近代化改修に伴う補足説明の追加
開設日 2019/01/29

***

(EP1)

 【十二神信仰の主要聖地】

 天河十二神信仰の聖地として崇められるのは、以下の8つの都市。

 「神聖神殿都市」:北方聖山山脈の奥地にある。十二神殿の総本山。
 「テュクルタンバ」:北方東西を繋ぐボウダン街道脇にある。旧紅曙蛸女王国の王都であり、十二神殿発祥の地。
 「タコリティ」:方台南岸の港町。無法都市と呼ばれる海賊の巣窟。近くにタコ神の遺跡もある。

 「ギジジット」:方台中央北部、毒地平原内にある。旧神聖金雷蜒王国の王都であり、金雷蜒神の地上の化身が棲むという。「神都」
 「ギジシップ島」:方台東岸の離れ島。島全体が東金雷蜒王国の王都である。外周は切り立った断崖のテーブル状の島。

 「カプタニア」:方台中心部カプタニア山脈西端、アユ・サユル湖の畔。褐甲角王国王都でもあり、褐甲角神の地上の化身が森に棲むという。

 「ウラタンギジト」:北方聖山街道東側に位置する。金雷蜒王国によって建設された金雷蜒神の神殿都市である。
 「エイタンカプト」:北方聖山街道西側に位置する。褐甲角王国によって建設された神殿都市で、「ウラタンギジト」に対抗する。

   物語中において、これらの都市は全部出ます。覚えてね。

          ***

 「神聖神殿都市」は、そもそも「テュクルタンバ」に有った総本山が神聖金雷蜒王国により強制的に移転させられた。
 この地には巨大な鍾乳洞が有り、元々はコウモリ神の聖地として知られていた。
 移転は信仰的にはダメージとはならず、むしろ泊が付いたようなもの。
 ただ、めちゃくちゃ寒い。冬場は死ぬ。

 「テュクルタンバ」は現在はほとんど人が住まず、ただタコ神殿が有るだけの寂しい土地。紅曙蛸女王の宮殿跡として巨大な磐座が残るのみ。

 対して「タコリティ」は、海賊の拠点として大繁栄している。金雷蜒王国と褐甲角王国が非公式の商取引をする場としても成り立つ。
 また亡命者を無制限に受け入れる、政治的聖地ともされる。
 街自体が「初代紅曙蛸女王の庭」という名で、タコ神官巫女の楽天地だ。

 なお「聖山街道」は別名「強盗街道」と呼ばれる。
 「神聖神殿都市」への貢物を運ぶ道だが、周辺の土地は貧しく寒冷で住民は困窮し、為に貢物を奪うという。
 これは一種の喜捨とされ、神への贈り物と解釈される。
 強盗ではあっても人が死ぬ事はめったに無く、また無一文で放り出されても周辺住民が暖かく迎えてくれ、旅には困らない。

 

 「ギジジット」は周辺を毒によって汚染して容易に通行が出来ぬために、寂れている状態。
 この地を支配する「王姉妹」はギィール神族とも対立する為に、外部からの支援は受けない。
 だが戦闘用の巨蟲「ゲイル」の繁殖地でもあり、市が立つので資金はいくらでも吸い上げられる。

 東金雷蜒王国王都「ギジシップ島」は全島が禁域であり、ギィール神族であっても許可なく立ち入りは許されない。
 不思議な生物の実験場となっており、怪しげな獣人が徘徊して警備するという。
 またこの島でしか栽培されていない薬草が有り、ギィール神族が必要とする薬物「エリクソー」の主原材料となる。
 ギィール神族は額のゲジゲジの聖蟲を授かるために、生涯に最低1度はここを訪れねばならない。だが貢物がかなり高価い。

 「カプタニア街道」は、カプタニア山脈と巨大なアユ・サユル湖との境目の細い街道で、方台中央部で東西を移動する唯一の抜け道だ。
 故にこの地を厄されると、商業的にも軍事的にも非常に困窮する。関税も取り放題だ。
 褐甲角王国はこの地を領有した事により、ようやく国家としての体裁を整えるのに成功した。

 王都「カプタニア」は、王城全体が「カプタニア街道」の関所として、また要塞として機能するように作られている。
 山自体が褐甲角神「クワァット」の聖地であり、その山肌に沿って建設された王宮は、カブトムシの聖蟲の繁殖育成も行っている。
 褐甲角王国にとっては心臓そのものと言えよう。
 ただし、ちょっと不便であるから、街道を抜けた西側に商業中心地として「ルルントカプタニア」市が設けられている。
 こちらの方が華やかで都会的。そもそもが「ルルント」が方台古語で「華やかな」の意味である。

 

 「ウラタンギジト」は金雷蜒神を祀る神殿都市であるが、またギィール神族の保養地観光地でもある。
 現在この場所は褐甲角王国の領域にあるが、飛び地として金雷蜒王国の所有が認められる。
 ボウダン街道と聖山街道を通っていくのだが、例外的にこの街への経路でだけは神族の移動・巨蟲「ゲイル」への騎乗も許された。
 この都市を統べるのは、直系王族より選ばれた「神祭王」
 「神聖王」の名代としての赴任となるが、気楽で自由なものであり暗殺の恐れもなく長生き出来ると好評である。

 「エイタンカプト」は、「ウラタンギジト」に対抗して褐甲角王国が建設した神殿都市。
 「ウラタンギジト」が重厚な城壁を持つのに対して、ただの囲いの田舎町の風情。
 この地を統べるのは、褐甲角王国の王族から分家した副王「メグリアル王家」。外交を担当する。
 十二神信仰を利用して、平和裏に外交交渉を行う窓口として機能する。

 

          *** 

 なお北方「聖山街道」の終着点は、「トリバル峠」と呼ばれる断崖絶壁の上となる。
 これより先は道は無く、切り立った断崖が東西に延々と連なり、人間の北上を妨げる。
 眼下に広がるのは一面の針葉樹林帯で、人外魔境。極めて寒冷で居住できない。

 この断崖絶壁に挑み未知なる土地に下るのは、「スガッタ僧」と呼ばれる苦行僧のみ。
 しかも一度下りたら二度とは帰らないと聞く。 

 この断崖絶壁の守護者とされるのが、トカゲ青晶蜥神「チューラウ」だ。
 「チューラウ」は冬と氷の神でもあり、この断崖絶壁自体が聖地とも呼べる。

 弥生ちゃんの額のカベチョロ「ウォールストーカー」の名の由来でもある。

 

 ついでに言えば、「聖山街道」出発点である「デュータム点」と呼ばれる大きな街に、弥生ちゃん次行きます。

 「デュータム点」は東西を繋ぐ「ボウダン街道」と、南北を貫く「スプリタ街道」の結節点で、北方「聖山街道」、東岸に抜ける街道へと連なっている。
 これで繁栄しないわけがないという好立地の大都市。
 『テュクルタンバ」もかなり近くにあり、「デュータム点」はその繁栄を引き継いだ形になっている。

 

 【十二神殿の秩序】

 天河十二神の信仰を司る組織の発祥は、創始歴2000年初頭 紅曙蛸女王国建国と同時となる。
 そもそもが神官巫女また神殿組織は、女王の私的な下僕であり、民衆に奉仕する専門サービス業として立ち上げられた。
 便宜上十二神の名を与えられているが、本来は全くの関係が無かった業務も多い。
 ただ神殿組織による活動が長く続くにつれて、神の属性が変化して神殿の業務と連携するものに変化し、固定した。

 創始歴2500年代に紅曙蛸女王国が崩壊すると、女王の不在を補うかに新宗教が雨後のたけのこのように発生する。
 その中でも最も有力で、権力者の間で進行されたのが「火焔教」人呼んで「人食い教」である。
 だがこの時、十二神殿組織は相も変わらず活動を続け、紅曙蛸女王国の栄華を世に伝え続けている。
 火焔教が権力者集団の権威の確立を支援する存在となったのとは対象的に、一般民衆に寄り添っての信仰が継続した。

 

 創始歴3100年頃に神聖金雷蜒王国が建国される。
 額にゲジゲジの聖蟲を戴くギィール神族、その頂点に立つ神聖王は文字通りに「自らこそが唯一に神聖な存在」であると主張した。
 当然に他の信仰は徹底的な破壊を受け、旧来の権力者であった「小王」階級も弾圧を受ける。
 これは当時の一般民衆から大きな支持を受けた政策である。なにせ「火焔教」は人間を火に焚べて生贄とするのだ。
 他の宗教も大差なく、民衆に負担を与えるものが多かった。

 その中で唯一、一般民衆にとって身近であり有益な存在と見做されたのが「十二神殿」組織である。
 神聖金雷蜒王国は、十二神殿の神官巫女を自らの下僕として体制に組み込み、正式に存続を許可する。
 唯一の宗教として確立した。

 だが、十二神殿の権威が神聖王よりも上となるのは許さない。
 当時に至るまでは、十二神殿総本山は旧紅曙蛸女王国の王都「テュクルタンバ」に有った。
 しかし、影響力の減少させる為にこの地を放棄。北方の山脈の奥地に移す事となる。
 新たに十二神殿総本山が設けられたのは、コウモリ神の聖地の一つ。極めて巨大で奥底が知れない大洞窟の入り口だった。
 もちろん冬寒く暮らし難い場所であるが、故に十二神信仰は単なる奉仕者から、形而上の教義を備える信仰へと脱皮。
 紅曙蛸女王抜きでも成り立つ完全に独立した信仰へと進化を遂げた。
 この進化の背景には、表向きは追放された「火焔教」の司祭達の密かな協力があったとされる。

 「火焔教」は各地の権力者である「小王」の権威を生贄の儀式によって認め、統治の権限を授ける機能を持っていたが、その中には秘蹟の継承も含まれる。
 つまりは、知識の集積だ。あらゆる学問が火焔教に集中し、一大図書館を作り上げる。
 また「小王」達の貢物を背景として、学問の振興が行われ、飛躍的な発展を遂げる。

 神聖金雷蜒王国の成立にも火焔教の知識智慧が貢献したとされるが、十二神殿の権威付けにもまた寄与する。
 おかげで、ギィール神族の間にも天河十二神信仰は広まり、遂には十二神殿総本山の近くに彼等の為の宗教都市が設けられる事となる。
 これが「神殿都市ウラタンギジト」である。
 さらには、ギィール神族からの寄進を受けて、十二神殿総本山も巨大化し、「神聖神殿都市」を名乗るまでになった。
 当然に「神聖」の文字の使用は、時の神聖金雷蜒王国神聖王の許可の上でのものである。

 「ウラタンギジト」には神聖王の名代として「神祭王」が常駐する。
 王族の出身者を当てられるのだが、神聖王ほどには義務で縛られる事も無く、気楽に一生を過ごせると人気の役職であった。

 ただし、神聖金雷蜒王国最大の権威は、その崇める神である金雷蜒神「ギィール」の地上に顕現した姿が宿る、王都にして神都「ギジジット」であった。

 

 創始歴4000年代。褐甲角神救世主「クワァンヴィタル・イムレイル」が兵を起こし、公然と神聖金雷蜒王国に対立する。
 やがて要衝「カプタニア」の地を抑えて、一国を名乗るほどに勢力が伸張した。
 ここにおいて、神聖金雷蜒王国では王都「ギジジット」が褐甲角軍の進攻を受ける可能性が無視し得なくなる。
 その為に、ギジジット西方の草原地帯の極めて広範囲に毒を撒き、人間の通行を許さぬ不毛地帯へと変えた。

 やがて精力を拡大した褐甲角軍に押されて、神聖金雷蜒王国は東西に分断される事となる。
 二つの領域は、やがて便宜上の独立を宣言して東・西金雷蜒王国を名乗る。
 東側の王都は「ギジシップ島」、西側の王都は百島湾の一隅にある「エイントギジェ」である。
 だがどちらも「ギジジット」ほどの宗教的権威を獲得する事は出来なかった。

 一方、褐甲角神「クワァット」の聖地は、カプタニア山である。
 要衝「カプタニア」はそのまま王都となり、また最大の防衛拠点・要塞として整備される事となる。
 王宮はそのまま神聖宮として崇められ、武と聖が渾然として成り立っていく。

 だが褐甲角王国が確立し支配の歴史が積み重ねられていくと、両金雷蜒王国との間に外交関係を結ぶ必要が生まれる。
 元より生産体制や流通商業はさほど分離していなかった為に、両者対等に協議できる場所を必要とする。
 そこで褐甲角王国は、「ウラタンギジト」の隣に褐甲角神の神聖都市「エイタンカプト」を建設。
 王族の分家である「メグリアル副王家」を配置して、守備と外交を任せた。
 メグリアル家はその後、宗教的に独自性を獲得して、「十二神信仰の擁護者」を名乗る事となる。

 

【十二神殿の秩序その2】

 天河十二神信仰の総本山は、北方聖山山脈にある「神聖神殿都市」だ。
 山奥で冬は凍てつく場所であるが、故に尊ばれ、また哲学的教義も発展したと言える。
 だがヘンピな土地には違いない。

 何故こんな場所に総本山が有るのかと言えば、創始歴3100年代に成立した神聖金雷蜒王国に僻地に追っ払われたからだ。

 創始歴2500年代に紅曙蛸女王国が崩壊した後、女王の不在を補うように新宗教が雨後のたけのこのように乱立した。
 中でも最有力であったのが、当時の権力者である「小王」に強く支持された「火焔教」である。
 人を火炙りにして生贄とする壮絶な、かつ奇術手品を駆使したスペクタクルな儀式によって、「小王」達に民衆を支配するカリスマを与えた。

 神聖金雷蜒王国の成立は、「火焔教」の駆逐も目的としたと言えよう。
 「神聖」という文字の使用は、世界で唯一ギィール神族の長である「神聖王」にのみ許され、他の権威の並立を許さない。
 この政策は、当時の一般民衆によって強く支持された。やっぱり生贄はイヤである。

 神聖金雷蜒王国において唯一許可された民間宗教が、民衆への奉仕を基盤とする天河十二神信仰だ。
 しかし、王国よりも高い権威となっては困る。
 ということで、本来は旧紅曙蛸女王国の王都「テュクルタンバ」に有った総本山を、山奥の僻地に移転させる。

 この場所には極めて大きな鍾乳洞が有り、コウモリ神の聖地とも見做されていたから、信仰上は特にダメージは無い。
 むしろ箔が付いたくらいだ。

 

 そもそもが十二神信仰には明確な教義・経典が存在しなかった。

 神官巫女は本来は紅曙蛸女王に仕える者で、様々な技芸で民衆に奉仕するのを役目とする。
 紅曙蛸女王の言葉以上に重要な教義は必要としなかった。

 しかし教義を持たない事が災いして、女王失踪後は小難しい屁理屈の新宗教特に「火焔教」の猖獗を見る。
 「火焔教」も、基本的には詐欺商売であったのだが、それで留まるのを良しとはしなかった。
 「小王」達よりの莫大な貢物を費やして、知識学問の蒐集を始める。方台における最初の学問の育成に尽力した。
 数々の賢人を輩出し、地下には一大図書館を建設する。

 神聖金雷蜒王国に駆逐された後も、この地下図書館は生き残り、表で活躍する賢人たちの秘密ネットワークとして機能した。
 もちろん「生贄を行う宗教として」だ。

 天河十二神信仰の教義確立にも、「火焔教」の智慧は貢献したと言えよう。
 複雑で合理的論理的な教義の確立により、ギィール神族の間にも信奉者を増やして財政的にも安定し、遂には「神聖」の文字を賜ることにも成功する。
 こうして「神聖神殿都市」は生まれた。

 

 なお「テュクルタンバ」には紅曙蛸神殿のみが設置を許可され、舞人楽士の育成に当たった。
 ただし、あくまでも旧紅曙蛸女王国の史跡を保存するためであり、参拝客目当ての施設の建設は禁止される。
 常に音楽が流れる静かな聖地となった。

 「ウラタンギジト」は金雷蜒神「ギィール」を祀る神殿都市である。
 ギィール神族の間に十二神信仰が広まり、自らも聖山の傍に参拝所を設けようと考えた。
 そこで建設されたのが「ウラタンギジト」であり、王族が「神聖王」の名代として派遣され、「神祭王」を名乗る。
 王族としてはお気楽な身分となり、またお参りに来るギィール神族も物見遊山であるから、楽しい観光地の趣きだ。

 

inserted by FC2 system