くっちゃりぼろけっと出張

 

17/10/22

まゆ子「というわけで、前回カニ巫女「ヤャラアタ」がいかに「運命の子」であるかを考察したわけですが。
 こんなもんでいいの?」

釈「なにか足りないところがありましたか?」
まゆ子「ヤャラアタは、まあ父親関係とか「潜水艦事件」でどういう経緯を辿ったか、がまだ不明でありますが、そこはよろしい。
 私が足りないと思うのは「ネガラニカ」だ。」
じゅえる「ふむ。たしかに謎の組織が謎のままだと困るな。」
釈「内部構造とか組織形態とか構成員とか考えますか。」

まゆ子「それもいい。だが、「ネガラニカ」が現在「海島権益争奪戦」で三カ国を手玉に取っているのは分かるが、その前は何をしていたのか?
 創始歴6000年までは三カ国の交通は成立しておらず、そもそもがそれぞれの存在をほぼ知らずに来ているわけだ。
 「ネガラニカ」は、たぶん旧世紀の支配者と呼ばれるくらいだから6000年以前から存在する。はるかな過去からだ。
 であれば、それまで何してたん? という疑問が当然に発生する。」

じゅえる「ふむふむ。まためんどくさいことを。」
釈「それ、無理矢理に考えなくてはいけないことですかね? 小説書くのに必要ですか。」
まゆ子「特には要らないが、気持ちが悪い。なんか裏付けを作るのだ。」

じゅえる「おーい、明美来いー。」
明美「じゃんじゃ。来ました。でもさじゅえる。この話、わたしには向かないと思うよ。だってわたしが得意なのはキャライジリだからさ、歴史設定なんかは、」
じゅえる「おう、歴史上の偉人を作れ。」
釈「そうですね。何をやっていたかよりは、偉人が何をやっていたか。こちらの方が想像の翼を羽ばたかせるのに向いてますね。」
まゆ子「そういう手法もありか。ではお願いします。」

明美「海だよねえ。やっぱ海賊王だよねえ。」
じゅえる「海賊王はそりゃあ作らないとダメだな。」
明美「でもこの三カ国では互いの存在を知らないわけだから、海賊王が荒らし回っていても気付かないんだね。」
まゆ子「そういう事になる。あまりにも何も無いから、外洋航海すら行われなかった。島も見つからないし、役に立たないからね。」
釈「互いの方台の存在が隠蔽されていたのは分かりますが、無人島もですか。」
まゆ子「まったくに陸地というものが無かったんだよ。隠蔽状態の時は。だから今一生懸命海図を作成している。」

明美「となると、既存の三カ国以外の方台で海賊王が活躍していた事になりますね。」
じゅえる「そうか、別の方台の組が有るんだ。タンガラムゥアムシンドラ以外の。」
まゆ子「ああーそういう話だと、「ネガラニカ」もこれまで活動してきた領域からいきなり追放されて、この三カ国領域に飛び込んできた。そういう感じになるのか。」
明美「それを成し遂げたのが海賊王です。救世主の一人と考えてもいいかな。」
釈「別領域の方台の組に現れた救世主が、海賊王であった。そういう話ですね。」
まゆ子「ネガラニカと戦っていた救世主海賊王が居る。という話だな。よし考える。」

明美「それは不老長寿の真人ではない。ちゃんと年取って死ぬ普通の人間の王様であるべきですね。」
じゅえる「聖蟲が有った方がいいのかな。」
釈「海だから、タコとかフグを乗せておきますか。」
まゆ子「フグねえ、可愛いけどねえ。」
明美「フグ提灯半魚人が居て、彼らと同盟関係を結んだ人間の海賊王が、ネガラニカと戦う。こういう話にしましょう。」
まゆ子「おう、半魚人!」
釈「デミヒューマン来ましたよ。」
じゅえる「タンガラムにだって人語を使うネコが居るんだ。今更驚く方がどうかしてる。」
まゆ子「確かにそうだ。」

明美「ちょっと考えたんだけど、バシャラタンは関係ないの? 三カ国と。」
まゆ子「新発見方台であって、工業力が低く海洋進出もしてないから、海島権益争奪戦に加われないんだ。海軍が無いどころか海浜部に住んでないし。」
明美「そして僧侶が国を支配してるんだよね? 聖蟲を持った聖戴者って居ないのここ?」
じゅえる「どうなんだよまゆ子。」
まゆ子「何にも考えていない。というか、バシャラタンは聖戴者の存在が極めて希薄な国だ。弥生ちゃんがやって来た千年前にはもう居なかったと思う。」
釈「それは、天の神様が聖蟲を与えなかったって事ですか。」
まゆ子「どうなんだろう。考えてない。」

明美「じゃあこうしよう。バシャタンにはかって非常に進歩した古代文明があった。当然に聖戴者が居て文明を支配していた。
 しかし彼らはネガラニカの手先と成り果てて暴虐の限りを尽くし、とうとうバシャラタンを焼け野原にして海に逃げてしまった。
 その後、回復した自然の森の中で人々を教え導いてきたのが、今の僧侶による組織機構だ。ての。」
まゆ子「悪の聖戴者、イソギンチャク聖蟲の仕業か。」
釈「いえ、また別の悪の聖蟲でやりましょう。その海に逃れた聖戴者こそが、ネガラニカの現在の構成員の祖先なのです。」
じゅえる「それ何年前だ?」
まゆ子「バシャラタン全土が森林に覆われるのに必要な時間を考えると、軽く1000年。弥生ちゃんが来た時には今の状態になっていたと考えると、2000年以上昔。
 タンガラムで言うとカブトムシ聖蟲が現れた頃には、もう焼け野原であったと考えるべきです。」
じゅえる「つまり、その文明を築いたのはバシャラタンに現れたゲジゲジ神族であった。というわけだ。」
釈「スケジュール的にはそうですね。知性と科学技術を身に着けた神族が暴走して、ネガラニカと同調して世界を破壊し尽くしてしまったんですよ。
 だから、バシャラタンは聖蟲を持たない国になった。」
まゆ子「その設定は採用しよう。」

じゅえる「つまり、バシャラタンを含む領域にある幾つかの方台の組において、ネガラニカは猛威を振るっていた。
 弥生ちゃん、間違いなく遭遇して一大決戦やってるね。あの人は。」
釈「確実ですね。」
まゆ子「よしわかった! 弥生ちゃんが海賊軍団を率いてネガラニカ艦隊と戦い、これを撃滅してその地域の人々を恐怖と圧政から解放したのだ。
 その輝かしい伝統を受け継ぐのが、海賊王。弥生ちゃんの教えに従ってネガラニカと延々戦い続けてきたというわけさ。」
明美「もうひと捻り!」
釈「では、弥生ちゃんキャプテンとネガラニカの熾烈な戦闘の結果、方台が1個海に没して、陸地を持たない民が発生した。
 彼らを束ねたのが海賊王。」
まゆ子「それだ!」

じゅえる「しかし、方台1個を全壊させるほどのエネルギーって、何を使ったんだ。核兵器どころの騒ぎじゃないな。」
釈「超磁力兵器ですかね。」
まゆ子「うん。火山のマグマからエネルギーを引き出してめちゃくちゃな操作を行ったんだろう。それで地脈が破れて方台全土沈没の憂き目に。
 そういえば、シンドラにおいて弥生ちゃんは、悪魔博士が作った泥の巨人と戦ったんだが、つまり泥製のゴーレム軍団なんだが、同系統の非機械ロボットだな。」
じゅえる「溶岩から作った燃えるロボット、とかだな。」
釈「そりゃ強いですね。」
明美「弥生ちゃんはそんなのにどうやって勝ったんだ?」
まゆ子「そりゃー、うーん。」
釈「この場合、キャプテンも同系統のロボットを使ったと考えるべきかと。」
まゆ子「無敵ロボットが1体有って、それを弥生ちゃんが手に入れて、溶岩ロボット軍団に単機で殴り込みを掛けたってところかな。」
じゅえる「ガンダムみたいなのか。」
釈「どちらかと言うと、巨神ゴーグ的な頭に露出して乗れるみたいな自律ロボットですかね。」
まゆ子「うん、コクピット内で守られているてのは弥生ちゃんぽくないしね。」

明美「弥生ちゃんはそんな敵と戦わなくちゃいけないって、そいつらは何をしてたんだろうね。世界征服どころじゃないよね。」
まゆ子「天河十二神によって各方台が隔絶しているバリアを破壊する為に、次元を破壊するほどのエネルギー兵器を必要とした。その為のエネルギー源として火山脈を利用した。そんな感じね。」
釈「やはり全方台征服がネガラニカの野望なんですね。」
じゅえる「世界征服というよりも、ネガラニカの影響力を全世界に浸透させるのが目的だな。」
まゆ子「天河十二神のゲキ再生計画を横取りして、ネガラニカ風の人間に置き換えるのが目的だね。ダイオウグソクムシ神は、天河十二神とは別口の宇宙人と考えてもいい。」
じゅえる「明美、それはSFでないかい。」
釈「ここはSFでいいんですよ。そうですねー、ダイオウグソクムシ神は旧世紀の支配者とされていますから、この惑星の現住物であって、天河十二神は後からやって来て人間サイズの知的生命体が住んでいないから「ゲキ再生計画」を行った。
 そんなところですね。」
まゆ子「うん。それならば敵対的な行動を取るのも不自然ではない。」

明美「つまりネガラニカのダイオウグソクムシ神は人間とはまるで縁が無い?」
まゆ子「無いね。」
明美「でもそれなら、なんで人間を使おうとするんだ?」
釈「ダイオウグソクムシ神は、神と呼ばれるくらいですからそれなりの文明を持った宇宙人なんですよ。古代宇宙人「ゲキ」の存在自体は知っていて、利用しようと考えたとか。」
明美「いやでも海の底に棲んでるんでしょ。だから誰も住んでないと思って天河十二神が「ゲキ再生計画」の実験場に使ったわけですから。」
じゅえる「ダイオウグソクムシ神も宇宙から来て、海底で隠遁していたと考えたらどうだ。もう発展や進歩への関心を失って引退生活をしていた宇宙人という感じで。」
まゆ子「ふーむ。であれば、「ゲキ」人間が地上を跋扈するようになって、「これを上手く使えないかな」と考えたってことだな。」
釈「そうですね。天河十二神の計画は「完全にオリジナルなゲキの再生」ですから、かなり迂遠なんですよ。ダイオウグソクムシ神であれば手っ取り早く宇宙文明を担う媒体として現世人類を使って発展できる。」
まゆ子「うざくなったんだなつまりは。」
明美「そうか。さっさと惑星上から出てってくれ、という動機ですか。」
じゅえる「ああそれは、分かる。」
釈「うざかったんですね。」

 

明美「海賊王はわかったけれど、海賊王朝は作るかい。」
まゆ子「つくろう。」
じゅえる「だが王位をどのように継承するか。普通に相続でいいか。」

明美「考えてみれば使い道が無かった。使いみちが無いと面白く作れない。」
釈「ああ、無理ですよね。マキアリイさんが遭遇するとかが無いと。」

じゅえる「つまり、
 ネガラニカが幾つかの方台を巻き込んだ領域で暴虐を奮い、人間を苦しめていた。→弥生ちゃん降臨でネガラニカと激烈な戦闘→人間も弥生ちゃんと共に悪と戦う→最終勝利を得るが、ネガラニカがエネルギーを吸い取った方台が海中に沈没
 →沈没した民は船の上に住む海洋民族となる→海洋民族を統一したのが海賊王→だがネガラニカの残党も海賊を作って人を襲う→海賊王、ネガラニカ艦隊と戦って人々を守る
 こういうことだな。」
釈「ネガラニカ系列の邪悪王朝も有る事にしましょう。正義の海賊王と、邪悪王朝が戦って、さらにネガラニカが暗躍するんですよ。」
まゆ子「フグ半魚人はどうなった?」
釈「正義の海賊王は、海を荒らすネガラニカ暗躍勢力と戦っているフグ半魚人と同盟して、海中と海上の2つの領域で戦っているのです。
 そして邪悪王朝が滅ぼされ、ネガラニカ勢力もこの海域はもうやることが無いと、元の荒れ地のバシャラタン経由でタンガラムゥアムシンドラ海域に侵入した。
 というか、この三カ国が天河十二神の計画によって国交が発生したタイミングを利用して、乗り出したってところ。」

明美「となれば、タンガラム海域に進出したネガラニカの悪党どもは、滅び去った邪悪王朝の生き残りってところだね。」
じゅえる「うん。なるほどそいう理屈だ。」
釈「邪悪王朝が、「十七人委員会」とか作って世界征服を企むわけですよ。」
まゆ子「集団合議制の支配体制なのか。」
釈「あー、「未来少年コナン」のインダストリアみたいに、原子炉を管理する科学者の集団と、行政を牛耳るレプカという感じで、「十七人委員会」がネガラニカのエネルギー源を管理して、陰謀を司る悪党の司令官が居る事にしましょう。」
じゅえる「その司令官は邪悪王朝の王族の末裔で、「十七人委員会」に事実上管理されている事に不満を持っていて実権を掌握しようと陰謀を画策しているのだ。」
釈「それは、「天空の城ラピュタ」ですね。目が〜.」
明美「やっと、マキアリイさんが戦えそうな相手が出てきた。」
まゆ子「そうだな。これならば戦えるな。」

 

       *******

 

まゆ子「というわけで、ネガラニカ関連はいちおうこれで良しとしましょう。
 ついでだから、ゥアムシンドラの昔話でも考えますか。バシャラタンの聖蟲計画が失敗したことが判明したし。」

釈「バシャラタンにもゲジゲジの聖蟲が居たことでいいんですかね。知性を授ける。」
まゆ子「いや、イソギンチャク聖蟲でいいんじゃないか。」
じゅえる「ゥアムの聖蟲はなんなんだよ、ゲジゲジに相当するのは。」
まゆ子「ゲジゲジでいいんじゃないかなあ。」

明美「天河十二神って、どの方台でも同じように聖蟲を与えていたの?」
まゆ子「いや、ちょっとずつ計画は違う。たとえばシンドラであれば、新石器文明の次に、青銅器文明のコガネムシ聖蟲が来て、その後に知性を司る鉄器文明聖蟲が来るはずだったけど、何故かイソギンチャクが出現した。」
じゅえる「元々の計画をネガラニカが干渉して捻じ曲げたんだな。」
明美「つまり、バシャラタンで使われていたイソギンチャク聖蟲が、シンドラで流用されたってこと?」
釈「そういう事になりますね。」
じゅえる「シンドラは、弥生ちゃん救世後は聖蟲を必要としない世界になったんだっけ。」
釈「黄金の黒ひげ危機一髪で大王を選出するようになりましたからね。神秘により支配されているという点を考慮すれば、今はまだトカゲ神救世主「ヤヤチャ」の支配時代ですよ。」

明美「タンガラムにおいては、弥生ちゃんは2度出現しているから、シンドラにも2度出てきた事にしよう。」
釈「おお。であれば、なにか大乱を起こすべきですね。」
じゅえる「革命だな。」
まゆ子「いや太守制だから全国的に波及するとかは無い。革命と言ってもだね、どちらかというととある太守が全シンドラ征服に乗り出したとか。」
明美「それは別にいいんじゃないかな、歴史的な話で。」
釈「キャプテン呼び出すほどの事件じゃないですねえ。」
まゆ子「いや、そこにはなにか凄まじい神秘の力があるべきで、」
じゅえる「イソギンチャクの三悪人が残した最終兵器を太守が持ち出した、とかでどうだ。」

まゆ子「あー、ここはエジプトに倣って一神教アテン神を強制しようとする、つまりイソギンチャク神への信仰を矯正しようとする太守が不思議兵器を使って全シンドラ制覇を目論見、追い詰められた村娘が村の守り神である武神像に祈ったら、弥生ちゃん見参!で。」
じゅえる「大魔神かよ。」
釈「ああ、それ。「ヤャラアタ」の母親である太守の姫の実家という事にしましょう。その末裔なんですよ。」
まゆ子「なるほど。ちょうどいいな。」
じゅえる「不思議兵器って何を使う? 泥ロボットか?」
まゆ子「うーん、そうだなー、殺人兵器ではなく洗脳兵器というのはどうだろう。光線銃みたいなもので、これを浴びた人間は人格が変貌して悪の波動に目覚めるとか。」
釈「イソギンチャク聖蟲の効果が、悪の波動に目覚めるってものでしたね。」
じゅえる「そりゃー弥生ちゃんを呼び出すしかないな。」
明美「マジカルハリセン一閃で、悪の魔手から民衆を解放するんだね。ハリセンは、」
釈「トカゲ神のハリセンはタンガラムにハヤハヤ・コミンテイタムが送り届けましたから、今はもう無いですね。」
まゆ子「なんの! 一時的に黄金のハリセンを出現させるよ。」
じゅえる「群がる悪の波動に侵された群衆をハリセンで一斉に目覚めさせるのだな。」
明美「うん、弥生ちゃんらしい。」

釈「その後はどうしましょうか。悪の太守は成敗されたでしょうが、その血族は生き残りイソギンチャク神への信仰も陰で続いたわけですが。」
まゆ子「あー、弥生ちゃんは徹底的にイソギンチャク神の遺跡を破壊して回ったが、全部は無理だな。
 ハンター組織でも作るか。」
じゅえる「遺跡ハンターはまあアリだが、もうちょっと面白いものは無いかな。」
釈「シンドラは太守制という封建社会で、地域ごとに独立しているから困りますねえ。」
明美「悪の波動に目覚める不思議銃だけ? イソギンチャク神の遺産は。」
まゆ子「どうしよう。泥ロボットもあってもいいんだけどさ。でも悪の波動銃は強力だしな。」
釈「そうですねえ。根絶する他には手が、」
明美「善い人になる光線銃って無いの?」
じゅえる「そんな都合のいいものがこの世にあってたまるものか。」
まゆ子「いや、善人は無理だが普通人になる光線はアリだな。悪の波動銃を改造して、普通人の波動になる銃にしてしまおう。」
釈「たしかに、不思議の力で誰でもが悪人になってどんどん増えるから困るわけで、どんどん普通人になっていく光線銃が有ればまったく困りませんね。」
じゅえる「そんないいかげんなもので、悪の波動銃が無力化するのか……。

 というか、どういう原理でそうなるのだ。悪とか普通とか。」
釈「悪の波動は簡単でしょう。人間誰しもが行動する時に必ず心理的な枷やら抑制する枠組みというものがあります。これが無ければ欲望のままに動いてまったく社会的生活が営めません。
 しかし、悪の波動で枷がすべて取り払われてしまったら欲望だけで暴走する人間が完成します。」
じゅえる「それはいい。それは分かる。だが普通人になる光線てのはどういう理屈だ。」
釈「さあ。」
まゆ子「いや、実は普通人になる光線も簡単な原理で成り立っているさ。
 人間てものはさ自分が生きていく為に都合の良い行動を取り、自分が損失を被るリスクを避けるように生来プログラムされている。
 恐怖が行動の原則であり、欲望と同程度あるいはそれ以上のウエイトで処理されている。」
じゅえる「うん。」
まゆ子「社会規範というものも、実際はこのリスク管理の意識で守られているわけで、社会の枠組みを踏み越えると自分が被る損失が意識されるからこそ人はそれに従う。また他人がそれを踏み越える事を許さないわけだ。」
釈「なるほど。礼儀というものが実際は安全の為に他者の領分を侵さない、他者との関係性を損なわない為の安全な行動のテンプレートという話ですね。」
まゆ子「普通人になる光線は、この枠を踏み越える事で発生するリスクへの恐怖を増強するものだ。人は勝手に自らの行動に枠を嵌めて、他者から強制されなくとも枠と枷を守って生きていく。
 つまり普通人になる。」
じゅえる「そうか。悪の反対は善ではなく、普通なんだ。」

 

 

じゅえる「次はゥアム帝国について考えよう。」

明美「面白いやつだよ。」
じゅえる「分かってる、まずは面白い歴史が無いと許せないよな。」
釈「えーと、キャプテンが訪れた1000年前は、ゲジゲジ神族であるゥアム神族が既に方台制覇していたんですよね、ゥアムは。」
まゆ子「これまでにおぼろげながらに設定されているゥアム帝国の歴史だと、ゲジゲジ神族に相当する氏族がカブトムシ神族の台頭するのを駆逐してしまったのです。」
釈「カブトムシ聖蟲、殺られたんですか。」
まゆ子「殺られたんだね。奴隷制度がしっかりと骨の髄まで染み込んでいて、一般民衆がゲジゲジ神族の支配から逃れるのを恐怖して、救世主を暗殺してしまったのです。」
じゅえる「おう……。」

明美「天河の神様の計画は、それでいいの?」
まゆ子「そりゃダメだよ。当然に、ゲジゲジ神族のーというか、ゲジゲジ神族でいい? サソリとかでもいいぞ。」
釈「なにか、南アメリカっぽい変な虫無いですかね。」
明美「アメリカザリガニとか。」
じゅえる「それはアメリカ付いてるだけだろ。」
まゆ子「ザリガニか。ちょっと弱いなゲジゲジに比べると。サソリ、ムカデ、ヤスデ。ムカデでいいか。」
じゅえる「そんなところ凝っても仕方ないからな。黄金のムカデでいいだろ。」
まゆ子「じゃあ黄金のムカデ神族が居まして、カブトムシ神族を打ち倒して支配体制をそのまま継続しました。すると、当然にムカデ神族同士での内乱が始まるわけです。」
釈「タンガラムでもそうでしたからね。」

まゆ子「ムカデ神族は集まって話し合い、このままではどうしよもなく殲滅戦になる事を理解しました。が、内乱を止める手立てはありません。
 というのも、奴隷が奴隷同士で自らの主である神族の為に戦っている状態です。神族がやめろと言えば戦うのをやめますが、しかし謀略や暗殺をやめる事はありません。
 敵を野放しにすると神族への害が及ぶのは必然であり、神族を守るためには敵対勢力を潰すしかないと思い込んでいるのです。」
釈「忠義の証として徹底的に敵を潰すことしか考えられない状態ですね。」
じゅえる「それはカブトムシ神族が居れば、もっと穏やかな戦争にもつれ込む事ができたわけだな。」
まゆ子「ムカデ神族同士が争い合えば、徹底的なものとなるのは最初から分かっていたのです。さすがのムカデ神族も、カブトムシ神族が何故出現したのかを後で理解して悔やみました。」
釈「後の祭りです。」

じゅえる「落とし所は?」
まゆ子「神族は、もう奴隷への指示支配をやめるしかありません。奴隷は奴隷同士殺し合え、俺達は知らん。というスタンスです。
 神族の知的的確な指揮命令が無くなって、もうただただ蛮族の戦いが進展して、ついに奴隷達は戦うにも食料すら残っていない状況に陥ります。そりゃそうだ、戦争して農業してないんだ。」
釈「物理限界に到達するまで、戦争やめなかったわけですね。」
じゅえる「そうか、奴隷は奴隷だけで国家運営をしていかなければならない事をようやく理解したんだ。」
まゆ子「まあそんなわけで、その後のぅアムにおいては奴隷の社会と神族の社会がかなり明確に分離して、隔絶した社会階層を形成する事となり、或る種の自立的な近代自我が発生する事となりました。
 ゥアム帝国は近代化の道を進んでいく契機となりました。」

 

明美「弥生ちゃんはそこにどう関与するの?」
まゆ子「どうしよう。内乱が収まった後にするか前にするか。」
釈「いやーその内乱は、たぶんカブトムシ神族が破れて百年くらいの間でしょう。キャプテンが来るよりも900年くらい前ですね。」
じゅえる「だなあ。とっくの昔に内乱が終わって、次の千年紀の頃に弥生ちゃんがゥアムに来て、奴隷である一般民衆がまったくに向上心を無くしている事に気がついて、なんとかするんだ。」
釈「しかし、向上心が無い中世的な状態であれば、近代精神の塊であるキャプテンの気性とは合いませんね。どうしましょう。」

明美「奴隷は主人の為に働くものだろうから、主人が命ずるものをただこなせばいいってものだよね。でも主人である神族はもう指揮指導はやらない。
 誰がやってるの?」
まゆ子「そりゃー、神族の親族ではあるが聖蟲を持つことを認められなかった、一歩低いレベルの特権階級ですよ。「げばると処女」でもたくさん出てきたでしょ。」
釈「アレですね。彼らは神族でなくても奴隷ではない、という風に認められているんですかねゥアムでは。」
じゅえる「そいつらも随分と頭が良くて器用で、様々に能力が高いんだよな。アレが普通の国であれば、普通に為政者として十分な能力を持つんだな。」
釈「聖蟲が無ければ支配者になれない、てものでもないですからね。」
明美「弥生ちゃんは、そいつらを頭脳的な勝負でこてんぱんにやっつける事にしよう。」
まゆ子「うん。本命である神族が出てこないから、その下を徹底的にコケにしなければ注目されないしね。」
じゅえる「そして、弥生ちゃんは神族と同等の存在であるとゥアム人全員に認められるわけだ。うん、手間がかかるが仕方がない。まずは土俵に上がらないとな。」

釈「宗教勢力を利用して、てのは今回出来ないのですか。」
まゆ子「あー、考えてないなあ。」
じゅえる「宗教って、ゥアムに有るのかなあ。」
まゆ子「難しいなあ。むしろ神族自体を神格化するのが行き着いて、ゥアム自体がもはや神話での極楽みたいな感じで考えているんじゃないかな。死んだらどうなるかは別として。」
釈「死んだら天の河原に逝く、てのはゥアムでは無いんですかね。」
明美「死んだら、って魂の概念はゥアムに有るのかな。」
まゆ子「無いなあ。魂もへったくれも、徹底的に即物的な人間だなあゥアム人は。それが生き神様である神族の神格化というものだよ。神はこの世に居る神族だけ。」
明美「弥生ちゃん、嘘を吐くべきですね。」
釈「幽霊の概念をばらまきますか。」
じゅえる「妖怪の概念は有るんだろ。さすがに。」
まゆ子「そりゃあ、ゥアムは恐竜とか鳥とかの楽園ですから、人外の化物には事欠きません。」

 

じゅえる「待て! 恐竜と言ったな恐竜って。」
釈「聞きました! ゥアムって恐竜居るんですか?」
まゆ子「言ってなかったっけ、二脚鹿が居るって。」
釈「カンガルーだと思ってました。あれ、恐竜なんですか?!」
まゆ子「カンガルーも居るんだよ。二脚鹿はカンガルーだ。でもカンガルーとよく似た形の大きな直立トカゲも居る。そりゃあ、恐竜だろ。」
じゅえる「二足歩行?」
まゆ子「ゥアム帝国には二足歩行動物が結構居ます。ニワトリは居るしダチョウも居る。イヌも二足歩行するくらいだ。魚のハゼだって二足歩行する。」
釈「聞いてないよお。」
まゆ子「四足で可愛い動物が居ないから、イヌコマがペット扱いされるんだよ。」

明美「であれば、足の無い幽霊がめちゃ怖いんだな。」
まゆ子「うん。弥生ちゃんが怪談話で人心を惑わす不埒な奴、として神族親族から目をつけられてとっ捕まって尋問されるんだ。そして快進撃開始。」
じゅえる「嘘八百をばらまいて、無事なのかそれ。」
まゆ子「うん。実は、ゥアム神族の間では本物の幽霊である「幻人」がはびこっていて、であれば妖怪退治のプロフェッショナルを自称する弥生ちゃんに退治させようという話になる。」
釈「「幻人」って、第五巻に出てくる真犯人で、最後はマキアリイさんの頭に住み着くという概念怪人ですよね。
 あれがゥアム神族の間で蔓延っていたんですか。」
まゆ子「ゥアム神族が長年民衆の指導をしなかった間に、民衆の指導が出来ないほどに幻人が神族の間を荒らし回っていたんだよ。
 これに取り憑かれた神族はガラッと人格が豹変して、残忍な暴君に変身するのだ。人の命すらも玩具にする人でなしに。」

じゅえる「それ、どうやってやっつけるんだ?」
まゆ子「無理でした。」
じゅえる「だよな。」
釈「それでは困ります。ゥアム神族も救ってやってくださいな、救世主として。」
まゆ子「そうは言っても、ゥアム神族は頭良すぎるのにそれを世の中の為に使わないんだから、頭くらいおかしくなるさ。」
じゅえる「つまり、暇なんだ。」
まゆ子「暇なんだ。もうなにもかも飽き飽きだ。」
釈「タンガラムでも、ギィール神族は既に支配に飽き飽きしていましたからね。アレだけ働く貴族であるギィール神族がですよ。」
じゅえる「そりゃー、暇を持て余して頭の中に「幻人」くらい作ってしまうか。一種の精神分裂病だな。」
釈「今は統合失調症と呼ぶのです。」

明美「弥生ちゃん、悪魔祓いとかする?」
じゅえる「超能力でなんとかしなさい。」
まゆ子「あー、 何か不思議アイテムをゥアム神族が持っている事にするか。そもそも聖戴者は超能力を使わないとな。」
釈「しかし、そんな状態であれば不思議能力も必要ありません。どうしましょう。」
明美「スタンド能力、いや、英霊を召喚する能力で。」
じゅえる「うん、半透明の化物姿になるくらいの能力は神族には欲しい。」
まゆ子「どうしたものかなあ。そうだな、超能力勝負を仕掛けて勝ったら神族から聖蟲を奪い取るという荒療治。
 ゥアム神族にとってもはや聖蟲自体が必要ではない、という事を肉弾戦で弥生ちゃんが教え込み、民衆の奴隷に対しても公の場でアピールする。」
釈「それがキャプテンの悪魔祓いなんですよ。恐竜の背中に乗って槍試合をするとかの、派手極まりない戦いです。」

まゆ子「うんなるほど。まずは幻人によって錯乱した神族が弥生ちゃんに切りかかってきて、そいつを倒して聖蟲を取り上げてみたら幻人も消失して、あ、これでいいんだ。と理解して大々的に悪魔祓いを行うようになるんだ。」

じゅえる「強制聖蟲剥奪か。そいつは無茶だなあ。」
まゆ子「まあ、ゥアム神族ももはや聖蟲による特別な存在である事に飽々しているから、最も貴重なものを賭けろと言われて喜んで勝負に応じるよ。」
釈「最終的にはそれ、どうなるんです。社会の変革が進むんですか。」
まゆ子「まあ。聖蟲を持たないゥアム神族が、実は「俺もう神族じゃないから」と奴隷たちの中に降りてきて、それこそ神の如き智謀を以て世を普通に正しく豊かに治めていくんだよ。
 それまでに歪んだ社会体制の中で蓄積された社会悪も、綺麗さっぱり払拭されて、「弥生ちゃんの敗北者」と呼ばれる勢力がゥアム世界を革新に導いていくのだ。」

明美「聖戴者全員から取り上げるの? それ。」
まゆ子「いや。5分の1も取り上げてないよ。ただ、その5分の1ですら社会改変に決定的革命的激変を起こしたのだ。
 それ以外の、いわば普通の幻人に取り憑かれなかった神族は、羨ましいなーとか思ってるが、それまでどおりの生活を続けていくだけさ。」
釈「実際、社会を正しく導いてくれる存在が居るのであれば、キャプテンがわざわざ統治を自分で行う必要もありませんからね。」

 

じゅえる「じゃあ、今回はこんなところで。」

 

17/10/13

まゆ子「というわけで、「マキアリイの歌」は出来た。となれば当然「クワンパの歌」も作らねばなるまいさ。」

釈「エンディングの方ですね。しっとりとしたバラードとか、本編の大活劇を見た後での鎮静化というか、落ち着いたやつです。」
じゅえる「マキアリイの歌の方が漢語ばっかりだから、こっちはひらがなカタカナで柔らかく行こう。」

まゆ子「うんうん、セオリー通りだ。

 でさ、「ヤャラアタ」って誰?」

釈「誰もなにも、6番目のカニ巫女でしょ。クワンパさんの2つ後です。」
じゅえる「本編には出てこないよね。なにせ5番目だって出て来ないんだから。」
釈「5番目「ポラパァーラ」はクワンパ編最終回にちょこっと出てきます。カニ巫女にも関わらずキンキラキンのお姫様です。」
まゆ子「いやそこは分かってるんだ。でもさ、年表見たら「ヤャラアタ」の事を「運命の子」と表記しているんだ。

 「運命の子」って、何?」

釈「はあ。でもそれは「ヤャラアタ」編でいいじゃないですか。」
じゅえる「なんだ、クワンパ編でちょこっと出るか? そうだな、3年後の登場になるわけだから、今11、2才くらいか。」
釈「そういう風に考えると、モブで出てもおかしくはない。と考えてもおかしくはない。確かに。」
まゆ子「「運命の子」というくらいだから、なにか凄く運命的な出生の秘密とかあるんだろう。そしてマキアリイにも関係する事でないと、面白くない。」

釈「隠し子ですか。マキアリイさんが今28、9月で29才ですから、18才の頃に仕込んでいれば間に合いますかね。」
じゅえる「無いとは言わないな。」
まゆ子「それは運命の子でもなんでもないだろ。」

 

じゅえる「冷静に考えてみると、その子が今11、2才として、その頃に何が有ったかというと、」
釈「「潜水艦事件」の2年位前の出生です。潜水艦事件の関係者の子ども、なるほどそれはアリだ!」
まゆ子「ふむ、つまり「潜水艦事件」の謎を解く鍵をこの子が生まれながらに握っている。そういうお話だな。」

じゅえる「こないだ考えたやつだ。謎の屍人集団「ネガラニカ」だ。」
釈「ですね。「ネガラニカ」の工作員の子どもなんですよ。」
まゆ子「ふーむ、であれば「潜水艦事件」のそもそもの、なんで巡洋潜水艦がイローエント港にやってきたか。そこに絡んでいるわけだ。」

釈「その身分から、政府秘密諜報員に狙われているとか?」
じゅえる「いや10年前と言えば「ネガラニカ」の工作活動に対してカウンター的な役割を果たしていたのは、「闇御前」組織だろう。闇諜報員だ。」
まゆ子「どちらにしてもやばい連中だな。「ヤャラアタ」は彼らから身を隠すように育てられ、カニ神殿に保護されてきたのだ。」

じゅえる「ここはコブラだな。「ヤャラアタ」の全身には秘密の地図が入れ墨として隠されているのだよ。特殊な光か環境で発現するのだ。」
釈「死にますねえ、その結末は全身の皮を剥がれて入れ墨だけを持ち去られますねえ。」
まゆ子「うーんなる。「ネガラニカ」が背後組織であればそれは、海底深海の海図だったりするか。」
釈「いいですねえ。深淵に潜む旧世紀の支配者ダイオウグソクムシ神の居場所を示す海図なのですよ。」
じゅえる「ちょっと話がでかすぎる気がするが、それはどう考えても「ヤャラアタ」死ぬぞ。」
まゆ子「うん。ちょっと考えよう。」

まゆ子「つまり、全身に秘密の海図が見えない形で記録されている。これが派手すぎるんだ。
 とはいえ、裸体を示すほどのインパクトは欲しい。皮を剥がれて死なねば逃れられない、とかの救いの無い結末を回避できるものであってほしい。」

 

じゅえる「特殊な条件下でないと入れ墨が見えない、とかでいいんじゃないか。「屍人の光」を当てないと模様が浮かび上がらないとか。」
まゆ子「屍人の光、ってなんだ?」
じゅえる「知らないよ。そんなの自分で考えなよ。」
釈「この世界では人間が死ぬ時に不思議な発光現象が起きる。その光を浴びれば……すいません苦しすぎます。」
まゆ子「うーん、死体から抜け出た燐が燃える光で、    人間から燐が出て燃えるのが人魂って説は、あれホントだっけ?」
釈「たぶんーあれはー嘘です。燐が燃えるほどであれば、むしろ腐敗した人体からメタンガスが出るでしょう。こっちの方が確実に燃えます。」
じゅえる「そりゃそうだ。メタンガスの光で浮かび上がる?」
まゆ子「ちっともかっこよくないな。」

釈「いっそのことチェレンコフ光の青い光で浮かび上がるとか。「潜水艦事件」が原子力技術関連ですから、アリです。」
じゅえる「チェレンコフ光って、水中を電子が光より早く走ると出て来る青い光、だっけ。なにか特別な成分でも混じってるのか。」
釈「いえ、エネルギーが高くて波長が短くて青く見えるってことくらいですかね。」
じゅえる「それのどこが屍人の光なんだ。当たると死ぬのか?」
釈「さあー。」

まゆ子「ああ! 当たると死ぬ光で照らさないと浮かび上がらない入れ墨ならいいさ。普通にX線やガンマ線で。」
釈「ああ、それは理屈ですね。レントゲン撮ったら写るんですよ。」
まゆ子「昔はレントゲン撮影技術が無かったから、入れ墨が見えるほどのX線を肉眼で観測する他無くて、死ぬ以外測定方法が無かった。そいうものだ。」
じゅえる「そんな昔からX線てあったのか?」
まゆ子「「ヤヤチャ」が未来技術をもたらす世界だ。そのくらいアリだよ。だいいち、「潜水艦事件」は「怪光線発射装置」を巡っての争奪戦だ。」
釈「放射性物質を山盛りにした部屋に「ヤャラアタ」を入れたら発光して、観察した人も死ぬという。
 それは間違いなく「屍人の光」です。」

じゅえる「でもさ、それレントゲン撮ったら見えるんじゃないかい?」
まゆ子「タンガラムの世界では、レントゲン撮影を「透過線撮影」と呼びますが、大病院にしか設置していない最新テクノロジーです。ゥアムシンドラだってそうそう使いません。」
釈「そうか。ヤャラアタが怪我して病院に担ぎ込まれてレントゲン撮ってみたら、なんか妙な紋様が全身にびっしりと描いてあるとバレてしまったんだ。」
じゅえる「そうか、その情報が医療関係者から「ネガラニカ」工作員に流れて、行方不明だった「運命の子」が発見された、という流れだ。」

 

じゅえる「と、だいたい「運命の子」てのが設定できたとして、もうちょっと運命てんこ盛りにしよう。」
釈「どこかの王族の生まれとかにしますか。」
まゆ子「うーん、褐甲角王国、金雷蜒王国、紅曙蛸王国、青晶蜥王国、その他小王一族、どれにするかい。なんだったら失われた王族てのを作ってもいいぞ。」

釈「シンドラの太守の娘が母親、だとか。」
まゆ子「ふーむ。」
じゅえる「シンドラねえ。これまでゥアムばかりに注意を向けられていたから、シンドラのお姫様は悪くないかも。」
まゆ子「海賊にさらわれたシンドラの地方太守の娘が、タンガラムの男性に救い出されて二人は結婚、生まれた子が「ヤャラアタ」で。」
じゅえる「いいねえ。タンガラムではなく海の上で暮らす人々の間で生まれ、育てる為に母子共々タンガラムに連れて来た。」
釈「このタンガラム男性も曰く有りげな人物で、」
じゅえる「王族?」
まゆ子「むしろ、「闇御前」の孫とか。」
じゅえる釈「おー。」

まゆ子「闇御前は、それまでどうやっても詳細が掴めなかった「ネガラニカ」組織について、遂にこの母親を手中にする事で迫る事が出来たのだ。
 しかし大事な海図は娘の身体に「屍人の光」で埋め込まれた。どうしても調べる方法が分からないから、娘をそのまま養育していたら「潜水艦事件」が勃発。
 この混乱で、母と娘が行方不明になる。つまりは逃げ出した。」
釈「シンドラの太守が「ネガラニカ」に関連する人物で、その王女はダイオウグソクムシ神の巫女であった。そのくらいは欲しいですね。」
じゅえる「うん、三重苦でいいぞ。」

まゆ子「四重苦を考えよう。」

釈「であれば、「潜水艦事件」が起きる前までは、彼女は幼くて何もわからない状態ではありますが、平和で幸福だったのです。」
じゅえる「そうだな。本人は理解していなくとも、ヒィキタイタン・マキアリイの二人によって幸福な幼年期を失った被害者なんだ。」
まゆ子「そうか、光有る所には影が有る。国家英雄となった二人の栄光の裏で、不幸の人生を歩みだした「ヤャラアタ」が居た。こういう仕組みだな?」
釈「誰が悪いわけではないが、被害者なのですこの娘は。マキアリイさんも事情を聞いていく内にそれを理解して、彼女の謎を解こうと決意する。」
じゅえる「王道中の王道だな。」

じゅえる「しかし、どうやって逃げ延びたんだ、その母子は。」
釈「王女母子が逃げる際に力を貸したのが、タコ巫女なんですよ。

 タコ女王の命を受けて、タコ神の宿敵であるダイオウグソクムシ神と対立する者として、この二人を暗殺の危難から救う。」
じゅえる「タコ女王は既に消滅したのではないのか?」
まゆ子「実は、青晶蜥神救世主星浄王が今も風習として続いているように、聖蟲は持たないが神聖なる王として続くタコ女王は存在するんだよ。たぶん。」
釈「そして、タコ女王から授けられた護りの宝剣が、青い光を放つのです。」
じゅえる「弥生ちゃんの神剣か?」
まゆ子「世にも珍しいお宝だ。そのくらいは持っているべきだろう「運命の子」は。」

釈「そこまでやるなら、弥生ちゃん先輩の宿敵であった「黒の母」を出しましょう。あの人はまだ生きているんですよね。」
まゆ子「生きて、タンガラム方台を裏から操っている。なるほど、「ヤャラアタ」の物語を締めくくる為の最終到達地点として、彼女にも出演してもらいましょう。
 クワンパ編での第五巻「英雄と皇帝」に続いてのご出演です。」

じゅえる「ちなみにこの時期、「闇御前」はどうなっている? 国家反逆罪の裁判は。」
まゆ子「裁判は終了してますが、あまりにも事態が大袈裟であるので処罰を言い渡す法廷はまだ開かれておりません。というか永遠に開かれずに終わる予定です。
 つまりもう90才近いですが、生きてます。曾孫に会ってもらいましょう。」

 

じゅえる「あまり苦になってないな。なにかもう一つ足りなくないか?」
釈「ああ、それはアレでしょう。ヤャラアタの謎が解けてもそのままでは大勢に影響が無いからですね。
 その謎を解くと最終破壊兵器への扉が開くとか、そういう破滅的な結末が待っている的ないかにも定番路線が必要です。」
まゆ子「世界滅亡、していいのか?」
じゅえる「核爆弾でも登場するか。」

まゆ子「いや、青い肌の男が思いの外タンガラムに多かったのがバレてしまうとか、そういう暴露的破滅がいいんじゃないかな。」
釈「カモフラージュが解けてしまう的なですか。そうですねえ、いや、青い肌の男が死んでしまう事にしましょう。カモフラージュで普通人に見せかけていた者が、ぱたっと死んで青い肌を曝け出す。」
じゅえる「だがそれは、世界の滅亡とは直結しないなあ。」
釈「そうですか。困ったな。」

まゆ子「うん、つまりスリリングな展開という事であれば、ヤャラアタが「ネガラニカ」側に捕らえられても世界は滅びる。「闇御前」側に取られても世界が滅びる、的な二重性が必要なんだ。」
じゅえる「それそれ。「ネガラニカ」側ではヤャラアタの秘密はまだ完成していないから陸地で成長を待っていたのが、行方不明で失われた。
 だが計画通りに潜水艦で海の深淵に行くと、なにかが起きる。そいうのだ。」
釈「「闇御前」側では、「ネガラニカ」をぶち殺す秘策を持っている。それを使う為の海図って事ですね。」

まゆ子「普通に考えると、パスが通じる。海底と地上を繋ぐ直結のルートが形成される。青い肌の屍人が地上に現れる。的なものか。」
釈「ここでゲートの概念が使われるべきですよ。秘密のトンネルが通じるのです。」
じゅえる「しかし、超自然をここで出していいものか?」
まゆ子「うーむ、ではこういうのはどうだ。

 ヤャラアタの秘密の海図で「ネガラニカ」深淵神殿まで通じると、禁じられていた巨人が復活する。
 巨人と言ってもほんとにデカイわけではなく、言うなれば「次の救世主」、本来千年紀に現れるべきであった救世主が悪の存在として蘇る。」
釈「なるほど。」
じゅえる「弥生ちゃんが用意した「近代文明路線」ヤヤチャ路線が崩壊して、神話的サイクルが復活するわけだな。」
釈「おお! そこまでオオゴトにしますか。」

じゅえる「そういえば、これまで発見されているタンガラム・ゥアム・シンドラ・バシャラタンの四カ国は「ヤヤチャ文明圏」と呼ばれるものだったな。」
まゆ子「弥生ちゃん降臨によって大きく文明が発達する方向に進化した国家です。バシャラタンはそこまで進化してないけど。」
釈「それが崩壊するわけですよ。新しい悪の救世主によって。
 これまでまったく勘定に入っていませんでしたが、この惑星は「ゲキ」と呼ばれる種族を再現するために「天河十二神」が運営する実験場みたいなものなんでした。」
まゆ子「出さないけどね、そこんとこは。

 じゃあ、その「悪の救世主爆誕」して世界が滅びに向けて前進する、ということで。急激には滅びないけど、数百年後にはとんでもない事態になると。」
じゅえる「うんうん、あまり詳しく説明しない方がいいだろう。ミステリアスで。」
釈「救世主「ヤヤチャ」が行った人類を救済する道筋がすべて破壊される。これを聞くだけでも十分タンガラムの人間は脅威を理解しますよ。」
まゆ子「よーし分かった。じゃあ「潜水艦事件」関連の映画とかでも、青い肌の船員たちが「来るべき救世主の時代の為に!」とか言って自爆したりする描写を入れておこう。」
釈「やっと、「潜水艦事件」の輪郭が定まりましたね。」

まゆ子「ああ!! そっか!
 いや前から不思議に思ってたんだ。弥生ちゃんがシンドラに行ってやっつけた「イソギンチャク聖蟲」をへそにくっつけた三悪人!
 あいつらのイソギンチャクはどこから来たか。まったく考えてなかったんだな。」
釈「それこそが「ネガラニカ」の仕業なんですよ。深淵に潜むダイオウグソクムシ神の手下であるイソギンチャク聖蟲によって、地上に悪がもたらされたんです。」
じゅえる「そのイソギンチャク聖蟲を密かに隠しおおせてきたのが、ヤャラアタの母の太守一族、というわけだな。うん、繋がった!」
釈「イソギンチャクの肉の芽を植え付けられたのが、ヤャラアタなんです。そして全身に屍人の光で浮かび上がる海図が成長によって年々形成されていくのです。」

 

じゅえる「しかしだ。「闇御前」組織はヤャラアタを確保して、で「ネガラニカ」に対してどうしようと言うんだろう。」
釈「ここまで話がでかくなると、ちょっと対応が難しいですねえ。」

まゆ子「そうかな? つまり「闇御前」組織は「蘇る救世主」とかはまったく知らないわけなんだ。
 彼らにとって重要なのは、海島権益争奪戦においてなんだか分からないけれどパワーバランスを操作して戦争を上手く継続させている仕組みだ。
 これを掌握すれば、当然にタンガラムにとって最適なバランスに操作して権益を独占できるようになる。むやみと海外派遣軍を増強する必要も無くなる。
 これは大きな魅力ではないかい?」

じゅえる「あくまでも現実的な利益として、タンガラム国家利益の為に行っているわけか。うん、動機としては十分理解できる。」
釈「つまりヤャラアタは「ネガラニカ」組織をこちらのいいように操作できるアイテムとしての機能を持つわけですね。」
まゆ子「「闇御前」側としては、その理解で十分だと思う。深い事情は理解しなくてもいいし、もしヤャラアタにそれ以上の利益を生み出す素が有るのならば、おいおいと研究していけばいい。
 どちらにしろ「闇御前」組織は「屍人の光」の謎すら解けていなかったんだ。入れ墨の海図についてもほとんど知らない。」
じゅえる「なるほど、無知ではあっても価値は理解していたわけだな。」

まゆ子「というかさ、「闇御前」だけが気付いていたわけではないのさ。当然にゥアム帝国においても「ネガラニカ」の暗躍に気付いている。
 シンドラに至っては「ネガラニカ」の巫女がいたりするわけさ。
 どちらの国もやはりヤャラアタ「運命の子」を狙っている。工作員が侵入している。
 国際謀略というのであれば、ヤャラアタの秘密争奪戦てのは立派な世界戦争なのさ。裏の世界の。」
じゅえる「そうか。「運命の子」を奪取しようとしたのはむしろゥアム帝国であった。「潜水艦事件」の発端はそう考えてもいいわけだ。」

まゆ子「う、ん。そこは「潜水艦事件」の映画構築の際に改めて考えるじっくりと。」
釈「タンガラムイローエント海軍・「闇御前」勢力、ゥアム神族大使科学者とその娘、「運命の子」ヤャラアタとその母シンドラお姫様、「ネガラニカ」巡洋潜水艦。
 これだけ入り組んでいれば、なるほど国際謀略だ。」

 

まゆ子「えー、この第六の巫女「ヤャラアタ」編は、予定によるとマキアリイ事務所に新人刑事探偵が入って、若い彼とヤャラアタとがコンビとなって活躍し、マキアリイ自身は裏方となります。
 というか、これだけデカイ裏がある事件であれば、マキアリイがコネを使ってあらゆる方向から捜査して、単独での移動も多かった。
 ヤャラアタの守りは新人探偵が行って、ピンチの時になるとさっそうとマキアリイさん登場! というお話だ。」

釈「完全に主役交代って事なんですね。まあ若い方がいいです。恋愛物は。」
じゅえる「マキアリイも弟子が出来て師匠ポジションになってしまうからな。
 であれば、マキアリイの相手をする悪の美女ってのが必要なんだろうさ。」
釈「ここで不二子ちゃん登場ですね。」

まゆ子「不二子ちゃんかあ。」

 

       ******* 

じゅえる「思ったんだけどさあ。いつもいつも「闇御前」引っ張り出してくるのもなんだな。もっと別の大物を用意できないものだろうか。」
釈「ふむふむ。「ヤャラアタ」に関してはこの設定でいいと思いますけどね。」
じゅえる「これはいいんだよ。これ以外の別の事件で使える大物が欲しい。なんか無いか。」

まゆ子「うーん、と言っても「闇御前」に匹敵すると言えばもう政治家の超大物になってしまうわけで、今現在の国家総統くらいしか無いぞ。」
釈「やっぱり民間人ですよね。「闇御前」が海外での戦争とその準備の為の国内産業を牛耳っているとすれば、新しい大物は国内において国民の生命を牛耳る者。
 「農業王」とかどうでしょう!」
じゅえる「国内食料自給を完全コントロールする巨人、てのか。F1種子とか使うのか。」
まゆ子「いやそれは、タンガラムの発展段階においてちと早すぎる。と言って、超巨大地主というわけにもいかん。流通を独占的に牛耳るのも国家が許さないぞ。」
釈「ダメですか。残念。」
まゆ子「考え方はいいのだが、さすがに農業王は難しい。なにせ百姓はほっといても自分とこの畑耕すからな。」
じゅえる「そうだよなあ、農業でストライキされると農民が死ぬからな。」

釈「では考え方を変えて、「ルパン帝国」では。犯罪組織の帝国です。」
じゅえる「なんか無かったか、それ。」
釈「なんかって。」
じゅえる「マキアリイが解決した年表の中にさ。えーと、   これか。「怪盗タコ石事件」だ。」
まゆ子「怪盗レロン・エンゲか。あれはアルセーヌ・ルパン級の怪盗ではあるのだ。一匹狼ではない手下をちゃんと持っているが、帝国というほどは無いぞ。
 ただこの事件では別口の盗賊団が絡んでいる。こちらは「ルパン帝国」の所属であってもいいかな。」
釈「だめですか、犯罪帝国。」
まゆ子「悪くはないが、「闇御前」に比べるとせこいな。」
じゅえる「そうだなあ、さすがに小者だなあ。」
まゆ子「だが「犯罪者帝国」はあっても悪くない。大物ではなく、ライバル的な存在として「泥棒王子」をでっち上げるか。「帝国」を相続した若き天才犯罪者。」
釈「因縁で言えば、それは使い勝手が良さそうですね。」

じゅえる「その王子がだ、マキアリイに対して「兄さん」とか言うんだよ。

 そしてマキアリイの両親についてのややこしい因縁が炸裂する。」
まゆ子「ふむ。」
釈「ふむ、定番ですね。」
じゅえる「銭形も出そう。というか、老刑事で名探偵が居ただろう。」
釈「今度第三巻で「名探偵総登場!」で話だけ出てくる老人の探偵ですね。彼がマキアリイの両親について知っていると。」
まゆ子「うんうん。ほんとか嘘か分からないにしても、そこはアリにしておくか。そもそもマキアリイの出生の秘密はまだ設定してないし。」
釈「無いんですよね、まったく。」
じゅえる「完全にゼロだからな。」

「あっははは」

 

まゆ子「……農業王か。全国的超大地主とはいかなくても、どこか穀倉地帯を牛耳る大地主で世間や業界から「農業王」とあだ名される大物経済人、くらいなら出してもいいかな。」
じゅえる「むしろそれは犯罪者ではなく、被害者側の超大物だな。」
まゆ子「そうか、被害者の金持ちとして出て来る分にはいいわけだ。考えておこう。」
釈「そういう事であれば、夏の国会総選挙で後援会の大物として政権与党に関わってくるとかいいんじゃありませんか?」
じゅえる「そうか、そういう人員の設定も必要だったな。財閥の大立者もなんとか捻り出そう。」

まゆ子「つらつら考えてみると、今度書く「名探偵総登場!」には6名の名探偵が登場するわけだ。
 であれば、それぞれがどういう敵を抱えているか、それを把握している必要がある。」
釈「確かに。方台全土における犯罪情勢というのを設定してはいませんでしたね。」

じゅえる「6名+非参加2名の名探偵だ。
 英雄探偵 拳銃探偵 首都警察女刑事 犯罪博士 ポワロ 子ども探偵+姉中学生 +老刑事(腰痛で非参加)ギィール神族探偵(出不精で不参加)

 まあ英雄探偵「ヱメコフ・マキアリイ」は別口で、首都政財官界軍部に至るまで幅広く派手な犯罪を暴いている。」
釈「マキアリイさんが遭遇した敵で最強の者が、「闇御前」であった。当然に繋がりも深くなるわけです。」

まゆ子「そして今考えた、不参加の「老名刑事」が「犯罪帝国」と長年戦ってきた。」
釈「場所はどこら辺が管轄になりますか。」
まゆ子「ボウダン街道辺りかな、北方だね。街道沿いを根城とする伝統的な追い剥ぎから発展したグループという事で、結構な老舗の犯罪組織だ。」

じゅえる「ボウダン街道で追い剥ぎといえば、バゲマゲを思い出すね。」
釈「『げばると処女』で出てきた強盗ですね。弥生ちゃんキャプテンの神威に触れて改心してゲイルに食われて死んだという。お芝居でも大人気の悪党です。」
じゅえる「あいつ、人気なんだ。」
釈「歌舞伎みたいな伝統芸能の定番十八番の演劇で主役張ってますから。現代でも大人気ですよ。」
まゆ子「じゃあ帝国の名前は「バゲマゲ会」とか?」
じゅえる「かっこ悪−い。どうせやるなら「追剥帝国」だ。」
釈「う。」
まゆ子「帝国はいかんぞ「帝」の字は。なにせタンガラムに帝王は居なかったからな。音だけ貰って「挺国」にしよう。」
じゅえる「意味が分からん。「挺身」くらいしか用例知らないぞその字。」
釈「漢字辞典だと、「挺」とはまっすぐ、抜きん出る、進み出る、突き出す、長い物、そんな意味です。「挺国」という造語は悪くないカッコよさです。」
じゅえる「そうか、では『追剥挺国』だ。」

 

釈「ポワロさんが居ますね、シンドラから来た外国人名探偵。彼の敵は何にしましょう。」
じゅえる「なんでもこなすだろうが、おしゃれな美術品窃盗団・贋作団で三国を股に掛けて国際的な美術品犯罪を行っている事にするか。殺人はあまり得意ではない。」
まゆ子「彼は食通としても有名で、とある食品メーカーが四カ国香辛料を売り出す時に監修を務めたのだよ。」
じゅえる「では味覚探偵ということで、偽装食品も暴き出す。偽料理犯罪団も作っておこう。」
釈「グルマン帝国ですね。ポワロ、いやそう言えば本名決まっていたんでした。「ポアロワ・エクターパッカル」です。」
まゆ子「シンドラ出身だから、活動範囲としては百島湾とか西岸部の都市で主に活躍だな。」

まゆ子「反対に、イローエントで「拳銃探偵」と呼ばれる無頼派は、それこそ殺人暴行傷害拉致誘拐日常茶飯事で外国人犯罪組織と戦っている。」
釈「滞留者犯罪組織、ですね。なにかカタカナ語を作っておきましょう。”マフィア”ぽいかんじで。」
じゅえる「”マフィア”とか”カモッラ”でいいじゃないか。」
釈「そうですねえ。いやそれこそ”ギャング”でいいじゃないですか。」
まゆ子「”ギャングギャンガーギャンゲスト”、うん”ギャンゲスト”にしよう。」
釈「なんですかその比較表現。」

 

まゆ子「マキアリイの友人で捜査官養成学校で同期だった女性刑事は、首都警察局で大活躍。手広く首都を舞台とした都会的ハイセンスな犯罪を解決している。特に個別の犯罪組織とは絡まない。
 「犯罪博士」と呼ばれる学者先生は、サイコパスとか天才知的犯罪者などという学術的に特筆される奴ら何人もと戦い知性で勝利してきた。だが組織犯罪ではない。

釈「女刑事さんはマキアリイに対して馴れ馴れしい、というかデカイ口叩くんですよね。」
まゆ子「だいたいね、捜査官なんて男の仕事に女が入ってくる時点でいい根性してるんだよ。マキアリイの在籍時代でも養成員30人に対して女子2名という少なさだ。
 それも道理で、大体捜査官養成学校の入学には選抜徴兵で2年間の兵役もしくは巡邏軍での街頭治安維持活動経験者が優遇されるんだな。女子は選抜徴兵してないから少ないのは当たり前。」
じゅえる「とんでもない変わり者ってことか、その女。」
まゆ子「ま、実家もお金持ちですから普通に大学に進学する事だって出来るのに、捜査官になっちゃうんだからね。とにかく刑事事件の最前線で犯罪者と戦いたいと考えるんだから。」
釈「そりゃあ親御さん泣かせですねえ。それが2名も居るわけですよ。」

じゅえる「捜査官養成学校ってカプタニアにあるんだな? みかん男爵が流された時に現地に居たんだから。」
まゆ子「うんそうだよ。カプタニアは法律と正義の都なんだよ。ルルント・タンガラムの首都の騒がしさとは少し離れているんだな。」

じゅえる「それで、その女がマキアリイと仲が良いというのは?」
まゆ子「「サユール事件」の時言ってたでしょ、マキアリイはサユールの溶岩地帯を踏破させられたって。
 これは密かにマキアリイを始末する為の謀略で、刺客はなんと同期生の男子であったのさ。まあ素人刺客であるからなんなく切り抜けるが、刺客自身が足を怪我してしまいマキアリイが担いで運ばねばならない始末に。
 毒ガスが吹き出す難所で大きな男を背中に担いで断崖絶壁をよじ登る、なんて苦行を手伝ったのが、その女だ。
 ちなみにもう一人の女子は小柄で体力は有るものの難所続きでへばってしまって、これもマキアリイに手伝ってもらってようやく全コースクリア出来た。つまりは足手まとい2人分を助けたわけだ。」
釈「はー、さすがに英雄探偵だ。まだなってないけど。」

まゆ子「で、女は卒業後無事に首都警察局への配属が決まり、マキアリイ共々任務に就いたがマキアリイは早々に左遷されて免職同然に警察局を去った。
 女自身は順調に職務をこなし、難事件を数々解決し若き美しき名刑事として世間に名が知れる事となる。」
釈「刺客をやった同期生の男性はどうなりました。」
まゆ子「マキアリイは知らなかったのだが、女に今度教えてもらうのだ。彼は政府の秘密工作員にリクルートされたって。」
じゅえる「ほお、政府工作員って捜査官から成るんだ。」
まゆ子「なる為の一つのルートだね。そもそもが警察局という組織は全国規模で統一されている、いわばFBIみたいなものだからね。
 なおもう一人の女子も無事卒業して、今は北方デュータム市にて元気に捜査官やってます。」

釈「犯罪博士は?」
まゆ子「その人れっきとした警察大学校の教授だから。「名探偵総登場!」の集まりにも、ギジジットで行われた犯罪関係のセミナーに出席した帰りです。

 こんど女刑事は現場でばりばりやりたいのに業務命令で大学校送りになって、上級捜査官になる為の勉強をさせられちゃいます。
 ヒラの捜査官を指導して実質的に事件を解決する上級捜査官は慢性的に人手不足ですから、有名になったのが仇になりましたね。
 ちなみにボウダン街道の老刑事は長年ヒラの捜査官として現場に密着してきましたが、流石に年功を加味されて嫌でも上級捜査官にされてしまいました。」

じゅえる「上級捜査官ってのは、日本の警察で言うとどのくらいの地位になるんだ。」
まゆ子「そうですねえ、「法衛視」をどの程度に考えるかの問題はありますが、巡査部長から警部補ですね。上級捜査官の上に捜査課長が居てこれが警部になります。その上が法衛視ですから。」
釈「国家公務員の「捜査官」の下に地方公務員の「捜査員」が居て、これがだいたい巡査〜巡査長くらいですかね。」
まゆ子「タンガラムにおいては「官員」と「吏員」との区別は大きいからね。でも「捜査官」は国家公務員の中でも下の方だ。
 「法衛視」は位的には上級公務員である「参議・参議官」の区分になるから殿上人だよ。」

 

釈「で、あと一人名探偵が居るんですね。「名探偵総登場!」では不参加ですが。」
まゆ子「元ギィール神族の安楽椅子探偵、というか出不精の庭園探偵なのだが、東岸特有の難しい社会構造で発生する事件と、ゥアム帝国から入ってきた犯罪者の仕業を解決している。
 彼は「ネガラニカ」の存在に気付いている、という事にしてもいい。とにかく神の如き推理力てのは彼の為にある言葉だ。」
じゅえる「こいつは無位無官か。」
まゆ子「人に使われた経験まるで無し。刑事探偵免許どころか民事探偵資格も持ってない。まあ民事探偵資格は民間団体発行だけど。」
釈「ああ、お金持ちなんですね。そりゃ元ギィール神族だから。」

 

釈「子ども探偵は?」
まゆ子「小学生探偵は、立て続けに7件の殺人事件を解決しただけで、未だにただのアマチュアだ。「黒の組織」とかは関係ない。」
じゅえる「うん、そんなもんだな。1年にも満たないのに数百件の殺人事件を解決した小学生探偵なんて物理的にありえないからね。」
まゆ子「彼と彼の姉の敵は、むしろマスコミかな。子ども探偵が大人気になって、二人の父親の刑事探偵がマネージャー業務に走って、まあ顰蹙を買ってます。
 あと、この二人、実の姉弟ではない。ということにするかな?」

釈「コナン君みたいな父娘、の所に居候してる、というのですか。」
まゆ子「いや、前妻の連れ子が娘で妻とは死別、後妻というか事件で知り合った女性が妊娠していてその子が子ども探偵で、その女性は身寄りが無いまま亡くなって、赤子を彼が自分の息子として引き取った。」
じゅえる「いい男だな。」
釈「そのくらいなら、カネが入っておかしくなっても許してやってくださいよ。」
まゆ子「なるほどねえ。出番を作るかその父親。「名探偵総登場!」では姉弟を迎えに翌朝来るということで。
じゅえる「ああ、それは。そいつ宣伝材料として子ども探偵と英雄探偵マキアリイのツーショット写真を撮りたがったりするんだな。」

まゆ子「でもね、この子ども探偵は中身も外見も子どもだから、麻酔銃を使って父親に喋らせたりしない。子どもで小学生だから難しい語彙も使えない。簡単な言葉で推理を説明するのだ。」
じゅえる「いやそもそも、この子ども探偵は何故招待されたんだ。その集まりに。」
まゆ子「いや単にホストの金持ちが名探偵を集めて楽しくパーティしよう、てので子ども探偵も呼んだのだ。先々有望な少年に本物の名探偵を会わせてやろうって。」

じゅえる「この中で、名探偵の集まりなんかに顔を出しそうに無い「無頼派探偵」が、「農業王」の絡みの事件でガンガランガまでやって来たことにしよう。
 例えば、「農業王」の縁者で若い女性が、金持ちにはよく有る事だがイローエントで悪い遊びに溺れて麻薬とかに手を出して、それで殺されてしまった事件。
 死体を移送するのに付き添ってきた。という感じで。「農業王」に経過説明をさせられた。」
釈「姪とかそういう関係者ですね。それならばカネ払いも良いでしょうから、ちゃんと来ますね。」
まゆ子「だいたい刑事探偵てのの仕事はそうなんだ。公的機関による被害者の遺体の取扱とか信用ならんから、刑事探偵を雇って回収してくるとか普通にある。
 ついでにどうして死んだのかとか、警察発表でなく自分でも調べて真相を知りたいとかの需要があるんだよ。」

 

まゆ子「今の話で犯罪組織は3つ出てきた。後は小さな組織だろう。
 増やすかい?」
釈「「ネガラニカ」関係でひとつ組織が欲しいですね。」
じゅえる「それは犯罪組織でない方が使いやすいんじゃないか。」
まゆ子「犯罪組織は別に雇えばいい。「ネガラニカ」の連絡組織としてのごく一般的な商事会社という事にしよう。まんま「カニガネ商事会社」て。」
釈「商事会社でいいんですか。ただの。」
じゅえる「犯罪組織だって、表にカタギの会社組織を抱えていた方が世間での活動に便利がいいぞ。ただの連絡機関としては普通にそれで十分だ。」
釈「それでいいのかなあ。犯罪組織なのに。」

 

 

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