃんと活躍していた、ということになってるのさ。」

じゅえる「あー、陸戦用ガンダムって奴か。あーいうのは良くないねえ。」
釈「ガンダムは一個しか無いから価値があるんですよ。サンライズもいけませんねえ、いくらガンダムでないと売れないからと言って、ぽこぽこ別なの増やしちゃうのは。
まゆ子「というわけで、いまやガンダムはあの当時ゴロゴロしていた事になる。アムロ様が乗っていたのはその内の只の一機てことになったのさ。」

じゅえる「うーむ、だがそうすると後の歴史がややこしくなるんじゃないかい?」
釈「というか、既にもうダメでしょう。」
まゆ子「まあ、ダメだな。アムロガンダムの実戦データを元に量産型GMがこさえられた、という設定は既に崩壊し、ガンダムとは別ラインで開発が進められ、ほとんど関係無く出来ちゃって実戦投入された、ということにならざるを得ない。」

じゅえる「面白くもなんともない話だ。」
釈「しかしまあ、ガンダムのお話ってのは一年戦争の後半数ヶ月でしかないわけですよ。実戦データの反映で、というのもスケジュール的にはキツイ設定です。」

まゆ子「たしかにソレはそうなんだ。だがそれでは劇中の設定と食い違って、はなはだ迷惑。で、ばたばたといかさまを重ねるわけなのさ。」

 

じゅえる「でもアムロが乗ったガンダムが一番強いんだろ。」
まゆ子「そーいうことになっている。」
釈「後から出来たロボットの方が出来がいいと、普通は考えますが。」
まゆ子「それではアムロガンダムのバケモノ的戦果を説明出来ない。故に、ニュータイプ万能論を用いるか、アムロガンダム最強論を用いるか、二者択一を迫られる。」

じゅえる「で、どちらが主流なんだ?」
まゆ子「ニュータイプを持ち出しても金にならん。第一外伝のOVAやらゲームやらで、アムロやララアを越えるニュータイプを出してはいけない制約が有る。故にアムロガンダム最強性能であろう、ってことにする。」

釈「ということは、その他ガンダムはアムロガンダムの粗悪品、ってことですか。」
じゅえる「マモーみたいだ。」
まゆ子「だがノーマルGMと比べて隔絶する超性能は持っていなければバンダイが許してくれない。であるから、アムロガンダム>>>>その他ガンダム>>GMカスタム機>>>ノーマルGM という設定が出来てしまう。」

じゅえる「まあ、プラモ売る側としては、その他ガンダムの性能を天井無しに強化したいとこだけどさあ。」
釈「世界観を破壊しちゃあ、ビジネス自体が崩壊しますからね。」

まゆ子「てなわけで、ではどうやってアムロガンダムを最強の位置に留めるかに腐心するわけだ。とはいえその他ガンダムもGMカスタム機もそれぞれの作品内においては主役機であるから無様は許されない。また敵ジオンのMSもオリジナル新型が登場するから性能のバランスも考えて双方納得の行く強さでないと、許されない。」

 

釈「うーむ、難しいパズルですねえ。」
まゆ子「てなわけで、”現在の設定”だとこんな風になっているらしい。

 ガンダムはGMとは別の系統で開発されたMSで、ハイローミックスで言うところのハイに当たる。つまり高級機「ガンダム」+低級廉価機「GM」というライン。
 で既にガンダムの量産は先行して始まっており、数十機分の材料は確保されていた。が急遽生産は中止の憂き目に遭ってしまう。
 その中でも最高の部品を集めて組み上げられたのが、アムロガンダムであり、当然のことながら最高の性能を発揮する。
 その他ガンダムはそこから漏れた部品を使って組み上げられ、また部分的には廉価機GMの部品を用いているから、ガンダムには劣るがノーマルGMとは比べ物にならない高い性能を発揮する。」

じゅえる「なんでガンダムの量産は停止したの?」
まゆ子「そりゃジオンが負けちゃって、それなりに手の掛る高価なガンダムでなくとも、廉価なGMの大量投入で間に合うと判明したから、でしょ。」
釈「なんか苦しいですよその説明。」
まゆ子「ガンダムは、沢山欲しいがちょっとでないと困る、というバランスがあるんだよ。それにビームライフル持ってりゃ、多少の性能差は補える。」
じゅえる「問答無用の攻撃力だからね。」

まゆ子「ま、後のZガンダムの時代にはGM2てのが主力機となっていて、ガンダム系統は一度断ち切られてガンダムMK2てのが作られてる「歴史的事実」ってのがあるからには、ガンダムをその後増やすシナリオは使えないんだな。困ったもんだ。」

 

じゅえる「だけど、進歩した工業力でそんな部品にばらつきが出るかね? アムロガンダムとその他を隔絶するほどの性能差が出る。」
まゆ子「ありえないね。」
釈「ですね。」

じゅえる「金の掛け方が違う、とか?」
まゆ子「それにしても、未だ実戦経験の無いMS技術で、そこまで無謀な投資も出来ないぞ。そもそもがアムロガンダムはテスト機だし。」
じゅえる「テスト機なんだよ、ねえ。」
まゆ子「”現在の設定”を作っているヒト達にとっては、アムロガンダムは決戦兵器らしいけどさ。」

釈「変ですよね。」

 

まゆ子「つまり要求される条件は、こうだ。

 アムロガンダムは最強である。ガンダムの生産は初回のみで何故か終了している。
 だがアムロガンダムを作る際に発生した資材部品を用いて数十機分のガンダムが作れるのだ。そうでないと困る。
 その他ガンダムは廉価機ノーマルGMをはるかに越える性能を持たねばならない。だが性能を極限まで向上させたカスタムGMは大体同じくらいの性能に到達する。
 だがカスタムGMであっても、アムロガンダムには遠く及ばない。」

釈「オリジナルガンダムの部品をどの程度用いれば、その他ガンダムになれるんですか?」
まゆ子「多ければ多いほど強い。」
じゅえる「はあ。」

まゆ子「では、なしてガンダムの生産は途中で終了してしまったのか、これをうまいことでっち上げねばならない。」
じゅえる「ふむ。あれだけGMを作れる金があるのなら、アムロガンダム100機くらい作っても財布は傷まないだろうしね。」
釈「金の問題じゃないですよ。技術者が居ない、とかですかね。テム・レイの頭惚けちゃったからガンダム作れないとか。」
じゅえる「改良を続けるのが難しくても、生産はもう彼要らないでしょ。」

 

まゆ子「要するに、ガンダムがいきなり生産を打ち切られる納得の行く理由があればいいのだ。
 というわけで私は、ガンダムの生産を開始した時点で、重大な初期欠陥が判明した、と考える。」

釈「欠陥、ですか。無敵のガンダムに。」
まゆ子「新型機に欠陥・初期不良が出るのは当たり前だ。だからこそテストする。テストで欠陥が暴き出されないと、実戦の最中に出てしまいえらい大惨事になってしまう。」
じゅえる「兵器のみならず人の乗る機械だから、とうぜんだね。でもなにその欠陥って。」

まゆ子「コア・ファイター・システムに由来する重大欠陥。」

じゅえる「あ〜。」
釈「あ〜。」

まゆ子「アムロガンダムはそのコアファイター欠陥を改修して、本来の性能がちゃんと出るようになっているガンダム。
 その他ガンダムは、コアファイターなんか取っ払ってしまった方が金掛からなくていいんじゃね?という改修をされてしまったガンダム、と考える。
 とうぜんのことながら、コアファイターなんか無い方がどれだけラクチンに組めるだろう。改修に掛る費用がどれだけセーブできるだろう。
 またアムロガンダムの実戦データから、コアファイターで武装を換装する必要は全く無い!てことが判明すれば、そりゃガンダム量産打ち切り決定でしょ。」

じゅえる「コアファイターシステムに見切りを着けるのに十分なデータが揃っちゃったわけだねえ。」

釈「そもそも誰がコアファイターなんか考えたんですか、そんなオモチャ屋さんしか喜ばないような設定。」
まゆ子「いやコアファイターシステムは、当時のアニメロボの変形合体システムに対するトミノ監督の解答なんだよ。オモチャ屋さんに言訳が立つ範囲内で可能な限りリアリティを追い求める、苦しいあがき。称讃すべき七転八倒なのだ。」

 

じゅえる「まあ、コアファイターは取っ払った方が量産性も運用上もコスト的にも、どの観点からしても○だったわけだ。」
釈「でも、アムロはそれなりにコアファイターは活用してますよ。それに、コアファイターがあるガンダムが高性能、という設定でないと困るんですよね。」
まゆ子「いや、コアファイター有りか抜きかの違いであれば、その他ガンダムとの性能の違いは特に考慮するまでもないよ。コアファイターはMSにくっついている間はエンジン動いてないし。」
釈「それだと困る人が居るんじゃないですかね。アムロガンダムがヒーローロボットでないと。」
まゆ子「だがコアファイター有ると性能が向上する、て理屈は恐ろしく苦しい。無い方が絶対いいぞ。」
じゅえる「いやまーそーなんだけどさ、そこをなんとか。」

まゆ子「そこのところは、運用上のサポートというので考えよう。
 つまり、ガンダムはそもそもコア・ファイター・システム構想がベースとなって開発されてるのだ。コアファイターを中核として様々なオプションが用意されていた。Gシリーズとかね。」
じゅえる「ふむ。フィルムのとおりにだね。」
まゆ子「だが量産計画が凍結→廃止された結果、オプション類、余剰パーツがすべてホワイトベースで運用されるアムロガンダムに集中する事が出来た。Gシリーズは他で使われた形跡は全くないから、これは誰もが納得するシナリオでないかね。」

 

釈「そもそもがコアファイターはどこから来たのですかね。いや営業政策上ではなく、物語内の経緯として。」

まゆ子「うーん、おそらくは宇宙戦闘機派閥ってのがあるんでしょ。

 MSは出始めたばっかりの機械だから、当然宇宙戦闘機の部所で取り扱うはず。空間機動兵器であるからそれは当然だ。
 だが運用はまったく違うから、どう取り扱うべきか分からない。こういう時はそりゃ当然に、これまでやってきたやり方を踏襲する。
 機種選定も同様に、宇宙戦闘機としての運用をベースとして考えられる。開発にも口が出せるとなれば、宇宙戦闘機としての性能をカバーする方策も考慮するさ。」

じゅえる「まあ組織ってのはそんなもんだ。そもそもが戦闘機屋がモビルスーツ作ってるんだからねえ。」
釈「ジオンは土建機械屋がモビルスーツ作ってるから、まるで成り立ち違うわけですよ。」

まゆ子「てなわけで、ガンダムはモビルスーツではなく、手足が付いた宇宙戦闘機として開発が進められたってわけだ。ミサイルを搭載するように、手足のパーツを搭載する、そういう考え方で設計される。運用する側の宇宙戦闘機隊の幹部はそういう理解で居たわけだよ。

 無論開発技術陣はそんなことはまったく考えてない。ともかくザクに勝てる人型ロボットを作らにゃいかん。
 で、両者の妥協的折衷案として、胴体部を宇宙戦闘機として上半身に兵装、下半身に移動機構を搭載する空間機動兵器という概念になる。
 当初案としては、胴体部宇宙戦闘機に動力の核融合炉が搭載され、上半身下半身には無い設計だったはず。それが技術的に普通だ。」

じゅえる「しかし、その案は却下される。構造上おかしいわけだ。」
まゆ子「推進剤の搭載部位が胴体戦闘機にはそう多く取れないからね。MSに搭載する核融合炉は推進と発電と冷却が密接な関係を持つ。冷却材も兼ねる推進剤の供給の便宜を考えると、胴体戦闘機から核融合炉を切り離した方がいい。でなければ、胴体戦闘機が大きく膨らんで、ふぐちょうちんかハート様体型のロボットになってしまう。」

 

釈「ガンダムは上半身Aパーツと下半身Bパーツと、双方共にエンジン持ってるんでしたか。」
まゆ子「昔読んだ設定だと、そうなってたかな。発電用核融合炉の小さいのがBパーツにもあるんだよ。コアファイターも合わせて3つのエンジンを持つ、これがガンダム強さの秘密だそうな。」
じゅえる「大きいの1個じゃダメなのかい?」
まゆ子「GMはそういう構造になってるはず。おそらくはコア・ファイター・システム構想が動力部の分散搭載を前提とするものなんでしょ。主動力とは別に兵装用動力を搭載することで、強力なビーム砲をばんばん使う。」
釈「ああ、それは強力だ。」
じゅえる「なるほど。ビーム兵器用動力を別に用意するのか。つまりはパーツをどんどん新型に入れ換えて行けば、どんどんガンダムは強力になる。」
まゆ子「夢のようなお話だ。で、その具体的実装例がGシリーズなのさ。」
釈「たしかにアレは強力です。」

 

まゆ子「だがこの構想には当然のことながら、欠陥がある。1機の機動兵器の寿命は、平均するとそんな長いものじゃない。キルレシオを考えて、敵ジオンMSとガンダムとの比率が10:1の圧倒的格差があったとしても、いずれはガンダムも撃破される。新パーツが届く頃には機体が無いときたもんだ。それが戦争だ。」
じゅえる「100機以上を撃破するアムロ様がそもそも規格外なんだよね。」

まゆ子「であれば、新しい機体に新しい武装を積んでどんどん送り出した方が余程コストパフォーマンスがいい。コア・ファイター・システム構想は当然の頓挫を遂げる。あるいは最初から頓挫することを期して計画されたと言ってもよい。

 宇宙戦闘機派閥の口出しを抑え、モビルスーツ独自の運用を果たす為に送り出された、デコイプロジェクト。そんな感じかねえ。」

釈「でもガンダムは彼らの期待に反して、素晴らしい戦果を上げたわけですよ。ここは予定外ですか。」
じゅえる「いやそういう経緯であれば、宇宙戦闘機派閥の方でもガンダム計画の頓挫を望んでいた、と考えた方がいいな。モビルスーツがダメならば、宇宙戦闘機の再開発→モビルアーマー化の方に話が進んで行く。ガンダム失敗しろ、と願ってたのにこの有り様。絶望した!」

 

釈「つまりはガンダムV作戦は誰からも祝福されない鬼子!」

じゅえる「うん。後の連邦軍のガンダムの扱いを考えると、そう考えた方がいいな。」
まゆ子「Z以降は酷いもんだからねえ。」

じゅえる「でもそうすると、テム・レイ可哀想だな。」

まゆ子「なあーに、そういうバカな構想を考えた連中の一人だよ彼は。格闘戦機体としてのガンダムに興味が集中してたみたいだから、データ取るだけ取って使い潰す気だったんじゃないかな。機体使い捨てのMS運用研究とすれば、V作戦も悪い話じゃない。予算がばっと獲得できるし。」

釈「産みの親からさえも見放されていたのか、ガンダムは…。」
まゆ子「まあなんだ、彼ならば飛行機能を持たないコアファイターくらいは考えそうだよ。余計な部品を外せば他の機材を積み込めるし。V計画を発展させるとしたらそうなるのが必然だ。脱出カプセルに武装やら核融合炉は必要無いさ。」

 

じゅえる「コアファイターを活かしてガンダム開発を進めるとしたら、最終的にはどういう形になったかなあ。」

まゆ子「そうだねえ。まずは、コアファイターの簡略化だな。地球大気圏内飛行能力なんて、必要なわけがない。これは廃棄だ。
 次に武装も廃棄。脱出カプセルとしてのみ機能すればいい。戦闘機としても火力不足で運用上意味なんか無い。却下だ。というか脱出カプセルに爆弾積むな。

 そして核融合炉は外す。外してどうするかといえば、Bパーツの動力炉を用いる。つまりコアファイターとBパーツ下半身の融合だ。
 主動力と兵装が上半身に集中するから、下半身は空間戦闘時にはほぼデッドウエイト。まあ推進剤タンクが入ってれば無意味てもんでもないけど、下半身の簡略化は可能。であればこっちに搭載する発電用核融合炉を使ってコアファイター飛ばそうと考えて不思議はない。
 もちろん脚ぶら下げて飛ぶのはなんだから、脱出時には股からパーツを切り離す。つまりコアファイターは胴体から股までの間になる。

 ここらへん被弾したらどうなるか?という疑問は残るが、そういう攻撃はパイロット狙いであるから、まあ普通死ぬ。上半身だけ破壊されて下半身が生きていれば脱出成功、てだけでも恩の字、命の大儲けだよ。

 というか、モビルスーツって通常頭を先に飛ぶんだよ。推進器の配置はそうなっていて、腹を敵に曝け出しながら飛ぶ、てのは例外的な機動だ。ザクだって肩にシールドとアーマーが付いてる。
 上半身の装甲を厚くして被弾時には上で受ければ、下半身は無事。この形でパイロットは十分助かる。というかBパーツが別だと、緊急脱出時下半身パージ出来なくてコアファイター出られない、という悲劇が起こる可能性が高い。
 下半身一体化は必然と言っていいでしょう。

 それと、大気圏突入能力の向上だ。機体全部が突入に耐えられるってのは、いくらなんでもご都合主義が過ぎる。コアファイターのみが安全に突入できる機構を完備した方が、まああんまり使用頻度は高くないだろうが、アピール度高いんじゃないかな。
 この突入機構として、腰の部分を利用する。つまりシールドとして腰を下に大気圏突入するのだよ。元々腰部分はそれなりの装甲があるはずだから、この防御力を利用しない手は無い。
 で股間の穴からへんな冷却ガスなりを噴出して、安全確実に地球帰還する。これは納税者にもがっちりアピールするな。
 ともかく、コアファイターは脆弱すぎる。パイロット保護の観点からすればもっと頑丈な棺桶が欲しい。ならば機体構造そのものを流用すべきでしょ。

 ついでに言うと、下半身とは別に上半身だけの交換でどんどん機体性能を上げられる。陸戦時にしか役立たない下半身は簡易に共通化して、上半身をどんどん強化していけば開発コストも製造コストも削減できる、発展性が高い機体になるわけだ。」

釈「要するに、上半身、コアファイター、腿から下の脚、という分割ですね。」
じゅえる「ふむ。脚なんかすぐもげるからねえ。」

まゆ子「よし、このリファインガンダムを”テムレイ ガンダム”と名付けよう。彼が脳味噌しゃっきりしてたら必ず作るはずだったガンダムだ。」

 

じゅえる「でもさ、その他ガンダムはGMと比べてどこらへんが強いんだろ。新しい機械の方がよく考えられて戦訓も取り入れられて、便利イイでしょ。」
釈「ガンダムのパーツを使ったから強い、ってのは、いくらなんでもアレですよ。宗教じみてますね。」
まゆ子「あー物神思想という奴かなあ。あるいは力士にぺたぺた触ると元気になる、とかの信仰だな。」

じゅえる「もちろんちゃんと理由があるんでしょ。」
まゆ子ー「やっぱ設計上のアドバンテージがある、と考えるべきかな。GMは主機関単体から電力を供給されて動いているのに対して、コア・ファイター・システム構想に基づいて作られたモビルスーツは動力分散になっている。複数の発電機を連携して使うんだ。」

釈「でも合計出力が同じなら一緒ではありませんか?」
まゆ子「ザクなら一緒だろうけれど、連邦のモビルスーツはビーム兵器を使うからね。ビーム使う度に電力系統に大きく負荷がかかるんでしょ。」
じゅえる「ふむふむ。でもビーム兵器の元の電力は、充電式だよねガンダムの場合。」
まゆ子「そこんとこは、皆必死になって考えてるぞ。エネルギーCAPなる技術を使うのに、出力制限が掛るのは何故か?
 まあなんだ、ビームの元は充電式だけど、ビーム砲自体の駆動に電力が要る構造なんだろうね。

 でGMとかの発電機1個型モビルスーツは、発射の度に電力低下が起ったりするのかもしれない。対して、分散型のガンダムタイプはビーム兵器駆動と機体駆動の電力系統を分割しているから、発射の際のフリーズが無くスムースに動き続けられる、とかでスペックに出ない性能があるんではないかい。」

じゅえる「じゃあGMも動力分散した方がいいんじゃない?」
まゆ子「いやー、それはどうだろう。電力回りの設計を見直してキャパシタ関係を強化すれば、そんな問題は潰せるでしょう。また単に発電機の出力を上げれば許容範囲内になる。」
釈「つまり後から出来たモノの方が性能イイわけですよ。」
じゅえる「当然にね。ふむ、動力分散型がガンダムタイプで、動力1個型GMの改良とどっちが得か考えた末に、GMで行こうってことになるのか。」

まゆ子「まあ、核融合炉ですから推進器周辺に設置して排熱を強化した方が発電量も上げ易いし、分散すればそりゃコストもメンテナンスも大事だろうし、ビーム発射時瞬間フリーズするとしても、数機の編隊で使うんだからそれほどの弱点にもならないかね。」

釈「GMに実体弾マシンガンを使いたがらせる癖も、それで説明できますよ。」
じゅえる「あー、なんというか、実体弾の方がかっこいいと思う、変な癖があるねえ。ガンダム関係では。」

*********

 

じゅえる「で、実体弾と言えば、今回のお題のガンキャノン。」

まゆ子「いやさ私ね、某所でガンキャノンは狙撃系だと言ったらびっくりされたんだ。」
釈「ガンキャノンは、じゃあなんなんです。」
じゅえる「肩から榴弾バラ撒いてそこらじゅう火の海にする機械、とでも思ってたのかね?」

まゆ子「だいたいね、30年前からガンキャノンの持ってるビームライフルはガンダムのより長距離射撃向き、って書いてるんだ。正式な設定だよ。そんなもの持ってるガンキャノンが狙撃系でないわけないじゃん。」
釈「しかし、それを理解している人はほとんど居ないですね。アニメの画面で描写が無いからですよ。」
じゅえる「まあ、宇宙で戦争すれば、どれだって狙撃系だろうしねえ。砲弾バラ撒いて面で制圧するなんて出来ないぞ、第一地面が無い。」

まゆ子「だがそれを理解してない人は、アニメ作ってる人にも多いのだ。だからガンキャノンの量産型作らずに、GMスナイパーカスタムで喜んでる。」

じゅえる「GMキャノンてなかったっけ?」
まゆ子「ガンキャノンが狙撃系だと知らずに作る機械に、意味あるわけないじゃん。」
釈「そりゃそうです。たんじゅんにミサイルポッド増加したGMに過ぎませんよ、それ。」
じゅえる「はー、そりゃ運用がまったく違ってくるからねー。そりゃぜんぜん違うものだ。」
まゆ子「第一、そういうのが欲しければボールを使うのだよ。廉価なボールに大砲括りつけて大量動員火力支援。GMキャノンなんか出て来る暇無いぞ。」
じゅえる「うう納得。」

まゆ子「だが悪い話ばかりじゃない。ということは、本来のガンキャノンは未だ十分に描写されていないってことだ。また続々と登場するOVAやらゲームやらで、ガンキャノン系のMSは活躍所がたっぷりと残されている。つまり、金脈は此所に有る。」

釈「おお!」
じゅえる「なるほど、穴か。」

 

まゆ子「ではガンキャノンとは何者か、これを考察してみなければならない。

 当然の事ながらガンキャノンは、ガンダムガンタンクと同様に、コア・ファイター・システム構想に基づいて作られたモビルスーツ。
 火力支援型と呼ばれる通りに、両肩にキャノンとは名ばかりのミサイル発射機を装備。手にはガンダムが使用するのよりも繊細で長距離射程が狙えるビームライフルを装備。だが白兵戦は考慮されておらずビームサーベルは装備されていない。」

じゅえる「火力支援、てのはどの程度の火力を想定しているのだろう。」
まゆ子「弾薬内蔵しているから、大したことないよ。ガンダムが担いで使うバズーカが弾数は5発だっけ? アレが左右で12発程度かな。ちょっと待ってWIKiで調べるぞ。
 えーと、なんだこりゃ? スペック表は360ミリキャノン砲と書いてるのに、説明文では240ミリキャノン砲になってるぞ? で装弾数20×2、て書いてるな。何処に弾しまってるんだろ?」
釈「ガンダムのバズーカは弾体が大きいですから。」

まゆ子「ま、どっちにしろ40発程度しか弾持ってない。フルアーマーとか重装備型とか言われる奴は機外にこれでもかとミサイル括りつけてるから、大した数ではないな。」
じゅえる「うーん、イメージしにくいな。40発は十分な数の弾ではないのかい?」
釈「少なくとも、1機で戦況に大きな変化を与えるものではありませんね。マクロスみたいに一斉射撃ができるわけでもないですから。」
まゆ子「アムロはガンダムにバズーカ2本とライフル括りつけて出撃するから、そうだね、それくらいは常時装備ってことかな。」
じゅえる「うーむ、まあ艦船1〜3隻モビルスーツ10程度の戦隊を相手にするのに、ガンキャノンは5以上あればなんとかなる、程度か。」
まゆ子「うーん、ザク換算でね。ドム換算だと同数でイーブンて感じかな。」

じゅえる「よわいじゃん!」
まゆ子「いや兵器ってものは、そのくらいのバランスで出来てるんだよ。100発弾積んでても、すぐ撃ち落とされたら無駄じゃない。」
じゅえる「ま、鉄砲の弾なんてのは当たらなければどうということはないのだよ。で、当たるの?」
まゆ子「当たるんだろうねえ。」
釈「当たりますか。」
まゆ子「後のGMキャノンなんかは、当たらなくても撃ちっぱなしでいいよおてな機体だけど、ガンキャノンはそうじゃない。当てに行く。」
じゅえる「ふむ。」

 

まゆ子「実際の戦場で考えてみよう。ガンキャノンは中距離支援型だ。だから中距離から狙える目標を標的とする。ガンダムはガンキャノンを阻止しようとする敵モビルスーツを駆逐する。これが正しい戦術だ。」
釈「ガンキャノンの方が主役なんですね。」
まゆ子「ガンキャノンの目標は艦船だ。敵モビルスーツの母艦を直接狙う。艦はモビルスーツほどは小回りが利かないから、キャノン砲の攻撃がちゃんと当たる。ただ当然防御兵装も付いてるから、そう簡単ではない。」
じゅえる「対モビルスーツ戦闘はガンダムに任せていればいいんだね?」
まゆ子「いや残念ながら、ディフェンスを突破して来る機体は必ず有る。故にガンキャノンも応戦しなければならない。逆に言うと、ディフェンスの網から漏れて抜け出す奴を狙撃する。これがガンキャノンの対モビルスーツ戦闘だ。」

釈「しかしアムロは勝手にやりますよ。」
じゅえる「あれバケモノだもん。」
まゆ子「まーそーなんだーね。実際の運用としてはガンダムが突出してモビルスーツを引き付けている間、カイの乗ったガンキャノンはホワイトベースの防衛をやってる。結構スコア稼いでいるんだけど、まあアムロ様の比ではない。なんですか、あまり母艦の心配をしなくても済むくらいには役に立っていたよ。」

じゅえる「つまり、本来の運用であれば、ガンキャノンの方が攻撃型なんだ。」
まゆ子「普通の人はまるっきり知らないのだが、戦闘機は攻撃型ではないのだよ。領域を守り、味方攻撃機爆撃機を護衛する為にある。だから攻撃機の方が爆弾搭載量も多いし、目標に与える被害もちゃんと出す。戦闘機は上で飛んでるのを追っ払うのが役目で必ずしも撃墜しなくてもいい。要は近づけなけりゃいいんだ。」
釈「驚きの一般常識ですね。」

まゆ子「だが、そういう攻撃用途であれば宇宙戦闘機で済むんだよ。ガンキャノンが大加速で敵母艦に肉薄してキャノン砲の斉射で撃沈。てのはなかなかね。」

 

じゅえる「うーん、なんというか、使いづらい?」
まゆ子「うん。」
釈「ではモビルスーツ運用の想定が外れた、ってことですか。」
まゆ子「連邦はそもそもがモビルスーツの開発運用に遅れを取ったんだから、どれが正しいか分からないんだ。また敵もザク1種類しか持ち合わせていない。参考資料が無いから、どういう装備形状のモビルスーツをどう運用すべきか、とりあえず実験するしかないわけだよ。」

釈「では劇中でガンキャノンが活躍しないのは、アニメで動かしてみてどうにも使い勝手が悪かったという、自然の成り行きですか。」
まゆ子「モビルスーツが後にびゅんびゅん空を飛ぶ、ってのも、コレの方が正しいんじゃない?という直感に基づいての描写だ。ガンキャノンも、このままでは使えないなあ、という直感が働いたんだね。」

 

じゅえる「ではどうするべきか?」
まゆ子「モビルスーツは格闘戦をしなければならない。狙撃系と言っても、なんでもかんでも狙撃でケリがつくとロボットアニメは成り立たない。故に、ガンキャノンのバリエーションは格闘戦指向であるべきだ。」

釈「具体的には。」

まゆ子「肩のキャノン砲を取っ払い、ガトリング砲のデカいのを取り付ける。もちろん砲塔になっていて独立して指向するぞ。要するにぴくぴく動く肩マシンガンで敵機撃墜だ。」
じゅえる「そりゃー、派手だね。」
まゆ子「ガトリング砲をのっけるのだから、これを”ガンキャノン・アヴェンジャーA10”と名付けよう。格闘戦用モビルスーツだ。」
釈「ビームライフルは持ってるんですか、それ。」
まゆ子「うん取り外す理由が無い。」

じゅえる「他には?」
まゆ子「重装甲で突入して艦船を撃破する、丁度リック・ドムみたいな運用も悪くない。これは逆に、肩の砲を下ろしてビームライフルに絞った方がいいな。肩には姿勢制御ロケットを装備して、運動性を高める工夫がよろしかろう。腰の左右にミサイル搭載もいいぞ。
 がばっと敵艦に取りつくから、”ガンキャノン・プレデター”と名付けるか。」

釈「狙撃性を追求するのも悪くないですね。」
まゆ子「当然だ。ガンキャノンはそれが当然だ。
 この機体は赤ではなく黒に、ステルスに塗装すべき。漆黒の機体にビームライフルと、肩には精密照準器を搭載する。
 といってもガンキャノンの頭は相当上等の照準機器を搭載しているはずだけどね。だからー、特殊なレーダーみたいなものだ。ミノフスキソナー、とかにしておこう。ミノフスキ粒子環境下で粒子自体の相互干渉から物体の移動を測定する装置ね。
 でより長距離を狙撃できるスナイパービームライフル。左肩には、もし万一見つかった場合に備えて、囮のフレアをバラ撒くポッド装備。
 スナイパーの名はGMに取られたから、これは”ガンキャノン・リベンジャー”とするか。」

じゅえる「陸戦用ガンキャノンも欲しいぞ。」
まゆ子「うむ。だがガンキャノンは装甲厚が災いして運動性が低いことになっている。これは30年前からの設定だ。だから、ちょっと軽くしなきゃいけない。
 てなわけで、ホバー装備のガンキャノンでドムと陸上高速戦闘対決だ。
 武装は右肩にビーム砲、左肩にはミサイルポッド、手にはマシンガン。白兵戦闘の為にビームサーベルでなくヒートマチェット装備。
 ジオンに占領された地球表面を奪還する為のモビルスーツであるから、”ガンキャノン・レコンキスタ”と呼ぼう。」
じゅえる「マチェットてのも今更だな。もっと個性的な武器が欲しいぞ。」
釈「では、単純にパイルではどうです。武器の持ち替えをしなくてもいいように、左腕にパイルバンカーが装備されてるのです。」
まゆ子「そりゃーボトムズの真似だあ。」

 

釈「水中戦用の!」
まゆ子「いや釈ちゃん、それはさすがにやめとこうよ。」
じゅえる「調子に乗っちゃいけないぞ。と。」

(注; 文中で「コア・ファイター・システム構想」って言ってるのは設定では「コア・ブロック構想」て言われているわけですが、宇宙戦闘機運用との関係性をわざと強調しているわけですよ。攣りですね。)

 

【ガンタンクぶれいぶだよガンタンク09/06/06

 

まゆ子「けふはガンタンク!」

釈「はいはじまりましたマシナリイ。ガンタンクですね。」
じゅえる「説明するまでも無いですが、ガンタンクとは機動戦士ガンダムに出て来る変態戦車で、主人公メカの引き立て役です。」
釈「過不足の無い説明ありがとうございます。」

まゆ子「ダウト! ガンタンクは戦車じゃないー!」
じゅえる「でもタンクって書いてるよ。」
まゆ子「うっ、だが戦車じゃないのだ。」

釈「まあまあ。そもそもが戦車というものはなんでしょうか、ってとこから行きますか。」

 

まゆ子「戦車とは、まあ装甲を持ち自立して行動できて地上戦の最前線に投入される強力な火砲を装備した戦闘車両で無限軌道で走行する。こんなもんかな。歩兵戦車とかあるから必ずしも対戦車戦闘を目的としなくても成り立つのだが、現在の定義だとちと困るか。」

じゅえる「対戦車戦闘をするのを主目的とはしないのかい?」
まゆ子「いやー、いまはそのなんだ、戦車同士の戦闘そのものがめったに発生しないから。」
釈「そうですねえー、イランイラク戦争くらいなものですかねえ。あとチェチェン紛争とか?」
じゅえる「イラク戦争では一方的に撃破されちゃったもんねえ。」

まゆ子「まあなんだ。そもそもが戦車ってもんは高度に工業の発達した国でしか作れない代物で、先進国同士がガチで戦争しない現在では、あまり出番の無い兵器だ。」
釈「或る意味へいわなもんです。」

じゅえる「そこでガンタンクだ。えーと定義のとこからまず、キャタピラはOKね。」
まゆ子「キャタピラはね。」
釈「強力な火砲を装備した戦闘車両、これもクリアですね。」
まゆ子「うん。」
じゅえる「装甲は固いんでしょ。」
まゆ子「ガンダムよりも強力だ。」
釈「最前線に投入されましたよね。」
まゆ子「運用上まずいけどね。」
じゅえる「自立して行動できる?」
まゆ子「弾薬車とか観測車の随伴を必要とはしない。」

じゅえる「戦車でいいじゃん。」
釈「ですよね。」
まゆ子「ちがーう。運用上はそう使われちゃったけど、元々はそんな風に使うもんじゃない!」
じゅえる「そもそも何が気に食わないわけだよ。」
釈「やられメカにそんな入れ込んでも仕方ないでしょ。」

 

まゆ子「ガンタンクやられメカじゃない。ガンタンク最強。ガンタンク殊勲賞なのだ。
 あんたたち、なんで地球をザクが跋扈してる?とか疑問に思ったことない? なんで巨大人型ロボットをわざわざ放り込まなきゃいけないのさ。」

釈「ジオンの地球上陸作戦は何がなんだか分かんないとこ多くて、合理的な考察が難しいんですよ。」
じゅえる「まあ、人型ロボットは戦車の的だとか、飛行機に負けちゃうよとかは皆言うね。」
まゆ子「そうそう。そこんとこ不思議に思いなさい。何故にジオン軍は戦車飛行機でなくて、モビルスーツ使うのか。ふしぎでしょ。」

 

釈「戦車も飛行機もありますが。」
じゅえる「まあ、あるけどぱっとしないね。とりあえず、マゼラアタックの不思議さはたしかにガンタンクの比ではない。」
釈「とはいえ、戦車も飛行機にはかなわないんですから、飛行機充実してたら戦車なくても大丈夫なんじゃないですかね。」

まゆ子「戦車の現代的意味合いだと、これは占領の為の道具なんだな。直接正面からの戦闘の為の兵器ではなく、占領地を支配し続けるプレゼンスの表現手法実行戦力として意味がある。マゼラアタックもその観点からすれば実に効果的なもんだと理解できる。」

釈「つまりアレば占領目的とすれば有用な機械なんですか。」
まゆ子「というか、アレ基本はコロニーで使うもんだ。コロニー内部の都市部にアレ入れたらどうなるか、と考えてみれば一目瞭然。」
じゅえる「えーと、マゼラアタックの武器は、空飛ぶ砲塔の主砲が1、下の車体に機関砲が1付いてる。この武器の選び方は賢いの?」
まゆ子「ぱーふぇくと、に近いですね。敢えて言うなら空飛ぶ砲塔にも機関砲欲しかったけど無くても構わん。
 マゼラアタックが都市制圧用というのは、そりゃ見たまんまだ。空飛べばビルの谷間に潜む敵をやりたい放題に遊んでやれる。」

釈「あ。ビルが遮蔽物にならないんですか。あーそれは厄介な兵器だ。」
じゅえる「うーんそうすると、ビルの内部に隠れてこっそり狙うしかないな。まとまった兵力を街の通りに隠してって作戦が使えない。」
まゆ子「そのビルの内部に隠れる、って敵には車体の大口径機関砲が思う存分の暴力を振るうわけだよ。ロシアなんかチェチェン紛争の時、高層ビルから狙撃やらRPGぶっ放す敵を一掃する為に高射機関砲で虱潰しにビルぶっ壊して行きました。」

じゅえる「つまりマゼラアタックの機関砲は都市に立て篭るゲリラを掃討するのに最適な装備であり、また空飛ぶ砲塔は都市部に展開する兵力を上から殲滅する戦闘へりみたいなもんだ、ってわけだね。」
釈「それは強い。」

まゆ子「だが、ということはこの戦車、野戦には向かない。というか野戦に出さないのであれば最低限の装甲で済むわけだ。MSの相手をするような超強力装甲は必要無い。」
じゅえる「ふむ。」
釈「なんとかと鋏は使いよう、ってわけですね。」

 

じゅえる「キュイは?」
まゆ子「アレ戦車じゃない。」
釈「キュイってのは、あのなんというか、動く楯ですね。あんな兵器が意味有るんですか?」
まゆ子「無い。」
じゅえる「無いよねえ、やっぱ。」
まゆ子「アレに関してはさすがに私も擁護のしようが無い。ただイランイラク戦争では日本製ブルドーザがドーザーブレードを楯にして、敵歩兵の攻撃をおどろくほどの効率で防いで敵陣地攻略に大変な功績を上げて、時のフセイン大統領から表彰されそうになったほどだ。楯そのものの有用性は、時と場合によるとしか言えない。が、さすがにアレは無いだろ。」

じゅえる「なんとか弁護してみてよ。」
まゆ子「うーん、なんというかねえ、あれは動かなければまだなんか考えようもあるんだが、動くからさあ。しかも内部に兵員を収容するならまだしも、楯の後ろ歩いてるから。
 強いて言うなら、アレは戦闘用ではない。暴徒鎮圧用だ。群集を制御するバリケードとしてなら機能するが、さすがにあの幅員では道を選ぶ。敢えてあんなもの作った奴は絞首刑でいいと思うぞ。」

じゅえる「あとはー、色々と巨大要塞みたいな戦車やら、ホバーで動くおっきい車とか有るよね。」
まゆ子「ホバーというのがどの程度の能力を持つか分からない。あんなバカでっかいものが動くのであれば、キャタピラ要らないような気がするが、そこはまあ知らん。
 とりあえず、戦車らしい戦車はジオン軍は必要無いし、用意もしていないと覚えておこう。」

釈「モビルスーツがあるからですね。」
じゅえる「火力でいえば、モビルスーツと戦車とで優劣は無いよね。」
まゆ子「まあね。というか、そもそもからして地球上陸作戦自体、戦争が始まってから泥縄で計画されたようなもんだ。十分な地上兵器を保有するはずも無し。マゼラアタックがあれだけの数用意できた事は称讃に値する奇蹟だよ。」

 

釈「でも戦車よりは飛行機ですよね。航空戦力が十分無いと、地球上では戦えません。」
じゅえる「というか、いくら頑張っても元々地球にある航空戦力を凌ぐほどの機数を揃えられないでしょ。」
まゆ子「そりゃ当然。」
釈「どのくらいの飛行機を作ればいいでしょうか? 途方に暮れますね。」

まゆ子「そういう不毛な考えはバカバカしいから止めよう。こっちが少ないのであれば、敵方を減らすしかない。宇宙空間からどかどかと攻撃だよ。」
じゅえる「そりゃそうだ。飛行場航空基地があれば、上から爆弾なりミサイルなりビームなりレーザーなり、どんどこ叩き込んで消滅させちゃいましょう。」
釈「問題は、それだけの暴虐を働く間、敵が大人しくしてくれるか、ということですが。」
まゆ子「大人しくさせられたんだろうねえ。あんな大規模な上陸作戦が可能なんだから。」

じゅえる「皆殺し?」
まゆ子「地上にある軍事基地、軍事空港、軍港湾施設、皆殺しだ。とうぜんだ。」
じゅえる「とうぜんだね。」

釈「そうすると、地上にあった航空戦力は大部分が潰滅?」
まゆ子「1/10、いやひょっとすると1/100くらいまでは減らされたかもしれない。あー、地球全体で作戦機が30000機ほどもあれば、残存1000機程度かなあ。」
じゅえる「まさに潰滅だな。」
まゆ子「このくらい減らさないと、ジオンの地球上陸作戦は実現不可能だ。その後の領域拡大の速度と面積から考えても、連邦の航空戦力はまったく意味が無いほどに弱体化したと考えるべきでしょう。
 だがこの世界の飛行機は早い。マッハ5、とか普通だ。早いということは遠くまですぐ飛んで行けるということで、各々ばらばらに隠されている機体でも、命令一下すぐに集結できるのだ。減ったとはいえ危険を無視できるようなものじゃない。」

釈「ですが、そんなに少ないのであればジオン側もそれほどの数は要りませんね。」
じゅえる「いやー要ると思うよ。連邦軍は戦闘機ばっかりで敵を空で駆逐すればいいんだけど、ジオン側はありとあらゆるミッションが飛行機には課せられる。」
まゆ子「まあー、大層な数が必要だろうねえ。だがそんなパイロット居るわきゃない。」
釈「宇宙人ですから。」

 

まゆ子「そこでモビルスーツの登場だ。あの世界では巨大人型ロボットを3機も4機も積んだ飛行機が平気でどこまでも飛んで行く。ザクの一個小隊ぽこっと落として、帰りにぽんと乗って来るのを持って帰ればミッションクリアだ。楽なもんだ。」
じゅえる「お手軽空挺団だね。」
まゆ子「うん。モビルスーツ戦略として、このどこでも空挺団は非常に有意義かつ有効なのだ。つまり、宇宙においては連邦側コロニーを思い通りに制圧して中の人数十万人をそっくり人質化したモビルスーツ戦術が、地球上でもそのまま可能になるんだよ。

 どっかの町にぴゅーっと飛んで行ってザクの1個小隊下ろす。そのまま皆殺しでもいいけれど、脅して降参させて勢力範囲を拡げる。降参しなくても都市インフラをぶっ壊せばその町はそっくり難民だ。そして、インフラ破壊とかはモビルスーツがとても得意とするところ。なんせ元が作業機械だし。
 ザクの行く町々で発生する難民は最寄りの大都市に避難し集結し、連邦軍の補給機能を完全に麻痺させる。」

じゅえる「クレバーだな。」
釈「エクセレントですよ。」
まゆ子「この作戦の優れている点は、防衛側はどこの町が次に狙われるか分からない。また守ろうとしても兵力の集中が出来ない。集中しても余所に行かれては仕方ない。全部を均等に護るのは不可能、というとこだな。」

じゅえる「この戦略戦術に対して、連邦軍の解答は?」
まゆ子「無視!」
じゅえる「むしいぃ〜!」
釈「自国民を無視しちゃったんですかあ〜、そりゃ無茶だ。」
まゆ子「だがクレバーな対応ではある。

 連邦軍が見放した難民、占領された領域は当然のことながらジオン軍に降伏せざるを得ない。降伏して受入れてしまえば、ジオン軍が彼らを食べさせなきゃいけなくなる。だが高度に発達した資本主義社会で、そんな細切れに切り離された社会が単独で食って行けるはずがない。物資の流通はまるっきり破壊されて、致し方なく軍事物資を割いて与えるしかなくなる。
 つまり連邦軍が為すべき役割をジオンに肩代わりさせる作戦だ。占領した領域が増えれば増えるほど、ジオン側は困窮してしまう。それが分かって居ながらも、連邦の反攻部隊を追っかけて攻めていけば、自然と占領領域が拡がってしまう。」

じゅえる「悪夢だね。」
釈「ジオンも諦めてしまえばいいんじゃないですか。」
まゆ子「まあ諦めたんだけどね。だからジオン軍と連邦軍がかわりばんこに顔を出す領域が至る所に出来てしまう。難民はどちらにも見放されてぜつぼーした。」
じゅえる「でも、そういう領域が増えた結果、連邦の反攻作戦が有効に働いたわけだ。」
まゆ子「連邦軍がさくさく逃げるさくさく攻める作戦を取り出すと、どうしようもない。市民を護るという最低限の義務を放棄したからこそ取り得る作戦、勝利だね。」

 

釈「つまり、戦争のコンセプトが変わって領域支配とか拠点防衛を必要としなくなったんですね。」
まゆ子「まあ完全に無くなったわけじゃないけれど、そういうのがモビルスーツ時代の戦争なんだね。以後のテレビシリーズでも、モビルスーツはびゅんびゅん飛び回るだけで占領とかしない。」

じゅえる「でもその作戦は超大型飛行機が無いと、駄目だね。また敵戦闘機による妨害が無いてのも前提となる。」
釈「しかし連邦側の妨害と言っても、そんなに自由に空を飛び回れるわけでもないんです。これはー、勝ってる間はまったく失敗しない類いの戦略ですね。」
まゆ子「うん。勝ってる間は何やっても上手くいく、そいう時期はあるからね。防御側としては、とりあえず占領地の奪回は諦めて、ともかく兵力の集中再整備しか手は無い。」

じゅえる「だが、手は有る。」

まゆ子「ここでガンタンクの登場です。」
釈「対空戦車ですか。」
まゆ子「そうです。本来飛行機が有ればまったく必要の無い地上からの対空攻撃、これをワンセットぽんと投入して、ジオン軍の航空戦力を駆逐します。」

 

じゅえる「しかし、そうは言っても一両のガンタンクのカバーできる範囲は狭いぞ。」
まゆ子「ガンタンクの射程距離は260キロです。」
釈「十分過ぎる距離ですね。」
まゆ子「それだけじゃない。260キロの遠方に届く砲ですから、上に向けて撃つととんでもない高度まで到達します。」
釈「えーと最大射程距離は斜め45度に撃ち出すわけですから、それを真上に撃つと200キロ近く飛びますね。ほとんど宇宙空間ですよ。」
じゅえる「宇宙空間!」

まゆ子「定義によると、地球では高度100キロ以上が宇宙空間だ。だがそうすると、あんな砲くらいで宇宙まで飛んでけるのか?という疑問を持つ方もいらっしゃる。」
じゅえる「だね。」

まゆ子「宇宙旅行の基本! 高く上がるだけならば、そんな大袈裟なロケットは必要無い!」

釈「えーつまり、一口に宇宙に行くと言っても、軌道速度に到達し宇宙空間にいつまでも居続けるのと、単に高度だけ宇宙空間に達してそのまま落っこちるのとでは、まったく話が違うってわけです。」
まゆ子「只の戦闘機でもマッハ2とかそれ以上を出せば高度30キロくらいはなんとかなるもんだ。ジェットエンジンだって弾道飛行できる。ま、普通やらないけどね。

 えーとググってみたけど、アメリカの高高度極超音速実験機X-15が、到達高度107キロ、最大速度マッハ6.7出してるね。ロケットプレーンだけど。
 民間宇宙船スペースシップワンは高度112キロ、到達速度マッハ3.09、大した速度ではありません。」

 

釈「ガンタンクの砲弾は、それはやっぱりこの場合、ミサイルみたいなもんでしょう。」
じゅえる「待てまて、ミサイルだとしたら逆に、あんなサイズでは宇宙空間まで飛べないでしょう。小さ過ぎる。」
まゆ子「ま、ね。」
釈「なにか解決策がありますか。」
まゆ子「砲の能力を上げればいい。」

釈「リニアガンですか、レールガンとか、クエンチガンてのもありましたか。」
じゅえる「電磁気力でふっ飛ばす奴だね。」
まゆ子「あー、ガンタンクはそういうのじゃないと思う。あくまでもアレは砲だろう。ただ、砲と言っても火薬燃やしてるとも限らない。たとえば砲弾のお尻に推進剤の固まりを付けて、尻からレーザー光線で焙る、とか半ロケット的な砲であれば、砲自身に巨大な反動衝撃を掛けずに超高速で飛び出すでしょう。つまりは連邦脅威のメカニズムによって超砲弾が飛んでくんだ。」

釈「そいう火砲は有りですか。」
まゆ子「レーザーで焙る方法ならば、砲身ほんとは要らないんだけどね。まあそこは趣味みたいなもんで。」
じゅえる「ともかく射程距離260キロは不思議じゃない数値なんだね?」
まゆ子「米軍新開発ズムウォルト級ミサイル駆逐艦に搭載されるAGSって大砲は、155ミリだけど通常弾で56キロ、砲弾後ろに固体燃料ロケット付けて185キロ飛ぶ予定。ガンタンクは未来大砲だから260キロくらい朝飯前だろう。
 ちなみにAGSのこの砲弾、長さ2.24メートルもある。ガンタンク砲の砲弾もロケット推進を利用しているとすれば、そのくらい長くても不思議じゃない。発射前の砲弾を保護する為に長い砲身が有る、と考えていいんじゃないかな。」

釈「しかし、ガンダム世界ではレーダーが使えないんですよね。そんな状態で対空ミサイル当たりますか?」
まゆ子「心配御無用。」
じゅえる「その心は?」
まゆ子「頭のとこに観測室が付いている。的は上に飛んでるのだから天体望遠鏡ででも覗けば良い。砲弾誘導もレーザー光線使えばラクチン。」
じゅえる「ああ、あのガラスコクピット、ただの飾りじゃなかったんだ。」
釈「というか、戦車にあんなもんが付いてるのは最初から不思議でしたよ。」
まゆ子「そりゃ不思議だろ、戦車なら。」
じゅえる「戦車にあるわけ無いもんね、あれ。」

 

釈「なんですか、そもそもガンタンクに先立ってそういう高射砲戦車があったような感じですねえ。」
まゆ子「ミノフスキ粒子関連以外の武器兵器弾薬類はなんの変更も無いわけで、ガンタンク砲なんてその最たるものでしょ。そうは言っても宇宙対空砲なんてほとんど必要なかったとは思うけどね。宇宙戦艦から飛行機から固定基地から、ありとあらゆる方法で空中の脅威を排除できるんだから。」

じゅえる「そんなこと言ってしまえば、地球上のどこに戦車を必要とする脅威があるのかな、という話になる。」
釈「どう考えても、そんな脅威は無いですよねえ。統一政体なんですから。」
じゅえる「反逆者やら分離独立派ゲリラやらもなさそうだしねえ。戦車何に使ってたんだろ。」
まゆ子「可能性があるとしたら、宇宙移民。宇宙コロニーに住む人を狩り集める為に、戦車を必要とした。あるいはキュイなんか、その為の地球連邦地上軍が使ってた兵器を分捕ったのかも。」
じゅえる「ああ、地球に住む人はエリートとかいう設定あったね。つまり下層階級の人は強制的に宇宙に放り出されちゃったわけだ。そりゃ戦車くらい要るさ。」
釈「いやなちきゅうれんぽうですねえ。」

 

じゅえる「まあガンタンクが対宇宙高射砲戦車であるとは理解した。でも普通に戦車みたいに前線に投入されてるよね。」
まゆ子「装甲が新型だからね。ガンダムより強いんだもん。」
釈「前回検討したザクの新型弾頭に対応した装甲、ですね。地球連邦の普通の戦車61式が為す術も無くさくっとやられていくのに比べると、そりゃあ頑丈ですから。」
じゅえる「でもあの大きさだとイイ的なんじゃないかな。」

まゆ子「ガンタンクの正面投影面積はそりゃデカい。ただそもそもが高射砲戦車だからね。敵は頭の上飛んでる。上空からみればガンタンクも普通戦車も同じ面積だ、被弾し易さの差は無いよ。」
釈「上から見れば、そりゃそうです。」
じゅえる「まあ敵はザクだからね。どっちが見付かり易いかと言えば、ガンタンクはザクよりも小さいさ。
 で、その正面からぶつかった時の武器だよ。あのガンタンク砲は正面の敵には使え無いわけではないよね。」
まゆ子「ま、射程260キロの砲弾を使うのはバカみたいな無駄だ。正面から撃ち合うのならせいぜい10キロも飛べばOK。ただー、こいつの装甲貫徹原理がなにかは知らん。ガンタンク砲ならばHEつまりただ爆発する砲弾である可能性も高いなあ。画面ではザク大爆発だし。」
釈「まあともかく前には撃てるんです。」

まゆ子「私はどっちかというと、そういう正面からぶつかる時は肩の大砲使わずに指ミサイルで応戦した方がいいと思うんだがね。あの指ミサイルは40ミリらしいけど結構な威力を持っている。しかも数撃てるんだから、いいじゃないか。」
じゅえる「あれはザクやっつけるのに十分な威力あるんだよね。」
釈「時々あれらしいミサイルがガンキャノンの肩に載っている設定画ってのを見ますね。」
まゆ子「それも悪くないねえ。十分な破壊力があるのなら、数撃てる方がそりゃ得だ。」

じゅえる「最新強力な装甲、十分な破壊力を持ち弾数の多いしかも腕を振り回して色んな方向に撃てるミサイル。これだけあれば普通に戦車じゃないかな。」
まゆ子「あー、それはいい戦車だ。おそらくガンタンクの半分の背丈で出来るでしょう。」
釈「まあ肩に砲が無いのも寂しいですから、ガンキャノンの普通の大砲を載っければいいんじゃないですか。」
じゅえる「戦車として使うには、それはいい機械だな。要するにガンタンクはオーバースペックなんだ。」
まゆ子「いや、単に使い方テレビで間違っただけで、普通に航空機やら宇宙船やらを撃ち落としとけば十分カッコイイよ。」

 

釈「で、コアファイターです。」
まゆ子「見たくない聞きたくない考えたくない!」
じゅえる「あー、ははは。」
釈「はは、はははははは。」
まゆ子「ははははははははははは。」

 

じゅえる「うんでもって運用だ。つまりガンタンクは対空戦車として用いられるべきなんだけど、どうだろう。ガンタンク配備と航空機配備と、どっちが得だろうか。」
釈「そうですねえー、航空戦力の整備はもちろん最優先ですが、地上には配備できませんから困り者ですね。」
まゆ子「なんというか、ビーム砲がどんどん戦場に登場しているからね。航空機がめちゃくちゃな威力を発揮する状況で無くなっている。地上配置の兵器でも航空機と対等に渡り合える時代にどんどん移っているんだ。

 そういう状況下において、ビーム砲を登載しないガンタンクは旧世代の発想に基づいた兵器と言えなくもない。ただだからと言って有効性が無いかと問えば、そんなこともない。
 ビーム砲搭載可能な航空機の量産と、宇宙空間までも攻撃できる高射砲戦車。敵が宇宙から襲って来るジオン軍であれば、悩むとこだな。」

じゅえる「地上における戦闘ではビーム砲を登載したGMの登場まで反攻作戦は行われなかったわけだ。ガンタンクは意味無し?」
釈「いえ、GMでは航空機の相手はできませんよ。ガンダムでさえアムロさまの超絶チート格闘戦能力が無ければ、ドップ編隊に勝てないんですから。」
まゆ子「まあ、そうだね。GM配備が進むとしても、航空戦力に対抗する手段は無ければ困る。航空機によるバックアップを付けたいところだが、おそらくモビルスーツ戦術にそれはふさわしくないんだろ。」
じゅえる「まあ、飛行機の方が早いから戦場がどんどん移っちゃうわさね。」
釈「そうは言ってもガンタンクはGMよりさらに遅いですから、また困りますね。」

 

まゆ子「そこで、こういう戦術を取るわけだ。
 まずこの世界にはモビルスーツなり超重戦車なりをそのまま飛ばせる大型輸送機がごろごろしてる。だからモビルスーツ隊はこれで移動する。ザクがそうしていた通りに、GMもこの戦術を用いる。
 で、航空機による護衛を伴い、戦場となる領域に輸送機が到達、空中からGMなりガンタンクなりを放り出す。
 ガンタンクはただちに上空の敵航空戦力の駆逐に入る。ま、近づけなければ上等だ。ガンタンク砲の性能であれば、超高空までも制圧出来る。自然、ジオン側は低空からの侵入を余儀なくされる。
 低空を飛んで来る航空機はさすがにGMの守備範囲となる。低空ではむしろモビルスーツによる機動戦闘の方が分がある。故に、モビルスーツ同士の近接戦闘・格闘戦が発生する。」

じゅえる「航空機同士の戦闘でケリを付けるわけにはいかないのかい。」
まゆ子「両軍共に、航空戦力は虎の子なんじゃないかな。前に言ったけど、この世界の航空機はやたらと足が早い。どこに配置されていてもすぐに結集して戦場を確定できる。逆に言うと、やられてしまうと広域に渡って航空戦力の穴が出来る。或る一定の役目を果たした後はさっさと帰って次のミッションに投入するべきだよ。」
釈「便利なのか不便なのか分かりませんね。空飛ぶザク作った方が良かったんじゃないですかね。」

まゆ子「まあ、さすがにファーストにおいてはそれは無しにしよう。モビルアーマーは空飛ぶから、その目的で用いられるべきでしょう。おそらくはGーファイターとかもそう使うべきだし、そう使ったんだけどさ、ガンダム世界ではその後まるっきり無視されるわけだ。」

 

釈「つまり、ガンタンクは蚊取り線香。」
じゅえる「航空機避けを務めた後は、やることが無い。」
まゆ子「純軍事的にはそれはとても重要な役目なんですが、まあ後はGMの支援砲撃でもしておくか、くらいなもんだよ。」

 

       *************************

じゅえる「さあて宇宙です。とりあえずガンタンクが高射砲戦車だとは理解した。その使い方も納得します。
 さて、これを宇宙に持って行くとどうなるか?」

まゆ子「ま、宇宙空間で機動戦闘させようと考えるバカはさすがに居ないな。だが実は出来るんだよ、というか出来るに決まってる。
 1G環境で空中に浮き上がるだけのロケット持ってるガンタンクだ。それがどれだけの推力を生み出すか。」
釈「あー、それはー、凄いロケットですねー。」
じゅえる「あー、そう言われてみると、そりゃ困ったね。凄いんだよ。」

まゆ子「まあなんだ。宇宙空間ではキャタピラ外した方がいいとは思うけどさ。
 だが実はこのキャタピラがまた役に立つんだ。AMBACって言葉は知っている、てことでいいよね。
 AMBAC:Active Mass Balance Auto Control = 能動的質量移動による自動姿勢制御。つまり重たいものをぐるぐる回せば、機体の姿勢を自由に変えられるって技術だ。」

じゅえる「あーモビルスーツにおいてはそれはー、なんというか魔法的機能として理解されてるね。推進剤無しでさくさく飛び回れる。」
釈「本物の人工衛星に搭載されているのは只の車輪であって、ぐるぐる回ることで衛星が姿勢を変えるってだけなんですがね。」
まゆ子「どこかの研究室で、長い棒をくきくきと振り回すことで衛星の向きを制御するってのをやってるらしいから、ここにヒントを得たんだね。
 だがもちろん、ただ単に機体の向きが変わるだけで、かっこよく弾を避けたりは出来ないぞ。」

 

じゅえる「つまり、モビルスーツにおいてAMBACって、無駄?」
まゆ子「いや逆に、手足とは別にAMBAC機能を確保しておかねばならない。なんといいますかね、宇宙で手足ばたばたさせれば、予期せぬ姿勢変更をしてしまうんだよ。あんなカッコヨク銃を振り回したりできない。銃口をちゃんと目標に向ける為には、手足とは別の機構が必要となる。」
釈「それは大袈裟な機械ですか?」
まゆ子「いや、要するに錘がぐるぐる回ればいいんだよ。そして錘が高速回転すれば、そんなに重たい錘でなくていい。そうだね、モビルスーツに搭載するとすれば、手足の関節のモーターの所に高速回転するリングを仕込んでおけば上等だよ。」

じゅえる「それはーつまり、回転するリングが必要なんだ。」
まゆ子「リングでなくても棒の先に錘がついていても構わんよ。ただバランスが取れている方が望ましいから、シンメトリカルであった方がいい。」
釈「キャタピラみたいな形でも使えますか?」
まゆ子「あまり理想的とは言い難いが、しかし地球上で荒地をごとんごとんと時速70キロとかで走れるほどのキャタピラならば、問題無い精度で回るでしょ。」

じゅえる「でもキャタピラは前か後ろにしか回らない。機体を前後に回すだけじゃないかな。」
まゆ子「いや、リングが左右に付いていれば、逆回転させることで軸に対して垂直な回転も可能なんだそうだよ。流石に横に寝るのは無理だが、ピッチングとヨーイングは可能になる。」
釈「つまり、御辞儀をするのと、左右にいやいやするのは可能なんですね。」
じゅえる「戦車であれば、その二つが出来ればOKだよ。」

 

釈「つまり、ガンタンクは宇宙でも大活躍?」
まゆ子「可能だ。」
じゅえる「でも、それはさすがに、やばいだろ。」
まゆ子「だが機能的には出来てしまう。まあ、ガンタンクのロケットの推進剤がちょっとしかない、てのなら仕方ないが、そのくらいなら機体外部に推進剤タンクをくっつけよう。」
釈「つまり、宇宙用にしようと思えば至極簡単?」
まゆ子「簡単。というか、キャタピラ止めて2輪だともっと分かりやすいんだけどね。」

じゅえる「そういう回転するリングを搭載したモビルスーツって、他に無いの?」
まゆ子「おそらくは、ボールの中には三軸でリングが入ってると思う。あの丸い身体に何を入れるかと問えば、リングでしょやっぱ。」
釈「つまり、ボールは内蔵したリングで、えらく簡単にくるくる回る事が出来る、んですね。」
まゆ子「それはもう実に器用に。」

 

じゅえる「ということは、ボールも大活躍?」
まゆ子「あー、世の中の大方のガンダムふぁんは物凄い誤解をしているのですが、GMよりもガンダムよりも先に、ボールが実用化されているのです。
 ボールと言えば大量動員で後ろから大砲ぶっ放す支援機、という位置付けで理解されてますが、とんでもない。

 ボールはまず、ザクに対抗する機動兵器として導入されたのです。しかも導入当初はそんなに潤沢に数が有るはずが無い。少数の機体で、艦船をザクの脅威から護っていたのです。というか、ザクの快進撃が止まったのはボールのおかげだ、GMじゃない。」

 

じゅえる「そんなに強いの?」
まゆ子「GM導入前にリック・ドムが導入された。つまり従来のザクでは艦船襲撃を攻め切れなくなったからだよ。では連邦軍のどの兵器がそんな防御力を発揮したかと言えば、ボール以外無いじゃない。」

じゅえる「あー、そうでした。リック・ドムは艦船強襲用の攻撃機として作られたのでした。」
釈「私、リック・ドムの導入って普通のことと考えてました。よく考えれば、ザクで間に合ってればそんなもの要りませんよね。」
じゅえる「わたしたちはテレビアニメだと新型ロボットが次々にでてくるのが当たり前と考えるから、そこは思考の盲点になってるな。
 つまり、ザクじゃ攻めきれない状況を打開する為に、新型強襲モビルスーツを投入した。至極当たり前の経緯だ。」

釈「ということは、ボールは凄い機械?」
じゅえる「言われてみると、そうね。要求性能がザクと格闘戦をして防げる、少なくとも2ないし3対1であればザクを防げる、程度の能力はしっかり実現してたんじゃないかな。」
釈「導入して役に立たない機械は、いくら阿呆の軍隊でも使いませんよ。そりゃー当たり前過ぎる話で、ボールはちゃんと必要とされた兵器なんです。」

まゆ子「まあなんだ。ザクを防ぐ機能のみを考えて、それ以外の性能をさっぱりきっぱり諦めちゃうという要求性能を課せられたんだね。モビルスーツみたいにコロニー内部への侵入工作とかは考えずに、ひたすら艦船の防衛の為だけに使われる。ディフェンスオンリー、それが第一義の機体だ。」

釈「しかしボールは核融合炉積んでいないという設定になっていますが。」
まゆ子「なってるねえ。だが、化学燃料ロケットなんかアノ時代で使ってると思う方がどうかしてるぞ。」
じゅえる「まーなんだ、コアファイターにはちゃんと小さい核融合炉が積んでいるからね。アレ使えばボールも立派にびゅんびゅん飛び回るよ。」
釈「しかしそれはさすがに設定厨の人が許さないのでは。」

まゆ子「わたしだって鬼じゃない。そこんとこはなんとかしましょう。だがボールに使われているロケットが化学燃料使うってのはいただけない。
 間を取って、これでどうだ。
 ボールに搭載されているロケットは、バッテリーの電力で推進剤を気化させて噴射する電気ロケット。まあイオンロケットにしたいところだが、単純に蒸気を吹かしているだけて代物。」
じゅえる「その利点は?」
まゆ子「まずは、爆発しない!」
釈「まあ、爆発物積んでるロケットで戦争するのはイヤですよね確かに。」

 

まゆ子「というか、宇宙では化学燃料の調達がかなり難しいんだ。考えてもみてください、宇宙に油田があるでしょうか?」
じゅえる「ケロシンを燃料に使うのはさすがに諦めよう。」
釈「天然ガスもありません。LPGは諦めましょう。」
まゆ子「いや、メタンはあるよ。というか、メタンくらいしか使える燃料が無い。水素は宇宙で使うにはひじょーに厄介な物体でね、これ使うくらいならメタン合成して使った方が遥かにマシだ。」
釈「水素はそんなに駄目ですか。」
まゆ子「まずあれ、水素はタンクから勝手に逃げ出してしまう。どんなに厳密に作った燃料タンクからでも、かならず逃げる。故に長期間の貯蔵は難しい。」
じゅえる「だから水素を燃料とするロケットは、発射直前まで燃料入れないよね。」

まゆ子「当然のことながら、逃げ出した水素はそこらへんに留まるわけだ。モビルスーツ格納庫なんかに充満したらどうするね。酸素と結びついて大爆発じゃないか。」
釈「たしかにそれはヤバい話です。」
まゆ子「だが実は水素が一番やばいとこは、金属やらなんやらを腐食してしまう性質があるんだな。腐食じゃないや脆化か。ともかくぼろぼろになっちゃう。」
じゅえる「それはー、いかん。それはやめよう。」
まゆ子「もひとつ言えば、そんなヤバいものを扱うのが、戦時に動員されたとてもプロフェッショナルとは言い難い要員だ。完全安全な取り扱いなんてまったく見込めないと思うぞ。」
釈「わかりました、水素禁止です!」
まゆ子「まだまだあるぞ。水素は液体にしてもえらく嵩張るんだ。H2ロケットがあんなに大きいのは水素が嵩張るからだ。つまりタンクが大きくなって機体に入り切らない。だからより小さく畳めるメタンをロケットで使おうとか研究している。」
じゅえる「わぁーったったら。もう。」

 

まゆ子「化学燃料として使い勝手の良い燃料と言えば、メタンかアルミニウムくらいしかない。あとは固体燃料としてのカーボンだな。」
じゅえる「爆発性の燃料は、やっぱ禁止かい。」
まゆ子「乗りたい奴は居ないだろ。」
釈「はあ。」
まゆ子「で、なぜメタンは駄目かと言うと、勿体ない。カーボンが。」
じゅえる「そりゃ固体燃料のカーボンも駄目ってことだね。」
釈「つまり炭素は貴重資源なんですね。」
まゆ子「一応ガンダム世界では小惑星を引っ張って来たり、木星から資源持って来る。潤沢に有るはず。だがー、やっぱ勿体ないでしょ。とくにN窒素を含む物体を燃やしちゃうのは。」
じゅえる「でも戦争だから我慢して。」
まゆ子「イヤ!」

釈「つまり、勿体なくなければ化学燃料でいいわけですね。」
まゆ子「そうは行くかい。化学燃料と、電気ロケット原子力ロケットあるいは太陽光を用いる自然エネルギーロケットと、何処が違うかと言えば比推力だ。比推力とはつまり燃費を表わす指標であり、これが大きければ推進剤少なくて済む。」
じゅえる「まあ、燃費がいいに越したことはないけれど、化学燃料はそんなに駄目なのかい。」
まゆ子「だって戦争だよ。どのくらいのロケットが燃料使うと思ってんだ。」

釈「あ。」
じゅえる「あ。そりゃーまずいな。物凄い量を消費しちゃうな。」
まゆ子「ね、勿体ないでしょう。1機2機をちょろちょろ飛ばす今のロケットとは違うんだよ。物凄い数のロケットがびゅんびゅん飛ぶんだよ。というか、ミサイルなんかもどんどこ飛ばすんだよ。」
釈「凄まじい量の推進剤を消費してしまう、わけですか。その大本の供給先を考えておかなければ戦争出来ない。」
じゅえる「そりゃ基本中の基本だけど、ふーむつまり燃費が良ければその手間がぐぐっと半額になったりするわけだ。なるほど、確かに考えちゃうな。」
まゆ子「というわけで、推進剤を電気で加熱して噴射するロケット、電気と言っても電子レンジだったりレーザーだったり電気火花だったりするわけですが、ともかく燃焼よりも効率の良い方法で加熱するロケットを使うべきなのです。」

 

じゅえる「問題が一つ。そんなバカでっかいエネルギーを貯えられるバッテリーって、実現可能なの?」
まゆ子「いや、モビルスーツ当然バッテリーというかキャパシタ積んでるよ。核融合炉から出る生電気で動いてるわけないじゃん。」
釈「そりゃそうです。電気を溜めといて適宜使うのは、機械として当たり前過ぎる設計です。ですが、うーんそうですねえー、ボールをびゅんびゅん飛ばすほどのエネルギーを貯えられるでしょうか。」
じゅえる「超伝導でも使うしかないかなあ、というか、そういや超伝導という手があった。」
まゆ子「おお! そういえばそういうものも有ったな。ボールの中にリング状の超伝導キャパシタが入ってる、という設定でもいいぞ。」

釈「では、ボールの中には超伝導バッテリーと推進剤が詰っている。あーそういえば艦載機が化学燃料で動いて居たら、母艦は凄い量の燃料積んでないといけませんね。」
じゅえる「あー、そりゃ動くガスタンク状態になるな。それは非常にマズイ。最小量の推進剤しか積まなくて済むように、電気推進にしておこう。」
まゆ子「それはつまり、核融合炉なり原子炉なりを積んでいる母艦と同じ推進剤で艦載機が動く、ってことです。さすがに母艦が化学燃料で動くって考えるバカは居ないでしょう。」

 

釈「推進剤って結局何使いますか?」
まゆ子「気化し易い液体ならなんでもいいんだけどさあ、宇宙で普通に使える液体となれば、水、メタン、アンモニア、固体だけど二酸化炭素、くらいかなあ。」
じゅえる「H2O、CH4、NH3、CO2か。」
釈「しかし極低温の宇宙空間で使うのです。水もアンモニアも凍りますよ。」
まゆ子「問題ない。かき氷にして粉体として扱う。」
じゅえる「気体でもいいよね。酸素とか窒素とか。」
まゆ子「低温維持めんどくさい。酸素危険窒素勿体ない。アンモニアもやっぱ勿体ないかなあ。漏れると臭いし。」
釈「アンモニアを推進剤に使うと、格納庫が酷い有り様になりますよ。却下です。」
まゆ子「うん、毒性あるしねえ。」
じゅえる「CO2もやばいよ。窒息する。」
まゆ子「メタンは爆発するからー、結局無難なとこだとやっぱ水、かな。」
釈「まあ、安全ではあります。」

 

じゅえる「とりあえず、ボールがそういう宇宙ロケットであるとは理解する。
 で、ザクと対等に渡り合える運動性を持っているとする理由は?」
まゆ子「かんたんに言うと、既存の兵器は運動性でザクに完敗したわけだ。速度ではない。速度で言えば直線番長の宇宙戦闘機の方が遥かに早い。」
釈「もっともです。」
まゆ子「つまり運動性において敗北して艦船の近傍にザクの侵入を許してしまうわけだ。では運動性を補うにはどうすればいいか。」
釈「軽くて、方向を簡単に変えられるような専用設計の宇宙戦闘機、ですね。ダッシュ力はある方がいいです。」
じゅえる「瞬間的に大推力が出るロケット積んでると良い。電気推進はこの要求に適うかい?」
まゆ子「レーザー加熱式ならOK!」

じゅえる「全身にロケットエンジン取り付けなくていいかい?」
まゆ子「ボールがリング搭載でくるくる回るのであれば、主推進器は1個でいいと思うよ。まあ細かい運動の為のロケット付いてる方が便利ではあるけど、瞬間大推力を必要とするのなら1個の方が便利かなあ。」
じゅえる「しかしさすがにバッテリーだと長持ちはしないでしょう。電池切れで動かなくなる。」
釈「そうですよ。そこんとこはどうにかなりませんか。」
まゆ子「大推力が瞬間的に必要だけど、ちょっと動けばいいから連続加速しないぞ。運動性が高いとはそういうこった。」
じゅえる「機動性が高い、て場合だと、やっぱエネルギー量が多くないと駄目かい。」
まゆ子「あー、機動というものをどう解釈するかだけど、やっぱ核融合炉でも積んでて長時間活動出来ないとそうは呼べないな。」

釈「つまりボールは短時間だけ活動する、運動性だけはピカイチの機体、なんですか。」
まゆ子「それ以上のものを要求されてないからね。ペイロードも小さいし。自重より重たいミサイル積んで特攻なんかはしないよ。」
じゅえる「要するに、ただ単にザク避けの為だけに作られたわけ?」
まゆ子「ザク避けが欲しかったんだから、そりゃそうだ。」
釈「そりゃそうですね。」

 

じゅえる「話をガンタンクに戻そう。ガンタンクはそういう風には使えない?」
まゆ子「あー、さすがにそれは無理。ボールが三軸でクルクル回転するのに対して、二軸でしかもややこしい手続きが必要な旋回をする。小回りが利くとはとても言えないな。」
釈「普通のモビルスーツみたいな戦闘はできませんか。」
まゆ子「その普通がどの普通か知らないけれど、たぶん期待しているような運動は無理だと思う。そうね、ガンタンクの機動性というのは、自力で敵要塞やらコロニーに辿りつくのに不便は無い程度のもので、機動戦闘は考慮していない。」
じゅえる「まあ、自力で飛んで行けるだけマシですかねえ。」
釈「よくこういう風に使われているんですよ。ハッチから顔だけ出して、対空砲として乗ってる船を守る。こういうのはどうですか。」
まゆ子「それでザクが防げるなら、艦船に対空砲増設するだけでOKだ。おそらく最初に試してみて失敗したアプローチだなそれ。」

じゅえる「つまり、テレビでやってるとおりにでくの坊でいいんだね。」
まゆ子「かまわないと思う。ただそれはそれで面白くない。宇宙戦闘、艦隊同士の戦闘においてもガンタンクが役に立つ運用法を考えてみたくなる。」
じゅえる「上半身とコアファイターだけで飛べばいいんだよ。武器は全部上に付いてるんだから。」
釈「あーそれは誰でも考えつくアレです。Gガンタンクですよ。」
まゆ子「あー、まどうでもいいや。それが使えるのならそれでいい。ただテレビには出て来なかったから、それは無いと考えよう。

 ガンタンクをまともに宇宙戦闘で使うにはー、あーむりがあるなー。」
釈「素直に諦めましょう。宇宙空間では使えないという結論に異を唱える人は居ませんよ。」
じゅえる「まゆちゃん、そこはやめよう。」
まゆ子「あ、うん。まあいいか。何しろガンタンクには非常に重要な役目があるからさ。

 

 つまり月面! 宇宙戦争において最重要拠点である月面での戦闘において、ガンタンクさいきょーだもん。」

釈「それはー、おそらく誰も反対しないでしょう。なにせ戦車ですから、地面の上で戦うのは当たり前です。」
じゅえる「ガンタンク射程距離260キロも、1/6重力なら1320キロも飛んで行くかな。」
まゆ子「月の脱出速度は2.38km/秒だよ。ガンタンク砲ならまあ軽くぶっちぎりだな。」
釈「つまり、月面のガンタンクは月軌道を飛び出して宇宙空間を飛んでる宇宙戦艦を直接攻撃出来ちゃうんですか。」
じゅえる「まてまて、そうするとガンタンク砲は月面上のどこに居る敵でも直接攻撃できちゃうのか。」
まゆ子「ま、月面上の兵器はだいたいどれもその能力を持ちますから、びっくりするこたあない。月の戦争に占領とか領域支配の概念は存在しないのだ。」

釈「それでは困るでしょう。なにか凄い方法で勝つとかできませんか。」
まゆ子「ある。月面バリアーという凄い方法が使える。」
じゅえる「それは地球では使えない方法かい?」
まゆ子「ま、バカしか考えないが月面の低重力なら可能となる方法だよ。
 やりかたはかんたん。そこらへんの土をかき集めて、バケツで空中に放り出す。1/6の重力だから土砂は高くまで飛び上がり、なかなか落ちて来ない。リニアカタパルトとかで連続的に放り上げれば、あたかも空中に壁が出来たも同然になる。」
釈「そりゃー、むちゃな策ですね。」
じゅえる「それは有効な手段なのかい。」
まゆ子「この兵器の恐ろしい点は、つまり土砂を大量に放り投げるというとこだ。壁として用いるだけでなく、敵基地を埋めてしまおうというのも考えられる。エネルギーは太陽光で無限に降り注ぐからOKだ。無限だよ。」

じゅえる「それはあまりにも恐ろし過ぎて禁止にしよう。」
釈「そんな世界ではガンタンクもなんかちっぽけな存在に見えてしまいますね。」

 

まゆ子「戦車が地球上では50〜60トンを普通とすれば、月面では360トン戦車が動いてしまう計算だな。ガンタンクは80トン程度だから、ちいせえちいせえ。」
じゅえる「つまりガンタンクは月面上では、ごく普通の機械でしかないんだ。」

釈「月面ではモビルスーツは有効ではないんですか?」
まゆ子「あー、基本的な月面の情報。月面は石がごろごろしています。」
じゅえる「なんとかの海ってとこは滑らかじゃないの?」
まゆ子「あれは例外ですが、それでも石はごろごろしています。車両でいくよりは、飛んでった方がラクチン。第一早いし。」
釈「そりゃ飛んでった方が早いでしょう。」
まゆ子「1/6重力だから、飛んでくロケットも大した推力は必要じゃない。ただブレーキもロケットだからちと制動は面倒だな。」

じゅえる「つまり、車輪要らない?」
まゆ子「超重量車両、戦車であれば必要かもしれないが、キャタピラだな。車輪はあんま得策ではない。」
じゅえる「ふむ。キャタピラか、ロケットか、か。」
釈「でも車輪には推進剤が必要無く進めるという利点があります。」

まゆ子「地面蹴飛ばしゃいい。」
じゅえる「そこで足が出て来るか。蹴飛ばしたくらいで飛び上がれる?」
まゆ子「いや、月面に行った宇宙飛行士は300キロくらいある宇宙服でぴょんぴょん飛んでるよ。」
釈「あー、飛んでますねえ。」
まゆ子「月面では二足歩行するよりも、ぴょんぴょんカンガルー跳びをした方が楽に移動できるんだ。というか、バランス崩さないカンガルー跳びの方が合理的な移動法だ。」
じゅえる「ふむ。つまり二足歩行ロボットは月面では別に非常識じゃないわけだ。」
釈「あまり高く飛び上がるのは、的になると思いますが。」
まゆ子「いやカンガルーは別に高く飛ばないから。」
じゅえる「カンガルーは低く遠くに飛ぶんだよね。あれなら問題ない。」

 

まゆ子「というわけで、ガンタンクも跳ねる。いや跳ねざるを得ない。キャタピラで70キロとか出してしまうと、自然と月面では跳ね上がる。地球上だって地面にでこぼこがあれば、戦車だって飛び跳ねるんだもん。」
じゅえる「ソ連戦車の得意技だね。」
釈「あれは技術アピールの為で、普通は飛んだりしませんよお。」

まゆ子「ともかく最高速なんか出してしまうと、ガンタンクは跳ねる。跳ねちゃっても大丈夫、ちゃんとロケット付いてる。だから遠慮無く跳ねる。」
釈「なんか、大胆な絵になって来ましたね。」
じゅえる「そりゃそうだ。1/6重力だとガンタンクは13トンくらいの軽量戦車みたいなもんだ。跳ね回って何が悪い。」
まゆ子「いや水平にぶつかる分にはちゃんと80トンの重さあるんだけどね。その衝撃はもちろん地球だろうが無重力空間だろうがおんなじだ。ただ、地球で80トンのモノが自由に動き回れるだけのパワーがあれば、月面ではぴょんぴょん飛び跳ねるんだ。」

 

釈「凄い絵ですね。」
じゅえる「ほとんど波乗りサーフィンではないだろうか。そのガンタンク。」
まゆ子「モビルスーツは蚤のように跳ね回り、ガンタンクはサーファーになる。これが戦争だ!」

 

                ******************************

じゅえる「でもやっぱり納得いかない。そんなに化学燃料はダメなのかい。」
釈「はあ、ここはなんとか出来ませんか。」
まゆ子「出来んでもないけど、まあ頑張って見ますか。

 えーとボールのスペックは、大体直径10メートル、重量17トンの球体です。推進剤やら弾薬やらを積むと49トンになります。30トンの内、推進剤質量は25トンくらいではないでしょうか、質量比は2.47になります。」

じゅえる「その質量比ってのは、宇宙船としてはどうなんだろう? 常識から外れてる?」
まゆ子「あー、宇宙で使う単段式ロケットとしては、でも少ないかなあ。地球から打ち上げるロケットの三段目であればー、でも少ないか。」
釈「つまり化学燃料ロケットとしては非常識なものなんですね。」
まゆ子「あー、有り難いロケット計算のHPを利用すると、比推力450秒の化学燃料ロケットとしては最高の液酸/水素ロケットで、この推進剤量では秒速3キロにしか到達しません。」
じゅえる「つまり、ボールは単独で地上から宇宙にはいけないわけだ。」
釈「それは当然です。」

 

まゆ子「さて、ボールは艦船の直衛であるからには、船からあまり遠くに離れて飛んではいけないのです。どのくらいの距離がいいかな?」
じゅえる「それはボールが秒速何キロで飛ぶか、に掛かってるでしょう。ボールって速度どのくらい?」
釈「えーと宇宙船人工衛星ってのはとんでもない速度で飛んでます。軌道速度はいちばん低いところで7.9キロ/秒ですか。」
まゆ子「高さ200キロくらいかなあ、それはもう落っこちる寸前の高さですよ。というか、低軌道だと速度出せば上に減速すれば下に落ちます。計算めんどくさいから、地球から随分離れた位置を飛んでることにします。」

じゅえる「母艦がその速度なら、機動兵器はそれ以上10キロ/秒は欲しいね。」
まゆ子「この場合母艦は推進していないわけだから、慣性飛行中。これは宇宙では止まっているのも同等の存在です。ボールの母艦との相対速度は2キロ/秒ってことになりますね。」
釈「あ、母艦速度はさっぴかれますか。」
じゅえる「秒速2キロ、これ遅い?」
まゆ子「飛行機で言えばマッハ5ですね。しごく早いと呼んで差し支えない。」

 

じゅえる「じゃあ決まり。ボール2キロ/秒で飛ぶ。」
まゆ子「これで旋回すると、そりゃもちろんGが掛ります。人間がまともに活動できる限界が6Gくらい。一般人が正気で居られるのが3Gくらいです。」
じゅえる「ふむ。気を失わない遠心力で旋回しなくちゃいけないわけだ。じゃあガンダムは女子供も乗るから、3Gでいこう。」
釈「1Gが9.8メートル/秒/秒ですから、ま適当に30メートル/秒/秒とします。」

まゆ子「旋回半径は、速度の2乗/加速度です。速度2キロ/秒、加速度3Gてことだと、133キロ。」
じゅえる「げ。」
釈「げ。そんなに遠くになりますか。」
まゆ子「まあ133キロはさすがに遠過ぎる。これは駄目だな。」
釈「はあ。では1キロ/秒で。」

まゆ子「1キロ/秒、3Gだと、半径33キロ。1周207秒、ま、いい数字ではないですか。」
じゅえる「半径33キロはー、端から端まで1分か。ちょっと遠いかも知れない。」
釈「逆を衝かれたらヤバい距離ですね。この半分くらいがちょうどいいかもしれません。」
まゆ子「直径30キロの球体内部、ふむ。」

じゅえる「なんか文句ある?」
まゆ子「それだと6.8G旋回だ。人間のパイロットの限界だな。でも可能だ。」
じゅえる「OK!」

 

まゆ子「えーとつまりだね、直径30キロの円を1キロ/秒で1周するとと、94秒。その間ずっと6.8Gで噴射しまくりだ。」
釈「宇宙では旋回するのも止まるのも、全部ロケット噴射しなくちゃいけないのです。」
まゆ子「6.8Gで94秒噴射すると、6.266キロ/秒の速度に達する。つまり1周するにはこれだけの速度に到達する推進剤がひつようなのだ。ところがー。」
釈「化学燃料ロケット質量比2.47だと、到達速度3キロ/秒。1周できません!」

じゅえる「あれぇ〜??」
まゆ子「これが旋回でなく、防衛圏内往復でも一緒だ。最高1キロ/秒で往復するとしてもボールの速度は、母艦発艦時0キロ/秒→1キロ/秒→外縁到達で停止0キロ/秒→逆推進で1キロ→(母艦を通り越し)→反対側外縁で停止0キロ→再度母艦に向けて加速1キロ/秒→母艦で停止0キロ、という噴射になる。
 つまり、+1-1-1+1+1-1、の加速過程を必要とする。全部加速だから6キロ/秒まで加速出来るロケットが必要、という話になる。母艦で止らない場合でも往復4キロ/秒必要。」
じゅえる「あ、あれあれ?」

釈「ちなみに電気ロケットだと、どうなります?」
まゆ子「電気ロケット、つまりレーザーやら電子レンジやらで加熱噴射するロケットだと、比推力1000秒あたりが期待できる。無論原子炉やら核融合炉積んでいれば、比推力2000秒も可能だし、核融合ロケットであればもうとんでもない数値になる。
 がまあ、モビルスーツは1000から1500秒あたりだと思うな。格納庫の中で噴射しても放射能汚染を気にしないで済むロケットを用いているのであれば、そんなもんを使ってるはず。」

じゅえる「で、それだとどのくらいまで飛べるんだよ。」
まゆ子「えーと比推力1000秒で質量比2.47だと、6.792キロ/秒。」
釈「え? 往復1回しか出来ないんですか。」
まゆ子「これがモビルスーツ技術の隠された真実なのだ。ボールに適用される数値はそのままモビルスーツも同じく当てはまる。」
じゅえる「要するに、モビルスーツは宇宙戦闘ができない…。」

 

まゆ子「心配御無用!」

釈「おお!」
じゅえる「策があるのか!」

まゆ子「誰が考えてもこの話はおかしいでしょ。ただ単にぐるぐる回るだけでこんなに推進剤を使っちゃうのは。もっとうまい方法で推進剤をケチれないか。」
じゅえる「うむ!」
まゆ子「有る!」
釈「おお!」

まゆ子「ボールを紐で結わえる!」

釈「え?」
じゅえる「なんじゃそれは。」
まゆ子「つまり長さ15キロのワイヤでボールを結んで、びゅっと1キロ/秒の速度を1回出してやれば、そのまま永久に回転し続ける。」
釈「しかし、…? それでいいのかな?」
じゅえる「というか、それでは戦闘はできないでしょう。」
まゆ子「そこだ。では戦闘とはどういう機動をすればよいのか、これが問われなければならない。」

 

じゅえる「あー、テレビみたいな運動はー、ってガンダムってどういう動きをしていたっけ?」
釈「はい、それが実はー、良くわからないのです。」
じゅえる「え?」
まゆ子「マクロスはどういう運動をしているか、良くわかる。そういう風に描いている、だがガンダムは、特に最初のシリーズは、飛んでいるシーンってほとんど無いんだ。」
じゅえる「えー?」

まゆ子「つまり、ロケット推進に関してはまるで描写が無い。ただ時々ぎゅんぎゅんと火花が飛び散るくらいで、分かんないんだよ。それが事実。」
釈「なんといいますか、浮いていながらくるくる回って飛び回るザクを撃ち落とす。あるいはガンダムがびゅんと一飛びすると、ザクやらドムが大爆発。こんなものです。」
じゅえる「や、やくにたたない…。」

まゆ子「つまり、モビルスーツがどういう戦闘機動をすればいいか、誰も知らない。また考えると頭がパンクする。上記のような限界に容易に到達するからだよ。」
じゅえる「ふむ。」
まゆ子「ちなみに宇宙戦闘機の戦闘機動は極めて単純、びゅーっと行って、ミサイルなりをバラ撒いて、びゅーっと通り過ぎる。」
釈「ブレーキは?」
まゆ子「宇宙戦闘機がブレーキ掛けようと思うと、質量比がとんでもないことになる。なんというか、ブレーキを掛けて、また加速して帰って来て、止まる必要がある。とんでもない推進剤が必要だけど、そんなもなあ積んでない。」
じゅえる「駄目じゃん。」

まゆ子「あー、だからこういう方法を使えばいいのだ。

 つまり初期加速の時は大推力で大量に推進剤を投入して所定の速度に到達する。で戦闘をして戦場をするっと通り抜ける。

 通り抜けた後は時間制限が無い。だから推進剤をケチれる比推力がさらに大きいイオンロケットを使う。推力小さいから時間は掛るけれど確実に減速方向転換して、天体重力を利用して帰還予定地点に到達し、あとは停止する為の方法をなんとかする。
 例えば速度を所定の数値に合せるように決まっていて、出撃機はその速度で所定の位置にまで来る。そこには宇宙空母が同じ速度で飛んでいて、機体を回収する。全機収容が終れば、空母自体が減速を開始する。空母ともなれば核融合推進なんて考えつく最強のロケット使えるから推進剤少なくても大丈夫。

 あるいはパラシュートという手もある。脱出方向を太陽にして、太陽帆で減速さらに地球方向に加速して戻って来る。で、空母に着艦で帰還。」
釈「どっちにしろややこしい手続きが必要なのです。」

じゅえる「ともかく、宇宙戦闘機はそんなものだから、機動戦闘なんかできないわけだ。」
まゆ子「まあ、人間乗っている必要も無いんだけどさ。」
釈「肝心なのはモビルスーツの運動です。」

 

まゆ子「今見た通りに、宇宙機動兵器は遅いんだ。早く飛べば止まれない。止まる推進剤が無い。だから遅く飛ぶしかないし、遅く飛んでも推進剤不足でろくに動けやしない。ならばミサイルで最初から止まる必要なんか忘れちゃえ、ってのが当たり前の発想となる。」
じゅえる「そりゃ賢いな。」
釈「まあ人間乗れませんね。」

まゆ子「モビルスーツは本来は作業機械で、コロニー内部を占領して人質にとっちゃうのがクレバーな戦術。艦船やら宇宙戦闘機相手にしても勝てる道理が無い。というか、ミサイル来たらどうしよう。」
釈「ふむ。」

まゆ子「ミノフスキ粒子があればデンパ妨害で見えなくなる、なんてのは嘘です。というか、そんなもの今更出て来ても、ECMやらステルスやらなんぼでもあります。というか、ミノフスキ粒子どんだけバラ撒けば、そんな宇宙的規模のデンパ妨害を引き起こせるというのか。」

じゅえる「あーそれはー、どんな膨大な量バラ撒けばいいか、見当もつかないや。」
釈「改めて考えてみると、単にガスをバラ撒くだけであってもそりゃあ凄い量の気体が必要ですよ。ミノフスキ粒子の散布って、どうなってるんでしょう。」

 

まゆ子「そこで考える。ミノフスキ粒子ってただバラ撒いてもダメなんじゃないかな。バラ撒くにしても、電磁場の袋なんか作って溜め込んでおくとかしないと使い物にならないのでは。」
じゅえる「電磁場でそんな袋なんかできるの?」
まゆ子「うん。これにプラズマを詰めて太陽風を受けて飛んで行こう、という構想もある。大した仕掛けじゃないし、エネルギー消費もほとんど要らないらしい。この袋はめちゃでかいぞ、数十キロにもなってしまう。でも大した磁場ではない。精々1メートルのコイルが生み出す程度だからね。
 詳しくは「マグネティック・セイル」もしくは「マグネティック・プラズマ・セイル」でググって下さい。というかWIKってください。

 で、ミノフスキ粒子もこんな感じの電磁場の袋に詰め込んで、戦場にぼんと置けば、そこに正体不明の探知不能存在が出来上がる。ミサイルがこの中に突っ込んで来るとわやになってしまう、とかではないかい。」
じゅえる「ミノフスキ粒子に当たると電子装備がいかれてしまう、というのはかなり昔から有る設定だったよね。」

 

釈「しかし、ミノフスキ粒子を閉じ込められるという根拠が無いと、」

まゆ子「いやホワイトベースってミノフスキ粒子で飛んでることになってるではないですか。この場合、ミノフスキ粒子になんらかの操作を艦体外部で行っている、としか思えない。ミノフスキ粒子を加速して下に噴き出しているのか? いやそれならば船の下は凄い嵐になってるでしょう。そんな凄まじい噴射があるとは描いてない。
 ならば、ミノフスキ粒子を積み重ねて上に乗っているのではないでしょうか。つまり袋だよ。」

じゅえる「うーむ、のべつ幕なしにバラ撒くもので空を飛ぶのはなんだかね。というかアレ、質量無いんだっけ。加速しても飛べないぞ。」
まゆ子「ともかく電波には反応するなにか、であるのは確かなんだ。あと磁場を与えると圧力を発生するという性質がある。公式設定ではそうなっている。
 ならば磁場で封じ込めが出来ないと考えるのも、おかしい。」
釈「ミノフスキクラフトなる飛行手段は、結局わけわからんでいいんですよ。ただ有るものならば、どんどん使わないと。」

まゆ子「まあね、ミノフスキ粒子関連技術は分からないことばっかりなんだよ。

 たとえばパブリク突撃艇ね。機体とほぼ同じ大きさのミサイルを2発も積んで飛んで行く宇宙戦闘機だよ。このミサイルは中身が「ビーム撹乱幕」というものになっている。
 でもこの実体は誰も知らない。おそらくは艦船要塞の強力な砲から発射されるビームを拡散やら偏向やらして、効果がなくなる為のものなんだけど、どういう原理かまったく説明が無い。
 まあビーム自体がミノフスキ粒子の固まりであるから、ビーム撹乱幕もおそらくはミノフスキ粒子をバラ撒くのだろう、とたいがいの人はうすらぼんやりとイメージする。
 だが今も言ったとおりに、宇宙でバラ撒けば際限無く拡散してしまう。ビーム威力になんらかの有為な変化を与えるためには、粒子密度が相当に高い必要があるはずだ。というか、その密度を稼げないなら意味は無い。」

じゅえる「うーむ、粒子密度を上げるには、しかしバラ撒く量にはそりゃとうぜん物理的限界があるわけだから、なんらかの封じ込めを行わなきゃいけない。とうぜん。」
釈「たしかに、ビーム撹乱幕ってどこにも設定見付かりませんね。というか、これはひょっとして後のガンダムシリーズには有ってはならない設定なのかもしれませんよ。ビームが簡単な仕組みで効果が無くなるってのは、まずいでしょう。」
まゆ子「まあ艦隊戦レベルの超物量をぶちまける戦でないと意味が無い代物かもしれない。でも後のシリーズにはビームシールドとかあるわけだし、そもそもがビグザムなんてビームから機体を護るIシールドなんてのもあるし、これはたぶん有り、の設定だよ。」

じゅえる「有り、ならば機構を考えなきゃいけないわけだ。ミノフスキ袋である可能性はかなり高い、と。」

 

まゆ子「まあ、ともかくミノフスキ粒子を使って敵艦に肉薄する、というのは確定なわけです。ただ、単なるデンパ妨害ではミサイルからは逃げられない。
 ミノフスキ粒子の詰った袋の内部に敵艦を包みこんでしまい、デンパが内部で反射散乱重複する状態にしてしまえば、わけわからん状態になるんじゃないかな。」

じゅえる「つまり、ミノフスキーバブル!」
まゆ子「ついでに、モビルスーツにその電磁袋装置が搭載していれば、ミノフスキ袋はモビルスーツの移動と共に動いて行く。ここまでやれば、密度の問題は解決出来るし、ミサイルも当たらないんじゃないだろか。」

釈「ミノフスキ発生装置をモビルスーツに積むというのはどうでしょう? これならば更にパワーアップですよ。」
まゆ子「うむ。だがそんなもの見たことない。モビルスーツはミノフスキ粒子環境下で動くようにできている、既存の兵器はそれを持たなかった、というのは誰でも納得するが、どんな装備か誰も知らない。ただミノフスキ発生器はさすがにこの時代のモビルスーツには積んでないと思われるぞ。」

 

釈「でもまだ問題はあります。誘導するミサイルはミノフスキ袋で無効化できるとしても、ただ真っ直ぐ飛んで来る砲弾やらロケット弾は防げないんじゃないですか。」
じゅえる「いや、それは画面上のまんまでいいんだよ。それは要求仕様に十分適っているから大丈夫。」
まゆ子「というか、誘導ミサイルだってそう簡単に潰れては困るんだよ。レーザーやらメーザーやらを当てて破壊する、あるいは機能を狂わせる防御法は普通にあるでしょ。」
じゅえる「そうか、デンパ障害内でもちゃんと動く機能が、当然の事ながら兵器には要求されるんだね。誘導ダメなら真っ直ぐ飛ぶさ。」

まゆ子「もちろん、運動性でそいつらをカッコヨク避けるなんてのは、とても無理だよ。」
釈「マシンガンの前にふらふらと飛び出していくようなものですからね。」

まゆ子「こういう時は力業で解決だ! 宇宙機雷で飛んで来るのをこっちから迎撃する。マシンガンで炸裂弾を撃ち出そう。」
じゅえる「そりゃ無茶な力業だな。でもミサイルならなんとかなるかも。」
釈「いえそれはー、さすがにレーダー使えないとダメなんじゃないですか。ミノフスキ袋の中に居るモビルスーツにはまったくレーダーは使えないでしょう。」

まゆ子「心配御無用。レーザーレーダーを使おう!」

じゅえる「なんか聞いたことのある単語だ。」
釈「わたしもそんな気がします。」
まゆ子「知ってるのも道理。自動車の速度違反で取り締まるレーダーに、一部これ使われてるんだって。」
じゅえる「おお! 時代はそこまで進んでいたんだ。」
釈「レーザー光線をレーダーの照射する電波の代わりにするんですね。ミノフスキ粒子はレーザーは透過OKということですから、それは安心です。」
まゆ子「ザクのまん丸お目々が何故赤く光るのか、これは長年の謎でした。ただのカメラが光っちゃ困るし、ヘッドライトのわけが無い。そこで、現在では無人地上車が地面をスキャンして進路を決定するのに使用されるレーザーレーダーを、宇宙空間に漂うデブリ検出に用いているという設定はどうだろう。」
釈「それは小さなものでも見えるんですか?」
まゆ子「現在では小さなものを観測するのに使用するよ。こないだ月に激突ミッション終了した探査衛星「かぐや」にも、月表面を精査する同じようなレーザー測定器が積んでたのだ。」

 

じゅえる「ちょっと待て、それなら連邦だってそれ使うだろ。ミサイルにも搭載するぞ。…ま、ミサイルはミノフスキ袋に飛び込めば無効化されるとしてもだよ。」

まゆ子「うーん、ミサイルはともかくビーム砲がね。だがマシンガンが多目的投射器であるとすれば、チャフをバラ撒けばさすがに探知は極端に困難になると思うぞ。」
釈「ミノフスキ袋と、チャフの混合ですか。それはさすがにわけ分からなくなりますか。」
まゆ子「そもそもがミノフスキ粒子自体が、チャフっぽい代物あるいはチャフを参考にして考案されたものだからね。」

釈「防御側がチャフを撒くのが普通じゃないですか?」
まゆ子「だって、攻める方も誘導弾使えない。」
釈「あ、そうでした。では防御側の艦船がバラ撒けば、自分の首を〆ることになりますか。」

 

じゅえる「そうは言っても、だ。そこまでしてもモビルスーツの運動性が最終的には決定打となる。ランダムに動き回る標的でないと、さすがにぶち抜かれちゃうぞ。」
釈「しかしそんな推進剤は無い。モビルスーツのロケットでは、ろくな運動が出来はしない。」

まゆ子「そこでだ! 紐で結わえるぞ。

 モビルスーツ同士を紐で繋いで、互いをカウンターマスとして、ぐるぐる回る。あるいは、ゴム紐みたいに伸び縮みすれば、さらに複雑極まりない速度で回避運動をランダムに展開できる。」

じゅえる「そこで紐か…。」
釈「やっぱり紐ですか。」
まゆ子「とことん紐だ。紐で結わえた2つの宇宙機は、推進剤無用でとんでもない旋回運動を繰り返す。これをレーダー探知無しで捉え、運動を予測するのはほぼ無理!」
釈「その紐って、何メートルですか?」
まゆ子「1キロより長いと良いな。」

じゅえる「しかし、所詮は円運動じゃないかなソレ。それに機体が2機無いと出来ないでしょ。」
まゆ子「3機で連結すると、さらに複雑怪奇な、ほとんど解析不可能な運動になるぞ。ついでに言えば、1機+おもり、でもいいのだ。」
釈「ただのおもり、ですか。」
まゆ子「無論そのおもりの中身は問わない。ただ重量が機体をふらふら複雑怪奇に動き回らせるだけの比率であれば、OKだ。だからそれがミサイルでも爆弾でも、あるいは帰還用推進剤でもロケットでも。」
じゅえる「そりゃそうだ。無駄なおもりをぶら下げて飛ぶのはバカだ。」

 

まゆ子「あるいは質量兵器でも。」
釈「質量、兵器、ってなんですか? 凄く厭な予感がするんですが。」

まゆ子「例えば、とげとげの付いた金属塊で、敵機にぶつけることで破壊を目論む。」
じゅえる「あーそれはーどこかでみたことがあるー。」
釈「でもーそれはーあまりにもなんといいますかー、オモチャ屋さんのご都合のー」

 

 

まゆ子「更に言うと! この紐を使えば「シャア3倍速問題」も解決できる!」

じゅえる「あー、」
釈「あー。」

まゆ子「シャアの赤ザクは通常のザクの3倍の速度で肉薄して敵艦を撃破する。故に付いたあだ名が「赤い彗星」。しかしこれまでに書いたとおりに、早く動けば停まるにもそれだけの推進剤が必要になる。3倍早けりゃ3倍の推進剤、停まるにも3倍掛かってしまう。これは無理!」
じゅえる「というか、宇宙船はスピード出すだけならどーでもなるんだよ。」
釈「まっすぐ進行方向に向かって進めばいいだけですから。ただ止まったり曲がったりすることを考えると、そこで茨の道に踏み込んでしまう。」

まゆ子「すでにモビルスーツはカッコイイ戦闘機動なんかできゃあしないと結論は出た。それを補う為に機体同士、あるいはカウンターマスに紐を繋いでくるくる回るべきと、示唆した。
 だがこれはただ単に回避運動をするだけに留まらない。

 あーつまりクルクル回る機体は2種類の速度を持っている。つまり進行速度と回転速度だ。どちらの速度を出すのにも推進剤が必要となるわけだが、幸いなことには回転速度を作り出すには推進剤をかならずしも必要とするわけではない。」
釈「モーターで振り回せばいい、という場合もありますね。エネルギー消費は有っても、推進剤消費は抑えられます。」

まゆ子「つまり、進行速度を出す分だけの推進剤が有ればいい。お得だな。
 さて、とうぜんのことながら回転を回避運動に効果的に用いるには、回転面が進行方向を向いている方がよい。敵に向かってまん丸と回っている時が一番大きく動き回れる。
 だが、あくまでもそれは理論的なもので、現場が拘束されなければならないものではない。斜めや縦回転でもいいし、そもそもが単純に回転するだけでなく、モビルスーツは適宜噴射して動いているから、綺麗に回るとは限らない。また不規則な運動は射撃を回避するのに極めて有効だ。」

じゅえる「ふむ。」
まゆ子「またこの紐を使った戦闘機動には、最終手段というものがある。敵に攻撃されて弾が当たりそうだー! という絶対絶命な危機の時。ベイルアウトするかのごとくに紐をさくっと切り離す。すると、拘束から解かれて機体は回転の接線方向に回転速度を持ってぴゅーんと飛ばされる事になる。推進剤も加速過程も無しにいきなり回避運動が出来るのだ。」
釈「つまり、いざという時に命拾いできるんですね。」

 

まゆ子「ここでシャアが利用すべきなのは、縦回転。つまり進行方向に向けて横に回転面が向いている状態。この時機体は、進行速度+(-)回転速度の動きを繰り返す。」
釈「ああ、なるほど。回転しているから敵に向かってより高速で近付く場面があるわけですか。」
まゆ子「ここで、おもりを切り捨てる。すると機体は進行速度+回転速度ですっ飛んでいく。これがシャア3倍速の秘密だ!」

じゅえる「でもその後回転運動が出来なければ、まっすぐ進行するしかなくて、イイ的じゃないかな。」
釈「いくら早くても、まっすぐだと困りますよ。」

まゆ子「うん。だが手は有る!

 回転運動のカウンターマス、もちろんかなりの重量が必要とされる。理想的には機体と同じ重量おそらくは僚機と繋ぐと綺麗な円運動が出来る。有為な戦闘機動をするには、せめて半分の重量。いや1/4の重量はなんとか確保したい。」
じゅえる「ふむ。」

まゆ子「だが緊急時は実は重量物は必要じゃないんだ。要するに遠心力が釣り合うものであればなんでもいい。それが大推力のロケットであっても、回転運動は可能なのだ。
 無論、そんな推力を長く発生させる事はできない。だが突撃する間の数秒だけであれば、大推力を発生させる固体ロケットでも十分役に立つ。」

じゅえる「数秒で大丈夫なのかい。」
まゆ子「ちょっとずれればいいだけだからね。だがここで、「固体ロケットで直接推進すればいいじゃないか」というバカな考えの人が出て来る。それではダメなんだよ。」
釈「直接推進だと加速過程でゆっくりとしか動かないんですよ。また止まる為にも噴射しなければいけません。紐固体ロケットであれば回転運動に変換されて、ーで、どうなります?」

まゆ子「いや、固体ロケット一個とは限らないじゃん。連続的に使ってもいいし、いきなり全部噴射でもいい。カウンターマスが非常に重ければ、機体は室伏のハンマー投げみたいにぶん回されてすっ飛んで行く。機体重量に倍する大推力数秒噴射できれば、シャアもすっ飛ぶわけだ。

 ともかく、テレビ画面で実現されるようなカッコイイ戦闘機動を実現できるきわめて少ない手法の一つ、なのだよ。」

 

釈「問題が一つあります。その紐回転、機体にはどれだけのG掛りますか?」
じゅえる「おお、そりゃそうだ。」

まゆ子「あー、紐の長さ2キロつまり半径1キロ、両方の重さは等量できれいな円運動で、えーと回転速度はどうしようか?」
じゅえる「1キロ/秒。」
まゆ子「ふむ。えーと機体に掛る加速度はー、102G」

じゅえる「は?」
釈「それはー、えーと6.8G限定で回転速度を出して下さい。」

まゆ子「えー半径1キロ、円運動、遠心力6.8Gでー、258メートル/秒。」
じゅえる「時速に直すとー、929キロ/時。」
釈「マッハ0.75。おー、これは早い。」

じゅえる「でもそのGのべつまくなしにパイロットに掛るでしょ。だいじょうぶかな?」
まゆ子「大丈夫だよ、ニュータイプだもん。」
じゅえる「いや無理だから、いくらなんでも。」

 

釈「こんなこともあろうかと、肉体のプロフェッショナルを用意しておきました。
   『ぢおん体育大学』!」

 

           *****************

じゅえる「でもやっぱり、紐切られたらダメなんじゃないかな、それ。」
まゆ子「そりゃ切られるでしょ、やっぱ。」
釈「まあ、戦場で使うわけですから、切れますよねやっぱ。」

まゆ子「そもそも切れるのを前提として紐システムを設計しておけば、どうということはない。要するに1本しか無いから切れた時困るんだ。」
じゅえる「ふむそりゃ当然。」
釈「2本なら、…て、しかし錘との間に2本繋げておくと同時に切られる可能性がありますよ。同じとこ通ってるんですから。」

じゅえる「そもそもがその紐って、めちゃ強力なんでしょ。そう簡単に切れるものかね。」
まゆ子「あー、紐の強度もさることながら重量が問題でね。50〜80dの物体が左右にくっついていて6.8Gいや10Gになることもあるだろう回転運動をするんだ。そりゃあ超強力な紐だし、でも細くないと機動に差し支えるし、ロケットに積むからには極めていや非常識なほど軽量な物体といえるでしょう。」
釈「不可能物体ですか。」
まゆ子「いや、軌道エレベーターつくろうって人の間じゃ、そのくらいなんともないだろ。カーボンナノチューブ製のロープなら要求性能をちゃんと満たすんじゃないかな。見たことないけど。」

じゅえる「まあとりあえず紐が有ると仮定して、切れるでしょ。」
まゆ子「どうだろう。いやむしろ、紐に切られる可能性が大きい。おそらくはこの紐はビームサーベル並にすぱっと切れる。」
釈「はあ。超強力な細い紐ですからモビルスーツの首にでも巻きつけば、すぱっと逝きますねやっぱ。」
じゅえる「じゃあ絶対切れない?」
まゆ子「そうは言ってもビーム砲やら熱エネルギーやらをぶつけられればいかんともしがたいな。」
じゅえる「そうそう。なんだかんだで切れるんだ。」

 

まゆ子「紐は極めて強靱で通常運動の際には切れることはほぼ無い。とはいえ、エネルギー兵器を用いる宇宙戦争においてはすっぱり簡単にちょん切れるのも道理。故に、紐は切れる前提で設計しなければならない。」
釈「しかし2本紐を渡すのは、リスク管理としてはまったく意味をなさないと思うんです。」
まゆ子「うん。」
じゅえる「おんなじとこ通ってるからね。」

まゆ子「問題無い。別の位置に3番目のアンカーを設置して、トライアングルを形成すればいい。これは軽量で良く、早い話が回転運動に影響を与えない程度のものだ。ただ予備の紐を遠くに離しておくだけのもの。絡まないように注意して、左右の質量間を渡す紐を軸として旋回させとけばいい。」
釈「3番目のおもりを予備に使う。極めて単純かつ論理的な工夫ですよ。」

じゅえる「その3番目に別のモビルスーツをぶら下げる、というのは出来ないの?」
まゆ子「OK。」
じゅえる「おお、出来るんだ。でもなにか問題無い?」
まゆ子「全部等質量の物体を三角形に吊るして回すと、極めて安定的に回転する。めでたい話だが、不規則な運動を必要とする機動戦闘においては、ちょっと動きが読まれ易いかな。」
釈「通常の宇宙構造物の逆の存在ですからね。」

まゆ子「あるいは3番目のおもりにモビルスーツではなく、ロケットを積んでいると良いかもしれない。そもそもが宇宙機動兵器であるからには、行って帰る推進剤が往復分必要になる。そんなもの機体に積むよりは、紐で吊るした別のポイントで使った方が楽。」

釈「つまり牽引用ロケットですね。モビルスーツ専用のみならず、ありとあらゆる用途に使えますよ。」
じゅえる「でもエンジンというか核融合炉積まないとダメだろ。それなりに金が掛るよ。」
まゆ子「いや、どうせ紐で繋がってるんだ。モビルスーツの動力を電線で流せばいいよ。というか、モビルスーツからレーザーでエネルギー供給して中華鍋ミラーでレーザーロケットにすれば、めちゃくちゃ廉価な使い捨てロケットになるぞ。」
釈「ほお。ペットボトルロケット並の安物でいいんですか。それはお得な。」

 

まゆ子「いや、ここんとこをシビアに考慮するとだね、推進剤は3回分要るんだ。行きと、戦場到着時の減速分と、帰還時加速用。最終的に収容する時の推進剤は母艦がなんとかするとして、3回だ。」
じゅえる「ふむ。3倍要るわけだ。」

まゆ子「NONNON! まず機体が家に帰る為の推進剤が必要。これをモビルスーツの重量と同等とします。つまり質量比2です。重量は2倍になります。
 次にこの機体と帰還用推進剤を戦場に減速停止させる為の推進剤が要ります。これもまた元の質量と同じ分必要とします。質量比2です。これで重量は4倍です。
 さらに、この機体と帰還用推進剤とそれを止める為の推進剤を戦場まで持って行く推進剤が、また同量要ります。質量比2です。重量は8倍になってしまいます。
 もし機体が自力で帰還して止まるまでもやっちゃうとすれば、更に同量の推進剤が必要で、総重量は16倍です。
 つまりミッションには機体重量の15倍の推進剤が必要となります。しかもこれは質量比2という最低限の数値で、です。」

釈「ね、燃費が、燃費が。」
まゆ子「うむ燃費をよくする努力を欠かしてはならない。最終的に帰還するまた停止収容されるシーケンスにおいて時間的余裕があれば、効率的な発電機を積んでいるモビルスーツであればイオンロケットを使って推進剤をめちゃケチってもらいたいところ。ただミッションは必ず成功するわけじゃなく、逃げ帰る局面も当然存在するからには、無理。」

じゅえる「なんとかならない?」
まゆ子「電気ロケットの効率をさらに上げるしかない。プラズマロケットを使おう。」
釈「でましたプラズマです!」

まゆ子「プラズマロケットは、名前ほどかっこいい代物ではない。電気ロケットであれば推進剤を電気的手段で気化加熱して噴射する。場合によってはこれでもちゃんとプラズマ化する。
 プラズマロケットはそのプラズマをさらにイオンロケットと同様に電磁的に加速して噴射する。あるいはそのプラズマを磁気的に封じ込めさらに加熱して放出する。
 性能としては比推力は電気ロケットの1000秒程度よりはずっと上、推力はイオンロケットよりは上。両者の中間の性能を持つのだな。
 モビルスーツ用として考えれば、推力を上げられるこちらを考えるべき。でも戦闘機動に必要な大推力は残念ながら無理っぽい。」

じゅえる「それは、なにか実用を妨げる技術的ハードルがあるの?」
まゆ子「いやー、基本的に現在の技術は、核融合炉なんていうバケモノ動力を使うようには出来てないから、そんな大電力扱ったこと無い。無いからわからん。」
釈「つまり、電気を喰う量が大きくなるんですね。」
まゆ子「うむ。であれば、冷却がかなりおおごとだな。電気ロケットであれば推進剤の蒸気に乗せて排出するところだが、それでは追っつかないかな。」

じゅえる「それはあれだ! ファーストの後の超ガンダム世代の機体には標準装備ってことにしておこう。今は無し、ね。」

まゆ子「てなわけで、機体+行き+戦域停止+帰りの推進剤を4箇所に分散して紐で繋いで、三角錐の形で回転しながら戦闘機動をすればどうだろう、とかも考えられる。機体は3本の紐で括られているから、少々切られたってだいじょうぶだぞ。」
じゅえる「うーむ、もう紐云々はどうでもよくなったよ。」
釈「まったくです。」
まゆ子「おいおい。」

 

じゅえる「でもさ、そこまでやるとさすがに念が入り過ぎて感じがするぞ。」

釈「あ、いやなことを思いつきましたよ。モビルスーツ同士の戦闘だと、紐絡みません?」
まゆ子「この場合、紐同士が衝突して反発するんじゃない? と問うべきでしょ。」
じゅえる「そんなものがぶつかると、でもどちらも張力目一杯掛かってるよね。ばいんと跳ねるんじゃないかな。」
まゆ子「そりゃあ盛大に跳ねるでしょう。でもその中で1本切れてぶら下がってると、絡んじゃうぞ。」

釈「絡むと、困りますよね。」
まゆ子「そりゃ当然。」
じゅえる「どうしよう。」
まゆ子「切ればいい。敵の紐を。」
じゅえる「でもどうやって。」

まゆ子「なんの為に切断兵器を後生大事にぶら下げてると思ってるんだ。ヒートホークをぶん投げろ。」
釈「あ。」
じゅえる「あ。ガンダムもサーベル持ってるし、ほとんどのモビルスーツはなんらかの切断兵器を装備してるよね。それって、そんな風にも使えるんだ。」
まゆ子「というか、それ以外にそんなもん使う局面が考えられないぞ。モビルスーツの斬り合いなんて、いくらなんでも臍が茶を沸かすよ。」

釈「それを言ってしまうと、あの、なんです。」
じゅえる「あーそーねー。」

 

              ********

じゅえる「そうだ! カタパルトだ! ガンダムはカタパルトで打ち出すんだ。なら初速は母艦から与えられているから、推進剤が節約出来る!」
釈「いや、ジオン側使ってませんが。」
まゆ子「ムサイには付いてないねえ。」

じゅえる「でも、カタパルトって意味無いの?」

まゆ子「計算してみましょう。えーと電磁カタパルトで、ホワイトベースの場合短くて50メートルほどですか。これがリニアモーターでぐいんと引っ張ってガンダムを打ち出します。当然正面にしか飛んで行けません。」
釈「つまり、緊急射出には使えないわけです。上から下から後ろから攻められた場合、困るのです。」
まゆ子「だがそういう場合でも紐さえあれば、ぐいんと方向を転換して射出できるぞ。ターザンみたいに母艦にくくりつけた紐で急旋回するんだ。」

じゅえる「紐ってべんりだねええ。」

まゆ子「えーとホワイトベースのカタパルトが加速長50メートル、加速度は人間の限界で6.8Gとする。この時の射出速度はー、81.6メートル/秒、時速293.8キロだ。」
釈「それって遅くないですか?」
まゆ子「大気圏内で飛行機が飛び出す分には、十分過ぎる速度だよ。」
釈「はあ、では最低限の仕事は出来る性能を持っているわけです。」

じゅえる「えー、わたしがいつも言うのはー、1キロ/秒。」
釈「ぜんぜん足りませんね。これなら自力で飛び出した方がマシです。」
じゅえる「がっくし。」

 

まゆ子「いや、実はいいとこ衝いてるんだ。機動兵器の初期速度は母艦が出すべきなのだ。

 何故ならば、母艦であれば小型の機動兵器が搭載しえない核融合推進が使えるからだ。核融合のエネルギーを直接に用いるロケットは推進剤の消費が極限まで少なく推力も十二分の、宇宙ロケットとしては理想的な性能を持っている。モビルスーツにも搭載したいところだが、残念ながら放射能垂れ流しだから、無理。」

釈「ヘリウム3を使うクリーンな核融合炉でも無理ですか。」
まゆ子「釈ちゃん、世の中綺麗言には必ず穴が有るもんだよ。クリーン核融合と言っても中性子が出ないだけで、高エネルギーのエックス線とかはどんどん出る。それに、ヘリウム3の核融合を実現するには3億度とかの物凄い高温が必要だが、それ以下の1億度程度から通常の水素の核融合が起ってしまう。完全クリーンな核融合なんて物理的に有り得ないのだ。」
じゅえる「そうそう。大人はきたないのだ。」

まゆ子「ともかくモビルスーツには核融合推進装置は搭載出来ない。これはガンダム世界の不文律だ。
 だが、大型艦船であれば問題ない。積極的に使って行こう。」

 

じゅえる「で、母艦から打ち出すのは無意味なんだ。」
まゆ子「打ち出すからダメなんだ。ぽろっと産み落とせばいい。」
じゅえる「へ?」

まゆ子「母艦を機動兵器が向かう方向にして、必要とする速度まで到達してから、母艦からリリースする。推進剤なんか使わなくてもすでにモビルスーツは所定の速度に達している。そこで母艦は反転減速すれば、発進終了。」

じゅえる「へ? そんなもんでいいの?」
釈「ということは、往きの分の加速用推進剤不要?」

まゆ子「この話には前提条件がある。モビルスーツ母艦が他の任務を持っておらず、モビルスーツ発進のみを純粋に行える状況に有る。これは結構難しい。
 なんとなればつまり、加速過程で船が進んでしまうからだよ。船だから無闇な加速ができないとして、3Gで6キロ/秒まで持って行くとする。と600キロ、減速終了停止まで1200キロも敵に近付いてしまう計算になる。
 ちなみに到達速度6キロ/秒というのは比推力1000秒質量比2、つまりモビルスーツが止まれる速度、ってことね。」

釈「なるほど。なるほど、ですが頑張れば条件をクリアできますね。」

じゅえる「ふむ。というか、別に大型母艦輸送艦戦艦でなく、モビルスーツ加速用舟艇があればいいんだ。」
まゆ子「うん。宇宙にこそ下駄がひつようなのだ。」

じゅえる「はは、その舟艇はもちろんモビルスーツ回収にも使えるよね。」
まゆ子「そりゃ当然。」
釈「つまり、戦域で減速する為と、戦域から離脱する為の推進剤だけを積めばいい、ということですか。」
まゆ子「2回分。機体重量の3倍で済むね。まあなんだかんだで、10倍以下で収めるようにするさ。というか、これまで行って帰るだけの話しかしてなくて、戦場に着いてからのミッション機動についてはなんの考慮もしてないからさ。」

じゅえる「なんだーおどかすなー。」
釈「まったくです。」

 

じゅえる「しかし、そうすると欲が出るな。戦域で停止する分の推進剤もなんとか出来ないだろうか。」
まゆ子「いや、そのモビルスーツ運搬艇で戦域まで行けばいいんだよ。」
まゆ子「うーむ、それはどうでしょう。さすがにそこまでやってしまうと、ガンダム世界からはかなり逸脱するのではないですか。」
じゅえる「その核融合推進器って、どのくらいの大きさになるんだろう。」

まゆ子「あー、おそらくは戦艦のメインエンジンであり、アレ以下の小ささには出来ないと考える。強力な磁場で噴射を受け止めるとか必要だから、結構大がかりなもんかな。」
釈「100メートルくらいの大きさになりませんか。」
まゆ子「なるんじゃないかな。ただー、このロケットの性質は私もよく分からん。小刻みな噴射ができるとは限らない。」
じゅえる「戦闘用に使うのは無理、ということだね。ふーむ、そうすると戦場近くに進出するのはあまり得策じゃないか。」
釈「欲をかくのは諦めた方がいいですかね。」

 

【ギャンはカッコイイ出来るロボットなのです】09/05/19

 

まゆ子「ギャンはカッコイイ出来るロボットなのです。」

釈「はい始まりましたマシナリイ。えーと今日はモビルスーツですか?」
まゆ子「ギャンはカッコイイロボットなのです。」

じゅえる「あー説明するまでもないけれど説明。ギャンは機動戦士ガンダムの第一シリーズに出て来たやられメカ。マ・クベなる人物の専用ロボットで、主人公メカにあっさりやられておしまいです。」
釈「過不足の無い説明ですね。」

まゆ子「ではまず、マ・クベ専用というところから潰して行こう。

 

 あー、誰が考えたってまともな軍隊で、パイロット上がりでもないただの高級士官の為に、それまでに類例の無い機動兵器をこしらえるなんて有り得ないのです。
 いかにガンダム世界が設計から製造まで1週間でやっちゃうんじゃないだろか、という超工業社会だとはいえ、無い。」

釈「ですから、今では次期主力戦闘ロボコンペティションに負けた、というか最初から出来レースの当て馬として作られたロボットということになってますね。」
じゅえる「そんなもん実戦に出すなよ、と思いますうん。」

まゆ子「あー、それはー早い話が尺が無いのが原因だね。ガンダムは途中でシリーズ打ち切りになったんだよ。」
釈「あんなに人気があるのにですか?」
じゅえる「いや、それがほんとだから面白い。とりあえずクローバーの辛抱が無かったのだ。だがそれゆえに傑作アニメと成り得たのかもしれない。」

まゆ子「私の予想では、シリーズが滞り無く1年間すっきり続いたとして、ギャンは見たまんま騎士型ロボットであるから、親衛隊としてラスボスを護る部隊に配属されたと思われる。それはジオン本国コロニー攻略戦、本土決戦の場で大活躍だよ。」

じゅえる「まあ、そのまま出さないのも不思議な話ではあるさね。そのシナリオだとすると、ゲルググは最終的な主力戦闘機、ギャンは最終防衛ラインを受け持つ迎撃機として活躍するんだな。」
釈「でもコロニー内部での戦闘となると、人死にすごいでしょう。それはもう駄目なんじゃないですか。」
まゆ子「まあそこんとこはなんだ。そうだね、それはもう駄目だろう。」
じゅえる「その直前のコロニー近傍の絶望的な戦いに、親衛隊ギャン部隊が自殺的特攻を繰り返す、というシーンが目に浮かびますよ。」
釈「神風ですか。」
まゆ子「うむ、神風ねえ。たしかにらしい最期だ。」

まゆ子「で、とりあえずそういうシナリオは断ち切られ、ギャンは一回こっきりのやられメカとして散華したわけだ。
 で、ガンダムファンからしても、あれは駄目ロボだったよお、という評価で決着している。
 その中でも一番の難点が、楯だ。」

じゅえる「爆発楯ね。中にミサイルやら浮遊機雷やらが入ってる。」
釈「そもそもがロボットが楯を持ってるのが変だろう、という気がしますが、そこはいいんですか?」
まゆ子「まあ、楯は役に立つ、という前提で話をしなければならないだろう。そこを潰しますか。

 

 あー、基本的に楯は要らないのが正しい。戦車が自前の装甲以外に楯ぶら下げているというのは、どう見ても泥縄。HEAT弾の脅威から仕方なしに外回りにぶら下げるのでありますが、無論そんなもん大した効果は無い。一発食らえば増加装甲は無効化する。まあその僅かな猶予が命拾いのタネではあるけどね。」

じゅえる「そもそも増加装甲は重くっちゃいけないでしょ。」
まゆ子「むろん、エンジンの馬力が許す重量でないと意味がない。増加装甲付けたら遅くなっちゃって敵に先手を取られたよ、では目も当てられない。」
釈「まあそれは戦車ですからそういう事も可能なのですが、飛行機なんかはもちろん無理です。」

まゆ子「モビルスーツも本来無理であるでしょう。基本的に航空機宇宙機であるからには、余分な重量はまったくもってけしからんのです。」
じゅえる「しかしガンダムは楯を持っている。ゲルググも持っている。Z以降のガンダムでもちゃんと標準装備になっている。作画が簡単になるという、極めて有益な機能があるらしいです。」
まゆこ「シド・ミード万歳。」

じゅえる「では、何故楯が有効なのか、具体的物理的な説明をしてちょうだい。」
まゆ子「簡単にいうと、装甲貫徹原理の問題だ。
 とりあえず、化学エネルギー弾・HEATであればスペースドアーマーにも擬せられる楯はちゃんと有効だ。現にイラクでは金網付きで直撃を避ける装甲車が大活躍。」
釈「ミサイルには有効、ってことですね。」
まゆ子「ひとをはかにしています。現代のミサイルだって、戦闘艦に当たれば半身不随の大被害。ミサイルの炸薬量をまるっきり無視したちゃちな爆発しかしない、との設定です。」

じゅえる「つまりモビルスーツが使うミサイルは、どんと派手に爆発するわけだ。」
まゆ子「どう見ても、対艦ミサイルくらいの大きさはあるからね。バズーカから撃ち出されるのは。」
釈「というか、バズーカ系のミサイルは文字どおり対艦用です。」

まゆ子「しかしまあ、これは許そう。戦闘艦の装甲よりも機動兵器の装甲の方が頑強だ、という設定はかなり許しがたいものではあるが、不可能ではない。現在の戦闘艦だってろくな装甲は付いてないし、部分的には戦車の方が良いものだったりするでしょう。まあデカい方が勝つのが普通だとは思うけど。」

じゅえる「その設定は悪くない効能があるよ。宇宙戦艦が落ちるようなミサイルの雨嵐の中でも生き残り肉薄する機動兵器は、たしかにかなり厄介だ。」
釈「でも戦闘艦に積んでいる武装の方が、やっぱり強力でしょう。」
まゆ子「そうでもない、と考えていい。数だね、決定的な差は。戦闘艦の方が容量が大きい分弾数が多い。ただ流石に主砲級の兵器の威力は比較するのも馬鹿馬鹿しい。エネルギー兵器であればなおさらだ。」

じゅえる「ガンダムのビームライフルは戦艦の主兵装と同等の威力を持つ、らしいけど。」
まゆ子「弾数の問題があるさ。戦闘艦であれば、それは5、6発同時に撃って来る。動力もデカいから、数も撃てる。」
じゅえる「当たり前だが、戦闘艦はつよいのだよ。」

 

まゆ子「話を戻そう。機動兵器であるモビルスーツの装甲が優秀だとしても、さすがにミサイルやら砲弾の直撃は有り難くない。最小のダメージで敵艦の致命的な近距離まで肉薄するとして、使い捨て装甲である楯に或る程度の効力があるとすれば、有って悪いものではない。」
じゅえる「重量がかさまなければね。」
まゆ子「そして、ガンダムやらが持っている楯はそんなに重くないものとされている。なして?」

釈「いえ、そこが聞きたいのです。」
まゆ子「装甲兵器というものは、何時の世でも丈夫というわけじゃあない。単なる鉄の塊が十分な防御力を持っていたのは近代以前。19世紀にもなれば特殊な処理を施した鋼鉄でなければ十分とは言い難い。武器弾薬の方もその度進歩して新型装甲を貫通して、次なる装甲の進歩を促すのだよ。」
じゅえる「で。」

まゆ子「そうは言っても、重量がどんどん増して行くようでは、装甲の進歩とは言えない。重量の軽減を図りつつも装甲強度を維持し、貫通手段を寄せつけない工夫が必要となる。」
釈「HEATのおはなしですね。」
まゆ子「まあ、それで説明すると楽なんだけど、ただの火薬も形を変えただけで分厚い金属壁を貫通するHEATは大した発明だ。だが既に最新式の戦車が有するセラミック装甲にはそれほど有効なものではなくなっている。APFSDS弾なんて矢みたいな弾丸もかなりが防げるようになっている。

 だが、だからと言って戦車は榴弾をいくら食らってもびくともしない、ってわけじゃあない。貫通しないはずの攻撃でも、戦車使用不能中の人全滅だったりすることもある。」
じゅえる「質より量、てのは何時どんな場合にでもあるってわけだ。」

まゆ子「さて、ではモビルスーツが戦闘中に遭遇する弾薬やら攻撃にはどんなものがあるだろう、て話だ。
 基本的に宇宙機である戦艦やら戦闘機、モビルスーツは重量を嫌う。装甲は強力でありつつも軽量でなけれなならない。デカけりゃ強いとはいっても限度があるわけだ。」
釈「不沈戦艦はありえない、なんですね。」

まゆ子「つまり、宇宙戦闘艦、宇宙戦闘機、モビルスーツ、どれもがどれを破壊するのに十分な威力を持つ兵器を装備する。当たれば何から発射されたのだって死ぬるのだ。
 ということは、超強力な兵器は必要ではない。超絶強力なビーム砲は、過剰な破壊力を持て余し不経済なだけだ。」

じゅえる「要塞やら地表やらを攻撃するには必要だろう。」
まゆ子「そんなデカ物では機動兵器は捉えられないよ、という設定にしよう。そうでなければ機動兵器そのものの存在が危うくなる。

 

 さて、というわけで、モビルスーツなり宇宙戦闘機はそれなりに威力はあるものの大袈裟ではない攻撃を受けるのだ。具体的にはどの程度の破壊力かと言えば、一撃でモビルスーツを貫通即死、というのが上限だな。ガンダムのビームライフルはそれほどの威力がありシャアも驚いていた。」

釈「十分強力だと思いますが、違います?」
まゆ子「だがその程度の破壊力であれば、バズーカ系のミサイルでも十分発揮できるのだ。」
釈「あ。」
じゅえる「そうだね。モビルスーツはなんであれ当たれば落ちる程度の脆弱さなんだ。」
まゆ子「ただ、ザクが装備するマシンガンの砲弾の威力はかなり謎。ガンダムは歯牙にも掛けないが、戦艦やらGMには十分効いている。しかも楯で防げるときたもんだ。」

じゅえる「へん、だね。」
釈「変ですね。」
まゆ子「これはかなり変なんだ。つまり、ザクマシンガンの弾は十分な装甲貫徹力を持っている。ただし、爆発力で問答無用に破壊するわけではない。というか、HEATにしては小さ過ぎる120ミリ砲弾はね。更に言えば、これは運動エネルギー弾ではない。発射器であるザクマシンガン自体は反動軽減の低初速らしいから、この砲弾は謎原理で装甲を貫徹する。」

じゅえる「正解は?」
まゆ子「ドリル! と言いたいところだが、まあ違うかな。正直言って不明なのだが、またここに別の装甲貫徹兵器がある。ヒートホークだ。ドムのヒートサーベルを入れてもいい。」
釈「熱、ですか。」
じゅえる「熱で装甲を溶断、か。そういう兵器はー、HEATって違うんだよね。」
まゆ子「HEATは熱で穴開けるんじゃなく、超高速のメタルジェットが一点集中する圧力で突破するものらしいよ。高熱ではあるのだが、熱で解かすのではなく熱が示すとおりの運動エネルギーが効いてるんだ。」

釈「では熱では装甲を貫通できない?」
まゆ子「摂氏2000度程度じゃとてもとても。3000、いや5000度は欲しい。」
じゅえる「燃焼では無理だ。」
まゆ子「プラズマだな。」
釈「プラズマですか。」
まゆ子「早い話が、電力だ。電気で超高温を出して装甲を蒸発させる、ってとこだろう。もちろん公式設定にはなあにも書いてないから、出典などは聞いて来るんじゃないよ。でもヒートホークは斧刃部分の素材が装甲ちょん切るほどの高温で発熱している! と考えるバァカはさすがに21世紀の今日では生き残ってないだろう。」

釈「電気貫通弾の長所はなんですか?」
まゆ子「当時の普通に使われている装甲板を問題なく貫通できる能力があり、実用に困らないという点。砲弾初速の運動エネルギーに依存せず低速で接触しても安定して装甲を貫通する。周辺被害を発生させる大爆発はせず、コロニー内使用でも無用な破壊を引き起こさない。連続発射をしても大丈夫な程に砲弾コストが低い。おそらくは必要な技術レベルも大したものではない。量産に向いている。
 ついでに言うと、ヒートホーク・ヒートサーベルのような馬鹿でっかいものも作れる。ガンダムにも或る程度ヒートホークが有効だったところを見て、ガンダムの新装甲は小型の電気貫通弾は問題無く防ぐけれど、連続的な加熱には耐えられない程度のものなんだろう。

じゅえる「あ、もちろんこれらは与太話として聞いて下さいね。」

 

まゆ子「だがプラズマを使っているのではないか、という状況証拠だってあるんだよ。
 えーと、つまりガンダムのビームサーベルだ。ミノフスキ粒子のビームがぼおぼお出ているわけで、高エネルギーを持った粒子が接触したものを溶断ではなく削り取ってしまうんだな。
 そんなものを通常の物質が防げる道理が無い。
 また、通常兵器の並の装甲だってそんなに弱いわけじゃない。21世紀の兵器でぼこぼこ撃ってみても屁でもないでしょう。HEATで撃ったって同じはず。なんせ何百年も先の未来なんだから。」

じゅえる「ま、古代人が石槍で現代戦車を突いてみるようなものだろうね。」
釈「つまり、現代兵器の発する程度の高温ではびくともしない装甲をざっくり削り取るビームサーベルです。」

まゆ子「ヒートホークは、まあ難しいんだが、限定的にビームサーベルを受け止めたり出来るんだ。そんな真似ができるものがただの高温に耐える物質、なんかであるはずがない。
 ミノフスキ粒子のビームの接触を防ぐなんらかの電磁的な防御力が、ヒートホークヒートサーベルには有る。絶対。」
じゅえる「そこんとこを考えると、やはりプラズマであろうよ、ってことになるんだね。」

まゆ子「さてガンダムだ。ガンダム本体はザクマシンガンの砲弾をかきんかきん跳ね返すだけの防御力を持っている。が、兵器そのものはどうだろう。
 ビームライフル、ハイパーバズーカ、ビームサーベルその他オプション、これら使い捨てとも思える武器も、ガンダム本体と同等の防御力を備えているだろうか? というか、画面でもそうでないことはちゃんと描かれている。ビームライフルはしばしばぶっ壊れてた。」
じゅえる「なるほどなるほど。本体を護る為でなく、脆弱な武器を護る為に、楯は有効だってわけだ。」
釈「しかもあまり大袈裟な攻撃を考えずに、ザクマシンガンの砲弾を防げればよい、という程度の防御力でいいわけです。」

まゆ子「というわけで、モビルスーツの楯はそれなりに有効なのだ。だが当然、それ以上の破壊力貫通力を有するビーム兵器が戦場に普及すれば、まったく意味をなさなくなる。」
じゅえる「泣く子とビームライフルには勝てない、ってわけだ。」

釈「ゲルググの楯はーGMのビームスプレーガンを防げるんですかねえ。というか、ビームスプレーガンって、どこがガンダムのビームライフルと違うんですか?」
まゆ子「謎だ。まあ基本的には、スプレー缶と同じような格好をしている鉄砲だよ、ってだけでしょう。

 が、文字どおりスプレーのようにビームを放出すると考える向きも少なくはない。またそれは無益でもない。なんとなれば、散弾銃のようにビームを振り撒けば、ミサイル等が雨あられと飛んで来ても、さっくり全部御陀仏さんにできるからだ。
 だから私は、ビームスプレーガンなる代物は、対モビルスーツ・艦船用に通常の真っ直ぐ飛ぶビームと、ミサイル等を掃討する拡散モードを持つ兵器ではないかと仮定する。」
釈「まあ、正解自体が無いですから。」

まゆ子「ゲルググの楯は拡散モードには効果が見込まれるだろうが、もちろんGMの方ではゲルググを視認すればビームモードで攻撃する。楯は気休め程度のもんでしょう。

 

 というわけで、ギャンの楯に話が逝くわけだ!」
釈「やああっと戻って来ましたよ!」

じゅえる「ちょっと待って。レーザーはガンダム世界には何故無いの?」
まゆ子「ありますよ。」
釈「シャアが腰にぶら下げていたじゃないですか。キシリアを最後に撃ち殺したバズーカは、レーザーバズーカですよ。」
じゅえる「そうなの?
 まいいや。でもなんでモビルスーツはレーザー兵器を使わないんだよ。」

まゆ子「ここんとこは昔から長いこと謎になってきました。だがー、ザクマシンガンの砲弾が電気貫通弾であってプラズマで装甲を蒸発させちゃうぞ、ってえことであれば、もちろん装甲板そのものは元々が超高温に耐えるモノ、レーザーで短時間照射された程度ではびくともしない耐レーザー装甲ではないだろうか。」

じゅえる「つまりレーザー兵器はこの時代既に陳腐化していた、ってわけだ。」
釈「十分な防御力を誇っていた連邦の既存兵器も、ザクマシンガンの新型砲弾によってざっくり穴穿たれていった、ってことですか。」
まゆ子「はやいはなしが技術の進歩の波に押し流されちゃった、ってところだろう。第一地球連邦なんて本質的に敵の居ない軍隊なんだから、兵器の更新なんかのんべんだらりとしてたんじゃないかな。」
じゅえる「ジオンが独立して、慌てて増員したってかんじかねえ。」

 

まゆ子「さて。楯がビーム兵器にはなんの役にも立たないものだ、てのは証明した。ビーム最強を疑う人は、ガンダムのファンにもそうは居ない。Iフィールドってのがあるよ、たってモビルスーツがそれ持ってないのは明白だ。」
じゅえる「まあ、楯役に立たないよね。」
釈「でもギャンは持ってるんです。」

まゆ子「ではギャンは非爆発性の楯を持つべきだろうか?爆発しない楯を持っていれば有利に戦闘を進められるだろうか。」
じゅえる「いやー、敵がビーム兵器を持っていないと仮定しても、楯は大して意味は無いでしょう。」
釈「なんたってギャンはビームライフル持っていませんから、近接戦闘する外ありません。楯なんか捨てちゃって二刀流の方がむしろ○ですよ。」

まゆ子「ではなぜギャンはビームライフルを持っていないのだ?」
じゅえる「そこんとこは後付け設定では、兵器メーカーが専用ビームライフルの開発に遅れをとった、ってことになっている。馬鹿みたいな設定だと思うけどさ。」
釈「ゲルググのビームライフル使えばいいだけの話ですからね。」
じゅえる「でも、エネルギー供給する部分の規格が別ならば、そこんところを手直しするのに手間が掛る、ってことはあるでしょう。選定試験の時には無かった、というシナリオは許容範囲内の出来のいい設定だと思うよ。」

まゆ子「私はそこんとこちょっと違う見方している。そもそもギャンにはビームライフルは用意されていなかったのではないか。」

じゅえる「ほお。」
釈「時代遅れの設計ではないでしょうか。ガンダムがビームライフルでがんがん成果を上げていた時期の設計ですよ、ギャンは。」

まゆ子「よくよくテレビを見てみると、ジオン系兵器群の技術的系統が見て取れる。ビーム兵装に関しては、ジオンはリニア系ビーム砲の開発はあまり熱心ではない。むしろ拡散ビーム系の技術を多用する。」
じゅえる「ゴッグのお腹ビームだね。」
釈「ズゴックの手ビームは拡散系ビームだったですかね?」
まゆ子「拡散系ではあるが直進能力を高めた、良いビーム兵器だ。基本的に一年戦争の時代のリニア系ビームライフルはちゃんとした線形加速器が必要で、ズゴックの手にはそんなスペースは無い。」

じゅえる「ふむ。」
釈「拡散ビーム系技術でも、十分に直進性のあるビームを発生できるわけです。当然ズゴックの後であればその技術を他のモビルスーツに応用できる。」
まゆ子「私は、ギャンに採用されるのはこの系統のビーム兵器であったのではないか、と考えている。」
じゅえる「ふむ。リニア系でなければならない必然性は無い、ってことか。」

まゆ子「というか、ビームスプレーガンだよ。さっき言ったけれど、直進性のあるビーム兵器の有効性は論を待たない。また拡散モードでのビーム使用も有効性は十分に期待できる。」
じゅえる「ほお。つまりギャンにはビームスプレーガンを装備させる計画だった、ってことかい。」
釈「なるほど。そういう考え方ですか。」
まゆ子「では運用を考えてみよう。ゲルググのリニア系ビームライフルは、あくまでも敵モビルスーツを直接に駆逐する為のものだ。これは論証する必要は無いね。

 ではギャンに拡散系ビームガンを装備させるとする。なんの為にビームを使うか。もちろん敵モビルスーツを直接撃破する事もできる。だが当然リニア系よりは接敵距離は短くなるだろう。そもそもが固定兵装であるビームサーベルが近接兵器であり、世間一般の解釈でもギャンは近接戦闘用と理解されている。中短距離を想定するビーム兵器の搭載は、特に理不尽な考えではないでしょう。」

じゅえる「まあ、ね。」
釈「ゲルググとペアを組んで闘うと、丁度いいかんじですねえ。まあ切羽詰まった状態であれば、機種を複数用意するのも無理かもしれませんが。」

 

まゆ子「ではギャンを中短距離迎撃防衛用モビルスーツと仮定する。戦況を素直に眺めてみれば、ギャン選定時は既にジオン敗色濃厚だ。ジオン本国への侵攻すら想定されうる状況にある。
 このような状況下で用いられる防衛用モビルスーツに期待される性能は、なんだ?

 敵モビルスーツを直接狩るのもいいだろう。しかし数的優位に立つ敵は、モビルスーツによる格闘戦銃撃戦よりは、ミサイル・ビーム等火力を大量に投入する戦術を用いるのではないだろうか。
 ゲルググは敵モビルスーツを効率的に駆逐できるとして、ではギャンは何をするべきか。後方の基地・艦船・コロニーを護る為には何を装備するべきか。
 まあビーム砲を防ぐ事はできないと思う。またIフィールドを艦船に装備することや、ビーム撹乱幕なるものが展開できるらしい。ビームへの対処はモビルスーツが考慮しなくていい。

 ではギャンが引き受けるべきなのは、ミサイルだ。大量の、圧倒的な数のミサイルが殺到する戦場が想定される。
 一応は核ミサイルの使用は条約によって禁止されるとはいえ、完全なる信頼はできない、というよりも、ジオン上層部の方がよほど信用ならない。というか、マ・クベ自身が核ミサイルぶっ放した。
 こちらが核ミサイルを使うのであれば、地球連邦が使わないはずがない。核ミサイルの使用はいつまででも留意すべきであり、対抗手段を用意しておくべきである。
 そこで有用に思われるのが、拡散系ビーム砲だ。」

釈「なるほど。核ミサイルは未だ死んでいなかったんですね。」
じゅえる「人間が口約束しているだけだからね。ふむ、であれば、GMが拡散モードを持つビーム砲を装備するってのは、むしろ合理的なんだ。なにせジオン軍の方が追い詰められているからねえ。窮鼠ネコを噛むで核ミサイルの再使用に踏み切る可能性は、ちっとも小さくない。それどころか、連邦が勝てば勝つほどその危険が増大して行った。」
釈「艦隊を護る為には、核ミサイル防衛の為の兵装を多数用意しておくに如くはない、ってことです。」

まゆ子「というわけで、ギャンは対ミサイル兵装である拡散ビーム砲を装備するはずだった。だがコンペティションには間に合わなかった。
 まあそれもむべなるかな。右手のビームサーベルで大量のエネルギーを消費する機体に、ビーム砲を更に搭載するのはおおごとだろう。ビームサーベルを諦めれば楽なのかもしれないけれど、それはまた別に考証する。

 ともかく、ゲルググ採用時にはギャン専用ビームライフルも、拡散ビーム砲も無かった。
 しかしギャンの用途は決まっている。対ミサイル防衛だ。その為に拡散ビーム砲が必要となる。が、無い。であれば、同じ機能を持った別の武器を携えるべきであろう。
 それが、爆弾楯だ。」

釈「イージスシステムですね。」
じゅえる「ミサイルにはミサイルか。まあ、そういう考え方もあるかな。」
まゆ子「というわけで、爆発物を大量に詰め込んだ楯を持っていても、ギャンはまったくおかしくない。というよりも、機体が直接被弾することなんか考えていないし、その頃には既に爆弾楯の中身は空だ。誘爆を心配する必要は無い。

 というか、もしも拡散ビーム砲が間に合っていたとして、それが左手に配置されるのであればやはり楯の形をしており、楯に武器が付いているよお、と笑われたこと必至。」
釈「はあ。」
じゅえる「まあ、笑うだろね。」

 

まゆ子「さて。そこで誰もが謎に思うのは、なんでそんなたいへんな目をして、強力なビームサーベルを装備しなければならないのか。」
釈「なぞですねえ。」
じゅえる「なぞだねえ。」

まゆ子「ビームサーベルはもちろん近接、いや超近接格闘兵器だ。或る意味、ビームライフルを持つモビルスーツはそんなバカな戦闘をするべきでない。戦車が殴り合いをしないように、モビルスーツも格闘戦なんか極力避けるべきだ。」
じゅえる「それを言ってしまうと、ガンダム世界が成り立たないよまゆちゃん。」
まゆ子「だがギャンは超強力な、いや必要以上に強力なビームサーベルを持っている。その強力さの異常は、ゲルググに装備されているビームナギナタの貧弱さを見てみれば分かる。
 敵モビルスーツの装甲を破って内部コンポーネントに致命的なダメージを与えるには、ビーム部分はさほど大きくなくてもいいんだ。先っぽからちょこっとビームが出ていれば上等。ガンダムだってビームランスを持っている。」

釈「それに比べてギャン様の極太男らしいサーベルは、さすがとしか言い様の無いものです。どんだけエネルギー消費が激しいんでしょう。」
じゅえる「これだけのエネルギー消費を賄えるのであれば、ビームライフルだってさくっと装備できるよ。無駄づかいもいいとこだ。」

まゆ子「しかし、ギャンの開発陣はそうは考えなかった。ギャンにはサーベルが絶対的に必要と考える。おそらくは、幻のジオン本国攻略戦では、極太長大ビームスピアを装備した超強力ギャンが護って居たでしょう。」
じゅえる「極太サーベル必須! 何故!?」
釈「近接戦闘、はぁ避けるべきなんですよね、GMは。」
じゅえる「機動兵器が殴り合い斬り合いをするのは、誰がどう考えても非常識であるよ。またGMのパイロットが格闘戦で強いはずもない。これまでモビルスーツ無しでぐいぐい押されていたのが、大量のGM投入で火力で圧勝という戦に転換した。斬り合いやってる道理が無い。」

まゆ子「変でしょ。」
じゅえる「変だ。」
釈「変です。」

まゆ子「極太ビームサーベルには、格闘戦以外の役割が有る。と考えてよいのではないだろうか、ここまで来ると。」

じゅえる「ほお。」
釈「その役割とは。」
まゆ子「Iフィールドの装備、を考えた。だが当然モビルスーツ程度のジェネレータ出力では、無理だった。」
じゅえる「ふむ。」
釈「膨大なエネルギーが必要でしょうねえ。ビグザムか、それ並の戦艦のエンジンでないと賄えないでしょう。」

まゆ子「モビルスーツ単体がIフィールドを装備することは不可能。これはよいとして、だがそうするとビームライフルで狙われると絶対に勝てない、という結論を得る。」
釈「当然といえば当然の結論です。アウトレンジ最強です。」
じゅえる「ゲルググの採用に走るのも当然だね。」

まゆ子「ギャン開発者は考えた。ビームサーベルで、ビーム弾いたらいいんじゃね?」

じゅえる「…、できるの?」
まゆ子「できないの?」
釈「ガンダムなら出来るかもしれません。でも、」
まゆ子「ギャンのサーベルは極太だよ。出力めちゃ凄いよ。」
じゅえる「う、うん、それは確かにそうだ。」
釈「うまくやれば、弾けるかもしれません。」

まゆ子「これは、楯だ。」

じゅえる「うまく弾ければ、確かに楯と呼べるでしょうか。ビームシールドだね。」
釈「つまり、棒状のビームシールドとしてギャンに装備されたのです、か。」
まゆ子「そう考えると、なかなかに辻褄が合う。」
じゅえる「つじつま、ね。」

まゆ子「実のところ、ビームサーベルでビーム砲の攻撃を防ぐのは、大して難しくはないんだ。

 まあ考えてみてください。アウトレンジで敵モビルスーツを破壊するとなれば、距離はかなり離れている。10キロ以上は確定だ。それ以下の距離ならば、ギャンの拡散ビーム砲でもちゃんと届く。ドッグファイトになってしまう。」
じゅえる「うん。ビームライフルの特性を活かす長距離からの狙撃は、安心確実だね。」

まゆ子「宇宙で10キロというと至近距離だから光学観測でも実に良く見えるはずだが、ガンダム世界ではどうもそうもいかないらしい。光学観測は結構難しく、長距離狙撃は案外と当たらない。つまりロービジになってるんだな。」
釈「ミノフスキ粒子による混乱で、レーダーと連動できないから照準が難しいのかもしれません。」
じゅえる「そこんとこは、作劇上の嘘と言ってもいいよ。」
まゆ子「まあ、火花がぱちぱち飛び回る戦場では、目が疲れるのかも。で、アウトレンジと呼ばれる距離にあっては、モビルスーツ程度の大きさの物体はなかなかに視認し難いものとされている。」
釈「特に問題はありませんか。」

まゆ子「そこにギャン様の極太男らしいビームサーベルがそそり立つんだ。いかにミノフスキ粒子でセンサが使えないとしても、闇夜に松明。ここにギャン様がござっしゃるぞと、誰の目にも明らかだ。」
じゅえる「男らしいね、惚れちゃうね。」
釈「ビーム兵器は全部そうだと思いますよ。ビームライフルも含めて。」

まゆ子「逆に言うと、アウトレンジから観測する敵は、ビームサーベル以外のものは見えなくなる。なんたってあの極太、あのビーム量、あの発熱、デンパも光も紫外線赤外線その他諸々放出しまくりだ。目が眩む。」
じゅえる「ま、闇夜に松明だ。あんなデカいもの焚かれては、持ち手は見えなくなるさね。」
釈「素晴らしい的です。」

まゆ子「だが、敵がビームライフルで狙撃するとして、その標的はビームサーベル自体となる。一番目立つんだからしょうがない。」
じゅえる「多少左右に外して撃つわけにはいかないの?」
まゆ子「互いに運動しているのに? 私なら、二発撃つ。その方が確実だ。」
釈「はあ、それはセオリーですね。」

まゆ子「だがそれはつまり、ビームサーベルに向かってビームが飛んで来るに外ならない。ビームサーベルで弾き返すのになんの支障があろうか。」

じゅえる「それはまあ、そうだ。」
釈「動かさなくても、ちゃんと当たります、ねえ。それならば。」
まゆ子「ここでゲルググなりザクなりがフォローに付いていれば、ライフル撃って来る奴を即座に攻撃するでしょう。囮としてもギャンは大人気なのです。」
じゅえる「いやまあ、なんだ。そもそもがゲルググはビームライフルに対抗する装甲も手段も無いからねえ。」
釈「撃たれればアウトなのはガンダムもかわりませんよ。」

まゆ子「ビームライフル時代におけるモビルスーツの脆弱性。これは後々のシリーズでもずいぶんと問題になるわけです。様々な対ビーム防御手段が試みられるわけですが、その嚆矢としてギャンが有る、と考える次第であります。」

 

釈「とにもかくにも、ギャンには極太ビームサーベルが確かに装備されていて、ガンダムよりも強力ですらある。これは画面に描かれた確定した情報なのです。
 ビームライフルの攻撃であっても、…いやしかし、それはやっぱりやばいですよ。タイミング間違えると駄目じゃないですか。」

まゆ子「するってえと、釈ちゃん。あなたは、どこの馬の骨ともしれぬパイロットが乗ってるGMの射撃より、にゅーたいぷアムロさま操縦の線形特性上々のビームライフル装備ガンダムの攻撃の方が、ぬるいとおっしゃる。」
釈「え? ええええええ。」

まゆ子「モビルスーツ操縦に関してはずぶの素人であるところのマ・クベ大佐で、あれほどのパフォーマンスを見せたギャンの操縦支援機能を、こばかにするのでございましょうか。」
じゅえる「あれ、やっぱり機体性能なんだ。」
まゆ子「どうもそういう事になってるらしい。ガンダムには教育コンピュータってのが搭載されていてアムロ初期の活躍を支援したわけだけど、それと同等のものをギャンに登載した、という怪しげな設定がどこからともなく湧いて出たんだとさ。」

釈「ふーん、なるほど。それじゃあギャンが量産されるとそれが搭載されていて、誰が乗っても格闘戦の覇者となる。」
まゆ子「むろん、ビーム攻撃を斬り払うことさえ楽勝だ。」
釈「いや、それはやはり例外的な機能でしょう。」
まゆ子「でもかっこいいじゃん。ポルナレフみたいに剣をぐりぐりと回して、ビームを斬り払うって。」
じゅえる「ポルナレフはガンダム放送の後でしょうが!」

 

まゆ子「ちなみに、マ・クベ大佐が何故に最終決戦を自ら搭乗のモビルスーツ戦に定めたか、これはまるっきりの謎です。」
じゅえる「謎だねえ。将官じゃあないか大佐か、でも将官級だよねえ、がそこらへんの少尉みたいな真似をしちゃあだめだよ。」
釈「だだっ子ですねえ。」

まゆ子「ギャンはマ・クベ大佐専用、というよりも大佐の為に作られたモビルスーツ、とされている。この解釈はかなり難しく、諸々の設定群の中でもうまいこと解決できていない。」
じゅえる「普通に考えるとあり得ないからね。」

まゆ子「だがギャンに操縦支援機能、学習コンピュータを積んでいるとの怪しげな設定を肯定すれば、それもうまく説明出来るのではないだろうか。」
釈「はあ。ではマ・クベ大佐が十分に使えるように徹底的にカスタマイズされた学習コンピュータ搭載であった、と。なるほど、機体ハードウエアをカスタマイズするよりは、マシではあります。」
じゅえる「でもなんでマ・クベ専用なんだ? マ・クベ専用に調整すればいい事があるのかい?」

まゆ子「ここで選択肢は二つ。

 マ・クベがだだっ子で職権を横暴に使って貴重な機動兵器を横領し技術者までもこき使って、戦闘員操縦員としては員数外のど素人の自分がカッコツケするために、ギャンを調整させた。」
釈「ありえません。」
じゅえる「そりゃあー。でも昔はそのラインの設定を皆信じていたんだね。はは、これは改めて書いてみると、馬鹿だなあ。」

まゆ子「第二の選択肢。マ・クベ大佐をモデルにギャンの操縦支援機能をカスタマイズすれば、以後極めて有益であると看做された。マ・クベ大佐はモビルスーツ操縦においてもパーフェクトなスーパーパイロットであった。」
じゅえる「それも無い。」
釈「そもそもが、モビルスーツによる実戦経験が一年戦争前は誰も無かったでしょう。その設定はあり得ません。」

 

まゆ子「第二選択肢B号。マ・クベ大佐をモデルにギャンの操縦支援機能をカスタマイズすれば、以後極めて有益であると看做された。マ・クベ大佐はモビルスーツによる戦闘こそ未経験だが、生身の格闘者としては筋金入りのチャンピオン。剣をとってはジオン一の猛者剣豪であった。」

じゅえる「む!」
釈「むむ。それはー、なかなかに見所のある、かなり魅力的な設定であります。」
じゅえる「だが彼はインテリだ。武よりも文に秀でたタイプと設定されているけれど、」

まゆ子「インテリというものは、案外と武術に興味を示すものだよ。特にややこしい理論的な展開を持つ武術武道には興味を惹かれる。大学に入ってから武術に目覚めたって人はかなり多いのだよ。」
じゅえる「それは、たしかにそういうところは有る。」
釈「しかし、そうするとマ・クベ大佐はフェンシングの達人てわけですよね。うーん、競技フェンシングの経験がモビルスーツの格闘戦に役に立つのでしょうか。」

まゆ子「イギリスかどっかの大学には、今も決闘部というのがあるらしい。びょんびょんハネる剣でなく、ほんものの固い剣を用いて、鋼鉄の面帽被って、がしんがしん斬り合うのだ。
 しかも一歩も退いてはならない。足を動かしてはいけない。逃げちゃ駄目。互いに剣が間違いなくヒットする間合いで、がしんがしん斬り合うのだよ。当然ケガもする。顔面に切り傷がぱっくりと開く。」

釈「ひ〜。」
じゅえる「マ・クベ大佐は、学生時代地球に降りて大学でその部に入り、百戦無敗、とか?」
まゆ子「そういう人間をモデルとすれば、それは素晴らしい格闘専用モビルスーツが出来るでしょう。

 

 もう一度言います。ギャンはカッコイイ出来るロボットなのです。」

 

【ぢおん体育大学】09/04/23

まゆ子「というわけで、ぢおん体育大学であります。」

釈「なんですかそれ。」
まゆ子「安永航一郎センセイがお描きになられた、ガンダムの同人マンガです。
 ジオン公国国立のぢおん体育大学に集められたエリート学生が、じゃあくな連邦と戦うというおはなしです。」
釈「はあ。そうですか。」
じゅえる「ほら、分かってない。」

まゆ子「簡単に言うと、生身の学生が宇宙服も無しに大気圏突入をするのです。」

釈「アハハ、できるわけないじゃないですか。」
まゆ子「出来る!」
釈「えっ!」
じゅえる「ちょっとまて、そんな無茶な。」

まゆ子「ちちち、ちみ達は情報が遅いねえ。スペースシャトルから紙飛行機を飛ばす実験て知らないのかい?」

じゅえる「アレ、しっぱいだろ。」
釈「どうなったんですかアレ。発射が出来なかったとかでしたかねえ。」

まゆ子「そんな事はどうでもいい。問題は、ちょいとライターの火で焙れば燃えちゃう紙飛行機が、大気圏突入出来ちゃうってとこだ。華氏451度ですよ。」
じゅえる「あれは紙になんか特殊な薬液をしみ込ませているんだったっけ?」
釈「どちらにしろ、燃えないほどのものじゃありません。そうか、紙でも大気圏突入できるてのならば、人間が突入しても…無茶言うちゃいけません。」

まゆ子「つまり、大気圏上層部で浅い角度でぴょんぴょん跳ねながら、徐々に何時間も掛けて減速すれば、別に超高温のプラズマに包まれて蒸発とかしなくても、安全に降下出来るのだ。生身の人間が赤裸で突入してなんの不思議があろうか。」
じゅえる「さすがに裸で突入は無理だよ。まあ宇宙服で突入は不可能ではないてくらいかなあ。」

まゆ子「とまあそういうわけで、ぢおん体育大学は現実的な課題なのだ。というお話を書く。」

釈「あ、新企画のお話ですね。」
じゅえる「とはいえ、ぢおん体育大学はあれはー、むさいおとこがわきげむなげすねげむきだしのきんにくでうりうりとやるばかばなしだから、これをどうしようというのだ。」

 

まゆ子「まず主人公は女の子! 体育会系。」
釈「ふむ。」
じゅえる「宇宙で体育大学で女の子、となると、大運動会だな。」

まゆ子「そいう前例はほったらかしで上等です。ともかく生身で大気圏突入すればいいのです!」

釈「なるほど。ようするにこれは一発芸ネタなんですよじゅえる先輩。使い捨てギャグ小説です。」
じゅえる「そいうことであれば問題ない。なるほど、そりゃおもしろい。」

まゆ子「というわけで、宇宙に筋肉バカを集めて、ほとんど生身で大気圏突入をさせる、これだけを描けばよいのです。これ以外書く必要は無いのです。」
じゅえる「うむ潔い態度だ。」
釈「なるほど、そこで紙飛行機話ですね。でもー、ただ単に落ちるだけで一発芸ネタが成り立ちますか。」
まゆ子「うむ。成り立たないな。そこでマジになる。」

じゅえる「ほら出たよ。まゆちゃんの病気だ。」

まゆ子「よくよく考えると、なぜに筋肉バカを大気圏突入させねばならないのか? これが大問題だ。そもそも何故にそんなことをしなければならないのか? 謎でしょ。」
釈「謎ですねえ。」
まゆ子「エリートです! この筋肉バカは全員超エリートのニュータイプなのです。ニュータイプが宇宙で訓練するのは当たり前、ニュータイプが大気圏突入するのは至極当然。」
じゅえる「いや、生身で突入はさすがにニュータイプやらないから。」

まゆ子「さて、では何故に生身で大気圏突入しなければならないのか? 単純に考えると、できるからやる、それだけだな。訓練課程に可能な技術があるから採用してみました、それだけです。」
釈「そんないい加減なものでいいんですか・」
まゆ子「いいんだよそれで。いや敢えて教育的効果を与えるとすれば、度胸試しだ。」
じゅえる「やっぱりバカじゃないか。」

まゆ子「まあそこんところは文学的魔術の冴えを期待するとして、ともかくニュータイプが世界中にうろちょろしていて、その中でもエリートを選りすぐって大気圏突入させるのだ。」
じゅえる「だからそこが分からない。それは何の為なんだ。」

まゆ子「あー、…そうね、00ガンダムみたいにいずれ宇宙人が攻めて来る、とか?」
釈「はあ。やはり戦争をしなければならないんだ。」

まゆ子「あーではこうしましょう。世界は2通りの人間によって支配されている。圧倒的多数のオールドタイプと、大気圏突入をするニュータイプだ。
 で、ニュータイプが恒常的に発見されるようになり、集めて専門の訓練をするようになった世界、これが舞台ね。でニュータイプは毎日のように生身で大気圏突入を訓練しているのだ。

 で、なんだかんだと学園モノっぽい展開があった後、宇宙人が攻めて来る。
 宇宙人はガンダムにのって攻めて来る。これに対してオールドタイプは宇宙軌道兵器で対抗するものの、どうしようもなく敗退する。
 そこでニュータイプの学生たちが、ほとんど裸同然の装備で爆弾抱えて敵宇宙人の母艦やガンダムに特攻して、みごと勝利。日頃大気圏突入で鍛えた身体は、特攻の際にもなんなく生還を果たすのでした。」

 

じゅえる「…いっぱつげい、ね。」
釈「まあ、いっぱつげいですか。」
まゆ子「これ以上の展開は必要無いでしょう。一巻の終りですよ。」
じゅえる「まあ、一巻くらいは書けるでしょうこんなもんでも。」

 

まゆ子「というわけで、ニュータイプだ。まあ宇宙モノであるからには、まずはハードウエアから考えよう。

 まず大気圏突入宇宙服。A,B,Cと三つ有る。
 一年生はちょっと安全な丸っこいスペーススーツというかミニモビルスーツみたいなもの。これでも安全に大気圏突入が出来る。
 二年生は本格的な大気圏突入宇宙服で、それだけでなくサバイバルゲームのような空中戦が出来る。この場合戦闘自体は宇宙空間で行われるのではなく、大気圏突入時の稀薄な大気中で落下中にレーザー光線でサバイバルゲームを行うような、そんな特殊宇宙服。
 三年生は一年生の面倒を見る為に、単純な人型の宇宙服。エンジンが付いておらず、只大気圏突入時に姿勢制御するだけのフィンが付いている。そんな裸同然の宇宙服なのだ。」

じゅえる「大きさは?」
まゆ子「二年生三年生は、ほとんど人間大。一年生はー、そうね一つの宇宙服に人間二人乗れるくらいでいいか。結構大きいのだ。」

釈「動力はなんですか?モビルスーツみたいに自由に動けるんですよね。前の二つは。」
まゆ子「原子力。小型のマジックポット、アトムズハートってのが付いていて、イオンロケットで推進しプラズマフィンで姿勢制御する。ついでに言うと、プラズマディスラプターってので大気圏突入時の空気抵抗排除を行う。というか、大気をクッションにして安全に降りて来るのだね。
 三年生はそいうのは無くて、単に電池が付いているだけ。というか、一年生のロボットを蹴飛ばして飛び回るくらいの体力筋力が有るのだ。」

釈「まずは、それで学園モノをするわけです。で、オールドタイプの軌道兵器というのは。」
まゆ子「敵がガンダムであればー、手足の無い合理主義的なかっこいい奴、であるべきだろうねえ。軍のエリートパイロットが操縦して無敵と思われて居たんだけど、なぜかガンダムに敗北するのだ。」

 

じゅえる「で、敵宇宙人のガンダムだ。どうしようか。」
まゆ子「おもいっきりカッコイイのがいいかなあ。」

釈「最終的に、どうすれば勝ったことになりますか?」
まゆ子「ニュータイプの学生さん達が特攻して大勝利、となれば。まずは宇宙人を完全に捕虜にしちゃうべきだろう。敵宇宙船を乗っ取り、敵ガンダムを鹵獲する。」
じゅえる「うむ、極力無血占領勝利が望ましいね。」

釈「では、ガンダムを乗っ取るとニュータイプも操縦出来る、と。」
まゆ子「そこまでは期待しない。というか、乗っ取ったはいいが操縦できなかった。このくらいがいいでしょう。オールドタイプに鹵獲ガンダムを渡して、学生さん達はまた赤裸で特攻だ。その内に敵の大将を捕獲して、オールドタイプがガンダムの操縦方法を解明して、敵味方の戦力バランスが崩壊。地球人大勝利!というシナリオ。」

じゅえる「うむ素晴らしく平和的だな。」
釈「それならば、地球人から見てカッコイイのにしましょう。」

まゆ子「とあればあー、宇宙人ガンダムのパイロットは人間?なのか。そりゃちと困るかな?」

じゅえる「そもそもが宇宙人がどんな形か、それを決めないと駄目だろう。」
釈「ばぐあいどもんすたーですかね。」
まゆ子「うーん、地球人が見てかっこいいロボットを作るとなれば、人間とほとんど同じメンタリティの持ち主だわさねえ。どうしようか。」
じゅえる「いっそのこと、人間のボディを乗っ取って脳味噌を食い荒らしたナメクジ星人、とかでいいじゃないか。」
釈「それはグロいし、人質作戦効かないでしょう。だめですよ。」

まゆ子「なんだか良くわからない機械生命体、ってとこでいいか。人間型ではあるが顔が無くて目鼻に歯車貼り付いている、とかの。」
じゅえる「この場合どーでもいいんだけどね。」
釈「人間味がまるっきり無い方が、この際いいかもしれないですね。人型サボテンに歯車目鼻、でいいですか。

 で、ガンダムを鹵獲して人類大勝利。で終りですか?その後内乱とかは?」
じゅえる「新たなる力ガンダムを手にした人類は、そのまま内戦を始めて、それも機械生命体の計画通りだった、でいいんじゃないかな。」
まゆ子「ふむ。この話はここでお終いだから、そんなもんでいいか。」
釈「ハッピーエンドに見せ掛けた、実はバッドエンディングだったわけです。まあ一発芸であれば、そんなものでいいですかねえ。」

 

まゆ子「…よし、いま考えた。敵ガンダムは、ガンダムではなくノーベルガンダムのようなものと決まった!」
じゅえる「美少女型ガンダムかい。」
まゆ子「うむ。それだけでなく、スカートと髪の毛がふわりと拡がるのだ。というか、スカートと髪の毛はプラズマがぶああと拡がって、敵のビーム攻撃を防ぐシールドになるのだ。で、その姿はまるで魔女のようなのだ。」

釈「かっこいいのですか、それ。」
まゆ子「てきとーに落書きしてみたら、かっこよかった。というか可愛い感じ。エンジェランみたいな。」
じゅえる「エンジェランとかフェイィエンであれば、ガンダムの代わりが十分に成り立つか。OK。」

釈「じゃあそういうサイバーっぽいロボットってことで。」

 

*********************************

釈「そういえば、ニュータイプってそもそもがどこらへんがオールドタイプと違うんですか?」

まゆ子「この一発芸設定であれば、脳内言語だ。」
釈「言語?」

まゆ子「普通の人はものを考える時に音声言語を用いる。当然だな、他に言語なるものは無い。」
じゅえる「そりゃそうだ。」

まゆ子「ところが、ものを考えるのに別に言語は無くても構わない。実際人間だってなにからなにまで全部理詰めで説明のつく思考なんざやってない。ふと気付くと考えがまとまっているし、考えるまでもなく身体が動いて正解を行っている事もある。」

釈「そうですねえ。言語レベルの思考というのは、或る意味きわめて限定的な思考ですねえ。」
まゆ子「ではあるが、言語による思考でないと到達できない境地というのもある。概念を効率的に取り扱うのに言語は極めて有効かつ他に置き換えの出来ないものだ。」
じゅえる「そうだろうねえ。難しい語彙の発明が、哲学の発展と直接に繋がっているんだよ。」
釈「そういう意味では、言語こそが人類文明の要ですねえ。科学技術の進展だって、言語による知識の共有化が無いとあり得ません。」

まゆ子「便利ではあるが、音声言語によって思考の幅が制限されるのも確か。功罪相半ばする存在だ。で、この一発芸設定でのニュータイプはこの音声概念言語を使わない人間なのだ。」

じゅえる「お。」
釈「それは普通の人以下ではないでしょうか? 知的レベル的に。」

まゆ子「そうでもない。つまりこのニュータイプは、音声言語以外に空間映像言語を用いるタイプの人間なのだ。物事を映像として取り扱い操作変形し、思考を組み立てる能力の持ち主。とはいえ、そういう能力は人間であれば誰でもがちゃんと持っている。ただ音声言語を用いた方が日常生活に便利だから能力は埋没していっただけで、実はちゃんと利用もされている。」

じゅえる「まあ、さっき言った考えるまでもなく思考が完成しているって奴だな。」
釈「それだけを切り離して訓練することができる、のは分かりますが、それはメリットになるんですか?」

まゆ子「まず空間認識能力が劇的に拡大する。複雑怪奇な概念認識図やら構造図がすっきりさっぱりかるーく理解できる。一度見たものはそのままそっくり画像として想起できるし、映像によって理解される概念イメージを脳内物理的変換作業によって加工し、別の概念を組み立てる事も出来る。

 もうちょっと簡単に言えば、つまりビジュアル思考の人間になり、しかもスポーツ万能となるわけだ。特に体操系。」
じゅえる「ふうむ、スポーツ的にはメリット大、というのは至極単純に納得できるね。」
釈「芸術的な方面にも利用可能かもしれません。」

まゆ子「というわけで、こいつらはぢおん体育大学に行くのだ。ちなみに筋肉バカではないぞ、ないのだが、音声言語の能力の代りにこれを訓練されるのだから、かなりの口下手になる。ちとアホっぽい。」
じゅえる「うむ納得した。まさしくぢおん体育大学だ。」

釈「どちらが優秀、ではなく、違う能力なんですね。で、その能力はどのくらいの人間が持つんですか。」
まゆ子「人類全部が持つんだけどさ、特にそれに適しているのは1/10くらい。だがこのような利用の仕方をされるとすれば、身体的能力が追随する者でないと有効に活用できないと考えてその他要因までもが完備した能力者は1/10/100で1/1000人て事にしよう。

 しかし、世の中には空間映像言語と音声概念言語の両方を自在に使いこなす天才も居る。1/1000/1000で1/1000000人、100万人に一人、って感じでどうだろう。」

じゅえる「そいつは凄いのかい?」
まゆ子「まさしく天才。というか、空間言語能力者が成し遂げる成果を、音声言語能力者主体の世間に説得力を持ってアピール出来る人間だ。つまりは、成果を成果として人に認めさせる事が出来る、まさに空間言語能力者のリーダー。かつ、音声概念言語界においても卓越した能力を示し双方の成果を融合できるのだ。」

釈「ううむ、それは凄い。」
じゅえる「まさにニュータイプと呼ぶにふさわしい人材だな。」

釈「主人公の女の子は、それですか。」
まゆ子「いや、これは生徒会長にでもしようかと考えてる。主人公はのほほんとしたちょっとトロい感じの女の子。」
じゅえる「ふむ、可愛いんだな。」

まゆ子「まあ、体育大学にあんまり居ないタイプの子だね。ただ、そいうのの方が大気圏無理やり突入とかのシーンで面白い。」

 

じゅえる「あ、そうだ。ニュータイプであるから、敵宇宙人とのコミュニケーションがスムーズに出来る、とかでいいんじゃないかな。」
釈「でも、宇宙人の言葉なんか分かりませんよ。」

まゆ子「いや! それはいいんだ。こいつら音声言語では口下手だから、身振り手振りでの会話が至極得意なんだよ。それどころか、相手の様子を眼で見るだけで、何を考えているか解読したりする。言葉が無くても理解が出来るんだ。」
釈「おー、まさしくニュータイプです。」

まゆ子「というわけで、こういう学園ラブものに発展したりする。
 男の子と女の子が、告白のシーンだったりする。だが互いに口下手で何を言うのか分からない。分からないが、互いが思っている事は互いの素振りを見れば一目瞭然に分かる。分かるんだけど、やはり口に出して言わなければ言ったことにはならない、ってことで、互いにもじもじもじもじし続ける。」
釈「ううーむ、実に素敵な能力。ラブですね。」

 

【島津大脱出】09/02/23

まゆ子「てなわけで、小説書きは順調に行っているのであります。」

じゅえる「げばると処女はEP6がもうすぐ終了。EP7が一応の最終巻で、次は「げばると処女U」という一応の別シリーズになる寸法だね。」
釈「サルボモーターは1巻がもうすぐ完了です。既にリーチ状態ですから。」
まゆ子「ゲキロボ☆は基本1巻終了、というか1巻でぜんぶ!突っ込む計画だから、まあほっといてもいい。」
じゅえる「あれはー、いつの間にか出来上がってる部類の小説だな。」

まゆ子「てなわけで、次を考えてみたいと思います。」
じゅえる「まあ続巻はあるんだけどさ。でもなにか新しい企画を立てるのかい。」
釈「またですか。」

まゆ子「とりあえず、げばると処女は習作として企画された。女ばっかり出て来るウエンディズを矯正して、男が十分な数出演する、しかも恋愛沙汰に持っていける技量を身につけるのが目的。」
釈「まあなんといいますか、恋愛沙汰は未だ十分とは言えませんが、」
じゅえる「ほとんどナッシングじゃないか。まあでもそこんところはゲキロボ☆でやるから、まあ男は描けるようになった、うん。」
まゆ子「とりあえず目標はクリアされたと結論づけて良いと思います。」
じゅえる「条件つきで可。」
釈「はい。」

まゆ子「では次に何をするべきか。私は元々SF畑の人間であり、今書いてるのも全部SFです。」
じゅえる「見た目ファンタジーのげばると処女であってもね。」
釈「問題ないですよ。ファンタジーはSFっぽくすればするほど、いい感じの煮詰まった設定になります。」

まゆ子「想定される読者様をヲタクと考えると、まあ問題ない。では次というのは、」

じゅえる「ちょっと待て。一般読者様向けの小説を書く気じゃないでしょうね。」
釈「それは無謀です! というか、現実周りのお話なんて書いたことないじゃないですか。」
まゆ子「うん。特に現代物で身の回りのこまごまとした話は、あるいは現実社会のリアルとか、書く気が無いどころか読んだことすら無い。」
じゅえる「そんなもの読む暇があれば、解説の本の方が早いもんね。」
釈「まゆちゃん先輩は新書しか読まないのです。小説はまりみてくらいなものですから。」

まゆ子「であるが、それでは小説家としては奇形的進化を遂げてしまう。冗長性に欠けて、弱い。」
じゅえる「そうは言ってもだね。」

まゆ子「であるから、取り敢えず一般読者層をターゲットとした小説を書いてみようと思う。」

釈「趣旨は理解しましたが、勝算は?」
じゅえる「無いでしょ。」
まゆ子「それがあるから、言ってるんだよ。時代劇だ。」

じゅえる「ふむ。」
釈「ふむ、SFよりはよほど繁盛してますか。書店では小説の欄はずらっと時代劇です。」
じゅえる「なるほどまだ目は有るな。」

まゆ子「ハリウッド時代劇です!」

じゅえる「…、は?」
釈「映画、ですか。」
まゆ子「うむまさに映画だ。いや映画を撮りたいと思う。何故ならば、小説よりもよほど儲かるからだ。」
じゅえる「うーん、ハリウッドで時代劇。うむ、ラストサムライとかか。」
まゆ子「ラストサムライは世界的大ヒットである。世界中でニンジャサムライは大人気である。白人だって黒人だって、サムライになりたいと思ってる。」
釈「たしかにマーケットは見込めます。」

まゆ子「そこで、日本の時代劇それも戦国モノを、ハリウッド俳優で撮ってみようと思う。勿論主要登場人物全部非日本人。金髪の秀吉とか黒人の加藤清正とか出て来る。」

じゅえる「…言わんとする事は良くわかる。わかるが、無理だ。」
釈「たしかに面白いとは思いますが、それは出来上がったものがおもしろいわけであり、その過程がおもしろいとは思えません。」
まゆ子「つまりこの企画を成立させるには、ハリウッドに英語の脚本を持ち込まなければいけない。そこまでは常識的なアプローチだ。」
じゅえる「まゆちゃん、あんた英語で小説は書けないでしょう。」

まゆ子「ぬかりなし。何故ならば、ハリウッド映画は、日本においては日本語ノベライズされるのです。これがターゲットだ。」

釈「ノベライズ、あれは誰が書いてるんでしょうか。」
じゅえる「そりゃ日本の作家だろう。まああまり儲かるとも思えないが、版権自分では持ってないし。」
まゆ子「自分が妄想したハリウッド時代劇のノベライズ小説の版権は、当然私が持っている。」
じゅえる「つまり、形態としてはハリウッド映画ノベライズである、小説だね。この企画。」
釈「切り口は面白いと思います。ですが問題は、それがターゲットとする一般読者様のお気に召すか、これです。」

まゆ子「そりゃまともな時代劇ファンには受けないだろうが、対象は30代以下の時代劇ファンだよ。今頃は女性の時代劇ファンも多くなって来たらしいから、その人達ね。」
じゅえる「女の時代劇ヲタクかー。なるほど、目の付け所はいい。」
釈「たしかに、そのマーケットは狙い目です。理想的な歴史上の人物でカップリングです。」

まゆ子「紅毛碧眼の信長、欲しくないかい?」

じゅえる「そのイカレタ企画、乗った!」
釈「うーむ、ファンタジー時代劇でなく、時代劇ファンタジーですか。」
まゆ子「しゃくちゃん、ちと違うぞ。むしろこれは、シェークスピア劇の映画化と考えてくれ。シェークスピアを日本人がやったって、どこからも文句は出ないだろう。」
じゅえる「なるほど。鶴屋南北をハリウッド俳優がやったって、誰も文句をつけたりしない。そういう感性だな。」
釈「なるほどなるほど。読めて来ました。これはつまり、マジ、なんですね。」

まゆ子「一発芸的な企画ではあるが、これが成功すると以後世界中で、非日本人による日本時代劇、というジャンルが出来上がる。」
釈「そんな大袈裟な。」
じゅえる「そうでもない。シナリオがあれば、やってみたくなるのが企画不足の今のハリウッドだ。しかも世界で一番興業収入が見込める日本で当たるに決まってる企画。」
まゆ子「無論、英語で書けないわたしには、ノベライズという筋しか使えない。だが逆流して、」

釈「それは無い。」

じゅえる「無い。が、だからと言って企画をぽしゃる理由にはならないな。」
釈「たしかに、そういう背景を持った企画であれば、バックボーンは強いです。でも要は面白いか否か、これに尽きますね。」
まゆ子「自信はあるぞ。」
じゅえる「げばおとで身に着けた、根拠有る自信、だな。ただし物凄い薄弱なもんだ。」
まゆ子「まあ、何枚か書いてみた後で、方針を考え直そう。」

釈「予定枚数は?」
まゆ子「映画は2時間。」
じゅえる「シナリオだと何枚だろうねえ。だがノベライズ版というのは、単行本1冊と決まってる。300〜400だ。」
まゆ子「げばおと1巻分ね。」
釈「ふむ。割はいい企画ですね。とにかく近場の勝利目標を得られるのは、強いです。」
じゅえる「げばおとはいい加減長過ぎるよ。確かに短いのが楽。」

 

まゆ子「というわけで、企画のタイトルは
  『SHIMADU ESCAPE』(邦題『島津大脱出』)なのだ。あるいは英語圏の人達に良く判るように『TheEscapeOfDaimyoSHIMADU』でもいい。」

じゅえる「「島津大脱出」、ね。そのタイトルから察するに、関ヶ原か。」
釈「ハリウッド映画で最も派手に映える場面です。なるほど、考えてますよ。」
まゆ子「問題が一つ。これ島津負け戦だ。」
じゅえる「…? それが問題?」
まゆ子「私は、だからこそこれを描こうと思う。だが普通の人は負け戦は嫌いだ。」

釈「あー、どうなんでしょうねえ。特に欧米人は負け戦を描く戦争は嫌いなのかもしれません。特にハリウッド娯楽大作では。」
まゆ子「この島津大脱出というのは、そういうリスクを含んでいる。それは了解してください。」
じゅえる「ふむ。」

まゆ子「その上で、関ヶ原を描くのだよ。だがその前段階では朝鮮征伐を描く。つまり秀吉が醍醐の花見でいきなりおっ死んで、半島から引き揚げる島津が朝鮮最後の戦をする。つまりは負け戦の締めくくりをする場面から始める。」

じゅえる「8万、だっけ、明と朝鮮の連合軍8万vs島津3千、の戦い。」
釈「島津大勝利、です。ですが全体で見ると負け戦には変わりない。つまりは、この企画は最初から最後まで負け戦を描くわけですね。」
(釈注;あー「歴史街道」3月号がちょうど島津特集でした。えー泗水の戦いですね。明軍20万VS島津7000です。敵軍総崩れ3万8千を討ち取り、被害2名。漫画です。)

まゆ子「おもしろいでしょ。」
釈「おもしろいです。日本人には。」
じゅえる「あんたインド人じゃん。」
釈「ああー!そうだった!!」

まゆ子「ここで私は、滅びの美学なんぞ書くつもりは毛頭無い。というか、当の島津にそんなものが無い。」
じゅえる「待ってよお、なんか哲学的な話になってきたな。」
釈「戦国武将の負け方、ですか。この企画の表現上の目標は。」

まゆ子「そこで、開巻冒頭にこう書くつもり。

『日本のチェス”将棋”は世界中の類似のゲームと比べて、特に難しいと言われている。とあるルールの存在が混沌を引き起こす。
 ”将棋”においては、取った敵の駒を自らのものとして、盤上の任意の場所に投入する事が出来るのだ。
 これは裏切りだ。だが我々の知る日本のサムライは義を重んじ恥を厭い、決して主人に背かないと覚えている。それなのに、何故このルールが存在するのか。』

釈「はあ。たしかにそれは不思議です。」
じゅえる「面白いな。なんでそんなルールになっているんだろう。」
まゆ子「そこに、この企画の核心が有る。つまり日本において、負けるとはいかなることか、サムライが負けるとはどのようなものか、を描く。それを端的に示す人物こそが、」

じゅえる「島津、なんだな。」
釈「なるほど。」

まゆ子「というわけで、この話は敗者の物語だ。だがここに、もう一人避けては通れない敗者が居る。石田三成だ。」
じゅえる「とうぜんだな。関ヶ原だもん。」
釈「なるほどなるほど。島津と三成の確執は、関ヶ原で描かなければならない必須アイテムです。」
まゆ子「三成ほど、立派に負けた奴もそうは居ない。」
じゅえる「つまりは、三成と島津の双方の負け方の対比をする、わけだ。」

まゆ子「ついでに、今話題の直江兼続も敗者の代表として出そう。」

じゅえる「ほお。しかし直江と島津に接点は無いでしょ。」
まゆ子「いや三成と直江と、あとどうするかなあー、島左近でも出すか。」
釈「まんま風の慶次ですね。」
まゆ子「だが島左近は三成の代わりとして大活躍して討ち死にする。ハリウッド映画的には是非とも必要なキャラだとは思わないかい?」
じゅえる「合戦の最中、島津は動かない。三成は総大将だから動けない。代わって島左近は動きまくる。なるほど、無くては困るキャラだな。」

まゆ子「三成×兼続×左近、この三者の友情関係を描くのだよ。というか、島津は関ヶ原の戦場に到るまで、さほど動きはしないから、仕方ない。」
じゅえる「まあ、動かないな。」
釈「ドラマを描くには、動く人を使わないと。つまり三成が縦横無尽に動くわけです。」
まゆ子「あくまでも主役は島津。ただ、画面上で動き回るのは、もちろん三成。敗者を主人公とする物語において、三成は非常に魅力的な人物だ。」
じゅえる「刑場に連れてかれる時の柿の話、なんかもね。」

まゆ子「関ヶ原脱出後、もちろん後に島津は家康の所に屈伏の挨拶にいかなくちゃいけない。また同時に、兼続も上杉景勝と共に屈伏する。」
じゅえる「ほお。」
釈「いい、絵ですね。」

まゆ子「どう?」

じゅえる「ふむ。」
釈「かっこいいです。なるほど、負けるという事はこのようにカッコイイものだ、という模範になるわけです。」

まゆ子「話は飛ぶが、ハリウッド映画では美女ヒロインが不可欠だ。敗者のヒロインとなれば、もちろん淀君であるよ。」
じゅえる「だね。」
まゆ子「アンジェリーナ・ジョリをスターリングしようと思う。」
釈「アンジェリーナ・ジョリーですか。それは肉食系淀の方様ですね。」

まゆ子「どう見ても只者ではないだろう。淀君は。」
じゅえる「そういう配役だと、なんか背筋がブルブルしてくるね。なるほど、三成と淀君の確執ですか。映画にすると映えるだろうねえ。」
釈「しかし、淀君は敗者としては、あまり潔くはないと思いますが、」
じゅえる「いや。だからこそ、それは書くべきなのだよ。正しく負けられなかった者として、淀君は描かれる。」
まゆ子「というか、関ヶ原以後も15年も生きるからね。」

まゆ子「問題が一つ。太閤没後の関ヶ原に到るまでの島津の動きは、あんまり活発なものとは言えないな。」
じゅえる「ドラマ性が欠ける、ってわけだ。」
釈「これまで映画とかで描かれて来なかった理由ですね。」
まゆ子「なんとかしよう。」
じゅえる「島津が、家康の戦略に深く関わって来る、とか?」
釈「嘘はいけませんよ。」

まゆ子「嘘も方便。ただし日本のそれ筋の人が納得する嘘であれば、ね。」
じゅえる「なにか、物語の視点として使える仕掛け、が必要だね。」
釈「…ここはアレです。地道な調査しかありません!」
まゆ子「トホホ。そうかあやっぱり。」
じゅえる「そりゃ下調べ無しに書くのは、やっぱ無理だよ。」
まゆ子「ちぇえー。でもまあ、そいうことで。」

 

【結構無敵ガンビットさん、もしくは輪廻転戦ガンビットさん、最終設定決定】09/04/11

【清子さまSHOWー、『チェス・ゲーム』を考える】09/02/08

【チェス・ゲーム】09/01/12

        (別シリーズとして企画確定ですので、別ページに移します。)

 

【ルパン三世をパクろう】08/10/24

まゆ子「ルパン三世をパクろう!」

じゅえる「また大胆な企画で来たな。」
釈「新企画またぞろぶったてて、どうしますか。面倒が増えるだけでしょう。」

まゆ子「増えないぞ。何故ならば、統則最前線能登子バージョンだからだ。」

じゅえる「能登子さんが不二子ちゃん?」
まゆ子「あー、銭形さん。」
釈「ほお警察関係者ですから、そういう目もありますか。」
じゅえる「たしかに、タコロボットでルパンを逮捕しよう、という考え方も出来るね。むしろ王道だ。」

まゆ子「というわけで、ルパンをパクる。
 構想としてはかんたん。男銭形が主人公。彼は能登子さんの協力を仰いで、タコハチでルパンを捕まえようとする。」
釈「なるほど。いい感じです、恋が芽生えます。」

じゅえる「それはしばらく話が進展した後だね。で、」

まゆ子「当然ルパンは男です。ルパン次元五右衛門不二子ちゃん、これは揃えなければならない。が、ここで一つ別の条件を外挿します。
 ドクロベエ様です。つまり、ルパンはドクロベエ様からの指令により、お宝を盗み出す。」

じゅえる「御仕置きは?」
まゆ子「未定です。」
釈「え〜。」
じゅえる「え〜。」

まゆ子「分かったよ。でも形態がどうなるかはまた考えるね。

 

 えー、時節柄ルパンは若い男の子20くらいとします。暗黒街のプリンスです。」

じゅえる「ちょっと待て、舞台は何時だ。」
まゆ子「能登子さんだから、2050年頃だよ。」
じゅえる「ふーむ、戦争後、か。なるほど世界的な混乱期だね。」
釈「悪が蔓延る下地としてはじゅうぶんです。」

 

まゆ子「ルパンには妹が居る。もちろん本物ではない。組織が付けた護衛役兼身の回り世話係だ。で、暗殺者。ルパンの敵を皆殺しにする。」

じゅえる「妹属性の闇メイド、という感じかい。」
まゆ子「綾波メイド、というのを予定している。」
じゅえる「うむ。だがその妹、結局は結ばれないのだな?」
まゆ子「どうしよう。まるっきり阻害してしまうのは可哀想で面白味にも欠ける。まあ物語の流れ上そんなこともある、程度で。」
釈「色気を匂わさないといけませんしね。」

 

まゆ子「次元。銃器爆弾等のプロフェッショナルくーるなガンマン。これはいいでしょ。もちろんこれも若い。」
じゅえる「しかし、少し芸が足りない。なにかもう一つなにか、」
釈「なにかってどこが気に掛りますか。」

じゅえる「闘うばっかりで盗みに役立たない。次元はあれでなかなか芸が達者だ。そこんところをもう少し、裏付けが。」

まゆ子「”鷹の目”でも付けるかい。」
じゅえる「いや! 機械モノバーチャルものは、すこし敬遠だ。そうだねえー、そう、2050年にふさわしい戦闘マシンとしての人間だ。」

まゆ子「では、サルボモーター第五話に出て来る予定の、拡張手マウス、を付けよう。手の中に埋めこまれたマイクロチップにより、神経を介してさまざまな電子機器を操作出来るのだ。でもバーチャルじゃないよ。触覚を強化したような感じ。」
じゅえる「それを使うと、どうなるの?」
まゆ子「いや、能登子さんもおなじものを使ってる。これでタコハチを操作する。次元はコンピュータ制御火器を操作する。その違いだ。」

釈「特別な才能が無いと、それ使えないんですか。」
まゆ子「いやこの時代ほとんどの人間が使ってる有り触れた技術だ。ただー、やり易いからと言って芸術的な仕事が出来るとは限らない、そいうものね。ピアノの鍵盤に一本ずつ指が付いてるようなものだけど、それで名曲が奏でられるかは本人の才能次第。やりやすいけれど品質を保証するものではない。」
じゅえる「十分特別な才能、ってわけだ。」

釈「コンピュータのハッカー、とかではないんですか。」
まゆ子「無い。完全に無い。まあ人並み以上にはコンピュータも詳しいんだが、主に銃器、ついでに乗り物ビークルの操縦ね、これが得意。」

釈「それらしくなります。」

 

じゅえる「五右衛門は、女だろう!」
まゆ子「うっ! ざんねん、検討した結果、やめました。男です。」

釈「斬鉄剣は使いますか。」
まゆ子「禁止です。そんな便利なカタナは2050年にも作られてはいません。空手使い、いや古武道の格闘家です。」
じゅえる「弱いじゃん。」
まゆ子「いや鉄砲使うから。」

釈「五右衛門ですよ?」
まゆ子「五右衛門の体術で、両手拳銃だ。もちろんナイフでも手裏剣でも使えるぞ。」

じゅえる「つまり、次元は未来的銃器のプロだが、五右衛門は古典的銃器のプロなんだ。」
まゆ子「斬鉄剣よりはよほど現実的だと思うぞ。それに、五右衛門が刀使わないんじゃ、パクリを訴えるわけにもいかんでしょう。」
釈「それはあざとい防御策ですね。」
まゆ子「企業努力と呼んでくれ。つまり、五右衛門は古武士の風格漂う格闘家なのだ。GUN道免許皆伝。」

じゅえる「それどっかで聞いたこと有るな。」
釈「わたしもです。」
まゆ子「じゃあ、GUN道禁止。巌流鐡砲術です。」

じゅえる「まあそこは、巌流か。小次郎だな。」
釈「小次郎はいいですね。五右衛門に匹敵するネームバリューがありますよ。」
じゅえる「よし決定。五右衛門の名前は小次郎だ。」

まゆ子「いきなりかい。ま、いいけどさ。」

 

じゅえる「ルパン・不二子・次元・五右衛門、は揃った。ドクロベエ様は、女だろう。」

まゆ子「女、でいいかな。もの凄い美女。これこそ不二子ちゃんぽい。まあドクロベエ様本人ではなく、そのエージェントとして考えるべきですが。」
釈「おっぱい1メートルありますか?」
まゆ子「おう、ロケットおっぱい尻ぼぉ〜んだ。凄い秘書、って感じね。」

じゅえる「それは戦闘はしないんだ。」
まゆ子「知的な役どころ、ではあるが時々状況によって危険な目に遇う事も少なくない。」

釈「ではその人は、歳上ですか。ルパンにとって。」
まゆ子「ルパン20歳、として、25歳かもっと上。だね。もちろん謎だ。」

釈「その上のドクロベエ様は、どうします?」
じゅえる「爺ぃかい。」

 

まゆ子「うーん、どうしようかなあ。あーシーケンスを言えば、

 美女が泥棒の依頼を持って来る→ルパンがテクニックで見事奪い取る→盗られた連中は悪の組織で復讐奪還に来る→撃退。です。」

じゅえる「追っかけて来る連中はマフィアだな。」
まゆ子「まあ、色々です。というか、盗みは割と簡単に終り、こちらの戦闘の方がメインと考えて下さい。これがこの物語シリーズのキモです。ぶっちゃけ、物品やらデータやらは金さえあればなんとでもなります。美女が持って来る依頼というのは、本来あるべき場所に無い宝物を、あるべき場所に返す、これだけです。私利私欲ではありません。」

じゅえる「それじゃ儲けが出ない。」
まゆ子「まあ、奪還費用というのが出るわけで、もちろんそれなりの組織から多額の報酬として、彼らには提供されます。」

釈「お金が動機では無い、ということですか。」
まゆ子「まあ、スリルと興奮、それなりの社会貢献、盗みのテクニック披露、かな。たまには自分の為に盗んでもみたりします。」

じゅえる「そこんとこ、盗む理由をでっち上げよう。暗黒街のプリンスと言ったね。その後継襲名の条件、てことではどう?」
まゆ子「自動的に、ライバルキャラが登場する。兄だな。」
釈「それも面白くはありませんねえ。ありきたりで。」

じゅえる「はなしを戻そう。そのルパンは何を盗むんだ?」
まゆ子「だから、エロイ秘書さんが依頼して来るものだよ。」
釈「でも、それじゃあ自主的な意志ってものが無いんですか。盗むのが快感、ってことですか。」

まゆ子「あー、それも有る。だがそこんとこはもう少し詰めた方がいいかな。基本的に抑えておいてもらいたいのは、ルパンが盗むものは正常まっとうな政府やら企業から盗んだりはしない。ヤバい犯罪組織がターゲットになる。」

じゅえる「それは盗むのは簡単だけど、後が大事だ。殺されちゃうよ。」
釈「というか、彼らが盗みをする動機としては、そちらの方がメインですよ。たぶん。」

まゆ子「うん、スリルとサスペンス、そうなるか。では秘書ってのが伝えて来る案件は、ごく近い時日で取締まりされてしまう犯罪組織で、追跡の可能性はそれ以降は無い。逆に、それ以前にしか盗むチャンスは無い。という代物にしよう。」

 

じゅえる「しかし、2050年くらいでしょ、能登子さんが出て来るんだから。その時代の組織犯罪って、警察で潰滅させられるのかな?」
釈「そうですねえ、ワールドワイドの拡がりを持つでしょうし。」

まゆ子「あんた達なめちゃいけない。この時代の国連は国家連合体として再組織化された強力なものだ。なんせ救世主弥生ちゃんがやらかしたからね。」
じゅえる「げ。」
釈「ここでそれが出ますか。」

まゆ子「弥生ちゃんは一度国会議員になって、その後国連に転出して八面六臂獅子奮迅の働きをして、国家連合体を作り上げた。組織犯罪を実力で破壊する超強力な武力組織を核とする攻撃的な連合体だ。敵は当時世界中で国家権力の枠を離れて暴走する組織犯罪。これを効率的に排除する能力を国連の枠組みは持ち得なかったものの、国家連合体は獲得したが為に世界中で支持されるようになる。」

釈「すげー。」
じゅえる「救世主さまか!」
まゆ子「実際救世主さまだ。まあ、時流を得た、とも思えるんだが、弥生ちゃんという個性が無いと世界人類を救えなかったのは事実だな。」

じゅえる「具体的にはどのようなトリックを使うんだ。軍隊か。」

まゆ子「えー便宜上『国連治安警察軍』とでも呼ぼう。国家の枠を越えて人権を蹂躙する組織犯罪が対象の、警察捜査力を持った軍隊だ。

 基本的には各国警察やら諜報機関やらの情報で、犯罪組織の認定を行う。で、国連総会でターゲットとなる犯罪組織を名指ししてそれが主に属する国家に対応を求める。無論、そんなことが出来るくらいならとっくの昔にやっている。そこで、治警軍の出番だ。」
釈「治警軍って言うんだ。」

まゆ子「基本的に犯罪組織てのは、その全貌が分からないものだ。首謀者の所在も、そもそも誰が本当の首領かも分からない。
 そこで治警軍では犯罪組織そのものを破壊する事は最初から考えない。組織によって虐げられている民衆を解放するのが目的となる。具体的には、組織末端の武力行使を主とした任務とする者を、皆殺しにする。」

じゅえる「ちょっとまて、逮捕しないのかい?」
まゆ子「軍隊だもん。」
釈「明確に敵ですか!」

まゆ子「というわけで、マイクロマシンセンチメートルマシンをそれらが根城とする領域に散布して、日常生活において誰が悪党かを記録して認定する。で、一人一人の位置情報を掌握して、GOサインが出たと同時に一気に殲滅する。これは特殊部隊と軍用ロボットで瞬時に行う。特殊弾を用いるから人質を楯にしている状況でも構わずぶち殺す。」

じゅえる「やり方は分かったけど、すごく金掛るでしょそれ。」
まゆ子「いや、そんなには掛んない。軍隊だから通常の戦闘任務程度だね。これがこの世代では普通なんだよ。

 問題は、この治警軍は主権国家にずかずかと入り込む、ってことだ。これをうんと言わせる為に、一元的仮想金本位制度ってのを取って居る。つまり、貿易やら投資やらを行う際に、各国通貨を直接購入する事は出来ず、一度仮想通貨を買った上で別の通貨を買う事になる。つまり仮想通貨との交換ができないと、国家は即死する。」

じゅえる「うう、やよいちゃんのやりそうなことだ。」
釈「よくもまあ、そんな物騒なおもちゃをキャプテンに与えましたね。」

まゆ子「だってアメリカ批准してないもん。ロシアも中国も。批准しなくても、仮想通貨は買える。

 国家連合体は混乱する世界経済を保護救済する為に組み上げられた主として経済を原動力とする体制だ。国際連合の、戦争を媒介とする体制とは違う。
 この一元的仮想金本位制を取る事で、超大国の勝手な経済政策の横暴から脱出出来て、安定した平穏な発展に導かれているのだな。

 逆に言うと、アメリカが批准しておらず外部に居るからこそ成り立つ、という代物だ。まあ批准は求めて居るけどさ。」

釈「つまり、国家連合体に属する国家は、治警軍の介入を拒めないんですか。」

まゆ子「逆だと考えて下さい。通常の国家では、この世代の組織犯罪に対して成す術が無い。国家の枠を軽々と越える彼らに対して、各国国家同士の連携は絶望的な程に遅く無力だ。だからこその治警軍、一元的仮想金本位制度と治警軍の二本立てがあるからこそ、国家連合体に加入する。

 あ、誤解して居るだろうけどさ、国連はあるんだよ。軍事力による紛争調停の場としての国連と安保理事会は存在するし機能している。もちろん今と同じくらいに無力だ。」

 

じゅえる「治警軍は国連軍とはまるで違うんだ。」
まゆ子「基本的には警察だからね。要するにバカでっかい特殊部隊、それが治警軍だ。」

釈「これに狙われたら、どんな組織犯罪でも抵抗出来ない?」

まゆ子「末端が抹殺されるからね。組織の中核は残るとしても、完全な麻痺状態に陥る。その状態であれば各国治安維持機構の脆弱な能力でもなんとか出来るし、生き馬の目を抜く世界犯罪界において、1年2年の空白は致命的だ。組織の立て直しに成功しても、かっての地位はとっくの昔に他に奪われており、弱小犯罪組織でしかあり得ない。更に、組織立て直しの過程はやはり監視されており、キーマンは適宜排除されていく。」

じゅえる「つまりは、対症療法であり時間稼ぎに過ぎない。だが、時間こそがすべてのなんだね。」
まゆ子「基本的に、その国の人間が自らの宿痾としての組織犯罪と手を切ろうと決意しなければ、平穏は望めない。それを望むほどには弥生ちゃんはバカではないのさ。」

 

釈「つまり、ルパンが盗んだお宝の持ち主は、近い将来あっという間に消滅する運命に有り、ルパン追跡やら復讐やらはそこまで逃げ切ればOK、てことですね。」
まゆ子「そういうことです。」

 

じゅえる「ルパン、って何する人?というか表の顔。」

釈「フルタイム犯罪者じゃないんですか?」
まゆ子「あー、世を忍ぶ仮の姿、くらいはあっていいか。あー、どうしよー、犯罪学の教授、くらいにするか。」

釈「若いんでしょ?」
まゆ子「20、21くらいかな。アニメ的に。」
じゅえる「いいんでないかい。若き犯罪学の天才、ってことで。妹は19くらいか。」

釈「犯罪学の教授は犯罪者としても優れている、んでしょうか?ちょっと疑問に思います。」
まゆ子「いや、教授の職ってのはルパンの才能のほんの僅かな一部分、と考えればいいでしょう。つまりは、もっとデカい才能だ。」

じゅえる「ふーむ、では才能ってのを描写しなくちゃいけないね。出来るのか、まゆちゃんに?」
まゆ子「自慢じゃないが、私はテレビの推理サスペンスのトリックとか、まるっきり考えずにぼーっと見るぞ。」
釈「そこらへんの才能と経験は無、ですか。むしろこの場合、そのくらいの潔さがあった方がいいですかね。」
じゅえる「ルパンだからね。」

まゆ子「だが勝算が無いわけでもない。2050年頃の警備システムを知って居る人間は、地上には誰一人居ない。」

じゅえる「まあね。」
まゆ子「ということは、2050年頃にリアルに思える犯罪トリックを知って居る奴も居やしない。」
釈「当然ですが、まゆ子さんも同じですよ。」

まゆ子「わたしには暴走する想像力が有る! 21世紀的犯罪小説のスタンダードを作れるとすれば、私以外にはあり得ない。」
じゅえる「まあ、そんな大それた野望を抱く奴も居ないけどね。」
まゆ子「サルボモーターも出る!」
釈「はあまあ、同じ時間軸上の物語ですから。」

 

まゆ子「とまあそういうわけで、ルパンをパクリますが、あくまでもこれは便宜上のもので、主役は能登子さん。」
じゅえる「まだそこにこだわるのか。」

まゆ子「しかしながら、能登子さんを主役に描くのは非常に難しい。というわけで、銭形に相当する人物を作ることにした。若い、30歳くらいのそんなに強面ではない優男だ。もちろんエリートで運動能力やら格闘能力でも秀でているが、基本的にはちょっと頼りないような感じの人。これが、ルパン対策で能登子さんのタコハチ操作能力を必要として協力を求める。」

じゅえる「それは悪くない。だが、ルパンはタコハチを使わないのかい?それだけの大盗賊であれば最新機器を使うのは筋だろう。」
まゆ子「あー、そうね。タコハチに対するルパンならではのロボットを使うべきだろうね。どうしよう?」

釈「ヒトデ、とかはどうでしょう。ロボットでしかも統則制御でしょ、どうせ。」
まゆ子「ふうむ、ヒトデねえ。悪くはない、というかイイ。しかしー、なんか面白くないな。可愛くない。か。」
じゅえる「トカゲはどうだろう。カベチョロンだ。」
まゆ子「悪くない。しかしタコハチに比べると一世代前のコンセプトだな。最新ロボットをつかうべきだと思うぞ、やっぱ。」
釈「蛇、蜘蛛、ゴキブリ、蠍、カタツムリ、猿犬雉、馬牛、」
まゆ子「鳥、か。カラスでは?」
じゅえる「タコハチには勝てんだろう。鳥じゃあ。」

釈「いっそロボットやめますか。」

まゆ子「…式神。いや、紙製のロボットというのはどうかな。鋏でちょきちょき切ると、そのとおりの形で動くロボットになる。」

じゅえる「なるほど、陰陽道を絡ませるのか、悪くない。ではその筋の円条寺さんも絡むな。」
まゆ子「おお!円条寺さんをドクロベエ様の秘書にするか。おおなるほど。」
釈「なるほど、おっぱいですよ。」

じゅえる「その式神はどんな原理で動いてるんだ。」
まゆ子「マイクロマシンを染み込ませた紙で、やはり統則制御されている。紙の形は自在、好きな形に切り抜いてもプログラム不要でその形状で最適の運動を自ら獲得する。」
じゅえる「たしかに統則最前線だ。」
釈「ということは、マイクロマシンの入ってる液体を適当な紙に染み込ませると、そのまんまロボットとして使えるってことですか。便利ですねえ。」

 

じゅえる「陰陽道を絡めるとして、では彼は暗黒街のプリンスというよりも、暗黒神の司祭なのか。」
まゆ子「うーむ、そこまで現世から外れた人物にはしたくないなあ。古の大盗賊の末裔とかがいいんだが、やはりそれは無理か。」
釈「そこは、13代目石川五右衛門とかが絡みますから、避けましょう。」

じゅえる「無論のこと、安倍清明も禁止だ。えーと、となるとそれに匹敵する怪しげな人物となるとー、果心居士、とか?」

まゆ子「む! 果心居士悪くない! ついでに三国志に出て来た左慈とか、仙人の類いも。」
じゅえる「あまりややこしくしてはいかんと思うよ。果心居士、或いは天狗で、」
釈「天狗ですかあ。」

まゆ子「天狗よりはー陰陽道だなあ。キツネだな。FOXだ。」
じゅえる「OK! ではコードネーム”FOX”でいこう。仮題として上等だ。」
釈「ルパン三世のアメリカ放送タイトルが”WOLF”ですからね。」

まゆ子「うーん、そうだな。安倍清明をまるっきり棄ててしまうのも惜しいか。清明の母はキツネの「葛の葉」ってことになってるんだが、葛葉という苗字にするか。で、果心居士の流れを汲む幻術使いだ。」

じゅえる「ルパン帝国に相当するものは必要?」
釈「旧家の出、でなければいけないのではないでしょうか。そういう設定ならば。」

まゆ子「合わん。彼の性格に。つまりー、彼にはれっきとした有力な親族が居る。日本を舞台にするとして、日本の政財界に深く絡んだ闇の将軍みたいな家が彼の後ろ楯だ。しかしながら、彼が本当に一族の者であるか、実は誰も知らない。ひょっとしたらまったくの無関係なのかも知れない。そういうあやふやさがある。」

じゅえる「妹、はその一族のれっきとした一員、ということにしよう。おぜうさまだ。」

釈「メイドじゃなかったんですか?」
じゅえる「お嬢様がメイドでもまるっきり問題無いっしょ。」
まゆ子「いや、暗殺者でもあるんだけどねえ。ナイフ使いでイタチみたいにするりと狭いところを抜けていく。」
釈「お嬢様のする仕事ではありませんね。」

じゅえる「ニンジャマスターだ! えーとつまりこうだ。ルパンの父であるとされる人物が、自分の護衛をしていたニンジャ・クノイチに手を付けて孕ませたのが、妹だ。お嬢様でありながらメイド、暗殺者の条件をクリアする!」

まゆ子「おおー。」
釈「おおー。」

じゅえる「ついでに言うと、その父は、ルパンが自分の息子であるか今も疑っている。というか、現実感が無い。他にも子供は幾人も作ったが、ルパンを産んだはずの女の顔をどうしても思い出せないんだな。まるで幻の女。で母の苗字である「葛葉」を名乗らせている。」
まゆ子「その父は、彼の才能が兄弟の中でもずば抜けて優れているとは認めるが、後継者にする気は無い。無いが、「欲しければ盗ってみろ」とは言っている。」

釈「では、円条寺さんは母「葛葉」を知っていると称する唯一の人物なんですね。あるいはドクロベエさま自体が、おかあさん?」
まゆ子「うーむ、考えるな。」
じゅえる「そこは永遠の謎ということで収めよう。」

釈「なんか果心居士消えましたね。」
じゅえる「御師匠さん、てことにしよう。凄い爺のなまぐさの坊主みたいなのが、ルパンの御師匠さん。時々現れては謎を残して去っていく。」

まゆ子「陳腐だ。」
じゅえる「そ、そうか。」

まゆ子「それはルパンのもう一つの姿、ということにしよう。変装だ。だがその姿はもう何百年も目撃され続け、今の世の権力者達も昔から何度も遭遇して居る。」
釈「でもやはり、御師匠さんも居る事にしましょう。果心居士が二人居てもいいじゃないですか。」
まゆ子「あー、幻術対決とかあってもいいかなあ。」

 

じゅえる「次元と五右衛門も、普通のにんげんじゃあないよね。一人はコンピュータの申し子みたいなもんで、もう一人は巌流鉄砲道だもん。」

まゆ子「あー、次元はデザイナーズベイビーというのは、陳腐だな。どうしよう。」
釈「普通にワルでいいじゃないですか。ワルですよワル。」
じゅえる「まあ、悪人であることは間違い無い。じゃあ徹底的なワルにするか。」

まゆ子「だが徹底的なワルというのがどのようなワルであるか、難しいぞ。ハイテク武器を使って人殺しもかるーくやってのけるんだから、そりゃワルに違いないんだがね。」
釈「人殺しを簡単にやる奴、というのは凄いワルでしょう。こいつら全員ワルですよ。」

じゅえる「違いない。うーんとー、しかしながらお茶の間テレビアニメ的倫理観で言うと、ひとごろしにもルールは有る。愛されるひとごろしとそうでない邪悪なひとごろしだ。」

まゆ子「まあ、数を殺して喜ぶ奴は居ないということで。ルパンは無用な人殺しはしないし極力人死にの出ない作戦をふつうは用いる。妹はルパンの敵しか殺さない。次元はーワルではあるが無駄弾は撃たない効率重視。五右衛門はー格闘家であるから強い敵を好む。」

じゅえる「面白みに欠ける設定だな。一人くらい殺人狂が居てもいいと思うけど。そうだね、妹は殺人狂でもいいよ。」
釈「ふだんはむすっとしてるけれど、人をさくっと殺す時にクスっと笑う。このくらいですね。」

じゅえる「次元は、まあ射的屋でいいや。難しいターゲットに当たれば普通に喜ぶ。そうね、この辺り、単純なスナイパーな印象を与えない方がいい。当たれば喜ぶ、外れれば悔しがる。ちゃんと感情を表現するタイプだ。射的屋だね。」

まゆ子「ふむ。ちょっとガキっぽいのかな。」
じゅえる「その線もアリ。メカが大好きだしカスタマイズも大好き。新型コンピュータをクラックするのも大好き。お宝ゲットも大好き。」

釈「分かりやすい人ですね。ふうむ、ルパンは冷たい人っぽいですから、そんな風でもいいのかな。」
まゆ子「ただ、仕事をしている最中は別人格が目覚めている、て感じにしよう。コンピュータ人間みたいな感じで感覚が拡大して常人ではない。が、そういう成果を得たらいきなり普通に戻りガッツポーズする。」
釈「はあ。そりゃ可愛いですね。」

 

じゅえる「逆に五右衛門は、まるっきり感情を外に表さないことにするか。」
釈「それはルパンでしょう。そうですね、五右衛門は案外と感情に起伏が無く、平然と人殺しをしている、そんな感じですかね。」

まゆ子「通常の撃ち合いでも、日常感覚が離れない人なんだ。コンビニでパン買うのと同じ程度の煩わしさで群がるギャングの悪党共を薙ぎ倒す。」
じゅえる「びんぼうにんだ。」
まゆ子「うん。」

釈「貧乏性で愚痴ばっかり言ってる割りには、モノに執着せず金銭にも興味を示さない。泥棒のお宝にもあまり関心が無い。というか、小銭を借金ばかりして恐縮してる。」
じゅえる「ダメ人間だな。」

釈「物凄い強敵が現れたら、決まって相手に借金を申し込む。というのはどうでしょう。借金を踏み倒すチャンスだとばかりに。」
じゅえる「それサイヨー。」

まゆ子「ただし武器には金を使う。いいものをちゃんと持っている。まあ、そこらの分捕り品使っても十分強いけどね。」
じゅえる「刀道楽、ということにするか。日本刀の名品をコレクションしているけれど、絶対仕事場には持って来ない。」
釈「それが正しい観賞法です。」
まゆ子「かっては五右衛門であったという痕跡を残すのはよいことだな。うん。」

じゅえる「ならばちゃんと女房が居る事にしよう。刀コレクションが趣味ならば、鞘だな。小夜という女が女房だ。」
釈「病人ですか?死にますか?」
まゆ子「それはおもしろくない。死なない。また女房のところには敵が来ないように、なんらかの隠れ蓑を用意しておこう。変装だ。」

じゅえる「ルパン達のところに現われる五右衛門と、女房の所に帰って来る男とでは、人格から外見からまるっきり違う、二重生活だな。」
釈「うんうん。そのくらいがいいです。そうですねえ、ルパン達の所に現われるのは40絡みの渋いおっさんですが、女房のところには30そこそこの若い姿なのです。」
じゅえる「リーマンと嘘付いている。出張してきた、とお土産持って帰るのだ。」

まゆ子「そんな男が日本刀のコレクションをしているのは変だろう。コレクション自体も、女房には内緒だ。隠し倉庫にちゃんと納めている。」

釈「結構な良いキャラになりましたね。そのくらいかけ離れて居れば誰も元が五右衛門とは看做さないでしょう。」
じゅえる「日本刀を格闘に使ったりしないからね。」
まゆ子「ナイフ使いは妹だしね。」

 

じゅえる「話は戻すが、次元が子供っぽいってのにも裏付けを与えておこう。やはり過去の犯罪の被害者犠牲者というところかな。」

釈「犯罪組織に拉致られて改造人間にされたんです。コンピュータ犯罪のスペシャリストとして、電脳化手術を受けたんです。」
まゆ子「悪くはないが、陳腐だ。」
じゅえる「いや、犯罪組織に改造人間、てのはむしろ新鮮だぞ。」

釈「ここで重視すべきは、れっきとした国家政府組織ではなく、場末のいい加減な犯罪組織に改造された、ってところです。麻酔もろくに無いようなヤミ医者によって改造されました。」
まゆ子「ふーむ、では被害者としても案外と不自由はなく、むしろ人間的な繋がりの良好な中で犯罪のスペシャリストになった、そんなとこか。」

じゅえる「犯罪組織の中にあっても、全部が全部不幸である必要はない。そういうことだね。」

まゆ子「ではそのヤミ医者がマッド・サイエンティストで、こいつによって改造されて教育されたが、割と丁寧に人間的に教育されて次元本人もちゃんと懐いて、で一流のコンピュータ犯罪者となった暁には犯罪組織の為に大手柄を立てて莫大な富を稼ぎ出し、だがそれが原因でちんけな組織は分裂抗争の嵐となり、なんだか知らない内に潰滅してヤミ医者と次元はフリーになってしまった。そんな感じ。」

じゅえる「人格的にいじけてない、というのは悪くない話だよ。なにせこの物語は「ルパン三世」のパクリだからね。」
釈「トラウマで動いている人間は要らないのです。」
まゆ子「そのヤミ医者はそのまま健在で、ルパン達の怪我を癒したり新兵器を作ったりしてる事にしよう。秘密基地に常に居るんだ。」

釈「実に健全な泥棒です!」

 

まゆ子「で、この物語の主人公はあくまでも能登子さんなわけだ。なにがなんでも能登子さんだ。もうそう決まった。」
じゅえる「はいはい。」
釈「意地ですね、もう。」

まゆ子「つまり能登子さん率いるタコハチロボットが、ルパン三世を逮捕する。これが物語の基本にして根幹。あくまでも正義はこちらに有る。」
じゅえる「はいはい。」

まゆ子「というわけで、眼鏡の優男風銭形さんというのが能登子さんのところに助力を求めてやってくる。まあなんだ、能登子さんは彼にとって対ルパン用最終兵器という位置付けだね。いつもいつも引っ張り出すわけではない。が、惚れっぽいのも能登子さんの属性だから、そのなんだ。」
釈「男と女の関係になったりもするわけですね、子持ちの独身女に引っ掛かるメガネ銭形サンですよ。」

まゆ子「ただ抑えておかねばならないのは、治警軍に彼は所属して居ない。あくまでも日本の警察官だ。

 で、治警軍の動きは日本の警察でも完全に把握しているわけではなく、かなり軋轢が有る。
 ついでに言うと、この銭形サンの守備範囲は日本国内に留まらず、太平洋諸島戦争で委任統治区分となった太平洋全域(アメリカ側除く)に拡がるのだ。もちろん5分裂した中国には手を出せないけど、現地警察との交流やら協力は頻繁に行っている。」

じゅえる「能登子さんとタコハチは、そんな遠くにまで引っ張り出せるのかい?」
まゆ子「そのくらいの工作は、メガネ銭形サンはやってのけるぞ。有能だ。でも公私混同もするぞ。南海にビキニ豊乳で遊ぶ能登子さんに悩殺されちゃうぞ。」

釈「タコの女王様を海に連れていくとは、なんて身の程知らずな。」

 

じゅえる「待って! ルパンは女に弱くないとダメだろう。このルパンだと、女には滅法強いか、逆に関心無さそうだぞ。」
釈「あ。そうですねえ、安倍清明が女狂いだって話も聞きませんし、ましてや女にだらしがないとかでれでれするとかも。」

まゆ子「でれでれは次元でいいじゃん。」
じゅえる「いや次元はそういうキャラじゃない。とはいえこっちの次元はガキっぽいんだったか、どうしよう。」
釈「こっちの次元が女に弱い、のはOKです。というよりも、普通の元気な女の子に普通に恋をする、くらいの方がいいですね。もちろん色気むんむんのおねえさんも大好きです。逆に言うと、次元は女が大好きだからルパンにも女をくっつけて一緒に楽しもうぜえ、という迷惑キャラではどうでしょう。」

じゅえる「で、騙される。」
釈「まるっきり元祖ルパン三世ですね。」

まゆ子「わかった。ではルパンの方は女の趣味が悪いことにしよう。なにかしら裏があるとか命を狙ってるとかの女にばかり引っ掛かる。普通の女なら妹バリアで近づけないけれど、そいう一癖も二癖も有る女なら、妹を突破するんだ。」

じゅえる「能登子さんはどうなんだ。ルパンvs能登子、という場面もあるだろう。」
釈「能登子さんは只者ではありませんから。」
まゆ子「身体の中に統則マイクロマシンも入ってるし、謎の美人小学生が娘だし。」

釈「あー、そうです。るぴかちゃんは古代英雄人種の末裔なのでした。そうです、ルパンもやはりそうなのです。で、るぴかvsルパンで、「君はわたしと同じタイプの人間だね」とか。」
じゅえる「OK。」
まゆ子「うーむ、なるほどそれ以外考えつかんか。つまりルパンの母親と、るぴかの父親はなんらかの接点が有るんだ。」

じゅえる「必然的に、るぴかちゃんも悪の組織に狙われる。」

釈「そこんとこはメガネ銭形サンに期待しましょう。有能なんですから、惚れた女の娘くらい護りますよ。」
じゅえる「ちょっと待て、惚れるのは能登子さんの方じゃないのかい。」
まゆ子「どーでもいいところだな。つかず離れず段々と、だよ。」
釈「王道です!」

じゅえる「もうひとつ、ややこしいところが有る。るぴかちゃんと円条寺さんはキャラデザ一緒だ。小学生バージョンと巨乳美女バージョンてだけの違いだよ。」
釈「親戚、ってことですか。」
まゆ子「あー、そこはー、前の「統則最前線」で設定詰めておけばよかったな。あー、未定です!」
じゅえる「ま、いっか。」

 

釈「まとめです。

・ルパン三世のイメージ、テイストを最大限に尊重する。しかし、パクリがバレない程度のキャラクターの改変を行う。
・盗みを主体にした物語は最近の状況からは難しい。盗み出した後の攻防戦を主体とする。(オリジナルルパン三世も同じ)
・必然的に戦闘シーンの比率が上がるが、残虐シーンやら猟奇・サイコ犯罪等の描写は極力排除する。読後感がすっきり爽やかであることが望ましい。
・これらの方針を貫くと刺激が低くなり読者の興味を削ぐ可能性が高いが、キャラクターの魅力で引っ張っていく。その為にルパン三世に比してキャラクターに日常性の度合を高めて共感を呼ぶ。
・主人公であるルパン三世相当のキャラは、反対にミステリアスな存在となる。周辺を固めるキャラクターの日常性、親しみやすさに対比する形で、近寄り難さや高級感を演出する。
・家系によるブランド価値を打ち出す戦略は、今回完全に放棄する。既存の物語のブランドからイメージ引用は避ける。が、ルパン三世そのもののイメージは強く想起させるべきだ。
・ルパンファミリーはあくまでも悪であり、正義は国家権力、銭形相当のキャラが強く担うべきである。あくまでもルパン達は犯罪者であり自己の意志で人類に貢献するなどは無い。
・サイバー空間のイメージやらコンピュータウイルスを使用する電脳戦は、これを忌避する。無視するわけではなく、中心には据えないだけで十分な表現が必要だが、物理的な窃盗や戦闘の描写を重視すべきである。
・敵は組織犯罪、ギャングやマフィア、共産テロリスト、宗教をベースとする戦闘集団であり、個々の対策では切り抜けるのが難しい。状況設定に、ルパン達が自由に解放されるタイムリミットを設けて逃げ切りを可能とすべきである。
・敵犯罪組織の戦闘員は遠慮容赦なく殺して良い。しかし残虐描写は避けるべきであり、その点を強調する為にルパン達が敵を倒したことを素直に喜ぶ表現を挿入するべきである。
・敵の側に正義があり個々の考慮すべき事情が有る、などという寝惚けた設定は一切排除する。これは舞台となる世界観より生じる要請で、組織犯罪は明確かつ残虐に一般民衆を搾取し虐殺している。殺されてしかるべき憎むべき存在で、彼らに慈悲を掛ける事すら許容すべきではない。無論、ゲストキャラに同情すべき理由が有る等の場合は別である。
・この物語の真の主役は土器能登子であり統則ロボットタコハチである。これが活躍する場面の描写こそこの企画の目的であるが、ルパン達が逮捕される事は無い。失敗を繰り広げることとなるものの、ルパン達の敵に対してはタコハチ隊は完全勝利を収めるべきである。反対に考えると、警察という絶対正義を担う存在に対しルパン達は十分な敬意を払い、自ら正義を成し遂げる行為は厳に慎むべきである。
・ルパン達には犯罪から乖離した日常生活が存在し、それは彼らの弱点とも成り得るが、物語上で決してそれらが側面から攻撃されるなどの描写は厳に慎むべきである。だがキャラクターの行動はそれを護る為の十分な配慮を必要とし、場面によっては密かに危機に陥る事も許容される。無論、最終的には完全解決で脅威が排除されるべきである。
・銃器火器描写に完全なリアリズムを求めることは難しい。だが、可能な限り追求する。無論、魔法に等しいあり得ない大活躍大成果は排除すべきである。とはいうものの、コンピュータ制御される銃器の性能は現在の人間が用いる銃器の性能を大幅に越えていると想定され、現在の常識ではあり得ないレベルの戦闘が実現すると思われる。奇蹟は排除するものの、ルパン達の成果は十分に奇跡的である、との印象を読者に与えねばならない。
・ルパンと言えば美女。十分に恋愛沙汰を描写するべきであるが、反面セックスは不要に思われる。もしくは、読者からは隠蔽される事となる。この制限を解除する為に、警察側や能登子の存在しない、ルパン達を完全な主役としたエピソードを用意する事が望まれる。故に、敵を二種類用意し、警察機構が絡まない暗闘のストーリーが背後で展開される必要がある。このサイドストーリーの流れは、ルパン達の出自に関わるものとして特別な配慮がされねばならない。

 

じゅえる「こんなもんかねえ。」
まゆ子「あー、こんなもんでしょう。まとめの最後の段ね、「盗みと戦闘」ストーリー、「個々のキャラの背景」ストーリー、もう一本背骨が欲しくないかな?」
じゅえる「ふうん、なるほどねえ。世界征服の企てがなされていて、それを打ち破るダークヒーロー、そういうのだろうねえ。」

釈「おもいっきりうさんくさいですねえ。現在のルパン三世は、それが無いからこそ生き残っていると思いますよお。」

まゆ子「そうか。それを排除して居るからこその、ルパン三世か。うーん、考えちゃうな。」
じゅえる「釈ちゃんの言う事は正しい。物語に流れを生み出す為に与えられる安易な背景ストーリーは、ルパン的長寿命シリーズにはふさわしくないものだ。「名探偵コナン」を見てみなさい! いつまで組織を引きずっていますか。」
まゆ子「うーむ、たしかに。アレは良くない。すっきりしない。」

じゅえる「だがまるっきり無いのも寂しいもんだ。ルパン達とは無関係のストーリー、というのはどうだろう。要するに歴史のうねりって奴だ。」
まゆ子「大河ドラマの中における、暗黒のプリンスの挿話、って感じかな。歴史は動いていき、それに従ってルパン達の立ち位置もやはり変わって来る。歳も経る。子供だって生まれるだろう。」
釈「動いて居る世界の中での物語、そういう事ですね。」

じゅえる「時間の流れを無視しては、現在のルパンのように化石になるってわけだな。まあこの企画がそんなに長持ちする訳も無いが。」
まゆ子「まあ、物語のテイストとスタイルを計算する為に最終到着地点を設定するのは、定石というもんだ。始めは終わりの中にある。」
じゅえる「物語の重層性ってやつか。語られない謎がある事で、なんとなく奥行きの深い物語に見えて来る、てね。」

 

釈「その謎は、円条寺さんに頑張ってもらいましょう。彼女の動きこそが歴史の動きですよ。」
まゆ子「うん。何の為にルパン達が盗みをしなければならないのか、そこの謎は円条寺さんの中に有る。有るけど、決して明らかにはされないのさね。」

じゅえる「いじわるだなあ。」

 

【「天使峡奇譚」設定発掘】08/09/01

じゅえる「お、絵が出来てる。しかも「げばおと」のイメージイラストだ。」
釈「『創始暦6666年』ですね、EP5に出て来る。」
まゆ子「久しぶりに頑張ってみました。」

じゅえる「しかしなんでこの人なんだ? 描くのならもっと別の重要人物が居るだろうに。」

まゆ子「いや実はこの人は非常に重要なキャラなんだ。プレ弥生ちゃんという位置付けだな。」
釈「プレ、ってことは、この人が弥生ちゃんキャプテンの元キャラですか。」
じゅえる「弥生ちゃんって「ウエンディズ」完全オリジナルじゃなかったの?」

まゆ子「完全オリジナルだよ。ただし、似たキャラは以前に弄くってたんだ。それがこの人。」

釈「具体的にはどういう人なんですか?」
まゆ子「この人は6666年にはトリバル峠のとんでもない荒地の高地に住んでいる。この人の元の世界観も同じような環境で、「天使峡」ってとこだ。「天使峡奇譚」というお話だった。」

じゅえる「それって、げばおとと関連性があるの?」

まゆ子「実は大有りだ。この天使峡ってところはオリハルコンの産地で、周囲を強国に囲まれながらも坑夫達が独立国家を作って危険を省みず採掘している。中央政府ってものは無く、坑夫達の元締めが有力者となって合議制で運営している。」
釈「あ、タコリティと円湾の関係にそっくりだ。」

まゆ子「そうなんだ。げばおとは天使峡の設定を下敷きに一部構成されているんだな。」

 

じゅえる「そもそもその「天使峡奇譚」の設定はどういうの?」

まゆ子「主人公ミレニアム・カプリコーナスは、天使峡を牛耳る最有力者の娘。

 父というのが早い話が「英雄」であり、ミレニアの母がヒロインとしてとんでもない冒険をして、皆に総議長として祭り上げられる程の人物だ。ミレニアには3人の兄が居るが、これもまた父母に似てよく出来た才能溢れる人物で、一家によって支えられる「天使峡」国は磐石を誇って居る。
 で、末娘のミレニアは兄弟の中でも最も父親に似ていると言われる気性の持ち主なんだな。さらに、伝説のヒロインである母譲りの念動の力を持つ。」

釈「基本的には、さほど珍しい設定ではありませんか。」
じゅえる「王家じゃないけどお姫さまなんだ。」

まゆ子「特別なのは「天使峡」そのものだ。この土地は文字どおり、天使の化石がごろごろしてる。それも100メートルオーバーの大物ばかりが石の中に眠って居る。死体ではなく、本当に眠って居る。」

じゅえる「生きてるの?」
まゆ子「すごく長い時間を眠って居る。数億年前大地創造の時に天使達が基地として用いたのが、この天使峡なのだよ。で、次の出番が来るまでずっと眠って居る。」

釈「不老不死なんですね。」
まゆ子「うん。しかも天使の身体はオリハルコンで出来ている。この物質は溶けたガラスのような水飴のようなもので、強い力を掛けるとゆっくりとたわむけれど、決して壊れない。火にも酸にも機械的衝撃にも冒されない無敵物質なのだ。あまりにも固い為に加工は不可能。天使を殺そうにも殺す手段は無い。」

じゅえる「天使を殺そうとする奴が居るんだ。」
まゆ子「いや居ないんだけどさ、天使が居れば悪魔もどっかに居るんだろう。眠る天使達を護るガーディアンという魔法生物が天使峡全体を徘徊しているんだよ。で、こいつらもオリハルコンで出来ている巨大な怪獣だ。ドラゴンとかキングコングを水飴で作ったような。で、オリハルコン採掘の坑夫達に襲い掛かるんだ。」

釈「しかし、どんな手段でも加工出来ない物質を採掘しても仕方ないでしょう。」

まゆ子「そうなんだ。だからこの地は長く放置されてきた。周辺諸国から落人やら迫害された宗教関係者やらが住み着いて、細々と生きて来た。雨も降らない、地面はオリハルコンで草木も生えない。食べるものもほとんどない。だからどの国の勢力からも見捨てられ、故に不法に住む事が出来るんだな。」
じゅえる「まさにタコリティだ。」

まゆ子「で、宗教勢力がここには住み着いた。中には偉いお坊さんも居て魔法の力でオリハルコンを加工して、霊剣とかを作る事が出来たんだ。

 なんとなれば、オリハルコンは念動力に感応してその形状を変える性質を持つ。というよりも、天使自体が念動力の塊みたいな存在だ。天使は大地創造で働いた、とさっき言ったけど、この時に使われる力が念動力。奇蹟を起こす力だ。天使の格は念動力の強さのレベルで決まる。そして天使自身も念動力で動かされる物質オリハルコンで出来ている。とな。」

釈「つまり強力な念の力を使う事が出来る人は、オリハルコンを自由に扱えるんですね。」
じゅえる「ふむ。いかにもファンタジーなお話だ。」

 

まゆ子「ところがどっこい、近代になって魔法にも科学の目が向けられ、念動力を合理的に用いて工業的にオリハルコンを加工する産業が生まれたのだ。

 つまりは念動力があればいいわけだ。昔は偉いお坊さんや仙人しか使えなかった術を、そこらへんのずぶの素人娘にも使えるようにする術が生まれた。女工哀史と同じで、念動の才を持つ貧しい娘をかき集め訓練を施して、工場でオリハルコンの加工を行わせるのだ。
 もちろんそんな事を長く続けて居れば身体を壊す。偉いお坊さんと違って訓練が行き届いていないから、無駄も多いし身体を損なう寿命を縮める事ともなってしまう。しかし近代資本主義の波はそんな娘達を食い物に魔法を産業化していくのだ。」

じゅえる「おおー! なるほど、これはやはり並のファンタジーとは違うもんだな。」
まゆ子「そして原料であるオリハルコンの採掘を巡って、周辺各国からならず者どもが流れ込み、貧しくとも平和だった天使峡は一転して動乱に見舞われる。娘達はかどわかされてオリハルコンの加工をさせられる、またはならず者相手の娼婦にさせられる。殺人強盗は当たり前という世の中になるのだな。」

釈「なんというか、酷い話ですねえ。」

まゆ子「そこにさっそうと現れたのが、若きミレニアのおとうちゃんだ。彼はばらばらだったならず者の頭を説得しあるいは撃破してつぎつぎと自分の子分にして、ヒロインのかあちゃんの助けを得て坑夫達を苦しめて来たガーディアンに対処する効率的な戦闘集団を結成し、返す刀で周辺諸国の妨害と干渉を排除して天使峡独自の政体を作り上げ、ここに住む人の利益を何よりも考える国を立ち上げた。」

じゅえる「文字どおりの英雄なんだ。」

まゆ子「貧しい娘達も保護して、身体に負担のかからないオリハルコン加工産業を国内に育成し、その為の念動の師匠として偉いお坊さんも招致して、効率的安全に国内で富を生産する事に成功する。何も無い土地に王道楽土を作り上げる。」
釈「ええはなしや。ほんま涙出るで。」

じゅえる「ふむ大体分かった。で、それから何十年か後のお話なんだ。」
まゆ子「そういうこった。30年てとこか。末娘のミレニアは念動の才が有ったので、より強力な術を会得する為に仙人様のところに弟子入りして、術を修めてこの度めでたく御帰還になったわけです。ここから物語は始まる。」

 

釈「ところで、この絵に描いている、脚にしがみ付く子供はなんですか? 鬼みたいですけど。」
まゆ子「焦らない!

 で、オリハルコンの採掘を行っているわけだが、なかなか重たいから機械力無しでは不可能なのだな。そこで巨大ロボットを使う。これも魔法工学の産物で、周辺国から買い入れたものだ。ただし、我々が考えるロボットと違いかなり原始的な制御方法を用いる。つまり、昔の戦車みたいに人間が多数必要なのだな。操縦手が居て車長が居て機関士が居て通信士が居て両手を動かすオペレータが居て、武装していれば砲手も居て、と何人も乗っている。」
じゅえる「戦車だね。第二次世界大戦までの。」

まゆ子「これを用いれば、大きな部材を確保出来る。もちろんオリハルコンの切り出しには念動力が必要で、それなりの訓練をした女の子が必要なのさ。
 で、昔はこの女の子が酷い扱いを受けていたのだよ。でも今では免許登録制にして一括管理により女の子を保護し、違反した奴らには貸出さないようにしている。従わない奴らは討伐する。」

釈「つまり、あらゆる観点からも社会が良くなったわけです。」

まゆ子「だが好事魔多し。天使峡が良くなって富裕になると、周辺諸国が目を付けるようになる。また別の所では魔法ロボットを使っての戦争が引き起こされて、戦略物資であるオリハルコンの供給元を牛耳ろうという策謀がある。今は大人しく従って居る坑夫達の親分衆も、外国からの密使に誑かされてなにやら裏で反逆を企てる、のさ。」

じゅえる「ふむふむなるほど。」
釈「ファンタジーというよりも、冒険物らしくなってきました。」

 

まゆ子「で、ミレニアはその策謀を阻止する為に、公式の警備隊でなく独立業者が運用する一台の警備ロボットを借り上げて独自の活動をするわけだ。

 そしてミレニアが会得した仙術を用いれば、オリハルコン生物であるガーディアンを一発で倒す魔法の砲弾が作れるのだ。というか、念動力を封じ込めたオリハルコン製の砲弾は、ガーディアン体内に撃ち込まれると擬似魔法生物として発動して内部から食い荒らすのだ。」
じゅえる「ふむふむ。ファンタジーの主人公として十分な素質がある、ってことだ。」

釈「そのロボットというのは、でかいんですか。」
まゆ子「大きいよ。10メートルくらいある。乗員も10人くらいは優に乗れる。というか、人間載せる為のロボットもあって坑夫の輸送にも使われる。ちなみに車輪で動く車両は無い。というか、天使峡は断崖絶壁だらけでそういう機械は入り込めないんだ。ロボットだってふわふわ浮く能力を持っている。ちなみに飛行機はあり複葉機が飛んでいる。豪華旅客機だ。」

じゅえる「道を整備してスロープを付けたりトンネル掘ったりはダメなの?」
まゆ子「天使峡自体がオリハルコンで出来てるからね。掘るとビー玉みたいな屑オリハルコンが出て来るんだ。これを掘るのは非常にめんどくさいし硬い。だから土木工事は諦めた。

 ちなみに屑オリハルコンと本物のオリハルコンの違いは、念動力に反応するか、だ。屑オリハルコンもちゃんと反応するんだが、精々形状を変化させるくらいだ、くっつきもしない。本物のオリハルコンは魔法生物の一部と看做す事が出来て、念動力でプログラミングして独自の機能を発揮するんだな。」
じゅえる「つまりは、経済的価値の無いオリハルコンで構成された大地、それが天使峡なんだ。」

 

まゆ子「で、ロボットだ。巨大ロボットは沢山の人の手で制御されねばならない。しかし部分的には自動化もされている。制御装置というのがあって、自動で動いていたりする。魔法の機械が入ってるんだな。」
釈「そうですか。魔法コンピュータですね。」

まゆ子「機械には疎いミレニアが、制御装置の鉄筺に「女人不可触」と書かれているのを怪訝に思い、フタを開けて見ると、」
釈「ふむ。」
まゆ子「中には小鬼が詰って居る。小鬼が制御しているのだ。」

じゅえる「それがこの子供かあ。」

まゆ子「ミレニアは制御筺の中で働いていた小鬼達を次々と解放して、車長になんて酷いコトするんだと怒鳴り込む。が、それは間違いなんだ。
 小鬼はまさにこういう事をする為に作られた一種の魔法生物、いや人形で、角に封じ込まれた死人の魂で動く。胴体はプレスで作られた合成樹脂だ。魔法の力で動くから、狭いところ息苦しいところでも大丈夫、お腹も空かず夜も眠る必要が無い。ただ角に封じ込まれた魂が数年で切れるから、それまで動くだけの存在なんだ。」

釈「どこかの国の工業製品なんですね、これも。」
じゅえる「機械の扱いがひどいから、と怒鳴り込んで行くんだ。怒鳴られた方はすごい迷惑だな。」

まゆ子「ミレニアは以後小鬼をたいそう可愛がる。しかし小鬼の寿命は最初から定まって居るから、或る日ことんと動かなくなるんだ。死体は業者が回収して行く。で、再び市場で買って来て制御筺に詰め直す、というわけだ。可哀想で可愛くて無常で、というところが味になるのだね。」
釈「ふーむ、可哀想な小鬼なんですねえ。」

 

じゅえる「で、このお話はけっきょく頓挫ですか。」

まゆ子「元々はマンガの企画だから。巨大ロボットは文章にすると途端にばかばかしくなる。」
釈「まあ、仕方ありませんねえ。」
じゅえる「マンガにしても、巨大ロボットはガンダムでなきゃ商業的に成功しないよ。」

まゆ子「そうなんだ。だからこの企画は放棄され、キャラクターだけが浮いてしまった。で、「ウエンディズ」企画の際に、弥生ちゃんというキャラが成立する運びにになるんだな。」

釈「残念ですねえ。」
まゆ子「うん、巨大ロボットと言っても、この作品中ではベトナム戦争の時の哨戒艇みたいな感じで、のたーっとした緊張感の中にある雰囲気は良い企画なんだけどさあ。」
じゅえる「ま、いつか復活する事もあるでしょう。」

釈「とっぴんからりとしゃん。」

 

【サルボモーター】08/06/12 

(長編連作に発展したのであしどりむに移転しました。)

 

【吸血リンク】08/05/12]

まゆ子「てなわけで、今回改めてオンライン小説のリンク集ふたつに登録してみたわけです。」

じゅえる「まあ、もちっと早くしてもよかったけど、エロコンテンツがあればリンクしづらいからねえ。」
釈「それに、げばると処女の第一巻は修正が必要ですからねえ。」

まゆ子「それが一番の問題だった。おそらくは、第七章までは書き直さにゃいかんはず。まあ、もう二章までやったけどさ。案外と楽だ。」

じゅえる「七章まで、というのは何故?」
まゆ子「第一巻は書いている時点で未だ設定が定まって居なかった。なんとなくうまく転がり出したのが、弥生ちゃんが東金雷蜒王国に上陸した後くらいかな。つまり、ここまでは未だフォーマットが定まって居なかったんだ。だから書き直さにゃいかん。

 でも、げばおと第一巻は初めて最後まで書いた記念すべき作品だ。なるべくなら手は着けたくないんだが、新しい読者様をお迎えするのに、そうも言ってられない。」
釈「まあ容量に余裕がありますから、別の所に置いときましょう。

 で、げばおとはともかく、その他の作品はどうしましょう。」
じゅえる「簡単になんとかなるのは、蠱螢(仮)だ。出来るものからなんとかするのが定石でしょう。」

まゆ子「うーむ。しかし、新しいのを書くには、或る特殊な精神状態に陥らなければいけないから。」
釈「トランス状態ですか。」
まゆ子「いやー、或る種の透明感というか、頭冴えてるのかボケてるのか分からない、特殊な時間なんだよね。あの時は一気に50枚くらい書ける。」
じゅえる「で、できたものを修正するのに四苦八苦するんだな。」

釈「しかしなんですね。げばおとばっかりやってるわけにもいかないんですよ。」
じゅえる「違いない。もうちょっと分量の少ない250枚くらいの中編書かなくちゃ。まゆちゃん、どうにかして。」
まゆ子「あー、そうだねえ。250かあ。適当なネタ無いかなあ。」

釈「また新しいシリーズを考えますか。」
じゅえる「いやそれは。止めといた方がいいいよね。」

まゆ子「もう考えた! 吸血鬼のお話。」
釈「うう、またですか。」
じゅえる「吸血鬼は読者の皆様大好きだから仕方ない。で、」

 

まゆ子「時は現代。吸血鬼が社会に認知されて、むしろステータスになっている。」
じゅえる「支配者ですかい。」
まゆ子「ノンノン。スターです。人間社会は磐石にあり、支配者層はちゃんとある。そこに、吸血鬼がスターみたいな感じで存在する。勿論殺人OKだ。」

釈「いいんですか、それ。」
まゆ子「えー日本人口1億3000万として、吸血鬼は300人ほど。吸血鬼一人が年間に食べる人間は5から精々12人。最大数を取っても3600人しか死なない。交通事故や自殺者数に比べると微々たるものだ。」
じゅえる「まあ、ね。」

まゆ子「これをコストとして考えると、吸血鬼が社会的に公認される時の利益が遥かに上回る、ってこったよ。吸血鬼は才能に溢れてセンスもいい、となってるからね、普通。」

釈「なるほど。でもそれで世論は納得しますかね。」
まゆ子「そこはそれ描きようだ。えーと、吸血鬼の貢献で日本社会の成長率が向上してるとか、芸能で外貨を稼いで来るとか。まあこういう金銭的な利得は良しとしましょう。

 で、時の政府が日本人を統制しようとする時のガス抜きとして、何者にも縛られない自由な存在「吸血鬼」をクローズアップする、とかだね。その裏では一般庶民に対する統制は強化されてるんだ。目眩しに使われている。」

じゅえる「ふむ。」

まゆ子「さらに、吸血鬼ハンターとかいうのも居る。年に一度、吸血鬼がひとり選ばれて、ハンターに公の場で狩られる。というかテレビ中継でハンター対吸血鬼の決闘がリアルタイムで放送される。」

釈「うわ、それすごく面白そうです。」
じゅえる「なるほど。納得がいくな。それならば殺された犠牲者も納得いくというわけか。」
まゆ子「更に言うと、別に血を吸われたからといって吸血鬼にはならない。そう簡単じゃない、て事が知れ渡り、また治療薬もあったりする。そしたら物好きにも吸われに行く馬鹿も出るわけだ。」

釈「ふうむう、それはいいかもしれません。でも吸血鬼ってどんどん増えていくから面白いんじゃないですか?」

 

じゅえる「そうだなあ、どうにかして理屈を考えよう。吸血鬼ってどういう繁殖の手段を使うんだ? それが確定していないから、そういう話になるんでしょ。」
まゆ子「あー、勿論セックスはするけれど、生物的な繁殖行動ってのはなんか変だよね。面白みに欠ける。どうしようか、処女でないと妊娠しないとかにするか。」
じゅえる「処女に、セックスでない方法で妊娠させる。たとえば血管から受精卵を送り込むとか、かな。」

まゆ子「もうちょっとエロくてカッコイイのを考えよう。

 ともかく、血を吸われたくらいじゃ吸血鬼にはならないが、だからと言って影響力が無いわけじゃない。吸われるとエンドルフィンが増加して頭がぱーっと逝っちゃう、ってことにするか。で、その快感が忘れられずに吸血鬼に従う。または、自分でも血を吸うことが快感を発生させるトリガーとなり、吸血鬼妄想に取憑かれて犯罪行動を繰り返す。」
釈「普通にまともな設定です。効果を打ち消す薬があるわけですね。」

 

じゅえる「じゃあ、…そうか、そうだ。吸血鬼の繁殖には特別な血が必要で、それは吸血鬼自身の血、というのだとどうかな。」
まゆ子「吸血鬼が吸血鬼の血を飲む、ってこと?」
じゅえる「あるいは、吸血鬼を産む処女に飲ませる、ということで。」

釈「なるほど。ではその血を提供する吸血鬼は、死にますか。」
まゆ子「ちっとやそっとでは死なない方がいいが、或る特別な方法で得られる血が繁殖に必要不可欠なもの、というのがいいかな。これをやられるとマジに死んでしまう。」

じゅえる「いいんじゃないですか。だからハンターは血を失わないように殺さないといけない。」

まゆ子「するってえと、吸血鬼は繁殖に最低一人の同胞の死を要求する。年に一人死んで一人生まれる?」
じゅえる「一人死んで5人生まれるくらいじゃないかな? 乱交パーティで。」

釈「待って下さい。繁殖に人間の処女が必要、ということは吸血鬼の女はどうなるのです?」
じゅえる「あー、それもそうね。」

まゆ子「そりゃそうか。うーんとじゃあこうしよう。吸血鬼同士の婚姻による妊娠では、吸血鬼は生まれない。醜い食人鬼になってしまう。だから、人間の処女に身ごもらせる。で、吸血鬼の女は人間の男と交わって、ハンターを産む。」
じゅえる「特殊な能力を持つ人間?」
釈「もう少しひねりが欲しいですね。」

まゆ子「じゃあ、こうしよう。吸血鬼の女は通常自分が吸血鬼であることに気付かずに成長し、普通に人間として暮らして居る。これを目覚めさせるのに必要なのが、吸血鬼の血で、これを無理やり飲ませると受胎可能な吸血鬼となる。これが人間の男と交わって産んだ特別な子供がハンターになる。」

じゅえる「普通にセックスして生まれるというのは面白くない。」

まゆ子「いや、じゃあこうしよう。吸血鬼の女は吸血鬼の血を飲む事で初めて吸血鬼として覚醒する。しかし妊娠可能となるのは、吸血鬼が特別な方法を用いて殺された血を飲む時で、同時に妊娠もする。」
釈「男の吸血鬼は関係無いですね。」
じゅえる「殺されるのが男オンリーだと?」

まゆ子「うーむう、えーとねえー、女の吸血鬼も殺されて欲しいなあ。じゃあ飲んだ血の性別で男か女かが決定するとか。」
じゅえる「つまり生殖に必要な遺伝子を取得するわけね。死んだ吸血鬼の。」

まゆ子「うむ、ちょっと良くない。」

 

釈「やはりセックスは無いとダメでしょう。乱交パーティですよ。ここは一発凄いグロをいきましょう。男も女も入り乱れて妊娠対象者とセックスして、喰い殺すんです。で、死体に例の血を掛けると甦り、妊娠する。」
じゅえる「OKです。」

まゆ子「つまり、誰の遺伝子を受継いだか分からないんだね。」
釈「そうなりますか。あるいは複数の子を産むとしてもいいですね。」

じゅえる「では暫定的にそういうことで。女の吸血鬼がどうやって女に子を産ませるかは興味があるけどさ。」
まゆ子「それは卵を産みつけるんだろ。」
じゅえる「そうか、そういう手があるな。じゃあ、妊娠者と卵子提供者が違う、ってことか。

 してみると、別にこれが吸血鬼である必要も無いか。ただの人間の処女でいい。」
釈「そうですね。じゃあ元に戻しましょう。清らかな処女に、皆で卵を植えつけ種付けをして、死んだ所に特殊な血液をぶっかけると蘇生し妊娠し、次代の吸血鬼が繁殖する。」

まゆ子「この血は、つまり人が生き返る血なんだ。」
じゅえる「そうだね。…価値があるか、普通の人間にも。」
釈「いかにも権力者が喜びそうなアイテムですね。」

じゅえる「じゃあ、吸血鬼ハンターってのは、吸血鬼の生殖に欠かせないアイテムとして特別に飼育されている、ってことか。」
まゆ子「自分達は何の為に生かされているか分からないわけですよ。うんうん、それくらい皮肉なものがいい。」

 

じゅえる「大体わかった。まあ、このネタがあれば普通一本くらい書ける。書けるけど、それじゃあわたしらは納得しない。」
釈「ごく普通のアクション、ごく普通の吸血鬼もの、ですよね。これで出来るのは。」
まゆ子「いやこれはごく普通の吸血鬼ものを書く為の企画だから、それでいいんだよ。」

じゅえる「でもこれは、鳥の目でしょ。俯瞰するというか、すべてを知って居る人間が書く物語でしょ。そうでないとテレビで中継する意味がない。」

釈「テレビ視聴者、吸血鬼、権力者、いずれもそれぞれ認識はちがうものの、このシステムを肯定しているわけです。これはそのまま書くとおかしいです。この枠組みをぶっ壊そう、という反体制的ヒーローが必要でしょう。反逆者ですよ。」
まゆ子「そんなもの要らないけどなあ。単に美人の吸血鬼がぶち殺されるだけでじゅうぶんでしょ。」
じゅえる「まあ、そういう話だと納得して下さる人が少ない、ってことかなあ。ひねりが有るようで無い、というひねりもあるけどさ。」

釈「でも実際、このシステムをぶっ壊さねばならない主人公というのは誰なんでしょう。」
じゅえる「やはり、裏に隠された陰謀というのがまだあるべきではないかな。人類と吸血鬼共に滅亡に向かう、愚かな選択が。」
まゆ子「だが、吸血鬼がぶち殺されるのは正義だぞ。繁殖の為に誰かが死ぬというのもまた正義。吸血鬼がまた元の闇に隠れて人知れず人を殺す世界が正しいのだろうか?」
釈「うーむ、それはー、このシステムは進歩なんでしょうかねえ。」

まゆ子「吸血鬼の血を飲んだ権力者、ってのは不老不死になるのかな。それだとまあ正義も作りようがある。」
じゅえる「100歳くらいまでは生きるかもしれないけど、不死じゃあない。そんなもんかね。超強壮剤と考えるといいんじゃない。」
釈「100歳まで元気にばりばりセックス出来るし権力の亡者を続けられる。十分な利得だと思いますけど。」

まゆ子「うーむ、そうだねえ。あまり効き過ぎて長生きし過ぎると、吸血鬼を全部殺してしまおう、とか考えるかもしれない。このくらいがいいか。」
じゅえる「だが、その程度を正義がぶち殺すわけにもいかないでしょう。爺の権力者がいつまでも居続けるのは問題かもしれないけど、吸血鬼が彼らを見逃しにするわけでもないよ。」

釈「正義の為に吸血鬼が天誅を下す、んですか?」
まゆ子「それも無いではない。吸血鬼はエライ賢い頭いいから、社会全体を管理する為にはそんな連中は適度に噛み殺しておいた方が良い、と計算するかもしれない。」

釈「ますます困ります。主人公はなにをするべきでしょう。」
じゅえる「足元をがっちり固めないといけない。この話はまずは、使い捨てか?」
まゆ子「そのつもり。だから、ハッピーエンドに終る必要も無いし、キャラが生き残る必要も無い。」
じゅえる「とするとー、ダークなホラーで上等ってことか。」

釈「うちの芸風ではありませんね。」
まゆ子「そこが問題。」
じゅえる「明るく楽しく人殺し吸血鬼殺し、というはなしでも無いしねえ。」

まゆ子「主人公を誰にするか、で話は展開のしようが変わる。吸血鬼にするかハンターにするか、普通の人にするか。」
釈「ハンターって結局なにものなんですか? そこが分からないとちょっと続けようがありません。普通の人が武術を鍛え抜いたんですか、それとも元から吸血鬼的能力を持つとか。」

じゅえる「此の世の人ではない、という手もある。幽霊とか。」
まゆ子「霊が取り憑いた人、というのはどうだろうね。武術も鍛えるけれど、なにか霊が降臨する儀式を行い、これに殺される事で吸血鬼は不死身の血液に転化する。」
じゅえる「ふむふむ。超人的能力を発揮するにはそのくらいがいいか。じゃあ、この儀式の秘密を暴くというところで、どうかな。」

 

釈「誰が暴きます?」

まゆ子「えーと、そうだねえ。基本的なことを暴露してしまえばだ、現在想定する主人公、吸血鬼の少女は『マクロスF』のミシェル(訂正シェリルだ)みたいな美少女を想定している。若くてぴちぴちの美人で世間一般にはアーティスト吸血鬼として知られる。」
じゅえる「若い吸血鬼か。それが殺される?」
釈「可哀想ですね。」

まゆ子「そうなんだ。まだ外見上の実年齢に近い期間しか生きていない、30才くらいの吸血鬼だ。いくら籤引きで生贄が決まるとはいえ、これは理不尽と彼女は思うのだね。」
じゅえる「逆襲に転じるか。それもいいねえ。勝ってもいいんでしょ。」
まゆ子「問題ない。勝率低いけど。」

釈「主人公決まりましたね。ではとりあえず「ミシェル」を仮名で使っときましょう。」

じゅえる「衆人環視、誰からも死を望まれる吸血鬼少女が、ハンターの攻撃をかわしつつ偶然にも吸血鬼全体の秘密に肉薄し、暴露する。こういうことね?」
まゆ子「ふむ。」

釈「吸血鬼は白木の杭を心臓に打ち込まれたら死ぬ、といいますが、これを用いましょう。特別なハンターが白木の杭をぶっ込んだら心停止して、不死身の血液を発生する。」
まゆ子「それ以外の鉄杭とかぶっ込まれても、心臓は動いて居なくても身体を引き裂いてでも逃げ出すパワーとタフさがある。白木の杭だけが例外ね。」
じゅえる「何故?」
まゆ子「吸血鬼は本来樹木の精、という事にするかな。樹だから、少々の損傷でも復元して死なない。」

釈「日光はどうなのです? 日光の下では動けない事にしますよね。」
まゆ子「ちょっとくらいは動ける方がいいよ。」
じゅえる「普通に動ける。ただ2時間くらいが限度、ってとこにするかな。後でひどい火傷になって復元に一晩掛るとか。」
まゆ子「変態する事にしよう。日光を浴び過ぎると人のカタチが保てずに本性を表わす。」
じゅえる「それが樹木、だね。」

釈「ではこうしましょう。樹木っぽいんですが、肉質なのです。動物の肉で出来た植物、という感じになります。」
じゅえる「では、白木の杭をぶっ込まれたら、花が咲くんだ。で、肉を絞ると聖なる血液が採集できる。」
まゆ子「いいでしょう。」

じゅえる「では、ハンターってのはそれを媒介する、蟲?」
まゆ子「蟲かな。」
釈「蟲でいいんじゃないですかね。」

 

【ルビの威力は絶大なり】08/03/16

まゆ子「というわけで、げばおとEP6 「第三章 恋のプロトコル」が第一稿が出来たわけだ。オマケ付きで95枚って事は実質87枚くらいかな。本編は70枚ってとこ。」

じゅえる「でか。」
釈「そりゃまた大きいですねえ。頑張り過ぎですよ。」

まゆ子「あー、なんだ。つまり、前半と後半と別々に書いたのがあかんかったな。標準で30枚以上って条件を両方ともクリアしちまったんだ。」
じゅえる「つまり二回分なんだ。」
まゆ子「もう一回分書けるぞ。というか書く。
 今回書いたのは前半が神聖王ゲバチューラウがゲルワンクラッタ村に駆け込むところ、後半が駆け込んだゲバチューラウがティンブットの舞対決をするところ。しかし、ゲバチューラウに従った赤甲梢が東金雷蜒王国領を移動中いかなる困難に出くわしたか、これがまるっきり書いてない。」

釈「またオマケですか。」
じゅえる「まあ、一応は押えておくべきかな。」

まゆ子「てなわけで、頑張ってなんとか早く掲載にこぎつけますよ。」

 

じゅえる「しかしながら、95枚か。もうちょっと小さく読みやすくできないものかね。」

まゆ子「黒いしね、漢字ばっかりで。ファンタジー世界にはカタカナ語が導入出来ないと来たもんだ。」
じゅえる「そうなんだ。現実世界でカタカナ語で表わされるものは、ファンタジー世界に導入すべきではない。外来語の外来は避けるべきだからね。」

まゆ子「黒くて長いってのは、こりゃあ読みにくい本の絶対条件ですか。なんとかできないものかな。」
釈「大丈夫ですよ。るびを振ればいいんです。」

まゆ子「るび?」

釈「そうです。るびを振ると、漢字ばっかりの本でも途端に読みやすくなります。」
じゅえる「そりゃそうだが、児童書じゃあるまいし。」

釈「先日私、古書にて押川春波の『海底軍艦』を入手いたしました。復刻本ですが、復刻自体昭和47年ですから、れっきとした古書です。」
まゆ子「海底軍艦といえば、アノ海底軍艦の元ネタか。」

じゅえる「そりゃ戦前の本だな。るび振ってるの?」
釈「ばっちり。とても読み易い本です。」
まゆ子「そりゃるびだから。」

釈「それが違うのです。戦前の本ですから、旧字体の旧仮名遣い、おまけに旧常識の旧教養主義が前提で書かれている本です。超難物です。にも関らず読みやすい。」
じゅえる「るびの効果は絶大ってことか。」

釈「ここで私はひとつの再認識をいたしました。るびは単にフリガナを書いているにあらず。思考の加速装置ではないでしょうか。」
まゆ子「思考の、加速?」

釈「『海底軍艦』、昔の人が昔の人を対象に書いた本です。非常に読みにくいのが当たり前。読むこと自体に知的負荷が掛かります。漢字も多くしかも旧字体です。いまの子供にはとてもじゃないが読めた代物ではありません。にも関らず、るびが振ってあるだけでこれが読めるのです。変です。」

じゅえる「それはー、…待てよ? るびが振ってあるから音は分かるけれど、漢字を読まないと詳しい意味は分からないよね?」
まゆ子「同音異義語は日本語にはめちゃくちゃ多い。にも関らず、るびを読むと同時に旧字体の漢字も読んでいる、そういうことか。」

釈「目で見ているけれど、音に翻訳していないのです。漢字は意味だけが脳で理解され、音はるびが受け持っている。思考自体は形体情報として処理され、直接概念の理解がなされており、音声言語への変換はるびにより防がれているのです。」

まゆ子「それで、思考の加速か。」
じゅえる「てことは、るび付きの本はきわめてややこしい内容の本、たとえば科学などの教科書解説書においても、理解を早める効果がある、ってこと?」

釈「わたし、るび付き漫画で幼少時より漢字をえらく詳しく知って居ました。当然漢字が指し示す高度な概念についてもです。」

まゆ子「ううむ、それはじゅうだいな示唆だな。るびを用いれば日本人の脳味噌レベルががくんと偏差値5くらいは引き上がるって話だ。」
じゅえる「そりゃあ凄い。」

釈「げばおとにこれを適用すれば、黒い本にも関らずさくっとすっきり読みやすく、しかも書いている内容のめんどくささをもすんなり理解してもらえるという寸法です。」

まゆ子「ううむ、大人向けるび本か。それは新発明だ。」
じゅえる「特許とろう、いますぐ。」
釈「いや特許は無理でしょ。」

 

【清子さま劇場〜どうすれば他のシリーズがちゃんと進展するかについての考察〜】08/02/10

まゆ子「というわけで二月です。げばおとEP&第2章は第一稿が出来ました。これも皆清子さまのおかげです。で、次はどうしよう。」
じゅえる「すなおに第3章の打合わせするか。」
釈「ちょっと面白みに欠けますね。しかしながら、別のものを手がけるというのもなんなんです。」

まゆ子「原因は分かって居る。蠱螢(仮)を手直ししないからだ。手直しというのは嫌なものでねえ。しかもやらないと次に進めないときたもんだ。」
じゅえる「そいうのを怠慢て言うんだよ。」
釈「うん。」

まゆ子「ではどうするか、が今日の話題。じつのところ蠱螢はそろそろちゃんとしないといけないのだ。」
じゅえる「まあ、ネタが腐るってことはあるもんね。」

まゆ子「必要なものは集中力。しかし集中力は集中しては得られない。」
釈「では今日の話題は、いかにして集中力を手に入れるか、ですか?」
じゅえる「いくらなんでもそりゃまゆちゃん、無理だ。」

まゆ子「無理なんだけどさあ、しかしながら無理でもない。あもうもなく、げばおとを書くということは集中力を用いるという事であり、これまでの成果はまさに集中力の結晶なのだ。」
釈「逆に言うと、その他のシリーズがうまく動かないのは、集中力の配分を間違っているから、ですね。」

じゅえる「げばおとに可能なものが何故他では無理か、か。なるほど一考する価値はある。」

まゆ子「あー、正直に言って他のシリーズとげばおとの差はたった一つしかない。」
釈「主人公が弥生ちゃんきゃぷてんである、ということですね。」
じゅえる「それはでかいな。」
まゆ子「愛の証し、と呼べるね。」

 

清子「こんにちわ。」

まゆ子「あ、さやこさま。ようこそお出で下さいました。」

釈「あの、どうしてまゆ子先輩は清子さまに頭が上がらないんですか?」
まゆ子「だってこの人、祥子さまのコンパチだもん。」
清子「ごきげんよう。」

釈「では、あの小笠原祥子さまのぱくりキャラなんですか!」
じゅえる「ちょっと違う。鶴仁波○○堂のお嬢様こと鶴仁波芽衣子さま、の外観を借りて祥子さまのキャラを投影したのが、鶴仁波清子さまだ。芽衣子さまのおばあ様に相当するキャラだよ。」
まゆ子「でぽには掲載していないから分からないんだけどさ、『大東桐子の、』シリーズにおいて、この鶴仁波○○堂のお嬢様は極めて重要な役所になる予定なのだ。」

釈「はあ、ではあだやおろそかに出来ない…、アレ? 桐子さんはどうしましたか?」
じゅえる「桐子にこんな知的作業はできゃあしない。」
釈「はあ。」

まゆ子「逆に言うと、鶴仁波○○堂のお嬢様は極めて知的なキャラとして造型されているからこそ、ここに居る。」
清子「どうぞよろしく。」

まゆ子「ついでに言うと、この人はここに出ている設定年齢で23歳だ。」
釈「え━━━━━━! そうか、そりゃあエライはずだ。」
じゅえる「とすると、この御方は私達よりもエライという事で設定しなきゃいかんのかな。」

清子「17歳と75ヶ月という事にしてください。」
じゅえる「井上喜久子さま方式だ。」
まゆ子「というわけで、清子さまはぴちぴち17歳なのだ。」

 

じゅえる「えーと、大体清子さまの設定は分かった。で、祥子さまのコンパチというのは?」
まゆ子「祥子さまが御美しいというのは論を待たないのだが、あの人結構癖が強く欠点だらけでもある。」
釈「ですね。」

まゆ子「だがそんなところが人気の秘密でもあるわけで、そこんところを解析した結果、ふわふわのほほんと無邪気に恐れ気もなく花園を遊ぶように現実世界で暮らしていく、というキャラを帰納した。それをウエンディズに当てはめようとしたけれど、本来その役を果たすべきシルクはー、まあメグリアル劫アランサ王女を見ても分かるように非常に生真面目なんだな、あの娘。」
じゅえる「軽くふわふわしてないもん。」
釈「つまりウエンディズには居なかったから、鶴仁波さんを連れて来た、というわけですね。」

じゅえる「その期待されるメリットは?」
まゆ子「風邪の高熱に浮かされて居る状態に近い、行動力がある。通常わたしを規定する上位自我がリミッター解除されるんだ。」
釈「えーと、つまり危ない?」
まゆ子「あぶないキャラだ、清子さまは。」

じゅえる「まゆちゃんよりも?」
まゆ子「私の御師匠さんは優子さんという人なんだけど、清子さまははじめて優子さんを凌駕できるポテンシャルを持っている。何故かそうなんだ。」
釈「まゆ子先輩の御師匠様よりも強いキャラ、ですか。」

じゅえる「でも強くなさそうだよ。」
清子「ええ、ぜんぜん強くありません。」

まゆ子「そこが一番の強さなんだ。はっきり言ってこの人弱い。しかもトロい。しかしジャストタイミングで動いている。わたしやじゅえるが通常の二倍で動いているのに対し、1倍できっちり動いて居る。」

釈「二倍の速度で動く方がいいんじゃありませんか?」
まゆ子「二倍有意義に使えばそりゃそうだが、二倍いらん事考えてるとなれば、これは問題。」
じゅえる「あー、そうね。あたしらいらんことばっかりしてるわ。」
釈「ですねえ。」

まゆ子「つまり集中力の配分という最初の話題に戻ればだ、私達は集中力の無駄づかいをして、本来振り向けるべき対象にはちっとも使って居ないんだよ。だからげばおと以外はちっとも進まない。」

じゅえる「一方清子さまは1倍できっちり動くから、余計なことは考えず集中力を本来の対象にだけ使って居る、そういうことか。」
釈「つまり、総体的に見ると、清子さまの方が私達より生産性が高い?」
まゆ子「というわけだ。」

清子「ほほ。」

 

じゅえる「で、具体的にげばおと以外のシリーズをまっとうに進める為には、なにをすればいいのですか清子さま。」

清子「わたくしがこれまでのでぽの進行状況をつぶさに観察したところでは、愛情をそそぐ対象としてのげばおとと他のシリーズとでは、根本的に異なる点がもう一つありました。」
釈「ふむふむ。」

清子「それは推敲です。他のシリーズに比べて、げばおとの推敲量はきわめて膨大です。」
じゅえる「まあ、一応四回するから。」
釈「他はほとんど投げっぱなしですね。」

清子「推敲はこれまで無駄や煩瑣な労苦として捉えられて来ました。くっちゃりぼろけっとの記述にもそれはよく描かれています。ですが、げばおとの生命は間違いなく推敲の量にあります。」

まゆ子「ということは、他のシリーズの進行を思えば、嫌がらずにちゃんと推敲しろ、と?」
清子「それが最も早い手段です。」

じゅえる「……めんどい…。」
釈「正論ですがー、せいろんですがあ。」

清子「やってください。」

じゅえる「…これがトロさの力かあ。」
釈「清子さま恐るべし!」

 

【運営に関する超重要なお話】08/01/24

まゆ子「閑話休題。深夜に風呂に入ったら熱が出た。頭痛い。」
じゅえる「夜の3時から2時間も掛けて、しかも真冬のくそ寒い中そんなことするからだ。」
釈「それは決して賢いとは言えませんねえ。」

まゆ子「というわけで、頭痛いから正常な判断能力が無い。というわけで、新しいでぽを作った。」

じゅえる「なに、また新しいコーナーが出来るの?」
まゆ子「いや、新しいサーバーを借りて、新でぽをこしらえた。」

釈「は? あたらしいHP立ち上げたんですか?」
まゆ子「うん。」
じゅえる「そりゃまたどうして。」

まゆ子「新しいのは、”FC2ホームページ”ってとこだ。無料で広告等の表示義務が無く、しかも容量1ギガバイトもある。」
じゅえる「1ぎが…。」
釈「ODNのオリジナルでぽは30メガですよ。なぜそんなに大容量が可能なんです?」

まゆ子「良くは分からないが、どうもこの程度はどーってことない世の中になっているらしい。なんせSDカード64ギガバイト1万円て時代だ。」
じゅえる「一昨年暮512メガバイト買ったんだっけ。3500円くらいだっけ。」
釈「おそろしくメモリとか記録媒体の価値が下がったんですねえ。」

まゆ子「しかしながらこのサービス、エロは禁止だ。」
じゅえる「ま、当然だな。ODNはいつまでも制限が掛らないから不思議に思うところだ。」
まゆ子「しかしながら、私は前々から小説オンリーのHPをつくりたいなあ、と思っていた。小説専門の検索エンジンとかに登録するのにエロ画像はちょっと問題あるからね。それに3DCGがもうでぽの容量では載せられないから、別HPの必要性は十分認識していたのだ。」

釈「そこで1ギガに飛びついた、と。たしかに3DCGにはちょうど良いですね、そこ。」
じゅえる「マンガもここならどんどん載せられるか。物辺村をいい加減に描くにはちょうどよいわけだ。」

まゆ子「しかも非常に早い。絵も長大なげばおとも、さくっと表示される。というか、ODNが遅過ぎるんだけど。」

じゅえる「はあ、しかしエロが無いのはちと寂しいな。」
釈「それはオリジナルでぽで拡充すればよいのではありませんか。非エロ絵をそちらに移せば、容量を節約出来るでしょう。」
まゆ子「てなわけで、新しいでぽ

       KOMNYAN’s でぽでぽ   に御期待ください。

 

【はりぽたを、はりぽたのままに、はりぽたする】2007・09・14

長くなったので、別の頁に飛びます。

【帰って来た新世紀Zエヴァンゲリオン2トロイメント焔の旅立ち、の設定を勝手に考える。07/07/29

まゆ子「げばると処女EP5 第9章「ここが峠」、絶賛炎上中であります。」
じゅえる「すでに100枚突破してるもんね。」
釈「しかも、まだ半分です。」

まゆ子「とりあえず、カロアル軌バイジャンは死んだ。カロアル兵師監も死んだ。穿攻隊が来て大逆転、これからイルドラ兄ちゃんが負傷して、エローアが食べられて、カエルっぽい神族特攻して、コウモリ神人が出ます。」

じゅえる「なんとかして200枚にならないようにしよう。」
釈「はあ。」
まゆ子「早く10章の弥生ちゃん書きたいよお…。」

じゅえる「と言いつつ、物辺村少女自警団の設定書きまくりです。」
まゆ子「戦闘シーンは疲れるんだ。」

 

じゅえる「てなわけで、夏休みです。夏休みといえば、一回くらいは映画を見るものですね。この夏公開で一番見物っぽいのは『トランスフォーマー』。」

まゆ子「その前に、ロッキーファイナルからこっち、三本見たわけです。「ハンニバル ライジング」、「スパイダーマン3」、「ダイ・ハード 4.0」。」
釈「で、どうでしたか?」

まゆ子「うーん、ロッキーファイナルにはあれだけの礼を尽した私が、何にも書かないのをみれば、大体の想像は付くと思いますけど。」
じゅえる「まね。」
釈「外れですか。」

まゆ子「ハンニバルライジングは、まあこんなものだ。ハンニバルは元から狂暴なんだけど、今回は凶悪犯だからあんまり知的という感じは無いなあ。アクションぽかったし。」
じゅえる「もうちょっと鬱屈した方が良かったと思うよ。それじゃあアメリカ人は見ないだろうけどさ。」

まゆ子「スパイダーマンですが、」
じゅえる「見なくてもよかったね。」
まゆ子「う、ん。まあテレビで見れば十分だったかな。おもしろくない、というのは最大の欠陥だ。」

釈「で、この夏本命とされていましたダイ・ハード4ですが。」
じゅえる「マクレーンが狂犬になってました。」
まゆ子「デリカシーが無くなってたねえ。人殺すにしても、もうちょっとびんぼくさい方が。」
じゅえる「やり過ぎはあかん、という見本みたいな映画です。ただちょっとは面白い。」
まゆ子「見てる最中はなにも考えてはいけません、て映画だね。」

釈「ことしはジブリもありませんし、そういえばアニメといえばエヴァンゲリオンが秋公開ですが、お二方は見にいかれますか?」

まゆ子「うん、まあね。」
じゅえる「いかねばなるまいねえ。」
まゆ子「何度も同じものをこさえて金を搾り取る、というビジネススタイルは気に喰わんが、見なきゃ批判も出来ないからね。」
じゅえる「作画に関しては向上してるでしょ。エフェクトとかCGとか。」

釈「消極的ですねえ、やっぱり実写でないと叩き甲斐がありませんか。」
まゆ子「実写エヴァはやっぱ潰れたのかな?」
じゅえる「頓挫、じゃないかなあ。やっぱり新路線でないと、続きが無いとフォローワーも動きにくいよ。」

釈「てなわけで、今回のテーマ『エヴァのつづき』です。

でも具体的にはどうしようもないですよね、あのキャラ配置は動かせないから。」
じゅえる「声優さんの劣化が酷いという話だけれど、完全新キャラ仕切り直し、が一番マシな選択かなあ。」

まゆ子「理想を言えば、なにもかも作り直しが一番早い。同工異曲、ではなく、おなじものを別なキャラが演じる、というのがね。

たとえばこんな具合。
テレビ版、つまりこれまでのエヴァの全てを肯定して。その結果世界はなぜか元の状態になっている。だけど地球上にはまるっきりぽっかりと黒い穴のような不可侵領域が出来ている。」

じゅえる「あ、それはラーゼフォンだ。」
釈「です。」

まゆ子「う! まあともかく、その穴から使徒がやってくるわけだ。で、外の世界の人達は、というか自分達は外に居ると思ってる人達は、これを迎撃する為にエヴァを作るんだよ。」
じゅえる「ま、新シリーズを構築するには簡単かな。前作をまったく否定する、というのは馬鹿馬鹿しいからね。」

釈「2025年、Zエヴァというのは、だめですか。」
じゅえる「言いたいことはよく分かるが、敵も味方も全滅だ。続けようが無い。」
まゆ子「続ける為には、なぜか世界が元どおり、という設定をこさえなければならない。無理だな。
だが意図はよく分かる。ガンダムシリーズと同様の発展性をエヴァに与える為には、そういう続きが絶対に必要なのだ。要するにオモチャの数が足りねえのだ。」

釈「試作型、先行型、最終試験型、量産型。あとは廉価版ですね。」
じゅえる「ミニエヴァ、は悪くないだろう。全高20メートルくらいの。」
まゆ子「いや、最低でも50メートルは欲しい。エヴァはウルトラマンが基本モデルだから。」

釈「50メートルでもずいぶんと大がかりなものですよねえ。それが世界中にうじゃうじゃと居る?」
じゅえる「12機くらいで、世界中が決闘戦を行い、人類の覇者を決めるとか。」
まゆ子「それ今やってる。ギガンティック・フォーミュラだ。」
釈「それならばむしろ、7の決闘で聖杯が現われる、とかの方がいいですね。」

まゆ子「ともかくエヴァ以降のアニメ作品にはエヴァの要素は十分入ってるんだ。おいそれと隔絶出来ると思ったら大間違い。なにかに似るのは必然です。」
じゅえる「逆に言うと、何かに似せたのがガイナックス作品なのだから、新エヴァもなにかに似せるべきなのだ、というかパクれ。」

釈「…どらえもん。」

じゅえる「え?」
釈「いや、まだどらえもんはぱくっていないかなあ、と。」

まゆ子「エヴァがどらえもん、とな? それは新機軸だ。一考の価値はある。
だが、どうやってのび太の願いを叶えるか、使徒との決闘をいかに実現するか。そこをまず解決しないとね。」

じゅえる「エヴァに乗ると、下りる度に下の世界が変わるんだよ。なんとなく自分に都合のよい世界が実現している。もしもボックスだな。
その一方で世界にひずみが多くなっていく。それが破綻するまでになんとかしなくちゃいけない。というのが、今回のテーマ。セカンドインパクト、サードインパクトに続く第四の破局ね。」

釈「世界を改変する為の装置として、エヴァは作られた、という事ですか。」
まゆ子「いや、最初の設定からそうなんだけどさあ。うーん、そうだねえ。どらえもんであれば、秘密道具を出さねばならない。エヴァの場合、世界改変の手段は極めて限られているんだけど、ここをなんとか出来る、としたら?」

じゅえる「つまり、必要があり世界を改変しなければならない状況が発生し、エヴァを使ってなんとかしようにも出来ないから、手段自体をエヴァに作らせる、ってこと? たしかにどらえもんっぽいし、乗る度に世界が変わるという設定にも合うかな。」
まゆ子「その機能実現も、念じれば叶うというてきとーなものではなく、極めて綿密に科学的に大規模スタッフを必要とし何ヶ月も掛る、とかの大事業なんだよ。」

釈「で、敵というか使徒はどこから?」
じゅえる「今回使徒はエンジェル、というのはいかんだろ。なにせ死海文書の計画に無い。」
まゆ子「ふむ。やはり人が乗る敵の方が敵ロボも使えておもちゃのバリエーションが増えますから、そうだねえ。少なくとも、ATフィールドは必要だ。ならば、尋常の兵器ではない。」

釈「こういうのはどうでしょう。機能実現の為には、複数体のエヴァもしくは同等物の相互作用が必要だ、それの端的な姿が戦闘である。ということで、故意に戦闘が引き起こされている。」
じゅえる「クラスの友達が、実は敵同士だったりするわけだね。定番といえば定番。」
まゆ子「コストとして人間の、というかパイロットの少年少女の心を蝕んでいく、というのは肯定する。しかし弱いね。傍若無人の強力でなにもかも破滅に導く問答無用の敵、というのは必要だろう。」

じゅえる「こういうのはどうかな?
実は世界中でこの試みは何度も繰り返されている。そして失敗して、ミニエヴァはコントロールを離れて敵になり、使徒になる。」
まゆ子「つまり、歴代パイロットとミニエヴァの損失分がすべて敵の使徒になるんだね?」

釈「つまり、何人もこの組織はパイロットを失っている、ということですね。でも失うという事は、つまり破壊?」

じゅえる「意図通りに機能を獲得できなかった時、エヴァが変質する、というのではないかな。つまりこれが、もしもボックスだ。エヴァを降りてみて、世界がなんとなく変わっているなあ、と思えばそのパイロットとエヴァは既に使徒に成り果てているんだ。自分では変わっているとは思わないし、組織の人も普通に居るし暮らしている。でも外部から見た場合、それは既に使徒化してしまっている。」

まゆ子「要するに、自分達が真の正義であるかわからない、って事か?」
じゅえる「だからこそ、全ての世界の使徒を破壊して、それらが持つ機能を分捕ってワンセット、つまりオリジナルの使徒であるアダムを完成させて、自分達がオリジナルになるのを目的とするんだね。」

釈「つまり、パイロットが3人居たとして、誰かが目の前で使徒になる、という事態も発生するんですね?」
まゆ子「それを防ぐ為に、使徒になる直前にミニエヴァをこちら側コントロールで破壊、もしくはプラグ排出でセーブするんだね。使徒になられては困るし、エヴァの建造には世界的コストはやはり掛るんだよ。」

じゅえる「やはり、世界全体 対 使徒、という枠組みなんだね? 必要とする機能を全て手に入れると、て? 機能ってなに?」
釈「むしろ、臓器である方が。」
まゆ子「機能のイメージというか現実的なモノとして、臓器という形で回収出来る。そいうのだな。」
釈「抜かれた使徒は、死にますね?」
じゅえる「それは、そっちの世界ではエヴァが破壊される、というのと同じだね。」

まゆ子「ん? そういえば、使徒をやっつけて臓器を確保したとして、複数をゲットした場合には、つまり使徒は基地に盗みにやってくる?」
じゅえる「そういう事だろうね。しかし平行次元が成立しているとすれば、よその世界からは接触出来ないよね?」

釈「スパイとか?」

じゅえる「使徒が出現した跡に残るATフィールドが道となり、限定時間の間ミニエヴァが探索出来る、ということにすればどうかな?」
まゆ子「ではATフィールドが何故残るか、を考えないといけないな。それはやっぱり、パイロットにダメージがとか心理攻撃でショックを引きずっている状態にある、とかでATフィールドが残存するとかかな。」

釈「では、エヴァは積極的に探索行を行うという事で。でも接触していない平行世界との接触はどうやって行います?」
じゅえる「そこは、自力で開けるということではないかな? ミニエヴァに機能を実現させるというオペレーションを行うと、それがある世界にこちらからATフィールドの道が開き、向うのエヴァが迎撃にやってくる。それはこちら側からは「使徒」に見えて、やっつけるとゲット。」

まゆ子「まてよ? そうすると、臓器の数は決まっているから、最初からエヴァの数も決まって居て、すべてが一個ずつ持っているってことか?」
釈「受精卵みたいなもので、細胞を分割したものからミニエヴァが出来ていて、エヴァが出来る度に臓器が増えていく、というのでは?」

じゅえる「エヴァの元を管理する大本の悪の組織、は必要ということか。そこがオリジナルな世界を自称する。」
まゆ子「完全な平行世界ではなく、どこかで皆が繋がっている、ということだね。…タイムパトロールみたいに。」
じゅえる「それそれ。机の引き出しがあるんだ。」

 

まゆ子「なにかがちょっとずれてるけれど、というか整合性がとれないところがあるけれど、ここんとこは謎ね。」
じゅえる「おかしいな、と思う所を残しておいて、てきとーに推察させるのも、親切というものだね。」

釈「そうですね。今までの話を総合すると、平行次元に同じエヴァと同じパイロットが複数存在する事になりますから。何人もパイロットがいて犠牲になっている、というのとは異なります。」

じゅえる「ここで優先すべきは、パイロットは何人も居て何人も犠牲になっており、主人公は段々倒している使徒に人が乗っている事に気付いていく、という恐怖感だ。だから、パイロットは複数あるべきね。」
まゆ子「さらに言うと、エヴァが際限無く増えていく、というのはそもそもがおかしい。つーまり、だ。釣で言うと、餌を取られるという事態は発生するんだよ。」
釈「使徒は撃破したものの、臓器は獲得出来なかった、という事例ですね。逆に言うと、パイロットの脱出には成功したものの、エヴァ全損。」

 

じゅえる「だがもうひとつ。おもちゃとしてのバリエーション展開をどうするべきか、だね。エヴァごとに形状は換えるとしても、全てがカスタム機というのはよろしくないし、廉価機がうじゃうじゃと出る、という絵は捨て難い。ガンダムとGMの関係をどうにかして獲得すべきだ。」
まゆ子「敵となるザク、も欲しいとこだね。」

釈「それはやはり、無人機ということで、武装も完全ミリタリー調で統一された無骨な機械としてのエヴァ、ということで。」
じゅえる「常に同じ機体に乗る、というのがそもそもおかしいのかもしれない。探索用と格闘用のエヴァは装備どころか機体が違う、という感じで、餌を摂られても大丈夫なようになっている、てのかな。」

まゆ子「主役機は、アレだ! 本来の機体のデザインが、使徒との格闘戦により部分的に破壊されて、以後復元が為されずにそのままにしておいて、パーソナルな特徴として認識される。」
じゅえる「耳無し、だね。青い耳無しのエヴァ。」

釈「では、ATフィールドを展開出来ないエヴァというのがあり、探索にしか使われない。でもパイロットは一緒、というのですね。」
じゅえる「ATフィールドは有りだろ。むしろ、S2機関が無くて、稼動時間に制限のあるエヴァ。原子炉を積んでもいい。」
まゆ子「おりじなるのジェットアローンをこけにする話、だよそれ。うんうん。」

釈「ではむしろ、探索用エヴァは本物よりも高性能で、空も飛べるとか。ただし、探索行で失敗した場合、パイロット共々に自爆してもらう。」
まゆ子「原子炉搭載ならば、そのくらいの出力は絞り出してみせるぞ。」
じゅえる「ふむ、なるほど。なんとなく形が付くな。量産機の方が性能がいい、という新機軸を打ち出せるわけだ。」

まゆ子「いっそ複座にするか、量産機は。」

釈「それでは、核動力の場合は平行世界への探索行では用いるものの、自分の世界で戦う時は危なっかしいから使わない、という事にしましょう。バッテリーで制限時間付き、飛行能力ナシで戦うのです。」
じゅえる「うむ。雑魚メカとしての機能も上等ということか。平行世界では、核動力を爆弾としても使用出来るとして。」
釈「他人の世界だと思ってやりたい放題です!」

まゆ子「となると、要するに臓器だから、S2機関を分捕っていくという話になる。ということは、最初の内はS2機関は保有しておらず、物語が進むにつれて獲得し、さらに複数を奪取して複数のエヴァを同時に無制限で稼動させる、とかの進展もあるわけだ。更には、傷付いた味方のエヴァからS2機関を引き抜いて自機に吸収するとかも。」
じゅえる「悪くない絵だね。」

釈「では、悪の親玉は量産型エヴァを大量に核動力で動かし、一気にS2機関の奪取を図る、とかするわけですよ。エヴァに無人機というかダミープラグで動き軍人が搭乗して操縦する、軍用機というもので、絶対避けるべき市街地に核動力で進入する。」

 

じゅえる「次行きましょう。きゃらです。うざい中学2年生の男子が主人公、女子2名が同級生のパイロット。この黄金の枠は外しちゃだめだよね?」
まゆ子「いや、女子の一人が歳上でも構わないと思うけどさあ、エヴァに期待される枠組みというのがあるから、そうかな。」
釈「しかし、いまやこの構図も方々で使われまして、くたびれてますよ。いいんですか?」

じゅえる「そうは言っても引きこもりを主人公にするわけにもいかない。今時14歳というのも、ずれてる気もするが、ねえ。」
まゆ子「うーん、いっそのこと小学生に、という手もあるが、ここは取り敢えず14歳ということで。で、主人公男子は親がえらいさんで無理やりパイロットにされる、という枠も崩しちゃなんねえだろね。」

釈「番組開始早々、秘密基地に連れて来られて無理やり。というのも、今時ですねえ。かといって、最初からばりばりに訓練されてるエリートパイロット、というのも月並みです。その中間の存在というのが。」
じゅえる「安室、だな。父親から贈られて来たゲームのチャンピオンで、」
まゆ子「それも月並みだ。うーん、そうだ一人っ子という設定自体が旧いんだ。兄弟がいて、上の方が親父の言いつけでパイロットになり、行方不明。弟が探しに来る、てのが。

釈「以前に失われたパイロットのひとり、ってことですね。それも月並みですが同じ手は二度使わない方が良いのは確かです。どうですか?」
じゅえる「ミサトさんの代り、をそのパイロットの同期、ということにすればいい。むしろ姉だね。」
まゆこ「そういう事なら、同じミニエヴァパイロットの先輩、だな。」

釈「しにますね。」
じゅえる「早い時期にね。」
まゆ子「アスカ1号だな。」

じゅえる「では、例の構図は、アスカ二号のところでようやく成立する、として。綾波は?」
まゆ子「おなじ手は通じない。最初から水槽にぷかぷか浮かべておこう。で、のっけから「これがエヴァだ!」と説明されてしまう。」
じゅえる「複座、ってことだね。常に二人乗らないと動かない。」

釈「謎がありません。」
じゅえる「同じ謎ならだめだろう。むしろ、いかにも人造人間に見える綾波が、実はただの人間だった、という事が暴露されていくのだよ。」
まゆ子「ただのにんげん、か。うーん、では主人公以下の他の人間はどうなのか、というとこに目が行くな。うんなるほど、ではこうしよう。
エヴァがもしもボックス状態い陥った際に、複数体ある綾波だけがその影響から逃れている。つまり元の空間を保持している。だから、彼女達を使えば元の空間と通信が出来る。これを利用して、裏の組織が司令を下しているのだ。」

じゅえる「つまり、この世界においてオリジナルの人間は彼女達だけ、ということだね。他は全て、虚仮?」
釈「なるほど、平行世界において自らの磐石の世界と思っているものがどんどん揺らぎ崩れていく、という展開ですね。で当初異物だと考えられていた綾波こそが、というか極めて異質な存在である彼女だけが、本物の人間である。と。」

じゅえる「じゃあ、綾波自ら、自分の事を「使徒」と名乗ろう。自分達がオリジナルの世界の使徒である事に、彼女達は自覚的なんだ。」
まゆ子「ふーむ。では攻めて来るかいじゅーは、なんと呼ぶべきか? 天使?」
釈「むしろ悪魔、でいいのではありませんか?」
じゅえる「モツ、でもいんだけどさ。機能を顕現した臓器のイメージなんだから。」

まゆ子「良く言った! ではエヴァンゲリオン2の敵は通称「モツ」だ。」

じゅえる「でもさ、臓器を集めてワンセットになったら、どうなるの? 神の肉体が甦るとか?」
釈「ここは108の臓器を集めると、妖怪に取られた元の身体を取り戻すとかですよ、ぱくりで。」
まゆ子「とりあえず、今回のコンセプトイメージはレオナルドダ・ビンチの解剖図だ。あの丸に手足を開いている奴。」
じゅえる「つまり、人類は神の手足を手に入れる、ということかな?」

釈「ここはアレです。つまりこれは、前回のエヴァンゲリオン1の補完の過程にある、ということで。確固とした人体イメージを獲得出来なければ人間に戻れない、ということを延々とやっている。だから、綾波は以前と同じキャラデザで出ているのです。」
じゅえる「たしかに、前回の続きというつながりは不可欠だ。しかしともすればそれは夢落ちにされてしまいかねない。」

まゆ子「夢オチでいいんじゃないかな? もしもボックスがテーマなんだから。」
釈「良い夢オチならば、それはいいと思いますよ。」

まゆ子「つまり、前回のエヴァンゲリオンのシリーズを追体験している、という形で物語は進行する。その中で主人公はー、えーとー、…シンジになる?」
じゅえる「あんなうじうじした奴イヤだ。」
釈「まあ、そうですよねえ。」

まゆ子「うじうじしているからこそ、共感されたんだろうと思うんだが、それも現在の状況ではちと違うか。うーん、だいたい今の世の中って乾ききってるもんねえ。愚痴ばかりで、他人なんか考えないし。」

釈「やはり、理想の人体を手に入れるということは、理想の人格も手に入れるべきだと思いますよ。臓器にイメージされる機能とは、裏を返せば精神の一側面であり、人体を再構築するということは、同時に精神をも再構築するという事です。」
じゅえる「それが、裏のえらいさん組織の目的だな。せっかく補完されるのに、いいかげんな肉体いいかげんな精神にされてはかなわない。神のごとき肉体と精神に進化するべきだと。しかし、それはやっぱり分からない。」

まゆ子「では、そこはやはり「おとなになる」という、永遠の青春と物語の大テーマをぶつけるべきではないかな。無論結論など要らない。ただ、…そうね、変らなきゃ、変りたい、変われない、という焦燥感にこのシリーズ全体が包まれている。救済ではなく脱出こそが、この第二シリーズのテーマとして上げられる。現状からの脱出と世界の新生だよ。」

じゅえる「いかにも厨なお話だが、まあいかにも厨だからこそ成功したわけなんだし。そんなもんかね。」
釈「そこらへんを突っ込まなければ、そもそも物語が成り立たないし、制作もできませんよ。」

まゆ子「ということは、「夢から醒める」という恐怖感、というのが常にシリーズに付きまとう、ということにもなる。或る意味それは現状への痛烈な打撃だ。主人公が守っていこうとする世界は夢で虚仮であり、なおかつ平和でも幸福でもない残酷な現実を孕んでいる。ちっとも幸せでない世界を夢とするのならば、起きた先の現の世界とは一体どれほどのものなのか?」

じゅえる「うん、なるほど。それは裏のえらいさんやら組織の上長の親父さんにとっても、恐怖なわけだ。主人公にとっても、アスカ1号が死ぬような残酷な現実が実は夢? という現実を突き付けられて、さあどうしよう。てもんだね。」
釈「なるほど。もしもボックスから下りたのび太は、しかしやはり紙の上にしか居ないんです。」

まゆ子「そこで、現実は自らの意志で作っていくものだ、なんてアホくさい教訓を出して来てはいけないわけだよ。もちろん、現実をそのまま受入れて黙って従うべきとも言わない。居心地の悪い現実も、やはり夢なのだということを、どうやって解決に導くべきでしょうかね?」
じゅえる「悟りを開くしかあるまいね。」
釈「まあ、そいう話になりますか。インド人だし、わたし。」

まゆ子「よし分かった! アスカ2号はインド人少女だ。カーリーだ。全世界の全てを焼き尽くし殺し尽くす偉大なる殺戮の女神だ。そういう風にミニエヴァの世界は展開する。第一シリーズでずたぼろにやられたアスカが、今度は逆に世界全体を殺戮に放り込むのだ。」
じゅえる「つまりは、煩悩をすべて焼き尽くす、とかだね?」
まゆ子「まあ、宗教的にはそいうはなしになる。」

釈「やはり、お釈迦様いや観音様をだしましょう!」
まゆ子「うーむー、悪くはない。キリスト教的に進行していた物語が、理想の人体理想の精神のフェイズに突入した途端に、それでは解決出来ない枠組みに放り出される、というのは美味しい展開だ。で、なぜか主人公は理想の肉体を取り戻したエヴァを操縦する羽目になり、カーリーアスカと対決する。」

釈「となると、そのカーリーという子はむしろ、人を傷つける事に対して大変な禁忌を覚える子、というのが良いのかもしれません。ミニエヴァの出動で街が毀れて人が死ぬのを極端に怖れる。それが、軍用ミニエヴァの集団攻撃で、切れてしまい、むしろ殺戮に神の摂理を感じるとか。」
じゅえる「うんそうだ、軍用ミニエヴァが人を殺すのを見咎めて、あんたたち目を覚ましなさい!って殺しまくる。」
まゆ子「う。それはブッシュ君に対しての痛烈な攻撃だな。」

釈「して、結論は?」
じゅえる「謎でいいじゃないか、今回も。」

まゆ子「それでは私が収まらない。うーんしかしなんだ、無しでもいいかな。むしろ何も無い、というのも結論であっていいのかもしれない。色即是空空即是色ですよ。カーリーに勝利した主人公は、何も無い空間に何も無い時間を生きる事になる。そして、何も無いことに驚かない自分にむしろ驚く。
そして自分が大都会の雑踏の真ん中に立っている、教室の喧騒の中に居る、自分の家に家族と仲良く暮らしている、好きな人と一緒に居る、事に対して、特別な何も抱かず、狼狽えもせず、過ちもせず。」

じゅえる「それが覚醒、か。」
釈「それが悟りですか。」
まゆ子「悟りになにか有る、と求めるのも間違いだろ。何も無いのが結論で、間違い無い。」

じゅえる「まね。」

 

じゅえる「では、つまりその綾波は最後には観音様になる。なにか特別な存在として、世界を正常化する?」
まゆ子「補完計画の最終段階では、綾波は天体的規模の存在として、つまり大地と月を自然のものとして認識するように、誰も不思議に思わない存在となる。だが、」
じゅえる「うーん、悟りを開く過程において、それでは矮小すぎるんだな。」

釈「カーリーと主人公の喧嘩を止めるのは彼女の役割ではないでしょうか、やはり。でも夢から醒めるという事は、彼女の場合。」
まゆ子「水に溺れる、ってことだな。水の中でぷかぷか浮かんでいるのがデフォルトと思われているキャラだ。溺れてもらおう。盛大にもがき苦しむ、空気が肺に入って来ないのを必死に水面に手を突き出して掻き分け、わずかな空気に食らいつく。
これでもかと言わんばかりの生の姿だ。」

じゅえる「酷い覚醒だね。」
まゆ子「だが、それを期待する声も小さくない。現実に目覚める事が苦しむ事と表現しなくちゃ、と思い込んでる連中も居る。そういう人達の為に、彼女は溺れる。溺れる事で初めて綾波は普通のアニメキャラから脱却出来るんだよ。」

じゅえる「そのもがき苦しみ空気を掴もうとする手、こそがー、あーなんだ、カーリーの殺戮とリンクするわけだ。」
釈「なんか、救いが無い感じになってきますが。」
まゆ子「ならばもっと救いの無いとこに。主人公のリアルエヴァはカーリーの殺戮を止めようとして、無数の人質をその手で掻き出すのだが、ちりめんじゃこのような人体がエヴァの手からどんどん零れていき、その中に自分の知った顔、基地のメンバーやら死んだはずのアスカ1号やらがあり、それが何度も何度も虚しく永遠に繰り返される事で、精神が崩壊し切れる!

てとこで目が醒めて、学園編に突入だ。」

じゅえる「あー、そんなとこまで再現するのか。」
まゆ子「だがこれも悪夢だよ。実際はほのぼの学園アニメなんだけど、その中に度々カーリーの殺戮や溺れ続ける綾波の姿がさまざまな手法で映し込まれ、主人公はこれがまた夢である事にだんだんと自覚していく事になる。死んだはずのアスカ1号に怯える身を抱き留められるとかね。」

釈「だんだん構図が読めて来ました。ビューティフルドリーマーのパクリです、それ!」
まゆ子「大正解!」

じゅえる「だとすると、最終的な解決に導くのは、でうすえくすまきなーであるところの。」
釈「いい加減にしなさい、とハリセンで起こしてくれる人が必要ですね。」

まゆ子「すべての夢を喰い尽くす、というのは最後に必要とされるエヴァの機能、だね。
そして無邪鬼と遭遇する。彼は主人公に、真に夢から醒める手段を示唆するが、それは。

というところでエンドだ。」

じゅえる「それは許さん。」
釈「まあ、ここまで来たら最後まで考えましょう。どうやって醒めます?やはり飛び降りますか。」

まゆ子「最終的には、無の色即是空空間に到達する。だがそれに到る最後の関門は、…そうだね、どうなりたいのか問われるね、やはり。」
じゅえる「どうなる、って日常生活に戻りたいと。と言ってもドレが日常なのか分からない。」
釈「異常が日常でありますから、異常を異常と思わない生活が、夢から醒めた状態?」

まゆ子「逆説的だけど、そういう事になる。だが主人公は既に知ってしまった、異常を異常と思ってよいのだと。そうなると、彼にとって世の中は異常な世界、夢の中の世界に他ならない。では異常の認識を他者と共有すれば、正常な世界に移れるのかといえば、殺戮に溺れるカーリーや際限無く溺れる綾波になる。」

釈「では、彼はすでに、覚醒している?」
じゅえる「というか、悟りとはそういうものだ。」
まゆ子「覚醒している人間に対して、起きろとはバカなはなしだよ。だが、それは無限に続く夢の、虚構の中を生きるに等しい。」

じゅえる「もう一段の覚醒が必要だ。というか、覚醒はあるの?というか、それが色即是空かい?」

まゆ子「覚醒を我だとすれば、覚醒していない状態は無我だろう。我も無し無我も無し、という状態になるのはやはり悟りだろうけれど、そこまで簡単に行き着くほど、主人公は出来たにんげんではない。」
釈「目の前の現実が色だとすれば、現実が夢だと理解すればそれは空でありましょう。現実が空だと認識すれば、それは別の現実を要求する事でもあり、色を見出すしかありません。」

じゅえる「えいまだるっこしい。簡単に悟りができるセットを用意しろ、どらえもんなんだから。」
まゆ子「うむ、まったくそのとおりだ。簡単悟りセット、というのを出します。」

釈「あの、”死”とかは?」
まゆ子「そりゃ誰でも真っ先に考えつく。だが、そこで無邪鬼は「際限無く溺れる綾波」を提示する。彼女の苦しみはまさに生の苦しみだ、だが彼女が真に欲しているものは”死”ではない、ということは誰の目にも明らかだ。それは簡単に却下される。」

釈「でもそれは、綾波を水から引っ張り上げれば済む事では?」
じゅえる「世界を自ら望むままに改変してもらう、とかいうのは出来ないのかな? 補完計画だから。」
まゆ子「それはカーリーが今一生懸命やっている。自分が望むままの世界を自ら作り出そうと殺戮を繰り返している。」

釈「では、永遠に覚醒する事が無い、という事を理解しろ、という事が答えですか?」
まゆ子「おそらくは、お釈迦様の答えはそうだったんでしょう。誰も覚醒していない世界の真ん中に、只一人だけ立っていらっしゃるのだ。これは凄まじい体験だ。」
じゅえる「天上天下唯我独尊だね。」

まゆ子「ちなみに、誰かえらいひとに目覚めてもらって、すべての悪と間違いであるところの自らを滅ぼす、消滅させてもらおう、というのがこのシリーズの人類補完計画。自分達が虚仮であるならば、えらいひとの覚醒によって無かった事になるだろう。ということさ。目的実現の為どんな悪でもやってのけるのは、そういう裏付けがあるからだ。」
釈「だからこその、究極理想の人体の臓器が必要だったんですね。そうか、それはそうだ。なんらかの異常に高度な目的が無いと、そういうばかばなしは続かない。」
まゆ子「とはいうものの、エヴァに乗ってる主人公こそが、そのえらいひとになってしまうのだ。困ったもんだ。」

じゅえる「ではそもそも答えが無い?」
まゆ子「答えがある、という事で話を進めるか。それとも、そんなものはないんじゃ、と話を進めるか。どっちにしたい?」

じゅえる「うーんとね、綾波が溺れるというのなら、解決策はもう一つ有る。泳げばいいんだ。」
まゆ子「??」

じゅえる「息が出来なくて水面を求めてあがいているんでしょ。でもあがいても息は出来ない。水面に顔を出さないと息は出来ない。なら効率的に上に出るしか手は無い、泳がなきゃ。」
まゆ子「うーん。比喩的には分かるけど、それが現実、というか夢から醒めるというのではどうすればよいか。ちょっと考えるな。」
釈「カーリーの殺戮では、ダメなんですね?」

じゅえる「意味が無いでしょう。自分に出来る事をやってもダメなもんはダメだ。前に進むべき術を使わなきゃダメだよ。」

まゆ子「夢から醒める夢、という奴だね。そういう場合は、これが夢であることを知るのが悟る…。そうか、目を醒まさなきゃと考える前に、これは夢の中なんだと自覚しなけりゃダメなんだ。水中を泳ぐというのも、自分が水の中にあるという自覚が無いと取れない行動だ。」

釈「しかしそれはまた結構難しいですよ。水の中にある人間は泡は見えますが、空気中に居る人間に空気は見えません。」
じゅえる「つまり、簡単悟りセットというのは、これが夢である事を知る為の道具、って事だ。」
まゆ子「綾波、だな。綾波の居る所、そこは夢なんだ。つまり、綾波は唯一の本物の人間ではあるけれど、彼女の居る所は現実ではない。」

じゅえる「でも考えてみれば、自分が夢の中に居ると知っていれば、それは醒めているのと同じなんじゃないかな?」
釈「夢から脱する努力は必要でしょう。でも、どちらからでも現実がわからないとなれば、夢を見ているという現実、にしか辿りつけない。」

まゆ子「夢を見ているという自覚のある意識にとって、真の現実とは。」
じゅえる「肉体、だよ。」
釈「ですね。」

まゆ子「つまり、目を開けばすべて解決、ということだ。」
じゅえる「エヴァの目がぱっちり開く、ってことだ。」
釈「理想の人体としての、すべての使徒の臓器を取り込んだエヴァの肉体ですね。」

 

【運営に関する重大なお話 byまゆこ】07/06/10

弥生「なにかでぽの運営に関しての重大発表がまゆちゃんからあるとかいう話です。」

まゆ子「あー、エロ絵を塗るのは飽きました。というか、折角物部村の連中というエロ担当キャラを作ったのだから、オリジナルエロで行ってみたいと思います。」

じゅえる「はあ。飽きたのか。」
まゆ子「というか、エロは別にいいんだけど面白みがないんだよね。動きが無い。動きを付けるとキャラが似なくなる。面倒くさい。」
弥生「つまりは、版権絵には発展性が無いということかな。」
まゆ子「うんそんな感じ。無論これ以降全然描かないというわけじゃないが、版権縛りはやめようというわけだね。」

じゅえる「でもさ、物部村ではなくウエンディズではダメなのかい?」
まゆ子「エロ絵には向かない。」
弥生「向くようにしてよ。」
まゆ子「やだ。」

じゅえる「意外と頑固だな。でもエロ絵と言ってもでぽでは絡みは無しだよ。百合はあっても男は禁止だ。」
まゆ子「だからバリエーションが作れないんだよ。というか、挿入も無しだからね。著しく禁欲的なのだ。だからバリエーションが少ない。」

弥生「それが物部村の子ならクリア出来るの?」
まゆ子「クリアしなくてもいいんだよ。あいつらはエロと同時にいい加減でもいいんだ。つまり描き捨てだね。」
じゅえる「そうか、ウエンディズの廉価版なんだ。真面目に描く気が無いんだ。」
弥生「うーむ、それは困った話だ。でぽはゴミ捨て場じゃないんだよ。」

まゆ子「とはいうものの、やる気が無いものはしかたない。ということでいい加減なエロ絵、しかも色が無いか部分的にしか塗らないものに変わる。」
じゅえる「完成すら予定されていないのか、うーんそれはなんというか、あの子達可哀想だよ。」
まゆ子「描いてもらうだけで有り難く思いなさい。」

弥生「でもあの子達はこういう感じで発言する事は無いの?」
まゆ子「無い。あくまでもあいつらはウエンディズの二軍だ。」

じゅえる「二軍といえば、ピンクペリカンズもいい加減引っ張り出してやらないといけないな。あれはエロ絵にはならないの?」
まゆ子「考えた事も無い。なんか特別なはなしでも書いてやるか、ウエンディズじゃなくてげばおとででも。」
弥生「そういう話ね。つまりはオリジナルを描こうというわけだ。そういう心境になったんだ。」

 

まゆ子「その代り、というわけではないが、3DCGも飽きた。」
じゅえる「なんだよ。」

まゆ子「3DCGでオリジナルものを作ってもキリがない。また発表の場も少ないし、受けも悪い。だから版権モノにチェンジする事にした。」
弥生「3DCGで版権モノを作らないのは発表出来ないし儲けられないからじゃなかったのかな? そういう理解をしていたんだけど。」
じゅえる「そうだよ、いくらガンダム作ってみても意味は無いでしょ。」

まゆ子「そりゃそうだが、3DCGの市場が縮小している現在ではどうでも意味は無いさ。同人業界では3DCGで美少女を作るってのは、おっそろしくマイナーな話に成り果ててしまったんだね。そこで考えた。諦めよう、て。」

弥生「諦めたらやめるのが筋じゃない?」
まゆ子「作りたいと思うのは思うんだよ立体モノを作りたいという欲求は全然引っ込まない。ただオリジナル美少女というのがなんだ、終点が見えないんだよね。そこで考えたのが版権モノだ。実のところ版権モノにはある落とし穴があって、或る程度特徴を押えると、それらしく見えてしまう。完璧に仕上げなくても、出来てしまっているところがあるんだよ。」

じゅえる「つまり、仕上げをやりたくないから版権モノに行こうというわけか。そりゃー、なんというかはなはだしく、いいかげんだ。」
弥生「2Dエロ絵はいい加減に、3DCGはさらにいい加減にやろうというわけだね。…いいのそれで?」

まゆ子「ちゃんとやるのはげばおととか桐子の小説だけでいいよ。小説はいいかげんでは徹らないからさ。」
じゅえる「つまりかるーくビジュアルの方は済ましてしまおうってわけだ。」

まゆ子「加えて、かるーく動きとか面白みとかをちゃんと出してやろうてわけだ。なんていうのかさあ、でぽで欠けていたのは動きとか面白みなんだけどさ、これは無いわけではなく、面倒くさいからやってなかっただけなんだ。マンガ見れば分かるでしょ、ほんらいウチの絵とかマンガは動いてナンボの代物だ。でも動くと色を塗るのが面倒くさいのでやらなかったんだな。」

弥生「あ、じゃあ先祖返りと言うか、動き優先にビジュアルの方向性を変更しようというわけ?」
まゆ子「ところが版権モノのキャラでは動きを付けるのに限界がある。というか、動きを付けるとキャラのイメージから外れて何を描いているのかわかんなくなるんだな。或る意味オリジナルキャラ化する。」
じゅえる「つまりは引用元があるオリジナルキャラ、になっちゃうのか。そりゃオリジナルで最初からやっちまうか、という気になるさね。」

 

弥生「3DCGは?」
まゆ子「3DCGは勿体ない。大量の時間と労力を費やして完璧に仕上げたとする。すると、それらを使って何十枚でも絵が作れるんだよ。でもそんなに載せるスペースが無いし、載せたところで意味も無い。発表手段の制限に引っ掛かるというわけだ。これははなはだ面白くない。というよりも、そんなに沢山作っても見てもらえない。無駄だ。」

じゅえる「うーん、基本的にモモ展に投稿するつもりで季節ごとに作って居たからね、そのチャンネルが潰れると創作意欲がなくなるってことか。」
弥生「でもそれは版権モノでも同じじゃないの?」

まゆ子「だってさ、いいかげんでいいんだよ、版権モノは。製作途中の腕が無いようなものでもそれなりに絵になる。キャラの名前を書いていると見るバカも居る。」
じゅえる「おきゃくさまをなめているなそのかんがえは。」

まゆ子「だが逆に、同じキャラの絵がどんどん入れ代わって行くと考えたらどうだろう。未完成のものがどんどん出来て行く、出来たものが色んなシチュエーションに放り込まれる。未完成であってもバリエーションのある絵はいくらでも作る事が出来る。完成の必要はそもそも無い。構図を工夫すれば頭部しか無くてもOKなんだ。」

弥生「でもそれは、そんなに沢山絵を置いておく事は出来ないよ。」
まゆ子「2Dキャラ絵でも、容量オーバーでどんどん切っているじゃない。掲載される絵は時限的なものと解釈すべきだ。となると、版権モノ未完成作品というのは実は、いい。」
じゅえる「つまりは、完成させる気は無い。」
まゆ子「完成したところで、それ以上の展開は無い。それで儲けるわけじゃないから、そこでおしまいだ。」

弥生「ちょっと待ってよね、ということはそれはむしろ発展的な考え方に基づいている、てこと?」
じゅえる「数とスピード、ってことか。垂れ流しまくるんだな。」
まゆ子「出来た端から流して行く、新しいのが出来たらお終いだよ。という、そういう考え方でやってみようと。それは物部村のマンガも同じだ、容量がもうちょっと大きければ考えるけど、所詮は見てもらえる量は限度があると考えると、垂れ流しは悪い話ではない。いつまででも存在するのは文字情報小説のたぐいだけでいい。」

弥生「見切ったんだ。」
まゆ子「うん。」

 

じゅえる「ではそういうことで、なんか実物を見せてくれないとね。」

まゆ子「実は今、ほぼ完成した「猫娘」がある。鬼太郎の新シリーズの萌え型ネコちゃんだ。これがほぼ完成状態だな。だからこのまま出す。ほんとうはもうちょっと手を入れてみた方が絶対いいんだが、だが所詮は版権モノだ。完成しても得になる事は無い。無いなら、これでお終いにしよう。次のキャラを作りたいんだよ、うん。」

じゅえる「そういうものか、じゃあ、ともかく出れば善し、としよう。」
弥生「流れる水は腐らない、てことだね。」

 

 

【復活!うえんでぃず くっちゃりぼろけっとのコーナー】07/05/13

ふぁ「最近のでぽ、くっちゃりぼろけっとは私達の出番が無い。無いだけでなくて、げばおととエロ絵しかやってないみたいだ。ちょっとこれは問題あると思う。」

しるく「そうね、もう少し視野が広い方がよいと思うわ。」
明美「そもそもくっちゃりぼろけっとは私のお料理コーナーとして始まったのに、どうしてこうなっちゃうのかな。」

聖「…。」
明美「聖ちゃんが言うには、まゆ子じゅえるシャクティの3人にメンバーが固定しているからだって。」

ふぁ「そりゃそうだ。あのふたりは自分が好きな事しかしない。」
しるく「シャクティさんは頭の良い子ですけど、おふたりの嗜好を変えさせるほどのあくの強い性格ではありませんから、」

明美「?? そう言えば、昔はなんで大丈夫だったの?」
ふぁ「そりゃあ、…あれ?」
しるく「何故でしょう?」
聖「…。」
明美「聖ちゃんが言うには、」

ふぁ「うっとうしいから、ひじりっちゃんには音声百倍フィルタつけなさい!」
明美「あい。」

聖「(前は蒲生さんが居たからよ。)」

ふぁ「あ。」
しるく「ああ、そうでした。弥生さんが司会をされていたのでしたわね。」

明美「げばおとの設定にはあんまり役に立たなかったけど、くっちゃりぼろけっとの正常化には弥生ちゃん役立ってたんだ。ということはあ。」
ふぁ「弥生ちゃんのとうじょうでーす。」

弥生「ども。えっへん、わたしの重要性がようやく分かったか。」

ふぁ「なんとかしてよおやよいちゃん。きゃぷてんでしょ。」
弥生「とは言っても、出てないものはどうしようもない。」

明美「弥生ちゃん自身はげばおとの主人公として大活躍だもんね。というか、しるくも聖ちゃんもそうだった。」
ふぁ「あんただって今度神さま役で出るでしょ。」
明美「出る予定だけど、それで終りだもん。」
ふぁ「あたしなんかさあ、男にされちゃうんだぜい。」

弥生「あ、そうだ昨日道を歩いて居て考えたんだ。明美、あんたげばおと出なさい。」

明美「?」
弥生「天の十二神から、わたしのところに警告として、天からあんたが降って来るんだよ。で、地面に激突して死亡。その姿から今後起きる凶事が占うのだ。」
明美「…それって、いいはなし?」
しるく「どうみても悪い話ですけど。」

弥生「いやいや、あなたはわたしが北の僻地で会った神さまの姿として現われるのだよ。激突死亡した場所が聖地として崇められ霊廟も建ち、ひっきりなしにお参りの人が来るという寸法ね。しかも死体が腐らない。柔らかいままそのまま残り続けるんだよ。」

ふぁ「弥生ちゃん、それまゆ子が言ってたんでしょ。」
弥生「あ、やっぱ分かる? そうなんだ、明美があんまり出ないなと言ったら、たちどころにこういう話をこしらえてくれたんだよ。ちょっとホラーっぽい演出で蒼穹から死体が降って来るという、ショッキングシーンをね、絵になるでしょ。」

しるく「でもわたし、そういうのはあまり。」
明美「あんまり得したような気がしない。」
弥生「あ、まあそうね。でも明美帝国のお姫様なんだから、いいじゃない。」

***

ふぁ「というわけでさあ、弥生ちゃんなんとかしてよ。」
弥生「話は簡単。うえんでぃずを再開すればいい。と言っても話はまゆ子が書くんだけどさあ、くっちゃりぼろけっとは本来誰が書いてもいいんだよ。」
明美「でもまゆちゃんには勝てないよ。」

弥生「いやわたしもさあ、げばおとだけというのは流石に問題有るかなあと懸念してたんだよ。もっと時事ネタ政治ネタ、あるいはまゆちゃん得意のSFネタを増やすべきではないだろうかと。ほら、うえんでぃずが出来た頃と比べても世の中の風潮もすっかり様変わりしてしまったでしょう。この修正をしなくちゃいけないわけね。」

ふぁ「ちょっと前までは、こんなに格差社会とか言わなかったもんね。」
明美「ほんとにどうなっちゃうんだろ。」
聖「(うちが修正しようと考えるくらいだから、もうその話も終盤ね。)」
明美「そういうものかなあ。」

しるく「でもここまで格差が問題視されていて、何もしないのは政治的に許されない状況なのは確かだわ。財政赤字とか保険年金の問題もあるけれど、一般国民に負担を押し付けるのは限界だと思います。」
ふぁ「しるくが言っても説得力の無い話題だね。」
しるく「すいません…。」

明美「こういうのって、良くなるのかな、やよいちゃん。」

弥生「聖ちゃんが言う通りなんだけどさあ、日本の歴史を考えるとこういう時は天皇陛下がクローズアップされるものなんだよね。つまり下層階級の人が既存の社会体制をひっくり返す為のツールとして天皇という誰も反対出来ない旗印を使うのね。
 戦後的価値観で考えると悪いように思える人も居るけれど、天皇という仕組みは本来異質なものを包含して社会の枠組みに組み入れる機能があるから、民族主義やら国粋主義やらにかぶれて格差社会をひっくり返そうという運動よりもよほど筋がいい。」

ふぁ「いきなり難しい話になったな。」
聖「(政治家が期待出来ない時には、政治家よりも上の存在に期待するのは筋だわ。力を持たない弱い人は特にそう。問題は、どういう形でそれがなされるかなの。)」

明美「右翼ってこと?」
弥生「右翼じゃないね。逆右翼って感じ。そう、たとえば資本の原理を考えると、一番弱いのは不法入国者、外国人労働者よ。この人達にシワ寄せが行く場合、誰がこれを護る?」
ふぁ「それはー、労働組合とかはだめだし、政党はないし、朝鮮総連とかは他の外国人にはむしろ敵対するだろうし、…無いね。」
しるく「やはり人権派の弁護士さんとかになるのではないかしら。でも、一般国民の支持が得られるかは難しい話にはなりますね。」

弥生「そうなんだ。本来、というか余所の国ではこの人たちはむしろ下層国民から迫害されるものであり、どこにも救いは無い。そして心ある一般国民もそれをどうしようもない。に対して日本ではそれを期待されるのが皇室なんだ。」
しるく「明らかに不正があり、しかも自らの力では修正出来ないとしたら、一段上の方に期待してしまうのかしらね。」

ふぁ「つまり、人道的人権的な皇室を中心とする格差是正運動が起きる、てこと?」
弥生「それが一番望ましい結果に繋がる。もちろん、それは法的裏付けを伴わねばならない。改憲スケジュールがちょうどそのあたりで結実するはずだね。」

聖「(どちらが早いかの勝負でもあるわ。)」

弥生「うん、運動の方が遅れた場合は、あまり良い結果を生まない。あるいは、外国人不法労働者が現状のレベルで留まるのならば、運動自体が起こらない可能性もある。だが、私はやはり増えると考えるさ。」

ふぁ「中国だね。」
弥生「中国だよ。」
しるく「やはり、起きますか。」
弥生「バブル崩壊は間近と見ます。そうなると、大脱出がはじまるんじゃないかな。」
明美「凄い事になるかな?」
弥生「凄い事にならなくても、十分酷い話にはなる。だから皇室を中心とする穏健な国家中心主義体制は確実に必要なのだよ。そうでない場合は右翼民族主義排他的国粋運動の方が勝ってしまう。」

ふぁ「でも一般の格差問題は、もっと早い時期での解決が望まれるよね。」
弥生「ガイアツです! アメリカからまたへこまされます。でもそれでいいのです。」
しるく「あまり、嬉しくないでしょうね、そういうのは国粋運動をなさる方には。」
弥生「うれしくなくても、無力よりははるかにマシです。ま、そこで内圧が一度高まるわけだよ。つまりは、国粋主義排他主義の圧力が高まるからこそ、それに対抗する穏健国家主義に人が集まるわけね。ついでに言うと、国粋主義は容易に資本に屈するのだ。階級上層部資本家の走狗として、これら排他主義が猛威を振るうという事例は、歴史上嫌と言うほど転がっている。格差社会の是正を謳いながら、まるで役に立たないのだよ。」

ふぁ「なんというか、弥生ちゃんの頭の中には、そういうスケジュールが出来てるんだ。」
弥生「歴史的必然と考えます。というか、このままではどうしようもないでしょ。であれば解決策に到る近道を突っ走るべき。これが最短です。」
しるく「回り道をしている余裕は無いの?」
弥生「すでに十分回り道をして、ぐるっと一周して戻って来た所だから。」

***

ふぁ「そういう歴史的展開の予測、というものが、でぽの改修になにか影響がある?」
弥生「もちろん。でも表立ってには無い。早い話が空気ね、現実の時間の空気と直結しているという感触を訪れて下さるお客様の感じていただくには、こういう話も定期的に挿入しておくべきなのだ。ウエンディズが現在頓挫しているのも、またそういう空気がでぽ内に不足しているからなのだよ。」

明美「じゃあ、雑談こそが本筋ってこと?」
弥生「生まれた時はそうだった。なら、新しく生まれ変わるとしたら、やはり先祖返りを一度してみるべきではないかな?」
ふぁ「まあね。」
しるく「はい。」

聖「(でも、政治向きの話はもっと突拍子の無いオチを持って来なければ、反発を食う可能性が高いわ。もっとも成功した場合でも半数にはそっぽ向かれるけれど。)」
弥生「まね、マトモな話は半数の敵視を買う。でもでぽはそれでも進まざるを得ないんだ。げぼおとも、現実とは隔離された逃避と考えられては魅力も半減だ。アレはじつのところ、現実の裏返しに出来ているんだからね。」

明美「桐子のお話ができてるらしいんだけど。」
弥生「あれも現実から隔離しているという感触を与えてはいけない作品だよ。つまりだね、私達がここでこんな風に話をしている必然性とは、はやいはなしが今までのまゆちゃん路線が作品自体の存在意義を薄くしてしまうという、自己矛盾するフェイズに突入したが故なんだ。よくできたフィクションは、進展するに従って独自の世界に埋没して魅力が内部で循環して閉じてしまう。げばおとは、それに陥るにはまだ早い。まゆちゃんは今こそ支援されるべきなんだ。」

ふぁ「そうか、結局でぽとげばおとは切っても切れない存在なんだ。」
明美「まゆちゃんピンチだったんだ。全然気付かなかった。」
しるく「それは、ではわたし達は、私達こそが雑談で支えなければならないのですね。」

弥生「早い話がウエイトの問題でね、げばおとが無責任である為には、他のところでバランス取っとかないといけない。最終的にはHP全体の空気が、げばおとの内容にも確実に反映される。意図しなくてもね。」

ふぁ「大分分かった。じゃあ私達は、えーと、具体的になにをしよ?」
明美「さっき言ったホラーはどうだろう。軽い笑いがとれる話題の方がいいでしょ。」
しるく「政治のお話はよそでさんざんやって居ますからね、でぽはもっとヘソ曲がりであるのが正しいと思います。」
ふぁ「弥生ちゃん、どう?」

弥生「わるくない。でもホラーってよくわかんないよ、私は。」

聖「(対象をどうするかが原動力ね。ウエンディズに投入するべきだわ。天狗の話、途中で止まってるのでしょ。)」
明美「えーとねえ、天狗の人の家の前まで出向いている状態で、ホールドだよ。ここまでで30枚ほど書いているの。」
ふぁ「そこまで書いてるなら出せばいいのに。」

しるく「まゆ子さんは、これでは良くないと思っているようです。厭兵術の描写が凄くなり過ぎて超人化したとお考えです。」
弥生「それはあれだ、後の続きでめりはりが付かなくなってしまうという罠に陥るのだね。まゆちゃんが止まるのは正しい。で、これから先に行く為にはその天狗と言う人の描写に工夫を入れて、前半の負担を軽くすればいいんだ。」

ふぁ「ホラーだ。」
明美「うん。」

***

弥生「しかしホラーと言ってもだねえ、あーそうだ、立ち乗りジェットコースターが事故って女の人が死んでるでしょう。」
明美「うー、あれはほんとのホラーだ。」
しるく「あれは例に出すと少し不謹慎になるのではありませんか。」

弥生「でもね、真のホラーは現実の生活に密接している場面でこそ起きるのよね。」

明美「はいはいはい! この間凄い怖い場面ありました! 3歳くらいの子供が二人、走行中の自動車の前に飛び出して通せんぼする遊びをしていました! 親は全然知らないの。」
ふぁ「まじで?」

明美「今度出来た大型ゲームセンター&ボーリング場でね、親はたぶん自動車を駐車場に入れるとかしていたと思うんだ。あそこのゲーセンは煙草くさいのに小さい子供がうろついているあまり良くないとか思ってしまうところだけど、つまり子供が外に出てしまったのね。」
しるく「それを目撃したわけですか。で、どうなさったのですか。」

明美「どうももこうも、それ見てるのは車の運転手と私しか居なかったよ。その二人、怒ってやりました。言うても分からないようだから、あえて怒りました。でもこっちもその後ずっとツキっきりになるわけにもいかないからドキドキでしたけど、しばらくして親が迎えに来たようです。」

ふぁ「あけみちゃんえらい。」
明美「あれはほんとにドキドキしました。」

弥生「車が危険なものだと、知らないのかなこどもだから?」
しるく「いえ、いくら子供だとはいえ、早いものは怖いでしょう。」
明美「いや、その道路は例外的に車の速度がかなり遅いところなんだよ。一本道だけどゲーセンから人や車が飛び出す確率が高いと見るのかも知れない。だから30キロ近辺で通るのを、こどもはこれなら怖くない、と感じるのかも。」

ふぁ「じゃあ実際は危なくない?」
明美「あぶなくないのとあぶないのとの境目の話かな。」
弥生「一歩間違えると、惨劇てわけだ。」

ふぁ「うん、なんとなくでぽで書くべきホラーの質がつかめた。じゃあなんだ、うえんでぃずの活動に伴う危険、ていうものを次の話に盛り込もうか。」
しるく「そうですね、焦点をちゃんと設定しているのがいいと思います。

 

 それはさておき、このような話はそうそう簡単にはできませんよね、話題が見付からずに。」
弥生「うん。”じゅえるのくっきーふぉーちゅん”が頓挫したのはそれが原因。」

明美「あのさ、皆でネタを探せばいいんじゃないかな。最初に次の話題を決めといて。」
しるく「そうですね。みんなで頑張ればなんとかなるかもしれません。」

弥生「じゃ、次。ホラーに続くとなれば、なにかな?」

ふぁ「やっぱ金儲けのネタがいいな。」
明美「新ビジネスのネタとか?」
しるく「わたしは、そろそろ梅雨時に入りますから、初夏の風物に注目したいと思います。」

弥生「どうぶつ、か。そうだね、動物観察をしてみよう。」

明美「なんかぜんぜん関係無いんだけど。」
ふぁ「つばめがうちの店の軒先に来てますけどね、そういうのでいい?」
聖「(動物の、なに?もう少し限定した方がいい。)」

弥生「よそのHPやブログでは無さそうな、動物ネタを探せ、というのはどうかな。でぽの独自性を追求する。」

ふぁ「そうか、ニュースバリューのある動物ネタね。」
明美「了解しましたあ!」

 

【「ロッキー・ザ・ファイナル」を見て来ました!byじゅえる】 07/05/04

じゅえる「というわけでGWなので、映画でも見に行って来ました。ロッキー・ザ・ファイナルです。ちなみに前回見た映画は、1月終りのアニメ映画『パプリカ』、これも面白かった。」

釈「じゅえる先輩はこういう格闘モノって好きなんですか?」
じゅえる「いやそうでもない。というか、ロッキー以外ではこういうのは見ないな。スポーツものも。ホラーもサスペンスもあまり好みではない。」
釈「じゃあ文芸モノですか。」

じゅえる「ヘンなの。」

まゆ子「こいつはそういう奴なんだよ。ロッキーを見に行ったのも、爺いのはなしだからだよ。」
釈「ああ!」

じゅえる「何を隠そう、日本ではこのろっきーざふぁいなる、売れてない。早くも上映館が無くなって、見に行った所も午後遅くの二回だけだ。これは見に行かなくちゃね。」
釈「なるほど、十分に変なんですね。」

 

まゆ子「で、どうだったの、やっぱりロッキーが勝つの?」

じゅえる「ロッキーシリーズは1では負けてるんだよ。だから勝ち負けはどうでもいいんだよ。」
釈「そうか、そうですよね。ロッキーて結構負けるんだ。」
じゅえる「負けて這い上がるからこそ、面白い。ガッツがある根性見せ所なんだ。今回の映画はまさにそういうおはなしです。」

 

まゆ子「粗筋を言うておくれ。」
じゅえる「基本的なことを言えばだ、このふぁいなる、何一つ予想を外す事は無かった。予想した通りの配役、予想した通りの敵、予想した通りの物語、予想した通りのファイティングシーン、予想した通りの感動。でもちょこっと泣いちゃった。」
釈「予想した通りの反応を示してしまったんですね。」
じゅえる「じっさい、こんなにベタなのに泣けるというのが、自分でもよく分からないですよ。まんまと嵌まってしまった。その意味ではこの映画、ちゃんとしたクリーンヒットを飛ばしてるんだ。」

まゆ子「ふぁいなるて名前が着くのはたいていロクでも無いんだけどね。」

じゅえる「或る意味それを期待していたんだけど、予想以上にスタローンがちゃんと零落れていたんだよ。まさにリアリティ溢れる零落れようだ。引退した伝説的世界チャンピオンは、まさにこうであるべきというそのまんま、幸福とは言い難いが不幸とは縁が無く、奥さんのエイドリアンは死んじゃっていたけどだからといって生活に困ってはいない、というかロッキーはイタリアンレストランのオーナーとして悠々自適に暮らしている。お客さんにせがまれれば現役当時の思い出話をして、誰もが彼を慕っている。街で見かけりゃサインをねだられ写真を一緒に写してもらって、皆大喜び。
 これ以上何が必要か? てなくらいだ。」

釈「それ零落れていないじゃないですか。」
まゆ子「いや、それはロッキーとしては、戦う男としては零落れきっていると言ってもいいんじゃないかな。だからと言って他にやりようもなさそうだし。」

じゅえる「そうなんだ。エイドリアンを失った以外、何も不幸はない。息子はあまりぱっとしないサラリーマンやってるが大学出でホワイトカラーで、ロッキーが何を言う必要も無い。ただエイドリアンを失った心の空白をどうにかしてまぎらわそうという毎日を送っているだけなんだ。」

 

釈「で、或る日突然心に火が点いたんですね。なにがあったんです。」

じゅえる「いや、なにも無いんだ。ちょっと昔会った事のある少女→おばさんに出くわして心が動いたけど、特に進展もしない。ま、そういう気が無いわけでもないんだろうけれど、やっぱりエイドリアンが一番なんだから、まあ無いんだ。」
まゆ子「街でちんぴらに囲まれて、ぼこぼこにされて、とかいうのは無いの?」
じゅえる「驚くことに、無いんだ。ちんぴらは出た、そのおばさんが勤めていた酒場で若いヤンキーの連中に絡まれたけど、世界チャンピオンの貫禄と迫力で軽く黙らせてしまったよ。暴力ですらない。」

釈「ほんとになんにも無いんだ。」
まゆ子「わかんないな、それでどうして戦うんだ?」

じゅえる「いや、むしろこれはこれでいいんじゃないかな。直接のきっかけは驚くほどさりげなく単純なんだ。現役世界ヘビー級チャンピオンと、在りし日のロッキー・バルモアとを対戦させてみたらどうなる、というテレビ番組のコンピュータシミュレーション、もちろん3DCGがね、でロッキーが勝っちゃったのを見て、なぜかやる気になってしまう。」

まゆ子「そんなかんたんな。」
釈「いや、そんなかんたんなはなしでいいんですか。」

じゅえる「だって、ロッキーはボクシングをやりたいわけで、世界チャンピオンと戦うつもりなんかないんだよ。やるべき事が無い、と見極めた時に最後に自分になにが残っているのかなと考えた時、まだボクシングをしようと思う心の焔が残って居た、というだけで、今更勝ちに行く必要なんかどこにもない。」

釈「おっそろしく稀薄なはなしですね。」
まゆ子「いやしかし、歳取ったボクサーがそれ以上を望むというのは、そりゃあ本当に変だファンタジーだ。」
釈「たしかにそうです。でも戦った相手は。」
じゅえる「その、3DCGでコケにされたチャンピオン。」

まゆ子「なんでやねん。」

じゅえる「いや、むしろこれはなんでやねん、というところがリアルなんだ。この黒人ヘビー級チャンピオンはね、若いんだけど無敵無敗なんだ。あまりにも簡単に勝ってしまうので、人気がなくついには試合を組んでもらえないほどになってしまう。そこで考えたのが、」
まゆ子「話題造りだ!」

じゅえる「本人はイヤだったんだけどね、若いし今更往年のチャンピオンとやって勝っても何もないし、むしろバカにされてるようなもので。でもプロモーターとかはこのままじゃあじり貧だから、話題造りをしようと考えていたところに、渡りに舟で、ロッキーがプロボクサーのライセンスを回復したというニュースが飛び込んで来るんだ。」

釈「・・・アメリカではありそうな話ですねえ。お金に困って、一回だけてのが。」
じゅえる「いやまったくその通りで、誰もこれをまじには考えてない。でも、ロッキーの周りの連中だけはまじなんだ。昔のトレーナーとか、シリーズ1でKOされた元ボクサーがロッキーのお店にたむろしてタダメシ食ってたのとか、エイドリアンのお兄さんのポーリーとか。ポーリーの役者さんがまだ死んでなかったのはめっけもんだな。この人が居なければたぶんロッキーの映画としては成り立たなかったよ。こちらもまた、リアルに零落れているんだ。というか、有る様に在るだけなんだが。」

 

まゆ子「で、根性の入ってないチャンピオンと、頑張るロッキーとがガチで戦うんだ。」
じゅえる「ラスベガスでね。いやーさすがに80年代と21世紀とでは、派手さが違う。今のプロボクシングとかプロレスみたいな派手な演出が色々あるわけなんだ。というか、意図的にそういうお祭り騒ぎを画面に挿入してるんだね。これはお祭りなんですよ、エキジビションなんですよって。」
釈「本当に、いいかげんでリアルなんですね。」

じゅえる「つまり、この映画はスタローンが現在のアメリカの風潮に対して批難というか抗議をしてみせる、というところがあるんだ。なにもかもビジネス優先で、人をおいてきぼりにしていく現代アメリカというものに。だから、その若い黒人チャンピオンも悪くは描かれて居ないんだ。むしろ、ぎすぎすとしたビジネスとしてのボクシングの中で才能がありながらも潰されてしまいそうな、そんな若者として描かれて居る。」

釈「悪役ではないんですね。」
じゅえる「悪役とはまるっきり縁の無い、むしろ可哀想な感じもするチャンピオンだ。観客からブーイングが飛ぶし、さっさと勝ってしまうからフルラウンド戦わないてので実力を疑問視されてるし、人気が無くて試合も組んでもらえなくなっちゃうし。おまけに3DCGでロッキーに負けると皆大喜びするし。」
まゆ子「気の毒なもんだな。」

じゅえる「しかしながら、そりゃどう考えたってロッキーが勝てる道理が無いんだ。ガチではね。そこでシナリオは考えた。ロッキーがマジで飛ばして来るもんだから、ついうっかりこいつも熱くなっちゃって、で、うっかり不用意なパンチから揉み合って、左腕を骨折しちゃうんだ。」
釈「うわ。」
まゆ子「骨折してもやめないの? ただのエキジビションでしょ。」

じゅえる「だから、やめられないんだ。人気取りで始めたこの勝負、降りたらますます人気が無くなる。ロッキーの勝ちになるわけだから、もう一生這い上がれないさ。という計算はあるけれど、まほんとの所は意地だね。チャンピオンのトレーナー、貧乏で駆け出しだった頃の元のトレーナーは要するにロッキーと同じような世代の古い人間なわけで、逃げる事を許さない。そして、チャンピオンもそのトレーナーの薫陶よろしく、逃げないボクサーなんだ。というわけで、試合はまさにロッキーとして進んでいく。」

まゆ子「ロッキーシリーズのボクシングシーンがリアルでない、てのは、まあ当たり前のはなしだからね。」
釈「そんなとこを突っ込む人間は、よほどものの分かっていないおバカの人ですよ。」

じゅえる「でもって、何度もダウンするし、ダウンし掛けて必死で堪えて、なにがなんだか分からないけれどひたすら前に進んでいくロッキースタイルのボクシングで、場内感動の嵐ってわけさ。涙なみだですよ。で、ロッキーシリーズでお定まりの最終ラウンドまでもつれ込んで、判定だ。」

釈「なるほど。歳取ったロッキーがそこまで現役チャンピオンと殴り合ったら、もう勝敗なんてものに意味も必要もありませんね。」
じゅえる「そういうこったね。現に、ロッキーは判定なんか聞かずにみんなで会場を引き上げちゃう。でも会場の観客皆大興奮の大感激だ。結局判定はチャンピオンの勝ちだけど、まあなんだ、ロッキーのボクシング魂を伝授された! てな感じですね。」
まゆ子「それもまた、勝敗は関係無いってわけだね。」

じゅえる「フルラウンド、10回だけど、戦った事の無いチャンピオンが、自分もべこべこにうたれながらしかも骨折の激痛の中右手一本しか使えないという、これ以上無い悪条件の中で、ロッキーのメガトンパンチをボディに食らい続けて、必死で堪えて戦い続けるんだ。その元のトレーナー、これも初老の黒人なんだけどさあ、が「ほんとうのボクシングをおしえてもらったな」とか言うんだよ。」

釈「はあ、なんというか、まさに昔むかしのお話なんですね。」
じゅえる「そうだね、ノスタルジックという感じもあるけれど、今だからこそそれが必要だという気もする。スタローンがロッキーで言いたい事が出来たから、今ロッキーを作ってみせたてことでしょう。なんというか、ロッキーの息子に対して言いたい事がある、て感じ。

 あと、ロッキーは要するに、モスクワで試合をしてから、以後アメリカでは試合をしていなかったわけだ。だから、最期の締めくくりをしなきゃいけないと思ってたんだろうね。なんというか、試合会場を後にするロッキーのガウンの背中に”ROCKY”て書いてあり、後ろに振り向かないんだ。これでやっと終れた、てのだよ。」

 

まゆ子「ふむふむ。つまりは、このくらい喋るほどには感動したってわけだ。」
じゅえる「うん。たしかに感動と言ってよいですよ。ただ、これを分かってくれないんだろうねえ、観客が少ないというのは。」
釈「寂しいもんですね。」

 

【桐子のおサムライの話 その2】07/04/30

 長くなったから、別のページに回します。

(つづく)

 

【恋する天使 金色のシャクティ2007/03/12

まゆ子「というわけで、げばおとEP5「第十一章 神聖宮にて」がとりあえず書けました。」

じゅえる「ちとスケジュール遅いぞ。」
まゆ子「あー、ま色々あるんだよ。神聖宮はやっかいな事が多くてね。特に描写には気を付けないとゴージャス感が出ないんだ。それに、以前にてきとーに設定して書いたものをひっくり返して整合性をとらなくちゃいけなかったんだよ。」
釈「エヴァちゃんも描いてましたしね。」

まゆ子それはそうと、新しいスキャナ買ったんだよ。旧いのはべつにぶっ壊れていないんだけど、CCDのが欲しかったしパラレル端子をとっぱらいたかったもんでね。」
じゅえる「でもモノクロ画像を取り込むのに、特に違いは無いでしょう。」
まゆ子「製造年月日が新しい分使いやすくなってるし、USB2だから早いし、CCDは被写界深度が深いから浮いた原稿でもきれいに写るよ。とくに雑誌のカラーグラビアを取り込むのによく効くんだな。」
釈「雑誌の取り込みがきれいというのはいいですねえ。」
まゆ子「それに、フィギュアのっけてぐあーんとスキャンしてみると、かなり綺麗に取れたりする。ま、デジカメみたいに構図をとれないけどさ。」
じゅえる「人形スキャンしておもしろい?」
まゆ子「おもしろくなかった。」
釈「そんなもんです。」

 

まゆ子「さて、今日はひさしぶりにばかばなしをしてみようかと思う。」
じゅえる「いつもばかばなしだが、そう改まって言われると、こまるな。」
釈「なにかネタがありますか。」
まゆ子「無い。」
じゅえる「しゅうりょーするのはかんたんだが、まあそうね。今いちばん凝っているものとか、花粉症対策とか。」

まゆ子「そうだね、実は今期、つまり2006年度後期のアニメはけっこう面白かったんだ。前期も結構よかったけど、えーと涼宮ハルヒとxxxHolicかな。あとアンジェリーク。」
じゅえる「アンジェリークって婦女子向けゲームでしょ。結構昔から有る。」
まゆ子「そうなんだけど今回新シリーズで初めて見たら、けっこう面白かった。で、その後を受けての後期だよ。

 やっぱコードギアス反逆のルル山でしょ、これおもしろい。ついで、KANONね。これは随分前のエロゲで前にもアニメ化されてるんだけど、今回リメイクで根性入れて作っている。見る気なかったけど、というかオリジナルのキャラデザはガキみたいで受けつけなかったのが、今回割と頭身が上がって受入れられるくらいになってた、のを何の気なしに見ていると、はまっちゃった。で、アンジェリーク第二シリーズ、と金色のコルダ、なぜか婦女子向けゲーム原作の二つにひっかかっちゃった。」

釈「ゲームをしてみようという気にはならないんですか?」
まゆ子「古いゲームだからKANONはドリームキャストでゲームがあるんだよ。で、中古を買って来たら、・・まだやってないな。」
じゅえる「ゲームをやってる暇があれば小説を書くべきだからねえ。」
釈「えらいです。」

 

まゆ子「まあ、そういうわけで、なぜか恋愛ゲームをオリジナルとするアニメに引っ掛かっちゃったというわけなのさ。さあどうしよう。」
釈「ずばり、うちでも恋愛モノをやる!」
じゅえる「うむ。」

まゆ子「うへへ、そういう話になると思ったがそうは問屋が卸さない。アンジェリークといいコルダといい、これは婦女子向けゲームで対象は女の子、かっこいい男の子に主人公がもてもてになる、という寸法だ。」
じゅえる「そりゃ嫌味だな。」
まゆ子「でも今回引っ掛かった二つは、それがまったく嫌味じゃない。主人公キャラが実に清潔感漂ういい子なんだよ。これにひっかかった。」

釈「うちで言うと、どのあたりのキャラになりますかね。」
まゆ子「あー、・・・おまえさんだな。」

釈「え?」

じゅえる「それは新企画。インド少女がカッコイイ男子にもてまくる素敵ストーリー。」
まゆ子「だが、彼女には他にやらねばならない重要な役目があるのです。それにひたすらに邁進する真摯な姿に、おとこどもはつぎつぎにひかれていくのですな。」

釈「え、えへ?」

じゅえる「だが重大な問題があるな。その、かっこいいおとこてのはどこに売っているんだ?」
まゆ子「うーむさーて、困ったな。」

釈「あの、この話これから発展するというシナリオは?」
まゆ子「やりたい?」
釈「是非に。」
じゅえる「そうだなー、げばるとしゃくてぃ、というのも有っていいかな?」
まゆ子「そうわるい話ではないか。ま、承認しましょう。で、おとこをどこから買って来るかだけど、そりゃあげばおとにはゴロゴロしているから。」

じゅえる「しかし現代物の学校生活を舞台にした物語じゃないのかい?」
まゆ子「アンジェリークはちがうよ。しかしミスシャクティは一応はなんちゃって高校生だから、そうかなあ。」
釈「できるならば、そいう定石を押さえていただくということで。」
まゆ子「貴方の願い、鼎ましょ。」
じゅえる「それはxxxHolicだね。」

 

まゆ子「えーと、ミスシャクティを主人公とした女子高生純愛婦女子向けアニメ企画、てなもんだ。主人公シャクティは創作インド料理店の看板娘。いつもけなげにご両親のお手伝いをしている。しかあーしその実態は、・・・どうしよう?」

じゅえる「アンジェリークは魔法で育成をして女王様になるんでしょ。金色のコルダは?」
まゆ子「魔法のヴィオロンを授かった女の子が、ど素人ながら学内コンクールに出るハメになり、皆の心をかき乱す。」

釈「世の為人の為になる良い事をする、というのが良いかと思いますよ。」
まゆ子「だがこの主人公達は大体無力なんだよ、女の子だから。無力だけれど必死に真面目に頑張るからこそ人の心を打ち、男子を次々に篭絡していく。」

じゅえる「なにか他に注意すべき点があるかな?」
まゆ子「そうだねえ、えーと、そうだ! この2作ではどちらも嫌味なライバルキャラが存在しない。友達の女の子連中は良い仲間ばかりで、主人公を支えてくれるんだ。」
釈「ウエンディズではかなーり難しい設定ですね。」

まゆ子「えーと、まずシャクティを支えるキャラとしては、学校に君臨する救世主”こんからー”弥生ちゃん。この人はシャクティの使命についてかなりの部分を知っていてなにかと便宜を図ってくれる上級生だ。その友人でしるく先輩。シャクティの良き理解者で、あぶない事があると助けてくれる、柔らかな春の日差しのようなお姉さんだ。で、気さくな先輩ふぁが男子のトラブルを解決してくれる、と。聖先輩は謎めいた人物で、シャクティの使命について奇妙な予言で警告してくれる。」

釈「まゆ子先輩とじゅえる先輩はダメなんですか?」
じゅえる「今回はむりだな。私達は悪役だ。あと、明美一号せんぱいはなんらかの事件の被害者ね。志穂美は出なくてもいいや。」
まゆ子「先輩関係はこんなもんだろう。明美二号ちゃんと美矩はシャクティの良き友人としていつも傍に居てくれる。ただ、あんま役には立たないな。後輩の明美三号と美鳥、洋子はシャクティを慕って助けてくれるが、トラブルメーカーでもある、と。」

 

釈「やはり使命が定まらないと、ぴっと来ませんね。そもそもが男子はどういう風にして絡んで来るんでしょう。」
まゆ子「さあそこだ。」
じゅえる「アンジェリークとコルダの構造は避けたいが、恋愛を中心とするのはなんだな。」

まゆ子「ミスシャクティは未だ自分の正体に目覚めていない、というのはどうだろう。で、彼女を守る騎士として、あるいはどこかの諜報機関から、あるいは暗黒教団から派遣されたかっこいい男子達が、それぞれに釈の目覚めを促すという。」
じゅえる「でもそれじゃあ、釈は努力をしないよ。なにか、頑張る要素が無いといけない。」

まゆ子「釈、あんたなんか、やりたいこと無い?」
釈「そうですねえー、料理とかあるいはお笑いとか。」
じゅえる「お笑いを頑張る、というのはダメだろうねえ。」

まゆ子「文化的な要素があるとよろしいが、あまり難しいのは困りものだ。謎解き、というのはどうかな? 比留丸神社に伝わる秘伝の書を読み解いて行く。」
釈「わるくはありませんが、ではゲキは無しですか?」
じゅえる「要らないでしょ。鳩保とか物辺とか欲しい?」
釈「いいええ。」
じゅえる「算術とか和算とかが使えるといいんだが、もっと理屈っぽくないものが欲しいな。」

釈「和歌はどうでしょう。わたし結構やりますよ。」
じゅえる「雅で良い感じ。しるくもそこんとこはなんとかしてくれるだろう。」
まゆ子「印度人が和歌、というのはわるくない。だが、それでどうなる、というのはなんだな。呪術でも引っ張り出すか。言霊?」

じゅえる「男子の間にも陰陽師を入れとくのは悪くない。だがミスシャクティの目覚めとどう繋がるか。そうねー、つまりは比留丸神社の古文書はミスシャクティ自身を表している。釈は自分で自分に関する秘密を解き明かして行き、遂には真の姿に目覚めるのだ。男子達はその過程を助けながらも見守り、あるい背後に潜む勢力の命令に服しなにごとか陰謀に携わる。」

釈「で、最終的には私はわたしを発見する、という話ですね。」
まゆ子「だが、実際釈本人はそれが自分だとは最初気付かない。そして、それを解く事で誰かの役に立つと信じている。誰?」

 

じゅえる「やはり敵は必要だ。最終的にはそれは敵ではないとしても、敵に見えるものの存在は必要だし、それでこそ釈は恋愛に陥れる。」
釈「きゃあこわい、ってやつですね。」
じゅえる「うむ、定番中の定番だ。」
まゆ子「だがあまり変すぎるのは却ってリアリティを損なうぞ。物理的な攻撃や生命の危険を伴う侵害行為は極力無い方が良い。もっとスピリチュアルな害が精神的な影響を及ぼす害がほしいぞ。」

釈「では、私が旧い神社の禁断のなんやらの封印を解いてしまい、世界になにかが逃げ出して、それを私は追いかけなければいけない、という事にしましょう。それは対象となる男子の心の中に逃げ込んで表には現われないけれど、確実に世界の害になる行為を働いてしまうんです。」
じゅえる「複数の男子の心の傷、心の支えとなるなにかをそれが盗んだか忘れさせたか、ともかく隠してしまった、という感じかな。彼らの心の中からそれを取り戻して、その過程で思い出したりして手掛かりを得て、本命の中に眠るそれを見つけ出す。」
まゆ子「上等だな。」

じゅえる「思ったよりもいい出来だ。言霊というか恋歌でそれをそとにおびき出す。で、キャプチャーしてしまうんだ。しかしキャプチャーしてしまうと男子はその取憑かれていた事実を忘れてしまい、だがシャクティに鯉をしている、という寸法だ。」
釈「えへ、えへへへへ。」

 

まゆ子「じゃあ、具体的に男子を決めるね。高校二年生の釈の周り、ということで、学内に限るかな。」
じゅえる「狭い範囲の方が良いが、ひとりくらい外部の人間が居た方がいいかな。大人とか教師とかも欲しいな。」

まゆ子「えーと、6人てとこか。で、一人別な奴、つまりそのなんとかが隠れている本命がある。都合7人。」
釈「教師一人、外部一人、上級生二人、同学年二人、下級生一人、ってとこですか。」
まゆ子「そりゃ金色のコルダそのものだ。ちょっと修正。教師一人外部一人上級生一人同学年二人下級生一人、謎の少年一人、あからさまに敵という奴だけど実は味方一人。」

じゅえる「外部てのは、比留丸神社の神主さん、ということで。謎の少年は実は女の子であった、ように見せ掛けて本当は男の子だ。」
釈「難しいですね。えーじゃあ、下級生の女の子だけど、私の前に出る時は男の格好で、でも実は女装した男の子だった。何故です?」
まゆ子「なんか凄い理由があるんだよ、魔術的な。というか、呪術として女装を強いられて居た、ということにするか。

 あからさまに敵、という奴は外国人っぽいのね。ハーフとか。」
じゅえる「実は彼はシャクティの幼なじみだけど、昔なんらかの理由で離れ離れにされちゃった、というのがいいか。シャクティを怪我させたとかで、その傷がまだ身体のどこかに残っているんだ。で、シャクティはその事を事あるごとに思い出す。でも彼がそれだとは気付かない。」

釈「定番中のていばんですね、それは。では他の男子もなんらかのつながりを持っていた方が。」
まゆ子「ひとりくらい死に掛けていた所を、色の黒い少女の活躍で助かった、とかが居てもいいな。あるいは幼稚園の頃にキスをした、とか。」

じゅえる「まったく最近に知り合った、そうだ、お店で辛いもの食べてひーひー言ってるのに、釈が水ぶっかけちまった、とかで知り合うというのがいいな。ドジっ子ウエイトレスだ。」
釈「それは上級生にしましょう。普段学校では取り澄ました冷たい優等生なんだけど、実はそういう面があり私だけに知られてしまった、とかの。」

まゆ子「なにかと釈を目の仇にする同級生男子、と釈を庇ってくれる優しい同級生男子、というの定番かな。下級生はあー、明美三号の男にするか。恋人が居るにも関らず釈に心惹かれる。」
じゅえる「下級生がキスをされた幼稚園児。命を救われたの教師だな。で、神社の宮司はまた別でこの事件が起きた端緒として知り合う。」
まゆ子「同級生二人もなにか裏には思う所がある、てのがいいな。庇う方が実は釈の命を狙い、妙につっかかる方は釈が知らない負い目がある。」

釈「あ、待って下さい。凄いお金持ちは誰です。定番ですよね。」
じゅえる「なぞの女装少年だな。旧い家のしきたりでなぜか女装させられている。鬼に狙われている、とか言って。」

まゆ子「あと定番は無いかなあ。眼鏡は上級生だろうし、剣道部か弓道部は同級生だろうし、下級生は明美三号と同じ部活だな、ブラバンとかの一緒に練習する。センセイは。」
じゅえる「妻子持ちだ。釈に心引かれるのは不倫でもあるし職業上罪悪である。」
釈「えへえへへえへ。私って罪だなあ。」
じゅえる「底抜けに明るい、って奴はどこだ。庇う奴か?」
まゆ子「そういう感じだなあ。サッカー部か、やはり。いや、ここは奇をてらってハンドボール部だ。ちょっとおもしろいだろう。」
釈「ハンドボールはサッカーと違って、かなりむきむきな感じになるんですよね。」
じゅえる「じゃあ突っかかっていく奴は剣道部だ。こちらは実は、釈の命を救おうと強くなる為に剣道を始めた、のだが本人はすっかりその動機を忘れてしまっている。が、釈と接している時に徐々にそれを思い出すんだ。」

釈「定番定番まっしぐらです。じゃあセンセイというのも、やはり私に惹かれる強い動機、私に命を救われたというだけでない何か、が必要ですよね。」
じゅえる「釈に、光を見たんだよ。世の中の闇を照らす、ミスシャクティの光を。で、その後その体験はすっかり記憶の片隅に隠れちゃったんだけど、釈が転校して来た時に走馬灯のように思い出されるのだよ。」

 

まゆ子「で、誰が行く?釈のバージンを狙いに行くのは。」
釈「おお! そこまでやりますか。」
じゅえる「未遂に終るんだけどね、定番だと。ハンドボール部、かなあ。かなりやばいところまで行くんだけど、なんらかのアクシデントで釈は初体験し損なう。」
釈「おお! それはそれは。」
まゆ子「波状攻撃で、別の奴にも迫られちゃう。そうだ、林間学校かなにか、で雨に降り込められるというポジションからだね。」
釈「そこまでベタですか!」

じゅえる「が、反面、釈はじつは上級生の優等生に乳をもまれてしまうんだ。特にそういう雰囲気にはない関係の彼なんだが、ひょっとした善意から釈を助けようとかして、もんでしまう。」
釈「意外と肉体的接触が多いんですね。ちょっと考えちゃうな。」
まゆ子「ま、その上級生はギャグ扱いで。逆にセンセイには釈はそのままでも十分にセクシーかつ悪魔的に美しいんだよ。」
じゅえる「で、下級生との間では他愛の無い体験が実に魅力的に、そうだね水辺でふたりでなにかして、それが実に素敵に感じられる、というのはどうだ。水だよ水!」
まゆ子「水は扇情的だなあ。外部の怪しいのは、緊迫した場面で口を抑えられるとか抱きしめられるとかだな。定番の。」

 

じゅえる「キャラはまあこんなもんか。えーと、魔法の精霊とか出るかな?」
まゆ子「婦女子の方には、そいうのが出た方が分かりはよいのかもしれない。出ないと現実の地平に縛りつけられるとかで、想像力が羽ばたかないかな。」

じゅえる「志穂美をここで投入だ。学校幽霊で守り神、に昼日中から導かれて、釈は比留丸神社に出かけて封印を破る。」
釈「志穂美せんぱいはそんな感じでいいんですかあ?」
まゆ子「よいってよいって。ついでに鳴海おばあちゃんを出そう。志穂美の妹がもう70歳になっていて、釈に姉の話をしてくれるんだ。」
釈「では志穂美先輩は封印の守り神、ということで、もう60年も前に私とおなじ体験をして、もてもてになって、でも不思議に取り込まれてずっと学校を守って来た、という感じでいかがです?」
じゅえる「還暦だな。で、魔法が解けるんだよ。だから新しい封印の守護者シャクティが選ばれた。で、幽霊になりたくなければ謎を解き悪を退治しなければならない。というべたなおはなし。」

まゆ子「ちょっとくらいサスペンスの臭いがあるといいかな。」
釈「失敗したらペナルティがある、というのは悪くないと思いますよ。」

じゅえる「最終的に、悪は何?」
まゆ子「ぴるまるれれこに退治された、ゲキの残滓というところでどうだろう。ぴるまるれれこについては弥生ちゃんが説明してくれる。」
じゅえる「ゲキは物辺村というところで5人の巫女によって封じられて来た邪悪の鬼です。が、それが漏れ出して学校で邪悪を振り撒くこととなったのに、霊感に優れていた志穂美がかんぜんと立ち向かい相打ちという形で封印に成功する。しかし還暦でそれが解けるのに合わせて、志穂美に選ばれたのシャクティだ。」

釈「邪悪の鬼、って実際どのような悪事を働くんですか?」
まゆ子「そうねえ、実害はほとんど無い、ていうのがいいかなあ。ただばくぜんと世界を破滅に追い込む、とかの。」
じゅえる「そんなところかなあ。でも犠牲者が男子になるわけでしょ、だったら夢とか希望を野望に変えて邪悪な方向に実現させるとか、てのじゃないかなあ。」
まゆ子「志穂美はそういうの大好きだけどね。」

釈「あの、ミスシャクティの目覚めというのがあるわけですから、世界を希望に導く癒し手という人の目覚めを妨げて、世界を暗黒に落とし込む、というのはどうでしょうか。簡単でいいと思いますよ。」

じゅえる「あー、なるほど。それは筋が通る。実害も無いし。」
まゆ子「で、目覚めを封じるために、釈を肉体的に奪ってしまおう、という衝動が、レイプ未遂事件になっちゃうんだ。というか、レイプじゃないんだけどまあそういうものか。」
じゅえる「じゃあ、世界を救う癒し手とは誰か? というのを探すのが釈の御仕事ね。同時に悪のゲキをやっつけないといけない。どうやってキャプチャする?」
まゆ子「お札かなあ。志穂美先輩の血で書かれたお札、というのをぺたんと貼ると封印完了。ただし一枚しかない。」

釈「そこはやはり、鳴海おばあちゃんが姉の遺品を持っている、ということでどうでしょうか。志穂美せんぱいは結局行方不明になってしまったのだけど、これだけが残されて居たと。」
じゅえる「志穂美はけっきょく死んだのかな?」
まゆ子「生死は不明なんだけど、失踪した状況があまりにも凄まじかった為に、なにか凄い事件が起きた事だけは警察も分かったんだけど、結局は迷宮入り。志穂美も帰らない。」
釈「鬼ですね。鬼が暴れたんですよ。」
じゅえる「ゲキの鬼、だな。」

まゆ子「じゃあ、鳴海おばあちゃんが持っていたものは、志穂美のー・・・・・・硯かな。まるい硯で裏にはぴるまるれれこ紋が掘ってある。弥生ちゃんの胸に有る奴とおなじだ。」
釈「志穂美先輩は書道部だし、私も和歌で敵をやっつけるわけですから、硯は良いアイテムだと思いますよ。」
じゅえる「志穂美は墨で和歌を買いてゲキをやっつけていたんだな。ただシャクティにはどうやってやっつけるのかが最初分からない。で、色々やっていく内に和歌であり言霊であり恋歌だと気付く。で、霊力の篭ったお札に恋歌を書いて貼り付けると封印完了、というはなしになる。」

まゆ子「しかし、その硯は肝心のところで割れる!」
釈「使えないんですか?」
まゆ子「ゲキの最終目標である癒し手、というのが釈本人だからね、直接攻撃に切り替えたんだ。」
じゅえる「そりゃとうぜんだ。」
釈「はあ、そりゃそうですか。」

まゆ子「えーと、ゲキの本体が隠れているのがハンドボール部、なんだけど、最終決戦の時には一度ダメージを食らってそいつから分離し、ハーフの男に乗り移る、という事にしよう。で鬼変身して暴れ回り、最終的には覚醒したミスシャクティの献身と愛によって美しい魂を呼び起こし、解決する。」
釈「定番ですね。」

じゅえる「で、1年後シャクティはめでたく卒業していくわけですよ。ミスシャクティとして目覚め、世界を平和に導く為に。同級生男子の二人も元気にね。」
まゆ子「めでたしめでたし。」
釈「綺麗な終り方です。」

 

じゅえる「・・・300!」
まゆ子「400字詰め原稿用紙300枚か。後腐れなく一巻で終わりね。」
釈「私としても、さくっと終ってもらえる方が嬉しいです。」
まゆ子「日本では、というか東洋では9を頂点とする思想がある。だから9章、で最後卒業式の場面でエピローグだね。」
じゅえる「男子が8人居るんだから、8章でシャクティの章で9、いいんでないかい。」
まゆ子「男子多過ぎるかな?」
釈「多くて困るものではありません!」

まゆ子「えーと

1)シャクティ転校、幽霊志穂美と遭遇、封印解除:比留丸神社宮司
2)基本的学校案内、同級生男子二人と知り合う。友達出来る。:同級生男子二人
3)本格的謎解明に動き出す。女装男子と遭遇。魔法発動。:女装男子
4)休日、お店の手伝い。上級生優等生来店、ドジっ子メイド。:上級生
5)学校行事(体育祭)で活躍、シャクティ鈍女判明。裏で事件進行。謎のハーフがクローズアップ。:謎ハーフ
6)同級男子と謎解き。次々に不可解な事実判明。ちょっとコワイ。雨に降られて濡れちゃう。:センセイ
7)謎の核心を追求して、女装男子の家に。おばあちゃん鳴海と遭遇。志穂美の正体判明:女装男子、下級生男子
8)悪の化身正体判明。剣道男の力添えでシャクティ改心の一撃! 悪、ハーフ男子に乗り移る。:同級男子二人、ハーフ
9)変化したハーフを追って比留丸神社へ。硯割れて、シャクティ真の姿に目覚める。:全部
EP)卒業式、大団円。

じゅえる「告白、というのが無いな。それに釈がだれを好きになるのか迷う、てのが無い。」
まゆ子「随時です!一章に一個は告白有りです!」
釈「おお!」
じゅえる「第一章からそれか、それは凄いな。」

釈「しかし、誰を選ぶか迷わないといけないんですよね。どうしましょう。」
じゅえる「それはほら、悪に取憑かれた男子が、自分を愛してくれ、とか口走り、シャクティは戸惑うてのじゃないかな。」

 

釈「では、男の子の容姿について考えましょう。えーと、髪の色は赤青黄緑茶黒藍ピンク、よりどりみどりなんですが、どうします?」
じゅえる「釈はインド人だから黒だ。これに釣り合う髪の色を考えると、ベースは黒で行った方がいいでしょ。」

まゆ子「そうだね。日本人なんだし。ともかく役柄から考えて、女装男子は女の子っぽい赤柿ピンクてとこだ。反対に下級生男子は落ち着いた感じの黒っぽい配色で普通さをアピールする。上級生優等生は知的で冷静な青か水色、剣道男は渋さを引き立たせる黒か焦げ茶、ハンド部は明るい茶、ハーフ男は灰色、てとこだね。」

釈「定番でございますねえ。で、センセイと宮司さんは?」
まゆ子「センセイは年齢を考えて27、8歳と推定される。釈が小学生の頃高校生くらいだ。10歳は離れている。」
じゅえる「微妙だな。ここは奇をてらって黄色に染めとくか。」
まゆ子「前髪だけ色が違う、て感じでもいいよ。メッシュがはいってるとか。」
釈「うんうん。」

じゅえる「宮司さんだが、実はかなり年配、というのはどうだろう。婦女子ゲームにはあり得ないけれど、釈の魅力を考えるとそれも有り、て気がする。」
釈「爺オッケーです!」
まゆ子「なるほど、美老人てとこでいくか。志穂美先輩との絡みもあるから、それは悪くない。うん。」

釈「眼鏡です。上級生優等生には眼鏡必須です!」
じゅえる「わかったわかった。えーとアイテム的には、眼鏡、竹刀、楽器、オートバイ等々各種取りそろえておりますが、ここで全員をつなぐシンボル的なアイテムも必要になると思われますよ。」
まゆ子「すなおに栞でよいじゃないか。和歌がカギになるんだから、和紙で作ったちょっと高級優雅な栞で字が書いている。どうやって手に入れたかはまた別で。」
釈「それは鳴海おばあちゃんの手作り、という事にしましょう。色んなルートから回って来るんです。或る者は付き合ってる彼女から手に入れた、てのもありますよ。」

じゅえる「なんの変哲もない、この学校ではなぜか皆持っているようなありふれたモノなんだけど、でも彼らのはちょっと違う。ぴるまるれれこ印が押してある。」
釈「百人一首でも特別な歌の、というのはどうでしょうか。失われた人を恋い慕う歌、だったりして。」
じゅえる「ふーむー、これ以上は下調べしないと出来ないな。わかった、なんか考えとく。」

まゆ子「お供は要らないかい? 可愛い魔法のどうぶつとか、あるいはマジックアイテムとか。」
じゅえる「この作品では要らないだろう。」
釈「でも、コスプレするとき困ります。ビジュアル的に目にも鮮やかな特徴が無いと。」
まゆ子「あんた、胸に虎のワッペン着けてるじゃん。」
釈「あ。タイガースの。」
じゅえる「十分目立つよそれ。またそれは話のとっかかりになり易くて、いい。」

 

まゆ子「よおし、大体分かった!あと、シャクティが個人的に進路とか国籍で悩む、とかいうのもちょこっと混ぜて、できあがりだ。」
釈「わーい!」

じゅえる「ばかばなししゅーりょー。」
釈「え? つくらないんですか?」

 

【統則最前線仕切り直しの仕切り直しの仕切り直し、今度こそいけそうの巻】2007/02/26

 長くなったから、別のページに回します。

 

【桐子のおサムライの話】07/01/25

 長くなったから、別のページに回します。

 

【ひまわりちゃんと児玉喜味子の類似性についての考察】(06/11/27)

まゆ子「ひまわりちゃんかわいそう。」
しゃくてぃ「は?」

まゆ子「いや、xxxHOLICの10巻を買って来たんだ。九軒ひまわりちゃんがとても可哀想で、でも良かったね、と。」
釈「マンガのはなしですかあー、ということでひさびさにましなりいです。

 つまり、ひまわりちゃんのはなしですか?」

まゆ子「あー、まあそれでもいいんだけど、不思議の話ね。魔法とかをも超えて、不思議世界の話。」

釈「なるほど、そういうスタイルもありますが、「げばおと」はそれは回避しているんですよね。」
まゆ子「徹底的にね。あれは本来SFで、カガクテキ裏付けの無い魔法は存在しない事になっている。
 だが、そすると逆に不思議もやってみたいなあ、とか思うわけさ。」

釈「あのー、統則は?」
まゆ子「あ、言わないで! あれはまた別の手を考える、というかげばおとがうまく行ったのは、実は弓レアルのおかげなんだ。という事に最近やっと気が付いた。統則には別の角度から見るというのが欠落していました。」

釈「まあ、ほとんど進んでいませんからね。・・・なるほど、10枚程度の小話を書いてみるという手もありますね、世界観を確固たるものにするには。」
まゆ子「そうなんだ。というか、それをやっていくつもりだったんだが、時系列的に並べてロス無しでやっていこう、という態度がちと甘かったようだ。ロスというか、ばらばらで中心も見えずに無定見にその世界の人間、主要登場人物の日常生活を書いてみる、という手間を惜しんだのが敗因だ。」

釈「それはー、まあ、・・・普通の作家さんはどうしているのかなあ。」
まゆ子「ああいう人達は締め切りがあるし、金貰わなきゃ書かないだろうから、どうなんだろう。試作品というのが転がっているのかなあ。」
釈「いや、それはなんか違うような。勢いで潰しているような感じがしないでも。つまりはシリーズ一本がそのまま試作品と。」

 

まゆ子「・・・ま、いいや。でひまわりちゃんなのだ。不幸を呼ぶ恐怖体質なのだね。」
釈「ありふれた設定と言えなくも無いですね。少なくともそいうキャラは、初めてではありません。」
まゆ子「まあね。というかウチの明美もそんなタイプだ。」

釈「一号先輩ですね。下手に手を出すと巻き込まれて大怪我をするんでしたっけ。」
まゆ子「本人も共に酷い目に遭うてところは違うけどね。そうしてみると、ウエンディズは素直にそういうシリーズなんだ。」
釈「ミステリーというかホラーもちらほら混じってますから、そうですね。」
まゆ子「なんだ。」
釈「なんだですね。」

まゆ子「そういえば、つい最近あんたら宇宙に行ってたよね。」
釈「わたしはミスシャクティでしたが、まあ。」

まゆ子「うーむ、そういえばだ、まだキャラを出していないシリーズがあるのだな。更に5人居る。」
釈「これ以上膨らすのはやめませんか。そのくらいならば新キャラ新シリーズの物部村の連中に。」

まゆ子「あいつら統則に出るもん。そこで提案。あいつらを統則でつかうに当たって、そいう不思議体験させていいかな?」

釈「でも統則はSFでしょ? ・・・・いや、そうか、別に完全なSFである必要も無いんだ。おもしろければ。」
まゆ子「別にSFで無くてもライトノベルは成り立つもんね。で、あいつらは元から不思議キャラなんだ。ゲキの鬼のへのこ設定が一番最後に出来たんだから。」

釈「あいつら、超能力者ですか。」
まゆ子「そう、物部村の内部に居る時だけ使える超能力を持っている、という設定。マンガ1話を見ると分かるんだけど、その設定の名残がある。鳩保は鉄砲撃ち、これは超能力ではないけれど、優子は霊が憑くし、花憐は加速装置があるし、童は怪力ハンマー女だし、喜味子は玉子を一度に13個も丸呑みしてそのままの形で胃袋から取り出す事が出来る。」

釈「そりゃ壮絶な超能力ですね。でも今はすっかり普通人に。」

まゆ子「ま、話だけ作って、後でキャラ換えてもいいんだ。とりあえず作業用にこいつらを使って考える。
 で、不思議と言っても色々有るわけさ。霊界を覗くとか、魔法のアイテムを使うとか、幽霊妖精女神様が見えるとか、怪奇殺人事件がわんさと沸いて出るとか。あいつらはどういうのがいいかな?」

釈「ま、5人居るんだから、5通りに考える方がお得かと。」

まゆ子「ふむ。物部優子は簡単だ。あいつはそもそも霊が憑く。妖精と出くわしてもかまわん。そもそも鬼のへのこを握って放さん奴だ。
 童 稔は動物関係だな。あいつの家は亀と鯉の養殖場だ。山でクマに出くわすとかでもいい。城ヶ崎花憐は逆に人間関係の中の不思議だな。はとやすはー、」
釈「そのまんまゲキでいいじゃないですか。宇宙人との遭遇と対決ですよ。」

まゆ子「ま、そんな感じでいいか。で児玉喜味子はー、」
釈「玉子を丸呑みにする奴に、どんな不思議がふさわしいか。これは難問です。異世界ですか?」
まゆ子「ちょっとずれた日常てのが、いやこれは城ヶ崎が優先する。エロか?!あいつら皆、元はエロキャラだ。児玉喜味子は玉子をあそこから出し入れするのが特技なんだ。初期設定では。」

釈「はあ。そりゃあちょっと使いようが。意外と恋愛物の香りがすると、よいかも。異なる者との恋ですよ。」
まゆ子「そんな潤いのあるキャラじゃない。不幸を呼ぶ、というのも使えないしなあ、明美じゃないんだから。・・・へんなものを発見する、というのか。」
釈「ああ、そんなのがいいですね。山から妙なお地蔵様を発掘する、とか。で妙な御利益があるんですよ。なんでも出て来る臼を回してしまうタイプです。」

まゆ子「で、それを統則に盛り込むと。・・・あー、いらいらする。」

釈「そんなところで、じゃあ練り込みましょう。誰から行きますか?」
まゆ子「今回ひまわりちゃんがテーマだ。似たような感じのキャラからいく、・・・・・おらん。」

釈「涼宮ハルヒとかならば鳩保がやりますけど。」

まゆ子「ひまわりちゃんは、・・・うーん、無いな。うちからは絶対出て来ないタイプだ。強いて言うならば、劫アランサ王女くらいなもんか。かなり違うけど。」
釈「えーと、でも不吉な事に正面から立ち向かうというのは、やっぱり鳩保ですかね。でも正直言って、そうぽこぽこと人を殺すお話というのはイヤです。」
まゆ子「そうなんだ。人は殺すけどさ、人殺しで遊ぶのはイヤなんだ。でぽでは。しかし今回やらにゃあいかん。」

釈「というわけで、今回のテーマは”商業ベースに乗るひとごろし”です。
 でも誰を殺す、というところからかなりの難問ですよね。死んでいい人てのは悪党くらいなもんで、普通の罪も無い一般人が死ぬというのは、後味が悪くなります。」

まゆ子「書いてる本人の精神にも良くない影響を与える。だから、うちではひとごろしは白の母こと東雲綾子透梨しかやらないのだよ。大東桐子ですらひとはころさない。弥生ちゃんに至ってはひところしたところすら書いていない。弥生ちゃんの場合は、どっちかというと相手が自滅して行くから殺す前に勝手に死んでる&成敗! のお言葉で狗番とかがころすようになっている。
 ついでに言うと、土器能登子さんはひとごろしのプロフェッショナルという設定だ。軍人だからね、遠隔操作のタコハチでぷすっと簡単にやってしまう。つまりは、ひとごろしができるキャラだからこそ、能登子さんは「統則最前線」の主人公なんだ。」

釈「色々と裏があるもんですねえ。しかし、物部村の連中はあれでもまっとうな女子高生ですから、ひとごろしさせるわけにはいきませんよ。」

まゆ子「・・・ひとりだけ、ひとごろしができるにんげんが居るんだ。」
釈「ほー、それは?」
まゆ子「ミスシャクティ、もちろん自分ではころさないけれど、周りには常時SPが付いていて、暗殺者とかをぷすっと殺してます。護る為に。ミスシャクティはそれほどまでに価値のある人です。」
釈「いやーそれは、えんりょします。」

まゆ子「それはそれで面白い話が書けるんだが、まあ置いといて。実は死に近いのはお話の傾向から簡単に導き出せる。

 喜味子は旧い死者に縁がある。器物の怪と遭遇する、と決めたからね。
 童 稔は動物と結びつくから、自然死、寿命、大自然の弱肉強食、人間の力に依らない死に縁がある。
 物部優子はまさに怪奇現象に、神罰としての死にイヤでも関る。また、因縁とか復讐とかの幽霊にも関係する。あいつは演劇部だからね、演劇とは死者の魂を演じる事でこの世に再び蘇らせる機能を持っている。演劇的な死、それも超自然物込みで、死に関係する。
 鳩保はゲキと関係するし銃を弄ぶ。つまりは荒事だね。戦闘行為に具体的に関係するとなれば、そりゃ死人は出る。だが、それが怪奇現象として認められるかとなると、これは問題。だがゲキの敵というのをうまく作れば、現実世界に侵入する敵という感じで死を演出出来るだろう。
 そして花憐は、こりゃ犯罪絡みだね。それも闇の世界の住人達に伝わるフォークロアとしての不思議に関係した死が。奴はあれでも村長の娘、やくざとかにも実は絡みがあるんだよ、小なりとはいえ政治家の娘だからね、色々あるさ。おまけに代々続く金持ちと来たもんだ。金田一さんの出番だよ。」

釈「いいかんじではないですか。段々具体的になってきた。えーで、この場合ひまわりちゃんに似ているのは、物部優子ですか。」
まゆ子「かならずしもそうとは言い難いが、そうね、ちょうどそこだけ穴が開いているな。なんの罪も無い人間が陥る罠としての死、不運。ラッキーとアンラッキーの相反する存在てのが、無い。」
釈「ラッキーは嫌いですからねー、でぽでは。でもそういえば、前にもそんな話がありますね。」

まゆ子「お嬢先生の回だな。正体不明の悪運に取憑かれたんだ。それは、物部村の人間には無い。だが、強いて言えばやはり児玉喜味子だろうなあ。器物に運は付き物だ。」
釈「ではうちのひまわりちゃんは、児玉喜味子にけってーい。いいですね?」

まゆ子「うむ。だが、児玉喜味子って、あんまり詳しく造型していないぞ。両おさげのでこっぱち、ファッションセンス無し、頭は中くらいで目立つ所が無く、男子にも相手にされない。これでいいのか、ひまわりちゃん?」

釈「えろですよ、ここで。児玉喜味子はまるっきりセクシーとは縁の無い人間です。だからこそ、不思議と遭遇した時には、得も言われぬ色気を醸し出すのです。」
まゆ子「なんとなく不思議少女っぽくなってきたな。でもひまわりちゃんみたく、いい子にはなれないぞ。物部村の連中は皆ひねくれてるからな。そいうところを加味すると、・・・ブスの無防備。」

釈「うわ。それはエロい。」

まゆ子「せっくす出来そう、と男子に感じさせる女こそが、なによりもセクシーなんだよね。セクシーは露出度ではない、可能性だ。ハードルの低そうな女は本人の意志やら嗜好やらとは別に、無条件でセクシーなんだ。児玉喜味子は普段はそんなところも無い絶縁状態の色気無し少女だが、妙な器物に遭遇するとガードが下がり無防備になるんだ。心のドアが解放されるのだね。」

 

釈「結構でございます。それだけあれば十分魔法少女出来ます。しかし、そうなるとストーリー、シナリオの力が必要ですね。」
まゆ子「うにゃ、そいう話は私の大得意だ。」

釈「はあ。そういうバックボーンがあるからこそ、こういうキャラは出て来るもんですか。」

まゆ子「私自身が、それ、だからね。釈、あんたもそうだよ。真顔の冗談で出来ている。大得意だ。」
釈「で、児玉喜味子がひまわりちゃんの役をやる、としまして。なんの為にこういう話をしているか、を説明しなければなりませんね。どうしてです?」

まゆ子「パクル為、に決まっているでしょう。ひまわりちゃんがかんどうてきだったから、このキャラをぱくるのよ。」

釈「あはは、そういうことなのです。でぽで使っているキャラは多かれ少なかれ、ぱくりなのです。」
まゆ子「弥生ちゃんは違うぞ。あの子は主人公の中の主人公として生まれたからね。しゃくはー、あんたの元ネタはー、誰だっけ?」

釈「わたしは、元から印度人少女という趣味がありまして、これ幸いにと。一応は完全オリジナルですか。まゆ子さんは違うんですよね。」
まゆ子「わたしは、某所からマッド・サイエンティストということでぱくられたモノが、年月を経る事により独自の生命を宿し、オリジナルとは似ても似つかぬ姿を手に入れた、・・まあここまで来るとオリジナルと言ってもいいんだけどね。」

釈「とまあ、そういうことで、ちなみに鳴海ちゃんはプリティーサミーが元ネタです。」
まゆ子「そうなんだよ。ま、人には出自というものが抜きがたく存在するのだね。

 で、ひまわりちゃんだ。四月一日君の存在無くしてひまわりちゃんはあり得ない。だが、喜味子には、無い。」

釈「ボーイフレンド作りますか。なんかヲタカップルになりそうですが、それもまた一興。」
まゆ子「わるくはない、というか今の定番だね。ヲタに彼女が出来るという、それもヲタ少女だ。」

釈「当たり前過ぎて、だめですか。そうですよねえ、ひねりが無いもの。でも受けますよ。」
まゆ子「うむ、受けるのは良いが、ひねりが無いのはいかん。男がダメならば、女か爺か、ジジイも定番過ぎるな。」

釈「オカマのトシマ、というのは?」

まゆ子「そりゃ濃過ぎる。ばばあ、いや女、未亡人、いやガキ、未亡人とガキ、というのは?」
釈「展開がかなり、難しく。ここはおもいっきり正統に、熱血少年というのはどうでしょう。」
まゆ子「ふむ、いやむしろ、鳩保の男版みたいな高慢なヤローに。いや、それでは。不良というのは書くのイヤだし。」
釈「いっそ謎の男にしますか、星野鉄ローみたいな不細工なのに。」
まゆ子「でも高校生活で出て来るようなキャラでないと、バイトしているわけでもないからなあ。実家の玉子農家の手伝いがあるし。」

釈「田舎なら田舎で、エロのタネはごろごろしているのですけどね。思わず露出する色気となると、学校でないと意味を持ちません。やはりヲタ少年という事で手を打ちませんか。」
まゆ子「ヲタねえ、だが四月一日君のようには、ねえ。」
釈「そりゃ超能力は無いでしょうけれど。ですが、ヲタならばここは潔く、まっとうな腐れヲタでいくべきではないでしょうか、アニメで二次元で、カメラ小僧で。」
まゆ子「わたしゃまっとうなカメラ小僧を知っているから、悪くは描けないなあ。同人誌でも作らせて、喜味子にコスプレさせよう、てか? でも喜味子はヲタではない。」

釈「じゃあ、こうしましょう。このヲタ少年はひそかに喜味子で、その、オナペットというのですか、にしているのです。そんな事とは露知らず、喜味子はこのヲタが親切にしてくれるから、なんか妙なものを見付けると持って来て相談するのですね。そこでその妙なものが発動して、不運が。」

まゆ子「あー、そんな感じかな。必ずしも心の交流が無くてもいいか。なんか、元がエロキャラだと周りも下品になるねえ。でも、そんなとこか。ひまわりちゃんとはえらい違いだ。仁徳の差だね。」

釈「さらには、ひまわりちゃんは文句なしに可愛い美人ですけど、喜味子はそうじゃない。ここはかなりの問題があると思われます。どうしますか、美人でない者に美人の役を振るというのは、やばいのではないかと。」
まゆ子「いつもにこにこ笑っている、ね。喜味子はいつもデコに皺を寄せている。はは、こりゃ大変だ。」

釈「正直に言って、かんぜんに違うキャラですよ。逆ですらない。無縁です。」
まゆ子「うむ、ふぁいと沸くなあ。」
釈「あー、やっぱりそういう無茶がやってみたいんですね。」

まゆ子「おまいさんは忘れているけれど、四月一日君が鈍いだけで、実はクラスのほとんどの人間は、ひまわりちゃんがヤバいという事は知っているんだよ。小物ゆえにそういう所は敏感だ。ひまわりちゃんには友達は多そうに見えて、実は居ない。また自分でも寄せつけない。或る一定のライン以内には人を近付けないんだ。」

釈「はー、それはー、なるほど。それはそうですか。自分に近付けば友達が不幸になると知っていれば、そりゃそうです。で、喜味子は。」
まゆ子「友達がいない、てとこは一緒だな。物部村の連中においてでさえ、みそっかすだ。ま、鳩保と優子がヤバ過ぎるだけなんだが、まあそう。」

釈「喜味子はなにか、人を避けねばならない理由があるんですか。」

まゆ子「玉子を丸呑みにする、という特殊能力のせいだな。これでいじめられた過去があるんだよ。まあ考えてもごらん、お昼時になるとゆで卵を何個も取り出して、くるっとカラを剥くと、噛まずに呑み込む女、ってのが居る。どうだ?」
釈「うわ〜、それはちょっと、やですね。」

まゆ子「イヤだろう。喜味子はデフォルトで人に嫌われる性を持っているんだ。ひまわりちゃんが人に忌避されるのと、等価だ。ただ、「いい人なんだけど、近付くと不幸になるって言うし」てのと、「うわぁ、きもちわる。」ての違いだけでね。」

釈「喜味子はいいひとじゃないんですか。」
まゆ子「ふつうだね。物部村の連中が他はヘンというだけで、ふつうだ。」

釈「なんというか、物語では描けない人間になってきましたね。描写するとっかかりが無い。」
まゆ子「リアルなにんげんてのはそういうもんだ。物語の主人公に為り得る人間てのは、それだけ異常なんだよ。」
釈「でもそれは困ります。」

まゆ子「もっともだ。喜味子に特殊能力を付け加えよう。というか、有るんだけどね。物部村の人間には元から超能力がある。鳩保は鉄砲、というのはおいといて、優子は妖怪憑き、花憐は加速装置、童 稔は怪力砲丸投げ。喜味子の特殊能力早剥き0.3秒てのは、手先が異常に器用だ、てものだ。」

釈「器用。なるほど、器物に関係するというのはそういう伏線があったんですか。もっと最初から言って下さい。」
まゆ子「早剥きを特技とするだけあって、ものを綺麗にぶっ壊すのは得意なんだよ。鶏の羽むしるのも得意だし、魚の骨を取るのも得意。機械モノだってさくっと解体しちゃう。修理はできないよ、そこまで頭良くない。」

釈「錠前やぶりとか。」
まゆ子「そりゃ子供の時からの得意だ。鳩保が悪い事する際にはいつも呼び出されているのは、そいう特殊な才能があるからなんだね。」

釈「なかなかエロくなってきました。」

まゆ子「というわけで、喜味子は手だけは別人のように優れている。暖かい。そして力がある。気付いてしまうと、魅せられるのさ。」
釈「それだけうかがえば十分です。なるほど、感触、ですね。モチーフは。そうか、ひまわりちゃんの魅力は、妙な、微妙な、イヤな感触ですから、そこに落ち着くのは分かります。でも死は?」


まゆ子「鶏をひねるのも大得意。」
釈「・・・・・うー。」

 

06/06/04

じゅえる「それにしても、げばると処女の煽りを喰って、ウエンディズは進まないねえ。」

シャクティ「そうなんですよ。私せっかくの主役なのにこれはどうかと思うんです。」
ふぁ「まあ気の毒だね。と言う私も久しぶりにでぽに出れたよ。」
明美「わたしなげばおとに出る事が予定されてますけど、これはどうにも困るよね。なんとかならないものかな。」

志穂美「別にいいじゃないか。どうせ私らは歳取らない。」
じゅえる「いや、そういう問題じゃなくて、というか出番も無いまま消滅というのは嫌じゃない。」
南「先輩! わたし思いますけれど、これまでわたしたちは自分の出番を作るのにあまりにも怠惰であったのではないでしょうか!」
ふぁ「だね。話を進める為になにかを積極的にした覚えが無いもん。」

じゅえる「うーむ。わたしはその自覚が無いなあ。」

明美「あなたいつも出てるもん。」
じゅえる「そうなんだよ。私いつも出てるし、くっちゃりぼろけっとは実質ウエンディズだもん、ウエンディズは依然としてしっかり続いているんだよ。」
ふぁ「きたないなあ。」

しるく「あの、わたしは出ている事になるのでしょうか? どうも出ているようのいないような。」
志穂美「出てると思えば出てる。それでいいじゃないか、私は悪役で今度出るんだぞ。」

鳴海「あのー、ちょっといいですか。中学生組もげばおとに出してもらいたいなあーとか思ってるんですけど。」
明美2号「それを言うのなら、現在北海道旅行中の新キャラ二年生にもなんとか。」

 

まゆ子「あー。みなのしゅう。」

ふぁ「ほら、裏切り者が来た。」
まゆ子「うう、ふぁ。出番が無いからといってそんな邪険にしないで。わたしだってげばおとには出演してないんだから。」
明美「そうだっけ。」
じゅえる「名前は出てるけど、出番は無い。わたしなんか名前も無い。しるくと志穂美、桐子だけだよ。」
志穂美「そんなもんか。弥生ちゃん出ずっぱりなんだね。」

まゆ子「で、わたくしはみなさんの為に解決策を御用意いたしました。」
ふぁ「うかがいましょ。」

じゅえる「ふぁは、今日は妙に積極的だね。」
ふぁ「そりゃ長く出番が無ければ、キャラだって変わるよ。えーつまり、弥生ちゃんまゆ子じゅえるは敵だ。しるく志穂美シャクティは保留、後のメンバーでわたし明美明美二号美矩洋子美鳥三号朱美で主導権を取るのはわたししか居ないでしょ。」
聖「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。(忘れられてる)」

志穂美「ま、まゆ子の話を聞こう。解決策とは何?」

まゆ子「まんがです。というか、落書きです。文字で書かないのならば絵で描くしかないでしょう。形があれば本筋も膨らむ。想像力が無ければ何事も進まない。」
ふぁ「それはむかしからそうだけど、・・・どうなのかな。」
明美「挿し絵はあるけれどマンガは無いね。何故無いのかな。」
じゅえる「苦手だからでしょ。・・・そうか、苦手ならば克服する手を考えればいいのか。新フォーマットね。」
まゆ子「それそれ。既存のマンガのフォーマットがダメならば、新フォーマットを考えるべきではないかいな。」

志穂美「では、なにか策があるというわけだ。」

まゆ子「まず、弥生ちゃんを出さない! 弥生ちゃんは最初から主人公として作られた最強キャラですから弥生ちゃんを出せはすべてのお話は弥生ちゃんのものになる。」
明美「そうそう。やよいちゃんてキャラすごく強いよね。勝てないよ。」
じゅえる「あれに勝てるのは、最初から主役として作られた桐子だけだ。私ら脇役として作られているから所詮はセンターに立てないんだ。」
ふぁ「そう言われると私もセンターに立つ度胸は無いな。」

志穂美「新キャラを作れという事だな。」

まゆ子「ただの新キャラではありません。それがある事で触媒となり私達の出番を増やす、そういう性格を持ったキャラです。」
じゅえる「にんげんじゃないな。アニタかぴるまるれれこか、タコハチか。」
鳴海「イヌはどうでしょう。うちのぴかーどを提供したいと思います。」

じゅえる「げばおとのネコがいいんだが、しかしマンガで何をするかという目的が無ければなにを用いるべきかははっきりとしないな。」

まゆ子「ただ、わたしたちはなんだかんだ言って、最終的にゲリラ的美少女野球リーグ、厭兵術に依存して物語をこしらえて来たのです。北海道編が進まないのはそのどちらからも外れている物語だからです。であれば、新キャラとは。」
ふぁ「厭兵術のキャラか、あるいは全く別の超展開でなければいけないという事だね。」

しるく「はい。舞台は門白高校で現代で変わらないのですか? その縛りがある限りは所詮は超展開にも限界がありますよ。」

じゅえる「そこを外すと問題が。・・・・私服ではどう? 学校から出よう。」
志穂美「マンガだから、私服を着ようというわけだ。コスプレありだな。」
釈「うはー夢が広がりまくりますね。」

美矩「ではマンガではなくコスプレ披露会でショートコントを展開するというのはどうでしょう。どうせ最初は枚数を稼がない事には展開もありえないんですから、」
二号「わたしもそう思います。軌道に乗るまではコスプレショーで行くのはまったく正しい方針だと思います。」

洋子「ではガンダムに乗ったしるく先輩とかいうのもあり得るのですね。そういう計画があったと思うんですが。」
じゅえる「あります。なるほど、コスプレまずありき、話の筋は後で適当ということですか。なるほどなるほど。」
まゆ子「しかし、その後の展開というのを無計画にしてあり得るのかな?」
ふぁ「どうせあんたがやるんでしょ。」
まゆ子「うん。」
ふぁ「なら嫌でも独自アイデアてんこもりは決定じゃない。」

志穂美「むしろ、それはヤメロ。この際まゆ子の暴走を留める事で、私達のキャラが引き立つ。ベタコスプレだ。」
じゅえる「ではわたしがまんがを管掌しましょう。まゆちゃんは何もしないで、変なコスプレの素材になる。」
まゆ子「とほほ、身から出たサビか。」

 

洋子「善は急げです。今から第一号を描きましょう今描きましょうすぐ描きましょう。」

じゅえる「えーーーーーー、では。べたでメイドです!」
全員「らじゃ!」
美鳥「おなかすきました。」

 

 

06/4/23

シャクティ「えー、ずいぶんと久しぶりな感じがしますけれど、ましなりぃです。」
まゆ子「今、げばると処女でいそがしいよ。なにか軽目のネタで行こう。」

釈「えーそうですねえ。では仮面ライダーなどでは。」
まゆ子「今やってる奴?」
釈「早起きすると、弟達が朝から仮面ライダーとかなんとかレンジャーとかを見ていました。なにか、もう何年も毎年毎年同じものをやっているみたいですねえ。」
まゆ子「仮面ライダーと、なんとかレンジャーと、魔法少女アニメと、ポケモン的カードバトルアニメと、あとウルトラマンかな。企画はおんなじだね。で、もう少し年齢層が上がれば、搭乗型ロボットアニメになる。」
釈「他には無いんですかね、フォーマット的な企画は。」
まゆ子「萌え系アニメ、バトル系アニメ、スポーツものは、まあそういう感じの統一的なシリーズものっぽくはないな。あるとすれば、3DCGアニメだろうけれど、これはなかなか人気にはならない。」
釈「仮面ライダーは相変わらず着ぐるみでやってますからねえ。」
まゆ子「そうなんだ。前作では蟹の化け物とかを3DCGでやっていたにも関らず、今作では基本的に着ぐるみだ。ウルトラマンもなぜか着ぐるみ回帰している。どうも3DCGは受けない!という共通認識があるみたいだ。でもCGエフェクトはばりばり使うよ。」
釈「では受ける企画は、着ぐるみ、と。」
まゆ子「まあターゲットを子供に合せると、そういう事になるかな。アニメのキャラの着ぐるみショーてのは根強く人気があるから、基本的に子供は着ぐるみが好き、という結論に達しても妥当だね。」

釈「着ぐるみ企画! でいきましょう。」
まゆ子「心得た。で、どういうのがいいかな。要するに、仮面ライダーと、なんとかレンジャーと、ウルトラマンはダメなんだ。既にニッチは埋まっている。」
釈「着ぐるみ魔法少女はダメなんですかね。」
まゆ子「悪くはない、というか特撮魔法少女ものは子供番組の王道だ。しかし、実写版セーラームーンが特に大ヒットしなかった事を考えると、よほどの仕掛けが必要だろう。」
釈「着ぐるみキャラと俳優が共演する魔法少女もの、というのはどうですか。」

まゆ子「また懐かしい企画だなあ。それは大昔にいっぱいあった。・・・・そうだねえ。ロボコンが今あってもいいのかなあ。」
釈「ロボコンですか? あの、手作りロボットで喧嘩する。」
まゆ子「いやそうじゃなくて、ロボットの着ぐるみが街に住んでいて、それと子供達が日常生活を送るんだ。」
釈「パワードスーツではなくて?」
まゆ子「自律型、人工人格搭載の高級ロボットだよ。つまりロボキャラだね。」
釈「今は、そういうのは無いんですか。」
まゆ子「なんとかレンジャーには出るのかもしれないけれど、現在基本的には特撮番組は、普通に大人のおにいさんおねえさんが主役の似非夜ドラマ、の形態を取るからね。ロボキャラとカッコイイおにいさんの絡みというのは、かっこ悪い。」
釈「子供向けの番組なのに。」

まゆ子「そうだねえ、でも子供がばりばり大活躍、ていうのは儲からないんだよ。それはアニメが担当する。実際特撮だとフレームの収まりが悪いんだろうね。オタにも受けが悪いし。」
釈「では、これには将来性が無い?」
まゆ子「やはり戦わなくちゃ。戦闘が関係して来ない事にはカッコイイ、つまり子供が憧れる物語にならない。しかしそれでは嫌でも仮面ライダーの亜種になってしまう。実際、深夜には仮面ライダーのバリエーションと呼ぶべきオタ向け特撮番組が最近増えているよ。」
釈「つまり、独自の企画と呼ぶには煮詰まり過ぎているて事ですね。搭乗型ロボットは、着ぐるみにはならないのですか。」
まゆ子「特撮には王道と呼ぶべきキャラの大きさがある。等身大と50メートル程度のウルトラマンサイズだ。等身大はそこらで撮影が出来る。ウルトラマンサイズは格闘する場所のミニチュアモデルが最も映えるサイズだし、経験値が高いから安く高品質で背景が作れる。」
釈「なる。ではそのサイズから外れると途端に困難と撮影費の増大を招くわけですね。」
まゆ子「搭乗型ロボット、つまりガンダムからパトレイバー、ボトムズサイズが着ぐるみには一番適していない大きさだ。この大きさならば迷わず3DCGだね。」
釈「でも、3DCGは受けない。」
まゆ子「つまり、まだ低価格シリーズ作品に導入するには品質が低いてことだ。実際、いまじゃあ皆CGに慣れちゃって、ハリウッド映画の特撮CGものも飽きが来ちゃってる。」
釈「では、着ぐるみを使ってこのサイズの作品を撮れれば、新企画という事ですよ。」

まゆ子「考え方は悪くはない。完全特撮でなくてもCG混ぜて誤魔化せばいい。だがどうやって、ということだわさ。
 大きさは多分、撮影技術で誤魔化しが利く。要するにカメラを下からあおればいい。小型カメラを用いれば、十分着ぐるみをその大きさに撮れるでしょう。問題は背景だ。つまりは、スタジオでの特撮で大きく見せる着ぐるみロボットを、街の風景に合成する撮影技法を開発すればよい。まだ無いけれど、基本的には3DCGを実写風景に合成するのと同じ手法を使えばいいのだから、やろうと思えば間違いなく出来る。」
釈「問題は、着ぐるみロボットがカッコイイか、ですよ。カッコイイおにいさんが乗り込んで、かっこよく戦えるか、ですね。」
まゆ子「ちと、それはむずかしい。だが、・・・そうだね。現在の技術であればむしろ、ロボットをほんとに作ってしまう方がいいかもしれない。」
釈「大きなロボットですか?」
まゆ子「いや、それこそロボコンに出て来る30cmから50cm程度の実可動ロボットだよ。人間等身大の着ぐるみロボットを合成で実写背景に写し込めるのならば、30cmのロボットを10メートルに拡大して撮影するのも不可能ではない。」

釈「それは今までのギミック付きミニチュアとは違うのですか。」
まゆ子「いやー、やっぱ今のロボットは芸達者だよ。まだまだ序の口ではあるけれど、実際にロボットとして作られたロボットは、ロボットに見えるように作られたミニチュアとは一線を画す。」
釈「では、本物ロボットを使った、搭乗型大型ロボット特撮番組は成り立つ、と。」
まゆ子「不可能ではない。というよりも、誰が最初に手を出すか、という問題だね。確かにそれは新機軸ではあるが、新機軸であるからこそイニシャルコストは掛かるんだ。やった事の無い手法はやっぱ金が掛かる。でも、それを補って余りあるメリットがこの手法にはある。」
釈「・・・オモチャですね。」
まゆ子「ただのオモチャではない。本物のロボットを売り飛ばす、機能限定版のオモチャロボットを売りつける。子供の前には、撮影に使っているのと同じものが届けられる。」
釈「うー、ぞくぞくしますよ。それは儲かる。」
まゆ子「さらに言うと、ガンダム級の商品展開が望めるのが、この手法だ。撮影ロボットは金が掛かっているから、そう簡単にモデルチェンジは出来ない。漸進的進化を遂げるしかない。シリーズが何作か続いていると、初代のロボットのフレームや設計を流用したもの、とか発展系とかがまんま作中に持ち込まれる。設計者、制作者の違いも確実に表現されるし、マニアの注目点になる。」

釈「つまりは、売りどころ満載てことです。で、筋書きですが、やはりカッコイイお兄さんがひつようですよね。」
まゆ子「第一作を考えると、主人公はロボコンやってる大学生とかが秘密の戦闘組織にスカウトされて、本物の巨大ロボットを作っちゃう、という形かな。巨大ロボットのテストバージョンとして、撮影用ロボットを主人公が作る、とかいう絵が出るわけだ。実際はどちらも同じロボットなんだけれどね。」
釈「画面で主人公のお兄さんが抱えている可愛いロボットが、オモチャ屋さんで買えるてことです。」
まゆ子「うむうむ、すばらしいな。」

釈「しかし、巨大ロボットであれば、街を壊さねばならないでしょう。そこはどうしましょう。」
まゆ子「3DCGでぶっ壊したビルを作れば良い。合成は簡単だ。だが、それでは面白みに欠ける。着ぐるみでやろう。」
釈「着ぐるみで、どうするんですか。」
まゆ子「基本的には、実写背景に巨大化撮影をした本物ロボットを合成して巨大ロボットに見せ掛けるわけだ。ミニチュア背景建築物は要らない。だが、ぶっ壊すところだけをCGで描くのはいかにも正統なアプローチだが、ちと面白くない。そこでだね、ぶっ壊すのに丁度良いサイズのビルを作るのだね、もちろん実写背景に出て来るものの10分の1とかだよ。しかしこれはデカ過ぎて本物撮影ロボットには壊せない。そこで、合成用にブルーバックと同じ色の着ぐるみを着た人間が、ぶち壊す。本物ロボットは着ぐるみロボットを消去した映像に合成されるのだね。」
釈「いい感じです。着ぐるみ、ロボット、特撮、と完ぺきです。サイズもパトレイバーサイズであれば、人間ドラマもばっちり描けるのです。」

まゆ子「うむうむ。えーーーーーーー、終り。」
釈「今回はうまく行きすぎて、突っ込み甲斐がありませんでした。」

 

 

06/3/12

まゆ子「なぜか知らないけれど、今3DCGを頑張って居ます。」
釈帝「何故今、3Dなんですか? まだモモ展も先なのに。」

まゆ子「いや、まあ、やりたいからやってるだけなんだけど。というか、げばると処女にちょっと突っ込み過ぎた。気分転換というよりも頭を冷やす為に別な事をやっている。どうにもね、小説書いてると小説だけでなんでもカタが着くと思い込んじゃうんだな。一種の造物主になるわけだから。字というメディアは便利なんだよ、絵だと上手い下手が一目瞭然なんだけど、字だと下手な文章でも内容が良ければいいや、書きたいものが書けてればいいやと思っちゃうんだね。それはヤダ。」

釈「因果なものですね。して、なにを作っているんですか。」
まゆ子「カベチョロン。十二月に作ってたものに手直しして、作り直して、出来てしまった。それと、カベチョロンに乗る女の子だね。あまり美人じゃないし、髪型はメイドロボアニタと同じという、不思議な娘だ。で、なんか取憑かれたようにやって、なぜか出来た。」

釈「はあ。で、その娘というのはどういう背景を持っているのでしょうか。カベチョロンですから、冥王星明美帝国の人ですか。」
まゆ子「考えてない。実になにもないんだよ、背景。作っている内にできると思うけれど、実際彼女の設定はこれから出来る。」

釈「そんなものでいいんですか。いいかげん過ぎませんか。」
まゆ子「いやー、実はこれはキャラが出来上がるプロセスとしては、実に当たり前の出来方なんだ。要するにね、絵なんだマンガなんだ。なんの意味もなく背景もなく、ただペンを走らせてもキャラは出来上がる。もちろん通常はどういうキャラが欲しいか要求条件を考えてからキャラデザを編み出すのだけれど、無意識に自由に描いてみた絵が割と使えそう、とキャラを起こすという手法も当然にある。」

釈「なにがその娘をそこまで押し上げるのですか、落書きならばいくらでもするんでしょ。」
まゆ子「実はこの娘は、基本的にブスに作っているんだ。」
釈「ぶす、ですか。」
まゆ子「いや、ネットでの会話の最中にブスを3DCGで作るという話があって、ではと作ってみたら、ブスが出来たけれどブスにしては魅力的、という実にいい感じのものができたんだ。」

釈「なるほど。ウエンディズには基本的にブスは居ませんからね。」
まゆ子「というか、字で書くキャラにブスは居ないよ。顔見えないんだもん。一応ブス呼ばわりしていても、本当は読者の脳内ではそのキャラはブスには描かれない。ブスやら醜い男とかいうものを想像するのは、かなり精神的コストが必要だからね。だから、ブスは小説には居ない。」

釈「そういうものですか。なるほど、深いですね。では私なんか色が黒いとは書いてあっても、」
まゆ子「肌の色の違いはまったく排除されてるね。これは実はよくない事なんだ。実際問題としては、肌の色で人を差別しないとは言っていても、やはりなにかそこに違いがあるんだよ。そしてあるべきなんだ。そうでなければ葛藤は無いし、葛藤が無ければ世界を動かすエネルギーは発生しない。シャクティのキャラがおもしろいのはインド人であるからで、しゃべくりだけを抽出して「この娘、おもしろいでしょう?」と言っても、そうは思えないんだ。シャクティは普通の日本人の娘とは違うからこそ、価値がある。だが読んでいる最中ではそれは気付かない。でも絵として突きつけられれば、また話は違うんだね。」
釈「ふむ、そうか、私もリアルに作ればインド人の美少女にはなれても、日本的美少女であるわけにはいかない、という当然の話が、字だけでは発生しないんだ。」

まゆ子「というわけで、創造の第一段階からブスとして作られ、しかし魅力的に作られた彼女には、活躍する資格があるんだ。ちなみにブスでありながら魅力的、というのは、作っている人間が本物のブスと長時間向かい合うと疲れるからだよ。ブス属性の美少女、なんだね。」
釈「してどんな性格ですか、その娘。」
まゆ子「さあ。かなりフェミニンな感じがする。外観からすると活動的に思えるんだけれど、むしろふぁに性格が似てるかな。動くようで動かない、女の子の枠からイメージ外れるけれど女の子、間違っても志穂美の線じゃない。」
釈「いい子ですか。」
まゆ子「無論、今後の展開でこのイメージはどんどん変わる。だが、カベチョロンを任せるに足るキャラになって欲しいものだよ。」

(サンショロン3DCGイメージ ういず くらら)

釈「で今回新装なったカベチョロンは、サンショロンというのですね。頭がー、無いのですか。」
まゆ子「頭っぽいけれど、頭は無い。第一稿の青いカベチョロンは頭がコクピット、キンギョロンがレーザー砲塔、ガマドロンは採掘機械が付いているんだけれど、サンショロンは頭部は身体とシームレスにくっついて居て展望室になっているから、頭じゃないんだね。頭こそがその機械の特徴を象徴するというラインは守っているんだけど。」

釈「展望室という事は見晴らしがいいんですよね。・・・宇宙線は大丈夫なんですか?」
まゆ子「だいじょうぶじゃない。だから問題だ。一応分厚いガラスで遮断する事になっているが、まあ普通にヤバい。明美帝国の人間にはどうって事ないけれど、一般人にはちとやばい。で、こんど出来た女の子、あ。コードネームは「クララ」だ。は、遺伝子改造の無い一般人ということになるらしいから、やばいな。」

釈「まあでも展望台がある観光バスという設定はなかなかいいですよ。どうしてこんなもの考えついたんですか。」
まゆ子「あー。まあこないだも言ったけれど貨客、あるいは客船としてのカベチョロンは最初から考えていたんだけれど、直接はぐうぜん『YAT安心宇宙旅行』てNHKで放送したアニメを目にしたからだね。このアニメはそのものずばりで、小型宇宙バスロケットで観光案内しているんだけれど、それはカベチョロンでもいい感じだなあ、とバス型カベチョロンが一気にできあがったんだ。
で、出来上がってみると、この頭の無いデザインのシンプルさと長時間キャラが居住出来るという物語性の高い環境と小惑星上でも活動出来る運動性がなかなかに魅力的で、これで行こうと思いました。まあ、カベチョロンシリーズの最終到達点ですね。それまでに作ったのの部品を相当に流用したから、一番出来も良かったて。」

釈「具体的に、これは一体なにに使うんですか。観光バスと言っても宇宙にそんな観光地はあるのですか。というか、無いでしょ。」
まゆ子「物好きは居るんだけどね。まあ簡単に言うとこのバスは明美帝国の人間以外には意味がない。頭にコンピュータが入っている人間にはまったく面白くない体験だ。そして明美帝国人は辺鄙な宇宙空間が大好きなんだね。で、宇宙観光が成り立つ。南極ツアーとか宇宙旅行とかに大金はたいて金持ちが行くのは何故か、という話と同じで行きたいから行くんだ。で、その為に実にサンショロンはいいかげんに出来ている。

つまりだ、明美帝国人は昔から狭苦しい息苦しい人工の空間に長期間閉じ込められて生活してきたわけで、狭苦しい宇宙船というのが大好きなんだ。それに乗って危ないところに行くのも大好き。アルファケンタウリへの恒星間旅行もだからこそやってしまった。」
釈「まるでネズミが回る車が大好き、というのに似ていますね。」
まゆ子「でもおもしろいんだから仕方がない。どこでメシを喰っても一緒なんだから変わったところでメシを食おうという話にもなる。実際明美帝国では生産される食材はほとんどすべて規格品だ。生鮮食品や野菜だってプリンタで作っている」

釈「なんですかそれ。プリンタで野菜をつくる?」
まゆ子「ああ、インクの代わりにね、植物の細胞をばらしたものを詰めて、インクジェットで紙の上に吹きつけていくんだ。これを何層も印刷するとあら不思議、レタスやほうれん草が見事に出来ている、という寸法。肉も魚も作れるぞ、うすべったいけれど。」
釈「でも原料は、・・・クロレラとか?ですよね。」
まゆ子「ぴんぽーん。」
釈「どこでご飯食べても一緒なんですか。そりゃあ観光が流行るはずだ。」

まゆ子「ちなみに、地球出身者で遺伝子改造をしていない人も、案外と宇宙観光を楽しんでいる。彼らの目的はまさしく”冒険”だ。宇宙空間に居住性の悪い狭苦しい宇宙船に詰め込まれてあやしい小惑星を探索する、というのは宇宙滞在に特化していない人間にとっては随分とたいへんなんだよ。ほんとうに冒険になってしまう。」
釈「死んじゃうんですか。」
まゆ子「そういうケースもある。だから、えーと、ここでサンショロンのスペックを説明しておこう。

 サンショロンは全長20メートル以上で100tある巨大なロケットだ。動力は原子炉。ただし放射能漏れはほとんどない極めて安全なもので、小型だけれど出力は相当に高い。
 ロケットは主機関としてプラズマイオンロケット、低速域用にプラズマアークエンジンを左右に搭載。その他姿勢制御ロケットが多数。秒速100kmでの航行をします。目安としては地球冥王星間を往復一ヶ月、まあ惑星の配置の問題で色々と変わるけどね。加速率はイオンロケット使用時で100分の1Gほど、プラズマアークエンジンで3Gから10Gが出ます。

 乗員は5名、乗客は10〜30人。通常は20人の旅客を定員としてますが、簡易シートの使用で30人。なぜシートが少ないかと言えば、シート自体が長期間搭乗する時の個人のベッドになり、個人のデスクとしての装備もあり、緊急時には脱出カプセルにもなる。だから20しか積めない。緊急時に簡易型脱出カプセルを使うとして30人が乗れるのね。緊急時を考えないならば一時的ならば100人乗ることも可能。

 乗員5名は、パイロットが2名内1名が船長。フライトアテンダントが2名、医師1名。ただしパイロットはかならず明美帝国人でないといけない。原子炉補修やら船体外殻補修は明美帝国人にしか出来ないからね。医師はオートマ医者で機械が無いと手術できない程度の看護婦さんに毛が生えたような者。あ、ちなみにサンショロンは一応は戦時中の存在ではないので、というか観光旅行は平和時にしかできないさ、で近代的な電子装備を持っています。すごく型落ちだけど。つまり、戦争をする時には重力ウエーヴィング機関で作動不能に陥る部品を簡単に交換して戦時対応に出来るというものだ。船は24時間で運行しますから、乗員は最低でも5人と明美姫の法律で決まっています。

 デッキは4層。最下層はシート室、つまり乗客個人のシートが備えつけられている部屋でテレビとかはここで自分のシートで見ます。このシートはよく出来ているので電話をしたりコンピュータで遊んだり、シートを被せて個室にしたりと色々と使えます。迷惑な乗客が居た場合、シートに拘束しちゃったりもします。乗客のバイタルデータも管理しますからまったく安全です。

 2層目は生活デッキ、長期間のフライトはたいへんだから生活関連の装備はここに備えつけてあります。キッチンや洗濯、風呂や便所などもあります。医務室もあります。3層目がフライトデッキ、コクピットと乗務員の控え室、倉庫や機関室があります。ここは乗客は立ち入り禁止になってる。で、頭部の展望デッキがあってここには何も無い。ただ広いだけで寝転がったり宴会を開いたりも出来ます。強化ガラスが張っているので宇宙の景観を存分に楽しめるのです。」

釈「展望デッキはいいですねえ。でもやっぱり狭いから拡張性も必要なのではありませんか。」
まゆ子「ビジネスに使う時、簡易宿舎としても使ったりするから、その時は背中のスペースに必要な機材を背負って行きます。サンショロンの改良点はガマドロンの拡張性とキンギョロンの機動性を同時に持っている事で、オプション装備を各所に多数設置可能なんです。武装もそうで、標準装備の155o連装機関砲に核弾頭はもとより、ミサイルやらレーザー砲やらもオプションで装着します。この設定がカベチョロンを駆逐しちゃった原因なのだよ。サンショロンでも戦える。」

釈「装甲はどうなんですか。サンショロンはカベチョロンよりも丈夫ってことはないですよね。」
まゆ子「いや、乗客を運ぶのが目的のサンショロンは貨物だけのカベチョロンよりも丈夫なんだ。それに乗員だけのカベチョロンにだって居住スペースはやはり欲しいから、展望デッキをそのまま居住区に使って、第1、2デッキを排除してコンテナにする、という事も考えた。つまり、カベチョロンはサンショロンで完全に置き換え可能なんだ。」

釈「でも脱出カプセルが無いですよ。カベチョロンの頭のまるいとこは。」
まゆ子「やめた。」
釈「はあ。死にますか。」
まゆ子「死ぬ。というか、惑星間航行中は僚機が無いと、どうしても死ぬ。脱出カプセルや脱出シートは同速度同ベクトルで航行中の僚機が無いと、どうやっても助からないと見た。であれば、おおげさな脱出カプセルは必要無い、その分カベチョロンを増やそうということで、サンショロンのシンプルな構造に最終的に落ち着いたわけだ。

 でも安全を考えていないわけじゃない。サンショロンにはドアが三つある。展望デッキの下正面と第一デッキの左右。この右のハッチは第一デッキに直接繋がっているけど、左のハッチは第二デッキと繋がっている。第一デッキが破壊された場合でも、脱出口が出来るようにそうなっている。ちなみに展望デッキのドアは同じサンショロン同士がキスをしてドッキングして乗客を移乗させる事ができるのだね。更に、展望デッキも閉鎖する事ができる。第二デッキとフライトデッキがあれば、生き残れる。」

釈「でも、非常時って明美帝国人はたのしいんでしょうねえ。困難が大好きなんだから。」
まゆ子「ものすごく好きだね。

ちなみにエアロックは三つのドアがすべてそうなんだけど、なぜか円筒状になっている。直径150cmだから狭くはないが、有重力環境では出入りしにくいな、冥王星基準だとどうということはないけれど。で、これだけではなくて、ただのドアが機関室のとこに左右二つ有る。原子炉の制御棒を管理するブロックに直接出て船外から補修やら作業やらを行うとこね。でも姿勢制御ロケットの隣だから使用には十分注意しないといけない。」

釈「原子炉は人間が制御しなくちゃいけないんですか。」
まゆ子「しなくちゃいけないように作ってある。電子回路を極力つかわないようにしているから、原子炉周りだけが相当にアナクロなぜんまい時計レベルの制御装置なんだよ。電子的障害があっても安定して作動する代りに時々引っ掛かって止るから、人間が補修しなくちゃいけない。あと、上甲板上で作業やら遊ぶやらをする事も出来るのだよ。上甲板は装甲板が厚いから結構無茶が出来る。ほんとうは原子炉制御部にも装甲板が必要なんだけど、のっぺりするからやめた。ま、ここも遊び的に作業するのが楽しいってことだね。」

釈「宇宙遊泳とかはできるんでしょうかね。やっぱりやるんでしょ。小惑星に到着したら。」
まゆ子「まあね。サンショロンの売りは小惑星帯での自由な発想での冒険、だからね。太い両手はダテじゃないよ。本来であれば、宇宙スクーターくらいは搭載していておかしくない。というか、そうしよう。」

 

釈「してこれからの展開はどうなりますか。これは新しいお話の元になるんでしょうか。」
まゆ子「とりあえずは3DCGとして動かしてみる。これまでわたしは背景というものにまったく手を付けてないから、キャラとメカが揃えば、背景に挑戦してみる必要があるんじゃないかな。」

釈「なるほど。つまりは新しいモチーフに挑戦する元とするわけです。」

 

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