がんびっとさん装備

 そもそもが「がんびっとさん」は土管型ロボでチェスゲームのような戦闘を行うラノベを考えて、とりあえず機体だけでも作ってみるかという企画です。
 故に、ロボットは無敵では困る。
 むしろ殺られまくり死にまくり、非力極まりない兵器であり、搭乗者の生命などまるっきり考慮していないという設定が必要とされます。
 数がモノを言う非人間的暴力の世界で美少女たちがきゃっきゃうふふする物語です。

 というわけで、ここに描かれている三種のロボは、チェスでいう雑魚駒”ポーン”=”鉛”と、”ルーク”=”亜鉛”、”ナイト”=”錫”なのです。

 機体設定はしていませんが、”ビショップ”=”銅”、”クィーン”=”鉄”、”キング”=”金”となり、”金”が破壊されると無条件敗北となるシステムです。
 ”銅”と”鉄”は強力なロボということで、普通に手足のあるロボらしいロボを想定しています。
 が、そこは名有りキャラが搭乗するということで、雑魚ロボに乗るのは階層の下の兵士、雑魚兵士であり、主人公は雑魚から成り上がるというストーリーです。

 故に主人公は”錫”に乗ります。機動力運動性が高く、一発で敵を撃破する攻撃力を備えている。
 主人公はそうでなくちゃいけない。しかも一匹狼的に行動して、単独で戦果を挙げる。
 だがだからこそ妬みを買い、チーム内であっても支持派と反対派が出来て、ドラマ性を盛り上げる。てなわけです。

 

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 主人公メカは”錫STANNUM”、雑魚の中でも花型の攻撃力特化型ロボで、敵を確実に破壊していく狙撃砲を右手に装備します。口径は適当ですが、とりあえず37ミリ。
 この砲はゲーム中でも最強レベルの威力を持ち、上位3ロボ”銅””鉄””金”を破壊する事が可能。
 とはいえ上になるほど防御力が高く、数発を急所に撃ち込んでようやく効果あり、となります。

 左手は最下級の破壊力しか持たない7.7ミリ対装甲機関銃+素敵銃剣。この機関銃は下位3ロボの装甲を破壊する能力がありますが、上位ロボには効果が無い。
 そもそも下位ロボだとて1発2発食らったくらいでは機能停止には陥らない。当たりどころが悪くて中のパイロットが死ぬくらいでないと、即時停止は望めません。

 銃剣は格闘兵器でエネルギーの刃を発生させ、ロボの装甲を直接に破壊する事が可能です。
 とにかくリーチが無いのでよほどの近接でなければ当たりません。
 でも戦闘が長期化すれば弾薬の補給が効かないために火器が戦闘力を失い、近接戦闘を余儀なくされます。
 銃剣は上位ロボにも一応有効ですが、”鉄”は大型格闘兵装「おおきな刀」を持っていますから、遭遇すると為す術もなく死にます。
 ”銅””金”には即死ではないものの効果はあります。

 弾薬を消費し尽くした火器はただの重りにしかなりません。特に長大な狙撃砲を装備する”錫”にとっては邪魔なだけです。
 これを投棄して身軽になって左手の銃剣で格闘戦に及ぶ、という選択肢も戦闘後半ではあり得ます。
 機動力運動性の高い”錫”機体は格闘戦でも有利が見込めます。
 ただし、狙撃砲にもし弾が残っていたら? というブラフ効果を考えると一概には良否を判断できません。 

 

 下位ロボ最下級の”鉛PLUMBUM”、雑魚メカ中の雑魚です。
 ただし装甲防御力は下位ロボはほぼ同等。”錫”のみが機動力1.3倍増で弾が当たり難いというアドヴァンテージがあります。

 ”鉛”の武装は右手50ミリ榴弾砲。左手7.7ミリ対装甲機関銃+銃剣。
 50ミリ榴弾砲は10メートル以内に着弾した場合、飛散する破片で下位ロボットの装甲は7.7ミリ対装甲機関銃に射撃された程度の損傷を受けます。
 ロボはそれぞれ相当の速度で移動するから、低速の榴弾砲の直撃は期待できませんが、当たれば下位ロボはほぼ全損リタイアします。
  ”鉛”は頭部に投光器を備えており、夜間警戒に役立ちます。

 ”鉛”は”ポーン”相当であるから戦隊中最も数が多いロボです。
 このゲームに参加するパイロットはまず”鉛”から始めるのが普通。つまりは二等兵ロボです。

 

 ”亜鉛ZINCUM”は左手に盾を装備しています。つまり防御力特化型ロボで”金”を守る盾となります。
 この盾はきわめて頑強で、”錫”の狙撃砲の砲弾を完全防御します。”鉄”の機体装甲と同程度の防御力です。
 しかし装甲面積が小さい為にクリーンヒットする例は珍しく、狙撃されれば確実に機体の破損が起きます。つまりは1発だけならなんとか凌げる、その程度です。
 ですが”鉛”の榴弾砲であれば直撃でも完全防御、これは直撃であるかぎりは何発でも耐久が可能です。
 故に”鉛”は”亜鉛”に対しては直撃を行わない。足元に落とした方が確実にダメージを与えられるという寸法です。

 右手に装備するのは13ミリ機関砲+銃剣。当たれば下位ロボであれば1発で動作不能、パイロット死亡を招く威力があります。
 しかも”亜鉛”は大型弾倉を背部に背負っている為に、弾数が多い。攻撃力にも優れており、戦場の状況を掌握する鍵となる戦力です。
 ただし上位ロボはこの銃弾に耐える装甲を持っています。

 下位ロボの足はソリ状になっており、歩行はまったく考えておりません。すべて半浮上走行です。
 ジャンプも可能ですが高度は10メートルまで、跳躍距離は最高速度状態で30メートル。ただし崖を飛び降りる場合は、緩い速度を保って軟着陸が可能です。
 速度の早い”錫”はジャンプで15メートル、距離で50メートルは可能で、戦場を自由に走り回り、戦況をリードします。

 

 上位ロボは人型ですが、まるっこく愛らしいスタイル。

 ”銅””鉄”は戦隊サブリーダー機であり、リーダー機”金”との直通無線通話が可能です。つまり指揮命令はサブリーダー機にのみ伝えられる。
 下位ロボはサブリーダーの機体の肩左右に装備される信号灯に従って行動します。
 つまり、音声や文字による通信機能は一切装備されていない。
 ロボ同士は、信号灯の点滅により意思疎通を行います。

 ”銅CUPRUM”は火力特化型で、50ミリ榴弾砲と13ミリ機関砲がセットになった複合火器を左右に装備します。13ミリ耐弾装甲を前面に、7.7ミリ全周耐弾性能を持ちます。
 装甲防御力は高いものの、”錫”狙撃砲を正面から喰らえば1撃で、また側背面に50ミリ榴弾砲を喰らえば損傷します。
 動力的には雑魚ロボよりもよほど強力ですが、装甲圧・火器搭載重量によって機動力が大幅に減衰して、”鉛””亜鉛”と同程度しかありません。
 火力は高いが機動力は劣る。鈍重とさえ呼ぶ事が出来る、使いドコロの難しい戦力です。
 銃剣は装備しません。

 ”鉄FERRUM”は火器を持たず、大型の刀を左右に装備。一撃で下位ロボを両断します。
 正面装甲は”亜鉛”が持つ盾と同等37ミリ狙撃砲抗堪、側面背面は13ミリ耐弾装甲でほぼ無敵。一応は銃剣装備機体であれば急所攻撃で破壊できますが、ほぼ無理。
 機動力も”錫”を越えて高く、これが戦隊に斬り込んできた場合、同種の”鉄”でなければ止められません。
 ただし武装が固定されるマニュピレーターは脆弱で7.7ミリ集中攻撃でも破壊が可能。戦闘力喪失があり得ます。
 近接戦闘しか出来ないので、接近を上手く補足できれば撃滅は可能となっています。 
 赤外線投光器を用いる夜間暗視機能を装備しています。しかし赤外線は全ロボが感知可能であり、奇襲効果は望めません。

 ”金AURUM”は指揮管制能力を備えた機体で13ミリ耐弾装甲を全周で装備。火器は無し、オプションで”亜鉛”の盾を1枚持つ事が可能。
 この機体にのみ周辺地形把握能力があり、敵味方戦力の展開状況をリアルタイムで確認できる。
 また通信機能を持ち、戦隊サブリーダーへの直通指令を送信する事が可能。音声通話も可能です。
 つまりは”金”に搭乗するパイロットはリアルタイムでの作戦指揮能力に優れた人物でなければならない。
 ぴかぴかと光る指揮杖が右手に装備されているので、戦隊を直接指揮する事も可能です。

 武装は無く、左右の手は作業可能なマニュピレーターになっています。ただし精密作業可能ではなく、ロボを引っ張り起こす程度です。案外と役に立ちます。
 機動力運動性は”銅”と同じ。鈍い、というよりは普通です。
 夜間監視能力は持ちませんが、発砲が有った場合その火点を自動的に地図上に表示する機能を持つので、撃たれれば位置が分かります。
 装甲が厚い為に、雑魚ロボが持つ7.7ミリ、13ミリ、50ミリ榴弾直撃が効きません。
 銃剣による格闘を余儀なくされますが”金”には格闘戦能力はありません。逃げ惑うだけです。

 

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 1戦隊100機で構成される場合、50機は”鉛”、30機が”亜鉛”、10機が”錫”、6機が”銅”、3機が”鉄”、隊長機”金”が1機、という編成です。

 ただし上位ロボは装備コストが高い為に完全充足するのは難しく、”錫”機体で間に合わせる事も少なくない。
 ”錫”に無線通信機能を積んだものを、”青銅AES”と呼びます。右手37ミリ狙撃砲、左手13ミリ機関砲で銃剣無し。機動力は重量増大分”錫”より少し落ちる。
 防御力は雑魚なので、”銅”のように雑魚ロボをかばいながら戦う事は不可能。苦戦を強いられること必至です。

 ”鉄”は決定的な戦力を持つ為に、常に敵の”鉄”を1対1でマークせねばならず、部隊指揮の実質は”銅”のサブリーダーによって行われる。
 つまりは50機の”鉛”、30機の”亜鉛”、10機の”錫”を6つのグループに分けて攻防を行う。

 その内”金”を守護する親衛隊は、”鉄”1、”銅”1、”錫”2、”亜鉛”10で構成される事が多い。
 残りは5つの小隊に分けられる。
 ”銅”1”亜鉛”10”×2の防御小隊、”銅”1”鉛”20”錫”2×2の攻撃小隊、”銅”1”鉛”10”錫”1の遊撃小隊。
 そして先行して敵”鉄”を牽制する”鉄”1に”錫”1が随伴する。×2

 残った”錫”1が直接に敵”金”を狙撃するリベロとなります。

 

 敵味方識別は機体に部隊色での標識を描く事で目視で行うが、事前に相手情報を与えられない為に紛らわしい標識で混乱する時もある。また夜は見えない。

 夜間暗視装置は無い。夜の索敵は困難である方が戦闘の幅が広がると考えられており、機体に暗視装置を搭載する事は禁じられている。
 その代わりに、”鉛”頭部に投光機が搭載されている。無論夜間に不用意に点灯していれば狙撃されてしまうので、滅多には使わない。
 ”鉄”機体には赤外線投光器によるパッシブ暗視装置が標準搭載されているが、赤外線は全機体が感知可能であり使えばバレて投光されてしまう。
 ロボの足元は夜間見えないのだが、コクピット内では10メートル以内がかなり明るく表示される。つまり技術的に暗視機能は実現可能でありすでに搭載されているのだ。

 音響索敵装置は全機標準搭載。特定周波数による敵味方識別機能搭載。
 音響索敵はロボットの駆動音から機体の特定、位置、移動方向速度を検知して表示する。複数機体であってもある程度の分解能を持つ。 
 ただし自機が移動中あるいは戦闘中で騒音を出していない事が前提。うるさいと機能しないので音響探索時は停止する。

 特定周波数音波での敵味方識別は可能であるが、常時発信だと位置がバレてしまう為に必要時しか使わない。
 この音波はかなり狭い領域に指向性を持って発信する事も可能で、コミュニケーションを取りたい機体に向けて照射して自機に注意を促すという使い方がある。

 レーダーは地上戦ではあまり役に立たないが、何故か搭載されている。砲弾飛来方向の確認や、帰りの輸送機が来た時くらいしか使い道がない。

 無線通信は”金””銅””鉄”に搭載されていますが、”金”をハブとして1対1のみの通話、”銅””鉄”間直接通信は出来ません。必ず”金”搭乗者を介しての意思疎通となります。
 それ以外の通信手段は機体肩部に装備される赤青の信号灯。これを点滅させる事で会話が可能ですが当然に読み取り技法の習得が必要。

 他の通信手段は、各機体に装備されている信号弾。
 下位ロボは接敵を表す信号弾5発、指揮をする上位ロボは3色計15発。高速性を利用して索敵をする”錫”にも15発が装備される。
  さらに7.7ミリ・13ミリ機関銃には曳光弾がセレクターで別に装備されており、攻撃目標を他に指示できる。
 ”鉛”は榴弾を節約するために撃つ目標・担当機体を特定するために曳光弾を多用する。

 究極の通信・確認手段として、ロボの装甲を上に上げて、ガラスコクピットを露出させるという方法も有る。とても危険。

 

 コクピット部分はガラス円筒であり、装甲部が上部にスライドして乗降可能となる。
 もちろん気密であり温度維持がされており、呼吸可能に内部環境は整えられている。外部がたとえ宇宙空間であろうとも、パイロットが死ぬ事は無い。
 しかも装甲が降りて密閉している状態であれば、ガラス円筒に外部視覚情報が投影されてまるで外にむき出しになっているように見ることが出来る。
 コクピット損傷が無い限り目視による外部索敵に不自由する事はありえない。

 基本的に1人乗りであり、狭いとはいえ1人が数日居るのには十分なスペースがある。
 他のロボが破壊された場合、救助してもう1人、頑張れば短時間で最大3人が乗れるがさすがに戦闘行動は不可能となる。
 水食料は持ち込み。最大1週間分を持ち込むが、衣類等は少ない。
 機体内に湯沸し器が有り、暖かい飲料を作る事が出来る。さすがに調理は無理で、湯を入れて柔らかくする専用携帯食を使う。
 排泄はビニール袋を機外投棄する。

 通信機は装備されていないが、公共放送ラジオが持ち込み可能となっており、ほぼ全機必携装備されている。
  つまりは戦闘中BGMを聞く事が出来るという親切設計。
 だがもちろん主目的は、公共ニュースによる現在の戦闘状況の解説番組を聞く事。
 自軍指揮官の命令は直接聞けなくても、どのような作戦を行っているか、敵がどう動いているかを間接的に知ることが出来る。
  また自軍コミュニティーからの応援メッセージが放送されたりもするのであった。

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 これはゲームではなく生存競争であり、勝利によってそのチームが生存する為に不可欠のポイントが与えられ、敗者には損害のみが残ります。 
 戦死者は死んだままだし、失われた兵器も回収不能。兵力の補充も勝利によって与えられるポイントの消費によってのみ実現可能。
 つまりは勝たねばまったく意味の無い戦争なのです。

 

 戦闘は、戦争を管理する上部組織によって公式戦として行われ、参加戦隊はランダムに選ばれて、1対1のフェアな状態で行われます。
 戦場は上部組織によって任意に定められた場所で、両軍にとっての有利不利は存在しない。 

 しかし両軍の装備ロボ数、兵員数は100を上限として下限は定められていない。
 兵力の損耗があった場合、各陣営において補充が利かなかった場合は少ないままで戦闘に望まねばならない。
 ただ”金”機体のみは上部組織によって無条件無償で提供されており、敗北による損耗も戦闘参加に差支えはありません。

 基本的に勝敗フラグとなるリーダー機は”金”機体です。公式に定められています。

  しかし機動性運動性が鈍く、これを中心として守るとどうしても防御に力点を置く必要があり、攻撃隊の陣営が薄くなります。
 そこで機動性の高い機体をリーダー機として逃げ切り戦略を使いたいと考える戦隊もあります。
 運営に申請して”青銅”に指揮管制能力を与えた特別製の機体を自前で用意します。これを”銀ARGENTUM”と呼びます。
 ”銀”は基本が”錫”ですから、機動力は高くても装甲は雑魚ロボと同等。そこで”亜鉛”の盾を左手に装備します。
 右手は”金”と同様のマニュピレーターで武装は無し。だがマニュピレーター自体の強度が高い為に、腕だけに13ミリ耐弾能力が有るとも言えます。

 

 戦場はロボに乗っていなければ長時間の生存が不能な、人間が生きていけない環境に設定されます。荒野や砂漠、凍土、酸素の薄い高地、毒ガス等々。
 故に破壊されたロボから脱出してもパイロットの生存はありません。
 友軍のロボに回収されて救出は可能ですが、1人乗りロボに2人乗れば窮屈で、負傷でもしていた場合はほぼ絶望的です。
 ゲーム終了まで数日は掛かるので、その間パイロットはロボに乗り続け、不眠不休での戦闘を余儀なくされます。
 でもやっぱり眠りますから、休息時間の配分設定もサブリーダー小隊長の管理能力に依ります。

 戦場への移動は上部組織が運行する輸送機によって戦隊まるごとを一度に移動させます。
 移動経路を知る事はできませんが、長くても1日で現地に到着します。
 それまではロボに乗らずに自由行動で待機しています。
 現地到着後に全兵員がロボに搭乗し、外部環境への対応が完了した後に、輸送機からの上陸が認められます。
 全ロボが上陸終了して輸送機が戦場から離脱した事が上部組織によって確認されて初めて戦闘開始です。

 

 ”金”に搭乗する指揮官は上部組織によって認められた資格を持つ者で、誰でもが成れるわけではありません。おおむね特別な家系、DNAによって決定される。
 しかしその人物が作戦指揮能力に優れているとは保証されていない。むしろ素人である場合が多い。
 事前に戦闘指揮演習を積み重ねて経験を増やしていくのは当然としても、実際に戦隊を指揮し作戦立案に当たるのは親衛隊に属するサブリーダー機搭乗者、歴戦の勇士であるでしょう。
 むしろその実質責任者と名目責任者とのコミュニケーションの良し悪しが戦況を左右すると考えられます。

 戦闘継続時間は交戦規則によって概ね1週間を限度としてタイムアウト引き分け撤収が義務付けられています。
 普通これほど長く交戦することはありませんが、短期決戦はほぼありえません。
 むしろ、敵の意表を突く攻撃を試みる為に投入された戦場戦域をくまなく探査して、待ちぶせや罠を仕掛けるポイントを十分に考慮して、必勝の態勢を整えてから攻撃に移ります。
 確実に、損害を最小として勝利せねば意味がないのです。慎重になります。

 ちなみに引き分け時は両軍ポイント無しで終了します。 

 勝利条件は敵”金”機体の破壊、ですが搭乗者の死亡は必要としません。機体制御回路を破壊する事で自動的に敗北信号を発生させます。
 ただし銃撃による破壊ではその加減は難しい。
 戦況に利が無く兵力も底を突き、敢えて敗北を求める時は”金”は斬られに出てくるので、刀を持つ”鉄”もしくは銃剣装備機体が介錯をする事が道徳的とされています。

 「自殺」は認められていません。”金”機体が自軍によって破壊された場合、敗北は確定ですが撤収の為の輸送機が来ません。敗軍は野垂れ死にを余儀なくされます。
 友軍の誤射による”金”破壊も同様のものと認められます。
 つまりは敵軍による”金”破壊は好意によって人命を助けられているのであり、勝者は生殺与奪の権限を有する。
 敗軍の将が有能な人物であり以後も脅威となると考えられる場合は、躊躇なく殺して後顧の憂いを断つべきであるのです。

 

 当然に、弾薬の補給は途中ではありません。出動時に装備していったのを最大量として、以後は消費するばかりです。
 50ミリ榴弾砲は25発、37ミリ狙撃砲は15発、7.7ミリ機関銃は300発、13ミリ機関砲は200発(”亜鉛”は500発)でばら撒けば1戦闘でも終了します。
 (”銅”は榴弾砲と機関砲の複合火器を左右に装備する為に、(25発+200発)×2となります)
 銃剣は破損しない限りはエネルギー供給が続く限り使用可能ですが、弾薬無しでの近接戦闘は自殺行為。

 作業可能なマニピュレーターを持ちませんから、擱座機体からの弾薬の奪取再装填は不可能です。
 ただ、ロボの機外にパイロットが出て弾薬を拾って再装填して発射可能とする。これは非常に困難ですが可能です。環境によっては人命が失われると思いますが、可能です。
 人命を浪費する行為に見合うのは、”錫”機体が装備する狙撃砲。
 追い詰められた後に唯一の勝機として試みられる事は少なくありません。

 武器は装甲されていないので、7.7ミリ機関銃による攻撃で破損する場合があります。小口径銃だからと諦めてはいけません。
 無敵の”鉄”機体だとて、刀を固定装着してあるマニュピレーターは破損します。がんばれ。

 弾薬切れになった場合は速やかに安全地帯に退避して、ひたすらゲームが終了するのを願うこととなります。
 逆に、弾薬切れになったロボは破損したロボからの脱出者救助に専念する事が出来ます。これを破壊する事は人道上恥ずかしいこととされますが、戦場では横行しています。

 ちなみにロボのエネルギー切れはありません。戦場外部から遠隔によって電力供給がされており、ロボは動力非搭載で動きます。
 つまりは戦闘が公式に終了した後は戦場の領域にエネルギー供給がされる事はなく、戦場に留まる事は不可能であり、占領という行為も意味を為さない。

 

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 以上が通常の戦闘ですが、最大百体のロボを用いての大規模戦はコストが高く、戦力整備の為には負担が大き過ぎます。
 そこで少戦力による小規模戦闘の場も用意されています。
 ちまちまとポイントを稼ぐのに最適な場であり、勝ち目がないと見極めればリーダー機自殺も許可されます。
 戦場も比較的生存に適した土地が設定され、ロボが破壊されてもパイロットの脱出が可能となっています。

 つまりポイントを稼ぐと同時に経験を積み重ねて指揮官・パイロットの熟練を図る事が出来る練習ステージ。
 最大戦闘時間24時間の短期決戦。犠牲を覚悟での戦術が可能な戦い易いルールと言えます。

 最大16体。チェス盤に乗る駒の数です。
 通常”鉛”8”亜鉛”4”錫”2”銅”1”金”1の構成です。
 ”鉄”は用いず、”銀”は使用禁止で逃げ切り戦略禁止。
 ”銅”の代わりに”青銅”を用いる事は許可されます。サブリーダー機1機の制限。0、つまり”金”直接戦闘指揮でも可能。
 ”錫”2は最大数で、減らした分は”亜鉛””鉛”で補充が許されます。
 ”狙撃砲2門までに制限。無くても構いません。そもそもが最大数を満たさなくても参戦可能。

 ”金”が直接戦隊指揮をする事で、通信の効く”青銅”を用いたリベロ戦術が可能となります。

 ”TABULA”と呼ばれます。

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まゆ子「というところを昔考えたわけさ。」
釈「チェスゲームが基本ですから、駒の能力には大きな制限が掛かるわけですよ。」
じゅえる「むしろ、これを舞台背景とした人間ドラマを構築するのを狙っていたわけだ。」

まゆ子「しかしめんどくさい、という理由でボツを食った。」
釈「はあ。めんどくさいですね。」
じゅえる「しかたがないか。」

まゆ子「これを全部メイドが乗ることにして、メイドばかりで構成される戦隊、それが拠点とするお城にどこからともなく現れた釈ちゃんが、チェスゲームの本質に隠された巨大な悪の陰謀を抉りだす。
 題して「黒い黒い子物語」というのも一応書いてみましたが、序章で頓挫です。」

じゅえる「しかし、この16体しか使えない小ゲームの方が面白いんじゃないか?」
釈「そうですねえ、しかも短期間で終わりますから、ゲームとしてはこっちの方が出来がいいですね。」
じゅえる「さすがに100体を投入するのは大迫力だろうが、個々人の活躍を描くには、このくらいに絞った方がいいぞ。」

まゆ子「ふむ。なるほど設定している最中でもそう思わないでもなかったが、なにせこれ設定中はシリアスで考えていたからな。犠牲被害者戦死でぼろぼろと友人知人が欠けていく、そういう物語を想定していたんだ。」
じゅえる「そのロマンは分からないではないが、」
釈「つまりムセるがやりたかったんですね。」

まゆ子「しかしポップに戦争をするという中二的無責任を考えると、簡単に死んでもらうのも良し悪しか。」
じゅえる「小戦闘を中心として経験値を積み重ねて友情とか対立とかの構図を明らかにして、大戦争でばっと全部蕩尽する。そういう形式のラノベでいいんじゃないか。」
まゆ子「ふむ。まあポイント稼ぎには大戦争をするのが一番てのは確かなんだから。小戦闘で経験値を積み重ねた戦隊が満を持して大戦争に突入して惨敗! もいいか。」
釈「結局死んじゃいますか。」

 

じゅえる「途中語調がくるくる変わるのは、まあつぎはぎで設定増加していく名残です。これでいいのだ。」

 

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まゆ子「とまあそういうわけで、ガンビットさんを見直ししているわけですよ。
 そこでテコ入れ案を考えた。新機体投入! 

 「水銀hydrargyrum」

釈「「水銀」、ですか。」
じゅえる「汞、だね。みずがねだ。」
釈「日本語で漢字の名前がある金属元素はこれが最後ですかね。」
まゆ子「亜鉛は中国でもかなり遅い時代まで単独で精錬出来なかったからね。でも真鍮、の材料となる鍮石は銅と亜鉛の混合物だから、亜鉛の別称としてもいいでしょう。」

釈「水銀はどこらへんが違う機体なのですか?」
まゆ子「これは現在のゲームでは使われていない機体なのだ。というか、ガンビットさんゲームも長く続いているからテコ入れが必要となって、新機軸の新戦術を生み出す為の機体性能の向上を運営側が考えたんだ。」
じゅえる「つまり高性能機なんだ。」
まゆ子「いや、そこを高性能で置き換えると性能インフレをするだけになるから、「水銀」は性能を上げずに戦術変更をする計画を立てたんだ。」

釈「そんなこと出来るんですか。」
まゆ子「したんだよ。光学迷彩で。」
じゅえる「光学迷彩装備機なのか!」
釈「それはスゴイですね。つまり敵に見られずに接近して攻撃できるんですね。」
まゆ子「しかし戦闘力破壊力は搭載兵器によって生み出される。現在は試験機だから一番戦闘の難しい装備を搭載している。」

釈「しかし光学迷彩ですよ。これは戦術上大きなアドバンテージになるんですよね。」
まゆ子「とはいうものの、どこの戦隊にも同じ機体が配備されるのがこのゲームの特色であるから、単純に隠れて攻撃はそうそう通じない。」
じゅえる「ああ、すぐ対策されるな。でも機体同士の直接通信が出来ないのだから、そこはやりようだろ。」
まゆ子「そうなんだけどさ、「水銀」は光学迷彩を搭載するから、機体に任意の模様や文字が表示できるんだな。」
釈「はあ、かなり自由に意思疎通が出来る機体ですか。そこはゲームの本質をかなり改変してしまいますね。」
まゆ子「そうなんだ。そこらへんをまだ運営側が詰め切っていないから、この機体はまだ試験機体なんだよ。」

じゅえる「だが戦闘力は有るんだろ? 弱いのか。」
まゆ子「簡単に言うと、RPG6発搭載。」
釈「RPG-7、ですか。」
じゅえる「いやパンツァーファウストかも。」
まゆ子「つまりは成形炸薬弾をぽんと飛ばす兵器だ。弾体自体が大きいから3発をリボルバー的に配置して、左右に2器6発装備だ。」
釈「……少ない。」
じゅえる「なるほど試験機体なわけだな。6発では6機しか敵をやっつけられない。」
まゆ子「当たれば「鉄」を含めた全機体を破壊可能なんだけど、なにせ直撃でないと効果ないからな。「鉛」の57ミリ榴弾は至近弾でも効果はあるが、これは直撃だけ。
 しかも射程距離50メートル。それ以上離れるとろくに当たらない。」

じゅえる「うーむ、他の武器を搭載する事はできないのか。」
まゆ子「そこも現在研究中で、なにせ光学迷彩を活用する為の機体だから、巨大な銃火器を搭載するとバレちゃうんだよ。
 RPG、こちらでは破甲榴弾と呼んでいるのは、弾体こそ大きいが発射器自体は小さく、ちいさな遮蔽物の陰に隠すことが出来る。
 というわけで、「水銀」機体にはちいさな翼が付いてる。表は光学迷彩、裏は破甲榴弾リボルバーランチャーね。」

じゅえる「小さい火器の開発はできないのか?」
まゆ子「うーん、この翼に隠れるほどの大きさの火器となると短砲身に限られるから、通常火器は無理だな。榴弾砲なら可能だが、というか榴弾砲搭載用に背部に弾倉スペースは用意されてるんだけど。」
釈「ああ、ちゃんと考えてはいるんですか。」
まゆ子「これは新型機体だから、ゆくゆくは「鉛」自体を「水銀」に置き換えてみようという計画も有るんだ。各部性能も良くなってるんだ。
 一番進化したのは装甲だ。」
釈「ふむふむ、防御力強化ですね。」
まゆ子「いや材質を変更して、「鉛」と同等の防御力をより軽量素材で実現出来るようになった。」
じゅえる「防御力強化はしないんだ。まあ、ゲーム性が変わるからな。」

まゆ子「そして何より変わったのが、なんとペットボトルと同じに透明だ。」
釈「透明、ですか。」
まゆ子「スーパーPET樹脂装甲ということで、完全透明でありながらも従来の装甲と同程度の防御力を実現した。
 透明であるからこそ光学迷彩機能を装備できる。」
じゅえる「必要性は分かるが、弱くないのか? そもそも従来の機体の装甲は何?」
釈「圧延鋼板ではないですよね?」
まゆ子「FRPみたいなものだ。炭素繊維を主体とする構造物で、防弾材としてセラミック小片が入っている。」
釈「利点と欠点は?」
まゆ子「利点は壊れて穴が開いても接着剤で塗り塗りして修復が可能。また破壊された部分が原因で全体に破損が広がったりはしないで強度を保ち続ける。
 欠点としては、まあそんなに強い防弾性を持たない。すぐ穴が開いちゃう。そんなに軽くない。」
じゅえる「重いのか。」
まゆ子「強度を出すには厚みが必要だから、鉄よりは軽い、という程度だね。まあガンビットさんの大きさはせいぜい装甲機動車程度であるから、そんなバカみたいな防御力はそもそも期待できないのだ。」

じゅえる「つまり新材料スーパーPET樹脂は薄くなったわけか。」
まゆ子「そうとう薄くなった。もちろん従来の機体と同程度の厚みにすれば防御力倍ではあるが、その分重量はかさむし、そもそもがゲーム性を考えての防御力設定だ。」
じゅえる「つまりゲームが必要とする装甲レベル以上は持たせてもらえないわけだ。当然だな。」
まゆ子「逆に言うと、装甲の厚さを変えるだけで自在に防御レベルを上げられるから、上位機体の防御力をちょっと強化しよう、てのが簡単にできるようになった。」
釈「いいコトづくしですね。で、それを使う兵員の評判はどうなんです。」

まゆ子「怖がって誰も乗らない……。」

じゅえる「薄くて透明の装甲だからな。「従来と同じですよ」と言っても誰も信じないな。」
釈「そりゃー、パスですわ。」
まゆ子「いやこの素材はさ、そもそもがガンビットさんの中に入っているパイロット保護用の透明シリンダーの素材なんだ。
 だからその強靭さは誰もが知るところであり、同時にその欠点や殺られ方を皆知ってるわけなんだ。」
じゅえる「あれはバリンと割れたりはしないんだろ?」
まゆ子「ガラスではないですからね。外側装甲を銃弾が貫通してきても、穴が開くだけで衝撃で全体が破壊されたりはしません。
 丈夫この上ない。」
釈「でも信じてもらえないんですか。」
まゆ子「穴は開くからね。それも貫通する。中のパイロットは死んでしまうが機体は無事で再利用可能、て事態が度々発生する。」
じゅえる「はー、そりゃおっかねえや。」
釈「そんな装甲誰も乗りたがらないわけですよ。」

まゆ子「そうなんだ。だから、新機体が試験的に配備されても実験だけしてオクラ入りだ。
 そこで、天から降ってきた美少女シャクティちゃんに、余っている機体に乗せてみよう、というイベントが発生するシナリオね。」
釈「はあ、そいつぁー自然な展開だ。」
じゅえる「なるほど、ごく自然に新型機に主人公が搭乗できるってわけだい。」
まゆ子「HAHAHA。

 ちなみに、ガンビットさんのトレードマークである肩の標識灯は「水銀」では省かれています。なにせ機体表面で自在にディスプレイ可能だから。
 ではあるが、それがルール的に禁止になる可能性もあるから、標識灯のソケットだけ肩部に装備してあります。

 あと特殊装備として、手。マニュピレーターが左右装備してありますが、腕がただの板でありますから、そんなに器用に作業は出来ない。
 この作業能力によって戦術上の可能性を広げるのを認めるか、も検討中です。
 またこの翼を広げることで、ジャンプ中の飛距離を伸ばすことも不可能ではありません。軽量機体で空中機動も可能性の内です。」

 

 

 

 

 

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