2017/08/30

まゆ子「あー、とりあえず現代までの政治史を語らねば現在の政治状況を説明できません。」
釈「もっともな話です。」
じゅえる「どこまで遡る?」
まゆ子「「砂糖戦争」まで。

 

 えー創始歴6072年に突如勃発した『砂糖戦争』
 当時の政権は「タンガラム民衆協和国 第五政体」でした。

 それまでの政治状況は、割とのほほんとしたもので景気も良く、一般社会にも怠惰というかぼんやりというか、
  薔薇色の未来が開けてる的な弛緩した風潮でした。

 この当時の特徴としては、ゥアム帝国シンドラ連合王国との国交が開けて三国の文物の交換が始まり、
 見たことの無い品や文化を体験してこれからどう世の中が開けていくのか、皆わくわくしていたのです。
 そして、いきなりの戦争。それも歴史上発の方台間戦争という初体験で、びっくりです。」

じゅえる「ああ。異国との交流が必ずしも平和的なばかりではないとその身に染みて知ったわけだ。」
まゆ子「そして第五政体は、与野党入り乱れて平和に政争などを行っていたのを、
 古今未曾有の戦争に挙国一致体制となり戦時動員体制を発動して、政府に全権委任が満場一致で賛成されて戦争に突入したのです。

 タンガラム全土からも義勇兵が続々と名乗りを上げて、一時は東海岸に敵軍の上陸を許したものの撃退に成功。
 ゥアム艦隊を撤退に追い込み、翌年再度の襲撃も撃退して「砂糖戦争」は終結した。

 ちなみにこの時代はまだ鉄道は無くトロッコは有る、蒸気船は有り。
 電信はあるが電話は無い。電気照明はあるが都市部のみ。和猪車全盛期。鉄矢銃最強時代。

 

 戦争終了が確認された後、政府への全権委任が解除されて素の議会制度に戻りますが、
  どの政党もこれまでどおりではやっていけない事が分かっている。
 そこで合従連衡、政党の組み換えが起きて、国際戦争に対応できる国家体制を構築する為の新しい政治体制「第六政体」が発足する。
 ここまでは平和的なプロセスでなんとかなった。
 創始歴6075年の事です。

 しかし、組み換えが終わった後の議会は紛糾を繰り返し、結局は武力を用いての粛清なども起きて、与党と穏健派野党による平穏な議会が成立する。

 「第六政体」の目的は一つ。
 タンガラムを国際戦争に対応できる軍事強国とする事。

 その為に絶対に必要なのが、先進国ゥアムに負けないだけの産業基盤の育成、特に機械工業の進化だ。
 不可欠なのが鉄道網の構築。政府は遮二無二鉄道線路の敷設を急ぎます。
 国防上の養成からも最優先課題であった。

 だが鉄道インフラの構築にはかなりの工業力が必要で、これまでのタンガラム社会には手に余る事業だった。
 その為にはまず資本をかき集めねばならず、鉄鋼業建設業機械工業といったこれまでに手薄だった産業分野に集中しなければならない。
 人材も不足するし、エネルギー供給もまったくに不足。
 原料調達も労働力も、とにかく全てを動員して急がねばならない。

 「第六政体」はほとんど戦時体制と呼べるほどの強引さで産業育成に励み、
  逆に育成に役立たないと思われる分野からは容赦なく人材や資金を引き上げます。

 国民の福祉も少なからず犠牲となる。そして当然とも言えるインフレの進行。
 農業部門の生産性の飛躍的向上の為に都市部から「余剰人員」送り込み労働力とするも、それは急激過ぎる体制に反発する知識人などの追放でもある。

 また産業育成だけでなく、新兵器を多数揃えた近代軍の構築を急がねばならない。
 となれば資金不足に陥るわけで、当然に増税が何度も繰り返された。

 

 これだけ直接的に産業界と政治が結びついていれば、汚職腐敗が起きない方がおかしい。
 というわけで、政府の腐敗体制が覆い隠せぬほどに露骨に暴露されて、国民の支持率は激減。

 さらに産業を育成するのは良いが、政府軍隊以外に消費しないという有様であるから、消費市場が拡大しない。
 腐敗による開発効率の低下により供給のだぶつきが起こり、深刻な不景気に突入する。
 が、これに拡大一辺倒であった政府与党は為す術を持たない。

 「第六政体」はもはや手の打ちようが無く、すべてを一度リセットせねばならなくなり、
  総統以下政府関係者総辞職となり、暫定政権により新しい政治が模索されました。

 ここで主導権を握ろうとする数多の勢力により武力をも交えた抗争が行われ、無政府状態の内戦に突入する寸前の状況に。
  軍部がこれを阻止するために独自の行動を開始して、全土を掌握。
 一時的に軍政が施行される。

 軍部は、司法の中枢である頂上法廷と、地方自治体の長によって構成される大審会の承認を得て、国民総選挙を実施。
 この時強権により既存の政治家で武装闘争を主導した者の参政権を剥奪しており、
  批判を覚悟の上での新議会の出発。新政権の発足となる。

 新政権と軍部が連携して事態の正常化を果たし、腐敗体制を一掃して新しい官僚制度の構築を果たす。

 3年後、参政権を剥奪された政治家も資格を回復したものの、国民民衆の支持はもはや無く、
  回復後最初の総選挙で彼等は惨敗を喫して政治から永久に排除されました。

 

 この選挙によって発足した議会と政府が、「第七政体」です。
 軍部は非常事態宣言を解除し、元の政治とは関係の無い立場に復帰した。
 創始歴6102年の事になります。

 とは言うもののそんなに簡単に正常化が出来るはずも無く、10年に渡って国家機関の抜本的改革が行われます。

 また開発計画の必要性は今もまったく衰えていないものの、これまで行われた開発は拙速に過ぎ、
  整理統合して効率化を図るべき段階にあります。

 加えて一般市民の購買力を高めて消費力を向上させて、健全な産業育成に務めなければならない。
 これまでなおざりにされてきた国民福祉にも尽力せねばならない。
 第六政体の時期には停止されていたゥアム帝国との国交も回復して、再び国際交流を行うものの、文化レベルの嵩上げをしなければうまくいかない。

 全面的な社会の見直しが必要となり、「砂糖戦争」以前の自然で大らかなタンガラム社会が再評価される事となります。

 こうして脅迫的な産業育成富国強兵に突き進んだ「第六政体」から、
  自然で持続的な発展と国民の生活向上に力を入れる「第七政体」へと時代が移り変わる事となる。

 まことに結構な話であるが、口で言うほど簡単ではない。
 むしろしゃかりきに突っ走った「第六政体」の方が目標が見えていた分楽だった。

 政府主導の開発独裁では限度が有るのを思い知り、民間活力導入と市場原理による産業の適正化を期待する
 「民間経済の時代」になる。
 政府は相変わらず公共事業による開発を進めるけれど、そこには需要者としての産業人、財閥の存在がクローズアップされる。

 また国民、一般労働者の福祉と健康にも留意して、労働条件の改善も財閥に受け入れさせて、それが功を奏し消費市場が拡大する。

 

 のですが、財閥・富裕層の支配力が強化され特権階級化していく。
 これは一般労働者にとっても自らの理想とする生活モデルを提示するものともなって、向上心を引き立てる元ともなったのですが、
  やはり天井というものがある。

 財閥富裕層は資金協力により政治家・政党への発言力を高め、産業育成・開発事業が彼等の草刈り場のような有様になる。
 またぞろ腐敗堕落が発生して「第七政体」は徐々に当初の反省と理想を失い、階級社会の形成に突き進む事となる。
 もっとも「砂糖戦争」前の社会に戻ろうとしていたような話である。

 さすがに未だ「第六政体」崩壊の記憶が薄らいでおらず、社会各層から批判と改革の声が湧き上がる。
 だが財閥富裕層はこれを資本の力で弾圧。
 政府も順調な景気を支える為に財閥の行動を追認していく事となります。

 当初は民間の力関係による言論封殺であったものの、
 社会全体に不公平感が募っていった為に遂には国家権力による言論統制に突入。
 今回「第六政体」の轍を踏まぬように、あらかじめ軍部の上層部を権益構造に抱き込む工作が続いており、
 改革勢力としての軍部は期待できない状態。

 というよりも、民間主導の気運は政府批判する側にとっても重要で、あえて自らそれを否定する軍部の介入は望まなかったわけです。

 が、軍人も末端の兵士は一般民衆であり、それも貧困層を主体とする構成でした。
 彼等兵士の実家の困窮を見かねた若手将校達による反乱事件が全国で多発。
 強制的な摘発と軍内部の綱紀粛正が行われ、ますます無力化が浸透する。

 

 軍事力によらず警察力で混乱する秩序を維持するのに、巡邏軍と警察局では力不足と感じて、政府は「国家治安維持警察隊」を改めて創設。
 秘密警察による批判者改革者言論人の取締りが効率的に行われる事態へと進展する。

 しかしながら、このような状態で好景気を維持できるはずもなく、全国的に大不況に突入。
 財閥富裕層にも被害甚大で倒産や破産する者まで続出し、特権階級側の人間であっても国家の方向性を間違えていると自覚し始めた。
 改革勢力が各地で旗揚げし、「国家治安維持警察隊」との衝突が続く。

 これでは政府への支持率など無いも同然で、総選挙を行えば政権崩壊間違い無しと選挙の無期限停止を宣言。

 頂上法廷はこれを違憲と判断して、政府機能の無効を宣言。
 政府は逆に司法権の一時代行を唱えて独裁体制に突入するも、賛同者はさすがに少ない。
 遂には巡邏軍までもが政府の命令に従わずに群衆の反対運動を野放しとして、
  鎮圧に出向いた「国家治安維持警察隊」との衝突までも引き起こす。

 事ここに至っては万策尽き果て、政権中枢部はタンガラム方台を脱出してシンドラ連合王国へと亡命。
 「第七政体」の崩壊が確認される。

 頂上法廷は暫定政権の成立を急がず、大審会の地方自治による全土の治安確保を優先。
 「国家治安維持警察隊」を解体する。

 早期の総選挙を求めて数多の政治勢力が活動を盛んに行うが 、
  強圧的な政権への反動の解放的過ぎる理想主義の暴走が懸念されて、また民衆の支持も得られなかった。

 弾圧の報復を求める声も強かったが、これは押さえ込み、
  実効的な政権をまず立ち上げて総選挙への道筋を整えるべきとの総意で動き始める。
 既存政党政権与党の残存政治家を中心として実務的な内閣を組織して、総統職は空位のままで政権が動き始める。
 2年を過ぎてようやく総選挙の気運が高まり、実施。
 新議会を立ち上げ総統を選出して、憲法通りの政権が発足する。

 これを以て「第八政体」の誕生と見做す。
 創始歴6154年の事なのです。

じゅえる「長かった。」
釈「まあ必要なんですから仕方ないですが、長いです。」

まゆ子「ここで留意すべきは、「第七政体崩壊」時に実は粛清が行われなかったのです。
 平和的な政権交代とはいいにくいものの、流血の惨事とはなっていない。

 そりゃまあ恨みを買った「国家治安維持警察隊」の隊員は後に報復された者も少なくないのですが、組織的制裁は行われていない。
 政治家政権与党も脱出亡命しなかった者は当分干されていましたが、別に殺されてはいない。
 亡命組もほとんどが15年後くらいに帰国を許されています。

 財閥や富裕層もまた同様に、汚職腐敗に連座して逮捕された者は少なくないのですが、
  資本系列としての財閥そのものを没収して取り潰した例はほとんど無い。
 おおむね財閥総裁の個人的刑事罰で、禁錮数年あるいは在宅謹慎のままで刑が終了した者まで居ます。

 とにかく「第八政体」が重視したのが早急な景気回復で、
  これには民間資本とくに財閥系の会社の業績を回復させなくてはならなかったわけです。
 一部には過激な無産主義的報復没収を呼びかける政党も居ましたが、これは全くに支持を得られない。

 とにかく景気をなんとかしてもらいたい。てのが国民全体が求める最優先課題だったわけです。」

釈「背に腹は代えられないて事ですね。」
じゅえる「政治家も公務員もそのまま居着いたわけか。」

まゆ子「まあ、汚職で私腹を肥やした者は容赦なく逮捕しましたが、不当資産没収と公職追放のみで、刑務所に入れたりは無かったのですね。
 でもブラックリストが作られて、それなりに社会的制裁は受けています。一種の晒し者です。

 「第八政体」においては、汚職や背任はだいたいこの晒し者刑にされてしまうのが慣習になってます。
 メディアで吊るし上げるのです。
 まあこれが後に、マキアリイさんに牙を剥く事ともなるわけですが。」

釈「財閥にはお咎め無しですか。責任者逮捕くらいで。」
まゆ子「ま、現実を取ったってわけです。公共事業指名停止とかも無い。
 これは後の時代には復活しますが、この時期どこもかしこも不正やってたから公共事業に支障が出るのです。

 でもまあ、あまりにも巨大で独占的な財閥は解体されちゃいましたよ。
 産業横断的なものは許さないとね。」

じゅえる「「国家治安維持警察隊」も、たしか解体されて別の組織に編入されちゃったんだね。」
まゆ子「30年くらいはそこの人脈が結構な権力を握っていました。

 

 この時期「第八政体」が何をやっていたかというと、財閥解体と税制改革です。

 前の時代に「消費者」の概念が発見されたのはいいのですが、結局は階層分化になってしまった。
 これを是正する為には富裕層への課税強化、累進課税が必要となったわけですが、これがあまり常識的な考え方ではなかった。

 富裕層というのはこれまでの時代、広大な地主やら工場経営者やらの産業を担う主体であり、
  それぞれが多くの労働者を抱えているのが普通である。
 彼等に対する重税は、彼等が抱える労働者に対する課税でもあり、労働環境の悪化に誘導するような話であるわけだ。

 相続税に関しても、これらの産業は相続によって受け継ぐ事が多く、
  高額の相続税は事業自体を破綻させる可能性が高く、あまり産業振興的に得策ではない。

 また累進課税は無いといえども、なんやかんやで富裕層には「特別拠出金」と言われる税ではない税金が課される事が多かった。
 これも農場やら工場などを経営する者には重くのしかかるが、貿易商や銀行家は免れ易いという悪平等を産んでいた。
 そして、カネだけを動かす資本家の登場。

 まあ、近代資本主義社会にふさわしい衣替えが税制にも必要であったわけです。
 「特別供出金」を全廃する代わりに「累進課税制度」を導入して、新しい経済状況を作り出していた。
 反対も多かったけれどこれは結構上手くいく。経済の発展も促される。

 

 しかしここで「第八政体」に重くのしかかるのが、「見えない戦争」「海島権益争奪戦」です。海外派遣軍ですね。
 なにせバシャラタン方台がいきなり出現しますから。

 これ以上の国力増加を図るには国内だけの資源、特にエネルギー資源が再生可能なものに頼っていては不可能。
 なんとかして新しい資源、さらには新しい有人方台を発見して特別な権益を他国に先駆けて獲得しよう。という現実的な闘争が始まっている。
 そして海の上で実際の戦闘行動まで起こっていた。

 ここでクローズアップされるのが「高度兵器」です。
 潜水艦、飛行機飛行船、無線通信、巡航装甲艦、高速長射程砲、機関砲、レーダー観測、誘導装置。
 とにかくこれまでの兵器体系を覆す技術の産物が続々と戦場に投入され、対応するのに苦労させられる。

 もちろんタンガラム国内でそれらの製造を行う為の技術革新が必要で、産業の高度化が民生の必要以上に発生した。
 防衛体制を整えるのにも四苦八苦するが、軍隊を整備する資金の出処が無い。

 そこで産業界に特別なルートを構築して、特殊技術の開発実用化を目指すと同時に、資金を捻出する秘密の共同体を作り上げる。

 これを担当したのが、第七政体で治安警察の若手幹部だった「闇将監」と、
  後に「闇御前」と呼ばれるバハンモン・ジゥタロウだ。

 ただこれは最初の内はあまり上手くいかなかった。やはり国民に内緒での戦争は無理がある。

 隠された利権は当然に腐敗を産み、政権与党を侵食し、崩壊に至る。
 「第七政体」の反省から、政治家による監査はずっと効率的に公明正大に行われていたので、道半ばにして政権交代へと至る。

 

 で、政権交代して新進気鋭の与党が誕生するのだが、そして旧来の権力構造の打破に成功するのだが、
  「海島権益争奪戦」の実情を突きつけられては、これまでの路線を踏襲するしかない。

 タンガラムの未来の為に、より強力な軍隊を派遣せねばならないと、
  「海外派遣軍」を正式化して国民にも徐々に開示していく方針を採用する。

 こうして政治的なお墨付きを頂いた産業界裏のルートでは、闇税金と呼ばれるような資金供出が続き、「見えない戦争」が拡大していく。
 これは経済が好調であったタンガラムを裏から拘束するようなもので、徐々に景気が悪くなる。
 民衆の生活の向上も止まり、長期化し、こんなものが世間だと皆が思うようになっていく。

 閉塞状態で社会が息苦しくなり、そのウサを晴らすかにエンタメ業界が大発展する。
 映画も天然色のトーキーになり、伝視館放送でテレビ生放送が開始される。
 新聞雑誌は芸能界のゴシップネタで花盛りとなり、或る意味では一般消費社会を刺激し続ける。

 「息苦しいのに躁状態」と評論家が言うような、徒花的社会が広がった。
 中間所得層のとりたてて生活が苦しくない、むしろ恵まれた家庭の子どもたちが不良化する「持てる者の反乱」などが叫ばれる。

 

 この状況で颯爽登場したのが、「潜水艦事件」の若き二人の英雄だ。

 エンタメ業界は熱狂的に彼等を賛美し、また政府軍隊も持て囃した。
 「潜水艦事件」によってタンガラム国防体制に欠陥が有るのが暴露され、おおっぴらに軍備増強が国民にも理解される。
 投資が拡大して一瞬ではあるが景気が良くなり、なんとなしに明るい兆しが見えてくる。

 しかしながら、なにか不健全なものを抱えているのは明白で、外国からの悪影響もあり治安の悪化が懸念された。

 このような状況で再び登場したのが、「英雄探偵ヱメコフ・マキアリイ」だ。
 彼の活躍はめざましく、
  裏の世界を牛耳ってタンガラム社会を拘束し続けてきた張本人「闇御前」までもを炙り出す。

 与党の政権基盤は大きく揺らぐが、逆にこれはチャンスである。
 古い「闇御前」体制を打破してまったく新しい世紀を築くための産みの苦しみと言えよう。

 そして創始歴6215年夏の「国民総議会選挙」が開かれるわけだ。

じゅえる「はいごくろうさん。」
釈「ごくろうさまでした。」
まゆ子「ははは、疲れるぜい。

 でここからが本題。「政党の名前、何にしようかね?」」

釈「それって、こんな前置きを必要とする問題ですかね?]
まゆ子「名前を決めるだけなら問題ない。
 その政党がいかなるバックボーンを持って現在活動しているか、それを体現するのが政党名であるから、これだけ要る。」
じゅえる「なんだよね。めんどくさいんだよ。」

まゆ子「

 で、30年くらいで「第八政体」において大規模な政権交代が起きて、それまでの与党勢力が崩壊します。
 この崩壊でおおむね「第七」から継承した古い権力構造は駆逐されます。

 そして新政権となって、ここで登場するのが『ウェゲ(真人)議政同志會』です。ヒィキタイタンも所属する党ですね。
 正確にはその前身となる政党で、合従連衡して当時の多数派を握った保守政党です。
『ウェゲ保守会』とでも言っておきますか。

 この政党は20年ほど政権を独占します。
 が、10年前に起きた「潜水艦事件」の責任問題が勃発。
 当時の国家総統「アテルゲ・エンドラゴ」はイローエント海軍統監「クリペン・サワハーァド」に全責任をおっ被せようとするが、
  全海軍がこの措置に反発して海軍士官が揃ってサボタージュを行う「海軍休日事件」が発生。

 さすがにこれには耐えきれず、「エンドラゴ」総統は引責辞任。
 しかし「エンドラゴ」の派閥はこれで逃げ切ったとして、勢力を保持し続ける。

 反発した『ウェゲ(真人)議政同志會』の原型組織の派閥が、「エンドラゴ」一派の放逐を画策闘争。
 結局「エンドラゴ」一派は離党して、ついでに幾つもの派閥が分離。
 残された与党は改めて『ウェゲ(真人)議政同志會』を名乗り、足りない議席分を『自由タンガラム党』他との連立でなんとか乗り切った。

 これがピンチヒッターの党首で、総統代理であった「ヴィヴァ=ワン・ラムダ」の仕事です。

 それから2度の選挙をなんとか乗り切った「ヴィヴァ=ワン」政権だけれど、
  2年前の「闇御前事件」で「自由タンガラム党」が政権から離脱。
 少数与党としてふらふらと迷走状態にあるのです。」

 

釈「『ウェゲ会』は、第六政体の昔から有った政党なんですよね。」
まゆ子「というか、第五政体にもありましたよ。
 かなり歴史が長い政党なんですが、その実体は政治評論を行う同人誌サークルなんだ。」
じゅえる「同人誌なのか。」
まゆ子「まあ、政党機関紙と言ってもいいんだが、政党じゃない時期も有ったし、政党じゃないから世間の有識者から寄稿を受けることが出来たというか。」
釈「それが、いつの間にか政党になってしまったわけなんですね。」

まゆ子「で、その同人誌のタイトルが『ウェゲ(目覚めた人・真人)』なんだ。」

 

釈「えーとつまり必要なのは、
  「第八政体」発足時の前半を担った政権与党名と、政権交代後の与党会派名を決めますか。」

じゅえる「最初のやつは、えーと『大同団結国民タンガラム発展党』とでもしておきますか。」
まゆ子「大同、はいいな。『大同正方台発展党』とでもするか。タンガラムは「正方形」て意味だし。」
釈「もうちょっとひねって『大同正方台発信党』としましょう。信無くば立たずですよ。」
じゅえる「う〜ん、『大同正方台発心党』、やはり初心に帰るべきさ。」

まゆ子「じゃあ第八発足時は、合同会派『大同正方台発心会』で、
  崩壊時は『正方台発心民誠党』に改名されていることにします。

 分裂して、『ウェゲ(真人)議政同志會』+『正方台発心党』+『タンガラム民誠党』に。

 その後野党『国民草莽社』が『ウェゲ會』と合同して、『ウェゲ信民党』に改名。
 現在の政権与党に。

 『タンガラム民誠党』は『自由タンガラム党』と『民誠党』に分裂。『民誠党』は『ウェゲ信民党』に再吸収、
 『正方台発心党』は『正方台改新党』に改名後、没落泡沫政党に。」

釈「はあ。」
じゅえる「めんどくさいな、政党って。」
まゆ子「でもこれ、野党系政党はほとんど書いてないから。

 ちなみに『国民草莽社』は宗教系の支援を受ける政党で、主に低所得者層の民生改善を主要な政策課題とする政党。
 財閥や富裕層を重視していない事を示す為に、『ウェゲ會』の方から取り込んだ。

 その後「新ぴるまるれれこ教団」系の政党『青天光日博尽会』との連携をして政権基盤を強化していたが政策が折り合いが悪く連携解消。

 その後釜として『自由タンガラム党』との連携をしてきたが、「闇御前事件」によってこれまた解消。
 『国民草莽社』系議員までもが逃げ出し、『ウェゲ(真人)議政同志會』単体となっている。
 ちなみに『民誠党』系議員は既にフェードアウトした。」

じゅえる「なんだか腹が立ってきた。」
釈「政党の合従連衡って腹立ちますよね実際。」

まゆ子「ちなみに、まったく関係ない独立系議員が立ち上げたのが、『タンガラム信民党』。紛らわしい泡沫政党だ。
 他にも『無産市民者之会』という強硬左派がある。
 『国家忠永団』という軍人系政党もある。これは特に右派ではなく、軍人の政治的地位を高めようという勢力。むしろ内向的だ。」

釈「ちょっとまとめますよ。6215年夏現在ですね。

 政権与党:『ウェゲ(真人)議政同志會』大
 元与党:『国民草莽社』小

 野党:『自由タンガラム党』大 『青天光日博尽会』中
     『国家忠永団』小 『無産市民者之会』小
    泡沫:『正方台改新党』 『タンガラム信民党』   『他』


じゅえる「なんか『ウェゲ會』選挙に勝てそうだぞ。」
まゆ子「あー、そうだな。もうちょっと、……いや、むしろ『ウェゲ會』もまた分裂気味ということで、その片方の有力者が餅を喉に詰めて死ぬのだよ。」
釈「なるほど。得票数によっては『ウェゲ會』自体の分解があるわけですね。」

釈「「エンドラゴ」総統一派は、「ウェゲ会」から追放されたんですよね。今どうなってます?」
まゆ子「あー、無所属と、他の政党に入ったのと、ウェゲ会に頭下げて戻ったのと居ます。
どうするかな、「闇御前」組織の手先みたいな議員だから、資金的には困ってない的なものかな。」
じゅえる「政党ではなく会派を作っている無所属議員の集まり、というのではどうだろう。」
まゆ子「ふうむ。」

釈「でも「潜水艦事件」はまだちっともほとぼりが冷めてませんよ。というかむしろ「英雄探偵マキアリイ」で盛り上がってます。
 「闇御前」も逮捕しちゃったから、その人達への風当たりはまだ強くないですかね?」
じゅえる「なんか禊が無いとな。」
まゆ子「彼らが株を上げるなにかイベントが有ればいいんだ。
 まあ選挙は前回「ヴィヴァ=ワン」総統大勝利したんだけどね。ヒィキタイタン議員も取り込んだし。」

釈「その後で、なにか主要な政治イベントは無かったんですか?」

まゆ子「設定してない。が、1個間違いなく揉めたものが有る。

 マキアリイが依頼により突き止めた、第七政体の秘密警察によって拘束されその後行方不明となった学者知識人報道関係者の埋葬地発見イベントだ。
 この真相を世間に公表する為に、ヴィヴァ=ワン総統は大決断をした。

 旧秘密警察から組織を移管した治安維持機関が第八にもあるからね。そいつらの機嫌を損ねる大問題だったんだよ。
 ただもう60年前の話だし、当時の責任者はとっくに引退か死んでるし、その治安機関を牛耳ってきた「闇将監」も7年前に死んでいる。
 「闇将監」はその権限を「闇御前」に譲ったのだが、
  「闇将監」自身はれっきとした政府高官であったのに対し、「闇御前」はあくまでも民間人の立場だ。
 治安維持機関は「闇将監」が生きていた時代と異なり、民間人「闇御前」にいいようにされるのを歓迎しない。

 そこで、改革を進めるヴィヴァ=ワン総統に協力して、「闇御前」組織を切り崩しに入ってるのだね。
 だからこその、大量虐殺事件の真相公開が可能となった。」

じゅえる「この公開の時、「エンドラゴ」一派がヴィヴァ=ワン総統に協力したのか?」
釈「むしろ逆ですね。「闇御前」組織と繋がる彼らは、えーと、」
まゆ子「そうだな。「闇御前」組織としては、離反しようとする治安機関を牽制したいと考えるだろう。
 そこで「エンドラゴ」一派を使って、ヴィヴァ=ワン総統に60年前の虐殺事件の責任追及を厳しく行った。」

じゅえる「あーーーー、それどっちがどう利益となるのだ?」
釈「えーと、60年前の事件でヴィヴァ=ワン総統が責任を取るのは筋が合いませんね。」

まゆ子「しかし誰が責任を取る、いや被害者遺族に謝罪と補償をする責任は当然に政府にある。総統が責められるのも無理はない。
 また当時の責任を追求することで、必然的に犯人である旧秘密治安警察への風当たりが強くなり、現在に続く治安機関も叩かれる。
 「闇御前」組織としては、まったくに利益と言えますね。」

じゅえる「うーむ、でも「エンドラゴ」一派も治安機関を使ってきた立場だろ?」
釈「でも政治家って、そのくらいころころ頻繁に態度変えますから。」
まゆ子「ここで彼らは正義ヅラをして見せて、有権者の支持を取り戻した、てわけさ。」

じゅえる「なんだか詐欺みたいな話だな。」

 

     *****

 

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