【「ヱメコフ・マキアリイを讃える歌」TAKE2】

 別途設定した「ヱメコフ・マキアリイを讃える歌」は、作詞した本人(著者)ですら歌えないものであった。

 そもそも作詞とかやったことがない第一回作品である。
 作曲もできないから、「作詞をするのであれば知ってる曲の替え歌を作ればよい」理論を用いているのだが、歌えなかった。

 というわけでTAKE2を行う。
 以前に作詞したものを流用して再編し直し、歌えるものとした。

 A・B・Cパートに分かれているが、ABパートは「気前がよくて二枚目で」の遠山の金さん、であれば歌えるのが確認されている。
 Cパートは曲調が一転するのだが、結構いろんな曲で歌えたのでよしとする。

 前作では1番ケバルナヤ「ソル火屋網焼き店屋根裏」時代、2番ザイリナ以後「鉄道橋事務所」時代を歌うものであった。

 しかし改変して、1番はヱメコフ・マキアリイ本人を、2番はカニ巫女事務員について歌うものに変えた。
 どちらも最初のカニ巫女「ケバルナヤ」を扱う事になるが、まあ最初が一番印象が強い、という理屈であろう。
 3番は「ソグヴィタル・ヒィキタイタン」と「潜水艦事件」についてだが、マキアリイが庶民の英雄であると強調している。

 なお2番の「惚れた女を泣かせちゃおかぬ」のくだりは、
 ヱメコフ・マキアリイ本人も歴代カニ巫女事務員もがんとして否定するものである。

 

   映画『英雄探偵マキアリイ』シリーズ 主題歌『ヱメコフ・マキアリイを讃える歌』

♪ここに一人の男あり
 鹹魚(かんぎょ)の煙(けむ)に燻されて まどろむ屋根裏階段(きざはし)の
 呼び来る声に目を覚まし
 正義の朝日今ぞ差す 

 憂いの人も科人(とがびと)も
 縋るを袖に出来ぬ質(たち) 証を求め東西へ
 旅の道連れ人殺し
 爆弾毒殺なんでもこい

(ぺぺんペンポン)

 疾(はし)る白球弱きを救え
 値千金誉れの拳(こぶし) 苦き盃(さかずき)奢るぜ今日は
 俺の名前を覚えておけよ
 英雄探偵ヱメコフ・マキアリイ

(ヤサエンヤラドッコイショ)♪

 

♪大道往くに独り無し
 侠(おとこ)百人争う原に 殴り込んだる偉丈夫の
 背中を守る凛々しさよ
 映画撮る手も熱くなる

 闇にほころぶ悪の華
 摘んで回るが艶姿 慈悲の心で打つ棒は
 古よりの戒めか
 痛くない嗚呼痛くない

(ぺぺんペンポン)

 剣(つるぎ)鉄砲なにするものぞ
 唸れ鉄拳我らの怒り 惚れた女を泣かせちゃおかぬ
 俺の名前をゆめ忘るるな
 英雄探偵ヱメコフ・マキアリイ

(ヤサエンヤラドッコイショ)♪

 

♪若人二人進み出て
 眺む夏海黒鉄(くろがね)の 怪鯨戦(いくさ)の船なれば
 日頃鍛えし兵(つわもの)が
 国をも救う大手柄

 それより数えて五六年
 いや増す誉(ほまれ)なお高く 何を思うか野(や)に下り
 庶人(ひと)の中にて輝ける
 立身出世は任せたぜ

「ヒィキタイタン!」

 金は無くとも真(まこと)があるさ
 巷に生きる我らが味方 固き友情四海に響く
 俺とお前で明日を拓け
 英雄探偵ヱメコフ・マキアリイ

(ヤサエンヤラドッコイショ)♪

 

 

”ヱメコフ・マキアリイを讃える歌”

 

【オリジナル・バージョン】

「昔、おとこありけり」(セリフ)      〜このセリフは、マキアリイ没後40年に制作されたテレビドラマ『罰市偵 〜英雄探偵とカニ巫女』劇中歌で追加された

 

 幾百万の人ぞ棲む 電気伝視の世の中で

 上辺は黄金(こがね)の輝きの 闇より悪の忍び寄る

 銭と権とで罷り出て 泣くは巷の者ばかり

(テケテン ペンペン)

 抗う術の無きものか ここに一人の男あり

 鹹魚(かんぎょ)の煙(けむ)に燻されて、まどろむ屋根裏階段(きざはし)の

 呼び来る声に目を覚まし 正義の朝日今ぞ差す 

(ぺぺんペンポン)

 流す涙を捨ててはおかぬ 奮え鉄拳我らの怒り

 殴れよ殴れ打ち倒せ 剣(つるぎ)鉄砲なにするものぞ

 カニ巫女棒ほど怖くはないさ

 俺の名前を覚えておけよ 英雄探偵ヱメコフ・マキアリイ

(ヤサエンヤラドッコイショ)

 

【ザイリナバージョン】

 中都湖南の市(いち)に住む 鉄車轟く橋の下         〜中都湖南の市とは、タンガラム方台中央部のアユ・サユル湖の南にあるノゲ・ベイスラ市を意味する

 構えし正義の砦にて 電話番する艶姿

 赤き花とて近づくな やがて手が出る棒が飛ぶ

(テケテン ペンペン)

 ここに一人の男あり

 憂いの人も科人(とがびと)も 縋るを袖には出来ぬ質(たち)

 証を求め東西へ 旅の道連れ人殺し 

 爆弾毒殺なんでもござれ

(ぺぺんペンポン)

 今ぞ皆んなの待てる時 疾(はし)る白球弱きを救え

 殴れよ殴れ打ち砕け 値千金誉れの拳(こぶし)

 苦き盃(さかずき)奢るぜ今日は

 俺の名前をゆめ忘るるな 英雄探偵ヱメコフ・マキアリイ

(ヤサエンヤラドッコイショ)

 

【潜水艦事件バージョン】

 眺(なが)む黒鉄(くろがね)南海の 怪鯨戦(いくさ)の船なれば

 兵(つわもの)二人若人の 国を思えて奮迅の

 力を示す殊勲の星ぞ 奸賊どもをなぎ倒す

(テケテン ペンペン)

 数えてそれより五・六年

 並の者なら図に乗りて 栄華に溺(おぼ)る毎日が

 何を思うか泥の海 庶人(ひと)の中にて輝ける

 立身出世は

「ヒィキタイタン、任せたぜ」

(ぺぺんペンポン)

 これぞ我らが心映(こころばえ) 腹を括って胸を張れ

 悪に限りは無いものぞ 明日晴れてもまた曇る 

 あんただけには任せちゃおかぬ

 俺も男にしてくれよ 英雄探偵ヱメコフ・マキアリイ

(ヤサエンヤラドッコイショ)

 

***

「オリジナルバージョン」は「英雄探偵マキアリイ」シリーズ2番目の映画『英雄探偵マキアリイ 実話・唸る鉄拳 侠(おとこ)百人殴り』にて使われたもので、
この映画が超大ヒットした為に、「英雄探偵マキアリイ」の主題歌として定着した。

「英雄探偵マキアリイ」シリーズ第1作『盗難国宝奪還事件』では、最初のカニ巫女「ケバルナヤ」との出会いとマキアリイが刑事探偵としてノゲ・ベイスラ市で開業するところが描かれて
歌にあるようなフォーマットがまだ整っていなかった。
「英雄探偵マキアリイ」のキャラクタ造形と演出の定型は2作目『実話・唸る鉄拳 侠百人殴り』で確立した。

 

最初のカニ巫女「ケバルナヤ」は、映画第一作『盗難国宝奪還事件』公開時には既に引退しており、2人目の巫女見習い「ザイリナ」に引き継いでいる。
事務所も「ソル火屋網焼き店」3階屋根裏から、鉄道橋町に正規の事務所を開業している。
その為にオリジナルバージョンと異なる歌詞で、新しい活躍を描くこととなった。
ザイリナに続く、「シャヤユート」「クワンパ」「ポラパァーラ」「ヤャラアタ」の映画まではこの歌詞が基本的に用いられる。
なお「鉄道橋町」線路橋下の事務所は、「ヤャラアタ」在籍時に爆破されて失われている。

 

「潜水艦事件バージョン」は、「英雄探偵マキアリイ」シリーズにおいて作中にソグヴィタル・ヒィキタイタン登場回にのみ使われた。
ヒィキタイタンとマキアリイの両英雄が並び立つ映画は特別に人気が有り、興行収入も大いに儲かった。
専用バージョンが生まれるのも当然である。

 

第七のカニ巫女見習い事務員「シスメィ&カトラマヤ」の頃の事件は、「英雄探偵マキアリイ」シリーズでは映画化されていない。
「マキアリイ」映画ブームも一段落を見せて低調で、マキアリイ本人も刑事探偵業より自ら起こした古代ゲルタ事業に忙しかった頃で、巨悪を裁く犯罪解明は少なくなっていた。

その後、マキアリイは南海イローエント市に拠点を移し、第八のカニ巫女「シクゥヴァル」と共に現地で跋扈する犯罪組織・外国人マフィアとの血で血を洗う掃討戦に突入する。
あまりにもシリアスな展開が続き、単体の事件を切り分ける事が難しかった為に活躍が続く間は映画化されず、もっぱら事件報道で全国民の耳目を集めていた。

6226年、ゥアム帝国に渡る豪華客船上でマキアリイが忽然と失踪。
死亡宣告が為された後に、改めて「英雄探偵マキアリイ 血風南海仕置」シリーズとしてシリアス路線で映画化される。

シリアス路線が終了してマキアリイのイメージを明るいものに戻すために、コメディ「英雄社長」シリーズとして「シスメィ&カトラマヤ」時代のエピソードが映画化された。
「英雄社長」シリーズでは、これまで長年「マキアリイ」役を務めてきた俳優カゥリパー・メイフォル・グェヌ(”マキアリイ=グェンヌ”)氏が起用を拒否し、新しいマキアリイ役が立てられた。
グェヌはそれまでのシリアス路線で、マキアリイ役を全てやり終えたと語る。それだけ撮影現場も過酷なものであったのだろう。

この後に、「クワンパ」ブームが巻き起こる。マキアリイ役も若手俳優に代わり、恋愛映画路線に突入した。

 

つまり、「ヱメコフ・マキアリイを讃える歌」は、マキアリイ存命中に作られた明るい希望に満ちた映画の主題歌なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

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